○高津委員 私は
政府に對して特定郵便局制度の問題につきまして、きのうの質疑を續けたいと思います。昨日この委員會において
逓信省の大野總務局長は、冨田委員の質問に對して、特定局制度を廢止する意思はないと答え、また言葉を續けて特定局に勤務する從業員の待遇は勞働基準法に基いており、普通郵便局に働く從業員との差別は今日はなくな
つておる。局長の請負制度は昔のことであるという意味のことをも答辯された。私は十二月二日附朝日新聞の三木逓信大臣の談話の中で、特定局の渡し切り
經費は十月一日から廢止したという
部分を讀んでいたので、昨日の御答辯の、それは昔の話だとい
つたような表現も氣にかか
つたし、また特定局員の待遇が普通局員の待遇とまたつく同樣にな
つたとは思わないので、冨田委員の質問のあとをうけて、私は、あれほど全逓勞組がこの問題を大きく取上げる以上、そこに何らか理由があるとは思われないか。たとえば特定局に働く從業員は、どうも私的雇用のような立場で、長い傳統のあることだから、局長の目色、顔色をうかがわねばならぬようなことがあるのではないかという意味の質問をしたのであります。すると大野局長は、近ごろは勞働組合の運動が自由にな
つたので、郵便局でも、從業員が局長の目色、顔色をうかがうよりも、局長が從業員の目色、顔色をうかがう方が多くな
つたという意味の御答辯を聽いたのであります。私はこの御答辯を聽いて、それは違うと思
つたが、ただあまり委員會の時間が遲れるのもどうかと思
つて昨日は質問を打切りました。私は本日ここに
一つの確固たる
事實をあげて、全國一萬三千の特定郵便局、すなわち昔の言葉でいえば三等郵便局に働いている多數の從業員が、その局長からいかに封建的なばかばかしい扱いを受けているかを
政府當局の前に證明したいと思うものであります。
これは一例でありますが、逓信當局のおひざもとに近い千葉縣市原郡市東村郵便局の森局長が、本年一月に電報配達として塚本道夫君を雇い入れたのであります。最初給料は月五百圓、現在は月收
總額千圓と申します。電報は普通多い日に十數通、少い日に五、六通ですが、その森局長は、ほとんど朝暗いうちから夕方まで今申した塚本道夫君をしてもつぱら自分のたんぼをつくらしております。電報にはウナ電もあり、たとえ普通電報でも發信人からいえばそれぞれ重要な用件があると見られるべきですが、この局ではそれを一日に一囘か二囘に溜めておいて自轉車でちよつと配達させて、あとの時間は全部作男同樣にたんぼをつくらせておるのであります。森局長は實は相當廣く耕作地をも
つているので、人手が足らぬものと見え、本年六月ころから、その塚本君の細君の弟、すなわち義弟を專門に作男として雇い入れたのでありますが、その義弟に當る人は、他でも働いた經驗があ
つて、あまりの酷使に腹を立て、も
つて勞働
條件のよいところを見つけて、去る十月郷里たる新潟縣に歸
つてしまいました。すると森局長は、自分の酷使ぶりを反省することなく、かえ
つて兄の塚本道夫君に向
つて、弟を逃がしたりしてきさまは不都合だ、やめさせるとい
つて叱りつけ、さらに、この局は電報が少いのだから、別の局の電報配達で間に合うかもしれないと言
つておどかしたのであります。元來塚本君は正直者で、一日として休んだこともない忠實な人物でありますが、民主主義の今日、局長からこの無法と侮辱とを受けてはやはり腹にすえかねたのでしよう。その日はそれに抗辯もしませんでしたが、翌日から局に顔を出さなくなり、一週間も二週間も經ちました。そこで貧乏な同君の家では細君が同君に對してぶうぶう言
つたと申します。さて數日の後、局長の方が折れて出て、元
通り働いてくれと申しましたが、わが愛するこの勞働者は、この蟲のよい要求には應せず、今月一日からは他のところに就職しているのであります。ちなみに塚本君は退職手當ももらわず、また支給されている服も取上げられております。私は、このような生々しい、しかもごく最近の
事實を知
つておりますので、きのうの當局の白々しい答辯を聽いて、國家と國民とのために驚きかつ悲しんだことをここに申し添えたいと存じます。特局定の局長は村ではだんな樣です。現在のようなインフレ期には金の動きがじぐざぐにな
つていますが、森局長は村内の一軒々々の金の動き、貯金の高を、めぼしいのは大抵記憶していると申します。税務署に言われたらどうなろうか、税務署に密告されたらどうなろうかと、村民はこの局長を恐れていることは、もちろんであります。それに、村にただ
一つの電話であり、村民はそれをときどき借りて使う。それを局に勤めさせておる自分の妹に聽きと
つて局長に
報告をさせる。たれが大きいやみをや
つているか、どんな大金を動かしているかを局長は手にとるように知
つているというのであります。だから、
政府が貯蓄奬勵をするときなど、森局長は、家に金をおくと危ないですぞ、と言
つて、金のある家をちやんと知
つていて勸誘するので、成續が上
つたといわれております。昨年はこの局には四百數十
萬圓の郵便貯金がありましたが今年は六百
萬圓ないし一千
萬圓の額が集ま
つておろうといわれております。あなたは大量の
物資を買いつけた、あなたは昨今大金を受けと
つている、それを電話で、知
つているとまでは局長も言わなでしようが、酒を常に飲んでいるこの局長は、醉うと、たれたれの家はいくら貯金していると言うのが癖にな
つているという話を聞くと、私は、さような人物がもし特定郵便局の局長を勤めているのでなく、他の役所にお
つたら、とうの昔にくびにな
つていようと確信するのであります。あまり長くなることは委員諸君に御迷惑になると思いますが、これは特定郵便局の局長なるものの悪い見本の代表的、典型的なものと思いますので、いま一點だけ森局長の解剖によ
つて質問を繼置させていただきます。森局長は近ごろ約百
萬圓を集めて
一つの事業を始めております。その資金の集め方は、例により村内どの家がいくら現金をも
つているかをよく知
つておりますから、それを利用悪用しての細工で、職權濫用的な行為であることは、俊敏なる刑事や檢事をまつまでもなく、政治家の末席を汚す私にも十分想像し得るところではあります。むべなるかな、はたして村内には、出資者も非出資者も、あの酒飲みの局長のことだから、いまにあの百
萬圓をどう使い果すか、ごまかすかもしれぬといううわさが村内に流れていると聞きます。當局においては、かような横暴な、封建時代さながらの局長のもとに使われる從業員の勤務がいかに苦しいものであるかを少しお考えにな
つていただく氣はありませんか。私は、全國には森局長は決して一人でなく、塚本道夫君もまた一人でないことを斷言いたします。森局長の上を行く局長、その下にすぐ續ぐ局長、それはそれは悪徳局長がいかに多いことか。また彼らのもとに涙で働くところの男の從業員、女の從業員がいかに多いことか。全逓勞組によ
つて代表されている特定郵便局制度廢止の叫び、そうしてこの叫びは、二三日前の十一月三十日、中立的な
中央勞働委員會によ
つてさえ當然なりとして調停案の一項とされているのであります。特定郵便制度廢止の聲の陰には、民主主義が相當普及されているかに宣傳されている
日本において、まだまだ特定局で働く勞働者が不當なる使われ方をしているものが數千はおろか數萬、數十萬存在するのだということを、
逓信省の中樞部にいる諸君が十分認識されんことを私は今警告的に希望するものであります。森市東郵便局長のような事例は、日をあらためて、さらにいくらでも委員會においてあげ得る用意をも
つておることを附言しておきます。私はこのような
事實及び認識の上に立ちまして、左の四點を質問いたします。
第一、私たちの屬するこの
決算委員會で、國家公務員法を
審議したのでありますが、あの國家公務員法においては、公務員は大臣、次官、兩院議員等々の特別職を除き、
一般職に屬する公務員は、近いうちにすべて試驗によ
つて採用されることになるのであります。また高文をパスした者の特權が廢止され、すべての就職後は、その職種職種において試驗によ
つて、その役所の課長さんにも、局長さんにもなれるのであります。この衆參兩院を今囘通過したる公務員法の精神に顧みましても、家族制度さえ撤廢された今日、ほとんどこの世襲制ともいうべき特定郵便局に局長、親は子に局長の職を讓るという不合理にして、特權的なるこの制度を廢止するのが、民主主義的だと全逓數十萬の勞働者は考え、私もそれをもつともだと思うのですが、
政府はあくまでこの悪制度の存續を固執するのであるかどうか。これが第一の質問であります。
第二、もし全逓及び本委員の主張にも道理ありとお認めになるならば、特定郵便局制度廢止の諸
方法を
審議するための委員會にごときものを設置される意思ありや否や、これが第二質問であります。
第三、本
日本委員會において、私が
一つの例として指摘した千葉縣市原郡市東村の市東郵便局長の、同局從業員に對する使用
方法の亂暴さといい、他人の貯金高を常に調べて公開するがごとき行為といい、私は言語道だ斷だと思いますが、この森局長に對し、當局はどのような處置をとられる御所存でありましようか。これが質問の第三であります。
第四、私は特定郵便局長に中にりつぱな人があることを知
つておるものでありますが、千葉の森局長と類似の人物が、他にも相當あるのではなかろうかと思われます。それらの人物にもとで勤務する從業員の苦しみや惱みを考えますと逓信當局は世襲制度を廢止されるまでの間の措置として、監督を強化して、何らかの措置をとる意思ありや否や、これが質問の第四であります。明確にして、
責任のある御答辯を伺いたいと思います。