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1983-08-11 第99回国会 参議院 法務委員会 閉1号 公式Web版

  1. 昭和五十八年八月十一日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員の異動  八月十一日     辞任         補欠選任      徳永 正利君     吉村 真事君      藤田 正明君     浦田  勝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大川 清幸君     理 事                 竹内  潔君                 中西 一郎君                 飯田 忠雄君     委 員                 海江田鶴造君                 浦田  勝君                 土屋 義彦君                 吉村 真事君                 寺田 熊雄君                 橋本  敦君                 柳澤 錬造君    国務大臣        法 務 大 臣  秦野  章君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   小野 幹雄君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君    説明員        警察庁刑事局捜        査第一課長    三上 和幸君        警察庁刑事局保        安部保安課長   仲村 規雄君        警察庁警備局審        議官       三島健二郎君        警察庁警備局外        事課長      吉野  準君        行政管理庁長官        官房審議官    古橋源六郎君        法務省刑事局長  前田  宏君        法務省矯正局長  鈴木 義男君        法務省人権擁護        局長       鈴木  弘君        外務省アジア局        審議官      藤井 宏昭君        大蔵省主計局主        計官       吉本 修二君        大蔵省銀行局中        小金融課長    朝比奈秀夫君        自治大臣官房審        議官       金子  清君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判の運営等に関する調査  (免田事件及び再審制度に関する件)  (死刑制度に関する件)  (右翼暴力の取締り等に関する件)  (金大中氏事件に関する件)  (消費者金融に関する件)     ─────────────
  2. 大川清幸

    ○委員長(大川清幸君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  本日、徳永正利君及び藤田正明君が委員を辞任され、その補欠として吉村真事君及び浦田勝君が選任されました。     ─────────────
  3. 大川清幸

    ○委員長(大川清幸君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 死刑囚再審事件におきまして、死刑判決の執行力が失われる時期について、法務当局は現在の段階でどのような見解を持っておられますか、ちょっとお伺いしたい。
  5. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) お尋ねの趣旨は、確定判決があります場合に、その判決の効力がいつなくなるかと、こういうことであろうかと思いますが、その点につきましては、再審判決がありましてそれが確定した時期というふうに考えております。
  6. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これはよく御存じのことでしょうが、再審決定の確定時だという有力な学説がありますね。そして、免田事件の場合に、検察庁というべきか、法務省というべきか、ともかくあなた方は、再審の第一審判決の言い渡しがあった時点で免田栄氏を釈放されましたね。これは私どもの主張に沿うものでありましたけれども、前田刑事局長、いままでなかなか慎重に対処されて、検討いたします、検討いたしますと言い続けておられたのだけれども、今回結論としては私どもの主張に沿う処遇をなさったわけだけれども、これは実定法上の根拠はどういうものでしょうか。それをお伺いしたいのです。
  7. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 先ほど申しましたように、原確定判決の効力は依然として残っているというふうに考えているわけでございますが、それはそれといたしまして、今回の免田事件について、身柄を釈放することにいたしましたのは、結論から申しますと、刑訴法の四百四十二条のただし書きの規定によるというふうに考えているわけでございます。御案内のとおり、四百四十二条のただし書きは、「検察官は、再審請求についての裁判があるまで刑の執行を停止することができる。」と、こういう規定でございます。  その規定につきまして、分けて申しますと二つ論点があろうかと思いますが、一つは、「再審請求についての裁判があるまで」というのはいつまでかということであろうかと思います。これについてもいろいろな考え方があり得るわけでございますけれども、私どもといたしましては、再審のいわゆる実体裁判が確定するまでというふうに解することが可能であろうというふうに考えたわけでございます。  また、第二の、「刑の執行を停止することができる。」ということで、いわゆる死刑の場合に拘置の執行停止ができるかどうかというのが問題でございますが、この点につきましても、場合によっては拘置の執行停止も可能であるという考えをとりまして、この四百四十二条ただし書きの解釈によりまして、検察官裁量によって拘置の執行を停止し、それに基づいて釈放するということにしたわけでございます。
  8. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いま二つの問題点をあなたが論じられたわけだけれども、一つは、再審の裁判があるまでというのを、これは確定したときだというふうに条文上解釈するということはちょっと無理なんじゃないでしょうか。裁判があるというのは、まだ確定してない第一審の決定での裁判だから、それを決定が確定したときというふうにあなたが解釈される。それは慎重に対応したいという、死刑判決の効力を重く見たいというそういうお気持ちが働いておられるのだろうと思うけれども、条文上の解釈としてはこれは確定したときだとするのはちょっと無理なように思います。  それからもう一つは、刑の執行を停止することができるという規定になっておる。これを死刑囚の場合は、死刑を執行するまで監獄内に拘置する、その拘置の処分を刑の執行だというふうに言い切れるかどうか、その辺ちょっと無理じゃないかと思います。  同じ刑の執行を停止することができるという規定は四百四十八条の二項にもありますね、裁判所が、「決定で刑の執行を停止することができる。」と。この場合には、熊本地裁八代支部の決定で、これは死刑の執行を意味する、ハンギングだ。それを停止する、しかし拘置は解かないという、そういう判示をしているわけでしょう。だから、あなたが死刑囚の拘置を解いて釈放する手続を慎重なものにしたいというお気持ちはわかるけれども、条文の解釈としてはちょっと無理じゃないだろうか。どうでしょうかね。
  9. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 先ほども申し上げましたように、この四百四十二条ただし書きの解釈については二つ問題といいますか、論点がございまして、それについていろいろな考え方があり得るだろうと。寺田先生のおっしゃったこととあるいは違うかもしれませんけれども、「再審の請求についての裁判があるまで」というのは、再審請求について開始するかどうかの決定があるまでというような解釈もまた一方にあるわけでございますが、私どもは、開始決定までということではなくて、いわゆる実体の裁判があるまでというふうに考えたということを申し上げたつもりでございます。  それから二番目の問題につきまして、御指摘のように熊本地裁の八代支部で、刑の執行というのは、いわゆる絞首、首をくくるといいますか、絞首の執行を指すので、その前の拘置は含まれないというような見解が示されたことがございます。これは判決でもございませんし、裁判所の御判断ではございますが、今回の無罪判決が出る以前の再審開始決定があった後におきます、その時点における判断でございまして、当時としてはまだ再審が開始されて再審の裁判が行われている状態でございまして、論理的にはその後も同様な解釈になるというふうに読めるといえば読めるわけでございますけれども、今回新しい無罪の判決が出ますについて特段裁判所の判断が示されたわけではございません。  そういうことで、この刑の執行停止についてどういうふうに考えるかということについていろいろと考え方があり得ると思いますけれども、その場合に、刑の執行停止をすれば当然に拘置の停止もされるのだという考え方が一方にございます。しかし、それはやはり適当ではないので、本来的には刑そのものの執行停止を意味するであろうと思いますけれども、場合によっては、まあケース・バイ・ケースという言葉が適当かどうかと思いますけれども、この刑の執行停止という規定を根拠にして拘置の執行停止ということも行い得るというふうに解することは、条文の解釈として、解釈の限度内として許されることではないかというふうに考えた次第でございます。
  10. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 この四百四十二条は再審の請求を前提としていますね。この再審の請求というのは、まず第一次的には再審をすべきかどうかという決定を求める請求だというふうに理解する方が文字解釈からいっても自然なように思いますね、あなたは実体の裁判だというふうにおっしゃったが。そういう解釈もそれはできないことはないかもしれぬけれども、多少無理なように思う。ともかくそういうふうに死刑囚の拘置を解くというのは、ちょっとやはりいまの刑事訴訟法の条文では少し規定が不十分で、これはもうちょっと整備しませんと、検察官の権限というか、それが非常に強大な広範囲なものになるでしょう。  というのは、刑の仮出獄の場合でも刑法に規定がありまして、三分の一以上の経過が必要だというふうな規定がありますね。それから恩赦のときは、これ内閣の決定にゆだねるという規定があって、個々の検察官の裁量で、どういう段階でどういう解釈をして死刑囚の拘置を解いて釈放していいかというようなことをゆだねてしまうというのは、検察官の権限としては余りにも強大に過ぎやしませんかね。これはやはりほかの諸規定との均衡上からいっても解釈上疑いがないように、どの段階にきたら検察官は死刑囚を釈放していいんだというようなもうちょっとしぼりをきかした方が適当ではないかと思いますが、その点いかがでしょう。
  11. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) そういう御意見も十分あり得るかと思いますけれども、先ほどの規定に即して申しましても、たとえば四百四十二条の条文そのものから言いまして、再審の請求があった段階でも検察官はできることになっているわけでございます。再審請求の段階というのは申し上げるまでもないと思いますけれども、開始決定がある前でございますから、むしろ原確定判決の効力が強いといいますか、それがほとんど影響されていない段階というふうに考えてもいいわけでございまして、その段階ですら検察官に自由なというか、健全なといいますか、そういう裁量権の行使を認めているわけでございますので、必ずしもそれを特に限定しなければならないというふうにも考えていないわけでございます。
  12. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それはあなたがおっしゃることはちょっと矛盾してはいませんかね。死刑囚の場合にこれは実体判決があったときであります、そういうふうに私どもは解釈いたしますということを言われて、それで今度また一転して再審の請求があればもう検察官は刑の執行を停止できるんだと、その刑の執行の停止の中には死刑囚の拘置も入るんだということになると、これは検察官が余りにも強大な権限を持って、死刑判決というような裁判所の重要な判決の効力を事実上検察官が支配するような結果になっちゃうでしょう。ちょっと余りにもほかの規定との均衡からいっても事柄から考えても、これはちょっと過ぎていますよ。もしも、これは刑事局長が検察官でいらっしゃるから、やっぱり権限が大きい方がいいと思われるかもしれぬけれども、ちょっとやはり大き過ぎやしないかしら、どうでしょう。
  13. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) あるいは誤解があってはいけませんのでもう少し申し上げますが、先ほどは抽象的な理屈として申し上げたわけでございまして、その運用いかんにかかわるわけでございます。私どももその意味においては寺田委員と同様に、むしろあるいはそれ以上にと申しますか、実体確定判決があるということの重みというものを考えているわけでございますので、運用面におきましてその重みというものを十分考えなきゃならないというふうに考えるわけでございますから、観念的には請求段階からできることになっておりましても、その実体に応じてその裁量権を発動するわけでございますから、事案の内容また判決の種類、それぞれに応じましてその運用はきわめて慎重でなければならない。したがって、具体的に申しますと、死刑の場合には特にその点が慎重でなきゃならないということになろうかと思いますので、実際の運用としてそういうことは通常考えられないということになるのじゃないかと思います。
  14. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 あなた方が運用面で慎重にやって、再審の請求があったからといってすぐ死刑囚の拘置を解くようなことはいたしませんということはわかるんですよ。これはあなたに最初に私がお話ししたでしょう。あなた方がそんなに権限を振り回して死刑囚を出すというようなことはないでしょう。それはもう信用しているけれども、ただ、規定として再審の請求さえあれば検察官は釈放する権限を持っているんだと言われるから、それじゃ余りほかの刑事訴訟法の規定と比べて検察官の権限が強大に過ぎはしないかと言っているんですよ。規定の問題だ。あなたが運用上どう扱うかという問題を言っているわけじゃありません。
  15. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 私もそういう意味においては寺田委員と同じようなことを考えておりますし、同じようなことを申し上げたつもりでございますが、抽象論としては権限が与えられている。死刑を含むかどうかということを抜きにいたしまして、「刑の執行を停止」ということで書いてございますから、あらゆる刑の執行を停止できるわけでございますから、権限論としては現に広く認められているということをまず前段として申し上げたわけで、しかし、その権限が広いからといって運用はきわめて慎重でなきゃならないであろう、そのことによって妥当な結論が導かれるであろう、こういうことを申し上げたつもりでございまして、寺田委員は権限が広過ぎるから限定すべきだというふうにおっしゃいますが、それはむしろ検察官が権限を広く行使してむやみやたらに出す、釈放するということが考えられる場合にそれを防ぐという意味での権限の限定ということになるのじゃないかというふうに思うわけでございまして、私どもといたしましては健全な良識的な運用で十分賄い得るのじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  16. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そういう議論は通らぬな。たとえば仮出獄だって、刑務所長があるいは所轄の委員会が、入ってきた人間をちょっと二、三日おったからというて出しちゃうなんていうことは実際上考えられないでしょう、法治国で。だけれども、やはり法の規定としては最小限度三分の一の経過が必要ですよと法律は規定しているわけだ。だから、やっぱりどうあるべきかというゾルレンの世界だから、法は。だから、そういうようにそういうおそれはありませんから規定する必要はないでしょうというのは通りませんよ、それは。やはり実際上はなかなか考えにくくても、余りにも強大な権限をゆだねるというのは適当でないと、だから裁判官の権限にしろ検察官の権限にしろ刑事訴訟法はむしろ金縛りに縛っているわけだ。だから、それが刑法と一緒にマグナカルタの役をしているわけだ。そこを考えてくれなきゃ困る。これは法務大臣、あなたどうです。いま前田刑事局長と私とのやりとりをお聞きになって、大臣としてはどう考えられますか。
  17. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) この問題につきましては、実はわれわれの方でもいろいろ検討して決断をしたわけでございますが、正直言って寺田先生なんかがやっぱり釈放した方がいいよという御意見だったでしょう。日本弁護士会もそうだし、それはあえて立法を要せず、いまの実定法の運用の中で片がつくのではないかという配慮ではなかったかと私どもは拝察した。それで、いま一つは被告人の利益のためですからね、検事の権限が強大化するといっても、人権とかそういうものを侵す、そういう方向への問題じゃなくて、本来刑の執行については検事はそもそもその指揮の権限があり、執行についての権限があり、いま局長が言うように、そういった前提に立って、いうならば利益のためのきわめてレアケースの問題だということであるならば、私は実定法の中で解釈されてもそれほど支障はないんじゃないかという感じなんですよ。  御趣旨の点は、緻密な法律論を積み上げていくと確かに御趣旨の点はよくわかるんですけれども、さあそこまで、法律まで変えなければならぬかどうか。そういうチャンスがあれば検討することはあり得て結構だと思いますけれども、これは被告人の利益を中心というか、前提に考えてのことですから、検事の権限の強大という観点ではそう心配はないのじゃなかろうかという感じでございます。
  18. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 今回は再審決定が確定した上で、さらに再審の判決が無罪という決定がありましたからね、その段階でやったわけでしょう、現行法上。だから慎重な対応でやって、被告人の利益のためということを法務大臣強調されて非常に結構だと思うんですが、だから被告人の利益のためなら検察官はもう再審判決の確定を待たなくても、また再審決定の確定を要せず、再審判決の無罪判決が得られなくても死刑囚を釈放できる、そういいうたてまえというふうに理解するのはちょっと余りにも検察官の権限が強大に過ぎないか。  これは法務大臣、私がなぜこういう問題で質問をするかといいますと、やっぱり再審の規定を――白鳥決定がありましたでしょう、つまり無罪を言い渡すべく明確な証拠というのを、原判決の事実認定に合理的な疑いを差し挟む余地があればいいんだという、非常に再審の門戸を広げましたね、最高裁の白鳥決定ですか。ですから、そういう問題もありますし、やはり再審の規定というものをもう一度洗い直してみる必要がありはしませんかと、そういう趣旨で質問しているわけです。どうでしょう。
  19. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 再審制度そのものにつきましてはいろんな御議論があるわけでございますし、日弁連の御提案なりあるいは社会党案が現に提案されているわけでございます。したがって、その点につきましていろんな角度からの検討は必要であろうと思いますけれども、やはり制度の改廃につきましては、運用上それが運用で賄えないということが十分詰まった上でのことであろうと思うわけでございますし、またいろいろな改正議論がございますけれども、その個々の、いわばばらばらのといいますか、現象的な部分的な検討だけではなくて、もっとさかのぼった再審制度そのもののあり方というようなことから慎重な検討が必要であろうというふうに思うわけでございまして、もちろん私ども刑事局の所管法律でございますから、この点に限らず所管法律については、運用上問題があるかないか、ひいては制度的に問題があるかないかということは常時勉強しているわけでございますが、それは今後とも続けてまいりたいというふうに考えております。
  20. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうも最後のところよくわからないけれども、結局、常時検討して、この刑事訴訟法の再審規定の改正についても検討したいというんですか、するというんですか、どうなんです。
  21. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 先ほどのようなことを申しましたのは、たまたまきのう衆議院で同じようなお尋ねを受けて、私はいま申しましたような意味で申したつもりでございますが、報道等によりますと、何か新しく検討開始だとか検討作業を始めたとか、そういうことも報道されたわけでございますので、若干私の真意と違っているような気もいたしましたので、私どもといたしましては、所管法律については、常時いろんな問題があるわけでございますから、常時検討をしている、その中の一環としてこの問題も一つの大きな問題点として十分考えていきたいということであるということを申したわけでございます。
  22. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 常時検討するから、そのうちの一環として検討するという、まあそれでひとつきょうは余り長くなってもいかぬからとどめておきましょう。  それから、これはあなたの御議論だと、再審決定が確定して、そして再審の第一審判決が無罪の言い渡しであった場合、死刑囚についても検察官の四百四十二条ただし書きの刑の執行停止処分というものがなされ得るし、なすべきであると、こういう結論をあなたいまおっしゃったね。そうすると、同様の事件でいま財田川事件が高松地裁、それから松山事件が仙台地裁で裁判中であるけれども、やはりそういうあなたの方針というものは、まあケース・バイ・ケースいうても、その方針は一貫して大きな流れとなってやはり妥当していくんじゃないでしょうかね、その点どうでしょう。
  23. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) ただいま寺田委員のお尋ねの中で、四百四十二条ただし書きでなし得る、さらになすべきであるというふうに私が答えたようにおっしゃったかと思いますけれども、私はなし得るというところで申し上げたつもりでございまして、なすべきであるとまでは申したつもりはないわけでございますが、それはそれといたしまして、いまお話のありましたように、やはりケース・バイ・ケースでございますし、いま御指摘の事件は現に裁判が係属中でございまして、その結果をいまから考えてどうこうするということを申し上げるのは適当でないというふうに考えております。
  24. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうしてそう頑固に言われるのかね。だってあなたは、この四百四十二条のただし書きは、これを検察官が運用する場合は、再審決定が確定して、それから第一審の再審判決がなされた時点で運用すべきだと、こうおっしゃったんだろう。だから私はそれを言ったわけで、そうすべきというのを、それは必ず釈放しなきゃいかぬという意味で私は言ったわけじゃないんで、あなたがその段階でやるべきだと言うからそれを言ったわけだ。だから、そういう大筋の解釈をあなたがとる以上は、やはり同様の死刑判決で、死刑囚の利益のために法を解釈するという以上は、同じ法理で臨まなけりゃおかしいでしょう。どうです。
  25. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 抽象的には、考え方を変える気はございませんけれども、やはり事案、事案に応じての判断ということになるわけでございまして、その前提となる事態がどのようになるかということはいまから申し上げかねるわけでございます。
  26. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それじゃあなたの言われる――まあ再審判決は確定しているね、この二つ。いま現に再審の裁判中なんだけれども、それが無罪と出た場合でもケース・バイ・ケースで釈放しない場合というのはどういう場合です、言ってごらんなさい。
  27. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 私が申し上げたいのは、無罪になるとかならないとかいうことをここで申し上げるのは、私の立場からは御勘弁願いたいということを申し上げたわけでございます。
  28. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それはそうですよ、これは裁判官の手中に握られているんだから、それはあなた、できないけれども、私の言うのは、そういう無罪があった場合は、先ほど法務大臣も、当然死刑囚の利益のために法を運用するという点であなた方の態度決定を是認されたわけでしょう。だから当然、無罪判決があったら同様の法理で運用しないというとおかしいじゃないですか。そこを言っているわけですよ。
  29. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) それでございますから、抽象的な考え方を変える気はございませんということを前提にいま申し上げたわけでございますけれども、やはり具体的な事案についてはいろんなことも考えられるわけでございまして、どのようなことが起こるかをいまから想定することはできないわけでございます。
  30. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 法務省は余り慎重で、頑固で、当然決まっていることをそうがんばる必要はないと思うんですがね。どうしてそんなに決まり切ったことをがんばるのかね。  これは法務大臣、どうですか、法理的にはあなたはこの四百四十二条のただし書きによる検察官の権限が強大であっても乱用するおそれはありませんということをおっしゃったでしょう。それで、被告人の利益のためにはできるだけ釈放ということも現行法上考えるということで釈放したんですということをおっしゃったですね。それで、再審決定がいま確定しているわけですね。それで、本案の判決が、再審判決がいまなされつつある。これは無罪の判決があった場合に、どうして違った結論が出る余地があるんでしょう。いろいろ考えられると言うけれども、いろいろ考えられると言ったって、被告人の利益のために、再審の無罪判決があって再審決定が確定しておれば、当然同じような措置が期待されるんじゃないでしょうか。大臣としてのお考えを伺いたい。
  31. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) 被告人の利益のためにということをさっき申し上げましたけれども、そのこと自体は、私はそれでそういうものだと思うんですが、しかし、事件は一つ一つ違うわけですよ。同じ無罪といってもその事件が、三十何年もかかって、そして第一審で無罪になった今度の免田事件のようなもの、いろいろその事件によって私は違うんだろうと思うんです。被告人の利益のため一点張りでもって論理をすべて一貫するということは現実的ではない。同じ無罪だといっても、やっぱり一つ一つの事件に対応して、無罪が出たって検事はまた控訴することもあるんですから。言えば、ケース・バイ・ケースで判断すると言っている局長の意見は私は正しいと思う。
  32. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、いま大臣はかなり具体的な問題に踏み込まれたわけですよ。事件がケース・バイ・ケースでいろいろ固有な性格を持っていることは私もよく知っておるつもりだが、あなたはそういう場合に控訴する場合もあり得るじゃないかとおっしゃった。それは一つ踏み込んだわけですよ。だから、検察官があくまでもこの事件は有罪なんだ、したがって控訴するんだといってそういう決定をなさったとき、これは私はあえて否定しません。それでも私は拘置を解いた方がいいだろうと思いますよ。思うけれども、まあしかし、大臣のおっしゃるように、控訴する場合に拘置が解けるかという論理があながち無理な論理だとは思いません。しかし、その場合でも控訴してもなおかつ拘置を解いて釈放する場合というのもあり得ると考えますか。あるいは控訴した場合は絶対もう拘置は解かないという方針なんでしょうか。その点どうでしょう。
  33. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) そのおっしゃるのも仮定の問題で何とも言えませんが、やっぱりこれケース・バイ・ケースだと思うんですよ。ケース・バイ・ケースで判断するほかはないだろうと思います。
  34. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 まあわりあい柔軟な考えを持っている大臣がそこまでがんばられるわけだから、もう私もこの問題はこれでとどめておきます。しかし、恐らく再審決定が確定して再審の判決が無罪と出た場合は、いかに検察陣ががんばって控訴をなさったとしても、それは世論の反撃を受けて、恐らくその反撃に耐えられないと思いますよ。そして私は釈放せざるを得ない立場に追い込まれると思う。それを予言しておきます。  それから、大臣、あなたきのう衆議院の法務委員会で、この免田事件について大いに反省の必要があるとおっしゃったようですね。まあ新聞報道ですから、新聞で拝見した限りなんですが、これどういうふうな教訓を免田事件で得られたというふうにおっしゃったんですか、もう一遍正確におっしゃっていただけませんか。
  35. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) 具体的にはどういう点を反省するかなどということを私は申すだけの材料はないわけですけれども、まずまず達観をして、三十四年の歳月がかかった、しかもその間必ずしも尋常とは言えない経過をたどったということだけを見ても、関係者はやっぱり反省をする材料はあるだろう、また反省する材料がないはずはないという意味で申し上げたのでございまして、具体的な問題は、私のところにもそんな材料はないし、これはもう国民の声だって、材料はないけれども、ちとおかしいなという気分を持っている人もいっぱいいるのではなかろうかというふうに思いましたので、私もそういう立場で申し上げました。したがって、具体的にはこれからの問題だと思います。これからやっぱりこの中から教訓を引き出して、そして二度とこういうようなことがないように一生懸命関係者がやるということは、これはやっぱりそこを考えなきゃいかぬだろう、こういう意見でございます。
  36. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そこなんですよ。私があの新聞記事を読みまして、大いに深刻な反省を必要とするというのが記事に書かれておりました。それはよくわかるのです。だけれども、一体だれがどの点を反省すべきなのか、もっと具体的に大臣のお気持ちを伺いたい。大臣、あなた謙遜しておられるが、あなたも警察の官僚としては最高の地位をお占めになったんだし、刑法や刑事訴訟法については一家言を持っていらっしゃるわけですから、捜査の点についてはやっぱり大ベテランでしょう。だから、どういう点を反省すべきだとおっしゃるのか、もっと具体的にお聞きしたいと思う。
  37. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) せっかくの御意見だけれどもそれは無理ですわ。私個人のところにそんな材料もないし、これはこれだけ長くかかって、逮捕があって起訴があって、それから第一審が始まって二審、最高裁へ行って、再審が六遍目でしょう。一区切り一区切りにやはり検討すべき材料はあろうかと思いますね、とにかく初めとしまいを考えただけでも。だから、私はそういう意味において関係者が、具体的に事件を取り扱った関係者、あるいはまた取り扱わなくてもそういう事件に携わる者はこういうものの中から教訓を学ぶということは、これはもう当然必要なことだろうと、こういう意味でございます。
  38. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは前田刑事局長も、あなたの答弁がやはり新聞に出ていますよ。それで、最高裁の判決で是認されたような結論がひっくり返って再審のああいう判決が出たという点でどうも釈然としないものがある、そういうようなお気持ちを述べていらっしゃるようだけれども、そうじゃないんですか。何か違えば違うでまた注釈していただいて結構だけれども、あなた方としてはどういうふうな教訓を得られたことになりますか。
  39. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) どの新聞報道をごらんになってのお尋ねかと思いますが、それに類することといたしましては、再審制度全体のことについて、いま大臣の仰せにもありましたように、三審制があって、それがまた再審請求の手続を経て、また再度の裁判が場合によっては三審になるというようになっていることにもなお検討の余地があるのではないかということを申し、また、それとの一環において、最高裁までいった事件について再審の第一審で別な結論が出るという場合もあり得るので、そこにも何か検討をするべき点があるのではないかという程度の抽象論を申したつもりでございまして、別に本件について釈然としないとか、おかしいとか、そういうことを申したつもりはございません。
  40. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうもこういう深刻な事件で深刻な反省を求められておるケースで、あなた方が余り抽象的に何かおっしゃるのがどうものみ込めない。われわれは無辜を犯してはいけないという刑事裁判の大鉄則がありますね。それからもう一つは、こんなに凶悪な事件で真犯人を逸するという点がありますね。これは被害者にとっては耐えがたいことでしょう。そういう大きなミスを犯しているわけですから、だからどうしたらそういうミスを繰り返さないか、どうしたら誤判を防ぎ得るかという問題、それをもうちょっと考えていただいていいんじゃないでしょうか。抽象的に反省、反省と言っちゃ困るので、その点どうでしょう。
  41. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 先ほどのお答えもその点を否定する意味じゃございませんで、別な機会にも十分申しているつもりでございますが、要するに誤判があってはならないことは当然でございます。それにつきましては、特に捜査当局といたしましては十分そういうことのないように、従来からもやってきたつもりでございますけれども、こういう事態もあるわけでございますので、いろいろなケース、今度のケースも含めましていろいろと最近も問題になったケースもあるわけでございますから、抽象論ではなくて具体的なケースに応じた、その中から具体的な問題点を十分拾い出して反省の材料として、対策も具体的に考えていかなきゃならないというふうに考えているわけでございます。  それにつきましては、やはり問題点の整理ということを十分緻密にやりまして、その上でないと、また抽象論的な対策では意味がないわけでございますから、それに応じた具体的な反省なり対策なりを講じていきたい、こういうことを考えているわけでございます。
  42. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そこで、私もいままでの各事件、免田にしろ、松山にしろ、財田川にしろ、いろいろ再審で扱われている事件を見まして、免田のようにアリバイが認められるというようなのはちょっと唖然としたわけです。これは新しい証拠じゃないわけでしょう。いままでの証拠で、その犯行の行われた日に売春婦としとねを同じくした日がいつかという問題だったわけでしょう。その問題について、なぜいままでの判決の事実認定がひっくり返ってアリバイが認められるか。これはやはり捜査の段階、それから第一審の裁判、それから二審の裁判、これが大きなミスを犯したということでしょう。  それからもう一つは、やはり鑑定の問題がありますね。凶器は何であったか、それからどういう殺害の方法がとられたか。また血痕の問題がありますね。前は四種類しかなかったけれども、いまは何か三百種類以上の血液型があるんだというような説もある。そういう鑑定の問題で、私は、いつも古畑鑑定というようなものがひっくり返ったり、また控訴で是認されたり、鑑定の結論がいろいろと争われるということを防ぐことも考えてほしい。これは鑑定を、一人の鑑定人じゃなくて二人以上の鑑定人に鑑定させるという方法も考えていいのじゃないかと思いますよ。だからそういう具体的な方法を考えてもらいたいのですが、どうでしょう。
  43. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 御指摘を待つまでもなく、鑑定の重要性ということは私ども十分理解しているわけでございまして、具体的な事案に応じてそれぞれの検察庁におきましても適切な鑑定人をお願いする、そして権威のある鑑定を得るということに努力をしておるわけでございます。  ただ、いろいろと、化学式といいますか、進歩もしておりまして、また鑑定の対象もいろいろとふえておるわけでございまして、それに応じた適切な鑑定人を得ること自体についてなかなか困難な問題もないわけではございません。しかし、その中でやはり鑑定の重要性ということは十分認識をいたしまして、適切な権威のある鑑定を得たいということを、従来からも考えておりますし今後とも考えていかなきゃならないと思います。その場合に、ケース・バイ・ケースになるかと思いますけれども、やはりむずかしい場合には複数の鑑定人を選ぶということも当然その中で考えられていいというふうに考えております。
  44. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いや、あなたのおっしゃるように確かに権威ある鑑定人が必要なんですよ。私もずっと裁判をいままでやってきて、これは鑑定人の能力によって鑑定の結果というのはもう天地ほど違うということを痛感しているものだから、あなたのおっしゃるように権威ある鑑定人を選任するという必要はわかるんだけれども、あの古畑さんなんという鑑定人は、戦前はもうこれは最高権威だったわけです。その最高権威の鑑定がいま争われているケースが多いわけでしょう。だから私は、そういう重大な事件に関しては原則として複数の鑑定人に鑑定させた方がいいよと、どうでしょうと言って具体的にお伺いをしている。重要な事件ですよ。どうでしょう。
  45. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) ですから最後に申しましたように、ケース・バイ・ケースということになるかもしれませんけれども、その鑑定の権威を高めるためといいますか、重要性にかんがみましてできるだけ慎重な鑑定が必要である、そのためには場合によって二人以上の鑑定ということも十分考えていいことではないかというふうに、寺田委員の御趣旨とほぼ同趣旨のようなお答えをしたつもりでございます。
  46. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは私も、荒川正三郎氏の論文があるが、あれを見て、それからフランスの刑事訴訟法、フランスは予審制度をとっているから、あながち日本と同じようにすぐ引っ張ってくるわけにいかないけれども、フランスの刑事訴訟法を見たら、「鑑定に付せられた問題が事件の本案に関するものであるときは、二人以上の鑑定人を委嘱する。ただし、例外的な事情のため、ただ一人の鑑定人で足りるときは、この限りでない。」、だから、つまり原則として二人だ、しかし事案が簡単なときは一人でいいんだというような、むしろ二人でやっている。  それで、鑑定書の一つの例が荒川正三郎氏の論文に引用されているけれども、二人の鑑定人がいつも鑑定書を提出している。そうなると、老大家と新進の化学者との間で議論をして、いろいろ問題点を論議した上で鑑定がまとまるというような、非常に鑑定の経過が慎重なものになりますね。だから私はその方がいいと思う。ことに殺人事件なんというような重大な事件に関しては、後でひっくり返って三十年たってから再鑑定とか、そのときは真犯人を捜すといったってもう無理ですよ。そうでしょう。大臣、やはりこれは鑑定をあくまでも慎重にという意味で、もうちょっとお考えになった方がいいですよ、フランスの刑事訴訟法なんか勉強なさった方が。どうです。これは大臣の指導力に期待して私は質問しているんです。
  47. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) これはむしろ何といいますか、警察が第一に着手したときの問題が多いと思うんですけれどもね。そういう意味では、戦後、この事件は二十三年ですけれども、あのころ必ずしも十分鑑識の施設、方法等整備されていなかった。応急措置法以前かな、応急措置法前後の時代なんですね。まあそこまで率直に申し上げますと、必ずしも十分ないま先生のおっしゃったようなことができていたかどうか、はなはだ私も疑問があると思うんです。血液型問題にしても、古畑さんでも、もう晩年と初めではえらい違うんですね。それから科学というのが意外と相対的である。科学は絶対かと思ったらそうじゃない。学者によって違うんだということがずいぶんあるわけですね。だからお説のように、やっぱり鑑定は数が多い方がいいのだろうと思うんですよ。二人でなくたって、場合によったらもっと多くたっていいというぐらいの気持ちでやるべきだろう、そう思います。  その他、さっきおっしゃったように、アリバイなんかの問題その他、まあ詰めといいますか、私は、正直言ってアリバイがああいうふうにひっくり返ったというのはびっくりしたですよ。だからそういう点では、どうしてそうなったかといったようなことを具体的にこの事件からひとつ勉強材料をとってほしいなと、第一線の諸君に心から期待をしているわけでございます。
  48. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そこで最高裁判所の刑事局長にお伺いするんですが、再審ということになりますと、第一に責任を負わなきゃならぬのはもちろん捜査機関ですね、そうでしょう。だけれども、考えてみると、第一審の裁判のときにこそ裁判が全力を集中して正しい事実の認定をしなきゃならぬ。それさえあればこれは誤判が生じなかったわけです、二審の重要性はもちろんさることながら。こういうひっくり返った事件を見て、最高裁判所としてはどんなふうな所感をお持ちですか。
  49. 小野幹雄

    ○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 先ほど寺田委員から御指摘がありましたように、無辜が罰せられてはいけないというのはもう刑事裁判の鉄則でございます。裁判官がこういうことがないようにこれまでも全力を傾けて記録を精査し、熟考を重ねて、慎重の上にも慎重に裁判をしてまいったというふうに確信しておるところでございます。  このたび、この免田さんの事件で再審無罪ということで決着いたしました。まあ日ごろ一生懸命、この事件におきましても裁判官は一生懸命努力してきたとは思いますけれども、とにかくこういう決着がついたということにつきましてはまことに遺憾である、私どもといたしましてもこれは慎重に受けとめざるを得ないというふうに考えておるところでございます。なお、私どもといたしましては、いろいろな問題がございますけれども、とにかくこういうことが起こらないように、これは研さんは裁判官各自が行わなきゃいけないことでございますけれども、私ども事務当局といたしましても、皆さんが研さんしあるいは研究する、そういう場も提供するし、こういうことがないようにみんなで努力していかなきゃいけないのじゃないかというふうに考えておるところでございます。  なお、先ほど鑑定や何かのお話もございましたけれども、私どもの方では鑑定などの問題につきましては、もう数年前からでございますけれども、鑑定研究会というようなものでそれぞれ集まって、いまの鑑定の問題というようなことについてもいろいろ裁判官の間で協議してまいりましたし、また司法研究というようなことでも取り上げて研究をしているというようなことでございます。それ以外のことにつきましても、また裁判官がいろいろ集まって研究し合う、反省し合うというような機会もつくりたいというふうに考えております。
  50. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 行政事件などは支部に任せずに本庁でやるというふうな指導が行われているように思います。われわれ常にそういう扱いを窓口で受けているのだけれども、この強盗殺人というような最高の刑をもって臨むべき刑事事件、これは支部でなくて本庁で扱うというような方針はいまとってないわけでしょうか。とってないとすると、それをとる必要はないのかどうか。その辺あなたの御所見を承りたい。
  51. 小野幹雄

    ○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) ただいまのところ本庁も支部も裁判官がそれぞれ、構成ができるところでは、裁判官皆同じ権限を持っておるわけでございますし、資質に本庁と支部の間に差があるというふうなことではないというふうに考えておりまして、ただいまのところではそういうことは考えておらないわけでございます。
  52. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それなら行政事件だって本庁に持ってこずに支部でやればいいわけで、なぜ行政事件だけが支部でなくて本庁へ持ってくるのか。検察官の中にも、やっぱり本庁の検察官がやるべきだというような意見をお持ちの方もあるようですよ、第一線で働いていらっしゃる検察官と話してみると。裁判でもそれはあなたのおっしゃるのは確かにそういうことを一応表面上言えるけれども、実際にはやっぱり本庁の方が充実しているのじゃないですか。もっとも実際は、私ども支部にもこんな優秀な裁判官がおるかと思って感心するような人がおることはありますよ。だけれども一般論としてやっぱり本庁の方が充実しているのじゃないだろうか。どうです。
  53. 小野幹雄

    ○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 私は一般論といたしましては、資質、能力という点では支部も本庁も裁判官には変わりはないと思います。  ただいま行政事件のお話がありましたけれども、行政事件は非常に特殊な事件でございまして、たとえば大きな庁では専門部というようなところで処理する方が非常に能率的でもある。各裁判官それぞれその専門の分野で非常に専門的なところを研究するというようなこと、それならば集めた方がいいということで恐らく行政事件の場合などは本庁で集めているのだろうと思いますが、普通の刑事事件の場合というのは特に法律的に専門化されているというようなことでもございませんので、ただいまのところ本庁、支部ということで同じに扱う、こういうことだと思います。
  54. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 余り適当な意見とは思いませんけれども、やはり余りそういう重大な事件にかかわりを持たなかった、経験を持たない裁判官よりは、本庁の部長の経験を持った人の方が一般論としては適当じゃないかと思います。しかし、その経験を持った人でさえも誤判をするのだから、余り無理に私はこれでなければならぬということは言わないけれども、しかし、本庁でやることを考慮した方がいいんじゃないかと思いますよ。  それから最後に大臣に伺いますが、この事件でもしも被告人が拘置の期間中に死んでしまったような場合、これは遺族がかわって再審の裁判を維持するということになります。しかし、その結果もしも無罪判決が得られても、その前に死刑を執行してしまったような場合は、これは取り返しがつかないということ、これが一つ死刑廃止論の根拠になっていますね。  死刑廃止論の問題で、この間イギリスの国会で死刑の復活が否定されました。各議員が党の方針に縛られない、自由に投票するというのを大変私感心したわけですが、これは何か大臣もそういうふうなことをいつかおっしゃったことがあるのじゃないかと思いますけれども。もう一つは、世論が死刑の存置論の方がむしろ多数であるというにもかかわらず国会は死刑廃止を支持した。しかも人気のあるサッチャーが死刑の復活を提案したのに対して否定的な結論をした。これは非常に私おもしろく思ったのですが、大臣はこれをどういうふうにお感じになりましたか。
  55. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) 国には国の風土と土壌とその上に制度があると思うんです。イギリスの問題は私は十分わかりませんけれども、陪審制がありますね。陪審制が悪いとは私言っているわけじゃないのだけれども、私の感想で、これは少しほかの領域に関係する発言だから必ずしも穏当じゃないかもわからぬけれども、司法制度としてやはり日本の裁判というのは、冤罪というものはまあないように、疑わしきは罰せずということをぴしっとやっていく限りないようになっていると思うんですよ。アメリカなんかがそうなんだけれども、陪審員とか、あるいはまた選挙制度なんかで判検事が選ばれるというようなことになると、やや大衆裁判に近いような方向に行きかねない。大衆は大事なんだけれども、実体的真実をあくまでも発見するということになりますと、やっぱりプロの緻密な積み上げた努力ということが非常に大事だと思うのです。  そういう点では私は、よその裁判はいいかげんだと言うわけじゃありませんけれども、まあ日本の方が英米法系よりはやっぱりすぐれているのじゃなかろうか。たまたまこういう事件が出ましたから奮起せにゃならぬというそういう気持ちは起きるんだけれども、このことによって死刑を日本の場合廃止した方がいいというふうに持っていくことについてはいささかちゅうちょがある。刑法改正を将来お願いしなきゃなりませんけれども、その中では、死刑の領域を狭めてなるべく少なくするというふうな努力もあるようでございまするし、また現実に死刑の判決というものは減っておりますからね。減っていることが直ちに論理として結びつくかどうかは問題だけれども、まあ要するに非常に慎重であるということについては一歩抜きん出ているのではなかろうかという感じがしておりまするので、イギリスをはるかに眺めながらもなお存置ということについては、いまのところ、いまの新しい刑法の示しているような方向ぐらいはやっぱり必要ではなかろうか、これが私の感じでございます。なお、十分これは検討さしていただかなきゃならぬと思います。
  56. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 次は右翼対策なんですが、先般、後藤田官房長官が六月末に選挙応援のために岡山に来られたときも、右翼団体が官房長官を追いかけて警察官と衝突して三人が起訴せられました。また、ごく最近、横山社会党代議士が右翼団体の者から暴行を受けた。その前、五十年の六月には一国の総理大臣である三木さんが衆人環視の中で右翼団体員から顔面を殴打された。ことしの五月には福岡県知事がやはり右翼団体員から殴打された。岡山県でもことしの三月に、右翼団体がダンプで公園のさくや植木をなぎ倒して、公園の中の集会にダンプ車を突入させる乱暴至極な行為がありました。そのほか最近の事件ですが、ある団地の主婦が約百五十人ほど、原爆反対の映画を鑑賞するために集まっていたところにやはり右翼の街宣車がやってきまして、解散しなければそこへ突っ込むと、こういうおどかしをして、危険を避けてその集会を解散せざるを得ないような立場になったわけですが、こういう暴力による無法な行為が多くなりまして善良な市民が大変困っているわけです。  街頭宣伝の音響騒音というものも、国会周辺は警察がよく制限してくれておるけれども、しかし迷惑するのは国会だけじゃないでしょう。市民一般があれには閉口しておる。もっとこういう右翼の暴力に対して政府が毅然とした対策をとってほしいというのは、大部分の国民が望んでおることじゃないでしょうか。  中曽根総理は大変右寄りの人であるという批評が行われておりますが、きょうは総理に出席してもらうわけにはいかぬだろうから官房長官に来てもらって意見を聞きたいと思ったところ、避暑で軽井沢に行っているということで、それじゃしようがない。法務大臣は法の主務者としての役を担っていらっしゃる、同時に国民の人権を守る官庁の長でもいらっしゃるわけで、こういう右翼の目に余る暴状に対して、これを放置してもいいというふうにお考えですか。何とかせにゃいかぬというふうにお考えですか。どうでしょう。
  57. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) 放置してもいいなどと考えるわけないでしょう、これは。寺田先生、それは常識からいってもどこから見ても放置していいなどということを政府部内でだれも思ってないと思いますよ。やっぱり厳正に取り締まる。その衝に当たるのはさしあたり末端の警察です。岡山の問題もそうです。したがってきょうは警察も来ておりますから、そちらの方からひとつよくお聞き願ったらいいと思います。
  58. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 もちろん警察が、犯罪が行われたときに的確に迅速にそれを取り締まってほしいということは国民一般望んでおります。そればかりでなくて、事前にやはり右翼の暴力を取り締まってほしい、それにはやはり内閣が毅然として対応してほしいという、そういう気持ちですよ、私どもは。だから、法務大臣がいま気色ばんで、放置していいなんて思うわけはないじゃないですかと、その気魄は私はやっぱり評価しますよ、それでなくちゃいかぬと思う。  だから、やっぱりもうちょっと何か、警察に聞きますと、騒音の問題でも、あの軽犯罪法の十四号ですか、あれは、近隣の迷惑をこうむった人間から迷惑をこうむったという供述調書をとらないと犯罪が成立しない、立件が困難だ、しかしなかなかこわがって供述してくれないと。警察には警察の悩みがあるわけで、だからそんなことではなくて、むしろ一定のホン以上のものは宣伝のためといえども出しちゃいかぬというような制限を設けて、そのホンを超えたものならばもう大衆の供述調書がなくたって取り締まれるようにしたらどうでしょうか。そういうところへ一歩踏み込んでもらいたいというのが私の考えなんです。北海道では何か道の条例でそういう規定を設けているということを聞いたけれども、これはどうなんでしょう、警察の方でもそういう考えを持ってもらえぬだろうか。いかがです。
  59. 三島健二郎

    ○説明員(三島健二郎君) ただいま寺田委員御指摘のように、最近の右翼活動を見ておりますと、国防問題、憲法問題、あるいは北方領土の問題、あるいは教育問題、さらには最近発生いたしましたスパイ事件等に関連いたしまして、大変敏感にこれらに反応いたしまして、各方面に対しまして批判あるいは抗議あるいは街頭活動、宣伝活動を行っているわけでありまして、これに伴いまして大変違法行為を多く発生さしているという状況下にございます。そういうことでございますので、実は警察といたしましてはこのような右翼の行動に対しまして、不偏不党の立場を堅持いたしまして、いかなる立場からするものであってもとにかく違法行為はこれは絶対に看過しない、こういう姿勢で厳正な取り締まりを行ってきているわけであります。その結果、昨年でございますが、右翼事件といたしまして四百五十九件、六百八十三人の検挙を見ておりますけれども、これは終戦後最も多い検挙数でございまして、それだけの事件を彼らが敢行し、また同時に警察としてはそれを検挙してきている、こういう状況でございます。  それで、先ほど御指摘がございました騒音の問題でございますが、これにつきましても右翼の宣伝カーによる騒音が大変目に余るということで、実は警察といたしましても相当厳しい姿勢でこの騒音の取り締まりに当たっているところでございます。もちろん、騒音そのものを直接取り締まれば一番いいわけでありますが、その関係の法令をいろいろと検討いたしておりますけれども、先ほど先生御指摘のように、現実に右翼に適用できる法律としては実は軽犯罪法第一条第十四号が一番適用の段階では活用できる法律でございまして、内容は「公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」というこの条文を適用しようということでございます。  ただ、先ほど先生からも御指摘ございましたように、大変実はこの軽犯罪法で検挙いたしますには立証上の困難な問題がございまして、特に「公務員の制止をきかずに、」ということでありますから、公務員が制止をしまして、もしもそれを聞けば軽犯罪法に当たらないわけであります。相当大きな音を立てる、公務員が制止をしなければならぬ段階にきた、そして制止をしますと向こうへ行ってしまう、おとなしくなって向こうへ行ってしまう。また向こうでやる、また制止をするというようなことを繰り返しておっても、これは実は騒音の防止にはならないという問題がございます。  また、犯罪そのものは大変軽微でございますから、現行犯逮捕には非常に制約がございます。それからまた、立証上の問題といたしましても、最近の右翼は数台の車を連ねましてそれぞれの各車が相当大きな騒音を出しておりますので、実は近隣が迷惑をこうむったといいましてもどの音で迷惑をこうむったかという立証が非常にむずかしいという問題もあるわけであります。また同時に、この法文によりますと、まさに迷惑をかけた者でありますから、迷惑がかからなければならない。そうすると、迷惑がかかった人は迷惑がかかったという立証をしてもらわなくちゃいけないという問題等がございまして、大変軽犯罪法という犯罪でありながらこれを検挙するためには膨大な捜査の体制をしかなくちゃならぬ、こういう状況でございます。  そういうこともございますので、警察といたしましてはこの騒音取り締まり、もちろん法律を適用するというだけではなくて、右翼の行動自体をある程度規制することによりまして騒音を防ごうということで、国会周辺等におきましては国会の直近にまで近づかないような形での実は規制をしているところでございます。しかし、現実的にはそれで抜本的な解決になるというわけではございませんが、そういう意味では、右翼車両等によります騒音の実態に即しましたより整備された騒音の規制の立法の必要性というものは、確かに実務の場においては痛感されているところでございます。  ただ問題なのは、騒音の規制ということになりますると、これは単に右翼車両の騒音だけを規制するというわけにもまいらないと思います。したがいまして、騒音全体というものが取り締まりの対象になるということになります。そうしますると、これはいろいろと音を出す社会の活動がございますので、各方面に対しまする影響というものも大変大きいということになると思いますので、この問題につきましては慎重に検討してまいらなければならないというふうに思っているところでございます。
  60. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 慎重に検討していただいて結構です。ただ、私のいま求めているのは街頭宣伝なんですよ。あの街頭宣伝で、しばしば右翼を制限すれば左翼も制限されますよというようなことを言われる人があるけれども、結構なんですね。ともかく余り騒音を出してみんなを悩ますというようなことは、これはやはり表現の自由の乱用なんですね。これは憲法でも基本的人権の乱用というのはやっぱりこれを戒めているわけで、だからそういう乱用はさせない、何ホン以上の音を出す街頭宣伝は許さないと決めていただいて結構なんですね。そうすれば、あの右翼のようなあんなにばかでかい、街頭宣伝といったって歌を歌ったりしているわけだからね。それから、何か他人の集会を妨害するためにわあわあ言って、本当に卑劣きわまる行動をするわけだから、これは審議官も答弁していただきたいが、やっぱりもうちょっと静かな市民生活が享受できるようにあなた方も立法を配慮してもらいたい。大臣も、あなたがやはりそういう気持ちで内閣をリードしていただきたいと思っているわけです。  お二方の御答弁を求めたいんですけれども。
  61. 三島健二郎

    ○説明員(三島健二郎君) この騒音の取り締まりにつきましての立法、これは騒音ということになりますると、所管としては環境問題ということになろうかと思いますので、必ずしも警察独自の問題ではないわけでございますが、その意味では関係省庁の間での連絡というものをしていかなければ結論が出ないことだと思いますけれども、いずれにいたしましても法律規制そのものには大変大きな問題があるということが過去の研究等でもわかっておりますので、これはやはり事前に十分な検討をしてからでなければ、そのような方向につきましては慎重でなければならぬという感じでございます。
  62. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 何かやや後退した、消極的なように聞こえるけれども、あなたは消極的なのかな。そうじゃない、やっぱり静ひつな社会を実現するために努力する義務があるとお考えなのかね、その点どうです。
  63. 三島健二郎

    ○説明員(三島健二郎君) 警察の立場といたしましては、現在あります軽犯罪法等を活用いたしまして、できる限りの社会の静ひつというものを確保しているわけでございます。同時にまた国会等、特に国会の審議ということで非常に公共性の高い場でございますから、その周辺につきましては、そのような法律の活用による検挙のみならず、必要な規制措置ということも行っている状況でございます。国会周辺につきましても、これは国会周辺だけの法律という点につきましても実は大変御議論がおありのところでございまして、一般的な騒音の規制ということになりますと、法律体系といたしましても大変いろんな問題を含んでくるということでございます。その意味で警察の現在の立場では、現在の法律を十分活用して、できる限り活用して、そして社会の静ひつというものを確保してまいりたいと、こういう考え方でございます。
  64. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大臣。
  65. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) どうも私の所管でもないようですけれども、これは公安委員会とか環境庁とかそういう所管だと思いますけれども、せっかくの御指名だから連絡しますよ。そしてまた、確かに公害に値する騒音みたいなものがありますわね。これは多分地域とか場所柄とか多少個別差もあろうと思いますから、あるいは自治省あたりの立法が妥当かもしれぬという感じもしますが、御趣旨の点は閣僚に会ったときに私からもよく連絡をして相談します。
  66. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ぜひ前向きにひとつ検討していただきたい。いまの審議官のような及び腰じゃ困るね。やっぱり右翼の騒音にはみんな困っているのだから、やりましょう、この騒音については、立法的な欠陥があればそれを何とかいたしましょうという前向きの姿勢がなければ、これは現行法で何とか対処と、現行法で対処できないからいま右翼の騒音でみんな困っているのだから、その現実をやっぱりあなた方しっかり認識してもらわなきゃ困る。  それから次に、具体的な問題ですが、右翼団体が日教組を目のかたきにしておることは周知の事実であります。昨年の島原における日教組大会に対しましては、五十七年の六月二十八日から七月一日までの四日間、街宣車が実に百七十台、百十九団体、八百九十人の右翼が島原に行きまして、町は騒然として何か内乱の状態のような空気さえも呈したということでありました。会場や宿泊のホテルのロビーなども右翼団体が座り込んで、ホテル業者に嫌がらせをするものですから、とうとうホテル業者が会場の辞退を余儀なくされたという事件さえあったわけであります。これは間違いない事実ですよ、警察の方はこれを認識していらっしゃると思うけど。  ところが先般、岡山の右翼団体、そのうちの一つは先ほど述べましたダンプ車を公園内に突入させて、労働組合員の集会の中に突入するという強迫行為をしまして、岡山地裁から有罪判決を受けた、そういう暴力的な右翼であります。その暴力的な右翼などが、日教組大会が開かれたら騒ぎが起きて市民が迷惑するというような理由で、県の体育館などの施設を貸さないようにしてほしいという陳情書を岡山県の議会に提出したわけであります。県の議会では、自由民主党の諸君がこれを採択する、知事もまたこの議会の決議に追随いたしまして、県の施設の貸与の拒否を日教組に通告したわけであります。これは県教組に対して通告したのかもしれません。その点はまあ同じようなものですから。  しかし、考えてみますと、憲法は表現の自由、集会の自由というものを二十一条で保障しております。それが右翼団体の嫌がらせ、あるいは妨害のためにじゅうりんされる結果になってしまいますと、これは憲法や民主主義というものの存在が疑われるようなことになりますね。  私が特にけしからぬと思いますのは、公務員は、国家公務員たると地方公務員たるとを問わず、憲法を尊重し擁護する義務を負うということが憲法九十九条にうたわれておるわけであります。それを地方自治体の機関が、右翼の暴力的な団体の陳情を採択して、事実上日教組の集会を開かせないようにしてしまったというのは、これは憲法違反もはなはだしくて、恐れ入ったことで、自由民主党の諸君といえども、一体戦前にはもう濱口雄幸総理大臣が殺される、犬養さんが殺される、自由民主党の大先輩が殺されて、あんな無謀な戦争に突入したわけでしょう。そういう歴史を見てみれば、ああいう暴力的な右翼の陳情を採択するなんていうのは、およそしてはいけないことだということがわかりそうなものだけれども、それがやっぱりわからないんだね。  ことに憲法九十九条の尊重、擁護の義務があるのだから、表現の自由なんていうものを、集会の自由なんていうものを暴力で脅かされることにおいては決然と立ち上がらなきゃいかぬでしょう。それが逆のことになるという、全くの情けないことですが、これはやはり大臣、こういう右翼の暴力が憲法の規定さえもじゅうりんするような結果をもたらす、こういうことについては、あなたのような方が、法務大臣というような御職責をお持ちの方が憲法を守るということでは人一倍熱意を持っていただかなきゃいけません。どうでしょう、これどういうふうにお考えですか。
  67. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) 当然のことだと思います。
  68. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 当然のことには違いないけれども、何かえらい簡単で、ちょっと物足らない面がありますが、まあ私のお話ししたことを是認なさったことですから、あえて申し上げません。  自治省の官房審議官、来ていらっしゃるでしょう。これはあなた方の先輩である長野岡山県知事がこういう決定をしたわけです。新聞で報道されているところによると、右翼が騒いだら市民が迷惑するというようなことが出ているわけです。それからもう一つは、県の議会が決めたことに反対をして県知事が態度をとりますと、県政の運営がうまくいかないというようなことがちょっと新聞に出ておった。しかし、県議会の言うことは何でも聞かなきゃいかぬということではないと思いますよ。私も市長をやったことがあるが、間違っておれば市の議会の決定も不執行にするということもあり得るわけで、憲法の規定がじゅうりんされるというような大事なときには、やはり県議会の反省を求めて、そして憲法を守る、そういう態度を示していただかないと困るわけです。県の議会もやはり同じような態度をとっていただかないと困るわけですね。  そこで自治省としては、こういう問題にもうちょっとやはり憲法や民主主義を守るというような点の指導をしてもらいたい。そう思いますけれども、どうだろうか。願わくは県知事に、県知事の決定を取り消しなさい、憲法を守りなさい、県の施設を貸したらいいじゃありませんか、表現の自由を守ることは大事ですよというぐらいの指導を思い切ってやっていただきたいと思うけれども、あなたのお考えをお伺いしたい。
  69. 金子清

    ○説明員(金子清君) 先生御指摘のように、集会、結社、言論等の表現の自由は、憲法の保障いたしております基本的人権の一つでございまして、地方公共団体もこれらの人権が侵害されることのないような努力をするということは言うまでもないことでございます。  しかしながら、今回の岡山におきまして、日教組から要請がございましたが、これに対しまして、岡山県では県の施設につきましては、すでにスポーツ団体が使用の申し込みをしており、スポーツ行事が予定されておるということ、それから県民生活への影響を考慮したものであること、これは具体的にはこの知事の文書によりますと、この体育館等がございます総合グラウンド全体の都市公園としての本来の機能を阻害するおそれがあるということによると書いてございますけれども、そういう理由で、日教組大会のための県施設の利用を断ったというふうに聞いております。したがいまして、岡山県といたしましては、私は集会、結社等の表現の自由は重要であるということは十分認識していると思います。  そういう上に立って、いま申しましたように、すでに県の施設について使用の申し込みをして、行事が予定されておるということで、それを取り消すことも困難だというような事情のもとにおきますことでございますれば、やむを得ないことではないかというふうに考えているところでございます。
  70. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうじゃないんですよ。それは県の知事が拒否して、すぐにほかの団体が入っちゃったんです、申し込みが。だからそれは事実でないですね。  それからもう一つは、体育館なり武道館で日教組の大会が開かれることがどうしてあの環境にふさわしくないのか。あれは私が市長時代に、県と協力して、経費は県市が折半で、自由労働組合の諸君、安定所の労働組合の諸君が長い間かかってつくり上げた公園なんですよ。その公園の中に体育館がありますね。その体育館で日教組が大会やったから環境を害するなんという問題が起きる余地がない。だから、それは全く弁明のための弁明です。もうちょっとあなた方実態をよく把握して、問題はやっぱり右翼団体の陳情が原因なんだから、右翼団体の陳情なかりせば県の議会の決定もないし、知事が議会の決定に反すると県の運営がどうのこうのなんという理屈をこねる余地もないわけですね。もうちょっとやっぱり事実を調査して、右翼団体の凶暴な圧力によって事態がそういうふうになったというのであれば、それによって表現の自由が侵害されたんじゃ困るわけだから、県の一片の文書のあなた方に対する回答だけによって判断なさらずに、もっと実態をきわめて、そして指導してもらいたい。どうです。
  71. 金子清

    ○説明員(金子清君) ただいま御答弁申し上げましたことは、県から参りました文書によってお答えを申し上げたわけでございまして、この体育館等の施設の問題につきましても、知事の文書におきましては、いずれもスポーツ行事が予定され、それぞれの団体に使用許可されているというふうにはっきり述べております。そういうことで私どもは、この文書に間違いはないというふうに考えているところでございます。
  72. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それだったら何で右翼団体の陳情なんかを、貸しちゃいかぬという陳情を採択する必要がありますか。ないでしょう。要するに、右翼団体の陳情を採択したのが発端なんだから。だから、あなた方もう一度調査して、右翼団体のそういう陳情によって県政が支配されるようじゃ困るわけだから、それによって憲法がじゅうりんされるようなことがあっちゃ困るわけだから、だからもう一遍調査して事実を確かめてもらいたい。そういうことがもしありとすれば、あなた方はやはり指導をするのにやぶさかじゃないわけでしょう。どうですか。
  73. 金子清

    ○説明員(金子清君) 県議会が県民からの陳情を採択をいたしたということは、県民の代表でございます議会の多数の意思でございます。それについて私どもがどうこう言う立場にもございませんし、この陳情者がどういう方なのか私どもつまびらかでございません。いずれにいたしましても、県議会のそういう意思というものが知事の判断に影響したかどうか、それはこの文面からははっきりいたしておりませんけれども、知事が日教組の関係者三者に回答した文書には先ほど申しました理由でお断りをしておるということであれば、それはやむを得ないものであるというふうに私どもは考えておるところでございます。
  74. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうも県の議会右翼に押しまくられる、知事も追随する、自治省も県の一片の文書通告でもう事足れりとして実態的な調査もやらない。県民は、右翼圧力に屈した県政に対していま抗議をして、みんな怒っているんですよ。そういう実態があるんだ。また、事柄は憲法に関する重要な問題だからあなたに要請しているわけですよ。事柄は非常に重大だということはわかるでしょう。わかったらその一片の文書通告だけじゃなくて、もっと事実を調査して毅然とした態度をとってほしいんです。どうです、これやれませんか。
  75. 金子清

    ○説明員(金子清君) 私どもといたしましては、もう知事の公印をついたこういう文書でございます。知事が申していることはそれに間違いないというふうに私どもは考えております。
  76. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 知事の言うことは間違いないと言ったって、それじゃ、当時の県内におけるマスコミの論調などみんな調べてごらんなさい。皆一様に怒りをみなぎらして、右翼暴力に屈して憲法に保障された大切な人権が侵害されていいものかという論調を展開しておるわけです。だから、そういう事実があるんだと私が言っているのだから、知事が言う以上間違いありませんと言うて、それだけをあなた固執するというのはどうだろうか、もうちょっと謙虚な態度をとってほしい。知事の言うことでも間違いがあるんだ。知事の言うことはもうインファラブルだ、過ちがないんだ、神聖にして侵すべからざるものだというわけじゃないでしょう。それとも、やっぱり知事の言うことはもう汗のごとく間違いないんだ、綸言汗のごとしだ、どうしてももう調査しないというのか。どうなんです。
  77. 金子清

    ○説明員(金子清君) いま、知事がこういう決定をした背景にどういう事情があったかということは私どももつまびらかでございませんけれども、知事が先ほど来申しておりますような理由で県の施設をお断りしたという事情については、私はこの文面から見る限りにおいてはやむを得ない事情ではないかというふうに考えております。  御指摘のように、その背後的な理由を調べろということであれば、私どもは県の方にその事情は聞いてみたいと思います。
  78. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 もうちょっとやっぱり暴力に対して毅然たる態度をとってほしいな。だから、戦前のあれでもそうでしょう。右翼暴力にみんな縮み上がり、軍人の言うことにみんな恐れおののいてしまって国家的な大失敗をわれわれはやっているわけだから、ああいう間違いを二度と繰り返しちゃいかぬということでみんなは努力しなきゃいかぬ。憲法だってそうでしょう。基法的人権を守る義務があるんだということをあなた方は、公務員はことに求められておるわけだけれども、国民でさえも基本的人権を守るように不断に努力しなきゃいかぬという規定があるわけだから、それをもうちょっと暴力に対して毅然たる態度をとってもらわなければ困る。調査してください。調査するというのだから、調査してまたその結果を報告してください。  それから、警察の方にお伺いをしたいが、県の施設は貸さないということをわれわれは撤回を求めているけれども、必ず撤回が実現できるという保証はない。その場合にも日教組としてはやはり自己の表現の自由はあくまでも守る、努力するんだということでやった場合、また全国からおびただしい右翼街宣車が岡山に集中してくるというようなことがあり得るわけですね。そういう場合に、警察力で県内に入れないというくらいな強い態度はとれないものでしょうか。これはあなたにお伺いしたい。
  79. 三島健二郎

    ○説明員(三島健二郎君) 日教組の大会に対しまする警備でございますが、これは従来から大変大量の警察官を動員いたしまして警戒態勢をとっているところでありまして、大体、毎回延べ一万人を超える警察官がそれぞれ会場並びにその周辺で警戒に当たっております。そうすることによりまして、右翼等の違法行為をとにかく未然に防止しようという態度でやっているわけであります。また同時に、違法行為が発生しました場合には、これは直ちに検挙する、こういう姿勢でございまして、過去五回の日教組大会の際の検挙人数を足してみますると百九十人になりますので、大体一回約四十人近い検挙者を出しているというのが実態でございます。  そういうことで、警察といたしましてはできる限りそのような事前に警戒を強めることによって事件を起こさせないという点にまず第一に力点を置く。そしてまた、事件が発生したからには必ず検挙するという姿勢で臨んでいるわけでございますが、ただいま御質問のように、それでは右翼の車両等をはるかに遠い段階で、たとえば県境あたりで県に入れないような措置ができないかという問題でございます。これはただいま申しましたように、違法行為が行われる具体的危険性があるという意味で会場周辺におきまして必要な規制を行っているわけでございますので、その規制につきましてはやはり何といっても具体的危険性があると判断されるというのが前提でございます。そういう意味では右翼車両の規制のどこで規制するかという問題につきましては、やはり危険性が認められる範囲の段階で行うべきであるというふうに考えておりますので、まだ違法行為を行う危険性というものが具体的に認められていない段階、単に通行しているような段階においてこれを規制するということは法律的に困難でございます。
  80. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ただ、実際問題としては、妨害するためにがんがん騒音を流して論難攻撃してへこましちゃう、それから旅館なんかに行ってまたロビーに座り込む、町じゅうを騒然たらしめるという目的を持っていることは、過去の幾多の事例からこれは明瞭なわけでしょう。あなた方まあ一〇〇%確実だというふうに推認できるでしょう。そこでそれはできないだろうかと言っているわけですから。できるんじゃないかな。どうでしょう。
  81. 三島健二郎

    ○説明員(三島健二郎君) 少なくともただ宣伝カーが県境を通過するといったふうな状況におきましては、ただ単に車両が通行しているというふうな形態でございますので、少なくとも犯罪がいまだその現場で発生しているとか、まさに発生しようとしているといったふうな状況ではないわけでございます。そういう意味では、やはり規制というのは、一定の事実行為、強制力を伴う場合もございますし、そういう行為でございますので、したがって、やはり犯罪がまさに行われようとするその直近の場で行うというのが法を運営していく際の姿勢であると、こういうふうに考えております。
  82. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは一般論としてはそうかもしれぬけれども、右翼という特殊な団体だからね、わかっているのだからもうちょっと、わかっていても抽象論でこれを見逃すというのはどうだろうか。まあもう一遍ひとつ考えてもらうんだね、きょうはこの程度にしておくから。  それから、もう一つはどうも右翼に対する警察の対応が甘いというのは、あなた方の陳弁にもかかわらず一般の民衆はやっぱりそう見ていますよ。幾らあなた方が、いや何件検挙いたしましたと言われても、一般の大衆はやっぱり右翼に甘いと、こう見ていますよ。  その一つの例として私はお話しするんだけれども、岡山県でも後楽園という天下の名園がある。そこに駐車場がある。一台一台縦に入れるようになっておる。右翼の車は大きいやつを横に駐車する。それで市民が所轄の警察に電話して、こういうのを取り締まってくれなきゃ困るじゃないかといって通報した。そうしたところが、右翼団体が翌朝やってきて、その家の前で、けしからぬやつだとわんわん言って妻や子供がおびえてしまう。そしてその男が言うのには、私が通報したということを警察が右翼に教えなければわかるはずないじゃありませんかと、こう言うんですね。これじゃ困るので、やはり違法行為があった場合に警察へ通報するというのは、警察に協力するようなものだから、それを右翼に教えて右翼のお礼参りみたいなものを現実化するようなことをさしてもらっちゃ困るわけだけれども、この点ちょっと審議官、少し県に厳重にひとつおきゅうをすえてもらいたい。
  83. 三島健二郎

    ○説明員(三島健二郎君) ただいま御指摘の後楽園の駐車場におきます事案でございますが、この事案につきまして、実は県に対しましてもどういう事実であったかということを調査させたわけでありますが、相当細かく関係者等も全部聞いてみたわけでありますが、一応それに該当するかなと思われる事案といたしましては、七月十六、十七日の両日に岡山市内の教育会館におきまして県の教組の大会が開催されたわけであります。その際、右翼の車両が数台後楽園の駐車場に駐車したという事案がありました。恐らくこの関連ではなかろうかと思いますが、これに関連いたしまして警察に対しまする通報等について細かく調べたわけでありますが、実はこの辺のところの状況につきまして、どうも先生御指摘のような通報の実態というものがつかめておりません。  と同時に、また、警察がそのように市民から通報していただいたことを右翼に知らせたという御指摘でございますけれども、これにつきましても、そのように右翼に知らせたという事実につきましても、そういうものは発見できないという報告でございます。  ただ、考えられますことは、いずれにいたしましても、警察が治安を守るというからにはどうしても市民の協力なくしては治安の確保の万全を期するわけにはいかないわけでありますので、したがいまして警察といたしましては、そのように警察に御協力いただく方々、この方々に対しましては大変感謝をしておることは当然であります。  また同時に、そのように警察に協力していただいた方々の氏名なりあるいはその通報なり等をみだりに第三者に漏らすというようなことがあってはならぬことはこれはあたりまえであります。そのようなことは今後ともないようにひとつ尽力はしてまいりたいと思います。
  84. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最後に、法務省の予算の問題、それから人員の問題ですが、この間、私は代用監獄の問題で検察官といろいろ意見を闘わしたのですが、第一線で活躍している検察官が言うのには、拘置所に被疑者を置いて調べるというと、被疑者を検察庁へ必要なときに連れてくる刑務官が足りないと、こう言う。だから、必要なときに持ってこれない。それから今度は、刑務所へ行って、拘置所へ行って調べるときに、四時になると、検事さん、もう看守がいなくなりますのでもうこれで調べを終えてくださいと。これじゃ被疑者を拘置所に置こうと思っても置けないんです。だから代用監獄に、警察の留置場に置かざるを得ないんですというような、そういう説明があったので、私も唖然とした。いま刑事施設法案、留置施設法案がもう二つの通常国会でストップしているゆえんのものは、代用監獄制度の問題なんですね。それをわれわれはできるだけ早いうちに廃止して、そして拘置監に被疑者を移して人権を守ろうといったって、刑務官が少ない。できないんです、これでは。  御承知のように登記所の問題も、公共事業の増大に伴って、それからまたいろいろ商業活動の増加に伴って登記事務が非常にふえておる。ところがなかなか登記官がふえないものだから、登記を申請してもなかなか登記ができない。閲覧のときにそれを監視する人がいないものだから、登記簿が改ざんされる、いろいろな権利関係がめちゃくちゃになるというようなことがある。  これはやはり、法務省のような人件費が過大な、過大と言っちゃ悪いけれども、人件費が主で事業費の少ない官庁の場合に、事業官庁と同じように一律一〇%引いちゃって予算を組めというようなことになると、これはもうどうしようもない結果になりますね。だから、主計官、大蔵省の主計局なんかも、こういう点では実態をよく把握してもらって、実態に合うようにやはり予算を組んでもらわなきゃ困る。それからまた行政管理庁も、こういう実態を見ないで、一律人間を減らせ、増員まかりならぬというのでは、いま言ったように不正が行われてしまう。人権が一向に守られない。いろんな不都合な結果が起きる。これは少し大蔵省も行政管理庁も考えてもらわなきゃ困りますよ。どうですか。
  85. 吉本修二

    ○説明員(吉本修二君) シーリングの問題でございますが、御指摘のようにことしは原則一〇%マイナスということで、五十九年度予算に向けて何さま聖域を設けず厳しい財政状況のもとで財政改革、財政再建を実現するということで、そういう方針でやっておることは御指摘のとおりでございます。  ただ一つ申し上げておかなければなりませんのは、先ほど御指摘ございましたけれども、実は、特別の領域について聖域を設けるというようなことはいたしませんけれども、経費の費目によって、当然すえなければならない経費、たとえば御指摘の人件費、こういうものは別枠ということでカウントされておりまして、それが一律削減になるというような形にはなっておりません。さはさりながら、全体として非常に厳しいシーリングであるということは事実でございます。ただ、現下の一番大事なことは、財政の対応力を回復するということでございますので、ひとつこの厳しい方針の中で、まず実情を一番よく御存じの法務省におかれまして、このシーリング枠のもとで実情に沿った予算要求をしていただいて、私どもは本予算の編成の過程で実情に即した予算ができますようにできるだけの努力はやってまいりたいと、かように考えております。
  86. 古橋源六郎

    ○説明員(古橋源六郎君) ただいまの御質問でございますが、まずその前に、私どもが行っております定員管理方式について若干御説明を申し上げて御理解を賜りたいと思います。  まず、定員の削減をしていくためには、まず業務の合理化、効率化をやっていただく。それによって既定定員を縮減していただく、こういうことが大切でございまして、これに基づきまして第六次定員削減計画によりまして、臨調答申に基づきまして私どもやっているわけでございますけれども、公務員全体の数を、五十七年度を初年度といたしまして五年間で五%削減するという計画をやっておるわけでございます。しかし、五%と申しましても、これ一律に全部五%削減というわけじゃございませんで、全体としての五%でございますから、その業務量の効率化の難易度であるとか、あるいは現在の定員事情であるとか、そういうものを勘案いたしまして、各省別にいろいろと御相談をし、やっているわけでございます。法務省の場合、全体が五%のときに四・四四%の削減でございまして、多いところは八%を超える削減をやっておるところもございますけれども、平均より低い削減率でやっているわけでございます。こういうようにして定員削減をいたしまして、今度、毎年各省から要員の新規需要というものを伺いまして、必要最小限度それに増員を加えていくということをやりまして、めり張りのきいた定員管理というものに私どもは努めておるわけでございます。  そこで、いま御質問の登記事務であるとか刑務所関係の職員でございますけれども、私も現場に行ってまいりました。登記関係で、不動産登記で、マンションが一つできますと非常に多くの事務がふえるとか、こういうことはもう少し制度を改革してもらわなければいけないのじゃないかというふうに私ども感じておりますけれども、しかし、現実に人はたくさん要るということは現時点においては確かでございましょう。あるいはまた刑務所におきまして、覚せい剤事犯が非常に入ってくる、暴力団の関係者が入ってくる、そうすると従来よりも保安の関係で非常に神経を使わなければいけないということも現場で伺ってまいりました。したがいまして、私どもが具体的に毎年度の定員を査定いたしますときには、そういうような特殊な業務であるということ、あるいはその業務量がふえているということを勘案いたしまして査定をしておるわけでございまして、たとえば五十八年度の場合に、全体として千六百九十五名という大幅なネットの減をやっている中で、刑務所につきましては十四名のネットの増、登記所につきましては三十五名のネットの増を行っておるわけでございます。したがいまして、各省の中でこれらの点については非常に配慮をしておるということを、まず御理解賜りたいと思います。  したがいまして、今後の問題でございますけれども、まず第一に、法務省の中においてどういう点がもう少し合理化できるのかできないのか、全体としてお考えをいただかなければいけない、あるいはもっと効率化できるところのものについては一層の御理解を賜りたい。しかし、それにもかかわらず業務の特殊性であるとか業務量の増大というようなことがあれば、それは私どもも御相談に応じてまいりたいというような考え方で、効率的、重点的な人員配置を進めてまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  87. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最終的に最高裁の刑事局長にお伺いしたいのは、去年国選弁護の報酬の引き上げがありませんでしたね、五十八年度は。五十九年度はどういうふうな方針で臨まれるのか、あなた方の方針ですね、それをお伺いしたい。  それから法務大臣に、これはいま行政管理庁や大蔵省の主計官の大変前向きのお話がありましたけれども、やっぱり問題は大臣の政治力ですね、これひとつぜひがんばっていただきたい。この二つお伺いして終わります。
  88. 小野幹雄

    ○最高裁判所長官代理者(小野幹雄君) 国選弁護人の報酬につきましては、毎年増額に努めてまいったわけでございます。昨年は、ただいま御指摘のとおり五・五%の増額を要求したわけでございますけれども、御承知のとおり刻下の厳しい財政事情、特に国家公務員の人事院勧告も凍結される、あるいは人件費類似の諸手当その他のものも全部そのまま据え置かれるというようなこともございましたので昨年は見送るということにいたしたわけでございます。しかし、そういう経緯でもございますので、ことしは、ことしと申しますか昭和五十九年度分につきましては、何とか増額していただきたいということで目下その作業を進めているというところでございます。
  89. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) いま寺田委員の御質問というよりも、私どもに対する大変御理解のあるお話でございますが、当然私どもとしては、特にいまお話しの登記関係は仕事の量が非常にふえているということで、仕事の量がふえるというから、それの対応策としては機械化がどこまでできるかという問題、人がどこまでふやせるかという問題、いまの状況のもとで非常にむずかしいのですけれども、これはどうしても国民へのサービスの低下になってしまうし、非常に、特に法務局の登記関係では仕事が忙しいがゆえにサービスが低下して評判の悪い役所になっているということも重々承知しておりますので、部内、法務省の中での何といいますかやりくり算段もしながら、人員、予算の問題につきましては何としても積極的に努力をしていかなきゃならぬということで目下やっておる次第でございます。
  90. 海江田鶴造

    ○海江田鶴造君 私は再審制度あるいは死刑廃止問題等について伺う予定でございましたけれども、先ほど寺田委員の方からるる御質問がありましたので省略をさしていただきますが、ただ、一部に、今回の再審事件が相次いだことから、再審事由を拡大するとかあるいは緩和するとかというような御意見もあるようでございます。私はやっぱり再審というものは、これはもう確定判決に対する非常救済措置でございますから、本来あってはならないものであるとこのように理解しておるものでございまして、誤判を避けるためにはもともと捜査あるいは検察また裁判審理の充実、こういうことについて反省すべきは謙虚に反省し、また不断の努力を積み重ねて、万が一にも事件判断に誤りを来すことがないように努力すべきことが一番基本的な大事な問題である、このように考えておるものでありまして、捜査手続あるいは刑事司法手続等について故むべきは改めていったらいいのではないか。  この際考うべきは、裁判が長期化するということはぜひとも避けなければならないし、また、やはり国民は法の安定性あるいは早期確定判決を望んでいるのが実情だと思いますので、当局におかれましては、きのう前田刑事局長の談話が読売新聞の夕刊に出ておりましたけれども、再審制をこれから検討していくというお考えのようでございますが、どうかこの点につきましては、私はやはり再審事由の拡大については抑止的に考えていくべきではないか、このように考えております。これは私の要望でございます。  また、死刑の存廃問題につきましても、先ほど寺田委員から一部触れられましたが、私、イギリスのほかに何か一、二年前にフランスがたしか死刑を廃止したというふうに伺っておりまして、一部ではどうも死刑があるのは後進国だ、先進国はほとんど死刑を廃止しているんだと、このように言っている向きもありますが、この点につきましては、前田刑事局長に簡単で結構でございますが、最近の国際的な死刑の廃止の流れといいますか、そういうものをお教えをいただきたいと思います。
  91. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 諸外国におきます死刑制度の実情でございますけれども、一九八〇年の国連の事務総長の報告というのがあるわけでございまして、数から申しますと、当時の加盟国百五十二カ国の中で廃止国が二十一カ国、それから通常の犯罪については死刑を廃止しているけれども、特別の犯罪については存置している国が十二カ国、それからアメリカ等の連邦国家におきまして一部の州で廃止しているものが二カ国、残りの百十七カ国は死刑存置国と、こういうふうになっているわけでございますけれども、そういう数字から見ますと存置国の方がはるかに多いというのが実情でございます。  一方、いわゆる西ヨーロッパの諸国において死刑廃止国があるということも一面事実でございまして、ただいま委員御指摘のようにフランスでも廃止をされておりますし、イギリスでも、論議がありましたけれども復活には至らなかったというような実情にあることは事実でございますが、先ほど大臣からもお答えありましたように、やはりそれぞれの国情に応じてそれなりの判断といいますか、結論が出ているのじゃないかというふうに考えております。
  92. 海江田鶴造

    ○海江田鶴造君 ありがとうございました。  次に、警察庁を中心にお伺いしたいのでございますけれども、最近無罪事件等が出てきまして、またいまの世の中まことに技術の進歩、交通の発達等で非常に複雑、スピード化、そういうものがありまして、犯罪の捜査というものが、特に証拠収集ということがきわめてむずかしくなっているのではないか、このように考えるのでございますが、最近海外から来る人たちが一様に、日本は世界では一番安全な国だ、わりあいに犯罪が少ない、また非常に日本の警察は優秀だ、検挙率が高いというようなことを言っておるわけでございますが、最近のいろんなこういう世の中の趨勢に伴って凶悪犯等の検挙率がかなり落ちているのではないか、また、国際的に比較してどうなのかということをちょっとお教えをいただきたいと思います。
  93. 三上和幸

    ○説明員(三上和幸君) 最近の犯罪をめぐります状況につきましては、ただいま御指摘もありましたように、なかなか捜査がむずかしくなってきております。その状況の中でどんな状況になっておるかということでございますので、凶悪犯について申し上げますと、五十七年の凶悪犯罪は八千七百五件認知をいたしておりまして、七千五百五件の検挙、八六・二%の検挙率となっております。過去十年間の凶悪犯の認知状況の推移を見ますと、凶悪犯全体としては減少傾向を示しておりまして、罪種別に見ましても、放火、強盗を除きましておおむね減少傾向を示しております。検挙の状況も先ほど昨年の八六・二%と御紹介を申し上げましたけれども、大体八〇%台の高い検挙率を示しておりまして、罪種別に見ますと、特に重要な殺人事件につきましては過去十年間九六%以上の高率で推移をいたしております。  そのような状況で、いまのところ、そういういろいろな形で捜査をめぐります環境はむずかしくなっておりますけれども、検挙そのものについてはいろいろな側面から努力をして、それほど大きな変化がない形で進めてきておるというのが実情でございます。  また、諸外国との関係でございますが、アメリカ、イギリス、ドイツ等先進国と言われる諸国におきましても犯罪が多発をいたしまして、特に凶悪犯罪の増加ということで悩まされておるわけでありますが、先ほども御説明申し上げましたように、昨年は百五十三万件ということで戦後第三位という発生認知状況を見ておるわけでございますけれども、これは窃盗犯、特に乗り物盗の発生が非常に多くなっておるということで、ある意味では百六十万件ぐらい発生しておりました昭和二十三年のころに比べますと、凶悪犯そのものは半分ぐらいになってきておるという状況でございます。そういう意味で非常に凶悪犯は減少ぎみにはあります。  他国との比較ということになりますと、やはり十万人当たりの犯罪発生件数ということで、犯罪率で比較をするということが適切であろうというふうに思いますが、そういう観点で見ますと、殺人では、認知の状況から申しますとアメリカが犯罪率で日本の六・五倍、あるいは英国が二倍というような状況でございますし、検挙の状況を見ましても、殺人では、一九八一年の統計でありますけれども、日本が九七・四%に対しましてアメリカが七一・六%、英国が八二・六%という状況ですので、はるかに日本が高い。それから強盗なんかにつきましても、日本では八一・五%に対しましてアメリカが二三・九%、英国が二四・七%という状況でございますので、犯罪率では日本は非常に低い。検挙率では欧米に比べて非常に日本が高い。こういう状況になっております。
  94. 海江田鶴造

    ○海江田鶴造君 ありがとうございました。  いまの若者はちょっと忍耐心がないとかあるいは遊び好きだとかいうふうなことで、なかなか捜査員の根性を養うのは大変だと思いますし、また人権擁護に大変大きな関心を払わなくちゃならないということでなかなかむずかしいと思いますけれども、これからもますますがんばっていただきたいと思います。  次に、これはまことにむずかしい問題でございまして、当局のお答えをいただくというよりはあるいは現在いろいろ犯罪捜査をめぐる町の声、民間の声というものをいつも聞かされておりますが、そういうことから私が特に痛感をしておりますことを申し上げ、物によっては当局の善処方を要望したいと思うのでございます。  一つは、最近、新聞というよりはマスコミというよりはもうテレビがきわめて発達をいたしまして、全部に普及し、それとともにテレビのいろんな刑事事件、特に特異な刑事事件の場合には取材競争というものがまことに激しいものがあるように見受けられるのでございます。テレビの取材あるいはマスコミの取材というのは、これはもう当然国民の知る権利ということから発しておるわけでございまして、大切に保障されなければならない問題だとは思うのでございますが、ただ、被疑者になった、警察につかまったという段階で、まことにそのつかまった段階から取り調べに入るまでの段階の取材というものが時には行き過ぎではないかと思うような点が見受けられますし、特に被疑者の家族についてのテレビあるいはインタビュー等については、これはもう明らかに強要と思われるようなものも私自身も見ておるところでございますが、私、いろんなところで、どうも家族まであんなにするのは弱い者いじめではないか、そこまでの国民の知る権利はちょっと行き過ぎではないかと、こういうような声を聞くのでございます。  いろいろ捜査上にマスコミの取材が支障があることもあると聞いておりますけれども、私はむしろ被疑者並びにその家族の人権という立場から、まあ一般の新聞よりはむしろ写真、特にテレビ取材というものについてもうちょっと配慮があり、そういう報道機関がみずから自主規制をするという必要があるのではないかと、このように考えております。  終戦直後に新聞はプレスコードというものを出しましたが、その後、新聞協会が新聞編集の基準というものを出しておりまして、御承知のように少年事件については名前を伏せるとか、あるいは営利誘拐については事件の報道を控えるとか、いろんな申し合わせがなされております。しかし、被疑者並びにその家族の人権については、ちょっと、私は見てみましても余り見当たらないのでございますが、この点について、マスコミの取材もこれはきわめて大事なことでございますので、大変むずかしい問題とは思いますが、法務大臣の御所見を承りたいと思います。
  95. 鈴木弘

    ○説明員(鈴木弘君) お答え申し上げます。  先生もおっしゃいましたように、取材の自由というのは国民の知る権利に奉仕するものとして非常に大切なものだと思っておりますが、先生もおっしゃられましたようないろいろの事例、ことに取材を嫌がっている被疑者、被告人にマイクを突きつけて執拗に発言を求めたり、あるいはむやみに写真撮影を行ったりして、事件とは直接関係のないような被疑者、被告人やその家族のプライバシーにわたる事実までも報道するというようなこともあるようでございまして、こういうようなことはやはり人権上好ましくないのではないかと考えておるわけでございます。  ただ、日本新聞協会では自主的に倫理綱領をつくられ、その中で、個人の名誉は他の基本的人権と同じように尊重され、かつ擁護さるべきであるとして、マスコミ各社も人権侵害がないように配慮をめぐらしておられると聞いておるわけでございますが、この点につきまして、先生の御意見にもございましたように、やはりマスコミで自主的に諮問委員会をつくるなどして、国民の各層から成る委員会というようなものをつくられまして御検討いただけたら非常に結構だなというように思っておるわけでございます。  なお、私どもといたしましても、人権上の問題でございますので、先生御承知のとおり人権擁護委員というのがあるわけでございまして、人権擁護委員は人権擁護活動を行っておりますし、また弁護士、元ジャーナリスト、元学校の先生など民間の有識者がそろっていらっしゃいますので、まずもってその全国的組織体である全国人権擁護委員連合会に何らかの提言ができるだろうかと検討方を依頼することが適当だと思って、その点考えておる次第でございます。  以上でございます。
  96. 海江田鶴造

    ○海江田鶴造君 次に、先般、爆弾事件、あれは土田邸と言うんですかね、それとピース缶爆弾事件と申しますか、あれの判決がございましたが、この判決の中にも私特別に関心を持たされるところがございましたし、特に、判決が終わったときに特別に裁判長が所感という形で所感を述べられております。判決の結論のところで、四人の被告については「犯人であるとの疑いがあるが、犯罪の証明はなく、」と、こうありますし、またあとの四人については「本件犯行に関与しているのではないかとの疑いは残るが、犯罪の証明はない。」と、このような結論になっております。  こういうことから無罪になっておるわけでございますが、裁判長がその宣告を終えるに当たり裁判長として一言せざるを得ないという判決後の所感を出しておられますが、ここで、ピース缶爆弾事件、日石あるいは土田邸事件の被害者、遺族の人々がこの判決を聞く心境を思うと、まことに深い感慨を禁じ得ない。当職らも、事件の重大さと証拠及び法との板挟みになって心の重い数年を過ごしてきたというのが偽らざる気持ちである。しかし、すべては法に従って行う裁判であるがゆえに、まことにやむを得ないと申し述べるほかない、こういうふうに言っておられます。  全体の新聞報道は被告側の言い分を全部取り上げておりまして、まことにけしからぬ、われわれは無実であるのにいかにも灰色みたいなことを言うと、こういうような新聞がきわめて多かったのでございますが、私は、やはりこの所感の中に事件に当たられた裁判長の良心と苦悩を読み取ることができると思うのであります。私は、一般国民は皆そうであると思いますが、犯罪捜査に当たる人たちに対しては、まず第一に無実の者が絶対に有罪になったりするようなことがないように避ける、これがもう一番大事なことでございます。しかし、また同時に、有実という言葉があるかどうか知りませんが、無実ではない、実際に犯行を行った者が無罪になって大手を振って歩いておるというようなことがあっては、これは絶対にならないのでありまして、もしそういうことがあれば、本当に国民は安心して国を信頼することができないのでございます。  先ほど申し上げましたように、非常にいま捜査はむずかしゅうございますし、証拠と申しましてもまことにすぐ消えるような証拠が多いわけでございまして、むずかしいとは思いますが、そしてまた疑わしきは罰せず、あるいは黙秘権を認められておるということで、これからも大変な隘路があると思うのでございますけれども、やはりこの裁判長の所感にもありますが、どうも犯人ではないか、実際にやったのではないか、しかしはっきりした証拠がないということで無罪になる、こういうことが絶対にあってはならない、このように思うのでございまして、その点について私は、マスコミがきわめて忘れっぽく、無罪になった人たちだけを報道して、犠牲になった人たちのことを余り報道しないということはきわめて遺憾であると思っております。何とかしてこういう問題について捜査当局――検察、警察がさらに全力を挙げて実際の犯人が大手を振って処罰されないでおるということは許されないということでがんばっていただきたいと思っておるわけでございまして、これは私の所信でございます。答弁は要りませんが、法務大臣が何か御所見がありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  97. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) 格別ないんですけれども、せっかくの御指名だから。  いま爆弾事件の判決の話が出ましたが、私は判決を見て、後で裁判長の所感を見て、ああそうかなと、こう承知をするほかはないわけでございます。われわれが一生懸命やらにゃならぬということは当然で、やっぱり法治国家、治安の維持ということから見れば当然でございますが、疑わしきは罰しないという大原則ということもまた近代国家、近代司法制度、われわれの制度の中の、裁判の制度の中の大原則でありますから、結局、いまおっしゃるように苦悩に満ちた裁判官のお話を判決後の感想で聞いて、それによってわれわれも大いに勉強せにゃいかぬという感想を言うしかないと思います。そのぐらいにしておきましょう。
  98. 海江田鶴造

    ○海江田鶴造君 終わります。
  99. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私は、免田事件に関連をいたしまして御質問を申し上げたいと思います。  私のこの質問は、免田さんが無罪になられたということ、そのことについては心から喜びとするものでありますが、そのことと別に、この事件を通しましていろいろな法律上の問題点があるのではないかと思いますので、二、三それを申し上げまして御見解を承りたいと思います。  まず最初の問題は、証言の証拠能力の問題でございます。証言の証拠能力につきまして現行法にどのような規定がございましょうか、お尋ねいたします。
  100. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 証拠能力ということになりますと、証言につきましては特段刑事訴訟法には規定がないわけでございます。
  101. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そういたしますと、裁判官の前で述べたことが、宣誓をして述べれば全部それは証拠能力があるということでございまして、もしその証言一つしか犯罪を証明するものがないという場合を考えますというと、うその証言で判決がなされるということが生ずると思いますが、この点についていかがお考えでしょうか。
  102. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 飯田委員に法律のことを申し上げるのもいかがかと思いますけれども、証拠能力といいますのは、やはり伝聞証拠とかそういう関係から問題になる事柄でございまして、証言ということになりますと裁判官の面前で行われることでございますから、あとはその信用性の問題、それをどの程度信用あるものとして裁判官、裁判所が御判断になるか、こういう問題であろうかと思います。したがいまして、いまのように一つの証言だけが有力な証拠であるという場合には、これはまあ裁判所の問題でございますけれども、ほかの状況証拠なりいろいろなことを判断された上でその証言の証明力をどのように見るかということになろうかと思うわけでございまして、その点については、裁判所が十分御配慮されるものというふうに考えております。
  103. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 免田事件につきましては余りはっきりとしたことが言われておりませんけれども、徳島のラジオ商殺しの事件につきまして、有罪の決め手となったのはやはり証言ではなかったでしょうか。
  104. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) まあいろいろな問題があるわけでございますけれども、御指摘のとおり、当時の店員といいますか関係した人の証言が一つ大きな証拠になっていたということは事実でございます。
  105. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 証言がそのように有罪判決の決め手として非常に大きな力を持つということは、言いかえれば、昔の裁判におきまして自白が証拠の王となされたと同じような意味で証言が証拠の王だということになるのではありませんか。
  106. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 御質問の趣旨を十分理解していないかもしれませんけれども、いわゆる自白が証拠の王だと言われたことと、いまおっしゃいましたような証言が証拠の王だというようなふうには、同じことではないような気がするわけでございまして、やはり証言につきましては先ほど来申し上げておりますように、その内容について、また信用性については十分吟味の必要があるわけでございまして、証言があったからといって直ちにそれのみによって結論を出すということは、もちろん事案によりますけれども、適当でない場合もあるわけでございますので、自白の問題とはちょっと性質が違うんじゃないかというふうに考えております。
  107. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この問題につきまして、証拠の証明力を裁判官がよく見きわめてやるからいいではないか、こういうことでございますが、証拠の証明力を見きわめ得る場合はいいですが、そうでない場合もあると思います。したがいまして、現在、自白の証拠能力としましては、不利益になる自白がそのこと一つでは有罪にできないということになっていますが、そうであるなら、証言につきましても、もしその証言だけが有罪にする決め手となるものであってほかに何もないということであれば、そういう証言は証拠能力がないというふうにする方がいいのではないかと思われますが、この点についていかがですか。
  108. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) そういう御意見もあり得るかと思いますけれども、従来から、自白につきましては別ないろいろな問題もありましてそういうような制限を受けているわけでございますが、証言につきましても確かに御指摘のような問題もないわけではございませんけれども、自白と同じように扱うということが果たして適当かどうか、必ずしも同様ではないんじゃないかというような感じを持っております。
  109. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 捜査の段階で、いわゆる広い意味の証言でございますが、広い意味の証言があればそれでいいという思想が広まっておりますというと、だれかの話を聞いてきてそれが証拠になるというと、それでもう犯罪が成立すると考えてしまうことに陥りやすいわけですね。ですから、そういういわゆる広い意味の証言がありました場合に、それを裏づけるもの、あるいは別の全然違った人の証言、そういうものがない限り証拠としてとることができないというふうに刑事訴訟法を改めることにつきましてはいかがお考えでしょうか。
  110. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 同じようなお答えになるかと思いますけれども、抽象的にはいま飯田先生のおっしゃるような証言だけが唯一の証拠ということも考えられないわけではございませんけれども、証言がありました場合に、直接的でないにもせよ、間接的あるいはその周辺の事情としてそれを裏づける何物かが普通はあるわけでございまして、やはりそういうものがない場合には、その証言自体、直ちに信用していいかどうかというふうな問題がまた逆に起こってくるだろうと思うわけでございます。したがいまして、実務の運用において、また現実において、そういう実態であろうと思うわけでございますから、直ちにそういうふうに厳格に立法をするということはいかがなものであろうかという感じを持つわけでございます。
  111. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 免田事件におきまして、一番初めの裁判の第一審において、石村某というお方がアリバイの証言をしておられますね。これは初めの証言と後の証言が、たった一回、回を違えるだけで変わってきておるわけです。しかもその証言は信用がない、変わったから信用がないということになったのかどうか、この点はいかがでございましょうか。
  112. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 免田事件におきまして、重要な証人の証言が前と後とで変わったということは事実でございますし、その点が一つの、一つといいますか相当大きな問題であったことはそのとおりでございますが、それにいたしましても、その変化だけで事が決まったわけではございませんで、その周辺事情なり、関連する間接的な証拠なり、そういうものとの総合判断の結果結論が導き出されたというふうに考えるわけでございます。
  113. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 あの事件で、二つの証言が違った場合に偽証罪として起訴されておりましょうか。
  114. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 免田事件ではそういうような措置はとられていなかったと思います。
  115. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そうしますと、前後で宣誓した証言が違った証言をなされた場合に、偽証罪にもしない、しかもそれは証拠としても採用しないということになりますと、その証言というものの意味はどういうことになるのか、大変疑わしいことになりますが。といいますのは、このように証言そのものを軽く扱う面があるかと思うと、時には信用できないようなものでも証拠としてとってしまう。たとえば徳島事件のごとく、つまり裏づけ資料がないのに証拠としてとるということが起こっております。それで、こういことを防ぐために、やはり証言についても証拠能力を厳格に決めるべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
  116. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 偽証の問題につきましては、申し上げるまでもないと思いますけれども、いわば故意にといいますか、ことさらに虚偽の事実を述べたという場合に偽証になるわけでございますが、記憶違いとかいろいろなこともあるわけでございまして、証言なり供述に変化があったからといってすべて偽証になるというわけにもまいらないわけでございます。  そういうふうに記憶等に基づく証言である場合にどちらが信用できるかということになりますと、冒頭に申し上げましたように、その変化がどういうわけで起こったかとか、あるいは前の証言と後の証言の内容に応じた裏づけ的なものがあるかどうかというような内容の吟味が行われるわけでございまして、その吟味の結果、どちらかが正しい、どちらかは誤りであった。誤りであったとしても、それが偽証になる場合もございましょうけれども、偽証にならない場合もあるというのが実態であろうと思うわけでございまして、飯田委員の御意見は、証言の持つ重要性、またその問題点を御指摘になっていると思いますので、検討はさしていただきますけれども、直ちに法改正ということになるかどうかということになりますと、まだ考えがまとまらないわけでございます。
  117. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この事件につきまして、再審の判決で無罪の判決をなされておりますのですが、その根拠はアリバイの問題じゃなかったでしょうか。もしアリバイの問題だとしますと、やはり証言が関連をしておると思いますが、いかがでしょう。
  118. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 今回の判決では、アリバイの点について、アリバイが認められるということが大きな理由になっておりますが、そのほかにもいろいろと、自白の信用性なり、従来から論ぜられておりました点についても触れておるところでございまして、いろいろな問題が含まれておるわけでございますが、アリバイの点が重点であることはそのとおりでございます。その場合に、何人かの証人が関係しておるわけでございますが、その中で御指摘の方の証言が一つの大きな意味を持っていることもそのとおりでございますけれども、そのいずれを信用するかということは、ほかの間接的な、あるいは関連する証言なりあるいは物証なり、そういうものとの総合判断のもとでああいう結論が出たというふうに考えるわけでございます。
  119. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この問題につきましてはこれでやめておきますので、ひとつ御研究を願いたいと思います。  次に、同じく免田事件でございますが、六回再審請求がなされております。一回から五回までは、法務大臣の死刑執行命令を出す六カ月という期間の範囲内で再審請求がなされております。これはもう死刑執行を食いとめるための手だと思いますけれども、第五回から第六回目の間を見ますとずいぶん期間があるわけです。第五回目、これは最後の棄却が昭和四十二年一月二十日、特別抗告の棄却ですね。それが再審の請求が昭和五十一年の四月三十日に棄却になっているんですよ、原審のあれが。ということは、これより前にやってはおると思いますけれども、しかし少なくとも五年近い期間があるのではないか、こう思われますね。そうしますと、六カ月のうちに死刑の執行命令を出さなきゃいかぬと法律に書いてあるのに五年間放置したということは、これは何か特別の理由があったのでしょうか。
  120. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) この事件におきまして再審請求が数回にわたってなされておりまして、第五次の請求についての裁判があってから第六次の再審の請求があるまで約五年の期間があることはそのとおりでございますけれども、御指摘の刑事訴訟法の四百七十五条の二項にございますように、六カ月の期間のことが定められているわけでございますけれども、再審の請求がある場合に限らず恩赦の出願がある場合にも、「その期間に算入しない」というただし書きがついていることは御承知だと思いますけれども、その点との関連で申し上げますと、実は恩赦の出願が当時なされておりましてまだ結論が出ていない状態にあったわけでございます。
  121. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 こういうしばしば再審請求をしなければ冤罪と思うておる人が死刑の執行を免れることができないという現在の法規定に私は大変疑問があると思います。少なくとも三審制をわが国がとっておる以上は、三審で終わらねばならぬ。ただ死刑判決につきまして、三審制をとっておりますけれども、最高裁から法務大臣にそのことが通告があります。ありますと調査をなさるんですね。そして死刑を執行するのがいいのか悪いのかということを十分調査をなさるはずでございます。その期間というのは相当の期間があるはずなんです。  そうしますと、こういう死刑の事件については、死刑を執行するというまでにずいぶんお悩みになって調査をした上で行われるということでありますが、そうであるならばもっとそのことを徹底しまして、少なくとも法務大臣は、最高裁から死刑の判決があったという通告を受けましたならば、その死刑判決の行われた起訴になった事実について、法務大臣の立場から、つまり行政機関の立場から調査される必要はないでしょうか。これは法務大臣は行政機関として刑を執行する役目ですから、裁判所の判決は判決、法務大臣の執行任務は執行任務と、これは別ですので、執行する以上は過ちがあってはいけませんので詳しく調査なさるのが当然ではないかと思いますが、いかがでしょう。
  122. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) お尋ねの中で、細かな点のようでございますけれども、判決が確定しました場合に最高裁から通告があるということはございませんで、確定いたしますと当該事件を扱っております検察庁の方から法務省の方に報告があるということが前提でございます。その後の手続きといたしましては、いま飯田委員の仰せになりましたように、死刑判決の場合にこれが重要なことであるということから、大臣の死刑執行命令を発せられます前に記録を十分精査をいたしまして、再審の事由はないかあるいは恩赦の事由はないかというような点も含めまして十分検討いたしまして、その上で執行の手続をとるという慎重な手続がとられているわけでございます。
  123. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 第三審で最高裁が判決をいたしました場合に、その判決を執行するのは行政機関の法務大臣だと思いますが、その場合に最高裁の方は、その判決をしたならば、死刑ですからね、当然そのことを死刑の執行機関である法務大臣に言うべきであって、法務大臣の内部機関である検察官の処置に任せるというのは法律上いかがなものでしょうか。
  124. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) あるいは御質問の趣旨を取り違えているかもしれませんけれども、死刑判決が確定いたしますとそれぞれ判決書があるわけでございまして、それは裁判所の判決書でありまして、そのことが検察庁に通知があるということでございますから、いわば間接的ということになるかもしれませんけれども、裁判所の御判断が正式なものとして私の方に伝わってくるということでございます。
  125. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そこで、それは検察官がやろうが最高裁の方でやろうがそういうことはもう別にしまして、手続の問題ですから。ただ、たてまえ上私はそれが正しいのではないかと思うだけの個人の見解ですので、その問題やめます。  死刑を執行するためにいろいろ調査をなさって、その調査の結果、事実の中に少し疑わしい点がある。たとえば証拠が不十分であるとか、このまま死刑を執行するのは忍びない何か理由がある、こういう問題があると思いますが、そういう場合に、法務大臣は最高裁に対して死刑の執行猶予の申請をする、そういう法律体制をつくることはできないでしょうか。
  126. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 先ほど申しましたように、大臣の死刑執行命令が出るまでの間、あらゆる角度から検討をするわけでございますが、その主たるものは、再審の理由はないか、または恩赦に浴させる事情はないかというようなことにあるわけでございまして、そのいずれかであれば部内の職員である検察官を通じて再審請求もさせることができるわけでございますし、また恩赦の申し立てもできるわけでございますから、御指摘のような制度をとる必要はちょっとないのじゃないかというふうに考えます。
  127. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 死刑の判決があったわけですね、死刑の判決があったということは死刑を裁判所は執行しなさいということでしょう。その執行する役を仰せつかったのが法務大臣ですね、法務大臣の命令が要るのですから。そうしますと、そういう場合に調査をした結果、再審の理由があれば再審は検察官がやればいいということでは、これはちょっと何か途中で抜けておるのじゃありませんか。  私がそれを申しますのは、結局そういう制度でありますというとなかなか検察官から再審は請求されない。むしろ法務大臣が行政機関の立場から、人権擁護の立場から、これは死刑の執行をするに忍びないという事由があれば判をおつきにならぬですわね。判をおつきにならぬということはそういう理由があるからだと私は思いますよ。そういう場合に、死刑の執行猶予を実際上いままではやっておいでですね。だから、実際上やっておいでならばそれを制度化したらどうだということです。制度化すれば犯人とされた人が再審請求を何回も繰り返すというそういうことをする必要はない。国が、一体これは刑を執行するにふさわしいかどうかということを責任を持って判定をした上で刑の執行を猶予する。これを公に猶予するということになるわけです。そうする方が正しいのではないか。そうして執行猶予をいたしましたその期間、事実関係を国の責任において調査をいたしまして、そして再審の理由があれば法務大臣が最高裁にそのことを請求するという制度が正しいのではないかと思います。もちろん犯人からの再審請求の権利はありますけれども、犯人だけに再審請求の権利を与えたのでは不十分ではないかということなんでございますが、いかがでございますか。
  128. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 同じようなお答えになるかもしれませんけれども、そういう制度の御提案は御提案として承っておきたいと思いますけれども、先ほど来申しておりますように、死刑の執行の権限は大臣にあるわけでございまして、大臣におかれて執行すべきものは執行し、執行すべからざるものはそれなりの措置をとるということが十分可能なわけでございまして、それで賄えないという点があればまた別でございますけれども、現行の法制のもとで、また運用のもとで十分賄い得ることではないかというふうに考えております。
  129. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 免田さんは大変苦労されて何回も再審の請求をされた。再審の請求がないときでも恩赦の関係があったということで延びたと、三十何年間も延びたということなんですが、そういう三十何年間も延ばして再審の裁判をした場合に、本当の事実がわかるかどうか大変疑問だと私は思います。早い機会にこういう問題は片づけるべき問題ではないか。ですから死刑判決がありましたならば、その死刑判決について、これは死刑を執行しても悔いのないものであるかどうかを明らかにする調査を法務省で、国でおやりになって、そうしてもしこれは死刑の執行をするのには無理だというふうにお考えになれば再審の請求を法務大臣から最高裁長官に申請されるという、そういう制度をおつくりになった方が再審問題を解決するためには一番いいのではないかと私は思うんです。これは死刑執行の判こをつかれるのは法務大臣ですので、法務大臣の御意見はいかがでしょうか。
  130. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) なかなかむずかしい問題だと思いますけれども、いま政府委員から答弁をしましたように、法務大臣がその直接のスタッフを通じていろいろ検討をした結果、死刑執行ができないというような事情があっていま一遍再審で審議した方がいいというふうに判断をするということがもしあるとするならば、それは検察官を通じて再審の請求をさせればいいわけですから、それで私は事が足りる。法務大臣が再審請求するよりも検察にやっぱり一遍おろして、検察官がよく検討して、なるほどそうかいなということで再審請求すればいいので、そのおろす道は法務省の機構の中にあるわけでございますから、やっぱり事足りると思うのでございます。
  131. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 死刑の執行命令をお出しになるのに六カ月しかないんでしょう。六カ月問にそういう調査ができるかどうか大変私は疑問に思いますがね。ですから、まず死刑の執行猶予をしておいて十分な調査をするということが私は必要ではないかと思います。こういう点についてぜひ御検討を願いたいわけであります。  それから形式の問題ですが、検察官が再審請求をするのはそれは事実上はそうかもしれませんが、死刑の執行命令を出されるのは法務大臣ですから、しかも最終の死刑の判決を確定する権限を持っておるのは最高裁ですから、法務大臣が責任を持っておやりになる制度が私はいいと思いますがね、いかがですか。
  132. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 先ほど申し上げましたように、いままた大臣からもお答えございましたように、やはり現行の制度で欠陥があるといたしますならば法改正ということも十分考えなければならないわけでございますけれども、現行の法制のもとで賄い得るような気がするわけでございまして、同じようなお答えで恐縮でございます。
  133. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) ちょっと補足しますが、六カ月以内に執行するというふうになっているんだけれども、この六カ月以内に執行するという法務大臣の執行命令というのは、要するに訓示規定と解されているんですね。したがって、法律じゃないものだから、やっぱりおかしいなと思ったら六カ月延ばしていいんですよ、極端なことを言えば一年になろうがそれは命の方が大事だから、この訓示規定は大したことないんですから。大したことないと言ったらおかしいけれども、延ばすことも可能で、それは大丈夫だと思います。それは確かにおっしゃるように六カ月が絶対のものだということになると、それはなかなかそういうことはないと思いますけれども、そういうふうに解釈で捕えるだろうと、こう思うんです。
  134. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 もちろんそういう訓示規定だという解釈をすればそれでいいんですが、これを訓示規定だということを決めた規定もないわけです、解釈でしょう、あくまでも。解釈ですと、解釈のままほっておくと、やはり再審というものがややこしくなると私は思います。ことにいまたくさん再審事件が出ておりますが、これなども何回も何回も請求してからでないとうまくいかぬというのでは、いかにも犯人に全責任を負わしたみたいなものです。つまり国が間違えておいて、しかも犯人に全責任を負わせる、これはちょっとおかしいじゃありませんか。つまり冤罪であれば、これは国が冤罪をつくったんですから、そうであるならば、それを免れる責任は国が負うべきであって犯人に負わせるべきじゃないじゃないかと、こういう考えも生まれますが、いかがでしょうか。
  135. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 先ほど来申し上げておりますように、有罪の判決の言い渡しを受けた者も再審の請求がもちろんできるわけでございますが、一方検察官も検察官の立場から再審の請求ができるというふうに現行法はなっておるわけでございまして、その適正な運用をむしろ図るべき場合もないとは言えないわけでございますから、その現行法の運用によりまして十分いまの問題も解決できるのじゃないかというふうに思います。
  136. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この死刑執行猶予の問題は新しいものだから急には御返答できぬと思いますよ。それはよくわかりますが、もう少し高い立場からひとつ御検討を願えればありがたい。そして、すべての死刑囚に対してもう一度国の責任において考え直す、死刑という刑罰を存続する以上はそれだけの配慮がやはり必要ではないかと私は思うんですがね。余りこの問題に時間を費やすわけにいきませんのでやめますけれども、どうですか、御研究願うという心も起きませんか。御答弁願います。
  137. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) 裁判で、いまの制度で一審、二審、三審と最高裁まで行って死刑になるというのが、今度再審で無罪になったものですから、御意見のようなことがある意味で必要かなという感じはするんですけれども、しかしいまの裁判制度を崩さないで、いまの裁判制度を充実さして、その中で冤罪なんかは絶対に出ない、いまの再審制度を活用して、まあ再審以前の三審制度の中で本当はもう充実せにゃいかぬ。私は、裁判権の独立というものは中身が充実しなければ独立が独善になっちゃうから、今度の免田事件というのはその意味において非常に大事だと思うのでございますけれども、何と言っても一審、二審、三審、この各段階における裁判が、中身が充実するということで片づくはずなんですよ。そのほかに再審制度というものがあって、そこで救っていこうと、こういうわけでございますから、最高裁判所の上に法務大臣が最高裁を審査するというような制度を制度的につくれるだろうかということにもなってしまう。  死刑の問題については、最高裁の上に審査制度があって法務大臣がそれを審査して、国の責任でとおっしゃいますけれども、最高裁はまさに国の責任でございますから、私はそっちの方の自覚を大いに求めて間違いがないようにしてほしいという、いまそんな感じがするのでございますけれども、今度死刑の執行の問題というのは、やっぱり執行以前に、どうして死刑の判決が出たかという、疑しきは罰せず、しかしそれも慎重審議の結果の話でございますから、むしろそっちの審議の方に重点を置いていくべきだろう、こう思うわけでございます。
  138. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 審議の方に重点を置くという点はよくわかりますが、しかし、再審というのはそれでもなおうまくいかなかったときの話でございますので、そうであるならば、そのときの用意として再審の規定があるならば、その再審の規定に関連して死刑の執行猶予の制度も必要ではないかと私は思いますけれども、きょうはこの問題はこのくらいにしておきます。  次にお尋ねいたしたいのは、今度の免田事件のようなことが生じたのは自白を強制する機構があるからだ、こういうふうに世間では言われております。その自白を強制する機構というのは代用監獄である、こういうふうに言われておりますが、ここで私、非常に奇異に感じますのは、代用監獄というものの意味がわからないのでお尋ねしますが、代用監獄と警察の留置場と同じものでしょうか、違うでしょうか。法律上の問題ですよ。お尋ねします。
  139. 鈴木義男

    ○説明員(鈴木義男君) 警察留置場は、本来警察官逮捕いたしました被疑者留置しておく施設として設けられたわけでございます。他方、監獄法の一条三項によりますと、警察留置場監獄に代用することを得という規定がございます。この規定が根拠となりまして、逮捕された後勾留の段階にまでいきました被疑者、それから被告人になってからも同じでございますが、こういう被疑者被告人につきましては、本来は監獄すなわち拘置所等に収容するというのでございますけれども、この一条三項の規定によりまして警察留置場監獄に代用することができるということになりますので、この場合にこの規定に基づきまして留置場勾留の執行をすることができる、こういうことになるわけでございます。  その意味で、施設は同じでございますけれども、留置場といいます場合には、それは逮捕された逮捕中の被疑者留置する、それから代用監獄といいます場合には、勾留になった被疑者被告人を収容する、こういうことになります。
  140. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 代用監獄に入れるということを認定する、認定といいますか指示するのは裁判官でしょうか、検察官でしょうか。
  141. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 勾留の場合でございますと、勾留すべき場所としてどこを指定するかというのは裁判官でございます。
  142. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 裁判官がある警察留置場を代用監獄と指定して、そこへ入れなさいということを指示いたしますと、検察官がそれを執行するわけですね。そしてその場合に、警察に代用監獄に入れた被疑者なり被告人なりを取り調べをする権限はあるでしょうか。
  143. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 被疑者勾留場所が代用監獄である場合と、いわゆる拘置所である場合とあるわけでございますが、その場合に、警察官が必要があれば検察官の指揮のもとに取り調べができるということでございまして、場所がどちらであるかによって変わることはございません。
  144. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そうしますと、警察官が勝手に、警察留置場を代用監獄にしたそこに入っておる被疑者とか被告人を取り調べることはできないわけですね。勝手にやるわけにはいかぬわけですね。いま検察官の指揮下においてとおっしゃったでしょう。どうでしょうか。
  145. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 勝手にという言葉でございますけれども、通常の場合は包括的な了承を受けているという場合が多いと思いますけれども、特に検察官の方で具体的な指示をした場合にはそれに当然従うべきであるということになろうと思います。
  146. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そうしますと、結局、警察の代用監獄に入れて取り調べるために自白が生まれてくるという考え方は間違いだとおっしゃるんですか。
  147. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) そういう御議論もあるわけでございますけれども、代用監獄留置するあるいは勾留するということが直ちに自白の強要につながるというふうには考えられないわけでございまして、免田事件を念頭に置いてのお尋ねであろうかと思いますが、ちなみに申しますと、免田事件における強盗殺人事件につきましては、代用監獄への勾留という事実はなかったわけでございます。
  148. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 代用監獄として警察留置場を使う場合、付近に拘置所がある場合でも代用監獄として使うことが事実上あるんでしょうか。
  149. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) いろいろな事案事案によって違うわけでございますけれども、捜査の必要性ということを言いますと誤解を受けるおそれもありますけれども、関係者の取り調べとの関係あるいは証拠物との関係、いろんな面から見て代用監獄勾留して取り調べる方が相当であるという場合には、代用監獄留置する場合もあり得るわけでございます。
  150. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 実は私が御質問申し上げておりますのは、検察官が当然責任を持って取り調べられるべき人ですね、被疑者とか被告人と言いましても。この場合は警察官権限下にあるのじゃなくて検察官権限下にある人たちでございますね。そうであるならば、検察官が取り調べるのに都合のいい場所を選ぶのが筋道じゃないでしょうか。それがそうでなくて、検察官が調べるのに都合がいいということよりも、むしろ警察が調べるのに都合がいいというふうにして代用監獄の指定がなされるということがどうも私にはわからぬのですが、どういうことなんでしょうか。
  151. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 警察の都合という意味ではございませんで、まさしく勾留になっているわけでございますから、検察官の管理下にあるといいますか、そういう状態にあるわけでございますが、全部が全部検察官がみずから捜査をしなければならないわけでもございませんで、警察を通じて、警察を指揮して補充捜査をするということも十分あるわけでございますから、そういう意味で申し上げたつもりでございます。
  152. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 警察官を補助員としてお使いになって取り調べをさせるということは、刑事訴訟法に書いてありますからできますね。その場合に補助員として取り調べをさせるということは、もちろん検察官の責任においておやりになることであって、もし検察官の指揮監督がだめならば警察の間違いということが起こるかもしれませんけれども、起こった場合でもそれは検察官の責任ではありませんか。つまり、警察官が拷問したという事実が起こった場合、事実上ですよ、法律上はないにしても事実上起こった場合に、それは検察官の責任ではありませんか。警察の責任でしょうか。
  153. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) その責任という問題がどういう意味でお尋ねかよくわからない点もございますけれども、先ほど来お答えしておりますように、検察官の請求によって勾留状態にあるわけでございますから、いやしくも行き過ぎたような捜査が警察によって行われてはならないわけで、それについて十分指導監督すべきものであるということはそのとおりでございます。
  154. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私がここでお尋ねしておりますのは、世間で、警察の留置場が代用監獄として用いられる、そのために自白の強制がなされると、こういうふうに一般に言われておりまして、世間の人はそう信じておるわけです。それが事実であるかどうかを実は知りたいために御質問申し上げているわけなんですが、もしそれが事実でなくて想像にすぎないなら、またこれは考え直してそうした宣伝を改めるようにしなきゃならぬと思いますけれどもね。自白を強要するということは、警察がやるということがどうも私にはわからないのです。検察官がおやりになるならわかりますよ、検察官のもとに置いている被告人、被疑者ですからね。それを警察官が拷問にかけるということは、どうも私は納得がいかぬのです。  それはそれとしまして、いまこの問題を提起しておりますのは、代用監獄というものが現実に存在する、しかもこれをいますぐ廃止することができないという事実がございますね。それができないというのが事実で、理想としてはこれをなくした方がいいかもしれませんけれども、現実にできないんだと、そういう場合に、従来世間で言われておるような状態が代用監獄に本当に存在するのか、そういう点が問題だと私は思いましてお尋ねしておるわけなんですが、検察官が当然責任を持ってそういうことが起こらないようにすべきにもかかわらず、それを怠けておられるから警察の拷問が起こるんでしょうか。その点いかがですか。
  155. 前田宏

    ○説明員(前田宏君) 代用監獄におきましてもまた拘置所におきましても、そういう強要あるいは拷問というようなことが行われてはならないわけでございまして、それはやはり関係者といいますか、捜査官の心構えといいますか、考え方といいますか、捜査のやり方といいますか、そういう問題であろうと思うわけでございまして、場所がどうであるかという問題には直ちにつながらないことではないかというふうに思います。
  156. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この問題はこの程度にしておきます。時間が来ましたのでやめますが、実はこれは世間の誤解がもしあれば、誤解を解くことをおやりになるべきだと思います。もし、誤解がなくてそれが真実であるならば、真実を改めることが必要だと思いますが、この点もきょうここで私、的確な御返事をいただこうと思いませんので、御研究を願いまして、後ほど、また九月から臨時国会が始まりますのでお教えを願いたいと、こう思っております。きょうはこれでやめます。
  157. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は、金大中事件の問題に関連をしてお聞きをしたいと思うのでありますが、警察庁は先日、金大中事件の捜査本部の解散を明らかにいたしました。この金大中事件が起こったとき以来、まさに国民の期待はわが国の主権侵害の事実を明確にすること、金大中氏の原状回復を成し遂げること、さらには重大な犯罪である本件の真相の究明を政府と警察、検察庁に期待をした、まさにこれであったと思うわけであります。  ところが、残念ながら十年たった今日、捜査本部が解散される、こういう事態になって、ある新聞の社説は、たとえば、ただ一つ残されていた真相究明、原状回復への政治決着後のか細い糸までいまははっきり切れた。こういう失望をあらわしているし、ある新聞は同時に、釈然としない後味の悪さが残る。どうすることもこれはできない。国民の間には、金大中氏が国家権力によって抹殺されようとしたのだという見方が依然として強い。政治決着は、この見方を否定するだけの説得力を持ち得なかったどころか、かえって強めたのではないかということで、依然としてこの事件に対する究明の国民的期待をあらわしているわけであります。  私がいま思い出すのは、これが起こったときにわが国の国会で論議されたときに、政府や大臣はどういう姿勢を示したか。これは徹底的に究明します、やります、こういうことであったわけであります。たとえば、当時の江崎国家公安委員長の衆議院地方行政委員会における答弁をいま読み直してみますと、「白昼堂々と外国の要人が拉致されて、しかも、それが海を渡って、韓国ソウルの自宅の前で釈放されたというようなことは、これはうやむやに済ませる性質のものではございませんですね。したがって、これは、日本の警察、ひいては日本の法律の権威、尊厳をないがしろにした事件であるというふうに言えると私は思うのです。それをうやむやのままに葬るということが一体どうしてできるでしょうか。」「したがって、少なくとも、この問題は、うやむやになるということは断じてありません。また、させません。これは、政治家として、はっきり申し上げます。」こういうように七三年、十年前、事件が起こった直後においては明確に政府の意思を示していたわけであります。  ところが、七三年、七五年、二回の政治決着、それから今日までの経過の中で、こういうわが国政府の気概と真相究明、主権侵害に対する徹底的な国際的な処置に対する気慨が失われて、外交決着はついた。そして捜査の方は捜査本部の解散だという事態をいま迎えている。こういう江崎国家公安委員長に示された当時の国会における政府関係者の気慨に満ちた答弁と比べて、まことに遺憾な事態でありますが、まず最初に、本件についても捜査の責任の一端をお持ちになっていらっしゃる、重大な責任者である法務大臣の現時点におけるこの解散についての御見解を伺いたいと思うのであります。
  158. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) 捜査本部を解散したという問題は、全く警察だけの判断で、警察の領域の中の問題でございまして、私ももちろんしたがって相談も受けないし、連絡もないし、私どもの段階へ来る以前の問題ですからね。私としては、ここでそれについてどういう理由でとかというようなことを申し上げる立場にないわけでございます。
  159. 橋本敦

    ○橋本敦君 大臣、そうはおっしゃっても、捜査本部の解散によって徹底的な捜査の追及と解明がいままで以上に一段と進むのではなくて、今後は人数も減る、捜査本部は解散される。ですから、まさに捜査のベテランである大臣として、今後の捜査に必ず真相究明がなされるという期待が持ち得るどころか、かえって逆だという方向に行くということは、これは予測される当然の状況があるわけでしょう。だから、そういうことについて、まさにこの金大中事件を私が指摘したように、私が引用したのは国家公安委員長の言明ですが、当時はこういった政府の姿勢が強かったわけですから、それと比べていまの時点、今後の展望として、金大中事件の真相解明は必ずできるという期待が大臣として持ち得るのかどうか、これが私は聞きたい一つの中心問題なんですね。これは答えていただけると思うのですが、いかがですか。
  160. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) 私の領域でないもんだから、領域でないことに答えるということは無責任になりますので、これはひとつ御了解を願いたいと思います。
  161. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は納得できないんです。ある意味で大臣は答弁をお避けになっていらっしゃるとしか私は思えないんですよ。  それじゃ警察の方に伺いますが、警察の方では、たとえば当時の山本警備局長は、「いまの金大中氏の件は、確かに、日本の警察に対しての挑戦といいますか、日本警察の真価を問うという内容であるということは、私ども十分承知いたしておるところでございます。」というように国会で答弁をされている。これは三井さんにしても高橋さんにしても、大体こういう立場で、まさに日本警察への挑戦だと受けとめて徹底的にやるという決意を示された。そういう点から見て、いま捜査本部が解散だというのは、これは警察として一体どんなふうに受け取られているのか。大きな後退だということは隠せない事実ではないか。いかがですか。
  162. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) この金大中氏事件につきましては、特別捜査本部を設置しまして、長期間にわたりましてじみちに全力を尽くして捜査をやってまいったわけでございますが、十年たちました現在、この状況をいろいろと検討してみますと、一つに、重要関係者が国内にいないという捜査を進める上での特殊な状況が続いておる。それからもう一つは、やはり時間の経過とともに情報が少なくなってきておる、こういう状況があるわけでございまして、こういう点を勘案いたしまして、捜査の体制を捜査の現状に見合ったものにしようということでもって特別捜査本部を解散いたしまして、今後は五名の専従捜査員をもってじみちに継続捜査をやっていくということでございます。
  163. 橋本敦

    ○橋本敦君 事実だけの経過をおっしゃったので私の質問にはお答えになっていないんですが、一番多いときはそれじゃ何人いらっしゃった、解散まではたしか二十三人の捜査員と聞いておりますが、人数の経過、まずこれを明らかにしてください。
  164. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 当初は麹町署に公安部長を長とする特別捜査本部を置きまして、百四名の体制で捜査をやっておりましたが、その後、警視庁本部内、外事二課内に捜査本部を移しまして、二十三名で捜査を行ってまいりまして、八月一日、特別捜査本部を解散するに至った、こういうことでございます。
  165. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから二十三名が五名になる、まさに四分の一以下ですから、こういった観点から言っても、捜査能力の後退と真相究明への期待の減退というのは、これは客観的に明らかですね。  そこで、これまでの十年の捜査の中で、まさに日本警察の真価が問われる事件だと受けとめてやったというこの事件で、一体何がどこまで明らかになったのか。まずこの問題で伺いますと、犯行グループが大体現場では六人だ、実行グループが。こういうことをつかんで、この六人の割り出しにまず捜査の力点を置かれたという経過はあったと思いますが、この点は間違いありませんね。
  166. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 犯行グループは一応六人ということで、おっしゃるとおりにこの辺に重点を置いて捜査をやってまいりました。
  167. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、現場から指紋が発見された金東雲元一等書記官、彼がこの六人のうちの一人であるという意味で、現場実行者六人のうちの有力な容疑者と断定されたことも間違いありませんね。
  168. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) そのとおりでございます。
  169. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、この指紋が発見されたという問題で、当時、三井さんも山本さんも国会ではすぐに逮捕状の請求ができる状況にあり、逮捕状がとれる状況だということを言明されたわけですが、どうして逮捕状請求を断固としておやりにならなかったのか、この点を聞きたいんです。
  170. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) おっしゃるとおり、逮捕状をいつでも請求できる状態にあったわけでございますが、これはいま申し上げたように、いつでもできるわけでございますから、これはいつやるというのは純粋に捜査技術上の問題でございまして、特別な意味はございません。これを必要とする場合はすぐに請求してすぐにこれをやるという状況にあるということでございます。
  171. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうすると、現時点でも逮捕状請求し得る事情は変わっていないし、現時点でも条件が整えば逮捕状請求するということは当然やると、こういうことですか。
  172. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) そのとおりでございます。
  173. 橋本敦

    ○橋本敦君 それでは、警察のおっしゃる条件とはどういうことですか。指紋が発見されて逮捕状請求し得る条件はある。何があるために逮捕状請求を現時点でもやらないんですか。
  174. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) これは言うまでもないことでありますけれども、逮捕状は犯人の身柄を拘束する目的で発付をしてもらうわけでございますので、やはり犯人、この場合は金東雲でございますけれども、身柄の所在のめどがつかない限りは、これは発付を得てもむだになるということはありませんけれども、ほとんど意味がないんではないかということでございます。
  175. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは一つの弁解にすぎない。金東雲が本件後ソウルに帰ったというのは出国記録で明らかになっておるので、これは九月六日に帰っておりますよね。それから、韓国の方では彼を調べて免職処分にしたということも言ってきておるわけですから、あれからしばらく韓国におったという事実、これはもう明白ですよ。だから、そこにおるんだから逮捕状請求したらよかったんです。あの時点で、身柄の所在が明白である時点において逮捕状をなおかつ請求しなかったのには、それなりの理由があるんじゃないんですか。
  176. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 先ほど来申し上げていますように、純粋の捜査技術上の問題でありまして、特別な事情はございません。
  177. 橋本敦

    ○橋本敦君 ならば、本気になってやる意思がなかったのではないかという疑いが日本警察に私は残ってくるんですよ。特別の事情がなかったんでしょう。その時点においてなぜ逮捕状請求をしなかったのか。逮捕状請求して、そして犯人引き渡しを外交ルートを通じて要求する、これはまさに捜査の常道ではありませんか。捜査の常道という観点から言えば、そうすべきであるという点はだれしも明白だと思いますが、いかがですか。
  178. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 先ほど来繰り返して申し上げましたように、いつでもこれはわずかの時間で令状の発付は得れるわけでございますので、やはり何よりも身柄を確保できるめどというものがまず先行するわけでございまして、その点に重点を置いたということでございます。
  179. 橋本敦

    ○橋本敦君 身柄を確保できるめどがなかったという、そのことを私は聞きたかった。それじゃ、なぜなかったのか。これは、まさに韓国政府と日本との間で行われた二次にわたる政治決着、そして、特に第二回政治決着で韓国政府は、金東雲の調査をしたけれども犯罪の嫌疑がなかったのでこれは不起訴にするという口上書が出されて、日本の政府はこれを了解をした。こういう状況で、外交ルートを通じて逮捕状をとって金東雲の身柄引き渡しを警察がたとえ要求しても、これは確保の見込みがないなと、こうなるのは私はわかります。そういう事情があったことは間違いないでしょう。いかがですか。
  180. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) おっしゃるとおり、韓国側からは昭和五十年の七月に、捜査結果、金東雲については容疑がないという通告がございました。
  181. 橋本敦

    ○橋本敦君 じゃ、そういう通告もあり、政治決着という壁もあって、身柄確保の見込みが立たぬと警察庁が判断せざるを得なかった事情は私はわかるし、それは間違いないでしょうと、こう聞いているんです。というのは、三井さんも、政治決着が捜査の壁になっているということは、国会で、私の質問でも予算委員会で明らかにされたわけですから、具体的にいま聞いているだけですよ。そういう状況はあったでしょう。
  182. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 政治決着以前に、すでに捜査の打ち切りを韓国側から通告がございますので、私ども必ずしもその政治決着が捜査の壁になったというふうには考えておらない次第でございます。
  183. 橋本敦

    ○橋本敦君 いや、必ずしもじゃなくて、捜査の打ち切りもあり、政治決着もあり、身柄確保が困難になる条件が韓国のむちゃくちゃな強行姿勢と政治決着と、どんどん積み重なってきた。そういう状況があって警察も非常に悩んだ、困ったというのが事実じゃないですか。それを聞いているんですよ。
  184. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 何分初めて経験する特殊な国際事件でございますから、わからないことだらけでありましたけれども、われわれも捜査をする以上は、しかも犯人として金東雲を割り出している以上は、何とかその身柄を確保したいという希望は持っておったのは事実でございますが、何分相手のあることでございますし、必ずしもこちらの希望どおりいかなかった、こういうことでございます。
  185. 橋本敦

    ○橋本敦君 そのとおりですね。その相手がどういう態度をとっているかを端的に示すのが、参議院の法務委員会に七三年十一月五日に外務省から出していただいた韓国国会議事録、金鍾泌総理が政治決着第一次をつけた、それの報告を国会でやつているんですが、その中でこう言っています。「日本で嫌疑があるとされている金東雲書記官に関しては、わが方が引き続き捜査をし、その捜査結果に従いわが国内法によって処理する。」と。つまり、日本で行われた犯罪で日本の主権に基づいて日本が捜査すべき犯罪を、韓国が自分の方で捜査すると、こう言うんです。「だから今後この問題に関する限り、日本ではこれで捜査が終結し、これからはわが方でこの問題に対する捜査を続け、真相を究明することになった。」、こう言って韓国国会で説明している。  にもかかわらず、日本の側では捜査は依然として続けますと、こういうことを言い続けてきたんですが、結果は韓国国会でこう報告されたとおり、まさにこういう政治決着が壁になって、金東雲はシロだと向こうが言ったら、身柄の引き渡しの見込みもなくなるし、それに対して厳しい抗議もできない。こういう情けない状況でわが国の主権侵害事件がまたまた捜査縮小されようとしていることについて、政治家の一人として絶対に納得できないという立場で私はいま物を言っているわけです。  そこで、さらに次に聞きますけれども、いま警察がおっしゃった六人の犯行グループ、問題は、金東雲を割り出したが、あと公にされているのは、実行に使われた劉永福の車、それ以外にこの六人の割り出しについては一切いままで警察当局は明らかにしてきませんでした。しかし、この犯行グループについて重大な関心を持って捜査をされてきたわけですが、二つの点でお聞きします。  一つは、アメリカのフレーザー委員会で、元韓国KCIA責任者であった金炯旭氏がこの犯行グループのリストを委員会に出し、フレーザー委員会が発表した。その中には現場実行者が確かに六名になっていた。その次は、金大中氏がワシントンに行って、日本の新聞記者その他の皆さんにもインタビューをする中で、日本国内の現場で金東雲がいたということと、同時に実行グループ六人についてフレーザー委員会の発表、これを否定しない。そういう状況が出ている。犯人の割り出しというのはまさに一番大事な関心事でありますが、この六人の実行行為グループについてかなりの情報が入っていると思いますが、いかがですか。
  186. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 犯人グループの中で捜査的立場から犯人と特定できたのは金東雲元一等書記官だけでございまして、その他の者については確たる証拠は持ち合わせておりません。
  187. 橋本敦

    ○橋本敦君 この金炯旭氏がこういう犯行グループの証言をしたときに、警察はこれに対してどういう関心を示しましたか。関心は全く示しませんでしたか。
  188. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) まあ参考情報ということで私ども聞いておりますし、また書いたものを読みましたが、結論の部分だけがあって、どういう根拠でこういう人たちが犯人だと、こう言っているプロセスがきわめて不明確でございまして、そういう点から、いろいろ検討はいたしましたけれども、捜査の上では必ずしも参考とするに至らないというふうになったというふうに承知しております。
  189. 橋本敦

    ○橋本敦君 まさに犯行グループに対する有力情報ですよね。違いますか。こういう情報が出たときに、捜査機関はまさにこれに飛びついて、あなたがおっしゃるように、海のかなたから具体的にどういう経過で出たかどうかというような客観的な涼しい判断をするんじゃなくて、アメリカにまで飛んで行ってでも金炯旭に会って事情を聞き、協力を求めるという姿勢になるのが私は本当は警察のあり方だと当時から見ていたんですが、これをしなかった。理由はなぜですか。理由だけでいいです。
  190. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 金炯旭氏につきましては外務省を通じてではありますけれども、意向を伺ってみたことがありますが、協力が得られなかったと、こういう事実がございます。
  191. 橋本敦

    ○橋本敦君 外務省、その点について、どういう手続でどうやったけれども協力が得られなかったか、いまわかりますか。
  192. 藤井宏昭

    ○説明員(藤井宏昭君) 一九七七年六月にフレーザー委員会におきまして、元KCIA部長の金炯旭氏が発言をいたしましたので、その発言に関連いたしまして、その発言のもとになりました金在権氏が米国に滞在しているということがわかりましたので、政府としては金在権氏から事情を聴取すべくアメリカ政府に対しまして協力を求めました。ところが、金在権氏は日本政府の事情聴取に応ずる意思はないという回答をいたしましたので、事情聴取ができなかったという事実がございます。
  193. 橋本敦

    ○橋本敦君 金在権氏の協力じゃなくて、金炯旭問題です、警察の方がおっしゃったのは。金炯旭については、私のいままでの理解では調査協力はやっていませんよ。
  194. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 私の言い間違いでございまして、金炯旭でなくて金在権でございます。
  195. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうでしょう。私は金炯旭の質問をしている。だから、調査協力依頼は外務省を通じてやっていないでしょう。なぜこういう有力情報についてやらないのかという理由を聞いているんです。
  196. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) これは国会でもしばしば答弁しておりますが、金炯旭氏なる者はこの事件の起こる何年も前のKCIAの部長でございまして、その職務上もこういう事件について知り得る立場になかったわけでございます。それから、その他の事情をいろいろ勘案いたしまして、聞くほどの価値はないというふうに判断いたしたわけでございます。
  197. 橋本敦

    ○橋本敦君 それはいまになっての口実ですよ。金炯旭自身に私がアメリカで会ったときに、当時の部下を含めた犯行グループで、そして彼は、そういう部下を通じて日本への調査依頼をやり、自分も日本に来て部下と会って調査をしたという直接な調査ということも言っているんですよ。ですから、こういう問題一つにしても、国会には日本の警察の真価が問われる事件であると、こう言いながら、本気になってやらなかったというこの事情について、私は、警察の捜査に重大な責任があるし、そういうことを許してきた日本の政府と政治決着の責任も重大だということを改めて思うのです。  そこでもう一つ聞きますが、この事件は政治的背景を持った組織的な犯行だという事件に対する見方はこれは共通して一致していたと思いますが、いかがですか。
  198. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 真相が明らかにならない段階でございますが、事件の態様を見ますとそういう感じがいたすわけでございます。
  199. 橋本敦

    ○橋本敦君 これは三井さんも高橋さんもそういう立場で国会で答弁されていますし、だれが見てもそうですね。そうなりますと、現場実行グループだけじゃなくて、組織的政治的犯行ですから、いわゆる指揮系統といいますか、そういう犯行の組織関係ということの追及も真相究明では非常に大事です。  この点で、もう一度金炯旭証言に戻りますが、この問題でソウルから監督指揮したのがこれが李厚洛KCIA部長。そして日本の責任者は金在権、先ほど名前が出ておりました。そのもとでソウルのKCIA本部から派遣された尹振元、これが工作第一団長、これがまさに現場の金在権に次ぐ第一工作団長としての指揮をとっていたということを金炯旭は言っておりました。  一方、金大中氏もこれと全く同じことをアメリカで明らかにしています。金大中氏は、日本国内での総指揮は金在権駐日公使が担当し、行動隊長は本国から派遣された尹振元元KCIA工作第一団長だったと、こう言っている。そして金大中氏はこの証言を、朴大統領が亡くなった後の短いソウルの春と言われるそのときに、多くの関係者が告白をする中でつかんだ有力な事実に基づくものだと、こう言っていますが、この組織系統については金大中供述と金炯旭証言が一致しているわけです。  そこで伺いますが、この尹振元なる人物が工作団長として当時日本に来ておった、こういう事実について、警察は情報としてつかんでおられるんではないかと思いますが、この点どうです。
  200. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 確認いたしておりません。
  201. 橋本敦

    ○橋本敦君 私が法務省の入管局に伺いますと、この人物がその事件の八月に来日したというそういう出入国記録はないということです。しかし、御存じのように金在権はKCIAの第七局長のときは金基完という名前であった。だから日本に来るときのパスポートで尹振元という名前じゃなくてほかの名前を使っておるならば、入管局としてはほかの名前で来たかどうかということまでこれは明らかにできませんね。そういう可能性がないとは言えない。  警察は当時あらゆるいろんな情報をお集めになっていたことは、たとえば高橋さんが七三年八月二十四日の衆議院の地行で答弁された中でこう言っておられます。「今回の事件は、複雑な韓国の政治情勢を背景にした、政治的色彩のきわめて強い事件と判断をしているのであります。それだけに、これまでに当庁及び特捜本部にはさまざまの情報が寄せられており、犯人像についても、さまざまのニュアンスの情報があるのであります。」と、こう言っている。  私はそういう状況だったと思いますよ。そういう状況の中の一つに尹振元なる人物が来日をしておった、これにかかわっておった可能性があったという情報が私はあったんじゃないかと思うんです。正直に言っていただきたいんですが、いかがですか。
  202. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) さまざまな情報が寄せられたことは事実でございますが、尹振元なる者についてはここで特に御披露するほどの情報はございません。
  203. 橋本敦

    ○橋本敦君 現在金東雲の所在、どこにいるかということ、どういうようにして追及されておられますか。
  204. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) これは私ども日本の警察は管轄区域は日本国内に限られるわけでございますので、当然その活動も国内における聞き込みと捜査ということになるわけでございまして、国内でいろいろと関係者からの情報収集に努めておるということでございます。
  205. 橋本敦

    ○橋本敦君 外務省を通じて韓国政府に対して、元一等書記官であった金東雲氏が現在どこでどうしているかということを照会するということはできますか、できませんか。
  206. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) すでに御案内のように韓国側からは捜査中止という通告が来ております。また韓国側の言い分によりますれば、金東雲は容疑がないということを公式に言ってきております。こういう状況で聞いても意味はなかろうと思いますので、聞くことはいたしておりません。
  207. 橋本敦

    ○橋本敦君 警察としては、金東雲が容疑がないという韓国の捜査の結果については納得できないでしょう。いかがですか。
  208. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 私どもはいまだに金東雲はクロだというように思っておるわけでございます。
  209. 橋本敦

    橋本敦君 外務省に伺いますが、いまだに警察は金東雲がクロだという確信を持っておる。当然ですよ、指紋という本当に重大な証拠が出ているんですから。で、所在がわかれば逮捕請求もなし得るんだし、やる意思もあるんだと、こう言っている。やるべきだと思いますが、外務省はどういう手だてが打てると思いますか。私は何とか打つべきだと思いますが、いかがですか。
  210. 藤井宏昭

    ○説明員(藤井宏昭君) ただいま警察当局から御答弁がございましたように、金東雲元書記官につきまして、この段階におきまして韓国政府に照会するということは警察当局からも特に依頼はございませんし、その理由は先ほど警察当局がお述べになったとおりでございますが、外務省として金東雲書記官の所在を現在捜すということは考えておりません。
  211. 橋本敦

    橋本敦君 全部あなた方はそういうふうにして幕引きをしているわけですが、いまお聞きのように警察はいまでもクロだと確信しているのですよ。逮捕状の請求もできる、この事件は終結してない、いいですか。だから所在さえ明確になれば逮捕請求はいまからでもやれるのだし、やる意思があるのだ。  ところが警察としては、どこにいるかという問題については、これは国内情報だけで国外にいる人間情報というのはなかなかつかめませんから、こういうまさに韓国の公的機関におったことの明らかな人物について、外務省捜査機関を援助して、外交ルートを通じて金東雲の所在を究明するという姿勢を持って事に当たらなくちゃどうにもならぬじゃないですか。警察がそう言っているのに外務省は知らぬということでは、一体だれが責任持って究明できますか。江崎自治大臣がどんなことがあってもやりますと言ったのは、国民に対するうそですか。山本さんが日本の警察に対する挑戦だ、名誉にかけてやると言ったのは、外務省はこれをつぶすつもりですか、こうなりますよ。どうお考えですか。
  212. 藤井宏昭

    ○説明員(藤井宏昭君) 先生のただいまの御指摘でございますが、いままでの議論で明確なとおり、警察庁は先生の先ほどの御質問に対しまして、現段階におきまして、韓国政府に対して金東雲書記官の所在を照会することを外務省に依頼する意図はないということを明確に申し述べております。その理由は、先ほど警察庁の方から御答弁ありましたとおりでございまして、それは外務省もそういうふうに考えております。したがいまして、先生の御指摘ではございますけれども、現段階におきまして韓国政府に対して金東雲書記官の所在を照会するという意図は外務省はございません。
  213. 橋本敦

    橋本敦君 やる気がない者ばっかり集まっているという感じを私は受けざるを得ないのですが、本当に主権侵害ということ、重大な、殺人未遂とも見られる重大な事件にかかわる捜査を遂げなきゃならぬということから見て、いまの二人の答弁というのは私はとても納得できません。これでは本当に日本主権を守り、真相を究明する熱意があるかどうか疑わしいと思いますね。  そこで、もう一つ聞きたいんですけれども、金大中氏に対して直接事情を伺うという、まさに被疑者から事情聴取するという、これも捜査の常道だと繰り返し三井さんから言われてきたこの問題について、ついにやられないまま捜査本部の解散と、こういうことですが、いまでもやる意思はありますか、警察は。
  214. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) これは言うまでもないことでございますが、被害者でございますから、被害者から事情を聞くということは捜査の常道でございます。そういうことで、いろいろ困難な状況の中で捜査当局としては強い希望を持ってきたわけでございます。昨年十二月に金大中氏がアメリカに参りました機会に、あるいはこの機会に実現するのではないかと、こういう希望を抱きまして、外務省当局それからアメリカ政府を煩わして金大中氏の御意向を伺ったわけでございますが、大変残念なことに、実質的に前提条件と見られても仕方がないような、しかもわれわれ捜査当局の判断になじまないようなものをつけてまいりまして、それが満たされるまでは回答ができないということでございまして、これは私ども検討した結果、結局は事情聴取は断わられたも同然と考えざるを得ないということになったわけでございます。
  215. 橋本敦

    橋本敦君 金大中氏がつけた、あなたは条件とおっしゃいましたが、その問題について解決する努力をすれば解決するかもしれない、その努力をして、なおかつ金大中氏から直接事情聴取するというような強い意思がいまでもあるのかないのか、これを聞いているのですよ。
  216. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 私どもは正式のルートを通じまして金大中氏に明確な御意向を示してもらうようにお願いした結果、そういう、とても私どもの判断になじまないような条件をつけて回答されてきたわけでございまして、これではとうてい事情聴取はむずかしかろうという判断に立たざるを得なくなったわけでございます。
  217. 橋本敦

    橋本敦君 外務省に伺いますが、この問題について金大中氏がつけた条件というのはどういうように理解していますか。
  218. 藤井宏昭

    ○説明員(藤井宏昭君) 外務省警察庁の御依頼を受けましてアメリカ政府を経由いたしまして金大中氏に問いただしましたところの回答の中に、次の三点がございます。これが条件ということであるのかどうかについては、金大中氏自身は条件とは言っておりません。  その三点とは、一つは、滞日中、日本政府の身辺保護は十分でなかったということでございます。それから第二点は、日本政府は真相究明を公約しながら政治決着をつけ、金大中氏の人権に無関心であったということでございます。第三点は、死刑判決政治決着に反していたにもかかわらず日本政府はこれを韓国政府に対して取り上げなかったという三点でございます。で、この三点について日本政府の見解の表明がなければ事情聴取問題に応ずるかどうか確定的な回答はできないということを言っております。したがいまして、警察庁が申しておりますこともそれは一つの前提条件というふうに考えざるを得ないということかと思います。
  219. 橋本敦

    橋本敦君 いまの三点、私は当然だと思いますが、この三点について日本政府の見解を示してあげて、協議をして誠意を尽くせばいいじゃないですか。いかがですか、外務省
  220. 藤井宏昭

    ○説明員(藤井宏昭君) 三点の中身につきましてはわれわれは全く別の観点を持っております。それについては後ほど述べさしていただきますけれども、そもそも本件につきましては、昨年十二月二十三日に金大中氏が渡米いたしましてその直後に、十二月末に警察庁の依頼を受けまして、被害者としての金大中氏に対して正式にアメリカ政府を通じまして事情聴取をするということで本件は始まっておりますし、その中で金大中氏はこういう返答をしてきておるわけでございます。で、日本政府といたしましての見解をこのような政治的と申しますか、ことを含めましての見解を何らかのルートで公に金大中氏に返答するという立場にはない、これはあくまで被害者としての金大中氏に対する事情聴取の手続の中の一環であるというふうにわれわれは了承しております。
  221. 橋本敦

    ○橋本敦君 事情聴取に協力してもらう手続の一環で起こった問題について、日本政府がしかるべき誠意を示しなさいと私は言っているんですよ。まさに金大中氏に対する国家保安法違反の死刑判決も、第一次政治決着で金大中氏が日本やアメリカで行った言動については責任を問わぬというこのことに違反をしているというのもそのとおりだし、あの白昼堂々と日本から連れ出される。即時に港湾あるいは交通ルートに緊急非常配備をしいてこういうことが起こらないようにするという点でも、警察の方に万全で何の手落ちもなかったかと言えば、それはいろいろ反省する点がないとは言えませんと高橋さんもかつて国会で言われたことがある。いいですか。こういうような問題がありますから、金大中氏の当然の日本政府の誠意を示せという趣旨の話し合いには私は誠意を持って応じて、捜査当局が捜査の常道である被害者からの事情聴取ができるように外務省は全力を尽くすべきだ。それを、いま言った彼のそういう前提条件のようなものがついてきたのでこれは政府は話をする立場にないと開き直ってしまうのは、政治決着があるからじゃありませんか。韓国政府との関係があるから外務省はそれを乗り越えてやろうという立場になれない。またここにも政治決着の壁が出てくるんじゃありませんか。どうですか。
  222. 藤井宏昭

    ○説明員(藤井宏昭君) 先生お言葉でございますが、これは警察庁から御答弁いただいた方がより確かでございますが、金大中氏が言っております第一点でございますが、当時のその身辺保護に問題があったのではないかということにつきましては必ずしもそうは思いません。外国人に与えられる当然の通常の保護ということは与えられておったわけでございますし、金大中氏自身が所在をくらますというようなこともあったわけでございます。  それから、政治決着につきましては、及び金大中氏の人権につきましては、金大中氏のこの事件でこうむりました精神的、肉体的に大変な苦痛があったということは想像にかたくないわけでございまして、韓国国内、まあ内政的な問題でございましたけれども、金大中氏の裁判等を通じまして日本政府が常に金大中氏の身柄について注意を向けてきたということも事実でございます。  それから、政治決着そのものにつきましては、これは当時の状況を踏まえまして日韓双方の最高首脳が日韓関係の大局を考えて高度の政治的判断のもとにこれを行ったものでございまして、その後の歴代の日本の内閣もこれを尊重してきておるわけでございます。ということでございまして、金大中氏に対しましてこういう種々の点、日本政府の考え方というものがあるわけでございますけれども、これを被害者としての金大中氏がその手続の中で答えたことに対しまして、日本政府の意見ということで金大中氏に話をするということは、やはりこれは正道ではないというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  223. 橋本敦

    ○橋本敦君 よくわかりませんね。日本の国家主権が侵害されている問題について、外務省が本気になってそれを解明するという姿勢があるかどうか疑わしいですよ。むしろ外務省は、高度の政治判断で行われた政治決着を理由にしてまさに捜査の行く先々をふさいで妨害しているんじゃないかと私は思うぐらいですね。  たとえばフレーザー委員会が七三年十一月に膨大な報告書を出していますが、これは外務省から私、きょういただいたんですけれども、その中で注目すべき項目をフレーザー委員会がわざわざつけている。これはこのフレーザー委員会の調査に対する日本の態度という一項目がわざわざついているんですよ、「ザジャパニーズアティテュードツワードジインベスティゲーション」。この中で何を言っているかといいますと、日本の各界からフレーザー委員会のスタッフに、韓国へ調査に行く、その機会に日本に立ち寄る、そのときには日本で金大中誘拐事件の調査もやってほしいというさまざまな声があった。しかし、小委員会のスタッフは、日本滞在期間中にはそのことに直接踏み込まないで、アメリカと韓国との関係、日本と韓国との関係を調査するという方針を決めて、そしてKCIAがこの事件に関係しているかどうか、在日アメリカ人がインボルブしているかどうかというようなことについては調査をしないという方針も決めたというように非常に慎重に言っているんです。  次が大事です。ところが、このスタッフのメンバーが短い日本での調査に関連をして、日本の政府は、主権に対する配慮を口実にしてこのスタッフに調査に関連をして条件をつけてきた。そういう条件をつけてきて、スタッフが東京滞在中に調査を行うということについては、アメリカのオフィシャル、そういうアメリカの関係者以外に会わないようにしろという条件をつけてきた。アメリカの政府はどうかと言えば、日本からアメリカへ行った金大中事件その他の調査団には、このような制限は一切つけずに自由な調査を許してきた。にもかかわらず、日本はこういう制限をつけてきたということをわざわざこの膨大な調査の一項目に入れているでしょう。これはフレーザー委員会のスタッフ自身が、日本の外務省というのは一体何者だということを言外に言っている重要な部分ですよ。  いまあなたのお話を聞いても、まさに捜査当局がやろうとすることも頭を押さえ、アメリカのフレーザー委員会のスタッフの日本での自由な調査にも制限をつけてきた、こういうことを言っている。こういうレストリクションをつけた事実は間違いないですか。
  224. 藤井宏昭

    ○説明員(藤井宏昭君) 報告書にそういう記述があることは存じておりますが、そういうたぐいの圧力をかけたことは一切ございません。
  225. 橋本敦

    ○橋本敦君 圧力とは言ってないですよ。入国についての制限ということですよ。一切ないですか。
  226. 藤井宏昭

    ○説明員(藤井宏昭君) そういう制限はございません。
  227. 橋本敦

    ○橋本敦君 しかし、私はあなたがそうおっしゃってももっと調査をしないと疑わしいと思いますね。  さてそこで、時間がなくなってきておるわけですけれども、この金東雲という人物が最有力容疑者であるということ、そしてまた組織的犯行グループが李厚洛以下金在権、尹振元、こういった組織系統で行われたということについての情報があるわけですが、この金東雲は金炯旭がKCIA部長時代に日本に送った優秀なKCIA要員であったと金炯旭が言っておる。こう金炯旭が言っているこの証言は、これは本人自身の、自分が派遣をし、自分が優秀なKCIA要員だとこう言っている証言ですから、伝聞でも何でもない、きわめて重要な証言だと思いますが、外務省及び警察はどう思いますか。
  228. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 私どもは捜査をやる立場でございますから、証拠に基づいて、証拠として事実を積み重ねていくという立場でございます。いろいろな人がいろいろなことを言うということはしばしば承知しておりますけれども、それは直ちに捜査上の評価にはつながらないということでございます。
  229. 橋本敦

    ○橋本敦君 積極的に調べようとしないで捜査上の証拠につながらないという結論を出すのは問題ですね  外務省に伺いますが、いま私が指摘したフレーザー委員会がこの膨大な報告書の中で、金大中事件はだれがやったと認定しているか、これはもちろん御存じですが、言ってくれますか。
  230. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 報告書の中には金大中氏がKCIAによって誘拐されたという記述がございます。
  231. 橋本敦

    ○橋本敦君 そのとおりですね。そしてこのフレーザー委員会がアメリカにおけるKCIA活動の調査をやって、その結果、アメリカではKCIAが金大中を犯罪者を雇って殺そうとしたような動きがあったこと、そしてこの責任者が李相浩であったこと、そしてその次に、アメリカにおけるKCIA関係者が金大中事件に関連をして、金大中事件にインボルブと書いてありますから、まさに一味に加わっていたという状況的証拠があるという断定をしている。このことも御存じですか。
  232. 藤井宏昭

    ○説明員(藤井宏昭君) そういう、かもしれない、状況証拠があるということを同じページで触れております。
  233. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで外務省に伺いたいのは、この金大中事件はしばしば問題になったレイナード証言、それからフレーザー委員長自身がこの報告書をつくり、フレーザー委員長自身がアメリカ議会で証言をして、金大中事件がKCIAの犯行だと言っている事実、こういうことを加えてアメリカでは、これがKCIAの犯行だということはこれはもうだれしも疑うことのない政府及び議会関係者の通説になっていると見てよいと私は思いますが、いかがですか。
  234. 藤井宏昭

    ○説明員(藤井宏昭君) フレーザー委員会の報告は、その冒頭にございますように、フレーザー委員会全員の一致した意見では必ずしもなくて、多数の意見であるということでございます。  それから、いま御指摘ございました元国務省の朝鮮部長でございましたレイナード氏につきましては、直接、当時わが在米大使館員が話をしたわけでございますけれども、レイナード氏は、同氏としては具体的な確たる証拠事実を知って言っているわけではないということを言っております。したがいまして、御指摘のようにかなり広くいろいろな方がKCIAの犯行だろうかということは言っておりますけれども、それは伝聞または再伝聞に基づくものが多うございまして、それが証拠というような性質のものではないというふうに了解をいたしております。
  235. 橋本敦

    ○橋本敦君 端的に外務省と警察に聞きますが、KCIAというのは身分を隠しているわけですよ。だから状況的な証拠を積み上げてKCIAだということを認定していく以外にこれは方法はないです。警察や外務省は、本人が私はKCIA要員ですと言わない限り証拠はない、認定できない。あとは全部伝聞だとかあるいは状況的証拠にすぎない、こういう態度をとられているように思いますが、それではKCIAは絶対にあらわれない、こう思いますが、あたりまえじゃないですか。本人がKCIAであったと言わぬ限りは絶対にKCIAだとは認定しないという、そういう方針ですか。
  236. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) これは捜査上証拠の方法としてはいろいろあると思いますけれども、いまおっしゃるような本人の供述というのが一番かたいのではないかと思っております。
  237. 橋本敦

    ○橋本敦君 そんなのあり得ないでしょう。田中元法務大臣が指紋が発見されたときにこう言っていますね。それまでは第六感で韓国官憲の犯行だと、こう言っておられた。ところが当時と事情は全く違ってきました。金東雲一等書記官の行動というものが指紋によって証明されたということが明瞭になり、日本の捜査当局がこれを公式に発表しました。この発表した瞬間から、これはいまや某国ではない、はっきりKCIAというか国家機関、この犯行だ、韓国国家機関だということを政治的に限定して差し支えがないのだと、ここまで言っておられる。これは四十八年十月九日の衆議院内閣委員会における議事録でこうなっているんです。  これぐらいはっきり政治的にKCIAというものがこうだということを状況的証拠からもう判断できる状況になっているのに、本人がKCIAと言わなかったらKCIAとは認定できぬというようなことを言っておったら、主権侵害について疑惑の解明なんてできはしませんよ。田中元法務大臣がここまではっきりおっしゃっているこのことについて、外務省はどう思いますか。政治的にはもうKCIAだと言って差し支えないと法務大臣が言っておるんですよ。
  238. 藤井宏昭

    ○説明員(藤井宏昭君) 先ほどから申し述べましたように、金大中事件につきましては二次にわたる外交決着、政治決着がございまして、現段階においては捜査を続行するということでございます。捜査によりましていわゆる公権力の行使すなわち主権侵害の確たる証拠が明白になった場合には、外交決着を見直すこともあるべしということは累次政府が答弁してまいっているとおりでございます。したがいまして、この捜査におきましてどういうふうに公権力の行使等について今後考えていくのかというようなことにつきましては、私から御答弁申し上げるのは適切でないというふうに存じます。
  239. 橋本敦

    ○橋本敦君 捜査の方で伺いますがね、三井さんは、いままで捜査当局はこの犯行は組織的、政治的背景を持った重大な犯行だとおっしゃって、KCIAかということについてはKCIAではないと言ったことはない、こう言明されてきた。つまり、いままでの十年の捜査で、あれをやったのがKCIAでない、つまり捜査の結果、KCIAは真っシロだという、こういう確信があるわけじゃない、これははっきりしてほしいんですが、いかがですか。
  240. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) KCIAであるともないとも断言できないということでございます。
  241. 橋本敦

    ○橋本敦君 ないと言えないことはあるという可能性があるのです。可能性ですよ、あるとは断定してない。あの事件はそれじゃ私人がやるか。私人がやる可能性がありますか。どう思います。いままでの捜査の結果、そういう可能性はありましたか。
  242. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 犯行の態様、それから複数の人数ということから見まして、これは単独犯でないということは明白でございまして、組織的な犯行というところまでは言えようかと思いますが、それがさらに背景を探るとなるとこれはまた別の問題でございまして、その辺について突っ込んだ証拠を得るに至っていないというのが実情でございます。
  243. 橋本敦

    ○橋本敦君 私人であるという証拠は一切ない、だが依然としていままでの総合をすると、状況的には、KCIAの犯行だと断定せよとは言いませんよ、KCIAの犯行だということがきわめて疑わしい状況が依然として存在しておる。KCIAの犯行だという疑わしさは消せない事件だと、これは常識的に言っても捜査の結果から言っても、あるいは外務省を通じてのいままでのアメリカでの調査その他の結果から見ても、KCIAの犯行であるという疑わしさ、これは消し去り得ないということをいまの時点でも言えると私は思うのですが、法務大臣いかがお考えでしょうか、いままでのやりとりをお聞きになって。田中元法務大臣は、あれは韓国KCIAだ、政治的にはもう証拠も要らぬぐらいだと、こうおっしゃっているんですがね、いかがですか。
  244. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) 私は言っていませんよ、そんなことは。私はKCIAだというようなことを言っていません。
  245. 橋本敦

    ○橋本敦君 いや、田中元法務大臣が。
  246. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) これは人によって判断が違うから、同じ法務大臣でもいろいろあるのだから。
  247. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは困る場合がありますからね。人によって判断が違っていい場合もあるし困る場合もありますから聞いておるんです。
  248. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) 困る、困らぬじゃなくて、判断が違うことは当然あり得るので、私はそう言ったことはない。言ったことはないが、まあ要するに何とも言えぬということじゃないですか。
  249. 橋本敦

    ○橋本敦君 名答弁だと思いますよ、私は。何とも言えぬ、つまりシロだということは言えないということは捜査当局もおっしゃっている。だからKCIAの犯行であるという疑わしさは依然としてあるし、その疑わしさが十年の捜査の結果、現時点で、あるいは国会の審議やアメリカ議会での追及を通じて疑わしさははっきり出てきておるというように私は言っていただいてもいい事件だ、これが素直な見方だと、こう思うのですが、最後にもう一遍聞きますが、いかがでしょうか。
  250. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 社会事象と申しますか、現象と申しますか、こういうものをどう判断するか、見るかということにつきましては、これはいろいろな推理が可能でございますし、いろいろな判断も可能だと思います。ただ、捜査をする立場から申しますと、たびたび繰り返して恐縮でございますが、やはり確とした証拠によって積み重ねていくというのがこれは鉄則でございますので、個人的にはいろいろな推測、推理というものは可能でございましょうけれども、それを軽々に申し上げるのはいかがかということで差し控えさせていただきたいということでございます。
  251. 橋本敦

    ○橋本敦君 じゃあ疑わしさはないと断言はできませんね。最後にこう聞いておきます。
  252. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 先ほど申し上げましたように、クロであるともシロであるとも申し上げかねる状況にあるということでございます。
  253. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 きょうはサラ金問題を取り上げていろいろお聞きをしてまいりたいと思います。  サラ金規制の二法が成立をしまして、十一月一日からいよいよ施行されるようになったわけなんです。しかし、依然としてサラ金地獄の問題というものは毎日のように新聞にも出ているわけなんですけれども、まず最初に聞きたいことは、サラ金業者というのがどのくらいいまいるのでしょうかということ。それで、この業者が運用している資金というものはどのくらいの量になっているのですかという、そこからお聞きをしてまいります。
  254. 朝比奈秀夫

    ○説明員(朝比奈秀夫君) 現在は、柳澤先生御承知のように出資法がまだ機能しております。その出資法第七条に基づく貸金業者数、その届け出の数字は、本年三月末現在で二十一万二千二百六十九業者ということになっております。しかしながら、これらの業者の中に実質的に営業を行っていないものもあるかもしれませんし、その辺が明らかでないという面がございます。  それから、次に御質問ございました現在サラ金業者が運用している資金量、この点につきましても、法施行前でございますので、現在はっきりした数字は把握しておりません。しかしながら、十一月一日、法が施行されますと、ある程度把握できるのではないかと私ども期待をしております。
  255. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 正確な数字をつかむのはいまの段階では無理だと思うんです。しかし、少なくとも大蔵省とするならば、どのくらいの資金が動いているのかということはおわかりのはずだと思うのです。わかる範囲でお答えをいただきたい。
  256. 朝比奈秀夫

    ○説明員(朝比奈秀夫君) サラ金にいろんな規模のものがございますが、非常に大きなものにつきまして、たとえば大手三社、この辺は有価証券報告書を出しております。それで、その五十七年度決算期について調べてみましたところ、武富士、レイク、アコム、この三社を合算いたしまして六千九十四億円という数字になっております。一応これは大手の数字でございますが、これから考えますと相当大きな額に上っているのでないかと、こういうふうに考えられます。
  257. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 今度のサラ金二法の立法趣旨というのは、高金利を抑えることと、過剰貸し付けというものを抑えるということと、強制取り立てをやめさせるという、この三悪追放にあったと思うんです。  これは警察の方にお聞きをするのですけれども、この強制取り立てというものをめぐって一家心中をしたり自殺をしたり蒸発をしてしまったりといういろいろの事件というか、事故が起きているわけですけれども、過去三年でもどのぐらいでも結構ですけれども、そういうのがどのぐらいあったという把握をなさっておりますか。
  258. 仲村規雄

    ○説明員(仲村規雄君) お答え申し上げます。  サラ金から借金をいたしまして、それを原因として家出なり自殺をしたという統計は特にいままでとっておりませんでした。ただ、五十七年中の家出人について、家出人全部で十万五千六百五十三人おりますけれども、いわゆるサラ金等を含めました借金を原因とする家出人、これが七千三百十六人ということでございまして、家出人全体の六・九%という数字を占めております。それから自殺者につきましても、これも特にサラ金だけを取り上げて調査をいたしておりませんが、サラ金等を含めましていわゆる負債等の経済生活問題を原因といたしまして自殺をした、こういう者が、五十七年中に自殺者全体が二万一千二百二十八人おりますが、その中で二千三百七十七人、一一・二%、こういった数字が出ております。  なお、サラ金だけを特に原因としてこういった家出なり自殺をしたというものについては現在調査中でございます。
  259. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これだけ社会問題になってきているんですし、そういう点からいきますと、ぜひそういう点もお調べをいただきたいと思うのです。また後ほどお知らせをいただければと思います。  ことしの三月三日の参議院大蔵委員会でもって、このサラ金問題の法案審議のときに、わが党の柄谷議員がこの強制取り立ての問題で質問したときに、警察の方からはこういう答弁があるんです。「警察といたしましては、ただいまお話ございましたように、従来からサラ金業者等の不法な取り立てに関しましては、刑法の脅迫とか恐喝あるいは暴行、障害、あるいは暴力行為等処罰ニ関スル法律、こういったものを適用いたしまして厳正に取り締まりをやってまいりました。」と言っている。「本法制定の暁にはやはり一歩前進、まあ非常な前進でございますので、サラ金業者の取り立ての実態も十分に把握する努力をいたしまして、本法の趣旨、特に二十一条の条文が十分に生かせるように、厳正な取り締まりをやってまいりたい、かように考えております。」と、従来もやってまいりましたという答弁がここにあるわけなんです。どういうやり方をしてきたのでしょうか、まず一つお聞きをしたい。  それから、現実にこの法律がいよいよもうでき上がって、この十一月からいわば施行されるわけなんですが、この段階にあってでも大変な苦しい思いをしておる。この間も私は、選挙で回っていて言われたんですけれども、会社へ勤めに行くわけにもいかないというんです、もうこわくて。だったら警察へ届ければいいじゃないか、それだけ脅迫されているのなら。そんなこと警察に知らせたら、今度命が危くなりますといって、会社へ勤めにも行かれないでじっとして、何とかしてくださいというふうなことがあるわけなんですが、この法律ができなくても、いままでもこのとおりやってまいりましたと警察が言っておるんですから、そういう点からいくならば、あの新聞をにぎわせるようなサラ金地獄ということなんかあり得ぬはずなんです、現実にあれだけ起きているんですから。その辺についてどうお考えになっているのか。  それから、この十一月の施行まで、どういうことをいまここでおやりになろうとしているのかお聞かせいただきたいです。
  260. 仲村規雄

    ○説明員(仲村規雄君) 警察といたしましては、従来からこのサラ金の問題につきましては、いわゆる出資法の違反ということ、特に一〇九・五%を超える高金利違反、これを中心に取り締まってまいっております。またその過程におきまして、いわゆる取り立て等に伴いまして刑法犯あるいは暴力行為等処罰ニ関スル法律、これに触れますものがありました場合には、刑法の暴行なりあるいは傷害、あるいは暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、こういうことで検挙をいたしております。  ただ、年間どのぐらいであるかということにつきましては、特に統計はとっておりませんが、私ども年間のうち一カ月間だけ、特に金融事犯の取り締まりというものに力を入れてやっております月がございます。昨年は十一月にやりましたけれども、この十一月に金融事犯の取り締まりをやった際、取り立てをめぐりまして暴行とか傷害あるいは暴力行為等処罰ニ関スル法律違反というものを全部で十件ほど検挙をいたしております。そういうことで、これから十一月の施行までの間におきましても、目に余るものがございました場合には鋭意取り締まっていくということでございます。  それからなお、新法の施行までの、十一月一日から施行されるわけでございますが、それまでの間は、こういったいま申し上げたように、目に余るものがございましたら当然取り締まりもやりますけれども、また新法につきましての教養等も全国の警察官に徹底をいたしまして、この新法が施行された暁に、特に取り立てに伴います二十一条の規定が生かされるように取り締まりを鋭意進めてまいりたいということで現在準備を進めているところでございます。
  261. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 いま私が読み上げたのもあなたが御答弁をなさったことなんですからよく覚えていらっしゃると思うのです。それで、いまもお話の中にあるんですけれども、目に余るものがありましたならば検挙をいたしますと、こう言われるわけです。これだけ新聞に騒がれたり社会問題になっていて、警察が知らぬはずはないと思うのです。それで、あなたが言われる目に余るものというのは、どの程度になったら目に余るものに該当するんですか。
  262. 仲村規雄

    ○説明員(仲村規雄君) 具体的に申し上げますと、やはり刑法の暴行なり傷害という構成要件に該当するものがあった場合には取り締まっておると、こういうことでございます。ただ、一般的に借り主対貸し主の場合なかなか暴行なり傷害というところまで至らない。何といいますか、しつこくいやらしく取り立てを追っておるわけでございますが、法律上刑法犯で処罰するわけになかなかいかないというものも相当数あるということを御理解願いたいと思います。
  263. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 大臣、よくお聞きになっていてください。いまのがもし警察を代表したり、政府を代表しての答弁だとするならば余りにも不謹慎過ぎると思うんです。私が聞いているのは、目に余るといって、いま言われた刑法に該当するというのは、それではどの程度になったらその刑法に該当することなのか。五分置きに電話をかけてきてがあがあ言ったら該当するのか。夜の夜中に電報で押しかけていったり、それで隣近所に騒ぎ立てることをしたら該当するのかしないのかという、その具体的なことを言ってほしいわけですよ。  それで、これはことしの雑誌の「諸君」というのに出ていた中で、事実のことを名前を避けて申し上げるのでお答えをいただきたいのです。  昨年の八月三日に、ある女性が大田区役所の国民健康保険課資格給付係の窓口へ行きまして、自分ではない別な人間の名前をかたって保険証の再交付を受けた。その保険証を持ってサラ金業者のところへ行って、次から次から借りて歩きまして、十五社から二百七十万円借りた。また別な奥さんの名前をかたって、それも保険証を再交付を受けて、これも百八十万円から借りた。そのほか友達やいろいろそうやって元金だけでもって総額千二百万円も借りている。  ところが、名前をかたられた方は全然そんなことを知らないわけですから、期限が来て、ことしの一月になってから、金を返せ、やいのやいのといって脅迫をされて、夜も寝られなくなる。そんなものを借りた覚えもないと言ったって、おまえらうそつくのかといって盛んに脅迫され、おどかされている。しばらくしてから、実は私、あなたの名前をかたって借りたんですといって、その本人の女性から電話があって、そんなばかなといって行ったときにはもうその女性は子供六人、御主人を置いて蒸発をしてしまってどこへ行ったかわからなくなっちゃっている。それでもサラ金業者の方から、おまえらうそついているんだといって押しかけられて返せ返せといってやられてしまう。  それでその御主人の方が、名前をかたられたのは奥さんなんですから、その御主人が思いあぐねて警察に行っているんです。警視庁の捜査二課の応対した刑事さんは、それは災難ですなあと言っただけでもってまともに取り上げてくれなかった。他人の保険証でもってだまされたといってサラ金業者から被害届けが出されない限り、現実に刑事事件として警察は介入することができないんだという、そういう言い方をしている。最近は日本の警察の成績が非常にいいという御答弁があったんですけれども、日本の警察というのはこの程度なんですか。これをお聞きになってどういうお感じになるか、お聞かせをいただきたいのです。
  264. 仲村規雄

    ○説明員(仲村規雄君) ただいまのお話、初めて伺う話でございまして、事実関係につきまして早速調査をいたしてみたいと、かように考えます。
  265. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 仲村さんも新聞ごらんになっているんじゃないですか。  それで、大臣、私が非常に思うことは、これは最後に申し上げて御返事をお聞きをしようと思っていたのだけれども、ついこの間も大阪で、もうどうにもならなくなって借りている側が貸しているところへ行って殺しましたね。これは知らぬことないと思うんです、まだ最近のことだから。あれは明らかに、ああすれば、お金を借りて返せなくなって苦しまぎれにその貸した業者を殺してしまえば、これは明らかに殺人罪でもって起訴になり、裁判になり、もう有罪になると思うんです、殺人ですからね。  ところがお金を借りている側が、借りたのが悪いといってしまえばそれまでですけれども、借りてそれで脅迫されおどかされしていって、そして最後にどうにもこうにもならなくなって蒸発しているというのは、まだそれはどこかに生きていればと思うんだけれども、現実には自殺をしてしまう。一家心中をしてしまう。子供も含めて無理心中をしていくというのも結構いるわけなんです。ある意味においてこの人たちというのは、私から言わせればサラ金業者が絡んで間接的な殺人をされたようなものだと思うんです。  しかしそのときに、じゃいまの警察のそういうお考えからいくならば、これだけやられておってですよ、刑法に適用されるようなことでもあればそれは検挙いたしますなんて、そんな悠長なこと言っておってこれがなくなりますか。間接的な殺人であってもそれは皆さん方は自殺として始末してしまうわけです。一家心中だといって始末してしまうんですよ。そういう点について大臣はどうお考えになりますか、お聞かせをいただきたいのですが。
  266. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) 大方警察の対応の問題だと思いますから私が言うのもどうかと思うんだけれども、せっかくのお尋ねですから。まあ今度出た法律の中にも刑法以外の罰則が加わりましたね、強要罪とか脅迫とかということまでいかなくてもできるような。したがって、そういう罰則がついたのだから、その罰則に係る部分についてはもう徹底的にやっぱり警察も重点を置いて監視をし、かつ違反があれば摘発をしていく、これはまあ当然のことだと思うんですよ。ただ、やや潜在的なものになっているということは、借りた者の弱みがあるものだから、弱いというのか、ちょっとその点もあるのじゃなかろうかという気もするんです。  しかしそれはそれとして、警察としては、とにかく積極的にやっていくほかないだろう、いろいろ被害も出ていることはもう明らかなんですから。格別の感想も私、持たぬのでございますけれども、とにかく借りた方が悪いというようなことだけを言っていてもこれは始まらぬわけですが、借りた方が悪い人もいるに違いないのだから。余り簡単に借りて、利子だけ返せばいいと思った、元金の方は忘れておって、両方来たらびっくりするというような話もずいぶんある。しかしそういうことよりも、暴力とか殺人とかえらいそっちの方に出てきていますからね。これはひとつぜひ徹底的に対応して国民の信頼にこたえるような方向に持っていかなきゃならぬ。これは私の感想ですけれども、きょうは警察庁が出ていますから、ぜひひとつそういう方向で私どもも期待をしております。
  267. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 大臣、今度罰則がついたというのだけれども、たとえばいまの取り立てのところ、これは警察の方で御答弁していただいてもいいのだけれども、問題の二十一条です。「貸金業者又は貸金業者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たって、人を威迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない。」とある。  ところが、現実にこういう状態になっても、いま言ったとおり最後になって警察に泣きついていっても、それは災難ですなと言って――この二十一条は正規に自分が借りましてそして金利が高いために返せなくなっていってこういう状態が起きた、そういう場合であってもこの私生活の平穏を害するようなことをしてはいけないぞといま言っているわけなんだ。ところが先ほど私が申し上げたのは、本人は何にも関係ないわけでしょう。区役所へ行って人の名前をかたって保険証の再交付を受けて、それで借りて歩かれて、いまのこの一人の女性というのは十五社から借りられちゃった。しかもまだ、本人はもう蒸発しちゃってどこに行っているかわからないのだけれども、その後にまた別のところへ行って、その保険証を持っているのでまた借りているわけだ。明らかに人の名前をかたってそれだけの悪質なことをやって、それも取り締まりができないということでは、いささかもって法治国家として情けないことだ。  それから、大臣は罰則がついたと言うのですけれども、いま私が聞きたいのは、「人を威迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、」云々という、どの程度のことになったらこれに該当するのでしょうか。それで、この二十一条に違反したらどういう罰則を受けるのですか。
  268. 仲村規雄

    ○説明員(仲村規雄君) 先ほど来先生からいろいろお話がございますが、警察庁といたしましては、このサラ金の問題については非常に積極的に前向きに取り組んでおりまして、いわゆる違反の実態等につきましても現在鋭意調査中でございまして、法に触れるものがありましたら積極的に取り締まっていくという態度で従来もやってまいりましたし、これからもやってまいりたいと、かように考えておるところでございます。  それで、この新しく設けられました二十一条の取り立て規定の条文でございますが、これは全く新しい条文でございますので、これが施行された暁には、われわれとしては関係当局、特に検察庁あたりとも緊密な連携を保ちながら、新しい判例をつくっていくというつもりで積極的に取り締まってまいりたい、かように考えておるところでございますので御了承願いたいと思います。
  269. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 前向きに取り組んでいきます、そういうことがあればといって、これだけ社会問題化するほど事件が起きていて、それで警察が知らぬことはないと思うんです。問題は、上層部の方からもう少し手厳しくやれという、そういう通達なり指示をお出しになるかしない限り、いまのような悠長な答弁をして、そうして前向きに取り組みますなんということを言っているようでは、こう言って私がやっている間にも自殺をしていったり、家出をしていったり、あるいは一家心中なんということが起きているかもわからないのですよ。それほど皆さん方は一般庶民の生活と関係のない優雅な生活でもしているんですか。少なくとも皆さん方の周囲にだって、何かの関係の係累の人たちの中で、この問題でもって困ったりなにしたりという人を、聞いたり話をされたりして知っているはずだと思うんです、なまやさしい数ではないのですから。先ほども言ったように二十何万です。その二十何万というのはあれですから、今度は正式に登録をすることになるから把握がはっきりすると思うのだけれども、少なくとも実際にサラ金だけ専業にやって商売をしているのが五万から六万と言われているんです。  それで、大臣、どこか一社から借りて、そこから借りた金を返せるか返せないかという、そういう企業の状態じゃないんです。借りて返せなくなると、そのサラ金業者が、おまえさん紹介してやるからあそこへ行けと言って、それで今度そっちへ行って、そこから借りたのでこの利子を返すというかっこうでやって、次々と行って、気がついたときにはもう大体十社から二十社になっちゃう。まごまごするとどこからどう借りているのか何だかわからないような状態になって、もう気が狂う一歩手前までいっちゃって、それでおかしくなってしまうわけなんです。それですから、いまのサラ金業者のそういうふうなやり方というものはよほど厳しくやっていただかなきゃならない。  それから過剰貸し付けも今度は禁止をすることになったわけだけれども、十三条で。この過剰貸し付けを禁止をするについて、過剰というのはどの程度を超えたら過剰貸し付けになるんですか。十三条の趣旨。
  270. 朝比奈秀夫

    ○説明員(朝比奈秀夫君) 法十三条でございますが、貸し付けについて過剰であるかどうかという点はなかなか一概に言えない問題ではないかと思われます。  貸し付けをする段階におきまして、債務者の返済能力、そういうものは千差万別でございますが、それを的確に把握するということが必要でございまして、その場合、よく言われております多重債務者というような問題もございますので、個人信用情報機関、これの整備が一番大切ではないか、かように考えます。これが整備されましたらそれを貸金業者に利用させる、できるだけ多くの者に利用させる、そうすることによって返済能力を超えるような多重の貸し付けが締結されないように、そういう指導を貸金業協会等を通じてやっていくということが必要になると私どもは考えております。
  271. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 大蔵省の方、私が聞いているのはもうちょっと具体的に聞いたんです。銀行でもどこでも、金を貸すというのには返済能力があるかないかくらいちゃんと調べるわけでしょう。現実にいまのサラ金業者というのは、さっきも言ったようにふくれ上がっていって何千万、私が知る範囲で一番高いのが一億になったのがいるんです。十万や二十万の給料もらっているのが何千万もの借金つくって返済能力あるもないも、もうないんですよ、そんなものは。それでも貸していくというような状態をこのサラ金業者がやっているわけなんだ。  ですから、いろいろまだ聞きたいけれども、もう時間が来たから時間を守りたいと思うので、最後に大臣もう一度、いまの日本のこの状態の中でもってこうやってサラ金業者がどんどん広がっていく、こういうふうな日本経済の中のあり方というようなものを好ましいと考えるんですか、好ましくないと考えるんですか、どちらですか。はっきりひとつお聞きをしたい。  それから、いろいろの点でさっきから言っているとおりもう犯罪行為がどんどん起きていくわけなんです。ですから、警察なら警察を通じて、あるいは大蔵省の方も次官通達か何か出して、もうちょっと自粛をさせる。それでそういう悪いことをさせないようにするという、そういう通達をお出しになって取り締まりをしていただきたいと思うんだけれども、それをおやりいただけるかどうか。
  272. 朝比奈秀夫

    ○説明員(朝比奈秀夫君) 御質問のような点につきましては、すでに金融機関側がサラ金業者に相当な融資を行っているのではないかということを前通常国会においても御指摘がありましたので、私どもその実態調査を行いまして、金融機関からサラ金業者にどのぐらい金が流れているか、そういう点を調査いたしました。その結果、直接融資につきましては約五千億、またその関係会社等を通じる間接融資につきましても約五千九百億円、こういった金額になっております。そういった実態調査を踏まえまして六月末には通達を発しまして、金融機関からサラ金に対する融資についてできるだけ抑制すべきである、どうしても融資するといたしましても消費者金融の健全化に資するような形でやっていただく必要がある、こういう通達を発したところでございます。  それから先生御質問のそのほかの点についての通達という点でございますが、これにつきましては、法律の趣旨を受けまして、あるいは政省令の趣旨を受けまして、法務省、警察庁、関係各省の御協力を得ながら、今後どういうような解釈をしていくか、どういうような指導をしていくかという点についての通達を今後設定してまいりたい、かように考えております。
  273. 仲村規雄

    ○説明員(仲村規雄君) 警察といたしましても、すでに法律につきましては全国の都道府県警察に流しまして教養をいまさせておる最中でございます。このたび政令、省令ともできましたので、そういうものを直ちに流しまして教養をさせておりますとともに、今後の取り締まりにつきましては、特に十一月にまた金融事犯の取り締まり強化月間を設けまして、法律施行と同時に、一カ月間鋭意悪質な事犯につきましては取り締まっていきたい、こういう指示をする予定にしております。
  274. 秦野章

    ○国務大臣(秦野章君) 月間を設けたりしていま警察もやると言っていますから、かなり重点的に施行してこういう取り締まりを励行していけば、それは一つの方策だと思いますね。  それと、いまお話しの十万から十五万の月給取りが一千万も一億も借りるなんというのは借りる方も悪いな、これ正直言って。だから、非常に被害が出ているということが宣伝されることによって、ある意味で、うっかり借りたらひどい目に遭うという、そういう啓蒙にはなっていますね。貸す方が悪い点ももちろんあるのだけれども、借りる方がとにかく安直過ぎるというこの体質がやっぱり問題じゃないですか。だから若干これ時間かかるかもしれませんよ。取り締まりは一生懸命やる、それから金融の方でもさっき言ったようなことで努力する。われわれ法務省の方は、罰則を適用したり高金利といったような観点で関係はしていますけれども、当面、直面するのはやっぱり警察と大蔵省でございます。私の感想はもうその程度ですね。  とにかく借りる方もだめだ、こんなむちゃくちゃに借りちゃ。一人前の人間、そのぐらい考えなきゃだめだということを私は痛感しますね。大体サラ金業者というものが、非常に庶民金融としてこたえられないほどいいものだと思っているのが大間違いなんです。だんだんそういうふうになってきたと思うんです、いいサラ金もおるかもしらぬけれども。安直に過ぎてしかも追及は厳しくやられるということになれば、困るのは決まっているのだから。そのくらいのことは、幼稚園じゃわからないかもしらぬが、だんだんわかってくるはずですので、時間はかかっても何とか持っていくのじゃないですか、取り締まりとかそういうのをだんだんやっていけば。
  275. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 やってください。
  276. 大川清幸

    ○委員長(大川清幸君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時四十七分散会