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1999-06-15 第145回国会 衆議院 法務委員会 20号 公式Web版

  1. 平成十一年六月十五日(火曜日)     午前九時三十二分開議   出席委員    委員長 杉浦 正健君    理事 橘 康太郎君 理事 八代 英太君    理事 山本 幸三君 理事 山本 有二君    理事 坂上 富男君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 達増 拓也君       岩永 峯一君    奥野 誠亮君       加藤 卓二君    河村 建夫君       鯨岡 兵輔君    小杉  隆君       左藤  恵君    笹川  堯君       菅  義偉君    西田  司君       保岡 興治君    渡辺 喜美君       枝野 幸男君    佐々木秀典君       福岡 宗也君    漆原 良夫君       安倍 基雄君    木島日出夫君       保坂 展人君  委員外の出席者         参考人         (千葉大学法経         学部教授)   新井  誠君         参考人         (日本弁護士連         合会理事)   久保井一匡君         参考人         (全国精神障害         者家族会連合会         専務理事)   荒井 元傳君         参考人         (障害者インタ         ーナショナル日         本会議権利擁護         センター所長) 金  政玉君         参考人         (大阪大学名誉         教授)     久貴 忠彦君         参考人         (日本公証人連         合会法規委員長         )       佐藤  繁君         参考人         (弁護士)   山田 裕明君         手話通訳    鎌田 真和君         参考人         (東京都心身障         害者福祉センタ         ー福祉指導職) 野沢 克哉君         手話通訳    田中 精一君         手話通訳    小林 君恵君         法務委員会専門         員       海老原良宗君 委員の異動 六月十五日         辞任         補欠選任   加藤 紘一君     岩永 峯一君 同日         辞任         補欠選任   岩永 峯一君     加藤 紘一君 本日の会議に付した案件  民法の一部を改正する法律案(内閣提出第八三号)  任意後見契約に関する法律案(内閣提出第八四号)  民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八五号)  後見登記等に関する法律案(内閣提出第八六号)     午前九時三十二分開議      ――――◇―――――
  2. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、民法の一部を改正する法律案、任意後見契約に関する法律案、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び後見登記等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  本日は、各案審査のため、まず午前の参考人として千葉大学法経学部教授新井誠君、日本弁護士連合会理事久保井一匡君、全国精神障害者家族会連合会専務理事荒井元傳君、障害者インターナショナル日本会議権利擁護センター所長金政玉君、以上四名の方々に御出席いただいております。  この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位におかれましては、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  新井参考人、久保井参考人、荒井元傳参考人、金参考人の順に、各十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、まず新井参考人にお願いいたします。
  3. 新井誠

    新井参考人 千葉大学新井と申します。よろしくお願いいたします。  私は、今回の改正につきましては、四つの大きなポイントがあるのではないかと考えております。  第一のポイントは、任意後見制度の導入であります。これは、今回の改正の最大の特徴ではないかというふうに考えております。  近代の市民法における後見法というのは、従来は法定後見と言われるものが中心でした。法定後見というのは、本人が保護を必要とする状態になって、その後にしかるべき保護をするといういわば事後的救済制度でありました。そして、その特徴はパターナリスティックな保護ということが念頭にありまして、かつ、身上保護というよりは財産保護が念頭にあったわけです。特に我が国におきましては、家産の維持ということが重要な問題であったわけであります。  ところが、最近の世界の流れは、法定後見ではなくて、むしろ任意後見というのを重視しようというふうに変わってきております。  この任意後見といいますのは、法定後見が事後的救済であったのに対して、こちらの方は事前的救済能力がなくなってから保護されるのではなくて、能力のあるうちにみずから、自分でその保護の形態を決めておくという形に変わってきております。したがいまして、事前的救済ですので、そこでは自己決定というものがきちっと尊重されるということでありまして、しかも身上保護も重視されるということであります。  お配りしました図を見ていただければ幸いです。契約のところで、本人が能力のあるときに本人と任意後見人が契約をするわけです。したがって、ここでは自己決定ということが生かされているわけです。網かけの部分は、自己決定のみならず、本人が能力がなくて任意後見人を必ずしも十分にコントロールできないことがあるわけですので、その任意後見人を監視するために任意後見監督人というのを裁判所が選任できるというふうになっております。つまり、自己決定の尊重、これがその左のところですけれども、それと本人の保護、これは網かけのところですけれども、その自己決定の尊重と本人の保護の二つがうまく調和のとれた、バランスのとれた制度ということになっているわけであります。  しかも、任意後見の優先、これを補充性の原則というふうに言ったりすることもあるわけですけれども、任意後見の優先ということが明確にされています。  この任意後見制度というのは、一九八六年施行イギリスの持続的代理権授与法というのがモデルになっております。このイギリスの法律がモデルになっているわけでありますけれども、日本の今回の改正は、このイギリスの十年間の施行の経験から学ぶべきところは学びまして、さらにこれに改良を加えているわけであります。  例えば、契約のときに登録する、登記をする。イギリス制度ですと、実はこの登録というのは、契約のときではなくて裁判所に代理人が選任されるときになっているわけですけれども、日本ではその点も改良を加えている。イギリスの場合には意思能力を喪失したときにこの制度の利用が限定されているわけですけれども、今回の改正では、意思能力の喪失に限定せずに、少なくとも補助の類型に該当すれば利用できるという形で、利用の幅も広げている。そしてさらに、任意後見監督人の選任については本人の同意が必要である。つまり、ここでも自己決定を尊重している。任意後見という制度は本来自己決定尊重の制度ですけれども、さらにきめ細かく自己決定が保障されるような仕組みになっているということであります。  したがいまして、私が理解するところでは、今回のこの任意後見制度の導入というのは、世界的に見ても極めてすぐれた立法であるということが言えるというふうに考えております。  二番目の目玉、これが補助の新設ということであります。  後見、保佐では対象とならないような軽度の精神上の障害により事理弁識能力が不十分であるような方々、こういう方々については今までは後見制度の対象にならなかったわけですけれども、そういう方も広く制度の対象でカバーしようということになっているわけであります。この図を見ますと、補助、保佐、後見というふうに三つ並列的に並んでおりますけれども、私の理解では、今回の改正の中ではこの補助こそがメーンで、比喩的に書いてみますと、この補助の部分が大きくなっているというふうに理解できるのではないかと考えております。  この補助という制度は、画一的な保護ではなくて、代理権と同意権、取り消し権等を必要に応じて組み合わせることが可能です。もちろん、代理権のみに限定してそれを付与するということも可能でありまして、柔軟でかつきめ細かな点がポイントではないかというふうに考えております。しかも、本人の同意がなければ補助人はつかないわけでして、ここでも自己決定というものが尊重されております。  補助のモデルというのはドイツ成年者世話法、これは一九九二年施行の法律ですけれども、そこで世話という新しい概念が導入されまして、そこでは、本人の能力を原則剥奪せずに本人をサポートするというような世話という概念が導入されたわけです。それを参考にしている制度ではないかというふうに思いますけれども、それにさらに工夫を加えているというわけであります。  一つが、必要最小限度の保護、つまりそれは、代理権のみの付与も可能であるということ。そして二番目に、本人の同意というものを要件にしておりまして、ここでも自己決定の尊重というものを重視しているわけであります。そして欠格事由に該当しないようにしようということでありまして、このように見てきますと、補助という制度も高く評価することができるわけでありまして、ドイツ制度を参考にしたわけでありますけれども、それよりもすぐれた点もあるというふうに考えております。  補助人の取り消し権というものも必要な保護手段として認容できるものであるというふうに考えます。もしそれを望まないということであれば本人が同意しなければよいわけでありまして、ここでも自己決定権は保障されているというふうに考えております。  三番目が、成年後見制度の充実ということであります。  最初に、身上配慮の重視ということがなされております。条文の文言でいいますと、「心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」という一般的な身上配慮義務が課されているわけでありますけれども、特に私は、この「生活の状況に配慮しなければならない。」という点に着目したいと思うわけであります。ここでは、後見的な介入、パターナリスティックな保護ではなくて、最近福祉の世界で言われております生活の支援、生活サポートというようなことも、生活の状況の配慮ということで実現できるのではないかというふうに考えております。この身上配慮義務というのは、法定後見のみならず、任意後見についても同様な規定があるという点も大変注目すべきでありまして、その意義は大変大きいものというふうに考えております。  さらに、今までの法律ですと、後見人は一人でなければならず、かつ自然人であったわけですけれども、今回は法人後見も可能でありまして、かつ複数の後見人も可能であるということでして、複数の後見人が自分の最も得意とする職務を分担して担当できるという意味でも、適切な担い手を確保するという意味でも、法人後見人、複数後見人というのは大変意味があるというふうに考えております。  そして、後見監督人ですけれども、従来は後見監督人という制度のみであったわけですけれども、改正法においては、保佐監督人、補助監督人、そして任意後見監督人という形で、あらゆる類型に監督制度を充実するという意味からしても、成年後見制度が一層充実したものになったというふうに考えております。  それから、成年後見登記ですけれども、これは従来、戸籍への記載ということが非常に心理的な抵抗があった。日本人には、戸籍を汚したくないという意識が非常に強くあったというふうに言われておりまして、戸籍への記載が制度利用への妨げになったということが言われてきたわけですけれども、その戸籍への記載というのをやめて、新しい成年後見登記制度を創設するというのも大変画期的なことではないかというふうに考えております。したがって、これによって、利用者が心理的抵抗を受けていたのを完全に排除することができるということになったわけであります。  以上申し上げてきましたように、私の考え方を以下まとめて申し上げたいというふうに思います。  成年後見の先進国であるイギリス法、ドイツ法というものの経験に学びながら、それを凌駕するような点もあるという点で、今回の改正法は国際的にも高く評価できるというふうに考えております。今回の改正は、民法が誕生して百年間の改正の中でも最も大きな改正の一つであるというふうに思われますが、今回の改正はその百年目の大きな改正に値する内容を持っているということで、私は、その内容を積極的に評価して、一日も早い改正法の成立というものを望むものであります。  以上で終わります。(拍手)
  4. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 ありがとうございました。  次に、久保井参考人にお願いいたします。
  5. 久保井一匡

    ○久保井参考人 日本弁護士連合会の理事をしております久保井でございます。  日本弁護士連合会におきましては、この成年後見制の研究をかねてから行ってまいりました。平成六年に検討を開始いたしまして、平成七年に欧米六カ国の調査をいたしました。そして、平成八年に中間意見書を発表し、平成十年、昨年でございますが、最終意見書を発表いたしました。その検討結果に基づきまして、私どもといたしましては、今回提案されている法律案については全面的に賛成をしたいと思います。  その理由は、現行民法は一八九八年に制定され、昨年でちょうど百年を経過いたしましたが、この現行民法の規定しております禁治産宣告制度、準禁治産宣告制度はいずれも極めて硬直的で画一的であり、人の人格を否定しているといいますか十分に尊重していない結果となっております。つまり、取引社会から排除する、そういう能力の劣る人たちを排除するというところに目的がありまして、その結果、大変利用が少なかったのでございます。私は大阪で弁護士をして約四十年近くなりますけれども、その間、後見人に家庭裁判所から選任されたことはたった一度しかないのが実情でございます。  そのような現行法について、世界的にいろいろな動きがございました。つまり、新しい成年後見制は自己決定権を尊重すべきである、あるいはいわゆるノーマライゼーションの思想に立って普通の人と同じように生活できるように支援すべきである、あるいは本人の持つ残存能力を最大限尊重すべきである、そういう考え方が一般化しておりましたけれども、このたびの改正案は、基本的にはこの世界的な潮流に沿った改正でございます。しかも、ドイツを初めとする法定後見中心の制度を持つ国と、英、米、カナダのように任意後見を中心に制度を組み立てる国の両者のよいところを取り入れた、極めて進んだ制度になっております。現時点では、世界の水準を行く最も進んだ制度になりつつあると思います。  具体的に言いますと、禁治産、準禁治産の用語を改め、後見、保佐という制度にし、かつその内容についても弾力的かつ合理的なものとしたということが言えると思います。例えば後見類型においても、日常生活に必要な行為については取り消しの対象から外すとか、あるいは居住用不動産の売却等については、現行法では後見人が自由に行い得ることになっておりますけれども、家庭裁判所の許可がなければできないようにしたとか、その他現在の後見、保佐についても、その中身をアップ・ツー・デートなものとして見直したということが言えると思います。  さらに、二類型に加えて、新たに軽度の障害、痴呆等を有する者に対して補助類型を用意しておられますが、この合計三類型にするとともに、いわゆる任意後見制度を採用し、本人があらかじめ自分の能力が健全な段階においてみずからの老後のために後見契約を用意できる道、つまり、いわば法定後見がレディーメードの服とすれば、任意後見は自分が自分の後見制度を設計できるオーダーメードの制度を用意したということが言えようと思います。この法定後見の三類型と任意後見制度の運用を的確に行うならば、本人の実情に即した運用が期待できると思います。  さらに、後見人の職務範囲について、従来、後見人は財産管理が本来職務だというような考え方が一部に強かったと思いますが、改正法では、この職務範囲について、生活、療養看護についての事務、つまり身上監護について後見人の職務が全般的に及ぶことを明確にし、かつ、身上とかその他本人の意思の尊重等についてもこれを明確にした点は評価できると思います。  さらに、戸籍への記入の制度をやめ、成年後見登記制度を新たに採用した、あるいは各種資格制限を見直したということ、そして補助類型については資格制限の対象から外したということ、遺言の方式について、聴覚・言語機能に障害のある者につき手話通訳とか筆談による遺言の道を開いたこと、いずれも、前記の自己決定権の尊重等の思想に基づくものとして高い評価をすべきものだと思います。  さらに、配偶者法定後見制の廃止、複数後見人制の採用、法人後見制の採用等についても、いずれも賛成であります。  以上のことを前提といたしますが、改正法の運用状況を見て、私どもとしてはさらに改善を期待したいところがございます。  私どもの期待する改善点といたしまして、まず第一点は、利用者の範囲を、意思能力の面だけでなくて、重度の身体障害等により意思の伝達、意思表示が困難な者についても、その利用を希望する者には利用が可能な形でその門戸を開放すべきではないかと思います。  それから、二番目といたしましては、後見人の類型が現行制度の二類型から三類型にされ、かつ任意後見制度を採用したことによって極めて大きな前進が期待できますが、さらに運用の状況を見て、ドイツ法等で採用しておりますように、個々人に即した後見人の権限を設定するという一類型にして、個々人ごとに後見人の権限は家庭裁判所が定める、そういう形の制度が望ましいということも将来的には検討すべきでないかと考えております。  さらに、成年後見の開始につきまして、家庭裁判所の職権による開始の道を制度の上では設けるべきではないかと思っております。  検察官あるいは市町村長の申し立て権によって十分カバーできればよいのでありますが、現行制度で検察官の申し立てはほとんど事実としてなされていない実情等を考えますと、やはり関係者の通告による、職権による開始の道を考えるべきではないかと思います。  さらに、任意後見につきまして、今回の改正案では、家庭裁判所がみずから監督せずに、任意後見を監督する監督人の選任を行い、間接的に任意後見の監督を行う建前になっておりますが、これにつきましても、改正法の運用の推移によっては、家庭裁判所みずからが任意後見人の監督をすべきだ。その場合、家庭裁判所のスタッフ、人的、物的な機能の拡大ということが課題になろうと思いますけれども、そういうことについても積極的な検討を必要とするのではないかと思います。  さらに、マンパワーの育成に努めるということをお願いしたいと思います。  成年後見制度が新しく誕生いたしましても、本人の周囲におる家族がその成年後見人に選任されるというのが常態であるとするならば、現在の我が国の実態と余り変わらないことになる。やはり社会福祉関係の専門家、あるいは我々弁護士、司法書士等もこの役割を進んで買って出るべきだと思っておりますが、国におかれましては、こういう成年後見人の供給源の充実に力を尽くしていただきたいと思います。  そしてまた、この成年後見の費用の負担について、原則として本人負担ということは当然だと思いますが、無資力者については、やはり国庫の負担ということを考えていただく必要があるのではないかと思います。  以上のような点についてさらなる改善を期待するものでありますが、基本的には、私どもとしては、今回の改正案は大変積極的に評価できると考えております。  以上で終わります。(拍手)
  6. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 ありがとうございました。  次に、荒井参考人にお願いいたします。
  7. 荒井元傳

    ○荒井参考人 この委員会に障害者団体の者が招致され、意見陳述が許されたことを、本当に感謝を申し上げます。  今回の、まさに百年ぶりの法改正ということで、平成七年から周到に、海外の調査まで始められまして、平成九年に行われたいわゆる小委員会についても、障害者団体の代表、知的障害、精神障害、それからぼけ老人を抱える会、そういう代表、それから、実際に後見のような事業をしている社会福祉協議会等の代表等が呼ばれまして、法律の専門家と同時に、使いやすい、当事者の立場に立った制度にというようなことで、さまざまな意見聴取の機会を与えられましたことを非常に評価をしたいと思います。  判断能力の十分な成年者の保護と、本人の自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーションの実現等を理念として、欧米諸国の状況も具体的に調査検討されて、こうした利用者にとって使いやすい新しい制度に改革するための関係者の努力ということを、まず敬意を表したいと思います。  たまたま、私は、精神障害の家族会の事務局というか、そういうことをしておりますので、精神障害の立場から申し上げることになるかと思いますけれども、基本的には、知的障害、痴呆性の老人の方々、そういうような方々の問題も共通しているというふうに思っております。そういう意味で、私どもの問題をまず申し上げたいと思います。  お配りしました資料の参考資料というところに、「精神障害者の障害と財産管理」という事例集がございます。精神障害の場合、全国に二百十七万人、推定という形でいるとされております。入退院を繰り返している入院患者が三十四万人、通院患者が九十万人と言われております。そんな中で、十年以上入院して、財産の管理ができない、日常生活ができないというのはごくごく少ない状況であります。ほとんどが、日常生活については不自由なくできるというようなレベルの人たちでございます。  そういう人でも思考がまとまらない時期がある。判断するとき総合的に判断する力が弱まる、断るのが苦手になるという障害があるということです。また、こだわりを持ちやすく、そのためにお金をつぎ込むというようなこともあります。対人関係が苦手で自閉的なので、情報が入ってきません。そういうようなこともあります。新しい財産知識とか、そういうものが入手が困難になるということがあります。入院の期間が長くなったり、家の人に世話をされている状況が続いているために、金銭管理の経験が不足している場合があります。自信の喪失、生きがい、目標の喪失によって、他人に影響されやすい。病状等が重く、入院しているために、実際に管理ができない、入院中にお金を預けられないとか、そういうこともありますので、そういう訓練ができていないということがあります。  そんな中で、幾つかの事例を挙げてありますけれども、時間の関係で概要だけ申し上げます。  同じ職場にいた上司が、金を貸してくれというようなことで、何回も何回も来て、断れなくて、一千万以上のお金をその人に渡してしまったということもあります。それから、こだわりでお金を使うということで、悪徳商法に近いわけですけれども、そういうものにひっかかってしまう。それから、学校、資格制度、そういうものにどんどん挑戦してみて、そしてこれも七百万、八百万という料金を払っているということもございます。そういう意味で、精神障害者の場合、判断能力がすべての面でないということではなくて、多くの人が判断能力が不十分であるというふうなことで、今までの禁治産、準禁治産という制度にはそぐわない、そういう障害を持っております。  資料の中に、悪徳商法の資料とそれから概念図を挙げておきました。そういう意味では、今申し上げたような拒絶能力の低下、自覚された能力の低下からの劣等感、それから批判、疑うことの欠如、それから超自然因的な疾病観、たたりとかそういうようなもの、もう一つは、被害に気づいていない、いわゆるマインドコントロールも含めて、そういう被害なり間違った判断をしたことに気づいていないということも一つ大きな障害でございます。  そんな中で、新しい制度として補助という類型が創設されたということは、精神障害の特性を見て、非常に評価したいと思います。スーパーとかそういうところで買い物はできるけれども、一年、二年の財政計画は立てられない、大きな契約はできない、こういうような人たちに、補助という類型は非常に用途が高くなってきているということであります。  と同時に、障害者の意思、自己決定の尊重から、本人の同意を要件とすることとか、それから、申し立てで代理権、同意権、取り消し権の選択ができるというような形で、本人の自己決定権が担保されてこの制度が滑り出しているということでありますし、このことに関して私たちは期待したいと思います。  それから、申し立て権については、福祉関係、行政機関の申し立て権をぜひ実現していただきたい。福祉事務所、保健所とか、身の回りの世話を日常的にしているところの申し立て権はぜひ必要であります。今、悪徳商法の例で申し上げましたけれども、補助人の取り消し権はぜひ認めるべきであると私たちは思っております。こだわりとか、自分がどんな契約をしているかわからないというようなことの中で、当然、本人の自己決定の担保に入れられているということを前提に取り消し権を認めて、本人の立場に立ってその行為をするというようなことはぜひ認めていただきたいと思います。  そのほか、本人の心身の状況に関する認定方法で、補助類型においては原則として鑑定を要しないとすることは賛成であるということで、鑑定の費用、時間等がかかりますので、そういうことを含めて、診断書等で行われるということは評価しつつも、補助の類型については非常に難しい診断だってあると思いますので、施行については当事者や専門家の意見を十分聞いていただきたいと思います。  それから、公示方法について、これは私ども一番最大の問題でありました。精神障害という偏見の多い病を抱える親たちにとって、いわゆる準禁治産、禁治産という形で戸籍に表記されるということは、もうほとんど使えないと同じようなものでありました。そういう意味で、この登録制度が創設されるということに関しては、全面的に支持をいたしたいと思います。  欠格条項を関係法令から撤廃すべきであるということも申し上げます。  さまざまなことがありますけれども、最後に、任意後見制度については積極的に進めてほしいということであります。  先ほど申し上げましたように、判断能力のある精神障害者が、自分が判断能力が落ちたときに、こういう問題を専門家なり他人に、第三者にお願いしたいというような形で、また回復したら、それを、その部分だけというようなことを含めて、非常に重要なことであると思います。私どもの相談のケースでも、今いわゆる契約行為でできるわけですけれども、きちっと法律で書いてあること、それから家裁とか、監督制度があるということで利用者が非常にふえていく。  さまざまな問題が私どもの世界に起こって、任意後見契約というようなことが起こっておりますけれども、財産を預けるということに関して、精神障害者も家族も非常に懐疑的になります。そういう意味では、民法にきちっと記載されていること、それから監督があるということは非常に重要な制度で、この制度についてはこれからぜひ期待したいと思います。  もう一つ。家族にとってみれば、親亡き後ということが大きな心配です。私どもの行事でこのテーマにしますと、もう満杯になってしまいます。任意後見をいろいろ組み合わせることによって、親亡き後の財産管理、そして身上監護というかケアの保障ができるということで、なかなか組み合わせが難しいんですけれども、これが期待できるということであります。実行上はぜひその辺のことも御配慮いただきたいと思います。  法改正のことで、さまざまな要望の一つとして、家庭裁判所、成年後見登録センター関連の部署に人、予算、設備等の充実をぜひ図っていただきたい。この制度を生かすというか、それは裁判所の裁量権とか審判のきめの細かさということですか、そういうものであるということを確信しております。そういう意味で、人それから予算、家裁の機能をぜひ充実してほしいと思います。  後見、保佐、補助人等の訓練や研修制度、それをぜひ充実してほしい。公的後見という形では今回は余り論議されませんでしたけれども、個人の後見よりも、法人や団体とか、そういう法人等の後見が非常に重要でございます。  時間の関係で省略しますけれども、この資料に、ささやかですけれども、私どものところで「さぽーと」という後見制度をやっております。そういう意味で、その予算とか支えとか、そういうことをぜひ補っていただきたいというふうに思います。  それから、我々にとってみれば非常に難しい制度でございます。用語でございます。そういう意味では、使いやすい制度に御配慮いただいたわけですから、利用者にわかりやすい解説書やビデオとか、使いやすいようにぜひ啓発をしていただきたいというようなことをお願い申し上げます。  我々にとって期待をしている制度ということで、この法律が一日も早く国会で成立して、実践、実務に移られんことを強く望んでおります。  ありがとうございました。(拍手)
  8. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 ありがとうございました。  次に、金参考人にお願いいたします。
  9. 金政玉

    ○金参考人 ただいま御紹介いただきましたDPI(障害者インターナショナル)日本会議権利擁護センターの金と申します。  きょうは、こういう貴重な発言の機会をいただき、感謝しております。まず、私たちDPI日本会議及び権利擁護センターの簡単な紹介をさせていただきます。  私たちは、障害を持つ当事者団体として、一九八一年、国際障害者年の年に、国際的な障害者の連帯の組織として結成をされました。従来、歴史的にと言ってもいいと思うのですが、障害者の処遇については、いわゆる障害分野、医療分野、福祉分野の専門家、そういう援助者の一方的な意見によって処遇が決められてきたという現実がやはりあると思います。そういった結果として、収容型の施設があちこちで各国においてはつくられていった。結果として、地域社会で障害者が住みにくい、生きていけない、そういった状況がつくられていったということが、深い現実に対する思いとして当事者の側からはあると思います。そういった経過の中で、自分たちの人権は自分たちの手で実現していこうという声を上げて、障害当事者団体として活動しております。  私たちの団体としては、DPIは、障害種別を超えて、すべての障害者を網羅した唯一の国際組織として活動しております。当法務委員の八代委員も現在、DPIアジア太平洋ブロック名誉議長を務めていただいております。私たちの団体には精神障害を持つ当事者団体も加盟しておりますし、知的障害を持つ当事者団体とも課題を通じて一緒に取り組みをしているところであります。  今私たちは、この成年後見制度の改正がされることによって、障害当事者を取り巻く状況の中で実際にどういうことが起こっていくだろうかということをさまざまな視点から議論をしてきました。その中で、今度の成年後見制度の中では、補助制度の新設を伴う大幅な改正がされておりまして、その理念においては、本人の自己決定の尊重と本人の保護の調和を図るということになっております。本人の自己決定の尊重と本人の保護の調和を図るというのは、私たちから見ると、本当にそういうことが今の現状においてできるのであろうかという率直な疑問を持っております。やはり一歩でも二歩でも、自己決定の尊重から自己決定の実現に向けて、この成年後見制度の改正の中でどういうふうにそういう方向に近づいていくのだろうかということ、そういう問題認識の上に立って若干の意見を述べさせていただきたいと思っております。  よく事例として出てくることなのですが、例えば、障害を持つ当事者が施設から出て家を借りるとします。不動産店舗を見つけて家を借りる相談に行きますと、あなたじゃちょっと不安だから、保証人なり代理人を連れてきてくれ、そういうふうに不動産店舗なり家主から対応されるということがよくあります。そういったことが、本人の自己決定ということからいいますと、本当にいいことなのだろうかということがあると思うのですね。私たちはやはり、今の取引の相手側が本人との間で直接話をし、契約を結ぶ、そういったことができていくための条件整備というものが少しでもこの成年後見制度の改正の中で図られていくことを第一に望んでおるところであります。  そういった視点から、このたびの改正の中身について、具体的に幾つか意見を述べさせていただきたいと思っております。  まず、補助類型、補助制度の新設ということに関してです。この点については、福祉関係諸団体の方からは非常に高く評価するという声が多いということは私たちも承知しております。しかし、補助類型の新設によって、では具体的にどういうことが起こるであろうかということであります。  先ほども、家を借りるときのことを少し言いましたけれども、実際に補助類型、補助制度の対象者には、これまでいわゆる現行の禁治産制度の中で対象にされなかった軽度の知的障害、精神障害の方たちが対象にされます。その分だけ網が非常に広くかけられていきます。そういった、広く対象者がふえていく中で、実際の取引、契約の場面において、取引の相手側が、あなたは補助人をつけているのですか、つけていないのですかということ、そういったやりとりが起こってくることがあり得るのではないかというふうに私たちは思っています。  そのときに、今度の後見登記の改正案にも盛られていますけれども、成年後見人をつけているかどうかという記録の証明書を出せることになっておりますが、そういった、例えば補助人をつけているのであれば補助人をつけているという証明書を持ってきてください、取引の相手側がそういうことを言ってくることが考えられると思います。  本人としては、自分は補助人をつけていない、補助人をつけるつもりもない、やはり自分自身である特定の契約をしたいということでやっているのですが、それが認められない。補助人がいないという証明書を出せることになっていると思うのですが、そういったものを出した場合に、相手側が、それだったら補助人をつけて、その上で契約の話をしましょう、そうしないと契約には応じられませんということが実際問題として起こり得るのではないかという不安を持っています。  そういったときに、これが、では補助人をつければいいのかということにすぐになるのかどうなのか。補助人などの成年後見人をつけるかつけないかは本人自身が決めることだと思うのですね。相手の意向に沿ってやむを得ず、仕方なく補助人をつけざるを得ない、そういった事態が発生するということがあった場合に、私たちは、これは明らかに取引の契約拒否、相手側の契約拒否という人権侵害事件にもつながるおそれがあると思います。そういった意味では、補助制度の新設に伴う運用に関しては、非常に慎重な検討を求めたいと私たちは考えております。  そういったこととの兼ね合いなのですが、今度の成年後見制度の改正によって、補助人などの成年後見人を本当に本人が望んでいるのかどうなのか、そういったことが後見の開始決定にかかわる手続において非常に慎重に検討される必要が私たちはあると思います。  成年後見人の開始決定に至る手続の場面で、本人の事情聴取、本人が本当に成年後見人をつけることを望んでいるのかどうなのかということを家庭裁判所の窓口の段階で、入り口の段階で、一回ならず、三度目の正直という言葉もありますけれども、少なくとも三回以上は、本人が本当に成年後見人を必要としているのかどうなのかということを確かめる事情聴取というものがぜひ必要なのではないかというふうに私たちは思っております。  そういったことの中で、本人が本当に成年後見人が必要であれば、成年後見人の開始決定が行われて、必要な事項において後見がなされていくということが望ましいのではないかというふうに思っております。そういった意味でいえば、補助制度の運用いかんが今度の成年後見制度の改正の評価において非常な意味を持っていると思いますので、その点については慎重に御審議を願いたいと思っております。  それとあと、同じく入り口の問題としての成年後見開始請求においてのことですが、やはり自己決定の尊重が言われているからには、保佐と後見においても、本人の同意を得ていく、丁寧な事情聴取の中で、本当に保佐人、後見人をつけることが必要なのかということを、保佐と後見のところでも、本人の同意が入り口の段階で必要であると思っております。  次に、費用とか報酬については、このたびの改正案においては、基本的に自己負担になっております。障害者にとっては、働いて財産を蓄積していくということが非常に困難な状態に置かれておりますので、一定程度の低い所得の、財産のない障害者にとっては、公費負担でこの制度が活用できるようなことを考えていただきたいというふうに思っております。  次に、法人後見については、さまざまな議論があるかと思いますが、少なくとも、本人が所属している施設、病院などを経営している法人においては成年後見人になることはできないという明確な規定がぜひとも必要であると思います。実際上、施設において、年金などをなし崩し的に施設側が管理をしている、それが本人の了解も何もなく、いつの間にか施設運営に係る寄附の方に回されている、そういったこともよく報道の中にも出てきますけれども、実際にそういうことが起こっております。利益相反という観点からも、そこは明確に線引きをされるべきであろうと思います。  このたびの改正案では、身上配慮の義務ということが言われています。そういった意味では、単に財産管理にとどまらず、身上配慮、本人の意思決定を本当に尊重していくための成年後見人のかかわり方というものが非常に大きな意味を持っております。そういった意味では、家庭裁判所の段階においても、家庭裁判所の裁判官、調査官、そして成年後見人になる人たちの質的な問題として、本人の自己決定の意味、意思決定の意味というものをさまざまな事例に応じて本当に理解できるような人権教育の研修というものが、ぜひともこの制度の運用の前提には必要なのではないかと思っております。その点は、昨年秋の国連の国際人権規約委員会の日本政府への勧告においても、司法関係者に対する人権教育の必要性ということがうたわれておりますので、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。  最後に、任意後見についてはぜひとも積極的に活用していただきたい。まずは、本人の任意性、自己決定というものが少しでも確実に担保される制度になっていただきたいと思っています。本来は、任意後見を中心にして、それを補う形で法定後見というものが本人の必要性に応じて適用されるということが望ましいと思っておりますので、ぜひそういった方向で制度運用がされるように望みたいと思っております。  一番最後ですが、欠格条項との関連について、少しだけ述べておきたいと思います。  欠格条項については、このたびの関係整備法においては、従来百五十八種あった欠格条項が百十六種に減らされていくということが新聞でも言われております。ただ、その中で、従来どおり残る欠格条項の中で、参政権、選挙権の問題があります。従来は、禁治産者宣告をされた禁治産者に対しては選挙権がなかったわけなのです。  私たちは、このたびの見直しにおいて、この選挙権は当然見直されるものと思っていましたが、このたびの改正案の中では、後見の対象者には選挙権が与えられない、欠格条項になるというふうに聞いております。やはり、選挙権というものは基本的人権の非常に大きなかなめのところにあります。この選挙権を被後見人が行使したからといって、何か相手に対するトラブルだとか被害だとか、そういったことが起こることは全くあり得ません。私たちは、少なくとも、このたびの見直しにおいては選挙権の行使ができるように、ぜひ改善を求めたいと思います。  若干時間を過ぎてしまいました。大変申しわけありません。どうもありがとうございました。(拍手)
  10. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  11. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村建夫君。
  12. 河村建夫

    ○河村(建)委員 自由民主党の河村建夫でございます。  参考人の皆さんには、貴重な時間をいただきまして、ありがとうございました。この民法改正につきましては、それぞれの立場で評価をしていただいておるところでございますし、また、それに対して貴重な御意見、御提言をいただきました。ありがとうございました。  限られた時間でございますが、各参考人の皆さんに、私の方から若干の質問をさせていただきたいと思います。  まず、発言をいただきました順番にと考えておるのでありますが、千葉大学の新井参考人にお聞きいたします。  先生は、世界の各制度を比較をしながら、今回のこの改正はそれらを凌駕するものであるという高い評価をいただいたのであります。個々について説明をいただいたのでありますが、日本が、イギリスあるいはドイツの制度を総合的に配慮して今回の改正に踏み切っている、こうおっしゃっておるわけでございますが、特に新設の補助、これが非常に大きな意義があるということでございます。また、あわせて任意後見の制度、この両者の新設について、改めて、どういう点を特に評価されるか、お伺いをしたいと思います。
  13. 新井誠

    ○新井参考人 世界の後見の流れは、できるだけ自己決定を尊重しよう、後見の世界でも自己決定を尊重しよう、保護をする場合でも、その保護というのは限りなく限定したものにしようというのが二つの基本的な考え方じゃないかというふうに思っております。一つの特徴的な行き方はイギリスの行き方、もう一つの行き方がドイツの行き方ではないかと思います。  日本の今回の改正は、まずイギリスの方からは、任意後見という形で学んだわけです。これは、とにかく自己決定を尊重しよう。それは残存能力じゃなくて、意思がきちっとあるときに、自分の意思で、万一自分に能力がなくなったときの保護のあり方はこうしてほしいということを決めておこうという形の制度ですけれども、それを学んだというわけです。しかも、この日本の制度の場合は、イギリスよりも本人の保護というところがきっちりしているという意味で、私は、イギリスよりもすぐれているんじゃないかというふうに評価しております。  ドイツは、世話という形で、これは法定後見で、保護の制度なんですけれども、できるだけ自己決定を尊重しようという形の制度をつくりました。これを参考にしたのが日本の補助ということではないかと思っています。ですからこれは、保護の制度ではあるのですけれども、限りなく自己決定を尊重したという行き方をしているというふうに思います。  ですから、世界の主要な先進国、つまりイギリスとドイツのそれぞれのいいところを、任意後見と補助という形で取り入れた立法だというふうに考えておりまして、今の世界の成年後見の立法としては大変すぐれているというふうに思われるわけです。ですから、もしこれが成立しますと、逆に諸外国は、日本の法律制度を参考にして、あるいは日本の実務がどう動いていくかを参考にして立法していく。今まで日本は外国からのみ学んできたわけですけれども、この成年後見は、逆に日本の知恵、アイデアというものを海外に普及できるんじゃないかというふうに考えております。
  14. 河村建夫

    ○河村(建)委員 ありがとうございました。  そこで、全家連の専務さんからも、福祉の立場からもお話がございましたが、荒井参考人は、先ほどのお話の中では、この補助と任意後見の制度が、心身の状態、生活の状況に配慮したいわゆる身上状況といいますか、そういうことにも及んでいくんだ、こういう御指摘でありました。いわゆる生活サポートという形になるであろうということでありますが、参考人は、具体的に、福祉の現場においてどう利用されていくというふうにお考えでしょうか。
  15. 荒井元傳

    ○荒井参考人 補助及び任意後見ということで、任意後見の契約行為というか、私どもが「さぽーと」でやっていることに関して、精神障害の中で、自分はこの問題とこの問題については能力が落ちたり、今でも心配だというような形で、弁護士だとかグループに委託をして、今、そういう意味では実験的なことをやっております。  そんな中で、スーパーでは買い物ができるが、一カ月、一年あるいはそれ以上の中長期的な生活設計なんかがなかなかできない、大きな財産の、遺産とか、生命保険を受け取るとか、そういうことがなかなかできないというような形で、専門職に委託をするというような制度をとっております。日常相談業務、それから保管業務、通帳を預かっておくとか、印鑑、実印を預かっておくとか、そういうこともしております。それから、マネジメント、相談してあげるというようなことですね。あとは、権利擁護というか、医療機関とかいろいろな問題があったら相談に乗るというようなことで、今、こういう任意に基づく援助をしております。  そういう意味では、精神障害の人たちが日常生活をすることにおいて、それよりも能力が落ちた状況の中で裁判所に申請するというときには、本人の承諾があるのか、だれが必要なのか、そういうことを含めて、いわゆる後見人の選任に関して、診断書なり、それから家庭裁判所のケースワーク機能というか、そういうものも十分図りつつこの制度が使えれば、非常に有効であると思います。  それから、圧倒的に年金生活等の障害者が多いですから、その財産からその費用を出すということについては非常に困難でありますし、私先ほど申し上げたように、やはり公的機関等の援助や支援がそういう後見人にも必要かなというふうに思います。
  16. 河村建夫

    ○河村(建)委員 全家連の荒井専務さんにお立ちをいただきましたから、あわせて、先ほど最後にお話をいただきました金参考人の方から、自己決定を非常に大事にしたいのだということで、補助の制度は、認定が非常に微妙な問題が出てきて、かえってそれが広がって、この補助制度があれば、せっかく自分でやりたいと思ったことができなくなるのではないかという御懸念も今御指摘があったわけでありますが、そういう観点から、補助制度を利用していく場合の自己決定をどういうふうに尊重するかということについては、全家連の荒井専務さんはどのようにお考えでございましょうか、今の御懸念に対しても、含めて……。
  17. 荒井元傳

    ○荒井参考人 そこが、精神の場合、自分の障害がなかなか認められないというレベルもありますので、非常に大変な場合もあります。しかし、自分にとってこれが自信がないというようなことで、助けてほしいという心情は基本にあるわけで、それをどう引き出していくかというのは非常に重要なことだと思います。  それで、この問題について、ちょっと話が飛躍するのですけれども、戦後すぐ、生活保護にケースワーク論争というのがありました。生活保護を与えると怠け者ができるのではないかというようなことで大論争になりました。  そういうことの中で、やはり指導、ケースワークですね、これは非常に重要だということで、自己決定の際に、我々、周りの人たちがきちっとしたケースワーク機能というか、そういうものをすることによって、自分が障害を認められなかったり、自分がしていることがわからなかったり、援助が何だかわからないというような人たちについてきちっとした対応をするということがかなめであって、この補助類型等について、自己決定権を本人のみとするということになると、この制度が実効的に進行するかどうかという疑念も出てくるかと思います。そういう意味では、さまざまな自己決定の担保の制度を保障しつつも、この制度をぜひ進めていただきたいというふうに思います。
  18. 河村建夫

    ○河村(建)委員 ありがとうございました。この制度が使いやすく利用されやすくということが非常に大きな念願にあるわけでございまして、全家連のお立場、障害者団体を取りまとめておられる立場からいっても、今後、その役割というのは非常に高まってくるであろうというふうに思います。時間があればその辺についてもお聞きしたいのでありますが、時間の関係で次へ行きたいと思います。  久保井参考人にお聞きをしたいと思うのでありますが、弁護士の立場からお話をいただいたのでありますが、この利用しやすいかどうかという問題で、これまでの弁護士の体験からいっても一度しか選任の御経験がない、こういうことでございまして、これから、この制度がいよいよ導入されることによって、改正によってかなり利用しやすくなっていくだろうというふうに思っておるわけでありますが、具体的にはどういうふうに予見をされておりますでしょうか。
  19. 久保井一匡

    ○久保井参考人 久保井でございます。  今度の改正法の目玉であります補助類型及び任意後見につきましては、恐らく、この法律ができますと非常に活用されるのではないか。  特に補助類型につきましては、判断能力が著しく不十分ではなくて、軽度の痴呆といいますか、そういう方が現代社会では非常に多うございまして、高齢化社会を迎えまして、その人たちは現時点ではどのような処理がなされているかといいますと、同居している親族とか知人が事実上の世話をする形で処理されている。正式な後見人の選任とか保佐人の選任という形をとらないで、家族の人を中心とする周りの人たちが処理をしているというのが実情だと思います。そのために、後日になりまして、本人が十分わかっていたかどうか、そういうことが大変争いになります。  弁護士が日常扱います問題で大変多うございますのは、不動産の売却とか、不動産を担保に入れた借り入れとか、そういうことが後日になって判断能力がないから無効だというような争いが多々発生しておりますけれども、そういう問題につきまして、きちっとした補助人をつけることによって、法律行為が透明化するといいますか、そういうことが促進されるだろうと思います。  私どもが常々経験いたしますのは、不動産を本格的に売却するということ以前にも、例えば、隣地との境界の立ち会いについて同意を求められるとか、あるいはまた、道路用地とか公園用地に自宅の一部を提供してほしいというような形で要請された場合に、それだけのために禁治産宣告とか準禁治産宣告をするということは大変過酷だということで、実際にはそうすべきであっても、事実上、本人の名前において家族が同意の判を押しているというようなことはよくあることなのです。  また、大勢の遺産分割の当事者の中の一人に判断能力が少し不十分な方がおられましても、その遺産分割成立のためだけに現行の後見とか保佐の制度を使うというのは大変困難。ちゅうちょするわけですね、非常に不利益といいますか、戸籍に記入されるとかいろいろなことがありまして。そこで、判断能力に問題があっても、周囲の人が事実上の同意をして進めるというようなことがよく行われるわけですが、そういうあいまいな領域を今度の補助類型の制定によってきちっとできるといいますか、本人の利益を守りながら、かつ、本人の意思を尊重しながらやれる。  つまり、今度のやつは、特定の法律行為について代理権を与えるとか取り消し権を与えるとかあるいはまた同意権を与えるという形で、一般的ではなくて特定の行為についてだけ、例えば、隣地の立ち会いの判を押すとか、遺産分割協議に判を押すとかいう、特定の行為についてだけ補助人の選任ということができるようになっております。そういうことから見ても非常に利用がしやすい。  後見とか保佐ですと一般的に対象の行為が定められるわけですけれども、補助類型はそれがないから、例えば自宅の売却あるいは自宅の一部の売却ということが動機になって補助人の選任をいたしまして、その行為が終われば、今度は同意権なり代理権は目的を達成して消滅する、そうすれば補助審判も取り消される、したがって成年後見の対象者でなくなるということになるわけです。  現行制度では、一たん後見が開始される、禁治産宣告とか準禁治産宣告がなされますと、当面の必要性がなくなっても永久にそれが続くということがあるために、戸籍にいつまでも載ってしまうということで、使いにくかったわけですけれども、今度の場合は、特定の法律行為について補助人を選んで、その特定の法律行為が完了すれば補助が取り消されるということにもなりますから、非常に活用がしやすいのではないか、そういうふうに思います。また、介護保険とか社会福祉サービス、社会保障サービスの交渉とか給付の申請、そういう行為について補助人が非常に活躍していただけるのではないかというふうに思います。  それから、もう一つの目玉であります任意後見につきまして、現行民法の委任とか代理によってもできるではないかという議論がありますけれども、やはり自分が代理人を監督できなくなる。自分がしっかりしている間は代理人の不正行為は自分が監督できますが、自分がぼけた場合、意思能力を失った場合には自分が監督できなくなるわけです。それを監督する者、任意後見監督人というものを今回の法案では家庭裁判所が選ぶということで、本人としてみれば、自分がぼけた後、あるいは判断能力を失った後でも、ちゃんと代理人の権限濫用を防いでもらえるといいますか、そういう手当てがしてもらえるということになりますと、現行制度よりもはるかに利用しやすくなる。現行制度でも任意後見は可能かもしれませんけれども、非常にすっきりしてくるといいますか、安心して頼めるという点が大きなメリットになろうかと思います。  以上です。
  20. 河村建夫

    ○河村(建)委員 ありがとうございました。  私の持ち時間が参ったのでありますが、最後に、久保井参考人は日弁連の前副会長でいらっしゃいますし、日弁連の重要な立場にもいらっしゃるわけであります。今後、この制度改正によって、今お話しのように弁護士の方々が後見人、監督人になるケースは非常に多いと思いますね。それに対応する日弁連側の方策というのはお持ちなのでありましょうか。
  21. 久保井一匡

    ○久保井参考人 現在、日本弁護士連合会として統一的な方策までは立っておりませんけれども、例えば大阪弁護士会とか第二東京弁護士会とか、幾つかの弁護士会におきましては、改正法以前から既に任意後見契約を前提とした制度を発足させておりまして、大阪弁護士会ですと約三百名の弁護士が支援弁護士名簿、つまり高齢者、障害者のための財産管理とか身上監護についての支援をしてもよいという、そういう支援弁護士名簿に登録をしてくれておりまして、その研修とか、あるいは現行法下における財産管理、身上監護のお世話とか、そういうものを既に開始しておりまして、改正法がもしできましたら、さらにこれを充実強化していきたい。このような動きは大阪とか第二東京弁護士会から始まって、現在では全国の弁護士会に燎原の火のごとく広がりつつありますので、御安心いただきたいと思います。
  22. 河村建夫

    ○河村(建)委員 ありがとうございました。  時間の都合で、金参考人まで質問ができませんでしたことをお許しをいただきたいと思います。  終わります。
  23. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 次に、日野市朗君。
  24. 日野市朗

    ○日野委員 民主党の日野市朗でございます。  この法律の改正案ができまして、今審議を行っているわけでありますが、私も、できるだけ早くこれを通して、そして新しい時代の流れにふさわしい補助の制度、これを実現していきたい、こういうふうに思っているのでございます。  ただ、私、こうやって考えてみまして、現在の世の中のありよう、それからその流れというものを考えてみて、これらは、法律ができることを私も強く希望いたしますけれども、それよりも先に世の中の動きの方がどんどん流れていくのではないかというような心配が実はあるのでございます。  もちろん、高齢社会にもう入っているわけでございますね。そして、核家族化はどんどん進んでいくというような状況でありまして、私なんかは田舎の方ですが、私の住んでいるところなんかは本当にこのごろは子供の声が聞かれなくなってしまった。どこに行っても空き家が目立つ。そしてまた、人が住んでいても、高齢者たちが肩を寄せ合うようにして住んでいるというのが実は私どもの田舎の方の実情でございます。  こういう中で、できるだけこの人たちを助けていく手段、方法が、これは福祉の面からも、それからこういった民法の、能力を補っていくという立場からも必要になってくるのであろう、そして、それに万遺漏なきを期したいものだ、私はこんなふうに思っております。  それで、先ほどの質問の続きから始めたいと思いますが、今弁護士さんたちの間で、補助、保佐、後見、こういった仕事に取り組んでいこうという方がずっと組織されてきている、私、非常に結構だと思います。しかし一方、私も一人の弁護士として、もし自分がそれをやるとしたら、これは大変な犠牲を伴うな、自分の弁護士の仕事、それにさらにこういう仕事をもつけ加えていくということになると、これは大変御苦労なことだなというふうに思わざるを得ないのです。  それで、先ほど、マンパワーの育成ということが非常に大事だということを久保井先生御指摘になりました。それで、そういう犠牲的な行為でいろいろ補いをつけていくということも非常に結構なことだが、これは限界がありはしないかということを私は強く感じます。将来のビジョンとしてどんなふうにお考えになっておられるのでしょう。先ほどは、福祉の専門家の養成ということもおっしゃいました。そして、従来と変わらないことになってしまうというおそれも指摘されました。これからこれをきちんとした制度として伸ばしていく、そのためには、久保井先生、どんなことが必要であるというふうにお考えになりますか。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  25. 久保井一匡

    ○久保井参考人 日野先生が御指摘のとおり、大変な犠牲を関係者が払っていかなければならないだろうと思います。  基本的には、やはりマンパワーを育成していくということでございますが、社会福祉関係の専門家、ケースワーカーを国家の力で育成し、アメリカ等ではパブリックガーディアン、公的後見人というものが非常に発達しておるようでございますし、ドイツでも世話人協会に所属する専門的な世話人がたくさんいらっしゃるようです。我が国でもし新しい法律をつくっても、そういう人材の育成を怠るならば、結局現在行われているような、本人の周囲におる家族とか知人がそのまま後見人の座に座らざるを得ない。家族の犠牲なり負担が解消されないで、現状がただ認知されるだけに終わるという、そういうことは十分考えられますので、そういういろいろな意味でのマンパワーの育成は不可欠だろうと思います。  また、弁護士の業務から見てどこまでお引き受けできるかということにつきましても、確かに大変でございます。現にドイツ等でも弁護士の引き受けているケースは不動産管理等が中心のようでありまして、もっと日常的に、密着したお世話をするということになりますと、弁護士が毎日本人の家で密着した形でお世話をするというのは困難でありまして、現実的な形態としては、本人の周囲におる知人が後見人をなさっておるところに後見監督人として後見人の会計事務その他日常のお世話の状態をチェックしていくというような、弁護士自身が後見人になることは難しくとも、後見監督人であれば、監査の仕事が中心になりますので、現実的にかなりお引き受けしていけるんではないかというようなことを今検討しております。  いずれにいたしましても、弁護士とかそういう職業だけじゃなくて、社会福祉関係の専門的な方々を大幅に育成して、アメリカのパブリックガーディアンの制度のような形に発展させていくということがどうしても必要だろうと思っております。
  26. 日野市朗

    ○日野委員 今私が感じている問題点を一つ摘出してみたわけでありますが、この点について新井先生、お考えがありましたらお聞かせいただけますか。
  27. 新井誠

    ○新井参考人 私の全く個人的な考え方でありますけれども、今先生の方で、これは多くの犠牲が伴うということをおっしゃった意味は、私、大変よく理解しているつもりであります。しかし、そういう犠牲論ということですと、この制度の受け皿というのは育たないと思うんですね。犠牲じゃなくて、それが正当な仕事であり正当なソーシャルワークであるという形の認識を持つことが大切だと思うんです。そのための受け皿づくりということが、私、この法律の施行と同時に必要なことだというふうに考えております。  では、そういう受け皿づくりの動きがあるのかということで、私の見るところ、少しではありますけれどもあると思うんです。例えば、久保井先生のおっしゃった弁護士会での動き。それから、司法書士会の方でも、今、特別の法人をつくって、その中で研修制度を設けてやっていこうというような動きもあります。それから、社会福祉士会でも同じように、「ぱーとなー」というような制度をつくってやっていこう。それから、社会福祉協議会ですか、これでも、厚生省と連携して地域福祉権利擁護事業というのをやっていこうという動きがありまして、私としては、親族に頼る、あるいは専門職でも犠牲の上に成り立ってこの制度が動いていくということじゃなくて、いろいろな受け皿が出てきて、そこがいわば適切な報酬を得ながらこういう分野を担当していくということがどうしても必要だろうというふうに考えております。  ですから、ぜひ先生方におかれましては、そういう受け皿づくりのバックアップ、支援ということをよろしくお願いしたいと思うんです。  理想的にはドイツのような世話人協会。世話人協会というのは、将来的には二百万人ぐらいの世話人をリクルートし、協力し、プールしようという構想があるわけですけれども、ぜひ私もそういうふうにしていきたいと考えておりまして、今回の法律がその契機になればというふうに考えております。
  28. 日野市朗

    ○日野委員 今度は荒井先生に伺いましょう。  財団法人として家族会を運営しておられるわけですね。財団法人としていろいろな障害者の皆さんの面倒を見てこられる中で、お金がどのようにかかっていくのかという問題も出てくるでありましょうし、それから、そのお仕事そのものの大変さということもございます。  それで、私は、今、久保井先生、新井先生からお話がありましたように、犠牲を払ってこういった面倒を見ていくということは、これは非常に美しいことです。しかし、なかなか、美しいということだけでは賄い切れる問題ではないことがいっぱいあるわけでございまして、荒井先生のお考え方から、補助、保佐、後見、こういった仕事、ある程度ビジネス性を持たなければならないのではないかというふうにも思うのでございますね。そうでなければこれは持っていけないのではないかというふうにも思うんですが、そんな私の考えについてどうごらんになりますか。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  29. 荒井元傳

    ○荒井参考人 法改正の議論の中で、この制度は土台である、家はそれぞれの厚生行政なり自治体行政なり民間のさまざまな努力によって建てるという例えがありまして、非常におもしろいなというふうに思いました。  いわゆる民法法人でも、民法の公益法人の規定はありますけれども、公益法人そのものはいろいろな自治体の中の認可と自主努力と補助金で運営しているわけです。そういう意味では、厚生行政が、先ほどの参考人がおっしゃられた地域福祉権利擁護制度とかそういうものに関して予算化をして、社会福祉協議会、行く行くは、都道府県社協ですから三千、本当に生活の身近でやるということになるんでしょうけれども、そういうものは画期的なことであると思います。  先生がおっしゃった、家族としてはいわゆる援護とか保護とかそういうものについては当然できるだけのことをする、個人の努力を超えたものについては公の責任であるということでさまざまな福祉やそういう制度ができているんだと思います。そういう意味で、権利擁護の財産管理とか後見人制度について、ビジネスというよりも、当然それに関する福祉的な、公益的な事業としてぜひ取り組んでいただきたい、制度化してほしいということが我々の要望であります。  例えば、今、信託制度で親が子供に財産を組み合わせて渡すことができます。ビジネスの信託業務では、お金を一年に一回とか月に一回とか支払うことはできますけれども、財産管理に問題のあるケースについてきちっとした渡し方はしてくれません。そこまでが今のビジネスの世界であるということであるとすれば、これから二十一世紀に向けたビジネスと福祉が調和した新しい制度の創設、いわゆる福祉の理念をビジネスに生かすという、チェック機構も含めて必要かと思います。  そういう意味では、今の段階では、全家連の場合は、家族の相談、援助活動とか作業所、小さなワークショップですけれども、そういうものを実践したりして、直接障害者の援助なり家族同士の連携とかそういうものをまさに自助努力でやっております。そういう意味では、当然、国の補助なり自治体の補助があるべきである。そういう意味でビジネスと考えるべきだと思っています。
  30. 日野市朗

    ○日野委員 もう時間がほとんどなくなってしまったんですが、金先生、ひとつお願いします。  結果として、補助人がないということになると、消費活動の場面から障害者の方々が排除されるというような趣旨のことを先ほどおっしゃいました。このような例は頻発している例なのかどうか。世の中もかなり福祉的な観点に立っていろいろな取引なんかも行われていると思いますが、現実にそういうことは非常に多いのかどうかについてだけちょっと伺いたいと思います。
  31. 金政玉

    ○金参考人 消費場面においてということなのですが、先ほど一つの例としてお出ししましたけれども、家を借りるときに、取引の相手側が、本人とのやりとりをしていながら、本人の言い方、言葉の調子などで不安を感じて、あなたは少し知的障害または精神障害を持っているんではないですかということがわかったときに、どういうことが起こり得るかということだろうと思います。  それは、私たちの中でもいろいろな情報などをつかんでいきながら、いわゆる賃貸契約、そういった契約事項についてはそういう事例が非常に多くあることは事実としてあると思います。きちんと統計などをとったわけではありませんので、まだそこは正確な数字は今持つことはできませんけれども、実態としては数多くあると思います。  そのときに、私たちとしては、先ほども少し言いましたけれども、本人がこの成年後見制度による後見人をつけて相手側との取引をしたいと思えばそれでいいと思うのです。ただ、本人自身が、自分でまずはやってみたい、できるところまでは自分で契約にかかわる話をしてみたい、そういった思いを持つことは当然ですし、それがむしろ保障されていかなければいけないというふうに私たちは一方で思っています。  そのためには、相手側に、ではあなたはちょっと不安だから、補助人をつけてまた改めてやってきてよというふうに言われれば、はい、わかりましたということになるのかどうなのか。  私たちもいろいろな相談を個別に受けていますけれども、本人から仮に、契約を拒否されたということで相談に来た場合に、私たちとしては、やはりこれは人権侵害の疑いがあるのではないかというふうに判断することになると思いますし、そういった場合に、例えば法務局に人権侵犯の申し立てをすることもあるかと思います。そのときに、法務局の判断として、では認定として、こういう成年後見制度があるのだから、補助人を使うことによってそれは契約がなされるというふうに判断されてしまうと、人権侵害に当たるのかどうなのかということも今後の問題としては出てくると思いますので、それが自己決定、自律を阻害することにつながる危険性を、私たちは結果としてそういうふうになることのおそれを感じておる次第です。
  32. 日野市朗

    ○日野委員 どうもありがとうございました。時間が何分短くて恐縮でした。ありがとうございます。
  33. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 次に、漆原良夫君。
  34. 漆原良夫

    ○漆原委員 公明党・改革クラブの漆原でございます。発言の順序を逆にして、金参考人の方からお尋ねをさせていただきたいと思います。  今の日野委員の方からお話があった件でございますが、そのまま続けていただきたいのですが、補助制度を設けることによって、逆に相手が不安を感じて、補助をつけていらっしゃいと、契約を結べなくなる可能性もあるのだとおっしゃっていましたね。この制度を設ける以上は必ずそういう問題は出てくると思うのですが、それが人権侵害の可能性がある、何か具体的にそれを解決するお考え、方法をお持ちでしょうか。いかがでしょう。
  35. 金政玉

    ○金参考人 人権侵害につながるおそれを解消していくための方策としては、例えば一般不特定多数に向けた人権教育の取り組みということもあるかと思います。それと、ある程度特定をした団体、例えば企業だとかさまざまなそういう関係団体に対する人権教育の取り組み方策ということも考えられると思います。それは二本立てで私たちは考えていくべきであろうと思いますし、人権教育の研修プログラムの策定においても、やはり障害を持つ当事者自身の声がきちんと反映されるような研修プログラムを策定して、それに基づいて人権教育というものが、関係団体なり不特定多数の方たちへの研修が進められる、取り組まれるということが望ましいというふうに考えております。
  36. 漆原良夫

    ○漆原委員 もう一点、法人後見について、金参考人は、本人が所属している施設、病院等を経営している法人は、利益相反の観点から、明確に成年後見人の欠格事由にすべきである、こういうふうに述べられております。私もこの点大変心配をしております。今まで御経験された中で、こういう利益相反の事例があったというふうな、具体的な事例があったら御紹介いただきたいと思います。
  37. 金政玉

    ○金参考人 昨年秋に毎日新聞の調査結果が出たと思います。要するに、知的障害者などの各施設において、年金などの管理においてどのようになされているかということの調査をされた結果が新聞紙上に出されておりました。その中で、三分の一ぐらいは年金管理の使途不明の部分があって、明らかにされていないという結果がその報道において公表されたということがあります。  それと、あと、知的障害者が働いている就労現場において、経営者、私たちから見ると非常に悪徳経営者でありまして、これは人権侵害事件としてもかなり社会的にも問題になって、裁判にもなりましたけれども、そういった経営者による、例えば本人の年金の着服、私腹を肥やすようなことにつながっていった。それはただ氷山の一角として私たちは考えておりますが、本当にまれな例としてではなくて、いつそういった事態が起こっても不思議はない現状であることは確かであろうと思います。  判断能力のない知的障害の方たちに対する、日常の管理者の立場から、経営者の側から、なし崩し的に、裁量で本人の了解も何もなく年金の着服ということが行われている現状は、非常に潜在的には私たちは多くあると思っていますので、そういった意味では注意を促したいというふうに思っております。
  38. 漆原良夫

    ○漆原委員 もう一点だけお尋ねしたいのですが、選挙権を認めるべきだ、保障するべきだというふうな御主張がございましたけれども、これは諸外国の例なんかを調べてみたらどんなふうになっているのでしょうか。
  39. 金政玉

    ○金参考人 私たちも、今さまざまな資格制限などにかかわる欠格条項の問題に取り組む団体として活動しております。その中で、今現在十分な情報をまだ持ち得ていません。現在のところ、少なくとも日本よりは進んでいると思われる欧米諸国のそういった資格制限などにおいて、障害者の制度上の扱いはどうなっているかということの海外調査をしております。  ただ、私たちが聞く範囲では、障害を持つことによって欠格扱いにする、いわゆる欠格条項というものが、アメリカ、カナダなどでは、そもそもそういう考え方そのものがほとんどない、制度上もない。実際にそういう資格を得る中で必要な能力だとか、適性は何なのか、そういう職務についていく上での具体的な、補助的な手段はどういうことが必要で、それがあれば可能なのかどうなのか、そういった観点から大体のことが検討されて行われているというふうに聞いております。
  40. 漆原良夫

    ○漆原委員 ありがとうございました。  次に、荒井元傳参考人にお尋ねしたいと思いますが、公的財政支援の話をしていただきました。その際に、今回の成年後見制度というのはいわゆる土台論なんだ、土台をつくって、後でその上にいろいろなものをつくり上げていくんだ、こんな話もあったわけでございますけれども、費用は申立人の自己負担になっておりますね。ここのところをきちっと国の方で面倒見ていくというふうな積極的な財政支援をしていかないと、いい制度をつくったんだけれども、結局画竜点睛を欠いてなかなか利用する人が十分な利用ができない、こんなふうにも考えておるわけですけれども、財政支援策についてお考えがあればお尋ねしたいと思います。
  41. 荒井元傳

    ○荒井参考人 財政支援策という形で、いわゆる法務畑の方ではまたそういう支援システムがあるかと思いますけれども、その補助制度を完備するというようなことも大きなことだと思います。  あともう一つは、厚生行政の中で、先ほど申し上げたものはずばり成年後見そのものの、厚生省の事業ということではなさそうですけれども、これは社会福祉議会に限定されております。ことしが十億というか、そういう予算を組まれているそうですけれども、行く行くはもっと大きくなると思います。私たちとすれば、先ほど公的後見人というようなお考えの発言がありましたけれども、それと同時に、法人後見人で障害者団体なり当事者団体なりそういうものが、資格とか内容とか非常に重要でしょうけれども、そういうチェック機構を踏まえた上で後見人になれないか、そこに今、社協の費用がついたような形で障害者団体にもそういう補助がつかないかということを当面希望しております。  そのほか、家族等については、在宅介護手当とかそういうことを含めて積極的に図っていただければ、この制度そのものが実質的に国民全体に使われるのではないかというふうに考えます。
  42. 漆原良夫

    ○漆原委員 もう一点お伺いします。  公示方法として、今回は登記所で登録するという制度にしたわけでございますけれども、登記所で登録するという公示方法で被後見人秘密が十分保護されるというふうにお考えなのかどうかということと、それから、実際に登記所東京法務局一カ所だというふうに聞いておるわけですけれども、これで不便は感じないかどうか、不十分でないか、この辺お尋ねしたいと思います。
  43. 荒井元傳

    ○荒井参考人 現実の行政機構の中でこの制度を受けていただくということで、登記所に手続をするということを伺っております。ただ、それと同時に、戸籍に記載されるとかそういうことがなくなったということは大きな前進だと私たちは評価しております。  今、一カ所というのは、全国に一カ所の管理センターをつくるというふうに私たちは理解しておりまして、本人、後見人等いわゆる当事者がそこで申請すればその内容を見ることができる、証明を得ることができるという形で、プライバシーは守られるのじゃないかというふうに思います。  ただし、後見人補助について、そういう手続に登記所に行くというのは気が重いなというような制度も考えられますけれども、現行の機関の中でやっていくとすれば、そこを申請の窓口とするのは仕方がないのではないかというふうに考えております。
  44. 漆原良夫

    ○漆原委員 久保井参考人にお尋ねしたいと思います。  まず第一点は、先ほど利用者の範囲ということで、重度の身体障害者にもこの成年後見制度を利用させるべきではなかろうかというようなお話をされました。今回の制度は、事理弁識能力の程度ということで三類型を設けたわけでございますが、さらにそれを事理弁識能力とある意味では異なった重度の身体障害者にも適用するというのはどんなふうなお考えによるのでしょうか。
  45. 久保井一匡

    ○久保井参考人 基本は、意思能力が不十分な人あるいは意思能力を欠く者を対象とするということであることは十分にわかっておりますが、寝たきりの病人とか老人が、判断能力はきちっと十分に備えておっても、その意思を伝えたりあるいは意思を実現することが身体的不自由のために困難な方々、つまりその人たちは、補助を必要とするという面では、意思能力に不十分な点がある方と基本的には変わりはないのではないか。だから、身体的な障害のために意思表示が十分できない人あるいは自分の意思表示を徹底し得ない人についても、本人が望むのであれば当然利用を認めてよいではないか。だから、三類型のほかにさらに四類型目を設けよという意味ではなくて、現在予定されております三類型の利用について、本人が望むのであれば利用の機会を与えてもいいのではないかという考えでございます。
  46. 漆原良夫

    ○漆原委員 もう一点お伺いします。  今回、法人後見ということを法的にはっきり認めたわけでございますが、先ほど金参考人にお聞きしたように、利害相反のケースも非常に多い。私も弁護士時代にそういう経験をしまして、大変つらい思いをした経験がありますが、この法人後見を認めるということについて、弁護士会ではどのような意見が出て、どのような経緯で了解されたのか、この辺をお尋ねしたいと思います。
  47. 久保井一匡

    ○久保井参考人 法人後見人制度を認めた場合に、御指摘のような利益相反関係、本人の入所している施設自身が後見人になると、そういうことが不正の温床になるといいますか、不正につながる危険性があるということについては弁護士会としても十分に検討いたしました。  しかし、結局、家庭裁判所が当該本人にとって望ましい後見人あるいは保佐人、補助人はだれかということについて個別に、一つ一つの案件において選任過程で十分に考慮の上選任するということになっておりますので、申立人が仮に法人を申請してきても裁判所の方で十分に検討した上で決定するのであれば、やはりケースによっては認めるということは、その余地を残した方がいいのではないかということで、制度として法人を選任し得るということについては賛成しているわけでございます。
  48. 漆原良夫

    ○漆原委員 最後に、新井参考人に一点だけお尋ねしたいと思うのですが、現在の禁治産、準禁治産宣告の場合には必ず医師の鑑定を受けることになっております。  イギリスドイツの方で、例えば補助の場合には医師の鑑定を受けるようになっているのかいないのか、どのような方法で認定しているのか、この辺を教えていただきたいと思います。
  49. 新井誠

    新井参考人 ドイツの実務が参考になるかと思います。ドイツの場合は、鑑定は必要なんですけれども、例外的に必要のない場合というのがありまして、意思能力の喪失が明確であるというような場合あるいは本人が申し立てたというような場合は必ずしも鑑定を要しない、医師診断書とか簡易な鑑定という形で代替することができておりまして、その点は日本の実務でも大変参考になるかと思います。
  50. 漆原良夫

    ○漆原委員 以上で終わります。大変ありがとうございました。
  51. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 次に、達増拓也君。
  52. 達増拓也

    ○達増委員 まず、新井参考人に質問をしたいと思います。  今回の民法改正等によりまして、成年後見制度、従来に比べて非常に柔軟でまたきめ細かい、そういう使い勝手、利用しやすい制度になるという反面、新しい制度が導入されますし、やはり使いこなす側の努力や工夫がかなり必要になってくるのではないかと思うわけであります。  先ほどお答えの中で、ドイツの世話人協会の例を引いて受け皿づくりの話をされましたけれども、これはもう国民全体が意識を高め、深め、いろいろNPOの活動とかそういったものも巻き込みながらやっていかなければならない話だと思うんですが、特に、国や自治体、そういう公的機関の側で、運用面をきちっとやっていくため、制度を使いこなすためにどういう工夫、努力を行っていくべきか、御意見をいただければと思います。
  53. 新井誠

    新井参考人 この制度をよりよく活用するための課題はどういうことか、そういう御趣旨でとらえてよろしいでしょうか。  一つは、やはり受け皿づくりということで、これはもう先ほど私が申し上げたとおりで、弁護士会司法書士会、社会福祉士会、社会福祉議会、それから今先生御指摘があったNPOですね。これは大分の方ですけれども、大分ネットというNPO、これは県の第一号の認可だそうですけれども、そこが成年後見を主体に活動していこう、そういうNPOもできてきております。ですから、こういうものに可能であれば少し公的なバックアップをしていくということが必要じゃないかというふうに思います。  それからもう一つは、能力の判定、これは今まで精神科のお医者さんが担ってきたわけですけれども、必ずしも精神科のお医者さんに任せるのではなくて、福祉の専門家に生活状況の様子を見させるというようなこともアイデアとしては必要ではないかというふうに思っています。例えばドイツでは、医師の鑑定書のほかに、ソーシャルワーカーが生活状況報告書というものを出させまして、その二つを裁判官が考慮する。というようなことが必要だと思います。  それから三番目ですけれども、やはりこの制度は何といっても、これは法的な制度、民法上の制度なんですけれども、福祉というものと非常に密接に結びついているものだと思うんですね。ですから、ソーシャルワーカーの持っている技術、そういうものが生かされる余地があると思うんですけれども、私の率直に見るところ、日本のソーシャルワークは、まだその面、必ずしも十分に発展していない面があると思うんです。ですから、こういう制度の創設を機に、ソーシャルワークの発展ということを期待したいと思うんです。つまり、保護を必要とする人にどういう生活支援をしていこうかというときの、そういういろいろなノウハウ、その蓄積が必要じゃないかというふうに考えております。  これでお答えになったでしょうか。
  54. 達増拓也

    ○達増委員 利用しやすい制度にするための運用の工夫や努力については、荒井元傳参考人も、レジュメの4として(1)から(4)まで書かれていらっしゃって、先ほどのお話の中でも触れられましたけれども、荒井元傳参考人に伺いますが、こうした工夫について、さらに具体的に敷衍して説明いただければと思いますが。
  55. 荒井元傳

    ○荒井参考人 自分たちの息子やその家族がこの制度を使えるのかということですね。  私も相談業務などをしていたことがあるわけですけれども、今から十年ぐらい前に、新宿の歌舞伎町に二百坪くらいの土地を持った大学の先生がおりまして、もう八十でありました。奥さんが七十五で、有名な方でありましたけれども、まさに何百億という資産を持っていらっしゃって、息子さんが三人。二人が精神病でありました。一人は病院に入院して、一人は在宅だというような形。  そんな中で、この方は有名な方でして、福祉の最高権威者にも病院をつくりたいとか相談しておりましたけれども、家族会ラインで私たちのところに相談に来ました。しかし、準禁治産、禁治産というわけにもいかないし、任意後見という形で任意契約を全家連にすることもなかなか信用がならないということで十年たって、そのおじいちゃんも痴呆状態になってしまった。その方が一番望まないそのおじいさんの兄弟のところに多分財産が行ってしまったんではないかという話がありました。  そんな中で、準禁治産、禁治産というよりも、本当に自分たちの財産を苦労している障害者のために使うんだというようなことを含めたイメージチェンジが非常に重要だと思うので、家裁にというのもいささかという気持ちもあって、厚生省と法務省の一部が合体すればいいのにななんて思いますけれども、そういう意味では、そういうイメージの問題があると思います。  それからもう一つは、精神障害に使いやすいんだというような幾つかの規定があり、それに監督が伴う、ここが非常に重要であります。法律に書いてあるということで、患者や家族は信用します。裁判所の監督があるということで、まさに使えるんじゃないかと思います。  そういうことを含めて、任意後見等について、その辺の方策がきちっとなされながら、我々も、この制度を使うために裁判所にかかわるのかという、その辺のある種の偏見を飛び越えれば使いやすいものになるんではないかと思いますけれども、ただ、やる人、受ける人、この人たちに対する援助なり育成なり、そういうものが最大の問題であるというふうに思います。
  56. 達増拓也

    ○達増委員 続いて、久保井参考人に伺います。  意思能力のみならず、身体的な事情で意思表示に困難を感じているような方々にもこうした制度を将来広げていくべきという指摘、実際、そういう必要性といいますかニーズというものは確かにあって、非常に不便を感じている方が多いので、何とかしなければとは思うんですけれども、一方で、法律的な整理の問題として、この成年後見制度は意思能力の欠ける部分を補う制度であって、意思能力は持っている人についてだれかがかわりを務めた場合、もし、もともと意思能力を持っている本人の意思との間に違いが出たときどうするのかというような、今回の改正される制度の中に入っていないような新しい問題も出てくるのかなと思うんです。これは整理の問題だと思うんですけれども、そうした法理論的な側面についてはどのようにお考えでしょうか。
  57. 久保井一匡

    ○久保井参考人 あくまでも本人の意思が優先するといいますか最大限尊重されなければならないというのは、この新しい成年後見制の根本思想でありまして、重度の身体障害のために自分の意思表示が十分にできない、そういう方々が利用する場合には、その意思表示の内容については、これは本人の意思表示が最大限優先するといいますか、本人の意思を無視した形での後見、実際は補助人が多かろうと思います。  補助人の場合は、そもそも、どの範囲内で同意権、代理権、取り消し権を与えるかということについては本人自身が決めるということができることになっておりますので、その権限の付与の段階でチェックは一つできると思いますし、仮に、付与した後の本人の意思と異なった、矛盾する行為を補助人なりがとろうとした場合でも、これは明らかに本人の意思を優先させるべく、双方が矛盾した場合には家庭裁判所がこれを決めるような規定も用意されているようですので、そこは実情にかなった的確な運用は十分に可能ではないかと考えております。
  58. 達増拓也

    ○達増委員 次に、金参考人に伺います。  金参考人が指摘された、補助類型を後見制度として新設することによって、かえって消費活動の場面から障害者が排除される危険性があるのではないかというのは非常に重大な指摘だと思います。  一方では、悪徳商法被害というような、やはり補助のようなものを必要とするようなケースもあると思うんです。そうした、悪徳商法のような被害から後見を必要とする、特に補助を必要とする人を守っていくという問題のバランスと、一方では、そういう悪徳商法にはひっかからないくらいの見識や能力を持ってはいるけれども、ただ、補助みたいなものは必要とするかもしれない、そういう人たちにとっては、かえって補助制度によって不便が多くなる、そのバランスの問題だと思うのですけれども、この点いかがでしょうか。
  59. 金政玉

    ○金参考人 確かに、そのバランスの問題ということは非常に難しい点だろうと私たちも承知しているつもりです。  私たちはかねがね思うのですが、本人と成年後見人とのそもそもの前提になる対等な関係の確保ということが本当になされていくのだろうかという疑問を持っているところもあるわけです。  そういった意味では、成年後見人の職務として与えられている代理権だとか同意権、取り消し権、そういったことで実際に本人に対する援助がされていくわけですが、その前に、私たちは、やはり成年後見人の非常に大事な仕事として、本人に対する情報提供と助言、アドバイス、そういったことが日常的にどれだけしっかり行われているかどうか。そのことによって、本人と成年後見人との信頼関係及び対等な関係の確保というものが実際にどの程度されているかということが決まってくるのではないかなと思っています。  そのことがしっかりできていれば、本人がその補助人なら補助人をつけて取引をするということも十分にあるでしょうし、それは本人が納得の上でのことであれば、私たちは全然それはどうこう言うものではありませんし、むしろそれは評価すべきものではないかなというふうに思っていますので、その点のことをぜひ考えていただきたいなというふうに思っておる次第です。
  60. 達増拓也

    ○達増委員 再び新井誠参考人に伺います。  荒井元傳参考人や金参考人の方から、低額財産保有者について公的援助をすべきだという趣旨の指摘がなされたのでありますけれども、財産保護に軸足を置いた伝統的な後見制度という点、また、本人の意思決定のサポートというところからは、本人の持っている財産の範囲内でということなんでしょうけれども、身上保護の観点を導入してそこを強調していくと、確かにそういう低額財産保有者について公的に補助をしながらこういう制度をやっていくということにもなり、これもかなり法理論的な問題も関連してくると思うのですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  61. 新井誠

    ○新井参考人 意思能力が必ずしも十分でない人は、その所得にかかわらず、すべてあまねく保護していこうということは、おっしゃるとおりだろうと思うのです。一応この制度は、自立自助ということで、要する費用、例えば後見人の報酬については本人が支弁するというようなことになっているわけです。そうすると、低所得の方が制度を利用できないのじゃないかと。  例えば任意後見契約、非常に制度はいいとしても、そのコスト面どうするのだということだろうというふうに思うわけです。これはやはり幾つかの工夫が必要だと思います。  まず、手続面に関しては、法律扶助法というものが予定されているわけですので、手続面についてはそこで賄うというようなアイデアもあろうかと思います。  実際にかかるコストの面について、手続外のコストについては、例えばこれは全くの私の私見ですけれども、例えば来年の四月から導入が予定されている介護保険、要介護の人を対象とする保険ですので、その中に、場合によっては成年後見制度を必要とする人のコストを、上乗せサービスというのでしょうか、そういう形で含ませることも可能でしょう。あるいは民間の保険、これは民間に限らないかもしれない。保険制度をつくって、例えば任意後見契約を締結するときに、自分が能力なくなったらサービスを使うときのその報酬を出してもらうというようなアイデア。幾つかアイデアがあると思うのですね、そういう工夫はぜひこれから必要だと思います。  ただ、今は、これは民法の枠内での議論ですので、コスト面が出てこないというのはいたし方ないところで、ですから、私としては早期成立ということをお願いして、その上でコスト面をどうしようかという形の議論をぜひお願いしたいというふうに思っております。
  62. 達増拓也

    ○達増委員 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  63. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
  64. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  四人の参考人の皆さん、本当に貴重な意見、ありがとうございました。  私どもも、現在の大変硬直した制度を改めて、障害者の皆さんの自己決定権が尊重される、またノーマライゼーションが促進される、そして同時に本人の保護、これも万全な制度を創設すること、大賛成であります。なかなかいろいろな難しい問題もありますが、そんな観点からひとつ、新設される補助類型がどのように運用されるか、非常に大事なポイントの一つであろうかと思いますので、まずその問題についてお聞きをしたいと思うのです。  金参考人から大変重要な問題提起がなされました。一つ、補助人の取り消し権の問題についてお伺いをします。  金参考人からは、補助人の取り消し権を少なくとも認めない、取り消し権は本人だけにしたらいいのではないかという指摘がありました。また逆に、全家連の荒井参考人からは、悪徳商法などの被害から被補助人を救済するためには、売買契約でしょうか、こういう分野にも取り消し権を認めるべきではないかという指摘がありました。改正法では、これは取り消し権の対象にはならないと思うのですね。この問題についてどう考えるのか、千葉大学の新井参考人、それから日弁連の久保井参考人。そしてさらに、補助人に取り消し権を付与すべきかどうかの問題について、改めて全家連の荒井参考人にお聞きをしたい。金参考人の問題提起を受けてどう考えるかについて、御意見をまずお伺いしたいと思います。
  65. 新井誠

    ○新井参考人 私は、金さんのおっしゃった趣旨は大変よく理解しているつもりですし、共感する面も大いにあります。ただ、法制度としてつくるときには、やはり補助人の取り消し権というのは認めて仕方ないというふうに考えております。  といいますのは、これは保護制度ですので、代理権のみで不十分な場合は同意権、取り消し権とワンセットにするということが必要だろうと思うのです。そうでないと、代理権だけだということですと、これは法定後見の後見の部分、保護制度に当たらないということになるのじゃないかというふうに思うのです。では、自己決定を侵害しているじゃないかということのわけですけれども、これは本人が望まなければこの制度は拒絶できるということですので、自己決定の尊重ということの確保もきちっとできているというふうに考えます。  そして、御存じのように、現行の保佐人には取り消し権がないということが学説上も批判されているわけです。つまり、取り消し権がないと実効的に機能しないということが言われておりまして、私もその説に賛成しているものです。  そうしますと、保護の制度ですので、やはり取り消し権という形は認めていたし方ない。この与え方も、全面的にすべて一律に与えるという形ではなくて、限定的に、しかも本人の自己決定に基づいて与えるという仕組みですので、私はこういう形でよろしいのではないかというふうに考えております。
  66. 久保井一匡

    ○久保井参考人 二つの点についてお答えしたいと思います。  一つは、補助制度がかえって差別につながる、場合によれば補助人の選任を取引先から要求されて、それが人権侵害にまでなるおそれがあるという御指摘。確かに私どもも十二分に検討していなかったといいますか、御指摘を受けますと、そのとおりかなと思う面もあるのですけれども、しかしながら、現在、あいまいな判断能力しかない、つまり重度の判断能力障害、保佐の場合は著しく判断能力を欠く場合ということですから、保佐と通常人の間のグレーゾーンといいますか、非常にあいまいな領域というのは広いわけです。  その領域を、もし制度をつくらないとすれば、無理に保佐を適用するということにするか、あるいはまた今までどおり本人に行為能力、意思能力があるという前提で本人に行為をさせる、あるいはまた周囲の同居している家族等が事実上の行為、不動産の売却等重要な行為をしてしまうということ、現在の紛争が多発している領域をそのままにしてしまうということになります。  したがいまして、やはり、痴呆性高齢者が非常にふえてきた、こういう状況下において、保佐の対象にならない、つまり著しく判断能力を欠くとは言えないけれども、しかし通常人から見ればかなり判断能力が落ちるという領域の人たちに対して制度を用意するということはどうしても必要なことではないか。  だから、問題は、今までの禁治産とか準禁治産のような、そういう反人権的な評価、つまり差別につながるような評価を新しい成年後見制では徐々にやめていくといいますか、あくまでも本人支援のための制度であって、決して不利益な処分ではないという法意識をやはり啓蒙していく必要がある。そして、補助制度というものが国民の中に、望ましい制度、補助を受けるということは補聴器をつける程度のことだというように国民が受けとめるような啓蒙をしていく形で問題を解消していくべきであって、今のこの領域を放置するということはやはり実態にそぐわない、紛争の多発をますます助長することになるのではないかというふうに思います。  それから第二点の、補助の場合には取り消し権を本人だけに限るべきだという御意見でございますが、それにつきましては、改正案では補助人に対して取り消し権を与えるかどうかについても当初の補助開始の段階において選択できることになっております。つまり、代理権もしくは同意権だけにして取り消し権は与えないということも改正案では可能ということになっておりまして、決してそこの選択をさせないということではありませんので、本件の場合、当該事案の場合には取り消し権までは与えなくていいケースだと裁判官が判断するならば、代理権のみあるいは同意権のみということをすれば、運用としては先生御指摘のような運用が十分に可能だ、そういうリスクを回避することは可能ではないかと考えます。     〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
  67. 荒井元傳

    ○荒井参考人 先ほども申し上げましたように、取り消し権を与えないということは、この制度そのものの実効性に欠くというようなことを申し上げました。  ただ、法人の施設なり入所施設関係の後見なり、こういう問題なり、法律は性悪というような立場でいろいろな規定をつくるのでしょうけれども、家族やそういうところがある意味では権利侵害にかかわることもあるというようなお考えも含めて、当然、障害者の自律と権利というようなお立場の御発言かと思います。  精神障害については、先ほども申し上げましたように、非常に判断力、疑うことの欠如というようなことも出てきます。それから、被害に気がついていないとか、自分がそのことのこだわりで逆に正しいと言い続けている状態もあります。それから、断ることが非常に下手というか言いにくいというようなことも出てきます。そういう意味で、委員会でも知的障害の家族の会からも意見が出たのですけれども、やはり取り消し権を持たなければ実効性は低いのではないか。と同時に、それのチェック機構とか、そういう意味での教育とか、そういうものを充実すべきであるというようなことであると思います。  自己決定と同時に、それはそういう取り消しの責任もあるのではないかというような論理かと思いますけれども、障害者のケースは、やはりアンビバレンスというか、こちらの考えとこちらの考え、自律とそれから自分が障害や病気でやってしまうことと、それをどうも嫌だな、不思議だと思っていながらもその両方が同居するという、自律の気持ちもあるし、何かしでかしてしまうという悩みもあります。そういうアンビバレンスなものが障害であるというふうに私は認識しておりますので、やはりこういう自己決定の自律の思想と保護の思想が調和するような、そういう制度を考えるべきだということと思います。
  68. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。  時間がもう五分を切ってしまったので。  そのこととの関係で、補助開始請求の申し立て権者がどうあるべきかについても金参考人から大変重要な指摘がありました。るるお話があった後、本人のみにすべきではないかという重大な指摘だと思うのです。しかし、本法案は、補助開始請求の申し立て権者は、本人は当然、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、検察官にまで申し立て権を与えております。これに対してどうお考えになるか。恐縮ですが、ほかの御三人の参考人の皆さんに一分以内でひとつ意見を述べていただきたい。  日弁連は、家庭裁判所にも職権で補助開始請求権、手続開始の権限を与えるべきだというところまで言っておりますので、簡潔にひとつ御三方から御意見をいただいて、そして、そういう御意見に対して簡単で結構ですが、金参考人から御意見などを最後に賜れば幸いであります。
  69. 新井誠

    ○新井参考人 これは大変難しい問題なんですけれども、一分以内ということですので。  検察官が入っていますけれども、実際に検察官が申し立てることはないだろうというふうに考えておりますし、実際には市町村長が申し立てるというようなこともあると思いますので、保佐、後見との平仄というようなことからしても、今回の改正についてはこれでよろしいのではないかというふうに考えております。
  70. 久保井一匡

    ○久保井参考人 この問題につきましては、私どもの考えといたしましては、やはり本人だけでは足りないと考えております。  つまり、本人が心身の事情によって寝たきりで申し立てをできない場合に、本人の世話をしている人、その周囲の者が補助その他の手続を開始できるようにするというのが現実的ではないかと思います。  ただ、今日は非常にひとり暮らしが多うございまして、配偶者とか四親等内の親族といいましても、そのいずれにも該当しない近所のおばさんが世話をしている、あるいはもっと親等の低い、遠い人が世話をしているとか、そういうケースも大変多い時代になってきております。  したがいまして、そういう方々から家庭裁判所に通告をすることによって、家庭裁判所が職権で開始の道を開くということができるようにしなければ現実的ではないのではないか。大勢の家族に囲まれた、古い、昔は四親等内の家族で十分カバーできたかもしれないけれども、ひとり暮らしの多い現代社会において、ますます家族の少ない本人が多い中で、やはり職権開始の道を開くべきではないか。  また、そういうものにかわるものとして検察官とかあるいは市町村長ということも考えられますが、検察官の申し立ては実績から見てもほとんど期待できないし、精神保健福祉法に基づく市町村長の申し立て等についても、現実的にはなかなか小回りのきく形で運用が期待できないということからすれば、本人の身近な者から家庭裁判所に通報することによって補助その他の手続、こういう成年後見の手続が利用できる道を開いておくべきではないかという考えでございます。
  71. 山本有二

    ○山本(有)委員長代理 それではごく簡単に、荒井元傳参考人。
  72. 荒井元傳

    ○荒井参考人 先ほどの発言と同様、やはり必要であるというふうに思います。福祉機関なり生活を一番よく見ているところ、そこの人たちがこれは援助が必要であるという手を挙げることだと思いますけれども、それはそういう形ですべきだと思います。  ただ、やはり本人の同意ということに関して、そのことに関して、実効性をどう自律的な権利と調和させるか、これが非常に重要なことだと思います。
  73. 山本有二

    ○山本(有)委員長代理 それでは最後に、ごく簡単に、金参考人。
  74. 金政玉

    ○金参考人 補助開始請求は、私たちはやはり本人のみにしてほしいというふうにお願いをしたいと思います。  それは、要するに、どこでこういうことになるのかということですが、私たちの基本的なキーワードというのは、やはり障害者の社会的な自律ということから、そういう観点からこのたびの成年後見制度の改正を考えております。そういった意味でいうと、補助の対象者はある特定の法律行為を行う場合ということになっておりますので、そのある特定の法律行為について、それが本当に必要かどうかというのは、障害の軽い知的障害、精神障害の方たちだったら、少なくともその必要性があるかどうかについては本人自身が理解できるだろう、判断できるだろうというふうに私たちは思います。それができる以上は、その申し立てについても本人が申し立てできるように、むしろ周囲がそういう方向で援助すべきなのではないかというふうに私たちは思います。  そういった意味では、障害者の社会的自律の問題と痴呆性高齢者のそういう保護の問題というのが、それはそれとして区別して考えられる必要があるのかどうなのかということも議論の余地としてはあると思いますが、やはり私たちの立場からいえば、そういった意味で、その主張を繰り返ししていきたいと思っております。  あと、欠格条項の問題についても、補助の対象者は基本的に欠格条項の対象にしないという考え方もあると思うのですね。そういった見地からいっても、補助の開始請求については、本人のみが請求できるということは十分担保できるのではないかというふうに私たちは思っていますので、ぜひ御参考にしていただけたらと思っています。
  75. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。終わります。
  76. 山本有二

    ○山本(有)委員長代理 次に、保坂展人君。
  77. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  全家連の荒井参考人の方にまず伺いたいと思うのです。  大変切実な、長い経過を踏まえた議論を聞かせていただきまして、いろいろ感じるところがあったのですけれども、特に精神障害者の財産管理をめぐる事例の中で、精神分裂のケースでいろいろお挙げになっていると思うのですが、一方において、いわゆる躁うつ症の患者さんもいらっしゃると思うのですね。  この場合、本人の同意というのをどの時点で考え得るのかということを考えますと、うつ状態であるときには、社会活動、非常に意欲も低下していますから、いろいろな手続にしても、もう任せたということになるケースも多いのかなと。  一方において、躁状態になってきたときには、高級な車をぽんと買ったりとか、さまざまな激しい消費行動ということが問題になってきて、家族あるいはその周辺の人間あるいは第三者で保護ということを考えるときに、うつ状態ないしはうつから躁への中間期のときに本人の同意を得ていたとしても、これがなかなか難しいのかなというふうにも思うのですが、そのあたり、経験に照らしていかがでしょうか。
  78. 荒井元傳

    ○荒井参考人 大変難しい問題で、委員会での議論のときから、同意というのが精神障害の場合どういう形で機能するのかなというのは非常に悩みつつも発言しておりました。  まず、うつの、躁の状況というのは医療と治療のレベルだと思うのですけれども、そういうレベルの中で、これはもう治療行為というか日常生活行為という中で、医療と福祉と家族なり、そういう中で援護するというか保護するということだと思うのですね。そのときに、自己決定ということで本人の了解のもとにこういう手続をするということ自身は不可能ではないかなという感じはいたします。  そういう意味では、医療機関なりそういう日常生活の援護のところできちっと対策を立て、落ちついたときということが、認めるかどうかわかりませんけれども、そういうことを含めて、その人の生活の中でそういう行為に関してどういういわば防止策を自分でとれるかというような話になるかなという感じがいたします。  精神分裂病の場合も、やはりなかなか認めないという部分があると思います。これは入院の手続等々も同じですけれども、やはり周りの者の努力なり説得なりそういうことを含めて、そういう制度をかりて自分が地域社会で生きていくというようなノーマライゼーションの思想をやはりいろいろな形で伝達していくという以外にないかと思います。     〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
  79. 保坂展人

    ○保坂委員 特に躁うつの場合は、とりわけ不動産の処分だとか権利譲渡だとかそういうことにまで走りかねないという部分があって、例えば家族が一生懸命いろいろ支えているというのが現状だと思うのですけれども、しかし、親が亡くなってお一人になる、残された財産というものがどう守られるのかというところで大変難しい課題をまだ残していると思います。  もう一つ、最近話題になっている境界性人格障害、ボーダーライン症候群と言われる新しい類型というか、ございます。例えば知的にも非常に高度な識別能力を持っている、もちろん日常生活、買い物などは難なくできる、けれども、そこのところで、さまざまな不安と不満といういろいろなこだわりの中で、周囲の人たちと次々と衝突をしてトラブルを続発させていくという方々が最近ふえていると臨床の現場からも聞いております。  こういった場合、事理弁識能力という意味では、事柄をいろいろ理解して、わかっているようにも見えるのですけれども、実際、不動産の処分だとか引っ越しだとか、あるいは日常生活で食事をしたりとかいう本当の基礎の部分において非常に危機的である。しかし、従来の福祉の枠組みでもこれはなかなか難しい人たちだと思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。もう一度、全家連の荒井参考人にお願いします。
  80. 荒井元傳

    ○荒井参考人 個々のケースについて余り詳しく私も経験してないものですから、やはり稼得能力とか自律とかそういうことを基本に、どんな原因で職場を転々としているか、いろいろな問題が起きるかというよりも、結果のいろいろな障害によって対応すべきだというようなところで、この制度そのものも、もし自己決定権なり判断能力がそういう疾病なり障害で落ちているとすれば、それは精神障害の中で、法案のいろいろな資料の中にも、自閉的傾向とかそういうのも含まれるというような資料がありました、そういう意味では、判断能力が事実落ちたというところであれば、その制度の中で何らかの形ですくい上げる。しかし、人的援助やそういうものについては、厚生行政になるんでしょうか、そういう意味での援護策はきめの細かなケース・バイ・ケースで必要だというふうに思います。
  81. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、金参考人に伺います。  先ほどから問題提起されている件は非常によくわかるわけなんですけれども、金さんの指摘されている点と、今精神障害を持った方の同意の問題や取り消し権の問題、例えば次々と高額の商品を買ってしまうなど、気がついてみたらとんでもない買い物をしていたみたいなことも現実にはあるわけなんですけれども、その辺の兼ね合いを御本人の利益の擁護という立場でどういうふうに考えたらいいのか、ちょっとお考えを伺いたいと思います。
  82. 金政玉

    ○金参考人 ただいまの取り消し権の問題については、私どもは、要するに、先ほどの議論にも返りますけれども、補助の対象者の方の問題でありまして、その場合には補助人の取り消し権はないでもいいではないか、本人のみが取り消し権を家庭裁判所に必要だと思えば請求をして、家庭裁判所の判断で許可がおりて、取り消しできるような、そういうふうな形に持っていくことができればいいのではないかなというふうに思っています。  保坂委員が指摘されました、高額な買い物をどんどんやってしまうということになりますと、補助の対象者になるのかどうなのかということもあるかと思います。どこまでの判断能力の境目をつけていくかというのは、また難しい問題、診断書の問題がどういうふうになるかという問題もあるかと思いますが、私どもの理解では、いわゆる補助の対象者については、そういったことはまずは本人がその点についての判断はできるのではないかというふうに理解しているところがあります。  あともう一つつけ加えれば、あえて言わせていただければ、本人にとっても、悪徳商法にだまされて不当な買い物をさせられた、そのことの失敗の経験というものは、やはり長い目で見れば、社会的自律ということにこだわって見れば、むしろ失敗する経験だって必要な場合があると私たちは思っています。それは障害者に限らず、どなたでも成人になっていく中でいろいろな失敗をしながら自分の生活基盤をつくっていくわけですから、そういった意味で、失敗を恐れてそういった自律というものが本当の意味で身につくのかどうなのか、そういった観点からも、私たちは、あえてリスクを本人自身も負わなければならないということを前提にそういう取り消し権の問題も考えていく必要があるのではないかなというふうに思っております。
  83. 保坂展人

    ○保坂委員 千葉大学新井参考人と日弁連の久保井参考人、お二人に伺いますけれども、保護を必要とする客観的な人数、二〇二五年には五百万人規模という数字も語られております。例えば、家庭裁判所の今の裁判官三百五十人、今までの制度が余り広がっていないから処理をできていたかもしれない、これが本当に幅広く使われるようになっていくと、その辺の体制整備は本当に急務だと思います。  そのときに、NPOや民間団体との情報交換や協力協調、あるいは地域からの参加、そういった点でまだまだ、今骨格ができたばかりだと思いますけれども、何が課題となっているのか、時間が余りありませんけれども、お二人にお願いしたいと思います。
  84. 新井誠

    新井参考人 これは、受け皿づくりということで、いろいろなところが受け皿になってほしいというふうに考えております。それで、その受け皿同士がネットワークをつくって情報を交換していく。もちろん、その核に恐らく家庭裁判所があるんでしょうけれども、家庭裁判所を中核にしていろいろな団体が受け皿になっていく。  そういうことで、私は、日本の福祉も、権利擁護のあり方も、あるいは、福祉の方でよくクオリティー・オブ・ライフというふうに言いますけれども、そういうものも徐々に変わってくれるんじゃないかなというふうに期待しております。
  85. 久保井一匡

    ○久保井参考人 現在、司法改革が非常に大きな問題に取り上げられ、司法制度改革審議会設置法案が先般国会を通過したという状況にありますが、家庭裁判所が現在の規模では足りなくなるであろうということは御指摘のとおりであります。  現在は、家庭裁判所というのは、離婚と相続、少年事件が中心の裁判所ということが一般の評価であり、事件の中でもそれが中心を占めているということですけれども、これから高齢化社会がどんどん進んでいく中で、家庭裁判所後見裁判官後見裁判所、つまり後見制度を運用する裁判所後見判事というようなものが非常に家裁の中心機能になっていくだろう。現にドイツでは後見裁判官とか後見裁判所という名前で呼ばれておりますけれども、司法改革の中で家庭裁判所を大幅に充実させる必要がある。それは量の面でも質の面でも充実させる必要がある。  ドイツなんかでは、裁判官自転車に乗ってあるいは自動車に乗って個々の本人の自宅の見回りをしたり、日常的にやっているようですけれども、日本の家庭裁判所裁判官もどんとふやして、かつ、高齢者、障害者の現に生活しているところにみずから出向いてその生活状況を観察し、それに最もふさわしい援助を与えていくというような、意識改革といいますか、そういう面での改革も必要だろうと思います。  もちろん、裁判所の改革だけじゃなくて、御指摘のとおり、民間団体、NPOとの提携、あるいは弁護士会とか司法書士会とか、専門家団体の方での努力、あらゆる面での受け皿づくりが進められなければ、結局、土台をつくっただけで中身はないというようなことになりますので、私どもとしても尽力していきたいと思っております。
  86. 保坂展人

    ○保坂委員 大変限られた時間でありましたけれども、ありがとうございました。これで終わります。
  87. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 以上で午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  各参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時八分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十二分開議
  88. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出、民法の一部を改正する法律案、任意後見契約に関する法律案、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び後見登記等に関する法律案の各案を一括して議題とし、午前に引き続き、参考人から御意見を聴取いたします。  午後の参考人として大阪大学教授久貴忠彦君、日本公証人連合会法規委員長佐藤繁君、弁護士山田裕明君、東京都心身障害者福祉センター福祉指導職野沢克哉君、以上四名の方々に御出席いただいております。  この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  久貴参考人、佐藤参考人、山田参考人、野沢参考人の順に、各十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、まず久貴参考人にお願いいたします。
  89. 久貴忠彦

    ○久貴参考人 久貴でございます。  本日、このような機会をお与えいただきましたこと、まことに光栄に存じております。委員長初め諸先生方に厚く御礼申し上げます。  それでは、時間が限られておりますので、早速本論に入らせていただきます。  今回の改正法案の最大の眼目は、私自身、公正証書遺言の方式の改正にあると考えております。したがいまして、本日これからは、それを中心にいたしまして申し述べさせていただくことにいたします。  現行民法の施行は、実は明治三十一年、一八九八年の七月の十六日ということで、あと一月ほどでちょうど施行百年を迎えることになるわけなんですが、この間、遺言(ゆいごん)――学問上は遺言(いごん)という言い方もしたりするんですけれども、ここでは遺言(ゆいごん)という表現で統一させていただきます。遺言に関します規定は、実は実質的な改正が一度も行われたことがございません。今回、もしこれが実現いたしますならば、画期的なことになろうかと存じます。  それで、ごく簡単なものでございますが、レジュメをつくらせていただきました。お手元に参っているかと存じますので、それに基づきまして申し上げさせていただきます。少しごらんになりにくい点があるかもわかりません、お許しいただきとう存じます。  現行規定、公正証書遺言は九百六十九条であるわけなんですが、この現行規定で生じる問題といたしましては、先生方既に御案内のとおりだと存じますけれども、あえて申しますと、証人二人以上の立ち会いのもとで、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授と言っていますが、口述で申しまして、それを公証人が筆記いたしまして、それを遺言者及び証人に読み聞かせる、そういう方式をとっております。しかも、秘密証書遺言とは違いまして、発言不能である人についての例外規定というふうな規定はございません。したがいまして、口のきけない方とか耳の聞こえない方には現行の公正証書遺言の方式がとれないということになります。  レジュメの二つ目になります、普通方式、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、この三つそれぞれに実は長短を持っております。私なりに考えておりますことを申し上げさせていただきます。  先に、まず自筆証書遺言からですが、文字を読み書きできる者であるならば、単独で、いつでもどこででも自由に作成できるということが最大の長所であると思います。費用も要りませんし、遺言の内容のみならず、遺言の存在そのものも実は人に秘しておくことができるという点は長所だと思います。  ですけれども、マイナスといいますか短所がございまして、しばしば方式不備を生じますし、また、内容の不明確さのために紛争を生じることが多いように思います。滅失とか隠匿とか改ざんなどのおそれもかなり大きいということでありますし、時には強迫などによります作成も考えられます。それから、後で家庭裁判所の検認が必要だという点も、大きなことじゃないかわかりませんが、短所というふうにとらえる方も多いようであります。  二つ目の公正証書遺言は、先ほど御説明申し上げましたとおり公証人が関与なさいますので、方式不備とか文意の不明確さを生じることは、これはあえて私はまれと申し上げます。絶無と言いたいんですが、現実に事件が起こるものですから、まれであります。ですけれども、後に紛争が発生することは少ないわけであります。また、遺言書の原本が公証人のもとに保管されますので、滅失とか隠匿とか改ざんなどのおそれはないと考えていいと思いますし、後に検認の手続も必要としないということが長所だと思います。  短所と言っていいかどうかわかりませんけれども、あえてマイナス面と考えられる点を申しますと、三つの普通方式の中ではやはり一番複雑であるということでしょう。それから、内容を他人、この場合少なくとも公証人の方あるいはその事務所の方々、そして二人以上の証人ということで、この方たちには内容は知られることになります。それから、よく本なんかで費用が要るように書かれることが多いんですけれども、私自身の意見としては大した費用じゃないだろう。つまり、物件の額に比して、公証人の先生にお払いする額というのは決して大きな額じゃないというふうに私は思っております。  それから、三つ目の秘密証書遺言というのは、長所、短所は自筆証書と公正証書のちょうど中間ぐらいの感じになるんですが、つまり、長所といたしましては、遺言の存在そのものははっきりさせておきながら内容を秘密にしておくことができるという点、これが長所だと思います。内容が改ざんされるというおそれも少ないだろうと思うんです。  短所といたしまして、実は、中の文書といいますか、中に封じられております書面は個人個人が書きます。公証人はタッチなさいません。したがいまして、方式不備とか内容不明確のため、遺志、つまり残された気持ちという意味での遺志ですが、これの実現が不可能になったり、後で紛争の生じる危険性もかなりあると思います。この点は自筆証書遺言によく似ていると思います。それから、検認を必要といたします。  このように長所、短所があるわけでありますけれども、自筆証書遺言では自書が要求されますから、字を知らないためあるいは文書が書けないために書けない者はこの方式をとり得ませんし、また、公正証書遺言では公証人への口授というのが必要でありますから、口がきけない人、あるいはまた何らかの事情で現在口がきけないような、そういう状況のもとにある人というのはこの方式をとれないわけであります。  ただ、立法者といたしましては、これらの者も含めまして、例えば前者、字の書けない人でも公正証書遺言とか秘密証書遺言ができるし、あるいは口授ができなくても自筆証書遺言ができるというふうに、つまりこれは、レジュメの一覧表で、「人はふつうどれかの方式に拠ることができる」という、これは私自身がつくりましたものなのですけれども、細かくは御説明いたしませんが、今×印がついている人たち、あるいはそういう状態の方たちについてはこういう種類の遺言ができないということなのですが、三つとも×のつく方はないわけなのでして、どれかの手続をとることができるというふうになっているわけなのです。  ところで、今考えられております、先生方が御審議いただいておりますのがこの公正証書遺言の改正であるわけなのです。したがって、なぜこの公正証書遺言を今問題とするのか、改正が必要なのかという点なのですが、三点ほどあると思っております。  一つは、公証人の関与による適法性が担保されるということ、それから公証人役場で証書の保管がなされる、先ほど申し上げましたことの繰り返しになるかもわかりません、家裁の検認が不要だ。これらのうち、私自身は、特に適法性の担保といいますか、方式不備とか内容の不明確の生じることが極めてまれであるという点が非常に長所だと考えて、人にも、相談を受けましたら、やはり遺言は公正証書でなさったらいかがですかということを常々、長年の間申し上げてきたわけであります。  それから、利用の実態、これはまたほかの参考人の方から数字が出てくると思いますが、現実には利用者数はふえているように思います。現在、公正証書遺言、大体年間五万件ぐらいございます。自筆証書の方は、実数わかりませんが、検認の数から推測いたしまして大体年間八千から九千の数じゃないか。つまり、公正証書遺言は自筆証書遺言の五倍以上の利用がなされているのが現状じゃないかと思っております。ちなみに、数日前に発表されました平成十年の死亡者の総数というのは九十三万六千四百八十という数字でございます。  それから、三つ目の問題といたしまして、個々人、つまり遺言者自身であってみたり相続人であったり、あるいは受遺者であったりいたしますでしょうが、こういう個々の人々の権利意識が高まっておりますし、他方、社会情勢とかあるいは家族関係が複雑化、多様化しております今日、聴覚や言語機能に多少の障害がある方々のために公正証書遺言を自由に利用する道を開く必要があると私自身は考えております。  レジュメの二番目に移らせていただきます、早口で失礼いたしますが。  一言で「遺言判例法の歴史は方式の厳格性緩和の歴史」であると私、書きました。先ほど申し上げましたとおり、全部判例法で来たわけであります。幾つかの例を挙げました。ほんのわずかなのでして、たくさんの判例があるわけですが、上半分の自筆証書遺言につきましては時間の関係で今細かいことは省略させていただきますが、自筆証書遺言のいろいろな、自書とか日付とか氏名とか押印という、そういう文言についてそれぞれにいろいろな工夫を裁判所が、大審院以来最高裁もなさってきています。もちろん、下級審もなさってきているわけであります。  公正証書遺言につきまして、ここにあります幾つかの古い判例も含めてごく簡単に申し上げさせていただきますが、口授につきましては、大審院の大正八年七月八日の判例は、遺贈物件の細かい詳細につきましては全部覚書を出すことによって口授を省略する、これを有効と見ております。  それから、口授と筆記というものの順番。次の大審院の大正六年十一月二十七日あるいは最高裁昭和四十三年十二月十日、これは口授と筆記の順序が逆になって筆記が先になったものでありますけれども、これも有効というのが最高裁のあるいは大審院以来の上級審の判断であります。  それから、一番下に書きました承認というのは、実はこれは昭和五十五年十二月四日の判例であるわけで、私にとりましては、プライベートなことを申し上げてあるいは失礼かわかりませんが、いわば懐かしいといいますか非常に印象深い判例であるのでして、実はこれは第二審で、私、依頼者の方から意見書の提出を求められまして、目の見えない方でも、公正証書遺言の読み聞かせのときの証人ということなのですが、これは目の見えない方でもできるはずなんだということを私は前から少し言っていたのですけれども、それを意見書に書きまして、二審そして最高裁、実は最高裁は三対二という際どいところだったのですけれども、これを認めていただきました。二十年近くにもなります。その二十年近くも前に、最高裁判所が目の見えない方々につきましてこのような判断をしていたということは、私は、注目していいだろうと思っております。  以上、見てまいりました、方式の厳格性緩和という判例法の流れに照らしてみますとき、今御審議いただいておりますこの改正案というものは、まことに時宜を得たものだと私自身考えております。  最後に、二つほどここにあります。ごく一言ずつ申し上げさせていただきます。  「今後の問題」ということで書きました。この「制度を支える態勢の整備と充実」、これはまた後ほど各参考人から具体的なお話があると思いますので、私自身は、法制審議会民法部会身分法小委員会の審議の中で、いろいろとこれから考えていかなければならないことが多いだろうと感じたことだけを今申し上げさせていただきます。  それから、一番下に書きました「自筆証書遺言の方式改正の必要性」というのは、これはあえてクエスチョンマークをつけさせていただこうかと思ったのですが、現在の自筆証書遺言はやはり少し、特に目の見えない方にとっては使いにくい制度だろうと私は前々から思っております。したがいまして、今回はいろいろなたくさんの、成年後見とかいろいろなことがありましたから、法制審議会民法部会としては作業量上触れられなかったのかとも存じますけれども、遺言法全体の今後のことを考えるときには、自筆証書遺言についてもやはり何らかの検討が必要ではないだろうか、これは研究者の立場で考えているということを申し上げさせていただきます。  非常に簡単にしか申し上げられず、また早口で失礼いたしました。  以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)
  90. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 ありがとうございました。  次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  91. 佐藤繁

    ○佐藤参考人 公証人をいたしております佐藤でございます。こういう機会をお与えいただきまして、ありがとうございました。  私は、今回御審議いただいております民法の改正案のうちで、聴覚・言語機能障害者の公正証書遺言の方式に関する改正部分について、現場で公正証書を作成しております実務の立場から意見を申し上げさせていただきたいと存じます。  新聞などでも時々報道されますように、近年は遺言に対する社会的関心が非常に高い、このことは公正証書遺言についても数字の上によくあらわれているように思っております。  お手元に差し上げましたレジュメに、平成元年以降二、三年おきに全国の公証役場で作成いたしました公正証書遺言の件数を書いておきましたけれども、これでもおわかりいただけますように、大体年に三ないし四%ぐらいの割合でふえている、昨年は約五万五千件という数になっております。  公正証書遺言の作成を希望する方も、必ずしも高額な財産の所有者ではありません。ごく普通の、言ってみれば庶民の方がふえておりますし、また年代的に見ましても、高齢者とは限らず、中年世代などにもどんどん広がっているという感じでございます。  遺言の中身としましては、事の性質上、財産に関することが主であるのはもちろんでありますけれども、それ以外にも、例えば自分のこれまでの生き方とか家族に対する思いだとか、あるいはまた自分の亡くなった後の菩提寺の管理あるいは墓の管理、そういった非財産的な事項について、ぜひやはり書面で言い残しておきたい、こういうような御希望を述べられる例が非常にふえております。これはやはり、最近のような社会の高齢化とか核家族化といったような中で、自分の人生に関することは自分で決めておきたいという、広い意味での自己決定の意識というのが国民の間に非常に強く広がっているあらわれであろうと私どもは思っております。  こういう遺言に対する社会的ニーズの高まりを考えますと、遺言に関する制度とかあるいはその運用というのは、遺言者の真意を確保できるものである限りはできるだけ遺言をやりやすいようにしてやる必要があると考えております。遺言につきましては適正の確保ということが一番大切でありますが、それを確保しながら、できるだけ遺言を容易にするような方向を目指すのが正しいのではないかというのが私どもの基本的な考え方でございます。  こういう観点からいたしますと、現在問題になっております聴覚・言語機能障害者の遺言につきましては、現行法のもとでは随分厳しい制約があるなということを感じます。この点はもう委員の諸先生には十分御理解いただいていることだろうと思いますし、先ほども久貴参考人の方から言及されましたので、ごく簡単にさせていただきますが、なお、実務の立場から、一つ、二つ、申し上げさせていただきたいと思います。  公正証書遺言について必要とされております口頭によるという方式は、これは健常者を対象としたもので、聴覚・言語機能障害者の場合にはもっと緩めてもいいのではないかという考え方は、公証実務家の中にも以前からございます。そういうことで、文字盤を使って一つ一つ文字を指示して公正証書遺言をつくろうと試みた例も、ごくごくわずかでございますが、かつてはあったようであります。  ただ、今も久貴先生からお話がありましたように、日本の判例あるいは学説では、この口頭方式という要件を大変厳しく理解しておりますものですから、そういう中で、公証人だけがぎりぎりの法律解釈をして、口頭によらない公正証書遺言をつくりましても、後でそれが裁判で争われて無効だということになりましたのでは、かえって混乱を招くことになる、紛争予防という公証業務の本来の目的にも反する結果になる、こういうようなことで、公証業務の現場では、需要のあることはわかりつつも、なかなか踏み切れないで来たというのが実情でございます。  私どもとしましては、公正証書遺言は無理であるにしても、自筆証書遺言とか秘密証書遺言とか、そういうものについては御相談があればできるだけの協力はしてまいりましたけれども、これも先ほどお話が出ておりましたように、内容は本人が作成するというのが建前であるものですから、公証人が手をかすということにもおのずから限度がございますし、遺言証書の原本の紛失あるいは改ざんというような危険もある、さらには家庭裁判所での検認を受けなければならないという手続上の制約もあるわけであります。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕  それから、これは遺言そのものではありませんけれども、遺言に非常に似た機能を果たすものとして、民法に死因贈与契約という制度がございます。これは、財産を譲ろうと思う者がその相手方との間で生前に贈与契約をいたしまして、ただ、その効力の発生を自分が死亡したときにするという条件をつけるものであります。一応これで似たような結果は実現できるのでありますけれども、これは第一には、財産以外のことについては契約の対象とすることができません。それから第二番目には、生前の契約でありますものですから、財産を譲ることを自分の死亡のときまでは内密にしておきたいという場合にはこの契約は使えないわけであります。それから第三番目に、一番困るのは、譲る契約をした後に考えが変わって、財産を譲ることを取りやめたいということを考えましても、一たん契約をした以上は自由にそれを撤回することはできないのではないかという大きな問題があるわけであります。こういうようなことで、死因贈与契約というのはとても遺言のようにはまいらないわけであります。  こういういろいろなことを考えますと、聴覚・言語機能障害者の遺言というのは、制度上も、また実際上もなかなか不自由だなというのが私ども公証の現場におります者の実感でございます。  公証人会の方には、現在でも年間に何回か、聴覚障害者の関係の方々から、どうしても公正証書遺言をつくることはできないのかという御相談あるいはお尋ねがございます。時にはおしかりを受けることもございます。実例としまして、例えば、御夫婦とも障害者で子供さんのいらっしゃらない方が、もしどうしても遺言ができないということになると、自分たち夫婦が大変苦労してやっと手に入れた家の四分の一の権利が法定相続によりまして兄弟の方に行ってしまう、それは非常に困るのだが何とかならぬかというようなお話なども伺うことがありますが、そういうお話を伺うと、やはりこれは随分深刻な問題であるなということを思うわけであります。  それから、遺言者の中には、聴覚・言語機能障害者ということで正式の認定を受けているわけではないけれども、老衰とかあるいは病気等によりまして、発語機能あるいはまた聞き取る機能が非常に減退して難渋をするという方がいらっしゃいます。そういう方でも、無理をして何回もしゃべってもらう、あるいは耳元で大きな声を出して尋ねるということをいたしますれば、どうやら辛うじて会話にはなるんですけれども、御本人の病気の症状などによりましては、そういうことをするのがただただ本人を苦しませたり、あるいは本人をいら立たせたりするだけで、大変気の毒だなと思うようなことがございます。現行法のもとで公正証書遺言をつくろうとすれば、そうするしかないのかもしれませんけれども、こういうときに手話通訳とか筆談というものが許されていれば随分役に立つんだがなということを常々思ってまいりました。  こういったような現場のさまざまな経験から、私ども公証人会としましては、以前から、聴覚・言語機能障害者につきましても、健常者と同じように公正証書遺言をつくる道を開くべきである、そのための方法としては、やはり手話通訳あるいは筆談というものが認められるように法律の改正をお願いしたいということを、機会のあるたびに法務省等に要望してきたところでございます。今回の改正は、そういう意味で公証人会としては全面的に賛成でございまして、ぜひひとつ早急な実現をお願いいたしたいと思っているわけでございます。  実務家の立場から見まして、手話通訳を導入した場合に一番問題だと思いますのは、通訳の正確性あるいは信頼性の確保ということでございます。この点は公証人会でも従前からいろいろ議論をしておりました。その点につきましては、現在の公証人会の受けとめ方といったようなものを最後にごく簡単に御説明をさせていただきたいと思います。  まず、遺言には難しい法律用語がいろいろございますので、通訳が技術的にこれは対応できるかという問題でありますけれども、これについては、これまでの裁判所の法廷通訳の実績とかあるいは一般社会の普及度、さらには通訳技術のレベル、こういったことから考えまして、結論的に申しますと、技術的には全く心配がないだろうというのが私どもの認識でございます。後ほど他の参考人からもこの点についてお話があろうかと存じます。  私どもとしましては、できるだけレベルの高い通訳者を得ることができますように、県や国の試験に合格した、資格のある通訳士の方の団体、あるいは従前から公的な活動を続けていらっしゃる通訳者派遣団体と連携をとりまして、いろいろ協力関係を深めていくということが必要であろうと思っておりまして、実はつい先日も、公証人会とこういった団体の方々の関係の者が若干集まりまして、非公式ながら、いろいろな問題の検討といいますか、意見交換をしたところでございます。  もう一つ。実務の現場としましては、公正証書遺言をつくる場合には証人二人を立ち会わせなければならないということになっておりますので、この証人として手話通訳のできる方に立ち会ってもらう、そしてその証人の方に通訳の正確性をチェックしてもらう、そういうことが一番有効なのではないか、運用に当たってはこの点はぜひ実行してまいりたいと思っているわけであります。  あと、そのほかには、手話通訳を入れる場合でも、筆談を適宜併用しまして、公証人が直接遺言者から意思確認をとるというのも有効な手段ではないかと思っております。  最終のチェック方法としては、今回の改正で遺言証書を遺言者本人に閲覧してもらうということができますので、本人にできるだけ慎重に読んでもらって内容の正確性を最終的に担保してもらう、これができるようになったと言ってよろしいのではないかと思います。  こういったような実務的な対応を、改正の趣旨に即してしっかりと行えば、手話通訳を導入することによって遺言内容の正確性が損なわれるということはまずないだろうというのが私ども公証人会の認識でございます。ほかにもあるいは述べるべきことがあるのかもしれませんが、とりあえず、以上のようなことであります。  今回の改正が公証人会の年来の要望をかなえていただいたものであるということを体しまして、この制度が円滑に利用され、大いに実績が上がるように、私どもとしては、これからもいろいろ工夫をし、努力を重ねてまいりたいと思っております。この点をつけ加えさせていただきまして、私からの意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  92. 橘康太郎

    ○橘委員長代理 ありがとうございました。  次に、山田参考人にお願いいたします。
  93. 山田裕明

    ○山田参考人 山田でございます。本日は、発言の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。私も、今までのお二方と同じように、民法改正をお願いしたい、そういう立場からお話をさせていただきます。  まず、簡単に私のこれまでの経歴を話させていただきますと、私は昭和二十四年に生まれましたが、そのときは耳は聞こえておりました。ただ、五歳のときに、はしかの高熱のために失聴いたしました。しかし、学校は普通の学校を出ておりまして、発音の方もまあまあ普通の人に近いのではないか、そういうふうに考えております。それで、司法試験には昭和五十五年に合格いたしましたが、そのときまではコミュニケーション方法はずっと筆談でありました。そのころから手話を勉強し始めまして、今では大体、裁判所でもお客との相談のときなどでも手話でやっておりますが、ただ、後の野沢参考人とは違いまして、まだまだ手話歴が浅いものですから、手話の読み取りなどにはちょっと、私としては下手なところなどもございます。その点はよろしくお願いいたします。  私、耳が聞こえないということから、やはり相談者の中には聴覚障害者が多くございます。そういう人たちの中からいろいろと遺言の問題などについても相談を受けることがございました。そのときに、私はそれまでにもやはり聴覚障害の問題を研究しておりましたので、現在の公正証書遺言は聴覚障害者は利用できないというふうになっている、そのあたりは勉強しておりました。もちろん、それに対して不満は持っておりました。  少し話が順序してしまうのですけれども、聴覚障害者のコミュニケーション手段ということからまず申し上げておいた方が、後々わかりやすくなるのではないかと思います。聴覚障害者のコミュニケーション手段といたしましては、先生方もよく御存じかと思いますが、まず補聴器、それから少し変わったものとして人工内耳、これはコンピューターを使ったものですけれども、そういったものを使いまして普通の人のように会話できる、そういう方もいます。それはそれでよろしいかと思います。  しかし、そのようにして音声言語では話すことのできない人としては、まず筆談、文字でやりとりをする方法でございます。それから手話、これは、先生方もただいま通訳者の手話をごらんになって大体おわかりいただいたと思うのですけれども、手の動きを文字として読み取るというようなものでございます、余り正確ではございませんけれども。それから口話法というのがありまして、口話法というのは、読唇術などとも言われておりますように、口の動きを読んで、それで相手の言わんとすることを理解する、そういうような方法もございます。さらにまた、身ぶりだけで簡単に意思を伝達するというようなこともあります。ただ、身ぶりとか、それからまた口話法ですと、余り長い話、複雑な話などは、これは理解ができないようなのです。  それからまた、私は中途失聴者、つまり、生まれてからしばらくして、言葉を覚えた後に失聴した者ですけれども、生まれつきの聴覚障害者、先天性聴覚障害者といいます、これらの人たちの中には、聴覚障害のために言葉を覚えることもできなかった、いわゆる言語障害者という人たちもおります。聴覚・言語障害者とまとめても言うわけなんですけれども、これらの先天性の聴覚障害者の人の中には、その障害のためか、文章力も十分ではない、そういう人もやはりいるわけなんです。文章力が十分ではない人の場合は、長い文章、複雑な文章を書いたりすることがなかなかうまくいかない。ここのところは、実は大事なことなのでございます。  それから、次に公正証書遺言のメリットですけれども、これはもうお二方がお話しになりましたように、私などが強調するまでもないのですけれども、後で無効にされるおそれというものが非常に少ない、また隠匿、改ざんのおそれもない、総じてこれを、私は安全性が高いという言葉で一括してもいいのではないかと思います。それで、私は、遺言をつくりたいとの相談をお客から受けましたときには、まず第一に公正証書遺言をお勧めしております。  ところが、聴覚障害者は、残念なことには今の公証人の実務では、先ほども佐藤公証人がお話しになりましたように、ちょっとその利用ができないような状態になっているのです。実際に公正証書遺言を作成しようとして断られたという例を、平成八年の十一月ごろまでは存じなかったのですけれども、平成八年の十一月ごろになりまして、聴覚障害者の人から、公証役場へ行って公正証書遺言を作成しようと申し込んだのだけれども、耳が聞こえない人にはできませんといって断られた、どうしましょうか、そういう相談を受けたわけでございます。  それで、そのときに、実務の方もそうなっているのかどうか確認しようと思いまして、私も知っている公証人、実はこれも佐藤公証人と同じ神田公証役場の方なんですけれども、そこに電話で問い合わせましたら、その方が日本公証人連合会の方に問い合わせてくださいまして、やはり今の実務ではそれは難しいようだという返事でした。  私としては、どうもこれはおかしいのじゃないかな、そう思っておりましたら、その後になりまして、平成九年の一月に、この次にお話をする予定の野沢参考人からも相談を受けまして、自分もやはり公証役場で公正証書遺言の作成を断られた、そういったお話がありました。人に差別を設けるわけではありませんが、野沢参考人というのは、いろいろな著書もあり、身体障害者問題の指導者ともなっている、人格識見ともにすぐれた立派な方なのです。大学も出ていまして、それで文章力もある。ところが、そういう方でも公正証書遺言をつくってもらうことができない。これはおかしいのじゃないかと思うのですね。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕  聴覚障害者というものは特殊な世界かといいますと、決してそういうことはないわけなのです。例えばですけれども、人工内耳の手術を受けている人には、突発性難聴といいまして、急に聞こえなくなったという人がかなりいるわけなんです。また、のどにがんができてその手術を受けますと、発音することができなくなる。そうすると、今の法律で、口授ができないから、だから公正証書遺言はつくってもらうことができない、そんなようなことになってしまうわけなのであります。これはいかにしてもおかしいのじゃないか、私、そう思いまして、いろいろな方面で運動をさせていただいたわけなんです。  それで、今までそういった例がないか、実例を調べてみましたら、大阪の例ですけれども、ここでも松本晶行弁護士という聴覚障害者の弁護士が活躍しているのですけれども、この人に聞いてみたところでは、大阪の場合には聴覚障害者が遺言者本人として公正証書遺言を作成してもらった例はあるようだ、あるようだということですけれども、どこのだれかということは、残念ながら御本人にも記憶がなくて、教えていただけませんでした。また、聴覚障害者が公正証書遺言作成の証人となるということも大阪では断られているんだそうです。  そういうような状況にありましたから、これは何としてもおかしい、やはり私の立場からしますと、今の扱いは、法律の解釈上はなかなか難しいのかもしれないけれども、端的に申しますと、憲法第十四条の法のもとの平等に反してしまうのではないか、そのように感じられるわけなんです。また、国際人権規約B規約ですけれども、その第二十六条の方にもやはり法の前の平等ということがありまして、それに反するのではないか、そのように思いました。  翻って考えてみますと、聴覚障害者は、コミュニケーションの手段さえ確保してもらえれば何でもできるんです。コミュニケーションを確保してもらうこと、そのもとに権利もあり、また義務も負う、そのように私は考えております。  ところで、今回まで民法にこのような規定が残置されていたのはなぜなのか、そのことを考えてみますと、今の民法のもとになっておりますのは明治時代でして、世間の聴覚障害者に対する意識も低かったのではないかと思います。聴覚障害者は耳が聞こえないからコミュニケーションが十分ではなかろう、そういう素朴な疑問がもとになって今のような規定ができたという面もあるのではないでしょうか。そしてそれが現在まで続いてきた。  残念なことには、聴覚障害者の側の意識の方もそれほど高いものとは言えなかった。しかし、戦後になりまして、憲法上も聴覚障害者は平等であるべきだ、そういうような意識が高まってきたと思うのであります。そしてまた、手話の制度も普及してきた、手話だけでなく筆記、要約筆記の通訳という制度も充実してまいりまして、聴覚障害者に対してのコミュニケーションの保障ということがかなり充実してきた、それが背景にあるのではないかと思うのです。  そして、先ほど佐藤公証人がおっしゃいましたように、一般の方は、手話で果たしてその正確性が担保できるのかどうか、そういうようなことに疑問を持っておられる方が多いのではないかと思います。しかし、公証人法第二十九条ですけれども、ここのところでも、耳の聞こえない人間には通事、つまりは通訳を付す、そういうような制度がございます。これは、手話通訳でも十分なコミュニケーションを図ることができる、そのあたりを根拠に置いているのではないかと思います。また、実際にも、民事訴訟法にも刑事訴訟法にも、聴覚障害者に対しては通訳を付すという規定がございまして、それで聴覚障害者が裁判を受ける権利が保障されているわけなんです。  さらにまた、第五十期の司法修習生に田門浩という人がおりまして、この人は先天性の聴覚言語障害者でしたので、最高裁判所の司法研修所が公費で手話通訳を付して、修習を終えておりました。それで全く問題はなかった、むしろいい成績だったというように聞いております。研修所も、手話通訳についてはその有効性を十分に認めていたと思います。  それで、私どももいろいろ運動し、また法務省にもお願いしまして、民法改正案をつくっていただきました。手話通訳、筆記通訳つきの遺言ができるという法律改正案でございます。  実は、午前中のこの委員会の様子をインターネットで拝見しておりましたら、千葉大学の先生でございましたか、成年後見法は今後世界のモデルになるようなものである、そのようにおっしゃっておられました。この今回の遺言法の改正も、実はヨーロッパ各国でも余り例のない、障害者のためにとてもよろしいものだと思います。ドイツでも、フランスでもここまですぐれたものではないように承っております。法務省のおかげで、やっとここまで案をつくっていただきました。ただ、法律を改正するということは立法府の専権でございます。ぜひ皆様のお力で、今度の法律案、法律改正案を成立させて、聴覚障害者の真の平等の実現のために一歩を踏み出すようにお願いしたいのであります。  どうもありがとうございました。(拍手)
  94. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 ありがとうございました。  次に、野沢参考人にお願いいたします。
  95. 野沢克哉

    ○野沢参考人(手話通訳) 野沢と申します。きょうは、参考人としてお招きをいただきましてありがとうございます。  私は、七歳のときに聞こえなくなりましたが、山田参考人と違いまして、補聴器は全く利用できませんでしたので、自分の声をコントロールすることができませんので、初めての方にとってはわかりにくいと思いますので、田中通訳にきょうは私の発語を、発声を代読してもらいます。  手話通訳の役割について申し上げますと、手で普通の人の声を表現するということではなく、私たち聾唖者の手話を読み取る、そういった面での正確性も要求されている仕事であります。先ほど、山田参考人が、手話はちょっとおかしいというようなこともおっしゃっていたようですが、そういうことは全くございません。これからそれを証明するようにお話を進めていきたいと思います。  初めに、日本の手話の概要についてお話をさせていただきたいと思います。  レジュメというか、資料をお持ちいたしましたが、我が国の歴史の中で初めて聾唖者の教育が開始されたのが一八七八年、これは京都です。その次に、一八八〇年に東京でも聾学校が設立されました。ここで初めて聾唖者の集団が形成されました。その集団の中から共通性を持った手話が生まれてまいりました。手話については百二十年の歴史がございます。この手話が、全国の聾唖者集団に限らず、健聴者に広がり、高度な言語となってきたのは、一九四七年、現在の全日本ろうあ連盟が設立され、また一九七四年に全国手話通訳問題研究会が設立された以降です。  また、一九六九年、全日本ろうあ連盟から「わたしたちの手話」の第一巻が発行されました。一九九六年までに全部で十巻、二百三十五万部以上が全国に普及しております。そして現在、一九九七年には、このような「日本語―手話辞典」というものが発行されております。ここには八千三百二十語の手話が収録されております。  ただ、現実の手話の語彙の数ということを考えますと、八千三百二十語にとどまらず、さらに大きなものがあることは間違いがありません。言語の原則としては、語彙に不足なしということが明らかにできるかと思います。聴覚障害者の言語として見る限り、言語に過不足はないということが言えます。今私たちがいつも読んでいる新聞の場合には、一万語前後によって構成されていると言われております。八千三百二十語というのは、新聞を読むのとほぼ同じ語彙数、日常生活の中で全く不足はございません。  ただ、問題は、聴覚障害者、音声言語として、日本語の社会に生活しておりますので、そのために、手話と日本語の翻訳関係が問題になってまいります。音声言語に対応する手話語彙の問題が問題になっていると思います。その結果、社会で生活をする上で、実際の問題として、言語に対応する手話の語彙の少なさが課題として出ているかと思います。これは、歴史的に聴覚障害者が疎外され、手話が疎外されてきたことの結果であると考えております。  この課題について、全日本ろうあ連盟は、厚生省の委託を受けまして、日本語に対応する新しい手話の造語の努力を続けております。それは現状の手話、日本語の語彙に対応する手話単語をつくることを目的としております。そのための手話研究も、大学も含め今進んできております。手話語彙の増加は、今のところ組織的、意識的な努力によっての成果をまつことが多くありますので、聴覚障害者の社会参加の進展とともに、自然に手話の語彙は増加をしていくということは間違いないと信じております。  次に、山田参考人も申し上げましたが、聞こえない者のコミュニケーションの手段。聞こえない人は、障害手帳を持っている人の数が三十六万五千人おります。そのうちで、手話をメーンとしたコミュニケーションを使っている聞こえない人は八万人から十万人ぐらいだと言われています。ですから、当然、文字、口の読み取り、補聴器、身ぶり、指点字、そういったさまざまな手段は幅の広いものがございます。  公正証書遺言の作成を委嘱するような場合にでも、手話だけに限るというのは不適当であると考えております。そういう意味で、手話通訳と言わずに、通訳人あるいは自書するという言葉で九百六十九条が新しく加えられ、改正されるということ、これは非常に正しい御判断だと思いますし、我々も全面的に賛成をしているところです。どういうような方法をとる場合にしても、それに応じた通訳を派遣してもらう、その体制はもう既に十分つくられております。  国の手話通訳支援の状況についてですが、国としては、公的に手話通訳養成をしてほしいという全日本ろうあ連盟の要請を受けまして、一九七〇年、手話奉仕員養成事業をスタートさせました。さらに、一九七三年には手話通訳設置事業、一九七六年には手話奉仕員派遣事業というように、手話通訳に関する事業を国として少しずつスタートさせてまいりました。これらの事業は、予算的には身体障害者社会参加促進事業の中の一つとして、手話通訳奉仕員、まあ手話通訳奉仕員というふうに位置づけているという問題はありますが、全日本ろうあ連盟などの積極的な取り組みによって、多くの聞こえる方々の中に手話が広がっております。  そういう中で、一九七九年から、厚生省が標準手話研究事業として、日本ろうあ連盟に委託するようになりました。また同時に、手話通訳指導者研修事業、手話通訳養成ができる指導者の研修も開始されております。  その中で、一九八二年、厚生省は、手話通訳制度調査検討事業を日本ろうあ連盟に委嘱いたしました。全日本ろうあ連盟は、三年間の月日をかけましてさまざまな調査をした結果を報告しております。内容としては、五つの面がございます。  一つは、今まで社会一般で理解されなかった聾唖者の生活実態、家族関係、医療関係、労働問題、文化の問題、教育の問題等々、さまざまな分野について明確にいたしました。二番目は、聾唖者の生活にとって手話は絶対に必要であるという手話の意義が明らかにされ、手話を言語として位置づけたことだと思います。三番目は、手話通訳の必要性を認め、手話通訳制度をつくる責任が国にあるということを認めたということです。四番目は、結論として、手話通訳制度の内容は、手話通訳の養成、認定、設置、派遣であることを整理いたしました。  これを受けて、さらに二年間、厚生省によって手話通訳士の認定基準の検討をいたしまして、平成元年、一九八九年、厚生大臣公認の手話通訳士試験が開始されました。平成十年現在、全国で九百六十四名の手話通訳士が誕生しております。数の目標としては二千人ですので、まだ半分に至らないという状況ですが、今後間違いなくふえていくものと考えられます。  その一つの立場として、手話がどのぐらい一般に普及しているかと申しますと、テレビの手話もございますが、手話サークルという組織が、一九九五年の全日本ろうあ連盟の調査によりますと、全国で千六百八十七サークルがございます。大体四万人の人が手話サークルで活動をしております。また、手話の講習会につきましては、ほとんどの地方自治体が主催をしておりますが、一九九五年現在、都道府県の手話講習会が四十二カ所、そこで学んでいる人の数が一万四千人、また、市区町村レベルの手話の講習会では三百十カ所、学んでいる人の数が二万八千六百四十人。手話はこのように大変すそ野も広がってきております。  私たちも、実際に、裁判ですとか刑事場面あるいは高度医療の場面でも、今は安心して通訳を頼んで協力をしてもらっております。また、それだけではなく、我々に合う健聴者の手話通訳がいることは、安心して我々とコミュニケーションができるということです。それはきょう先生方も十分御理解いただけたものだと考えております。  その中で、公正証書遺言に通訳人あるいは自書が認められるということは非常にうれしいことであります。この前の六月十一日から十三日、鳥取県で開催されました全日本ろうあ者大会でも、聾唖者のみんなは非常に喜んでおりました。  そういうことで、私の方の御報告を終わらせていただきます。  済みません、実は、あと一分でちょうど時間になるのですが、そうしますと、今、私、机の上に置いております時計が振動いたします。あと十五秒ほどお待ちください。こういったものもできております。  今、ちょうど、二時半きっかりに振動するようにしておきました。こういったものもございます。(拍手)
  96. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  97. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村建夫君。
  98. 河村建夫

    ○河村(建)委員 自由民主党の河村建夫でございます。  きょうは、参考人の皆様には、大変お忙しい中を貴重な時間を割いて本委員会に御出席をいただきまして、ありがとうございました。また、ただいまは、貴重な御意見、また御提言を賜りました。感謝にたえません。  今回のこの民法改正、午前中は成年後見制度の問題も質疑をしたわけでありますが、自己決定権の尊重、あるいはノーマライゼーションの精神を生かしていく、あるいは残存能力の活用等、こうした抜本的な改革が成年後見制度によってなされる。そして、あわせて、これはノーマライゼーションの精神に合致すると思うのでありますが、聴覚・言語機能障害者が不可能であった公正証書遺言への道も開いていく、意義ある画期的な改正ができるということ。また、きょうおいでをいただきました参考人の皆さん方にもいろいろ御要請をいただいたことが今まさに実現しようとしている。立法府の一人といたしまして、法務委員といたしまして、この質疑に参加できますことに大変な喜びと誇りを持っておるところでございます。  さて、限られた時間でございますから、簡潔な質問になるかと思いますが、一、二、各参考人の皆さんにお聞きをしたいと思います。  久貴参考人にまずお聞きをいたします。  我々のこの日本の民法は、母法といいますか、フランス民法、フランス法からきているというふうに聞いておるわけでございます。先ほど来お話しのように、ドイツ、オーストリアにおいては既に手話による公正証書遺言の道が開かれておるのでありますが、フランスではそれがまだできていないということで、そのことから日本の法律もそうなったのかなと素人考えに思いながらおるわけでありますが、ドイツ、オーストリアでは現実にもうそういうことができておる。  この辺の事情といいますか、同じヨーロッパでありますが、どうしてそういうことになっておるのかなと。大変基本的な、初歩的な質問でございますが、まずその辺からお聞かせをいただきたいと思います。
  99. 久貴忠彦

    ○久貴参考人 十分なお答えになるかどうか存じませんけれども、少し申し上げさせていただきます。  フランスでは、確かに先生御指摘のとおり、認められてはおりません。  なぜだろうということは、実は法制審議会の民法部会身分法小委員会の審議の中でも話題になりまして、そのときのお話では、フランスでは、最近まで聾教育の中で手話が、排除という言葉が適切かどうかわかりませんが、しかし、排除されてきたという経緯があって、手話が余り発達、普及していないということによるのではないだろうかということが話題になっておりました。  フランス法に詳しい、長年留学しておりました若い研究者に実は私は聞いたこともあるんですけれども、公正証書遺言につきまして手話通訳を認めようというふうな動きは、一般にも、あるいは、研究者の書いた本とか論文の中にも見たことがないというふうなことを申しておりました。  フランスの特殊性といいますか、割に非常に頑固なところのある国と私は思うんですけれども、何かそういったことがあるいはあるんだろう、伝統的な何かにこだわっているのかもわからないというふうに思っております。  それから、ドイツそれからオーストリーの方では認めているというのは先生御指摘なさったとおりでございますが、実は、民法典の中には規定しておりません。証書作成法あるいは公証人法と呼ばれるような、それぞれの国によって名前のつけ方は違いますが、一般には、普通、公証人法とよく呼んでいるようなんですが、その中の規定の解釈とか運用として手話を認めているということのようでございます。  御質問の趣旨、つまり、これがどのような事情によるのかということは、私つまびらかではございませんですけれども、これもドイツの法律に詳しい研究者に聞きましたところでは、先ほどおっしゃいましたノーマライゼーション、障害のある方たちも一般の人たちと同じように同じ社会の中で活躍していただこう、そのノーマライゼーションという考え方が、ドイツでは大体一九六〇年代後半から出てきたんじゃないかと思うと当人が申しております。改正法がちょうど六九年、七〇年施行ですので、何かそういった国全体の空気といいますか、公正証書遺言だけではなくて、広くいろいろな問題についてドイツとしては取り組もうとした。  オーストリーのことは細かく私存じませんが、オーストリアは隣の国でございますので、ドイツの影響を恐らく受けているだろうというふうに思っております。  以上でございます。
  100. 河村建夫

    ○河村(建)委員 ありがとうございました。  人権尊重の国フランス、こう言われるのでありますが、私も不思議な感じはするのであります。幸い日本では、遅きに失したかもわかりませんが、この時点でこういう改正ができるということは、意義のあることだというふうに思います。  さて、佐藤参考人は、日本公証人連合会の法規委員長というお立場でもいらっしゃるわけでございます。先ほどのお話、御説明の中でも、公証人連合会としても、いよいよ手話通訳による公正証書遺言が実現できる方向だということで意見交換もされたというふうに伺いました。  公正証書遺言が可能になるということで、これから公証人連合会としても本格的にPR等々いろいろお取り組みになろうとされるわけでございますが、その辺についてはどういうふうな形で今から取り組んでいかれるか、改めてお聞きしたいと思います。
  101. 佐藤繁

    ○佐藤参考人 お答えをいたします。  聴覚・言語機能障害者が手話通訳を利用して公正証書遺言をつくる、そういう新しい制度が非常に円滑に利用される前提として、まずは何よりも、公証役場なり公証制度というものがそういった障害者の方たちにとっても利用しやすいものでなければならないだろうと思います。  恐らく、多くの障害者の方にとりましては、公証役場って一体何なんだ、どこにあるのか、どんなことをしているのか、用事があるときはどうすればいいのだろうか、遺言公正証書というのは一体どういう手順でつくるんだろうか、そういったような事柄についても必ずしも十分な御理解を得られていない面があるのではないかと思います。そういう点で、今回の制度をまずとにかく円滑に動かすためには、何よりもまず公証役場へのアクセスを容易にする必要があるであろうと考えます。  そういう点から、私どもとしましては、全国にあります公証役場の名称、名前とか所在地、電話、ファクス番号、それからその役場に所属しております公証人の氏名、そういったものを一覧性よくまとめた名簿をつくる、それからまた、公証役場の利用についての利用手順などをごく簡単に記載したパンフレットのようなもの、さらには、公証役場を利用した場合の手数料がどうなっているか、これは法令で定まっておるわけでありまして、そういう定まっている手数料令の内容など、そういった関係の資料を障害者団体あるいは通訳者団体等にできるだけ早い機会に提供申し上げようと考えております。  それに関連して、例えば、そういった団体から法律制度あるいは公証制度についての説明を求められたような場合には、講師派遣などにも喜んで応ずるつもりでございます。  その次には、先ほど、信頼できる通訳者の確保のために派遣団体と連携するということを申しましたが、その関係で、各県にあります公証人会と地域の通訳者団体とでできるだけ早急に意見交換をして、各地の実情を把握してもらうように、これは各地の公証人会の方に指示するように考えております。  あるいはまた、実際問題としては、聴覚・言語機能障害者の方は、御自分で通訳者を帯同して公証役場にお見えになることが多いんだろうとは思いますけれども、いろいろな事情で、自分の方では通訳者を確保できないから公証役場の方でどうにかしてほしいというような御要望がある場合もあろうと思いますので、現在、私どもの方としては、全国にあります通訳者派遣センターの一覧表なども入手いたしまして、これを各県の方にも連絡をして、その辺の対応に手抜かりがないようにしております。  あるいはもう一つ実務的に考えられますのは、この制度が実施されまして、手話通訳による公正証書が徐々につくられるようになった場合には、そういった作成事例を早速全国的に集めまして、運用上の問題点などを検討して、できるだけその運用に地域差などが起きないようにする、これも必要ではないかということを今内部で話しして、方策を検討しておるところでございます。  あとは、個別の問題としては、先ほどちょっと申しましたように、立ち会い証人に通訳者の方を入れるとか、あるいは筆談を活用して、その筆談のメモを残しておいて後日の紛争に備えるとか、そういった事案に即した実務的な工夫はいろいろあるのではないか、こういうことを今内々に検討しているところでございます。  大変大ざっぱでございますが、そんな程度でございます。
  102. 河村建夫

    ○河村(建)委員 ありがとうございました。ぜひ公証役場のPRをしっかりやっていただいたらと思います。私自身も国会議員になるまでよくわからなかったわけでございまして、職業安定所なんというのは最近ハローワークという名前をつけておりますが、そういうことでしっかりPRしていただいて、この遺言の公正証書がうまく行き渡るようにお願いしたいというふうに思います。  時間が非常に差し迫ってまいりましたが、山田参考人には聴覚障害者、野沢参考人もそうでいらっしゃいますが、この場にお出をいただいて、私も大変びっくりしたという言葉はあれでございますが、難しい司法試験をお通りになった。しかも、司法研修等も手話通訳で受講された。素人で考えてみても、あの難解な法律用語をどのような形で手話で通訳し、それをきちっと理解されたかということ、現実にそういうことをやってこられておるわけでありますから、そんなことをお聞きするのも大変失礼なんでありますが、先ほど来のお話のように、公正証書を作成する場合には、法律用語あるいは難解な、非常に複雑な事実関係を伝えていかなきゃいかぬ。先天性の方には複雑な文章をうまく書けない人も中にはあるんだということでございますが、そういう場合のこれからの支障ということについては大丈夫なんでしょうか。
  103. 山田裕明

    ○山田参考人 山田でございます。私から簡単にお答えさせていただきます。  これは多分、少し本論から外れるのだろうと思いますけれども、実は私の場合は、そのころは手話の勉強中でございまして、大体は友達の筆記通訳でやってもらっておりましたが、司法修習を通訳つきで受けたという田門修習生の場合は、通訳たちのチームをつくりまして、いろいろと専門的な言葉を手話であらわす場合もどうすればいいか、そういうようなことを勉強しておりました。  次に、これが本論だろうと思いますが、なかなか難しい言葉など理解してくれないような人ということの問題ですけれども、実はこれは健聴者の中にもたくさんおりまして、遺言という言葉は大抵知っているんですけれども、それに関係する遺留分とかそういった言葉などは知らない人が多うございます。そういう人たちに対しては、遺留分というのは一定の範囲の相続人に対して与えられた権利です、自分たちの生活を守るため残された財産なのです、そういうふうに説明しております。  聴覚障害者の場合で難しい言葉など知らないような人たちもやはりたくさんいると思いますけれども、そういう人たちに対しては、一つ一つ手話通訳をつけて、また私自身が手話で説明しまして、そのようにすると結局はわかってもらった、そういう例が多うございます。そうするとやはり時間はかかるのですけれども、そのように一つ一つ丁寧にやっていきますと、大抵の聴覚障害者は理解してくれますので、それで遺言などもつくることができるのではないかと思います。このあたりでよろしいでしょうか。
  104. 河村建夫

    ○河村(建)委員 ありがとうございました。聴覚障害者、そして弁護士として御活躍でございます。後輩の方もお出になっているようでありますが、どうぞひとつ、そういう方々に希望と夢を与える存在として、さらに御活躍を御期待申し上げます。  ちょっと時間が参ったのでありますが、せっかくでありますから、野沢参考人、この手話通訳の歴史等を説明いただきまして、大変勉強になりました。日本のこの制度というものは、国際的に見ても非常に高いレベルにあるのではないかというふうに感じておりますが、手話通訳者の今後の確保の問題、諸外国、特にオーストリア、ドイツあたりは進んでいるそうでありますが、日本は大丈夫なのかということをもう一度確認させていただきたいと思います。
  105. 野沢克哉

    ○野沢参考人(手話通訳) 野沢でございます。  御存じの先生もいらっしゃるかと思いますが、日本でも一九九一年、世界聾者会議が開催されました。日本の手話通訳のレベルも十分上がってきております。国際的にも全く、おくれているということはございません。むしろ、アジアの中では一番進んでいるということが言えます。JICAの協力をいただいて、日本にアジアの聾唖者リーダーを招いて手話通訳養成などをやるぐらいのレベルに日本はございます。  今後も、厚生省がことしの四月から、手話の奉仕員、そして手話通訳者というふうに事業を二つに分けて都道府県に指示を出しております。私どももそれを受けて、全国一律の方法で、同じ技術レベルの通訳者が誕生できるように頑張るということで計画をつくっております。ということでよろしいでしょうか。
  106. 河村建夫

    ○河村(建)委員 どうもありがとうございました。  まだ一、二聞きたいこともございましたが、時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  107. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 次に、坂上富男君。
  108. 坂上富男

    ○坂上委員 坂上富男でございます。  参考人の先生方、本当に感銘深いお話をお聞きしておりました。ありがとうございました。また、手話通訳の先生方、大変御苦労さんでございます。本当にこの法務委員会で、私たち、また聞いておる皆様方も、深い感銘を覚えておられることだろうと思っておるわけでございます。私はほとんど質問することはありませんが、特に山田弁護士さん、それから野沢先生に、最高の、最大の賛辞を送らせていただきたいと思っているわけです。  私も、ささやかでございますが、この手話通訳による公正証書遺言等について少しかかわらせていただきました。最初は、平成九年の三月十八日の法務委員会でこの問題をまず取り上げさせていただきました。その動機となりましたのは、平成九年三月十四日の朝日新聞の夕刊でございました。そこに大きい囲み記事で、何という表題だか忘れましたけれども、次のようなことが書かれておりました。  聴覚障害の方々が公正証書遺言をつくることができないということでございます。一体こんなことで、法律と常識から考えていいのだろうかという指摘がここに書かれておったわけであります。聴覚障害者の方々は、では何をすればいいんだろう。自筆遺言をおつくりになったらいいだろうとか、秘密遺言をおつくりになったらいいだろう、こういうように言われておりますと。「しかし、ここで、自筆を使うことのできない聴覚障害者の方があったら、これは一体どうなるのか。遺言ができないということになるわけです。これは一体どういうふうに法務省、考えておりますか。」、こういう質問から私はかかわらせていただきました。  法務省の方も、まじめに、真剣に、精いっぱいお答えをいただきました。当時、濱崎政府委員でございましたが、「今御指摘のありました、聴覚障害者で自分で字も書けないという方については、結論的に申しますと、御指摘のような問題があるというふうに承知をいたしております。そういう場合には、遺言という形でない死因贈与を公正証書でつくるという形で、同じような目的を達することができるというふうに考えております。」一応こういう答弁でありました。これも本当に法務省がまじめに、今の民法の、現行法の中で、どうすれば障害のある皆様方がその目的を達成するかということについてのお話だったろうと思っております。  さて、そこで、この報道によりますと、全国の聴覚・言語障害者は四十万近くいるという。そして、「この経験をした聴覚障害者の方は、同じく聴覚障害者の弁護士さんがおられるそうでございますが、この方々と一緒になりまして、手話によって意思伝達ができるのだから、これはもう公正証書、手話によっても認めるべきだという運動が始まっているそうでございます。」と。  このとき、まだ山田弁護士さんを知りませんでした。野沢先生のことも私は知りませんでした。これを書かれた論説委員の先生と、私がこの発言をしてからお会いする機会がありました。そして、山田弁護士さんや野沢さんたちが真剣に、これらの皆様方のために、公正証書遺言ができるようにと必死の運動をなさっているということを私はお話を聞いて知ったわけでございます。私に山田先生らを御紹介をいたしますというふうにおっしゃいまして、御紹介をいただいたわけでございます。  まあそんなことで、私は、差別そのものではないか、そうだとするならば、法務大臣、どうもどこか変じゃないですか、大臣、突然ですが御所感をお聞きをしたい、こう言いましたところ、大臣は、当時松浦大臣でございましたが、率直にお答えになりました。「いきなりでございますので、私は余りよくわかりません、率直に申し上げておきますが。しかし、矛盾があれば検討しなきゃならない問題だと思っております。」と。私は、「ぜひこういう人たちの差別のないように、そしてこれらの人たちも安心して遺言ができるような、そういうやはり法律でなければならぬと思っておるのです。」、こういうように結んだわけでございます。私は、この大臣の答弁をお聞きをいたしまして、何とかなりそうだな、あるいは法務省が民法改正に乗り出してくれるかもしらない、そんな気持ちも持ちました。  そして、山田先生らとお会いをすることになったわけでございます。そして、当時、山田先生は、公証人の先生方に公正証書遺言の依頼をなさいましたけれども、これはできませんということで、まあ戦術上でございましょうか、行政不服審査法でございましょうか、それをもとにいたしまして手続をなさったのかどうだったか忘れましたが、そういう努力もなさっておったわけでございます。  そして、皆様方がいろいろの努力を重ねられまして、昨年の一月、下稲葉法務大臣になりましてから、記者会見で、手話通訳等による公正証書遺言を認めたいと思います、民法を改正したいと思いますという言明がなされたわけであります。関係者の皆様方、大変お喜びになったろうと思いますし、私自身も大変うれしゅうございました。そして自後、先生方が法制審議会等でいろいろと御議論をなさいまして、その成果が今回の民法改正というような法案となって提出されたんだろう、こう思っておるわけであります。  そんなような意味におきまして、山田弁護士さん、あるいは野沢先生、本当に今日ここに至るまでの大変な御努力に私は、まあ私はいつも言うんでございますが、社会的弱者のために頑張りますなどと偉そうなことを言っておるわけでございますが、やはりその立場に立ちませんとなかなか思うようにまいらぬものでございまするし、思ったことの百分の一も実現できないことでございます。たまたまこういう問題に遭遇をいたしまして、ささやかでございますけれども、私はこの法案をこうやって法務委員会で審議をし、いずれ近くこの国会の中で法案が成立するであろうというふうに思いますと、まさに感慨無量でございまして、このお二人に私は最高の賛辞を送りたいというのはそういう意味でもあるわけでございます。本当に感謝をいたしたいと思っておるわけでございます。  また、山田弁護士さん。先生が今弁護士という立場、ここに至るまでの大変な御努力をなさったんだろうと思うんであります。本当にいろいろの困難を乗り越えられまして、難関と言われる司法試験に合格をされ、そしてまた研修期間の二年間、大変御苦労をなさって実務修習をなさったんだろうと思っておるわけでございます。それがそれで終わらないで、あなた自身がこうやってみずからの仲間の皆様方の、障害のある人たちのために必死の御努力をなさっておる、そういう献身的な姿に、私はさらにまた山田先生の御活躍に大変な敬意と賛辞を送りたいと思っているわけでございます。どうぞひとつ、健康に留意をくださいまして、頑張っていただきますことも御期待をいたしたいと思っておるわけでございます。  さて、そこで一、二点質問させていただきますが、口唇術、何か唇でもって読むという方法があるんだそうでございますが、これは公証人の先生でございましょうか、一体これは、民法の場合、口唇術でやった場合はどういう条文の取り扱いをしたらいいのか。何か御意見があったら、あるいは久貴先生でもどちらでも結構でございますが、ちょっとお聞かせをいただければありがたいと思いますが、どうでしょう。
  109. 久貴忠彦

    ○久貴参考人 的確なお答えができないような気も実は私いたしておりまして、民法自体は、基本的には発音、つまり音を口から声に出してということを基本に、口頭主義と言ったりしておりますが、それを考えておりますので、今先生、読唇術というのをどのようにこれまで扱ったか。少なくとも学説の中では、私自身不勉強かわかりませんが、余り読んだことはないような気がいたします。かえって公証人の先生御自身の御経験を聞かせていただく方があるいはいいのかと存じます。  以上でございます。
  110. 坂上富男

    ○坂上委員 先生、どうでしょうか。
  111. 佐藤繁

    ○佐藤参考人 私どもも、公証の現場で口唇術で対話、コミュニケーションをとったという例はございません。私、裁判所にもおりましたけれども、口唇術でもって法廷の仕事をしたという経験もございませんので、恐らく法曹関係者の間では、口唇術で意見陳述あるいはコミュニケーションがとられたという例は非常に少ないのではないかと思っております。
  112. 坂上富男

    ○坂上委員 山田先生、どうぞ見解をちょっとお答えください。
  113. 山田裕明

    ○山田参考人 山田でございます。  やはり、今の法解釈からいたしますと、音声言語という、単に読み取るというだけではなくて、言葉として耳から聞こえるかということを重視していると思いますので、なかなか遺言を作成してもらうことは難しいのではないかと思います。  ただ、実際に聞こえて理解しているのか、それとも全く表情だけから読み取っているのか、少し耳の悪い人、完全に聞こえないというわけではございませんけれども、そういう人の中には音と口の動きと両方から見ている人がやはりいると思いますので、そのあたり、どこで理解しているかは第一義的には公証人の御判断になるのではないかと思います。やはり、音声から聞こえない場合は今の解釈では難しいかなと思いますね。  私自身としては、とにかくコミュニケーションができれば、それで公正証書遺言をつくっていただいてもいいのではないかというふうに考えているわけですけれども、多分これは、公証人連合会の考え方、全体の取り扱いとは違っているのではないか、そういうふうに思われます。  なお、これは御参考ということになるかと思うのですけれども、人工内耳という手術を受けている人もいまして、これは、人工内耳で聞くのと口の動きを読み取るのと両方合わせますとほとんど聞こえる人と違いがないという方がいまして、そういう場合は今の法解釈のもとでも公正証書遺言をつくってもらうことができるのではないかと思います。よろしいでしょうか。
  114. 坂上富男

    ○坂上委員 お話によりますと、聾学校等では口唇術といいますか、唇で読み取るという教育が大変中心になされているという話も実は聞いておるわけでございます。  また、いろいろの問題もたくさんあるのだろうと思いますが、満足な質問もしませんでしたが、私は、ただただ皆様方の御努力に敬意を表しながら、今後ますますこういうような、いわゆる社会的な弱者の皆様方のために私たちがやることがあれば一生懸命やることを誓いながら、私の率直な気持ちを表明をいたしまして、参考人質問にならない質問をさせていただいたわけでございますが、皆様方の御活躍を期待をいたしたいと思います。ありがとうございました。
  115. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 次に、漆原良夫君。
  116. 漆原良夫

    ○漆原委員 公明党・改革クラブの漆原でございます。  まず、私の方からは野沢参考人にお聞きしたいと思います。  資料をいただきまして、私も初めて目を通すわけでございますが、日本の手話通訳制度の概要という資料をいただきまして、今一生懸命読ませてもらっておりました。公正証書遺言に手話通訳を導入する、こういう制度、大変結構なことだと思います。  そこで、お尋ねしたいのですが、この七ページに「東京都手話通訳派遣協会「対象別派遣分類表」」という一覧表がございまして、一から八まで、「生命と健康を守る」とかあるいは「人権の保持」とかいろいろなものがあります。この中で、「人権の保持」というところで、警察署、検察、裁判所、法務、その他というところにも派遣をされているということなんでございましょうが、これは東京都に何名くらいがおられるのか、また、全都道府県にこういうふうな分類表に従ったような組織化がされているのかどうか、この辺をお聞かせいただきたいと思います。
  117. 野沢克哉

    ○野沢参考人(手話通訳) 野沢でございます。  知っている範囲でお答えをさせていただきたいと思います。  先ほど申し上げましたとおり、手話通訳の制度といいますのは、国の公認した手話通訳士と都道府県が独自に試験を行って合格者である通訳者、その二つございます。  手話通訳士、国の制度の場合には九百六十四名、都道府県の場合には、十分法的な手話通訳もできるという者の数ははっきりはつかんでおりませんが、大体同じぐらいの数がいると思われます。日常的な通訳活動をやっている人は四千人ほどおります。  そういう中で、この東京都の手話通訳派遣協会のような分類表をつくりまして、きちっと対応しております。特に、警察、病院ですとかそういうところにはそれぞれの県の手話通訳試験に合格した人のリストをすべて配付してございます。夜間でも日曜日でも、聞こえない人が、必要な場合には、そういうところに電話をすればすぐに通訳が来てくれる、そういう体制にほぼなっております。そういうお答えでよろしいでしょうか。
  118. 漆原良夫

    ○漆原委員 追加でお尋ね申し上げますが、この東京都の派遣分類表のような組織体制が各都道府県にできておるのでしょうか、いかがでしょう。
  119. 野沢克哉

    ○野沢参考人(手話通訳) 公証人協会のような都道府県の派遣協会五十の載っておりますリスト、先ほど公証人の方からお話があったように、全国のリストがございます。ただ、東京都の派遣協会と全く同じかというとまだまだという段階でございます。東京の場合には手話通訳者の数も非常に多いのですが、数の少ないところもございます。十分な対応がまだまだというところもございますが、基本的には東京都と同じような基準をつくりまして、そのリストは病院、警察等に配ってありますので、それは間違いはございません。
  120. 漆原良夫

    ○漆原委員 非常に難しい法律用語がたびたび出てくると思いますが、特に法律にかかわる人たちに対する研修だとか教育だとか、この辺は今後どのようにされていくのか、そして、新しく導入をされる公正証書遺言における手話通訳士に対する研修、教育、どのようにしていくのでしょうか。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  121. 野沢克哉

    ○野沢参考人手話通訳) 私ども、今後、法律関係の、刑事の場面だけではなくて、公正証書遺言もありますし、民事の関係もあります。非常にこれから多くなってくると考えています。私ども聴覚障害者も努力をする必要があると感じております。  先ほど佐藤参考人ともちょっとお話をしたのですが、我々、聴覚障害者協会、全国各地に組織を持っております。今後、そういったところで公証人の方をお招きして、公証役場の機能ですとか遺言に必要な言葉ですとか、そういった法律に関する言葉を学習するというようなことをやっていこうという予定でございます。  また、全日本ろうあ連盟の手話研究所でも、今回、公正証書遺言改正に関するこの問題を踏まえて――今手を動かしました。あのようにやりますと遺言、それから遺書、遺留分という手話をつくるという努力もしております。聞こえない人たち、に、手話通訳と一緒に勉強していく、法律関係の言葉をつくる、深めるという学習努力を始めているところであります。まだまだ足りない面もありますけれども、お互いに頑張っていこうという決意でやっております。  この間開かれました鳥取での全国ろうあ者大会でも、そういう努力をするということをスローガンにも掲げて確認をしております。
  122. 漆原良夫

    ○漆原委員 ぜひ研修教育を積んでいただいて、公正証書遺言を確実のものにしていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。  続きまして佐藤参考人にお尋ね申し上げますが、先ほど久貴参考人の方から、公正証書遺言について、これは大正の大審院の判例ですけれども、遺贈物件の詳細について覚書で済ませた、口述を省略した、こういう御報告があったんですが、確かに、遺言をするときは物件の目録なんかいっぱいありまして、正確に覚えていないという方もいっぱいおります。  それで、そういう場合に、本人もしくはだれかがあらかじめこの覚書を、目録をばあっとつくっていって、これでいいですねというふうな感じの、口述に変えるようなそういう便法は今とっているんでしょうか、それとも、きちっとその目録は公証人が見ながら、御本人に見せないで、大体のところでもいいから全部言いなさいというふうに言わせるような格好なのか、その辺の実務の実態について教えてもらいたいと思います。
  123. 佐藤繁

    ○佐藤参考人 恐らく、多少程度の問題も入ってくるんだろうとは思いますけれども、非常に不動産等が多岐にわたりまして、しかも所在もばらばらであるというような場合に、全部を本当に正しい意味での口頭で賄うということは不可能でございます。最初の段階で、まず御本人の方からどういう財産があるかということをむしろ書面に書いていただきまして、それに伴う不動産登記簿等を全部出していただきまして、それによって、権利関係あるいは物件の表示の仕方その他に誤りがないかをまずは公証人の方で十分確認をいたしまして、それに基づいて遺言証書の原案がつくられます。  それで、最終的な作成の段階では、例えばマンションのような場合に、逐一頭から終わりまでその室番号まで読むかどうかということは、程度の問題によりますけれども、例えば当事者が千葉のどこそこにある物件というような自分たちに特有の言い方をしている場合には、そういう言い方を借用しまして、一番から五番までは千葉の物件、それから六番から十番までは静岡県の物件、それからその先も八王子にあるマンション、こういうような形で言っていただきまして、こちらもそういう目で確認をするということで、現実には、純然たる口頭のみでたくさんの不動産を確認するというのはかえって危険でございますので、両方をいわば混用しながら、本人の意思を確認し証書を作成しているというのが実態であろうと思います。
  124. 漆原良夫

    ○漆原委員 なぜこんなことをお聞きしたかというと、物件目録みたいなものを事前につくらせて、本人のもちろん意思に従って遺言はなされるんでしょうけれども、往々にしてそこに力関係が働いて、お年寄りがある意味では半分しようがないなという感じで、弱ってきてから遺言をするケースが非常に多うございまして、そんなときに、積極的にきちっと自分の遺贈する遺言に挙げるという対象が、果たして言えないような感じでなされては非常に困るなという感じを持っております。さらにまた、今度手話による場合が広がってくるわけですから、ある意味では、そこを少し厳密に考えていただいた方が遺言者の権利の保護になるのかなと、こんな実感を持っておりますので、この点、ひとつどうぞよろしく御検討いただきたいと思います。  それから久貴参考人にお尋ねしますが、今後の問題点として、「制度を支える態勢の整備と充実」という項目を挙げられておりますが、これについて御提言があられましたらお聞かせ願いたい、こう思います。
  125. 久貴忠彦

    ○久貴参考人 お答え申し上げます。  先ほど抽象的に申し上げまして、ほかの参考人の先生方、これまでこういう取り組みをしてきた、あるいは、今後こういうことをしようと思っているという、具体的にいろいろおっしゃいました。まさにそのあたりが私申し上げたかったことであるわけなんでして、恐らくきょうのお話は、特に山田先生とか野沢先生の方のお話、具体的ないろいろな細かいお話があったんですけれども、私あえて申し上げさせていただきましたら、公証人の先生にも、今後かなり、御勉強と言ったら失礼ですけれども、実際の手話の問題をかなり御理解いただくようなそういうこともやはり必要になってくるんじゃないか。そういうことも含めまして「今後の問題」と申し上げさせていただいたわけであります。  以上です。
  126. 漆原良夫

    ○漆原委員 最後に山田参考人にお尋ねします。  法律関係の仕事、弁護士の業務をやられて、大変難しい作業をされているんだなということを先ほどから感心しながら聞いておりました。また、大変御苦労があるなというふうに思っております。  実際に先生のお書きになったこのレジュメの中で、ナンバー2の(7)のところで「現在私が取っている方法」というところがございます。大きな項目として「手話通訳または筆談による公正証書遺言の必要性」というこの項目の七番目に「現在私が取っている方法」というのがございますが、これはどんな方法なのか、先生、具体的に教えていただきたいと思います。
  127. 山田裕明

    ○山田参考人 山田でございます。  実はいろいろと申し上げるつもりでレジュメには書いたんですけれども、どうしても時間がなくなってしまいまして、はしょってしまいました。  私のとっております方法というのは、聴覚障害者の場合でございますが、まずまず文章が書けるような人の場合には、私が手話で相手と話をしまして、そして希望を聞く、その上で私が文章をつくってさしあげる、それを本人に大体はそのとおりに書き写してもらう、そういう方法をとっております。  ところが、それでもなかなか文章のわからない人というのは、まあ四苦八苦と申しますか、一言一言、一字一字一字と書いておりまして、B4判の遺言書二枚のものを四時間もかけてやっと清書した。つまり、自筆証書遺言でもそれだけかかる。  ところが、それだけかかってもまだできない人というのもやはりいるわけなんです。そういう場合でも、公正証書遺言の場合は公証人文章をつくってくださいますので、それで、文章が書けない人の場合でも、自筆証書遺言はできませんけれども、公正証書遺言はつくってもらえる。まあ、口授と読み聞かせで遺言をつくってもらえるという制度はもともとは文章を読めない人のためにあったのだと思うんですけれども、聴覚障害者のためにもこういうふうにして利用価値があるものなんです。  私としては、そういうふうにして大体聴覚障害者の半分には対応できていますが、残りの半分といいますかそのぐらいの人には、文章を書いてもらえないということからどうしようも手の打ちようがない、そういう現状なんでございます。ですから、今度の法改正はぜひともお願いしたいわけなんです。  よろしくお願いいたします。
  128. 漆原良夫

    ○漆原委員 以上で終わります。  四人の参考人の方、本当にありがとうございました。
  129. 橘康太郎

    ○橘委員長代理 達増拓也君。
  130. 達増拓也

    ○達増委員 自由党の達増拓也でございます。  まず、山田参考人に質問させていただきます。  今回の民法改正、この制度改正につきまして、聴覚障害の皆様、また言語機能障害の方々、どのような議論をされているのか。期待ですとか、あるいは不安ですとか、いろいろあるかと思いますけれども、山田参考人お耳にしたところあれば伺いたいと思います。
  131. 山田裕明

    ○山田参考人 山田でございます。  実のことを申しますと、この問題は、野沢参考人公正証書遺言書の作成を拒絶された、そういう問題が起こったときに、聴覚障害者たちの間では、遺言なんてつくらないでもいいのじゃないかなどという、理解の足りない人もかなりいたことは事実でございます。  しかし、それからだんだんと話をしてみまして、なるほど、そうか、遺言というのはそういうふうに有効性の高いものなのか、そして、公正証書遺言というのはその中でも特にすぐれたものなのか、そのあたりがわかってくるような人がどんどんとふえてきました。今は期待している人が多いと思います。  私のもとにも、法律が改正されまして公正証書遺言の制度が利用できるようになったら利用したいという聴覚障害者は何人かいます。また、野沢参考人のもとにも何人かいると聞いております。そのように、期待をもって迎えられていると思います。  一方では、遺言の制度を利用したいけれども、どのようにしていいのかわからない。これは、正直言いまして、漠然たる不安。遺言というものは自分の死後に財産関係、身分関係をはっきりさせるために残すものということはわかっていると思うのですけれども、それ以上に、どういう手続でやったらいいのかわからないという不安を持っている人が聾唖者の中にはかなりいると思うのですね。そういう人たちには、いろいろな場面をとらえて、例えば講演会とか、そういったところを利用しまして、遺言というのはこういうものでこんなふうにつくります、そういうことを説明しております。  ただ、正直言いまして、私の努力もまだまだ十分ではないと思いますので、これからもいろいろな機会をとらえて、そのような不安を解消していくために努力していきたいと思っております。  よろしいでしょうか。
  132. 達増拓也

    ○達増委員 はい、ありがとうございました。  次に、野沢参考人に質問させていただきます。  この機会ですから、今回の民法改正を離れまして、一般的に法律関係や経済活動などで不便を感じる点、聴覚・言語機能障害者の立場から法律や経済関係で不便を感じる点について、少なくないかとは思うのですけれども、特にこれはと思うものあれば挙げていただきたいのです。
  133. 野沢克哉

    ○野沢参考人手話通訳) 野沢でございます。  私は、昭和四十年大学を卒業しましてから、ずっとソーシャルワーカーとして、聞こえない人たちの相談にかかわってまいりました。  今、やはり聞こえる人たちと同じように、年配の聾唖者がリストラその他に遭っております。  法律的な不備といいますと、例えば、先生も御存じのように、障害者の場合、障害者の雇用の促進に関する法律がございます。それは、一・八%雇えという義務ですけれども、ほとんどの企業は軽い障害者、若い障害者を雇って、四十代、五十代、職を失った後の人たちへの保障、職業訓練も含めて保障する体制が何もございません。  ですから、仕事を探すのに、雇用保険が切れてもなお見つからない、三年も四年も仕事を探し続ける、そういう聞こえない人が、私が相談を受けているだけでも今八百人ほどおります。  これは、職業上の問題、景気の問題も関係あるかと思いますが、法律制度的な問題で申し上げますと、今回の遺言とも関係ありますけれども、聞こえない人の、昭和五十年ごろから少しずつ年金制度の確立ですとか、法律的には雇用促進に関する法律等ができて、いい面もありますけれども、そういうのができる前からさまざまな問題がございます。  例えば、今までは、親が死んだ場合に、兄弟が財産を分けるようになってしまうとか、遺言について情報がないから兄弟の言うままにそれを受けてしまう、自分の持ち分が本当に兄弟と同じなのかわからない。また、それを強く主張すると、聞こえないくせに、兄弟の世話になっているのに、これからも世話になるのに何を言うのかというふうに言われて黙らざるを得ない。  また、先ほど佐藤参考人のお話の中にもございましたが、聾唖者の場合、特に五十、六十歳以上の高齢者は、昔の経済状況、社会状況も悪いので、結婚しても子供を産まない、あるいは産めなかったという聾唖者が大勢おられます。結婚して、夫婦でやっと頑張って自分の土地へ小さな家をつくった。どちらかが死んだら、今の法律では、例えば御主人の名義だとすれば、奥さんは四分の三だけ、四分の一は亡くなった御主人の兄弟の方に相続されてしまう。それを強く主張されると、聾唖者は非常に弱いですね。それに対して抗弁もできない。そういう現実がいつもいつも私の相談の中にはございます。  今回の公正証書、小林さんの手話で認められるということは非常に大きな進歩だと考えております。山田参考人も、筆談もなかなか難しい聾唖者もいるということをおっしゃられましたが、私も、そのとおりです。  ただ、そういう聞こえない方も、手話では非常に高いレベルでの会話が可能になってくるということです。学校に行っていない未就学の聾唖者にも何人も手話を教えておりますけれども、手話でやりますと、私どもの言語と全く同じように高いレベルで話をする。それは学問的にどうなのかというふうに言われると、私、ちょっと説明が長くなってしまいますけれども、そういった面がございます。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 達増拓也

    ○達増委員 今挙げられましたリストラや雇用の問題、また年金の問題というのは、これはもう全国民共通の喫緊の課題、急がれる課題でありますし、また、相続の問題は、これも健常者、障害者超えて深刻な問題となってきている。  ただ、そういう共通の問題について、独自の角度からの特有の問題があるということでありまして、健常者側からすれば、同じテーマについて違った特有の課題で問題を感じている、そういうあたりをきちんとお互い理解することで、立場を超えた連携ができていくんだなということを感じました。  もう一つ野沢参考人に伺いたいと思いますが、手話、手話通訳制度に対する国の支援について、今までの支援について先ほど述べられましたけれども、それでは、今後の支援のあり方について期待するところを述べていただきたいと思います。
  135. 野沢克哉

    ○野沢参考人(手話通訳) 野沢でございます。  先ほどもちょっとお話し申し上げましたけれども、厚生省が手話通訳の制度をつくり、本腰を入れるように現在なってきています。  その理由の一つといたしましては、来年の四月から介護保険制度がスタートいたしますが、介護支援専門員、手話通訳士もそこに入れるか、聾唖者問題に詳しい人を入れるかということを制度として認める、手話通訳者をもっとふやす必要があると考えております。聴覚障害者の情報提供施設で働く指導員をふやす必要があります。そうでないと対応ができない。  そういう意味で、厚生省も力を入れて取り組むように現在なってきております。また郵政省も、字幕放送、それから難聴老人がどんどんふえてきておりますので、そういったことにも力を入れてやっていただくようになっております。労働省の方でも、トライアル雇用のような制度、これは主に知的障害者を対象としておりますけれども、そういう細かな対応をやるようになっていただいております。そういう面で、我々も国に対して大いに期待しているところです。
  136. 達増拓也

    ○達増委員 最近パソコンが著しく技術的に発達しております。人間同士のコミュニケーションということで、手話通訳に取ってかわることのできないところもあるとは思いますけれども、パソコンが発達して、特に最近目立って発達しているのが、一つは音声認識ソフトの発達。一万円台でかなり性能のいい、このくらいのペースで話していることをどんどん字にしてくれるソフトが既に商品化されております。これを活用すれば、テレビの字幕ですとか、あるいは国会審議のような公的な審議をどんどん字にしていくことが可能になると思います。  もう一つ極めて発達しているのが、立体アニメーションをつくる技術でありまして、英会話の教材をパソコンを使って行う例がどんどん見られますけれども、手話についても、手話映像をパソコン上に出すことができるようになる。  こうしたパソコンの発達について期待されるところ、また何か問題として感じるところがあれば、これも野沢参考人に質問させていただきたいと思います。
  137. 野沢克哉

    ○野沢参考人(手話通訳) これは御存じのように携帯文字電話です。Jフォンと申します。文字を入力できますので、我々聴覚障害者は非常に便利になってまいりました。パソコンが発達普及いたしましたので、Eメール、インターネット、そういったものを聞こえない者も活用しております。  ただ、手話通訳にかえられるかといいますと非常に難しい問題がございます。何が難しいかというふうにいいますと、一つは感情という問題です。例えで申し上げますと、失礼ですが、国会答弁に字幕がついても、先生方、感情を余りお出しにならない。字幕を見ていて、それでわかるわけですが、ただ、先生方の感情部分がわからないわけです。手話通訳の場合には感情を込めて、手のほかに表情なども含めて表現をしています。どういった気持ちで話しているかといったことがわかってきます。パソコン、インターネット、Eメール、文字、あるいはテレビで手話をやっても、本物と同じようになるかと言われますと、やはり違うというのが正しい答えになるんじゃないかと思います。
  138. 達増拓也

    ○達増委員 大変参考になりました。時間の関係で一部の参考人にしか質問できませんことを、失礼をお許しいただきたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  139. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
  140. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。四人の参考人の皆さんには大変すばらしい御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。四人の皆さんがそれぞれの立場から、聴覚障害者の皆さんあるいは言語障害者の皆さん方が公正証書遺言をつくることができるというこの民法の改正のために本当に長い間、並々ならない努力をされてきたことに対して、私は本当に心からの敬意を申し上げたいと思います。一日も早くこの法改正が成立をし、そして具体的に障害者の皆さんが公正証書遺言をつくれる、それが実現するということが非常に大事だというふうに思いますので、そんな立場から幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  最初に、私は、山田参考人が法学セミナーの昨年の六月号にお書きになった論文、「公正証書遺言と聴覚障害者差別」と題する大変すばらしい論文を読ませていただきました。本当に感銘をいたしました。その最後のところで、山田参考人はこのようなことを言っています。「考えていただきたいのは、民法のような私法の一般法において、差別規定が差別規定と実感されないまま百年も放置されていたということである。私が調べた範囲では学者の手になる相続法の基本書や注釈書で聴覚障害者が公正証書遺言を作成してもらえないことの不当性を指摘したものはなかった。むしろ、現在の取扱いはおかしいと気付いたのは当の公証人であった。」、こういう文章がございます。  民法が施行されてからちょうど百年。しかも、基本的人権の尊重を最大の柱の一つとしてつくられた新しい憲法施行から五十二年たって、ようやくにしてこのような民法改正ができる。本当に私は、遅過ぎた、この間国会は何をやっていたんだ、法務委員会は何をやっていたんだと厳しい指摘をされたんではないか、そんな気持ちで先ほど来からの皆さん方の公述をお聞きしておりました。  そこで、山田参考人にお聞きしたいんですが、さきの論文の最後に、「民法十一条の改正は法律における聴覚障害者の実質的平等を達成するための一里を印したマイルストーンであった。」中略しますが、「完全な平等を達成するための行く手は険しい。重要なものでも次のような差別的な取扱いとその根拠条文がある。」と記して、例えば、公職選挙法百五十条一項選挙権にかかわる問題、道路交通法八十八条一項二号免許取得の問題、著作権法二十条一項、三つ挙げられておるんです。  我々がなかなか勉強不足で、聴覚障害者の皆さん、当然のことながらの権利が現実上制限されている、制約されていることがたくさんおありかと思うんです。余り時間もございませんけれども、まず山田参考人から、今回民法改正が一歩前進でありますが、こういう点残されている問題があるんだということをお知らせいただければ、ここでお述べいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  141. 山田裕明

    ○山田参考人 山田でございます。私の書いたものに興味を持っていただきまして、まことにありがとうございます。  さて、ただいま御指摘いただきました公職選挙法とか著作権法の問題ですけれども、これも今回の民法の問題と同じように、法律上は聴覚障害者を差別しているとは言えない問題ですけれども、解釈によって結局聴覚障害者が排除されているという問題でございます。  それについて、これは私個人の見解ですけれども、例えば著作権法の場合には、まだまだ著作権者の権利が確保されていない、確立されていないという面があるのではないかと思います。私の考えといたしましては、いわゆる公共の福祉といいますか、権利に内在する制約といいますか、そういうものから、著作権者の権利はある程度制限される。それで、聴覚障害者のために著作権者の同一性保持権が少しは後退して、字幕とか手話をつけることも当然であると考えられるような世の中に持っていくことが大事ではないかと思います。現実に外国では、そういうことが十分になされている国もかなりあるようでございます。  ですから、日本人の法意識が発達して、そのように、聴覚障害者のためには自分たちの権利が若干制限されることがあってもそれは当たり前のことであるという法意識、そういうふうな法意識の世界に変わっていくように私どもは努力をすべきではないかと考えております。またその場合、どうしても解釈だけでは限界がある場合には、今回のように法律改正ということを先生方にお願いしたい、そういう希望も持っております。  また、そのほかにも実は聴覚障害者の権利を排除するような条項、例えばですけれども、ただいま御指摘いただきました道路交通法八十八条は、耳の聞こえない者には車の運転免許を与えない、そういうような規定がございます。これも解釈によって、ある程度の聴力が残存している人は、会話などはできなくても、音が聞こえることで免許をもらうことができるようになっている、現実にこの私も免許はいただいております。ただ、野沢さんのように完全に聴力を失った人には今でも免許が与えられていない、そういう状態にあります。また、薬剤師に対してはやはり免許を与えないということになっておりまして、現実に、薬剤師の国家試験には合格しましたが免許は与えられていない、そういう人がいるわけなんです。そういうのは解釈ではちょっと難しいかと思いますから、やはり法律を改正していただきたい。これは立法の方でお願いしなければならないことですので、ぜひお願いしたいと思うのであります。  それに関連いたしまして、今回、民法とともに、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案というのも提出されていると思いますけれども、この中には、いわゆる公催仲裁法、ここの中に、聴覚障害者は仲裁人の資格を制限されるとか、また検察審査会法、検察審査員から聴覚障害者を排除するというような条項がございますが、これらもあわせて改正されるようになると思うのですね。私どもとしてはこれは大変ありがたいことで、直接的には民法改正だけを目的としておりましたけれども、あわせて二つも、差別条項と言うんですけれども、それを改正していただけるようになったことは大変うれしく存じます。  ただ、聴覚障害者に関する欠格条項という差別条項のある法律だけでも、数え方にもよるんですけれども、大体三十ぐらいあるわけなんです。これらのほとんどは、聴覚障害者はコミュニケーションが十分にできないから資格を与えられないんじゃないかというような、そういった漠然とした誤解に基づいて立法されているんじゃないかと思われるものですから、これらについても早急な改正をお願いしたいと思うのであります。  どうも少し外れましたが、ぜひよろしくお願いいたします。
  142. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。国会としても今後とも努力を続けていかなければならないと私は思います。  具体的に、この法律が成立して使いやすさが求められていると思います。運用がスムーズになされることが大事だと思います。そんな立場から幾つかお聞きしたいと思うんです。  私は、聴覚障害者の皆さんが公正証書をつくるために公証人役場に行くのは一番最後だと思うんです。その前提としては、みずからの権利を確認するために、法務局へも行って不動産などの具体的な特定もきっちりしなくちゃいかぬだろうし、どういう遺言をつくったらいいか、場合によっては法律相談ですね、弁護士事務所も行かなければならない。それでようやく腹を固めて、その最後に行くのが公証人役場だろうと思うんですね。  そうすると、そこに到達するためのさまざまな障害等もあろうかと思うんです。法務局関係あるいは法律事務所、また、具体的に公証人役場に行く、さまざまどんな問題があるだろうかという点をひとつお聞かせ願いたいと思うんですが、これはぜひ野沢参考人、考えられる幾つかで結構でありますが、こんな点は改善してもらいたいということが、公正証書をつくるその問題についてありましたら、率直に語っていただければ幸いであります。
  143. 野沢克哉

    ○野沢参考人(手話通訳) 野沢でございます。  私は、聞こえない人の専門のソーシャルワーカーをやっております。私は、国の制度のソーシャルワーカーとは違いまして、東京都の専門職としてのソーシャルワーカーですが、私と同じように地域で聞こえない人の相談等にかかわっている、名称はさまざまです、聾唖者相談員という言い方をしたり、情報提供施設の職員であったり、それぞれの地方自治体独自の聾唖者相談員など、全国で百八十人ぐらいおります。全日本ろうあ連盟と一緒に全国的な組織をつくっております。  しかし、ほとんどが、私と違いまして、週に三日、四日の非常勤、あるいは週に五日であっても嘱託。給料も、よくて月給二十万円、悪い人は給料が月額六万円、七万円で働いているというのが現状です。そういうところで聴覚障害者の相談を受けています。福祉事務所に手話通訳が置かれているところもございますが、手話通訳つきで相談を受けられるというところもございます。  また、本当はだめというのか、よくないことではありますが、地域によっては、そういう情報提供施設がございません。情報提供施設は、皆様も御存じのように、現在、都道府県、義務設置ということになっておりますが、まだ全国で二十カ所できているだけです。ですから、聾唖者が、そういう場所がないというときにはどこへ行くかというと、手話通訳派遣協会に相談に行くという形になります。そこではコミュニケーションはできます。ですけれども、通訳というのは、そういう相談を兼ねるということになってくると、逆に通訳がやりにくくなってくるという立場もございます。だからといって、来られた場合に帰れとは言えない、そういう矛盾を抱えながら働いているということもございます。  そういうようなことが幾つかございます。けれども、一番いいのは、国がつくることを身体障害者福祉法で義務づけている情報提供施設を、できるだけ早く全国四十七都道府県、指定都市も含めてつくっていくことだと思っています。  ただ、この情報提供施設の職員定員がたった五名です。ビデオ制作と、所長ですとかそういった人たちも合わせてたった五人です。その中で相談員の担当者はたった一人。とても全部の、県の中でたった一人の相談員、とてもできません。今、全国の相談員が受けている数が、一年間大体二千件の相談を受けています。一人で三件、四件担当しているというようなことがあります。とても、体力に自信がない限り、仕事を続けることができないという状況にあります。
  144. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。これは法務委員会だけの問題ではありません。厚生委員会その他、国会全体としての問題だと思いますので、努力をしていきたいと思います。  時間も迫っておるのですが、具体的に、公証人役場に公正証書遺言作成依頼があった、しかしなかなか適当な手話通訳人が見つからない、遠方から来てもらわなければいけない、費用の問題などはやはり大きな問題としてこれから解決しなくちゃいかぬ。国庫補助制度などもあるのでしょうか、ないのでしょうか。つくらなきゃいかぬと思うのですが、佐藤先生に、最後に、そういう費用の問題はどうお考えか、あるいは国に対する要望等ありましたら、お聞かせいただいて終わりにしたいと思うのですが、よろしくお願いします。
  145. 佐藤繁

    ○佐藤参考人 お答えをいたします。  現在の公証人法の規定は、手話通訳に限らず、通訳人一般について、通訳人は嘱託人、つまり当事者本人がこれを選定することを要する、こういう規定になっております。  こういうことなものですから、通訳の方は公証役場においでになる御本人が選んで同行していただくというのが法律の建前でございます。したがいまして、その通訳を必要となさる方と通訳をされる方とがいかなる報酬契約をするかというようなことも、いわばそういう意味では当事者の関係に任せているというのが法律の建前でございまして、公証役場の方から通訳人にその報酬を支払うというようなことは法律の予想している建前ではないわけでございます。例えば、裁判所で通訳などを使った場合には裁判所から通訳の報酬を支給するようになっていると思いますけれども、そういうのとは仕組みが違っているわけでございます。  ただ、これからの問題としまして、それではそういうことで、適当な通訳人もいないというような場合に、それは全部御本人の問題だということで公証役場が対応できるかということは、我々としても、それはとてもそんなことをしているときではなかろうと理解しておりますので、まず第一番には、適当な通訳人がいない場合には、先ほど申しましたけれども、一覧表などを参考にいたしまして、信用できるところに御紹介をする。  そうなると、その次には、当然その通訳の報酬はどうなるのかという御質問が御本人の方から公証役場の方へ参るだろうと思いますが、これもそういう意味で公証役場一存でどうするというようなこともまいりませんので、この前も、実は先ほどもちょっと触れました通訳者団体との内々の意見交換の機会でも、やはり広い意味の弱者援護というような発想もあるわけですから、通訳者団体でも、そういうものを含めて、公証役場で通訳をする場合に、一体一つの基準としてどういう額を設定するか、公正証書遺言を作成するのに非常にそれが手かせ足かせになるような高額な報酬とか、そういうことがないようにひとつ検討していただきたい。団体などでも検討していただくということで、現在のところは、それ以上特定の具体的な方策が打ち出せているわけではございませんけれども、方向としてはそういう方向で検討しているところでございます。
  146. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。  時間の関係で、久貴先生には質問できませんでした。お許しいただきまして、私の質問を終わらせていただきます。  重ねて、四人の皆さん方のこれまでの御努力に大変感謝を申し上げ、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  147. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 保坂展人君。
  148. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  まず、この手話通訳の問題に入る前に、佐藤参考人に伺いたいのですが、午前中の参考人質疑の中で、私の方で精神障害の方と成年後見制度についてちょっと質疑を交わしたのですが、今回の九百七十三条で、いわゆる成年被後見人という、今までは禁治産者だったわけですが、事理弁識能力をいっとき回復した場合に、医師二人の立ち会いのもとにということで遺言ができるという部分がございますけれども、これは過去こういった実例はあったのでしょうか。簡単で結構です。
  149. 佐藤繁

    ○佐藤参考人 正確な調査をしたことはございませんけれども、私が先輩から聞いたり、あるいは私の経験したところでは、まず九九%ないであろうと思っております。
  150. 保坂展人

    ○保坂委員 わかりました。  それでは、続けてやはり佐藤参考人に伺いたいのですが、今回大変抜本的に法改正が進んだということだと思うのですけれども、例えば突然の事故などで、手話は使えない、そしてまた文字を書くことも不可能であるという場合に、例えば文字盤だとか、あるいはキーボードを打つとすぐ音声になる機械などが出ていると思うのですが、そういうものは実務の世界で今回の法改正によってどうなっていくか、そのあたりのことをちょっと聞かせていただきたいと思うのです。
  151. 佐藤繁

    ○佐藤参考人 実は、先日の内々の勉強会の席でも、今委員のおっしゃるような、OA機器の進歩に伴ってそういうことがあり得るがどうだろうかという議論をしたわけでございます。  これは今回の法律の解釈の問題になるわけでございますが、意見としては、それもいいではないかという意見と、やはり今回の改正は広い意味でランゲージになるようなもの、ボディーランゲージでもいいけれどもランゲージと理解できるようなものでなければぐあい悪いのではないかというようなことで、そこまで踏み切るにはちょっと問題があるのではないかという意見が出ておりまして、公証人会として今特定の見解を決めるというところまでには至っておりません。もう少しいろいろ勉強させていただきたいと思っております。
  152. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、今の点について久貴参考人に伺いたいのですが、確かに、高齢者で病弱の場合に、言葉が話せなくなる、そしてまた書いてもらおうにもちょっとペンを握る力はない、しかし意識ははっきりしていて、今言ったような機器を使用して意思表示をするということは可能だというケースは非常にこれからふえてくると思うのですね。今の点について、御見解をお願いします。
  153. 久貴忠彦

    ○久貴参考人 お答えいたします。  基本的に、少し保守的かもわかりませんけれども、民法自体が規定しております従来の自筆証書遺言とか、特に今おっしゃったのは自筆証書遺言になるかと思いますが、自分の手で字を書く。もちろん、手でなくても、口でもいい、足でもいいというところまでは私たちは解釈として出しております。ですけれども、やはり全文を自書というふうに明文で規定がありますので、余り緩くは解釈しないようにというか、そこが保守的と見るか、その枠を広げるかというのは解釈にもよるかわかりませんが、少なくとも裁判例は比較的文言に忠実な解釈をしてきた。  ところが、先ほどの、省略いたしましたけれども、自筆証書遺言で、最高裁の六十二年十月八日、先生御指摘になった、まさに手が震えてというケースであったわけでありまして、これは添え手と私たちは言うておりますけれども、手が震えるので手を添えて書かせた、これが有効かどうか。  ところで、実は私これも意見書を書かせていただいて、震えている場合、支えるのは構わないと私は思っておりますし、最高裁もそういう考えなんです。ただ、基本的には自分の意思でこういう字を書くということははっきり意識して、ただ、うまく書こうとするのだけれども、特に一番わかりやすく言いますのは、ここで行を変えようと思うのに、手が震えてうまく行変えができない。そういうときに、手を添えてあげて行変えを手伝ってあげるとか、そういうふうな、どちらかといいますと形式的という言い方もちょっとふさわしくないかわかりませんが、遺言者自身が書いているその行動を制約して、あえて内容を変えていくような、それは決してここで言うところの添え手ではないだろう。全くの補助的なというものであれば、他人さんの、遺言者以外の人の手が加わったとしても、重ねて書いたようなものであったとしても、それを無効ということはないんじゃないかと私はずっと思っておりましたし、最高裁もそういう考えをとりました。
  154. 保坂展人

    ○保坂委員 では、山田参考人にお願いしたいのですが、私なども文章はほとんどキーボードで書いていまして、メモとかそれ以外はほとんど長い文章はワープロなりコンピューターで書く習慣になっているわけなのですが、手話が使えなくて筆が握れないという場合にどうなのか。これは本当にケースとしては少ないのかもしれないけれども、高齢化時代ということに目を移すとやはりここも考えなければいけないように思うのですが、御意見をお願いします。
  155. 山田裕明

    ○山田参考人 山田でございます。  ただいまの御指摘は、まことにおっしゃるとおり、今後は非常に重要な問題になっていくのかと思います。  それに関連しまして、今回の民法改正の問題についても、法務省の皆さんといろいろと協議をしてまいったわけですけれども、今までの話にもありましたが、オフィスオートメーションの利用ということはどうか、そういう問題につきましては、これは私の記憶ですから記憶違いがありましたら御容赦願いたいのですけれども、まだまだ機械に対する信頼性が十分ではないのではないのか。そういう問題が指摘されたと思いまして、なかなかそこのところまでは今のところはいっていないというようなお話があったと思います。  なるほど、機械に対してまだまだ信用性が十分ではないというのでは、それは仕方がないという気がいたしますけれども、ただ私としては、ただいまのお話に直接的な回答になるのかわかりませんけれども、私自身の経験で、これは公正証書遺言の場合でしたけれども、本人に最後に署名させたのですけれども、物すごく読めないような字だったのですけれども、一応字の形をなしているということで、本人の署名あり、そういうふうにやっていただいた、そういうようなのもありました。  もっとも、そういう場合、署名だけの問題でいいますと、公証人に書いていただく、代筆していただくということができるのですから、そっちの方で解決することもできるわけですけれども、実際に、自筆証書遺言とかそういうのができないような人たちに対して、これは人の最終的な意思をどう見きわめるかという問題ですから、厳格性にとらわれず、できるだけ柔軟に解釈して、その人の最終的な意思を尊重する方向でやる。ただ、それでもどうしても対応できないような問題につきましては、やはり立法及び技術の進歩に任せるしかないのではないか、そういうふうに考えております。  私としても、今回の民法改正でとどまるということではなしに、どんどん新しい問題に対してはいろいろと考えていかなくてはならない。また、その場合には先生方のお力をおかりすることになる、そういうように考えておりますので、その節はよろしくお願いいたしたいのであります。よろしいでしょうか。
  156. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、なるべく今回の改正をきっかけに、意思を表現するという、そこがきちっと信頼できれば幅広く認められていくように、私個人としては努力をしていきたいと思います。  最後に、野沢参考人に伺いたいと思います。  お配りいただいた手話通訳の派遣状況を拝見いたしますと、東京都議会の中継放送あるいは傍聴人に対する手話通訳ということで既に実績があるということなのですが、これによって都議会の審議内容を正確に早く把握をして、都議会においてはこれがあるわけでございます。これは大変国会の側の努力として恥ずかしい話なのですけれども、本日の大変関心の高いこのやりとりも、例えば傍聴の方に、あるいは国会テレビというのがありますけれども、そこで手話で伝えるという努力はまだ欠けているわけなんですね。この国会の審議内容を手話で伝えるということについて、恐らく御要望はあると思うのですけれども、改めてそこの御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  157. 野沢克哉

    ○野沢参考人(手話通訳) 野沢でございます。  都議会に通訳がつくようになりましたのは、そんな長い昔ではございません。二、三年前からではなかったかと思います。現在、議会に正式な手話通訳を雇うというか認めて置いているのが、岐阜県議会だけだと思います、多分。  私たちもきょうの午前中、成年後見法についてインターネットに出ていたというふうに伺っています。ただ、手話通訳がないので、そばでその画面を通じてまた通訳をやってもらわないとわからないという状態でした。我々も一般国民と同じように情報はすべて欲しいと思います。情報公開法というようなものはできておりますけれども、それは役所の資料の関係だけですから、手話をつけるというようなことにはなっていないわけです。ぜひ国会でも取り組んでいただきたいと思います。  私は時々、アメリカ、スウェーデンなどに勉強に行きますけれども、そういったところでは手話通訳が必ずつくという状況にあります。当たり前だというふうに思いますけれども。日本も手話通訳制度が徐々に充実していくと思います。  公正証書遺言のようなもの、我々もやっと皆さんと同じように利用できるようになりましたので、国会のこういった審議等についても、ぜひ通訳ですとか字幕をつけていただいて、全国の方がわざわざここに傍聴に来なくてもわかるようにつくっていただきたいということを強くお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。
  158. 保坂展人

    ○保坂委員 今の点は、今回の法改正の本当に前提となる点だと思いますので、これは恐らく与野党問わず、党派を超えて、なるべく早くそういった努力ができるように力を尽くしていくことが必要だということを改めて思いました。きょうは、大変貴重な意見を四人の参考人の皆さんにいただきまして、ありがとうございました。  以上、終わります。
  159. 杉浦正健

    ○杉浦委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  各参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時七分散会