○
三浦説明員 お
手もとに印刷にしておあげいたしました
裁判官彈劾法案というのが、小
委員会において決議されました
原案であります。それから一枚刷りにいたしまして
裁判官彈劾法案修正というものを差上げてありますが、これはその後
関係方面に折衝の結果、
修正をしたらばと考えておる
箇所であります。順を逐うて御
説明申し上げます。
第
二條につきましては、先般の
委員会の際に申上げましたが、
原案に四号ありますものを二号にまとめまして、「
涜職の
行爲があ
つたとき。」というのは
修正案の一号の中に含まれることに
規定をいたしまして、
原案の一号、二号、三号をひつくるめまして
修正案の一号に、それから
原案の四号を
修正案の二号といたしたのであります。かように改めましたゆえんは、
涜職の
行爲は一應
職務上の
義務違反に入ることは、もとより考えてお
つたのでありまするが、
原案第十
二條との
関連におきまして、一
應裁判官として
涜職の
行爲があれば、これは
訴追事由とするに足るという考えをもちまして
訴追事由にあげまして、なおそれに情状によ
つて宥恕すべき
事由があれば、十
二條によ
つてこれを免除しよう。こういうことにいたしたのでありますが、
修正案の
通りに一号の中に入れてまして、「
職務上の
義務に著しく
違反」という、著しく
違反した場合において
訴追事由とすることにいたしますれば、十
二條の
規定がその
関係においてはなくなるのでありまして、それとなお
一般の
職務上の
義務違反につきましては、著しく
違反した場合につきまして
原案においても
訴追事由といたしてお
つたのでありますが、それと三号の「
職務を甚だしく怠
つたとき。」を一緒にして、今のような
意味におきまして一号の
規定としたわけであります。
それから第二号は「その他
職務の
内外を問わず、
裁判官としての
威信を著しく失うベき
非行があ
つたとき。」といたしまして、
職務の
内外を問わずという
言葉を附加えました点と、従來「信用」とありましたのを「
威信」ということにいたしたのであります。「
職務の
内外を問わず」というのは実は附け加えませんでも当然のことと考えてお
つたのでありまするが、これを加えまする方が明瞭でありますので、さようにいたしたのであります。なお
威信といたしましたのは、この四号に関しまして多少明瞭を欠くきらいがありはしないか、要するに四号の場合は今一号にあげた以外において
裁判官の
非行があ
つて、それが
司法の
尊嚴を害する、こういう場合におきまして
訴追事由とする方が適当ではなかろうかというような
意見もありましたので、その
意味を加味いたしまして
威信ということに改めました。
それから第三條は
原案の二十
五條と
関連いたすのでありまするが、二十
五條におきましては「
法廷は、
彈劾裁判所でこれを開く。」ということに
規定してありまして、開廷の場所を明らかにしてあるわけであります。しかしながらこれはどこで開くかという疑問が多少起るのでありますが、
彈劾裁判所自体は、
國会が
東京におかれている以上当然のことだという
建前をも
つて、特に
規定をしなか
つたのでありまして、ただ二十
五條におきましては、
彈劾裁判所と
法廷は別個のものでありますので、
法廷は
彈劾裁判所で開くという
一般刑事訴訟法の概念によ
つて規定をおいたのでありますが、なおこれを明瞭にした方がよかろうと考えますので、これは
彈劾裁判所だけでなくて、
訴追委員会についても同樣でありますので、総則におくことにいたしまして、第三條に
修正案としてあげてありますように「
彈劾裁判所及び
訴追委員会は、これを
東京都に置く」という
規定にいたしたわけであります。從いまして
條文は順次繰り下
つてくるのであります。
次に第四條の第八項であります。「
訴追委員及びその
職務を行う
予備員は、
衆議院議長の定めるところにより、
相当額の
手当を受ける」という問題でありますが、この点に関しまして多少の
意見がありまして、
修正案に示しましたように
國会の
閉会中その
職務を行う場合に、
手当を出すということに改めたのであります。この点に関しては
訴追委員会並びに
彈劾裁判所は
國会の
閉会中において
職務を行うという点、さらに本來の
委員の
職務以外に、
裁判的な
職務を執行するという点におきまして、
閉会中以外におきましてもこの
手当を出すを相当と考えてお
つたのでありますが、先ほど申しました
意見を斟酌いたしまして、かように改めたのであります。
次に第
七條であります。第
七條については
括弧書に「
訴追委員の
職務を行う
予備員を含む。以下同じ」とあるのでありますが、この
括弧書は、第四條の
規定の中に、「
予備員は
訴追委員に事故のあり場合又は
訴追委員が欠けた場合に、
訴追委員の
職務を行う」ということがありまして、当然
予備員というものはかような
條件に該当する場合におきましては、
訴追委員と同樣の
職務を行うということになりますので、これが当然のことだと考えまして削除いたしたわけであります。
次に第十條の三項であります。第十條の三項は「
出頭した
證人には、
議院の
要求により、
證人が
出頭した場合の例により、
旅費及び
日当を支給する」の
規定でありますが、これは一應「
議院の
要求により
証人が
出頭した場合の例により」ということにいたしまして、
議院に
証人の
出頭した場合の額をやることに考えていたのでありますが、
彈劾裁判所の場合におきましては、
刑事訴訟法を準用することにいたしまして、
刑事訴訟法に
規定されておりますところの、
旅費日当並びに
止宿料を出すことにいたしましたので、その間権衡上同樣の
規定にするが適当だと考えまして、
裁判的な
規定でありますので
刑事訴訟法の
原則に合わせることにいたしまして、「
議院の
要求により」とありましたのを「
彈劾裁判所に」と改めまして、あと「
証人が
出頭した場合の例により、
旅費及び
日当を支給する」ということにいたしたのであります。
次に第十
二條であります。これは先ほど申し上げました第
二條との
関連において削除することにいたしたのであります。
次に第十四條であります。これに関しましては
訴追後
訴追、
事由に関しましてこれを取消すを必要とするという
事由が発見された場合、
訴追委員会の
権限においてこれを取消すという
規定を置いたのであります。これは現在
刑事訴訟法において檢事が公訴の
取消しをするという
規定ともにらみ合わせてかような
規定を置いたのでありますが、この点に関しては一旦
彈劾裁判所に
事件が移された以上は、これを
訴追委員会が取消すことはいかがであろうか、それは
取消しの
希望の
要求をする
程度に止まらなければならぬのではないかという
意見もありましたので、その点をくみまして、それも
一つの考え方だと存じますので、この第十四條を削除いたしまして、
訴追後の
取消しは一切
彈劾裁判所の
権限においてなすというようにいたしまして、この
規定を削除することにいたしたのであります、。
次に第十六條の第九項であります。これは先ほど申し上げましたと同樣の理由によりまして、「
國会の
閉会中その
職務を行う場合においては」という字句を入れる
程度に
修正をいたしたのであります。
次に第十九條であります。これに関しましては第
七條において
説明したしましたと同樣に、
括弧書の中の(
裁判員の
職務を行う
予備員を含む。以下同じ)を削除することにいたしたのであります。
修正箇所は以上申し上げた
通りでありますが、なおこれに
関連いたしまして、多少御
研究を願い、御
檢討を願
つたらよかろうと考えます
箇所について申し上げたいと思います。それは第二十六條の
規定であります。これは
委員会においていろいろ論議された
規定でありまして、現在問題と
なつております点は、
憲法違反ではないかどうかという点であります。それは
憲法第七十
八條の
規定との
関連におきまして、さような
憲法違反となりはしないかどうかという問題であります。第二十六條の
但書以下の
規定がその問題にあたるのであります。私どもといたしましては、この問題につきましては一應かように考えておるのであります。
憲法第七十
八條に「
裁判所は公の
彈劾によらなければ、
罷免されない」という公の
彈劾とは廣く
一般の人、
言葉をかえて申しますと、
國民に名においてという
意味でありまして、
國民を代表される
國会議員各位が
職務に当られることによる公の
彈劾と、公の
機関による
彈劾との二樣の
意味に解しておるのでありまして、この第七十
八條の
規定から常に
彈劾裁判は
公開をしなければならないという
意味は、公の
彈劾の
意味の中には含んでいないと解しておるのであります。第八十
二條との
関係においてこの
但書に「この
憲法第三章で保障する
國民の
権利が問題と
なつてゐる
事件の対審は、常にこれを
公開しなければならない」という
規定があるのでありますが、この
憲法第三章で保障いたしておる
規定は、
憲法第十
五條に「
公務員を選定し、及びこれを
罷免することは、
國民固有の
権利である。」なお第十六條の中に、その他の
規定がありますが、「
公務員の
罷免に関し、平穏に
請願する
権利を有し、
何人も、かかる
請願をしたためにいかなる
差別待遇も受けない。」という
規定がありますが、この点に関しましては、第八十
二條は
司法権に関する
公開の
原則を定めたのでありまして、
彈劾裁判所における
規定は、
憲法上特にその点に関する
規定がある以上、これは
特別法であり、八十
二條の
規定の
原側そのままが
彈劾裁判所の
公開原則に適用されるものだとは解されない。かように解している次第であります。今申し上げましたような
意味合におきまして、二十六條の
但書に公序良俗を害する恐れがある場合には
公開しないでこれを行うという例外的な
規定を置くことは、
憲法違反ではなかろうと、かように考えておる次第であります。しかしこの点につきましては、
皆さま方の御
意見を拜聽したいと思
つている次第であります。
次に第二十
八條の
規定でありますが、これは「
罷免の
訴追を受けた
裁判官を召喚し、これを訊問することができる」こういう場合におきまして、
訴追を受けた
裁判官に対しまして、あるいは強制的に
不利益な
供述を強要するのではないかというような
意見があ
つたのでありますが、これは
憲法の第三十
八條に「
何人も、自己に
不利益な
供述を強要されない」という
規定があるのでありまして、この
憲法上の
原則は当然のことだと考えまして、特に
規定を置かなか
つたのであります。
第三十
七條の
規定であります。「
裁判官は、
罷免の
裁判の宣告により
罷免される」という
規定があるのでありますが、この
罷免の効果といたしまして、
恩給の問題をどう考えるか。次に他の
文官等への
就職の問題をいかに考えるか。あるいは
裁判官への
就職の問題をいかに考えるかという問題なのであります。これらの点に関しましては、
裁判官への
就職任命の問題に関しましては、
裁判所法に、
彈劾裁判によ
つて罷免された者は、任命することはできないということに
なつておりますから、そこで解決がつく次第でありますが、
恩給の問題に関しましては、
從來官吏懲戒法の中に、
懲戒によ
つて免職せられました者につきましては、
恩給権を喪失する
規定があるのであります。今度
官吏懲戒法がなくな
つたのでありますが、同樣の
趣旨はやはり維持していきたいと考えておるのでありまして、この点は
恩給法の改正にまつことにしたいと思
つておるのであります。なおまた、他の文官への
就職の問題でありますが、現在の
官吏懲戒法の
関係におきましては、
懲戒免職になりました場合におきまして、他の文官へ
就職できるかどうか、
就職が制限せられておるかどうかという点につきましては、明瞭な
規定がないのであります。しかしながら
一般文官の
懲戒令によりますと、二年間は文官の他の官職へつくことができないという
規定があるのであります。これらの点を考えますときに、やはり
裁判官につきましても、権衡上他の文官への
就職につきまして適当なる制限を加えるの必要はあると考えておるのでありまして、これは他日
公務員法が制定せられます場合におきまして、
公務員法の
規定に讓ることにいたしたいと考えておるのであります。以上の二点に関しまては、法制局に一應
事務的な連絡をと
つてある次第であります。
次に第四十
二條の
規定であります。四十
二條は刑法の誣告罪に該当する
規定でありますが、誣告罪の
規定の中にこの
彈劾を受けさせる
目的をも
つて虚僞の申告をした
規定がないのでありまして、ただ刑事または
懲戒処分を受けさせる
目的で虚僞の申告をした場合のみが
規定せられているのであります。この点に関しましては、これは刑法の改正に委ねた方がいいのではないかという
意見がありまして、私ども、さようにしてもいいかとも考えてお
つたのでありますが、このままでもよかろうというような
意見もありましたので、
原案の
通りこのまま
規定することにいたしたのであります。以上
修正に対します概要であります。