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2018-05-15 第196回国会 参議院 文教科学委員会 8号 公式Web版

  1. 平成三十年五月十五日(火曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員の異動  五月十日     辞任         補欠選任      今井絵理子君     宮本 周司君  五月十一日     辞任         補欠選任      宮本 周司君     今井絵理子君  五月十四日     辞任         補欠選任      伊藤 孝恵君     石上 俊雄君      大島九州男君     柳田  稔君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         高階恵美子君     理 事                 上野 通子君                 大野 泰正君                 神本美恵子君                 吉良よし子君     委 員                 赤池 誠章君                 石井 浩郎君                 今井絵理子君                 衛藤 晟一君                 小野田紀美君                 橋本 聖子君                 水落 敏栄君                佐々木さやか君                 新妻 秀規君                 石上 俊雄君                 柳田  稔君                 蓮   舫君                 高木かおり君                 木戸口英司君                 松沢 成文君    事務局側        常任委員会専門        員        戸田 浩史君    参考人        一般社団法人日        本経済団体連合        会産業技術本部        長        吉村  隆君        早稲田大学大学        院法務研究科教        授        上野 達弘君        筑波大学附属視        覚特別支援学校        教諭       宇野 和博君        専修大学文学部        人文・ジャーナ        リズム学科教授  山田 健太君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人の出席要求に関する件 ○著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出、  衆議院送付)     ─────────────
  2. 高階恵美子

    ○委員長(高階恵美子君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。  委員の異動について御報告いたします。  昨日、大島九州男君及び伊藤孝恵君が委員を辞任され、その補欠として柳田稔君及び石上俊雄君が選任されました。     ─────────────
  3. 高階恵美子

    ○委員長(高階恵美子君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。  著作権法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に一般社団法人日本経済団体連合会産業技術本部長吉村隆君、早稲田大学大学院法務研究教授上野達弘君、筑波大学附属視覚特別支援学校教諭宇野和博君及び専修大学文学部人文・ジャーナリズム学科教授山田健太君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高階恵美子

    ○委員長(高階恵美子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 高階恵美子

    ○委員長(高階恵美子君) 著作権法の一部を改正する法律案を議題とし、参考人の方々から御意見を伺います。  この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。  参考人の皆様から忌憚のない御意見をお述べいただき、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の進め方でございますが、まず、吉村参考人、上野参考人、宇野参考人及び山田参考人の順でお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。  なお、参考人、質疑者共に発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず吉村参考人から御意見をお述べいただきます。吉村参考人。
  6. 吉村隆

    ○参考人(吉村隆君) おはようございます。経団連の産業技術本部長をしております吉村と申します。  本日は、このような機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。  著作権の柔軟な権利制限規定の創設は長年にわたる課題でございまして、今回こうして法制化に向けて国会で御審議いただけますことを心より感謝しております。  個人的なことで恐縮ですけれども、私自身、経団連でこの問題に初めて接したのが約十年前ということになりまして、以来約十年間にわたってこの議論に関わってまいりました。その意味でも、今回の法案成立に向けた重要な局面でこうして皆様の前でお話しすることができるということには大変感慨深いものがございます。  私からは、著作権の柔軟な権利制限規定に賛成する立場から、産業界としての考え方を申し述べたいと思います。  なお、法技術的な論点とか条文ベースの議論というのは、隣に専門家である上野先生など、ほかの専門の委員もいらっしゃいますので、その方々に基本的にはお譲りしたいというふうには思ってはおります。  まず、なぜ産業界が著作権の柔軟な権利制限規定を求めるのかということなんですけれども、その背景を昨今の状況も踏まえつつ簡単にお伝えしたいというふうに思います。  現在、IoTやビッグデータ、人工知能などの先端技術があらゆる産業にパラダイム転換をもたらしております。特に、米国や中国などの海外企業は、大量のデータを用いて革新的なビジネスモデルを構築し、国際競争で優位な立場に立っているというのが現状かと思います。  そうした中で、経団連では、我が国企業の国際競争力の向上に向けて、データの活用とそれから先端技術によって国際競争力の強化と社会課題の解決と、この両方を目指すソサエティー五・〇というコンセプトを掲げて現在様々な施策を推進しているところでございます。  ソサエティー五・〇について詳しく御説明する時間はございませんが、端的に申し上げれば、革新的な技術の活用によって第五段階目の新しい社会を創造するんだということでございます。五段階目というのは、狩猟、農耕、工業、情報社会といったものの後に来る新しい経済社会というのをイメージしております。  経団連では、こうしたソサエティー五・〇を国内外の社会課題の解決と我が国の成長を両立させるものというふうに捉えておりまして、これは国連の掲げる持続可能な開発目標、いわゆるSDGsといったものの達成にも寄与するというふうに考えております。こうした認識の下で、我々は現在、ソサエティー五・〇フォーSDGsという考え方を提唱しておりまして、国際的な評価も得つつあるという状況でございます。私も今日バッジをちょっとさせていただいているんですけれども、これはSDGsの関係のバッジですけれども、経団連ではSDGsを本業で企業としてしっかり取り組んでいこうということも別途活動しているということでございます。  ソサエティー五・〇の実現に向けてはデータあるいは情報の利活用が重要な鍵を握ります。特に、近年、著作物を含むデータあるいは情報を大量かつ迅速に集積して活用する形のビジネスが世界で次々に起こっております。こうしたビジネスを活発化させて新しいイノベーションを創出することは、我が国の国際競争力の強化にとっても社会全体にとっても有益なものであり、喫緊の課題というふうになっております。  こうした観点から我が国の現在の著作権法を見ますと、残念ながら、現状のままでは時代の要請に応えられない部分があるなというふうに感じております。詳しくはこの後申し上げたいと思うんですけれども、これまでより柔軟に様々なデータあるいは情報の利活用を認めていくということがどうしても必要になってくるというのが我々の見立てでございます。  こうした認識の下で、今般提案されている柔軟な権利制限規定に対する考え方というのを申し上げていきたいと思います。  今、私は、これまでより柔軟にデータあるいは情報の利活用を認めることが必要というふうに申し上げました。これがいわゆる柔軟な権利制限規定を求める意見ということになるわけですけれども、経団連が考えている柔軟な権利制限規定というものは、著作者が費用と労力を掛けて作った著作物を何でもかんでも権利制限の対象とすべきというものでは全くございません。著作物の利用に当たっては、著作物の創造サイクルを維持するという観点から、権利者から許諾を得ることが原則でございます。ただし、事前に権利者の許諾を得ることは極めて困難であり、かつ公共性、公益性、著作物の利用態様等の観点から、権利者の利益を不当に害さないと思われるケースが近年増えておりまして、そうしたケースについてはイノベーション創出の観点から権利制限を可能な限り認めてよいのではないかというのが経団連のスタンスでございます。  経団連では、柔軟な権利制限規定の検討に当たりまして、権利者の利益が尊重され、著作物の創造サイクルが維持されること、著作物の利活用が促進され、権利者、事業者双方のビジネスチャンスが拡大すること、事業者が適切なリスク判断ができるよう予見可能性が確保されること、この三点が重要であるというふうに主張をしておりまして、私自身も、文化審議会の著作権分科会の中で、我が国の法体系や社会状況等を多面的に考え、我が国に及ぶ実際の効果と影響を十分に吟味して最善の制度を模索するべきというふうに申し上げてきた経緯がございます。  この点、今回提案されている三層の柔軟な権利制限規定というのは、第一層として示している新三十条の四の非享受利用、新四十七条の四の電子計算機における著作物の利用に付随する利用、それから第二層として示している新四十七条の五である電子計算機による情報処理の結果提供に関する軽微の利用、こういったものによって、著作物を利用したい事業者側の現時点でのニーズをほぼ網羅するとともに、抽象度を高めた要件も加味するということで、権利制限の柔軟性も図る工夫もなされているというふうに理解をしております。  我々といたしましては、今回の条文案は、事業者にとっての予測可能性を確保する一方で、非享受とか軽微とかいった文言によって権利者の利益にもバランスよく配慮できているというものと評価しておりまして、早期の成立を強く期待するということでございます。  これまで柔軟な権利制限規定をめぐる検討の大半を費やしていたのが米国型フェアユースを日本に導入すべきであるという議論であったというふうに理解をしております。  御高承のとおり、米国のフェアユースは、著作物の利用の目的、著作物の性質、利用された著作物の量、重要性、著作物の利用の及ぼす影響という四要件を総合的に勘案して、司法が公正な利用と認めたものについては権利者の許諾を得ずに著作物の利活用を行うことが認められております。  米国型フェアユース導入の賛成論の根拠としましては、現時点で予想できない新たな技術やビジネスモデルに即応できるという意見がございます。ただし、注意すべきは、予測可能性が低く、かつ最終的には司法の判断に委ねるというものであるということでございます。我が国の企業につきましては、コンプライアンス意識が高いことから、こうした予測可能性が低くて、かつ最終的に司法判断に委ねるというものであった場合に、ビジネスにどうしても萎縮効果が生じるおそれがあるというふうに考えます。我々も会員企業の方々といろんな議論をこれまでしてきておりますけれども、やはりそういう傾向があるかなというふうに感じておりますし、さきの文化審議会の報告書でもそのような結果が示されているというところでございます。また、権利者の方から居直り侵害のおそれが高まるといったような強い懸念の声があるということも耳を傾ける必要があるというふうに思っております。  基本的な原則のみを法律で定めて具体的な運用を判例に任せるというのは一つの考え方ではあると思うんですけれども、少なくともこの考え方を著作権法だけに導入しても機能しない可能性が高いのではないかなというふうに思います。もし法体系全体を英米法型に変えるべしというような議論をするのであれば、それはそれで非常に大きな議論でありまして、幅広い国民的な議論を経る必要が不可欠ではないかなというふうに思います。  あと、米国型フェアユース導入を賛成する議論としてもう一つ根拠としてよく挙げられるのが、グーグルが生まれたのはフェアユースがあったからだという御意見がございます。この意見は、客観的に事実に照らせば少し無理があるかなというふうに思います。この点は文化審議会の報告書でも詳しいので、詳しくは割愛したいと思います。  加えて、私から、この間、東京大学の渡部俊也教授から教えていただいた話を少しだけ御紹介したいと思います。有名なグーグルの創設者であるセルゲイ・ブリン氏、この方がラリー・ペイジ氏とともに独自の検索技術を開発してグーグルの基礎をつくったというふうに言われておりますが、実は彼はその前に既に検索技術に関する特許出願を行っていて、その権利者は実は某日本企業でございました。当時、彼はその日本企業の米国法人でアルバイトをしていて、その間に検索技術の開発に成功したということでございます。その日本企業は、そういう意味ではその当時検索技術の特許権というのを有していたということですけれども、自社のビジネスモデルと異なっていたので検索サービスを事業化することはございませんでしたというようなことでございました。  何が申し上げたいかというと、日本には米国型フェアユースがないからイノベーションが起きないという主張は、それはそう主張される方もいるんですけれども、現実のビジネスというのはそれほど簡単、単純なものじゃないということだと思います。今申し上げた事例を引くまでもなく、一つ法律が何か問題で、それだけでビジネスが止まるとかそういうことではなくて、やっぱり、元々革新的なビジネスモデルを考えるとか、そういったことを含めたところからイノベーションが起こるんだろうなというふうに思っているところでございます。  話を少し戻したいと思うんですけれども、米国型フェアユースについては、日本の法体系全般に関わる問題もあり、イノベーションを萎縮させる可能性があるということ、それから居直り侵害による権利者の不利益も大きい可能性があるということから、そのまま我が国に導入しても十分に機能しない可能性が高いというふうに考えます。米国型フェアユースを強く主張する企業というのは今でもいらっしゃるわけですけれども、そうした企業さんの主張は、結局のところ事業者さんとの対立を先鋭化させるということになって、結局のところ法改正をずっと遅らせる結果を招いたというふうなことだというふうに思っています。  そういう意味で、今回の法案は権利制限の柔軟性と明確性のバランス、それから権利者と事業者の間のバランス、そういったものを取った非常にリーズナブルなものであって、我が国の国情にも沿った、この国にふさわしい内容であるというふうに考えられることから、経団連としては今国会での確実な成立を強くお願いする次第でございます。  今回の著作権法改正によって、データの収集、データの蓄積、解析、それからデータの解析結果の提供、こういったものが権利者の不利益が軽微の程度、軽微である程度を超えない限りは権利制限の対象となりますということになりますので、我が国が後れを取っているAIの開発とかインターネットによる様々なサービス、こういったものが著作権法上の懸念なく実施できることになりますので、その意義はとても大きいというふうに思います。  現在、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて、様々な企業が様々な分野でイノベーションを起こして革新的な製品、サービスを提供し、国民生活の向上に寄与すべく努力をしているところでございます。今回の法改正は、こうした努力を力強く後押しするものになるというふうに確信をしております。イノベーションの革新に向けて、今国会での確実な著作権法改正を再度お願いして、私からのお話を閉じさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  7. 高階恵美子

    ○委員長(高階恵美子君) ありがとうございました。  次に、上野参考人にお願いいたします。上野参考人。
  8. 上野達弘

    ○参考人(上野達弘君) 早稲田大学の上野達弘でございます。  本日は、著作権法改正法案に関しまして意見を申し述べる機会をいただきまして、誠にありがとうございます。  私、若輩者ではありますけれども、長年著作権法の研究教育に従事してまいりました。また、文化審議会の委員も長く務めてまいりました。今回の法案の基になりました法制・基本問題小委員会やそのワーキンググループ、さらにはその作業部会にも関与いたしましたので、そのような立場を踏まえつつ、本日は今回の法案に関する所見を申し述べたいというふうに思います。  法案の内容につきましては、御案内のとおり、主に四点ございます。  第一に、柔軟な権利制限規定であります。  著作権法というのは、権利を定める一方、その限界を権利制限規定として定めております。ただ、この著作権法三十条以下に列挙されております多数の権利制限規定は極めて詳細で個別的なものです。そのため、それは、明確ではある反面、ともすると硬直的で時代や社会の変化あるいは技術の発展に必ずしも対応できない場合があるのではないかとの問題提起がなされてきたわけです。  そこで、今回の法案は、既存の権利制限規定を整理統合し、シンプルにするとともに、二つの行為類型、すなわち第一層と呼ばれる権利者の利益を通常害さない行為類型、そして第二層と言われる権利者に及び得る不利益が軽微な行為類型に関しましては、従来の著作権法にはこれは見られなかったような柔軟な権利制限規定を設けようとするものであります。  私の配付資料におきましても、権利制限の対象となる具体的な行為を例として掲げておりますけれども、その上で、アンダーライン引いておりますが、その他と記載しております。これは、そうした具体的例示と同等の行為であればそれ以外の行為も柔軟に権利制限の対象になることを意味しているわけであります。  少し具体的に申しますと、もし今回の改正が実現いたしますと、情報解析やリバースエンジニアリングのための複製といった具体的な行為が権利制限の対象となるだけではなく、これらと同様に著作物の表現を享受しない利用と評価できるものであれば、それらの具体的例示以外の行為も柔軟に権利制限の対象になり得ます。また、キャッシングやバックアップのための複製といったコンピューターの利用に付随する利用と評価できるものであれば、これもまた、それらの具体的例示以外の行為も柔軟に権利制限の対象になり得るわけであります。  また、第二層につきましては、現行法でもネット検索サービスがこれ可能なんですけれども、今回の改正が実現いたしますと、公開情報一般を対象とする所在検索サービスや、あるいは論文剽窃検証サービスなどの情報解析サービスも可能になるほか、これらと同様に、電子計算機による情報処理に付随する軽微な利用と評価できるものであれば、それらの具体的例示以外の行為であっても政令によって柔軟に権利制限の対象になり得るわけであります。こうした柔軟な権利制限規定というのは、我が国にとりましてかなり画期的なものだというふうに思っております。  もちろん、先ほども御紹介ありましたけれども、権利制限規定の在り方をめぐりましてはかなり以前から議論がありまして、その中では、アメリカ著作権法百七条のフェアユース規定のような一般性の高い規定を我が国著作権法にも導入すべきという見解がございました。しかし、ある規定が柔軟であればあるほど具体的妥当性の観点からは望ましいわけですけれども、他方で法規範が過度に不明確なものとなりかねず、それが国民にとって常に望ましいものとは限りません。これに対しまして、ある規定が明確であればあるほど法的安定性の観点からは望ましいわけでありますけれども、他方で法規範が過度に硬直的なものとなりかねず、これも国民にとって常に望ましいとは限りません。  そこで、明確性のある個別規定と柔軟性のある規定を組み合わせたものが望ましいと考えられます。今回の法案はそのような方向性に沿うものです。そして、今回の法案は、最近の国際的な議論におきましても一つの理想的な著作権制度の在り方とされるシンプルでフレキシブルなスタイルに日本の法律を近づけるものと言えるかもしれません。もちろん、法改正が単に理屈の上で画期的だといっても、これは意味はありません。しかし、今回の改正による新たな権利制限は、現実のイノベーション促進効果が期待できるものと考えます。  これも、もう少し具体的に一例のみ挙げますと、現行法には、情報解析のための著作物利用を可能とする四十七条の七という規定がありまして、これは、営利企業であっても著作権を気にせず機械学習を行うことができるという世界でもまれな規定であります。そのため、私も外国に行きますと、よく日本はAI開発や機械学習にとってのパラダイスだというふうに申し上げたりするわけなんですけれども、今回の改正は、この規定を更に多様な情報解析に対応できるように拡充するものです。これは、我が国のAI開発や機械学習の発展を促進する礎になることでしょう。  第二に教育の情報化です。  現行著作権法は、教育機関における複製等について既に三十五条という規定を有しております。しかし、昨今では、教室で紙の資料を配付する代わりに、受講生がアクセスできるサーバーにアップしたり講義映像を受講生がネットで見られるようにするなど、様々なICT活用教育が展開されているものと承知しております。  今回の法改正が実現いたしますと、従来と同程度の条件の下で教育機関における公衆送信等が可能になります。その代わり、一定の公衆送信については無償というわけではなく、補償金が権利者に支払われることになります。これによって、従来は権利処理が必要であったICT活用教育に伴う著作物利用が円滑化するとともに、権利者には利用に応じた利益分配が保証されることになるわけです。  さて、ここで注目されるのは、単に権利制限によって著作権を制約するだけではなく、権利制限とともに権利者に補償金請求権を付与したことです。こうした規定は現状の著作権法にもないわけではありませんけれども、これまでの我が国著作権法は、権利制限というふうに申しますと、つい無許諾、無償の完全自由になってしまうということが多過ぎたように私は思っております。そのような中、今回の三十五条の改正は、権利制限による円滑な著作物の利用の促進と補償金制度による適正な利益分配を両立するものです。これは、今後の権利制限規定の見直しにおける一つのモデルになるものと私は考えております。  第三に、障害者関係です。  著作権法は、障害者福祉を増進する観点から、既に障害者等のための利用を可能とする権利制限規定を有していますが、今回の法案は、視覚障害者等の概念に肢体不自由等により印刷物の判読が困難な者も含めることによって、録音図書等の作成等を自由に行えるようにするものです。  この改正は多様な障害者等の情報アクセス機会の充実に資するものと考えられ、その意義の大きさはここで言うまでもありません。また、この改正は、WIPOのマラケシュ条約を締結するために必要な改正でもあります。そのため、この問題は以前から検討されてまいりましたけれども、そうこうするうちに、このマラケシュ条約は二〇一六年九月に二十か国によって既に発効してしまっております。したがいまして、我が国も早急な法改正が求められるところであります。  第四に、アーカイブ関係であります。  昨今、アーカイブ施設における文化資料の収集、保存、活用が重要な政策課題となっておりますところ、今回の改正が実現いたしますと、国会図書館による絶版等資料の送信が外国の図書館等にも可能になることや、美術館等がその展示作品を解説し紹介するために観覧者のタブレット端末等に送信することが可能になるほか、国などが裁定制度を利用する場合には事前の供託義務が免除されることになります。  アーカイブというのは、人類の知の蓄積と発信に資するものです。今回の法改正は、アーカイブの発展を多面的に支援し、また、裁定制度の活用によるオーファンワークス、いわゆる権利者不明等著作物の利用を促進するものであり、大きな意義が認められます。  最後に、全体的なコメントを申し上げます。  今回の改正、とりわけ柔軟な権利制限規定については十年以上前から我が国において盛んに議論されてきたテーマでありまして、今回の改正は、平成二十一年から始まった文化審議会での議論を踏まえて、平成二十四年の改正を経まして、その後、平成二十五年から文化審議会の中、平成二十七年からはニーズを把握するためのワーキングチームが設置されるなど、我が国全体で行われた長年の議論の集大成と言うべきものです。  そして、そうしてでき上がった今回の改正法案は、これまでの改正のように単に権利制限規定を追加するというものではなく、既存の規定を整理統合するとともに、二つの行為類型については従来全く見られなかった柔軟な権利制限規定を設けるものであり、極めて画期的なものと言えます。  こうした明確性と柔軟性を組み合わせる手法というのは、我が国にとって画期的であるというばかりではなく、同様の問題を抱えている諸外国、特に我が国と同様に大陸法系諸国にも重要な示唆をもたらし得るものです。恐らく今回の改正は国際的にも注目を浴びることになるでしょう。また、教育の情報化に見られるように、権利制限による円滑な利用促進と補償金制度による適正な利益分配を両立する方法は、今後の制度論のモデルになるものでもあります。  著作権法にとって、権利保護と利用促進のバランスをいかに実現するか、これは永遠の課題です。しかし、今回の改正は、その調整に多様な手法があることを明確に示しました。その意味で、今回の改正を機に、著作権法の制度論は、これはやや大げさかもしれませんが、新時代に入ったと言えるかもしれません。もちろん、我々研究者がこれは画期的だと幾ら申し上げましても、現実社会に効果がなければ意味がありません。ただ、今回の改正によって整備された権利制限規定は、先ほどお話ししたAI開発や機械学習のための規定のように、我が国におけるイノベーション促進に具体的で実践的な効果をもたらすものと私は確信しています。  もちろん、今回の改正法の内容は、いずれも権利制限というものであります。したがって、一見すると、これは権利の切下げばかりではないかと受け止められるかもしれません。また、結果として権利者の利益を不当に害しないかといった御懸念もあるのかもしれません。しかし、今回の改正法の内容は、あくまで権利者の利益を不当に害しないことを条件とするなど、権利保護に対する制度上の配慮は十分なされているものと認識しております。  ただ、一般論として、改正法の適切な運用、これは求められるというのはもう当然のことかと思います。そのため、既に衆議院の方でも、教育の情報化に伴う補償金の適正な徴収、分配や権利制限規定に関するガイドラインの策定など必要な措置を講じるべきことを内容とする附帯決議が行われたものと承知しており、そうした点は今後の課題となろうかと存じます。  なお、今回の改正は従来の改正に比べれば比較的規模が大きいものです。そして議論の集大成でもあります。したがって、これが実現しますと、それなりに一段落するようなところがあるかもしれません。ただ、著作権制度というのは、常に社会や技術の変化への対応が求められる運命にあります。そのため、将来に向けて我が国著作権制度を絶えず検証し続けていく必要があります。  ちなみに、現行著作権法は昭和四十五年に制定されたものです。したがって、二〇二〇年には制定五十周年を迎えます。だからというわけではありませんけれども、将来の我が国にとってあるべき著作権法の姿を国際的な視野も広げつつこれからも追求していくことが重要ではないかと思っております。この点を強調いたしまして、私からのコメントとさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  9. 高階恵美子

    ○委員長(高階恵美子君) ありがとうございました。  次に、宇野参考人にお願いいたします。宇野参考人。
  10. 宇野和博

    ○参考人(宇野和博君) 筑波大学附属視覚特別支援学校の宇野和博と申します。本日はこのような場を与えていただき、ありがとうございます。  私からは、障害当事者の立場から、著作権法第三十七条の改正案と読書のバリアフリー化について意見を述べさせていただきます。よろしくお願いいたします。  今回の法改正は、二〇一三年、国連の世界知的所有権機関で採択されたマラケシュ条約がきっかけになっています。ですので、この法改正は、マラケシュ条約に批准するための国内法整備という側面と、これまで障害者の読書の足かせとなってきた問題の解決、両方が含まれています。よって、マラケシュ条約に批准することも、それに伴い著作権法を改正していただくことも大変有り難いことだと思っております。  著作権法改正に関し、障害者団体から要望された事項は三点あります。  一点目は、マラケシュ条約が定義する受益者と三十七条三項の権利制限対象者を一致させることです。これまで視覚障害者や文字の読み書きに困難のある発達障害者が権利制限の対象とされてきましたが、ここに、寝たきりや上肢に障害のある方、眼球使用困難者を加えることはマラケシュ条約に批准するためには必須事項と言えます。  二点目は、これまで認められてきた自動公衆送信に加え公衆送信が認められることです。これにより、図書館などからメールサービスなどによって障害者に情報が発信できるようになります。  三点目は、法改正ではなく、政令の改正事項になります。これまでボランティア団体や社会福祉協議会、障害者団体は政令にありませんでしたので、別途、文化庁長官の指定を受けない限り、著作権者の許諾を得なければ音訳や拡大写本に取り組むことができませんでした。これは、障害児教育の現場においても教材入手の足かせとなっておりました。  例えば、全盲の生徒のための点字教材はインターネット上のデータベース、サピエにそれなりの数が上がっているのですが、弱視生徒のための参考書や問題集の拡大版となると、著作権許諾の問題が足かせとなり、ほとんど整備することはできませんでした。これらのボランティア団体が政令で定められることは、障害児教育の現場においても大きな意義があると考えております。  ここで、法改正のきっかけとなったマラケシュ条約について少し触れさせていただきます。  マラケシュ条約の目的は、著作物を利用する機会を促進する、つまり障害者の読書環境を整えていくことにあります。既に三十七か国が批准しています。条約は、大きく二つのことを締約国に求めています。一つは著作権の制限や例外規定を設けること、もう一つは障害者が読書可能な図書データを国境を越えてやり取りできるようにすることです。  しかし、私は、ここで条約批准に魂を入れるためにもう一つ大事なことがあると考えております。それが条約の前文に書かれています。たとえ著作権を制限したとしても、障害者が利用可能な著作物は不足している、障害者が利用可能な形式に変えていくには相当な資源が必要であるということです。  例えば、ここに一冊の本があり、これは著作権フリーですよと言われても、私にとってはただの紙の束にしかすぎません。誰かに点字か音声か拡大か電子データにしていただく必要があるわけです。つまり、障害者の読書環境を整えていくということには、著作権を制限するだけでなく、障害者が読める媒体をいかに増やしていくかという取組の両輪が必要になるということです。  それでは、一体、今、日本には障害者が読める本はどれくらいあるのでしょうか。現在、全国の点字図書館で作成された点訳図書や録音図書は、インターネット上のサピエにアップされています。また、国立国会図書館は数年前から全国の主に公共図書館で作成された図書データを収集し始めています。このサピエと国会図書館のデータを合わせると、点訳図書でおよそ十九万タイトル、録音図書で約九万タイトル、それ以外の媒体は一万タイトル以下という状況です。世界盲人連合は、障害者の読める本を、途上国で一%未満、先進国で七%と推計しています。現在、国立国会図書館に納本されている本は既に一千万タイトルを超えていますので、この数と比べると、点字図書は約二%弱、録音図書は一%弱ということになります。  それでは、障害者が読める本をどのように増やしていったらよいのでしょうか。大切な理念は、障害のない人と同じように本を買う自由と借りる権利を確立していくことにあると思います。  まず、本を買う自由についてです。以前はデジタル技術もありませんでしたので、発売された本は、ボランティアにお願いし、点字、拡大、音声にしていただくほかはありませんでした。これらの作業には一定の期間が掛かりますので、発売日当日に障害者が本を読めるということはありませんでした。ここでもし発売日にテキストデータを売っていただけるのでしたら、今の時代、実は障害当事者でも瞬時に点字に変換したり、合成音声で聞いたり、画面上で拡大したりすることができます。つまり、誰の手も借りないで、テキストデータをベースとしたワンソース・マルチユースが可能ということです。  一方、現在の出版社の合理的な配慮に関する取組についてですが、ごく一部の本にはテキスト引換券が付いています。また、電子書籍の中には合成音声で読み上げするものもありますが、そうでないものもたくさんあります。障害者が読める媒体を販売していただく、それを促進していただくというのは、出版社、障害者双方にとってウイン・ウインになることですので、何らかの形で政策上の後押しをしていただければと思います。  次に、借りる権利についてです。今、条約批准に伴い最も考えなければならないのは、新たに受益者となる寝たきりや上肢に障害のある方の読書を誰がどのように保障するかということです。長年の歴史がある視覚障害者の読書については、視覚障害者情報提供施設、いわゆる点字図書館が大きな役割を果たしてきました。では、寝たきりや上肢障害者のために新たに情報提供施設をつくるかとなりますと、これは現実的ではありません。  それでは、点字図書館にその役割を担ってもらうかという考え方もあります。しかし、二〇〇九年に著作権法が改正され、読み書きに困難のある発達障害者が権利制限の対象者に加えられましたが、その後、発達障害者の点字図書館の利用はほとんどないという実態から考えても、これも現実的な解決とは言えません。  結論としては、公共図書館、学校図書館、大学図書館といった法律上の図書館に障害者サービスを充実させていっていただきたいと考えております。  約二年前の四月に施行された障害者差別解消法にも、障害者への合理的な配慮の提供義務が明記されております。しかし、公共図書館の障害者サービスの実態は、一部の図書館を除き、まだまだ十分とは言えない状況にあります。これは、各自治体において予算が削減され、サービスを充実したくてもできないという側面もあるようです。  学校図書館については、盲学校でさえ、年会費四万円の問題もあり、サピエに加入できていないところもあります。また、文部科学省はインクルーシブ教育を推進していますが、地域の学校に在籍する障害児の読書環境は特別支援学校よりも更に手薄になっていると言えます。  大学図書館については、せっかく国立国会図書館にデータをアップし全国で共有する仕組みがあるにもかかわらず、そこにデータをアップしている大学は僅か六大学にとどまっています。つまり、それぞれの大学でテキスト化されたデータはその障害学生支援室又は図書館に眠っており、大変もったいない状況になっています。点から線、線から面へと障害学生の教材保障のサポート体制を広げていく必要があると思います。  このように、図書館が障害者サービスを充実させていく鍵は、インターネット上のネットワークの整備にあります。その縁の下の力持ちになっていただきたいのは、国立国会図書館関西館と考えています。そして、障害者が読書可能なデータを全て関西館に蓄積していくということです。その上で、点字図書館、学校図書館、大学図書館、公共図書館がネットワーク化できれば、子供も大人も、どこに住んでいたとしても、近くの図書館に行けば日本で制作された全てのアクセシブルなデータに出会えるということになるわけです。  今、サピエに約七万タイトルの録音図書がありますが、これらは寝たきりや上肢に障害のある方にもきっと楽しんでいただけるものだと思います。しかし、残念ながら、サピエのデータは国会図書館には流れないという仕組みになっています。また、全国に約三千二百ある公共図書館のうち、サピエに加入しているのはおよそ百六十にとどまっています。  一方、サピエの財政も脆弱で、システムを管理していくための費用は厚生労働省からの補助金で賄われていますが、運営費はありませんので、実際は会員からの寄附や加盟図書館の年会費で賄われているという実情があります。  今後ネットワークを整備していくためには、省庁を横断した協議の場が必要であると考えております。といいますのは、サピエは厚生労働省、学校図書館、大学図書館、公共図書館は文部科学省、国立国会図書館は立法府の所管になっているからです。省庁の垣根を越えて、障害者の理想的な電子図書館はどうあるべきか、障害当事者を交えて今後検討していっていただきたいと考えております。  少し外国に目を向けてみますと、アメリカには日本のサピエのようにブックシェアというデータベースがあります。最初はスキャナーで読み取った不完全なデータの共有から始まったそうですが、その後、出版社がデータを提供するようになり、今は完全なデータが読めるようになっているそうです。また、フランスには、障害者が国立図書館に申し出れば出版社からデータが提供され、それが図書館を通して障害者に届けられるという仕組みが法律で定められているそうです。  これからの高齢化社会を見据え、誰もが図書に親しめるようにするにはどうしていったらいいのか、出版社にはどこまで協力がお願いできるのか、これらの課題を含め、読書のバリアフリー化に資するような施策を検討していっていただきますようお願いいたします。  障害者にとって読書は、教養や娯楽という側面だけでなく障害者の教育や就労を支える大切な基礎的環境整備とも言えます。是非、先生方のますますの御理解をお願いしつつ、私の話を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  11. 高階恵美子

    ○委員長(高階恵美子君) ありがとうございました。  次に、山田参考人にお願いいたします。山田参考人。
  12. 山田健太

    ○参考人(山田健太君) 専修大学の山田健太です。  今般の著作権改正案については、国会等の議論を拝見する中で気に掛かる点がありました。そうした中で、当委員会におきまして意見陳述の機会をいただきましたことについて、大変感謝申し上げます。  本日は、言論法、情報法の研究者の立場からのお話をさせていただきたいと思っておりますが、あわせて、表現者の集まりであります日本ペンクラブの会員としての経験についても御披露させていただけることで、高階委員長を始めといたしまして、委員各位の今後の御議論の素材にしていただければ大変幸いに存じます。  さて、著作権法は法律の中でも非常に頻繁に改正が行われる法律でございます。ただし、今回の法律改正は極めて著作権法の基本的な考え方を変更するものでありまして、それだけに大きな転換点になるものであります。したがいまして、是非とも慎重な、いつも以上に慎重な御議論がいただければと思っているところであります。  委員の皆様に初めにお伝えしたいことは、みんなのためとはどういうことかということであります。言うまでも、著作権法とは、著作者が自らの創造物を我が子のようにいとおしく思う気持ち、これを権利化したものであります。同時に、その気持ちを大事に保護することが次の創造物を生み出す原動力にもなるわけです。これは豊かな表現活動そのものであります。そして同時に、この表現物が同時代あるいは後世の人々の創造的活動を刺激することで更に新しい創造物が生まれていくことになります。あるいは、こうした表現物を見る、聞く、触れることによってその人の人格的成長が実現するのでありまして、これもまた表現の自由の大切な大きな理由であります。こうした社会全体の、あるいは人類全体の自由闊達な表現活動の実現のために、いとおしく思う気持ちはあるにせよ、少しだけ我慢してもらうということで権利制限がなされているということになります。それが人類全体の進歩に貢献すると考えられるからであります。  いずれにせよ、このように著作権というのは、もうかる、もうからないというビジネスの話である前に表現の自由の問題であり、それがベースになって考えられる必要があるということをまず御理解いただければと思います。そして、そこからおのずと最初の問いであるみんなのための落としどころが見えてくることになると思います。  それからすると、今般の著作権法改正は表現の自由の立場から大きな疑問が残る点があります。  繰り返しになりますが、著作権法は表現者の人格権を保護する一方、文化の継承を図るための知恵であります。また、市民の知る権利や表現活動を守るという意味で、表現の自由のための法制度というふうに言っても構いません。そして、この表現の自由はガラスの城であり、一度壊れたら復元不可能であるというのが大きな特徴であります。とりわけ、私たち日本の社会におきましては、いわゆる日本型表現の自由モデルなるものが確立しておりまして、そのルール、原則にのっとって各種の法制度は基本構造、枠組みを維持しているという現状がございます。  では、この日本型表現の自由モデルとはどういうものか、ごく簡単にお示ししたいと思います。  一つ目には、ただし書がない絶対的な自由の保障であります。  よくアリの一穴を認めないという言い方をしますが、先般の戦争の教訓から包括的な例外を一切設けていないというのが日本の憲法の大きな特徴でございます。その中で、内在的な制約を業界自主規制によって実現し、バランスを取っているというのが一般的な方法であります。同時にまた、公権力の謙抑性が非常に良き伝統として利いているということもあります。  こうした表現の自由の大原則を大切にする、この原則にのっとりながら個別の法制度を構築していくことが必要であるということになります。それからすると、この著作権法改正を考える場合にも、いわゆるよく議論されているような米国型の著作権制度が唯一の選択肢ではないことが見えてきます。  そして、もう一つ重要なのは、文化政策としての著作権法制度を貫徹させる必要があるという点であります。  さて、これらを考えていく上で、少し具体的な話をさせていただきます。時計の針を十五年ほど戻していただくことになると思います。  二〇〇四年、グーグルが図書館プロジェクトを開始いたしました。いわゆる全ての人が自宅にいながらにして全ての本を読むことができるというプロジェクトであります。このプロジェクトをサービスするに当たりまして、ブックサーチ、すなわち図書検索サービスが始まります。この始まった中で、著作物を著者に無断で全文スキャニングをし、それをテキストデータと化して検索できるようにすることとともに検索結果の該当箇所を表示することが問題視され、訴訟になりました。まさに、現在議論されているフェアユースがどこまで許されるのか、著作物を自由にスキャニングして、企業がそれを自らの企業活動のために利活用することが許されるのかの問題の原点があるわけです。  そして、二〇一〇年二月十八日、少し大げさに言えば、私は日本を代表し、米国連邦裁判所のニューヨーク地裁におりました。そこで私たちは幾つかの教訓を得ることができました。まず一つ目には、このようにいわゆるスキャニングをし、それを利活用するという行為が問題であると考えるのは日本だけではないということであります。この法廷の場にはフランスやドイツの政府代表がいまして、意見陳述をしていました。まさに自国の文化を守るために闘っていたということであります。あるいは、アメリカの裁判所は、ペンクラブの意見書をほぼ全面的に採用し、グーグルの事業にストップが掛かりました。  よく無理が通れば道理が引っ込むということわざがありますが、実際はきちんと道理が通るということも証明されたわけであります。こうして考えると、いわゆる大きな恐竜に対するアリのような存在であったと思いますけれども、きちんと、文化にとって利便性、効率性が全てではない、あるいは一旦立ち止まって考えることが重要であるということが分かったわけであります。  その裁判を通じまして幾つかの確認がされました。一つは、やはりオプトイン原則が大事だと。すなわち、著作物に関しては、著作者の許諾なしに勝手にスキャニングをする、あるいは勝手にそれを利用するというのはよくないんだということの再確認であります。そしてまた、どう使うかということではなくて、そもそもスキャニングすること自体が問題であるということになりました。その延長線上として、もしそのコピー、複製を使う場合には極めて限定的に許諾をしていきましょうということになったわけでありまして、この考え方はこの著作権法改正の前回の改正に生かされているということになります。  その上で、今回の改正法案について考えてみたいと思います。  非常に分かりやすく考えると、今回は一層、二層、三層という形でレイヤーに分けて議論を進めています。日本型フェアユースというふうに呼ぶのか呼ばないのかということも含めていろんな議論がありますが、ごく分かりやすく考えれば、第一層目に関しては、フェアユースを導入をすると。これに比べて、第三層に関しては、フェアユースを導入するのではなくて、これまでの著作権法で定められた限定列挙の例外を拡大していくんだという考え方、そして第二層に関しては、いわゆるフェアユース風の規定を作ろうということであろうというふうに理解できます。  そう考えた場合に、一体この著作権の保護と文化の継承のバランスの取り方がいいのであるかということが問題になるわけであります。全体に考えた場合に、お手元の紙にもありますとおり、結果としては、少し言い方は乱暴ではありますが、こっそりとスキャニングをして利活用するのはいいけれども、大っぴらにそれを堂々と使うのは駄目ですよということになっているわけであります。  本当にその方法がいいのかどうか、これによっていわゆる先ほど言ったようなオプトインの原則が事実上空洞化するのではないかという問題性であります。現在は極めて限定的に複製を認めているということになりますが、そのいわゆる現状が、業界ルールが置き去りになり、事実上その政令の委任によって包括的な除外というものも起きますし、同時に公権力の謙抑性というものも薄まっていくのではないかということを心配するわけであります。  あるいは、全データが集積、集中化する中で、自分の著作物が、誰が一体保持しているのか、どういうふうに使っているのかという問題についても分からないという状況が生まれがちになります。これは著作権者の人格権を毀損する可能性すらあるというふうに言えると思います。  それからすると、例えば第一層でいうならば包括規定、あるいは利用方法の無限定化ということについてはより一層の御議論をしていただく必要があるのではないかというふうに思いますし、これはまさに一番最初にお話ししました、いわゆる日本型表現の自由でいう原則と例外というものが逆転する可能性すらあるのではないかということであります。  更に言いますと、とりわけ第二層について大きな問題があると考えております。すなわち、現在認められていないサービスとしまして所在検索サービスや情報解析サービスが挙げられ、このような書籍検索や論文剽窃検証をできるようにしましょうというのが今回の分かりやすい具体的な解決策として示されております。  すなわちこれは、先ほどのグーグルブック検索訴訟の話からしますと、米国型のフェアユースは導入しないと言いながら事実上のフェアユース規定を導入するということに近いのではないかというふうに思うわけであります。  すなわち、まず第一に、いずれにせよ著作物を全文スキャニングする、しかもそのスキャニングは著作者に無断ですることについて許容する、許諾をするという問題性が残ります。さらに、スナペットの表示に関しても、どこまでそのスナペットの表示にするかについては法律上の明記がなくて、事実上政令若しくは運用によって決まっていくという状況があり、なし崩しで多くの表示がなされる、やはり重要な検索表示が自由にできるということにつながりかねません。更に言うならば、情報解析のサービスにおいては、事実上の内容チェックというものがAI技術との関連の中でできていくだろうということも考えられます。それからすると、今我々が大事にしてきた日本型表現の自由のモデルというものが事実上崩れていくという可能性があるんではないかということであります。  最後に、文化政策の点でも一言だけお話をしておきたいと思います。  この今回の議論の中では、幾度か著作権の保護と著作物の公正な利用のバランスで文化の発展を図るというふうな文言が出てまいります。ただ、実際は、大事なのは著作権の保護と文化の継承のバランスの結果としてその著作物の公正利用を図るというのが大事なポイントでありまして、この二つは似たような文章でありますけれども、微妙に違うんではないかというふうに考えております。  あくまでも、今日お話をしましたように、大事なのは表現の自由という基本的な考え方に基づいてどういう形でするのが一番人類全体の表現活動が活発化できるかということであって、その上でイノベーションの創造や経済的な活動の利活用ということが考えられてしかるべきだろうと思いますので、それからすると、著作権の保護と経済的な利便性というものをバランシングするというそのバランスの立て方は、どうも今回の表現の自由の考え方からすると違うのではないかということを思うわけであります。  その中で、このペーパーにありますように、公正な利用というものは実際上はこのフェアユース、事実上パブリックユース、みんなのための利用というふうになっておりますけれども、このみんなのための利用というのが事実上は国家繁栄というか、あるいは経済の成長という形の国の利益というものにつながりかねないというふうに思うわけで、本当であれば、このフェアユースという考え方はいかに多様性を維持するか、多様性を確保するかというものでなくてはいけない、そのための豊かなコンテンツの実現がなくてはいけない。そのためには、やはり自由な表現活動の基盤であるとか多様な情報流通の維持であるとか、そういう数字で表れないものを大切にしていくような形での議論をより一層深めていただきたいというふうに思い、私の話を閉じさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  13. 高階恵美子

    ○委員長(高階恵美子君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  14. 赤池誠章

    ○赤池誠章君 自由民主党の赤池誠章でございます。今日は参考人の方々に質問をさせていただきたいと思います。  まず、吉村参考人に御質問をさせていただきます。  経団連のお考えはよく、今日の陳述含めて理解をさせていただいております。その一方で、経団連の中でも、やはり米国型フェアユースこそ今後の科学技術の発展とともにイノベーションの創出、企業活動にとって重要だという企業もあるやに聞いております。  その辺での経団連の中での議論として、今回の法改正につきまして理解が進み、また、この法改正をてこにイノベーション創出に向けていこうという機運みたいなものがどういう現状か、教えていただきたいと思います。
  15. 吉村隆

    ○参考人(吉村隆君) 大変重要な御質問ありがとうございます。  御指摘のとおり、経団連にはたくさんの企業が加盟しておられますので、米国型がいいんだ、米国型こそがいいんだとおっしゃっている企業さんがあることは理解をしております。ただ、私の理解するところでは、そういうことをおっしゃっている方の方が少ないというふうに理解をしております。  というのは、先ほども御説明を申し上げましたけれども、やはり日本企業、一般には法令遵守の意識が高いので、余りにも漠然とした規定があることをもって、そこでビジネス突っ込んでいけるのかということについては、現実的にはなかなか難しいというのが現状だと理解をしております。これは私どもも十年来議論しておりますけれども、そういうのが実感だと思います。ですので、日本企業がイノベーションを起こすためには、一定程度どういう範囲なのかというのが見えるような範囲での柔軟性がある規定といったものが一番日本企業が新しいビジネスを起こしやすい、そういうものになるというふうに確信をしているところでございます。  そういう意味では、今回の法改正について会員企業の皆さんとも数多く議論をしておりますけれども、ほとんどの企業さんは今回の改正を非常に高く評価しておりますし、是非お願いしたいという意見だということでございまして、今後の日本企業のたくさんのイノベーションが起きることを確信をしているところでございます。  以上です。
  16. 赤池誠章

    ○赤池誠章君 引き続き吉村参考人にお伺いをいたしますが、今、本当にたくさんの企業が、それぞれの新たなビジネスの創出、イノベーション創出ということで、いろんなアイデア段階から、シーズ、ニーズ、様々な形で検討なさっていると思うんですが、吉村参考人が全てを知っているとは思いませんが、一通りの大きな声の中で、やりたいと思っていたことが、今回の法改正でですね、イノベーションの創出につながる、これがやりたいのにできない、今回の法改正でもできないというものがあるかないか、一点お聞かせいただきたいと思います。
  17. 吉村隆

    ○参考人(吉村隆君) ビジネスはある意味闘いですので、現状、新しく考えていること、そのときそのとき私が全部存じ上げるという立場にはないわけですけれども、ほぼほぼ今言われているニーズについては今回の法改正で手当てされるというふうに思います。  それでは不十分だという企業さん確かにいらっしゃるんですけれども、実はそういう企業さんとも議論する機会がございまして、そういう企業さんに対してはどういうビジネスやりたいんですかという御質問をすると、いや、秘密ですとおっしゃるわけですね。そうすると、いや、日本は米国型フェアユースがないからできないんだとおっしゃるわけです。であれば、アメリカでやればいいじゃないですかというふうに私はその方にはお伝えしております。日本で米国型のフェアユースができないできないと言って、もう何年も待っているわけですね、その企業さん。そんな暇があったらやれと、アメリカでやってみろと、そして逆輸入すればいいじゃないかという。何が申し上げたいかというと、意外とそうおっしゃっている企業さんも実はアイデアないのかなというのが私の実感でございます。  ですので、少なくとも今、今回の法改正で、上野先生からも非常に画期的というような御評価もございました。これでできることはすごく拡大していると思います。ですので、米国型フェアユースを主張している企業さんは是非この法律を使ってどこまでできるのかというのを、訴訟を覚悟で、司法判断、もう最後は委ねるところたくさんございますので、そこにチャレンジしていくということを、是非そういう米国型を主張される企業さんにはお勧めしたいというふうに思っているところでございます。  以上です。
  18. 赤池誠章

    ○赤池誠章君 是非、今法律を、改正をてこにというか、ますます活用していただいて、経済界としてイノベーションの創出につなげていただければなというふうに思います。  続きまして、上野参考人に御質問をさせていただきたいと思います。  先生は長年、まさにこの審議会の下で御活動していただいて、言ってみれば、上野先生のお考えがこの中に盛り込まれているというふうにも聞かせていただいているわけでありますが、その中で、画期的であり革新的であり新時代を創出するということで高く評価をいただいているということの中で、今後、国際的にも非常に注目を浴びて、一つの大きな、英米法、大陸法を含めて一つの、今回の日本のこの柔軟な権利規定、権利者の保護と同時に活用のモデルになるということを聞かせていただく中で、日本においても法務省を中心に法整備支援ということで様々な日本の法律を海外に輸出しようという中で、この議論を国内法にとどまらず、やっぱり海外の、日本の国際社会の中の貢献の一つとして位置付け得るのかなということも感じさせていただいておりまして、そのためにどういう形で、英語にするのか、国際会議の中でどう発信するのか、先生のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  19. 上野達弘

    ○参考人(上野達弘君) 御質問ありがとうございます。  ただいま委員から御指摘いただきました。大変重要な点だというふうに思っております。  国際的にも、著作権法の権利制限規定をどのように設計すべきかというのは非常に大きな課題になっております。これは我が国と問題意識を共有しているものです。数年前にも国際的なシンポジウムがこの権利制限をテーマにして数回行われました。その中では、やはり新しい時代に、新しい技術にどうやって対応するのか、そのときに権利制限規定をどれだけ柔軟なものにするのかというのが大きなテーマになっています。  もちろん、英米法系の諸国であれば、アメリカ型のフェアユースであったり、あるいはイギリス型のフェアディーリングであったり、柔軟な規定というのは元々あるわけですけれども、特に大陸法系諸国においてどのように権利制限規定を柔軟化していくかということについて悩んでいるわけであります。私もそれで随分議論に参加してまいりました。大陸法系諸国でアメリカ型のフェアユース規定を導入している国というのは、私の知る限り、韓国と台湾ぐらいしかないと思います。  したがって、どういう形で柔軟な規定を導入するかというのが問題となっている中、今回の日本の新しい規定は、明確性と柔軟性を兼備したような新しい形の権利制限規定を提案するものでありますので、これはかなり国際的に注目を浴びるものだと思っております。ただ、難しいのは、先ほど委員からも御指摘がございましたように、これを英語に訳すときに、表現の享受をするとかというのはこれどのように訳すのかと。これは平成二十一年の報告書のときからありましたので、私もドイツにおりましたときにそれをどのように翻訳しようかというふうに悩んだことがございますけれども。  いずれにいたしましても、そうした今回の改正がもし実現しましたときには、国際的な発信というのも是非前向きに検討していいのではないかと思っております。  以上です。
  20. 赤池誠章

    ○赤池誠章君 続きまして、宇野参考人に御質問をさせていただきたいと思います。  今回の法改正、賛成だということの中で、さらに、法改正にとどまらず体制整備もしっかりやっていただきたいという御意見でありました。その際、海外においては、先進国七%を是非クリアしてほしいということの中で、米国とフランスの事例を取り上げられておりますが、我が国が目標とすべき、一番モデルとすべき国がどこで、それはどういうところをもっと勉強したらいいのか、フランスなのかアメリカなのか、是非教えていただきたいと思います。
  21. 宇野和博

    参考人(宇野和博君) 非常に難しいところではあるんですが、アメリカのブックシェアの場合は、民間企業が自らそのブックシェアに対してデータを提供するということを進めているわけです。フランスの場合は、ちゃんと法律を作って、国立図書館を通して障害者が図書データを入手するという仕組みができ上がっているわけです。  今の時代、なかなか日本出版社も、出版不況ということがありますので、その雰囲気をつくっていくためにはなかなか時間が掛かるのかなというのが正直なところですけれども、果たして今の日本出版社にどこまで障害者の読書保障に対して気持ちがあるのかとか、また国立国会図書館の電子納本とか、又はその電子化、この辺りの作業の進展具合と相まって進んでいくものだと思いますので、民間の動きと公の動き、これは両方とも相まっていくなというふうに考えております。  以上です。
  22. 赤池誠章

    ○赤池誠章君 以上です。ありがとうございました。
  23. 佐々木さやか

    ○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかでございます。  今日は、参考人の先生方、大変にありがとうございました。  今までお話がありましたように、今回の法改正というのは、日本の様々な法体系ですとか状況に照らす中で、この権利の保護ということと、そして利用の促進、また明確性と柔軟性というところをどうバランスを取るかというところ、非常によく考えられた改正ではないかというふうに思っております。  その中で、まず上野参考人にお聞きをしたいと思います。  柔軟な権利制限規定のお話の中で、非享受利用について特にお伺いをしたいんですけれども、今回三十条の四ということで新しい規定が設けられると。これは享受を目的としない利用について権利制限を定めたものでありますけれども、例えばこの条文では一号、二号、三号ということで情報解析などの例が挙げられていると。  上野参考人が強調されましたところは、そういった例に加えて、その他ということがあり得るんだというところでございました。その他に当たるかどうかというのは、この条文に書かれた本文のところ、ただし書もございますけれども、ここに当てはまるかどうかということが判断されていくわけだと思いますけれども、こういった条文について、最終的には司法判断というところがあるんですが、ただ、どういう場合が享受目的に当たらないのかということは、やはり法律の審議の中を通して、予測可能性ですとか、そういったところに資する議論をしていくべきじゃないかなというふうに思っております。  そういった観点から、この享受を目的としない利用に当たるかどうかというところ、微妙な判断になるようなこともあるんじゃないかと思うんですが、この判断基準ですとか、どういった趣旨なのかとか、そういったところはこの議論の中でどういうふうなものがあったのか、また上野参考人はどのようにお考えになるか、教えていただければと思います。
  24. 上野達弘

    参考人(上野達弘君) 御質問ありがとうございます。  まさにこの、先ほども翻訳しにくいと申し上げたこの享受ですね、表現された思想又は感情の享受というのは一体どのような意味を持つのかというのが今後この解釈として問題となってこざるを得ません。  典型的には、本当にバックエンドで機械の中で蓄積されているとか複製されるというようなこと。これは確かに、著作権法上は、物理的には複製なんですけれども、そのようなものについて権利を及ぼすということは本来的ではない、そして権利者に与える不利益は通常ないという考えから、このような非享受利用については権利が及ばない、広く柔軟に及ばないとしてもいいだろうという考え方に基づいているところであります。  その背景にあるのは、元々著作権法というのは、複製とか広く権利が及んでも、昔であれば出版をするとかということにしか権利は及ばなかったわけですけれども、コンピューターが発達してインターネット発達しますと、多くの場面で簡単に複製だとか送信とかが起きてしまう。それが全て権利侵害だということになってしまうと社会的に不都合が生じるということですので、したがって、そういう権利が形式的には及んでしまうけれども、実質的には権利の対象にならなくてもいいだろうというものについて非享受利用という形で権利の制限を定めたものというふうに理解しております。それに従って今後も解釈されていくんだろうと承知しております。
  25. 佐々木さやか

    ○佐々木さやか君 四十七条の五について、続いて吉村参考人に御意見を伺いたいんですが、この四十七条の五も柔軟な権利制限規定ということで、一項の三号には、前二号に掲げるもののほかということで、今後出てくるようなニーズに対して対応するという規定になっております。  こういう、じゃ新しいニーズ、どういうものについて認めるかということを判断するに当たっても、そういうバランスをどう取っていくか重要になりますけれども、ここについて経済界としてどのようなことを、何というか、考えていらっしゃるか、どういう形で判断していくのが適当というふうに思っていらっしゃるか、御意見をいただきたいと思います。
  26. 吉村隆

    参考人(吉村隆君) ここで政令で定めるということになっているのは、現在想定されている利用目的を明記しながら将来のニーズにも対応できるようなバスケット条項を作ったということだというふうに理解をしております。  ここの政令をどういうふうにするかというのは、確かに御指摘のように結構難しいところがあって、じゃ、ニーズを物すごく細かく、こういうビジネスしたいんですと申し上げないとやってもらえないのかというと、それはビジネス上の秘密もございますので、ある程度抽象化したようなところで議論していただく必要もあるだろうと思いますし、それから、まさにこういったものを作ったのは、法改正が一つ一つやるとまた時間が掛かるみたいな話を考えると、ここで政令で認めてもらう方が早かろうということもございますので、ニーズが出てきたときにはここで迅速に政令の方を出していただくということも大事だと思います。  つまり、一定程度の抽象性を持ったところで議論していただいて、そうだよねとなったら政令で迅速に結論を出していくということが期待したいところだというふうに産業界側からは見えるということだと思います。  以上です。
  27. 佐々木さやか

    ○佐々木さやか君 では、時間が限られているので最後の質問になるかと思いますが、宇野参考人にお聞きをしたいと思います。  読書環境の充実のための体制整備について大変重要なお話を伺いました。その中で一つ質問させていただきたいのは、公共図書館、学校図書館、大学図書館について、バリアフリーサービスについてまだまだ十分ではないという御指摘がありました。お話にもありましたとおり、なかなか予算とか財源の関係で一気に全ての必要なサービスを充実するというのは難しいかもしれないなと思っております。  その中で、例えば優先順位を付けるとしたらどういったところからやり始めるべきかといいますか、例えば建物の物理的なバリアフリー自体まだ十分じゃないかもしれませんし、ほかのソフト面というか、そういう支援のサービスも不十分なところがあるのかなと思いますけれども、優先順位を仮に付けるとしたらどのようなところからやっていけばよろしいでしょうか。
  28. 宇野和博

    参考人(宇野和博君) 公共図書館の障害者サービスにつきましては、確かにお話のありましたとおり、ハード面、ソフト面、両方必要だというふうに思います。  ただ、現状、先ほどお話し申し上げたとおり、全国の図書館が障害者サービスを展開していくためのサポート体制、それが私は国立国会図書館関西館によるネットワークの充実だというふうに思っています。そのネットワークの支えの上にそれぞれの図書館がそれぞれの障害者に対してこういう図書がありますよという紹介のサービスが展開していけると思いますので、まず一番最初はネットワーク、その後は各図書館職員の意識改革、そしてあわせて、当然ながら個々の図書館のハード面のバリアフリー化ということも必要になっていくんだろうというふうに思います。  以上です。
  29. 佐々木さやか

    ○佐々木さやか君 ありがとうございました。  以上で終わります。
  30. 石上俊雄

    ○石上俊雄君 国民民主党・新緑風会の石上俊雄でございます。  今日は、四名の参考人の皆さん、貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございました。  まず、吉村参考人、上野参考人、山田参考人、三名に共通した内容で質問をさせていただきたいと思いますが、音楽と映像のコンテンツ業界から見た本法の改正、柔軟な権利制限ということについてちょっとお聞きしていきたいと思うんですけど、私自身が電機産業の労働組合の出身でございまして、私どもの部会というんですかね、音響部会というのがあって、そこは音響機器をやっているヤマハさんですとかパイオニアさんですとかコロムビアさんとか、そのほかにレコード業界や映像ソフト業界さんですね、例えばキングレコードさんとかコロムビアさんとかワーナーミュージックさんとかおられるわけであります。そういった方といろいろ話をしていると、ネット上の違法なアップロード被害がとにかく深刻なんだよねという話をよく聞くんです。その見付けるのに四千万円から五千万円掛けてクローリングシステムというのを入れていろいろウエブ内を動かしているわけでありますが、年間に六十から七十万件も削除しているという話を聞きます。しかし、見付かったとしても、じゃ、賠償で回収できるかというと、一件当たり七十万円程度でなかなか割に合わないというのも現状なんだよという話なんだそうですね。  今回の改正なんですが、デジタル化、ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備の必要性というのは、先ほど御説明いただいて理解はするんでありますけれども、だからといって、悪質な侵害行為も適法になったと誤解する居直り侵害者や思い込み侵害者の予想される増加を黙って受容するわけにはいかないというふうに思っておりまして、そういう声明が、音楽、映像制作者連盟さんとかレコード協会さんとかこういうところだけではなくて、新聞協会とか書籍出版協会さんからも出されているということでございますので、この辺に対して、参考人はそれぞれ、要はその方々から言わせたら、個別権利制限規定をスピーディーに立法化するとか権利制限規定を適法に運用すればいいんじゃないかという声も出ているわけでありますが、この辺に対して参考人の皆さんの御意見はどうか、お聞きしたいと思います。
  31. 吉村隆

    ○参考人(吉村隆君) 御意見ありがとうございます。  私自身も、今先生がおっしゃったような権利者団体の皆さんともたくさん議論をする機会がございます。おっしゃったような違法な権利侵害が非常に深刻であることはすごく重く受け止めているところでございまして、今回の法改正の話とは関係なく、やはり、しかるべき投資をしてコンテンツを生み出して、それをなりわい、ビジネスとして行っておられる皆さんのビジネスのサイクルがうまく回らなくなるということは絶対に許してはいけないというふうに思っているところでありまして、そこに対する手だてというのは、今回の法改正の話とは別にしても、非常に重要な論点だというふうに思っております。  今回の法改正でそういったことがより起こるようになるのかどうなのかというような御質問なのかもしれないと思っているんですけれども、私自身はそういうふうには必ずしも思っておりませんで、政令についても産業界側のニーズはもうお伝えして、迅速にと先ほど申し上げはしましたけれども、当然のことながら、権利者の方々としっかりとした議論をした上で決めていただくということが極めて重要だというふうに思っておりますので、政令でどんどん、権利をないがしろにするようなことをどんどんやった方がいいという立場にないということだけは強調させていただきたいと思います。
  32. 上野達弘

    ○参考人(上野達弘君) ただいま御指摘のありましたような居直り侵害という問題は、非常に重要なものだと思っております。もし今回改正をして柔軟な権利制限規定できたと、この権利制限規定ができたから私は適法なんだという人が増えてきたとするならば、これは確かに問題があるというふうに思われます。  ただ、審議会の議論の過程では、もしアメリカ型のフェアユース規定をつくると、私の行為はフェアユースなんですというふうな人が増えるんじゃないか、だからそのような規定はやめた方がいいんじゃないのかという議論をいたしまして、今回、そのようなアメリカ型のフェアユース規定ではなく、非享受であるとか一定の電子計算機の利用に伴うとかいう限定を加えておりますので、居直り侵害的に、私のこれは非享受利用ですというような人は出てこないのではないかというふうに思われます。  ただ、しかし、そのような懸念がないように様々な手当てをしていく必要はあるのではないかと認識しております。  以上です。
  33. 山田健太

    ○参考人(山田健太君) 今の御質問は、今ちょうど議論が盛んな海賊版ブロッキングの問題と共通する話かと思っております。  ずばり、これもやはり表現の自由の問題なわけですね。何かといいますと、誤った自由の行使が結果としてより強力な法規制を招き、社会全体の表現の自由の可動域が狭くなってしまうという問題があるわけです。ですので、より手前の段階でいかに、フリーライドも含めて、様々な違法アップロードの人たちをいわゆる制御するかということが大事なわけですけれども、その一つのポイントは、やはりオプトインをきちんと徹底すると。要するに、勝手に著作物をスキャニングする、あるいは著作物を勝手にコピーするということを認めないのがまず第一だと思うんですね。  それからすると、今回の法改正によって、いわゆる一部、部分的にいわゆるその使い方によっては自由なスキャニングを認めるわけですから、それが、いわゆるアリの一穴ではありませんけれども、一般的なスキャニングはしてもいいんだよと、使い方さえ気を付ければいいんだよという、そういう雰囲気を社会に蔓延させる可能性があるということを大変私は懸念していまして、それからすると、まずこのオプトインの原則をきちんと徹底することの大切さということを改めて確認をしていただいた上で、じゃ一体どういう形で個別具体的に限定的にその利用を認めるのかという議論が進めばいいなというふうに思っております。
  34. 石上俊雄

    ○石上俊雄君 ありがとうございました。  次に、宇野参考人に質問させていただきたいと思います。  先月、国民生活・経済調査会にお越しいただきまして、調査会の中では、豊かな国民生活に向けてという形の中で、ユニバーサルサービスという観点でお聞かせをいただいたということでございます。本当にありがとうございました。  そんな中で、ちょっとお聞きしたいというふうに思いますけれども、誰もが生き生きと生活する前提の情報アクセス機会の充実ということについて、そういう観点で質問させていただきたいと思うんですが。  先ほど参考人からも、視覚障害者にとって著作権制限のままでは本は紙の束だというふうな御発言もございましたが、ちょっとこれは法とは関係なくなっちゃうかもしれませんけれども、今回の法の改正でマラケシュ条約や国内での法の改正、それがしっかりと整備された後、先ほどもちょっと私申し上げましたけれども、電機産業の出身なものですから、電機産業は一生懸命自分たちがやっている電気機器を生活されている方々の何とか役に立ってもらいたいということで活動しているわけでありますけれども、宇野参考人が、お金が掛かるとか何か制約があるとか、こういったところを度外視にした場合、こういったやつが世の中にあったらもっと良くなるよなというところがありましたら、電機産業的な分野から何かこういうやつ便利だから考えてよという御意見がありましたら、是非お聞かせいただきたいと思います。
  35. 宇野和博

    ○参考人(宇野和博君) 現在、電気製品の中にも、きちんと洗濯機に例えば点字が付いていたり、テレビでも二つのメーカーから音声に対応しているようなものが出ています。でも、アメリカの場合は、そもそもリハビリテーション法、ADAの関係で、障害者にも使えるようなものでなければ売ってはならないというような法体系もあると聞いています。  そう考えると、私たちはついついテレビを買うならこのメーカーとこのメーカーというふうに限定されてしまうんですけれども、やはりどの商品を買っても障害者にアクセシブルな製品になっていただきたいというふうなことは常々考えているところです。  以上です。
  36. 石上俊雄

    ○石上俊雄君 ありがとうございました。  皆さんが生き生きと暮らせるように電機産業頑張ってまいりますので、また引き続きよろしくお願いします。  以上で終わります。ありがとうございました。
  37. 神本美恵子

    ○神本美恵子君 立憲民主党の神本美恵子でございます。  今日は、四人の参考人の皆さん方、本当にありがとうございました。    〔委員長退席、理事大野泰正君着席〕  お話を聞かせていただきながら、今回の著作権法の改正は大きく四つの柱でできているんですけれども、柔軟な権利制限規定の整備ということと教育や障害者やアーカイブ利活用促進に向けての権利制限規定の整備と、大きく分けると二つあると思うんですが、お話を聞いていて、ううんと、まあ、ううんじゃ分かりませんけれども、思ったところがあります。後でちょっと御質問させていただきますが、まず私は宇野参考人にお伺いしたいと思います。  今回の改正はマラケシュ条約の批准のための国内法整備の一つとして入っているわけですけれども、お話の中で、自分たち視覚障害者にとっては、書物やこういう書類や様々なものが、書籍も、単なる紙の束にすぎないと、そのままでは。大変ショッキングなお話でありました。  また、読書飢餓ということも使われましたし、読書というのは単なる、私は目は見えるんですけれども、そういう人間にとっては教養とか知識を広めるとか、そういうふうにしか考えていませんでしたけれども、視覚障害を持った、あるいは肢体不自由などの理由で読書がなかなかできない人にとっては、これは単なる教養ではなくて、生きていく上での、就業も含めた基礎的な環境整備なんだというお話がとても私は今日、印象的でありました。  そういう観点から見ると、柔軟な権利制限規定をするんだというようなお話とバランスがなかなか自分の中で取れないでいるんですけれども、一つ、宇野参考人の事前の資料を読ませていただいて、以前この委員会で拡大教科書のことを議論しました。  教科書、一般の人は皆さん、見えるということで普通の教科書を当たり前のように接していますけれども、視覚に障害がある方々はその教科書では紙の束にしかすぎないということで、教科書バリアフリーをここで議論したときに、実際にボランティアの方が、太サインペンで教科書をそのまんま拡大して、ですから普通の教科書の一ページ分が三ページ分にも五ページ分にもなる、高校だと小さい字で書かれていますから五分冊にも十分冊にもなってしまうぐらいの拡大教科書をボランティアの方が作っていると。それが、しかも高校は無償ではありませんので教科書を有償で数十万掛けて買わなければいけないというようなお話を宇野先生にも直接聞かせていただいたことがあって、この委員会でその拡大教科書に対するどのような配慮があれば本当に視覚不自由な方たちが同じように学ぶことができるかというような議論をしたことを論文を読ませていただいて思い出しました。  そこで宇野参考人にお伺いしたいんですけれども、今回の改正は皆さん喜んでいらっしゃるというふうに聞きますけれども、これが本当に具体的にこの改正が生きていくためにはどのようなことを具体的に文科省あるいは地方行政それから国民がやらなければいけないのかということを、ちょっと抽象的な質問で申し訳ないんですが、もう少しお聞かせいただきたいと思います。
  38. 宇野和博

    ○参考人(宇野和博君) その前提となる深刻な今状況が障害者の読書にはあるんですけれども、実はこれまで障害者の読書を支えていただいているボランティア、これは点訳にしても音訳にしても拡大写本にしても、どのボランティアの方に聞いても、年々高齢化してどんどん数が少なくなってきているという現状があります。そういう意味では、本当に十年、二十年、三十年後にこの媒体を変えるということがボランティアベースだけで進んでいくのかというようなことは懸念される状況にあります。  ですので、ちょっとアメリカの例を申し上げましたけれども、例えば今、日本のボランティアは、一生懸命スキャナーで取って、それが間違いがないかチェックして、正しくしてから点字に変換するというような作業をやっているわけですけれども、仮に元データをいただけるのであれば、本当に正確に点訳がすぐにできていくというような技術も十分そろっているわけです。  ですので、これから、まず、先ほど申し上げたとおり、全国的なネットワークをきちんと整備する、そしてそれぞれの図書館等にいらっしゃる方にも、例えば障害者にこうやってデータというのはダウンロードするんだよというようなことも教えていただきたい。それから、地域の学校にいる先生方にも、例えば発達障害のお子さんがいらっしゃったら、いや、ひょっとしてこういうふうに文字を変えると読みやすくなるんじゃないというふうに、教科書だけに限らず、本当に参考書、問題集、一般図書を含めて教材の重要性ということを理解していただいて、その子に合った媒体を提供していく、こういうことが本当に全国津々浦々で進んでいってくれればうれしいなというふうに思っています。  以上です。
  39. 神本美恵子

    ○神本美恵子君 ありがとうございました。  また、これは、この法案の審議のときに、文科省に対しても今のようなことも踏まえて明らかにしていきたいと思っております。    〔理事大野泰正君退席、委員長着席〕  あと、お三人の方にも今のような立ち位置でちょっとお伺いしたいんですが、資料の中には、柔軟な権利制限規定に関する関係者の主な意見、これ文化庁の審議会の資料なんですけれども、恐らく先生方はもう御存じだと思いますが、大きく三つの類型で分けてあって、柔軟性の高い規定に慎重な意見と、それから、米国版フェアユースを日本版フェアユースという形でもっと柔軟にすべきだという考えと、いや、今回の改正はその両方をよく考えたバランスの取れたものだということがパブコメの中で出てきている。  三つの意見が出ているんですけれども、お話を聞かせていただいて、それぞれどういう立ち位置かというのはよく分かったんですけれども、そのことも含めて、著作者の権利保護と、それからイノベーションも含めた、もっとビジネス的にも活用できるように柔軟にしていくという、その両方のバランスがとっても必要だし、今回のがそのバランスが取れているのかどうかということも含めて、先ほどの宇野先生の御提起にあったような、例えば障害者の利活用促進という観点から考えて、この柔軟な権利制限規定ということに対してどう考えたらいいのか。  特に山田参考人は表現の自由ということでおっしゃっておりましたけれども、そういう観点から考えるとどう捉えたらいいのかということを、時間がありませんので、申し訳ありませんが、吉村参考人、上野参考人、山田参考人、それぞれに、簡単に御意見をお聞かせください。
  40. 吉村隆

    ○参考人(吉村隆君) 御質問ありがとうございます。  ちょっとどのような御回答が適切かというのは難しいんですけれども、一つは、これまでの著作権法上の規定というのは余りにもリジッドだったので、そこをちょっとはみ出るとちょっと法律に触れる可能性があるというので、怪しいということでできなかったようなことが少し柔軟にできるということは、先ほどの障害関係の話であっても同じだと思っております。なので、企業としてもできることがこれまでより増えていくということだというふうに理解しています。  その上で、我々のような立場からいえば、もう本当に最近技術革新が激しいので、そういったものの中で、技術の力でこれまでできなかったような障害者の方々のアクセシビリティー上げるとか、そういったことについても非常にできるという時代にどんどんなってきているというふうに思います。  これは、先ほど、最初のプレゼンでもSDGsという話をさせていただきましたけれども、企業も今本業でSDGsへの貢献といったことをいろんなことでできないかというふうにやっている流れもございます。なので、産業界としては、著作権法上の規定が柔軟になるとともに、技術の力によっていろんな貢献ができるというふうに確信をしているところでございます。  以上です。
  41. 上野達弘

    参考人(上野達弘君) 著作権法が保護と利用のバランスを取るというのは、もうこれは運命的な課題でありまして、それをどのようにするかということが問題になるところであります。  ただ、今回の改正はフェアユースかそうでないかという非常に単純なものではありませんで、その柔軟な規定にもいろんなレベルがあると。一層の柔軟さと二層の柔軟さは異なります。そしてまた、権利制限をするとしても、ただ権利制限するだけじゃなくて、補償金請求権を課すといったような、権利制限にも多様な在り方があるということを示したものであるように思います。ですから、今後はそうしたツールを使って様々な問題に取り組んでいくということが可能になったように思います。  そして、委員が御指摘になった障害者につきましては、一層、二層の次の三層というところで対応するものかと思っております。たとえ表現を享受したり、あるいはそのまま享受するような形でありましても、やっぱり社会的あるいは政策的に配慮を要するものについては積極的に権利制限規定を今後も見直していく必要があると思います。その三層につきましては立法の場でそれを行うということですから、今後もそうしたことについて実態に即した御検討をいただければ幸いでございます。  以上です。
  42. 山田健太

    参考人(山田健太君) 一言申し上げます。  障害者も含めまして、社会の構成員である市民全ての人がきちんと情報アクセシビリティーを高めて、平等な情報、知識に対するアクセスを確保できるということはとっても大切なことであります。まさにそれが表現の自由の確保、実行であります。  ですので、今回でいうならば、第三層におけます様々ないわゆる情報、権利の制限の仕方については、制限の緩和については私は賛成の立場であります。まさにそういう形できちんと限定的に権利制限の形を変えていくというのが正しい法のありようではないかと思っているということであります。
  43. 神本美恵子

    ○神本美恵子君 ありがとうございました。済みません、終わります。
  44. 吉良よし子

    ○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。  今日は、四人の参考人の皆様、それぞれの立場から貴重な御意見を聞かせていただいて、本当にありがとうございました。  では、早速ですが、山田健太参考人から伺っていきたいと思っております。  まず、様々懸念を示していただいたと思うんですけれども、とりわけその第二層の部分について、著作物の全文スキャニングそのものが問題なのではないかと。その中で、そのペーパーの中でも内容チェックの問題性ということが指摘されておりますけれども、この内容チェックというのはどういうことなのか、この点を詳しくお聞かせいただければと思います。
  45. 山田健太

    ○参考人(山田健太君) 御質問ありがとうございます。  ここで申しますのは、基本的に、今回、一層にしても二層にしても大きなポイントは、全て情報を利活用したい者が全ての情報を全量的に収集する、しかもそれを集積する、そしてそれを自由に使うというところに大きなポイントがあるというふうに考えております。それからすると、当然ながらそのサービスの中で、まあ一番考えられ得るのは情報解析サービスや所在検索サービスかもしれませんが、その中で、当然その集積されたデータをデータベース化して内容をチェックすることが可能になってくるということであります。  実際、それは目的としていないというふうに言うかもしれませんが、現実的に、今般の例えば個人情報保護法でも非識別、非特定の情報がビッグデータの中で事実上特定できるということもあり得るわけでして、今回のこの著作権の、著作物の集積、活用の中でも、そのような内容上の特定とあるいは内容上の選別というものが起き得る可能性があるということを考えた上では、特に第二層のこのサービスについてはより厳格な歯止めというものが必要ではないかというふうに考える次第であります。  以上です。
  46. 吉良よし子

    ○吉良よし子君 大事な御指摘だったと思っております。  また、山田参考人からは、この本改正案については文化政策として論じることが大事ではないかというようなお話もありました。ペーパーの中には、文化政策が経済振興優先議論の中で軽んじられてはいないかという懸念も書かれております。  先ほど吉村参考人の話の中でも、法令事項が政令事項になることで迅速に物事が進んでいくというお話もあったことを踏まえれば、やはりそうした懸念というのも考えられるのではないかと思うわけですが、この点、より詳しく、また、守るべきその日本型表現自由モデルは大切にした方がいいとありますが、その辺との比較と併せてお答えいただければと思います。
  47. 山田健太

    ○参考人(山田健太君) 先ほど時間が足りなくて少しはしょってしまいましたので、改めて御説明させていただきます。  まさに文化政策が経済振興優先議論の中で軽んじていないかというふうに書いた部分でもありますけれども、昨今の議論を聞いておりますと、例えば、放送制度改革において、民放はもう要らないのではないかというような議論がありました。あるいは再販、再販売維持契約の問題や軽減税率の問題でも、そのようなメディアの特恵的な待遇というのはもう要らないのではないかという話がありました。  これで大事なのは、一つこういうような形で、メディアの公共性や表現の自由についての議論よりも経済的な効率性というものが優先されているという議論自体にも問題があるんですが、より私はここで確認をしておきたいのは、このような不要論が出てきたときに、与野党問わず、国会の中で、やっぱりそれは表現の自由大事なんじゃないかと、あるいはそのメディアの公共性をもっと大事にした方がいいんじゃないかという議論が巻き起こって、結果的に、このような放送制度改革については少し慎重にいきましょうよと、あるいはその軽減税率や再販についてのメディア特恵も大事にしましょうよという結論に落ち着いたということがあるんですね。ですので、まさに今回のこの著作権法の改正議論におきましても、議論をいただく中で、やはり表現の自由やメディアの公共性が大事なんだよということに話が行くことを願っているということであります。  具体的に言うならば、例えば表現の自由でいいますと、みんなのためという名において、そういう、みんなのためという名における経済的な利益のために表現の自由が制約されるということについてはできる限り避けた方がいいということがあります。あるいは、内容や流通においては多様性というのが大事なわけでして、それがまさにメディアの公共性の意味合いであるわけですから、その公共性が維持、担保するにはどのような権利制限がいいのか、それからするならば、柔軟なという言葉で一くくりにするのではなくて、より具体的に法律に書き込む形で、一体どの場合にはどのような形でこの公共性や自由が担保できるかという議論を進めていただきたいというふうに思っているわけであります。
  48. 吉良よし子

    ○吉良よし子君 みんなのためにというところで、どこまでかと具体的に制限していく方向がよろしいということでしたけれども、あわせてもう一点伺いたいのですが、その辺に関わって、先ほど著作権の保護と著作物の公正な利用のバランスで文化の発展を図ると著作権の保護と文化の継承のバランスにおいて著作物の公正利用を図るとは違うんだというお話があり、公正な利用というのは改めてどういうものが望ましいのか、また公共とは何なのかという点について、もう一度詳しくお聞かせいただければと思います。
  49. 山田健太

    ○参考人(山田健太君) 先ほど文化の発展というのがどうも引っかかるというふうに言いましたのは、文化の発展というのの中身がどうしても現在では、特に日本の場合には公共という言葉が、パブリックという言葉がですけれども、公的なもの、国家のものと、国家的な利益というふうに結び付きがちなものですから、ここでも結果的には公正利用というのが事実上は経済的なイノベーションの創造、そして文化の発展というのが国としての経済的な発展というふうに読み替えられてしまう可能性が高いんではないかという、やはりそこについてはより限定的に、厳格にこの著作権法の法の趣旨に基づいて、一体どういう形で著作権の保護と文化の継承のバランスを取っていくかということについての御議論がいただきたいという意味合いであります。  そして、まさにその表現の自由の、まさに一番最初にお話しした点でありますけれども、あくまでも日本の場合には包括的な例外はつくらないということを決めてきたわけです。それがまさに憲法で定められている表現の自由の大原則でありますので、今後の著作権法におきましても包括的な例外において表現者の表現の自由が制約されるということがないような形での法改正を望みたいということであります。
  50. 吉良よし子

    ○吉良よし子君 表現の自由が侵されないような法改正という点では、本当に重要な指摘だったと思います。  その点で、吉村参考人にも一点伺いたいと思います。  最初のお話の中でも、吉村参考人からも、そうはいっても権利者の声は大事であると、また、その著作物の創造サイクルが維持されることは大事な点であると。その点においては、山田参考人のおっしゃっていた表現の自由を保障した上でという話と一致する部分はあるかと思うんですけれども、経団連の中では著作物の利用等についてずっと議論されてこられたとおっしゃっておりましたけれども、では、表現の自由や文化政策としてどのような議論をされてきたのか、どう表現の自由を保障していくべきかという議論があったのかどうかも含めて、経団連として、あるいは参考人御自身のお考えとしてお答えいただければと思います。
  51. 吉村隆

    ○参考人(吉村隆君) 御質問ありがとうございます。  我々としては、決して文化と経済といったものは二律背反の関係にあるとは全く思っておりません。こういう時代にあっては、ますますもって両者のいい関係が築くことが誰にとっても非常に重要なことだというふうに思っています。  その中で、先ほど表現の自由というお話がございました。経団連の中で、正直言って表現の自由についてどう考えるかということだけを大上段にして議論したという経験は私自身は持ってございませんけれども、議論するまでもなく、表現の自由というのは非常に貴重な権利であるというふうに思っておりますので、そこは議論するまでもなく、経団連会員企業、普通の企業さんであれば、そこに疑義を持つところはいないということだと思います。  文化政策についてはなかなか一言では言いにくいんですけれども、すごく狭い意味での文化政策といったものともう少し広い意味での経済と連動したような文化政策があるような気が個人的にはすごくしております。なので、我々が特に主としてできることは、経済としてのサイクルを回しながら、文化の力もお借りしながら、あるいは文化の力をより強めていただくようなことにも貢献しながらやっていくという、そういったところが大事だというふうに思っております。  実際問題として、著作権法が掛かる、何というんですかね、著作物の範囲って物すごく広くなっていて、まさになりわいとして作家さんがやるようなそういったものから、先ほど来議論が出ているデータみたいなものまで全部一律に掛かってくるということなので、なかなか一律に議論するのは難しいなと思うんですけれども、産業界としては、そうですね、もちろん本業として、あるいはCSR的な観点で文化を応援していることもたくさんやってございますし、ビジネスとして活用させていただくこともありますしという、いろんな意味で文化との関わり合いというのは切っても切れないものだと思っていますし、これからも重要だと思いますし、表現の自由について疑いを持っている団体だと思われないような矜持を示していきたいというふうには思っております。  以上です。
  52. 吉良よし子

    ○吉良よし子君 どうもありがとうございました。終わります。
  53. 高木かおり

    ○高木かおり君 日本維新の会の高木かおりでございます。  本日は、参考人の皆様におかれましては、本当にお忙しい中お越しいただきまして、また貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。  我が国は、知的財産立国、また文化芸術立国の実現に向けて様々な施策を進めていっているわけなんですけれども、昨今の社会情勢を見ますと、本当にデジタルネットワーク化が急速に進んでいっておりまして、それにいち早く対応するために今回の法改正ということかと思います。  そこで、時間もございませんので、早速質問をさせていただきたいんですが、まず吉村参考人に伺いたいと思います。  先ほど、グーグルの検索技術、実は日本の企業が持っていたんだというようなお話もありましたけれども、IoTやビッグデータ、AIといったものがこれから社会経済を変えていくという点は非常に理解できるんですけれども、一方で、産業界としては知的財産を保護することも必要かと思われます。  この改正法では、柔軟な権利制限規定を第一層、第二層、第三層と行為類型で分けることで著作権者に不利益にならないように配慮をしていると思われますけれども、著作物の利用とともにこの知的財産の権利保護への取組、こういったことも重要と考えるわけですが、この点についてお考えを是非お聞かせください。
  54. 吉村隆

    ○参考人(吉村隆君) 御指摘のとおりですということで答えになってしまうわけですけれども、知的財産の保護と活用のバランスというのは非常に重要だと思います。  近年、元々知的財産ってどちらかというとその保護が重要だという話がすごく多かったんですけれども、最近オープンイノベーションというようなことも言われるようになって、著作権の話以外のいろんな知的財産法の全般について言えることではありますけれども、持っているだけでは価値を生まないことが多いよねという話があって、お互い持っているものを上手に利活用し合った方が新しい付加価値を生むんじゃないかというような流れになっていると思います。そういう意味では、いろんな企業さんが持っている知的財産を単に囲い込むだけじゃなくて、使い合って、オープンイノベーションで新しい付加価値を生むという流れになっているかと思います。  そういう意味では、先生がおっしゃったとおりで、保護と活用のバランスといったものが新しい価値を生むということがますます実現していかなければいけない時代に入っているというふうに認識しておりますし、そこのバランスは常に取るための議論というのがすごく大事だと思っておりまして、どちらかに偏るといいことが生まれないというのは、先生のお考えと私は完全に一致していると理解しております。
  55. 高木かおり

    ○高木かおり君 ありがとうございます。  是非、そのバランスというものを大切にしながら進めていっていただきたいなというふうに思います。  次に、上野参考人にお伺いをしたいんですけれども、まずフェアユースの無許諾、無償制について伺いたいんですが、先生は、権利制限に一般規定を設けると、権利者の許諾なく著作物を利用できるだけでなく権利者に利益分配がなされなくなってしまい、問題があるのではないかという指摘があると、先生の論文の方にもお書きになられております。この部分、大変懸念する問題だと私も思っております。  これについては、個別規定に伴う補償金請求権を活用することによって著作物の円滑な利用と権利者への利益分配を両立する方向性が望ましいとおっしゃっておられますけれども、確かにこの著作物の円滑な利用には資することと思いますけれども、果たして本当に権利者への利益分配がきちんと妥当に行われるのか、この点についてもう少しお聞かせいただけますでしょうか。
  56. 上野達弘

    ○参考人(上野達弘君) 御質問ありがとうございます。  確かに、今回の一層、二層という柔軟な権利制限規定も、いずれも補償金請求権は付いておりません。したがって、この権利制限規定の適用を受けますと、自由にできるというだけじゃなくて、権利者に一切金銭的補償をせずにできるということになるわけであります。したがって、本来であれば、権利制限規定を設けるのであれば、その分の金銭的な補償を権利者にするということが必要になる、日本では少しこの規定が少ないんですけれども、必要になると思いますので、この第三層というところにおきましては、例えば教育の、今回のも補償金付きの権利制限規定というのが設けられたわけであります。  そうした領域をより増やしていくべきだと思いますけれども、それでも一層、二層は金銭的補償もないじゃないかというふうに思われるかもしれません。ただ、この第一層、第二層というのは決してそんなに広いものではありませんし、そしてそのタイトルからもお分かりいただけるように、権利者の利益を通常害しない、あるいは害するとしてもそれが軽微であると、つまり、不利益がゼロか軽微であるというものに限定された非本来的な利用で対象とするものです。  したがって、仮に一層、二層について補償金請求権がないとしても、この権利の保護とそして利用の促進のバランスにおいて欠くところはないものと認識しております。
  57. 高木かおり

    ○高木かおり君 詳しく御説明ありがとうございました。  続きまして、宇野参考人に伺いたいと思います。  視覚障害、また肢体不自由になった年齢も様々だと思います。そういった中で、障害があってもなくても子供たちが教育を受ける権利は守られなければならないというふうに思うわけですが、先ほどから、図書のそういった点訳とか録音というのがまだまだ進んでいないというようなお話がございました。子供たちの例えば児童図書ですとかそういったものと大人の本とを比較しまして、この点訳や録音などはどのような割合で進んでいるのか、子供たちの分もしっかりと進んでいるのか、その現状をお聞かせいただけないでしょうか。
  58. 宇野和博

    ○参考人(宇野和博君) 子供たちに対する図書ですが、これは圧倒的に少ないです。これは、点字も録音も拡大写本もそうですけれども、どうしても障害者の年齢構成が高齢者に偏ってしまっているということの裏返しでもあるんですけれども、本当に子供たちが読める図書というのは全ての媒体において少ないというふうに思っています。  また、今後、その受益者となる上肢に障害のある方、これは先日お話を聞いたんですけれども、もう本当にページがめくれない、本が持ち続けられない、だから、介護の人にページめくって、また次のページめくって、これがだんだん嫌になってくるというようなお話も伺いました。そういう意味では、電子データとか録音図書というのは、恐らく寝たきりや上肢の障害の方にとっては大変有効な媒体になると考えられます。  ですので、子ども読書推進法にありますけれども、やはり子供の成長にとって読書は欠かせないものでありますので、特に子供の教育に対する読書媒体の充実、これは国を挙げて進めていっていただきたいというふうに思っているところです。  以上です。
  59. 高木かおり

    ○高木かおり君 時間ないですので、最後に山田参考人に伺いたいと思います。  先ほどから、米国のフェアユースというのは、今の日本に導入されるということに関してはかなり先生は懸念されているふうに感じられました。そういった中で、アメリカだけではなくて、諸外国の柔軟な権利制限の例として、例えばイギリスですとかヨーロッパとかもあるかと思いますけれども、EUでは例えばどういう考え方なのか、それが例えば日本にはアメリカ型よりはなじむのかどうか、その辺りの御所見ございましたらお聞かせいただけないでしょうか。
  60. 山田健太

    ○参考人(山田健太君) 時間がありませんので詳しい説明はできませんが、既に別の参考人から話がありましたように、日本の著作権法は元々大陸法的な著作権法を引いているわけですので、具体的な列挙によって権利制限を定めていくという制度を今後も維持していくのがいいのではないかというのが私の考えですし、多くの国はそうしているということであります。  何よりも大事なのは、今皆様方の意見を聞いても、皆さん方が柔軟なという言葉の意味合いとか社会に与える影響について悩んでいらっしゃるということが分かるわけでありまして、悩んでいらっしゃるうちはやはり拙速は避けるべきではないかなというふうにあえて思うわけであります。
  61. 高木かおり

    ○高木かおり君 ありがとうございました。終わります。
  62. 木戸口英司

    ○木戸口英司君 希望の会、自由党の木戸口英司です。今日は本当にありがとうございます。  それでは、早速お聞きいたします。  上野参考人にまずお伺いをいたします。  今回の法改正について、非常に意義深いものだという御評価であったと思います。そういう中で、当然、著作権法、これまでも改正が重なってきたことでありますし、この今後の課題の中で不断の検証ということも、議会の方からもでありますし、これは参考人からの御指摘でもあろうかと思います。そういう中で、参考人、これまでも課題として、明確性、また法の解釈の在り方、刑事罰との関係、権利制限の拡大ということの在り方、許諾制について、立法事実、またその法案の文言ですね、様々私案も示されていると思います。  今後、この全般の検証ということにもなろうかと思うんですけれども、今後想定される検証において非常に大事になってくることを御指摘をいただければと思いますし、また、ガイドラインの必要性ということも言われるわけでありますが、なかなかこれも困難なんだろうと思います。それゆえにこういう柔軟性のあるという法案になっているわけでありますので、このガイドラインについてのお考えをお聞かせいただければと思います。
  63. 上野達弘

    参考人(上野達弘君) 御質問ありがとうございます。  二点御質問いただいたと承知しております。  一点目は、今後の著作権法の課題についてでございます。今回、著作権法改正されますけれども、まだまだ大きな課題が残っていると思います。特に、やはりインターネット上の著作権侵害というのは非常に大きいものがございます。昨今でも様々な事件が報道されているところであります。侵害行為それ自体が国外で行われているというような場合に、それに誘導するというような行為、問題となりますし、また、そこにアクセスを提供している、いわゆるブロッキング問題も最近議論されているところであります。そうしたことにつきまして今後も早急な対応というのが求められるのではないかというふうに認識しております。  二点目はガイドラインにつきましてでございまして、今回の改正は、ある意味これでもし改正実現すれば規定できるわけですけれども、しかし、様々な点で解釈の余地が余り大きく残っているとすると、国民の皆さん、それを解釈、適用していく上で困難を生じさせるのではないかと思います。特に今回は柔軟な規定というのもありますので、どういう行為がその柔軟な規定の適用を受けるのかということにつきまして、何らかの形でそれを明確化していく工夫が必要ではないかと思います。ガイドラインというのはその一つの手段かもしれませんけれども、やはりそうしたことも選択肢に入れて検討していくべきではないかと承知しております。  以上です。
  64. 木戸口英司

    ○木戸口英司君 それでは、山田参考人にお伺いいたします。  フェアユースに寄っているという評価なんだろうと思います。そこに対する懸念も示されたところであります。表現の自由という観点は非常に重要な観点でありますので、我々も心していかなければいけないと思いますが、あえてこの法案が今回通っていくとすればでありますけれども、例えばこの表現の自由、権利者の表現の自由を守っていくという中で、今ガイドラインのことをお聞きしましたけれども、この点について山田参考人の立場とすればどのようにお考えになるか。また、著作権者が権利侵害に対抗できる制度を、もう少し簡便な制度があっていいんじゃないかという指摘もあるようですけれども、こういったことで山田参考人が懸念されるようなことを少しでもフォローできるのかどうか、その点いかがでしょうか。
  65. 山田健太

    参考人(山田健太君) 御質問ありがとうございます。  まず一つには、きちんとその権利制限をする場合には、それに対応する制度をつくっていく、その一つが補償金制度かもしれませんけれども、そのような制度設計をした上で、全体構造をつくった上でということが大事かと思います。さらに、もう一つは、今も既に御指摘がありましたようにガイドラインというものはあるかもしれません。  ここで問題なのは、最初に日本型表現の自由モデルというお話をしましたけれども、そもそも、今、日本は、これまで戦後七十年間は、表現の自由をどういうふうに活用していくのか、あるいは運用していくのかについては、おおよそ既存メディアと言われるメディアが、業界的にいわゆるルールを作って、そのガイドラインを、ある種、行政との相談の中でやってきているということがあるわけです。これは非常に良き伝統だと思うんですね。それによって直截的な法規制をしないということもありますし、あるいは行き過ぎた表現を制約できるという面もあります。それからするならば、今回のこの第二、特に第二層ですけれども、第二層に関しては、もしこのまま法律が成立するとするならば、相当程度綿密な、いわゆる業界とのすり合わせというものが必要になってくるし、それは政府主導ではなくて、ある種の業界ルール、業界慣習を生かした形でのいわゆるルール作りというものをしていく必要があると思うんですね。  ただし、大事なのは、あえてもう一度お話をしますけれども、そのようなガイドラインをする、あるいは補償金制度をつくっていくという大前提として、一体どういうような原則守っていくのかという考え方をもう一度きちんと確認をした上でしていくと、具体的な基本構造をつくっていくということが必要かと思っております。
  66. 木戸口英司

    ○木戸口英司君 それでは、宇野参考人にお伺いをいたします。法案というよりも、ちょっと現状を少し、先ほど来御説明いただいているんですが、もう少し詳しくお聞きをしたいと思います。  この電子書籍のアクセシビリティーを高めていくということについて、総務省で電子書籍制作ガイドラインというものを作り、まあこれはあくまでガイドラインですので、なかなか進まない状況もあるんだろうと思いますが、この効果についてと、あと、その音声読み上げ等について、まだまだテキストデータからの読み上げ等、誤読も非常に多いという現状、技術的な問題だろうと思います。その中で、SSMLという方式、これもコストが非常に掛かると。で、OCRに掛けてテキストデータ化する、これはまあ自炊をし、という言葉なんですね。それぞれ自らテキスト化していくという、また共同自炊型オンライン電子図書館といった試み等々あるようですが、この辺の現状、苦労話などを少しお知らせいただければと思いますし、あと国会図書館の使命ということ、先ほどお話ありましたが、国会図書館への今後の期待というものをもう一度お知らせをいただければと思います。
  67. 宇野和博

    ○参考人(宇野和博君) まず、音訳における誤読の問題ですけれども、例えばサチコと読むかユキコと読むかとかですね、経緯と読むかいきさつと読むかとか、中には宇宙と書いてソラと読ませるとか、いろんな、小説には読み方、ルビがあったりします。どうしても、それは漢字だけだと、それは誤読してしまったり著者の意図と違った形で合成音声は読んでしまうという側面があります。  そこで、お話のあったSSMLという形で総務省の研究でも進んでいるわけですけれども、ここにはやはり出版社の一手間が入ってしまう。でも、本当にその正確なデータを伝えるという意味では、その読み方をやっぱり出版社が、一つその裏データとしてそういう読み方をかませていただく、こういうことも将来的に進んでやっていただければなというふうに思った次第です。  先日、ある方と話していたときに、例えば車椅子で上肢に障害のない方は、そのような読み方を入れていくということに支障がないので、そういう仕事は是非そういう車椅子の方に回していただけないかというようなお話も、ああ、なるほどなと伺ったところです。  それから、国会図書館につきましては、先ほど全国のアクセシブルなデータの収集、配信についてお話し申し上げましたけれども、もう一つ、近代デジタルライブラリーにおいて、国会図書館は図書の電子化を進めています。これも、PDFという形で進められてしまうと、どうしても私たち障害者は置き去りになってしまう。ここでもデジタルディバイドという問題が起きてしまいますので、やはりそのデータ形式については、誰もがきちんと読めるような形式でデータを電子化していっていただき、そして、それを広く、どんな身体的条件があっても同じように読めるような媒体で近代デジタルライブラリーの所蔵を進めていただきたいなというふうに思っているところです。  以上です。
  68. 木戸口英司

    ○木戸口英司君 ありがとうございます。終わります。
  69. 松沢成文

    ○松沢成文君 希望の党の松沢成文と申します。  今日は、参考人の皆さんには、お忙しい中ありがとうございます。  私は、上野参考人に、これまで文化審議会等でもずっとこの著作権法の改正に学識の立場で携わってきたということなので、三点ほど質問をさせていただきたいと思います。  今回の著作権法の改正で、フェアユースの導入などによって法規範というのが柔軟になる一方で、法解釈の余地が逆に言えば拡大をしていくわけですね。そうなったら、それを、事業者と権利者の間でトラブルが起きてきます、見解の違いが、最終的に誰が判断をするかとなると、これはもう訴訟の場で判断をされざるを得ないと思うんですね。そのときに活躍するのが弁護士さんであります。ただ、弁護士さんといっても非常に多様でありまして、企業の顧問弁護士をやられている方から、逆に言えば表現の自由とか人権を尊重している弁護士さんもおりますよね。  この今回の法改正について、まず、弁護士会が果たして弁護士さん全てを代表しているとは言えませんが、例えばこの訴訟に関わる弁護士会はどのような反応であったのか、その辺り、もちろん両方意見がありましたということかもしれませんが、少し御説明いただければ有り難いなと思います。
  70. 上野達弘

    ○参考人(上野達弘君) ただいまの御質問ありがとうございました。  確かに、今回のような権利制限規定が解釈の余地が大きいとすると、トラブルになるということは確かにあるかもしれません。最終的には司法によって解決せざるを得ないからです。そうすると、弁護士さんがそうした著作権訴訟に関わられるということが増えてくるのかもしれません。  ただ、元々、著作権訴訟は非常に少ないですね、日本は特に少ないですね、年間百件ぐらいしか訴訟はございません。ですので、それが今回の規定ができたことによってどうなるのかというのはちょっと見通しが付かないところでありますし、弁護士会としてどのようなスタンスを取っていらっしゃるかというのはちょっと私の承知するところではございませんので、その程度にさせていただきます。
  71. 松沢成文

    ○松沢成文君 ただ、先生、これだけ法解釈の余地が残るわけですね。そうすると、訴訟は間違いなく、著作権法をめぐる訴訟というのは増えますよね、そう見ていいんじゃないでしょうか。その辺はどうですか。
  72. 上野達弘

    ○参考人(上野達弘君) ありがとうございます。  確かに、不明確な規定が増えると訴訟増えるという考えもあるんですけれども、今回、この不明確な規定というのは権利制限規定なものですから、これは、これに適用されると訴えられても別に大丈夫なわけなんですよね。ですから、言ってみたら被告側といいますか、訴えられる方に武器を与えているものなので、権利制限規定が増えたということは訴訟が起きなくなるんじゃないかという見方もあるようでございます。
  73. 松沢成文

    ○松沢成文君 次に、今日の議論でもいろいろ、著作権法、海外ではこういうふうになっているって、米国のフェアユース規定とか、あるいはイギリスのフェアディーリング規定ですか、方式みたいなものの議論がありました。また、先ほど高木先生の質問では、EU諸国なんかはどうなっているんでしょうかというのがありました。  先生方からは、米英法と大陸法の違いみたいな御説明もあったんですが、私聞いていて非常に疑問に思ったのは中国の存在なんですよね。これもう経済大国になって、政治大国です。それで、インターネットなんかで情報というのはもう広域化というか、どんどん多様化していくわけですよね。かなり法律よりも政治が優先してしまうようなちょっと特色を持った中国ですよね。中国なんかは大陸法的な考えで、やっぱり個別権利制限規定のみをぎちっと規定しているような著作権法体系になっているんでしょうか。
  74. 上野達弘

    ○参考人(上野達弘君) 御質問ありがとうございます。  中国は大陸法系なので、基本的には日本と同じような形で個別的な権利制限規定を持っているんですけれども、数年前から著作権法改正の検討をしておりまして、その改正法案の中には、本当に、その個別規定の一番最後に、その他の利用について言わば一般的な受皿規定というのを提案しているんですけれども、まだまだこれは法案が法律として成立する段階にはないようでございます。
  75. 松沢成文

    ○松沢成文君 これ吉村参考人にも、じゃ、ちょっといいですかね、一点聞いて。  これ、中国との経済関係というのは様々難しい部分抱えています。日本の例えば企業が中国に入っていっても、かなり技術を、ある意味で盗まれてしまっているんじゃないかというのもありますけれども、産業活動における技術を盗むスパイ行為みたいなものも中国との間でかなりあると思うんですが、この中国の著作権規定などについて、例えば経団連から改正を要求するとか、そんなことはやったことありますか。
  76. 吉村隆

    ○参考人(吉村隆君) 御質問ありがとうございます。  当然のことながら、経済界としてのパイプとしての中国との対話というのはいろんなものがございます。そのときにやはり、著作権に限らずではあるんですけれども、知的財産の取扱いについては、やはり日本企業側からは改善してほしいという意見は必ず出ておりますし、そのことはお伝えしているという状況にございます。  まあ、ひどいのが多いですよね、やっぱり、というのは確かだと思いますので、だから付き合わないという話にはいかなくて、ゼロ、一ではない関係を築かなければいけないわけですけれども、申し上げるべきところは申し上げるということの姿勢でやっております。  それから、スパイ行為というお話が先ほどございました。これについては少し前になりますけれども、不正競争防止法の営業秘密の保護については、ここも法令の改正をしていただきました。それは別に中国だけを念頭に置いたわけではないですけれども、近隣のライバルとおぼしき国にいろいろな営業秘密が漏れるということが非常に深刻であるということで、日本の法律としては多分異例な方だと思いますけれども、国内外で少し条件、差別を付けるような、つまり、海外が絡むと重くなるような、そういう法改正もしていただいた経緯がございます。  ということで、中国との関係は、何というか、まあにっこり握手をしながら、何というか、蹴るべきことは足で蹴っているというか、というような関係というのが現状だと思います。そういったことを言い合うことが将来的には建設的ないい関係に発展し得るというふうに信じて、申し上げることは申し上げるというスタンスでやっております。
  77. 松沢成文

    ○松沢成文君 マラケシュ条約の議論もありました。これは、先に、あれですよね、視覚障害者の情報アクセシビリティーをきちっと保障するために条約というのを作って、その後にそれに合わせて国内法を整備するという形なんですが、私、この著作権法についても、これだけインターネットで情報が広域化、多様化する中で、例えば世界で共通ルールを作るべきじゃないかという議論が出てこないのが不思議なんですよね。  例えば、二国間なり多国間の協定というのもあるでしょうし、あるいは条約、全世界的な、普遍的なルールを作る条約。そうしないと、各国の法律でルールがかなり違って、でも、これもう取引は海外ともいろんなことをやるわけですね。そういう何か広域性、普遍性に対応できないんじゃないかと。そういう協定だとか条約を多国間で作っていこうという議論というのは全くないんでしょうか。
  78. 上野達弘

    ○参考人(上野達弘君) 御質問ありがとうございます。  確かに、近時、ボーダーレスエコノミーの時代です。インターネットを通じて著作物が流通いたしますので、ある国では権利があったり、ある国では侵害にならなかったりと、こういうことになりますと流通を妨げてしまうことになります。したがって、著作権制度のハーモナイゼーション、国際的な調和というのは非常に重要な課題であります。  国際条約はもう百年以上前からあるわけですけれども、ただ、それはどうしても時代遅れになってまいります。インターネットに対応した条約というのも九六年、九五年にできましたけれども、またそれも古くなってしまって、どうするのかということは常に課題になっております。  マラケシュ条約というのは、これ権利の制限に関する条約なんですけれども、権利自体の条約というのもなお重要ではないのかということで、今、一応WIPOの中では放送機関に関する条約というのが審議されているところではありますけれども、更にこれは進めて、検討していく必要があると認識しております。  以上です。
  79. 松沢成文

    ○松沢成文君 時間ですので、どうもありがとうございました。
  80. 高階恵美子

    ○委員長(高階恵美子君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。  本日は、長時間にわたりまして貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十分散会