○夏秋
参考人 私は、全日本同和
対策協議会会長の夏秋幹であります。
まず、全日本同和
対策協議会と申しますのは、
同和対策事業に携わっております三十六都府県と十市で組織をいたしておりまして、第一線にあります
地方公共団体の立場から共通の課題につきまして調査研究あるいは関係機関への要請、
世論啓発等の事業を実施いたしておりまして、同和問題の早期解決を図りますため適正かつ
効果的な事業促進を図ろうとする任意
団体でございます。なお、会長につきましては、全国を六ブ
ロックに分けておりまして、その輪番制ということで一年任期となっておるわけでございます。よろしくお願いを申し上げたいと思います。
まず、委員長初め委員の諸先生方には
同和対策事業の推進、わけても
地方公共団体に対します財政措置、適用事業の採択等につきまして日ごろ格別の御尽力と御援助を賜っておりますことに対しまして、ここに心から厚く御礼を申し上げる次第でございます。
また本日は、
同和対策事業特別措置法が明年三月末日をもって効力を失うことに関しまして、私ども
地方公共団体の立場から意見を申し述べさせていただく機会を与えられましたことに対しましても、これまた御礼を申し上げる次第でございます。
それではただいまから私の意見を申し上げたいと存じます。
同和問題の解決に関しましては、御高承のとおり、昭和四十年八月同和
対策審議会の答申がなされ、昭和四十四年には
同和対策事業特別措置法が制定せられたわけでございます。以来、国並びに
地方公共団体において答申の趣旨並びに法律の定めに従いまして施策を進めてきたところでございます。そこで、まず、私たちの立場で特に感じておりますことを数点申し上げ、続いて
同和対策事業特別措置法の期限延長について意見を申し上げたいと存じます。
なお、これらのことは、私ども過去九年間にわたり事業を実施してきた上で深く反省し、また強く感じておりますことは、それぞれの
地方公共団体が各分野におきまして精いっぱいの努力を続け、一定の成果を上げてきておりますものの、各
地方の実情によってその実施水準と申しますか程度と申し上げましょうか、事業の内容、到達度が必ずしも同じ状態に達しているとは言いがたい実態を認めざるを得ないのでございます。これはその
地方の諸種の事情による結果ではございますが、
基本的人権に係る最も重要にして崇高な
同和対策事業の実施に当たり内容や程度に差があってよいはずはございません。
つきましては、まず第一番に、行政の責任と
主体性を持って施策の適正な運営と執行を正しく位置づける必要があろうと存じます。このため、国に
基本対策を審議する機関を設置していただきたいこと、さらに
地方公共団体の財政運営の健全化を保ちつつ、
地域の実情に見合った総合的かつ計画的事業を推進するため、国に総合的調整機能を持った組織を設置していただければ大変ありがたいと考えておるわけでございます。
第二点といたしまして、教育、啓蒙、啓発に関してでございますが、この事業こそ同和問題解決の原点とも言うべきものでございまして、私どもも常にその充実に努めているところでありますが、
教育問題について特に感じますことは、施策が対象
地域については定められておりますが、
国民すべてが心理的
差別解消の姿勢を確立することが非常に重要でございまして、そこで全
国民を対象といたしました
学校教育及び
社会教育の実施が必要であると痛感をいたしておるわけでございます。
第三点といたしまして、また
人権擁護問題に関しましては、対象
地域の住民に対します啓蒙、啓発にとどまりませず、さらに進んで
差別から
保護される施策が必要であろうかと考えているところでございます。
続きまして第四点といたしまして、これらにあわせまして産業職業
対策についてでございますが、単に産業の振興あるいは雇用の促進を図るということにとどまらず、対象
地域におきます人的能力の開発と
所得向上を図る施策がきわめて不可欠な要件であると考えております。
最後に、第五点といたしまして、
地方公共団体にとりまして最も切実な問題であります
国庫補助
基準、起債及び
地方交付税等
地方公共団体に対します国の財政援助措置の諸要件についてでありますが、法施行以来今日までの経済事情の激しい変動のもとでは補助単価、条件等が実勢に追いつかない点が多く、その結果といたしまして
地方財政が非常に苦しい状況に立ち至っておることは御承知のとおりであります。
これら
地方財政問題につきましては、格別の御配慮を賜りますよう、特にお願いを申し上げる次第でございます。
以上、大変厚かましいこと、あるいは率直にいろいろなことを申し上げましたが、関係都府県市が直面をいたしております主要な課題を取りまとめ、お願いを申し上げた次第でございます。
次に、明年三月末日をもちまして効力を失います
同和対策事業特別措置法に関してでありますが、まず、昭和五十年に実施をされました全国地区調査の結果による、先ほど御説明がございましたが、物的施設の事業量と現状を勘案いたしますと、とうてい法律の有効期間、つまり本年度中に事業を完了することは不可能と言わざるを得ません。加えて、この調査に基づきます物的施設についての残事業量には、先ほど申し上げました教育、啓蒙、啓発等精神的な面及び産業職業
対策等経済向上の面といったような、形や数字であらわすことが困難なものは含まれておりません。しかし、これらの事業は、今後とも相当量継続実施していかなければならない重要な事業でございます。
仮に、物的施設整備だけについて考えてみましても、昭和五十年調査の事業以外に、その後、なお相当量の事業実施を必要とするものが生じておるわけでございます。
これにつきましては、本日数字をもちまして御説明申し上げるのが本来であろうかと存じておりますが、私ども全日本同和
対策協議会といたしましては、ただいまのところこれらのまとめを行っておりませんので、大変失礼ではございますが、新たに事業の生じた主な理由について御説明申し上げたいと存じます。
まずその第一点は、調査時には事業計画が未確定のものがあったこと。第二番目といたしまして、調査後において新たに法の対象
地域として事業計画が立てられたものがあること。第三点といたしまして、
地方公共団体の財政事情あるいは
地域の実情等により、調査時には計画の調整がついていなかったもので、その後事業計画がまとまったものがありますこと。最後に第四点といたしまして、事業採択
基準の変更及び新事業の
制度化に伴いまして、調査時以降に対象事業となったものがありますこと。以上はいずれも法の趣旨に沿った事業でありまして、これらはすべて実施の必要があるものばかりでございます。
このほか、国の
制度を補完いたします意味におきまして、
地方公共団体が単独で実施している事業も多くあります。さらに、明年は従来の調査年次から推しまして全国調査が行われる年ではないかと思われます。したがいまして、この調査が行われたとしてその結果を推測すれば、先ほど申し上げましたもろもろの理由から、前回の調査に比べまして新たな事業計画と、それから単価の引き上げ等の要因が加わりまして、残事業は、現在の金額よりなお増大することは明らかであろうかと存じます。
以上のことを総合的に勘案いたしまして、この際、
地方公共団体の立場からお願い申し上げたいことは、
同和対策事業特別措置法は今後なお相当年限の期間延長を図っていただきますとともに、前段に申し上げました諸点についても十分御配意を賜りますようお願いを申し上げまして、私の意見といたします。
なお、これらのことにつきましては、別途、全国知事会、同市長会、同町村会等からかねがね要望なされているところでありますので、十分御承知を賜っておることと存じますが、何とぞよろしくお願い申し上げます。