○
藤澤政府委員 ただいま
委員長から
貿易關係について詳しく
お話しろということでありますが、おそらく皆さんのご期待にな
つているのは、例の
占領下日本輸出入囘轉基金をめぐ
つて、いかなる
貿易計畫を立てているかということが、
美奈様の關心事であると思います。その状況はまだどこでも發表しておりませんが、できるだけなるべく簡單に、要點がわかりますように、
お話いたしたいと思います。それから今年度の
貿易計畫は
數字をも
つておりますから、これにつけて
お話申し上げたいと思います。かねて
美奈様も
日本の
新聞には出ませんでも、時事通信というような
外國電報には出ておりますので、それによ
つて安本でも、何か
クレジットというものがわれわれに與えられるであろうという
豫想の
もとに、七月の初めごろから大體どのくらいの
程度のものが與えられるであろうかということをまず
豫想をおきまして、二、三
作業をいたしました。もしどれくらいの
クレジットが與えられるならばどのような計畫を立てるかというので、七月の初めから
安本の各局はいわば総動員いたしまして、
貿易計畫を立ててお
つたわけです。たまたま八月十五日の
民間貿易再開を
機會に、たいへんよい時期をねら
つて、
マッカーサー司令部より、昨今
皆様方のお耳に達しております
占領下日本輸出入基金というようなものが、發表になりました。私
どもはそれを
從來いたしました
作業と照らし合わせまして、大
體私どもの
豫想したものに達したものですから、
作業も今日では一段落したのであります。やがてこれを
司令部にも御見せし、のみならず單に
安本が机上で作文したというようなそしりを受くべきではありませんから、
各省各
作業廳に全部おはかりして、さらにこれまた
民間の
經濟團體、
貿易界、
産業界一般の人々に御披露して、そうしてだれが
考えても
日本の
經濟貿易のすすむべき途はこれだというようにいたしたい
考えであります。今日は
囘轉基金がすでに現實のものとなりましたが、われわれが
豫想していたものと大體近いので、それを
めぐつてどういうふうな構想をも
つて、どういうふうにや
つていくかということを一應申し上げてみたいと思います。
囘轉基金のことは大體
新聞などですでに
安本から発表しておりますので、おわかりのことと思
つて話しを進めたいと思いますが、
囘轉基金は一口に申しますと、
日本の保有している
金銀その他寶石類などを一應
輸出入囘轉基金として認めていただいたわけであります。これは今日ではごく
内輪に
見積つて一億三千七百
萬ドルにな
つているわけでありますが、要するにこれは非常に
内輪の
見積りだと思います。それに
從來の
綿花貿易における総
手取金を加えまして、それが訳七、八千
萬ドルですから二億何がし、大體二億というふうに
考えております。無效はむろんそういうふうに言
つております。
日本の
綿花貿易における純
手取金というものは、今申し上げたように、七、八千
萬ドルないし一億ドルと見積らせておりますが、これとてもきわめて
内輪の
見積りであるらしい。相場の變動とか、その他のことを
豫想して、よほど
内輪にみておる。人によ
つて一億を越すだろうといい、私
どもとしても一億近くのものが實現すればよいと思
つております。ですから
基金はもつと殖えるだろう。まず今日では
金銀その他のもので一億3千七百
萬ドル、これに加うるに七千
萬ドル。そこで
囘轉基金は二億ドルということで進んでいきたいと思います。それは
基金としても使いうる。この
基金の中から何千
萬ドルを使うこともできる。同時にこの
基金は
クレジットの
ベースにも使える。それで
基金が三割にいつもあるようにというのですから、約二億といいますと、これを
クレジットの
基金として用いれば六千六十
萬ドルくらいになるわであります。しかし
クレジットの一項目として、
日本の
輸出入貿易のためのみならず、
日本の
経済維持のために、
つまり一遍に消えてしまうもの、
貿易にならないものに
使つてもよい。これは
基金の約15%を出ないようにというのですから、三千
萬ドルです。これは一遍きりしか使えない。ですから綿を
輸入して綿織物を出すということはそれにはいらない。あるいは
鐵道の資材とか
機械を買うとか、
つまり日本の
経済のためになるけれ
ども貿易品にはならない。にほんで消費してしもうものが一割五分だけ認められる。二億ドルの中の三千
萬ドルはそういう
方面に使える。
司令部の方で
日本の
クレジットは五億ドルとみたらよかろうというのは、二億ドルから三千
萬ドル引きまして一億七千
萬ドル、それの約三倍の五億ドル見當は囘轉して使える。こういうふうにみておる。そういうように私
どもも理解している。これは今申し上げましたように、
基金は
基金だけとして三千
萬ドルとれば、殘りはそのまま使える。それを
クレジットの
ベースに用いれば、三倍以上に使えるのです。そういうふうにはなはだ
運用がおもしろくできている。ですからこれは五億ドルにも、うまくいけば六億ドルにも使ひ得る。そういうことであります。それからさらにだんだん進んでいきまして、
貿易じりが非常に
日本に順調であ
つて、かりに一年に三億ドルの利益といえませんでも、
貿易じりの純
手取金が三億ドルに達したときにどうするか。その
あとは
日本の
經濟維持のために使うことができるかというと、そこに若干の
制約がありまして、いつでも
負債額の二分の一、純
正味が
全員債の半分以上は使えない。一例をあげますと二億ドルの
基金をも
つている。これは一方は
負債であるとともにまだ資産である。
資本金というものはある
意味の
負債ですから、
實際の
基金が二億ドル、そうして
綿花をかりに三億ドル
輸入する、できたものが五億ドルになるとします。そうすると帳面づらは、
もとの
基金が二億ドルと
貿易の純
手取金が五億ドルで七億ドルになる。今度は
負債の方はどうかというと、二億ドルの
資本金と、
原料が三億ドルで五億ドル、七億ドルと比べて二億ドルの差ができる。
つまり二億ドルというのは何に
使つてもよさそうでありますが、これには
もとの二億ドルと
原料の三億ドル、
合計五億ドルの二分の一、二億五千
萬ドル以上は
使つてはならないという
制約があります。だからこの五億ドルというのがもし六億ドルになりますと、八億ドルになるから、
正味は三億ドルになります。そうすると三億ドルから二億五千ドルを引いた五千
萬ドルが自由に
使つてもよいということになります。
次に本論にはいります。
安本では
海外の
情勢、あるいは
アメリカ方面の
情勢、
海外新聞に出た
情勢を
考えまして、二億ドルくらいの
クレジットを囘轉して五億ドルくらいは與えられるだろうと
豫想しておりましたが、これが的中したと申しますか、そういう
豫想の
もとに
仕事を始めておるわけです。しかし今申しましたように、六億ドル
程度のものが
クレジットとして利用できるのでありますが、それでは
いくらでも金が借りられるならうんとかりようというわけにいかないのであります。
つまり胃袋が小さくな
つているときに、たいへんな御馳走が來たけれ
ども、それは一遍に消化できないというのが今日の
日本の
経済状態であります。一例を申し上げますと、例えば
綿紡にいたしましても、
戦前には千三百錘もあ
つたものが、今日はどうかというと三百
萬錘程度にな
つている。人絹にしても
戦前の五分の一にな
つている。だから綿でも
いくらでも買いこんでこなしていくというわけにまいりません。それだけ申し上げても、
日本の
経済がいかに戦争中の
企業整備あるいは繊細を受けて減
つておるかということがおわかりと思いますから、五億ドルなり六億ドルの
クレジットをそのまますぐには消化しきれない。
それではどのくらいの
輸出入貿易ができるかということでありますが、御承知の
通り日本の
貿易は書こう
貿易によ
つて立
つてお
つた。綿にしても、
米綿、印綿、
エジプト綿、
南米綿などを商品化して、それを出して
日本の
経済を賄
つていた。綿に限らず、多くのものは原材料を
海外に仰いで、それを加工して製品にして
輸出していたのでありまして、この
状態は
戦前も今日も變らない。そこで、一體どういう計畫にな
つているかということであります。ここで
ちよつと申し上げておきますが、
基金を利用しての
貿易計
畫といつても、まだこれで
すすむのだということにきまつているわけではございません。廣く
一般にも訴え、
司令部あたりからもこの邊でよかろうというお許しがなければできませんが、まず
原料としてはどのくらいのものをも
つてくるかというと、これは二億五千
萬ドルくらいのものしかこなせないのじやないかと思います。それから
原料加工に必要な
動力とか
燃料な
どもやはり
輸入しなければならぬのでありますが、そういうものが九千
萬ドルくらいは要るだろうと思います。そうしますと、これおを
合計したものが、
數字はちがうかもしれませんが、
原料、
燃料、
動力で三億四千万ドルくらいのものを
輸入したらどうかと思
つております。一方、そういうものを利用して
輸出し得るものはどのくらいかというと、これがまず七億ドルくらいと
考えております。それから
日本國産
原料、
つまり生絲とか絹織物、
農水産物などの
輸出が約一億ドル
程度だろうと思います。それから
日本の國内で、まずみんなが飢えないで、なんとか
日本の
經濟を維持していくためにどのくらいのものを
輸入しなければならぬか。これは
食糧が一番多くて四億ドルくらいのものが必要であると思う。
輸入の方の
合計は全體で約八億二千
萬ドル、
輸出の方は八億一千
萬ドル、
貿易外収支、たとえば昔は
日本は
海運國であ
つて、
運賃収入があり、おおきな
保険会社は
保険金をとり立てるというわけで、そういうような
収入があ
つたが、今日はそういう
貿易外の
収入はほとんどない。今度はどういうものがはいるかというと、今日來ている
貿易團が四百人ばかり代り代りおるだろうから、そういうものがかれこれ六、七百
萬ドルあれば結構だと思う。支出の方は今までとは逆に船賃などを拂わねばならぬからこれが約二千五百
萬ドルくらい。結局どちらも八億四、五千
萬ドルということにな
つているわけです。
それは
基金をりようして一生懸命や
つたら
來年度どのくらいの
貿易ができるかを示しただけで、必ずしも思う通りいかないかもしれません。しかし一つ私
どもの心を明るくすることは、最近
司令部から一九四八年度の、
向う側でおつくりに
なつた
輸出入計畫を示されましたが、たまたまわれわれがさぎようしてや
つたものと非常な差がない、たいへん近ずいているということです。このことは
日本經濟に對する認識がお互いに近寄
つておることを
意味しておる。ですから私
どもみなが集ま
つていろいろ
考え、つくりあげたところの
貿易計畫が大體において
向う側のものと似ておる。たとえば一例を申しますと、われわれはコメを五百
萬トンくださいと泣き叫んだところでもらえるものではない。ところが
向う側の
日本の
食糧に對してどのくらい要るかということの見當は、われわれよりは少し少いけれ
ども大體當
つておる。今日米の産額が約六千万石ということを
土臺にし、それに應じて
輸入食糧を計算するのですが、
向うのほうで
日本はもつとできると
思召すかもしれない。そう言う差があるけれ
ども、大體においてよく似ておる。それから少し話を進めて申しますと、まず七億の
輸出をしようとすると、これに
燃料動力が必要であることはだれでもすぐ
考える。
石炭三千
萬トンは一生懸命やらなければならぬと言
つておる。その
石炭一トンさえもむだにつかえない。
輸出が盛んになるからとい
つて、
石炭を賣
つてもらわなければ
實際仕事ができない。だから
石炭、
動力をこの
輸出に向けてもらうためには、よほど國内の
必要量をカットして
輸出に向けてもらわなければならぬ。それではまた國内が立
つていけないので、どうしてもきに申したように、
輸出するために若干の
燃料動力を
輸入しなければならぬ。なおそれだけで足りないので、あらゆるくふうを凝らさなければならないが、とにかく
輸出貿易を盛んにするためにはどうしても若干
海外から仰がなければならぬ。私
どもの方では
輸出産業に
燃料、
動力をまわすためには、他から削らなければならぬ。それにはどうしたらいいか。それにはどうしても
石炭を
輸入するとか、
重油を
輸入するとか、
鐵鋼を
輸入するとかしなければならない。
石炭を
輸出産業にまわす、あるいは
鐵鋼の方は、
鐵鋼をつくるためにたいへん
石炭を食うのですが、もしここに
鐵鋼をある
程度輸入すると、鉄鋼の
生産を少々切られてもかまわない。その
代わり鐵鋼を使う
石炭を
輸出産業にまわす。こういう
方法で進めていこうと思
つておるのでございます。それでは
石炭をどこから
輸入するかと申すと、御案内のように
北支の
開らん炭も多く期待できない。ソヴィエトのサガレンの
石炭も、
事情を聞いてみると自由に出せない。賣りたくても港にも
つてくる設備もないらしい。
沸印の
ホンゲー炭も
向うは
勞力不足であるし、
輸送力もない。われわれは百万トンくらいは何とかしていれなければならぬという
考えをも
つておるが、實現できるかできないかわからない。また
アメリカあたりでも
重油も
鐵鋼もなまやさしいものではないらしい。けれ
どもとにかく
筋道の立
つた計畫を立てたのですから、これはひ
とつ司令部あたりに
十分お話をして、また
基金を利用して
輸出をやめるためには、どうしてもこういう
燃料、
動力に對するご援助を願わなければならぬつもりで一生懸命やろう、
大車輪にやろう、こう
考えております。
司令部側の方では
石炭をうんとと
つたらどうかというお
考えをも
つておられるようですが、現在どこから
石炭を入れるかわからないので、その邊のところは
貿易廳がおやりになるでしようが、これは國をあげてやらなければならぬことです。われわれは
大車輪になら
つて輸出計画を実現するために
燃料、
動力の
方面を何とかしてと
つてきたいと
考えております。
それからいつも問題になることでありますが、
司令部の非常な好意の
もとに、十月まで缺配なく
濟むように輸入食糧の放出を許されておりますが、來年はどうかということは今日申し上げることはできませんけれ
ども、今言うように、われわれ
國民の
經濟を維持するための
食糧は大體そろばんに入れてあるのです。食生活において一人の飢餓も出ないように、また治安を保とうという
考えから、
來年度もまた本年度のように入れていただけるかどうかわかりませんが、今までいただいたものも何も
支沸いをせぬということではありません。その準備はいつもしていなければなりませんが、今まで通り
向うから要るだけのものをいただけるかどうかはかか
つて將來のもんだいであります。そういうことが今の
囘轉基金を
運用してどういうふうにや
つていくかという今日の
構想であ
つて、ある
意味から言えば
理想案である。これだけでも各
方面から十分検討をして妙案がありますればこれを受け入れる、こういうわけであります。それから
委員長から先にご注文がありましたように、
長期の計畫についてはどうか、
長期の計畫を立てるといいましても、
從來はこういう豊富な
クレジットがないものですから、とにかく、
貧乏状態のままでや
つてきた。こういうふうに
基金が與えられ、今後これを囘轉することによ
つて日本の
經濟活動ができますれば、それによ
つて日本の
長期計畫もそういうことをいつも頭におきながら立てていく門を締めてしま
つておいて
石炭が三千五百
萬トンになればああだこうだ、ということはむしろ了簡が狭過ぎ
狹過ぎはしないか。こういう
囘轉基金を考慮にいれながらまず
來年度や
つてみて、国力の伸展をはか
つていく。
たま國内の
生産力と
考え合わして
長期の計畫を怠りないようにや
つていく。私
どもの方でもそれを始めておるわけですが、
長期の計畫に對してはそういう
考え方で進んでおるわけです。
いじよう
貿易囘轉基金を利用しての
來年度の
貿易計畫のあらましを申し上げたのですが、もしご
質問がありましたらできるだけお答えいたします。