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成重委員 私はただいま
田中政務次官から大體
國鐵の将来の見通しについての御所信を承りまして、そのお答えに對して遺憾の意を表するものであります。同時に前者の質問に對しましても、私は多少質問の觀點を異にして
考えたいと思うのでありあります。この
鐵道經濟白書を見てみますと、まことに杜撰である。こう私は
考えるのであります。
第一に、ここに現わしております今年度の割當のレールと同附屬品の鋼材でありますが、これはおそらくブレーク、シユーその他であると
考えます。それから枕木、こういう點でありますが、この
鐵道經濟白書の中にありますところの
内容を見てみますと、まことに齟齬した點が多いのであります。殊にレール鋼、材の點につきましてでありますが、私はむしろ
鐵道の經營の見透しについて、
鐵道當局が御
説明になる御
答辯を聽いておりますと、まことに退嬰的であり、また消極的であり、至
つて進歩的な積極的な點を缺いておることをはなはだ遺憾に思うのであります。むしろ昨年竝びに今年の食糧問題を解決したような國民の輿論が、もし
鐵道の復興に對して集中されましたならば、この
鐵道の復興に對するところの問題を解決することは、おそらく食糧問題を解決するより以上に平易であると
考えるのであります。枕木がないと仰せになります。またレールが三萬トンノ割當に對して七千トンしか入手できないということを申しておられます。殊にまた同附屬品の鋼材の五千七百トンの割當に對してわずか千四百トンの割當しかない。こういうことによ
つて運轉上におけるところの最も重要なるブレーキ・ブロック等の消耗が非常に多く運轉に支障があるかのごときここに
説明が書かれてあるのであります。私はここにおいてこのレールがないとか、あるいは附屬鋼材のブレーク・シユー等に使うところの銑鐵がないということは受けとれないのであります。なぜならばわずかに千四百トンないし二千トン、三千トンの銑鐵材料というものは、敗戰後の
日本においてはどこに行
つてもうず高く轉んでおるのあります。もし國において、
經濟安定本部において、こね戰災地、燒跡におけるとにろの銑鐵であるとか、あるいはその他の鋼屑等をただちに囘收して鑄物用材としますならば、ブレーク・シユーのごときものは、むしろ素材銑鐵の方が鋼材においてはいいのでありますが、ゆえに、銑鐵等においてはここ半年、一年の間には、もし國民が國をあげてこの戰災地、燒跡等にあるところの機械の燒けたやつ、あるいは壞わされやつ、これらを國民が
戰爭中屑金の囘收した、
鐵道においても線路の中に落ちておるボルト・オツトを拾い上げた、あるいは貴重なるところの鋼材等を選別して地から堀り出してつくつたように、國民ひとしく力を合わせてこの鋼材に力を注ぐならば、何のここ一年、二年
鐵道がブレーキ・ブロツクに使うところの銑鐵の材料ぐらいは—これがもしピストン・リングを鑄造するとか、あるいはシリンダーを鑄造するというような、いわゆる高級鑄造物ならばいざ知らず、主としてその大量がブレーキ・ブロツクに振り向けられるものならば、わが國の戰災地等にうず高く積み上げられておるものを拾い上げればこれで十分に充たし得るのであります。もし
鐵道の現場係官よりの
報告によ
つて、机上プランでかくのごとき白書をつくり出したとするならば、私はそれに對して遺憾の意を表するものであります。枕木が足りないというならば——私はか
つて狩獵が好きでありますために、あらゆる山野を歩いております。各所における國有林、あるいは
鹿児島縣尾久島に行けば、國有林に無限大の枕木の材料があります。もしわが國において枕木が眞に不足で
鐵道の運轉に支障を來すがごときことがあるならば、積極的にやれば枕木の
生産は易々たる問題であると
考えるのであります。不足の食糧問題を諭入に仰いで解決するがごとき難問題でなくして、むしろ國内においてこの枕木の不足を十分に賄い得る方法は立てられるものと
考えるのであります。この點經營の見透しについて、
鐵道當局におきましては非常の非觀的な論をもたれておりますけれ
ども、もしそれ
鐵道當局がいま少し積極的な、進歩的な頭をも
つて進めていきますならば、
戰爭中に、不足した材料、あるいは不足した入力、あるいは勞力等に力を注いだような氣持でいきますならば、私は先ほど申されましたような悲觀的なものでなくして、
鐵道の運營の将來の見透しに對しては、決してさほど難點はないと
考えるのであります。國内における資材の流用等によりましては十分解決し得るものと
考えるのであります。すなわち
經濟安定本部等におきましては、これらの廢品等の
活用によ
つて、その活路を見出す點を、私
どもは愼重に御檢討願いたいと思うのであります。かくしてまず私は先ほどの御
答辯に對して遺憾の意を表しておきたいと思うのであります。殊に戰前におきましては犬釘であるとか、あるいはボルトであるとかいうようなものは、ベルギー等から優秀なものが多量に輸入されておつたことも私は知
つておるのであります。もしそれ貿易が再開いたしますならば、私はおそらく軌條あるいはこれらの
鐵道用材等におきましては不足が補えるのではないか。殊にタイヤ等は、過去におきましては多くアメリカあたりからの輸入に仰いであつた品物であります。むしろこういうところを
考えますと、あまりにも悲觀的な、消極的なお心持に對して、まことに私は遺憾の意を表したいと思うのであります。もう少し積極的に——かくのごとき机上プラン、いはゆるペーパープランによ
つて、悲觀的な、いかにもあすの日にも
鐵道がその運營に對して大なる支障を來すがごときお氣持をもたれることをまことに遺憾に思うのでありますもう少し積極的なお氣持をも
つてひとつお
考え願いたいと思います。こね點に對する御所見を承りたいと思います。
次に
國鐵賃金の値上げ問題と地方
鐵道の値上げの問題につきまして伺いたい。私去る九日に歸省いたしまして、十八日に參
つたのでありますが、この
國鐵賃金の値上げが非常に社會的に問題とされましたとともに、地方
鐵道の値上げが非常に問題にな
つておるのであります。私
どもの所では數箇所を合同した西
日本鐵道というものがあります。これが北
九州の線では非常な黒字を出しております。今年の三月か四月にすでに多額な賃金の値上げをいたしまして、半年經たないうちに、
國鐵が値上げをしたからというので四倍の値上げをしております。わずか一分か二分乘
つて二圓乃至四圓の賃金をとられておりまして、今日通學
學生あるいは通勤勞働者たちはまことにあえいでおる
状態であります。なぜそういう値上げをするかというと、たとえば縣廳所在地などにある私鐵の所有しておる
鐵道等は、
一つの報償契約のために値段をまつたく上げない。甲の地における
鐵道においては非常に莫大な黒字を出しておるにかかわらず、なおかつ四倍の値上げをしておる。乙の地における
鐵道においたはかくのごしとき
状態であるということでは、私
どもは甲の地における住民の負擔と、犠牲というものを非常に氣の毒に
考えるのであります。おそらくこれは社會問題化するものと
考えますが、これらの
鐵道經營者の
答辯によりますと、あるいはどこの命令とか、あるいは運輸省の命令とかによ
つて値上げをしたので、われわれとしては黒字を出しておるけれ
ども、やむを得ず値上げをしたというような
説明を市會、縣會の代表者等に對していたしておることを聞き及ぶのであります。かくのごとき不合理な地方
鐵道の値上げに對して、いかなる
監督なり、あるいはまた御指導をなされておるのか、この點について
お尋ねいたしたいと思うのであります。この三倍半の値上げは、
鐵道が經營ができない、すなわち赤字を出すから、やむを得ず値上げをしたと國民は納得しておるのであります。地方
鐵道において黒字を出しておるならば、別に値上げをする必要はないと思いますけれ
ども、はたしてこれは運輸
當局の命令か、あるいは業者の言うがごとく他の命令によ
つて値上げをしておるものであるかどうか、そういう點に對して
鐵道當局の御見解を承りたいと思うのであります。
第三點は
戰爭中、いわゆる總動員法によ
つて私設
鐵道を買收しております。全國において多くの
鐵道を買收しておりますが、これは私がここで
説明申し上げるもでもない、いわゆる封鎖によ
つて株主等が非常な迷惑をこうむ
つておることも
事實であります。しかしやむを得ない
状態であるとは
考えますれ
ども、これらに對して元の
所有者が還元拂下げ等の希望を最近多くいたしておるように見受けるのであります。すでに議長の手もとにもこれらの
請願書がたくさん來つつあるのではないかと思いますので、私は多くを申しませんが、この
機會に
鐵道當局のこれらの元私設
鐵道の還元拂下げに對する所見を承
つておきたいと思うのであります。殊に
鐵道は今日非常な赤字を出しておる。山陽
鐵道等の幹線ならば、むしろこれは黒字を出す形態にあるが、いわゆる山間地におけるところのこれら買收した私設
鐵道、あるいは買收した
鐵道でなく、もともと省營の山間地におけるところのこれらの支線の
鐵道等は、おそらく赤字の
状態ではないかと
考えるのであります。しかしながらこの還元拂下げを要望するところの私鐵關係等においては、ただ
鐵道事業だけではなく、沿線において、あるいはグラウンド、あるいはホテル、あるいはその他の何かの副事業をこの際經營せんとするような
考え方があるのではないかと
考えております。もしそういうことが
事實ならば、むしろ地方民の要望、あるいは沿線の住民がこぞ
つてそれを望要した場合においては、
鐵道當局はどういう御處置をとるのであるか、沿線の住民の總意が、省營よりもむしろこれを民營にすることを希望するがごとき現象のあつた場合においては、いかなる處置をとられるという御所見をもたれるか、この點も併せて
お尋ねいたしておきたいと思うのであります。
第四これは地方に限定されるのであるが、御
承知の
通り關門國道トンネルは、
電氣機關車で牽引しております。この
電氣機關車の修繕は門司
鐵道局の小倉工機部でや
つておると見受けられるのであります。ところがこの
電氣機關車を小倉工機部で修繕する場合に、關門トンネル竝びに門司港内、下關港内は
電氣機關車の走行し得るように電化されております。また工機部の修繕工場に行きますと同じく電化されております。その中間のわずかの短距離間が非電化なるがために、いわゆる修繕
車輛を一々
蒸氣機關車の足りないときに、この
電氣機關車を牽引して、試運轉ないしこれを往復しておるような非常な無駄があるのであります。わずか短距離でありますために、この間を電化するならば、石炭の足りないとき、あるいはまた
機關車の不足のときに、それをこの
電氣機關車の修繕あるいは試運轉のために使用せずして、石炭の節約、
機關車の有效な利用ができるのではないかと
考えるのであります。これらは技術的に
考えますれば、わずかの設備費において多額な利益をそこに生み出すことができ、節約ができるという
事實がありながら、これを放任しておくということは、まことに私
どもは遺憾に思うのであります。これらに對しては早急電化する必要がある。殊にもしそれを電化するば、せつかく關門トンネルは、
電氣機關車を
活用されておりますから、門司・福岡間、あるいは門司・行橋間は短距離でありますがために、これらの間を電化する
意思ありや否やということを併せて
お尋ね申し上げておきたいのであります。
それから第五には、私は
旅客輸送の根本に關して私見を述べてみたいと思うのであります。今や
日本は
民主主義化されまして、國民もひとしく教育の
程度水準が引上げられまして、將來はおそらく學制改革によりまして、國民全部が中等學校以上の教育を受ける教養の進んだ國民になると思うのであります。この際私は
鐵道に一等、二等、三等をまた將來につけていくべきものであるかどうかということを
考えてみたいのであります。そのためにあるいは切符の印刷、取扱い等に非常な複雜な點があると私は
考えるのであります。その改正の方法はいろいろ具體的な研究もありましようけれ
ども、私
どもは將來そういう三等國民、四等國民ではなくして、平和國家のいわゆる世界に同等の國民としていきます上においては、三等列車を廢止してはどうかと私は
考えるのであります。あるいは一等、二等に限定するか、さもなければ一等、二等の
言葉がいけないならば、何か
言葉をかえても、一、二、三等というような三つの段階にわける必要があるかどうかという點について研究いたしまして、將來これに對しては一等と二等に限定するか、さもなければむしろ等級を廢止して、殊に最近のごとく次から次に
旅客運賃を上げます場合には、三等なんという
言葉は私はあまり適しないと
考えるのであります。これは私見でありますが、これに對して何かお
考えに
なつたことがあるかどうか。あるいは將來これらの點に對する何らかの腹案があるかどうかという點も併せて
お尋ねしたいと思うのであります。
最後に私は實例を申し上げます、親の心子知らずという
言葉がありますが、いろいろ
鐵道從業員等については、伊能長官あるいは次官等からもたびたび承
つておるのでありますが、私
どもはまことに遺憾な點があるのであります。私は本月九日に六時四十分の列車で歸りました。列車ボーイが東京を出てから門司に著くまで、ほとんど各釋に著くごとに、乘り降りする人の荷物等を間斷なく親切丁寧に整理整頓し、そうしてくつまで磨いてくれまして、私
どもはそのサービスに對して非常に感激したのであります。しかもそのボーイは白の詰襟の服を着て、腕に腕章をはめて服裝もきちんとしておりました。これは最近運輸交通
委員會等で、サービスの點についていろいろ進言したおかげかと思
つてわれわれも心ひそかに喜んでおりますが、私
どものくつまで磨いてくれたボーイに對して、私は心づけをや
つて快くわかれたのであります。ところが十八日の朝、八時五十分の八列車で門司を立ちましたところが、ちようどぼうしは海軍の戰鬪帽みたいなものをかぶり
鐵道のマークはつけておりましたが、開襟のカツターシャツを着た背の高い頑丈な大きなボーイでありましたが、ただの一度も列車を掃こうともしないのであります。また荷物などはもちろんのこと、
旅客に對して親切なこともない。くつを揃えるとか磨くとかいうことはまつたくしなかつた。同じ列車ボーイでもこれほど違うかということを私現實に見まして、實はそのボーイの名前も聽いたけれ
ども、こういう席で申し上げることははばかります。同じ急行列車に乘
つているボーイを見ても、心構えのいい
從業員は非常に親切丁寧にしておりますが、中にはかくのごとき非常に亂雜な、しかも
旅客に對して不愉快な
感じを與えるボーイもあるのであります。この點は私はどうしてもこの際列車等に乘りこむ車掌、ボーイというような者に徹底的な再教育を早急にしていただきまして、賃金を上げますとともに、
旅客に對する好感を與えていくようにお願いしたいと思います。あまりにもよい質の者と悪い質の者とがありましたので、その點は深く
感じましたことを御参考までに申し上げておきます。先ほど
お尋ねいたしました五つの點について簡單にお答え願いたい。