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1967-06-13 第55回国会 衆議院 法務委員会 20号 公式Web版

  1. 昭和四十二年六月十三日(火曜日)    午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 安倍晋太郎君 理事 大竹 太郎君    理事 高橋 英吉君 理事 中垣 國男君    理事 濱野 清吾君 理事 松前 重義君    理事 横山 利秋君 理事 岡沢 完治君       千葉 三郎君    加藤 勘十君       中谷 鉄也君    西宮  弘君       小沢 貞孝君    沖本 泰幸君       松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         法務省刑事局長 川井 英良君  委員外の出席者         専  門  員 高橋 勝好君     ――――――――――――― 六月十三日  委員下平正一君辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長の指名で委員に選任された。 同日  委員中谷鉄也君辞任につき、その補欠として下  平正一君が議長の指名で委員に選任された。 同日  理事神近市子君同日理事辞任につき、その補欠  として横山利秋君が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の辞任及び補欠選任  刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第九四  号)      ――――◇―――――
  2. 大坪保雄

    ○大坪委員長 これより会議を開きます。  まず、理事の辞任に関する件についておはかりいたします。  すなわち、理事神近市子君より辞任の申し出がありました。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大坪保雄

    ○大坪委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  ただいまの理事辞任に伴う補欠選任に関しましては、先例により、委員長において指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大坪保雄

    ○大坪委員長 御異議なしと認めます。よって、横山利秋君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 大坪保雄

    ○大坪委員長 次に、内閣提出、刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。
  6. 大坪保雄

    ○大坪委員長 まず、政府より提案理由の説明を求めます。田中法務大臣。
  7. 田中伊三次

    ○田中国務大臣 刑法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  今次の刑法の一部を改正する法律案は、最近における交通事犯の実情等にかんがみ、刑法第二百十一条の罪の法定刑に五年以下の懲役刑を加え、かつ、その禁錮刑の長期を現行法の三年から五年に引き上げるとともに、同法第四十五条後段の併合罪となる罪の範囲を禁錮以上の刑に処する確定裁判があった罪と、その裁判確定前に犯された罪とに限ろうとするものであります。  まず、刑法第二百十一条の改正についてでありますが、最近における交通事故と、これに伴なう死傷者の数の増加の趨勢は、まことに著しいものがあり、政府におきましては、かねてからこのような事態を重視して、交通安全対策の樹立とその推進につとめてまいったのでありますが、近時の自動車運転に基因する業務上過失致死傷事件及び重過失致死傷事件の実情を見まするに、数において激増しつつあるのみならず、質的に見て、高度の社会的非難に値する悪質重大事犯が続出して、法定刑の最高限またはこれに近い刑が裁判において言い渡される例も次第に増加しつつあるのでありまして、この際、この種の事犯中、特に悪質重大なものに対して、より厳正な処分を行ない得るものとするよう必要な法改正を行ないますことは、今日における国民の道義的感情に合致するばかりでなく、国家の刑政から見ましても、きわめて緊要なことであると考えられるのであります。  次に、刑法第四十五条後段の改正についてでありますが、近時道路交通法違反にかかる罪等により罰金以下の刑に処せられたる者の数は、急激な増加を示しており、たとえば、昭和三十九年に全国第一審裁判所において罰金以下の刑の告知を受けた人員は、実に四百万人余にのぼるのであります。  しこうして、現行刑法のもとにおいては、このような罰金以下の刑に処する裁判であっても、それが確定すれば、同法第四十五条後段の確定裁判に含まれますので、その前後に犯された二個以上の罪が右の確定裁判のあった後に審判される場合には、これら二個以上の罪の併合罪関係は右の確定裁判により遮断され、必ず二個以上の刑に処することとなるのであります。このために、裁判及び検察の手続の段階においては、右のような確定裁判の存在の調査を的確に行なっており、これがための事務量はまた少なからぬ状況にあるのであります。  ところで、併合罪の処断に関するわが刑法の原則から考察いたしますと、刑法第四十五条後段の規定により数個の罪の併合罪関係を遮断することは、これらの罪がいずれも禁錮以上の刑に処すべき罪である場合に最も実質的な意義を持つものであり、罰金以下の刑に処する裁判によってはこのような併合罪関係を遮断しなければならないものではなく、むしろ、罰金以下の刑に処する確定裁判によって併合罪関係を遮断することは、刑事審判の手続においても、また、刑の執行の手続においても複雑さを加え、犯人に不利益となる場合も生ずることとなりますので、この際、同条後段の確定裁判を禁錮以上の刑に処するものに限るように改正しようとするものであります。道路交通法違反の罪によるものをはじめといたしまして、罰金以下の刑に処せられたる者が、きわめて多数にのぼる最近の傾向を考慮いたしますときに、早急に右のごとき改正を行なうことは、現下における刑事裁判の迅速円滑な運営をはかる上において緊要のことであると存ずる次第であります。  以上が刑法の一部を改正する法律案の趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  8. 大坪保雄

    ○大坪委員長 次に、本案について逐条の説明を求めます。川井刑事局長。
  9. 川井英良

    ○川井政府委員 本法案につきまして、逐条説明を申し上げます。  まず第一項は、第四十五条後段中「確定裁判」を「禁錮以上ノ刑ニ処スル確定裁判」に改めるというものであります。  この改正は、刑法第四十五条後段の併合罪となる罪の範囲を、禁錮以上の刑に処する確定裁判があった罪と、その裁判確定前に犯された罪とに限るものとしようとするものであります。  元来、数個の罪について訴追された被告人に対して有罪の裁判をする場合に、一罪につき一刑を科する原則をとるならば、犯罪の数だけの有期自由刑を併科することとなって、犯人に過酷な結果を来たし、また、死刑と死刑、無期刑と無期刑を併科することとなって、刑の執行を不能ならしめる等不当な結果を生ずることとなるので、諸国の立法例においては、このような場合には、併科主義を緩和して後述のいわゆる吸収または制限のある加重主義を適用し、数個の罪の全体を評価して一刑を科することとしているのであります。  わが刑法においては、確定裁判を経ない数個の罪を同時に審判して有罪の告知をする場合は、これを第四十五条前段の併合罪として、これに科すべき主刑につき次のような原則によっているのであります。  その第一は、いわゆる吸収主義に関し、一罪について死刑に処すべきときは、他の刑を科さない(第四十六条第一項)。また、一罪について無期の徴役または禁錮に処すべきときは、罰金及び科料以外の他の刑を科さない(第四十六条第二項)。  その第二は、いわゆる制限のある加重主義に関し、有期の懲役または禁錮に処すべき罪が二個以上あるときは、その最も重い罪の法定刑を一定限度で加重した刑期範囲内で一個の懲役または禁錮の刑を科する(第四十七条)。  その第三は、いわゆる併合主義に関し、罰金については、死刑以外の他の刑とはこれを併科し、罰金に処すべき罪が二個以上あるときは、その合算額の範囲内で一個の罰金刑を科する(第四十八条)。拘留は、死刑及び無期の懲役または禁錮以外の他の刑と、また、科料は、死刑以外の他の刑と、いずれも併科し、拘留または科料に処すべき罪が二個以上あるときも二個以上の拘留または科料をいずれも併科する(第五十三条)ということになっております。  すなわち、わが刑法は、原則として、禁錮以上の重い刑に処すべき罪が二個以上ある場合には、併科主義を緩和する吸収または制限のある加重主義をとっており、数個の罪のうちに罰金以下の刑に処すべき罪がある場合は、原則として、併科主義によることとしております。例外となる場合は、数個の罪のうち、一罪について処すべき刑が罰金以下であって、他に死刑に処すべき罪が競合しているとき及び一罪について処すべき刑が拘留であって、他に死刑または無期の懲役もしくは禁錮に処すべき罪が競合しているときであって、この場合には、吸収主義をとっているのであります。  ところで、審判の対象となっている数罪の間にすでに確定裁判が存在する場合は、その確定裁判があるにもかかわらず、さらに犯した罪とその裁判確定前に犯した罪とを併合して全体として評価し、いわゆる吸収または制限のある加重主義のもとに一個の刑を科するものとするときは、不当に犯人に利益となることがあるので、わが刑法は、第四十五条後段において、右の併合罪の範囲を制限し、確定裁判にかかる罪と、その裁判確定前に犯した罪とを併合罪とするものとし、右の確定裁判後に犯した罪については、これを別個に評価して別に刑を科することとしているのであります。  したがって、ある罪について確定裁判があった場合、その前後に犯された二個以上の罪が右の確定裁判のあった後に審判されるときは、これら二個以上の罪の併合罪関係は右の確定裁判によって遮断され、その犯人は常に二個以上の刑に処せられることとなるわけであります。  しかしながら、この場合、右の確定裁判の前後に犯された罪がいずれも禁錮以上の刑に処すべき罪であるときは、確定裁判後に犯された罪を別個に評価し、確定裁判前に犯された罪との間に吸収または制限のある加重主義を認めない点において、併合罪関係を遮断するかどうかに最も実質的な差異が生ずるわけでありますが、確定裁判の前後に犯された罪がいずれも罰金以下の刑に処すべき罪またはそのいずれかが罪金以下の刑に処すべき罪であるときは、その罪の処断が原則として併科主義による以上、別個に評価するかどうかに実質的な差異はほとんどないわけであります。  したがって、かように数個の罪の併合罪関係をその間に確定裁判が存在することによって遮断することは、前後の罪がいずれも禁錮以上の刑に処すべきものであるときに最も実質的意義があるとすれば、このような併合罪関係を禁錮以上の刑に処する確定裁判によって遮断することは別として、必ずしも罰金以下の刑に処する確定裁判によってまで遮断しなければならないというものではなく、かえって、罰金以下の刑に処する確定裁判によっても併合罪関係を遮断することとすることは、刑事審判の手続及び刑の執行の手続に複雑さを加えるものであり、また、犯人に不利益を生ずる場合もあるので、この際、刑法第四十五条を改正して、併合の関係を遮断する確定裁判を、禁錮以上の刑に処するものに限ろうとするものであります。  近時、道路交通法違反の罪等によって罰金以下の刑に処せられる者がきわめて多数に及んでいるのでありますが、このような裁判も、それが確定すれば刑法第四十五条後段の確定裁判に含まれるので、数個の罪で訴追されたすべての事件の裁判においてその調査を必要とするのであります。そのため、検察庁における捜査の段階においても、裁判所に於ける審理の際にも、右のような確定裁判の存否について明確を期するため、その調査を行なっているのでありますが、元来この調査には相当の時間と手数を必要とし、その事務量は少なからぬ実情にあるのであります。そこで、右のような現状にかんがみ、刑法第四十五条後段につき、早急に、今回のような改正を加えることは、現下における刑事裁判手続の迅速円滑な運用をはかる上においてもきわめて有意義であると考えるのであります。  なお、すでに公表されている改正刑法準備草案は、その第六十三条において、今回の改正法律案と同趣旨の規定を設けていることを付言いたします。  次に、本法案の第二項は、第二百十一条中「三年以上ノ禁錮」とあるのを「五年以下ノ懲役若クハ禁錮」に改めるというものであります。  この改正は、最近の自動車運転に基因する業務上過失致死傷事件及び重過失致死傷事件等の実情にかんがみ、その法定刑に新たに五年以下の懲役を加えるとともに、法定刑の禁錮の長期を五年に引き上げようとするものであります。  まず、法定刑に新たに懲役刑を選択刑として加える点でありますが、近時における自動車運転に伴う業務上過失致死傷及び重過失致死傷事犯等の中には、傷害、傷害致死等のいわゆる故意犯とほとんど同程度の社会的非難に値するものが相当数見受けられるに至っているのであります。たとえば、相当量の飲酒をした上での酒酔い運転、運転技量の未熟な者の無免許運転、はなはだしい高速度運転等のいわゆる無謀な運転に基因する事犯中には、きわめて軽度の注意を払えば人の死傷等の結果を容易に予見し、その発生を防止することができたのにかかわらず、これをさえ怠ったため、重大な結果を発生せしめたような事案が見受けられるのであります。これらの事案は、故意犯に属するいわゆる未必の故意の事案と紙一重の事案であり、このように人命を無視するような態度で自動車を運転した結果、人を死傷にいたした場合も、単に故意犯でないとの理由で、禁錮刑ないし罰金刑によって処罰せざるを得ないことは、国民の道義的感覚からいってむしろ不自然に感ぜざるを得ないというべきであり、この種事犯中きわめて悪質重大なものに対しては、懲役刑を科し得るものとすることが相当であると考えられるのであります。  次に、法定刑のうち禁錮刑と新たに加えるべき懲役刑の長期をそれぞれ五年とする点でありますが、近時における自動車交通の発達に伴い、主として自動車運転に基因する業務上過失致死傷及び重過失致死傷の事案は、一般的にその過失の態様、程度のみならず、その行為の結果において重大なものが増加しつつあることにかんがみるとき、犯情の最も重大なものに対しても現行の禁錮刑について定められた三年をもって責任を評価することは、いささか軽きに失すると考えられるのでありまして、諸外国のこの種の事犯に関する立法例等をも参酌すれば、法定刑の上限をこの程度に引き上げることが望ましいと考えられ、これによって過失の態様、程度及び行為の結果に応じ、具体的事案に即したより適切妥当な刑の量定をなし得ることとなるのであります。  なお、すでに公表されている改正刑法準備草案は、第二百八十四条において、業務上過失致死傷及び重過失致死傷の罪に対する自由刑として、今回の改正法律案と同様「五年以下の懲役もしくは禁錮」を規定していることを付言いたします。  最後に附則でありますが、附則の第一項は、「この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。」というものであります。  これは、改正法の施行期日を定める規定であります。  その第二項は、「この法律による改正後の刑法第四十五条の規定は、数罪中のある罪につき罰金以下の刑に処し、又は刑を免除する裁判がこの法律の施行前に確定した場合における当該数罪についても、適用する。ただし、当該数罪のすべてがこの法律の施行前に犯されたものであり、かつ、改正後の同条の規定を適用することが改正前の同条の規定を適用するよりも犯人に不利益となるときは、当該数罪については、改正前の同条の規定を適用する。」というものであります。  前項によれば、改正法の施行後に罰金以下の刑に処し、または刑を免除する確定裁判があった場合におけるその罪とその確定裁判の前及び後に犯された罪について、改正法による改正後の刑法第四十五条の規定の適用があることは明らかであります。しかしながら、改正法の施行前に確定裁判があった場合におけるその罪とその確定裁判の前及び後に犯された罪について、新法の適用があるかどうかは必ずしも明らかではないので、この項は、本文において、これらの罪についても新法を適用することを明らかにしたものであります。したがって、改正法施行前に確定裁判があれば、上記の罪のうち、確定裁判の後に犯した罪が、改正法の施行前にあろうと施行後にあろうと、すべて新法が適用されることとなるのであります。これは確定裁判の前と後に犯された数罪を併合罪としない現行法に比し、新法は併合罪とすることによって一般的に犯人に有利な取り扱いとなり、また、新法の取り扱いによれば、刑事裁判の迅速円滑な運用をはかり得ることとなるので、このような取り扱いを認めることとしたものであります。ただ、特定の場合には、新法を適用することが、改正法による改正前の刑法第四十五条の規定を適用するよりも、犯人にとって不利益となることがあるので、刑法第六条の趣旨をくみ、この項ただし書で、対象となっている数罪がすべて改正法の施行前に犯されたものである場合において、犯人に右のような不利益が生ずるときは、例外的に、旧法によることとしたのであります。  その第三項は、「前項の規定は、この法律の施行前に確定した裁判の執行につき従前の例によることを妨げるものではない。」というものであります。  この項は、前項の規定が、数罪中のある罪につき罰金以下の刑に処し、または刑を免除する裁判が改正法の施行前に確定し、その他の罪の全部または一部につき改正法施行のときまでにまだ確定裁判がない場合に関する規定でありますので、その他の罪の全部または一部につき改正法施行前に禁錮以上の刑に処する確定裁判があった場合におけるその刑の執行については、すべて従前の例によるべきものであることを念のために明らかにしたものであります。  以上がこの法律案の逐条説明であります。
  10. 大坪保雄

    ○大坪委員長 これにて提案理由の説明及び逐条説明は終わりました。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時十五分散会