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○坂田委員長 これより会議を開きます。
国の
安全保障に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢山有作君。
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○矢山委員 きょうはきわめて時間が限られておりますので、端的にお伺いいたしますから、端的にお答えをいただきたいと思います。
まず第一にお伺いしたいのは、
極東有事の
研究が始まるということのようでありますが、
極東有事というのは一体どういう事態を想定されておるのか、承りたい。
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○矢山委員 きわめて一般的な、まさに木で鼻をくくったような御答弁でありますが、
極東有事の事態というので当面
研究を迫られておるのは、やはり
朝鮮半島有事の場合じゃないのですか。そのことは八二年度の
軍事情勢報告の中にも、世界における最も緊張の厳しい地帯、そして重要な
地域ということで、西欧と
北東アジアと南
西アジアというのが挙げられておるわけです。それからさらに、八二年度の
国防報告を見ますと、
極東で最も可能性の大きいのは、
朝鮮民主主義人民共和国による韓国への全面攻撃だということをはっきり言っているわけですね。そうすると、そういう状態の中で
極東有事の
研究に着手しようというのは、
朝鮮半島有事をまず想定をする、そこから入っていくということになるのじゃないですか。
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○大村
国務大臣 お答えいたします。
極東有事の場合に、
日本が米軍に対して便宜供与をするということは
ガイドラインの第三項に書いてあるわけでございますが、その
研究はまだ取りかかっておりません。しかし、米側の希望もありまして、日米間で調整の上、これから
研究に着手することといたしております。しかしながら、
研究作業をいかなる形でいつから行うか等については、現在
外務省との間で検討を行っている段階でございます。
また、ただいまお尋ねのございましたどのような場合を想定するかといったような問題につきましては、今後日米間で調整していきたいと考えております。
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○矢山委員 いや、それは、われわれずっといろいろな
報道を見ておりますと、現在の
日米関係の非常に厳しい状況の中から、
極東有事の
研究には年内にも前向きの回答を出すということを言われておるわけでありますから、前向きの回答を出してどういう
研究に入っていくかというのは、なるほどこれからの御協議になると思います。思いますが、
アメリカ側のいま言いましたような
軍事情勢報告なり
国防報告等を考えてみるときに、まず取り上げられるのは
朝鮮半島有事を想定した事態ではないかということを私は申し上げておるわけでありまして、それがお答えになれぬということならお答えになれぬでよろしいが、しかし実際の
研究はそこからであるということ、私はこのぐらいのことは言われていいんじゃないかと思います。
しかし、この問題で議論しておりますとまさに時間が足らなくなりますから、それは答弁として受けておきまして、じゃ、その場合に、
研究対象になっておる便宜供与という問題についてはどういうものを考えておるのか、承りたい。
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○塩田
政府委員
日本政府が行います便宜供与でございますから、
自衛隊が行う場合と違いまして、
外務省が
主体になってお取り扱いをされることになると思います。したがいましてといいますか、お尋ねの便宜供与の内容自体がどういうことを意味するか、
アメリカ側はどういうことを希望するか、まさにそれがいまからの
研究課題でございまして、いまの時点でどういうことがあるだろうというふうな想定をいたしておるわけではございません。
-
○矢山委員
日本側は一切何も想定をしないで協議に入るというような御答弁なんですが、そんなばかな話はないだろうと思うのですね。便宜供与というものが
研究対象になっておる以上は、一体便宜供与というのはどういうものなのかということぐらいは考えて協議に入らなければ、何にもわかりませんというような形で協議に入るというばかなことが考えられるのですか。これは
外務大臣にも御所見を承りたいのですけれどもね。
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○松田説明員 お答え申し上げます。
お尋ねの点は、
外務省の立場といたしましても全く同一でございまして、これから協議に臨む、白紙の立場で万般の協議をこれから行いたい、かように考えております。
-
○矢山委員 まさに白紙もいいところですね。一切何にもない、そういうような形で協議というものができるものかできないものか。少なくともこの
研究について前向きの回答をしようという以上は、考えられる便宜供与というもの、これが
研究課題になることははっきりしておるのですから、じゃ、その場合の便宜供与というのは一体どういうものがあるんだろうかということぐらいは考えておらなければ、これはまるで
子供の協議じゃないですか。
こんな、何にもありませんということにならぬでしょう。米側はやはり便宜供与の中に、
有事の際の
後方支援の問題を考えておるのじゃないのですか。
後方支援といえばいろいろあるでしょうが。輸送だとか、
救助だとか、
捜索だとか、
サルベージだとか、弾薬、
燃料の事前貯蔵だとか、軍需
物資の緊急調達だとか、そういったものは当然便宜供与ということで考えてこられる問題だと思うのですが、一切ないのですか。全く頼りない
防衛庁、
外務省だね。
-
○塩田
政府委員 いま
外務省がお答えしましたように白紙で臨むわけでございますが、米軍がどこかの
極東地域に出動する場合でございますから、
軍隊が出動した場合にどういうことを希望するであろうかというようなことは、先生がいろいろお挙げになったことは米側としては希望するかもしれません。それは米側の方からこういうことを希望するという提案があって協議が進むわけでございますから、いまの時点では白紙である。そういうような協議があるんだろうかとこうおっしゃいますけれども、それは米側の提案を待って協議するということはあり得ると私、思います。
-
○矢山委員 そうすると、そういった、私がいま挙げたようなことが便宜供与の中身として
研究が提起されるだろうということなんですが、その場合に
自衛隊として、そういうような
後方支援といったものに対して対応できるのですか。
-
○塩田
政府委員
自衛隊に対して何を望むかということもいまからの課題でございますけれども、
自衛隊といたしましては、現在のところ
基地の共同使用といったようなことは考えられます。それ以上のことは私ども考えておりません。
-
○矢山委員 いや、
基地の共同使用は考えられるが、それ以上の
後方支援等について考えてはいないということなんですが、それが提起をされたときに、
自衛隊みずからがやる
後方支援として、それは
研究課題に現在のわが国の法制上なるのですかということを言っているのです。
-
○塩田
政府委員 御存じのように、現在の日米
安保条約なり現在の
法令、取り決め等によって
研究するわけでございますから、その
研究は、その取り決め等によってできないことはできないわけでございます。現在の
自衛隊としましては、
基地の共同使用等ができるだけでございます。
-
○矢山委員 そうすると、
基地の共同使用以外は、恐らく、
自衛隊みずからがやる
後方支援というのは、現在のわが国の法制上できないだろうと思う。そのことはあなたもいまお認めになったわけでありますから、
後方支援等について
研究課題として提起をされた場合には、明確に拒否されますね、その場合は。
-
○塩田
政府委員
法令上できないことはお断りするよりないわけでございます。
-
○矢山委員 そこで、ちょっと観点を変えて御
質問申し上げたいのですが、わが国が個別
自衛権を発動できる場合というのはどういう場合ですか。
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○塩田
政府委員 例の
自衛権発動の三要件というのがございますが、その三要件に該当する場合に発動し得るというふうに考えております。つまり急迫不正の侵害がある、それから他に手段がないという場合に侵害に対応する排除措置、対応するといいますか必要最小限度の自衛のための行動、こういう三つの要件が言われております。
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○矢山委員 そうすると、一つお聞きしておきたいのですが、
国連憲章の第五十一条に、個別的または
集団的自衛権の発動の要件として挙げておるわけでありますが、その中に「武力攻撃が発生した場合」に
自衛権を発動する、こうなっておるのですが、その武力攻撃の発生した場合というこの
解釈はどういうふうにされておりますか。
-
○栗山
政府委員 お答え申し上げます。
憲章五十一条の武力攻撃というのは、一国に対します組織的、計画的な武力の行使というものは
憲章五十一条に該当する武力攻撃であるということは、従来から
政府が申し上げているとおりでございます。
-
○矢山委員 そうすると、その「武力攻撃が発生した」というのは、現実に武力攻撃が発生した場合ですね。
-
○栗山政府委員 現実に武力攻撃が発生した場合であって、武力攻撃のおそれがある場合は含まないというのは、これは従来から政府が申し上げているとおりでございます。
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○矢山委員 そうすると、わが国の国連憲章五十一条の「武力攻撃が発生した場合」ということに対する解釈は、現実に武力攻撃が発生した場合、こういうふうにわが国は解釈しておる。ところが、この武力攻撃の発生の場合の解釈については、そういう日本がとっておる解釈のほかに、最近は「武力攻撃の脅威が発生した場合をも含む」というような解釈が出てきておるように聞いておりますが、その点はどうなんですか。いずれの国も、武力攻撃の発生ということについて、日本がとっておる解釈と同じ解釈をとっておりますか。
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○栗山政府委員 国際法の学者の間では、先生いまおっしゃいましたような、若干学説において相違があるかと思います。しかし現実の問題として、いわゆる予防戦争と申しますか、単に攻撃のおそれがあるとかあるいは脅威があるということによって自衛権を行使することはできないということは、現在の国際社会においての共通の認識であろうと思います。
ただ、誤解がございますといけませんので一言申し上げておきますが、現実に武力攻撃が発生した場合と申しますのは、攻撃、侵害が現実の問題として発生したということが必要であるということではございませんので、先ほど申し上げましたような、組織的、計画的な武力行使が行われるという事態が発生しました場合には自衛権の発動は許される、これは国際法学者あるいは国際社会の同での共通の認識、あるいは解釈であろうと思います。
-
○矢山委員 そうすると、どういうことなんですか。現実に武力攻撃が発生したというのは、これは物理的な問題として確認できますね。ところが、いまのお話を聞いておると、必ずしもそうじゃなくて、武力攻撃が現実に起ってなくても、そういうようなことが起こるということが確実に考えられる場合には自衛権の発動が可能だということになると、現実に物理的に起こっておる場合より範囲が広くなってきますね。
-
○栗山政府委員 先ほど私が申し上げましたように、単に相手国のそういう意図があるかもしれないとかあるいは脅威があるということで自衛権の発動が許されるということではございませんで、武力攻撃というのは組織的、計画的な武力の行使ということで、一つの客観的にだれしも認識できる明白な事態であろうと思いますので、そういう事態が発生しましたときにはその攻撃の対象になっている国は自衛権の行使が認められる、こういうことでございます。
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○矢山委員 それでは、この国連憲章五十一条の「武力攻撃が発生した場合」という場合に自衛権が行使できる、その武力攻撃の発生した場合ということに対する解釈といいますか、それは日本もアメリカも全く一緒であるということが言えますか。
-
○栗山政府委員 同じであろうというふうに私は考えております。
-
○矢山委員 同じであろうというふうにあなたが考えておるということは、アメリカに対して、武力攻撃の発生した場合というものをどう認識するかということを、お互いに意見を出し合って確認し合ったということではなくて、日本の立場として、日本側から、アメリカも日本が解釈しておると同じように考えておるだろうと、こういうふうに推察をしておるということですね。
-
○栗山政府委員 若干私の申し上げたことは言葉が足りなかったかもしれませんけれども、先ほど来申し上げておりますように、組織的、計画的な武力の行使というのは一つの客観的にだれしも認識できる明白な事態でございますので、そういう事態が発生した場合に国際法上自衛権の行使ができるということは、これはあらかじめ相談しておくとかいうような問題ではございませんで、一つの客観的に明白な状況に対する対応でございますので、そういう点につきましてアメリカも日本も認識を同じくしていると、こういうふうに考える次第でございます。
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○矢山委員 認識を同じくしておると考えると言うのですが、現実に対処した場合に、アメリカと日本が、武力攻撃が発生した場合という解釈が全く一緒になるということであるなら私はそれなりに理解できますが、必ずしも絶対一緒であるというふうに断定はできない場合ができてくるんじゃないかと思うわけです。自衛権の現実に発動される事態がどういう事態に発動されるかという判断が違ってくると、これは日本とアメリカとの間の対応に相違ができてくる、これは当然のことです。
そういうことを申し上げておいて一つお聞きしたいのは、安保条約の第五条の場合ですが、御存じのように、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め」て「共通の危険に対処するように行動する」ということになっておるわけですが、この場合に、一体日本とアメリカとどちらがこの武力攻撃が起こったというふうに判断するのですか。
-
○栗山政府委員 これは従来からも政府が申し上げているところでございますけれども、わが国の施政下にある領域に対する武力攻撃でございますから、これはまさにわが国が攻撃を受ける、こういう明白な事態でございますので、アメリカが認定するとかわが国が認定するとか、どちらが認定するというような状況の問題ではないというふうに考えます。
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○矢山委員 それは現実をいろいろ考えない、机の上の議論じゃないんですか。たとえば、日本における米軍基地への攻撃が自衛権行使の要件をいつも満たしておるというふうに言えますか。わが国が自衛権を発動できる場合というのは、自衛権発動の三要件ということでいま防衛局長の方からお話があった、その自衛権発動の三要件と、アメリカがこの第五条によって自衛権を発動して武力行使に出る場合と、全く判断が一緒だということが考えられるでしょうか。
そこで、私は一つの具体的な例を引いてお尋ねしたいのですが、日本における米軍基地への攻撃がいつも日本が言う自衛権行使の要件を満たしておるということで判断が一致するか、一致しないかという場合の一つの例証としてお尋ねしたいのは、たとえばわが国の領海内にある米軍艦艇が攻撃をされた場合、その場合に一体どうなるかということ。というのは、わが国の領海内にあるわが国の艦船が武力攻撃を受けた場合に、常に自衛権発動の三要件を満たしておると考えて直ちに武カ反撃に出るかどうか、これはいろいろ判断があろうと思うのです。わが国の領海にあるわが国の軍艦が武力攻撃を受けた、しかし判断の仕方によっては、直ちに武力的な反撃をするのでなしに、あるいは外交交渉によって解決のつくそういう道もあるわけで、わが国としては独自の立場として自衛権発動の要件を満たしておらないというふうに考えられる場合は、これはその判断に基づいて直ちに武力反撃をしないということも考えられますね。ところが、わが国の領海にある米軍艦が武力攻撃を受けた場合、その場合には米国の武力による反撃というのは、日本の判断というのは働かぬのじゃないですか。アメリカの立場に立って判断をし、武力による反撃に出るということは当然考えられると思うのですね。そうすると、そういう具体的な場合になったときに、自衛権の発動としての武力による反撃という問題で、日本側の判断とアメリカの判断とこれは食い違ってくる場合が出てくるということが想定されると私は思うのです。常に一緒でしょうか。
-
○栗山政府委員 いかなる事態のもとにおいて武力攻撃が発生したかというふうに認定するかということにつきましては、従来からも先生御承知のようにたびたび国会で御議論がございまして、放府といたしましては、現実の時点において、どの時点で武力攻撃が発生したかはそのときの国際情勢、相手国の明示された意図、攻撃の手段、対応等々によるもので、抽象的にまた限られた与件のみを仮設して論議すべきものではございません、ということを従来から申し上げておるところでございます。
ただ、先ほど先生が御提起になりました問題について申し上げますと、わが国の領海内にある米軍艦に対する攻撃ということでございますから、これは、米軍艦に対する攻撃もさることながら、その前提にございますのは、まず当然わが国の領海内に、すなわちわが国の領域に対する武力攻撃があったあるいは発生しておるということを先生は与件としてお述べになられたというふうに私は理解いたしますが、そういう事態でございますれば、これはアメリカが判断するとか日本が判断するとか、どちらが先に判断するとかという問題ではなくて、まさにわが国の領域に対します武力攻撃が発生しておる事態であろうというふうに考えられますので、それはわが国自身の問題として、わが国の自衛権が発動される状況にあるというふうに当然考えられるだろうというふうに存じ上げます。
-
○矢山委員 武力攻撃を受けた場合に、たとえばわが国の軍艦がわが国の領海で武力攻撃を受けたという場合には、わが国の判断によって、それは現実に武力攻撃が起こったから反撃するという形に出るのか、あるいはいろいろな状況を考えてみてわが国の武力反撃の判断をするわけで、自衛権の発動には先ほどおっしゃった三つの条件があるわけですから、その三つの条件によって、わが国の軍艦に対する武力攻撃はわが国で判断することができますよ。ところが、アメリカの軍艦に対して武力攻撃があった場合に、その判断を、いわゆる武力による攻撃であるということを判断して、そして武力反撃に出るか出ないかは、これはアメリカの問題でしょう。アメリカが武力反撃に出れば、これはわが国の方からやるなとかやらぬとか、いいとか何とか、そんなことを言えた問題じゃないでしょう。わが国の領海内にある米軍艦が攻撃をされた、それに対して反撃するかせぬかは、わが国が自衛権の発動として考えておる三要件というものにアメリカは別に縛られるわけじゃないでしょう。アメリカの判断で反撃するかせぬかを決めていくわけでしょう。そうじゃないのですか。日本が判断してやるのですか。
-
○栗山
政府委員 先ほどから申し上げておりますとおりに、一つの
組織的、計画的な武力行使ということは、一つの客観的に明白な事実でございますので、そういう場合でありますれば当然
安保条約の五条という事態でございまして、わが国と米国とが共同で対処する、そういう事態であろうというふうに考える次第でございます。
先ほど申し上げましたことの繰り返しになりますが、
領海内にあります米
軍艦に対する攻撃というのは、そもそも米
軍艦に対する攻撃
以前の、わが国の
領域そのものに対する攻撃でございますので、攻撃の対象になっておるものが米
軍艦であるかあるいはわが
自衛隊の自衛艦であるかということは、むしろ二次的な問題であろうかというふうに私は考える次第でございます。
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○矢山委員 そればおかしいのじゃないですか。なるほど、わが国の
領海内にある
アメリカ軍艦が攻撃された、それはわが国の
領海に対する侵犯だ、そこはわかりますよ。ところが、それが
組織的、計画的な武力攻撃なのかどうかという判断は、必ずしも日米で一緒になるわけじゃないでしょう。
日本としては、
日本領海内における米
軍艦が攻撃された、そのときに
日本の判断で見るなら、それはいろいろな客観情勢があったにしても、これは
組織的、計画的とまでは言えない、したがって武力による反撃をしなくても、その他の手段で決着がつくではないかという判断をたとえばしたとしても、
アメリカの方の見方で、これは
組織的、計画的な武力攻撃なんだという認定をすれば、
領海内にある米
軍艦が攻撃されたのだから、
アメリカはみずから
自衛権の発動をやるんじゃないんですか。そこまで全く一緒になるという保証はどこにもないんじゃないんですか。
-
○栗山
政府委員 一般論で申し上げますと、
国際的な武力衝突で、
組織的、計画的な武力行使に至らない事態での武力の衝突、非常に偶発的、単発的な武力の衝突ということは、一般的な
自衛権の発動要件であります武力攻撃の事態とは異なる事態としてあり得るということは、先生の御指摘のとおりであろうと思います。
しかしながら、どういう状況が
組織的、計画的な武力の行使であるかということは、先ほど申し上げましたように、一定の仮説だけを設けて議論するということは、これはなかなか困難な事態でございます。
しかしながら、他方において一定の、発生しました事態というものがそういう事態であるかどうかという判断になりますれば、これはもう客観的に非常に明らかな事態ということでございまして、別に
アメリカが一方的に判断して行動を起こすとか、あるいは
日本と
アメリカの判断が食い違うとか、そういう余地はない状況であろうというふうに私は考えます。
-
○矢山委員 それはあなたが考えることで、これが
組織的、計画的な武力攻撃と見るのかどうかという見方というのは、これは変わってきますよ。
アメリカと
日本とが常に一致するということにはならぬでしょう。
アメリカがかつて
レバノンに対して派兵をやったが、あれは
集団的自衛権の行使だということでやったわけでしょう。そういう理由づけでやったわけだ。そういう場合を考えてくると、
アメリカの
自衛権の行使というのが
日本と全く一致するということは、これはたまにはあるかもしれないが、まずほとんどない。
ところで、では、第五条の
自衛権の発動という場合に、
日本の考え方に
アメリカは束縛されるのですか。
アメリカは束縛される
義務があるのですか。
日本は
組織的、計画的な武力攻撃でない、だからこの場合は
自衛権は発動すべきでないと判断した。それに
アメリカは、
日本領海内における自国
軍艦が攻撃された場合にはどういう
態度に出るかということで、
拘束されるのですか。これは
拘束されぬのでしょう。
アメリカは
アメリカの判断で^
日本領海内における自国の
軍艦が攻撃された、これは
組織的、計画的な攻撃であるという判断をして武力反撃に出るということは、第五条で認められないと言うのですか。それはできるんでしょう。そこまで
日本が
アメリカの武力反撃を
拘束できるという前提で、第五条はつくられているのですか。
-
○栗山
政府委員
条約の仕組みについては矢山先生よく御承知のとおりに、第四条で、
条約の実施に関して日米間は常に随時協議をして、日米間において種々の
条約の実施、あるいは
条約が予定しておりますような状況にどういうふうに対応するかということにつきましては、日米間において随時緊密に協議をするチャンネルが
存在しておるわけでございます。したがいまして、必要に応じて、そういう随時協議の場を通じまして、日米間において物の考え方その他について緊密に調整をするということが、
条約の仕組みとしては考えられておるわけでございますけれども、いずれにしましても、第五条におきまして、
アメリカがいわゆる対日
防衛義務というものが発動されるという状況におきましては、これは
アメリカが
拘束されるとかされないとかという問題ではございませんで、わが国に対します武力攻撃が発生した事態でございますから、これは
アメリカがわが国と一緒に共同対処をする
条約上の
義務が発生するということでございます。
-
○矢山委員 だから武力反撃をやる、その
条約上の
義務が
日本にも
アメリカにもあるから、したがって
自衛権発動をどういうふうに考えられるかということが非常に重要な課題になるということで、私は申し上げておるんですよ。
では、随時協議するとおっしゃるけれども、これを武力攻撃と見るか見ないか。たとえば武力攻撃と見るか見ないか協議する、協議して、必ずしも
合意できなければいけないとはどこにもないでしょう。協議はするけれども、
アメリカは、いや、これはわが国に対する武力攻撃だと見るんだということで、その場合五条によって武力反撃をできないという、そこまで
日本は
拘束できないでしょう。そこまで
拘束できるんですか。協議をやるのは――協議をやるという場合はあるでしょうが、どうなんですか、協議をやるということは必ずしも
合意ということじゃないですよ。第五条で
合意が
義務づけられているんですか。――こういう重大な問題は
外務大臣なり
防衛庁長官から答えてくださいよ。これは
事務官が判断する問題じゃない、こんなものは。
-
○松田説明員 五条の運用の側面に御言及でございますので、私から答弁させていただきますが……(矢山委員「運用の側面と言ったって大変な運用だよ」と呼ぶ)御承知のとおり、常時米国と
日本との間では
安保条約の運用について協議が行われておりまして、四条に基づく各種の協議があることは御承知のとおりであります。まさに問題が生じたときにあわてないよう、問題が生じないように常時協議するというのがこの四条の仕組みであることは御承知のとおりでございます。そしてその根底に、日米が共同して
日本の
安全と極大の平和と
安全に寄与するという共同認識があって、対処している次第でございます。
したがって、先生の御設問が仮に、逆に
日本が武力攻撃と認定するという場合に、
アメリカの方がむしろまだそうではないんではないかという事態も、そういう逆のケースも両方あろうかと思います。その両方を含めまして、随時の協議と日米間全般の調整を通して、そういった食い違いのないように常にきわめていくことがまさに日米のいまの最も大事な問題だと理解し、努力している次第でございます。
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○矢山委員 いや、随時協議する、協議して、たとえばあなたが言われたように反対の場合だが、わが国が、これはわが国に対する組織的、計画的な武力攻撃であるという認定をした、アメリカは、いや、そうじゃないよ、そこまではまだいっていないという認定をした。その場合には恐らく第五条の発動を、日本は、いや、おれに個別自衛権があるのだからと言って、この発動を恐らくようせぬでしょうね。しないと思う。しないと思うと言って断定をすると、あなた方は、いや、そんなことはわからぬ、こうおっしゃるかもしれぬが、恐らくアメリカが、それは武力攻撃でない、だから日本は個別的自衛権の発動をやるべきではないと言うのに、それを振り切ってまでやるというのは、まず考えられないでしょうね。ところが、アメリカの方がいろいろ緊密な協議をやったが、いや、これは日本が反対しようがどうしようが、これは組織的、計画的な武力攻撃だとおれは認定するんだ、だから武力による反撃をやるんだ、こうなったときに、日本はとめられるのですか。現実に即して話をしてくださいよ、回りくどいいろいろなことを言わないで。
これは大臣、安保条約の運用にかかわる、きわめて重要なんですよ、日本の安全を保つ上に。だからこの判断は、私は事務官がやる判断じゃないと思いますよ。これは高いレベルでやる判断ですよ。だから外務大臣なり防衛庁長官の御見解を承りたい。何遍聞いても、事務官の答弁は、いままで一つも前進がないんだから、もういいですよ。あなたはいい。もう幾ら言ったってだめだ。大臣の見解を伺いたい。あなたはもうだめだよ。
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○坂田委員長 栗山条約局長がやって、そして外務大臣から……。
-
○矢山委員 これは大臣が答えなければいかぬ。これはきわめて重要な政治的な判断を要する問題ですよ。あなたはもう答えぬでもいい。
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○坂田委員長 一応やって、それから大臣から……。
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○栗山政府委員 委員長の御指名をいただきましたので、一言だけ……。
まさに先生御指摘のように、そういう基本的に重要な問題でございますので、それであるからこそ平素から日米間においては十分協議を重ねておりますので、現実にそういう事態が発生しましたときには、日米間でそういう基本的な重要な問題についての認識の相違があり得ようはずがないということは、従来から政府がいつも申し上げておるとおりでございます。
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○矢山委員 外務大臣、防衛庁長官、答えてください。そんなでたらめな話があるものか。
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○坂田委員長 園田外務大臣、どうですか。
-
○園田国務大臣 安全保障についての日米関係は、その根底に、日本と米国の友好とそれから極東の平和を守ろうとするというのが前提でございまして、そういう重大な時期の判断というのはまさに一つの大きなポイントである。しかし仮定でそれをやられて、そういう場合はこうする、こういう場合はこうすると申し上げることは、今後実際にそういう事件が起きたときの一つのハンディになりますから、大臣の答弁は差し控えたいと存じます。
-
○大村国務大臣 お答えいたします。
確かに重要な問題でございますので、私どもも平生から勉強しなければならないと思うわけでございますが、いま外務大臣が述べられましたように、日米間は平生から信頼関係が大切でございますので、そういった点も念頭に置いてこれからも努力してまいりたい。そして、御指摘のようなときに重大なそごを来すことのないようにいたしたいと考えております。
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○矢山委員 これはきわめて重要な問題なんですが、何しろ時間が短時間でもう来てしまいましたので、最後に申し上げておきますが、私はこういうように考えるのです。
わが国には集団的な自衛権はない、こういう解釈をずっと続けてきておられるわけですね。ところが、集団的自衛権がないという前提に立って物を考えるなら、第五条の武力反撃という問題については、わが国が考えておるいわゆる自衛権行使の三要件を満たすということが前提になければだめなんです。そうすると、その前提が崩れた場合、つまり三要件を満たす、そして自衛権を発動するというその縛りがアメリカ側にもきいてない場合は、当然第五条による米軍の武力反撃があるわけだ。そういうことを考えたら、わが国は個別的な自衛権以外には自衛権の行使はできない、集団的自衛権の行使はできないということだけで安保条約を解釈することはできるのですか。私はできない場合があると思う。そうじゃないですか。
わが国の第五条の発動の場合、わが国の自衛権発動の三要件が常に満たされた場合以外には武力反撃はないのだということならいいのです。ところがそうでない場合がある。日本とアメリカの判断が食い違う。アメリカは武力反撃に出る、その場合に日本は、おれの判断は武力反撃に出るところまではいってないからということで拒否はできない。それを拒否するためには、アメリカも日本と同じように自衛権行使の三要件、これを守るという前提がなかったらだめなんです。そうでしょう。わかりましたね。
そうなると、安全保障条約というものは個別的自衛権ということで全部を律することはできない。集団的自衛権にかかわってくるのではないですか。そうなると、そのことが、わが国の解釈で言うなら憲法上許されぬと言うのでしょう。許されぬのなら、そういうような事態を想定をしながら極東有事の研究をやるというのは、私は問題があると思う。つまり極東有事の検討をやるという場合には、個別的自衛権と集団的自衛権の区別をどこでどうやるのだというこの点がぼけてしまう。そうなるのじゃないですか。だから、極東有事の研究をやるということは集団的自衛権行使の体制を固めることになるから、わが国は憲法上集団的自衛権の行使はできないと言っておるのだから、極東有事の研究はやるべきではない、こういうのが私の考えです。
この問題はきわめて重要な問題です。これは安保条約の運用上の基本的な課題としてどうしても詰めなければならぬ問題ですが、残念ながら時間が参りました。そして、私はあらかじめ言っておいた今回の対韓経済援助の問題について質問することができませんでしたが、これはまた別の機会に改めてお尋ねしたいと思うのです。
以上で終わります。
-
○坂田委員長 有馬元治君。
-
○有馬委員 私は外務大臣とはさきの、第一回目の外務大臣のときにも軍縮問題で実は御縁がございました。五十三年の五月に本院で、軍縮特別総会に関する決議がなされました。そのときに、五党提案の決議案でございましたが、私が趣旨説明に立ちまして満場一致で決議がなされたわけでございますが、これを受けて、五月三十日に、大臣が国連総会でわが国の立場を鮮明に表明され、自来三年半になりますが、その間における軍縮努力、いかになされたかということを時間があったら逐一聞きたいのですけれども、きょうはございませんから、当面問題になっておるヨーロッパにおける戦域核の配備と交渉の問題について、そしてまた、それはわが国に当然はね返る問題でございます、一体で考えなければならない問題でございますから、わが国がこれにどう対処していく考え方であるのか、その点を主としてお尋ねしたいと思います。
そこで、先月の中旬、十二日から十六日まででございましたが、西ドイツのミュンヘンでNAA、北大西洋評議会というのがございまして、私ども衆議院から八名の有志議員がオブザーバーとして出席したわけでございます。自民党から竹内先生、椎名先生、平沼先生、それに栗山先生と私の五人、それから公明党から渡部先生、民社党から西村先生、新自由クラブから石原先生、合計八名が有志議員として、しかも去年に引き続いてオブザーバーとして出かけてまいりました。私は、今度の二回目でオブザーバーとしての地位は定着してまいったと判断をいたしております。もちろん中にはフランスの議員のように、NATOの地域外である日本から何でオブザーバー面して参加するんだ、こういうふうな空気もございまするが、大勢としては、日本がアジアからオブザーバーとして参加することについては、積極的に歓迎をしていただきました。私はこれは非常に大事なことだと思います。
NAAの従来からの活動ぶりは御承知だと思いますが、アメリカ、カナダの二カ国並びにヨーロッパの十三カ国、合計十五カ国から成る二百名を超す国会議員から構成されておる、これは大事な評議会なんです。日本ではNATOという軍事機構が正面に出るだけですが、その背後といいますか、それと対等な立場で、むしろ政治的にはNAAが重要な意思決定をしておる、こういう背景のもとに軍事機構であるNATOが動いておるという実態でございますから、これらについての御認識は外務御当局はもう十分持っておられると思います。
私はこのことを云々するのじゃございませんけれども、今度のミュンヘン会議に行った時期に、ちょうどわが国の政府派遣で稲山ミッションが経済摩擦の解消のためにヨーロッパへ大デレゲーションを繰り出しており、われわれはわずか八名で、しかも有志という私的な立場で出かけておるわけでございますから、私どもの存在はきわめて影の薄いものであったと思いまするが、しかし、その中においても、現地の出先機関は、われわれに対して接遇関係等においては非常に万遺漏なきを期していただいたわけでございます。このような大きな問題がことしのNAAにおいては議題になっているわけですから、もっと外務省の取り組み方といたしましても、現地のミュンヘンの一総領事館任せということでなしに、もちろん後からブリュッセルから西崎公使が駆けつけてくれましたけれども、もっと全欧的な体制で、経済摩擦以上に安保摩擦は大事なんですから、そういう御認識でこれは取り組んでいただきたいと思います。
大臣、現地からもいろいろな報告が来ておると思いますけれども、今回のミュンヘンにおけるNAAの総会に対する評価をひとつお聞かせ願いたいと思います。
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○園田国務大臣 御発言の中でいろいろ大事な御意見が拝聴されまして、感謝をいたします。
欧州諸国で見られておりまする平和デモ、反核デモ等の諸運動がだんだんと活発になってきております。教会、環境保護団体、労働団体等多くの団体がこれに関与しており、かつまた、ドイツの政治情勢もこれに影響しておるとは言われておりますけれども、この運動がだんだん活発化しておるということば、素朴な一般国民の感情がこういうことに非常に関心があるということだと考えて、欧州諸国の平和と安全保障の問題がこれらの諸国に大きな政治的関心と論議の対象となっておる、こういうことでこれに注意をしておるところでございます。かつまた、外務省としては、外務審議官をそちらへ派遣をして、この運動についてあるいは艦機関と連絡、情報の収集に努めておるところでございます。
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○有馬委員 園田大臣、私が次に聞こうと思っていることを先に言ってしまったからちょっとぐあいが悪いんだけれども、われわれが出席してオブザーバーとしての地位が定着しかけております。そして大事な問題を協議したわけです。このことに対する外務省としての評価は、これはおまえの方で勝手に有志議員で行ったんじゃないか、そんなことはわれわれの公的な視野には入ってこない、こういう見方をしているのではまさかないとは思いますが、私は押し売りしませんからこの程度にしておきますけれども、これは非常に大事な話し合いの場なんです。経済ミッションも大事かもしれませんけれども、安保問題というのはなお大事なんです。それをひとつ御認識をいただきたいと思って冒頭申し上げましたので、これは御回答なくても結構でございます。
そこで、どういう空気であったかということはもう大臣は御承知だと思いますけれども、私は私なりに簡単に申し上げてみたいと思いますが、戦域核の配備と軍縮交渉について非常に熱心な討議がなされました。かつてといいますか、二年前に二重決議が採択されておることは御承知のとおりでございますが、これをめぐって各国の国会議員が非常に真剣な討議をした。しかしその結論は、やはりこの二重決議を確認し支持していこうじゃないか。そして、ちょうどボンの反核デモが展開された直後でございましたので、ボンのこの反核運動に対する各議員の見方、これは議員の発言の中に必ずと言っていいほど引用されておる、これほど大きな問題なんです。決して軽視してはならないということは、各議員異口同音に言っておりました。
もう一つは、開催場所がミュンヘンである。大臣も、若い時代にミュンヘン会議の思い出があると思います。英、独、仏、伊と四カ国の巨頭が集まった。片やヒトラーとムソリーニ、片やチェンバレンとダラディエ、この巨頭の名前は、われわれいまでも覚えておるわけです。そして、あのヒトラーの力の政策にチェンバレンが屈した。この宥和政策が、翌年から展開される第二次世界大戦の引き金の一つになったことは覚えておられるでしょう。これをまた同時に各議員は口にして、ここで妥協してはいけないのだ、力には力で対抗していかなければいかぬ。一面ボンの反核運動に非常に気を使いながらも、結局はチェンバレンの轍を踏んではいけない。これがやはり決め手になっているわけです。だからこそ、二年前の二重決議を、反省しながらも、なおかつ、これを確認し支持していこうという空気が、今度のNAA総会の支配的な空気でございました。
これは、今後の欧州の運命、世界の運命を決する上で非常に大事な場面なんです。このことを私は外務大臣によく御認識いただきたいと思って、先ほどどういう評価をなされますかと聞いたわけです。
そこで、時間がありませんから要約して申し上げますが、ボンを皮切りにヨーロッパに展開されておる反核運動、平和運動、これは各国それぞれ事情は違います。違いますけれども、これらの運動に対してどういうふうな評価を与え、政府はどういうふうに判断しているのか。私もこれは楽観をして、そのうちいずれ鎮静するだろう、ある会合でそういう報告をしたのでございますが、どうもその考え方には少し甘い点があるのじゃないか、これはやはりもっと重大に考えなければならぬのじゃないか。それからもう一つは、さっきのチェンバレンの轍を踏んではいかぬ。こういう二つの大きな空気の中で、われわれはこの問題を判断していかなければならぬ。
まず、この平和運動に対する政府の見解をお尋ねしたいと思います。
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○園田国務大臣 先ほどは、もっともなことでありますから答弁いたしませんでしたが、先生初め各党の方々が御出張になって、各方面から公正な立場でこの会議に参加をされ、オブザーバーとしてではありますけれども、ヨーロッパの関心を呼び、非常に正確な情報をとらえられたことを感謝いたしております。今後ともこういう面はもっともっと――外務省だけでやっておりますとどうも情報や判断がへんぱになりますから、議員の方々の御協力を期待するものであります。
いまの平和運動、核反対運動というのは、先ほど申し上げましたとおりに非常に重大でありまして、非常な関心を持って見ておりますが、これは単なる一時のデモであるとか、あるいは関係団体のみの連動であるとは私は判断ができない。やはりヨーロッパ国民の過去から未来へと見通した非常に素朴な反省と決意があって行われている運動であるから、おっしゃるとおりにこの運動の成り行き、これは世界平和、米ソの対決がどのようになっていくか、どのようにしなければならぬか、こういう一つの羅針盤にもなると思って、注意をしておるところでございます。
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○有馬委員 この反核運動の実体に体する政府の考え方、これはよっぽど検討してかからないと、この平和運動は決して軽視してはならない。そこで、総会における議員の発言の中からも、この平和連動は軽視してはならない、どうすればいいか、結局政治指導者と大衆の心が一致してないわけですから、これは容易なことではないと言われておりまして、これこそまさに政治家が啓蒙をし、説得しなければならない最大の問題なんです。西ドイツのシュミットも、それからキリスト教民主同盟のコール党首も非常に深刻に受けとめておる。西ドイツ史上最大の脅威だ、核の脅威よりもこれがこわい、これほど言っているわけですから、これはもっと深刻に受けとめて検討をしなければならないのじゃないかと思います。
反面、これをソ連がどういうふうに見ておるか、そして、その背後にソ連なり共産主義者というものがどういうふうな動きをしておるか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
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○武藤政府委員 ソ連の新聞論調を見ておりますと、当然ヨーロッパにおきます平和運動、反核運動というものに積極的な評価を加えているという傾向が見られるわけでございます。ただ、ヨーローッパにおきます運動の背後にどれだけソ連の影響力というようなものがあるかという御質問につきましては、もちろん背後の問題でございまして、いろいろうわさをされておるところはあるわけでございますけれども、私どもといたしまして、何らかの確証を持ってそういうものがありということを申し上げることはできかねるというのが現状でございます。
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○有馬委員 この分析を長々とやっておると時間がございませんが、私は、これからも引き続いた問題でございますから、これはもっと真剣に分析をし、われわれの心構えをきちっとしておく必要があろうかと思います。
そこで、この三十日からは、米ソの間でヘイグ、グロムイコの戦域核を中心とする会談が始まるわけでございますが、これについてはいろいろな憶測があるようでございます。当然外務省御当局もいろいろな観測をしておると思いますし、また何もこれはウラル以西だけの問題ではない、アジアに必ず飛び火をし、初めから一体で考えなければならない問題でございますから、これに対してどう対応していくのか。どういう見込みを持っておられるのか。
この点については、NAAの総会におきましてもいろいろな議員から発言がございました。代表的な発言の一つをとってみますと、イギリスのカートライトという議員でございますが、これは核兵器についての基調報告を共同で行った一員でございますけれども、このカートライト氏は、近い将来開始される交渉について、要するに三十日から開始される交渉について、統一した見解が確立されることが基本的に重要である、交渉の過程でその成果の成功、不成功についての基準が統一されていなければならない、やたらと理想的な見解で終始してみても落胆するだけである、そして欧州の団結が崩れ、分裂をしていくということは最も大きな脅威である、脅威といいますか、もっと大きなヨーロッパの失態である、こういう意見が出ておるのでございます。
そこで、昨日あたりの毎日新聞を見ておりますと、ゼロオプションで始まるのではないかとか、いろいろな観測が出ております。私も理論的筋道から言えば、ゼロオプションから始めゼロオプションに終わるということが一番理想だと思います。しかしこれが実現するという保証、見込みは絶対にないと思います。絶対ないと言っては悪いですけれども、ほとんどない。したがってこの際、戦域核交渉においてはどこまでやれば成功するのか、どこまでやらなければ不成功に終わるのか、これは大変大事なことだと思います。ゼロオプションの理想論だけをわれわれは考えているのではない。しかし、そこから始まってどこで終わるのか、それが成功したのかしないのか、こういうことは大変大事なことだと思います。ひとつその辺の観測なり、観測ではない、政府は一体になってヨーロッパとも意思の交換をしなければならないと思う。その上でヨーロッパ側を支援して、その目標までは日米の今度の交渉において成功させなければならない、そういう問題でございますから、ひとつ大臣の御見解を承りたいと思います。
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○園田国務大臣 三十日から始まると言われております交渉は、御承知の国連総会におけるグロムイコとヘイグの会談から始まったものであります。しかしながら、これは理想ではなくて、やはり米ソ両国が真剣に軍縮話し合いについてはやらなければならぬ立場になってきたと私は判断をいたしております。
しかしながら、その後中性子爆弾その他の問題がありましたので、若干スピードがおくれたり、あるいはほかの問題が出てきたりしましたけれども、この三十日の交渉をきっかけに制限交渉、または重ねて米ソ両国の外相会談等が逐次行われる。これは具体的に一歩一歩と前進することを期待をし、これに対してわが日本もできるだけの努力をしなければならぬと考えております。
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○有馬委員 外務大臣、これは大変なことなんですよ。私が先ほどウラル以西の問題ではないと申し上げたのは、日本の問題でもあるのです。戦域核がヨーロッパに二百五十基配備されておる。これに対してアメリカの、ヨーロッパ側のパーシングIIだとかあるいは巡航ミサイルの配備計画合わせて五百二十数基、これでバランスがとれるという判断で真剣にやっているわけでしょう。だからこれが今度の米ソ交渉でどういう見通しになるのか、どういう形で軍縮が展開されるのかということは、私は非常に重大な問題だと思います。まかり間違えば、交渉の結果さらに悪化することもある。これはお互いの信頼感が欠如していくわけでございますから、下手をすると、これが引き金になって逆に軍拡競争に陥らぬとも限らない、そういう重大な問題でございますから、もう少しこの辺のわが方の見解と、それから全体の見通しとしてはどうなるんだ、こういう見通しは持っておらないと、成功したのか不成功に終わったのか、この判断もできない。
そして、ウラル以西の問題ではない、まさに日本の問題でもある。現にいま生産されておるSS20は二対一でヨーロッパとアジアにいままでは回されており、すでに七十基前後配備されておる、これが専門家の常識でございます。そういう中において、もし仮にヨーロッパはある程度の軍縮が話がまとまった、そうなれば、生産をとめない限りあとは全部アジアに持ってこられるじゃないですか。そして、アジアに持ってきたSS20は中国に向いておるのだ、こんなことを言っております。また、日本には非核三原則があるんだから、核配備のないところには核攻撃はしないのだ、こういうソ連の言い方もございます。そんなことに現実に政治家が惑わされたのではこれはもうどうしようもない。したがって、アジアにおいてもヨーロッパと同じように真剣にこの問題は取り組んでいかなければならない問題ではないか。われわれといいますか、日本の国民全体の風潮としては、非核三原則があるから核のことはタブーである、アメリカに任せておけばいいんだ、どうなっておるかはアメリカ次第だ、アメリカさんに任してあるんだ、これだけでは私は済まされない問題ではないかと思う。
したがって、この当面問題になっておる戦域核、中距離ミサイルの軍縮交渉についてアメリカとどういう話をしておるのか。これは何もヨーロッパの問題ではない、こういう立場から、グローバルな見地から、アメリカにどういう話をしているのか、全然接触もないのか、その辺をひとつ。われわれとしては非常に心配だ。防衛力の整備もさることながら、その前提となる核戦略について、われわれはもっと慎重な見識を持たなければならぬ。私は当然外務大臣は持っておられると思いますし、アメリカともその意味で何らかの交渉をされておると思いますので、そういう点をひとつ大臣の口からお聞かせ願いたいと思います。
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○園田国務大臣 先ほどのヨーロッパの運動、それから、先ほど先生方が出席された国際会議あるいは米国の安全保障、平和に対するいろいろな議論、こういった点を見ましても、非常に明瞭であることは、西側から言えば、力の均衡が破れたならば大変だ、しかしまた、力の均衡という力だけで軍事増強がこのまま進むならば、これは非常な恐るべき事態になる、したがって力の均衡、その均衡を崩さないように、逐次両方が話し合いで軍縮交渉、兵器の管理、こういう話し合いをやれ、そして何方の対決をだんだんと緩和していけ、これが先般出られた国際会議の二重決定の基礎であると考えております。
いろいろ紆余曲折はありますが、私は、大体世界の平和に対する願いというものはそういう方向で前進すべきであるし、前進しておる。もちろん楽観することは危険でありますすそういう意味で、国連総会で私はその趣意の演説をいたし、かつまた、ヘイグ、グロムイコ両長官にその趣旨を強く要望をして、両国の話し合いになったわけでありますから、日本側としては、日本側の要請なりあるいは情勢の認識等はそれぞれ必要に応じて申し上げているつもりでございますけれども、いま交渉が開始される前にどうこうということを申し上げることは不謹慎であると考えますので、お許しを願います。
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○松田説明員 ただいま大臣から、お尋ねの第一点、軍備管理、軍縮の前進の分野についての所信の御表明があったわけでございますが、お尋ねの第二点、わが国と米国との話し合いの状況について御説明申し上げます。
本件は、御指摘のとおり軍備管理、軍縮の側面と、アジアの安定、わが国へのかかわり合いという二つの側面を持つ重大問題であることは、政府もつとに認識しておりまして、従来より国会におきましても、たびたびその認識と成り行きに注目している点は申し上げてきたところでございます。
私どもは、米国がこの分野における西側陣営のリーダーとしての立場からも、十分に万般の考慮をしていることを信じておりますが、同時にわが国としても、全体の交渉の結果あるいは経過から、戦域核がヨーロッパにおいては制限されたけれども、極東アジアにおいてはそのような状況に進まないということが、相対的な意味でわが国ないしは極東の平和と安定にかかわり合いのあることを十分認識しておりまして、この点については米側とも従前より話し合っております。
最近の例を一つだけ申し上げますと、九月末に来日いたしましたカールッチ国防副長官と私どもとの会談の際に、この点を十分論じ、意見を交換し、協議したところでございます。その内容の詳細は遠慮さしていただきますが、こういったことも含めまして、高い次元での接触を含め、日米間で本件についての意見の交換は十分に進めているところでございます。
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○有馬委員 いま局長から、米国との接触の一端について披瀝がございましたが、この核問題は、外務大臣と総理が体当たりでやらなければ、話すら通じない問題だと私は思うのです。交渉の中身について一々私ども聞いているわけじゃないので、その姿勢を私は問題にしている。非核三原則がある以上は、防衛庁長官が何ぼ防衛力増強を強調しても、核の問題には触れられない。これはもう外務大臣しかできない仕事なんです。外務大臣と総理しかできない。これをやることによって、わが国の防衛力はどういうふうに持っていかなければならぬかということが当然出てくる問題なんです。これをあなた任せにしているから日本の防衛力問題についても腰が入らない。もっと核問題については外務大臣が率先して、総理を動かして、シュミットだってブレジネフに体当たりしているじゃないですか、こういうことをやらなければ前進も後退もありっこない。遠くの方でほえているだけに過ぎないじゃないですか。私はそういう意味で、これから始まる米ソの戦域核の交渉に重大な関心を持ち、また、われわれの見解は絶えずアメリカに伝えながら、この交渉を成功させてもらいたい。単にテーブルに着くだけが能ではない。下手をすれば、これが第三次世界大戦の引き金にならぬとも限らない大事な問題です。ひとつ体を張ってやっていただきたいということをお願いしまして、私の質問を終わります。
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○坂田委員長 市川雄一君。
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○市川委員 最初に外務大臣にお伺いしたいのですが、最近米議会で対日防衛費の増額要求について一連の決議案の動きがございます。一方には慢性的な対日貿易赤字というものを背景にはしておりますが、十月二十二日には日米安保条約改定決議案、これは提出後撤回されました。十月二十八日にはGNP二%の安保税決議案とか、あるいは今月の四日にはGNP一%への防衛費増額要求決議案というものが出てきておりますが、こうした動きについて外務省としてどう見ているのか、またどう受けとめておられるのか、この点を外務大臣にお伺いしたいと思います。
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○園田国務大臣 御発言の問題は、御承知のごとく米国議会内で採択された決議案ではございませんし、いま一つの動きとなってあらわれているわけであります。したがいまして、こういう問題に私は一々コメントを言うことは差し控えますけれども、しかしながら、少なくとも、こういう動きを見ますると、日本の防衛努力に対する米国内の一般的な期待感というものは十分認識できるところでありますので、今後ともかかる認識を踏まえつつ、あくまで自主的な判断に従い、憲法及び基本的防衛政策に従って、わが国の防衛力の整備を行う考えであることに変わりはございません。かつまた、米国のこういう動きに対しては、これの理解を求め、お互いに相互理解するために、外務省としてはその方面に今後努力をしたいと考えております。
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○市川委員 それでは、こうした要求が表面化してきた原因というか、背景というものをどういうふうに分析しておられるのですか。
-
○園田国務大臣 一つは日米間の大きな貿易摩擦、貿易不均衡というものも非常に影響していると思います。それに従って米国内の国民感情というものが、日本は得するだけ得をしてやるべきことをやらぬじゃないかという非常なそういう感情もあるし、そういうことからいろいろ動きが出てくる、こう思っておりますが、しかしわが国としては、わが国の立場あるいは能力あるいは世界平和に対する考え方、こういうものをもっとアメリカの国民の方にも理解してもらう必要があると考えております。
-
○市川委員 そうすると、こうした問題に対する日本側の対応としては、貿易摩擦の解消が第一義的である、こういうお考えというふうに理解してよろしいですか。
-
○園田
国務大臣 こういう動きが起こる原因をお尋ねになりましたから一つずつ申し上げただけで、
貿易摩擦を解消すればこれが解消するとは考えておりませんし、
貿易摩擦もそう簡単に半年や一年で解決するとも考えておりません。
-
○市川委員 では、
貿易摩擦以外の原因として見ておられる点はどういう点ですか。
-
○園田
国務大臣 これは下田の会議とか、それから皆さん方が
参加される日米
議員の意見の
交換等にもしばしば出てくるように、米国での、
日本がやるべき
義務を果たさないで、そのために
経済的にどんどん得をしているんだというのが一番大きな、素朴な原因じゃないかと思いますけれども、また、
日本の憲法とかあるいは
アジアの状態とか、こういうことに対する心からなる御理解を願うという努力にわれわれは欠けた点もあると考えておりますので、今後全般について努力をしたいと考えております。
-
○市川委員
日本の憲法とか
アジアの情勢について米側に理解を求める努力が欠けておった点もあるということですが、GNP一%まで
防衛費を増額せよという
決議案を出されたこのザブロツキ委員長、六日の日ですか、
日本政府が
日本の立場を説明したいというのであればこれに応じるだろう、こういうコメントをされておるのですが、これは一々米
議会の動きに合わせてこちらから対応する必要はない、全く無視していくということなのか、それとも一連のそういう理解を得る努力を
外務省としてはやっていこうということなのか、その辺はどうですか。
-
○園田
国務大臣 私のコメントをここで申し上げるのが適当でないというだけで、努力は十分努力をしなければならぬと考えております。
-
○市川委員 先ほど
ヨーロッパにおける戦域核の問題が議論されておりました。重複は避けたいと思いますが、ブレジネフ
ソ連共産党書記長が、今月末ジュネーブで始まる米ソ戦域
核ミサイル制限交渉を前に、西独のシュピーゲルという週刊誌の会見の中で、NATO側が八三年から予定しておりますパーシングIIと巡航
ミサイル、この配備を取りやめれば、
ソ連もSS20を含む
核ミサイルの大幅削減に応じる用意がある、こういう見解を発表しているわけです。ここで特に注目されておりますのは、
ソ連側は公式に初めて
ヨーロッパにおける
ミサイルの数を確認した。
ソ連側が九百七十五基、NATO側が九百八十六基、これに新しく配備される新型のパーシングII、巡航
ミサイルを含めて五百七十二基、これが
西側に加わりますと、
ヨーロッパ正面における東西の
軍事バランスが一対下五になる、こういうこともあわせて言っておるわけですが、こうした
ソ連側の提案というものについて、先ほど
外務大臣は、ほかの
質問でしたが、いままさに
交渉が始まろうとしているときに、その
交渉についてコメントすることは差し控えたいということをおっしゃっておりましたけれども、こういうことについて
ソ連側の提案に対しどういう分析を、分析はお聞かせいただけると思うのですが、どういうふうに見ておられますか。
-
○園田
国務大臣 交渉が始まる前に、その中心である
ソ連と
アメリカがそれぞれ
政治的にあるいは
外交的にいろいろ働きかけることは当然でありまして、一方
アメリカから言えば、核配備をするとかしないとか、片方から言えば、それをやめれば何はやらぬとか、そういうやりとりのあれだと思って、詳しく拝聴しておるところでございます。
-
○市川委員
交渉前の、言ってみれば
アドバルーンのやりとり、こういう感じで見ておられるわけですか。
-
○園田
国務大臣 交渉を有利に導くためにそれぞれ一生懸命にやっておられる、こういう努力だと思います。
-
○市川委員 時間が限られておりますので、次に
防衛庁にお伺いいたします。
防衛庁が
防衛白書等で再三にわたって強調しておられる
シーレーンという問題です。海上
交通路の確保ということを言っておられるのですが、まあ大体いままでの答弁では、
日本列島の周辺数百海里、
航路帯で千海里、こういうことなんですが、この
航路帯の方でお伺いしたいのです。
これは
新聞紙上では南東
航路、南西
航路、いわゆる京浜を起点にしてグアム方向へ千海里、それから阪神を起点にして
フィリピン方向へ千海里の南東、南西
航路帯ということが言われておりますが、
防衛庁の考えておる
航路帯というのはこの二本の
航路帯に特定しておられるのかどうか、その点をまず確認したいと思います。
-
○大村
国務大臣 お答えします。
防衛庁といたしましては、ただいま御指摘のような範囲で、
海上自衛隊の
有事における整備目標を掲げて整備を進めているところでございます。
そこで、特定した
航路帯を考えているかというお尋ねでございますが、そういうことではございません。いわゆる南西、南東
航路帯といったものを一応念頭には置いてありますが、もともと
航路帯の設定は、そのときの脅威の様相等に応じて行われるべきものであって、必ずしも特定の
航路帯や海域を固定して考えることは適当でないと考えております。
-
○市川委員 非常に重要な発言だと思うのです。
航路帯を特定してない。もちろん無数というか、
航路帯というのはたくさんあると思うのです。ですからそういう意味では、それを特定してないということになりますと、その
航路帯を確保するということは、非常に膨大な
軍事費がかかると思うのです。そういう意味でいまの御発言は非常に重大だと思うのです。
もう一つ確認しておきたいのですが、南東
航路、南西
航路、この二本の
航路帯を軸にして北西
太平洋の三角形の面というものがあるわけですが、いままで帯なのか、面なのかという議論がされてきましたけれども、この南東、南西
航路帯についてお伺いしますが、これはやはり面に及んだ
防衛をお考えになっていらっしゃるのですか、どうですか。
-
○大村
国務大臣 お答えいたします。
航路帯を設ける場合も、最近では、船団を組んで行くいわゆる直接護衛という形よりも、やや広い一定のエリアにおいて
防衛していくという、いわゆる間接護衛方式に移行しつつあること等を考慮に入れますと、狭い帯のような
航路帯というよりも、面的な要素を持った
航路帯における海上作戦というものにだんだんなってきているのではないか、そのように考えているわけでございます。
-
○市川委員 そこでお伺いしたいのですが、この
シーレーンの確保という
概念ですね。
概念というか、
定義というか、考え方というか、要するに、まずどういう脅威から何を守るのか。何をですね。要するに商船隊を守るのか、何を守るのか。それからそれをどういう手段で考えておられるのか。この辺が非常に、いままで
国会答弁等を伺っていてもどうもはっきりしない。きょうは実は時間があればもっとこれを具体的に詰めたいのですが、まずこの辺の考え方をひとつ明確に伺いたいと思います。
-
○塩田
政府委員 何をという点は、何といいましても
シーレーンの
防衛でございますから、海上
交通の保護、具体的に言いますと
船舶の保護ということになろうかと思います。
何から守るか。やはりそれに対する攻撃でございますから、空中、水上、水中の三方面からの攻撃があり得ると思います。それに対して守る。
何をもって守るかということでございますが、やはり同じく
航空部隊あるいは水上艦艇をもって守る、こういうことになろうかと思います。
-
○市川委員 いろいろ問題があるのですけれども、従来の御答弁では、南西、南東
航路帯について必ずしも
航路帯だけではない、面だ。それはP3C等を想定されてお答えになっていらっしゃるのじゃないかと思うのです。つまり哨戒、偵察をいま考えているという意味の御答弁があった。そのいまのお答えで、特に空についてお伺いしますが、そういう防空、要撃、こういうこともいまお考えになっていらっしゃるわけですか。
-
○塩田
政府委員
シーレーンの
防衛についての空からの攻撃に対する
防衛ということになりますと、もちろん
航空自衛隊の
戦闘機部隊をもってする空の
防衛ということも考えられるわけでございますが、現実の問題といたしまして、
航空自衛隊の
戦闘機部隊の行動半径がございますから、実際問題、
基地から展開いたします
航空部隊によって
防衛できる範囲におきましては、それは当然
航空部隊による要撃もいたします。しかし、
シーレーンはそれからさらに相当遠くまであるわけでございますから、実際問題として
航空部隊をもって
シーレーンの
防御ということは困難でございます。したがいまして、その部分につきましては、
海上自衛隊の艦艇による対空
ミサイルあるいは
機関砲等による護衛、
防衛ということになろうかと思います。
-
○市川委員 そこで、その守るということなのですが、船舶、恐らく商船隊だと思うが、これを守るということはどういうことなんですか。
たとえば、いろんな方から指摘されていますけれども、元米海軍作戦部長のハロウェー、一九七五年当時大将だったこの方の発言が、非常に有名な発言としてこのシーレーンの問題でよく出てくるんですけれども、このハロウェー氏は、われわれがペルシャ湾からヨーロッパと米国に至る石油の補給路を保護する方法は、大西洋の戦いを勝つことであり、ソ連海軍を敗北させることのできる米海軍を持つことである、ペルシャ湾から出てくる石油タンカーの安全を、それを護衛することによってだけでは確保することはできない、こういうことを言っておるわけですよ。ですから、いわゆる船団護衛方式、間接か直接かは別として、いずれにしてもその海域において、その海域を脅かすであろうと想定しておる相手の海軍力をノックアウトする力を持つことである、こう言っておるわけですね。この辺はどうなんですか、この守るという意味は。つまり、おっしゃっている南東、南西航路帯、北西太平洋、面、防衛庁もそういう予想をされる相手をノックアウトする海軍力を持とうという発想なんですか。それともそうでない別の考え方で守るのか。その守るという意味をもうちょっと明確にしていただきたいと思います。
-
○塩田政府委員 現在、各国の海軍力の海洋を支配する目標といたしまして、従前から制海権の確保ということが言われておりますが、現在各国の海軍を見た場合に、従前から言われておる意味での、いま先生が言われました相手国の海軍をすべてノックアウトするというような意味での制海を目指しておる海軍というものは、米ソ両海軍はあるいはそうかもしれませんが、現実に各国の海軍はとてもそういうことを考えておりません。
各国海軍のいま制海と言っておりますのは、二つに分かれておりまして、一つはいまおっしゃったような意味の完全な制海権、もう一つはやはりシーコントロールと言いまして、それぞれの国がある一定期間、一定の作戦目的に応じてある海域をコントロールするということができれば、それをもってシーコントロールと言って、それを一つの目標にしておるわけでございます。
そういう意味で、わが国の場合でも、海上自衛隊がいま話題になっておりますような南西航路あるいは南東航路等におきまして日本の商船隊を保護するという、いわばシーコントロール的な意味での海上防衛作戦、これをわが国の自衛隊として目指しておるわけでございまして、御指摘のような、いわゆる従前から言われております制海権の確保というような意味の海軍力の整備というようなことはとうてい私どもの考えておるところではございませんし、またできないところではないかと思います。
-
○市川委員 シーコントロールということの具体的なことにもうちょっと触れたいのですが、時間が来たようですから、次の機会にそれはしたいと思います。
最後に一点、施設庁にお伺いしたいのですが、横須賀市にある米軍の三施設の返還問題ですね。この三施設の返還は、日米間でもうすでに合意されておると思いますが、日米合同委員会に今後かける必要があるのかないのか。恐らくないんじゃないかと思いますが、その点が第一点。
第二点は、これはたしか昭和五十二年秋にそういう合意があったと思うのですが、その後の返還のめどですね、いつごろ返還されるのか。それで返還のめどとして恐らく移設をされておると思いますので、移設工事の完了後に返還されるだろう。したがって移設工事の進捗状況、返還のめど、時間が余りないようですから簡単にお願いしたいと思います。
-
○吉野(実)政府委員 お答えをいたします。
第一点の、日米合同委員会にもう一回かけるのかどうかということでございますが、基本的には昭和五十二年、それに続く合同委員会でもってもう合意はされております。今度正式に返還をされる前には、所定の移設工事をするということが条件でありますので、そういうことが予定どおりできているかどうかということを確認することが主体となりまして、合同委員会に上程をすることになっております。
それからもう一つ、返還のめどはいつかということでございますが、先生がお話しになりましたように、三施設とも移設工事が完了をいたしましてから返還という運びになりますが、いつ移設工事が終わるかということでございますけれども、これは横須賀市の要望等もありまして、返還の優先順位といいますか、遅速の度合いが違いまして、稲岡地区ですか、あそこが一番早い。その次が兵員クラブ、その次が長井住宅地区、こういうふうになっておりまして、最初の稲岡地区につきましてはことし中に移設工事が終わります。それからもう二つの施設につきましては、五十七年度中に所定の全部の移設工事が完了することに予定しております。その後で移設が行われる。こういうことでございますので、基本的には五十七年度末までに工事ができますから、その後で返還する、こういうことになりますが、一部につきまして若干調整を要する。特に長井住宅の部分でございますが、残っているようでございますので、工事完了後若干調整期間が要るという事態も予想されるかと思います。
-
○坂田委員長 吉田之久君。
-
○吉田委員 先ほどからの政府の答弁を聞いておりまして、特に外務大臣や防衛庁長官の御発言を聞いておりまして、私は、アメリカがいよいよいらいらするのは当然だ、そのうちに怒り出すのじゃないだろうかというような気さえするわけなんです。
いま市川委員からも御指摘がありましたけれども、ヘルムズ、ニール、ザブロツキ、こう続いて出されております三つの決議案の動きですね。それは確かに外務大臣がおっしゃるとおり、まだ採択されたものではありません。あるいは撤回されたものもあります。しかし、それぞれに米上院の、外交委員長とか、あるいは下院の外交委員長らがみずから提出をしたり、あるいはかかわり合って撤回さしたりされている動きでございますね。そういう議会を中心とする強力な動きが現に起こってきているにもかかわらず、外務大臣は、まだ採択されたものでもないそういうものに対して、一一コメントすることは差し控えたい、とりょうによっては歯牙にもかけないような、そういう態度が私にはほの見えてまいります。あるいは、米ソのやりとりをただながめているだけだと言ってみたり。あなたは外務大臣でなしに外見大臣だ、外から見ているだけの大臣かというような気がするわけですし、また防衛庁長官も、日米共同声明によってシーレーンを守るということが総理の約束として向こうの大統領になされている事項であるにもかかわらず、一女特定の航路帯や海域をまだ設定いたしてはおりませんと言われる。要するに日本は何もしていないではないか、こうとられたって当然だと思うのです。この辺の米議会を中心とする最近の一進の動きに対して、もっとわが国の政府、その最も責任あるべき外務大臣や防衛庁長官というものは、もっと緊密なきめの細かい対応がなされなければならないと確信する次第でありますけれども、お二人の御意見を伺いたいと思います。
-
○園田国務大臣 御発言の趣旨はよくわかりましたが、何か言うと生意気な発言をすると言われるし、言わなければ歯牙にもかけない、こういうことで、なかなかむずかしいところでございますけれども、私が申し上げましたのは、歯牙にもかけないということではなくて、米国の国民の要求とつながったいろいろな動きであるから、十分関心を持ち注意をしておるところであります、しかしながら、まだ委員会に付託されただけでありまして、今後どのようになるかわからぬのに、正式の場所でコメントを私が言いますととかくまた誤解を受けるから、こういう意味で、決して歯牙にかけないわけではなく、非常に注意をして、心配をして見ておるわけであります。したがいまして、この問題等につきましては、この背景あるいは国会の動き、将来等を見通して、それぞれに外務省としてはできるだけの手段を尽くして、まず第一に、日本がいま行政改革の最中でありながら非常な努力をしているこの努力、かつまた、日本の置かれている立場、環境、と同時に、安全保障に対する日米の協力、こういうものを理解していただくように努めなければならぬ、こういうことを申し上げておるわけでありまして、決してどうなってもいい、こういうわけではありませんで、非常に心配をいたしております。
-
○大村国務大臣 最近アメリカの国会で、わが国の防衛問題につきましていろいろ決議案が出されているという点は、承知しておるところでございます。また、私が六月末から七月にかけまして米国を訪問した場合にも、米政府の内部で、米国自身が国防努力を最優先的に取り組んでいるので、同盟国である日本に対しても、領域並びに周辺地域における防衛努力をしてほしいという強い要請があったことは事実でございます。また、両院の軍事委員長をお訪ねしましたときにも、議会側からそういう強い御意向があったということもよく承知しているわけでございます。
私といたしましては、そういった点も念頭に置きまして、また、わが国の憲法並びに防衛の基本原則にのっとり、また、財政再建という厳しい状況も考慮に入れながら、最善の努力をいたしているわけでございます。明年度の概算要求についてもしかりでございますし、さらに、今後の防衛力整備についての見積もりをつくる場合におきましても、そういった点は十分念頭に置いて対処してまいらなければならないと考えておるわけでございます。
また、シーレーンについて特定していないというお話でございましたが、御質問が特定しているかというお尋ねでございましたので、航路帯といいますと二木だけではない、幾つもたくさんあるわけでございますが、そのときの侵略なり脅威の状況で変わり得る可能性がございますので、特定しているわけではないとお答えしたわけでございます。ただいまのところは、航路帯を設ける場合千海里程度の整備を目標にしている、その場合には、現在船舶の航行の多い南西方面なり南の方面の航路帯も念頭に置いて、それを守るにふさわしいような海上防衛力を整備していこう、こういう趣旨で申し上げたわけでございまして、決して怠っているという趣旨で申し上げたわけでございませんので、御理解願いたいと思います。
-
○吉田委員 心配しているとか努力しているとか、当然のことであります。私は、こんな動きまで起こっているのに心配しないほど外務大臣は無神経な人だとは全然思っておりませんけれども、しかし、あなた方お二人は、本当に心配し努力していることをもっといろいろな形で表現し、また事実をもって説明しなければならないと思うのです。決して一夜にして完璧なそういう体制がとれるとは私どもは思いません。しかし、とれないまでも、ここまではいま検討しているんだとか、このぐらいの努力は現にしているんだとか、こういうことを相手側に知らす努力も全然しないでおりますと、やはり大きな誤解を招きはしないだろうかという感じがするわけなんです。
特に私は、ザブロツキ米下院外交委員長の提案の動きの後、外務省が鈴木総理に対して、いろいろな決議の動きがあるけれども、ザブロツキさんのこの決議というものはモデレート、穏健なものだと説明された、それで総理大臣は黙って聞いておられたというような報道を聞いております。そうなりますと、私は、外務大臣あるいは防衛庁あるいはわが国の政府みずからが、やはりGNPの一%ぐらいは防衛費として支出しなければならないものだという感じを次第に持ち始めておられるのではないかと思うわけです。まずその辺、一%以内をめどとするという物の考え方について、この辺でよほど明確にわれわれが相互確認したり、あるいはアメリカその他西側諸国に対しても説明ができないと、やはりこれは非常にこだわられる問題になってくると思うのですね。
時間がありませんのでついでに申し上げますが、この間のNHKの討論会に大村長官も出席しておられました。その席で、ある方から、一%というものそれ自体に特別の意義や根拠があるとは思わないけれども、GNPの一%以内ということがやはり一つの縛りになるのだ、一%を超えてしまえば二%までふくらむ、それが恐ろしいので一%以内ということが国会の決議になっていると思う、こういう御発言がありました。しかし、一%を超えればすぐに二%になるものだろうか。その辺の考え方を外国に対してもいよいよ明確にきちんと説明できなければならないと思うのですね。だから国民に対してもその辺の理解をさせることが必要だと思うのですね。防衛庁長官はどうお考えですか。
-
○大村国務大臣 お答えいたします。
一%めどというのは、先生御承知のとおり、五十一年十月の国防会議、閣議における決定でございまして、現在もこれが生きているわけでございます。それで、私ども、現在のところ、これを変える考えはないということをしばしば申し上げているところでございます。
ただ、もとの決定を見てみますると、「当面」という文言がございますので、それから見ますると、固定的な期限を予定したものではなく、また、内外諸情勢の変化に伴って、必要があると認められる場合には改めて検討される可能性のあるものであるというふうに考えているところでございます。
しかしながら、現在におきましては、防衛庁としましては、最近の厳しい国際情勢にもかんがみ、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準を可及的速やかに達成する必要があると考えており、このため、経済、財政事情をも勘案しつつ、防衛費の確保についてできるだけの努力を試みているところでございます。
そこでまた、お尋ねの一%を超えればすぐ二%になるとかなんとか、こういう御意見についてでございますが、私どもといたしましては、わが国の防衛費というのは憲法及び基本的防衛政策に基づく防衛力整備の必要性のほか、財政、経済事情、他の施策との調和、国民世論等総合的に勘案して決められるべきものでありまして、御指摘のように、仮に一%を超えることがあっても、すぐ二%になる、そういった性格のものではないと考えております。
-
○吉田委員 まず一%の論議でありますけれども、安保税を二%払え、二百億ドル払えという意見も一方にあるわけであります。結局、わが国が絶対値としてどれだけの防衛費を支出しておるかということよりも、むしろ諸外国からながめますと、日本が分相応にどれだけの防衛をしておるかということがやはり絶えず問われると思うのですね。だから、GNPが大きくなっていくから必然的に、一%以内であっても防衛費は当然増大していくのはわかりますけれども、しかし、それだけで諸外国が納得するかどうかという問題につきましては、篤とひとつこの辺で政府みずからが、諸外国との関連の中で再検討なさるべき時期に来ているのではないか。いま長官の御説明がありましたように、当面一%以内、しかし諸情勢の変化があれば別だ。現に私は、現在の「防衛計画の大綱」が設定された昭和五十一年の時点と比べて、かなり諸情勢の変化が起こってきておると思うわけであります。だとするならば、この辺で、自民党みずからもいろいろと、この大綱を改定すべきときではないかということでいろいろな検討がなされつつあるようでございますけれども、政府みずからとしてもその辺何らかの対応が急がれるべき時期に来ているのではないかと思うわけでございますけれども、長官のお考えはいかがですか。
-
○大村国務大臣 お答えいたします。
大綱が策定されましたのが五十一年の十月でございます。その後アフガニスタンへのソ連軍の侵攻あるいはイラン・イラク戦争等々の事態が発生しておりまして、策定当時と国際情勢に変化がある点は事実であると考えておるわけでございます。
しかしながら、防衛庁といたしましては、まだまだその大綱の線に達していないという実情を何とか改善しなければならない、これが急務であるというふうに考えておりまして、現在のところ、大綱の線に到達することを基本的な方針として、防衛力の整備を進めているところでございます。
-
○吉田委員 私は、その考え方が根本的にやはり狂っていると思うんですね。あなた方は常に、情勢はかなり変化しておる、しかし前に決めた大綱がまだ達成できていないからまずそれをやるんだ、こうおっしゃっているのですけれども、この間も、安保特の坂田委員長らと一緒にワシントンへ参りましたときに、ワインバーガーさんらが申しておられることは、われわれが知りたいのは、八〇年代後半のわが国の防衛計画の大綱を知りたいんだと言われた。当然だと思うんですね。後追いで過去の最もデタントの時代につくられた大綱、それがまだできておりませんからそれをやっております、これでは答えにならないと思うんですね、実情はわかりますけれども。それでは現実にこれからの諸情勢に対応しようとする姿勢が全然にじみ出ておらないと言われたって、弁解の余地はないと私は思うのです。私はそういう意味で、特にいまあなたがおっしゃったアフガンやイラン、イラクの問題、それから先ほどお話がありましたSS20やバックファイアの問題、ソ連の恐るべき海軍力の増強の現状、こういう点から考えて、このままで、ただ、未達でございますからそれをやっております、前倒しに努力をいたしておりますだけでは、アメリカや諸外国が納得しないとこう私は思うのですが、重ねて御意見を承ります。
-
○大村国務大臣 お答えいたします。
先生御指摘のような策定当時以降の変化もあるわけでございますが、私どもといたしましては、大綱の線を実現いたしますれば、わが国の防御力が現状に比しまして相当改善されると見ておるわけでございます。完璧とは言えないまでも相当改善されることは間違いない、そう考えておりますので、その達成を基本目標として今後の整備計画を進めていく、これに重点を置いて取り組んでいるところでございます。
-
○吉田委員 若干改善されるでありましょうけれども、問題は、そういう過去の延長線上で君子の改善がなされたって、それで間に合うかどうかという問題が問われていると思うのです。たとえば、在来の陸海空の三本立てがこのままでいいのかどうか、これもまたそろそろ再検討すべき時期に来ている。私はそういう意味で、あなたのお考え方にはどうも理解ができないわけでありまして、また、十分責任を果たそうとなさっておるとは思えないわけであります。
それから、特に最近米国の世論が大きな変化を来しておりますし、わが国のマスコミもかなりずいぶん核問題や防衛問題に対する扱いが変わってきて、大変な紙面を割いていることは外務大臣も御承知だと思うのです。これはやっぱり、国際世論の変化に対応しながらわが国が今後どういう方針を策定していくかということは、特に外務大臣にはさらに真剣にお考えいただかなければならないと思います。
そこで、最後の一つの質問といたしまして、日韓関係を外務大臣は一口に言ってどう位置づけられるのか。たとえば日米関係は同盟関係にあるということはさきの日米共同声明ではっきりしたわけでありますけれども、日韓関係というのは、まあ一衣帯水だとか同文同種だとかいう表現ではなくて、もっといろいろ防衛上の観点から見てもあるいは貿易上の観点から見ても、一口にどういう国だというふうに位置づけられますか。
-
○園田国務大臣 日韓関係は、日米、米韓のような同盟関係ではございません。日本と韓国の関係は隣国であり友邦である、これが日韓関係だと存じております。
-
○吉田委員 ただそれだけの関係でしょうか。そうすると、日米関係とははるかに次元の違う関係だ、こういうふうに一般に受け取られますね。
私はそうは思わないんです。最も近い関係であり、かつ、この国はいわゆる現体制を維持するために、二分された共産主義体制と相対峙して、懸命の努力をしておる国だ。しかも、わが国は自由なる体制の側にあって今日の繁栄がなされているわけでございますね。だとするならば、わが国の経済的な発展のためにも、あるいはまたわが国の現実の防衛上の諸対策を進める意味でも、この韓国の存在というものはきわめて重要な意義を持っている国だ、これは日本じゅうほとんどの人はそう思っているはずでございますが、あなたはそうはお考えにならないですか。
-
○園田国務大臣 いまおっしゃいましたような意味を含めて、隣国であり友邦であると申し上げたわけであります。近い国であり、過去の歴史のある、関係のある国でありますから、韓国の平和と安定、日本の平和と安定、繁栄、こういうものは関係は密接である、このように考えております。
-
○吉田委員 時間が参りましたので、これで終わります。
-
○坂田委員長 東中光雄君。
-
○東中委員 私は、沖繩米海兵隊の緊急展開部隊としての任務と、それが
安保条約上の駐留
目的に違反しているんではないかということについて、時間がありませんので簡単にお伺いしたいと思います。
けさのニュースによりますと、
エジプトのムバラク
大統領がきのう
議会で
演説をして、
エジプトは東西どちらの陣営にも属さない、そういう立場を堅持するのだ、
中東紛争でもどちらにも属さないで、
アラブ諸国
紛争にも距離を置いていくんだ、こういう
演説をされたように
報道されています。
一方、きょうから米緊急展開部隊の
エジプトにおける大
演習が、
エジプト、
スーダン、オマーン、
ソマリアなどと一緒にやられるということも、ヘイグ
長官が十月十一日に
カイロで
記者会見で言われて、その後
報道されておりますが、この大
演習には
陸軍二個大隊、それから沖繩駐留の第三海兵師団の水陸両用部隊千五百人が
参加するということも言われておるわけであります。こういう関係をいま
外務大臣はどのようにお考えになっているのか、御所見を承りたいと思います。
-
○松田説明員 お答え申し上げます。
ただいま御指摘の、
中東におけるいわゆるブライトスターという名の
演習に、わが国の一部に駐在しております米軍の部隊が
参加しているということは、
政府としては全く聞いておりません。
-
○東中委員
外務大臣、一方ではムバラク
大統領の
議会の
演説がある、いま米軍の緊急投入部隊を中心にしたがってないような大規模な
演習が多分きょうから始められるわけですね。それについて
外務大臣としてどういうふうにお考えですか。
-
○園田
国務大臣 エジプトの新
大統領が自分の
外交方針を鮮明にしたことは、そのままにこちらは拝承する以外にございません。かつまた一方、米国と共同
演習をやる、こういうことも
エジプトと米国の関係でありまして、われわれがこれに対してコメントを言うべき筋合いではないと考えております。
-
○東中委員 それでは改めてお伺いしますが、RDF構想というのは御承知のようにカーター政権下で発案されたわけでありますが、レーガン政権になってこの構想はどういうふうになっているのか、まずそこからお伺いしたいと思います。去年の二月に
予算委員会の総括
質問で大来
外務大臣がRDF構想について答弁をされておりますけれども、その後レーガン政権になって、内容的にどう変わっているのかという点についてお伺いしたいと思います。
-
○
新井政府委員 お答えいたします。
ただいま先生がおっしゃられましたとおり、本年の三月、四月でございますか、レーガン政権が緊急部隊について新しい発言をいたしました。それによりますと、この緊急部隊を今後三年-五年のうちに統合軍に昇格させる、それと同時に、その統合軍の中には独自の
管轄区域、あるいはその部隊、あるいは
通信・兵たん機構を持たせる、そういう構想になっていると承知しております。ただし、その後現在具体的にどう進展しているか、これについては米側当局も発表しておりませんし、詳細は明らかでございません。
以上でございます。
-
○東中委員 沖繩駐留の米海兵隊が、先ほど言った
エジプトでの緊急展開部隊の合同大
演習、かつてない規模のものだと言われておりますが、これに
参加しておるということについては、聞いていないというのがいま松田
審議官の御答弁でありましたけれども、これは米側に問い合わせて、そして
参加していないということなのか、その点はどうなのでしょうか。
-
○松田説明員 お答え申し上げます。
特に私どもの方から、積極的かつ自発的に問い合わせたわけではございません。私どもと米国との従来からのこの種問題に関する調整の方式として、問題のあるときは米側の方から連絡することはございますが、今回の場合はそういう連絡は来ておりません。
-
○東中委員 そうすると、こっちから聞いていないということなんですね。この前の大来さんの答弁のときも、念のために問い合わせたところこういう回答があった。よく問い合わせておられるようですね。今回の場合は、これくらい大きく
報道されておって問い合わせもしてない。
アメリカから何も言ってきてない、だからないんだろう、ただそれだけのことですか。
-
○松田説明員 このたびのブライトスター訓練につきましては、
参加する兵力が約五千六百人という点を含めまして、若干の概略については公表されております。私どもは、沖繩にある海兵隊等の部隊が、その与えられている任務、それから
中東と沖繩との
地理的な距離、それから運用の方針等々から、直ちにそこへ行くのが当然必然性があるというような事態では全くないと考えております。従来から、御指摘のとおり米側にいろいろな問題を問い合わせることは多々ございますが、それはわが国の場合あるいは
極東の場合、お尋ねが蓋然性、必然性があってごもっともな御
質問は、私どもの発意の場合も
国会の御要望に基づく場合も含めまして、必要に応じて問い合わせている次第でございますが、今回のこの件に関しましては、先ほどから申し上げましたような事情で問い合わせる必要はないと考えております。
-
○東中委員 沖繩の米海兵隊の事実上の
機関紙であるオキナワ・マリーンによりますと、米第二海兵連隊の第一大隊が、米
本土東岸のノースカロライナのレジューン
基地から、十月中旬に沖繩の
キャンプ・シュワブに到着したということが
報道されていますね。しかもこれは「
歴史的第一歩を記録した」、こう言っているわけであります。
第二海兵連隊の第一大隊といえば、
大西洋、地
中海を守備範囲として、いままで
演習もやってきたし、そういう位置についておった、いわば
大西洋側にある米海兵隊であります。それが今度沖繩に配備をされた。これは地
中海なり
ヨーロッパなりを守備範囲にしておったのが、わざわざ沖繩まで来たということであります。昨年は
ノルウェーでNATOの
演習のアノラックス
エクスプレスという
演習をやっておった、ことしの八月は
キューバのグアンタナモ湾で行われたオーシャン
ベンチャー81、この
演習にも
参加しておった、いわば
大西洋、地
中海、
ヨーロッパを守備範囲にして
演習しておったのがいま沖繩に来ている。これは六カ月のローテーションの関係でしょうけれども、第一海兵隊ではなくて、第二海兵隊からも来ている。こういう状態になっています。
これは地
中海あるいは
エジプトに何の関係もないというふうにいま
審議官は言われましたけれども、こういう部隊の編成がえといいますか、こういうふうに変わってきているということについて何の関心も持っておられないわけですか。
-
○松田説明員 お答え申し上げます。
先ほどからのお尋ねが、一種の事実関係についてのお尋ねでございましたので、私ども承知している点について申し上げた次第でございますが、さらに敷衍させていただきますならば、御指摘にもありましたとおり、海兵隊はその機構、編成上かなり移動することは御指摘のとおりでございましょう。たとえば、沖繩にある第三海兵水陸両用部隊の兵員は、一年で兵員が交代すると部隊がかわるというふうにも承知しておりますが、そういったぐあいにいろいろと部隊の編成がえ、移動があることは事実かと存じます。
また、私、先ほど事実関係だけの御
質問でありましたので答えを局限させていただきましたが、仮に、これは全く一般論、仮定の問題としてお答えするわけでございますが、沖繩にある部隊が仮に部隊移動を命ぜられて米
本国へ帰る、あるいは第二師団に移る、あるいは
中東へ行く、そうして訓練をするというような事態を仮に御指摘のとおり想定するとしても、それは
安保条約の枠組みでいいますならば、部隊が
日本の
領域外へ転出していく、移動していくということでありまして、それについては
安保条約上特段申し上げることがないという点は、従来から
政府が御説明しているところでございます。
-
○東中委員 いや、そういうことを聞いているのじゃないんですよ。配備について画期的な変換が起こったということをいま言っているのであって、特にことしの十月二十二日のオキナワ・マリーン、さっきの沖繩海兵隊の事実上の
機関紙ですが、ここでメイヤーという第二海兵連隊の第一大隊長である中佐の人が、部隊のローテーション計画が、即応態勢の良好な状態を維持する上での助けになっていると信じているかという
質問に対して、指摘される重要なことは、今日、三つの師団から、結局海兵隊の第一、第二、第三海兵師団から、六つの異なった連隊から六つの大隊がこの沖繩に来ているのだということを言っているのです。そうして、
歴史的に第二海兵師団は北
大西洋機構諸国と地
中海地域で任務についておったものだ、それがいま沖繩へ来ているのだということを、
責任者であるメイヤー中佐が発言をしているわけです、そういう態勢になっておるということについて。そうして、その部隊が地
中海、
エジプトでの
演習に
参加をしているということが、
国防省筋の発表としてずいぶん大きく
報道もされているわけです。しかし、それは何にも関心を持っていない、そういうことはあり得ないのだ、こういうことでは、あなた方は本当に
在日米軍についての行動、任務というものを何と考えているのだ、何の制約もしていないということになってしまうじゃないか。
昭和三十五年の岸
内閣時代の
政府統一見解で、駐日米軍については二つの点で制約をしている。
アメリカ軍は
自由に行動できるだろう、それはそうだけれども、
日本に駐留させる上は無
条件にというわけにはいかないのだ、二つの点で制約をするとはっきり言っていますね。その一つは、駐留
目的についての制約だ。
日本の
安全と
極東の平和、
安全に対しての、そういう
安保条約上の
目的において制約しているのだということを言っている。もう一つは、
事前協議の問題であります。
だから、いま沖繩におる米海兵隊の実態が、地
中海で作戦をする、そういう任務を持っておった部隊がこっちへ来ているということを私は聞いているのであって、その点については何らただしていないのか、その点はどうでしょう。
-
○松田説明員 お答えを申し上げます。
これは従来からもたびたび御議論を賜ったところでありますけれども、特に海兵隊の場合、その移動性、緊急派遣性に着目した部隊でありますゆえに、ただいま沖繩に駐留して、その駐留
目的がわが国の
安全、
極東の平和と
安全ということに局限されていることは御指摘のとおりでありますけれども、そのような移動性の高い部隊として、他の
地域に必要が生じたときに用いられる、用いられるという意味は、
事前協議とは別の問題で、部隊の移動、転出の問題でありますけれども、そういったことがほかの部隊よりはより多く、より容易に行われる性質の部隊であるということは、先生の御指摘のとおりかと思います。それはまた、従来からも海兵隊の本質の問題として私ども理解しておるところでございまして、沖繩にいる部隊がどこかの
地域へ移動していこうと、また別の
地域のものが部隊編成がえで沖繩に来ようとも、そのこと自身は、私どもとしては、一々事実関係を問いただし、
安保条約の枠組みとの絡みでとがめ立てするということはないと考えております。
-
○東中委員 私は、米
上院軍事
委員会の要求で議会
予算局が昨年の十二月に作成したというリストを、最近手に入れました。「米地上軍――NATO紛争、非NATO紛争への計画と資金」ということで議会
予算局が出しておるものであります。これによりますと、沖繩におる部隊は、
中東へ十六日の間に船によって移動するということを書いています。「ペルシャ湾に対する現在および潜在的な米地上軍の能力」という表でありますが、一日目に飛び込んでいくのは千名。これはイタリーからエアリフトで行くという表になっています。二日目はやはり千名。これはノースカロライナからエアリフトで飛んでいくということになっています。その表の中に、十六日目、シックスティーンス、一万二千名のマリーン・オキナワ・
ジャパン、日本の沖繩にいる部隊がシーリフトですぐに到着をするというふうになっています。これが現在の状況だ。そして、RDFの場合にはそのほかに、
アメリカの
基地からシーリフトで一万二千のマリーンが行くということになっておりますが、そこにも一万二千のマリーン、所在地はオキナワ・
ジャパン、こう書いています。沖繩にいる米海兵隊一万二千、これはそのまま緊急投入軍といいますか緊急展開部隊として行くのだ、そういう任務を持って配置されているのだということが書いてあるわけです。
中東地域、ペルシャ湾へ飛んでいく任務を持って一万二千の部隊が現に沖繩におるのだ。こういう
アメリカの議会
予算局の調査報告が
上院軍事
委員会に提出されている、それが論議の対象になっている、こういう状態になっておるわけであります。これは公式のこういう文書ですね。
ということは、いま沖繩にいる米海兵隊というのは、任務がそういう任務になってきたということをこれははっきりとこういう公式の文書で認めている。そういう任務づけがあったからこそ、今度は第二海兵師団の第二連隊から、要するに地
中海なんかで作戦をする部隊であったのが沖繩へわざわざ来るようになってきた。こういう状態でありますから、事態はきわめてはっきりしていると思うのです。そして、いままた具体的な合同演習に
参加しておるということが
報道されている。しかし、それは聞きもしていないのだ、そういうことで一体いいのかどうか。
安保条約に基づく
在日米軍の任務による制約、これは非常に重要な問題であります。日本が
中近東における
アメリカの
戦争の
基地にされるというようなことになったのでは、これは何としても許されないことだと思うのです。
外務大臣、これはやはりはっきりただして、そういう
安保条約上の制約はきっちりと、
主権国家として日本がちゃんとしていかなければ、一体どこがやるのですか。
アメリカから言うてこなければ何にもないのだ、こんなことでは済まされない問題だと思うのですが、時間がありませんので、
外務大臣の御見解をお聞きして、終わりたいと思います。
-
○松田説明員 大臣の御答弁をいただく前に一点、安保条約の原点に返って申し上げますが、現に沖繩なり日本本土に駐留しております米軍は、当然のことながらわが国の安全と極東の平和と安全に寄与するということを直接の目的として駐留しており、それが抑止力を構成し、わが国の安全等々に寄与している点は、まず御認識いただきたいと思います。
その部隊が移動して出ていくことの可否については先ほどから申し上げた点でございますので、その点は御理解を賜りたいと思います。
-
○園田国務大臣 作戦計画その他の計画にはいろいろあるわけでありますが、いま事務当局から説明いたしましたとおり、この部隊が直ちに作戦に使われる基地となる場合には、これは安保条約の規定によってそれぞれ問題があるわけであります。その際は、それに従ってきちんといたします。
-
○東中委員 ちょっと、私の言っているのは、米議会に出されたこの文書に、十六日目にはペルシャ湾に到達する、そういう部隊として日本の沖繩の一万二千のマリーンがあるんだということを任務づけている、そういう文書が初めて手に入ったわけですね。外務省の方も、何かそれは知らないとかなんとかいう話だったのですが、これは国会図書館へ来ておるから、私たちはそれを言っておるわけなんで、そういう任務づけまでちゃんとされておる一万二千の部隊が日本におる、緊急投入部隊として編成してそこへ行くんだというふうに書いてある、それはそういう任務でしょう。これはやはり、何もたださないで、初めから仮定の場合の仮定だというようなことを言ってやっておく問題ではないと思うのです。これは外務大臣、やはり安保条約の一番基礎になる問題でありますから、きっちりしていただきたいと思うのです。
-
○園田国務大臣 いま米国でいろいろやっているのは、抑止力というものを最大限に発揮するようにいろいろやっているわけであります。いまの問題は安保条約からくる事務的な問題と政治的な問題の二つに分かれるのでありますが、政治的な問題については安保条約でありませんし、向こうからそれぞれ意見も聞きますし、いざという場合の準備はいたします。準備をいたしますということは、受け入れるということではありません。
-
○東中委員 時間ですから、やむを得ません。
-
○坂田委員長 中馬弘毅君。
-
○中馬委員 外務大臣は先月、十月二十二、二十三日、総理とともにメキシコ・カンクンにおける南北サミットに出てこられたわけでありますけれども、この南北関係について少し日本の安全保障の問題からお尋ねをしたいと思います。
南北問題と申しますと、どうしても表面的には南の民生安定だとか経済発展といったようなことで、経済的な観点が表面に出てまいります。事実、日本の置かれた立場からしますと原材料の多くをそこに依存しているわけでございまして、ここに大きな力を注ぐことは当然ではございますけれども、しかしまた、日本の安全保障といった点からいたしましても、これは重大な問題を含んでいると思うのです。東西対立があることは事実でございますが、その発火点はやはり後進国における後進性ゆえの政情不安に起因して、そこに大国が介入して惹起されるという歴史的な現実があるわけでございます。資源のないわが国が、みずから戦争をするのではなくて、戦争に巻き込まれるだけでエネルギー、食糧、原材料、こういった輸入が阻害される。それだけで日本の経済は破滅、そして国民生活は崩壊、こういうことになるわけで、わが国の安全保障にとっても、南のいわゆる後進国の経済発展と政情安定が必須であることは言をまたないわけでございます。
日本は、ODAにしましてもDAC諸国の中で十二番目の〇・三二%、これを五年間で倍増しようということですけれども、それにしましても国際目標とします〇・七%に達しないような状況でございまして、やはりもう少し日本というのはそういうところに大きな力を入れていっていいのじゃなかろうか。今度の南北サミットを通じても、またそれまでにいろいろ国民にPRされているものを見ましても、たてまえは非常によく出ております。しかし本音が、日本の安全保障としてどういうことに対応していかなければいけないかといった本音が何か欠けているような気がするのですね。そこを少しお伺いしたいと思います。
南北サミット、これに大きな意欲を持って臨んだことは評価されるわけでございますけれども、たとえばグローバルネゴシエーション、国連包括交渉にしましても、アメリカはそれなりにはっきりと本音を出していると思うのです。ところが、日本の場合にはGNをこれで進めるといったようなことをむしろはっきりと書いておられて、しかし実際には、アメリカとのすり合わせに非常に苦慮されるような形になっているわけでございまして、そうしますと、日本としてはそれでいいのかどうか、ただ南の諸国に国連を通じての援助をしたところで、場合によってはそれこそざるに水を入れるようなことで、ばらまき福祉になってしまうことだってあり得るわけでございます。そうするならば、本音として、日本の外交方針としてどういうことが必要だということをもう少しはっきりとわれわれも認識したいと思っておるのです。ODAの二国間選別援助あるいはGNでいくのがいいのか、このところの本番を少しお聞かせ願いたい。
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○園田国務大臣 御発着のとおりでありまして、いま世界は南北ともに非常に厳しい状態にございます。この際に、日本は資源がありませんし、孤立してやっていけないわけであります。そうなってまいりますと、軍事的な貢献は限界がある、これには限りがあるわけです。そのために経済的な力をもって世界の平和と安定に貢献する、こういうのが日本の仕事と考えます。
そういう意味で、いま御指摘のとおりに、過去五カ年間で倍増したものをさらに明年度を初めとしてこれの倍増を五カ年間で考えておるわけでありますが、これは次の予算で国会の御承認を得なければならないわけでありますから、ここではっきり言うわけではなくて、方針だけでございますが、その場合、日本の二国間の経済協力の援助の額は、御承知のとおり絶対額から言えば世界で四番目くらいだと考えておりますが、国際目標の〇・七%にはまだ追いつかない、半分をようやく超えたくらいだと思います。したがいまして、国家財政のつらいときではあるが、この経済協力にはさらにお力添えをいただいて努力をしなければならぬ。
もう一つは、南北問題と軍縮の問題でありますが、これは非常に大きな関係があります。南北問題をうまく解決することはまた平和への一つの道だ。これをこのままほうっておくと戦争の一つの原因をつくる。これを除去することは日本の仕事である。
かつまた、包括交渉の問題がありましたが、包括交渉は、御承知のごとく日本は最初から国連交渉を開始すべきだ、こういう意見で進んでおりまして、関係方面に連絡をとりつつ、一人ではなんでありますからそれぞれの国と協力をして努力をしたわけで、結論としてはこれが国連の場に持ち込まれた、これは成果があったと考えております。
かつまた、この国連交渉は、南北の場所で具体的な解決を見るべき問題ではなくて、全部南北問題は方向を決める場所でありますから、これでよかったのではないか。その包括交渉、国連交渉が始まると、ここでまた南と北のいろいろな問題が出てくる。その場合に、微力ではありますが日本の責任も出てくる。こう考えております。
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○中馬委員 南の援助にしましても、ソ連はソ連で、ソ連の戦略的な意図でやっている部分がかなりございます。アメリカも同様でございます。ですから、国連だけに任してあとは人道的な立場でということだけではないと思うのです。日本にも、それとは別の違った観点で、そういったような戦略的な一つのものが必要ではないか。もちろん人道的なことも必要でございますけれども、しかし、日本の安全と置かれた立場からするならば、アメリカに追随した形だけの援助の仕方、あるいはまたソ連のかいらいのところまでも援助するようなやり方、これがいいかどうかというのはまた逆に問題ではございます。むしろ日本として二国間の選別援助といったようなことも考えていかざるを得ない、そのときにどういう配慮をするべきかということの何か方針がないような気がするのですけれども、いかがですか。
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○園田国務大臣 経済協力の七割が二国間協力に振り向けられるものであります。したがいまして、この経済協力の二国間の七割というのは、紛争のある国のお隣の国、これはいまのところはタイとパキスタンとトルコ、この三つに限定してございます。平和と安全保障のために高い見地から協力すべきでありますが、それは結局は人道的立場、それから貧に困っている人を救うばかりでなく、両方が力を合わせて世界の平和と経済力に貢献するということでありまして、これはなかなか言い回しがむずかしいところでありますが、これが間違えまして、軍事貢献ができないからお金の方でそういう防衛その他について協力ということは、日本の経済協力としてはできない立場でありますので、大きな立場から平和と世界の経済の向上、こういうことに努力をすべきであると考えております。
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○中馬委員 おっしゃるとおりなんで、そのところをもう少し日本の世論にも、場合によっては国際世論にもはっきり、日本はこういう立場でやっているんだということを明確にする必要があるのじゃないか。でないと、何かふらふらしているような感じを与えるものでございます。アメリカあるいはソ連のどちらと言うわけじゃありませんが、そういう大国のかいらい政権に援助しても仕方がないことでございますし、また自助努力をしない国に援助したところで、これは先ほど言いましたようにざるに水を入れるようなことになるわけで、やはり本当に世界の平和に貢献するような形で自助努力をしている国にはっきりと日本は援助をするんだ、日本はそういう国なんだということを明確な形で出していただきたい、こういうふうに願うわけでございます。
それとも関連するわけでございますが、日本の安全保障というのは集団安保ということになっております。日本だけで、あるいはアメリカに全く依存してということではなくて、集団的な安全保障の一つの役割りを担うということだと思うのですけれども、しかし現実の形は、何か日本とアメリカとの関係だけが非常に強く出ていると思うのですね。そういう意味では、シーレーンの問題が先ほどから出ておりますけれども、それも一つでございますが、そのシーレーンの問題にしましたところで、太平洋の海域というものは日本とアメリカの船だけが船団を組んでやっているのじゃないですね。それぞれ中国の船もおりましょうし、シンガポールの船も、あるいはカナダの船も通っていると思うのです。そこを何かアメリカと日本だけが一つのシーレーンを確保するといいますか、しかし現実の問題として、ソ連の船もあるいは中国の船もオーストラリアの船もいる、その上を日本の日の丸をつけたP3Cが飛び交う、あるいは自衛艦隊がうろうろするということであったならば、逆に非常な軍事的な摩擦を起こしかねない問題であります。ということは、まず必要なことは、その周辺諸国ともちゃんと話し合って、お互いに、フィリピンはフィリピンでこの程度の海域を守りましょう、あるいはインドネシアはこういうことの責任を持ちましょう、日本はこういう責任を持ちましょうという話し合いが具体的になされているのかどうかということで、その点はいかがでございましょう。
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○大村国務大臣 お答え申し上げます。
ASEAN諸国の平和と安定は、わが国の安全保障にとって重要なかかわりを有しているものと考えております。ただ、わが国といたしましては、憲法上の制約もありまして、集団的自衛権の行使を前提とするような直接的な軍事関係を有することはできないものと考えております。そこで、これらの国々とわが国の間の相互理解を図ること、ただいま御指摘のような周辺の海域との関係、これは外交交渉の問題でございまして、防衛庁としては直接は関係ないわけでございますが、防衛庁といたしましては、防衛関係者の交流とかあるいは海上部隊の相互親善訪問、現にいま練習艦隊を派遣して、東南アジアの主な国々を一巡して、間もなく日本に帰ってくるわけでございますが、そういったことをやることによりまして、これらの国々との相互理解を深める。この点はかなり成果を上げつつあるのではないか、さように考えている次第でございます。
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○中馬委員 そのような相互理解を深めているといった抽象的なあれじゃなくて、具体的に日本のシーレーンの問題が出ているわけですね。そして、それに対して防衛庁は対応されようとされているわけです。そうするならば、具体的にそのことで周辺諸国とお話しになっているのか。どの程度、どういう形でわれわれがやりますから、その点はちゃんと御了解してくださいよとか、逆に、この点はあなたの国がこの程度守ってくださいよといった具体的な話が始まっているのか、されているのか、その点をお答え願いたいと思います。
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○大村国務大臣 先ほど申し上げましたように、集団的自衛権の行使を前提とするような直接的な軍事関係を持つわけにはまいらないと思います。あとは、外交ルートを通じていろいろお話をされるということは必要だと思うのでございます。これは外務省の方でおやりになることでございますから、防衛庁としてお答えするわけにはまいりません。
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○中馬委員 では、外務大臣にお願いします。
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○園田国務大臣 いまの日本の立場から言えば、ASEANを中心にした近隣諸国に対して、第一の目標は軍事大国にならない、再び日本が軍事的な脅威を隣国の方々に与えないということを説明するのが最大の問題だと考えております。したがいまして、私と各ASEANその他の国々の外務大臣との話し合いは、防御についてはおのおのそれぞれの国が自分の責任において自分がやる、こういうことを話し合っているところでございます。
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○中馬委員 その軍事大国とはならないという言葉のうらはらで、現実の形として、先ほど言いましたそれぞれが防衛努力をするという中で、日本が太平洋の相当のところまで出ていって、そこに日の丸をつけた飛行機が、それこそ三十六年前にはそれが侵略してきた飛行機であったわけですから、その同じ日の丸をつけた飛行機が飛び交う、あるいは自衛艦隊が行くといった場合に、何の話し合いもせずに、具体的な話し合いもなしに、了解もなしに、いや、これは自分のところの範囲だから守るんだということで、逆に軍事的な摩擦を起こしてしまいはしないか。そのことの方を恐れるわけで、もしやられるのであれば、その話を十分詰めなければいけない、そのことが前提じゃなかろうかと思うものですから申し上げているのですけれども、いかがですか。
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○園田国務大臣 おっしゃることは私も非常に懸念をいたしております。しかしながら、現状は、日本の自衛隊の防衛区域を拡大するという話だけでありまして、具体的になっておりませんので、それを誤ってお先棒を担ぐようなことはかえっていけないかと思って、私は注意をしているところでございます。
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○中馬委員 もう時間がないので話が十分詰まりませんが、防衛庁長官の日ごろのお話と外務大臣のお話が、その点で若干食い違っているように思います。ここは十分調整をしていただきまして、その周辺諸国に脅威を与えない形での日本のしっかりとした防衛というものを考えていただくことを念願いたしまして、質問を終わらしていただきます。
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○坂田委員長 本日は、これにて散会いたします。
午後零時四十七分散会