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1975-12-10 第76回国会 衆議院 法務委員会 6号 公式Web版

  1. 昭和五十年十二月十日(水曜日)    午前十時十八分開議  出席委員    委員長 小宮山重四郎君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 田中伊三次君 理事 保岡 興治君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 青柳 盛雄君       小坂徳三郎君    小平 久雄君       千葉 三郎君    福永 健司君     早稻田柳右エ門君    諫山  博君       栗田  翠君    田中美智子君       沖本 泰幸君  出席国務大臣         法 務 大 臣 稻葉  修君  出席政府委員         法務大臣官房長 藤島  昭君         法務大臣官房司         法法制調査部長 賀集  唱君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省保護局長 古川健次郎君         法務省人権擁護         局長      村岡 二郎君         法務省入国管理         局長      影井 梅夫君  委員外の出席者         人事院事務総局         給与局次長   角野幸三郎君         警察庁刑事局捜         査第一課長   鎌倉  節君         警察庁刑事局保         安部公害課長  星野鉄次郎君         大蔵省主税局税         制第三課長   水野  勝君         厚生省児童家庭         局母子衛生課長 北川 定謙君         厚生省保険局国         民健康保険課長 舘山不二夫君         自治省行政局振         興課長     苫米地行三君         最高裁判所事務         総局総務局長  田宮 重男君         最高裁判所事務         総局刑事局長  岡垣  勲君         最高裁判所事務         総局家庭局長  裾分 一立君         法務委員会調査         室長      家弓 吉己君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月五日  辞任         補欠選任   沖本 泰幸君     岡本 富夫君 同日  辞任         補欠選任   岡本 富夫君     沖本 泰幸君 同月六日  辞任         補欠選任   木村 武雄君     塚原 俊郎君 同月七日  委員塚原俊郎君が死去された。 同月十日  辞任         補欠選任   諫山  博君     栗田  翠君 同日  辞任         補欠選任   栗田  翠君     田中美智子君 同日  辞任         補欠選任   田中美智子君     諫山  博君     ――――――――――――― 十一月二十日  最高裁判所裁判官国民審査法の改正に関する請  願(島本虎三君紹介)(第三三〇〇号)  同外二件(藤田高敏君紹介)(第三三〇一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政に関  する件      ――――◇―――――
  2. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所田宮総務局長、岡垣刑事局長、裾分家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  4. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  5. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 最初に、警察関係を先に質問をしてしまいます。というのは、言葉が悪いけれども、例の三億円事件で時効が完成したということですね。これはこれとして、一つの問題点は、ではなぜそういう状況になってしまったのかということで、捜査上反省すべき点が一体あるのかないのか、そういう点からひとつお聞かせ願いたいと、こう思うのです。それからまた、正式に時効が完成したと言えるのかどうか、そこら辺のところも、これは警察の方からでいいです。
  6. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 いわゆる三億円事件につきましては、発生いたしましたのが昭和四十三年の十二月十日でございますので、昨日をもちましてちょうど七年間が過ぎたということで、公訴の時効の期限は来たわけでございます。結果としまして犯人を検挙することができなかったということで、私ども捜査についていろいろ反省をしているわけでございます。  その反省点は幾つかあるわけでございますが、要約いたしますと、一つの問題としましては、この種の犯罪が起こりましたときの初動の措置といいますか、特に緊急配備、なかんずく車社会における車の検問等の初期の段階における検挙方策ということが十分でなかったのではないかということでございます。  二つ目には、いわゆる捜査の常道でございます物についての捜査で、何分にも大量生産、大量消費という現在の状況でございますので、従来のような物のたぐり方では必ずしも十分ではないというような点で、物からの捜査についての捜査方法というような点についてもいろいろ反省をしておるところでございます。  三つ目には、今度は人の問題でございますが、三多摩地区は御承知のとおり都市化の一番進展のはなはだしいところでございまして、人口の急増地帯、人の移動の非常に激しいところでございますので、そういう場所における情報の収集というようなことについて非常な困難性がある。こういうところでの人からの情報収集をどういうふうにしてこれから進めていくかというような点でいろいろ教訓を得ておるところでございます。  最後に、捜査内部の問題といたしましては、非常に犯罪が大型であり、かつ長期化したわけでございますが、非常に多くの捜査員を要するということで大規模な捜査陣になりましたが、こうした大規模な捜査員を掌握、管理して捜査を運営していくという内部体制の問題というような点についても、いろいろ反省をしておるというところでございます。  以上、この三億円事件について、捜査といたしましてたくさん反省点がございますが、特に強く反省をしておる問題点でございます。
  7. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 細かい点は本来地方行政でやるのが筋かもわかりませんし、そちらの方であしたあさってやるらしいということですから、細かいことは聞きませんが、私がいろいろ考えあるいは疑問に思っていることは、あなた方の方ではいわゆる別件逮捕とは言わないでしょうけれども、世間的に見ると別件逮捕だ、こう言われるような案件、あるいはそういうふうに逮捕までいかなかったけれどもそこまでいきかけたというかそういうふうなもの、そういうのはどの程度あったわけですか。
  8. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 本件で容疑性のある不審者としまして捜査の対象にしましたものは合計で十一万七千九百五十名に上っておりますが、このうち容疑性が強いと認めまして事情を聞いたというものは三十三名でございます。そのうち強制捜査によったものは一名だけでございます。
  9. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その一名というのはどういう事件で強制捜査して、結果としてはどういうふうになったわけですか。
  10. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 この一名につきましては、いま先生御指摘のようにいわゆる別件でございまして、恐喝事件で身柄を逮捕したということでございます。
  11. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、恐喝事件で身柄を逮捕してこの三億円事件を調べようとしてやった、そこを主目的としてやったということは、これはまあ間違いないわけか。
  12. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 三億円の容疑というものが背景にございまして、直接の逮捕容疑である恐喝事件をまあ入り口にしたといいますか、そういう手段であったということは、結果としてそういうことでございます。
  13. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは私いろいろ疑問を持つのですが、別件逮捕がいまの裁判例の中で許される場合と許されない場合とある。私は全面的に許されないのが筋だと思うのですが、いまの判例ではその点は限定していますからね。いまの場合がどういうのに当たるのか疑問があるのですが……。  そこで問題は、いま言ったいろいろな反省点がありますね。それは今後どういうふうな形で生かしていくかということについては、何か部内で今後ずっとまとめていくということになるのですか。
  14. 鎌倉節

    ○鎌倉説明員 ただいま申し上げました反省点の多くは、すでにいろいろな機会に全国の警察で改善をしておる点もございますし、また、今後さらにいろいろな方策を講じまして改善をしていくという点もございます。昨日、警視総監が記者会見でも発表いたしましたが、警視庁自身といたしましても内部の捜査体制等かなり大幅な改革を行うということで計画をいたしております。
  15. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 あとのことは地行委の方にお任せをしましょう、余りこの委員会でやっちゃってもあれになるから。  そこで、もう一つ、警察の方にお聞きしたいのは、チッソの例の事件ですね。この事件で結局聞きたいのは、まずいまどうなっているかということ、そこを最初にお聞きしたいわけですが、それと、当初これは全然警察の方としては手をつけなかった。そこで告発があってから初めて手をつけるようになったのじゃないかというように考えられるのですが、そこら辺の経過はどういうふうになっておるわけですか。
  16. 星野鉄次郎

    ○星野説明員 熊本の水俣病事件でございますけれども、現在どうなっておるかというお尋ねでございますが、警察といたしましては、三月十四日に告訴を受けまして捜査を進めました結果、業務上過失致死傷罪が成立するのではないかというふうに判断をいたしまして、去る十一月の二十九日に熊本地方検察庁へ送致をいたしております。  なお、告訴事件でございますので、告訴の罪名は殺人傷害罪ということになっておりますので、この点につきましてもあわせて同時に送付をいたしております。  それから、その告訴がある以前に警察が捜査しなかったのではないかというお尋ねでございます。警察といたしましては、この熊本の水俣病の被害というものが、チッソの水俣工場の排水しております有機水銀に起因するのではないかということがほぼ明らかになりました時点以降、それまでは原因不明でございますので当然捜査できなかったわけでございますが、そういうことがほぼ明らかになりました以降、刑事責任の有無につきましていろいろ検討は進めたわけでございます。しかし、その当時の事情といたしましていろいろむずかしい問題もございますし、因果関係、あるいは予見可能性の問題、そういった点がいろいろ問題がございますものですから、犯罪ありと思量して捜査に着手するだけの資料が得られなかったということでございますけれども、しかし、昭和四十八年の民事判決が下りました以降、熊本県警察といたしまして、具体的な捜査に着手いたしませんでしたけれども、いろいろこの問題につきまして検討を進めまして、相当当時も調査をいたしました。そうして、そういう調査を進めておる過程におきまして、今回三月十四日に被害者の方々から告訴がございましたので、これによりまして具体的な捜査に着手した、こういう事情でございます。
  17. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこら辺は非常におかしいんで、告訴の場合はただ事実を調べてそのまま検察庁に送ればいいわけでしょう、いまの規定では。どうして民事判決が出るまで、あるいは出てから後においてももっと積極的な捜査ができなかったのかということですよ、問題は。これは非常におかしいんで、警察としてはむずかしいむずかしい、それはなるほど普通の事件とは違うわけですから、むずかしい事件であるには違いないですね。どうもそういう点について、熱意がないというと言葉は悪いかもわからぬけれども、少なくとも現実に死者や何か出ておられるのを見て、それがわかれば、自分の方から認知をして積極的に事件として調べるというのは当然過ぎるくらい当然だと思うのですが、どうもそれを積極的にやらなかったということは私は理解に苦しむわけです。  そうすると、今度業務上過失致死傷で送ったというのは、これは業務上過失致死傷になるという確信があるということ、証拠があるというので警察は事件を検察庁に送ったの。あるいは告訴があれば、規定で調べて送らなければなりませんね。だからそのまま送ったということなんですか。どっちなの、これは。
  18. 星野鉄次郎

    ○星野説明員 告訴に基づく捜査をした結果、熊本県警察といたしましては、業務上過失致死傷罪が成立するという判断で事件を検察庁に送ったわけでございます。
  19. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはだれとだれとがどういうような疑いというか嫌疑があって事件として成立するという見込みで検察庁へ送検したわけですか。
  20. 星野鉄次郎

    ○星野説明員 昭和三十四年ごろから当時の元社長、それから元工場長、これは二名ございますけれども、計三名がその当時の状況からいたしまして、工場排水によりまして水俣病というものが発生する、その原因であるということを予見すべきであったのに、これらの必要な注意義務を怠りまして、依然として工場排水を続けた結果、水俣病という被害を生ぜしめた、またその結果死に至らしめた、こういう疑いでございます。
  21. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それがいまごろわかるというのはおかしくないですか。当然もっと前から同じ状態が続いているんだからわかっているはずじゃないんですか。いまになってその事実関係がはっきりしてきたというのは理解できないですね。どういうわけなの、これは。
  22. 星野鉄次郎

    ○星野説明員 この問題の因果関係がはっきりいたしました経緯というものは、先生御存じと思いますけれども、四十三年には政府といいますか、当時の厚生省の政府見解が出されております。チッソ水俣工場の排水による被害であるということが出されておりますが、この時点で熊本県警察がいろいろ検討しましたのですが、この時点では、当時の被害の状況からいたしまして、三十六年ごろ以降の水俣病の発病者がないというようなことで、もし仮に業務上過失致死傷罪が成立するとしても時効が完成しているのではないかというようなことでございました。  その後、さらに被害者の方が、新たに被害の発生がございましたけれども、時効の問題を別にいたしましても、個別的な因果関係というものが非常にむずかしいのではないかということで、いろいろ検討を進めましたけれども、先ほど申し上げましたとおり、犯罪ありと思量して捜査するだけの資料がどうしても得られなかったということのようでございます。
  23. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それが民事の判決があってから犯罪ありと思量すべき状況になったということも警察としては積極性がないし、また告訴、告発があってから、それにある程度やらざるを得ないというか、そういう形でやってきて送検になったというふうにとれるので、非常に積極性がないというふうにとれるのですが、法務大臣、あなたはこの前ここのあいさつのときに、公害問題、公害犯罪といいますか、これには積極的に取り組むというようなことを言っておられた。最初のところで言わないで最後のところにくっつけて言われた。そうすると、この問題について検察庁としてはどういうことをやっておられるのですか。
  24. 安原美穂

    ○安原政府委員 先ほど警察当局から御答弁がございましたように、本年の十一月二十九日に総計百三十二名を被害者とする業務上過失致死傷事件の送致及び送付がございましたので、検察庁といたしましては、御指摘のとおり、世間の耳目を引く重大な公害事件の被疑事件でございますので、全力を挙げてその犯罪の成否を明らかにする必要があるということで、熊本地検におきましては特別捜査班を編成いたしまして、次席検事のほかに検事五名をこれに当たらせ、さらに検察事務官十三名をこれに配置するという体制で特別捜査班を編成し、なお常務の処理のために隣接地検から応援検事を派遣するという態勢で、全力を挙げて犯罪の捜査に従事するという態勢でおります。
  25. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いままで検察庁としては、率直に言うと警察へ任せっ放しですか。指揮権がないと言うかわからぬけれども、事実上自分の方でもやれるわけですから。そうして、送検を受けて初めて取り組むというのはどういうわけなんですか。もっと前に積極的に、警察とは関係なしに、あるいは警察の捜査を補充する意味において、あるいは独自に幾らでもできるわけですよ。これはどうしてやらなかったのですか。
  26. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘のとおり、検察官は捜査に関しましては第二次的な機関ではございますけれども、いかなる犯罪も捜査できるわけでございまして、その意味におきましてこの事件につきましては非常に重大な関心を持っておったことは事実でございますし、事実上警察当局からも情報受け入れあるいはその他の基礎資料についての検討は続けてきたわけでございますが、御理解いただきますように、まことにその予見の可能性の問題あるいは因果関係の立証の問題あるいは事件が非常に古いというようなこと等ありまして、犯罪の嫌疑を抱くという段階に遺憾ながら至らなかったために捜査に着手せず、あるいは検事認知をしなかったということに相なるわけであります。
  27. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、いままで長い間かかって、これは恐らく証拠隠滅というものはもう至るところにされているに違いないと思うのですよ。今後の捜査の中で証拠隠滅の点を一体どういうふうに理解して、どういうふうに対処していくのですか。仮に証拠隠滅の点が明らかになってくる、これは逃げ隠れないでしょうけれども、そういうふうなことを考えたときには、これは身柄の拘束というか強制捜査ということもあり得るというふうに考えてよろしいでしょうか。これは大臣どうですか。
  28. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘のとおり、理屈はそのとおりでございます。
  29. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 私は特に水俣病公害には経歴上非常な関心を持っているわけです。昭和三十二年文部政務次官当時、九州地方の文教施設の視察に参りました際、熊本大学を訪れました。医学部長からフィルムを見せてもらいました。とにかく妙な病気が発生して、ネコが踊ったりする写真、人間も大変な状態にある。そこで、この原因究明や病気の研究を医学部にしてもらうために、帰ってから早速、当時の金でわずかでしたけれども、予備費から五十万円を支出いたして研究してもらうことにいたしました。  昨年のきょう、法務大臣に就任の際あいさつをいたしまして、全般的に犯罪の検挙はもちろん重要であるけれども、特に去年は水島の石油流出事件等が起きた直後でございましたので、国民の心配している公害についてあれだけの法律ができたので、罰則もあることだから、公害諸立法上の違反事件については特に厳重に対処するようにということを訓示をしたわけであります。したがって、稲葉委員御指摘のいろいろな点につきましては、私としては法務省や検察当局にも、それから警察当局にもしっかりやってもらいたいものだが、どうも御指摘のように手ぬるいような感じを抱かざるを得ない心境であります。
  30. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣、その手ぬるいような印象というのはどういう点が手ぬるいのですか。
  31. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 先ほど来稲葉委員の御発言で指摘されているような点についてであります。
  32. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、そうすると今後、大臣、あなたに直接指揮権はないわけで、検事総長に対する指揮権しかありませんけれども、いずれにしても国民――こういう事件だけじゃないですよ、ほかの公害犯罪がいっぱいありますね。非常に告訴、告発が出ていますね。そうすると、告訴、告発だと何かそれがいかにも誇大なもののように、どうしても検察庁なり警察はとるのですよ。それで告訴、告発になるとなかなかやらないで、机の引き出しにしまっちゃうのが実際問題として多いのですよ、内容によりますけれども。だから、国民が納得できるように――納得できるというといろいろな形がありますよ。納得できるように、しかも早く結論が、早くたってラフであっては困りますけれども、結論が出せるように、こういうふうな問題について全力を挙げるということは大臣の口からはっきり言えますか。
  33. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 本日のこの委員会で強い稲葉委員の発言もございますので、なお一層――私の心情は先ほど申し上げたとおりです。一般的に公害犯全般につきたびたび検事総長にはしっかりやってもらいたいと申しておりますが、またきょうこういうこともあったということを伝えて、しっかりやってもらうようにいたします。
  34. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 人権擁護局長は時間の制限があるようですから……。  これはちょっと大臣にも聞きたいのですが、きのうの朝刊で、朝日と読売その他ですが、被差別部落のマル秘地名集というようなものが人事調査資料にということで大企業相手に売り込みをされているという記事が出たわけですね。私も実はこれを読んでみてびっくりしたのですが、これは一部に伝えられるところでは、資料は官庁関係から入手したに違いないというふうにも報ぜられているわけですね。それは私もちょっとどうかと思うけれども、そういうふうに報ぜられていますから。その点を含めて、こういう事件について一体人権擁護局長としてはどういうふうに考えるかということを聞くのですが、その前に大臣、新聞をお読みになったと思うのですが、こういうことについて大臣はどういうふうにお考えになりましたか。
  35. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 まことにけしからぬ、法務省としては遺憾千万であるというふうに感じました。
  36. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、これについて法務省としてはどういう手を打つのですか、また、法律的にどういう手が打てるのですか。
  37. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 法務省といたしましては、人権侵犯事件ということで調査活動を進めていくわけでございます。  本件につきましての経過を申し上げますと、去る十一月十九日に大阪法務局におきまして大阪府の同和対策室からこの本の出版案内書の写しを入手いたしまして、この件を東京法務局に通報いたしました。これは出版元が東京でございますので、東京法務局でこの事件を処理するということになったわけでございます。  まず、東京法務局ではこの出版をいたしました京極公大という者の身元を調べまして、さらにどういう規模でどの程度のことをやっているのかという事実関係を調査している、現在は調査中でございます。  で、先ほどお触れになりましたこの本の種本になったものは何かということも現在調査中でございますが、まだ確定的な結論を得るには至っておりませんけれども、一部の新聞に報道されておりましたような総理府の資料から出たのではないかということは、どうもそういうことではないということは調査の現在の段階では出ております。御参考までに申し上げておきます。
  38. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこでお聞きしたいのは、法務省として、これは勧告はわかりますよ、それ以外に手は打てないのですか。
  39. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 人権擁護局といたしましては強制権を持っておりませんで、あくまでも啓発を図るというのがその職責でございますが、本件につきましてはこの処理の方針として、その出版元に残っております本は全部任意に提出させまして、これは廃棄する。それから、これは数は非常に少ないようでございますが、一部すでに販売されたものがございますが、これは販売先を早急に調査いたしまして、これも任意提出を求めて廃棄する。こういう本が世の中に出ないようにできるだけの手段を講ずるとともに、こういう出版を図ったこの京極本人、これは本名は坪田というのでございますが、この本人はもとより、これを購入した一部の者につきましても、こういう本の出版は重大な社会悪である、差別事犯としてもきわめて悪質なものであるということを説きまして、個別的な啓発を図るとともに、今後こういうことがないように、さらに一般的な啓発活動を進めていきたい、このように考えております。
  40. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 問題は、これは本来訟務部を呼んでおけばよかったかもわかりませんが、大体皆さんおわかりだと思うのですが、任意に提出しなかったときにどうなるかということですよ。任意に提出しなかったときに一体どうなるのか、国が当事者となって債権者となってそれを差しとめなり何なりの仮処分の申請ということが一体できるのかできないのかということですよ。国自身の法益というものも非常に大きく侵害されておるではないかということから言えば、そこまでやらなければならないのじゃないか、こう思うのですが、それはどうなんですか。法律的にできるの、できないと考えているのですか。
  41. 村岡二郎

    ○村岡政府委員 これはなかなかむずかしい問題でございまして、普通の法理をもってしますと、強制的に取り上げるということは非常にむずかしいと思います。その法律構成をするにはよほど検討を要すると思いますが、私、まだいまの段階でこういうふうに構成していけばできるということはお答えいたしかねますので、検討させていただきたいと思います。  それから、本件につきましては、現在の見通しでは完全に回収できるという見通しを持っております。ただ非常に流動的なところもございますので、何かまた新しい支障が生ずるようなことがあれば別ですけれども、東京法務局は従来からやってきておりました調査が予定どおりスムーズに進めば、完全に回収できるものと確信しております。(稲葉(誠)委員「大阪じゃないの」と呼ぶ)これは出版元は東京なものですから、事件は東京法務局が処理しております。
  42. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 あなたの方でそういうふうに言われるのですから、それを信じて早急に処理していただきたいと思う。大臣、どうですか、それは。細かい法律論はいいですよ、いまわかりましたから。
  43. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 これどうなんでしょうか。私、よく法制局長官にも聞いてみなければお答えしにくいところですがね、憲法十四条の問題と二十一条の出版の自由はこれを保障するという条文と、どういう兼ね合いになるのか。任意に提出することを求めて提出しない場合の罰則の法律もございませんし、公共の福祉ということで二十一条の出版の自由について、御指摘のような十四条違反のおそれある出版物については何らかの処置ができるのかどうか、検討さしていただきたいと思います。
  44. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大臣、私はそれを聞いているんではないのですよ。それは確かにむずかしい問題があるのですよ。そのことを聞いているんじゃなくて、いま人権擁護局長は任意に回収できるということを言われたから、それを私は信じますから、だから早急に任意にそれが回収できるように、法務省として最大限の努力をしてくれということを言っているわけですから……。
  45. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そういうことは、人権擁護局長ができると言うのですから、恐らく事務的にできるんでしょう。できるのならばやってもらいたい、こう思います。できるのなら大いにやらせたいと思います。
  46. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 話は別になりますけれども、いま少年法の改正の問題、これが新聞などでは植松試案という形でちょっと出ましたね。これは植松試案と呼ぶのが正しいのかどうか私はよくわかりませんが、これは法務省としてはどの程度進捗しているわけですか。
  47. 安原美穂

    ○安原政府委員 御案内のことと思いまするけれども、少年法の改正問題につきましては、過去にさかのぼって申し上げますと、昭和四十五年六月に法務大臣から法制審議会に対しまして、法務省としての少年法改正要綱というものを示しまして、法制審議会にそれについて意見を承りたいという諮問が出されたのでございまして、それ以来少年法部会におきまして、ほぼ月一回の割合で会議を開催してきたわけでございます。今日もさようでございますが、その中で特に重点として要綱が示しております問題の重要なポイントは、少年の中で十八、十九歳をいわゆる青年層としてとらえて、これを十八歳に満たざる少年と区別し、あるいは成人とも区別して、青年層というものを設けて特別の処遇を図っていこうというところに、この少年法改正要綱の基本的な特徴があったわけでありますけれども、この青年層の設置の可否をめぐりまして激しい意見の対立がございまして、稲葉委員御案内と思いますけれども、激しい意見の対立のままで五年近くを経過したわけでございます。その間、この可否問題をめぐりまして、非常に意見の対立がありますとともに、どこに意見の対立点があり、どこに意見の一致点があるかということも、反面において明らかになってきたわけであります。  そこで、本年一月の第四十九回の会議におきまして一般委員の方から、今日まで五年の歳月を経過して、どこに問題点がありどこに一致点があるか、どこは早急に改正を要するかというようなこともほぼ明らかになったので、いつまでもこの改正要綱の可否を論じておってはエンドレスになる、いつ終わるかわからない、一般委員からは一種のもういいかげんにというような趣旨の御発言がございまして、改正要綱の可否ではなくて、何か大方の意見のまとまるところでひとつ早急に改正を要する点についての中間報告を行うというようなことを検討してみてはどうかというような御提言がございまして、かねて部会長も同じような感覚を持っておられましたので、それではそういう方向でさしあたり中間報告を行うということではどうかというようなことが本年二月の第五十回の少年法部会で検討されまして、そしてその結果、先ほどの一般委員の御提案のように、さしあたり早急に改正を要する、大方の意見の一致するところで意見を取りまとめて総会に中間報告する、その間、要綱の審議はしばらく留保するというような方向でやってみようということに部会で話が決定をいたしまして、その後部会長からわれわれ事務当局に、いま言われる一般的に大方の意見の一致するところというのはどういうところかというような点を、部会の会議の外で非公式に、インフォーマルにサウンドしてみてはどうか、そしてそれを部会長に報告してくれというようなことでございましたので、法務省の事務当局といたしましては、最高裁判所を初めとして各委員、関係機関にも意見をサウンドいたしまして、それを御報告申し上げたところ、先般、先ほど御指摘のような部会長試案という形で、大方の意見が一致しそうなところであると部会長がお考えになったものを植松試案あるいは部会長試案としてお示しになり、それが本年の五月の第五十二回会議でございました。自来、その中間報告に盛り込むべき事項、いわゆる部会長試案についての検討を重ねて今日に至っておるというのが現況でございます。
  48. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いま最高裁にサウンドしたという話がちょっとありましたけれども、最高裁、これは恐らく家庭局だと思いますが、どういうふうなサウンドの仕方があって、そして最高裁としてはどういうふうにこれを考えているのですか。これは本当に結構でございますと言うの、早くつくってくださいという考え方なのかな、どういう考え方なんですか。
  49. 裾分一立

    ○裾分最高裁判所長官代理者 稲葉委員のお尋ねでございますが、先ほど安原政府委員からお答えがありましたような経緯でもって進んでおるわけでございます。本年の二月、たしか少年法部会の第五十回会議だったと思いますが、その際に大方の意見の一致するところで考えてみてはどうかというような線が出まして、それから後数回、法務省の方が植松部会長の意を受けて私どもの方に参られまして、裁判所の考えておるところを聞かしてほしいということでございましたので、私どもとしましては、かねてから昭和四十一年に最高裁判所事務総局が少年法の改正の向かうべき方向を指し示した意見がございますが、それに基づきまして、その当時と現在まだ意見は変わっていないので同様の方向で善処してほしいということを申し入れました。植松部会長は私どもの方ばかりでなく学者の委員の方やあるいは在野法曹の方やいろいろな方面の意見をお聞きになったようでございますが、その結果、本年五月にいわゆる部会長試案なるものが示されまして、大体その部会長の示されました試案には私どもの意見が盛り込んであるというふうに考えておる次第でございます。
  50. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 どうも結論ははっきりしないのですが、そうすると、部会長試案というものについては最高裁としては一言で言うと賛成なんですか。そのとおりで結構だということなんですか。
  51. 裾分一立

    ○裾分最高裁判所長官代理者 部会長試案は、先生御案内のように、大方の意見の一致するところということで締めくくってありますので、その表現がなお抽象的な部分がかなりあるわけでございます。それを煮詰めていきますと、もっと細かい部分に入りますとまた各方面いろいろの御意見がございましょうし、私どもの方としても意見があるわけでございまして、なおその細かい点の方は私どもは第一線の現場の裁判官とか調査官とかいったような方々の意見をくみ上げていかないと、いますぐにこの線でいいということまで行かないわけでございます。そういうふうな細かい点は留保されたかっこうで、大まかな意見の一致したところという部会長の御意向の範囲内では私どもは結構だと思っておる次第でございます。
  52. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、十八歳、十九歳を青年として十八歳以上は普通成人として取り扱うということ、そこが一番大きなポイントでしょう。ぼくの聞き違いかもわからぬけれども、それは最高裁とすればいいということなんですか。どうもちょっとはっきりしないな。私の聞き違いかな。
  53. 裾分一立

    ○裾分最高裁判所長官代理者 ただいまの御質問でございますが、十八歳以上を青年層としてとらえるというのは、当初昭和四十五年に法制審議会少年法部会が発足したときに法務省の方から示された要綱がそうなっておるということでございまして、部会長の試案というのはそれとは違った姿になっておるわけでございます。つまり要綱の考え方は、十八歳以上を青年層としてとらえて、これに対しておおむね刑事訴訟手続で処理していこう、こういう構想であったわけでございます。それにつきましては非常に意見の対立がございまして、私どもは現在でもそれに反対しておるわけでございます。それで、いつまでも反対で意見が一致しないと困るからということで、部会長の試案は、現行少年法の手続の基本構造を変えないで、その枠内で多少年長少年について取り扱いを変えていこうということでございまして、そういう点で要綱と部会長試案というものは法律的に見ますと構造そのものが変わっておりますわけで、現在の部会長試案については私どもは大体おおむねその線でいいんじゃないか、こういうことでございます。
  54. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 最高裁の態度が何かよくはっきりしないところがありますが、そういう点から一つでも崩れていくと、要綱とは違うにしても、だんだん少年法のあり方というものが壊されていくんじゃないですか。現場の人たちは植松試案でいいと言っているのかな、どうもそこら辺が……。もっとあなたの方から、それは困るんだ、だんだん少年法が一つずつ崩されていくのは困るんだという強い意見が出るかと思っていたんですが、聞いてみるとそうでもあるようなないようなところがあってはっきりしない。最高裁としては植松試案というのは賛成なんだ、ちょっと荒っぽい聞き方ですけれども、そういうふうに聞いていいですか。
  55. 裾分一立

    ○裾分最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、法務省御当局が少年法改正構想を発表されて以来、それに対してどういうふうな態度でもって臨むかということをいろいろ部内で議論したわけでございますが、その結果が昭和四十一年に意見書として出ておるわけでございます。それ以後ほとんど毎年のように裁判官あるいは調査官の会同を開いて、その都度協議してまいりました。現在でも昭和四十一年に発表しました事務総局の意見の線がわれわれとしては正しいと思っておるわけでございます。部会長試案はその四十一年の線で了承し得る範囲だ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  56. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは私の考えと大分違うところですが、私の方でもよく研究します。大分いまの発言は問題になってくるのじゃないかと思いますよ。  そうすると、大臣、今後少年法の改正はどういうふうなプロセスをたどって、いつごろどういうふうな形になるというふうな目安ですか。これは目安ですから、厳格なことはわからないとしても……。
  57. 安原美穂

    ○安原政府委員 一応現在の法制審議会少年法部会の進行状況を申し上げますと、先ほど申し上げましたように、部会長試案というものの検討を進めておるわけでございますが、これはすでに発表いたしておるように、柱が五つございまして、第一が、少年の権利保障の強化及び一定の限度内における検察官関与という両面から、現行少年審判手続の基本的構造を変えないで改善を図っていくということでございます。それから二が、十八歳以上の年長少年の事件については、少年審判の手続上十八歳未満の中間・年少少年の事件とはある程度異なる特別の取り扱いをする。これはもう御承知と思いまするけれども、先ほど裾分家庭局長御説明のとおり、少年法の改正要綱とは違いまして、要するに現行の少年法手続の中でこの年長少年につきましての死刑または無期もしくは短期一年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪に係る事件に関しましては、検察官が出席して立ち会いかつ意見を述べ、刑事処分を相当とすることを理由とする抗告ができるというような道を開くという意味で特別の取り扱いということでございますが、これが第二の柱でございます。  この第二の柱と第一の柱はお互いに検察官関与という点において関連いたしますが、現在この第一と第二の議論がおおむね出尽くしたという段階でございます。これを越えますと、第三が一定の限度内における捜査機関による不送致の問題、第四が保護処分の多様化と弾力化の問題、第五がその他必要な改正というように五つの柱がございまして、なお三、四、五と進まなければなりませんので、いつ中間報告に盛り込むべき事項としての部会長試案全体についての採否が決まるかはいまのところ予測はいたしかねますが、そう遠からず一つの結論を得るものとわれわれ事務当局としては予測をいたしております。  その結果、これが中間報告という関係で部会から総会に報告され、それが総会で採択されました場合におきましては、その中間報告としての答申を得まして、法律の改正の必要な面につきましては、この答申を尊重して事務当局としては立案の作業をする。その過程において、先ほど裾分家庭局長御説明のとおり、細かい立法の技術面についての詰めを行っていかなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  58. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 では少年法の問題はその程度にして、民法の問題ですね。  昭和五十年八月一日に、法制審議会の民法部会身分法小委員会が中間報告を出して各方面の意見を求めておるわけですね。第一が相続人と相続分、第二が夫婦財産制、第三が相続人の寄与分、三部から成っておるということでございまして、私も中を大分読んでみたのです。  そこで、身分法小委員会はずいぶん長くかかっておるように考えられるのですが、今後の作業としてはどういうふうに進んでいく見通しなんですか。
  59. 香川保一

    ○香川政府委員 ただいまお話しの中間報告を一般に公表いたしまして、ここに盛られておる審議対象事項は国民の生活にも重大な関係がございますので、広く意見を徴しまして、その意見を踏まえまして身分法小委員会でさらに検討して結論を出す、かような順序でございます。
  60. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは何か法務省が発表したのですか。もう三年ぐらいかかっている、あと二年ぐらいで大体の目安をつけたいというふうなことですか。おおよそはどういうふうになっていますか。
  61. 香川保一

    ○香川政府委員 先ほど申し上げました法制審議会の身分法小委員会の中間報告を公表いたしましたのはことしの八月一日付でございます。で、何分にも盛られている問題点、事項がむずかしいものも相当ございますので、あと二年間でここに盛られておる事項全部について身分法小委員会で結論が得られるかどうかということは、ちょっとこの段階では申し上げかねると思います。
  62. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると大臣、これはきわめて大ざっぱなことを聞くのですが、現在の憲法なり民法なりあるいはその他の法律の中で、日本の場合ですよ、婦人の地位が平等というか、あるいは男子から比べて低くなっているか、こういうことについては大臣自身はどういうふうにお考えなんですか。
  63. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 夫と妻の経済的地位の平等化を目標として身分法の改正をしたいと思っているのですが、現在はそういう点で不十分だと思っております。経済的平等、地位の平等という点で妻の方が不利なようにできているというふうに私は感じております。
  64. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、妻の方が不利にできているという点は、一体民法上あるいはその他の法律上どことどこですか。これは専門的になるから民事局長でいいですが、大臣の答弁を受けて答えなきゃならないですよ。
  65. 香川保一

    ○香川政府委員 ただいま大臣の申されました妻の方が不利益を受けておると申しますのは、つまり、形式的な男女の平等という点から申しますと、形式的には現行民法は特に不平等ということでの憲法違反というふうな問題はないと思うのでありますけれども、実質的に個々の事案等考えますと、その場合に、夫に比して妻が不利益を受けるというふうな事態になることもあり得ると思うのであります。これは、たとえば夫婦財産制の問題にいたしましても、たとえば現在は御承知のとおり特有財産は除きまして、民法では夫婦が婚姻中に得た財産は、夫が得た物にいたしましても、だれの財産かが明確でないときには共有と推定するというふうなことに相なっておりますけれども、通常は夫の名義で財産が取得されるケースが非常に多い。その財産の取得の背景としまして妻の寄与した分も相当あるというふうな場合でも、夫の名義で財産が取得されれば夫の特有財産になるというふうな点があるわけでございますが、これは、つまり妻の内助の功と申しますか、そういった面が、夫婦関係が正常に継続しているときには特に問題がないと思うのでありますけれども、離婚した場合とか、あるいは夫が死んだ場合の妻の相続関係というふうな面において、果たして十分妻の内助の功が法律的に保護されておるかどうかというふうな点に相なりますと、若干不十分な点があるのではないかというふうな点、問題になろうかと思うのであります。
  66. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いまの話の中に出てきましたね、たとえば離婚の場合に、財産分与と慰謝料とが厳密に言えば全然違うわけですけれども、通常では一緒になっちゃっている、考えているようですけれども。慰謝料は別として、財産分与というのはどういうふうな形で妻が夫に対する財産の分与を求めるのが正しいというふうに理解していいのですか。そして現実にそのとおりになっているのか、どうなのですか。
  67. 香川保一

    ○香川政府委員 財産分与の関係につきまして、どのような形が法律的に正しいかと言われますと、いろいろ問題があると思うのでありますが、その辺のところが非常に実際問題として――これは妻の場合が主として問題になるわけでございますけれども、その場合の保護に現行法として十分であるかどうかということが現在検討されておるということで御容赦願いたいと思うのであります。
  68. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その検討されているというのは身分法小委員会の中間報告の中ではどこに当たるわけですか。
  69. 香川保一

    ○香川政府委員 実は、中間報告の点は財産分割の問題としてとらえておるわけでございますけれども、直接分与請求をどうするということは、以前に身分法小委員会でいろいろの意見が出ておるのでありますけれども、まだどういう方向の改正がいいかというふうなことで、たとえば甲案、乙案というふうなところまで煮詰まっていないというふうなことでございます。
  70. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 よくわからないのですが、たとえば相続権、相続分の問題ですね。配偶者の相続分の問題がこの中間報告の中の相続人・相続分の中に出てきますね。六に出てくるのかな。そうすると、配偶者の相続分を三分の一という、普通子供のいる場合三分の一ですね。三分の一と決めている理論的な根拠というかあるいは歴史的な根拠というか、これはどこから来ているわけですか。
  71. 香川保一

    ○香川政府委員 厳密な意味で定かでないのでありますけれども、当時立案の過程において考えられたのは、当時の家族構成としましての見通しと申しますか、通常は、子供が二人が通常であろう、こういうふうなことで、したがいまして、夫が死亡いたしました場合に、残る妻と子供二人というふうなことで、いわば平等と申しますか、さような点で配偶者の相続分を三分の一にするのが妥当だ、こういうふうな考え方があったように承っております。
  72. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 この配偶者の相続分を三分の一じゃなくて、現在の情勢では二分の一ぐらいにしないと、妻の生活というか保障といいますか、そういうふうなものが不十分であるから、子供はだんだん大きくなってくるし、自分で生活できるようになってくるわけですから、配偶者の相続分を普通の場合でも二分の一にしたらどうかという議論が出てきているわけですね。これについてはどういうふうに小委員会の中では考えられておるわけですか。また、立法上これはどういうふうになっているのですか。
  73. 香川保一

    ○香川政府委員 小委員会で出ました議論を大別いたしますと、お説のように、妻の相続分三分の一は内助の功等を考えると低きに失するから、これを二分の一にすべきである、引き上げる説が一つと、それから、現行法のままでいい、つまり三分の一でいい。たとえば、先妻の子供と後妻の子供があってというふうなケースを考えると、後妻が二分の一相続するのは行き過ぎじゃないかというふうなこともございますし、また、同じく中間報告でも取り上げております寄与分の制度を設けることで、実質的に内助の功の十分あった妻の保護は図られるじゃないかというふうなことで、現行法維持論と引き上げ論と二つ出ておるのでありますけれども、まだいずれが多数というふうなところまでは至っていない現状でございます。
  74. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それで、いま言った寄与分というのは一体どういうものなんですか、それが一つ。まあわかっていると言えばわかっているのですが、ゆっくり説明してもらいたいのが一つと、それから寄与分に関する部分だけが法案の試案として示されているわけでしょう。そこら辺の事情は、どうしてここだけが法案の試案として示されているわけですか。
  75. 香川保一

    ○香川政府委員 この寄与の制度を設けるべきであるということにつきましては、小委員会におきまして大方の意見が一致いたしておるわけであります。したがって、方向といたしましては、寄与の立法をするということに相なろうかと思うのでありますが、その理論構成等につきましていろいろむずかしい議論があるようでございまして、細かな点についてまだ確たる結論は得ていないという状況のようであります。
  76. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、寄与分というのは一体どういうふうなものなのかというのですよ。それをまずわかりやすく説明してもらいたいということなんです。
  77. 香川保一

    ○香川政府委員 どうも、当然御存じと思いまして失礼いたしましたが、たとえば農家の長男がおやじさんと一緒に――もちろん特に賃金を得るわけでなしに、一緒に農業をやっておるというふうなときに、その父が死亡したという際に、当然その農業によって得た財産と申しますか収入と申しますか、それが相続財産になるわけでございますが、それがまあ無報酬で長男の力が非常に強く出てそれだけの財産が形成されたというふうな場合に、その長男のいわば相続財産に対する寄与の関係を特別に保護して、特にその者に寄与分として相続財産から分かち与える、こういうふうなことが寄与の制度ということになると思うのであります。これがまあ妻の場合には、夫の名義で得た財産一その夫が死亡しました場合にそれが相続財産になるわけでございますが、それだけの財産を形成できたのも妻の内助の功が大いに働いて力があったというふうなことでありますと、その相続財産から妻の寄与分としてそれだけを抜き出して特別に与えるというふうなことが寄与の制度として考えられておるわけでございます。
  78. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それは現実に、法案がなくても、実際にはそういうふうに行われているのではないんですか。それを特に法案を必要とするというのはどういうところに理由があるわけですか。
  79. 香川保一

    ○香川政府委員 家庭裁判所の実務におきまして、いま申しましたような寄与の制度の考え方の合理性から、相続財産の遺産分割の審判の際に、そういったことを勘案して、まあ寄与した分を余分に与えるような遺産分割の審判がなされるケースがあるようでございます。ただ、これは非常に問題でございまして、考え方といたしましては、つまり、その相続財産が本来は相続人全員の共有になって、相続分に応じて遺産分割がされるということに相なるわけでございますけれども、その中に寄与した者がおるときには、その財産の中にその寄与した者のいわば財産としてしみ込んでおるというふうな考え方で、それを確認的に――もともと、だから、相続財産ではなくて、寄与した者の財産だというふうな考え方があって、それを確認するような意味で遺産分割の審判をかりてその寄与分だけを余分に与えるというふうなことが行われておると思うのであります。これは稲葉委員御承知のとおり、一審のところでそういうふうなことがなされました場合に、高裁へ参りますと、全部と言っていいくらい破棄されておるという現状でございます。これは、もしも実質的な寄与、それが本来の寄与者の財産だということになりますと、いわばその財産分だけの確認の審判というふうなことになるわけでございますが、これは本来遺産分割の審判としてはそういうことはできない相談でございますので、法律的に申しますれば、やはり現在一審で行われているそういうやり方というのは疑問が大いにある、やはり立法で解決することではなかろうか、かように考えるわけでございます。
  80. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、その立法というのは、もう試案もできているんだし、全体の小委員会のものとは別に、そこだけを抜き出してといいますか、早くやろうと思えばやれるのではないんですか。これはまずいのかな。
  81. 香川保一

    ○香川政府委員 これは御承知のとおり、法務省といたしましては法制審議会の答申を得まして、その答申を尊重してその線に沿った立法をするというのが従来からの慣例でございます。したがって、全体の議論を踏まえて、この分だけは早急にかような形での立法をすべきであるというふうな答申が法制審議会から得られますれば、もちろんその線に沿って立法するということになると思うのでありますけれども、寄与分の制度を設けるべきだということについて、先ほど申しましたように、小委員会においては大方の意見は一致いたしておるのでありますけれども、先ほど御指摘の配偶者の相続分等とも関連する問題でございますので、直ちにそれだけを抜き出して特別に立法するというふうなことはいかがかというふうなお考えが小委員会にはあるように思うのであります。
  82. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これはよく議論がされているところなんですが、私わからないので教えていただきたいんです。いまは妻の得た財産というもの、持ってきた物から得た物を、特有財産としてありますね、それをよく、共有にしろ、基本的に夫婦共有にしろ、そういう議論があるわけでしょう。その場合と別産制の場合と、利害得失というのは一体どういう点にあるんですか。私は別産制の方が妻の地位の向上にはいいんだというふうに思ってはいるんですが、どうもよくわからないのですよ、そこら辺のところが。ひとつ具体的な例を挙げて説明をお願いをしたいと思うのです。
  83. 香川保一

    ○香川政府委員 ただいまの別産制と共有制のそれぞれの利害得失と申しますか、いろいろあろうかと思いますけれども、主な点をちょっと申し上げますと、別産制をとっておりますれば、何と申しましても、これはだれの財産かということが明確だという点が一つあるわけでありまして、明確である関係から、取引をする第三者の保護が図りやすいという利点があると思うのであります。この場合に、共有制をとりますと、たとえば夫の名義で不動産の登記がされておるというふうなときも、名義は夫の単有の形になっておっても実体は夫婦の共有ということになる、そういった名義と実体とが分離する場合が考えられる。これはある意味では不都合でございまして、この場合の取引関係に立つ第三者の保護というのをどのように図るかという点が、一つ問題になってくる点があろうと思います。  それから、別産制をとっておるというのは、これは理念的には妻の独立、経済的な独立と申しますか、さような点を、形式的なことかもしれませんが、配慮している。そういう意味で、配偶者の財産の独立制が守られるという意味の利点はあるだろうと思われるのであります。共有制をとりますと、今度は積極財産のみならず消極財産について、債務につきましてもいわば共有ということに相なりますので、そうなると、夫が得た借財について妻も連帯債務の関係に立つということが果たしていいのかどうかというふうな問題点も出てこようかと思うのであります。  それから、いろいろございますが、別産制をとっておりますれば、婚姻関係が解消いたしました場合に、先ほどの分与の問題とかいろいろのその事案に応じてわりあい妥当なと申しますか、端的に言えば妻の保護を図るような財産の帰属関係を決めることも可能になるわけでございますけれども、共有制をとっておりますれば、共有持ち分ということでぴしゃっと決まってしまうというふうな、硬直性と申しますか、さような点も一つの不都合ではないかと考えられる点だと思うのであります。それから共有性をとっておりますと、端的に妻の内助の功と申しますか、夫の名義で得た財産についても、そこに共有という形での妻の内助の功がそのまま財産評価として出てきておるというふうな利点があろうかと思うのであります。  それやこれや、いろいろ利害得失はあろうかと思いますけれども、そのような利害得失を踏まえて、わが国の国民感情あるいは夫婦の実態等も踏まえて、単に数量的にこちらの方が利益が多いからということでさような立法に踏み切るというわけにもなかなかいかぬむずかしい問題があろうかと思うのであります。
  84. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、結局これは、身分法の小委員会では結論は出ないというふうにお聞きしてよろしいのかな。あるいはそこまでいくのはちょっと無理かもわかりませんが。結局、甲論がある、乙論がある、あるいは修正論がある、修正論というか、谷口さんのような議論もありますね。いろいろな御議論が出てくるということだけで、結論的なものとしては出そうもないということですか。
  85. 香川保一

    ○香川政府委員 いろいろの意見があってまだ結論に至っていないわけでございますが、今回、中間報告という形でいろいろの意見を公表いたしまして、各方面からこれに対する意見をお聞きした上で小委員会で検討されるわけでございますが、私どもといたしましては、やはり夫婦財産制にいたしましても妻の地位の向上と申しますか、さような点から、そう時間がかかっておったのでは困ることでございますので、小委員会の方にはできるだけ早く結論を得ていただくように、先ほど御指摘もございました他との関連を考えながらも、この点だけは先に立法してもいいというものがあれば、さような点について答申をいただいて立法するというふうなことでお願いしたいというふうに、小委員会の方には強く要請しているところでございます。
  86. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 あと、再審の問題があったのですが、きょうは時間がなくなりましたので、別のときにしますが、大臣、いまの質問なり答えをずっと聞いておられて、それで大臣としては、日本の、民法の問題が中心でしたけれども、そこで婦人の地位というか妻の地位というか、そういうふうなものの今後の拡充強化ということについて、具体的に余り細かいことはいいとしても、一体どういうふうにしていったらいいというふうに考えるわけですか。
  87. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 一般論として、基本的には夫と妻の経済的地位の平等化、経済的地位の対等性を法律、制度として確立する方向に民法を改めたいということ以外に答弁のしようがございませんね。
  88. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 余りそういう抽象的なことを、言うと、それでは具体的にどうしたらいいかということになるわけですね。そういう点の大臣の勉強がまだ十分じゃないのじゃないかなという感じがしますね。それは大変失礼かな。
  89. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 いや、失礼じゃないです。勉強は不十分でございますけれども、いま申し上げましたような抽象的な考えのもとに、方針としてはそういう方針で、せっかく法制審議会民法部会、小委員会と一生懸命にやっていることであり、相当の成果も得つつあるわけでございますから、なるべく早急に結論を出していただいて、法務省としての政府案を早くつくりたい、こう思っております。
  90. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私もその点については勉強が足りないのですがね。ただ、いわゆる法制審議会の小委員会といったところで、それは学者やいろんな方が入っておられるけれども、実際幹事役をやっているのは法務省の民事局の人たちでしょう。そういう人たちが実際は動かしているわけですからね、やろうと思えばもっと早くやれるんじゃないですか。学者というのはなかなか各人癖が――癖と言うと語弊があるけれども、各人個性があるから……。小委員会は法務省の人が幹事役じゃないの、実際はいろんなことは法務省の人がやっているんじゃないですか。もっと早くやれるんじゃないですか。
  91. 香川保一

    ○香川政府委員 法務省の役人として、私も委員でございますし、参事官、課長等が幹事になっておるわけでございますが、これは何分にも理屈だけではいく問題でもない、いろいろ多方面からの意見を徴し、いろいろな方の御議論を得てやっていかなければならない身分法の分野でございますので、何と申しましても、身分法小委員会の諸先生方の御議論が中心になって進んでいっているわけでございまして、率直に申し上げまして、この身分法の分野は、財産法とちょっと違いまして、大げさに申しますと世界観、人生観が問題になるというふうなことがございまして、いろいろの意見が出るためになかなか結論が容易に得られないということはございます。しかし、身分法の分野というのはそうたびたび改正すべきものでもございませんし、やはり国民生活に重要な影響のあることでございますので、そういったはなはだ回りくどい、あるいは時間がかかり過ぎるというきらいはあるにいたしましても、やはりそこは十分慎重に審議していただかなければならぬというふうに考えるわけでございます。  しかし、それにいたしましても、実質的にいろいろな面での、特に妻の不都合な面が出ておるわけでございますので、その面をできるだけ早く是正するという意味で、やはり一つの妥協的なと申しますか、ことも考慮してできるだけ早く立法措置をするということで努力しなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  92. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 横山利秋君。
  93. 横山利秋

    ○横山委員 きょう私は裁判の遅延の問題につきまして、関連した一つの事案を取り上げまして、最高裁あるいは政府、実は日弁連の御意見を伺いたいわけでありますが、それはどうもうまくいきそうもございませんが、御両所の御意見を伺いたいと思います。  裁判の遅延問題につきましての最近の判決で注目すべき判決がたくさんございます。しかもその判決は、時間を経るに従って、憲法三十七条について具体的な判断を高田事件でいたしました。きわめて画期的な判決だと思います。  しかし、翻って最高裁昭和二十三年十二月二十二日の大法廷の判決は、  裁判の迅速を保障する憲法第三七条第一項に違反するかしないかは、更に諸般の事情を究明した上でなければ、にわかに断定することができない。ところで、いま、本件の裁判が迅速を缺き憲法の条規に違反したものと仮定して、その結果はどうなるであろうか。裁判の遅延が担当裁判官の責に帰すべき事由による場合には、その裁判官は、司法行政上その他の責を問われることのあるべきことは当然であろう。しかし、裁判に迅速を缺いた違法があるからといって、第二審判決を破棄すべきものとすれば、差戻すの外はない。しかし、そうしたならば、裁判の進行は更に一層阻害されて、憲法の保障はいよいよ裏切られる矛盾を生ずるであろう。それ故裁判が迅速を缺き憲法第三七条第一項に違反したとしても、それは判決に影響を及ぼさないことが明らかであるから、上告の理由とすることができないものと解さなければならない。 これが二十三年の判決であります。要するに、この中で二つのことが言われておる。裁判官は司法行政上その他の責任を問われるのは当然だということが一つ、もう一つは、この段階では差し戻せばそれだけ時間がかかるから、被告に対して気の毒だから実質的に差し戻したって意味がないではないかということであります。  その次が高田事件であります。高田事件はもう有名でありますから多くを申しませんが、少なくともこの判決は画期的なものでありまして、憲法三十七条は単に訓示的に述べたのでなくて、これは具体的に強行法規であるという立場に立ちました。これについての論告その他についてはずいぶんたくさんございますが、もう御存じのことでありますから、ここでは一応省略をいたします。  この高田事件の判決、次いで今度は五十年八月六日における最高裁の判決であります。この判決で四年間の審理中断がわずか一票の差で合憲となりました。この判決は、裁判官岸盛一氏の補足意見、裁判官下田武三氏の反対意見、裁判官團藤重光氏の反対意見、二人の少数意見があるわけでありますが、いずれにしても、高田判決の後を受けて、最高裁判所でわずか一票の差で、四年間の審理中断が合憲かあるいは違憲かというところに峠を一つつくったということが言えるかと思います。  また、本年十一月二十八日、大須訴訟で名古屋地裁が、迅速よりも慎重性という点でしりぞけました判決の理由の中で、可知裁判長は、「遅延かどうかは期間の長短だけでなく、諸事情を総合的に判断しなければならず、迅速性より慎重性が重視される場合がある。集団公安事件のような巨大訴訟では統一組の審理が分離組にも影響するなど、裁判所の訴訟指揮に違法性はなかった」まあ集団公安事件のような問題につきましては、高田事件におきましても判決で少し触れておるわけで、高田判決におきましても画一的な立場ではなくて、いろいろな状況をも総合的に判断をしなければならぬと言っていることは言うまでもありません。  しかし、いずれにしても、訴訟の遅延というものがかくも具体的に裁判で憲法三十七条を盾にして争われるようになり、しかもそれについて具体的にそれが強行法規であるというたてまえのもとで争われておるということは、もはや放置することのできない問題だと私は思うのであります。  その放置することができないという意味はどういう意味かと言いますと、これらの判決の中で言われておる諸問題、たとえば裁判所側に問題がある、裁判所の人員が不足である、あるいはまた機構が複雑である、設備が足らない。裁判所側にある問題、弁護士を含む被告側にある問題、それらを通じてなおかついろいろな客観的な条件というものは一体解決ができないものであるかどうかという点について、裁判がこれから出るのを任していくわけにはもはやいかなくなった、私はそう判断するわけであります。  これらの憲法三十七条は強行法規であるという説を正しくとらえるならば、最高裁は何をしなければならないか、政府はどういうことをこれにこたえなければならないかという点について十分な措置をすべきである。これがきょう私が申し上げたい一番の焦点なのでありますが、法務大臣はいかにお考えですか。
  94. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 迅速な裁判を受ける権利は国民に憲法上保障されているわけでありますから、そういう点でいま御指摘のように、裁判所側に訴訟遅延の責任がある場合といたしましても、あるいは人員の不足であるとか設備の不備であるとか事務職員の不足であるとか、そういうことのないよう、法務省といたしましては予算等の面で努力をしなければならぬと思うのでございます。  また、弁護士をも含めた被告側におけるいたずらなる裁判の引き延ばし等につきましては、やはりこれは裁判長の訴訟指揮権を遺憾なく発揮してやってもらう以外に方法はないと思います。とりわけ法曹三者が迅速な審理の重要性を自覚し、お互いに協力してその実現に努めることが最も肝要であると考えられるわけであります。
  95. 横山利秋

    ○横山委員 具体的に最高裁にお伺いしますが、最高裁判所の判決で、長過ぎる裁判として何回も何回も指摘され、その内容が具体的に判決の中にも明らかになりつつある。つまり、国民から言わせれば、言うならば自分の罪を自分で最高裁は自白しておる。そんなこと気がついたら自分で直せばいいではないか。何を自分の罪をいつまでも弁解の材料に使っているかということを言いたいところでありましょう。  裁判官岸盛一氏が本年の八月六日の補足意見で言っているところを引用いたしますと、  裁判所としては、司法行政上も遅延防止の対策をつねに講じていなければならず、裁判官をはじめ関係職員の増員による人手不足の解消、裁判所の諸設備の充実等に力を尽くすべきことは論を俟たないところであるが、また、訴訟手続の運用面における創意工夫を凝らすことの必要であることはいうまでもない。しかしながら、多数意見もいうとおり、裁判遅延の責めは、窮極的には裁判所がこれを負うべきである。 これはかなり私は率直な意見であると思う。弁護士や被告にあげつらうなという意味も含んでおると思います。  したがって、将来、本件のような特殊事情が裁判所内部にあったとしても、これに類する事例が跡をたたないようなことであれば、裁判上も特別の考慮を払わなければならない場合のあることを留保しておきたいと考えるし、また、この際、「訴訟の遅延は正義にあらず」とか「裁判の遅延は裁判の拒否にひとしい」という裁判の遅延についての聞きなれた非難や警句をあらためて噛み締めてみることが肝要であると考える。 これは多数意見、つまり合憲であると言った中の一人、岸盛一さんの意見なんであります。  ですから、この岸さんの立場というものは、岸さんも多数意見の中にありながら、もう今度はおれも承知しないよ、おれはこういうことを言うておくから、今度また同じようなことがあったらおれは違憲の方へ変わるよということを私は暗示を受けているような気がするわけであります。そうだといたしましたならば、最高裁判所の裁判官の多数意見と反対意見を含めてこれだけ具体的に言って判決を出しておるのですから、最高裁判所はこれについてどう一体対処をなさるのですか。
  96. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 適正、迅速な裁判は裁判所の使命でございまして、もし適正、迅速な裁判がなされないということでありますと、裁判所に対する国民の信頼を失うということでございます。私どもといたしましては、鋭意裁判の迅速ということについていろいろ措置をとってまいったのでございますが、御指摘の判決に掲げてありますような事情もなくはございません。いやしくもそうした司法行政上の措置が十分でないために訴訟が非常におくれるということでありますならば、これはまさにわれわれ裁判所全体として十分考えなければならないことであろうと思います。その点について、今回の判決の趣旨を体しまして、今後とも司法行政上の措置について遺憾のないようにいたしたいというふうに考えております。  なお、裁判の進行自体につきましては、これは個々の裁判官がなさることでございますので、これは裁判の独立とも非常に密接な関係を持っておりますので、裁判のやり方そのものについて一々種々の指導等をいたすわけにはまいりませんけれども、これも裁判の迅速の重要性ということについてその趣旨を十分徹底いたしまして、裁判のやり方等についての創意工夫をこらすよう、いろいろ裁判官会同等を通じて検討をしていただこう、こういうふうに考えております。  なおまた、訴訟遅延の問題でございますが、これは確かに究極的には裁判所並びに裁判官の責任という面もございますが、また現在の裁判では当事者主義ということでございまして、当事者の十分な協力というものと、それから裁判官の適切な訴訟指揮というものが相まって初めて迅速な裁判ということが実現できるわけでございますので、その点につきましても、弁護士会、検察庁等とも訴訟促進のための方策について種々今後とも御協力いただき、また御協議し、対策を講じていきたい、こういうふうに考えております。
  97. 横山利秋

    ○横山委員 いろいろな事情がある、これは私も冒頭申し上げたように承知はしておる。しかし、それをもってしても結局究極的には、裁判遅延の責めは裁判所がこれを負うべきである、こういう岸裁判官の補足意見にぼくは賛成をするわけであります。  この件でこの八月六日の判決の中における団藤重光氏の反対意見を見ますと、  本件の審理経過をみると、第一次控訴審においては控訴趣意書が提出されてから第一回公判期日が開かれるまで約四年間、第二次控訴審にお  いては控訴趣意書が提出されてから第一回公判期日が開かれるまで約三年七箇月のあいだ、まったく審理が行われないままに放置されたのであり、しかも、記録上、その遅延につき被告人側の責に帰せられるべきなんらの事由もみとめられないのである。起訴から現在にいたるまでの長年月もさることながら、右のように、第一次控訴審において四年、第二次控訴審において三年七箇月という時日が空費されたことは、裁判所の過重負担その他諸般の事情を考慮に入れても、なおかつ、迅速な裁判という憲法の要請に反するものといわなければならない。この団藤裁判官の反対意見は、一票差で合憲になりました八月六日の判決の理由をきわめて直截に言っておるわけであります。こんなことが一体どうして起こるのであろうか。あなたが言うように、ほかの理由もありますからというようなことは許されない問題。高田事件でもそうですね、十五年間。そういう点について最高裁判所としては、また裁判官としては一体どういうふうにこれからこのような指摘を解消するのですか。  私が最高裁判所やあるいは法務省にお伺いしておる基本的な問題は、この機会に少し折り目をつけたらどうだ。いつも訴訟遅延の問題を質問しておりますけれども、今回はこのような最高裁の判決が続出をしておる機会に、裁判の遅延の問題について少し折り目をつけたらどうだ。具体的にどういう折り目をつけるかということを聞いておるのでありますから、その点で抽象的な答弁をなさらずに、このような団藤指摘だとかあるいは岸指摘といわれたことについて、具体的に一体これからどういう折り目をつけて改善をなさるおつもりであるか、それをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  98. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 先生御指摘のように、こういうふうな判決が相次いでおります以上、私どもといたしましても、この辺について、訴訟の促進ということについて真剣に検討しなければならないというふうに考えております。  ただ、一般的に裁判の遅延と申しましても、一般の刑事事件はおおむね相当な期間内に処理されております。ただ、このような事件になりますと、非常に複雑、困難であるといったような問題、それからさらには、御承知のように公害事件でありますとか、それから学生、公安、労働といったような事件になりますと、これもまた争点その他が多くていろいろな問題がございまして、とかく訴訟がおくれるわけでございます。こうした特殊の一部の事件について訴訟遅延の状態が生じておりまして、それがひいては一般事件もすべておくれているのではないかという印象を一般国民に与えているということも否定できないところでございます。こうした特殊の事件につきましての訴訟促進という問題につきましては、これは単に人員をふやすというだけの問題ではございませんで、その点につきましては、訴訟のやり方その他について十分な検討を加える必要があるというふうに考えておるわけでございます。  なおまた、こうした長期未済事件の処理の促進を図るという点をも考慮いたしまして、現在ではたとえば刑事では係属してから二年以上なお処理ができないもの、それから民事におきましては係属してから三年以上処理ができないものにつきましては、報告をとりまして、それについて所長なりまたは高裁長官がその点を十分把握いたしまして、もし司法行政上それについて何らかの措置をとる必要がある。   〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕 たとえば、そのために人員が足りないということであるならば人員の手当てをする、もし予算が足りないということであるならば予算の手当てをするというふうな司法行政上のバックアップをするということで、現在ではそうした長期に未済になっているような事件の把握並びにその促進について努力している、今後ともそうした努力は続けていきたい、こういうふうに考えております。
  99. 横山利秋

    ○横山委員 長過ぎる裁判について、高田事件を契機にして各新聞が一斉に社説なりあるいは解説で取り上げまして、そして専門家とは必ずしも言いがたいのですが、庶民的な感覚を代表して幾つかの示唆に富む問題を投げかけています。  その一つは、きわめて庶民的だと私も思うのでありますが、いまのお話しのように、最高裁判所としての指導を強化、あるいは年々歳々の予算の充実等のようなやり方だけではもはや解決ができないのではないか。だから、たとえば「長期裁判を防ぐための補充立法の要望が数年前から出されているが、早急に検討すべきではないだろうか。たとえば審理期間を死刑事件については十五年以下、十年以上の有罪刑の事件については八年以下といった規定を設けるようにする。もちろん、審理期間が短ければよいというわけではなく、被告の防御権が十分尽くされることが前提である。」  その社説の中の一部の引用なのでありますが、少なくとも、長期裁判を防ぐということについて私の言うような折り目の一つとして補充立法の制定を法律的な立場においてひとつ考える。最高裁の高田事件の判決が出たということは、ある意味では一つ法律ができた、こう考えてもいいと私は思うのでありますが、それを受けて、長期裁判を防ぐための新しい立法措置は検討に値しないものであるかどうか、どなたでも結構ですが、御返事を伺いたい。
  100. 安原美穂

    ○安原政府委員 私が答えるのが適当かどうかわかりませんが、刑事裁判に関連する検察を所管する局といたしまして考えます場合には、当然、訴訟の遅延ということは裁判の拒否に等しいとわれわれも考えておるわけでございまして、そういう意味におきましては、訴訟が迅速、適正に行われることをわれわれ検察官としても一致して願っておるところでございます。そういう意味におきまして、運用上審理の促進を図る方策についてはいろいろあると思いまするが、いまお尋ねは立法上の問題でございまして、立法上考える点はないのかというお尋ねでございます。  その点につきましては、私ども直ちに立法が必要であるというようには思っておりませんが、たとえば、いま横山委員いみじくも御指摘のとおり、高田判決というものは最高裁の確立した判例として、一つの法規と同じような拘束力を持つものとして検察官、裁判官、弁護士を拘束するものであると考えておりますが、御案内のとおり、裁判の迅速ということは、これによって被告人側が利益をこうむる場合と不利益をこうむると思われる場合とがある二面を持つ非常にむずかしい問題でございます。私どもは、被告人の責めに帰すべからざる場合の裁判の遅延ということについては、現行の制度のままで、裁判官なり検察官なりの運用の結果に待つべき点が多いと思いまするが、むしろ、被告人の側の原因によるところの遅延につきましては、もとより裁判所の訴訟指揮権の的確な厳正な執行を望むものでございますけれども、最近の事件のように、わざわざ出頭を拒むというような事案あるいは引き延ばしを図る事案につきましては、場合におきましては、被告人が出頭しなくても公判審理ができる範囲を広げるとか、あるいは必要的な弁護人制度の事件の範囲を狭めるとかいうようなことも一つの立法の問題としては考えられるわけでありますが、そういう問題は他面において被告人の権利というものにも関連する重大な問題でございますので、立法の措置ということを図るよりは、最善の策はやはり現行の制度の中で、法曹三者が協力をして迅速を図るというのが最も望ましい。その点においてもっと現行の制度の活用を図るということにもう少し目覚めていくことが一番大切ではないかと実は考えておる次第でございます。
  101. 横山利秋

    ○横山委員 私も現行の行政上の機能なりあるいは裁判のやり方を充実することが大前提であるということについては認めるにやぶさかではない。しかし、それを実行するためにも歯どめが必要ではないか、こういう立場なのであります。被告の立場に立って考えてみまして、今回の高田事件で考えられるのですが、訴訟の遅延によって、免訴の判決ができる訴訟法の規定は存在しない。最高裁は高田事件については刑事訴訟法三百三十七条四号「時効が完成したとき。」に規定する事項、この考え方を準用したものだと思います。しかし、これで一つの考えを確立したわけでありますが、少なくとも刑事訴訟法の中における免訴の判決ができる明文というものでは必ずしもない、私はそう考えられるわけであります。  それから、公訴棄却の方法として三百三十八条の規定がございますが、これは東京地裁八王子支部が言い渡したのですけれども、東京高裁、最高裁ではこれは認めなかったわけでありますね。そういうことを考えてみますと、三百三十七条の四「時効が完成したとき。」というこの条文援用というものを、もう少し具体的に裁判の遅延というものについて刑事訴訟法の中で明らかにする方法は、立法上一体あり得ないものであるかどうか、この点についてはどうお考えになりますか。
  102. 安原美穂

    ○安原政府委員 立法の余地がないわけではない、十分に検討に値するとは思っておりまするが、ただ、いまのところ横山先生御指摘のようなことをやってみて、果たして裁判がその結果直接的に効果がある、迅速が図られるかどうかについては私は疑問がありますが、最高裁の判例のままで任しておかないで、立法することが検討の余地があるかと申し上げますならば、検討の余地はあるというふうに思います。
  103. 横山利秋

    ○横山委員 その次は、裁判の遅延によって犠牲を受けた人の損害の問題なんであります。もちろん国家賠償法というものがありますけれども、裁判官の故意過失の立証が必要なのでありますから、この点については容易なものではない。そうだとすればどういう方法があり得るか、裁判遅延によって非常に物心両面の損害を受けた人に対する慰謝、賠償、どういう方法があり得ますか。
  104. 賀集唱

    ○賀集政府委員 所管部局がきょう出ておりませんけれども、したがいまして、私がいままでの、どう言いますか、過去の経験からでございますが、恐らくそれは国家賠償法の、先生も仰せのとおり、それによって損害を受けたということ、それから因果関係その他が立証できた限度において考えられる、申しわけございませんがこの程度以上にはお答えできません。
  105. 横山利秋

    ○横山委員 そればかりでなく、どこか、私もいまちょっと記憶が十分でないのですけれども、こういう場合に、このまま裁判が進行をしたら無罪になるであろう十分な事由がある場合には補償することになっているんではありませんか。
  106. 安原美穂

    ○安原政府委員 刑事補償法の二十五条で、無罪の場合のみならず、免訴、公訴棄却の判決があった場合であって、御指摘のとおり無罪であることと認めるに「充分な事由のある」場合は補償の対象になるわけでございます。
  107. 横山利秋

    ○横山委員 補償法でしたか。その補償法の二十五条の「充分な事由がある」場合は、このまま裁判が進行しておったならば無罪となるであろう「充分な事由がある」場合ということが、私ども素人にはなかなかわからないんですけれども、それはだれがどういう基準で認定するのでありましょうか。
  108. 安原美穂

    ○安原政府委員 二十五条の解釈として、当然補償の請求を受けた裁判所が決定をもって判断をする問題でございます。なお、これは横山先生十分に御承知のとおり、これは免訴、公訴棄却の場合すべてが補償の対象ではなくて、そういうものの裁判を受けた者で拘禁を受けた者についての拘禁の補償であることは、もう御案内のとおりと思います。
  109. 横山利秋

    ○横山委員 私の聞いておるのは、そこにおける「充分な事由がある」場合、拘禁を受けておる場合ですけれども、裁判の進行中における「充分な事由がある」場合というのは、裁判官の自由裁量に基づくものでありましょう。これを補償しろということは、とにかく判決はしないけれども、おまえは無罪だということを言ってしまうことですからね。だから「充分な事由」ということをきわめて私は重要視するわけなんです。一体、そういう事例がいままででもございますか。また、判決はしないけれども補償してやる、将来裁判やったら、おまえは無罪になるであろうと私はかたく信ずるから、判決はしないけれどもおまえは補償してやるから、したがっておまえは実質無罪だという勇気ある補償をした例というのは、どの程度ございますか。
  110. 安原美穂

    ○安原政府委員 刑事補償法が施行になりました昭和二十五年以来昭和四十九年までの間に、いま御指摘のような免訴、公訴棄却の場合における補償の請求人員は百二十五人おりまして、補償する旨の決定、いま御指摘のような判断を裁判所がなさって補償になったのが四十八人でございますから、三八・四%は裁判所がそういう判断をしておるわけでございます。ただ、非常にむずかしい判断でございまして、事例としてはそうむずかしい審理を経ないでそういう判断ができる場合に具体的な例は限られておるのが運用の結果でございまして、たとえば一審または控訴審において無罪の裁判を受け、さらにこれがその上級審に係属中に死亡して、それで公訴棄却になった、あるいは本人が死亡して公訴棄却となったけれども、一方、共犯とされた者が無罪となってその裁判が確定した、あるいは起訴された事件と同種の事案について、罪とならないとの判断が最高裁でなされた結果、検察官が公訴を取り消しをしたために公訴棄却になったというふうに、何分にも決定手続で判断することでございますので、裁判所としては非常に判断のしやすいのが具体的な事例としてなっておるということでございます。
  111. 横山利秋

    ○横山委員 次は、この判決の中でも指摘されておりますが、担当裁判官の責任についてであります。判決の中には、先ほど引用いたしましたように、この期間何もしなかったというばかげたことがあろうかという指摘をしておる者もありますし、裁判官の一概の責任とも言えないというふうな指摘をしておる者もあります。   〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、いずれにしてもこの裁判遅延が、裁判官の責任なしと言い得ないという点は明白なのでありますが、この担当裁判官の責任を問うたことはありますか。具体的に裁判遅延はおまえの責任だ、なぜこういうことをしたと言って裁判所法なり裁判官分限法なりによって処分したことはございますか。
  112. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 裁判官の裁判事務につきましても、裁判官が自由裁量の範囲を著しく逸脱し、もしくは明らかに法令を誤ったというふうな場合には、職務上の義務に違背し、もしくは職務を怠ったということで当然監督権が及ぶわけでございます。  先生御指摘の点でございますが、訴訟の遅延につきましては、先ほど来種々指摘がありましたように、種々の原因がございまして、一概に当該裁判官の職務僻怠であるとか職務上の義務違背であるということの認定が非常にむずかしい事案が非常に多うございまして、単に訴訟がおくれたということだけで従来処分をしたという事例はございません。  ただ、たとえば判決の言い渡しをしたけれども、しかし、そのときは原本に基づかないで判決の言い渡しをし、長期にわたって判決原本の作成ができないで、そのために審理に支障を来した、こういう事案は若干ございまして、これらにつきましては、少なくとも判決を言い渡した後判決を書かないということ、これこそまさに当該裁判官の責めに帰すべきものということがはっきりしておるわけでございますので、こうした事案については若干過去において処分された事例がございます。  以上でございます。
  113. 横山利秋

    ○横山委員 これは裁判官のみならず担当検察官における責任もまた同じようでございますが、担当検察官の責任を追及したことがございましょうか。
  114. 安原美穂

    ○安原政府委員 そういうことは、幸いというべきか、ございません。
  115. 横山利秋

    ○横山委員 刑事訴訟法二百七十七条「裁判所がその権限を濫用して公判期日を変更したときは、訴訟関係人は、最高裁判所の規則又は訓令の定めるところにより、司法行政監督上の措置を求めることができる。」と相なっており、規則百八十二条「裁判所は、やむを得ないと認める場合の外、公判期日を変更することができない。」「裁判所がその権限を濫用して公判期日を変更したときは、訴訟関係人は、書面で、裁判所法第八十条の規定により当該裁判官に対して監督権を行う裁判所に不服の申立をすることができる。」とありますが、その不服の申し立てについての何らかの規程はできておりますか。また、刑事訴訟法二百七十七条の訓令はできておりますか。
  116. 田宮重男

    ○田宮最高裁判所長官代理者 規程並びに訓令等ございません。
  117. 横山利秋

    ○横山委員 細かいようではありますが、私がいまずっとたどってまいりました、いま言いましたようなそういう数々の問題をもう少し厳しく詰めをしたらどうかと私は考えるわけであります。  時間がございませんので、大臣がいらっしゃるときに最後のこの問題についてまた質問をいたしたいと思いますけれども、法律及び規則に定まっておることが具体的に何ら決まっていないということの中に、私は、裁判の遅延に対する根本的な問題及び細目的な詰め、そういう誠意と努力に欠けるところがある、そう考えるわけであります。  私がこれから引用いたします問題は、いままで申しましたものとは少し違うわけでありますが、これもやはり民事ではございますけれども、約二十四年間争ってまいりまして、そして先般最高裁判所で判決が出たものであります。この二十四年間の問題を具体的にここで御説明をする時間はございません。  ただ、一つ私がこの中で指摘をいたしたいのは、弁護士がその岳父名義で受任事件の相手方から係争土地を訴訟終了後その確定の債務名義を利用する等の方法で譲り受けた行為の効力について、最高裁はそれはだめだと言ったわけであります。御存じのように、弁護士法二十八条は、「弁護士は、係争権利を譲り受けることができない。」きわめて明白になっています。いま私が引用しておりますのは、具体的に現に仕事をしていらっしゃる弁護士さんであります。名前はまあ申しませんけれども、その弁護士さんが、自分の妻の父の名義で係争中の相手方から土地を譲り受けて、妻の父と言って譲り受けたのでありますが、実質は自分がやっているわけでありますから、今度は自分の依頼人と権利義務関係が対決をするというかっこうになっていくのは当然であります。そういうことは最高裁の判決はきわめて明白にこれは間違いである、こう言っております。  乙山というのは弁護士、甲野というのは妻の父ですが、  乙山は甲野と別個の存在ではなく、甲野の名義人であるに過ぎないから、乙山が本件土地を取得するというのは、ひっきょう甲野が取得するということに外ならない。しかるに甲野は組合の訴訟代理人であって本件土地は正に当該訴訟の目的たる係争物であり、しかもそれを組合の相手方当事者から取得して爾後その相手方の地位を承継して組合に立向おうというのであるから、弁護士法二八条に違反し到底許されるものではない。右訴訟は前記第一審判決の確定により終了したとしても、甲野弁護士がこれを取得することは、右訴訟終了前はもとより訴訟終了後であっても、後記のとおりその確定の債務名義を利用する等の状況においては依然係争物を譲受けることとなるという性格を失うものではない。したがって乙山は本件土地につきなんら権利を取得するものではないとともに、甲野もまた本件土地につき所有権を取得するに由なく、本件土地は当初の契約により永井から組合に譲渡され、組合の所有となったことには、なんら消長がなく、爾後はただ組合と甲野との間に、甲野が立替えた代金の返済関係が残るだけであるといわなければならない。 これは高等裁判所の判決でありますが、これに不服で上告をしたものに対しまして、本年九月十九日に最高裁はこれを棄却いたしまして、この高裁の判決が確定をした、こういうことなんであります。  私がこのことを提起をいたしましたのは、いろいろな角度からこれを取り上げたいのでありますが、時間がなくなってまいりましたので、弁護士法の解釈について聞きたいのであります。  最高裁判所が棄却をしたことによって高裁の判決、この弁護士は弁護士法二十八条に違反したという判決が確定をしたのであります。しかるに、日本弁護士会並びに東京弁護士会の懲戒委員会は、この判決が出ます前に懲戒に該当しないという決定をしたかに私どもは承知をしておるわけであります。一体これはどういうことになるのでありましょうか。日本弁護士会の懲戒委員会の決定と、高裁並びに最高裁において弁護士法二十八条に違反した行為は無効であるというふうに端的に言ったことに対してどういうふうに解釈をしたらいいのでありましょうか。
  118. 賀集唱

    ○賀集政府委員 ただいまの弁護士法違反の案件でございますが、弁護士会で懲戒の申請がありましてそれについて審査している段階は、まだ最高裁判所の判決が出ていなかった段階ではなかろうかと思っております。それで最高裁判決が出ます前のいろいろな法解釈でございますが、先ほどの係争中の権利の譲り受けでございますが、事件が終わった後どうかという点については触れた文献はごくわずかでございまして、多くは係争中というのは何を言うのかという解釈ばかりが問題になって、事件の終了後のことについて触れたのはほとんど見当たらない状況でございました。  それで、今度の最高裁判決は、実は中身をまだ承知しておりませんけれども、恐らく先ほど先生が御引用になりました東京高裁の判決にある部分が論点になっていたのではないかと思われます。論点になっておったとしますと、それを支持しますといいますか上告を棄却いたしました今度の最高裁判決が最初の有権的な解釈を下したということになります。それ以前では弁護士会が独自の考え方でこれが懲戒事由に当たるか当たらないか有権的な解釈のないところで判断したことでございますので、その後に最高裁判決が出ましても、懲戒に当たらないという弁護士会の審査の結果というものは無効にはならない、かように考えております。
  119. 横山利秋

    ○横山委員 私は、本事件について弁護士から過去の経緯も改めて聞きましたし、日弁連の懲戒委員会が審議を行っておる当時から日弁連に対してこの事案について十分検討をして慎重に措置をされるようにということを希望をしておったのでありますから、率直に言いましてきわめて遺憾千万なことだと私は言いたいわけであります。懲戒委員会の内容については日弁連は公表をいたしません。しかし、本件についてこの弁護士さんが行った行為で高等裁判所で彼が認めた点、たとえば原告に対して五十万やったからそれで話はついたはずだと言っておったことを、高等裁判所におきましてはそれでおしまいとは言えないということをついに言うたこと、あるいはまた原告の字をまねた偽造文書がつくられたこと等々、数々の問題があるわけであります。私はそういう点をも含めて日弁連の懲戒委員会に十分善処をされるようにということを希望しておったわけであります。で、風の便りに聞くところによりますと、日弁連の懲戒委員会でも弁護士法二十八条違反の疑いといってずいぶん議論をされたそうであります。にもかかわらず懲戒の決定にはならず、そして最高裁判所でこの判決が出された。一体日弁連はこの判決についてどういうふうに考えるのか。もし懲戒委員会で弁護士法二十八条に違反するという決定がありとせば、この原告が――森田リン子というおばあさんでありますが、今日までまさに二十数年間、日弁連の決定が彼女に有利なものでありせばかかることはなかったであろう失った物心両面の損害は一体だれがそれを補償してくれるのだろうか。そういうことを考えますと、日弁連は弁護士法に定められております自治権の運用について慎重かつ公正な扱いをしてもらわなければいかぬのではないか、私はそう思うわけであります。  たとえば弁護士法を引用いたしますと、日弁連の懲戒委員会で懲戒と決定した弁護士は裁判所へそれを訴えることができることになっている。ところが、懲戒しないと決定したときに、たとえばこの該当者森田リン子でありますが、裁判所へ訴え出ることができないという立場だそうであります。何という不公平なことでありましょうか。森田リン子は、日弁連で懲戒しないというふうに決まったわけでありますからそのことについては争うことはできない。だから普通の民事訴訟で争っていって、高裁、最高裁はその弁護士は弁護士法二十八条に違反しておるよというように判決を出しております。この弁護士法の解釈なり運用は一体どなたが、法務省がなさるのでありましょうか。懲戒になった弁護士は裁判所に訴え出ることができるけれども、懲戒にならなかった場合に国民はその弁護士の非違行為を裁判に訴えることができないという不公平はどういう理由でありましょうか。
  120. 賀集唱

    ○賀集政府委員 ただいま先生の御指摘の論点は非常に多岐にわたりまして、その中には私どももずいぶん共鳴さしていただくところもございますが、最後に御指摘になった弁護士会のあり方といいますか、弁護士法の解釈、運用の仕方について法務省はどの程度のことができるのかということでございます。こういう点についてお答えしたいと思います。  御承知のように、弁護士会というのは自治でございますし、弁護士会に対する監督官庁というのはございません。では法務省はどういう立場かといいますと、司法制度に関する事務を受け持っておりまして、弁護士法も司法制度の一環でございますからその立法、これは担当できます。立法の前提としての解釈、これも前提がございますから勉強といいますか研究、検討は法務省の仕事の一部かと思いますが、いまやっていることに対してその実情はどうなのかといって調査を求めたりあるいはおかしいではないかと監督権を発動したりすることはできない仕組みになっております。  その次に、御照会の案件について、本人はではどういう救済を求められるかといいますと、担当の弁護士に対しましては、恐らくその弁護士の仕事によって訴訟がうんと遅延した、こういうことになりますと、あたかも先ほど来論点がございました裁判官が訴訟をおくらせた場合に国家賠償の問題になるのと同じように、問題になった担当の弁護士に対しては責任追及という道があろうかと思われます。しかし、弁護士会の懲戒の処分がおくれた、早く懲戒してくれておれば早く事件のけりがついた、そういう前提をとりましても、弁護士会の懲戒は内部の規律の問題でありまして、早く当該案件を解決するという意味での懲戒ではございませんので、そちらの弁護士会あるいは日本弁護士会を相手に訴訟がおくれたことを理由に損害賠償ということはなかなか困難であろうか、このように解釈されるのでございます。
  121. 横山利秋

    ○横山委員 くつの裏から足をかくような答弁ですね。私も日弁連の自治権なりあるいは弁護士法の基本的な考えなり、そういうことについてとやかく言うわけではなくて、要するに弁護士法の精神というものが、自治の精神というものが、いま部長がおっしゃるように、内部の問題とばかりというわけにいかぬ。それは国にかわって、役所にかわって弁護士会が自分たちで社会に対して責任をみずから負うという、社会的責任をみずから負うという立場における弁護士法である。そうならそうで、みずからもっと峻厳に社会的責任を負わなければいけないのではないか。だから、私はある意味においては懲戒委員会の結果については公表をする、みずから進んで日弁連が公表するということぐらいは社会的責務の上からいってもしかるべき措置ではなかろうか。  それから、いま言ったように、懲戒に該当した決定をした場合には弁護士は裁判所に訴えられる、しかし、懲戒に該当しないと決定をしたら、訴えた国民はもうそれでどこへも行くわけにいかぬということは、私はどうも納得できません。いま法務省にあるいは最高裁にこの弁護士会の――私はこれは日弁連のいまの全部の事態と言っているわけではありません。たまたま出たこういう問題について、法務省や最高裁に質問し答弁を求めることが少し筋違いということも十分承知の上で、あえて私はあなた方と質疑応答をするということ、この質疑応答しておることによって日弁連にひとつ御返事をいただきたい、こう私は思いながらしゃべっておるわけなんだ。ここに日弁連に来ていただくわけにもいくまいだろうし、あるいは非公式でやったって十分な効果があるわけではあるまい。したがって、あなた方が御答弁できないことは百も承知の上で、しかしながら、私は相手のそこに座っておられない日弁連に向かって、この種の問題についてどう責任をおとりになるおつもりであるかということを聞いておるつもりなんであります。  大変質問がむずかしいのでありますが、法務大臣、何か御感想がありましたらお伺いしたいと思います。
  122. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 やはり広い意味の司法制度の非常に重要な点についての御指摘でございますから、私も感想を率直に申し上げます。  御指摘の事案についての日弁連の懲戒にすべきであったのをしなかったというような、それは弁護士法の解釈は終局においてはやはり最高裁の判決に一番の権威を置くべきものでありますから、法律の専門家がみずからを自律すべき法解釈を誤ったと言われても仕方がないことでございますから、大変に最高裁の判決はいい反省の材料になったもの、日弁連も十分その点は自覚しておられるものという感想を抱くものであります。
  123. 横山利秋

    ○横山委員 この私の相手なき質問に対しまして法務大臣も感想をおっしゃったわけでありますが、ぜひともこの種の問題について日弁連が私にお答えくださることを要望をいたしておきたいと思います。  最後に、先ほどの締めくくりでありますが、訴訟遅延につきまして、大臣、私はあなたの御退席の後で細かいことについて幾つも幾つもだめを押しました。  そのだめを個条的にもう一遍整理をいたしますと、訴訟遅延についての高田判決は刑事訴訟法三百三十七条四号に規定する公訴時効の考え方を準用したものだが、せっかく高田判決がもはや実際ある意味では法律とも考えられてもいいのだから、刑事訴訟法の改正を検討したらどうかということが一つございます。  それから二つ目は、訴訟遅延によって被害を受けた国民に対しては、お話を承ると刑事補償法二十五条で四〇%ぐらいですか、補償がしてあるそうではあるけれども、その一層の運用を望みたいと思います。  それから裁判遅延による担当裁判官、担当検察官の責任を具体的に追及してください、こうお願いをしておるわけであります。裁判官の問題は別のことで多少事案があったそうでありますが、検察官はそういう該当事案はないというお話ではございますが、この担当者の裁判遅延による、たとえば團藤最高裁判所裁判官の明示したようなことだったら、当然裁判官の責任を追及しなければなりません。あるいはまた、場合によっては検察官の責任を追及しなければなりません。それをやってくださいと言いました。  それから刑事訴訟法二百七十七条、規則百八十二条の規則や訓令が制定されていない。その他法律規定に基づく決めるべきものが決めていないことを指摘をして遺憾の意を表し、改善を求めました。  私の結論は、基本的にはこれほどの裁判遅延の最高裁判決かつ地方裁判所の判決が出ておるときであるから、一回ひとつえりを正して裁判遅延について折り目をつけた改善策を基本的にやってもらいたい。それから具体的にいま指摘したような諸問題について改善措置を望む。これが私がきょう注文をした要旨でございますが、法務大臣の最後の御判断を願いたいと思います。
  124. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 横山さんのおっしゃることは、私ももっともだと思います。迅速な裁判は公平な裁判とともに憲法上の重要な要請であり、裁判の長期化は被告人等の訴訟関係人の負担をいたずらに加重することにとどまらず、司法の運営に重大な支障をもたらし、ひいては裁判に対する国民の信頼を失わせることにもなりかねない点で、きわめて重要な問題であると考えております。  このような裁判の遅延を防止する方策としては、高田事件に関する最高裁大法廷判決のように、きわめて異常、例外的な事態において免訴の裁判により手続を打ち切る、これも一つの方法でありますが、同時に起訴事件の厳選、集中審理の励行、裁判所の訴訟指揮権の適切な行使等についてさらに工夫を重ねることが必要でございます。特に裁判所における審理が、裁判所だけではなく他の訴訟関係者の協力によって初めて円滑、迅速に進められるものであることから、とりわけ法曹三者が迅速な審理の重要性を自覚し、互いに協力してその実現に努めることが最も肝要であると考えております。法曹三者の復活もできましたから、私も機会がありましたら横山委員からのいまの御質問のようなことがあって法務委員会でも非常にこれを重視しているのだということを申し上げて御協力をいただいております。協力がなかなかできない、どうにもならぬということになれば、それは刑訴法の改正も当然検討すべきであると考える次第でございます。同感であります。
  125. 横山利秋

    ○横山委員 終わります。
  126. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長 栗田翠君。
  127. 栗田翠

    ○栗田委員 いま法制審議会で民法の改正問題が論議されておりまして、それが民間でも大きな関心を呼んでいろいろ論議になっております。また、ことしは国際婦人年であったということで、例年になく婦人問題がよく取り上げられていたと思います。婦人年はもうあと一カ月足らずで終わりますけれども、婦人年でないからといってそれがとまるわけではなく、本来婦人の実質的な平等の権利を保障していくということを法制上、行政上もますます努めていかなければならないときだと思うわけでございます。  ところで、民法ばかりでなくその他のいろいろな法規なども洗ってみますと、これはかなり男女平等の権利を侵すものではないかとか昔の家夫長制の考えに貫かれているものが残っているのではないかという問題や、また、そのために女性が不利益を受けているようなものがかなりあるように思うのです。そういう問題についてきょうは幾つか質問させていただきたいと思います。  まず最初に大臣に伺いますけれども、そういうふうな男女の実質的な平等を阻害するような問題については、改善の必要のあるものは積極的に改善していくべきだと思いますが、その点について大臣はどうお考えになりますか。
  128. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 御指摘を受けるまでもなく当然なことと考えます。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
  129. 栗田翠

    ○栗田委員 では、まず国籍法とか戸籍法などで夫と妻の取り扱いが異なっているというものがかなりございます。たとえば国際結婚の場合の国籍法、それから国際私法に関連する法例などを見てみますと、これは大変男性中心になっているように思われるのです。  たとえば国籍法の二条を見ますと、出生による日本国籍取得の要件の第一を父の国籍ということにしております。それから法例の十四条を見ますと、これは婚姻の効力の準拠法なんですけれども、「婚姻ノ効力ハ夫ノ本国法ニ依ル」というふうになっておりますし、また十五条は「夫婦財産制ハ婚姻ノ当時ニ於ケル夫の本国法ニ依ル」となっております。法例の十六条は離婚の準拠法ですが、これを見ますとやはり「離婚ハ其原因タル事実ノ発生シタル時ニ於ケル夫ノ本国法ニ依ル」となっております。十七条を見ますと、嫡出子かどうかの判断ですけれども、「子ノ嫡出ナルヤ否ヤハ其出生ノ当時母ノ夫ノ属シタル国ノ法律ニ依リテ之ヲ定ム」となっておりますし、「若シ其夫カ子ノ出生前ニ死亡シタルトキハ其最後ニ属シタル国ノ法律ニ依リテ之ヲ定ム」というようにまさに父、夫を中心にしていると思います。  これはなぜこんなふうにしなければならないのでしょうか。また、こういうふうに父系主義をとるということは、いま日本は父系制度をとっておりませんので、そういう意味から言いましても矛盾があるのではないだろうかと思いますが、その点いかがでしょう。
  130. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 栗田さんの御質問はきわめて専門的なことに属しますので、民事局長に答弁をさせますからお許し願いたいと思います。
  131. 香川保一

    ○香川政府委員 御質問の第一点の、わが国の国籍法では子の国籍の取得は父の国籍による、つまり父親が日本人である場合にはその子供は日本人、こういうことになっておるわけでありますが、これは国際的な諸外国の立法と似たり寄ったりと申しますか、つまり父系主義的な考え方に基づくものでございますが、実質的に申しますと、父または母の国籍を取得するのだということになりますと、たとえば日本人男と外国人女の間に生まれた子供は日本人男の子であることから日本人、母親が外国人でありますればその国から見れば母親の国籍ということで外国の国籍を取得する、こういうふうになりますと二重国籍に相なるわけでございます。そういうふうな二重国籍をできるだけ避けようというのが国籍に関する国際的な一致した共通の考え方であろうかと思うのでありまして、そういう二重国籍を避けるというところに実質的な意味があるわけでございます。もちろん、外国の立法例でもお説のような母の国籍によるというふうな立法例もございますが、その辺のところも踏まえてなお検討すべき問題があろうかと思いますけれども、現行法は少なくとも二重国籍を避けるということと、国際的な一般の考え方が父系主義をとっておるということによって父親の国籍によるのだ、こういうことにいたしておるのだろうと思います。  それから法例の幾つかの点について御指摘がございましたが、現行の法例の考え方は、やはり一般的に国際的な一つの考え方を基準にして同一歩調をとっておるということに尽きようかと思うのでありますが、ただ、いろいろの御指摘の点も含めまして具体的に問題もございますので、現在法制審議会の国際私法部会におきまして法例の改正の検討がなされておる次第でございます。
  132. 栗田翠

    ○栗田委員 最初の国籍法二条の出生による日本国籍取得の問題なんですが、二重国籍を避けるためというふうにおっしゃいましたけれども、父または母のどちらか一方ということに選べるようにしましたら二重国籍にはならないのじゃないかと思いますが、その点はいかがでしょう。
  133. 香川保一

    ○香川政府委員 父が日本人で母親が外国人の場合に、生まれた子供に国籍の選択ということはこれは無理なことでございますので、いずれかに決めなければならぬわけでございますが、その場合に恐らく栗田委員の御提案の御趣旨は、父または母いずれかが日本人である場合には、その間に生まれた子供を日本人にしてはどうか、こういうことであるといたしますと、たとえば外国人男と日本人女の間に生まれた子供はいまの御提案どおりだといたしますれば日本人ということになるわけでありますが、しかし、外国から見ますと、外国人が父親でございますから、父系主義をとっておる国の方から見ますと、自分の国の父から生まれた子供であるからその子供は外国人ということになる、かような意味で二重国籍になる、それを避けようという必要があるのじゃないか、かような趣旨でございます。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 栗田翠

    ○栗田委員 私がいま日本国籍取得の要件と言いましたのでそうおっしゃったと思います。ちょっと言い方がいけなかったのですけれども、それならば国際結婚をして、まあ片方が日本人であった場合に、その両性、男女、夫婦が相談をしまして、生まれた子供はどちらの出生国の国籍にするかということをお互いに相談の上で決めることができるようにする、こういうことはできないのでしょうか。
  135. 香川保一

    ○香川政府委員 御提案の考え方も決して絶対的にとり得ないということではないと思いますけれども、国籍法というのは、つまり生まれた子供とその国との関係の問題でございまして、両親がその子の国籍を選択するというふうな法制は、あるいは不勉強のせいかもしれませんが、ちょっと存じません。国籍選択の自由という問題とはちょっと違う問題だろうと思うのであります。やはり一つの強行法規的なと申しますか、それぞれの国と具体的な人との間でその人を自分の国民にするかどうかということを決めるものが国籍法でございますので、そういった国籍法の性格から申しますと、両親の選択によってどちらかにできるというふうなことは、ちょっと立法論的にはなお検討を要することではなかろうかというふうに考えます。
  136. 栗田翠

    ○栗田委員 それでは、先ほど検討しているところがあるというふうにおっしゃいましたけれども、それはどんなふうに検討していらっしゃるのですか。
  137. 香川保一

    ○香川政府委員 先ほど御指摘の法例の関係で国際私法部会で検討を煩わしておるわけでありますが、これはまだ結論は得ておりませんけれども、中間的にどういうふうなことが議論されているか、先ほど御指摘の法例の条文に即して申し上げますと、法例十四条の「婚姻の効力」についての規定でございますが、これは両性の男女の平等の原則に沿うように検討するということで、一応の結論めいたものとして、夫婦の共通の本国法によることにしてはどうかということでございます。この場合も、夫婦の共通の本国法と申しましても、直ちにおわかり願えますように、その夫婦が同じ国の国籍を持っておる場合はいとも簡単でございますけれども、そうでない場合、つまり、たとえば夫が日本人で妻が外国人というふうな場合には、共通の本国法と申しましてもないわけでございますから、そのような場合の補充規定として、たとえば最後の共通本国法とかあるいは最後の住所地法とかいうふうな補完規定を設けなければならないわけでありますが、その辺のところの詰めがまだできていないわけでございます。  それから「夫婦財産制」の法例十五条の関係でございますが、この点につきましては、来年ハーグの国際私法会議第十三会期におきまして、この関係の条約が採択される予定になっておりますが、これとの関係で現在どのように持っていけばいいかということが検討されておりまして、一応その「離婚」の場合の準拠法では、夫婦の現在の共通本国法というふうなことではどうだろうかというふうな議論がされております。  それから親子関係の法律関係につきましては、これは嫡出子あるいは非嫡出子あるいは養子と全部ひっくるめまして、いずれもこの属人法を準拠法としてはどうかというふうな方向で検討されておるわけでございます。  さようなところがまだ結論を得ておりませんけれども、御趣旨のような形式的、実質的両面から男女の平等というふうなことを踏まえて議論が進んでおりますので、そのような方向での意見がまとまるものと期待いたしております。
  138. 栗田翠

    ○栗田委員 いまの点はわかりました。  それで次に戸籍法なんですが、この戸籍法の五十二条で出生届について決められているものがあります。これも父と母との取り扱いを別にしている一つの例だと思いますけれども、これを見ますと、出生の届け出は「嫡出子出生の届出は、父がこれをし、」というふうにまずなっております。何と言っても最初の責任者が父というようになっておりますが、これはどういうわけですか。
  139. 香川保一

    ○香川政府委員 これは端的に申し上げますと、御承知のとおり、出生届は分娩後、生まれてから十四日以内に届けなければならぬ。その場合にそういう事実を一番よく知っておるのが父、母でございますが、母親の方は、分娩後十四日以内ということになりますれば、肉体的にも無理があるというふうなこともございますので、これは届け出の義務でございますから、特に男女の平等というふうなことは考えないで、母親にも届け出義務を認めるというのはいかがなものかということで、父親がまず届けなければならぬ、かようにいたしているのだろうと思う次第でございます。
  140. 栗田翠

    ○栗田委員 私もそういう面もあるかと思ってその続きも調べたわけなんですけれども、非嫡出子の場合には母となっておりますね。そうなりますと、いまのような論拠でいきますとやはりおかしいのではないか。非嫡出であろうと嫡出であろうと、出生十四日目といえば肉体的にもその母親というのが動きにくいというのは実際そうなんですから、その場合は矛盾が出てくるのではないだろうか。そしてまた、非嫡出子の場合でも、それならば認知されたり――即座にするわけてないのですけれども、父親に当たる人というのは必ずいるわけでして、父または母ということで全部を通してもぐあいが悪いことはないのではないだろうかというふうに思うのですけれども、この辺の矛盾点はどうなるのでしょうか。
  141. 香川保一

    ○香川政府委員 非嫡出の場合には、それは父親がおることは必ずおるわけでございますけれども、その届け出義務を課す主体としての父親というのはなかなかとらえにくい場合もあるわけでございまして、これは母親に義務を課することは肉体的には若干問題がありますけれども、それ以外に義務を課する者がいないというやむを得ない措置だろうと思うのでありまして、お説のように父または母が届ければいいというふうにするのも一つの立法論と思いますけれども、これはしかしいずれが便利かといいますか、つまり届け出義務の方でございますから――これは制裁があるわけでございまして、届け出義務のことでございますので、さほどこの分野で男女同権というふうなことの理念を持ち出さなくても、どちらがよりその届け出義務が励行され、しかも容易であるかというふうな観点から考えることだろうと思うのであります。
  142. 栗田翠

    ○栗田委員 義務であるからというふうにおっしゃるのですけれども、理念的にやはり父親中心に考えている。この責任者は父母であり、責任があるからには義務もあるという、こういうことに本当はなるはずで、また権利としても対等であるということになれば義務も同じように持つという考え方の方が実際には徹底した考え方ではないかと思うのですね。確かに母親が動きにくいという事実はあるわけですけれども、なぜ父とし、しかも非嫡出の場合に母とするかということについて、まだ家父長的な考えがそこに貫かれているのではないかという気持ちが私はぬぐい去れないわけなんです。父または母ということにしてどちらかが責任を持つということになれば、実際には父親が行ける場合には父親が行くでしょうし、非嫡出子の場合でも父親が行ける場合には行くということだってとり得るわけですし、そのことの方が、両性に責任を持たせ、また権利も対等であるというそういう立場から納得できるのではないかと思うのですけれども、大臣いかがでしょうか、こういう考え方はおかしいでしょうか。
  143. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 栗田さんの御意見は私、正しいと思います。
  144. 栗田翠

    ○栗田委員 大臣がこのようにおっしゃっておられますし、ぜひともまた御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  145. 香川保一

    ○香川政府委員 決して栗田委員の御提案のような案は正しくないというわけではないわけでございますけれども、きわめて技術的なことを申し上げて恐縮でございますけれども、父または母というふうにいたしましても、これは義務規定でございますので、やはり両方なすり合いされても困るわけでございまして、通常複数の義務者を法律で決めます場合には、御承知と思いますけれども、第一順位、たとえば父が十四日以内にその義務を履行しないときに、第二順位の母親がその義務を履行しなければならぬというふうな形で恐らく規定せざるを得ないだろうと思うのであります。その場合に、第一順位、第二順位、これを母を先にするか、父を先にするかという問題として、お説のような提案も踏まえて検討したいと存じます。
  146. 栗田翠

    ○栗田委員 それでは次の問題に移らせていただきます。  いま協議離婚の制度がございまして、実際には離婚をする場合に、日本の例でも裁判離婚、調停離婚、審判離婚などよりは協議離婚の数が圧倒的に多いというふうに聞いております。実際に協議離婚というのは、夫婦でお互いに協議し合って、それでは離婚しようかと決めて、そして書類を出せばかなり簡単にできるわけでございますが、実は、私などもいろいろ聞いている例、調査した例があるのですけれども、本当に協議がされずに、一方的に、その片方が知らない間に、多くの場合は妻が知らない場合なんですけれども、離婚届が出されてしまっている、こういう例がずいぶんあるように聞いておりますが、現状はどんなふうになっておりますか。
  147. 香川保一

    ○香川政府委員 協議離婚の場合に、届け出される際に、御承知のとおりその届け出が間違いないことを担保する意味で証人二人に連署させることになっておるわけでございます。なるほど、それだけでも、いまお説のような夫婦の一方が知らないままに離婚届が出される、つまり不真正な離婚届が出されるというケースは防ぎようがないかと思うのでありますが、さようなことも踏まえまして、昭和二十七年だと思いますが、法務省民事局長通達によりまして、たとえば、夫がどうも勝手に離婚届けを出しそうだ、過って受理されては大変だということで、そういうことを気づいた妻の方から市町村長に対しまして、夫の方から出てきた離婚届は、自分の判を押してあるかも知れぬけれども、あれは離婚意思がないんだからということで不受理の申し立てをしておくというふうな、これは法律に根拠がないのでございますけれども、お説のような不真正な離婚届を防止するという観点から、さような不受理の申し立てという制度を通達によって認めておりまして、数字は定かでございませんけれども、かような不受理申し立てのある件数というのはわりあいあるように聞いております。
  148. 栗田翠

    ○栗田委員 私の調査でもこれはかなりあるわけです。いまおっしゃいました二十七年の不受理の申し立ての制度化以来、四十四年まで出されました不受理の申し出総数が一万三千三百二十五件というふうに聞いております。ところが、このうちで妻から出されたものが一万四百五十四件、七八%ですから、圧倒的に妻の側が不受理の申し立てをしている数は多いわけで、実際には夫が一方的に、離婚したいけど妻がしないのを、協議離婚という手続を使って不公正な離婚を協議もせずにやっているのが非常に多いと思います。この調査で、離婚件数の全体の一三・九%にこれが当たるといいますから、率からいっても非常に多いというふうに思うのです。  私は、ここに離婚届の用紙も持ってきてみたのですけれども、なるほどこれは証人も二人書くようになっておりまして、妻、夫それぞれが自筆で書いて判を押すようにはなっていますけれども、筆跡鑑定までするわけではありませんから、別の手で書けばだれが書いてもわからない。判ぐらいはどこからでも持ってこられますし、証人だって、本気でやろうと思えばこれはどうにでもなるわけです。確かにそういうような余地はずいぶんあるし、不受理の申し立てがされずに、知らずにされていた場合ということはかなりあるように思います。  こういうことについての対策について伺いたいのですけれども、たとえば、大変ひどい例というのも、調べていきますとあるわけです。たまたま戸籍謄本を取ってみたら離婚になっていたというような例がかなりあるのです。  これは東京都で最近起こっている非常にひどい一つの例ですけれども、夫と妻が別居しておりまして、そして夫は別の愛人と住んでいたそうです。それで、離婚してくれ離婚してくれと言われたけれども、妻が拒否をして、離婚調停の申し立てもされていたけれども、妻の側は拒否をしていた。夫の方に責任があるということで妻が拒否をしておりますので、離婚の調停も成立しないという状態になっていたわけです。ところが、妻のお母さんがあるとき何げなく戸籍謄本を取ってみたら、もうとっくに離婚になっていた。それだけならいいのですけれども、この人と離婚をしておいて、別のいま一緒にいる女性とすでに婚姻届が出ていたそうです。そうすると、もとが違っているわけですから、二重にやっているわけですね。しかもその上に、別の女性との間にできている子供が籍に入っている。それはいいのですが、前の奥さんとの間の娘さんがいたそうですか、この娘さんまで夫の方の籍に入ってしまっているんです。そこまで手続がされている。この娘さんというのはもうかなり年ごろで、近く結婚しなければならないということになっていたのだそうですか、その人が知らない間に母親が変わっているという状態にまでなって、本籍まで変わっている。こういうふうなものもあるわけで、こうなってきますと、これをもとに復すためにはいろいろな審判をやらなければならないし、大変な手続が必要になってまいります。  これは極端な例だとは思いますけれども、実際にはこういうふうに協議離婚が非常に簡単にできるのは、ある意味ではいいわけなんですが、こういうふうな場合を阻止するような対策というのを考えていく必要があるのではないかと思いますが、こういう点ではいま何か御検討をされていることはありますでしょうか。
  149. 香川保一

    ○香川政府委員 まことに申しわけございませんが、その辺の防止策というのはなかなかいい知恵が浮かばないわけでございまして、一つには、協議離婚の場合には家庭裁判所の認証を受けるということにしてはどうかというふうな案も考えられておるようでございますけれども、これも、いまお説のように、先ほど虚為の婚姻届を出されるのが全体の一三・何%とおっしゃいましたけれども、さような率にはならぬと思うのでございますけれども、恐らくその十分の一ぐらいだろうと思うのでございますが、そういうことの実態を考えますと、通常の、うそでない離婚の場合にまで一々家庭裁判所の認証を受けなければならぬということ、その手続の煩瑣の面、あるいはまあ離婚というふうなことは余り表向きにしたくないことでもございましょうから、家庭裁判所に一々認証というふうなことにするのもいかがかというふうな気がするわけでございます。  また、その離婚届が出てまいりました場合に、いずれの当事者にも市町村長から、こういう離婚届が出ているけれども、これは間違いないかというだめ押しの意味で通知をする。そうして、間違いございませんという返事が返ってきて初めて受理するというふうな方法はどうかということも考えられるわけでありますけれども、もともとその虚偽の離婚届を夫なら夫が出す場合には、妻の現住所というものが夫と同じ住所になっておりますと、そこへ市町村長からの通知が夫、妻別々に参りましても、その返事は夫の思うとおりの返事になってしまうというふうなことで、実際そういった虚偽の離婚届を防止する方策については考えあぐんでいるというところが偽らざるところでございます。
  150. 栗田翠

    ○栗田委員 確かにむずかしい問題があるわけですが、いまおっしゃった後の方のやり方ですね。それを、やはり受理までに一定期間を置いて、とにかく通知を出すということをしますなら、通知を隠されたとか手に渡らなかったという場合があったとしても、それでもかなり救われる部分があるのではないかと思うのです。通知を受け取ったという返事が来なければ受理しないというふうにしますと、またいろいろ問題が出てくると思いますけれども、その書類が出されて一月なり二月なりは置いて、そして通知をするという、それだけでも相当よいのではないかと思うのです。こういう点ではいかがでしょう。
  151. 香川保一

    ○香川政府委員 いま御提案のように、通知をすることにして、一月あるいは二月、正式の受理をとめ置くというふうなやり方、これはまず根本的には、結局まだ法律的には離婚が成立してないことになるわけでございますから、その間にいろいろの法律の問題が生じた場合に、当事者としては離婚する意思があり、届け出されているのになお夫婦として扱うというふうな矛盾をどういうふうにするかというふうな問題がございますし、先ほど申しましたように、通知すること自身が、的確にそれぞれの当事者に届いて、そして当事者からその真偽が市町村長に伝えられるという仕組みができますれば、防止策としては非常に適当なんでございますけれども、なかなかその仕組みが容易でない。たとえば郵便局の方へこちらへ届けてくれというふうなことがあればそちらに届けられるというふうなこともあるそうでございまして、また本人が、夫の方が悪いことをしようというつもりでございますから、常に郵便局の方にそういうようなことをした場合、市町村長からの通知に関しては一切そういうのは受けつけないというふうなことが郵便局の方で扱われるとすれば、その面は何とかなるのでございますけれども、一律的なそういうことが果たしてできるかどうかというふうに、その通知制度によって防止することが的確に行われるようなことになるためには、やはりいろいろ工夫しなければならぬ問題があろうかと思うのでありまして、その辺のところはさらに検討さしていただきたいと思います。
  152. 栗田翠

    ○栗田委員 それからあわせまして、協議離婚などをする場合に、権利を知らずに離婚をするという例がずいぶん多いと思います。たとえば慰謝料の請求権はありますし、それからまた子供の養育費は、たとえ母親が親権者になろうとも父も出さなければならない義務は持っているわけですし、その他遺産の分与などの請求もできるはずですけれども、実際にはどうなんでしょうか。この裁判離婚その他でなく、協議離婚の形の場合のときには、わりあいにこういう権利が行使されていないと思いますが、実態はどんなふうになっておりますか。
  153. 香川保一

    ○香川政府委員 協議離婚の場合の妻の方からの権利行使の実態はどうかという点は、ちょっと私どもの方では実態を把握する資料がございませんので、家庭裁判所の方で把握しておられるだろうと思うのであります。  私どもといたしましては、これは民事局の所管ではございませんが、法務省の人権擁護局の方で、ことしが国際婦人年でもございますし、それとは関係なくても、婦人の地位という問題を人権擁護の面から取り上げていろいろの啓発活動等をやっておるわけでございまして、聞くところによりますと、本年度各地におきまして講演会を開いて、その際に婦人の地位、これは先ほど御指摘の離婚の場合の請求権も含めた婦人のそういった権利等を取り上げた講演をやるとか、あるいは人権週間におきまして、今年度は婦人の地位を強調テーマにするというふうなこととか、あるいはさような権利行使も含めた啓発資料を作成して、これを一般に配布してPRに努めるというふうなことが計画あるいは実施されておるようでございます。
  154. 栗田翠

    ○栗田委員 先ほどの通知の問題とも関連してこのことを私は伺ったのですけれども、一般的に聞いている場合にはなかなか自分のものとして、権利として考えられなくとも、いざその場になれば非常にみんな自分の問題として取り上げてくるわけです。だから、ふだん一般的なPRももちろん必要なんですけれども、協議離婚をした場合にこれこれの権利がありますよということを本人に知らせるということは、特にいま女性の側にとっては大変必要ではないかと思います。それで、離婚の申し立てがされた場合に、そのような権利があって、それを行使する場合にはこれこれのやり方をすればよいとか、必要があればどこそこに相談に行ったらよいというようなことを、できれば本人に通知するということをあわせてしたらばかなり効果はあるのではないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  155. 香川保一

    ○香川政府委員 いま御提案のようなことを、たとえば市町村の窓口におきまして離婚届が出てきたときに、それを受理すると同時にそういったパンフレットを差し上げるというふうなことも一つの方法かと思いますが、これは一つの人権擁護というふうな面にもかかわり合いがございますので、よく内部で相談いたしましてお説に沿うようなことを考えてみたい、かように考えます。
  156. 栗田翠

    ○栗田委員 大臣、いまお聞きくださいまして、協議離婚の問題一つでもずいぶん深刻な問題もあるとお思いくださったと思いますが、ぜひともこういう点でできるだけ問題がなく両性が権利を保障されますように御検討いただきたいと思いますが、いかがですか。
  157. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 一生懸命に検討しなければならぬなと感じております。
  158. 栗田翠

    ○栗田委員 それでは次に、婚姻中に形成された財産処分の問題で伺いたいと思います。  婚姻中に財産が形成されました場合には、たとえ一方の名義になっていても妻の潜在的な財産権というものはあると思うのですね。寄与分の問題などとも関係して、それがどのくらいであるかということはかなり問題がありますけれども、特に共働きの場合とか一緒に事業していた場合とか一緒に農業に従事していたというときにはかなりはっきりありますし、ましてそうでなくても家庭の主婦であっても潜在的な寄与というのはかなりしていると思います。ところが、この婚姻中に形成された財産処分の場合、こういう意味がありますから、本来勝手に処分すべきでないと思いますけれども、かなり処分されている例もあるように思うのですが、これは処分する場合、本来だったらば当然夫婦で確認すべき内容のものですね。いかがでしょう。
  159. 香川保一

    ○香川政府委員 実質が夫婦の共有財産であれば、当然お説のようなことになるべきものだと考えます。
  160. 栗田翠

    ○栗田委員 ところが、法的には何の規定もありませんね。どうなんでしょうか。この処分を勝手にやらせないための措置ですね、法的にありますか。
  161. 香川保一

    ○香川政府委員 共有名義になっておればこれは問題ないのでございますけれども、夫なら夫の名義になっておるというときに、妻の寄与分があるというふうな関係で、夫がその財産を処分しようとするときに、たとえば処分禁止の仮処分をするとかあるいは処分の差しとめ請求をするというふうなことが一応法的手段として考えられるわけでございますけれども、その場合、潜在的な一つの寄与分的な権利でございますので、まだ実体法的に顕現化された権利というふうにはまいらぬものですから、御承知のとおり仮処分なり差しとめ請求の際の本来の被保全権利というものがないことになりますので、さような意味で、幾つかの裁判例は、御承知のとおり仮処分等を認めていないわけでございます。この点はいろいろ問題がございますので、現在法務省の法制審議会の身分法小委員会におきまして、夫婦財産制の問題としていろいろ検討されているところでございます。
  162. 栗田翠

    ○栗田委員 仮処分の問題は離婚を前提とした場合にはできますが、婚姻を継続する意思があって、しかもそのときに一方的に財産を処分された場合には仮処分でできますか。
  163. 香川保一

    ○香川政府委員 お説のような場合には、現在の裁判実務においては仮処分なり差しとめ請求は認めないと思うわけでございます。しかし、必要性はあながち否定できない問題でございますので、さような点も含めて身分法小委員会で現在検討しておるところでございます。
  164. 栗田翠

    ○栗田委員 実際その必要性はあると思うのです。離婚を前提にしたとき初めて財産が問題になるわけではなくて、健全な夫婦の場合にはこんなことは余り問題になりませんけれども、夫がばくちにこってお金を使い果たして次々に財産をすり減らして売ってしまったというようなこともあるわけで、それが必ずしも離婚につながるわけではありませんが、奥さんが一生懸命働きながら家庭を維持していきたいし、家庭経済も守っていきたいと思うときにそんなことをやられましたら、非常に困るわけです。離婚を前提としないでも何らかの手が打てるようにしないと、これはかえって家庭を破壊するような原因にもなっていく場合があると思いますから、ぜひとも必要だと思います。  それからもう一つ伺いますが、この仮処分をする場合には供託金が要るはずですけれども、かなり額は高いわけですね。いかがでしょうか。
  165. 香川保一

    ○香川政府委員 これは個々の事案におきまして仮処分裁判所が保証金を決めるわけでございますが、どれくらいになりますか、大体多い場合で当該処分禁止の対象財産の価格の三分の一程度が保証金で一番高い額ではなかろうかというふうに思いますが、ちょっと正確なところはつまびらかにいたしません。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
  166. 栗田翠

    ○栗田委員 たとえば三分の一ぐらいになりますと、一般的な庶民の財産とすると家屋などがあるわけですけれども、一千万ぐらいの家屋はざらにありますから、三百万ぐらいのものは出さなければならないわけです。ところが、離婚を前提にする場合であっても、妻の方がそれだけの現金を持っていないということはずいぶんあるわけですね。そのために、せっかく仮処分の制度がありましても、供託金が出せないためにそれも使えないという、実際にはそういう問題が非常にたくさん起こってきているわけです。ですから、仮処分の制度そのものが離婚を前提にしているということが一つの問題だし、また、その供託金が高いために権利が行使できないという問題もありまして、実際には一緒に働いてつくった財産を一方的に処理されながら何もなしにほうり出されるという女性が出てきたり、また家庭が破壊されるという例が出てくると思います。ですから、どうしても御検討いただきたいのですけれども、たとえば、夫婦が婚姻中に形成した財産を一方が処分する場合には同意を必要とするといったようなことを一つ法文の中に入れまして、同意がされていない場合にはこの処分は無効であるといったようなこと、何かそのような手だてが必要ではないかと思うのですけれども、こういうことについてはどうお考えになりますか。
  167. 香川保一

    ○香川政府委員 お説のような案も含めまして、先ほど申しましたように、身分法小委員会で検討されておるわけでございます。ただ、夫婦が共同で取得した財産なりやあるいは特有財産なりやというふうな点を、第三者の取引の安全保護という見地からどのような形で公示するかというふうなことも、技術的にはあわせて問題になるわけでありまして、その点も含めまして検討されておるわけでございます。  なお、仮処分の点は、これは身分法小委員会におきまして、婚姻継続中の夫婦の一方が、共有的な財産の処分をしようというときに、処分禁止の仮処分を申請するというふうな制度を仮に設けるといたしました場合に、立法論といたしましては、夫婦の間でございますから、もともと保証金というのは間違った場合の損害賠償を担保するという趣旨でございますので、立法的に担保は要らないということにするか、あるいは一般と同じように担保が要るということになりましても、事案が事案でございますから、恐らく裁判所の保証金の額は一般にはぐんと低くなるだろうというふうに考えております。
  168. 栗田翠

    ○栗田委員 いまの点では裁判所の判断というのもかなりかかわってくる問題だと思いますけれども、あくまでも、そういった事例でお金がないとかその他の問題で権利がむざむざと失われるようなことのないように大いに検討して努力をしていただきたいと思います。  それで次に、世帯主の問題について伺います。  これは民法には世帯主という規定はありませんけれども、住民登録法だとか住民基本台帳法だとか地方税法の中には世帯主というのが書かれております。  まず伺いますけれども、これはどういう概念なのでしょうか。
  169. 苫米地行三

    ○苫米地説明員 お答えいたします。  世帯主の解釈といたしましては、その世帯を主宰する者ということでございまして、主宰する者と申しますのは、社会通念的に見て、その世帯の家計を主として維持しておる、そのための所得を得ておる者、このような考え方をとっておるわけであります。
  170. 栗田翠

    ○栗田委員 最近は女性もずいぶん働くようになりまして、いま雇用労働者の三割以上が女性ですし、既婚者もその中で六割以上、非常に多くなっております。それで実際には家計を維持していく場合に婦人の果たしておる役割りも非常に大きいし、中には夫より所得の多い人もかなりあるのですね。そういう場合に、それではいまのような世帯を主宰する者という概念になってまいりますと、これは夫であっても妻であっても、世帯主として決めることができるわけですね。それはいかがですか。
  171. 苫米地行三

    ○苫米地説明員 先生御案内のように、住民票の記載は市町村長が行うものでございますけれども、これは届け出に基づいて行うということになっておるわけでございます。したがいまして、届け出がそのような形でされましたときには、それは妻を世帯主として記載することも可能なわけでございます。
  172. 栗田翠

    ○栗田委員 そうしますと、それは夫と妻、家族の相談の中でだれを世帯主にするかということを合意で決めて届け出ればそれでよいというわけでしょうか。
  173. 苫米地行三

    ○苫米地説明員 原則的にはそのとおりでございますが、夫と妻ということだけならばそれでもよろしいかと思いますけれども、社会通念的に見て、かなり非常識な者を家族の間の相談ということで世帯主の届け出をするというようなことも考えちれないことはないわけでございます。そのような場合にはやはり市町村長がそれを直す、直すためのいろいろな方法がございますけれども、そのようなことで取り扱うこともあり得るわけでございますが、正常な形で、そのような家庭内の相談ということで届け出がされたことが客観的に判断できるような状態でありましたならば、それは妻を世帯主にするということも可能であるわけでございます。
  174. 栗田翠

    ○栗田委員 ところが、実際には女性が世帯主になっているのは非常に少ないですね。それは確かに、家計の中心になっているのが男性である場合がまだ多いわけですから、そういう意味でもそうなのですけれども、夫婦で、奥さんの方が圧倒的に所得も――私も別に所得だけて決めるべきだとも思いませんが、夫の方がほとんど仕事ができない状態であっても、夫が世帯主になっておるという場合が非常にあるのですが、これは何か基準になっているようなもの、そういうふうに決めさせていくようなものがあるのでしょうか。
  175. 苫米地行三

    ○苫米地説明員 別にそのような基準というものが特にあるわけではございません。ただ、客観的に妥当だという判断を下す前提といたしましては、確かに所得の問題が一番つかまえやすいわけでございますが、これはその家庭内でも、どなたが主たる所得を得ているかというのは変わり得るわけでございます。奥さんと夫の場合でも変わりますし、また、父と子の間でも変わる場合があるわけでございます。ですから、そういうことをそのたびに基準ということで世帯主を変えるというようなことになりますと非常に問題がございますので、現在のところ一般的な考え方としては、大体夫が所得の主なものだということで判断してやっている場合が多いのでございます。
  176. 栗田翠

    ○栗田委員 私も、家族とか世帯というのを考えた場合に、必ずしもそんな所得だけで決められるものでもなく、また、家族の中での考え方というのもあるわけですから、そこのところを無理にはっきりした基準を所得などで決めるべきだというふうには思っておりません。ただ、昭和二十六年に厚生省の保険局長、地方財政委員会税務部長通知というのが出ておりますね。御存じですね。私、これを見て大変疑問に思ったのですけれども、こういうふうになっているのです。これは、参考として大体こんなふうに世帯主は決めていくべきだという基準が示されているのです。  まず第一に父親ですが、その次「父親は所得がなく、所得税法上、長男の扶養親族となっており、長男が主として世帯の生計を維持している場合は長男が世帯主」、二番目ですが、「父親が長男と共に、その世帯の生計を維持している場合は、たとえ、父親の所得が長男のそれより少額であつても、社会通念上父親が世帯主」、そして第三番目に「父親が所得税法上、長男の扶養親族であつて、長男、次男が共に世帯の生計を維持している場合は、長男の所得が、次男のそれより少額であつても長男が世帯主」、しかもその次が「父親が無所得で、次男が主として世帯の生計を維持している場合においても、長男が一時的に失業しているものと認められる場合においては、たとえ、所得がないときでも、社会通念上長男が世帯主」、最後にやっと五番目に出てくるのが妻なんですが、「夫が不具廃疾等のため無収入で、妻が主として世帯の生計を維持している場合は妻が世帯主」、こういう順序になっているのです。  大臣、これをお聞きになっていかがですか。私、夫の次には妻が出てくるだろうと思ったのですが、家族で成人した子供たちもいるような場合、父がいて長男が出て次男が出て、一番最後に、夫が不具廃疾で完全に無収入のときに妻だ、こうなっているのです。なぜこういう順序で世帯主が決められて――全部これて当てはめるというわけじゃないけれども、考え方の基準として出ていますし、長男がいたって長女がちっとも出てこない。次男まで出てくるのになぜこうなんだろうかと思うのです。変だと思いますが、いかがでしょうか。
  177. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 困った御質問でございます。女の出場所をつくるように一生懸命にこれから検討しなければならぬと思います。
  178. 栗田翠

    ○栗田委員 これにかなり準拠して、実際には市町村でいろいろな登録をしたり何かしますときにやっている例が多いですね。ですから、圧倒的に男性が世帯主になっているというのも、所得の関係やいろいろありますけれども、これに準拠しているというのが非常に多いのです。だから、最後にみんないなくなっちゃって、全部何も働けない状態で初めて奥さんというのが出てくるのです。これは私、必ずしも何も妻が所得が多かったら妻でなければいけないと思いませんし、そんなことは決して言っておりませんけれども、しかし、やはり夫婦が対等であり、家庭の主人、主婦という形でいわば責任を持っている場合に、子供よりも妻が後になるというようなことはずいぶんおかしいと思います。この通知というのは昭和二十六年なんですが、憲法の精神からいっても非常にはずれていると思うのですが、いかがでしょうか。
  179. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 いまのような日本社会のそういうあり方は、婦人の権威を余りに軽視しているように感じますね。これはよくないというふうに思います。
  180. 栗田翠

    ○栗田委員 大臣はそういう点で大変御理解のあるはっきりした御答弁をしてくださいますので、大変うれしく思います。ただ、理念的に女性の地位を認めていないという問題もこれは重大なんですが、実際上の不利益というのがこのことから非常に出てきております。これはまた、世帯主というのがこういう形で決められていることをよいことにしまして、企業などがいろいろな手当をなるべく女性には出さないで、その分安上がりになるわけですが、そういうふうにして節約しようということにも利用している場合があるわけですね。  これは私の調べました例で、私は静岡出身ですが、地元の静岡銀行の例で申し上げますと、こんなふうになっている。家族手当は妻に二万円を出す、こうなっておる。これは実は昭和四十八年までこうなっておりまして、そこの銀行の労働者たちが、余りにひどいじゃないか。もし夫が病気で寝ていて収入がない場合、奥さんが銀行に働いていたら扶養家族手当はその場合出ないわけですから、妻には出るけれども夫には出ない、これはおかしいじゃないかということでさんざん闘いまして、やっと四十九年から、配偶者に所得がない場合には出すというふうに変えさせたのですけれども、まずこういうのがあるんですね。これは、夫は世帯を率いている世帯主である、しかし、妻は扶養家族であるからという考え方からこういう状態になっておりまして、いま北陸銀行とか第四銀行、横浜なんかまだこのままの規定になっておるようであるというふうに言っております。  しかも、この同じ銀行で、子供の家族手当は男性のみに出します。ですから、奥さんの方が勤めていて、夫がたとえば民間の仕事をしているとか、自分の家業をやっているとかいったような場合――家族手当は家業なんかの場合出ませんけれども、こういう場合にそれじゃ妻の方が扶養家族手当をもらいたいと思っても、世帯主でないからということでもらえないのです。これは現在もそうです。この実態は全国各地にあります、銀行だけではなくて。二重に家族手当をもらったのでは困るのですけれども、片方がもらうというのは私はいいと思うのです。それが阻まれております。  しかも、こういうのが出てきたんですね、独立生計手当。この独立生計手当もいま撤廃させておりますが、昭和四十八年まではこういう形で男子のみです。女子は扶養家族であるという考え方で、世帯主である男子にだけ出す。これもそうなっておりました。二十五歳から千五百円、二十六歳から二十七歳まで二千五百円、二十八歳が三千五百円、二十九歳から三十四歳が五千八百円、そして三十五歳以上になると七千円つくということになって、婦人にはついていなかったのです。これは世帯主という考え方を基礎にして全部やっております。  それから、現在でも問題になっているのが住宅資金の借り入れですが、これは男子でなければだめ。女子にはよこしません。これも、男子は世帯を主宰する者だからという考え方ですね。だけれども、女の場合にはだめだというわけです。  こういうように非常に差がついておりまして、これはいま静銀のほんの一例ですが、これは全国にあります。私、ざっと計算してみまして、もし男女で最も差がつく場合、一体幾ら差がつくんだろうかと思ってやってみましたら、たとえば昭和四十八年当時、夫が病気で無収入の妻の場合、ここで二万円もらえるべきものがもらえないわけですね、働いていても。それから家族手当はいまでももらえませんから、子供が二人いますと、六千円つかないわけですね。そして三十五歳以上だと、男子の場合七千円独立生計手当がついていますから、これだけ計算しても三万三千円の相違が一カ月に出るのです。そうなりますと、もし家計を維持するために一生懸命に働いている婦人があったとしても、手当で男性とこれだけの、月三万三千円の差がつくということは実に大きいことで、家計を維持し、りっぱにやっていこうという、そのことさえこういういろんな手当で阻害される、差がつくという問題になります。しかも、これは税金の控除なんかにも関係してまいりますから、世帯主になっているかなっていないかで税金の控除が違いますので、ここなんかも入れていったら大変なものだと思うのですね。実際の不利益を受けているわけです。  それから、これは銀行の話ではありませんけれども、現在でも公務員住宅に入る場合に世帯主が申し込むことになっておりますね。これはいかがですか、自治省でしょうか。多くの都市でそうなっているのですけれども。――じゃちょっとおわかりにならないようですが、多くのところでそうなっておりまして、世帯主でないと申し込めないのです。それで奥さんが公務員でだんなさんが民間にいた場合なんか、公務員住宅に入りたくても妻が公務員の場合には公務員住宅に入れないのですね。この考え方なんかも、つまり世帯主を中心にした考え方になっているわけです。これは法制上の規定は何もございませんから、その違反であるかないとかという形でやられているのではないのですけれども、実際に先ほどのような通知が出てこれに準拠して世帯主というのが決められていて、大体それに沿って決めているわけですね。ところが今度は、こう決まっているから世帯主でなければいけないのだぞといういろいろなものが出てくるわけですね、企業の場合もいまのような住宅の場合も。そのために二重、三重の不利益というのが出てくるわけで、これは理念上の問題ばかりでなく、実際生活上もらうべき手当その他の権利も行使できないという具体的な例になっております。  ですから、一日も早くこのような通知というのは再検討していただく必要がある。そして、いまの男女平等の憲法の精神にもどうも反しているように思いますし、それから実際の不利益も与えているこういう問題というのは考え直していただきたいと思いますが、もう一度その点でお考えを伺いたいと思います。
  181. 苫米地行三

    ○苫米地説明員 とりあえず私の方が住民基本台帳法の所管官庁でございますのでお答え申し上げます。  これは、確かに先生おっしゃるように、いろんな行政に関連するものでございまして、実はこの通知は私どもの省だけでなしに法務省とか厚生省とか共同で出しておるわけでございます。したがいまして、これをにわかに改廃ということになりますと、やはりいろいろと検討すべき点が出てまいるわけでございますが、先ほど読み上げられましたものの趣旨は、父親あるいは長男と書いてあるところが実質的に妻あるいは長女などが主な所得を得ている世帯においてはそれに準じて読むという趣旨があるわけでございますが、たまたま各種の分野におきましてこの世帯主の規定というものが影響を及ぼしているというようなこともあるようでございますので、これはひとつ十分に検討させていただきたいと考えております。
  182. 栗田翠

    ○栗田委員 いま私、ざっと挙げましただけでもこのようにいろいろ問題がございます。これはまたずっと調べていきますとまだたくさん方々にあると思うわけです。引き続いて実質的な男女の平等を確立していくための法制上、行政上のいろいろな改善というのをぜひともお願いしたいと思います。  先ほどから幾度もお答えをいただいておりますけれども、いま全体の私の質問を通じまして、大臣のお考えを最後に伺わせていただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  183. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 憲法の基本原則に基づく男女間の平等性に関し、あらゆる法制を通じて検討すべき点を指摘されまして、大変参考になりました。法務省といたしましては、特に民法の改正なども作業中でございますから、男女同権の基本原則にのっとって誤りなからんことを期していきたいと思うのでございます。  ことしは国際婦人年で、婦人の議員さんからたびたび、そういういまおっしゃいましたような妻の地位の向上とか婦人の地位の向上について御指摘がございました。ただ私は、この臨時国会の参議院の予算委員会、総理大臣以下ずっとあそこに並んでおりまして、参議院の婦人議員の佐々木静子さんから御質問の中に、そこで総理大臣以下並んでいるけれども、あなた方幾らいばったって子供は生めないでしょう、こういう御詰問がございまして、総理大臣別に事なかれ主義でもないが返答はしなかったのですけれども、やはり女だけで子供は生めるものでないと思っておるのです。夫の内助の功を全然無視するようなそういう御質問がありましたが、そういう点につきましては私には不満があるのです。しかしながら、女尊男卑にならないように気をつけながら、婦人の地位の向上については、御指摘もございましたし、いろいろ参考になりました、勉強になりました、厚く感謝を申し上げますが、一生懸命に感謝を申し上げつつ一生懸命に努力をいたします。
  184. 栗田翠

    ○栗田委員 ちょっと一言言わせてください。  社会党の佐々木先生の例をお出しくださいました。社会党の佐々木先生どうお考えか知りませんが、共産党の私は男性、女性がともに力を合わせて家庭も築き、本当の平等の権利をつくっていかなければというふうに思っておりますから、そういう立場で一貫して質問させていただきましたので、そのようなことで一層改善に努力をしていただけますようにお願いしたいと思います。  終わります。
  185. 大竹太郎

    ○大竹委員長代理 田中美智子君。
  186. 田中美智子

    ○田中(美)委員 大臣が早くお帰りになるということですので、大臣のお答えを先にしていただきたいと思います。  夫婦の離婚の場合のことですけれども、家庭裁判所で調停委員制度がありまして、調停を受け、その結論が出るわけですね。それがどれぐらい履行されているか、決められたことがどれぐらい現在履行されているか、その点についてお答えいただきたい。
  187. 裾分一立

    ○裾分最高裁判所長官代理者 ただいま御質問の御趣旨は、家庭裁判所で離婚調停がなされているが、そこで定められた義務がどの程度履行されているかという御質問のように承りましたが、家庭裁判所では年間約七万件足らずの事件を調停事件で扱っておりますが、その中で夫婦間のもめごとというのが約五十数%ございます。それらの調停事件がすべて金銭なんかの履行を命じておるとは限りませんので、その履行の結果いかんということは私ども十分把握できておりませんが、履行されてない事案につきましては、その後家庭裁判所に対して、履行確保の制度を利用してなるべく履行するようにさせてほしいという申し立てが出されるようにたてまえがなってございます。  その内容をちょっと見ますと、大体履行を勧告してほしいという申し立て、これが大体年間八千件余りだと思いますがございます。それからそのほかに、履行をちっともしようとしない者に対して履行の命令を出してもらいたい、この履行の命令にもし従わなければ過料を取ることになるわけで、制裁の規定がございますが、この申し立てば非常に利用度が少のうございまして、年間大体五十数件というようなところでございます。一番多く利用されておりますのは、たとえば別れた夫が別れた妻に支払いをするという場合に、直接持っていったのでは具合が悪い、顔も見たくないというようなことから、家庭裁判所に金を預けて、そして家庭裁判所から渡してもらうというふうな、まあこれは寄託制度と呼んでおりますが、これが大体年間十万件足らず、九万数千件ございます。そういうことでこれが一番よく利用されておるんじゃなかろうかと思いますが、私ども裁判所の立場から見ました履行確保制度というものが、これは昭和三十一年に発足いたした制度でございますが、毎年順調に若干ずつ伸びを示してきておるように考えられますので、今後もこの傾向はなお一層この制度の改善と関連して進んでいくんじゃなかろうかというふうな考え方をしております。
  188. 田中美智子

    ○田中(美)委員 時間が非常に少ないものですから、回答は簡潔に、私が聞きましたことに焦点を合わせて、余分なことはおっしゃらないでいただきたいというふうに皆さんに申し上げたいと思います。  いま御回答にありましたように、履行確保制度というのがあって、いろいろな点でそれができる前よりは多少の前進があるということは私も存じておりますし、私自身が家庭裁判所の調停委員を国会に来る前にずっとやっておりましたので大体の事情は知っております。その中で、実際にはなかなかその支払い義務が履行されない。特に夫が妻に払う場合に非常に履行されていない。私が調べましたところでは、いつまでにということがありますので正確には言えませんけれども、大体いま半分くらいは履行されないうちに――結局妻が申し立てをすればいいでないかといっても、離婚した妻は働かなければならないので非常に忙しいわけですね。そういう点で何遍も何遍も裁判所に行かなければならない。遊んで食べていかれる人であればこれは何遍も裁判所に出かけていって催促をしてもらうということもできるわけですけれども、実際にはそれがなかなかできないということで、この制度をもう少しきっちりとしていただきたいというふうに思うわけです。どこできっちりとさせるか、逃げる男をどう追っかけるかということも、これは大変なことなわけですから、その中で、過料がわずか五千円になっているわけです。  たくさんの事例がありますが、これは離婚のときには幾らお金を渡すんだというようにお金は決まってないわけですから、だから調停で決まるので、少ないのになれば二千円ということもあるわけですけれども、たとえばこの司法研修所から出されました「家事調停条項例集」という教科書ですね。この中の十三ページにあった例を一つ取り上げたいと思うのですけれども、ここには夫が妻に対して二十一万円支払うことになった。これは昭和三十五年の話です。三十五年ですから、いまはもうそれから物価はぐっと上がっておりますね。二十一万円支払われることになった。   〔大竹委員長代理退席、保岡委員長代理着席〕 この内金を十一万先に払って、残金を月賦で払うというふうなことが調停で決まったわけですね。こういうふうに二十一万も支払うというのを払わない場合に、わずか五千円の過料で済むということはどう考えても少ないのではないかというふうに思いますが、この点、大臣にお答えいただきたい。
  189. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 少ないと思います。
  190. 田中美智子

    ○田中(美)委員 少ないと思うだけでは、実際には全く国民のためにはならない。稻葉さん一人が少ないなあと思ったのではしようがないことです。少なければこれをどのように多くするのか、どのように改善するのか、そういう本当の国民のところにまで、大臣の思われたことが具体的な実践として妻のところに来るようにするにはどうしたらいいか、どのようにお考えになっていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
  191. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 いまは具体案を持ちませんが、よく勉強します。
  192. 田中美智子

    ○田中(美)委員 この履行確保制度は三十一年にできたというふうにいまもおっしゃられました。その間、三十一年からいまもう五十年、もうすぐ五十一年になるわけですね、二十年間こういう現状が放置されていて、法務大臣が少ないと思ってこれから御勉強なさってということでは余りにも遅いのではないでしょうか。
  193. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 ほうっておきまして申しわけないと思います。したがって、いま御指摘によって知ったわけでございまして、不勉強の点はおわびしますが、知った以上は早く御要望に応ずる制度をつくりたいと思います。
  194. 田中美智子

    ○田中(美)委員 しつこいようですけれども、早くというのは大体いつごろにできるか。そちらの方がおわかりと思いますので、大体の目安というもの、お考え、まあ大臣は不勉強でいらしたけれども、これからやると言っていらっしゃるわけですから、そちらの香川さんの方は不勉強であるはずはないと思いますので、いつごろにそれができるでしょうか。
  195. 香川保一

    ○香川政府委員 まことに申しわけない仕儀でございますが、私どもの怠慢でございまして、ただいま御指摘の家事審判法二十五条の過料五千円、これのみならず、実は民事訴訟法、民法その他の法律に過料の額が十数年そのままになっておるというのが相当ございまして、この家事審判法二十五条の過料の五千円の引き上げにつきましては、先般の最高裁判所に設けられました臨時調停制度審議会の答申にも引き上げの勧告があるわけでございます。この際も検討いたしたのでございますけれども、家事審判法だけ引き上げいたしますと、まあこれは役人的な考えかもしれませんが、ほかの法律との均衡が非常にとれなくなるというふうなことで、全般的に洗い直して一律に妥当な額に全部引き上げるようにすべきだ、こういうことで現在各法律を洗い直しておるわけでございまして、できるだけ早く御声援を得て国会に提出したい、かように考えております。
  196. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いまのお答えでも、まだ私としては多少納得いかないように思うわけです。これは「家庭裁判所の制度と展望」というのが家庭裁判所から出されているわけですが、この中にはっきりと、履行確保制度の整備充実を図る必要を痛感しているというふうに、実際に使う裁判所自体が言っているわけですね。それから、一番大きな問題点、取り立てができない主要な原因がここにあるのだということがこれに書いてあるわけです。よく御存じだというふうに思うわけです。そういう観点からしましても、常にお答えというのが、ほかの制度と見合いながらでなければできないのだ、あちらができぬならこちらはできない、法務大臣でさえ二十年たってもきょう初めて御存じだということになりますと、ほかのところも、これも二十年たって初めて知った、これは三十年たって初めて知った、それが全部そろわなければできないということでは、これは私は逃げるのではないか。この次聞いても、またこうなるのではないかというふうに思いますので、本気にやろうと思うならば、これはすぐにできることだと思いますので、すぐにやっていただきたいというふうに思うわけです。
  197. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 私は、法務省の関係のものについては、知った以上は――知らないことはできないのですね。不勉強だという非難は受けますけれども。ですから、知った以上はやる。あっち向いたりこっち向いたりはいたしません。
  198. 田中美智子

    ○田中(美)委員 では大臣、いつまで大臣でいらっしゃるかわかりませんので、大臣でいらっしゃる間にもう早急にやっていただきたいと思います。もう一度答えてください。
  199. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 そういたします。
  200. 田中美智子

    ○田中(美)委員 では次の質問に移りたいと思います。  次は子供の扶養の問題でございますが、公務員の給与法の中に、妻が子供を扶養することができないというふうなことが書かれているでしょうか。簡潔にお答えください。働いている妻が自分の子供を扶養できないということが書かれているでしょうか。お答え願います。
  201. 角野幸三郎

    ○角野説明員 人事院からお答えいたしますが、現在、国家公務員の給与法の上には扶養手当の規定がございます。その扶養という点と、先生がいまおっしゃっておりますのと少し距離がある話かと思いますが、給与法の上にはそういう規定はございません。
  202. 田中美智子

    ○田中(美)委員 給与法の規定に、法律に全くないならば、母親が扶養家族手当をもらっても父親が扶養家族手当をもらっても、二重にもらうということはありませんが、どちらかがもらってもいいわけですね。
  203. 角野幸三郎

    ○角野説明員 差し支えございません。
  204. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうしますと、たとえば夫の方が民間の会社に勤めていて、妻が公務員の場合に、これも妻がもらってもよろしいでしょうか。もらえますね。
  205. 角野幸三郎

    ○角野説明員 いまのお話は、御主人が民間にお勤めで、それで民間でそのお子さんのために扶養手当を支給されておる場合には、国家公務員である奥さんの扶養親族として、その民間の御主人の方の扶養手当の対象になっている子供さんに対する扶養手当は出ない、こういうふうにいたしております。
  206. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そんなわかり切ったことは、時間がもったいないですから……。私は二重に取ると言っているわけではありませんのでね。夫が家族手当を取っていない場合、取らないで、妻が公務員ですから、これをもらうということができますかと言っているのです。
  207. 角野幸三郎

    ○角野説明員 差し支えございません。
  208. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それからもう一つ確認しておきます。  なぜこんなに細かく言うかといいますと、実際にはもらえない場合が多いからなんです。法律どおりにいっていないから私はいまこれを言っているわけです。  それで、いま国家公務員も大丈夫だと、こういうふうに言われた。そうしたらば、妻が教員の場合はいただけますか。夫が扶養家族手当を取らなければもらえますか。一つ一つ確認していきたいと思います。
  209. 角野幸三郎

    ○角野説明員 奥さんが教員の場合で、それで奥さんが主としてその子供さんを扶養なさっている場合には、それは支給できます。
  210. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ちょっと聞き捨てならない言葉がだんだんいきますと出てくるわけですけれども、奥さんが主として子供を育てるということはどういう意味ですか。夫婦が別れているのじゃないのですよ。仲よく一緒につくった子供を二人が育てているのですよ。それなのに、主として妻が育てる場合というのはどういう場合なんですか。その場合を説明してください。いまあなたのおっしゃった言葉の中身を説明してください。
  211. 角野幸三郎

    ○角野説明員 言葉が足りなかったと思いますが、御夫婦お二人共同で――共同でといいますか、共かせぎをなさっておられまして、それでお二人でお育てになっておりました場合に、そのどちらがというか、主としてと言いましても、いろいろな共かせぎの形があるだろうと思いますが、その中で一般に社会通念といいますか、実際に家庭の中で扶養なさっている形がどちらが、御主人も奥さんも両方が扶養していられるということではなく、どちらかということでございます。ですから、御主人の方でも奥さんの方でもどちらでも構わないわけでございます。そのどちらか、どちらが主として扶養なさっているかということでございます。
  212. 田中美智子

    ○田中(美)委員 どうもあなたおわかりになっていてとぼけていらっしゃるのか、おわかりにならないのかわかりませんからもう一度繰り返しますが、夫も外で、会社で働いて給料を持ってきています。妻は学校の先生で給料をもらって家庭に持ってきています。このお金を一緒にしてそして子供を養っているのです。それでどちらが主なんですか、あなたのおっしゃっている主というのは。私は主という考え方はないわけですけれども、あなたが主としてと言うのは、こういうときはどういう場合ですか。夫が働いてないときは妻が主という、これはわかりますよ。しかし、夫も収入を持ってきている、妻も持ってきている場合、どちらが主なんですか、あなたの言う意味は。私は共働きのことを言っているのですから。
  213. 角野幸三郎

    ○角野説明員 家計の実態によってどちらでも結構でございますが、どちらかでございます。
  214. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それは金額にも関係なく、それはどちらにするかを夫婦が選択して選ぶことができるわけですね。もう一度はっきり言ってください。
  215. 角野幸三郎

    ○角野説明員 普通の場合には、それは収入と支出といいますか、実際にお育てになっている実態を考えて主としてということになるのでございます。給与法の規定上、主として扶養している者と書いてございまして、その主としてというのはそういうことでございます。実際問題としては、御相談なすっておやりになる場合が多いと思います。
  216. 田中美智子

    ○田中(美)委員 その「主として」というのがはっきりしないわけですけれども、二人が持ってきて、二人が育てているわけでしょう。育てるということは、お金だけではないですけれどね。二人で相談してどっちにしてもいいということですね。
  217. 角野幸三郎

    ○角野説明員 家計の実態ということでございますが、公務員の本人の申請をいただいて、それを認定してやっておるという実態でございます。
  218. 田中美智子

    ○田中(美)委員 何というお方ですか、あなたは。全くどうしてそういうふうに不誠実なお答えをなさるのですか。もうちょっとはっきり、どちらか選択してもいいならいい、悪いならこういう基準があるのだと、どちらがこういう理由で主なんだ、こういうふうに答えてください。
  219. 角野幸三郎

    ○角野説明員 お答えいたしますが、給与法の十一条の扶養手当の規定に、扶養手当の対象になる扶養親族の対象者の規定がございます。その二項でございますけれども、「扶養手当の支給については、次に掲げる者で他に生計の途がなく主としてその職員の扶養を受けているものを扶養親族とする。」それで、この場合には、「その職員」の「その」に当たりますのが共かせぎの御両親であるとしましたら、そのいずれかがその「主として」に当たると思います。
  220. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうすると、二人とも主としてですから、二人が両方はもらえないので、どちらにしてもいいということですね。  それでは、自治省の振興課長さんにもう一度その点で確認したいと思います。
  221. 苫米地行三

    ○苫米地説明員 先ほどお答えいたしましたように、世帯主に関しまして妻が世帯主になる場合もあり得るわけでございます。
  222. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私、いま世帯主のことなど言っていませんよ。妻と夫の二人が働いている場合、いま言っているのは女が教員の場合、夫が会社に勤めている場合、どちらが家族手当をもらってもいいですかということをあなたに伺っているわけです。
  223. 苫米地行三

    ○苫米地説明員 私、ここに住民基本台帳の所管課長としてそのような御質問があるということで参っておりまして、実はその関係の御質問は私の所管事項でございませんので、ちょっとお答えいたしかねます。
  224. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは退席なさってください。次のお仕事があるようにお聞きしておりますので、至急退席をお願いいたします。  それでは、実際には教員の場合には非常にいやがらせがありますので、よく現状をお調べいただきたいと思うわけです。夫が非常に中小零細企業などに勤めておりまして、家族手当ももらえないというふうな夫の場合がたくさんあるわけです。で、妻が教員として働いているわけですね。それを幾ら出しましてもあらゆるいやがらせをして、夫が働いているのだからという形で、実際に支給されない場合が多いわけです。非常に強い方が何でもと、こういうふうに言いますと、やっと出てくるというふうに実際の運用面ではなっているということですので、この点の御指導はそちらでできるのでしょうか、お答え願います。
  225. 角野幸三郎

    ○角野説明員 扶養手当を支給いたします前提として、新たに扶養親族ができた場合とかそういうときには職員自身から申請をさせております。これには個別にその事情をよく拝見させていただいておりまして、共働きの場合、御夫婦が同居しておりましたり別であったり、それから収入が別であったり一緒であったり、いろいろよく検討して具体的にやっております。
  226. 田中美智子

    ○田中(美)委員 あなたのお答えは非常に不誠実だと思うのですけれども、実際にこれは国家公務員の組合からいろいろお話を聞いたわけです。あなたは国家公務員の場合はもう文句なしにどちらでもいい、こういうふうに言いますけれども、実際には妻の賃金が夫よりもはるかに高くなければだめだとか、これは三〇%高くなければだめだとか、何%高くなければならないとかというふうな理屈をつけて、なかなか妻の方に扶養手当を出そうとしないということがあるわけです。  それで、もう一度国家公務員にちょっと戻りますけれども、その中で子供が二人以上いた場合に、一人の子供を夫の扶養家族にし、もう一人の子供を妻の扶養家族にするというふうなことさえも実際にはなかなかできにくいということが訴えられているのですけれども、それはどうなんでしょうか。
  227. 角野幸三郎

    ○角野説明員 お答えいたします。  どんな形であるか生計の形によると思いますけれども、別居なさっておったり、それでそれぞれが子供さんを別にお育てになっておったり、要するに生計が一になっておるかどうかということで、別々に支給することもできると思います。
  228. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そういうふうにとぼけたことを言わないでください。いま私は、夫婦が二人で仲よくして、普通の夫婦の話をしているのです。特例の話をしているのじゃないのです。一緒の家に夫婦が住み、一緒に自分たちの子供を育てている場合に、これはどちらを主にするかということ、両方主になっているということをさっき言われたわけですから、両方主ならば、どの子供は妻につけ、どの子供は夫につけるということは可能なわけじゃないですか。それが実際に運用される場合になかなかされていないということを言っているわけです。これはそういうふうにしてもいいですね。
  229. 角野幸三郎

    ○角野説明員 それはどちらでも自由でいいということではございませんで、その家計の実態とか社会常識とか、そういうものによると思います。
  230. 田中美智子

    ○田中(美)委員 家計の実態ということと社会常識についてちょっとお答えください。簡潔にお答えください。
  231. 角野幸三郎

    ○角野説明員 家計の実態といいますと、御主人、奥さんの収入がどうであるか、それから子供をお育てになっていますその支出といいますか、家計がどうであるかというのが実態でございます。それから社会常識というような言葉はちょっと不適当かと思いますが、同居なさっておるとか別居なさっておるとか、そういうことだろうと思います。
  232. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それじゃ社会常識の方は同居していればいいということですね。実態ということはお金の支払いということですね。そうすれば夫は二十万給料を取っている、妻は十万しか取っていない場合、夫は酒を飲み外でばくちをしてお金を使っている、実際には妻の十万円の方から相当たくさん子供に金が出ているのだという解釈だってできるわけでしょう。それをなぜ国家公務員の場合に妻の賃金の方が夫よりはるかに高くなければならないと――夫はその金は子供に使っているか使ってないかという実態まで調べられますか。お答えください。
  233. 角野幸三郎

    ○角野説明員 実際問題として奥さんからのお金がたくさんその子供さんにかかっている場合には、主として扶養しているということに当たると思います。
  234. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いま、子供の扶養の問題のものの考え方は、実際には妻がなかなか扶養家族がとれないという現状があるわけですね。それで私のところへたくさんの訴えが、長距離電話でもかかってきているわけです。これは教員の場合が非常に多いのですけれども、民間では半分あきらめかけているわけです。そういう点で、やはり人事院という一番元締めになるところがしっかりとした考え方を持っててもらわないと民間の方はもうめちゃくちゃになっていくわけです。そういう点で、あなたのところの考え方をしっかりしていただかないと……。  いまの考え方でもう一度私はっきり申しますけれども、子供に対してどれだけ支出をしているかということで主たるということが決まるようですので、もしこちらが要求を出した場合、どうしても妻の方はおかしいのだと思うときには、家計調査を一切してから――給料の金額で決めるのではなくて、あなたがおっしゃるように、実際に妻のかせいでいる金がどれくらい子供にいっているか、夫のかせいでいる金が子供にどれだけいっているかということで決めるということをしてからでなければしてはならないということですね。よろしいですね。これではっきりいたしましたので、今後一切給料が高いとか少ないとかではわからないわけですからね。特に男性にはばくちとか酒とかいうことで余分な金を使う方が非常に多いわけですので、その点厳重にしていただきたいと思います。  それでは次に零細業者の主婦の問題について質問したいというふうに思います。  いま中小零細企業が非常に不況になっていることは御存じだと思います。私は統計はよくわかりませんが、最近では中小零細企業者の自殺が交通事故よりも多くなっていると世間で話されているほどこれが深刻な状態なっていることは、もう御承知だというふうに思います。で、その中で中小零細の白の場合ですが、白の場合には全く妻の働きというものが実際の収入の中の利益の中に入ってきていない。この点はどのようにお考えになるでしょうか。
  235. 水野勝

    ○水野説明員 先生のお話は、中小事業者の白色専従者の場合のお話ではないかと思われますが、白色専従者につきましての、これは奥さんにも限らないわけでございますが、専従者控除をこの三年来年々引き上げてまいりまして、現在四十万円にまで参っておるわけでございます。
  236. 田中美智子

    ○田中(美)委員 年間四十万ということは、ボーナス全然なしで一カ月三万円程度ですね。もしボーナスがこれに入っていれば、二万円程度の給料だという見方しかしていないわけですね。こういうことが実際には、これは十月二十八日の読売新聞に出ているわけですけれども、この中には、もう仕事がひどくやってきますと、あそこは遅い、早く仕事を上げないとええかげんなところだからといって注文が切られてしまう。それから、おなかが大きくなっても自分の体をどうしようも、休むこともできない、そういうふうな形で、妻が妊娠中であろうと病気であろうとずっと仕事を休むことなしに働いているという現状が書いてあります。特にお豆腐屋さんなんかも、年じゅう冷たい水の中に手を入れ、足も手も冷えて丈夫な子供も産めないんじゃないかというふうな状態の中で、夫と同じように働いているわけです。しかし、実際には業者でもなければ労働者でもない、雇われた者でもない。そうして専従者控除という形で、われわれの言葉で言えば月給みたいなものは月に二万円ぐらいしかもらっていない。こういう現状というのをどのようにお考えになりますか。
  237. 水野勝

    ○水野説明員 この専従者控除でございますが、一般には専従者給与という別名でも呼ばれておりまして、これが給与の分であるというふうな観念も半分はあるわけでございますが、税法上のたてまえから申し上げますと、そういう中小事業者に対する課税のあり方といたしましては、そこに一体として事業が存在する、通常でございましたら、それは奥さんの方は配偶者控除ということで現在は二十六万でございますが、これを控除として適用するわけでございますが、中小事業者につきましては、奥様の方も普通の奥様以上に働いておられる、あるいは給料をお払いになるという慣行もあるということから、配偶者控除にプラスいたしまして専従者控除四十万といたしておるわけでございまして、厳密にこれが奥様への給料という形にまで徹底したものでもございませんので、ちょっと給料の点ということになりますと、そういう問題はございますかと思います。ただ、この事業者が青色事業者になっていただきます場合には、これはもうたてまえといたしましては、全額給与をお払いになればその分は控除として引かれる、そういうたてまえになっておるわけでございます。
  238. 田中美智子

    ○田中(美)委員 玉虫色のようなこの四十万円というのは一体何なのだ。給与という言葉でも言われているし、そうでもないんだ、ちょっと上乗せしているということじゃないのですか。そういうわけのわからない物の考え方でぐっと安くして、給与と考えるならばやはりいまの平均的な給与というふうに考えるべきだと思うのですね。どっちにでもとられる方法にしてこれを非常に低くしているということが数々の悲劇を生んでいるわけです。  私の住んでおります名古屋市で、新聞に出た上での業者婦人の死者というのが、自殺がことし四件ありました。新聞に出ないで死んでいる分というのは私どもの耳に入ってまいりませんけれども、四人も新聞に大きく報道されたのがみんな小零細企業の奥様なわけですね。この方たちを一人一人見てみますと、これはみんな子供を二人持ち、三人持ち、ほとんどの方が、四人とも三十歳代です。そうして中堅的な形になってその事業を夫とともに仕事をしているわけです。  一つの例を言いますと、この方は冷暖房設備の下請の仕事をやっているわけですね。これは一応だんなさんは業者ということです。その業者の奥さんになるわけです。三十七歳です。この方のやっている仕事は下請ですので、冷暖房設備をするのはあちこち現場が毎日いろいろ違うわけですね。それで、六人の人を使っているわけですから、この方が来ますとこれを車に乗せて、それで現場へ連れていくという仕事をまず朝早くからやるわけです。全く一般の働く労働者と同じように、朝早く車に全部そういう人たちを乗せて運んでいく。全部乗せられないときは二度往復するというようなことで、どんな遠いところにでも奥さんがこれを連れていくというのを仕事にしていたわけです。それから、資材など全部材料を持っていかなければならない。そういうふうなものがあったときには、それをすぐに運ぶという車の仕事を全部しているわけですね。経理も全部この奥さんがつけていらっしゃる。そして金繰りまで、お金の借金、そういうものもこの奥さんがやっている。その上に子供を育てている、家庭のこともあるという働きをしているわけですね。そして昨年、四十九年度に税金は、四百七十万円の申告をしたわけですね。そうしたら、これに対して税金が百万円もかかってきているわけです。こういう状態の中で、仕事をとらなければならないというので必死で材料置き場をつくった。そうしましたら、この材料置き場に対してまた物すごい税金がかかってきた。仕事はもう減ってくるしというふうなこういう中で、この奥さんは材料置き場の仕事場の中でシンナーを吸ってビニールの袋をかぶって自殺をなさったわけですね。  これは、いろいろな死ぬ原因というのは死んだ人ですから聞けませんけれども、結局、これだけ男以上の仕事をやっていながら、この人の収入というのはまあわずか年間四十万しか計算されていない。そして、この家庭というのはきちんと生まじめに従業員には払っていたそうです。ですから、自分たちのところに残るお金はもうゼロになってしまうわけですね。それでもうこれはとてもやっていけないという形で死んでいるわけです。  こういう悲劇が、これは一つの例しか申し上げませんけれども、いかにひどい状態になっているかということで、この点を十分改善していただきたいというふうに思うわけですけれども、どのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  239. 水野勝

    ○水野説明員 先ほども申し上げましたように、専従者控除、これはいろいろな性格がございますが、突き詰めて言えということでございますと、給与とはやはり違うものでございまして、たとえばその中小事業者が一銭も奥様にお払いになっておらなくてもこの分は控除できるというたてまえになっておりますので、突き詰めて言えば、これは給与というものの性格とは違うというふうに私ども考えておりますが、その性格の根底にはやはりそういう慣行が社会的に少しずつふえてきているということも考慮されていると考えたいと思うわけでございます。  それから、ただいまの個別のお話でございますが、そのくらいの、四百数十万と申しますと、中小事業者といたしましてはどちらかと言えば、所得水準から申しますとわりあい中以上、高い方の部類かと、私どもの統計からまいりますとそんな感じがするわけでございまして、それからまた、帳簿も、経理も家計もきちんとしておられるということでございましたら、青色事業者になっていただければ、帳簿、給与の支払い、そこらの点もはっきりいたしますので、奥様にお払いになる分は全額引かれるようになりますので、そんな方向で解決されるのが現在の仕組みとしては一番いいのではないか、私どもそんなふうに思っているわけでございます。
  240. 田中美智子

    ○田中(美)委員 結局、あなたのいまのお返事は、青色にすれば死ななくてもいいということですか。
  241. 水野勝

    ○水野説明員 私どもとしてその個別の背後の事情につきましてはつまびらかにいたしませんので、数字の点だけからお答え申し上げたわけでございまして、それ以上のことにつきましては、私どもとしてなおここでお答えをできる立場にないので、お許しをいただきたいと思います。
  242. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私が言っておりますのは、白か青かということは自分が決めることですのでね。白にしたって日本の制度ですし、青にしても日本の制度です。白には白の理由があってやっているわけです。だから、これをどれにすれば救えるんだとかいうようなことは、そういう御返事を私はいただきたいと言っているわけじゃないのです。白の人はたくさんいるわけですから、この人が、いまあなたが給与ではないんだというふうに言われましたけれども、私はこれを給与にせよ、こういうふうに言っているのではないのですね、税金をかけ過ぎているということを言っているのです。実際に二人で働いているわけなんですから、その分の自家労賃というものがあるわけですよ。必要経費というものがあるわけでしょう。その必要経費は一銭も引かれていないわけでしょう。ですから、必要経費を引けば税金というのはもっと少なくなってくる。そうすれば結果的に、給与という名前でなくても、夫婦でやっている家計というものがそれだけ潤うわけでしょう。ですから、必要経費とか自家労賃というものを認めてほしい、認めなさい、そうしなければこうした自殺者がどんどんふえていくということを言っているわけです。これをどうするのか。どんどんふえていいんだ、それだったらもう全部青にしてしまえ、白は死んじゃったっていいんだということをあなたはおっしゃっているんじゃないでしょう。白の人はみんな死んじゃっていいわけですか。そういうことになるでしょう、青にしていただけばよかったんだというようなあなたの言い方は。白という制度があるならば、これで経営がちゃんとやっていけるようにこの制度を改善しなければならないわけでしょう。その点、どういうふうにお考えになっているか、お答え願いたいと思うのです。
  243. 水野勝

    ○水野説明員 お答え申し上げます。  白の場合でございましても、必要経費として外にお払いになる部分、仕入れでございましても雇い人に対する給料でございましても、そういった必要経費は全部差し引かれるわけでございます。ただ、白色事業者の場合の課税に当たりましては、奥様が専従者として働いておられる場合にはそこは一体として課税させていただくという、現在の事業所得課税の基本的なあり方の問題ではないかと思われます。しかし、その場合におきましても、給与の支払いの有無にかかわりませず四十万円を引くということになっておるわけでございまして、先生のお話は、中小企業者についての課税のあり方の基本的な問題であろうかと思われます。
  244. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私の意見がそうであろうかと思うというふうにあなたに言っていただくんじゃなくて、あなたはどう思っているかというふうに聞いているわけです。
  245. 水野勝

    ○水野説明員 現在の白色事業につきましての課税のあり方といたしましては、現在の社会情勢からいたしまして、現在の課税の方式がやはり適切なものであろうかと考えております。
  246. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうすると、あなたは大蔵省の課長さんですので、それ以上お答えする立場にないと言われるのならばやむを得ないことですけれども、結局いまの自殺をする人たちというのはここに大きな原因があるわけです。妻の働き分というものが必要経費に入っていない。従業員の給料やそういうものは必要経費に入る、これは当然のことですよ。ところが、妻のものを全然認めていない。大蔵省はそういう考え方だということは非常にはっきりいたしました。水野さんはそういう立場にないと言われるのですから、もうこれ以上聞いても仕方がないと思いますが、怒りをもって抗議をしたいというふうに思います。今後よく新聞をごらんになってください。中小零細企業の婦人たちがどんな状態になっているか、一度は町の中を見ていただきたい、職場に入っていってほしいと思うのです。小さな企業は普通の住宅で、玄関をあければげた箱があるんじゃなくて、そこにもうすぐ小さな機械があって、そこで寝るところも何もなく一緒になってがたがたやって働いているのです。そういう人たちが、いまもう本当に死ななければならないという人が出てきている現状というものを全くお考えにならないで、そしてこれが妥当だと言われるのは、週刊誌で言うような、いわゆる大蔵官僚というのはいかに冷たいかということを、私は週刊誌の話は話半分に聞いておりますけれども、しみじみといまそれを強く感じました。  次に、厚生省の方に国保の問題をちょっと伺いたいと思います。  業者婦人はほとんどが皆、国保に入っているわけです。特別な組合をつくっている方もありますが、これはほとんどが国保に入っているわけですね。この国保がどうして出産のときに現実には二万円にしかならないのか。一般のほかの政府管掌の健康保険ですと最低六万円出ているわけです。賃金の高い人であるならば、本人であった場合にはもっとずっと高く出ますけれども、配偶者の場合は最低六万円出ているのになぜ国保から生まれてくる子供は二万円なのか。同じこの世に生まれてくる赤ん坊が、ある子供は六万円の費用をもらって生まれてくる。一方、これは業者の婦人だけではありませんけれども、いま業者婦人にしぼって言っていますが、なぜ業者婦人の子供は二万円で生まれてこなければならないのか、この点をお伺いしたいと思います。
  247. 舘山不二夫

    ○舘山説明員 お答えいたします。  国民健康保険の助産費は、国の補助基準でございますとことしは四万円ということになっておりまして、すでに一部の市では四万円になっております。これが健康保険の六万円とまだ差があることは先生のおっしゃるとおりでございます。この点につきましては、私ども、この格差というものは埋めていかなければならないということで、来年にでも一部六万円というものは実現して、そちらの方向に向かいたい、かように考えております。
  248. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いま地方自治体で四万円にしたところはどれだけありますか。何%ありますか。
  249. 舘山不二夫

    ○舘山説明員 お答えいたします。  市町村の数にいたしましては八一・七%でございます。
  250. 田中美智子

    ○田中(美)委員 この数字は、自治体が相当超過負担としてかぶっている数を入れているんですよね。こんなになるはずがないでしょう。あなたは四万円にしたと言いますけれども、補助金を幾ら組んでいるのですか。補助金は七月からで六十八億しか組んでいないじゃないですか。これは七五%でしょう。こういういいかげんなうそを答えないでほしい。全国の自治体が申請をしても、その補助金というのは三分の一の補助金でしょう。七五%分しか予算がないのですよ。
  251. 舘山不二夫

    ○舘山説明員 私、お答えいたしましたのは、市町村の数として八一・七%でございまして、実は被保険者の数としては、非常に大きな東京とか大阪とか名古屋がまだ二万円ということになっておりますので、そういう数字になるわけでございます。ですから市町村の数にいたしましては、八一・七%というのは間違いございません。
  252. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ですから、実際には二万円の人がまだたくさんいるということです。そしてあなたがおっしゃった四万円というのは、全部やっても四分の一はみ出るわけですよ。ですから全部四万円にはならないわけでしょう。それで、そのうち三分の一しか補助金が出ないのですから、三分の二は自治体が負担しなければならないわけでしょう。名古屋市だってこれをやりましたら二億かかりますよ。四万円にしようとしたら自己負担を二億出さなきゃならないわけですね。だから現実にはできない。できないで申請しない、そうするとこの六十八億というのが余っちゃう、余っちゃえばこれはもうこの次から、申請がないのだからといって出さない。こういう理屈はあなた方の方では成り立つかもしれませんけれども、現実には、ほかの健康保険の子供は六万円で生まれてくるのに、この業者婦人がほとんど入っている国保では二万円の子供が生まれてきているということです。これをあなたはいま、これから改善なさっていくというふうにおっしゃるわけですけれども、どうやって改善していかれるか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  253. 舘山不二夫

    ○舘山説明員 厚生省といたしましては、五十年度予算においては確かに先生のおっしゃるとおり四分の三の費用しか計上しておりませんけれども、五十一年度においては全市町村四万円になるような予算にした上、さらに、健康保険の助産費の六万円という額に近づけていく、上乗せをしていくような考え方をしております。
  254. 田中美智子

    ○田中(美)委員 この補助金が三分の一というのは非常に少ない、これがまた現実にならないところです。来年度はことしのように七五%ではなくて一〇〇%予算を組む、そうすれば申請すればどこでもみんなもらえる、それは一歩の前進だと思います。ですが、三分の一という補助金が低いために、地方自治体ではこの自己負担が非常に大きくなるわけですね。この点はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  255. 舘山不二夫

    ○舘山説明委員 健康保険の方では、分娩費については保険料で負担しているわけでございます。国保の方は零細な所得の方が多いということから、三分の一の補助金をつけているわけでございまして、私どもといたしましては、来年度以降も三分の一の補助金で、ぜひとも四万円は実現していただきたいですし、六万円ということになりましたら、それについても三分の一という補助金を考えてまいりたい、かように考えております。
  256. 田中美智子

    ○田中(美)委員 三分の一の補助金というところが大きな問題です。非常に低所得者の人たちがこの国保には集まっているわけです。これに対して国が補助をしないことには、国保は全部掛金だけで賄おうという形にどんどんなっていく。国保には危機的状態がいま来ているわけです。ですから、国の補助金を必ず大幅にふやすことが緊急な問題だというふうに思います。  時間がありませんので、次に移ります。  簡単にお答え願いたいと思うのですけれども、夫が妻に贈与するときの贈与税の問題です。これは、いま二十年以上になりませんと免除にならないということで、大平大臣が共産党の小林政子さんの質問に対して検討をするというふうに言われたわけです。これはことしの二月二十六日です。これはいまどのように検討していただいていますでしょうか、簡潔にお答えいただきたい。
  257. 水野勝

    ○水野説明員 二月の審議の際にもいろいろ御議論はいただいたところでございまして、なおいろいろの調査等も進めているわけでございますが、私どもとして現在の実態をいろいろ調べますと、二十八、九年ぐらいあたりでの贈与が多いような実態でございますので、現在のところこの二十年を改正するという必要はないのではないか、私どもの段階ではそんなふうに考えております。
  258. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いま家を建てる現状を、時間がありませんので簡単に述べますが、いま若い人たちが家を建てるということに一生懸命です。大学を出まして独身のときにまず貯金をしていって、これで何とか安い土地を買っていこう。それから結婚して二人で共働きをしまして、そして借金して家を建てて、一生かかってこの借金を払っていくという実態になっているわけですね。いまのあなたのお考えでは、家を妻に与えるということは、長い間の働きを見た賞与というふうに考えているから、二十年で適当だというふうに考えているんだと思うのですね。しかし、これは家作ではないわけです。自分たちの住む家です。それも小さなマイホームをつくっている。ここでは子供を育てるという大きな役割りがあるわけです。ですから、それに対して、それを妻と共有に登録すれば妻に贈与税がかかるということは、いまの実態としては合わないのではないですか。もう一度、その点のあなたのお考えをはっきりさせてください。
  259. 水野勝

    ○水野説明員 生前に奥様にその家なり屋敷なりを名義をお変えになるということ、これはある程度の結婚生活をされて、御主人なり何なりが後の奥様の老後のことを心配されて、子供が大きくなってから、核家族の時代でもございますので、それを心配されてという場合が多いようでございまして、そういったもののために主としてこの制度が発足したというふうに聞いておりますので、そういう趣旨からいたしますと、一定期間以上の結婚生活をされた方というのが趣旨に合うのではないかという気がするわけでございます。  それから、共かせぎをされてお建てになり、借金も合わせてお建てになるというとき、もしその共かせぎの資金がお残りになっておるならば、その分は共有にされても別に贈与税の問題は起こらないのではないかと考えております。
  260. 田中美智子

    ○田中(美)委員 発足当時と状態が変わってきている。発足当時の考えでやるから間違っているわけです。何も妻に家を全部やると私は言っていないのです。いまは家は二人で建てる、そう言ったってお金は夫がかせいできているわけですけれども、妻は節約して子供を育てながら、老後の家という考えではなくて子供を育てる場の家、そういう中でこれを二人の名前でやりますと、半分に贈与税がかかるでしょう。それを私は言っているわけです。これは老後のための家ではないわけですよ。妻の寄与分というものを夫は高く見て、そこで一緒に生活し、子供をいろいろめんどうを見てもらう、そして自分は外へ行ってかせいでくる、現状はそうなってきているし、二人の名前で共有として登録できるようになっているわけですから、この現状に合ったやり方を検討していただきたいというふうに言っているわけです。簡潔に一言でお答え願いたい。
  261. 水野勝

    ○水野説明員 現在、四十一年にできましたこの制度につきまして、趣旨を大きく変えてというところまでは、私どもとしてもまだ考えが至っておらないわけでございます。
  262. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いまの若い人たちがどういうところで家を建てているか。女から見れば、結婚は二十五歳が平均になっていますので、二十五歳で結婚して、二十年後、四十五歳にならなければ家というものは全くないのかということになるわけじゃないですか。現状に即した行き方を検討する、それが検討じゃないですか。現状をもう一度見て検討していただきたいと思います。  時間が参りましたので、最後に、さっきちょっと落としましたので申したいのですけれども、業者婦人の母体保護というのはひどい状態になっているわけです。労働者もひどい状態になっておりますが、一応労働基準法というのがありまして、少しでも歯どめをかけるものができているわけですけれども、業者婦人の場合には、先ほど国保の問題を出したというのはその問題があるわけです。いま統計を挙げる時間がありませんが、お産の後三日で働いているというような、徳川時代の農婦並みに、出血もとまらないうちから業者婦人は働いているというのがほとんど常識になっているわけです。産前産後の休暇もほとんどない。もちろん生理休暇で休むということもできない。こういう中で働いている業者婦人のほとんどが国保に入っている。こういう問題で、婦人の健康破壊というものをどうするか。税が非常にかかっているからこれで自殺に追いやっていかれるということと同時に、健康破壊が非常に進んでいるということのために、これでまた自殺にも追いやられていっているわけです。  そういう意味で、厚生省の方にお伺いしたいのですけれども、この業者婦人の健康はどうやって守っていこうとなさるのか、その点をちょっとお答え願いたいと思います。
  263. 保岡興治

    ○保岡委員長代理 退席されたようです。
  264. 田中美智子

    ○田中(美)委員 どうしてですか。
  265. 保岡興治

    ○保岡委員長代理 質問が終わったと思ったのではないでしょうか。
  266. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私、終わったと言っていませんよ。ちょっと無責任じゃありませんか。私の質問はまだ終わっていませんよ。
  267. 保岡興治

    ○保岡委員長代理 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  268. 保岡興治

    ○保岡委員長代理 速記を始めて。  沖本泰幸君。
  269. 沖本泰幸

    ○沖本委員 予算時期になりまして、大蔵省の方も内示を早めるとかいうようなうわさを聞くわけでございますが、来年度の予算に関して、どうしてもこれだけは整えていただきたいという点について御質問したいわけです。  昨日の三億円事件にしても、三多摩の方では警察の捜査以上に人口が増加して十分その機能を発揮できなかった、こういうふうな警視総監の談話もありました。同じように法務省の、たとえば登記事務、こういうものは同じような傾向の中にあって、経済成長に伴って経済社会情勢の急変とか国際交流の活発化、こういうことで業務量が非常にふえてきておるということになるわけですけれども、私がいろいろ伺った中では、非常に業務量がふえているということで、特に登記の問題に関しましては、われわれ毎年委員会で視察をいたしますが、必ずその中に登記所の問題が出てき、その実態というものは一番強く要望されておるということもあるわけでございます。だんだんと古い施設が整えられていっておることも事実ですが、まず統廃合の問題から起こってきて、設備が整っておるところあるいは施設が整った、こういうところでも人が足りないあるいは窓口に人が殺到している、こういうことで非常な問題点が、その都度陳情も受けてわれわれはつぶさによくその点をじかに見せられておるわけでございます。  この間、全法務の新聞というのをいただいたわけですが、この中に全部の紙面を使って、東京の法務局の入り口、これは、城北出張所の職場写真を撮っていらっしゃるわけですけれども、壁のずり落ちたところ、疲れた体で職員全員が交代で宿直も行っているというところからずっと仕事の内容という点、また最終的には地図の閲覧などで場所が狭くて閲覧もできない、こういう点まで全部写真で出しており、「登記所は慢性人欠病」になっている。「職員アクセク……国民イライラ」、こういう指摘をしておりますが、全くこういう事態はあちこちでよく見受けるわけでございます。  そういう点で、最近は高速道路、新幹線建設を初めとする公共投資事業、持ち家政策による宅造、住宅建設、そのための金融、会社法人組織による企業活動の増大等すべて登記事件として窓口に殺到し、これらの登記の調査、確認のための謄本、証明事務の激増と相まって取り扱い業務量がこの一年間で約四倍になっている。こういう点も陳情の中にあるわけですけれども、現在の実態はどの辺にありますでしょうか。
  270. 香川保一

    ○香川政府委員 現在の法務局の中で出張所、つまり登記所と呼ばれている施設につきまして、老朽、狭隘なものが多数あることは事実でございまして、鋭意その改善に努めておるところでございますが、事件数の推移をちょっと申し上げますと、昭和四十年度におきまして千三百二十八万件何がしであったものが、四十九年におきましては千九百九十三万何がしになって、約五割ふえておるわけであります。いま申しましたのは登記甲号事件でございますが、これに対しまして、謄抄本の交付等の乙号事件は、昭和四十年に対比いたしますと、四十九年は約二・八倍に増加しておるという現状でございます。  これを処理する職員の増員について申し上げますと、昭和四十年度は、登記従事職員は七千八百十八名でございましたのが、昭和四十九年度は八千九百六十九名と約一割五分増加しておる、かような現状でございまして、登記所によりましては非常に多忙をきわめておるという現状は否定できないと考えます。
  271. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この点につきましては、先ほど休憩時間中大臣とも雑談をやって、大臣も非常に憂慮しておられて、これは何とかしなければならぬ、こういうふうなお話もあったわけで、省内の人事の配置をいろいろやりくりしてこういうところを何とか、補おうとしているところなんだ、こういうことなんですが、究極は、結局総定員法の中で定員削減という問題と絡んで問題が起きてくるので、どうしても法務省全体として人減らしが起こってくる、そういうことになるので、そういう点の矛盾というようなものがこういうところにあらわれておるんじゃないだろうか。そこで結局、事務量が非常にふえてくるために職員の方々の職業病が非常にふえてきている。これは、数年前からいろいろこの点が問題にもなってきておるわけでございます。こういう点で、どうしてもこれは何とか対策を立てなければならない、こういうふうに私は考えておるわけです。  さらに空港の場合、入管の方にお伺いいたしますけれども、これは前からも言われておりましたけれども、審査官の方々がだんだんと年齢が上回っていく、後の補充が少ない、こういうところから職業病も非常にふえてきて、それぞれ年のいった病気持ちがだんだんふえてきているということも現場でいろいろ伺ったこともあるわけですし、それから飛行機が大型化してきている、また社会的な問題になっていますけれども、飛行機の発着が非常にふえてきている、そういう事柄から、これまた十分に人の面で対応できないということで、いわゆるエアバスとかジャンボになってくると、一機で三百七、八十人から四百人以上の人がいっときに出てくるわけですね。それの入管業務、税関業務をいっときにやらなければならないということになって、激しいときはもうトイレに行く間もないという事態が起きてくるということも聞いておるわけですが、現状として成田に羽田を移管しなければならないという事態もありますし、また将来は関西の第二国際空港も建設しなければならない。飛行場、国際空港拡張、こういうものについての人員のバランス、こういうものも考えていきますと、相当前から準備されていかないと出入国の審査をやる方々の十分の確保ができないということではないかと思うのですけれども、この点、いかがですか。
  272. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいま沖本先生御指摘のとおりに、最近の航空機の大型化ということによりまして空港審査官の事務量、これは確かにふえてきております。これに対する対策といたしましては、目下いろいろ困難な事情にございますけれども、一つの方法といたしましては、こういった情勢に対応いたしまして人員の増加をお願いする。他方、もう一つの方法といたしましては、所要手続の簡素化ということによりまして事務量を減らすということが考えられるわけでございます。  この後者の方、事務の簡素化ということにつきましては、現行法令の範囲内で、また実際の必要ということを勘案いたしまして、現行法令の範囲内で許されるぎりぎりのところまで簡素化に努めております。しかしながら、現行法令のもとにおきましてはこれ以上は進められないという部面もございますので、現在の法令をどういうふうにしたらさらに簡素化が進められるか、そちらの面からも私ども目下極力検討を進めているところでございます。
  273. 沖本泰幸

    ○沖本委員 また保護局の場合でも、民間の保護司を身分保障等が不十分でありながら雇用しているというような点の指摘があるわけですが、こういう点の事情はどういうふうになっているのでしょうか。
  274. 古川健次郎

    ○古川政府委員 お答えいたします。  御承知のように、保護司は民間人でございまして、わが国の更生保護制度が前から官民一体といいますか、官側と民間の協力で行われるという、世界に無比のようでございますが、そこで五万人近くの保護司各位に御協力いただいているわけでございます。  ただ、その身分関係は保護司法でも無給ということになっておりまして、人格高潔、健康で時間的余裕のおありになる方、そういうような条件の方を法務大臣の方から委嘱申し上げて御協力いただいております。ただ無給というのでは、これはまことに申しわけないわけでございまして、その保護観察、すなわちお仕事をしていただく上でかかりました実費弁償につきましては、一部または全部を差し上げるという制度で、待遇の点につきましてはそれでもまだまだ足らない状況でございまして、さらにそういう実費弁償の額を上げる、あるいはその他の表彰とかいろいろな方向で待遇改善と申しますか、御労苦に報いる努力をさらに重ねてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  275. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そこで、人が足りない、ノルマが過酷になっていくということで病人もいろいろできてくる。こういうことだけでなくて、登記事務の場合は部外応援というようなことから謄本作製のコピー、出張の際の配車を申請代理人等に無理を言っている。これはわかっておりながら無理を言わざるを得ないというようなこととか、さらに問題になるのは、申請書の申請の際、手抜き作業というようなことが起こってきて、債権額や抵当権者の名前を落とすような過ちもしばしば出てきている。また、その帳簿の閲覧者の不正が防止できないような事柄がある。こういうふうな指摘も聞いておるわけですが、そういう点については現状としてはどういうふうなんでございましょうか。
  276. 香川保一

    ○香川政府委員 最初の部外応援の問題でございますが、確かに人手が足りないために、たとえば謄本の申請をしても一日じゃ済まないというふうなときに、司法書士の補助者あるいは市町村の職員が謄抄本のコピーをつくる作業を手伝っていただくというふうなこと、あるいは土地改良事業その他の公共事業の登記申請が一時にどかっと登記所に多数されることがあるわけでございますが、さような場合に、できるだけその処理が早く済むようにということで市町村の担当職員等の応援を得ておるというふうなことは、御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、できるだけこの部外応援を排除しなければならない。部外応援ということからまたいろいろの一面不都合なことも生じますので、できるだけ早急に部外応援を排除できるように増員その他の措置を講じまして、登記所の職員の手でみずから仕事の全部が処理できるようにしたい、かように考えて努力しているところでございます。  それから第二の、登記所が人が足りないために事件処理について手抜きをしておるのではないか、またその結果、いろいろ不都合が生じておるじゃないかという点でございますが、私どもといたしましては、ことさらと申しますか、やむを得ずにしろ手抜きをしておるというふうなことはないと信じておりますが、しかし、登記所によりますれば、確かに負担が重くなって忙しいために、さようないろいろの事情から本来見落としてはならないところを見落としたり、あるいは登記簿に記入するのを遺漏したりというふうなことがあることも事実でございます。登記所の職員の過失によりましてさようなことがございました場合に、監督の法務局長の許可を得て登記の更正をするという手続がございますが、この許可件数を考えてみますと、昭和四十年には約三千八百件程度であったものが、昭和四十九年におきましては一万五千件にもふえておる。かような職権登記の、更正登記の件数の増加を考えますと、手抜きをしておるわけではありませんけれども、過った処理がされておるものがふえつつあるという現状は否定できないと思います。これもやはり部外応援の排除と同じように、増員その他の能率化等の措置によって、できるだけさような過誤な処理がされないように努力したい、かように考えておるわけであります。  それから、登記簿の閲覧等の場合の監視体制が不十分ではないかという御指摘でございますが、これもまことにそのとおりだと言わざるを得ないと思うのであります。これは先ほどもちょっと申しましたように、登記所の施設自身に問題がある。つまり、閲覧室の監視が非常にしにくいというふうな構造上の欠陥と申しますか、さようなところがあることも否定できないと思うのでありますけれども、やはり本来の登記事件の処理に追われているために閲覧の監視が少ない人数でしかできないというところに問題があるわけでありまして、登記所によりましては、机の配置あるいは監視用のテレビというふうなことも考えていろいろ工夫はいたしておるわけでございますけれども、結果的にはなお不十分な点があるやに思われるような事故が起こっております。司法書士の補助者あるいは部外の者によって登記簿が改ざんされるというふうな事故が、少数ではございますけれども年々あるようでございまして、まことに申しわけない現状であるわけであります。これも結局、全体といたしまして登記所の職員の増員、その他機械化等による能率化というふうなことでいろいろの総合施策を考えなければならない。今日まで鋭意努力を続けてきておるわけでありますけれども、なお十分でない点があるわけでございまして、今後とも努力を続けなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  277. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それから、保護観察官が刑余者の更生を目的とする仕事のために年間に一人で三百件も担当している例があるというようなことを聞いておるのですが、この点はどうなんですか。
  278. 古川健次郎

    ○古川政府委員 ただいま保護観察官一人が持っております観察対象者の数、これは一対三百のような事例があるのではないかという御指摘でございますが、全国的に見ますと、五十年八月末現在でございますが、第一線の保護観察官は全部で五百七十二名おりまして、対象者数が六万七千三百七十七名、結局これを割りますと、保護観察官一人当たり平均担当事件数が百十八件という状況でございます。ただ、これは各観察所でばらつきがございまして、最近、社会内処遇ということが非常に重要視されてまいりまして、家庭裁判所などでも非行少年等につきまして、従来交通事件は不処分になりましたりなにかする事例が多かったのでございますが、最近は保護観察の方へ任すべきだという傾向も強くなってまいりまして、そういう傾向の強い家庭裁判所あたりではそういう交通の非行少年が非常にふえて、そういうところでは、私いま承知しておりますところでは、保護観察官一人で二百名程度のところがあるようでございます。ちょっと三百名というのは私まだ聞いておりませんが、二百名を超えるところがあることは事実でございます。  こういう点につきましては、われわれもできるだけそういうばらつきがないように考えてまいりたい。同時にまた、全般といたしまして、やはり理想的に言いますと、保護観察官一人で対象者数は五十名ぐらいが理想的だ、こういうふうに言われております。できるだけその方に近づけたい、かように考えておるわけでございます。  ただ御承知のように、増員関係につきましては、人員削減等のこともございますので、われわれ、観察官については毎年三けたの増員を要求しておるのでございますが、これが毎年二十名前後ということで、ただ十年ぐらい前に比べますと、四十年には保護観察官一人平均二百十六件でございました。それが先ほど申し上げましたように、ことしは十年たちまして百十八と、これもさらに今後増員の努力を続けましてできるだけ負担を軽くいたしまして、理想的な保護観察ができるように努力してまいりたい、かように考えております。
  279. 沖本泰幸

    ○沖本委員 観察官の場合についても言えるのですけれども、いろんな社会の民主化というようなことで、多種多様の考え方、生活に対する思考あるいはその行動、いろんな点が、個人個人、昔とずいぶん変わってきているわけですね。そういうものに対応できるような観察官でなければ、いま例を引かれました非行少年なら非行少年についての更生というようなことは図れない、現状維持で現状はどうであるかということを見るにすぎない、こういうことになるわけですね。  そういう点から考えていきますと、現在全国にいらっしゃる保護司の方々、毎年私よく言いますけれども、相当年齢が高齢化されておって、果たしてその人たちの能力で保護司の役割りが果たせるかということですね。ずっと古いお考えの持ち主である場合には、明らかに現在の青年、少年を含めての人たちと、考えなり何なりに断層が起こっているはずなんですね。それを埋め合わせるだけの能力をお持ちになるだけの努力をしていただいているかいただいていないか。また法務省としても、そこに報酬の伴わないいわば名誉職的なものであるために、無理なことも言えないということになりますと、その反面、私は向こう側の方からいろいろ見ていますけれども、どうしても名誉職的に肩書きがほしいということで、しばしばトラブルを起こしています。あいつはそんな能力なんかないのに保護司の名前をとったとか、そういうふうなのはちまたでしばしば聞く話なんですね。そうしますと、保護司という役割りというものと、保護司になっていらっしゃる方の能力というものを比較していくと、それは十分機能を果たさないというふうに私は見るわけですけれども、そういう点はもう一度根本から考えを変えてみていただいて、そして将来に向かっていかにあるべきかというふうに見ていただきたいと思うのですね。  私の住んでおるところは大阪の西成でございますから、いわゆる愛隣地区、そういう刑余者のたくさんおる地帯でもありますし、しょっちゅうそういう方に触れてはおりますけれども、いろいろと変わってきているわけです。そういう点考えてみても、複雑なこういう保護司の業務というものは、もっと新しい物の考え方で見ていただかなければならないわけですね。昔ドヤと言われたところはいまはホテルと名前は変わっているわけです。中にはカラーテレビもありますし、いろいろとその内容は変わってきているわけですね。ところが、そういうものに対応できないようなことであれば、これは保護司の能力がないということになりますから、その点も十分研究していただいて、将来に向かって検討を加えていただくし、そういう内容のものが、また別に考えれば観察官の上にのしかかってきているということも言えるのではないかということが言えるわけですから、十分能力を発揮していただくためにはやはり十分人をふやして仕事を楽にしてあげる以外に十分な役割りを果たすことはできないのじゃないか、こういうふうに考えられます。こういう点について、いかがですか。
  280. 古川健次郎

    ○古川政府委員 いま沖本先生から御指摘いただきましたように、少年の対象者は非常にふえてきております。しかも非常にむずかしくなっております。保護司各位に伺いますと、やはり成人よりは少年の方がむずかしい、ことに少年院を退院した者が一番むずかしいというようなことをよく言われております。  そういう断層の問題、われわれそれにつきましても前々からいろいろ努力をいたしまして、研修を強化いたしますとか、さらに最近力を入れておりますのは、先生も御承知のBBS運動でございまして、これは全国に約一万人のビッグ・ブラザーズ・アンド・シスターズの会員、少年、青年諸君ですが、こういう人たちに大いに協力してもらい、まして、保護司さんの片腕になっていただきまして友達活動を行う、非行少年の更生というふうなことに大いに力を入れております。予算も法務委員会の御援助もございまして、ことしはBBS関係予算も約十倍にもふえたような状況でございまして、そういうふうにわれわれ力を入れておるわけでございます。  ただ、何分にも保護司各位の適任者、先ほど名誉職だけになっているような点がありはしないかという御指摘でございますが、最近適任者、つまり本当に保護司として活躍いただく適任者を得るのはだんだんむずかしくなっているというのが実情でございます。これにつきましては、できるだけわれわれ本当に適任者を得るように、観察所その他を通じまして努力をしているわけでございます。現在欠員も一割、一二%はあるような状況でございまして、できるだけ適任者を選んでいるつもりでございますが、いろいろ御指摘もございますので、そういう点についてわれわれ十分考えていかなければいかぬと思います。  ただ、その報酬制、最近こういうふうに経済情勢がなってまいりますと、単なるボランティア、無給ということでいいかという問題につきましては、従来からもいろいろ問題がございまして、最近保護司各位、つまり一線の保護司各位はどのようにそういう点を考えておられるかという点を十月末にアンケートをお願いいたしまして、全国約五万の保護司さんの中で約三千人をアトランダムに選びましてアンケートをしました。それがようやく集まってまいりまして、来年早々に集計できると思うのでございますが、ただ、ちょっとその一部を見ておりますと、どうもやはり報酬をもらってやるよりは、自分たちはボランティアなんだから実費弁償で十分である、報酬制よりは現在の制度の方がいいのだという御意見の方が多いように見受けられるわけでございます。しかし、それにいたしましても、もっとそういう御労苦に報いる努力をしなければならない。やはりある程度報いられるということで初めて適格者、適任者、じゃおれもなろうかという方もおいでいただけるわけでございまして、そういう点につきましては今後とも十分努力してまいりたい、かように考えております。
  281. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この問題は非常にじみな仕事ですから、よほど何か魅力あるような内容のものがなければ喜んでそっちをやっていただけるということにならないわけですね。たとえば非常にお年を召した方ですと、出歩くのもおっくうですし、どうしても家の中におって家の中でキャッチできる範囲内しか見ていない、こういうふうなことになってくると思いますから、この点を十分根本的に考えていただきたいと思います。  それから、入管の方でございますけれども、この前も伺ったことがあるのですが、国際交流が盛んになってきますので、非常に語学の点が重要になってくると思うのです。前は語学の点で税関の方といろいろ交流をやりながら語学の勉強をやっていらっしゃるということだったわけですけれども、やはりあそこには、たとえば空港を一番例にとって言いますけれども、検疫の面あるいは入管の面、税関の面といろいろな方が一つところにおるわけですね。そうすると、各省によって待遇が違うということになり、待遇は悪いわ仕事はひどいわということになると、意欲もなくなってくる、結局日本の国の入り口で外国人は印象をすでに悪くしてしまうということにもなっていきますし、そういう点もずいぶん気を使っていらっしゃって、日本人と外国人の入り場所をかえていただいたり、いろいろな配慮はあるわけですけれども、たとえば服装の点であるとかカッコいいとか何かのことで報われるというものもそこになかったら、意欲は出てこないと思うのですね。そういう点をもう少し広げていただいて、男性でなければならぬということもない、女性の審査官もいらっしゃるわけですけれども、その辺、語学の点とか待遇の点についてどういうふうにお考えなんでしょうか。
  282. 影井梅夫

    ○影井政府委員 御指摘のとおりに、羽田その他の空港におきまして入国審査官というものが、帰国いたします日本人に対してもでございますが、特にやってまいります外国人に対して与える印象、これがその後日本に在留しております間、当該外国人の頭の中に非常に大きい影響を与えるであろうということは、私ども常々その点に気をつけているつもりでございますし、それから第一線の入国審査官の諸君一人一人私よく自覚しているものと確信しております。  そこで、この入国審査官に対する待遇の件でございますが、ただいま一例として御指摘のありました服装、制服につきましては、予算その他いろいろの制約はございますけれども、なおかつ、その制約の中におきましてどういう服装がいいかということは、常々私ども第一線の入国審査官諸君の要望、意見等も聞きまして、なるべくこれを取り入れるようにしております。  それから、語学の研修の件でございますが、これはたとえば羽田空港におきましては、あそこにいわゆるランゲージラボラトリーと申しますか、というものを設けまして、余暇を見ましてと申しますか、審査官の諸君熱心にこれを使用しております。それからああいった機械施設だけではございませんで、アメリカ人の会話の先生に来てもらいまして、一クラス大体十五名ないし二十名のクラスで、ああいう騒音のひどい場所ではございますけれども、その場所の中で比較的静かな場所を選びまして、実は私、先般そのアメリカ人の会話の先生に会いましていろいろ様子を聞いたのでございますが、そのアメリカ人の先生の申しますには、あの施設の中では自分は申し分ないと思っている、それから審査官諸君の態度も非常にまじめで気持ちよく教えているということを申しましたが、いろいろの制約はございますけれども、第一線の諸君の士気の高揚とそれから自分の仕事の責務に対する自覚を高めるための措置は十分とは申せないかもしれませんけれども、現状のもとにおきましては非常にいいいろいろの施設、研修等をやっているというふうに確信しております。
  283. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大分以前よりは変わったように伺うのですが、アイデアとして私の提案ですけれども、せめてマナーなり何なりを身につけるということを経験することが一番いいわけなんで、近いところの海外旅行をさしてあげたらどうですか、できるようにしてあげる。一般のツーリストの会社でも添乗員で会社から運賃を払わないで乗っている人はいっぱいおるわけですからね、そういう点も考えていくと、入管の審査官になれば近いうちには海外旅行もちゃんとその中にあるのだ、それで勉強してくるようなシステムの中で仕事ができるのだということになれば、これは一つの励みになると思うのですね。予算の関係でしぼられる点はあると思いますけれども、航空会社でも半額の扱いとかいろいろなこともできると思いますから、それが仕事のためにいろいろ経験してくるということでもあり、あるいはそのこと自体が飛行機の警備にも当たるというようなことであれば、十分役割りを果たすと思うのですね。そういうふうなものも取り入れてあげて、やっぱり仕事に対する意欲をふやしていく、希望者も出てくる、こういうことでなければならないと思います。  それからもう一つは、だんだん年齢が高くなっていらっしゃることも事実ですけれども、最近は若い人が、わりと皆語学に堪能になってきましたから、そうなってくると、やはりそこら辺にいろいろと考えさせられるものが出てくると思いますので、そういう点も十分お考えになっていただいてやっていただきたいと思うのですが、そういう考え方、どうですか。
  284. 影井梅夫

    ○影井政府委員 ただいま沖本先生から御提案のございました入管の職員をなるべく海外に出してはどうかということ、伺いまして実は私、非常に心強く思っておるのでございます。私自身も同じ考えでございまして、これは言うまでもなく予算その他の制約がございますので、なかなか一遍にというふうにはまいりませんけれども、省内の各方面にお願いいたしまして、少しずつその人数をふやしたいと考えております。現にいま手元に数字を持っておりませんけれども、入管局の職員が海外に出る機会というのは、少しずつではございますが、ふえてきております。これはただいま先生おっしゃいましたとおりに、入国審査官として審査する立場に日常あるわけでございますけれども、海外に出ることによりまして、自分が今度は審査を受ける立場になった場合にどういうふうな気持ちを持つか。またその場合、相手国の入国審査のやり方、それから相手国の入国審査官の態度というものが当該日本の審査官にとりましても非常にいい教育になるだろうというふうに考えまして、なかなか一遍にというふうにはまいりませんけれども、なるべくその機会をふやしていきたい、こんなふうに考えております。
  285. 沖本泰幸

    ○沖本委員 各班に分かれてやっていらっしゃるらしいので、各班の班長さんぐらい、そういう後進者を指導するような立場にある方々は、できるだけ早い時期にそういう経験をしておいてもらうということが大事ではないかと考えます。  それから法務局の点でございますが、これは局長さん、もっともだという点でいろいろお述べになったわけでございますが、総定員法がありますけれども、この辺どうでしょうか。思い切ってうんとふやしていただくような方向で折衝していただくわけにはいかないのでしょうか。
  286. 香川保一

    ○香川政府委員 私どもの立場だけからいたしますと、来年度増員要求も、実は千四百五十名ばかりお願いしておるわけでございまして、いろいろ計算し、実態に基づく算定によりまして、現在、大まかに申し上げまして、千八百名ぐらい職員がより必要ではなかろうかというふうに考えておるわけでありますが、一挙にというわけにもまいりませんので、予算要求の枠の縛りもございまして、千四百五十名ばかり要求いたしておるわけでございます。私どもの登記所の現状からだけ申し上げますれば、それだけの増員措置は何とかしていただきたいということはやまやまでございますけれども、そういう必要性はあるといたしましても、現在の厳しい情勢のもとにおきまして、国家公務員全体の増員抑制措置ということも、不況のさなか当然のことでございましょうし、また総定員法の枠もあることでございますので、なかなか容易ではないと思いますが、増員措置はできるだけ多く講じていただきたいということで努力いたしておるわけでございます。努力が足りないとおしかりを受ければそのとおりでございますけれども、なかなかむずかしい問題がございまして、思うようにはまいらないという現状でございます。
  287. 沖本泰幸

    ○沖本委員 組合の方は本年度八千三百六十九名要求しているということを述べていらっしゃるわけですね。法務省全体としてそういうことで、いま民事局長がおっしゃった数字は民事局内だけの増員計画だと考えるわけですけれども、片一方、こういうところの増員を図ったので、今度は検察官を減らすとか事務官を減らすとかいうようなやりくりがあると困るわけですね。われわれも委員会の一員としてこういう点、側面からもお手伝いさせていただきたいと思いますが、各省の中で法務省、裁判所が予算要求に対して削られるのが一番激しいということも聞いておりますし、全力を挙げるつもりではおりますけれども、事登記事務等に関しましては、国民の財産の問題でもありますし、いろいろな問題が絡んでくるわけですから、どうしても正確を期していただき、十分なサービスをしていただかなければ、そこに大きなそごを来してくるという重大な事態もあるわけですから、力を入れていただいて、この辺を努力していただきたいと考えるわけでございます。  これは委員長に申し上げたいわけですけれども、先ほど休憩時間に大臣とも話し合って、この定員増については大臣自体が憂慮しているんだ、何とか側面からでも応援してほしい、こういうお話もありましたので、この件に関しては当委員会の決議として今臨時国会の終わるまでの間にお取り上げをいただきたいわけなんです。当然、理事会に諮っていただくなり何なりという手続を踏んでいただくことになりますが、その点十分お願いしたいと考えます。
  288. 保岡興治

    ○保岡委員長代理 はい、しかるべくしたいと思います。
  289. 沖本泰幸

    ○沖本委員 以上で終わります。
  290. 保岡興治

    ○保岡委員長代理 田中美智子君。
  291. 田中美智子

    ○田中(美)委員 業者婦人の問題の続きなんですけれども、総理府の統計によりますと、小規模企業所というのは、大体企業の八六%になっているというので、いただいた数字では四百十四万人、この方たちが全部妻があるとは限りませんけれども、大体妻があるということになりますと、約四百万人の業者婦人がいる。その大体の統計では、このうちの八〇%が男性と同じように朝から晩まで働いているというのが現状だと思います。そうすると、約三百万ちょっとの婦人というのは、一体、妻だけでもないし、企業主でもないし、労働者でもないし、すべての法から浮いた立場で、世間的にいわゆる業者婦人と言われる人たちがいるということは、先ほどの質問で十分おわかりいただいたと思うのですけれども、この方たちの健康が非常に破壊されているという問題があるわけです。法的に何も守られていないということが結局ひずみのようになって、この業者婦人がひどい状態にあるわけです。この中で、国や自治体での調査というのがほとんどなされていない。民間でいろいろ業者自身が調べたり、いろいろなところで調べているわけですけれども、これを見ましても、健康全体を言いますと非常に大きくなりますので、母体保護の問題のところだけちょっと見たいと思います。  これは、「税制と自家労賃」というパンフレットですけれども、全国商工団体連合会婦人部協議会というのの中に載っているわけです。この中には、業者婦人が働いているのは一日十時間から十四時間という人が三二%、何しろ八時間以上働いている人というのが六八%もいるわけですね。この人たちが産前産後の休養をどれくらいとっているかというのは、産前に一日しかとっていないというのが一五・七%、二日から六日休んでいるというのは一〇・二%、一週間以上休んでいるのは三一・三%というふうに非常にわずかしか休んでいない。それから産後は、一週間しか休んでいないというのが二〇・四%、三週間以上休んでいるという人がほとんどないというふうな状態です。  それから、この調査を見ましても、これも業者婦人がしたわけですけれども、北海道、東京、神奈川、群馬、静岡、山口、大阪というふうなところから約六万五千人分というのでこれを調査しているわけです。この中を見ましても、大半の人は産前一週間以内、産後二週間以内と、労働基準法で定められた基準の半分しか休めていないのが現状です、というふうに書いてあります。もちろん、生理休暇などは八〇%以上の人がとっていない。  それから、これは「社会保障」という月刊の、これは2という数字がついております。これは中央社会保障推進協議会というところで出しています。この中に業者婦人の間沢ふささんという方の論文が載っております。これを見ましても、五百七十四人のうち百四十五人が一日、四割以上が六日以下、というふうに答えているというふうに論文の一部にあります。流産を経験した人が三六%、「お産の時でも生れる寸前になってあわてて病院にかけつける始末です。」というふうに、もうほとんど産前は一日もとっていない。陣痛が来てからびっくりして病院に行くという形で、そうしてもう一週間以内のうちにほとんどの人が動き始めている。それがいわゆる主婦として家庭で動くのではなくて、実際の労働者として働いているという現状があるわけです。   こうした健康破壊というのも、これは先ほど言いました十月二十八日の読売新聞の記事ですけれども、これを見ましても、「ある飲料水製造業の奥さんは、中絶-流産-死産-早産-出産-子宮外妊娠を繰り返し、六回妊娠しながら、二人しか子供がない。産前休みを全く取れなかった人は四一%、産後一週間以内しか休めなかったのは一六%、二週間以内が四〇%で、両方で過半数を占める。」というふうに、読売新聞のつい最近の新聞にもこういうふうなことが出ています。こういう状態を一体どのように厚生省ではお考えになって  いらっしゃるでしょうか。
  292. 北川定謙

    ○北川説明員 母子衛生課長の北川でございます。  ただいまの先生のお話、厚生省の母子衛生課といたしましては、妊産婦及び乳児に対して一般的な保健水準を上げていくということで行政の体系を組んでいるわけでございまして、法的には児童福祉法、母子保健法が基本になっているわけでございます。私どもの方からのアプローチといたしましては、妊娠をする前のいろいろな母性としての知識の教育、それから妊娠中の健康診断あるいはそれに基づく健康の指導でございますね、そういう一貫した体系の中でこういう問題を取り扱っているわけでございまして、いま先生がお話しになられましたような特殊な中小企業、零細企業の労働者階層を対象とするということではなくて、一般の地域社会という形でとらえております。いま先生からお話しいただきましたようなそういう問題については、非常に大きな問題があろうかと思いますが、これは労働関係の問題として対応していくべき分があるのではないかと私としては考えるわけでございます。
  293. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それじゃ一体業者婦人というのは労働者なんですか。いまおっしゃいましたことに私は非常に――体制はこういうふうに整えています、教育をしている、健康診断をしています、それから指導しています、こう言いますね。でも、業者婦人の現状というのは、あなたは先ほどから私の質問を聞いていませんのでよくおわかりにならない、それで先ほどから言っているわけですけれども、やはり政治というのは、法律だとかやれ何だとか、こういうふうに人間の体を分けて考えることはできないわけですよ。政治というのは、一人の人間が幸せに、健康に、その人の権利が守られているか守られていないかという形で物を考えませんとね。私は議員になってまだ三年ですけれども、そういう点では素人かもしれませんけれども、少しおかしいのじゃないかというふうに思うのですね。いま業者婦人というのは、教育を受けなくたってよく知ってますよ。業者婦人は、税金の問題から何から総合的に知っていますので、そういう点では非常にすぐれています。現状が、すぐれざるを得ない場所に置かれているわけですから、税金の問題から仕入れの問題、不況の問題、景気の問題、世界の動きの問題、輸出や、そんな問題までも知っているわけですね。ですから非常にすぐれていますので、産前産後の休暇をどうとらなければならないかということはよく知っています。産前に休暇をとっていないと小さい子供が生まれるということも、業者団体の中では自分たちで学習もしています。しかし、実際に、幾らあなたがいま教育する教育すると言ったって、休めない現状にあるわけですよね。それから診断すると言ったって、統計を見ましても、健康診断を受けに行く人は半分もいませんよ。行く暇もない、そういう状態です。それから指導をすると言ったって、一体どこで指導するのか。保健所に行かなければ指導してもらえないというふうな状態です。  ですから、私が言っていますのは、いま特殊な人というふうに言われましたけれども、この人たちは特殊な、変わった、異人種じゃありませんよ、ちゃんとした日本人です。この約三百万人の業者婦人というものの母体が非常に破壊されているということを、なぜ労働問題だというふうに――厚生省は関係ないということですか。そういうふうに人間を分けて物を考えるという考え方に根本的な誤りがあるのではないですか。
  294. 北川定謙

    ○北川説明員 言葉が十分でなかったのかもしれませんが、分けて考えるということではございませんし、それから特殊なと言いましたのは、特殊な差別ということではございませんで、私どもはその地域社会に住む母性という一般的なとらえ方をしておりますので、行政的には、零細企業の家庭の方あるいは農村の家庭の方という形ではとらえていないわけでございまして、一つの都道府県の中に住む住民あるいは一つの市町村の中に住む住民という形で全体的にとらえてまいるということでございます。  なお、いま先生のお話にございましたように、労働あるいは家庭内の仕事のためになかなか時間がとれないとか、いろいろな問題がございますので、そういう点につきましても、これはもちろん、お話のように、教育の問題だけで片づく問題ではございませんけれども、たとえば母子手帳を交付するという制度がございます。これは、妊娠届けをすることによって母子手帳を交付し、これによっていろいろな基礎的な知識を与え、あるいは健康診断の機会を提供していくというような形のものになっているわけでございますが、一般的な指導といたしまして、妊娠をしたらなるべく早く届け出をして、それに基づいて必要な健康診断をしていく、問題がある場合には医療へ早くつないであげる、そのサービスのために保健所に保健婦を置き、これらの人たちが相談相手になって具体的な問題を解決していく、そういう体制をとっているわけでございます。
  295. 田中美智子

    ○田中(美)委員 あなたは体制をとっているとおっしゃいますけれども、実際にはその恩恵に浴していない。  いま、あなたは家庭の仕事でと言われましたけれども、私が言っていることをきっちり聞いていてほしいと思うのです。この四百万人の業者の妻、その八〇%は単なる主婦ではなくて実際に働いているということなんです。労働者と同じように働いている。だけれども、労働者として扱われていないわけです。労働基準法を適用するのなら労働問題として扱うのだというあなたのおっしゃる考え方もいいですけれども、労働基準法は当てはめられていない。すべての法の保護から宙に浮いているということですね。そういう日本人が、特殊な人ではなくて日本人が、少なくとも三百万人ぐらい推定であるのではないか。この人たちの調査をそれぞれ民間でやっていますが、いま私が話したように、こんな状態にあるんだということですので、ただ普遍的に机の上で、一人の女の人の母体をどういうふうに守ろうか、教育して診断してこうすればいい、こういうことで片づく問題ではない。教育をしてもなぜちゃんと保健所に来ないのか、保健所でこうしようと思ってもなぜ来ないのかということは、なぜ来られないのか、なぜ産前を休めないのかというところをきちっと知らない限りは、全く机上の空論でしょう。世界の人類の状態がみんな違っているわけですから、日本の状態ではこういう人たちがいる――これは農村婦人やいろいろありますけれども、きょうは業者婦人の問題を言っているわけです。これだけ大ぜいの人たちに健康破壊が進んでいるというならば、厚生省としてはこれに何らかの形で取り組まなければならないんではないかということを言っているわけです。  先ほど言いましたように、いろいろな原因で自殺をしていっている人があるわけです。ノイローゼ的になっていく人も非常にあるし、正常でももう先をはかなんで死ぬ方もある。ノイローゼみたいになっていくというのにも、健康破壊が非常に影響しているわけです。総合的なもので自殺者がどんどん出ているという話をさっきからしていたわけです。そういう中で、母体が非常に傷つけられている。健康保険も業者の婦人の子供は二万円でこの世に生まれてくる。一般の政府管掌の保険では最低六万円の費用をもらって生まれてくる。生まれるときにもはや子供は、業者婦人の子供とそうでない子供とが違ってきている。その上に産前の休みをしていませんので、業者婦人の子供は生まれても小さい。小さいということは弱く生まれるわけですね。いま言ったように、流産だのいろいろなことをして、何回妊娠しても結局二人しか子供が生まれない。まだ二人でも生まれた人はいい方です。生めない人もあるという状態が出ているから、いま厚生省の母子衛生課長に、この問題はどういうふうに考えるのかということを伺っているわけです。単に、いままでこうこう教育して、診断して、保健所があって母子手帳出しているからこれでいいのですということではしょうがないのです。こういう状態がいまどんどんひどくなっているわけです。不況と一緒になってこれはひどくなっている。  だから、厚生省としてはこのひどくなっている現状にどう対応していくのかということを、具体的な対応策がまだ出ていないならば、どういう気持ちでこれに対応していくのかという決意なりとも私は聞きたいわけです。
  296. 北川定謙

    ○北川説明員 ただいま先生のお話にございました母性の問題として見た場合に、十分な休養がとれない、あるいは十分な検査ができない、いろいろの社会的なサービスの場に届かない方々がまだまだ非常に多いということは十分認識しているわけでございまして、これは私どものそういう都道府県における保健所のネットワークを通じまして、そういう問題になるべく深くアプローチをしていくという基本的な姿勢は、従来私どもとしては各都道府県に対していつもお願いしているわけでございます。  なお、制度的な問題等につきましては、今後いろいろな問題があろうかと思いますので、私どもはまた帰りまして上司にも十分そのことは申し伝えたいと思います。
  297. 田中美智子

    ○田中(美)委員 もう時間がありませんので、最後に一言お願いしたいわけですけれども、早速にこうした業者婦人の母体が破壊されている状態というものを、厚生省として国の力で一度調査してみていただきたいというふうに思うのです。実際調査してみませんと――こういうふうにたくさんの民間の人の調査というのは、いろいろ論文が発表されたり新聞に載ったりしているわけですね。しかし、国として、厚生省としてこれがうそかまことかということはやはりきちっと、これだけ出てきているのですから、一度調査していただきたいと思うのです、どのような破壊になっているかということを。これを至急検討していただきたいというふうに思います。その点いかがでしょうか。
  298. 北川定謙

    ○北川説明員 担当の課長といたしましては、ただいま先生からお示しいただきましたいろいろな資料をまた十分勉強させていただいて、問題点を勉強したいというふうに考えます。
  299. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私は、あなたに勉強してくださいというふうに質疑をしたのではなくて、調査をしていただきたいと言っているわけです。調査をしなければわからないわけでしょう。ですから、こういう資料がたくさん出ているのをいま私は明らかにしているわけですから、大至急調査をするということを持ち帰りまして、大臣にもその話をしまして、そして検討していただきたいというふうに思うわけです。その返答を……。
  300. 北川定謙

    ○北川説明員 いま田中先生がおっしゃられました問題は、上司にお伝え申し上げます。
  301. 田中美智子

    ○田中(美)委員 質問を終わります。どうも御苦労さまでした。
  302. 保岡興治

    ○保岡委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時九分散会