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2000-03-23 第147回国会 衆議院 青少年問題に関する特別委員会 4号 公式Web版

  1. 平成十二年三月二十三日(木曜日)     午前九時開議     出席委員       委員長 富田 茂之君    理事 石崎  岳君 理事 太田 誠一君    理事 阪上 善秀君 理事 戸井田 徹君    理事 田中  甲君 理事 肥田美代子君    理事 池坊 保子君 理事 三沢  淳君       岩下 栄一君    岩永 峯一君       江渡 聡徳君    大野 松茂君       奥山 茂彦君    佐田玄一郎君       佐藤  勉君    坂本 剛二君       実川 幸夫君    中野 正志君       能勢 和子君    原田 義昭君       水野 賢一君    目片  信君       北橋 健治君    城島 正光君       中川 正春君    中山 義活君       山本 孝史君    石田 勝之君       一川 保夫君    松浪健四郎君       石井 郁子君    大森  猛君       中川 智子君    保坂 展人君     …………………………………    参考人    (全国児童相談所長会会長    ・東京都児童相談センター    所長)          大久保 隆君    参考人    (東京都児童相談センター    相談処遇課児童福祉第二係    長・児童福祉司)     飯島 成昭君    参考人    (社会福祉法人子どもの虐    待防止センター理事)   広岡 智子君    衆議院調査局青少年問題に    関する特別調査室長    澤崎 義紀君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   保坂 展人君     中川 智子君 同日  辞任         補欠選任   中川 智子君     保坂 展人君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  青少年問題に関する件(児童虐待問題等)     午前九時開議      ――――◇―――――
  2. 富田茂之

    ○富田委員長 これより会議を開きます。  青少年問題に関する件、特に児童虐待問題等について調査を進めます。  本日は、参考人として全国児童相談所長会会長・東京都児童相談センター所長大久保隆君、東京都児童相談センター相談処遇課児童福祉第二係長・児童福祉司飯島成昭君、社会福祉法人子どもの虐待防止センター理事広岡智子君、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、児童虐待問題等につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず大久保参考人、飯島参考人、広岡参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  念のため申し上げますが、発言はその都度委員長の許可を得てお願いいたします。また、衆議院規則の規定により、参考人は委員に対して質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず大久保参考人にお願いいたします。
  3. 大久保隆

    ○大久保参考人 私は、全国児童相談所長会会長を務めさせていただいております東京都児童相談センター所長の大久保隆でございます。  本日は、このような発言の場を与えられましたことについて厚くお礼申し上げます。  私は、去年六月に教育庁の方から異動で現ポストに就任した者でして、これまで児童相談所の当面する緊急の課題である児童虐待に取り組んできたところでございます。  本日は、ことし一月、全国百七十四カ所すべての児童相談所を対象とする児童虐待に関するアンケート調査の結果について報告させていただきます。  その調査結果を取りまとめたものを本日委員の皆様方にお配りさせていただきました。以下、この資料をもとに、調査結果の概要を御説明させていただきます。  恐れ入りますが、表紙の次の目次をお開き願います。  この資料は、一、児童虐待に係る制度改正についての集計、二、要望項目の趣旨・理由、三、要望項目に関する事例、四、要望項目に関する意見の四つの章で構成されております。  次のページ、一ページ目をお開き願います。児童虐待に係る制度改正についての集計でございます。  A欄は、法、制度の整備に関する要望でございます。「(1)児童虐待の定義の明確化」から、下段の表になりますが、民法第八百二十二条に規定されております「(8)懲戒権の廃止」まで、八項目にわたり調査いたしました。  この中で最も賛成の多かった項目は、下段の表の最初の項目になりますが、「(6)法第三十三条の七による後見人選任請求を行う後見人は、機関及び団体後見に変更」についての要望でございまして、百四十二カ所、率にして八一・六%に上りました。次に多い項目は、今の項目の右にございます「(7)親権の一部(身上監護権)の一時停止」についての要望でございまして、百四十一カ所、八一・〇%でございました。三番目に多い項目は、上段の表の最初の項目、「(1)児童虐待の定義の明確化」についての要望でございまして、百三十七カ所、七八・八%でございました。  以上、要望の多い順に三項目ほど御紹介させていただきました。  次のページに移らせていただきます。二ページをお開き願います。二、要望項目の趣旨・理由を一覧にいたしたものでございます。概略を御説明させていただきます。  「(1)児童虐待の定義の明確化」についてでございます。  現行児童福祉法には、児童虐待の定義が規定されておりません。このため、法第二十五条の規定により、虐待されている児童など要保護児童を発見したときの通告義務を国民に課しておりましても、虐待かどうかの判断に迷い、通告をちゅうちょするような状況がございます。通告の一層の促進を図るためには、児童虐待の定義を明確に規定し、国民に周知する必要があるという趣旨でございます。  「(2)児童虐待の禁止及び罰則」についてでございます。  法第三十四条は、児童の福祉を著しく阻害する行為を列挙し、これを法律上禁止する規定、法第六十条は、法第三十四条に違反した場合の罰則規定であります。この両方の規定に児童虐待を加えることによりまして、虐待を抑制し、児童が心身ともに健全に成長する環境を確保できるよう関係規定を整備すべきであるという趣旨でございます。  「(3)関係機関の通告義務及び誤認通告の免責規定の法整備」についてでございます。  児童虐待を発見し、児童相談所などに通告した場合、通告者と保護者との間にトラブルが生じる可能性を否定できません。一方、先ほど御説明させていただきました通告義務につきましては、義務違反に対する罰則規定がございません。これらのことから、保護者とのトラブルを恐れ、通告に消極的になりがちな面があろうかと思われます。  児童虐待を発見しやすい立場にあります医療機関や保育所、幼稚園、学校などの関係機関等への通告義務と、通告を怠った場合の罰則を科するとともに、その通告が間違いであっても責任は問わないとすることにより、これら関係機関等の通告の促進が図れるよう関係規定を整備すべきであるという趣旨でございます。  「(4)介入機能(立入調査、一時保護)と相談・支援機能の役割分担」についてでございます。  児童相談所は、立入調査権や一時保護権が与えられ、虐待家庭への強制的な介入が可能ですが、この権限を行使した場合は、保護者はその後の児童相談所の対応に拒否的になる傾向がかなり強うございます。  児童相談所といたしましては、家庭環境の改善を図るため、立入調査や一時保護後も引き続き保護者への指導援助を実施したいと考えましても、児童相談所との接触を拒むなど、拒否的な対応をなされる保護者が多く、なかなか改善が進まないという状況がございます。したがいまして、介入は警察等他の機関が行い、児童相談所は介入後の家庭環境改善を担うというような役割分担が望ましいという趣旨でございます。  「(5)立入調査の具体的権限の付与」についてでございます。  先ほど、児童相談所には立入調査権が与えられていると申し上げましたが、これにも限界がございます。例えば保護者が部屋の中から施錠し、立ち入りを拒否されるような場合は、かぎを壊して立ち入ることはかなりの困難が伴います。このような場合、児童相談所の要請に基づき警察署も合同で立ち入るなど、実効性のある立入調査ができるよう関係法令を整備すべきであるという趣旨でございます。  「(6)法第三十三条の七による後見人選任請求を行う後見人は、機関及び団体後見に変更」についてでございます。  法第三十三条の七は、親権を行う者または後見人のない児童について、家庭裁判所に対して後見人の選任請求を行う義務を児童相談所長に課することによりまして、児童の福祉を保障しようとする規定でございます。後見人は親族及び利害関係人の中から選任されますが、児童相談所長も一個人として選任されることとなります。このため、異動や退職などで所長職を離れた後もその義務と責任を負わざるを得ず、個人に過大な負担を強いる実態となっております。  このような実態の改善を図るため、後見人を個人ではなく児童相談所という機関の長、いわゆる充て職の長などが行うよう関係法令を整備すべきであるという趣旨でございます。  「(7)親権の一部の一時停止」についてでございます。  児童を児童福祉施設に入所させるときは、家庭裁判所の承認を得て入所させる場合以外は保護者の承諾が必要とされているところでございます。しかしながら、一たん承諾した後これを取り消し、親権を振りかざして引き取りを強要する保護者が少なからずありまして、その対応に苦慮しているところでございます。  児童相談所といたしましては、施設入所措置から保護者の承諾を必要としない施設への一時保護委託に変更するなどの応急策により対処しているところでございます。しかしながら、この処置はあくまで施設に一時保護を委託するという応急的な方法でありまして、施設の財政的な面からも、長期間続けることは困難であります。また、保護者が児童の登下校時に自宅に連れ帰ったり、施設に押しかけ大声で職員との押し問答となることもありまして、当該児童のみならず他の児童への影響が大変懸念されるところです。抜本的な対策の必要性を痛感しているところでございます。  このため、民法に規定されている親権のうち、監護権や居所指定権など、いわゆる身上監護権と言われる権利につきまして一時的に停止する措置がとれるよう関係規定を整備すべきであるという趣旨でございます。  「(8)懲戒権の廃止」についてでございます。  平成九年度に実施いたしました児童虐待に関する全国児童相談所実態調査によりますと、虐待を行った保護者の半数以上は虐待を認めないという調査結果がございます。これらの保護者の大方は、児童に対し殴る、けるなどの行為を行っても、これはしつけであり、それが少し行き過ぎただけで虐待ではないなどと主張し、児童相談所の介入を拒む傾向が強うございます。  私どもといたしましても、虐待であるという認識を持ちつつも、児童の心身に重大な影響が認められない限りは、なかなか強制的な介入には踏み切れないというジレンマに悩まされております。  このような実情にかんがみ、児童虐待の容認につながりかねない懲戒権は廃止すべきであるという趣旨でございます。  次に移らせていただきます。  三ページをお開き願います。要望項目に関する事例につきまして、三ページから十ページにかけまして記載してございます。  全国の児童相談所からお寄せいただいた事例は二百五十七件に上りましたが、その中から、要望項目ごとに代表例を一、二例掲載させていただきました。それぞれ一例ずつ御紹介させていただきます。  まず、三ページの「(1)児童虐待の定義の明確化」に関する事例でございます。  上段の表、事例その一でございますが、十一歳の児童が実母から心理的、身体的な虐待を受けた事例でございます。自分の行為をしつけの一環として正当化する母親に対し、法律上虐待の定義が明確にされていないために児童相談所の関与が円滑に行えない例でございます。  四ページをお開き願います。「(2)児童虐待の禁止及び罰則」に関する事例でございます。  上段の表、事例その一でございますが、十六歳の児童が実父から性的な虐待を受けた事例でございます。虐待行為そのものに対する処罰規定がないため、心身ともに傷を負った娘に対し父親から性的虐待が繰り返し行われた例でございます。  五ページをお開き願います。「(3)関係機関の通告義務及び誤認通告の免責規定の法整備」に関する事例でございます。  上段の表、事例その一でございますが、二歳の幼児が実母から身体的虐待を受けた事例でございます。幼児を診察した医師が虐待を疑ったものの、誤認通告の免責規定がない中では、虐待でないとされた場合の責任を負えないということから通告をためらったため、児童相談所の対応がおくれ、幼児の心身に重大な影響を及ぼした例でございます。  六ページをお開き願います。「(4)介入機能と相談・支援機能の役割分担」に関する事例でございます。  上段の表、事例その一でございますが、七歳の児童が実母から身体的虐待等を受けた事例でございます。母親の同意が得られないため、家庭裁判所の承認を得て児童福祉施設に入所させた結果、母親は児童相談所が子供を取り上げてしまったという思いが強く、児童相談所との接触を半年以上も拒否し、親子関係の改善に支障を来している例でございます。  七ページをお開き願います。「(5)立入調査の具体的権限の付与」に関する事例でございます。  上段の表、事例その一でございますが、八歳の児童が実母から登校を禁止された事例でございます。立入調査を実施した際、母親が刃物を持って暴れ回るなど、児童相談所単独での実施は危険な場合があり、警察署に対して強制立ち入りを要請できる規定整備が必要な例でございます。  八ページをお開き願います。「(6)法第三十三条の七による後見人選任請求を行う後見人は、機関及び団体後見に変更」に関する事例でございます。  父子家庭の児童が児童養護施設に入所後、その父親が死亡したことに伴い児童相談所長が後見人となりましたが、退職後も後見人としての義務と責任を負い、多大な負担となっている例でございます。  九ページをお開き願います。「(7)親権の一部の一時停止」に関する事例でございます。  上段の表、事例その一でございますが、一歳の乳児が実父母から養育を放棄された事例でございます。親権の一時停止規定がないため、親による強制的な引き取りに十分対応できない例でございます。  十ページをお開き願います。「(8)懲戒権の廃止」に関する事例でございます。  五歳の幼児が実父から身体的虐待を受けた事例でございます。体罰もしつけの範疇であるとする強硬な主張に対し、懲戒権を廃止することにより、しつけに名をかりた虐待を抑止する必要があるという例でございます。  次に移らせていただきます。  十一ページをお開き願います。四、要望事項に関する意見についてでございます。十一ページから十八ページにかけまして、要望項目別に賛成意見、反対意見の主なものを記載いたしてございます。  「(1)児童虐待の定義の明確化」につきましては、虐待としつけの定義の違いを明確化するなど十項目にわたる賛成意見がございました。  「(2)児童虐待の禁止及び罰則」につきましては、児童虐待は犯罪行為であることを明確化するなど九項目の賛成意見と、罰則項目を入れることは疑義があるなど五項目の反対意見がございました。  十二ページをお開き願います。  「(3)関係機関の通告義務と誤認通告の免責規定」につきましては、通告を受ける児童相談所の体制整備が前提であるなど九項目の賛成意見と、通告義務は必要であるが罰則規定は除くなど二件の反対意見がございました。  「(4)介入機能と相談・支援機能の役割分担」につきましては、警察に生命身体の保護を目的とした介入機能を付加するなど八項目の賛成意見と、介入と支援は一貫性があった方がよいなど三項目の反対意見がございました。  十三ページをお開き願います。  「(5)立入調査の具体的権限の付与」につきましては、児童相談所が協力要請し、警察署が主体的に実施できるようにするなどの法的整備が必要であるなど三項目の賛成意見と、時期尚早である、児童相談所の体制整備ができていないなどの反対意見が二項目ございました。  「(6)後見人を機関・団体後見に変更」につきましては、公職指定として法整備が必要であるなど五項目の賛成意見がございました。  十四ページをお開き願います。  「(7)親権の一部の一時停止」につきましては、親権剥奪は保護者の拒絶反応が大きいが、一時停止であれば受け入れられるなど七項目の賛成意見がございました。  「(8)懲戒権の廃止」につきましては、監護教育権で十分であり、懲戒権は必要ないなど五項目の賛成意見と、民法八百三十四条で親権乱用の抑止をかけているのでしつけと虐待は整理されているなど四項目の反対意見がございました。  十五ページをお開き願います。このページ以降最後の十八ページまでは、その他の要望項目とその趣旨等につきまして整理したものでございます。ごらんになっていただきたいと存じます。  アンケート調査結果の説明は以上でございます。  なお、本日御説明申し上げました調査結果については、六月に予定しております全国児童相談所長会総会において要望として取りまとめ、体制整備、法改正が必要なものについては改善をお願いしていく予定にしております。  最後になりますが、去年七月二十二日のこの委員会で、児童虐待の指導中に転居、行方不明になったケースについて、ネットワークをつくるべきではないかという質問がございました。このことにつきまして、全児相として、去年の十月からCAネットワークの名称を設置しまして、現在までに十五件使われているということを報告させていただきたいと思います。  以上で説明を終わらせていただきます。(拍手)
  4. 富田茂之

    ○富田委員長 どうもありがとうございました。  次に、飯島参考人にお願いいたします。
  5. 飯島成昭

    ○飯島参考人 おはようございます。東京都児童相談センターで児童福祉第二係長をしております飯島でございます。  私は、きょう、児童相談の現場で児童福祉司として日々子供の処遇に携わっておりますので、その立場から、相談援助の流れに沿いまして、私自身が困難に感じたり悩んでおりますことを御報告させていただきたいと思います。  まず初めに、現状でございますが、東京都の児童相談所における児童虐待の相談受理件数の状況について御報告させていただきたいと思います。  児童虐待の相談受理件数は、平成五年度に百九十五件でしたが、昨年度、平成十年度は七百十四件と三倍強に増加しました。そして、今年度に入りさらに急増し、十二年度は千二百件を超え、昨年同月に比較して約一・八倍にも上ることが確実な状況となっております。  この増加の要因についてでありますが、まだ正確な分析が児童相談所としてはできておりませんが、一つは、都市部、私どもの東京都におきましては、核家族化や子育て家庭の孤立化などが一層進行していることに伴いまして、気軽に育児相談ができない、悩みや不満が蓄積されまして、これが自分の子供に向けて発散されてしまう傾向があるというようなことも考えております。  またもう一つは、厚生省を初め各都道府県、政令指定都市などの行政による広報活動やマスコミ報道などによりまして、児童虐待に対する関係機関や国民の意識啓発が進みまして、これまで潜在化していたものが児童相談所に通告や相談という形で上がるようになったのだというように考えております。  それでは、相談援助の流れに沿いまして御報告させていただきます。  私たちの活動は、通告、相談を受けてから始まるわけでございます。特に虐待の場合は、第一報は電話で相談を受けることが多いのですが、虐待相談の通告受付票というようなものを私どもつくっておりまして、電話を受けながらその相談項目に記入をして、プロフィールをできるだけ詳しく把握するように努めております。  児童虐待の相談経路は、従来は家族からの相談が第一位でしたが、啓発等の進んだ影響もあろうかと思いますが、今年度は近隣からの通告が最も多くなっております。ほかに、相談件数の多い順番に、家庭、学校、児童館も含めまして保育所等の施設、それから福祉事務所、警察、児童委員、医療機関、保健所からの順番になっております。  私たちは、通告を受けますと、虐待の事実の調査、確認に入ってまいります。学校、保育所、保健所等の地域の関係機関がかかわっている場合につきましては、直ちに連絡をとり、状況を調査、確認しまして、より詳しく状況を確認するようにいたしております。  今年度、最も多い近隣からの通報の場合でございますが、匿名による通報もございます。その場合は、まず調査対象の特定に苦労いたします。また、虐待を受けている子供の性別、年齢、住所など、また家族の状況がはっきりせず、状況の把握に手間取ります。なかなか通告者自身がお住まいの場所などを明確にお話ししてくださらない場合もございます。  通告を受けた場合、おおむね一両日中には児童委員等の協力も受けながら現地調査を実施します。匿名による通告の場合で地域の関係機関がかかわっていない場合につきましては、状況の把握に大変手間がかかります。また、他人のことにはかかわることを嫌うという孤立化した家庭も多く、大都市特有の問題でもありますけれども、対応に苦慮することもございます。特にマンションについてはオートロックの場合もありまして、家庭に近づくことさえできない場合もあります。  児童虐待の相談は、しかし即時に対応しなくては、子供の命にかかわることでございます。予定されていた虐待以外の相談や既に子供が入所している施設への訪問を後回しにしても、早急に対応しなくてはなりません。そういう考えで飛び回っているような状況でございます。  また、虐待以外の相談の場合は、保護者自身が相談自体を肯定している場合が多いのでございますが、またその場合には保護者からお話を聞くことが可能になるのですけれども、虐待の相談の場合については、保護者自身は虐待を否定していることが多いのです。その場合、保護者等は強い拒否的態度で私たちに迫ってまいりまして、近づくこと自身も難しいこともございます。  一方、児童相談所の相談件数は、それ全体が増加しておりまして、その中での虐待の相談件数の増加は、勢い、私たちは一人一人の子供にかかわる相談に丁寧に対応することが基本と考えておりますけれども、それを困難にいたしかねません。この辺が悩むところです。  なお、私たちは、虐待の対応は、相談を受けた初期の段階から、一人の児童福祉司が単独で当たるのではなくて、必ず複数の児童福祉司で対応するようにしております。また、係制、チーム制をとっており、チーム協議を行い、また、直近の処遇会議で報告し、共通認識を得て行動もしております。  これらの一定の調査の積み重ね、それからその後の相談活動の結果、強制的に親子分離をする必要性が疑われるにもかかわらず、親が調査拒否をする場合があります。私たちの面接を拒否したり、子供を外に出さない。学校にも行かせない。虐待などが疑われるが生活実態がわからない。子供は確かにいるはずなんですけれども、閉じこもってしまってその生活実態が全くわからない。医療的な手当てが必要で命の危険があるにもかかわらず、病院から連れ帰ってしまって家にこもってしまう。子供の体の傷や栄養不良が保育所とか学校、近所の方のお話で確認されているのですが、そういうことにつきましても接近することができないというようなことがございます。  このような場合、関係の機関、保健所さんとか保育所さんとか学校とか福祉事務所等と十分な連携をとり、立入調査を行うということになります。また、立入調査に伴いまして、直ちに一時保護が必要な場合に備えて、車等も配備しておくようにしております。  立入調査は、一方で家庭のプライバシーという問題がありまして、家庭のプライバシーを侵しても子供の命と安全を守るために行うものです。子供の命と安全を守るために行うのだ、私たちはそういう気概を持って事に当たっているのでございますけれども、虐待の証拠が入手できるだろうか、強制的に家庭に立ち入った後、その後の保護者に対する指導援助や、子供と分離した後の保護者に対する処遇をどうやって進めていくのか、また、暴力を振るう親や前後の見境もなく襲ってくる親に対する、自分自身や関係者あるいは子供本人の身の危険をどうやって守るかなど、悩むことは多いのでございます。  また、立入調査の際、親がドアに施錠したりチェーンをかけて屋内へ立てこもり、物理的に立ち入りできない場合もあります。もちろん、緊急避難の状況にあるときには、壊して立ち入るのにちゅうちょするものではありません。実際にそのような行為を、私自身ではありませんが、私たちのところで対応したことがございます。しかし、やはり何らかの法的裏づけがあればもっときちんとした形での対応ができるのではないかと思っております。  立入調査によって子供の命と安全を守るために保護が必要というふうに判断した場合、児童福祉法の三十三条に基づきすぐに一時保護をいたします。また、立入調査に至らず、関係機関と連携をとって、あるいは親の同意をもって一時保護をすることもあります。  一時保護は、まずとにかく虐待されている環境から子供を引き離し、命と安全を守ることを目的に行います。保護した後でございますけれども、医者や心理職員、また一時保護所の職員等もかかわりまして、個別の診断や行動観察を行い、虐待の状況や子供の状況を確認していきます。そして処遇方針を決めるのです。  虐待の場合だけではありませんが、子供の命と安全を守るために一時保護の必要性が生じたときには、待ったなしの対応が当然迫られるわけでございます。したがって、一時保護には、すぐ受け入れられる物理的な余裕が必要なわけです。この点で東京都の場合はかなり厳しい状況にあることもあります。  また、一時保護所は、虐待を受けた子供だけではなく、いろいろな子供、非行を行ってしまった子、親が病気で入院したためにその間養育する者がいない子供さん、施設に入所したけれども、施設との間が不調になってしまっていられなくなってしまったお子さん、里親との生活が不調になってしまったお子さんなど、いろいろなお子さんが一緒に生活をしております。  最近は、特に処遇の難しいお子さんがふえています。そして、虐待を受けた子供は、多動だったり、拒否的であったり、生活習慣が身についていなかったり、時にはリストカットを試みる子など、多様な問題を抱えて、処遇の容易ではない、個別的なかかわりが特に必要なことが多く、一時保護所の職員は日夜奮闘している状況にあります。  一方また、一時保護中に、虐待した親からの面会の強要や引き取りの強要もあり、時にはどなられたり、暴力的な威圧を受けたり、しつこく朝から晩まで電話を切っても切ってもかけられたりすることがあります。  一時保護ということの結果から、親の同意を得られなくても施設措置が必要であると判断した場合、児童福祉法二十八条審判の申し立てを家庭裁判所にすることになります。二十八条の審判は、長期にわたることが予測されます。六カ月から一年ぐらいかかるものもございます。したがって、児童相談所の一時保護所に長期に在所することは、その一時保護所の限られた空間の問題とか、そういう環境の面とか、学校生活の保障のこととか、子供本人の精神的な安定のために、長期に一時保護所に在所することは好ましくないと考えております。したがいまして、児童養護施設に生活の場を変えて、一時保護の委託をします。  一時保護委託先の施設では、一時保護所にいたときと同じように、親の面会の強要、引き取りの強要や、電話による嫌がらせ等を受けることがあります。また、学校への登下校の際に強制的に親が引き取ってしまうおそれもないこともありません。その懸念もありますので、親には一時保護委託先の施設の施設名とか所在地を教えないなど、苦衷の選択を余儀なくされる場合もあります。この場合につきましては、親への対応を児相は一手に引き受けまして、先ほど申し上げましたさまざまな威圧も受けながら対応している次第でございます。  また、一時保護委託先の施設にはさまざまな負担をかけることになります。一時保護委託は、措置ではありませんので、措置費が払われません。委託費用として、東京の場合一日、一般生活費ということなんですが、千八百四円が支払われるだけでございます。この千八百四円の内訳は、国が千五百七十円、都の負担で二百三十四円ということでございます。施設に対して一時保護を委託するときに、そういう面での心苦しさを感じるわけでございます。  さて、六カ月以上の審判期間を経まして決定が出ることになるわけですけれども、虐待を受けた子供の安定した施設での生活をできる限り早く保障するためにも、もっと早く審判が欲しいのです。これは本当に切実な思いでございます。  二十八条審判の承認決定がおりますと、親の意思に反しての施設措置ができるようになります。子供を虐待されている環境から離し、施設での安定した生活を保障することができるようになるのです。  しかしながら、虐待をした親に対してこの審判結果をしみ通らせるためのもう一押しの法的対応があればとの思いは残ります。親に対して、居所指定権等の親権が制限されたことを明確に認識させ、親に一定の指導に従わせることを条件としての親権制限期間の定め等の対応があれば、いずれは親と住みたいという子供の願いをかなえさせてあげる努力の、また、親の強引な引き取り要求に対しても一つの手だてになるのではないかと思っているところです。  また、二十八条審判の場合、親から虐待を受けたという証拠を集めることの困難さの問題もあります。特に、虐待でもネグレクトの場合、身体的虐待のように、いつ、どのような状況で、どのような虐待を親から受けたという証拠を集めることは非常に困難です。  この子のこの状態像、拒否的なかかわり、否定的なかかわり、多動、さまざまな状態像がございますけれども、その状態像から見れば、明らかに虐待を受けていて、その虐待環境が長期にわたっているために、この子は心にひどい傷を負わされており、またその虐待環境から早く離さなければならないということが状態像や関係機関の訴えから明らかであっても、その具体的な因果関係を立証することは大変難しいことでございます。そのような資料を要求されますと、もどかしさもあり、怒りを覚えることもございます。  虐待を受けましたお子さんが、また、虐待をしてしまった親が、こういう審判措置の後、施設に入所することになりますけれども、その後のケア、キュアというものが非常に不足しているのではないかと思っております。子供にとって、まず身の安全を図ると同時に、その後この子が社会で自立して生きていくための援助は大変必要なことだというふうに私は考えております。  虐待を受けた子供は、極端な大人不信や対人関係の形成がうまくできないなど、多くの課題を抱えていたり、情緒的にも困難な問題を抱えていることが多く、施設入所後も特別なケアが必要となります。そういう意味では、施設職員のかなりの手がかかるわけでございます。また、専門的な治療機関にかかる必要があることもまれではありません。  現在の施設の人的、物的条件では容易でないことは事実だと思っております。虐待を受けた子供が虐待の傷から立ち直り、安定した生活が得られるようにするためには、さまざまな条件整備を一層充実させる必要があると考えております。それがなされないと、悲しいことですけれども、虐待の世代間連鎖を生じさせることになります。虐待を受けた子供が成人して子供を持ったときにまた虐待をしてしまうという、そのような状況はぜひ避けたいと思っております。  また、虐待した親が、その虐待する養育態度を改め、環境を是正しない限り、子供を家庭に帰すことはできません。今は、虐待の被害者である子供は、虐待から分離し、保護という形でケアをいたしますけれども、加害者である保護者に対しては有効な手だてが乏しいという現実がございます。虐待した保護者は、虐待を否認する態度ばかりでなく、薬物の使用やアルコール依存、また心身に難しい課題を抱えていたり、また経済的な破綻や家庭崩壊など、それ自体が非常に解決困難な問題を抱えていることが多いわけです。心身に抱えた課題や生活上の課題を解決する方策も重要であり、早急な対策が望まれます。  しかし、最も大きな課題と私が思いますのは、本人が課題に取り組む意欲を持てるかどうかということにあります。多くの場合、保護者自身の自助努力に頼らざるを得ない状況にあります。このことは、言いたいことは、対応する人も場も機関も設備も全く不十分であるということでございます。
  6. 富田茂之

    ○富田委員長 飯島参考人、ちょっと時間をオーバーしていますので、簡潔にお願いします。
  7. 飯島成昭

    ○飯島参考人 済みません。すぐ終わります。  一口で家族調整、再建と言いますけれども、越えるべきハードルは高く、多く、非常に困難を感じております。  また、つけ加えますけれども、虐待の定義でございますけれども、第一線の機関である保育所、学校、保健所等での親指導の困難の訴えが、虐待ということが明確になれば、しつけとの対置の関係で、きちんと対応できるという声が現場ではいつも聞かされます。  本日は、日ごろ思っていますことを御報告させていただきました。また、このような機会を与えていただき、感謝いたします。ありがとうございました。(拍手)
  8. 富田茂之

    ○富田委員長 どうもありがとうございました。  次に、広岡参考人にお願いいたします。
  9. 広岡智子

    ○広岡参考人 子どもの虐待防止センターで一九九一年、開始当初から相談員をしております広岡と申します。よろしくお願いします。  今、お二人の参考人の児童相談所関係者の方々のお話を聞きながら、その話だけに終息いたしますと、恐らく皆さん方は、虐待というものは自分たちの話ではないんだ、何かとんでもない、貧困であったり無知であったり、そういった人たちのところで起きていることだから、何か我々とは関係ないんだというようなお顔をして聞いていらっしゃるような気がしたのですけれども、私は、決してそうではないということをまず一つは訴えたいと思います。  御存じのように、子供の虐待というのは英語で、何で英語なのかというのはいつも思うのですけれども、マルトリートメントという言葉があって、クリントンさんで有名になりましたが、不適切な関係である、親の子供への不適切な関係、つまり不当処遇が子供の虐待であるということなんですね。  そうしますと、確かに我々は、子供が血がだらだらと流れるほどの暴力は子供には振るっていないかもわかりません。身体的な虐待というのは、確かに今目の前で見えるんですよね。でも、実は虐待には、心理的な虐待というものがあります。これは目に見えません。私の体験では、恐らく児童相談所に心理的な虐待で通報があるということは大変少ないだろうと思います。  同じ心理的な虐待でも、心理的虐待には、ネグレクトとそれから心理的アビューズというふうに二つに分かれるのですけれども、心理的なネグレクト、学校に行かせないとか、病気になっているのに病院に連れていかないとか、そういったものは通報として上がってくると思うのですが、恐らく、心理的なアビューズ、これは非現実的な期待ですとかそれから差別ですとか、愛情を与えないとか、言葉でのおどしもそうですね、こういったものは、今私たちの前で、子供は決して傷ついた姿であらわれないんですね。  私の体験では、まさにこういった心理的な虐待を受けた子供たちが大人になって親になったときに、自分はやはり認めてもらえなかった、愛されていなかったから、どうしても子供が抱けないんだということを訴えてきたような気がするのです。  ちょっと前置きが長くなってしまいましたけれども、私がまず訴えたいことは、虐待というのが、何度も繰り返しますが、血がだらだらと流れるものだけではないんだ、実は目に見えない虐待こそが深刻で、これこそ我々の社会の暮らしの内側にあるものなんだということをまず頭の中に入れておいて、そして法案もつくっていただきたいなというふうに思います。  虐待防止センターは、私がかかわった仕事というのは、まず一、電話相談です。これは電話相談が大きく二つに分かれまして、一つは通報ケース。虐待を目撃している人たちから、どのように対応していいかわからないという相談がたくさん寄せられた。それに対して、私たちはアドバイザーという形で危機介入するわけですけれども、子どもの虐待防止センターには措置権がありませんので、ネットワークを開催してその中に出ていくという仕事をしたわけです。  それからもう一つは、これは八割が母親自身からの電話相談であったということで、当然お母さんの電話カウンセリングがありました。実は、この電話の最大のメリットは、虐待している親たちが、なぜ自分が子供を虐待しないといけなかったかということを電話で私たちに伝えてくれたのです。つまり、虐待している意識があるわけですから、これを放置しておく手はないわけです。彼女らが虐待をやめるために治療することができたわけです。  そしてもう一つの仕事として、私たちは、MCG、これは精神科医の斉藤学先生が初めに提唱なさったのですけれども、マザー・アンド・チャイルド・グループ、つまり、連鎖であるということは皆さんよく聞かれていると思うのですけれども、もちろん虐待は一〇〇%連鎖で起こっているわけではないです。いろいろな条件が重なり合ってできているわけですけれども、つまり、虐待をやめるための治療は何かといったら、子供時代に自分がどのように親に扱われたかということをもう一回立ちどまって考える、そして初めて今自分が子供に虐待していることがわかるということなんですね。  懲戒権という言葉がありますけれども、虐待している親に、自覚のない人に、どんなにこれがしつけじゃないなどということを言っても、それは通らないと思います。彼らに、それがしつけじゃない、これは虐待であるということがわかるためには、やはり自分が何をされたかということがわからなければ、彼らはどんなに説明されても同じことをやると思います。  もしかしたら皆さんだって、親だと思うのですけれども、自分は全然虐待と関係ないと思っていても、もし、ティーンエージャーになった子供たちが、または青年期を迎えた子供たちが、おやじ、あんたのは虐待だったというふうに言われたら、確かに殴ってはいないかもわからないけれども、もう一回立ちどまって、自分が子供に何をしたかということは考えないといけないのじゃないでしょうか。  ちょっと話がわからなくなりましたけれども、それは以上にしておいて、そういったMCGという治療グループも始めた、この三本柱で私たちは仕事をしてまいりました。  まず、この中で見えてきたことを伝えたいのですけれども、児童相談所に対する批判は非常に声が大きくなっていますので、私があえて言うことでもないと思うのですけれども、むしろ児童相談所を批判するのではなくて、実は我々が問われないといけない話じゃないかなというふうに非常にいつも怒りに思っています。  なぜならば、通報ケースで、医者から、赤ちゃんが入院してきた、どうも虐待らしい、しかし医者は児童相談所に連絡するということを知らなかったですよね。それは保健婦さんであろうが教師であろうが、もしかしたら弁護士さんだって、虐待問題に児童相談所が第一線の機関であるということを一体どれほどの人が知っていたかといったら、ほんの十年前までだれも知らなかったんじゃないかと言いたいぐらい、実は、これは児童相談所の問題ではなくて、我々の問題であったというふうに私はとらえ直したいなと思います。  そして、通報ケースの中で一つ見えたことをお伝えしておきますと、一つは、法律や何かで皆さんはハードの側面で話されているわけですが、私は、そういったことは余り詳しくありません。それで、私が見えたものというのは、児童相談所の職員の専門性の問題です。これは恐らく、児相のワーカー個人の問題ではないと思います。これこそ政策や制度の問題なのかなというふうに思いますけれども、ちょっと具体例を話しますと、例えばこれは通報ケースだったと思うのです。  保健婦さんが、乳幼児健診の中で、あるお母さんが、子供って案外死なないものですねというふうに言ったんですね。この言葉をとらえて、これは虐待なんだろうかという電話が入りました。私たちは、恐らくこれはやっています、もし実の母親が自分の子供をほうり投げるとか、命の危険にかかわるような暴力を振るうという認識がなければ、恐らくこの保健婦さんは動かなかったと思うのですけれども、これは虐待です、すぐ行ってみてください、行ってみました。子供はほうり投げられていて、次の日、すぐその場で病院に入院しました。  保健婦さんは全くどういうふうにしていいかわからなかったので、ぜひ病院に入院させて、安全な場所が確保、獲得できるまで、子供を決して帰しちゃいけないと。これは児童相談所を病院に呼んでください、だけれども児童相談所だけの仕事ではないんですよ、病院も、社会的入院といって、実は子供の安全な場所が確保できるまで入院させておかないといけないんですよと。早速児童相談所の方も出向いて、病院でミーティングをして、そして子供は数週間後に乳児院に保護されました。  その後なんですけれども、お母さんから防止センターに電話が入ってきまして、実は週に一回、土、日に、乳児院に私は呼ばれていると。これは、病院の先生や児童相談所の職員が、母親と子供を長期に離しておくとますます母子関係は危なくなるから離してはいけないんだ、なるべく早くに統合しないといけないということで、分離しながらも一週間に一回会わせる努力をするのです。  恐らく皆さんもそういう頭があるんじゃないでしょうか。うまくいかないのだったら、離したらますますうまくいかないのじゃないか、一週間に一回、母親なんだから乳児院に面接に行くのは当然だと。だけれども、これはお母さんとしては苦しいのです。そんなことができるのであれば、子供をほうり投げたりはしないわけです。ここはやはり児相のワーカーの専門性が問われるところだったと思います。  例えば、よくあることなんです。双子がいたら、一人が虐待されるということはしばしばあります。そのときに、児相のワーカーの対応を見ていると、かわいい子を乳児院に預けましょう、かわいくない子供と一緒にいなさいという指導をするんですね。これは虐待というものに対しての認識がない結果だと思います。  虐待というのは、その人の道徳観ですとか人格に問題があって、そして子供を虐待するわけではないわけです。日本には家族イデオロギーという言葉があって、どんな親子関係でもやはり家族が一番だという考え方がありますね。こういう考え方が実は、虐待をしながら、分離されているのに一週間に一回会いに行きなさいという言動になったり、かわいい子供を預けてかわいくない子供とうまくやりなさい、こういった言動になるのは、やはり私たちの社会が、虐待の問題に対して、ソフトの部分で、なぜ親が虐待するのかというところに対して、余りにも無知で無関心であるからこういったことが起きるんだと思います。  児童相談所の職員は専門家ですから、やはりここのところについては学んでほしいというふうに思います。  それから、医療関係者も同じでした。親が虐待をしますと、まず精神鑑定する。虐待した親に精神鑑定をしても、何も出てこない場合が多いのです。精神科医の方に聞きますと、あえて病名をつければ、人格障害だとか境界例だというふうに私たちは病名をもらっています。それが通報ケースの中で私たちが見たことです。  実は、私は、この後、お母さんからの電話相談について皆さんに訴えたいと思います。  今、電話相談全体では、九年間、一九九一年から今日まで、約一万九千件の電話相談が入っていると思うのですけれども、このうちの八割が母親本人からの電話相談です。  このお母さんの電話相談を、実は四つの段階に分けることができたと思います。  まず一つは、育児不安のお母さんたちです。育児不安だからといって殴っていないかといったら、とんでもないです、殴っています。なぜ殴っているかといったら、一つは、御存じのように、密室で、孤立で、都市化している中で、昼間だれも見てくれている人がいないんです。人間には限界があって、皆さんもそうだと思うのですが、だれも見ていなかったらうちの中で何でもできちゃうんです。親のストレスは当然弱い方に行きます。子供に行きます。  これは不思議なことに、私は、お母さんたちの声を聞いていますと、いろいろな日本社会の病んでいる部分、例えば教育の問題も含めて、競争社会の問題も含めて、すべてお母さんたちの声の裏に見えてきます。きょうは、それを話すともう時間がないので話しませんけれども、この人たちも無視できないです。  一つ言えば、私が最近出会うお母さんの中に、子供が泣くと自分は窓をあけると言ったお母さんがいました。普通、自分がたたいて子供が泣けば、昔のお母さんは窓を閉めたり雨戸を閉めたりして子供を殴っていたと思うのですけれども、今のお母さんがあけるというのはどういうことかわかりますでしょうか。やはりだれかに気づいてほしいんだ、まるで置いてきぼりにされているんです。だれかにこの窮状をわかってもらいたい、こういうお母さんたちがたくさん電話相談してきたのです。  このお母さんたちが虐待じゃないかといったら、聞いていますとやはり虐待です。虐待の分類でいけば危惧です。児童相談所がこのケースまでやるということになったら、これは児童相談所はパンクしているのにもっとパンクしてしまいます。  ですから、ついでに言わせてもらいますと、厚生省は、民間と児童相談所は車の両輪だというふうに発言しているそうです。両輪という割には、私たちのところには補助金は全くゼロなんですよ。  今言っていいかどうかわかりませんけれども、私たちのところは家賃で年間二百七十万出ているのですが、たしか地域社会福祉振興財団から出ているお金が五百万円弱です。一千万円は自分たちで、自助努力で集めております。きょうはこれだけは絶対言ってもらいたいと言われていますので、せめて場所代だけ出していただいたら、どんなに育児不安のお母さんたちが救われるでしょうか。それが一です。  それから、二番目のお母さんたちなんですけれども、この人たちが私たちの先生でした。なぜ自分が虐待をしたかということを言ってくれたのです。これは明らかに世代間連鎖の話なんです。  ちょっと皆さんの身近なところで話をしますと、あるお母さんは非常にしつけが厳しいのです。余りのしつけの厳しさに、子供の心身に問題が起きていました、例えば多動であるとか言葉が出ないとか。これはもう児童精神科医にかからないといけないほどの状況がありました。物すごく乱暴なんです。ですから、公園などに連れていかないんです。  このお母さんをケアしてきて、このお母さんから出てきた言葉にはっとしました。彼女も気づいていなかったんですけれども、子供時代、ずっと父親に言われていた言葉が、おまえはばかだ、おまえみたいなばかな子には友達なんかできるはずがない、ばかだ、ばかだ。つまり、自分がいい子じゃなかったから、優秀じゃなかったから親は私を愛さなかったんだと。彼女の中では、やはり子供をいい子にしないといけないという気持ちが大変強くて、そして非常に厳格な子育てをしていたんです。  このような形で親の声が頭の中に残っていて、親の呪縛にかかったように子育てをしているという親がたくさんいたということをまず一つ報告しておきます。  子供がジュースをこぼします。ジュースをこぼしたらぶん殴るお母さんがいました。彼女は、ジュースをこぼすと自分の父親が殴る、自分は殴られた、お父さんに殴られないために子供を殴った、こんな妙なことが世代間連鎖の中で起きているんです。  もっと深刻なことでいいますと、今、心的外傷とかトラウマという言葉が使われていますけれども、子供を抱いていた。赤ちゃんというのは動き出します。当然、顔をたたいたり髪の毛を引っ張ったりします。そのときに、乳児に殺されるなんてだれが思うでしょうか。そのときに、この子に殺されると思ったお母さんがいた。  それから、男のお父さんでもそうです。例えば、四歳児の子供がお漏らしをしたときに、切れて、お漏らしをしたといって怒ったんです。これは私の前で起きたことなんですけれども、そのときに子供がよけたんです、やめてパパと。そうしたらその手がパパに当たったときに、この父親が何と言ったかといいましたら、おまえはおれを殺す気かと言ったんですよ。四歳の子供が果たしてあんたを殺すはずがないわけですね。  もちろん、これは一つの視点です。科学ではかれるものでも数量ではかれるものでもないので、厳密な科学者によれば、そんなものは信用ならないという人もいると思います。それはそれで認めます。ただ、一つの視点として、私たちは、彼らの言う言葉をそのまま真に受けて、信じてケアするという方法をとっています。そういった立場です。  この中で見えてくるのは、彼らのかつての心の傷、心的外傷。よく、親になって知る親の恩、何かそういったものがあると思うのですけれども、私たちがこういった電話相談を聞いていますと、まるで、親になって知った親の憎しみというんですか、これは助産婦さんなどからも報告されています。例えば、分娩台の上で狂乱分娩をしたお母さんがいたとか、分娩した途端におかしくなった。夫からも報告されています。自分の妻が、全く普通だったのに、子供を産んでからおかしくなった、私は危ないから精神科医に通わせてほしいなんて言う人も出てきたそうです。  これは、虐待問題というものが広がってきて、社会に根づいてきて、こういったお母さんが前もって自分の危うさに気づいて、相談機関や医療機関につながるようになったという意味では大変よかったと思います。これは二番目です。  三番目が、これはまたやはり、本当にここ二年ぐらいで変わってきました。今虐待をしているというお母さんたちが実際に登場してくることができました。  これは私が体験した事例なんですけれども、よくあることなのでお話しして大丈夫だと思いますけれども、私は子供を殺しそうなんだという電話が防止センターに入ってきました。殺しそうだと言われても、私たちは、ややもすると大げさだとかそんなはずがないというふうに対応していたんですね。でも、今私たちは違います。  このお母さんの声を聞いていたら、警察も役に立つものだと思うのですが、お母さんは、夜になると警察に電話をしていたそうです。夜は警察が声を聞いてくれる。警察に、私は殺しそうだと。相談員は、このお母さんは本当に苦しんでいるということで、児童相談所に電話をします。児童相談所は保健所に電話をしました。このようにネットワークは動くんですね。保健所に電話をして、保健婦さんに、訪問に行ってと言いました。保健婦さんが訪問に行きましたら、実は、お母さんも子供もそんなに悪い関係ではない。子供にあざなどないんですね。  でも、保健婦さんも最近はなかなかソーシャルワーカーでして、精神科のドクターにこのお母さんと子供を連れていきます。子供を連れていきまして、ドクターの診断で、やはりひとまずの分離が必要だろうということで、分離になるわけです。次の日に児童相談所、児相が出てきて、書類をつくって、正式に分離ということが決まるわけです。  ここで私が何を言いたいかといいましたら、やはり虐待というのは発見が難しいのです。言葉だけで分離ができる、できたということは、ここに関係した児相のワーカーと保健婦さんと精神科医の見識が高いということなんです。ですから、虐待の問題についてはかなり専門性の高い人の配置が必要だということを言わせてください。それが三番目です。  最後、これは四番目。最後にします。  四番目というのは、まさに親。危機介入があって、自分が子供を虐待した、児童相談所が介入してきた、そして分離された人たちが、実は子どもの虐待防止センターの電話相談に最近ふえています。なぜかといったら、なぜ自分が分離されたかわからない、もっと説明をきちんとしてもらいたかった、子供は保護されたのに自分を保護してくれる者がだれもいない、実は自分もケアを受けたいんだということを言ってきた人がいるのです。  皆さんの中には、虐待親の治療なんか必要ないというふうに思っている方がいらっしゃるかもわかりませんが、虐待親というのは間違いなく、だれも救出してくれなかったかつての子供たちなんです。ですから、そういったことを考えれば、子供の治療も虐待親の治療もコインの裏表ということで必要なんだということを伝えさせていただきます。  これでおしまいです。(拍手)
  10. 富田茂之

    ○富田委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  11. 富田茂之

    ○富田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石崎岳君。
  12. 石崎岳

    ○石崎委員 おはようございます。自由民主党の石崎岳でございます。  きょうは、三人の参考人の皆様方、児童虐待問題について貴重な御意見を賜りまして、心から厚く御礼を申し上げたいと思います。  また、全国児童相談所長会が非常にタイムリーにこの問題についてのアンケート調査をおまとめになったということで、このアンケート結果について、これを中心に御質問をさせていただきたいと思います。  当委員会でも、昨年来、児童虐待問題についての議論を積み重ねてまいりましたけれども、現在は、その必要な法的整備について、理事の間あるいは与党においても検討会をつくりまして、議論を続けております。  そういう中にあって、今三人の参考人のお話を聞いておりますと、やはりその背景としては、非常に根深い問題があるというふうに痛感をいたしました。広岡参考人のお話を聞きますと、児童虐待の背景には、やはり家庭あるいは親の生育環境、そういったものが非常に関係をしているというお話でございました。そして、それに対応している児童相談所の現在の体制、機能についてもまだまだいろいろな不備、問題があるということでございます。  それで、私も昨年来いろいろ議論に参加をさせていただいておりますけれども、児童虐待がふえている、あるいは児童虐待の要因といったものをいろいろ私自身も考えるのであります。今、飯島参考人からも要約したお話がありました。広岡参考人からもいろいろ、るるお話がありましたけれども、児童虐待の原因、要因といったものについて、広岡さんはどのようにお考えでしょうか。
  13. 広岡智子

    ○広岡参考人 先ほども言いましたけれども、重ねますと、理論で言いますと、実は虐待の要因は一つでないというふうに考えられます。親側の要因と子供側の要因があるというふうに言われます。  親側の要因というのは、愛されなかった体験、愛情飢餓状態の親たちと言っていいかもわかりません。それから夫婦間の問題、経済的な問題、それから、孤立しているという問題。  確かに、親側だけの要因ではなくて、実は子供側にも要因がありまして、子供側には、ディフィカルトチャイルドというふうに言われている、いわゆる大変育てにくい子供たちというタイプがあります。これは未熟児ですとか超未熟児に代表されるものです。または多胎児、双子、三つ子とも言われております。そして、乳児虐待に出会ったときに、またこれも未熟児かというふうな事例には大変多く私たちは出会っています。  それから、虐待のもう一つの分類の仕方で、実は古典的な虐待と現代的な虐待という考え方がありまして、古典的な虐待というのは無知であるとか貧困であるということが要因になっているのですけれども、実は今大変わかりづらいのは現代的な虐待でありまして、無知でも貧困でもない人たちが子供を虐待しているという問題があります。  こういった親たちと接していますと、俗に言いますと、大変いい子をしていたという子供たち、子供時代が浮かび上がってきます。何か親の言うことをよく聞いて、親の期待に合った自分を演じていた。もっと言えば、子供時代というのは非常に非社会的な存在であるはずなんです。しつけといっても、親の思うとおりにならないのが子供たちのはずなんです。本当にそういった子供時代を過ごせていない、子供時代を子供として過ごしていない、そのまま大人になった人たちが、またこれ、子供を虐待している。現代的な虐待の裏には、この問題が見えました。
  14. 石崎岳

    ○石崎委員 きのうも私、この問題に取り組んでいるある方とお話をさせていただいたのですけれども、児童虐待というものが日本の中でふえているのだろうか、相談件数的には大変ふえているのですけれども、実態として、昔も今も、数値的にどうなのかということを、ちょっときのうも話し合ったのであります。  大久保参考人にお聞きしたいのですが、児童虐待というものが、相談件数はふえていますけれども、実態として、昔から同じように数的にはあったのではないか、それが、世間的な関心が高まったり、そういう取り組みが充実してきたので相談件数がふえただけであって、昔からあったのだ、昔から数的には変わらないのだという見方もありますけれども、その点はいかがでしょうか。
  15. 大久保隆

    ○大久保参考人 先生の御質問でございますけれども、確かに今まであったそういう児童虐待が、マスコミの報道とか、国を初めとしたそういう広報活動の結果として、潜在していたものが浮かび上がってきているのではないか、こういう話もあることは間違いございません。  ただ、今広岡さんの方からも話がありましたけれども、やはり児童虐待という問題については、まさに現代的な児童虐待という、そういう視点でつかまえるべきではないか。  これは、昭和二十年代からすれば、貧困を基調とした、そういう家族問題というのは現実にあったわけですね。そういった中で、児童虐待というのも確かにあったと思います。あるいは戦災孤児の問題とか孤児の問題、そういった問題が家族問題であったわけです。ところが、現在の家族問題というのは、この児童虐待のほかに不登校という問題もあるわけです。そういった不登校の問題、児童虐待の問題というのは、現在、豊かになった社会で初めて出てきている問題ではないかというふうに思います。  ですから、そういった現在の児童虐待の問題をつかまえるときに、社会全体の変化の中で、何が原因なのか、やはりそこら辺はきちっと調査して、今後の見通しをつけていかなければいけないのではないかというふうに私は思っております。
  16. 石崎岳

    ○石崎委員 児童虐待の背景、要因としては非常に複雑なものがある、現代性もある、親の問題もあるということの中で、児童虐待を第一次的に扱っている児童相談所の機能として、そういった子供だけではなくて、その背景にある家族、親に対するフォロー、ケア機能というものが今の児童相談所の体制に備わっているか、児童相談所の職員にそういう専門性が備わっているかどうかということについて私はやや不安、疑問を抱いている部分もありますけれども、その点は飯島参考人、いかがでございましょうか。
  17. 飯島成昭

    ○飯島参考人 児童相談所、私どもの勤めている児童相談センターの場合につきましては、相談所総体として、ドクター、これは精神科の医者、それから小児科医、心理指導の職員、私どもケースワーカーとおりまして、処遇会議等で、また行動観察を通じまして、十分に把握をしてやっておりますので、総体としては専門性があるというふうに私は思っております。  ただ、お母さんとかお父さんを本当にケアできる場があるのかというと、その辺は非常に不十分だというふうに私は思っております。
  18. 石崎岳

    ○石崎委員 飯島参考人に引き続きお伺いしたいのですけれども、先ほど、児相の業務全体の中で児童虐待の取り扱いがふえているというお話があった一方で、一両日以内に対応するというお話がありましたが、人員体制的には多分ふえていないと思うので、相談件数がふえている一方で、一両日以内に緊急対応をする、速やかに対応するということが現在までも可能だったということでしょうか、今後とも可能でしょうか。
  19. 飯島成昭

    ○飯島参考人 先ほどもお話し申し上げましたように、児童相談所には虐待以外にもたくさんの相談が参るわけでございます。非行も含めまして、不登校の問題もございます。また、知的に障害をお持ちのお子さんのお母さん、お父さんからの訴えもございます。それにつきましても、一つ一つは大切な相談でございまして、真摯に対応しなければいけないのでございますけれども、虐待というのは本当に命にかかわる問題ですから、それらの問題を隅に置いても、横に置いても取り組んでいくというのが今の私たちの対応でございます。
  20. 石崎岳

    ○石崎委員 大久保所長にお伺いしたいのですけれども、先ほどのアンケートに基づいてちょっと質問をさせていただきたいと思いますが、二ページの「要望項目の趣旨・理由」の中の(3)、通告義務について、これも随分我々も議論をしてまいりましたけれども、この中に、「通告しないことに対しての罰則がないため、後の保護者とのトラブルを恐れ協力が得られにくい。」という説明がございます。  この罰則ですけれども、通告義務者が通告しないことに対して罰則がないから問題だという御指摘、本当に、罰則をつけることで問題が解決する、通告が速やかになるんでしょうか。そして、罰則をつけることによる副作用といいますか、問題点はお考えになりませんでしょうか。
  21. 大久保隆

    ○大久保参考人 罰則の問題でございますけれども、確かに先生おっしゃるとおり、罰則をつけるかどうかということについては、意見欄の方でも、罰則をつけるのは時期尚早である、そういったような御意見もございまして、ここら辺については六月の総会時点でもう少し内容を精査してまとめていきたいというふうに考えております。  罰則をつけた場合、非常に厳しいものとなりますし、例えばアメリカの例ですと、約三百万件通告がある、そのうち実際二百万件ぐらい、あるいは百五十万件がそうだったという、そこら辺の逆機能みたいな働きが出てくるのではないか。つまり、虐待という形で通告があれば、全部動くわけですね。それで、危ないということの可能性で全部、親子分離を図る、そういった実態ということになっていいのかどうかという、まさに先生のおっしゃるとおり、逆機能が働き出したときのおっかなさを感じております。  そういった意味では、ここら辺の罰則については、再度、全児相として意見交換して考えていきたいというふうに思っています。
  22. 石崎岳

    ○石崎委員 広岡参考人、例えば虐待防止センターが通告義務者、罰則を科せられる通告義務者に入るとは思えないんですけれども、もしそういう立場で例えば罰則をかけられたとしましたら、どうお思いになりますか。
  23. 広岡智子

    ○広岡参考人 大変複雑ですね。  つまり、子どもの虐待防止センターには、みずから虐待をしているということを訴えてくるわけです。この人たちを児童相談所に私たちが通報しないと罰せられるとなりますと、これはもう私たちの相談業務、私たちはケア、カウンセリング、治療的な内面の援助をしていると思うのですけれども、私たちのこの部分にそういった規定がかけられますと、私たちの仕事は多分成立しないと思います。ですから、やはり罰則規定というのはもっと慎重に論議される部分かなというふうに思います。
  24. 石崎岳

    ○石崎委員 この通告義務についてちょっと視点を変えまして、通告義務を強化した場合に、例えば虐待をしている親、そういう人たちが通告にさらされるといいますか、一方的な立場になる、通告される側になる、親が知らないところで通告されるということで、一方的な権利侵害、あるいは親子関係にひびが入る、傷が入るという懸念というものは、飯島参考人、感じられませんでしょうか。
  25. 飯島成昭

    ○飯島参考人 やはり懸念は感じます。  その後の親とのかかわり等の問題、それからまた、通告される方が通常は虐待されている方と近い関係に、ある程度知っている方が通報されてくるわけですけれども、その方が、今後接する場合、やはりキーパーソンとしていろいろな役割を担っていただかなきゃならないことがございます。そういう点から見ますと、十分に、慎重にいろいろ考えて対応していかなきゃいけないなと思っております。
  26. 石崎岳

    ○石崎委員 これもよく言われていることですけれども、通告がふえたら児童相談所は対応できるのかという点です。大久保参考人にお聞きしたいのですが、そういう通告義務を強化することによって相談、通報がどんどんふえた場合に、児童相談所が対応できるのかどうか。  児童福祉司の配置基準、人口十万人から十三万人に一人という配置基準でありますけれども、聞くところによりますと、これは昭和二十三年から改定されていないというお話でありまして、きのうも、ある関係者とお話ししておりましたら、外国の人に昭和二十三年から改定されていないということを言っても理解してもらえないんだという話をされておりました。それぐらい、日本の制度というのは大変強固な、前例踏襲主義といいますか、世の中がどう変わろうとなかなか変わらないという面があるということの一つの具体例であります。  そういう通告義務を強化するというのがこの委員会でも大変議論になっておりますけれども、それを児童相談所が受け入れられるかどうか、受け入れるためにはどういうことが必要であるかということを大久保さんにお聞きします。
  27. 大久保隆

    ○大久保参考人 通告義務を強化されると、当然、通告件数はふえる。したがいまして、当然、調査等に多大な人員が必要になろうかと思います。  これは、厚生省が来年度に向けまして、交付税算定の関係で児童福祉司の配置現員を見直したということで、これにつきましては、東京都の場合、現在百六名の配置ですけれども、平成十二年度につきましては百十一名という数字が出ております。  これにつきましては、きのうですか、東京都の方は児童虐待特別班というものを設置して、専ら児童虐待の通報から引き受ける、こういう体制を現在考えております。
  28. 石崎岳

    ○石崎委員 それから、アンケートの二ページの「(4)介入機能と相談・支援機能の役割分担」、これも大変議論になっております。児童相談所自身が強制的な介入もし、そのフォローもするということで、二つの異なる機能を同一の機関が、あるいは同一の職員が担うことの無理という点が随分指摘をされておりますけれども、それならばどういう形が望ましいかということであります。  これについてもぜひ御意見をお聞かせいただきたいのでありますけれども、児童相談所の中で役割分担をするのか、あるいは、強制介入といいますか、それについては別の機関とする方がいいのか。そうすると、なかなか、家庭のこと、子供のことについて詳しい別の機関というものが一体どこにあるのかなという感じもいたしますけれども、これについて大久保参考人にお話を聞きます。
  29. 大久保隆

    ○大久保参考人 この問題は、児童福祉司が実際介入して親子分離を図る、その後のケアとして相談しますという関係を想定した場合、片方で殴っておいて、片方でまたなでるという非常に難しい役割を引き受けるということになるわけです。そういったところで機能の分担というのは考えられないかということでアンケートをとったわけです。  こういった中では、例えば警察を初めとした司法機関がこういった介入をやったらどうだという意見もございました。ただ、その場合でも、児相が主導的な役割を担いながら警察と一緒にやる、こういうやり方もあるのではないか、こういうような意見もございました。  ですから、そういった介入と相談・支援機能の役割分担ということにつきましては、先ほど話しましたけれども、東京都では、来年度から児童虐待班というものが、課長一名、職員が七名、計八名の編成で、専ら児童虐待について対応していこう。したがいまして、介入についてはこの班がやれば、後は地域の児相の担当者が親子の関係をケアする、こういう形でやれないかということで、そういう特別虐待班というものが考えられたものです。
  30. 石崎岳

    ○石崎委員 これは、現場の一線におられる飯島参考人はいかがでしょうか。
  31. 飯島成昭

    ○飯島参考人 大まかな仕組みは決まっておりますけれども、まだ具体的に細かいところは決まっておりません。  ただ、先ほど全国児相の会長の方からもお話がございましたけれども、介入する者と、それから、実際に分離した後、親に対してケアをしていく、あるいは相談をあずかっていくという立場の者が分かれるということにつきましては、そういう対応をすれば、私たちも、非常に困難なことではございますけれども、今よりは少しは前進するのではないか、そんなふうに思っております。
  32. 石崎岳

    ○石崎委員 ここは先ほど広岡参考人からも、ある意味では児童相談所批判といいますか、児童相談所の現状に対する批判というものも出ておりましたけれども、親に対するケアあるいはそのフォローについての専門性ということについても広岡さんから御意見が出ておりましたけれども、今、介入と支援・相談について分離をするということについて、広岡さんは、もしそういう分離をするのであれば、後者の相談・支援機能の専門性をもっと高めるべきだ、現状ではなかなかそこまでいっていないという御認識ですね。
  33. 広岡智子

    ○広岡参考人 なかなかマニュアルチックに答えるのは難しいんですね。つまり、先ほどの話もそうですけれども、虐待する親の中には、認識している親と認識していない親、ちょっと介入すれば認識できる親というふうに、いろいろなタイプの親たちがいるわけです。いろいろなタイプの親がいるということは、いろいろなタイプの、またはさまざまな重症度の虐待があるわけですね。それによって、実は、ケアの方法も介入の方法もまた違ってくると思います。  ただ、基本的に、児童相談所が親ときちんと対立する、先ほどの言葉をかりれば、実は親子関係にひびを入れないといけないケースというのがあるわけです。ひびを入れないといけないようなケースに関しては、児童相談所がその後親の治療をしようとしても、親がそう簡単には受け入れられるものではないです。  ここのところは、児童相談所の専門性というのは、むしろ親の治療をしない、自分たちは子供の側に立つ。ですから、親の治療はむしろ民間の親の立場に立てる人に委託するということの方に、私は、治療については、児童相談所の専門性はここにあるんじゃないかと思います。  しかし、治療をすべて民間が担うということではなくて、最近、自分から子供を預けたいというお母さんたちも実はふえているのです。このように言ってくるような方々に対しては、児童相談所の心理士で十分ケアはできると思います。  ですから、さまざまなタイプがあって、児相でできるケアとできないケア、やはりこれは明確に分ける必要があると思います。  それから、ケアする場所についてですけれども、今あるシステムやケア機関を使おうなんという、そんなみみっちいことを考えるのではなくて、やはり新しいシステムというのですか、新しいケアできる場所を私たちは社会の中に積極的に開拓していくということが必要なんだろうなと思います。今あるシステムの中だけで考える必要はないと思います。
  34. 石崎岳

    ○石崎委員 昨年の当委員会での決議においても、関係機関との連携ということを強く決議に盛り込んでおります。今、広岡さんからもお話がありましたけれども、大久保参考人、その後、関係機関との連携体制というのは強化、進展をしておりますか。
  35. 大久保隆

    ○大久保参考人 東京都におきましては、これまでも、児童虐待防止連絡会というものを区市町村ごとに設置いたしまして、毎年開催しております。またそのほか、三者協とか、そういった地域との関係、そういったものを実施してきております。
  36. 石崎岳

    ○石崎委員 私の地元の方は、研修を合同でやってはどうかという御意見を申されておりました。そうすることによって、具体的ケースに対応する連携の仕方というものは習熟をされていくという御意見を述べられておりましたけれども、飯島参考人、関係者がこの虐待問題について合同で研修をするという必要性はお感じになりますか。
  37. 飯島成昭

    ○飯島参考人 先ほど大久保所長の方からお話がございましたけれども、児童虐待防止連絡会、これは、具体的な事例を幾つか持ち寄りまして、それに基づきまして、関係した機関それぞれがどういうふうに対応したかを話し合います。そういうことで、実質的には研修の場にはなっていると思いますけれども、さらに、例えば医学的な見地とかいろいろな専門的な知識、情報を得るために、関係する者が一堂に会しての研修、討議の場というものがあればさらにいいとは思います。
  38. 石崎岳

    ○石崎委員 かわりまして、(5)の立入調査について具体的権限を付与してほしいという御要望でありますけれども、具体的権限というのは、つまり、施錠を壊すというような、そういうことを警察に依頼する権限ということでしょうか。具体的権限の中身について、何か具体的にもっと踏み込んだ、あるいは盛り込んだもの、考えがございますでしょうか。大久保参考人、お聞かせください。
  39. 大久保隆

    ○大久保参考人 この場合、基本的には、これは実際私ども、去年、十年度、六件ぐらい立ち入りを実施しているわけですけれども、やはりどうしてもドアの施錠という問題があります。つまり、引きこもってしまうわけですね。立てこもってしまう。それについての決め手がなかなか難しいということで、そういう意味では、施錠について何らかの形で権限が付与できないか、こういう考え方のものです。  これは必ずしも私どもだけの判断でやるということじゃなくて、例えば警察と一緒とか、あるいは裁判所許可をもらってという形でもよろしいのですけれども、何らかの形でそういう意味での権限があれば、もう少しここら辺の立入調査がやりやすくなるな、こういう意味のものでございます。
  40. 石崎岳

    ○石崎委員 この立入調査についてよく言われることですが、二十八条と二十九条との関係ということで、二十八条のためのという制約、目的というものがあった方がいいのか、ない方がいいのか。この点についても、大久保参考人、お聞かせください。
  41. 大久保隆

    ○大久保参考人 確かに、法文上、この立入調査については、施設入所の見通しがあった場合にできるというのが多分法文上の読み方だろうと思います。ただ、これにつきましては、厚生省の方で、平成九年に、通知文の中で、それ以外というのか、もう少し範囲を拡大しているということがございます。  ここら辺の問題について、私ども、確かに厚生省が言うように、これは厚生省の有権解釈という形になるんだろうと思うのですけれども、ここら辺について、やはり法改正して、はっきりと明快にすべきだ。つまり、通知文で、確かにそれはできるという形で私ども児相は動くことはできるわけですけれども、少なくとも、国民というのか、相手方に対しての説得が違ってくるのではないか。そういう意味で、そこら辺も法改正の視野に入れてもらいたいなと思っております。
  42. 石崎岳

    ○石崎委員 (7)の親権についてお聞きします。  親権の一部、身上監護権の一時停止という措置が必要だという御主張であります。  この問題は大変デリケートで、民法の問題は大変難しい問題を含んでおりますけれども、我々も理事者間あるいは与党内で議論する中で、法務省は現行でも、家庭裁判所の保全処分など、親権者の職務執行停止等、弾力的な運用が可能であるというふうに見解を述べております。  これは大久保参考人にお聞きしたいのですけれども、現行でも弾力的な運用が可能という法務省見解ですけれども、これについては、実態は必ずしもそうではないという認識でございますか。
  43. 大久保隆

    ○大久保参考人 この親権喪失、身上監護権の一時停止の問題でございますけれども、やはり制度として、こういう現在の児童虐待問題に対応するための新しい制度をぜひ欲しいということでありまして、運用でできるというのは、国民に対しての周知というのが非常に難しいわけです。ですから、そこら辺の意味で、法律的にはいろいろな操作をすればできるということをおっしゃるわけですね。ですけれども、そうじゃなくて、私どもは、現在のふえている児童虐待の問題に対応するためには、そのための新しい制度をぜひつくってほしい、こういう考え方でこの身上監護権の一時停止というのをお願いしているわけでございます。
  44. 石崎岳

    ○石崎委員 その親権剥奪あるいは一時停止の対象になるような親は、一時停止ということは将来それを復活させるという意味が含まれているわけでありますけれども、飯島参考人にお聞きしますが、そういう親権を失わせる、そういう議論になるような親が将来また子供と一緒になる可能性というのはありますか、そういうケースというのはありますか。
  45. 飯島成昭

    ○飯島参考人 先ほども私の御報告の中でお話ししましたように、非常に難しい親御さんたちが多いわけでございますけれども、しかし、私はケースワーカーでございますので、人と人と接していくということが基本でございまして、やはり子供は親のもとに帰りたいという気持ちがありますから、そのこともありますので、そういう制度があれば、一つの弾みとして、それを目標にいろいろな取り組みをしていきたい、努力していきたいと思います。  やはり、親権が一部停止されて、一時停止されて、それがある程度、親の状況なんかの改善等が進めば家に戻って、もちろん、子供の被虐待的な環境で育ったそういう部分が、その子自身が成長すること、あるいはさまざまな方々のかかわりによって直っていくこと、そういうことを踏まえて、また、その子自身が親に対してきちんと物を言える、対抗できるような立場になったときに、やはり自分の親は親としていて、それは親権を剥奪されたものではないと。  そのときに、一時停止というので、そのときは親権は復活するような形がとれれば、子供はいつまでも子供であるのではなくて、やはり将来的には、十八歳を過ぎれば児童福祉法の対象から離れて社会に出ていかなくてはならないわけですので、そういう措置があれば、私たちとしては、将来的な展望を踏まえての対応、ケースワークができるのではないかというふうに思っております。
  46. 石崎岳

    ○石崎委員 そういう点では、広岡参考人にちょっとお聞きしたいのですが、児童虐待の事例、相談の中で実際に親子分離される例というのは一部ですね、ごく一部。本当に親権を剥奪されるというのはそのまたごく一部だと思いますけれども、いろいろな相談をお受けになっていて、そういう相談の過程の中で、そういう虐待をした親がケアされて立ち直っていく事例というのは多いんでしょうか。
  47. 広岡智子

    ○広岡参考人 それに対する回答といたしましては、まだ親へのケアは始まったばかりですので、非常に正確な回答をここで申し述べることはちょっとできないなと思います。  しかし、私の考え方ですけれども、親権の一時停止が実は子供を守ることになり、それは養護施設で暮らす、または乳児院で暮らす子供を守るという意味は、施設の職員が親の引き取り要求に対して非常に安心して子供と向かい合えるという時間を提供するという意味では非常に必要なことであるし、それから、親自身に自分が深刻な虐待をしたんだということを認識させるためにも実は必要であるという場合もあると思います。  さっき、一部という話が出ましたけれども、本当に一部と言っていいのかどうかはわかりません。むしろ、親子分離しないといけないケースというのは実は一部ではなくて、もっと本当は潜在的にたくさんあるのかもわからないという認識の方が今は必要かなというふうに思います。
  48. 石崎岳

    ○石崎委員 私、札幌で聞いたら、親子分離するのは全体の一割だと聞いたのですが、分離しない方がいいんだという考え方もありますね。今広岡参考人に聞いたら、分離した方がいい場合も多く考えられる。  これは児童相談所の担当の職員の方々の考え方、方針に密接にかかわる部分だと思いますけれども、飯島参考人は今の点、どうでしょうか。親子分離、現在の体制上、分離をこれ以上ふやすと問題だから分離させないのか、あるいは真剣に、厳密に考えて今の比率で親子分離をさせているというふうにとらえていらっしゃるのかどうか、その辺はどうでしょうか。
  49. 飯島成昭

    ○飯島参考人 虐待する親の場合、広岡参考人の方からもお話がございましたけれども、みずから訴えてきている親、それから、みずから虐待を否定する親、いろいろあります。  例えば、みずから訴えてくる親、育児不安等で訴えてくる親に対しましては、保健所、関係機関の方と連携をして、乳児院に一時措置等もいたしまして対応していくわけでございますけれども、その場合につきましては、親自身がいろいろな教室に通ったり、保健所にかかわったりして自分自身を治療していくということができるわけでございます。  そういう場合につきましては特に親子分離というのまでは必要ないのですけれども、アルコール依存の非常に激しいお父さん、お母さん、そういうところで育っている人とかそういう親に対しましては、やはりきちんとした形で、それは虐待なんだということを明確にして、あなたの親権は制約されるんだということを明確に伝えることが私としてはいいことではないかというふうに思っております。
  50. 石崎岳

    ○石崎委員 大久保参考人にお聞きしたいのですが、親に対するケア、フォローアップというものを法的に明確に位置づけるということが必要でしょうか。例えば、家庭裁判所によってそういう命令を発する、あるいは、親子分離を解除する条件とする、あるいは、親権の例えば一部停止、一時停止というような機能をつくった場合に、それを原状に戻す条件としての親の治療命令、治療義務といったものを法的に明確に位置づけるということが必要でしょうか。
  51. 大久保隆

    ○大久保参考人 先生の御指摘のとおりでございまして、親権の一部、一時停止ということの考え方の流れの中に、同時に、その間、親の治療命令を出すということは考え方としてはあります。  したがいまして、当然これは治療命令を出すというのは家庭裁判所の方から出してもらうという形で、一定期間を区切りながら親の状況を見て、親子の再統合を図っていく、こういう考え方になろうかと思います。
  52. 石崎岳

    ○石崎委員 それから、要望事項にはないのですが、我々の理事の間の議論の中で、よく児童福祉司、任用資格の厳格化という議論が頻繁に出てまいりますけれども、十一条、十六条の「準ずる」というところの規定、これを厳格に適用して、この「準ずる」という規定を排除する、すぐに排除するんじゃなくて、長期的にあるいは段階的に排除するという考え方は現場にとって歓迎しない点でしょうか。  厚生省の見解は、児童相談所の体制の弱体化、地方公共団体の人事政策への支障を招くおそれがあるという、大変大上段に構えた批判の論点が出されておりますけれども、現場の方から見て、この任用資格の厳格化というのはウエルカムではないということでしょうか。大久保参考人、お聞かせください。
  53. 大久保隆

    ○大久保参考人 任用資格につきましては法律で規定されているところでございますけれども、そもそもこの法律が昭和二十六年のときに決められて以降、この五十年余ずっと来ているわけですね。その昭和二十六年の時点の考え方と今時点の考え方が全く同じなのかということについては、特にそういう形式的な資格のところで問うということについては、多少私どもは疑念を持っております。  したがいまして、本当に専門性を求められるのは、どこどこ大学の何々学科を出たということではなくて、本当の専門性を身につけるための、別に法学部でも私は構わないと思います。問題は、それ以降の育て方あるいは専門研修のやり方ですね。そういったところで育てればいいのではないかと思っています。
  54. 石崎岳

    ○石崎委員 まだ質問を予定していたのですけれども、時間が参りましたのでこれで終わりますが、今三人の参考人のお話を聞いておりますと、大変難しい根深い問題に対応する現状の体制というものにまだまだいろいろな不備があるというふうに感じております。今、理事者間あるいは与党内で法律整備の議論を進めておりますけれども、我々としては、きょうのアンケートあるいは御意見を踏まえて、法律整備だけではなくて体制整備の方もしっかりと対応しなければこの問題の解決にはならないというふうに今認識した次第であります。  どうもありがとうございました。
  55. 富田茂之

    ○富田委員長 次に、田中甲君。
  56. 田中甲

    ○田中(甲)委員 三十分の時間を民主党はいただきました。私、田中でございます。参考人の皆さん方には、十分なごあいさつもせずに早速質問に入る御無礼をどうかお許しをいただきたいと思います。  昨日、千葉県船橋、恩寵園の卒園生とお会いをしました。児童養護施設という、虐待あるいは家庭内の問題によって養護されて、心を傷つけた子供たちがどのように施設の中で保護されていくのか、その施設内の児童に対する虐待が起きたということで、私も実は千葉県に住む者の一人として、本当に、なぜ今まで気がつかなかったのだろうか、なぜSOSを発している子供たちの声にもっと機敏に対応することができなかったのだろうかという反省の念を持っているところであります。  広岡参考人、この恩寵園の実態というものを、広岡参考人は長くいこいの家を通じて、自立支援ホームということで御努力をされてきた、そういう観点から、この一件に関する御所見というものを冒頭お聞かせいただければありがたいと思います。
  57. 広岡智子

    ○広岡参考人 私の感想は、後見人のいないというか保護者のもとにいない、施設で養育されている子供たちの暮らしの中で起きている暴力が、やっとここで少し出てきたかという印象でして、これは今に始まったことではなくて、もうずっと以前からあったものだというふうに考えております。やはり、子どもの権利条約などが批准されまして、子供の権利意識が高まったところでようやく出てきたのか、今回のこの虐待の騒ぎとも連結しているのかなというふうに思います。  いこいの家というところで寮母をしておりまして、そこでは、養護施設で実は虐待を受けていたという子供たちは多数おりまして、非常に悲劇的なことは、親元で虐待を受けながら、再び施設で虐待を受ける、彼らは二度にわたって家庭を喪失するという経験を経て、いこいの家という自立援助ホームに来ています。ですから、自立援助ホームでも、この子たちのケアは大変難しいものになっているということは、一言言っておきます。  施設のあり方というものがこれから問われなければいけない。今ようやく児童相談所の機能不全が問題になっていますけれども、次は養護施設、児童福祉施設の問題がこういった場で論じられないといけないのだろうと思います。大舎制であったり、傷ついた子供のケアをするときに、学校のような大きな建物の中で大人数の子供たちがケアされていて、それで本当に心の傷のケアになっているのかどうなのか。ぜひ施設の担当者を招いて、こういった場で施設内処遇について次は論じてほしいなというふうに私は思っています。  恩寵園のことでいいますと、恩寵園だから起こったという話ではなくて、どこに虐待が起こってもおかしくない。つまり、家庭で起こることも、学校で起きることも、施設で起こったとしても不思議ではないです。虐待問題を抱えている、虐待しないといけない問題を抱えている人はどこにでもいます。  私は、今回一つ思ったことは、恩寵園が閉鎖にならなくて非常によかったと思っています。あれは虐待家族の論理と同じで、虐待する親は子供たちに秘密を命じます、しゃべるなと。君がしゃべれば家族はばらばらになるというメッセージを与えます。それで、ばらばらになりますと、子供たちは自分のせいで家族がばらばらになったといって自分の責任だと思うんですね。これはまたもう一つのトラウマになって、子供のその後の人生に影響を与えます。  ただ、今回の恩寵園でも同じようなことが一時起こりかけました。子供たちが発言したことで、恩寵園はつぶすということが一時出てきました。その後に、これで恩寵園がもしつぶれたら、あの発言をした、恩寵園に問題がありと言った子供たちは、自分の責任、自分たちがふるさとである、故郷であるうちをつぶしたというもう一つの重荷を背負うことになると思いまして、これは心理的な側面から見たときに、絶対あってはいけないことだというふうに思っていました。  ですから、今回子供たちが声を出したこと、その結果つぶれかけた恩寵園がつぶれないことになったこと、これは大変よかったと思います。しかし、中身をどのように変革していくかということに関しては、余り前進した様子がございませんので、ぜひ外側から第三者機関が見守っていく必要が大いにあるだろうというふうに思っています。
  58. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ありがとうございました。これからは、児童福祉施設に対してももっと目を向けて、改善措置というものをとっていかなきゃいけないだろう、そういう時期が来るのだということを参考人から聞かせていただきました。  恩寵園の関係者にかかわらず、国会にいらしていただくということも機会を見てできればと思っていますけれども、私たち国会議員が直接出向いて現場を見るということも大事なことなんだろうという認識を持たせていただいております。  広岡智子参考人は、平成二年にいこいの家に対して吉川英治文化賞という評価がなされて、そして、五年前にお亡くなりになられた御主人広岡知彦様には、東京弁護士会の人権賞が贈られたということで、以前より認識をさせていただいておりました。きょうはいろいろと御質問させていただきますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。  まず恩寵園の事例からスタートいたしましたが、東京都の児童相談センター、都内十カ所の児童相談所の調整を行っているというふうに聞いております。研修のための機関ということも行っておられるそうで、東京都福祉局子ども家庭部に所属するということで認識をさせていただいていますが、昨日の新聞の報道によりますと、東京都においては、児童虐待対策課ということで四月にスタートさせるという記事を拝見いたしました。  職員は課長以下八人、この新聞の報道によりますと、一般職員の六人は全員児童福祉司の有資格者を充てる、そのような新たなスタート、そして、児童虐待に対する世論の、社会的関心の高まりにこたえていきたいということでありますけれども、この際、新設される児童虐待対策課の概要についてお聞かせをいただければありがたいと思います。大久保参考人にお願いします。
  59. 大久保隆

    ○大久保参考人 児童虐待対策課ということですけれども、これはあくまでも仮の名称でございまして、児童虐待を専ら担当する、そういうセクションでございます。お話のあったように、基本的に人数は八人の体制で考えております。これから細かくいろいろと詰めなければいけない部分もあります。例えば、地域児相との連携、役割分担の問題、そういった問題が出てきます。  ここでねらっている一つの大きな目的というのは、児童虐待というのは非常に難しい、困難ケースが多い、そういったところで、ここの児童虐待の対策課、そこで専門的に経験、ノウハウを全部集積したい、こういう思いがございます。したがいまして、ここで積み上げた知識、経験、ノウハウをさらに他の地域児相の一般の児童福祉司にどこかの時点でだんだんと広げていく、こういう形で今後児童虐待の対応を図っていきたいということで考えているものです。  つまり、一点突破主義といいますか、とにかく新しい問題については新しいプロジェクトチームで、とにかくそこのところで頑張ってもらって、そこで積み上げた知識、経験を広めていく、こういう体制で考えているものでございます。
  60. 田中甲

    ○田中(甲)委員 積極的な対応をぜひ期待させていただきたいと思います。  きょうの参考人に対する質疑の中心的な部分は、児童虐待に関する全国児童相談所のアンケート結果、これに基づいてということになると思っておりました。  一番これは決定的に改善してもらいたいというところで、法の第三十三条の七による後見人選任請求を行う後見人は、機関及び団体後見人に変更してもらいたいというところが、アンケートの結果を見ても反対がほとんどない。これは、早速にでも法改正をしてもらって、現在の問題点の解決に立法府から手を差し伸べてもらいたいというように受けとめてよろしいでしょうか。  この点、簡潔で結構ですが、顕著な例でありますから、法改正の必要な事例として御答弁をいただければありがたいと思います。
  61. 大久保隆

    ○大久保参考人 この法第三十三条の七による後見人選任請求を行う後見人については、機関及び団体後見に変更してもらいたいということで具体的なケースを出させてもらっております。  実は、このほかにもっと深刻なケースがございまして、実は、父親が養女それから自分の実の娘に対しまして性的虐待を行っていたというケースがございまして、これについて親権喪失を行う。それで、当然、親権喪失を児相長が行えば後見人という形で出さざるを得ない。しかし、その父親が実は暴力団の組員だということで、そうすると、後見人については戸籍の記載事項になるわけですね。そうすると、仕返しというのか、そういったおそれもあるわけです。  ですから、そこら辺の戸籍の記載にもかかわっていって、当然相手方の親とは対立する、そういう状況の中で、そこまで危険を負担してやるということの、そこら辺の問題点ですね。したがいまして、それについては団体後見、あるいは児相長という職に対して後見人という形をやらせてもらえないか。今の形ですと、あくまでも個人の形で児相長が名前を出して、住所を出してやっていくということについての危険性、そういったものがあるということでございます。
  62. 田中甲

    ○田中(甲)委員 法改正の必要な点として強く認識をさせていただきます。  関連して質問をさせていただきたいと思いますが、家庭裁判所に対する親権及び管理権の喪失宣言の申し立てが非常に少ないという点を関連として御質問をさせていただきたいと思います。  平成十年では百二件、そのうち裁判所が容認、すなわち親権を喪失させたものはわずかに十八件でありました。裁判所が却下したものが十一件、取り下げが七十一件という状態であって、申し立て自体が少ないのですけれども、この申し立てをする権利というものを児童相談所の所長が持たれているという部分で、きょうはぜひお聞きをしたいと思ったのですけれども、児童相談所所長による親権の喪失申し立てが少ないというのは原因はどこにあるのでしょうか。
  63. 大久保隆

    ○大久保参考人 やはり親権喪失ということまで申し立てるということについては、そのケースが相当ひどい場合、しかもそれがほとんど回復不可能というふうな、そういった見通しの中でしか行えないということだと思います。  例えば、一度親の関係を切ってしまうということについて、そういった意味でのためらいというのか、やはり親権喪失しても親子の関係というのはそういう意味では切れないわけですね。そういった意味では、本当に親子の関係を切ってしまっていいのか、それは相当悩む部分ということで、しかもこの親権喪失について取り下げ件数が多いというのは、多分家庭裁判所の方が、取り下げた方がいいですよという形の中で行われているのだろうというふうに思います。  したがいまして、そういう重装備の親権喪失ではなくて、親権の一部一時停止というのをぜひお願いしたいというのはそういう意味でございます。
  64. 田中甲

    ○田中(甲)委員 わかりました。  次に質問をしようと思っていたのですけれども、改善していく部分がどこにあるかということを実はお尋ねをしようと思っていたのですけれども、まさに今おっしゃられた、すべて親権というものを停止するのではなくて、一部を一時的に停止する規定というものがあれば子供の生命を守るということに迅速な対応ができるという受けとめ方でよろしいですか。
  65. 大久保隆

    ○大久保参考人 おっしゃるとおりでございまして、身上監護権というのは居所指定権、特にこの居所指定権というのが親の関係で非常に問題になるわけです。これについて停止していただければ、施設に入っていても、施設サイドの方でも拒否できる、こういうことで考えているわけです。
  66. 田中甲

    ○田中(甲)委員 この点について、広岡参考人、現場の声から何か御指摘されるような点はございますか。親権を一部に限って一時期というようなものは望ましいとお考えかどうか。
  67. 広岡智子

    ○広岡参考人 先ほどから何度も出ていますように、わかりやすい形で治療の開始でもあると思うんですね。なかなか虐待についての自覚がない親に対して、子供を守るために、親を治療につなげるために一時停止をする、そして治療にきちんとつなげられるのであれば、これは有効であるというふうに思います。
  68. 田中甲

    ○田中(甲)委員 わかりました。  目的はあくまでも家族関係の修復ということ、そこを目的にしていなければいけないと思うんですね。そのために、戸籍に記載しないという身上監護権の一時停止ということ、それが家裁で判決が出された場合でも、戸籍上には記載しないというところまで、きめ細かな配慮がなければいけないのかなと考えますが、この点いかがでしょうか、大久保参考人。
  69. 大久保隆

    ○大久保参考人 戸籍に記載しない、そういう方式でぜひお願いしたいというふうに考えております。
  70. 田中甲

    ○田中(甲)委員 わかりました。ありがとうございます。  実は、以前、青少年問題に関する特別委員会で、対政府質疑のときに、私は、民法上の親権を財産管理権と身上監護権に分けて、ドイツの事例を出して、ぜひ、この児童虐待において、財産を管理する能力があっても子供に対して虐待を行ってしまう、子供を愛しているけれども虐待を行ってしまうという事例が実際に起きている。そのためには、身上監護権というものを別分けして、そこを一時的に停止するということが必要ではないですかという質問をしたのですが、助けを求めるわけではないんですけれども、残念ながら、法務省の民事局では民法は不磨の大典ではないと言いながら、実際には非常に難しい、これは、改正することはひたすら消極的だったという、そんな姿が今の国会の姿であります。  ただ、そこでお知恵をいただきたいのですけれども、親権というものを財産管理権と身上監護権ということに二つに大分けした場合、なぜ財産を管理する権利はあっても身上を監護する権利というものは一時喪失、停止しなければならないという状況が起こり得るのか、この辺を実例を挙げてもし御指導いただければ、飯島参考人、何かそういう実例はございませんか。
  71. 飯島成昭

    ○飯島参考人 私自身が経験したケースの中では、そういう例はないんですけれども。
  72. 田中甲

    ○田中(甲)委員 では、違う角度で御質問させていただきます。  実は、最近、まだ二歳と四歳のお子さんを育てているお母さんですけれども、子供に対して虐待を行う、つまり加害者である保護者の方から直接お話を聞く機会がありました。  なぜ虐待を行ってしまうか、そこには非常に根深い、まさにトラウマと言っていいんでしょうか、心の傷を持たれている方で、自分の実の父親から性的虐待を受けていた、子供が乳房に吸いつくことに対してでも嫌悪感が走る、そこで突き放してしまったり投げ飛ばしたり、虐待につながる行為が、その瞬間に自分の中を、体じゅうを血液が逆流するような状態になってしまうんだと。  まさにこういう親に身上監護権の一時停止ということが適用されてしかるべきなのかなというふうに考えておりました。  参考人の中で何かそういう実例がございませんか。実際にこういうケースのときに身上監護権の停止が欲しいんだというものをさらにいただければ非常にありがたいなと思います。また後日でも結構ですから、何かございますか。
  73. 飯島成昭

    ○飯島参考人 私ども悩んでおりますことは二つありまして、一つは、やはり施設に措置した後の強制引き取りの問題ですね。これは明確な形で身上監護権が、特に居所指定権がないんだということが明確になれば一つの力になるんだと思っております。  もう一つは、先ほども申し上げましたけれども、将来に向けての統合のことで、やはりこれはなかなか難しいのですけれども、一つの目指すことではないかと思っておりますので、その面でも有効ではないかと思っております。
  74. 田中甲

    ○田中(甲)委員 わかりました。ありがとうございます。  この青少年問題に関する特別委員会で法改正を行って、子供たちの命を守っていくというルールづくりを行いたいという思いの中から、私は、ぜひ踏み込んで身上監護権の一時停止というところまでできないものかというふうに模索しているのですけれども、実際に法務省関係とのやりとりの中で、もう一つ努力をしなければならないのかな、強くその点を望まれている参考人の意向というものを受けとめて努力を続けていきたいと思っています。  実は、児童虐待防止法、昭和八年にまさにその名称で法律がつくられた。さかのぼっていくと児童虐待防止法というものが、中には、児童に対して物ごいをさせることや、軽わざ、曲芸をさせること、お酌をさせること、障害のある子供を見せ物にすることなど、現行でもこのような記述になっています。この際にしっかりとした児童虐待の定義ということをうたっておく必要があるというふうに思うのです。  今、この特別委員会の中で、定義というところで大体大枠共通の認識が生まれてきています。それは、身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクトという四つの項目になるんだろうというふうに認識しておりますけれども、この点を法律にうたっていく際に、現場から見て、さらにこういう点が必要だとか、あるいはその四項目がこういう意味合いを持って重要なんだという、その辺の補足が飯島参考人からいただければありがたいと思います。
  75. 飯島成昭

    ○飯島参考人 犯罪の構成要件ということではないんですけれども、それをもって、やはり規定的には非常に抽象的に最終的にはならざるを得ないとは思いますが、一般的な、今社会合意の中でこれは許せないという行為につきましては、例えば身体的に殴る、けるとか、そういうようなことも含めまして、やはり一歩具体的に踏み込んだ形での、世間一般にわかりやすいような形での定義というのがなされれば、私としては助かります。
  76. 田中甲

    ○田中(甲)委員 定義に関して、広岡参考人、何かございますか。
  77. 広岡智子

    ○広岡参考人 ケースワークをする立場で考えますと、虐待の定義の中の、その虐待の種類を今述べられたと思うのですけれども、種類そのものは余り重要ではなくて、やはり重症度の方が大事なんですね。命の危険、重度、中度、軽度、危惧、このあたりの概念をきちんとすることの方もとても重要だと思います。どちらかといったら種類の方に皆さんの気持ちが行っているんですけれども、実際には、この種類というのは絶えず重なり合って私たちの目の前に登場してくるという認識をいつも持っております。  それから、もう一つ種類のことでいうと、私たちは母親たちと接するときに、随分虐待の定義が変わってきたんだよ、皆さんは、今お母さんをする人たちは以前母親をしたときよりもずっと厳しい定義の中にさらされているんだよという話をあえてしております。  それは、特にネグレクトの部分で安全の考え方が去年通達の中で変わったと思うのです。例えば、スーパーマーケットに行って子供をベビーカーの中に置いたまま二階に行ったり、車の中に放置したままいなくなる、これは不注意ではなくて虐待である、こういった考え方が提出されたと思うのですけれども、まだこれについてはなかなか一般には、お母さんたちは受け入れがたいものがあるみたいです。これも随分、時代とともにこの種類も変わっていかないといけないものなんだというふうに私は考えています。
  78. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ありがとうございました。  児童相談所の介入機能という点で御質問を続けさせていただきます。  介入機能、立入調査と一時保護、この二つに大きく分けることができると思うのですが、先ほども、石崎委員からこの点、立ち入り、一時保護に関連して質問がありました。  私は、その際に、かぎをあける、家に入ることができる権限が付与されるという部分が、一時保護を行うということに限ってかぎをあけることはできるという規定にした方がいいのか、そうではなく、事前の立入調査を行う際に既に警察と連動してかぎをあける、あるいは家裁の判断によってかぎをあけることは可能にするという、その段階で既にかぎをあける、開錠の権限ということを付与した方がいいのか、その辺をどのようにお考えになるか、お聞かせいただきたいと思います。  飯島さんの方が現場の方でよろしいですか。
  79. 飯島成昭

    ○飯島参考人 二十九条というのは、二十八条が前提のものでございます。確かに、一時保護をするときにかぎをあけるということは、緊迫した状態にあるときにはそういうことができれば子供を非常に早く救うことができると思います。また、引きこもってしまって、虐待の状況がうかがわれるけれども疑わしいという場合に、やはり中に立ち入ってその状況を確認するということが絶対必要なことになりますので、いろいろな条件はあると思います、つけていただきたいと思いますけれども、立入調査の場合につきましてもかぎをあけるということができるようにしていただければと思います。
  80. 田中甲

    ○田中(甲)委員 私も現場の声を聞いて、なるほど、そうなんだなというふうに今思いました。一時保護をするためにかぎをあけて、警察官立ち会いのもとで児相の方が来るというと、自分の子供を奪われていく、そのためにかぎをあけるんだという、非常に親御さんが、保護者側が、加害者と言った方がいいのかもしれませんが、おびえるという状況が出てくると思いますから、立入調査を行う段階から中に入れる、開錠権というものを付与した方が、非常に緩やかな対応ということが親子間の中に入って可能になる、時間的余裕もそこにあるのではないかというふうに思って、開錠権の規定ということを立入調査権のその動きに対して付与することができれば、そんなことを今考えております。  最後に、多分、次に質問される池坊先生も御質問されるのかと思いますけれども、懲戒権というところがこれからやはり問題になってくると思います。一点だけ、これは広岡参考人に、私の最後の質問になりますけれども、懲戒権ということに対する基本的な御認識というものを最後にお聞かせいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  81. 広岡智子

    ○広岡参考人 懲戒権は、やはり私は廃止してもらいたいというふうに思っています。  親が虐待をする、それも深刻な虐待をする理由は、いつでもしつけです。このしつけが行き過ぎているんだということを彼らに認識させるためには、長い時間をかけた治療が必要です。彼らに、どんなにこれがしつけではないということを論理で迫っても、理屈で迫っても、実は承知できるはずがないんですね。ですから、これはやはり外側から、どういった言葉を使っていいかわかりませんが、外側から律していくものでしかないと思います。いつでも虐待はしつけのためという論理は消えないだろうと思います。
  82. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ありがとうございました。終わります。
  83. 富田茂之

    ○富田委員長 次に、池坊保子君。
  84. 池坊保子

    ○池坊委員 公明党の池坊保子でございます。  私は議員になりましてから四年間、児童虐待にかかわってまいりましたので、この四年間の推移を見ますときに、四年前に比べたら随分とマスコミも注目をし、そして行政の方々の対応も、道半ばではありますけれども、よくなりつつあるのではないかというふうに思っている一人でございます。  私は、被虐待児を救うためには、まず国民意識の喚起、そして二つ目に行政の心温まる対応、指導、そして三つ目に、現場にいらっしゃる方々が被虐待児を救出しやすい法整備が必要なのではないかというふうに思っております。  国民意識の喚起は、私も講演のたびに児童福祉法二十五条では通告の義務があります、皆様方にそれは課せられているのですと、いつもいつも言ってきておりますし、またマスコミの方々が言ってくださることによって、通告は昨年度は倍にふえたという現実がございます。  また、行政の方も、心温まる指導とは言いがたいですけれども、厚生省も児童虐待に対しては十二年度に九億四千万、前年に比べたら倍の予算をとっておりますし、警察、文部省、いろいろなところが協力しようという態勢にはなってきたと思います。  そして法整備ですけれども、厚生省の中には、現行の法律への理解が足りないからで、このままでいいのではないかと指摘する声もございますし、政治家の方々の中にもまだ児童虐待への認識がすべて浸透しているわけではないというのが現実でございます。  ただ、私はお話を伺って、大久保参考人が、無理をしたら現行でもやれないわけではないけれども、そのための制度をつくってほしいのだとおっしゃったそのお声、そして飯島参考人が、例えば子供を救出する場合に児童福祉法二十八条を適用しようとするならば、証拠集めをしたりいろいろな、虐待の子供を救う以外のことでエネルギーや時間を費やさなければならないのだ、それはもったいないのだという、このお声が私は現場にいらっしゃる方々の本当の声ではないかと思います。政治家も省庁も、この声を大切にして取り組まなければならないと私は思っております。  まず、先ほど田中先生から出ました身上監護権一時停止についてですけれども、補足するつもりで大久保参考人に伺いたいのは、養護施設に預けるだけでなくて、例えば、治療しなければならないので病院に預けた、そこの病院に親が、どうしてもこの子をもう引き取りたいと言って来る場合に、病院の看護婦さんとか先生がそれに対して対応し切れないという例を私は知っておりますけれども、そういう例はお出会いになったことがあるかどうか、ちょっと伺いたいと存じます。
  85. 大久保隆

    ○大久保参考人 身上監護権の一部停止ということについての問題点は先ほどお話ししましたけれども、施設あるいは乳児院、そういったところで親の引き取りがあるということで、それについて、対抗するための措置として欲しいというものでして、確かに、病院に入っていて、病院のところから実は虐待の疑いという連絡もあるわけです。その間、病院として入院というのは、あくまでも病院の入院になるわけですね。そこら辺が措置として切りかえられるかどうか、そこら辺の問題があるかというふうに思います。
  86. 池坊保子

    ○池坊委員 身上監護権の一時停止は養護施設だけでなくて、現場の中では、医療機関に預けたときに、もしこれがあったならばもっとスムーズに拒否をして治療に専念できるのにという声もございますが、飯島参考人、そのようなことにはどうでしょうか。
  87. 飯島成昭

    ○飯島参考人 具体的なケースで、確かに、明らかに虐待をされたお子さんを病院の方で治療しまして、ある一定の段階になったときに、父親が無理にお子さんを家庭の方に引き取ってしまったということで、そのときに医療機関の方は、もう一つの、例の通告の関係の、法的整備の問題もございますけれども、やはりちゅうちょをされて、児相の方にはすぐ、即座の通告がなかったというようなこともございます。  そういうことも考えますと、身上監護権の問題をきちんと整理することによってそういう対応もより進むのではないかというふうには思います。
  88. 池坊保子

    ○池坊委員 民法第八百二十二条の懲戒権については、先ほど広岡参考人も、しつけと虐待との整理がきちんとできないのでそれは廃止してほしいというお声でございました。  大久保参考人は、もし懲戒権がなかったならばもっと子供たちを速やかに救出できるのにというようなことに遭遇されたかどうか、伺いたいと存じます。
  89. 大久保隆

    ○大久保参考人 私が直接そういう場面に出会ったということはございません。  ただ、虐待している親というのは必ずしつけということを主張いたします。
  90. 池坊保子

    ○池坊委員 同じ質問を、飯島参考人お願いいたします。
  91. 飯島成昭

    ○飯島参考人 幾つかそういう例には当たっております。  先ほど広岡先生の方からもございましたように、まず、そのこと自体がこれは許されないことなのだということをしっかり認識できるような法整備ができていれば、その後の親に対する治療なども、第一歩にはなると思っております。
  92. 池坊保子

    ○池坊委員 私は、懲戒権というのはもう古いのではないかというふうに思っているわけです。現実に、八百二十二条に書いてございます懲戒場というのはもうないわけですから、八百二十二条の懲戒場というのは絶対に廃止すべきで、現実に存在していないものが書いてあるというのは本当におかしなことだと思います。  ちなみに、ドイツでは、従来の親権概念を廃止して監護という概念を採用しておりますし、懲戒ないし懲戒権という言葉は、少なくとも一九七九年の改正法には出てまいりません。義務と権利を抱合する、監護というのは義務と権利を抱合するというふうに書いてございますし、フランスにおいては、一九八九年の家族法の改正として、未成年者に対する虐待の予防、保護に関する法律が制定されております。そしてまた、アメリカでは、家族法は州によって違っておりますけれども、子供への虐待については厳しい規制をしております。  それに比べて、日本は諸外国のような制約原理というのが明記されておりません。学校教育法の懲戒に関して、ただし体罰は許されないと規定されているのと、児童福祉法四十七条に関連する厚生省規約九条の二に、身体的苦痛を与え人格を辱めるなどの権限を乱用してはならないというふうに書かれているわけでございます。  私は、懲戒権というのがなくなったならば、もっとスムーズに子供たちを救えるのではないかというふうに思っております。  それからもう一つ伺いたいのは、児童虐待の禁止及び罰則の規定がないわけですね。このことによって支障を来すということがおありになるかどうかを、お三方にちょっと伺いたいと思います。
  93. 大久保隆

    ○大久保参考人 児童虐待の禁止及び罰則についてでございますけれども、特に、ケースとしては性的虐待の場合、これは本人が訴えなければだめだということで、実際そのことは現実問題としてほとんど不可能。そういった場合について、少なくともこういう禁止、罰則というのははっきりさせておくべきではないか、こういう考え方もございます。
  94. 飯島成昭

    ○飯島参考人 児童虐待、一般的に禁止し、禁止というか一般的に罰則を設けることにつきましては、その後の親と子のケアのために問題も幾つかはあろうかと思いますけれども、特に犯罪行為になるような場合につきましては、それはきちんとした対応が必要だというふうに思っております。
  95. 広岡智子

    ○広岡参考人 私も同様に思います。いかにも犯罪に近い、まさに犯罪そのものであるような虐待をしていながら何も罰則規定がないというのはおかしいと思います。  しかし、みずから、虐待してしまったけれども自分の間違いに気づいて治療を受けたいというような人たちに対しては、やはり罰則よりも治療が優先ではないかと思います。この二種類をいかに分けていくかという、この境界線を引くことが大変難しくて、ここはやはりたくさんの事例を出し合いながら、ぜひ時間をかけて検討してもらいたいと思います。
  96. 池坊保子

    ○池坊委員 私は、加害者も深い傷を負っている場合も多く、また世代間連鎖犯罪ということもございますから、加害者もまた被害者であるということはあるとは思いますけれども、児童虐待というのは明確な犯罪ではないか、そして、もし死亡させた場合はこれは殺人なのではないかというふうに考えております。  それも、三十八人の子供が死んだ。声なき声、その子たちの九割が六歳未満だというとき、まるで声を出すことができない、そして無力な幼児を殺したというのは、はっきりこれは殺人以外の何物でもないというふうに私は思っているわけです。  法改正の中に、刑法の百七十四条並びに二百四条で適用できるのではないかというお話がございましたけれども、刑法の百七十四条というのは公然わいせつ罪です。二百四条は傷害の罪になっております。私はむしろ、刑法の二百十九条、遺棄などの致死罪、それから二百十八条の保護責任遺棄に当たるのではないかというふうに思っているのです。弱い人間を殺したりした場合には、傷害の罪と比較して重い罪によって処罰されるということが明記されております。  私は、やはり、これはきちんと犯罪だという意識を持たすことも必要なのではないかというふうに思っておりますけれども、その点は、親の立場から見てどのように大久保参考人はお考えでしょうか。
  97. 大久保隆

    ○大久保参考人 確かに、そういった意味で、児童虐待、甚だしい場合は犯罪であるだろうというふうに思います。  ここで考えておりますのは、児童福祉法の第六十条のところでの規定を使って、一般的に児童虐待についての罰則をつくってはいかがか。つまり、児童虐待についての犯罪性というのはなかなか証明が難しいということもございますし、なかなかその関係、そこら辺のいろいろな要因が働いている。例えば、それは母親が虐待していれば、じゃ、だんなさんはどうだったのだろうとか、そういったいろいろなことを考えていった場合に、一概に刑法でやっていくというのは少し難しい部分があるかなというふうに思っております。
  98. 池坊保子

    ○池坊委員 児童虐待というのはさまざまな問題をはらんでいるのだと思います。例えば、この間、兄弟が母親を殺しました。あれもネグレクト、結果的には児童虐待で、母親が子供たちに食事も与えなかった。それに対して子供たちが憤って母親を殺してしまった。母親も被害者であるならば、私は、それ以上に子供が被害者であったのではないかと胸が痛むわけです。  それからまた、神戸の少年殺傷事件も、加害者だった子供は何度も動物たちを殺していた。それは、自分が受けとめてもらえない、そういう思いを、何かを虐待することによってあらわしていた。それが、人を殺すということにまでいったのではないか。少年犯罪をひもといてまいりますと、その根っこには、幼いときに虐待を受けたということがたくさんございます。ですから、そういうためにも、児童虐待というのは現代の病理と言われておりますけれども、私は、これは本当にみんなが力を合わせて解決しなければならない問題ではないかと思います。  通告の義務というのが今、国民の間に意識としては広まってまいりましたが、それに伴って免責ということがあると思うのですが、広岡参考人、現実にプライバシー、私、日本は変なところで、プライバシーの侵害だということを何か声を大にして、それが大きな権利であるように言う場合があると思います。免責があったならば、もっともっと子供を救えるのになというふうな事例がおありになるかどうか、伺いたいと存じます。
  99. 広岡智子

    ○広岡参考人 それはもうたくさんあるのではないでしょうか。例えば学校での事例なんか見ておりますと、やはりどうでしょうか、ここ何十年のことなのか十年のことなのかわかりませんけれども、ますますプライバシーに介入しないという方向に学校教育も動いてきていると思うのです。  例えば、保護者の職業も知らない、保護者の経歴や学歴も一切もう明記しないというような形になっています。学校の先生方は、やはりプライバシーの問題だからといって、本当に出してこられないのです。虐待については、疑いで動かなければ遅いんだ、つまりプライバシーに侵入する仕事なんですよ、密室で起きているんだからということを私たちは何度も訴えないと、学校からは出てまいりません。  あと幼稚園もしかりだし、同じような感覚で、病院だってそういったことがあると思います。
  100. 池坊保子

    ○池坊委員 先ほども申し上げましたように、日本の場合にはおかしな、プライバシーの侵害に対して微妙にみんなが神経質になっているのではないかと思います。  先ほど広岡参考人がおっしゃいましたように、母と子の引きこもりというのが、例えば、京都で去年の暮れに校庭で子供が殺されましたけれども、あれも母と息子の引きこもりでございますし、新潟県の九年間子供が監禁されていたということも、これも母と息子の引きこもりがやはり幾つかの原因をなしていたのではないかというふうに思っております。  そして、特に、九年間発見されなかったということは、もし通告の義務というのが徹底していたならば、おかしいのじゃないかということでもっと早期に発見されたのではないか。昔、地域社会が行っていたさまざまな連帯だとか、お互いに注意し合うとか、思いやりだとか、そういうのが核家族になってなくなったんだと思います。それをどこかで補わなければならない。どこで補うかというと、国が補わなければならないのではないか。  ですから、先ほどの親権の問題とか懲戒権の問題にもかかわってまいりますけれども、子供はひとり親のものではなくて、すべて国の子供たちなんだという思いを持たなければいけないんだと思いますけれども、免責の法整備があったならば、もっともっと子供たちが救われるというような事例がおありになるのか、お二人の児童相談所の方々にお伺いしたいと存じます。
  101. 大久保隆

    ○大久保参考人 免責規定があったならばというケースにつきましては、この資料の五ページのところに書いてございますけれども、医師について、そういったトラブルを恐れて、もし違ったらということで当然心配して通告しなかった、こういったことが、もし免責規定があれば、通告という形で早目の段階で対応できたんじゃないか。また、学校の先生については、下のケースでやはり同じようなことが出ております。
  102. 飯島成昭

    ○飯島参考人 埋もれているケースの中にはたくさんあるのではないかと私は思っております。  先ほどの先生の御質問の中にもありました医者の場合も、もしこういうものがあれば、より早く通告して、子供を保護することがスムーズにいったのではないかと思っております。
  103. 池坊保子

    ○池坊委員 私は、政治家のなすべきことは、まじめで誠実に生きている人たちの生命と財産を守ることにあるのではないか。子供は大切な日本の宝ですから、その子たちの生命を守ることなくして政治家の使命はないのではないかというふうに思っておりますけれども、最後に、現場にいらして、これだけは言いたいということがおありになりましたら、一言ずつ三人の方に伺いたいと思います。
  104. 大久保隆

    ○大久保参考人 先生先ほど申しておりましたけれども、子供というのは、家族の子供だけじゃなくて、やはり社会の子供という視点がこれから必要なのではないかというふうに思っております。
  105. 飯島成昭

    ○飯島参考人 安全に、安心して暮らせるということは、子供だけではなくて国民全体が望んでいることだと思います。とりわけ、人格の可塑性のある、将来の社会を担う子供に安全で安心できるような、そういう場を社会全体でつくってあげるということが、この虐待の問題だけではなくて、非常に大切なことだと思っております。よろしくお願いします。
  106. 広岡智子

    ○広岡参考人 お母さんたちの声を聞いている立場としてお話しさせていただきますと、やはり自分のいらいらした感情、子供を育てるときのいらいらした感情を聞いてくれる人がいないというふうに訴えます。この聞くということは、まさに心理的なケアであるとも思います。私たちの社会で今盛んに心の傷ということが言われています、また心のケアということが言われていますが、この聞くということに対して、相談事業ということにもなるのですが、こういったことにももうちょっとお金をつけてほしいなということが一点あります。  それからもう一点は、母親というものが、子供を持ったらすぐに母親になれるんだというふうな考え方はもうやめるべきだと思います。これだけ虐待が起きているのです。ほっておいても母性というのは出てくるものではないんですね。やはり、子供がいて、母がいて、それを取り巻く夫や社会が優しくて、初めて母性というのは出てくるのです。ですから、虐待が起きる社会というのは、まさに我々の問題なんだという認識をしてほしいと思います。
  107. 池坊保子

    ○池坊委員 皆様方のお声をしっかりと心に受けとめ、政治家は何をなすべきかを考えて頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。
  108. 富田茂之

    ○富田委員長 次に、三沢淳君。
  109. 三沢淳

    ○三沢委員 自由党の三沢淳です。  三人の参考人の皆様、本日は大変ありがとうございます。参考人の皆さんが日ごろより児童虐待の最前線に立たれる御苦労と熱意に敬意を表したい、そういうふうに思います。  児童虐待の解決のためには、やはり警察や病院、学校、また家庭裁判所、弁護士の方々等の皆さんが、相当熱心に一人のために連携して行動することが必要だと私も痛感しております。  その中で、児童相談所は中核としての活躍が期待されるところでありますが、今回、全国の相談所長さんのアンケートを拝見して、かなりの法整備要望事項が列記されておりますが、中には民法本則の改正を必要とする事項もありました。民法の改正は、児童虐待以外の相当幅広い分野へ影響が大きなものとなりますので、民法改正や新法制定というのは勢い慎重にならざるを得ないというふうに思います。それ以外のところで、即効性のある部分を求めていくのが現実的なことなのかなと個人的には考えております。  そこで、私は、現行法の枠内でもっとうまくできないかという立場で、参考人の皆さんに御質問したいと思います。  まずは、大久保参考人、飯島参考人にお伺いいたします。  アンケートの中で一番大きな問題として象徴的にとらえているのが、親権の一部停止の是非であります。これはこれまでの先生方の質問とちょっと重複するかもわかりませんが、お許し願いたいと思います。親権のうちの監護権について、一時的に喪失させることに賛成の所長さんが百四十一人、反対はわずか二人という結果が出ています。  しかし、この一時停止というのは民法の大改正となります。しかも、どれだけ親権を停止したらよいのか、期間もケース・バイ・ケースで異なってくると思います。場合によってはずっと停止かもわかりません。ずっと停止するなら、現行の制度と同じことになると思います。また、現行で親権の回復も可能ということですので、一時停止というのは現実的には難しいのじゃないか、そういうふうに思います。喪失のままとした方が妥当ではないかという考えを持っております。  財産管理権はそのままで、身上監護権のみを一時停止させよという回答ですが、御承知のとおり、先ほどの田中先生の御質問でもありましたが、民法上、身上監護権というのは親子間の最も基本的なものというか、これがなくては親子ではなくなるものだと思います。対して、財産管理権は副次的なもので、基本的な監護権を持たない親が財産権だけを持つこともあり得ることになります。これは適当とは思われないのですが、やはりこの点も現行制度の運用でできるのではないかというように考えますが、大久保参考人、飯島参考人はどのようにお考えでしょうか。     〔委員長退席、池坊委員長代理着席〕
  110. 大久保隆

    ○大久保参考人 親権という、そもそもその中身がどういう権利なのか、そういう議論も正直言ってあるかと思います。ただ、親権というのは俗に身上監護権。身上監護権の中には、居所指定権、監護養育権、それから懲戒権、職業許可権、こういったものが身上監護権だということを言われております。  ここら辺で特に問題になるのは、監護養育権と居所指定権。これにかかわって私どもが虐待している親に対抗する場合、非常に難しい。少なくともそういった制度を新しくつくっていただけないか、そういうことでのお願いでございます。
  111. 飯島成昭

    ○飯島参考人 身上監護権の一部停止、私が一番、どうしてもしてほしいと思いますのは、やはり施設からの強制引き取りに対する対抗として、親に対してはっきり認識をしてもらう、そのことによって有効に対応できるというふうに思っておりますものですから、これは私としては非常に必要なものだというふうに思っております。
  112. 三沢淳

    ○三沢委員 これは大変難しい問題でして、一時停止してどのぐらいの期間が本当に必要なのか、それとも、それまでに親が子供をまた正常に育てていけるのかどうか、非常に難しいところがあるんじゃないかと思うのです。  そこで、今の現行法でも親権の回復はできるはずだと思うのです。そういう意味では、一時停止となると本当に、また改めて書類を出したり、一時停止をまたやらなきゃいけない、複雑なことにもなってくると思いますし、そこらが今のままの方がすっきりしているんじゃないか、そういうふうに思われますが、その辺のところはどうでしょうか。また同じような質問かもわかりませんが。
  113. 大久保隆

    ○大久保参考人 確かに、現行民法で、親権喪失した後も、その原因がなくなれば回復できるという規定がございます。しかし、その規定というのは、実際親権喪失宣告するに当たっては、家庭裁判所が求める条件というのは非常にハードルが高いわけですね。ほとんど、多分回復ということの条件はあり得ないだろうと思います。  私どもが児童虐待で親権の一部停止ということをお願いしているのは、一定の期限を決めて、その時点で返すということじゃなくて、その時点でまた家庭裁判所なりに判断していただいて、それを一年ごとずっと更新していく、直ったらその時点で親子の統合を図るという、こういった制度を頭の中でイメージしているわけでございます。
  114. 三沢淳

    ○三沢委員 続きまして少しお伺いしたいのですけれども、児童というのは十八歳以下のことを児童というんですけれども、親が子供を虐待する反対、今子供が親を虐待すると言ったらおかしいんですが、親は絶対虐待とは言わないんですけれども、そういう例もあります。そこらの対処はどういうふうに今されているんですか。親が子供に、逆の立場というのも出てくるんじゃないかと思うのですが。子供さんが精神的にちょっと異常な面とか、薬物でちょっと異常な面で、親は絶対虐待とは言いませんが、周りが見てもどうしても親御さんが危ないという場合はどういうふうに対処されているんですか。大久保さんに。     〔池坊委員長代理退席、委員長着席〕
  115. 大久保隆

    ○大久保参考人 子が親を虐待するケースがあるのではないか、そういうお尋ねかと思います。例えば不登校とか、いわゆる社会引きこもりといったケースでそういったケースはあるやに話は聞いておりますけれども、それを虐待という形で言えるのかどうか、それは子供が親に対して暴行を加えている、やはりそういうとらえ方になるのかなと。多分、質的には全然違う話だろうというふうに私は思います。
  116. 三沢淳

    ○三沢委員 こういう問題に対しては、余り相談は受けられないんですか。ないですか。
  117. 飯島成昭

    ○飯島参考人 相談の訴えの仕方としましては、やはり、子が暴力を親に振るうということですけれども、私たちは児童相談所でございますので、子に対して、ではどういうふうにその子の悩みを聞いて対応していくか、そういう立場でかかわっていくことになります。病をお持ちの子供とか、それから非常に精神的に悩んでしまっているお子さんとか、情緒的に不安定になっているお子さんとか、いろいろな場合がありますけれども、お父さん、お母さんの訴え、学校の訴えなども聞きまして、子供に対してどうしていくかということを考えてやっております。  また、親に対しても、子供の状況をお話ししながらお父さん、お母さんの悩みも聞いていくという形で対応していくということでやっております。家庭内暴力、ドメスティック・バイオレンスですか、そういう言葉で言っている部分もありますけれども、ちょっとそれとは私は対応の仕方が違うのではないかというふうに思っております。
  118. 三沢淳

    ○三沢委員 続きまして、同じく飯島参考人にお伺いいたします。  アンケートでは、立入調査について警察に主体的権限を持たせるべきとする意見が七件ありました。また、警察に生命身体の保護を目的とした介入機能を付加すべしが十一件あります。現在の児童相談所のやり方は、親に対し関係を悪くしないようソフトに接していくというものだと思います。したがって、かぎをあけて子供を親から引き離すような介入は、たとえ権限があってもできないし、しないのだと思います。  そこで、警官や他の機関に親から恨まれたり危険な目に遭うような部分を任せたいということじゃないか、そういうふうに思いますが、むしろこの中で気になるのは、権限を他者に譲ろうという消極的な姿勢じゃないかというふうに思います。  現行法の中で、警察の援助は仰げるのですし、かぎを壊して立ち入ることも犯罪の疑いが強い場合にはできるはずだと認識しておりますが、さらにアンケートでは、立入調査については、個人の人権を侵害する行為なので一行政機関がするべきではないとの撤退意見までもあるのですが、これでは二十九条の趣旨と大きく違ってくるのだと思います。平成九年六月に、児童家庭局長名で、児童福祉法二十九条を積極的に使い、警察と連携して立入調査を行うよう通知があったはずでありますが、それから立入調査について児童相談所の現場のやり方は変わったのでしょうか、それとも、厚生省が何を言ってもそう簡単にはいかないよということなんでしょうか。その辺のことを飯島参考人にお伺いしたいと思います。
  119. 飯島成昭

    ○飯島参考人 立入調査につきましては、先ほども、最初の私の御報告の中にありましたように、いろいろな問題がありますけれども、しかし、子供の命を守るためということでございますから、私もその中で、先ほど申し上げましたように、チェーンを切ったこともあります。それは私自身の対応したケースではありませんが、私たちのセンターの中で緊急避難的にやった場合もございます。  ただ、それを他の機関、特に警察ということを申し上げておりますのは、その後のケアの関係や何かのことを念頭に置いてでございます。また、現実にやりやすいということもございます。決して子供の命を守るということに私たちがちゅうちょしているわけではありません。
  120. 三沢淳

    ○三沢委員 言い方はちょっときついのかわかりませんが、どんな世界でもやはり体を張ってみんな生きているというのはどの職業でも一緒じゃないかと思いますので、よく相談し合って、子供たちの命をぜひ助けてもらいたい、積極的に行動していただきたい、そういうふうに思っております。  続きまして、大久保参考人にお伺いします。  例えばアンケートでは、虐待の定義が明確化されていないために、関係機関の理解も得づらく、親にも説明し切れないと書かれております。しかし、全くできないというわけではなく、現実的には、熱心な話し合いを重ねたり、相手の胸襟を開く努力を重ねていく中で、関係機関の理解、協力を得ることも、親を説得することも、ある程度突破できるんじゃないかと思います。  法律に定義が盛り込まれていればと言われますが、法律があればすべてうまくいくというものでもないと思います。むしろ、やはりこれは担当される皆さんの充実した体制と熱意が重要であり、プロとしての説得力、包容力というようなもので決まってくると思います。  相談所の対応が人や地域によって大分異なるという話を聞きますが、児童相談所の体質というか、役所ですから、慎重過ぎる面があって、家庭になかなか介入したがらない面もあるのではないか、そういうふうに思います。担当者も少ないし、人事異動もあるしということの改善の方をより優先してやってほしいと思いますが、そこらはどうでしょうか。大久保参考人にお伺いします。
  121. 大久保隆

    ○大久保参考人 児童虐待の定義の明確化についてお話がありましたけれども、少なくとも私ども児相長の権限というのは非常に大きいものがございまして、子供を親子の関係を裂いて施設に預ける、そういう権限を持っているわけです。それについての大前提となる児童虐待について何だということが法律上何も規定されていないわけですね。それはあくまでも厚生省の通知文の中でしか書いていない。  やはり、これだけ大きな社会問題になっている児童虐待について、これは法律できちっと前面に出して、こういうことがあった場合についてはこういう措置がとられるんですよというのをきちっと国民に見せる必要があるのではないか。そういう意味で法改正をお願いしたいというのが全児相としてのお願いでございます。
  122. 三沢淳

    ○三沢委員 きょうは本当に御苦労さまです。いろいろ逆の立場から意見を聞かせてもらいましたが、これは一種の家庭崩壊の一部と考えております。先ほど申しましたように、子供に大人が虐待されている家庭もありますし、夫が妻に殴られている、その逆もあるのですが、問題のある家庭にだれが介入して健全な地域社会をつくっていけるか、トータル的に考えていかなきゃならない問題だ、そういうふうに思います。  その意味でも、児童相談所や福祉事務所は、家庭問題全般の相談所としてもっと積極的になってもらい、地域に根差して連携をして、虐待以外の幅広い問題にも対処してもらいたいというふうに思います。そのためには、私は、組織や人材の拡充が欠かせない、その辺の方向もしっかりしていくべきじゃないか、そういうふうに思います。  この議論は機会を見てまた参考人の皆さんにもお聞きしたいと思います。時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  123. 富田茂之

    ○富田委員長 次に、石井郁子君。
  124. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。  現代の虐待というふうに言われましたけれども、まさに、その背景、要因、そしてまた治療も大変複雑な問題を抱えているこの虐待について、いわば最前線で本当に子供たちの命を守るために取り組んでおられる皆様方に改めて敬意を表したいと思いますし、きょうのお話で私もいろいろと教えられるところがございました。  それで、幾つかに絞ってお尋ねをしたいのですけれども、既に出ておりますが、懲戒権の廃止の問題、私からも一点、大久保参考人に伺いたいと思います。  このアンケート結果を見まして、要望項目の八項め、「懲戒権(民法第八百二十二条)の廃止」ということで、結構と言ったら失礼かもしれませんけれども、私としては、合計で百十七人、比率で六七%の賛成ということ、これに改めて、ああやはり現場はこういう意見なのかという思いを強くしたのですが、お伺いしたいのは、この懲戒権の廃止ということについて、児童相談所の関係者の皆さんは以前からこういう意見表明をされていたのかどうかということと、この賛成の意見、ここには五点の項目が挙がっておりますけれども、主な意見、こういう点でこういう内容でぜひこれは廃止なんだということをもう少しお聞かせいただければというふうに思います。
  125. 大久保隆

    ○大久保参考人 懲戒権の廃止につきましては、アンケート結果を見ますと、確かに一番反対が多かったというものになっています。また、どちらとも言えないというのが二四%ということで、これはやはり児相長が全部集まってきちっと議論すべき問題かな、そういうふうに思います。  ただ、懲戒権が廃止ということでなくても、他方、児童虐待の定義が明確化されればそちらの方で虐待の対応ができるのではないか、こういうような意見も結構あるわけです。ですから、懲戒権の廃止に象徴される議論というのは、現在の家の家族制度というのをどう考えるのか、そこら辺の問題が大きくかかわっているのかなというふうに思っております。
  126. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 やはり虐待としつけが区別されないというか、それが混同されるというか、言いわけにされるというか、この問題が虐待を深刻にしているんじゃないかというふうにずっと言われているわけですから、私も、大体、先ほど池坊委員からも御指摘がございましたけれども、本当に世界的に見ても懲戒権として残している国というのはまずないと言われているわけですから、この辺は何とか整理がされていかなきゃいけないなというふうに思っているところでございます。  それで、二つ目なんですけれども、児童相談所のアンケート結果は本当にいろいろ参考になりました。それで、ここでは、まさに法整備、そして制度の整備、改正ですね、この点で整理をされているわけです。ここまで言われた以上、法改正に取り組まなくちゃいけないということにもなるのですが、多少アバウトな言い方をして申しわけないのですけれども、それぞれ、法改正ですから、条項についてずっと検討があるし、幾つか論点も整理されている部分があるかというふうに思いますが、この虐待問題は、保護者との関係、親子の関係で今議論されていますけれども、もう一点は、施設での虐待も先ほどちょっと出てまいりましたし、第三者による虐待ということだってあるわけですね。  だから、そういう点でいうと、児童福祉法の改正の部分で対応できる問題なのか、それとも、虐待防止法という新法的な、特別法的なというか、そういうことがどうしても必要になってくるのかというあたりでアバウトという言い方をしたのですけれども、三人の皆様方に、今の大体描いていらっしゃることを率直にお聞かせいただければというふうに思いましたが、いかがでしょうか。
  127. 大久保隆

    ○大久保参考人 単独立法でいくべきか、現在の児童福祉法の改正でいくべきかというお尋ねかと思います。  私ども、児童虐待の現在の状況を考えますと、単独立法できちっと前面に出してやっていただければ正直言ってありがたいというふうに思っておりますけれども、現在のいろいろな状況があって、例えば民法改正をひっくるめて難しいということであれば、少なくとも改正していただいて、よりやりやすい体制をつくっていただければありがたい。  また、その先の段階で、多分、この虐待の問題は今回で終わるというふうに私ども思っておりません。まだ長く続くと思っております。そういった状況の中で、また次の段階で考えてもいいのかなと思っております。
  128. 飯島成昭

    ○飯島参考人 基本的には大久保所長と同じで、やはり単独立法ということが明確にするために望ましいとは思いますが、少なくとも、国民にわかりやすい形にするためには、法改正ということをしていただきたいと思っております。
  129. 広岡智子

    ○広岡参考人 同様に思っております。
  130. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 どうもありがとうございました。これは今後各党とこの委員会で議論していくことでございまして、皆様方の御意向をいただきまして慎重に検討していきたいというふうに思います。  それで、私はあと、先ほども親へのフォローという話がありましたように、これは虐待する側と、それから子供、された側と、それぞれが実は深い心の傷を負っているという話はよくわかったところですね。ですから、これは罰則だけでは済まなくて、やはり治療的な部分がどうしても必要になる問題だということなんですが、私は、親へのカウンセリングという問題と、それから子供へのケアの問題も、それぞれ専門的なプログラムが要ると思うのです。  既にアメリカなんかはそういうものがある。イギリスでもあるというふうに言われているのですけれども、では、日本ではそういうプログラムというのはどこが、開発と言ったらおかしいけれども、研究するのか。そういう場はないと思うのです。それから、そういう専門的なセラピスト、カウンセラーも大変不足しているということも言われているわけですね。  その点で、現場の皆さんが非常に困っていらっしゃること、法整備してできることと、やはり法整備に伴ってそういうものが充実されるというものなのか、それとも、法整備と別個に、本当にまさに現行のもとでも直ちにそれらは取り組まなければならない問題としてあると私は思うのですね。そういう点を、どういう体制が望ましいか、必要かというあたりのことをぜひお聞かせいただきたいというふうに思います。三人、それぞれよろしくお願いします。
  131. 大久保隆

    ○大久保参考人 子供のケア、親のケア、そういう問題かと思います。  子供のケアについては、今施設の方である程度というか、細々とやられているという状況でございます。ここら辺についても、やはりケアの体制というのをきちっとつくっていかなければならないというふうに思っております。  親のケアについては、さらに正直言って体制は全然ございません。そういった意味で、これから親のケアという問題については相当程度取り組んで、先生おっしゃるプログラムの開発をひっくるめてやっていかなければ、法律でつくったからといってその体制ができるというふうには考えておりません。
  132. 飯島成昭

    ○飯島参考人 まず、子供のケアのことですけれども、昨年度から国の通知に基づきまして、虐待を受けているお子さんを養護されている児童養護施設の方からの申請に基づきまして、心理指導の職員を派遣するような手だても一つはできておりますけれども、やはり基本的には、生活する場が本当に、深い傷を負ったお子さんをいやしていくためには、人的にも物的にも、もっと個別的な対応が絶対必要だというふうに思っております。  親のケアについてですけれども、現行医療機関とか福祉事務所とか、さまざまなものが地域にはあるわけですけれども、そこに具体的につなげるということが非常に困難です。それが私自身が非常に常日ごろ思っているところでございます。
  133. 広岡智子

    ○広岡参考人 子供のケアも親のケアも本質的には同じだと思っています。傷ついた心のケアをするわけですね。同じなんですね。  今の現状でいうと、子供の心理的な治療も親の治療も、とても充実しているという状況ではありません。しかし、全く何もやり始めていないかといったら、恐らくそうではなくて、システムの中や制度の中で行われていることではないのですけれども、部分的に、熱意のある人たちがやり始めている。たしか、児童養護施設では、十人被虐待児が措置されれば一人の心理職というふうな規定が設けられて、心理職員がついて活動し始めていると思うのですけれども、これは私は、やはりないよりはずっと有効に機能し始めているというふうに思っております。  これからのことだと思いますが、施設で子供を養育するワーカーたちが、児童精神科医ですとか心理職の職員と実は連携しながら子供を育てるんだというふうにかなり認識を変えていく必要があると思います。単なる衣食住、暮らしを提供する場ではなくて、治療的な場であるというまず意識改革も必要であろうと思います。  それから、親の治療のことでお話ししますと、今子どもの虐待防止センターで、最初にお話ししました母と子の関係を考える会で、十年間で約百六十人近いお母さんたちが登場しています。去年だけ見ますと、四十人弱のお母さんがいらしていまして、その半数近くは、児童相談所が危機介入をして分離された親が実は登場してきているのです。この中には、二十八条、二十九条で介入されて、とても治療につながると思わなかった人も出てきております。つまり、私たちに受け皿が用意できれば、虐待親たちが決して治療につながらないわけではないという認識もしてもらいたいと思います。  ただし、性的な虐待の加害者などは、恐らくケア受講命令のようなものがなければ治療につながらない。それから、あえて命令をしてほしいんだという親たちもいることも忘れることはできません。非常に自尊感情に欠けていて自信がない親たちは、自分が治療を受ける価値があると思っていない人たちもいたということはありました。
  134. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 どうもありがとうございます。  あと最後に一点、専門性の問題で、これは大久保参考人に伺いたいと思いますが、私もいろいろな方にお聞きしますと、この虐待問題で改めて児童相談所が脚光を浴びるというか、日の目を見るというか、大変今忙しい状況にあるかなというふうに思うのです。しかし、職員の専門性の問題というのは、今のままでいいのかということも聞かれるところなんですけれども、児相の職員の資格要件を厳密にすべきだという御意見がありますけれども、その意見についてだけあと伺っておきたいと思います。
  135. 大久保隆

    ○大久保参考人 児童福祉司について、これについて専門性を身につけるということは当然必要だというふうに思っております。  ただ、入り方について、こういう大学を出た者でなければだめだということについては、私は多少疑問を持っております。そこまで限定されますと、多分専門職採用という形でやっていくことになるかと思います。そうすると、入ったときから児相とかあるいは養護施設、そういう狭い世界だけで生きていくという形になるわけですね。そういう意味では、そういう組織内専門職というのは雰囲気的に余りよくない、風通しがよくないんじゃないかというふうに私は思っております。  ちなみに、教師も専門職でありますけれども、教師の専門性が、逆に言えば民間のそういった発想、見方がないんじゃないかというふうに言われております。そのほか、最近、いろいろなところで専門職と言われているものについて、一家意識というのか、そういうものがあって、おかしいではないかというのがやはり言われているわけですね。そういった意味で、専門職という形で固めてしまうのがいいのかどうかという疑問も私は持っております。
  136. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 時間が参りました。  福祉司というふうになっているわけですから、福祉の専門という部分というのはやはりあるんだろうと思うのですが、それを厳密化、固定化したらいいのか、それとも広げておく方がいいのかとか、いろいろあるかと思いますけれども、その点も私どもの研究課題にさせていただきます。  きょうは、どうもありがとうございました。以上で終わります。
  137. 富田茂之

    ○富田委員長 次に、中川智子君。
  138. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは、本当にありがとうございました。貴重な御意見を伺えて、本当によかったと思っております。  まず最初に、広岡参考人に伺いたいのですが、私もずっと地域でNPOを長いことしておりまして、ともかく手弁当で、ほとんど疲れて途中で消えてしまうという活動をもったいなく思っております。最初の意見陳述のときに、行政と民間、車の両輪のようにと言っておきながら、補助金なりいわゆる財政的な支援、それで大層苦労していらっしゃると思うのですけれども、先ほどはちょっと遠慮がちに、せめて場所代ぐらいとおっしゃいましたが、それは本音ではないと思います。  これから地域でもっとこのような民間の活動を広げていくために、それはもう一番大事な部分だと思いますので、現状、そして本当にこの場でもっときっちりおっしゃりたいこと、財政的な支援のことに関してお話をいただきたいと思います。
  139. 広岡智子

    ○広岡参考人 私たちのところは、電話相談員が専任で六人いるのですけれども、ほとんどパート職のようなものでして、あとはボランティア電話相談員が三十人ほど登録して、電話を受けております。私自身は、こういった福祉的な仕事の中には、やはりどこかボランタリックな部分は残しておいた方がいいだろうという気持ちは持っております、特に市民運動として周辺の理解を得るためには。  しかし、それにしても、とにかくアパート代ですね。これは全相談員の意見を聞いてきたんですけれども、せめてアパート代だけでもと。しかし、もうちょっと運営にかかわる資金を出していただけたらどんなに私たちの団体は助かるかわかりません。  これは私たちの団体に限ったことではありませんで、実は御存じのように、子どもの虐待防止センターのような民間の機関は、今、日本全国、非常に画期的に広がりつつあります。むしろ、我々よりもそちらの団体の声を聞きますと、もう全くお金のない中で、資金を出し合いながら、場所を借り、電話を設置しているという状況です。ですから、ぜひ、子どもの虐待防止センターにだけではなくて、日本全国にこういった民間団体が広がるような支援を広げてもらいたいというふうに思っております。
  140. 中川智子

    ○中川(智)委員 わかりました。本当に大事な部分だと思います。  続きまして、広岡参考人に、先ほど、いわゆる虐待というのは、単に体に傷がつくとかそういうことではなくて、心理的虐待ということをおっしゃいました。  私も、これは先ほどの広岡さんのそれと合致するかどうか、私の友人が初めて月経を見たときに、お母さんから、汚らしい、寄らないで、あなたはもう子供じゃなくなってしまうのねということを言われて、それがトラウマになってしまって、今もいわゆるセックスレスカップルになってしまって、二人姉妹なんですが、二人ともそのようなトラウマを抱えて生きています。  もう少しその心理的虐待ということを具体的に教えていただければありがたいのですが、よろしくお願いします。
  141. 広岡智子

    ○広岡参考人 これは本当に目に見えないものですから、伝えづらいところがあります。ただ、理屈で言えば、心理的虐待には、無視、無関心、それから愛情を与えない、指示しない、認知しない、刺激しない、差別するなどということが言われているわけです。  先ほども言いましたけれども、今本当にこの場でわからないものですから、なかなか親支援もしにくい。しかし、今一つあえてやらないといけないことがあるとしたら、早期教育にまつわる子供の虐待というものに、もうちょっと心理的側面、そこに心理的虐待があるのではないかということを見詰めていく必要があるのかなというふうに思っています。大変難しいですね。  今東京都でしつけ論争が巻き起こっていると思うのですけれども、要するにしつけが必要だと。子供たちは、親を喜ばせたい一心で生きているというふうに言われています。ですから、親が望むような子供を演じる側面があります。それで、後で気がついたら、実は子供の本当の欲求を私たちが奪っていたということになる。その結果、後から心理的虐待が見えてくるということは往々にしてあるわけです。  ですから、この辺は本当にうまく説明できないのですけれども、私たちはやはり育児をしているお母さんのそばまでおりていって、お母さん一人に育児を考えさせ、やらせるのではなくて、先ほどのプライバシーの侵害じゃありませんけれども、もうちょっと中に入っていって、一緒に考えさせてもらいたいなというふうに思います。  それはやはり先輩親たちの私たちの役割じゃないか。案外、子育てをしている私たちは、自分たちが何をやったか、子供たちにこれはまずかったということを成長した子供たちから結構教えられているんですね。このことを今の親と共有する中から出てくる心理的な虐待の中身が、もうちょっとクリアになってこないかなというふうに思います。  ただ、これと別に、これだけは言っておきたいのは、私が出会う事例の中に、子供をほうり投げた、それも大変重症度の高い虐待をして分離されたお母さんたちのケアをしていまして、この人たちの中に、たたかれたり殴られたりした経験のない人というのが結構多いのです。彼女たちが親から何をされたかということが見えないんですね。見えないから、彼女たちは親に対して自分の怒りを返すことができないので、治療の中で大変苦しんでいます。  そして私たちは、こういった親たちに、あなたが受けたのは、これこそ心理的虐待だったのだというふうに言っています。例えば、通知表をもらう日がとても怖かったとか、お母さんがたたきもしないのに、殴りもしないのに、お母さんへの恐怖心を回想したりしています。  ですから、なかなか心理的虐待の中身について触れることはできないのですけれども、今の子供を取り扱っているお母さんたちの虐待問題の中に、かつて親たちが、殴られてはいないけれども、実は心理的虐待を受けていた側面があるということは事実じゃないかというふうに思います。  うまく説明できません。済みません。
  142. 中川智子

    ○中川(智)委員 私もずっと地域で専業主婦をしている時間が長かったのですが、そんな中で、今広岡さんがおっしゃったように、虐待寸前の普通の母親たち、もう既にしているかもわからないけれども、ごく普通に生きていて、そしてたまたま、私の経験では、女性センターに少し私が話をしに行ったことがございます。  そのときに、ちょっと子育てのことで悩みを聞かせてとか言いますと、本当に、二十人ぐらいいらしたお母さんたちの約半数が、子供を育てるのが自信がない、母親として失格じゃないかといつも責めながら子育てをしていると言って、涙をぽろぽろ流しながら話をされる。そして、ついたたいてしまったのだけれども、たたいた痛みがわかるから、もうあしたはたたくまい、あさってはたたくまい、そういうふうに日々生きている。物すごく悲鳴を上げたいんだけれども、自分で、頑張ろう、頑張ろう、たたかないようにしようと言っている親がとても多いということを実感します。  そこで、お三方にちょっと伺いたいのですが、私は、この児相の数の少なさもありますが、行政の中で女性センターとか公民館とか、そのように虐待寸前の親たちを救うような形のネットワークづくりということはされているかどうか、そこをちょっと教えていただきたいのです。  大久保参考人と飯島参考人、お二方で結構です。
  143. 大久保隆

    ○大久保参考人 東京都の子育ての支援施策としまして、これは区市町村の方でつくっていただくということで、子ども家庭支援センターというものを設置、計画的にやっております。十一年度でたしか九カ所ぐらい今でき上がっているかというふうに思います。  やはりそういう区市町村が地域に根差した形でそういった支援の仕組みというのをこれからつくっていかなきゃいけないのだろうというふうに思います。
  144. 飯島成昭

    ○飯島参考人 今、大久保所長の方から、子ども家庭支援センターの話がございました。常態的にはネットワークというものがつくられているわけではないんですけれども、個々のケースに基づきましてネットワークを組んで対応しております。  これは、そういうことがさらに進めば、地域の中で常にそういう結びつきが強まっていって、お母さんたちの相談を受けとめたところが、例えば保健所さんの機能を活用しようとか、児童館の機能を活用しようとか、保育所の機能を活用しようとか、そういう形での広がりが出てくると思いますので、相談できるところはいっぱいあるのですが、やはり一つ一つの事例の中でそういう協議を重ねていくということが実態的な方法ではないかと私は思っております。
  145. 中川智子

    ○中川(智)委員 広岡参考人にまた伺いたいのですけれども、この間も、自分が虐待していたというお母さんが国会の方に見えられて、お二方の話を伺いました。  そのときに、特に夜が怖いということを聞きました。本当に児相とかいろいろな公共施設があいていない、そんなときがすごく怖いというふうにおっしゃったのですが、今電話相談を受けていらして、その時間帯、特にそういう逼迫した形の電話がかかってくるような時間帯、そしてその方がおっしゃったように、お休みの日とか家族で家にいる日、そんな日が特に危ないということを話していらっしゃいましたが、そのことについての御意見をちょっと伺いたい。  もう一つは、九一年から一万九千件相談を受けて、子供自身が自分で言ってこられるのは大体どれぐらいの年齢に達したころなのかということを教えていただきたいのですが。
  146. 広岡智子

    ○広岡参考人 私自身の認識では、虐待は何も夜だけに起きることではなくて、実は今は昼間でも、先ほど言いましたように大変うちの中の状態というのは孤立していまして、むしろ昼間の方が、周辺がにぎやかだったり楽しそうだったりしますから、昼間も危ないんだ、これは夜だけじゃないんだという認識が必要だろうと思います。これが昔と今の社会の違いじゃないでしょうか。以前は、育児不安ですとか子育て不安は夜ほどボルテージが高まると言われていましたけれども、今は決してそうではなくて、昼も同じだというふうに考えています。  それとはまた別に、やはり夜の電話相談、夜の相談機関というのは本当に不十分です。子どもの虐待防止センターも、それこそこれは財源の問題と関係してくるわけですが、人的資源、それから場所の問題、そういったこともあって夜の電話相談はまだ始まっておりません。ただ、やはり夜の電話相談は必要だというふうに考えています。  それから、二番目の御質問ですけれども、子供がどれぐらいSOSを出せるかということなんですが、実は、子どもの虐待防止センターでありながら、子供が電話相談をしてくることはほとんど皆無だと言っていいと思います。私の経験では、十六歳の女の子が、父親が自分の部屋に夜中になって入ってきて、ベッドの中へ入ってくるんだ、そういったSOSを出してきたケースが一、二件ありましたけれども、あとはほとんどありません。つまり、これが虐待の核心にある問題だろうと思います。  子供たちは、自分の親にされていることが虐待だというふうに認識できないでいます。自分の問題だと思っています。つまり、親になってよううやく親を批判することのできた、親の間違いに気づいた人たちが、何と、子供という名前のついている相談室に電話することができたわけです。十八歳でも十九歳でも、親に怒りを向ける、自分の被害状況を声に出せる子供たちは決して多くないんだという認識が私たちは必要かなと思います。  それは、教育の中で、子供の側に立って教育をする人たちが、やはり、大人が、親がいつも正しいわけじゃないんだ、自分たちの意見表明権がありますね、虐待に対してノーを言っていいんだという子供側の視点に立った教育が必要なんだろうというふうに考えています。
  147. 中川智子

    ○中川(智)委員 どうもありがとうございました。  きょうは保坂さんのかわりで質問させていただいたんですが、私も厚生委員会ですから、一生懸命頑張ります。ありがとうございました。
  148. 富田茂之

    ○富田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十三分散会