○
中原委員 まず
醫療制度の問題でございますが、由来
醫療制度はあくまでその公共性のために、
醫療制度そのものを大きく変革する必要があるという議論はもはやその歴史が長いと思う。從来また現在のように、ある程度まで公の機關もできているようでありますが、その公の
診療機關にいたしましても、まだはなはだ不十分な点が多々あるのであります。殊に國立とかあるいは公立とかいうふうな病院のも
つている性格が、言うところの官僚的な性格を多分にも
つている患者が
診療を求めましても、その患者に對するいろいろな応對その他取扱い等が非常に遺憾な点をも
つているという
實情にあるわけであります。もちろん
當局に置かれましては、そういうふうなことについて十分御認識であろうとは思いますが、かようなことはその由来するところがどこにあるかということについても、これはひとり、
醫療機關だけではなくて、わが日本のすべての機構の中にいわゆる官僚性がいまだなおかつ拂拭されず、むしろますますその根を深くしつつあるというような憾みさえあるのであります。最近いわゆる民主主義だとかなんとかいうようなことが強く呼ばれておりますけれ
ども、
實際はむしろ逆に民主化どころではなくて、一層そういう傾向が強まりつつあるような部分もあると思うのでありますが、その中の
一つに、いわゆる
診療機關が算えられるわけであります。なぜ私はさようなことを申すかと申しますれば、たとえば最近赤十字の病院ができております。赤十字の病院も相當
普及されているようでありますけれ
ども、これらが特にその性格に、いわゆる官僚的な色彩がたぶんに事務
當局等にあるのでありまして、あるいはまた國立病院等にいたりましては、なおさらいろいろ非難も起
つております。今ここで露骨にあまり耳障りのすることを申上げたくありませんから申上げませんけれ
ども、とに
かく國立病院等の中にはなお許し難いものさえ伏在いたしているのでありまして、そういうようなことを十分御
調査が願われていることと思いますが、そういう
實情に對する認識の上にた
つて、今後の
醫療機關に對する方策が立てられなければならぬのではないか、このように私は思うのであります。從いまして、たまたまここに
國民健康保險に關する問題がもち上げられました以上、この
國民一般の
健康保險に對する答えとしては、特にそのような遺憾のないことを期するように努めなければならぬのである。そうであるならば現在のような
醫療制度そのままも
つていくべきものであるか、むしろここで大きく転換を要するのではないかという後者の方の
考え方に、相當良心的にそして積極的に私は
當局の御努力が願いたいのであります。もちろん厚生
委員會等においては、當然このことが今後論議されることと私は期待いたしておりまするが、これを要するに、
醫療制度の社會化ということがしきりに長い間言われてまいりましたが、
醫療制度社會化につきましても、相當研究さるべき問題が多々残
つておると
考えておるのであります。もちろん私
どもはただ漠然と
醫療制度の社會化への構想を簡單に承認しようとは思いませんが、しかしながら結局
醫療のことはこれを私的の
關係で取上げていくのではなくて、あくまで公的な
關係において取上げていかなければならぬのではないか、特に非常に良心的な
開業醫でありまする場合は、良心的な
開業醫であるだけ、その
開業醫の拂う
犠牲が大きく、またもしたまに良心的ならざる
開業醫の犯す罪悪はまた大きいのであります。從いましてそのいずれを
考えましても、
醫療機關はやがてその行くべき方向は、あくまで個人的な經營に委ねられるものであ
つてはならない、
醫療社會化への方向をめざしながら、
醫療制度に對するいろいろの問題が今後は取上げられていかなければならぬのではないか。すなわち目標をそこに求めて、今後の
醫療機關等に對するすべての施策も、あるいはまたそれらに對するいろいろな
當局の構想も、またわれわれのとるべき態度も、
醫療社會化への方向を明確に認識しながら、すべてが取扱われていくべきものとなるのではないかと私は思うのであります。このようなことを
考えまするときは、しばしま公認の
診療所等が問題にな
つてくるわけでありますけれ
ども、これとても
先ほど申し上げますように、やはりその經營と申しますか、その
運營の上で、非常に遺憾なことが多々あるわけでありまして、そういう遺憾が多々ある点についての認識、從
つてそれを拂拭するための方策というものが十分もたれなければならぬと思います。そのことは結局、
指導教育というふうな問題に及んでもまいると思いますが、その機關に從事いたしておりまする人々の
醫療機關の使命、あるいは任務等についての自覚が、もちろん十分なされなければならんと思いまするし、同時にまたそういう機關に從業いたしております諸君の待遇等の問題も、十分
注意深く考慮すべきものであると
考えるのでありますが、そういうことは今ここに議論する時間でもないと思いますので、とりあえずそういうような事柄にまで心を及ぼしながら、
國民健康に對する基本的な
醫療機關の問題を今後討議していきたい、かように私は思うのであります。從いまして
政府當局とせられましても、從来のようにただあらゆる
方面のいろいろな摩擦のために、正しき方向に突き進むの勇氣を缺きしばしばみずからの良心に背いて、おざなりと言えば少し言葉が強過ぎるかもしれませんけれ
ども、とも
かく事なきを求めながら、無難にその
仕事をやり遂げていくというようなきらいが
事實あ
つたのであります。少くとも今後はそのようなことのないようにお願いいたしたいのでありまして、問題は國家、
國民、民族に對する大きな問題でありまして、ある特定の勢力に對して躊躇するようなもはや時ではないのであります。殊にまた現在わが日本の
國民の生活の諸
事情からいたしますと、戦争によ
つてやつつけられました現在の
國民の健康
状態を
考えますと、一層この
診療制度に對しましてその感をわれわれは深うせねばならぬのでありますが、とりわけ現在の食生活あるいは居住等のいろいろな不衛生な
状態から
考えまして、ゆるやかにわれわれはその方向に行こうとするのではなくて、そういう
國民の
實情に即応するために、
政府は對策を
活發に實行に移すという行き方が、もはや緊切に迫られておるのではないかと私は思うのであります。殊に最近いわゆるカロリー摂取量等にいたしましても、
實際は一千を前後するということさえも言はれておる今日でありますので、もちろん基本的な問題の對策が必要であることは言うまでもありませんけれ
ども、まず厚生
當局としては消極的ながらそういう
實情に即応するための對策が立てられなければならぬ。そうであるならば、なおさら
國民健康保險組合の問題はより勇敢に、大胆に、率直に今後これが大きい変革を私は要請されておるということに氣がつかなければならぬのではないか、かように思うのであります。從いましてこの
國民健康保險組合制度の問題についても、もとより現在は日本の風格から
考えまして、その
組合加盟を
強制するなどということは、
絶對に許されませんけれ
ども、
國民すべてが
健康保險組合員であるということが
實際は必要であると私は思うのであります。なぜかと言えば
國民健康保險組合員でない人々と
保險組合員である場合との取扱いが、はななだ遺憾でありますけれ
ども、
實際はこれを公平になしがたいという
實情があるわけであります。率直には私は
一つの例をも
つて申し上げますと、あるいわゆる新圓成金の人の病床を一度訪れたことがありますが、その人の病室へ参りますと、しかもそれがいわゆる國營的な性格をもつた病院でありますが、なるべくぼんやり申しますけれ
ども、その人の室はまことに格別な室であ
つてまた
醫師のその室を訪れる囘数も非常に頻繁であり、おそらく普通の病室には許されないであろうような、いろいろな設備が許されて、その病床を訪れました私は、病人を心配する氣持よりは、待遇の非常に超特別的な、何と申しますか水準をうんと飛び越えた
實情に目を見張
つたのでありますが、そういう事柄と今後は反對に、まさに死に瀕しつつあるような重病患者が、實に暗い、じめじめした見るからに非衛生的な病室の隅つこの方に、いわば投げ放りつぱなしにされておるというような感じのする對象を見たのであります。こういうことは
ほんとうに良心ある
醫療科學者のおそらくたえられないところであろうと私は思うのでありますけれ
ども、それを別に氣にも止めないで、さつさと出ていくその
醫師の姿を見て、私は
實際何とも言いようのない憤怒を感じたのであります。こういうことは特別な例であ
つて、さようなことがしばしばあるものではないとあるいは言えるかもしれませんが、
實際にはそれはまたしばしば豫想されるのであります。またそういうふうになることもやむを得ないのが現状でございまして、現在の經済組織のもとでは、もとより公の病院であつたにいたしても、その個人個人の利害といろいろ結びつく点もあるわけでありますし、また人情としてやむを得ないかもしれないという了解もつかないわけではありませんけれ
ども、それを今見逃していいのかどうか、
實際少なくとも
指導監督の機關におります者はそのような現象を見逃しては主體といたしましては、これがすべての人々にあまねく平等に利用せしめ得られるような經營主體であることが最も望ましい。一部の人々あるいは特殊の階層を代表するというふうな經營主體は好ましくない。またその經營主體に適正な
醫療の經營が實行されるようなものであり、また必要に応じてはその公的
醫療機關を整備する
能力、殊に
財政的な
能力をも
つておるようなもの、それから
社會保險制度を緊密に連繋
協力すること。かような公的
醫療機關の一方には、
開業醫制度はその長所を助長し、その缺点を是正して、公的
醫療機關の及ばないような場合、あるいは公的
醫療機關を必要としないような對象に對する
醫療機關として存置しておく。またすべての
國民に對して必要最小限度の
醫療を与えるために、殊に
戦災地または無醫地等に對しては、なるべく速やかに公的
醫療機關を整備する。かような公的
醫療機關を整備に對しては、國庫において相當額の
負担をなすこと。かような方針要領等を一応御承認を得ております。この内容だけをごらんいただきましても、現在の日本の
醫療の法典とも申すべき
國民醫療法の中に盛られております
考え方、並びに
國民醫療法の制定せられました
當時の議會における速記録等について、少くとも私が一
通り目を通しまして与えられた印象等からいたしますと、これは相當程度の方向転換であるというぐあいに私は存じております。殊にこれはすでに過去にわたることでありまして、本年二月、三月の交において議せられた問題でありますが、なおこれが将来、殊に近い将来の日本の
醫療制度のあり方ということを
考えましても、あるいは今後の
醫療制度審議會におきまして、いろいろと御
意見を伺い、そうしてこの時代に合つたような方向への
醫療制度の転換が期待し得られると私は存じております。少くともこの要領で今申し上げましたように、公的
醫療機關と
開業醫制度を並存いたしておりますが、その
考え方の中には、存来のような日本
醫療團と
開業醫制度との二本の對等の並存ということよりは、よほど
違つたものと私は了解いたしております。すなわち公的
醫療機關を主流にするという
考え方でありまして、
開業醫制度はこれをその主流にまつわるところの線として存置していく、さような
考えと御諒承願いたいのであります。從
つて國民健康保險と将来の公的
醫療機關との
關係は、これは密接不可分の問題でありまして、と申しますよりも、ただいま
お話のありましたように、
國民皆保健というふうなことを
一つの目途といたしますと、
國民健康保險即日本の
醫療制度ということにも相なると思うのでありまして、從
つてこの
醫療制度の審議にあたりましても、おそらく今後の審議は
國民健康保險と離れてこれを論議することはできないと存じております。一體となりますような方向に審議が進められるように、私
ども期待いたしておるわけでございます。
次に公的な
醫療機関、特に國立病院等におけるいわゆる官僚臭、官僚色ということに對する主體といたしましては、これがすべての人々にあまねく平等に利用せしめ得られるような經營主體であることが最も望ましい。一部の人々あるいは特殊の階層を代表するというふうな經營主體は好ましくない。またその經營主體に適正な
醫療の經營が實行されるようなものであり、また必要に應じてはその公的
醫療機關を整備する
能力、殊に
財政的な
能力をも
つておるようなもの、それから
社會保險制度を緊密に連繋
協力すること。かような公的
醫療機關の一方には、
開業醫制度はその長所を助長し、その缺點を是正して、公的
醫療機關の及ばないような場合、あるいは公的
醫療機關を必要としないような對象に對する
醫療機關として存置しておく。またすべての
國民に對して必要最小限度の
醫療を與えるために、殊に
戦災地または無醫地等に對しては、なるべく速やかに公的
醫療機關を整備する。かような公的
醫療機關を整備に對しては、國庫において相當額の
負担をなすこと。かような方針要領等を一應御承認を得ております。この内容だけをごらんいただきましても、現在の日本の
醫療の法典とも申すべき
國民醫療法の中に盛られております
考え方、竝びに
國民醫療法の制定せられました
當時の議會における速記録等について、少くとも私が一
通り目を通しまして與えられた印象等からいたしますと、これは相當程度の方向転換であるというぐあいに私は存じております。殊にこれはすでに過去にわたることでありまして、本年二月、三月の交において議せられた問題でありますが、なおこれが將來、殊に近い將來の日本の
醫療制度のあり方ということを
考えましても、あるいは今後の
醫療制度審議會におきまして、いろいろと御
意見を伺い、そうしてこの時代に合つたような方向への
醫療制度の転換が期待し得られると私は存じております。少くともこの要領で今申し上げましたように、公的
醫療機關と
開業醫制度を竝存いたしておりますが、その
考え方の中には、存來のような日本
醫療團と
開業醫制度との二本の對等の竝存ということよりは、よほど
違つたものと私は了解いたしております。すなわち公的
醫療機關を主流にするという
考え方でありまして、
開業醫制度はこれをその主流にまつわるところの線として存置していく、さような
考えと御諒承願いたいのであります。從
つて國民健康保險と將來の公的
醫療機關との
關係は、これは密接不可分の問題でありまして、と申しますよりも、ただいま
お話のありましたように、
國民皆
保險というふうなことを
一つの目途といたしますと、
國民健康保險即日本の
醫療制度ということにも相なると思うのでありまして、從
つてこの
醫療制度の審議にあたりましても、おそらく今後の審議は
國民健康保險と離れてこれを論議することはできないと存じております。一體となりますような方向に審議が進められるように、私
ども期待いたしておるわけでございます。
次に公的な
醫療機關、特に國立病院等におけるいわゆる官僚臭、官僚色ということに對する御批判でありますが、ごもつともなことと思います。われわれといたしましても、いろいろと
具體的な事例についてさような事柄を聞き及んでおりまして、十分それを認識いたしております。それを是正いたしますためには、われわれといたしましても微力ではありますが、でき得る限りの努力は
拂つてまいりますし、將來といえ
どもますますその方向に進みたいと存じております。特にそれらの
醫療機關における
醫療從事者、殊に
醫師というものが、さような公的
醫療機關の
運營の中枢をなるものでありまして、要するに
醫師の心構えとその
活動いかんが、結局それらの機関の
運營の全般に大なる影響を及ぼしてくるのでありまして、このことにつきましては、私自身醫育に携
つておる者といたしましては、まことに遺憾に堪えないのであります。そのことの大部分の責任は、在來の日本の醫育機關が負うべきでありまして、醫育機關に働いております私
どものような立場にある者が負わなければならないものと痛感いたしております。と申しますのは、醫育の中に醫業、醫というものの社會性、公共性ということが強調せられることすこぶる少ないのであります。醫育機關にはい
つて學ぶ者は言わず語らず認識いたしておりますことは、いわゆる在來の
開業醫のようなものが自分らの將來であるというふうに
考えがちであります。少くとも私自身はさような訓育の中に育
つてまいりました。そうして醫育機關の中において教わりますことは、専門的な技能、學問でありますが、
醫師というものが社會においていかなる役目を果たすべきかということについての徹底的な訓育は、ほとんどまつたく受けておりません。おそらく現在においてもほとんどまつたく受けていないのではないかと存じます。この點につきましては、
教育の面における
醫師の公共性というものに目覺めさすようなものが完成いたしますことが、わが國の
醫療の技術的標準のみならず、その精神的の標準を一段上げることになると思うのでありまして、この點はただいまご指摘のことと私もまつたく同感でありますが、そのおもなる根底を日本における醫育の缺陷というところに認識をいたしたいと存ずる次第であります。御
質問の
趣旨は十分に私は正しく了解いたしたつもりでございますが、以上をも
つてお答えといたします。