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1994-12-06 第131回国会 参議院 厚生委員会 9号 公式Web版

  1. 平成六年十二月六日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         種田  誠君     理 事                 清水嘉与子君                 宮崎 秀樹君                 菅野  壽君                 横尾 和伸君     委 員                 石井 道子君                 尾辻 秀久君                 大島 慶久君                 大浜 方栄君                 佐々木 満君                 前島英三郎君                 今井  澄君                日下部禧代子君                 竹村 泰子君                 堀  利和君                 勝木 健司君                 萩野 浩基君                 高桑 栄松君                 西山登紀子君        発  議  者  横尾 和伸君        発  議  者  勝木 健司君    国務大臣        厚 生 大 臣  井出 正一君    政府委員        厚生省保健医療        局長       谷  修一君    事務局側        常任委員会専門        員        水野 国利君    説明員        外務大臣官房審        議官       高野 紀元君        外務大臣官房審        議官       杉内 直敏君        外務省北米局北        米第一課長    河野 雅治君        外務省欧亜局西        欧第二課長    齋木 昭隆君        文部省初等中等        教育教科書課        長        清水  潔君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人の出席要求に関する件 ○原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案  (内閣提出、衆議院送付) ○原子爆弾被爆者援護法案(横尾和伸君外一名発  議)     ―――――――――――――
  2. 種田誠

    ○委員長(種田誠君) ただいまから厚生委員会を開会いたします。  参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。  原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案及び原子爆弾被爆者援護法案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 種田誠

    ○委員長(種田誠君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 種田誠

    ○委員長(種田誠君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  5. 種田誠

    ○委員長(種田誠君) 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案及び原子爆弾被爆者援護法案を一括して議題といたします。  両案につきましては既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 被爆者援護法案、これを私どもが最初に国会に提出いたしましたのが一九七四年でございました。これまで十六回提出をし、廃案となり、あるいは継続となりを繰り返してきたわけでありますけれども、八九年十二月には御存じのとおり参議院を通過、続いて九二年参議院を通過、衆議院に送られまして、いずれも審議未了できているわけでございます。  私も反核や平和の運動をずっと続けてまいりました立場からいいますと、この法案の審議が今国会で行われているということに本当に深い感慨を覚えます。被爆者の方たちが願ってこられたことを一〇〇%実現できたわけではないといたしましても、この法案が今国会で審議をされているということは本当に私は喜ばしいことであるというふうに思います。  これまで私たちが提案、主張を繰り返してきましたのは、やはり国家補償の精神に基づく必要性だったと。「国の責任においてこという言葉で今度は表現されておりますが、これにはいろいろと長い経過がございました。国家補償の精神になぜ基づかなければいけないかということにつきましては、私たちはこんなふうに考えておりました。  それは、七八年の最高裁の判決、それから厚生大臣の私的諮問機関であった原爆被爆者対策基本問題懇談会の八〇年の報告、その後の国会での論議の三点で明らかになっていることでありますけれども、すなわち、それは単なる社会保障法ではなくて広い意味における国家補償の見地なのではないかということでありました。  それから、国家補償の意義といいますか配慮といいますか、それは基本懇で示されておりますように、原爆の特別な被害に着目したいわゆる結果責任であって、国の不法行為に基づく戦争責任や賠償責任の趣旨ではないと与党間で合意するためには、ここまで我々は譲らざるを得なかったということがございます。それは結果的には非常に残念なことだったと思います。  それからもう一つは、すべての原爆死没者を対象にということがございました。私たちはその壁を破るようにと努力いたしましたけれども、与党間の合意が得られず、原爆死没者の遺族である生存被爆者だけを対象とするという今回の決着となったわけでございます。  さまざまな経緯を踏まえながらあったわけですけれども、私どもは、今回特別給付金ということに対しましても、人道上許すことのできない核兵器の使用による人類初の犠牲者なのである、戦後五十年の節目に特別の弔意をあらわすことによって再び核兵器の使用を許さないこと、二十一世紀には地球上から核兵器のような大量殺りく兵器をなくすことという国家意思を内外に示したいということから、私はこの部分を非常に大きく評価しているし、画期的なものだというふうに考えております。  たくさんおありになると思いますが、厚生大臣の概括的なお考えをちょっとお聞かせいただければと思います。
  7. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 今先生がおっしゃられました二十年かかったということに関しましては、衆議院の厚生委員会でも、ずっと取り組んでこられた委員の先生からその御感懐を拝聴したところであります。  与党の五十年プロジェクトの皆様方が大変真摯な論議を重ねてくださって、その結果合意されて今回の法案提出になったわけであります。御指摘のとおり前文に、世界唯一の被爆国として、原爆の惨禍を再び繰り返さないよう、核兵器の究極的廃絶と恒久の平和を念願することを盛り込んだところでございまして、これは被爆後五十年のときを迎えるに当たりまして非常に重要な意義を持つものだと考えております。
  8. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 私も評価をしているところは、まず第一に、国との雇用関係になかった戦争被害者への補償が我が国で初めて行われるということ、それから二番目に、原爆投下の直接の加害者ではない日本政府が被害者に補償するという点で戦争責任とは何かということを考え直すきっかけとなること、それから、先ほど申しました国是である非核が初めて立法化されるということで大変画期的なことというふうに考えております。  七八年の最高裁判決ではこんな言葉があります。途中からですけれども、「このような特殊の戦争被害について戦争遂行主体であった国が自らの責任によりその救済をはかるという一面をも有するものであり、その点では実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあることは、これを否定することはできないのである。」という最高裁の判決がございます。  それから基本懇の報告の中にも、「原爆被爆者の犠牲は、その本質及び程度において他の一般の戦争損害とは一線を画すべき特殊性を有する「特別の犠牲」であることを考えれば、国は原爆被爆者に対し、広い意味における国家補償の見地に立って被害の実態に即応する適切妥当な措置対策を講ずべきもの」である。  それから八一年、園田厚生大臣は、「基本懇から、御承知のとおり、単なる社会保障制度ではなく、「広い意味における国家補償の見地に立って講ずべきである」との意見をいただいておりますので、政府は、これを尊重しながら検討してまいりたいと思います。」というふうにお答えになっておられる。公的な見解はそういうふうになっているわけであります。  私は、いろいろたくさんの問題があり、そして議論をされた中で、このようなことが今後もきちんと位置づけられていき、そしてできることならばそういう精神に基づく改正といいますか、そういうことが徐々に行われていくことを望みたいというふうに考えます。  本題に入ります前に、衆議院で附帯決議がつきましたが、その一番目に書いてあります「平成七年度に予定されている原爆被爆者実態調査について、内容の充実に努め、原子爆弾被害の実態及び被爆者の現状の把握に遺漏なきを期すこと。」というところがありますし、その後にも調査について触れているところがございます。一瞬にして何十万の人たちが消滅をしてしまわれたというような大変な被害だったわけですが、その調査、実態、現状の把握などにどんな御決意で臨まれようとしておられますか、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
  9. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 衆議院の厚生委員会の附帯決議の最初に、今先生がおっしゃられたことが取り上げられているわけでございますが、厚生省では、平成七年度に原爆被害者実態調査を行うために平成六年度においても必要な予算を計上し、準備を今行っております。  具体的な調査項目等につきましては、これまで実施してきた被爆者の方々の世帯や所得等の生活の状況、医療や身体障害などの健康状況等の項目に加え、どのような事項について調査を行うかについて関係者の御意見を伺いながら今後検討していくこととしております。
  10. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 非常に大変なことだと思いますけれども、やはり調査をぜひ進めていただきたいというふうに思うわけです。  この法案で触れられていないんですけれども、政府が既に実行しておられることを私よく知らなかったものですから、ちょっとお伺いしたいと思うんですが、被爆者援護法は旧来の原爆二法同様、海外の在住者は対象外となるのでしょうか。例えば、今南米に約二百人ぐらいの被爆者が生活をしておられて、これを厚生省が調査しておられますけれども、その辺のことをお聞かせいただけますでしょうか。
  11. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 今、御提案をさせていただいております新法の適用につきましては、現行の原爆二法と同様に日本国内に居住する者を対象とするという立場をとっております。ただ、国籍条項というものはございませんので、国内に居住する外国人被爆者についてもこれは適用されるという考え方でございます。  それとは別にと申しますか、在南米あるいは在北米におられる被爆者の方々に対しましては、巡回診療と申しますか、そういうことをやってきております。
  12. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 南米被爆者健康診断というのがサンパウロで行われましたね。これはもう何回目かになるんでしょうか。いつから始まって、どんなふうに診断が行われているのか、お聞かせください。
  13. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 在南米の被爆者に対する巡回医師団の派遣事業というものは、第一回を昭和六十年から実施いたしております。  経緯を申しますと、六十年の秋に外務省、厚生省それから広島県及び長崎県の四者共同事業として医師団を派遣して健康相談を実施するということを始めたわけでございまして、平成六年の秋、ことしは十月の末から十一月の初めにかけてブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア、ペルーの被爆者の健診をやっておりますが、現在まで既に六回の事業を実施いたしております。基本的には隔年、つまり一年置きに実施をするという形でやってきております。
  14. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 どのくらいの方を診断されたのでしょうか。
  15. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 現在までに六回派遣をしておりますが、受診者数を申しますと、第一回が昭和六十年でございますが百三十三人、第二回、六十一年が百二十六人、第三回、六十三年が百十八人、第四回、平成二年でございますが百十八人、第五回、平成四年が百七人、ことしやりました第六回目は九十八人の方が受診をされております。
  16. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 今お聞かせいただいた数字によりますと、どんどんパーセントが下がっているんですね。最初七三%、三回目が六四%、次が六三%、第五回は五四%と、これはどんどん高齢になっていかれるから診断を受けに来られないということもあると思いますけれども、その原因をどんなふうに考えておられますか。  それと、帰国治療というのも実施しておられるんですね。その実施の要領と人数もお聞かせください。
  17. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 巡回医師団の報告によりますと、ことしの秋現在で在南米の被爆者の数というのは百九十一人というふうに聞いておりますけれども、そういう意味で申しますと、今先生御指摘がございましたように、受診者の数、健康相談を受診いたしました数というのが年々減少をしてきているという事実はございます。  ただ私どもとしても、これについての理由は必ずしも明らかではございませんが、やはり被爆者の方々の高齢化が進んできているというようなこともその原因の一つではないかというふうに考えております。  南米からの帰国治療の方々の数でございますが、これは広島では広島市医師会の事業として、また長崎では長崎被爆者医療国際協力会の事業として実施をしてきておりまして、帰国治療を受けられました方が平成二年度が三人、三年、四年度同様に三人、平成五年度が五人、それぞれ広島に行かれた方、長崎に行かれた方がございますが、そういうような人数になっております。  治療につきましては、帰国治療が必要の方あるいは現地の医療機関でも治療が可能な方あるいは現在のところは帰国治療が必要でない方、いろいろございますけれども、本年の秋に行きました巡回医師団からの報告では、今のところ緊急に帰国治療が必要と判定された方はことしはいなかったというようなことでございます。  なお、絶対数につきましては少ないわけでございますけれども、北米健診の結果帰国治療をされた方も、やはり年単位で見ますと大体数人というようなことでございますので、南米と北米と比べて南米の方が若干少ないのでございますけれども、やはり地理的に遠いというようなことも影響しているのかなというような感じを持っております。
  18. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 同じように被爆されて遠い国へ行かれた。そして、移住後は生活を安定させるのに精いっぱいで、被爆について考える余裕が余りおありにならなかった。既に六十歳代半ば以上の方たちでありますから、ブラジル原爆被爆者協会というのがありまして、ここでは現地の医療機関に委託するなどして国内の被爆者と同じ待遇を受けられるようにとずっと日本政府に要請をしてきたと言っておられるのですけれども、その辺厚生省は要請をどう受け取っておられますでしょうか。
  19. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 在南米の被爆者の方々の健診ということについて、できるだけ多くの方が受診をしていただけるように現地の被爆者協会の方、あるいはまた広島、長崎の県人会等の協力を得て事業を実施してきたところでございますが、今後ともそういったような関係者の御協力を得ながらこの事業を推進していきたいというふうに思っております。
  20. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 大臣、この南米の被爆者の問題でそういう要請がこれまで何度も来ていることを御存じだったでしょうか。お忙しいですからもし御存じなかったとすれば、こういう方たちがなぜこんなにパーセントがどんどん下がってきているのかといいますと、もちろん高齢になられたこともあるんですが、診断はしてくれるんだけれども治療に結びつかない。診断してもらって、あなたはきっとこういう障害があると思いますよとか、ぐあいが悪いんです、わかりますよと言ってくれても、それを治療に結びつけてくれない。よほど悪い人はさっき局長がお答えになったように帰国治療というのがあるようですけれども、なかなかそれでもブラジルは遠いですから、二十何時間かかって飛んできて、もちろん治療費は要らないとしても旅費は要るわけです、自己負担ですから。そういう形で飛んで来られて、そして被爆手帳の申請から始まるわけです。被爆手帳を持っておられませんね、この方たちは。  ですから、そういうことで居住要件というのがこれまで二法にはあったわけですけれども、その辺はこれから十分に改善をしていっていただかなければならない問題ではないかと思いますけれども、御所見を伺いたいと思います。  それから、局長、国別に人数をちょっと教えてください。南米といいますが、どこの国が何人、帰国治療に来ておられるかどうか、どうぞ。
  21. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 帰国治療されました数につきましては先ほど申し上げましたけれども、国別の数は現在ちょっと把握いたしておりません。
  22. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 先ほど局長から御答弁申し上げましたように、在南米の被爆者の方々に対する健康診断につきましては、できるだけ多くの方々に受診していただけるよう、今後とも現地の被爆者協会や広島、長崎県人会等の協力を得て事業の推進を図っていきたい、こう考えております。  また、帰国治療につきましては、帰国治療を希望される方が来日して治療のための手帳の取得を希望される場合には、実はこれまでも基本的な申請書類の予備的なチェックを行っておりまして、来日後の事務負担の軽減をできるだけ図っているところでございます。しかしながら、書類等が十分でない場合には来日されてから面接等にかなりの日時を要する場合も見受けられますので、関係地方公共団体や民間団体等の御協力を得て、また関係省庁とも相談をしながら、できるだけ迅速に事務手続が行えて短期間に治療ができるように努力してまいりたい、こう考えております。
  23. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 できれば、その旅費ぐらいは何とかお助けができればいいなと思いますけれども。  局長、これは南米だけでしょうか。ほかの国はどうですか、北米とか。
  24. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 在北米につきましても南米でやります以前からやっておりまして、昭和五十二年から社団法人広島県医師会、それから財団法人放射線影響研究所等が中心になりまして医師を米国に派遣いたしまして、在米被爆者の健康診断を実施してきております。平成五年で第九回目を迎えておりますが、受診者は現在までに延べで二千九百七十二人というふうになっております。  なお、南米のときにもお尋ねがございましたけれども、帰国治療ということにつきましても、広島市においては昭和五十八年から、また長崎におきましては昭和五十七年から実施をいたしてきておりまして、平成五年までの延べ人数、帰国治療を受けられました方は延べで六十八人ということになっております。  なお、平成五年七月末現在の北米犬陸在住の被爆者でございますが、アメリカで千五十名、カナダ在住の被爆者が二十三名というふうに承知をいたしております。
  25. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 そういうことで日本が在外の被爆者に対しても温かい手をもっと差し伸べることができるように、大臣、ぜひ御配慮を賜りたいというふうに強く要望しておきます。  さて、この被爆者援護法で在外の問題を出しましたついでにと言ってはなんですが、これの方がむしろ重要なことなのですが、数多くの援護関係の法案の中でただ一つ国籍条項がないのでございます。従来の関連二法もございませんでした。いわゆる内外人平等の精神に基づく法律であるわけであります。しかし、このお出しいただいた資料を見ましても、私たちが御迷惑をかけたアジアの国々の方々のことはどこにもない。そして、全くそういった観点はないのではないかとさえ言いたくなるほどないわけです。  そして、私は援護関係法案の中でただこの従来の二法だけかと言いましたけれども、厚生大臣に私もう何回も何回もお願いをしております旧軍人軍属の方たちにすら国籍条項で隔てをつくって、日本の軍隊に連れてきて戦わせた軍人軍属の人、そして今在日の方、韓国からも日本政府からも何の援助も受けられていないこの谷間の方たちを何とか救っていただきたいとお願いをしてまいりましたが、この七月十五日の裁判の判決は、これは国の立法不作為であるということで、国がきちんと法のもとでやらなければならないことだとボールを投げ返してきているわけでございます。  こういう問題もあることを踏まえつつ、厚生省が援護ということで旧植民地の人たち及び侵略をしていった国々の人たちをいかに締め出すか、国籍条項でもっていかに隔てようかとしか考えてこなかったのではないかと思うくらい厳しい国籍条項の壁があってどうすることもできない。そして、そのわずかな軍人軍属の在日の人たちに対してすら救いの手を差し伸べられていない現状、こういうことがあるわけなんです。  外国人被爆者の問題にちょっと触れたいというふうに思います。旧植民地である朝鮮半島出身者の方たち、この被爆者の問題についてお尋ねしていきたいと思います。  一九四四年十二月末現在で広島県内には、旧内務省警保局の記録によりますと八万一千八百六十三名の朝鮮人の方が住んでおられたとされています。この中で警保局は、朝鮮から徴用で強制連行をしてきた数を六千名程度というふうに記しているんですけれども、これは何人ぐらいだったかわかりますでしょうか。
  26. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 第二次世界大戦の末期、あるいは原爆投下当時、かなりの数の朝鮮人の方たちが徴用工として広島あるいは長崎市におられたということは承知しております。  ただ、厚生省におきましてそのような強制連行あるいはそういった徴用工の方に対する資料は保管しておりませんので、その具体的な数について私どもは承知をいたしておりません。
  27. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 一九四五年のあの八月六日、広島市内には一体どのくらいの朝鮮人の方たちがおられたのか。公式の調査は数字としてあらわれていないのですが、民間の団体などの聞き取り調査、大変な御努力によって出てきた数字によりますと、広島県内には約五万二千から五万三千人の朝鮮人の方が居住していたのではないだろうかと。そのほとんどが爆心地から四キロから四・五キロ以内に居住しておられたということが想定されているわけであります。  それは、承認等の条件が非常に厳しいとされる被爆手帳の交付されている朝鮮人被爆者の方たちが二千名近くいらっしゃる。この数字は局長、わかりますね。二千名近くと言ってよろしいでしょうか。
  28. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 現在、原爆二法というのは国籍のいかんを問わず国内に居住をされる方に対して適用されるということでございまして、私ども国籍別の人数というのを把握しておりません。  ただ、関係団体の調査の中では、広島県内の在住者で約二千人、長崎市内で約百人というような調査があるということは承知をしております。
  29. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 そう大きく外れた数字ではないということですね。  長崎でもそうですけれども、広島での朝鮮人被爆者の存在を考えたとき、なぜそんなにたくさんの朝鮮人の方が広島に当時いらっしゃったのかということを考えなければならないのではないかと思いますが、大臣はこの点どのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  30. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 原爆投下当時、かなりの数の朝鮮人の方が徴用工として広島、長崎にいらっしゃったと聞いております。  また、広島に大変多かったというわけですが、これは広島が戦前の中国地方の中心地であったこと等も多くの朝鮮人の方たちがいらっしゃった理由の一つであるんじゃないかと考えておりますが、正確な理由については承知しておりません。
  31. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 そういうことをお聞きしているのではなくて、大臣の御所見で結構なんです、役所の書いた答弁は結構なんですけれども。  なぜそんなにたくさんの人たちがよその国にいて原爆を受けねばならなかったのだろうか、大臣はそれをどのようにお考えになられますでしょうか。もし来なければ被爆しなくてよかったんです。徴用のことを今おっしゃいましたけれども、ですからこれは日本の国が強引に連れてきたと、そうじゃない人もたくさんいると思いますけれども、強制的に連行してきた人たちがいるということはもちろん大臣はおわかりになっての御答弁でいらっしゃいますか、どうですか。
  32. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 朝鮮人の方の被爆者数については、先ほど申し上げましたように正確に把握できてはおりません。したがって、明確になっておらないわけでございますが、日本に徴用されかつ被爆された方が多数おられることはまことに重い意味を持っていると考えておるところであります。  なお、これらの方々のうち国内在住の方については、これまでも原爆二法に基づき医療の給付や諸手当の支給等の施策を講じてきたところでございます。
  33. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 大臣、申しわけありませんが、この方たちが被爆をした責任はだれにあるとお考えでしょうか。
  34. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 戦争によって朝鮮半島からこちらへ徴用をした結果こういう悲惨な事態に遭われたという意味で、戦争が原因だと思います。
  35. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 最後が聞こえなかったのですが。
  36. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 戦争でございます。
  37. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 戦争が責任なんですか。ということは、戦争をしていた国の責任だということでよろしいんですね、そういうことですね。いかがでしょうか。
  38. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) それは、戦争は国と国との戦いでございましたから、そういった戦争を遂行したという意味では国の責任があろうかと思います。
  39. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 広島では約三万人、長崎で一方から二万、合計四万から五万人もの朝鮮人の方が異郷の地で瞬時に命を奪われてしまったということです。この重みを、敗戦五十年という節目を迎えるに当たりまして、私はぜひいま一度問い直すことが必要だと考えますけれども、どうお考えになりますでしょうか。
  40. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 今回御審議いただいておりますこの新法を悲惨な原爆投下という事態から数えて五十年という節目に提出するのも、今先生がおっしゃったような意味があろうかと思っております。
  41. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 まあ物足りないんですが。  私の尊敬する画家で丸木位里、俊という原爆をかき続けてきた画家がおりますけれども、この絵の中に「からす」という絵がございます。私も何回も見まして、その都度深い感動とショックを受ける絵であります。  それは、長崎で被爆した朝鮮の方たちが亡きがらをほうっておかれた。日本人の亡きからは片づけられるんだけれども朝鮮の方たちの亡きがらはほうっておかれる、それにカラスが群がっていくという大変残酷な絵なんですけれども、朝鮮人被爆者の方は、今日までその生と死を問わず不当な差別に苦しんでこられたわけであります。そういう差別に苦しまれた歴史の上に現在の敗戦五十年があるということを思いますとき、私どもは今この被爆者援護法を審議している中で、やはりこういったアジアへの視点、私たちが苦しめ続けたために被爆をしなければならなかったこの四万とも五万とも言われる方たちへの視点をぜひ重く受けとめなければならないというふうに思います。  厚生大臣、この被爆者援護法制定を一つの契機に、これをスタートにぜひこの外国人被爆者問題、とりわけ旧植民地出身者である朝鮮人被爆者問題、この被爆者というのはもちろん被爆手帳を持っておられるいわゆる被爆者じゃなく、当時広島や長崎で居住しておられそして原爆の被害を受けた人たち全体のことを言っているんですけれども、この人たちのことを国として、国の責任で朝鮮人被爆者の実態調査、私冒頭に調査のことをお聞きいたしましたのはそういったことがあるんですけれども、ぜひその実態調査に取り組んでいただきたい。  もちろん日本人の方々の調査も、亡くなられた方が毎年のように八月十五日に名簿に追加されていくという事実は私もよく知っておりますのでその困難性は本当によくわかりますけれども、どんどん高齢化していく朝鮮人の方たち、関係者の方たちが御存命のうちに何とか聞き取り調査ぐらいはきちんと、日本の国に住んでおられるわけですから、もちろん在韓の被爆者の方々もたくさんおられますけれども、何とかきちんとした調査をしていただきたい、その取り組む姿勢を示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  42. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 被爆者の方々につきましては、先生御存じのように昭和四十年以来十年ごとに、国籍を問わず国内のすべての被爆者の方々の就学や所得等の生活状況あるいは健康状態等についての調査を行っております。来年はちょうど十年でございますからその調査をきちっとやろう、こう考えておるところでありまして、在日の朝鮮人の被爆者の皆さんについてもこの中に当然含まれると思っております。  在韓の被爆者の方々がいらっしゃることは私も承知をしておりますが、これは主権を有するそれぞれの国との関係もありますものですから、厚生省がすぐ韓国へ調査団を派遣するということはなかなか難しい、こう考えておりますが、もし外交ルートからの要請なんかあったとすればどのようなことができるかは検討していかなくちゃならぬ、こう思っております。
  43. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 第四十条に、「国は、原子爆弾の放射能に起因する身体的影響及びこれによる疾病の治療に係る調査研究の推進に努めなければならない。」という項が第一項にございますけれども、この中にぜひただいまの視点も入れていただきたいと私確認させていただいてよろしいでしょうか。ただいまの大臣の御答弁、そういう意味にとらせていただいてよろしゅうございますでしょうか。
  44. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 今、大臣が申し上げましたことは、来年予定されておりますいわゆる実態調査、昭和四十年代から十年置きにやってまいりました実態調査のことを御答弁されたと理解をしております。  この四十条につきましては、もちろん広い意味での調査及び研究でございますが、当面この中で具体的に想定をしておりますのは、財団法人放射線影響研究所におきます調査研究というものを法的に位置づけて、将来にわたります原爆被爆の影響というようなことを調査研究していこうというようなことでこの四十条というものを法律の中に入れさせていただいたわけでございます。
  45. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 医療的な部分を中心にということでありますけれども、さっき私が申しましたように附帯決議がつけられておりますから、ぜひそのような調査をきちんと進めていただきたいというふうに思います。  これは私、通告しておりませんのですが、もしおわかりだったら教えてください。その次の四十一条にあります「平和を祈念するための事業」、これは大臣、どのようなことを考えておられるのか。この文章だけではわからないんですけれども、何か案がおありでしたら教えていただきたいと思います。
  46. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 原爆死没者の慰霊施設なども一つ考えております。慰霊や平和祈念、国内外の情報の収集、あるいは国際協力、交流等による国際貢献といった事業を行えるんじゃないかということを検討してまいりたいと考えております。  広島、長崎には既に平和資料館というようなものがございますから、こうした施設と重複しないような、例えば国内外に散在する資料を総合的に把握できるような機能とか、死没者に関するさまざまな情報が検索できるような機能とか、あるいは国際協力のコーディネーターとしての機能を果たせるようにするとか、こういった国でなければできないような役割が果たせるように地元とも十分相談しながら進めていきたい、こう考えております。
  47. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 これは国の主管で原爆資料館みたいな、被爆資料館のようなそういうものをつくるとか、何かそういう事業を考えておられるわけですか。
  48. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) さようでございます。
  49. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 既に広島、長崎には平和記念館などの資料館はございますので、ただこうした施設と重複しないよう国においてこの施設を設置したいということでございます。  具体的には先ほどちょっと大臣からもお話ございましたような、国際的な機能も含めた国内外の資料を総合的に把握できるような機能というようなものも考えていきたいと思っております。
  50. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 平和祈念事業というと今私は冷やっとするわけですけれども、平和祈念館というものが百二十三億円の予算を計上され、しかも予算執行を二十数億円ですか、しながらとんざしているということで、これをどうなさるおつもりか。  きょうは時間がありませんから私はここで深入りいたしませんけれども、やはりこういった事業に対する国民の税金の使い方というものは本当に真剣にしていただきたい。いいものをつくられるならそれは私たちだって賛成いたしますし、国がきちんとした姿勢でこういった被爆者のために、あるいは資料が散逸しないようにとか、そういうものを国民の声を聞きつつ、私たちの声も聞きつつきちんと立案してくださるならばそれは何も反対はいたしませんけれども、前述のそういう祈念事業のようになってしまいますとやっぱりこじれにこじれてしまいますから、これは慎重にきちんと、何年かかってもいいから立派なものをつくっていただきたいというふうに思います。  きょうは私は、核兵器の究極的な廃絶と恒久平和の確立を全世界に訴えるためと、国の責任においてきちんとした、放射能に起因する健康被害を他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ、この法案が出され審議されているということを非常に重く見、そしてこのことに意義を感じて幾つか質問をさせていただきました。  来年は戦後五十年でございますから、私たちもどうかいろいろな問題できちんとアジアの方たちにも顔向けができるように、そしてそれがアジア外交のスタートの第一歩となれるようなそういう姿勢を示していただきたいと強く要望して、終わりたいと思います。
  51. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 先ほど先生から御質問いただいた帰国治療者の国別の数につきましてお答えができませんでしたので、ちょっとお答えをさせていただきたいと思います。  帰国治療者につきましては、平成五年度に北米ではアメリカから十名でございますが、南米ではブラジルが四名、アルゼンチンが一名でございます。六年度も同じ程度の方を予定しておりますが、なお、旅費につきましては予算の範囲内で支給をするという形でやらせていただいております。  それから、平和を祈念するための事業の慰霊等の施設でございますが、これにつきましては地元の自治体の方、それから被爆者団体の方々の御意見も聞きながら現在進めてきておるところでございます。
  52. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは質問をさせていただきますが、私は、つい二、三日前まで公明党・国民会議でございまして、党議拘束を受けないということでございました。これからお話しする最初のところは党議とは関係なく私の考えとして申し上げたいと思いますので、聞いていただきたいと存じます。  放射線被害というのを特に私が勉強いたしましたのは百十六国会、百十八国会ですか、当時野党として議員提案をしましたときの発議者の一人として私も名前を出させていただいておりまして、医学を担当したのが私でございます。そこで勉強してみまして、勉強すればするほどこれは大変なことであるということがよくわかりましたので、きょうはその辺を少し披露させていただいて、大臣の御見解も承りたいと思います。  私が一番一生懸命読んだ本の一つが、大阪大学名誉教授の近藤宗平という方の書かれた「人は放射線になぜ弱いか」という本でございます。その最初の扉を開きますと、寺田寅彦の言葉が載っております。「ものを怖がらな過ぎたり、怖がり過ぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることはなかなかむつかしい。」、こう寺田寅彦さんが言われたようでございまして、それが最初の扉のところに書いてあるんです。  放射線に対しても同じことが言えるのではないか。非常に怖がる人と大したことはないと言う人がある。正当に怖がるということが非常に難しいということでございますので、私は正当に怖がるかどうかの内容についてこれからお話ししたいと思っております。  そこで最初に、ここ二、三日の間に急に、米国の郵政公社が、第二次世界大戦勝利の記念切手というので、原爆のキノコ雲を図柄にした十枚のシリーズを来年発行する予定であると、そう新聞に出ておりました。  この記事を頼りに読んでみますと、まず図柄には「アトミック ボムズ ヘイスン ウオーズ エンド オーガスト 一九四五」と書いてあります。つまり、一九四五年八月、原子爆弾は戦争の終結を早めているという現在形で書いてあるわけですが、そういう理由で出しているわけです。これに対してアメリカの郵政公社は、「切手に取り上げる事象の選択は国防総省や国務省の歴史家と相談した。原爆使用という歴史的に重要な事件を外すのは怠慢のそしりを免れない」と、これは新聞記事でございますのでどこまでどうなのかわかりませんが、我が国の栗山駐米大使は米側に抗議を申し入れたということがこれも新聞に載っております。抗議を申し入れたというのは十二月三日の朝日新聞に載っておりました。「「切手の図柄は、唯一の被爆国である日本国民の感情を著しく傷つけるものだ」として米側の配慮を求めた。」と、こう書いてございます。  これは新聞記事でございますので、どんなふうにこのことが申し入れられたのか、外務省に来ていただいておると思いますが、内容についてお知らせ願いたいと思います。
  53. 齋木昭隆

    ○説明員(齋木昭隆君) 申しわけございません。ちょっと関係の者が今……。
  54. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それじゃ、担当者が見えてからこの話を伺うことにいたしましょう。  それでも全く別にしてしまうと困るものですから、少し継続をさせていただきたいと思います。  これはせっかくですから、厚生省あるいは大臣はどういうふうに受け取られるかと思うんです。日本国民の感情を著しく傷つけた、非常に抽象的な話なんで、日本国民の感情のどこを、どんな部分を傷つけたということになるのか、どういうふうにお考えになるでしょうか。
  55. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 実はこの問題、衆議院の厚生委員会の最後の方でも問題となったところであります。アメリカ郵政公社の原爆切手の発行については、唯一の被爆国であります我が国の国民感情をまさに逆なでするような問題でありまして、その取り扱いにつきましては、被爆者対策を行っております私としましても大変重大な関心を持っておるものであります。投下されたことは事実かもしれませんが、これが正当化されるようなものであっては私はならないと思っております。  実は、きょうの閣議後の閣僚懇談会でも、厚生委員会で大変大勢の委員の先生方からこの問題が指摘されたり御論議をいただいておる、きょうの参議院の委員会でも恐らく出ると思うが、外務大臣ひとつ強い姿勢で当たっていただきたいと、こんなお願いをしたところであります。  今、外務省も見えたようでありますが、新聞報道によりますと、外務省からアメリカ政府に申し入れをしておるとのことでございますから、厚生省といたしましてはその結果を注目しておるところでございます。
  56. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 大臣に外務省にかわっていただいて恐縮でございました。  では、外務省の担当者がそろったようでございますから、十二月三日の朝日新聞によりますと、私が切り抜いているのはそうですが、「栗山尚一駐米大使は二日、米国務省のロード次官補(太平洋アジア担当)らと会い、「切手の図柄は、唯一の被爆国である日本国民の感情を著しく傷つけるものだ」として米側の配慮を求めた。」、これは新聞報道でありますけれども、どんなふうに申し入れたのか承りたいと思います。
  57. 高野紀元

    ○説明員(高野紀元君) 政府は、明年、米国政府が、具体的には米国の郵便公社でございますが、原爆投下の記念切手を発行するという情報を得て以来、その事実関係の把握に努めますとともに、本件は我が国の国民の感情を傷つけるものである、そういう問題になり得るという認識のもとで、外交ルート、在米大使館を通じまして米国政府に申し入れるべく訓令を発出したわけでございます。  これを踏まえまして二日の午後に、今委員の方から御指摘がありました当吏栗山駐米大使は、国務省のロード国務次官補に対しまして本件についての日本国民の強い感情を伝えるとともに、我が方としては本件の成り行きに重大な関心を有しているということを伝えた次第でございます。  なお、これと同時に国務省からの説明を種々受けていたわけでございますけれども、その中で米国務省は、上記の記念切手発行情報を国務省として得て以来、本件の重大性を認識の上、国務省から米郵便公社に対して申し入れを行うなど、独自に対応策を検討中であったという事情も判明いたしました。  現在はそういう状況でございますので、政府として当面、米政府内部で行われている検討の結果を注目しているという状況でございます。
  58. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 今、大臣にもそこを伺ったところなんですが、日本国民の感情を著しく害したと、極めてあいまいな、内容が漠然とした言葉でありますが、日本国民の感情のどこを傷つけたのか、どういう点を怒っているんでしょうか、ちょっとそのポイントを教えていただきたい。
  59. 高野紀元

    ○説明員(高野紀元君) 我が方として、原爆投下そのものにつきましては、これが老幼婦女子など多数を含む広い範囲にその害が及ぶ人道上極めて遺憾な事態を生じせしめたというもので、どのような理由にせよ我が国の国民感情としてはこれを是認し得るものではないと。こういう唯一の被爆国としての立場、強い国民感情が存在しているということについては、これまでも折に触れまして米国を含めましてこれを伝えてきているわけでございます。そういう基本的な考え方、立場を踏まえて米側に今回の申し入れをしたわけでございます。
  60. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 もう一つ、米国郵政公社は、国防総省や国務省の歴史家と相談をしたときに、原爆使用という歴史的に重要な事件を外すのは一これはアメリカの考え方ですから聞いているんですが、外務省が代弁できるかどうか知りませんが、怠慢のそしりを免れないと説明していると。この歴史的に重要な事件という、歴史的に重要という意味は何を言っているんでしょうね。原爆そのものの被害を言っているのか、それとも原爆を落としたということを言っているのか、初めて落としたということを言っているのか。そこの歴史的重大という意味が私ははっきりしないんですよ。いかがでしょうか。
  61. 高野紀元

    ○説明員(高野紀元君) 今回の問題に関連いたしまして米国の郵便公社の方の説明によりますと、第二次世界犬戦史の中で原爆の投下は重要な史実であると考えているという趣旨の説明があったことは承知しておりますけれども、その詳細についてはそれ以上私どもとして承知しておりません。
  62. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 承知していないで抗議を申し込むという手はないと思うんですね。分析をしていただいているはずだと思うんです。分析をした結果のお話を承りたい。
  63. 高野紀元

    ○説明員(高野紀元君) 私どもといたしまして、今回の切手の発行全体について今も種々調査をしておりますけれども、今回の切手発行の事実は、一九九一年から五カ年間にわたって毎年十枚、十種類ずつの第二次世界大戦の重要な出来事について合計五カ年間にわたって発行していくという計画の中の一環というふうに理解しております。そういう中における位置づけというふうに理解しておりますが、その詳細について日本政府として申し上げることは差し控えたい、こういうふうに考えております。
  64. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 いや、差し控えたいとおっしゃったって、非常に抽象的な言葉で抗議を申し入れても相手は抽象的な言葉で返してくるだけでありますから、ここが悪いんだと言ったら、それに対して悪くないなら悪くないという反論があるだろうと私は思うんです。ですからその点で、きょうは本当は私の質問のほとんど全部がここなんですけれども、原爆二法、何とかいいものをつくってと思っているわけですが、原爆というのはいかなるものか、さっき申し上げましたが、正当に怖がる必要があるということでありますので、ですからよく確かめてみる必要があると思うんです。  歴史的重大事件というのは、原爆という大量殺りく兵器を使ったからか、あるいは最初に日本に落としたからかというこの辺がなと思うんですが、大量殺りくというのは、原爆でなくても大型爆弾を一千個一遍に落とせば同じような被害は起きるわけだ。したがいまして、大量殺りく兵器を使ったということの意味は一発であったか千発であったかの違いなわけです。ですから、ほとんど意味がないだろうと思うんです。  ただ一つ、非常に高温であって、爆心地から二百五十メーター離れたところの銀行の石段に腰かけていた人が一遍に蒸発をした、影だけが残った、これは人影の石として展示されています。こういう今まで見たこともないすごい兵器であると、これを使ったということなのか。そうしたら、歴史的重大な事件というのは何なんだと。人類に対する犯罪ではなかったのかと、私はそれを言おうと思ったんです。これだけじゃないんです。一発の威力で物を言っているんじゃないんです。後でお話をゆっくりいたしますから、遺伝的影響がどういうものかということを正当に怖がっていただきたい、こういうことであります。  ですから、我が国民の感情を傷つけたというような言葉は何となくみんながそう思うでしょう、どこの感情なんだと。一遍に一発で十万人が死んだということかと。しかし、三月十日の東京大空襲でも同じように十万人死んでいるんですよ。何にも広島だけが十万人だというのじゃないんだから。長崎だけが十万人じゃないんです。そうすると、日本人の国民感情というのは何だと。放射能による遺伝子障害が長崎、広島の人及びそこにおられた方々、例えばさっき朝鮮の方が五万人もいると言われた。したがって、日本国民だけではないはずです、これは。したがってそういう遺伝子が、少なくとも日本人の中にたくさんの遺伝子異常が今受け継がれようとしているということを言わなきゃいけないわけだ。それが国民の感情だというんであれば、私は一〇〇%そうだと思います。  しかし、大量殺りく兵器を使った、日本で初めて落とした、それが国民感情というんなら戦争なんかできませんよ、戦争をやっているからには新しい兵器が使われるんだから。それごとに、これは新しい兵器だ、国民感情だと言っていたら戦争なんかできませんよ。昔のように、旗を掲げて行って、やあやあ遠からん者は音にも聞けと、そういうふうな試合をするんであれば話は違う。それはもう戦争なんですから。  ですから、そこで今問題にしているのは、外務省の申し入れられた米側の配慮を求めたとは何かと。私はもう結論を申し上げれば、原爆攻撃は人類に対する犯罪だと告発をしなければいけないんじゃないかと。殊に米国が、「アトミックボムズヘイスンウオーズエンドオーガスト一九四五」、得意になっているのかと。これは放射線の被害というものを本当に知って言っているんだろうか。大量殺りくのところだけが問題になっているのではないか。私はだからさっき言ったように、それは原爆一発と旧来の大型爆弾一千発と同じであれば、ただ一遍でいったか一千発でいったかだけの話であるということであります。私は結論を先に申し上げてしまいましたが、原爆攻撃というのは人類に対する重大な犯罪であるということなんです。これからお話しいたします。  一九八二年、W・L・ラッセルという人が数百万匹のマウスを使って十年余にわたった実験を行った。これが先ほど申し上げた近藤宗平さんの著書に詳しく書いてあるんです。  近藤宗平さんという人は、京都大学理学部を出て、国立遺伝研を通って、そして大阪大学の医学部放射線基礎医学講座ができたときの教授であります。非常にすぐれた放射線基礎医学の学問の大家でございます。このお方は、国際環境変異原・がん原防護委員会委員、日米原爆放射線線量再評価委員会委員というのを歴任しておられます。現在は阪大の名誉教授で、近畿大学原子力研究所教授である。このお方が、この本に繰り返し繰り返し引いておられる言葉を申し上げたいと思うんです。  今申し上げましたように、数百万匹のマウスを十余年間使ったということは、三年で一代といたしますと、少なくとも三代以上にわたって実験をしてきた。なぜ三代か。遺伝子です。遺伝子を必要としなかったら三代も四代もやることはない。ですから、遺伝子障害がどうなっていったのかということをこのラッセルという人は大実験をやっているわけです。数百万匹のマウス、十年以上と言葉では言いますけれども、大変なものですよ。ですから、この大実験を私たちは拳々服膺しなければならないんじゃないか、こう思います。  ラッセルさんは、結論を引きますと、どんな微量の放射線であっても性細胞に被曝をいたしますと、子孫に突然変異が増加いたしまして人間に危険であるというこの結果は国際合意に達したことであります。同じ本の中にこの言葉が何遍も出てくるんです、何遍出てきてもやっぱり読み直すわけだ。どんな微量の放射線でも性細胞に被曝をいたしますと、つまり性細胞に刻印をされると放射線によってDNAに障害が起きます、それは子孫に突然変異を増加させることになる、これは人間にとって将来が極めて危険であることを示している、これは国際合意に達していたんですと何遍も出てきますから、二度くらい申し上げておいた方がいいと思って今申し上げたのであります。  しかも、人類の遺伝子プールに一遍入りますと簡単には排除できないということなんです。つまり、蓄積をする一方である。だから、私はチェルノブイリと広島、長崎は同じだと思うんです。あの大事故が起きて、チェルノブイリのときの放射能ちりは地球を駆け回ったわけだ。日本にだって数週間後に来ているんです。あのころ、新聞紙がなんか頭につけて、雨が降るとこんなふうにして逃げているようなのが新聞にも出ていました。間違いなく来たんです。ですから、放射能ちりは世界を駆けめぐるわけだ。広島も長崎も同じだと思います。  したがって、原爆攻撃をしたということは、広島、長崎を攻撃しただけではない、人類の遺伝子に影響を与えるような攻撃をしたんだということを私は改めて申し上げたいわけです。一遍遺伝子プールに入ると排除されないということです。その人が子孫をつくらないという決意をしなければずっと続いていく。それが一が二になり、二が四になりというふうに次々といくわけだ。疫学的調査で出ていないではないかという意見がございますが、これは統計を知らない人が言っていることですよ。そんなに目の前で三世に突然、間違いなく遺伝子障害によって起きた奇形児であるなんというのが出るわけないんだから。それは、そういうのが蓄積をされて蓄積をされて、そして一万人に何人とかというふうに出るわけです。  しかも、この本の中に言われていることは、放射線による遺伝子障害も自然に起きた遺伝子障害というか奇形も、外見的にこれを区別することはできない。だから、もう起きてしまえば同じだということです。  しかし、おもしろいんですね。私も読んで何となく、にっこり笑うわけにはいきませんでしたが、なるほどと思ったんですが、生命のからくりというものは非常におもしろいんですね。マウスの雄の精子をつくる精原細胞、精子をつくる細胞にごく微量の放射線障害が起きても、つまり精子をつくるもとの細胞に一遍傷がつきますと、精子は全部常にその鋳型をもらっていくわけだ。だから、雄の精子はその雄が絶滅しない限り子孫にどんどん遺伝子は受け継がれていくということであります。そこへ別な遺伝子が入ってくるとその危険率は高まっていくというわけであります。  ところが雌の方、これはまた不思議なんですね。卵母細胞、つまり卵子をつくる卵母細胞が微量な放射線障害を受けてもこれは修復をしてしまう、修復能力がある。これは、ですから同じ性細胞の遺伝子障害も、雄を通してはずっといくけれども雌を通してはいかないんだね。やっぱり動物の世界でも雌は強い。人間ですぐ申し上げるわけにはいきませんが、雌は強い。だから、生命というものは不思議だなと。やっぱり子孫を残すために母性は長生きであるというのは、これは人間でございましたが、いや動物でもそういうのが多いですね。ですから、雌の方がやっぱり種族保存に非常に重要だからそういう能力があるんですね。  ただ、それじゃ雌は、今私が申し上げているのはマウスの実験でございますけれども、雌は、レントゲンだとかそういう医療用に使っているような強力なものを一挙に短時間に集中的にやるとやっぱり遺伝子障害が起きる、これは起きる。だから、さっき申し上げた原爆のようなあるいは原発事故のようなそういう放射能ちりが出ていったときに、ごく微量な放射線があったときにどうだと。一見だれも何もない。しかし雄の場合には、その微量放射線が性細胞を傷つけると、永遠に人類の遺伝子プールの中へ蓄積をされていって、やがて何年か後に人類には異常な奇形が生まれる確率が高くなるんですよと、こういうことです。  ですから、私が今申し上げているのは、新聞に出ておったのをあえてけちつけたわけじゃなくて、表現が余りにあいまいだから、私は大変あいまい過ぎると思うんです。だから、こういうのはサイエンスですからきっちりサイエンティフィックにあらわさなければいけない。日本国民の感情とは何だ。遺伝子を傷害するということだというんであればわかります。大量殺りくならば、さっき申し上げた理由になるのだろうか。そして、原爆戦争終結の手段として役に立ったではないかと。確かに役に立ったかもしれないですね。  今、ちょうど朝のドラマでやっていますね。新型爆弾が投下されたなんというのがちょうど今出ていますけれども、新型爆弾というのは大量殺りくということがメーンでございまして、大体原爆が落ちる前に日本はもう何かポツダム宣言受諾の下交渉に入っていたという話でしたね、たしか。ですから、早めたのかどうか。しかし、早めたことの効果がもしあったとしても、そのもっと大きな被害、つまり人類の遺伝子を傷害した、その傷害した遺伝子が永遠にプールに入っていくんですよということをアメリカは知らないのかと、これを私は言いたいと思うんです。  いっどこだったか忘れたんですが、広島だったか東京だったか、放射能被害のシンポジウムみたいなのがありまして、チェルノブイリの女性だったと思うんですが来ていて、こう言ったんです。二世、三世にすぐ出てこないではないかという話があったんですね。そうしたら、例えばチェルノブイリの女性と広島の男性が結婚したら一挙にその確率が上がるんじゃありませんかと、こう言いました。国際化の中では当然の話でありますから、日本国の国民だけに限られて、日本国だけが戦争の被害を国民ひとしく受忍せよというんであればこれはまた話は別でありますけれども、第二次世界大戦の終結を早めたという考え方には、その裏の犯罪がどうなるんだと、これを私は告発すべきだと思っています。  ということで、マウスから出発をいたしましたが、ラッセルという人の実験でございます。  大臣、この辺でひとつ、厚生省を代表なさらなくてもいいんです、大臣個人のお考えでも結構です、この話は初めてお聞きになったかもしれませんので、いかがお考えでしょうか。
  65. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 先生のお話、今大変興味深くお聞きをしておったわけでございます。特に、近藤教授の御著書の最初の、寺田寅彦さんの正当に怖がることは難しいという一節の御引用、正当に怖がる必要があると。放射能につきまして先生の見解を今、興味深くと言っちゃ大変失礼でございますが、感慨を持ってお聞きかせいただきました。  それで、先ほどちょっと申し上げましたが、私はキノコ雲切手につきましては、原爆投下ということは事実であったと思いますが、その事実がこういうことによって正当化されることにむしろ我々被爆国の日本人としては怒りを覚えるというふうに考えております。
  66. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 御承知のように、放射線障害は身体的影響と遺伝的影響がある。今、遺伝的影響のことに少し力点を置いてお話をさせていただきました。身体的障害には早期効果、つまり即時に第一次障害というのがばんと起きるわけですが、晩発効果というのもあるわけです。これは、場合によると十年、三十年という潜伐期を経て白血病になるとか、あるいは白内障、発育障害というふうないろんな症状が出てまいります。  したがいまして遺伝子障害というのは、今五十年たったわけで、その二世、三世というとどれくらい生まれているのか。それから、それの調査ということはプライバシーもありますので非常に難しいだろうと思うんです。しかも、何か突然変異が起きたときに、それが原爆障害なのか、それとも自然に今まであったのと同じようなものなのかというのが区別がつかないというお話も申し上げておりますからこれは非常に難しいことだろうと思うんですが、その中で特に際立っていることがございます。  小頭症というのがありますね。これは胎内被曝でありまして、一般的には妊娠十七週間以前に障害を受けると小頭症が起きる。頭蓋の周囲が四十八センチ以下というふうになっていたようですね。ですから、知恵おくれ、運動障害、いろんなのがあって大変な症状だと思います。  放射線というのは非常に未熟な細胞あるいは分裂をどんどんしているような若い細胞、こういったもの、それから分裂をして成長していく過程の長い器官ほど障害が大きい。したがって、胎児十七週以下ぐらいだと非常に分裂が速いわけだ、どんどん大きくなっていきますから。そのときの障害が大きいので、しかも大脳というやや長くかけて大きくなっていくもの、こういったものに対する障害が大きいので小頭症ができてきたということであります。この小頭症というのは、年次別にもしおわかりになったら、被爆後どういう経過で、何人ずつ今手当をもらっておられるのか、厚生省に承りたい。
  67. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 小頭症の方に対します手当の支給というのは昭和五十三年から実施をしております。昭和五十三年にはこの原爆小頭症手当の支給数は二十二名でございましたけれども、その後五十五年に一名、五十八年に一名、六十三年に二名を新たに認定をいたしまして、二十六名の方が認定をされております。その後一名の方が亡くなられまして、現在、平成五年度末でございますけれども、把握しております数は二十五名でございます。
  68. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 昭和五十三年からですか。それまでは知っていたんですか、どうなっていたんでしょうね。随分時間がたってますね、昭和二十年被爆なわけだから。
  69. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 小頭症手当というものを新たに設置いたしましたのは昭和五十三年でございますので、それまでの年次別の数は詳細には把握をしておりません。
  70. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 いや、私うっかりしてましたけれども、昭和五十三年というのは随分反応がゆっくりでしたね。だから、我が国が原爆被害に対して真剣に取り組んだんだろうかなと改めて今思ったんです。  しかし、ABCCなどが広島にもできて、今は放射線影響研究所に変わってずっとやっておられるわけでありますが、統計的に出たか出ないかばかり言っているんじゃだめなのでありまして、明らかに小頭症というのは今二十六例起きている。昭和五十三年、随分遅いんだなと思っているところであります。  しかし、明らかに胎児に胎内被害がはっきりあらわれた、それは十七週以前でありまして、十八週以後はそこを境目にして全くゼロではないんです。率は変わりますがやっぱり起こり得るということでありますが、十七週以前であったかどうかというのはさかのぼって、何月に生まれたのかということで八月にさかのぼればわかりますか。いや、数字わからなきゃわかるだけでもいいですけれどもね。
  71. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 原爆医療審議会の中での資料としてはこれらの方の生年月日というのは把握されておりますので、そういう意味では、今先生がおっしゃったことは生年月日からはある程度把握できるだろうと思います。
  72. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 原爆の無差別投下は国際法違反であると先ほど竹村さんもおっしゃっておられて、高裁の判決ですか、何か出たというお話を聞いておりました。私は素人でありますが、確かに原爆投下を今までの国際法に当てはめてみると、無防備都市を攻撃してはいけないとか、無差別で攻撃してはいけないとか、一九二五年には毒ガスあるいは細菌兵器を使ってはいけないというふうなことになっております。しかし、原爆は今までの国際法に禁止しているようなこれに比較しても、それこそ格段に違う威力と被害があるということであります。  つまり私を言うのは、何としても問題になるのは放射線障害ではないか。こういう意味で、原爆の投下というのは国際法違反なんだしその内容においてもはっきりしているわけですから、私は再度申し上げるとすれば、なぜ告発をしないのかと言いたいです。  だから、外務省の抗議というのはもう少し科学的なデータに基づいて、国民感情を逆なでしたような話ではどうしようもないと思うんです。逆なでされて気持ちがいいという人がいるかもしれない、そんなのわかりませんからね。そんな言葉では国際語としては通用しないと僕は思うんです。これからは何でも国際語として通用する言葉を使って、あるいは内容を使っていかなきゃいけない。  日本人が国際性があるとかないとか言われるのは、非常にあいまいな表現をするからだろうと思うんです。イエス・ノーがはっきりしない。今度、大江健三郎さんが「あいまいな日本の私」というのでお話をなさる。私は大変そうだと思うんですよ。日本人はあいまいですよ。科学の世界でさえもそう思う。  ですから、そのあいまいさではなくて、今度ははっきりしてもらいたいし、外務省にもう一度伺うと、抗議を申し入れたときには文書じゃないですね。文書であればそれを見せてもらいたいと思いますけれども。
  73. 高野紀元

    ○説明員(高野紀元君) 先ほどの栗山大使からの申し入れは口頭によるものでございます。
  74. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 今、急に思いついたんですが、口頭であるということは証拠が残らないんですか、どうなんでしょうね。
  75. 高野紀元

    ○説明員(高野紀元君) このような申し入れを行うに当たりまして、それぞれの側が会談の記録等をとるのが通常でございます。
  76. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 記録といっても、聞かなかったとか記憶にございませんとかいろいろと表現があるようでありますから、本来は文書が必要がな。これは重要な話じゃないかと私は思う人です。  これはさっき申し上げましたが、私個人の主張でございますけれども、国際法違反である、それから遺伝子障害を引き起こしているということで原爆攻撃は人類に対する犯罪であるということを申し上げて、次の国家補償というところに入りたいと思います。  国家補償の概念というのは、どういうことについて使われていたんでしょうか。
  77. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 一般的に国家補償というのは、いわゆる多義語、幾つかの意味があると、そういうことから先生の御質問がと思いますが、一つは、国や公務員の行った不法行為に対する損害賠償責任をあらわすもの。それから、国の行為は適法ではございますが、相手方に対して損失を生ぜしめたということに対する損失補償。それから三番目といたしまして、国と一定の身分関係にあった者に対して使用者が果たすべき責任として行う、いわゆる使用者として行う補償。それから、原因行為の違法性等にかかわりなく国が行う結果責任に基づく補償。そういったような用いられる文脈に応じてそれぞれの概念を示す、指す場合があるというふうに考えております。
  78. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 これは来年被爆五十周年を前にして、私もさっき申し上げましたように、社会党その他の方々とともども援護法の設立に取り組んできたという今までの私たちの仕事がありました。この国家補償というのは私たちが議員提案をしたときにも非常に重要なポイントであったんです。ところが、それが今度の政府案には入っていないということはどういうことでしょうか。
  79. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 今、局長から御答弁申し上げましたように、国家補償というのはいろんな意味で使われる用語でございます。  そこで、政府案に国家補償という文言を使わなかったゆえんでございますが、国家補償という用語につきましては、概念が今申し上げましたようにいろんな意味に使われるという意味では確立した定義がないわけでございまして、被爆者に対する給付を内容とする新法におきましてこの表現を用いますと、国の戦争責任に基づく補償を意味するものと受け取られる可能性が強いわけであります。そしてまた、そうなりますと、被爆者に対して国の戦争責任を認めるのであれば、一般戦災者との均衡上の問題が生じるわけでございます。そんなような理由を考慮いたしまして、今回の新法に国家補償という言葉を使わなかったわけであります。
  80. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 そうすると、国家補償しないとなると、それを耐え忍ぶのは国民みずからである。つまり戦争受忍論というんですか、戦争被害受忍論をお認めになるということになりますか。
  81. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 今おっしゃいました問題につきましては、昭和五十五年の基本懇の答申の中でも戦争についての考え方が示されているわけでございまして、今次の戦争において「すべての国民がその生命・身体・財産等について多かれ少なかれ、何らかの犠牲を余儀なくされた」と、これは大変重いものと認識をしているところでございますが、こうした犠牲については基本的には国民一人一人の立場で受けとめていただくほかはないんではないかというふうに考えているわけでございます。  ただ、原爆の被害ということにつきましてはこの基本懇の中にもございますように、「例をみない特異かつ深刻なものである」ということ、そして「他の一般の戦争損害とは一線を画すべき特殊性を有する「特別の犠牲」である」ということから、従来、原爆二法によります対策を講じてきたところでございます。
  82. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 やっぱり原爆の特殊性というのが出てきたわけですが、先ほどの私が主張する特殊性は、遺伝子障害が一番ポイントであると申し上げたわけです。  戦争被害というのはだれの責任だというときに、戦争というのは国と国との間で行われたものでありまして、国民が何人か集まって戦争したわけじゃない。これははっきりしているわけです。したがいまして、その戦争によって起きたものは原則的に言えば国家が、つまり戦争を開始した当事者である国家の責任である。これは、さっき大臣がたしかそういうふうに答弁というか、お考えを述べられたと思いますけれども、だれの責任かというときに、国であるということだと思うんです。  それから、国家補償の概念というので三つか四つか今述べられたわけですが、例えば国の不法行為があったのかとか、その損害補償だとか、あるいは国が適法に行ったけれども損失が引き起こされたということがあったと。もう一つは、適法、違法とは関係なく国家作用によって被害が起きた場合これを救済する、つまり結果責任ということが最後に述べられた。少なくとも結果責任というのはあるのではないか。  結果責任についてはどう思われますか。認めておられるんでしょうね。
  83. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 先ほども竹村先生の御質問のときにちょっと触れましたが、戦争が国の行為であり、原爆投下により被爆者のこうむった損失は国の行為たる戦争に起因するものであると私は思います。  しかしながら、戦争という国の存亡をかけた非常事態での行為につきましては、法律論としての国の不法行為責任があると言うことはできないと考えますが、先生おっしゃいます結果責任に基づく補償という意味では基本懇でも述べているところだと思います。
  84. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 一方では軍人軍属等、国と契約、契約なんてしないと思うんだけれども、動員をされてやむを得ずだったんではないかと思いますが、国との間にちゃんとした契約があって受けた被害は国家補償をする。しかし、今のお話からいっても、全く国家総動員下における、国民はどんなことでも我慢しなさい、自分の被害だと思えという戦争被害受忍論なのか。ということは、戦争肯定論にもつながるわけでありますね。  そういう意味で、やはり結果責任と思われるんであればこれは国家補償というのが出てこなければいけないんじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  85. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) これは先ほどもちょっと申し上げ、また大臣からもお話をさせていただきましたが、基本問題懇談会におきましても広い意味での国家補償の見地から対策を講ずべきであるということは言われているわけでございます。  ただ、国家補償という言葉そのものは多義語であるということから、この法文の中に簡潔にこれを表現するということは事実上難しいわけでございまして、そういう意味から今回の私どもが御提案をさせていただきます新法に国家補償という言葉を盛り込むことは適当ではないというふうに考えたわけでございます。この法案そのものが被爆者に対する給付を内容とするという意味におきまして、他の一般戦災者との均衡ということも勘案をして国家補償という言葉はこの法案の中では使わなかったわけでございます。
  86. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 原爆二法というのがずっと今まであったわけで、この二法では足りないから改正案というか新しい案が出てきたわけでありますね。だから、原爆二法のどの点が不備なのであるか、その不備なところをちょっと教えてもらいたい。
  87. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 現行の原爆医療法あるいは特別措置法によりまして被爆者の方々の保健、医療、福祉について年々充実した対策をやってきたつもりでございます。ただ、戦後五十年の節目を迎えるに当たりまして、改めて恒久平和あるいは核兵器の廃絶といったような基本的な考え方を前文の中に盛り込み、かつ被爆者対策を総合的にやっていくということから、国の責任においてこれを実施していくということを前文に明らかにしたわけでございます。  また、あわせまして具体的な施策として、高齢化が進んでおります被爆者の方に対する保健、医療、福祉それぞれの対策を個別にやるというよりは総合化をする、また従来予算措置でやってまいりました福祉関係の施策を法定化する、また調査研究の事業につきましても法定化してより安定したものにするというようなことから今回の新法を提案させていただいたわけでございます。  そういう意味で、現行の二法をさらに充実発展させたものが現在提案をさせていただいております新法であるというふうに理解をしております。
  88. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは、原爆二法に対応してですが、諸外国の戦争犠牲者に対する対策、特に第二次大戦の敗戦国であるドイツ、イタリア、それから戦勝国である英、米、仏あたりの戦争犠牲者に対する対策がどうなっているかを外務省に伺いたいと思います。
  89. 齋木昭隆

    ○説明員(齋木昭隆君) お答えいたします。  ドイツでございますけれども、ドイツにつきましては、戦争の被害や追放による被害で物的な損害を受けた者に対する法律、これは一九五二年の負担調整法という法律がございますけれども、こういう法律によって一般的な戦争中の損害に対する補償措置といったものが定められております。  ドイツの場合には、こういった一般的な戦時の損害のほかに、ナチスの迫害という特別な行為によって生じた不正について国内法で次のような措置が講ぜられるというふうに承知しております。一つは、一九五六年の連邦補償法という法律でございますが、この法律によって、対象者の国籍にかかわらずかつてドイツの領域の中に居住しておったナチスによって被害を受けた者に対する補償の実施でございます。それからもう一つは、一九五七年の連邦返還法という法律がございますが、この法律に基づきまして強制収用された財産の補償を実施しているという状況にございます。これが国内法に基づく措置でございます。  それから、戦争によって相手方に被害を与えたということで幾つかの補償協定を結んでおります。例えばイスラエルとの補償協定、これは一九五二年に結ばれておりますけれども、この補償協定に従って相当額の補償が行われております。それから、西ヨーロッパ十二カ国を相手とする補償協定、これは一九五九年から六四年にかけてそれぞれ結ばれましたけれども、この協定に基づく補償といったものもなされております。さらに、東ヨーロッパの四カ国との補償協定も一九六一年から七二年にかけて締結されて、この協定に基づく措置といったものが講ぜられております。また、ポーランドでございますけれども、ポーランドとの関係ではナチスの迫害による犠牲者に対してドイツ・ポーランド和解基金というものを設置いたしまして、この基金に基づいて相当額の措置を講じております。以上が第三国との補償協定でございます。  さらに、国際機関との協定に基づく措置というのもございまして、これはUNHCR、国連の高等難民弁務官事務所でございますけれども、ここに対する拠出といったものを一九六〇年から八〇年にかけて相当額行っております。以上御説明いたしましたのがドイツにおける補償の概要でございます。  イタリアでございますけれども、イタリアは戦争の後、一九四七年にバリの平和条約といったものを戦勝国との間で結びまして、その条約の第十四附属書というものがございます。第十四附属書の中で、イタリアの旧植民地だった国々が新しく独立国として誕生しておるわけでございますけれども一例えばソマリア、エリトリア、リビアといった国でございますが、こういった国々の文官、軍人の恩給支給に責任を負うということになりまして、この条約に基づく国内の法令といったものが整備されまして、自分の国、イタリア国民に加えてもとの植民地であったイタリアの軍人軍属として死傷した者及びその遺族に対する年金の支払い等による補償を実施してきているものというふうに把握しております。  一方、戦勝国側でありました英国、フランス等でございますけれども、それぞれ国内法令がございまして、旧植民地の住民を含む軍人軍属の傷病者、戦死者及びその家族に対して恩給や年金といったものが支給されてきているものと把握しております。
  90. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 ちょっと私聞き漏らしたんですが、イタリアは市民や死亡者に対しても軍人等と同じく戦争傷病者年金とか財産補償をしているんですか、市民にも。
  91. 齋木昭隆

    ○説明員(齋木昭隆君) そうでございます。法令によって、自分の国の国民以外にも被害を受けた軍人軍属及び家族に対して補償しております。
  92. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 いや、私が聞いているのは、一般の市民のこともあるんじゃないかと申し上げたので、私が聞いている限りでは、一般市民も軍人軍属と同じように補償をしているというふうに聞いているんですが、それでいいですか。
  93. 齋木昭隆

    ○説明員(齋木昭隆君) イタリアはイタリアの旧植民地、先ほど申し上げましたけれども、ソマリア、エリトリア、リビア、こういった旧植民地の継承国国民の文官それから軍人、こういった者に対する恩給の支払いに引き続いて責任を負うと、そういう協定がございます。
  94. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 やっぱりここで指摘しておかなければならないのは、軍人軍属というと日本も同じわけでございますけれども、一般市民というところが大変大事なポイントで、今度の被爆者援護法については一般市民がほとんど大部分でありますから、その意味で今参考意見を聞いたわけでありますが、西欧の方では一般市民も含んで補償をするということがあるように私は聞きました。  したがいまして、原爆二法の不備を新しく直す、訂正するということであれば、やはり国家補償ということが言葉として出なければならないのではないか。広い意味でというふうに厚生省側の説明がございましたが、広い意味ではそうであるが狭い意味ではそうでないというんじゃこれは世界に通用しませんよ。広い意味でそうであったら狭い意味だってそれは指しているわけだ。やっぱり言葉というのは、前文で書いてきたのが後文でひっくり返っているんじゃどうしようもないですよ。広い意味で国家補償なのなら狭い意味でも国家補償なんだよ、それは。そうでなきゃおかしいですよ。ですから、そういう言葉の使い方をしっかりしてもらわないと、日本は国際社会の一員として暮らしていかれない。日本人はあいまいだ、大江健三郎さんにばっちり言ってもらわないといけない、こう思います。  そこで、またあいまいな言葉になりますが、国家責任において補償をするというのが案に出ているわけですが、国の法律で国家が責任を負わなくてもいいというのはあるんでしょうか。自治体だって同じだと思うんですよ。そこで法律をつくったら、それはその自治体が責任を持つ。国の法律で国の責任においてというんであったら、それはやっぱり責任のない法律なんというのはないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  95. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 今回の新法は、再三申し上げておりますように、被爆後五十年のときを迎えるに当たりまして、高齢化の進行など被爆者の皆さんを取り巻く環境の変化を踏まえまして、現行の被爆者対策を一層充実発展させ、保健、医療及び福祉にわたる総合的な対策を講じようとしているものでございます。  新法において「国の責任においてこという表現を特に盛り込むのは、こうした制定の趣旨を踏まえ、被爆者対策に関する事業の実施主体としての国の役割を明確にし、原爆放射能というほかの戦争被害とは異なる特殊の被害に関し、被爆者の方々の実情に即応した施策を講ずるという国の姿勢を新法全体を通じる基本原則として明らかにしたものであります。
  96. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 どうもきょうは言葉じりをとらえて申し上げるようで申しわけありませんけれども、「国の責任においてこというのをわざわざ入れたのは、入れなくても国の責任はあるわけでしょう、国の責任のない法律があるならそれを承りたいと思います。
  97. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 今、大臣からもお答えをいたしましたけれども、今回の法律案の中では特に前文というものを設けて、その中で核兵器の究極的な廃絶あるいは恒久の平和の念願という考え方とあわせて、被爆者対策について国の責任において実施をするという考え方を明確にしたわけでございます。そういう意味で、被爆者対策を通じる国の姿勢というものを改めてこの前文の中で明らかにしたという意味において私どもとしては意義がある、意味のあることだというふうに考えております。  そういったような考え方を踏まえて新法においては、現行の二法を一本化して医療、手当等の援護の施策を総合的な位置づけをする、また福祉事業の実施あるいは調査研究の実施といったような内容を盛り込んだわけでございまして、前文におきます国の姿勢というものをあらわしたという意味において意義があるというふうに考えております。
  98. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 どうも同じような堂々めぐりの質問と答弁になっているように私は思うんですが、やっぱりどこかでクリアカットしないといけないなと思うんです。  つまり、国が戦争という大事業を行った。その結果起きた被害の救済を今責任を持ってやろうとしている。責任というんだからそうだろうと思うんです、無責任ならやることはないんだから。そうであるとすれば、これは結果責任を認めたということになるんじゃありませんか。いかがでしょうか。
  99. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 法文上は、ごらんいただきますように国の責任において被爆者対策を総合的に講ずるということでございますから、いわゆる実施責任という意味で国の責任を明確にしたということでございます。
  100. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 実施責任なんという言葉あるんですか。実施するからには責任があるのは当たり前なんであって、何のために実施するのかと聞いているんですよ。つまり、その結果を認めてこれを何とかしなければいけないから責任を持って実施なさるんでしょう。実施責任なんという言葉を使っちゃ笑われるんじゃないかな。私はそういう日本語ならわからない。結果責任をお認めになって、その結果を補償しようというんでしょう。結果責任を認めたということじゃございませんか。
  101. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 被爆者対策に関する事業の実施主体としての国の役割を明確にしたということでございまして、そういう意味で国の姿勢というものを新法全体を通じる基本原則として明らかにしたと。  先ほど実施責任と申しましたけれども、ちょっと言葉を雑に使って申しわけなかったですが、被爆者対策に関する事業の実施主体としての国の役割を明確にしたということでございます。
  102. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 大分しつこいようでございますけれども、国の役割というのはわかったです。なるほどそうでしょうね、実施をする役割があると。しかし、何のためにやるかと、そこですよ。私は、結果を認めたという、つまり結果責任をとろうとしているのではないかと。いかがでしょうね。
  103. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 昭和五十五年の基本懇の考え方の中には、被爆者対策というものは広い意味の国家補償の見地に立ってやるべきだと。ただ、この場合の「広い意味における国家補償の見地」というのはこういうことであるということがるる説明として書かれているわけでございまして、私どもは従来から、被爆者対策についてはこの基本問題懇談会の考え方に沿って対策を進めてきたところでございます。今回の新法の全体の考え方なり、ここに盛られております内容というものも、基本懇の答申の考え方を踏まえたものだというふうに理解をしております。
  104. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 この辺で、改革案では「国家補償的配慮に基づきこというふうに述べられているわけですが、改革案がこういう表現で出された趣旨をひとつ伺いたいと思います。
  105. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 新緑風会及び公明党・国民会議として提出をさせていただきました法案でございますが、今改革案と言われましたけれども、衆議院の改革と一緒に長い時間をかけて検討してきた法案であるという意味で、私どもの案をあえてここで改革案という仮の名前で申させていただきたいと思います。  改革案の前文に、御指摘のとおり「国家補償的配慮に基づきこという表現を明確に用いております。これは前文ですから、もちろん法の目的であり趣旨であり大変大事な部分でございます。そこに「国家補償的配慮に基づきこと明示したわけでありますが、この原爆被爆者対策の基本理念と対策の基本的あり方を考える上でまず重要な二つの文献を示さなければならないと思います。これは先ほど来何回か出てきているものですけれども、私どもは初めての説明、答弁になりますので、少し詳しくなりますけれども、まずこの文献についてお示ししたいと思います。  その第一は、最高裁判所昭和五十三年三月三十日第一小法廷判決であります。この判決に、  被爆者のみを対象として特に名立法がされた所以を理解するについては、原子爆弾の被爆による健康上の障害がかつて例をみない特異かつ深刻なものであることと並んで、かかる障害が遡れば戦争という国の行為によってもたらされたものであり、しかも、被爆者の多くが今なお生活上一般の戦争被害者よりも不安定な状態に置かれているという事実を見逃すことはできない。原爆医療法は、このような特殊の戦争被害について戦争遂行主体であった国が自らの責任によりその救済をはかるという一面をも有するものであり、その点では実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあることは、これを否定することができないのである。こういう部分がございます。  また第二は、昭和五十五年の厚生大臣に対するいわゆる基本懇、原爆被爆者対策基本問題懇談会ですが、この基本懇の答申でありますが、これには、「国は原爆被爆者に対し、広い意味における国家補償の見地に立って被害の実態に即応する適切妥当な措置対策を講ずべきものと考える。」とあります。またその後の文では、その意味は「今次の戦争の過程において原爆被爆者が受けた放射線による健康障害すなわち「特別の犠牲」について、その原因行為の違法性、故意、過失の有無等にかかわりなく、結果責任として、戦争被害に相応する「相応の補償」を認めるべきだという趣旨である。」、こう答申をしているのであります。  我々の法案は、かかる有権的判断に依拠して立案したと言うことができるわけでありますが、繰り返しになりますが、法案前文において国家補償という言葉を「国家補償的配慮に基づきこという形で用いておりますが、これは現在の原爆二法について単なる社会保障制度と考えるのは適当ではなく、実質的に国家補償的配慮が制度の根底にある、あるいは広い意味における国家補償の見地に立っていると指摘した最高裁判決、あるいは基本懇の答申の趣旨と同様の趣旨で用いているものであります。  以上でございます。
  106. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 この辺で大臣にひとつ伺いたいと思います。  今、国家補償というのと国家責任というのが二つ出てきたんですが、私は重みが大分違うと思うんです、この二つの違いというのは。手当の重さ、お金の重さではなくて文言の示す意味が、国家補償というのは国が責任を、国が補償するんだということでありまして、それこそやっぱり非核のあらわれでなければならない、これを主張していることの一つのあらわれとして国がそれに対して補償していくというふうな気持ちがあると思うんです。ですから私は、手当の金額の問題ではなくてやっぱり補償という言葉が必要じゃないかと。いや、必要じゃないかというか、原爆被爆者の声の一番大きなところはそこだったと思うんです。  ですから、その点について大臣はこの二つを、大臣の立場としては困るかもしれませんがそれはそれとしまして、どんなふうに解釈をなさるか、お考えになるか、伺いたいと思います。
  107. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) ずばり国家補償と国の責任というのとはかなり私も違うと思います。ただ、今度対案として出されていらっしゃるいわゆる改革案ですか、この「国家補償的配慮」、「的配慮」までおっしゃられると、しかも前文はそこが違うだけであとは全く一字一句違わなかった。衆議院の段階ではそうだったんです。  ですから、そんな意味で私は、改革の皆さんの出されたのと私どもの今御審議いただいている「国の責任」というのはそんな大きな差はないんじゃないか。どちらもこの基本懇にのっとってということでもございますし、そういった意味で私は、個人的には改革案とこの文言でそんなに大きな違いはないんじゃないかなと思っております。  ただ、国家補償ということになりますとまさに戦争責任といったものにつながることでありますから、そうなると先ほど来御審議いただいております一般戦災者との整合性をどうするかとかいろんな問題に波及しますものですから、これは御提案しております今度の被爆者援護法の範囲をちょっと超える分野も出てくるものですから、そこまでは踏み切れない。連立与党の五十年問題プロジェクトの皆さんも、いろんなそういうところまで御論議された結果、これがぎりぎりだという線で合意なさったということを伺っておるものですから、この線で法案を提出しておる次第であります。
  108. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 大臣の御答弁は一生懸命になさったなと思って今伺いましたが、しかし改革案の方で言っているのは、やはり結果責任を含んでいるから「国家補償的配慮」ということになるんだろうと思うんですね。だから、結果責任をどうするのかというのはこれからの、例えば東南アジア等に対する戦後処理の問題にしてもほとんどそこにやっぱり集中していくんですね。日本の国内だけの問題ではないと思うんです。  ですから、やはり文言というのは大変大事な部分でありまして、あいまいだとばかにされるし、信用されないし、そういう意味では結果責任を明確にする意味で国家補償というのが一番いいんでしょうが、「国家補償的配慮」、せめてその程度の表現がやっぱり必要なのではないかというのを私は今ここでは主張しておきたいと思います。  私、まだ本当はありますけれども、友軍の萩野先生の質問がいろいろございますので、あんまり重複してもうまくないし、あとはお任せいたしまして、最後に大臣に伺いたいのは、被爆者の声をできるだけ反映できるように、私たちが幾つか指摘いたしましたように、法律というのは完璧な部分というのはないわけなんですから、少しでもよりよい、被爆者の声に近づくような法案にこれからもしていく必要があるのではないか、こういうふうに私は思いますが、大臣の御決意というかお考えを承って、私の質問を終わりたいと思います。
  109. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 従来も被爆者の皆様方のお考えをできるだけ取り入れるべく努力してきたつもりであります。必ずしも御満足はいただけない状況にあることももちろんわかっております。そしてまた、今後私どもの目指すのも、特に生存被爆者の皆さんへの対策を一番重点的に考えておるわけでございますから、先生御指摘のようなそういう関係の皆様方のお声は十分耳に入れていかなくちゃならぬ、こう思う次第であります。
  110. 種田誠

    ○委員長(種田誠君) 両案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時二十分まで休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ―――――・―――――    午後二時二十分開会
  111. 種田誠

    ○委員長(種田誠君) ただいまから厚生委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案及び原子爆弾被爆者援護法案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  112. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 私は、社会労働委員会から厚生委員会へと原爆被爆者の方々の問題を所管する委員会に所属してまいりまして、質問もいたしましたしあるいはまた発言もさせていただきましたので、再びこの問題でこうして質疑に参加することはいろんな意味で感慨深いものがございます。  そして、戦後四十九年の長きにわたって被爆者の方々が言葉に言いあらわせない御苦労を重ねまして、今日においても健康障害に苦しんでおられる方々が数多くいらっしゃる。私としても本当に胸の痛む思いがいたします。  今日までの原爆被爆者の皆様方のための政策を振り返ってみますと、原爆被爆者の方々が原爆の放射線を浴び、そのために健康障害に苦しんでおられるなど、健康上特別の配慮を必要とするという特別の事情に着目いたしまして、昭和三十二年に原爆医療法が制定されて、続いて昭和四十三年には原爆特別措置法が制定されて、健康診断あるいは医療の給付が行われるとともに、医療特別手当、特別手当、原爆小頭症手当、あるいは健康管理手当とか、保健手当、介護手当とか、葬祭料の支給等の施策が講じられてきたところでございます。  近年は、被爆者の方々が年々高齢化している実態に対応しまして、原爆養護ホームの整備とか、あるいはホームヘルパーの派遣とか、相談事業の充実とか、あるいはまた手当の引き上げ、健康診断の強化等がなりきめ細かく施策の展開が図られていると承知いたしております。  一例を挙げれば、平成三年ごろでございましたか、当委員会の委員でもあります佐々木満先生が小委員長で、自民党の中に設置いたしました原爆被爆者対策小委員会を中心にいたしまして論議を重ねて、被爆者の高齢化に適切にかつきめ細かに対応するために、介護手当の大幅な引き上げもいたしました。健康管理手当の認定期間の延長もいたしました。各種手当の所得制限の大幅な引き上げとその手続の簡素化など、思い切った改善を図ったことなどはまことに記憶に新しいところでございます。  こうした改善は被爆者の皆様方にも評価していただいていると聞いておりますが、被爆後五十年という節目の年を目前にいたしまして、このたび国の責任において被爆者の方々の保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講ずるとともに、国として原爆死没者のとうとい犠牲を銘記することとしたことはまことに適切なことであると考えるものでございます。  さて、法律が一本になりました。施策の内容面でもこれを機会として大変な充実が図られるようでありますが、まず大臣にお伺いしたいわけでありますけれども、今回の法律案の提出に至る議論の経過と結果を踏まえまして、現在の御心境の一端を承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
  113. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 被爆者対策といたしましては、これまで、今先生お触れのようにいわゆる原爆二法に基づいて医療の給付、手当等の支給を初めとする各般の施策が実施されてきたところでございますが、高齢化の進行など被爆者の皆さんを取り巻く環境の変化を踏まえ、現行の施策をより一層充実発展させた総合的な対策を講ずることが強く求められていると認識をしておるところであります。  今回の新法は、こうした状況を踏まえまして、来年は被爆後五十年でございます。この五十年のときを迎えるに当たり、恒久の平和を念願するとともに、国の責任において被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じ、あわせて国として原爆死没者のとうとい犠牲を銘記しようとするものでございます。  今回の政府案につきましては、与党におきまして真摯な議論を積み重ねられた末の合意を受けて作成されたものでございまして、その内容は被爆者対策の前進を図るものでありまして、現状では考え得る最善のものであると、こう認識をしております。
  114. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 衆議院でも何時間か議論され、そしてまた野党の皆さんから対案も出され、あるいは広島、長崎で公聴会も開かれ、それが報道され、来年は五十年という節目を前にいたしまして、いろんな形で我々は核兵器の廃絶ということも心に銘記しながら議論をしてきたわけであります。参議院では、あしたまた参考人の皆さんの御意見も伺うということのようであります。  にもかかわらず、新聞によりますと、来年、米国の郵便公社がキノコ雲をデザインした原爆切手の発行を計画していると大きく報道されております。しかも、その切手の下欄の方には原爆が戦争の終結を早めたという説明がつけられているようでありますけれども、米国の原爆投下を積極的に肯定するかのようなこうした計画は、まさに世界唯一の被爆国である我が国国民の感情を本当に逆なでし、今もなお被爆の後遺症に悩む被爆者の方々の心情を無視するものと思うんです。  本件については外務省でも、いろいろと報道では、クレームをつけたとか意見を述べたとかあるいは抗議文を送ったとか、いろんなとらえ方があるんですが、外務省はどのように対処していくお考えであろうかとへうことをまず外務省に伺っておきたいわけです。週末の新聞にもいろいろと取り上げられておりましたが、そうした部分も含めて明確な御答弁をいただきたいと思うんですが、いかがですか。
  115. 河野雅治

    ○説明員(河野雅治君) お答えいたします。  先ほど前島先生おっしゃったように、私も国民の一人として、この原爆というのが大きな惨禍をもたらした、そして今先生おっしゃったように今日でも苦しんだ方がいる、これがまさに国民感情だと思っております。  私どもはこのことは非常に重大だと考えておりますものですから、訓令を先週末打ちまして、ワシントンの方で栗山駐米大使の方から国務省のカウンターバートの方に我々国民の原爆に対する強い気持ち、このものをお伝えして、その成り行きに重大な関心を持っているということを伝えました。  一方、総理大臣の不快感の表明その他ございまして、国務省もその辺の報道は十分承知しておりまして、前もって事の重大さというのを十分認識していたようでございまして、独自の立場から検討した上で、昨週、少なくとも金曜以来、アメリカの郵便公社との間で善後策について協議を行っているという段階で、今の段階ではそういう状況でございます。
  116. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 厚生大臣としても被爆者対策を所管する大臣でありますから、これはやっぱり今後の対応ということも考えておられるのか、あるいはこうした郵便切手の発行のようなものに対して、大臣は大臣なりのまた見解もあろうかと思うんですが、この際伺っておきたいと思います。
  117. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) アメリカの郵政公社のこの原爆キノコ雲の切手発行につきましては、先週の衆議院の厚生委員会でも問題となりました。唯一の被爆国であります我が国の国民感情を逆なでするような問題でありまして、その取り扱いにつきましては、被爆者対策を行っております厚生大臣として重大な関心を有しておるものでございます。  けさも閣議の後の閣僚懇談会で外務大臣に、厚生委員会で多くの委員の先生方が重大な関心を寄せていただいて、日本としてきちっとした対応をすべきだ、こういう御意見がたくさん出ております、きっときょうこれから参議院厚生委員会でも出ると思います、ひとつ外務省しっかりやっていただきたいと、こんなことをお願いした次第であります。  今、外務省の方から御説明がありましたように、アメリカ政府に申し入れをしているとのことでございまして、厚生省といたしましても、その結果を重大な関心を持って注目していきたいと思っております。
  118. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 ぜひ適切な対応をお願いしたいと思います。  それでは、時間も限られておりますから、今度は新緑風会の皆さんと公明党より提案しておられます被爆者援護法案の中身を横尾さんにお伺いしたいと思っておるんですが、初めにも申し上げましたとおり、政府はこれまで原爆医療法及び原爆特別措置法に基づきまして、健康診断や医療の給付、諸手当の支給などさまざまな施策を講じてきたわけでございます。私としては、こうしたこれまでの着実な取り組みが被爆者対策を大きく前進させてきたものと私なりの高い評価をしているわけであります。  そこで伺いたいんですが、現行の原爆二法にかえて新法を提案されるに当たっては、やはり現行施策なり現行法をどう評価するかという点が出発点になるかと思うんです。この点について被爆者援護法案の提案者としてはどのように評価していらっしゃるのか、伺っておきたいと思います。
  119. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 御説明にありましたように、昭和三十二年にいわゆる原爆医療法が制定されまして、また四十三年には原爆特別措置法が制定される、こういったことを節目としながら、関係者の大変な努力の結果、漸次着実にその充実が図られてきたという事実については、立場、見方によって十分であるか否かという観点には微妙なものがありますけれども、それなりに私は評価すべきものと考えております。  しかしながら、一方において、原爆はどんなことがあっても二度と繰り返されてはならないということ、また被爆時から満五十周年というまたとない節目のときを迎える、こういったこと。さらには、先ほど来お話のありましたように、アメリカの例のように、現に原爆戦争を終結させる有効な手段と考えているというびっくりするような信じられない事実が現実となっている。そういうことを踏まえますと、今新たに趣旨を明確にした基本法が必要である、基本法といいますか、趣旨を明確にする基本的な法律が必要であると、こう考えているところでございます。
  120. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 国の責任問題ということですね。そこがちょっとこれからまた議論を深めなきゃならぬところだと思うんです。  そこで、厚生省に伺いたいんですけれども、前文の表現は政府案と被爆者援護法案における大きな違いの一つであるわけなんですが、次に、この前文の表現について伺っておきたいと思うんです。  まず、政府案についてお尋ねしておきたいんですが、政府案の前文では、国の責任において総合的な援護対策を講ずることが新たに規定されているわけです。この前文盛り込みというのはまことに画期的なことでもあるし、私も大変いいことだというふうに思います。この表現はこれまでのいわゆる原爆二法では用いられていなかったわけでありますけれども、今回新たに盛り込まれたのはどのような趣旨であるのか、その御説明を伺っておきたいと思います。
  121. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 今回の新法は、被爆後五十年のときを迎えるに当たりまして、高齢化の進行など被爆者を取り巻く環境の変化を踏まえて、現行の被爆者対策を充実発展させ、これによりまして保健、医療及び福祉にわたる総合的な対策を講じようというものでございます。  新法において特に前文を設けまして、「国の責任においてこという表現を盛り込みましたのは、こうした制定の趣旨を踏まえまして、被爆者対策に関する事業の実施主体としての国の役割を明確にし、原爆放射能という他の戦争被害とは異なる特殊の被害に関しまして、被爆者の方々の実情に即した施策を講ずるという国の姿勢を新法全体を通じます基本原則として明らかにしたものだというふうに考えております。
  122. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 つまり、「国の責任」という言葉自体は事業実施の主体としての国の役割を明確にしたと、こういうことですね、局長さん。
  123. 谷修一

    政府委員(谷修一君) おっしゃるとおりでございまして、国の戦争責任という意味ではございません。
  124. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 一方、被爆者援護法案では「国家補償的配慮に基づきこと前文に規定されておるわけでありますが、この場合の「国家補償」とは国の戦争責任に基づく補償を意味するものなのか、また国の戦争責任に基づく補償を意味するのでなければ、国のどのような責任に基づくどのような性格の補償を意味するのかという点について、ひとつ提案者の御所見をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
  125. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 既に先ほどお答えしておりますけれども、私どもは、「国家補償的配慮に基づきこという言葉を前文に入れだというのは、政府案とは相当違うものだと。私も法案の提案理由説明のときに申し上げておりますけれども、少し極端な言い方かもしれませんけれども、むしろ政府案というのは生存被爆者を対象としたいわば事後処理として、国がその事後処理を行うんだというふうに理解をしております。  それに対しまして私どもの考えは、昭和五十三年の最高裁判決、また五十五年のいわゆる基本懇の答申、特にここでは「国は原爆被爆者に対し、広い意味における国家補償の見地に立って」云々と、こうあります。私どもはそういう観点から、「その原因行為の違法性、故意、過失の有無等にかかわりなく、結果責任として、戦争被害に相応する「相当の補償」を認めるべきだという趣旨である。」というこの答申の趣旨を踏まえて、これによって立案をしたということでございます。
  126. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 ちょっとよくわからないんですけれども、私は、国家補償という用語につきましては、不法行為責任に基づく国家賠償とか、あるいは適法行為に基づく損失補てんを含めた極めて多義的な広いいろんな意味の中身を持つものでありますから、その定義は必ずしも確立していないと思っております。  いろんなものの国家補償の文言の使い方があるんですが、この法案が被爆という戦争による被害を理由に給付を行う法律である以上は、国家補償という言葉を盛り込みますと、結局のところ国の戦争責任に基づく補償を意味するものと受け取られてしまう。これは当然そういう受け取られ方になると思うし、それは避けがたいと思いますね。そういう点で提案者としてはその辺をどう考えているんですか。
  127. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 そこは見解の違いかもしれませんけれども、私どもは明らかに逆の見解を持っております。  おっしゃる意味は、いわゆる空襲などほかの戦争犠牲者との均衡の問題についてお尋ねだと思います。広い意味における国家補償の見地に立って行うところの原爆被爆者対策、これは先ほど来申し上げている基本懇の答申でも明確に述べているんですが、「原爆被爆者の犠牲は、その本質及び程度において他の一般の戦争損害とは一線を画すべき特殊性を有する「特別の犠牲」であるし、この考え方によるものであります。したがって、国の戦争責任を認めるものではなく、今後、他の戦争犠牲者に同じような補償的措置を行うべきものとは考えておりません。
  128. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 基本懇から引用されているということなんですね。基本懇の「広い意味における国家補償の見地」ということは、戦争遂行に関し国の不法責任を是認したりあるいは賠償責任を認めるという趣旨ではなくて、あくまでも一般の戦争被害とは、損害とは一線を画すべき特別の大変苦しい放射能被害であったという実態に照らして、もろもろの施策を国の責任においてやりなさいよ、その結果に照らしてやるんですよということをうたっているというふうに私は理解しておるんですけれども、その国家補償の文言を被爆者援護法に盛り込むことによって国の戦争責任を意味するものとこれは当然受け取られてしまうと思いますね。  しかし、戦争そのものは国の責任ではない、あなたはこういうとらえ方をしているんですか、どうなんですか。
  129. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 この国家補償という言葉そのものがどのような使い方をされても誤解を生ずるという御見解のようでございますが、私どもはそうは考えません。  既に、先ほど引用させていただきました最高裁の判決、また基本懇の答申、そこでも明確に国家補償という言葉は使われております。使われ方は若干言葉の上では違いますけれども、言葉としては入っているわけでございます。  また、昭和五十六年の衆議院本会議において当時の園田厚生大臣も、広い意味での国家補償に基づいた法改正を行おうとしているんだという御発言も明確にされているわけでして、そういう意味では決して「国家補償的配慮に基づきこと、あるいは「広い意味における国家補償の見地に立って」ということが必ずしも混乱を招くものとは考えておりません。
  130. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 それは大変混乱を招くわけですね。  そこで、援護法案の提案者として、一般戦災者に対してこの被爆者に対するのと同様の給付を行うという覚悟はお持ちなんですか。
  131. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 この一つ前にお答えしましたように、同じもので同じ扱いをするべきものではないと考えております。
  132. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 それじゃ、一般戦災者に対する補償についてはどのようなお考えをあなたはお持ちなんですか。いずれは原爆被爆者同様の補償を、その法案の中身を見ますと当然これはもう補償をすべきだというふうに私たちは解釈せざるを得ないんですが、その辺はどうですか。
  133. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 何回も同じことを申し上げますけれども、私どもはこの基本懇の精神、基本懇の考え方に基づいて行うべきだと思っておりますので、一般の戦災者とは別な扱いになるかと思います。
  134. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 つまり、被爆者の方々に対する手当にもいろいろあるわけですけれども、年金のようなものをするとか、それからそのときに直爆で亡くなった方々とか、それは全部含める、しかし今、一般戦災者の方は念頭にないんだと、こういうことになりますね。  そうすると、焼夷弾や艦砲射撃や、あるいは国の内外においてこの戦争による、すべての国民は何らかの形で加害者であったかもしれません、しかしまた被害者でもあったということを考えていきますと、この法律の中にそういう文言が入ることによって、同じ死の中にも大変大きな誤解とまたいろんな意味での思いが絡み合うということを私は指摘せざるを得ないんですね。その辺はどうなんですか。
  135. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 何回も申し上げますけれども、特別の犠牲という特殊性を有している、こういうことを踏まえて基本懇におきましても、「広い意味における国家補償の見地に立って」と明示されているわけでございます。私どももそのように考えるわけでございます。
  136. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 被爆者の方々に対する手当なんですけれども、各種手当を年金とせず原爆特別措置法においては手当としている考え方は、局長、これはどういうものなんでしょうか。
  137. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 現行の原爆特別措置法におきましては、被爆者に対する諸手当というものは放射線による健康被害の状態にある被爆者の実態に即して支給をするという考え方に立っているわけでございます。この手当を年金化するということは、被爆者の方々の健康障害の実態を問わずに一定の給付を継続するということに、そういう考え方になるというふうに思っておりますので、現在の特別措置法並びに政府案で提案させていただいております手当につきましては、年金化ということはしていないわけでございます。
  138. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 そこで横尾さん、被爆者援護法案では、自分自身が被爆者である方のみならず遺族の方すべてに特別給付金を支給することとされているわけですね。したがって、この給付金は政府案と異なって、被爆者が死亡したことを理由としてその遺族に支給されるものであり、実質的には弔慰金と変わらないものでもあるわけです。  このように遺族会員に支給される給付金を設けることは、まさにここが一般戦災者との均衡という点で大変問題だと思いますし、大変矛盾もあるし、合理性を欠くという思いがするんですが、いかがでございましょうか、その辺は。
  139. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 特別給付金、私ども提案するものでございますが、これを創設するということに対する御質問だと思います。  念のために趣旨を申し上げますと、原爆被爆者の方々へ国家的関心の表明として核兵器廃絶の祈りを込めて行うものだと、対象につきましては昭和四十四年四月一日の葬祭料制度発足前に亡くなられた原爆死没者の遺族に対して行うものである、額につきましては死亡者一人につき十万円を交付するという趣旨でございます。政府案が生存被爆者に対する事後処理対策であるのに対しまして、私どもの法案は国家補償的配慮に基づいているものでありまして、言いかえれば、広い意味における国家補償の見地に立って考えるところの基本懇の言う公平の原則を踏まえたものであります。  ちょっと重複になりますが、私どもの特別給付金は、現行の特別措置法が制定された昭和四十四年以前に亡くなられた方につき葬祭を行う者一人に十万円を支給しようとするものであり、これはともに被爆の経験を持ち、ともに長きにわたり病と闘いながら不安な日常生活を送り、また被爆者の援護の充実のために行動し、そして二度とこのようなことが起きないようにと念じ続けてきた同胞たちの死亡に対し、ひとしく国家的関心の表明として給付が行われるということであります。そしてこれは、高齢化しつつ今日なお被爆の影響や死に対する不安と闘いながら日常生活を送る被爆者にとって、何よりも心安らぐ措置と確信するものであります。
  140. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 もう時間が来てしまいまして、いずれにいたしましても、国家補償という言葉を軽々に扱い過ぎているのではないかという思いが私は大変強くいたします。  やはり被爆五十年という節目の年を迎えるわけでありますから、今私どもが取り組まなければならないことは、被爆という悲惨な被害を生じさせた核兵器の究極的廃絶に向けての決意を新たにすることだと思うんです。原爆の惨禍が繰り返されることのないように、恒久の平和を念願することだと私も考えます。また、被爆後約半世紀を経て被爆者の方々の高齢化は著しく進んでおりまして、その対策はいささかの猶予も残されていないと思っております。こうした状況を踏まえて、被爆者の方々に対し各般にわたる総合的な援護対策を講ずることのできる法律として、この政府案を一日も早く成立させることが大切だというふうに思います。  最後に、今後の被爆者対策に取り組む大臣の決意をお伺いして、時間になりましたから私の質問は終わりといたします。
  141. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 来年は被爆後五十年に相なるわけでございます。被爆者の方々の高齢化も年々進んでおるわけでございまして、そういった事情を踏まえまして、国の責任において保健、医療あるいは福祉といった総合的な対策を講ずることによりまして、被爆者の方々の福祉についてその一層の向上を図ってまいりたいと思いますし、同時に五十年という節目です。先生今おっしゃったように、核の究極的な廃絶といった方向に特に決意を新たにする意味でも、この法案の一日も早い成立をお願いする次第であります。
  142. 前島英三郎

    ○前島英三郎君 どうもありがとうございました。
  143. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 私は、政府及び新緑風会公明党の対案の提出者に対しまして質問をいたします。  同僚の委員の方々から、予定しておりました質問はかなり出ました。しかし、重要な点でありますので、重複する点はひとつお許しいただきたいと思います。こういう機会にこの法律の持つ意味を理解していただくという意味で、御答弁のほどをよろしくお願いいたします。  いずれにしましても、原爆が落とされてはやもう半世紀に至ります。そういう被爆者の切なる悲願にこたえるべく今回この法案が出されたわけでございます。この法案の意味は、今まで大臣も答弁されておられましたけれども、また対案の方からも言われておりましたが、恒久平和の確立ということを目指しておるのだろうと思います。私もそういう願いを込めまして質問をさせていただきたいと思います。  この政府案を見させていただきまして、大変残念ながら、原爆の残虐性といいますか、またこの後遺症、こういう点につきましては高桑先生が詳しく説明されましたので私申し上げませんけれども、こういう後遺症を残す特殊性についてもっと理解があってもいいんではないかと、私、先ほどの答弁等、またこの政府案を見させていただいて感じた一人であります。  こういうような政府案が出たということに関しまして、聞くところによりますと公聴会を開かれておりまして、そこから、本来でしたらかなり被爆者の方は喜ばれるはずなのに、どうもそうではないような声を耳にするわけであります。  それじゃ、その原因は一体どこにあるんだろうかと私考えてまいったんですが、前連立政権のときにこの原爆被爆者援護法に関しましていろいろと議論を闘わせました。その中で最も強い主張、また公約であったものは何かというと、これも午前中から話題になっております国家補償の精神、こういうものが常にベースにあったと思います。しかし、これから逸脱してでき上がってしまったんじゃないか。特に政府案の方に、大変申しわけないんですがそのように私感じざるを得ないんです。  これは政権がいろいろかわりましたから、政策というのは、ある政策を出していくのにはお互いに譲り合わなきゃならない。だけれども、変な意味で妥協の産物ということになると、これは本当に変なものができてしまう。そういうことは絶対にないだろうと思いますが、今、連立政権の中の産物としてでき上がってきた。前の連立政権のときには、国家補償の精神というのは絶対に入れるんだと。連立政権の中で妥協のものとしてでき上がったとは私は思いたくありませんけれども、その辺のところを、まず政府提案者の責任といたしまして、大臣ひとつ御答弁をお願いいたします。
  144. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 実は、今回こういう形でまとまるというか、審議がなされておるわけでございますが、そのきっかけといいますか、一つには、昨年来、前連立政権時代にいろんな御論議があったことも大変な意味があったと私は思います。その当時、私も実は連立の途中までおったのでありますが、御論議は大変熱心に進められました。  正直のところ、私どもが加わっている間は、例えば社会党の皆さんなんかはどちらかというと今回の、今の野党の皆さんが出されている案に近いようなお考えでしたし、新生党の皆さんあるいは民社党の皆さんはどちらかというと大変慎重でいらっしゃいまして、正直のところ前連立政権のところでもなかなか合意は見られなかったのであります。社会党が政権を離脱されて後、野党になられてからこの合意がまとまってきたというふうに私は理解をしております。  また、新連立政権、これまた社会党と、どちらかというと今まである意味では慎重であられた自民党が、もちろん私の属しておるさきがけも御一緒させていただいたのでありますが、新政権スタート以来、五十年という年を控えて五十年問題プロジェクトチームでぎりぎり御論議をしていただいてようやく合意を得たのがこの内容だと思いまして、妥協といえば妥協の結果にならざるを得なかった点はあると思います。
  145. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 大臣がそのようにはっきりおっしゃいましたので、もうこれ以上私その点については申し上げません。  いずれにしましても、被爆者の方々が政府の姿勢というものを厳しい目で見守っておることは事実だろうと思います。すなわち、戦争に対する反省とそれから平和を求める強い決意といいますか、そういうものがあらわれておるかどうかということを私は見ているんではないかと思います。それぞれ公党の姿勢があると思いますから、私はその点についていろいろ申し上げませんけれども、政治は確かにリアリスティックでなければなりません。でも、哲学とか理念とかそういうようなものが余り変化しては、刻々に変化してしまうというのはこれはまたいかがなものかと思っております。  いずれにしましても、こうした法案が出されたわけですから、被爆者の願いに対してこういう論議の場を通じてこの法案の持つ意味を明白にしていく必要があるだろう、こう思いますのでよろしくお願いします。  それでは質問に入りますけれども、この点についても先ほど来同僚の委員から何度か質問がありましたが、もう少し明白にしておかなければならないと思います。というのは、くどいようですが、この政府案の中の国の責任において措置を講ずると、国家補償との間に一体どこにどんな違いがあるのか。先ほど来るる答弁されておりますが、特に高桑先生のときの答弁を聞いておりまして、私どうもびんとまいりません。前島先生も今その辺いろいろ聞いていらっしゃいましたけれども、私は頭の回転が悪いのかどうも納得がいきませんので、くどいようでありますけれども、どこにどんな違いがあるのか明白に、まず局長さんから答弁されて、その後大臣でいいですから。
  146. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 今回の新法におきまして、前文に「国の責任においてこという表現を盛り込んだわけでございますが、この新法そのものは、先ほど来大臣からもお答えをさせていただいておりますように、被爆後五十年のときを迎えるに当たりまして、高齢化の進行など被爆者を取り巻く環境が変化をしてきている。そういったような状況を踏まえまして、現行の被爆者対策を充実発展させ、保健、医療及び福祉にわたる総合的な対策を講ずる必要が出てきた。  そういう現状におきまして、新法においてこの「国の責任においてこという表現を前文に盛り込みますのは、今申したような制定の趣旨を踏まえまして、被爆者対策に関する事業の実施主体としての国の役割を明確にし、原爆放射能という他の戦争被害とは異なる特殊の被害に関しまして、被爆者の方々の実情に即応した対策を講ずるという国の基本姿勢を新法全体を通じる基本原則として明らかにしたものでございまして、「国の責任においてこという言葉自体は国の戦争責任ということを意味しているものではございません。
  147. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 さっきと余り変わった表現ではないので私まだ理解に苦しむんですが、この「国の責任においてこというのは、わかりやすく言えばちょっと強調したと、そういう意味ですか。総合的な福祉、いろんな面での対策を講ずるという意味で単なる国が措置を講ずるというんではなくて、「責任」という言葉を入れたのはそこに強調の意味で入れられたんですか。
  148. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 強調したというより、被爆者対策に関する事業の実施主体としての国の役割というものを改めて明確にしたという意味があると思いますし、その国の姿勢というものを、提案をさせていただいております新法全体を通じる基本原則として明らかにしたという意味もあると思います。  このような考え方を踏まえまして、新法におきましては、被爆者の援護に対する施策を総合的に実施するということ、それから福祉事業の実施ですとか、また原爆放射能の人体への影響についての調査研究に対しての国の推進義務といったようなものを法制化することにしたわけでございます。さらに、これらのいわゆる援護対策についての、先ほど来のちょっと繰り返しになりますが、実施主体としての国の責任の明確化、それから特別葬祭給付金の支給、平和を祈念するための事業の実施等々の事業を具体的な内容として盛り込んだところでございます。
  149. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 どうもよくわかりません。この「責任」という言葉がなぜここに入ったかというのは、くどいようですが、高桑先生の議論の中で、いずれにしても結果責任との因果関係というようなものがここでファジーにされておるので、一体どこにどんな違いがあるのか、国の責任の措置とそれから国家補償という、この辺のところがまだ私はどうも納得できません。いつまでもここを論議しておっても進みませんので、それでは今おっしゃいましたのを頭に一応入れておきます。  現行二法がございます。原爆二法ですね。これと、今回出された法律案との間に一体どういう、「国の責任」というのが片一方は入っていて片一方は入っていないというのは、これは大切なところだと思うんですよ。先ほど来、こういうことをやります、ああいうことをやりますということはるる並べられましたけれども、法律というのは、実定法はやはりそれなりの、一たん制定されればそれが生きていく。やっぱりその辺のところは、この案を出す以上は責任を持って出すべきだろう。どうもこの辺が明白でない。  もう少しついでに言わしていただくならば、日本はどういう国家であるかと申しますと、ルール・オブ・ロー、法の支配による法治国家であります。だから、この国会で制定される法律というのは、それなりのルール・オブ・ローの原則というもの、これを崩したら大変なことになっていくと、私はそのように考えております。  だから、私はいろいろ申し上げましたからまとめて申し上げますと、現行の原爆二法はそれじゃ国の責任ではないということにとられても仕方がない面も出てくる。これはちょっと言い過ぎかもわかりませんけれども、仮にそうであるならば、法律による措置は国の責任ではないということになって、これは大変な課題を今後残してしまうということになりますので、この辺のところは明白にしておく必要があると思います。  答弁をお願いします。
  150. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 政府といたしまして、これまで原爆二法によりまして被爆者に対する医療の給付あるいは諸手当の支給等の事業を行ってきたわけでございますが、もちろんこれまでのこうした施策の実施について国の責任はあったというふうに認識をしております。ただ、長年にわたります被爆者対策の経緯の中で、現行の法律の中では国の責任を明文化したものは法文の中にはなかったということは言えるんではないか。  今回、これまでの医療の給付あるいは手当の支給といったような個別分野の施策から、総合的な対策を講ずるための新法案を策定するということに当たりまして、原爆放射能による健康被害という特殊な被害であります被爆者援護対策につきましては、施策の実施に当たっての国の責任には特に重いものがあるということを考え、また先ほど申しましたように事業の実施主体としての国の役割を明確にするということから、特にこの前文の中で国の責任というものを法文上明文化したものでございます。  そういう意味において、私どもとしてはこの「国の責任においてこという言葉自身には重い意味があるというふうに理解をしております。
  151. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 「国の責任」というのが突然ここにあらわれてくるから、またこれはいろんな問題も惹起してくる、そのように私は考えてもおりますので、その辺は御理解いただきたいと思います。  今の件につきまして、先ほどの答弁の中でも措置の面からいろんなことを説明いただきましたけれども、大臣、これ大変大事なところでございますから、「国の責任」という言葉の、大臣の素朴な本当の気持ちのところを国民の前に、やっぱりこういう重要法案は、衆議院では本会議でやりましたけれども、参議院は本会議をパスするということは私は本来よくないと思っている一人でございます。ですから、これはひとつ厚生大臣、内閣の一人でございますから、大変これは重要法案ですので、「国の責任」という言葉の意味するものを論理的に、また付加される措置面から明白な答弁を国民の前に示していただきたいと思います。よろしくお願いします。
  152. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 「国の責任」という文言を前文の中に入れました理由につきましては今局長から申し上げたとおりでありますが、今までずっと長い間、御論議の大きな一つの焦点になっておりますいわゆる国家補償の問題がこの法案に盛り込めるかどうか、実は連立与党の五十年問題プロジェクトチームでも御議論の大きな点にもなっておりましたし、政府といたしましても、ずっと従来の経緯もございまして、正直なところ、この問題、大変迷ったり悩んだりした内容であります。  そして、国家補償という形できちっと明言して、そのかわりもう一般戦災者にまで全部戦争責任を認めるんだと、こういうお考えはお考えで私は論理的には正しいと思うのでありますが、これが実際問題としましては大変いろんな問題を生じますし、整合性のことも考えなくちゃなりませんものですから、そこで苦慮した結果といいましょうか、ぎりぎり御議論してお考えの達した結果、私どもは「国の責任」という言葉を使いましたし、「国家補償的配慮」と野党の対案に出ているのもそこらにあるんじゃないかなと。  どちらもこの基本懇をもとに法案をつくっておりますから、これは基本懇を否定しているわけじゃございません。そういった意味では、国家補償、ずばりどちらも言えない難しさがこの表現になっている、こういう面もあろうかと思います。
  153. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 どうもありがとうございます。  それでは、この対案の提出者の方に質問をさせていただきます。  「国家補償的配慮」、大臣はこれと似通ったものではないかと今おっしゃいましたけれども、対案の方では国家補償的配慮を講ずると、このようにしておりますが、その論理的根拠並びによって立つ理念といいますか、その辺を簡単にお答えをお願いいたします。
  154. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 大臣からは今、御丁寧な私どもの案に対する解説までいただきましたが、ちょっと違っておりまして、それは苦しんだことは間違いないんですけれども、あくまでも私どもの考える対比として申し上げますと、政府案につきましては事後処理の問題としてとらえていると。これから事後処理をどうするか、その事後処理について国の責任で行う、こういう位置づけなんだなと、こう理解をしているものでございます。  それに対する対案としてあえて出させていただきましたのは、先ほど来から申し上げておりますところなんですけれども、現行の原爆二法が長い間に大変な努力をされながら充実拡充されてきたという中で、昭和五十三年の最高裁判決、五十五年の基本懇、そういう中で現行の二法の精神を解釈して、国家補償的配慮に基づくということをあえて明確にしてきたわけであります。また基本懇におきましては、広い意味における国家補償の見地に立ってということが明確になってきたわけです。そして、そのことも踏まえて昭和五十六年には当時の園田厚生大臣が、その精神に基づいて改正を行うんだと明確な答弁と説明をされているわけであります。  こういう流れを踏まえますと、現行政府案であります、これからの事後対策として国が責任を負うという考え方はむしろ後退であって、せっかく解釈が進んできた、これも先ほど一部御質問がありましたけれども、いろんな努力をされて進んできた中の一つだと思うんです。その進んできたものを、新しく法案をつくるという段階で、少なくともそれをきちっと踏まえて明確化するということが我々の今課せられた大事な仕事ではないかと、こう思いまして、私どもの案には「国家補償的配慮に基づきこと明示させていただいた次第であります。
  155. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 どうもありがとうございました。時間もだんだんたってきますから、次の問題に移りたいと思います。  給付金の支給対象について、この辺につきましても大分混乱をしておるようです。まず、この支給対象者をどうして手帳所有者に限ったのでありましょうか、簡潔に御答弁をお願いします。
  156. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 今回提案をさせていただいております特別葬祭給付金の考え方は、被爆後五十年という節目のときを迎えるに当たりまして、死没者の方々と苦難をともに経験した遺族であって、自身も被爆者であるといういわば二重の特別の犠牲を払ってこられた方に対して、生存被爆者対策という考え方の一環として国による特別の関心を表明し、生存被爆者の精神的苦悩を和らげるという考え方でございます。したがってこうした観点から、支給対象者は現在被爆者健康手帳を所持しておられる生存被爆者ということに限定をしたものでございます。
  157. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 ちょっとわかりました。生存被爆者というところに限ったということですね。  では、申し上げましょう。例えば学童疎開の方々、また戦地で終戦を迎えられた方々、肉親が被爆して亡くなったということを後になって知り、もうこれは後になって知ったから手帳を持っていない。そういう気の毒な人はこの支給対象とされないということ、なぜその対象とされないか。そういう気の毒な人の存在ということを私はどうしても見逃すわけにはいかないわけです。手帳を持っていない事情があったそういう気の毒な人になぜ支給されないのか、その理由を明らかにしてください。
  158. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) まず、今回提案をさせていただいております法案の基本的な考え方としては、前文において明らかにしておりますように、「国として原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記する」という考え方を明確にしているわけでございます。そういう意味からも、平和を祈念するための事業ということで、死没者や遺族の方全体に対しましては、原爆死没者慰霊施設の設置といったような平和を祈念するための事業を実施するということによりまして、国としてそれらの方々のとうとい犠牲を銘記し、追悼の意を表するということで考えているわけでございます。この特別葬祭給付金につきましては、基本的な考え方は先ほど申したとおりでございますが、そういう意味では、今先生が例として挙げられました方についてはこの特別葬祭給付金の対象にはならないと思います。    〔委員長退席、理事菅野壽君着席〕  先ほどの繰り返しになりますけれども、私どもの考えておりますのは、もし仮にこの特別葬祭給付金というものを、現在の生存被爆者に着目をせずに死没者ということに着目して給付を行う場合には、弔慰金と同様の給付、弔慰金と区別ができない給付になるのではないかと。その場合には、先ほどの国の責任ないしは国家補償ということとの関連もございますけれども、一般戦災者との間の均衡を失するんではないかというのが基本的な考え方でございます。  それからもう一つは、現行の被爆者対策というものが、葬祭料の支給ということも含めまして、原爆放射能に起因する健康障害が他の戦争被害とは異なる特殊な被害であるということに着目をしたものであるということから、現行の生存被爆者対策の根幹、基本的な考え方を変更することなしに現行の制度の範囲内で、基本的な考え方の範囲内で実施をするということからこのような結論に至ったものでございます。
  159. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 今、ある程度の理由というのも示されましたので理解した点もありますけれども、私はどう考えてみましても、政府案の特別葬祭給付金というものは多分間違いなく被爆者の間に新たな不公平を生み出すんじゃないかという疑問を持っております。また、被爆により亡くなった個人のディグニティーといいますか、そうした尊厳、そういうものに差をつけるというか、そういうものを傷つけるおそれがあるんじゃないかと私はちょっと感じますが、それは間違っているんでしょうか。
  160. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 先ほど先生が具体的に触れられたような例の方には現在の特別葬祭給付金というのは支給をされないわけでございます。ただ、こういったような特別葬祭給付金を支給されない死没者や遺族の方々に対しましては、全体として慰霊施設の設置といったようなことで平和を祈念するための事業を実施するということにいたしておりまして、そういう形で国としてそれぞれの方のとうとい犠牲を銘記し、追悼の意をあらわしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。  なお、繰り返しになりますけれども、この特別葬祭給付金というものは現在の生存被爆者対策の一環という位置づけをしております。また、すべての死没者の方あるいは死没者の遺族の方ということになれば、この給付金の性格というものが弔慰金的なものになるんではないかということを私どもは内部のいろんな検討の中で議論をしたところでございまして、そういうことから、一般戦災者との間の均衡ということも考慮いたしましてこのような形にさせていただいたわけでございます。
  161. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 慰霊碑を建てるとか、それはよくわかりましたけれども、現にあらわれた上においても、私は先ほども申し上げたから二度申し上げませんけれども、事情があって手帳を手にしていないという方も存在するんだということをやっぱり忘れないでいただきたいと思います。  ちょっと角度を変えて質問をさせていただきます。現在、御案内のとおりの特別措置法、これによりまして被爆遺族のうち一人に葬祭料が支給されておりますね。
  162. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 現行の葬祭料につきましては葬祭をした者に支給をするということでございまして、仮に身寄りのない方が施設で亡くなったという場合にはその施設の方に支給をする、葬祭を行った方に支給をする、そういう形になっております。
  163. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 一人という表現ではなくて、そういうような場合はそういうぐあいになると思いますけれども、ところが今回の政府案を見ますと、手帳を所有する二親等内の遺族会員にこれは支給するとなっているんじゃございませんか。
  164. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) まず、現行の葬祭料との均衡というようなことでお尋ねかと思いますが、現行の葬祭料といいますのは、被爆者が亡くなった場合にその葬祭を行う方に対して葬祭料を支給するということによりまして、生存されている被爆者が日ごろ持っておられる死に対する不安感などの特別な精神的な不安を和らげようとするものでございます。  なお、これにつきましては、この葬祭料が創設をされました四十四年当時に、特別措置法の改正の趣旨がその当時の局長通知によって述べられておりますけれども、「日ごろから死に対する特別な不安感をいだいている。」「このような不安な日常生活を余儀なくされている特別被爆者への国家的な関心の表明としてこ「これら特別の状態にある被爆者の精神的不安をやわらげ、もってその福祉を図ることとしたものである。」ということがございます。また、この葬祭料というものが、「特別の状態にある被爆者に対する国家的関心の表明として支給されるものであって、葬祭の実費にあてる趣旨のものでない」ということも述べられているわけでございます。  今回の特別葬祭給付金につきましては、先ほど来申しておりますような生存被爆者対策という制度の枠組みの中で実施をするわけでございまして、亡くなった被爆者と苦難をともにした遺族であって、自身も被爆者としていわば二重の犠牲を払ってきた方に対する給付ということで、生存被爆者の精神的苦悩を和らげるということでございます。    〔理事菅野壽君退席、委員長着席〕  そういう意味におきまして、生存被爆者対策という制度の枠組みで見れば、葬祭料とそれから特別葬祭給付金との対象者の間には公平が確保されているというふうに考えております。したがって、支給対象となる遺族の数のみに着目をして不均衡があるということは当たらないのではないかと考えております。
  165. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 答弁になっていないです。私がお聞きしたのは、今回の政府案を見ると、手帳を所有する二親等内の遺族会員に支給することになるのではないかと聞いたので、そのことについて明確に答弁をお願いします。
  166. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) そのとおりでございます。
  167. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 それでいいんです。  ここで同僚の委員の皆さんも考えていただきたいんですが、手帳を所有する二親等内の遺族の全員に支給する、こうなっているという今の答弁になりますと、これは先ほど言いましたルール・オブ・ロー、法による支配、法のもとの平等、こういう観点からしますと明らかに不平等であり不公平な措置と、こういうぐあいに考えざるを得なくなってまいります。いかがですか。
  168. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 特別葬祭給付金といいますのは、先ほど申したような考え方に基づいて生存被爆者対策という形で支給をするということを考えているわけでございます。そういう意味におきまして、現行の葬祭料というものと基本的な考え方、性格上の考え方は同じでございます。  ただ、葬祭料が創設される以前、逆に言えば被爆者対策が充実をされる以前に亡くなられたそういう被爆者の方、それらの方々と苦難をともにされました現在生存をされている被爆者の精神的な不安を和らげるということから支給をするものでございますので、現在生きておられる方に着目をする、現在生きておられる生存被爆者一人一人に着目をするという考え方から、今お話のございました二親等内の遺族会員に支給をするということでございますので、基本的な生存被爆者対策という考え方の中で、あるいはその枠組みの中において整合性はとれているというふうに私どもは考えております。
  169. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 私はどうも頭の回転が悪いのかもわかりませんけれども、私もいささか法律は学んでおるつもりでございますが、今の答弁ですと、やっぱりこれは明らかに不平等であり、不公平な措置というものがそこにあらわれてくる。これはどんな説明をなさいましても私はどうも納得がいきませんので、この点は保留しておきます。いずれにしましても、今後このような措置をとっていきますといろんな問題が私は起こってくるだろうと思うんです。  大臣、せっかくですから、今後どのような措置をとるのか、それともこのままで放置するのか、特にこの給付金に対する疑問というものを私はまだ抱いておりますから、その辺ひとつ御答弁をお願いします。
  170. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 今、担当の局長から御答弁したわけでございますが、先生になかなか御理解いただけない。  ただ、実は昭和二十年の八月六日ないし九日のあの爆撃で亡くなられた皆さんまでこの対象にしたい、しかも一方で、いわゆる一般戦災者の遺族の皆さんとの整合性を考えるときに、しかも弔慰金ではなしにと、こういったいろんな条件をあれして大変苦慮したといいましょうか、ぎりぎり生存被爆者対策という意味で二親等まで、いわゆるお孫さんまで、あるいは子にもいきますけれども、生存被爆者対策だという意味では御理解いただけるんじゃないかなというふうに私は考えております。
  171. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 まだ私はすっきりしませんけれども、これはひとつ対案を出された提出者の方に、少しこうした問題も含めまして、どういう点を改良しておるのか明示いただきたいと思います。  今私が言いましたような疑問点を持ちながらこの対案の方を見ていきますと、若干工夫の跡が見えます。特に、特別給付金のところに関してはそれなりの工夫があると思います。  でも、全体を見ていると、今回出されたこの対案といえども、こういうことを私が言うのはどうかと思いますけれども、両方読ませていただきましたから端的に申し上げまして、私が質問してきました重要な争点を除いては少なからず似通ったものであるということも私は事実だろうと思います。  そこで、旧連立て七カ月、それから十何回もの論議をもとにまとめられたと私は聞いておりますけれども、今回わざわざこの対案をせっかくお出しになったわけですから、それなりの本法案提出の経緯、またそれにかける決意、そしてこの対案の最も骨子とするところをひとつお示しいただきたいと思います。
  172. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 特別給付金に関連して根本的なお話をされたと理解しておりますけれども、特別給付金の関連から申し上げますと、私どもの案は死亡者一人について十万円を国債により交付するという内容でございまして、これは同じ原爆死没者でありながら葬祭料の支給を受けることのできた方とできなかった方との均衡にも配慮したものであります。そういう意味で、昭和四十四年四月一日の葬祭料制度発足前に亡くなられた原爆死没者の遺族に対して、原爆被害者の方々への国家的関心の表明として、また核兵器廃絶の祈りを込めて行うものである、こういう意味合いでございます。  先ほど来申し上げておりますけれども、政府案との違いは、政府案が生存被爆者に対する、私が聞いておりまして政府案についてどうしてもぬぐいがたい印象があるんですが、それは何か生存被爆者を早く事後処理として処理してしまいたいという気持ちがここへ伝わってくるんです。  私どもはそういうことではなくて、これまでの間に、何回も申し上げますけれども、昭和五十三年の最高裁判決昭和五十五年のいわゆる基本懇の答申、こういう中で関係者の大変な努力で考え方も整理され、また内容的にも進歩してきたわけであります。それをこの際、新しい法律をまたとない機会に成立させようというわけでありますから、過去のこととして処理するというのではなくて、もっと前向きに将来に向かって建設的な意味を持たせるべきだとなりますと、やはり根本にさかのぼって、基本にさかのぼって、原爆の特殊性も十分考慮した上で対応をとるべきであると、私どもの案はその点が政府案と違っているところであります。
  173. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 ありがとうございました。  それなりの工夫をされたところは見えますが、どこまでも今回の原爆被爆者に対する援護法というものは、一つの節目といいますか、戦後の約半世紀、この歴史的視点に立って考えていくということで、これは政府案もそういう姿勢だと、それから対案の方でもそのような姿勢だということはわかりました。  そこで、先ほど横尾委員もおっしゃいましたけれども、我々は常に、過去も見なければなりませんけれども、未来を見ていかなきゃならない。そういう点で、最初にも申し上げましたが、原爆投下後五十年、そしてもう二十一世紀をすぐ前にしております。これを機会に、我々は一体何をこれからの未来を背負っていく若者に託し、また我々は今一体何をみずからの責任として果たすか、やっぱりこの辺を明白にしていかなきゃならないと思います。今回のこの被爆者援護法が一つの引き金となって、世界平和のためにあらゆる面からもう一度我々はみずからを振り返り総括する機会にすれば、私は非常に価値があると思います。  ところで、大臣、御案内と思いますが、けさの朝刊にも出ておりましたけれども、こういう見出しで、「「核使用は違法」二十一カ国」と、これは朝日の朝刊でございますが、ごらんになったと思います。  午前中に高桑委員の方からも質問がありましたが、先ほどまた前島委員に対しても答弁がありました、あの例の記念切手に関しては早速それに対応するというんですが、私はこれはもう本当に遅きに失していると思います。前から私、機会があればこのことを言ってきたんですが、この核兵器使用の違法性という問題については日本がなぜちゅうちょするのかと。私はこれはもう本当に納得がいかないものであります。  御案内のとおりの、国際司法裁判所が今回いろんな国に意見を求めた、その回答をこれは朝日が入手して出したんだと思いますが、その中を見ていきますと、この違法性を主張したのが特に非同盟諸国を中心に二十一カ国と。その中で最も注目すべき点はインドの考え方でございますね、不必要な苦痛を与える兵器の使用を禁じたハーグ条約などに違反すると。私は、核の使用は国際法上違反である、そういう信念を持っておりますが、大臣、いかがでございますか。
  174. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 我が国が唯一の被爆国であり、核兵器の使用禁止については、各国にまさるとも劣らないというよりは、もう各国のあれをはるかに凌駕して強い意向を国民的にも持っておる、こう考えております。  核兵器の使用が実定国際法に違反するかどうかという解釈は外務省にゆだねたいと思いますが、率直に言って、核兵器の使用はまさに人道主義に反するものだと私も思います。
  175. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 そこで外務省、いらしておられますね。  今の、特に実定法上の問題ということで大臣もおっしゃいましたけれども、日本のこの態度というのが「実定法上、違法とまでいえない」、こういういかにも法律を表面から解釈していく、こういうようなことを、これは政府がこういうぐあいに言ったんですか、新聞に出ておりますけれども。
  176. 杉内直敏

    ○説明員(杉内直敏君) 唯一の被爆国であります我が国といたしましては、核の惨禍が繰り返されてはならないと考えておりまして、核軍縮、核兵器不拡散、さらには核兵器の究極的廃絶に向けて一層の努力をしていくことが重要であるというふうに考えております。  違法性の問題につきましては、核兵器の使用はその絶大な破壊力、殺傷力のゆえに国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないものと考えており、この点は村山総理も国会で述べられているとおりでございます。
  177. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 村山総理がそのように述べられたんですか。
  178. 杉内直敏

    ○説明員(杉内直敏君) 国会における御発言で、村山総理もそのように発言しておられます。
  179. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 国際反核法律家協会、略称IALANAと言われておりますけれども、そこの意見ですと、違法かどうかの判断を実にうまく日本は切り抜けているんではないか、このように言われておるようですが、私も、こういうあいまいな態度というのは日本にとって実に恥ずかしいことではないかと。    〔委員長退席、理事菅野壽君着席〕  私は、これから今度は文部省の方にも質問いたしますけれども、まず外務省としましても先ほど来、私はこういうことは余り言いたくはないんですが、もう自白をいたします。私の身内の者も被爆手帳を持っているわけでございます。だから、私は軽い気持ちで言っているんではないということは、こういうことをなるべくこういう席では言うまいと思いましたけれども、どうもこういうファジーな日本の国の、特に戦争に関し、原爆症に関してはやはり毅然たる態度日本はとることが平和への糧であろう、私はそのように思っております。そういう点から私は言いたいことはたくさんあるんですけれどもね。  まず、日本がやるべきことに、ここへ外務大臣はいらしていませんし、総理もいらっしゃらないから、こういう問題に関してはきちっとしたかったんですけれども、日本の外務省としましても特に厚生省あたりとよくコンタクトをとって、被爆国の日本がやはり世界の範となって、こういうものへは積極的な、あいまいな態度をとるんではなくて、明快な態度をきちっととっていくということが私は非常に大事と思っております。  もう一度、ひとつ外務省の方、お願いします。
  180. 杉内直敏

    ○説明員(杉内直敏君) 政府の立場につきましては先ほど御説明いたしたわけでございますけれども、この核兵器の究極的廃絶のためには、政府といたしまして現実の国際情勢の中で実現可能な具体的軍縮措置を着実に進めていくことが重要というふうに考えまして、今次国連総会第一委員会に対しまして、このような我が国の基本的立場を明確にする決議案を提出したところでございます。同決議は圧倒的多数の諸国の支持を得て採択されましたけれども、我が国が訴えてきた現実的かつ着実な核軍縮の努力について広く国際社会の理解が得られたものというふうに考えております。    〔理事菅野壽君退席、委員長着席〕  政府といたしましては、同決議の採択により、国際社会の一層の核軍縮努力が促されることを強く期待するとともに、我が国として引き続き核軍縮の推進のために積極的努力を行っていくというふうな考えを持っております。
  181. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 それは、今のは外務大臣が国連で演説したその内容でしょう。
  182. 杉内直敏

    ○説明員(杉内直敏君) 外務大臣が一般討論演説で述べられたことを踏まえまして、その後第一委員会におきまして我が国が決議案を出しまして、それに対しまして非常に多くの国の支持を得て第一委員会において決議の採択に至ったということを申し上げたわけでございます。
  183. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 そういう機会をとらえて、大いに平和のために、特に核に関しては日本はリーダーとなるべきだろうと思っております。  この国際司法裁判所の、これだって私は、こういうところにせっかくの機会なんだから、よく外務の一貫性ということを言われますが、外務の一貫性をもし言うんであるならば平和のための外務の一貫性というものをやっぱりきちっと示すべきであって、現にこういうようなものが出てきたら、多分もうこれは同時に世界にみんな知れ渡っているわけですよ。だから、平和の確立のために日本がそのリーダー国となるんであるならば、こういうのでもきちんと平和に向かっての一貫性というものは保っていくんだというのはこれはもう当たり前のことですが、もう一度聞きます。
  184. 杉内直敏

    ○説明員(杉内直敏君) 核兵器の問題につきまして、国際司法裁判所からの意見の照会に対して我が国としまして、核兵器の使用は、先ほども申し上げましたけれども、その絶大な破壊力、殺傷力のゆえに国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないものと考えているということを、そういう意見を陳述書で提出したわけでございますけれども、これで我が国の核兵器の問題についての考え方ということは明確に示したものというふうに考えております。
  185. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 明確に示したと言ったって、ファジーにとられてしまうというようなところに問題があるんで、その反省を求めているんです。その反省はないわけですか。
  186. 杉内直敏

    ○説明員(杉内直敏君) 核兵器につきましては、先ほど申し上げましたような考え方で、その究極的廃絶に向かって努力を積み重ねていくということは政府といたしまして強い気持ちで受けとめておりまして、今後ともその気持ちを踏まえまして可能な限りの努力を、またそういった我が国の考え方が国際社会でも理解され、国際的な各国政府協力も得ながら究極的廃絶に向かっての努力を積み重ねてまいりたいと考えております。
  187. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 僕のには全然答弁してないのでありまして、またパールハーバー・サプライズ・アタックに関してでもやっとこの前外務省は遅まきながら出した。そのときだって、まあそのことについて今触れる時間はございませんから触れませんけれども、今のような答弁では、私が要求しているのは、そういうような回答を出したということは、実に日本がファジーにとられたということは申しわけない、アポロジャイズする、やっぱりそういうはっきりしたところがないと、私は日本はいつまでたってもあいまいな日本ということになってしまうと思います。  もう一度答弁を求めます。
  188. 杉内直敏

    ○説明員(杉内直敏君) あいまいにとられるということを先生おっしゃっているわけでございますけれども、核兵器に対する日本政府の考え方、姿勢につきましては、先ほど来申し上げております点で明らかにされているというふうに考えます。
  189. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 委員長、ちょっとちゃんとしてください。
  190. 種田誠

    ○委員長(種田誠君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  191. 種田誠

    ○委員長(種田誠君) 速記を起こしてください。
  192. 杉内直敏

    ○説明員(杉内直敏君) この問題におきましては、唯一の被爆国として核廃絶に向けたメッセージを送るべきであるとの外務委員会における御指摘を念頭に置きつつ、さらに予算委員会での議論等を踏まえ、唯一の被爆国として核兵器の究極的廃絶に向けての我が国の決意を一層明確にするのが適当と判断するに至りまして、先ほども申し上げましたように、核兵器の使用はその絶大な破壊力、殺傷力のゆえに国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないものと考えているという陳述書を提出したわけでございます。
  193. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 外務省としましてはちゃんとした文書を出したのに国際司法裁があいまいと判断したと、そういうことですね。外務省とすればきちんとしたものを出したのに、向こうが勝手にファジーな国の中に入れたんだということですね。
  194. 杉内直敏

    ○説明員(杉内直敏君) 私どもの提出いたしました陳述書の内容について国際司法裁判所が判断を下したというようなことはいまだございません。先ほど先生御指摘の新聞記事に書いてありますことも、そのような新聞の記事はございますけれども、この点については国際的な判断をなされたものではないというふうに考えております。
  195. 種田誠

    ○委員長(種田誠君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  196. 種田誠

    ○委員長(種田誠君) 速記を起こしてください。
  197. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 先ほども申し上げましたが、いずれにしましてもこの被爆者援護法というものが引き金となりまして、平和のために糧になればと願っております。  だけれども、あのキノコ雲があのように記念切手になるとか、あそこに書いてありますのは「アトミック ボムズ ヘイズンウォーズ エンド」というような言葉が出ておりますが、これは私には理解できませんし、また許すこともできない言葉でございます。多分そこに意味しているのは、原爆投下が戦争を早期に終わらせ多くの人を救ったんだ、人命を救ったんだと、こういう意見が外国にあるということも私は知っております。たとえ百歩譲っても、広島と長崎に時を異にし、しかも二種類の原爆をなぜ落とさねばならなかったか。この辺も、これはだれに聞いてもなかなか答えが出るものではない。ただし、これは事実でありますし、それからまたもっと言葉を加えるならば、日本に落ちたということは有色人の国に落ちたということもこれは事実であります。  私は、個々については私なりの見解も持っておりますが、いずれにしてもこの原爆に関する被爆者援護法というものが今制定されるに当たりまして、戦後五十年の総括、そしてくどいようですが、平和への我々の力強い歩みというか、そういうものを確実なものとしていくために私は教育が非常に大事だろうと思うんです。  そこで、私の考えを申し述べ、答弁をいただきたいと思いますが、私は教育の一番の根本というのはやっぱり真実を教えると。やはり真実を隠しておいて、無知に置いて教育された者が戦争というのは怖いものということを知らない。また、原爆というものが本当にこんなにも恐ろしいものだということを隠しておいて平和を築こうとするならば、あの有名なバートランド・ラッセルが言いました、そこには倫理的弱さがあるんだと。  そういう観点から、日本の今まで歩んできたこの五十年の教育の中でまず一つびっくりしましたのは、私はドイツ教科書を調べてみましたら、当時の西ドイツでもあのキノコ雲とそして戦争の悲惨さ、これはヒトラーの行ったアウシュビッツのあの事件と同等に扱っているんです。日本では、今では教科書の終わりの方にやっと出るようになりましたけれども、こういうのはイデオロギーの問題ではないんです。人間存在の基本的問題として平和の問題というのはしっかりと我々はとめておかなければならない。  そういう点に関して、これは文部省にも関係いたしますから、文部省の方からも答弁をお願いします。
  198. 清水潔

    ○説明員(清水潔君) お答え申し上げます。  まず、戦争に関する教育上の取り扱いについてのお尋ねでございますけれども、学校教育におきましては、憲法教育基本法を踏まえて平和的な国家及び社会の形成者として必要な資質を養うということとしており、戦争を防止し、平和を確立するための熱意と協力態度を育てるということは極めて重要であるという認識を持っております。  このため、小学校、中学校、高等学校の主に社会科あるいは歴史分野等においてでございますけれども、今先生御指摘がございましたように、原爆の投下を含めた今回の戦争の経過あるいは戦時下の国民生活あるいはアジア諸国民に与えた被害等々につきまして、それぞれ児童生徒の発達段階において指導されているところでございます。  教科書についてのお尋ねでございますけれども、教科書についていわゆる戦争あるいは被爆の被害に伴う記述の状況というお尋ねであろうかと思いますけれども、これについては例えば小学校段階におきましても、広島における被爆者の方々の体験談を登載したり、あるいは中学校段階でも同じようでございますけれども、それぞれにさまざまな工夫が凝らされているというふうに私ども思っております。  以上のような状況でございます。
  199. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 これは大臣ではないですから、姿勢までは今の答弁には出ませんでしたけれども、いずれにしてもこの日本で、くどいようですが、やはりリアリティーというか、現実というか、事実というか、やっぱりそういうようなものを子供に知らせていくという姿勢だけは、そのもとにつくっていく平和でなければ、知らされない者に戦争の抑止力というようなものが出てくるはずがない。やはりこれは教育の根幹であり、私は大事な点であると思いますから、それは指摘しておきます。  いずれにしましても、今回はこの被爆者援護法について議論をしてきたわけでございますが、被爆国という宿命を我々はみんな背負い、この歴史的体験というものを一人一人が消化し、これを糧としなきゃならないそういう立場にあるだろうと思います。  私たちの北国では雪が解ければ春が来ると、こう言いますが、冷戦が終わっても御案内のとおりに血で血を洗っているのが現状でございます。この悲惨な局地戦争というのは終わりを知っておりません。戦争を起こした者、始めた者、戦った者よりも、その状況の中で最も一番弱い者にそのツケがいっているというこの戦争が示す事実、やっぱりこういうものを我々は重く受けとめていかなければならないだろうと思います。  この被爆者援護法という法律の制定を契機としまして、日本が世界平和へのリーダーとなることを私は祈っております。最後に、大臣ひとつ決意のほどをお願いいたします。
  200. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 広島、長崎の原爆被害は、御存じのように原爆の熱線あるいは爆風、放射線により広範な地域で多数の人命を奪い、健康上の障害をもたらすなど悲惨きわまりないものでございました。また、原爆放射能に起因する健康上の障害についても、直後の急性原爆症に加えて白血病とか甲状腺がん等の晩発障害があるなど、一般戦災による被害に比べ際立った特殊性を持った被害であると考えておりますし、午前中に高桑先生から、特に遺伝的なあれも教えていただいた次第であります。  このような原爆の悲惨な被害について、被爆者対策を所管する厚生大臣として、また世界で唯一の被爆国の厚生大臣としての立場から申し上げますれば、核兵器の使用は人道主義の精神に反するものであって、二度とあってはならないと考えております。その意味でも、今回の法案の前文において明らかにしておりますように、核の惨禍が二度と繰り返されることのないよう、核兵器の究極的な廃絶と恒久平和の確立に向かつて我が国として努力を重ねていくことをこの際さらに国民全部で、特に政治に携わる者は決意を新たにしなくちゃいかぬと思います。  私も、小さいときでしょうか、永井隆先生の「この子を残して」とか、あるいは小学校時代でしたから「原爆の子」といった映画なんかもすぐ身近にありましたが、私の子供たちがああいう本を読んでいるかというと、今余り読む機会がなさそうで、そういった意味ではこれを風化させちゃいかぬな、そういうのは親の責任じゃないかな、こんなふうにも思っておるところであります。
  201. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 終わります。
  202. 西山登紀子

    ○西山登紀子君 十二月二日に衆議院の本会議で被爆者援護法が可決をされまして参議院に送付されてきたわけですけれども、この可決と送付ということにつきまして、被爆地の広島それから長崎では、参議院でぜひ被爆者の心情に配慮して法案を見直してほしいとの声が上がっております。  平岡広島市長はこういうコメントを出していらっしゃいます。特別葬祭給付金の支給などは一歩前進なのだが、被爆者にとってはやはり不満が残る。それから、本島長崎市長はこういうコメントを出していらっしゃるわけです。国家補償が明記されず、支給対象も限定されるなど、法案の後退は残念だ、被爆者の実情に配慮をして参議院では十分審議をしてほしい、このように語っていらっしゃいます。  私は京都なんですけれども、京都にも被爆者の方々が千七百人ほどいらっしゃるわけです。そこで、被爆者の方々の直接の声を聞いてみました。ある被爆者懇談会の方は、これは魂と心のこもったものとは言いがたい、それにしてもひどい内容になっている、国家責任の明記も年金も消えた、特別給付金も死者に対する補償にはなっていない、このように大変落胆をしていらっしゃるわけです。  そこで、大臣にお伺いしますけれども、本法案が被爆者にとっては非常に不満なものであり、実情に即してぜひ見直してほしいんだと、こういった被爆者や被爆地それから国民の声をどのように受けとめていらっしゃいますか、お伺いをいたします。
  203. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 今、先生御指摘のような御意見があることは私も聞いております、必ずしもすべてとは思っておりませんが。  被爆者についてのみ戦争責任に基づく国家補償を行うということになりますと、先ほど来御答弁申し上げておりますように、一般戦災者との均衡など基本的な問題があるわけでございます。国家補償という用語についてはどのような概念を指すものか確立した定義がないことから、被爆者に対する給付を内容とする新法においての表現にこれを用いますと、先ほどの前島先生の御質問のような国の戦争責任に基づく補償を意味するものと受け取られる可能性も強いわけであります。  したがってその場合に、最初に申し上げましたように、被爆者に対して国の戦争責任を認めるのであれば一般戦災者との均衡上問題が生じるといったことなどから、国家補償を明記するような修正は私ども考えてはおりません。
  204. 西山登紀子

    ○西山登紀子君 先ほど来からずっと繰り返し同じような答弁が続いているわけです。  そこで、大臣にお伺いしたいんですけれども、なぜこのように国民の間に厳しい批判の声が起こるのかということです。  御承知のように、国家補償の被爆者援護法というのは本参議院において二度可決をしているわけです。国家補償の被爆者援護法の制定を求める国会請願署名というのは一千万を突破しています。地方議会から上げられた決議、意見書は、全自治体の七四%に当たる二千四百六十五の自治体に及んでいます。国会議員の賛同署名というのは、衆参両院合わせて三分の二に達しているわけです。  こうした状況を見ればおわかりのとおりに、国家補償に基づく援護法というのは、運動の広がりやその深さから見てもまさに国民的要望になっているのではないでしょうか。被爆者と国民の願いになっている、そう見るのが妥当ではありませんか。
  205. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 過般といいましょうか、過ぐる年、参議院において二度可決されたことも私承知しておりますが、衆議院では可決に至りませんでした。  今回、戦後五十年というこの節目のときを迎えて、このような内容で各党の合意ができて、衆議院を通過して、今参議院で御審議をいただいておる。そういう意味では、いろんな御意見がある中で、ようやく成立に向かって協議の末達せられたぎりぎりの合意点にこの法案が位置しておる、こう考えております。
  206. 西山登紀子

    ○西山登紀子君 一般被災者との均衡を一つの理由にして被爆者援護法を国家補償とはできないというような御答弁があるわけですけれども、国民はどう考えているかという点で私先ほどの例を出しました。請願署名も一千万を超え、自治体も二千四百六十五自治体、全自治体の七四%にわたる自治体がこれが必要だということで決議もしている。本参議院では二度も可決をしている。国会議員もかつては三分の二が賛同署名をしていらっしやった。  こういうことで、国民の間には国家補償に基づく被爆者援護法をつくってもらってもいいという大きな支持、そういうものが広がっていると、そう見るのが妥当ではないかということをお聞きしたわけですけれども、続いてお伺いをいたします。  これほどの国民の支持があるのも、私は原爆の被爆という実相が非常に深刻だからだと思います。本法案の前文の冒頭にはこういうふうに述べられています。「昭和二十年八月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾という比類のない破壊兵器は、幾多の尊い生命を一瞬にして奪ったのみならず、たとい一命をとりとめた被爆者にも、生涯いやすことのできない傷跡と後遺症を残し、不安の中での生活をもたらした。」と述べているわけです。  実は私のおじも大学の医学生でしたが、卒業して最初の赴任地が広島の陸軍病院でした。ですから、直爆を受けて八月六日に一瞬にして蒸発をしたと聞かされています。まさにジェノサイド、私はこのように原爆のことを思って育ちました。  こうした被害の実相についての国民的な一般的な認識があるからこそ、国家補償を明確にした援護法の制定を国民は支持し求めているのではないでしょうか。
  207. 谷修一

    政府委員(谷修一君) 今お触れになりましたように、この前文でも、冒頭に「原子爆弾という比類のない破壊兵器は、幾多の尊い生命を一瞬にして奪った」ということを書かせていただいているわけでございますが、広島、長崎の原爆被害というものが原爆の熱線、爆風、放射線というものによりまして広範な地域で多くの人命を奪い、健康上の障害をもたらすなど、非常に悲惨きわまりないものであったということは私どもも十分に認識をしております。  こういったような健康上の障害につきましては、直後の急性原爆症というものに加えまして白血病など後から出てくる晩発障害があるといったようなことで、一般戦災による被害に比べまして際立った特殊性を持った被害だということは認識をしております。  昭和五十五年の基本問題懇談会におきましても、戦争という非常事態のもとで国民が「何らかの犠牲を余儀なくされたとしても、それは、国をあげての戦争による「一般の犠牲」として、すべての国民がひとしく受忍しなければならない」としておりますが、一方においてこの原爆放射線による健康障害というのは、先ほど申しましたような意味においての一般の戦争損害とは一線を画すべき特別の犠牲だという考えを述べられているわけでございます。  私どもといたしましては、そういうことでこの原爆被害の特殊性、特別の犠牲ということに着目をして従来現行二法によります対策をやってまいりましたし、今回御提案をさせていただいているものも、原爆によります被害の特殊性ということに着目をした新法を提案させていただいているところでございます。
  208. 西山登紀子

    ○西山登紀子君 次に、大臣にお伺いをいたしますが、本法案では国の責任において総合的な援護対策を講ずるというふうになっているわけです。この点については朝からずっと議論がされているところですけれども、もともと年金にいたしましても医療にいたしましても、全国民的な政策というのは本来国の責任において実施されるものではないでしょうか。いわばそれは当然のことなんですね。  当然のことをわざわざ明記する特別の意図があるのか。「国の責任においてこというふうにわざわざそこに明記されたその意義、そういうものがあればおっしゃってください。
  209. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 午前中以来何人かの先生方からほぼ同じような御質問をちょうだいしたわけでございますが、今回の新法は、被爆後五十年の節目の年を迎えるに当たり、高齢化の進行など被爆者を取り巻く環境の変化を踏まえて、現行の被爆者対策をより一層充実発展させ、保健、医療福祉にわたる総合的な対策を講じようとするものでございます。  新法において「国の責任においてこという表現を前文に特に盛り込みましたのは、こうした制定の趣旨を踏まえて、被爆者対策に関する事業の実施主体としての国の役割を明確にし、あわせて原爆放射能というほかの戦争被害とは異なる特殊な被害に関し、被爆者の方々の実情に即応した施策を講ずるという国の姿勢を新法全体を通じる基本原則として明らかにしたところでございます。
  210. 西山登紀子

    ○西山登紀子君 大臣にお伺いしますけれども、「国の責任においてこというふうな言葉をわざわざ入れなくても、現行の原爆二法は不十分でありましても国の責任においてやっているわけなんですね。ですから、これだけでは私は今と変わらないというふうに申し上げたいわけです。法律の名前だけは援護法という名前を使っている。しかしその立場というのは、今の原爆二法は不十分であるけれども国の責任においてやっている。その原爆二法の立場と何ら変わらない。  こういうところで被爆者の人々が失望し、非常に怒っているのだと思います。私は、この国家補償の立場をなぜ明記してくれなかったのかということに本法案に対する被爆者の最も大きな失望点が集中しているというふうに理解をしているわけです。日本原水爆被害者団体協議会の要請には強い抗議の表明すらされているわけです。衆議院の公聴会とか参考人の質疑でも失望、怒りが強く表明されたところだと思います。  国家補償に基づく理念というのは、いわば被爆者援護法の魂だと思います。それでは国家補償の理念というのは何かということですけれども、これは原爆の被害に対する国家責任を明確にすること、そしてすべての被爆者とその遺族に対して謝罪と補償を行うこと、さらに核兵器の廃絶と再び戦争の惨禍を繰り返さない決意を込めるということ、これが国家補償の理念だと思いますし、参議院で可決をされてきた被爆者援護法に盛り込まれている「国家補償の精神に基づき、」と、こういうふうに第一条になっていたわけですけれども、その理念というものはこういうものだというふうに私は考えております。  先ほども述べましたが、本法案の冒頭にも非常に重大な被害であるということを述べられているわけですけれども、さらに詳しく、先ほど来原爆被爆者対策基本問題懇談会ということでしばしば引用されているわけですけれども、私もその基本懇の中から少し引用をさせていただきますが、この原爆の実相というのは本当にひどいものです。この被爆者基本問題懇談会でも原爆の実相をこのように書かれているわけです。  広島及び長崎における原爆投下は、歴史はじまって以来初めて人類に対して原爆の恐るべき威力を発揮したものであり、これによる原爆被害は悲惨きわまりないものであった。すなわちその無警告の無差別的奇襲攻撃により、前代未聞の熱線、爆風及び放射線が瞬時にして、広範な地域にわたり多数の尊い人間の生命を奪い、健康上の障害をもたらし、人間の想像を絶した地獄を出現した。さらに言えば、この惨禍で危うく死を免れた者の中にも原爆に起因する放射線の作用により、三十五年を経た今日なお、晩発障害になやまされている者が少なくない。原爆放射線による健康上の障害には、原爆直後の急性原爆症に加えて、白血病、甲状腺がん等の晩発障害があり、これらは、原爆後数年ないし十年以上経過してから発生するという特異性をもつものであり、この点が一般の戦災による被害と比べ、際立った特殊性をもった被害であると言うことができる。このように報告は述べているわけです。  大臣にお伺いいたしますけれども、人間の想像を絶した地獄、こういう特別の残虐性を持った原爆被害の実相は、一般被害者との均衡論を持ち出して退けることのできないまさに国家補償による救済こそがふさわしいのではないでしょうか。大臣の御見解をお伺いいたします。
  211. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 私どもの考え方もこの基本悲報告にのっとったものだと認識しております。そして、この基本悲報告におきましては「広い意味における国家補償」という用語が使われておるわけでございますが、その意味するところは報告書の中で詳しく述べた上で用いられているわけでございます。  したがいまして、限られた字数の中で意味、内容を解釈する法文の中では、国家補償という用語が国のどのような責任に基づく補償を意味するのか明確にすることが非常に困難であります。そのため、そうした定義が確立していない用語をもしこの法律の中に入れますと、被爆者に対する給付を内容とする新法において用いますと国の戦争責任に基づく補償を意味するものと受け取られる可能性が強いこと、またその場合に、被爆者に対して国の戦争責任を認めるのであれば一般戦災者との均衡上問題が生じることなどの理由を考慮いたしまして、私どもはそういう解釈というか見解に立っておりませんものですから、国家補償という文言をこの法案に取り込むことは適当でないと考えたところであります。  先生は、一般戦災とは異にするがゆえにむしろ国家補償というのを使えというお考え、それはそれで私は一つの考え方だと思いますが、私どもと立場を異にすると思うところであります。
  212. 西山登紀子

    ○西山登紀子君 一般被災者に対して何もしなくてもいいというふうに言っているわけではありません。原爆被害者に対して国家補償をやらない理由に一般被災者との均衡論を持ち出すことはこの被爆の実相に対してふさわしくない、そういうふうに申し上げているわけです。被爆者は今の大臣のような御答弁ではとても納得はしないと思います。  私は次に、特別葬祭給付金についてお伺いをしたいと思います。  本法案の特別葬祭給付金、十万円というんですけれども、これは生存する被爆者対策として被爆者手帳を持つ遺族に限って支給する、こういうふうになっているわけですね。それはそういうことでしょうか。
  213. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 今お話がございましたように、政府案で提案をしておりますこの特別葬祭給付金は、原爆の投下から被爆者対策の充実を見るまでの間に亡くなられた方が経験された苦難ということに対しまして、自分自身も被爆者としてこうした死没者の方々と苦難をともに経験された遺族という、いわば二重の意味での特別な不安や精神的な苦悩ということに着目して給付をするものでございます。  したがいまして、こうした死没者の方々と苦難をともに経験した遺族であって御自身も被爆者としていわば二重の犠牲を払ってこられた方に対して、生存被爆者対策の一環として支給をするものでございますので、支給を受けられる方は現在生存されている被爆者、被爆手帳を持っておられる方ということでございます。
  214. 西山登紀子

    ○西山登紀子君 この点にもいろんな意見が集中したところですね。私は集中するのは当然だというふうに思います。  国家補償の立場に立つ被爆者援護法をというふうに切なる願いをしていた人たちは、すべての死没者に対する弔慰金としての特別給付金、これを切実に願っていたわけです。ところが、これはそういうものではないですね、明確にない。明確にないわけですが、そこでない場合にも問題はいろいろあるわけです。  当時被爆された方の中には広島、長崎に強制連行されて働かされていた外国人、朝鮮人の方の問題、朝ありましたけれども、それ以外にも外国の方はいらっしゃいます。単身赴任をしていて被爆して亡くなった軍人や軍属、学生、会社員など多数に上るわけです。また、当時疎開をしていて家族を亡くした原爆孤児、四千人以上と言われているわけですけれども、こうした方々は対象から除かれてしまうわけですね。また、同じ原爆で兄弟を殺されたのにもらえない人もいるわけです。ですから、被爆者の中から、被爆者の中に差別を持ち込むのか、原爆で亡くなった人の間に今まで差別をするのか、こういうことは絶対やめてほしいという声が上がるのは私は当然だというふうに思います。  そこで、一つの例を御紹介したいと思うんですけれども、先ほど外国人の方々の被爆者の例が出されましたが、京都の洛北に円光寺という小さなお寺があります。そのお寺に大変変わった形のイスラム風の白いお墓があるんです。それには「モハメド・アルサゴフの息子 サイド・オマールマラヤ 一九四五年九月三日」と墓石に刻まれていまして、手前に武者小路実篤が寄せた追悼の辞が碑になっているわけです。  このオマールさんという方は、十九歳で広島の原爆で亡くなられたわけですが、アジア・太平洋戦争中の昭和十八年、東南アジア諸国の占領政策として始まった南方特別留学生の第一期生として日本に来ていた。広島の興南寮というところに住みながら勉強をしていたわけですね。そこで、八月六日、ほかの八人の南方特別留学生とともに被爆をいたしまして、みずからの傷も顧みずにたくさんの被災者の救助に奔走しておりまして、帰国する途中で病状が悪化して京都に下車された。そして京大病院に入院をしたわけですけれども、当時ですからどんな治療の施しようもなく、結局は九月四日に亡くなられたわけですが、当時は小さな土盛りのような形でしか葬られていませんでした。余りにもかわいそうだ、そしてまた日本人にとってそのように放置しておくのは恥だということで、心ある人がこの円光寺さんにお墓をつくられたということが今新しく話題になりまして、私もお参りをいたしましたし、地域の子供たちや皆さんが毎年慰霊祭をやられているわけです。  こういうマレーシアのようなところから一つの戦争政策として連れてこられて十九歳の命を落とさなければならなかった、そういう外国人もいるわけです。こういう人は、ではどうなるのかということです。  また、先ほどもお話しいたしましたが、京都の被爆者の方からお話を伺ってきましたけれども、同じきようだいで、同じ長崎に住んでいて両親と妹を瞬時にして亡くした。いわば壊滅状態。通学途中の弟と自分は助かった、そしてもう一人の妹は疎開していたので被爆をしていなかったということで今度のこの補償の対象からは除外をされてしまいます。  というようなことで、この法案自体に非常に合理性がないし、正当性がない。確かに、さかのぼって支給するということはいいことですし、評価はします。むしろ当然の措置だというふうに考えるわけです。しかし、やはりこういう整合性、合理性がないことについては再検討する必要があるというふうに思うわけです。すべての遺族に広げるというようなことの再検討を強く要求いたしますけれども、どうでしょう。
  215. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 今回の特別葬祭給付金につきましては、先ほども申しましたように生存被爆者対策という現行対策の枠の中でやっていくということを基本にいたしているわけでございます。  そういう意味で、今先生から御提案がございましたすべての死没者の遺族を対象にするということにつきましては、特に死没者に着目して給付を行う場合にはこの給付金の性格というものが弔慰金と区別ができなくなるのではないか。したがって、その場合には一般戦災者との間の均衡ということについて問題が出てくるのではないか。そしてまた、現在やっております被爆者対策というものが、先ほど来申し上げておりますような原爆放射能に起因する健康障害が他の戦争障害とは異なる特別の犠牲であるというそこのところに着目して対策を進めてきたというようなことから、この支給を受けられる対象者としては現在生存されておられる被爆者ということに限定をしたわけでございます。  そのような意味からいって、私どもといたしましてはすべての死没者の遺族にこの対象範囲を拡大するということは考えておりません。
  216. 西山登紀子

    ○西山登紀子君 一つお伺いしたいんですけれども、葬祭料が創設されたとき、昭和四十四年四月一日以降に死亡した被爆者の遺族に葬祭料が出されると、そのときにはその遺族の中に被爆者かどうかということの区別があったんでしょうか。
  217. 谷修一

    ○政府委員(谷修一君) 昭和四十四年から支給をされております葬祭料につきましては、支給対象者は葬祭を行った者という形になっておりますので、限定はしておりません。
  218. 西山登紀子

    ○西山登紀子君 そのように、四十四年四月一日以降に葬祭をした人たちについては、被爆者の遺族は被爆者手帳を持っているかどうかという区別はなかったわけです。ですから、いろんな意味でいろんなこじつけをしなければつじつまが合わないというようなことは、結局は国家補償による被爆者援護法をつくるという立場に立っていないからいろいろなところでこじつけをしなければいけない、整合性がなくなってくるというふうに私は思います。  そこで、一つ大臣にお伺いしたいんですけれども、来年は被爆五十年を迎えるわけですが、五十年という月日というのは決して短い月日ではありません。私は昭和十八年に生まれたわけですけれども、この五十年という時を振り返ってみますと、本当に被爆者対策の立ちおくれというのはひどいものだというふうに思うわけです。  被爆者の中には、せめて被爆者援護法ができるまでは生きていたいと、そのことを生きがいに生き続けた人もいます。しかし、そう思いながらも亡くなられた被爆者も多いわけですね。言語に絶する被爆体験を強いられ、一九五七年の原爆医療法まで十二年も放置されていて、特にアメリカ占領下では原爆の被害の実相を声を大にして語ることもあるいは究明することもできずに、また十分な治療を受けることもままならず多くの方が亡くなっていきました。  このような被爆者に対して、先ほど私が例に出しました一九八〇年十二月の原爆被爆者対策基本問題懇談会の報告というのは、先ほど引用した部分は「人間の想像を絶した地獄を現出した。」というふうに述べているんですが、その後の対策という点につきましてこの基本懇は、「国をあげての戦争による「一般の犠牲」として、すべての国民がひとしく受忍しなければならない」ものであるということで、実は戦争犠牲の受忍論を押しつけたわけです。私は、この点が基本懇の意見の最大の欠陥だと考えているわけです。  しかし、八〇年にそのような基本懇の報告が出された後にも被爆者は決してそういう立場に甘んじようとはしません。受忍はいたしませんでした。そうではなかったでしょうか。被爆者が、そうだ、一般の犠牲者たちと同じなんだということで受忍をしたかどうか、この間の経過につきまして大臣の認識をお伺いいたします。
  219. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 基本懇のいわゆる戦争犠牲受忍論でございますが、これは国民ひとしくであって、被爆者の皆さんだけに押しつけているものではないと私は解釈します。  戦争という国の存亡をかけた非常事態での行為について、法律論として国の不法行為責任があると言うことはできないという意味だと考えておりますし、被爆者に対する援護施策につきましては、原爆放射能というほかの戦争被害とは異なる特殊の被害があることにかんがみて、その特殊性に応じたさまざまな施策を講じるべきだというのが基本懇の考え方じゃないかと私は理解をしております。
  220. 西山登紀子

    ○西山登紀子君 被爆者は、一九八〇年のそういう受忍をせよというような報告が出された後にも、むしろ運動は未曾有の広がりを見せて国民的な要求に発展し、先ほど私が紹介しましたような国民的運動となって広がって、しかも国会の中の力関係、そういったものにも反映をしたわけなんです。被爆者の方が受忍できないその最大の理由というのは、原爆の被害が実に恐ろしい、人類が想像することができない恐ろしい被害、つまり人間が人間でなくなるような被害だからだということを私は申し上げたいと思うんです。  もう一つ、京都でお伺いした例を出したいと思います。大変悲惨な状況です。  だんなさんが被爆者で、再婚された奥さんがお話をしてくれたわけですけれども、八年間看病を続けてきたけれども夫は二年前に死亡したと、実は再婚なんだと。再婚するときに夫は被爆者であることを隠していました。いざ病気で倒れて、八年間寝ていらっしゃったわけですけれども、最期は体の穴という穴から血が噴き出して死んだ。そのときは被爆者であるということがわかっていたんですが、お医者さんは、被爆者だから病状は特殊だと、手の施しようがないということで死んでいった。手の施しようがない、特殊だから。治療も、血が噴き出してしまって、それをとめようとしても方法も何もない。こういう状況で死んでいったということです。また、先妻との間には娘があったけれども、その子も原爆症で、常に夫は、わしの恐ろしい血が流れていると思うとたまらぬと言って泣いていたと。その再婚された奥さんとの間には子供はなかったんですけれども、その方がよかったというふうに奥さんは述懐をされているわけですね。  このように原爆の被害というのは人が人でなくなる、これほどにも恐ろしいものだということから被爆者は、こういう人生、こういう生きざまをだれが強いたのかということについては国家補償を要求しなければ決して浮かばれないというんでしょうか、死んでも死に切れない、そういう思いがあるわけです。決して運動の火は消えないと思います。  引き続いて、大臣にお伺いしますけれども、本法案についていろいろ努力されたということをおっしゃいますけれども、被爆者が納得するというふうにお考えでしょうか。本当によかったと満足をして、これまでの運動や国家補償の精神に基づく被爆者援護法の制定の運動がこれでよかったということで終えんするというふうにお考えになるかどうか、お伺いいたします。
  221. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 今回御審議いただいております法案につきましては、被爆者に対する総合的な援護対策を講ずると評価していただいている意見がある一方、先生が今御紹介くださったような戦争責任に基づく国家補償を求める意見もあることは私も承知しております。  しかしながら、繰り返しになりますが、被爆者についてのみ戦争責任に基づく国家補償を行うことにつきましては、一般戦災者との均衡など基本的な問題がございます。また、今回の政府案は、被爆者の方々の高齢化を踏まえ被爆者対策の前進を図るものでございまして、現状で考え得る最善のものと私は思っておりまして、国民の皆様にも御理解をいただけるものと考えております。
  222. 西山登紀子

    ○西山登紀子君 被爆者は絶対に納得しないし、また運動も決して終わらないだろうと私は思います。  次に、被爆者が国家補償を望むのは単に給付の問題だけではないわけですね。被爆者の方々は、自分たちが味わったあの非人間的な体験をもう二度とだれにも味わわせたくないという核兵器廃絶への悲願が込められているわけです。本法案の前文には「究極的」という言葉が二度出てくるわけですが、究極的な核兵器廃絶という言葉は、私は核兵器の廃棄を永遠のかなたに追いやる立場だというふうに思っています。  ことしの八月六日、広島の平和祈念式典での平和宣言で平岡市長は、「ヒロシマは、ナガサキとともに世界の核保有国の指導者に訴える。即刻、すべての核兵器の廃棄を宣言すべきだ」と述べているわけです。核兵器の廃絶というのは即刻の課題だということを求めているわけですね。被爆者と国民の切実な願いがそこに込められております。  六十年に被爆者の実態調査をやっておられるわけですが、自由記載で希望を書くということで資料のまとめが出ておりますけれども、その中でも、被爆者の人たちが最も望んでいる第一ランクに出てくるのは恒久平和と核廃絶です。被爆者の人たちの願いはそれが一番に出てきているわけです。  そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、戦後五十年を迎えるに当たって被爆国日本の政府が、原爆被害の実相を通じて核兵器と人類は共存はできない、即刻廃棄しかないと国際社会にはっきりと明言してほしい。大臣はこういう被爆者のお気持ち、願い、このことをおわかりになるかどうか。おわかりになると思いますが、どうですか。
  223. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 被爆者対策を所管する厚生大臣として、核兵器の使用は人道主義に反するものであって二度とあってはならないと考えております。  核廃絶への願いは、被爆者の皆さんはもちろん、世界で唯一の被爆国である我が国国民の願いであります。今回の法案におきましても、核兵器の究極的廃絶と恒久の平和を念願することを盛り込んだところでございますし、先般国連の、あれは第一委員会というんでしょうか、日本が単独で核軍縮決議案を提出し委員会で採択されたわけでございますが、これも私はこの時期に大変意味があることだったと思います。  五十年を契機に、まさに被爆者の皆さんあるいは犠牲になられた皆さんのとうとい犠牲やあるいは悲願におこたえする意味でも、核兵器の究極的廃絶と恒久の平和に向かって邁進をしていかなくちゃならぬ、こう考えております。
  224. 西山登紀子

    ○西山登紀子君 最後に、大臣に二問お伺いをいたします。  一つは、先ほど来ありましたアメリカの郵便公社が原爆のキノコ雲を図案にした記念切手を発行するという問題についてですが、被爆者問題を所管する大臣として、アメリカ政府に対してノーモア・ヒバクシャ、ノーモア・ヒロシマ・ナガサキ、こういう立場を明確にした態度をとっていただきたいというのがその一つです。  それからもう一つは、アメリカのように公然と核兵器を正当化するということはないまでも、外国の中にはまだまだ核兵器についての恐ろしさ、その実態が十分知らされていないと思うんです。私は一年間スイスに住んでいたことがあるんですけれども、スイスはあの強固なアルプスの岩肌にたくさんの核シェルターを掘っております。五百万人とも三百万人とも言われる国民が核戦争になれば入ることができるような核シェルターをつくっている。私が住んでおりましたすぐそばにも核シェルターがありました。実相が知らされていないということについて、私はむしろ日本政府が唯一の被爆国としての実相を世界じゅうに徹底する、知らせるということについて重大な怠慢があり、その点に非常に重大な責任があるということを痛感して帰ってきたものです。  そこで、ノーモア・ヒロシマ・ナガサキ・ヒバクシャを実現するためにも、原爆被害の実相を世界の諸外国に伝える原爆白書、それから文書や映像などなど、できる限りのあらゆることをやるという、そういう御決意をお伺いしたいと思います。
  225. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) アメリカのキノコ雲切手につきましては、唯一の被爆国である我が国の国民の感情を逆なでするような問題であり、私も大変その取り扱いについては関心を持っておりますし、けさほども河野外務大臣に、厚生委員会でも大変な議論を呼んでいる、ひとつきちっとした態度でアメリカに立ち向かってくれと、こういうお願いをいたしたところであります。  原爆白書というんでしょうか、たまたまといいますか来年は十年ごとに調査をする年でもございますし、まさに被爆五十周年にもなるわけでございます。そういった意味で、被爆者の実態調査を予定しております。原爆白書と銘打つかどうかはまだ決めではありませんが、きちっとした調査をしていくつもりでありますし、また現在検討中でございます原爆死没者慰霊等施設につきましては、原爆に関する各種資料の収集とか情報提供や国際交流、まさに世界に原爆の悲惨さあるいはむごさといったものを知っていただけるような発信基地としての機能を持たせたい、こんなふうに考えておるところであります。
  226. 種田誠

    ○委員長(種田誠君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十七分散会