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1953-07-14 第16回国会 衆議院 法務委員会 13号 公式Web版

  1. 昭和二十八年七月十四日(火曜日)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 吉田  安君    理事 猪俣 浩三君 理事 花村 四郎君       大橋 武夫君    寺島隆太郎君       林  信雄君    鈴木 幹雄君       古屋 貞雄君    細迫 兼光君       木下  郁君    佐竹 晴記君       山本 正一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         法務政務次官  三浦寅之助君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         法務事務官         (入国監理局         長)      鈴木  一君         外務事務官         (アジア局長) 倭島 英二君  委員外の出席者         検 事 総 長 佐藤 藤佐君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 七月十三日  委員三浦一雄君辞任につき、その補欠として鈴  木幹雄君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  逃亡犯罪人引渡法案(内閣提出第一〇二号)  刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出  第一四六号)     ―――――――――――――
  2. 小林錡

    ○小林委員長 これより会議を開きます。  逃亡犯罪人引渡法案を議題とし、質疑を続行いたします。質疑の通告があります。これを許します。猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 入国監理局長にお尋ねいたしますが、先般から問題になつておりますところの、われわれが不良外人と認めるジエイソン・リーというシカゴ出身の外人が日本へ入国して来たことにつきまして、われわれの聞くところによるならば、出入国管理令の四條の一項の四号、すなわち一般観光客という許可で入つて来たにかかわらず、いつとはなしに同管理令の四條の一項の五号、すなわち三箇年間滞在してもいいという規定に切りかえられておるという事実があるそうでありますが、さようなことをお調べになつたかならぬか、お調べになつたとすれば、それはいかなる人間がどういう方法で、さような六十日の許可で入つて来た者がいつの間に変造されたか、それが三箇年になつておるという事情を御説明願いたい。
  4. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 お答えを申し上げます。ジエイソン・リーの在留資格の点につきましてお尋ねがございましたが、先般お手元に差上げました書類をごらんいただきますとわかりますが、講和條約発効後におきまして、すなわち昭和二十七年五月二十四日羽田へ参りましたときに在留資格四の一の五、今御指摘になりました商用入国者として三年の在留資格を得ておるわけでございます。それ以前におきましては連合軍の占領下にございまして、そちらの方のやり方で半永住、セミ・パーマネントという資格で従来入つて来ておつたわけでございまして、今のお尋ねの点は、特にあとですりかえたというようなことは別にないのでございます。
  5. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうしますと、占領期間中に要するに管理令四の一の四で入つて来ておつたような者が、四の一の五に認可されるというようなことはリー以外にもあることですか。さようなことはないのが常例だと聞いておりますが、さようなことがあり得るのですか。
  6. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 入国をいたします際には、その入国の目的を在外領事館におきましてただすわけでありまして、その際に日本に観光のために行くということでございますと、四の一の四ということで観光客の資格で入つて参るわけであります。また一ぺんもどりまして、さらに日本で商業をやりたいということで参ります際には、四の一の五ということを領事館におきまして認定しまして判を押して参るわけでございまして、その査証によつて羽田であれ、横濱であれ、入国審査官が一応調べまして、適格の者につきましては入国を許可いたしておるわけでございます。
  7. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうするとり―の場合においては、前には管理令四の一の四であつたものを、特に今度は四の一の五として三箇年滞在してもいいということで日本の入国審査官が入国を許可した、かような筋合いになるわけですか。
  8. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 ジエイソン・リーにつきましては、四の一の四は今までないのでございます。こちらの調べによりますれば、平和條約発効後に入りましたのは五月二十四日、それからことしの三月十五日の二回でございまして、五月二十四日におきましては四の一の五、いわゆる商用入国者として入つて参つており、三月十五日におきましてもやはり商用入国者として四の一の五で入つて来ておりまして、お尋ねのような四の一の四で来ておるということは、私の方の記録にはないのでございます。
  9. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 先般の当法務委員会におきまして、前の入国監理局の入国審査課長でありました平野氏がこのリ―とか、ルーインとかいう者の入国はおもしろくないと言つた証言は、われわれは納得できないのです。ただ何となく入れたくない人物だ、何となくというようなばかな話はない。そんな虫のせいや勘のせいでもつて審査されたのではたまらない。ただ何となくというのしやないので、リーのごときは有名なシカゴのカポネの一味で、シカゴ賭博連盟の有力な会員なんです。しかも国保的に知られた人物である。なおまたフイリピンのル―インのごときも、しかりである。それで入れたくないということになつたと思うが、それが入つて来た。そこでそういう入れたくないような人物を、しかも三箇年も、いわゆる管理令の四の一の五でもつて入国を許可しておるというようなことは、どうも尋常じやない感じをわれわれは受けるのであります。その間に何かのいきさつがあつたのであるか。平野氏の証言によれば、倭島アジア局長が特に名ざしで入れてくれと言われたので、それで入れたというのであります。そこであなたにお聞きしますが、入国監理局というものは外務省から何か頼まれると、やつぱり入れなければならぬ義務があるのですかどうですか、そこをお聞きいたしたい。
  10. 鈴木一

    ○鈴木(一)政府委員 ただいまのお尋ねは、法律上から申しますと、領事が査証をいたしました旅券を持つて参りましても、入国審査官の認定によりまして拒否事由ありと認定いたしますれば、査証がありましても拒否することはできるのでございます。ただいまの当該の事件につきましては、日本側におきまして拒否事由としてはつきりした証拠というものがございませんので拒否することはできなかつたというのでございまして、かたがた外務省の方からその人物を入れるがよかろうといお話も、ございましたので、許可したいうことになるのでございます。
  11. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 倭島局長がお見えになつているそうですから、倭島局長にお尋ねしたいと思います。  先般当法務委員会におきまして逃亡犯罪人引渡しに関する法律制定に際しまして、マンダリン・クラブにおける国際賭博団、不良外人の入国問題についていろいろのうわさがわれわれの耳に入る。ある場合においては、金さえ出せば、幾らでも入れるんだという人がある。ある場合においては、入国審査官が入れたくないと思つても上の方から圧迫があつて入れるように相なる、そこでかような札つきの、国際的に有名な賭博団が東京へ集まるのだというふうなことを耳にいたしまして、私は入国監理局長に質問をしたのであります。その際ジエイソン・リーあるいはテツド・ルーインという人間はどうして入つて来たか、聞くところによれば、時の入国監理局の審査課長の平野重平氏は、どうも好ましからざる人物だと思つたが、倭島アジア局長が特にお名ざしで、これは入れてやつてくれろと言われたから、これは入れた、こういうふうな証言を当委員会でしておるのであります。そこで審査課長が好ましくない人物だと思う者を、まるで管轄違いの外務省の局長であるあなたがお名ざしでこれを入れてくれろとお頼みになつたとすれば、何かそこに事情があるはずだと思う。そこで本日はあなたから、どういう事情においてかかる人物を特にあなたが名ざして、入国監理局に対して、依頼か、指示か懇請か知りませんが、入国でき得るようにしたか。しかもお尋ねしますと、このリーという人物は普通の観光客にあらずして、三箇年滞在できる、出入国管理令の四條の一項の五号で入つておる、かような処置をとられておる。そこでその理由について承りたいのであります。御答弁をいただきたい。
  12. 倭島英二

    ○倭島政府委員 お答え申し上げます。第一の、外務省のアジア局長の私が、本件についてどういう関係を持つかという点を申し上げますが、当該の人は当時マニラにおりまして、フィリピンとの関係からそういう問題が生じて来た。私は外務省でフィリピンの関係をも含めたアジアの仕事をしておりますが、そういう関係で私が直接連絡の役に当つたということであります。従つて関係、筋合いはそうであります。  それから理由はきわめて簡単でありまして、どういうわけでそういうような連絡をするに至つたかという問題は、実はまだ戦犯の問題が完全に片づいておりませんので、秘密会にしていただければごく詳しい話を申します。しかしながら公開の席上としましては、多少まだ懸念される点もありますので、大ざつぱな理由を申しますけれども、問題は、私の職務としてフィリピンとの関係の戦犯の問題と、やはり賠償の問題を担当しております。それでこの当該のルーインという人の入国の問題は大分前からいろいろあつて、外務省はこれについて考慮を払つておりませんでしたけれども、私が昨年マニラに参りまして、今ですからこの程度を申し上げていいと思いますが、戦犯の問題とそれから賠償の問題を交渉しました。それは昨年の十二月の暮れであります。その際にフィリピンの責任ある政府の方から、事情はこうだからということで、特に依頼がありまして、それについても外務省はいろいろ考慮したのでありますけれども、その事情とわれわれが当時直面しておる問題、特に戦犯の問題の扱いについてはいろいろ従来苦心したのでありますが、それとのひつかかりが、われわれは相当心配になつて参りましたので、それならば短期間を限つてこの際その入国ということを解決した方がいいのじやないかというのが筋でありまして、そのほか何ら理由はありません。
  13. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうするとこのルーインという人物はフィリピンにおいていかなる役におり、いかなる仕事をしておつた人物でありますか。御調査になつたと思いますから、この機会にお伺いいたします。
  14. 倭島英二

    ○倭島政府委員 これはフィリピンでは大分長く、何と申しますか演芸関係の仕事をやつており、ナイト・クラブですか、そのほかに関係を持つておるようでありますが、きよう実はその詳しいものを持つておりませんから御説明できませんが、フィリピンには大分長く滞在をして事業をやつておるようであります。
  15. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 演芸をやつたりその他事業をやつておる。しかしこの人物が日本へ来ていかなることをやつたか、あなたも御存じだと思います。マンダリン・クラブなる国際賭博場あるいはラテン・クオ―タ―なるナイト・クラブを実際上経営をしている人物であつたはずである。これが一体フィリピンの政府の高官といかなる関係に立つておるのであるか、ただ演芸や何かそういうようなことをやつておるということだけでは、われわれ納得いたしかねるのであります。そうして事実日本へ入つて来てやつたことはかようなことであつて、わが国の治安を乱すようなことをやつておる。そういう人物である。外務省がそれに対して折紙をつけるようなことは、何かもつと詳しい御決定よういたします。調査の上だろうと思う。あなたの公開できる範囲において御説明願いたいと思います。
  16. 倭島英二

    ○倭島政府委員 その点は先ほども申し上げましたように、これはひとつ御了解の行く点かと思いますが、われわれが戦犯の問題にいろいろ苦心をし、早く少くとも日本の国土に迎えたい、それから減刑赦免その他実現するように持つて行きたいということで、従来苦労に苦労しました問題が、今もう数目で片づくところになるわけであります。その問題と相当関係を持つておるとわれわれ認定いたしましたので、そういう関係から、本人の商売柄だとかあるいは日本でどういうような関係を持つておるとかということよりは、もう少し大きな問題のようにわれわれ考えましたので、そういうふうにとりはからつたわけであります。現在においても日本の戦犯の関係がまだはつきり――内地へ帰つておりません。帰つてからも、よく考えれば関係者のいかんによつては、将来の減免の問題等にも関係する問題だとわれわれ考えております。従つて問題を慎重にするためにこれを秘密会にしていただければ、われわれの知つておる限りのことを申し上げます。
  17. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 委員長、秘密会にして、その辺の事情を聴取したいと思います。
  18. 小林錡

    ○小林委員長 この際お諮りいたします。本件につきまして国会法第五十二條の規定により秘密会を開会いたしたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 小林錡

    ○小林委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  それでは議員、政府関係者、事務関係者以外は御退席を願います。      ――――◇―――――     〔午前十一時四十一分秘密会に入る〕     〔午前十一時五十九分秘密会を終る〕      ――――◇―――――
  20. 小林錡

    ○小林委員長 この際お諮りいたします。衆議院規則第六十三條により、秘密会議の記録中特に秘密を要するものと委員会で決議した部分についてはこれを公表しないことになつておりますが、その取扱いについては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 小林錡

    ○小林委員長 御異議なしと認めます。さようにとりはからいます。  他に本案について御質疑はありませんか。――御質疑がなければ次に移ります。     ―――――――――――――
  22. 小林錡

    ○小林委員長 刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより本案に対する質疑に入ります。質疑の通告があります。順次これを許します。鍛冶良作君。     〔「大臣がいないじやないか」「休憩休憩」と呼ぶ者あり〕
  23. 小林錡

    ○小林委員長 それでは午前中はこの程度にとどめて、午後一時から再開いたします。しばらく休憩いたします。     午後零時二分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十六分開議
  24. 小林錡

    ○小林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。この際お諮りいたします。刑事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会より連合審査会を開きたいとの申出があります。申出の通り連合審査会を開会いたすことに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 小林錡

    ○小林委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。なお連合審査会開会の日時につきましては委員長に御一任願いたいと存じますから、さよう御了承願います。     ―――――――――――――
  26. 小林錡

    ○小林委員長 逃亡犯罪人引渡法案を議題とし、質疑を続行いたします。質疑の通告があります。これを許します。佐瀬昌三君。
  27. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 本法案の審議にあたつてなお一点確かめておきたいのは、法案第十四條に基く法務大臣の引渡し命令に対して不服のある引渡し犯罪人が行政訴訟を提起することができるかどうかという点であります。この制度が、せつかく局部的ではありますけれども、司法化を目ざし、個人の人権保障を目標とする以上、高等裁判所の決定に対する再審制度も考えられなければならないのでありますが、この法案の上からはそれは予定されてないように考えるのであります。従つて他の方法としては一般の行政事件としてこれに対する訴訟が許されるかどうか。特にまた私どもが第十四條について考えるべき点は、法務大臣がその自由裁量によつて、言いかえるならば、東京高等裁判所が引渡しができるものと決定した後において、法務大臣がなおその引渡しを相当とするかどうかという点において自由裁量をされる。この法の精神から見まして、その場合に行政訴訟が許されてしかるべきものであるというふうに考えるのでありますが、政府委員のこの点に対する御見解を伺いたいと思います。
  28. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 お尋ねの点は、結論的に申し上げますと、一般の行政訴訟の例にのつとつて訴訟の提起を法務大臣の命令に対してなし得る、さように理解しておるわけでございます。と申しますのは、法務大臣は東京高等裁判所の決定にのつとつて、その趣旨を勘案しつつ、諸般の情勢を見て裁量いたすわけでございますが、内容的にはやはりそれが法律的にもできるということを前提としておるわけで、つまりその適否なる点を争うことになるわけでありますから、当然行政訴訟はできる、かように理解するわけであります。
  29. 小林錡

    ○小林委員長 他に御質疑はありませんか――他に御質疑がなければ、本案に対する質疑はこれにて終局することといたします。  この際本案に対する修正案が提出されておりますので、提案の趣旨説明を聴取することといたします。佐瀬昌三君。
  30. 佐瀬昌三

    ○佐瀬委員 私どもは、本法案を審議いたした結果、若干の修正すべき点を発見いたしまして、その修正案をここに提出いたしたいと考える次第であります。   逃亡犯罪人引渡法案の一部を次のように修正する。   第九條中第三項を第四項とし、第二項中「前項」を「第一項」に改め、「逃亡犯罪人」の下に「及びこれを補佐する弁護士」を加え、同項を第三項とし、第一項の次に次の一項を加える。  2 逃亡犯罪人は、前項の審査に関し、弁護士の補佐を受けることができる。   第十四條第一項中「引き渡すことができ、且つ、」を削り、同項及び同條第三項中「引き渡すことができず、又は」を削る。   第二十二條第七項第三号中「、引き渡すことができず、又は」を削る。以上であります。  この修正案を提案いたしました理由を簡単に申し上げます。この修正の要点は二つでありまして、一つは弁護士の補佐を認めることと、一つは第十四條の、法務大臣が引渡しを決定される場合に、東京高等裁判所のなした決定との関係を顧慮いたしまして、これを本修正案のごとく改めようとするものであります。  まず政府提案の原案によりますれば、裁判所は引渡すことができると裁判をしたものに対し、さらに法務大臣が独自の立場から引渡すことができるかどうかを判断し、かつその上引渡すことが相当であるかどうか判断した上、その裁量によつて引渡し命令を出すべきものと解されるのでありまするが、これは引渡すことができるかどうかという法律的適否に関する確認的裁判に対し何らの拘束的価値を認めず、政府が重ねて同一の争点について自由な判断をなし、その措置上裁判所の決定を無視した結果になる場合もできるのでありまして、それではせつかく逃亡犯罪人引渡し手続の過程において、人権擁護と近代的立法のためその司法化をはかつた精神が没却されるので、この誤解を解消するため、この点修正案のごとくに原案から削除いたしまして、しかも他方においては、依然として引渡し命令を出すべきかどうかは、右の裁判の上に立つて法務大臣がなお引渡すことを相当とするかどうかを大局的見地に立つて判断いたし、その自由裁量によつて決することができるように規定いたしておいて、引渡し命令そのものの性格が終局的にはやはり政府の自由裁量により、しかもこれは先ほど政府との質疑応答にも明らかにされたごとく、法的判断を含んだ上の裁量処分であるから、これに不服な引渡し犯罪人は行政訴訟を提起することができることとなし、この新制度の司法化と行政との調節をはからんとするのが、本修正の最大眼目であります。  なお引渡しの審査に弁護士の補佐を受け得るように修正した点は、引渡し犯罪人が引渡しの適否に関し裁判を受ける際、その人権を擁護するため、近代的訴訟の原則として弁護権を保障されることからして当然のことと思料いたし、かつは本法案がきわめて国際性を有し、進歩せる諸外国における同様の人権保障の立法に対応せしめるために当然かように修正する必要性を認めた次第であります。
  31. 小林錡

    ○小林委員長 本修正案に関し、何か御発言があればこの際許します。――ちよつと速記をやめて……。     〔速記中止〕
  32. 小林錡

    ○小林委員長 それでは速記を始めて……。  次に原案及び修正案をそれぞれ討論に付すべきでありますが、討論はこれを省略し、ただちに採決を行うに御異議はありませんか。     「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 小林錡

    ○小林委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  これよりただちに採決を行います。逃亡犯罪人引渡法案のうち、まず自由党提出の修正案を表決に付します。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  34. 小林錡

    ○小林委員長 起立総員。よつて本修正案は可決されました。  次にただいま可決されました修正部分を除く原案を表決に付します。修正部分を除く原案に賛成の諸君の御起立を求めます。     〔総員起立〕
  35. 小林錡

    ○小林委員長 起立総員。よつて修正部分を除く原案は可決されました。  従いまして逃亡犯罪人引渡法案は自由党提出の修正案の通り修正議決すべきものと決しました。  お諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 小林錡

    ○小林委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。     ―――――――――――――
  37. 小林錡

    ○小林委員長 次に刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより本案に対する質疑に入ります。質疑の通告があります。順次これを許します。鍛冶良作君。
  38. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ただいま議題となりました刑事訴訟法の改正に関する提案理由の説明を見ますると、現行刑事訴訟法は、実施以来四年半を経過した結果、いろいろの欠点あり、かつまたわが国の国情に合わないもののある点を改正しようというねらいのように思つておりますが、私もまことにその必要あるものと考えまするが、どうも本改正案を一覧いたしますると、何だか検察庁側の不便な点ばかりを改められるように見受けますが、これと同時に何よりも大切なことは人権擁護ということだと考えるのであります。この点に関して事務上の便益よりも人権擁護の観点に立つてこれを立案せられたものであるかいなやを法務大臣から伺いたいと思います。
  39. 犬養健

    ○犬養国務大臣 お答えをいたします。このたびの改正は、今御指摘のありましたように過去四年有半の運用の実績にかんがみて、やむを得ざる最小限度の点を法制審議会の答申をまつて御審議を願うべく提出をいたした次第であります。率直に申し上げまして、鍛冶委員のおつしやることは、ある意味で当つていると思います。その事情のよしあしは別として、控訴審において事実取調べの範囲を広げる、その他二、三の点で明らかに人権擁護一点張りという修正もありますが、大体あとはごく正直に申し上げまして、人権を拘束する意味の改正案でございます。但し人権というものもやはり何といいますか、社会全体の公共の福祉と調和をはかつての人権でございますので、その点で実は、今度の改正案に盛られた内容は、私どもから見ますとこのくらいはやむを得ないのじやないか、こういうふうに考えたわけでございますが、事いやしくも少しでも、日本国民の人権を一寸でも一分でも縮めるということは、非常に重大な責任だという意識をもつて当局がかからなければたいへんなことになるという謙虚な気持で、この改正案に臨んでおるわけでありまして、この当局の心持はひとつ御了承願いたいと思います。
  40. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこでまず承りたいの一は、起訴前の勾留期間を五日間延長しようとせられておる点、われわれは刑事訴訟法上人権の尊重ということは、何よりも不要の拘束を避けるということだと考えております。ところで現行刑事訴訟法の精神は、原則として人身を拘束せないで傍証を固めた結果起訴、不起訴をきめる。人身を拘束するということはやむを得ざるときの措置であるとわれわれは考えておるのであります。ところが現行刑事訴訟法では十日間だけこれをしておる。やむを得ざる場合においてはなお十日間これをやれる、こういうことになつておつたのでありまするが、その後の実施状態をながめておりますると、どうも現行刑事訴訟法の精神と相反するやり方が一般に行われておると言つてもいいんじやないかと思うのでありまして、まず人身を拘束してから、それから証拠固めをして起訴、不起訴をきめる、こういうことになりますから、十日のこの特別の場合はさらに進んで二十日間は当然やれるものだというような考え方を持つておられるようであります。この点に関しましても、われわれは非常に遺憾だと思つておりますのに、さらにこの際いま五日間延長しようとかかられることは、われわれ本刑事訴訟法の精神に最も反する傾向をとられるのじやないかと危惧せられるのでありますが、この点に関する当局の御意見を伺いたいと思います。
  41. 犬養健

    ○犬養国務大臣 この点も御質問の御趣旨は重々ごもつともでございます。いやしくも人を最初に十日、あと十日、そして今度は事情あるにせよさらに五日間身柄の拘束をするということは、これは重大問題でございます。私はこの問題に携わりまして以来、御承知のように浅学でございますから、いろいろ過去の速記録あるいは法律雑誌の座談会などを読みまして、ずいぶん検事のやり方に対する国民の批判も承りまして、十分その点は気をつけなければならぬと考えておりますが、一方鍛冶さん重々御承知のように、新刑訴をつくりましたときには、あまり予想もしなかつた多衆犯罪的な暴力騒擾事件がひんぴんとして起りまして、検察陣としても、どうにもこうにもやり切れないというような内容の事件が起りましたので、ここにやむを得ずさらに五日の勾留期間延長について御審議を願うことになつたのであります。御承知のように、これは当局からもすでに説明があつたかと思いますが、よくよくの事件であります。かつ最初の十日間で問題が解決してしまう事件は、全体の八〇%に及んでおるのであります。あとの残り二〇%、おそらく一〇%くらいの問題が、最後の五日間の期間延長の対象になるのではないかという予想でございます。なおこれは、一部にお疑いのあるように、絶対に選挙違反事件などを対象にしておりません。今日予想されております事件というものは、まず大部が騒擾的な公安事件でございますが、そればかりとは言い切れない。と申しますのは、大がかりの詐欺事件あるいは手形の偽造事件なども予想されますが、大体そういう特殊なものであつて、かつ多衆犯罪という点でもつて特別の例外措置を御審議を願つておるわけであります。この点当局もやむを得ない最小限度の範囲にとどめたいと思つたわけであります。御承知のように前々回の国家では勾留期間延長七日ということでありまして、最高検の人の不足、予算不足の立場からいいますと、十日というのは必要欠くべからざる期間であるという議論もあつたのでありますが、在野法曹の経験ある皆さんの御意見、その他国民の社会意思といいますか、そういうものを十分しんしやくいたしまして、七日と申し上げたのを五日に減らしたような次第でありまして、この点当局の考え方を御了承願いたいと思います。
  42. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今の大臣のお考え方は、われわれもけつこうだと思いまするが、大臣の考えておられるようなことが、実際と異なるように思えてならない。そこで私は、実際に行つておられる責任者である検事総長並びに国警長官にお聞きしたい。現刑事訴訟法は、原則として人身を拘束せない建前である。拘束するときは、やむを得ざるときでなかつたらせないものだと考えるが、この点に関してどういうお考えを持つておるか。往々にして、拘束せないで調べられませんよということを、公然と聞かされる。そうなると、十日でもやむを得ざるときでなければいかぬと思つておるのに、さらにあとの十日はもう平気でやつておられる。平気でないというならば、あとの十日はやむを得ざるものであるということを、どういうことで表わしておるか。この点を御両名から伺いたいと思います。
  43. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 現行刑事訴訟法が、捜査についてはなるべく人身を拘束しないように、任意捜査を原則としておることは仰せの通りでございます。ただ実際の捜査に当つてみますると、現在のような人員及び予算、物的な制限も受けておりまするし、なお現在の程度の科学的な知識では、なかなか全部任意捜査で徹底するということもできませんので、実例としては鍛冶委員のおつしやるように、例外として人身を拘束して調べるというような事例もあるのでございます。しかしながら私どもの方針といたしましては、どこまでも刑事訴訟法の原則に従つて任意捜査をする、やむを得ない場合に人身を拘束して捜査をするという方針をとつておるのでございます。なお数字の上で申し上げますと、人身を拘束して調べた事件と、全然拘束をしないで調べた事件との比については、最近の統計を法務省の刑事局の方でお持ちであろうと思いますから、その方面から御説明をいただくことにいたしまして、今鍛冶委員から問題にされました勾留の延長の問題でございます。これは昨年最初に刑事訴訟法の改正案が本国会に提案されました当時、私どもは全国の勾留状の発付の数について詳細調査いたしたのでありますが、その調べによりますと、先ほど法務大臣から申されましたように、拘束をしておる被告人のうち、十日以内で釈放する事件が八〇%なのであります。十五日以内で釈放されるものが八%、満期の二十日以内で釈放されるものが残りの一二%という飢を示しておりますので、勾留を延長いたしましても、大体勾留満期まで置くのではないかというような御心配は、過去の統計によつても、そう大して御心配をかけるようなことはないだろうと思います。もしこの法案が通過いたしまして実施するようになりますれば、私どもの方では、極力この延長期間の勾留を用いないように、特別の、よくよくの場合でなければ延長期間を用いないように、特に厳重に部内に指示したいと思います。
  44. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいま佐藤検事総長からお答えがありましたように、警察側におきましても、この犯罪の捜査にあたりましては、原則として任意捜査、ただ逃亡のおそれがある、あるいは罪証隠滅のおそれがあるという場合に限つて、やむなく身柄の拘束をして取調べるということ、これが捜査の鉄則、ことに新憲法下また新刑事訴訟法下における鉄則であると考えておるのであります。鍛冶委員のお考えとまつたく同様に考えます、ただ、しからばわれわれがこれを厳重に守つておるかどうかという御疑念もあろうかと存じますが、われわれといたしましては、極力この原則を実際に現わすように努力をいたしておるのでありますが、一番むずかしい問題は先般もお話がありましたように通謀のおそれがあるかないかという点の判断が、警察側におきましても検察側におきましても、私今後もつともつと新刑訴の精神にのつとつてやつて行く必要があるだろう、かように考えまして、ただいま法務大臣からお答えになるような種類の犯罪につきましては勾留期間をもう少し延ばしてもらわないと取調べ上実際困るということは、われわれ警察側から見ましても考えられる点でございます。
  45. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 いろいろ皆様にその考えを持つてもらわなければたいへんなのですが、そのお考えはけつこうだが、実際第一線に立つている者はあなた方の今おつしやつたようなやり方でやつているかいなやということが問題です。そこで私は具体的に伺いたいのは、現行刑事訴訟法の二百八條の第二項であります。「裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。」とある。この裁判所に対して、やむを得ざる事由がある、こういう請求をしておられるかどうか。もしやむを得ざる事由があるといわれるならば、どのようなことで十日の延長を求めておられるか、これを実際的にお伺いいたしたい。
  46. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 このやむを得ないという事由につきましては、裁判所に必要な疎明資料を出すのでございます。たとえば被疑者が今までずつと黙秘をしておつて真相をつかめなかつた、ところが傍証の関係である程度の事実が出て来た、あとたとえば七日なら七日あればその傍証の固めとそれから本人の調べがついて完了する、その七日だけを許してくれ、こういうような申請をするのでございます。その際にこのやむを得ぬという具体的な事情を資料に載つけて裁判所に請求する、かようなことになつております。
  47. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私はその点は厳重にやつておられぬように思えてなりませんが、現行刑事訴訟法でさえわれわれはそのような危惧を持ちますのに、さらに改正して五日もやろう、こういうことです。そこで提案の理由を見ますと厳重なる制約のもとにとあります。條文を見ればわかるようでありますが、とのような厳重なる制約をここへ持つて来て、さような憂いのないようになつておるものであるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  48. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 まずこの再延長の場合の事件の種類によつて制限がしてございます。それは死刑または無期もしくは長期三年以上の懲役もしくは禁錮に当る罪、それ以上の重い罪に限るということがまずその一つでございます。それから具体的な場合として限定しておりますのは、その一つは犯罪の証明に欠くことのできない共犯その他の関係人または証拠物が多数であるとき、第二は、そのために検察官が、起訴前の勾留期間が二十日延長されましても、なおかつその関係人または証拠物の調べが終了できない、しかもその被疑者の身柄を釈放したのでは、それらの関係人または証拠物を取調べることかはなはだ困難になる、さように三つの要件が軍なつておらなければいかぬ、これが厳重なる制約になつておるわけでございます。その場合々々のこまかい、たとえば「犯罪の証明に欠くことのできない」というのは、捜査に欠くことができないというのとは違いまして、犯罪の証明自体が犯罪事案の内容自体に反しなければならない、たとえば情状その他の場合はこれには入らない、こういう点まで考慮してあるわけでございます。
  49. 犬養健

    ○犬養国務大臣 ただいまの御質疑に対して政府委員の答弁に補足さしていただきたいと思います。今申し上げた通りでございますが、先ほど私が申し上げた点、すなわち選挙違反事件などはこの対象として含まぬということを速記に残すばかりでなく、大臣通牒としてこれをいたし、なお具体的なこまかいことば検事総長訓令でもしてもらおう、こういうふうに考えております。厳重なる制約を加えたいと思います。
  50. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 大臣の御深慮はまことにわれわれはありがたく思いますが、どうもこの條文を読んでみますと、「犯罪の証明に欠くことのできない共犯その他の関係人又は証拠物が多数であるため」これは近ごろいわゆる新戦術をもつて向つて来るような被疑者及び被告人のある場合にこれを予想せられておることは、われわれも想像できるのでありますが、今大臣のおつしやつたような選挙違反もこの中へはまるものと――選挙違反でなくても、ほかにも共犯のこういうものがありましよう。共犯その他の関係人が多い場合、選挙違反なんかはすべてそういうてもいいぐらいなものであります。なるほど今速記に残したら訓令でお出しになるか知りませんが、第一線でそれを守らぬからといつて、方法がない。私は先ほど以来十日もむし返すということが、よほど事情やむを得ない場合でなかつたらできぬものと思つておるのに、簡単に十日もむし返しが行われると同じように、今はこのように共犯その他でも、選挙違反のごときものは入らぬということを言つておられても、やがて第一線へ行つて捜査をするたびごとに共犯その他多数の者がおるじやないか、こう言われた場合はその点が入ると思いますが、そういうものが入らぬという法律上の確たる何かございますか、その点をお聞きしたいと思います。
  51. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 法律上の解釈と表立つてお聞きくださると、これは入らぬということにはならぬというお答えをするほかないのでございますが、それではこれを除くために立法技術的にどうするかということになりますと、選挙違反の事件はこれを除くというふうなことをまつ正面から入れるかどうかという問題になるわけでございます。たださような選挙違反を除くということだけをこの際書くというのは、立法の体裁としてもいかがでもあろうかという点もございます。ただ大臣の通牒あるいは検事総長からの指揮に反するものに対しましては、もとよりこれは厳重なる行政上の処分もあるわけでありまして、その通牒なりあるいは指揮というものは十分守られる、かように私どもは確信いたしております。
  52. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今の御答弁を聞くとますます私は不安にたえませんが、私はこういうふうに考えます。あなた方の予想しておられるような事件に対してやるというならば、そういうものを取締る法律に特別なものを入れられた、たとえば破防法を適用するようなものを一番あなた方はねらつておられる。それならば破防法のところでこういうことをきめれはいいので、一般のどの犯罪にも適用されるものをきめておいて、それだけはやらぬのだとおつしやつたからといつて、それが行われるとはわれわれは思いません。これはただ私の意見でありますが、あなた方はそういうお考えはないかどうか。
  53. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 法制審議会におけるこの議案の審議の際に、やはり同様の点が問題になつたわけでございます。その際に個々の犯罪を一々検討してみたらどうかというただいまの御質疑とちようど同じことが問題になりました。考え得られる犯罪といたしましては、たとえば騒擾とか内乱とか外患とか暴力行為の取締り等とか、そういうふうなものが次々と考えられたわけでございます。しかしながらこれをそれぞれの法律に、この法律に違反するものについてはこういう特殊の手続があるということを書くこともできませんし、またそのための法律を特に出しまして、その中に犯罪の種類を限定するというのも、立法技術としてはたいへんまずいわけでございます。と申しますのは、たとえば今おつしやるような場合に、内乱、外患、騒擾、暴力行為というのは大体われわれすぐ思いつく犯罪でございますが、たとえば先ほど大臣からもお答えのありました通り、詐欺の非常に厖大な事件たとえば通貨偽造行使詐欺あるいは手形偽造行使詐欺というふうに、転々とその証券なり偽造の通貨が動きまして、その間の関係人が非常にたくさんになつて来たというふうな場合に、結局二十日ではまとまりがつきかねる、もう二、三日あれば全部のまとまりがつくというような場合も、実は現にあつたわけでございまして、そのようなことも一応考えつつ立法した方がいいのではないかというのが、法制審議会においてかような結論の出たゆえんでございます。
  54. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 こまかい点はあとの一般的質問に譲ることにいたしまして、次に承りたいのは百九十三條ないし百九十九條の改正の点でございます。提案理由の説明にもございました通り、検察官の一般的指示を、捜査の適正をはかるために強化しようというねらいが現われておるものと思いますが、私はこの新刑事訴訟法の成立のときに、その根本精神についてずいぶん議論したのでありますが、今あらためてまた当局の御意見を伺わなければならぬのは、現行刑事訴訟法の制定されたときには、大体アメリカの制度を日本へ移そうという考えであつたろうと思われます。そこでアメリカの制度を承りますと、捜査はすべて警察官がやる、その結果警察官が公訴提起の適否を判断し、さらに進んで訴訟の維持をやる、こういうように聞いておるのであります。しかるに現行刑事訴訟法がいよいよ現われましたときに、この精神の中へさらに検察官の一般的指示ということが入つて来て、捜査は警察官並びに検察官の二本建になつております。これは日本の国情からやむを得ないものであつたかはしりませんが、改正案そのものの根本趣旨からいたしまして、徹底を欠いたものと思われておりますが、そこからこのたびこういう改正に出て来たのでございましよう。そこで聞きたいのは、さらに検察官の一般的指示を強化するということは、現行刑事訴訟法の根本精神と相反するものでないか、それともそうするのが刑事訴訟法の根本精神に合致するのか、この点をひとつ明瞭に承りたいと思います。
  55. 犬養健

    ○犬養国務大臣 お答えを申し上げます。刑事訴訟法のただいまお示しの條項でございますが、今度の改正はちようど今度のスト規制法とほぼ似たような考え方でございまして、條文の正しい読み方を再確認する解釈規定のように私は考えておりまして、従来とかく條文の読み方について一部疑義があるのをはつきりさせる、こういう考え方をしておるのでございます。これは鍛冶さん特に御承知のようになかなかめんどうな事情があつたのでございますが、私どもは、一方において司法警察官というものは何といつても捜査の第一次的責任者である、こう存じております。しかし刑訴百九十三條の條文を的確に読んでみますと、やはり検察官も一般的指示をする必要があることを、もとの原文においても認めておるように思うのであります。ただ従来のこの読み方の一部に、公訴の維持と公訴の遂行とを混同して読まれる結果、そこに疑義が生じておる、こう思いますので、このたびこれを解釈規定として再確認するというような精神がもともとでありまして、検察官の力をにわかに今度伸ばすとかなんとかいう問題ではないと私は考えて、御審議を願つておるわけであります。従つて、何と言つても捜査の第一次的責任者は司法警察官でありますから、検察官は公訴の遂行を全うするためには適正な捜査をしてもらわなければならぬ、また適正な捜査が行われておるということを確認しなければならない立場にもありますけれども、しかし今度の百九十三條の改正によりまして、個々の事件を直接の目的として一々干渉がましく指示をするという意味ではないのでありまして、準則を示すということでそこに検察官としての指示をする、こういう意味でございます。但し準則というのはどうしてもその性質上、間接的には個々の事件に影響するのであります、影響がなければ準則は書かないでいいということになりますが、しかしその準則たるや、繰返し申し上げますと、個々の事件を直接の目的として干渉する意思はない、この程度の気持で私は解釈いたしておるわけであります。
  56. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 もつとつつ込んでお聞きしますが、アメリカの制度のようにした方がこれは明瞭になる。このあと百九十九條のときに問題になつて来ますが、アメリカの制度にしてしまえば、現在でもやはりそういう問題は起つて来ないわけであります。しかるに捜査並びに公訴の維持、遂行に対して検察官が一般的指示をいたさなければならぬというこの根本理由がどこにあるか。捜査に関しては警察にまかせつきりでは何かあぶない。それだからこういうことになるんでしよう。そういう実例は――これは大臣でなくても検事総長あるいはほかの政府委員でもよろしい、これはなくてはいかぬのだと私は思いますから、そんならこういうのでなくてはいけない、それだからアメリカ同様の刑事訴訟法ではいかぬという理由があれば、その点明白にしておいていただきたいと思います。
  57. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 百九十三條の改正の趣旨は、ただいま法務大臣から申されましたように、私どももこれは現行法の百九十三條の解釈を明確にしたという程度に了解をいたしておるのでございます。百九十三條の第一項の解釈につきまして、刑事訴訟法の実施以来、一部に私どもの解釈と違つた解釈を施しておる者があつたのであります。さようなぐあいで法制審議会におきましても長い間論議を闘わしまして、それでは解釈を明確にする程度ならけつこうじやないかというので、大多数の賛成を得て法制審議会を通過したのでございます。  そのわけを詳しく申し上げますと、一部でどうしてそういうふうに現行刑事訴訟法の百九十三條の第一項を誤解しておるのか、解釈上の誤解を生じました。その問題は、公訴権の実行、言いかえれば刑罰権の遂行ということのほかに、捜査権というものがあるやの感を抱いておつたのではないかと思つておるのであります。私どもの考えでは、犯罪の発生と同時に公訴権なり、刑罰権が発生するのであつて、その第一段階として捜査を始める、捜査が終ると公訴を提起するかどうかということを決定し、また公判に事件が係属したならば、検察官はそれに対して、公訴維持について十分法律適用について関心を払わなければならぬ、また有罪の判決が確定いたしましたならば、その判決の執行について、やはり検察官が十分指揮監督をしなければならぬ、かように刑罰権、公訴権の発生から消滅に至るまで、検察官というものは、その間いろいろ事情はありますけれども、全階梯を通じて職責を持つておる、こういう建前が刑事訴訟法の現在の建前だろうと私どもは考えておつたのであります。條文の解釈をくどく申し上げるのは失礼でございますが、百九十二條と思いますが、捜査に従事する者はすべて協力しなければならぬようになつておる。そうすると、現在捜査に従事する者、捜査の職責を持つておる者はだれであるかというと、一般の警察官のほかに、海上保安官とか、鉄道公安官とか、いろいろ特別な司法警察官もございますし、それから検事も犯罪捜査をしなければならぬということをきめられておるので、かようにお互いに協力関係とはいいながらまちまちな司法警察、職員が並行しておる。警察のうちでも国警もございますし、自治警もある。こういうふうに非常に並行的に搜査を進めて行く職責を持つておる。その捜査の目的は何であるかというと、刑罰権の実行にあるのでありまして、検察官にその捜査した結果を送つて、そして公訴を提起してもらつて、公訴を維持し、刑罰権を実行するというのが目的なのであります。その捜査の目的というものは、どんな捜査官でも同じである。それならば公訴を提起する唯一の機関である検察官において、そのばらばらに行われる捜査を調整をとつて、そして適正な捜査にすべきではないかというところから百九十三條の條文ができ上つたものと私は了解をいたしておるのであります。第一項においては一般的な準則をきめ、第二項においては協力についての一般的指揮をすることをきめ、第三項においては検事みずから捜査をする場合には、司法警察官を補助させるためにいろいろな指揮をすることができるようにきめておる。こういうふうに検察官をして指揮や指示等をさせて調整をなさしめるのは、やはり捜査は刑罰権実行の一段階としてなす捜査であるから、捜査の適正を期するためには検察官において調整をとる方がよろしいのではないかというような考えから現行の刑事訴訟法ができたものと理解いたしておるのであります。そういう考えから考え直してみますと、百九十三條の一項の、捜査のために一般的な準則を定めることができる、これは刑罰権を実行するために必要な事項、重要な事項に限るというふうにこれを設けた趣旨はよくわかるのでありますが、いざ実際の場面になつてみますと、捜査官の一部の間にも、どうも捜査については一般的指示はできないのじやないかというような誤解を生じ、つまり疑問をさしはさむ一部がありましたので、それではもう少し字句を明瞭にして、現行刑事訴訟法百九十三條の精神を明確にしたらどうかというので、この改正案ができたものと了解いたしております。
  58. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の一番聞きたいのは百九十三條がなければならぬ根本の理由で、アメリカにおいてはそういうものはないと思いますが、日本ではこれを入れなければならなかつた根本理由を聞きたかつたのでありますが、あとでまた出て参りますからそのときお聞きいたします。  次に百九十九條について承りたいのでありますが、百九十九條の逮捕状の請求にあたつては検事の同意を得なければならないという改正案の根本理由はどこにあつたか。提案理由の説明書を読んでみますと、最近逮捕状濫用の非難が高く、有力な法曹の間にも本案のような規定の創設を希望する声が高いので、これを改正案に入れたというふうにいつておりますが、これだけの理由であるのか、あるいは一般的指示という根本の問題からこれがなくてはいけないというお考えであるか、この点をまず法務大臣から承りたいと思います。
  59. 犬養健

    ○犬養国務大臣 この点は、私は法学者ではないからごく平たく申しますが、たくさんの人数のことですから例外もありましようが、大部分は、検察官と司法警察官とは仲よくやつておるわけでありますが、それにもかかわらずときたま逮捕状の濫用についてあなた方在野法曹界でなかなかおやかましく言われるということは、やはり民意の反映でありますので、私どもとしては在野法曹の強い意見として、これを適宜に取入れて扱つたのでありますが、御承知のように法制審議会でもいろいろ議論がありました。また警察には警察のその場合々々のやむを得ざる理由があるので、これは私の政治的な判断も加わつたのでありますが、元は鍛冶さん御承知のように検察官の承認が必要であるという言葉を使つております。承認という言葉は、私のしろうと考えですと、検察官がいすにすわつておつて、警察官が立つていて検察官の承認を求めるというような感じを受けますので、これは第一次的捜査の責任者としての警察官の立場もありますので、こまかいりくつは別として、私は同意という字の方がよいのじやないかと考えまして、訂正して御審議を願つたのがこの前の国会でございます。この同意という言葉も、世界でこれしかないほどよい言葉だとは思つておりません。ただどうもわれわれ表現が貧しいものでありますから、いろいろ考えて今のところは同意以外にはない、こういうふうに考えまして同意ということにしたわけであります。なぜこういうことをしなければならぬかということは、大部分の検察官はそうではないと思いますが、ときどき世間からも私どもしかられる事案がありますので、どういうふうにしたらより多く円滑に行くかということで考えたのでありまして、専門的なことについては政府委員からお答えいたします。
  60. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 われわれ多年この職に当つた者として、十分その経験も味わつており、前から改正を叫んだものであります。それでは検事総長あるいは岡原政府委員からでもよろしゆうございますが、先ほど言つたように捜査は警察官だけにまかしておけない。捜査の適正をはかるため、さらに公訴を遂行するために一般的指示がいるのだ。この根本理由と、ただいま改正案として出された同意を必要とするということに関連があるのか。関連はない、ただ今までの警察官の諸君のやり方が悪かつたから改正をしただけだ、こういうお考えか、その点を明確にしておきたいと思います。
  61. 犬養健

    ○犬養国務大臣 百九十三條と百九十九條とは関係ない、こういうふうに考えて、御提案いたしております。
  62. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の言うのは一般的指示ということから、どうして同意が必要かということなんです。岡原刑事局長がおられますから政府委員から伺いたい。
  63. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 これは一般的指示ということと関係なしに、別に百九十九條が掲げられた、かような関係であります。
  64. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると残りの問題は逮捕状濫用の非難が高かつたからという点になりますが、それならば単に消極的に同意を与えるだけで、これは防止できますか。どうしても同意を与えなければならぬという理由にははなはだ薄いように思いますが、この点に関してどういうお考えであるか。
  65. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 同意という文字を使いましたのは、要するに逮捕状の請求について、検察官、警察官もまつたく意見が一つである。従つて検察官もその請求について責任を負うのだという建前によつて、検察官たるものがその内容を見て行くということに問題の中心があるわけであります。と申しますのは、どちらかといいますと検察官の方がむずかしい試験を終えて、法律的な素養においても、全般的に高いものと思われます。また実際的な捜査の方法その他につきましても、大局からものを判断するという能力が一般の刑事諸君よりは積んでおる、さような点から考えまして、在野法曹の人たちも検警官の手を経て初めて逮捕状の請求ができるようにした方がよいのではないかという御意見を出されたものと私は推察しておりますが、そういう意味でこれは一般的指示というものとは直接の関係はないのでありまして、たださような何意ということで検察官も責任を持つ、従つて内容的にそれを見て、不当な逮捕状の請求がないように、そこでチェックする場合はチェックする。もとより逮捕すべき事件については、これは同意する。かような運用になれば、従来以上に間違いなしに済むのではないか、かような考えに基くものであります。
  66. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私いま少し必要なる根本理由があるものではないかと思われるので、当局の御意見をもつとお聞きしたかつたのです。私から意見を出すのも変ですが、やむを得ないので私の考えを申し上げます。この間花村委員がアメリカに行かれたとき調べられたアメリカにおける警察の捜査の実情を承つて、いかにも感を深くした。アメリカににおいては警察官が全部捜査権を持つておる。ところが捜査は全部任意捜査をやりまして、傍証がすつかり固まつて、本人が出て来れば、それですぐ起訴ができる。否認しようが、自認しようが、そんなことは関係ないのだというときに、初めて逮捕状を出しておる。被疑者が来ればすぐそれでよいのだ。身柄とともに送検する。検事はただちにそれに対して起訴する、だからほとんど勾留の必要がない、そういう捜査のやり方をやつておられるならば何も一般的指示もいらなければ、同意を求めることもいらないわけだ。ところが日本の実情はそうではないのだ、情ないと思うが、ちと行き過ぎかと思うが、われわれの知つているところでは、嫌疑があればひつぱつて行く、そして自認を求めて、自認をしたところからたどつて行つて傍証をたぐつて行く。これでは十日あつても二十日あつても容易にできるものではない。二十日かかつても起訴がやれない。問題はそこにある。われわれは検事総長が次官の当時ずいぶん議論したはずなんだ。この刑事訴訟法は非常にけつこうな刑事訴訟法だが、そのように行われるかどうか、この精神に従つて行かれるかどうかということを伺つておつたのでありますが、四年後の今日といえどもわれわれの見るところではこの精神に従うようにできない、なつておらない、そこでこれを早くやるように努めようということをお考えになつているのかしらぬが、それよりもこれではいかぬからもう一歩下つて、警察官を押えて検察庁でこれをやらなければならぬものだ、こうお考えになつているのではなかろうかと私には思われますが、私の今申しますことが杞憂であるか、間違いであるか、この点ひとつ検事総長からお答え願いたいと思います。
  67. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 戦争の終結前の犯罪捜査の実情は、確かに鍛冶委員の申されましたように、まず人身を拘束してそれから証拠を固めるというようなやり方であつたことは私も認めるのであります。ところが新刑事訴訟法になりましてからいわゆる新憲法の精神にのつとりまして、なるべく人身を拘束しないで任意捜査を本則として、やむを得ない場合には人身拘束するというような方法で捜査をしておられることは、これは先ほど国警長官からも申された通りでありまして、私ども検察の方から見ましても、その点は警察の方の犯罪捜査が非常に進歩したものと見ているのであります。従つて戦前には見られないほど、人身拘束が実は少なくなつていると思うのであります。これがだんだんアメリカのように科学的な犯罪捜査が進歩したり、また人員や物的設備等につきましても十分理想的な姿になりますれば、あるいはやがて人身を拘束することなく完全に任意捜査を徹底して捜査を完了するということができるかもしれないのであります。私どもはその理想の姿を夢見ているものでありますが、現在の状態におきましてはいわゆる過渡的でありまして、このまま人身拘束を全然やらないで犯罪捜査を徹底するということはなかなか期しがたいものと思うのでありまして、現在の刑事訴訟法の建前、原則として任意捜査をやるが、やむを得ない場合には人身拘束もしかたがない、こういう態度で進むよりほかないと思うのでありますが、しかしながらなるべく人身拘束の弊を少くし、また人身拘束をするにしてもできるだけ慎重な手続をとつて国民が安心の行くように捜査を進めなければならぬ、かような考えを持つているのであります。そこでたびたび当法務委員会におきましても逮捕状の濫発があるのではないかというようなことを申されたこともありますし、また在野法曹の方から一斉にこの逮捕状の請求については、何とかわくをはめて慎重な手続で逮捕状を請求するように改正しなければならぬというような要望もありますので、その線に沿うてこの改正案ができたものと考えているものであります。
  68. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私がもう一つ根本的に考えておることについて、私の考えが間違つておるかどうか御意見を承りたいと思います。この間もここで私は質問したのですが、国家警察における警察の最終責任は長官が負つて、そうして政府委員としてここに出られるのでありますけれども、これは最高機関である国会に対して国警長官が負われるということで、ある程度通ると思う。しかし遺憾ながら自治体警察については、だれが最終責任者で、国会に対する責任をだれが負われるのか、どういう方法でわれわれがやればいいのか。どうもいくら考えてみても見当がつかない。ところがこの捜査ということは、国政上重大なる問題であり、最も人身に関係の深い、人身を拘束するという重大なる行政行為である。その行政行為に対する責任は、やはり国家としてどこかにまとまつて来なければならぬ。さらに国権の最高機関である国会に対しては、まとまつた責任者がなければならぬと思われるのですが、自治体警察にはそういうまとまつたものがありません。そこで甲の町のやり方と、乙の町のやり方と違つておつたからといつて、苦情の言いようがない。また一々そういうことを言つていたら切りのないことである。これらの点から考えてみると、どうも警察官にまかせきりということでは、責任の所在が明らかにせられない。捜査という国政の重大なる行政行為に対する最終の責任がないから、この点から、私はどこかに責任を帰属させることが必要ではないか。かように考えますが、それらの点とも結びつけて、こういうことの必要があろうかと考えておりますが、政府の方ではこういうことに対してお考えづきはなかつたかどうかを承りたいと思います。
  69. 犬養健

    ○犬養国務大臣 ただいまお話のありましたように、自治警察についての最高責任者は、その土地の公安委員会でございまして、私どもは連絡して意見を聞くとか事情を聞くという以外に方法はないわけであります。御承知のように、このごろ国家的犯罪とか、国際的な事情を裏に持つ騒擾事件というようなものがありますので、何かそこに別の仕組みの警察組織というものをつくる必要がある、但しへたをやると警察国家ということになりますので、率直に申し上げますと、この間のほどほどということがなかなかむずかしくて、私どもも実は苦心しておる次第であります。今後段にお述べになりました司法警察官と検察官の関係をそこに結ばせるという問題なのでありますが、お心持はよくわかりますが、私どもは、やはりそういう問題は準則を定めて一般的指示をして、そのわくを警察でよく理解してもらつて、今国警長官が努力しているように、警察官の常識の向上、人権擁護の観念の強化というようなことで、何かここに道を開いて行けばいい、こういうふうに考えています。御心配の点はむしろ警察法の改正で今苦慮の中心点になつておるかと思いま。
  70. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 この点に対して国警長官の御意見を承りたいと思います。私は何としても捜査というもの責任を国会に対して負う一つのまとまつたものがなければならぬと思うが、この点はどうお考えになりますか。
  71. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私もただいま大臣がお述べになりましたように、警察のいたしておりますことのうちで、捜査は、ただいま鍛冶委員がおつしやいますように、最も大事な一つであると思います。また捜査のほかに、あるいは犯罪の鎮圧ということも、非常に国の運命に関係する場合もありまして、きわめて大事な問題であると考えます。この捜査の適正、あるいは鎮圧の敏速完全、いわゆる警察全体についてどうしても国体として関心を持たなければならないという問題は、これは警察法の問題として検討せらるべき問題であると私は考えております。警察の至らない点を検察官とともともに協力して直して行くという点は、非常にけつこうでありますが、検察官の監督下に赴いてこれをやらして行くという行き方は、現在の刑事訴訟法の建前、いわゆる捜査の公正、人権の保障という面から考えて、いかがであろうかと思うのであります。また検事の監督と申しましても、やはり身分権等とも関係いたしますから、主眼はやはり警察法をどこへ持つて行くかという問題が根本であろうと思います。
  72. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 警察法でどういうことになるか知りませんが、私は捜査という国の大きな行政の責任の所在を明らかにすべきで、甲の町のやり方と乙の町のやり方と違つてもやむを得ないのだというようなことは、重大なる問題であると考えております。これはあとでまた質問するとします。  そこで私ははなはだ法務大臣を前に置いてよくないが、世上言われることだから露骨に申しますが、この改正にあたつて最も杞憂せられておるところは、検察フアツシヨになることである。一般的指示を強化し、さらに逮捕伏の要求に対して検察官の同意を求むるということは、要するに捜査の実権を検察当局に移そうとすることである。せつかく新刑事訴訟法によつて、この点が分離せられたのを、もう一ぺん一手に集めようとせられるものである。そうすると、かねてから言われておる検察フアツシヨということが起つて、検察庁の権力というものは非常に大きくなる、その権力によつて国家の重大事をも動かすような危険がないか。これは率直に申しまして、この改正案に対する非難の根本であります。かような非難に対して、もちろんあなた方は、そんなことはないとおつしやるだろうが、どういうわけでそういうことがないか、この点をひとつ明確にしておいていただきたい。
  73. 犬養健

    ○犬養国務大臣 まことに適切な御質疑でございます。そういうことはありません、と機械的に言えばそれまででありますが、私の心持としては、そういうことでは済まぬと思つております。検察官の大部分はりつぱな人でありますが、中には元気のいいのがあつて、おつしやるような気持を持たないとは限りません。人間ですから、ぴんからきりまでありますので、そこで私も十分これは気をつけてかかつたことでございます。今のお話のように公訴の遂行を全からしめ、そしてその前提となる捜査の適正を期するということであつても、これは必要事でありますが、個々の捜査のケースに、一々ああしろ、こうしろということになりますと、これはおつしやるように検察フアツシヨという声も起るかと思いますが、一般的指示を準則によつて示して、おそらくそれの具体的な受入れ方は、司法警察側で司法警察職務規範か何かに書き込むということになる。従つてごく砕いて言えば、捜査の第一次的責任者である警官は、検察官から見れば御苦労さんであるが、公訴の遂行を全からしめるためには、捜査の適正はこういうわくでやつてもらいたいというのが、私は一般的指示であろうと思います。それ以上立ち入るわけでない、先ほど申し上げましたように、個個のケ―スを直接の目的として干渉する意思はない、ただ一般的準則というものの本質上、そこに個々のケースに精神的なといいますか、影響を与える、この程度ならば私は検察フアツシヨにならないのじやないか、もう一つ、先ほど逮捕状の請求にあたつては検察官の同意というのは弱いのじやないかという御警告もあつたのですが、今の声のようなことを考えまして、同意ならばお互いに寄り合つて一つケ―スを考究するということになるので、検察フアツシヨということにはならないんじやないか、そういう意味を含めて、多少一部では物足りないようにおつしやるのですが、同意という字が書いてある。しかしこの同意という字もたびたび申し上げるように世の中で考えられる一番適当な字とも思つておりませんが、表現というものは二字にしか出ないので同意ぐらいにしておこう、こういうことでございます。精神は今申し上げたようなことでございます。
  74. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 国警長官に聞きたいのですが逮捕状を司法警察職員に委任しておいたら非常な弊害があるという場合が出、非難の的になつておりますが、一巡査までが容易に許される、これを一番恐れおる。われわれは往々に聞くのですが、任意出頭を求める、捜査令状を持たないで証拠の収集に行く、そのときにいつでもここに令状があるのだが、こんなものは執行しない、任意にやればやらないんだ、もし行かないというならこれをいつでも出すと言つてひらひら見せるそうですが、こういうやり方をするということが一番非難の的なんです。そこで私が承りたいのは、どういう者までが任意にとれると思つておるのか、これに対してあなた方は弊害ありと認めておられるのか、弊害ありとすれば、どうすればこの弊害をためられるとお考えになつておるか、この点を承つておきたい。
  75. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 令状の濫用防止につきましては、われわれもかねがね非常に大事なこととして、これが濫用にわたらないように努力いたしておるのであります。国警側におきましても、また自警側におきましても、ほとんど漏れなく令状の請求はそれぞれの捜査規範によりまして、署においては署長、各本部においては隊長の指揮を受けることなしに令状を請求してはいけないということにいたしておるのであります。従いまして一巡査部長あるいは巡査が司法警察員になつているところもありますが、巡査が司法警察員になつて令状を請求し得る資格を持つているところは少いのであります。しかしさような場合におきましても、少くとも署長なりあるいは県の捜査課長の指揮を受けないで令状を請求したという事実があるならば、これは規律違反であつて処罰されるべきでありまして、われわれの方では、さようなものを発見いたしましたならば、処罰は厳重にいたしておるのであります。ただいまお述べになりましたような例は、私は絶無ではないと思います。もし過去においてそういう実例があり、すでに警察当局においてわかつたというものであれば、それは処罰されておると思つておるのであります。おそらく不心得な警察官がそういつた捜査規範を守らず、何らかためにするために、事実は令状を持つていないにもかかわらずさような風をしてやつたということもあり得ると考えるのでありますが、令状の請求はさようにいたしておるのであります。私どもといたしましてはこの令状の濫用防止を一体どうすれば一番いいのか、これをほんとうに率直に研究をし、そうして法律が足らないところはそこを補つて、そして非難に値しないようにやつて行きたい、かように考えておるのであります。われわれといたしましてはたとい上司の指示がなければ令状をとることができないということになつておりましても、今のような不心得な者があつて令状を請求する、あとで懲罰をされても、これによつて実現された人権の蹂躙というものはおおいがたいのでありますから、司法警察員の中ででも令状を請求し得る者は、もつと上級の階級に限定のできるように刑訴の改正をお願いできれば仕合せだ、私はさように考えておるのであります。しかし法制審議会においてもこの考慮を与えてもらえなかつたのを非常に私は残念に思つております。また実際問題として令状の濫用というのは、これは法の適用を誤つたというところがほとんど私はないと思います。というのは、とにかく判事がその疎明事項を見て令状を許可するのでありますから、むしろ法律上は令状を請求するのに値しておるというものを、警察が職権濫用的な考え方から、ためにするために令状を濫用するということが、これが最もいけないのであります。この点は警察の監督組織の監督力の強化ということにまたなければ、この令状の濫用の防止はできない、かように考えます。
  76. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 こまかくなりますが、この改正案を見ますと百九十九條の第二項の次に「司法警察員は、第一項の逮捕状を請求するには、検察官の同意を得なければならない。」これは同意を必要條件としております。しかるに次の項を見ますと、「裁判官は、逮捕状の請求が検察官の同意を要する場合において、その同意を得ていないことが明らかなときは、逮捕状を発付しないことができる。」必要條件であれば、不適法だと却下するのがあたりまえだ。しかるになくてもできるところがあると聞える。これはどういう意味なのですか。何かそこに重大な意味がなかつたらかようなことはできぬものだと思いますが、重大なことがあるのですか、それともどういうお考えでしようか、これは岡原さんに伺います。
  77. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 この点はなるほどごもつともな御質問でございまして、法制審議会におきましてもその点問題になつたわけでございます。これはちよつと考えますとお話の通りでございまして、その手続に違法である場合はできないというふうに書いた方がわかりがいいわけでございます。ただそれではどうしてこれをその場合でもなおかつ「発付しないことができる」というような表現にしたかと申しますと、実は逮捕状を出すについての裁判官の判断権については、従来いろいろ議論があつたわけでございます。それでいわゆる不適式の場合において――これは適法でなければ問題なしにはねるわけでございますが、不適式の場合においてその妥当性をも判断して裁判所が出すべきか、あるいは妥当性については判断権がないのかということについては、実は学説上争いがあることは御承知の通りであります。従来の裁判所のやり方もおおむねその妥当性の点については判断権がないというふうな態度で取扱われて参つたわけでございますが、今度の場合につきましても検察官の同意を要する場合において、その同意を得ていないことが明らかであるということになりまして、さてその場合に裁判官が一切の判断をいたして、そして逮捕状を発付しないというふうに全責任を裁判官に負わせるというのは、裁判官はいわばこの逮捕状の発付についての審査が間接になるわけでございまして、直接の資料を警察から持つて参る。それを検察官が見てどつちかの意見をつける。同意しない場合にはおそらくその理由をつけて参るだろうと思いますが、さような場合に裁判所においてこれを取扱つて調べてみたところが、全体の方式としてはこの点を除いては全部不適式である。しかも裁判所の判断でそれは非常に逮捕が必要であるという判断も、中にはないでもない。それでその判断に余裕を持たせるというふうな点が「できる」といたした趣旨であります。法制審議会でもいろいろ議論が出たのでありますが、結局さようなことになつたのであります。
  78. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の質問はまだありますが、寺島委員がお急ぎのようでありますから、そのあとでやることにいたします。
  79. 花村四郎

    ○花村委員 ちよつと関連して国警長官にお尋ねしたい。ただいま国警長官の御答弁によりますと、逮捕状を出すときは署長並びに隊長の承認を得なければいけないという内規がある、こういうお話でしたね。そういう内規がありますか。
  80. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 内規ではありませんで、われわれの方の訓令であります。署長または隊長の指示を得なければ令状を請求しては相ならぬという捜査規範の訓令を出しておりまして、これを遵守励行させておるのであります。
  81. 花村四郎

    ○花村委員 それはどうもたいへんなことですね。刑事訴訟法には、逮捕令状を請求し得る者は司法警察職員であると規定してある。しこうしてこの司法警察職員というのは警察官及び警察吏員であるということに相なつておるのですが、刑事訴訟法でこれらの警察職員に対してりつぱに捜査権を与えられておるにもかかわらず、そういう内規あるいは訓令をもつてしてその権限を剥奪するというようなことは容易ならざることであろうと思じまするが、この点はいかがですか。
  82. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 権限を剥奪しておるのではありませんで、警察は組織体として犯罪の捜査をする責任と同時に義務を持つております。ただ令状を請求し得るのは司法警察員ということで、その司法警察員はどれどれであるかというのは、これは警察の公安委員が指定をいたしておるのであります。そこでその司法警察員が令状を請求いたします場合に、この令状の請求に濫用がありますならば警察の責任でありますから、従つて濫用にならないように、適正に捜査が行われますように、警察の統轄責任者はこの令状を請求する際には上司に意見を伺つて、その承認がなければやつてはいけない、かようにいたしておるのでありまして、私はこれは適切な監督上の行為だと考えております。
  83. 花村四郎

    ○花村委員 しかし刑事訴訟法からいえば、警察職員というものは自分の責任において捜査ができるのであるということをはつきり規定してあるのじやないですか。しかるにもかかわらずその捜査権を行使するというか、逮捕状を請求するのに警察署長の承諾を得なければできぬというような、そういう警察職員の執行行為を制限することは、刑事訴訟法に違反するものであると言わずして何でありましようか。こういうことが悪いのです。あなた方はこういうことをいいと思うがこういうことが悪いのです。アメリカなどへ行つてごらんなさい。一例を言えば、われわれは法務委員会へ参りまして、法務委員会で集めてあります赤化防止、共産党に関するいろいろの資料を見せてもらいたいという申入れをしたのです。ところがその書類のすべてを扱う権限を持つておる人は一人の女事務員であります。その女事務員がただちにわれわれを連れて行つてその重大なる書類を見せてくれるのであります。これはやはりその女事務員にその書類の保管に関する一切の権限をゆだねてあつて、そしてその書類については少くともこの女事務員が責任を持つているのだという建前になつておるがゆえに、上長の許可も得ずあるいは上長に話もせずに、ただちにわれわれを連れて行つてみんな見せてくれた。こういうことで、その者が持つ責任というものを重んずることであつてこそ、初めてりつぱな職務の遂行ができるのです。少くとも議会でつくつた法律において、逮捕状の請求は警察官吏が自分みずからの権限においてできるという規定をしておるのに、それを上長の同意を得なければいかぬとか、刑事訴訟法で与えておる権限を制限するとか、あるいはその行使に対して制約を加えるとかいうこと自体が悪いんじやないですか。あなた方は逮捕状を厳正公平に扱わしむる意味において多分やられたことでありましよう。その心情を私はあながちとがめるものではありませんけれども、しかしその人に与えられた権限の行使に対して、上長が干渉をするというようなこと自体が悪い。それであるから、この捜査権を持つておる者が、捜査権を濫用するというような問題も起きて来る。これは上長に相談してやるのだから、われわれの責任じやないのだ、警察署長が負えばいいのだというような頭になりがちなんです。こういうところから改めて行かなければ、警察官の逮捕状というものの運行がうまく行かないのは、当然なんだ。あなた方がこの逮捕状の運営について悪い範を示しておる、こう申し上げていいと思う。刑事訴訟法上、この警察職員に与えられた以上は、自分は全責任を負つて、自分の責任において、この与えられた権限を行使するのだという、そこに責任感と喜びと矜持を持つて当つたならば、逮捕状を濫発するというようなことは、少くとも幾分かは防止せられるであろうと私は考える。それを、あなた方のとつたこういう行動というものは、刑事訴訟法に違反しておるのではありませんか。それをしも、あなたは違反しておらないと言うのですか。
  84. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私は現在の警察は、御承知のように刑事訴訟法によりましても、あるいは警察法によりましても、警察全体としての捜査の責任を持つていると思います。また下級警察官の行う捜査につきましても、この捜査の適否は、統轄責任者が負うべきだ、さような建前になつておると思うのであります。個々の警察官の上長の監督というものを法律が否定しておる、かようには私は考えておらないのであります。また実際面といたしましても、相当厳重なる指導と監督を加えるということは、捜査の適正を期する上から必要である、かように考えております。また刑事訴訟法の百八十九條におきましても、「警察官及び警察吏員は、それぞれ、他の法律又は国家公安委員会、都道府県会安委員会、市町村公安委員会若しくは特別区公安委員会の定めるところにより、司法警察職員として職務を行う。」とありまして、もちろん、刑事訴訟法において与えられた権限を否定するような定め方では相なりませんが、この権限を適法に行使をするために、他の法律なり、またただいま申し上げました公安委員会その他の定めるところによつて、職務を適正に行わしめるというきめ方は、刑事訴訟法においても認められておる、私はかように解釈をいたしておるのでございます。
  85. 花村四郎

    ○花村委員 警察官の監督、指導に関することは、警察法によつて、下僚の行為に対してその上長が責任を負わなければならぬということは、行政組織の点から言つて当然なことで、こんな当然なことを私はあなたに聞いているのではない。刑事訴訟法では、上官、下官に関する監督、指示に関する規定を設けてあるべきものでもなし、またないことも明瞭であります。少くとも逮捕状を請求し、あるいは発行するという捜査権に関することは、刑事訴訟法の規定ではありませんか。刑事訴訟法の百九十九條に何とありますか、あなたよく見てこらんなさい。司法警察職員は、いずれも逮捕状を請求する権別を持ち、捜査権を持つておることは、明瞭なんだ。この刑事訴訟法上与えられたる権限を、ほかの警察法で制限し制約するというようなことができますか。百八十九條は、警察職員というものの定め方を規定したものである。もちろん司法警察職員であるから、この警察法にのつとつて、行政的監督、指示の系統のもとに働いてはおるのだが、しかし少くとも捜査権に関する刑事訴訟法上の問題に対しては、刑事訴訟法の規定に従つて行かなければならぬことは明瞭じやありませんか。
  86. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいまも申しております通りに、刑事訴訟法において与えられておる権限を奪つてしまうということは、私はできないと思うのであります。従いまして、先ほども申し上げましたように、今司法警察吏員というものを公安委員会が指定をいたしましたら、その司法警察吏員は、みな令状の請求ができるという資格者になるわけであります。しかし司法警察吏員の中で、令状の請求のできる者をさらに公安委員会が区切るとか、法律で別にできるというようにしていただくことが必要じやなかろうか。そういうような権限を剥奪してしまうということは、指導、監督という意味からは、私はできないと思うのであります。しかしその権限の行使を適正にするために、上司の指揮を受けろということは、私は刑訴の精神を没却するものではないと思うのであります。検事が起訴、不起訴を決定されるにあたりましても、あるいは最高検に対する禀議事件――こういうものは禀議すべしという訓令が出せる、また出しておられると思うのであります。これは私は刑訴には定めてないと思うのであります。
  87. 田嶋好文

    ○田嶋委員 議事進行について……。実はこれは重大な法案で、相当慎重審議をして行かなければならぬ問題だと思います。各委員に十分言わして、十分お聞きを願いたいと思います。それには一定の秩序がなければならないと思いますので、どうも鍛冶君の質問、花村さんの質問を聞いておりますと、このままの状況だと、何日かかつても審議のめどがつかないように考えられる。そこで私は、先ほど理事会でまとまらなかつたから、ここで委員会に提案するのです。大臣も相当お忙しい身ではありますから、できれば大臣を中心にした一般的な質問を十分尽して――それにはもちろん関連質問がございますから、それに関連した行政府委員の答弁がなければならぬですが、一般質問として大臣を中心にした大きなところで十分尽していただいて、それが終つてからまた逐條的な各政府委員に対する質問――そのときには大臣に休んでもらつてもいいですが、逐條的にこまかく入つて行く、こういうようなことで、ひとつ議案の審議を軌道にお乗せ願いたいと思います。(「そういう方針じやないか」と呼ぶ者あり)もちろんそういう方針で行つているわけでしようが、どうもきようの質問を聞いておりますと、大臣に対する質問よりも、政府委員に対する質問が多いようです。これはちよつとどうかと思われますので、皆さんの御同意を得て、そういう方針でございますから、それを御確認願つて、大臣を中心にしたことでやつて行きたい、そういうことでお諮りを願いたいと思うのであります。
  88. 小林錡

    ○小林委員長 花村君、もつと続けますか。
  89. 花村四郎

    ○花村委員 それでは私はまたあとに譲りますが、国警長官も、この問題をもう少し研究される必要があると思う。そういう雑駁な頭で刑事訴訟法を執行されることが、ひいて禍根を残す原因だろうと私は思う。でありますから、もう少し真剣に取組んで、やはり下僚は下僚としての自主的立場を認めてやつて、それに十分に正当な行為を遂行させる。そしてそれを高いところから監督し指導して行くという、やはり刑事訴訟法の精神をとりませんと、ただその責任のことばかり恐れて、警察署長というものはみんなそうだ、部下のことや国家のことよりもまず自分の責任をどうして痛めつけられないようにして行くかということを考えるのはなかなか神経過敏ですから、そういう方面にとらわれることがやはりこの逮捕状の執行に対していろいろ非難を受ける原因であるということを、あなた方はやはりよく研究しなければだめですよ。そういう点についてまだ質問があるから後に留保しておきますが、あなたももう少しそういう点を真剣に研究しておいてもらいたい。
  90. 小林錡

    ○小林委員長 寺島君。
  91. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 いわゆる刑法並びに刑事訴訟法といわれる法律制度に対しましてはまつたくのしろうとでございまする私が、特に生涯初めてわずらいました長き大病の疲弊の身をかつて、一言御当局に御答弁を煩わしたいと申しまするゆえんは、今回提案せられました刑事訴訟法の改正案が及ぼすところの政治的並びに社会的影響に対して、後日深き憂いを残すものではないかという考えからかく発したものでありますということについて、御了解願いたいのであります。従つてただいま動議にもございました通りに、まず私の一般質問といたしましては、犬養大臣に対する三点と、まつたく右大臣に対しますところの関連事項でありまする点に対して検事総長に対する一点、国警長官に対する一点、これば大臣中心主義の質疑でありますことは明々白々でありますが、大臣列席のもとに、重復を避けんとして君は御答弁を伺つて行きたいというために御質問するのであります。  第一点、犬養大臣に御質問申し上げたいことは、私どものかつて青年時代に学びました支那の古いことわざに、駅長驚くなかれ時の変改、一栄一落これ春秋、大臣もまたおおむねかかる漢籍にはお親しみ深い二とでございまして、別個の感慨をお持ちになつていることであろうと思いまするが、まことに時代の変遷というものは、本来無一物の空に絶対の奥をきわめるという禅の世界にも入らない限りは、これは到達し得ざる境地であることを私は考えるのであります。あたかも私が第一回に当選いたしました当時に、日本進歩党の一陣笠といたしまして、時の日本進歩党の総務会会長といたしましてのただいまの犬養大臣が、時の日本進歩」党を代表してなされましたところの新憲法に対する賛成討論の光景を、あたかも七年の春秋を経たる今日、まざざまと胸奥に私は思い浮かべずにはいられないのであります。私はあえて大臣のこの名所論に対する速記録を引用いたそうという失礼をいたすものではございません。ただ私の忘れ得ざる記憶のかなたから犬養討論の所論をつまぐつて参りますならば、当時私ども貧弱なる青年政治家でありましたが、吾人をして肯綮せしめたる理論的背景は、明治維新においては政治機構の近代化か本格的に行われた、しかしながらかんじんの社会の近代化はこれに伴うことができなかつた。その弊害をここに超克いたしまして社会の近代化を本格的に行おうという熾烈な御抱負であつたと考えるのであります。特に基本的人権を見詰めまして、犬養大臣にとつては特にお考え深かろうと存念いたしますところの軍閥なる権力の形態を越えてあらゆる権力をここに分散いたしまして、権力分散の思想をここに確立いたし、再び権力思想が政治思想の中に浸透して参りますことを断じて防ごう、こういう賢明なる大臣の当時の総務会長としての御討論を、私は今なお耳朶の奥によみがえらせることができるのであります。申すまでもなく犬養所論の、かかるほうはいたる全国的な要請は、ただいま最も問題となつておりまする警察制度に対して容赦なき鉄槌を加えたことを私は思い起すのであります。当時内務省なる最も全国の俊英を集めたりと称したる機構が一瞬のもとに飛び去つて、その内務省機構の爆風音であるといわれました警保局を中心といたしました全国的な警察網は、すでに行政の主管をいたしておりました民生行政に対しましては、厚生省を中心として、その出先官庁である保健所に分散せられ、あるいはまた交通運輸事業に対しましては陸運管理事務所なる一つの機構に分散せられまして、申してはまことに恐縮でありますが、わずかに防犯でありますとか、あるいは司法警察でありますとか、残余若干のものを残して、ついに巨城が大きな地響きを打つて倒れるような感慨にも似た形で改組されたことを感慨深く思い浮べるのであります。これに対処せられ、しかも中道政治をたくましく打立てられ、中道政治の意味が今日巷間に流布されておりますところの考え方とは違つておつて、当時の最も客観的妥当性を含んでおる政治イデオロギーの中核であるこの修正資本主義ないしは中道政治の指揮者としての犬養大臣の姿は、かつてヨーロツパの十九世紀に見たような民主主義の情熱が、大衆の一人々々の胸の奥底を焼き尽しておつたのであります。しかしながらわずかにその間春秋七箇年の歳月を経た今日、逆コースの思想が端的にわれわれの肌膚を脅かしておりますが、その最も直截的な現われを感じますのは、私は本改正の趣旨であろうと考えるのであります。
  92. 小林錡

    ○小林委員長 予算委員会の方で大臣を呼んでおりますから簡潔に願います。
  93. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 しからば私は書きました原稿を離れまして端折つて申し上げますが、ただいま佐藤検事総長もおいででございますが、終戦直後において最も権力が温存せられたと申しては恐縮でありますが、比較的温存せられた世界というのが検察御当局の世界であつたと私は考えるのでございます。かかる検事総長を中心として全国的な検察網というのは微動だにすることなく、その考え方、運用の方針は違つておりましても、すなわちその組織というものが全国的に網羅せられておつたものであろうと私は考えておるのであります。後段においてさらに質問を申し上げますが、ただいま佐藤総長と鍛冶委員との質疑応答の一々を伺つておりますと、結局において司法警察官というものは検察官というもののアシスタントに持たれるのだ。大臣ただいまお聞きの通り、佐藤総長は、アメリカ式の検察思想へのあこがれは持つておるのだ。しかしながら日本の現状においてはやむを得ないからという、これは清盛のよろいのそでではございませんが、明白に旧刑事訴訟法へのノスタルジアをわれわれはことに感得することができるのであります。よつて私は畳み込んで犬養大臣にお伺いを申し上げたいと思うことは、この結果どういうことになるかというと、現在最も排撃し、かつ七箇年前にあの議政壇上で精魂を傾けた、あらゆる権力の水平化を考えて、わが国の民主主義を達成せしめようという考え方からはむしろ逆の方向をたどりまして、これは純粋なものの考え方から申しますと、結局におきまして、いわゆる司法警察官というものをアシスタントといたしますところの検察当局という厖大なる力を持つという結果になり、さらにまた現在の法律をつまぐりますならば、いわゆる保安大臣というものもまた結局内閣総理大臣の指揮下に属するということに帰着いたします。そうすると、私の寡聞なる法制史の視野から考えますると、かかる厖大なる権力の突破口が貫通いたしましたと申しますことは、山崎闇齋が確立いたしたと申されておりますところの徳川幕府の考え方ないしは源頼朝の征夷大将軍のあり方というものにも相なりましようし、ないしはこれを通俗的に申し上げますならば、全国の国家警察の職員というものを結局銭形平次の姿に追い込んで、恐るべき権力政治に陥れるという危険を肌膚に感ずるのでございまするが、最もこういう問題に対してはシャープな感覚を持つておられると信じまする犬養大臣の率直なる御答弁を煩わしたいと存じます。
  94. 犬養健

    ○犬養国務大臣 いろいろ御忠告を謹んで承りました。ありがとうございます。  本改正案を提出いたすに至りました経過を御了解を求める意味でちよつと御説明いたしておきたいと思います。これは法制審議会に長い聞かけまして――法制審議会の構成員といいますのは、裁判官もありますし、在野法曹の代表もあり、各大学の法律学者、それから検察庁、国警、そういうふうになつておりまして、そこで協議、審議の上、大体皆さんに御納得のできたものだけを出して見たものでございます。従つて人権擁護の急先鋒であられます在野法曹団も、この改正案については、私のところにたびたびお見えになつておりますが、さしたる御反対がないのみか、大部分についてはできるだけ協力して意思疏通をはかつて行こう、こういうような御意思でありまして、決して法務省、検察庁が独断にこの改正案を書いて、世間に諮らず提出して御審議を願つておるというわけではありません。  そこで原則的に、寺島さんの御心配も私の心配と同じでありまして、検察フアツシヨにしてもいけない。司法警察官を検事の旧刑法のもとでのように助手並に扱うというようなことを毛頭考えておりませんですが、私の聞き方もさぞかし不十分な点があつたと思いますが、どこの点が助手になつておるか、よく御指摘くだされば、私の方の考えも申し上げてみたいと存じます。先ほど来ほかの委員の方に答弁申し上げている中で十分触れたと思うのでございますが、そういうことは全然考えておりません。御承知のように捜査を適正にし、公訴の遂行を全からしめるために、検察官は準則によつて一般的の指示をするにとどまつておりまして、第一線、捜査についての第一次的責任者としての司法警察官の捜査している個々のケ―スに一々干渉する気は毛頭ないのであります。これは先ほどからたびたび申し上げておることでありますが、あるいは遅れてお見えになつたかと思いますが、お見えになる前にそういう説明をしておるわけであります。それからアシスタントと言えば、検察官と警察官の関係のある問題点は、もう一つ逮捕状の請求にあたつて、司法警察官は検察官の同意を得ることになつております、これは原案は承認ということになつております。私もまつたくおつしやるような気持で、承認ではアシスタントが先生の承認を求めるという感じに、どうも字の感じがそういうにおいがする、それで同意といえば何等だというので、同意に直したようなわけであります。まあおしかりのような精神のもとに私も承認を同意という字に直したり、御趣旨とはまつたく沿つたつもりでこの改正をやつておるわけであります。
  95. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 大臣に時間がないという話ですからどうにもいたしかたがございませんが、私の申し上げる意味が率直に通じなかつたという表現の悪さということがあるいはあるのではなかろりかと思いますが、聞き返すのではございません、私の言うことを明確にどこがどうなんだ、こういうようにあなたお聞きになるから私は申し上げるのですが、実は私の申し上げるのは、いわゆる当事者主義でようやく発展しよりとしておるところの日本の刑事訴訟伝が、遂に職権主義の逆コースにもどつて行くのか、そのイデオロギーは一体どこにあるのだ、こういう意味で実は私お聞きいたしたいのです。この問題に対するデスカツシヨンをいたす意味ではありませんが、はなはだ遺憾ではありますが、私の主観的意図と大臣の認識との間に多少ずれがあるということはまことにやむを得ないことでありますので、第二点に入りたいと思います。  第二点は検事総長、第三点は国警長官の御答弁をいただいて後に大臣にお伺いすればよろしいのでございましようが、その時間もないようでございますから、それを飛ばしまして、国警長官並びに佐藤総長に対する質問は、大臣に対する質問が終つた後にいたしたいと存じます。  一体刑事訴訟法は、申すまでもなく刑法の手続法であることは、私のようなしろうとでもよくわかることでございますが、ここに問題として取上げられておりまする犯人というものがあるのだ。この犯人に対する考え方に私は二つの考え方があるように承つておつたのであります。もとより英米法に対する無学な私がかかる分析をいたそうとは思つておりませんが、実は犯人というものはかわいそうたものなんであります。いわゆる犯人というものは最後に判決があつて刑罪が決定するその瞬間まで保護すべきであるという考え方がここにある。さらにこれに対して英米法はむしろオーソドックスな考え方であると言われておるやに私は聞いたのでありますが、そのオーソドツクスであると言われておる考え方は、人の犯人の放恣を許すと結果結論的にその社会を不安に陥れるために、この犯人を除くべしという所論である。他日十六日に御出頭に相なる瀧川教授の考え方が後者であり、当時私どもは法律学徒ではありませんでしたが、客観的に承つておりました瀧川さんと並んでおられた宮本英脩氏の学説であつたと聞いておつた。かかることを私は引用するのではなくして、大臣にはむしろおなじみ深いと考えられておりますところの筍子によつて体系づけられておりますところの性悪説、さらに同じく孔子、孟子、特に周禮の思想に展開せられておりますところの性善説と、東洋においては二つにわけられると思いますが、かかる御無礼な御質問を申し上げるのもいかがかと思いますが、大臣は性善、性悪のいずれの考え方をおとりになつておられるか伺いたい。
  96. 犬養健

    ○犬養国務大臣 お答え申し上げます。私は人間はみんな性は善であつて、環境によつていろいろ気の毒なことが起り、その気の毒なことが起つたことについては、私どもは共同責任を感ずるような形で司法行政をやらなければならぬと思つております。それで御趣旨には賛成なんですが、その御趣旨に反する條文がどこに出ておりましようか。
  97. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 いや、これから申しますよ。
  98. 犬養健

    ○犬養国務大臣 そうすれば條文を改正したゆえんについて懇切に申し上げます。
  99. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 この條文のどこだ――きようは一般質問だから私は申し上げるのですが、あなたは性善説なんだ、わかりました。この性善説に――岡原さん、大分お笑いになつておるようですが、あなたのやつておられるいわゆる英米法の考え方と全然別個な東洋的な考え方から申し上げた。一体東洋的な考え方……。
  100. 小林錡

    ○小林委員長 ちよつと御相談しますが、今しきりに予算委員会から大臣の出席を求めております。その間検事総長の方にお願いします。
  101. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 ではそういたしましよう。  第二点は――第二点といいますか、本然の議論を元にもどしまして、佐藤検事総長に私は承りたいと思うのであります。佐藤検事総長がただいま鍛冶委員との問答の中に、いみじくも展開されました考え方の多くは、大体過ぐる七月八日の朝日新聞の紙上に検事総長が、あるいは談話でありますか、談話でなくてこれは原稿でありますか、いずれであるか存じませんが、発表せられました所論とまことに軌を一にするものでございますので、その点議論を進めて参ります上にまことに幸甚であると存じまするが、しかし議会では新聞記事を引用したりする質疑には答弁をしかねるという政治的な御答弁が比較的多いのでありますが、参考のために、これは参考のためと申しますより、私の議論を進めて参りますために申しますと、佐藤検事総長の所論は、「適正指示は当然、検察官には一貫した責任」という三段見出しでもつて、「犯罪の発生と同時に公訴権、刑罰権が生ずるのであつてその公訴権、刑罰権を行使するについてはまずその一段階として捜査をするわけだ。」「わけだ。」というのですから多分これは談話でしような、「刑罰権、公訴権を離れて犯罪捜査はない。警察官だけでなく、」云々、ここで中途を略しまして、その必要なところを追つて参りますと、中略、「現行の刑訴法百九十三條はこれを規定しているのだ。犯罪の予防とか警備とかは公訴権とは関係ないが、犯罪捜査が公訴権の実行と関係がないというのは間違いだ。今回の改正は現行法のこの規定をさらに明白にしただけであつて、検察官の権限をふやそうとしたものではない。」こういうふうに明確に申しておつて、しかも実に当事者主義の刑事訴訟法の達成は夢見ておる理想であるが、日本の現況においてはこれができないから、まあこういう改正になつたのだという考え方は、結局職権主義のいわゆる刑事訴訟法の考え方に私は犬養さんとはやりずらいのですが、犬養さんの申された考え方、いわゆる逆コースと指摘される――これは主観の相違と申されればやむを得ませんが、重要なる一環をなしておると思うのであります。     〔委員長退席、鍛冶委員長代理着席〕 そこでいわゆるこの所論、すなわち検事総長の所論の全体を、これは私はごく端的に申しますと職権主義の考え方なんだ、そうすればアシスタントであるとか、やれ承認でござるとかいうことを犬養さんが申されましたが、さような議論もこれは納得いたすし、これは肯定できる、かようなことに相なるであろうと私は思うのでありますが、当事者主義の刑事訴訟法の体系を、将来においてもさらにたくましく推し進めて行かなければならないのだという考え方をここに基本の構想として、考え方におきましては、これはやはり公訴権の内容、手続と、公訴権を忠実に行いますためには、やはりその捜査権に対しても無関心ではあり得ないという程度において、いわゆる現在の検察官側が捜査権を持つておるのであつて、本来、理論的に申しまして、捜査権というものは警察が把持すべきものであるということは明々白々な考え方であると思うのであります。犬養さんと私はちよつと議論が違うので、実は昔からの知り合いなもんですから、ちつと横まわしに言うておるので、岡原さんに笑われるだろうけれども言うならやりますが、実はそういう考え方たろうと私は思うのです。  ところで検察官というものは、しからばさつき私は、検察フアツシヨが起らないかということを大臣に答弁を煩わしたが、その御答弁たるやきわめて抽象に堕したのでございまして、やむを得ず見解の相違ということで、私は議論上においてはわかれましたが、きわめて検察官というものは視野の狭いところの専門家だ。しかもその視野の狭いところの検察官が、これはきわめてまじめな方々であるということを私は明確に肯定いたします。実に検察官というもののほとんど百パーセントがまじめな、まじめにしんにゆうがつくほどまじめな方々であるのであります。しかしそのまじめな方々の、一〇%なり二〇%なりの人々の考え方を、私は方々地方を歩いて考えてみますると、乃公立たずんは蒼生をいかんせんという考え方がひそんでおるように私は明確に見受けられる。代議士と見れば、あんなものは利権屋、感覚の標本みたいなものであると言う。あるいは実業家というものは悪玉だ。乃公立たずんば日本の蒼生をいかんせんやという考え方を一〇%なり二〇%なりの人がまじめに持つておるのだ。こういう考え方なんです。私は犬養さんの所論の冒頭に申し上げましたところの検察フアツシヨ抬頭の原因になりかねない。言うなれば第一点、あなたが考えられるところの、あなたは明確に日本の将来の刑事訴訟法の骨格体系はいわゆる現段階においてはやむを得ないのだ。よつてこれは職権主義の考え方に逐次改めようとする所論のもとに、かかる議論を展開したものなりやいなやということに対するあなたの、佐藤さんの明確なる見解を第一に承りたいとともに、第二点は、かかるきわめてその視野の狭い、そういうことを申しては恐縮でありますが、きわめて視野の狭い専門家であるこの検察官が厖大なる権限を持つておられる。厖大なる権限をいかにして検事総長としてはコントロールせられるのか。かりに背後に法務大臣のもとに検事総長以下まさに源頼朝以来の厖大なる権力を持つているものができ上るんだ。第三点として聞きますと、大体刑事訴訟法というものはサイエンスであると言つて間違いないので、これは決してフイロソフイーでも何でもない。サイエンスであるならば、一個のサイエンスは他のサイエンスと並んでおりますところのサイエンスと相提携、と言つては恐縮でありますが、その甲のサイエンスと乙のサイエンスの結び目が明確に行われることによつて、これか普遍妥当の考え方として行使せられるのであろう。私は厚生委員長をやつて、精神衛生法の立法をいたした経験がありますが、こういう経験で個人的な問題並びに特定の問題は本日は絶対に申し上げません。総長にもずけずけ申し上げましたが、私は実に不愉快な思いをいたした体験を持つている。寺島隆太郎は道聴途説云々という考え方のもとに、今日の精神衛生医学において、たとえばここに精神医学の患者を拉し来るならば、抑欝性分裂、進行性分裂、本来性分裂の三症に明確にわけるべく、これは客観的に、具体的にここに臨床のもとに行われなければならないにもかかわらず、こういう継ぎ目に対して、今日どれを見ましても、ここに具体的な、科学的な脈絡、連絡なく、いわゆる検察の公平化を考えるということは、逆コースの波、逆コースの風潮に乗つて国警の評判きわめてあしきという好個の事例をとらえて法制審議会のものの考え方、そのオーソリテイをもつて国会議員の所論、考え方を甲にし乙にせんとすることは、大なる冒涜と認める。こいうことを超克して所論があるべきだと思うが、こういうことのもとに行われておるのが今日の刑事訴訟法の考え方ではないか、一アマチユア、まつたくのアマチュアである、刑事訴訟法の刑の字も知らない寺島隆太郎、かくのごとく国家の前途を心配するゆえんの問題に関して明確なる御答弁を検事総長佐藤藤佐氏より承りたい。
  102. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 ただいま寺島委員から刑事訴訟法の一部を改正すると、将来権力集中の弊に陥らないかという御心配のお言葉をるる拝聴いたしたのでありまするが、私どもは長い間の討議を重ねて参りました法制審議会の経過から見ましても、毫も権力集中とか検察フアツシヨというようなおそれはないものと確信いたしております。もし寺島委員の方で、條文のこういう点が将来権力集中になるおそれがあり、検察ファツシヨの弊に陥るということを御指摘くださるならば、あるいは私どもも考え直す、あるいはさらに研究を要するような場合があるだろうと思いまするけれども、今のところ私はこの改正案を見まして、決してそういう御心配はない。どうしてそういう御心配をなさるかというその杞憂のほどもお察しいたしかねるのであります。ただいまかような刑事訴訟法の改正をすると、職権主義になるおそれがある、せつかく現行刑事訴訟法で当事者主義に重きを置いているのが職権主義になるおそれがあるというようなことをおつしやいましたが、この点も私はまつたく理解いたしかねるのであります。  私から刑事訴訟法の基本的な構造を申し上げてはまことに恐縮でありまするが、現行刑事訴訟法で、職権主義を非常に加味した旧刑事訴訟法に比べて――職権主義を加味したというのは、公判手続なのであります。公判手続の進行上、従来の職権主義を後退さして、当事者訴訟主義を非常に重く加味したということは確かでございます。その線はこの刑事訴訟法の改正案でくずしておらないのでございます。  先ほど来問題になつておるのは、捜査の段階における警察、司法警察職員と検察官との関係であります。これは旧刑事訴訟法以来いわゆる職権主義で捜査をいたしておるのでありまして、現行刑事訴訟法もその建前をとつておるのであります。決して現行刑事訴訟法が捜査の段階において全面的に当事者主義に重きを置いているというふうには思えないのであります。ただ捜査の段階において最も人権を尊重しなければならぬということは、刑事訴訟法の第一條の目的として掲げているところでも明らかでありまするように、人権を尊重しながら、個人の基本的人権を尊重しながら捜査を進める、事案の真相をきわめて、そうして適正な刑罰権を実行するようにということが刑事訴訟法の第一條に明定しておるのでありまして、その大方針に基いて現行刑事訴訟法が構造せられております。この基本的な構造には今度の改正案は何ら私は抵触しておるものとは思えないのでありまして、言葉じりをとらえるようではなはだ恐縮でありますが、職権主義というのはこれはよくいわれておりますけれども、捜査の段階で現行刑事訴訟法が職権主義を当事者主義に全部改めた、しかるにこの改正案が捜査の段階において、せつかくの当事者主義を後退させて、職権主義が君臨をするのではないかというような御心配は、私は御無用と思うのであります。それからなお戦前の警察と検察との関係については、申し上げるまでもなく御承知と思いますが、戦前のいわゆる刑事訴訟法時代におきましては、犯罪捜査に関して司法警察官はすべて検事の指揮を受けることになつておりました。しかしながら警察官の身分については何ら権限も監督権も持つておらない。捜査については全面的に指揮することができるとあつても、戦前の検察の運用または検察と警察との関係をごらんくださいますならば、全面的に指揮できたであろうかどうかということをお考えくださいますならば、制度の上において全面的に指揮すべしとなつておつても、実際はできなかつたのではないかということに思いをいたされるであろうと思うのであります。この新刑事訴訟法になりまして、そういう全面的な指揮権はない、捜査はお互いに協力してやれ、しかし協力してやるべきであるが、そのばらばらにやつた捜査をどこでだれが統制をし、調整をして行くかということが現行刑事訴訟法の百九十三條ではつきりきまつておるのであります。ただその百九十三條を解釈上異議を述べる者があるから明確にするというだけでありまして、百九十三條第一項の字句を明瞭にしたからといつて権力集中とか検察フアッシヨというようなことは、どうしてそこまで因果関係が及ぶのか、ちよつと了解いたしかねるのであります。
  103. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 権力集中がいかなる理論的な展開を経てその因果関係に及ぶか了解がいたしかねるというが、具体的事実をもつてあなたに御答弁を求めている。検事はきわめて視野の狭い専門家で、視野の狭い専門家が厖大な権力を持つて、乃公出ずんば蒼生をいかにせんというのがテン・パーセント、これは言えるのだ。全都が全部ではない、検事というのは相当な御人格の方と私は考えておりますが、最近私が思いを新たにしている事例にかんがみて、一割ぐらいはそういう考え方を持つておる、こういう考え方だからやれ代議士なんというものはとんでもないやつだからぶち込んでしまえとか、どうしろこうしろ、こういう考え方に発展するんだ。こういうのは法文の一條々々の陰に隠れて、百九十二條云々という問題ではなくて、結局権力集中を来らしめるであろうということを私は申し土けている。これはいわゆる逐條審議の段階において申し上げます。本日は一般の、この法律が施行せられたあとにおけるところの社会的、政治的影響を私は心配いたすがゆえに、総長なり大臣なりに御質疑をいたしております。     〔鍛冶委員長代理退席委員長着席〕 あるいは私の考え方に対してあなたは堅白異同の弁であるというような見方をしているように考えられるが、吾人をもつてすれば法務省、検察庁の役人というものにかかつたら始末に負えない。堅白異同の弁で、白いものが黒いものになつてしまうということを、私は方々の委員会をまわつておりますが、率直に言つてそういうふうに考えます。これは意見の相違と思いますが、そういう意味でお尋ねしておるのでありますから、どうぞもう一ぺんお答えを願いたい。
  104. 佐藤藤佐

    ○佐藤説明員 寺島委員がお考えの、将来を憂えまして権力集中あるいは検察フアツシヨに陥らないようにという御説明は、これはありがたく私どもは服脅しなければならぬことでありまして、現行刑事訴訟法の運用にあたりましても、また改正法が通過した後の改正法の運用にあたりましても、御心配の点がないように十分気をつけたいと思います。ただいま検事の一部に非常に見識の狭い者があるということを申されましたが、これはおそらく皆様から御非難をされるような見識の狭い者も、大勢の中でありますからあると思います。またふだんはよろしいが、ある特定な事件の取調べにあたつて少し行き過ぎをしたあるいは非難に値するようなこともなきにしもあらずと思つております。しかしなるべくそういうことのないように、私どもは検察権の運用にあたつて注意はいたしております。それでそういう一部見識の狭いあるいは行き過ぎのあるような運用をする検察官がおるから、検察官に捜査の調整なり統制をさせるということはいけない、やはりばらばらな捜査にしておく方が国民の納得の行く捜査、安心の行く捜査ができるということでありますならば、私はこれは一つの御意見だろうと思います。しかしながら現行刑事訴訟法ができ上るときには、ばらばらの捜査にしておつたのでは適正な捜査を期しがたい、公訴権を適正に遂行ずるためには捜査の段階から調整をとり、統制をとつて、そうしてりつぱにして行かなければ適正な刑罰権の実行を期しがたい、こういう考え方から現行刑事訴訟法の百九十三條ができておるのであります。百九十三條をつくる当時においてはおそらく寺島委員のようなお考えの方もあつたとも思いますけれども、ただいま申し上げましたように、ばらばらの捜査についてこれを統制をとり調整をとり、適正にしようというために百九十三條はできたのでありますから、私はどこまでも百九十三條を設けられた趣旨に従つて運用し、また百九十三條の精神を明確にするためにかような改正をするのが適当だろう、こういうふうに考えております。
  105. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 百九十三條の解釈をめぐりまして佐藤総長の考え方と私の考え方とに食い違いがある。法律とはしばしばさようなものであるということを私は了承いたしておりますが、ただこれは国会の問答でございまして、あなたもしばしば若かりしときに法服をつけて、おいこらともやらなかつたでしようが、人定尋問をせられた当時のわれわれは被告じやないのだから、そういう意味でお聞きを願いたいのだが、私は若いときにかつてジヤーナリストから国会議員になつた体験者の一人として、今日の光景はかつて濱田國松氏が本会議議場において時の寺内寿一大将といたされたあの問答がほうふつとして私の脳裡をかすめるのであります。この気運いずこにありやまさに盧山の中にあつては盧山の面目を知ることはかたいと言われておるのでありますが、この点は逐條審議の段階においてさらに伺いたいと思います。ただいま法律論でどこがどうなんだ、こういうことを言われて、そういうことはないというお話だつたから私は申し上げません。そういうことについては、私は逐條審議の段階においてさらに御意見を承りたいと思います。  次いで第三点は、齋藤国警長官に承りたい。どうも私はふに落ちないのですが、齋藤国警長官の主管大臣は犬養大臣であり、検事総長の主管大臣も犬養大臣であるが、――私二月ばかり寝込んでおりましたので、よく知りませんが、どうもあなたの方がまま子のような扱いを受けておるのではないかというような感じを受けるのです。そしてその背景をなすものは、ただいま佐藤さんが、そういうようなしやあやあとした議論をされておるが、これは法制審議会といういわゆる法律家の集まりをもつて、それに一回とか二回とか聞いておりますが、その結果結論をもつてこういう案を出した。この案というものについて、私は犬養さんがどうもそういうような水くさい答弁をせられるということは実は納得が行かない。大体法務省と検察庁で岡原さんのような頭のいい古参の連中がねじりはち巻きでこしらえた原案は、審議会では一ぺんで通ります。これがこういうところへ来てにつちもさつちも行かないでものを言うような、四角四面の水くさい議論を聞くために、私はわざわざ両君に出て来ていただいておるのではないのです。しかるにこういう議論がなされておる。しかもこれが、ほんとうならば私は齋藤さんの味方をするだろうと思つた在野法曹さえも、――基本的人権を擁護すべし、基本的人権はあくまでも擁護しなければならないという考えに立てる在野法曹の所論は、第一弁護士会連合会長であるところの山崎氏、あるいは佐藤さんの前任者である福井さんに直接聞きましたところ、福井さんはちよつと考え方が違つておりましたが、しかしそういうような方々が何人かある中で、比較的若い弁護人はそうでもないんですが、老人の弁護人はどうも旧刑事訴訟法の方に妙にノスタルジアを感じているのです。しかしこういうものが本来ならば国警に味方をすべきものである。ああいう抱負をもつて自治警をつくり国警をつくつたというものが、今日になつて不幸にして今あなたのすぐ前の、どんな偉い人か知りませんが、佐藤藤佐なる者に、こてんぱんに国警はかくかくでございますといつて所論をされ、しかも法制審議会はかくかくでござる、しかも味方であるべき在野法曹がちとどうも国警の味方でなくて、同じ父親であるところの犬養法務大臣が、――私はしばらくぶりの国会登院でございますので、客観的な事実把握が間違つておれば、これは御勘弁を願いますが、国会等でふんじばられるということはないから申し上げますが、どうも大臣からそういう水くさい答弁が出尋ねではございませんが、弁明をいたるということは、実は、この法律の運用が完全ではなかつたということになりはしないか。さつき花村委員が言われたが、彼は専門家ですから、六法全書をつまんで、アメリカさまがどうのすべつたのといつてあなたに御質問をなさいましたが、そういう所論が出て来るようになつたということは、これは実に国警なり自治警なりの制度の欠陥というものをついて来ての所論ではない。これは運用の欠陥というものをついて来た所論である。佐藤氏の所論についても私は後日明白にいたしたいと思うが、運用上の所論の欠陥を制度上の所論の欠陥にすりかえるところに、天一坊にもまさるところの驚くべき魔術が存在しておるのである。本来ならばあなたに味方をするはずの在野法曹ないしは法制審議会までもどうも国警の方から離れて、父親である犬養さんもしやあやあと見ておるという感じである。私は運用を将来において十分ならしめ、万人要望いたすところの基本的人権を確立するのでなかつたならば、いかに検察庁の屋舎厖大を加え、いかに警察の建物が厖大を加えても、人民無事の弊に泣く憂いは絶えないと思うが、国警に関する限りこの運用上の問題に対して具体的にいかなる抱負をお持ちでありますかお伺い申し上げたい。
  106. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 国警と検察庁の間の運用よろしきを得るならば。ただいま問題になつておるような法律の改正は必要なかつたではないかという御町論だろうと思います。その前に犬養大臣は警察力をまま子扱いにするように見えるという点について、これはお尋ねではございませんが、弁明をいたしておきますが、大臣は警察の方も非常にまく理解をされて庇護をしていただいております。この点は私は感謝をいたしております。ただ警察と法務省と完全に了解できない案がどうして出なければならなかつたということは、これは法制審議会がすでに通つておりますし、また内閣に設けられた法制審議会の成案を得られたものにつきましては、大臣とされましては一応それを尊重せられるという気持も私はよくわかつておるのであります。またわれわれの意のあるところも相当くみとつていただいております。その意味におきまして私は必ずしもわれわれの方をまま子扱いにしておられるという感じは持つておるわけではございません。ただ問題は運用よろしきを得ておつたならば、こういう点はなかつたではないか、ことに逮捕令状の請求、これは濫用がなければこういうことはなかつただろう、まずこれにつきましてはわれわれ警察側の教育の面、監督が不十分であつたという点もわれわれ十分自戒をいたしておるのであります。また検察側から見られて、こういう濫用があつた、こういう点についてこういう注意をしたらよかろうという御注意を、もつといただければよかつたであろうと私は思つておるのであります。ただわれわれといたしましては、たとえばこの法案が法制審議会に出されます前におきましても、警察と関係のある部分につきましては、これらの点をいかにすればほんとうに国民が納得されるようなものになるかよく研究をして、そうして法制審議会の案にして出していただくことができればこういうことにもならなかつたであろうと思うのでありますが、そういつた面の連絡が不十分であつたのではなかろうか、これはわれわれの方も責任があるとも考えられまするが、法制審議会は全然われわれの側の同意なしにきめてしまつたものですから、こういうようになつて来たわけであります。逮捕権の濫用の防止につきましては、私は事実検察側とは大部分は事前によく連絡をいたしております。また警察側のみずからの監督というものも、先ほど申し述べましたような方法において、今後ますます自戒をして行くことによつて、皆さんの御期待に沿えるようになり得る、かように考えておるのであります。百九十三條につきましては、解釈点でわれわれもう少し法務省側と協議する点が残つておりますから、これは逐條審議のときに申し上げますが、これも私は連絡協調よろしきを得るならば問題はないものだと考えております。
  107. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 私は齋藤さんの説明にはあまり満足しないのですが、しかしきようの齋藤さんの態度は検察庁の人々よりはまじめな態度であつたように思います。結局こういう事態を引起したことは、機構ではなくしてむしろ法律の運用が悪いからである。この問題については、実は私は在野法曹の相当な長老に意見を聞いたのです。それで実は佐藤さんにお伺いをいたしたのですが、あまりつつけんどんに言われたからつい私もこういうことを申し上げたのですが、これが検事総長に対してもし礼を失しておるとすればおわびをいたしておきますが、どうぞ私の衷情の存するところを御了解願いたいと思います。これはさつき花村さんも御注文をなされたが、それとは別個に、こいねがわくは自警、国警は、いわゆる当事者主義が刑事訴訟法の骨格体系をなすわが国の刑事訴訟界に、「清新の天地を犬養法務大臣のもとに打立てるフアイトを燃やされて、どうか逐條審議にお備えあらんことを願いたい。  犬養法務大臣がせつかくおいでくださいましたので申し上げますが、大臣は、お前は何條を聞くのだというように仰せられますが、実は、私は、法律の背後に流れているところの思想的背景についてお尋ねしているのであつて、何條というような法律の條文に従つて聞いているわけではないのです。つまり、刑事訴訟法とは切つても切れない関係にございますところの陪審の問題についての総括質問でございます。命題を先に差出さなかつたという点に多少の誤解があつたかもしれません。誤解と申しますか、私の寸足らず、舌足らずのところがあつたかと思いますが、陪審制度について私はまず申し上げたいのでありますが、英米の法律の思想において、民衆の叡知が最も大切なる裁判の中に入つていないというところから、ここにいわゆる陪審の制度が考えられたわけです。そこで、私もしろうとでありますが、しかし、しろうとが横目に見た考え方というものも往々世を裨益し得る例もあるという点でどうぞ御記憶にとめていただきたい。私、大正十二年の刑事訴訟法の速記録を見たのでありますけれども、その当時は、犬養法務大臣の先代が最も政界において御活躍なされたころでありまして、ただいま最高検察庁に、私は顔は見たことはないのでありますけれども、花井忠さんという人がおられるやに聞いておりますが、その人の先代などもその当時からきわめて活発なる所論をなしてこれを取上げておるのであります。故事に、主たる者、わかれて三日見ざれば刮目してこれを見るべしと書いてありますように、大臣たるもの、一年間も法務大臣をやつたら大いに刮目して見るべきである。ところが犬養大臣に、お前は法律の何條を聞いているのだと言われて私はびつくりしてしまつたのでありますが、大臣の本領はむしろ政治家としての一個の見識にあろうと思うので、何條だというようなやぼなことは私はお聞きしたくないのであります。  そこで、あなたは性善の考え方をおとりになつているのだが、性善の考え方をおとりになつているとすると、法律の中で性善、性悪がどこに通ずるのかというと、支那におけるところの周禮の性善の思想に結びつくのであります。これはアメリカのことなどやイギリスのことをやると、隣におる岡原君は頭がいいからべつちやんこにやられるからやめておきますが、周禮の考え方の中に三刺、三宥、三赦の法という考え方があるのであります。これは四書五経の特に四書までの段階ですが、これをデイスカツシヨンするとなかなか今の法務省の方にはわからない。この間の逐條審議の説明のときにも、これはとてもてつこうにさつこうに負えぬと思つて私はびつくりしたのです。五経ぐらいになると相当の漢文学者も読んでいないので別ですが、ともかく、周禮の中には三刺、三宥、三赦の法という考え方があるのでございますが。その中に、一度は群臣に聞くをいい、再度は群吏に尋ねるをいい、三度は万民に尋ねるをいう云々という文句があるのであります。その思想体系をなすものこそは、言うまでもなく、断獄は民情を得ざれば大害ありでありまして、これを演釋いたしましたものが孟子の考え方であつて、大臣がおとりになつている性善説の中に、左右みな殺すべしというも聞くことなかれ、群臣みな殺すべしというも聞くことなかれ、国人みな殺すべしというて、しかるのちにこれを察し、殺すべきを見てしかるのちにこれを殺せよという句があります。この句は、錚々老々たる当時の一個の政治家である孟子の独立の思想ではなくて、いわゆる周代の禮記の考え方を孟子が演釋いたし、この考え方が隋唐に及び、隋唐の思想は大宝律令となり、わが国の明治までに及びまするところの諸般の法制史の骨格構造をなし得ましたということでありまするが、この考え方は、支那の考え方の中にも禮記の中にすでに――すなわち、当時の支那の初代思想発展のその奥にすでに陪審制度の考え方があつたものであるということを東洋における漢学者がかように所論を生かしておるのでございます。ところで、せつかくのこの周禮の法を用いてしかも失敗したものに王という政治家があります。大臣も御存じだと思いますが、王がこの周禮の考え方を用いて失敗せるそのあとに王安石という者が出て来るのでありますが、なぜこれは失敗したかというと、周公が苦心さんたんしてつくり上げたところの周健の中に論じている陪審制度、その陪審制度を取入れなかつたために失敗したのである。つまり、断獄は民情を聞いてやらなかつたために失敗をいたしたのであります。私のお知合いと申しては怒られるかもしれませんが、私どもがかつて御指導をいただいた大臣よ、法務大臣というやつかいな御商売――と言つては恐縮でありますが、さようなものを引受けて、願わくは王の失敗を繰返すことなかれ、正安石の失敗を繰返すことなかれ、すなわち、陪審の考え方に対するあなたの所論いかん。
  108. 犬養健

    ○犬養国務大臣 お答え申し上げます。陪審の問題は私も学生の時分からやつておりますが、御承知のように若槻さんが生前非常に熱心でありましたために、陪審制度を社会に徹底させるという意味で、有名なドレヒユーズ事件の記録を翻訳されたことがあります。私も当時それを読んで、なるほどこれは一般人民の考え方を法廷に反映させるという意味で非常に意義の深いものだと思つたのであります。就任以来たまたま陪審問題などが、まだ試案でありましたが、出まして、その問題に触れたこともございます。法務当局から言いますと、陪審制度というものは、一審、二審の審級の根本問題に関してもいろいろ問題が残つておりますが、証拠法の関係からいつても今の法律ではまかないきれないものがあるというので、にわかにこれを取上げるというところまで機が熟しておりません。結局これは法制審議会にかけて広く社会の知識を求めるということになるのでありますが、寺島さんの言つておられる御趣旨はよくわかりますから、今日この委員会を終えてからまたよくその点について考えたいと思います。
  109. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 この間実は岡原政府委員が逐條審議の過程で、黙秘権を御説明になつておるのを私はここで聞いておつた。なるほどこれは憲法の條章に抵触するものにあらず、かくかくすることがかえつて捜査の上においては便利であるという御説明があつた。私はとてもこれは通常のデイスカツシヨンでは、これは白いものを黒いと言いくるめられてしまつて、あきらめたのですが、これは賢明なる大臣の御出席でありますから聞いてみたいと思いますが、黙秘権の一部を切るということであります。不幸にして私はあそこにぶち込まれた経験がないので、実際どう  いう運用になつているか知りませんが、こういうものを通したあかつきにおいて出て来る社会的、政治的影響はどうかというと、共産党というような、こういうような考え方の皆さんに対しては、結局一片の法律をもつてしたつてこれは黙つて何も言う気づかいがないと私は思うのです。これは言つたつて、そんなことは法律に書こうと書くまいと黙秘権はやります。但し善良なるわれわれのごとき第三者は、三日もぶち込まれてぎゆうゆうやられればこれはたいてい――現行刑事訴訟法でぶち込まれた人の自白したものを読んでみると、たいてい二日か三日でみんなしやべつてしまう。善良なる人に苛酷にして、そうして刑訴法の目的者には実はあまり通用しないところの法律になりはしないかという考え方、私はほかに多くの一般質問を用意いたしたのでありますが、時間の関係上以上をもつて打切りまして、逐條審議の際に譲りますが、この点について御答弁を願いたい。
  110. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 いわゆる供述拒否権の規定の改正につきましては、先般逐條説明の際に、概括的には申し上げてあることでございます。ただいま黙秘権という言葉でこれをおつしやつたのでございますが、これはおそらく刑事訴訟法の二百九十一條の関係だろうと思いますが、私どもはこの黙秘権という言葉と、それからいわゆる供述拒否権というものを、法律上は一応違えて考えております。それは二百九十一條と百九十八條とを対比してこらんになりますとわかるのでございますが、用語が若干違つておるのでございます。なおその点につきましては、結局一部のいわゆる供述拒否権というものをとことんまで利用するような人に対しては、同じことではないかという御質問はまことにごもつともでございまして、私どももこれによつていわゆる供述拒否権というものが全面的に濫用されないとは思つておりません。ただ先般お話いたしました通り、取調官の側におきましても、お前はしやべらなくてもいい権利があるのだぞと供述を拒むことができる旨を告げた後に、すぐそのあとで、ときに尋ねるが、ちよつとこういう点についても聞きたいのだがというのは、いかにも心理的な矛盾を感ずるのみならず、この取調べの際にさようなことを告げるその根本的な理念といたしましては、何も権利としてさようなものがあるのではなく、いわゆるプリヴイレツジ的なものである、ライトではないというふうな点から、憲法の三十八條に書いてあるその程度のことを告げれば、もちろんそれで足りるのではないか、かようなことを考えた次第であります。
  111. 寺島隆太郎

    ○寺島委員 以上をもつて終りますが、岡原さんの御答弁はちよつと――私の言う意味は、あの法の改正ということは、結局において悪人には同様であつて、善人、普通の良民に対しては、かえつてそういう改正ができたんだから、みなしやべらなければならないという心理的な影響を与えて、この法律の志す方向と著しく異なる到達点に至るのではないか、こう考えるのでありますが、時間の関係もございますので、以上をもつて終ります。
  112. 小林錡

    ○小林委員長 本日の質疑はこの程度にとどめ、次会は明日午前十時三十分から開くこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時六分散会