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1952-05-16 第13回国会 衆議院 労働委員会 14号 公式Web版

  1. 昭和二十七年五月十六日(金曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 島田 末信君    理事 倉石 忠雄君 理事 福永 健司君    理事 船越  弘君 理事 森山 欽司君    理事 前田 種男君       麻生太賀吉君    天野 公義君       三浦寅之助君    柳澤 義男君       山村新治郎君    熊本 虎三君       柄澤登志子君    中原 健次君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君         労 働 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         人  事  官 入江誠一郎君         刑 政 長 官 清原 邦一君         労働政務次官  溝口 三郎君         労働事務官         (労政局長)  賀来才二郎君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      龜井  光君  委員外の出席者         通商産業事務官         (炭政局炭業課         長)      加藤 悌次君         専  門  員 横大路俊一君 五月十六日  委員天野公義君辞任につき、その補欠として森  幸太郎君が議長の指名で委員に選任された。 同日  委員森幸太郎君辞任につき、その補欠として天  野公義君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長の補欠選任  労働関係調整法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第二二〇号)  労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出  第二二一号)  地方公営企業労働関係法案(内閣提出第二二二  号)     ―――――――――――――
  2. 島田末信

    ○島田委員長 これより会議を開きます。  前会に引続いて労働関係調整法等の一部を改正する法律案、労働基準法の一部を改正する法律案及び地方公営企業労働関係法案を一括議題といたしまして、質疑を続行いたします。森山鉄司君。
  3. 森山欽司

    ○森山委員 労働大臣にお伺いいたしますが、五月十二日に労働大臣は労闘、総評の代表と会見されたそうでありますが、その会見の経過並びに所戒場について御報告を願いたいと思います。
  4. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お話のように十二日に総評の幹部の方がお見えになりまして、そして政府に警告をしたい、その趣旨は新聞に出ておりましたように、破防法あるいは労働法あるいはその他の治安立法については反対である、これを撤回しないときには総評としてはストに出るかもしれない、こういうような意味の申入れがございました。そこで私はいつも申上げていることでありますが、破防法にいたしましても、労働三法にいたしましても、内容をよく御検討になるならば、必ずしも反対をされるものではないじやないかという点をるる説きまして、政治ストは健全なる組合のとるべきことでないから、ひとつ十分御考慮を願いたいという意味のことを申してわかれたわけであります。
  5. 森山欽司

    ○森山委員 その際に総評、労闘側から話が出たと思いますが、労闘スト第三波をやるようなことが新聞紙上伝えられております。ところできようの新聞によると、総同盟は労闘ストに反対しているという報道が伝えられているこの労闘スト第三波に対する現在における見通しを承りたいと思います。
  6. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 総同盟はこの前もそうでございましたし、やはりこういう法律の問題については、ストで対抗することはよくないという見解を堅持されておりまして、今度の総評のストに対しましても、総同盟はストでやつてはならないという態度をきめているようであります。総評の中でもいろいろ意見があるようでありますが、過般大体幹部の会合で、第三波ストを二十八日ごろを予定いたしてやるという計画があつたようであります。その規模はまだはつきりいたしておりません。しかしながらこの前もそうでございましたが、総評は百何十万スト態勢に入ると言つておりますが、実はストに入るのはその一部でありまして、職場大会その他もストだというような感じをもつて発表されがちでございますが、古何十万がストに入るとは考えておりません。
  7. 森山欽司

    ○森山委員 もとよりいわゆる労闘スト第一波、第二波は、お花見ストだつたり、睡眠ストだつたり、あるいは片日振替ストだつたり、実態を見るとはなはだナンセンスなものがあつたことは事実であります。しかし四月十二日の第一波と第二波とは多少様子が違つておる。今度は第三波をやる。必ずしも第一波、第二波が甘かつたように、第三波が甘いとは限らないのであります。従つてこれに対する政府の態度をひとつ明確に示していただきたい。なおこれに関連して日経連が相当強硬な態度をとつているやに伝えられておりますが、労働省に入つておるところの情報をひとつお話願いたいと思いまする。
  8. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私どもは前々から申し上げまするごとく、こういう法律でありますとか政府の施策とかいうものに対する反対ということは、国民の代表である国会において論議されることが、これ民主政治の建前であります。それを一部の者が実力行使によつてこれに対抗するということは、私は民主政治の確立の上にはなだ遺憾だと思つております。しかも憲法二十八條に保障いたしますところの労働者のスト権というものは、労働者の労働條件の維持高揚、すなわち労使間の労働條件の獲得のために、やむを得ない場合にはストも発動し得るということで保障まれているのであります。これが自分たちの政治的な見解を通すために、それが反対であるために、このストライキをやるということになりましたのでつ、民主政治、議会政治というものは、極端に行く場合には否定するということになるのでありまして、私どもはしばしばその違法であることを説き、また健全なる労働組合が今後発達する上においても、そういう態度をとるものでないということを言つておるわけであります。それでもどうしてもやられるということでありますれば、それぞれの法の命ずるところによつて処置されることはやむを得ないのではないか。私としてはそういうことは好みません。ほんとうに日本の労働組合というものが健全に発達することを、私は真に希望しておるのでありますから、切にその自重を要望しておるのであります。万一やつたときにどうなるかということは、そのときになつてみませんとわかりませんが、すでに日経連等におきましては、この前の政治ストの経験もございまするので、まあ一回やつたからといつてすぐそれに対する処置をとるということもどうだろうかということで、自重されておつたようでありまするが、これが再三繰返されるということになれば、経営陣といえどもこれを黙認するわけにも行かないでありましよう。従いましてそれぞれの秩序違反に対するところの処分もしくは損害賠償の訴え等の準備もしておるようでございまして、私どもはそういう事態、結果を招来することはなはだ遺憾な点でございまするので、切に組合側の自重を要望してやまぬところであります。
  9. 森山欽司

    ○森山委員 さきの労働大臣の総評、労闘代表の会見の経過といい、また伝えられる労闘スト第三波の決行の問題といい、現在労働組合の内部に弾圧法規反対闘争の一翼として、労働法の今回の改正が改悪であるという強い反対があるのであります。この改悪であるという強い反対を労働大臣はどう見ておられるか、伺いたい。
  10. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は組合側が一応それに対して反対される気持はわからぬでもございません。しかしながら日本の終戦後の組合のあり方につきましては、総同盟はそうではございませんけれども、とかくまだ案の内容が出ないうちから、組合法、労働法というものが非常に改悪されて、弾圧されているかのような印象を與えて、一般労働大衆にアッピールするきらいがあるのであります。それは終戰直後にいわゆる三月闘争というものが行われた。これは主として全逓の土橋君がリーダー・シップをとりましてやつたことでありますが、そのときも政府がまだどういう案をつくるということも言わないうちから、労働法反対ということを旗じるしに掲げまして、そうしてスト計画を立ててやるという、そういうきらいがあるのであります。でありまするから、過日私が総評の幹部に会いましたときにも、それを引用いたして忠告を與えたのでありますが、総評も、まだ政府がどういうことを考えるということも言つていない、法令諮問委員会に諮問をいたしておるときから、すでに労働法の改悪をするのだ、これには絶対反対であるといつて闘争目標を掲げて、そうして大衆をひつぱつて来たきらいがある。破防法についても同様である。破防法も御承知のように中をごらんになりますると、組合側の心配される点もそれはございます。昨日も熊本さんがお話になりましたように、かつての治安維持法その他の点をも考慮するならば、運用の面について一応心配される点がございますが、案の内容をごらんになれば、これが健全なる労働組合を弾圧する法規でないことは明瞭であります。しかも今日の世相においてひんぴんとして起るところの極端なる暴力行為、これが單に個人の犯罪ではなくして、その背後に団体的なものがあるということも世間周知であります。そういうものを放置することを一体国民が希望するか、国民の大多数の人はそれを非常に憂慮している、何とかひとつ政府はこれを防止してもらいたいというのが、日本国民のほとんど多数の希望ではないか、それにわれわれはこたえて今回破防法を出しているわけでございます。労働三法の改正につきましても、これは過日来私からも説明申し上げましたように、その大半というものは、今日国家あるいは地方団体における現業職員の団体交渉権を復活しようという努力であります。これを何も改悪だというところがどこにあるかと私は言いたいのでありますが、過半はその問題がある。もう一つ組合が反対される点は、いわゆる緊急調整の点であろうと思うのですが、この緊急調整も、昨日も私はどなたかにもお答えをいたしましたように、一定期間争議が制限されるという点は、組合としてもいやなところでありましよう。しかしながら争議をすれば必ず勝てるときまつたものではないのであります。また特に公益事業などになりますると、そう簡単にもできないのであります。でありますから、そういう国民生活に重大な障害を與える場合に、政府としてはそれはお互いの争議であるから、ほつておいて知らぬ顔をするのだでは、今日国民が承知しないのでありますから、そういうときには一時争議をやつて、合理的な機関で解決をはかることは、労働者に必ずしも不利な解決になるはずはないのであります。そういう公正な機関には労働大臣も入つていられるのでありますから、あるいは労働者の言い分が全部百パーセント通らないかもしれませんが、労働者に不利な決定が行われるということでは、そういう中央労働委員会というものを、労働者代表は信頼するはずはないのであります。今日はしばしば行われる争議も、中労委等の調停によつて解決した例もあることでありますから、こういう合理的な機関でできるだけ解決をして行くという努力をはかることは、私は日本の今日の自立経済の必要なときに当然ではないか、しかも日本ばかりがこれをやつているということになれば、日本はまた後退するのかというような印象を與えるかもしれませんが、現にアメリカでは八十日間もとめてその努力を拂つている。しかもアメリカと日本と比べるならば、労働事情から申しましても、また経済事情から申しましても、その必要はアメリカ以上でありますから、その点はただ表に現われた形式的な文字だけを見て、そうして労働大衆をひつばつてストライキに入らせる、ストライキに入ればその間賃金はもらえないのであります。多数の労働者に一日の賃金を棒にふらせるというようなことは、組合の指導者、幹部としては相当考慮になつてしかるべきではないか、かように存じている次第であります。
  11. 森山欽司

    ○森山委員 労働大臣は労働組合側の改悪ということは、大体その内容もわからないで言うのだ、また緊急調整は意見を異にするかもしれないが、おれの方にも言い分があるというお話ですが、しかし労働大臣がどうお考えになろうとも、あくまでも労働組合の多くが改悪反対で一貫して来ている現在の労働運動自体について、一体どうお考えになつているか伺いたい。
  12. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 これは森山さんの日ごろのお説のように、総評は政治的偏向のきらいがあるというお言葉も、私は全然ないではないと思つております。今日の総評のあり方は、多分に政治的なもののにおいがあると思つております。しかしこれは労働組合がだんだんと発展をして行く途上でございまして、総同盟はずいぶん長い歴史を持つておりますから、そう簡単にそういう動きもいたしませんけれども、総評は何といつても戦後に生れた組合でございますので、その点はまだだんだんと固まつて行く途中であります。でありますから、多少政治的なものによつて動かされるきらいは多分にあります。これは先ほどもお話申しましたように、やはり労働組合というものは労働者の労働條件を目的としたもので、政治的な団体ではないのでありますから、政治に走り、そのために労働大衆をひつぱつて行く、そして労働者に少からざる犠牲を拂わせるということは、指導者の方はよほど考えてほしい、こういうように考えております。
  13. 森山欽司

    ○森山委員 大臣は私がかねがね指摘しておるところの総評の政治的偏向を認められた。この問題については本委員会でも私は数回大臣に質問をした。大体大臣はそういう偏向があることを前々から指摘して、組合に反省を求めるという率直な態度をとらないで、いかにも政治家ぶつて健全だ健全だということを言つておる。そのうちに労闘スト一波、一波が起り、メーデーの暴動事件を起すということになつておる。しかし今日私の言いたいのは、そういうことではない。もちろん総評には政治的な偏向がある。おそらくこれはこのまま進めば自滅するであらうと私は思つておる。しかしあくまでも改悪反対で一貫して来る現在の労働運動自体について、少し労働大臣に反省が足りないと思う。あなたは責任をあくまでも総評に負わしておる。総評の政治的偏向賃もおる。もともと彼らは階級的社会観を根抵に持つて考えておるのであるから、いわゆる保守政党の確たるところの自由党吉田内閣に対して好意を持たないのはもちろんです。しかしそれだけではない。現在の自由党の労働政策というものに対して、根本的に不満があるからではないかと私は思うのですが、いかがでしようか。
  14. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は自由党の労働政策に不満があるとは思つておりません。先般来も申しましたように、私は終戦後ほとんど労働関係に従事して参りました。労働三法も私どもの手によつてつくつたのでありまして、私は世間にはばかるところなく、労働問題に対しては誠意をもつて対処して来たと思います。ただそれを信頼されないことは遺憾でございますが、私自身は決してうそ偽りを言つておるつもりはないのであります。ただ現在の労働組合には先ほど来御指摘になりましたように、政治的なにおいが強いのでありまして、たとえば再軍備反対であるとか、あるいは條約反対であるとか、これも一国民としてそういう政治に対する見解を持たれることは、私は自由であると思います。それはどういう見解を持たれようとかまいません。けれどもそれに対してのやり方は 民主政治下においては、民主的な方法でなければならない。おれたちは條約に反対である。再軍備に反対である。それがためにおれたちはストライキでやるのだということは、それはもう議会政治の否認になります。でありますから自由党の労働政策に反対して、現在労働組合がいろいろな行動をされておりますが、いろいろな政治的見解を持たれて、そのもとにいろいろな行動をされておる。無意味にストライキをやられるとはもちろん考えておりませんが、しかしながらいかに政治的見解を異にしても、やり方がある。それをストライキでやるということは、これは決して民主政治の上に許されない、かように私は考えております。
  15. 島田末信

    ○島田委員長 今法務総裁が見えまして、労働大臣は予算総会にすぐ行かなければならぬ関係上、法務総裁に先に質疑してください。
  16. 森山欽司

    ○森山委員 それでは法務総裁がおいでになりましたので伺いたいと思います。この際お伺いいたしたいことは、ゼネスト禁止を含む非常事態処理法案の構想をお持ちになつておられるかどうか、それから本国会提出の御意思があるかどうかを明確にお話願いたい。なぜかと申しますと、今回の労働法の改正を見ますと、緊急調整という事項がございます。御承知の通り四月の上旬はからずも発表された労働省の試案によりますと、総理大臣のさしとめ命令権まで含めておつた。ところが今回はその総理大臣のさしとめ命令は抜いております。しかし緊急調整は残つておる。私どもの見解からすれば、緊急調整などをやらなくても、現行法に若干の修正を加えれば、同じような効果を上げ得るという見解を持ち、従つてこの緊急調整を認めるか認めないかについては、治安対策としてゼネスト禁止を含む非常事態処理法案というような構想を政府として持つておられるかどうかということが、きわめて重要なことであります。ところで労働大臣にこういうことを聞いても、おそらく考えておりますとかなんとかお茶を濁されてしまう。一つにはこれは主務大臣が違うせいであろう。法務総裁においでを願つたのは、主務大臣としてゼネスト禁止を含む非常事態処理法案の構想をお持ちかどうか、本国会に提出の考えがあるかどうか、これを聞くためで、これをはつきりここでお話願えなければ、われわれは労働法の審議を一歩も進めることはできないのであります。その点を明確にお願いいたします。
  17. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。御承知の通りゼネストにも二通りあると私は思う。いわゆる経営ストと政治ストというのがあります。経営ストの方はできるだけ労働関係調整法等によつてやられて行くべきものであると私は考えております。しかしそれがまとまらず、その結果国民経済が危殆に瀕し、国民の生活に非常な危害を及ぼすようなおそれのある場合には、そういうことは考慮しなければならぬと考えております。政治ストは御承知の通りわれわれは、労働法上許すべからざるものであると考えておる。その結果これも同じく国民経済が重大なる危殆に瀕するということであれば、政府としても治安維持上これを放置することはできないのであります。これに対する処置は考えなければならぬと考えております。そこで今お尋ねの非常事態と申しますか、そういう場合についての立法について何か考えておるかということ誉ざいますが、実はわれわれもこれに対する法案の立案にとりかからなくてはならぬと考えております。考えておりますが、まだ結論に至つていないのです。これははつきり申し上げます。結論に至つておりません。しかし各種の情勢を見まして、早急に立案をいたす準備はしなければならぬと考えております。
  18. 森山欽司

    ○森山委員 法務総裁の御見解によれば、ゼネストに二種類ある。経営ストと政治ストというような御分類をなさつた。いずれにいたしましても、これらが国民生活に重大な損害を與えるというようなことになれば、これは取締らなければならぬ、こういうお話であります。そういうようなお考えをお持ちであるならば、少くも労働法上において緊急調整ということで、事実ストライキ禁止にひとしいようなことをやつておるのですが、治安上これをやるかやらぬかということはきまつていないというのは、どういうことです。おやりになるつもりがあるのですか。ただ考えておるということでは話になりません。労働法審議に必要なことであるから、あなたがここで明確な態度を示してもらいたい。これは労働大臣に話しても明快な御答弁が得られないのであります。
  19. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今私が申しました通り、私は出さなければならぬと考えております。しかしこれはいろいろの情勢のもとにおいて、内閣できめなくちやならぬことであります。今の私の立場といたしましては、立案を準備さしておるという程度であります。
  20. 森山欽司

    ○森山委員 はなはだくどいようでありますが、今国会においてこれを御提案になれるような見込みでありますか。
  21. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 できることであれば出したいと考えております。しかし各種の情勢その他を考えまして、最後的の結論にまだ到達いたしておりません。
  22. 森山欽司

    ○森山委員 われわれ議員の立場から見ますと、特に労働関係の議員の立場から見ますと、日本国憲法の建前から、できるだけこれらの団体行動権というものは広く認めるということが、正しいやり方であると考えております。もしそれが国民生活に重大な影響を及ぼすようなものがあれば、治安上の問題になる。治安上の問題について、治安対策としてゼネスト禁止の法律ができるならば、労働法におけるところの対策というものは、もう少し軽減されていいのじやないかという観点が出て参ります。法務総裁はそれについていかがお考えか。特に、今回の緊急調整の條文をお読みになつたと思うのですが、これについてどういう御見解をお持ちになるか。屋上屋を重ねるようなことにならないか、お伺いいたします。
  23. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は展上展を重ねるものとは考えておりません。労働法規上、緊急調整はやむを得ざるものと考えております。国民経済が危殆に瀕し、国民生活を不安に陷れるようなゼネストであれば、治安の面から見て法的処置を講じなければならぬ、こう考えております。
  24. 森山欽司

    ○森山委員 法務総裁はそれでよろしゆうございます。  労働大臣に伺います。ただいま法務総裁からきわめて重大な御答弁がございましたが、このことはまたあとで申し上げるといたしまして、先ほどあくまでも改悪反対で一貫して来る労働運動自体についての労働大臣の見解を伺つたのですが、そういう労働組合運動自体について、一体吉武労働大臣はどういう対策をおとりになつておられるか、伺いたい。
  25. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は労働大衆に労働組合のあり方はこうあるべきだという教育がもつと必要だと思います。これは今まででもやつておりまするが、それがまだ徹底いたしませんために、往々にして大衆が一部の指導者の指導にひつばられるというきらいがございますので、労働組合というものはこうあるべきものだという教育を、もつと徹底さしたい、かように存じております。
  26. 森山欽司

    ○森山委員 どうも教育すればそれでなおるような病状にないと私は思う。教育をしてなおるようでしたら、ここに今大臣に謹いたしました「平和闘争を意味するもの」という本を全国に配つていただけば、おそらく日本の労働運動はよくなると思うのですが、私はこの本を一冊書いても、とてもそういう自信がない。私はきわめてプアリな対策であると思います。というよりは、むしろ現在吉武さんのおとりになつておるやり方を見ておると、なるほど一面において現業公務員に団体交渉権を與え、一歩前進した面もある。しかし今回の労働法改正の眼目は、何と言つても緊急調整ですが、そういう点から見ると、どうも労働運動を押えて行く方に、あなたの方の対策が立てられているような感じが私はいたします。政府の一体的な対策というものが、労働者階級にそうとられておらない。たとえば住宅政策という問題です。私は昨年海外に参りましたが、イギリスに行つても、あるいはイタリアに行つても、労働者住宅の建築は目ざましい進捗状況で、目をみはるものがある。日本ではそんなものはこれつぼつちもない。なるほど住宅金融公庫で金を貸しますが、相当な月給をとつている人でなければ家は建てられない。住宅政策について、一体何をやつておるか。そういうようなことなどいろいろあります。しかしそういうことは議論外でありますので、本題に入りたいと思う。  そこで伺いたいのは、四月八日の労働大臣の試案は、遺憾ながら心ならずも新聞に漏れましたが、その事実であることを労働大臣といえども確認されたが、それによると総理大臣の争議さしとめ命令があるのであります。それが今回の改正から削除されている理由は一体どこにあるのか、これを伺いたい。
  27. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 これは先ほど来申しました通り、国民生活を危殆に陷れるような争議というものは放置できないのであります。でありますから、これは何とかしてさしとめなければなりませんが、そういう争議というものは、もうすでに労働法において調整をする以上のものであります。多くの場合は政治的なものが加味されておるのであります。その例として二・一ゼネストを例にとりましても、このゼネストは、表面は待遇改善が名目でありましたけれども、あの規模からいい、あのときの情勢からいいまして、明らかに政治的なものであつたことは、もう世間周知のところであります。遂にマッカーサー元帥のストツプ命令が出たような状況であります。でありますから、この問題はすでに治安立法としての問題であつて、労働問題としてこれを解決しようとしても、それは無理であるというところから、治安立法で考究をするということにいたしたわけでございます。それは先ほど来法務総裁のお話になつた点と同様であります。
  28. 森山欽司

    ○森山委員 しからば四月八日の労働大臣試案による総理大臣の争議さしとめ命令は、ゼネスト禁止法の代案として考慮されたのですね。
  29. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私がしばしば申しましたように、ゼネストであるからこれを禁止するということは、労働面からいつて行き過ぎではないかというのであります。そういうゼネストが国民生活を危殆に陷れるというような事態になりますれば、これは国家としてもほつておけないからさしとめなければならぬ。これがすなわち治安立法として緊急事態に対する非常処置の方法を講ずる必要があるのではないかとして、目下検討されているところであります。でありますから、ゼネストであるからただちにそれを全面的に禁止するという考えは、四月八日に漏れました事項につきまして書いてないはずでございます。
  30. 森山欽司

    ○森山委員 どうもあなたのお答えは三百代言であります。なぜかといいますと、労働関係の分野と治安関係の分野というものはダブる部分がある。その、ダブる部分を総理大臣の争議さしとめ命令として、労働法の中に挿入しておいたということは、労働法の別の角度から見れば、治安法上のゼネスト禁止であつても、実質上のゼネスト禁止であることに間違いない。あなたは冨士山を東の方から見たらこういうかつこうをしていると言うが、富士山は同じなんだ。東から見ようと西から見ようと、少しかつこうが違うだけだ。そのかつこうが違うのは、西の方から見ますれば富士山はこういうかつこうをしている。それをあなたは東の方から見ておるということかもしれませんが、私は実態の富士山自体を論じている。だから結局今のお話でもわかるように、実質上のゼネスト禁止は、労働法上の問題よりも治安上の問題であるということは、吉武労働大臣といえども御異論がないところであろうと私は思います。よろしゆうございますね。―しからば労働大臣のゼネスト禁止に対する態度に一貫性がないのではないかと思います。四月八日のときは、治安上の問題を労働法の中にぶち込んでおきながら、今度は出している。あなたは一貫しているようなつもりかもしれませんが、実際にはちつとも一貫していないのですが、この点いかがですか。
  31. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 この緊急な事態、すなわち国民生活を危殆に陷れるような状態は、国家として放置できないから、これに対する処置を講ずるということで、このことについては一貫してかわるところはございません。それを労働法の中に入れるか、治安立法の中に入れるかということは形式であります。一つの法律の中に治安的な観点の含まれたものを入れてはいけないということはございません。それは法律の形式であります。ただどちらが本質であるかといえば、治安的なものが本質であるから、できれば治安立法としてやりたいということは当然のことである。もしそれができないということであれば、労働立法の中におきましても、要は国民全体に対していかにしてこれをよくして行くかということがねらいである。法律というものは一つの形式であります。だからこれを労働問題として解決をするという面から見れば、労働法の分野に入つて来るのでありましよう。それからそれを治安立法の面から考えるということになれば、治安立法の方に入つて来る。要はそういう事態になつたときそれをどうするかということ、これは国家としてほつておけないから、ここに治安立法としてやらないということになれば、労働面に関する限りにおいて―労働面以外の面までは入れませんが、労働面に関する限りは、労働面においても一応考えなければならぬじやないかというのが私の構想でございます。しかしそれが治安立法の面で考えるということになれば、それがベターであることは当然である。もうそれは労働問題以上のものでありますから治安的に考えるべきであるということは、私は初めからかわつておりません。もし治安の方で考えられないということであるならば、労働面に関する範囲においてでも、それは考慮する必要があるのではないかというのが私の構想であります。
  32. 森山欽司

    ○森山委員 私が言いたいことは、労働大臣の労働法改正の基本的思想の中には、やはり取締りというような考え方がある。この点が重要であるということを私は言つているのです。ゼネスト禁止というものをやることがいいか悪いか、そういうことを私は今言つているのではない。労働法の改正というものに対するあなたの基本的な心構えの中に、取締りというような考え方を持つているということは、これは私は労働法改悪と労働階級が言つてもさしつかえないじやないかと思うのです、そこでひとつ今回の改正による緊急調整の目的を伺いたい。
  33. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 先ほども申しましたように、それが労働法であろうと何であろうと、社会的な現象というものは一つであります。その社会的現象に対してこれをどうするかということにおいて、これが法律に現われて来る、あるいは法律以外の対策になつて出て来る。でありますから私が考えますのは、そういう争議というものが万一国民生活を危殆に陥れるような事態になつたとき、これをどうするかということです。これが取締りでやるとかなんとかじやなくして、それに対処することは国家、国民全体のためには当然であります。それでも政府はほつておくのだ、そんなものはしようがないのだというのでは政治になりません。でありますからそれを治安立法の方でやらなければ、労働立法の方で、労働に関する範囲においてやろうといつたことに違いはありません。これは緊急調整についても同じことです。緊急調整においても、国民の全体の生活に重大な障害を及ぼすようなときに、これを放置してほつておくというのでは、これでは政治にならぬ。ですからそういうときには、合理的な機関にかけて解決をしようじやないか。それが目的です。そのことは労働者自身にも利益であります。争議をほつたらかしにされて、ストライキをやるだけが労働者の利益ではありません。ストライキ自体は、労働者にとつては損です。その間賃金はもらえないのですから、そして犠牲者を出したりすることは、決して労働者にとつては得なものではありません。でありますから、それを合理的なものにかけて解決しよう、そうすることが一般国民にとつても迷惑にならぬ。争議の巻き添えを食つて一般の大衆は足を奪われ、あるいは電気が消えてからものが見えないというようなことをほつたらかしにされては、たまつたものでない。これが緊急調整の必要なゆえんであつて、これははつきりその中に書いてある。
  34. 森山欽司

    ○森山委員 なるほど緊急調整の必要なるゆえん、吉武説は私にはわかつた。これを放置することによつて国民生活に重大な損害を與えるというようなストですね。しかしそういう争議は、以前はポツダム政令三百二十五号によつて阻止されておつた。政令諮問委員会も、このポツダム政令三百二十五号にかわるものとして、別に治安上の立場から制限または禁止する制度を新たに制定する必要があると言われておるが、そしてこれが立法化される。おそらくこれは立法化されるでありましよう。先ほどの法務総裁の説明は、明らかにこれを物語つておる。従つてそれが立法化されれば、緊急調整なんか必要ないじやないか、私はそう考えるが、労働大臣はいかがですか。
  35. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 森山さんも労働問題を御存じでありましようが、そういう国民生活に重大な損害を及ぼすものを一々治安立法で禁止されたのでは、これは労働運動の抑圧になります。でありますからそういう大きな争議であつて、ほつておいたら困る場合には、できるだけ調停でやつて行くというのが、労働問題としては必要なことなんです。だからこれはアメリカでもやつているわけです。しかしそれにもつと政治的なものが味加されて、そして労働争議というものを利用して革命の手段にしようとかなんとかいう場合には、これを解決しようとして中労委にかけたつて、解決できないのです。でありますからそういうものは、治安の面からストップしなければならぬ事態があるかもしれません。ですからその間には相当の幅のあることで、ゼネスト禁止さえやれば、こんな緊急調整はいらぬではないかといつて、緊急調整で必要だと思つているところまで全部ひつくるめて禁止することは、これは労働問題に対する処置ではないと私は考えます。
  36. 森山欽司

    ○森山委員 吉武説はわかりましたが、もし緊急調整の実体が必要であるとするならば、何も緊急調整というような大げさな言葉を使わないでも、現在の労調法第十八條第五号の活用及び第三十七條の修正で、十分対応できるのではありませんか。だから緊急調整というおどかし文句を使わなくて、そうして労働者をおびえさせなくてもいい、刺激しなくてもいい、私はそう考えるのですが、いかがすか。
  37. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 それでできればけつこうでありまするが、必ずしもそうではございません。でありますからそういうふうな緊急調整の事態だおいては、先ほど申上げましたようにしばらくの間やめて、公正な機関にかけて話を進めるということは、自立経済の必要な日本においては、特に私は必要だと存じております。
  38. 森山欽司

    ○森山委員 どうもそこまで行くと、あなたの言うことがちよつとおかしくなる。よく條文を読んでいただきたい。労調法第十八條第五号に何と書いてあるか。ここに今、緊急調整に必要な要件のような文句を一つ入れる。そうして第三十七條の冷却期間も、これに関連する修正を行えば同じことができる。この中に、緊急調整の前にあつせんを行うことが書いてあるが、かかる事態に至つてあつせんもへちまも、何もないではないかと思う。もう調停なら調停でよろしい。仲裁を行う場合は第三十條各号に該当する場合に限るのですから、こういうものはナンセンスです。事件の実情を調査するということは、今までやつたことでもできます。解決のために必要な事項をとるべきことを勧告する、これは今まで実際にやつているではありませんか。要するに労調法第十八條第五号の活用と第三十七條の修正で十分対応できることを、ことさら緊急調整というようなおどし文句を使つて今度の労働法改正に臨むところに、あなたの考え方のおかしなものがある。いかがですか。
  39. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 第十八條をあなたはよくお読みになればわかりますが、第十八條は強制調停だけであります。その間に、争議は何らの制限を受けておりません。
  40. 森山欽司

    ○森山委員 だから修正するということです。
  41. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 修正するならどういうふうに御修正なさいますか。それが同じ文字を入れて修正なさるなら、今私どもが出していることと同じことです。それは書き方が違うだけであります。
  42. 森山欽司

    ○森山委員 私が申し上げることは、緊急調整というような、ことさら大げさなものをつくらなくても、この條項さえかえれば、実質上同じような目的を達するのではないか。こういうぎようぎようしい、鐘やたいこで緊急調整なんということを新聞紙上に書き立てられて、そうして労働階級を刺激するようなことはやめたらどうか。私は今そのことを言つているのです。もし必要であるとするならばという前提でです。緊急調整がもし必要であるとするならば、現在の労調法第十八條第五号の活用、第三十七條の修正によつて十分対応できるのではないか。仮定の上に基いて、今私は議論しているのです。同じことができるのではないかと言つておる。但しその仮定がいいか悪いかは、これから私が申し上げる。
  43. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 仮定の御議論を抜きにしての御議論がはなはだわからないのでありますが、かりに書き方をかえろとおつしやるのなら、それも一つでありましよう。しかし書き方をかえたらそれで済むというものではないと私は思う。書き方は條文を第一條に置こうと、三十何條に置こうと、そんな書き方のことを議論をするのでしたら、あなたによい案があつたらお示しになつてもけつこう、私は問題は内容だと思う。
  44. 森山欽司

    ○森山委員 いずれ修正案としてお示しいたしますから、ひとつ率直にお直し願いたいと思いますが、しかしこの際ゼネスト禁止法案が伝えられておりながらその内容もわからず、また本国会に提出されるかいなかもわからないでいて、この緊急調整の事項は良心的に考えれば審議できないと思う。同じ労働問題の中で、治安の面からはゼネスト禁止という形をとつて、片一方は労働法上の緊急調整という形をとつて、しかもこれは相当部分ダブる。ところがダブる相手方がどう出るかわからないでいて、一体労働法の改正を審議することができますか。労働大臣が真に国会を尊重されるならば、ゼネスト禁止法もあわせて出して、政府の意図をはつきりさせなければならぬ。労働法は労働法で出して、治安立法は治安立法で出して、ばらばらです。一体今の内閣は自由主義ですから、ばらばらがすきです。最近の殺人事件でもばらくがはやる。そういうことでは困る。少くとも今回の労働法の改正を真剣に審議しようと思うならば、ゼネスト禁止に関するところの具体的な構想というものをこの際明らかにしなければ、一歩も審議を進めることができないのではないか。われわれが政治的良心を持つておるならばそうであります。もつともあなたのように頭のよい方は、先がすつと見えておるから、自分だけはわかるでしようが、遺憾ながらわれわれ国会議員はあなたほど頭がよくない。とにかく鬼が出るか、じやが出るかわからないものを片一方に持つていながら、これだけやると言つたつてできない。労働大臣はどうですか。
  45. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は森山さんの御説を聞いておると、争議というものは、大きくなつたらゼネスト禁止法でとめてしまえば、もう簡単ではないかという前提のもとにお話になつているのではないかと思う。それならばお話のようにそれが出ぬと、これとの関連性が出て来ないのでありますが、しかし私は先ほど言つたように、ストライキが大きくなつたら、ゼネスト禁止法でやればよいのではないかという構想は持つていない。それをほつておけば国民生活を危殆に陷れる。そういうのは普通の争議ではない。政治的な意図が必ず入つております。そういうものは治安立法で別に考えるべきであつて、労働委員あたりへかけてもなかなか片づかない問題ではないか。労働立法の面においてはこういう緊急調整で、大体行けるものだという構想のもとに一貫して出しております。でありますから、あなたの言れるゼネスト禁止法で何もかもやつてしまおうという前提に立たれると、なるほどゼネスト禁止法が出ないと、これとの関連がわからないとおつしやるかもしれませんが、私はそういう構想を持つておりません。
  46. 森山欽司

    ○森山委員 どうも労働大臣は、私から見ると非常に不愉快な言い方をされる。私はゼネスト禁止の立法をやつて、片つぱしから取締れということを今まで言いましたか。そんなことは言つておりません。大体公益事業の職権調停をこの法律ができてからまだ三回しかやられておりません。電産で二回、あと何かで一回、三回しかやつておりません。ほかは他の一般の労働法のやり方でやつております。それから政令第三百二十五号によるところの措置、これもほとんどやつておりません。もつともこれを陰にして司令部の内面指導はあつたでしよう。だから私は何もそういつたゼネスト禁止法を大上段に振りかざして、ストライキは片つばしからとめてしまえということを言つておるのではない。私は第十八條第五号でさえも過去三回の実例しかない、こういうことを問題にしているのです。しかるに吉武さんのお話は、はなはだ議員の立場を愚弄しておる。一体緊急調整はどういう場合にやるのか。あなたは特に頻繁にやるつもりか、ゼネスト禁止はたまにしかやらないつもりだと言つているから、これは頻繁にやるつもりかもしれない。それではまことに恐るべきことになるのだ。あなたの意向をはつきりと聞きたい。
  47. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 緊急調整は、先ほど申しましたように文字にはつきりいたしております。こういう問題はそう再三行われるべきものでもないし、行わずに済むことを私は真に期待しておるわけであります。
  48. 森山欽司

    ○森山委員 それならばまたこの緊急調整に関連して伺いたいのありますが、緊急調整を発動するときに、吉武労働大臣のごきげんがそのときに悪ければ、いつでもこれは発動できるという危険がある。あなたも人間だからときどきはむつとするときもあるでしよう。またいやに朗らかになるときもあると思う。きようはお天気が悪いということで緊急調整をぽかつとやられては困る。私もあなたを信用しておるけれども、どうも人間である以上、しかもこういう重大な、たまにしかやらないような問題であるとすれば、これは公益委員の答申案を考慮したような慎重な手続というものを一体考える必要がないか。これと同時に今国会に提案されておる改正警察法の第六十一條の二、第六十二條、いずれも緊急事態でありまして、国家公安委員会の意見や勧告によることになつている。これに比べるといささかこれはおかしくないか。治安上の問題は総理大臣が指示をするというようなことがあるといたしましても、国家公安委員会の意見を聞くようになつている。ところが労働問題に関する限り総理大臣ではない。一労働大臣がやりたいと思えばいつでもやれるというふうなやり方になつておる。緊急な、非常に重要な事態だ、しかしほとんどこれを発動することがないように望むというような事態であればあるだけ、いま少しこの発動については慎重な手続があつていいのじやないかと思うが、いかがですか。もとよりあなたはこう御答弁になると思う。こういう問題は労働大臣の責任においてやるべきだ。わかつております。労働大臣の責任であることには私は必ずしも反対しない。もつとも労働大臣よりは内閣総理大臣というふうに格をつけた方がいいと思つておりますが、しかし手続が慎重でなければならないとするならば、そこに中央労働委員会なら中央労働委員会の意見を聞くというような、何かそういうことをはつきりうたつておくということが、この緊急調整を認めるにしても私は必要ではないかと思う。いかがでしよう。
  49. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ごもつともではありますが、これを労働委員会の意見できめるということになりますと、労働委員会は御承知のように行政機構ではありますけれども、政府から独立した機構であります。でありますから、時の政府の制肘を受けずに済むわけであります。でありますから、国会に責任を負わないところの機関に、こういう重大な政治責任を負うべき問題についての意思決定をさせるということは、私はよくないと思う。従つてこれは政府の責任でやる、放置すれば国民生活に重大な障害を及ぼぼすと見たときには、これは政府の責任でやる。もし誤れば国会において責任追究が行われるわけであります。これは労働大臣でなくても、政府でもよろしゆうございますが、労働大臣は特に労働問題において責任を持ちます。でありますから、労働大臣はそう軽々にこれを発動してはならぬということもよくわかる。これは自分のことを申すといかがかと思いますが、私でなくても、どの労働大臣でありましても、労働問題に対してはこれは何とかしてしずめたいという責任を持つておりますから、労働大臣がきめることが一番いい方法だ、私はかように存じております。
  50. 森山欽司

    ○森山委員 あなたは私の質問していることにちやんと答えていただきたい。労働大臣がきめることはいいだろうと私は初めから言つている。あなたは責任をとらなければならぬからということを言つておられる。もつともあなたが責任をとるかどうかはわからない。どうも今までのやり方を見ても、宮城前広場の問題なんかでも、第一審でやめなければならぬ。あれだけでも厚生大臣はやめなければならぬ。労働大臣の首だけ残つておる。その労働大臣の首も、メーデ治の暴動事件を起した、あのメーデー事件に対しても、労政当局の最高責任者として当然やめなければならぬのだが、一向おやめにならぬ。そういう責任のないあなたが、責任を持つためにとにかく緊急調整についてはおれがやらなければならぬと言う。そう言うだろうと思つたから前置きを私はつけておいた。私の重点はそういうことで言つているのではない。慎重な手続をやるために、少くとも中央労働委員会の意見を聞くくらいなことをやつたらどうか、こういうことを聞いておるのです。それを答えられないでもつて、私がこう言うだろうという方だけを先に答えておる。まことにけしからぬと思います。もつと慎重な態度でおやりになつたらどうかと言つておるのであつて、私の意見もひとつ聞いていただきたい。
  51. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 あなたの意見は十分聞きましたが、先ほども申しましたように、つまり労働委員会というものは、政府から独立したところの機関でありますから、国会に責任を負う機関ではありません。ゆえに大臣がこの問題を決定するのがよい、こういうことであります。労働大臣がやるにしても、労働委員会の意見によつてきめるということになりますれば、労働委員会の意見について国会で責任追究というわけには行かないのであります。でありますから労働大臣に責任を負わせるということが私は一番よいと思います。
  52. 森山欽司

    ○森山委員 私の言うことをもう少し率直に受けていただきたいと思うのです。なぜならば警察法の六十二條に国家非常事態とあるが、これはあなたの考え方からすれば国家公安委員会の意見や勧告を聞く必要はない、総理大臣が責任をもつてやればよいじやないですか。その際でも警察力を発動するときには国家公安委員会の意見を聞き、勧告を聞くというふうに建前上今なつておるのじやないですか。今度の改正案でもそういう改正案が出ておる、労働法だけはおれがおれば大丈夫だということになつておる、こういうことはまことにけしからぬと思う。そう思いませんか今警察の場合は多少事情が違うにしても、国家公安委員会の意見や勧告を聞いて慎重を期しておると言つても、内閣総理大臣の発動の場合は法律上は責任は解消されません。しかし今回の緊急調整についての労働大臣の責任は解消されないでありますが、その際中央労働委員会の意見を聞く程度の慎重さがあつてよいじやないかと思います。中労委がどういう意見を出すかもしれない。発動しない方がよいと言うかもしれない。あるいは発動した方がよいと言うかもしれない。そういうことを選択するのは労働大臣です。しかし一応そういう意見を聞いてやるということが必要じやないですか。警察の場合でさえ緊急の事態に対して、国家公安委員会の意見を聞くということになつております。聞くひまは十分にあるのです。それならば労働法上においてはなおさらのことじやないですか。私はそういうふうに考えるのです。自分は多数党の上にあぐらをかいて、野党の代議士がどう言おうとおれの原案が正しいのだということでは、健全な議会政治というものはできない。野党の意見が正しいと思つたならば、それを率直に受入れればよいではないかと思うのです。
  53. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 それは多少誤解があるのじやないかと思います。国家公安委員会は、公安委員会自体が人事権を持ち、また警察の運営についての機関であります。でありますから今度の改正においても、そのものの意見を徴するということは、公安委員会制度を残す以上は当然だと思います。ところが中労委というものは調停機関であります。国民生活を危殆に陷れる場合にほつておいてよいか悪いかというようなことは、政治的な認定の問題であります。政府の責任の問題であります。それをあなた方の方で調停してやつてくださいと言つて、それを調停するのが労働委員会の任務で昂りましてそれをほつておいたら国民生活に重大な影響を及ぼすか及ぼさないかという、その政治の運営についての職務を労働委員会は持つておるのじやありません。でありますから形は似ておるかもしれませんが、その機能は違うのであります。従つて国家非常事態の発動におきましても、これは総理大臣の発動と思いますが、この問題は総理大臣独自で発動されるものであります。そのかわりに国会で責任を負うように、国会の承認をあとで求めるようになつております。その点ひとつ誤解のないように願いたいのであります。
  54. 森山欽司

    ○森山委員 この問題はいろいろ疑義がありますが、大分ほかの問題もありますから、一応これでこの問題は打切つておきますが、あくまでも私はこれは慎重な手続が必要であるということを申し上げておるのであります。初めから警察の問題とは多少事情が違うがという前提を置いている。慎重な手続ということに班点を驚いて申し上げておるのであつて、同じものであるということは初めから申し上げておりません。そのことを御了承願いたいと思います。  そこで争議行為制限の五十日間の算定の根拠を伺いたい。五十日におきめになつたのはどういうわけであるか、具体的な実例を示して御説明願いたいと思います。
  55. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 これはこの前も申し上げたように、私どもは労働法制の改正についてはできるだけ民主的にと思いまして、労務法制審議会をつくつて、それには労働組合の代表、使用者の代表、それから公益の代表の三者構成で諮問をしたわけであります。諮問の際にも政府は原案を示して諮問していなかつたのであります。労働法制において改善すべきものありとすれば、どういうふうにしたらいいでしようかということで、この労務法制審議会で百数十回にわたつて論議された問題であります。そしてついに公益委員の方から中立側の意見としてこの五十日の案が出たのであります。従つて私どももこれを見まして、もつともだと思つてそのまま採用したのであります。御承知のように争議が悪化して対立してなかなか解決しない、ほつておいたならば国民生活に重大な影響があるから、労働委員会に持込んで解決しよう、これはあまり日にちを縮めますと、解法するものが解決しない。それから急いでやるために納得が行かないという場合が多いのであります。でありますからこれを制限することが、労働者のためになるとだけは言えないのであります。争議というものを何か別の目的でやつて、賃金は名目に掲げたけれども、何とか世間を騒がすのだということであれば、短かければ短い方がいいのでありますが、健全な組合はそんなことを考えていない。それを何らか有利な方法で、解決する労働争議でありましたならば解決するわけであります。大体今まで私どもの方でも取、上げましたいろいろ大きなな争議は、終戦後ずいぶんだくさんございますが、調停にかけました期間を見ましても、過去六、七年間にやりました調停の日数は、大体五十日くらいです。平均五〇・四%であります。アメリカでは八十日で、六十日間を事実調査その他をやつて、あと十五日間にそれではたしてのむかのまぬかという手続をして、さらに五日間の報告期間を置いて八十日後にそれでもどうしても解決しなかつたらしかたがないというやり方をとつておるのでありまして、私はこれをあまり短かくすることが必ずしもいいことだとは思つておりません。長いのもあまりよくありませんけれども、五十日と労務法制審議会でおきめになつたのは、相当御研究になつた結果であると私どもは見ております。
  56. 森山欽司

    ○森山委員 もし緊急調整を認めるとすれば、冷却期間は従来の実績にかんがみて不必要になるのではないか。どうか冷却期間というものは、ほんとうに争議の解決ということを考えるよりは、スト権を獲得するという方に従来重点が置かれておつた。緊急調整ということがあとに控えておるならば、もう冷却期間の三十日というのは、今度十五日に改正になつておるようですが、そういう冷却期間というものはいらないのではないか。冷却期間と緊急調整の間の具体的な関係をどういうふうにお考えになつておりますか、伺い場たいと思います。
  57. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 御承知のように冷却期間は、従来のやり方ではお話のように手続だけ申請をして、そして三十日たつてスト権を獲得してストの計画をするというきらいがございます。これは無意味であります。しかしながら公益事業等につきましてはできるならば、すぐ争議をするということは大衆にも迷惑を及ぼすことでありますから、冷却期間は私は必要だと思います。冷却期間を置かないでもつて、ただちに今度は緊急調整で五十日の制限でやつて行くというのは、これは私はとるべき方法ではない。できるなら公益事業の方はそういうことでなしに、冷却期間でもつて治めるだけ治めて行く。それでも争議が勃発して、ほつておいたらたいへんなことになるというとにきは、やむを得ず緊急調整をかける。緊急調整が一つあれば、みなそれでやつて行くということになると、これはあなたのおつしやるように不当に労働争議に制限を加えることになりますから、普通の全盛事業についてはできるだけ冷却期間でもつて治める方法を講ずる。それでもいかぬときに初めて緊急調整で行くという行き方が、私、は至当であると考えます。
  58. 森山欽司

    ○森山委員 私は冷却期間は不必要ではないかという疑念を持つております。しかしそれはただほつておけばよいというのではない。これは例の昨年の労政局試案のように、公盛事業に関する争議は七日前に公告することが合理的ではないかと思つておりますが、いかがですか。
  59. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 予告だけで一般の大衆が知つておればよいというだけのものではないと思います。公益事業は予告で一般の大衆が知ることと同時に、できればその冷却期間内に解決をする努力を拂うことが必要である、かように存じます。
  60. 森山欽司

    ○森山委員 労働大臣は、今度の冷却期間は十五日にしたが、却下の制度があるから、十分生て来るというお考えのもとにそういう御答弁をされておると思うのです。しかし改正案の第十八條第二項に自主的解決が不十分なときは申請を却下できるということになつておりますが、従来の労使の実情にかんがみまして一応思いつきとしてはいいのでありますが、これは実際上争議権の制限になるおそれはないか、伺いたい。
  61. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 これも労務法制審議会の中立の意見を尊重したのでありまして、労働委員会に関係のある方々が労務法制審議会にも入つておられまして、過去においていろいろ調停をやられた経験から生み出された案だと思います。私はごもつともな案だと思つて賛成したのであります。今までのはただ切符を買うために、自主的解決をいい加減にやつてすぐ申請するというきらいがありました。これでは意味がないから却下の方法をとつて、もつと自主的に相談をさせる。そのために却下ということは私は至当だと思います。しかしそれでもつてむやみに何回も却下して受付けないということになれば、労働委員会自体が信用を失います。労働委員会というもは、あなたがおつしやるようにそうかつてなことはできないのであります。三者構成でありますと同時に、やはり信頼を得なければ、間に入つても調停は成り立たぬのであります。そこはあの機関は非常に合理的にできておる。従つてもし政府が一方的に却下するということであれば、あなたは御信用にならぬかもしれませんけれども、労働委員会が却下するのではありますから、その点はそう御心配にならぬでも無理なことはしない、かように考えます。
  62. 森山欽司

    ○森山委員 従来の冷却期間の実績にかんがみまして、自主的解決の努力が著しく不十分だということの認定について、かえりて紛糾を結くことがないか。また申請が受理されても却下されても、いずれの場合にも立法意図に反して労働争が長期化するおそれはないかということを私は心配いたします。たとえば却下された場合には、もちろんそれについていろいろ組合側から異論が出て、かえつてごたごたするだろう。また受理されたにいたしましても、冷却期間のうち受理されるまで一週間くらいかかつてしまう。実際上の冷却期間は五日くらいしかないというような骨抜きになるおそれもある。だからかえつて改正案第十八條第二項の規定は、あなたの立法の意図に反して、労働争議を長期化させるのではないか。これは従来の冷却期間の実際の慣行を見ると、そういうことを私どもは痛感するのであります。そういう御心配をお持ちになりませんか。
  63. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 これはいろいろ御心配をいただくようでありますけれども、実は先ほど申したように中労委その他で、過去五年間か六年間実際にやられた方が、その経験に基いて立案された事項であります。私どもも伺つて知つておるのでありますが、実はあの三十日間というものは、巧妙に申請だけ出してしまつて、そうしてほつたらかして置いて、一月たつて初めて計画をするという慣行になつて来ておる。でありますからそういう弊害をためて、実質的に自主的解決をはからせようという意図のもとに立案されたのでありまして、心配される向きもごもつともだと思いますが、今までの経験にかんがみて立案をされた。しかもその運営は労働委員会がなさるのでありますから、あなたが御心配になるようには私はならないと確信いたしております。
  64. 森山欽司

    ○森山委員 労働省自体が昨年労政局試案を出しておる。これは明らかに従来の冷却期間について欠点があつたということを物語つておる。あの労政局の試案に対して、公益委員は労働委員会の認定による却下という制度をとつております。どちらがいいかということに私はなると思いますが、労働大臣の御見解を承りたい。
  65. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は労務法制審議会に答申されたこの案の方がいいと考えております。
  66. 森山欽司

    ○森山委員 あなたは原案提出者の方だから、原案が悪くても必ずいいと言われるだろうと思いますから、これ以上聞きません。いずれ修正案を出すから御検討願いたい。  次に国家公務員から団体交渉権を奪つている理由を伺いたいと思います。
  67. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 今回現業公務員について団体交渉権を認めましたのは、独立後のわが国の労働行政にふさわしい態勢をつくりますためにこれを認めたわけでございますが、一般の現業公務員以外の公務員につきましては、公務員たるにおいては現業公務員と公然同じでございますけれども、おのずから性質が違つておりまして、団体交渉を認めることは適当でないという見解でいたしたわけでございます。
  68. 森山欽司

    ○森山委員 なぜ団体交渉権を奪つておるのですか、その理由を伺いたい。
  69. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 御承知の通り先般国家公務員法が制定されますときに、公務員全体の奉仕者として、一般職員の使用者の立場に立ちまする政府にいたしましても、あるいはそれに使用されまする職員の側につきましても、同様に国民が使用者という立場に立つておるわけであります。従つてこの身分関係あるいは給與問題を決定いたしますためには、すなわち国民を代表されておりますところの国会において、法律をもつてこれをおきめになるのが筋であるという観点から、国家公務員の団体交渉を国家公務員法制定のときに見合せましたと同時に、やはり国家公務員につきましても民間の給與との関係その他適切なる待遇をいたす必要がございますので、一面人事院と申す機関を設けまして、不断に給與調査等を行いまして、政府に勧告する道を開きました。ただ、そういう性質でございますけれども、現業公務員につきましては、今回労働法の改正がございますときに、公共企業体の職員と非常に似ておる点がございますので、官庁の企業におきましても、経済的、企業的性質を持つて運営いたしておりますので、公共企業体の職員と同様に、団体交流を認めるという例外を開きますことが、実情に即するということからこういうふうになりました。
  70. 森山欽司

    ○森山委員 私があなたに伺つているのは「現業よりも何よりも、国家公務員全体として団体行動権を奪つている理由は何か。その理由としてあなたは、使用者が国民だからというようなことをおつしやつた。それはちよつと私は公務員から団体行動権を奪つたことについての御説明としては不十分じやないかと思います。もう少し言い方がおありになるのじやないか。全体の奉仕者だから、ストをやれば国民に迷惑を與えるからというようなところに重点を置いて御説明になるべきじやないかと思いますが、ここは大学じやないからそういうことはやりません。そこでともかく団体行動を奪つているけれども、一方において憲法によつて生活の保障を考えなければならない。そういう趣旨から人事院の勧告によつて生活の保障をするということになつた。今まで人事院は何回この勧告をしたか、どういう勧告をしたか、政府はどういう態度をとつたか、これをひとつ簡単でけつこうですからあなたから説明願いたい。
  71. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 国家公務員法が制定されました後、その方針に従つて従平四回勧告をいたしておるのであります。第一回は二十三年十一月でございまして、勧告が六千三百余円、この規合は大体勧告通り実現いたしております。第二回は二十四年の十二月でございまして、七千八百余円の勧告をいたしまして、この場合にはこれが見送られております。なお第三回が二十五年の八月でございまして、八千円余りの勧告をいたし、大体同額が実現されております。第四回が二十六年の八月でございまして、この場合は一万一千二百六十三円の勧告をいたし、一万六十二円が実現いたしております。
  72. 森山欽司

    ○森山委員 今人事院の説明を伺うと、四回勧告をやつて政府は一回も聞いていないのですね。公務員から団体行動権を奪つたら、少くもそれに対する生活保障をしなければならない。これは政府に憲法上の責任があると思うのです。政府は憲法違反をやつているのじやないかという疑いが濃厚であります。これについて人事院の御見解はどうですか。但し勧告がどうのこうのという勧告の法的な性格を聞いているのじやないので、日本国の憲法の解釈上人事院はどう考えているかということです。
  73. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 ただいま申します通り四回の勧告を通じまして、大体において勧告の線で予特措置が講じられているわけでございまして、その点におきまして、不完全ではございますけれども、公務員の生活は漸次改善を見つつあると思います。
  74. 森山欽司

    ○森山委員 あなたは何というお名前ですか。
  75. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 入江と申します。
  76. 森山欽司

    ○森山委員 あなたの最初の話では、四回勧岩をやつて政府は一回も聞いていないということを言つている。もちろんある程度はのみましたよ。しかしあなた方の言う通り政府はのんでないのでしよう。大体の線においてのんだからさしつかえないとおつしやるのですか。
  77. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 先ほど申し上げましたのは、第一回の勧告並びに第三回の勧告は勧告通り実現されているわけでございます。そういうふうにお答え申し上げたはずでございます。
  78. 森山欽司

    ○森山委員 あと二回はどうしました。
  79. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 第四回は先ほど申し上げました通り一万一千二百六十三円の勧告をいたしまして、一万六十二円実現いたしております。第二回が七千八百円の勧告をいたしましまして、見送られております。
  80. 森山欽司

    ○森山委員 そうすると第二回目は全然問題にされなかつた。それから第四回目は千円くらいの差があるわけですね。そういうことは一体憲法の精神からいつてどうお考えですか。
  81. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 人事院といたしましては、精密なる科学的調査によつて勧告をいたしておるわけでございますが、政府の財政上の都合によりまして、時にこれが勧告通り実現いたし得ないといたしましても、それによつて憲法違反であるとは考えません。
  82. 森山欽司

    ○森山委員 あなたに今憲法の精神に合つているか合つておらないかというお話を聞いたのですが、人事院の勧告なんというものははな紙みたいなもので、一応聞きおく程度の人事院でありますから、おそらく私は近くこれはなくなるのじやないかと思います。ひとつせいぜい政府に最後の勤めをやつていただきたい。  この際労働大臣に伺いたいのですが、一般公務員はなるほど労働省の所管ではないでしよう。これは人事院がやつている。しかし広く労働行政という観点から見ると、政府自体に立法の趣旨に反するような行動が行われておりますが、御見解はいかがでしよう。
  83. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ただいま入江政府委員からもお話がありましたように、政府といたしましても人事院の勧告はでき得る限り尊重して来たはずでございます。
  84. 森山欽司

    ○森山委員 論争しても始まらないけれども、そういうところに政府に対する不信がわいて来るのじやないかと考えるのであります。そこで今回の改正において、現業公務員の大部分に団交権を與えた点はけつこうでありますが、土木、建築、清掃等の現業従事員が漏れた理由を伺いたい。
  85. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 これは国鉄、専売同様、国家企業に限りましてその性質がほぼ同様でございますから同様の取扱いをしよう、かように考えたのであります。
  86. 森山欽司

    ○森山委員 土木、建築、清掃等の現業従事の公務員も、一般の公務員とは大分性質が違うと思います。そういうものを労働法上依然として国家公務員法の束縛の中に置くことがはたしていいかどうか、伺いたいと思います。
  87. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 なるほど仕事はいろいろ違つてはおるでありましようが、やはり公務員たる性質という点におきましては同様でございますので、先ほど入江政府委員からお話のありましたように、公務員というものは国家全体に対する奉仕を目的とするものでありますから、これは団体交渉その他によつて給與をきめるということではなしに、国会が予算できめて行く、かように存じております。
  88. 森山欽司

    ○森山委員 公益委員側の答申案によると、現業公務員及び公共企業体の職員に対して争議権まで認めるべきであるとして国家公務員法その他の関係法規の根本的再検討を要望しております。また一般公務員についてもその関連について適当に再検討を要望しておりますが、こういう公益委員側の要望とあなたの今の御返事は大分違います。これは一顧だに拂つておらない。再検討する頭はない、こういうことですか。
  89. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 公益委員側の御意見は拝聴いたしましたが、私どもは先ほど申しましたような見解をとつております。
  90. 森山欽司

    ○森山委員 あなたの御意見はわかりました。そこで地方公務員法附則の第二十項は今回の改正で処理されましたが、二十一項の単純労務者を漏らした理由を伺いたい。
  91. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 この問題は別途に研究いたしたいと考えております。
  92. 森山欽司

    ○森山委員 別途に研究したいといつても、講和発効後政令第二百一号はどうなるのか伺いたい。
  93. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 政令二百一号はなお六箇月間延長をいたします。六箇月間延長しなくても、法律はなお従前の例によることでありますから、この点についてはなお引続き施行されることになります。
  94. 森山欽司

    ○森山委員 政令二百一号が六箇月間効力が残つているというけれども、これが失効した場合に、第二十項の「従前の例による。」というのは、今あなたが御返事になつたようなことですか、もう一度はつきり伺いたい。
  95. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 「従前の例による。」とは、今まで通りであるという意味でございます。
  96. 森山欽司

    ○森山委員 今まで通りとは具体的にどういうことですか。
  97. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 今まで通りとは、今まで二百一号が適用されておれば、その二百一号の内容に該当する事項が従来通り行われるという意味でございます。
  98. 森山欽司

    ○森山委員 そうすると単純労務者に関する限り、占領下と同じだということですか。
  99. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 政令二百一号の内容が同じに引続き適用されるのであります。
  100. 森山欽司

    ○森山委員 あなたはそういう答弁をしていてはずかしくありませんか。
  101. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 はずかしくございません。
  102. 森山欽司

    ○森山委員 今回の改正で、国の経営する企業並びに地方公共団体の経営する企業の職員が、団体交渉権を認められることになつたのは一進歩であります。政治行動の禁止規定が適用除外されていないのは、国鉄、専売の職員に比べて、著しい片手落ちじやないかと思うのでありますが、ひとつ人事院の方から御返事願いたい。
  103. 入江誠一郎

    ○入江政府委員 先ほど申し上げました理由によつて、片手落ちでないと思うのであります。
  104. 森山欽司

    ○森山委員 片手落ちでないという意見はわかりました。そこで私はさつき労働大臣がおつしやつたことについて、ひとつ伺いたい。きようは保利官房長官に出ていただくとけつこうなんでありますが、昭和二十五年十二月八日の参議院の地方行政・人事・文部・労働・連合委員会会議録、これは第九国会でありますが、そこで国務大臣保利茂君、当時の労働大臣で今の内閣官房長官は、何と言つておるか。「国家公務員の中に国家公務員法の適用を受けておられる單純労務者といつたいわば現業の方々、それらとこの地方公務員の適用を受けられる単純労務者と言つていいような方々に対しては、私は中央地方を通じての同様の均整のとれた労働関係法を持つことが非常に望ましいと、こういうふうに考えております。」そこでこれを質問した成瀬議員が「そうすると労働大臣個人の見解かもしれませんが、とにかく国家公務員法にも不備な点があつた、地方公務員法にも今言つたような矛盾点がある。この点を除外することについては、政府の一員として早急に努力されるということを、こういうことをお約束したと、こういうように受取つてよいのですね。」と念を押しております。そうすると時の保利労働大臣は「どうぞそういうふうにおとりくださつてけつこうだと思います。自分はそのつもりでおります。」と言つております。これは昭和二十五年十二月八日の参議院の速記録によるものであります。労働大臣にあらためてお伺いしますが、きようは昭和何年何月何日か、ここで御返事願いたい。
  105. 島田末信

    ○島田委員長 今の御質問にはちよつと答弁はなかろうと思います。
  106. 森山欽司

    ○森山委員 労働大臣にお伺いいたします。昭和二十五年の十二月八日に時の保利労働大臣はできるだけ早く片づけるということを言つておる。今日は昭和二十七年五月の……。(笑声)ともかく二十五年、二十六年、二十七年、足かけ三年間、自由党の内閣下の労働大臣は何をしておつたか。はつきりこういう約束をしておきながら、さつきのような御答弁をなさつた。これで一体いいのですか。大臣がかわつたからといつて、前の大臣の言つたことは知らぬとおつしやるのか、御意見を伺いたい。
  107. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は前の大臣がどういうふうに言われましたか聞いておりませんからわかりませんが、先ほどお読みになつた中にも、保利さんに対する成瀬氏の意見の中に、あなた個人の意見かもしれないが、どうぞ御努力を願うということに解釈してもよろしゆうございますか。さようにお考えになつてけつこうです。こういうことで、保利さんが努力されることは私はけつこうだろうと思いますが、政府としては今のところさように考えておりません。
  108. 森山欽司

    ○森山委員 時の労働大臣が参議院で努力するということを約束しておる。それが大政がかわつたからといつて、政府は拘束されないというのはどういうわけですか。国会の委員会でちやんと約束したのですから、今一生懸命やつておるのだとか、これからできるだけ早い時期に何とかしましようと言うならまだいい。あなたの御返事を伺つておると、占領下と同じようなことが、単純労働者にそのまま引続いて行われるということしか言つておられない。ちつとも誠意がないじやないですか。それでいいのですか。
  109. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 地方公労法につきましては、先ほど申しましたように、二十一号に該当する事項は、目下検討中であるということを申し上げます。
  110. 島田末信

    ○島田委員長 午前はこの程度にとどめ、午後一時半まで休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十五分開議
  111. 島田末信

    ○島田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。森山飲司君。
  112. 森山欽司

    ○森山委員 公益委の答申によると、仲裁裁定は、政府または地方公共団体の理事者を拘束する旨を明らかにしておる。これはまことにけつこうだと思うのでありますが、今度の改正によると、公労法の十六條は全然改正されていない。今回の地方公営企業労働関係法の第十條または十六條にも、これと同趣旨の現定があるのであります。これは一体どういうわけですか、伺いたい。
  113. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 この十六條の件は、昨日も申しましたように労働法上仲裁というものの制度は、仲裁ができると拘束するのが建前であります。でありまするから、三十五條でございましたか、仲裁の裁定が出れば、両当事者を拘束するという建前が一応うたつてございます。しかし事の性質上、国家の予算でまかなわれるものは、最終決定は国会できめなければなりませんから、従つて但書によつてその原則が條件につけられておる。すなわちどういうふうにつけておるかというと、但し一十六條に掲げる場合は、それに従うんだぞ、こういうふうになつておるわけであります。でありまするから、ただ法律の形式論的にお考えになると、そこに誤解が生ずるのですが、仲裁の裁定の建前は一応拘束をする。しかし事いやしくも国家予算に関係のあるものは、十六條に従わなければならない。そこで第十六條はどういうふうに書いてあるかというと、予算上、資金上不可能である場合には、政府を拘束をしない。だから予算上、資金上可能である場合において初めて原則が適用される、こういうことであります。それでは拘束しなければ、しないつぱなしでいいかということになると、これはやはり公労法の精神というものが失われまするから、二項において十日以内にこれを国会に、どういたしますかという承認を求めなければならぬ。そこで国会が承認して、これはのむべきだということになれば、そこにおいて初めて国家が今度それに従つて予算措置を講ずる、こういう建前になつておるのであります。でありまするから、その全体をひつくるめてお考えになりませんと、ただ仲裁だからこうだというふうにお考えになると、無理が行くと思います。そのことは地方の公労法においても同様であります。地方議会において予算措置が講ぜられるものにつきましては、やはり最終決定は県会がきめる。県会がきめて初めて当事者を拘束して行くというふうになるのであります。その点御了承いただきたいのであります。
  114. 森山欽司

    ○森山委員 公労法の十六條の問題が国会に付議される。その国会の労働委員会におきましては、その回数並びに日数は大部分十六條二項の問題に集中されている。国鉄裁定の際もそうであるし、昨年の専売裁定の場合もそうであります。その際常に粉議の種になるのが十六條二項の解釈であります。これは大臣もよく御承知の通りであります。従来の各労働学博士の本とそれから政府の公権的解釈とは異なつて参つております。これが紛争の種となつて毎年々々こういうトラブルが繰返されております。そこで大臣にお伺いしたいのですが、こうやつて毎日々々問題を起しておる根源はどこにあるかということは、要するに仲裁裁定の拘束力を、少くとも政府を拘束するというような建前をとつた御解釈をなさらないというところにまず根源の第一がある。それを一体国としてのむかのまないかは、これは国会が審議すればいい。少くもそれだけのことはやらないと、十六條の二項というものは事実上死文になる可能性があるのであります。大臣はいかがに思いますか。
  115. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 それは専売にいたしましても、国鉄にいたしましても、この問題が国会にかかつたときに論議されます。その論議になる実質は一体どこにあるかといえば、国会がまるまるのんでもらいたい、あるいた国会がこれをまるくのまないというところに、実質的な論点があるのであります。その論点が形式上は十六條の解釈その他によつて論議されますけれども、問題の実質というものは、それをのむかのまぬかということにある。でありますから、私が先ほど申しましたように、国会が最終決定をすべきものであるならば、これを国会がのむかのまぬかということをきめる。そうして国会がのむということになれば、それによつて初めて政府が予算措置を講ずる。それを法律上、形式上政府を拘束するというが、しかしそれは最終は用会が決定するというのでは意味がないのであります。もしそうだつたら、めから仲裁裁定は国会も拘束すると書くことが一番はつきりする。仲裁の裁定が出た以上は、政府ばかりでない、国会も拘束するのだということは、仲裁の建前からいえば形式的にはその通りであります。しかしそれはいけない。予算というものは国会が最終決定をすべきものでありますから、やはりのむかのまぬかをまず国会がきめる。それまでは政府も拘束をしない、こうあるべきであります。でありますから、なるほど十六條についての解釈の論議はございます。これは私もよく存じております。ですから私の私見をもつてしますならば、もしはつきり書けとおつしやるなら、そういうふうに書かざるを得ない。しかしそれは、前田さんもおいでにないますが、なかなか御承知になるはずもないのでありますから、こういう問題はあまりに字句をいじつているくないきさつをするよりも、すでに数年間慣行もできて、解釈も行われ、しかも国会も実質的にのむべきものはのみ、のむべからざるものはのまない。そうして国会が仲裁裁定の意をできるだけ尊重して来ておる今日におきましては、字句をいじることは得策でない、かように存ずる次第であります。
  116. 森山欽司

    ○森山委員 十六條においての仲裁裁定は、やはり政府を拘束するというような考え方を少くも筋道として持つべきではないか。先ほど公務員の場合が出ましたが、公務員は団体行動権を完全に否定されておる。しかし生活の保障をしなければならないというので、人事院の勧告というものが相当詳細に調査をされて出される。これをやはり政府はのむべきであります。これが今の日本国憲法の建前なんです。公共企業体の場合においてスト権を奪つております。これは一方において仲裁裁定というものが相当慎重に検討の上出されます。出されたものを政府がのむとかのまないとかいうのでは、これは話にならないのです。そういうことを今の憲法の建前として理解すること、そういう労働感覚が私ははなはだおかしいと思う。これは吉武さんに似合わしからぬ御解釈であると思うのですが、いかがでありましようか。
  117. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私はちつとも自分に省みて恥ずるところはございませんが、お話を申し上げましたように、国家予算でまかなわれる公務員については、国会が最終決定をすべきものである。これはなるほど公務員の給與というものはこの程度なければならないか、こうあつてはいかぬのかという点は、国民の代表であるところの国会が判断をすればいいのであります。でありますから、それを最終的にきめるまでは政府を拘束しないのだ、こういうことであります。ですからあなたがおつしやるように、くどくなりますけれども、仲裁裁定というものが形式的に出た以上拘束をするということであれば、国会も拘束するということにしなければ一貫しないのであります。国会だけは別だぞ、政府だけ拘束するんだぞと言つたところで、政府はかつてに予算が使えない、国会で予算をきめなければかつてにやれない。そうすると、政府は拘束すると言われるが、拘束するからといつて予算を出す、それを国会の方ではそれだけの予算が使えないからというので削られる。これでは運用ができないのであります。でありますからごの法律が規定しておりますように、予算上、資金上の問題については国会に承認を求める、こういう制度になると思います。
  118. 森山欽司

    ○森山委員 大臣はそういうことをおつしやいますけれども、実際は今の自由党は大体政府の言つたことをうのみにする機関である。ちつとも硝化なんかしない。党独自の機関でもつてどうしようということはあまりない。多少はあるかもしれませんが、とにかく政府の方からいえば、絶対多数の上にあぐらをかいている。やはりお上は偉いという考えで、議員としての立場が何というか、政府の思う通りに動く。議会が中心になつて政府を動かすというよりは、政府がこう考えると言えば、議会がついて行くという傾向がある。これは議院内閣制度においては多少そういう傾向は見られるのでありますが、どう考えましても、実際は政府がやるまいと思えば、自由党は賛成の手を上げる。政府がやろうと言えば、自由党が賛成の手を上げるのが従来の経過である。そういう点から言いますと、今吉武さんのおつしやつたことはいささか詭弁に類するものが実情においてはあるのです。その点を私は言つているのであつて、あなたがそうでないと言い切れない面がある。二十七年度の政府関係機関予算はごらんになつたと思いますが、それには従来の予算総則上の給與総額のわくに、さらにもう一つわくをかけて基準内紛與の額、基準外給與の額というわくをかけておるのです。こうなりますと十六條二項というものは踏んだりけつたりで、あつてもなくても同じだ。そういうような状況に置いていて、一体労働大臣の商売ができますか、私はできないと思う。大体大臣は昭和二十七年度政府関係機関予算の予算総則にこういうことが載つていることを知つておつたのですか。これはとにかく次官会議か何かにはかかつているから、これは政府のお役人の人も知つていなければならぬ。賀来労政局長にもはつきりしたことを言つてもらわなければならぬし、大臣も十分了承の上おやりになつたことかどうか伺いた。今までの十六條二項にそういう問題がある。そこへもつて来てますます金縛りにかけて来た、こういうことを労働大臣が黙つて見のがしにしておくのはおかしい。なるほど労働大臣だから、今のものはすべていいんだという御答弁をしなければならない気持はよくわかりますが、ここで遺憾の意を表してもらわなければ、私がここでつばを飛ばしてしやべつているかいがない。ここで公共企業体の職員に深くおわびするということを言つてもらわなければならぬと思います。
  119. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 せつかくの御希望でありますけれども、私は現在のごの制度でけつこうだと思つております。なおお言葉を返すのは不本意でありますけれども、今の自由党は政府の言うことを何でも聞くのだから、それでせつかくの裁定が出ても結局のまないのだというふうな口吻でございましたが、それはどういう事実に基いておつしやるのか。一昨年の暮れの第一回の国鉄の裁定の際に、政府の意見はございましたが、私は当時自由党内におきましてこれに対して相当の努力を拙い、自由党内においてその同調者が多数でございまして、全部はのみませんでしたが、相当部分を政府にのます努力をいたした。その次は昨年の三月、専売裁定の際でございますが、これとても政府には相当の難色はございましたが、遂に一月余りかかりまして全面的に国会ででは自由党がこれを承認する結果になつておるのであります。また昨年暮れにおける国鉄裁定の場合も専売裁定の場合も同様でございまして、裁定の趣旨を私ども自由党としては了承させておるのであります。でありますから、どういう事実によつておつしやるのかわかりませんが、私どもは当時自由党におりましても、およそ仲裁裁定が出た以上は、その内容を検討いたしまして、もしもつともである点がありますれば、これに対して努力いたすことにおいては、今後といえども私はわからないものだと確信をいたしております。
  120. 森山欽司

    ○森山委員 それでは大臣に伺いますが、国鉄裁定の際の予算総則の建前はどうなつておつたか。あの当時は、あれだけのゆとりがあつたわけです。それから去年の秋の専売裁定の際は、少くとも基準内紛與、基準外給與というようなわくははめられておらなかつた。そうして予算全部は動かさないで、予備費から事実上の流用というものをやつたわけです。ですからなるほどやつたことはやつたけれども、当時はできるような状況に置いておいたわけです。ところが予算総則の方は毎年毎年厳格に縛つて来ておる。事実上これは骨抜きになつておる。池田大蔵大臣は、もう十六條二項は私は死んでおるものだと思つております、こう言つておるのであります。ともかくも大蔵大臣は死んでおると思つているのに、労働大臣は生きているものだと思つておる。こういうまかふしぎなことがありますか。同じ條文を労働大臣は生きておると言い、大蔵大臣は死んでいると言う。少くとも大蔵大臣は金を握つておるから一番強いのですが、それが死んでおるというならば、労働大臣はいささかどうかしていないかと思うのです。どうもあなたのおつしやるほどに、十六條二項の趣旨に忠実なるように御行動になつておるならば、なぜ一体二十七年度予算の予算総則に、こういう基準内給與、基準外給與というようなわくを、さらにはめるようなことを齢認めになつたのですか、伺いたいと思う。もしこれが当時占領下において、司令部側からの要望においてなされたとするならば、二十七年度の補正予算においては、これを改める御意思があるかどうか、これをひとつ伺いたいと思います。
  121. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 十六條二項は死んでおると大蔵大臣が言つたということは、私はまだ聞いておりませんし、十六條二項が廃止になつたことも知らないのであります。これは嚴として存在しております。また御指摘の、予算のわくをルーズにしろというお話でございますけれども、いやしくも予算というものは、国民の租税によつてまかなわれるものであります。従つて予算の執行は厳格であるべきであります。それをルーズにしておいて、どつちにでも流用できるようにしておくことは、それこそ国会の意思を尊重しないゆえんであります。私は当初予算が組まれました趣旨を嚴東に守つて行くように、予算は組まれるのが当然である、かように存じております。
  122. 森山欽司

    ○森山委員 どうも労働大臣の言うことは、私はまことに解しかねるのです。一体政府関係機関はこうなつておりますけれども、一般の官庁予算でこんなわくがありますか。また二十七年度から基準外とか基準内給與のわくができたけれども、二十六年度まではなかつたのです。そういうものを、またなぜ公共企業体だけはつきりつけなけばならなかつたか、労働大臣のお答えを願いたい。
  123. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 先ほど申しましたと同じであります。予算というものは厳格なる執行をすべきものである。ルーズな予算の組み方をすべきものではないというところから規定したものと私は存じております。
  124. 森山欽司

    ○森山委員 公共企業体に限つて特に厳格なわくをはめなければならないのでありますか。
  125. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 それは公共企業体ばかりではございません。いずれにおいても同様であるべきだと私は思つております。
  126. 森山欽司

    ○森山委員 それではなぜ一般官庁にそういうわくをはめないのですか。
  127. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 それはひとつ大蔵大臣にお申入れを願います。
  128. 森山欽司

    ○森山委員 少くとも一般官庁にはそういうわくがはめられていないのに、公共企業体にこういうわくをはめられて、労働大臣は黙つておつたのか、それがよいと思つておつたのか、それをひとつ伺いたいと思います。
  129. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は先ほど申しましたように、国民の租税によつてまかなわれるものは、ルーズな予算の組み方をすべきものでない、かような確信を持ちまして、例の企業体においてそういうわくをはめられることは適当であると考えております。
  130. 森山欽司

    ○森山委員 それでは労働大臣は、一般官庁にこういうわくがないことは、ルーズであるというふうにお考えでございますね。
  131. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 さようでございます。
  132. 森山欽司

    ○森山委員 どうも驚くべき労働大臣の御返答であるので、これ以上この問題であなたと論議をかわしても、私は意味がないと思うのであります。しかしかつて自由党は、専売事業についてこれを民営にしようとした。民営にしようということは、一つは国家予算のわくからはずすということなんだ。そういうような考え方を片方で持つております。昨年七月ですか、私が海外に行つておるときに、政令諮問委員会の答申にも、タバコ専売事業の民営というのが答申案に載つておる。それから自由党内において、これに相呼応した動きがあつたことは、吉武さんといえども御存じだと思う。遂に日の目を見なかつただけの話だ。そういうような考えが一方にあると思うと、片方では公共企業体の予算を、一般官庁よりずつと厳格にしてわくをはめるというやり方は、はなはだ矛盾しておると思う。私はそういうようなあなたのお考えをどうしても理解することはできません。いずれ修正案を提示いたしまして御町考を願う、こういうふうにいたしたいと考える次第でございます。  次に、交渉単位制の問題について伺いたいと思います。交渉単位制の採用について、わが国の労働運動の現状から、今後においていかなる問題があるのか、国鉄の機労の問題もありましたが、ひとつこれについての御説明を願いたいと思う。
  133. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 交渉単位は、あまり複雑であることは好ましくないと思う。従つて交渉単位はできるだけ一本で交渉して行くことがけつこうだと存じまして、現在のような交渉単位制をきめておるわけであります。
  134. 森山欽司

    ○森山委員 時間がありませんから次に移ります。労働委員会は、現状のまま改変を加えていないのでありますが、これに対してはいろいろ労政局試案等にも意見があつたようであります。この問題について御説明願いたい。
  135. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 労働委員会の構成その他については、いろいろ意見はございます。お話のようにわれわれの内部でもいろいろ研究をした経緯はございます。しかしながらおよそ制度というものは、だんだんとこげがついて来ないと、ほんとうの働きというものはできないのでありまして、かりに欠陷があつたからといつて、毎年々々いじりまわしておると、いつまでたつてもほんとうの動きというものはできない。幸いにして日本の労働委員会は、よその国と全然同じわけではございませんが、過去七年間の間にだんだんと確立をいたしまして、使用者側も労働者側もだんだんと信頼をしてきておる。でありまするから、私は労働委員会というものをあまりいじりまわすことなくして、現在までやつて来たものをよりよく強化して行くことが適当であろう、こう存じまして、内容的な変更は加えなかつたのであります。
  136. 森山欽司

    ○森山委員 その他労働法規の改正審議会において、労使の意見の相違を来した点が多々あるようでありますが、これについての労働省の見解を伺いたい。
  137. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お話の点は、どういう点を御指摘になつておるのか知りませんが、原則的こは最初の日に申し上げましたように今度提案いたしました改正案は、大部分は労務法制審議会及び労働基準委員会の答申を尊重しております。基準委員会の方は、答申そのままを採用しております。労務法制審議会の方は、労使一致した部面はもちろん採用しております。それから労使一致しなかつたこまかい点はございますが、大きい点では、現業官庁に団体交渉権を與える点と、緊急調整の点でございます。この点はとうとう最後まで決定に至らなかつた。公益委員が努力されましたけれども、決定に至らなかつた。そこで私どもは決定するには至らなかつたが、いずれも今後の日本の労働行政の上において私は必要であろうと存じまして、それを採用したわけであります。こまかい点につきましては、もし御必要であれば事務当局からお答えいたします。
  138. 森山欽司

    ○森山委員 この問題は、またいずれ個別に伺うことがあると思いますから、次の質問に移ります。  先般労働大臣は珪肺療養所を視察されたそうでありますが、どういう御感想をお持ちでしたか。
  139. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は珪肺については、かつて社会局におりましたときから関心を持ちまして、この問題は何とか早く根絶したいと思つておりましたが、なかなかはかばかしく行かなかつたのであります。先般珪肺の病院を訪れまして、私がかつてこの問題に携わつておつたときから比べると、非常に進歩をしておる感じを受けたのであります。しかしながらその研究は非常に進んでおりまするけれども、まだ珪肺患者が出ておるということはへ私は非常に遺憾に存じております。これは普通の病源体と違いまして、原因ははつきりしておることでありますから、この予防の処置をもつとく徹底さして、将来こういう珪肺患者というものが、漸次消滅をして行くことが一日も早からんことを私は希望し、努力するつもりでおります。
  140. 森山欽司

    ○森山委員 労働者側に、珪肺の予防から補償を含めた単一立法の要望がありますが、労働大臣の所見はいかがでございますか。
  141. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 労働委員会では、小委員会を開きまして御検討されておるそうでございますが、十分ひとつ御研究を願いたいのであります。     〔委員長退席、船越委員長代理着席〕 立法と申しましても、一応今日立法は翻りますが、問題はいかに立法いたしましても、立法だけで根絶できるものではございませんで、労働者側にも予防的な処置について、これを履行して行くという習慣をつけませんと―これは防塵マスクというものをやりますれば、それでもうんと防げるのであります。これは坑内ばかりではございません。工場でもよくあることでありますが、なかなかめんどくさいから、いざ仕事をしておると、ぽつとはずして便宜にタオルででも包んでやるということが往々にして行われるのであります。これなんかも、法律をいくらつくりましても、法律で効果が上るということでなしに、やはりこれに対する知識の普及と励行をさせるということ、それから事業主側におきましても、客種の予防の装置というものはあるのでありまするから、これらにつきましてはもつと理解を深めて、そうしてこういう装置を完備させることが先決問題だ、かように存じております。それから補償のお話が出ましたが、病気に対する補償につきましては、現在の労災法におきまして、一般の職業病と同様、これらについては一応の処置が講ぜられております。
  142. 森山欽司

    ○森山委員 予防の問題については、また後ほど前田委員から御質疑があると思いますので、この点には触れません。予防が重要であるということはもちろんわかつております。しかし単一立法をしなくても、今法規が別にあるのだというお話ですが、今回労働基準法の改正案が出ておる。ところが、たとえば労働基準法第七十六條、これに関連する第十二條等については、触れられておらない。現に珪肺に悩む人たちは、こういう法規の改正を要望しております。労働基準法第七十六條で、労働者が業務上負傷または疾病によつて療養のため労働することができない場合には、使用者は平均賃金の百分の六十の休業補償を支拂わなければならないことになつておりますが、平均賃金算定は、事故の発生した日以前玉簡月の賃金を基礎としているために、珪肺病は不治とされている特殊的慢性病であり、長期療養を必要としており、現行療養期間三箇年を五箇年まで孤長されるよう強く要望しておるのでありますが、現行三箇年の療養期間中においても、特に顯著な経済情勢変動の現実は、一般労働者の賃金水準変動を認めても、療養者の平均賃金は変動が認められない現状であるので、産業のとうとい犠牲となつた労働者へ、一般労働者の賃金変動に準じて療養補償費算定の平均賃金を改訂し、補償されたいという要望がある。こういうことは今度の改正ではちつとも触れておらない。また労働基準法の八十一條におきまして、「療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の現定による補償を行わなくてもよい。」ということになつておりますが、一般職業病であれば三箇年間には全治することがありますが、珪肺病は一度罹患すれば絶対なおることができないと医学会が発表している事実からいたしましても、珪肺病に対する三箇年はまつたく不合理である。また一般職業病は三箇年間に全治して、その後再発した場合は、新たに三箇年の療養期間が生れて参ります。これを通算すれば、五年、六年の療養期間があるわけであります。珪肺は最も悲惨な職業病でありながら、不治とされておる点だけでも、当然五年とすべきであるという強い要望がある。こういつた目下焦眉の問題であるこれらの問題につきまして、今回の労働基準法の改正は何ら触れておらない。かんじんかなめのことは落してしまつて、どうでもいいようなことばかり直しておる。よく大臣は、今度の改正は異存はないでしようと言われるが、異存がないわけだ。直しても直さぬでもいいところを直しており、直さなければならぬところは直さない。こういうことでは、労働基準法の改正は意味をなさぬのです。ですから労働者が、あなたにとつては不本意かもしれぬけれども、改悪だ改悪だといつて騒ぐ。こういう点をあなたがお直しになれば、ほんとうに労働法規の改悪でなくて、改正だといつて労働者は喜ぶ。せめて今度の労働基準法の改正に、この二項目ぐらいを盛つていただくわけに行かないでしようか、ひとつ御意見を伺いたいと思います。
  143. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 職業病につきましては、何も珪肺ばかりに限らないのであります。珪肺だけを重く見て長い年限を療養するということは、これは相当研究の結果でなければならぬ。職業病には、他にもいろいろ悲惨なものがございます。ですから全体としてどうするかということは、絶えず考えて行くべきでありましよう。お説のようによりよくすることは、決して悪いことではございません。しかしそれは一般の労働條件とも関係のあることであります。でありますから、よければいいじやないかというわけには参りません。将来よくすることについては、一層努力を拂うつもりでおります。
  144. 森山欽司

    ○森山委員 職業病が他にもあるということは事実です。しかし珪肺という病気は、職業病の中でも特殊な病気です。あたかも一般の伝染病の中で、結核というのが特殊な性格を持つておるために、あなたも厚生大臣をやつているのですから、結核予防法というものが別にできているのはおわかりでしよう。それと同じように職業病の中でも、珪肺というものは特殊な性格を持つておるものです。だから世界的にこの問題は研究されております。ILOでも、珪肺病のために国際会議が行われておる。大体一つの職業病を特に取上げて、国際会議が行われるというような病気がほかにありますか。私はないと思う。そういうような重要な病気であるから、少くも今申し上げました労働基準法の第七十六條や、これに関連する第十二條あるいは第八十一條というような規定は、こういう特殊な職業病に対しては、いわばこれに例外的な措置をとり得るような最小限度の改正を施すべきではないでしようか。他にも職業病があるから、珪肺だけを取上げることができないと言われるのは、あなたは珪肺に対する認識が足りない。あなたは労働者の人気をとろうと思つて、珪肺の病院を視察なさつたただけである。ほんとうの改正をやろうとするならば、今度の改正においてはこの問題に触れなければいけませんよ。いかがですか。
  145. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 あなたは、職業病を全部御研究になつての話かどうかは存じませんが、私が言つておるのは、そう軽卒に言つておるのではありません。職業病はほかにもたくさんあります。鉛の中毒の問題もありますれば、一般化炭素の中毒の問題もあります。いずれもみな悲惨です。珪肺だけが悲惨だというわけではありません。ですから職業病については、全体的にものを考えなければならないのです。あなた個人はただ珪肺だけよくすればよいと言つておるが、われわれはそうは行かぬのです。ですから、これでいいと言つているのではない。全部を見て、将来よくすればよくしたい、こういうことを言つておる。珪肺についての特別の国際会議もございます。これはこういう職業病というものを何とかして取除きたい、特に珪肺というような病気は、予防すれば予防の道があるのですから、これはできるだけ何らかの法によつて防止したい、そういう特別会議のあるのはけつこうであります。しかも先ほど申しましたように珪肺の病気は、病源体がわからぬというものではない。病菌でなく、粉塵から来るのでありますから、その粉塵を防止する方法はないわけじやないから、それについては十分考究しなければならない、努力しなければならない。これはただ法律さえつくれば直るというわけではありません。これは労使ともに努力をして根絶をすることが、私は大切だ、かように存じております。
  146. 森山欽司

    ○森山委員 私は他にも職業病があり、またその中には悲惨なものがあるということは知つております。しかし大臣もお認めになられたように、珪肺という一職業病のために国際会議が開かれるというほどの問題なんです。そこでもちろんこれは大臣の言われるように、予防する方も大事で、労使ともにこれは手を盡さなければならぬ点があります。しかし現行の法律的措置としても、今申しましたような労働基準法の條文について改正を加えるということは必要であるという結論が、先ほどの大臣の言葉から出て来るのじやないでしようか。どうも大臣がこの政府原案を通そうとするために、かんじんかなめの大事なところが落ちておる。今度の労働基準法の改正は、気の抜けたビールだというような批評を下されるのがいやさのために、こういう大事なところの修正についてあまり積極的じやないと思う。私は珪肺病が特殊な病気であるという点は、現行法規においても他の職業病と違つて不備が見出されるという点について、これは法規の例外的な期間の延長等がはかられるような改正を施すべきじやないか、こういうことを申し上げておるのであります。そういう意味でひとつ大臣の御再考をお願いしたいと思うのですが、いかがでしよう。
  147. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 前々申し上げた通りでありまして、私はどれだけということではなくて、あらゆる職業病につきまして検討をし、その上で特に必要なものがあれば、もちろんそのものからやつて行くことに異議はございません。ただこれだけという考え方は持つておりません。
  148. 森山欽司

    ○森山委員 そうすると珪肺病の特殊な性格からいたしまして、今の七十六條や十二條、八十一條の改正は、労働大臣はなす御意思がないということですな。そうしてそれは全国の鉱山労働者に伝えるということは、何ら御異議がないということでございますか。
  149. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は職業病については、全面的な考慮をするということを申し上げておるのであります。やらないとはだれも言つておりません。将来この問題については重要であるから、なお検討をするということを言つておるのであります。
  150. 森山欽司

    ○森山委員 職業病全体について大臣が考慮されるということは私は異存がない。大いにやつていただかなければならぬ。しかし珪肺という病気は特殊な病気で、しかもこれは焦眉の問題であります。すでに療養期間の三年が切れて、全然療養費をもらえないような患者が続々今日出始めておるのです。そういう悲惨な人たちのために、法律においては、原則は三年としても、病気の特殊性によつては五年に延ばせるという、何かそういう緊急的な措置を講ぜられたらどうか。単一立法はいろいろな意味で難点があるならば、せめて現行の法規だけでもそういうような余地を残したらどうか、そういうようなことをお考えになるお気持がないかということであります。もちろん私は一般の職業病の三年が五年になれば、なおけつこうだと思います。しかしこれはいろいろな関係上むずかしい面が多かろうと思います。せめてこの珪肺だけでも、これは職業病の中でキヤラクタリステイツクなものであります。こういうものについて大臣がさしあたりおやりになる気がないかということを聞いておる。だからそういう気持があるかないかということを、ひとつ全国の鉱山労働者の前にはつきりこの際御声明願いたいと思います。
  151. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 何度申し上げても同じことで、時間をとるから、簡潔に申し上げます。職業病はいずれも特殊な病気であります。珪肺は珪肺の特殊性を持ちます。鉛の中毒は鉛の中毒の特殊性を持つ、みんな特殊な病気であります。でありまするから、私は職業病は全体として考えて参ります。珪肺の方だけを取上げて、これだけ考えるという行き方はとりたくありません。
  152. 森山欽司

    ○森山委員 私はこれをもつて質疑を打切りたいと思いますが、先ほど来二時間有余にわたつて労働大臣に質問いたしました。しかもその間ゼネスト禁止法との関係、それから緊急調整の問題、さらに公労法十六條二項の問題、さらにはただいま申し上げました珪肺対策、これら目下最も重要な問題について大臣の答弁は、ほとんど否定的であつたのであります。これは今日の吉武労働大臣の労働感覚の限界を示すものであるということを、私は深く痛感いたします。あなたはかかる感覚をもつて今後労働政策に臨まれる限り、その報いは必ず受けなければならないということをよくお忘れにならないように願いたいのであります。
  153. 船越弘

    ○船越委員長代理 前田種男君。
  154. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は質問に入る前に、通産大臣、岡野国務大臣、大臣がどうしても都合が悪ければ、大臣にかわる人の出席を至急に求めます。
  155. 船越弘

    ○船越委員長代理 承知しました。
  156. 前田種男

    ○前田(種)委員 最初に労働大臣にお伺いします。七年近く占領下にありました日本が、曲りないにも独立国家となつたわけであります。しかも本労働委員会は、独立後重要なる労働三法を議題として審議の過程中でございますから、七年間を顧みて将来の日本の労働組合運動は、一体どうあるべきかという基本的な点に対する大臣の所見を伺つておきたいと思います。  これは七年の短期間に予想もせなかつたほど組合が急に発展、籏大されたこと、あるいは資本家陣営が一体占領後の日本の産業はどうなるかということについて自信がなかつた、政府また占領下にあつて思うように行かなかつたというような三すくみの関係において、ともかく七年近く経過して参りましたが、いよいよ曲がりなりにも独立して全国的な協力の上に立つて、日本の再建をして行かなければならぬ。その中心になるべきところの労使関係あるいは経済の自立、この大事な問題でありますので、この一番基本的になる大事な問題であるところの労働組合運動、あるいは労使関係の実績の上においても、おのおの反省せなければならない点が幾多あつたと思うのであります。しかもその責任が労働組合にあるとか、資本家側にあるとか、政府にあるとかいうようなことをお互いに言い合つてみたところで、それで解決するものではなく、むしろ過去の実績を冷静に判断して、将来労働組合は一体どうあるべきか、あるいはまた労使関係について使用者はどうあるべきか、またそれに対して政府の労働行政はかくなければならないという基本的な線が、もつと強く打出されなければ、個々のできごとにびくびくしたり、左右されるということになると、大局をあやまつと私は考えます。この大事なときでございますから、今後の労働対策上、重要な労使関係のあり方、あるいは日本再建に対する組合運動の将来の見通し等について、大臣の基本的な方針、あるいは今後の見方、あるいは今後責任者としてどうやつて行かれるかという点についてお聞きしたいと思います。
  157. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ごもつともな御質問でございまして、私も終戰後の組合のあり方につきましては、必ずしも全面的には安心していないのでございます。私がいまさら労働組合というものはどんなものだなどと説くことはあなたに対して失礼だと思いますが、労働組合というのは、労働者の労働條件をだんだんと上げて行くというために、個々の者ではそれができがたいから、団結を許す、そうして最悪の場合には争議権までも與えて、これを保障するという行き方をとつておるのであります。終戰後に出ました組合は、新しい関係もございましようし、あるいはまた占領下であつたとか、かつてのいろいろな政治に対する反動的な感じもございまして、一時非常に政治的に走る。具体的に言うならば、非常に左に走り過ぎたきらいがあるので為ります。しかしそれも二・一ゼネストによつて組合大衆も体験をいたしまして、これではいかぬ、労働組合というものはうつかりしているとあぶないところにひつぱられるぞということで、組合の中にいわゆる民主化運動というものが起りまして、組合はやはり組合主義に走らなければならぬというふうな傾向のできて来たことは、私は非常に喜ばしいと思つております。しかしながらそれではそういう組合主義になり切つているかというと、今日のところ森山さんのお説じやないのですが、政治的な偏向がございまして、とかく労働組合というものが政治に使われる、労働大衆が一部の指導者の政治的な見解に引きまわされるというきらいがあるのであります。でありますから、それは私は日本の労働組合を健全に育てる上においては、はなはだおもしろくない、かように存じておるわけであります。従つて労働組合もただ争議をやるというのが能ではないのであります。どうしても自分たちの正しい主張が通らぬときには、憲法に保障した争議権を発動することももちろん許されておることでありますけれども、争議をやりさえすれば労働者に得になるというわけではない。争議をすれば労働者に不利な点もたくさんあるのであります。でありますから、労働組合も争議に走ることなくして、できれば合理的な機関によつて解決をして行くという道を選ばれることが、労働組合が今後健全に発達する上においても、また労働者の労働條件を上げて行く上においても、かえつて近道ではないだろうか、かように私はかたく信じておるわけであります。と申しましても、私がそう言つたからといつてああそうだつた、そういたしましようというわけになかなか行かないのでありまして、これには皆様方の御協力もいただきますし、国民一般の御協力もいただきますし、また労働大衆もこの点に対しての認識を深めて行かれる必要があるのではないか、かように存じております。
  158. 前田種男

    ○前田(種)委員 私はもつと基本的な線を聞きたいのですが、あるいはこれ以上吉田内閣に基本的な労働政策を聞くということは無理だという人もあるかもしれぬと思います。しかしそれはそれといたしましても、吉田内閣の中にあつても、労働行政を担当するものはやはり大局を忘れないで、大局をつかんでやつて行くということでなくてはならない。そうしなければこれの反動が必ず来て、その結果が国家に及ぼす影響というものは非常に大きなものがあるということを常に忘れてはならぬと思います。それで労働組合関係に対しては労働組合のあり方に対していろいろ批判もされ、あるいはその都度大臣の所見を承つておりますが、使用者側に対して政府は一体どういう見解なり、あるいは労使関係のあり方に対して、使用者に対してどういう方針を持つて接しておられるか、あるいはどういう意見を持つておるかという点も大事でありますから、この機会に承つておきたいと思います。
  159. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私も使用者に対しても、もちろん労働問題及び労働組合に対する理解が必要だと思つております。ちようど労働組合法をつくりました当初でありますが、組合法の普及に私が参りましたときに、ある事業主の言葉に、労働組合をつくつてもらうんだつたら、うちでつくらぬで外でつくつてほしいというような意見もあつたくらいでありまして、そういう感覚ではこの労働問題というものは決してうまく行くはずはございません。しかしながら最近私は使用者側の人とも会つて話を聞いてみますが、過去七年間に非常に発達いたしまして、使用者側も組合というものに対しては一応理解が積んで来ていると思つております。しかし使用者側の懸念されますのは、組合が組合主義の上に立つてそうして経済的な面で闘争もし、また話合いをされる点については、今のところ異議はないのであります。それは労働組合から要求されたのを、そのままうのみにできない点はございましよう。経済的な面からあるでありましようが、組合が経済主義の上に立脚されて組合活動をやられる上において文句を言われているというのは、私は聞いておりません。ただ使用者側で今日やはり意見のあるのは、組合が政治的な意図をもつて政治的に行動される点に、非常に不満を持つておられるのであります。でありますから、もし使用者側が経済的な面において無理な点があれば、これは私どもとたしましても使用者側に極力その理解を深める努力は拂うつもりでおります。また幸い労働委員会というものが過去七年の間にだんだんと信用を博して来ておりますので、使用者側も合理的なこの機関にまかせた方がいいという指導を加えておるのであります。
  160. 前田種男

    ○前田(種)委員 労働組合が経済闘争を中心にし、組合主義により政治的な活動は政党にゆだねるということに、わが国の現状がなりまするならば、一番理想的であると思います。しかし遺憾ながら今日の現状はそうなつていないのであります。しかも国民生活の面等から考えますと、非常に逼迫した状態に置かれております。しかもその半面に国民すべてが生活上逼迫した状態にあるかといえば、想像もつかないようなゆたかな生活を一部にはしていて、多数の勤労大衆がみじめな状態に置かれているという政治の実情が、いやが上にも労働組合が心ならずも政治的に活発にならざるを得ない原因の一つでもあると思います。もちろんそれが全部であるとは思いませんが、そういうもろもろのものが総合されて、健全な組合活動がややもすれば阻害されて、政治活動の方に主になつて行くという状態になつておるのでございますけれども、私自身もそういう見解を持つております。しかしこの原因がどこにあるかということを労働行政を担当しておられる労働大臣としては、この中心をつかむということに努力されなければならぬと思います。もう一度その点について大臣の御見解を承りたいと思います。
  161. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お話ごもつともの点でございまして、もちろん一面において国民生活の安定という点を努力しなければならぬことはお話の通りであります。ただ日本の今日の国民生活の状況及び労働者の労働條件の状況は、お話のごとく必ずしもいいとは申しかぬます。というのは、賃金だけをとりましても、戦前の約八〇%程度にしか回復しておりませんから、その面だけから見ましても、私はお気の毒だと思つております。しかしながらこれはただ勤労者ばかりではなく、御指摘のように日本の一般の国民生活の水準というものが敗戰の結果、こういう事態になつたのでございまして、これを引上げる唯一の道は、やはり日本の経済の復活、復興ということが私は先決であると思います。労使間の調整という問題も必要でありましよう。しかしながら現在の日本のこの現状は、労使間の問題が不均衡であるがために生活が困難なのではなくして、日本の経済というものがまだ思うように復帰していないところに最大の原因があるのでありますから、これは結局は労働者諸君の御協力を得て働いて行つてもらう以外にございません。そうしてだんだんと日本の経済が復活するにつれまして、もちろん国民生活の安定、勤労者の労働條件の向上という点に、大いに努力すべきものであると私は存ずるのであります。ただ労働組合運動の点においてもう一つ遺憾な点は、その面も重要なところでありますが、日本の労働運動が常に思想的な影響を受けるという点で、これは重視しなければならぬところであろうと存じます。いろいろ表に現われておる運動の面には、賃金その他の点もありますけれども、その底に流れるものには常に国際情勢から来る、あるいは一部の思想的な影響が常に背後に動いておるという点であります。この点はいくら生活安定をいたしましても、政治的なにおいによつて動かされる面はなかなか取除かれないのでありまして、その点は一般国民あるいは労働大衆が十分な認識をもつて、一部の思想のあやつりに乗ぜられないところの覚悟が必要であろう、かように存じます。
  162. 前田種男

    ○前田(種)委員 経済的復興が達成されなければ、国民生活の安定は確保されないということは、その通りです。しかし経済的復興をなすために一体どうするかという場合、日本は資源もなければ資金もない。あるものは労働力だけです。結局労働力を百パーセント、それ以上に活用するごとによつて初めて日本経済の復興が達せられるという点が、諸外国と非常に違うのです。それだけに労働行政、あるいは労働者の国家再建における重要性が主張されると私は思います。それだけに労働大衆が、ほんとうに百パーセント国家再建に協力する方向に政府は指導する、あるいはその指導にあくまでも成功しなければだめだという考え方にならなければならぬと思います。しかしこれはこれ以上のことは質疑よりもお互いに意見になりますから、私は触れません。それから思想的にあやつられる者が相当あるという点は、私も遺憾に思うところがございます。しかしこれは終戦後のわずか数年間において、一時に厖大に擴大いたしました浅い日本の労働運動の現状、あるいは経済上の事情その他がございまして、いろいろ寄り道している点もあると考えるのであります。少くともそういう点に左右されずに、ほんとうに健全な組合運動の姿に立ち得る状態に、一体どうして行くかということが、今日の重要な問題だと思います。その観点からいつて、今日今議会に、しかも後半の議会にあわただしく出されましたところの治安関磨いろいろの法規をながめてみますと、結局破防法を中心にいたしまして警直察法の改正、あるいはゼネスト禁止法を出すとか出さぬとかいう問題、あるいは集会、デモの制限の問題、本委員会にかかつております三立法の問題等、全部を総合いたしまして、院外における国民大衆は、要するに大衆の弾圧法規だ、非常に自由が制限されると言う。こういう法規が集まつて来て、そういう結論になるのだということが、大きく大衆を支配していると思うのです。これは一つ一つの法律をとつてみますと、一つの法律で右の足をとり、一つの法律で左の手をもぎ、一つの法律で片目をつぶすというようなことにして、自由を制限し、行動を制約することになつて来ると思います。今政府が計画しておりますこうした法律案が、全部そのまま通過いたしますならば、おそらくこの夏と今年三、四月以前の状態と比較して、非常な大きな制約を受けなければならぬ結果になる。こういうもろもろの情勢に対して、それで今日の治安の最小限度の対策と思つておられるのか、あるいはこういうやり方がむしろ拙策だという意見もありますが、その点に対する大臣の見解を承つておきたいと思います。
  163. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お話の点は一応そういうふうにも見れるかもしれませんが、これはくどく申し上げると時間をとりますが、破防法にいたしましても、その他の治安立法にいたしましても、また今度の労働三法にいたしましても、まじめにやつて行かれる方々には影響はないのであります。破防法でも、もう内容はくどくなるので申し上げませんが、これは一部の極端なる暴力者を防止するのがねらいで、むしろそれによつてまじめな方は助けられるのであります。労働組合運動でいうならば、正常な組合運動をされる方はこれによつて助けられるのであります。でありますから、表向きの運動としてそういう反対運動が出ると、前田さんあたりもなるほどそうかなというふうに影響を受けられてそういう発言をされますが、私は静かにお考えになつてみるならば、前田さんたちがこういう法律にひつかかるはずはない。それではこういう法律をつくらなくてあなた方は安全かといいますと、安全でない。ひんぴんとして暴力行為を行うものがあるのであります。こういうことは今日の民主政治下においてはやはり一日も早く防止しなければならぬ。こういう法律案に対して労働大衆が反対的な行動をとるということは、もうすでに思想的な影響を受けておる証拠であります。でありますから、前田さんのような古い長い労働運動の経験者の方は、むしろそうではないと言つて勇敢に、これはおれたちを対象にするのではないぞ、こういうぐあいに指導していただきますならば、私は日本の健全な労働運動が早く立ち直ると思う。ほんとうにこの法律の対象になりますのは、ごく一部の暴力者だけであります。昔であるならば、あるいは前田さんがおつしやるような治安維持法の濫用というような心配をなさる点もあるでありましようけども、今日の政治はもう民主政治にかわつておる。上から政権が来て政治をとつておるのではないのであります。国民大衆から政府ができておるのでありますから、そんなむちやなことはできるはずはないのであります。でありますから今日労働大柔いろいろな意見を持たれることを、全然無理だとは言いませんけれども、多分に一部の者の思想的な影響を受けておるということはいなめないと思う。でありますから健全に進まれる方々は御協力になつて、そうしてこの非合法な暴力的なものは、一日も早く日本から根絶するように御努力を願います。
  164. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は今の大臣の言葉はふに落ちないのです。というのは、法の建前は一応悪質なものを対象にしておりますが、これが実際適用される場合は、多くの人々がそばづえを食うということが事実になつて来るのです。これはこの間からの審議の過程から見ましても、この事実が現われて来ると思います。第一この間のメーデー事件を見ましても、八百何十人検挙したということでありますが、検挙された八百何十人の中には、やつた者もありましようが、何でもない人が多い。石の一つをポケットに入れたというような何でもない者か多くひつかかつて、かんじんかなめの中心になつた重要な人たちはみんなもぐつてしまつて、つかまつておらない。こういう法律ができますと、結局何でもない国民大衆が多くの犠牲を出して、首魁と目されるような者が案外つかまらぬということになります。ことに問題があろうと思います。今後いろいろな問題等についても、結局政府はつとめて建設的なまじめな運動をやつておる者には何ら関係がないとおつしやいますけれども、案外まじめな運動をやつて安心しておる者が、何でもないのに口実をつけて、そばづえを食うということがたくさんあります。さらにきのうの法務委員会の討論を聞いておりますと、共産党の議員がこう言つておるのです。どんな弾圧法規ができても、われわれは潜水艦と同じだ。危険なときは水中に沈み、安全なときは上に浮ぶのだ、はつきりこう言つておるのです。ですからどういう法律をつくつても、結局政府のねらつておるところの対象はその対象にならずして、安心している者がその対象になるという結果になりますから、そこをわれわれは心配しておるわけです。それから、今日は昔と違つて民主主義になつている。なるほど今日は国民が主権者でありますから、国民がだれよりも一番上位にすわらなければなりませんが、えてして政府なり、官吏のものの考え方の中には、昔と同様に、やはり官僚は国民よりえらい者で、奉仕者でなくして、官分らが主権者だという点え方が、多分に抜け切らない点があるのじやないかということも考えられるのです。ですからこの点は、大臣が言われるようなことだけで済めば、世の中はまつたく平穏無事でございますが、そうでない方向にえてして持つて行かれるという危険があるから、私どもは言葉を盡して、そういうことのないように、実際に不都合な者、秩序を乱す者が処罰されて、そうでない者がそばづえを食うというような犠牲がないような状態にしなければならぬということを注意をしておるというのが、われわれの意見でありますから、その点は誤解のないように、政府は対処してもらいたいと思います。     〔船越委員長代理退席、委員長着席〕 先ほど私が申し上げました治安対策のいろいろな法規が、総合されて今日悪法だといわれておりますが、それに対して大臣は、決して悪法でないと答弁されております。しかし私は、今日治安対策の方法として出されておりますところの状態を見て、これで治安の確保ができるとは思つていないのです。むしろこれは逆に刺激する結果になるというような点もありますから、プラス・マイナスで、はたして政府のねらつておるところの治安対策の効果が上げられるかどうかという点について、多くの不審を持つております。そういう点について、もう一度大臣の所見を承つておきたいと思います。
  165. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 前田さんの御心配になつておる点は、熊本さんも過日おつしやつた点と同様で、これは過去の経験から徴してごもつともな御意見だと私は思いますでありますからわれわれも、この破防法にいたしましても、その他の治安立法にいたしましても、運営の面においては十分気をつけなければならぬお言葉だと思います。しかしその心配のためにもとを逃がすということであつてはならない。心配するためは、一方非常に極悪な暴力主義が行われておるものを、どうにも手がつかない方向に放置するということは、私はお考えを願わなければならないと思う。心配しておいでになる点は、私異議はございません。これは運用を誤つてはいかぬということは十分了承しております。一方にそういう極左の暴力的な活動がないならば、将来を心配して立法することは、いたずらに刺激するということでありましようが、現にひんぱんとして行われておる。過日のメーデーの際における騒擾だつて、まじめなる労働組合運動者というものは全然参加していない。引込もうとしたけれども、幸いにして引込まれなくて、一部の者だけがやつておる。だから、ああいうような状況を現在のままでいいと前田さんがおつしやるのなら格別で、おそらくあの状況というものは、前田さんあたりも御否定になるに違いない。政府は何をしている、早くああいうような極端な暴力者はやつつけなければいけないじやないかというのが、おそらくあなた方の真意であると思う。だから、そのために立法しておるのでありますから、心配の点は私はよくわかりますが、一方そういう者を除外するに必要な最小限度の立法措置には、ぜひひとつ御協力を願いたいと思う。
  166. 前田種男

    ○前田(種)委員 今の答弁を聞いておりますと、現行法規ではどうにもならないのだから、法規を強化しなければならぬというのですが、強化することによつて完全に逃がさずにつかまえるという結論が出るならば、それも一つの方法です。しかしこの程度の法規をつくつたからといつて、とうていその実績は上らないと私は思います。はつきりと地下にもぐつている連中を完全につかまえてみせるというだけの答えが政府にできますならば、ここでそのお答えをしていただきたい。この程度のことでできるはずがないと私は思います。むしろもつと全体の総合的な対策を考えることが先決問題ではないかと考えます。その総合的な対策等について議論をすればきりがありませんから、議論をしようとは思いませんが、これだけの法規の不備を補うことによつて、完全に逃がさずにつかまえるというような考え方は甘過ぎる。そういう甘いやり方では、かえつて迷惑するのは国民大衆だけだという点を、繰返し私は指摘しておきたいと思います。  提案されております本法案の逐條については後日に譲りますが、一番問題になりますのは、昨日も、またきようの午前中も問題になりましたところの労働関係調整法中の、大臣の権限の緊急調整の問題だと思います。争議権を認め、罷業権を與えておりながら、大臣の処置によつてそれはストツプされるというような措置がとられているというのが、この法律の中一番問題になる点だと私は考えます。これは冒頭に私が申し上げましたように、過去六年間の実績の上に立つて、現在のようなゼネストを頻繁にやつたり、いろいろなことをやられるということではかなわぬ、何とかしてこういう状態から救わなければならぬというその気持はわかりますが、こういう措置をとれば、結果はどうなるかということを考えてみますれば、資本家陣営が一ぺんに強化されると私は思う。非常に強腰になると思う。要するに争議権を持つておつて、万一の場合は争議をやるぞという労働組合の最高の権利が認められておつて初めて、対等の労使間の交渉というものはできる。ところがその権利が大臣の処置によつてストップされるという法的措置が講ぜられますならば、結果から見ますと、與えた権利が実行できないということになります。そうすると今度は相手側が、ストというものはやれぬものだ、やれないからということで、非常に強腰になるという点が、今後の組合運動、労使間に逆の悪い結果をもたらす危険性が多分にあると私は考えますが、この点に対する大臣の見解を承つておきたいと思います。
  167. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 この緊急調整の関係について、使用者側が強くなるというお言葉でありますが、使用者側から言わせますと、こういう緊急調整にかかつて調停にかかると、自分の方はとられるばかりだということも言つておるのであります。でありますから、こういう合理的な機関にかける場合には、どちらが得をするとか、どちらが損をするとかいう問題ではなくして、公平に見て、妥当なところで解決がついて行くものだと私は考えるわけであります。ただ争議権をもつておどしさえすればとれるのだということは過去のことでありまして、今日争議をやつたからといつて、事業主がそれではひとつ出しましようというわけでもないのであります。それはもう早い例が、この間の私鉄のときの争議だつて同様でありまして、必ずしも争議に入らぬでも、あれくらいのものは調停委員会で妥絃ができたのではないかという気がいたします。でありますから、何だか争議権を制限されると損をするというふうにお考えになりますけれども、これは前田さんのように長い間労働運動をおやりになつている方はおわかりでしようけれども、争議は、やつて常に得をするものではない。でありますから、合理的なもので解決するという処置は、結局大きい目で見ますならば損がない、かように存じます。
  168. 前田種男

    ○前田(種)委員 今私鉄の例を出されましたが、私は私鉄の例を引いて質問したいのです。というのはストをやつたために、これは全体ではないかもしれぬが、二〇%ないし三〇%で妥結しております。だからこれだけの條件が確保できるならば、なぜスト寸前に解決がつかなかつたかと私は言いたいのです。極端に言えば、ストをやられたからといつても、会社が聞けないものなら、一週間電車がとまつてもやむを得ないということがあつてよいと私は思います。わずか半日か一日ストをやつたことによつて、二〇%ないし三〇%という相当大きな金額のものが妥結するということになれば、半日前の、ストがとまる寸前に妥結するという労働のあり方が望ましいと私は考えます。今日までの冷却期間の活用等については、スト権を獲得するために活用されるというので、改正案を出されておりますが、ほんとうに団体交渉が、この問題を事前に防止するという点に誠心誠意協力しようというあり方にならなければならぬ。しかし今の実情は、ストをやらなければ、解決がつかないという実績をすでにつくつておるのです。この悪い習慣を何とかして正常のところにもどさなければいけないという私の見解です。だからこの点から私鉄の例を申し上げますと、あるいはある程度の條件はスト前にできておつたかわかりませんが、結果から見ますると、ああいう数次のストをやられたために解決つけるというやり方、ストをやらなければ決して解決つかぬという状態が私はいかぬと思う。そういう状態にならなければ解決に行かぬということになれば、やむを得ずストにならざるを得ないということになりますから、私はそういう状態でなしに、労使間の問題が解決するような状態に持つて行きたい。それが今度こういう処置ができるということになりまして、その処置に依頼して、使用者側の方は必要以上に強い態度を持つて参りますと、結局問題は解決つかない。つかなければどうなるかというと、これは非合法的な方法を講じなければならぬという問題が生れて来ます。せつかく正常な方向に組合運動を持つて行こうとするものが、やむにやまれず非合法の方向に持つて行かれなければならぬということになれば、将来これは危検な状態になつて参りますから、こういう点等を勘案いたしますと、この改正案から来る資本家陣営のものの考え方というものは、非常に強い武器を得たということになるにきまつておるのです。その反対に労働組合側から見ますと、実質上スト権が剥奪されるということになりますから、この点を私は非常に心配し、また組合側は、組合の生命としてスト権が実質的に奪われるということに対しましては、いかなる方法をもつてしても反対しなければならぬという気持が出て来る、私はそう考えます。もう一度その点承つておきたいと思います。
  169. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お話の点は、私どももそういう点もあろうかと思いますが、この労働委員会というものは、使用者側の味方をする労働委員会でありますれば、ことごとくが解決するはずはないのであります。でありまするから今日中労委というものが、大きい争議でも昨年未解決しておりまするのは、やはり信頼を博しておるからであります。それは労働委員会というものには使用者側と労働者側と両方の代表が出、しかも中立委員は両方の承認を得た者が中立に出て、公正な機関として、しかもそれが一年、二年とだんだんと経験を積んで信頼を博して来ておる。でありまするから、この緊急調整の案というものは、政府がかつてに制限して、政府がかつてに案を出すのじやないのでありまして、中労委におまかせをして、どうぞひとつ中へ入つて収めてください、こういうことでありまするから、労働者側の全面的な意向をのむということはむずかしいかもしれませんが、大局的に立つて見れば、決して労働者の損になる結果を生まない、かように存じております。
  170. 前田種男

    ○前田(種)委員 大臣がそう言われると、もう一言私は申し上げますが、今までの中労委の実績が割合に効果を発揮しておると言われますが、従来の労働法規のもとであるから、中労委が実績を上げておると思います。もし緊急措置のこの改正案が施行されますと、中労委がいかに熱心に努力されましようとも、資本家陣営が相当強くなつて参りまして、公正な今までの実績を上げることは不可能だと私は今から言つておきます。必ずそうなります。今日はスト権があるし、又ストがやられるという状態のもとにおいては、何とかしてこれを大きくせずに解決しようとする中労委のあつせん等が、ある程度効果を発揮しておりますが、この処置が講ぜられました以後における中労委のあつせんというものは、なかなか容易に資本家陣営は聞くはずはないと私は思う。だからそういう点から行くと、今までの実績を高く評価されますが、私はなかなか容易でないという点に今後ぶち当ると考えます。この点がこの法律の一番中心だと私は考えますので、私の申しておりますこの点に対して、もう一度お答えを願つておきたいと思います。
  171. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 これは前田さんも御承知のように、五十日間の制限をしておるのでありまして、現在の中労委の態度がへんぱな態度にかわるということになれば、これは五十日置きましても、六十日置ききましても、解決しないということになります。でありまするから、私はその点は御心配なくていいのではないか。それからこういうことを解決する方法は自主的にやるか、こういうふうな調停でやるかしかありません。それで自主的にやれるものは、私は自主的にやるがいいと思います。けれども自主的にやつて解決がつかない、しかもそれが国民生活に重大な影響を及ぼす場合に、政府はこれに対してどういう処置もつけない、ほつておくんだ、けんかはけんかでやらしておけばいいんだということは、私は許せないと思います。でありまするから、いろいろ御意見はあるでありましようけれども、結局いろいろな点を考慮いたしますれば、こういう重要な、国民生活に大きな影響のある争議につきましては、緊急調整の方法をとるよりほかないではないか、しかもそれが一番結果的に見れば、公正ではないかと思います。しかしながらこの運用につきましては、決して濫用すべきものでございませんで、自主的な解決をまず原則にすべきことは当然でございます。
  172. 前田種男

    ○前田(種)委員 重ねてお聞きしておきたいのですが、今大臣は、濫用しない、あるいは政府機関としてはこの程度のものはやむを得ないというような言い方でございますが、私はこれは組合運動、労働組合の基本権に触れる問題でありますから、この点だけは労働組合の立場から承認できぬのです。というのは、形式的にはスト権を否認しているわけではありませんが、実質的には否認する形になりますし、五十日経過すればできるじやないかということにもなりますが、一体そういう時間のあやを置いて、ストが初めの目的通りやれるかどうかということなると、そてでまた大きな障害にぶち当るのです。その点相手の連中に非常に大きな力を與えるという結果になります。午前の答弁の中で、アメリカですらという例を引かれましたけれども、大統領が今日持つておりますような企業を接収するだけの権限を政府が持ち、それだけの責任を持つて労働大臣がやられますならば、あるいは公正な立場に立つて問題を処理するということもできますが、大統領が持つているような権限は日本の政府にはございませんし、そうしてストをやろうとする方だけをストップしておいて、そのことを処理しようというところに、一方的なという非難が多分にそこに集中されていると思うのです。この点もう一度承つておきたいと思うのです。
  173. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 アメリカの例をとつたのでありまするが、アメリカも国民生活に霊大な影響のある場合は、緊急調整の方法をとりまして、六十日間の制限を受ける。なおそのあと十五日と五日、合計二十日間の手続を要しまするから、合計八十日間の制限を受けております。今話になりました大統領の接政権は、その緊急調整のほかにさらに非常権として持つておるのであります。でありまするから、工場接收権だけあればいいんだと言いましても、それは非常権でありますから、そういう非常権をたびたび使うわけにも参りませんで、やはりその間に緊急調整の制度というものは私は必要ではないかとかように存じます。
  174. 前田種男

    ○前田(種)委員 もちろんこれは調整機関以外に、非常権を持つておるアメリカの制度である。しかし資本家に対しても、無理を言つた場合は、政府はその事業を接収するというだけの非常措置、こういうものが使われることは、国として遺憾なことでありますが、そういう権限を持つて、資本家にもにらみをきかし、しかして労働者の方も押えるというところで、均衡が保てると私は考える。一つだけ切り離してどうということを私は言つてない。もう一つは、やり労働組合運動の本質は、あくまでも罷業権を與えるということが本質であつて、その罷業権が行使されずに、労使関係が円満に行くというあり方にならなければならぬと思います。私は昨年十月イギリスに行つたとき、ちようど十月二十六日でありましたが、選挙の勝敗がきまつたときに労働党本部に行き、労働組合総評議会の本部に行つて、いよいよ保守党内閣ができた場合に、今度は労働攻勢が相当きつくなるだろうということを、端的に質問いたしましたときに、労働党のミスター・ヒーレーという国際局書記長、総評議会の、ミスター・ネルという国際局の書記長は、私にこう言つた。そう簡単なものじやない。イギリスの労働組合はゼネストをやるだけの実力を持ち、八百万近くの組織も持つておるが、労働攻勢が、今後きつくなるという簡単なものじやない。労働攻勢が積極化されるかそうでないかということは、政府の出方によつてきまるのだ。もう一つは、今度の選挙でもわかるように、六年間も政権を担当しておつた労働党が、依然として票数の上においては保守党よりも二十二万も多く票をとつておる。その差はわずかに二十五だ。普通ならば六年も政権をとつた政党なら、もつと大きな開きで負けるのがほんとうだ。それだけの実力を持つておる。だから今後労働攻勢がきつくなるだろうという君の質問は、一応もつともだがと言つて、つけ加えてこう言つてくれた。イギリスの労働党なり労働組合は、そう単純に物事は考えてない、いわゆる町で社会主義者が革命行動をやるような、そういうばかなことは考えてないのだ。それから政治ストをやつたり、ゼネストをやるというようなやり方を簡単にやれば、国の経済が破壊される。国の経済が破壊されると、一番先に困るのは、資本家でなくて労働大衆だ。そういうばかなことは、イギリスの労働組合や労働党は考えてないのだ。しかしわれわれは実力を持つてそういうことは考えずに、結局、勝負は投票箱ときめるのだという考え方をるる話しておりましたが、さすがにイギリスの労働党の幹部であり、総評議会の幹部である実力を持つた人の言葉として私は聞いて来ましたが、かくあるべきだと思います一しかし日本の実情はなかなかそうは行かない原因がある。先ほどからお尋ねしたように経験も浅いし、実力がない。あるいは経済上においても、その他の條件においても、そういうわけに行かない。私はやはり日本においても、今のような状態で日本が経済的に再建されるとは思つておりません。どうしてもこういう関係を正常な方向に導いて、むだな摩擦を避けて行くようにしなければなりません。しかしそれは何も労働組合だけの責任ではなく、資本家も同様責任を負い、政府また責任を十分感じてやつて行かなければならない問題であるはずです。そういう観点からいつて、今度の治安対策全体の政府の処置は、はなはだ遺憾だ。むしろ労働組合関係を刺激する結果になつておる点が多分にあると私は見ております。しかも労働組合の基本的な権利であるところの争議がやれないような状態にしてしまいますと、先ほどから繰返し申し上げますように、使用者側の意思というものは相当強くなつて参ります。私はやはり罷業権を完全に與えて、いつ何時でも争議ができるような状態に置いておいて、そうして争議が起らずに問題が処理されるというところに、対等の立場に立つて労使関係の調節がとれる。しかしそれが今度の緊急調整で相当曲げられるという結果になりますから、この点だけはどうしても承認ができない問題だと私は考えます。この点について大臣は、この程度のことはやむを得ない今日の状態だと言われますが、私はやむを得ない状態だと了解するわけには参りませんし、どうしてもこの点だけはこの條項から削除してもらうようにしなければならぬ。また削除させなければならぬと考えます。さらに今言われましたように、これはめつたに使うべきものではないと繰返して言つておられますが、三十五條の二に書いてありますように、公益事業に限つておりません。その規模の大きさ、あるいは特別の性質の事業ということになるから、小さな事業でも特別な性質のあるものについては適用されるという場合が出て参ります。従来の労調法で行きますならば、強制調停等は公益事業に限られておりましたが、今度はそうではなくして、一般見聞事業でも特別な性質の事業ということになると、国民生活に重大な影響を及ぼす、あるいは国家産業に重要な影響を及ぼすというような問題は、どの産業といえども国民生活に関係のない産業はない。だからこれは解釈上によつては、あるいは今後政府のものの考え方によつては、相当幅広く悪用されるという危険性が多分にあると思います。局限された、真に国民生活上やむを得ないというふうに、非常に消極的に考えられるべきものばかりでなくして、相当広汎な問題まで対象にして、特に規模の大きい小さいにかかわらず、特別なる性質の事業に関してはというようなこういう文句を使われたところにも、相当意味慎重なる政府の考慮がめぐらされておる。その考慮は労働組合側から行けば、どうしても納得できない考慮が携われておると私は見ておりますが、大臣の見解はどうでしようか。
  175. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 前田さんのイギリスの労働組合運動及びイギリスの労働党のあり方についての御見解は、私もそうありたいと思います。イギリスは長い間の経験を経て今日に来つておりますから、つまらない行動をとらないで非常によく行つておるのでありますが、前田さんも御指摘になりましたように、日本の労働運動は終戦後に生れたものも相当ございまして、まだ年月としては浅い。従つてイギリスの労働運動のようなあり方になつて行くには、日時がかかることと思うのでありますが、私は一日も早く労働運動がそういうふうに健全な姿になることを希望いたす次第であります。  なお緊急調整の点につきましていろいろ御指摘がございましたが、なるほどこれは公益事業に限つておりません。しかしそれはすでに現在の労調法の十八條におきましても、公益事業そのほか大規模な争議や、特別の性質―特別の性質というのは、労調法の際にも申しましたが、ごく一部のワクチンの製造にいたしましても、そこの工場がとまつてしまいますと、国民生活の保健上非常に脅威を感ずる場合があるからでございます。必ずしも全国的な地域にわたるものだけが、国民生活に重大な影響を及ぼすとも言い切れませんので、置いただけでございます。従いまして、これが運用につきましては、私ども十分留意をして行くつもりでございます。
  176. 前田種男

    ○前田(種)委員 午前中森山委員のゼネスト禁止法に対する見解について、労働大臣はゼネスト禁止法はまつたく治安上から考えられなければならぬ、本質的にはそうあるべきだという答弁をされましたが、私はこれは反対です。あくまでも労働組合に関係する一切の問題は、本質的には労働法規の建前の上に立つべきである。労働組合運動が、行き過ぎやいろいろなことのために、治安立法として法務府を中心とするところの立法措置によつて制約されるということは、これは本質じやない、逆だと私は考えます。あくまでも労働法規は、その国の民主化が達成され、その国が正常に発展する建前から行きますならば、あげて労働立法の中に、そういうものがもし必要ならば魅るべきであつて、治安立法としてあるべきでないと私は考えますが、この点に対する大臣の見解をもう一度承つておきたいと思います。
  177. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 これは午前中も申しましたが、ただゼネストだから禁止するという行き方は、私はどうだろうかと思つております。問題は、ゼネストが国民生活を非常に脅威に陷れるような事態になつたときに、これをどうするかという問題であります。そうなつて来ますと、おそらくそういうふうなストライキは、普通の健全なる組合活動としてはないのではないかと思うのです。しかし過去七年の間に、二、一ゼネストみたいな形において行われたこともあるのでありますから、今後においても、ないとは限らない。そうしますと、それではそういう問題は労働問題としてかりに禁止をして、それで解決をして行く方法がつくかというと、そういう政治的な意図の多分に含まれたものは、やはりこれは治安上の処置によらなければならぬのではないか、かように存じまして、労働法としては今日のところ、緊急調整のところが限界ではないだろうか、かように存じております。
  178. 前田種男

    ○前田(種)委員 この問題は、論議をしますると時間が延びて参りますからさらに後日に譲りますが、地方公営心業労働関係法案の中心をなします問題の二、三の点について承つておきたいと思います。第一は、これは御承知のように公企労法と同様にスト権がないのです。私はあくまでスト権を持たすべきだと主張いたします。それは実績から行きましても、東京の地下鉄はスト権があつて、都電はないというような状態は、現実に不合理な状態であつて、私はスト権は與えてしかるべきだと思います。もしスト権がない場合も、団体交渉の範囲というものは相当に広範囲に許されてしかるべきである。ここに指摘されておりますところの団体交渉の範囲等につきましても、項目をあげて、それ以外のものは許されないという状態にすることは、労働組合がその企業にほんとうに協力態勢を整えようとする場合におきましても、非常な制約を受けます。あるいは管理権、経営権に入ることがいいとか悪いとかいうようないろいろな議論もございますが、ほんとうにまじめな労働組合でございますならば、少くとも経営協議会あるいは経営上の問題についても、相当団体交渉の中において発言の余地を與え、あるいは交渉の余地を與えることが、かえつてその労働組合が実力行使をせずに、団体交渉によつて解決できると思います。労働省が最初に立案された條項に比較いたしますと一就業規則の問題、共済及福利厚生に関する事項、あるいは専従職員に関する問題等々が省かれているのです。私は、こういうことは新しく政令を法規にかえようとするスタートにおきまして、当然もつと幅広く団体交渉の内容を與えなければ、相手側の理事者に口実を與え、そうして非常なきゆうくつな組合活動の中に制約されるということになると思いますが、この点に対する見解を承つておきたいと思います。
  179. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 地方公共団体の企業につきましては、形の上ではなるほど地下鉄その他と似ておるのでありますが、御承知のように相手方は公共団体であります。つまり地方の公共団体は一般の公民に奉仕する形になつておるのでありまして、会社の方、使用者側はこれは一つの営利団体である。利益を求める団体であります。ところが片一方の公共団体は利益を求める団体ではないのでありますから、そこに普通の労使関係とは違うものがある。しかしながら労働條件について、ただ公共団体だから県会できめればいいではないかというわけにも参りません。業態はお話のように地下鉄あたりと似たところがありますから、従つてその待遇については少くとも団体交渉権を許して、最終決定を県会や都会にまかせようじやないか、こういう趣旨でありますけれども、経営についての参加を認めるとかなんとかいう点になりますれば、私企業についてはそうしなければ、自分たちに直接影響を持つて来るということもございましようけれども、公共団体の方は、もし利益が上らなければ上らないで、一般会計から繰入れの方法もございましようし、あるいはまた料金その他につきましても県会でこれを決定することができるのでありますから、従つて私企業と同じようにというわけには行かないのではないか、かように考えております。
  180. 前田種男

    ○前田(種)委員 どうも公共団体あるいは公共の福祉という名前のもとに、実際は当然あるべき交渉権、罷業権等が、大幅に制限されるという結果になつております。今日国内のこの法律を適用される主要な団体でありますところの都市交通のごときは、戦前戦後を通じまして、一番健全な組合だといわれております。ある意味では今日の私鉄以上に実績を持つており、また事業にも協力している団体だということが言えるのです。そういう組合がかえつてそういう名前のもとに多くの制約を受けるということになつて参りますと、先ほどから申し上げますように、労働組合運動がすなおであるべきものが、かえつて曲げられるという結果にもなつて参ります。私はむしろ団体交渉権の範囲等は相当大幅に認めて、そうして実際に労働組合が事業に対しましても真に協力態勢ができるような状態にすべきだと考えます。それで何らの弊害がないと私は思います。  それからもう一つは、先ほども問題になりました公企労法の第十六條、第三十五條の関係が、本法によつては第十條、第十六條ということになつて来ておりますが、どうも公企労法の條項よりも悪くなつたのではないかと私は見受けます。この点からいつて一応この内容について、もつと明確な線を出さなければならぬ。公企労法であれだけ問題を與えましたから、その問題がないようにするのが進歩的な新しい法規であるべきであるにもかかわらず、後退したような結果なつておるきらいがありますのでこの関係に対する説明を、あるいはこの点については局長からでもいいですから、ひとつ説明願つておきたいと思います。
  181. 賀来才二郎

    ○賀来政府委員 十條と十六條に書いてありますことは、公労法の十六條、三十五條と同じでございまして、後退をいたしておりません。
  182. 前田種男

    ○前田(種)委員 十條並びに九條、八條という関係になつて参りますと、協約等も、九條ではその定める規則その他の規程に抵触する内容というようなものに拘束される。こうなつて参りますと、東京都の例を引きますと、相当こまかい規則、規程があるわけであります。これに一々抵触するということになつて参りますと、団体協約等が相当大幅に圧縮されるのです。もちろん議会の承認を得る場合は許されますが、前段にこういう規定が本法に盛られておりますと、その規定に拘束されまして、協約というものが非常に狭められるという結果になつて参ると思います。その点に対する局長の意見を承つておきたいと思います。
  183. 賀来才二郎

    ○賀来政府委員 地方におきまする條例と規則との関係につきましては、われわれといたしましては非常に慎重に扱つたつもりでありまするし、特に御意見のように団体交渉が行われ、かつ団体協約を締結するということがこの法律の最も主要な点でありまする関係から、これが規則あるいは條例等によつて必要以上に制約されないように注意をいたしたつもりであります。この法文の書き方は、さような意味において、條例は地方においては法律にひとしいものでありまするから、一応條例に抵触するものにつきましては、それがかえられるまでは効力が出ないということになつておりますが、規則につきましては、これは協約の方が強いというふうな書き方をいたしておるのであります。
  184. 前田種男

    ○前田(種)委員 この点はまた逐條審議のときに触れたいと思いますが、第十一條の争議行為の禁止の場合に、次の第十二條におきまして、労働組合を処罰する規定があります。十一條二項のいわゆる企業者側に対しましては、「してはならない。」という規定はありますが一十二條では罰則規定はないのです。これはまつたく片手落ちじやないかと思いますが、その点の見解を承つておきたいと思います。
  185. 賀来才二郎

    ○賀来政府委員 十二條につきましては、十一條違反についての取扱い方を規定いたしておるのでありますが、公労法の場合と同じように、本法に規差する手続に参與し、救済を受けることができないということが書いてありますが、罰則としてはございません。
  186. 前田種男

    ○前田(種)委員 私の言つた罰則は、処罰の意味の罰則でありまして、違反行為の罰則のようにお聞きになつたと思いますが、それは私の質問の言い表わし方を訂正いたします。十一條の規定を侵した者は、十二條によつて解雇することができるというような、企業内におけるところの罰則規定です。要するに処分その他の方法がここに書いてあるわけです。しかし同じようにそういう規定を設けるならば、この二項のいわゆる企業者に対して、何もきめてないという点については、やはり何か制裁を加えるべきだと私は思うのですが、どうですか。
  187. 賀来才二郎

    ○賀来政府委員 対等の立場という意味から言うと、そういう御意見も成り立つかもしれませんが、いやしくも公共団体の責任者といたしまして罰則といいますか、そういうものがないから、さような閉鎖をやるということはないものと考えております。
  188. 前田種男

    ○前田(種)委員 次にこの法規に関連いたしまして午前中にも質問がございましたが、いわゆる公共企業体に関係のないという意味において、単純労務の條項を、最初の原案にはこの中に入つておりましたのが、提案されるときに削除されております。午前中は何か別途の方法をもつて処置をしたいという大臣の御答弁でありましたが、これは御承知のように相当長い間もみにもんで来た問題でありますし、また政令がなくなるときには、必ずこれに対するところの代案を考えて処置するという答案たびたびなされておつた経過から申しましても、当然この中に入れるか、この中に入れられなければ別途の方法を講ずべきであると考えます。しかも私はあくまでも労働省の所管としてやるべきだという考え方を持つておりますが、その点に対する大臣の見解を承つておきたいと思います。
  189. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お話のように附則二十一項に規定しております単純労務については、別の法律できめるということになつておりますので、検討いたしております。あるいはお話のように労働省として立法す、べきものじやないかと思つておりますが、これは自治庁の方とも今相談中でございまして、いずれ将来何らかの形において設けたい、かように存じております。
  190. 前田種男

    ○前田(種)委員 時間もだんだん延びまして恐縮でございますが、最後に基準法のことについて承つておきます。基準法の中で一番重大だと思いますものは、やはり十八才未満の坑内労働者の問題と特定の女子の時間外勤務、深夜業務の問題だと思います。大臣が本会議でもあるいは一昨日からいろいろ答弁されております中にも、イギリスの例あるいはILOの例を引かれて当然だという見解を申し述べておられますが、私はあくまでも現行法でもうしばらくがまんすべきだと考えます。なぜかと申しますと、この問題が一つの突破口として、労働基準法を悪くするのではないかという世論があるわけです。独立して旬日を出ずしてこういうところに手を染めて、そしていろいろりくつを設けられまして悪くするというやり方に対して、私は基本的に反対です。というのは、なぜ急いでこういうことをやらなければならぬかということを考えてみますと、そう大して急がなくても、大所高所から十分に検討してもおそくないと考えるのであります。特に監督官庁の厳重な監視の上に、設備等が十分許された範囲内においてこれを採用するということを言つておられますが、今日の法規が完全に事業上に適用されておるかどうかという点を見ますと、現行の基準法がなかなかそのままで適用されていないのです。相当たくさんの違反行為が平然として行われているのが今日の現状であります。そうした中に十八歳未満の坑内労働を許すということになりますと、結局許されない事業場にまでもそういう点が悪用されることになつて来ると私は考えます。技能養成の問題はあくまでも必要である。禁止されているところの坑内以外において技能養成の措置をつくつてやることは必要でございますが、十八歳未満を坑内に入れて、しかして技能養成をやるというやり方には相当危險性も伴いますから、どうしてもこのことが納得の行かない点です。それから女子の時間外労の場合に、特定の計算あるいは期末あるいはその他の方法というように限られた項目を掲げておられますが、これは引用いたしますと相当大幅に適用されることになります。百貨店などでたなおろしをやる、普通の商店、会社がたなおろしをやるような場合に、もちろん会計経理をやつておる者ばかりでなくして、伝票や商品の一切の清算をする者までも許されるということに、相当蹟大して適用される危険性が生れて来るわけです。さらに深夜業を許される特定の女子に対しましても、いろいろ事情が出て参りまして、相当擴大して許されることになつて参りますと、やがてはこれがまた通俗的になつて参りまして、相当違反行為がこれを機会に大幅に行われることになつて来ることが心配されるのでございますから、この点に対する大臣なり局長の見解を承つておきたいと思います。
  191. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 坑内労働の問題でありますが、前田君の御心配の点は私どもも気をつけておるところでございますけれども、御承知のようにこの技能養前は若いときからやりませんと、十八歳になつて初めて坑内の技能の養成をやるのだというのでは、実情に合わぬと思います。従つて十六歳になつて十八歳まで、一人前に働くまでにいろいろ覚えるのでありますが、その際に坑内の作業について、坑内の技能を習う必要の限度において坑内に入ることを許すということは、これまた実際の必要があるのではないかと思つております。これが国際的に許されていないことであれば、私はこれをしいてやろうとは思いません。しかし国際労働條約でも、十六歳から十八歳までは技能養成ばかりではないのです。技能養成のほかに特別の装置さえ考えるならば、一般作業では許せるような條約があるのであります。でありますから技能養成だけでも十六から十八まで許すことは、国際労働條約でも認められてることである。また各国の例を見ましも、イギリスは十五歳以上は技能養成ばかりでなく、條件なしに許しているのであります。また他の国の例をとつてみますと、濠州でも十六歳は別に條件なしに許している。フランスでも十四から十六までの間は、一定の作業に限つてやはり地下労働を許している。でありますから他の国の例をずつととつてみましても、十六から十八について、せめて技能養成をすることは、そう国際的に劣つておるとは思わない。それが必要のないことなら別でありますけれども、十八歳になつて初めて坑内に入れてもらつて坑内作業を覚えるというのでは、いかにも実情に合わない点がありますので、今回の改正をするのであります。でありますから技能養成といつて、これを一般作業に使うという脱法的な行為をすることは許されるべきではございませんが、昔と違つて今日は坑内も労働組合が非常に発達しでおりますから、そんな違反が堂堂と労働組合の前で行われるとは考えられませんし、私はこの程度のことは必要であろうと存じます。
  192. 前田種男

    ○前田(種)委員 今大臣が言われましたように、技能養成があくまでも必要だということは私も認めます。しかしこれは坑内に入れなくとも、一、二年の間は炭鉱全体の作業場の実態その他の点について十分習得せしめる。あるいは坑外において坑内の実情等の予備的な教育をやるという方法もあると思います。問題は坑内に入れるという点だと思う。それについて国際労働機関なり、あるいはイギリス、濠州等の例を言われましたが、これには設備の面においても、衛生施設の面においても、あるいは賃金その他の労働條件において、あるいは健康診断の面、社会保障全体の面において、わが国と西洋各国の実情とは、相当大きな差があることを考えなければならぬと思います。そういう点を考えずに、他国が十五歳でもやつておる、あるいは十六歳でもやつておるので、日本でも当然許されてよいということでありますが、実態にそういう大きな開きがあることを考えなければならぬのと、もう一つは日本の場合は往々にして現行法規ですら脱法行為をやろうという風習が、相当露骨にあるのであります。おそらく諸外国は法規に対しては厳重に守るという建前の上に立つて、一切のことがやられておる。日本の場合は逆に相当大幅の違反行為すら行われておる現状のもとにおいて、こういうことが許されると、また許されていない中小の炭鉱においても、そういうことが行われるのではないかという点を心配いたします。通産省の係りの課長も見えておりますが、一体通産省としてはその問題について、そういう弊害がないような措置をとられるかどうかという点を、通産省としてお答え願いたいと思います。さらに大臣としてもその点についてもう一度お答え願いたい。それから後段に申し上げました女子の時間延長、深夜業の問題について、亀井局長からお答え願いたいと思います。
  193. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 重ねての御質問でございますが、ただいま申し上げましたように、おそらく前田さんも十六から十八の技能養成についての御異議はないので、もしそれを認めると脱法行為が行われはしないかという御心配のようであります。だからその点は私ども法の施行の上においては厳重に留意をいたします。と同時に先ほど申しましたように、今日の労働組合はそんなものをそう黙つて見ておるわけではございませんから、私は大丈夫施行できると思います。
  194. 加藤悌次

    ○加藤説明員 私資源庁の炭政局の炭業課長をやつておりますので、坑内労働のうちで特に石炭関係のことしかわらないわけでございますが、その範囲内でお答えいたしたいといと思います。まず第一番に、坑内作業の予備知識を與えるという程度のものであれば、坑外でできるではないかというお話でございますが、全然坑内を見たこともない人に、実際の坑内の作業のやり方を教えようとすることは、そのこと自体が不可能ではなかろうかというふうに考えます。それから濫用されるかどうかということでございますが、実は坑内労働に対する監督権は、今度のこの基準法の関係につきましてはもちろん労働省でございます。通産省の方としましては、これは私の局の権限の範囲外になりますが、一般の労働基準と切つても切れない関係にある鉱山についてだけの保安法という特別法がございます。その保安法に基きまして、鉱山保安局の方でその監督をいたしておるわけでございますが、この鉱山保安法による監督というのは、年齢だとかそういうものの違いによつて監督がかわつて来るというふうな性質のものではございませんで、坑内一般についての保安の監督という見地から、特に年少者だけを対象に監督を強化するとかなんとかいうふうなことは、保安法の建前からは現在していないわけでございます。それから、少し順序が逆になつたかと思いますが、技能養成の必要があるかどうかという問題でございます。この点につきましては、私どもといたしましてはまつたく中立的な立場でございまして、ただ申し上げられることは、今度そういうふうな規定が設けられ、技能養成という目的のためには坑内労働をやつてもいいというチャンスが與えられることは、非常にけつこうなことだというふうに考えておるということでございます。先ほどから御懸念がございますが、これはあくまでも坑内労働そのものが目的ではないのであつて、坑内に入るということは技能養成の一つの手段だという考え方で、これは労働省が御監督になるわけでありますが、私どももそういう方面の指導は側面的にやつて行きたいと考えております。
  195. 前田種男

    ○前田(種)委員 先ほど大臣は技能養成は私も認めておると言われましたが、私は必要は認めるのですが、しかし技能養成を坑内に入れてやることには反対であります。坑外で技能養成、素地をつくるというだけのことは、それぞれの炭鉱がやつてしかるべきだが、十六歳、十七歳の子供を坑内に入れることは残酷だというふうに私は考えます。それ以上のことは言いません。それからその点については設備が、何といつても日本の炭坑の現状においては無理です。現在十分設備の整えれたところに対して許可をすると言つておられますが、それがはたして完全に守れるかどうか。その点は今日基準法が完全に守られておるかどうかという点を見てもわかるし、今の通産省の答弁に至つてはなつていない。もつと法規を守らなければならない点があるにもかかわらず、中小炭鉱に至るまで法規が完全に守られておるかというと、守られていないのです。そういう無理なことをやつておる。その上になおまたこういうことをやりますと、むしろ悪い結果を来すというのであるから、そこまでやることがいいかどうかという点は、もつと慎重に扱つてもいい。半年か一年早く十六歳の子供を坑内に入れなければならぬというほどせつぱ詰まつた問題ではなくて、もつと幅を持つて十分検討してやるべきだ。それからもつと炭鉱の設備その他の問題等も完全に近いような内容にしてからそういう方法をするとか、そういうことを研究するようにしてもいいと私は考えます。
  196. 龜井光

    ○龜井政府委員 先ほど御質問のございました女子の労働時間の延長のことでございますが、現行の国際労働條約によりまして、女子の時間延長を認めておりまする場合は、非常災害の場合、腐敗しやすいものの急速な処理を要する場合、たなおろし、決算、清算、賃金の支拂い等の事務の場合、あるいは異常に業務の繁忙の場合等非常に広くその例外の場合を認めておるのでございますが、今回の改正におきましては、その中の決算事務だけに限定をいたしたのでございます。この問題につきましては、労使公三者完全に意見の一致した点でございまして、われわれとしましては、その答申を尊重いたしましてごの改正案をつくつたわけでございます。決算と申しまするものは、御承知のように大体年に一回か二回行われる性質のものでございます。その年に一回あるいは二回しか行われない決算事務のために、平素職員を雇つておきますることは、費用の負担を増加させることで適当でございませんし、あるいは臨時に職員を雇いましても、日ごろの事務に習熟しておりませんければ、その能率も上らないわけでございます。従いましてこういう特殊のごく例外的な場合におきまして、現行法の一週間に三日、すなわち一日で計算しますると、一週に三日間だけ延長し得る制限を二週にして、それが六日間だけ延長し得る。大体六日間引続き毎日二時間ずつの時間延長をいたしますると、この程度の事務の処理はできるだろうというふうな見地から、この例外措置が認められたのでございます。それ以外にごの條文の適用範囲を広げることはできないのでございまするし、またする意思もないわけでございます。  次に深夜業の問題でございまするが、現在の国際労働條約におきましては、非公共的事業につきましては、女子の深夜業につきまして何らの制限がないのでございます。公共的事業につきましては、国際労働條約で深夜業の禁止をいたしております。しかしながら航空業は、その適用の範囲内にないのでございます。従いましてたとえばエア・ガール、これはその業務の性質上、必ず午後十時過ぎにも業務に従事しなければならない実態があるわけでございまして、これはまた世界の各国におきましても、現在行われておるところでございます。こういうもの、あるいは女子の寄宿舎の寮母、これもやはり十時過ぎに業務に従事しなければならぬ場合もありましようし、また寄宿舎のまかない婦、これも交代制でやつております場合は、夜食等の関係で、十時過ぎには仕事につかなければならぬ場合もあろうと思います。これらのごく例外的な場合において認めようという趣旨でございますし、しかもこれを認めるにあたりましても、中央労働基準審議会の議を経て、命令で定めるものに限定されるのでおります。中央労働基準審議会の意見を聞くのではなくて、議決を経なければ命令で指定できないことになつております。御承知のようにこの中央労働基準審議会は、労働者の代表も出て来られて審議に参画されるわけでありますから、この範囲につきまして、そう非常識な決定はなされるものではないとわれわれは考えます。
  197. 前田種男

    ○前田(種)委員 今局長はそういうことを言われましたが、現実に大阪の本町筋の大商店を見ても、女子が相当おそくまで夜業をやつておるのです。これは一々許可を受けてやつておるかどうかという点もはなはだ怪しいものと思つております。大方のこうした大きな商店街では、脱法行為をやつておる。現実に見ておるのです。これを厳重に取締つておらぬ。そういう現行法ですら十分な取締りができていないときに、こういうことになりますと、なおさらそういう脱法行為に拍車をかける結果になることを私はおそれる。現行法が完全に守られておつてそうしてこういう必要なものの最小限度を許されるということならば、もつと慎重に扱つて、これに対して十分配慮するというだけの余裕を持ちたいと私は思います。女子に時間外労働をさせる場合において、全国には相当多数の脱法行為が行われているというこの現実を、一体局長はどう見ておられるか。そういう事実はありませんとおつしやるのなら別ですが、現実に相当多くあると私は見ております。この点については、答弁があればしてもらつてもけつこうですが、なければ私も聞きません。そういう事実のあることをはつきり認識して、全国の各局に命じて厳重に脱法行為の取締りをやつていただきたいということを付言して、私の質問を終ります。     ―――――――――――――
  198. 島田末信

    ○島田委員長 この際お諮りいたします。委員天野公義君が、今十六日一旦委員を辞任いたしましたので、ただいま港湾労働に関する小委員会におきまして、小委員が一名欠員となつております。この際小委員の補欠選任を行わねばなりませんが、これは前例により、委員長より御指名いたすことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  199. 島田末信

    ○島田委員長 御異議なしと認め、天野公義君を小委員に御指名いたします。  なお天野君は、港湾労働に関する小委員長でもありましたので、小委員長も欠員となつております。小委員長の選任につきましても、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  200. 島田末信

    ○島田委員長 御異議なしと認め、天野公義君を再び港湾労働に関する小委員長に御指名いたします。  次に珪肺病対策小委員の青野武一君も、去る七日一旦委員を辞任されておりますので、珪肺病対策小委員も一名欠員となつております。この際小委員の補欠選任を行わねばなりませんが、これも前例により、委員長より御指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  201. 島田末信

    ○島田委員長 御異議なしと認め、青野武一君を小委員に御指名いたします。  次会は明十七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時七分散会