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2010-02-17 第174回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査会 2号 公式Web版

  1. 平成二十二年二月十七日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員の異動  二月十日     辞任         補欠選任      小川 敏夫君     一川 保夫君      松浦 大悟君     広田  一君      水戸 将史君     川合 孝典君  二月十二日     辞任         補欠選任      植松恵美子君     川崎  稔君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         矢野 哲朗君     理 事                 大河原雅子君                 佐藤 公治君                 轟木 利治君                 古川 俊治君                 吉田 博美君                 澤  雄二君     委 員                 一川 保夫君                 川合 孝典君                 川崎  稔君                 谷  博之君                 津田弥太郎君                 中谷 智司君                 広田  一君                 広野ただし君                 山根 隆治君                 吉川 沙織君                 米長 晴信君                 石井 準一君                 泉  信也君                 塚田 一郎君                 鶴保 庸介君                 若林 正俊君                 松 あきら君                 山下 芳生君    事務局側        第二特別調査室        長        五十嵐吉郎君    参考人        株式会社東レ経        営研究所ダイバ        ーシティ&ワー        クライフバラン        ス研究部長    渥美 由喜君        東京大学社会科        学研究所准教授  水町勇一郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国民生活・経済に関する調査  (「幸福度の高い社会の構築」のうち、これか  らの社会保障と働き方・自由時間について)     ─────────────
  2. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) ただいまから国民生活・経済に関する調査会を開会いたします。  委員の異動について御報告を申し上げます。  去る十日、松浦大悟君、水戸将史君及び小川敏夫君が委員を辞任され、その補欠として広田一君、川合孝典君及び一川保夫君が選任されました。  また、去る十二日、植松恵美子君が委員を辞任され、その補欠として川崎稔君が選任されました。     ─────────────
  3. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) 国民生活・経済に関する調査を議題とし、「幸福度の高い社会の構築」のうち、これからの社会保障と働き方・自由時間について参考人の方々から御意見をちょうだいします。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、株式会社東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長渥美由喜君及び東京大学社会科学研究所准教授水町勇一郎君、両先生に御出席をいただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  大変御多用のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  本日は、両先生から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  本日の議事の進め方でありますけれども、渥美参考人、水町参考人の順にお一人二十分程度で御意見を述べていただきました後、各委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  その後、時間がございましたら、必要に応じて委員間の意見交換を行いたいとは思いますけれども、おおむね二時五十分を終了の目途とさせていただきますので、御協力のほどよろしくお願いを申し上げます。  なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず渥美参考人、よろしくお願いを申し上げます。
  4. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) 皆様こんにちは。渥美と申します。今日は呼んでいただいて大変光栄に存じております。(資料映写)  私は、これまで、ワーク・ライフ・バランスというものに取り組んでいる企業国内外六百五十社にヒアリングしてまいりました。大半が地方の中小企業で、先進的な取組をしている企業を回ってきております。最近は、せっかくそうやって学ばせていただいたものを職場改善に生かしたいと思って、企業コンサルのようなお仕事もさせていただいています。  私自身、今、今月生まれたばかりの二人目の子供と三歳の子供と二人子育て中で、上の子供のときには育児休業も取得いたしました。ここ半年くらい、私の父が認知症になってしまって、父の介護もやっております。ワーク・ライフ・バランスと格闘している一人なんですが、よくこのテーマは女性が職場で働き続けるために必要だと思われるんですけれども、私は、むしろ男性がきちんと理解して男性自身が取り組むことによる本人のメリット、職場のメリット、本当に大きいと思っています。  よくワーク・ライフ・バランスは、バランスという言葉でシーソーの図、てんびんの図がかかれることがあります。ただ、こういうどっちを取るかというものだと、やっぱりそれは、じゃ家庭生活重視することで仕事ないがしろにするのかというふうに思われてしまいます。こういう二者択一のものではございません。  そもそもワークの土台にはライフがあります。当たり前のことですが、質の高い生活は質の高い仕事につながっていく。先生方も本当に生活者の視点というのをお持ちであることがより良い政治につながっていくということと全く一緒だと思います。また、めり張りの利いた仕事というのは生活の余裕、生活のゆとりにつながる。ワークとライフの相乗効果、これがワーク・ライフ・バランスです。  私はずっと企業を回っていて、ワーク・ライフ・バランスというのは大きく三つの要素がございます。一つ目は、業務をオープンにして共有する。これは例えば、去年の秋、実際にあった企業の例なんですけれども、おれがいないと職場は回らないと、職場のすごくエース管理職の方がちょっと熱が出て、職場に迷惑掛けられないとはってでも出てくるような、彼は新型インフルでもう職場は全滅してしまいました。だれかがいないと職場が回らないというのはこれはやはり大きな職場にとってのリスクだということで、どうしたら業務を共有できるかということを私はお手伝いしました。  二つ目の要素が、絶えざる業務改善。北九州市が面白いワーク・ライフ・バランスの個人表彰という制度をつくっています。  去年受賞した女性は四十二歳、私と同い年なんですけど、四人お子さんを育てているワーキングマザーでした。彼女は、四人もお子さんがいるとできるだけ早く帰りたい、異動するたびに業務改善の提案をなさったんですね。自分の前任者が二日半掛かった仕事を、こういうやり方をしたら一日半でできる、こういうツールを使えば半日でできるということを提案して、実際にそれを証明してきました。  彼女のモットーは、私もハッピー、みんなもハッピーなんですけど、私は、ワーク・ライフ・バランスというのは、単に自分さえ早く帰れればとか休みが取れればという、そういう独善的なことは思っていません。そういう業務改善というのは、本人が早く帰れるだけじゃなくて、職場全体にも恩恵が及びます。このお互いさま、思いやり、これが一番重要な要素だと思っています。  実は私、二回転職していて、最初に入った会社は富士銀行の子会社のシンクタンクだったんですが、超ワーク・ライフ・アンバランスでした。私が入社してすぐに驚いたのは、部の掲示板に、朝行ったら、部内会議午前二時スタートと書いてあって、何で朝行って夜中の会議が決まっているんだと思って先輩に聞いたら、いや、うちの会社はライバル会社が寝静まっている間に会議をして出し抜くんだと、そんな職場風土でした。  クライアントが霞が関だったので、霞が関も不夜城ですから、不夜城がクライアントにいると職場も不夜城、そんな状況で、私は本当働きたくなくなって嫌になって飛び出したんですが、最初の職場はもう本当に二十四時間三百六十五日働いて当たり前という職場で、こういう職場はまだ日本にもあると思いますけれども、やはり問題は、同僚や部下を巻き込む、あるいは家庭を巻き込む、これが一番大きな問題だと思います。  私が二十年くらい前に新入社員で入ったときにすごく仕事がよくできた先輩が、二十年たって私は二つ職場を移ったので直接にはやり取りないんですけれども、彼がちょっと今仕事が手に付かないというのは、バツ二で、子供がぐれちゃって、それがてきめんに仕事に響いちゃってというふうな、風のうわさで聞くにつけ、あんなに仕事ができた人がそんなふうになっちゃうなんというのは、やっぱりワークの土台のライフが、そこがおかしくなってしまうとという部分だと思います。  ワーク・ライフ・バランスに取り組むと何がいいかというと、自分の時間はもちろん大切、だけど、それ以上に相手の時間、同僚、部下の時間、また取引先、そういうふうに相手の時間に敬意を持つ、これが一番大きな変化だと思います。ですから、私がこれまでずっと回ってきた先進的な取組をしている企業、特に地方の中小企業って、そんなに制度が華々しいものがあるわけではないです。ただ、本当にすばらしく職場の雰囲気がいいですね。お互いさま、思いやりという雰囲気が浸透している職場というのがあります。  こういうワーク・ライフ・バランスの取組というのは、単に企業にとどまらないです。地域全体に波及していきます、社会に波及していきます。近畿地方で一番頑張っているのは、私は兵庫県、神戸市だと思っています。これは理由があって、阪神・淡路大震災で一度壊滅的な打撃を受けたことをきっかけに、労使団結して、あるいは行政と民間も本当の意味での官民連携でという土壌ができていて、しかも実際に仕組みとしてワーク・ライフ・バランスを進める四者協議というのを進めています。とかくワーク・ライフ・バランスというのは、総論賛成各論反対、同床異夢になりやすいですね。労働組合側は、そんな、経営側は人件費カットでやりたがっているんだろうというふうにうがった見方もされやすいところなんですが、そうやって兵庫、神戸は頑張っています。  こういう地域ではこういうふうに住民マインドも変わってくるんだと私が感心したのは、県立柏原病院が小児科の先生がいなくなった、これは別に兵庫に限らず日本全国レベルで起きているのは先生方御存じかと思います。小児科の先生、大変な状況です。そういうときに、いわゆるコンビニ診療、何でもかんでも診ていただくっていうんじゃなくて、やめて、最低限自分たちも医療知識を身に付けようと、乳幼児を抱えているお母さんたちが市民運動を始めたんですね。お医者様に診ていただいて当たり前じゃなくて感謝の気持ちを伝えよう、実際にこういう活動が実を結んで、救急患者数半減に成功しました。また、他県にお住まいだった先生がこういう地域で働きたいといって移ってきて、閉鎖の危機は免れたと。これは私は、地域全体のお互いさま、思いやりが広がった例だと思っています。  要は、自分の職場、家族の職場だけじゃなくて、この場合でいえば、患者の家族が、お医者様、医療従事者の方の職場という形で相手の職場に関する思いやりということですね。これはたまたま医療従事者と患者という関係ですけど、行政でいえば、住民と行政という関係でも全く一緒のことが言えます。いわゆるクレーマー住民みたいな、ニーズばかりを突き付けるようなことではなくて、一住民として自分たちが何ができるかという、そういう発想で、地域のために自分がというふうに変わっていきます。  要は、男性が取り組むと、家庭に帰ってくるだけじゃなくて地域に帰ってきて、地域住民としての自分という形で、本当に本来的な意味での官民連携という機運が生まれます。ここが一番大きな変化で、九州では基本的に男尊女卑の気風が強い地域だと言われますが、福岡が頑張っています。子育て応援宣言という枠組みで三千社を超える企業が賛同してやっています。この三千社を超える規模というのは福岡と埼玉だけです。もう突出してこの二県はやっています。第三位が大阪で、一けた違います。  この福岡で、市が作ったイメージ図で、私は気に入って使わせていただいているんですけれども、池の水面にぽちゃっと飛沫が落ちて、その波紋がいろんなところに広がっている。男女共同参画、ほかに下に産業活性化というのも書かれています。これは本当に必ずこれから日本でも起きてきます。  私、これまでワーク・ライフ・バランスに取り組んで成功している自治体、地域というのを、海外十数か国回ってきました。地域戦略としてのワーク・ライフ・バランスというのがこれからの重要なキーワードだと思っています。要は、暮らしやすい地域、働きやすい地域に住民が集まってきて、納税者が増えれば当然自治体の財政が潤う、さらに施策が展開するという形で、例えばイギリスだと、十年くらい前のイギリスと今の日本はとてもよく似ていると思います。  ブレア政権が当時ワーク・ライフ・バランス・キャンペーンって、かなり力を入れて国家プロジェクトでワーク・ライフ・バランスを進めましたけれども、それだけではなくて、地域や自治体が国よりもユニークな取組をいろいろやっています。勝ち組自治体の筆頭はバーミンガムだと思いますけれども、ロンドンで、とてもじゃないけれども、こんなワーク・ライフ・アンバランスな地域ではちょっと燃え尽きちゃう、パンクしちゃうといった人たちが移住してきて、労働者が増えると企業誘致も進むという形で地域活性化に成功しています。  面白いのは、こうやってワーク・ライフ・バランスに地域として取り組んだ自治体の周辺に全然関心がなかった地域ではもうどんどんどんどん住民が逃げちゃっていて、流出してしまって、もう税収も落ち込むので施策も打てないと。非常に大きな明暗を分けている。私は、今不況だから、そもそもそんなワークさえままならない中でワーク・ライフ・バランスという声もよく聞くんですが、不況期こそワーク・ライフ・バランスというのは力を入れるべきだと思っています。  よく勘違いされているのは、労働時間は見かけ上減っています。ただ、サービス残業、これは労働者が回答している労働時間と企業が回答している労働時間、このギャップをサービス残業と定義すると、この上半期はサービス残業非常に増えています。これは従業員規模平均で出していますが、特に大企業は著しいです。対前年比三割増くらいですね。過去三十年さかのぼってもこれだけの大きなサービス残業の増加というのは初めてですね。非常に今仕事は減っているんだけれども全然業務は減らないという状況というのはあります。  今、もう皆様御案内のように、労働力人口は減っていく、しかも日本はこれまで六百年掛けて増やした人口を二百年で減らしてしまうという非常に大きな人口減少に直面している中で、これは厚生労働省の試算ですけれども、今働きたいと思っている女性やお年寄りが全員働いたとしても、五十年足らずで三分の二になってしまう。ですから、これから日本の職場というのは、女性、あるいは共働きで自分も子育てしたい男性、外国人、障害者、いろんな属性の人たちが働いて、そういう人たちをいかに活用できるか、いかにそういう人たちが能力発揮できるかというのが職場づくりの大きなポイントです。ですから、先が見えている企業はもうここに気付いて手を打ち始めています。  日本の大きな問題は、かつて片働き主流モデルで一度大成功を収めてしまって、その成功体験が足かせになっている面があると思っています。今、先が見えている企業は、むしろこれからは、かつての成功体験、職場に属性そろっていて、あうんの呼吸、以心伝心の方が効率的に進むというビジネスモデルじゃなくて、職場に多様な人たちがいて多様な意見を言う、そういうダイバーシティーを推進した方が付加価値が生まれやすい。付加価値を生むためには、そもそも多様な人たちのコミュニケーションスキルをその職場の一人一人が身に付けないといけないというところにもう既に手を打ち始めています。  私はずっとこれまで企業の財務分析してきて、国内企業三千社、海外六百社、データを集めてやってきたんですけれども、基本的にこういう取組というのは大きく企業業績を伸ばします。その理由は後でお話しします。  一番顕著なのは、不況脱出二、三年後にすごく伸びます。これは一般企業でもそれは当たり前だろうと思われるんですけれども、先進企業はがあっと伸びます。というのは、不況期に大きな差別化が図られます。特に、優良企業は逆に危機感持ちにくくて、今不況だから、男性、優秀な男子学生採れているからいいよというふうに対応遅れがちなんですけれども、むしろ第二グループとか第三グループの企業が積極的に女性が活躍できる職場環境あるいは男性でも子育てできる環境とかつくって、徐々に差が縮まっています。  先進企業のキーワードは筋肉質な職場づくりですね。働きやすい、やる気が上がる、人が集まるという、そういう正の連鎖を生もうとしています。イメージでいうとこんな感じですね。一般企業はこんな業務効率改善とか無駄な業務をなくすということを関心持たずに、メタボ体質のままサイズだけちっちゃくしちゃう。働きにくい、やる気が下がる、人が集まらない。イメージでいうとこんな感じですね。仮に、下のような職場で何とかこの不況をしのげたとしても、いずれ好況になったときに全力疾走できないですね。すぐに息切れしてしまう、足がもつれ出す。あるいは、業務効率が改善できていない職場だと、いずれ景気が回復したときに時間外の増え方は尋常じゃなくなります。今でさえメンタルの増加、過労死社員の続出ということに頭悩ませている企業は、もう時間外は、また好況、景気が回復したときに目も当てられなくなると思って先に気付いて今業務効率に力を入れているのが起きている大きな今分岐点に立っています。  よくあるのは、経営者と従業員というのは上下関係にあって、顧客を従業員の逆側に置く。それは、従業員に対する施策は重要かもしれないけれども、それは顧客からタイトな納期の発注が来たときに、うちはワーク・ライフ・バランスでやっていますからなんて言ったらお客におしりを向けることになるじゃないか、それはなかなかできない、お客を取るか従業員を取るかといったらお客だ、こういう考え方だと、そこで思考停止してしまいます。  ただ、特に地方の中小企業だとこういう考え方はしないですね。従業員がいなくなったら会社困る、会社つぶれたら従業員困る。いかに共存共栄を図るかということで、従業員に対してすることの延長線上に顧客を置いています。つまり、従業員にやる気が上がると必ず商品の質が上がる、サービスの質が上がる、ひいてはお客様のためになる。従業員満足度イコール顧客満足度だ、企業と従業員はウイン・ウインの関係になれる、こういうふうに考えて取り組んでいる企業、実はいっぱいあります。  私は、こういう取組というのは本当に財務データとして大きく伸びるということを、これは失われた十年、十五年のデータで確認しました。大きく三つの効果があります。一つ目は、いい人材を引き付ける。二つ目は、頑張る気持ちになりモチベーションが上がる。三つ目は、効率的な組織になるということです。これは経済産業省から委託を受けて私が前の職場にいたときに実施した統計でもきれいに出ています。  要は、ワーク・ライフ・バランスというのは、単に帰宅時間を早めるとか休暇を増やすとかそういうことではなくて、いかに従業員にやる気を引き出して業務体制を絶えず見直すことで個人の生産性も上げる、チームの生産性も上げる、そういう、ベースにあるのは組織、業務体制の見直しで、ここが進むとワーク・ライフ・バランスも進むし、業績も伸びるという一石二鳥のものだと思っております。  今、日本企業が直面しているのは、大きく、よく言われる業務効率高めて生産性向上、これはもう取り組んでいる企業はないというくらい生産性というのは大きな命題になっています。また、持続可能な働き方、これもワーク・ライフ・バランス、あるいはダイバーシティーで最近言われています。  ただ、問題なのは、ここが別々に議論をされていて、しかも自分たちだけの働きやすさというところだけに終始してしまう。例えば、大企業グループであれば自分たちがワーク・ライフ・バランスするために金曜日に下請企業に発注して月曜日までに納品しろなんということをやらせていると、結局それは大きな全体最適が損なわれている。こういう点で、いかにこの三つを統合して考えて、特に地方の中小企業なんかはそういう考え方全くしないですね、地域あってこそ自分たちのビジネスが成り立っているんだからと。いかに地域貢献を上げるか、地域貢献できるかという形で外向けのワーク・ライフ・バランス、単に自社の内向けのワーク・ライフ・バランスじゃなくて、地域全体のことを考えて子育て支援とか、あるいは地域貢献、暮らしやすい地域環境づくりということに頭を、考えて実行しておられる企業経営者というのは実は地方にたくさんいます。私はそういう企業を支援するべきだし、またそういう企業を支援することが日本の大きなこれからの成長戦略にもなると思っています。  よく環境とワーク・ライフ・バランスは似ていると言われますが、それはネーティブアメリカン、インディアンの言葉で、未来の大人である子供から環境を預かったものだから大切にして引き継がなければいけない。地域環境も職場環境も全く一緒だと思います。  そういう意味では、これからは是非、先生方にお願いしたいのは、企業というのは本当に取組が百社百様です。特に、従業員規模によって小さな規模ほど実にユニークなことを、しかも業種別に自分たちがこういう業界だからこういうことをやってワーク・ライフ・バランス、あるいは子育て支援、あるいは障害者でも外国人でも働きやすい職場環境ということですごく知恵が詰まっています。ただ、その取組が余りにも百社百様でまちまちなものですから、個別企業が推進して模倣するにしても、テーラーメードでカスタマイズしていかないとなかなか施策展開というのは難しいです。  今、ワーク・ライフ・バランスはもう国家プロジェクトで、厚生労働省も内閣府もかなり力を入れて事例集も作っていますし、あるいは経済産業省さんはマニュアルも作っていますけれども、更にそれをカスタマイズしてテーラーメードなものを企業に伝えていかないと、なかなか良い取組が広まっていかないという現状がございます。  そこで、やはり参考になる海外事例というのはあると私は思うんですけれども、イギリスが貿易産業省にコンサルタント企業に派遣する基金としてのチャレンジ基金というのをつくって、これも一つワーク・ライフ・バランス、イギリスのワーク・ライフ・バランス推進に大きな草の根運動として役立ったと言われています。このチャレンジ基金に倣って、ワーク・ライフ・バランス基金であったりダイバーシティー基金というのをつくって、企業が、自己負担はあっていいと思うんですけれども、自己負担だけではなくて国庫負担もあって、コンサルを受けて、そこのカスタマイズされた施策というのを、成功事例ですね、成功した他社事例というのを学んでいくという、そういう仕組みづくりを是非国を挙げて支援していただけたらなというふうに思っております。  つたない話ですけれども、御清聴いただきまして、誠にありがとうございました。
  5. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) ありがとうございました。  次に、水町参考人、お願いいたします。
  6. 水町勇一郎

    ○参考人(水町勇一郎君) 座ったままお話しさせていただきます。  東京大学の水町と申します。  本日は、テレビや新聞などで拝見する先生方の前でこういう形でお話しさせていただくのは大変光栄で、ただ、皆さん、ちょっと怖そうな顔の方もたくさんいらっしゃるので、ちょっと緊張をしておりますが、二十分の時間、与えられたお話をした上で、その後、質疑応答できたらと思います。  私の方からは、日本の労働者は幸せかというタイトルで、私、専門は労働法というのを専門にしておりますので労働法と、特に欧米諸国との比較法、諸外国との比較という観点で、日本の労働者が本当に幸せなのか、不幸せだとすればその原因はどこにあるのか、原因がどこにあるともし分かったとすればそれをどうやって解消していくべきなのかという点をお話しさせていただきます。  まず最初に、日本の労働者をめぐる状況を見てみますと、諸外国と比べてかなり大変な状況になっている大きく二つの問題があります。一方では、これはもう最近よく言われていることですが、非正社員の格差問題や、派遣切りとか期間工切りで言われるような不安定、雇用の不安定をめぐる問題、非正社員は安くて切りやすい存在として位置付けられているという状況。他方で、非正社員の他方にいる正社員についてですが、正社員はじゃ安泰かというと、先ほどの渥美さんの話にもありましたように、正社員はかなり過剰な労働を強いられている、重い負担を負っているという状況にあります。諸外国と比較してみると、こういう非正社員の問題も正社員の問題も同時に深刻な形で起こっているというのは、私の知る限り、アメリカやヨーロッパと比べても非常に深刻な状況で、どちらも幸せとは言えない状況に陥っているんではないかと。  じゃ、その原因はどこにあるのか。いろいろ調べてみると、恐らく日本のこの問題の原因はいわゆる日本的と言われる雇用システムの在り方にあるんではないか。日本的雇用システムとか日本型雇用システムということが言われますけれども、これはいわゆる終身雇用と言われるような長期雇用慣行と、あと年功賃金というような年功的な処遇、それと企業別労働組合という、大きく三つのものを柱として日本的雇用システムができているということが言われていますが、この日本的雇用システムというのが基本的に正社員を対象としている。正社員を対象として非正社員はその枠外に置かれている。非正社員はその枠外でどういう状況に置かれているかというと、長期雇用の外なので困ったらすぐ切られる、雇用の不安定さにつながっていますし、正社員のような年功処遇で勤続年数が長くなると地位とか賃金が高くなるというわけにはいかない。  そういう意味で格差問題を伴う状況になってきていますし、他方で正社員はどうかというと、日本的雇用システムは終身雇用、長期雇用慣行と言われるように、正社員をよほどのことがない限り解雇しない、正社員は守られているように思われるんですが、なかなか解雇できないということの反面、雇用の中で調整の対象とされている。  例えば、常日ごろから長時間残業をさせられている。恒常的に残業をさせられていて、景気が悪くなったら残業時間を削ることによって労働時間で調整している。あと、賃金については、例えば賞与、ボーナスが諸外国よりも比率が大きいです。この賞与、ボーナスの比率を高めていてどう調整できるかというと、景気が悪くなったらボーナスを減らすとかボーナスをゼロにする、賃金で調整をすることも可能ですし、さらには、諸外国に見られないような辞令一本で正社員であれば単身赴任も余儀なくされるような配転、出向に応じなければならないという状況にある。家族と一緒にずっと幸せに暮らせるかというと、正社員はなかなかそうはいかないという状況になってきています。  実は、いわゆる労働市場の二重性という問題は日本だけの問題ではないんですが、日本でより深刻な問題になっているのは、労働市場の内と外、日本的雇用システムの内と外の壁が非常に高いというか厚い、この壁がなかなか壊れない、乗り越えられないという点が一つ重要な問題。この日本的な労働市場、企業の外と中、正社員の中と外の間の壁が厚いまま、一九九〇年代後半以降、グローバル競争に突入してどうなったかというと、企業はコスト削減競争にここ十五年ぐらい一気に走った。  正社員と非正社員って、正社員はコストが高い、非正社員はコストが安くて切りやすい。コスト削減競争に突入したらどうなるかというと、企業は自然な行動として、切りやすくてコストが安い人たちを増やそうとします。ここ十五年ぐらい非正社員の比率がどんどん高くなって全体の三分の一を超えることになっていますし、その非正社員の数が増えるのの代わりに正社員はどうなったかというと、自然に退職していったり、出向、転籍させた後は正社員を補わない。正社員の数は減っている。  その中で今何が問題になっているかというと、賃金が安くて不安定な非正社員の数がどんどん増えて、いわゆる格差問題の対象となっているような人が増えてきている。格差問題が大きな社会問題になっていると同時に、正社員の数が減っている。正社員の数が減っているけれども仕事は減らないですし、正社員が担う仕事は減らないし、正社員の仕事が非常に難しくなって、あと、スピードが速くなっています。ノルマがきつくなって、その中で、正社員は数が少なくなる中で、数少ない残された人たちが過剰労働を強いられて、先ほど渥美さんからもお話しになったように、いまだにサービス残業や長時間残業が減らないという人たちが存在しているという状況になっています。  そういう意味で、今までのままの日本的雇用システムの内と外をそのままにしたままでグローバル競争を続けていくとどうなるかというと、これはどんどん悪循環が広がっていって、格差問題の対象になっているような働いても二百万円稼げないような人たちがどんどん増えていってしまうし、逆に数が減っていた正社員はどんどん過剰労働になっていく。どちらも不幸せな時代がどんどん悪循環として広がっていくという問題が今の日本の労働者をめぐる問題だと言えるんじゃないかと思います。  この悪循環を絶つために、じゃ、これからどうすればいいのかと。改革の方向性として見た場合、大きく二つの方向があり得ます。  一つは、アメリカ型と言われるやり方。これはもう市場による調整、市場に任せるというやり方です。  今の日本の正規、非正規労働者の状況はどうなっているかというと、今の日本のいわゆる非正社員は外部市場、いわゆる地域相場で処遇が決まっています。例えば、時給幾らというのは会社別ではなくてその地域相場で、大体時給七百円ぐらいだとか八百円ぐらいと地域相場で決まっている。これに対して正規労働者、今の日本の正社員は企業内市場、いわゆる内部労働市場と言われる企業内のいわゆる就業規則に書かれている賃金表で正社員の処遇が決まっている。そういう意味で、今の日本は、非正規は外部市場、正規は内部、企業内の論理、企業内のルールで決まっている。  これをアメリカ型にするためにはどうするやり方があるかというと、正社員も外部市場に任せてしまうと。法的に言うと、今、日本に解雇権濫用法理と、労働契約法十六条で、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認できなければ解雇は無効にすると。合理性、相当性がないと解雇は無効にするというふうにされていますが、日本の解雇規制というのは諸外国と比べてもかなり厳しいものになっています。なかなか解雇できない。この解雇規制を緩める。解雇規制を緩めて、正社員も解雇しやすくなるとどうなるかというと、今企業の中で買われていた正社員も外部労働市場にさらされることになりますし、市場の中で正社員も非正社員も処遇が決まる。そういう意味で、市場の中でバランスが取れていくというやり方がアメリカ型のやり方です。  ただし、ここで注意しなきゃいけないのは、果たして解雇を自由にして市場に任せますよといった場合に、アメリカでも言われていることですが、企業が目先の行動に出るのではないか。経済学的に言うと機会主義的行動と、近視眼的な行動で、本当はそんなに解雇すると企業の中長期的な繁栄のために良くないんだけれども、今困っているから今切っちゃおうというので、目先の行動に走ってしまって適正な水準以上に失業者が増えてしまうということが考えられますし、さらには、社会全体での格差というのが非常に大きくなってしまう。  アメリカでは、正規、非正規格差というのはありません。正規も非正規も外部市場とつながっているので、フルタイム労働者であれ、パートタイム労働者であれ、派遣労働者であれ、市場の論理で決まっているので、正規だから、非正規だからという格差は日本ほど深刻ではないんですが、その雇用形態と離れたいわゆる能力とかいわゆる資産、その教育訓練機会を得られたか、能力があるかどうかというので、能力のある人は非常に高い処遇を受けられ、能力のない人は失業したり、働いても非常に処遇が低いという問題があります。  そういう意味で、アメリカ型にしてしまうと社会全体での格差が今の日本よりももっと大きくなってしまうという弊害がある。なので、私自身はアメリカ型の選択をするには慎重にならざるを得ないんではないかと思っております。  これに対して、もう一つの典型的なやり方がヨーロッパ型、これは法律によって規制をすると。具体的には、平等取扱原則というものを法で定めて、雇用形態によらず、みんな平等に取り扱いなさいということを国が言うとか、過剰労働とかワーク・ライフ・バランスに支障を生じるような長時間労働は法律で規制するというやり方です。  その中身についてはこの後少しお話ししますが、ただし、このヨーロッパ型の選択をする上でも注意しておかなければいけないところが一つあります。何かというと、ヨーロッパでもアメリカでも日本でもそうですが、企業の現場の実態は非常に多様化している。先ほど渥美さんの方からもお話がありましたように、企業の実態は非常に多様です。非常に多様に展開されている企業に対して、国が詳細なルールを定めて、ああしなさい、こうしなさい、手取り足取りのようなルールを定めてこれを強制しようとしても、当事者は表面的な対応をするだけ、責任回避的な行動を取るだけで、実態はそう簡単には変わらないという問題があります。  そういう中で、ヨーロッパ型の新しい法のスタンスというのはどういう方向に進んでいるかというと、法律は、国は基本原則とか政策の方向性を定める、その基本原則に沿った企業内での運用とかこういう政策の方向性に進むために各企業の中ではどういうことをするかということについては当事者の取組を促すと。当事者にこういう基本原則を守って運用してくださいとかこういう政策の方向性にかなうような取組をしてくださいということを促すようなものとして、今の新しい法の基本的な立場、スタンスは進んでいるということを注意しておくということが必要かと思います。  こういう視点から見た場合の、先ほど見た日本の問題を解決するための具体的な改革の在り方、ここでは大きく三つの点を取り上げてお話ししたいと思います。  まず第一点が、いわゆる正規と非正規の間の処遇のバランス。格差問題の元になっているような、正規だとある程度処遇が得られるけれども、非正規だと働いても二百万円なかなか稼げないという状況、これについては、正規労働者と非正規労働者の間の雇用形態によらない平等取扱原則を法律によって定めると。フルタイム労働者とパートタイム労働者の差別の禁止とか、期間の定めのない契約による労働者と期間の定めのある契約による労働者などについて雇用形態で差別してはいけませんよということを法律上明確に定めるということが大切なんではないかと思います。ただし、注意しなきゃいけない点が二つあります。  一つは、これは非正規労働者全体を視野に入れた規制にしなければいけないと。例えば、パートだけ規制するとか派遣だけ規制するとするとどうなるかと。じゃ、パートじゃなくて期間の定めのある労働者にしましょうとか、派遣だけ規制したらどうなるかというと、じゃ請負にして、実態は変わらないまま請負にしてしまいましょうというので、実態が変わらない、玉突き現象がいわゆる起こってしまいます。  ヨーロッパでは、まずパートタイム労働者に対する平等原則を定め、その後、期間の定めのある有期契約労働者について平等を定め、今派遣まで行っています。そういう意味で、玉突き現象を一個ずつ玉をつぶしていっているというのがヨーロッパの今までの状況ですが、日本でこれからやるとすれば、玉突きが起こるというのが分かっているのに一個ずつやっていくというよりかは、全体として、問題を全体的にとらえた上で一貫性のある原則、例えばパートも有期も派遣も請負労働者なども含めて、雇用形態によらない、雇用形態による差別を禁止するという形で平等取扱原則を法定した方がいいんではないかと思います。  もう一つの注意点は、じゃどういう原則にするかという点です。最近、同一労働同一賃金ということがよく言われますが、果たして、じゃ法律上、同一労働同一賃金と書き込んでいいのかという点です。  同一労働同一賃金というのは、実は労働と賃金がリンクした国にはなじみやすい。いわゆるヨーロッパでは、こういう仕事だったらこういう賃金ですよという職務給を取っているような国ではなじみやすいということが言えますが、例えば、勤続給なり職能給というような、ちょっと勤続年数が長い人にはその職務にかかわらず一定の配慮をするというような賃金制度になっている場合には、労働が今一緒だから同じ賃金を今払いなさいという制度を取ると実態になじまないという側面があります。そういう意味で、多様な実態、多様な賃金制度になじむ法原則にすることが必要と。  具体的には、合理的理由のない差別的取扱いを禁止すると書けばいい。パートについても、有期についても、派遣についても、請負労働者についても、合理的理由のない差別を禁止する。その合理的理由の中で多様な実態を読み込む。この企業ではこういうのが合理的理由になるかもしれないし、ここではこういうのが合理的理由になるかもしれない、だけれども、合理的な理由がなければ差別をしちゃいけないよということを法律上書いて、あとは多様な各企業の実態に応じた形で平等を進めていくということが重要なポイントになるのではないかと思います。  二番目の問題は、不安定雇用をめぐる問題。正規と非正規の間の雇用保障のバランス、正社員だと解雇されにくいけれども、非正社員だと困ったときには簡単に切られてしまうという問題のバランスの取り方ですが、ヨーロッパだと、これも雇用保障、解雇についても平等取扱原則の中に入れています。例えば、短時間労働者、パートタイム労働者だから雇用調整のときに最初に対象にするということは、ヨーロッパではできないことになっています。日本でも、一番の格差問題のところで、平等取扱原則、差別的取扱いの禁止というのを定めるときに解雇も視野に入れて雇用保障でもバランスを取るということが考えられるかもしれません。  ただし、その際に注意しなければいけないのは、今のように、正規は守る、非正規は切りやすいという基準で今のところ線引きがなされていますが、正規だから守る、非正規だから切りやすいという線引きをしないというふうになったときに、じゃ新しい雇用調整の基準をどうするかと。景気が悪くなって企業が人員整理をしなきゃいけないときに、だれから切るかという基準を新しく決めなきゃいけない。およそ絶対解雇しちゃいけませんというような形にはなり得ないので、そういう場合の新しい基準を決めなければいけない。  例えば、ヨーロッパでは、ドイツでは社会的選択ということが言われていまして、勤続期間や扶養義務の考慮、勤続が長い人はなるべく解雇をするには後にしましょうとか、扶養義務、被扶養者をたくさん抱えている人は解雇しない、解雇されにくくすると、こういう基準をフルタイムにもパートタイムにも同じように適用して雇用調整の対象者を決めていこうという基準がなされています。  こういう基準を日本でどうするかというのを併せて考えていくことが必要になってきます。その際にも、必ず調整の対象となる人が出てきますので、その人たちに対するセーフティーネットの拡充とか、なるべく早く就労に復帰できるようにきめの細かいアクティベーションを講じていくということは、同時に重要な課題になってきます。  三番目のポイント、これは働き方をめぐるバランスの問題。正社員自体非常に過剰な働き方をしていますし、逆に言うと短時間労働者で労働時間が短くなると公正な処遇を得られないという状況にありますが、正社員についても非正社員についても、バランスの取れた働き方をして、それぞれの働き方において公正な処遇を得られるようにするということが必要になってきます。そこでは、例えば具体的に、健康を害するような、生命、身体を害するような長時間労働はやはりこれはきちんと是正していかなければいけないということと同時に、短時間労働者にも公正な処遇や必要な訓練を与えてキャリアを展開できるというような措置を講じていくことも必要になってきます。  まず、健康被害についてですが、やはり健康を害するような長時間労働を許容しておくということが社会的に許されるかという点は、私は疑問があります。ヨーロッパでは、これは労働時間規制がかなり厳しくなっていまして、ヨーロッパ全体で最長労働時間というのと休息時間というのがEUの指令で定められていますが、最長労働時間というのは残業時間も含めて週四十八時間に設定されています。日本でいきなり週四十八時間と言われると多くの企業は困ることになってしまうかもしれませんので、少し基準をどこら辺に設定するかというのは時間的な猶予も考えながら設定するということになると思いますが、ヨーロッパでは週四十八時間という最長労働時間が設定されていますし、休息時間、一日の労働が終わってから次の日の労働までの間に休ませる労働解放時間が十一時間に設定されています。この最長労働時間とか休息時間をきちんと法律上定めて健康確保を図っていくというのは、これは国がやるべき重要な課題。  もう一つは、働き方をめぐる状況の改善というのを同時に促していくということが必要。健康を害さない程度の働き方はどうやって改善していくかという点ですが、これは各企業の実態とか労働者の希望に沿った形で状況の改善を促していく。例えば、きちんと企業の中で労使が話し合って、行動計画、このアクションプランを作って、これを外からも見えやすいようにする。企業の中の人も、この企業だとこういう形でみんな働いていますよ、だからこの企業に行こうとか、そういう形で、外からも見えやすいような形で公表をしていたら、政策的にこういうインセンティブを与えるというやり方があるんではないか。  例えば、労働時間が短縮されて病気になる人が減る、病気で休業している人が減るという成果が得られて、そのプロセスを外にも見えやすいようにしておいた企業には労災保険の保険料を引き下げると。労災保険のリスクがその分減るということになりますので、労災保険の保険料を思い切って引き下げると。ここまでやれば企業もやらざるを得なくなってやるということになるような形でインセンティブを与える。  もう一つは、例えば短時間労働者、今パートと言われている人にもきちんと処遇をし、訓練の機会もきちんと与え、その結果、定着率が上がると。そんなに簡単に辞めなくなって、短時間労働者でもその企業に定着して長く働いている、キャリアを展開しているということであれば、その人たちの失業に関するリスクがその分減るわけですから、雇用保険の保険料を思い切って下げると。  そういう形で、使用者にもインセンティブを与える形でやると。ただし、そこでは、現場の意見とか、先ほど渥美さんからもありました現場の知恵というのを生かしながら状況の改善を政策的に促していくということが必要。こういう点、全体を視野に入れた一貫性のある改革を行っていくことがこれからの日本の重要な課題になるんではないかと思います。  以上です。
  7. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑及び答弁の際は挙手の上、会長の指名を待って着席のまま御発言くださるようお願い申し上げます。  なお、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう、答弁を含めた時間がお一人十分程度以内になりますよう御協力を賜りたいと思います。  それでは、質疑のある方の挙手を願います。  大河原雅子君。
  8. 大河原雅子

    ○大河原雅子君 民主党の大河原雅子と申します。  今日は、渥美先生、水町先生、お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございました。  くしくもといいますか、昨日、過労で倒れられて寝たきり状態になった息子さんを介護する御両親が訴えて、その裁判、勝訴をやっと勝ち取ったということが報道されました。  本当にこの国は何て切ない国なんだろうなと思いつつ、今日、この調査会でお二人の先生からお話を伺ったわけですが、まず、お二人に私の問題意識を初めにお伝えしたいと思うんですが、やはりこの国では、家族の形が、大黒柱のお父さんの集中的な働き方と、それを支える専業主婦そして子供という、家ですね、昔の、しかしこれは、ごく最近といいますか、高度経済成長、企業戦士をむしろバックアップするためにできた形。そういう意味では、年金、サラリーマンの奥さんの三号被保険者問題からしても、非常につくられた像だと。元々、例えば農村地域であれば、家族がみんなで働きを、小さな子供からお年寄りまで分け合って仕事をしてきたようなこともあるわけなので、私は、今ある労働の様々な問題点の根底には、社会的につくられた男、女という差別、このジェンダーの問題があるというふうに思っております。  まず、このことをお含みおきいただいて、渥美先生には、私、イクメン、元祖イクメンと言っても過言じゃないと思いますが、しっかり育児休暇を取られて、こういうふうにワーク・ライフ・バランス、これも研究なさっているということです。  私は、そういう意味でいえば、小さいときから実は男の子の育て方が大事じゃないかと。ジェンダーとかワーク・ライフ・バランスといったときに、どうしても女性のための施策、女性を解放するためにというふうな空気がこの国には漂っておりますので、その点について、渥美先生、水町先生、両方からこのジェンダー問題、お伺いをしたいんですが、いかがでしょうか。  私は、ジェンダー問題、男の人が生きやすくなる、そのことがとても今強調されなきゃいけないと思っているんですが。
  9. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) 御質問いただきまして、ありがとうございました。  私の見解は基本的に大河原先生と全く一緒です。そもそも男性がワーク・ライフ・バランスに取り組む意義は、父親がきちんと仕事だけじゃなくて家事、育児やっているっていう姿を次世代に伝える責任というのも大きいと思っています。  私自身がどういうふうに両親に育てられたかということを、ちょっと一つだけお話ししたいんですけれども。  私の母は働いていました。すごく働きながら子育てしてくれたので感謝はしているんですけれども、一つ興味深いのは、全く料理ができない人間だったんですね。私は味にも無頓着だったんです。それは、母の子育てってすごく影響あったと思うんですが、私の母はすごい手抜き料理でした。中学、高校と六年間お弁当作ってくれたんですけど、六年間全く一緒の弁当でした。ノリ弁で、いり卵とショウガ焼き、私それが好きだったので感謝していたんですけれども、私の二歳下の弟があるとき反旗を翻したんですね、私の高校時代。お母さん、これ、手抜き料理じゃないかって言ったら、母は微動だにせずに、いや、私は本当は作ろうと思えばフランス料理のフルコースも懐石料理も作れるんだと。ただ、男のあなたたちが味にうるさい男に育つと将来のあなたたちのお嫁さんが苦労するのは目に見えているから、あなたたちの将来の夫婦の円満のために私はあえて手抜き料理をしていると。そんな親に育てられて、私は味にうるさくない男に育ったんですね。結婚して最初、妻はそれを喜んでいたんです。何を食べてもおいしいおいしいって、手料理を。ただ、しばらくしたら、あっ、この人は味音痴だって気付いたらしくって、私はコンビニ弁当でも屋台のラーメンでもおいしいって食べるんで。  そんな私でも、子供授かって、ちょっと息子が一時期アトピーになっちゃったものですから、それで本当に、私もアトピー体質で、アレルギーがあるものですから、遺伝しちゃったかなと思うとかわいそうで、今すごい食材に気を遣って、料理も育児休業中せざるを得なくって、やり始めたらこれまた面白くって、私はあんなに味に無頓着だった人間なのに今はすごく料理大好きで、お弁当を自分で作ったりもしているんですね。弁当男子に変わって、妻はそういうのを見ていて変われば変わるものだなと言っています。  そういうふうに父がやっていると息子もよくやります。男の子なんでチャンバラごっことかいろいろやっていますけど、料理はすごい好きです。トントントンとおままごとをやっていて。私は、やっぱり育ち方の中で普通に家事、育児、父親でも母親でもやっているっていうのは男の子でもこういうふうになるんだなと思って、おっしゃったように、息子が小さいときから自分の性別役割を固定して考えないで何でもできるようになった方が、将来の彼の生活力、多分伴侶獲得能力にもつながると私は思っていますので、そういう意味でも大きな自分の責任を感じています。  ジェンダーに関して、本当に問題意識は私はジェンダーの方と近いんですが、ただ、今企業を変えようとする立場で余りジェンダーを押し出すと価値観によっては反発する方がおられるので、私は基本的にそういう切り口で論ぜずに、そもそも企業にとっては、付加価値を生み出すのは、いろんな人たちがいろんな職場にいて、しかも自由に意見が言える、そういう職場をつくらないと付加価値が生み出せない、そういうアプローチで話しています。ですから、ダイバーシティーですね。こういう考えは、別に価値観が多少性別役割の考えがある人であったとしても、やはりこれからの日本、自分たちの企業の将来を考えればやらないといけないなというふうに経営者の方も結構思っていただけて、そういう意味では私はダイバーシティーこそこれからの日本の経済の活力の源泉になると確信していますので、そういうアプローチで話しております。  どうもありがとうございました。
  10. 大河原雅子

    ○大河原雅子君 ありがとうございます。
  11. 水町勇一郎

    ○参考人(水町勇一郎君) 私も三歳の子供がいまして、大学の教師というのは、比較的暇というか、暇と言ってはいけないけれども、自由なので、週に二日ぐらいは勝手に仕事を休んで子供を見て、子育て広場とかに連れていったことを思い出しておりましたが。  ジェンダーの問題、ワーク・ライフ・バランスの問題を法がどうするかというときには、大きく二つあるのはあめとむちで、むちというのはやっぱり差別に当たるようなことはいけないということが法律がはっきり書いて、それで規制するということが一つです。  ただ、差別を禁止したらすべてが解決するかというと、ダイバーシティーの問題はむしろ差別の問題というよりも、企業が自主的にどう取り組んでいって働きやすい環境をつくっていくか。ダイバーシティーの問題については、先ほど言った企業の中での知恵を生かしながら促していくということが大切で、今の法律だと、例えば次世代法で事業主に行動計画を立てさせて、基準を満たしていれば、くるみんというマークを使っていいということが言われていますし、均等法で、これは余り進んでいないとも言われていますが、ポジティブアクションというのが規定されていて、ポジティブアクションで企業の中で取り組みなさいということが言われていますが、むしろ差別を禁止すると同時に、行動計画とかポジティブアクションをどう促していくかというそのインセンティブをきちんと高めていって、政策的にもダイバーシティーとかジェンダーの問題、ワーク・ライフ・バランスを進めていくということが重要になってくるんじゃないかと思います。
  12. 大河原雅子

    ○大河原雅子君 ジェンダーって非常に誤解のある言葉が日本ではなかなか正当な意味で流通ができなかったということで、非常に教育問題から問題を感じております。  中小企業こそワーク・ライフ・バランスが容易ということを渥美先生がおっしゃっているので、このことは非常に大事だと思いますが、とてもこれまではできないことだと、小さいから無理なんだということで。でも、一人一人がいろんなことができるようにするという教育が必要とおっしゃっていたので、そこのところを最後にお伺いして、終わりたいと思います。
  13. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) そもそも中小企業は男性の優秀な労働者は雇いにくいという、そういうある意味ハンディがあったことが女性がそもそも活躍しやすくて、しかも入った従業員が男性であろうと女性であろうと能力を発揮してくれれば、それこそ社長の片腕ですごく助かっている、もう自分は何々さんがいなかったら困るというような経営者は実際たくさんおられます。そういう方々は、あらゆる属性の人たちが働きやすい職場をつくれないと組織として会社としての持続可能性はないと思っていますから、必要に迫られて、もういや応なしにやっています。ただ、そういうノウハウがなかなか広がっていかない。  つまり、企業の取組ってかなり二極化していて、ワーク・ライフ・バランスあるいはダイバーシティー、先進的な取組をやっている企業は本当にやっていて、しかもそれは本当に経営戦略の観点でどんどんどんどん取組を深めていく中で、一方で、いやそうはいってもそれは職場にオール男性の方が以心伝心、あうんの呼吸でコミュニケーション取りやすいし、そっちの方がうちのような業界だったらいいんだという会社もまだ依然として少なくありません。だから、そういう会社を変えていくためには、良い取組をしている、先進的な取組をしている企業が、こんなふうに企業業績の向上に結び付けているということを知らしめる意義があると私は思って、それで最後にワーク・ライフ・バランス基金、ダイバーシティー基金のことを申し上げました。  以上です。
  14. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) ありがとうございます。  引き続き、質疑のある方、挙手を願います。  塚田一郎君。
  15. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 ありがとうございます。  自由民主党の塚田一郎です。両先生には、今日は貴重なお話をありがとうございました。  それぞれの先生に御質問をさせていただきます。  まず、渥美先生にお伺いをしたいんですが、企業を中心に、お勤めの方の実証研究をされたということのようなんですけれども、例えば雇用体系によるこうしたスタディーあるいは業種別によるそうした比較みたいなことの研究をされているのでしょうか。例えば、非正規、正規雇用によって当然その労働環境も違いますし、価値観の多様性の中で非正規の仕事を選ばれる方もいる状況ですから、そうした中での御研究がどういうふうに出ているのか、あるいは職業別、企業にお勤めの方以外、例えば自営業の方ですとか、国会議員はちょっと特殊な例でありますけれども、そうした業種別のワーク・ライフ・バランス等の実証研究についてあれば少し御説明いただけますか。
  16. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) お一人お一人でいいですか。  それでは、渥美参考人、お願いします。
  17. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) 御質問いただき、ありがとうございます。  私は今御質問あった点については大変興味を持っています。よく、正社員はそれでも恵まれている、ワーク・ライフ・バランスなんていうことを言えている、非正規はそれどころじゃない、ワークさえままならないというふうに言われやすいんですけれども、私は基本的にワーク・ライフ・バランスを進めることは非正規の処遇改善にもつながると思っています。  なぜなら、先ほど申し上げたように、業務をオープンにして共有する仕組みづくりというのはワーク・ライフ・バランスには不可欠な要素で、これをやると、本当に、今は概念的に語られている同一価値労働、同一賃金という話につながっています。  つまり、非正規の方が正規の方と今同じ仕事をしていても、非正規であるがゆえに処遇が低いということがなされているのが、それはブラックボックスになっているからそういうことができていても、本当に正社員がやっていること、業務を洗い出す、それを標準化する、しかも非正規、例えば育児休業を取る人が増えてその代替要員として非正規が入るというときには、完全にそこの業務というのは比較されますから、ワーク・ライフ・バランスを進めることによって非正規の処遇が上がるということは実際に先進企業では起きています。  例えば、神戸にモロゾフという会社がありますけれども、今こうやって非正規の処遇改善のことが言われるはるか前、二十年くらい前から非正規の方々も正規職員と同じワーク・ライフ・バランス施策が導入されているんですね。これは、かなりほかの先進企業と比べても早い時期からの取組です。これは、別に雇用形態にかかわらず一緒に働いているんだからそんな区別しちゃかわいそうじゃないかというのを正社員から声を上げて、また会社もそれを受け入れたという経緯でやっています。  非正規を視野に入れて職場改善を考えていくというのは、これはワーク・ライフ・バランス進めると必ず不可欠になってくると思います。というのは、あらゆる人たちが働きやすい、働きがいのある職場にする。私は、だれでも、いつでも、どこでも働きやすいというのが私の定義なんですけれども、そういうことを進めるときに排除する人があると絶対うまくいかないですね。部外者をつくらない、傍観者をつくらない、最後の一人まで働きがいのあるというのを展開していくというのはある意味終わりのない取組なんですが、そういう意味で雇用されている方についてはある程度私の中で見えています。  ただ、自営業に関しては、多分ワーク・ライフ・アンバランスになりやすい業界、私は永田町と霞が関と大手町じゃないかと思っているんですけれども、それは、多分皆さん、先生方のように強靱な頭脳、強靱な肉体の持ち主で、しかも本当に国のためだったら志の高い方々がもう身を削ってでも働いていく。ただ、そういう、ある意味、大手町にしても霞が関にしても、滅びの美学みたいのが生きている職場だとワーク・ライフ・バランスが成り立たないので、そういうスーパーマン、スーパーウーマンじゃなくてもワークとライフがバランス取れるという意味での私の中での定義です。  自営業の方は、自分の裁量の余地が大きいという点ではワーク・ライフ・バランスしやすい面もあります。ただ、そこはやっぱり、そうはいっても代替が利かないという意味ではワーク・ライフ・バランスしづらいところもあって、ここは定義によって、どこを優先するかによって自ずと変わってくるかなと思います。  以上です。
  18. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 ありがとうございます。  我が家はワーク・ライフ・コンフリクトの状況にあるのかもしれないんで、参考にさせていただきたいと思います。大変ありがとうございました。  水町先生にお伺いをいたしますが、先生の御説明の中で、九〇年代以降のグローバル競争が一つの問題の深刻化を生んでいる要因の一つだという御指摘がありました。  私は、労働者の環境と産業の生産性の関連性について興味がありまして、例えば九〇年代以降のグローバル競争というのは、いろんな指摘があると思いますけれども、低賃金の競争力のある国がどんどん出てきて日本の優位性が崩れていくというような要素が一つあると思うんですね。  そういう環境が継続的に続いている中で、国もそうですけれども、産業自体の競争力を維持することを考えていくと、必ずしもトレードオフじゃないですが、労働環境が良くなるというのはなかなか難しい要素も出てくるのかなというふうに思います。技術力や労働生産性を高めるということはもちろんあるんでしょうけれども、それにしても常にそういう国際競争の中で労働に対する負荷が高まってくるということはあり得るんじゃないのかなと思うんですが、その辺りの産業競争力と労働環境について、先生どのように分析をされているか、お聞かせいただけますか。
  19. 水町勇一郎

    ○参考人(水町勇一郎君) ありがとうございます。  おっしゃるとおりだと思います。何でもとにかく労働時間を全員短くすれば、短くした分、生産性が上がって経済的にも活力が出て、それで国民にとっても幸せになるというふうにはならないと思います。それは、ある程度労働時間の柔軟性を持たせたり、ある程度の長時間労働を許容して生産しなければいけないような職場もあると思います。ただ、これは職場とか企業とか産業の実態次第。  渥美さんからお話があったように、やっぱりダイバーシティーとか労働時間短縮を進めたら生産性が上がるというところはたくさんあると思いますので、一つは、やはり長時間労働が生産性とか技術力の確保の観点から必要だと言われる企業も、じゃ死ぬまで働かせていいかというと、やっぱり死ぬまで働かせちゃ駄目だろうと。死ぬまで働かせて今はしのいだとしても、結局、中長期的にはそういうところは持続可能にはならない。そういう意味で、健康確保の観点からはある程度一定の規律をした上で、あとは健康確保をした上での中の柔軟性というのは、ある程度の時間働かせて生産性や技術力を育てていくようなところと、それとも、もう長期労働とか長時間労働ではなくて、人がどんどん流動化した専門性の高い人たちを組み合わせて、そのつなぎ合わせの中で生産性を高めていくという企業もあるかもしれませんので、その中で、多様性を許容しながら、政策的に誘導していくということが大切だと思います。  こっちのタイプの企業とこっちのタイプの企業がありますので、こっちに全員合わせろとかこっちに全員合わせろと言えない。けれども、人権なり生命、身体を害さないような範囲内での多様性、柔軟性を認めるというのが本当の意味でのダイバーシティーで、それを進めれば企業の競争力や生産性が高まるということにもつながっていくんじゃないかというふうに私は思います。
  20. 塚田一郎

    ○塚田一郎君 ありがとうございました。
  21. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) 引き続き、質疑を進めさせていただきます。  澤雄二君。
  22. 澤雄二

    ○澤雄二君 公明党の澤雄二でございます。  渥美先生、水町先生、今日は本当にありがとうございます。  渥美先生にお伺いしますが、六百五十社ヒアリングをされたというのは、これはほとんどワーク・ライフ・バランスを何らかの形で実行されている企業を訪問されたんでしょうか。
  23. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) 先進企業が六百五十社です。それ以外に一般企業も何百社単位で回っています。
  24. 澤雄二

    ○澤雄二君 具体的に、労働時間を短縮するだけではないと思うんですね。先生が気付かれた特色あるワーク・ライフ・バランスをこういうふうに実現しているんだというのを幾つか御紹介していただけますか。
  25. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) 本当に百社百様なものですから、今話し始めると多分六百五十社ケース話すんですけれども、ただ、共通している考え方としては、特に私が重視している地方の中小企業の先進的な取組例ですと、制度と人との関係が全く大企業と違います。よくワーク・ライフ・バランスにしてもダイバーシティーにしても、メディアに取り上げられるのは大企業なんですね。大企業の取組だと本当に制度はすばらしくよくできています。華々しい持ち上げられ方をするんですけれども、往々にしてあるのは制度に人を合わせるんですね。  中小企業の場合は人に制度を合わせます。要は、こういう人がいるから、こういうニーズを持っているんだからこういう制度をつくろう、こういうふうに対応しようという形で経営者が皮膚感覚で従業員ニーズを分かっている、特に小さい規模の企業だと。そういうところを本当にきめ細やかに対応するという、ここの考え方が全く違いますね。  長岡塗装店という、島根県にある従業員二十二人の、いわゆる三Kと言われる塗装業の会社が二年前に、内閣府の子どもと家族を応援する日本という企業表彰の受賞企業です、総理大臣表彰の受賞企業です。その選定は六人委員がいて、私はその下っ端の一人だったんですけれども、応募があった、自薦他薦、数百社、日本を代表するそうそうたる企業を全部見させていただきました。その中で、この長岡塗装店と秋田にあるカミテという会社、この会社もワーク・ライフ・バランス、とても有名な会社ですけれども、この二つは小さい規模なのに受賞して、ほかの大企業、一緒に受賞したのはパナソニックさんと東芝さんですけれども、落選した大企業もいっぱいある。  それに比べて、どうしてじゃ長岡塗装店が優れているのかというと、やっぱり塗装業はなかなか職人さんが定着しない、定着しないと技術継承もうまくいかなくて、職人さん自身レベルが上がっていかない、そうすると顧客からの反応も芳しくない。そんな負の連鎖が起きていた十数年前に、今も担当なさっている四十二歳の女性常務、創業社長のお嬢さんなんですけれども、彼女がどうしたら定着してもらえるのか、どうしたら一人一人が仕事に集中できるのかということを、一人一人のことを頭に浮かべて施策展開されたと。中小企業にしてはすごく、子育て関連、介護関連、あるいは子育て関連だけじゃなくて、勤務時間短縮であったり有給休暇取得奨励とかいろんな取組をやっているんですけれども、ただ、制度だけで比較したら恐らく大企業でもっと整っている企業はあります。だから考え方の、一人一人に合わせるというところが一番大きな差であって、そういう考え方、経営理念がはっきりしているので本当に働きやすいですね。  要は、二十二人しか職場にいないのに、それこそ都市部にある大企業に勤めていたんだけれども、介護をきっかけにちょっと松江、島根県に残しているお父さんの看護をしたいといって戻ってきているIターン・Uターン男性社員であったり、あるいは離別して戻ってきたシングルマザーであったり、あるいは夫が難病でちょっと、筋萎縮性で本当に困っていらっしゃる女性が短時間勤務で働いていたり、いろんな女性たちが働いているんですね。  そういう人たちがまた、制約があっても働きやすいということですごくモチベーションも高いし、忠誠心も高いんですね。また、制約があるからといって能力がないわけじゃない。そのIターンした、またシングルマザーで戻ってきた人なんかは業務スキルは非常に高い。だけど、元いた職場ではそういうちょっとハンディがある人は働いてほしくないという形でじゃけんにされていたところを、もろ手を挙げて是非働いてほしいというふうに歓迎されたのがやっぱり本人のやる気にもつながって、能力を発揮している。  そういう形で、実際に先進的な取組をしている企業というのは人が先にありきで、そこに合わせて制度をつくっていったし、またそれによって絶えず変えています。思考停止しないですね。うちなんかまだまだとおっしゃるのは、改善点が見えているからそうおっしゃるんです。逆に、一般企業で、いや、うちは結構制度整っていて、女性も結構働いていますしというのはもう思考停止しちゃっていますから、そうするとその時点で多分、幾ら先進的な取組やっていたとしても退化の一途だと思います。そういう受け止め方の違いというのが一番大きいポイントかなと思います。  以上です。
  26. 澤雄二

    ○澤雄二君 おっしゃるとおりだと思っていまして、ワーク・ライフ・バランスというのは労働時間を短縮するということよりも人を制度に合わせる、そのことはもう渥美先生もそれから水町先生も言われていますけれども、人を定着させる企業にと、これが要するに一見コストが掛かるようだけれども一番会社にとって大きなメリットになるんだと。  だから、前、たしかこの調査会だと思いますけど、クララオンラインという会社の経営者に……
  27. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) 家本さんですか。
  28. 澤雄二

    ○澤雄二君 ええ、来ていただいて話を聞きました。彼のところは、もちろん労働時間の短縮もそうなんだけど、職場に子供連れてきていいよと。会議で泣くと困るんだったら、ほかの社員が子供たちの面倒を見ているんですね。それから、人種を問わないで雇い入れていると。ほかの国の言葉を勉強したいんだったら、その時間空けてあげるよと。場合によったら一か月、二か月長期休暇取って外国見聞行ってもいいし、一年間休み取って語学研修行ってもいいよと。そういうことを全部やってやると、優秀な人間が全部残ってくると。だから、多分人の確保をするということが、どれだけコストを掛けても企業にとってメリットがあるということで、今まさに言われた人に制度を合わせるということがワーク・ライフ・バランスの特色だと思うんですけど。  誠に失礼な質問なんですけど、今、渥美先生は週何時間ぐらい働いていらっしゃるんですか。
  29. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) 短いです。育児と介護と家事、私は三Kと呼んでいるんですけど、それをちょっとやっているものですから短いです。本当に会社に申し訳ないくらい短いです。私、週一回くらいしか会社へ行っていませんので。  ただ、私の会社の社長も、佐々木常夫というんですけれども、結構有名な人なんですね。最近メディアによく取り上げられるんですが、彼自身が若いときから、奥様がちょっとうつになられて四十数回入退院を、お子さんも三人いるんですけど、長男が障害を持った自閉症の子というところで、子育て、家事、看護をしてきた人なものですから、すごく理解があるんです。  ですから、例に挙げられたクララオンラインの家本社長も、御自身ちょっと障害を持っていたとかいろんな制約抱えながら頑張ってきた実体験がある。そういう経営者って強いですね。本当に良き理解者で、本当に言葉が、頭で考えた言葉じゃなくて皮膚感覚で紡ぎ出される言葉なので、すごく私も、上が理解者なので今働けているという面もあるかと思います。
  30. 澤雄二

    ○澤雄二君 週一日でお給料どれぐらいもらっていらっしゃるんですか。週一日会社に行って、給料どれぐらいもらっていますか。
  31. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) お答えられる範囲で結構です。
  32. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) 給料ですか。週一日というのは会社に行っている時間です。それ以外に、企業に行って職場以外で働いているテレワーカーなものですから、給料は人並みにいただいていると思うんですけれども、ただ、そんなにばか高くはないと思います。大企業よりもちょっと劣るくらいの、私のところも中小企業なものですから。
  33. 澤雄二

    ○澤雄二君 失礼なことをお聞きしましたが、それは要するに具体的に、ワーク・ライフ・バランスってどれぐらいコストが掛かってどれぐらいの人件費でどれぐらいのメリットがあるんだというような具体的なことをお聞きしないと、皆さんのイメージの中に多分働いてこないので。
  34. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) 分かりました。そういうことでしたら……
  35. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) ちょっと待ってください。  質問でいいですか。
  36. 澤雄二

    ○澤雄二君 はい。
  37. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) 渥美参考人、お願いします。
  38. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) まず、ワーク・ライフ・バランスはもう多岐多様ですが、一番お金が掛かる制度は事業所内託児施設で、一人子供を預かるたびに最低百万掛かります。ここら辺も結構できていますけれども、大手町近辺でもできています。そうすると二百万くらいですね。三十人規模だったら年間六千万のランニングコストが掛かります。それ以外に造る費用がもう数億円掛けてますね。  実際に、じゃ数億万とか何千万とか掛けて三十人くらいしかベネフィットを受ける人はいないわけですよね。ただ、じゃ何でやっているかというと、企業の姿勢を鮮明に出せるからですね。企業はワーキングマザーを支援する、働き続けてほしいんだ、そういう姿勢をアピールするために造っている企業が事業所内託児、ここら辺で造っている会社は多いと思います。  じゃ、そういう企業がコストとベネフィットをどういうふうに考えているかというと、むしろ一人辞められちゃうと、それこそ働き盛り、十年くらいでこれまでせっかく教育訓練してきた女性が辞められてしまうと、一人逃すともうそれで二千万くらいそれまでの教育訓練がなくなるとともに新しく採用する採用コストは考えて、それだけの大きな見えざるコストというのがある。  そこをこういう取組をすることによって今の離職率の高さが減ってくるのであれば、今、妊娠、出産、育児のときに七割辞めていますけれども、日本は。その七割の女性たちを、例えば平均的な数字だとすれば、我が社はそれがゼロまで落とせた、そうしたら七〇%リテンション率が高まったとすれば、今のうちの会社の規模だったらという計算を始めます。  今、例えば百人女性が年間辞めているような会社だと、百人掛ける二千万になったら、もうそれこそ数十億になっちゃいますよね。そういう単位での大きな見えざるコストを減らすのでわずか数億、わずか数千万という、そういう比較で考えています。ですから、コストは掛かるんですけれども、それをはるかに上回るベネフィットが大きいという、そういう理解だと思います。  あともう一つは、最近はやっぱり不景気なので、なかなかベネフィットは、そうはいっても、私はよく漢方薬だと言うんですけれども、すぐに効果が現れる即効薬ではないので取り組みづらいという企業はあるんですけれども、そうすると、リスクですね、例えばメンタルが増えてしまって働かなくても賃金を払わなくちゃいけないという、そういう大きなこれもコストにつながる。あるいは、例えばサービス残業させて、それが摘発されて新聞記事になったりしたら、そこの社会的信用喪失コストですね、そういう社会的責任を果たしていない企業という烙印を押されちゃう方が怖い。そういうコストの見える化ということをまた計算して、マイナスのコストを発生させないためにという形で企業には説明しています。  以上です。
  39. 澤雄二

    ○澤雄二君 短く、済みません、お答えください。  最後の質問です。  十ページに、自治体の取組が大きく明暗を分けたと、イギリスではね。勝ち組の自治体の筆頭がバーミンガムだと書いておられますけれども、具体的に何をしたんでしょうか。
  40. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) 基本的にキャンペーンと企業事例紹介、あと個人レベルでの取組紹介という、この三本柱です。  キャンペーンは日本もかなり力入れてやっている自治体が増えてきています。やっぱりイメージ戦略ですね。子育てがどうしても負担が大きいというマイナスのイメージが余りにも広がり過ぎちゃっていて、ワーク・ライフ・バランスもよく私大変だと、そんな家事も育児も介護もなんてそんな大変だろうと。  大変は大変なんですけれども、私は、特に子育てはストレスの相殺効果というのを言っているんですけれども、余り大変だけじゃなくて楽しいですよね。また、仕事しているとストレスを子育てで発散して、子育てでストレスがたまってくるとまた仕事で発散してみたいなものがあるものですから、そういうメリットをバーミンガムでも従業員に言わせて、自分がこういうふうに取り組んでこういうふうに生活が充実してきた、またそういう生活を充実するメリットを作り出すためには業務上こういう工夫をしてきたというような、そういう実際の取り組んできていた人の生の声を広げていくという草の根運動です。  北九州市のワーク・ライフ・バランスの個人表彰と似ている面、あるいは国が今やっているワーク・ライフ・バランスキャンペーンに似ている側面と、加えて企業の取組を推進する、今日は最後に是非にと言って御提案申し上げた基金ですね、この三本柱でうまく進めたと私は思っています。  以上です。
  41. 澤雄二

    ○澤雄二君 ありがとうございました。
  42. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) 引き続き、質疑を続けます。  山下芳生君。
  43. 山下芳生

    ○山下芳生君 まず、渥美参考人に伺いたいと思います。  多数の企業の調査を踏まえた問題提起、特にワーク・ライフ・バランスの三つの効果ということについて大変参考になりました。  まず、小さな企業ほどワーク・ライフ・バランスについて知恵がいっぱいとおっしゃったのはなぜか、逆になぜ大企業でそういうことができにくいのか。いかがでしょうか。
  44. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) まず、今私が小さい企業ほどと言ったのは、主観的な情報ではなくて、四年前に中小企業白書をお手伝いしたときに出ています。それはデータで、従業員の働きやすい働きがいのあるという意識は、一番小さい規模の企業が一番高いんです。そこから下に凸のカーブで、大企業になるとちょっと上がるんです。  これは、やっぱり経営者の方が、従業員全員が視野に入っていて、しかも一緒に机並べて仕事していると、皮膚感覚でこの人ちょっと今体調悪いなとかちょっと御家庭の様子がうまくいってないのかなというようなことを感じ取っていますね。感じ取りながら、その人たちをうまく仕事に集中できるように励ましたり相談に乗ったりということを実際に小さい規模だとやっています。  これは、本当は大企業も、部署別、部門別、事業所別でいったら中小企業、中堅企業と余り変わらない規模ですからできるんですけれども、ただ、大企業の場合は人がいっぱいい過ぎて歯車になっちゃっていますね。つまり、だれか休むとそれはもう代替要員いるという形での交換が可能だという見方、ここがやっぱり一番足かせになっていると思います。  中小企業の場合は代替利かないですから、その人を大切にしないともう同じようなスキルを持った人を採れないという危機感もあってやりますね。大企業はむしろ恵まれているところが足かせになってうまく進まないという面もあるかと思っています。  以上です。
  45. 山下芳生

    ○山下芳生君 続いて、渥美参考人に伺います。  そうしますと、大企業も含めた日本の企業全体にワーク・ライフ・バランスを普及するためには各企業の自主性に任せるだけでいいんだろうかと。水町先生の提案にもあったような何らかの法的な規制が必要ではないかなと私は感じるんですが、参考人の御意見、いかがでしょうか。
  46. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) 外部からの働きかけが重要だとは思うんです。あめとむちでいうと、むちは結構あると思います。もう結構摘発されていますから、今は労働基準監督署に。あめが必要だと思うんですね。そもそも取組をして、漢方薬なものですから、取り組めば取り組むほど良さが分かって、どんどんどんどんほっておいてもやるんですけど、最初の一歩がすごく難しいんです。  私が今回はしょっちゃったんですけれども、やっぱり取組を進める上で続けるということがすごく重要だと思うんです。コストがやっぱり掛かるものですから、ありがちなのは、数年やってやっぱりこれ大変だといってやめちゃうケースもあって、すごくもったいないんですね。そこを止めないで続けるという、そこの後押しは重要で、今回、何か新聞記事によると、行政が発注するときのポイントに建設業者はこういう取組をしているか否かというポイント加算を国は考えておられるというのを見聞して、すごくそれはいいことだと思います。  そういう取組を進めることとともに、やっぱり知見を持っている人たちがちゃんと専門的にアドバイスしないと、やりたいんだけど何をやっていいのか分からないというのは多いと思います。  要は、業種によって本当にやるべきことが百社百様なものですから、そこのカスタマイズというのが一番重要かなと思います。要は、資生堂さんが有名だとしても、小さな地方の中小企業は資生堂さんと同じことできるわけがないので、そういうカスタマイズをちゃんと知らしめる、そういうスキームづくりが一番重要かなと思っています。  以上です。
  47. 山下芳生

    ○山下芳生君 ありがとうございました。  水町参考人に伺いたいと思います。  日本の労働者は正規も非正規も幸せではないという認識なんだろうなと思うんですが、これ政治の大変大きな課題だと思います。そこで、ヨーロッパの事例をお聞きしまして、どうしてヨーロッパではこうした御紹介いただいたような法的な規制が進んだのかと。歴史的な背景ももし御紹介いただけるのならしていただきながら、先生のお考えをお聞かせください。
  48. 水町勇一郎

    ○参考人(水町勇一郎君) 基本的に背後にあるというか基盤にあるものが違うというような気がします。だから、できるできないという話に短絡的にはつながらないんですが。  私が思いますと、一つはやっぱり労働に対する考え方が、まじめに勤労で働くことが美徳だというふうに日本的に考えるか、それとも労働というのは生活のために必要最小限でやって、あとは自由時間を楽しむんだというふうに考えるか。ヨーロッパのカトリック系では今でも、そう短絡的にステレオタイプに言えないかもしれませんが、イタリアとかスペインとかフランスなんかでは定時で残業しないで帰る。労働も大切かもしれないけれども、同時に自由な時間が大切で、仕事の終わった後の時間を家族と楽しむとか、夏のバカンスで楽しいことをみんなでやるというようなことが大切にされている。その労働に対する価値観の違いがあって、日本では働くことがいいことだと、働いている間にどんどんどんどん自分を労働に突入してしまって自分を見失ってしまうということが往々にしてある。その突入できない人たちは非正規として位置付けられて、ある意味で社員としての扱いを受けないという状況になっているという違いが一つある。  あとはもう一つ、労使関係の違いで、法律を作ったとしても、現場で法律がこうなっていますよとか法律に違反しているから守らなきゃいけないですよという人がいないと法律は守られないんです。法律作りました、官報で公示したら、はい、じゃ、みんな明日から守るかと、そういうわけにもいかない。一つは労働基準監督署が全部監督して逐一やるということが考えられるかもしれませんが、そういう労働基準監督署の監督官の数を膨大に増やしてやるということは恐らく考えられない。  それで、ヨーロッパでは、やはり労使、労働組合が重要な役割を果たしていて、その法律を守らせるということや職場環境に対するチェックをきちんとする。その労働組合が日本では企業別にできています。企業別にできている労働組合の問題というのは、企業がこけないようにすると。企業が滅びてしまったら自分たちも一緒に滅びてしまう。そういう意味で、企業内組合は企業内の不正に対してチェックが働きにくいと、日本の労働組合全部がそうだと言っているわけではありませんが。ヨーロッパとかアメリカでは、基本的に労働組合の基盤は外にあります。外にある産業別とか職業別とか全国レベルの労働組合が本部であって、企業内に支部があるようなもの。そういう意味で、企業の外に労働組合があることによって、企業が不正を行ったとしても外からのチェックが働きやすい構造になっています。  そういう意味では、働き方に対する意識とかそれを支えている労使関係というものの在り方も少し視野に入れながら改革を考えていかないと、法律の条文だけちょろっと変えたというだけでは実態が急に変わるということにはならないと思います。そういう意味で、死ぬほど働くことは良くないよということはみんな共通に認識して法律で変える、あとは企業の実態とか意識に根差しながら促していくというあめをうまい具合に使って実態を変えていくということがやれることかなというふうに思います。
  49. 山下芳生

    ○山下芳生君 日本の非正規雇用がこれほど増えた背景に、私は、これは政治の責任大きいと思うんですが、やはり三人に一人が非正規、若者や女性の二人に一人が非正規、背景には、派遣労働を解禁して対象を拡大してきたこと、あるいは有期雇用契約を広げてきたことということがあると思うんですが、そういう労働法制の規制緩和が経済状況とは別に、グローバル化とは別に、またそれと軌を一にする形で行われたことが今日の日本の労働者のヨーロッパにもアメリカにもないような深刻な事態を生んでいるのではないかと思うんですが、これは事実そうだと思うんですが、ですから、そこのところはやはり変えなければならないなと私は思っているんですが、先生、その分析の中でちょっとその点が余り触れられていなかったというふうにちょっと思ったんですが、いかがでしょうか。
  50. 水町勇一郎

    ○参考人(水町勇一郎君) これは経済的な分析もかかわってきて私の専門から少し離れるかもしれませんが、例えば労働者派遣法の規制を緩和したから派遣がどんどん広がっていって、それで過酷な状況で、不安定な状況で働かされている人が増えたということは事実としてそうだとは思いますが、因果関係がどうなのかは分かりません。  もう一つ、どういう雇用形態にするかというので閉めたり広げたりするということも政策的には大切かもしれませんが、その基盤としての平等取扱原則をきちんと定めるとか、どの形態になっても平等に取り扱われるんだとか、あと、最低賃金を引き上げて、非正規として働いていても最低の人間らしい生活は送れる最低水準をきちんと定めるということが大切で、ヨーロッパは、非正規対策というのは、基本的には平等取扱原則と最近は最低賃金を引き上げて底上げするということがメーンになってきていますので、もちろん派遣を広げたり狭くするという議論も大切なんですが、その底上げというものをきちんとやるということが大切で、そこが十分にこれまで十年、十五年間やられてこなかったのが日本の問題なのかなという気がします。
  51. 山下芳生

    ○山下芳生君 ありがとうございました。
  52. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) 質疑を続けます。  川合孝典君。
  53. 川合孝典

    ○川合孝典君 ありがとうございます。民主党の川合と申します。両参考人には、本日は大変示唆に富んだお話をいただきまして、ありがとうございました。  まず、渥美参考人の方にお伺いしたいんですが、参考人の御説明にありましたワーク・ライフ・バランスが経営に対して非常に有効に機能する、効果があるというお話、私もお話を聞いていてそのとおりだなと同感いたしましたし、また、中小企業ほど導入しやすいという事例、分かりやすい事例でお話をいただいた。そこまでは分かるんですが、今の実態として、中小じゃなくていわゆる零細ですね、超零細企業と呼ばれるところも日本にはたくさんあるわけで、そういったところでワーク・ライフ・バランスというものが果たして機能するのか、導入できるのかということについて是非御所見をお伺いしたいと思います。
  54. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) 零細といっても十数人いると、先ほどの中小企業庁のお手伝いをしたときのデータを見る限りは一番従業員満足度は高いし、ワーク・ライフ・バランスできているんですね。ただ、それ以外の例えば本当に家族経営みたいな、それこそ父ちゃん母ちゃん会社みたいな、どっちかが休んだらどっちか働くみたいなところだと、そこは一番厳しい。  だから、自営業に近い規模の会社ですね、そこのワーク・ライフ・バランスをどうやっていくのかという点については、そもそもワークとライフがかなり混在していますね。ワークとライフの混在している状況が、また家族だと融通利いて、見えていますから、お互いにそれぞれの状況が。で、何とかやっているという面があります。だから、大企業とか、あるいは中小企業でもいいんです、企業でいうワーク・ライフ・バランスとは多分違う概念で自営業にしてもそれこそ本当に家族経営の会社なんかは考えるべきだと私は思っています。  ワーク・ライフ・バランスという言葉は、いろんな見方ができるんですね。ワークとライフが混在していて、そこがある意味ごちゃごちゃで切り分けられないんですけど、そこでもいいととらえられれば、それは満足度は高いと思います、その人たちは。周りがとやかく言うことでもないと思います。ただ、そうじゃない、本当はワークとライフは切り分けた方がいいだろうと考える価値観に立つとそれはやっぱり駄目なんだと思いますけれども、実態として満足度が高いのはその一番企業規模が小さいところですから、そこはどう解釈するかという話かなと思います。
  55. 川合孝典

    ○川合孝典君 ありがとうございます。  どうしてもやっぱり景気が悪くなると一番影響を被るのは小さいところからということにもなりますし、そういう状況の中で、企業経営者の方々がワーク・ライフ・バランスやっている場合ではないというような意識になられるのもこれもやむを得ないことだというふうに思っておりますね。そういう中でどう今お話があったようなことを浸透させていくのかということが非常にこれから求められていくと思うんですが、この点に関して、政治に対して渥美参考人が何か求められることというのはおありになりますでしょうか。
  56. 渥美由喜

    ○参考人(渥美由喜君) ちょっと済みません、本当に同じことばっかり言ってしまうんですけれども、企業は本当に、先ほどの従業員二十二人の三Kと言われる塗装業の取組なんて、内閣府の表彰制度がなければ日の目を見なかったですね。これは、やっぱり国がそういうことをなさったから、表彰制度をつくって表彰したから全国規模で知られるようになって、また、つい先日もヒアリングしてきたばかりなんですけど、そういう表彰をされると、ああ、うちの会社は先行き暗いかと思っていたらいい会社なんだというふうに後継者の方が気付かれて、大学院やめて戻ってきて、今は職人さんたちに交ざって次の経営者としての帝王教育を受けているということがあります。要は、人材確保がまさしく次の経営者の確保につながったということですね。  ですから、そういう、中小企業でも人材確保に悩んでいる、あるいはもう仕事が減っている、建設業なんか一番今ダメージを受けている業種ですね、そういう業種であったとしても、こういう取組をして、島根県は建設業の評価ランキングってつくっているんですけど、それでも高い評価を受けていて上位にランクインしていて、こういう、行政が良い取組をしている企業を評価するとか表彰するとか、あるいはそういう取組を広めるためのコンサル、支援制度とか、こういうことは国しか、行政しかできない役割だと私は思います。是非お願いしたいところです。
  57. 川合孝典

    ○川合孝典君 ありがとうございました。  続きまして、水町参考人にお伺いをしたいと思います。  いわゆる正規、非正規の格差の是正のためにということで先生がいろいろお書きになられた論文も何本か読ませていただきまして、私自身も非常に共感するところが多かったです。その中で、職能給中心の日本では同一労働同一賃金というものがなかなかなじみにくいという御主張に関しては、私もそのとおりだなというふうに思っております。  そこで、先生が御主張されているのは、各企業が最適と考える賃金体系に職能給が含まれているのであれば、その制度内での均等処遇を目指したらいいのではないかということをお書きになられている。それができればいいなと私も思ったんですが、実際に企業の中での、それぞれの企業の中での非正規、正規の均等処遇ということになったときに、仮に非正規の方の処遇を正規の方々に合わせるという話になった場合には、実際の手取りの部分の賃金の水準というものが、正規に対しては企業は賃金以外にもいろいろな社会保険料だとか企業負担部分を払っているわけですから、金額を合わせようと思うと非正規の方には莫大な金額のコスト負担が掛かってしまうんではないかなという実は素朴な疑問を感じたものですから、この部分に関してもう少し詳しく御説明いただきたいと思います。
  58. 水町勇一郎

    ○参考人(水町勇一郎君) 企業の中の処遇というのは、賃金だけではなくて社会保険の問題であり、賞与とか退職金とかその他福利厚生を含めていろんなものがあります。その中で、仕事、労働時間とリンクしているものと、そうではなくてその企業に所属していることとリンクしている、例えば通勤手当は一日八時間働く人であっても一日四時間働く人であっても通勤しているので、四時間の人は半分でいいかというと、やっぱり通勤している実費が必要ですよね。その企業に所属して働いていることによって生じるような給付と、労働とか労働時間の長さに比例して算定すればいい給付というものがあります。  それぞれの実態に合わせて、例えば非正規であったとしても、労働時間とか労働の質とか長さによって比例計算できるものは比例して支給する、そうじゃない、所属していることによる通勤手当とか住宅手当等についてはその所属していることによって払う、払わない。基本的には平等取扱原則なので、比例しているものは比例して払う、所属しているものにかかわるものは所属して払う。  ただし、資源は有限なので、どうやってその分量を決めるか、払う、払わないかを決めるかというときに、企業の中できちんと話し合って配分を決めることは一定の範囲で合理的理由に基づくものとして認めようということで、各企業の中で話し合って考えて結論を出していくということをすべきなんじゃないかと。基本的に労使の話合い、それはもちろん労使といっても正社員しか入っていない組合と話し合うだけでは駄目で、非正規の人も含めた話合いによって給付の性質に伴った平等というものを図っていくことが大切だと思います。
  59. 川合孝典

    ○川合孝典君 ありがとうございました。  現状、残念ながら、労使といっても労働組合の組織化率が二〇%を割り込んでいる状況の中ではなかなか、そうあったらいいなという思いもありながらも、難しい部分があるのも今の現状であります。  また、この件に関しては機会がありましたら御質問させていただくことにして、これで終わらせていただきます。
  60. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) まだ多少の時間があろうと思いますけれども、質疑のある方の挙手を願います。  津田弥太郎君。
  61. 津田弥太郎

    ○津田弥太郎君 会長、ありがとうございます。  民主党の津田弥太郎です。  今までお話を聞いていて、ワーク・ライフ・バランスにしても、日本の労働者がより豊かに暮らしていくためにどうしたらいいかというプラスの思考の話はいいんですが、問題は、マイナスの問題にどう対応するか。  自民党さんのときにやってくれればよかったんだけれども、JALの問題が今大きな問題になっているわけです。一万五千人の人員削減をするという大変なことになっていて、先ほど水町先生からヨーロッパにおける先任権のお話がございました。人員削減をする場合に、いわゆる先任権という考え方でいけば勤続年数の短い人から首にしていくと、これが基本的な考え方なんですね。  ただ、我が国の場合はどちらかというと年功序列賃金ですから、給料の高い人間をターゲットにして首を切るという、これまでは割とそういうやり方をやってきたわけです。四十歳以上とか五十歳以上とかと。企業の活力を考えたときに、そういう人員整理をした後、やはり比較的若い方を残した方が企業の活力は残るんじゃないかという考え方が結構強かった。  これは、ヨーロッパの先任権主義とはかなり我が国とは事情が違うんですが、今お話をいろいろしていただいていて、JALの場合も恐らくこういう問題が出てくるんではないのかなという気がしてならないんですが、例えばJALの一万五千人削減するとしたら、水町先生はどういう対応をしようとお考えになるか、ちょっとお考えをお聞きしたいと思うんですけれども、いかがでしょう。
  62. 水町勇一郎

    ○参考人(水町勇一郎君) 大変マイナスの方の話で答えにくいことですけれども、基本的には、今の整理解雇法理と言われる今の法理でもそうなんですが、無理やり最終的に指名して解雇するというのは最後にすると。その中で、いろいろな余剰人員のほかの配転とか出向とか、関連企業の紹介をしたり、それでも駄目な場合は希望退職者の募集をすると。希望退職者の募集をするにしても、ただ単にほっとくだけではなくて、退職金の上積みをするとか、次の職場へのあっせんをするとか、いろんな努力を踏まえてみてもそれでも駄目なときは最後に解雇ということになります。  その解雇になるというときに、セニョリティーでいくか、コストの高い人でいくか、能力の高い低いでやるのかというのは、これは本当にその企業の実態次第で、企業の意識次第で、どういう人を残したいと思っているのか、それを働いている人たちも納得しているのかにかかわってくるので、日本で仮に今後新しい雇用調整の基準を考えるときに、セニョリティーがまず大切だ、第一だ。どこの企業もセニョリティーでやれというわけにもいかないでしょうし、逆に、日本で中高年の人は年功で賃金が高いので切られやすいとすれば、それも含めて、賃金と雇用保障ってつながっていますんで、そしたら賃金をもう少しフラットにしながら、フラットで雇用をしていった方がいいんじゃないかという議論も健全な労使関係の中では話になっていくかもしれません。  今のJALの問題は、今になって急にやんなきゃいけないというんで、中長期的な視点というんでなかなかいくのが難しいのかもしれませんが、そういう意味で、その労使の話合いを踏まえた形で、なるべく嫌がっている人から先に出さないような工夫をしていくことが大切なんじゃないかなという気はします。
  63. 津田弥太郎

    ○津田弥太郎君 嫌がっている人から先に首になるというのはよくないと。この嫌がっている人というのはじゃどういう人かというと、これちょっと下世話な話にだんだんなっていくんですが、再就職しにくい人たちなんです、ここなんですね。  これは、実態としては非常に、これ企業の側からすればむしろ残したい人が先に辞めていっちゃう、希望退職をすれば。ある程度年齢を絞って、ある程度ターゲットを絞ってやれば、むしろ企業にとっては、できるだけこの人は要らないよという人をターゲットにしてしまうという、そういう今まさにおっしゃったことが現実としては非常にシビアな話としてあるわけですよ。  それは、今我が国のこういう経済情勢下では、実は大きな企業からちっちゃい企業までこの問題でもう右往左往しているわけですが、そういうのを乗り越えてまた再建をしていこうという、これは当然必要なことなんですけれども、そのために、雇用の問題というのを労使が取り組むに当たっての一番のキーワードになるものというのは、先生、どんなふうにお考えになりますか。
  64. 水町勇一郎

    ○参考人(水町勇一郎君) 余りどっちかにステレオタイプに決めてしまうと、全体としてのバランスが取れなくなってしまいます。企業が残したい人を残したいと、希望退職者の募集をしたらいい人がどんどん出ていくので、希望退職者の募集を掛けないというと、企業の利益、企業の意思を重視することになってしまいますし、逆に希望退職者の募集を絶対しなければいけないということになると、もう次が見付かりそうな人はどんどん出ていくけれども、次が見付かりそうにない人だけ残るということになります。  そのバランスの問題なんですが、これまでの日本の裁判例では、やはり希望退職者の募集をしないと解雇しちゃいけないよというのがルールとして一般化しています。そういう意味で、そういう解雇という一番労働者にとって苦しい選択をするときには、企業の意思も大切かもしれないけど、労働者の利益を重んじなさいというのがこれまでの判例のルールなんだと思います。  ただ、どっちにしても、右に出るか左に出るか二者択一の問題ではないので、その二者択一になる前に労使で話し合ってバランスの取れた解決を図るというのが何よりも大切なんじゃないかと私は思います。
  65. 津田弥太郎

    ○津田弥太郎君 ありがとうございました。
  66. 矢野哲朗

    ○会長(矢野哲朗君) おおむね予定された時間に相なりました。以上で参考人に対する質疑を終了いたします。  渥美参考人、水町参考人、今日は御多用のところ、本調査会に御出席をいただきまして、ありがとうございました。  本日お述べいただきました御意見でありますけれども、今後の調査の参考にさせていただきたいと思います。本調査会を代表しまして心から御礼を申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)  本日はこれにて散会をいたします。    午後二時四十分散会