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2016-12-08 第192回国会 参議院 法務委員会 13号 公式Web版

  1. 平成二十八年十二月八日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  十二月六日     辞任         補欠選任      徳茂 雅之君     牧野たかお君     渡辺美知太郎君     柳本 卓治君  十二月七日     辞任         補欠選任      丸山 和也君     こやり隆史君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         秋野 公造君     理 事                 西田 昌司君                 山下 雄平君                 真山 勇一君                佐々木さやか君     委 員                 猪口 邦子君                 こやり隆史君                 中泉 松司君                 古川 俊治君                 牧野たかお君                 元榮太一郎君                 柳本 卓治君                 有田 芳生君                 小川 敏夫君                 仁比 聡平君                 高木かおり君                 糸数 慶子君                 山口 和之君    衆議院議員        発議者      二階 俊博君        発議者      門  博文君        発議者      宮崎 政久君        発議者      若狭  勝君        発議者      江田 康幸君        発議者      逢坂 誠二君    国務大臣        法務大臣     金田 勝年君    事務局側        常任委員会専門        員        青木勢津子君    政府参考人        法務省人権擁護        局長       萩本  修君        外務大臣官房審        議官       水嶋 光一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人の出席要求に関する件 ○部落差別の解消の推進に関する法律案(衆議院  提出)     ─────────────
  2. 秋野公造

    ○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員の異動について御報告いたします。  昨日までに、徳茂雅之君、渡辺美知太郎君及び丸山和也君が委員を辞任され、その補欠として牧野たかお君、柳本卓治君及びこやり隆史君が選任されました。     ─────────────
  3. 秋野公造

    ○委員長(秋野公造君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。  部落差別の解消の推進に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、法務省人権擁護局長萩本修君外一名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 秋野公造

    ○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 秋野公造

    ○委員長(秋野公造君) 部落差別の解消の推進に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 西田昌司

    西田昌司君 おはようございます。自民党の西田です。  先日、参考人の方に来ていただきまして、様々な観点から、意見聴取、また委員の先生方との間のやり取りがありまして、非常にこのおかげでこの同和解消法案の審議も随分進められた、深掘りができたということで、非常に委員の皆さん方にも感謝をしたいと思っております。  その中で何点か改めて提出者やまた政府側に質問させていただきたいんですけれども、元々この案が出てくる前に、人権擁護法案というのが何度も出ては廃案になり、出ては廃案になりということがありました。その廃案になってきた一つの大きな原因といいましょうか、私が反対をしてきたわけなんですけれども、しかし、その意味は何かというと、この法律によって人権を守ろうということについて何も否定するものではないわけですが、そういうかつての人権擁護法案なんかの場合には、いわゆるある種の禁止条項といいましょうか、行政が差別事案があった場合呼出しをして調査するとかいうことになってくると、その萎縮効果が出て、差別が解消されるというよりも基本的な人権が侵害されてしまうんじゃないかと、表現の自由や内心の自由が侵害されるんじゃないかと、そういうおそれがあるのでこれは断じてやるべきでないと。  かつてのヘイト法案のときも同じことを私、提案者として申し上げたんですけれども、そのときも、本当は禁止条項等がある方がヘイトに対する規制はできるかもしれないけれども、それをやった瞬間から違う人権侵害が起きてしまうと。それでヘイト法案の場合にも、そういう禁止規定等がない、いわゆる理念法ということになってきたわけです。  今回のこの同和解消法案もそのヘイト法案に倣った形で理念法という形になっているわけなんですけれども、しかし、これも運用を間違うと、今言いましたように、また新たな差別をというか、新たな、まあ言い方は悪いんですが、ある種の暴力装置になりかねないわけなんですね、行政の方からそれぞれ個人の内心の自由表現の自由まで制限すると。それがないようにということでぎりぎりこういう形で出てきたんだと思うんです。  それで、先日の参考人の中でも、一番この法案について熱心に是非やっていただきたいというのは解放同盟の方からの話が一番顕著であったと思うんですけれども、その一番やっていただきたい理由が、いわゆる同和三法が終わって、いわゆる経済的ないろんな格差の問題は解消できたかもしれないけれどもまだ差別が残っていると、それが典型事例として結婚の、ついての差別、これがあるんだという話をおっしゃっていたわけですね。これはなかなか、お話を聞くと、非常に深刻なそれぞれ個人にとりましては問題であるということは私も認識をしているわけですけれども。  それで、この法律を作って、先ほど申し上げましたようなこの結婚差別とかが、しかしどういう形でなくなるようになるのかと、その辺のところを改めて提案者、それから政府の方にお聞きしたいと思います。
  7. 門博文

    衆議院議員門博文君) おはようございます。  今、西田委員からの御質問にお答えをさせていただきたいと思います。  先日、参考人の質疑の状況は我々も速記録ないしは中継で拝見をさせていただきました。その中で、今御指摘いただきましたように、結婚に関する差別ということについて多くの問題点が指摘されたということは承知をしております。私たち自身も地区の皆さんとこの立法過程の中で懇談をさせていただいた中で、切実にお訴えをいただいたことの一つがやっぱりこの結婚差別でありました。  特に、通婚ということで、被差別部落とそうでない地区の方々の間で結婚を交わされることを通婚というふうに言われるんですけれども、そういうことがどんどん進んでいるという実態は御説明もいただいたんですけれども、その中で、特に私、印象に残っているのは、問題は、隣の町、例えば同じ小学校区の中でその地区とそうでない地区の方の結婚はいまだに大変いろんな障害があって難しい状態だと、このことを解消するためにも是非ともこの法律を作っていただきたいということの切実なるお声をいただきました。  今お話の中にもありましたように、旧同和三法は、今申し上げたように、被差別地域とそうでない地域、同和地区とそうでない地域、ここを分けて、特に被差別地域、同和地域に対して焦点を当てた法律であったと思います。今回は、私たちは、そういうことでなくて、この部落差別の解消に関する施策を推進することによって国民一人一人、要するにその地域の人であろうが地域の人じゃなくても、国民一人一人が差別の解消を図り、その結果として理解が高まっていって、今御指摘いただいております結婚差別、そのような行為が行われないような社会を目指すということであります。  随分と法律が成立しても時間が掛かることだというふうに私は思っておりますけれども、この機会に国民一人一人がこの部落差別はいけないという認識を、改めてこの法律ができ上がることによって認識をしてこれからいろいろな行動をしていっていただきたい、そういう思いであります。
  8. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 本法律案は議員立法として国会に提出され審議中でありますから、その法律が成立した場合の効果等について法務省としてお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、法務省の人権擁護機関におきましては、今御指摘のありました結婚差別に関するものも含め、同和問題に関する偏見や差別をなくすための啓発活動に取り組むとともに、人権相談等を通じ人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講ずる調査・救済活動に取り組んできたところでございます。  今後も、御指摘の結婚差別のような同和問題に関する偏見や差別をなくすための人権啓発活動、調査・救済活動にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
  9. 西田昌司

    西田昌司君 今御答弁いただいたんですけど、提案者の方からの説明にもありましたように、結局、この法律というよりも、私は、要するに人権教育、ある種のですね、いわゆるいわれなき差別が同和差別としてずっとあったわけですけれども、そういう歴史を学びながら、これは本当にいわれなきこと、差別をやること自体がですね、もう近代になって百五十年になるわけですから、恥ずかしいことなんだというやっぱり共通認識、持つべきだと思いますね。  しかし、それは同和ということだけじゃなくて、いわゆるそういう大きな意味での人権教育なのかなという感じもします。この前のヘイト法のときもそうだったんですけれども、やっぱりそういう意識というのが、日本もいわゆる世界に冠たる先進国であるわけですから、そういう意識をやっぱり醸成させていくことが大事だと思うんですね。  そういう意味で思うと、実は先日の参考人の方々でも、自由同和会から来られていた参考人の方も、内容的には実は私が今言っているような広く人権教育という観点でやっていくべきだと、ただ、こういうのもあってくれると有り難いなというような感じだったんですけれども、もう少しそちらの方に焦点を当てていく方がいいのではないかと思うんですけど、提案者はどうでしょう。
  10. 江田康幸

    衆議院議員(江田康幸君) 私の方から西田先生の質問にお答えさせていただきますが、先日の参考人の質疑におきまして、先生今御紹介されましたように、一部の参考人からは、この部落問題だけを、中略いたしますけれども、第一義的に教える教育を排除して、子供の人権、教職員の人権、その権利を保障する、憲法教育の軸にすべきという主張がなされたと承知しておりますけれども、一方で、先生御指摘のとおりでございますが、別の参考人からは、人権教育・啓発推進法という大きい人権の網を掛けた中の一項目だけで同和問題をほっておくと、意外にももう全然扱われなくなったという感じがしているという御意見、また、啓発そのものも進められないということが起こってきているという御意見もあったと承知しております。  提出者といたしましては、例えば、現在、人権教育・人権啓発推進に関する法律に基づいて行われております人権教育及び人権啓発に関する施策も重要であると考えております。しかし、その一方で、この部落差別を解消することが重要な課題であるということに我々は重点を置きまして、人権教育及び人権啓発に関する施策の中でも部落差別を解消するために必要な教育並びに啓発について、個別法で、本法案において特に規定して推進していくこともまた重要であると考えているところでございます。  なお、本法案に定める教育、啓発としましては、人権教育並びに人権啓発の推進に関する法律に定めるものと異なる手法を想定しているわけではございません。その内容については、今後、行政庁において、同和問題に関して行っている施策を前提として、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることも十分に踏まえて、本法案の基本理念等にのっとって検討されていくものと考えております。
  11. 西田昌司

    西田昌司君 いろいろ微妙な問題があるんですけれども、先日の参考人の話でもちょっと私が一番印象的だったのは、これは解放同盟の西島さんの話でしたけれども、要するに、自分たちのふるさとを、次の世代にも誇りを持って住みたい、守っていきたいと、こういう趣旨の発言があったわけです。人間誰しも、自分のふるさとや、また自分の出自も含めてやっぱり誇りを持って生きたい。自己アイデンティティー、そこにつながるわけでありますから、そう思われるのは当然だと思いますし、当然の権利、要求でもあると思うんですね。  しかし、その一方で、それぞれ、この同和問題の解決ということから考えると、ある種、通婚もそうですけれども、その部落から出ていかれて違うところで生活されると。本人も家族も親戚も含め、元はどこであったかというのはもう既に忘れ去られていると、当然他人さんからも忘れ去られていると。もっと言うと、これは同和の方だけじゃなくて日本人の多くがもういろんなところに動きますから、本当の自分たちの出自がどうだということを、もちろん誇り持っておられる方もたくさんおるんでしょうけれども、だんだん分からなくなってきているのも現実にあるわけなんですよね。そのことによって、実はそういういわれなき差別というのはなくなっているという現実が私はあると思うんですね。  だから、いわゆるこれが寝ている子を起こすなという話で、その現実をどう捉えるのかというのがあるんですが、しかしまたもう一方で、そうであるけれども、例えば何かの機会にそういうことが分かったとかばれたとか知らされたとかそういうことで、そのことによって何かまた新たないわれなき差別が出てくる、こういうことですね。これはまた、まさに島崎藤村の「破戒」の世界なんですよね。全く知らずに、みんな秀でて立派な方だと思っていたけれども、そういう出自だと言った瞬間からいわれなき差別に遭ってしまう、しかしそれを乗り越えていくという話なんですが、今日においてもやっぱりそういうところは非常に重要なところだと思います。  私は、かつて学生時代にたまたま友人とこういう話になりまして、何でこういう同和みたいな話したのかは覚えていないんだけれども、そのときに、これを解決していくには、そういうふうにやっぱり時の経過、忘却効果というのもこれ非常に大事じゃないかということを申し上げたことがあるんです。そうするとその友人が、いや、そういうことにしちゃうと、今まで差別がおかしいと闘ってきたそういう方々の行為はどうなるんだ、また、それを忘れることで解決するなんてしたら人間の尊厳はどうなるんだというようなことで、非常に議論したことがあるんですね。そのときに、私も随分若かったですし、稚拙な議論でもあったんですが、残念ながらその友人とはその後没交渉的になってしまいまして、残念な思いなんですが。  しかし、今も実はこの問題の解決というのは、片っ方でやっぱりそういう忘却というのも大事だし、しかし片っ方、人間の誇りということを考えると、そもそもそういう差別というものがあって、やっぱりそれは良くない恥ずかしいことなんだという、そういう教育、これ両方とも必要だと思うんですよね。だから、そこがバランスよくされるということが大事で、余り、何といいましょうか、その元々の水平社から始まるこの運動ですが、その一番のそこのところに余りにも固執してしまうとかえって解決を遅らせてしまうんじゃないかと思うんですが、この辺のことについては提案者の方々はどういう認識をされていますか。
  12. 宮崎政久

    衆議院議員(宮崎政久君) 西田委員御指摘の点につきましては、前々回のこの質疑でもやり取りをさせていただいたものでございますし、また、私ども発議者は前回の参考人質疑については速記録全部読ませていただきましたし、また映像も見せていただきました。その中で西島参考人からの委員御指摘のような御発言も聞かせていただきましたし、また違う立場に立たれる方からの御意見も出ていたことも確認をさせていただいているところでございます。  そして、この法案を作る過程においても、様々な異なる立場の方から御意見を聞かせていただきながら法案を作らせていただいたという過程をたどっております。提出者としましても、様々な意見がある、いろんな懸念がある、そして、委員御指摘のような形で、法律は万能というわけではありませんので、その兼ね合いをしっかりしていくことは大変重要だという同じ認識に立っているものであります。  その上ででありますけれども、提出者としましては、この委員会の中で、例えば前々回、有田委員からも御指摘があった結婚差別に関しての御指摘、また先立って今日いただいた御質疑のような形で部落差別の存在が今あるということを認識をしている上で、部落差別の存在を知らないというだけでは、将来部落差別に関する情報に触れたときに、これに起因して再び差別がなされるおそれがないとは言えないという認識に立っております。  旧同和三法が失効した後も部落差別は自然の解決を見たというわけではないことが、結婚を始めとする差別が今現に存在しているというところからも理解できるところだと思っています。  また、法案の第一条の目的のところにもありますけれども、インターネットを始めとする情報化の進展に伴って、半永久的に情報の閲覧が可能となる形で部落差別に関する情報が拡散しているなどの状況の変化があるということもまた厳然たる事実でございます。  この部落差別の根本的な解決を図るためには、やはり国民一人一人が部落差別を解消する必要性に対する理解を深めることができるように、部落差別の解消に関する施策を行っていくことがやはり必要であるというふうに考えております。そして、教育、啓発というふうな施策を定めているわけでありますが、これは部落差別が発生しないような社会的意識の確立を目指すものでありまして、西田委員が御指摘いただいたような、危惧されているような、教育を行われることによって部落差別の解消に逆行するようなことがあってはならないわけでありまして、これは、そのようなことは本法案の第一条の目的、また第二条の基本理念にも反するものでありますので、そのようなことがあってはならないと提出者としても同様の認識に立っているものであります。  以上です。
  13. 西田昌司

    ○西田昌司君 それで、結局のところ、この法律、これから成案が成ったとして一番懸念するところが一つあるのは、これはいろんな委員からも御指摘がありましたけれども、事実としてやっぱり過度な糾弾活動というのがあったということがあるわけでございます、様々な団体からあると。ただ、不当な差別を受けると、人間、抗議したり、そういうことを言うのはこれも当然の話といえば当然であるわけで、当然認められる権利ではあるわけなんですね。要するに、さじ加減問題といいましょうか、程度問題なんですよね、ここは。だから、それが、かつてそういうことがあったということもあります。  ですから、この法律ができることによって、またぞろそういう方向にそういう運動団体の方々や様々な方々がなられるという根拠を与えるようなことになっちゃうとなると、本当にこれは悲劇なんですよね。せっかく融和させて、皆さんが、だんだん差別というのが少なくなっている、その中でまた新たなそういう運動に拍車を掛けるようになったら困るわけで、ここはちゃんと提案者からもそういうことはあってはならないんだということを確認をさせていただきたいと思います。
  14. 宮崎政久

    ○衆議院議員(宮崎政久君) 御指摘のとおりだと思っております。  この法案の作成過程においても、私どもは様々な民間団体の方々と意見交換をいたしました。その中で、今委員御指摘のような形での、過去の過激な運動によって起こされた悲劇などについても意見交換の場で率直に言葉を交わし合ったことも事実であります。そして、先日の参考人質疑の中で、この参議院法務委員会の委員の先生方と参考人の皆さんとの間でそういった過去の事実に遡って意見交換がされたことも確認をしております。  御指摘のような行為が決して起きてはいけない。私たち提案者は、部落差別の解消を推進する本法案の趣旨に反するような行為、これは、本法案が成立をさせていただいた後であったとしても、こういった過激な運動や不適切な言動に対していかなる根拠も与えるものではございません。そのことは改めて明言をさせていただきたいと思っております。
  15. 西田昌司

    ○西田昌司君 終わります。
  16. 有田芳生

    ○有田芳生君 民進党・新緑風会の有田芳生です。  今から百四十五年前、一八七一年に賤民廃止令が制定をされて、それまで同和地区と言われていた人たちが、それまで一種の労働税のような形で例えば牢屋の掃除をさせられるとか、あるいは道に倒れていた牛や馬の処理をさせられるとか、あるいは死刑執行がされるときにその実務を担わされると、そういうことは確かに廃止されたんだけれども、賤民廃止令から百四十五年、先ほどお話出ました水平社宣言からもう九十五年になる。確かにかつてのような差別はなくなってきつつあるのかも分からないけれども、実際に、インターネット問題を含めて、私がこの間確認しただけでもいまだ進行中の結婚差別などは厳然としてなくなっていない。  結局、それは何なのか。いろんな考え方があります。身分制度の下で、日本が近代化されれば部落差別はなくなるんだというような意見も確かにありました。例えば、ある民間運動団体の指導部の方は、一九九八年ですけれども、このように語っていらっしゃいました。部落と言われている地域は解体過程にあるけれども、九〇年代に入ってから急速にそれが起きていて、つまり解体過程がですね、十年後には解体してしまったということを誰もが認めざるを得ないような状況になると言っても言い過ぎではないというふうにおっしゃっていますけれども、それからもう十年以上たっているにもかかわらず、陰湿な結婚差別を中心とした様々な部落差別というのはなくなっていない。だから、そう語った方は言い過ぎではないだろうと言ったんだけれども、言い過ぎであるということはもう事実が明らかにしている。  ということは、やはりこの問題というのは、過小評価をしてもいけないし過大評価もしてはいけない。何が必要かといえば、やはり現実から出発するしかないと思うんですよね、現実を正確に把握をすること。  私は、個人的に言えば、この間もお話をしましたけれども、日曜日にヘイトスピーチ問題で福岡に行ったときに、ちょっと調べただけでいまだ学校に部落差別の落書きがされているということを確認いたしました。あるいは、参議院選挙が終わってから、九月ですけれども、三重県に行ったときに、やはり今でも駅に部落差別のいたずら書きがされている。それどころか、先ほど提案者がおっしゃっておりましたけれども、本法案にも書かれているインターネット上の部落差別というものを見れば、これは誰でもがみんな見ていただけば分かるんだけれども、部落差別をなくそうという主張よりも部落差別を助長するようなひどい書き込みがいまだもうあふれ返っている、凌駕している現実がある。これにどう取り組むかということがやはり今度の法律案の課題だろうというふうに私は思っております。  そこで、まず提案者にお聞きをしたいんですが、事実から出発するという意味において、皆さん方はこの法案を提出されるに当たって、現代の部落差別の実態というものをどのように把握されてこういう法律案を出されたんでしょうか。
  17. 逢坂誠二

    ○衆議院議員(逢坂誠二君) 御質問ありがとうございます。  今、有田委員がお話しいただいたように、江戸や明治の時代に比べればそれは随分状況は変わっているんだろうというふうには思います。ただ、その中でも、十二月一日の質疑においても有田委員から、部落出身者との結婚に反対する両親が逃げ出した娘さんを追跡するためにGPSを送り付けたなんという事例も紹介いただきました。私、これ聞いて本当にとんでもないことだなというふうに感じました。あわせて、前回の参考人質疑において、結婚相手の両親や祖父母の戸籍謄本まで取得し、父親が部落出身者であることを理由に結婚に反対した事例、あるいはまた結婚相手の出身地が部落かどうか知りたいという問合せを役所に行った事例、こういうものも紹介されたわけであります。したがって、委員御指摘のとおり、現在もなお部落差別が存在するというふうに我々も認識をしております。  具体的な数値の上でもこれは明らかでありまして、法務省の人権擁護局によりますと、同和問題に関する人権侵犯事件につき、人権侵犯事件調査処理規程に基づく救済手続による処理を行った件数、これが平成二十五年で八十件、平成二十六年で百七件、平成二十七年で百十三件となっておりまして、依然として同和問題に関する人権侵犯の実態があるという、これが現実だと思います。  加えまして、これも委員から御指摘がございましたけれども、情報化の進展に伴って新たな事態も生じているというふうに認識をしております。  これも法務省の人権擁護局によりますと、先ほど申し上げた同和問題に関する人権侵犯事件の処理件数のうち、インターネット上の情報につき法務局が削除を要請した件数は、平成二十五年で五件、平成二十六年で十件、平成二十七年で三十件となっておりまして、その数は増加傾向にあるということであります。また、前回の参考人質疑において紹介されたように、かつての同和地区の地名、世帯数、人口などが記載された全国部落調査復刻版なるものがインターネット上で出てきている、こういう事案もあるというふうに承知をしております。  以上です。
  18. 有田芳生

    ○有田芳生君 繰り返しですけれども、いまだ続いている結婚差別、西日本地方で、いまだ結婚したいお二人は親から逃げている現実があります。先ほども提案者からお話ありましたけれども、親は現代的な手段であるGPSを娘さんに送り付ける中で居場所を確認をして、またお二人が逃げているという、そういう陰湿な状況が続いております。結婚差別がかつてよりは少なくなっていることは事実なんだけれども、しかし、やはりこの問題というのは表に出さない形で解決をしたいということで、それで以前よりは減っているにしても陰湿な形でいまだ続いているというのが、これはもう認めざるを得ないことだというふうに思っております。  それで、今インターネットの問題でも、削除要請が二十五年五件、二十六年、平成ですね、十件、二十七年三十件と増えていると。これは、人権侵犯事件として法務局に削除要請をするという件数というのは、これはヘイトスピーチと同じでなかなか大変なことであって、これはもう先ほどもお話をしましたけれども、インターネット上を見ればもうとんでもない部落差別というものは様々な書き込みがある、それを削除要請することさえもう面倒くさいという方がいらっしゃるという現実なんですよね。ですから、そういう新しい課題をやはり解決していかなければいけないというふうに思っております。  確かに被差別部落の問題というのは、賤民廃止令以降様々な形態がありましたけれども、やはり封建遺制の遺物、残りかすという見方もあるんだけれども、そこにとどまらない現代的な課題、つまり近代の中にやはり部落差別というものが組み込まれているからこそこうやってなくならないんだという見方もある。私はそちらの方に近い考え方なんですけれども、だからこそ具体的な問題を具体的に解決していかなければいけない。  そこで、じゃ、この法律案がもし成立したとすれば、じゃ、具体的に結婚差別の問題を含めて様々な被差別部落の問題というものが実際にどのように解決していく可能性があるのか、そこは提案者の方々はどのようにイメージされているのか、ちょっと具体的にお話しいただければと思います。
  19. 逢坂誠二

    ○衆議院議員(逢坂誠二君) 今、有田委員の御指摘、非常に大事なものだというふうに思っております。  まず、本法案が成立する前の状態、今の状態であっても確かに対応できるものというのは、インターネットへの書き込みの削除要請だとかそういうことはできるわけでありますけれども、この法律が成立することによって、やっぱり私は、この部落差別というのはよろしくないものなんだと、そういうことを発生させてはいけないんだという意識を浸透させるというか、そういうことが非常に大事なことであって、そういうことの大きな柱になっていくんじゃないかというふうに思っています。  特に社会の中で、社会の底といいましょうか、底流に重低音のように流れる差別は駄目なんですよという、そういう意識を多くの人たちが持っていく、そういう社会づくりをしていくということにこの法律の成立によって私は向かっていっていただきたいと、提案者の一人としてはそんな思いを持っております。
  20. 有田芳生

    ○有田芳生君 ヘイトスピーチ問題のときにも何度も何度もこの委員会で質問をさせていただきました。そのときに、もちろん人種差別撤廃条約に基づいて日本はヘイトスピーチを含む差別をなくさなければいけない、そういう主張をしてまいりました。その人種差別撤廃条約の第一条に基づいて、国連の人種差別撤廃委員会は、世系、ディーセント、つまりインドのカーストとか日本の部落問題というものは解決しなければいけないと、これは日本も一九九五年に加入した人種差別撤廃条約に基づいて明らかになっているわけですけれども。  外務省にお聞きをしますけれども、人種差別撤廃委員会は、日本の部落問題というものをなくさなければいけないという、そういう主張をされているという理解でよろしいですね。
  21. 水嶋光一

    ○政府参考人(水嶋光一君) お答えを申し上げます。  ただいまございました人種差別撤廃委員会におきましては、一般的勧告におきまして、世系、ディーセントについて、これは条約の一部であり、それに基づく差別といったものを強く批判をし、各国にそれぞれの措置をとるようにという勧告をしてございます。  日本政府に対しましては、最終見解におきまして、世系、その言葉はそれ独自の意味を持っており、人種、種族、民族的出身と混同されるべきではないということを取った上で、部落民を含む全ての集団について差別から保護されること等について、その権利を完全に享受されることを確保するようにということで勧告をしてございます。
  22. 有田芳生

    ○有田芳生君 人種差別撤廃委員会は日本に対して三回これまで勧告をやっておりまして、来年の一月にはまた日本政府が報告書を出さなければいけなくなっており、二〇一八年の恐らく夏には次の人種差別撤廃委員会の会議が行われる予定になっておりますけれども、その人種差別撤廃委員会は、ヘイトスピーチだけではなくて、琉球、沖縄に対する差別、部落に対する差別、あるいは朝鮮学校に対する差別など様々な問題、アイヌ民族に対する差別などを取り上げているわけですけれども、外務省にそこでお聞きをしたいんですが、人種差別撤廃委員会の二〇〇二年に出された一般的勧告二十九の中で、この部落差別の解決に向けてどういう提案がされていますでしょうか。
  23. 水嶋光一

    政府参考人(水嶋光一君) お答え申し上げます。  二〇〇二年に出されました一般勧告二十九におきましては、前文の方で、カースト及びそれに類似する地位の世襲制度等の世系に基づく差別を条約違反として強く非難をした上で、勧告といたしまして八つの項目の下で、すなわち、一つ目は一般的な性格を有する措置、二つ目が世系を共有する集団の女性構成員に対する複合差別、三つ目が隔離、四つ目がマスメディア及びインターネットを媒介とするものを含むヘイトスピーチの流布、それから司法、そして市民的及び政治権利、それから経済的及び社会権利、そして教育を受ける権利という八項目の下で、委員会が全部で四十八の措置について各国に勧告をしてございます。
  24. 有田芳生

    有田芳生君 そのように、国際的な人権基準から見ればやはり日本にいまだ残っている部落差別というものを、法律的な対応を含めて解決に進まなければいけないというのが勧告のポイントなんですよね。ですから、そういう意味で本当に効果的な中身にしていかなければいけないというふうに思っております。  そこで人権擁護局長にお聞きをしたいんですけれども、例えばヘイトスピーチの問題でしたら、今年の五月の末に法案が成立をして六月三日から施行されましたけれども、ヘイトスピーチという新しい課題に対して、法務省は二〇一四年の段階から「ヘイトスピーチ、許さない。」という、そういうポスターなどを作っていただき、今ではそれが増刷をされて全国各地で貼り巡らされている。例えば、東京でいえば新宿駅にも今でも貼られているということを含めて全国各地でそういう啓発活動が行われておりますけれども、この部落解消の法律ができたらどうなるのかということをお聞きする前に、ざっとこれまでの教育啓発活動の内容、あらましについて、どんなことをなさってきたのかということについて、まずお示しください。
  25. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 法務省におきましては、従来から同和問題を重要な人権課題と位置付けて啓発活動を実施してきたところでして、現在は、人権教育・啓発に関する基本計画、平成十四年のこの閣議決定に基づきまして人権啓発の強調事項の一つに掲げ、講演会、研修会の開催、啓発ビデオの作成等の各種啓発活動を実施してきておりまして、こうした活動を通じて同和問題に関する偏見や差別意識の解消に取り組んでいるところでございます。  また、同和問題の解決を阻む大きな要因として、いわゆるえせ同和行為、すなわち同和問題を口実として企業、行政機関等へ不当な圧力を掛けて高額の書籍や機関紙を売り付ける、活動への寄附金、賛助金を要求するなど不当な利益を要求するこのえせ同和行為の横行がありますことから、国においては、えせ同和行為対策中央連絡協議会が中心となり、また地方においても、全国の法務局、地方法務局を事務局とするえせ同和行為対策関係機関連絡会が中心となってえせ同和行為を排除するための啓発活動等を実施してきたところでございます。
  26. 有田芳生

    有田芳生君 前々回の法務委員会でしたか、私が質問した中で、例えば、同和対策事業地域の変化が大きく現れてきたときに、東北地方なんかでは、なかなかこの被差別部落の問題というのが知られていない状況の下では、何でここだけこんなに立派なものが建てられるんだろうかとか様々な批判が起きたわけですけれども、そういうことに対して、やはり啓発活動が弱かったという、そういう総括はなさっていらっしゃるんでしょうか。
  27. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 必ずしもそういう総括をしているわけではございませんが、そうした声があることには謙虚に耳を傾けてまいりたいと考えております。
  28. 有田芳生

    有田芳生君 つまり、まだまだ啓発が弱い、教育も弱いということだろうというふうに言わざるを得ないんですけれども、もう少し具体的に、先ほど講演会のお話をなさいましたけれども、どういうところでどんな講演がなされてきたんでしょうか。もし分かれば教えてください。
  29. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 今ちょっと具体的に手元に資料を持ち合わせておりませんけれども、例えば、企業における人権研修の中で同和問題を取り上げていただいたり、あるいは各地方自治体における人権啓発の取組の中で同和問題を取り上げていただいたりしてきております。
  30. 有田芳生

    有田芳生君 確かに、企業に対するそういう啓発活動というのは効果を発揮しつつあって、就職差別などがなかなかできない環境というのはつくられつつあるというふうに思うんですが、しかし、隠然と今でも続いている結婚差別に対しての対策というのは何か考えていらっしゃるんでしょうか。
  31. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 特にその結婚差別に特化したものでもありませんし、また必ずしも同和問題に特化したものでもありませんけれども、同和問題を含め、この差別意識をなくし差別の問題を解消していくためには、先ほど来各委員の先生方あるいは提案者の方からも御指摘ありますとおり、教育や啓発を通じまして社会全体の人権感覚というんでしょうか、人権意識を高め、差別はあってはならないものだという、こういう意識を広く醸成していくことが大切だと考えておりますので、そのような問題意識の下、啓発活動に取り組んでいるところでございます。
  32. 有田芳生

    有田芳生君 なかなか具体的なイメージとして伝わってこないところもあるんですが、例えば目に見える形でいえば、これまで被差別部落の問題についてのポスターというのはどういうものを作られてきたんでしょうか。
  33. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 今委員から御指摘のありましたポスターという形で、最近目に付く形のもので記憶に残っているものはございません。  ただ、引き続き同和問題に関する差別がなお存在しているという問題意識の下、啓発ビデオなどは作成しておりまして、例えばですが、人権の啓発教材としまして、人権アーカイブシリーズの一つとして「同和問題 過去からの証言、未来への提言」という啓発ビデオを作成するなどして取り組んでいるところでございます。
  34. 有田芳生

    有田芳生君 これまでどういうことを、教育、啓発をやってきたかということは分かりました。  しかし、今度の法律案が成立したとすれば、今後何が変わるんでしょうか。
  35. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 本法律案、議員立法として提案され、現在こうして審議中でございますので、その成立を前提とした直接のお答えは差し控えたいと思いますけれども、先ほど申し上げましたとおり、教育、啓発を通じて社会全体のその人権意識を高めていくことが何よりも必要かつ重要と考えているところでございまして、教育一般については所管外ということになりますけれども、法務省としましては、人権啓発のその一端を担う立場から引き続き適切な啓発活動に努めてまいりたいと考えております。
  36. 有田芳生

    有田芳生君 なぜそういうことをお聞きするかといえば、ヘイトスピーチの解消法が議論になっているとき、法律がどうなるか分からないという段階でも、二〇一四年から「ヘイトスピーチ、許さない。」というポスターを作成してくれました。あるいは、ヘイトスピーチ解消法が成立したその段階で、例えば警察庁あるいは文科省などが具体的な通達を出されました。  この法律ができつつある、議論になっている過程の中で、そういう準備というのは何かなされていないんでしょうか。法務省が積極的にほかの省庁に働きかけるとか、そういう準備というものはないんでしょうか。
  37. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) この法案の成立を見据えてという準備ではございませんけれども、先ほども御紹介いたしました平成十四年の閣議決定、人権教育・啓発に関する基本計画におきまして、重要な個別の人権課題の一つとして同和問題が取り上げられておりまして、その同和問題も含めて協議する場としまして人権教育・啓発中央省庁連絡協議会というのがその当時から設置されておりますので、そういう場でこの同和問題についても、関係する府省庁、連携して取り組んでいくということになろうかと思いますし、先ほど御紹介しましたとおり、えせ同和の問題につきましても、えせ同和行為対策中央連絡協議会をかねて設置しているところですので、そのような場を活用することを考えてまいりたいと思います。
  38. 有田芳生

    有田芳生君 もう一つ、相談体制なんですけれども、人権問題について、自分のことあるいは身近な人のことを相談するというのはなかなか大変な、足を踏み出すまでに覚悟が要るという現実がこうした問題なんですが、その教育だけではなく、相談体制についてはこれまでどういう取組をなさってきたんでしょうか。
  39. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 法務省の人権擁護機関におきましては、全国の法務局、地方法務局計五十か所及びその支局二百六十一か所におきまして、法務局の職員及び全国に約一万四千名いらっしゃる人権擁護委員が同和問題を含むあらゆる人権問題について人権相談に応じているところでございます。  この人権相談におきましては、その内容に応じまして問題の解決に向けた助言を行うほか、人権侵犯の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として立件の上、調査を行い、事案に応じた適切な措置を講ずるなどして被害の救済及び予防に努めてきたところでございます。
  40. 有田芳生

    有田芳生君 今お話しになった全国一万四千人の人権擁護委員の方々に対して、部落問題を含めた人権問題についての講習とか、そういったものはこれまで行われているんでしょうか。どういう仕組みになっているんでしょうか。その人たちが、例えばヘイトスピーチにしても、この被差別部落の問題にしても、いまだ大きな問題なんだということを、そういうことを周知徹底するような仕組みというのはあるんでしょうか。
  41. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 人権擁護委員さん、民間のボランティアとして様々な活動に取り組んでいただいているところでございますが、法務大臣から委嘱をいたしますと、当然最初に研修を行いますし、定期的に研修を行っております。その研修も、法務局が中心となって行う研修もありますし、また、人権擁護委員さんは人権擁護委員さん自身で組織体をつくることになっておりまして、つくっていただいておりますが、その人権擁護委員さんの組織体自らが主体となって実施している研修も行われているところでございます。
  42. 有田芳生

    有田芳生君 ちょっと細かいことで申し訳ないんですが、定期的に行われているということですけれども、どのぐらいのサイクルなんでしょうか。そこでまた、例えば今度新しい法律が議論になったことを含め、あるいはヘイトスピーチ問題がこれまで議論になって新しい法律ができて、だけどいまだ問題を抱えているんだというような、そういう新しい課題についても教えるような体制というのはあるんでしょうか。
  43. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 本来、局長として頭の中にインプットしていなければいけないと思いますが、今、何年ごとに行っているか、ちょっと正確な数字を持ち合わせておりませんが、少なくとも、人権擁護委員に委嘱した当初に一回行うだけではなくて、その後複数回研修を実施しております。
  44. 有田芳生

    有田芳生君 ヘイトスピーチ問題で実感したんですけれども、やはり法務局に相談に行って、自分の問題を解決したい、してほしいと言うことはなかなか大変な覚悟がいる。で、訴えたところで、例えばツイッターとかユーチューブから差別の書き込みがあったら削除してほしいという、それを法務局が努力をされてもなかなか進んでいかないという残念な現実ありますから、本当に大変な課題だと思うんですよね。  ヘイトスピーチについて言えば、例えば参議院の法務委員会の参考人で来てくださった崔江以子さん、在日三世の女性なんかにしても、そういう行動をするだけでいまだインターネット上では六十万件ぐらいの攻撃が一女性になされている。それでもひるまずにそれを削除するように努力するというのは大変なこと。で、一般のそういう感覚の中で、相談体制というものは本当に親身になってやらなければいけないというふうに思うんですよ。  幸いなことに、ヘイトスピーチ問題について言えば、担当の方々が本当に真剣に対応してくださっているんで現実が変わっていっているということがあるんですけれども、この被差別部落の問題についても、やはりそういう相談体制というものをプロがやはり取り組まなければいけないと思うんですが、そういう体制はこれから準備はされるんでしょうか。
  45. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 先ほどと同じことになりますが、議員立法として提案された法律案ですので、成立を前提とした直接のお答えは差し控えたいと思いますけれども、今、有田委員の御指摘、非常に重要な御指摘だと認識しております。  法務省としましては、今後、引き続き人権相談にしっかり取り組まなければいけないところですけれども、その人権相談等に真摯に取り組むことはもとより、御指摘のとおり、相談しやすい環境づくりというんでしょうか、相談しやすい体制になるにはどのような工夫があり得るかということも含めましてしっかり検討したいと思いますし、また、研修につきましても、研修によりまして人権相談に応じる法務局の職員あるいは人権擁護委員の対応能力に努めてもらいたいというように考えております。  先ほどのちょっと補足をさせていただきますと、今手元にある資料ですと、人権擁護委員さんに対する研修ですが、まず委嘱後六か月以内に最初の研修を行いまして、その後二年以内に二回目の研修を行います。それからさらに、再任されると三年以上お務めいただくことになるわけですが、再任した場合にはその再任後にも研修を実施しているところでございます。
  46. 有田芳生

    有田芳生君 新しい課題というのは本当日々動いておりますので、もう少し頻繁に研修をやるということも必要なのかなというふうに、今お話を伺っていて感じました。  それで、最後に、部落の解消とは何かという遠大なる問題なんですが、私は個人的には、人権問題には終わりがないというふうに思っております。ヘイトスピーチも、そして部落の差別も根絶しなければいけない、それをみんなで進めていかなければいけないと思うんですけれども、しかし、ヘイトスピーチ解消法ができてもいまだヘイトスピーチが続いているということは、やはり法律ができることによって、あるいは法務省を含めて関係者の努力によってそういう人権問題というのが、私たちが努力をすることによって、根絶に向かっての理想を掲げながら、そういう差別というものがこれまで十あったものを三に、二に、一に抑えていく、その努力を怠ればその差別というものがまた二、三、四、五、六と積み重なっていくという関係にあるというふうに思うんですよね。  ですから、繰り返しですけれども、まず、人権擁護局長に、もうしつこいようで申し訳ないんですが、今大きな課題としてはインターネット上の差別、これ何とかしなければいけないと思うんですよ。いまだ部落地名総鑑がずうっと、これ何年もにわたって削除要請がされているにもかかわらず、削除されたとすれば、電子的な記録が残っているからミラーサイトという形でまた出てくる。そういうものを利用して、いまだ結婚差別に結び付いているという現実がある。これは、ユーチューブ、ニコ動、ツイッターなどへの削除要請などをしてくださったというのは分かっておりますし、そういうことをやってもいまだ解決していないという現実。  これは、どうすればいいんでしょうか。これは物すごく大きな現代的課題だと思いますが、どのように対応されようとしていますでしょうか。
  47. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) インターネット上におきまして、不当な差別的取扱いを助長、誘発する目的で特定の地域を同和地区であると指摘する、そういった内容の情報が掲載されている事実があるものと私どもとしても承知をしております。  法務省の人権擁護機関では、関係行政機関からの通報などによりそうした情報認知した場合には、人権侵犯事件として立件の上、調査を行い、その情報の発信者に対しそうした行為をやめるように説示をしたり、プロバイダー等に対してそうした情報削除を要請するなどの対応に努めてきたところでございます。法務省のこうした取組はいずれも強制力を有するものではなく、あくまで任意の対応を促すものにすぎないという限界がございますが、そうした限界の中で繰り返し粘り強く是正を求める、あるいは繰り返し情報違法性あるいは被害の重大性を訴え削除を要請するということに努めております。  さらには、先ほども申し上げましたとおり、こうした問題につきましては、そもそも社会全体の人権意識を高め、差別的な情報を発信することは許されないという意識を広く醸成することが何よりも重要というように考えておりまして、同和問題に関する偏見や差別をなくすための啓発活動に引き続き努めてまいりたいと考えております。
  48. 有田芳生

    有田芳生君 法的拘束力がない、説示しても差別を遊びのように続けている人たちはいるわけで、例えば、部落問題をおちょくるということで部落地名総鑑を本にしようとしたり、あるいはそれができなくなればインターネットでさらす、そしてまた、それが消えたとしてもまたモグラたたきのように出てくる。法的拘束力がないのは分かっているんですが、だけど、そういう現実があるわけだから、それを更に前に進めて解決するのが人権擁護局のお仕事だと思うんですよね。  差別された側はずっと苦しんでいる、傷つけられている、何年にもわたって。法的拘束力がないからといって、そういう答弁だけでは解決しないじゃないですか。前に進める方向、方策というのは何かお考えにはなっていないんでしょうか。
  49. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 強制力がないというと弁解がましく聞こえるところでして、強制力を持たせるということが一つ考えられるわけですけれども、これにつきましては、先ほど西田委員からも御指摘ありましたとおり、表現の自由の逆の侵害になるのではないか、あるいは正当な言論までも萎縮させることになるのではないかという重大な懸念がありますので、極めて慎重な検討が必要になろうかと思います。  そうした中で何ができるかということにつきましては、有田委員から繰り返し御指摘いただいているところですので、引き続き検討してまいりたいと考えております。
  50. 有田芳生

    有田芳生君 それはヘイトスピーチ解消法ができた段階の御発言とは到底思えない。例えば、京都朝鮮第一初級学校襲撃事件あるいは徳島県教組襲撃事件でヘイトスピーチに対する判決が出ている、最高裁決定まで出ている。何が人種差別撤廃条約に基づく差別なのかというのはもう明らかになってきている。だからこそガイドラインが必要であって、そこで表現の自由なんというのを持ち出すことはもう時代遅れの議論にしなければいけないというふうに私は強く思っております。  ですから、例えば、具体的に何度も質問していますけれども、ドイツとかあるいはEUのように、差別の発言などが行われて、これはやっぱりおかしいぞと、何とかしなければいけないということが判断されたときには、やはりプロバイダーなど業者との合意をつくっていく、そして、これはどうしても問題だと、だから法務省人権擁護局、法務局としては削除要請出されているわけですよね。だけど削除できない。ならば、やはりプロバイダーと話し合って合意をして、EU並みにそういうものが明らかになった場合には二十四時間以内に削除するという、そういう取決めを進めていくのが国際的な人権基準になっていると私は理解しているんですが、そういう努力をしていただけないでしょうか。
  51. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) プロバイダー等に対して私どもは個別に要請をしている立場でございますけれども、そうした業界団体などに対する要請につきましては、現在、総務省等関係府省庁、関係機関協力も得ながら検討を進めているところでございます。
  52. 有田芳生

    有田芳生君 検討を進めているというのは、EU並みのそういう合意を目指しているという理解でよろしいんですか。
  53. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 内容につきましてはまだお示ししている段階にありません。現在検討を進めているところでございます。
  54. 有田芳生

    有田芳生君 しつこいようで申し訳ないですが、方向性としてはそういうことも一つの選択であるという理解をしていいんでしょうか。
  55. 萩本修

    政府参考人(萩本修君) 具体的な内容になりますと、電気事業産業を所管している総務省に直接お尋ねいただきたいと思いますけれども、現時点では業界団体の自主的な取組を促すという方向で取り組んでいるものと承知しております。
  56. 有田芳生

    有田芳生君 時間がもう来ましたので、最後に大臣に、この間の議論を聞かれて、部落差別をなくさなければいけないということについてどのようにお考えになったか、お気持ちを率直にお話しいただきたいんですが。
  57. 金田勝年

    国務大臣金田勝年君) 有田委員から様々な御指摘をいただいた中で、私は、同和問題に関する差別や偏見というものは他人の人格や尊厳を傷つけかねないものであって、決してあってはならないものであると、このように考えておる次第であります。  局長からも度々申し上げておりましたところでございますけれども、法務省では、これまで、この同和問題につきましては人権啓発の強調事項に掲げまして、講演会や研修会あるいは啓発ビデオということも含めて各種啓発活動を実施をしてきたということと、人権相談及び人権侵犯事件の調査処理を通じましてその被害の救済と予防を図ってきたというふうに申し上げてきたところであります。  これからも、法務省としては、やはり引き続きまして、御指摘等も本当にいただいたところでありますし、そういう中で引き続いてこれからも同和問題に関する偏見あるいは差別というものをなくすための活動、人権啓発活動、調査・救済活動、そういったものにしっかりと取り組んでいきたい、そういう思いを持った次第であります。
  58. 有田芳生

    有田芳生君 終わります。
  59. 仁比聡平

    ○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。  今日は、提案者の皆さんがこの法案をしきりに理念法というふうに繰り返しておっしゃいますので、この法案の中でキーワードになっています部落差別の解消に関する施策に関係して、ちょっと質問の通告の順番と変わりますけれども、現在も西日本を中心に全国各地に残っている同和対策事業の特別扱い、この問題についてこの法案がどう考えるのか、お尋ねをまずしたいと思うんですけれども。  先ほど有田議員から福岡のお話が少しありました。私、福岡の北九州市の出身で、この福岡県下、旧同和地区が数多くございます。  そうした中で、この同和対策の特別事業が、二〇〇二年三月に国の事業は完全に終了したにもかかわらず、自治体において、特別扱いが個人給付も含めて今も続いているという自治体が幾つもあるんですね。詳しく御紹介をするのはまたの機会にしたいと思いますし、紹介するだけではなくきっぱりたださなければならない、特別扱いはなくしていかなきゃいけない、つまり、垣根は、これはなくしていくというのが私たちが部落問題を解決する道だと思うんですよね。  ところが、福岡県の、最近合併がありましたので旧と言った方がいいんでしょうが、旧筑紫郡という地域があります。この市町には同和対策の特別事業がたくさん残っております。  ある市では、個人給付を含めて同和対策事業費が四億五千七百三十六万という規模。中身は、老人福祉費、これは介護サービスの助成金、老人医療費を助成する、あるいは旧同和地域隣保館費、児童センター費、あるいは解放保育園などと言われる保育所の費用、それから住宅管理費などなど、こうした大きな金額があるわけですね。  名目は、あるいは事業名は少々違っても、個人給付の仕組みとかテーマというのは多くのところで共通するわけですが、また別の市では、短期一日人間ドック事業、あるいは固定資産・都市計画税の減免、中、高、大学、専修学校の入学支度金、高校、大学、専修学校の進学奨励金、五歳未満児医療費の扶助事業、それから自動車技能取得訓練費、これはいわゆる免許を取りに行くというこの費用の個人的給付なんですが、あるいは保育料の減免などがありまして、これ、最近の年で一億九千七百二十五万円、およそ二億円、そんなに大きな町ではないんですけれども、そういう規模で特別扱いが存在するわけです。  これ、どうしてこうなっているかと。これ遡りますと、昭和四十年代、私が、六〇年代後半から確認・糾弾路線で解同が極めて暴力的に行政への圧力を加え続けたという時期があります。せんだって御紹介した八鹿高校事件というのは、直接行政ということではなく学校ですが、あれも、県あるいは教育委員会全部巻き込んで、圧力を掛ける中での起こった事件なんですよね。この市町のところでは、一九七九年の六月に一通、そして十二月にもう一通、その自治体の首長たちと部落解放同盟筑紫地区協議会との間で確認書というのが交わされ、言わばこれに基づいてずっとこの同和の特別扱いが続いてきたわけですね。  そこで、発議者にお伺いをしたいんですけれども、この今度の法案というのは、これは成立すれば地方自治体がその地域の実情に応じて施策を講ずるように努める、あるいはその施策に資するものとして、皆さん、そうやって地域を特定するんじゃないというふうにこの間おっしゃっているんですけれども、何にせよ、全国規模だとか、あるいは、衆議院段階でしたか、エリアごとにというので、例えば九州なら九州という地域の実情に見合って実態調査をするというふうにおっしゃっているでしょう。こういうもので実態が調査をされる、そうしたら、それを引き続き部落差別が極めて深刻な状況にあるというふうに受け止めての特定運動団体が、今度は、この部落差別解消法というのがあるではないか、ここで国、自治体はそうした施策を行うと書いてあるではないか、この差別の、つまり我々が差別と認定するこの事態を解決をするためにこういう個人給付だってすべきではないか、あるいは、皆さんがやらないとおっしゃっているんですけど、地域改善事業のような、そうした事業もやれと言われたときに、何しろ現にやっているわけですから、特別対策として、今やっている特別対策を拡充せよとか、あるいはもうやめるなと、これからずっとこれやれと、そういう足掛かり、根拠に使われてしまうじゃないか、それは当然の懸念だと思うんですが、しかも、法文を見る限り、それを排除する、そんな条項はどこにもありません。これは発議者、どう考えているんですか。
  60. 宮崎政久

    ○衆議院議員(宮崎政久君) 幾つかの御指摘をいただきましたけれども、まず、例えば財政措置が伴うようなことについて、この法律を根拠として行政に対して行為を求めていくことはできないというふうに考えております。  この法案は、生活環境の改善などのために行う事業について定めている旧同和三法とは異なりまして、部落差別を解消する必要性に対して国民一人一人の理解を深めるように努めることによってその解消を図ろうとするものであります。ですから、財政出動に関する規定は一切置いていないところでありますので、この法案において、部落差別の解消に関する施策として、相談体制の充実と教育及び啓発と部落差別の実態に係る調査の三点のみを定めておりますので、本法案ができたということを根拠として国や地方公共団体が旧同和三法のような形で地域改善対策特定事業のような財政出動を求めているわけではありませんし、また、そのような根拠に使われるものではないというふうに考えているところであります。
  61. 仁比聡平

    ○仁比聡平君 いや、私の問いに答えていただけないんですが、今、宮崎提案者がおっしゃったことは条文のどこにも書いていないでしょう。  少なくとも、提案者の皆さんはよくよく財政措置を伴う法文がどんなふうになっているというのにお詳しくてそんなことをおっしゃっているのかもしれないけれども、だって、国民一人一人に理念を呼びかけているんでしょう。国民が見たときに、第三条、前条の基本理念にのっとり、部落差別の解消に関する施策を国は講ずるって書いてあるでしょう。二項には、地方公共団体は、繰り返しませんけど、その地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めると書いてあるじゃないですか。確かに地方自治体は義務付けはされていないかもしれない。だけど、努めるって書いてあるんだから、目の前にこんなに差別があるんだから、だからこれは講ずるのが当然ではないかという論拠になるのは間違いないんじゃないですか。そうしたら、自治体の皆さんは、それは違うんですとどうやって言ったらいいんですか。
  62. 宮崎政久

    ○衆議院議員(宮崎政久君) まず、この法案の規定ぶりについてでありますが、先ほど御説明を申し上げましたとおり、旧同和三法とは異なって、財政出動に関する規定は一切置いていないわけであります。ちなみに、旧同和三法におかれましては、旧の同和対策事業特別措置法では、第二条で同和対策事業について第六条各号に掲げる事項を実施する事業だという定義付けをした上で、第六条に国の施策があるわけでありまして、それを受けて、第七条で特別の助成ということで、同和対策事業でこれに要する経費について国が負担し、又は補助するものに対するその負担又は補助についてという形で、この支出についての算定の仕方などについても規定をしているところでありました。  また、旧の地域改善対策特別措置法においても、目的や地域改善対策事業の推進等が一条、二条というところで定められました上で、第三条で特別の助成という形で、この経費について国が負担又は補助することを定めた上で、その予算の範囲内での三分の二の割合をもって算定するということも定められておりました。  また、旧の地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律、これは法律の名前からいたしましても財政上の措置について定めたものでありますけれども、第二条において、地域改善対策特定事業について定義を置いた上で、その事業の内容を示した上で、続く第三条において特別の助成ということで、これに要する経費について国が負担し、又は補助するものについて、その算定の割合について、三分の二の割合でありますけれども、こういった定めを置いていたわけであります。  本法案について、今回定める法案を提出するに当たっては、このような形での財政上の措置を伴うような事項については定めておりません。そして、その上で、第二条で基本理念のところで、繰り返しになりますけれども、一人一人の国民に対して部落差別の解消の必要性の理解を深めるということで、その旨施策を行っていくという基本理念を定めているものでありまして、こういった定め方から財政上の措置はされないということを規定ぶりとして定めているところであります。
  63. 仁比聡平

    ○仁比聡平君 そうすると、この基本理念というものが理解を深めると書いてあるんだから、理解を深めるのに財政措置は、これは掛からないというか、含まないというか、ないとか、そういうことですか。
  64. 宮崎政久

    ○衆議院議員(宮崎政久君) 規定の、今第二条に触れましたのは、第二条の基本理念でこの法案の趣旨を定めているということを説明をしたわけでありますが、財政措置がないと、財政措置に関しては先ほど申し上げたような形で旧同和三法との対比をさせていただきましたけれども、そのような定めを一切置いていないということが、この法案の中で財政出動の措置が、とることを目的としていないということを表していると説明したものであります。
  65. 仁比聡平

    ○仁比聡平君 いや、提案者の皆さんそうおっしゃるんですから、国会議員やあるいは国の機関は、自治体からそういう相談がもしあったら的確にそういうお答えをされるということなんでしょうけれども、ただ、部落差別を解消するための施策ということの実現を掲げて、言わば理念で迫ってくるというそうした圧力に、これで本当に現場の自治体の職員の皆さんや首長さんが行政の自主性を失うことなく本当に対応できるのかと。  先ほど私が挙げている町の二つの確認書をちょっと紹介しますと、まず最初に問題にされたのは、実態調査も行わない、部落差別の現実さえ把握しないまま同和行政の具体的施策は推進できないと。これ、確認書の中で、これを実施していない市は、同和問題が行政の最重点課題になっていなかった、これは部落問題を自分の問題として捉えていなかった首長自身に原因がある、部落問題についての認識を深めるためのあらゆる研修を定期的に積極的に行っていく、その計画や講師の選定については筑紫地協、つまり解同と協議をして決める、あらゆる部落解放のための事業を進めていく上で、筑紫地協を唯一の協議団体とし、協議を密にし、連携を深めていくという確認書が交わされているんですね。もう一通の確認書には、もっとあからさまで、町長は部落問題を自分の問題として捉えていなかった、このことは町長自身の差別性である、今日までの取組は差別行政であった、部落解放は行政の責務であり、部落を解放するためのあらゆる事業については赤字になってでも取り組んでいくという確約があるんですよ。これは一貫してどうなったか分からない。  実際、ここまでの主体性を奪われてしまって確認書を結ぶというのは、それはその行政に対する確認・糾弾がもう極めて激しく行われているからでしょう。そうそう簡単に首長や職員の皆さんが屈するわけがない。だけれども、それを屈せしめるところまで、部落民以外は差別者である、その差別性は解同が認定するのであるというこの確認・糾弾というものが部落解放運動を大きくゆがめ、行政をゆがめたわけです。それが歴史の痛苦の教訓なんですよね。  そこでお尋ねをするんですが、発議者、今日はおいでではないんですけれども、衆議院の五月二十五日の質疑で山口提案者が、糾弾、これも一切ないようにかなりきちっと心掛けて条文を作ったつもりと答弁をしておられるんです。これ、先ほども少し関わる御答弁があったんですが、先ほどは条文をきっちり作ったというお話では全然なかったんですけど、条文のどこに今私が申し上げているような運動を排除するという規定がありますか。
  66. 門博文

    ○衆議院議員(門博文君) 今の、去る五月二十五日、衆議院の法務委員会での山口提案者の答弁の一部を御指摘をいただいておりまして、繰り返しますけれども、糾弾、これも一切ないようにかなりきっちりと心掛けて条文を作ったつもりですという答弁に対して、法文のどこにそういうものが担保されているかという御質問だと思いますけれども、私は山口提案者と一緒にこの立法作業にずっと携わってきた者でありますし、そしてまた、その過程において様々な方々から、そして様々な団体から御意見を賜ってまいりました。その上で、今御指摘いただきましたこの「糾弾、これも一切ないようにということをかなりきちっと心がけて」という後の「条文をつくったつもり」というのは、立法作業をしてきたつもりということで、その趣旨で山口提案者は御発言をされたというふうに思います。  その上で、今御指摘いただきました、そしてまた先日の参考人質疑でも様々な糾弾の歴史について参考人からそれぞれ意見が陳述されたところでありますけれども、私たちも、かつてのこの民間団体の行き過ぎた言動並びに糾弾については大変問題意識を持っておりまして、このことが差別意識の解消を阻害し、そしてまた新たな差別意識を生む要因となり得るという点については強く認識をしております。
  67. 仁比聡平

    ○仁比聡平君 いや、提案者の方々のお一人お一人の議員としての思いはそれはそうでいいですよ。けれども、恒久法をお作りになるわけでしょう。独り歩きするじゃないですか。何にしろ、それが政府解釈かどうか、あるいは有権解釈かどうかが現場で問題になるんじゃないんですよ、ここにこう書いてあるじゃないかとやるわけですから。それを阻む条文がどこにありますかと聞いたら、そういう意味の答弁ではなかったというのは驚きです。  実際、今、部落解放同盟が私が御紹介したようなことを暴力を使ってやっているかということを声高に申し上げようとしているわけじゃないんです。けれども、おとといの参考人質疑で解同書記長の西島参考人は、私が、二〇一一年に改定をされた部落解放同盟の綱領の解説文書だということで解同のホームページにアップされているし、この委員会の調査室の資料としても配付されているその資料をお示しして、そこの中に糾弾というのはこれは堅持すると書いてあるから、だから、かつてのようなこういう確認・糾弾というのが今も生きているのかと趣旨のお尋ねをしたら、いや、いつの時代の文書に基づいてそんなこと言っているのかと、お答えにならなかったんですよね。  その確認・糾弾の中で、およそ四十二年前になるんですが、八鹿高校事件に至るエスカレートというのがありました。この事件についての総括を有田議員がお聞きになったんだけれども、私に対しても有田議員に対してもですが、五十年ほど前の事件ですからということで直接その総括というのはお答えにならなかった。  そうすると、この糾弾というのは解同の運動方針の何しろ基本の第一に掲げられていますから、そうした下で全国各地で、例えばせんだって御紹介しましたから議事録などで御覧になったのかもしれませんけれども、大分県の宇佐市に対して昨年の夏に八十数項目の個人給付も含めた要求書が提出され、市がそれを応じるという、そうした状況になっているわけなんですね。  そういう下で、この確認・糾弾というのをこれどうやって、復活をやめさせるといいますか、そういう行政の主体性をしっかり確保して、民間運動団体のそうした不当なやり方というのをこれやめさせていこうということなんですか。
  68. 宮崎政久

    衆議院議員(宮崎政久君) 今御指摘がありましたようなその民間運動団体の行き過ぎた確認・糾弾行為、これが不適切なものであるというふうなことについて、提出者としてもその認識は共通しておるところであります。  そして、この法律案の中でどうなのかと言われたら、これはやはり理念法であって、そしてこの法律の中では、具体的な施策としては、四条の相談体制の充実、五条の教育及び啓発、そして第六条の部落差別の実態に係る調査というところに規定をしているところでありまして、この法律が定めることによって、今御指摘のような形で確認・糾弾が、例えばその根拠を与えるような、裏付けになるようなことはないということは再三再四申し上げているところでございますし、また、そのことに敷衍しながら、第二条の基本理念の中では、この法律案というのは、部落差別を解消する必要性に対する国民一人一人の理解を深めるように努めることによって、部落差別のない社会を実現することを旨として行わなければならないというふうに定めているということを指摘したわけであります。  それで、御指摘のとおり、私ども提案者も、先日の参考人質疑、これも映像でも確認もさせていただきましたし、記録の上でも読ませていただきました。  その中で、灘本参考人のお答えの中で、今のような御質問に対して灘本参考人はこんなふうにもお答えになっておられていました。この法律を見ると、何かよこしまな人が入ってきてあれもこれも差別だと言い立てて、何か利権を昔のように貪るようなことは到底不可能な程度のと言ったらちょっと申し訳ないですけれども、そういう法律じゃないかなと思うんですね、だから、それほど何かおいしいことは何も書いていないんじゃないかというので、そういう危惧は、そういう危惧というのは、これも部落差別だから解消するためにこれもやれという要求を地方公共団体に言ってくる可能性という仁比委員の御質問の中のことをおっしゃっていると思うんですが、そういう危惧は私は法案を読む限りは払拭しましたけれどもという御意見がありました。  私どもは、こういった形で理念法を定めさせていただいて、不当な要求であるとか、そういった言動に対していささかの根拠も与えるものではないということを繰り返し述べているところであります。
  69. 仁比聡平

    ○仁比聡平君 いや、何言っているんですか。灘本参考人がそうおっしゃったのは、それは当然でしょう。私も伺っています。その引用をして提案者の答弁にするというのは、一体どういう了見ですか。提案者なら自らの言葉で語るというのが当たり前じゃないですか。答弁の中に灘本参考人の質疑が引用されているって、一体どんな議員立法だ。  大臣はこの点について、お伺いはしませんが、十一月の二十二日でしたかの質疑で、私が申し上げているような、民間運動団体の行き過ぎた言動等によって、行政の主体性の欠如、あるいはえせ同和行為の横行が見られるという、この問題が新たな差別意識を生む要因になり得るという点については、現在も変わらないものと承知をしておるという御答弁をなされておりまして、これ極めて重要だと思うんですよね。確認・糾弾通知が平成元年に出されて、もう二十五年、四半世紀たっているから、だからもうこれ消えているのかと。二十五年じゃないか、二十七年ですか。そんなものではない、そこははっきりとさせておきたいと思うんです。  そうした中で、これが差別だ、これは差別ではないかといって不当に圧力を掛けてくるということがあったときに、いや、これは、ここに言う部落差別というのはこういう意味ですから、だからあなたのおっしゃるのは差別ではありませんというふうに言えるのか言えないのかというのは、前面に立たされる行政職員にしてみれば極めてもう重要な問題ですよね。だから、私は部落差別というのはどういう意味なのかと繰り返しお尋ねしてきたわけですが、結局、最後、今日に至るまでよく分からない。  そこで伺うんですけれども、この部落の出身者であることによる差別という考え方は、部落解放同盟の綱領にある部落民の定義と同様です。そして、せんだって解同書記長参考人にこの出身に当たる部分のお考えを伺いましたら、そういう定義ではないんだと。社会の側が、おじいちゃんやおばあちゃんや、もしかしたらその上までたどって差別をする、それに対して、言わば運動の構えといいますか、そういうものを示しておられるというような御趣旨だと私は受け止めたんですけど、そうすると、解同の皆さんもそうした、何というんでしょうか、きっちりした範囲みたいなのを確定しておられるわけじゃない。だけれども、皆さんは、一義的に明確であって、これは行政にとっても明確だとおっしゃり続けてきたわけです。  そこで、出身というのをどんなふうに考えておられるのか、ちゃんと伺いたいと思うんです。そこに住んでいるという、居住している、あるいはかつて本人が住んでいた、あるいは、自分は住んだことはないけれどもお父さんやお母さんがそこに住んでいたことがあるとか、親も住んだことはないけれどもおじいちゃんやおばあちゃんがそこに住んでいたことがあるとか、もしかしたら更に本籍をたどるとか血統をたどるとか血縁たどるとか、そういうような、出身というのはそういう概念たり得るでしょう。どこまでということなんですか。
  70. 宮崎政久

    衆議院議員(宮崎政久君) お答えするまず前提として、この法案は、部落差別を解消する必要性に対する国民一人一人の理解を深めるように努めることによってその解消を図ろうとしているものでありまして、対象地域や対象者を特定して何らかの施策を行うことを求めるものではないと、こういうことを踏まえた上で、今、部落出身者ということについて定義規定は置いていないわけであります。  その上で、お尋ねがありますので、出身という言葉は、一般的にはその生まれた土地や卒業した学校などがそこにあることというふうに解されているというふうに理解をしております。ただ、本法案は、繰り返しになりますけれども、部落差別そのものの解消を目指しているものであって、その差別の理由が部落に関係あるものであるとすれば、実際に、ある個人であるとか、今御指摘があったような親族であるとか祖先とかの住所や出自が特定地域であったかどうかということに関係なく、本法案ではその施策の必要な範囲でということで射程になってくるというふうに考えているところであります。
  71. 仁比聡平

    ○仁比聡平君 ごめんなさい。たどることなく、誰が対象になるんです。もう一回お願いします。
  72. 宮崎政久

    衆議院議員(宮崎政久君) 最後の部分でよろしいでしょうか。  この法案自体は部落差別そのものの解消を目指しているものでありますので、差別の理由が部落に関係するものであるとすれば、それが実際にある個人であるとか、御指摘あったような例えば親族であるとか祖先の住所や出自が特定地域であったかどうかということに関係なく、本法案の射程になってくるというふうに考えているところであります。それはつまり、先ほど申し上げましたとおり、この法案が対象地域や対象者を特定して何らかの施策を行うことを求めるものではないからであります。
  73. 仁比聡平

    ○仁比聡平君 いや、重大じゃありませんか。初めて御答弁になったら、そんな答弁している。  長野県に旧同和対象地区のある御代田町がありまして、茂木祐司町長のインタビューを衆議院で皆さんお聞きになったと思うんですね、私どもの議員から。そのインタビューの中で町長は、行政が部落の人と特定し特別な事業をする場合、その人はどこに行っても部落の人となりかねません、結婚するとその家も対象になります、解消どころでなく、逆に部落の復活になりますとおっしゃっています。今の宮崎提案者の御答弁だったらば、文字どおりこうなるんじゃないですか。  それは、かつて大きな格差があり、特別対策で、けれどももう今は全く分からない。だから、混住も進んでいるし人口移動も激しいと。元々住んでいた人はもうほとんどいないというところだってあるでしょう。結婚だって、地区外の方々ともう結婚するのが当たり前と。八割、九割がと自由同和会の灘本さん、おっしゃっていたじゃないですか。八割、九割が恋愛で結婚して、そのうち七割、八割の方々は何の反対も受けていないと。そういうような状況になっているわけですよ。  そこを、自治体がそうやって部落の人と決め付けて、その人と結婚したらみんな実態調査なら実態調査、部落差別を受けていないかの対象といいますか、していくということになったら、部落の復活になるじゃないですか。それを恒久法で、実態調査を例えば五年ごととか十年ごととかとやっていったら、ずうっと部落なくならないじゃないですか。そうしたら、部落差別もなくならないんじゃないですか。何が解消推進法だ。
  74. 若狭勝

    衆議院議員若狭勝君) この法律は、これまで何度も申し上げてきているとおり、特定の地域とか対象者を定めてあるいは特定してその施策を行うというものでは決してございませんので、委員御指摘のような状況になることはないものと、私として、提案者としては今確信しておるところでございます。
  75. 仁比聡平

    ○仁比聡平君 いや、この間から若狭提案者がそう確信しておるとおっしゃるので、条文上は全く無限定ではありませんかと申し上げ続けてきているわけですね。これは折り合いは付かないですよ。  もう私の質疑時間が残り四、五分ということになってきて、いや、こんな中で本当に質疑を終えれるのかと。私は、この御代田の町長さんも、私どもが本当だったらお邪魔してお話を伺う、それが当然だと思いますよ。けれども、与党の御努力もあって、せんだって参考人質疑が実現をしました。だったらば、この国会においでいただいて、ちゃんと、そういう行政のあるいは学校教育現場部落問題をめぐっての様々な努力や経験あるじゃないですか、いい経験いっぱいありますよ。逆に、困っていること、本当に恐ろしかったこと、それをどうやって乗り越えてきたかと、たくさんあるじゃないですか。  それ乗り越えて、この茂木町長が同和事業を十年近く前に廃止されたわけですが、同和関係住民も、町を脅している部落解放同盟の一部幹部と同じように見られてきたことがつらかったと、そういう声を上げられておられるようです。もしこの法案が通れば、実態調査で解同には自治体に介入する絶好の口実ができると町長はおっしゃっています。実態調査を自治体から請け負って、差別意識はあるだろうと、一方的に差別事象だと脅すことが大いに予想できますと。実際、私が厚労省の委託事業として行われた隣保館調査というのをこの委員会でお示しをしましたけれども、いや、実際、そうやって委託を受けてやっていますからね。そういうふうになるじゃないかというこの自治体首長さんの声にどう応えるのか。  最後、門発議者に是非お伺いをしたいと思っているんですが、ちょっと興奮して資料どこに行ったか分からなくなっているので、ちょっと待ってください。  和歌山県の御坊市長の柏木市長が、九月議会で私ども日本共産党議員質問に対して、つまり質問は部落差別解消法の、推進に関する法律案についての市長の所見いかんということなんですが、一般施策の中で教育、啓発、相談体制の充実を行えばと考えている、時計の針を巻き戻すようなことにならないよう願っているとおっしゃっているんです。  住民の皆さんの声として、これはこの和歌山でということじゃないですけど、かつて同和地区と呼ばれたり被差別部落と呼ばれたりした地域に対して、今改めて部落というレッテルを貼ろうとしています。それも未来永劫、その地域とその地域で生きる人間を調査対象にしようとしています。その地域がこの国から特別視される新たな事態が始まるのでしょうか。もう同和地区はありません、したがって同和地区住民の方はいません、被差別部落もありません、全て一般地区になりました、これでよいのではないでしょうか、いけませんかという声ですけれども、こうした住民の皆さんの声を背景に、時計の針を巻き戻すようなことにならないよう願っているとおっしゃる首長の意見に対してどう思われますか。
  76. 門博文

    衆議院議員門博文君) 今の和歌山の御坊市長さんの議会での発言は、私は今初めてお伺いをいたしました。まさに私の認識も、その時計の針を戻すことのないようにという思いで我々発議者、発案者もここまでこの審議に臨んできたところであります。  それで、先ほども申し上げましたけれども、旧同和三法は、被差別部落とそうでない地域、同和地区とそうでない地域というところに線を引いて、そして特にその被差別部落、同和地区に対して事業を行うという法律であったと認識をしております。  今回は、その地区に線引きをするのでなくて、広く国民一人一人が部落差別があってはいけないということを認識を一にして、将来にわたってこの部落差別をなくそうということでありますので、委員も、部落差別が現在残っているか残っていないかということはともかくとして、もしそういうことが残っているのであれば解消しようというお気持ちは我々と共通の認識をお持ちいただいていると思います。
  77. 秋野公造

    ○委員長(秋野公造君) この際、お諮りいたします。  本案に対する質疑を終局することについて賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  78. 秋野公造

    ○委員長(秋野公造君) 多数と認めます。よって、本案に対する質疑は終局することに決定いたしました。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  79. 仁比聡平

    ○仁比聡平君 私は、日本共産党を代表して、ただいまの質疑打切りに厳しく抗議するとともに、部落差別の解消の推進に関する法律案に断固反対の討論を行います。  その理由は、本法案が、部落差別の解消推進のための理念法と言いながら、部落問題解決の歴史に逆行して新たな障壁をつくり出し、部落差別を固定化、永久化する恒久法であり、その危険は重大だからであります。  国の同和対策特別事業が二〇〇二年三月に終結して十四年たつ今日、社会問題としての部落問題基本的に解決された到達点にあります。時として起こる不心得な部落問題に関する非科学的認識や偏見に基づく言動が、その地域社会で受け入れられない民主主義の力を強めていくことこそ重要です。行政施策は全ての国民に対し公平に運用するのが原則であり、人権問題の相談、教育、啓発活動は憲法に基づく一般施策として行うべきです。  法案の「現在もなお部落差別が存在する」という規定について、提案者は、依然として存在するとか、肌で分かっているとか述べるだけで、何をもって部落差別とし、それがどのように存在するというのか具体的に示すことはできませんでした。  参考人質疑においては、自由同和会推薦の灘本参考人からも、部落解放同盟の部落差別はいまだに根深く厳しいという現状認識は差別の過大評価、日本は差別をうまくなくしてきているとの評価が具体的に語られ、全国地域人権運動総連合事務局長の新井参考人からは、各地の実態に基づき、従来の部落の枠組みが崩壊し部落が部落でなくなっている状況、国民の多くが日常生活で部落問題に直面することはほとんどなくなったことが明確に述べられました。部落問題を特別扱いする本法案の立法事実はないのです。  法案には部落差別の定義規定がありません。提案者は、定義を置かずとも一義的に明確、その者が部落の出身であることを理由にした差別と言いますが、それは部落解放同盟綱領の言う部落差別の考え方を法に持ち込むものです。その説明は極めて曖昧であり、濫用による表現や内心の自由が侵害される危険は重大です。  かつて解同は、部落民以外は差別者、差別かどうかは解同が認定するとして、八鹿高校事件を始めとする数々の暴力確認・糾弾事件を引き起こしましたが、その総括を問われた解同書記長の西島参考人は、五十年ほど前の話と言うだけで直接答えませんでした。弁護士石川参考人は、弊害は今後に続きかねないと警告しましたが、そのとおりであります。  昭和六十一年、地対協基本問題検討部会報告は、何が差別かというのは一義的かつ明確に判断することは難しいことである、民間運動団体が特定の主観的立場から恣意的にその判断を行うことは、異なった理論や思想を持つ人々の存在さえも許さないという独善的で閉鎖的な状況を招来しかねないことは、判例の指摘するところでもあり、同和問題の解決にとって著しい阻害要因となると述べています。  民間運動団体の行き過ぎた言動、その圧力に屈した行政の主体性の欠如が新しい要因となって新たな差別意識を生むことこそ、歴史の教訓です。国の特別対策の終結は、部落問題の特別扱いが差別解消に逆効果となったからであることを銘記すべきであります。  更に懸念されるのは、不公正な同和行政による特権と利権の復活です。提案者は理念法と言いますが、法案の言う部落差別の解消に関する施策、相談、教育及び啓発、実態調査の条文は極めて無限定であり、同和対策事業の復活を排除するものとはなっていません。これが民間運動団体の、あれも差別、これも差別といった圧力の根拠となり、行政が主体性を失って、補助金や委託事業による民間運動団体の相談事業、教育、啓発を押し付けられる危険があります。学校や自治体、企業や地域で、あるいは人権擁護委員にまで、特定団体による教育、啓発が実質強制されかねません。各地になお残る個人給付を含む同和対策の特別扱いを固定し、助長することにもなります。  さらに、部落差別の実態を明らかにするとして行政に義務付けられる実態調査は、旧同和地区、旧同和地区住民の洗い出し、精密調査や行き過ぎた意識調査によって、それ自体が国民の内心を侵害し、分け隔てなく地域で生活する旧地区住民とそうでない者との間に新たな壁をつくり出す強い危険があります。これらが部落問題についての自由な意見交換のできる環境づくりを困難にするものとなり、部落問題の解決につながらないことは明白です。  なお、提案者はインターネットにおける差別事象を言いますが、削除要請などの具体的課題は、ヘイトスピーチを始め他の人権問題も同様である上、本法案によって具体的解決が進むものとはなっていません。  法案は断固廃案とすべきことを重ねて申し上げ、反対討論を終わります。
  80. 秋野公造

    ○委員長(秋野公造君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  部落差別の解消の推進に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  81. 秋野公造

    ○委員長(秋野公造君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、真山勇一君から発言を求められておりますので、これを許します。真山勇一君。
  82. 真山勇一

    ○真山勇一君 私は、ただいま可決されました部落差別の解消の推進に関する法律案に対し、自由民主党、民進党・新緑風会、公明党及び沖縄の風の各派並びに各派に属しない議員山口和之君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     部落差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議(案)   国及び地方公共団体は、本法に基づく部落差別の解消に関する施策を実施するに当たり、地域社会の実情を踏まえつつ、次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 部落差別のない社会の実現に向けては、部落差別を解消する必要性に対する国民の理解を深めるよう努めることはもとより、過去の民間運動団体の行き過ぎた言動等、部落差別の解消を阻害していた要因を踏まえ、これに対する対策を講ずることも併せて、総合的に施策を実施すること。  二 教育及び啓発を実施するに当たっては、当該教育及び啓発により新たな差別を生むことがないように留意しつつ、それが真に部落差別の解消に資するものとなるよう、その内容、手法等に配慮すること。  三 国は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するための部落差別の実態に係る調査を実施するに当たっては、当該調査により新たな差別を生むことがないように留意しつつ、それが真に部落差別の解消に資するものとなるよう、その内容、手法等について慎重に検討すること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  83. 秋野公造

    ○委員長(秋野公造君) ただいま真山君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  84. 秋野公造

    ○委員長(秋野公造君) 多数と認めます。よって、真山君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、金田法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。金田法務大臣。
  85. 金田勝年

    ○国務大臣(金田勝年君) ただいま可決されました部落差別の解消の推進に関する法律案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処をしてまいりたいと存じます。
  86. 秋野公造

    ○委員長(秋野公造君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 秋野公造

    ○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十三分散会