○山下栄一君 私は、
公明党を代表して、平成十一年度
予算三案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。
我が国経済は、二年連続のマイナス成長という未曾有の不況に陥っております。消費は低迷が続き、
設備投資も大幅な減少を見込む企業がほとんどであります。雇用面においても有効
求人倍率は〇・五倍程度と極めて低い水準にあり、失業者は三百万人に
上り、
失業率も過去最悪を更新し続けるなど、雇用情勢は一段と悪化の様相を色濃くしております。
小渕政権は、経済再生
内閣を掲げて発足したにもかかわらず、依然として経済対策に実効が見られず、この間、平成十年度の政府経済見通しは、昨年十月に当初見通しの一・九%がマイナス一・八%に、十二月にはさらにマイナス二・二%と下方修正され、その改定された成長率さえ達成が危ぶまれております。
かかる状況の中、提出された平成十一年度
予算は、我が国経済を不況から抜け出させるためのものであるにもかかわらず、当面の不況対策さえ不十分であるばかりか、中期的な構造改革につながるものともなっておらず、到底認めるわけにはまいりません。
小渕
内閣は、五つのかけ橋を強調しておりますが、
国民の生命、生活を守るための安全へのかけ橋については全く不十分と言わなくてはなりません。ダイオキシン問題に関する政府の対応は、国の安全基準値が
国際基準と比べて甘く、また省庁によっても異なり、極めてわかりにくく、
国民に不安を与えております。また、所沢周辺や
茨城県龍ヶ崎市など、高い汚染地域における野菜やお茶、魚介類などの食品に関する国の調査もおくれ、測定分析に関する基準も
国際基準よりも劣っているなど、
環境問題に対する政府のセンスは極めて鈍いと言わざるを得ません。
ダイオキシン類はもとより、PCB、環境ホルモンなどの汚染実態や健康影響等の総合的な調査研究を進めるとともに、廃棄物対策や発生源対策を抜本的に強化するよう、政府に強く求め、以下、
本予算に反対する主な理由を申し述べます。
反対の第一の理由は、平成十一年度税制改正で平成十年度の特別減税に比べ負担増となる中低所得者層への配慮が不十分であり、その結果、景気に悪影響を及ぼしている点であります。
個人消費は
国内総生産の約六割を占め、景気回復のかぎを握ると言っても過言ではありません。しかるに、政府の減税策では、減税の大部分が定率減税方式で実施されるため、標準
世帯の場合、年収七百九十三万円以下の
世帯で昨年よりも実質負担増となっており、これでは個人消費の拡大による景気回復もプラス成長もおぼつかないと言わざるを得ません。
私たち
公明党は、かかる状況を踏まえ、総額二兆円規模の特別戻し税の実施を提案しております。政府は一刻も早く、二兆円規模の戻し税を実施して、中低所得者層が減税の恩恵を受けられるようにすべきであります。
反対の第二の理由は、少子化対策が不十分である点であります。
若い夫婦の家庭では、本当に安心して子供を産んで育てることができるのか、十分な教育を受けさせることができるのかという不安に駆られております。本格的な少子高齢社会にあって、子供の誕生から社会に出るまでの子育て、教育に関するトータルな支援
システムを築くことが、
国民に安心感を与えるために不可欠であると確信いたします。
不況のあおりを受け、可処分所得が減少する中で、児童手当
制度の抜本的拡充は、育児の支援に対してなくてはならない政策であります。しかしながら、
本予算案では、多くの子供を持つ
世帯に配慮して所得
制限が緩和されてはいるものの、支給額はこれまでと何ら変わっておりません。施策を実効性あるものにするためには、欧州各国で行われている
制度に倣い、支給額を倍増し、支給対象を
義務教育終了前の全児童まで拡大するとともに、所得
制限を撤廃することが不可欠であります。
奨学金制度については、一部のエリート養成支援という戦前からの育英という古い考え方を改め、すべての子供の能力の多様なあり方に価値を認めるという視点からの支援
システムを創設すべきであります。この観点から見ると、
本予算案における施策の内容はなお不十分であり、成績要件や保護者の所得
制限を撤廃し、希望するすべての高校生、大学生等に無
利子で入学金も含めて
奨学金が貸与されるよう、
制度の大幅な拡充を図ることが不可欠であります。
反対の第三の理由は、
行政改革への積極的な取り組みが見られないことであります。
護送船団方式と言われる金融行政の崩壊に見られるように、これまで我が国を支えてきた行政
システムの疲弊は明らかであり、
国民の官僚不信は高まる一方であります。かかる現状に早急に対処しなければならないにもかかわらず、政府が打ち出した
公務員定数の削減は前年より百人も少なく、
特殊法人の整理合理化に関しては、我が党が審議過程で明らかにしたように、役員の減少はごくわずかで、その
退職金などについても見直しは不十分な内容に終わっています。
税金のむだ遣いをしないという姿勢が極めて希薄であることは、
電気料金を初め、
公共料金の不経済な使用に関する会計検査院の指摘が繰り返されても、
内閣は何ら関心を示さないことからも明らかであります。一刻も早く行政のスリム化を実現するために、
行政改革の具体策を目に見える形で実践すべきだと考えます。
反対の第四の理由は、ばらまき型
予算によって財政赤字を大幅に拡大させている点であります。
不要不急の
公共事業への支出により膨らみ続けた財政赤字によって、国と地方の債務残高はGDPの一・二倍と先進国中最悪の水準に陥っています。そのことによって、既に昨年末からことし初めにかけて長期金利の上昇を引き起こし、今後の状況次第では
設備投資の一層の落ち込みや住宅建設を冷え込ませることは必至であります。むだな
予算を削減し、財政支出の効率化を通じて財政再建の展望を示すことが必要であるにもかかわらず、そうした努力を放棄した
本予算案は到底認めることはできないのであります。
以上、
本予算案への反対の理由を申し述べました。
我が国は、二十一世紀において
国民生活の豊かさを維持発展できるかどうかの重大な岐路に立たされております。構造改革の推進には痛みを伴い、ややもすれば庶民が最も大きな負担を背負わされかねません。我々は、財政難を理由とする福祉切り捨てに断固反対するとともに、二十一世紀を展望し、
社会保障の整備や教育対策を推進して、
国民が安心して暮らせる施策の大胆な実施を強く求めて、私の反対討論を終わります。(拍手)