○田中(源)
政府委員 本日は
大臣がやむなき事項で出張しておりますので、代りまして今議題に供せられております
鐵道營業法の一部を政正する
法律案の提案理由竝びに道路運送法の提案理由を御説明申し上げたいと存じます。
まず最初に
鐵道營業法の一部を改政する
法律案を今囘の國會に提出します理由について申上げます。七月の
鐵道運賃の改正は、新物價體系の一環として石炭、米、肥料等の重要物資と同時に決定
實施する必要がありました。
從つて鐵道營業法第三條の
規定により公告する暇がなか
つたので、
昭和二十年勅令第五百四十二號、ポツダム宣言受諾に伴い發する命令に關する件に基く政令を制定して、この
法律の
適用を排除する
措置をと
つたのであります。しかしながらこの
措置は、やむを得ず
實施した非常
措置でありますから、あらためてこれを
法律案として國會に提出し、その
審議にかけんとするものであります。
第二に公告期間を短縮します理由は、平常の經濟
状態におきましては、社會的に影響の大きい
鐵道運賃等は、一般に十分にこれを知悉させて、不測の損害をこうむることのないよう相當期間公告することが適當でありますが、わが國の
現状は經濟情勢の變轉がきわめて激しいので、一箇月の公告期間は、かえ
つて實情に副わない場合がありますことと、殊に物價體系等との
關係において運賃を改正する場合は、さらに今囘にごとき非常
措置をとる必要のある場合が豫想せられますこと等のため、これを短縮し得る途を開いて置くのを適當と考へます。また國有
鐵道については、今後運賃改正の際は、國會の議決を經ることとなりますため、その
審議の過程におきまして
國民は大綱を知ることができますので、公告期間を短縮しても、實害がないと
考えられます。
以上述べました理由によりまして、公告期間はその時の實情に應じ、最低限度七日まで短縮することができるよう改正しようとするものであります。なお、この
法律の改正によりまして非常
措置としてとりました政令第百十三號は廢止するのであります。以上をも
つて鐵道營業法の一部を改正する理由といたす次第であります。
次に
道路運送法案の提案理由について御説明申し上げます。自動車及び輕車輛が陸上運送部面におきまして、きわめて重大な役割を演じつつあり、その
運營の良否は、ただちに全經體制の
運營に、また公共の福祉に影響を及ぼしますことは、すでに御承知の通りであります。
政府におきましては、自動車運送
事業の重要性に鑑み、
昭和六年自動車交通
事業法を制定して、自動車運送
事業を免許
事業とするほか、必要な監督の
規定設をけ、爾來
事業の健全な發達をはか
つて參
つたのでありますが、本法は
事業法規として自動車運送
事業のみを
對象としており、すでに陸上運送において重大な役割を擔當する輕車輛に對する
規定を缺くのみならず、目下の運送の秩序の確立を期する上から見て必要な
規定もなく、最近の經濟産業の要請から見ますると、現在の法制はまことに不十分であり、公共の福祉を確保する上からも不備な點が認められるのであります。同時に現行自動車交通
事業法は戰爭中の改正を受け、統制組合としての自動車運送
事業組合を
規定する等、戰時法規としての色彩をも殘存しておりますので、これはただちに改正しなければなりませんとともに、その他の點におきましても新
事態に即應して、
事業運營及びそれに對する監督行政を民主化する必要が認められるのであります。本法案は前に申し上げましたように道路運送の重要性に鑑みまして、單に現行法制の不備を是正補充するのみならず、さらに現下の産業經濟の要請を加え、さらにまた自動車及び道路運送の洋々たる前途に光明を認めつつ企畫され、ここに本國會に提出された次第であります。
以下簡單に本法案の骨子を申し上げます。
第一に申し上げたいことは本法案の
對象についてであります。すなわち本法案は道路運送に關する總合法規として次の四つの事項を
對象としておるのであります。第一は、バス
事業、トラツク
事業のやうな自動車運送
事業と、從來荷牛馬車業とか或は乘合馬車とか言われていたいわゆる輕車輛運送
事業とを新たに總括したところの道路運送
事業。第二は、十國峠に盛るようないわゆる自動車道
事業、すなわち專用道路
事業であります。第三は、自家用自動車。第四は、道路運送の基礎をなす車輛の構造、検査及び整備であります。
第二に申し上げたいことは
事業の監理についてであります。すなわち本法におきましても、自動車運送
事業及び自動車
事業はその公共性が特に大きいと認められますので、主務
大臣は免許、認可等のいわゆる行政監督の
措置をとることとしたのであります。しかし輕車輛運送
事業については、その經營の實情に即するよう免許制によらず届出制とし、かつできるだけ
地方で處理できるようにいたした次第であります。なお旅客交通の面において特に考慮しなければならない公共團體、市等でありますが、その地域内の運輸については、その公共團體の
意見を十分参酌して行政を行う
規定をも設けた次第であります。
第三に申し上げたいことは、行政の民主化についてであります。すなわち道路運送行政の適當な運用をはかるため、中央及び
地方に道路運送
委員會を置きまして、重要行政事項に關しその
意見を徴する方途を講じますとともに、免許の基準を設けて免許の適正を期した次第であります。
第四に申し上げたいことは、
事業經營の公正合理化についてであります。すなわち自動車運送
事業における物品運送契約の公正簡易化をはかるため、運送約款の制度を設けて契約を定型化するとともに、運送義務及び運送委託を明確にし、その他公共の福祉に反する行為の取締り體制の確立等、
事業經營の民主化のため、必要な
規定を設けた次第であります。
第五に申し上げたいことは、自家用自動車に關する
規定を設けた點であります。すなわち運送秩序の確立を期するため、自家用自動車は對價を得て運送の用に供したり、または貸し渡したりすることはできないこととし、その他公共の福祉を確保するため必要があるときは、
運輸大臣は所要の
措置をとり得ることといたした次第であります。
第六に申し上げたいことは、車輛の構造、檢査及び整備について
規定を設けた點であります。すなわち車輛は道路運送の基盤をなし、これが整備如何は輸送力に直接大きな影響がありますので、車輛の機能及び保安の適正化をはかり、輸送力の高揚に資することといたした次第であります。
第七に申し上げたいことは自動車運送
事業組合と整理についてであります。すなわち從來の統制方式の自動車運送
事業組合を解散し、自主的團體の設立に委ねることにいたしたのであります。なお自動車交通
事業財團の制度も從來あまり
利用されません
關係上、この際これを廢止いたしたいと存ずる次第であります。
道路運送の健全な發達をはか
つて、公共の福祉を確保するためには、是非ともこの
法律の
實施を必要とするものと信じますから、何とぞ十分に御
審議の上、御協贊くださるようお願いする次第であります。