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1957-05-23 第26回国会 衆議院 商工委員会木材利用の合理化に関する小委員会 2号 公式Web版

  1. 昭和三十二年五月二十三日(木曜日)     午前十時三十六分開議  出席小委員    小委員長 鹿野 彦吉君       川野 芳滿君    首藤 新八君       本名  武君    永井勝次郎君       松平 忠久君  小委員外の出席者         通商産業事務官         (軽工業局長) 齋藤 正年君         工業技術院長  黒川 眞武君         参  考  人         (東京工業大学         学長)     内田 俊一君         参  考  人         (東京大学教         授)      桑田  勉君         参  考  人         (東京教育大学         教授)     小林 達吉君         参  考  人         (東京大学教         授)      右田 伸彦君         参  考  人         (東北大学助教         授)      柴崎 一雄君         参  考  人         (京都大学教         授)      片桐 英郎君         参  考  人         (野口研究所技         師)      大島 幹義君         参  考  人         (北海道顧問) 堀  義路君         参  考  人         (北海道林務部         長)      小野岡 清君         参  考  人         (新日本窒素肥         料株式会社調査         部長)     柴田 健三君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 五月二十三日  小委員鈴木周次郎君同日委員辞任につき、その  補欠として本名武君が委員長の指名で小委員に  選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  木材化学工業(主として木材糖化に関する)問  題について参考人より意見聴取     ―――――――――――――
  2. 永井勝次郎

    ○永井小委員長代理 これより会議を開きます。本日は小委員長が所用のため出席がおくれますので、私が小委員長の指名により暫時小委員長の職務を行います。本日は木材化学工業、特に木材糖化に関する問題について、御出席の参考人より御意見を承わることといたします。本日御出席の参考人は、東京工業大学学長内田俊一君、東京大学教授桑田勉君、東京教育大学教授小林達吉君、東京大学教授右田伸彦君、東北大学則教授柴崎一雄君、京都大学教授片桐英郎君、野口研究所技師大島幹義君、北海道顧問堀義路君、北海道林務部長小野岡清君、新日本窒素肥料株式会社調査部長柴田健三君、以上十名の方々であります。この際参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。参考人の方々には御多用中のところ本委員会に御出席下さいましたことを厚く御礼を申し上げます。申すまでもなく木材糖化の問題につきましては、最近ようやく政府及び民間におきましても木材の高度利用の観点よりその企業化の推進のための努力がなされて参りました。従来森林資源を原料とする工業製品のおもなるものは、繊維素をそのまま利用するような化学処理度の低いものでありましたが、近き将来におきましては、有効成分のリグニン、フルフラール、結晶ブドウ糖等の有効利用によって高度の有機化学工業としての発達が期待されているところであります。目下塩酸法または硫酸法により試験研究が行われているようでありますが、それぞれ一長一短があり、未解決の問題が多々あるようであります。この際本委員会といたしましても、かかる新規工業の一日も早い企業化を期し、何らかの施策を見出すべく調査検討を進めていきたいと存じております。かかる意味合いにおきまして、この際斯界の権威であられる皆様の御意見を伺い、調査の参考にいたしたいと存じ各位の御出席をわずらわした次第でありますから、以上の趣旨をおくみ取り下さいまして、忌憚のない御意見を御発表願いたいと存じます。参考人の御意見開陳の時間は一人おおむね十分ないし十五分以内にお願いをいたすことといたし、その順序は勝手ながら小委員長におまかせを願いたいと存じます。なお御意見御発表の後小委員の側から種々質疑もあろうかと存じますので、お含みの上お願をいたします。出席者が大へん少いようでありますが、速記によりましてこれは委員全体にわかるように知らせるわけでありますので、その点あしからず御了承をいただきたいと存じます。それでは最初に内田参考人よりお願いいたします。
  3. 内田俊一

    ○内田参考人 ただいま小委員長のお話でありますが、はなはだ突然で、しかも数日前にちょうどアメリカから帰朝したばかりでありますので、何にも準備がございませんが、大体の線に沿いまして、私の考え方を申し上げます。実はこの木材糖化に関する研究はかなり古いものでありまして私もそのかなり初期の時分から、何らかの形で関係をしてきたものでありますが、最近までの研究は、私の考えますところによりますと、大体においていわゆる研究室における研究という段階を通ってきたものであると思っております。約一年ぐらい前から、そろそろこれがいわゆる開発研究の段階に入ったというふうに感ずるのでありますが、御存じのように、学問的な研究におきましては、工業化ということを、念頭には置きますけれども、その研究の対象がかなり限定されておることはやむを得ないのであります。そこで、しばらく前から、これの工業化を目標にするというところで、研究がかなり多方面になって参りました。  〔永井小委員長代理退席、小委員長着席〕 特に日本におきましては、従前から濃硫酸を使うという方法に興味が集中されておりまして、開発研究の段階になりましても、これに関する研究 すなわち硫酸の事後の処置をどうするかというようなところに、かなりな重点が置かれてきたようでありますが、ただいま座長のお話にありましたように、しばらく前から塩酸を使うということの研究も同時に行われまして、これも同じく開発研究の段階にそろそろ入ってきた。詳しいことは存じませんが、あるところではこれの中間試験も行われておる。それから、濃硫酸におきましてもそういう段階に入っておるところもあるのですが、みなこれはいわゆる中間試験のごく小型なものでありまして、大きな設備をもってやるというようなところまではいっておらないように思うのであります。私のこの木材化学工業に関する全体の感じを申しますと、いかなる仕事でもそうでありますが、これが工業化ということになりますと、非常に多方面な研究を要します。これは余談でありますが、最近私はアメリカで工業研究に関する組織、運営といったような面の調査をしてきたのでありますが、まず基礎研究におきまして一の経費を使ったという場合には、開発研究においては、これの十倍を要する。それから、これが生産になりまして、しかもその製品の用途の開拓、市場の受け入れその他の面、あるいはこれの配給というような面まで研究が及びますと、基礎研究の百倍の経費を要するということに、大体の線が向うでも出ておるようであります。従いましてこの木材化学工業におきましても、ここのところ一、二年までの間は、いわゆる基礎研究である。最近もかなりな程度その基礎研究の段階が残っておるというようなことでありまして、これを実際の化学工業というところまで持っていくには、今までに投じました金のおそらく内輪に見ましても数十倍の研究費というものを必要とするであろうということは、大まかにいって考えられるのであります。即座にこれが工業になり、一般の国民の生活の中に製品が流れていくというような段階にすぐさまいくというふうには、私自身は考えておりません。こういう大きな工業になりますと、まだまだ相当程度そういったことに努力が注がれなければならない。ただいま行われておりますようなごく小規模な中間実験というような段階におきましても、幾つかの改変が行われて、最後に日本の森林資源の大きさに見合うこころの工業というものが徐々に育っていくのだというふうに考えております。  まだ少し時間があるようでありますから付帯して一、二意見を申し上げますと、濃硫酸の方法について私の考えを申し上げますと、硫酸の処置というものが非常に大きな問題でありまして、当初の基礎研究はこの硫酸の処置にだんだんと重点を転化してきたのであります。これに幾つかの案が出まして目下それの比較検討というようなところが問題であろうかと思います。一、二の例を申しますと、その硫酸を石こうに直しまして、これを石こう板として建築材料に向けるという案もございます。こういう案もこれは小規模な段階においてはある程度考えられるのでありますが、もしもこれが非常に大きな工業になりますと、硫酸を全部石こうに直してしまってこれをボードに直すということがどの程度の大きさになり得るかということは、また今後の研究を要する問題である。また一つの解決法は、その硫酸を回収してこれを再利用するというような方向にも研究が行われておるかのように思うのであります。これが上手にいきますと、これははなはだけっこうな方法でありますが、しかしながらそれがどの程度のところまで現在研究が進展しているかということは、これはその方の関係の他の参考人からお話があるかと思いますので、省略いたします。それからその硫酸を、今度は肥料に持っていくというような案もあるのでありますが、肥料工業はそれ自体が非常に大きな工業でありますので、木材化学工業とその関連した肥料工業とがどちらが主体であるかわからぬような、そういうふうな一つの総合化学工業というような大きなものを考えないと、これはちょっと成り立たないというようなことにも考えられます。  これらに対しまして塩酸の方は、やや回収循環使用が可能であるという見通しを、当初われわれも持ったのでありますが、それに付帯しましても、やはりいろいろな点で今後の研究を必要とするものがあると思うのであります。まあ日本におきましては、各方面に行われておりますのは大体その二つの方法のように思うのです。  それからリグニンその他のことにつきましては、これは御専門の参考人の方がおられますから、その方からお話をお聞きになった方がけっこうだと思うのであります。外国におきましては薄い酸の硫酸を使います方法が、相当程度、ある時期において発展いたしましたが、現在におきましてはそれほど注目すべき段階までいっておらないようであります。これにはいろいろの理由もあるのでありますが、技術的にもかなりな問題が含まれておるというふうに考えていいのではないかと考えます。  はなはだ簡単でありますがこれで私の意見を終ります。
  4. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 次に桑田参考人にお願いいたします。
  5. 柴崎一雄

    ○桑田参考人 私は酸の回収という特殊な部門の研究をやっております。その前に今内田さんからお話のありましたことに、ちょっとなお敷衍して申しますと、木材の利用というのは非常に大きい工業であるだけに、化学工業が他の産業と非常に密接に関係しているという上に、木材をいろいろ処理してリグニンとかフルフラールをとるというようなことは、大体パルプとかあるいはそれに関連した仕事が非常に多いわけであります。その次にこれを糖化するという仕事は、これが主体になっておりますが、これはいわゆる狭い意味の化学工業になります。それからできましたブドウ糖を糖としていろいろするのには、従来あります製糖工業の力を借りなければならない。そういう意味で同じ化学工業の中でも木材を完全に利用しようとすれば、すでにある化学工業の中でもその三つの部門の非常に緊密な協力のもとで初めて成り立つだろうと思います。そのいろいろな方法を考えてみますと、さっきもお話がありましたように、一番問題は硫酸とか塩酸を使って糖化いたしまして、できましたブドウ糖が硫酸とか塩酸とかのまじったものができます。その硫酸、塩酸をどういうふうにして回収するか、あるいは利用するかということになります。おそらく塩酸の方法の特徴は、塩酸の回収が硫酸に比べて非常にやさしくて、他のものに利用しなくても大部分塩酸として回収しやすいという点に着目されて始められたのだろうと思います。それに比べますと硫酸法は装置その他においては塩酸法に比べておそらく非常に簡単であるという利点はありますが、できました糖が硫酸とまじってできてくる。これを今お話しのように、その硫酸を石こうに変えたり硫安に変えたりいたしますと、今度は石こう工業あるいは硫安工業というものと関連してくるわけです。化学工業は副産物ができるのが利点ではありますが、また化学工業の立場から見ると副産物ができるという二とは非常な弱点であります。たとえば今の石こうができるとすると、石こうが十分の需要がない限りは本体の工業が発展しない、こういうことでわれわれの立場としてはなるべく副産物は出さないということをねらいにいたしております。そういうようにしますと、この木材糖化の一番キー・ポイントと考えられることは、使った酸をなるべくそのままでもとのものに、硫酸を使った場合には硫酸としてこれを回収して、これを繰返して使いたい、こういうことであります。これがうまくいけばおそらく経済的にも十分工業はやっていけるだろう、こういうふうに考える次第であります。  私のやっておりますことをちょっと簡単に御説明するためにほかのことを申しますが、私はイオン交換膜というものを研究しております。これは現在問題になっております海水から塩をとるという場合に、おそらくこれが成功しますと、現在あるあらゆる方法よりも最も安く塩ができます。現在そういう意味で日本の各ソーダ会社あるいは塩に縁のある会社は熱心にこのイオン交換膜の研究をいたしております。外国では一番熱心なのはアメリカであります。アメリカは塩が必要ではありませんが、塩分を含んだ水がたくさん出る。これを灌漑に使うのに塩分が多過ぎるので中の塩分を除くのにこれを使うということを研究しております。いわば現在日本とアメリカとイオン交換膜でどちらが早く工業的に成功するかという競争時代だと考えております。アメリカですでに相当の製品が市場に出ておりますが、まだ値段と品質において日本において塩を作るのにこれを使ったのではペイしないのであります。われわれは日本の立場として、アメリカに負けずに勝ちたいということから、数年来このイオン交換膜の製造に努力しております。現在発表されておる限りは、少くともアメリカの製品に品質、価格の点においても数等まさっておると自負しておる次第であります。このイオン交換膜を硫酸の除去に使ったらどうかということを昨年からお話がありまして、その問題を今取り上げてやっております。そういう意味で、これはまだほんとうに基礎研究の時代であると言えるわけでありますが、今までの見通しでは非常に有望であるということを申し上げても差しつかえないと思います。ただ、今のように机の上でやる小さい実験は、針の穴からのぞいて、将来大きくなる姿を見るわけでありまして、そこに見誤まりもあります。また、大規模になりますと、たとえばこの膜を何千枚、何万枚と使うわけであります。そういうものが一体耐久力がどのくらいあるものであるか。またその膜がどのくらいの値段で生産されるかということが、結局は工業的には支配いたします。相当うまく硫酸が抜けるということはわかりましたが、今後の問題は、この膜をいかに安く多量生産するか、またその耐久力がどの程度までいくかということなどその他いろいろ問題が残っておると思います。なお、こういうふうな方法をやります前には、予備的にいろいろ木を処理しなければいけない。なるべく不純物あるいはリグニンとか、そういうふうなものは除いてやってほしいのであります。そういう点において今までなされた木材をただ硫酸で処理するということよりも、その予備処理なども適当な方法をやっていただければ、この硫酸の除去がやさしくなってくる、また膜の耐久力とも関連してくる。そういう関連した仕事もやっておりますが、最初は率直に申し上げますと、この問題を引き受けたときは、ほとんど自信がなかったのであります。約一カ年やりましてそれで成功すれば案外日本で初めて木材糖というものが経済線に乗ってでき得るのではないかという希望を抱いております。しかし、これはどこまでも机の上でやっておる範囲を出ておりませんので、いかなる障害が出てくるか。ともかく小さくやっておってうまくいきましても、大きくやるといろいろな障害が出てくると思いますが、ただ私としましては、最近までの結果で明るい希望を抱いておるということだけをここでお話し申し上げたいと思います。
  6. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 次に小林参考人にお願いいたします。
  7. 小林達吉

    ○小林参考人 私はだいぶ前から木材を濃硫酸を使って糖化する方法についていろいろ研究し、考えて参ったのでありますが、この大戦後になりまして、ブドウ糖を木材から作るということがドイツから叫ばれるようになりまして以来、かなり自由経済下でも木材糖化が成立するという計算がされるようになったのでありますが、ドイツは戦争の終るまで十年間くらい大きな規模の工場を持っておりまして、それを操業しておりましたし、実際にブドウ糖を作るということもやっておりまして、工業におけるいろいろ起り得るトラブルについて非常な経験を持ったわけでありますが、戦後の研究によってその方法が合理化されて、できるという段階に到達しておるのだろうと思います。われわれのやっております硫酸の方法は、初めにアメリカでやっておりまして、それが今度の大戦のときにイタリアで同じ方法を工業化したのでありますが、いろいろな事情で閉鎖になった。その方法及びアメリカでやった方法について検討をしてみますと、みな問題となっておりますのは、もちろん糖液を作るということの範囲内におきましても、硫酸法の場合には、硫酸の回収ということができませんので硫酸を捨てるという建前のもとに考えられております。それからもう一つ、戦後の新しい木材からブドウ糖を作るというような考え方からしますと、澱粉からでも同じでありますように、原料からまず澱粉を作ります。そうしてその澱粉を精製することによってブドウ糖の製造を非常にたやすいものにしておるのでありまして、木材からそういうようにブドウ糖の製造が容易になるようにするために、いわゆる前加水分解をやるようになったのであります。現在のドイツの方法でも、まだ連続的な近代的な方法にはなっておらないのでありまして、この問題について現在考えられている方法は非常にお金のかかる方法であります。何億円というお金をかけなければそういう装置を実際に使えないということが問題でありまして、そのために多額の金が必要であるということであります。これは木材の大きさ、たとえばチップの大きさが変らないために、小さい装置でのこぎりくずを好成績で前加水分解できたからといって、大きい装置でチップでうまくできるというわけにいかないところにいろいろな問題がある。そういう装置を使っていろいろ実験をやりますと、従来非常にリグニンが入っているために困った問題も、そういうことで簡単に解決できることも考えられますし、また副産物として価値ある製品たとえばフルフラールができるということもあります。糖化自身の問題についても、従来アメリカでもイタリアでもやりましたそういう装置を使う方法では、反応の有効部分の七割五分くらいまでしかいっておらないのでありまして、それ以上は、やはり物理的にもっと違った方法を使うことができれば、この問題は相当大きな進歩をするのではないか。そういうことについても、まだ応用研究の部分に問題が残っておるということが言えるわけであります。いろいろな基礎的なことと関連して、それを装置化するのに現在相当重要な問題が残っておりますし、また一方ではすでに前加水分解というものに非常にすぐれた方法があって、そういう方法、装置を導入することによって相当大きな進歩を期待でき、それにその装置をどういうふうにうまく使うかということによっても非常に大きな効果が生まれることが予想できるのであります。そういうことは一にかかって、そういう研究のために経済的な意味でもどれだけの努力がされるか、また研究者がそれに対してどれだけの熱意を持っておるか、また時間がかかるということ、みなこれらが相関する問題でありますが、こういう問題が解決されるならば、この産業もかなり大きな進歩をするのではなかろうかと思っております。
  8. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 次に右田参考人にお願いいたします。
  9. 右田伸彦

    ○右田参考人 私は木材化学を専門にいたしておりますが、私自身は木材糖化の研究にはタッチしたことがないのであります。木材糖化にはタッチいたしませんで、もっぱらパルプ関係の方に力を注いで研究いたして参ったのであります。しかしながら専門の立場上木材糖化には大きな関心を持っておりますし、また木材糖化関係の委員会などにも出席させていただいておりますような関係で、これに関する文献その他にはかなり注意して目を通しておるようなわけでございます。  それで木材糖化の工業化の見通しにつきまして私なりの意見を申しますならば、木材糖化工業が相当古くから研究されておりましたにもかかわらず、ある時代には国の援助によって成り立つことがありましても、またこれがいろいろの事情で立ち消えになる、そういったような歴史を繰り返して参りましたようなことから考えて、安易に考えてはいけない、しかしながら全く悲観すべきものかと申しますと、いまだにアメリカあるいはドイツ、日本もその通りでありますが、そういった国におきまして、木材糖化の研究に相当多くの努力が払われているということは、裏を返して申しますならば、木材糖化工業というものの完成が決して捨てたものではない、いわば経済線すれすれのところにある、ボーダー・ラインをうろついているといったような気がいたすのであります。  先ほど内田先生がお話になりましたように、木材糖化に関しましては、実験室的の研究がすでにかなり進んで参りまして、まさに開発研究に移るべき時代であるということを申されました。私も全くその通りであると存じておるのであります。そしてその開発研究をできるだけ慎重に、また多額の経費をかけて行なっていくということが、最も望ましいのではないかと存じます。あわてますと、せっかく完成するであろうところの木材糖化工業の芽がつまれてしまうというようなことに陥るおそれもあります。これはまことに悲しむべきであります。開発研究というものにできるだけ便宜を与えて、そしてこれを十分に行わせるということが、きわめて望ましいと思います。  それから先ほど桑田先生からお話がございました化学工業においては、副産物というものはありがたいようでまた厄介なものだというお話がございました。ところが木材というものは五〇%がセルローズ、あと二〇%くらいがフルフラールのもとになるヘルセルローズ、それから広葉樹と針葉樹と違いますが、二〇%なり三〇%のリグニンを含んでおるのであります。このリグニンだけはどうしても糖化できませんので、木材糖化ということをいたします場合には、ぜひともこの残ってくるところのリグニンの利用というものを考えなければならないのではないかと思います。  木材質を化学的に利用いたします場合に、リグニンの利用ということは常に考えられておるところであります。パルプ工業におきましても、パルプ廃液中のリグニンを利用しようということは、亜硫酸パルプ工業が興りました直後からすでに関心を持たれておるのであります。ところがパルプ工業の方は、その製品の性質上から比較的競争が少いのであります。たとえば製紙工業を考えますならば、木材というものがほとんど独壇場にある現状であります。またレーヨン・パルプの場合におきましてもその通りであります。パルプ工業というものは製品の種類によって非常に恵まれておりますがゆえに、リグニンの利用を直ちにいたさなくても十分に採算に合う工業であるのであります。ところが木材糖化工業の場合には、その製品の種類が農産廃物の方からくる製造法もありますし、また合成化学の方から参ります製造法もありまして、非常に競争が激烈であります。どの製品の方に持っていこうとしましても、かなりの競争に打ち勝つということが必要なのであります。従いまして、木材糖化工業を安定いたしますためには、これは私の考えでございますが、リグニンの利用ということが相当重要な意味を持ってくるのではないかというふうに考えられるのであります。  ところでリグニンの利用なんでありますが、先ほどもちょっと申し上げました通り、リグニンを利用しようという考えは相当古くから起きておるのでありますが、いまだにリグニンの利用に関してぱっとしたアイデアができておらないのであります。少量のリグニンを利用いたしますならば、たとえば香味料のバニリンを製造するといったようなことが確かに化学工業の面で成功しておるのであります。しかしながら木材の二〇ないし三〇%を占めるリグニンというものは相当の量でございます。しかも木材糖化工業といったようなものを考えますと、パルプ工業も同じでありますが、大量に製品を作りますので、その出てきますリグニンの量というものは莫大でございます。従いましてこれを香味料のバニリンを作るといったような特殊な用途にだけ振り向けたのではとうてい消費し切れない。何とかしてリグニンを大量に消費される方面に持っていこうということがきわめて重要なのでございますけれども、これは非常にむずかしい問題なのでございます。そのむずかしい問題であるということは、亜硫酸パルプ廃液のリグニンの利用に関して今までに何百人何千人の人がこれを手がけて参りましたが、いまだにうまい工業ができ上っておらないという事実がこれをよく証明しているのではないかと思います。しかしながら他の科学の分野の進歩によりまして、リグニンの利用ということも決して不可能な問題ではないと思うのであります。これはきわめてむずかしい問題でございますから、リグニンの利用の研究ということも十分育成下さるようにお願いいたしたいのであります。  私、学校を卒業して以来二十数年間もっぱらリグニンをいじっておるのでありますが、学校におります関係か理屈っぽいことだけやっておりまして、リグニンの利用ということは全然やっておりません。と申しますのは、これがあまりにむずかしいのであります。いいかげんに手がけてもなかなかできませんし、またそういった利用面の研究をしようと思いますと、先ほど内田先生も言われました通り相当多額の経費、また研究組織といったようなものも必要になってくるのでありまして、木材糖化工業を育成いたしますためには、ぜひともリグニン利用の研究がしやすいような措置をとっていただきたいということを特にお願いいたす次第であります。
  10. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 ありがとうございました。  次には柴崎参考人にお願いいたします。
  11. 柴崎一雄

    ○柴崎参考人 私ども従来糖類の研究をやっておりまして、昨年から木材精化液の糖の分析をやっているのにすぎませんので、特に申し上げることはないのでございますけれども、つまり木材を酸で処理して甘くして糖化液を作る、これはやっておりませんで、たとえば小林教授その他のところで糖化液を実際にやる、その糖化液の中に、ブドウ糖が大部分でございますけれども、そのほかに幾つかの糖がまざっております。その糖を分析するのにはちょっと特殊な分析法を要しますので、その糖化を実際にやっておられる方から糖化液をいただきまして、その中の組成がブドウ糖が何%、その他の糖類が何%ぐらい入っているか、そういうことをやっている程度にすぎないのであります。それからその中にだいぶブドウ糖が入っておりますが、これを結晶のブドウ糖に持っていくというのはまた一つの大きな問題なのでございます。一体糖化液の中に入っているブドウ糖から実際に結晶のブドウ糖がどれくらいとれるか、その辺のところをやっているので、特に申し上げることはございませんから、もし質問がありましたらあとでお答えすることにいたします。
  12. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 ありがとうございます。  次には片桐参考人にお願いいたします。
  13. 片桐英郎

    ○片桐参考人 私は専門は発酵の方で、微生物をやっておるのでございますが、こういう本質の糖化につきましては、私どもの方の先任者でありますところの、志方益三教授が、これはおそらく日本で初めてのショラー法の実験室的な装置を作ったのでありまして、今から二十二、三年前でございます。志方教授が満州の大陸科学院に赴任されまして、そのあと私どもが受け継いでやってきております関係から、その糖化液の発酵という面では私どもずいぶん長く研究しておりまして、たいていの粗悪な発酵液に対しても容易に発酵を起す酵母を発見しております。  なお木材はどうもわれわれ農林化学の立場から見ますと、天然資源的にもったいないという立場がございましたので、木材にかわるような林産未利用資源を利用しようということで、志方教授が目をつけましたのはほとんど無尽蔵にありますところの樺太のツンドラ地帯にありますいわゆる草炭の利用でございまして、草炭を酸糖化して、それからアルコールを作る、こういう方法は実験室的には成功をしておるのであります。そればかりでなく麦わらとかあるいはもみがらとか、そういったようなものも非常に簡単にアルコール化するということができたのでございます。ことに日本において未利用資源としてありますところの桑の葉を取ったあとの棒――桑条と申しますが、桑条を利用する。ことに桑の皮というものが非常にたくさん蛋白質を持っておりますので、これを糖化いたしますと窒素源も何もいらないのです。非常に簡単に発酵ができる。こういうようなことをいたして参ったのでございます。これらをアルコール化するということは割合に簡単に、これは薄い硫酸を用いる方法でございますが、そういう方法は確立したものでございます。しかしそういう発酵液、アルコール、つまりそういう糖化液に酵母を加えまして発酵いたしましても、酵母が食い切れない糖類が非常にたくさん残っておるのでございます。つまりいわゆる砂糖――われわれの口に甘く感じないような糖類が相当入っておる。言いかえると五炭糖と申しますか、あるいはペントースとかその他ガラクトースとか、ペントースは発酵いたしますがガラクトースは発酵しにくいといったような点がございます。なおアルコールをとった蒸溜廃液の中に糖がございますのでそういう蒸溜廃液まで利用してしまえということで、そういう蒸溜廃液に生えますところの酵母をいろいろ研究いたしましてこれもドイツにありますトルラユーチリスよりもさらに優秀な酵母を私のところで見出しまして、それによりまして蒸溜廃液にそういう酵母を繁殖さしてその酵母を家畜の飼料にする、あるいは蛋白資源にする、そういったようなところまで戦時中行なってきたのでございますが、戦後になりましてはもう少し欲を出しまして、日本で一番足りないのは一つは油の資源であるから、油を合成するところの酵母をやってみようというので、そういう蒸溜廃液とかその他の未利用資源に生えますところの、油を多量に持った酵母、これはちょうど大豆油みたいな形態の油でございますが、材料であるこの酵母はちょうど大豆くらいな油の含量になっておりますが、こういう酵母も見出しておりまして、それらを利用しようといったようなことを努めておる次第でございます。  私どもの考えから申しますと、今まで私どもがとってきたのは、化学的に繊維を分解して、その分解物を微生物で利用していこう、こういうことでございますが、私どもが抱いている夢は、繊維を分解して砂糖にするような微生物を見出していきたい、これがわれわれども百年前から持っておるところの考えでございます。アメリカでもそういう各研究がちょいちょい行われまして、それで収量はまだ少いのですが、まんざら夢物語ではなさそうなのであります。将来私どもの研究といたしましては、先ほどお話しのようにいろいろ酸を用いると、あと回収というような問題もございますし、装置等の問題もございますが、何とかして繊維を分解するような酵素を持っておるバクテリア類を見つけていきたい、こういうことを心がけておる次第でございます。これはいつ実現するかということは申し上げかねる一つの私ども研究者の夢でございます。そんなところでございます。
  14. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 次には大島参考人にお願いいたします。
  15. 大島幹義

    ○大島参考人 私は野口研究所におりまして、研究所の性格上応用研究を中心としてやっております。現在は塩酸法の木材糖化を中心とします木材の総合利用の研究をいたしております。塩酸法の木材糖化の進展状況を申し上げますと、昭和二十二年ごろからずっと木材の完全利用の研究をいたしておりましたが、二十八年ごろから塩酸法の木材糖化に一つの着想を得たわけでございます。これまで諸先生方からお話がございましたように、木材糖化の基礎的な学理というものは昔からわかっておりまして、多数の研究がございます。問題の中心点は木材の糖化の装置と酸の回収法いかんという問題にかかっておると考えております。そういう見地から研究を始めまして、二十九年から三十年にかけましては小型な装置を作りましてそれによる研究をいたしました。それに引き続きまして三十年度に政府から補助金をいただきましたので、三十一年に工業化試験工場を九州の水俣に新日本窒素肥料と野口研究所と協力いたしまして建設いたしました。内田先生の先ほどのお話しのように実際だんだん研究のポイントが変るわけでございますが、その費用の方も初めの総費用が二、三百万円でございましたが、今度やっております工業化試験工業の方は六千万円かかりまして、現在運転しております。工業化試験の目的は大体工業化したときに起るべき問題を全部そこで処理するということが目的でございますが、工業化試験工場の問題は昨年九月に大体工場ができ上りましてそれから各部が進展をいたしまして一応最後の結晶ブドウ糖まで製出するに至っておりますが、なお各種の工業化するときに起るところの難点がございましたので、これを一つ一つ解決して現在漸次好転しております。現在の目標といたしましては、本年九月ごろに一応の結果をまとめたい、現在そういう考えであります。それから木材化学工業は、最初は結晶ブドウ糖を作りまして、それによって将来の木材化学工業は採算をとるということが必要かと私ども考えておりますが、その他の副産物もその後の木材化学工業の進展には非常に重要であります。その見地から木材中の成分の一つでありますペミセルローズからキシローズという糖を作る。それからフルフラールを作る。フルフラールというのは将来優良な化学工業の原料であります。そのフルフラールを作る研究といたしましては非常に力を入れておりまして、本年それによる装置試験に移ろうと考えております。それから右田先生のお話がありましたリグニンの問題につきましても、これは非常に重要でございます。これは石炭液化の技術をそのまま使いまして液化する。液化しますと、これが油になります。それから油になりましてから以後は石油化学工業と同じ考え、この考え方は、化学工業というものは、まず石油化学、石炭化学というものがございますが、昔は、これは燃料と考えておったわけでありますけれども、それを今度は木材も化学工業の原料と考える場合にはまず一回、原料と申しましても一等基本となる原料まで分解してしまう、それから再出発していくという形が普通の化学工業の形でございます。石油化学またしかりなんでございます。リグニンの場合も、私どもとしましても同じように考えておりまして、まずリグニンからすぐ何かを作るのではなくて、一回これを完全に分解してしまって、一等エレメントになるところまで持ってきまして、石油化学と同じような方向に進みたい、こういうように考えております。この方は現在六月中にでき上りますが、政府の補助金をいただきまして、東京の板橋に連続式の装置試験を約一千万円ほどかけまして、現在建設しております。  以上が塩酸法を中心としました木材糖化の現況でございます。塩酸法におきましては、塩酸の回収の問題は割合に楽でございます。しかしながらそのかわり、ものを処理する、糖化をする反応あるいは原料の取扱いその他について工業化の諸条件を十分きわめる必要がある、こう考えております。これも漸次解決する見通しを現在持っております。以上であります。
  16. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 次には堀参考人にお願いいたします。
  17. 堀義路

    ○堀参考人 私は専門は化学工業となっております。そうして北海道庁の技術顧問をいたしております。その関係で現に北海道庁でやっておりますところの硫酸法による木材糖化という問題に過去約一年半くらい参与しておる見地からお話を申し上げたいと思います。  皆様方からお話があったと思いますが、この上木材糖化という仕事は、かなり前から研究され、またわが国でも諸外国でも何べんも工業化されたのです、これは非常に世上が異常なときにそういうものが起ってきまして、一時はそういう工業が盛んになりますが、経済が正常化するとともに細々とつなぐかあるいはそれが倒れるかというような運命を今までもたどっておったかと思います。これは一つから言いますと、ちょうど浮び上るか浮び上らないで沈むかというボーダー・ライン、境目にある産業だと思います。従って日本で将来木材工業が確立し、あるいは世界のどこかで確立されるといたしますと、今まで持っていたような手法をそのままやっておるのではなかなか困難で、ここにいわゆる技術的の一つの発見なり飛躍がなければむずかしいのじゃないかと思っております。その意味において、今大島さんからお話のあった塩酸法というのは、これは流動法という、割に新しく発達いたしました化学工業の非常によい手法で、今までの木材糖化ということとは断然違っている一つの原理を使っておりますので、こういう方法が成功いたしますと、これはちょうど浮ぶか浮ばないかというところでありますから、浮び出るという可能性が非常にあると思います。北海道の方におきます硫酸法においては、硫酸の除去ということが非常に大きな問題でありまして、そのことについて過去一年間この方法を研究して、その見通しが今ついた段階であります。従って、まだほかにもありますけれども、大きなところは硫酸の除去という問題が解決すると、おそらくこれはラインに乗るというふうに考えております。  それからもう一つ、今大島さんからもお話がありましたが、フルフラールというものが木材の産物として非常に大きく最近取り上げられてきております。これはイタリアでも木材からフルフラールをとるだけの工業が今成立し、最近行ってきた人の話によりますと、それがさらに拡大しようとしておるということを聞いております。それからまたアメリカの一工場、これは文献でありますが、最近木材からフルフラールをとって、その残りのかすを木炭に使うということを聞いております。御承知の通り、アメリカはクェーカーオーツではトウモロコシのかすからフルフラールをとっておるのでありますが、これは地理的に違う場所かもしれませんけれども、そういうふうにフルフラールは木材のほとんど単一産物としての見通しもついてきておるわけであります。  それからもう一つ、木材工業の将来に対する非常な未知数であり、おもしろい問題は、先ほど右田先生もお話になりました非常に大量に出るところのリグニンの利用であります。これは木材工業ですと、当然今までのパルプと違いまして――パルプと同じかもしれませんが、あまり処置をしなくてもリグニンが相当固まってとれますから、これも非常に大きな一つの将来性のある資源だと思います。私ども化学工業をやっているものは、そういうじゃまものであると同時に、化学工業の進歩というものはいつも要らないものが出てきたということで、その利用をはかるところに進歩があり、それに対する技術が生まれてくると思うのであります。それでこれは変な言い方かもしれませんけれども、私けさ英字新聞を見ていたところが、その中に聖書のマタイ伝が出ておりまして、まかぬ種を取り入れることはできない、散らさぬものは集めることはできないとあるのでありますが、私はこの木材工業に対しては要するにここで種をまき、ここで散らして集めるということは非常に大切なことだと思うのであります。  私は北海道の見地から木材工業を考えておりましたが、木材工業の技術が先ほど申しましたように、現在の技術よりも一段と飛躍してそういうものがわが国でもって確立すると、たとえば南方におけるところの非常に大きな資源というものがその技術によってわれわれが開発することができると思います。そういう意味において循環資源である木材工業というものをわれわれとしても見直さなければならないものと思います。
  18. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 次は小野岡参考人にお願いいたします。
  19. 小野岡清

    ○小野岡参考人 私北海道林務部長の立場から参考意見を申し述べさせていただきます。まず順序といたしまして北海道における原木の事情、特に木材糖化を対象とした広葉樹の供給力、第二には今日までの道としてやって参りました研究試験の経過、さらに本年度道として中間試験を行うその理由と申しますか、必要性について、さらに中間試験の内容、規模並びに企業としての見通し並びに最後に本年度計上いたしました予算の金額について簡単に申し上げたいと思います。  まず第一に、原木の事情でありますが、御承知のように、北海道において森林蓄積は日本の二割二分、約十九億五千万石でありますが、その約六割は広葉樹に占められておるわけであります。なお昭和三十二年度の木材全般の需給状況を見ますと、針葉樹の用材で約千三百三十万石、広葉樹の用材で約千五十万石、合計いたしますと、これは素材換算でありますが、二千三百八十万石という莫大な数量に達していますし、それにプラスするに薪炭林の約七百万石が推定されているわけであります。従いましてわれわれが考えておりますものの木材糖化に消費します材料、これはもちろんでありますが、今日考えられますところの木材に関する限りの近代工業の原料につきましては、むしろ今まで未利用のまま放置されてありましたいわゆる不良材あるいは未利用材の際に捨てられておりました枝条材あるいは合単板工場、製材工場等において捨てられておりましたくず材等を対象として考えることを主眼としておるわけであります。なおこれにプラスすることは、御承知でもありましようが、北海道において約五十万町歩に及ぶ第二次林――低価値な広葉樹の森林が存在するわけであります。これらの森林から生産されます低価値の広葉樹をいかに応用するかということが最も緊急かつ重大な眼目になっておることであろうと思う次第であります。しかしながらこれにプラスするに、最近国有林といわず民有林といわず、逐年低価値な広葉樹のみの蓄積が増加いたしまして、有用な森林は減退する一方であります。これに対処いたしまして、すでに道の持っております道有林六十数万町歩についての計画数字を発表しておりますが、聞くところによりますと、国有林も同様な計画を樹立しているそうでありますが、これらの低価値な広葉樹を伐採して、これに置きかえるのに成長量の大きな針葉樹をもっていく、林種転換、林層改良によって北海道の森林の生産力を増強しようという案が本年度から計画されておるやに聞いておる次第であります。この案が実行されますと、従来よりはるかに増加する生産が予想されるわけであります。しかしながらその内容においては従来と非常に差がありまして、従来のような優良材のみを伐採し、生産するということでなく、むしろ生産されるところの木材はこれにかわるいわゆる低価値な広葉樹あるいは品質の不良なもののみの数量が多くなることが予想されるわけであります。これについていわゆる木材糖化の原料とするところのものは、北海道においてはいわゆる広葉樹であり、しかも品質、樹種を問わず、また木材中の成分のすべてを完全に利用する、いわゆる従来パルプ工業においてすら利用し得なかったところの木材の完全利用を、この木材糖化工業において実行して参りたいという考えでおるわけであります。  次に今までの研究の過程を申しますと、昭和二十五年から東京大学、工業大学あるいは京都大学、さらに仙台の東北大学等に研究を委嘱し、同時に北海道におきましても林業指導所におきまして一部担当し、かつ国立の林業試験場とも密接な連携を得ながら総合的な研究をやって参った次第であります。この段階におきまして、いわゆる基礎研究、応用研究を終えまして本年度中間試験の段階に入る見通しを得たような次第であります。  なおこの過程につきまして、いわゆる試験の可否、あるいは試験担当者の人選、あるいは経費の点等の問題点につきましては、斯界の権威者の方にお願いをいたしまして、道知事の諮問機関でありますところの木材糖化審議会を作り、随時それを開催し、さらにその中に小委員会を作りまして専門的な研究を御依頼申し上げておった次第であります。今申し上げましたように、従来の基礎試験、応用試験並びに小型のパイロット・プラントを終えまして、本年度中間試験を計画いたした次第でありますが、北海道の濃硫酸によりますところの木材糖化法の経済単位を推定いたしますと、少くもこれを原料といたしまして乾燥木材一日数百トン、従ってこれに付随いたしますところの設備、機械等を考えますと、その創設費のみにつきましても数十億を必要とするやに考えられる次第であります。初めての木材化学工業において、このような大きな規模を直ちに実行するということは不安を免れない次第であります。と言いながら、あくまで基礎試験、応用試験のみに依存するときには、想定されますところのいろいろな糖化工程、あるいはこれらに付随いたしますところの仕事の遂行はとうてい考えられないような次第であります。従いまして基礎試験並びに応用試験といわゆる企業化の間に、中間試験を一応策定したような次第であります。  試験の内容につきましては、木材糖化の工程を一応やるわけでありますが、しかしながらいろいろ経費の問題その他等を勘案いたしまして、重要問題三点にしぼります。これは先ほどお話がありましたいわゆる前処理としてフルフラールの生産、さらに糖化液の生産、硫酸の回収、この三点に中間試験をしぼりまして遂行いたしたいと考えております。しかしながら以上のような中規模の中間試験でありながら、その経費はおよそ一億の巨額に達するわけであります。従いまして地方財政とし、あるいは道予算の現状からいたしまして、しかも急速にこの中間試験を遂行いたしたい考えから国費の補助の申請をいたしますと同時に、民間業界の協力を得て、この一億の予算をもって今年度遂行して参りたいと考えておる次第であります。  現在中間試験を遂行いたしまして、今後興るであろうところのいわゆる企業の見通しは、一にこの中間試験のいかんにかかると思う次第であります。ただ先ほど諸先生のお話がありましたように、今までこの濃硫酸法において非常に問題視、困難視されておりましたところの硫酸の回収が、いわゆる電解膜による方法を使用することにより非常な明るい見通しを得たような次第でありまして、いわゆる木材糖化工業の最も障害と考えられておりました点を除去し得る明るい見通しを得ているような次第であります。また道といたしましては、この木材糖化工業を北海道の総合開発の重要産業の一つとして考えている次第でありまして、もちろんこの中間試験が終了し、その見通しによって工業化ができました場合、その受くる利益は、広く道民に還元いたしたいというような考えもあり、さらに従来道といたしまして、過去七カ年にわたって研究に関与して参りました関係上、これが企業化された場合には、この企業体の構成メンバーの主体の一つになりたいというふうに考えているような次第であります。  なお予算の費目につきましては、先ほども申し上げましたように、国費の補助並びに民間業界の協力を得る次第でありますが、総額一億百万円という数字であります。その内容は、設備費として七千七百十万円、運転経費として二千四百十万円、これが予算の大きな費目になっている次第であります。  時間の関係もありまして、非常に簡単でありますが、以上申し上げる次第であります。
  20. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 次に柴田参考人にお願いいたします。
  21. 桑田勉

    ○柴田参考人 先ほど来各参考人から、この木材の糖化工業につきましての参考意見が出尽しましたので、私から今取り立てて申し上げることもないのでございますが、われわれの方の会社で、現在木材糖化工業の中間実験をやっておりますので、その実験を取り上げた動機について簡単に申し上げます。  御承知のごとく、化学工業の原料の大宗といたしましては、石炭とそれから石油、木材というものがおもな三つのものであると思います。もちろんそのほかにも電気その他の大きな資源はあるわけでございますが、現在の化学工業の中のおもな三つといたしまして、木材、石炭、石油というものがあげられるのじゃないかと思います。そのうちで、初期におきましては、このいずれのおもな原料も、ありのままの姿で使っておったのであります。たとえば木材は建築用材、石炭、石油は燃やしておったのでありますが、それがだんだん進歩するにつれて、これをだんだんと分けて使っていく。たとえば石油で申しますと、これをガソリンとか重油に分けて利用していく。おのおのの特質をうまく活用していくというふうに進んできたわけでありますが、さらにこれを細分化して、また再結合をするといったような、いろいろ複雑な手法をこれに応用して、高度の利用に持っていくというふうな段階に進んでいったわけであります。そういう面から見ますと、石油及び石炭につきましては、かなりその段階が進んできたわけでありますが、木材につきましては、昔のままで使うということと、それからこれを簡単に分けて使うという段階にまでしか進んでいなかったのではないかというふうに考えるわけであります。結局、それは石油で申しますと、ちょうど精製工業の段階にまで木材というものは来ておったのじゃないかというふうに考えられるわけであります。すなわち、パルプあるいは紙といったような仕事は、そういう段階じゃないかというふうに考えられます。これをさらにもう一つ突き進んで持っていきましたのが、木材糖化を主体といたしまして、それからさらに誘導されますフルフラール、リグニン、これからさらに高度のものに持っていくというふうな一連の仕事じゃないかというふうに見ておったのでありますが、たまたま先ほど大島参考人からお話がありましたように、野口研究所におきまして、木材の高度の利用という観点から、その第一歩といたしまして、糖化工業の基礎試験をやっておりましたので、将来まだ高度の利用のおくれております木材というものを、高度に化学工業的に利用していくという一つの大きな部面がここから開けるのじゃなかろうかというふうな考え方から、野口研究所でやっておりました基礎研究を、われわれの方の会社で一緒になりまして、これを企業化の段階にまで持っていくための中間段階の工業化試験をしようじゃないかということになって、これを取り上げたわけであります。現在試験の段階といたしましては、先ほど大島参考人から申しましたので省略いたしますけれども、これが将来企業化していくためには、なお今後いろいろ困難な問題が予想されるのであります。現在はなばなしくやっております石油化学工業におきましてすら、ある外国の有名な石油化学会社でございますが、そこの最新式の設備を持ちました最新式の工場の工場長に会って聞きましたときでも、スタートいたしましてすでに三年半になるけれども、現在まだペイ台に乗っておらないということを聞きましたが、木材化学工業、特に木材糖化からスタートいたしました新しい方面の分野ということにつきましては、これを完全な企業態勢に持っていくのには今後いろいろとむずかしい問題があると思います。しかしながら、いろいろとこれを突っ込んで、各方面の御援助も得ながら努力していけば、やって行けないことはないだろうというような考え方から、現在われわれの会社といたしましては、かなり大きな部面を占める研究費を注ぎ込みまして、これの工業化の段階に突き進んで行っておる状態でございます。ただいま申しましたような観点から木材糖化という問題に取っ組んでおる次第であります。簡単でございますが……。
  22. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 ありがとうございました。  大体以上をもちまして参考人各位からの御意見を拝聴いたしたわけでございますが、時間もちょうど昼になりましたので、小委員長におきまして食事の用意をいたしております。参考人各位と食事をして、一時から再開いたし、委員各位からの御質問にいろいろとお答えをお願いいたしたいと思います。  では暫時休憩いたしまして、午後一時から再開することにいたします。    午前十一時五十三分休憩      ――――◇―――――    午後一時二十三分開議
  23. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 休憩前に引き続きまして会議を開きます。  木材化学工業、特に木材糖化に関する問題について参考人各位に質疑を行いたいと存じますが、質疑応答がしやすいように席をこのように作ったわけでございますので、どうぞお心やすく御懇談的にお話を進めていただきたいと存じます。  なおまず最初に小委員長としての私から御質問を申し上げたいと思いますが、参考人各位は、木材糖化問題については日本の権威であられる方々がほとんど全部お集まり願ったわけでありますけれども、参考人各位にこの木材化学工業というものが、日本経済においてどのような立場にあるか知っていただくことも、私は大へんいいのではないかと思いますので、私の意見を御参考までに少し申し述べたいと思います。  世界各国の経済事情と日本経済という立場について比較検討いたしますときに、アメリカとか、あるいはまたカナダ、ソビエト、中国、オーストリヤ、南米、アフリカその他のあらゆる資源に恵まれたところの諸国は、これらの各国の資源を開発さえすればひとりでに各国の発展が期せられるわけでございますが、日本、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアなどという国々は、割合に狭い国土にたくさんの人口が生存いたしておりまして、そうした資源に恵まれた国々に比較して、開発さえすればというような簡単な事情にはないわけであることは皆さんも御承知の通りでございましょう。そうした比較的狭い国土に多くの人間が住んでおる国々の中にあって、日本だけが全く独自な立場に立っておるという問題が一つございます。それはイギリスでもドイツでもフランスでもイタリアでも、これらの国民に対しては無限に移民という道が開かれております。カナダでもアメリカでも、ああして非常に恵まれた国々が、移民の募集員をわざわざ派遣して募集をしておるというような実情でありますが、日本にとってはこうしたことも全く、ごくわずかはありますけれども、ふさがれておる。ここに日本経済というものが世界において独自な立場に立たされておるという認識がよくなされなければならないと思います。こうした日本民族が経済の自立をはかっていくためには、国家の七〇%を占める山間地帯を活用するよりほか道がない。われわれはアメリカの資源がうらやましい、カナダの資源がうらやましいというたところでどうにもなるもんじゃなし、また移民をいたしたいと思っても、現在のところでは望めない。そうしたことから山間地帯を活用する。この山間地帯を活用するということにつきましては、結局栽培林業をやっていくということよりほかに道がないのではないか。その栽培林業をやっていくためには、材種のいかんを問わないで木材を利用する道、いわゆる木材化学というものの存在によって、初めて栽培林業の可能性が生まれてくるというようなことが考えられますので、木材化学工業というものが日本国民生活にとって、独立を確保していくためにどのような重大な影響を持つかということははかり知れないものがあるし、日本経済が自立をしていくためには、木材化学の存在だけがこの解決方法であるといっても過言ではないのではないかというような認識に立ちまして、私も努力をいたしておるわけでございますが、そうした御研究をなされておる皆様方におかれまして十分御承知のことと思いますけれども、そうした御認識の上に立って、今後とも一そうの御努力をお願いいたしたいと思います。そこでこの木材化学工業というものにつきましては、私のお聞きいたしておるところでは、また皆さんのきょうのいろいろな御意見に基きまして、いよいよ具体的に工業化をし得る見通しもつき、その段階に到達いたしたようでございますので、こうした研究の中にあって未解決の問題を今後どういうように処理するかということが、木材化学という企業を一そう有望ならしめるわけでございますから、そうしたことに重点が置かれなければならないと考えます。参考人各位のすべての人々が触れられた問題は、現在の段階といえどもまだ完全なる段階に達しておるものではなく、今後のいわゆる実際的な研究が、開発研究という言葉で表現された方もございますが、そうした研究をなすことによって、この成否が問われるというようなことでございますが、つきましては、内田先生、あるいはまた桑田先生、小林先生、右田先生、片桐先生、大島先生、堀先生、いずれの方も今後の研究について御強調しておられますが、それぞれのお立場から、今後どのような人間の構成が必要と考えられるか、また大体どのような費用がここにつぎ込まれればこうした大きな目的を達成することができるか、またそのような人間の配置と費用とを費した場合には、どのくらいの年数で完全な解決が見られるかという、こうした三つの点についてそれぞれのお立場から一つ御意見を承わりたいと思うのです。ただこの問題について、今直ちに参考人の皆様方からここで発表をしていただくと、同じ問題についてそれぞれの違った意見が出ると思いますが、私の方としては必要なわけでございますから、一つ紙に書いていただいて御発表をお願いいたしたいと思います。それはそれぞれみな違った立場からでけっこうですが、どういう研究目標に対してどれだけの人員が必要であり、予算が全体としてどのくらい必要であるかというようなことを、一つお示し願いたいと思います。ただこの際皆様方にお願いいたしたいのは、どうせこんなことを言うても大した金は出ないのだからというようなお考えは一つ捨てていただいて、従来の日本の政府のやり方はまあそういうことですが、少くともそうしたことを克服して、お互いわれわれは努力していかなくちゃならないので、理想的に考えた場合を一つ基準にして御意見をお漏らし願いたいと思います。まずこのことをお願いいたしまして、次には大島さんに、あなたの方の塩酸法が今実際工業化試験に入っておりますけれども、工業化試験が今年の九月ころに完成を見るというようなお話でございますが、九月ころに完成を見ましたならば、実際上直ちに生産設備に着手できますかどうかというようなことについて、一つお聞かせ願いたいと思います。
  24. 大島幹義

    ○大島参考人 先ほどお話し申し上げました通り、九月までに、現在までにわかりました難点を一応解決し得るという見通しで現在進めております。そこまでいけば何らかの形で次は企業に進む資料ができる、またできるようにしたいと思って現在努力している次第でございます。  ではその次に企業はどうするかという問題は、現存私ども企業者の立場ではございませんので、それに対しては何ら申し上げる立場でございませんが、私どもが日本窒素と協力してやっております際に、何と申しましても相当の工業化試験工場の費用である考えているわけでございます。それは別にただ研究ということでなくて、あとは企業化をするということを目標にしてやっているということがおわかりいただけると思います。これに関する関係者は、非常に企業化に対しては熱心に考えておるというふうに私は印象を受けております。
  25. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 つきましては大島さんに、これが企業化をやります場合に、経済生産の単位はどのような規模でございますか、どのような御予定をあなたは技術者として立てておられますか、お聞かせ願いたいと思います。
  26. 大島幹義

    ○大島参考人 企業者の立場でなくて、エンジニアとしてこれを考察しました私の現在の結論を申し上げます。そういたしますと、この工業の規模は、大体人絹パルプ工場の製造工場と同じ規模でやるべきものだと考えております。しかしながら、そういう大きな規模で最初にスタートすることは適切を欠く面もあるかと思います。新しい工業でございますから……。そうしますと、採算のとり得る範囲の最小規模を最初に選ぶというのが適当なのではないか、こう思います。その見地から考えますと、年産一万トンの結晶ブドウ糖を作るという程度が最小規模だと思います。すなわち一年間に二十万石の材木を消費して年間一万トンの結晶ブドウ糖を作るというところから最初はスタートするということになるべき性質の工場だ、こう私は考えております。
  27. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 つきましては、人絹パルプ工場と同じような場合にはどうなりますか。
  28. 大島幹義

    ○大島参考人 人絹パルプの工場は年産二万トンないし三万トンが大体単位だと思います。
  29. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 木材の使用量は……。
  30. 大島幹義

    ○大島参考人 やはり三十万石くらいか単位だと思います。
  31. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 結局私はこの工業をやるには、値段を最初から安く出すということがこの工業を発展させる方法だと思いますので、スケールが大き過ぎるからなかなかやれないというような立場に立たれないで、まずどのような設備にしたならば大体一番安くできるかというような点について考えていただきたいと思いますが、もともとこうした工業は、今回成立しました合成ゴム工業と同じように、やはり政府資金の援助をもってある程度育成していくべきものと考えるのであります。そうした点から考えていただいてけっこうだと思うのですが、それは年間三十万石の木材を処理するというふうに解釈していいわけですね。
  32. 大島幹義

    ○大島参考人 けっこうです。
  33. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 年間三十万石の木材を処理する工場ですと、大体設備費はどのくらいかかる御予定でございますか。
  34. 大島幹義

    ○大島参考人 三十万石処理するといたしまして、大体工場に対してはいろいろな付帯設備もずいぶんございますが、それも全部ひっくるめた方がいいかと思います。そうすると十五億ないし二十億の間と思います。物価の変動がありますから確たることはわかりませんが、二年ほど前に試算をいたしたことがございますが、そのときの数字から現在のその後の変動を考えてみまして、大体その範囲におさまると思います。
  35. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 つきましては北海道の問題をお扱いなさっております堀参考人から、やはり技術的な立場から、今と同じ問題についての御意見を承わりたいと存じます。
  36. 堀義路

    ○堀参考人 硫酸法で、これは最終の形ですから、われわれの考えておりまする理想的な形と、それからその段階に行くまでにどう行くかということは別といたしまして、最初に理想的な形を申し上げたいと思います。  先ほども申し上げましたように、製品といたしまして結晶ブドウ糖を考えております。同時にフルフラールを考えております。フルフラールは今日本における需要は割合に微々たるものであります。そして木材工業をやって相当量のフルフラールが出るといたしますと、このフラフールの用途というものの開拓もしなければならない。そのフルフラールの用途というものはいろいろありますが、そのフルフラールがある程度以上の量になりませんと、それを原料とした派生の工業が一つの工場単位にならないわけなんです。その意味におきまして、フルフラールを工場単位に持つということが終局の木材工業のいい形だと思います。そういたしますと、かりにフルフラールをナイロンにするといたしますと、大体私の考えでは、年間六千トンぐらいのフルフラールが必要だと思います。そういうふうに考えますと、それから逆算して木糖企業といたしましては、先ほど北海道の林務部長から御説明いたしましたように、大体乾材といたしまして一日三百トンの原料を使います。そういたしますと、結晶ブドウ糖にいたしまして年産二万九千七百トン、五五%の糖蜜が二万二千百トン、フルフラールが六千四百三十トン、メタノールが、九百九十トンというふうな数字が出て参ります。そういうふうにいたしますと、ただいま大島さんのお話になりましたものの約二倍になると思います。  それからそれに対します設備費の点でありますが、設備費の点は工業化試験によりまして設計をいたしませんと、はっきりした数字が出ませんが、一応われわれの今持っております知識の段階からいたしまして推算いたしたものがございます。この金額は建設資金総額として二十六億七千六百七十九万円、約二十七億になります。しかしこれもただいま申しましたように工業化試験をいたしませんとそれがはっきりしないのでありまして、大島先生の言われましたような、その前後に幅があると思います。
  37. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 今の一日三百トンの乾材を使うということと、三十万石年間使うということとの比較はどういうふうに……。
  38. 小野岡清

    ○小野岡参考人 三百トンと申しますと、大体木材に直して、七倍ですから、年間原木の使用が三百日稼働として六十万石です。
  39. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 そうすると年間六十万石使う設備が経済単位の……。
  40. 堀義路

    ○堀参考人 それが最終の形です。と申しますのは、フルフラール自体が、何に使われるとしても六千トン以上ないと一つの工場単位にならないと思います。そこを一つ検討して参るわけであります。
  41. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 そうすると堀さんの方では、これから大体最終の試験設備をやるわけですが、それを完成する大体の年月はどのくらいでございますか。
  42. 堀義路

    ○堀参考人 これも希望的になるかとも思いますけれども、御承知の通り工業は何でもそうでありますが、基礎の研究というのは常に進歩しております。既存の工業にしましても常に変化がありますが、私どもの、ことにこういう新しいものとなりますと、常に基礎研究でもって変って参ります。しかしただいまの段階におきまして、できるまでの姿に対する基礎研究は一応は終っておるわけであります。従ってここで問題になりますのは、これをどうやって工業化するかという点にあるわけであります。実験室程度のことでその化学反応その他が大体つかまっておりますから、それをどうやって大きくするかという問題であります。そうしますと、硫酸法の木材糖化の問題で問題になる点は、まず第一に、木材のチップを、私どもの方法でいきますと、相当高圧の蒸気で蒸煮いたします。そうすると、そういうものを工業的に連続的にどうするかという問題が一番大きな問題に最初なって参ります。その点はどうしてもある程度大きな工業化試験をいたしませんと、実験室程度ではまだ確かめなければならない点があります。これが第一の点であります。それから第二の点は、先ほどから問題にいたしております硫酸の除去の問題であります。これには私どもの考えといたしましては、ただいまのところ硫酸全部は除去いたしませんが、できれば八〇%あるいはそれ以上もイオン交換樹脂膜あるいはそれと類似の方法でとろうかと思っております。イオン交換樹脂膜というのは割合新しい製品でございます。これもしょっちゅう変っておりますが、それに対しての相当長い期間の耐久試験を必要といたします。これが第二のむずかしい点であります。この二つの点に重点を置いて今度工業化試験をやろうかと思っております。それと同時に、今までやりました実験室の方をある程度はもう一ぺんだめしをするということが必要でありますから、それをいたしたいと思います。こういうのはみな目的がきまりますし、それからまたやり方もきまっておりますから、設備と日時をかせばいい。それを今後一年くらいでやりとげたいと思っております。そうすると、そこでもって設計に対する基礎の資料ができますから、そこであらためて考え直して工業化できるかと思っております。そこでまたつまずきが起ったとすれば少しまた延びるかと思います。私どもが実験するとか試験するとかいうのは、わからないからやるのでありまして、その結果は今から予測できませんが、私どもとしてはこれができるものと思ってやっておる次第であります。
  43. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 つきましては新日本窒素の柴田さんにお伺いいたしますが、今新日本窒素では塩酸法のものを研究いたしておりますけれども、研究が完成した暁は製造方法というようなものを公開なさる御予定でございますか、それともお宅では公開なさらない御予定でございますか、承わりたいと思います。
  44. 桑田勉

    ○柴田参考人 技術的な問題につきましては、これは企業形態とも関連する問題だと思いますので、企業形態によってはこの技術を公開して各方面に利用していただくということも考えられますし、それからまたある私企業でもってこれを育成していくというような段階の状況になりますれば、あるいは公開しにくいようなことになるかもしれませんので、その点は実は企業の形態によって技術の問題を考えたいと思っております。
  45. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 これは同じく北海道の小野岡さんにも承わりたいのですが、先ほどから申し上げております通り、この木材化学工業は日本経済全体にとって非常に大きな影響をもたらすものでありますから、国民全体の力によってこうした工業が一日も早く発展していくことが望ましいので、いわゆる純然たる私企業よりも政府の援助によって、民間政府共同の責任においてこれを遂行するということが考えられますが、こうした場合には今柴田さんのお話では大体差しつかえはない、こういう御意見のように承わりましたが、そういうふうに解釈していいわけでございますか。
  46. 桑田勉

    ○柴田参考人 大体そうだと考えます。しかしこれは私個人の意見でございまして、会社としてはそういうふうな問題につきましてはまだ実は詳しく考えておらぬのでございます。
  47. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 ではお帰りになりましたら、お宅の社長さんとも御相談して下さいまして、今後の御方針を一ぺん書面ででもけっこうですから当委員会あてにお聞かせ願います。  小野岡さんの場合はどういう御方針でございますか。
  48. 小野岡清

    ○小野岡参考人 将来の企業化の見通しを得るべく、今回中間試験を実行するわけでありますが、今回の中間試験が成功いたしまして企業化がなし得るという場合には、当然公開をして差しつかえないものと考える次第であります。ただしその場合ケース・バイ・ケースによりまして、その具体的な場合によってまたいろいろ出てくるかとも思いますが、原則といたしましてはただいま申し上げたようなことであります。
  49. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 なおきょうの懇談会は速記はとりますけれども、決して責任を追及しますものではございませんから、今後皆さんお心やすくしていただいて……。ただわれわれ委員が皆さんの貴重なる御意見を全部覚えておくわけにいきませんので、御参考にいたしたいと思って記録するだけでございますから……。むだなようですが重ねてそのことを申し上げますので、そうしたおつもりで一つお答え願いたいと思います。  ここに片桐先生とかあるいは桑田先生とか、従来の塩酸方式、硫酸方式に直接タッチしておらない柴田先生とかというような第三者的な立場から、この木材化学がずっと塩酸方式と硫酸方式とが将来まず並行していくものでありますかどうかということについての御意見を承わってみたいと思います。その辺はなはだ学者の皆さんに申しわけないが、ざっくばらんにお聞かせ願えればはなはだけっこうだと思いますので、片桐先生一つ……。
  50. 片桐英郎

    ○片桐参考人 私は従来硫酸法をやっていたわけです。しかし薄い硫酸法です。それもずいぶん前から、もう二十年ぐらいやっております。それで例の未利用資源をやっておったわけです。未利用資源の場合にはそれでいくわけですが、砂糖をとるという場合にはなるべく濃い方がいいですから、現在砂糖をとる目的ならなるべく濃い塩酸法がいいと思います。しかも一番望ましいのは、木材そのままを塩酸法でやるよりパルプにして塩酸法で砂糖をとった方がはるかに楽じゃないか、むだな塩酸が要りませんから。なお私の理想は、さきに申し上げましたように、そういう薬品を使わないでバクテリアでやってしまえということです。それは百年の夢かもしれませんがやはり研究  の価値はあると思います。
  51. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 百年の夢でもけっこうですが、そうすると、そうしたことについての今の研究には人的にはどのくらい配置をして、どのくらいの費用をかけてどのくらいでいくかということをあとでお聞かせを願いたいと思います。  今私が非常に興味を持ちますのは結局この木材化学が日本の完全雇用を達成するために非常に重要な意味を持つということ、もう一つは、この木材化学から生まれる酵母を安く酪農経営に供給するということが非常に大きな問題であると思うのです。そうしますと、日本の重大問題である食糧の自給自足という問題を解決するについての大きな意味を持つと思います。その場合には、この酵母を安く生産するというときに今の片桐先生の発酵法でいくことが、しろうと考えですが私は一番いいのじゃないかとちょっと考えましたが、それはそういうふうに解釈していいのですか。
  52. 片桐英郎

    ○片桐参考人 さあ、そこまで言っていいかどうか……。ともかくこれは酵母からとった油なんです。これはちょっと大豆と同じような油ですが、こういうのはわけなくとれるのです。これをとったあとは蛋白質ですから、それを飼料にすればいいということも考えられるわけです。一番有利なのは今おっしゃった糖蜜ですね。結晶にならない砂糖が木材の糖化でずいぶんできてしまうわけです。それは酵母に食べさせていただけば非常にいいじゃないか。油にもなるし蛋白質にもなる。それはそのときの食糧の状況によりまして蛋白に傾かせることもできるし油の方に傾く酵母もございます。人間ですからそういう使い分けはわけなくできます。ですからそういうものにも結びつくと思います。現在の砂糖をとる方式にも酵母は結びつくと思います。
  53. 松平忠久

    ○松平小委員 関連して、今のところをちょっと聞きたいと思います。大島さんにお伺いしたいのですが、塩酸法を硫酸法に装置を変えるということが簡単にすぐできるものでございますか、あるいは硫酸法を塩酸法に変えることが簡単にできるものかどうか。つまり、連続蒸煮とか前後の処置はみな同じだろうと思うのですよ。肝心の塩酸を使うか硫酸を使うかというところだけの装置が違うのだろうと思うのだが、私のしろうと考えでは硫酸法を塩酸法に変えるということに比較的簡単にできるような気もするのですが、そこのところはどうですか。要するに、その転換が、大して費用が変らなければ二本立でいってもいいだろうと思う。ところが変えるのに非常に金がかかるということになりますと、この二つを並行していって、最後にはどっちかに落ちつくというふうになると思う。転換ということは金その他の関係でどの程度簡単にできるものか、そこのところはどうでしょう。
  54. 大島幹義

    ○大島参考人 私どもの方で今やっております塩酸法は硫酸法とはやり方が全然違います。ドイツでやっております塩酸法は液体を使っておりますが、私どもの方の塩酸法はガスを使っております。ガスを使って木材の粒子を処理してそのまま砂糖に転化してしまうという方法でございますから、出てきましたときはリグニンと砂糖の固まりがごろごろ出てくるという格好をとっております。硫酸の液を使って濃硫酸の液の中で木材の糖化をするのは液体処理でございます。私どもの方はガスで処理しております。この点が全然違っておりますから、転換は全然できません。ただ前処理というような問題は、両方同じような方法をとっておりますから、これは転換できます。
  55. 堀義路

    ○堀参考人 ただいまの大島さんのことについて意見を申し上げます。硫酸法の立場から考えましても全然同意見でございます。しかし先ほど御質問の中にあった中でちょっと私感じますのですが、どっちかになるということは当然あることはあると思いますが、両方両立することはこれもあると思います。これはたとえば同じソーダを作るのに、いわゆるア法ソーダと電解法ソーダとやはり両立してあるわけでありますから、非常に両方の技術的な差あるいは経済的の違いがあったときには、片方は片方に負けるということは当然あるかと思いますけれども、しかしそうでなくして両方ともあり得るということもあると思います。この点については大島さんも同意見だと思います。どっちか片方にしてしまうということはちょっと無理かと思います。しかし先ほど食堂で話が出ました、同じ木糖をやっておるのでありますから、お互いにその間においていろいろ技術交流があるということは当然望ましいことだと思います。
  56. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 なお柴崎先生、桑田先生から今の塩酸法、硫酸法についての御意見を承わりたいと思います。
  57. 柴崎一雄

    ○桑田参考人 これはなかなか私はむずかしい問題だと思います。率直に申しますと、私は一年くらい前までは全然木材糖化については関係もありませんし、しいて関心も持っていなかったのです。しかしそのころ今の大島さんのおっしゃった概要等が発表されまして、非常に感心いたしました。従来の行き方と違ってガスを使う。しかも塩酸はガスですから、簡単に回収できる、非常にうまいことを考えられたと実は感心していました。こまかいことは知りませんでしたが、ただ塩酸ですと腐蝕性などありますから、そのつどいろいろ御苦労されるでしょうが、非常に新しい方法だということで感心しておったわけです。一年くらい前から、硫酸法では硫酸の回収ということが非常にむずかしい、それが経済的にうまくいくかいかぬかということで、この方法がうまくいくかいかぬかということの境目になるというお話と同時に、ちょうど私やっておったのを利用して、イオン交換法ですが、これでうまくいかないかどうか、それで私着手したのです。ただこの前にもちょっと申し上げましたように、イオン交換膜そのものがまだ世界的に未完成品で、非常に各社競争で、ほとんど何ものも発表されないで、日本ではどこも発表していないのです。サンプルさえ手に入れることができないくらい互いに秘密にして競争しておる状態です。日本のが従ってどの程度まで進んでおるかわからないのですが、アメリカの方は若干サンプルが手に入ります。実は率直に申しますと、私試作したときも、自分自身で非常に半信半疑でおったのです。いろいろやってみますと想像以上に簡単に膜を通してブドウ糖は来ない。硫酸だけがこちらへ抜けてくるわけです。これはごく小さくやってみますと相当なものになるというので、硫酸法もそれがうまくいけば相当に有効ではないかということを感じております。しかしそれならば今の膜というものがすでに市場に出ておれば非常にいいのですが、今膜を安く多量生産する方式を方々で研究しております。われわれのところも実験室でこのくらいのものならば簡単にできますけれども、将来やろうとすると、ちょうど紙をすくように連続的に安くできなければならぬ。それをどうするかということを目下やっておる最中です。少くともことし中くらいには多量生産が可能になるだろうという見通しは持っております。
  58. 松平忠久

    ○松平小委員 今のイオン交換膜、それはどういうものですか。私全然しろうとでわからぬのですが、その原理というか、そういうものと、それはほかにもそういう膜を使う用途があるものかどうか。それからどこか何かの副産物ができるかどうか。日本カーボンあたりではそういうものを作っておりませんか。
  59. 柴崎一雄

    ○桑田参考人 それはいろいろありますけれども、全然薄い紙のようなものから、少し厚い板のようなものもあります。これはむろん人工的に合成樹脂を原料にして製造する。どういうふうに説明したらよろしいですか、たとえば食塩で申しますと、食塩は水の中でナトリウムと塩素と、陽電気を帯びた粒子と陰電気を帯びた粒子とに分かれております。しかし塩水は電気がないじゃないかといわれますが、陰電気を帯びた粒子と陽電気を帯びた粒子と同じ数がありますから、見たところわからない。実際は中で二つに分れておる。そのときにこちらに電気をかけますと、陽極の方には陰極を帯びた違った方がひっぱられる。陰極の方には陽電気を帯びたのがひっぱる。それを利用して食塩から苛性ソーダを作っております。イオン交換膜というものは非常に特殊な膜で、あの膜は陽電気を持ったものを平気で通す。陰電気を持ったものは通れない。陽イオン交換膜は陰イオンは平気で通れるが、陽イオンは通れないという特殊な性質を持った膜です。両方並べて交互に電気をかけて、その中に塩水を通しますと、濃くなる部屋と薄くなる部屋と交互にできてくる。陰電気が入っていこうと思うと陽膜がありますからとまっちゃう。陰の方はこちらを通ってこちらでひっかかる。この部屋でだんだん濃くなる。海水を落しますとわずかな電気で食塩ができてくるので、日本では非常に注目しております。それから同じ膜を今度硫酸とブドウ糖と入ったもので使いますと、硫酸はこちらに通ってくる、ブドウ糖は通れない。そういうふうな特殊な膜になっております。全然人工的に作る。
  60. 本名武

    ○本名小委員 今の問題に関連して。硫酸法では硫酸の回収が一番問題の一つになっておる。たまたまイオン交換膜のお話が出たのですが、今のお話を伺って私の頭は混乱してきたのです。日本では全然やっていない、サンプルもないというのです。私一、二見ておるのですが、例の水から熱を加えずに蒸溜水を作る場合に、イオン交換膜を使う。それから糖液を製精する場合イオン交換膜を使う。非常にいい結果を得ておるわけです。これと硫酸の回収のイオン交換膜とどういうふうに違いますか。
  61. 柴崎一雄

    ○桑田参考人 あれは粒なんです。あの粒を膜にすることができればいい。非常に利用があるであろうということは、七、八年前に日本でもアメリカでも気づいた。あれは小さい砂のような粒なんです。ところがあれはもろいものですから膜にならない。だからあれをわれわれはどうにかしてフィルムにしたいということをやっておる。簡単に言えば同じことなんです。
  62. 本名武

    ○本名小委員 粒を大きくしたらどうなんですか。
  63. 柴崎一雄

    ○桑田参考人 もろいのです。せんべいのようにぺかぺかと割れてしまう。
  64. 本名武

    ○本名小委員 割れないように何かサポートする方法はないのですか。
  65. 柴崎一雄

    ○桑田参考人 現在アメリカでできているのはほかのねばいものと練ってこしらえたものがアメリカでできています。それはやはり性質的に非常に不十分な点があります。ですから今おっしゃるように膜にさえなればもうそれでいいのです。それを膜にしようと思って何年も苦労しているのです。
  66. 本名武

    ○本名小委員 そうすると問題は粒を膜にできるかできないかということで、従ってイオン交換膜を通すことによって硫酸の回収ができるという理論的な根拠も、実際にも、それは確実にやれるということにはなっているのですね。
  67. 柴崎一雄

    ○桑田参考人 だからそういう膜の性質のいいものを安く作るのにどうするかというのが主として日本とアメリカで競争状態になっております。
  68. 本名武

    ○本名小委員 そうすると逆に伺いますが、イオン交換樹脂膜を使っても硫酸の回収は十分でないという理論は打ち消していいわけですね。膜を作るのができる、できないだけの問題で……。
  69. 柴崎一雄

    ○桑田参考人 そうです。それは膜を使えば大丈夫であります。
  70. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 そうすると柴崎先生から一応承わります。
  71. 柴崎一雄

    ○柴崎参考人 塩酸法、硫酸法の優劣の問題でございますけれども、今まで公表されて私どもが知っている範囲といいますと、まだ塩酸法も硫酸法も比較する材料まではとうてい発表されていないのでございますけれどもね。それでもう少し製品が出てその品物はこうやって、こういうふうにしてできたというお話を承わらないとどっちがいいかということはちょっと……。お恥かしいのですが。それから先ほどお話が出ましたけれども、それを右か左かにここですぱっときめちゃおうという必要性も私も疑問を持っておるのでございますけれども。経費は先ほどの十五億か二十億、大へんでございますけれども、どちらか一つにきめる必要もないのじゃないかと思うのです。簡単に申しますとそれだけです。
  72. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 そうすると内田先生にちょっとお伺いいたしたいのですが、片桐先生の今の発酵法による方法でございますね。こうしたこともまだ海のものとも山のものともわからぬと片桐先生おっしゃっていられますが、それは可能性があると考えていいものでございますか。
  73. 内田俊一

    ○内田参考人 いつでもそうなんですけれども、こういう基礎の学者というのは、われわれみなそうですけれども、いろいろな着想を持っておるわけなんです。けれどもその段階はあまり金がかからないのです。基礎段階を一とすれば開発研究はその十倍、ほんとうの生産並びに市場にこれを出すということになるとその百倍もかかるという、ごく乱暴なあれですけれども……。ですから基礎の研究の段階にはみんなの着想を思う存分やらしていくということが国として一番よろしい。私は今の片桐さんのあれがいくかいかないかということも何も断言できません。それもいかず、うまくできないということになるかもしれませんが、たというまくいかなくてもいろいろな新しい知識が蓄積されていくのですから、国家として決して損はしない。
  74. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 そうしたこともわかっていますが、私どもはしろうとでございますから一応の目安をこうした際お聞きいたしておりますので、なお私も各委員の質問の中にいろいろまたお尋ねいたしたいと思います。  ただ私はここで皆さんに一つ提案をいたしておきたいと思うのは、せっかくこうした日本の中にあって、木材化学に関連し、またあるいは直接関係なさっておる優秀な諸先生方がお集まり下さったわけで、なかなかこうしたお集まりはたびたびお願いできないのじゃないかと思いますが、こうした機会に木材化学というものをいろいろな面からほんとうに育てていくというような意味におきまして、私は皆さんの一つの団結の力が日本にとって非常に必要なんじゃあるまいかと思いますので、この機会に諸先生方が一致して、お互いに意見を交換し合って、堀さんもおっしゃられたように、違った道を歩むといえどもそれぞれまた同じように参考になるべき場合も非常にあるのじゃないかと思いますから、何か木材化学の推進をする会のようなものを作っていただいて、御協力を願うことについて私は皆さんに御相談を申し上げたいのですが、いかがでございましょうか。
  75. 松平忠久

    ○松平小委員 それは委員会を閉じて、さらにこの懇談の中の懇談ということの方がよいのじゃないかと思います。
  76. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 そうしますか。――それではそういうふうにいたしたいと思いますから、そのことをあわせて御考えおきを願います。
  77. 松平忠久

    ○松平小委員 これは大島先生にお伺いしますが、今お話を聞くと、リグニンと一緒に出てくるということですか、リグニンの研究というものはどの程度お宅の方では進めておられるかということなんです。さっきごく簡単にリグニンについても研究しておられ、こういうようなお話だったのですか、これについて何か御研究の結果なり何なりがありましたらお伺いしたい。
  78. 大島幹義

    ○大島参考人 リグニンの研究のことを申し上げます。前に右田先生がいろいろ二十何年御研究になっておるというお話を伺いまして、非常に基礎的の例研究をずっとやっておられ、非常に教えられるところが多くていつも敬服しておるのでありますが、私どもの研究所の方ではリグニンを今度は直接すぐ何かに利用するという面の方を研究しております。研究を開始いたしましたのは二十二年から始めました。それでその間にリグニンを酸化をして分解していく、それから塩素化をして分解をしていく。それから水素を加えまして、水素添加と申しますか、実は中の酸素を除去することですが、水とかメタノールにしまして酸素を除去するわけでございますが、そういう水素添加分解の方法、そういうふうに進めてきております。現在そういう段階を約十年やっておりますが、一等現在、今後の最も有望と考えてもっぱら重点を注いでおりますのは水素添加分解であります。これは二十七年ぐらいから始めまして、基礎的研究を終りまして、昨年から連続試験をする小さなブラントを現在建設しております。この六月一ぱいで毎日消費量十キロぐらいの装置が完成します。この試験に関しましては政府から補助金をいただきまして、東京の板橋の野口研究所内に作っております。この中の原理はどういうことかと申しますと、石炭というものは太古の植物の中のリグニンが石炭になっております。植物の中のリグニンは、それと同性質のものでございますそういう性質を持っておりまして、石炭がしわくちゃばあさんならば、リグニンは若い娘という段階でございます。従いまして私どもの方で多年研究をいたしておりました石炭液化の技技術、それから数年前に発見しました新触媒によりまして、これを液化する研究をいたしております。この液化した油の方は、ちょうど石油化学工業におきまするプラットフォーミングという技術がありますが、そのプラットフォーミングをやった後のような状況でございますから、油の性質は化学工業の原料としましては、ちょうど石油精製業から石油化学に移る途中の段階にごく似ておるという立場にあります。成分のおもなものは芳香属化合物でございます。
  79. 松平忠久

    ○松平小委員 右田先生にお伺いするのですが、今パルプ工場というのはリグニンをみな逃がしておると思うのです。それでリグニンを全部捨てておりながらかなりの成績を上げて、どこの工場も大へんな高配当をしておるわけなんです。そこで根本的にそれらの産業と競合する立場にある木材化学工業というものの中で、フルフラールと糖化ということだけをやって、リグニンを全部捨ててしまうというような今のやり方をもってするならば、その木糖工業というものは一体パルプ工業に経済上太刀打ちができるかどうか、私は非常に疑問を持っておるのです。先ほどもお伺いしましたが、リグニンは今後相当研究しなければこれの工業化ということはむずかしいだろうという印象を受けておるのです。三つの要素の中で一番最後に解決されるべきものではなかろうか、こういうふうな印象を受けております。もしそうであるとするならば、この木糖工業というものはパルプ工業に太刀打ちできないのじゃないか、よほど糖化なりフルフラールというものが採算が合うということでなければそういう経済上の制約というものを受けるのじゃないか、こういう印象を受けておりますが、その点はどりでしょう。
  80. 右田伸彦

    ○右田参考人 午前中私がお話しいたしました中でもその点に触れたと思いますが、パルプ工業の方は、製品は比較的競争が少い。しかも製紙工業なりレーヨン工業というものは、いわゆる日の当る産業といわれているくらい恵まれておりまして、リグニンを利用しなくても経済的に成り立っておる。ところが木材糖化工業というものは、製品をどちらの方にかじをとるといたしましても相当いろいろな面からの競争がある。たとえば合成化学あるいは農作物の廃物利用といったものからできる製品と競争の立場にあります。午前中堀先生もおっしゃったように、ボーダーラインすれすれのところにあるわけであります。従いまして木材糖化工業というものが、一時的に安定するということはあるいはあるかもしれませんが、真に安定いたしますためにはぜひともリグニンの利用という面で開けなければならないということは言い得ると思います。  それからリグニンの研究でございますが、なぜリグニン利用の研究が進まないかと申しますと、少し御質問の面からそれる面があるかもしれませんが、先ほども申しましたように非常にむずかしい問題なのであります。そのむずかしいということを手取り早く説明いたしますには、パルプ工業が興ってから何十年の間に非常にたくさんの人が手がけたにもかかわらず、なかなかうまい利用法というものが開けない。木材糖化残滓の場合においても同じようなことが言えるのじゃないかと思います。それで私が考えますには、なぜリグニンの利用の研究が進まないか、普通の研究所でいたしますと、そういった仕事を分担いたしますとなかなか業績が上らない、あれは一体何をしているのだろうということになりがちであります。それで研究組織というようなものを作りまして、またそれを育成される方の方々が非常に同情ある立場をとられて盛り立てるといったようなことが必要ではないか。それからなおパルプ工業廃液が河水を汚濁するという問題もからみまして、パルプ工業にとりましてリグニンの利用ということは非常に大きな問題でございます。私は、できますならばパルプ工業と木材糖化工業とを一体にしたようなリグニンの研究といったようなものができる、それでどういう形態が一番いいかと申しますと、国立の研究所といったようなところは理想的ではあるのでございますが、大へん申しわけないのですが予算が少い。それで私の抱いております一つの夢は、アメリカではインスティチュート・オブ・ペーパー・ケミストリー、ウィスコンシン州のアプルトンにございますが、これは紙、パルプ会社が共同で作っておる一つのアソシエーションでございます。そこの直属の研究所みたいなものであります。何もそこをまねしろということではないのでありますが、たとえばそういった関係のもの、それに木材糖化関係のものを加えればなおけっこうだと思いますが、そういったところで相当長い期間、研究者が何も業績を上げなくてもあいつは無能じゃないという御理解あるところで、相当な経費をかけてやるということが必要だと思います。それからリグニンの利用の面を伸ばそうとしますと、研究者だけではなくて、これを企業化そうというある種の経営者の方の意欲というものも同時に必要ではないかというように考えます。
  81. 松平忠久

    ○松平小委員 今のに関連するのですが、リグニンの研究をされて、これが利用できるということになりますと、パルプ会社のリグニンもみな利用できることになるのであって、そうするとやはりスタンダードは同じ立場で木糖工業もやらなくてはならないということになりますと、その段階においてもこっちの方がよっぽどしっかりしなければパルプに押されてしまうという結果になるような印象を、私は今のお話を聞くと受けるわけです。それともう一つは廃液の処理、たとえば山陽パルプ、それから王子系統でもやっているところもあることを聞いておるのですが、あの廃液の処理をやっているところでは、このリグニンについてはその廃液の中に入っておるのかおらぬのか、その二つの点をお伺いいたします。
  82. 右田伸彦

    ○右田参考人 最初の御質問に対しましては、パルプ工業と木材糖化工業というものは、製品の面においてはそう競合しないのではないかと思います。ただ原料が同じ木材でございますので、片方が日の当る産業であり、片方が日の当らない産業でありますれば、片方は高い値段で木材を買い取るというような面があるかもしれませんが、産物が違いますからその間にあまり競合がないように思います。ただ競合ありといたしますれば、パルプ廃液の中にも糖が溶けておりまして御承知のようにそれからアルコールを作っておる工場もございますし、酵母を作っておる工場もございます。ですからそういった面では木材糖化工業と関連は持ってきますが、しかし木材糖化工業で結晶ブドウ糖をおねらいになる以上は、そういった薄い廃液からは経済的にちょっと成り立ちにくくなるのではないかと思います。ただ酵母の製造とかアルコールの製造といった面に関しましては、パルプ廃液と競合する面ができてくるのではないかと思います。  それから第二の点でございますが、パルプ製造廃液を利用しておりますのは、中に溶けております炭水化物、すなわちセルローズの分解物と、ヘミセルローズの一部の分解物、一部と申しますのはマンノース系統、その分解物を利用しているのでございます。リグニンの方は廃液の中に含んでおります。
  83. 松平忠久

    ○松平小委員 含んでおるけれどもそれは全然……。
  84. 右田伸彦

    ○右田参考人 それは川の方に排泄されます。
  85. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 なおちょっと関連してお伺いいたしますが、パルプ工業と木材糖化は材種のいかんを問わないということをお聞きいたしておりますが、パルプ工業の将来はどうなりますか。やはりアカシア、ユーカリ、ポプラその他アオギリなどというようなものについても、同じようにパルプの原料として考えられるわけでございますか。その点お伺いをいたしておきます。
  86. 右田伸彦

    ○右田参考人 原料がより好みできますときには、工業といたしましては少しでも扱いやすい原料を手にするというのが有利でございます。針葉樹材と広葉樹材と比べますと、どちらが使いやすいかという点では、何と申しましても針葉樹の方が使いやすいのでございます。ですから従来のパルプ工業というものは大体寒帯林を豊富に持っておる国において発展したわけでございます。しかしながら針葉樹資源というものは決してパルプ原料だけでなくて、構築材や何かの方にも広葉樹材以上の用途を持っております。世界的に考えまして広葉樹材に比べて針葉樹材資源の方が減少の傾向がひどい、それで世界のパルプ工業界を見ましても、何とかして広葉樹材をもっと多量にパルプ原料に使おうというような努力が進んでおりまして、日本でも昨年は、たしか一〇%から一二%ぐらいの広葉樹材が役立っております。将来もっとふえるだろうということも当然言えます。これは針葉樹材と広葉樹材の値段の開きがもっと大きくなれば、多少の不便を忍びましても広葉樹材をもっと多量に使う、なおパルプ製造法の種類によりまして広葉樹材もけっこう使えます。ただ、それならば現在のパルプ原料も全然針葉樹材をやらなくていいかといったら、これはパルプ製造法の種類にもよりますし製品の種類にもよりましてちょっとわかりかねますけれども、相当部分――たしか通産省でおやりになったかと思いますが、三十五年には全体の約三分の一くらいの広葉樹材を使い得るだろうというような見通しを立てておられますが、これは非常に妥当な数字だと思います。
  87. 永井勝次郎

    ○永井小委員 それぞれ専門の分野を持っておられて、いろいろ立場が違っておられる諸先生方もおられると思いますが、一つ簡単でよろしいのですが、それぞれの立場でずっと御所見を伺いたいのです。  木材糖化の研究、これは日本の現在の研究が進んでおる段階ではどういうところから出発するのがよろしいのか。あるいは基礎研究をもっときちっとやらなければいけないというふうにお考えなのかどうか、あるいはこの程度の基礎研究が進んでおれば不十分であってもこれを工業化しよう、こういうところに突っ込んでいけば、基礎研究の方も逆算的に相当刺激して促進されるというところまで基礎研究がある程度できておるのかどうか、そういうどこから出発すべきであるとお考えになっておられるか、これが一点。  それからもう一つは、研究を進めていくとすれば、塩酸法あるいは硫酸法、こういうことをもう少し基礎研究の段階できめて、それからそれを統一していった方がいいとお考えになるのか、あるいは二本立でずっとそれぞれの特色を発揮して進めていった方がいいとお考えになるのか、これが第二点。  それからもしそれぞれ塩酸法なりあるいは硫酸法、こういう二本立で研究を進めていった方がいいということになれば、それぞれの分野における、塩酸法あるいは硫酸法におけるところの研究テーマはどういうふうに分類してやることが、科学的にはっきりさせてなお推進していくというようなことになるのか。それからそういう研究を推進していく場合における研究組織は一体どんな形のものが望ましいのか。これはまあ日本の現状というものを無視しては、あまり飛躍はできないのですが、大体そういうことをお考えの基礎に置いて、どういうシステムがいいかというようなことを一つそれぞれの諸先生の立場からお聞かせをいただきたいと思います。
  88. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 内田先生から順々に始めていただきます。
  89. 内田俊一

    ○内田参考人 これは一がいには言えないのですけれども、最初の御質問の、研究をどの点に指向するかというようなこと、これにつきましてはちょうどいい例なんですが、硫酸法において今のイオン交換膜がもし成功すれば、これで見込みが立つというようなある程度の見通しが立っておるわけです。そういう段階におきましては、その点をはっきりさせるということが全体の死命を握るということになるので、当然そういう場合にはほかの方はさておいても、そこのところに一番の力を入れるということになるのじゃないかと思うのですしかし今の内容が、先ほど桑田先生からもお話がありましたように発表されておりませんし、果してどの程度のことができるのか、それからそれをもとにして一応の経済的な試算ができる段階になっているのかどうかで違いますけれども、そういう要点をあるところまで掘り下げてみて、それから経済試算をやって、これは十分成り立つぞという段階にならなければいわゆる発展の段階にならない。それでイオン交換膜自体がその一つの研究テーマになっておるわけですから、これがある程度まで進まないというと本体の方も進まないという状態じゃないかと思います。そこで、イオン交換膜が一体どのくらいの値段でできるのか、これがどのくらいの耐久力を持つのか、どのくらいの能力を持っているのかというところに全体の計画が立てられるとすれば、やはりその点がそちらの関係の方では一番大きな問題になるので、そこに基礎研究も新しく起るかもしれず、あるいはある程度の開発研究もなされなければならない、あるいはそういう段階にもうすでにきているかのようなお話もあります。ですから、これは一がいに言えないと思うのであります。  それから塩酸法と硫酸法とのどれをやるかというような問題も、それぞれの方で十分やり得る見込みがあるという段階にきたならば、私は早くいわゆる工業化の第一歩であるところの中間実験をやって、そこで初めて総合的な各分野の共同研究というような体制をとられる。それをやってみていろいろな難点が生じたときには、場合によったらばまた基礎研究に問題を返していくという必要も起るでしょうし、一応は基礎研究が進んだら全部開発研究というのじゃなしに、そこはやはりかなり柔軟な考え方をしなければいけないのじゃないかと思います。  それから研究の組織でありますが、研究組織も、やはり研究者も人間でありますから気持よく協力できるということが第一でありまして、あまりに組織にとらわれてもいけず、あまりに組織を無視してもいけず、そこのところはなかなかむずかしい問題だと思いますが、先ほど申しましたように、ある程度中間試験のようなことをやりますと、いやでもおうでも各分野が協力しなければならなくなると思いますから、そういう段階にくれば、いわゆる総合研究というのは期せずして行われていくようになるだろうと思いますので、見込みのある仕事になりましたならば早く中間試験がそれぞれの面で行われる方が、研究自体の進展、発展には一番都合がいいのじゃないか、こういうふうに思っております。
  90. 柴崎一雄

    ○桑田参考人 今内田先生のおっしゃったのと大体同じことですが、基礎研究といってもいろいろなのがありまして、たとえばほとんど金もかからないでごく机の上でできる程度のもありますし、基礎研究とはいいながら少し大きな設備でやってみないと結果の出ないというものもあるわけであります。それから基礎研究を、小さくやってみて大丈夫だと思っていても、案外大きくやってみますと――われわれが今まで経験したところによりますと、とかく一生懸命にやったところは大きくやってみると何でもなくて、つまらぬところ、それもパイプが詰まりやすいとか、案外早くどこか漏れてくるとか、そういうふうなつまらないと思えるようなところで非常に障害が起ってくる。その障害を克服するのが、簡単な原因で、パイプが詰まればパイプを曲げるのを曲げなければいいというのじゃなくて、もう少し深いところに原因があって、もう少し基礎的なところでやはり改良していかなければならぬというような問題が起ってくる。そういう意味から言えば――私は硫酸法しか知りませんが、硫酸法はそういう意味においてはまだ開発研究よりも基礎研究の時代とも言えますが、基礎研究ですけれども、今のようにただ机の上でやる程度のことではもうわからないところがだいぶ出てきておりまして、そういうところの部分は少し金をかけて大きくやっていかなければならない、そういうふうに考えております。そうすると、今のお話の硫酸をどう抜くかということは、いろいろ検討された結果イオン交換膜で抜けば経済的に大体いくだろう。ところが膜そのものを作るということがまだ研究時代で、これは前に申し上げましたように、この問題でなくて海水から塩なり苛性ソーダを直接作るということが非常に大きな関連があるものですから、二、三の会社でその膜を使いまして今パイロットを動かしている程度であります。しかしそれがどういうふうなものを使っているかということは、よそのことは全然わからないわけです。ですからもしこの硫酸の処理ということが一番問題になるとすれば一刻も早く膜で酸を抜くという問題を、経済の点も加味し、耐久力という点もみんな加味して問題をなるべく早く解決する、そういうことが一応の順序じゃないかと思います。組織の方になりましたときにはやはりなるべく今のように気持よく協力できる人が加わる必要がある。そしてそのときにたとえば木材を処理するまでのところは十分経験のある――われわれのような学校とか研究所だけでなしに、パルプ会社の実際のいろいろな技術の経験のあるような人を加えていく。それから砂糖を出すようなことも製糖会社とかそういう人もできれば加わっていただく。パイロットは、できるかできないかわからないのを試験するのが研究ですけれども、しかし相当の金がかかる。技術者としてはどうしてもそういうことをしたいと思いますが、そういう万全の策をとってできるだけ検討して成功するように持っていきたい。ですから研究室の者ばかりでなしに、実際の経験者の人に一つ加わっていただいてあらゆる立場から十分検討して大丈夫というところでいろいろな施設をやる、こういうふうに考えております。
  91. 小林達吉

    ○小林参考人 どこからスタートするかということについてでありますけれども、前に申しましたように、木材をブドウ糖の原料として処理する、前処理といいますか、その工程が経済的にものを作る場合に大きな問題になるので、その部分について先進国で非常に進んだ方法が、ほかの目的の、たとえばパルプを作るためにやられておるとかあるいはフルフラールをとるためにやられておるとかいうことがあるのであります。そういうものは設備がないと研究しようにもできないということも言えるわけです。そのために非常に大きな金がかかる。そういう場合には、理想を言えば、たとえば木材を作るために非常に高い温度が必要である。そうするとその高い温度を、しかも連続的に反応させてフルフラールがとれる。しかも残ってくるものはそれをブドウ糖の原料として最も適当な形にする、そういうことを兼ねた最も経済的な方法を選ばなければならぬ。そういうことの実験ができない。普通の小さい装置ではさきに申し上げましたようにできないわけであります。そういうことをやるのは今からやっても決しておそくないので、もう実験室である程度見当のつくことはやられておるわけですけれども、それ以上は進まないところに来ておると思うのです。それからその残滓をブドウ糖の原料とするということについては、方法によって塩酸法、硫酸法でおのおのの持ち味が違うわけでありますから、どういう形で残滓が残るかということもおのずから変ってくるわけであります。これは前加水分解をそういう進んだ装置を使ってどういう実験をやるかということとも関連するわけでありまして、一つの研究問題として前加水分解が非常に重要視されるゆえんだと思います。それから残滓をブドウ糖にするところの過程につきましては、従来やった濃硫酸法というものはある程度たくさんの硫酸を反応に必要としたのでありますが、だんだんと減すことができる、たとえばとれるブドウ糖と同じくらいの硫酸でも十分反応を行うことができるという具体的な事実もあるわけであります。ただ、そういう適当な実験装置を考案してそれを工業化することのできる、つまり工業化に持ち込むためには、なお基礎的な研究が必要だという基礎的な研究とも関連してなお研究するというような問題もあるわけでありまして、現在それをやらなければ工業化できないかというとそうでもなくて、従来考えていた方法を使っても硫酸をたくさんある程度回収すればよろしい、また経済的な問題となればなるべくすぐ回収した方がいいということもある。ですから基礎的な研究はいつまでたっても必要なんでありまして、そういう基礎的な研究をやるためにはやはりもうこの段階にきたら基礎的な研究をやることは要らないというわけにはいかない。  もう一つは、経済性というものがそのときの製品によって非常に違ってくるのでありまして、どういう製品を作るかということによって実際に工場を作る場合に非常に有利性とか不利性とかが出てくると思う。現在のところはブドウ糖というものが具体的に考えられておりますけれども、あるいは将来の製品を何にするかということをもっと適当に選ぶことによって、あるいはパルプと同じように木材からでなければ工合が悪いというような製品だってあり得るかもしれません。そういう新しいものについての研究も基礎的な分野では必要だということも十分言えるのだろうと思います。それから、ブドウ糖を作った残りのものを、たとえば発酵法によりましていろいろな製品にするということももちろんありますし、化学的な方法で、たとえば糖とアンモニアのようなものをつけることによって、それを飼料に回わすことによって蛋白と同じような栄養効果を与えるような方法についてもかなり先進国では進んでおるわけであります。そういうふうに考えれば、糖をかなり高い価値のものにかえることも可能になるわけでありまして、そういうことについてもわが国ではまだ十分研究がなされていないわけであります。  それから、そういう新しい製品を対象にしていきますと、その製品を作るために最も合理的な方法もまたそこに新しく存在し得るのでありまして、工場の立地条件とかその工場が持っているいろいろな他の工場と違う特徴によってどういう製品を選び、どういう方法を選ぶのが一番経済的かということもおのずから変ってくるわけであります。ですから、基礎的な部分の研究は現在はもう必要はない、これからはもうその段階ではないというふうにはそういうときが来てもある程度言えないのではないか。特に新規産業としてまだ机上の形もできておらないような場合には、基礎的な研究というものはこれからますます必要だというふうにわれわれは考えております。そして、その組織の問題については、基礎的な研究というのはたとえば大学とかそういうところは非常にやりやすいわけです。しかし、ほんとうの応用的な研究になりますと、なかなか金もかかるし人手も相当要るわけでありまして、そういう研究は何か特別に国家がそういう研究所のようなものをお作りになっておやりになることも一つの方法でありましょうし、あるいはまた何か適当な機関がそういうものを作られてこれを国家が補助するというようなことも必要だと思うのでありますが、アメリカが一九五〇年ごろに行なった濃硫酸法の工業化試験でも、日本の金に直して約二億円くらいな金をかけておりますけれども、結局それだけの資金をアメリカのビューロー・オブ・マインという役所が農務省に委託して、その限りでやったので、ある段階に到達したときにストップになった。そのためにその研究のデータが発表してありますから、ある程度の参考になるわけでありますけれども、一応ものにならないでしまっている。しかしその中には非常にすぐれたやり方も入っておるのでありまして、現在のわれわれはそういうことを十分に参考にしていくことができるわけであります。ですから結局結果論として、役に立つためにはまだ基礎的な研究も必要でありますし、またそれをやっていくための組織というようなものも、これはやはり新しい企業で相当リスクを伴うものであれば、民間で営利の対象としてすぐやられるというようなことは非常にむずかしいのじゃないか。そういう場合には、国家としても、こういうことが成り立つことによって、たとえば食糧不足ということも絶対的にはあるわけでありますし、値段さえ安くなれば――この値段が安くなるということも、工場立地によっては非常にあり得るかもしれない。たとえば木材が高いといっても、ある限られた量の廃材というものは非常に安い値段で集まってくるということもあり得るでしょうし、一がいにはどういう方法がいいということは非常に言いにくい点が多いのだろうと思うので、こういう総合的なことについては、そういうことを調査したり指導されたりするような機関とか、そういうものも存在することが非常に必要だと思うのであります。いずれにしても、たとえば、具体的に言いますと、今北海道で出されておるような計画の前加水分解の装置自身が非常にたくさんの金がかかる。何千万円とか億とかいうようなお金がかかるということを聞いております。またアメリカの近くで何か完全向流のパルプを作っているような会社があって、その会社で使っているような高圧の向流の反応装置というようなものをかりに作るとすると、一億何千万という金がかかるというように聞いておりますが、そういうものを実験装置として製作してやるというようなこと自身が、さきのチップの大きさとかいろいろな問題と関連して、相当金がかかるわけでありますから、そういう装置があればいろいろなことをやっていかれる。それがかなりパルプというものを作る場合においても問題になるでしょうし、糖化自身にもそういうふうに使える可能性があるわけですし、フルフラールをとるとか、前加水分解の工程が全体のプロセスに対して非常に経済的に大きく支配的に働く、影響を及ぼすということはあると考えられるので、そういうたくさんお金のかかるようなことをやるためには、国家みずからやるか、国が相当大きな援助をするのでなければ、そういうことはいつまでたってもできないということになりやせぬかと思います。
  92. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 それでは右田先生から……。
  93. 右田伸彦

    ○右田参考人 内田先生初め皆さんから大へん適切な御発言がございまして、特に私から加えることはないと思います。
  94. 永井勝次郎

    ○永井小委員 それでは小委員長、大体同じような御意見だと思いますので、一つ技術院長から、政府の方ではこの木材糖化の問題をどういうふうな考え方でやられているかという考え方をお聞きの上、それを基礎にして東北大学の先生から御答弁をいただいた方が有効だと思います。
  95. 黒川眞武

    ○黒川説明員 この木材利用の問題につきましては、日本の資源的に見ても非常に重要であることは今さら申すまでもございません。この部分的研究につきましては工業技術院の傘下の試験所におきましても二、三やっておりますし、また補助金の交付につきましても、特に糖化の関係につきましては昭和二十九年以来数個所に引き続いて出しております。ただいま糖化というような問題に対する意見というような御質問でございますが、木材の糖化には、ただいままで御紹介がございましたように、硫酸法と塩酸法がございますが、技術院といたしましては、これはどちらでもこの工業が成立して採算に合い、しかも資源の有効な利用をはかり得るならば、われわれはでき得る限りの方法によりまして育成したいというふうに考えております。ただ塩酸法と硫酸法との技術的な立場から考えますと、おやりになっている方がいささかセンスが違っておるというように私は考えます。塩酸法につきましてはきわめて最新な技術を、いわゆる粉体科学の技術をアプライいたしまして、そうして日本の新しい技術を生み出そうという大きな努力がうかがわれ、またわれわれとしてもこういう研究がすみやかに成功することを望んでおります。硫酸法につきましては、これは先生方もたびたび申されておりますように、かなり古くから行われている方法でございまして、これが成功ということになりますためには、私の考えます範囲では、その副産物の問題――と申しますのは、副産物がいかに安く有効に使われるかということと、それからこの硫酸は塩酸と違いまして不揮発性でございますので、そこに回収という問題が一つつきまとって参ります。技術的に比較いたしますと、前者は新技術であるだけに、そこに非常に大きな努力を必要といたしますが、硫酸法におきましては糖化というような事柄につきましては、すでに相当知られておる方法でございますので、前者に比べましては比較的容易であると思います。ただしそこに先ほど申しましたように副産物の問題とこの硫酸の回収という問題が、非常に大きな、この工業の死命を制するものであるというふうに考えております。従ってこの硫酸の回収いかんが今後の成功を左右する一つの大きな因子になるのじゃないかというふうに考えております。  われわれはこの両方の工業の成功を祈ってやまない次第でございますが、いずれにいたしましてもこういうような新しい技術と申しますものは、これは石油化学にしろ石炭化学にしろ同じでございまして、成功するためには、相当大きな資本といいますか、資金が必要なものでございます。従って、またいろいろな関係の技術の方々の知識の協力ということが必要になって参ります。ゆえに、今後こういうような重要な問題を育成し、また成功していくためには、本日お集まりの諸先生方、原局その他の関係の方々のお互いに協力的な一つの話し合いの場を作っていくことができるならば、一そうこれの促進がすみやかにいくのではないかというふうに考えております。
  96. 永井勝次郎

    ○永井小委員 今院長の話では非常に金がかかるというだけで、金がかかるからどうだ、どういうふうにしたらいいのだという意見はない。ただ金がかかるというだけのことです。金がかかるというだけの話ならだれでもわかっているので、ただ金がかかるが現在金がこれだけよりない、そうしたら政府が出せる金はどのくらいだ、民間から動員できるのはどのくらいだ、それをどういうふうに積み上げていって早くこれをなし遂げるかということが重要な問題だと思うのです。技術の内容は私はわかりませんが、塩酸法はいいのだ、硫酸法は今までほかでやっているのだからと、こう始末してしまうことはできないのであって、硫酸法は糖化の段階まで出ているならあとは中間試験なり何なりで通して工業化へ早道でいけるいろいろな条件があると思うし、塩酸法も新しい方式でいくならそれに刺激していけばいい、こういうふうに思うわけです。そこで諸先生の今までの話を聞いても、基礎研究はどこまでいったって限りはないので、基礎の研究は続けなければいかぬ。しかしこの程度ならばもう臨床なら臨床をやって、臨床の中から出てきたものは基礎に戻して基礎のまとまったものはまた臨床へ持っていくというふうな交互の刺激によって相互に刺激し合って成長発展していく、こういうことを期待できると思うわけで、一つ柴崎先生から、今院長のお話あるいは諸先生の今までのお話というものを基礎にして、具体的にどういうふうにしていったら今の条件の中でもっとこれを促進していくことができるか、そういうような事柄について一つ御所見を承わりたいし、今までお話を伺った先生の中からでも、どういうふうにしたらいいのだ、これはざっくばらんにいろいろディスカッスする意味合いにおいていろいろ御所見を承わることができたら幸いだと思います。
  97. 柴崎一雄

    ○柴崎参考人 感じておることを申し上げたいと思います。先ほど三つ質問がございまして、組織は四番目に出ておりましたが、先ほどのお話で、たとえば塩酸法を九月には一応の見通しがつくような、ずいぶん進行している状態であると拝見いたします。硫酸の方も先ほど北海道の部長さんからのお話ですと、ことしですか、パイロットを作るような予算の額も出ておりましたので、そういう点を拝見しておりますと、塩酸法、硫酸法、基礎で比較――先ほど二番目の問題は、あれはもうしばらく待って、この九月になりますと塩酸法ももう少し見通しがつくと思いますので、基礎の比較は今は待った方がいいかと思います。  一番目の工業化、実験程度の研究、これは先ほど小林教授からお話ししたようで、研究はいつまでも続くのはそうなんですが、先ほどから進行状況を見ておりますと、一応研究は研究ですけれども、パイロット程度までも進まなくては私どもが担当しているような仕事ではサンプルもできないので、もう少しパイロット程度の部分もほしいかと思います。  それで組織に関連してなんですが、ここで申し上げて差しさわりないと思うので、若げの至りであえて申し上げますけれども、パイロットの方は塩酸法もだいぶ進んでおるのですが、硫酸法で見ますと、小林教授の研究室を拝見すると、かなりの設備ができておりますが、率直に申し上げますと、人手がないし、金もなくて、あの設備が完全に動いてないように私は感ずるのでありますけれども、ああいうところをもう少し生かす。それから実験室での仕事は、北海道では各大学に委託されてやっておいでで、できることにも限界があり、またそこでなければならないこともありますけれども、あのようなパイロットをもう少し活用できるような気がいたしますから、具体的には九月までですか、その模様を拝見しておることと、かなりパイロットができておる――パイロットというほどでないかもしれないのですけれども、教育大学の設備をもう少し活用していったらというのが具体策なのです。
  98. 片桐英郎

    ○片桐参考人 私、院長さんの説に賛成なのです。つまり日本の資源という面からいきまして、この工業はぜひ一つ世界の水準を突破していただきたい。そのために科学者も何もみな総知を尽しておやりになっていただくような組織をお作りになっていただきたい。おやりになっておる人はずいぶん自信を持っていらっしゃるようですが、なお、おやりになっておる方々からもわれわれに問題を与えてもらいたいのです。われわれはこれで進んでおるように思いますけれども、アメリカの方はまたどんどん進んでおりますからね。研究をやっておる人の数がべらぼうに違うのです。ペニシリンがとられたのはみなそれなのです。われわれ一人でやっておるのが向うでは五百人くらいでやっておるのです。今のガンのあれなんかでも一つの研究所に三千人くらいおります。単位が違ってしまっておるのです。そういうことで日本の残された大きな資源なのですから、それをやり遂げるためには、ほんとうに胸襟を開いて総合的におやりになるような組織をお作りになるのが一番じゃないか。先ほど内田先生からもお話があったように、やはり運用は人なのですから、それにはいい組織をお作りになって、それでまたそう言ってはいけませんですけれども、われわれ企業家でありませんから経験がありませんので、そのかわり学理的にはうんとやりますから、つまりざっくばらんにこういう問題が困るのだということをわれわれにときどき明示していただきたいパルプの廃液なども日本ではああいう大事な資源を少しも活用してない。そういうところが情ないのじゃないかという気がいたします。そういう轍を踏まないように、われわれも一生懸命やりますが、ぜひ一つやっていただきたい。なお、私の方には国立の京都大学の木材利用研究所というものがございます。それには相当のエキスパートがおりますから、きょうは私を間違えてお呼びになったのだろうと思うのでございますけれども、そういうメンバーの方も一つ加えていただきますようにお願いいたします。
  99. 松平忠久

    ○松平小委員 ちょっと大島さんにお伺いしたいのですが、昨年九月に中間試験的なプラントを建設されて、今日までの仕事の中で、今まで研究されておったことがプラントを作ってから実際の研究に当って初めの予想とは違ってなお解決すべき点がある、こういう状態であったかどうか。それでなお今後解決を要すべきテーマはどういうものがあるかということを、秘密にわたらぬ程度でいいですが、一つお漏らし願いたいのです。
  100. 大島幹義

    ○大島参考人 昨年九月から試運転をして試験をしたのですが、昨年中はまだ作りました設備が予期のごとくに性能を発揮しなかったという問題が主であります。それで工場はみなそうでございますが、二、三カ月はそういう状況です。  それから次に現在までの状況はどうかといいますと、その前に小型装置試験をやったのでございますが、先ほどからほかの方もおっしゃって下さいました流動法でガスで糖化するという分ですね。こういう分は大体予期のごとく成果を上げております。問題はどういうところにあるかといいますと、工業化試験はみなそうでございますが、途中のプロセス間の受け渡しとかパイプの曲げ方が悪いので詰まるというような、そう申し上げると失礼でございますが、化学工業の新しいパイロット・プラント、中間工場で経験しない方には御理解できないような、言葉ではどこが悪いということは適切なことも申し上げにくいような、そういうこまかい本質的ならざる問題が各所にあるわけです。もちろんその中には取扱い物質の物理性を根本的に変えなければいけないという問題もある場合がございます。しかしただいままでのところは、いろいろな難点はございますが、大体全部解決できるだろうと私どもは現在見通しております。そういうように一つ一つ全所要量はどうだ、糖化の主反応はどうだ、塩酸の回収はどうだとテーマをあげてみますと、どれも大体よろしゅうございますと申し上げるほかはないわけでございまして、そういう中間のいろいろなこまかい部分の問題の解決が主でございます。現状はそういうことであります。
  101. 松平忠久

    ○松平小委員 小野岡先生にちょっとお伺いしたいのですが、一億円の予算を立てて政府の補助もいただきたいという先ほどのお話でしたが、これは何か政府の方へ直接もう書類か何かお出しになって補助の申請の手続をおとりになっているのか、その補助は来年度の予算ということになるわけですか、その点どういうふうなことですか。
  102. 小野岡清

    ○小野岡参考人 実は先ほど申し上げましたように、道といたしましては木材糖化審議会、特にその専門委員会の各先生方に御依頼を申し上げまして、できましたところの試験成果をとりまとめました結果中間試験を行う段階であるという確信を持ちまして、将来の企業化の再確認という形で今年度中間試験を考えたわけであります。もちろん先ほど小林先生や柴崎先生がおっしゃったように、ほかの工業もさようでありますが、特に木材糖化等につきましては基礎研究、応用研究を決して終了したというわけではなくて、同時に私たちの予算の上で考えておるわけであります。ただいま御質問がありました政府の補助金につきましては、昨年の十月の二十九日に商工委員会の本小委員会でたしか政府側の方から御回答がありましたように、来年度は北海道の木材糖化につきまして中間試験の補助金を考える段階であるというようなことを御答弁されておるわけでありますが、われわれといたしましては先ほど申し上げましたように、道財政の現状をにらみ合せまして、補助金並びに業界の協力を求めましてやろうという次第でありますが、すでに申請書を通産省の方に提出しておる次第であります。
  103. 松平忠久

    ○松平小委員 それから工業技術院長にお伺いしたいのですが、この木材糖化の研究問題については、文部省との間には何らかの連絡をとっておられるわけですか。
  104. 黒川眞武

    ○黒川説明員 文部省との間には工業化補助金については直接関係はございません。この補助金は御承知のように産業合理化法に基きます補助金でございまして、いわゆる純学術研究の補助金とは性格が違うのです。
  105. 松平忠久

    ○松平小委員 補助金の問題ではなくて研究ですね。研究そのものについては工業技術院と文部省との間に何か連携があるか、あるいは個々別々にばらばらでやっているのですか。
  106. 黒川眞武

    ○黒川説明員 これは御承知のように科学技術庁がございまして、科学技術庁にみな各省からそれぞれの研究テーマを提出いたしましてそこで調整することになっております。それでなお協力すべきものは協力をするというような行き方でやっております。
  107. 松平忠久

    ○松平小委員 もう一つ、これはちょっとくどくなりますが、右田先生に先ほどのことでお伺いしたいのです。私が先ほど申しましたのは、このリグニンの問題が解決しましたとなると、パルプも木材糖化もやはり同じスタンダードになる。そうすると競合ということは製品に対する競合ではなくて、採算率というか利益率というか、そういうもので木材糖化とパルプ産業というものがやはりそこに甲乙が出てくるのじゃないか。そういうことになると今の化繊系統パルプ関係の方が利益率が多いので、そうした場合においては木材糖化というものとパルプというものとの関連において、木材糖化の方が利益率が小さいということで、そういう利益率、採算上の問題からこの工業が発達しない、パルプの方はやはり同じテンポで発達していってしまう、こういうことのおそれがあるかどうかということなんです。
  108. 右田伸彦

    ○右田参考人 私の先ほどの御返事の言葉が少かったので申しわけないと思います。ただいまの御指摘の通りでございまして、私学校におりますので採算とかなんとかいうことの正確なことはわかりませんが、ばく然とした感じから申しますと、木材パルプ工業の方が採算という点では確かに現段階では有利のように思います。しかし木材糖化工業というのはこれからの工業でございますので、いろいろの面の進歩によってその差が縮まって参るという可能性も多分にあると思います。ただ現在を考えますれば、木材パルプ工業の方は現在すでに繁栄しておる工業でございますからそういうことが言えるのではないかと思います。
  109. 松平忠久

    ○松平小委員 その点で大島さんどうでしょうか。パルプとこれは太刀打ちできるような採算のベースというものが成り立ち得るものかどうか。たとえばある程度の経済単位の工場というものを作った場合に、今の研究を進めていくわけですが、リグニンという問題を抜きにして、糖化はフルフラールだけでこのパルプと太刀打ちできるかどうか、これが私はこの産業が将来わが国の資本主義の態勢がこのまま続いていくとすれば発達できるかどうかということの一つのポイントになりはせぬか、こういうふうに思うわけなんですが、その点はどうですか。
  110. 大島幹義

    ○大島参考人 これは私の個人の考え方で調べてみたのですが、問題は要するに工場の生産規模の大きさの選択にある。もし同格の大きさの生産規模を比較する場合には、大体同じ程度の利益率になると思います。それからなおパルプの方は現在非常に日の当る産業でございますが、これは私の調べたところでは全世界のパルプ不足に基いておる。だから現在日本のパルプをアメリカに輸出しておる状況です。永久にパルプが有利であって、木材の糖化は不利だということは、世界の過不足の問題からくるわけですから、必ずしも成立するものではないと思います。普通に結晶ブドウ糖だけで考えれば約二十石で一トンできます。そういう立場にございますから、パルプ産業の方も当然今後はリグニンの利用ばかりではなくして、木材をまず前処理をしまして、それからフルフラールを取って、あとの繊維素の部分だけをパルプにするということになるだろうと思っております。そういう意味で私の方でもパルプに関する研究は、まず前処理してからパルプを作るという研究をいたしております。それからなお先ほど言葉が足りなかったので付言いたしますが、リグニンの液化の研究を私ども水素添加分解をやっておりますが、そのやり方は、パルプ・リグニン、特に亜硫酸パルプのリグニンをまず目標にしております。どちらも同様に液化ができます。ですから今後はパルプ工場は少くとも、たとえば山陽パルプの程度の規模、四万トン程度を作っている工場ですね、そういうところは当然リグニンの利用を今後お考えになっていいのではないか、こういうふうに技術者としては考えております。
  111. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 なおちょっと関連して私からもお伺いいたしますが、この木材糖化についてはリグニンだけでなくいろいろ今後の研究によって価値のあるものがだんだん出てくるわけでございましょう。そうしますれば現在のパルプ工業なんかよりも将来はるかに有利である。たくさん利用するものが、ことに価値の高いものが出てくれば、ますます全体の他の生産費も安くつくわけですから……。そういうふうに考えていいわけでございますね。
  112. 本名武

    ○本名小委員 私ちょっと急くので結論的なことを申し上げて御意見を承わりたいと思いますが、いろいろお話を伺っていますと、幸いにこの研究ないしは工業が絶対見込みないからやめろという御意見が一つもなかったことは非常にけっこうだと思います。要するに、いろいろな研究の未開発の面は今後に待つといたしましても、当面の問題として一つの大きな問題は、学究的なお立場にある学校側――大学にいたしましてもあるいは地方の研究機関にいたしましても、まず工業化企業化の前提として研究するのに、いろいろなプラントによって研究したいが金がない、金がないということの責任は、私は日本の今の経済的な客観情勢もさることながら、やはり政府が相当考えてこれを助長していかなければならぬじゃないか、こう思われるわけです。そこでこれは先ほどからお話がありましたが、企業採算ということと、リグニンその他の未解決の問題を考えていきますと、ここに三つの鼎立した姿が出てきやしないか。その一つは学者のお立場から学究的な研究を進めていかれて結論を出したいということ、あるいは結論は遠い将来のことであっても、一つでも多くの解決を部分的に解決していきたいという立場に立たれる方と、それから野口さんあるいは北海道庁のおやりになっている研究のように、一応もう工業試験の段階に突入して、さらに近い将来においてりっぱな企業化をはからなければならないのだという意欲に進んでいかれる段階と、もう一つは、リグニンの研究その他細部の問題はあと回しとしても、研究は皆さんの御研究を基礎にして、とにかく企業意欲一本やりで進んでいくという行き方と、この三つがこの問題の上にこれから現われてきやしないかと思うのです。  その一つは、実は私ごとしの三月スエーデンの方からずっと欧米を回ってきましたが、すでにイタリアのフルフラールを中心とした工業化というものが、リグニンの問題も一応日本ほどやかましく騒がずにりっぱな企業化がなされているということ。さらにまたそれらの設備に対する機械はお引き受けいたしますという機械工業がすでにもうでき上っているというこの事実、それから国内におきましても、糖化あるいはフルフラールはともかくとしてアルコールならば採算がとれるといってすでに一トン・プラントを五トン・プラントに増強してやっているというこの姿、さらにまたそれぞれ木材の資源利用の面から、特に未利用廃材利用の面からも相当の企業意欲を中心にした行き方が現われてきやしないかと思う。そこでこれは政府としてもせっかくそういう意欲が現われんとするときに、押えるようなことがあってはいかぬ。と同時にまた研究機関に対してもこの際できるだけそういうものに劣らないように広く研究をやらせるということがこの企業があやまちなく将来発展していく道だろうと思います。そこでちょっとお伺いしますが、三十二年度のこの事業に対する研究費として国は一体どのくらいお出しになるのですか。
  113. 黒川眞武

    ○黒川説明員 三十二年度の助成金の予算といたしましては、四億円計上されております。そのうち一億三千万が電子工業技術、この問題にしぼられておりまして、あと三千五百万が輸送航空機の試作研究補助金ということになっております。従って残りの二億何千万がいわゆる鉱工業の研究補助金ということになるわけでございます。  そこで、ただいままで提出されております木材利用の研究が、工業化におきまして五件、応用研究におきまして二件出ております。これらにつきましては、現在所定の研究機関――原局、地方通産局・工業技術院というものからできました審査委員会でその技術を検討し、さらに学術会議より推薦されました学識経験者によって審査していただきまして、現在この中で補助金に相当する件数をしぼりつつあります。従ってまだどれが補助金に該当するか今のところ検討中でございます。現状はそういうことでございます。
  114. 本名武

    ○本名小委員 それでは予算の配分はまだ確定していないということでございますね。しかし、頭金がきまっているのだからこれ以上ふやすということは事実上困難かもしれませんが、今お話があったことでもあるし、われわれもぜひこの機会に、硫酸法、塩酸法の可否の問題は将来に待つとしても、あるいはまた同時に並行して進めるにしても、先ほど小委員長のおっしゃった通りに両方の方法がほんとうに並行してりっぱに育ち上がるように予算配分をしていただくように一つ御留意をいただきたいと思います。  そこで、実は先ほど小委員長からお話がございましたが、内田先生から冒頭にお話がありました原料の点ですけれども、原料の点からこの企業が左右されるということは端的に申し上げまして私は非常に情ないと思うのですよ。これはちょっと余談になりますけれども、私どもの党におきまして今一番考えておりますことは日本の農林業はこのままでいいかどうかということであります。なおせんじ詰めて言うと、農業形態がこのままであってはいけない、経営方式がこのままであってはいけない、林業もこのままではいけない、それならばどういうことがいけないかというと、いろいろありますが、まず第一に日本の土地の利用方法が誤まっていやしないか、土地の利用方法をどうするかというその上に立って林業の経営形態をどうするか、これは農地改革に次ぐ大きな土地の改革をやらなければならぬじゃないかということまで党内では話し合いをいたしております。その上に立った栽培林業であり、農業経営の一環としての問題を解決していきたい。従いまして先ほど北海道の例が林務部長からお話ありましたが、これは量の大小は別として、全国的に言える問題だと思うので、一応先生方は原料の点は御心配なさらないで、あくまでも技術上の問題で一つ突っ込んで御研究をお願いしたいと思います。  それからもう一つの問題は、学究的なお立場から当然でありますけれども、企業採算の点に言及なさる場合はよほど御慎重にやっていただかなければ、この民間研究も非常に阻害されやしないかということであります。リグニンやフルフラールの研究というものがこの木材化学工業、特に木糖工業にとっては重大であることには間違いありませんし、またそれを解決してスタートすることも、企業化することも当然必要ではありますけれども、それが解決しないことが採算に影響があるないということは、これは私は別な角度から採算は検討して、もしベースだとするならばあるいはやってしまうかもしれないという段階――やってしまうことはむちゃなようですけれども、これは一つの大目的であるところの木材の資源の活用と、それから日本の化学工業の発達という点からいって、特にまたフルフラールや糖分にいたしましても、日本の需給のバランスの点からいっても、これはやらなければならぬ場合でありますから、その点を一つお考えいただいて、もし企業採算の点を御検討下さるならば、一つ的確なデータを出していただいて私どもにも検討させていただきたい、こう思うのであります。  それから最後に一つ通産省の方にお伺いいたしますが、いろいろ御熱心に御検討をしておられるようですけれども、実は先ほど北海道の方から予算の問題があって、今伺いますとまだ決定していないということでありますが、予算が通ってからだいぶ日がたつのですが、もし大体のお考えの中身を漏らして差しつかえなければちょっとお漏らしいただけませんでしょうか。と申しますのは、私は北海道庁に対して先ほどの一億一百万円とかの計画で中間試験をやりたいというのに、かりに非常に小さい額の国の助成であったならば、この中間試験というものは中絶しやしないかという心配がある。あるいは中絶しないまでも、とうとい一カ年間というものを、その中間試験ができないために枝葉の研究だけに終るようなことになりはしないかということで、北海道がそういうことになれば、これはまた御趣旨にも反して木材糖化がどんどん進んでいくことができなくなるということにもなるのであります。大体どの程度の配分をお考えになっておるか、しかもある程度の中間試験達成に必要な額というものが確保できないとするならば、われわれとしてもまた考え方を変えてお話し合いをしなければいかぬのではないかと思うので、今の御様子をちょっと漏らしていただきたいのです。
  115. 黒川眞武

    ○黒川説明員 今の点に関しましては、今北海道庁の担当の方と工業技術院の助成課の係員との間で技術的に検討いたしまして、大体今明日、両方御了解いただける程度になっておると思っております。従ってまだ私の方に額が来ておりませんので、その辺で御推察いただきたいと思います。
  116. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 ちょっと関連して。今本名君から発言がありましたことについて、私も木材利用小委員長として黒川院長並びに通産省の齋藤軽工業局長に、北海道庁の今回の開発研究というか、そうした研究に対する補助金については、木材化学の重要性を十分御認識の上、できる限りの援助をして下さることを、この委員会の席で特にお願いいたしておきます。
  117. 内田俊一

    ○内田参考人 先ほど私が原料の面で心配しておるというようなお話がありましたが、私の言葉が足りなかったのか何か知りませんが、あれはこういうことを申し上げたのをそうおとりになったのかと思うのです。硫酸の処理にこれを石灰で中和して石こうを作る、そこで石こうボードというものはもちろんある程度の需要があるのでありますが、これが将来の姿の木材の化学あるいは木糖を作るときの硫酸の処理方法としていいか悪いかという問題になると、これは非常に大きな工場になりますと、その方法は必ずしも最終的な解決方法ではないだろうという意味のことを申し上げた記憶があるのですが、木材なる原料が日本において不足するという点で私が心配しているようなことを申し上げた記憶はないのです。
  118. 本名武

    ○本名小委員 それは私も決してそう申し上げたのじゃないのです。私が言葉が足らなかった。と申しますのは、先ほど先生は森林資源に見合う木材化学工業ができ上らなければならないというお話があったのです……。
  119. 内田俊一

    ○内田参考人 最後的に私はそれを目標にして話を申し上げたので、従ってそういうことになった。
  120. 本名武

    ○本名小委員 それで今木糖に関する限りは森林資源に見合う、見合わないということの御心配は要りませんから、一つ研究の方はどんどん進めさせるようにして下さい、こういうことなのです。
  121. 内田俊一

    ○内田参考人 ちょっと敷衍しますと、たとえば一トンとか五トンとかいうようなものであるならば、アルコールを作ろうが、石こうボードを作ろうが、企業家が意欲さえあればりっぱにうまくやり得る余地はあるわけなのです。そういうことは私十分認められると思います。
  122. 永井勝次郎

    ○永井小委員 日本の科学技術のいろいろな振興という面において、全体として足りない点が非常に多い。それぞれの技術者や学者やそういう人たちが、経済的な裏づけがないために実力を伸ばせないで国内に窒息しておる。かえってアメリカその他からどんどん優秀な技術者が引っぱられて、向うで研究の環境を与えられて、そこでいい業績を上げているという実情に置かれておりますことは、日本の国の現状としては非常に恥かしい、残念だと思います。そこでやはり国の技術院あるいは科学技術庁というようなところが、単にだれかが自力で研究して、何か業績を上げるのを黙って見ていて、その業績に対して批判して、つめのあかほど、はなくそほどの金をもったいぶって配分して、国がこれだけ助成しておる、応援しておるというような、研究の力にもならないくらいな金をそこらに散布して、そういう結果だけが有効に実を結ぶように期待するということは大きな間違いだと思うわけなんです。やはり役所の組織だけで予算を要求していたのでは、毎年同じようなことを繰り返して大した予算の期待はできないと思う。そこでもっと積極的になって担当の省は、たとえば木材糖化なら木材糖化の技術の段階はこうなって、国際水準はどうで、そうして実を結ぶことによってどうだという、そういう計画をちゃんと立てて、そうしてこれだけの予算がつけば大学の研究室はこういうふうにして増員ができる。塩酸法は野口研究所なら野口研究所を一つの拠点として、硫酸法なら北海道庁の林業指導所というふうにしてやっていけるというような計画をちゃんと立てて、予算の受入れ態勢をちゃんと示しながら、それをやらないでこの研究がおくれたということは、大蔵省なら大蔵省の責任であるし、政権を握っている政府の責任だというふうに明らかにしながら予算を要求して、そうしてその予算はできるだけ大学の研究室にも回すし、それぞれの中間試験のところに学者を動員して、そうして交互に臨床と基礎とを結びつけるような、もっと積極性を持ったやり方をしなければ、学者も研究の意欲は刺激されないだろうし、それからそういう方面の仕事を担当している人としては、ただ予算がどうだろう、ないから、ないからということだけで居眠りをして、自然発生的にできるのを待っているというような消極的なやり方ではいけない。もう少し全体が活を入れて生き生きと活動できるような、そういう体制を確立することが現状として非常に大切だ。その一つの集約的な、また日本の独特な――独特というほどではないが割合に同じようなスタートで出発するこの木材糖化の問題、合理化の問題については、一つそういう体制を整えて、そうして来年度を期して一つ飛躍的にぐんと進めるというようなことをこれから一つ、技術院長及びその方を担当している齋藤局長には、来年の予算折衝の始まる夏ごろまでにはそういう体制をまず作って、予算の要求をするような基礎資料を整備してやっていく。われわれもこの小委員会を中心としてこれは強力に社会党もあるいは自民党も超党派的にこの問題を推進するというように、背景の力をまとめていく以外にはないと思う。それに対する学者側のお考えと、それから院長及び軽工業局長の決意を私は伺っておきたいと思う。  そのためには今この小さなはなくそほどの金をばらまかないで、頭金が少いなら少い金をどういうふうにことし集中して使うかという、その使い方によって皆さん方の決意のあるところをわれわれはそんたくすることができると思う。その少い予算をばらまくという考えなのか、集中して使って効果を期待するという考え方で予算の配分をするのか、それもあわせて一つ決意を伺っておきたい。お二人とそれから学者の代表の方にお願いいたします。
  123. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 学者の先生はだれが代表といってもなんでありますから、一番こちらにおられる内田先生に代表していただいて御意見を承わることにいたしたいと思います。
  124. 内田俊一

    ○内田参考人 学者の方は、実情を申しますと絶対値が非常に少いものですから、五万でも十万でもみな非常に喜ばれると思うのですけれども、その程度の金を今はつぎ込んでも焼け石に水というような格好で、あまり本式の仕事はできません。言いかえれば学者は頭を本式に仕事とくっつけて十分に使っていないという状態ですから、これはそういうふうな状態にほっておくのは、国家的な非常な損失だろうと思います。それで今われわれ大学側としましては、一つの講座に対する基本研究費をある程度に増額してほしい。たとえば昔一講座一万円というのが大体の標準でありましたが、それを今の価値に直しますと大体四百万円くらいですね、その程度まで持っていきたいということで、そういう努力をしているのでありますが、現在やっとまず代表的な大学において実験講座で百万円に若干欠けるというようなところまで最近進展してきた、そこで先生方は実際の力が余っておるという状態なんで、幾らでも吸収できる状態だと思うのです。ですから工業技術院の方でも、大学において具体的なパイロット・プラントのようなことをやるのは大学の任務ではありませんが、一つ先生方の実力を十分に伸ばすような方面にできればいろいろ工夫をして金を回していただきたいと思います。しかしながら総合研究になりますと、大学のようなところは、必ずしもやるに適当なところではありませんが、これは適当な研究の専門の機関なりあるいは会社なりそういうところが学者に公開できるような形において仕事をする。言いかえれば国の金がそこに入っておって、国の全体のものが、それに関与できるというような形のものができますと、大学の先生も必要に応じてそれに協力ができるということになりますので、それは非常にけっこうな姿だと思っております。ただものを完成するということになりますと、学理の面だけでなしに総合研究が必要でありますので、ただいまおっしゃいましたように、総合研究ができるような、一体的に仕事のできるようなそういう場所が、木材の精化においても二つでも三つでもできることは好ましいことだと思うのであります。ですからそういう意味において一つ政府の方々もあるいは委員の方々も御推進を願いたいと思います。以上であります。
  125. 黒川眞武

    ○黒川説明員 この問題につきましては、齋藤局長の方が適当だと思いますが、私から先に答えさしていただきます。ただいま申しましたように、この木材利用ということは単に糖化ばかりでなく、あらゆる需要におきまして研究しなければならない大きな問題であろうと思います。従ってこれは先ほども申しましたようにいろいろな方のお知恵を拝借して、そうして研究をなるべく有効に促進していきたい、そういう意味におきまして、原局とも相談いたしまして、でき得るならば研究体制を一つにしていきたい。例を申し上げますと、研究組合のようなものあるいは研究団体のようなものを作りまして、業界と学界あるいはまた原局、われわれの方と相寄りまして、そうして原局の方ではそれに伴う行政的な処置を強力に施す。研究の方はわれわれどもでその組合に補助の形で金をお出しする場合もございましょうし、あるいは共同研究をやる場合もございましょう。そういうような形で進めたらば、一番やりやすく合理的に進むんじゃないかというふうに考えております。工業技術院で補助金をとりまして、これを文部省の先生方に補助金を差し上げるということは、これは会計法上不可能でございまして、そういう組合の形によってやっていけば、皆さんの協力でできると思っておる次第でございます。そういう気持でおりますので、先生方も一つ今後御協力を願いたいと思います。
  126. 齋藤正年

    ○齋藤説明員 研究の問題は、われわれの方の所管ではございませんが、木材糖化の事業の推進をはかっていかなければならない、そのためには従来のやり方だけでは不十分ではないかというお話、(永井小委員「不十分どころか、そこまでいっていない」と呼ぶ)まことにごもっともな御意見のように思います。ただ先ほどもお話がございました工業化試験の制度でありますが、こういうものは一つ制度ができますとその一つのルールができてしまいまして、そのルールのワクへ入る限度でしかできない。限度というよりは、むしろ一つの総合的な研究につきましてもそのルールに乗る部分しか見られないということになりますので、全体の研究費が非常に多額の研究費でございましても、それをそういった行政技術的に見ますと、ルールに乗る部分は案外少いというようなことがあるわけでございまして、ほんとうに徹底した援助をいたすといたしますれば、現在の工業化試験、あるいは応用研究というような、そういうルールをそのまま守っておったのではほんとうは十分な援助はできないわけです。もっと徹底した制度をということになりますれば、たとえば委託研究というような方法がございます。そういうような形になれば、これは建前上は全額政府が出すわけでございますし、またそういう扱いをしておる例が全然ないとは言えないわけでありまして、戦争中の軍関係の研究といったようなものは、ほとんど委託研究でした。アメリカの原子力の研究なども大部分委託研究で、会社はほとんど金を持ち出さないで全部政府で負担しておる。日本でもそういう委託調査の研究とか、テーマによってはそういうことになっております。原子力関係などでは相当そういうふうなものがあるはずでございます。従って同じ規模の研究に対しても政府の金の出し方がまるで違ってくる。ただ委託研究のような制度をとるためには、その研究が本来当然国としてやるべきものである、国が直接やるべきものだ。それをただ民間の知識を動員するために委託研究の形をとるのだということでございまして、木材化学の研究が、そこまで、いわば社会的な認識が進んでおるかということになりますと、残念ながらわれわれの努力も非常に足りなくてそこまでいっていないわけであります。ただ黒川院長からも申し上げましたように、これが同じ研究でありましても、民間研究の立場を守りながらも、従来の単独の研究組織というものと、研究組合というふうな共同研究組織と比べてみますと、その場合には共同研究組織というものがはるかに取扱い上有利にできるような面もございますので、これは確かにそういう線を考えていきたい。しかし根本的に申しますと、木材化学というものに対する社会的な認識、原子力とかあるいは今度の国会で非常に問題になりました電子工業というようなもの、原子力までいきませんが、電子工業並みの現在日本の経済にとって大きなウエートを持つものだという認識が得られますれば、それは非常に進むのじゃないかという気がいたします。そういう点に関する、啓蒙宣伝という言葉は不適当かもしれませんが、そういう面でわれわれがまだ非常に足りない点がある。次の来年度の予算までにはわれわれもできるだけ勉強いたしまして、諸先生方のお力も借りましてそういう方向へ持っていきたい。それで現在の制度にこだわらないで、もう少し進んだ制度も適用できるほどの認識を得たい、そういうふうに努力いたしたいと実は考えております。  それからちょっとさっき本名先生からもお話がございましたが、企業化の問題につきましては私らはこれは研究が全部まとまらなければならぬということは毛頭考えておりませんので、そういうお考えの方、企業化したいという計画も現にございまして、それはそれとして現在できるだけの協力をするという考え方でございます。また大企業のものが必要ならば幾らでも突っ込んだ御援助をいたしたい。ただそういう企業化の問題になります場合には、少くともその企業化する事業の範囲では、とにかく何年か後には必ず採算に乗るのだ、その企業化しようという範囲においては技術的には全然不安がないのだという点が非常に大事でございます。何も関連のものまで全部完全に研究を完成するという必要はございませんが、企業化しようとする範囲のものについては、技術的に完全な、ほとんど完全というということは不穏当でございますが、技術的には全然問題がないのだというところまでいきませんと、われわれ行政の方では困りますので、その点一つお断わりしておきます。
  127. 永井勝次郎

    ○永井小委員 そこでちょっと伺いたいのだけれども、今黒川さんと齋藤さんのお話で政府でもそういう考え方だ、こういうことであるならば、大体八月から九月ころは予算の編成にそろそろ取りかからなければならぬ、こういうふうに思うわけです。そこで結局今のお話を具体化していくというテンポにしても、その辺のところを目標にしておやりになるということではなかろうかと思いますが、その点はどうですか。
  128. 齋藤正年

    ○齋藤説明員 それはお話の通りでございます。電子工業のように少しまとまった金をとるということになりますれば、既存のワクの予算ではだめでございますから、別ワクの予算で要求しなければなりませんので、われわれもそれに間に合うようにできるだけ一つ準備を進めていきたいと思います。
  129. 鹿野彦吉

    ○鹿野小委員長 いろいろと大へん皆さんから御意見を承わりましてまことにありがとうございました。なおこの木材化学の問題については、ただいま齋藤局長から大へん理解ある発言がございましたが、理解ある齋藤局長にしてなおかつ電子工業や原子力平和利用問題と比較にならぬようなウエートを置いておられますが、私の考えでは原子力の平和利用あるいは電子工業と比較にならないほど日本経済にとっては重要さが、非常にウエートが重いものという認識に立っております。ただそれに対して、政府に対してわれわれ国会においても大へん今まで微力であることをおわびいたす次第でございますが、今後そうした皆さんの御認識に協力いたしまして、われわれも自由党、社会党超党派的に努力をいたしたいと思いますので、格別なる御努力を重ねてお願いいたしまして、なお本日御出席下さいました諸先生方におかれましては、ぜひ一つ今のような認識で私たちも大いに努力いたしたいと思いますから、積極的にこの木材化学の重要性を認識した上において御研究の道に進んでいかれますことをお願いいたしますとともに、先ほどお願いいたしましたそれぞれの立場からの開発研究に対する人員、費用、その予定年数という、このことを出していただかれんことをお願いいたします。  大へん御多用のところ、参考人各位には長時間にわたりましていろいろと御意見を承わり、本問題調査に多大の参考となりましたことを厚く御礼を申し上げる次第でございます。  なおこの小委員会は来たる二十八日午後三時よりパルプ廃液の処理などに関し、審議をいたしたいと思います。これにて散会することにいたします。    午後三時五十九分散会