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1948-04-06 第2回国会 衆議院 司法委員会 10号 公式Web版

  1. 昭和二十三年四月六日(火曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 松永 義雄君    理事 石川金次郎君    井伊 誠一君       池谷 信一君    石井 繁丸君       山中日露史君    中村 又一君       八並 達雄君    山下 春江君       吉田  安君    佐瀬 昌三君       花村 四郎君    明禮輝三郎君       大島 多藏君  出席政府委員         法 制 長 官 佐藤 達夫君         法務廳事務官  國宗  榮君  委員外の出席者         議     員 山下 榮二君         專門調査員   村  教三君         專門調査員   小林 貞一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  軽犯罪法案(内閣提出)(第一三号)  行政代執行法案(内閣提出)(第三一号)     ―――――――――――――
  2. 松永義雄

    ○松永委員長 これより会議を開きます。  行政代執行法案について、政府の説明を願います。
  3. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 本案は行政執行法を廃止いたしまして、新たに行政上の代執行に関する法規を整備せんとするものであります。  現行行政執行法は、古く明治三十三年の制定にかかるものでありまして、その内容において、たとえば行政檢束の規定のごとく、過去の歴史において暗い陰影に満ちておるものがあり、その他これを新憲法の光のもとに照しますならば、調整を要するところ少からざるものがあると思われるのであります。よつて政府は、これが調整について、今日まで種々研究を進めてまいつたのでありますが、その結論として、この際行政執行法を全面的に廃止して、これに伴う暗い連想を拂拭するとともに、將來における濫用の余地を閉しも、今日必要なる限度において、新たなる制度の出発を企図することといたしたのであります。  御承知の通り、從來の行政執行法には、前述の檢束、仮領置等の警察的処置のほか、行政上の義務の履行確保に必要な手段について、若干の條項を設けておるのでありますが、本案は、これに規定されておりました代執行に関する手続を補足整備いたしまして、單独の法案といたしたものであります。  本案の内容は、法令に基づく行政上の義務を義務者が履行しない場合、他の手続によつて、その履行を確保することが困難であり、かつその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政廳は、みずから義務者のなすべき行為をなし、または第三者をして、これをなさしめ、その費用を義務者から徴收することができる旨を定め、これに必要な手続を規定したものであります。すなわちたとえば違法の建築物あるいはやみの建築物に対しまして取りこわしの命令が出ておりますにかかわりませず、義務者がこれを実行しない場合には、行政廳においてその取りこわしを行いまして、費用を義務者から徴收するというような場合が、これに該当するわけであります。  なお現行行政執行法には、行政上の義務履行確保の手段として、右のいわゆる代執行のほかに、執行罰及び直接強制の途をも存しているのでありますが、執行罰については、その効用比較的乏しく、罰則による間接の強制によつておおむねその目的を達し得るものと考えられ、また直接強制は、人または物に対して直接実力を加えるものでありますがゆえに、すべての場合に通じて、一般的にその途を設けるのは行き過ぎであろうと考えるのであります。從つてこれらの手段は、特に行政上の目的達成上必要な場合に限り、それぞれ法律において、各別に適切なる規定を設けることとし、本案におきましては、行政上の義務履行確保の手段として、一般的に必要であり、かつ適当と認められる代執行に関して、その手続を定めることとした次第であります。  以上をもつて本案の要旨の説明を終ります。何とぞよろしくお願いします。
  4. 松永義雄

    ○松永委員長 午後一時まで休憩いたします。     午前十一時十分休憩      ――――◇―――――     午前二時二分開議
  5. 松永義雄

    ○松永委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  行政代執行法案について審査を進めます。
  6. 井伊誠一

    ○井伊委員 本法における代執行は、どういう場合に行われるか。その具体的な例示を指摘願いたいと思います。なお從來の行政執行法当時の運用の実例をも、併せて承知いたしたいと思います。
  7. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 代執行につきまして、実際に具体的に働きます場合につきましては、むしろ從前の実例を先に申し上げた方がいいと思うのでありますか、御承知の建築の取締りの法制がございます。市街地建築物法、それから近くは臨時建築取締規則というようなものがありまして、建築の統制をやつておるわけでありますが、これに違反して建物がつくられます場合に、行政廳といたしましては、違反建造物の除却処分を命ずることができるわけであります。その場合に義務者が除却の処分を一向やらぬ。これを放置しておきますと、非常に困るという場合には、やむを得ず行政廳の方から出かけて行きまして、その建物の取壊しをやる。そうしてその費用は義務者から取立てるというような例が、比較的に多い例であります。それからわれわれの承知いたしております例としては、交通取締りの関係で、交通上のじやまになるようなものが、道路のきわなどにつくられる。その場合に同じくそれの除却の命令を出し得るわけでありますが、それに應ぜずして一向義務者が除却しないというような場合に、やはり行政廳の方でその除却の処分をやりまして、費用を取立てるというようなことがあります。それから廣告物の取締りの関係で、廣告物取締法というのがありますが、この関係で非常に危險な廣告、看板、あるいは風俗を害するような看板などの除却命令を出すような場合があります。一番われわれの耳に触れておりますのは、今のやみ建築物の除却取壊し、例の池袋の場合のごとき、新聞にも出ておりましたが、顯著な例だと思います。今後のこの法律によります場合につきましても、大体予想されますのは、さような事柄が予想されるのでありまして、それ以外に代執行が働く場合というのは、あまりないのではないかというふうに考えております。
  8. 井伊誠一

    ○井伊委員 第二條におきまして、義務者がその行為を履行しない場合であつて、代執行以外の手段をもつてしては、その履行を確保することが困難であり、その上不履行を放置しておけば、著しく公益に反すると認められる場合において、この代執行がなし得るということになつているのでありまして、この履行の確保が困難であるということと、それからその不履行を放置しておくことが、著しく公益に反するということが、この代執行をする一つの條件になつていると思うのであります。そこで、これはどうしても困難であるということと、それから著しくということが当然問題になつてきて、しこうしてこれが二つともそろつていなければならぬものと解釈せられるのであります。そこで、それは異議申立の理由になるということはもちろんでありますが、こうなつております以上、代執行をしようとする行政廳におきましても、こういう事実が著しくは公益に反しないというように認められるとするならば、それは代執行ができないということにならなければならぬように思うのであります。そういうふうになりましたときの本來の法律の効力、あるいはその法律に基いて行政廳が命ずる命令の効力というものは、どういうふうになるのでありましようか。
  9. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 むつかしいお尋ねであると思うのでありますが、命令の効力はあくまで法律に基きました正しい命令であります限りにおいては、依然として命令の効力はもつわけであります。從いまして、かりにこの代執行の條件がそろつておらないために代執行の手続はとれないという場合におきましても、その命令に違反したという事実は、依然として残るわけでありますから、多くの場合の法律にあります罰則の規定、これはほとんどこういい命令に対する違反の罰則があるのでありますが、その罰則の規定は当然働くというふうに考えております。
  10. 井伊誠一

    ○井伊委員 もう一つお尋ねしたいと思います。第三條の第二項に「当該行政廳は、代執行令書をもつて、」云々ということになつておりますが、この代執行令書の表示します内容と申しますか、大体どういうふうになるのでありますか。と申しますのは、その権限の範囲、内容というものをどういうふうにして表示するかということでございます。
  11. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これは第三條の最初の第一項におきまして一應戒告がなされるわけでありますが、おそらくこの戒告におきまして、どういうことをやれ、たとえばお前の建てた建物は除却命令の対象になつておるのだから、そのどこそこ番地のどの建物を除却せよという一種の戒告をまずするわけでありますが、今度それを受れまして、ただいま御指摘の代執行令書が出るわけであります。從いまして、ただいまの戒告の場合に出ました具体的の建物であれば、その建物の特定した指定というものをまず渡される令書にそれが示されることになるわけであります。その点は戒告の書面に書いてあるものず一應そこにもう一遍うたわれまして、それからここに書いておりますいつ代執行する、どういう人がいく、費用は大体どのくらいかかるということがこれに示されるというふうに考えておるわけであります。
  12. 井伊誠一

    ○井伊委員 たとえば建物の取拂いをするというのが終局の目的であり、そのことが代執行令書の中に書いてあるといたしまして、その方法の過程におきましては、一度にこれを取崩すことができないために、ある場合にはこれを管理をするとか、あるいは占有をどういうふうにするとかいうことが必要なのではないかと思うのであります。すなわち仮処分をします場合と同等な用意が必要なのではないか。そうしたならば、やはり仮処分等に現われておるように、その範囲というものが、相当明確に示されていなければならぬではなかろうか。それを取崩すに必要な一切の行為というふうにでもなるのであるか。かりにこれを占有をして、すぐ取崩してしまえば格別でありますが、それが何日もかかるので、占有していなければならぬ期間があるというようなことになれば、そういう占有する、これを保管するというような権限が、当然この令書によつて発生するのでありましようか、どうでありましようか。その点を伺いたい。
  13. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 大体今の除却の例で申しますと、除却処分ということが、一應はつきりするわけでありますが、その除却処分の行われる態様と申しますか、それからその期間というようなものが、一應問題になるわけであります。これは大体建物そのものが特定されておりますし、また実際上最小限度に必要な除却行為が何日かかり、あるいはどの範囲の幅で行われるということも、これは客観的にその必要なる限度がはつきりしておると思うのでありまして、そこまでのこまかいことをこの執行令書に示すというようなことは、実は予期しておらないのであります。從いまして、通常考えられる必要なる最小限度の処置が行われる、從いまして、この令書をもらつた方では、自分の建てた違反建築物は非常に大きな建物であるから、相当期間かかるだろうということは。示されずして大体見当がつくわけであります。その間はやはり立退きの必要もありましようし、その他火災の処置というようなことにも本人の義務者の方が適当な判断をもつてこれをやつてもらう、その二、三日かかつたというような場合執行中の管理というようなことは、これはやはり執行者の方の責任として考えられることではないだろうかというふうに考えておる次第であります。
  14. 井伊誠一

    ○井伊委員 今の建物の除去というような実例につきましても、もしその義務者なるものが執行責任者の行為に対して抵抗する、反対するというような事実が予想される、そういう場合における執行責任者の権限というものは、どこまであるのか承りたい。
  15. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これは過去の公務執行妨害の場合と同樣に考え、かつその措置も同樣に措置してしかるベきものではないかと思います。考えようによりましては、それに妨害を加えた者に対して、直接手を下して実力をもつて強制するということも実は考えられるのでありますが、本件の立案に対しましては、まずそこまでいくのはいかがであろうかということで、一般の公務執行の場合と同樣に考えるという氣持であるのであります。
  16. 井伊誠一

    ○井伊委員 もう一つ伺いたいのでありますが、総括的にこの行政執行法によりまする代執行と本案によりまする代執行との間には、どういうような差異がございましようか、その点を御説明願いたいと思います。
  17. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 大きく申し上げまして数点ありますが、第一点はこの適用の幅の問題であります。すなわち現在の行政執行法におきましては、行政官廳の命令というふうに発令の機関が行政官廳だけに限られておるわけであります。本案におきましては、第二條にありますように、行政廳という言葉を使いまして拡めたのであります。すなわち行政廳と申しますことによつて、地方自治体の機関をも含むことになります。これは御承知のように、最近における地方自治行政の拡充に伴いまして、同じくこの命令違反という場合であるならば、行政官廳であろうと、地方自治体の機関の場合であろうと、同樣に取扱うのがむしろ合理的であろうというふうに考えまして、幅を拡めたわけであります。  それから第二点は、先ほど井伊委員の御指摘になりましたように、この第二條におきまして條件をつけまして、他の手段によつて確保することが困難である、かつ不履行を放置することが公益に反するというような條件をはめまして、濫用を防ぐという措置をとりました。それからもう一点は手続を多少こまかく法律そのもので規定することにしたという点も若干違いと申せば申し得ると思います。  それから最後に、不服の場合に訴訟に訴えることは、もとより訴訟に関する一般法によつてできるのでありますが、訴願あるいは異議申立というような途をも設けまして、十分不服を言つていただく機会を設けたというような点が、おもなる差異でございます。
  18. 井伊誠一

    ○井伊委員 私の質疑はそれだけであります。
  19. 石井繁丸

    ○石井委員 本法案によつて、昔からありました行政執行法が廃止せられるのでありますが、大体この法律においては、行政執行法の中の第五條を中心として法案が制定せられたのでありまして、その他の第一條、第二條、第三條、あるいは第四條、第七條、それらに該当する法案は、廃止せられることになるのでありますが、それら廃止せられる法案について、何らかいずれ立法その他によつて廃止に基くところのいろいろな影響の発生を防止することの措置が考慮されておるかどうか、お伺いしたいのであります。
  20. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいま御指摘のように、行政執行法の中には一條、二條、三條、四條というような、ただいま本案において取上げております以外のことが、取上げ規定されております。殊に行政檢束の規定のごときは、幾多の暗い陰影をもつた沿革をもつておるのであります。これらについての政府の考え方といたしましては、すべての行政分野を網羅して一條、二條、三條、四條というような規定が全然不必要かどうかという点については、これは十分檢討をしたわけであります。なおまた今後檢討をし続けようという態度をもつておるわけであります。結論は、むしろ背水の陣を布いて、こういう新憲法の光のもとに照して見た場合に、何か若干の調整を要するというような條文は一挙に抹殺してしまう、そして新たなる措置のもとに、どうしても必要であるというところに一々の立法をしていうというのが、政府の達しました結論であります。しかしてさような背水の陣を布つて、一体大丈夫かという懸念が残るのでありますが、一通り今日のわれわれの研究の結果を申し上げますと、一條の行政檢束というのは、大体醉つぱらいでありますとか、氣違いでありますとか、自殺云々というようなことであつて、隣人の愛をもつて手を差伸べて救護をする場合とさしたる違いのない場合であります。殊に警察官というものが國民の生命身体の保護という責任をもつておりますから、普通の隣人の場合であつたら横を見て通つてもよいことであつても、警察官は職務上その救護の手を差伸べなけれでならぬという事柄でありますので、警備官がその場合とるべき措置というものは、やはり隣人のとるべき措置と同じであつてもよいのではないか。二十四時間云々というような檢束の期間というものがありますと、かえつてそれだけは檢束ができるというような形になつてまいりまして、從前のいろいろな弊害のもとにもなるというようなことで、少くとも一條関係は、そういう意味からいつても、今特に取立てて今日残さなければならぬというようなことはないのではないかという氣持でおるわけであります。  その他その関係の法制といたしましては、御承知の生活保護法でありますとか、精神病者の看護法でありますとか、水難救護法とか、大体その点カバーをしている点がありますが、一應これは抹殺して出直そうという頭であります。それから二條等においてもそうでありますが、顯著なのは三條の密賣淫云々の條項であります。これは実際上必要があつて活用されておつたのでありますが、御承知のように、最近花柳病予防法の特例というものができておりまして、これは実際上も必要がないわけであります。それからなお大きな問題としては、四條あたりで、土地物件の使用制限というようなことがございますが、これは前の國会で御審議を得ました災害救助法とか、あるいは地方自治法等にもその途がありますので、今のところはその途によつて処置をしていこうということで考えているわけであります。先ほども触れましたように、一應これを抹殺してみて、どうしても必要だということが起れば、またそれはその見地で立法を新たにしようという氣持でいるわけであります。
  21. 石井繁丸

    ○石井委員 政府委員の説明によりまして、今回の行政執行法廃止、それに代つて行政代執行法を設けた趣旨がよく明瞭になつたのであります。特に一應大英断をもつて、第一條の檢束の規定その他を廃止する、そうしておもむろに日本の國民の民主的動向を察して、やむを得ざればその後において立法をまつ、かような氣持をもちまして、今回の法案制定にあたられたということにつきましては、われわれとしましても、今までの政府、ある意味において官僚的ないき方でなく、大膽率直なるところの國民を信頼したいき方については、非常に賛意を表せざるを得ないのであります。この行政執行法の一條その他の廃止によつて、あるいは將來対策を立てなければならない問題等も発しようと思いますが、それらにつきましては、今後想を新たにし、そうして今まで行政執行法が人権蹂躪の法規として存在したというような非難があつたのでありますが、かようなる非難をこうむらないように、万全の措置を講じて、そうしておもむろに人心の動向、あるいは國民の考え方の定まるところをまつて、万全の対策を立てていただきたいと思うのであります。またこれにつきまして、最高法務廳その他いろいろな立法に関連せられる方面におきまして、いろいろと資料を蒐集し、爾後の問題について御考慮を煩わしたいと思う次第でございます。
  22. 松永義雄

    ○松永委員長 それでは暫時休憩いたします。     午後二時二十五分休憩      ――――◇―――――     午後三時三十一分開議
  23. 松永義雄

    ○松永委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  軽犯罪法案について、委員外の方から発言の申出がありますから、この際これを許します。山下榮二君。
  24. 山下榮二

    ○山下榮二君 この機会に、軽犯罪法のことについて、労働委員会の方でいろいろ疑義を生じてまいつておりますので、労働委員会を代表いたしまして、二三お赤いをいたしたいと思うのでございます。軽犯罪法の第一條の第十四号、あるいは第二十八号ないし第三十一号、あるいは第三十三号というような項目が、労働委員会の方で問題になつておるのであります。労働運動がこういうような軽犯罪法でもつて取締りを受けるというようなことになつてくると、労働運動の発展に著しき障害を與えるのではないか、こういう懸念を多分にもつておるのであります。伺うところによりますと、当司法委員会でも、諸種のことが問題になつて、第四條に「この法律の適用にあたつては、國民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本來の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。」こういう條項が一項殖やされると承つておるのであります。殊にわれわれの方の心配いたします労働組合運動、あるいは農民運動その他社会運動の面から、いろいろ考えてみますと、過去においてこれらの社会運動に対して取締りをいたしました実例に徴して考えてみますときに、この軽犯罪法が、ややともすると、その法の実施運営にあたつては、取締りに濫用されるのではないかという心配をいたすのであります。そこで今日の健全なる労働組合運動の発展のためには、憲法の上におきましても、第二十八條に「勤労者の團結する権利及び團体交渉その他の團体行動をする権利は、これを保障する。」と明記いたしておるのであります。さらに労働組合法の中にも、第一條に「刑法第三十五條ノ規定は労働組合ノ團体交渉其ノ他ノ行為ニシテ前項ニ掲グル目的ヲ達成スル為為シタル正当ナルモノニ付適用アルモノトス」と、刑法の適用除外例が明確にされておるのであります。從つて労働委員会といたしましては、今当司法委員会で修正され、四條を挿入されようといたしております「その本來の目的を逸脱して」というこの條項を、もつて明確に、労働運動ないしは社会運動にはこれを適用しないと、こういうようにしていただくことにはまいらぬのかどうか、この点伺つておきたいのであります。
  25. 國宗榮

    ○國宗政府委員 お答えいたします。軽犯罪法は、いろいろ御心配の点もありまするけれども、御承知の通りに、日常の非常に卑近な道徳に違反するものを拾い上げまして、そして今日の文化社会における文化生活の秩序を維持する、こういう建前でこの法律をつくつたのでありまして、もちろん労働組合運動とか、あるいはその他の社会運動を取締る目的にためにつくつたものでは全然ないのであります。ただいまいろいろな点で御指摘になりましたけれども、これらの点は大体労働組合法その他の正当なる社会運動、あるいは政治運動等にありましては、憲法の御指摘になりました條章、並びに労働組合法の第一條第二項の規定が適用されまするし、のみならず刑法総則の第七章の規定も、そのままに適用に相なるのであります。從いまして、多くの場合におきましては、この法律によつて労働組合運動に対し、誤つた適用をするという場合は、ほとんどないというふうに言えるのであります。ただいま衆議院の方におきまして、第四條に入れたいという点について、もつとはつきりしたものを入れたらどうか、こういう御意見でありますが、これは法律の体裁から申しますと、結局労働組合法の第一條第二項の規定をやはりここにあげてくるということになるだけでありまして、本來ならばこの法律の中にこういうものを入れなくとも、一般に違法性のあるものは阻却されるし、違法性のないもので阻却すべきものは、ただいま申し上げましたような労働組合法の一條二項の規定によつて全部阻却されるのであります。入れること自体が法律の体裁としておかしなものになつてくるのであります。もしこの法律を実際適用する者に対しまする一つの守るべき注意の規定といたしまするならば、組合法の一條二項とまつたく重複するような規定をここに入れるということは、実は法律の体裁としておかしいのじやないか、趣旨はまつたく衆議院で御修正になろうとする点と同じだと私は考えております。むしろ御修正になろうとする第四條の規定の方が、法律全体としての構成の上におきましてきれいな形にいくのではないかと考えております。
  26. 山下榮二

    ○山下榮二君 今当局の御説明を伺いまして大体了承はいたすのでありまするが、四條の修正は、衆議院の当委員会で修正されておるのでありまして、その本來の目的も、今当局に伺つてみましても、労働委員会が心配しておることを懸念して挿入されたと、こう伺うのでありますが、法の体裁あるいはいろいろなことの上からいつて、どうも明確に書くことがぐあいが悪い、こう今おつしやられたと思うのでありまするが、この席上ではつきり、その本來の目的というものは、労働運動ないしは農民運動というがごとき社会運動を指しておるものではないと、こう解釈いたして間違いはないのでしようか。重ねて伺つておきたいと思うのであります。
  27. 國宗榮

    ○國宗政府委員 本法は労働運動その他の社会運動を直接に取締ろうという考えの前提に立つたものではないのであります。もちろんそれ自体を目的にいたしておる法律では全然ない、こう申し上げて差支えないと思います。
  28. 山下榮二

    ○山下榮二君 それではよくわかりましたので、どうか委員会に特にお願いを申し上げておきたいと思うのでありまするが、先ほど申し上げましたようなことを、すでに当委員会でも御懸念に相なつておることは、われわれのまことに感謝いたしておるところであります。さらに先ほどから私が申し上げました各項目、いわゆる十四、二十八、三十一、三十三という條項等についても、さらに当委員会でもともとと御配慮を願つて、今後健全なる日本の労働運動を阻害するがごときことに相ならないように、格段の御配慮を委員会としても願いたいと、特に労働委員会を代表して、当委員会にお願いを申し上げておきたいと思うのであります。たいへん貴重な時間を拜借いたしまして恐縮でありましたが、ありがとうございました。
  29. 松永義雄

    ○松永委員長 暫時休憩いたします。     午後三時四十一分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は開会に至らなかつた〕