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1956-03-30 第24回国会 衆議院 外務委員会 25号 公式Web版

  1. 昭和三十一年三月三十日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 石坂  繁君 理事 北澤 直吉君    理事 須磨彌吉郎君 理事 高岡 大輔君    理事 山本 利壽君 理事 松本 七郎君       伊東 隆治君    大橋 忠一君       菊池 義郎君    並木 芳雄君       福田 篤泰君    渡邊 良夫君       田中織之進君    田中 稔男君       戸叶 里子君    福田 昌子君       細迫 兼光君    森島 守人君       岡田 春夫君  出席政府委員         外務政務次官  森下 國雄君         外務事務官         (経済局長)  湯川 盛夫君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君  委員外の出席者         労働事務官         (大臣官房国際         労働課長)   村松 伍郎君         労働事務官         (労働基準局監         査課長)    辻  英雄君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月三十日  委員中山マサ君辞任につき、その補欠として草  野一郎平君が課長の指名で委員に選任された。 同日  理事須磨彌吉郎君同月二十八日委員辞任につき、  その補欠として同君が理事に当選した。     ――――――――――――― 三月二十九日  日本国とカナダとの間の小包郵便約定の締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一五号) 同日  千島列島の返還促進に関する請願(伊藤郷一君  紹介)(第一六五一号)  日ソ及び日中の国交回復促進に関する請願(松  本七郎君紹介)(第一六七五号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  連合審査会開会に関する件  オランダ国民のある種の私的請求権に関する問  題の解決に関する日本国政府オランダ王国政  府との間の議定書の締結について承認を求める  の件(条約第一〇号)  すべての種類の鉱山の坑内作業のおける女子の  使用に関する条約(第四十五号)の批准につい  て承認を求めるの件(条約第一一号)  有料職業紹介所に関する条約(千九百四十九年  の改正条約)(第九十六号)の批准について承  認を求めるの件(条約第一二号)  日本国における英連邦戦死者墓地に関する協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一三  号)  千九百五十五年五月三十一日に東京署名され  た農産物に関する日本国とアメリカ合衆国との  間の協定第三条を改正する議定書の締結につい  て承認を求めるの件(条約第八号)  農産物に関する日本国とアメリカ合衆国との間  の協定の締結について承認を求めるの件(条約  第九号)  防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識  の交流を容易にするための日本国政府とアメリ  カ合衆国政府との間の協定及び議定書の締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一四号)  日本国とカナダとの間の小包郵便約定の締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一五号)     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 これより会議を開きます。  理事の補欠選任についてお諮りいたします。理事須磨彌吉郎君が去る二十八日委員を辞任せられ、再び当委員に選任せられました。従いまして理事が一名欠員となっておりますので、この際その補欠選任を行いたいと思いますが、これは同君を再び理事に指名することといたして御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 御異議がなければさように決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 次に日本国における英連邦戦死者墓地に関する協定の締結について承認を求めるの件、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書の締結について承認を求めるの件を一括して議題といたします。  政府側より提案理由の説明を求めます。
  5. 森下國雄

    ○森下政府委員 ただいま議題となりました日本国における英連邦戦死者墓地に関する協定の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国は、サンフランシスコ平和条約署名の際に行なった宣言におきまして、日本国の領域内にある連合国の戦死者の墓、墓地及び記念碑に関して、必要とされる協定を締結するために交渉を開始する旨を明らかにしておりますところ、昭和二十七年四月英連邦諸国を代表するオーストラリア政府より、当該協定締結のための交渉を開始したい旨を申し入れて参りました。自来、オーストラリア政府との間に交渉を続けて参りました結果、案文について協定当事国の合意成立しましたので、昨年九月二十一日、東京においてこの日本国における英連邦戦死者墓地に関する協定署名されました。  この協定は、大体において、英連邦がイタリア、ベルギー、オランダデンマーク等と締結しております墓地協定と同様のものでありまして、横浜市保土ケ谷区にある第二次大戦中に戦病死した英連邦軍人の墓地を、三十年間無償で使用させることを認め、それに伴う墓地の維持、管理等に関する事項を取りきめようとするものであります。  政府といたしましては、前記の平和条約の宣言の趣旨にもかんがみ、かつまた、英連邦諸国が南西太平洋地域及び東南アジア地域における旧日本軍人の墓の維持及び遺骨の収集等につきまして、好意ある態度を示していること等を考慮いたしまして、この協定に調印いたしました次第であります。  よって、ここにこの協定の御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことをお願いいたす次第であります。  次にただいま議題となりました防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定及び議定書の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  日米両国政府は、昭和二十九年三月八日に東京署名された相互防衛援助協定第四条におきまして、「両政府は、いずれか一方の政府の要請があったときは、防衛のための工業所有権及び技術上の知識の交換の方法及び条件を規定する適当な取極であって、その交換を促進するとともに、私人の利益を保護し及び秘密の保持を図るものを作成するものとする。」旨を合意しておりますが、両政府は、この規定に基く取りきめを作成するため、一昨年十月以来交渉を進めて参りましたところ、幸い意見の一致を見ましたので、去る三月二十二日東京において重光外務大臣とアリソン米国大使との間で、本件協定及び議定書の署名を行なった次第であります。  この協定及び議定書は、相互防衛援助協定第四条の規定に明らかな通り、日米両国政府及びその国民の間における特許権及び技術士の知識の防衛目的のための交流を容易にし、促進するとともに、その間にあって、関係私人の利益の保護及び秘密の保持を確保することを目的としております。従ってこの協定の締結によりまして、日米両国間に防衛上の近代的技術の交流の体制が整備されるわけでありまして、わが国にとりましては、米国の防衛用装備資材の製法、用法等の導入及び、その結果として、わが防衛力の強化と防衛産業の育成を期待することができる次第であります。  よって、ここにこの協定及び議定書の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次にただいま議題となりました日本国とカナダとの岡の小包郵便約定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案の理由を御説明いたします。  日本国とカナダとの問の小包郵便物の交換業務に関しましては、戦前は、大正二年の約定によって規制されて参りましたが、戦後も、カナダ政府は、サンフランシスコ平和条約第七条の規定に基いてこの約定の復活を通告して参りましたので、現在この戦前の約定が両国間に適用されております。しかしながら、この戦前の約定は、大正二年以来一度の修正も行われていないため、現状に適するよう改訂の必要がありましたので、政府といたしましては、新約定締結の希望をカナダ側に申し入れますとともに、オタワに専門官を派遣いたしまして先方と予備交渉を行わしめたところ、その内容についてほぼ両者の意見の一致を見ましたので、その結果に基きこの約定が作成され、わが国は、本年二月十六日に東京署名し、カナダ側も三月二十日にオタワで著名いたしました。  この約定は、小包の交換に関する条件、小粒の運送料金に関する事項、誤送小包、転送小包等に関する事項、航空小包に関する事項、価格表記小包に関する事項等について現在の状況に適した規定を内容としております。従いまして、この約定を締結することにより、日加両国間の郵便小包の交換業務は改善せられ、一そう円滑に行われることとなる次第であります。  よって、慎重御審議の上、なるべくすみやかに御承認あらんことを希望いたす次第であります。
  6. 岡田春夫

    ○岡田委員 ちょっと委員長を通じて資料の要求をお願いしておきたいと思います。先日この委員会に提出されました原水爆実験に関するわが方の申し入れに関する三月十九日米国政府の回答、この仮訳をわれわれいただいたのでありますが、英文のいわゆる正文をぜひお出しいただきたい。それからもう一つは、この回答に関連して日本側の見解が発表されたはずでありますが、この見解についても文書をもって一つ資料の御提出を願っておきたいと思います。
  7. 下田武三

    ○下田政府委員 第一の米国の回答の原文は、さっそく御配付申し上げます。それから第二の日本政府の見解と伝えられておりますのは、外務省の情報文化局が新聞記者諸君の参考のために、議事資料として配付しましたものが新聞に出たのでございまして、別に政府の正式の見解ではないわけなのでございます。
  8. 岡田春夫

    ○岡田委員 その議事資料といいますか何ですか、おそらくコピーにしてあるのじゃないかと思うのですが、それも御配付願いたいと思います。
  9. 下田武三

    ○下田政府委員 部内で相談いたしまして、なるべく御希望に沿うようにいたします。
  10. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 次にオランダ国民のある種の私的請求権に関する問題の解決に関する日本国政府オランダ王国政府との間の議定書の締結について承認を求めるの件、すべての種類の鉱山の坑内作業における女子の使用に関する条約(第四十五号)の批准について承認を求めるの件、有料職業紹介所に関する条約(千九百四十九年の改正条約)(第九十六号)の批准について承認を求めるの件を一括議題といたします。質疑を許します。岡田君。
  11. 岡田春夫

    ○岡田委員 私はとりあえずすべての種類の鉱山の坑内作業における女子の使用に関する条約、これについて伺いたいと思います。まず条約上の問題から伺って参りたいと思いますけれども、この条約の調印はいつ行われたのでありますか。
  12. 下田武三

    ○下田政府委員 御承知のように国際労働機関で作成します条約は、いろいろな形をとっておりまして会議参加国が署名するという形式をとっておりませんで、この条約の末尾の方にも書いてございますように、署名いたしますのは国際労働事務局長だけでございます。それであとで参加せんと欲する国が批准書を寄託するということによって、正式の調印になるという、そういう手続にいたしております。この条約ができましたのは一九三五年の労働総会の第十九回に採択されたのであります。
  13. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうすると、ことさら調印を必要としないで、これに参加しようとする国がこれの正式の手続をすれば、これに正式に参加し得るということになると、この説明書にもあるように、一九三七年の五月三十日に発効した、こういうことになっている。ところが、条約局長も御承知のように、日本の労働関係法においては、戦後女子労働者の坑内の作業というものを禁止していることは明らかなのであります。この法律ができましてから、もうかれこれ約十年近い口にちがたっておるのでありますが、今日まで直ちにこれに加入しないで、数年の間放棄しておいた理由は、一体どういうところにあるのですか。
  14. 村松伍郎

    ○村松説明員 わが国が国際労働機関に復帰を認められましたのは、昭和二十六年の十一月でありまして正式に代表を送りましたのは昭和二十七年の六月の総会からであります。従いまして、その後二十八年から逐次それ以前に採択した条約批准して参りまして、二十八年に四件、二十九年に一件、昨年に四件、こういうふうな件数を批准して参った次第であります。従いまして本年にはまたそれに引き続きまして批准の可能なものの御批准をお願いする、こういうような仕組みになっております。
  15. 岡田春夫

    ○岡田委員 そうするとこれは順次批准を進めていくのだ、こういうお話ですが、もう一度念のために伺っておきますが、女子労働者の坑内作業の禁止は、日本の国内法の何条の適用によって禁止されておりますか。
  16. 村松伍郎

    ○村松説明員 労働基準法の第六十四条であります。
  17. 岡田春夫

    ○岡田委員 六十四条で禁止していることは私も知っておるのですが、この点は戦後労働法規としてはきわめて画期的なものである、そういう意味では当然この女子労働者の坑内作業の禁止というものは、日本が国際労働機関に加盟すると同時に、なるべく早い機会において、条約批准を行うべきであったと私は考えるのだが、今日まで順次こういうふうにおくらして参ったという理由が、先ほどの御答弁だけでは私、わからないのです。ことさらに女子労働者の問題が今年まで延びておったという理由については、どういう理由があるのか、その点を伺いたいと思います。
  18. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せはごもっともでございますが、先ほど労働省の方から御答弁申し上げましたように、何分日本は戦争中、戦後にかけまして十余年のギャップがございまして、その間国際労働機関に対する協力というものが軽視されておったわけであります。それが戦後、占領中からでございますが、日本は再びILO会議に参加することを認められまして自来国会の毎会期に必ず二、三の労働条約を提出いたしまして御審議を願っておるわけなのでございます。そこでいろいろの労働条約のうちで、労働省におかれまして優先順位に従いまして、早く入りたいものから入って参ったわけでございまして、このILOの加盟国であって、批准した条約の数からいいますと、日本は十余年のギャップがあったにもかかわらず、今日では平均以上の労働条約批准するに至っております。日本はすでに二十二の条約批准したことになっておりまして、国際的の標準から申しましても、戦時中のギャップにもかかわらず、平均よりも多くの条約批准しておるという状況でございます。これはまた毎回必ず御承認を願っておりますおかげでございますので、今後とも労働省と外務省と相談いたしまして、毎会期必ず二、三の労働条約を提出させていただきまして御審議をわずらわしたいと思っております。その点は、必ずしも政府側におきまして、労働条約批准を軽視しておるということはないのであります。むしろそれを重視しておる次第でありますので、御了解いただきたいと思います。
  19. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、私の伺ったのは、重視しているか、軽視しているかの問題ではなくて、女子労働者に関するこの条約を今日までおくらしておった――まああなたのお言葉によって言うならば、優先順位からいってこれけことしくらいが一番適当なのであって、むしろ先に亜要なものがあったのでこれはあとでもよかったのだ、こういうように理解するのでありますが、その優先順位から見て、女子労働者条約がこのようにおくれておるのはどういうわけなのか、この点を実は伺っておるわけなのです。二十七年に加盟をしてから少くとも四年ないし五年間おくれて、女子労働者の問題が批准されておるという事実は、一体どういう理由でこのようにおくれているのか、日本の労働関係法規としては、女子労働者の坑内就業の禁止というものは画期的なものであるだけに、こういうものは優先順位からいえばむしろもっともっと先に、たとえば二十八年かあるいはおくれても二十九年かに条約批准すべきものであったと私は考えるのだが、そういうようにおくれている理由は一体どういうわけなのだ、こういう点を伺っておるので、全体として軽視しているか重視しているかという問題を伺ったのではないのであります。そのあとになっている理由を伺いたい、こう申し上げているわけであります。
  20. 村松伍郎

    ○村松説明員 二十八年に批准をお願いしました条約は、工業及び商業における労働監督に関する条約、それから職業安定組織の構成に関する条約、団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約、これは御承知のように復帰第一年目でありますので、労働三法に直接基本的に関係のある条約を選びまして御批准を願ったわけであります。それから二十九年には最終条項改正に関する条約、これは御承知のように、当初ILOは国際連盟に属しておりましたものが国際連合に属することになりましたのに伴いまして、いろいろの条約、勧告等の内部的な事務的な調整規定でございます。これはどうしても必要でありましたので、二十九年にお願いしたわけであります。三十年には船員関係のものを四つ御批准を願っております。そういうわけでありまして、まず二十八年にはどうしても日本の労働三法に直接関係する基本的なものから、それから三十九年にはILOの内部的な機構の改革に伴いまして必然に要請される条約、それから昨年は海員関係の四つ、こういうふうな関係で参っておるわけでありまして、別段にこの婦人の地下労働禁止に関する条約を軽視して参ったわけではございませんので、その点御了解願いたいと存じます。
  21. 岡田春夫

    ○岡田委員 その点はあとで伺って参ります。  条約の内郭に入って参りますが、第三条に国内法令、法律と除外例との関係が出ております。日本の国内法との関係で、第三条のabcdの四つの項目にわたって、国内法で認めておる場合には、この条約から除外することができるという意味のことが書かれておるのでありますが、現実に日本の国内法と比べました場合に、このabcdはどういう関係になりますか。日本の国内法ではこの四つの条項については、これは同様に禁止されておるのか、禁止されておらないのか、この点についてお伺いいたします。
  22. 村松伍郎

    ○村松説明員 国内法においては条約の認めました四つの除外例は認めておりません。従いましてこういう除外例は禁止されております。
  23. 岡田春夫

    ○岡田委員 こういうような除外例がたとえあったにしても、これは国内法においては違反になる、このように理解して間違いないわけですか。
  24. 村松伍郎

    ○村松説明員 お説の通りであります。
  25. 岡田春夫

    ○岡田委員 これの加盟国は大体三十八カ国でありますが、ここに出ておるのは、フランス、ドイツ、イギリスの三つの名前は出ておりますが、アメリカとソ同盟とは入っておりません。このアメリカとソ同盟とは入っておるのかどうか、こういう点も伺いたい。
  26. 村松伍郎

    ○村松説明員 ソ同盟は今まで条約は全然批准しておりませんから、これも批准しておりません。またアメリカも入っておりません。
  27. 岡田春夫

    ○岡田委員 アメリカがなぜ入っておらないのか、あなたの方で何かお調べになっておりますか。
  28. 村松伍郎

    ○村松説明員 アメリカ批准しません理由は、これはアメリカの国内の事情に基くことで、われわれとしてはなぜ批准しなかったかについては、その事情をつまびらかにしておりません。
  29. 岡田春夫

    ○岡田委員 その点はお調べになったことはないのですか。ILOにはアメリカは加盟しておると思うのですが、女子労働者だけには加盟しておらないというのは、事実アメリカの国内に女子労働者を坑内で使っているという例があるから、批准に加盟しておらないのではありませんか。
  30. 村松伍郎

    ○村松説明員 米国の国内法がどうなっているかわかりませんが、米国の国際条約批准数が少いのは、御承知のように連邦制度でありますので、各州の同意を得ることが困難でありますので、アメリカ批准数は少いということを聞いております。
  31. 岡田春夫

    ○岡田委員 もう少し条章で伺いますが、第八条によると、この条約の運営に関する報告の義務は、十年ごとに一度ということになっているようであります。これは毎年やらないで十年ごとに一度ということになっているのは、各国の自主性にまかして、この運用を誤まりなきを期するようにしておいて、十年ごとの報告をさせるという意味なのでありますか。事実上こういう条約を作っておいても、この国際労働機関であるILOはほおかむりをして、事実上坑内労働がやられても知らぬ顔をしているために、十年間も報告しなくてもいいということになっているのですか、この点はいかがでありますか
  32. 村松伍郎

    ○村松説明員 八条の規定はむしろ後段の、この条約の全部または一部を改正する問題を、総会の議事日程に加えるという可否を審議するための報告の提出でございまして、そういうお説のような趣旨ではないと存じます。
  33. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは国際労働機関に年次報告を負う義務があるのですか、どうなのですか。そしてあるとすれば何条の規定に基いてやることになりますか。
  34. 村松伍郎

    ○村松説明員 憲章の規定に基きまして、批准しました条約の実施の状況は、毎年必ず報告する義務批准国は持ちます。
  35. 岡田春夫

    ○岡田委員 批准の報告の義務は、大体毎年何月ごろに行うことになっておりますか。
  36. 村松伍郎

    ○村松説明員 毎年一定はしておりませんが、通常六月に総会がありまして、総会の終りましたあとの理事会で、何月何日まで報告を出してもらいたいというILO事務当局からの要請がございまして、それで出すことになっております。
  37. 岡田春夫

    ○岡田委員 本年はどういうことになっておりますか。
  38. 村松伍郎

    ○村松説明員 本年はおそらく十月十五日までに提出することになると存じます。
  39. 岡田春夫

    ○岡田委員 今年は十月ということにおくれているのは、この条約批准の関係でおくれているのですか、その他の関係がありますか。
  40. 村松伍郎

    ○村松説明員 これはすべての批准した条約について、一斉に報告することになっております。その報告の期日を各条約全部について十月十五日になるだろうと考えられております。
  41. 岡田春夫

    ○岡田委員 そこで私は伺いますが、日本の国はこの条約批准しても、条約違反を侵しておると思うのだが、あなたはこの点は御存じでありますか、どうでございますか。
  42. 村松伍郎

    ○村松説明員 基準監督課長からお答えいたします。
  43. 辻英雄

    ○辻説明員 私どもの手元にあります資料によりましてお答えいたします。昭和二十九年におきまして女子の坑内労働の違反の発見されました数が三十三件でございます。三十年におきましても同じくちょうど三十三件でございます。なるべく私どもの方といたしましては、違反がないように全力をあげて監督を実施いたしておりますが、この条約批准をされることになりますれば、さらに一そう重点を指向して、違反の絶滅を期したいと考えております。
  44. 岡田春夫

    ○岡田委員 三十年の違反の事項は三十三件でありますが、これは主たるものは一つ理由別にこの際御報告を願いたい。
  45. 辻英雄

    ○辻説明員 理由別に一件々々こまかい資料を持ち合せておりませんが、大まかに申し上げますと、従事しておりました作業の内容は、主として採掘の補助あるいは運搬の積み込みその他の補助的雑役作業に従事されておったのが発見されております。
  46. 岡田春夫

    ○岡田委員 その三十三件に基くところの就業婦人労働者数は何名くらいになっておりますか。
  47. 辻英雄

    ○辻説明員 昭和三十年の就業労働者数について申し上げますと、女子が百八名でございます。二十九年は百十二名でございます。
  48. 岡田春夫

    ○岡田委員 昨年の十一月の末ごろに、九州の二瀬という町の下相田というところで、中島さんという女の人が落盤で死んでおります。それから一月になってから山田町の三友炭鉱で田中トシさんという女の人が同じく落盤で死んでおります。こういう状況を見ると、先ほどの御答による百八名の発見の程度ではなくて、全国的に見るならば、最近婦人労働者の坑内就業というものが非常にふえていると思う。それは日本の国内経済の状態から見て、特に炭鉱の現状から見て、経済的に非常に窮乏しておりますだけに、女子労働者が全国的な形で非常に坑内労働者としてふえていると考えるのだが、そういう数字をあなたはお持ちならばこの際発表を願いたい。筑豊炭田でも約三百名の者がいると言われているのがが、私は北海道の炭鉱地帯の出身なので、北海道の状態も知っておりますが、おそらく宇部の炭田あるいは常盤炭田においても相当の数があるはずだが、この点をお調べになっておらないとするならば、あなたの方はきわめて怠慢である。お調べになっておるとするならば、その数字をあなたの方から御発表を願いたい。
  49. 辻英雄

    ○辻説明員 ただいま御指摘のございました北九州地区におきます違反の二件については、私どもの方でも承知をいたしております。これにつきましては、前者の十一月にございました件につきましては、すでに労働基準法第六十四条違反といたしまして検察庁に送致をいたしております。一月の件につきましても、そのような方向でただいま調査準備を進めておる段階でございます。お話のございましたように特に筑豊地区におきましてそのような事態があるように私どもも伺いましたので、直ちに鉱山保安局等とも連絡をとりまして、筑豊地区一斉に監督を実施せしめておるのでありますが、そのときの数字につきましてはただいま持っておりませんので、大へん恐縮でございますが後ほど差し上げて御説明いたしたいと存じます。
  50. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは後ほどとおっしゃると、明日でも資料を御提出いただけますか。
  51. 辻英雄

    ○辻説明員 筑豊地区の分につきましてはできると思います。
  52. 岡田春夫

    ○岡田委員 それから三十三件というのは、二十九年、三十年にあるわけですが、これを地方別に分けて一つ御報告を願いたい。
  53. 辻英雄

    ○辻説明員 承知いたしました。
  54. 岡田春夫

    ○岡田委員 今わかりませんか。
  55. 辻英雄

    ○辻説明員 ただいま手元に地区別の数字を持ち合せておりませんので、後刻御報告いたしたいと思います。
  56. 岡田春夫

    ○岡田委員 きょうはお持ちにならないからやむを得ませんけれども、おそらく全国的にこのような状態が出ているということだけは事実だと思いますが、婦人少年局長の谷野さんに一つ御意見を伺っておきたいと思います。
  57. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 婦人少年局といたしましては、坑内の地下作業の法律の施行につきましては、かねがね注意をいたしております。労働基準局と協力をいたしまして、法律の普及、趣旨を説明いたしますと同時に、もし坑内の地下作業についての問題が起りましたような場合には、その問題の起ってくる生活の事情なども十分に調査いたしまして、婦人会あるいはその他の団体と協力をいたしまして、生活の面から坑内の作業に対して、入らないでも生活のできるような方法をお助けするように努力をいたしております。
  58. 岡田春夫

    ○岡田委員 あなたのお書きになったものを私拝見したこともあるのですが、この機会に伺っておきたいのです。婦人の坑内労働者というのは、戦争前にはずいぶんありました。戦後には法律で禁止されただけに、戦後、特に直後には、ほとんどなかったようです。最近は経済状態が非常に苦しくなってきたので、婦人労働者の坑内就業というのは、だんだんふえてきております。その原因をいろいろ考えてみると、私は経済的な問題だと思うのです。一家の中でだんなさんが、炭鉱がつぶれたために勤められない。そのためにどこかで奥さんは働かなければならない。ニコヨンで働きたいのだが、ニコヨンの就業手帳もなかなかもらえない。最近のように国の予算が非常に少い現在においては、ニコヨンの手帳も簡単にもらえない。そうするとしようがないから、小山に行ってタヌキ掘りの山で、奥さんたちは坑内で働かなければならない。こういうような状態になってきていると思うのです。その原因の大半は―――大半というか全部は、経済的な理由にあると考えますが、この点は局長としていかにお考えになっておりますか。
  59. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 坑内のような、女子の労働環境として好ましくないような仕事に入りますについては、私どもといたしましては、経済的なやむを得ない事情が、非常に大きな原因であると思っております。ただ坑内労働者家族の生活状態を個々について見てみますと、あるいは夫も働いていらっしゃる場合もあるわけでございまして、夫の賃金の状態などから見ますと、あるいは働かないでも済むような家庭の婦人で、坑内に入るようなものもあるのではないかと思うのでございます。坑内に入っていた女子労働者が、仕事を追われて、坑内で働けなくなるということは、家庭にとって直接経済的な負担でございますし、何よりも生活の問題で、何とか経済的には失業対策の方向に適用いたしますように、私どもとして努力をいたしたいと存じますが、そのほかに労働者家庭の生活の持ち方という点についても、私どもとしてはまだ生活指導の面が大きいのではないかと思っているわけでございます。
  60. 岡田春夫

    ○岡田委員 局長は御婦人だから、あまり私も言えないのだけれども、(笑声、「戦意喪失か」と呼ぶ者あり)戦意喪失だが、あなたの前段の御答弁は、私は実はいただけない。あなたは、御主人も働いているし、奥さんが働かなくても食えるのだと言うが、それではその食えるという水準は、どの程度で言っているのですか。あなたの給料と同じだから、これは食えるのだというふうにお話しになっているのですか。それともおやじの方はニコヨン程度の八千円ぐらいもらっているのだから、これでも食えるのだろう。エンゲル係数なんかどうでもいい、とにかく生きていればいいだろうという意味で、食えるなら何も奥さんなど働かなくてもいいだろう、こういうような御意見であるならば、これはちょっと戦意喪失でなくて戦意を盛り返さなければならぬのだが、そういう意味でお話しになられるなら、そういう意味でお話しになったのだといただいてもけっこうです。それならばもう少し続けなければならないのだが、ともかくも私は経済的な原因であるということだけは事実だと思うのだが、その点はお認めにならないのかどうかということです。
  61. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 私の申し上げ方が少し足らなかったと存じますが、坑内の地下作業のような、女子にとって好ましくない仕事に働かなければならないような事情の大部分は、やはり経済的なやむを得ない事情で入っていらっしゃる方が多いと思うのでございます。ただ私は夫のある女の人たちが仕事を持って働いてはいけないということを言っておるのではなくて、むしろ私は自分が従来婦人少年局の仕事をして参りました立場からいたしますと、婦人で、能力を持っておる人たちは、社会に対して能力を使ってもらうための仕事をするということは、かえっていいことだというふうに、職業的には指導いたして参りました。
  62. 岡田春夫

    ○岡田委員 経済的な問題だということにして話を進めますが、私その前に実は伺いましょう。女子労働者に坑内労働をさしてはいけないという理由は、一体どういうところにあるということで、局長は御指導されておるのですか。
  63. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 これは労働基準法ができます前から、日本の工場法時代に、鉱業法におきまして、鉱夫就業扶助規則によって、女子の坑内作業の禁止がきめられます前に、日本の婦人団体が非常に強い運動をなさいまして、国際条約との関連もあり、坑内の地下作業というものは、婦人の働く社会環境としては、非常に好ましくないところだという立場に立った運動であったと存じます。その坑内というのは地下作業でございまして、落盤の危険もございますし、もちろんその環境におきましては非常に暑いところで、しかも裸になって仕事をしなければならない、非常に社会から隔離された環境で、風俗その他女性の体面上もあまり好ましくない。できるだけ女子は女子らしい、ふさわしい仕事の環境で働くことが適当なのであって、坑内のような仕事は、女としては働く場合にむしろ残酷ではないかという考え方に立っていたと思うのでございます。そういう趣旨でございますから、私どもといたしましては、一刻も早く鉱山の坑内地下作業から婦人が出て、好ましい、もっと婦人にふさわしい仕事につくようでありたいと願っておるわけでございます。
  64. 岡田春夫

    ○岡田委員 坑内の暑いのは常磐の湯本なんか暑いですけれども、どこも暑いわけではないのです。北海道の山なんか暑くないのです。その他の山は暑くないところがたくさんある。そういうこまかい点は言ってもしょうがないからよしますが、しかし坑内労働を禁止して、女子がいわゆるおか作業なり坑外で働ける場所が現在与えられておりますか。そういう十分なる場所がありますか。最近のように、登録による完全失業者でさえ、政府が隠しておりながらも、六十何万かおる。潜在失業者が一千万にもなろうとしていっておる。それなのに婦人の働く場所があるかどうかということなのです。そういう点について、婦人少年局長として婦人の就業の問題を奨励されるなら、何か具体的な案をお打ちだろうと思うのだが、この点についてはいかにお考えになっていますか。
  65. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 坑内から出られた婦人につきましては、できるだけ坑外の鉱山の仕事に第一に使っていただきたいと思うのでございます。たとえば選炭作業でありますとか、あるいは坑内の炊事の手伝いとか、管理的な仕事でありますとか、その事業場に沿うた坑外の仕事にできるだけ第一についていただきたいと思うのでございますが、鉱山という隔離された社会環境でございますので、なかなかそれだけにたよるということもむずかしいと思うのでございますが、その坑内で働き得ない女子労働者につきましては、あるいは家庭で仕事のできるような対策を考えますとか、それからまた失業の対策に加えていただくような方向で、できるだけ女子の生活の問題について考えて参りたいと思っております。
  66. 岡田春夫

    ○岡田委員 話をどんどん進めますが、あまりこの条約からはずれるといけないので、この程度にしますが、一点だけ申し上げておきます。実はソビエトでは――私はドンバスの炭鉱に一週間入ったのです。あそこは坑内の婦人の労働があるのですよ。あるというとおかしいじゃないかというふうにお考えになるかもしれないが、実は入っている人は、地下に診療室があるのですが、その診療室の看護婦さんです。もう一つは、この条項のaに出ている管理の地位にあって筋肉労働をしない女子です。こういう場合なら私は問題ないと思う。ところが今問題になっているのは、日本の炭鉱においては、中小炭鉱、特に小山で、タヌキ掘りの炭鉱で、実際に炭層に沿って採炭の仕事をやっておる。落盤の危険のあるこのような状態にあるからして、これをやめさせなければならないと思う。ところがあなたのおっしゃったように坑外の作業に転換させるといったって、タヌキ掘りの山に選炭場なんかないですよ。あるいは炊事場なんていったって、炊事場なんかありませんよ。みんな自分のうちから通うのです。そういうような状態ですから、坑内労働を転換させるといったって、転換させる道なんかありはしないのです。しかも転換させるからといって、経済的な補償を政府がやれるならいいけれども、政府はやりはしない。むしろ首切る方が得意なんだから…。(発言する者あり)そうじゃないか。今度の行政機構改革だって、首切りをやるんじゃないか。(「進行」と呼ぶ者あり)そこで、こういうように就職の道がない。しかも経済的にきわめて貧困な状態になっている。そこでさっきこっちの何とかいう大きな課長さんが言ったのだが、今度この条約をやることによって、日本の国内においても坑内就業をできるだけやらないようにしますというのだが、一体あなたはどういう方法でやらないようにするのですか。今度は経済的に補償でも出すというのですか。何か具体的な案があってそういうようにお話しになっているのなら私も納得できるのだが、何とかいたしたいという気持だけでは通らない。あなたも坑内で働いておればわかるかもしれないけれども、坑内を首切ってあとそうしないようにしろといったって、食えないのだから、食えない場合、あなたはどういうようにするのですか。こういうようにさせないようにいたしますというのだが、どういうようにしてさせないようにいたしますというのですか。その具体的な政策なり具体的な理由を伺いたいと思います。
  67. 辻英雄

    ○辻説明員 私が先ほど御答弁申し上げましたのは、監督の方の――私労働基準局の監督を預かります立場から申し上げたことでございまして、労働省といたしましては、ただいま婦人少年局長からお答えいたしましたような方法で処理をいたす考えでおります。
  68. 岡田春夫

    ○岡田委員 どういう方法ですか。ただいまというのはどういう方法ですか。局長は何も具体的に言っていませんよ。――課長言いなさい。何か具体的にあるのなら……。
  69. 辻英雄

    ○辻説明員 私基準局の監督関係の担当でございますので、婦人少年局長からお答え申し上げます。
  70. 岡田春夫

    ○岡田委員 そんなこといったって、局長は答えられないですよ。金がないのだもの。答えますか。――答えるなら答えて下さい。
  71. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 坑内作業から坑外に出ますということにつきましては、経済問題から職業のお世話をいたしますことが第一に大事なことであると存じます。それで先ほどお話いたしましたように、まずできるだけ坑外の適当な仕事を選んで、職業安定機関を通しまして、女子の就職を促進いたしますと同時に、また坑内の労働者家族の問題につきましても、特に労働者家族の座談会などもいたしましたり、あるいはまたその地域の婦人団体の方々と御相談いたしまして、一般の婦人の協力を得まして、就職の促進と同時に生活の改善によって何とかその経済を抜けるように、私どもとしては努力をいたして参りたいと存じます。
  72. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 岡田君、簡潔に願います。だいぶあとの質問もありますので……。
  73. 岡田春夫

    ○岡田委員 経済的な原因と言っているのに、それではなかなか救えない。大体そっちの若い方の何とかいう課長さん、大体婦人を虐待してはいかぬというのに、この委員会で婦人を虐待するように答弁を肩がわりさせてはいかぬじゃないか。  その点はともかくとして、私は最後に一点外務省に伺っておきますが、今外務省ではこういう実情をあまり御存じないだろうと思う。実際日本全国に女子労働者は坑内で就業している。これはこんな条約を作ったって、批准をしたって、明らかに条約違反を日本がやっているのですよ、条約違反をやっているのだということを御存じ願いたいということと、もう一つは、こちらの課長に伺いたいのだが、こういう事実は、ことしの十月の報告には必ず書いていただかなければなりませんよ。この事実があるのですから、事実を曲げてあなたは御報告するというのなら私は容赦いたしません。御報告になるならなるとおっしゃって下さい。
  74. 村松伍郎

    ○村松説明員 国際労働機関に対します報告の中には、違反件数は確実に載せて報告します。
  75. 岡田春夫

    ○岡田委員 条約局長もお聞きですが、こういう事実なのです。こういう看板だけ出してみたって意味ないのです。日本の経済的な基礎というものができておらない限り、こんなものを作ったってインチキなのです。だからこういう条約批准するそのこと自体は、私は何も反対ではありません。しかし実際にこれを適用して、いかに日本の国がこのような非民主的な、そうしてこういうようなインチキなものカやっているかということを暴露せざるを得ないということを、私は日本の国民として非常に残念に思う。遺憾に思う。こういう点でこの条約批准されるに当って、条約局長も十分御留意を願いたいということを特に申し上げておきます。それで私は質疑についてはきょうは留保をいたします。なぜならば先ほど向うの課長から、幾つかの問題についてまだ御報告がありません。地方的な違反事項の発生の状態についてもまだ御報告がありませんし、それから女子労働者の就業者数ということについても、これは御報告ができないそうでありますから、きょうは留保いたしまして、その資料をいただきましてからまた続けてやりたいと思います。きょうはこれだけにしておきます。
  76. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 松本七郎君。
  77. 松本七郎

    ○松本(七)委員 さっき岡田委員から婦人労働が相当なされておるという話がありましたが、これは中小企業においては特にひどいような事実がたくさんある。その中小企業における違反事項というものについて、当局はどういう処置をされようとしておるのか。
  78. 辻英雄

    ○辻説明員 御質問の御趣旨は、ただいま申し上げました石炭の女子の坑内労働の規模別の数字というふうに了解いたして御答弁申し上げてよろしゅうございますか。――先ほど申し上げました女子並びに年少者の坑内労働の数字の規模別の内訳を申し上げますと、昭和三十年におきます違反事業場数が、女子と年少者を合せまして六十事業場でありますが、そのうち規模十人未満のものが十一、十人から五十人未満までが三十二、五十人から九十九人までが六、百人以上が十一という数字になっております。
  79. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それから三条のC項の除外規定の中に「実習の過程において坑内で訓練を受けている女子」というのがあるのですが、これは、第二条において坑内で作業をすることを禁止しておきながら坑内で実習するというのは、どういう実習なのですか。作業を禁止されたものが坑内で実習をするというのはちょっとおかしい。
  80. 村松伍郎

    ○村松説明員 これはILO総会の議事録等を見ますと、aの管理的地位にあって筋肉労働をしない女子の坑内作業をする者の実習の過程において坑内で訓練を受けている場合、こういうふうに説明しております。必ずしも法律的にはすっきりはしませんが、一応議事録にはそういう説明がございます。
  81. 松本七郎

    ○松本(七)委員 筋肉労働をしないという場合の筋肉労働の性格を有しない職業というのは、あとのb項にもあるわけですが、何か定義があるのですか。事務系統の仕事を言うのでしょうか。
  82. 村松伍郎

    ○村松説明員 aにつきましては、鉱業の管理的な地位にある者、マネージメントの地位にある者、こういうふうな議事録の説明であります。
  83. 松本七郎

    ○松本(七)委員 さっき岡田さんの質問にありました国内法との関係で、国内法では全然除外規定はないのだというお話でしたが、今後国内法を改訂する御意思はあるのですか。
  84. 辻英雄

    ○辻説明員 ただいま御質問のありました点につきましては、日本の炭鉱その他における雇用慣行等におきまして、そのような例外を要求しておる声もございませんし、ただいまのところ改正しなければならないとは考えておりません。
  85. 松本七郎

    ○松本(七)委員 この条約を現在まで批准しておる国の数は。
  86. 村松伍郎

    ○村松説明員 三十八カ国であります。
  87. 松本七郎

    ○松本(七)委員 われわれの見るところでは、アメリカはILOに対してはきわめて消極的であるように思うのですが、政府当局としてはそういうふうな見方をされておるのか、もしそうだと見られるならば、どこに一体原因があるのか、それをお聞きしたい。
  88. 下田武三

    ○下田政府委員 アメリカ国際労働条約批准している数が少いのは事実でございます。その原因につきましては、後進国のように国際労働条約のレベルに達するような労働慣行が存在しない、おくれておるという意味ではむしろなく、先ほど労働省の方から御説明がございましたように、何分四十八の州の労働関係法規は州法で制定されることになっておりますので、アメリカというのは妙な国でございまして、非常に州がばらばらにいろいろなことを規定しておりますために、国家全体として条約の拘束を受けることが不可能な場合がある。そういう点が国際労働条約批准する数が、アメリカとしては少くなっておる理由だと思います。
  89. 松本七郎

    ○松本(七)委員 労働省のお考えはどうですか。
  90. 村松伍郎

    ○村松説明員 今の条約局長の説明の通りに私ども承知しております。
  91. 松本七郎

    ○松本(七)委員 ソビエトがILOに加入したわけですが、その一般的な影響はどういうふうなものですか。
  92. 下田武三

    ○下田政府委員 ソ連がILOに入って参りますときには、実は国際的には非常に注目されたわけでございます。全然国家体制の違う国が入ってきて一体どういう動きを示すかということは、国際的に注目されておりましたが、実際は毎年総会においてやっておることはそう大したことはないわけでございます。これはILOの純粋の立場から申しますと、あれを政治的宣伝の舞台に利用するということもそうできないだろうと思います。もっとも必ず会議のつど中共代表権の問題を持ち出してきましたりそういうことはございますが、ILOに入ってそういう動きは実は割合にない。その点は懐重に、全くリーズナブルに行動しておるように私どもは考えております。
  93. 松本七郎

    ○松本(七)委員 ただいまの答弁は、きわめて興味のある答弁であって、ソ連が入ればかき回されるのじゃないかとか、いろいろわれわれから見ればこっけいなような心配をされておったけれども、やってみれば局長の言われるように大したことはなかったということになるわけなのです。しかし、アメリカは特にソ連のILO加入については相当神経も使い、不快な思いをしておったように私どもは見受けるのですが、その後そうやって一緒にやってみて、アメリカ自体においても当初心配というかあまりいい気持がしておらなかったような面も、だんだん緩和されてきたと見られるでしょうか。元来そういうふうに社会、経済体制が違う国だからといって排他的にすること自体が、ILOからいえば、はなはだおかしなことなのです。そういうこともだんだん最近なくなってきたと見られておるでしょうか。もう少し詳しく御報告願いたい。
  94. 下田武三

    ○下田政府委員 ILOにおきましては、ソ連圏以外の国は、政府の代表労働者代表雇用代表の三部面の代表が国の代表団を構成しておるわけでございますが、その点ソ連という特殊な国柄からいたしまして、政府と雇用者とは実は同一であるというように見まして、果してほかの国のような立場から一体ものが言えるかどうかという見方もあったわけであります。しかしソ連側は、先ほど申し上げましたように、私はソ連がおとなになったせいだと思うのでありますが、ユネコスにおきましてもILOにおきましても、そうむちゃな、常識をはずれた行動には出なくなったということであります。このようなリーズナブルな国際機関にソ連が出てくるということは、国際的に見て好ましいことであると私は存じます。
  95. 松本七郎

    ○松本(七)委員 加入当初のあれから見て、アメリカの態度はどうですか。
  96. 下田武三

    ○下田政府委員 アメリカも、ソ連が入ってきましたときには、ほかの国と同様にどういうことをするか注目しておったようでありますが、その後のソ連の行動につきまして、このごろはそう大した関心を示してないようであります。
  97. 松本七郎

    ○松本(七)委員 今後ILOに加入するのを予想されておる国はどの程度あると見られておるでしょうか。
  98. 下田武三

    ○下田政府委員 ILOは、国際機関の中で最も多くの参加国を擁しておる機関の一つでありまして、世界に八十何カ国あるといわれておりますが、すでにもう七十一カ国参加いたしておりまして、大体もう入り得るものはすべて入っておる。ネパールとかそういう特殊な国は入ってもしようがないと思いますが、入って意義のあるような国は全部入っております。
  99. 松本七郎

    ○松本(七)委員 現在政府は労働三法を改訂する意図があるようにわれわれ伝え聞いておるのですが、そういうことのために、ILO関係の諸条約に日本が加入することをちゅうちょしておる面があるのじゃないか。労働三法が改訂される、そうすると、それと関連する諸条約についてはそうあわてて入る必要はないのじゃないか。そういう傾向があるやに思えるのですが、いかがですか。
  100. 村松伍郎

    ○村松説明員 労働三法の改正につきましては、今私自身としましては、はっきり申し上げる立場にないのでありますが、少くともいかなる場合におきましても、国際的な労働基準を下回るようなことはあり得ないのではないかというのが、われわれの立場でございます。従いまして、国内法の改正と関連しましてILOの条約批准をちゅうちょするとか、あるいはそれを阻止する、こういうようなことは私たちは全然ないと信じております。
  101. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると、国際的な基準というものを今後国内法制定にも大いに尊重していくという方針を基本にしておられる、こう了解してよろしゅうございますか。
  102. 村松伍郎

    ○村松説明員 その通りだと思います。
  103. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 福田昌子君。
  104. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 この条約は、だいぶ前から国会の承認を求めたらどうかということが問題になっておったと思いますが、これがやっと今出て参ったというその間には、つまりこれが承認を求めることがおそくなったというその理由は、どこにあるのか、この点を伺いたい。
  105. 村松伍郎

    ○村松説明員 条約は、御承知のように、英文と仏文が正文になっておりまして、その両方につきまして検討しまして、必要に応じましてILOの事務局にも照会したものもございます。そういう関係でおくれたのでございまして、それ以外に別段特に延びたという理由は私たちは考えておりません。
  106. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 この改正案は一九四九年ということになっておりますから、すでに六年目になりますが、その六年間というものがいろいろな事務上のそういう調整にかかった。その事務上の調整のためにおくれたとばかり私たちは受け取れないところがあるのであります。しかし私たちとしましては、この条約に加盟するということについてはもとより賛成でございます。  そこでお伺いしておきたいと思うのですが、日本の国内法労働基準法が制定されてから、坑内における女子労働というものは禁止されておるわけでありますが、相当違反件数が出ておるという御説明をいただきました。その違反件数の出方というものは、年度別に概略御発表いただくと、どういう趨勢になりますか。
  107. 辻英雄

    ○辻説明員 ただいま手元に持っております昭和二十四年以降の年度別の違反件数を申し上げます。昭和二十四年が百五十四件、二十五年が百二十五件、二十六年が八十九件、二十七年が百三十二件、二十八年が百四十八件、二十九年が七十四件、三十年以降は、先ほど申し上げました通りでございます。(「さっきは二十九年が三十三件だと言ったが、違うじゃないか」と呼ぶ者あり)これは女子、年少者すべてを含めました数字しか資料がありませんので、ただいま申し上げております数字は、女子、年少者のすべてでございます。先ほど御質問のございましたのは、女子の違反件数と承知いたして御答弁を申し上げたわけであります。
  108. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 私は女子労働者の違反件数をお尋ねしたのでございます。
  109. 辻英雄

    ○辻説明員 古い資料は、はなはだ申しわけないと思いますが、条文が一本になっておりますので、内容の区分がわかりますのが、二十九年以降でございますので、御了承願いたいと思います。
  110. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 二十九年以降でもけっこうなのですが、女子労働者を使っての違反件数を、先ほど伺っておりませんので。
  111. 辻英雄

    ○辻説明員 女子の坑内労働の違反件数を、二十九年について申し上げますと、三十三件、三十年も同じく三十三件でございます。これは女子だけの数字でございます。
  112. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 そういたしますと、労働基準法が制定された以後――二十四年からでもけっこうでございますが、二十四年から二十九年のはわかっていないのですか。年少者と別に分けて発表願えるとけつこうなのですが、資料をあすまでに作ってきていただきたい。
  113. 辻英雄

    ○辻説明員 先ほど申し上げましたが、古い数字は、女子と年少者を区分して統計をとっておりませんので、はなはだ申しわけございませんが、女子、年少者の違反を含めました数字で先ほど申し上げましたけれども、これで御了承願いたいと思います。
  114. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 そういう違反件数に対して、その労働者自体に対しましては、どういう処置をおとりになっているか、職業のあっせんをなさったか、この点を伺いたいと思います。
  115. 辻英雄

    ○辻説明員 個々のケースについていろいろあろうかと思いますが、発見されました女子で、就業を継続しなければ、生計上困難な者につきましては、先ほど婦人少年局長からも申し上げましたけれども、第一次的には当該炭鉱の中で坑外における職業に転換をせしめるように指導いたしまして、それがない場合には、職業安定機関等を通じて就職のあっせんをいたす建前で、処理をいたしております。
  116. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 御努力いただく方針というものは、私どもわきまえておるのでございます。問題になるのは、その三十三件の違反者がどういう形で職場を得られたかということでございます。その具体的な点を伺っておるのでございます。どういう形で職業に何%つけたとか、あるいは職業安定所であっせんしたけれども、職につかなかったとか、その結果について、それはこまかくなりますけれども、そのこまかな点にまで思いやりがあるのが、婦人少年局として当然の仕事だと私は思うのですが、その点を伺っておるのです。
  117. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 ただいまお尋ねの、坑内から出ました女子の人たちの措置について、どういう経路をもってどういう結果が得られたかという点につきましての事実を、ケース別に数字に表わしたものは、実はまだないのでございますが、今日までそのような調査はいたしておりません。
  118. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 ただいまの御答弁は、私どもきわめて遺憾に思います。そういう点につきましては、局長の御意思に反して、予算上できがたい点もあったかと思うのでありますが、その点私ども予算措置の上において非常に申しわけない点もあるかと思いますが、事務上から申しますと、遺憾ながらお仕事の上において、万全が期せられていないということを言わざるを得ないと思うのであります。  私どもは女子の職場拡大ということは、当面当然必要な問題だと思いますので、この重大な問題に対して違反の取締りだけで、その労働者自身をどういうふうに善処されたかということが、今日まで統計の上において何らなされていないということは、きわめて遺憾です。まことにおそきに失しますが、やらないよりはましでありますから、今後は早急にそういう御調査をなさいまして、万全を期していただきたいと思います。  さらに私お願い申し上げたいことは、坑内作業を禁止するのは、これは母性保護、女性の生理上から申しましても妥当だと思います。しかしそれを理由といたしまして、女子の職場が狭められるということも、なお非民主的な日本においては当然考えられてくることでございますが、婦人少年局におかれて、女子の職場の拡大のために、どういう処置をとられておるか、この点につきまして先ほどの御答弁では、私ども十分納得できないように感じましたので、もう少し具体的にどういう方向に女子の職場というものの拡大を求めておるか、そのためにはどういう処置をしておるのだ、どういう働きをしておるのだという具体的な御答弁をいただきたいと思います。
  119. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 ただいま先生からお話のように、婦人の職場につきましてこのごろ狭められているのではないかというような疑問をずいぶんいただくのでございます。私ども婦人少年局におきましては、その使命といたしまして、男女の機会均等に対して、私どもは婦人の弱い立場を守るために仕事をいたして参っているのでございますが、特に憲法の原則に定められております男女の就職、雇用の機会均等という問題につきまして―――最近結婚によって職場を追われるとかそういう取りきめをするとか、あるいは停年制について女子を低くきめるとかいうようなことが、時たま新聞紙上で伝えられましたり、また労働者自身から私の方に相談を受けることがございます。そのような場合には私どもは憲法の原則に従いましてそういう規則を事業場で一律にきめるということに対しては、どうしても納得が参りませんので、その問題につきましては個々の事業場に対しましても私どもから十分話し合いをしまして、その問題を解決するためのお手伝いをいたしております。と同時に婦人の職業につきましては、とりわけ最近では女子の雇用労働者はふえているのでございますが、しかしそのような社会情勢は、婦人の職業に対上ての実力の不足ということもございますので、特に婦人少年局におきましては、婦人の雇用機会の拡大というものについての啓蒙活動を実施いたしまして、年々秋あるいは夏その他の適当な時期に、婦人の職業意識を高める運動というようなものを全国的に持っておりますと同時に、地方に婦人少年室の協助員も配置されておりますので、婦人の就職の問題につきましては、特にそのような観点から職業指導を充実して参りますし、またそのような趣旨に沿いましてパンフレット、リーフレットその他の資料を準備いたしましたり、また労働組合あるいは使用者の団体、それから婦人団体の皆様とお話し合いをいたしましてそのような趣旨を通しますために、今日努力をいたしているわけでございます。
  120. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 局長だけに御責任がかかるような御質問を申し上げることは大へん恐縮ですから、これでやめさしていただきますが、私ども非常に希望いたしますことは、憲法では保障されておりましても、実際の社会においては、女子の職場というものはだんだん狭められつつある形勢に伺います。しかも最近結婚した女性、ことに産前、産後の保障というような点になりますと、これは非常な後退を見せておるのでございまして、こういうことを理由に女子の首切りということが盛んに行われ、また停年制においても男女に差がつけられてくる、職階制の点におきましても当然女子が蔑視されておる、賃金においても差別がつけられておるという点がたくさん出て参っております。雇用関係の増大をはかると同時に、その雇用内容につきましても、せっかく局長がより一そう御努力いただくようお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  121. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 田中稔男君。
  122. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それでは私からオランダの関係について簡単に質問いたします。  最近イギリスで「アリスのような街」と題した映画が非常に好評を博しております。この映画のストーリーというのは、今度の戦争に際して日本軍がマレーで婦女子を捕虜として無理やりに行進させ、途中多くの者が死んでいくありさまを描いたものであります。イギリス国民の日本に対する感情というものは、最近は幾らかよくなりましたが、戦後非常に悪かった。先年吉田首相や皇太子などがイギリスを訪問した場合にも、非常に露骨な反感が示されたことは御承知の通りであります。それでこれはイギリスのことでありますけれども、イギリスに限らず、フランスにしてもオランダにしてもやはり同様だと思う。そこでまずここではオランダが問題になっておりますが、オランダ以外のイギリス人だとかフランス人だとかあるいはオーストラリア人だとかアメリカ人だとか、こういうものに対しまして日本国政府の機関が戦時中いろいろな苦痛を与えた、こういうことに対しまして日本政府は自発的に何か苦痛をやわらげるための措置をとってのるかどうか、これを一つお伺いしたい。
  123. 下田武三

    ○下田政府委員 オランダ以外のその他の連合国につきましては、平和条約の第十四条で、戦時中日本政府、日本軍がとった行動によってこうむった損害その他の請求権を放棄するという規定がございますので、今さら米英豪その他の国は桑港条約批准いたしました以上、法律的には日本側に何らの要求をなし得ないわけでございます。また事実におきましても、要求する意思はないようでございます。ただオランダだけにつきましてどうしてこういう措置をとるかと申しますと、桑港条約の調印の際にオランダ政府は、どうしてもこういう交換公文でもするのでなければ、自分の国は承認できないということを強く申しましたので、吉田全権とスティッケル外務大臣との間に交換公文を行いました。その交換公文の跡始末をつけるというのが今回の協定でございます。
  124. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それは私もよく知っております。その平和条約の第十四条によれば、正式にはそういうような措置をとる必要はないわけでありますが、しかしオランダの当時の外務大臣のスティッケルと吉田全権との間に書簡の往復があって、日本政府が自発的に、つまり条約上の義務としてではなくて、自発的にこういう措置をしたわけである。しかしオランダに対してこういう措置をして、オランダの国民の日本に対する感情をやわらげるためにプラスになるものであるならば、ただいま申しましたようにイギリスでは今日なお「アリスのような街」というような反日映画が非常に国民に訴えているという事情がありますから、自発的に、それも大へんな金額ならともかく、これは大したことはないと思いますが、自発的にそういう措置をとるという意思は政府にないかどうかお尋ねしたい。
  125. 下田武三

    ○下田政府委員 さなきだに賠償その他の莫大な負担を負っております日本といたしましては、精神的にはできたら自発的にやることはけっこうなことでありますが、実際問題といたしまして、連合国に広くそういう措置をとるということは不可能なわけでございます。それならなぜオランダだけにこういうことをやるかと申しますと、確かにオランダは特殊な地位にございます。私自身戦後最初の在外専務所長としてオランダに参りましたときに痛感いたしたのでありますけれども、あの狭い国に十何万人も戦時中日本人に苦しめられたオランダ人がそれぞれ国に帰りまして話すものですから、オランダ国中に対日悪感というものが強く行き渡っております。在外事務所で雇いますオランダ人のタイピストがカーテンを締めてくれないかと言う、なぜかと申しますと、向う側のビルディングから私が日本人に使われて働いておるいうことをのぞかれるのがいやだということを申します。だからカーテンで隠してくれということを申しております。われわれとしてはまことに遺憾にたえなかったのですが何分小さな宙に十何万人の苦しんだ経験のある者がおりまして、そうして人々に話すものですから、オランダヨーロッパの中でも格段に対日空気が悪うございまして、そうしてそういう感情を持って去りますために、たとえて申しますと、ガットにつきましてもまつ先に三十五条の援用をいたすというように、オランダがそういうことをやるとお隣のベルギーやルクセンブルグもそれにならう、三国がやるならばドイツもそう悪びれずに三十五条の援用ができるというようなことになりまして、ヨーロッパオランダのような国がありますと、それがずるずるとやはりガットのような国際舞台で日本に不利な動きの源泉になって参ります。そこで何としましてもオランダが一つ懸案になっております。この懸案だけは解決しなければならない。また戦犯の問題にもこれは影響あるでございましょう。現にこの協定が調印されましてから、最近、一昨日ですか、巣鴨の二十五人の戦犯を許すというような処置をとってくれました。でございますからこういうことを解決することによりまして、三百年にわたる伝統的な日蘭友好関係が回復し、そうしてまたガットその他の国際舞台でオランダの協力を確保するということが、どうしても必要だという特殊の事情がございますために、オランダだけにこういう措置をとることになった次第でございます。
  126. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 実は私も戦時中ジャワにおりまして、そしてジャカルタオランダ人所有の家屋にいたのですが、戦争が済みましてからオランダの兵隊が銃剣を突きつけてそこを立ちのいてくれと要求した。その場合にオランダの兵隊が言うことは、要するに日本の兵隊がわれわれの同胞をひどい虐待をやったというようなことを私どもに言って、そうしてそういう日本人ならオランダ人所有の家屋に一日もおるのはけしからぬというようなことで、私どもはとるものもとりあえず立ちのいたわけであります。それで私ども戦時中のオランダ抑留者に対する日本側の扱いも大体知っております。今日終戦すでに十年、こういうことを取り上げることは、日本の国民としてある意味でおもしろくない、何かこう古傷にさわられるような気持でありますけれども、しかし今日日本が太平洋戦争をやったことについて、何か悪いことはやっていないというような無反省なことを、この間も外務委員会その他で外務大臣や防衛庁長官などを呼び出していろいろ聞いてみますと、何だか太平洋戦争というものは日本の誤まりではないのだ、むしろ積極的なプラスであるかのような答弁が平気で行われている、こういう非常に官僚的な逆行の現象がある。こういう際にわれわれは悪いことは悪いとしてはっきり反省をいたしまして、その反省の上で再出発をしないと、今後日本のアジア政策、特にまた東南アジア政策というものは再び失敗すると思う。そういうふうことから私はここで少し具体的に事情を明らかにしたいと思う。問題によりましては即刻ここで御答弁をいただけないこともあると思いますから、それはあとから資料としてでも御提出願いたいと思います。  まず「日本国政府の機関がオランダ国民に与えた苦痛」というのでありますが、その苦痛の具体的な内容であります。提案理由の説明の中には「食糧不足、悪居住条件、衛生及び文化施設の欠除等によって多大の苦痛をこうむり、その結果として多数の死亡者及び廃疾者を出した」こう書いてありますが、これでは具体的な事情が少しも明らかにされていない。そこで私は今からそれを聞きたいと思う。  まず戦時中抑留されたオランダ人の数でありますが、それを一つお聞きしたい。
  127. 下田武三

    ○下田政府委員 抑留されました数につきましては、オランダ自身もぴたっと何十何人というところまでの正確な数字を持っておりません。そこで交渉の際に両方とも争わなかった数字は十一万人となっております。
  128. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それは一般人だけで捕虜は含まないのでございますね。
  129. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの通りでございます。軍人たるものは含んでおりません。軍人捕虜の方は全然別でございます。
  130. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それでは今度は死亡者と廃疾者の数は幾らです。
  131. 下田武三

    ○下田政府委員 オランダ側の数字は死亡者が一万八千人、それから廃疾者が一万人と出ております。
  132. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 男女別……。
  133. 下田武三

    ○下田政府委員 男女別はただいま持っておりませんが、先ほどの死亡者一万八千人、廃疾者一万人のほかに、未亡人となった者、孤児となった者が一万一千人おります。     〔「オランダ人をいじめた方だろう」と呼び、その他発言する者あり〕
  134. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 こういうことの反省がないから諸君はだめなんだ。だから東南アジア政策は失敗する。     〔「諸君とは何ごとだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  135. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 静粛に願います。
  136. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 これをインドネシア人に見せたらどうなる。そういう無反省な日本の自由民主党なら川手にされぬよ。
  137. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 そんなことではなしに、質問して下さい。
  138. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 じゃ続けます。今度は取り扱いの具体的な事例を聞きたいと思う。まずこの十一万人を一体どこに、何カ所に分けて収容したのでありますか。これは十一万人、一カ所ではないでしょう。収容所の名前、どこのどういう名前の収容所に入れておったのか。たしか婦人だけ収容しておったところもありましたね。そういう名前をずっと言って下さい。
  139. 下田武三

    ○下田政府委員 実はオランダ側との折衝の際に、先方は相当の資料を持っておるわけなのでありまするが、わが方は軍というものが解散いたしましたために、実は資料がないので非常に交渉に不便をこうむったことがあります。もちろん厚生省の復員局等で不十分な資料は持っておりますが、交渉の際に確信を持って使えるような資料ではなかったわけであります。私どももそういうような資料は実は全部オランダ側の資料によらざるを得なかったわけであります。従いまして公式の資料というものは軍なき今日私どもは出せないわけであります。しかしお話のような、私自身もオランダで見て参りましたが、たとえばジャカルタ郊外の住宅地域オランダ人が住んでおった。住宅地の一角を赤線区域にしまして、そこでオランダの婦女子に売淫行為をさせておるというようなところもあったのは事実でございます。それから大体ジャカルタ、スラバヤ、メダン等の大都市郊外に、これは鉄条網で囲っただけの非常にお粗末な収容所、抑留所で、鉄条網の外からオランダの土民がのぞいて非常にオランダ人に苦痛な思いをさせるようなお粗末な設備の中で、暑いところに十分な家屋の設備もなくて、そこへ婦女子を収容しておったということも事実でございます。そういう事実はばく然とはわかるのでございますが、統計的また具体的な文書による資料というものは、軍なき今日お出しできないことを御了承願いたいと思います。
  140. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 どうも下田条約局長の人柄は私非常に買っておるのでありますが、政府の代表として今の御発言はきわめて不誠意だと思う。とにかく収容所の管理に当った日本人は戦犯としてみんなやられておるのだから、戦犯にあげられておるくらいだからちゃんとわかるのです。どの収容所の責任者はだれというようにみんな引つぱられているのですから、だから調べようと思えば調べる方法は十分ある。調べようとしない日本政府の不誠意、これはやはり問題だと思う。なるほど古傷にさわられるのはいやだろう。私どもも日本国民としていやです。いやですけれどもこれはわれわれの同胞のやったことなんだ。(「そんなこと必要ない」と呼ぶ者あり)必要ないことじゃない。そういう態度が悪い。     〔発言する者多し〕
  141. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 静粛に願います。
  142. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それが悪いんだ。それがあなたたち船田長官と同じ考えなんだ。重光外務大臣と同じ考えなんだ。それじゃアジア政策は成功しないよ。     〔発言する者多し〕
  143. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 質疑を続行して下さい。
  144. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それでは向うの調査を信用して、一ぺん出して下さい。きょうここで出せるのでしょうから。いろいろオランダ政府の方から出した資料があるというのですから、日本語に訳してあるのを出して下さい。これは審議の資料ですから……。
  145. 下田武三

    ○下田政府委員 日本側の政府の資料がないために、オランダ側の資料を一応基礎として交渉いたしたわけでありますが、オランダ側は実はできるだけたくさんの金を日本側から取ろうという意図のもとに作成された資料で、それを実は日本政府が公式に先方の資料をそのまま右から左へと国会にお出しするということは、私多少考慮しなければならないと思いますので、その点は一つ御容赦願いたいと思います。
  146. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 われわれだってオランダの代議士じゃないのだから、オランダ政府の出したものを全部肯定するというのじゃないですよ。ただ日本政府で調査資料がないというから、ないなら一応先方から出した調査資料を見てわれわれの参考にする。(「参考にも何にもなりはせぬよ」と呼ぶ者あり)なるんだよ、ばかなことを言うな。日本は軍が解散したといったって、スラバヤにはどこに収容所があって何人収容しておったということはすぐわかるのだ。調べようとする誠意がない。僕だって調べようとすればできる。昔の連中を当って調べればすぐできる。だから一つそれは出してもらいたい。
  147. 下田武三

    ○下田政府委員 先ほど申しましたように、交渉の特定の意図のもとに先方が出した資料でございますから、政府側から公式に国会に資料として右から左に出すことは、どうも不適当と思いますので、もとより隠そうといたす意図は毛頭ございませんが、田中先生の御要求がおありなら、ずいぶん厚い資料がございますので、いつでもそれはお目にかけますから、それによりまして一つ御承知願いたいと思います。
  148. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 僕は局長の答弁に不満です。不満ですけれども局長がそう言ってがんばるなら、もしそれを私の要求に対して出したりすると、今度局長が上の人からいじめられたりすると気の毒だから、非常にいい局長ですから一つかんべんしてあげましょう。  そこでその次に、食糧不足だというのですが、この状況はどうでしょう。まず死亡者ですが、その死亡の原因を一つ聞きたい。書いたものはありますか。調べたものはありますか。死亡の原因が食糧不足というと栄養不良、栄養失調で死んだ人もたくさんできたということが想像されるのです。死亡の理由に食糧不足の結果栄養不良もしくは栄養失調で死んだというのは相当あると思いますが、その数字を一つ伺いたい。
  149. 下田武三

    ○下田政府委員 食糧の不足の状況は、戦争末期には一日一千カロリー―普通二千四百カロリーから六百カロリーでございますが、一千カロリーまで低下したということでございます。実は日本の兵隊自身も運搬船が沈められまして、食糧その他が手に入りませんで相当苦心したのであって、必ずしもすべての場合に悪意でいじめたというわけではないのでございましょうが、ともかくヨーロッパ人の体格に対して千カロリーということは、相当なひどいものだったと思います。それからやむを得ず不消化物を供給しますために、下痢のような症状が非常に起り、その病人に対して薬をやろうと思っても、薬もまた輸送の途中で沈められるというような状況で、そういうことの手当もできないということで、悪疫が蔓延して死ぬという事例が、非常に多かったように聞いております。
  150. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そこで今の局長の答弁では、私は絶対に承認できない点がある。というのは日本の軍も食糧不足だった、こういうお話があった。とんでもない。私はジャワにおりましたけれども、戦時中のジャワというのは確かに一つの楽土だったのです。ジャワという国はいろいろな物産の多いところです。主食のほかお酒だってたばこだって、コーヒーでも紅茶でも幾らでも手に入ったし、ことにその当時軍はいばっておったのですから、われわれ一般邦人だって事欠かなかったのですから、軍なんというものは、そういう方面の給与は非常に豊富だった。むしろジャワが補給基地で至るところに物を出しておったわけですから、自分のところを犠牲にして出すというようなことはない。終戦のその日まで兵隊どもはどんちゃん騒ぎをやっておったのですからね。そういうわけだから日本軍の給与が悪かった、だからオランダの一般人の収容所の食糧不足もやむを得ぬというような、そういう合理化は私は絶対に承認できない。それは南方のほかの地域は知りませんよ。しかし事ジャワに関してはそういうことは言えない。とにかく一千カロリーに落ちたということはこれは驚くべきことだと思う。ヨーロッパ人、ことにオランダ人は太っておりますからね。あれが一千カロリーに落ちたのでは、それはひどい。  それはそれといたしまして、その次、悪居住条件といいますか、大体一人当りスペースは何坪くらいになったのですか。
  151. 下田武三

    ○下田政府委員 そういう数字も実は手元にないのでございます。とにかく非常に不十分な、狭いところに大ぜい押し込めたということは事実だろうと思います。
  152. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 次に衛生及び文化施設の欠除とはっきり書いてあるから、これをお伺いしたい。
  153. 下田武三

    ○下田政府委員 衛生につきましては、医療器具機械、薬品その他の欠除、それからまた医師の数が足らないというような点かと思います。
  154. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 どうも不満足な御答弁です。とにかく一万八千人が死んで、一万人が廃疾者、一万一千人が未亡人になった。十一万のうち約四万の犠牲者が出たということで、大体どんなに衛生及び文化施設の欠除という内容がひどかったかということが想像できる。これ以上追及しましても時間の関係もあり、何ですが、とにかくひどかったことは事実なのです。これはやはりわれわれは反省しなければならぬ。とにかくこういう非人道的な行動を平気でやる日本人という印象が、アジアの諸国民あるいは世界の全人類の頭の中から一日も早く消えないというと、やはり日本が今後国際社会に伍して外交をやり、あるいは貿易をやり、学術文化の交流をやるにしても、非常にいやな思いを続けなければならぬと思う。今出ていく人はみんないいでしょうけれども、それが過去の同胞の罪過のために非常にいやな思いをする。私ども一昨年でしたか中国に参りましたが、中国なんかは今大体いいのです。暴に報いるに暴をもってせず、むしろ恨みに報いるに徳をもってするという方針が徹底しておりますから、大体悪くないけれども、それでも、私ども興味を持って上海あたりのどこか裏町で食事をしておりますと、そういうところの下層庶民――というと語弊があるが、そういうのはやはり非常に恨みを込めた目で私どもを見たりする。何のためにやってきたかと聞く。そういう指導方針が徹底した中国でもそうなのです。ところがイギリスなんかは、今言った「アリスのような街」という映画が一般に非常に好評で、その映画で日本人の虐待の場面が出ると、みんなが口笛を吹いて立ち上るというような状態です。今の政府の外交だって、こういうことにもっとほんとうに思いやりのある措置をしないといかぬのです。(「賠償金をもっと出せというのか」「できてしまったことはしようがないじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)ところが委員諸君あたりは、外務委員をしながら、こういうことについて僕が質問すると、たけりたって非国民扱いをするのだ。とんでもないことで、私は外務委員会自体の自粛が必要だと思う。実はそういう動議を出したいくらいでありますけれども、動議を出すのは後日の機会に譲って、とにかくお互いにこれは一つやろうじゃないですか。過去の悪いことはお互いに認め合おうじゃないか。そして新しいスタートをしようじゃないか。
  155. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 正規の質問を続けて下さい。
  156. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そこで、政府機関に関係した人は戦犯として向うで扱われておる。今も入っている人があると思う。ところが、日本がこういう措置をオランダに対してしましたために、オランダ政府が戦犯の早期釈放をしてくれた。これはいいことだ。そこでその戦犯でありますが、現在オランダ関係で戦犯はどのくらい残っておるのでありますか。
  157. 下田武三

    ○下田政府委員 最近の二十五名釈放前に巣鴨に百十一人おりました。従いましてただいま残っておりますのは八十六人であります。
  158. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そうするとそれを全部巣鴨の方に移管されて、インドネシアの旧オランダ領の現地にはいないわけですね。
  159. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの通りであります。
  160. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それから、収容所の管理に当った者には朝鮮の人が相当おった。今残っておる戦犯の中に朝鮮人も相当おるのですか。
  161. 下田武三

    ○下田政府委員 朝鮮人も少数の者はおると思います。
  162. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私の質問はこれで終ります。
  163. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 北澤直吉君。
  164. 北澤直吉

    ○北澤委員 問題はオランダとの補償の問題ですが、サンフランシスコ平和会議等のいきさつもありまして、今回一千万ドルで解決したことはやむを得ないことだと思うのです。ただ、先日の提案理由の説明によりますと、今後の日蘭協力関係を一そう強固にするためにこういう措置をとったとかいうことでありましたし、先ほど条約局長の説明では、日本とオランダの関係が従来必ずしも満足すべき状態でなかったので、それが、ベルギーなりルクセンブルグあるいはドイツにも響くということで、どうしても日蘭関係をよくすることが必要だ、こういうお話でありまして、私もその点は同感であります。それで伺いたいのでありますが、今日本とオランダの関係で最も大事なのは何であるかというと、私はニューギニアの問題じゃないかと思う。今日本政府におきましても海外移住の問題を取り上げてやっておりますが、結局遠い将来にわたって日本人をたくさん外国べ出すという見地から申しますと、中南米では今の情勢ではできません。結局ニューギニア方面に発展する以外に道はない。今ニューギニアはオランダインドネシアとの両方で帰属を争っている状態です。もしオランダ側がある程度の好意を示してくれるならば、日本人がニューギニア方面に相当発展できるのじゃないか、従来オランダは、日本がそういう方面に発展することにつきまして反対しておる。豪州も反対しておったのでありますが、今後日蘭協力関係を一そう強固にするという点から考えますならば、日本の遠い将来を考えて、日本人がもっと支障なくニューギニア方面に出られるように、オランダ側の協力を求めたいと思うのであります。そういう点につきまして、政府の方は、今度の損害補償の問題とからみ合せてお話しになったかどうか、実はこの問題でオランダの方から要求があった場合に、岡本大使はこういう問題もひっからめてオランダの方と話したように私は聞いておるのですが、どの程度まで話し合ったのか、この機会に伺いたいと思います。
  165. 下田武三

    ○下田政府委員 実は私もオランダにおりますときに、お話のようなことをサゼストしたことがございます。それはまだ西イリアンの問題が、オランダインドネシアとの間にアキュートな紛争になる前でございました。日本も、ただ金をやるというのじゃなくて、日本が金をやったそれを融資して、日本人にはああいう方面の適当な技術者もおるのでございますし、あちらにはまだ未開発な資源、ことにミネラルの資源が非常に豊富にありますから、日本は補償として融資の形で――融資と申しますか、返ってこなくてもいい日本の出す金と日本人の技術でもって、ニューギニアの未開拓の宝庫の開発にサービスさせてくれないかという角度で話を持ち出したことがあるのであります。そのときはオランダ政府は、まだ戦争直後のことでありますので、ちょっと興味を感じた面があるのでありますが、結局政府全体としては、まだ日本に対してそれだけの気を許していないという点からだろうと思います。その案には乗って参りませんでした。そこで結局今回のような金を出すということで解決したのでありますが、将来やはり仰せのように、日本の比較的近いところにある膨大な未開発資源をかかえておるニューギニアの開発に、日本が奉仕するということは非常にやりたいことでございますが、ただ今日インドネシアオランダの間の紛争になっております関係上、どちらに味方するということは極力避けて、将来当事者間の話し合いでどちらに帰属することになりましても、ただ人類のために未開発資源の開発に奉仕するという見地からだけ日本としては貢献したい、そういう考え方でいくべきではないかと考えております。
  166. 北澤直吉

    ○北澤委員 西イリアンの帰属の問題どっちにきまるかは、今後のオランダインドネシアの交渉による問題でありますが、今条約局長のおっしゃいましたように、日本の将来のことを考える場合には、やはりどうしても日本に近いああいう方面に、日本人が支障なく発展できるということが最も大事であります。それでなくても日本は人口問題で因っているわけであります。オランダ補償問題は解決したわけでありますから、こういう方面に今後日蘭関係を向けていく。もちろん日本は必要ならインドネシアも入れて、そうして日本人が未開発のままに放置されておるニューギニアやああいう方面の開発に、日本のためでなく、そういう未開発地域の開発のために奉仕する、こういう形でオランダなりインドネシアなり、フランスもこれには重大な関心を持っておりますから、こういう方面の了解を取りつけるように―――これは今すぐできないと思いますから、そういう方針をもって着々と政府は手を打っていくようにしていただきたいと思うのでありますが、そういう点について一つ政務次官からその抱負を聞いて私の質問を終ります。
  167. 森下國雄

    ○森下政府委員 仰せの通りでございまして、先ほど田中先生からもよくこの点のお話がございました。今われわれはそうしたことに対して、新しい日本の進むべき道に誠意を預けるべきときだ、かように考えておりますので、最善の方法を尽して参りたい、かように考えております。
  168. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 今北澤君の御質問の中に、こういうことでいろいろ私的請求権なんかに対しても日本政府が考慮しながら、ニューギニアベの移民の問題なんかでオランダ政府にかけ合え、こういったような御質問があったように思いますが、イリアンの帰属問題でオランダインドネシアと非常に争われております場合に、私どもはインドネシアに帰属すると考えておるのですが、オランダなんかを相手にして妙にやると、インドネシアの方から恨まれると思う。だから移民問題なんかはその帰属問題がきまったあと提起しないと、係争中にオランダに日本の移民問題を持ちかけてインドネシアの反感を買うということは、とにかく日本がアジア政策を進める上に大へんなマイナスになる。現在だってインドネシアは日本に対してまだ好意を持たぬ。だからこそ、たとえばインドネシアの鉄鉱資源の賦存状態を調べるために日本の製鉄業の技術者を呼ばないで、西ドイツから技術者を呼んで調べております。私も日鉄から南方に行っておったのでその点よく知っております。鉄鉱石もあり、石炭もあるが、粘結性がないから問題にならないが、鉄鉱石の賦存状態を調べるのに、戦時中の関係から日本から呼べばいい。それを特に回避して西ドイツから呼ぶという状態であります。特に今度新たに成立しました二度目のサストロアミジョヨ内閣のごときでは、おそらく日本がよほどインドネシアに対する考えを変えませんと、日イの親交は実現できない状態だと私は思う。そういう際にオランダに対してニューギニアの移民問題をかけ合うということは、かえって逆効果になると思うのでありますが、そういうことについての外務省としての御所見を聞きたい。  それからもう一つは、これはあるいは私の記憶間違いかもしれませんが、ダレスがこの間SEATOに行く途中だったか、SEATOの会議の席上であったか、何かイリアン問題についてインドネシア側に幾らか好意的な発言をしたように私は記憶しておりますが、そういうことはどうでしょうか。事実の問題ですが、条約局長御存じならお尋ねしておきたい。その発言のいかんにかかわらず、アメリカは一体どういう態度をとっているかという問題についてお伺いしたい。
  169. 下田武三

    ○下田政府委員 第一点につきましては、仰せのように西イリアン問題が解決する前に、オランダ側にアプローチして話をするということは差し控えたいことだと思います。  第二点につきましては、ダレスがSEATO会議の席上または帰り等において、西イリアン問題についての発言をしたということは承知いたしておりません。カシミール問題については発言いたしております。西イリアン問題についてアメリカがどう考えておるかという点につきましては、アメリカも日本と同じように、この紛争は当事国間の解決にまかして、どちらに味方するという見解を表明するのを避けておるようでございます。
  170. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 松本七郎君。
  171. 松本七郎

    ○松本(七)委員 先ほどの御答弁でこの補償の対象になるのが十一万人だということでございます。インドネシア人でオランダに協力したというかどで収容された者が相当いるだろうと思うが、それがどのくらいおるかおわかりですか。
  172. 下田武三

    ○下田政府委員 その点もインドネシア人の数はわかっておりません。ただ本協定の対象になりますのはオランダ人だけでございますので、インドネシアに対しましては将来の賠償協定で解決するという関係に相なるだろうと思います。
  173. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それがインドネシア人で相当おるだろうと思いますが、そうするとおそらく議定書と同じ基準での補償を要求してくるだろうと思いますが、そうなった場合に日本政府としては、これと同じ基準で補償する用意があるのですか。
  174. 下田武三

    ○下田政府委員 インドネシア人も日本軍にふだんからにらまれておったような少数の者は一緒に入れられたかもしれませんが、大体においてインドネシアの現地民は同じアジア人だという見地から、むしろオランダ人と差別待遇するというような考えで、インドネシア人をオランダ人と同一にぶち込むということはそうなかったように聞いております、  それから第二の、賠償協定の際に今回の基準は大体一人当り三十二ポンドということになるのでありますが、賠償協定はおそらく苦しんだ人間が何人おってその一人当り幾らの額でそろばんをはじき出すという交渉の仕方にはなりませんで、ビルマあるいはフィリピンとやっておりますように、結局ランプ・サムの額を上げ下げすることになると考えております。
  175. 松本七郎

    ○松本(七)委員 インドネシア側は、この議定書ができると、この議定書と同じ基準での補償を賠償のときに要求してくるだろう。そのときにこれより低い基準でやることを主張すれば、これは不平等待遇ということでねじ込まれるおそれがある。その点のところはやはり相当政府として、はっきりした方針を定めて臨まれないと、工合が悪いのじゃないか、今お話のように全然これと切り離して、フィリピンに対すると同じような見当を持っておると間違うように思うのですがどうでしょうか。
  176. 下田武三

    ○下田政府委員 インドネシアの賠償協定の話もまだ具体的な緒にはついておりませんが、しかし打診はもうずいぶん前からやっておるわけでございます。今までのところ、インドネシア側もそういう賠償額の算定方式を日本側に提起いたしておりませんので、やはりフィリピン、ビルマ等と同じように、割に大きな金で持ち出すという方式をとるのじゃないかと思っております。
  177. 松本七郎

    ○松本(七)委員 それから先ほどから問題になった食糧状態、労働条件、そういうことも少し聞きたいのですが、どうもあまりはっきりわからないようですからその程度にしておきますが、当時収容所に対して、オランダの赤十字あるいはその他の団体から救恤品だとか慰問品が相当いった。これの分配について日本の当局によって非常に不正が行われたというふうなことがいわれておるのですが、その間の事情がおわかりでしたら、お聞かせ願いたいと思います。
  178. 下田武三

    ○下田政府委員 戦時中赤十字を通じます救恤品の送付がありましたのは事実でございます。これはただ日本軍が横取りするとか分配を怠ったということよりも、むしろ船舶で連送の途中潜水艦で沈められたために、本国から送っただけのものが―――もっとも本国は、あのときはまだドイツに占領されておって、ほかの方から送ったのだと思いますが、運搬の途中でなくなったために、発送した数と到着した数との間に、大きな開きができたのが真相だろうと思います。
  179. 松本七郎

    ○松本(七)委員 この桑港条約締結のときに交換した吉田スティッケル書簡、これの法的な性質はどういうものでしょうか。これは条約と同じような性質のものだと解していいでしょうか。
  180. 下田武三

    ○下田政府委員 これは法律的に見ますと、条約ではないと思うのであります。将来の方針と申しますか、日本側の考え方をばく然と言っただけでございまして、これだけでは条約にならず、この結果として具体的な文書を作成して、それが将来条約になることはあり得るということは当時考えておったのでありますが、当時は交換公文条約とは実は両方とも考えていなかったわけであります。
  181. 松本七郎

    ○松本(七)委員 しかしこれは交換公文によって、将来このような処置をするという意向を明らかにされているのですから、結局国民の税金による財政的負担を日本がしなければならぬ。そういう義務づけを予想することになれば、これは相当拘束力を持った、実質的には条約のようなものだと解することはできませんか。
  182. 下田武三

    ○下田政府委員 外交文書の中で、将来その言った内容が具現すれば財政的負担が生ずるというような内容のことを書くことがございます。その際にはその言ったことが将来具体的な財政負担という形で現われて参りますときに、そのあとの文書条約といたしまして国会に提出いたす関係になっておりまして、初めばく然と申すこと自体は、まだ正式の財政負担をもたらすものではないので、条約とは取り扱っておらない慣例でございます。
  183. 松本七郎

    ○松本(七)委員 しかし当呼でも、少くとも将来財政的な負担を伴う措置をとらなければならぬ、そういうことに関係のある重要なこれが交換公文であるということは言えると思いますがどうでしょう。
  184. 下田武三

    ○下田政府委員 その点は仰せの通りだと思います。ただばく然たる内容を直ちに条約とみなして、財政負担の見地から国会に出すということが、従来行われなかったという慣例を申し上げただけでございます。
  185. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうしますと、そのように将来問題を含んでおる重要な交換公文であるならば、桑港条約審議の際にこれを公表さるべきものではないか。その当時公表されなかった理由はどうなのですか。
  186. 下田武三

    ○下田政府委員 それは実はこれを明るみに出しますと、ほかの国からまたいろいろな要求を誘致するおそれがあるということから、極力知らないことにして、相当年月がたちましたときには、明るみに出てもしようがないということで、なるべく他国との関係から隠しておったわけでございます。
  187. 松本七郎

    ○松本(七)委員 しかしオランダ側としては、サンフランシスコ条約批准に際してオランダ自身国会でこれを公表しておるのです。それでむしろれが補償されることを条件にして桑港条約というものを批准しておるわけです。それだからオランダがそういう意向で、一種のこれを留保条件にして、桑港条約に賛成しているのだということは、各国とも同意しているのじゃないですか。この点はどうですか。
  188. 下田武三

    ○下田政府委員 日本政府は、これはお互いに公表せざるものと実は了解しておったのであります。そこで桑港条約を御審議願いました国会でもその了解に基いて、かつまた第三国の要求を誘致する危険を避けるために、発表しなかったのでありますが、日本のあとオランダの国会に平和条約を提出しましたときに、オランダ政府は出してしまったのです。初めから出したわけでは実はないのでありまして、オランダ議員側が蘭印における抑留問題を鋭く質問をいたしましたときに、オランダ政府はたまりかねて、実はこういう書簡を吉田総理とかわしておるのだという、オランダ政府の立場を有利ならしめるために、オランダの国会に出してしまった。出してしまったので私ども困ったと思いましたが、幸い関係国のほかの国から類似の要求を誘致しないで済みました点は、ほっとしておるわけでございます。
  189. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると、これは一種の秘密協定であったものをオランダ政府はそれを破って公表してしまった、こういうふうに理解してよろしいですか。
  190. 下田武三

    ○下田政府委員 秘密協定にするという約束でも実はないのでございまして、暗黙のうちに公表すべき性質のものではないという、ばく然たる了解になっておったようでございます。
  191. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると桑港条約十四条b項に対してオランダ留保条項を付した。このことについては日蘭間の話し合いだけでなしに、連合各国その他の国もこれを同意したのですか。
  192. 下田武三

    ○下田政府委員 このスティッケルの文書は、実は平和条約に対する留保とは私ども見ておらないのでございます。条約に対する正式の留保をいたします場合には、会議の席上署名の際に、この第十四条の規定を留保してというように署名者が断わって、ちゃんと条約本文に書きまして、それからあと署名するか、あるいは会議で公表する文書、たとえば留保宣言というものを明白にいたさなければ、正式の条約留保にならないのでございます。こっそりオランダ外相と日本の総理との間にかわしたものでございますから、これは正式の留保でないと思っております。ただ日本の総理大臣が自発的に処理することができるということを書いておりますので、その自発的の処理に言及したことをほおっておくことの道義上の見地から、自発的にやるということをやるのだというモーラル・オブリゲーションからやっておる、そういう建前で考えております。
  193. 松本七郎

    ○松本(七)委員 その間の事情を他の列国は承知したのですか、そこのところをお尋ねいたします。
  194. 下田武三

    ○下田政府委員 桑港会議のときは、他の列国は知らなかったわけであります。
  195. 松本七郎

    ○松本(七)委員 そうすると日蘭間の秘密協定ではないけれども、それに近いものであるために、直接条約の中に入れるとかあるいは桑港条約の議定書あるいは附属書でやることをしないで、こういう交換公文の形式をとった、こういうふうに解していいですか。
  196. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの通りでございます。もしオランダ署名のときに、第十四条を留保してと断わって署名いたしますと、それじゃほかの国も、おれの国もと出てくる。そこまではオランダ側も気の毒だからやらないで済まそうという了解があったわけでございます。
  197. 松本七郎

    ○松本(七)委員 この議定書の第三条と平和条約十四条b項との関係はどうなるのですか。オランダは桑港条約の調印国ですが、十四条b項と同趣旨のことを再びここで述べております。これをわざわざ述べるのはどういうわけでありますか。
  198. 下田武三

    ○下田政府委員 これは日本側としては念のためではありますが、これ以上オランダから何らかの請求権を持ち出してもらいたくないという一札を取りたいという日本側の要求があったわけでございますが、ただどういう一札を取るかという場合に、吉田スティッケル交換公文留保ではないという日本側の立場からいいますと、今度この協定で初めて放棄すると言うのは矛盾するわけでございます。そこで桑港条約でもう一たん放棄しておりましたけれども、その放棄を確認するという規定のいたし方にいたしまして、すでにきまったことを確認するという書き方で、日本側からいえば、これ以上持ち出されることはないという安心感を、この目的を達したわけでございます。
  199. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 きわめて小さな関連質問でございますが、このオランダとの取りきめによりまして、日本とオランダとの関係をよくするという御趣旨の御説明もあったわけであり、私もそう信ずるわけでありますが、病院船の問題に関して、オランダは長く主張を続けており、私の印象ではこれは権利はないものだと思うのでありますが、オランダ政府としてはあくまでこれに対して忘れ得ないような郷愁を感じておったように私は聞いておるのであります。今度は個人請求権でありますし、面接には関係ありませんが、この交渉の過程におきましてあの問題もやめにしよう、これですっかり決済をしてしまおうというような話し合いでもありましたものか、あるいはそういうような了解のもとにこれができておりますものか、日蘭関係の将来については一つの重要な点だと思いますから、この点を伺っておきたいのであります。
  200. 下田武三

    ○下田政府委員 御指摘の病院船はオプテンノールと申しまして、舞鶴沖三海里のちょっと外で、実は日本海軍が自沈させた船でございまして、オランタ側は日本海軍が自沈させたものだから損害は日本側が賠償しろと申しますが、日本側は平和条約の規定によると、日本国内、つまり領海を含む日本国内にある財産は、連合国財産として返還しなければならず、また返還できない場合にはかわりの金をあげなければならないという規定がございますが、三・九海里の沖に進んで――これは第十五条の日本国内に該当しないということで突っぱねて参ったものでありますが、結局この案件は調停委員会に付することになりまして、ただ調停委員会でもし解決しない場合には、国際司法裁判所まで持っていく権利を留保するということを先方は申しまして、調停委員会にかけるというように相なっておりまして、実は今回の協定とは全く別個のイシューといたしまして、オランダはまだ病院船の件を主張し続けておるわけでございます。ただ抑留者補償が、オランダ側から見ますと全国民的の大きな政治的のイシュー案件であるに反しまして、オプテンノールは実はオランダ人のごく一部の利害関係者があるだけにとどまる問題でありますために、オランダ政府といたしましても、抑留者補償の問題よりはるかに重要性の置き方が少いわけでございまして、これはごく事務的に調停委員会、調停委員会でけりがっかなければ裁判で片づけるという冷静な態度で出ておりますので、その案件が残りましても口蘭間の友好関係の回復にさしたる支障はないのではないかと考えております。
  201. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 大体わかりましたが、しかしオランダ政府の代表者としては、オプテンノール号事件というものは、やはり忘れておらないだろうと思いますから、今後この協定批准になりまして、両国の関係の一つの新しい基礎となる場合におきましては、これをもととして、オプテンノール号事件を、調停委員会ということもありましょうけれども、政治的に一つ解決したことにすることが一番いいと思いますが、あるいはある種の軽い方法をもって解決するという方向に向けることが、これをして意義あらしめるわけでありまして、せっかくかようなプロトコールができましても、オプテンノール号事件がまた持ち上りますと、これはまたせっかくの御努力が無に帰するわけでありますから、さようなつもりでいていただきたいと思いますが、そういうような御計画がありますか、この点確かめておきたいと思います。
  202. 下田武三

    ○下田政府委員 調停にかけ、さらに、国際司法裁判所に持ち出すということになりますと、アラフラ海の裁判でも実は三億五千万円という大きな金がかかるわけでありまして、この病院船一隻のためにまた大きな金を裁判で使うということはばからしいという見地から、調停にはかかっておりますが、実は政府部内におきましては大蔵省と話をしておりまして、協定の成り行きその他に応じましては、仰せのような政治的解決ということで解決するということも、引き続き政府としては念頭に置いておるわけであります。
  203. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 いまちょっと念を押しておきたいのでありますが、オプテンノール号事件の解決策の一つの方法としては、オランダ政府側においても、今お話のような数額が述べられておったようですが、調停費等にも満たないような金でもここで解決する用意があるということを私は仄聞しておる次第でありますから、もしこれ調停委員会に付するようなことにしますならば、私は政府としてはこれはあまりに策を得たものでないと思うのでありますから、さようなことに至らない範囲内において、しかもこの条約のほとぼりが、今度のプロトコールのほとぼりのさめないうちにおやりを願うという老婆心から申しておる次第でありますから、それをお含みおきを願いたいと思うのであります。
  204. 松本七郎

    ○松本(七)委員 先ほどの御答弁に関してもう少し伺っておきたいのです。両方で公表しない約束だった。それをオランダ政府は国会で公表してしまった。それについては日本政府として抗議をするとかその善後措置はどういうふうにされたか。またこれはもともと公表すれば日本に不利益が及ぶだろうということで、公表しない建前になっておったのですが、これはオランダの方で公表してもうわかってしまって後、何らかの不利益が日本に及んだかどうか、この間の事情を御説明願いたい。
  205. 下田武三

    ○下田政府委員 先ほど申し上げましたように、機密文書とするという明確な了解があったわけではございませんで、つまりいきさつから申しましても、調印式のときに留保署名をするということになりますと、これはほかの国の同様な留保を誘発して、日本政府にとっても気の毒だからということで発表しない交換公文になったいきさつがございますから、その立場は当然オランダ側もよく考慮してくれるものと日本側は思っておったわけなのであります。ところがオランダの国会に桑港平和条約を出してみましたところが、抑留者補償の解決していない点について、野党からの強い攻撃がありまして、オランダ政府はもう自分の背中に火がついて、背に腹はかえられなくなりまして出したようなわけでございますが、幸いにして、出しました結果、これはオランダだけが関心のある事項でありまして、ほかの国はそう大きな関心を持っておらなかったせいもございましょう、類似の要求を誘発するというようなことは、今日までなくて済んでおるわけであります。
  206. 松本七郎

    ○松本(七)委員 たとえばインドネシアにおけるフランス人というようなものも、これは多少あるだろうと思うのです。今の問題に関連してもそういう影響はないか。それと別問題としても、この議定書ができることによって、今度フランスの方からも、やはりインドネシアにおける問題が出てくる可能性はないでしょうか。
  207. 下田武三

    ○下田政府委員 オランダ以外の国々につきましては、日本の総理大臣が自発的に処理するというような言及をいたしておるものは一つもないわけでございまして、よし万ないと思いますが、将来かりにほかの国が申し出て参りましても、これは拒否する考えでございます。
  208. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 暫時休憩いたします。午後二時より再開いたします。     午後一時一分休憩      ――――◇―――――     午後二時三十二分開議
  209. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を継続いたします。森島守人君。
  210. 森島守人

    ○森島委員 オランダとの見舞金支払いの議定書に関連しまして、先ほど下田条約局長からオランダだけで、ほかにはこの種の国はないのだとお話しになりましたが、事実はその通りでありますが、しかしこれに類する例は相当ほかにある。私の知っている限りでも、スウェーデンがスウェーデン・マッチ会社等で問題を起しております。ノルウエー、デンマーク、イタリアもある。それにスペイン、それからポルトガルがチモール島の不法占拠を中心にした賠償金の要求をしておったことは事実だと思う。これらの点につきましても、オランダとの問題には直接の関連はありませんけれども、この機会にお許しを得まして経過を伺っておきたいと思います。そのほかにも私の了解しておるところによりますと、平和条約には調印はいたしましたものの、英米両国も長年日本の中国占領中において、いろいろ何百件にわたる懸案がありまして、これに対する個人的な請求が依然として残っておるように私承わっておりますが、この辺に対する外務省の御見解、お見込み等を承わりますれば幸いと存ずるのであります。
  211. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せの通り、オランダと同質のクレームではございませんが、いろいろな点から補償の要求が出ておることは事実でございます。御指摘のありましたように、スウェーデン、ポルトガル等の国からも出ております。それらの中でただいままでに解決いたしましたのは、スイス補償に関する取りきめで、先般国会の御承認を得まして、発効いたしております。これはいずれも中立国の補償でありまして、従いまして平和条約の規定によって規律いたされませんので、結局その相手国と別個の交渉をいたしまして、それぞれ二国間の取りきめで処理いたすほかはないのでございますが、ただいまのところスイスだけが解決しまして、あとは目下交渉中でございます。またイタリアのような同盟国との間の補償、これは主として当事者になっている旧正金の人がただいまローマに行って折衝しております。またスペインからも補償を相当要求されておりまして、これはマニラ攻撃の際に宣教師が死んだとか、教会がこわれたとか、そういうたぐいの補償でございます。  それから御質問の後段の、英米等においても平和条約でカバーされておりません支那事変中のクレームがたくさんございます。上海で物を没収されたとか、あるいは北京で拉致されたとかいうことからいろいろな要求をして参ります。これは平和条約でいいますと、第十八条の戦前債務の問題になっております。これも逐次解決いたしまして、むしろただいまでは大半とまでは申し上げられませんが、半分以上は片づいておるような状況でございます。今後とも鋭意進めて参りたいと思います。
  212. 森島守人

    ○森島委員 関係のある国は何カ国くらいになりますでしょうか。
  213. 下田武三

    ○下田政府委員 第一のカテゴリーの中立国はスイスとスウェーデンでございます。それから旧枢軸国のスペインとポルトガルが特殊な関係になっております。それからイタリア、ドイツは全然出ておりません。大体その四カ国でございますが、第二のカテゴリーは、一番多いのがイギリス人でございます。御承知のように上海にたくさん人が住んでおりましたために、イギリスが案件といたしまして一番多い、次がアメリカが多くて、ごくわずかのフランス人とかその他のヨーロッパ人もおりますが、英米以外はそう大した要求ではございません。理論的には今全連合国も第十八条の戦前債務で申し出られるわけでございますが、とるに足らぬ数でございます。
  214. 森島守人

    ○森島委員 そこで私がお伺いしたいのは、スペインは私が駐在しておった関係もありまして、事情もよく知っておるのであります。戦争直後外務省はアメリカに書類の提出を要求されるからという心配からこれをみな焼いてしまったので、私のところに来て事情を詳しく聞いておるから、私が差し上げた材料を外務省はお使いになっておると思うのです。ポルトガルの問題ですが、チモール島を不法占拠したということで相当大きな問題になっておる。ポルトガルに公使を派遣する場合にも、その問題が片づかなければ公使の交換はできないという強い要求があって、数年間国交が開かれなかった、こう思っておりますが、幸いにして外務省のお取りなしで公使だけは交換したということになっておりますけれども、このポルトガルの要求はどうなっておりますか。いずれ私は法眼参事官が来られましたときに詳しく一々お聞きしてもいいのですが、もしおわかりでしたら、この際に御説明願えたら幸いと存じます。
  215. 下田武三

    ○下田政府委員 ポルトガルの方は私詳しく関係いたしておりませんが、まだ数字等の話し合いに入っていないわけでございます。むしろその前の原則論で応酬しておるような段階でございます。
  216. 森島守人

    ○森島委員 原則論で応酬すると申されますと、これを払うとか払わぬとかいうことじゃないかと思うのです。これは一体どういうふうにお考えになっておるのですか。払うことを建前として話をしておるのか、あるいは払わぬでもいいのだというお立場をおとりになっておるのか、この点一つ御説明願いたいと思います。
  217. 下田武三

    ○下田政府委員 その点につきましては、実は仏印のケースと同じでございまして、必ずしも敵対関係と申しますか、いやがるのを無理やりにやったというよりも、日本政府側としましては、一応向うの了解を得てやったつもりでおったのだろうと思うのでございます。ところがフランスの方はヴィシー政権とペタン政権との二つの政権ができまして、現在はヴィシー政権はなくなりまして、あとの政府によって引き継がれておるわけでありますが、ポルトガルの方は政府の変更がないわけでございますから、敗戦いたしました日本といたしましては、戦争中の関係をこの際援用できないという不利がある点が、仏印とは大きな差であると思うのでございます。しかし当時の事情、これも森島先生の方がお詳しいと思うのでありますが、全面的に向うの言いなりに払うということも、またわが方の財政上からして不可能なわけでございまして、何とか政治的な解決に持っていきたいということで、応酬しておる段階だと存じます。
  218. 森島守人

    ○森島委員 仏印と事情の違うことは、私よく了解いたします。仏印の方は、やはり協定があるから、これに基いて日本が進駐したいというふうな事情がありますけれども、ポルトガルの場合は、全然別なのです。チモール島は、半分はオランダ領ですね。イギリスがポルトガルとの約束に反して独断で進駐した。そこでポルトガルとしては、本国から兵隊を出すから、その本国の兵隊がチモールに着いたら、イギリス兵に撤退してもらうという了解がイギリスとの間についた。そこで日本に対してこういうふうな了解がつきました、従って一つ御協力を願いたい、ポルトガルの兵隊はいついっかどの地点を通っていつごろ着くということについて詳しい協定とまではいっていませんが、打ち合せを当時の次官であった西大使との間でやって、それで日本政府のとった態度を大いに多とするといって、非常にポルトガル政府は喜んでおった。そのやさきに陸海軍の独断で――外務省はとういう態度をおとりになったか知りませんが、おそらく外務省にも連絡がなかったものと思います。独断でチモール島に英兵が上っておるからということで、これを駆逐するという口実のもとに、外務省とポルトガル政府との間にできておりました了解を無視して、独断で進駐したのが事実なのです。この点から考えますと、今の原則論は別としまして、ランプ・サムかなんかで私は一日も早くこれもお片づけになる必要があるのじゃないか。これは日本の財政的負担の立場もありますから、私はその御都合のある点はよくわかりますけれども、何とか早くお片づけになった方がいいのじゃないか。私の聞いておりますところでは、向うから数字なんかを持ってきてないという話ですが、なるべくこの種の懸案になっておるものは、やはり一日も早く片づけておくことが、国交の正常化をはかる上に、非常な大きな力になりはしないか、こういうふうに私は信じておるのであります。詳しいことは、欧州担当の法眼参事官が御出席のときに、一々国別に事情をお聞きすることにしまして、きょうは御担任でないですから、この程度で私の質問をおいておきます。
  219. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 ほかに質疑はありませんか。     ―――――――――――――
  220. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 それではこの際連合審査会開会の件についてお諮りいたしたいことがあります。千九百五十五年五月三十一日に東京署名された農産物に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定第三条を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、農産物に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件について、農林水産委員会より連合審査会開会の申し出がありますので、この際これを承諾いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  221. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 御異議がなければ、さように決定いたします。  なお開会の日時等につきましては、農林水産委員長と協議して決定いたしたいと存じますので、さよう御了承願います。  次会は公報をもってお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。     午後二時四十六分散会