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1954-09-24 第19回国会 衆議院 法務委員会 73号 公式Web版

  1. 昭和二十九年九月二十四日(金曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 林  信雄君    理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君       押谷 富三君    高橋 英吉君       田渕 光一君    花村 四郎君       本多 市郎君    牧野 寛索君       並木 芳雄君    神近 市子君       木下  郁君    岡田 春夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 小原  直君  委員外の出席者         法務政務次官  長谷山行毅君         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         検 事 総 長 佐藤 藤佐君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 九月二十二日  委員田中幾三郎君辞任につき、その補欠として  木下郁君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  法務行政及び検察行政(所謂造船・陸運・保全  経済会・日本殖産金庫等の疑獄事件)に関する  件人権擁護に関する件     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    ○小林委員長 これより会議を開きます。  本日は一昨日に引続き、法務行政及び検察行政、いわゆる造船・陸運・保全経済会・日本殖産金庫等の疑獄事件及び人権擁護に関し、質疑を続行いたします。  佐藤検事総長は、午後はやむなきさしつかえがあるため、午前中だけにしてもらいたいとのことであります。  なお委員各位に申し上げますが、質疑者も大分多数でありますから、特に時間の制限はいたしませんけれども、なるべく簡潔にお願いいたしたいと思います。それでは質疑を続けます。田嶋好文君。
  3. 田嶋好文

    ○田嶋委員 検事総長は先般決算委員会に証人として御喚問を受けましたが、私たち傍聴をいたしておる者の目から見ますと、まことに痛々しい感じすら持たれるような気持で見られたのであります。今日は法務委員会でございまして、決算委員会のような態度で検事総長に向おうというような委員は一人もないのであります。ひとつそういう点は御安心くださいまして、できるだけ法務委員会らしく、またできるだけ許される範囲で、誠意をもつてお答え願えれば、われわれ委員にとつても非常にありがたいことだと思いますし、またそうあつてほしいと思うのでございます。  私は、先般起りました疑獄事件について、特に法務委員会の立場からお尋ねいたすのでございますから、やはりその角度は人権関係について向けてみたいと思うのでございます。御承知のように今度の事件は、おそらく日本の歴史が始まつて以来初めてといつていいくらいの大幅な、しかも幅ばかりでな上に、見方によつては非常に深い事件ではなかつたかとわれわれは見ております。承りますところによりますと、調べられました参考人だけでも一千人ということでございます。逮捕された被疑者と見られる者は、八十人を越える、こういうような大々的な事件、これに対して動員された検事が四十数名だと聞いております。検察事務官も百数十名は招集されたのでございましようが、一千人の証人を調べ八十人以上の人間を逮捕して、しかもこれに当つた検察官が延べ四十人――四十人以上になつたと思いますが、四十人程度であつたといたしますと、そこには人権擁護の問題と、逮捕によつて取調べるという問題とは非常に錯綜いたして参りますし、人権擁護するとするならば一方が支障を来す。人権をおかまいなくやろうとするならば、人権に支障を来すというような関係は、当然に起るべき現象だと私は考えます。これらの点に対して、検察最高責任者でありますところの検事総長は、いかなる考慮をめぐらしてこの事件に当つたのか、はたしてこの事件を最後まで完全なる事件として起訴することに自信を持ち、かつ確信を持つておつたかどうかということをまず承つておきたいと思います。
  4. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 ただいまお尋ねの点は、先般衆議院の決算委員会でも申し上げましたように、昨年の暮れに詐欺事件が検挙されまして、その詐欺事件から、会社の重役の不当貸付等による背件事件に発展いたしまして、その背任事件の家宅捜索によりましてある物的証拠が入手されたのが一月のたしか中ごろだつたと思います。その後に私の方に報告がありまして、こういう物的な証拠もあるし、またすでに調べておる当事者の供述等を報告を受けまして、相当大きな発展を見るのではないかという予想はされたのであります。しかしながらこの事件の関係者は初めから実業界の有力者また政界の有力者にも捜査が及ぶだろうという見当がついておりましたので、調べにあたりましては慎重に事を運んだのでありまして、むしろ世間からは少し調べが手ぬるいんじやないかという非難を受けたくらいに慎重に取運んだのであります。(「有力者じやなかつたら慎重にやらぬのか」と呼ぶ者あり)一般事件も同じでありますが、証拠に基いて犯罪の嫌疑が生じ、また証拠に基いて捜査を発展して行つたのでありまして、そういうふうにだんだん発展して行つたのでありまして、すべて証拠に基いて、相当自信を持つて捜査を進めて行つたのであります。
  5. 田嶋好文

    ○田嶋委員 御承知のように造船疑獄と関連しまして、時を同じうして起りました保全経済会、日殖というような事件は、まだその最終点に達していない、捜査の段階にあるという報告をわれわれは受けておるのでありますが、そういたしますと、造船疑獄関係も、犯罪の内容、あの当時の調べの状態からいたしますと、今日なおかつ継続されていなければならぬ事件ではないかというふうに私は推察するのでございます。この事件が、佐藤検事総長よりの逮捕要求に対する指揮権発動ということによつて中止された、ここらあたりに国民は疑惑を持つのでありますが、保全経済会と日殖とこの事件は程度においてどういう差があつたのでございましようか。私は同様ないしそれ以上のものと考えております。なお今日この捜査は進行されておるべき性質のものではないかと考えておりますが、この点を伺いたい。
  6. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 保全経済会の事件と造船関係、陸運関係の事件とはほとんど同時に捜査を進めて行つたのでありまするが、造船関係の事件と保全経済会の事件とはこれはまつたくその性質と申しますか、性格が違うのでありまして、たとえば造船関係の事件の関係者はほとんど全部といつてもいいくらい東京に在住している方が多いのであります。ところが保全経済会の事件は被害者に当るいわゆる投資者は全国の庶民階級にわたつておるのでありまして、ほとんど全国津々浦々に被害者が散在しておる。とうてい東京地検だけで捜査を進めることができませんので、全国の検事を動員して捜査を進めてはおりまするけれども、さように広範囲でありまた被害の金額も新聞紙上すでに御承知と思いますが、続々と追起訴がいまなお行われておるような次第で、まだ捜査は完結いたしておらないのでありまするが、造船関係の事件は極力捜査を進めまして、そうして七月末に大体事件の終結を見たのでありまして、この両者の事件が同時には発生しましたけれども、その被害の範囲、程度また関係者の遠近等の関係におきまして、その終結に差が生じた次第であります。
  7. 田嶋好文

    ○田嶋委員 保全経済会、日殖関係と造船疑獄関係の取調べの状況から見まして、明らかに違うと思いますことは、保全経済会、日殖においては逮捕拘禁せられた人数がいかにも少い、最小限度にとどめられておる。造船関係におきましては逮捕拘禁せられた人数が非常に多い。これはいかなる原因から生れておるのでありましようか。
  8. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 造船関係の事件はたびたび申し上げますように、詐欺事件が会社の背任事件に発展し、またその背任関係から金銭の政界に流れた関係で公職選挙法違反あるいは贈収賄事件、政治資金規正法、こういうふうに犯罪がだんだん発展して行きましたので、被疑者並びに関係人で逮捕を要するものが相当多かつたのでありまするが、保全経済会あるいは日殖関係の事件になりますと、被疑者が少く被害者が非常に多いという特色を持つておりますために、一概に保全、日殖関係の逮捕者が造船関係より特に少かつたということではありません。やはり事件の性格からまた被疑者の人数等から、つまり被疑事実の及んだ範囲が造船関係の方が多くて、保全、日殖関係の方が少かつたというような関係で、その逮捕人員に差が生じたものと思つております。
  9. 田嶋好文

    ○田嶋委員 保全関係、日殖関係は詐欺事件だとわれわれは承り、そう解釈しておる。造船関係はさつき検事総長がお答えくださいましたように、商法の特別背任に基くところの事件でありまして、それがいろいろと発展して行つたというのでございますが、詐欺事件の被疑者と特別背任の被疑者というのは、私たちから見れば、取調べに対しておのずから差異がなければならないと思うのであります。詐欺事件は御承知のように詐取の意思があつたかどうかということの判断が非常に困難でございます。これは当然に逮捕監禁の理由等も見つけられる事件だと思う。特別背任となりますと証拠もある程度はつきりいたしております。帳簿上の押収さえすればわかります。それからなお今の御説明によりますと、森脇メモを中心とした事件の取調べによつて、この事件が明るみに出ている証拠関係というものは、特別背任に関する限りははつきりいたしている。特別背任の被疑者をぶち込んで、そうして取調べをするということ自体が、私はどうも行き過ぎがあるのではないか。帳簿の押収もできている、森脇のメモによつてある程度の事実の捜査も完了している。その被疑者を特にほうり込む。一方詐欺事件の被疑者としては、主として頭に立つた人たちを入れて、詐欺の手先になつて動いた人間等はほとんど勾留されていない、こういうような矛盾を私たちは感ずるのでありますが、特別背任容疑で、これら造船関係の被疑者を勾留しなければならなかつた特別の理由というのはどこにあるのか、これを承りたい。
  10. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 田嶋委員のおつしやるような見方も一つの見方かも存じませんが、私たちの見ておるところはまつたく違うのであります。詐欺事件は、その詐欺被疑者の共犯と目せられるような人は、逮捕して調べるということもありましようけれども、被害者の立場にあるものを逮捕して調べるというようなことは避けなければならぬことで、おそらくそれはやつておらないのが通例と思います。ところが特別背任の事件になりますと、その特別背任の共犯と目せられる被疑者が相当出て来るのであります。たとえば海運会社で特別背任の事件があつたとしますと、その特別背任に使つた金がどこから入つて来たのか。たとえば造船所から入つて来たということになると、造船所にその特別背任の共犯者がいるのではないかという疑いが生じて来るので、そこで特別背任の共犯者たる被疑者が、造船会社の方にも見出される場合が多いのであります。それからその特別背任の金がどこへ流れて行つたかという、その流れ先を究明いたしますると、その金を受取つた方にまた何らかの犯罪が見出されることがあり得るのでありまして、さような関係から被疑者がだんだんふえて行くのでありまして、結果から見ましても、単なる詐欺事件の被疑者すなわち逮捕者が少い。また特別背任事件の関係の被疑者が多く、逮捕者も多かつた、こういう結果になつただろうというふうに見ております。
  11. 田嶋好文

    ○田嶋委員 その点はある程度了承できますが、私たちがこの事件について、また一つ問題として取上げ、疑問に思います点は、この造船疑獄に対しては世間が相当騒いだ、その反面に人権擁護の面に対して、検察庁は世間があまり騒いだためというわけではないかもしれませんが、手抜かりがあつたように見受けられる点が多々できておるのであります。御承知のようにこの事件の前後を通じて自殺者が二人出ている。この自殺者に対する真相は検察当局では調べたか調べないか。この真相は世間に公表されておりません。これらは当然公表されるべきものでなければならない。公表されなかつたために人権蹂躙という点に対して誤解を生んでおると見受けられる点もあろうと私は考えるのでございますが、この真相はどういうようになつておるのか。  いま一つは、われわれ法務委員会として非常に重大問題として国会の審議の都度取上げられておりますところの逮捕の問題、特に逮捕した人間の勾留期間の問題、検察当局は立法に当りましては勾留期間に対してはとにかく厳守するということを繰返しております。先般刑事訴訟法の改正に当つてわれわれは五日間の勾留の延長を認めました。この延長は最高の勾留の延長である。これ以上はいかなる理由があつても勾留は延期しないという確約を政府当局にせしめてこの法律を通したつもりなんであります。いつも法務委員会ではこの勾留期間というものが問題になつておるのにかかわらず、今回はあの俣野の逮捕に対しましては一回、二回、一面と勾留の再延長をいたしました。また第四回の勾留が出るんじやないかという世間の風評がありましたことは、検事総長御指揮に当つた関係で一番よく御承知のことだと思うのであります。一体われわれ法務委員会に約束されました勾留期間は反古にするつもりでやつたのか、これをやはり守り通す意思があるのか、そうするなれば今後はこの俣野被疑者に対する勾留の再々延長、三回にわたる延長は一体前例となるのかならないのか。私たちいなかに帰りますといなかの警察官がこう言います。警察が人権蹂躙をして検事さんは人権蹂躙をしないということを世間でよくいわれるが、私たちはこの勾留期間というものは非常に重大視してこれを守り通している。もう少し延べればこの事件は成り立つなあと思つても、勾留期間があるために釈放している。だのに今度は検事さんの方でみずから勾留期間の再々延長をやつたから私たちが勾留期間の再々延長をしたところで世間はふしぎに思わない、これは前例として取上げてかまわないだろうと公言している警察官が最近出て参つている。これに対して私はゆゆしき問題として今日考えておるのでありますが一体これは今後の刑事訴訟法の運営にとつて前例として取扱うのか、これをもつて最終とするのか。この自殺者に対する関係と、この勾留再々延長問題に対する検出総長の御見解、今後の御方針、御覚悟を承つておきたい。
  12. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 今回の海運関係並びに陸運関係の事件取調べの途中に、取調べられた者二名まで自殺者を出したことに対しまして、私ども検察当局といたしましては深く哀悼の意を表しますと同時に、その事故の発生について何らか検察当局に責任があるのではないかという考えのもとに極力調べたのでありますが、その間何らの手落ちがなかつたということを発見いたしておるのであります。それは取調べられた自殺者二人とも単なる参考人として検察庁に出頭してもらつて取調べた、任意に数時間ずつ取調べいたしまして、そしておのおの家へ帰つた。また役所に帰つた。それから後に自殺という事故が発生したのであります。取調べられたということがその自殺の一つの遠因といいますか、関係はあつたろうと思いますけれども、その取調べにあたつて苛察な取調べをしたとか、あるいはその取調べられた二人の者に対して犯罪の嫌疑をかけて、間もなく勾留の段階に入るとか、起訴の段階に入るというような見通しはまだなかつたのでございまして、まつたく参考人として取調べられただけでありまして、その取調べも逮捕もしない、もちろん任意の取調べで昼中に数時間取調べをしたという事実だけでございまして、また取調べにあたつて、取調官が苛酷な苛察な取調べをしたというようなことは毛頭ございません。なおこの事件の捜査にあたりましては、先ほど申し上げましたように相当大きな事件に発展するかもしらぬという見通しがありましたので、全国の各地から応援検事を求め、また東京地方検察庁におきましては、ほとんど全力を上げて取調べにあたつたのでありますがその係官が調べにあたりまして、私の方から特に一同を集めて強く訓示をいたしたのであります。それはとかく従来の大きな与件の取調べにあたりましては、その事件が公判に行つてから、あるいは事件が終息してから、取調べの途中に人権蹂躙があつたというような非難をときどき聞いておるのであります。そういうような関係で、今度の事件はそういり人権蹂躙というような世間の指弾を仰ぐようなことが毛頭ないようにということを厳重に申し渡しまして、また犯罪捜査にあたつていろいろ経験を持つておる先輩の方たちからも調べの方法等についていろいろと老婆心ながら注意をしておつたのであります。この事件の捜査の初めから終りまで、私は皆様から人権蹂躙の非難をこうむろうとはゆめゆめ考えておらなかつたのであります。それから俣野社長を被疑者の間に三度逮捕いたしました。これは仰せのように前例のない処置であつたのでありまして、再逮捕するときも三逮捕するときもわれわれは慎重審議して、どうしてもこれはやむを得ない、いわゆる特殊例外の場合だというつもりで三逮捕をいたしたのでありまして、その逮捕にあたりましては、最初の逮捕も、二度目の逮捕も、三度目の逮捕も、これは初めの逮捕の事実とは別な事実が調べの途中で発覚した、また再逮捕の調べの途中においてまた新たなる事実が発覚した、こういう関係でやむを得ず逮捕を繰返したのでありまして、今後の刑事訴訟法の運用にあたりしましては、私どもは刑事訴訟法上において強く勾留期間の制限を受けておるということを道守いたそうと思うのでありまして、今回の例を前例としてたびたび繰返すというようなことはいたさないつもりでおります。
  13. 田嶋好文

    ○田嶋委員 今回の例を前例としないという御確信、これはまことにうれしく拝聴いたしました。ぜひそうしていただきたいと思います。俣野被告人の三逮捕事件が前例にならないということになりますと、俣野を対象にして疑いをかけられた人の事案はむしろはつきりさしてやつた方が、俣野三逮捕を前例としないという検事総長の確言に対して裏づけを与えるのじやないかと私は考えるのであります。と申しますのは検事総長のように、どうしても再逮捕をしなければならない、例外をつくつてでも、再逮捕、三逮捕しなければならない理由があるのだということは、これは抽象的な言葉になるのでございまして、三逮捕の前例ができた以上、その次に、これは例外の事件で、どうしてもやむを得ない事情がありましたので、再逮捕、三逮捕いたしました、こういうことになれば、いかなる場合でも弁解の余地を残すことになると私は考えるのであります。検察当局で前例をつくつた以上は、前例を前例とした事件が生れ、これがまたやはり前例となる。そこで私は、少くとも俣野事件くらいに対しては、何がゆえに再逮捕また三逮捕しなければならなかつたのか、その理由はこういう理由ですという納得できる理由をここでお聞かせ願えますれば、再逮捕もやむを得ないじやないか、そしてこれはやむを得ない前例である、今後は再逮捕はできないということを捜査に当る当局、また国民にも納得せしめて、遵法精神がここに確立されるのではないかと思うのですが、俣野関係の事件内容に対しても、なお検察当局は発表できないという気持でおられるでございましようか。
  14. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 俣野社長の被疑事案に関しましては、共犯と目せられる被疑者も多数おりましたし、犯罪事実がなかなか複雑でありまして、最初の逮捕請求に掲げた被疑事実以外に、さらに新たなる事実がその途中において発覚し、また再逮捕しておる間にまた新たなる事実が発覚したという非常に複雑な犯罪容疑を持つておりましたので、その都度検察当局におきましては、刑事訴訟法の定めるところによつて裁判所に逮捕の令状を請求いたしました。逮捕の請求をする場合には、これはほかの事件でも同様でありますが、現実に逮捕する理由があるかどうか、また今逮捕しなければならぬという必要性があるかどうかということを、具体的な疎明資料と申しますか、証拠に基いて裁判所によく説明しなければ裁判所は令状を出さないのであります。以前は、御承知のように、逮捕の理由があれば、大体令状を出してもらえたのでありまするが、先般の刑事訴訟法の改正にあたつて、衆議院において、裁判所が逮捕の必要があるかどうかということまでも審査しなければならぬという制限を設けられましたために、裁判所は現在におきましては、逮捕の令状をするにあたつて逮捕の理由があるかいなかということのほかに、さらに必要があるかどうかということまでも詳しく審査されまして、納得した上で令状を出されるのでありまするから、私どもが逮捕を請求するにあたりましては、裁判所を納得せしむるに足るだけの逮捕の理由及び逮捕の必要について具体的な疎明資料を備えて請求いたすのであります。もしその疎明なり証明について欠くるところがあれば、裁判所は令状を出さない、そういう制度になつております。今申し上げましたように、それぞれの理由があり、必要があつて、再逮捕、三逮捕という結果になりましたが、今後はできるだけそういうことがなく、一回の逮捕で事実をみな調べて、そうして起訴の見当がつくまでに取調べを進めたい、こういう気持でおります。  なおその逮捕請求にあたつて、それでは具体的にどういう理由があつたか。再逮捕、三逮捕するその必要性を証明する資料をここに発表いたすということになりますると、どうしても関係者の取調べの内容を言わないと、なかなか御納得の行かないことだと思うのであります。逮捕するにあたつてすでに関係人も何人か調べた。その関係人のAはこう言つているし、Bはこう言つている、Cはこう言つている、さらにDという物的証拠があるというふうに、取調べの内容、証拠の内容を申し上げないと、その必要性の判断はなかなかできかねると思うのでありますが、そこは裁判所に十分説明し、また裁判所に疎明資料を出して、そうして令状を出していただいているのでありますから、ここは私ども並びに裁判所を信用していただいていいのではないかと思つております。
  15. 田嶋好文

    ○田嶋委員 最後に一点だけいたしまして、私の質問を終えますが、今の点は非常に重大でございまして、先例をつくつてはいけないとわれわれは考えておつた。その先例ができ上つた。今の御答弁で、これを特別の先例として、もうこれで今後はやらないように努めるという確信を得ましたが、この先例の内容を知ること自体が私はやはり国政調査権の範囲に入るのではないかと思つて、これは私はぜひ知りたいと念願している一人であります。ただ今のお言葉の裁判所と検察当局を信用してくれ、それを発表することは検察権、司法権の独立、検察権の職務上の秘密にわたつて非常にめんどうになつて来るということもよくわかるのでございますが、私はここらあたりが国政調査権と職務上の秘密に関する御答弁の内容との一致点を見出すことに非常に重大な点だと考える。われわれは先例をつくることを非常におそれるものでありますが、先例の内容はなるたけ知つておきたい、こう思う。しかしこれは今ここでお答えを願うことは非常にむずかしいと思いますから、よく御研究を願いたい。  次に一点の質問でございますが、検事総長はかつて疑獄事件の進行中に社会両派の代表者と会見いたしまして、その社会両派の代表者の諸君に対して、この疑獄事件の内容はいずれ国民の前にはつきりと真相を申し上げますという強い言葉をもつて答えられた、これは私の申し上げた通りの記事ではありませんが、そういう趣旨のことを新聞紙上で読み上げた記憶がございます。またこれに対して当時法務委員会で問題になつたとも思つております。世間ではいずれ検事総長からこの疑獄事件の真相の発表があるんだろうというように期待しておつた向きもあるようでございますし、今日われわれ政治家が野党諸君と立会演説をいたしますと、必ず野党諸君の言葉の中に、検事総長はこういうことをわれわれ社会党が代表に答えた、そうして発表すると言つておつたのに、政府の圧力をこうむつたために、検事総長はよう発表しなかつた、政府は指揮権を発動して、ますますもつて臭いものにふたをしよう、これにすつかり参つてしまつたのは検察当局であるというふうに一も三もなく頭から断定いたして立会演説の論旨を進めて行きます。この論旨を聞きますといかにももつともらしく国民大衆は聞いておるようでありまして、私たちそれに列席いたしておる者がいつも苦痛を感ずるのであります。おそらく検事総長は公式の会見ではございませんので、公式の会見でないときの言葉を野党諸君が用うることに対して理解できない気持でおられると思うのですが、しかしこれが一般公表的になつております今日の段階では、その当時検事総長がいかにお答えになつたかということをやはりわれわれ問いおきませんとちよつと困るのであります。また検事総長はその当時の気持としては、実際は真相をはつきりさせるお気持でおつたのじやないかというふうにあのときの空気から察しまして、私どもには察せられぬこともないのであります。あの当時のいきさつというものはどんなものであつたのでございましようか、また検事総長のあの当時のお気持というものはどういうお気持でいられたのでありましようか。これを最後に承つておきたいと思います。もう一回補充するかもしれませんが、お答えが満足せられますならばこれで私の質問はやめます。
  16. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 今回の事件の捜査の途上におきまして、国会方面、ことに今御指摘の社会等方面の方がときどき検事総長の部屋に見えまして、いろいろ激励の言葉を寄せられたことを記憶いたしております。その会見のときに将来この事件の全貌の発表というようなことについて、どういう言葉で私が申し上げましたか、その内容は記憶いたしておりませんけれども、おそらく適当な時期に適当な方法で公表せられるだろうという趣旨のことは言つたろうと思います。その当時もそう考えておりましたし、今でも私は法律の許す範囲において、なるべく全貌を国民に知らせて、そうして国民一般の考えの一つの参考資料になれば、検察のあり方というようなことについても非常に国民の理解を増すことになりますので、できるならばそうしたいものだというふうに考えておりますので、その気持でおそらく事件が終つたならば適当な方法、適当な時期に発表せられることもあろうということぐらいはきつと申したろうと思います。その趣旨から私は事件が終息いたしました七月三十日に、おそらく今までああいう例はなかつたかもしれませんが、私としてはなるべく国民一般にこの事件の捜査の発端から捜査の経過、また処分がどうなつたかということを大体公表したつもりでありますが、しかし国民の一部にはどうももつと具体的に詳細に発表しなければ満足できぬというような声も聞いております。しかしそこはやはり法律のわく内ではあの段階においてはあの程度しか言えないのではないだろうかという基準がありますので、私としては手一ぱい、せい一ぱいにあの程度発表したのでありまして、ああいう発表になつたことが、何も今田嶋委員の申されましたように、政府の干渉を受けるとかあるいは弾圧によつてあの程度の発表になつたのだというようなことは全然ございません。これはまつたく私の責任において、私の裁量で発表いたしたのであります。なおこの事件の関係者で数十名すでに起訴されておりますから、その事件の公判においては今後必ずや被告人あるいは弁護人の方からあるいは検察官の方からその事件関係の内容がおのずと公表されることがあるだろうと思います。
  17. 田嶋好文

    ○田嶋委員 ちよつと私個人的にたつた一言ですが、私の考えとしては、あの発表、これは今の言葉で、やむを得なかつたのでございましよう。ただ今吉田自由党総裁、吉田総理大臣を中心にして非常に世間がやかましく騒いでおります。それからわれわれ与党にいたしますれば、やはり政治資金規正法その他に関係をいたしておることであるから、野党の立場、改進党なり社会党左右両派の立場――政治資金規正法に関係のある立場でございますが、立場等もむしろ現在の取調べの結果とにらみ合せて公表してやることが、政党を育てることであり、むしろ世間の誤解を積極的に解くことになる、そうして検察当局の正当さも認めていただけることになるのじやないか、こういうように考える。吉田総理が政党の政治献金にどれだけタッチしているか、また調べの結果は出たのか出ないのか。また社会党の左右両派の委員長あたりは政治資金にどれだけタッチしているのか、この関係が一体調べの途中で出たのか出ないのか、また改進党はどうなのか、こういうことは各党とも発表せよと迫つておるのでありますから、自分の党の方は言つてもらつては困る、与党だけ言えというのでなしに、自由党も言つてもらつていいだろう、社会党も言つてもらつていいだろうというような気持でもつて今日問題になつておるだろうと思いますが、こういう点においてはもうちよつと積極的に発表してやつていいのじやないでしようか、談話で発表するということは、これはおこがましい話だと思うのですが、委員会の質問等に対しては積極的に答弁するという趣旨でもつて世間に公表することが、私たちは今の混乱した政界、今後の政治の是正というような面から必要ではないか、こう考えるのですが、どんなお気持でいらつしやいましようか、発表する御意見はございませんでしようか。
  18. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 検察のあり方としましては、御承知のように旧憲法時代と違いまして、新憲法となりましてからは、検察もなるべく民主的に運営されなければならぬというので、検察の民主化、検察の明朗化ということを強く要請されておるのでありまして、私も検察に対する国民の理解を深めるためには、できるだけ検察の運営について国民に知つていただくということが必要ではないかというふうに考えております。ところが具体的な問題になりますと、今御指摘の政治資金規正法の違反の問題でございまするが、この点はすでに公判に起訴いたしておりまして、新聞の伝えるところによりますると、やがて十一月の初めごろから公判が開廷されることになつております。そういたしますると、公判においてその係属しておる事件またそれに関連しておる事実はおのずと公表されることであるだろうと思うのでありまして、その公判開廷に先立つてただいま仰せのように、自由党がそのほかの政治資金規正法関係の容疑事実はどういうのがあつたか、改進党にはどういう容疑事実があつたか、社会党にはどういう容疑事実があつたかということのその調べの内容なり結果を発表することはどうも今の段階においては差控えるのが適当であろうと考えております。
  19. 小林錡

    ○小林委員長 押谷君、時間が大分たつておりますが、簡単にひとつお願いします。押谷富三君。
  20. 押谷富三

    ○押谷委員 今最後に田嶋君が尋ねられた点はきわめて重要な点でありますから、基本的な問題としてこの際検事総長の御意見を伺つておきたいと思います。すなわち今国会において問題になつておりまするのは、国会の国政調査権と職務上の秘密という、この限界についてでありますが、検察庁の最高責任者の地位にあられる総長といたしまして、捜査の内容に関する国政調査につきましては、職務上の秘密の限界をどうお考えになつておりますか。基本的にまず御意見を伺いたいと思います。
  21. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 検察はことに捜査にあたりましては、関係人を秘密に調べております。この秘密に調べるということは、一面において関係者の名誉を守ることにもなりまするし、検察の運営、その事務の能率向上にもなりまするので、昔から検察の、ことに捜査の仕事は秘密に行われておるのが例になつております。この秘密に取調べたものを発表するということになりますると、そこで関係人の名誉を保護する上においてどうかということも考えなければなりませんし、また、関係人の取調べの内容を発表することについては、将来の検察の運営に支障を来しはしないかということも考えなければならぬのでありまして、そういう点を研究いたしますると、抽象的に申し上げまして、捜査の取調べの内容を発表することは、関係事件の公訴を維持する上においても支障を来す場合があるし、また関係事件には支障がなくとも、将来の検察の運営に非常な支障を来すというようなおそれもあるのでありまして、かような点になりますと、私どもはこの点は検察の秘密として、つまり職務上の秘密としてこれを守らなければならぬのじやないかというふうに考えております。さように、一旦職務上の事項は具体的な問題について一々検討されるのでありますが、その具体的な問題について、私どもの考えで、これは職務上の秘密であるからという認定をいたしましても、もし監督官庁の方でいろいろ国家的な立場から考えて、捜査には、検察には支障を来すだろうけれども、この程度なら発表しても国家のためにいいんじやないかということになれば、その職務の秘密について発表することを承認いたしてくださるだろうと思うのでありまして、承認あれば、それは法律の命ずるところ従つて、われわれは発表せざるを得ない、こういうふうに考えております。
  22. 押谷富三

    ○押谷委員 検察官の捜査内容を発表するということについて、準司法権というような立場にある検察庁の仕事は、原則として発表しにくいのである。準司法権というような考えがこの職務上の秘密の限界に加わつておるかどうか、その点についてはどうですか。
  23. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 私どもが職務上の秘密に属するかどうかということを判断するにあたりましては、秘密に取調べたことを今公にするならば、関係人の名誉を保護する上において欠くるところがないかどうか、またすでに公判に係属しておる事件の公訴維持について支障がないかどうか、さらに将来の検察運営上支障がないかどうかという観点に立つて、これは職務上秘密を保持しなければならぬかどうかということを判断いたすのでありますが、ただいまお尋ねのように裁判の公正と申しますか、裁判の独立にどうだろうというような問題は、これは私どもとしましては、たとえば公判に係属しておる事件ならば、その事件の公判開廷前に発表するということは、やがて公正なる裁判の運営に支障を来しはしないか。つまり裁判官に予断を抱かしめるようなおそれはないかどうかということもやはり一つの考えといたしております。
  24. 押谷富三

    ○押谷委員 具体的な問題で、造船疑獄の大勢の被疑者をお調べになりました一連の事件は、目下裁判所において係属いたしております三十五名の被告人に対する造船関係の公訴事実、この公訴維持に面接間接に関連があるとお考えになつておりますか。この大勢の被疑者を調べられました一連の全部の事件が、かれこれ三十五名の現在係属しておるこの事件の公訴維持に必要なものであるか、関連があるものであるかこう承つていいのであるかどうかを聞きたいと思います。
  25. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 その点になりますと、具体的な事項について現に係属しておる数十名の被告事件に直接または間接にどういう関係があるであろうかということを詳細調べなければ、はつきり申し上げかねるのでありますが、大体先ほど申し上げましたように、一つの詐欺事件から特別背任事件に進展し、特別背任事件から贈収賄、政治資金規正法違反等の事件に発展して行つたのでありますから、大体直接または間接の関連はあるだろうと思つております。
  26. 押谷富三

    ○押谷委員 最後に一点お伺いしますが、これは別個のことですが、先般吉田総理が自由党の支部長会議において検察庁法十四条に基く指揮権の発動に言及せられましたあの発言内容について、検察庁の方面に多少刺激したことがあるので、その点について法務大臣に釈明があり、法務大臣を通じての釈明に了承をせられたというようなことを聞いているのでありますが、法務大臣からどういう点についていかなる釈明があり、それをどういうふうに了承せられたかということを具体的に承つておきたいと思います。
  27. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 その点につきましては、ほかの委員会でも申し上げたのでありますが、法務大臣から、総理大臣の釈明としてこういう返事があつたということを聞いたのでありまするが、その総理大臣の釈明というのはごく抽象的なものでありまして、そのときの法務大臣のお話によりますると、あの発言は既存の法律を無視するようなつもりは決してなかつた、また毎日職務に健闘しておる検察庁の職員を非難するような気持は全然なかつたのであるが、用語が不十分なために真意を尽せないではなはだ遺憾である、こういう趣旨だつたと記憶しております。
  28. 押谷富三

    ○押谷委員 私はこれで終ります。
  29. 小林錡

    ○小林委員長 高橋禎一君。
  30. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 私はまずこの際法務大臣がただちに当委員会に出席されるよう要望いたしておきます。  そこで法務大臣が出席しておりませんので検事総長なり刑事局長に二、三質問いたしておきます。  私の質問いたしたい趣旨は、まさに今日本の検察権は危機にあるというふうに私は考えるわけであります。と申しますのは、いわゆる佐藤自由党幹事長の被疑事件に関連して、ときの犬養法務大臣が検察庁法第十四条に基いて指揮権を発動されました。ところがその指揮権は法律的に不法であるかどうかというようなことについて、これは専門的の立場にあるわれわれとしてとやかく申し上げるわけではない。ただそれがきわめて妥当を欠いておつたものであるということは、ひとり国会の空気だけでなく、国民のすでに輿論となつておるのであります。そしてまたその指揮権を発動されましてから後の内閣総理大臣の言動、その他政府のなさることに、きわめて不明朗、不可解な点が多々ありますので、なおこれが一層指揮権発動ということについて妥当でなかつた、不当であつたという印象を深めて参りました。それはすなわち政府の行政の力をもつて検察権というものの公正を無視している。すなわち検察権を政府に隷属さしておるものである、こういうふうな考えを国民が持つておるわけであります。その点をこの際解明しておきませんというと、国民は検察権に対してこれはますます  信頼を失うものである、それがすなわち将来検察関係の法律の制定にあたつても、あるいはまた予算の審議にあたつても、きわめて重大な、しかもそれは悪い影響を与えると思うのでありまして、国家の今の治安ということを思いますときに、そういうことになるということはわれわれといたしまして遺憾千万であります。この際どうしても検審権の中立性を確保し、その独立を保ち、それを健全に将来発達さして行くようにわれわれは努力しなければならぬ、そう思いますから、これからこれに関連して二、三の質問をいたしたいと思うわけです。  そこで検事総長は、佐藤自由党幹事長の被疑事件に関連して指揮権が発動されました場合に、検事総長自身はこれに対して非常に不満に考えていらつしやつたように、これまでの検事総長の談話なりあるいは決算委員会等における証言等からこれは推測できるわけでありますが、この際あらためてその点について質問しておくわけです。すなわちあの指揮権発動がなされるにあたつて、検事総長は検察の立場から非常な不満のお気持を抱かれたかどうか。そしてまたひとり検事総長のみならず、その部下である検察陣営全体がこれに対して非常な不満、すなわち検察権の公正なる逆用を阻害するものであるというふうに考えていたかどうか、この点についてお答えを願いたいと思います。
  31. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 その点につきましてもすでに他の委員会において私の所信を申し述べたのでありますが、率直に申しまして先般のいわゆる指揮権の発動に対しましては、われわれ検察官一同非常に不満の意を持つておつたのでありまして、その当時も私は事件の捜査に非常な支障を来し、また検察官全部の士気にも影響することを思うとはなはだ遺憾であるということを申し上げたのでありまして、その点は率直にさように答えざるを得ないと思います。
  32. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 そこで第三には、その指揮権発動の結果、すなわち造船疑獄関係については検察運営上非常な支障を来したものである、こういうことはこれまた検事総長なりあるいは馬場東京地方検察庁の検事正なりが決算委員会等で証言されたところでありますが、私はこの際当委員会においてもやはりその点を明確にしておきたいと思うのであります。すなわち佐藤自由党幹事長の被疑事件に関して、犬養指揮権が発動された結果、造船関係については捜査上非常な支障を来したものであるということは間違いないかどうか、その点を明確にお答え願いたいと思います。
  33. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 その点もしばしば申し述べましたように、佐藤氏に対する逮捕請求について、いわゆる指揮権の発動によつて逮捕ができなかつた。逮捕はできなかつたが、その後任意捜査によつて極力万全の努力をしたのであるけれども、思うような結果は得られなかつたということは、皆様御承知の通りでありまして、それを言いかえますれば、指揮権の発動によつて捜査に相当影響を来したということは、これはいなみがたい事実であると思います。
  34. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 その指揮権発動について法務省側は当時新聞発表を行いました。それによりますと、自由党幹事長佐藤榮作氏の第三者収賄等のいわゆる汚職案件につぎ、逮捕請求許可の請訓があつたが、事件の法律的性格と国家的重要法案件の審議の現状にかんがみ、本件は特殊例外的な事情にあると認め、重要法案通過の見通しのつくまで暫時逮捕請求を延期して任意捜査を継続すべき旨指示した、こう言われていたわけであります。ところが吉田内閣総理大臣が本年八月十日自由党支部長会議において演説をされて、この指揮権発動に触れておられるわけであります。検事総長はおそらくこの演説の内容を録音なりあるいはその翻訳なりによつて御了知になつておると思いますが、こういうふうに言つておる。「汚職事件であります。指揮権発動の問題であります。政府としては信念を持つて指揮権の発動をいたしたのであります。汚職問題、汚職問題と申しますが、その内容は何であるか、何がゆえに幹事長を逮捕しなければならぬかということを突きとめてみますと、政党の会計簿といいますか、記帳が不十分であるということに帰するのであります。一体政党の会計帳簿なるものは不正確であるのが当然であるのであります。何となれば善意の最も好意ある寄付者は売名のためではないのでありますから、自分の名前は、寄付者として党の資金は喜んで寄付するが、名前は出してもらいたくないと申すのが当然であります。しかるにその寄付者の名前あるいは金額等がふぞろいであるというゆえをもつて逮捕しなければならぬということは私において最も不可解に存ずるのであります。逮捕ということは」云々。中を省略いたしまして、「党から活動資金として運動資金をもらつたという者が、資金はいいが、しかしながら自分がもらつたということを名前は出してもらいたくないというのが、これは人情であります。にもかかわらずその使途が不明瞭であるがゆえに逮捕しなければならぬということであればこれまたはなはだおかしな話と言わざるを得ないのであります、もしかくのごとくするならば、幹事長になり手はなくなり、党に資金を寄付する者はなくなり、あるいは党から金を受取る者はなくなるということになれば、これはまさに政党政治の破壊である。政党政治の破壊を目標とするわけではありますまいが、結果において政党政治の破壊を来すようになるならば、これは政党として断じてこれと闘うのが当然であります。これ政府が指揮権を発動したゆえんであります。この点についてはいろいろ誤解がある。また新聞その他においていろいろおもしろ半分にいろいろ流説をなしている者があるが、政府はかかる流言飛語に対しては何ら顧慮することなく、法律の命ずるところによつて指揮権を発動いたしたのであります。」こういうふうに言うております。そうすると、犬養法務大臣が指揮権発動直後に新聞に発表いたしましたところの内容及び法務当局が当委員会等においても発表されたところのいわゆる指揮権発動の理由と、内閣総理大臣の説明されるところの理由とは全然これは内容が異なつておるわけであります。そこでこの吉田内閣総理大臣の演説を御承知になつたときに、検察当局としては一体犬養法務大臣の発表したところの指揮権発動の理由と、吉田内閣総理大臣の発表したところの理由とが非常に異なつておるから、これはどうもそこに不明朗なものがある。犬養が言つたのがほんとうであるか、あるいは吉田の言うのがほんとうであるか、あるいは両方ともうそを言つておるのじやないかということを考えられるのが当然であると思います。そこで、こういうふうな事情のもとにおいて検事総長は一体あの指揮権発動をなした理由は那辺にあるものであるかということについてまじめにお考えになり、いろいろ事情を探究されたかどうか。そしてこれが国民に対してはきわめて悪い影響を与えており、それがまた検察の威信を非常に私は結果において傷つけると思うのですが、これらに対して一体どういう対策を持つて検察の威信を保たれようとするのであるか、それらについての所見を承りたいと思います。
  35. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 今回の事件の捜査にあたりましていわゆる指揮権の発動がありましたその直後に、前犬養法務大臣があれは特殊例外的な措置であるということを申されたことも聞いております。またおそらく法務大臣はほんとうにそういうふうに理解されてああいう措置をされたことと私たちたちも信じておるのでありますが、その後新聞の伝えるところによりますと、吉田総理大臣が自由党支部長会議においてただいま高橋委員の申されましたような内容を発言したということを新聞に報ぜられたましたので、私ども松葉当局といたしましては非常に驚いたのであります。逮捕請求にあたつてその理由なり必要性が法務大臣の方から総理大臣に十分な御理解が願えたのかどうかということさえ疑つたのでありまして、そこでさつそく小原法務大臣に対しまして、新聞の伝えるあの総理の発言というものはわれわれはどうもわからない、どういう事情で、またどういう真意で申されたのか、また総理大臣において逮捕請求なり指揮権発動についてその当時の事情を何らか誤解があるのではないかと思われるから、どうぞひとつ、法務大臣としては検察に理解のあるわれわれの先輩でもあらせられるし、ぜひ総理大臣がどういう事情で、どういう真意で述べられたのであるか、また誤解があるならば十分ひとつ誤解を解いていただきたいということをお願いいたしたのでありますが、その後先ほど御質問のありましたように総理大臣の方から法務大臣に釈明をされて遺憾の意を表されたということを聞きまして、われわれはさように了承いたしたのであります。
  36. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 私の心配いたしますのは、これはただいまの検事総長の御答弁の中にも現われた言葉でありますが、一体あの指揮権発動をするにあたつて検察当局と法務大臣の意見が非常に対立しておつたということは、これは認められるのです。そこで、普通ならば口頭でもつて双方の話合いで円満に、かりに指揮権を発動するにしても、将来に問題が残らないように指揮権の発動ができるわけです。ところがそこに意見の対立があるために書面をもつて禀請をし、書面をもつて指揮をしなければならぬというような深刻なる場面に遭遇したことは、今日までの経過から見まして私は疑う余地はないと思う。そこでその書面によつて法務大臣に請訓をされたときに、これは法務大臣の処置に関するわけですが、ほんとうに犬養法務大臣が自分の識見をもつて指揮されたという場合と、それからやはり内閣総理大臣その他いわゆる政府に諮つて、その意向として指揮権を発動したものであるか、そこにはまだまだ私は疑問がある。内閣総理大臣の言葉をもつてすれば、やはり犬養法務大臣の独自の判断においてなされたものでなくして、総理大臣その他内閣側のいわゆる政府の意向としてこれをなされたものである、こういうふうに考えられるわけです。ところがその内閣の意見が決定する際に、犬養法務大臣が検事総長のなしたる禀請をそつくりそのまま正直に総理大臣その他に連絡をして、そうして判断をして下した指揮権の発動であるか、しかもその間に犬養法務大臣が吉田総理大臣等に連絡するのにきわめてあいまいなことを言つて、しかも内容を間違えて報告をして、指揮権発動の原因となる意見がそこで生れたものであるか、あるいはまた犬養法務大臣が正確に連絡をしておつたにもかかわらず、吉田内閣総理大臣が爾後ことさらに事実に反したことを放言したものであるか等は、これは検察の将来ぜひとも究明しておかなければならない問題であると思うのです。これをあいまいにしておいたのでは、将来の検察権の運用の公正ということについての保障はできない。検事総長自身またその職責を十分果されるのにいろいろの支障があると私は思うのです。だから今お尋ねしたような諸点について検事総長はお考えにならないはずはないと私は思いますから、お考えになつてどういう処置をおとりになつたか、小原法務大臣を通じて吉田内閣総理大臣が外交辞令のようなことでもつて検察官を誹謗するような考えはなかつたというようなことで、そういうお世辞でもつてこの問題を解決しておくということでは、私は非常に危険であると考えるわけです。ここのところについての検事総長のお考えなりあるいは今日までそれらについてなされたる処置について、そしてまた何らこれについての手続がなされておらぬということであれば、将来どういうふうにしてこの点を明らかにしようとお考えになるのであるか。国会としてもこの点を明確にしなければなりませんが、検察の最高責任者としての重責を持つておられる検事総長としてもこれを黙過しておかるべき筋合いのものでは断じてないと思いますから、その点について所信を伺いたいのであります。
  37. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 高橋委員の御質問の御趣旨はよくわかりました。私どもその点が非常に心配になりましたので、先ほど申し上げましたように小原法務大臣を通じて首相の真意を確かめ、また誤解があるならば誤解を解いてもらいたいということを申し上げました。その後たびたび法務大臣に対して、どうも何らか誤解があるのじやなかろうか、誤解があるならひとつよく大臣から御説明していただかなければならぬし、またわれわれが直接御説明する方がよければそういたしますということを申し上げたのでありまするが、総理大臣からの御返事をいただいてから後の法務大臣の言葉から察しましても、どういう理由で逮捕請求がなされたのであるかというような、そういう事実は総理大臣においては決して誤解をしておらないというふうに、私は法務大臣の言葉から承知いたしておるのでありまして、決して今は誤解はしておらないと思います。
  38. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 おそらくその点について内閣総理大臣からも小原法務大臣からも納得の行くような御説明がなくして、ただ抽象的におれは誤解しておらぬとか、あるいはまた検察官を誹謗する考えはない、新聞社に対しての考えはこうであつたとか、またいわば外交辞令、そういうことをもつてお茶を濁しておる程度であつて、この問題については政府当局が明瞭にしようという誠意がわれわれには認められないと思うのです。おそらく検事総長も同感であると思いますが、将来は――将来といいましてもこれから引続いて国会でも明瞭にしますが、検察当局としましても明確にされるように御努力になられることを私は切に要望いたしておく次第であります。  そこでお尋ねをいたしたいと思いますのは、衆議院の決算委員長から職務上の秘密に関する証言につき承認を求める件というのを法務大臣に要求いたしました。それに対して回答があつた模様でありますが、この回答をなすにあたつて検事総長その他検察当局は法務大臣から御相談にあずかつておるのかいないのか、その点をお伺いいたしたいのであります。
  39. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 私どもが国会に証人として呼ばれまして、その証言の際に尋問事項あるいは答弁の事項によつて、これは職務上の秘密の範囲に属するものと思うということで答弁を避けた事項が数項目ありました。この秘密であるかどうかということを判断するのは私ども証人の責任において判断して申し上げたのでありまするが、この秘密の範囲のうちで証言することを監督官庁が承認するかどうかということは、これはもつぱら監督官庁の意見で判断されることと思うのであります。しかしながら監督官庁たる法務大臣が承認するかあるいは承認を拒絶するかということを定める前にあたりまして、今回は特に私どもに意見を徴せられたのでありまして、私どもの方からは、この事項についてはこういう理由で公表することは非常な支障があるから公表したくないという意見を申し上げました。おそらくわれわれ当局の意向を十分参酌されて、法務大臣から承認不承認の御返事をなされたことと思います。
  40. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 そこで問題は非常にむずかしくなつて来るのですが、御存じのように検察権は準司法権とは言うものの、今の制度からいたしますと行政に属しておつて、内閣総理大臣は行政各部を指揮監督するし、国務大臣に対しては御存じのように罷免権を持つておる。そしてその法務大臣が検察庁法第十四条によつて検事総長に対して、個々具体的な事件についてもこれを指揮することができるような制度になつておるわけであります。そういたしますと内閣総理大臣の考えがそのまま検事総長に、事件の処理の指揮をするというようなことになるわけなのであります。そういたしますと、検察権というものはまつたく内閣総理大臣に隷属したという姿になつて参ります。それではせつかく口では検察権の中立性だとかあるいは準司法機関だから三権分立の精神に従つてその独立をはからなければならぬとは言うても、実際上これをなし得ないのではないかということになるのです。そこで私はこの問題を解決する道として、やはり憲法が国政に関する調査権を国会に認めておるというところに大きな意義があると思う。すなわち内閣総理大臣といえども、法務大臣といえども、検事総長に対して不当なる指揮権を発動しておつた場合には、それが国会の国政調査権によつて調査されてそして国民の前にその点が明瞭になるから、自粛自戒して誤つた指揮権を発動すべきものでないのだということになる。そこに担保があるわけです。ところがその国政調査権に基いて証人を調べますと、これはいわゆる公務員として職務上知り得た秘密を守らなければならないとして、証言に限界があるということは当然であります。ところが議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の精神からいいますと、いわゆる検察官もいろいろの立場に立つて訴訟法上秘密を守らなければならぬことになつておるけれども、しかし、国家の重大な公益の立場に立つてこれを考えるときには、その問題はやはり若干犠牲にして、国会にこれを明らかにしなければならないというのが、私は法の精神であると思うのです。これは国会法によつても、あるいはまた憲法が新しくなりましてからいろいろ制定された法律、たとえば刑事訴訟法の書類の秘密に関する関係の法律とか、あるいはまた名誉毀損に関する関係の法律等から見ましても、公益のためにはやはりこれを明らかにしなければならぬ、通常の状態においては秘密にすべきものであるけれども、しかしもつと高い、憲法の要求する国家的な、公益的立場に立つて考えれば、これを公にしなければならないということについては疑いないと思うのです。そういうふうなものであるにもかかわらず、先ほどもお尋ねいたしました、決算委員長から法務大臣の承認を求める件について、やはり刑事訴訟法的立場に立つて秘密を守らなければならぬという検事総長のお考えは、単に検察当局として、いわゆる事務的な立場に立つて意見を述べられたもので、さらにその上に法務大臣としては政治的立場に立つて、それは若干参考にはなるでしようけれども、しかし、より高次的な立場に立つてこれを解決しなければならない問題である、こういうふうにお考えになるのかどうか。すなわち、自分は検察官の立場に立つては秘密は守らなければならぬけれども、しかし政府の立場に立つて考えて、これは公にする方が相当だと思う場合にはすなおにその意見を尊重されるという立場であるかどうか、ぜひとも検察官の立場を固執して刑事訴訟法的にお考えになるのか。それらについて、すなわち検察権の中立性確保、準司法権としての検察権の確立の問題と関連して、忌憚のない御意見を承りたいと思う次第であります。
  41. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 その点は先ほど申し上げましたように、私どもが職務上の秘密であるかどうかということを述べるにあたりましては、もつぱら検察の事務を遂行する上において、すなわち事務的な立場から、これは職務上の秘密であると思うということを申し上げたのでありまして、またこれを公表してもさしつかえないかどうかということを申し上げるのも、すべて事務的な立場から意見を申し上げたので、さらにその上に立つて、政治的な汚職と申しますか、国家的な見地から、公益の立場から職務上の秘密ではあるが、国家的な立場から、これは今公表する方がよろしいかどうかということの判断になりますと、これは法務大臣の裁量によつて判断さるべき問題であろうと考えておりますので、もし監督官庁から公益上これは発表してよろしいという承認を得れば、事務上さしつかえのあるような場合でもそれは発表せざるを得ない、こう考えております。
  42. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 今の問題に関連してちよつと刑事局長にお尋ねをいたしますが、決算委員長から要求のあつた承認を求める件については、これは法務大臣から回答をなさつたことは間違いありませんかどうかということ、法務省から検察当局にその問題に関連して御相談になり打合せになるというのはどういう趣旨のものであつたか、それについてお答え願いたいと思います。
  43. 井本台吉

    ○井本説明員 法務大臣から決算委員長あてに書類が出ておるのでございますが、直接国会の方にお届けしたその衝に私は当つておりませんので、どういう形で出したかということになりますと、今明確にお答えできませんが、これは確かに届いていると私は考えております。  それから、この回答をするについて、どういう趣旨で最高検察庁などと打合せをしたかというお尋ねでございますが、職務上の秘密事項について、もしこれが外部に表示された場合にどういう支障が起るかということにつきましては、この事件を直接指揮しておられます最高検察庁の御意見を聞くのが私どもの判断の重要な材料になりますし、おそらく法務大臣といたされましても、さような意見を聞きまして自分の最後の決心をする重要な材料にしたいとお考えになつて、さようにしたのではないかと考えるのであります。
  44. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 これはほんとうは法務大臣にお尋ねすべき問題だと思いますが……。
  45. 小林錡

    ○小林委員長 法務大臣は後に来られますから……。
  46. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 それでは法務大臣がおいでになりましてから、またお尋ねいたします。
  47. 小林錡

    ○小林委員長 神近君。
  48. 神近市子

    ○神近委員 今大体高橋委員からの御質問でわかりましたけれども、今の時代に検事総長をお勤めになることはたいへん御不幸であつたと考えて、同情しております。それで検察庁の方では、威信を十分国民の前に確保しているというように思つていられることが、今までのいろいろの御返答で想像されるのですけれども、事実はたいへん違つていると私は考えます。国民の権力者に屈服したという印象はひどく強いと思うのでありましてどういうふうにしてこれを回復するか、正義の殿堂と思われていたものの権威をどうして回復するかということは、相当長くかかつて努力されなければ元には復さないと私どもは想像します。それを回復するためにどういう努力をなさつたかと言えば、やはりこの事件の遂行のうちに機会がときどき来るはずだと思います。そして今までにも、七月三十日の御声明が出た日、それから八月十日の総理大臣のあの演説に対する態度によつて機会はたびたびあつたと私は思うのです。第一の七月三十日の発表はあれが最低の発表で、それ以上のことはできなかつたのでしようか。裁判進行の上でまた発表することができて、それによつて国民の疑惑を解くというような信念を持つているということでしたけれど、おそらくあの裁判が決定いたしますのは三年か四年あとだと思われます。そうすると、その間の時差というものがここで大きく問題になると思います。あの発表をもう少し国民に納得行かせるような形でなさるべきだつたと私どもは考えたわけですけれど、その裁判の最終決定まで待つてこれを回復しようというお考えでしたらば、その間の空白はどうなさるかということが一点。  それからさつき八月十日の支部長会議における首相の演説に対して非常に御不満と、非常に驚いたという表現を何度もなさつております。そのあとの手続きに私どもは納得が行かないのでございます。法務大臣に要求した、そして誤解がありはしないか、もしわれわれ出ることが必要であつたらば御説明に出るということは申し入れたとおつしやいますけれど、どうしても検事総長の方から面会を総理大臣に求めるというようなことはできないことなのでございますか、そしてそれをなさらなかつたというのはどういうわけなのでございますか、その点をちよつと伺わしていただきたいと思います。
  49. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 今回の造船関係並びに陸運関係事件の終結にあたりまして、七月三十日に検事総長談をもつて捜査の経過並びに処分の結果を一般に発表いたしたのでございまして、この発表の範囲、限度と申しますか、その点は、先ほど申し上げましたように、将来検察権を行使する上にあたつて支障がないように、また関係人の名誉をできるだけ保健することができるように、こういうような制約のもとに発表いたしたのでありまして、あの当時としてはもう発表し得る限度は発表したつもりでおります。ただ関係人が非常に多うございますから、あの中で、この関係人は将来の公判にも関係がないじやないか、あるいはそれを発表しても将来の検察運営上支障がないのじやないかというようなものも探り出せばあるいは一、二あるかも存じませんけれども、もしその点だけ具体的に内容を発表いたしますと、ほかの事件は全部内容を発表しない、また具体的に名前も出さぬというようなふうになつておるのに、一人や二人の関係人だけの事実を発表するということではどうも発表全体が体をなしませんので、あの当時としてあれがわれわれとして発表し得る限度だつたと考えております。  それから吉田総理の発言問題につきまして、私から面接総理大臣に、どういう事情でああいう発言をなされたのか、どういう真意であられるのか、また誤解の点がないかどうか、誤解の点があつたならば面接誤解を解くように努むべきではないかというような仰せのようでありまするが、私ども公務員といたしましては、すべて監督官庁を通じて自分の意見を述べる、そうしてただすべきことをただすというのが慣例になつておりまするし、特に法務大臣は検挙に最も御理解のある先輩であらせられますので、やはり監督官たる法務大臣を通じて総理大臣のあの発言がどういう事情でなされたのか、また真意はどこにあられるのか、誤解の点があるかないかということを調べるのが最も適当だろうと考えまして、さような措置に出でた次第であります。
  50. 神近市子

    ○神近委員 大臣が御出席になりましたから、なるべく簡単にしなくちやならないのですけれど、今ちよつと仰せになりましたように、先輩である法務大臣というもののウエートと、それから先輩でない大臣というもののウエートは違うのでございますか、ちよつと言葉じりをとらえるようでございますけれど、承つておいた方がよいと思います。  それから最後の質問でございます。それは今高橋委員からお尋ねになりまして大体御返答があつたようでございますけれど、九月二十一日の法務大臣の疎明に対して検事総長としては、あれはあれでよかつたとほんとうにお考えになつているのかどうかということ。もつとこまかく伺いたいのですけれど、大臣が御出席ですからその二点だけ。
  51. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 先ほど申し上げましたように、私どもはすべて監督官庁を通じてその上の監督賞に対して意見を述べたりあるいはいろいろな話を伺うというのが慣例になつておりますから、たとい検察の先輩でない法務大臣がおられましてももちろんその道を選んだと思います。特に検察に理解のある法務大臣であらせられるからということをつけ加えましたのは、これはそういう関係にありますので、あの発言を見ましてとるものもとりあえず御相談に参つたというような気持で参つたのでありまして、部外から来られた大臣ならば阻害するとか、あるいは特に部内の御出身だから申し上げた、そういう関係ではもちろんないのであります。
  52. 神近市子

    ○神近委員 それから疎明について。
  53. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 決算委員会の証人の証書に対する監督庁としての法務大臣の出しになる前に、先ほど申し上げましたように、あの職務上の秘密の事項については、検察当局として発表することをどう考えているかという意見を聞かれましたので、私の方では、一々この事項についてはこういう理由で非常に検察の運営に支障を来す、あるいはこの点は公訴を維持する上において今発表することは差控えたい、あるいはこの点を発表するということは、どうも関係人の名誉を保持する上において支障があると思うというような具体的な意見を一々率直に申し上げておるのであります。その上さようなわれわれの意見をおそらく法務大臣においても御考慮の中の一つに入れられて、そうして承認すべきかどうかということについて御裁断なされたことと思います。
  54. 神近市子

    ○神近委員 その手続の行われたということは大体想像しておりますけれど、私がお尋ねいたしましたことは、その結集において検察庁内の意見が完全にいれられたのか、あるいはそのいれられた率は非常に少いのかということであります。
  55. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 決算委員会に法務大臣からこの回答書を出されましたあとで写しを私の方でいただきましたので、それを拝見いたしますと、われわれ検察当局の意見が大分反映されておると思つております。
  56. 小林錡

    ○小林委員長 木下郁君。
  57. 木下郁

    ○木下委員 検事総長に一、二点伺いたいと思います。先ほど、今度の疑獄出件がたいへん大規模に行われたといり御意見もあつたようですが、これはあたりまえの話で、前代未聞の何億という金額が疑いの的になり、大幅の捜査がなされた。その捜査については、一億円を越す臨時の費用が使われた。国民は、綱紀を粛正するためであるならば、一億円はおろかなこと、十億円でも百億円でも惜しみなく使うだけの覚悟を持つております。ところがそれについてあの問題の吉田総理の暴言がありました。吉田総理は言論、報道陣に対しマしては、平あやまりのあやまつておる。釈明どころの騒ぎじやなくあやまつておる。検察当局に対しても、法務大臣を通じていろいろ釈明があつて、検察陣の方も大体納得したかのような今の御答弁がありました。一番かんじんの国会に対してはまだ何のさたもありません。これはいずれまたの機会に吉田総理から、国家の最高機関たる国会に対してこの点については平あやまりがあることであろうと思いますので、この問題についても私は触れません。ただ職務に関する秘密事項の限界――先ほど同僚議員から聞かれまして、検事総長から抽象的に捜査の内容は原則として秘密にするというふうに私は聞いたのでありますが、これは御案内の通り、刑事訴訟法の面からいつても、国家の重大な利益を害する場合を除いては承諾を拒むことができない。職務の秘密というものは、裁判の上その他国会法のあの規定の中でも国政の調査のためといえば、原則として国家の利益の重大な――しかも重大という言葉がついておる。重大な利益を害さない限りは拒むことができないぞというふうに非常に強い意味のことが規定されておるのであります。  そこで検事総長にお伺いいたします。今関係者の名誉というようなことが考慮の中に相当深く払われたようでありますが、これは私としては少しウエートを置き過ぎておると思う。まつたく置くなとは言いませんが、この場はごく軽く考えて、国家の重大な利益を害するかどうかという問題に重点を置かるべきものだと思います。そういたしますると、不起訴になつた人たちの、及びこれに関係する人たちの事実については、原則として少くともこれを公表すべきものであり、かつ証人としてはこれを証言すべきものであると私は考えるのであります。ことに今までの金というものに手を触れること自体が非常にはずかしいことだというような、幾分東洋道徳的な考え方、潔癖過ぎるような考え方が行われて来ておることも事実であり益するが、しかし全体に事件になつた人が無罪になると、初めから普通人以上にきれいであつたかのごとくふるまつております。白日青天の身になつた。普通の人間は白日青天ではない。少しくらい曇つたところがあるのが普通の相場なのに、おれだけは初めから何の毛ほどの曇りもない人間だというふうに反駁的に出て来る空気があります。それについては御承知の通り日本の刑法の面では外国の事例のようにあつせん収賄罪の規定がございません。御承知と思いますが、去る十九国会におきまして私どもはあつせん収賄罪の規定を設けようということを主張し、かつ具体的な案を提出して来ましたが、今度の事件及び今度の事件に関連しないでもあつせん収賄罪の規定があればやはり有罪になると思われるようなものがあつたかどうか、その点について一点伺いたいのであります。
  58. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 先ほど職務上の秘密について私の考えを申し上げましたが、これはもつぱら検察の事務を遂行する上において支障があるかどうかということが、職務の秘密であるかどうかの範囲をきめる重点になるのでありまして、従つて私の方から法務大臣に意見を申し上げる場合におきましても、検察の運営上支障があるかどうか、事務の遂行の上において支障があるかどうかという観点から意見を申し述べるのでありまして、さらにその上に立つて国家の重大なる利益を害するおそれがあるかどうかというようなところまで突き進んで私どもの意見は述べてないのでありまして、その点は監督官庁の方の裁量においてもつぱら判断さるべき事項ではないか。私はこういうふうに解釈いたしております。  それから今回の造船関係並びに陸連関係の事件の捜査中に、これは現在の刑法で取締つておる収賄罪あるいは第五者収賄罪には当らないが、あつせん収賄罪の規定がもしあつたとするならば、あつせん収賄罪の嫌疑がかけらるべきものだというような事件もありました。ありましたけれども、御承知のように、現在の刑法においてあつせん収賄罪の規定は欠けておるのでありまするから、何ら取締りの対象にはならなかつたのであります。
  59. 木下郁

    ○木下委員 承諾を与えるか与えぬかの問題について法務大臣が回答されましたが、その問題でなくても検事総長として小さな事件についてお伺いを立てる、そういうようなケースがあることだと思います。それについて、不起訴になつた部分は、起訴されて今公判審理が進行中のものとは区別していいんではないか、不起訴になつた部分だけは原則としてこれを明らかにする、それは本人の名誉を帯することじやない。潔癖なことを申すから本人の名誉に関するように思うんだけれども、それは間違いであつて、事実を事実として国民の前に提供するということが、これは考え方では本人の名誉でもあります。法律の面では、これは御承知の通り非常にわくが狭いから、のがれるのはたくさんあります。法律の面で白か黒かは裁判所が判断する。だがしかし、そういう金の動き方は法律の面では問題にならないけれども、政治の面でそれが白であるか黒であるかを国民が判断し、また国民が政治的にどの党を支持するかということは、単に政策だけではありません。その政党の持つ純潔さに重大な関係があるのであります。従つて国民が政治的に白であるか点であるかを判断する資料として問題になつておることをなるべく――私は日本国中の刑事事件で不起訴になつたものの事実を公にせよというのではありません。一億円以上の捜査費を臨時に使つたというような、国民の関心がこの点に集まつたというような今度の事件のような場合には、国民が政治的に白黒を判断する資料をなるべく提供すべきだと考えておるのでありますが、この点については検事総長はどうお考えになつておりますか。
  60. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 ただいまお尋ねのように、皆様が国政を審議される上において、たとえば将来の法律案を立案されるために、また予算の組み方、決算を検査されるという上から、今回の事件で申し上げるならば、刑事事件のみならず、そのほかのリベートの行方なり金額はどうしても明確にされなければならぬという御要請のあることはよくわかるのでありますが、私どもといたしましては、あくまでも法律に従つて、どうもこれは刑事事件になるという嫌疑をかけたものだけを調べて、その事実の真相を究明するのでありますから、刑事事件になつた、たとえばリベートの総額は、先日申し上げましたように二億六千七百万円というふうに申し上げられますけれども、刑事事件にならないリベートの額はどうか、あるいはその金額はどこからどういうふうに流れておるかということをお尋ねいただきましても、私の方はその点にはどうも明確になる答えはいたしかねるのでありまして、刑事事件になつたリベートは総額どのくらいであるが、あるいはそれがどういうふうに流れたという事実は究明いたしておるのであります。そのほかの点はちよつと申し上げかねるのであります。
  61. 木下郁

    ○木下委員 その点ですが、検察庁はこう見ておるからといつても、国民はそれをうのみにいたしません。やはりそれをみずからの政治的見解をもつて判断をするのです。だから判断の資料として、こういうことが出ておるという資料を資料として出すことが望ましいと私は思つております。  なお最後に保全経済会や日殖の問題に関して伺いたい。これは今のリベートの問題も関係いたしますが、国会で現われた資料だけでも、保全経済会の理事長伊藤斗福、この人が、日本国中に二百何箇所のりつぱな事務所を持つてあれだけのことをした。五十億の逆転貸金を動かして、そうしてうそであつたかもしれませんが、とにかく利益が上つたと称して、匿名組合の法規に基いて一年に二割四分以上の配当をして来ました。大体一年に十二、三億も配当をして来た。しかも大蔵当局は、金融の取締りの面では、匿名組合という一つの法律構成を持つておるから、うつかり手が出せぬから、一年何箇月の間警視庁の方でやいやいいうのを押えて来た。押えられたために、国民はたいへん迷惑をした。十何万の出資者が迷惑をした。しかし私は、大蔵当局がみずからの判断ではつきりそれを右か左かに決定してやるべきものだと思います。そこをぼやぼやしておつた。ところが中小企業者のしがない連中は細々と営業しておりますが、税務署は二日も三日も上り込んで、帳簿をすみからすみまで調べておる。大蔵省の解釈によれば、匿名組合伊藤斗福の個人企業です。それで五十億の資金を動かして、表面ともかく十何億の配当をして来ておる。それであるのに昭和二十七年が六十何万円の所得税。二百万円くらいの収入のある連中が、それよりもよけい税金を払つておる。こういうばかなことが出て来ておる。しかもそれははつきり国会で出て来ておる。そういう問題が出て来ておるときに、ただ伊藤が資金を集めたのは詐欺かどうかということにばかりとらわれておつてやることは、国民としては納得しません。重税に苦しんでおる国民としては、やはり伊藤に対して、とれるかとれないかにかかわらず、今まで厖大な脱税があるのだということも常識的に考えております。国民はそう言つております。そういうことについてもお調べになつたかどうか、その点だけを最後に伺いまして、検事総長に対する質疑を終りたいと思います。
  62. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 お尋ねの保全経済会の詐欺事件でありますが、被疑者はすでに公判に詐欺事件の被告人として係属いたしておるのでありまして、その後たびたび追起訴がありまして、詐欺の被害の範囲も非常に莫大なものになつております。そういうふうに詐欺した莫大な金円をどういうふうに使つたかということが御質問の趣旨だろうと思うのでありますが、これは当然公判において詐欺した金円をどういうふうに使つた、たとえば政界にはどのくらい流した、あるいは自分のぜいたくな生活のために、どういうふうに使つたか、あるいは投機に手を出してどのくらい損をしたかというようなことは、これは公判において当然明らかになるべき事項なのでありまして、また公判も開廷せられない現段階において、その詐欺をした莫大な金円の消費先、流れ先について、その内容を申し上げるということは、今のところ差控えたいと考えております。
  63. 木下郁

    ○木下委員 私の言い方が足らなかつたのかもしれませんが、今の質問の趣旨は、脱税という面で、伊藤斗福があれだけの大きな仕事を個人名義でやつておりながら、昭和三十六年にはたつた五十何万円、三十七年が六十何万円というわずかな税金を納めている。それに対して国民は、どうしても常識的に考えて、納得行かないのだが、そういう問題について詐欺かどうかという表向きの原則的刑事法の訴追以外に、税法の面からの捜査もおやりになつたかどうかということを伺つておきたい。伊藤斗福の金がどういうふうにして、ああいう結果になつたかという内容については、破産の事件及び刑事事件の公判で明らかになると思います。そういう意味を伺つたのじやない。税法の面からの取締りの権力の発動といいますか、そういうものにも考慮を払われたかどうかということを伺いたい。
  64. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 捜査の途中におきまして、お尋ねのような税法の関係についても、もちろん捜査当局が調べておるのです。そうしてこの調べが一段落いたしますと、必ず国税庁の方に連絡をとりまして、国税庁の専門的な立場から、税法違反があるかどうか、税法違反があれば、今度はあらためて検察庁の方に告発がある、こういう手続になるだろうと思います。
  65. 小林錡

    ○小林委員長 林信雄君。
  66. 林信雄

    ○林(信)委員 検事総長にお尋ねいたします。私が最後であります。時間の関係もおありのようですから、一括して述べますので、重点的に要領よくお答えを願つて時間を節約したいと思います。  一つは、指揮権発動の問題なんですが、本年四月二十一日、当時の法務大臣犬養健氏が、ああいう検察行政上の指揮をなすつた。これは日にちの経過もありまするし、なお国会における論議その他、いわば言い尽された古い問題にもなつておりますが、指揮権発動それ自体は、常に新しい問題であらねばならないと思う。今後決してこれが消滅すべきものでもなく、なお厳然として検察庁法第十四条があります以上、いつのときにかまた起り得る問題であると思うのであります。かような意味から、これに関するものを、なお一、二取上げてみたいのですが、今まで、本日もそうなんですが、検事総長のこの点に対するお答えの部分として、あの指揮権発効が、当時の当該事件の捜査に非常にとか、あるいは相当にとかいう抽象的な言葉で、支障を来すとか、少くとも影響があつたというようなことを言われます。これはまあとにかくと私も考えております。もつとも火のないところには煙は立たないのかもしれませんが、世間においては、なるほど初めから悪意を持つて、いいかげんな逮捕許諾要求なんかはしなかつたろうけれども、その後の日時の経過をいたしておるうちに、実はあの指揮権発動になるころは、もうすでに佐藤榮作君を逮捕いたしてもとうてい事件は解決の見込みがない、証拠上それはとうてい困難だ、こういう事態であつたときで、むしろ指揮権発動が検察側としてはもつけの幸いであつたのだ、こういうことも言う人があるのであります。それがどの程度の真相であつたかは私は知りませんから、かような機会ですからこれもひとつ検察側の所信を承つておきたいと思います。しかしそれが私の質問の重点ではなくて、さような点はまあ考え方で、事件に支障があつたといえばあつたにいたしましても、別のお答えの部分に、検察陣において非常な不幸不満がある――これが私は解せないし、重大なことに考えておるのであります。なるほど意見が違えばいくらかそこに気分の悪い者はありましよう。しかしながら検察庁法第十四条があつて、その厳然と存在いたします法規に基いてとりました行動、それが適法であります以上、その法務省の長官である、法務省設置法から見ましても責任を負うべき長官が、その責任において指揮権を発動いたしました以上――それが違法ならばまた違法としてあなた方の態度がなくてはならぬと思う。そうでないとしますならば、これはどうしても検察に従事します諸君としての考え方は、やはりこれは上長の責任においてとられたことであるから正しい、その指揮権に対しては服従することそれ自体で済むのではないか。もちろんそのことは政治的に見まして妥当であるか非妥当であるかという批判、これは国民の一人としてやつていいのかもしれませんが、検察陣自体として不平不満が残るということは、私は制度として、法の建前としてまつたくそうであつてはならぬと思う。この点について検事総長はどうお考えになつておりますか。もし私の考えるごとくでありますならば、その考え方を是正されておくことが正しいと思う。そうでないと、あの規定が検事フアツシヨ、検事専制、国政の上の権力の、事実上その上を行くようなことのないようにというおもんばかりも含めてできたといわれておりますその考え方と、非常に反して来ると思うのであります。  簡単にその程度にとどめますが、その点のお伺いをいたしまして、時間の関係上もう一点つけ加えてこの際伺いたいのは、決算委員会の方から総理を証人に呼んで、それが出頭しなかつた。それは公務上の支障の事由をもつて届けられたのであるが、それが事実でないというような見解で、なお証人出頭義務の違反だというような意味で、検事総長の部屋をわざわざたずねられて、その告発書を渡しておるというような事実、これに対しまして、田中彰治君は、検察陣はすみやかにやれ、あるいは第二の指揮権発動なんかに恐れるなというようなことで、非常に激励したといいますか、考え方では脅迫したような言辞もあつたやに伝えられておるのであります。が、また面、田中君に言わせますと、これはすみやかにやらなければならぬし、すみやかにやるんだが、すみやかにやらなかつたら、外遊のどういう途上にあつてもひつぱりもどすんだ、これは暴言か放言か、非常な強い話をしております。そこで国民の間には、総理大臣が外遊に出かけても、検察陣の考え方では途中から引きもどし得るものであろうかというような、これは少くとも疑問だけども考えられますけれども、やはり疑惑を持つている。そこでもう総理の外遊も予定されまして日にちがないのでありますが、その間にこの問題は解決せられる問題であるのでありますか、あるいはしからずして帰朝前においてやられるものであるのか、帰朝後においてやられるものであるのか、田中君が言つているがごとく、途中においてもひつぱり出せるものであるのか、こういうことも考えられますが、根本といたしましてああいう調べをいたします場合において、総理の公務上のさしつかえというものは、総理自体がむしろつくつたものでなくて、国政の遂行上に起つた事情でありますから、総理を調べなくても、その公務の実態をお調べになれば済むと思うのでありますが、その程度のものでありましようか。告訴、告発が出れば必ず本人を調べなければならぬという建前があるといたしますれば、総理を調べなければならぬのでありましようか。この点も時期の関係も持つのでありますが、かような点は、告訴告発に対する一般の取扱いと、今回のような証人の不出頭義務関係におきまして、その捜査の対象となります範囲は、また捜査の方法には大よそ限界があるのでありますか、この点に関します御当局の御意見を承つてみたい。これだけにいたしておきます。
  67. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 造船関係の事件の捜査の途中において、いわゆる法務大臣の指揮権が発動せられましたので捜査に非常な支障を来したということは、先ほど率直に申し上げたのであります。その指揮権の発動を見て検察官がどう考えておつたか、どういう気持であつたかということを先ほど質問がありましたので、私の方から率直に、検察官全体が不平不満を抱いておつたという感じを申し上げたのでありますが、制度上ああいう指揮権発動は適法なことである。適法な行為をしたのに検察官が小平不満を抱いたということはけしからぬという御言葉でごさいました。それは皆さんの御批判にまかせることにいたしまして、その当時の一同の感じといたしましては、はなはだ不平不満と申しますか、遺憾の意を表しておつたということはいなみがたい事実でございまして、その点を申し上げたのであります。  それから吉田首相が決算委員会に証人として呼ばれまして、それに正当の事由がなくして出頭しなかつたということで、決算委員会の方から告発があつたのであります。この告発の事件は主管庁である東京地方検察庁にその日さつそく事件を移送いたしまして、東京地方検察庁においてはすでに主任検事、係をきめまして、捜査に着手いたしております。その捜査の経過はまだ報告に接しておりませんが、おそらく外遊前に捜査を完結するというようなことはないだろうと存じます。一般の告発事件の取扱いといたしましては、告発があれば告発人それから被告発人両者を調べる。関係人ももちろん調べなければなりませんが、告発人及び被告売人を調べるということが普通の事例の取扱いでございます。この事件も一つの告発事件と同じように捜査が進められるものと思いますが、その後の捜査の進展ぐあいはまだよく承知いたしておりません。
  68. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 今林委員の質問を聞いておりますと、いよいよ総理大臣も外遊されるのだそうです。そこでこの際われわれとしていろいろ明らかにしておきたいと思いますが、吉田総理大臣に対して現在刑事事件というのは一体何件係属しておるのか。すなわち吉田茂を被疑者として取扱わるべき刑事事件が検察庁に何件係属しているかということと、告発がありましても、あるいはまた告訴がありましても、あるいは風聞等に現われましても検察庁としては犯罪の疑いがあるというのでなければ捜査されないはずであります。しかし吉田さんの事件はやはり一応捜査してみなければならない。そして犯罪の成否を検討しようという程度のものであるかどうか。そしてその係属しておる事件の捜査の結末は一体いつごろつくものであるかの見通しをひとつお伺いいたしたい。
  69. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 吉田総理大臣ばかりではございませんので、これは高橋委員もよく御承知のことと思いますが、相当名士の方で全然問題にならないようなことも、投書があつたり、告訴、告発がよくあるのであります。吉田総理大臣に対して今全国にどのくらい告訴、告発になつておるかというお尋ねでございますが、その点は私の記憶するところでは、先般決算委員会でも御質問がありました社会党の方から告発になつた政治資金規正法違反の事件、それから今回の証人下出頭に関する事件、この二つは記憶いたしておりますが、そのほかはどうも報告に接した覚えはありません。
  70. 小林錡

    ○小林委員長 佐瀬昌三君。
  71. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 せつかく法務大臣がお見えになりましたので、私は簡単に一、二点法務大臣にお伺いをしたいのであります。  一つは、指揮権発動に関する検察庁法十四条と関連する問題でありますが、そのうちまず小原法務大臣の御感想として承つておきたいのは、当時犬養前法務大臣が指揮権の発動をされたことに対して、これは妥当であつたかどうかという御感想を承りたい。  次に検察庁法十四条の将来における逆用の心構えと申しましようか、指揮権発動の基準に対する御見解はどうであるか、あわせて検察庁法十四条の存在価値あるいは改正点があるかどうか、それに対する御見解を承りたい。
  72. 小原直

    ○小原国務大臣 お答え申し上げます。犬養法務大臣がいわゆる造船疑獄等一連の事件について佐藤自由党幹事長の容疑について逮捕の禀請があつたのに対して、いわゆる逮捕の禀請を延ばすようにという指揮を出した、これがいわゆる指揮権発動であります。あれは検察庁法十四条の但書によつて出たものであることは間違いないのであります。これはたびたびほかの委員会でも、あるいは当委員会でもお尋ねを受けたと思うのでありますが、検察庁法十四条の但書は、結局法務大臣は、「個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」こういう条文がありまするので、この条文によつて当時の法務大臣が検事総長に対して逮捕の禀請を延期せよ、こういう指揮を出されたのであります。これは法律に従つたのでこれはまつたく適法であることは間違いないと思つております。ただしかしこれが妥当であるかどうか、こういうことになりますと、人によつていろいろ批判が異なると思つております。私は当時この事件の取扱いの現場におらなかつたものでありまするから、その当時の事情を詳しく承知いたしませんが、いろいろ報告を聞きますと、報告というものはやはり自分がその場におつて現に当つたこととは感じ方においてたいへん違いが出て参りますので、その報告に基いてこれが、妥当であつたとか、妥当でなかつたというようなことを批判することは間違つておると思います。私はこの前から申し上げておるのでありまするが、適法であることは間違いないが、妥当であつたかどうかといつてお聞きになると、私はこれは答弁しかねるのであります。この答弁は差控えておきます。こういうことを申し上げております。お尋ねに対しても同様に申し上げるほかありません。  そこでさらに第三のお尋ねの十四条の将来の運用基準はどこに置くかというお尋ねでありますが、これもたびたび申し上げましたように、検察庁法ができまするときに、検察庁に対する指揮監督は一般に法務大臣が持つておる、こういうことは検察仕法十四条に書いてある、ただしかし個々の事件の取調べ及び処分についてまで法務大臣が各検察官に指揮ができるということになりましては、ちようど旧法時分のと同じことで命令が二途、三途に出て収拾に困りますから、そこで統一をはかるために、どうしてもこれは検事総長を通じてのみ各個の事件の取調べ及び処分については指揮ができる、こういうことにせんければならぬということで、この条文ができたことを私は承知いたしております。従いまして今後もやはりこの条文は改正せられない限りは用いられることは当然であります。現にこの法律ができた後今日に至るまで、また私が就任いたして後も、この十四条の但書によつて、個々の事件の取調べ及び処分については始終指揮をいたしております。ほとんど毎日と申してさしつかえありません。それは要するに下の方の取扱い検事から順次上級の監督者にまわつて来て、検事総長が最後に法務大臣に対して指揮を仰いで参ります。その事件に対しては法務大臣は常に検事総長を指揮いたしておるのであります。この場合は常に下の方と上の方とが意見が不一致になることはないのであります。大体――大体と申しますよりは、ほとんどすべて禀請を仰いで来るものはその通り指揮をいたして、ごうも検察側と法務大臣側とにおいて意見の杆格はないのであります。今日私が毎日数件ずつ指揮をいたしておりまするが、これも下の方から禀請をして来るものは、その意見の通りに私は指揮をいたしておりまするから、何らその間に相互杆格がなくて円満に行われておる、こういう方法によつてこの十四条の但書というものは常に行われるのが理想であり、またそうなることがほんとうである。今後もその方法によつてやる限り、この検察庁法十四条は存在し、そうしてその但書によつて検事総長を通じて法務大臣が指揮することは当然なけらねばならず、またこれがあつて初めて検察の運用がうまく行く、こういうふうに私は考えております。
  73. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 もう一点お伺いしておきたいのは、さような意味合いにおける検察庁法十四条であり、しかもまた他方におきましては、その運営上検察界にいろいろな問題を提起する。そこで私どもは時あたかも憲法改正の問題もありますので。もつと根本的組織機構の上でかような問題を解消するような基本的な考えをめぐらしてみたらどうか、こう思うのであります。そこでとりあえず検察権をもつて準司法権とみなし、三権分立の建前から、また基本的人権の擁護の建前から、検察機構を準司法機関として系列づけて行くということも尊重すべき精神は一応うなずかれるのでありますが、しかし検察庁法十四条があり、しこうして法務大臣が個々の事件をも通して検察に対する指揮権を持ち、しかもその法務大臣は現内閣制度のもとにおいては罷免権を持つ総理大声の監督下にあるということになりますると、その面からはいわゆる行政権の支配下に隷属しておる、かような相矛盾したいれざる性格を露呈しておる。そこで私はかつて法務庁あるいはその長官である法務総裁の制度、アメリカで言ういわゆるアドミニスター・リアル・ゼネラルの組織機構というものがこの際考えられていいのではないか。言いかえるならば法務大臣が横車総長的な権能を持ち、しこうしてその法務大臣が内閣における最高法律、司法に関する限りは、内閣の最高の顧問として総理大臣の指揮権に属しないような立場を独立的に確保する、こういつたような基本組織機構にしたならば、検察権の本来の独立的な機能を発揮する上において最も合理的なものになるのではないか、かように考えるので、この際この問題に対する法務大臣の御見解を承つておきたい、こう思います。
  74. 小原直

    ○小原国務大臣 私は就任後まだ日がたちません。また前任におりました以後空白約十数年たつておるのでありまして、その後における日本の各種制度、法律の改廃はたいへんなものであります。検察庁法はちようど、戦後裁判所と当時の検事局を分離して、裁判所は裁判所で司法権を行うものとして全然独立の組織にする、いわゆる三権分立の司法権そのものにする。検察庁いわゆる元の検事局は、これはやはり性質が行政権の一であるから司法権と同様に扱うことは困難であるが、しかしながら司法権の前提をなす検察権が適正厳格に行われざる限りにおいては、司法の独立公正は望めないのでありまするから、どうしてもこの検察権を非常に強いものにして、できるだけ独立を保ち得る、程度を高くする、こういうことにやりたいということは何人も考えておつたところであると思うのであります。そこでこの検察庁法ができまするときもその点を取入れて、いわゆる準司法的性格を持たせる上にはどうやつたらよろしいかということをいろいろ考えられた結果が現行の検察庁法、しこうして法務大臣の指揮監督に関する件は十四条に定めたがごとき方法できめるはかなかろう、こういうことでこれができたと承知をいたしております。お尋ねのように検察権を全然独立させておくことはたいへん望ましいところでありますけれども、これはまた反対に考えますと、いわゆる検察フアツシヨみたようなことになつて、検察がある場合には横暴なことでもやつたときにこれを取押え是正する方法がないのではたいへん困るのであります。そこでいわゆる内閣責任制をとつて、検察権が行政権の一つであるということにする以上は、やはり責任内閣の下に法務大臣というものを置いて、法務大臣に全体の責任をとらせるようなことにしなければならぬというのが、今日の検察庁法の建前であつたと思うのであります。しかしお話のように、やが憲法の改正もしなければならぬ時期があります。そうして今度の指揮権発動等がたいへんやかましくなりましたことから考えますと、今後の検察庁法のあり方というものについてはなお相当考慮を加え、お話のように準司法として強い独立制を持つた機構を立てるということがたいへん必要であるかと思うのであります。ただ今おお尋ねになりましたこの場合に私が即座にそれではこういう方法がありますと御即答申し上げるほどの準備を持つておりません。これはとくと朝野ともに研究をして、日本の検察権がりつぱに運営されて、司法権の独立、公正に寄与する上において機構を打立てたい、こういうふうに考えております。今日申し上げるのはこの程度で具体案を持つておりません。その点は御了承願いたいと思います。
  75. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 法務大臣に三、三お伺いをいたしたいと思います。
  76. 小林錡

    ○小林委員長 高橋君、大臣は二時から会議があるそうですからなるべく簡単に願います。
  77. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 私は佐藤自由党幹事長の被疑事件に対する法務大臣の指揮権発動に関連して、その後の政府のなさつておられることを見て一歩も譲歩することのできない問題があるのです。と申しますのは、今のようなやり方をやつておれば、品では検察権の中立性確保だとか、検察権の独立だとかいいましても、実際はまつたくの秘密検察になつて、しかも警察よりはもつと信用を落すようなことになると思うのです。警察の制度については、御存じのようにかなり民主的な面も加味されておりますけれども、検察制度についてはそうでないのです。この前の委員会における質問の際にも大体申し上げたのですが、もう一度よく冷静にお考えを願いたい。先ほど佐瀬君の話も出たところであります。また検事総長にも私からも質問いたしましたが、内閣、すなわち総理大臣が行政各部を監督して、そうして国務大臣に対しては罷免権を持つておる。そうしてその罷免権の対象になるという立場にある法務大臣が、個々の事件について検事総長を指揮する、検事総長はそれに従わなければならないという公務員としての義務を背負わされておる。特に権力濫用というようなことがだれが見ても明らかだというような場合は格別でありますけれども、大体は違法でない指揮権には服従しなければなりません。そういうふうになつて参りますと、結局は総理大臣の意のままに検察権が動く、こういうことになるのです。それは検事総長がしつかりしておればいいだろう、法務大臣がしつかりしておればいいのだというようなことで解決さるべき問題ではないのです。それに従わなければならないように制度ができておるのですから……。そこで私はこの制度のもとにおいて検察権をどういうふうにして中立公正に運営するようにするかということは、これは国政調査権の精神を十分に発揮して、憲法の考えておるところを正しく運営する以外に、今の制度のもとでは道はないと思うのです。だからそこで私は小原検察行政の本質を知りたいために、小原法務大臣は一体検察権との関連において、国政調査権というものをどういうふうにお考えになつておるのか。すなわち国政調査権の本質問題についての所見をお伺いいたしたいと思うのであります。
  78. 小原直

    ○小原国務大臣 前会の高橋委員のお尋ねに対しても大体お答えしたかと思つておりますが、ただいまのお尋ねは、要するに検察権が今のままでは総理大臣の意のままになつて運営されることになるので、それでは困る、そこで検察の中立運営をするがためには、国会の国政調査権の正しい運営にまつ方がいいんじやないか、こういう御説であります。この御説に対しては私は何ら異存がないのであります。まことにその通りであります。国会の国政調査権が正しく運営されて、検察権のあり方を正しく持つて行かれるようにさしずして行かれる、こういうことになれば、これは確かに検察の中立が相当よく行くであろうということが考えられる。先だつて来のお尋ねに対して私が申し上げておるのは、何も国政調査権に対して、検察権が全然独立して国政調査権の範囲外であるというようなことは毛頭申しておりません。これは行政権の一つであるから、国政調査権によつて国会がこれを調査せられることは当然であります。ただその御調査になる間において、現在の今扱つておる事件について申しますと、その事件の公訴の維持上あるいはやがて開かるべき起訴されておる事件の公判の判断において、裁判の公平を害するようになつては困るから、その限りにおいては国政調査権はしばらくの間これに解れることを待つてもらいたい、こういうことを申し上げておる。絶対に国政調査権が立ち入つてはならぬとか、検察権は国政調査権の範囲外であるということはかつて申し上げたことはないのであります。この点はよく御了解を願います。
  79. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 私のお尋ねいたしましたのは、小原法務大臣が国政調査権の本質をどういうふうにお考えになつておるかという点であつたわけですが、ただいまの御答弁ではどうもその本質問題に触れていないように思うのであります。そこで私は答弁していただきやすいように質問いたしたいと思います。国会が予算あるいは法律の審議なり、あるいはまた新しく立法し制度を考えるという、その職責を果す補助的な権限として国政を調査する、国政調査百権はそういう内容のものである。これは異論ない。そこでいま一つ問題は、一体国会の国政調査権というものは、国権の発動に関しての監督的要素を持つておるものとお思いになるかどうか、この点なんです。検察の面について関係いたしますと、検察権の逆用が正しく行われておるかおらぬかということについて、国会が国政調査権を発動して、その真実を究明して行くということによつて検察権運用を監督しておるという内容を持つておるものとお考えになるのであるかどうか、その点であります。
  80. 小原直

    ○小原国務大臣 憲法が国会に国政調査権を与え、その調査権を十分に活用させようという趣旨は、ただいま高橋委員の仰せになつた通りであります。要するに国政が正しく行われているかいなかを国会の調査権を通じて監督して行こう、正しく導いて行こう、こういうことにあることは言うまでもないと思います。そこで検察権に対してやはりそれが行われるのであろうから、それならばそれはどういう形において行われていいかというお尋ねに帰着すると思うのでありますが、それはやはり申し上げまするように、国政調査権は検察権が正しく行われておるかどうかを調査して、それを正しく行われるように沸いて行くということが、国政調査権の検察権に対する調査の目的であろう、こういうことも異論のないところであります。ただそれを調査するときに、やはり検察権というものには、国政調査がある種の制約をもつて当つていただかなければならぬ、こういうことを私は考えるのであります。この点が多分高橋さんとは御意見の違うところであろうと思うのであります。それは先ほどたびたび申しますように、検察権は行政権のでありますから、国政調査権が検察権の正しく行われることを監督するために調査をなさることはもちろんでありまするが、しかしその検察権が現在において正しく行われて行かなければならぬ段階においては、国政調査権といえども若干の制約をもつてこれに臨まれることがあり得るのであります。本件の場合においては、すなわち現在の段階においてすべての事柄を外部に明らかに表示せよと仰せられれば、それでは公訴権の維持が困難になり、また裁判の公平が保てなくなるから、今日はしばらく待つていただきたい。かすに時をもつてしていただけば、公判が開延せられて、これらの御要求になつておる事項は、やがて証拠として公判に提出せられる。そのときにおいて御要求になる、いわゆる秘密になつておる事項が明らかに国民の前に展開されることになるから、それまで待つていただきたい、こういうことを申し上げるのであります。決して長くこれをどこまでも秘密にしておこうなどということはないのであります。秘密はやがて時を経る従つてだんだん薄れて行くのが普通であります。検察権の捜査の秘密も、やはり時を経るに従つてその秘密性はなくなつて参ります。ことに今の事件のように公判が開始されればその秘密性はほとんどなくなつてしまつて全部外部に表示せられるときがあると思います。こういうときにはたとい国政調査権といえどもそのときまで待つていただくのが、国政調査の仕事を進ずる上に十分役に立つて行くものである、こう考えております。
  81. 小林錡

    ○小林委員長 高橋君、ひとつ端的に短かくやつてもらえませんか。木下さんからも質問したいことがあると言われておりますから、結論的にひとつお願いいたします。
  82. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 国政調査権というのは国政監督の内容を持つものだという御意見は私の所見と一致するわけであります。そこで問題は国政調査権を尊重するとかしないとか、口で言うのではなくして、国政調査権の本質に従うように行政当局もあらゆる問題を解決して行く、こういうことになるのが当然であります。そこでお伺いいたしたいのは、この議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の第五条に規定してありますところの疏明というのは一体どういうことをやればいいんだというふうにお考えになつておるか、すなわちこの法律第五条の疏明の性質はどういうことであるか、これをお伺いいたしたい。すなわち政府が独断的にかつてなりくつを言うというのでは、この疏明をしたことにならないと思うが、この疏明とはどういう性質のものであるか、その本質をお伺いいたしたい。
  83. 小原直

    ○小原国務大臣 「その理由を疏明しなければならない。」とある、この疏明でありますが、これはもう法律の用語で大体きまつておることでありまして、証拠をもつて説明するほどのことではなくして、言葉でも何でもよろしいから、その理由がわかる程度に釈明をすればよろしい、こういう意味に私は理解しております。しかし本件においては決算委員会からお尋ねになりました証言の承認を求められる場合に、証言を拒絶いたしましても、その拒絶した理由をごらんの通り相当詳しい書面をもつて、理由を掲げて弁明をいたしておるのであります。あの程度で私はここにいう疏明に当るものだと考えております。
  84. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 この疏明というのは今法務大臣のおつしやつたように、法律にちやんと前例があるのです。訴訟法で証明だとか疏明だとかいうのは、これは単なる主張とは異なるわけですね。当事者の主張というものとは、疏明あるいは証明というものは異なつておる。ところが先ほど刑事局長にお尋ねいたしまして明らかになつたのですが、決算委員長からの要求に基いて証言等についての承認を求める件の回答の法務大臣からなされ、これを読んでみると、政府のほんとうに独断的な一つの主張なんです。意見なんです。これでは疏明というものに該当しないように私には思えてならないのです。もつと一つ一つの要求事項に対して、これはここのところはこういう閣係があるからということを、いわゆる真実に関する一応の推定が生ずる程度の心証を得られるくらいにして、おかなければ、私は疏明にはならないと思うのです。この意味においてこの疏明ということについて法務大臣の方で誤解があるのではないか。単なる主張をすればいいんだ、理由をいえばいいんだ、そういう意味に思つておられるのではないかと思うから、そこを特にお尋ねするわけです。それはいかがでございましようか。
  85. 小原直

    ○小原国務大臣 あの回答書に書いたことで、尋ねられたる証言の承認についての理由に一々当つておると考えております。
  86. 小林錡

    ○小林委員長 高橋君、まだほかにもありますから、その辺でどうですか。あなたこの前一ぺんやつておるのですから、一人でそう長くやられては困るので、もう前置きをやめてひとつ質問だけをやつてください。
  87. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 先ほどの証言等に関する法律の第五条の第二項、監督庁が承認を拒むときにその理由を疏明するわけですが、その理由というのは、いわゆる国家の重大なる利益に悪影響を及ぼすかいなかということが標準にならなければならぬと私は思うのですが、そこはどういうふうにお考えでしようか。
  88. 小原直

    ○小原国務大臣 それは条文によりまして、「当該公務所又はその監督庁が前項の承認を拒むときは、その理由を疏明しなければならない。」とあるので、私の方はその理由を疏明したのであります。「その理由をその議員若しくは委員会又は合同審査会において受諾し得る場合には、証人は証言又は書類を提出する必要がない。」、こうあります。ちよつと私字がこまかくて見えないので困るのですが、要するにその次の項に、疏明をしても決算委員会その他の委員会等が疏明を受諾し得ざるものと考えたときは、この証言の承認が国家の重大なる利益に悪影響あり、こういう声明をしなければならぬということになるでありますから、委員会等が声明を内閣に、要求したときに、内閣はそれが国家の重大なる利益に悪影響あり、こういう声明をすればいいのでありますが、その問題は内閣の問題でありまして、私の方の法務大臣として出す疏明にそれを書く必要はないと思つております。
  89. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 今のところがまだ十分法務大臣が理解していらつしやるというふうに私には受取れないのです。すなわち監督庁が承認を拒否する場合にはどういう場合にできるかということについて、どうお考えになつておるかということを知りたいのです。ところがこの法律の精神からすれば、第三項に掲げてある国家の重大なる利益に悪影響を及ぼすべき場合だと認められる場合でなけらねば証言を拒否することができないのでしよう、こういうわけです。それとも別なお考えがあるのか。ただ理由疏明書を書いて出しさえすればそれでよいというのか。その拒否するときにどういう条件があれば拒否できるのかということについてどうお考えになつておるのかこういうことをお尋ねしておるわけです。そういたしますと、この理由が価値判断において非常に差が出て来るから、そこをお伺いしておるのです。
  90. 小原直

    ○小原国務大臣 私の方は、疏明つまり証言を承認し得ざる理由を疏明すればよろしいのでありまして、その疏明は、結局政府が後に、それを証言することは国家の重大なる利益に悪影響ありと見るようなものが証言されることは困るということで証言をしないように拒絶したわけなのであります。その理由を私の方は書いている。その理由はつまり公訴権の維持に悪影響があり、あるいは裁判の公平を確保する上に悪影響あり、こういうこと等を書いて疏明の理由といたしておるのでありまするから、それを見ればただちになるほどこれだけのことがあれは国家の重大なる利益に悪影響あるなと政府が見てとつてその意味の声明をする、こういう順序になつて行くべきものだと私は思つております。
  91. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 今の問題は非常な重大な意味を持つていると私は確信している。と申しますのは、国政調査権の本質からしまして、国会においてでき得るだけ行政運営ということについて明らかにしなければならぬ、国政の運営について明らかにしなければならぬという本質がある。それらから出て来た法律である。証人を調べてみると、証人は公務員であつて、職務上知り得た秘密を守らなければならぬからというので、それは証言を拒んだ、証言を拒んだときには今度は証人が公務上知り得た秘密である、証人が秘密であると思うからというので、法務大臣はそれをそのまま疏明として国会に出すのでは、国政調査権というようなものは意味をなさないのです。だからこの場合で言いますと、法務大臣がその決算委員長からの要求を拒否されるためにはどこかに標準がなければならぬ。刑事訴訟法に定められていることをそつくりそのままを取次ぎすればいいというのは法の精神じやない。そんな無意味のことを規定するはずはない。だからそれは法務大臣はこれを承認していいか、悪いかということの判断をされる、その限界というものは国家の重大なる利益に悪影響を及ぼすかどうか、承認を与えて証言さすことによつて、国家の重大なる利益に悪影響を及ぼすかどうかということを標準にして決定されなければ意味をなさない。もしもそういうことを考えないで、この承認に対しての回答がなされておつたとすれば、先ほど申し上げたように、これは法律の精神に沿うた理由の疏明にならぬと、こう私は思うのでありますが、そこではつきりとしておかないと、きようだけの問題でなく、将来大きな問題になると思いますから、重ねてお尋ねをいたすわけであります。明確なお答えを願いたいと思います。
  92. 小原直

    ○小原国務大臣 この問題は国会始まつて以来の最初の問題であります。私の方は非常に重大な事件と思つて慎重に各種の法律その他を研究した結果答案をつくつたのでありまして、決して軽率につくつた関係ではないのでありますから、この点を一言申し上げておきます。しかしお尋ねのごとく疏明するのは、証言を承認せざるように回答いたしましたのは検察庁の意見も徴しましたが、もちろん法務大臣としてこの証言を承認することは、やがて起訴されたる事件の公訴の維持に支障を来し、また公判の公平を保つ上に支障があると考えるがゆえにこの証言を拒絶したのであります。しこうしてその理由を疏明したのであります。そうしてその疏明は、国家の重大なる利益に悪影響ありという文句は使いませんが、その理由それ自体を見れば、これはあなた方もお考えくださることができると思うのであります。検察権が行う公訴権の維持に支障が生ずる、検察が犯罪の検挙をなして国家の治安を保ち、公共の福祉を保護するという重大なる責任を持つておる、それを行うに支障がある、こういうことになり、一面にはさらに司法権の逆用の上においてやがて裁判せらるべき公判事件の公平なる判断に誤りを生ずるおそれがある、こういう二つの大きな理由を示せば、この三つの理由をとらえてこれが国家の重大なる利益に悪影響なしというようなことはとうてい言い得ないのである。それでありますから私はそれを疏明の中に暫く必要がない、それは国家の声明の中に書けばよろしいのである。条文をごらんになつてもその通りの建前になつていると存じます。
  93. 小林錡

    ○小林委員長 木下君。
  94. 木下郁

    ○木下委員 先般決算委員会の委員長に対しての回答の問題だけについて一点だけ伺いたい。このお答えになつた職務上の秘密に関する証言等につき承認を求めるの件の回答というものを読みまして、一点だけ伺つておかなければ了解に苦しむ点があるので伺うわけであります。  それはしまいから二枚目ぐらいのところに、国会において職務上の秘密の証言というものを調べると、「右の立証すべき事項を外部に表示し、国会においてその存否並びに当不当を調査するとするならば、当該事件につき裁判しようとする裁判所に対し、事実上予断を与え、裁判の公平を保つ上に重大なる障碍を来す虞のある」ということが書かれてあります。これは国会が調査するというのは、捜査の結果国会が事実の存否及び当不当、検察当局がやつた起訴、不起訴についてそれが妥当であるとか不当であるとかいうことを判断するのは、これは三権分立の性質上国会としても相当考慮しなければならない、軽々しくやることのいけないことは申し上げるまでもありません。民主政治、ことに議会政治を運用する面においては、お互いに立法あるいは国家の最高機関としての国会が司法部の独立という点についてはほんとうに真剣に考えなければならぬことは申すまでもありません。従つて当不当を判断するというようなことは、するかしないかまだわからぬことであります。これは調査する国会自体が自己の責任において、自己の識見においてやることであります。それを、当不当をすぐ判断するのだというようにおきめになつてこの回答を出されたという点については私了解が行きません。それと同時にその判断が出た場合には、裁判所が事実上予断を与えられて、裁判の公正を害せられるであろうということを心配された――日本の裁判というものはさようなものではありません。私は裁判の権威のためにもこういうことが軽々しく法務大臣たる地位の人から言われることは実に心外に思う。国会が当不当を判断するかしないかもわからないときに、それをするであろう、そしてそれをしたならばすぐ裁判所がそれの影響を受けて、予断を与えられて裁判が右左に動くであろうというようなことをきめられることは、私はまことに心外に思う。この回答の決定をされたときには、やはりさようなお気持でされたのかどうかを一点伺つておきたいと思うのです。
  95. 小原直

    ○小原国務大臣 「立証すべき事項を外部に表示し、国会においてその存否並びに当不当を調査するとするならば、」こうあるのは、いかにも国会の調査権が事実を調べて検察権の当否の判断を下すように見えて、それはおかしいではないかというお尋ねであります。なるほど一々当否を判断されることがないこともあるかもしれない。しかし国会の調査権が検察権の当否を判断されるためにいろいろの事項をお取調べになるのは、検察権のやり方がいいか悪いかを御判断になるためであると私は思う。でありますから、ここに当不当を調査するとするならばと書いたので、必ずしもこれあるがために私の疏明理由が不当であるということは、私としては承知ならないのであります。  それから次に裁判の事前にもしそういうことを外部に表示すると裁判の公平を害するおそれがあると書いてある、日本の裁判は不覊独立でりつぱなものであることは言うをまたぬのだから、この疏明書に裁判の公平を疑うかのごときことを法務大臣として書くのは不都合であるというお考えのように承りました。私は裁判所が必ずそうなるからといつてここにうたつておるのではありません。現に法律で公判の開廷前に訴訟に関する書類を公にすることを得ずという規定を設けておるのは、要するに日本の裁判はりつぱではありますけれども、いやが上にも大事をとつて、裁判の開廷前に訴訟に関する書類等を公にすることは裁判の公平を書するおそれがあるから、そういうことをやるなという意味で書いてあるので、私の方もそういうおそれがある書類を出したり、その書類の内容となるべきことを財政調査の建前においてお取調べになるときに、外部に表示することはやはり裁判の公平を害するおそれがあるということに考えて書いたのでありまして、それがあるために私が日本の司法権の独立公平を疑うなどということは毛頭ないのであります。
  96. 木下郁

    ○木下委員 法務大臣はお年を召しておられる。旧刑事訴訟法のときには公判前に一切の記録を絶対に出さないということになつております。しかしながらそれが新しき憲法となり、新しき刑事訴訟法となつて、原則としてはガラス張りの中で裁判するという方向に向つております。これは何といつても事実であります。さようであればこそ刑事訴訟法の面においても、また今直接問題になつている議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律におきましても、原則として職務上知つた秘密事項を証言する、それを許さない、承認しないという場合には国家の利益を害する――害するだけでは済まぬのです。重大なる利益を害する場合でなければ証言をさせないというようにまで制限されて参つておるわけであります。さような意味でありますから、私が今聞いたのは、この回答文を読んだだけで私どものぴんと来た感じでは――いかにもそれは国会の調査権の権威に基いて当不当を判断するかもしれません。しかしこれがまた軽々しく当不当、起訴不起訴が妥当だ、いや不当だというようなくせがついたならば、これは三権分立はありません。その点についてはわれわれ国会に席を持つている者は十分の覚悟をいたしております。その十分の覚悟を持つている者に対してこういうものが出ますと、いかにもわれわれの覚悟に対して十分の理解がないじやないかというふうに思われるのであります。それと今申しました日本の裁判所が動かされやしないか、今の法務大臣という大事な地位の人が、ちよつと国会がそれに対して調べたから、そうして新聞の口の端にはあの不起訴は甘いというようなことが出たからといつて、すぐそれが裁判所の裁判に予断を与えて裁判を動かすというふうな危険を感ずるからという意味が出ておりますが、さようなことは私としては十分慎まなければならぬことだと思いますので、この一点を伺つたわけであります。
  97. 小原直

    ○小原国務大臣 お答えいたしますが、御意見承つただけでよろしゆうございますか。
  98. 木下郁

    ○木下委員 その程度でよろしゆうございます。
  99. 小林錡

    ○小林委員長 それでは皆さん長い間ありがとうございました。これにて散会いたします。   午後二時十七分散会