○東
政府委員 ただいまの
大臣からの
お答えと重複する點があると存じますが、一應この
委員會におきまして武藤徳田兩委員から御
質問のありました各項目につきまして、逐條私
どもの
調査の結果を御
報告いたします。
まず武藤委員からの御
質問の點でありますが、第一は特別病室の監禁に關する問題、そのうちの第一の
質問は、この特別病室設以來九十二名の
患者を監禁しておる。しかもその期間は許さるべき二箇月を超えるものが多い、最長は一年半にも及んでおる、平均四十日にも及んでおる。これは監禁とい
つても監獄ではない。
人權蹂躙ではないかという御
質問であ
つたと存じますが、この
事實は、九十二名の
患者を入れておりますこと、その他監禁の長さ等、これは
事實その
通りでございます。
第二の御
質問は、九十二名の監禁中
手續關係書類の完備しておるものはた
つた一つである。書類の不備なものは二十七件で、書類のないものが六十四件である。これでは暗黒裁判である。この點を十分
調査せよという
お話でありますが、
厚生省の
調査團が參りまして、倉庫等丹念に
調査いたしました結果、入室
關係書類が整備しあるものは四十九件あります。これには必要なる書類が全部見つかりました。しかしその他の入室につきましては
關係書類はございません。その大部分は外部から、これらの監禁をせらるべき、いわゆる不良と稱せられる
患者を護送してまいりまして、それをただちにそのままこの特別病室へ入れてしまうという
事實がありますので、さような者については、この
關係書類は完備していないものと思われます。いずれにいたしましても當初武藤委員から御指摘になられたただ一件よりないということよりは、よほど多數、四十九件までは正式の書類を見出し得たのであります。
第三の御
質問は、監禁の例をお示しにな
つた二例でございますが、ともにこれは一種の連坐的監禁である。すなわち監禁せらるべきはずでない者が監禁せられておるという
お話でありました。この點も
調査したしました結果、
事實御指摘になりました者の監禁せられてお
つたことは
事實であります。その
事情を
調査いたしましたところ、第一の北牧つぐのという者が夫山田道太郎と
一緒に罪なくして監禁せられたことにつきましては、この罪なしということは
事實であります。北牧つぐのも夫道太郎も、ともにこれは當然監禁せらるべきはずの人ではなか
つたようであります。不幸にしてこの二人は、他の八名の不良
患者と
一緒に、東京の全生
病院から送られてきたものでありまして、當時警視總監から一括して、十名が不良
患者であるという送監状がついておりましたために、その送監状によ
つて收監したのであります。誤
つて二人に監禁室へ入れられた氣の毒な人であ
つたのであります。もう一例の齊藤俊次ということでありましたが、これは
調査いたしますと齊藤新助という者でありまして、二十六才になる新助の息子茂という者が園内のカボチヤを盜んだ。その際に親父の新助がこれを教唆したというので、
一緒に入室せられたというのがその事柄であります。
それから特別病室に關する第一の御
質問は、この
病院の構造についてでありまして、これはすでに
大臣から
お答えいたしたように、御指摘の
通りであります。
嚴重な錠前のかか
つた部屋でありますし、日光等がほとんどはいらない、確かに御指摘のような構造のものであります。それから御
質問の第五は、そういう特別病室内における
待遇についてでありまして、非常に狭いところで、冬は零下十七度くらいにな
つてふとんが凍えるくらいである。
從つて九十三名の被監禁者中、監禁中に十四名死亡し、出所後八名死亡し、しかもその大部分は冬季に死亡しておる。こういうような
事實について
調査を求められたのでありますが、仰せの
通り零下十七度に下るということは、その
通りであります。また監禁中の書類によ
つて申しますと、監禁中に死亡した十名、出室當日死亡四名とな
つておりますが、これは兩方合せまして監禁中とすれば、御指摘の
通り十四名であります。出室後一箇月以内に死亡した者は二名でありまして、私
どもの
調査では監禁と死亡との間に密接な
關係があると思われるものは十六名であります。しかもそのうち十一名は冬季に死亡しております。以上が大體特別病室に關する御
質問に對する
調査の結果であります。
第二の點はいわゆる不正と申しますか、特に前園長及び前庶務課長に對する不正の問題についてでありまして、御
質問の要旨は、タバコは
患者には
配給せずして横流しておるような
事實があるということでありました。その點について
調査いたしましたところ、約二百名の幽靈人口によ
つて配給を受けておりまして。そしてこれを職員に二重
配給及び
特配いたしました。それを他の物交に使用したという
事實もございました。
それから不正に關する第二の御
質問は、五十萬圓にも達する別途會計があるのではないか、これについて詳細なる使途を調ベろということでありました。この
調査の結果によります、昭和二十年以來財團法人慰安會に炊事用具施設費という別途會計を設けて、最近までの收入が約三百萬圓、支出が約二百四十萬圓にな
つております。この
事實は一種のやみ賣買をいたしまして、その運用によ
つて國費の
不足を補
つてきたのであります。現在現金及び貸付金が合わせまして約六十萬圓、それから物品といたしまして購入當時の價格で約四十萬圓、これだけの財産がこの財團法人慰安會、殊にその別途會計にございます。しかし一應金額の帳じりは合
つておりまから、その點だけからただちに私腹を肥したという證據は、私
どもの手では握れないのであります。しかしながら整理がきわめて不完全でありまして、金額だけを記入した傳票以外に正規の帳簿のようなものはございませんでした。
從つて賣買の相手方も明らかでありませんし、物品名も不明なものもありまして、疑いをかけられてもただちにその疑いを解くだけの證據も得られないと存じます。
第三の
質問は、百ヤールの布地を三十反、それをガソリンと交換したという
事實があるかどうか。これは
調査の結果によりますと、今申し上げた別途會計で購入いたしました布地を横須賀でガソリン、モビール・オイルと交換いたしまして、園用の自動車の燃料竝びに潤滑油として使用した
事實はございます。
第四の御
質問は、倉庫から
患者の
食糧を持出して費消した
事實があるではないか。これに對する
調査の結果をみまずと、炊事倉庫から米麥合わせて約四十俵餘りを持出しまして、職員の出張及び取引先への賣却に充てた
事實がございます。しかしながらこの炊事倉庫には
患者用のもの、職員用のもの竝びに別途會計でいわゆるやみ買いをした米麥等も雜然と保管してありまして、かつ受け拂いの帳簿等も完備しておりません。
從つて持した
事實はございましたが、その米麥が
患者用のものであるという證據もつかめないのであります。
次に御
質問の第三は、癩豫防
對策上根本的な缺陷があると思うかどうかという御趣旨だ
つたと思います。すなわち癩は
傳染病であり、隔離によ
つて防止し得べきものであり、またすべきものである。いろいろ歐米等の例もおあげにな
つての御
質問でありました。これに對して御指摘のことは、私
どもといたしましては十分是認いたさなければならないのであります。必要な療養所、病床數等を完備いたしまして、かつ療養所の
患者の
生活竝びに
治療を十分に改善して全國の癩
患者が進んでこれらの療養所に入所して、いわゆる完全收容と申しますか、全癩
患者を收容し得て、しかもそれに對して
治療の目的を達するようにいたしたい。すなわち最近におきましては、癩
治療ということに對して、非常に大きな光明を見出しつつありますから、
治療を目的とするところの全癩
患者の收容ということを、一つの國策としてでも取上げていくようにいたしたいというふうに私
ども當局としては
考えております。
第四の御
質問は、癩療所は全國に十箇所ある。すなわち國立のものは十箇所ある。それらにも樂泉園と同一の
事件があるだろうと思われるが、これを徹底的に
調査してもらいたいということでごさいました。これにつきましては、ただいま
大臣からも申し上げました
通り、十月一日、二日、全國の國立癩療養所長を招集いたしまして、樂泉園の問題を詳細に話し、各療養所の近況等も十分聽きました。その結果、樂泉園のような問題がはたして他の九箇所の療養所にあるかどうか。あるとは
考えておりませんが、しかしながらなお實情を
調査する必要がありますので、逐次
調査班を派遣して、十分遺漏のないように指導監督をいたしたいと思
つております。
第五の御
質問は、癩
患者の犯罪についての問題でありまして、これを裁判所の管轄すベきか、あるいは療養所の權限に任すがよいか、これは大いに檢當を要する。特別病室を廢することはよいが、それだからと
言つて癩の犯罪を不問に付するという結果にな
つては困るし、あとの處置に窮するようなことがあ
つては困る。その
對策を十分に
考えなければならぬという
お話でありました。
厚生省及び特に癩の療養所側といたしましては、癩
患者といえ
ども犯罪に對しては一般人と同様正式の裁判を受けさせて、かつ差支えのない程度の刑を科するような設備が必要と思います。これがためには癩
患者に對する特殊の法廷、あるいは
刑務所内におきまして、つまり癩専門の病館を設置せられるということが、
厚生省といたしましては望ましいと思
つております。この點につきましては、すでに司法省當局等とも話合いを始めております。
次の御
質問は、
患者獻立表で見るとずいぶんいいものを與えておるようである。しかし
事實は
患者は握り飯と梅干だけを食
つていたというが、眞相はどうか。これにつきましては最初に武藤委員に差上げました獻立表なるものはこれはまた
つたく信をおくに足りないものでございました。
厚生省の
調査班が現地に参りまして、いろいろと食事の點についての資料等を調べました。その結果現在殘
つておりますその資料から、日々の獻立表というものの明細のできたものはございませんが、しかしながら全體として使用した主食、副食物等の全量はわか
つておりますので、その方から算定しても、また
患者には
特配がございますので、主食についてはその量はまず十分と申しますか、與えるベきものを十分に與えてお
つたということは言えます。しかし副食物につきましては、畫あるいは夕食に副食物がついていない日が相當あ
つたことは
事實であります。これは一方
患者の賄いが著しく安か
つたとか、あるいはまた不便な土地であ
つて、副食物の入手が困難だとかいうことももちろん原因としてあげられましようが、しかしながら園當事者における計畫性と、またこういう問題についての執意が缺けてお
つたということが大きな原因であ
つたと思われます。
以上が武藤委員の御
質問に對する各項目についての、一應の
調査の御
報告であります。
なお徳田委員の御
質問につきましても、特別病室についてその死亡者が大い。しかもそ中には縊死した者あるいは凍死した者があ
つた。しかもあるいは死亡者の全體の六割までがそうである。その原因はどういうところからくるかということについての御
質問でございました。
調査をいたしまして、その死亡診断書等を根據にした結果を申し上げますと、特別病室死亡者中に縊死した者が一名ございます。それから死亡診断書の表面から見まして、診断書の上では心臟麻痺あるいは神經衰弱という病名にな
つておりますが、それらの状況から推測いたしまして、凍死と思われる者が二名ございます。すなわち合計三名は縊死あるいは凍死ということが断定せられると思われます。かようなことになりました結果は、要するにこれは監視の不十分、十分なる見まわり手當が行届いていないということが原因でございます。
第二の御
質問は
生活保護法の適用の問題でありましたが、これはもはやすでに楽泉園におきましても、群馬縣當局と直接園とが折衝中でありまして、
生活保護法を適用することに話が進みつつございます。但しその額は、一様に一人二百圓というような、そういう
患者の希望
通りの額にはなり得ないと存じますし。もちろんこれは原則上は各個人の能力に
從つて査定することにな
つておりますが、それは縣と十分
事情を話合
つた上で、實際の額が定まることにな
つております。
第三が勞働賃金の問題でありまして、
患者の勞働に對して一日一圓八十錢しか拂
つていない。
患者はこれを二倍いしてくれと要求しておるという
お話であります。これは先般私が現地に参りまして、
患者と會見いたしました節に、この勞働賃金は
患者の要求
通り三圓六十錢にするのが至當であるということで、
實施いたしております。また一般人と同一勞働に對しては、一般人と同一賃金を拂うようにしたらどうかという御
意見でもありましたが、これにつきましては癩
患者は一體に一般人よりは能率が劣
つておるのでありますが、もちろんその能力に應じた適正な賃金を
考えるのは當然であります。但しその場合に、その賃金の中から、園内で作業いたしております場合は、官給の、國費をも
つて給しております
生活費を差引いたその妥當額を勞働に對する報償として與えるようにいたしたいと存じます。なお園外の作業は、
傳染豫防の原則からしてこれをさせないようにいたします。それから松葉鑛山の勞働賃金が不正なることに使われたのではないかというようなこともございました。これは
調査いたしてみましたところ、勞働賃金のうち四分の三を本人に與えて、四分の一を例の財團法人慰安會に積立てて、全
患者の勞働いたした者もしない者も、全
患者の福利に與えるようにいたしております。なおこのことを
患者に公表いたしておりませんので、四分の一づつ上前をはねておるというような横領の嫌疑を受けたのではありますが、
事實はこれは全部慰安會の方に送
つております。
第四は
患者に對して農耕を強制した。手足のない者にまですき、くわをとらして働かしておるというような無理なことをさせるということから、
患者の
逃亡する者があるというようなことでありましたが
患者は問題の樂泉園の作業として、みずからの割當てられた地所にいわゆる自作農園をつく
つてその農耕をや
つております。しかし手足のない者に強制的に勞働させたという
事實は認められませんでした。
第五は、
新聞配達料の問題で、つまり園内の配達を子供にやらせておるのであります。その配達料は
新聞屋が各戸に配達することの煩を省きまして、一括して園内の配達料として、一箇月に二百三十七圓が受取
つております。ところがその園内に配達する子供に對しては、一人に一箇月十二圓しか拂
つていない。これは實際は三十圓拂うベきものだそうでありますが、十二圓しか拂
つていない。しかも
患者まで負擔させておる。そこに不正があるというわけでありましたが、この點は
調査してみますと、この
新聞配達料が値上げにな
つた後も、すなわち十二圓でなく三十圓拂
つてやるベきことにな
つたことを、事務の擔當者が支拂いを直接擔當しております者に通知をしていなか
つたために、値上げの前の安い賃金しか拂
つていなか
つたものであります。但しその支拂殘りのいわゆる差額は全部
患者慰安會に積み立ててあることがわかりましたので、ただちに値上げ當時にまでさかのぼ
つてそれぞれ支給いたして解決いたしました。
最後はやみもうけの件について、一千萬圓にも上るやみもうけを職員がや
つておるのじやないか、あるいはすでにわか
つたものも六百萬圓くらいはある、療養所という所は實に官吏がどろぼうをするところだろうというふうな痛烈な御
質問であ
つたのでありますが、これに對しましては先ほど武藤委員の御
質問に對する
お答えの中で申し上げました
通り、別途會計というものによるやみ賣買でありまして、その目的は決して私腹を肥やすということのために行われたやみ賣買ではなく、その賣買による利益をも
つて患者に對する國費の
不足を補おうとしたのであると思われるのであります。しかなながら國營の施設においてかようなことを行
つたことに對してはまことに遺憾であると存じます。ただこの間個人的に私腹を肥やしたり、あるいは横領したというふうな
事實が完全にありませんことを、私
どもは祈
つておる次第であります。