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1947-07-25 第1回国会 衆議院 外務委員会 2号 公式Web版

  1. 付託事件  平和會議に關する決議案(尾崎行雄君提出)(  決議第一號) ――――――――――――――――――――― 昭和二十二年七月二十五日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 安東 義良君    理事 細川 隆元君 理事 原 健三郎君    理事 堀江 實藏君       猪俣 浩三君    田中  齊君       高瀬  傳君    戸叶 里子君       馬場 秀夫君    和田 敏明君       竹田 儀一君   長野重右ヱ門君       佐々木盛雄君    仲内 憲治君       若松 虎雄君   唐木田藤五郎君       多賀 安郎君  出席政府委員         司 法 次 官 佐藤 藤佐君         司法事務官   國宗  榮君 七月七日  委員芦田均君及び松本瀧藏君辭任につき、その  補闕として同月八日中山マサ君及び多賀安郎君  が議長の指名で選任された。     ――――――――――――― 七月二日  平和會議に關する決議案(尾崎行雄君提出) の審査を本委員に付託された。     ――――――――――――― 本日の會議に付した事件  理事互選  刑法の一部を改正する法律案中國交に關する罪  についての説明聽取竝びに意見交換     ―――――――――――――
  2. 安東義良

    ○安東委員長 ただいまより會議を開きます。お諮りいたします。本委員會に理事一名を増員いたしたいと思いますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 安東義良

    ○安東委員長 御異議なきものと認めまして、これより理事一名の互選をいたしたいと思います。
  4. 細川隆元

    ○細川(隆)委員 理事は委員長において指名せられんことを望みます。
  5. 安東義良

    ○安東委員長 細川君の御意見に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 安東義良

    ○安東委員長 御異議なきものと認めまして、それでは堀江實藏君を理事に指名いたします。     ―――――――――――――
  7. 安東義良

    ○安東委員長 次に御報告申し上げたいことがございますが、外務省より「アメリカ議會における外交委員會の運營について」、「日本及び歐米諸國の外交豫算について」、「生産物賠償と日本經濟」、「ソ連の對外經濟政策」、「ロシヤ人の民族性」、「インド問題解説(一)、(二)、(三)」、これを送つてまいりましたが、初めの「アメリカ議會における外交委員會の運營について」、「日本及び歐米諸國の外交豫算について」、「生産物賠償と日本經濟」、この三つのみ部數が各委員にわたります。あまりのものにつきましては、前囘同樣委員部において一時保管いたしますので、御用の方は書記から借りられることを希望いたします。     ―――――――――――――
  8. 安東義良

    ○安東委員長 次に、今囘司法委員會の方に付託せられました刑法の一部を改正する法律案におきましては、外國の元首、使節に對する暴行、脅迫、侮辱の特別罪の規定、すなわち第九十條及び第九十一條でありまするが、これを削除しておるのであります。この問題は事小さいようではありまするが、國交竝びに國際法關連する問題でありまして、當委員會としても、愼重審議を要するものと考慮いたしまするので、まず、ただいまより司法省御當局の本件についての立法理由、竝びに御措置ぶりについて伺いたいと思うのであります。
  9. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 ただいま、委員長から御説明ございましたように、このたび政府から提出いたしました刑法中の一部を改正する法立案中には、現行刑法の外國の君主大統領及び使節に對する特別なる保護規定が削除されておるのであります。この外國の元首大統領及び使節に對する特別な保護規定と申し上げますれば、身體、名譽に對する特別な保護規定でありまするが、この點を特に削除いたしましたのは、新憲法において、國民は個人として尊重されるべきであつて、しかも、國民はすべての法のもとに平等であるべきであるという原則が掲げられてありまするので、この憲法の精神を徹底して、皇室に對する特別な保護規定と同様に、外國の君主大統領、使節に對する特別な保護規定も削除いたしたのであります。皇室に對する特別な保護規定を削除した點についても、おそらく國内においているいろいろな異論のあることと存ずるのでありますが、外國の君主大統領、使節に對する特別な保護規定についても、國際法上この規定を削除することは、いかがなものであろうという異論のあることは存じておるのであります。しかしなから、新憲法において、法のもとに國民が平等であるべきであるというその原則は、個人としての尊重の立場を徹底させた原則なのであります。しかるに外國の君主大統領、使節がわが國に滯在しておる場合に、その身體及び名譽を保護するということは、その人の個人としての身體及び名譽を特に尊重さるべきであるという趣旨と解釋されまするので、その點は新憲法の精神を徹底させますると、やはり一般國民と同様な保護をなさるべきではないかと思うのであります。ただ國際法上、外國の君主大統領、使節に對しては、各國において特別に厚く保護しなければならぬという原則が確立されておることは、承知いたしておるのであります。これは國際法上治外法權と竝んで、いわゆる不可侵權と稱せられておるものでありますが、その國の刑罰法規において、特に身體及び名譽に關する特別な規定があれば、それで足りるのであつて、相當重い刑罰をもつて保護しておるのに、さらにそれ以上に特別な規定をもつて保護しなければならぬという趣旨には解せられないのであります。國際法上いわゆる不可侵權とは稱しておりますけれども、その國の刑罰法規において厚く保護されれば、それで十分なのであります。言いかえれば、不可侵權を保護するのに相當な、不可侵權を保護するに足りるだけの刑罰規定があればよろしいのではないかというふうに考えられるのでありまして、他面改正刑法の案におきましては、一般の暴行、脅迫、名譽の刑罰法規が、現行刑法よりも一段と刑を高めてありまするので、この點に關しましては外國の君主大統領、使節に對する保護は、國際法上要請されておる點を滿たすのに十分であろう。こう考えましたので、新憲法の精神を貫いて、外國の君主大統領、使節に對する暴行竝びに名譽毀損の特別な規定は、これを削除いたしたのであります。
  10. 安東義良

    ○安東委員長 ただいま、司法次官より御説明がございましたが、これにつきまして私より意見を申し述べたいことがございますから、細川理事に委員長を代わつていただきたいと思います。     〔委員長退席、細川委員長代理著席〕
  11. 細川隆元

    ○細川委員長代理 安東委員より發言を求められておりますから、これを許します、安東委員。
  12. 安東義良

    ○安東委員長 ただいま、佐藤司法次官より、今囘の修正に對する理由を承りましたが、私の見るところをもつて申し上げまするならば、今囘外國の元首、使節に對する暴行、脅迫、侮辱の特別罪の規定を削除するということは、これはただいま御説明のように、單純に個人平等思想を徹底したということをもつては、不充分であるように考えるのであります。また個人に對する暴行、脅迫、侮辱等について刑を重くしたがるがゆえに、外國の元首、もしくは使節に對する不可侵權を、十分保護するにたるものであるからして、それらの規定を設ける必要はないという御意見につきましては、私はにわかに贊同し得られぬのであります。何となれば、この刑法が外國の元首及び使節に對する特別罪の規定を設けました趣旨は、外國の元首なり、使節なりが特別な個人であるという觀念に基づいたるものではないと思うのであります。これは元首なり、使節なりの代表する國家の名譽、尊厳、獨立というものに對して、侮辱を加うることを取締る趣旨でありまして、自國の元首に對する特別規定とは、全然立法趣旨を異にするものであると考えるのであります。現に刑法は自國の國旗に對する侮辱の罪を、特に規定しておりませんけれども、外國の國旗その他の國章に對する侮辱につきましては、第九十二條に特別の規定を設けておりまして、外國の元首、使節に對する特別罪とともに、國交に關する罪の章に一括しておるのであります。しかも今囘の刑法の一部を改正する法立案には、この點はそのまま存置せられておるのでありまして、國交に關する罪から、元首、使節に對する罪だけを廢止するということは、やや矛盾のように思うのであります。國際法は、一国は自國に滯在する外國の外首もしくは外交使節に對し、特別の保護を加うる義務ありとしております。この點につきましては、先ほど司法次官も御同説であつたようであります。從つてこれに危害を加うる者に對しては、特に嚴重なる處罰をなす義務があるというのが、國際法學者のほとんどの一致した言であります。またこれにつきましては、一八九五年、國際法學界の決議もあるのであります。要するに、現行刑法の規定は、この國際法上の國家の義務に基づくものでありまして、この規定を廢止せんとする改正案は、憲法第九十八條第二項にありまする「確立された國際法規は、これを誠實に遵守することを必要とする。」という規定から考えてみましても、憲法違反、あるいはこれは少し言い過ぎた言であるかもしれませんが、少なくとも憲法の精神に反し、あるいは改正案の效力有無の問題をさえ、生ずるおそれがないわけではないのであります。現に各國の刑法の立法例を見ますと、ほとんどおもなる國は何らかの形で、外國の元首及び使節に對する特別罪の規定を設けておるのであります。ここに各國の立法例につきまして、外務省方面に依頼してつくつて頂きました調書がございます。十分に部數はございませんが、ご参考におわけしたいと思います。米國のごときは、自國大統領に對しては、何ら特別罪を設けてはおりませんが、外國使節に對する特別罪の規定は設けておるのでございます。從つてもし今囘の改正案のようになりますならば、日本の元首、在外使節が外國において特別の保護を受けるにかかわらず、外國の元首または使節には、日本においては特別の保護を與えないという、まことに不條理な立場ができるのであります。各國の立法例を見ましても、中には相互主義を揚げておるところもあります。たとえばイタリヤのごときがありますが、これらの國はきわめて少いのであります。大部分の文明各國は相互條件によらないで、これを認めておるのであります。日本の今後の世界における地位を考えますと、日本として國交をます尊重んじなければならないことは明らかでありまして、萬一外國の元首及び使節に對する暴行、脅迫、侮辱等の事件が起きて、外國から犯人の嚴罰を要求せられた場合に、刑法に特別規定がないゆえをもつて、これを嚴重に處罰することができないということは、これはおそらく不可能なことであろうと思われます。刑法の一部を改正する法立案の起草者は、一般人に對する暴行、脅迫、名譽毀損等の罪を加重しておるがゆえに、十分の處罰をなし得るという見解をとつておられるでありましようけれでも、國際法上は、被害者の本國は加害者政府に對し、特に重く罰することを要求する權利があり、その場合特に重く罰する義務があるのであります。  なお從來第九十條第二項、第九十一條第二項に、外國元首、使節に對する侮辱の罪に對しては、外國政府または被害者請求をまつて、その罪を論ずることになつておるのでありますが、これはひつきようするに外國として、外交機關を通じて處罰を要求することをもつて足りるとする趣旨でありまして、今次改正案におきましては、これを外國元首に代わる外國使節に對する侮辱の場合は、使節自身が裁判所所定の手續により、告訴をしなければならないということになつておるのであります。この種事件發生についての國際間の慣例といたしまして、外交手段で處罰を要求するのは當然であり、外國使節に對し、日本法の手續によつて裁判所に告訴しなければ處罰ができないというのは、不適當ではなかろうかと思うのであります。  これを要するに、第九十條及び第九十一條を廢止せんとする案は、外國の元首及び使節に對する罪が、あたかも個人の特別の身分地位に基づくものであるかのような見解に出發して、この種規定を設ける國際法上の義務があることを閑却しておる傾きがあるのでありまして、日本外交の見地から見て、政治的に不適當であるだけでなく、憲法第九十八條との抵觸の問題を生じ、刑法改正法の效力の問題をも惹起するおそれあるものとしなければならないのであります。從つて私はこの九十條及び九十一條はもとの刑法のことごとく存置せられることを可なりと存ずるのであります。
  13. 細川隆元

    ○細川委員長代理 議事進行についてお諮りいたしたいと思いますが、本日議題になつておりますのは刑法の一部改正に關する法律案に關して、外務委員會として意見を交換するというのが、本日の議題であります。その意見の交換の最初において、刑法改正を提出せられた主務省である司法省の佐藤司法次官より、外務委員會としてその權限の範圍内で、當然議題となつても差支えないところの刑法第九十條及び九十一條の國交に關する罪のある部分の削除についての御説明があり、それに對して安東委員から削除不可という御意見が述べられたわけであります。從つてここに相反する二つの意見が出たわけでありますから、この相反する意見を中心として質疑應答の形で審議を進めたらどうかと存じます。そうして、はたしてこれが本日一囘で終わるか、あるいはさらに引續いて意見交換が續くか存じませんが、その意見の經過を見て、もし必要であるならば、當然主管の委員會である司法委員會との間に、この國交に關する罪の部分だけの合同審査ということになるかもわからないのであります。これは今後の審議の結果を見なければわかりませんが、少くとも本日は議題に明記されております意見交換という範圍内で、ただいま述べられました削除すべしという司法省側の御意見と、削除すべからずとする安東委員のただいまの御意見に對して、お互いに質疑應答の形で意見を交換していきたいと存じます。それでただいま安東委員からお述べになりましたことについてまず司法次官より御意見がありますならば、これに對して御意見を承ることができればさいわいと存じます。
  14. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 ただいま、刑法中の一部改正に關する法律案中、國交に關する罪の一部を削除したことにつきまして、安東委員から詳細な反駁の御意見を承つたのであります。その點について考えまするに、私どもの見るところと安東委員のお考えと違う點が數點あるのであります。  まず第一に、國際法において、外國の君主大統領、使節に對し、治外法權と同時に、いわゆる不可侵權を國際法上認められておるのでありますが、この外國の君主大統領、使節に對する不可侵權に關する保護規定は、特に刑法上一般人に對する保護規定よりも重い刑罰をもつて保護規定しなければならないという、國際法上の原則が確立されておるのであるかという點について、見方が違つておるように思われます。御説のように、外國の君主大統領、使節に對して接受國がこれを重く保護するために、刑法上いろいろな刑罰規定を設けておるということは、お話の通りでありまして、この點は何ら私どもの見るところと違う點はないのでありまするが、自國の刑法をもつて外國の君主大統領、使節に對する不可侵權の保護に關して、十分なる規定があるのにかかわらず、なおそれ以上特別な保護規定を設くべきかどうかという點が異なるのであります。私どもの見るところではそれほどの國際法上の原則が確立されておるというふうには承知いたしておらないのであります。その例といたしましては、申し上げるまでもなく、外國の君主大統領、使節に對する不可侵權のおもなるものは、身體及び名譽であります。身體に對する保護規定として一番最たるものは、殺人罪であるに違いないのであります。ところが各國の刑法を見ましても、外國の君主大統領、使節に對する殺人罪について、一般國民に對する殺人罪よりも重い刑罰を規定している刑法は、まだ見ておらないのであります。身體の保護として最も重く科すべき殺人罪に對する刑罰法規は、重ければ死刑というような極刑を科しておるのであるから、たとえ外國の君主大統領、使節に對する保護であつても、重い刑罰をもつて科し得る刑法がある以上は、外國の君主大統領使節に對して、さらにそれよりも重い刑罰を科すような規定を設ける必要がないというところから、おそらく特別の規定を設けなかつたのではなかろうかというふうに考えられるのであります。  もう一つは、外國の君主大統領、使節に對する保護規定として、特別なる規定を設けておる各國の立法例を見ますると、ある國の刑法においては、名譽毀損について特に特別な取扱いをしておるという例もあります。またある國の刑法では暴行、脅迫についてのみ特別な規定を設けて、名譽及び侮辱に關する罪については、何ら規定を設けておらないというような規定もありまして、その間の立法例はまちまちなのであります。かような實例から見ましても、要するに各國の刑法において、國際法上要求されておる外國の君主大統領、使節に關する不可侵權を保護するのに十分な規定を設けよう。こういう趣旨から、各國の刑法においてその一部について特別なる規定を設けているのではなかろうか、かような見方をいたしておりますので、刑法を改正するにあたりまして、現行刑法の暴行、脅迫、名譽毀損等について、現行刑法よりも重い刑罰を科し得るように、現行刑法を改める以上はさらにそれ以上外國の君主大統領、使節に對して、特別な保護規定を設けるには及ぶまいというふうな、結論に到達いたしたのであります。また國民の一般感情といたしまして、新憲法の國民平等という精神に添わんがために、皇室に對する罪を全部削除いたしまして、天皇及び皇族に對する身體、名譽等に關する保護規定を特にもうけなかつた。この點の筋合から考えましても、外國の君主大統領、使節に對して、この際さらに特別の保護規定を設けるということは適當でなかろうという結論に到達いたしたのであります。さらに、御意見と私どもの考えておりますところと違いますのは、現行刑法の國交に關する罪の中で、外國の君主大統領、使節に對する保護規定は、これは外國の君主大統領、使節の個人としての立場における方々の保護規定か、あるいはその個人の立場を離れて、外國の機關あるいは外國自體に對する暴行、脅迫、侮辱というふうにみるべきかという點が、おそらく見解が違つているのではなかろうかと存ずるのであります。その點につきまして安東委員が外國の國旗國章の損壊除去に對する九十二條の特別な規定があるにかかわらず、日本國の國旗國章の損壊、除去に對する保護規定はないではないかというようなことも申されたのでありますが、この外國の國旗國章の損壊除去ということはなるほど九十二條におきましては、外國に對して侮辱を加うる目的、これは明らかに外國自體に侮辱を加える目的で國旗國章を損壊除去した場合の規定でありますから、九十二條についての御説はまつたくその通りでありますけれども、九十條及び九十一条においては何ら、外國に對して暴行、脅迫を加える目的というようなことは特に掲げておらないのでありまして、おそらく九十條及び九十一条の規定はわが國に滞在する外國の君主大統領、使節の個人としてのその身體及び名譽を特に重く保護しようという趣旨から規定された規定であろうと考えられるのであります。そういうふうに考えますと、新憲法の國民の權利義務平等に尊重しなければならぬという精神を貫く上から、帝國に滯在する外國の君主大統領、使節に對して一般國民よりも厚く保護しなければならぬという特別な規定を設ける必要がなかろうというふうに考えたのであります。  それから、もう一點は現行刑法においては、外國の君主大統領、使節に對して暴行、脅迫、侮辱罪が行われた場合には、外國政府請求あるいは被害者請求をまつて論ずるというふうになつているのに、改正刑法法律案によると、君主大統領の場合には、外國政府代表者が代わつて告訴を必要をする。また外國の使節については、使節自身が告訴をしなければその罪を論ずることができないというふうに改正したのは、やはり外國の君主大統領、使節を保護するのに不充分ではないかという御意見でございまするが、このたび提出いたしました刑法の改正案によりますると、暴行、脅迫についてはすべて非親告罪といたしたのであります。被害者の告訴をまつて論ずるのではなく、犯罪があれば檢事が直ちにこれを訴追することができる、一般犯罪と同様なる非親告罪といたしましたので、この點は現行刑法よりもむしろ保護が厚く改正されたと見られるのであります。ただ外國の使節に對する名譽毀損罪については、使節自身の告訴がなければその罪を論ずることができないという本來の親告罪にたちかえつたのであります。これは前に申し上げましたように、九十一条の第二項自體が、外國の使節の個人たる使節の名譽を厚く保護しようという規定でありまして、名譽毀損罪をすべて親告罪とする建前から、この點は一般國民に對する場合と同じように、使節自身の告訴がなければその罪を論ずることができない、しかしながら名譽毀損罪の刑罰は現行刑法よりも重く處罰し得るように刑法を改正するのであるから、この點においても現行刑法よりも使節に對する保護が厚くないというふうには言い得ないだろうと考えるのであります。
  15. 安東義良

    ○安東委員 ただいまの御説明に、二、三私は見解を同じうする點があるのでありますが、第一番は何と申しましても、この外國の君主及び外交使節に對するこれらの特別規定というものは、その個人に自體に對するものではないということであります。これは國際法上その代表しておる本國の獨立、名譽、尊嚴に對するものである。法益はそこにある、またほかの論者は、たとえばアメリカの國際法學者中の第一人者といわれるようなムアーの學説をみますると、彼は、國際間の安寧のために必要なる保護であつて、これは世界自體に對するものである。そういうような見解をとつておる者もあるのであるます。またそこまでいかないにしても、少くとも直接これらを保護する法益というものは、個人自身の生命もしくは名譽の保護ではなくて、これを代表としておる國家にあるということは、私は、各國の立法令それ自體が、間接に説明しておるものであろうと思うのであります。もとより先ほどおつしやいましたように、死刑をきめておりますような殺人罪につきましては、いずれの國もほとんどが殺人罪をきめておりまするが、特にこれを保護するような規定を設ける必要はないであろうと思うのでありまして、むしろ實際問題として起こつてくる元首もしくは使節に對する侮辱、名誉毀損、こういう問題に對して特に厚く保護する必要を認められるのであります。ところがただいま御説明があつたように、かかるものは一般人と同様に保護することになつている。しかもその罰則規定は加重せられているからして、何ら差支えないじやないかという御意見は、また別の方からみますならば、この外國の元首も、また外交使節も、個人平等である、同じことであるという觀念そのものにほかならないのでありまして、そのこと自身につきましては、私は國際法上の見地から異議を申立てざるを得ないのであります。日本の新刑法におきまして、刑罰を加重せられた、それらの點が最高の限度は上つたでありましようが、最低の見地から考えますと、元首及び外交使節については、何ら區別がないという事實は認めざるを得ないのであります。そこに何ら特別の保護精神は現れていないと申して差支えないではないかというふうにも考えます。この點なお御参考のために申し上げたいのでありますが、今まで二十七の各國の立法例、これを基礎として調査したものが先ほどお配りしたものでありますが、この國名をごらんになりますれば一目瞭然でありますように、日本として關係の深いオーストラリアブラジル、英國、フランスドイツ、イタリー、オランダポルトガルスペイン、スエーデン、スイストルコ、米國、これらの國はいずれも特別な法規をもつております。またソビエツトにいたしましても、いわゆる特別な法規はないのでありますけれども、しかし外交使節が一國の刑事裁判權の管轄外にあるという原則をはつきり明定しております。從つて外交使節の不可侵權、その他の特權を國内法において何らかの形で明白にしておくということは、今後の日本の國際的活動の見地から言つて、決して不利でない、また必要である、利益でもあるというように、私は考えざるを得ないのであります。
  16. 細川隆元

    ○細川委員長代理 ただいままでの司法次官及び安東委員の御意見に關連しまして、委員各位の間で質問なり御意見を述べていただければ、結構であろうと思います。仲内委員。
  17. 仲内憲治

    ○仲内委員 裁量で刑を加重するというのは、どういう方法で實際上できるのでありますか。特別の規定がない場合に、特に外國の元首、使臣なるがゆえに、刑事の執行に當る當局として、どの程度にできることになるのでありますか。
  18. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 その點につきましては、具體的な事件が起きた場合に、その取調に當つた裁判所において、法律上許される範圍内において重い刑罪を科するということは自由にできるのであります。その限度は刑法上定められたる最高刑がマキシマムになると思います。これは外國の元首大統領、使節に對する場合ばかりではなく、日本天皇皇族に對する場合も同様であります。
  19. 仲内憲治

    ○仲内委員 裁判官のいわゆる自由裁量の意味でありますか。
  20. 佐藤藤佐

    ○佐藤(藤)政府委員 そうです。
  21. 細川隆元

    ○細川委員長代理 どうぞ御自由質問なり、御意見を述べていただきたいと存じます。―ございませんか。安東委員、もう御發言はありませんか。―ほかの方はないようですから、そうすると大體質疑、御意見の發表は盡きたと思いますが、―ありましたならばどうぞお延べを願いたいと思います。
  22. 長野重右ヱ門

    長野(重)委員 ただいま、いろいろと質疑が交わされておりまする外國使臣に對する特別な法規削除の問題に關しましては、本委員會といたしましても、かなり重要な問題であると考えるのであります。突然この問題がただいま議題になつておりますので、われわれ委員といたしましても、もう少しかなり突込んで研究をする必要があるかと考えますので、質疑はこの程度で打切つて、次會の委員會になお引續いて討議せられんことの動議を提出致したいと存じます。
  23. 細川隆元

    ○細川委員長代理 ただいま長野委員から提出されました、お互い委員がまだ深く研究の餘裕もなかつたし、準備もなかつたろうと存じますから、本日現れました意見に基いてお互いに研究をして、さらに次會において、質疑なり意見の交換を行うという動議に、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 細川隆元

    ○細川委員長代理 御異議ないと認めまして、引續き次會において意見の交換、あるいは當局に對する質疑を續行いたしたいと思います。   その時日は公報をもつて御通知することにして、本日はこれにて散會いたします。    午前十一時二十九分散會