運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-05-18 第22回国会 衆議院 法務委員会 9号 公式Web版

  1. 昭和三十年五月十八日(水曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 世耕 弘一君    理事 古島 義英君 理事 山本 粂吉君    理事 三田村武夫君 理事 馬場 元治君    理事 福井 盛太君 理事 田中幾三郎君       今松 治郎君    林   博君       生田 宏一君    船田  中君       横川 重次君    猪俣 浩三君       神近 市子君    淺沼稻次郎君       佐竹 晴記君    細田 綱吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君  出席政府委員         法務政務次官  小泉 純也君         検     事         (民事局長)  村上 朝一君         検     事         (矯正局長)  中尾 文策君  委員外の出席者         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      鈴木 忠一君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 五月十七日  委員木下哲君辞任につき、その補欠として吉田  賢一君が議長の指名で委員に選任された。 同月十八日  委員稻村隆一君辞任につき、その補欠として古  屋貞雄君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十六日  少年院法の一部を改正する法律案(内閣提出第  四五号) の審査を本委員会に付託された。 同月十七日  監獄法の一部改正に関する陳情書(埼玉県浦和  市高砂町豊多摩刑務所肥後亨)(第一九〇  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員の選任  参考人招致に関する件  商法の一部を改正する法律案(内閣提出第二七  号)  少年院法の一部を改正する法律案(内閣提出第  四五号)  最高裁判所司法行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これより会議を開きます。  少年院法の一部を改正する法律案を議題といたし、まず政府より本案の提案理由の説明を聴取することといたします。小泉法務政務次官。     ―――――――――――――
  3. 小泉純也

    ○小泉政府委員 ただいま上程になりました少年院法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を簡単に御説明申し上げます。  この法律案の要旨は、少年院の在院者に対し、死傷手当金を支給できるようにすること、逃走した少年の連れ戻しについての措置を明らかにすること及び最近の少年院の状況にかんがみ、暴行、逃走等のおそれがある場合においては、やむを得ないときに限って、在院者に対して手錠を使用できることとすること並びに若干の事務手続の簡素化をはかるとともに、同法中の用語の整理をしておることの四点であります。  第一の死傷手当金について申し上げますと、従来、少年院の在院者が職業補導等を受けるに際して、負傷し、なおったとき、障害を残すような場合に、何らの手当金も支給できなかったのでありますが、このような場合には、たといわずかでありましても、何らかの措置を講じてやる必要があると思いますので、今後はこのような場合には、その災害の程度に応じて若干の手当金を給与できることとし、その支給の範囲、金額及び方法等は、すべて法務省令に譲ることといたした次第であります。  第二に、少年院の在院者が逃走した場合の連れ戻しについては、従来、その方法及び時間的な制限等について明確な規定を欠いていたため、連れ戻しについて、機宜の措置を敏速かつ適切にとることが困難であり、連れ戻しの時期を失して、逃走者を犯罪に陷し入れ、社会不安の一因となるとともに、他面、逃走した少年の前途をますます暗くさせることにもなりますので、この際、逃走者を連れ戻す場合の措置を明確にして、少年院の在院者が逃走した場合には、敏速かつ適切な措置によって、社会と本人の利益のために、なるべく早く連れ戻しができるようにしたのであります。  第三点としましては、最近の少年院の状況を申し上げますと、在院者には、反社会性の非常に強い者が多いのでありますが、そのため往々にして集団的な逃走や騒摂等が起る場合があるのであります。これらの場合におきまして、それを防止する適切な方法がないため、少年院の適正な運営に著しく支障を来たす傾きがありますので、この際、在院者が逃走、暴行または自殺をするおそれがある場合に、それを防止するため、やむを得ないときに限って、手錠を使用できることとしたのであります。しかしながら、少年院の性格から、手錠の使用はできるだけ避けなければなりませんので、その使用については、原則として、院長の許可を受けなければならないこととして、特に慎重を期したのでありますが、いやしくも乱用することのないよう厳重に監督する方針であります。  第四点としましては、従来、少年院に収容された者の所持する金品を預かる場合には、本人にそれぞれ受領証を交付しなければならないこととされておりますが、現実には領置手続を煩雑にするのみで実益に乏しいので、この際、その手続を簡素化し、受領証を交付しなくてもよいこととするとともに、その他少年院法中の字句について、若干の整理を加えたのであります。  以上が提案の理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを希望いたします。     ―――――――――――――
  4. 世耕弘一

    ○世耕委員長 次に商法の一部を改正する法律案を議題といたします。本案の逐条説明を聴取いたすことといたします。村上民事局長。
  5. 村上朝一

    ○村上政府委員 商法の一部を改正する法律案につきまして逐条的に御説明申し上げます。この法律案は、提案理由の説明の際にも申し上げました通り、本年三月二十五日法制審議会から答申がありました商法の一部を改正する法律案要綱に基いて立案いたしておりますので、お手元にお配りいたしてあります要綱と対照しながら、各条項について簡単に御説明申し上げたいと思います。  まず百六十六条第一項第五号でありますが、これは新株引受権に関する事項を定款の絶対的記載事項でないことにする趣旨の改正でありまして、要網の第一に当ります。現行法の規定は、前回昭和二十四年の改正の際に加えられたものでありますが、株主新株引受権につきましては、立案の際法律上原則として株主新株引受権を認めるべきであるという見解と、法律上当然株主には新株引受権を認めない方がいいという見解と対立がありまして、それの妥協としていずれの原則をとるかを法律に定めずに、会社の自治にゆだねる趣旨で、株主新株引受権の有無、制限に関する事項を定款の絶対的記載事項と定めたのであります。ところがこの規定につきましては、解釈上いろいろ疑義を生じたのでありますが、絶対的記載事項でありましたために、新株引受権に関する定款の定めに不備がありますと、定款全部が無効となり、ひいては会社の設立無効の原因ともなるのでありまして、その影響するところがきわめて大きいのであります。これによって生じます困難を避けるために、新株引受権に関する事項を定款の絶対的記載事項を定める本条から削除いたしまして、これにつきましては第二百八十条ノ二に新たにこれにかわる規定を設けたのであります。  次に百七十五条第一項であります。これは要綱の第四に当ります。株式申込証の通数を、現行法で二通となっておりますものを一通で足りるとするものであります。現行法が二通を要求しておりますのは、その一通を会社に保存し、他の一通を登記の申請の際に添付書類として登記所に提出させるためであったのでありますが、しかし登記の申請の際に添付する書類につきましては、さきに非証事件手続法の改正によりまして株式申込証そのものを提出しなくてもいい、株式申込証と称する書面を提出すれば足りるということに改められましたので、商法上株式申込証を二通要求する必要がなくなっておるわけであります。  次は第百八十条第三項であります。この条文は前回改正の際に整理漏れとなっておるのであります。この百八十条の三項におきまして決議取り消しに関する二百四十七条、二百四十八条を創立総会に準用しておるのでありますが、二百四十九条も当然創立総会に準用すべき条文なのであります。しかし立案の際二百四十九条が削除ということで欠けておりましたために、その後商法が改まったときにこちらを整備することが整理漏れとなっておるわけであります。  次に百八十八条第二項第一号であります。これは先ほど申し上げました百六十六条第一項第五号の改正に伴いまして、それを引用しておりますこの条文を整理したわけであります。  次は二百二十二条ノ五の第一項でありますが、これも要綱第四に相当するものでありまして、転換株式の転換請求書を現在二通要求しておりますのを一通で足りるものとする趣旨であります。その点は株式申込証と同一でありますが、非証事件手続法の方が転換株式の転換請求書につきましては同様改められておりませんので、この法律の付則第六項におきまして非証事件手続法も株式申込証の場各に準じて改めることといたしております。  次は二百二十四条ノ二でありますが、これは要綱の第五に当るのでありまして、株主名簿の閉鎖または基準日を必ずしも定款の定めがなくても定め得るものとして、かつ株主名簿の閉鎖期間と基準日と権利を行使すべき日との間が現在六十日となっておりますのを二カ月といたしまして、臨時に定める場合の公告を二週間前にすることにいたしたのであります。現行法によりますと、名簿の閉鎖及び基準日の設定は、定款に規定がなければできないことになっておりますけれども、現在ほとんどすべての会社では、株主名簿閉鎖の定款の定めをしておるのであります。一般に定款の規定をまたず利用してもよい制度であろうと考えられるのであります。  次にこの期間を六十日を二カ月と改めましたのは、この方が期間の計算にきわめて便利であるというところから、実際界の要望にこたえたわけであります。  次に、臨時に名簿の閉鎖または基準日の設定をいたします場合に、三十日前に公告すべきものと現在なっておりますけれども、多くは緊急を要する場合でありますので、三十日の期間はやや長過ぎます。報道機関交通機関等の発達いたしました現在、二週間程度で十分であろうということで、これも実際界の要望にこたえて立案いたしたものであります。  次は第二百三十七条第二項でありますが、いわゆる少数株主の総合招集の要件を整備いたしたのであります。要綱の第八に相当いたします。現行法の規定によりますと、少数株主から総会招集の請求がありました後二週間内に総会招集の通知が発せられないときは、少数株主裁判所許可を得てみずから総会を招集することができることになっておりますが、この規定には、二つの点におきまして一般に不満を唱えられておるのであります。その一つは、総会招集の準備のために相当の期間を必要といたします。ことに総会に出席して議決権を行使すべき株主を確定するために、名簿の閉鎖等もやる必要がありますし、二週間内に総会招集の通知を発することは、むしろ不能をしいるに近いということになるわけであります。もう一つの点は、総会招集の通知が二週間内に発せられましても、総会の会日が非常におくれておる場合、たとえば半年先の会日を定めて総会招集の通知を発したというようなときには、少数株主権利は事実上有名無実になってしまうわけでありますので、会日が総会招集の請求があった日から六週間内の日でなければならぬということにいたしたのであります。  次に第二百八十条ノ二でありますが、これは要綱の第二及び第三に相当するものであります。新株引受権は、株主に対しましては取締役会の決議でもって自由に与え得るものとし、株主以外のものに対しては、一定の事項について総会の決議を要するものとし、その決議の範囲内において取締役会の決議により与えることができるということに改めたのであります。  まず株主の新株引き受けについて申し上げますと、現行法は、前回の改正におきまして授権資本制を採用し、新株発行による資本調達の便宜をはかったのであります。新株引き受けにつきましては、新株発行に関する取締役会の決議で与えることができるとするのが最もよく、この授権資本制の妙味と申しますか、長所といたします資金調達の機動性を発揮するゆえんであろうということで、この法律案におきましては、新株引受権を与えるべきもの、引受権の目的たる株式の額面無額面の別、種類、数及び発行価額を、新株発行に関する取締役会の決議事項の一つといたしたのであります。二百八十条ノ二に第五号を加えておりますが、この第五号がその趣旨であります。もとより本条の取締役会の決議事項につきまして定款をもって別段の定めをなし得ることは従来通りでありまして、株主新株引受権につきましても、定款に別段の定め、たとえば定款をもって株主に新株の引受権を与え、または与えないということが定めてありますれば、これに従うことは申すまでもないことであります。  次に株主以外のものの新株引受権について申し上げますと、株主以外のものに新株引受権を与えるにつきましても、結局新株発行の具体的な場合に、取締役会の決議によって具体的内容を定めるというわけでありますが、取締役会の決議だけにまかせておきますと、取締役会でその権限を乱用して、縁故者その他に新株式引受権を与える、有利発行いたしまして、株主の利益を害するおそれがあります。そうかと申しまして、株主以外のものに新株引受権を全然認めない、与える道を閉ざしてしまうことは、特別な場合の資金調達の支障を来たすことも考えられることであります。そこで株主以外のものに新株引受権を与えるにつきましては株主総会の特別決議を必要とするものとして、この決議に関して第二百八十条ノ二に新たな三項を加えたのであります。すなわち、まず株主以外のものに新株引受権を与えるには、取締役会が与えることのできる引受権の目的たる株式の額面無額面の別、種類、数及び最低発行価額について株主総会の特別決議がなければならないのでありまして、その場合株主総会において何人に与えるかを具体的に特定することは必要ないのでありますが、株主の判断に正確を期するため、議案の要領を総会招集の通知及び公告に記載するとともに、総会において、株主以外のものに新株引受権を与えることを必要とする理由を開示しなければならないこととしたのであります。しかもその決議があまり遠い将来のことに関してなされますと、総会の決議を要するものとした趣旨が没却されるおそれもありますので、この決議は、決議後最初に発行する新株でその後六月間に払い込みをなすべきものについてのみ効力を有するものとしたのであります。また定款の定めによってこの特別決議を不用ならしめ得るものといたしますと、これまた株主保護に十分でないきらいがありますので、定款の規定にかかわらず常に総会の特別決議を必要とするものとしたのであります。  次は第二百八十条ノ四でありますが、この規定は新株引受権を有する株主に新株を割り当てる場合における端株の処理について新たな規定を設けましたことと、株主が新株の引受権を有すべき場合に割当日を定めてこれをあらかじめ公告するという旨の新たな規定を設けたのであります。ただいま申し上げました後段は、要綱の第七に当ります。新株発行の場合、株主に新株を割り当てまして一株に満たない端数を生じましたとき、いわゆる端株が出ましたときにその処置をどうするかについて、従来いろいろ学説が分れておりますが、この法律案におきましては、新株発行事務の処理の迅速をはかるために、この点の疑義を一掃いたしまして、端株の切り捨てを規定いたしたのであります。ただいまの二百八十条ノ四第一項のただし書きがその規定であります。  従来いわゆる新株の割当についての割当日というものが定められておりますが、現行商法にはこれに関する明確な規定がありませんので、本条に一項を加えまして、新株引受権を有すべき場合には必ず割当日を定めてその日の二週間前に公告すべきものとし、またその日が株主名簿の閉鎖期間中でありますときには、その期間の初日の二週間前に公告すべきものとしたのであります。これは株式譲受人が名義書換の機会を失って不測の損害をこうむるおそれがないようにという配慮から考えたものであります。  次は第二百八十条ノ五第三項であります。これは新株引受権を有する者に対する失権予告付通知の期間を二週間に短縮いたしておりますが、これは要綱の第七に相当する部分のものであります。これまた新株発行事務の迅速をはかるための改正でございます。  次は二百八十条ノ六第三号であります。これは百六十六条第一項第五号及び三百四十七条の改正に伴って必要となった整理であります。  二百八十条ノ八第一項、これは二百八十条ノ二の改正に伴う整理であります。次に三百一条第一項であります。これも要綱の第四のうちの社債申込証に関する部分に該当いたします。株式申込証及び転換請求書をそれぞれ一通と改めたのと同様の趣旨でございます。  次は三百四十一条ノ四第一項、これは転換社債の転換請求書につきまして、要綱第四に基きまして同様な趣旨で改正したわけであります。  次は三百四十七条第二項及び第三項でありますが、この規定は株主新株引受権に関する定款の定めを会社が発行する株式の総数の効力発生要件でないことにいたしました。その趣旨は百六十六条第一項第五号について申し上げました趣旨と同様でございます。次は第四百八十九条第一号でございます。これは二百八十条ノ二の改正による整理であります。  最後に附則について申し上げますが、第一項は施行期日を七月一日としておりますが、実はこの新株引受権を中心とする商法の改正につきましては経済界あたりでは早急に改正法の実施を要望いたしておりますので、なるべく早い機会に施行されることが望ましいという考え方であります。  第二項は経過規定の一般の例に従ったものでありまして、特段申し上げることはございません。  第三項について申し上げますと、現行法によりますと、株主新株引受権に関する定款の定めはもしこれに不備がありますと、定款の全部または変更された定款の部分が無効になり、ひいては会社の設立、新株の発行に無効を来たすのであります。この資料にありますのに現在大多数の会社でとっております見解及びそれに従ってできました定款の規定というものは、一応株主新株引受権ありと定めて取締役会の決議で制限できるとするか、あるいは株主新株引受権なしということにして取締役会の決議で与えることができると主張するか、いずれかが多いのでありますが、この点について非常に説が分れておりまして、一部の極端な説によりますと、大部分の会社がとっておりますこういう形の定款無効だということになるのであります。最近一、二の下級裁判所判決におきましてさような趣旨の判決をした例もございまして、この点をはっきりいたしておくことは必要だと考えまして、新法の趣旨を改正法施行前に定めた新株の引受権に関する定めにも及ぼして、かりに不備な点がありましても会社の設立、新株の発行、あるいは合併組織変更または定款の他の規定の効力に影響を及ぼさないことといたしたのであります。  第四項でありますが、この法律施行前に定められた株主新株引受権に関する定款の規定についてこの法律施行後における効力を明らかにしたものであります。  次に第五項でありますが、この法律案によりますと、株主以外の者の新株引受権につきましては、定款の定め方いかんを問わず株主総会の特別決議を必要としておりますので、従前一般の会社が定めておりますこの点についての定款の定めはほとんど無意味になるわけでありますが、解釈上の疑義を避けるためにこの点についても規定を設けたのでございます。  次は第六項であります。これは非訟事件手続法を、商法のこのたびの改正に伴って必要な改正を加えたのでありますが、そのほか会社の役員等の印鑑の証明に関する規定を整理いたしております。これは現在登記所でやっております印鑑の証明ということが非常に便利だというので、各方面からもう少し印鑑証明の範囲を広げてもらいたいという要望もありますので、この際これを整備いたしたのであります。  次に第七項は商法百六十六条第一項第五号及び三百四十七条第二項の改正に伴う会社更生法の整理であります。  はなはだ簡単でありますが以上をもちまして逐条説明を終ります。
  6. 世耕弘一

    ○世耕委員長 この際お諮りいたします。すなわち去る九日設置するに決定いたしました最高裁判所の機構改革に関する小委員会、及び交通禍防止に関する調査小委員会の小委員の選任については、私より御指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 世耕弘一

    ○世耕委員長 御異議なければ最高裁判所の機構改革に関する小委員には    三田村武夫君  山本 粂吉君    古島 義英君  高橋 禎一君    長井  源君  世耕 弘一君    福井 盛太君  馬場 元治君    船田  中君  小澤佐重喜君    古屋 貞雄君  猪俣 浩三君    原   彪君  田中幾三郎君    佐竹 晴記君をそれぞれ御指名申し上げます。  次に交通禍防止に関する調査小委員には    三田村武夫君  今松 治郎君    高木 松吉君  椎名  隆君    林   博君  世耕 弘一君    福井 盛太君  馬場 元治君    生田 宏一君  横川 重次君    古屋 貞雄君  猪俣 浩三君    神近 市子君  細田 綱吉君    吉田 賢一君をそれぞれ御指名申し上げます。     ―――――――――――――
  8. 世耕弘一

    ○世耕委員長 次に最高裁判所司法行政に関して調査を進めます。  なほ本件調査中、最高裁判所より発言の申し出のありました場合には、国会法第七十二条第二項の規定によりこれを許可いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 世耕弘一

    ○世耕委員長 御異議なければ左様決定します。質疑の通告があります。これを許します。猪俣浩三君。
  10. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は司法修習生の採用に際して裁判所側で思想調査をやっておる疑いがあるということでお尋ねをしたいと思ったのでありますが、あまり唐突な質問のように思われてはいけませんから、この質問をするに至りました動機について簡単に申し上げて、御答弁はなるべく具体的に願いたいと思うのであります。  私がこの質問をすることになりました動機は、司法修習生の相当の人から思想調査と思われることを質問せられた訴えが前からありました。そのうちに日本弁護士会連合会の発行いたしておりまする「自由正義」という雑誌の四月号に思想自由を否定する論理的技術かと題して、やはり司法修習生に思想調査が行われておるということを前提といたしました論文が出ております。引き続いて「法律時報」の五月号に巻頭の時評といたしまして、司法修習生の任命と思想調査、裁判所の自己侮辱、かような題でやはり司法修習生の思想調査に関する論文が出ておるのであります。そこで私が司法修習生から聞きました話が、すでに客観的にかような雑誌に発表せられておるのでございまするがゆえに、私は一応質問しなければならぬと考えてきたのであります。そこで順序といたしましてお尋ねいたしますが、裁判所法六十六条によれば「司法修習生は、司法試験に合格した者の中から、最高裁判所がこれを命ずる。」となっておる。そこで命ずるについて何か条件があるのか、司法試験に合格した者のうちから何らかのテストをしてその合格した者に入所を命ずるということになるのであるか、もしさような次第であるならばいかなる基準をもって入所を命じたり命じなかったりするのであるか、さようなことについて実際の手続をやっておることを御説明いただきたいと思います。そうしてそれはいかなる人間がさような判定をするのであるか。ここにはただ最高裁判所となっておって抽象的でわかりませんが、具体的に何人がそういうテストをするのであるかという一連の入所を命ずるに至るまでの概況を御説明いただきたいと思います。
  11. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 ただいまの御質問に対して私から説明いたします。司法修習生の採用についてはその資格として司法試験に合格した者の中から最高裁判所が命ずるわけでございますが、その命ずるまでの手続としましては、まず司法試験に合格して司法修習生たる資格がある者から最高裁判所に対して願書が提出されます。その願書を最高裁判所で受理した場合に、例外なくその身元調査というのをいたします。経歴についての調査、それからそれが終ると面接をいたします。この面接は最高裁判所人事局及び法務省人事課が相談をしますけれども、主として最高裁判所人事局が事務的なことはやっております。そうして面接をする場合には、面接員は最高裁判所人事局長及び司法研修所の所長、司法研修所の教官、法務省人事課長、こういう人たちが手分けをして面接をいたします。そうしてその面接と申しましても、これは法律上司法試験に合格した者ということになっておりますから、面接というのはただ顔を知るというだけのこと、それからもう一つは採用された場合の任地をどこにするかという希望を聞くこと、それから任地と関連をして家庭的な事情を聞くということ、これがおもな内容であります。それから採否についての決定は、そういう資料を整えて人事局から最高裁判所の裁判官会議に提出します。そうして全体の裁判官がお集まりの裁判官会議において最後に採否を決定なさいます。採否を決定する標準と申しますと、第一に不適格とされる者が健康上司法修習生の修習に耐えないと認められる者、その前提といたしましては、医師の細密検査をして健康診断をいたします。レントゲンをみんなとりまして細密検査をします。その結果二年間の修習に耐えない、ないしは集団生活をいたしますから、その関係上他人に菌をうつすおそれがあるというような者は除外されます。  それから裁判官、検察官を志望いたす者と弁護士を志望いたす者との間では若干の差異があると存じますが、法律実務家として身体上実務をとり得ない者、これは今までの例としてはほとんどございません。ただ裁判官に、判事補に採用する際に、非常に耳が遠くて補聴器をかけて辛うじてやるとか、それから失眼をしておるとか、そういう者は裁判官には採用されておりませんけれども、司法修習生としては、目の非常に悪い者、補聴器使用して辛うじて音が聞きわけられるというような者、こういう者も弁護士になる場合には差しつかえないではないだろうかというので採用されている例があります。それ以外に、これはおそらくその次の御質問になると思いますが、司法修習生として、ないしは法曹としての適格に疑問を持たれるというような者、そういう者については採否が論議をされておる状態であります。大体今申し上げたような手続方法でやっておると思います。
  12. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると身元調査をなさって面接をなさる、その面接をする者は最高裁の人事局長、司法研修所の所長及び教官、それから法務省人事課長そういう者がなさる。面接をするのは、顔を見るというようなことや家庭的のこと、それから任地をどうするというようなことなのだという御説明で、最後の採否は最高裁の裁判官会議にかけるという御説明を承わりました。そうして不適格者と見られる者は、主として健康状態、それは調査する。健康状態については裁判官や検察官と在野の弁護士になる人とは多少違う、それもわかるのでありますが、最後にあなたが言われたことがはっきりしないのですが、健康以外に司法修習生として採用するに当って適格であるかないかということの審査をするのですか。
  13. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 適格性についての察査は、たとえば犯罪を犯しておる、それから検挙されて調査を受けて起訴猶予になっておる例とか、学校において騒動をやって処罰を受けておる、そういう者、つまり法律を順奉しておる性格であるかどうかというような点を――これはもちろんきわめて例外的な事例です。一々そういう方面にわたって調査をするのでなくて、身元調査の間にそういう事柄が出てきた者についてのみしか調査をしておらないのです。今申し上げたような、過去において犯罪があった、それから現に取調べを受けておる、取調べを受けておって中止処分になっておる、そういう者について今まで論議された例があります。
  14. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そういうものについて調査されたものを最高裁判所へお送りになると、最高裁判所では裁判官会議で決定になるこういうのでありますが、今あなたの御説明によれば、犯罪者あるいは起訴猶予になったような者というようなことに限られておるようであります。これは御調査になることは当然かとも思うのであります。なお学校か何かで騒動を起して処罰されたということは、犯罪として処罰されたという意味ですか、学校の当局者から学生の風紀を乱したという意味で処罰されたことを言うのですか。
  15. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 学校の規律を乱したという意味で譴責、停学、退学等になっておるものを意味します。
  16. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そこであなた方のこういう調べをしておるということから思想調査をしておるというにおいが相当出て来る。私の聞いた具体的事実によればある司法試験合格者は、この面接のときに、昭和二十七年十一月です、ちょうど十月に総選挙があった。そのときに君はいかなる政党に投票したかという質問を受けておる。自由党に入れたか改進党に入れたか、社会党に入れたか、何党に投票したのだという質問を受けた。それからその人は官公労の職員組合の委員長をやっておったことがある、それについて根掘り葉掘り聞かれた。そうしてその結果、何党に投票したと開かれた。これは僕は犯罪とは関係ないと思う。一種の思想調査だと思います。その人間も場所もはっきりいたしております。あなたの答弁とちょっと具体的に違う。なおまたこれも今大阪で弁護士をやっている人ですが、何ゆえかしらぬが一カ年間入所を延ばされた。何の理由もない、ただしこの人はある労働組合の執行委員長を長らくやっておった。そのことについて相当聞かれたそうでありますが、一カ年間入所を延期されておる、一カ年たった後に入所を許された。今大阪で弁護士をやっており名前もはっきりしております。いかなる事情でそうなったのか、あなた方がさようなことがないというならば、私の方は具体的に証人として出頭してもらって聞いてもいいと思います。どうしても事情はわからぬが、一カ年採用されなかった。それからなお私はあなたに参考までに言っておくのですが、修習中、指導官というのか教官というのか知らぬが、ある公務執行妨害に相当する事実を掲示して、これに対する起訴、不起訴を書けという問題が出た、これも名前はわかっておりますが、多数の人間は起訴状を書いたけれども、私の知っているその男だけは、不起訴処分に書いた。しかもその理由の中に若い血気にはやる者が、その場の空気で多少の反抗を示しても、それを一々処罰すべきものではないと思うという理由がついた。そうすると出題したのは東京の高等検察庁の検察官であるそうですが、修習生全部を集めて、この中には反権力的思想の持ち主がある、不都合千万だ、そういう人間は、第二次試験には落すかもしれない、そういう訓辞を与えた。われわれはかような一連のことを称して、一種の思想調査、良心に対する圧迫、主観に対する圧迫というように考える。なおこれを具体的に調査し、組織的に積み上げていくならば、裁判所の側で、目的に、有機的に、かような巧妙なる思想圧迫を相当やっておるのではないかと思われますが、私の方はまだ五、六人の話を聞いただけで、それを統一的にしておりませんから、今あなたに対して具体的にそれを追及することができませんけれども、これはあなたが今答弁されたような実情ではないわけです。またそうであるならば、こんな弁護士会雑誌や「法律時報」に出る道理はない。相当こういう響きが出てきたことだろうと思うのです。私の耳に入ったのみならず、弁護士会にも入り、「法律時報」の記者の耳にも入った。相当広範な範囲にこういうことが行われたのではないか。私の聞いた二、三の実例はこうであります。  そこでもう一点お尋ねいたしますが、同じ二十七年なら二十七年に合格した場合に、十月に試験が発表になり、十一月ごろ面接が行われて、大体一月には入所の採否の通知が来るそうでありますが、これは大体同じように通知が出るのか、または非常に時期を異にして通知を出しておるのか。時期を異にして通知を出すならば、それはいかなる理由に基くのであるか、それをお答え願いたい。
  17. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 面接は日を同じくして一律的にいたしますけれでも、採用の通知は一律的に行われないのが実際です。と申しますのは、面接で少しも問題のない、今言いましたように、健康的にも、経歴等についても問題のない者については、できるだけ早く採用の通知をしないと、本人も他の方に方向を転換されるようなこともありますし、裁判所の方としても、できるだけ多くを資格者の中から採用したいわけですから、そういう点で、面接の結果少しも問題のない者は、裁判官会議にできるだけ早くかけて、年内に採用の通知をしております。残る者はさいぜん申し上げましたような不健康的な者、それから過去の経歴上犯罪があるとか、起訴猶予があるというような者、そういう者があと回しになるのが実際であります。
  18. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それならばなおお尋ねいたしますが、司法試験に合格して、しかも入所の願書を出しておる。しかし身元調査、面接、その他の調査によって、不健康な者は別として、あなたのおっしゃるいわゆる犯罪者――身分証明をつけなければならないから、大体犯罪者なんか願書を出せないと思うのだが、そんな者があるかどうかわからないが、犯罪者とかあるいは起訴猶予した者、その他学校で何か騒動を起して処罰された老――これなんかも、学生がストライキなんかやって譴責を食ったというようなことが直ちに問題になるということも私どもはどうかと思う、「法律時報」もそういうふうに批評をしておりますが、これはいいとして、こういう者で不採用になった者はどのくらいあるのですか。口頭試験に合格して願書を出して、調査の結果犯罪者というようなことがわかって、不採用になった者があるのかないのか。あったとすれば、今までに幾らあったでありましょうか。
  19. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 その御質問の趣旨は、終局的に不採用ときまって、採用しないと決定された者という意味でしょうか。     〔猪俣委員「そうです」と呼ぶ〕 その意味ならば一人もございません。
  20. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、あなたはさっき不適格者ということを言われたが、犯罪をやった者でも採用しているわけですか。
  21. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 犯罪をやった者でも、その後大赦にあっているとか、執行猶予期間を無事に過ぎた者であるとか、そういうような者は採用をいたしております。
  22. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私は、今世論の問題になっておりまするものは、そういうことじゃないと思うのです。そういうことの調査なら当然のことだと思う。今この「法律時報」でも、「自由正義」でも問題にしておりまするのは、そういう常識上考えて当然の調査そのことを問題にしているのじゃないと思う。さっき私が二、三の例を申し上げましたように、過去において労働組合の委員長をやったとか、過去において何か学校の学生運動を指導したとかいうような者に対しては、根掘り葉掘り、いずれの政党に投票したかまでも質問している。そうして、その一問一答が最高裁判所に提出せられておるのじゃなかろうか。なおまた、修習の途中において、公務執行妨害罪として起訴されるかされないかという、これは純然たる学問的な問題だ。しかるに、不起訴の起案をした者に対しては、落第するかもしれぬということを訓辞する、かようなことが修習の目的にかなうものであるかどうか。ことに検事は、刑事訴訟法上便宜主義を持っている。ある事案に対して、起訴すべきか不起訴にすべきか、ある程度の便宜主義をもってやっているわけだ。しかも題が公務執行妨害罪という題である。それに対して、こんなものは起訴する必要がないという起案をすると、反権力的思想の持ち主だ、こんな者は落第するかもしれぬというようなことを言う。あなたはそういう事実はないとおっしゃるのですか、そういう事実はまだ調べてないとおっしゃいますか。実際の指導に対して、一体指導官はいかなる言動をやっているのか、そういう言動が響いてこういう雑誌に出てきたのじゃないですか。それに対するあなたの所見を承わりたい。
  23. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 最高裁判所司法修習生を採用いたすときにも、さいぜんも申しましたように、その個人個人の思想を調査するということはしておらないのです。個人々々のやった経歴、その行動を、どういうことをやったかということについては調査をいたしますけれども、どういう思想を抱いているかとか、どういう政党を支持しているかとか、まして投票したかというようなことはしたことはないと思います。かりに投票したかというようなことを言ったといたしましても、それはおそらくそのときのはずみで言ったもので、いわゆる思想調査とか、何政党を支持するかということを調査するために言ったのではないと私は確信しております。  それからなお、研修所に入りました後に、研修所で各修習生の思想を調査するとか、ないしはある種の思想に対して圧迫的な態度に出るとかいうようなことは、これは絶対と申してもいいほどないのじゃないかと思います。ただいまおあげになりました例は、高裁の検察官とおっしゃいましたので、私の方とちょっと管轄違いで、私が申し上げるのもどうかと思いますが、私の個人的な意見としては、おそらく修習生が検察庁に配属されておった場合、その検察庁における修習の際に起案をさせた結果について結論的に間違っておるというので、あるいは言葉がきつ過ぎたかもしれないと思いますが、そういうことを言っただけのことで、公務執行妨害罪について不起訴の裁定をしたからといって、それに対して非常に反権力的な焼き印を押してしまうというような趣旨ではないのであります。その結果が普通の検察官の感覚としては不起訴裁定をすべからざる場合なので、そういう意見を出されたのではないかと思います。司法研修所に入ってからの生活というものはかなり学科の方面で忙しい面もありますけれども、自由な面が非常にあるので、私は司法研修所に入ってから後の思想調査ないしは思想的な圧迫というようなことは絶対にないと信じております。また現在の司法研修所はそう信用していただいていいのではないかと私は思います。
  24. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 私どもも実は今までそう思っておりました。ことに裁判所司法修習生の採否を決せしめたところに、行政官を排除したところに法の深いもくろみがあった、私どもさように考えておりましたが、最近そういうことがひんぴんと私どもの耳に入るのみならず、雑誌に堂々とそれが出てきた。そこで私はお尋ねしたのであります。あなたのように根も葉もないというような答弁だとこれは困るのでありまして、多少調査してもらわねばならない。私は具体的な名前もあれも全部知っておるのです。ただし修習中はその事実をみな隠してしまってしゃべらないのです。万一それがばれて落第でもさせられちゃたいへんだという頭がある。修習を終りますとみんなばらばらになりますので、そのためにたくさんの人からたくさんの問題をとることは困難であるのですが、四、五人のを私は知っておる。今何党に投票したかということを聞いたはずはないと言うが、これは現に聞かれておる。それはあなたのおっしゃるような軽い意味で言うたかどうか、これは主観的な問題でありますが、聞かれた人間は非常にショックを受けておる。これは御存じのように近ごろ会社で社員を採用するときには、お前何党に投票したか、何党を支持したかと聞く。大体みな自由党を支持した、こう答える。近ごろ民主党もふえてきたが社会党なんというものはめったにない。心理的圧迫です。会社の入社試験にそういうことが出てきた。私どもは実にまゆをひそめたのでありますが、もしさようなことが司法修習生の採用の際に出てきたとしたらゆゆしき大問題だ。私どもがこの心配をいたしますのは、大体今の最高裁判所長官田中耕太郎さんという人は、ちっと異常な反共の闘士であります。裁判官としては度が過ぎておる。昭和二十七年に、八十八人の弁護士から裁判官弾効法による訴追の請求を田中耕太郎氏は受けておる。その訴追の理由は、あまり極端な反共的な言辞、ソ連や中共をまるで強盗、強姦犯人にたとえたような裁判官に対する訓辞をしておる。そうして中立を唱える者を全部実に勇気のないダラ幹であるかのごとく罵倒し、かような反共でこり固まっている長官をいただいておるその裁判官会議で、この採否を決する。そうしてその材料を、諸君が、いや何党を支持したことの、いや労働組合の執行委員長をやって何をやったことの、そういうようなことを根掘り葉掘り聞いて提出すると、どういうことか起らぬとも限らぬ。この司法研修所は申すまでもなく、裁判官になる人だけではない、在野法曹になる人もたくさんある。近ごろ弁護士になる人が多い。しかるにかような一種の思想的弾圧をほのめかすような、採否を決する際にさような調査をせられたり、入所してからも、さような一方的な、反共的な訓練みたいなことばかりやられる。これでは正義、中正な、良心的な訓練が僕は失われると思うのです。それでゆゆしき問題として私は裁判所側にこの質問をしておるのであります。そうして何党に投票したかというようなことも、これは現実のことであります。そうして一カ年間理由なしに入所を延期せられた人物がある。おそらくその人物自身は、自分が労働組合の執行委員長をやったことがあるためであろうと理解しておる。さような理解をせられておるところに、これがもし誤解であったとしても、何らかの不利益があると見なければなりません。一カ年間も入所を延期した者があるかないか、あなたはそれを調査なされたことがあるかないか、今御存じであるかどうかをお答え願いたい。
  25. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 一カ年間延期された例はあります。そのあれは多分こういう観点できめられたものと思います。つまりさいぜんからおっしゃっておりますように、司法修習生は、将来判事、検事または弁護士になるのが百人のうち九十八人まではおそらくそうだろうと思います。司法研修所を出て、そのどれにもならないというものはおそらくないのでありまして、どれかになるわけでございます。そういう弁護士にしろ、検事、裁判官にしろ、これは法律に従い、憲法に従い、規則に従って行動するものであることは申し上げるまでもないことであります。そういう場合に、憲法をじゅうりんし、法律を無視し、規則に従わないというような性格ないし傾向があると見られるような場合に、司法修習生は公務員ではありませんけれども、御承知のように公務員に準じて大学出の普通の者よりもむしろ高い報酬をもらっております。しかも二年間の修習を受けた後少しの負担、何らの義務というようなものも負担をしておらない、これは申し上げるまでもないことであります。そういう面からいいまして、少し大げさになるかも存じませんけれども、憲法を無視し、法律を無視し、規則を無視するというような傾向の者、そういう性格が強い者、これはやはり裁判官、検察官にはもちろんのこと、弁護士としても困るのではないか、そういう観点から、具体的な事実があった場合にそういう傾向が強過ぎるというような場合は、少し様子を見ておったらどうかというようなことで、一年延期をして様子を見ておったというような例も、私の記憶に確かにございます。しかしそれは何も、ある種の思想を持っておるからとか、ある種の傾向を持っておるからということに対する単なる毛ぎらいとか好悪とかいうような問題でなく、ただいま申し上げましたような職務の性質上、最も憲法の線に従った行動をしなければならない、その行動をすることのできない、ないしは違反するような性格があっては困るではないか、しかし若い諸君のことでありますから、そういう傾向が若干見られたとしても、それをとらえて最後まで門戸を閉ざすというようなことはまた行き過ぎだろうから、しばらく様子を見ようという意味で、一年延期されて採用されたという例が確かにございます。しかしその意味は今申し上げましたような趣旨でございます。
  26. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなたの説明はどうも納得いたしかねます。大体裁判官になるにいたしましても、良心の自由ということが裁判官の最大の資格でなければならぬ。いわば司法修習生になるような人間に一体憲法を否認する人間があるか。たとえば共産主義を信奉しているということだけで憲法を否認するのだということになるか。元来共産党なる政党は合法政党として存在している。そういう一つの思想のみならず、団体をつくっても現下日本では合法政党になっておるのみならず、やはり国会というものを承認して、ここにも志賀義雄君というものは法務委員になって出てきておる。共産党員であったら、直ちにこれが今の憲法を否定しているということは言い得るか。いわんや共産主義という一つの社会主義――これは政治上の主義です。それを持っておることで、直ちに憲法を否定しているのだ、あるいは法律を守らぬやつじゃないかというふうに考える、ソ連とか中共との友好関係を説く人を、すぐさまこれは赤だというような判定と同じような、乱暴な素朴な議論になる。共産主義を奉じていること即現行の憲法を現実において否認しておる、法律を一切否認しておるということにはならぬと思う。もしその一カ年あなた方が採用を延期された人間について具体的に考える場合において、それは一体どういう事情で一カ年間――何か犯罪でも犯したというのであるか。あるいは共産党にでも入党しておったというのであるか。いかなる事情で一カ年間入所を見合せたのであるか。その辺の説明は、私には具体的にはわかりません。共産党にでも入って破壊活動防止法に触れるような行動でもやったというのであるか。ただ共産党員であるということであるのか。あるいは共産党員でもないが共産主義の信奉者だというのであるか。いかなる段階の人間を目して、憲法をじゅうりんするおそれがある、法律規則をじゅうりんするおそれがあるというふうに断定したのであるか、そこが問題だと思う。田中耕太郎氏が「ジュリスト」の一月号に、裁判官も検察官も弁護士もみな一つの資格条件があるというような論文を書いておる。それはあなたのおっしゃらんとする、憲法をじゅうりんするような、法律を無視するような者はというような前提のようでありますけれども、じゃ具体的にその一カ年間猶予せられた人間が果して一体それに該当するのであるかどうか。田中耕太郎氏のような反共観念の猛烈な、ソ連、中共を強盗犯人にたとえるような人間から見ると、大ていの人間はみな資格を失ってしまう。そこで私どもはそういう主義や良心的なことに対して、採否を決定したり、あるいはおどかしたり、さようなことをすることは、ほんとうの正義観念、ほんとうの良心的な行動をする青年をしてゆがめてしまうと思う。そしてこれはまた将来大きな問題になると私は思うのです。会社の採用試験みたいなことになってしまったら大へんなことだ。そこで私どもはこの質問をしたのでありますが、その一カ年間猶予したと称する、様子を見ようとした人間が、どういう行動、いかなる思想を持っているためにそういう態度に出られたのか、もう少し詳細に私は報告してもらいたい。それが今おわかりであるならば、具体的にこういうことをやったからこうしたというふうに承わりたいし、具体的におわかりにならなかったら、一カ年間入所させなかった理由についてもっと詳しく御答弁願いたいと思います。
  27. 世耕弘一

    ○世耕委員長 猪俣君にお諮りいたしますが、最高裁の司法行政に関する調査は、今後さらに具体的に進められると思いますが、そのときにさらに掘り下げて質疑応答される機会をとらえられたらどうかと思います。なおこの際鈴木局長の方でも、もし具体的な事例をお持ちでないために御説明できなかったら、次の機会をとらえられることがかえって便宜かと思いますので、議事進行の都合上御参考までに申し上げておきます。
  28. 鈴木忠一

    ○鈴木最高裁判所説明員 ただいま猪俣委員からの御質問は、どういう具体的な事実をとらえてそういう結果にしたのかという御趣旨でございますけれども、その具体的な理由というのを私今宙に覚えておりませんが、記録が多分残っておると思いますから、それに基いて後日お答えをいたしたいと思います。
  29. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それでは私はその具体的な事実をお答えいただいてからなおまた質疑を続行させていただきたいと思います。きょうはここで終ります。
  30. 世耕弘一

    ○世耕委員長 この際参考人の決定についてお諮りいたします。すなわち人権擁護に関する件について先般来調査を進めて参りましたが、選挙違反の取調べについてなお調査を進める必要があると思われますので、参考人を本委員会に招致いたしたいと思います。そこで森達雄君、橘基一君、亀田昇君、大津義兼君、斎藤利勝君を参考人とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 世耕弘一

    ○世耕委員長 御異議がなければ、以上の五名を参考人として決定いたします。  なお参考人の招致の日取り等については委員長に御一任をお願いいたします。本日はこの程度で散会いたします。     午後零時十九分散会