○館
委員 貴重な時間を拜借して突然に緊急動議を出しまして相濟みませんが、會期も餘すところいくらもなくな
つておりますので、どうにも時間をいただかなければならないような緊急事態と思いますから、御了承を願いたいと思います。運輸當局にまずお聽きしたいことは、北海道と青森地區の、いわゆる山猫爭議という言葉は不穏當でありますが、そう稱せられております爭議の形態がどういうにな
つているかということであります。もう一つはこれがだんだん波及する状態にあると御觀測になりますか、あるいはまたこのままで止まるという御觀測にな
つているか、そういうことも併せてお伺いしたいと思います。それからその原因がどういうところにあるかということについての當局の見るところも併せてお聽きしておきたいと思うのであります。
從つてその
見解から當局がどういうふうな態度をと
つていくか、この態度はどの面をどうしたらどうなるかということについて、具體的なお
考えがおありでしたら、それも全部ここで聽取したいと思
つております。實は新聞紙上によ
つても十分わか
つておりますし、また組合のいろいろの方からも話を聽いているので、私としても相當の豫備知識はも
つているのでございますけれ
ども、これは民間人としての、また組合としての
考え方でありますし、當局自身がこれに對して正式に發表なさ
つたことを聽いておりません。そこでこの正式
委員會について發表を願いたいという趣旨なのでありますが、北海道から鐵道職員が當局に向
つてるるその職員の窮状について
陳情をいたしております。その第三囘目は今日この
委員會に參りまして、時間を得て
陳情をしております。その
陳情の趣旨は、東北六縣と北海道における交通がいかに國の
經濟全般について大きな力をも
つているかということに基本を置きまして、それから發展して、この重責を擔うところの職員を遇することがいかにもをを盡していない。いかに
陳情してもその點が到逹せられないのは殘である。國鐵再建の立場において、その衰情を切々として訴えているのであります。十分お調べにな
つていられることだろうと思いますが、その點について明らかにしていただきたい。もしもこの急場がしのげないときは、自然と職場を放棄する状態が續出してくるであろういとう見方をと
つているのであります。給料が非常に不足である。
生活が困難であるというところからして、自然に三日なり四日なり、食糧を求めるための資料を求めるために郊外に出て、その日かせぎを三日か四日や
つて、四、五百圓の金を見つけなければ、
やみ食糧その他が買えない。冬季に向
つて暖房用石炭を御
承知の
通り二トン三分の配給ということを北海道民としては望んでいるのであるけれ
ども、去年の實績を見ても一トン八分しかもら
つていない。おそらく今年も二トン三分ということは願
つてお
つても―全體として百六十七萬トン要るのでありますが、石炭事情その他がやかましく論議されておりますので、十二月のごときは、全道で五萬八千トンしか石炭が渡らない状態にな
つております。その石炭がもし渡らないとするならば、その石炭の代りに薪炭を買いこまなければならぬ。その薪炭の値段がいくらであるかということを
考えていただきたい。石炭はさいわいにして去年は百四十五圓でありました。これを
政府當局の斡旋によ
つて三トン半分をもらいました。約五百圓の石炭代を北海道の全官公勞はもら
つている。今年はその百四十五圓何がしかの石炭が、千三百何十圓という非常な騰貴をしている。これに家庭までも
つてくると一トンの石炭代は約五百圓になるのであります。二トン三分ということになりますと三千四五百圓になるのであります。しかし二トン三分では――やむを得ざる國の状態から二トン三分と石炭の消費高を規正されたのでありまして、北海道全體の地帶から申しますと、寒冷地と南の方とを平均いたしましても、三トン半の暖房用の石炭はどうしても必要なのであります。完全に二トン三分もら
つたとして、あと一トン餘りの採暖用の薪というものは、
當然買いこまなければ、家にいても凍死するというような實情ができますので、この一トン餘りの石炭の代りをなすものを買うとしますと、また薪二敷ぐらいは要るのでありまして、これを買うためにはやはり約三千圓ないし四千圓の金が要るのであります。結論において、金高を申しては財政困難な今日はなはだ申譯がございませんが、金高といたしましたならば、今組合が要求しておるところの七千六百圓の最低のものは必要なのであります。この七千六百圓という暖房用の金高というものは、單に
一般の市中の人たちが
考えるように、組合は何でも多くもらえばよいという立場から計算したのではなくして、その證據には、北海道における出先官廳においての調査も、七千六百圓ないし七千八百圓は要るということを、出先官憲の人たちも皆考慮しておるのであります。そうして地域的な地方勞働
委員會に提訴した結果として、この薪炭料の請求は正當であるという一應の調停案ができた。できたということは、もうすでに出先官廳の人たちがそういうふうな筋に
從つてものを
考え、かつそれらの筋に
從つて陳情しておる。その實情をも
つてしても、組合の七千六百圓という要求は決して厖大なものでないということを、まず基本的にお
考えを願いたい私は思うのであります。國の財政が非常に困難であるということをよく理解しておりますので、われわれこの組合の人たちは何も金を要求するのじやなくして、石炭そのものを欲しい、薪そのもの現物支給してもらいたい。それであればその薪炭代や石炭代は要らないのだ。そういうような立場をと
つてお
つた次第であります。いろいろな勞働關係閣僚、あるいは大藏大臣其他の御斡旋によ
つて、三千圓と獨り者千圓はいただいのでありまして、これが實に二箇月もかか
つたというほど、當局が努力を拂
つていただいた點については衷心から感謝をいたしておる次第でありますが、實はそればかりでなく、それで四千圓の差額がある。縁日の商人のようなことを申して、まだ四千圓足りないと言わざるを得ないということは、實はなさけない話でありますけれ
ども、そういう事情にな
つておるのであります。その他に北海道及び東北六縣というものが、寒冷地の第二地域給として當局で考慮され、研究されて、これも今井給與局長が努力を拂
つておられることは十分わかるのでありますが、現實に冬を迎えての今日をどうするかということに對して、非常に家庭をあげて惱んでおるのでありまして、その實情を申しますと、石炭車が完全に驛へ到著するかしないか、去年、おととし、さきおととしにおける石炭不足の北海道住民が、いかに用品庫、機關區、あるいは鐵道の貯炭場にはまりこんで犯罪を犯してお
つたかというその的確な實例をあげることは差控えますけれ
ども、それにいかに鐵道當局も苦しんでお
つたかということもお察しを願えると思うのであります。それは何といいましても、今用品庫の暖かさは、函館の一番暖かい所の九月ごろの暖かさであります。この間も連絡船が約三日間吹雪ののために不通にな
つて、函館に二千五百人の客を停滞させておる現状であります。まして北海、網走方面に行きましたら、
陳情態の
説明を聽きますと、ほとんど零下十二度である。釧路あたりでは零下十五度ということを聽いておりますときに、その寒冷地における鐵道從業員の――これは鐵道從業員ばかりではありませんが、殊に鐵道從業員の苦勞というものは、なみたいていではないのであります。これを稱して脱落だとか、あるいは猫爭議だということがあるかもしれませんが、その實情を言うたならば、あながちにそれを猫爭議として一つの罪悪のごとく印象づけるというようなものの
考え方は、人間として私はできないと思うのであります。そういう爭議があ
つて、最も今
日本の産業の根源地であるところの北海道の國鐵がもしも止まり、あるいはもしほんとうの
意味の爭議が
ちよい
ちよい方々でもち上るということになるのでは、實に悲しむべきことであると私は
考えております。北海道の鐵道というものは、單に北海道三百四十萬の人間のためにのみ存在する鐵道ではなくして、これで石炭を輸送し、木材を輸送し、パルプを輸送し、それからじやがいも等の食糧を内地へ春までのうちに輸送するという重大な使命をも
つておりまして、臺湾も朝朝鮮も失
つた後における北海道の
日本全部の産業、
經濟に及ぼす位置というものは、非常に大きいのであります。
從つて青函連絡船に本省も主力を注いで、連絡船をこしらえておる意義もそこにありましようし、また北海道の鐵道自體がどういうふうに再建設せられていかなければならぬということも十分お
考えのことであろうと思いますが、そういう
意味において、北海道は地域的な北海道でないということを、殊に運輸の立場から十分お
考え願いたいと私は思
つております。そういう
意味において、たとえば冬の石炭のごときは、あの積雪になりますとほとんどロータリーのために機關車をとられてしま
つて、餘すところが少くな
つてしまう。しかも積雪が非常に強いから、函館までの輸送が困難であり、そうして仙鐵と新鐵との機關車の石炭を補給するために、私の記憶によりば、間違
つておるかもしれませんが、一月二十萬トンぐらいの石炭は北海道から東北本線のために奥羽本線のために送
つておるのであります。毎年の例を見ると、仙鐵において石炭がもう三日しかないから、もう四日しかないからというと全部を放擲して札幌鐵道局用品庫の連中は岩見驛まで出かけてい
つて、小樽行きの濱積の石炭車を尋ねて、その貨車の車票を差しこんだものまでも欠鐵行きとして押えなければならぬというような仕事をかるわざのようにや
つておるのであります。それほど重要な位置を占めておる北海道の鐵道の復興について、もつと眞劍にお
考え願いたい。そういう立場をよく理解しておるがために、今も
つて爭議も起らない。酷寒の中に今年の多もまた鬪い通そうとしておる北海道の鐵道職員の苦衷というものを、どうして察していただけないかという
陳情の
意味なのであります。單に組合の人間の利己的な立場からのみこの要求を突きつけておるのではないかということを十分にお
考えにな
つていただけておると私は
考えております。現に岩見驛の連結手あるいはその他の地區の連結手が續々倒れてい
つておる。そうしてとにかく昨年四十五人なり五十人の連絡手がやめて倒れていく、しかも肺病が何人おるかということまで報告されておりますが、それらの人がそういうふうに自分の自治的な立場から、これでは仕事がもたぬぞということを驛長を通じて局長に言うた場合に、その一部分がやはり少しずつ解決がついておる。なぜその子供たちがそういうことを言わない前に、それだれの見透しをも
つて一歩進んで解決ができないかと私は思うのであります。もちろん全般的にものを
考えておらねばならぬ運輸省の立場でありますから、個々的な解決は多少できても、全部的な解決は一遍にできないということもよくわかりますが、しかし地方地方の出先官廳といたしましても、單にこれを勞働爭議であるというような古い
考えから、そういうことを取上げるのにきわめて遲いのではないかと思う。殊に北海道においては人が足りない、排雪がうまくいかない、うまくいかないというその裏にも、何か若い組合員たちが鐵道をつくり上げようとする熱意が現われておるということを十分に御
考え願いたい。一遍この機關區の協議會が札幌にあ
つたときのごときは、機關手やあるいはかまたき、それらの人が機關區の問題でしたが、徹宵二晩も續けて、とにかく侃々諤々の議論をや
つて、そうして札幌の運轉部長のところへ私組合長として一緒に行
つた。そのとき何と言われたか、これらの人は鐵道における下つぱでちんぴらだが、汽車を停めてはならぬというので、清和寮の二階で二晩も續けて議論してお
つたということをあなた方はどう
考えるか、それに對するあなた方の返事は、これもよろしい、これもよろしいという返事だが、できないことをできないとなぜ言わぬか。た
つた一つだけはできる、あとはできないと
言つて斷られてもいい。また全部できないなら全部できないと
言つて斷られてもいい。はつきりした態度をなぜとらないのだということを私はやかましく言い立てたことがありますが、もつと地方の出先官吏の人たちもそういう方面に主力を注ぐべきではないかと私は思う。勞働の管理、あるいは驛管理、機關區管理という言葉は、學問ではそういうものはないでありましようが、現實の
情勢において勞働管理ということについての頭をも
つておる人たちがどれだけおるかということであります。鐵道職員には古い人もおるのでありまして、驛の管理、機關區の管理ということについては、あながち管理部長あるいは何々課長の指令をまつまでもなく、十分に通曉しておるのであります。ただそれらの人の通曉し得ないのは、勞働の實態管理ということに對しての理解をもち得ない。それなるがゆえによけい紛擾を起こしておる。これは末輩の鐵道職員に對してよく世間は教養が足りない、サービスが悪いという言うが、それを指揮しておる人たちの頭の觀念がすでに時代遲れであ
つて、それを上手に御する力がないものと私は
考えるのでありまして、鐵道職員の教養をやかましく言え前にその教養を指導する人たちの教養がまず重大だと思うのであります。そういうことであるがゆえに、いよいよこの問題の解決を混亂せしめる。その問題のあり方を自分の上長に向
つてまつ直ぐに傳え、さらにそれをまつ直ぐに本省までも
つてくる勇氣のある官僚がいないということは、實に私はなさけないと思う。常にふたをして、私のところは無事にい
つておると押えておる。ほんとうに捨見にかか
つて從業員の立場に立つ出先官廳というものが、勞働爭議の場合には必要でないかと私は思います。いずれにしても軍手一足買えば七十囘圓かする、くつ一足買えば二千何圓かする。酷寒の吹雪の中に、ポイント一つを濕らせないために雪を積られないために、竹ぼうきをも
つて一間四方の雪拂かをするのに三時間も四時間も立ち通す。こういうことは一圓五十錢や十圓や二十圓の金高で解決する問題ではないのであります。それを正しい
意味におとりになりまして、組合對
政府の立場も十分わかりますが、その前に同僚としての立場からこれをどう處理すべきかという熱情だけでもも
つていただきたいと思う。ほんとうの鐵道の復興ということはそういうことから足を入れていくべきものではないかと思う。それをきようお伺いしたいのでありますが、これは別として、今青森の爭議もどんどんはびこ
つていく形であります。新聞ではこのごろ下火にな
つておりますけれ
ども――新聞は最初はニユースとして取上げるときは取上げましようが、そういうものは古くなりますと病膏肓にはい
つてしまうのではないかと私は思う。これが秋田に擴がり、横手の機關區に擴がり、あるいはまた盛岡に擴がるというふうになら
つていくのでありまして、
生活の基礎的條件が整わない以上は、これもだんだんそういう風潮を擴ま
つてくるだろうと思います。その點について當局としては十分に腹をきめて、この正月を越す、三月を越す、その間における資材、設備の改善、それから勞働條件の改善について思いやるのある徹底的な方策を構じられる必要があるのではないかと思います。但し全般的にものを
考えていかなければならない運輸省の立場であるから、そこばかりが問題ではないという御意見もあります。また代議士をしておりますと、鹿兒島までから
陳情が來ておりますから、これらの人たちに向
つては、それは全般的にものを見なければならぬと私は言いますが、しかし國費その他の關係でできなものとすれば、一部的にでもどしどし解決するのでなければ、とうていこの弥漫状態は防ぎ得ないのではないかと私は
考えております。そこで具體的な
措置をお願いすると同時に、現在の
情勢に對してどういう御判斷があるか、それからまた先の見透しについてどういう御判斷をなさ
つておるか、そういうことを重ねてお聽きしておきたいと思うのであります。