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1954-01-30 第19回国会 衆議院 本会議 8号 公式Web版

  1. 昭和二十九年一月三十日(土曜日)  議事日程 第六号     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     ――――――――――――― ●本日の会議に付した事件  国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     午後一時四十一分開議
  2. 堤康次郎

    ○議長(堤康次郎君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――
  3. 堤康次郎

    ○議長(堤康次郎君) 国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。成田知巳君。     〔成田知巳君登壇〕
  4. 成田知巳

    ○成田知巳君 日本社会党を代表いたしまして、政府の施政方針中主として外交及び防衛政策について、総理並びに関係大臣に若干の質疑を展開いたしたいと存じます。  総理は、去る十六日、静岡市における自由党の演説会におきまして、わが国の独立は政治的独立であつて、経済的には独立に達していない、経済自立を伴わない独立は意味がないと言つておられます。また、去る二十七日の財政演説で、小笠原大蔵大臣も、御自慢の一兆円予算で経済自立を完遂し、民族独立を達成しなければならぬと、総理と同様の発言をしておられます。学者の説明をまつまでもなく、政治的には独立したが経済的に独立していない国を称して従属国と称することが常識だといたしましたならば、日本はどつかの国の従属国であることを総理みずからお認めになつたことであります。(拍手)賢明で正直でいらつしやる吉田総理はこの私の問いを肯定されると思いますが、総理が総裁をしていらつしやる―――――――――――――――は、必ずしも総理のごとく賢明でもなく、かつ正直でもありません。(拍手)たとえば、これらの諸君はこのように言つております。独立国で軍隊を持たない国はない、だから日本は当然再軍備すべきである、こう言つておる。あたかも日本が完全な独立国であるかのごとく主張し、国民大衆に日本独立国なりとの幻想を与えて、再軍備熱をあおつておる現状であります。(拍手)もしそれらの諸君にして日本がほんとうに独立国だとお考えになつておるとすれば、それは政治学のイロハを知らざるものであり、だからこそ、マツカーサーから日本人の精神年齢は十二才だと言われるのであります。(拍手)もしそれらの諸君にして、日本独立国にあらざることを知りながら再軍備促進のための方便として独立国だと宣伝いたしておるとするならば、それはみずからを欺き、国民を愚弄するのはなはだしきものであつて、政治家として断じてとるべき態度ではありません。(拍手)一昨日、本議場で、改進党の三木武夫氏が、論理明快に吉田内閣の経済政策を批判し、経済自立なくして独立の達成なしと断定されながら、事防衛問題に移るや、独立国として再軍備するは当然なりと結論されたことは、まさに論理の矛盾であり、日ごろ尊敬おくあたわざる三木氏のためにまことに惜しむものであります。独立国にあらざる日本独立国のごとく考え、あるいはそのごとく宣伝し、この上に立つて日本の政治、経済、外交の一切が運営されているところに現代日本のあらゆる悲劇が胚胎しておることを知らなければなりません。  日本は、講和会議以前においては、アメリカ占領軍の直接支配のもとに軍事基地化、従属化が推進され、講和会議後は、講和、安保両条約、行政協定、日米通商航海条約等、一連の屈辱的条約締結により、サンフランシスコ体制の中に金縛りとなつております。日本の植民地的従属状態は半永久化され、むしろ占領当時よりも基本的にはアメリカの軍事的支配は強化されておるのであります。かくして、アメリカの意図する日本の軍事基地化、再軍備、NATO体制のアジア版である太平洋における軍事協力体制への従属的編入というアメリカの戦略スケジユールは着々として進められ、今やMSA協定により、その戦略スケジユールは飛躍的に拡大強化されんといたしております。(拍手)  アメリカは、占領時代、二十一億四千万ドルに達するイロア、ガリオア資金を日本に投入いたしましたが、これは言うまでもなくアメリカの慈善事業ではございませんでした。それは、第一に、アメリカ政府の何ら支出増を必要としない過剰物資の売込みであつたことを知らなければなりません。(拍手)第二に、この援助資金の大部分は見返資金特別会計に積み立てられ、国債、復金債の償還に充てられ、銀行資本の強化をはかるとともに、鉄鋼、電力、海運等に投資され、日本産業軍事化のための地ならしが行われたのであります。これがためアメリカの軍事予算を大幅に節約できたことは、ドツジ氏自身が下院委員会証言しておる通りであります。(拍手)しかも、この援助引当てに日本国民の税金でもつて日本の予算から支払われました終戦処理費の累計は、実に大蔵省の発表によるもその二倍以上に達する四十七億ドルであり、この金もアメリカの中国、ソ連に対する軍事基地を日本に設定するために使われたことは明らかな事実であります。今回鳴りもの入りでアメリカに渡つた池田特使が持つて帰りましたワシントンみやげの中に、イロア、ガリオア援助代金の勘定書、支払い請求書が入つていたことは、諸君御承知の通りであります。(拍手)これらの援助費が、日本のための援助ではなく、実はアメリカのための援助であつたことは今申し上げた通りでありますが、一歩譲りまして日本への援助であつたとしても、すでに日本国民によつて占領軍経費として援助額の二倍に当る終戦処理費が支払われているのでありまして、この意味において、日本はアメリカに対し逆に貸しこそあれ、借りは絶対ないはずであります。(拍手)支払い請求書は当然握りつぶしてよいと思うが、総理の所見を承りたいのであります。もし総理にして援助費を債務として支払うというのならば、総理はアメリカという御主人にまことに忠実な臣茂だと言われてもいたし方がないでありましよう。現在、右の点で、アメリカ政府との間にいかなる交渉が進められているか、債務として支払うというのならば幾ら支払わんとしているのか、またその根処を明らかにしていただきたいのであります。  なお、債務として返済するという場合、問題になりますのは、だれが返済するかという点であります。御承知のように、援助物資は、ただで、無償で国民に渡されたものではなく、当時の国内価格で払い下げられたものでありまして、国民はその対価をすでに支払い済みであります。このように、国民にとつて支払い済みのものを、さらに一般会計に計上して租税負担の形で国民に支払わせることは、国民が二重支払いをさせられることであり、不合理きわまることだと言わなければなりません。(拍手)当然見返資金特別会計から融資を受けた銀行その他公私の大企業が支払いの責任があると思うが、これが支払い方法につき大蔵大臣の明確なる見解を承りたいのであります。(拍手)  次に、対日援助費返還に関連いたしまして、賠償問題についてお尋ねいたしたい。総理は、施政方針演説におきまして、経済自立のための貿易の振興を説かれ、国民に耐乏生活を要望されておられます。はたして、好んで白たびをはかれる総理が、国民に耐乏生活を説かれる資格ありやいなやと問いたいところであります。(「白たびがどうした」と呼び、その他発言する者あり)  この点はしばらくおきまして、貿易の振興について考えてみまするに、政府が従来とり来りましたところのアメリカとの片貿易を中心とする貿易政策は、今や根本的に改めなければならない段階に来ておると思います。現に今回のランドール勧告を見ましても、関税の引下げは、その国の標準賃金以下で働く労働者のつくる生産品に対してはこれを適用しないとあります。このねらいがソーシヤル・ダンピング防止にあるとは申せ、現実の問題として、右の勧告が劣悪な労働条件労働者を雇用しておる日本の多くの中小企業者にとつて重大な問題を提起しておることは明らかであります。また勧告は、海外買付を経済援助の一つとしてはならぬと言つております。といたしますれば、海外買付によるところのドル収入に過大な期待をかけることも、はなはだしく危険であります。いよいよ中国を含むアジア貿易日本貿易に占むる比重は、吉田総理の好むと好まざるとにかかわらず、増大せんといたしております。この重大なときにおいて、中国その他東南アジア諸国との国交回復がいまだにできていない状態でありますが、賠償問題未解決がその大きな原因をなしておることは申すまでもありません。岡崎外相は、外交演説で、賠償問題解決に努力しておると述べられましたが、賠償問題に対する基本的心構えといたしまして、賠償支払いと対日援助費返還と、そのいずれを重しとし、いずれを優先せしめんとしておるか。賠償は、申すまでもなく、今回の戦争により相手国に与えた損害の補填であります。当然対日援助費よりも優先せしむべきものと考えますが、岡崎外相の所見を承りたいのであります。  池田特使がワシントンから持ち帰りましたかばんの中には、ガリオア、イロアの支払い請求書のほかに、MSA援助受入れと日本の再武装という、まことに物騒きわまるみやげが入つておりました。地田氏は、今回の日米交渉は百二十パーセントの成功だと、またまた放言したそうでありますが、MSA受入れにより日本を再武装し、かくして再編成された日本軍をアメリカとの軍事協力態勢に従属的に編入するという点では、まさに百二十パーセントの成功であります。(拍手)われわれは、かの講和、安保両条約は、日本の再武装と、太平洋における反ソ反共の多辺的軍事同盟をもたらし、日本戦争の危機に追いやるものであることを指摘して参つたのでありますが、私たちの予想は不幸にして的中いたしました。一塁が抜かれ、二塁、三塁がとられ、今やMSA援助協定で本塁が陥れられんとしておるのであります。  かの安保条約には、日本駐留のアメリカ軍隊が出動する場合の一つといたしまして、極東における国際平和と安全の維持に寄与するためと規定してありますが、極東における国際平和と安全の維持のためアメリカ軍が日本の基地から出動して、その結果として武力衝突が起きたとすれば、たとい日本が中立国であつたとしても、日本領域が交戦国の基地として利用される限り、日本が交戦区域となることは明らかであります。しかも、行政協定二十四条により、この武力衝突が日本区域における敵対行為の急迫した脅威と判断された場合、日米両国は必要な共同措置をとるとの名のもとに、日本の自衛隊という名の軍隊はアメリカ軍の軍事行動に当然協力しなければなりません。かくして、日本人意思とは無関係に、アメリカの戦略のままに日本戦争に巻き込まれる危険は、MSA協定をまたずとも、すでに安保条約、行政協定によつて発生いたしておるのであります。右の共同行為協力措置を確定的ならしめ、義務づけんとするのが今回のMSA協定のねらいであり、またそのためにこそ保安庁法の改正が企図されているのでありまして、日本戦争に介入する危険はますます濃化して参つていると思うが、総理の所見を承りたいと思うのであります。(拍手)  政府は、MSA協定を締結するも絶対海外出兵は行わないと言つている。また、保安庁法の改正も、外部よりの直接侵略に対抗し、自衛措置を講ずることを目的としているのであつて、積極的攻撃、従つて海外出兵は行わないと言つておられます。ここで政府にお尋ねいたしたいことは、近代戦は、その性格上、源平の昔の戦いのごとく、波打ちぎわに敵の来るを待つてこれを迎え撃つというような戦いの方式はとうてい考えられないということであります。直接侵略に対する自衛上の措置であつたとしても、敵に先制攻撃を加えて、敵の空軍あるいは海軍根拠地の空爆あるいはこれが占領を行わなければ有効適旬な自衛措置がとれないことは、言わずして明らかであります。このようにして、たとい自衛のための対抗措置と言つても、事実上海外出兵を結果することは、近代戦の性格上当然であると言わなければなりません。政府は、このような場合をも海外出兵とお考えになつて、かかる出兵も絶対に行わないと言われるのか。それとも、かかる場合は自衛のためのやむを得ざる措置として海外出兵とはみなさないと言われるのか。もし後者だとすれば、すなわち自衛のためのやむを得ざる海外出兵は海外出兵にあらずと言われるならば、自衛のための戦いの名のもとに、事実上日本軍隊がアメリカの戦略の命ずるところに従つて海外出動を余儀なくされ、アジア人がアジア人同士戦うというアジアの悲劇を再現する結果となると思うが、この点につき木村保安庁長官の明快なる答弁を承りたいのであります。(拍手)  吉田内閣は、警察予備隊、保安隊、戦力なき軍隊、自衛隊と、いわゆるなしくずし再軍備を進めて参りましたが、このことは、憲法に基き、憲法に照して事実を判断するにあらずして、逆に事実をでつち上げて、このでつち上げられた事実に憲法を曲げ、押しつけんとするやり方でありまして、法治国家のもと、断じて許すことのできない非民主的、非立憲的態度であります。(拍手)今や、吉田内閣は、MSA受入れに備え、外敵の直接侵略に対抗して国を守るとの口実のもとに、本格的軍事予算を編成し、保安庁法の改正、憲法の改正さえも企図して、いよいよ仮面をかなぐり捨てて再軍備に乗り出さんとしておりますが、ここで吉田総理に特にお尋ねしたいことがあります。外敵から国を守ると言われますが、その国を守るということは一体いかなる意味を持つかということであります。国を守るということが単にこの物理的な山や川や土地を守ることでないことは、賢明なる吉田総理大臣のとくと御承知のことだと思います。国を守るとは、わが国に芽ばえて参りました民主主義を守ることであり、基本的人権を守ることであり、国民大衆の生活を擁護することであることは申すまでもありません。(拍手)しかるに、口では国を守ると言う吉田内閣が過去にやつて来ましたことを見ますると、再軍備に備えて破壊活動防止法、スト規制法等の一連の反動立法を制定いたしまして、国民基本的人権を侵害し、民主主義を否定して来たという事実であります。さらにまた、吉田内閣は、今回教育の中立性の美名のもとに、日本における平和運動の一翼をになつて参りました全国教職員の政治活動を禁止せんとしている。さらにまた、警察法の改正により警際国家の再現さえも企図いたしておるのであります。  戦争の道具をつくることは、まことに高いものにつきます。今回の予算案を見ましても、防衛支出金、保安庁経費、平和回復善後処理費、軍人恩給等、防衛関係費は実に二千億を越え、総予算九千九百九十五億円に対し二〇%以上を占めております。そのため、社会保障関係費、食糧増産費等、民生安定費は大幅に削減され、本予算案に対する国民の非難、抗議が今や全国に翕然と巻き起つておることは、吉田総理大臣御承知のことであります。(拍手)今まで自衛力の漸増を強調し、再軍備を推進して参りました自由党の諸君までが、本予算案に不平不満を持ち、自由党内部に動揺の色さえ見えておることは、皮肉と言えばまことに皮肉であります。(拍手)もし本予算案が強行されるならば、中小企業労働者、農民、漁民等、国民大衆の生活はますます軍事費の重圧を受け、破局への道をたどるでありましよう。まさにわれわれが守らなければならぬ民主主義基本的人権国民生活は、外敵の侵入によつてではなくして、国の内から吉田内閣の手によつて侵されんとしておるのであります。総理は、一昨日参議院において、わが党の荒木君の質問に対し、社会党員に愛国心はわからぬと、またまた暴言を吐かれましたが、みずからの手で国を滅ぼそうとしておる吉田総理に、愛国心を語る資格は断じてございません。(拍手)  また、政府は外敵から国を守るため軍隊をつくると言つておられますが、大切なことは、軍隊の中心をなす人間の問題であります。守るに値する国を持ち、その国を守り抜かんとする熱情に燃える兵士がなければ、国は絶対に守れません。政府の諸公並びに再軍備論者は、口を開けば、国を守る気魄を国民の間に振い起さなければならぬと言われるが、国を守る中心の力である勤労大衆の基本的人権、その生活さえも奪わんとしておる今日、MSA援助によりいくらたくさんの武器をもらつたとしても、その武器は一体だれがだれのために使われるとお考えになつておるのでありましようか。国を守る力である勤労大衆の守るに値する国をつくり上げるならば、フアツシヨの侵入に対しても、また共産軍の侵入があつたとしても、彼らは敢然立つて祖国を守り抜くでありましよう。(拍手)この意味において、まず守るに値する国をつくることが防衛問題の先決条件であると思うが、総理の所見を承りたいのであります。(拍手)  また、政府は外敵の侵入に対し国を守ると言うが、一体外敵はどこにいるか、お尋ねいたしたいのであります。総理は、一昨日の両派社会党の中国、ソ連との国交回復に関する質問に対し、ソ連、中共が国交回復を申し出でて来るならば応ずるも、こちらから申し出ようとは考えないと答弁されました。また総理は、よく中ソ不可侵条約に言及され、この条約をもつて日本に対する中ソ両国の敵意の表現であるかのごとく説明されております。現に、昨日参議院において、大山郁夫氏の質問に対し、総理は、中国、ソ連日本仮想敵国としておると答弁されております。この言葉は、裏から言えば、とりもなおさず、このソ連、中共両国を総理は外敵とお考えになつておるということになりますが、はたしてしかりやいなや承りたいのであります。  中ソ友好条約は対日関係に重点を置いております。その第一条には、日本及び日本と結ぶ侵略勢力に両国共同して断固対抗する意味の規定がありますが、この条約を真に誤りなく理解するためには、一つの前提となる事実を見のがしてはなりません。ソ連、中国の間に中ソ友好条約締結される前、すなわち一九四九年に、すでに中ソ両国を除いた対日講和というアメリカの政策が決定しておつたということであります。このことは、長期にわたつて日本軍国主義の直接、間接の被害者であつた中ソ両国の権利をまつこうから否定するものであり、またこのサンフランシスコ講和体制が日本軍国主義を復活し、日本をアメリカの軍事基地とする意図を持つていたことは、MSA受入れを頂点とするその後のアメリカの対日政策が事実をもつて証明いたしております。(拍手)このことがソ連、中国両国にとつて重大な脅威とならないはずはありません。この脅威を前にして、両国お互いに提携することは、理の当然だと言わなければなりません。(拍手)現に、昨年中国に派遣された日本の国会議員団に対し、中国の郭沫若氏は、中国における和平運動の発展状況を詳細に紹介した後、次のように言つております。もし日本がアメリカ侵略主義の追随者としての地位から脱却して和平と独立の国家になるならば、中国と日本との間に正常な関係が設定されるだけでなく、両国の間に不可侵条約締結することも考慮できるであろうと言つております。もし吉田総理にしてほんとうの意味での善隣友好と極東の平和を希求されるならば、かのサンフランシスコ講和体制を根本的に改正し、ソ連、中国との間に国交回復、領土並びに安全保障についての協定を結ぶべく、こちらより積極的に乗り出すべきであり、これこそ日本独立平和にとつて緊急不可決の問題であると考えますが、総理の所見を承りたいのであります。(拍手)  総理自身施政方針演説においてお認めのごとく、世界は、朝鮮戦争の一応の終結を契機として、今や大きく平和への方向に動かんといたしております。かのバーミユーダ会談、ベルリソの四箇国外相会議の開催、原子力管理に関する国際会議の提唱等、みなこの平和への動きの現われであります。この世界情勢に即応して、かの戦勝国の英国でさえ、軍事費の財政、経済、国民生活に及ぼす影響の深刻なるにかんがみまして、援助よりも貿易を主張し、軍備拡張、アメリカの軍事援助受入れに消極的態度をとつているのであります。フランスその他の諸国またしかりであります。かかるときにおいて、敗戦の痛手に苦しんでいる日本が、国民生活の犠牲の上にMSA援助を受入れ、再軍備を強行する必要がどこにありや、伺いたいのであります。(拍手)このやり方は、たとえば英国その他の諸国が危険なりとしておりようとしているMSAという名のバスに、勢い込んで乗り込もうとしているのが吉田内閣のやり方であります。(拍手)  総理は中ソ両国の動きに対して非常に警戒的な気持をお持ちのようでありますが、私は総理に最後に申し上げたい。かの英国保守党の総裁チヤーチル首相は、昨年議会において次のごとく演説しております。ソ連との間の諸問題は、全部が一時に解決できない限り何一つ解決できないという態度をとることは明らかに誤つておる、よいことならば、平和に役立つことならば、一つからでもよい、ソ連と話し合つて解決すべきである、と。そのチヤーチル氏が、最近ソ連との不可侵条約締結の用意あることを声明したことは、総理よく御承知のところであります。ノーベル賞には値しないかもわかりませんが、日本のチヤーチル氏に当る自由党総裁の吉田総理は、せめてチヤーチル氏だけの進歩性と平和に対する勢情を持たれまして、ソ連、中国その他アジア諸国との国交調整に努力してもらいたいということを最後に申し上げまして、質問とする次第であります。(拍手)
  5. 堤康次郎

    ○議長(堤康次郎君) ただいまの成田君の発言中不穏当の言辞があるとの申出がありましたので、議長は、もし同君の発言中に不穏当のところがあれば、速記録を取調べの上適当の措置をとることといたします。     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  6. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  現在消費と生産との間のアンバランス、国際収支のアンバランスをもつて私は経済自立あるいは経済的独立がないと申すのでありますが、しかし、これがために従属関係のもとにありとは私は考えておらないのであります。また米国の軍事支配のもとにありという事実は何ら私は認めておりません。  ガリオア、イロア等の資金について、これを私は日本国債務と考えておるということは、かねて申しております。これは道徳債務と申すべきものでありましよう、実質的においては。しかしながら、とにかく、このガリオア資金によつて送られた食糧その他によつて、日本は食糧その他の危機を免れたのであります。これを慈善的な贈与と考えることは、日本国民の名誉においてわれわれは承服できないのであります。もしこれを債務と考えず、もしこれに対して支払いをなさないということであれば、これこそ従属的関係のもとに立つのであります。これは国民の全然許ざざるところであります。  また、池田君の持つて来られた――池田君の米国における協議の全体は、その共同声明に明らかになつております。これ以外に何にもないから、お話のような再軍備等の準備行為があつたとは私は認めません。  また、サンフランシスコ会議その他一連の条約をもつて、条約を廃する考えがないか、これは全然ございません。日本国としては、その条約において規定せられたる義務権利を忠実に履行する考えであります。  ソビエトその他の共産主義国との間に積極的に国交の回復をなすべしという御質問に対しては、私はこれに対してはノーと言わぎるを得ないのであります。何となれば、一体日本外交として、外交の動きをなすのには、その時期と、相手方の置かれた地位、また相手方の国際状況等よく判断せずして、ただいたずらに動いたところが、それが無効に終れば決して日本外交の名誉にはならないのであります。  また、その他いろいろ、なしくずし軍備とか、あるいは国民の知らざる間に軍備ができるというようなことは、これは民主国において、国会が存在する限り、そういうことは考え得られざるところであります。  その他抽象的な御質問に対してはお答えしない。     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
  7. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) イロア、ガリオア等の米国対日援助費の問題は、ただいま総理から御答弁がありました通り、政府としてはこれを債務と心得ておりますけれども、この問題は今後の日米交渉にまつ次第であつて、日米両国間に協定が成立して、国会の承認を経て初めて有効かつ確定的の債務となる次第であることは、御了承の通りであります。従いまして、その支払い方法については債務が確定した場合に考慮する次第でございます。     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  8. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 賠償と対日債務についてお話がありましたが、これはいずれも日本として当然解決を要する問題であつて、いずれを重しとし、いずれを軽しとすべき性質のものではないのであります。  MSAにつきましては、これは日本防衛力の漸増に伴つて必要な援助を求めるものでありまして、これが戦争危険をもたらすものとは全然考えておりません。むしろ、わが国を侵略の危険から守らんとする措置であります。  なほ、外敵とは何ぞやというお話でありますが、しいて申しますれば、日本を侵略しようとするものがあれば、それが外敵となるわけでありますが、今どの国だと別に言つているわけではありません。     〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
  9. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 成田君は、自衛隊を創設した場合に外国へ派遣される危険がないかどうかという御質問であります。断じてさようなことはないと申し上げます。すなわち、自衛隊を創設する目的は、外敵の不当な侵入を防止して日本の安全と平和を守らんとするものであるのであります。従いまして、海外への派遣なんということは毛頭考えるべきものでないと考えております。
  10. 堤康次郎

    ○議長(堤康次郎君) 成田君より再質問の要求があります。成田知巳君。     〔成田知巳君登壇〕
  11. 成田知巳

    ○成田知巳君 小笠原大蔵大臣にお尋ねいたしたいのであります。先ほどの私の質問は、ガリオア、イロア資金は債務でないという前提のもとに質問いたしたのでありますが、政府の答弁では、債務と心得ておると言われる。ただ、国会で承認を得なければいけない、こう言われるのですが、債務となつた場合、その支払い方法をどうするかということについてお尋ねしたいのであります。すなわち、援助物資は、すでに払い下げられたときでも、正当な価格で国民がこれを買い受けている。もしこれを支払う際、支払うのは何も小笠原大蔵大臣がお払いになるのじやない。国が払うとした場合に、一般会計に計上して税金の形で払うということになれば二重払いになるのじやないか、そういうことをお尋ねしている。現に、政府はまだ債務として確定しないと言いながら、昭和二十七年度、二十八年度の予算案において、平和回復善後処理費のうちにこの対外援助費の支払いの金を計上している。そのことは国民の税金で払おうとしていることなんだ。二十七、二十八年度の予算の説明書、政府の出されております説明書にも、はつきり平和回復善後処理費の中に対日援助費支払い引当てと書いてある。こういう点、政府はやはり国民の税金でお払いになる、こういうお考えじやないかということを私は質問したいのであります。この点を明確にしていただきたいのであります。     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
  12. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) お答えいたします。債務と心得ておるということはすでに答弁された通りでありまして、その債務有効なもので、金額等が確定した場合にどうするかという問題は、そのときに考えて皆さんの御協賛を仰ぐ次第であります。
  13. 堤康次郎

    ○議長(堤康次郎君) 大西正道君。     〔大西正道君登壇〕
  14. 大西正道

    ○大西正道君 新しき日本の再建は、何よりも国民精神の改造によつて初めて可能なのであります。従つて、われわれ国民に課せられたる歴史的課題は、わが国の政治、経済、社会制度等の変革とともに、国民精神の根本的改造に努めることにあるのであります。しこうして、それはひつきよう教育のカにかかるのであります。かかるがゆえに、今日為政者として文教政策をいかにするかということは、最も緊急にしてかつ重要なる課題というべきであります。しかるに、先般の吉田総理の施政演説及びその具体的な施策並びに予算面を検討いたしますると、この重要なる文教政策がきわめて貧困である事実は、私のまことに遺憾とするところであります。(拍手)そこで、私は、これらの問題について、日本社会党を代表して総理大臣の見解をたださんとするものであります。  まず第一にお尋ねいたしたいのは、吉田総理大臣のわが国文教政策についての基本的考えが一体いかなるものであるかということであります。過去数年間にわたる自由党政府の具体的な政策の跡を通覧いたしますると、はたしていかなる方針のもとに首相はその政策を進めておられるのか判断に苦しむのであります。一例をとつて申し上げますなれば、第十四国会において成立した義務教育費半額国庫負担法がいまだ実施されないまま、ただちに次の国会において、早くも政府は全額国庫負担を内容とするところの義務教育学校職員法の提案を用意いたしたのでございます。これは決して義務教育尊重の趣旨から出たものではなくして、教員の身分を国家公務員にして、教員の政治活動を全面的に禁止せんがための便宜主義に出たものであることは、しばしばこの本議場においても論議されたところであります。たまたま解散によりましてその実施を見るに至らなかつたのであります。しかるに、昨年末の十七国会において、今度は富裕県には金を渡さぬという義務教育費半額国庫負担法の趣旨を無視した臨時特例法案が上程されたのであります。矛盾もはなはだしいと言わければなりません。(拍手)  また、教育行政の面における教育委員会の存廃問題も同様でございます。同法は、市町村教育委員会の設置につきましては、いまだ時期尚早として実施を遅らせたのでございますが、第十三国会においては、政府みずからさらにその実施を一箇年延長する法律案を上程したのであります。しかるに、かの抜打ち解散によつて、政府の趣旨に反し、市町村教育委員会は自動的に全面実施となつたのでございます。それにもかかわらず、政府は今回突如地方教育委員会育成の方針を打掛したのであります。また一方、都道府県教育委員の選挙は二箇年延期を決定し、近く改正法案が上程されようといたしております。まことに千変万化、ねこの目のかわるがごとき変転ぶりには、ただ驚くのほかはないのでございます。(拍手)  教育の面におきましても、愛国心の高揚を言うかと思えば、ただちにまた政治的中立を主張しておるというようなぐあいでございます。これらはいずれも自由党政府に文教政策に対する何らの基本的方針のないことに基くものでありまして、その乱脈ぶりたるや、そのときどきの御都合主義、便宜主義に終始しておる証拠であると断ぜざるを得ないのでございます。(拍手)ある者は、これをすべて自由党の党利党略による日教組対策であると言つておる。また、ある者は、再軍備の推進、MSA受入れのための地ならしにほかならぬと言つておるのであります。一体総理は何をもつて教育の基本方針としておられるのであるか、率直なる回答をお願いしたいのであります。  次にお伺いいたしたいのは、教育の中立性と教員の政治活動禁止の問題であります。昨年の夏、大連文相の車中談以来、各方面からの悲壮なる反対の声を無視いたしまして、過日の総理の施政方針演説においては、その禁止立法措置を講ずる旨の言明がなされたのであります。政府は、その立法措置の理由として、教育の中立性ということを掲げております。われわれといたしましても、この教育の中立性が尊重されなければならないことは言うまでもないと考えておるのだが、だからといつて、教員の政治活動を禁止しなければならないというがごとき、あまりにも飛躍し過ぎた結論はどこからも出て来ないと思うのであります。(拍手)いな、むしろ、この結論は、ものの正当な解決を誤つた、きわめて危険な考えと言わざるを得ないのであります。目前の解決を急ぐのあまり長期の計画を逸することは、政治の世界においては厳に戒めなければなりません。いわんや、教育の世界においてはなおさらでございます。  私は、今回の政府の言明を聞いて、政府の政治的無能と教育に対する無理解なる態度に深い憤りを感じたのでございます。教育の中立性と教員の政治的自由はともに尊重さ乱なければならぬと思うのでございます。そして、この両者は、いずれか一方の犠牲において一方だけが尊重されるのではまつたく意味がないのであります。この点をよくお考えをいただきたいのであります。もちろん、教員の政治的自由は、教員たる身分によつて一定の限界が存することは言うまでもないが、その限界を越えざる政治的自由は十分に尊重されなければなりません。もし教員の政治活動禁止措置が行われるならば、健全なる教員の政治活動にまでその制限が加えられるであろうことは、従来の吉田内閣の態度から見て当然予想されるところであります。さらにまた、これが教育の本質をゆがめる重大なる危機に導く要因になるであろうことは私も深く憂えるものであります。  そこで、私はまず総理にお尋ねいたしますが、総理はこのような禁止立法をもつてしなければその教育政策を遂行できないとおつしやるのかどうか。もし遂行できないというのであるならば、それはあなたが数年間政権を担当して行い来つた教育政策の破綻をみずから認めたものであると解釈してよろしいのであるかどうか。この点について正直な御答弁をお願いしたいのであります。  さらに文部大臣並びに労働大臣にお尋ねいたしますが、あなた方は、教育の中立性さえ守れれば、憲法によつて明確に保障されている教員の政治活動の自由はどうなつてもよいと考えているのかどうか。従つてまた、政府は、この禁止措置を行うことによつて、みずから憲法を蹂躙する結果になることを承知の上でなさんとするのかどうか。(拍手)さらにつけ加えますと、あなた方は、このような禁止立法を考える前に、なぜもつと積極的な指導と啓蒙をしようとしなかつたのか。また、もししたとおつしやるならば、その具体的な事実をわれわれの前に示してもらいたいのであります。  以上の点について、各大臣の明確なる御答弁を要求するものであります。  さらにまた、私は教育の中立性擁護に対する政府の根本的な誤謬を指摘したいと思うのであります。ここに各国の例を見まする場合、教育の中立性が教員の政治活動の禁止措置によつて維持せられておる例はまつたくないのでありまして、それはもつぱら個々の教員の自覚と責任とによつて守られておるというのが世界の実情なのでございます。これこそ教育に対する政治の本来の道でなくて何でありましようか。一部の教員が教育の中立性を侵害したという一例のみによつて、全体の教員に対してまでその政治活動の禁止を行うならば、それはかえつてすべての教員を刺激し、その結束を固めさせることにより、事態をますます悪化せしめる結果を惹起し、教育の中立性はもちろんのこと、民主的労働運動にとつても将来大きな禍根を残すであろうことは必至と言わなければならないのでございます。  私はさらに文部大臣にお尋ねいたしますが、政府として、教育の中立性維持を教員の自覚と責任にまつ意思はないのかどうか。また、もし意思がないとするならば、それはいかなる理由によるものか。これらの点についてお尋ねいたしたいのであります。さらにまた、今回の禁止措置が中立性に名をかる自由党の教育支配の策謀であるといわれておるのでありますが、真の意図がそこにあるのかどうか。政府の本音を吐いてもらいたい。  ある英国の学者が、その国が独裁国であるかいなかは、その国の権力教育に対する干渉の程度を見よ。――もう一回言つてみます。よく聞いておいてください。その国が独裁国であるかいなかは、その国の権力教育に対する干渉の程度を見よと言つたのを記憶いたしておるのであります。かつての日本軍閥が、軍のカで著しい教育干渉を行つて、軍国日本建設し、またヒトラーが教育統制を行つてナチズムを打立て、全体主義国家たるソ連が、現に教育に対して圧力を加え、共産主義独裁をほしいままにしつつある道を、まさに自由党政府が今歩まんとするならば、われわれとしては断じて容許し得ないところであります。(拍手)はたして政府がかかる意図を持つておるかいなかは別として、この際政府は政治活動の問題を真剣に考慮をいたし、百の取締法をつくるよりも教育に対する一つの深い理解と愛情を持つべきことを政府に警告して政府の決意のほどをお尋ねし、一応この問題を打切りたいと思うのであります。  第三点は、教育文化に関する財政の確保であります。二十九年度予算案について見ますると、保安庁費の膨脹により、文教費の圧迫はまことに歴然たるものがあります。年間百万に上る学童の自然増加を控え、すでに現在においてさえ一つの教室に六十人も七十人もの子供を押し込め、その上に危険校舎や災害校舎は年々累積しつつあり、戦災学校の復旧は八年後の今日いまだ完了していないという情ない状態であります。文教施設費においても、危険校舎改築費は大幅に削減され、ために本年の改築見込みは二十八年度の半分にも達しないであろうといわれております。また、新入学の児童に対する教科書の無償配付費五億円までも全額削除をするという、まことに恐るべき編成ぶりであります。軍事費の圧迫による文教費の削減は、さらに転じて父兄に対するしわ寄せとなつて現われているのであります。すなわち、現在父兄は年間約一千億円に達するまことに厖大なる教育費を、税金とは別に、種々な形で直接に負担させられている現状であります。今日PTAが大衆収奪機関化しているといわれるゆえんは、まさにここにあるのであります。これが憲法と教育基本法で保障されている無償の義務教育の実態でございます。教育財政のかくのごとき破綻に直面して、政府ははたして今後新学制を維持し得るの確信を持つているのかどうか。それとも、国民の中から六・二制に返すべしとの声がわき起つて来るのを実は待つているとでもいうのか。もし今後とも六・三制を堅持するというのならば、いかなる財政的な年次計画を持つているかお示し願いたいのであります。  これを要するに、問題の根本は、全国の大学研究所の総経費と保安庁の一技術研究所の経費とがほとんど同額であつたり、(拍手)また、軍艦一隻を余計つくるために全国二百万の新入学児童が希望と喜びをつないだところの二冊の教科書の無償配付費五億円を全額一文残らず削り去つて恬として恥じない吉田自由党政府の教育に対する政策の冷酷無比な態度にあると言わなければならぬのであります。(拍手)さらにまた、問題は、毎年増加して行く学童の入る校舎やあるいは教科書はあとまわしにいたしましても、保安隊や警備隊の大砲、軍艦、あるいは軍服等を先にするのかどうか、そういうところにあるのであります。私は、わが国が憲法に規定する文化国家、平和国家を指向する以上、国力に応じた自衛軍の創設を叫ぶところの政府は文教予算をかかる再軍備費よりも優先せしめるべきが理の当然なりと思ふが、この点、総理はどうお考えになるか。(拍手)もし政府もこの私の考えと意見を同じゆうするならば、かの厖大なる軍事予算を即時削減して文教費にまわすべきものであると思うが、その意思があるかどうか、同じく総理に質問をするものであります。(拍手)  次に、私は、農林、文部及び大蔵の各大臣に対し、学校給食に関しましてその所見を承りたいと思うのであります。学校給食は、国の施策として、学童の体位向上、偏食防止、児童に貧富の差を及ぼさないという配慮、外貨の節約、食生活改善を通じての食糧問題の解決等のためにきわめて重要なる意義を有し、その必要性がますます痛感されつつある現状にあります。世界各国は今や競つて学校給食を拡大しつつあるとき、わが国においては、給食のための諸費用が父兄の負担をますます増大せしめる結果、今や学校給食は継続するか放棄するかの岐路に立つている実情であります。されば、今国会におきましても、食生活の改善、食糧増産に関する決議をいたしまして、この食糧難打開の決意を固くいたしたのでございます。この決議は、政府においてもよろしくこれを尊重いたし、その実現のために積極的なる努力をなすべきであろうと思うのであります。  そこで、まず私は、来年度において政府が予定をいたしておりますところの輸入米百六十万トンのうち百万トンを麦に切りかえることによつて約五百億円の財源を確保いたし、それによつて、全国の小学校中学校高等学校定時制夜間部、一千八百万の生徒、学童に週五日、年二百十五日、パンと牛乳の完全無償給食を実施すべきであるとの構想を持つているが、この点政府はいかに考えるか、御意見を承りたい。(拍手)総理は、今回の施政演説においても、食生活の改善につき鋭意検討を進めたいとの態度を表明しておられるのであるが、しからば、政府はこの問題に対してすでに一定の方針をお持ちなのかどうか。またさらに、学校給食法の提案の用意ありやいなや、もし準備ありとすれば、その概要をお尋ねいたしたいのであります。以上が学校給食に対して私の問わんとするところであります。  私は、この際、大学の自治の問題について、さらに進んで政府に質問をなさんとするものであります。すでに、政府は、保安庁法を改正するとともに、警察制度を改廃し、さらに知事官選を予定いたしておるようでありまするけれども、これは明らかに権力による統制の一連の施策であることは論をまたないところでありまして、私どもの断じて容認できないところでございます。民主主義に逆行する権力の統制の強化は、やがてまた、学長の官選や大学の自治にも干渉いたし、あるいは学問の自由を脅かす事態を生ずるおそれなしとしないのであります。この点について、今後あくまでも大学の自治と学問の自由とを維持することを保障し得るやいなや、政府の所見をただしたいのであります。  さらに、科学技術の振興に関する問題であります。すでに本院においても二回にわたつて科学振興の決議をいたしておるにもかかわりませず、その後一向にその具体化が進捗いたしておりません。私は、日本の経済的諸条件を解決するためには、すみやかに科学技術行政の中央機関を設置し、科学技術行政の刷新強化をはかるがごとき具体的政策を樹立することが喫緊の課題であると信ずるのでありますが、これに対する政府の御見解を承りたいのであります。この点、特に総理大臣より御答弁を賜わりたいのであります。  これに関連いたしまして、先般来問題になつております日本学術会議の民間移譲の真意をただしておきたいのであります。日本学術会議が、わが国科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発展をはかり、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させて来た功績はまことに顕著なものがあるのでございます。しかるに、今回、何らの予告もなく、行政機構改革の一環といたしまして、これを総理府の所管から民間に移譲する旨の緒方副総理の談話が発表されたのでありますが、はたして政府はこれが民間移譲を行う意思なのかどうか、もし意思ありとすれば、いかなる理由によるものであるかをお伺いしておきたいのでございます。  次に、労働問題についてお尋ねをいたします。私がまず第一に政府にお尋ねいたしたいのは、最近新聞紙上に発表されておりまする公労法の改訂の問題であります。政府は、昨年以来、仲裁裁定実施をめぐる苦しい経験から、この仲裁裁定を常に国会の承認のもとに置くことによつて、仲裁裁定の内容を政府の財政的な見解と一致せしめようと試みるとともに、このような仲裁委員の任命並びに委員会の運営を完全に政府の統制下に置くため公労法の改訂を企図しつつあるやに聞いております。もしそれが事実であるとするならば、それは明らかに、仲裁せらるべき一方の当事者である政府が、事実上仲裁者の地位に立つことによつて、第三者的地位を前提とする仲裁制度を完全に政府の思いのままにするという、きわめて悪辣なる意図を意味するものであると言わなければなりません。(拍手)この公労法が、公務員の争議権剥奪の代償として、またそれを合法化せしめるがために与えられたものであることは、政府自身がだれよりもよく御存じのはずであります。その政府自身が、争議権剥奪をそのままにしておきながら、さらに一歩進んで公労法を改悪せんとするがごとき、われわれの断じて許せないところであります。  かの国家公務員法を初め、地方公務員法、破防法、スト規制法と、政府の労働者に対する一連の弾圧法規は、わが国の労働者に福祉をもたらすどころか、その民主的労働運動の発展をも著しく組害する原因をつくり出しているとともに、わが国の指導原理たる民主主義の精神を浸蝕し、民生の不安動揺を招来せしめつつあると言わなければならないのであります。政府による仲裁裁定の不履行は、仲裁裁定制度が決して争議権の剥奪の代償でなかつたことを雄弁に物語つております。しこうして、それを一層露骨にせんとするのが今回の公労法改訂の意図であると考えざるを得ないのであります。  そこで、私は労働大臣にお尋ねいたしまするが、政府はこの公労法をほんとうに改訂するつもりなのかどうか、また行うとするならば、いかなる意図に基くものであるか。さらに、もし新聞に伝えられるがごとき改訂をなす場合は、一体公務員の争議権剥奪の代償を何によつて保障せんとするのか、これらの点について、政府の見解をお尋ねいたしたいのであります。  第二の問題は、行政首切りの問題であります。最近政府の発表した行政機構改革案によりますると、整理人員は六万人余といわれております。しこうして、この首切りが労働者にとつて死活問題であることは申すまでもありません。政府はこの首切りをもつて行政機構の合理的改革のためと称しておりまするが、われわれとしては、これは政府が再軍備費の膨脹と財政の緊縮というジレンマから、自己の政治的無為無策を人員整理にしわ寄せするものであると考えざるを得ないのであります。(拍手)私は、このような首切りは確固たる産業拡充計画の裏づけがあつて初めて行われ得べきものであると信ずるのであります。しからば、現政府は、かかる産業拡充計画の一つでも持つておるでありましようか、遺憾ながら、私は、今まで政府のかかる施策の一つだに拝見したことはございません。もしそのような裏づけなしに人員整理が行われるならば、現在以上に労働者を困窮に陥れ、総理の言われる民生の安定などとうていおぼつかないでありましよう。  そこで政府にお尋ねいたしますが、これらの人員整理の対象となる人々の職場転換を政府はいかに保障しようとするのか、また、この人員整理を行う前に、まず産業拡充のための経済計画を行う意思があるかどうか、その具体的な方針をお答え願いたいのであります。  第三に私が政府にお尋ねいたしたいことは、最近特に経営者において叫ばれております労働基準法関係法令の改訂についてであります。労働基準法が、その成立以来、わが国の労働者保護法規としてきわめて重要なる役割を果して来たことを、われわれは率直に認めなければならないのであります。ところが、最近、中小繊維産業部門あるいは一部の大企業においてさえも、利潤追求のあまり、この基準法の無視が半ば公然と拡大しつつある現状は、きわめて遺憾な事実としてわれわれの注目するところであります。(拍手)従つて、政府は、今こそこの基準法完全遵守のため厳重なる監視を行うべきときであるにもかかわらず、それとはまつたく逆の改悪を行わんとするに至つては、基準法本来の精神を忘却するもはなはだしいと言わなければなりません。(拍手)基準法違反の常習化した産業においては、一刻も早くこれに合法性のレッテルを張りたいでありましようし、また基準法のわくを苦痛と感ずる産業にあつては、一日も早くこれを取除くことを望むかもしれません。しかしながら、いやしくも国の政治をあずかり、労働対策の範をたるべき政府が、一部悪徳資本家のために法令の改悪を強行するとするならば、政府の労働者大衆に対する罪悪はこれに過ぐるものはないのであります。  そもそも基準法によつて労働時間を短縮し、婦人年少労働者保護し、安全衛生規則を厳格にしたということは、政府のかつてな思いつきであつたのでもなく、実に憲法の精神だつたのであります。また国際労働条件の水準への引上げのためであつたのであります。これを分に過ぎた保護であるとして省令による改訂を試みるということは、単に法律実施上の問題のみではなくして、憲法あるいは基準法の精神に対する逆行であると言わなければならないのであります。(拍手)労働大臣は、はたしてこのような改悪の意思があるのかどうか、その改訂を行わんとするならば憲法並びに基準法の精神に反しないかどうか、これらの諸点について大臣の御意見を聞きたいのでございます。  以上、私は、かなり広範囲にわたつて、るる質問をいたして参りましたけれども、これらの質問はすべて私一個の見解にとどまらず、日本社会党を支持するすべての知識層、勤労大衆、青年層はもちろんのこと、全国民の真剣なる叫びであり願いであることを私は確信いたします。私はここにあらためて政府の懇切なる御答弁を期待し、この労働問題に対する質問を最後に、日本社会党を代表いたしましての私の質問を終る次第でございます。(拍手)     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  15. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。政府は民主主義国家のもとにある国民にふさわしい教育の方針を確立いたしたいと考えて、鋭意その研究及び措置を講じ来つております。しかるに、終戦後の一種の空白状態に乗じて、教育者が教育の中立性を奪うがごとき行動を起したことは、私ははなはだ遺憾とするところであります。これに対していかなる措置をとるか、具体的方法等については、文部大臣その他からお答えいたします。(拍手)     〔国務大臣大達茂雄君登壇]
  16. 大達茂雄

    国務大臣(大達茂雄君) お答えいたします。  教育の中立性を確保するための立法につきましては、ただいま鋭意成案を急いでおりますので、不日提案の運びになることと存じます。提案の上、その内容についてとくと御審議をいただきたいと存じます。ただ、決して不必要な制限、いわゆる行き過ぎをするという気持はありません。いわんや、憲法を蹂躪するというようなことは全然考えておらぬことはむろんであります。本音を言えということでありますが、これが本音であります。  次に、文教予算について非常に熱烈な御意見がありました。すでに御承知の通り、二十九年度の予算はいわゆる緊縮予算でありまして、文教予算に関しましても、もちろん十分満足すべき予算を計上することはできませんでした。しかし、二十八年度に比較いたしますと、総額において約百二十億増額計上されておるのでありまして、この緊縮の際、これはやむを得ないことと存ずるのであります。特に御指摘になりました危険校舎の改築は、このたびの予算におきましては、全額としては十四億円を計上してありますので、二十八年度の当初提出の予算に比べれば二億円上まわつた予算になつております。決して半額以下になるというような御心配はありません。  それから、御指摘になりました教科書無償配給、これは従来はなはだ不徹底な点もありまするので、経費の関係上、これはこのたびの予算には計上してありません。  その次に学校給食の問題でありますが、学校給食が普及せられるということのきわめて大切であり、また望ましいことであるということは、これはまつたく同感であります。政府におきましても、来年度の予算におきましては、財政の許す限度における経費を計上いたしまして、この給食の普及に努めたいと存じておるのであります。給食に関する立法措置をするかどうかというお尋ねでありましたが、これは目下検討をしております。  最後に、大学自治に関するお尋ねでありました。学問の自由が尊重せられなければならぬということは当然であります。その学問の自由、研究の自由を確保する意味において大学の自治が尊重せられなければならぬ、これもまつたくそのように私ども考えております。大学の管理につきましては、御承知の通り、まだ大学管理法というものが制定の運びになつておりません。これは目下中央教育審議会におきまして検討をしておるのであります。政府といたしましては、この中央教育審議会における審議、検討をまつて立法をいたしたい、かように考えております。従つて、今日大学の学長を官選にするというような、あらかじめ予定した考えは毛頭持つておりません。(拍手)     〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕
  17. 小笠原三九郎

    国務大臣(小笠原三九郎君) 文教の諸予算並びに教科書無償配給の件についての事柄は、文部大臣答弁の通りでございます。  学童給食の問題中、外米に対する補給金云々というお話がございましたが、現在実は外米に対する輸入補給金は九十億円でございまして、これを全部かりに外麦に切りかえたとしましても、とうていお説のような、五百億というようなものは出て参りません。なお、外米輸入百万トンをとりやめるという問題等は、国民への米の配給日数数日を削減することになつて、消費者に及ぼす影響等も相当考慮しなければなりませんので、重大な問題としてさらに考えることといたします。(拍手)     〔国務大臣保利茂君登壇]
  18. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 食糧増産及び食生活の改善に関しまする、旧臘の本院の御決議の趣意は、私どもも全然同感でございます。その一つの、食生活の政善の手段としての学校給食を強化して参るという趣意からも、今回の予算に所要の措置を講じているわけでございます。ただ、外米を全部外麦に切りかえるということは、むろん計画としては簡単でございますが、全国の台所を受持つてくださる奥さん方が外米よりも麦がいいということにならないと、なかなか簡単には行かぬのではないか。そのための基礎的な条件を整えるということがまずもつて先決であろうかと存じております。(拍手)     〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
  19. 小坂善太郎

    国務大臣(小坂善太郎君) 公労法の点についてお話がございましたが、御承知のように、この法律は占領下の産物でございまして、その運用につきましては種々改善すべしという意見があるのでありますから、私どもとしては、仲裁制度の合理的な改正につきまして事務的に検討させております。これをいかにするかということについては、目下諸般の事情を検討している最中でございます。  なお、労働基準法につきましていろいろ御意見がございましたが、基準法もさることながら、この施行についての労働省令として厖大な関係規則があるのであります。これがあまりに煩瑣に過ぎる、そして非常に手続上迷惑であるという声が多いのでございまするから、私どもとしてはこれを全面的に検討いたしまして、法律に根拠のない政令、あるいは薄弱であると認められるもの、あるいは許可、認可等の手続が非常に厖大で、またわが国経済社会の実情に沿わないというふうに考えられるものについては極力これを簡素化し、特に中小企業については、積極的に負担の軽減をはかる方針のもとに、目下改正を考えている次第でございますが、但し、労働者の身体、生命に直接の危害を及ぼし、あるいは国際水準を下まわるような改正は避けたいと考えているので、憲法に違反するなどということは毛頭考えておりません。従つて改悪はいたしません。(拍手)     〔国務大臣塚田十一郎君登壇〕
  20. 塚田十一郎

    国務大臣塚田十一郎君) お答え申し上げます。  学術会議の存在理由というものは、一つは科学者の内外に対する代表機関として、もう一つは行政、産業及び国民生活に科学を反映させる、その目的のためにあるということは、学術会議法第二条に書いてある通りでありまして、この目的を持つた機関が何か必要であるということは、私もまさにその通りであると思うのであります。しかし、この第二の、行政、産業及び国民生活に科学を反映させる機関というものは、政府部内にも他のいろいろな機関があるのでありまして、私は、主としては科学者の内外に対する代表機関というのがこの学術会議の主たる目的ではないかと考えているわけであります。そういう目的から考えますと、現在のような形がはたして適当であるかどうかということには十分まだ検討の余地がある、こういうように考えているわけであります。現在の機構は、御承知のように総理府の付属機関になつており、その会員は選挙によつて選ばれるということになつており、選ばれた者は特別職国家公務員ということになつておつて、いろいろの点ですつきりしない点があります。終戦後の混乱しておつた時期であればとにかく、現在はだんだんと学界なども整備されて参つておりますので、この機会に、学士院のようなものは国の機関として残し、その他の部分は民間に移して、適当な何か構想を考えたらいいじやないかというような構想で、現在検討中でございます。  次に、行政機構改革でありますが、行政改革は、御承知のように、国民が強くこれを要望されているのでありまして、その要望に基いて政府が何とかして実現したいと努力しているわけでありまして、決して政府の他の政策のしわをここへ持つて来て寄せておるというような物の考え方では毛頭ないのであります。従つて、行政機構改革は、まず第一段に事務を整理する、機構を簡素化する、また事務処理能率を上げるべきものがあれば上げる、その上で整理すべき人間があるならばこれを整理するという考え方でしているわけであります。ただ、今後の整理の場合には、大部分が出血整理になるということが考えられますので、例外としては年次計画も考慮する、また待命の制度も考慮するというようなことも考えているわけであります。また、政府部内におきましては、自然減員の不補充の方針を一層強化して、各省間の配置転換を行う。そのために政府部内に特別機関を設けたいということも考慮いたしております。また、民間の職業安定機関職業補導機関、そういうものも百パーセントに活用して、職を離れる方に御困難のないように努力いたすつもりであります。
  21. 堤康次郎

    ○議長(堤康次郎君) 川上貫一君。     〔川上貫一君登壇〕
  22. 川上貫一

    ○川上貫一君 私は吉田総理大臣に対して一つ二つの質問をいたしたいと思います。  去る一月二十三日、アメリカは、朝鮮民主主義人民共和国と中国人民義勇軍の捕虜を一方的に釈放して、その大半を台湾に輸送し、朝鮮に新しい緊張状態をつくり出そうとしたことは、世界周知の事実であります。一体、朝鮮の休戦会談で一番大きな問題になつたものは捕虜問題でありまして、国連軍の手による捕虜の釈放ということは、戦争当事国の一方がこれに反対しておるだけではありません。休戦協定によつて捕虜の処理に直接関係を持ちましたインドのネール首相はもちろん、メノン国連代表も、もし国連軍が捕虜を一方的に釈放するようなことをすれば、それは休戦協定の違反であり、戦争再開の危険があるということを言うておるということは、総理大臣も御承知の通りであろうと思う。ところが、このときこの数万の捕虜台湾に輸送することを引受けましたのは日本の某船会社であると報道されておるのであります。これは事実であるかどうか、この点をはつきりと総理大臣にお聞きしたい。  この行為は、朝鮮における紛争への事実上の介入であります。また、アメリカによる捕虜の一方的釈放を援助することによりまして、戦争の再開を挑発するアメリカに加担して、休戦会談のぶちこわしに協力したものであるという、国際的非難にとうてい耐え得ないと私は考えます。しかも、この国際的紛争の渦中に加わるところの重大な行為は、ただ単に一つの商行為として、一つ二つの船会社がかつてにとりきめてよいようなものでないということは、国際的常識を持つものにとつてはまつたく明々白々であり、吉田総理大臣にとつては重々御承知のことであろうと思う。総理はこれにどういう責任をお持ちになりますか。  総理大臣は、このたびの施政演説で、国際的緊張が緩和されておるということを喜ばれ、世界の平和を念願すると述べられたのであります。一体、総理大臣は、このような行為をあえてすることが国際緊張を緩和するゆえんであるとお考えになつておるのかどうか。もし総理大臣にして、ほんとうに世界の平和を念願するのであれば、このような行為を許してはならぬと私は考えます。また、総理大臣にして、ほんとうに国際的緊張の緩和をお望みになるのであれば、このようなことに協力するかわりに、中ソ両国との国交再開のために献身し、世界の諸国、なかんずく五つの大国が親善友好を深め、平和のとりきめを結ぶことにこそ努力を払われなければならぬと私は考える。これは簡単なことではありません。日本戦争の挑発の拠点とするかどうか、民族の滅亡を招くかどうか、あるいはまた、国民と一諸に平和を守り、民族の自由と独立を守るかどうかにかかわる問題でありますから、総理大臣責任のある御答弁をお願いしたいのであります。  しかしながら、私はここで、吉田内閣が過去幾年の久しきにわたり、平和を念願する方法ではなく、アメリカのために戦争の拡大に協力した事実を指摘しなければならぬ。すなわち、朝鮮戦争の際に吉田内閣は直接これに参加しておきながら、その事実を、国会においても、また国民に向つても秘密にして来たということは、総理大臣御自身が一番よく知つておられると思う。しかるに、今日に至つて、元山上陸作戦には海上保安隊の掃海艇のほとんど全部が参加して、その一隻が沈没しておるという事実が報道されております。私はこれは単なる報道かと思うておりましたら、当時の国連軍最高司令官であつたマツカーサー元帥の最近の証明によつて、このことははつきりと裏づけせられたのであります。総理大臣は、今日この事実をお認めになるかどうか。また、このような重大な事実を、今日まで国会にも国民の前にもひた隠しに隠しておき、国民の耳目を欺いたことに対して、どういう責任を考えておられるかどうか。総理大臣として、ほんとうに国際緊張の緩和を望まれ、平和を念願すると言われるのであれば、この一切の事実をここで明白にし、政府の責任をはつきりと明らかにされるべきであると私は考えます。  第二は、MSAについてお聞きいたします。まず総理大臣にお聞きしたいのでありますが、総理大臣は、ビルマやインドネシアが今日に至るまでMSAの援助を断つているのは一体どういうわけであるとお考えになりますか。また、西欧の諸国におけるMSA反対は国民大衆だけではありません。多くの資本家もこれに加わつて、ますます広汎な運動として広がつている事実を、総理はお知りにならぬはずはない。それは言うまでもなく、このMSAというものが、平和国民生活に対する援助ではなくて、反対に軍備を拡張し、厖大なる軍事予算を強要せんとするものであつて、国民経済を混乱と破綻に導くばかりではなく、アメリカヘの隷属を強化する毒素であるということが、だれの目にも歴然たる事実となつて現われたからでありましよう。しかるに、吉田総理は、この各国試験済みの毒素を、どういうつもりで今になつて哀願しておられるのか。しかも、政府が期待する額というのは、軍事援助において、たつた二百七十億円そこそこ。私は総理大臣にお尋ねしたい。総理大臣は、たつたこれだけの目くされ金で、全面的な再軍備を強要され、経済と貿易を一方的に管理され、国民の生活の破綻を余儀なくされることを、ほんとうにまじめに国民の利益であるとお考えになつておるかどうか。  問題はそれだけではありません。MSAの援助によつて提供される完成兵器というのは、新しい兵器ばかりではなく、今日すでに保安隊が持つておる兵器をMSAが肩がわりするというのではありませんか。そもそも今日保安隊が持つておる兵器というものは、国会の決議によつてアメリカと貸借の関係を結んでおるものではありません。従いまして、これはまつたくのやみ兵器である。アメリカがかつてに保安隊に持たせているものにすぎない。その上に、今日の保安隊にいる顧問と称するものはアメリカの軍人でありますが、政府は、これは一ぺんも頼んだことがないものであるということを、外務委員会において答弁しておる。そうしてみると、この顧問は、これまたまつたくのやみ顧問である。しかも、その顧問が保安隊の兵器のかぎを握つておるということである。それが事実であるとすれば、私は、MSAというものは、まことに奇妙奇態なものであると思う。なぜなら、保安隊のやみ兵器をこの際ドルに換算され、日本はアメリカの顧問の手から兵器のかぎを渡してもらうだけのものである。これで日本の政治、経済、貿易のすべてにわたつてアメリカの軍事的さるぐつわをはめられるのであると言われても、政府は一つも申訳はあるまいと思う。このようにして、海上保安隊のフリゲート艦から上陸用舟艇に至るまで、次から次へと肩がわりされ、MSAに変更されるということであるならば、これは国民大衆ばかりではありません。日本の資本家にとつても、どうしても明瞭にしてもらいたい問題でありますし、その上に、MSAの正体というものがどういうものであるかを明らかにする問題でありますから、総理大臣並びに外務大臣の答弁をお願いしたいと思うのであります。  第三は、MSAが国民に強要するものはこれだけではない。これをもう一ぺん指摘する必要があると私は思います。すなわち、それは今度の国家予算案や、政府の二十九年度の施政方針ですつかり明らかになりましたことく、大量の首切りであります。米価、賃金のくぎづけであります。災害復旧の事実上の放棄である。貿易のアメリカによる一方的管理の強化である。そうして、その上に、金融の一方的引締めを通じ、平和産業並びに中小企業破壊であるばかりではありません。保安庁法並びに警察法の改悪から労働者の政治活動の禁止までを含むところの徹底的な民主主義の抑圧であるということは、一昨日以来社会党の諸君からも重々指摘されたところであると私は考えます。それにもかかわらず、総理大臣は、国民経済と貿易の発展を口にしておる。MSAによつて、外に向つては国際市場の窓口をますますふさがれてしまい、内に向つては国内市場破壊してしまい、これでどうして国民経済の発展を期待することができるのでありますか。さらに、政府は、本国会に、駆逐艦の貸与の協定から、見返り資金使用の協定、投資保証協定まで提案するおつもりがあるかどうか。確かに提案される御所存であると思う。これはまつたく日本の政治経済をあげてアメリカの手に引渡そうとする以外の何ものでもありません。これがMSA再軍備政治であるということを、私ははつきりとここに申し上げたい。(拍手)また、政府は口を開けば治安を云々いたされますが、治安というものは収奪と弾圧によつて保たれるものではありません。あるいは国民に耐乏を要求しておるようでありますが、これはMSA再軍備の代償であるところの国民生活の破壊を合理化する口実にすぎない。総理大臣は、まじめに、国民大衆がこれ以上耐乏することができると、ほんとうに考えておられるかどうか。謙虚に国民の声に耳を傾けなさるがよいと思う。そうして、その要求を支持し、平和を守り、民主主義を擁護し、国民の生活を完全に保障することが、ほんとうの治安の確保であるということを銘記すべきである。現に、ベルリンにおいては四国外相会議が開かれております。米ソの間には、原子力の管理についての話合いが進められております。国内においては、平和民主主義を守り、生活を守る運動がほうはいとして巻き起つておることは、政府といえども重々御承知のところでありましよう。こういう事実を前にして、私は総理大臣に申し上げたい。総理は、このような内外情勢に顧み、MSAの援助をお断りになつて、国民の要望にはつきりとこたえ、再軍備の計画をやめる決心に立ち直る意思はないのであるかどうか。現在、政府は、硫安の在庫一つがないにもかかわらず、アメリカから仏印向けの輸出を強制され、しかもその上に、もし日本がこの輸出を承諾しないならば、今後アメリカは日本からの域外買付は見合せるとおどかされておる。こうして、政府は、国内の需要を犠牲にして仏印向けの硫安に応じようとしておる。硫安の輸出一つにさえ、自主もなければ自立もない。もし吉田内閣にして、このありさまに反省をしませんならば、私は祖国国民は破滅するであろういうことを、心から吉田総理大臣に警告いたします。最後に、私は、沖繩の日本復帰に関する問題について総理大臣にお聞きしたい。周知のように沖繩の日本国民は、終始一貫、日本復帰のために熱心な運動を続けておるのであります。しかるに、去る一月七日、アメリカ大統領は沖繩の無期限占領を宣言し、さらに、同十一日、沖繩民生副長官オグデン少将は、沖繩における復帰運動を中止することを勧告いたしまして、事実上これを禁止する態度を明らにしております。そればかりではありません。この沖繩の復帰運動禁止についてはアメリカは日本合意の上であるということを明らかに声明しておると報道されております。吉田総理は、施政方針演説の中で、沖繩、小笠原諸島の復帰については、今後機会あるごとにその早期実現を要請する所存であると明言されておる。世には、平和を唱えて戦争を準備するやからがおる。世には、口に民主主義を唱えて民主主義破壊し、自衛を唱えて戦争をたくらむやからがある。吉田総理大臣は、口に沖繩の復帰を唱えて、復帰運動の弾圧に協力し、復帰を妨害して、アメリカの無期限占領に協力するつもりでありますかどうか。これは沖繩在住の日本国民を見捨ててしまい、これを見殺しにして顧みない所存であると言われてもしかたがありますまい。このことは、政府の責任に関するだけの問題ではありません。沖繩在住日本国民の死活に関する問題でありますから、吉田総理大臣責任ある答弁を要求します。  私は、今から三年前、この壇上において、ここに出席されておる同じ吉田総理大臣に、日本の隷属と軍事基地化の問題について一場の質問をしたのであります。ところが、そのとき、吉田総理大臣はろくろく答弁されなかつたと記憶しております。しかし、今回はあんまり興奮されないで、祖国国民の利益のためでありますから、冷静に、親切に答弁されることを要求して、私の質問を終ります。     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  23. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  MSA援助については、ただいま協議中であります。協議が結了すれば、その協議の結果、協定の結果は議会に報告され、また議会の協賛を経なければならないのでありますから、その節、はたしてお話のようなことがあるかどうか、あつたらば十分に攻撃していただきたいと思います。本の商船が雇われたということの事実は、私はいまだ存じておりません。  また、掃海艇が沈没した、マツカーサー元帥云々と言われるのでありますから、マツカーサー元帥日本におられるときのことであろうと思いますが、私には現在記憶がございません。  また沖繩、西南諸島及び小笠原島の復帰の問題については、私の施政の方針にはつきり申しております。すなわち、国民の要望にこたえて、その復帰を、返還を、機会あるごとに努力するということを、はつきり申しております。お話のように、アメリカ大統領との間に、協議の結果、ただいまお話のような返還しないという声明にわれわれが相談にあずかつたとか、あるいはまた復帰運動を弾圧するというよろなことは、断じていたさないつもりであります。(拍手)     〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) もう総理がお答えになつたので十分尽きておると思いますが、ただ、MSAの交渉等において、日本の政治、経済、貿易等が制肘を受けるというようなことは、これは全然ありません。(拍手)
  25. 堤康次郎

    ○議長(堤康次郎君) 松田竹千代君。     〔松田竹千代君登壇〕
  26. 松田竹千代

    松田竹千代君 大阪府第五区選出議員といたしまして、私は、その全責任において、つとめて重複を避けながら、数点総理大臣とその政府に伺いたいのであります。  私は、総理の施政演説を承り、またここでたびたび総理の御答弁の様子を伺いまして、一種異様の感に打たれたのであります。そして、思い出したことは、夜郎自大なる言葉を生んだところの夜郎国王のことである。敗戦国として民族の興亡の岐路に立つ日本を忘れ、あたかも戦勝の大国の元首のごとき暴慢不遜の言辞をあえてせられることは、われわれとしてはどうしても不可解に思うのでございます。(拍手)これを要するに、敗戦後の困窮せる大衆の生活と一切接触することなく、ただ少数の特権階級あるいは側近にのみ取巻かれておる総理としては、往年の大日本帝国の幻影がいまだにその悩裏から消え去らないためであろうと思う。そこで、せめても、自大主義の権化であり、現存する官僚の親玉である吉田総理に、行政整理のことについて承つてみたい。  行政整理については、吉田首相は、五年前第二次吉田内閣組織以来、これを口にしないことはなかつた。しかも、いまだかつて一度もこれが効を奏したことがない。今度も、政府は、行政改革本部とか称して、緒方副総理を本部長にして、看板だけはものものしく発足したが、これまたまつたく看板倒れ、龍頭蛇尾に終つたことは、いまさら喋々を要しない。吉田首相は、本年の初頭にあたつて、内閣記者団との会見において、行政整理というものは、すす払いのようなものだよ、すすはじきにたまるから、毎年払い落さなけりやいけないよと言つたそうであるが、このすす払いという言葉ほど吉田内閣の行政整理のほんとうの性格をはつきり表わした言葉はないと私は思う。(拍手)吉田首相は、さすがに自分のやつておることだけに、鳴りもの入りで宣伝しておる行政整理の内容を実によくはつきりと知つておいでになる。  これを要するに、官僚出身であり、また骨の髄まで官僚政治家であるところの吉田総理には、国民、われわれが強く要望しておるところのこの非民主的な官僚機構の根本にメスを入れるところの行政整理、抜本的な行政機構の真の改革である行政整理、これに手をつけて行く意思は毛頭なく、官僚機構の根本には関係のない、外部にたまつたすすを払う程度のことで、これすなわち行政整理なりとして、国民の要望をごまかして、欺いておるのであると私は思う。(拍手)国民が要望し、またわれわれが望む行政整理は、そんなものじやない。単純なるすす払い、単純なる人間の数の整理ではない。また、単なる機構いじりや、部局の改廃、あるいは縮小、そういうことではない。行政機構の徹底的な改革である。この徹底的な改革によつて、明治藩閥政府以来国民の上にあぐらをかいて来た、非民主的で、かつ野草のごとく強靱で根強い日本官僚制度に根本的にメスを入れること、現在の官僚制度を打破して、官庁をして国民のものたらしめ、官僚をして人民の公僕たらしめようとするのである。これが単なる数の整理や部局の改廃でできないくらいのことは、だれにでもわかつているはずだ。日本の官僚が武器としておるのは、一般人民がうかがい知ることを許さぬ彼らの複雑多岐な官庁機構でありまして、この機構があるがゆえに、彼らは外部からの勢力の侵入を防ぎつつ、彼らの勢力をすべての時代、藩閥、政党内閣、軍部の専制、敗戦後のスキヤツプ政治の時代を通じて温存し続けて来たのである。この機構のゆえに、政党から出た各省大臣は、事務官らに翻弄せられて、その省の仕事の実際を握ることができない。この実情は、おそらく大臣になつた諸君、自由党の諸君も、よく身をもつて体験せられておることであると思う。(拍手)従つて、この官庁機構の核心に手をつけ、根本から改革しない限り、官僚勢力はびくともするものではない。  私は、ここに、その一例として、自由党の諸君のみならず、共産党をも含めて、各政党の諸君が身にしみて体験せられた事例を顧みてみたいと思う。第三次吉田内閣のときに、政府支払いの遅延についての陳情にほんとうに耐えかねた各政党では、挙党一致して超党派的にこれを促進するために、政府支払いの促進に関する特別委員会なるものをつくつたことは、諸君もいまだ御記憶のことと思う。そして、その委員会が、政府の支払いの遅延する理由について、ほんとうに真剣に超党派的に協力して調査したことは、その委員長であつた岡野前通産大臣の委員長報告を、共産党を含む各党が一致して拍手で迎えたことだけでもわかる。しかし、この各党一致しての協力調査にもかかわらず、政府支払いの遅れた理由を遂にあげることができなかつたことも御承知であろう。岡野氏の報告によれば、現在の官庁の機構によると、支払うべきものを支払わぬことがかえつて合法的だというような非論理的な言葉さえ出たと言つておる。この政府支払いの遅延の理由は、各党の知恵をしぼり抜いても遂に発見できなかつた。政府支払いを促進し得なかつた理由の第一としては、官庁機構の複雑多岐をあげておる。第二に、これに基く行政事務の煩瑣を指摘しておる。これを要するに、現官庁機構の複雑多岐は、全政党をあげての攻撃からも彼ら官僚を完全に守り得たのである。すなわち、官僚は現在の複雑な官庁機構を持つ限り、彼らは強固な防塞の中に、さざえのごとく、みの虫のごとく、安全に身をひそませておるようなものであつて、この官庁機構を根本から打破しない限り、簡素化しない限り、現官僚の民主化とか公僕化などということは百年河清を待つにひとしいと思う。すなわち、行政整理とは、このように官庁制度の根本に徹底的にメスを入れ、その勢力を根底から打破し、人民のための役人にしない限り、何の意味も持たない。すなわち、吉田総理は語るに落ちて、みずから告白したように、単なるすす払いにすぎないのである。  私は先ほども言つたのでありますが、みずから官僚であり、骨の髄まで官僚政治家であると言つたが、また官僚でなければ内部のことがわからぬから、そこもまた考えておるのであるが、私は、吉田さんが、自分のいわばたてであり、自分のほこであるところのこの官僚制度を打破するために、現在の官庁機構に根本的に手をつけるような徹底的な行政整理は決してやらぬ、そんなことは夢にも思つていない、すす払いでお茶を濁すにきまつておると信じていますが、それなら、吉田総理は、自分にはほんとうの行政整理をする意思はないのだ、すす払いをやるだけなんだ、現在の官僚制度を温存発展して行く方針であるということをむしろはつきり言つてもらいたい。もしまた、そうじやないのだ、真剣にやるつもりであるが、いかにワン・マンのおれのカをもつてしても及ばないのだというなら、これまたやむを得ないから、そうおつしやつてもらいたい。あるいはまた、日本国を強大な国にせしめた、かつての財閥や軍閥の二大支柱はスキヤツプによつて壊滅された、幸いに官僚制度は残つておるのであるから、これはあくまでも大切に温存して行くのが一番いいことであるとお考えになつておるのか。この点について、私はこれはほんとうに日本のがんであると思いますので、真剣に御答弁を願いたいと思います。(拍手)  次に、私は、これは吉田総理が非常に熱心であるようであります道路の改修の問題について、これまたほんとうに真剣にお伺いをいたしたい。総理が言うところの道路の改修は、自動車の乗り心地が悪いためであるかもしれない。その理由は知らないけれども、道路の改修、新設については、私はもろ手をあげて吉田総理に賛成する。これだけはまつたく全面的に賛成である。この四つの島に、何しろこれだけの人間をわれわれが食わして生き抜いて行かなければならないただ一つの道は産業の開発にあることくらいは、今ここでそんなことをことごとしく言つたならば、だれからも笑われるくらい、はつきりわかり切つたことであるが、しかし、三才の童子の知つておることを八十の老爺も行いがたいのは世の中の常である。吉田政府は常に声を大にして産業開発の急務を絶叫するが、それにふさわしい施策は一つも行つていない。吉田総理はしばしば、日本の持つ唯一つの資源は人間であると言つておられる。人間だけだ。しかし、総理は、この言うところの唯一の資源である人間を活用する方法を講じたことがありますか。進歩的思想を持つ青年労働大臣をもつて自任するか小坂君が、先日来しきりに、潜在失業者を含めて失業者の数は大したことはないと力説しておられるけれども、現に就労しておるところの人の中にも、その労働が生産に寄与せぬサービス業である者がどのくらい多いかは、あなたもよく御承知のことと思う。  ここで、私は、失業対策産業開発とを兼ねて、道路開発について、私の多年抱懐して来ておる意見を述べてみたい。欧米に比べて日本が今最も遅れておるところのものが道路であるくらいのことはみな知つておる。戦後欧米を視察して来たこの中の諸君は、いずれも痛切に感じておられるところである。吉田総理は、先年桑港に使いして、その道路の発達を自動車の乗り心地のよさくらいに感じたかもしれないけれども、同じ自由党にいても、具眼の士は、みなこれを産業道路の発展の大きな差異として痛感しておる。その人たちは、道路の開発、産業道路の開発を前提としなければ産業の開発はあり得ないことを知つておる。それで、私がここで言いたいことは、日本産業の開発のために、政府はその基本国策として、ほんとうに思い切つてまず道路開発を取上げて、これをその施策の重点とすべきではないかということである。吉田総理は、本年度の予算は重点的に編成したと言われておるけれども、実際みんなの言うところ、みんなの見るところは、まつたく重点を欠き、総花縮小予算であつたということがみんなの批評である。ゆえに、私は、今こそ政府はこの道路開発に総力を注ぎ、乏しい国家の予算はあり余るわが国の人的資源で補い、職を求める失業者を動員し、たとえば道路開発奉仕隊やあるいは産業開発奉仕隊のごときものを組織して、産業開発と失業対策との一石二鳥の効果をねらうというような考えを持たないか。政府では、あるいはこれに対して予算の不足を言うかもしれぬが、しかし、日銀の地下室に厖大な貴金属が眠つておるじやないか。これを海外に輸出して必要な資材や機械とかえることもできるだろう。また、手持ちのドルは、漫然と貿易じりを埋め合せて行くというようなことでなしに、こうしたことに重点的に使用なさるベきであると思う。今や、日本の施策は、まつたく八方行き詰まりの形で、じり貧の能勢になつておる。これを切り抜けるためには、どこかに重点を集中して突破口を切り開く以外にないと私は考える。そのために、私はこの道路開発の施策を提唱するのでありまするが、吉田総理並びに閣僚の諸君は、もつてどういうふうに考えられるのか、これまたどうぞ真剣にお答えを願いたいのであります。  通商貿易のことについて一言いたしたいのであります。国際収支の改善について、政府はいろいろ施策をあげておるが、これらの項目はいずれも古くから言い尽された題目である。要は実施にあるのである。欧州諸国は、戦後いち早くこれを実施して成果をあげておる。これに反し、日本ひとりが特需ドルかせぎの安易になれて今日まで来たことがそもそも間違いであり、政府の責任ではないかと思う。昨年来の貿易じりの逆調が特に著しかつたので、ようやく目をさまし、また内外からの要請もあつて、あわてふためいて圧縮予算をしやにむにつくり上げたというような今度のやり方である。しかも、総理は何ゆえ耐乏生活に垂範しないかとの質問に対して、この圧縮予算がそれだと答弁するに至つては、私は言語道断、さたの限りであるといわざるを得ない、(拍手)聞くところによれば、アデナウアー首相は、自国製の最も安価なフオルクスワーゲンをみずから運転しているということではありませんか。かくすれば、耐乏生活を強要せずとも国民はついて行くものである。もしそれ、みずからは運転せずとも、吉田総理がビユイツクを廃して国産自動車を使用するようになれば、閣僚諸公はもとより、官庁も右にならうであろうし、また国民がその姿を見れば、総理の徳を慕うに至るであろうと私は思う。何もとりもけ耐乏生活々々々々と声を張り上げなくても私はいいと思う。また、本年度の圧縮予算の中に、目黒公館の六百万円の家賃は入つておると思うが、かくのごとき公館は、日本はなやかなりしいずれの時代の総理大臣も試みなかつたぜいたくである。外国の葉巻やウイスキーのようなものまで日本国民がとやこう言いはしません。そんな個人生活に、個人のことに言及することは、私の趣味でもありませんから避けたいが、あまりにも日本の経済の危機を云々する総理にふさわしくないことばかりでありますから、あえて一言するわけである。  政府は、貿易の振興について、しきりに東南アジア貿易を叫んでおるが、ここでも英国、西独その他と競争を覚悟しなければならないのはもとよりである。東南アジアの購買力にもおのずから限度のあることを知つていただきたい。そこへ行くと、吉田総理の言う通り、金持とおつき合いしなければ損だという説を取上げるならば、アメリカとの貿易が大事となつて来るのだが、それではお伺いしたいが、この貿易の危機に瀕したといわれる現在、一体全体対米貿易の将来について、どういう見通しを、総理大臣初め外務大臣、通産大臣、大蔵大臣、関係大臣がみな考えておるのであるか。これは直接関係してなくても、一番大事な現下の問題であるから、国務大臣も各大臣も御意見があるならば、この際国民に知らしてもらいたい。(拍手)対米輸出の大宗であつた生糸の輸出ができた間は、多量の綿花、機械類を輸入しても、なお輸出超過になつたような時代もあつたのである。現今は化学繊維の優秀なものができて来る。まつたく逆超ばかり続いて来ておる。日本の輸出品は……。
  27. 堤康次郎

    ○議長(堤康次郎君) 松田君に申し上げまするが、申合せの時間は過ぎておりますから、結論をお急ぎください。
  28. 松田竹千代

    松田竹千代君(続) 心得ました。――日本の輸出品は、製品以外に何一つない。アメリカ人も役に立つものがあれば買うのだ。くだらぬものをダンピングされたら、日貨排斥をされるのもあたりまえだ。生活水準の高い国のましやくに合うところの高級品を、それ相応の値段で輸出することができるならば、販売の拡張は幾らでもできる。従来のような粗悪品では、今に東南アジアでもインドでも排撃を食うに至るであろうと思う。陶磁器でも光学機械でも、日本のものは優秀だと考えたら、それはかつて軍部日本の科学水準は世界の最高を行くものであると言つたのと同じことになると私は思う。マーケツトの研究も、顧客の趣味も、何一つ十分な研究ができておらない現在の状態である。私の考えでは、せめて日本の特色を生かし、美術工芸品にでも力を注いではどうかと思う。終戦後、無慮百万に近いGIが相当この宣伝をしてくれておるのであります。ただ残念なことには、これらのメーカーはことごとく弱小であつて、広大なマーケツトの需要に応じ切れない。そのために、みすみす季節々々の注文を逃がしておるという状態であつて、この組織と金融の道を開いてやれば、一挙に現在のこの品目によるところのドルかせぎの十倍を得るということは簡単なことであるというのが専門家の見方であります。この産業に力を入れて、スイスのような国のあのウオツチにおける、あるいはスエーデンのヨハンセン・ゲージ類のようなものにおける卓越したるところの産業としてでつち上げるお考えはないかどうかをお伺いしたいのでございます。もう少しでありますが、私は決して……。
  29. 堤康次郎

    ○議長(堤康次郎君) 松田君に重ねて申し上げますが、簡単に願います。
  30. 松田竹千代

    松田竹千代君(続) 私は一番最後に吉田首相の綱紀粛正についてお尋ねしたい。しかし、これは号令をかけただけでは何もできるものではない。独裁者はしばしば、命令を下したならば何でもできるように思つておるが、命令を下すだけで能事終れりとする場合が吉田さんにもあるようであるが、そういうことでは何もできるものではない。吉田総理は思いつきでひんぴんといろいろ指令を発することは有名な話である。それと同時に、どうしてそれを行うかということを考えないことも同様に有名な話であるが、われわれは、現に総理がしばしば物価引下げの必要を説かれておる、そのために安い原料を確保することが必要だと言つておることをしばしば聞いておつた。しかし、その安い原料をどこから求めよと命令したという話をいまだかつて聞いたことがない。それどころじやない。隣邦中国の安い鉄鉱石や粘結炭はまるつきり忘れて、高い運賃を支払つて、はるかに遠いアメリカから高価な原料を輸入して平然としておるのにあきれざるを得ない。吉田内閣の綱紀粛正の掛声は、まつたくこれと同様である、看板だけは掲げたが、しからば、いかにして綱紀の粛正をするか、その方法について少しも研究していない。また、粛正の具体的方法について何らかの手を打つたということもわれわれは聞いていない。戦争中に、統制経済によつて絶大な権力をその手に集中し、さらに敗戦によつて財閥が解体を命ぜられ、民間における力が、強力なる勢力がなくなつたがために一層その権力を増大した官庁が、戦争中及び敗戦後の国民道義の弛緩、権力の集中、さらに昔ながらの官尊民卑の精神によつて……
  31. 堤康次郎

    ○議長(堤康次郎君) 松田君、簡単に切り上げてください。
  32. 松田竹千代

    松田竹千代君(続) 今や汚職の巣窟になつておるのである。吉田総理は現内閣にスキヤンダルはないと広言されたが、吉田内閣のもとにおける行政官庁の大きな腐敗を知つておればこそこういう看板を掲げられたのであろうと思う。私はやめろと言われれば、今すぐにでもやめますが、官僚の汚職は知能犯である。外部からうかがい知ることの困難な、複雑な、多岐な官庁機構、煩雑をきわめる行政事務の中で、あらかじめ計画的に証拠を事前に隠滅し、かつ集団的に行われる犯罪である。これを摘発するのは容易なことじやありません。官々相守るの言葉があるくらいである。官僚が官僚の犯罪をあばくということは、なかなか徹底しにくいものである。従つて、たまたま摘発された汚職は、よく言われることであるが、氷山の一角にすぎない……。
  33. 堤康次郎

    ○議長(堤康次郎君) 再三御注意申し上げておりますので簡単に……。御了承願います。
  34. 松田竹千代

    松田竹千代君(続) それではこれでやめます。時間がありません、残念でありますが。私は、さらに重大なことを申し上げようと思つたのであるが、ここでやめます。     〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  35. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。  私一身上の弁明は、これは主義としていたしません。  また、行政管理はすすはきに終るかどうか、政府としては徹底的にいたす考えであります。道路改修またしかり、綱紀の粛正またしかりであります。(拍手)     〔国務大臣愛知揆一君登壇〕
  36. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 貿易の振興につきまして、特に対米輸出の伸長が大切であるということにつきましてはまつたく御同感でございます。従いまして、今後たとえば輸出組合の指導育成による輸出取引の公正化、安定化、貿易あつせん所の増強、あるいはまた絹スカーフ、まぐろ、陶磁器等についての米国側の関税引上げの措置を阻止するような外交交渉といつたような内外両面にわたるできるだけの措置を講じて参りたいと存じます。     〔国務大臣戸塚九一郎君登壇〕
  37. 戸塚九一郎

    国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申し上げます。道路産業の基盤で最も大切なことである、また、日本道路外国と比べてはなはだ劣つておるということは、まことにお説の通りだと存じます。道路の整備が必要であることは、おそらく天下の声であろうと私も考えております。政府におきましても、きわめて重点的にこれを取扱つておるのでありまするが、最近の自動車の激増、ことに大型の自動車、重量車が多くなつて、この道路が損傷せられることについては、私もまことに焦慮をいたしておる次第であります。御説一々ごもつともに拝聴いたしましたので、今後一層加えて善処いたしたいと存じます。
  38. 堤康次郎

    ○議長(堤康次郎君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五分散会