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葛西政府委員 お答え申し上げたいと思います。
基本的人權の
尊重すべきこと、これは
憲法の明示するところでございまして、申すまでもないことでございます。從いまして、あるいは
災害の
救助にあたりましては、こういうふうな
條文を使うことなしに、
協力によ
つて、話し合いによ
つてやるべきこと、これは申すまでもないことでございます。非常に
協力が得られないという場合、あるいはまた
差迫つた場合等におきましては、
公共の
福祉と申しますか、そういうふうな立場から、あるいは今御
指摘になりましたように、
他人の
物資あるいは
家屋等についても若干の制限をして、これを公の
目的のために、
公共の
福祉のめに活用するということは、これはまた必要ではないかと思います。御
承知のように、これは申すまでもないことでございますが、
憲法の第二十九條には
財産權の點につきまして、
公共の
福祉に適合するようにやらなければならぬ。それから正當な
補償のもとに
公共のために用いることができる、という
規定がございます。それでこれをやります場合にも、ここにありますように
補償ということを明らかにいたしてございます。
補償によ
つて、しかもこれをいい加減にやるというのでございませんで、一々
令書を出しましてや
つてまいるというふうに相な
つておるのでございます。また人の動員というような點につきましても、これも
もちろん
協力といいますか、お互いに話し合いということで、近隣の
災害に對して働いてもらうということ、これまた申すまでもないのでございますが、先日の
委員長からも御
指摘いただきましたように、
國民の
自由權というものも、常に
國民の
公共の
福祉のために利用される
責任があるというふうに十
二條の
規定もございまするし、また
憲法で禁じておりまする
苦役というようなものに服させるという
考え方ばかりでもございませんので、こういうふうな人道的な、殊にごく非常な場合にやるようなことにつきましては、
苦役というふうな
憲法で禁じておるものに該當しないというふうな
建前から、
基本的人權の
尊重は、これは申すまでもないことでございますが、こういう
非常突發の
差迫つた場合においては、やむを得ない場合にはこれだけの權限を與えていくということは必要ではないかというふうに考えた次第でございます。なお先日も
ちよつと申し上げましたように、
地方自治法等におきましても、第百六十條に、
市町村長が
非常災害の場合に
補償をいたしまして、ほんとうの
非常災害のとき、必要のあります場合に、物件の使用、
收用というふうなことができましたり、あるいはまた
市町村の住民をして防禦に從事させるというふうな
規定も、
現行法でございますのです。これらと照し合わせまして、
憲法の
人權尊重の
精神を侵害しておるのであるというふうには考えないでもいいのではないか。こういうふうに思
つておるようなわけでございます。
それから第二に
お尋ねいただきました
災害の
範圍でございますが、これは
非常災害と申しますのは實は
部落等におきまして、あるいは七戸あるいは十戸あるいは二十戸というような
家屋が火事で燒けてしまうというふうなものも、やはり土地の
事情等によりましては
非常災害というやうなことになるかとも思うのでございます。そういうふうなごく小さい
災害、これは都市と農村とで
大分非常災害という觀念が違
つてくると思います。そういうものと、大きいのを
豫想いたしますれば、これはほとんど
豫想もできぬような
——先日も
委員の方から
指摘がございましたが、
豫想もできないような大きい
災害も考えられるわけでございます。こういう場合にも、やはりわれわれがやり得る
一つの
災害の
救助の
對策というふうなものにつきましては、一應この
法律によ
つてや
つてまいるということができるというふうな構想のもとに立案いたしたような次第でございます。ただいま御
指摘になりました第三國間の
交戰状態に對應して、これを
豫想しているかというふうな點についての
お尋ねでございますが、これは特に第三國間の
交戰状態による
災害を
豫想してこれを立案したということは申し上げられないと思います。ただしかしかりにそういうふうな
状態が起きたといたしますれば、やはりそのことによりまして相
當程度救助がやれるのじやないか、またや
つてまいらなければならぬというふうに心得ております。ただ第三十六條の
補助の
規定等につきましては、
最高限度が百分の九十で終
つているものでありますから、相
當大規模の
災害というようなことにな
つてまいりまするとそれを受けました地域の
地方公共團體だけで負擔ができるかどうかというふうな點については、これはあるいは
補助率というような點だけは、特別に
議會で御決議をいただくというふうなことが、非常に特別な大きいものに
なつた場合には、必要ではないだろうかというふうに考えております。一應
豫想し得るものについては、小さいものから大きいものは相
當程度のものまで、これに含んでこれでやることができるのではないかというふうに考えております。