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1973-05-11 第71回国会 衆議院 外務委員会 17号 公式Web版

  1. 昭和四十八年五月十一日(金曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 藤井 勝志君    理事 石井  一君 理事 小坂徳三郎君    理事 西銘 順治君 理事 岡田 春夫君    理事 堂森 芳夫君 理事 金子 満広君       稻葉  修君    深谷 隆司君       石野 久男君    河上 民雄君       三宅 正一君    柴田 睦夫君       沖本 泰幸君    渡部 一郎君       永末 英一君    瀬長亀次郎君  出席政府委員         外務政務次官  水野  清君         外務省条約局外         務参事官    松永 信雄君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君         労働大臣官房長 藤繩 正勝君  委員外の出席者         労働大臣官房国         際労働課長   森川 幹夫君         労働省労働基準         局安全衛生部計         画課長     倉橋 義定君         参  考  人         (国際労働機関         理事使用者側         副理事)    吉村 一雄君         参  考  人         (国際労働機関         理事労働者側         理事)     安養寺俊親君         参  考  人         (前国際労働機         関理事労働者         側理事)    塩路 一郎君         参  考  人         (東京工業大学         教授)     慶谷 淑夫君         参  考  人         (日本女子大学         教授)     佐藤  進君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十日  辞任         補欠選任   竹内 黎一君     藤山愛一郎君 同月十一日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     沖本 泰幸君 同日  辞任         補欠選任   沖本 泰幸君     大久保直彦君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際労働機関憲章の改正に関する文書締結に  ついて承認を求めるの件(条約第四号)  電離放射線からの労働者保護に関する条約  (第百十五号)の締結について承認を求めるの  件(条約第五号)  機械の防護に関する条約(第百十九号)の締結  について承認を求めるの件(条約第六号)      ――――◇―――――
  2. 藤井勝志

    ○藤井委員長 これより会議を開きます。  国際労働機関憲章の改正に関する文章締結について承認を求めるの件、電離放射線からの労働者保護に関する条約(第百十五号)の締結について承認を求めるの件、機械の防護に関する条約(第百十九号)の締結について承認を求めるの件、右各件を議題とし、審査を進めます。  本日は、右各件の審査のため参考人として吉村一雄君、安養寺俊親君、塩路一郎君、慶谷淑夫君、佐藤進君に御出席を願っております。  なお、本日出席予定でありました野村参考人は、病気のため欠席されることになりました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  さきに御連絡申し上げましたとおり、各件につきまして参考人各位にはそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の進め方につきましては、参考人各位には最初にお一人十分程度御意見の御開陳を願い、そのあと各委員から質疑が行なわれることになっておりますので、よろしくお願いいたしたいと存じます。  それでは、吉村参考人からお願いをいたします。
  3. 吉村一雄

    ○吉村参考人 ただいま御指名をいただきました国際労働機関、ILO使用者側副理事吉村一雄でございます。  国会の批准を求めて提出されておりますILO関係の三つの文書について参考人としての私の意見を申し述べます。  まず、国際労働機関憲章の改正は、理事定員の増加に関するものであります。御高承のとおり、ILOの理事会は政労使の三者構成であります。日本政府は、主要産業国十カ国の政府として選挙によらない常任議席を有しておりますが、私ども労使の議席は、それぞれのグループの選挙によるものであります。したがって定員増加により議席がふえることは、地理代表制の上からも、日本の労使の当選率の上からも望ましいことであります。憲章改正の効力発生には加盟国の三分の二、ただし、この中には主要産業国十カ国の半数を含めての批准を必要といたしますので、わが国もすみやかに本文書を批准することを希望いたします。  次に、電離放射線からの労働者保護に関する条約(第百十五号)、機械の防護に関する条約(第百十九号)の二条約は、いずれも労働安全衛生に関する重要な国際条約であります。事業所内における労働環境の安全衛生は、特に最近ILOが重大な関心を有している問題であり、わが国においても労働安全衛生法の制定があり、日本がこの二条約を批准することにつき賛意を表したいと思います。  この機会に、国際労働条約に関して若干の見解を申し述べることをお許し願いたいと思います。  まず第一に、しばしば耳にすることは、日本はILO条約の批准数が他の国に比べて少ないということでございます。ILO加盟国として批准の数が多いに越したことはありませんが、ただ数だけが問題ではないことを指摘いたしたいと思います。極端な例をあげますと、連邦制をとっている米国のごときは、七条約しか批准していないのであります。何となれば海事条約を除いては連邦議会は管轄権を有しないからであります。  現在ILO条約は百三十六あり、わが国の批准数は二十九であります。一応数字の上では未批准条約数百七となりますが、実はこのうち四十二条約は、わが国にとって、批准の対象とならないものであります。すなわち、その内訳、改正条約が採択されたため批准が不適当であるもの十二、新改正条約効力発生に伴って批准が不可能になったもの十三、条約が指定した国の批准が得られないため未発効のもの六、これは主として海事関係で、ある特定の海事国の批准を必要とするものでございます。非本土地域、ノンメトロポリタンエリア関係十一であります。したがって、実質的に未批准の条約は六十五でございます。  この点について、政府当局も鋭意努力をされておることは私も熟知しておるとおりでございますが、批准の手続に先立って国内立法措置を厳密に検討し、いささかも条約と国内立法の間にそごのないように慎重を期しておるわが国の態度は賞揚に値すると思います。特に一部の国には、みえというか、プレスティジのためだけで批准国として名を連ね、国内法による実施を長期間にわたって顧みず、ILO事務局から適用状況報告を要求されてもナシのつぶてという国さえあるのでございます。  条約の批准を困難にしている最大の原因は、条約内容の弾力性の欠如と各国実情の無視でございます。私自身、過去十年近くの間、毎年の総会で条約案審議に参加し、また若干の条約については、使用者側の副議長兼スポークスマン、さらには起草委員の一人として条約審議の舞台裏まで関与いたしてまいりました。  一例をあげますと、一九六九年から七〇年にわたって有給休暇条約、これは現在百三十二号条約となっておりますが、これの審議に使用者側スポークスマンとして参加いたしました私は、六九年、第一次討議の結論が本会議に提出されましたとき、使用者側を代表いたしまして反対演説を行ないました。その中で私は、本条約案はあまりにも弾力性が欠如しており、各国実情の無視が、加盟国に対して条約批准を著しく妨げ、またかりに批准しても条約内容の実施が困難もしくは不可能となることを憂慮する旨申し述べました。これに対しまして、労働側スポークスマンは、この条約を直ちに批准し得ない国が多いということを認めながらも、さらにことばを継いで、さればこそ将来のガイドラインとしてかかる条約を将来に残す必要があるとして私の演説に応酬いたしたのでございます。ガイドラインとしてはILOでは条約、コンベンションではなくして、勧告、リコメンデーションという形式の文書があるのでございますが、労働側はこの勧告、リコメンデーションという形式では納得しないことが多いのでございます。しかも採択のための投票になると、政府側の中でも特に発展途上国の大多数がとうてい批准し得る国力、経済能力を持っていないのにもかかわらず、これまたプレスティジのために投票する結果、採択に必要な三分の二の賛成票が入る、こういう実情でございます。ちなみに各加盟国は、労使それぞれ一票を持っておるのに対して政府は二票、つまり二倍のウエートが票数の上であるわけでございます。  次に、同じく批准を困難にしている一因に、各国の法制体系の差違を無視して、あまりにも詳細な規定が含まれていることがあげられます。一般的にいって、英米法系の国では成文法によらないで、労使の自由な交渉によって細目の協定に達するのでありますが、大陸法系の国ではずいぶんこまかい点まで法令で規定する傾向があります。私どもは条約案審議にあたっては、この点に留意し、詳細な規定は団体協約仲裁裁定、裁判所の決定、最賃決定機構の決定もしくは国内事情のもとにおいて適当な国内慣行にまかせられるよう努力いたしておるのでありますが、これまたこれと反対の主張と対峙し、投票の結果、当方の主張が後退せざるを得ないことがしばしば起こるのであります。  条約案の審議採決にはこのような事情がありますので、わが国としてILO条約の批准という問題については、いたずらに数の多いことではなく、その内容の国内法による適用実施が可能かどうかという見地から検討されることを希望いたします。ただいま例をあげましたように、条約によっては、その審議の過程においてきわめて問題の多い内容がただ投票数の僅差で通ってしまうような事情もときには存在していることを御銘記願って、国の内外における条約批准数をただふやせという圧力には無条件に屈服されることのないよう希望いたすものでございます。  こう申しますと私はILO条約批准消極論者とお考えになるかもしれませんが、実はそうではございません。私はILO理事会が海事労働の担当をいたしており、海事関係の会議では議長をつとめることが多いのでございます。その立場から私は海事条約、マリタイムコンベンションの審議にも関与することが多いのでございます。現在、海事条約、マリタイムコンベンションは三十四ございます。日本の批准数は八で、未批准二十六ですが、そのうち改正条約採択のため廃物化、オブソリートになったものが三、新改正条約の効力発生に伴い批准の閉鎖、クローズされたもの三を差し引きますと、実質的な未批准は二十でございます。この二十の未批准海事条約につきまして今後批准の可否を御検討いただき、可能なものからなるべく批准をお進めくださることを希望いたす次第でございます。  最後に、わが国は結社の自由団結権交渉権に関する第八十七号、第九十八号二条約を批准いたしております。この二条約に関連して、ILOはわが国の公共部門にスト権を与えよと勧告しているかのごとき見解を持っておられる方が一部にはあるようでございます。はっきり申し上げますが、ILO条約ないし勧告の中でスト権、ザ・ライト・ツー・ストライクに言及しているものは皆無であり、まして公務員のスト権に触れている個所は全くないということを申し上げたいと思います。  日本ではILOというと公共部門の労働組合の提訴機関だというイメージがあるようでございますが、ジュネーブの雰囲気は全く異なるものであることを申し述べて結びのことばといたします。  御清聴を感謝いたします。
  4. 藤井勝志

    ○藤井委員長 ありがとうございました。  次に、安養寺参考人にお願いいたします。
  5. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 参考人の安養寺でございます。  私は昨年六月、ILO第五十七回総会で労働側の理事に選ばれまして、国際労働の諸問題に微力を尽くしておるものでございますが、本日、ここに国会で審議中の二つの条約と憲章改正につきまして意見を申し上げたいと思います。三点にわたって申し述べたいと思っております。  第一は、今回批准案件として審議されています百十五号、電離放射線からの労働者の保護に関する条約並びに百十九号、機械の防護に関する条約につきましては、すでに多くの国で批准されていますし、わが国でも昨年国会で審議の上成立発効しております労働安全衛生法による法制整備により、抵触する部分もなくなり、批准される運びに至ったものでありますが、今日、この二条約が審議されるに至るまでの関係者の努力に対しまして、ILOに関係する者といたしましても同時に総評の一役員といたしましても深く敬意を表するものでありますし、本国会で慎重審議の上批准されることをお願いするものであります。  この条約に関連して一つだけ、行政上の問題を指摘するならば、百十九号条約については、機械の製造並びに販売、賃貸、使用のほかに輸出上の問題があると思います。防護設備や製品について、すでに本条約、言いかえれば安全衛生法に触れることとなった在庫品や注文品をそのまま輸出することがあるとするならば、輸出先が条約批准をしていない場合であったといたしましても、将来国際信用にもかかわる問題が生ずると思われますので、同条約とともに採択された機械の防護に関する勧告、百十八号勧告の雑則にありますように、国際的に十分協議をし、輸出上配慮を払われることを希望するものでございます。  また、憲章改正につきましては、先ほど吉村参考人からも申されましたように、日本は重要産業国ということですみやかな批准に対する責任が重いわけでございますから、ぜひすみやかなる決定をお願いしたいと思います。  第二点は、この二つのILO条約批准に関連をいたしまして、日本のILO条約批准状況について、全体的に、総体的に検討すべき必要があるということであります。  この二条約の批准が行なわれますと、日本は現在の二十九条約から三十一条約と批准数が増大いたします。しかしながら、この数は必ずしも多いものではありません。十大産業国の中でも、連邦制度の国という特殊なところを除きますと、フランスの九十一、イタリアの七十八、英国の六十六、ソ連の四十、すでに北京政府に代表権が移りましたが、台湾の場合でも三十七の批准数があり、日本はインドの三十と肩を並べるという状況であります。  ILOが、労働条件の改善によりまして社会正義を実現し、ひいては世界の恒久平和を確立するという人類の希望のもとに、大正八年、ベルサイユ平和条約によって設置されました趣旨からいっても、あるいはまた戦後日本がILOに復帰をするに際しまして、主要条約の批准を約したことからいっても、もっと前向きに批准促進と取り組む必要があると考えられます。  特に十大産業国として政府は常任理事国となっている今日、しかも国民総生産も資本主義国の中では第二位、三位と上昇いたしまして、多くの国から、日本の高度成長とその輸出の増大に、あるいは警戒の目をもって、あるいは白眼視されたり、あるいはまたエコノミックアニマルというようなことばさえ出ておる今日、さらに多くの条約の批准を要請されているのでございます。  たまたま政府も、GNP主義、貿易第一主義の政策を大きく転換をし、福祉国家の方向をとり、国際的にも公正な競争で貿易を拡大することを明らかにしているところでございますし、また使用者、経営者並びにその団体も、利益追求第一、設備投資第一主義から、産業、企業の社会的使命を自覚をして、国際的にも長期的に信頼をかちうる方向に変換することがたびたび言明されておりますので、ILO条約の批准の促進は今日その絶好の機運を迎えていると言えると思います。まさに好機でありますので、政府はもちろん、国会においてもこの点十分御配慮をお願いをしたいのでございます。  条約は今日百三十六採択されておりますし、ほぼ同数の勧告とともに整備が続けられておるわけでございますが、もちろん中にはすでに改正されたものとか、発効してないものとか、あるいは非本土地域に関するものなどがありますから、実際には八十から九十程度の条約がわが国の批准の対象となると考えられます。  この中で重要なものとして、ILO五十周年に際しまして、昭和四十二年に十七の条約が公表されたのであります。この十七の中で、日本は国内で七年間もたいへん政治問題化した末、批准をされました八十七号条約、結社の自由に関する条約並びに九十八号の団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約、二十九号の強制労働ニ関スル条約、百号の同一労働同一報酬に関する条約、八十一号の工業及び商業における労働監督に関する条約、九十六号の有料職業紹介所に関する条約、二十六号の最低賃金決定制度の設立に関する条約の七条約は批准していますが、あと十条約は未批准でございます。百五号、強制労働の廃止に関する条約、百十一号、雇用及び職業についての差別待遇に関する条約、百十七号、社会政策の基本的な目的及び基準に関する条約、百二十二号、雇用政策に関する条約、九十九号、農業における最低賃金決定制度に関する条約、九十五号、賃金の保護に関する条約、百二号、社会保障の最低基準に関する条約、百十八号、社会保障における内国民及び非内国民の均等待遇に関する条約、五十九号、工業に使用し得る児童の最低年令を定める条約、百八号、国の発給する船員身分証明書に関する条約、この十条約が未批准でございます。  また、昭和四十六年十月に日本の招待で来日いたしましたジェンクスILO事務総長は、その当時の原労働大臣に会見をいたしまして、主要条約の批准を申し入れました。また、昭和四十七年七月、ILOは再び東京支局を通じまして、時の田村労働大臣に対し、特に百十一号、百五号、百二号、百二十二号のほかに、容易に批准ができる条約として、今回の百十九号条約のほか、通勤災害のことなどをきめております業務災害給付に関する条約、労働者代表保護の条約、ベンゼン中毒条約などについて批准促進を申し入れてきたのでございます。これらの条約の早急な批准が必要であることを強調いたしたいと思うのであります。  第三は、すでに批准した条約の取り扱いについてでございます。  日本国憲法では、国際信義上の問題として締結した国際法規は、これを誠実に遵守することが規定されております。しかし現状は、労働者の保護条約であるILO条約の場合は、形式的に流れてその精神をはき違え、条約に抵触するような現行法規定をそのままとし、あるいはできる限り法網をくぐるような解釈に立つことが多いということでございます。すでにILOでも疑義明確にしていることさえ、口実を設けて正そうとしていません。また、そのような考え方は、批准をおくらせている原因でもございます。  先ほど申し上げましたジェンクス事務総長が、当時の原労働大臣に会見をし、大臣もまた、特に重要であり、しかも内容的には容易に批准できると判断をした百十一号、差別待遇に関する条約の批准を即断踏み切って回答しようとしたところ、事務当局が法律上の取り扱いについてあまりにも慎重な態度に過ぎ、結局批准ができなかったということを聞いておるのであります。これは、労働大臣が大胆率直に決断を下そうとした政治判断を、事務当局の関係各省庁、部内局部との形式的折衝にこだわり、龍頭蛇尾に終わらした一つの例であると思います。  また、この百十一号条約については、ジェンクス事務総長は、ベルサイユ平和条約当時に、日本が国際会議で、皮膚の色、人種による差別禁止を提唱した経緯が、結局フィラデルフィア宣言となり、百十一号条約となったことを指摘しておるのでございます。  また、田村労働大臣の時代にも、せめて常任理事国の平均値である四十五ぐらいは批准したいと事務当局に検討を命じたと聞いておりますが、ようやく今日二条約の批准にこぎつけたことは、一方ではその努力に敬意を表しますとともに、形式的な批准取り扱いについて一考をしたほうがよいことを強調いたしたいと思います。  ILO条約は、この二条約で三十一の批准数となります。しかもそのうち十四条約は戦前のものでございます。そうすると、戦後は十七となるわけであります。戦前はその国内体制から比べますと、たいへん前向きの姿勢と今日考えることができると思いますが、国際的には、そういう状態であったにもかかわらず、ソシアルダンピングと強い非難を受けることとなって、ついに経済的報復措置の強化を招き、そのことが戦争の大きな原因になったことを考えまするとき、ILO条約の積極的批准を再度要請いたしまして、意見を終わるものでございます。(拍手)
  6. 藤井勝志

    ○藤井委員長 ありがとうございました。  次に塩路参考人にお願いいたします。
  7. 塩路一郎

    ○塩路参考人 ILO憲章の改正と、ILO百十五号条約並びに百十九号条約の締結について承認を求める件が今国会に提出されたことを、労働側を代表する者の一人としてたいへんうれしく感ずると同時に、賛成の意を表したいと思います。  その理由については、他の参考人がすでに述べられましたし、また後ほど先生方が述べられると思いますので、重複を避けたいと思います。  そこで、私は、たいへん貴重な時間と場所をいただいたので、ILO条約批准に関連して日ごろ考えていることの一端を申し上げさせていただきたいと思います。  それは、私が六九年から三年の間、ILOの労働側理事としてILOの仕事に直接携わりながらジュネーブで、あるいはその他の地域でいろいろと経験した中から考えさせられ、そして感じたことをぜひ皆さん方に聞いていただきたいと思うからです。  その問題点を一言で言うなら、わが国の政労使は、ILOに対する取り組み方、姿勢を正してほしいということです。わが国では、ILOに対する理解の程度が政も労も使もたいへんに低いのではないか、むしろ間違っていると思われることがしばしばあるように私は感じております。それが今日までの日本のILOに対する取り組み方となってあらわれてきたのではないだろうかと思うのです。  そこで、釈迦に説法かもしれませんけれども、ILOとは何かという点について、若干歴史的に総論めいたお話を申し上げたいと思います。  御承知のように、ILOの創設は一九一九年、つまり第一次世界大戦の直後であります。大正三年に始まった第一次世界大戦は、五年にわたってヨーロッパの広範な地域を戦場と化して、その結果は、戦勝国と敗戦国とを問わず、すべての国の間に恐慌と社会不安、貧困というはかり知れない不幸をもたらしました。そういう世界的な背景の中で、人々の平和への期待を込めてベルサイユ平和条約が締結されましたけれども、実はこの平和会議の冒頭に、何よりも先に満場一致で決定されたのがILOの創設であります。  すなわち平和を乱すもの、戦争や紛争のもとになるものの除去をはかろうということです。たとえば社会不安のもとになる劣悪なる労働条件を国際的に規制して、労働条件の改善、生活水準の引き上げをはかろう、あるいは社会正義の実現、人権の確保によって世界平和の実現に各国が協力していこう、そういう趣旨で、民間の労使の代表が政府の代表と平等の投票権を持ち、対等の地位を確保するという形で発足いたしました。いまから五十四年前に労働者の参加という、まさに革命ともいえることを世界の人々がきめたことの意義を、私どもはまず注目しなければならないと思います。  それから約二十年後、世界は再び、しかも前よりもはるかに大きな規模の戦争へと突入いたしましたけれども、戦争の悲惨と第一次世界大戦から第二次大戦につながるもろもろの教訓に照らして、戦後の世界平和に対するILOの決意を示したのが、いわゆるフィラデルフィア宣言でございます。一九四四年の第二十六回ILO総会で出されたこのフィラデルフィア宣言は、国際労働機関の目的に関する宣言というもので、その中で基本原則として次の四項目を確認いたしております。  一つは、労働は商品ではない。二つは、表現及び結社の自由は、絶えざる進歩のために欠くことのできないものである。三つ目は、一部の貧困は全体の発展にとって危険である。この三つ目は、よくいろいろなところで引用されるので、皆様方御承知のことだと思います。そして四つ目は、政労使の三者構成の確認の内容になっております。そしてこの宣言は、さらに後段において加盟各国に対して、完全雇用及び生活水準の向上を中心とする諸計画を推進するように、厳粛な義務であるとして提示しております。かつて国際連盟の有力な一機関として活動していたILOは、第二次世界大戦後においても、国際連合の専門機関の一つとして不可欠の役割りを果たしてまいりました。ILOができて半世紀の間に、世界は目まぐるしく変化を遂げてまいりました。したがってILOが取り組んだ問題も多岐にわたっております。そして世界の進歩と平和の発展に果たしたILOの役割りは、まことに大きなものがあります。しかるがゆえに、一九六九年のILO創設五十周年の記念にあたって、その数々の業績に対してノーベル平和賞が与えられたわけであります。  ところで昨今の技術革新のもたらす産業、社会の大きな変化、世界経済の大型化、先進諸国間における経済の開放化、さらには先進諸国と発展途上国との間における南北格差の拡大の問題などを考えますと、政労使の三者構成で組織されているILOの今日的な意義は、これまでにも増して重大なものがあります。  現在、ILOの新たな課題として取り上げられ、あるいは考えられているものの中から若干例を申し上げますと、たとえば国連開発第二次十年計画に基づく世界雇用計画、アジアに関連して言えば、アジア労働力計画、また環境問題あるいは多国籍企業の問題、そして貿易関係と各国の雇用、労働問題に関する課題等、たいへんに今日的な世界の大きな問題にILOも取り組みつつあります。  これら今日的課題の中から、時間の制約もございますので、一つだけ例をあげて申し上げてみたいと思いますが、それは国際公正労働基準の問題です。戦後、第二次大戦の反省の中からIMFとかガットとかOECDというような国際機関ができてまいりましたけれども、その精神は各国間の公正な経済競争と協力によって世界の平和な経済発展をはかっていこうとするものです。すなわち極端な保護貿易は、国際間の紛争、対立を激化させるから、自由貿易をたてまえとする必要がある。しかし自由貿易を野放しにしたのでは、各国間の格差がまた大きく開き過ぎて、世界の調和のとれた発展ができないし、また対立抗争を生む。そこで各国間の経済、産業、企業の力の格差をある程度考慮しながら自由競争を進めるようにしようというものであるはずです。すなわち公正な競争をしていくべきだということでこれらの諸機関が設立されたと思います。ILOでも貿易と公正な競争、フリートレードからフェアトレードというような考え方で、昨今ではいろいろとものが論じられるようになってまいりました。この公正な競争条件の中に労働条件が入っております。そしてこの労働条件の国際的な基準になるものがILOの条約や勧告に定められております。公正な競争条件というのはガットやIMFの運営等を見ていただけばおわかりいただけるように、決して画一的なものがあるわけではございませんけれども、そういう意味で国際公正労働基準というものをわかりやすく申し上げますと、あまり適切な例ではないかもしれませんが、ゴルフのハンディキャップのようなものではないだろうか、そのように考えていただくとわりあいにわかりやすいと思うのです。ゴルフのハンディキャップは三十六以下はございません。どんな新米でも三十六でプレーをする。ILOでも人権、労働基本権等に関する基準条約をある程度批准しないような発展途上国には経済協力つまり技術協力をすべきでないといたしております。かつて日本がガットに加盟を申請しましたときに、日本政府がILOに提出しているレポート、日本の労働者の労働諸条件に関する報告をガットの人たちが調べた結果、日本はまだ国際公正労働基準に照らして問題があるということで加盟承認が数年間見合わされた経験がございます。こういう重大な事実が、国際的な問題意識がうっかり見過ごされ、忘れられているというところに日本の今日の問題があるのではないかと思います。  いまや日本はGNP世界第三位、世界が目をむくような成長をいたしております。これをゴルフにたとえていうなら、シングル級のプレーヤーなのに、おれのハンディは三十だ、三十だと言って、いつも優勝をかっさらっていってしまう、こういう見方が世界にあるわけです。  今日、日本は、ILO百三十六の条約のうち二十九しか批准いたしておりません。世界の百二十三カ国の加盟国の中で六十二番目です。発展途上国でさえも日本よりもはるかに多くの条約を批准しております。これでは日本はずいぶん不公平なあるいは公正でない条件で競争していると非難されてもしかたがないと思います。これからはこのような面から、つまり国際公正労働基準をかがみにしたフェアな競争という問題が世界でますます議論されていくと思いますし、このことを私ども日本人は十分に考えていかなければならないと思います。  第二次世界大戦後、一九五一年、つまり昭和二十六年に日本は再びILOに加盟いたしました。一九三八年、昭和十三年に脱退をして一九五一年に再加盟したわけでございますが、日本が再びILOの場に迎えられるにあたって、当時ILOの長老といわれておりましたポール・ラマジュというフランスの代表が、日本の再加盟を支持しながらも次のようなことばを述べております。われわれはこの放蕩むすこの帰宅を迎えよう、そして将来に期待しよう、このように述べて、彼は演説を結んだそうでございます。それから二十二年、日本ははたしてこの世界の期待にこたえているといい得るでしょうか。答えは、私はノーだと思うのです。  高度成長を続けるわが国は、いまや世界の先進工業国の一員となりました。組織労働者の数も一千万人をこえるという強大な姿に発展してまいりました。ILOの加盟国は百二十三、その中に先進国の数は幾つあるのか。このうちの一割もないわけです。たいへんに貧困でひどい環境のもとで労働者が弾圧をされ、人種差別を受けているような国々がたくさんあります。それらを考えると、今日の日本が先進工業国の一つとして考えなければならない役割り、これはおのずから答えの出てくるところではないだろうか。  いままでの日本の労働組合は、ときとしてILOを時の氏神のように、ILOに対して何かしてもらうという姿勢でやってまいりましたけれども、これからは、アジアの開発あるいは平和な世界の建設に何をなすべきか、何ができるかを真剣に考えていかなければならない時期に来ていると思います。そしてこれは私が労働代表であるがゆえに、まず労働組合としての強い反省の立場からいま申し上げておりますけれども、労使関係というのは、労働組合は使用者のかがみです。つまり使用者側に問題があるからいろいろなことがILOに関連しても起きてきているというふうに思います。  今日このようなことを私たち日本の政労使は十分に考え、新たな役割りについて検討してみるのは非常に大事なことではないかと考えております。このようなことを考えながら、本日のこの三つの問題について賛成の意を表して、私の意見を終わります。(拍手)
  8. 藤井勝志

    ○藤井委員長 ありがとうございました。  次に、慶谷参考人にお願いいたします。
  9. 慶谷淑夫

    ○慶谷参考人 参考人の慶谷でございます。  今回提案されています国際労働機関憲章の改正の問題につきましては、労働機関の運営に参与する政府労使の代表の人数を増加させようとするものでありまして、現在ILOの加盟国は百二十三国でございますから、できるだけ多くの国の代表に国際労働機関の運営に参加させるということは非常に好ましいことでありまして、わが国としても批准することは至当であると考えるわけであります。  次に、電離放射線からの労働者の保護に関する条約、ILO百十五号条約が問題になっておりますが、この条約は、成立の趣旨から考えてみますと、近代科学技術の進展に伴いまして、産業社会におきましてもだんだん電離放射線に関する災害が多数見られるようになりましたので、作業過程において電離放射線にさらされるおそれのある労働者をそういうふうな放射線から保護するということを目的としているものでございます。  わが国におきましても、放射線業務従事者が電離放射線によって被曝した事故というのも最近各地におきまして起こっているわけでございます。たとえば昭和四十六年九月二十日には千葉県の市原市の三井造船千葉造船所構内におきましてイリジウム一九二によって五名が被曝をいたしまして、そのうち二名が重傷、三名が軽傷ということになっております。また四十六年の七月十五日には、東海村の日本原子力発電の東海発電所で、発電用の原子炉燃料制御棒の取り扱い中に三名が被曝をする。しかし、この場合におきましては許容量以下で休業がなかったようでありますが、等々の事故が発生をしているわけでございます。  そういうふうな中におきまして、この条約を批准いたしまして、電離放射線にさらされています労働者を保護していくということは、わが国として当然の義務であろうというふうに考えているわけであります。すでにこの問題につきましても、わが国の法制も次第に整備をされてまいりまして、従来の電離放射線障害防止規則の整備も行なわれましたし、また一般職の国家公務員につきましても、人事院規則の一〇-四とかあるいは一〇-五におきまして、こういうふうな放射線災害からの労働者の保護を定めておるわけです。こういうような国内法の整備とともに、わが国の法内容と申しますものがILO百十五号条約の内容に沿うようになりましたので、そこで今回、この条約の批准が上程されるようになったと考えておりますが、この条約の趣旨からいたしまして、先ほども申しましたように、すみやかに批准をするということが非常に重要な問題であろうというふうに考えているわけでございます。  次に、機械の防護に関する条約、ILO百十九号条約についてでございますけれども、この条約は、近来の生産技術の進展に伴いまして、産業社会で使用される機械が非常に多種多様になってまいりました。要するに、機械から生ずる災害が現在非常に増加している。その機械による災害からの労働者の保護をうたっているわけでございます。わが国におきましても、最近、機械に基因する災害がわりあいにふえているということが言えるわけであります。  わが国の労働災害は、昭和三十六年以来減少してまいりました。特に、生産工程とかあるいは作業の自動化とかあるいは機械化によりまして、ものの取り扱いだとか運搬人等、人力作業を中心とする労働災害は減少をしておりますが、しかし、機械の使用台数がだんだん増加してまいりまして、またその大型化あるいは高速化ということがはかられまして、荷役運搬機械とか一般動力機械という機械に基因する災害は逐年増加をしまして、企業災害において占める割合がだんだん増加をしてきております。  最近の労働災害の発生状況、四十六年度の労働災害の発生状況を約十年前の、すなわち昭和三十五年の労働災害の発生状況と比較いたしますと、死傷者数は全体では約二〇%減少しまして、特に取り扱い、運搬、墜落等の作業行動による災害あるいは感電、爆発等の特殊危険による災害がそれぞれ三〇%減少はしておりますけれども、各種の動力機械による災害、いわゆる動力運転災害と申しますのは、逆に二五%増加をしてきているという状況でございます。それで、昭和四十六年度における各種の動力機械による死傷者数というのは、約九万七千人です。そのうち死亡者は二千六百人でありまして、全災害中に占める比率は、三十五年の二三%から三〇%と増加をしてきております。各種の動力機械による災害のうち死傷者数の増加の著しいのは、クレーン等の動力揚量機械による災害でございます。これが約四〇%増加をしております。あるいはフォークリフト等の動力運搬機械による災害、これも約二〇%ほど増加をしてきておるわけでございます。  こういうように、機械による災害がわが国におきましても増加をしてきているという状況のもとにおきまして、ILO百十九号条約を批准いたしますことは、労働者の安全と健康の保護にぜひ必要なことであるというふうに思うわけでございます。  それで、昨年労働安全衛生法が施行されまして、それによってわが国も、危険部分が防護されてない機械の譲渡等を禁止することになりました。それによってわが国の法制の内容も、ILO百十九号条約に適合するようになったわけであります。したがって、この際ILO条約を批准して、さらにわが国の機械から生ずる災害の防止に対する姿勢を明らかにするということは、これは刻下の急務であると考えておるわけでございます。  今回の安全関係の二条約の批准が問題になっておりますから、いままで参考人も申されましたように、現在ILOで採択している条約は百三十六でございます。このうち日本が批准している条約は二十九でありまして、これは非常に少な過ぎるのではないかというふうな意見も出てくると思います。たとえば、フランスは九十三批准しておる、イタリアは七十八批准しておる、イギリスは六十六批准しておりますし、ドイツは四十四の条約を批准しておりますし、ソ連は四十の条約を批准しておりますし、インドは三十の条約を批准しておりますし、カナダは二十六の条約を批准しております。アメリカは、先ほどもお話にありましたように、七つの条約を批准しておるわけです。大体、現在、一国当たりの平均批准数は三十一でございます。したがって、今度日本が二つの条約を批准しますと、二十九足す二で三十一になり、まあ国際的には平均の水準に達するということが言えます。  しかしながら、私は今後の方向としまして、やはり政府労使が協力をいたしまして、できるだけ多くのILO条約を批准していくという方向を確認していかなければならないというふうに思いますし、またそのことが日本の労働者の労働条件を改善し、また日本の国際的信用を回復していくことに役立つというふうに確信をしているわけでございます。  一応持ち時間もありますので、これで私の意見の発表を終わりたいと思います。(拍手)
  10. 藤井勝志

    ○藤井委員長 ありがとうございました。  次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  11. 佐藤進

    ○佐藤参考人 このたび日本政府におきましては、三条約を批准するという政策を打ち出されたことを私はまことに欣快に存じております。  そこで、ILO条約と国内法との関係につきまして、従来日本政府がおとりになってきた政策その他を私見として申し上げ、御参考に供したいと思います。  従来、ILO条約は、主としてILOに加盟する諸国の義務創設文書と申しますか、ILO総会で採択された国際労働条約についてしかるべき機関に付託をして批准を促進し、そしてそれを国内法化するということを義務づけている文書と考えられています。  したがいまして、この点につきましては、ILO条約は他の条約とかなり異なっておりまして、通常の政府間条約になりますと、取りきめによってかなり即時的な効果が出てまいりますが、ILO条約の場合には、しかるべき機関に付託をして、と申しますのは、ILO条約そのものが、各加盟国に模範的な労働立法の内容を提供するという性格を持っておりますために、批准を通じて、そして国内法化をはかるという性格を持っております。こういう点につきまして見るときに、ILO条約がそれならばわが国の労働政策あるいは労働力政策に一体どういう影響を持ってきたかという点を考えてみますと、戦前から、わが国の場合には条約の批准の政策についてはきわめて消極的であったということをいわざるを得ないのであります。  たとえば戦前に採択されたILO条約の中には、その条約の中にかなり日本としての特殊条項を挿入しておりまして、そしてその特殊条項が国際的な先進国で採択された国内法の基準よりもかなり低いという条項が多かったわけです。この点は他の参考人が御指摘になりましたように、このことが当時の日本の国力と申しますか、産業発展の状況と申しますか、そういうものとのからみ合いでわが国の特殊性だけが強調され、そして当時の日本の国際的な地位と申しますか、力によってこういう特殊条項が入れられたという点で、かなり世界的に評判を落としていたことは事実なんです。これがいわゆる戦前のソシアルダンピングと申しますか、血と肉の輸出によって日本の輸出がはかられたといわれている国際的な一つの理由だと思います。  それと同時に、わが国の場合には、ILO加盟国として有力な地位にあったわけでございますけれども、いま申しましたような各労働基準関係における条約に特殊条項を挿入して非常に特殊な取り扱いを国際社会で強調している。それから同時に、基本的な人権その他の面に関するILOの政策その他に関しましても、たとえば団結権その他の問題に対してもかなり消極的な政策しか、当時の国内事情としてはとり得なかったということも、あわせて日本のソシアルダンピングの非難を、先進諸国をして非常に正当化させる理由になっていたのであろうと思います。  戦後ILOに復帰いたしまして、わが国のこれまた二重経済構造を軸にしました労働保護政策は、それは国内の事情によっていたし方なかったのかもしれませんけれども、一歩進んでわが国の労働基準法が、戦前採択されました国際労働条約のエッセンスを労働基準法の各規定の中に盛り込んだといわれておりますけれども、やはりこの面では、純粋な、理論的な面から見まして、ILO条約そのものを内容とした労働基準法にはなっていなかったと考えられるわけであります。  と申しますのは、たとえば労働時間八時間制一つとってみましても、わが国の国内経済における二重経済構造そのものが反映をしていたということでただし書き、例外条項が労働基準法にかなり多くございます。これは労働時間に限らず、女子、年少労働者あるいは今次の批准をいたします労働安全制諸法規につきましても、同じようにただし書き、例外条項が非常に多くございまして、この面からも、ILO条約の面から見て、わが国の労働基準法そのものは、決してILOの条約の内容を結晶化されたものではなくて、その表面的なものしかとり得なかったということがあると思います。このことが、またおそらく私は戦後の新しいソシアルダンピングの非難を受けてきた今日的な日本の事情ではないかと思っております。  こういうことを総体的に見まして、ILO加盟国の中には、いずれの国においても、自国の国内のいろいろな諸事情を擁護しようというナショナリズムが反映をしていることは、これはいたし方ない事実ではございますけれども、やはりILOが条約を設定して、そしてILO加盟国に対して訴えていこうとしたものは、少なくとも国際経済社会、国際労働社会における公正取引の原則、いわゆる労働力の適正な保護を通じて価格の公正な競争原理を打ち出し、そしてそれによって国際社会の秩序のある経済社会、労働者の基本的人権を尊重した上での秩序のある国際経済取引慣行を意図しようとしていたということは、これもまた否定のできない事実ではないかと思います。このことが、いわばインターナショナリズムと申しますか、国際的な正義あるいは国際的な協調主義ということになりますと、当然にナショナリズムとインターナショナリズムと申しますが、国際協調とが少なくともかみ合わさったいわば法の体系というものが、あるいは行政の体系が考えられなければならなかったと思います。この点から見ますと、少なくともわが国の条約の批准を通じて見る限り、やはりこの点にも私は慎重さに名をかりた逆の意味での消極さが欧州諸国に比して見られるのではないかという気がいたします。  そういう点から見まして、今次の三条約の積極的な批准の政策というものは、私個人としてはきわめて賛意を表したいと思っております。  とりわけILO機関憲章の改正につきましては、いわばILOへの加盟国の増加、それからILOの条約作成という戦前から戦後の機能に加えまして、ILOの果たす国際社会における技術的援助、その他公正競争の実現というものを通ずる多面的な活動の拡大化に対応して国際的ないわば政治諸関係との配慮を兼ねて理事の増員をいたすということは、この点世界的な産業国家として、同時に常任理事国としてわが国は当然批准をされるということについては、私自身は全く賛意を表したいと思っております。  次に、電離放射線保護条約、ILO百十五号につきましては、慶谷参考人も御指摘のように、これに対応する国内的な措置としましては、従来、この条約に照らしてきわめて不備であったわけでございますけれども、昨今の技術革新に伴う多面的な放射線利用、そのための関係労働者のいわば被曝に対する人体保護、そのための措置が急務であったということ、それに対して政策的には十分対応し得なかったということを補完いたしまして、若干の疑義はございますけれども、労働安全衛生法、昭和四十七年法五十七号の制定に伴いまして、同時に電離放射線障害防止規則、昭和四十七年労働省令四十一号を制定をいたしましたことは、この電離放射線保護条約と国内法との関係で、当然条約批准に値する内容を持つものとしてこれまた賛意を表したいと思っております。ただ個別的、こまかい点につきましては理論的にはもう少し国内法について検討すべき点もございますけれども、現在の労働安全衛生法とそれに伴います電離放射線障害防止規則の作成に伴いまして、この条約は私は批准ができるという点で賛意を表したいと思います。  それから三番目に、機械防護条約、ILO百十九号の批准につきましては、これに対応する国内法は昭和四十七年法五十七号をもって労働安全衛生法の制定が見られたわけでございます。それに伴いまして昭和四十七年ですか、これまた労働省令三十二号によって労働安全衛生規則を持って、そしてその労働安全衛生規則の第三章第一節、機械等に関する規則、それから第二編、安全基準その他の対応する措置がとられたわけでございます。この条約は先ほども慶谷参考人が御指摘になりましたように、人力によって作動する機械を対象にしまして、条約で定める法定の危険部分について適切な労働者保護のための防護措置のされていない機械の販売、賃貸並びにそれ以外の方法による移転並びに展示の禁止並びに特に使用の禁止を包括的に定めていると理解をされます。これに伴いまして、わが国の法もほぼこれに対応しているというふうに私は理解をいたします。この点につきましては、先ほどの電離放射線保護条約並びに機械防護条約に対応する立法措置がとられたことには私は賛意を表しますけれども、この点、とられることが実を申しますと、高度経済成長下の技術革新に伴う産業社会で、いろいろな労働者の安全並びに衛生を脅かす諸条件が増大をするまで対策が十分にとられずに来て、そして今日こういう法をもってしたということは、私は非常におそきに失したと思います。しかし、おそきに失しましたにしても、わが国の現代の労働安全の状況に、新しい技術革新に伴い労働の安全を脅かすという事態がすでにまた出ているわけですが、そういう事態にこれから、いま申しましたような国内法が対応するという前提で条約が積極的に批准をされて、国内法もそれに対応するような措置をとるという政策的表明を政府がなされたということについては、これまた賛意を表するものでございます。  最後に、わが国の労働条約の批准に伴う国内法化の措置の問題でございますけれども、従来わが国の場合には憲法九十八条の二項との関係がございまして、これは確立された国際法規を順守する義務があるという意味で、若干学説間には議論がございますけれども、わが国の積極的な国際社会への加入ということを前提にして当然国際法優位の原則がとられたというふうに理解をいたし、そういう理解に立ちまして政府の従来の条約批准に伴う国内法措置の実態を見てまいりますと、条約そのものを批准をする前に条約に抵触をするかあるいは条約から見て、欠落をしているものがあればこれを制定をして、そして条約批准を進めていくということをおやりになっているのが日本の条約批准に伴う国内法採択のルールというふうに、こういうルールが一応確立をしているというふうに理解をいたしております。したがいまして今次の三条約、まあ三条約と申しましても主たる労働基準関係の実体に影響を及ぼす条約は先ほど申しました電離放射線保護に関する条約並びに機械防護に関する条約でございますけれども、この法措置は私は適切であったというふうに理解をいたします。  ただ最後に、この条約の批准の多い少ないということが国際社会で問題になるのかならないのかという点でございますけれども、欧米諸国とりわけ米を除きますとヨーロッパEC諸国並びに北欧諸国に比してわが国の労働条約の批准度は、先ほども慶谷参考人が申されたごとくきわめて少ない。ただ、この多い少ないということを問題にすべきではないと私も思います。欧米諸国の労働条約の批准の多いこと少ないことというのは、その国の国内情勢も、もちろん産業の発展、歴史的な発展条件その他がございますけれども、わが国の条約の批准のうちその内容がかなり問題となる。今次のようにこの二条約を積極的に批准になるという政策が私は非常にいいことだと思います。と申しますのは、従来条約が批准をされた内容を見てみますと、実質的な今日の労働関係の変化、労働力不足下の技術革新下の状態に適合する内容の労働条約を採択をしているかと申しますと、きわめて労働基準法の実態に適合するような意味での、いわば先ほど冒頭に申しましたように、特殊例外条項をわが国に残すようなものに、かなり残しているような、慣行に抵触するような実質的な労働条約、たとえば労働時間に関する条約あるいは婦人労働に関する条約あるいはその他に関する条約がきわめて批准が少ないということについては、今後私は日本政府は非常に一考の余地ありというふうに考えております。  この点につきましては、もちろんEC諸国が、あるいは北欧諸国が積極的に労働基準に関する条約を適用するというのは、もちろん一国だけでは今日国際社会で主人公になることができない。少なくとも国際協調によって、それも労働者の生活水準を高めることによって資本主義、かりに社会主義、共産主義社会でもそうでございますけれども、それによって成り立つというILOの原則に忠実であるということと忠実でないということになるのではないかという気がいたします。  この点から見て、今次の条約の批准を契機にいたしまして、それも非常におくれていると申しますか、戦前採択された条約が、今日、戦後になりまして、ILOではやはり国際労働情勢の変化に対応しまして新しい時代の要請に基づいた数多くの条約の改定をなしております。そうしますと、現在、労働基準法の改正にまずその一角として労働安全衛生法が特別法として制定を見、その一環として各種規則の改定を見、今次の批准に至ったわけでございますけれども、日本の現在の国際的な地位その他を考え、同時にILOにおける常任理事国としての立場を考えますと、もっと実体的な条約を積極的に批准をなされることが私は日本のとるべき政策ではないかというふうに考えます。  非常に時間をたくさんいただきまして、ありがとうございました。以上で私の陳述を終わります。(拍手)
  12. 藤井勝志

    ○藤井委員長 ありがとうございました。  これにて参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  13. 藤井勝志

    ○藤井委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  14. 石井一

    ○石井委員 きょうは、たいへん御多忙のところ参考人としてお出ましいただきまして、たいへん示唆に富むお話をいただきましてありがとうございました。  先ほどから皆さんのお話を伺っておりまして、私、自由民主党の所属でございますが、やはり批准という問題がなぜこんなにおくれておるのか、基本的な政府のほうの考え方ということについても、私たち議員としても少し考え方を改めなければいけないのではないか、こういうふうな印象を率直に受けておるわけでございます。  最初の吉村参考人からは、やりたいのだけれども非常に弾力性がなく、また各国の実情に合わないというふうなことがございましたが、それと同時にまた、批准をしてもなかなか守らない国もたくさんある。こういうことでもいかぬわけでありますけれども、やはりある程度、その辺の従来のいわゆる保守的な批准に対する態度というものに対して私は検討を加えるという立場で今後対処したい、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで、私の持ち時間、だいぶ参考人の時間が長引いたようでございまして削られてきておりますので、端的にお伺いをいたしまして、端的にお答えをいただきたいと思うのでございますが、安養寺参考人に、先ほどILO五十周年の時点で十七の案件のうち七件は批准を済ましておるが、十件が残っておる。このあとの十件でもう即座にできると考えられるもの、あなたのお考えで、あえて言うならばプライオリティーをつけてくれ、こういう注文をいたした場合に、十件とも全部そういう範疇に入るのか、少なくともこれと、これと、これと、これと、これは、もういまの日本のレベルからしてだいじょうぶだと、こういうようにお考えになるか、この点からまずお伺いしたいと思います。
  15. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 直ちに批准できるという意味が、国内法上直ちに批准できるという意味か、それとも政策的にも直ちに批准しなければならぬという意味なのか、その点はまあ意味によって違うと思うのであります。  しかし、十七の重要な決定がILO理事会でなされまして、十残っておるわけですが、その中でも特に、ILOのジェンクス事務総長日本に来たときに労働大臣に会って、四つばかりのことを言っておる。それからILO東京支局が次の田村労働大臣時代にILOとの連絡をとった上で、十の中で四つばかりを指摘しておるのでありますが、それはやはり私はILO的に考えれば非常に重要なものだと思うのであります。その四つの中でも、特に国内法を変えないでもいけるんじゃないかというものにはどれがあるかということなのでありますが、百五号には問題が少しあるんじゃないかと私は思いますが、それ以外の差別待遇の問題とか社会保障の問題とか、そういう問題については、条約そのものが宣言的な部分が多いわけでありますから、直ちに批准しても問題はそれほどないのではないか、こういうものだと私は思うのであります。  もちろん、それにいたしましても、詳細にほじくっていけば、それはずいぶん国内法に関係があるところはあると思いますけれども、原労働大臣が即座にできれば回答したいと言ったのも、おそらくそこらあたりからきておると思うのであります。したがって、法律的な国内法との関連は抜きにいたしますと、十のうちでも特にまたその四つばかりの先ほど私が言いましたものが、かりに優先順位をつけるとすればそういう状態ではないかと思うのであります。
  16. 石井一

    ○石井委員 私がお伺いしましたのは、やはり国内法との関連をも含めて、しかし緊急度の高いということで、大体御趣旨はわかりましたが、百二号の社会保障に関する条約でございますけれども、これはやはり社会保障制度日本における基準ということをも考えて、非常に政治的にも重要な条約だと私は考えておるわけでございますけれども、これに対して国内法上の抵触ということはほとんどないとあなたはお考えですか。
  17. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 この社会保障に関する条約の内容は非常に多岐にわたっておりまして、一つ一つを法律専門家に検討していただかなければわからぬと思うのでありますが、私はやはり若干のことは整備の必要があるのじゃないかと思います。しかし、それにしても基本的なものは日本でも精神的には相当整備をされておるわけでありますから、宣言的な部分を相当含んでおりますし、しかも批准にあたっては幾つかの部分を指摘して、こことここを批准するということもできるようになっておるようでございますから、それらの点を考え合わせれば、重要度合いからいきまして、私はそう困難なくできる時代になっているのではないかと思います。専門的なことはまた別に検討をお願いしたいと思います。
  18. 石井一

    ○石井委員 次に、塩路参考人に一問お尋ねをしたいと思うのでございますが、あなたのお話の中で、いわゆるフェアでない労働条件というふうなものをやはり克服していくというお話でございまして、私一つ思い当たるのは、週休二日制という問題であります。これは先進国で相当採用されており、わが国でもそういう方向にいっておることは確かですが、これがあなたのおっしゃっておる国際公正労働基準という面から見ると、やはり著しく問題点となる点であるかどうか、この点についてお答えいただきたいと思います。
  19. 塩路一郎

    ○塩路参考人 先ほど国際公正労働基準という点についてのみ若干説明をさせていただいたわけですけれども、あの中でも申し上げたように、国際公正労働基準に照らして世界の労働者労働条件を引き上げていこうという考え方は、ILO創設以来、先進諸国のみならず、発展途上国の加盟国の中にも多く理解もされ、努力してきたことなんですけれども、その基準なるもののわかりやすい部分がわりあいに少ないのです。そこで私がゴルフのハンディキャップの例を若干申し上げたのですけれども、日本の今日の経済成長の姿、そして国際市場における日本のあり方等からいろいろいわれている点は、一つは賃金の比較、そして労働条件の比較なんですけれども、賃金の比較というのはわりあいにむずかしい。理論的に言いますと、絶対比較というのはできないという認識があるのですが、それでもいろいろな努力をして比較をして、どうしようかといわれているのです。その他の労働条件の中でわかりやすいものは何かというと、この週休二日制、そして労働時間の問題なんです。ですから、今日の日本がまず考えなければいけないのは、世界各国どこと比べてもたいへんに比較のしやすい、わかりやすい部分は、できるだけ早く実現しなければならない。週休二日というのはどこの国でもやれるわかりやすいことであり、週の労働時間は何時間にする――ILOでは早くから四十時間ということを勧告できめておりますけれども、そういうものを実現するというのは日本にとって急務ではないか、このように思います。
  20. 石井一

    ○石井委員 いまの問題も非常に興味がある問題でございますが、時間の関係で次に移らしていただきます。  慶谷参考人からいろいろと専門的なお話がございましたが、ただいま議題になっております案件は、たとえばアメリカ、西ドイツ、スイス、フランス、イギリスなどでは、多くの機械その他というふうなものに関して、これは批准してないのじゃないかと思うのでございます。もしそういう場合に――いまの中で批准を済ましている国もあるかとも思いますが、そういう国から機械をどんどんとわが国は輸入しておる。要するに私が言わんとしておることは、加盟国と非加盟国とがある。こちらは加盟国になっても、非加盟国からどんどんとそういう機械が入ってくる場合には、こういう問題の調整というのがILOではできないのだろうか。批准をしなければいかぬということは非常によくわかりますけれども、その辺の統制というものが、これはぼくは非常に技術的にむずかしい問題じゃないかと思うのでございますが、この点はいかがですか。
  21. 慶谷淑夫

    ○慶谷参考人 いま御指摘がありましたように、機械の防護に関する条約の批准国は現在三十カ国でありまして、おもな国を申し上げますと、イタリアとかノルウェーとかスペインとかスウェーデンとかソビエト連邦、そのほか小さい国がいろいろございます。確かに御質問がありましたように、条約を批准した場合は、わが国の場合は国内法というふうになりますし、国内におきましてこの条約を守らなければならないことは言うまでもございません。したがって、私まだ詳しく条約の内容を十分に検討しておりませんけれども、外国から機械を輸入したような場合におきまして、国内におきまして使うというような場合は、この条約の基準に適合するようにしていかなければならないということになるのじゃないかと思いますが、その点につきましてのILOの調整というのが十分に行なわれていないように考えるわけであります。
  22. 石井一

    ○石井委員 それでは、次に佐藤参考人にお伺いします。  これは参考人がお述べになった問題とは直接関係がありませんが、女子大の教授ということで、婦人の地位という問題に関して一言御所見を伺っておきたいと思うのですが、ILOにおいては、百三号とか八十九号とかいうのにわが国は批准をまだやっておらないという状態でございますが、百号に関してはすでに四十二年にやっておる。これは賃金の問題であろうと思います。ところが、現実にはなかなかそういうふうに各企業においても動いておらないのではないか。戦後くつ下と女性は強くなったといわれる反面、やはり労働条件の中ではなかなかそういうレベルに達してないという感じが私は直感としてするわけですが、この間四月十日の婦人の日に、何か婦人の意識調査を読んでおりましても、まだまだ不平等だということを婦人が訴えておるということもありますが、やはりそういうふうにお考えになりますか。この点はいかがですか。
  23. 佐藤進

    ○佐藤参考人 私は、いま石井先生御指摘のように、婦人の意識の問題の前に、やはり今日の労働力不足の中で、婦人の労働力化が非常に促進をされているという現状を考えてみますと、現在の婦人の保護、とりわけ労働立法面では、条約の面からそう抵触していると思わないのですけれども、婦人労働に関する監督という面の行政のおくれと申しますか、その面が一点と、それから、社会保障の面から見ますと、私は非常におくれているというふうに考えます。したがって、石井先生にぜひ、百三号条約を含めて、条約の積極的批准を促進をお願いいたしたい。あわせて、それに関係をいたします出産、これは当然女子には、母性保護ということから見ますと、日本の労働力の将来を考えてみますと、出産そのものを社会保険の保険事故として扱うという面のことを考え合わせていただきたい。としますと、当然百二号の条約の問題にひっかかりますけれども、私はその点で、結論的には、おくれていると理解をいたしております。
  24. 石井一

    ○石井委員 少し問題点からそれるかもわかりませんが、去る四月二十七、八日の交通ゼネストの問題に関しまして、一、二御意見を承っておきたいと思うのでございますが、吉村参考人、憲法の二十八条には勤労者の団結権、団体交渉権など保障してございます。しかし一方、公労法の十七条では、こういうスト権を禁止しておるということでございますが、この二つの、条約を対比しての議論として、一体この公労法の十七条というのは憲法違反だというふうにお考えになるか、あるいはこの間のストライキの突入ということは全くの違法行為だというふうにお考えになるか、この点はあなたの御意見はいかがですか。
  25. 吉村一雄

    ○吉村参考人 石井先生の御質問にお答え申し上げます。  まず、ILOの二条約を背景に置いて意見を申し述べさせていただきたいと思いますが、第一の憲法の規定と公労法の規定の間に、私は矛盾は存在しないと考えます。何となれば、日本を含む世界の先進国公務員あるいは公共部門の労働基本権ということについて考えますと、ILOのことばでいえば重要産業並びに公務員、パブリックサービスということばを使っておりますが、これに対してスト権の制限もしくは禁止をするという法律上の制度ないし慣行は、何らかの程度において、いずれの先進国にも存在しておるわけであります。かりにスト権が与えられている場合にも、いわゆる差しとめ命令権であるとか、あるいは緊急命令権であるとか、そのような措置がとられておりまして、実質的に一般の社会公務員ないしは重要産業のスト権の行使によって迷惑がかからぬように、国民経済上混乱が生じないような予防措置がとられております。かような現状にかんがみまして、憲法に規定する労働者に対するいわゆる三基本権、スト権を含む三基本権の規程と、公労法における三公社五現業あるいは公務員法、地方公務員法におけるスト権の禁止規定とは、矛盾するものではないと私は考えます。  それから、過日の不幸なる現実でございますが、スト突入という事態に対しましては、私はこれは違法であると断じます。
  26. 石井一

    ○石井委員 安養寺参考人、過日のストライキ突入は違法だとあなたはお考えになりますか。
  27. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 私は、先日春闘で全国的にストライキが起こったわけでありますが、これは現在の憲法の条項に照らしまして、決してこれに反するものではない。法律には確かに禁止とは書いておりますけれども、これは当然憲法にある基本的人権というものが保障されている以上、このこと自体が憲法達反の疑いが非常に強いし、私どものやったことは正当行為だと言っておる総評の立場を当然支持したいと思います。  それから、ILO条約の問題とこのストライキ権の関係で若干つけ加えさせていただきますと、ILOではストライキそのものについての条約というものは具体的にはないのであります。しかし、ではストライキのことを論じてないかといいますとたいへん多く論じておるのでありまして、先ほど指摘をいたしました百号条約も、結局は争議行為の問題の結果強制労働、いわゆる懲役などにすることについての条約なんであります。  それから、同時に本来の考え方といたしまして、労働者がみずからの労働力を提供しない、きょうは気分が悪いから休むとか、きょうはどうも自分の賃金について不服があるから休むというようなことはあっても、これは決して違法ではないのであります。ただ、それを集団で団結行為としてやることが違法だというのが資本主義発達初期における争議行為はいけないという禁止立法であった。したがって、結社の自由団結権がほんとうに認められるということは、逆に言えばいま言ったことがスムースに争議行為も結局は団結行為としては当然認められる、こういう前提であります。残りますのは、その争議行為の結果が国民生活にどれだけ重要な影響を及ぼすかという点に各国の国内法がいろいろかかわり合いを持っているわけであります。  同時に、西欧の国々でも、アメリカでも、最近の公務公共部門の職場というのは非常に変化を遂げておりまして、民間とか公共部門という差はほとんどなくなりつつある職場がどんどんふえておるのであります。公務員の職場といえども、たとえばコンピューター室なんかに行ってみますと、同じ部屋に同じような服装で仕事をしているのに、半分はレンタル会社職員であり半分は公務員。レンタル会社職員がやめれば仕事はストップをする。それからたとえば東京清掃なんかを見ましても、自動車の運転は半分は民間の一般特定運送であります。しかも労働組合をどんどん組織化をしておるわけです。したがって、そういうふうに民間とか公共とか関係のないような状態に拡大をしていった今日では、ヨーロッパではかりに各国に若干の法制があったとしても、現実的には相当広範な、相当きびしいストライキであるにもかかわらず、その結果は強制労働に値するものとかあるいは大量処分とか、そういうものは実際ないわけでありますし、それらを基礎にしてILOも逐次勧告をしておる、こういうことだと私は理解をしております。
  28. 石井一

    ○石井委員 スト突入が合法だということになりますと、公労法十七条は憲法違反だ、こういうお考えですか、一言でけっこうですから。
  29. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 公労法の十七条は憲法違反だと私どもは思っております。
  30. 石井一

    ○石井委員 それでは最後に慶谷参考人にお伺いしたいと思いますが、現在ソ連だとか中国だどか、ヨーロッパのほとんどの国々その他でも、いわゆるこういう公務員ストライキ禁止という条項があるというふうに思っておりますが、これを認めている国はどこなのか、これも簡単でけっこうでございますけれども、世界情勢について一言でけっこうですから、この点についてお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  31. 慶谷淑夫

    ○慶谷参考人 いまの御質問にお答えしますけれども、公務員といいましても非常に概念が広うございまして、わが国の場合で申しましても、非現業国家公務員もございますし、非現業地方公務員、現業国家公務員あるいは地方公営企業職員、その他公務員に準ずる職員、いわゆる公共企業体の職員もございますから、一がいに公務員と申しましても、どのような範囲の職員をさすのかということがはっきりいたしませんと、なかなか答えることがむずかしいわけでございますけれども、ただいわゆる非現業の公務員につきましては、たとえばアメリカの連邦法あたりにおきましてはストライキ禁止しておりますし、その他イギリスあたりにも争議を禁止する規定はございませんけれども、ストライキをやった場合には懲戒処分にするというふうなことが、大蔵省のいろいろ解説書に書いてございます。公共企業体等の職員になりますと、一般的にスト権を制限してない国が多いわけでございます。しかし公務員ストライキ権の制限につきましては、各国によっていろいろ事情が違いますし、また各国の政策によっていろいろ違うものですから、外国がどうだから日本がこうならなくちゃならぬというふうに直ちに言うことができない事情にあるというふうに私は考えております。
  32. 藤井勝志

    ○藤井委員長 岡田春夫君。
  33. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 時間が制限されておりますので、若干要点だけを伺ってまいりたいと思います。  まず第一点は、五月にILOの理事会が行なわれる。そこで新聞の報道によりますと、各国の批准件数の国際比較のテーブルをすでにILOの事務局では準備をしている。それから輸出製品のコストの中の労務費の国際的な比較、こういう点をすでに準備を始めているというように聞いておりますが、こういう点はどういうことになっておりますか。安養寺さんにまず伺ってまいりたいと思います。
  34. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 先ほど塩路参考人からもたびたびお話がありましたように、塩路参考人が私の前任理事の時代から、貿易に関する公正基準といいますか、どういうふうに設定をしたらいいのか、あるいはその内容はどういうことであるべきかということは何度も議題になるし、また資料も準備をされ、やってきております。今度の理事会の詳細な資料はまだ入手しておりませんが、議題にはそのことが重要な議題として載っかっております。おそらく事務局のほうではさらに新しい資料を準備をして、それらの討論が当然あるものと考えております。
  35. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 批准の比較テーブルが出てまいりますことになりますと、先ほど塩路さんもお話しになりましたように、日本の場合に加盟国の中で六十四番目という、まあたいへん批准数ではおくれている、こういうことで、一がいにこれはその批准数の多少をもって比較するわけにはまいりませんけれども、しかし主要な十大国として常任理事でもあるだけに、この問題はやはり一つ重要な点であろうと私は考えております。  先ほど吉村さんからもいろいろお話を伺ったのでございますが、使用者の代表といいますか、経営者の戦闘的な代表としてたいへん戦闘的な御意見を経営者の立場に立ってお話しがあったのでございますが、その中で私はぜひ伺っておきたいことは、批准が不適当であると考えるものが十二と、こういうように吉村さんはお話しになっておりますが、その十二は具体的にどれとどれでございますか。
  36. 吉村一雄

    ○吉村参考人 岡田先生にお答えいたします。  ちょっとこれはテクニカルな問題でございますが、日本が批准を将来考慮する場合に取りのけていい条約の中に批准が不適当十二と申しました意味は、ある条約が存在しておって、それよりも内容のレベルの高い新しい条約が採択されて両方とも批准が可能である、批准がオープンされておるというような条約の幾つかのセットがございます。そのような場合にはレベルの高い条約を批准するのが至当であって、レベルの低い、古い条約がかりに批准が可能であっても、それを批准しても意味がない。したがってこれは批准をすることが不適切である、不適当であると申し上げたわけでございます。  これは例をあげますといろいろなものがございますが、たとえばある特定の危険作業に従事するような労働者の年齢の制限であるとか、そういうようなものは、以前の古い条約が採択された時代には何歳と、こう規定してあるのが、新しい条約においてはそれをもっと繰り上げて何歳と、こういっている場合に、両方とも批准していない場合には、新しいレベルの高い条約を批准すべきであって、古い条約を、批准は可能であるけれども、批准することは意味がない、こういう意味でございます。
  37. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 数を十二というお話でしたから、具体的な点を伺いたかったのでございますが、まあお答えがなければやむを得ませんけれども、いまの御趣旨で、古い条約ならもうしょうがないんだから、いい条約ならばこれは批准したほうがいいんだという御趣旨ならば、当然吉村さんは、五十年前の第一号条約は、もうこれは四十時間制度にもなりつつある世界的な情勢ですから、この一号条約批准には御賛成だろうと思いますが、いかがでございますか。
  38. 吉村一雄

    ○吉村参考人 岡田先生の御質問にお答えいたします。  この一号条約は、趣旨としてはけっこうでございますけれども、国内的に現行の基準法におけるいわゆる三六協定その他の規定がございますので、これは必ずしも使用者側がそれに反対しているというだけではございません。日本の超過勤務に対する労使の慣行というものもございますから、そういう問題から整理していく必要があると存じます。
  39. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 参考人に対する御意見を伺うのですから、あまりしつこく伺うのはよしておきますけれども、それでは一号条約は賛成されるわけですね。
  40. 吉村一雄

    ○吉村参考人 お答えいたします。  私はILOの使用理事という立場でお答えしておるのでございまして、これを批准するのが至当かどうかは日本の国内問題でございますから、私は国内で、別に皆さま方、先生方のような議員でもなければ政府の役人でもございませんので、趣旨としては私は賛成でございますが、日本でどうされるかということについては、私は意見を差し控えます。
  41. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ちょっと話題を変えますが、実はこれは理事になっておられる安養寺さん、それからまた副理事の吉村さん、その他、学者の皆さんにも伺いたいと思いますが、ILOというのは、国連機関の一部であります。したがいまして、国連に中華人民共和国が正式に正統の地位を確立して台湾が排除される、こういう事態になりました場合に、当然ILOからも台湾は排除されるべきであると思います。これは当然のことだと思うのですが、このような手続を現在までにおとりになっておられるのかどうか。そしてまた、おとりになっておられないならばこれはどういうようになさるのか。この点をひとつ、これは国の問題ですから、使用者の問題あるいは労働者の問題、そういう点とはかけ離れて、今日の国家利益の立場からはっきりした御答弁をいただきたいと思います。安養寺さんは理事ですから、どうぞ安養寺さんからひとつ順次お答えをいただきたいと思います。
  42. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 一昨年の十一月の理事会で、それまで台湾のほうが代表権を持っておったわけでありますが、これを明確に、北京政府のほうが代表権ありという国連の決議に従いましてそういうことをきめたのであります。これに至るたいへんな議論もあったようでありますが、当時の理事の方々にたいへん敬意を表するわけでございますが、そのあと、私、理事になりまして、いまはILOといたしましては全く受け入れる準備ができておるわけでありますから、あとは中国がこれに加盟をしてくることを待つだけであります。しかし、それだけではどうも芸がございませんので、私、労働側の理事といたしまして、中国労働組合に相当いたします総工会の設立の準備が、再建の準備が現在進んでおると聞いておりますので、この二カ月ばかりのうちに、数回にわたりまして中国のそれらの代表の方々とお会いをいたしまして、ぜひともすみやかにILO復帰をして――復帰というか正式に加盟手続をとられて、その上で世界の国際労働問題に力を添えてもらいたい、こういうことを特にお願いをしておる、こういうことでございます。
  43. 吉村一雄

    ○吉村参考人 岡田先生の御質問にお答えいたします。  これは、私、客観的事実を申し上げるのでございます。  ただいま安養寺参考人からお話ございましたように、実は私、当時すでに副理事理事会に出席してこの討議に参加したわけでございますが、一九七一年十一月の理事会におきまして最も重大な議題として、ピープルズ・リパブリック・オブ・チャイナを正統なる、レジティメートなりプレゼンタティブである、中国の、チャイナのレジティメート・リプレゼンタティブであるということが理事会におきまして承認いたされました。そうしてILOの事務局長は理事会の命を受けて、北京の政府に、ピープルズ・リパブリック・オブ・チャイナのガバメントに対して、いつでもILOにおいでいただくとびらは開かれておるという旨の招請状を出しました。しかしながら、現在に至るまで出席の回答もなく、具体的に出席をしていないのが実情でございます。  それから、次にもう一つこれに関連した問題を御参考までに申し上げますと、ILOの三者構成の原則にのっとる政労使の代表は、それぞれ同じ国から来ておっても、独立した、インディペンデントな代表でございます。言いかえれば、労使の代表政府の統制とか管轄とか圧力を受けない、こういう原則が尊重されております。したがって、中国におきましても、ILOに具体的に出席して参加される場合には、労使の代表政府のコントロールのもとにない、ほんとうにインディペンデントな自由な代表であるということが憲章上要求されるわけでございます。東欧圏の社会主義国の多くの例を見ますと、遺憾ながらこの憲章上の要求にあいまいな点が多うございます。たとえば、使用代表は国営企業の工場長である。これは政府の役人であります。労働組合代表は、ときには官選の労働組合代表であることが多うございます。このような場合には、これは憲章上の抵触事項として信任状委員会、クレデンシャル・コミィッティーで問題になる可能性が多いのでございます。
  44. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 よくわかりました。いま政労使がインディペンデントで、そういう形で交渉される、そういうお話でございましたので伺っておきますが、この間のILOの会議においてアパルトヘイトの問題がたいへん問題になったようですが、特にアパルトヘイトの問題では、日本の産業におけるアパルトヘイトに関連する問題として抵触するのではないかということで、たいへん問題になったようでもございます。実は、この外務委員会でもこの問題がこの間から再三問題になっているわけなのですが、インディペンデントな立場にある使用者側の代表として、吉村さんは、このアパルトヘイトの問題の日本産業の問題についてどういう見解をおとりになったのか、お差しつかえなければ御意見を伺っておきたいと思います。
  45. 吉村一雄

    ○吉村参考人 岡田先生にお答えいたします。  アパルトヘイトという、南ア連邦におけるこの制度は、ILOが人種の差別を撤廃するという根本理念に立っておるたてまえからして、かような制度は排除さるべきである、かような制度が存在しておることは嘆かわしい、デプローラブルである、こういう態度をとることにおいて私も意見を異にするものではありません。しかしながら、このアパルトヘイトの問題がILOの場においてどういう形で議論されるのかということによりまして、具体的にいまこれからどういう態度を私ども、たとえば日本の使用者代表として、あるいは理事会の使用者グループとしてどういう態度をとるのかということは、具体的な提案がない限りにおいて、それに対してイエスの態度をとるのか、ノーの態度をとるのか、アブステインするのか、それは具体的な問題でないとちょっとお答えいたしかねます。
  46. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 時間が二十分ですから、もうあと五分しかなくなりましたので、もう少しいろいろ伺いたかったのですけれども、この条約の関係を一、二お伺いをしたいと思います。  先ほどたしか佐藤先生じゃなかったかと思いますが、佐藤先生は労働安全衛生法のたいへん専門家でいらっしゃるそうですけれども、国内法の改正が必要な部分が少なくない、こういう意味での御意見の陳述がありました。私は、この条約を承認するにあたって、この問題はやはり重要な点だと思いますので、ぜひこれは伺っておきたいと思うわけです。特にそれに関連をして、きょうは外務省国連局長が帰ってしまったようですが、外務省もよく聞いておいてもらいたいのだけれども、安保条約とかそういう場合には、条約優先の原則というものを盛んに振り回すのだが、さてこういう問題になると、条約はうしろのほうへ隠れてしまって、国内法が先になるというような傾向があるわけなんで、そういう意味でも、これはちょっと意見になりましたからよけておきますが、佐藤さんから、時間がないので、こういう点をひとつ伺っておきたいと思います。
  47. 佐藤進

    ○佐藤参考人 私、先ほど、ILO条約を含めまして条約の批准にあたって、日本の政府が従来おとりになっているルールのようなものを少し申しました。その際には、わが国の政府の場合には、積極的に、条約批准にあたりまして、条約に抵触をする部分を修正をする。あるいはないものを新しく立法化措置をとって、そして条約批准に合わせて条約批准をするというルールをとっております。  今次の二条約につきましては、昨年の労働安全衛生法の制定、同時に、従来の労働基準法に基づく旧労働安全衛生規則、この部分を改定いたしまして、そして新しい労働省令をもって、この条約に適合するような形での採択をやっております。この点では、今次の条約について私は、従来の日本の条約批准のパターンを踏襲されたと考えております。  ただ、条約批准につきましてはいろいろ考え方がございまして、条約批准によって抵触するものがあった場合に、条約批准によって直ちに国内法的な効力を持つのかどうかという点での若干の学説上の議論はございます。しかし私は、ILO条約そのものの批准によって抵触をする部分は修正をされる、したがって国内法化されるというふうに理解をいたします。これは憲法九十八条二項によりまして「確立された国際法規」ということで特に批准という行為をとりまして、これは行政府が批准のイニシアチブをとるわけでございますけれども、最終的には、国民のいわば意思の決定機関と申しますのは国会でございますので、国会が御承認になれば当然それは国内法化をする。したがって、この考え方は、当然九十八条の二項の憲法の考え方は、国際法優位の原則を明記をしているというふうに理解をいたしております。したがいまして、ただ問題は、わが国の場合に、批准の条件に国内法が満たない場合には、いつになっても国内法の抵触をそのまま残して、それは批准をしていないのだからいいではないかという考え方がいつまで通るか。従来、私はILO条約の専門家としまして、歴史的にたどってみてとても遺憾だ、このことが今日ソシアルダンピングその他を招いて、今日でもその考え方をふっ切れないというのは、塩路参考人も御指摘になったように、私は一貫して今日でも主張している立場に立ちます。  以上です。
  48. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 どうも残念なんですが、先ほど石井委員から御質問がありました点に関連して、私のほうも伺っておきたいのですが、公労協関係の四月二十七日の問題を中心にスト権の問題です。  われわれが承知している限りにおいては、たとえばフランスでは警察官の組合も組織される。スト権もある。あるいはアメリカでは消防士の組合もある。こういう形で、公労協関係では団結権あるいはそれに当然関連する罷業権というのは国際的にどんどん広がっていくのが当然であり、日本のような場合はむしろ珍しいというか、非常に数が少ない例であるといわざるを得ないと思うのですが、こういう点について、今日の世界的な情勢において、公労協関係の団結権、罷業権の問題について、先ほど慶谷さんからお話がございましたけれども、労働者側の代表としての安養寺さんから、そして塩路さんからも、ひとつ御意見を伺いたいと思います。
  49. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 ILO条約日本の憲法といいますか、この両方から見ました場合に、日本労働者団結権交渉権、それからスト権は不当制限、規制をされている。特にILO条約だけでいきましても、警察軍隊は国内法であるが、その他は結社の自由が与えられるという基本的な条約批准しているにもかかわらず、今日消防組合は団結が禁止されている。しかも政府は、これは警察と同様なことだからといっておるわけでありますが、これはどうもILOからいっても無理な解釈のようでありまして、おそらく今度の総会あたりでは、この消防夫の問題はILOの正式の専門家会議あたりで結論が出るのではないかと私は考えておるところでございます。  それから公労法の問題でございますが、私は、日本の法制は――本来、労働運動というのは、要求があって団結する。しかも常続的な組合をつくっていく。代表者を選んで交渉していく。その代表者を選んだ交渉成立をしたときに、それが労働基準になっていく。法的にも認められていく。さらに、その間に紛争が起こった場合には、できるだけ平和的な解決をするように努力し、政府も、いろいろな委員会、公労委だとか中労委などを置きまして、そこで仲裁裁定とかあるいは調停、あっせんを通じて、できるだけ争議行為を防止する。  こういうシステムになっているのでございますが、どうもわが国の現状は、その、最初に要求が起こって、当然代表者を通じて交渉する、これらの問題のすべてに対して、はたして十分な労働政策がとられておるのか。たとえば話し合いの問題にいたしましても、十分話し合いができているのかといいますと、遺憾ながらその点については当局のやり方は、各国の状況に比してあまり十分ではない。そうして最後の争議行為のところだけを、ただ一律に法律で、違法だ、禁止だということで禁止をするだけでは、これは全く権力でもって人の生活権を押えていくという作用だけが残ってくるのであります。  したがって各国を見ますと、もちろん日本よりもずっといい先進国がたくさんあるわけでありますが、中には先進国の中でも一部規制をしておるところもございます。また法律的に公務員はスト権があるということを明言していないところもあるわけであります。しかし同時に、それにもかかわらず、たいへん長い間交渉した結果どうもうまくいかない、ついに最後には紛争に入ったという不幸な場合といえども、できるだけ話し合いによって解決をさせるという労働行政上の配慮を中心にしてやっております。したがって、法律に違反しておるにもかかわらず、争議が終わったならば円満にもとの職場で心よく働いておりますし、また大量処分だとかあるいは組合をぶっつぶすような介入、組織に対する圧迫、そういうことはほとんどなされていないというのが西欧の国々の実態でございます。  したがって、法律禁止しているということも、たいへん重要な法律的なことでございますけれども、それ以前行政的に、特に政府やなんかが直接関連のあります公労協につきましてはその点が一番日本で欠けておる、そのことが今日いろいろな事態が起こっておる大きな原因ではないかと私は考えておるわけであります。
  50. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 もし御意見があれば述べてください。大体同趣旨ならばけっこうです。
  51. 塩路一郎

    ○塩路参考人 スト権、団結権に関する公務員労働者関係の問題については、たとえばアメリカでは警察官の団結権、つまり組合を組織することが認められております。したがってAFL・CIOにアメリカの警官は加盟をしておりますけれども、スト権は禁止をされておる。ところがヨーロッパに参りますと公務員労働者のスト権を認めている国がかなりございます。これはそれぞれの国の慣習なり特に労働運動の伝統、これまでの実績、労使関係のあり方等に左右されていると思います。せんだっての鉄道関係、輸送関係の労働者のスト問題がまた新聞紙上でもいろいろ取りざたされましたけれども、私がジュネーブにしばらく行っておりまして、あるいはその他の国際会議でヨーロッパ労働者代表の話を聞いておりますと、やはり労使関係のあり方、基本的な面、そして労働運動の歴史の違いというものを感じます。たとえばパリでメトロ、地下鉄がとまる、そうするとパリの市民はあまりこれについて批判もせずに、それならきょうは会社に行くのをやめようかというような動きが多いわけです。ところが日本はこれに対していろいろな批判があり、世論がございます。この辺の違いがどこから出てくるかといいますと、欧米労働運動の先進諸国の組合の歴史は常に市民の立場、国民の問題というものを考えた運動をしてきている。労働運動のかがみとして社会正義というものが常にございます。労働者の権利を守り、労働条件を確保する、引き上げるという問題と同時に国民生活を守るんだ、社会の正義を守るんだ、国民の平等な権利を守るんだということで労働組合の社会的な役割り、責任というものを長い間果たしてきた実績が市民をして労働運動に対する同質感を持たせているわけです。ですからこういう面を私どもは考えなければならない。これは労働組合自体が反省し考えるべきことでもありますが、同時に使用者側、つまり政府がそして経営者が反省しなければならない面、新しい時代の新しい労使関係ということを考えていかなければならないということが重要な前提になる、このように考えておるわけです。  ところで公務員労働者のスト、この前の輸送関係のストライキという点についての同盟の見解を一言申し上げますと、スト権は認められるべきである。ただし法律に違反するストはまずい、これはやはり違法行為であろう。法治国家であるんだから国の法律は守る、それが民主主義を守る道でもあるという立場をとっております。したがって、公務員制度審議会の運用をもっと積極的に進めることによってこの問題の解決をすべきではないか、このように同盟の態度はきめられております。
  52. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 まだ伺いたい点はたくさんありますけれども、私省略いたしますが、一点だけ。九十カ国が批准している百五号条約、この点とこの間の最高裁の判決、これとの関連について安養寺さんに、もう時間がないものですから簡単に御意見を伺っておきたいと思います。
  53. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 残っております重要条約の十の中で、私は特に百五号条約というのはいち早く批准をしていただきたいと思います。それは過去八十七号条約を批准する当時からも百五号についてはずいぶん国会でも言及され、検討されたものでございますし、歴史的に見てもたいへん重要な条約だと思うからであります。  同時に、四月二十五日に最高裁が判決を下しました。率直に言って私どもはこの判決は非常に問題のある判決と思いますが、その内容についてはきょうは触れません。一言でいえば公労法十七条などは合憲であるという判決であるようであります。ただ非常に問題がありますのは、その問題を私は感じましたのは、最高裁判決は多数意見も少数意見もILOのことを相当引用しているのであります。特にILO事務総長の演説の文句まで引用して、しかも多数意見のほうはどうも自分の都合のいいところだけつまみ食いをしたような意見を言っておる。これは当時のドライヤー勧告を引用しているのでありますが、ドライヤー勧告自身が、この勧告は一つだけ取り上げてこの部分だからこうだということでは困る。全体を取り上げてひとつ議論をしてもらいたいということをわざわざ書いておるのに、最高裁がそういう形をやっているということは私は問題があると思いますけれども、結局最高裁の判決の結果はすべて合憲である、こういうわけでありますから、私どもは憲法違反であるとかりに申しましても、違法であるということで訴追を受ける可能性は、前々よりずいぶん違った形で出てくる可能性がふえたわけであります。そうなってきますと、国際条約の中で特に重要な労働争議などによる強制労働を禁止をした条約というものは世界各国で九十幾つも批准をされている現状からいってもやはりこれを問題にし、少なくとも不作為の行為、通常の争議行為についてはそういう罰則が全然ないという状態をつくっていただきたい。このようなことからいきましても百五号条約を速急に批准をしていただきたいと考えるわけであります。
  54. 藤井勝志

    ○藤井委員長 堂森芳夫君。
  55. 堂森芳夫

    ○堂森委員 ただいま同僚の岡田議員からいろいろ参考人の皆さんに御質問がございましたが、私二十分しかございませんので重複しないようにして二、三の点を伺ってみたい、こう思うのであります。  先刻来吉村参考人をはじめ五人の参考人から貴重な御意見を拝聴しました。まず第一に、時間がありませんから端的に、簡単に御質問申し上げるのですが、一つは、わが国は百三十六号まである採択された条約の勧告がいまだに二十九である。今度の二つの批准が当然行なわれるわけでありますが、三十一になる。これはさっき佐藤参考人もおっしゃいましたように、戦前からの日本の国の経済的な本質がソーシャルダンピングである、これが国際的ないろいろな評判についていろいろ問題を起こしてきた一つの大きな問題点である。これはだれでも認めるところだと思うのであります。  そこでこのILOに関しての専門家であられる、あるいは理事をしておられる、あるいは吉村さんは副理事である、あるいは塩路さんは前理事をしておられた、あるいは学者の方々がいらっしゃるわけですが、日本はこんなに少ない状態であり、たくさんの条約の批准があるべきだが、あなた方には、こういうものをまずまっ先にしたいというお考えが当然あると思うのでありますけれども、それぞれの参考人から、私ならばこれをまずやりたいという御意見をお伺いできればけっこうだ、こう思っております。
  56. 吉村一雄

    ○吉村参考人 時間の関係上、堂森先生の御質問にごく端的にお答え申し上げます。  まず第一に、今回批准のための御審議を願っておりますような安全衛生関係、これは、環境問題が重要視されておる現在、特に労働環境の改善あるいは危険災害の防止という見地から、他にも幾つかの安全衛生関係の条約がございますので、これをまず第一にお取り上げ願うのが至当と存じます。その次には多少の国内法的な手直しが必要かとも存ぜられますが、社会保障関係の条約、この二点でございます。  申すまでもございませんが、私は冒頭の発言で海事関係の条約の重要性を指摘いたしました。それも含まれます。  以上でございます。安養寺参考人 なかなか軽重のつけがたい問題でございますが、私は、先ほど発言いたしましたように、百五号、強制労働の廃止に関する条約を先頭にいたしまして、ILOが特に日本政府に強く要請をいたしました雇用政策の問題、あるいは職業上雇用上の差別待遇の問題、それから社会保障政策の問題などはたいへん重要であると思います。もう一つ、先ほども指摘がありましたように、最近の、労働時間、休日、有給休暇などに関する条約は、賃金とか生活水準の問題と違いまして、国際的に非常に比較がしやすい問題であり、最近の労働組合側のいろいろな会議の情報を得ましても、やはり何といっても時間の問題が相当きつくいわれておりますし、これらはぜひ第一号条約以下批准を促進していただきたいと思います。
  57. 塩路一郎

    ○塩路参考人 ILOが一九六九年に五十周年を迎えるにあたって理事会で指定した重要十七条約というのがございます。この中で、日本が未批准の条約がございますが、その未批准の条約の中で、その年に、特に同盟としての重点目標を決定いたしました。それを申し上げますと、百五号の強制労働の廃止に関する条約、これは一九五七年の総会できまったものです。それから百十一号、雇用及び職業についての差別待遇に関する条約、これは一九五八年の総会で決定を見たものです。それから二十六号、最低賃金決定制度の設立に関する条約、これは一九二八年です。それから同じく賃金に関しては、九十五号の賃金の保護に関する条約、一九四九年です。それから社会保障の関係では、百二号の社会保障の最低基準に関する条約、一九五二年に決定しております。そしてもう一つは、百三号の母性保護に関する条約、一九五二年です。  これらの中には国内法の関係で抵触するものもございますけれども、抵触するからできないということではなしに、ILOが定めたこういう基本的な条約については、まず批准をして、それに合わせて国内法の改正をしていくという姿勢が望ましいかと考えております。
  58. 慶谷淑夫

    ○慶谷参考人 すでにいままで他の参考人が述べられましたので、詳しく申し述べることは差し控えますけれども、労働者の生活条件を改善するための労働時間に関する条約とか、社会保障に関する条約とか、あるいは業務災害に関する条約とか、そういうような条約を優先して批准できるように国内体制を整備していくべきではないかというふうに考えております。
  59. 佐藤進

    ○佐藤参考人 ILO創設に伴う人権五十周年記念に対応しまして、そしてわが国の憲法に対応しまして基本的人権に関する条約、ただいま他の参考人が御指摘になりました百五号条約、百十一号条約、それから一番批准度の低い条約と申しますと、わが国の場合には社会保障に関係する諸条約、とりわけ社会保障の最低基準に関する百二号条約、それから出産母子保護に関係させますと百三号条約、労働災害給付に関する百二十一号条約、それから老齢年金に関する条約と申しますと百二十八号条約、それから最近付託になりました、医療の現物給付、予防給付、そしてリハビリテーション給付を含む、いわば包括的な医療の保障に関する百三十二号条約、この辺を優先させるべきだと私は思います。それに伴いまして、これはもう総花になるわけでございますけれども労働基準法、当然のことだろうと思います。  以上です。
  60. 堂森芳夫

    ○堂森委員 どうもありがとうございました。  それぞれ関連してお聞きしたいと思うのですが、二十分間あると思ったら、零時三十分でやめろということでございますので、残念なんですが……。  そこで、先刻、塩路さんでございましたか、一たん批准をしておいて、一年間の期間があるんだから、その間に国内法を改正すればいいじゃないか、こういう御意見がございました。私もそう思うのです。ところが、日本保守内閣はけしからぬのです。昭和二十八年に閣議決定をしておるのです。ILO条約については、まず国内法を整備して、それから条約批准をやることを原則とするという鉄則をつくっておるわけですね。これは日本政府がILO条約について全く熱意がないという明らかな証拠なんです。参考人の皆さん方に幾らそんなことを申し上げてもしようがありません。これはまた問題は別であります。われわれ、国会において政府を追及いたします。また、たとえば百二号条約について、私はほんとうに予算委員会社会労働委員会で――私、社会労働委員を十数年しました。何回も自分でしてきたのを覚えております。予算委員も十年以上前にも数年やっておりまして、やってきましたが、政府は何だかんだといっていまだにやらぬわけですね。私が申し上げるまでもなく、これは九つかの条件のうち三つあれば批准ができるわけなんです。ここに労働省国際労働課長の森川さんもおりますが、彼は大いに推進しようとしておるほうだけれども、政府部内でまとまらぬのですよ。厚生省が抵抗する。今度また、この条約の審議の過程で、両方を呼びつけましてわれわれ締め上げますから。それは先生方と関係ありませんが、そういう事情があるのですよ。  そこで、このILO条約批准の推進のためにどうしたらいいのか、どういうことをやったらいいとお考えになりますか、御答弁願える方、全部でなくともけっこうですが、自発的に御答弁になることを……。まあ、吉村さんからひとつお答えを……。
  61. 吉村一雄

    ○吉村参考人 堂森先生にお答え申し上げます。  はたしてこれは直接のお答えになるかどうか存じませんが、私の意見を端的に申し上げますと、冒頭発言の中で御理解いただいたと思いますが、あるいは御同意はいただけなくても、私の言わんとするところは理解していただけたかと思いますが、条約というものは加盟国の批准を待って初めてその国にとってバインディングな、強制的なものを持つわけでございます。したがって、国際機関の主人はわれわれであって、主権国家である日本国際機関サーバントではございません。したがって、一つの国家主権の中において、その国の国内の立法手続を通じてその条約批准できるかどうかということを考えるということになりますと、私は、一年の猶予期間を置いて、まず条約批准して、その一年ぐらいの間に国内法の改正をはかるという手続は、実はこれは逆ではないか。そういうことをすることによって、私が例にあげましたような多くの、なかんずく、みえのために条約批准するような国に起こっておる、批准した条約の国内立法による実施の怠慢という結果が招来されることを憂うるものでございます。
  62. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 条約批准促進の具体的な方法について二、三申し上げますと、一つは、この国会外務委員会の中に、できましたならば相当長期にわたって検討できるような小委員会、そういうものができるのかどうか、私は慣行としてよくわからないのでありますが、ほかの委員会では二、三聞いたことがございますので、そういうところで、たとえば相当政治的にあるいは国際的な問題を感ずるならばILOの機関に直接出かけていってでも、政治的な判断をそれぞれしていただいて、できるだけ一致するものから、政府を鞭撻して促進をする、こういう方法がまず一番いいのじゃないか。それからもう一つは、いま労働省のお世話で任意的な国際労働機構、ILOの技術協力関係の審議会のようなものがございます。それをILOの国内におけるいろいろな対応ということをある程度公式にできるような、国内委員会とでも申しますか、そういうものの必要性というものは今日たいへん多くなっておるのであります。特にILOがただ単なる基準の設定から開発の部分まで手を延ばしているというような今日の状況ではずいぶん必要じゃないかと思いますので、そういう方法もあるかと思います。  それから、いま吉村参考人が言いましたように、国内法の整備よりも先に批准をして、一年の発効期間のうちに国内法の整備をするのは、どうも逆ではないかという御意見がございました。なるほど、基本政策の食い違いが国会あるいは与野党の中であるということになれば、また話は別かもしれませんけれども、基本的には一致をしながらも技術的な部分であるという条約はどれかということは、事務当局にお尋ねになれば大体おわかりになっているわけでありますから、それらの問題についてはやはり政治判断こそ私は大事だと思っております。したがって、先にやって、それからあと技術的な部門の準備をされて十分間に合うのじゃないか。特に前例といたしましては、たいへん基本的な重要な条約でありましたが、八十七号条約の場合には、国内法のある部分をたな上げにいたしまして、一年後に発効した、こういう実例が重要条約であるわけでありますから、決しておかしいことではないと私は思います。それらのことを考えて、ぜひ批准を促進をしていただきたいと思います。
  63. 塩路一郎

    ○塩路参考人 条約を批准してそのあとで国内法の改正をしたらという私の考えに対して、吉村さんは逆だと申されましたけれども、私はそれは古い考え方だろうと思います。発想の転換が必要なときです。確かに、条約を批准してそれから国内法の改正というよりも、国内法を改正しておいて条約批准というやり方がないわけではございませんから、その方法を私は全面的に否定するつもりはございませんけれども、今日までのわが国のILOに対する取り組み方から見て、そういうことではいつまでたっても日本は国際社会の一員にまともに扱ってもらえないのではないだろうかと考えておるわけです。ただここで考えておかなければならないことは、条約を最低賃金に関する条約だとか社会保障に関する条約と一言で言ってしまいますと、そういう基本的なものが何でできないのかというふうに一見とられるわけですけれども、それぞれの条約の中にたいへんこまかい多くの項目がございます。そうしてどういう項目を盛り込むかが実は理事会で検討され、毎年の総会で各国の政労使の代表の間で議論されておるわけです。ですから、その議論の場に参加している人たちの主張が多数決で盛り込まれるということになっているのです。日本はどうかというと、からだは出ていっているけれども、ほんとうに参加しているのだろうか、つまり、条約づくりにいろいろ意見も述べ、発言もし、条約をつくったという実績がほとんどなかったのではないか。そういう関係から、各国の労使関係の歴史なり社会慣習、生活慣習の違いが条約のこまかい項目の中に盛り込まれて、わが国では合わないという点があるかと思います。ですから、私は観念的に何でも条約を先にしてというふうに申し上げるつもりはございませんけれども、わが国のいま考えなければならないことは、発想を転換せよということでございます。
  64. 慶谷淑夫

    ○慶谷参考人 ILO条約の批准を促進するためには、やはり一般に国民に対して、ILOとは何かとか、ILO条約とは何だろうかということをもう少し認識させるという努力が必要じゃないかと思うのです。相当ILOというのは新聞に出ますけれども、案外国民一般はこれは何だということは知らないのじゃないかと思う。ILOというのはどんな活動をしているのかということが認識をされていないのじゃないかと考えておるわけです。ILO条約を批准する上におきまして、ILO条約と国内法との抵触しているところも多いわけですけれども、たとえば先般から問題になっていますILO第一号条約におきましては、災害とかあるいは不可抗力のある場合を除きましては、時間外労働を禁止しているわけです。その点、労働基準法の三十六条におきましては時間外労働を認めておりますから、そういう点でILO第一号条約と労働基準法とが抵触しているわけです。ですから、こういうような条約を批准しようと思えば、先生方が議員提案で労働基準法の三十六条の削除を提案されれば、これはすぐにILO第一号条約は批准できるのではないかと思うのです。そういうふうに抵触する分野があれば、野党の先生のほうにおきまして、現在の抵触している国内法の改正法案をどんどん出されるということが、これがILO条約批准の促進の第一の条件ではないかと思っております。
  65. 佐藤進

    ○佐藤参考人 私もILOに戦後日本が復帰をしますときに、民間機関としましては、日本ILO協会が、これはもう労使政一体になってあそこで推進運動をやって、当時は非常に労働条約の比較検討その他の研究が私は盛んだったと思います。そして、今日その成果があらわれているかと申しますと、今度条約の研究が行なわれだすと、国内法の抵触する分があろうとなかろうと、非常に警戒心が強くなっております。私は、その点で、民間機関でもそれだけ一生懸命やっていらっしゃるわけですから、政府機関内部、とりわけ国際労働条約は、厚生、労働も多数の官庁にかかわるわけでございますけれども、これは超党派的にやはり国際的な、いわば日本の将来をかけている問題として、私は積極的に検討するような委員会を御設置になることをお願いいたします。  それから、いま慶谷参考人が御指摘になりましたけれども、私もやはりこれはもう野党の先生方が積極的に条約に抵触をするような部分についての改正提案を、やはり御審議、促進をするというような形で、私は、国民にやはり訴える、受益者に訴えていくということをぜひお願いをいたしたいというふうに考えております。
  66. 堂森芳夫

    ○堂森委員 もう私、時間がありませんから終わりますが、私はILO条約の批准の促進にはやはり大切なことがたくさんあると思うのです。たとえば労働関係の役所は、船員関係は運輸省がやっている。それから国家公務員等は人事院がやっている。他は労働省がやっている。そして、お互いに日本の役所はなわ張り争いをして、そこらの連携というものはなかなかむずかしい。これはやはり一つの大きなネックになっておると思うのです。あるいはかつて八十七号条約でございましたか、私の記憶では、あのときは熱心に与野党でたいへんな折衝を重ねまして、あの条約が批准されました。当時、私は党の国会対策の責任者をしておりまして、半年くらい寝られなかったくらいのあれがあったのです。そういうふうに一つの条約を批准していく場合にもたいへんな苦労が重ねられてきた。それは原因がどこにあるか、いいか悪いか、これはいろいろ問題があるわけですが、そこで私は、吉村さんにも安養寺さんにも今後大いにそういう意見を吐いてもらいたいと思うのですが、私らも国会でやりますが、政府と使用者側と労働者、この三つくらいの代表が一つのILO条約促進の委員会みたいなものをつくって、いろいろ形はあるでしょうが、そして促進をしていくような機関を常時的につくって、そしてこれを大いに批准を推進していくというようなことにも、私は大いに努力をしてもらいたいということを、これはわれわれはもちろんやりますが、そういうふうな意見を述べまして要請をして、ほかにだいぶ聞きたいことがあったのですが、時間がもう少のうなってしまいましてできませんので、これをもって私の質問を終わります。
  67. 藤井勝志

    ○藤井委員長 瀬長亀次郎君。
  68. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間がございませんので、私、まとめて三つの点、お伺いしたいと思いますが、特に安養寺参考人と佐藤参考人の御両名に御意見を聞かしていただきたいと思います。  第一番目に、日本政府の、ILO条約や勧告に対する態度の問題です。二番目は、労働基本権等、日本国憲法、さらにILO諸条約と勧告の問題、三番目に、日本の婦人労働者の地位とILO条約、この三点にしぼって御意見を承りたいと思います。  御承知のように、ILOで採択された条約や勧告は国際的最低基準を定めたものであり、各国はこの最低基準を守るだけでなく、それより上回る内容の実現に努力する国際的義務があると考えます。ところが日本政府は、いま参考人の皆さんから御説明もありましたように、現在批准した条約は二十九にすぎないで、国際的に見ても非常に低い状態である。これは日本政府がILOの諸条約や勧告を実施していくために、国内法が国際的な水準に達していなかったり矛盾しておれば、国内法を改正していき、実施していくという姿勢ではない。日本政府の政策に合わないのは批准しない。ILOの軽視、日本の労働者の労働条件、権利の改善にきわめて消極的な考えがあるからだと私は思うのですが、これについてどうお考えであるか、御意見を聞かしてもらいたいと思います。  もう一つは、労働基本権の問題であります。四月に展開されました、労働者の生活と労働基本権を守る統一の戦いがありました。で、日本の公務員についてはストライキを全面的に、かつ一律に禁止しておる状態であり、ドライヤー委員会の批判があっても、日本の政府は態度を変えていない。この点は、日本国憲法二十八条の労働基本権の保障とILO条約との関連から申し上げましても遺憾なことであります。これをどうILO条約の問題と関連して理解されておるか、御意見を承りたいと思うし、さらにもう一つの点は、これと関連いたしますが、これは常識ではちょっと考えられないようなことが現実に日本国内にある。これは安保条約地位協定に基づいて、アメリカ駐留軍は日本政府から労務提供をされておる。この駐留軍労務者は、沖繩を含めて約五万といわれている。この駐留軍労務者は、結社、表現の自由すら奪われている。これを奪っているのはアメリカ軍規則というものなのです。これは去る七月二十日に米軍司令官が出した警告文の中に明らかになっておりますが、米軍規則は、当然のことながらアメリカの軍人軍属など、基地内におけるアメリカ人に対する法律、規則であって、これが日本人労働者に適用されるものではない。この軍規則なるものに、「在日米軍施設内における日本人従業員労働組合またはその他の従業員団体の活動はこれを禁止する。禁止される活動の中には、労働集会、デモンストレーション、祝賀会、および公式・非公式を問わず、招集による政治的又は一般的な会員の会合や集会が含まれる。但し、禁止される活動は右記のものに限られるものではなく、リボン、旗、プラカード、標識、紋章又はその他の所持品などを在日米軍施設内で掲げることは禁止される。」という内容のものなんです。これが五万の日本人駐留軍労務者の基本人権を奪っておる。事実、この軍規則のもとで首切りが行なわれる。労働組合活動家の出勤停止が行なわれる。さらにもうものも言えないわけです。集会もできない。組合費も基地内では取ってはいかぬ。これが憲法に規定されておる諸条項、民主的、平和的条項に完全に違反しているだけではなくて、いま申し上げましたILO条約の基本的な精神である結社の自由、表現の自由を踏みにじっているものでもあると考えます。ところでそういった場合には、日本政府は当然のことながら、基本労務契約にもちゃんと書かれておりますように、日本国の憲法、労働諸法規、これは双方とも守らなくちゃいかぬということを全部に書いてある。そうだとすれば、日本政府はこういったような軍規則は適用してはいかぬということを言うべきだ、普通これは保守革新を問わず、国民であればそう考えるのが当然だと思います。そういったことに対して、日本国憲法、ILO諸条約、勧告というかがみに照らしてどう映るのか、御意見を承りたいと思います。  三番目に、日本の婦人労働者の地位とILO条約の関係でありますが、現在の日本の婦人の労働に関する地位は、国際水準にきわめておくれていると思います。それはILOの婦人に関する条約から見ればどういうふうにお考えなのか。  また一九一九年に採択された婦人の出産休暇に関する第三号条約、婦人の深夜業の禁止に関する第四号条約をわが国はまだ批准していない。労働基準法の少なくとも国際的水準への引き上げなど、日本の婦人の地位を高めるための措置をとっていくと同時に、この条約を批准していくことは当然だと思いますが、こういった点についての御意見を承りたいと考えます。  以上でございます。
  69. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 まず最初に、日本政府のILO条約の批准促進という命題に対する態度でございますが、私が最初の意見からその後にわたって申し上げましたように、現実には公約の中にもあるいは政府の出しました経済計画の中にも、大きくいままでの政策を転換をしてそして人間を尊重し、福祉を重視をする、こういう政策に移行をする、こういう言明があるわけでありますから、われわれはそれを期待をして、いまこそ条約促進の絶好の機会である、かように思うわけです。しかし、もしもそれが絵にかいたもちであって、ただ単なる宣伝にすぎなくて現実にはそういう状態でないということがあるならば、これはたいへん重大な問題でありまして、私どもはこの点は追及をしなければならないと考えているところであります。したがって、今日は二つの条約もすでに批准案件としてかかっておりますし、さらに今後多くの努力がなされると思いますので、私どもは、いま政府が言明をしたことの、すみやかなるILO条約批准促進に対する態度の確立をお願いをしておきたいと思います。  その次に、労働基本権の問題で特に具体的に軍労働者の問題が出されました。私は、沖繩が行政権が日本に返ってこない、いわゆる復帰前でもたいへん問題があったと思いますが、復帰をいたしますと憲法も労働法規も当然これは適用されるわけでありますから、いま例にあげられましたような幾つかのことを私どもも伺っておりますが、たいへん不当なことだと思うわけであります。特にILOは戦後結社の自由ということに対して、先ほど塩路参考人からもフィラデルフィア宣言の内容のお話がございましたが、非常に重視をしておるのであります。したがってその結社の自由というものが基本的に侵されてしまうという事情については、これはたいへんな問題でありまして、批准をしてない国であっても労働団体が提訴できる結社の自由委員会というものが理事会の中につくられておるのもそういう理由からでございます。また労働代表が企業の中で保護をされるという条約も最近条約として採択をされております。これから見ましても、いま沖繩で行なわれている事情は、日本政府と労働者の雇用関係というところにもたいへん基本的な問題がある。もっと言いかえれば、安保条約において軍事基地がああいう形で許されたところに基本的な問題がありますけれども、それはかりにさておいたといたしましても、現状は、国際的にも国際条約の上からも、あるいはまた日本の憲法の趣旨からいきましても非常に問題があると考えられます。すみやかなる是正をわれわれ労働組合側も強く主張いたしますし、もちろん政府は強力な主張をすべきであると考えております。  それから婦人労働者の地位の問題でございます。最近ILO総会では婦人労働者の保護促進に関する決議というのは毎回話題となり、議題となり、決議となっておるようでございます。しかし日本の場合には、なるほど幾つかの法律には性別によっての差別はしないということを書いておるのでありますが、現状ははたしてそうかというと、いろいろな違った理由で現実的に性別による差別がやはり行なわれておると見ざるを得ないわけであります。先ほど指摘をされました一九一九年以降母性保護に関する条約が幾つか出ているわけでありますが、たとえば産前産後の休暇という点からだけ見ましても、日本は各国の基準から大きくおくれておる。特に産後の休暇数は、現行法がすでに低いわけであります。したがってこれらの問題については至急に改善をする必要があります。  この際、特にこれらの条約について申し上げたいのでありますが、よく政府は日本の特殊事情、国内ではこういう特殊事情があるから批准がなかなか検討しにくいという言いわけをするわけであります。私は、ILOの考え方というのは、言語が違い、人種が違いあるいは歴史が違い、また現在の状況も非常に大きく違った世界の国々が集まって、そういう違いを乗り越えて一つの条約を結ぶことによって基本的な世界の社会正義を達成しよう、平和をもたらそう、こういうことに立っている以上、国内の問題は慣行が違うからということを申し立てるようなことでは、ILOに入った意味もあまりなければ、ILO自身の意味も減退をすると考えております。したがっていま御指摘の婦人労働者の問題にいたしましても、すみやかにまず母性保護の面を批准いたしますと同時に、同一労働同一賃金の面につきましてもその他についてもできるだけ地位の向上に努力を払っていただきたいと思います。特に来年の総会では、総会の条約適用勧告委員会の主要な調査議題は、同一労働同一賃金、特に婦人に関する問題が取り上げられることが前回の理事会できまっておりますので、さらにそれに向けて努力をお願いしたいと思っておるところであります。
  70. 佐藤進

    ○佐藤参考人 第一点の日本政府の条約勧告批准に対する態度、これは厳密には勧告は批准の対象にはなりません、条約批准に対する態度でございますけれども、ある面では、日本の政府は国際政治社会では政治的イニシアチブをとりたいとすることを非常に強く望んでいるものがございます。ところが、事ILO条約になってまいりますと非常に消極的になってくるという理由が、私には残念ながら理解ができない。今日、多かれ少なかれ、現在の資本主義の段階になりますと、国家の行政機能にゆだねられている部門が非常に多い。特に労働関係、戦後の日本の労使関係を見てまいりますと、労働組合運動が承認をされ、そして労使の力関係で労働条件の改善その他がずいぶんなされてはまいりましたけれども、現実にはやはり政府主導の労働条件改善というものが、労働基準あるいは労働福祉その他の面で非常に私は大きい力を果たしてきたというふうに理解をいたします。といたしますと、なぜ日本の政府がILO条約勧告に対してだけは消極的な態度をとるのか、この辺については、もちろん国内の日本の労使関係事情が反映をするということはいたしかたないにしても、今日の経済的、政治的な日本の地位その他からかんがみまして、私は、積極的に従来の消極的な態度を変えて条約批准に取り組むべきではないかという気がいたします。もちろん、条約に対しまして、どの条約も、先生方御存じのように、勧告はその国の労働立法あるいは社会保障立法の国内の行政指針になるような高度な基準を盛っているものが大体多うございます。今度の二批准条約につきましても、条約とともに内容の少し高まっている勧告を伴わしております。その辺の配慮があっても今日の二批准条約についてはあえて批准をなされているという政府の意欲を感ぜられるとすれば、労働時間その他の条約についても、私は積極的に批准ができるのではないかという気がいたします。その点では、結論としまして、日本政府の条約批准、それから勧告の履行について積極的な私は施策をお願いをいたしたいという気がいたします。  それから第二点のILO条約と日本憲法との関係、とりわけ瀬長先生御指摘になりましたことを初めてお伺いいたすわけでございます。  私は、占領体制下の沖繩でも、私の乏しい研究の関係で申しますと、沖繩には復帰前には布令百十六号というきわめて労働基本三権を制限禁止をするといわれるような、いわば軍労働法が支配的であったわけでございます。しかし、私は復帰後日米安保協定の存続はともかくとして、少なくとも今日の日本政府とそれから米軍との雇用というような問題を通じますと、沖繩の少なくとも軍基地労働者の地位がまだ復帰体制前の布令百十六号の状態、いわゆる労働基本三権問題がいわば残されているということに実を申しますと同じ日本国民として非常に驚きをいま感じております。したがいまして、これはもう少なくともILO八十七号、九十八号条約、かりに争議権を定めている条約がないにしても、私は基地労働者のこの労働条件について軍規則がいわば残されているということに対して、日本政府、少なくとも国民がいわば黙って見てきたということについて、実を申しますと驚きの目をもっていま承っております。したがいまして、この辺の問題につきましては、私はもう積極的に、いわばこの軍規制の廃止を願うのが、かりに日米安保条約というようなものがあったにしても、それが日本の政府のとるべき方策ではないかと思う。かりにその軍規制というのは、私のこれも乏しい記憶でございますけれども、アメリカの公務員に労働基本三権の保障をかなり促進する役割りを果たしましたのが、たしか故ケネディ大統領下の一九六二年の大統領行政命令であったと記憶します。したがいまして、アメリカの公務員がいろいろな制限禁止を受けているということを聞きますけれども、それ以下のいわば労働規制をなぜ日本人が受けなければならないのかという点について、私はいま承っておりまして、ILO条約に照らすまでもなく、日本国憲法に照らしてその規則の廃止を願うのが当然ではないかという気がいたします。このことは当然、これはILO労働代表のまた問題にゆだねられるのかもしれませんけれども、私はそう理解をいたします。  三番目の婦人労働者の地位とILO条約との関係、国内法との関係でございますが、先ほど石井先生にもお答え申しましたように、婦人労働者の意識がどうあれ、私は日本の現行労働基準法並びに婦人に関する社会保障条項と申しますと、出産保護、それから出産に伴う休暇期間、それから生活保障、それから出産後の育児の問題、あるいは特に産前産後に関する予防給付その他いろいろな包括的な問題がございますけれども、わが国の婦人労働者の地位は、婦人の今日の労働力化状況に対して決して適切な保障を受けていない。したがいまして、私は、積極的にこれはILO条約そのものに抵触するかと問われますと、ILOの百三号条約はたしかILOの三号条約の修正を現代的になしたものでございますけれども、一番ひっかかるのは、三号条約を批准をすれば当然にILOの母性保護に関する勧告にからむわけでございますので、この面から見て、いわば高度経済成長を果たしたわが国の婦人労働状況の現況から見て、保護はきわめて現行法では不十分である。したがいまして、ILO条約に照らしても不十分であるという点で、この点では積極的に国内法を修正をするなり、あるいは条約を批准をすることによって修正をするなり、その辺の措置を講じていただきたいという気がいたします。いわんや、先ほども男女同一賃金同一労働に関する百号の条約はわが政府は批准をいたしておりますけれども、人権の、いわば雇用、職業その他の差別待遇禁止に関する百十一号条約というものとの批准から照らしましても、この点での私は問題がある。したがいまして、積極的に婦人労働者の地位の向上をはかっていただきたい。ましてや、労働基準法の改正によって婦人の地位を引き下げるなんというようなことは、私は絶対に許してはならないというふうに考えております。  以上です。
  71. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これで終わります。
  72. 藤井勝志

    ○藤井委員長 沖本泰幸君。
  73. 沖本泰幸

    ○沖本委員 私も許された時間が二十分ちょっとしかありませんので、質問が前後するかわかりませんが、それぞれの方々に端的にお答えを願いたいと思います。  一つは、塩路参考人から、いわゆるILOについての考え方をもう少し考えてみることが必要じゃないかという御意見がありました。いま労使の五代表がいらっしゃるわけですけれども、政労使という立場から、いま最も政のほうに望むべき姿勢なりやるべきことは、端的に言って何であるかという点を塩路参考人、安養寺参考人、吉村参考人から一応お伺いしたいと思います。
  74. 吉村一雄

    ○吉村参考人 沖本先生にお答え申し上げます。  ILOが五十有余年にわたって常に社会正義の実現と世界平和の追求のために、政労使というユニークな三者構成の国際機関として活動しておること、それからまた日本がその加盟国として、一時戦時中の中断期間はあったにせよ、ベルサイユ条約締結国として当初からそれに参加しておったという事実、これらを踏まえて、さらに最近の、世界の第一級の経済大国となったということからかんがみまして、日本がこの政労使という三者構成の基盤においてILOにさらに積極的な貢献――受け身の姿勢ではなくして、積極的な貢献、コントリビューションをしなければならないというのは、これは国際的な一つの崇高な義務であると考えます。  しからば具体的に何をなすべきかという点について一、二私の所見を申し述べますと、第一は、日本はこれだけの国力を背景にして財政的により多くの貢献をしてしかるべきではないかという点でございます。ILOに対する日本のコントリビューション、つまり分担金でございますが、それはもちろん一定のスケール、分担率というものがございまして、これは絶えず国連に対する分担金との比率において考慮し、なるべく国連の分担率と同じ比率で金を出すようになっているわけでございますけれども、この点について、これだけの経済大国になりますと、国連もそうでございましょうが、ILOももっと日本から金を出してくれないかという要求が必ずや出てくると思います。その際には先生方ひとつ大いに御協力願って、日本国家予算の中においてILOの分担金の支払いの増加ということに積極的に御賛成なさると同時に、これを積極的に推進していただきたいと思います。  それから第二点、ILOは、国際労働基準の設定という重要なる機能と並行して、技術協力、これは言うなれば発展途上国に対するマンパワー、労働力の面における経済協力でございます。これは日本国際協力の全体における一環として考慮さるべき問題であると思います。すでに国連の経済開発十カ年第二次計画において、たとえば各国はそのGNPの一%は最低経済協力に振り向けることであるとか、あるいはその中において占める公的協力、つまり直接の政府予算からするところの基準は何%以上のことが望ましいとか、そういういろいろなターゲット、目標が定められております。これは何も日本だけではございませんで、ほかの国にとってもそれだけのターゲットはまだ達成していないのが実情でございます。ですから、日本全体の国際協力の一環としてILOに対するマンパワーの面における経済協力の積極的な貢献、それはある点においては金を出すという面もありましょうし、ある点におきましては日本の現在持っておるところの知識、経験あるいは施設というものを提供して――特に日本が一番近いところは東南アジアでございます。もちろん東南アジアに限ることございません、アフリカとか羅米とかいうところもございますが、とにかくまず近きより始めて東南アジアに対する協力活動、特にこれは具体的にはすでに技術研修の活動を国家予算に計上していただいて始めております、日本の政労使三者構成の基盤において。こういう面でひとつ今後とも大いに活躍できるように先生方の御配慮を願いたいということであります。  それから第三番目に、これらの国際機関の一つであるILOに対して日本人としてもっと個人的な意味で、日本代表ということじゃなくて日本人という一人の個人として、より多くの優秀なる方々が国際機関のスタッフとして参加していただきたいということでございます。これは各国の分担率に応じて一応の定員のワクというものがございます。これは国連本部についても同様でございますが、ILOの事務局につきましてもまだこのワクを満たしていないというのが実情でございます。それは日本官庁であるとか企業で定年までたくさん給料やボーナスをもらって働いたほうが苦労がなくていいという一つのあらわれかもしれませんが、そういう国の中でぬくぬくとぬくまっている気持ちを排して、国際機関に挺身して、そして発展途上国の炎熱瘴癘の地であろうと、あるいは伝染病の蔓延しているところであろうと、どうか日本人が一人の個人としてこれらの国際協力に活躍するような、そういう雰囲気を達成することに私どもつとめたいと思っておりますので、どうぞ先生方の御協力もいただきたいと思います。  以上、三点申し述べます。
  75. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 政府に対する私どもの批准促進上の希望といいますか期待といいますか、これを端的に申し上げます。  一つは、やはり現在ILO条約批准をすべき国内的な情勢が非常に高まっておる、好機である、それをできるだけ政府は利用して促進をしていただきたいというのが第一。  第二は、行政府の中でその衝に当たっております外務省労働省のそれぞれのILO国際条約関係の方々はたいへん熱心で、しかも批准促進を心から願ってお仕事を進められておるようであります。ところが、さて政府全体となりますと、なかなか簡単にそれが運ばないところに問題があるし、その理由が先ほど言いましたように法律に抵触するかどうかというたいへん技術的な点でお互いにうまくいかないという点が多い。したがって私は、この際国会にもぜひ御協力を願って、相当政治判断のできる高いレベルの検討を政府自身も行なっていただく、これに対して労使団体が積極的な協力をする、そういうシステムを何かつくっていただく、これらのことが政府にぜひお願いをしておかなければならないことだと思っておる次第であります。
  76. 塩路一郎

    ○塩路参考人 政府、経営側に対する注文を述べよという御質問だったと思います。  時間がないので簡単にお答えいたしますと、まず冒頭の私の意見でるる申し上げた内容になるかと思いますが、ILOの精神政府も財界も知ってほしい。それから二番目は、ILOの役割りと機能を理解してほしい。その次には世界の変化、たとえば経済的に非常に大きな変貌を続けている今日の世界に対応して、ILOの役割りもまたその分野を広げている、こういうことを勉強せよ。これらの件について経営側の実態は、端的に言えば経営者は吉村さんまかせ、財界は勉強していない、政府も同様にもっと勉強してほしい。特に政府の窓口である労働省はもっと勉強してほしい。  以上です。
  77. 沖本泰幸

    ○沖本委員 時間がありませんので、次々にもう二点ぐらいお伺いしておきます。  安養寺さんは、先ほどの御意見の中で、これは重複するかもわかりませんが、すでに批准した条約の活用とか労働保護条約等に違反するような内容、あるいは法をくぐっているようなことで、実際に生かされていないようなことがずいぶんある、こういうことなんですが、具体的に御指摘いただけたら、また将来のためにこうあるべきであるという点を御指摘いただきたいと思います。
  78. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 一、二の例をあげたいと思いますが、たとえば、いまたいへん問題になっております結社の自由に関する八十七号条約あるいは団結権擁護に関する九十八号条約なども、批准の際からたいへん問題になったのですが、政府は、幾つかの条項についてわれわれが抵触しておると主張しておるにもかかわらず、言を左右にして抵触していないと盛んに発言をされる。しかも、立法政策に関する建議を行ないます公務員制度審議会も、若干この点は直すべきだという答申があったにもかかわらず、それも今日まで実施をしない。さらにILOの専門家会議で、この点はもう相当問題があるということを指摘されてもなかなか動かない、これがやはり問題であります。  具体的にいいますと、たとえば登録の問題などはその一例でございます。それから九十八号条約の中に、この条約行政公務員に関しては適用ないという条項が一つあるのです。さて、その行政公務員解釈というのは非常に狭い解釈から非常に広い、全部公務員と名のつくのは全部という解釈まであるわけでありますが、ILOの今日の事務当局の考え方は相当狭い、相当高級な方々をいっておる。特に行政管理に当たっておる方々のことを大体さしておるということが、ILOの法律専門家もその担当部局の方々も大体一致をした見解のようであります。しかし、日本ではとにかく公務員と名がつけば全部これは適用されない、こういう見解をとるなどが、まあ好例ではないかと思っております。
  79. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それでは、ことしの春闘の中にも、いわゆる先ほどから種々御質問がありました、労働基本権の問題が重要課題になっておるわけですけれども、そういう中にありまして、労働団体等からも現在の労働基準法はもうすでに内容をなさないのだ、変えるべきであるというような意見がたくさん出ておりますし、そういう要求もずいぶん出ておるわけですけれども、それぞれのお立場によって、一番基本となるべき労働基準法が現在の日本の情勢に当てはめて、合っているか合ってないか、早急に変えるべきであるのかどうか、そういう点についての御意見を伺いたいと思います。  これは塩路参考人、安養寺参考人それから佐藤参考人等に御意見をいただけたらありがたいと思います。
  80. 安養寺俊親

    ○安養寺参考人 国際労働条約の採択の状況からいきまして、労働基準法は、すみやかにそれらの条約を批准するとともに、内容を改正する必要があると思います。  先ほども説明がございましたが、たとえば第一号条約の中でも――象徴的なその第一号条約が今日批准できてない。それはやはり労働時間の問題が厳密にいえば国内法に問題があるからであります。したがってそれらの改正は今日緊急でありますし、労働基準法は最低をきめておる基準でありますけれども、もっともっと改善をしなければ国際的にもだんだん古くなって、つくった当時はあるいは国際基準だったかもしれませんが、その後逐次低下をしておるというのが現状ではないか、かように思います。
  81. 塩路一郎

    ○塩路参考人 国際社会の変化、進歩に対応して各国の労使関係が非常に大きく変わっております。そういう面からすればなおさらのこと、わが国の労働基準法の改正の必要はあると考えております。
  82. 佐藤進

    ○佐藤参考人 時間もございませんので簡単に申しますと、現在技術革新の段階で、一週四十時間制、週休二日制、有給休暇三週間時代、婦人労働法時代、それから社会保障の内外人均等待遇時代、こういう時代がきてまいりますと、当然にこれに抵触をする部分は全部直していただきたい。そのためには、企業家にもいろいろ問題がございますけれども、労働行政監督については、従来の教育、啓蒙の監督から、やはり罰則といわれるようなものは時代おくれかもしれませんけれども、できれば私はもうとることを検討する時代がきているのではないか、そんな気がいたします。以上です。
  83. 沖本泰幸

    ○沖本委員 最後に条約のことについてお伺いしてみたいと思うのですが、これはどなたにというわけにもいかぬのですが、第一条の中にあります「最も代表的な使用団体及び労働者団体と協議したうえで行なう。」ということが出ているわけですが、この権限ある機関と労使代表との協議というのは、代表とはどの程度のものをさすものになるんでしょうか、あるいはこういうふうな条約というものは単なる通報ではなくて措置の策定の段階における労使代表の積極的な参加を意味しておるものであり、そういう段階から考えると、代表というものはどの程度に限定して考えるべきなのか、この点について御意見を伺いたいと思うのです。  それからもう一点伺います。  こちらの百十九号のほうの第一条の二項の中では「使用団体及び労働者団体と協議したうえで行なう。」前の百十五号のほうではそれぞれの代表ということになっているわけです。「使用者及び労働者代表者」という表現が使われておりまして、百十九号では「使用団体及び労働者団体」と、こういう表現が使われておるわけですが、この二つの違った表現にはそれぞれの違った意味があるのでしょうかどうでしょうか。その点の解釈について御意見を伺いたいと思います。
  84. 吉村一雄

    ○吉村参考人 お答え申し上げます。  これは私の知る限りでございますが、私のILOで仕事をしております経験あるいは勉強した結果から申しますと、いずれにしても「各国の権限のある機関」というのは、この問題についての行政責任にある、行政権限を持っておる機関ということでございまして、具体的には労働安全衛生の主官庁であるところの、日本で申しますれば労働省を含む関係各省もあるかもしれませんが、含む日本政府と私は考えます。  それから「最も代表的な使用団体及び労働者団体」とございますが、この「最も代表的な使用団体」というのは、かような表現を日本に当てはめますれば、使用者全体の包括的なナショナルレベルでの団体としての、私の所属しておりますところの日本経営者団体連盟、また場合によってはその特殊の問題につきましては、その業種なりあるいはその問題を管掌しておるところの産業別の使用団体、あるいは労働安全衛生に関与しておるところの使用者の団体ということであると考えます。  それから、ただ単に「使用者及び労働者代表者」、使用者の代表者とある場合には、ナショナルレベルの場合もあるし、あるいは産業別レベルの場合もあるし、あるいは企業ベルすなわちある企業使用者、経営者の代表、それはある場合には労務担当重役でありましょうし、ある場合には安全衛生責任ある重役か部長、これは一例でございますが、そういうように解釈してよろしいと思います。
  85. 塩路一郎

    ○塩路参考人 条約第一条の後段にある権限ある機関と労使の代表との協議ということばは、ILOの中でよく出てくることばですけれども、この協議というのは英語でコンサルトということばが使われております。そしてこの協議というのは、よくこの労使の協議の例として使われるドイツのような経営参加、つまり決定権にも参加するという意味なのか、そこまでではなくて話し合うという段階なのか。この協議ということばについては若干意見があるようですけれども、ILOのこの条約に関する限りは、総会の確認事項として、権威ある機関がただ単に労使に通報する、つまりインフォームすることではないとしております。したがって、この協議という中身はそこまでの規定である。各国がそれぞれに考えてこの内容を生かしていくこと。どちらにしても、労使の代表が参画しないILO条約並びにILO活動に関する取り扱いないし取り組みは不可能であろうという前提に立っております。  それから、代表の意味は、いま吉村さんが言われたように、特定のきめはないと私も理解しております。
  86. 沖本泰幸

    ○沖本委員 以上で終わります。
  87. 藤井勝志

    ○藤井委員長 永末英一君。
  88. 永末英一

    ○永末委員 塩路参考人に伺いたいのですが、先ほど吉村参考人は、ILOでわが日本はきわめて重要なるリーディングメンバーの一つであるかのように言われました。  ところで塩路参考人は、先ほどの御発言の中で、一体われわれ日本はこのILOの条約づくりに対しても積極的に参加したのではなかったのではなかろうか、こういう疑念を表明されたように伺いました。なるほど見かけはわが国は二次産業、三次産業が非常に大きくて、そうして労働者と称せられる人々の持つ問題も多種多様でございます。ILOでは常任理事国になっておる。しかしこのILOに対して、すでにつくられた条約に対しましても未批准のものもきわめて多いという形。塩路さんは数年間ILOの舞台で各国の人々と接触をされたので、一体われわれ日本の国は、彼ら、他のILOに参加している国々の人々に対して先進国的なものと映っておるのか、後進国的なものと映っておるのか。私は先進国とか後進国とかいうことばはあまり好きではございませんが、ぼうっとした感覚で受け取っていただいてけっこうでございます。その辺のひとつ感覚を伺いたいと思います。
  89. 塩路一郎

    ○塩路参考人 日本に対する諸外国の見方が先進国的か後進国的か、ことばの使い方の適否は議論のあるところかもしれませんが、そういう設問に対して一言でお答えするなら、後者として映っているのではないか。たとえば政労使がこれまでILOに対してどういう取り組みをしていたか、簡単に申し上げると、たとえば政府側も経営側も使用者側もILOをやっかい者扱いにしてきた向きが強い。労働者が参加しているという意義をわきまえておられるかどうかもよく私どもでは理解できないし、わずらわしいと思っているのではないだろうかと思うのです。  それから日本全体の取り組み方として、問題点が、いろいろと感ずる面があるのですが、その中の例を申し上げると、たとえば最近出ました外務省発行の「日本の経済協力」というのを見ますと、実はこの経済協力というのは国際的にいわれているテクニカルコオペレーション、技術協力という内容になるかと思いますが、この中に労組の問題が一つも入っていない。それだけではなくて、労働省の役割りなり、これまで果たしてきた問題についても触れられていない。これは私はどうかと思っております。日本の労働省はすでに三年前からILOアジア技術協力推進会議というものを持ちまして、三者の構成でこの技術協力に関する問題に取り組んでおるわけです。  それで一昨年秋ILOでトレード・アンド・エイド・エンプロイメント・アンド・レーバー、このエイドというのが後にテクニカルコオペレーションのコオペレーションということばに置きかえられましたけれども、つまり貿易、援助、もとのことばでいえば援助、かえられたことばでいえば貿易、技術協力、雇用そして労働という議題が一昨年秋からILOの理事会で議論されるようになったときに、日本の政府代表も経営代表も、これはことばの表現は正確でございませんが、こういうことを言われたように記憶しておるのです。つまり貿易と国際公正労働基準の問題についてILOで議論するのはおかしいのではないだろうか。またそういう観点から何か条約や勧告のようなものを考えていくというのはおかしいのではないかという内容だったと思います。これは私が先ほど申し上げたILOの精神なり役割りなり機能なりという点から見ると、誤っているのではないだろうか。あるいは政府経営側ばかりのことを申し上げると何ですから、労働側の面で申し上げれば、総評にいわせますと、総評の話によりますと、日本政府はILOという圧力をかけないと話し合いに応じてくれないのだということをよく私聞きます。だとするなら政府も悪いのか。政府も悪い、反省してもらわなければならないと思うのです。  ところで、こういうことに関して日本の労働代表がジュネーブの理事会あるいは総会に大ぜい出かけていくことに対して、この問題の事情を知らない第三者つまり外国人にいわせると、日本の姿勢はよくわからない、解せないということを耳にいたします。これは安養寺さんもそういうような話を現地で聞かれていると私は思っておりますが、たとえばどういう言い方をするのかというと、日本の労働組合が労働代表をこんなに送って金をかけている。こんなに金を持っているなら、もっと発展途上国の労働者のために金も力も貸してくれたらいいではないかという言い方がございます。こういう面が日本に対するチープレーバー、ダンピングという批判につながっておるわけです。ですから私どもはジュネーブで感ずることは、ILOは国際司法裁判所ではないのだから、そういう面から取り組み方を考えなければいけないんじゃないか、あるいはILOの考えというのは、労使関係は当事者同士の自主性を前提といたしております。そういう面から、わが国の公共部門あるいは民間部門の労使関係の問題について、私どもの考え方を、悪い部分、まずい部分があれば変えていく必要がある。こういう点から、公共部門の労使は早くこのような形を正すように国内において努力してもらいたいと思うわけです。こういうようなことは、日本にとっても世界にとってもためにならない。言いかえれば、今日の日本の地位にふさわしい応分の役割りを国際社会に対して果たしていないと思うわけです。  ところで、ただいまの御質問の中に、それから先ほども出ましたが、条約作成の段階におけるわが国の代表の参加の問題ですけれども、先ほども私が答弁の中で申し上げたことですが、国内法に合わなければ条約の批准ができないということですと、ILOは要らなくなるのではないか。毎年総会で、新しい条約と勧告あるいはこれまでの条約と勧告の改正について、二年連続で各国の代表が討議をしておりますけれども、こういう条約作成の議論の中で政府の発言はいつも、そういう内容は国内法に合わないからわが日本政府は反対だあるいは保留だと言われます。経営側の代表も、大体似たり寄ったりの発言をされておるわけです。ところが、ILOというのは、あるべき姿、そして実現し得る理想を求めて、それを条約としてあるいは勧告として採択して、そういうものに対してそれぞれ加盟各国がその批准の努力をするために国内でいろいろな努力をするというのが、ILOの運営と私は考えております。また、それが世界の実情だと思います。ですから、こういう点から見ると、どうも政労使の取り組み方はいかがかと先ほど申し上げたわけですが、一例を申し上げますと、二期前の総会で採択された連続有給休暇、つまり、三週間の有給休暇の条約、これはたいへんに長い議論を呼んだことですけれども、日本は国内法の基準法で六日間という規定をしておりますし、この六日間が分割してとれるという解釈になっております。ところが、この有給休暇三週間条約というのは、連続有給休暇なんです。私は、この議論に参加しておりまして感じたことを一言で申し上げると、「ノートルダムのせむし男」という小説は、ヨーロッパでは生まれたけれども、日本では生まれないんだなということなんです。どういうことかというと、ヨーロッパは御承知のように、太陽が少ない。したがって、夏の太陽の強いとき、太陽が一ぱい出るときに長く休んで、太陽をからだ一ぱいに浴びないとせむし病になる。ところが、日本には四季がある。そして春夏秋冬、太陽の強弱の差はあっても、いつも太陽が浴びられる。そういう点から、連続して夏長いこと休まなくてもいいといういままでの習慣がございます。そこで、私は、この条約の議論をしているときに、労働側の中で、労基法がこうだからというんじゃなくて、わが国の慣習からいくと、三週間連続というのは困るという主張をしたんです。そのときにヨーロッパ勢から言われたことは、おまえはおれたちの、つまり、ヨーロッパの労働者の悩みがわからないかと言われたんです。いろいろ話し合ってみると、いま申し上げたような環境の違いがある。そこで、それなら分割してというか、二週間連続ということで、三週間を分割してもいいという項目が入ったわけです。ですから、各国の慣習なり生活環境、気候その他の関係で、それぞれ自分たちの国民なり人間なりあるいは労働者を守り、その生活水準、労働諸条件を高めていくためにどうあるべきかという議論をしているのが、ILOの姿だ、ILOに参加する各国の代表の姿だと思うのです。ですから、こういう観点から、日本の各界代表はもっと積極的に、そうして自分たちの都合のいいことではなしに、世界はこうあるべきであるという考え方に基づいて議論に参加していくべきではないだろうか、このように考えております。  ILOの問題についてそういう観点から、私は何回か申し上げておりますけれども、ILO創設の意義とか役割りを理解する努力をみんなすべきだと言ってまいりましたが、ILOの考え方の中に、経済開発と社会進歩は車の両輪であるというたいへん重要な基本的な考え方がございます。つまり、どんなに経済が発展しても、それぞれの国において、そこに住んでいる人間の自由が阻害されたり、平等な扱いを受けなかったりするのはいけないから、人間の自由を守り、平等が確保されるようなことの伴わない技術開発、つまり技術援助、経済援助は意味がないという考え方に立っておるのです。こういう考え方から言うと、労働組合の参加、三者構成、こういうものが国際的にもそして国内的にもはっきりと確立されていくことが、日本が先進国として見られる大事な条件ではないだろうかと思います。
  90. 永末英一

    ○永末委員 いまのお話で大体の輪郭はわかりましたが、日本人というのは妙な考え方をするわけでありまして、たとえば国際連合に入っていなかったものが国際連合に入りますと、自分の主権国家の上に何かスーパーパワーを持つものがあって、それに寄りすがっておれば何かできるような、こういう考え方をしがちでございまして、わが国を守るためにみずから努力することをたな上げにしておいて、一たん事があれば国際連合が守ってくれるだろうというようなことを考えるのもおったようでございますけれども、私は、そのILOにつきましても同じであって、ILOというものがそれぞれの国家の上にスーパーパワー的な機関としてあるのじゃなくて、そこへ参加をし、それを通して、自国の労働者の問題としては自国内で解決をするだろうし、また世界の労働者、すなわち他国の労働者の問題、すなわち労働者の問題の中には他国の経済開発の問題もございましょうが、それが一国ではできない場合に、ILOというみなの寄り集まっている機関を通しながらコミットしていく、私はそういうものがILOではなかろうか。ところが、わが国におきましては、いまだに日本という国家の上にILOがあって、それを利用して日本政府の方針をどうしようと考えたり、あるいは政府が動かなければILOに提訴をしてもう一ぺんやろうと企てたり、それも一つの方針かもしれませんが、私はその意味合いでいま塩路さんが、まだ後進国的と言われたのではなかろうか。われわれがもしILOに対してリーディングメンバーとして働こうとし、コントリビューションをもっとたくさん出そうというのであるならば、国際機関に対してわれわれ日本がどういうコミットのしかたをするかということを基本的に考えなくてはならないと思います。われわれ民社党はそう考えておるわけでありますが、その場合に、日本政府の中身、機構のつくり方もはなはだ奇妙ではないか。労働問題だから労働省がやっている。ところが、この条約は外務委員会で審議をしておるのでございまして、外務省は外向きのことはわかりますけれども、国内の労働問題のそれぞれの条項はわからぬ。国会は一つでございますが、やり方に、国会の機構の中身もそうでございますが、私はおもに先ほど塩路さんが触れられましたように、労働省は労働省自体で国際技能開発計画なんというようなものを思いついても、結局政府は一体として出る場合には予算はつかぬ、こういうことになって、小さくなって、結局、通産省のジェトロの一局に似たような調査機構が行なわれて、そうして自民党政府はぽかっとしておるということになっている。何かやはりILOで、政府も出ておるのでありますし、使用者のほうも労働者代表も出ておるのでございますから、そこで話し合われ、そこでILOとして動かしていこうということにわがほうも合意をしたならば、日本政府もまたそういう一体的な力を固めてやるように、何か日本政府にその辺に欠点がある。あるとするならば、その点について時間がございませんが、簡単にひとつ御指摘を願いたいと思います。
  91. 塩路一郎

    ○塩路参考人 ただいまも永末先生からジェトロという例が出ました。これについても私たいへんに問題ではないかと思うのですが、これもILOに対する理解、そしてよく言われる技術協力というものについての理解が不消化の結果生まれてきているものではないだろうか。  ILOの関係で言えばILOは条約、勧告の作成、改正並びにそれの批准を通じての各国の協力活動という面もございますけれども、そういう目的を実現していく上で、経済協力という観点から南北問題あるいは先進国の関係の問題を議論しております。つまり、ILOにも技術協力という仕事があるということなんです。そして、ただいまのこのジェトロというのは、実は労働省が前々から計画をしておりました中に国際インフォーメーション・センター、国際情報センターの設立というものがございました。これはこの技術協力を円滑に積極的に進めていく上で、海外、特に発展途上国、近くはアジア諸国の労働諸事情、諸問題を情報として集めるということ、そしてこれからの日本の企業の海外活動のあり方というものを考えていくということで、こういう計画が出たものと思います。  ところが、いつの間にかこれがジェトロに行ってしまった。ジェトロというのは技術協力というものとは次元が違って、輸出振興であるはずです。日本がエコノミックアニマルということを言われているやさきに、またまたこういう問題について、こういうインフォーメーション・センターについてジェトロに持っていくということがいかに国際的に誤解をされるのか、こういうことを私は心配している者の一人でございます。  ところで、これについてもただいまお話があったように、外務省なり労働省なりそれぞれのなわ張り争いがあるということもありますし、あるいは通産省の問題があるということもありますが、これはむしろ通産省がほしいと言ったのではなくて、どこでどうなったかわかりませんが、結果としてジェトロに持っていかれてしまった。この件で労働省の代表の方ともちょっと話し合いましたけれども、どうも労働省の皆さんもこういう点からの問題意識が欠けているのではないか、そういう点で私先ほど労働省にも問題があるのじゃないか、勉強してほしいということを申し上げたわけです。労働省が現在やっておる国際技能開発計画の中にアジアから技能研修生を招いて日本の企業で教育をするという計画がございますが、これも当初労働省から出された案は研修経費の二分の一について補助金を企業に対して政府が交付するという案だったのです。私はこれについて全額を政府が負担すべきであると主張をいたしました。結果は四分の三ということになったわけですが、理由はこれまで通産省が輸出振興という考え方の中で出してきたのが四分の三であり、それ以上のことはこれまでやったことがなかったからという理由だったと記憶いたしております。技術協力という問題は新しい問題ですから、そういう観点から新しい考え方、取り組みをぜひしてもらいたい、このように考えるわけです。  時間がなくて簡単に答弁ということですので、以上で終わりますが、最後にひとつ先ほどの先生の御質問で私には答弁の要請がなかったのでお答えしなかったことで、中国と台湾の問題がございました。  これは大事なことなんで一言だけ申し上げておきたいのですが、ILOのユニークな、つまり三者構成という立場からこの中国、台湾の問題については国連傘下の各専門機関の決定とは違った結論を出しております。何かというと、中国の加盟承認と同時に台湾の追放ということが国連からの文章としても回ってまいりまして、この二つを抱き合わせといいますか、この二つをくっつけてILOとしても承認すべきだという意見がかなり強かったのです。それに対してわれわれ労働側はILOの特徴、そして労働者は政府の立場、国際政治上の立場から離れてILOの精神に基づいて世界の平和を実現していく、確立していくために努力しているのだ。したがって、台湾にも労働者がいるのだし、そういうところを追放ということは、中国の承認はけっこうだけれども、ILOとしてこのことばをつけ加えるのはまずいという主張をいたしまして、結局この追放ということばははずされまして、結果として出てくることは同じだったのですけれども、たいへん重要な点だと思うので、たいへん貴重な時間をいただきましたが、つけ加えさせていただきました。ありがとうございました。
  92. 藤井勝志

    ○藤井委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  参考人各位には長時間にわたり、貴重な御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。  委員会を代表して委員長より厚くお礼を申し上げます。  次回は、来たる十六日水曜日午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時五十八分散会