運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1982-08-03 第96回国会 参議院 法務委員会 14号 公式Web版

  1. 昭和五十七年八月三日(火曜日)    午前十時九分開会     ―――――――――――――    委員の異動  八月三日     辞任         補欠選任      世耕 政隆君     岩本 政光君      安井  謙君     関口 恵造君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木 一弘君     理 事                 平井 卓志君                 円山 雅也君                 寺田 熊雄君                 小平 芳平君     委 員                 臼井 莊一君                 岩本 政光君                 関口 恵造君                 戸塚 進也君                 増岡 康治君                 真鍋 賢二君                 八木 一郎君                 和田 静夫君                 山中 郁子君                 中山 千夏君    国務大臣        法 務 大 臣  坂田 道太君    政府委員        法務大臣官房長  筧  榮一君        法務省民事局長  中島 一郎君        法務省刑事局長  前田  宏君        法務省入国管理        局長       大鷹  弘君        公安調査庁長官  鎌田 好夫君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君    説明員        内閣官房インド        シナ難民対策連        絡調整会議事務        局長       色摩 力夫君        警察庁警備局外        事課長      吉野  準君        法務省大臣官房        審議官      當別當季正君        外務省アジア局        難民対策室長   今川 幸雄君    参考人        在日本朝鮮人総        連合会中央常任        委員会社会局長  河  昌玉君        明治大学教授   宮崎 繁樹君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 鈴木一弘

    ○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  本日、世耕政隆君が委員を辞任され、その補欠として岩本政光君が選任されました。
  3. 鈴木一弘

    ○委員長(鈴木一弘君) 外国人登録法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として在日本朝鮮人総連合会中央常任委員会社会局長河昌玉君、明治大学教授宮崎繁樹君の御出席をいただいております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人の方々には御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、皆様から忌憚のない御意見を承りまして、今後の本案審査の参考にいたしたいと存じます。  これより参考人の方々に順次御意見をお述べ願うわけでございますが、議事の進め方といたしましては、初めにそれぞれの立場から一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただくという方法で進めてまいりたいと存じます。  それでは、まず河参考人からお願いいたします。河参考人。
  4. 河昌玉

    ○参考人(河昌玉君) 意見を申し述べる機会を得ましたことを光栄に思います。  外国人登録法がいかにひどい法律であるかを、私たち在日朝鮮人は日常生活の中で自分たちの肌で感じています。このような状況に置かれている在日朝鮮人の立場から意見を述べたいと思います。  私は、まず法案について述べる前提として、現行法の規定内容及び実際の運用状況について簡単に触れてみたいと思います。  外国人登録法は、出入国管理及び難民認定法とともに在日外国人に関する二大基本法規の一つとされています。ところが、一般の日本国民は、この法律の内容についてはもちろんのこと、その存在自体を知らない人が多いことでしょう。仮に知っていたとしても、せいぜい、外国人の登録手続を定めたもので、住民基本台帳法のようなものだろうくらいに軽く考えていると思います。一般には、刑事法規としてではなく、民事法規として認識されている結果、市販の六法全書でも戸籍法、住民基本台帳法などと並べて民事編に収録されているのです。しかし、登録法の内容を検討し現実の機能と運用の状況を見ると、決して単なる民事法規、行政法規にとどまらず、刑事法規、治安法規としての本質を持っていることが明らかであります。  第一点は、罰則が不当に重いことであります。  登録法と住民基本台帳法、戸籍法とは居住関係、身分関係を明らかにする点ではほぼ目的を同じくしています。ところが、基本台帳法は、届け出義務違反について二千円以下の過料とされています。過料が単なる行政上の秩序罰にとどまるのに比べ、登録法は届け出義務違反でも一年以下の懲役もしくは禁錮または三万円以下の罰金に処せられることになっています。懲役一年といえば、刑法上の賭博罪や過失致死罪よりも重いのです。賭博罪も過失致死罪も二十万円以下の罰金にすぎず、懲役や禁錮の刑はないのです。形式的手続に多少違反したくらいのことが、どうして賭博行為や不注意で人を死に至らしめた行為より重く罰せられねばならないのでしょうか。  元来、個人の居住関係、身分関係などは、刑事上の問題ではなく民事上の問題であります。単なる民事上の問題に対し、不当に重い刑罰をもって臨んでいるのです。登録法が常識では理解しがたい過酷な刑罰を規定しているのは、常に捜査権の発動ができる機能を持たせるためと言えましょう。  第二点は、登録証明書の常時携帯、提示義務を刑罰をもって強制していることであります。  在日外国人は常に登録証明書を身につけていなければならず、入国警備官や警察官、海上保安官、鉄道公安職員等の官憲からその提示を求められたらこれを見せなければならず、身につけていなければ不携帯罪、見せなければ不提示罪ということで刑罰に処せられることになります。うっかり自宅に置き忘れたと言っても通りません。刑法三十八条第一項は「罪ヲ犯ス意ナキ行為ハ之ヲ罰セス但法律二特別ノ規定アル場合ハ此限二在ラス」と規定し、原則として故意行為のみを処罰し、過失行為を処罰するには法律に特別の規定のあることを必要としています。ところが、登録法には過失行為を処罰する規定はありません。にもかかわらず、現場の日本警察官等は、常に携帯ということをしゃくし定規に適用して、朝鮮人と見れば登録を見せろというがごとき非常識な態度に出ているのであります。  昨年七月、山梨県に居住する朝鮮人女性が、登録証明書を自宅に置き忘れ携帯していなかったということで警察に呼び出され、延べ二日間も厳しい取り調べを受けたばかりでなく、顔写真の撮影、身長、体重の測定、十指指紋、掌紋をとられ、足の長さ、足形まで測定、採取されるというひどい扱いを受けました。これは数多い具体例の  一つにすぎません。  第三点は、指紋押捺の問題であります。  論ずるまでもなく、指紋は犯罪捜査のためのものと言えます。ところが、在日外国人は、理由なく、不特定多数の人たちが見ているところで指紋押捺を強いられ、人間としての尊厳と品位を著しく傷つけられています。ある学者から聞いたことでありますが、あるアメリカ人が窓口で指紋押捺に抗議したところ、係員が、在日朝鮮人のために設けられている、不都合だががまんしてぐれと弁解に努めたということです。このエピソードは、指紋押捺制度が在日朝鮮人を的にしたものであることを、はしなくも物語るものであります。  以上の諸点のほか、登録法は、重い刑罰で未成年者にも成人同様の義務を課していること、韓国籍強要の機能を有していること一出入国管理法の退去強制の根拠として機能していること、司法官憲の不当な政治的弾圧及び情報収集活動を合法化する道具として作用していること、登録の切りかえ制度の治安的機能等を総合判断すると、住民基本台帳法や戸籍法と同じく民事法規のような外観を呈してはいますが、その実体においては刑事法規であることがきわめて明らかであります。  そして、ここで特に強調しておきたいのは、登録法は、一見すると、日本に在留しているすべての外国人に平等に適用、運用されているかのように見られますが、決してそうではないということです。私たち在日朝鮮人に対する場合と他の外国人に対する場合とでは、登録法違反事件の迫害の程度が全く違うのです。日本に在留しているアメリカ人やイギリス人が町を歩いていて、登録証明書を携帯しなかったということで警察に連行され不当な取り調べを受けるということが果たしてあるでしょうか。そんなことをしたら、外交上大問題となることでしょう。日本に在留する外国人のうち、圧倒的大多数は在日朝鮮人であり、登録法の適用の面でも最も厳しい適用を受けているのです。在日朝鮮人は登録法によって日常的に人権が侵され、生活に大きな不安と重大な脅威を受けているのであり、日本官憲の登録法による在日朝鮮人への人権侵害事件の事例は枚挙にいとまがなく、日常茶飯事のように行われているのであります。  一九四七年旧外国人登録令が施行されて以来一九八〇年までの三十三年間、登録法違反を理由に検挙された在日朝鮮人の数は四十九万五千八百六名に上っています。しかも、その大部分が不注意によるささいな違反事件なのです。この数字が端的に示しているように、外国人登録法が在日朝鮮人に対する弾圧法規であることは何人も否定しようがないほど明らかであります。  在日朝鮮人は、かつて日本帝国主義が朝鮮を植民地支配した時代に強制連行されたか、あるいは日本の植民地支配のもとで土地を奪われ生活の道を失い、やむなく祖国を後にして日本に渡ってきた人たちやその子孫がほとんどであります。しかし、私たちは日本当局に対し特別に優遇してくれることを望んでいるのではありません。私たちは、日本に在留する他の外国人と同様、国際法上、外国人が他国において与えられている程度の処遇を求めているにすぎないのです。ところが、日本当局は、登録法の運用のところでも明らかなように、在日朝鮮人の人権を侵害し迫害を加えているのであります。在日朝鮮人に対する日本当局のこのような対応は、時代の流れにも沿わないものであり非難されるべきでありましょう。  次に、法案について。  法案は、確認申請期間を三年から五年に延長したこと、義務年齢を十四歳以上かち十六歳以上にしたこと、不携帯罪の法定刑から懲役、禁錮刑を外したこと等一定の改正を行う一方、罰金額の上限を三万円から二十万円に引き上げる改悪をしています。このような手直しは、事務の簡素化に主眼を置いたものであります。在日外国人、とりわけ在日朝鮮人を日本国民と区別して、常にその動向を監視し規制するという外国人登録法に込められた本来のねらいについて、法案は何らの変化ももたらしていないと言えましょう。  日本において一九七九年九月二十一日に発効した市民的及び政治的権利に関する国際規約B規約十二条の移動及び居住の自由の規定並びにB規約二条の内外人平等原則の規定、また、右国際人権規約承認日本国国会の附帯決議は、すべての者は法の前に平等であり、人種、言語、宗教等によるいかなる差別もしてはならないとの原則にのっとり、在留外国人の基本的人権の保障をさらに充実するよう必要な措置を講ずることにつき、政府は誠実に努力すべきであるとしています。この趣旨に従って現行外国人登録法は、その適用対象の圧倒的多数を占める在日朝鮮人の歴史的特殊事情に照らしても、彼らの人権を保障し、治安立法的性格をなくす方向で、その規定内容を大幅に改正すべきであると考えます。  第一、携帯義務について。  法案は、不携帯罪に対する法定刑から懲役、禁錮を外し、上限二十万円以下の罰金に処することとしました。罰金は刑罰である以上、従来と同じように捜査権を発動できます。捜査権を発動できる仕組みが残っている点では、従来と変わっていないのです。登録法の立法目的に照らしても、刑罰をもって義務を強いる制度は廃止すべきであると考えます。  第二、指紋押捺制度について。  さきの衆議院法務委員会の参考人として意見を述べた、在日朝鮮人が最も多く集中している大阪市生野区の区長は、指紋の押捺は区民感情にそぐわないと指摘しています。在日朝鮮人を理由なく犯人扱いしている指紋押捺制度は廃止すべきであります。  第三、登録事項の確認申請について。  法務省入国管理局登録課調査指導係長の飛鋪宏平という方が「外国人登録法逐条解説」という本を書いております。この中で、確認申請の目的について、三年ごとに1当時は二年ごと、それが三年になって、法案では五年になるわけですが、登録証明書の生命を更新することが直接の目的ではなく、外国人に対しそのような義務を課す形式をとり、その機会に登録原票の記載が事実に合っているかどうかを確認することにあると述べているように、登録の切りかえは在日外国人、とりわけ在日朝鮮人の動静を治安的に把握するためのものであることは疑う余地のないところであります。  ところで、登録事項に変更が生じた場合は、その都度、法定期間内の申請が義務づけられているのでありますから、常にその確認ができるようになっているのです。ですから、この切りかえ制度は屋上屋を架すのたぐいで、合理性を欠いたものと言わざるを得ません。  第四、義務年齢について。  十四歳あるいは十六歳といってもまだいたいけない子供であります。このような未成年者に対し携帯、指紋押捺、各種申請義務を成人と同様に課し、重い刑罰で臨むというのは、人道的にも非難されなければならないことだと思います。義務年齢は、少なくとも十八歳以上に引き上げるべきであります。  第五、罰則について。  在日外国人を日本国民と区別して不当に重い刑罰を科するのは身分関係、居住関係を明らかにするという登録法の必要最小限度の立法目的をも逸脱したものであり、法のもとの平等原則にも反することであります。罰則については、刑罰制度を廃止し、日本国民と同様、過料程度に改正すべきであると考えます。  御清聴ありがとうございました。
  5. 鈴木一弘

    ○委員長(鈴木一弘君) どうもありがとうございました。  次に、宮崎参考人にお願いいたします。
  6. 宮崎繁樹

    ○参考人(宮崎繁樹君) 御紹介いただきました宮崎でございます。  外国人登録法の一部を改正する法律案について意見を申し述べます。  今回の改正案は、法務省作成の関係資料にも書かれてございますように、一、義務年齢の十四歳から十六歳への引き上げ、二、確認申請期間の三年から五年への延長、三、登録証明書不携帯罪等についての自由刑の廃止、四、指紋押捺回数の四回から三回への減少、五、罰金の多額を三万円から二十万円に、過料の多額を五千円から五万円に引き上げること、以上五点を主要な内容としており、現行法と比較した場合に、罰金、過料額の引き上げの点を除いては改良となっており、対象となる外国人にとっても、その事務を国の機関委任事務として現実に担当している地方自治体担当者にとっても、負担軽減となり歓迎すべきもののようであります。  しかし、-私は他人の足を踏みつけている人は、踏まれている人の痛さがわからないということを聞いたことがあります。他人の足を四回踏みつけていた人が、今度は踏みつけるのを三回にしてやる、だから改良だ、感謝しろと足を踏まれた人に言ったとしたら、踏まれた人は何と言うでありましょうか。現在の外国人登録法が四回踏みつけている法であるならば、一敗正法はそれを三回にしているにすぎません。  率直に意見を申し述べるならば、外国人登録法は、その主要な部分において国際人権規約の精神に違反した法律であり、これを廃止すべきものであると考えます。それにかわる処置としては、住民基本台帳法の第三十九条の外国人に対する適用一除外規定を改めて、本邦に上陸した日から九十日未満の外国人についてのみ届け出義務を免除することとし、九十日未満の未届け出者については旅券その他身分を証明する書類の携帯義務を課する、ただし罰則は科さないという処置をもって足りると考えます。  国際人権規約B規約は、前文で「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎」であり、「人権及び自由の普遍的な尊重及び遵守」を促進する義務を諸国家が負っていることを認め、具体的に第二条で「各締約国は、その領域内にあり、かつ、その管轄の下にあるすべての個人に対し、」人種、国民的出身などによるいかなる差別もなしに人権を尊重し確保することを約束しております。  そして、日本政府の解釈によれば、この国民的出身、ナショナルオリジンという言葉は国籍を含むのでありますから、国籍による差別なしに市民的権利を保障すべきことは日本国家の義務であります。同規約の第七条は、「何人も」「非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い」を受けない、ディグレーディング・トリートメントを受けないと定めており、また同規約の第十六条は、「すべての者は、すべての場所において、法律の前に人として認められる権利を有する。」と定めております。  昨年十月二十二日、国際人権規約に関する日本政府の報告書が人権専門委員会で審議された際、日本政府代表は、条約は以前から日本の法制の一部を構成すると解されてきており、それに相応する効力を与えられてきた。条約は、国内法より高い地位を占めると解されている。一このことは、条約に合致しないと判断された国内法は無効とされるか改正されなければならないことを意味すると述べております。国際人権規約の承認に当たりまして、当院におきましても、外国人の処遇について格段の配慮すべきことは附帯決議で明らかにされているとおりであります。  問題となる点は、ほぼ次のような点であります。  第一は外国人登録の必要と目的、第二は指紋押捺、第三は登録証明書の常時携帯、第四は登録事項確認、第五は刑罰規定の諸点であります。  第一の外国人登録の必要と目的は、外国人登録法第一条に規定があり、衆議院における本法案の審議の際にもしばしば強調されました。それは、外国人の身分関係及び居住関係を明確化することによって、在留外国人の公正な管理に資するというのであります。外国人の管理というのは、要するに外国人を監視し取り締まるという感覚であります。このような考え方自体、国際人権規約そして憲法の精神にも反していると言わなければなりません。人間が人間を管理するという考え方、特に行政庁が人間を管理するという考え方が間違っているのであります。  人間は、自己の意思により、その希望、能力によって本来その望むところで生活し幸福を享受し得るものであります。そのような自由、人権は、国家により認められることによって初めて有効になるというものではありません。国家は、むしろその人権を保障するための手段にすぎないのであります。現在、国家が存在する以上、国民と外国人との問に、ある程度の取り扱いの差が生ずるのはやむを得ませんが、それは必要最小限のものでなければなりません。国民の住民登録以上に外国人にだけ過重な外国人登録を義務づける必要があるのでしょうか。確かに取り締まりの便宜という点からすれば、指紋を押捺させた外国人登録、そしてその外国人登録証明書を常時外国人に携帯さ  せ、違反に対しては重罰で威嚇しておけば便利に  は違いありませんが、それは外国人の人権を大きく制約しているのであります。  政府側は、この外国人登録の制度が不法入国者や不法在留者の検挙に有効であり、また抑制効果があるといってその必要性の根拠としているようでありますが、それは本来善意で善良な外国人全体を潜在犯罪者とみなしているにほかなりません。取り締まりの便宜と外国人の人権のいずれに重きを置くかといえば、後者に置くべきことは当然であります。  第二の指紋押捺、このことこそは、外国人を潜在犯罪者扱いしている典型というべきものであります。今度は押捺の機会が三年から五年になり、回数も四回から三回に減るとはいうものの、その確認のたびに指紋をとられるというのは、当該外国人にとっては、不愉快を通り越して屈辱以外の何物でもありますまい。  衆議院の参考人になられた、実際に外国人登録の事務に当たる立場におられる大阪市生野区長の山崎さんは、一応スムーズに押捺されているように見受けられますが、よく見てみますと内面的に複雑な反応がうかがわれ、一部の方からは明らかに不快感といった様子が感じとれると述べておられます。私は、指紋押捺を強制することは、品位を傷つける取り扱いであり人として認められる権利に反していると考えます。みずから署名できない者、犯罪や出入国管理法に違反した者、身分、国籍について疑いがある者、旅券を所持せず身元確認のためにどうしても必要な場合に、本人の同意により指紋を押捺させるということであれば合理性があるかもしれませんが、不法入国者発見や登録証の偽造防止のために便利であるからといって、すべての長期滞在外国人に指紋を押捺させるというのはよくありません。  文明国としては、ほとんどアメリカだけというこの指紋押捺の制度は、本来諸外国がこういう制度をとっていないというところからも見受けられるように、決して必要不可欠のものではありません。それゆえ、この制度は早急に廃止すべきものであります。登録証偽造防止のためであるならば、自動車免許証や旅券のように、写真の上に透明な紙をかぶせるなどの技術的な方法もあると思いますし、また、どうしてもわが国において指紋押捺が必要であるとするならば、最初の登録のとき一度、一回で足りるはずであります。指紋は一生変わらないのでありますし、写真とかコピーの利用により複写は可能なのですから、何回にもわたって指紋を押捺させる必要は全くないと考えられます。  第三に、登録証明書不携帯について自由刑を除くという今回の改正は、わずかながら一歩前進と評価されておりますが、本来、登録証明書の常時携帯自体不必要な義務づけであると思われます。長期滞在者であれば住居も定まっており、勤務先や友人関係も形成されているわけでありますから、国民と同様に住民登録をして、その基本台帳に登録しておけば身元はすぐ判明するわけであります。未登録の者については、旅券その他の身分証明書の携帯義務を課することによって足りると考えます。  政府委員は、登録証を常時携帯させて、そしていつでもその人の生活の場でその人が登録証を持っているかどうかを点検できる体制にしておかなくてはならないと述べていますがなぜそうしておかなければならないのかという点が十分の説得性を持っていないと思います。なぜ外国人について、その生活の場で即時的に当該外国人の居住関係や身分関係を把握する必要があるのでしょうか。むしろそれに伴うトラブル、人権侵害の弊害の方が大きいと思われます。  これは従来にもよく紹介された例でございますので委員の方も御承知かと思いますが、一九六三年、昭和三十八年の五月に、茨城県の竜ケ崎市内の竜ケ崎朝鮮人学校で、女の先生が教室で授業をしていたところ、教室にやってきた警察官に外国人登録証明書の提示を求められ、たまたま市内の自宅に置き忘れていたので、証明書はあした自宅から必ず持ってくるからと言ったのに対して、不携帯罪だと言って児童の見ている教室のその場から警察へ連行されたという事件があったと伝えられます。  一体そうしたことを行う合理的必要があるのでありましょうか。その先生は登録証を持っていたわけですし、市内の自宅に行けば御本人であるということは当然わかるわけであります。学校の人に聞いてもわかるわけであります。それにもかかわらず、登録証を持っていないということで強制的に連行し、そうして先ほど河さんがおっしゃいましたように、刑罰的な処罰を科するということが本当に必要不可欠なのでありましょうか。外国人登録法はそのようなことを可能にする法律でありますし、その本質は今回の改正法律案でも抜本的に改められているわけではありません。  第四の登録事項の確認という点についても、改正案では従来の三年ごとの確認を五年ごとに延長しようとしておられますが、このような切りかえ、確認ということは本来不必要であり、登録事項が変更した場合においてだけ手続をするということにすれば足りるのではないでしょうか。これは先ほど河さんが申されたとおりであります。  また、現在、外国人登録の場合には、住民登録の場合と異なり職業や勤務先の名称、所在地まで登録させ、もしそれが事実と相違していれば一年以下の懲役、禁錮、または二十万円以下の罰金ということになるわけですが、国際人権規約により、すべての者が自由に選択しまたは承諾する労働によって生計を立てる機会を得る権利、A規約の六条一項というのを認められ、また、何人も私生活に対して干渉されない自由ということをB規約の十七条も認めているのであります。こういう点から言いますと、このような詳細な登録事項は不必要であり、結局、住民基本台帳の住民登録と同じ内容で足りると考えます。  このように見てまいりますと、外国人の登録についても住民基本台帳に統一して整合性を持たせた方が、国民健康保険、児童手当その他の、先般出入国管理令の改正などに応じまして国民に準じて外国人も取り扱われることになりました社会保障あるいは就学通知、統計その他の点でも便宜でございますし、最近問題になっております行政簡素化という点にも貢献するものであると思います。  第五の罰則につきましては、すでに多くの人たちが指摘されているところでございますが、私も重過ぎると考えます。  本来、外国人登録も外国人の身分関係、居住関係を明らかにするという行政目的のものであると考えるべきものでありますから、その手続違反についても住民基本台帳法の場合と基本的に取り扱いを異にする必要はありません。住民基本台帳法の罰則が二千円以下の過料であるのに対して、外国人登録法の罰則が二十万円以下の罰金というのは余りにも差があり過ぎますし、申請を怠り――これは過失によって怠るということも含まれるようでありますが、また登録証の提示を拒んだ場合に、今回の改正法でも自由刑を科し得るというふうにしているのは重過ぎると思います。  昨年十月の「法曹時報」に掲載された出入国管理の概況によれば、国籍別外国人登録者数の表におきまして、昭和五十五年度登録総数七十八万二千九百十人のうち、韓国・朝鮮人六十六万四千五百三十六人、中国人五万二千八百九十六人であり、韓国・朝鮮人と中国人の合計で総数の九一・六%となっております。  坂田法務大臣は、ことし四月二十七日衆議院の法務委員会における本法案審議に当たって、「この人たちに対しましてはできるだけ最大限の、何といいますか、日本人と変わらないような処遇をしなくちゃならないということも当然だと私は考える」、「国際人権の立場から考えて、それに著しく違反をするようなあるいはそれに余りにもほど遠いような、人道上の取り扱いがなされておらないということであってはならない、こういうふうに私は思う」と述べておられます。  人間には顔もあり個性もあり、写真や署名、サインによって特定不可能ではありません。それを、動物や犯罪人のように手の指にインキをつけて指紋を押捺させる。日本人にはさせないことを外国人には強制し、また常時外国人登録証を持つて歩かせる、ちょうど犬に鑑識票をつけるように絶えず持って歩かせる。日本人にはさせないことを押しつけ、過失で登録証を持っていなくても厳重な処罰をする、提示を拒めば刑務所にもほうり込むというのは、これは国際人権の立場からはよ.ほど遠い取り扱いと言わなければならないと思います。  ほとんどの先進諸国で行われていない、すなわちそういう諸国においては外国人についてそういうことをする必要がないと考えている、そういうことを日本だけがどうして行う必要があるのでしょうか。アメリカについてはこういう指紋押捺、そういう制度があると言われておりますが、また十八歳以上の者については登録証を持って歩く必要があるというふうに言われておりますけれども、アメリカというのは御承知のように日本のような戸籍制度を持っているのではなくて、ドミサイル――定住者証を持っている人はすべて自国民になるのであります一九十何%に上るという朝鮮・韓国人あるいは中国人の人たちは、アメリカのような制度から言えば当然自国民になっている.人たちなのであります。  そういうふうに考えますと、日本だけがこういう特異な制度を持っている、そのことは決して名誉ではありません。外国人だからそれぐらいは仕方がないという感覚こそが国際人権の意識と相入れない、精神的な鎖国の意識構造であると思います。  今回の改正法律案のようなことで足りるとせず、抜本的に外国人登録を廃止し、外国人も日本人と同じ人間である。外国人を管理や取り締まりの対象と考えずに、外国人も日本人と同じように地球上に生きている人類の一員であり仲間なのだという考え方で、外国人の処遇法制を考え直していただきたいというふうに考えます。  以上をもって意見の陳述を終わります。
  7. 鈴木一弘

    ○委員長(鈴木一弘君) どうもありがとうございました。  以上で参考人の方々の意見陳述は終了いたしました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 河参考人にお尋ねをしますが、先ほどの意見陳述ではこの法律は非常に乱用せられる、あるいは組織の弾圧に使われる、強制退去の根拠とされるというようなお話がありましたね。そういう問題でちょっと具体的におっしゃっていただけますか。具体例を、余りだくさんでなくて  一つ、二つでいいですから。
  9. 河昌玉

    ○参考人(河昌玉君) お答えします。  登録法を朝鮮総連弾圧の手段とした典型的な例を申し上げます。  ちょっと古い資料ではありますが、一九六三年十一月二十八日の早朝、兵庫県尼崎中央警察署の警察官二十数名が、市内に居住している、これは鄭という人でありますが、その自宅を急襲しまして、その家じゅうを捜索をいたしました。そして、在日本朝鮮人総連合会の組織関係の名簿、学習帳、通信など、合計五十余点を持ち去りました。また、この鄭さんの奥さんが在日朝鮮民主女性同盟尼崎支部委員長をしているということを理由に、女性同盟の財政帳簿なども証拠品として没収するという弾圧行為が行われました。この警察が押収した物件というのは、登録法とは関係のない証拠品などでありました。この事件は、当時の参議院法務委員会においても厳しく追及された事案であります。  次に、これは新しい事例であります。登録法を情報収集の手段とした例であります。一九八二年三月二十一日正午、東京三多摩朝鮮第一初中級学校に通っている中学三年の十四歳になる生徒に対して、西武新宿線久米川駅前をこの十四歳の少年が自転車で通りかかったところ、駅前派出所の警官がいきなり呼びとめて、登録証を見せろと。持っていなかったわけですね。この警官は、派出所に連れ込んで尋問をした後、さらにパトカーで東村山警察署に連行し、厳しく取り調べを行いました。警察は取り調べ室で、学校内部の事情について主として尋問をした事案であります。情報を集めるためには、十四歳の少年の人権をも顧みないひどい事例の一つであります。  事例はたくさんございます。先ほど寺田先生の強制退去の根拠になっている事案ですけれども、この出入国管理令第二十四条、これは退去事由の規定であります。「外国人登録に関する法令の規定に違反して禁こ以上の刑に処せられた者。但し、執行猶予の言渡を受けた者を除く。」に対しては「本邦からの退去を強制することができる。」と規定をしております。強制退去は、在日朝鮮人の財産と生命、生活の基盤を根底から覆し、家族や肉親をばらばらに引き離すという、死刑の宣告にひとしいものだというふうに私どもは考えます。  実際の事例としては、一九六八年の春、当時韓日条約が締結され、いわゆる協定永住権というものが行われました。この韓日間で結ばれた法的地位協定に基づく永住権申請の中で、当時は法的地位協定で強制退去は一般犯罪の場合は七年になります。出入国管理令では一年以上ということにされています。七年と一年の違いがありました。韓国籍を確認してもらって協定永住を申請すれば、すぐ釈放になるわけです。ところが、おれは朝鮮民主主義人民共和国を支持する公民だと主張すると、大村収容所へ収容するわけです。  その具体例でありますけれども、東京三多摩に居住している二十三歳の青年が交通事故を起こし、そして外国人登録証を携帯していなかったということが併合罪になりまして、一年六カ月の刑を受けました。大村収容所へ収容し、南朝鮮への送還が企図された具体例がございます。  具体例はたくさんございますけれども、以上でお答えとします。
  10. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いま強制退去の場合に、韓国籍を取得すれば日本滞在を認めよう、韓国籍の取得を拒めば大村収容所に入れられてしまうというお話がありましたね。それからもう一つ、登録の切りかえの際に市役所などの職員が、朝鮮籍でなく韓国籍に移りなさいというようなことを勧誘するというような事例があるということも聞いておりますが、そういう事例も現実にあるんでしょうか。
  11. 河昌玉

    ○参考人(河昌玉君) 強制退去の問題でございますが、昨年、出入国管理及び難民認定法ができました。出入国管理令の一部改正が行われました。最近に至っては、朝鮮の国籍を有する者も大体懲役五年くらいまでは勘弁しようというような扱いにちょっと変わってきています。ところが一九六五年、韓日条約が締結されますが、それを契機として、在日朝鮮人に対する退去強制令が乱発されます。そういう中で、この強制退去に対する反対運動、出入国管理令、出入国管理法に反対する運動と結びつけた在日朝鮮人の在留権擁護闘争というものが長年にわたって行われます。  その結果として最近、入管当局では扱いにおいて若干の手直しが行われています。最近は若干緩められた、そういう状況でありますが、数年前の状況を見てみますと、韓国籍である者と朝鮮国籍である者についての入国管理局の特別在留を許可するかしないか、その裁量の基準の要件の重要な部分としてやっていたのが実情でなかったかというふうに考えます。増山という審判課長ですか、この方が裁判でも、韓国籍の者については特別在留を許可するが朝鮮国籍については許可しないんだ、これが法務省の方針なんだということを裁判所の証言で明らかにした事実がございます。このように、国籍が韓国であるという場合と朝鮮の国籍である場合においては、非常に差別的な扱いをやっていたということが事実であります。このような具体例はたくさんございますけれども、省きたいと思います。  それから、登録切りかえのときに韓国籍にしろということが行われているかどうか、これは最近においては少なくなっております。ところが、以前は公然とやられていたわけですね。登録、最初は二年、それが三年になって、今回切りかえが五年ということになるようでありますけれども、外国人登録課の職員が、おまえは韓国籍にした方が日本で生活するのに非常に便利であるというようなことで韓国籍を暗に強要する、勧めるというようなことがたくさん行われました。そればかりでなくて、韓国籍にしないと日本で生活していくことができなくなるんだというようなことまで韓日条約が締結された当時はそういうことが公然と言われ、そういう中で朝鮮籍を韓国籍に移した在日同胞もたくさんございます。  ここで、直接先生の御質問とはちょっとあれですけれども、法務省が韓国籍を強いる政策をいまなお続けているという問題でありますが、先生方も御承知のように、一九七一年福岡県田川市を皮切りに、日本の各地の自治体が登録証明書の国籍欄の韓国を朝鮮にかえる正当な処置をとりました。その数は八千数百名になると言われております。ところが、そのうち千二百余名については、いまなお法務省が持っている登録原票の国籍欄の記載を韓国のままにしてあるわけですね。そのためにこの人たちは、第三国への旅行の自由も奪われた状態が現在も続いています。韓国を朝鮮に自治体が直して十一年たった今日においても原票は直さない。その間、登録の切りかえも数回にわたって行われています。これは非常に不自然な状況ではないかというふうに考えます。
  12. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 宮崎参考人にお尋ねいたします。  大変人権を重く見るという立場からいろいろな御意見をお述べになったわけでありますが、いま指紋押捺を強制しているのは文明国ではアメリカがあるのみであるというようなお話がございましたね。ヨーロッパ大陸の場合は、御承知のように国境が紙一重なわけですからして、かなり往来は日本のような海洋国と違って容易ではないかというふうに考えますが、そういうところでも密入国の取り締まりであるとかそういうような問題に、登録は別として指紋押捺は必要はないということでありますか。その辺の合理的な根拠といいますかね、なぜそういう制度になっておるのか、その辺のところをちょっと御説明いただけますか。
  13. 宮崎繁樹

    ○参考人(宮崎繁樹君) 私個人の経験といたしましては、一九六〇年から六一年にかけて一年ほど西ドイツに留学をしてやはり登録をしたのでありますけれども、西ドイツでは郡の、クライスの警察署が登録を受け付けるということでございましたが、これは住民登録と同じように、ただ書類に記載をしてサインするだけでございまして、指紋押捺ということはございませんでした。その他フランスとかイギリスも島国でございますけれども、そういう指紋を押捺させるということは原則としてしていないと思います。  ただ、犯罪とか不法入国者あるいは身元が明確でないというような場合に、その身元を確認するといいますか、ちょうど刑務所などで犯罪人の確認をするということのためにそういう指紋をとるということはあるかもしれませんけれども、犯罪を行っていない普通の人間に対して、元来指紋のようなものを強制的に押させるということは必要がないということが前提になっているのだと思います。疑いもないのにそういう指紋を押捺をさせるということ自体が不必要である、そういう考え方でございまして、むしろ日本の場合のような指紋押捺をさせるということが世界的に見れば例外なのでございますから、基本的に犯罪も行っていない、疑いもない、身元が確認をされている人に対して指紋を押捺させる必要がないというのが、そういう根拠になっていると思います。
  14. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 もう一つ、もし御存じでしたら、社会主義国家の場合は外国人の居住問題についてはどういう法制をとっておるのか、その辺もし御存じでしたら御説明を願えれば幸せですが、いかがでしょうか。
  15. 宮崎繁樹

    ○参考人(宮崎繁樹君) 私は、社会主義国と言えばソビエトそれからベトナムそれから東独に若干いたぐらいでございまして、長期に滞在した経験がございませんのではっきりわかりません。しかし、そういう指紋を押捺させられたということをそれらの地域で聞いたことはございません。
  16. 小平芳平

    ○小平芳平君 初めに河参考人にお伺いしたいですが、いろいろ御説明いただいてよくわかり、また参考にさせていただきたいと思いますが、特に二点お伺いいたしたい。  第一点は、指紋を押捺させるという、それがいろいろ問題があるとお二人の参考人の方からお話がございました。  その点と、それからもう一点は、この外国人登録証明書を持っていなくちゃいけない。これなどは常時持っていなくちゃいけない。本当に、もうちょっとした買い物に出かけるにも必ず持っていなくちゃいけないということになりますと、非常にそのために不便な思いをなさるんじゃないかと思います。その二点につきまして、具体例によりましてこういう不合理があったというようなことが伺えたらと思います。  それから宮崎参考人に伺いますが、先ほど来、住民基本台帳で事足りると、日本のみがこうした国際人権規約に違反するような制度をとっているというお話がございましたが、第一点は、なぜ日本がそういうような古い制度を依然としてとり続けようとするか。今回の一部改正で若干前進する点はありましょうけれども、依然としてこの国際人権規約に違反するそういう制度をとっていこうとしているかという、その特殊事情がありましたらお述べをいただきたいということが一点。  もう一点は、法務省とそれから地方自治体の実際のやり方というものがずれがありはしないか。法務省の説明でも、市区町村等においてはたとえば住民サービスの一環としてお知らせを出しているでしょうとか、あるいはそういう点は県では自発的にそういうことはやっているでしょうというようなことを法務省も言われますけれども、そういう点、この問題に対する法務省とそれから実際に取り組んでいられる地方自治体にずれがありはしないか、そのためにまた外国人登録関係についての不合理な点が起きはしないか、そういう点についてお気づきの点がありましたらお聞かせをいただきたい。  以上です。
  17. 河昌玉

    ○参考人(河昌玉君) 指紋押捺の問題でありますけれども、私どもは犯人扱いをされているんだというふうに考えております。先ほど宮崎参考人からも御説明がありました。しかも、この指紋について一度だけでなくて、三年ごとに三年ごとに登録の切りかえをやりますけれども、その都度同じ指紋をずっととるわけですね。私ども、法律で決められていますから日本の法律は尊重するという立場をとっておりますし、登録切りかえをやります。私どもの同胞に対しても、法定期間内に登録切りかえをやりなさいという啓蒙もやります。ところが、なかなかそれが浸透しないということで、ちょっと期間を徒過して何日かおくれて切りかえをやったというような場合には、先ほど言われましたように最高一年以下の懲役というようなかっこうになります。  この指紋押捺と携帯の問題は、私どもは在日朝鮮人すべてを被疑者扱いしているというそういう制度であるということで、機会あるごとに当局に対して是正方を申し入れているところであります。このように人間を犯罪人扱いするということは、これは許されないことだと思いますね。人道的には、こういう制度は直さなきゃならないというふうに考えております。  それで、その登録証の携帯義務の問題です。常に携帯しなければならない。現場の警察官などは、実際にこれをしゃくし定規に適用するわけです。すぐ家の前で待ち受けていて、登録証を見せろというような事案があります。最近はちょっと少なくなりました。以前はひどいものです。家の前で待ち構えていて、出てくるのを待って、おまえ登録証を見せろということで、たまたま不携帯ということであれば警察へすぐ連行していくというようなひどい仕打ちをしていたのが事実であります。  この登録証携帯の問題の具体例を一つ紹介したいと思いますが、これは一九八〇年、二年前でございます。一月十九日、茨城朝鮮初中級学校の教員であります。この人が自動車で高速道路西神田口の信号にちょうど差しかかったときに、信号が変わったので一時停車しました。ところが、覆面パトカーというのがいるようですけれども、そのパトカーが一時停止しているとまっているところへ来まして、免許証を見せろ、信号無視なんだと言う。実際は信号無視はなかったようです。信号無視だということで、免許証を見せろという取り調べを受けたわけです。  免許証を見せました。免許証に朝鮮名が書かれています。朝鮮人だということは一目明らかであります。次に登録証を見せろ。たまたま学校に置いてあって持ってなかったんですね。不携帯だということで、この教員を麹町警察署に連行いたしまして、学校内部の状況それから学校と朝鮮総連との関係などについて主として厳しい取り調べをやったという事件であります。たまたま持っていなければ、非常にひどい目に遭うということなんですね。持っていれば大体見せますけれども、持っていて不携帯罪でやられるというのは、これはほとんどないんじゃないかと思います。  ここで問題になるのは、自動車学校に行って一定の期間そこで練習をして自動車免許証を取るわけですが、自動車学校に入学をする際に外国人登録済証明書と写真を出します。だから登録をしていること、どこに居住しているということは一目明らかであります。だから、登録をしてない者は免許証が取れないわけです。そういう状況ですから、免許証の確認でその人の身分関係、居住関係を確認することは十分ではないか。免許証で朝鮮人だとわかれば登録証を見せろ、たまたま登録証を持ってなければ、これはさっき言ったようなそういう仕打ちを受ける。さらにひどい目に遭うということになると、これは併合されて二重の処罰もあり得るというようなひどいかっこうになっています。このように、登録証の携帯義務は私どもにとって非常に重荷になるわけです。  私の経験を申し上げますと、私どもは、先ほども申し上げましたように、法律が一応あるんだからそれは守るという立場です、やらなければ弾圧されますから。服をよく着がえます。中に登録証を入れて、服を着がえたときに入れかえることを忘れることがあります。駅まで来て、改札口に入って気がついて家まで取りに行くことがしばしばあるわけですよ。こういうことは日常生活の中でたくさんあり得る問題だと思います。  私どもはそういうふうに注意するからいいんですけれども、一般同胞、特に十四歳や十六歳や小さな子供たちがそれを持ってなければ――ひどい目に遭った者はわかりますけれども、ひどい目に遭うということをよく知らないわけですね。こういう状況ですから、在日朝鮮人の日常生活の中で登録証携帯というのは非常に重荷になってくる。このような私ども登録制度そのものを全面的にやめろというような主張をいままでしたことはありませんが、刑罰をもってそういうものを強制するというような行き方は、これは是正されるべきであるというふうに考えています。
  18. 宮崎繁樹

    ○参考人(宮崎繁樹君) いまの点でございますが、私の持っております兵庫県在日朝鮮人の人権を守る会が出しております「わたしと朝鮮人」という本によりますと、「次のような例があります。」ということで、朝鮮の人達のマラソン大会が行われました。ところが、決勝点で誰が一番でゴールをきるかと待ちかまえていた多くの人達は、あまりに選手の到着がおそいのにやきもきしていました。あとで判ったところによると、そのマラソンのコースの途中で警官が選手に外国人登録証明書を持っているかを尋ね、呈示できない人は携帯義務違反ということで取調べを受け、マラソンどころではなくなってしまったというのです。そういう例が挙げられております。  私に対する質問でありますが、第一の、なぜ日本だけこういう特殊なのかということについて思いますと、一つには、先ほど御指摘がございました日本が島国であるということ。二番目には、明治以降の国粋主義的な一つの教育といいますか、そういうもの。それから三番目には、それによって形成された民族的な利己主義といいますか、そういうもの。四番目には、日本が第二次大戦後朝鮮・韓国人、台湾人の人たちに対して国籍選択権を与えなかったということ。そういうことが絡み合っていると思います。  これも国会で何回か取り上げられました、法務省の参事官が書かれた.「法的地位二百の質問」というものの中に、外国人は煮て食おうと焼いて食おうと自由であるというふうに書かれていて問題になりましたけれども、そういう考え方が一般的であった、少なくとも国際人権規約の批准に至るまではそういう考え方が強かったということが災いしていると思います。  第二の、法務省と地方自治体との間の食い違いということでございますが、外国人登録につきましては、御案内のように、また先ほども申し述べましたように、本来は国家事務で、地方自治体は機関委任事務として行っておりますし、住民登録につきましては地方自治体の固有事務として行っていると思いますが、そういうところで同じ住民でありましても外国人は住民基本台帳に載っていないというところから、最近では社会保障事務ということが外国人に対しても行われるようになってきている、あるいは就学の問題についても、外国人は義務はございませんけれども、便宜通知をするということに当たって、同じ住民でありながら日本人は基本台帳、外国人は外国人登録ということで、その問にそごが生じてくるということがあると思います。  また、地方自治体当局者といたしましても、その実際の処理に当たりまして、固有の事務ではなくて法務省からの指示ということがございますけれども、地方自治体のやり方が間違ってそごが生じたという場合に、これは外国人登録という雑誌がございまして、そこで一々お伺いを立てているという例がございますけれども、不便を感じておられるということがときどき見受けられます。
  19. 山中郁子

    ○山中郁子君 参考人の皆さんには御苦労様でございます。貴重な御意見をありがとうございました。それぞれ御意見を拝聴いたしまして、二、三重ねてお伺いをしたいと思います。  初めに宮崎参考人にお尋ねをいたしますが、この外国人登録法の問題の一つの本質というのが、先ほどの御意見からも、お二人からも出されておりましたけれども、いわゆる国家主権と基本的人権の関係という問題があると思います。かつて金大中氏が拉致されて、そしてあの問題で韓国政府の金大中氏に対する処分について日本の心ある人々から多くの批判がされたのに対して、韓国側からは韓国の内政に干渉するものだという、こういう反論がありました。そのときに基本的人権の擁護に国境はないのだということで基本的人権の.普遍性、国際性ということが強調されたわけですけれども、本委員会でいま審議をされているこの問題についても、すぐれてそうした問題を本質としていると思います。  つまり、指紋押捺の問題にしましても、それから登録証明書の常時携帯義務問題、こうした問題につきましても、日本に出入りする、あるいは在住する外国人に対してこれを管理する国の主権に属する作用ですね、それから出入りする外国人、在住する外国人の人権を尊重するということとの.調和の問題という点が出てくると思うんですけれども、この点について先生の御意見をまず初めにお伺いをいたします。
  20. 宮崎繁樹

    ○参考人(宮崎繁樹君) 御指摘のとおりだと思います。絶えず国益ということと人権というのは対立するわけでございまして、国家の取り締まりという点から申しますと、外国人に対しては絶えずその動静を監視し、そして国家に対して不利なことが起こらないようにするという立場があり得ると思います。  そういう点からするならば、外国人に対して指紋押捺をさせ、また、常時携帯をさせていた方が取り締まりにとって便利なわけであります。しかし、そのことは、先ほども申し述べましたように、外国人にとって非常に不便であり不愉快であり屈辱であるという人権の侵害につながるわけであります。  この場合の一つの手法としてはどうかと申しますと、現在の時点においてそのバランスをどのように考えるか、現在の日本国家にとって、日本国民全体といってもいいかもしれませんけれども、その利益が害されるということのないようにするためにどの程度外国人の基本的人権を制約することが許されるのかということでございますが、他の文明国において行われていない指紋押捺あるいは登録証の常時携帯ということを日本においてだけ行っていくとすれば、その必要の合理的な根拠が明らかにされなければならないというふうに思うのでございます。  そのように考えていきますと、確かに国家主権、国益、取り締まりの便宜ということからいいますと、現在の指紋押捺、登録証の常時携帯ということは根拠があるようでございますけれども、外国人の人権を制約してまでその制度を維持していかなければならないかというより高い次元で評価した場合には、その必要性がないということになってくると思います。  ただ、全く野放しでいいかということになれば、国家としてもそうは言えないわけでございますが、国民について住民基本台帳という制度があるのでございますから、その制度を活用すれば、住民の動向というものを把握することができるわけでございまして、それを越えて外国人の人権を侵害するだけの国家的な必要というものはないのではないか、そういうふうに思うわけでございます。
  21. 山中郁子

    ○山中郁子君 いまの問題と関連をするんですけれども、日本におけるこうした問題がいろいろ多くの問題点を含んでいるということはすでにはっきりしているのですけれども、たとえば昨年秋の国連の人権委員会でも、日本における外国人の人権状況についてかなりシビアな質問がされたというふうなことも伝えられています。いま先生おつしゃいました観点から、先ほど御意見の中でも必要最小限のものでよろしいんだという御意見がありました。その中身について多少具体的な御意見があったんですけれども、ちょっと先生が考えていらっしゃる必要最小限というのを、包括的で結構ですけれども、伺っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  22. 宮崎繁樹

    ○参考人(宮崎繁樹君) 御指摘のとおり、国際人権規約のB規約につきましては、各国からその実施状況を国連に報告するということになっておりまして、昨年人権専門委員会で審議されました。私も、この点について指摘されているのではないかと思いまして記録を見たのでございますが、この外国人登録法の点については指摘はしてありませんでした。  私が先ほど申し述べました指紋押捺の点でございますけれども、一般的には必要はないと考えますが、たとえば犯罪を犯したというふうに考えられた場合、あるいは出入国管理令に違反している、あるいは旅券を持っていない、あるいは持っていましてもその内容に疑点がある、そういうような点で身元を確認するためにどうしても必要があるという場合には、その方法として写真、サイン、その他の照会などによってどうしても身元が確認できない、そういうような場合においては、確認の一つの方法として指紋押捺を求めるということもあり得るというふうに考えますが、それ以外の場合、長期滞在者などはその住居も明白であるわけでございますし勤め先も明白である、そういうような身元確認が可能な場合にはその必要がないのではないか。  確かに、指紋押捺し、常時登録証を持っていれば即時的にその身元を確認することはできるわけでございまして、持っていなければ、その登録先に照会するとか勤務先に照会しなければならないということで手数はかかるわけでございますけれども、手数がかかるから人権を制約していいということにはならない。どうしても身元確認にとって必須であるという場合においてのみそういう指紋押捺の制度を認めるべきだ、そういうふうに考えるわけでございます。
  23. 山中郁子

    ○山中郁子君 もう一点宮崎先生に御意見をいただきたいんですけれども、在日朝鮮人の場合が大変問題が多く出てくるわけですけれども、かつての日本帝国主義の政治支配、つまり植民地支配がされていたような国で、そこの人々が外国に、つまり日本に滞在するような場合には、特別の待遇というか、日本人に準ずる扱いということが行われて当然だと思います。つまり、たとえばイギリスでは、かつての大英帝国の植民地であった国の国民に対して、在留期間の定めのない在留については外国人としての登録を必要としないというようにされているということも聞いているんですが、それらの実情を御承知いただいていればお聞かせいただきたい。そして、その点についての先一生の御意見をお伺いしたいと存じます。
  24. 宮崎繁樹

    ○参考人(宮崎繁樹君) イギリスにつきましては、御案内のように、戦前はカナダとかインドとかオーストラリアとか、そういうところはコモンウエルス、英帝国の領土ないし自治植民地でございまして、コモンウエルスのシチズンシップ、まあ市民権という考え方がございました。そういうところがら、ほかの国の、全くの外国と、それからコモンウエルスのシチズンシップを持っている者について違いがあったといいますか、そういう影響が残っておると思います。  それから、英米圏につきましては、先ほども申し述べましたように、日本のような統一戸籍制度.というものをとっておりませんで、その国に定住所地、ドミサイルを持っている者、持つことを認められた者がそこの国民なのであります。そういう点から、御、質問の、戦前から日本人であった、日本に定住している朝鮮、韓国の人たちはそういうドミサイルによって国籍を決めるという、国で申しますならば当然に日本の国民になってしかるべき人たちなのであります。その点に問題がございますし、また、国籍選択権を終戦のときに認めなかったということから、本来日本国籍を選択したかもしれない人が外国人になったという点もあるかと思います。  この点につきましては、在日朝鮮・韓国人の方々の中にも考え方の違いがあるようでございまして、日本が植民地統治をしていたために、ほかの国の場合ならば当然その国民になっている者が、日本国民になることを拒絶いたしまして、外国人の地位にとどまっているという点もあるわけでございます。しかし、世界の趨勢から申しますと、これはスウェーデンなどでは現行法、それから西ドイツなどでも案が出ておりますように、住民というものに対してはその国家の投票権は与えないけれども、地方自治体の選挙権は与えていいのではないか、そういうふうになってきているわけでございます。  そういう考え方からいたしますと、逐次に外国人に対する管理ということも国民に対する処遇というものに近づいていく、そういうことが考えられるかと思います。ちょっとお答えがずれたかもしれませんが……。
  25. 山中郁子

    ○山中郁子君 専門的な問題は別として、私はやはりこうしたことによって、先ほどから河参考人からもいろいろと具体的な事例が出されて、本当に驚くようなことも、宮崎先生さっきおっしゃったマラソンの件なんか本当に驚くわけですけれども、そうした差別的な扱いがされる不当性というものを、何とかやはり外国人の人権を守るという立場から解決していかなければならない問題だと私どもは受けとめております。  河参考人にお尋ねをいたしますが、先ほどいろいろ在日朝鮮人の立場から、関係者の立場から具体的な切実な御意見、批判的御意見あるいは要望なども出されました。実は、私ども日本共産党は、この法案審議に当たりまして衆議院の段階で修正案を提出したところでございます。  残念ながら少数でこれは否決をされましたんですけれども、その中身として、柱といたしましたものは、義務年齢、この法律に関して義務年齢を二十歳に引き上げる、それから外国人登録証明書の常時携帯義務を廃止する、それから五年ごとに行う確認申請証明書の切りかえ交付、これを廃止する、また、指紋押捺は当然のことながらこれを廃止する、そして外国人登録原票の登録事項のうちの職業と、それから勤務所または事務所の名称及び所在地についてはこれを削除する、また罰則の軽減、申請の不履行及び虚偽申請なんかについての罰則の軽減を図るという内容で修正案を提起したところでございますが、関係者のお立場から、私どもが提出、考えておりますこの内容についての御見解と、こういう問題もあるんだという御指摘がありましたら、せっかくの機会ですのでお伺いをしておきたいと存じますので、お願いいたします。
  26. 河昌玉

    ○参考人(河昌玉君) ただいま御指摘がありました外国人登録法の改正点でありますが、私どもが主張しているのと同じだと思います。  ただ、その記載事項の中で勤務先などは要らないんじゃないか等の問題についても、従来から私どもは法務省にその都度申し入れをしております。この前に外国人登録法の一部改正の問題がありまして、自治体の外国人登録係、これは法務省が指導している機関だと思いますが、外国人登録事務協議会というのがありますけれども、そこでも先ほど先生が言われました指紋はやめた方がいいんではないか、義務年齢についても十八歳ないしは二十歳までにすべきではないか、あるいは記載事項の変更の中で職業欄の記載事項は不必要ではないか等々、そういう意見があるのを私ども資料で承知をしております。私どもがかねがね主張している問題と、いま先生の御指摘のあった問題とでは、問題は同じであるというふうに考えております。  ただ、私が先ほど意見陳述の中で幾つかの点について申し上げたのは、当面、法務省が今度の一部改正の中でこういうのをこういうふうに手直しするんだという問題提起がありましたので、大体その問題に限って私どもの考えを述べたということであります。外国人登録法全般について、細かい部分にまで至ってこうしてほしいというようなことではないわけであります。
  27. 山中郁子

    ○山中郁子君 最後にもう一点、河参考人に、これは御感想というか御意見を承りたいと思います。  この問題は、私やはり歴史的にもそれから日本の国という立場から見ても大変厳粛な、そしてまた本質的な問題を含んでいることだというふうに考えます。つまり、数十万の在日朝鮮人の方々がおられて、そしてその方たちが外国人登録法に基づいてさまざまなそのような屈辱的な経験をされ、また負担を負わされているという事実。じゃ数十万の在日朝鮮人の方々がなぜ日本でこのようにして生活をされているのか、またそうしなければならないのかというその歴史的背景、これはいまさら私が申し上げるまでもないんですけれども、たまたまいま教科書問題が起こりまして、それで過去の日本の歴史を塗りかえようとする試みが文部省などの指導のもとに進められているということが多く指摘もされ、それから批判もされて、国会でも文教委員会などのしかるべきところで論議がされているところなんですけれども、これはまさに外国人登録法のいま審議している問題の具体的なあらわれと本質的なかかわりを持っている内容だというふうに思っておりますので、この機会に、河参考人から在日朝鮮人歴史的な経過に照らして教科書問題についてどのような御見解をお持ちか、お伺いできれば幸いです。
  28. 河昌玉

    参考人(河昌玉君) 在日朝鮮人の歴史的背景でありますが、これはすでに御承知のことと思いますが、日本帝国主義の朝鮮植民地支配は三十六年間に及びました。文字どおり武断政治が強行されるわけです。その中で朝鮮の衣装を、婦人ですけれども、男性も含めて朝鮮の衣装を着てはいけない。朝鮮民族を白衣の民族と言いました。これは朝鮮人が、女性も男性も白い着物を着ていますと、着てはいけないというそういうことで、黒いインキで官憲が塗りつぶして、結局着ないようにしたわけですね。衣装も着てはいけない、それから朝鮮の言葉を使用してはいけない、日本語を使え。学校では朝鮮語は廃止されていくわけですが、朝鮮語を使ってはいけない。朝鮮の名前を使ってはいけない。それで、本名を使うと治安維持法というのでやられますので、だんだんナカヤマなんとか、カワモトなんとか、カネヤマなんとかというふうに日本名を使うようになる。  このようにそのほかにもいろいろありますけれども、衣装を着てはいけない、言葉を使ってはいけない、名前まで日本名にかえろというような政策が強行されて、最初に武断政治が行われ、まず土地をうばうわけです。農民が大部分なわけですから、土地を奪われて生活の手段がなくなるわけで、生活の手段を求めて日本に流浪してくる。最初の段階はそういう形態で、日本にたくさんの朝鮮人が来るわけですね。  特に、第二次大戦がはじまった時点で徴兵令がしかれて徴兵、それから徴用、これは戦時労働力を補うために徴用という形で強制連行が行われます。終戦当時約二百四十万人に上がりました。祖国が解放されたというので一九四五年八月一五日なんですが、集団で祖国へ帰るようになります。ところが当時アメリカが今度は主人が入れかわってアメリカが登場するわけです。李承晩を担ぎ出して人民抑圧の政治が行われます。日本から大挙帰った人たちが生活ができなくなって、祖国が解放されると今度はアメリカ植民地、つまり主人がかわっただけではないかというふうな経過がございます。で、約二百四十万人のうち、集団でたくさん帰りました。そして六十万人が残ります。そして、一九五九年十二月に朝鮮民主主義人民共和国への帰国事業が始まります。これは資本主義から社会主義への民族の大移動ということで御承知のことだろうと思います。約十万が帰りました。それで五十万になって、その後、自然増加などがあって現在は六十六万に達しております。  在日朝鮮人が開放される前の、つまり植民地時代朝鮮から強制連行で連れてこられた、また初期、生活の手段を求めて日本に流浪してきた人たちがどのような生活を強いられていたか、多くを語る時間はございませんが、主として炭鉱にたくさん投入されます。
  29. 山中郁子

    ○山中郁子君 河参考人、済みません。わたし、持ち時間がもう時間になっていますので、簡単で結構ですけれども、ご感想を伺わしてください。
  30. 河昌玉

    ○参考人(河昌玉君) それで、在日朝鮮人がもじどおり人間以下の牛馬の生活、牛と馬と同じような生活が強いられます。どうにか生き残ったのが、現在の在日朝鮮人であるというふうに言えるんではないかというふうに考えます。  こういう点で、在日朝鮮人の歴史的特殊事情ということで私どもは表現しますけれども、それに照らしてもまた、国際法上外国人に与えるべき基本的人権、最近は人権の国際的水準というのが叫ばれています。そういう理念に照らしても、在日朝鮮人について私、意見陳述の中で申し上げましたけれども、特別に強く強調していることはございません。一般外国人並みの平等な、つまり法のもとにおける平等なそういう処置に改めるべきではないかというふうに考えています。
  31. 山中郁子

    ○山中郁子君 ありがとうございました。
  32. 中山千夏

    ○中山千夏君 どうもきょうはお二方ありがとうございます。  お二方のお話を聞きまして、同意するところがたくさんありました。宮崎さんのお話は大変合理的だと思いましたし、それから河さんのお話は、一般日本人にはなかなか感覚的にわかりにくい部分があって見過ごしてしまうようなところを、よく的確に話してくだすったと思います。不携帯の話なんかにしましても、たとえば私も議員になりましてから委員会ですとか本会議に出るこきには議員バッジをつけるということ、これはもちろんつけなかったからといって罰則があるというような話ではありませんけれども、一応つけることになっております。ところが、やはりバッジをつけてうちへ帰りまして、それでうっかり服を着がえると、そのまま置いてきてしまって大変あわてるということがあります。そのときにもし罰せられる、あるいは牢屋に入れられるというようなことがあったら、これは大変毎日生活しにくいだろうなあとしみじみ思いました。  まず宮崎さんにお伺いしたいと思うんですけれども、四月の二十二日に衆議院の方の法務委員会でやはり参考人の方の御意見がありまして、その中で愛知県立大学の田中先生という方がこの法の乱用についていろいろ事例を述べられまして、「こういうことが起こる一つの原因は、不携帯罪に非常に重い刑罰を科している。捜査の必要上、重い刑罰についてはそれなりの対応をするというのも恐らく警察の立場でしょうから、もしこれが非常に軽微なものであればそれほどにする必要を警察も感じないのではないか。私は、どんなことがあってもこういうことだけはもう二度と起こしてほしくない。私は、捜査のために一生懸命努力された警察官を非難する気は毛頭ありませんで、こういう法条がつくられている限りあるいはやむを得ないのかなと思うわけです。」という意見を述べていらっしゃいます。  やはり法が非常に厳しいと、警察の方でも実地にいろいろこうするときに厳しくなってしまうということなんですけれども、この点については宮崎さんはどうお考えでしょうか。そして、今度の法改正で、もしこういうことがあるとすれば少しはいい方に向かうのかどうか、そのあたりお話しいただきたいんです。
  33. 宮崎繁樹

    ○参考人(宮崎繁樹君) 警察官といたしましても、重い罰則が定められていればそれに対して取り締まりが厳しくなるということは事実あると思います。国内法でも、たとえば軽犯罪法というようなものにつきましてはいろいろと規定があるのですけれども、実際に警察官がそれを取り上げるということはごく少ないと思います。今度の改定によりまして罰金刑を二十万円ということに定めているわけでございますけれども、確かに不携帯罪につきましては懲役刑がなくなるということは改善でございますが、二十万円以上の罰金というのはこれは非常に重い刑でございまして、これは逮捕することができる。たしか十万円以下ですとそれが在宅ということになると思うんですけれども、強制的に逮捕、取り締まりができるという問題だと思います。  法務省がつくっておられます関係資料を拝見いたしますと、やはり外国人登録法違反で多いのは切りかえのとき切りかえを忘れたということと、それから不携帯というのが圧倒的に多いわけでございますけれども、この場合に不携帯ということはもう過失なのでございますけれども、それを契機にしていろいろと取り調べをする、そういうことで乱用されてしまう。もしたとえば自動車の免許証につきましても、持っておりませんと処罰されますけれども、その場合に、そのことに関連して不携帯だから逮捕し警察に連れていって取り調べをするということはないわけでございます。  ですから、この不携帯につきましてこれをもっと軽微にしておけば、逮捕されることもございませんし、またそれに関連して警察官が、先ほど淘さんがおっしゃいましたように、関係のないことを根掘り葉掘り調べるということもなくなってくるということは確かであろうというふうに思います。
  34. 山中郁子

    ○山中郁子君 次に、河さんにお伺いいたしますけれども、いろいろ問題点についてこれまで政府にも、それからそれぞれの地域行政にも申し入れをされてきたと思います。それから、いろいろな事件が起きましたときに警察などの方にも抗議に行かれたりなすったことがあると思います。そういう場合に、相手方の対応について何らかの感想をお持ちになったことがありましたら、そしてそれが、あるいは皆さんに対する力を持っている側の意識といいますか、あり方に関係があるんではないかというような事例がありましたら、話していただきたいんですが。
  35. 河昌玉

    ○参考人(河昌玉君) お答えいたします。  この不携帯で処罰を受けている数ですけれども、全体としてこれまで五十万を超えるわけです。十四歳以下を除けばほとんどの在日朝鮮人がやられているというような計算、数になろうかと思います。そのうち約半数が不携帯罪ということでやられています。  私ども、こういう弾圧事件あるいは不当なそういう仕打ちがあるたびごとに関係当局に申し入れをいたします。特に警察当局の対応の仕方なんですけれども、これは現在も余り改善がないわけです。  その具体的な一例を申し上げますと、これは二年前、一九八〇年の四月十八日、小平にあります朝鮮大学の学生を集団的に待ち構えていて、つまり移動パトカーというものを配備しまして、集団的に登録証提示を求めた弾圧事件がありました。これは計画的なものであります。その周辺で何らかの事件があったとか、あるいは朝鮮大学の学生に対してそのような取り調べをする必要性が全くないにもかかわらず、移動パトカーを配備して、計画的に待ち構えていて、それも一人や二人じゃなくて、数十名に対して集団的に登録証不携帯を口実に弾圧を加えるという事件がございました。  この問題について、小平警察署に私ども抗議に参りました。ところが、当時は著名な法律家もいました。また、現地の社会党、共産党、労働組合の代表たちも一緒に参りましたけれども、警察は門から入れないんですね。非常な何というんですか高飛車に、もう会う必要はないんだというような対応の仕方でありました。  これは一例でありますけれども、私どもが抗議するのは非常に行き過ぎな事件の場合だけに限るわけですね。そうでない事件は、もう私どもそんなことをやっていたら毎日抗議しなきゃならぬですから、そういうわけにいかないので、典型的な人権侵犯事件、計画的な弾圧事件、これらに対しては私どもは抗議をいたします。現場の警察署の対応の仕方は、昔も今もほとんど余り変化がないというのが実情であろうかと思います。  そういうことで、日本の法律学者たちは、これは外国人登録法ではなくて、むしろ在日朝鮮人登録法というべきであるというふうに指摘をしたことがございます。衆議院また参議院において、この登録法の問題についてこんなに集中的に討議がなされ検討が加えられたのは、登録法施行以来初めてのことだと思います。そういうことで、今後この登録法を在日朝鮮人抑圧の手段として使うようなそういうことはやっぱり是正されるべきである。そのために私ども今後また日本当局にも申し入れしたいと思いますし、今後も運動を強化していきたいというふうに考えております。
  36. 中山千夏

    ○中山千夏君 先ほど山中さんのお話にも少しありましたけれども、国益とそれから治安、そしてもう片一方で人権というのが、いつもつっかえて問題にされるわけなんですけれども、確かに治安や国益はどうでもいいんだというのは余りにも大胆な言い方かもしれません。でも、その治安や国益というものを強調するときに、ある種の人たちだけに非常に制限が加えられる。差別が加えられる。たとえば外国人に対して非常に重い制限を加えておいて、それで国益や治安を守ろうとするというのは、非常にこれは誤っている考えだと私は思いますし、世界的にもとてもこういう法律を持っていることは恥ずかしいことなのではないかと思うんですが、宮崎さんはいろいろ外国の事情などもごらんになっていらして、どうお考えでしょうか。
  37. 宮崎繁樹

    ○参考人(宮崎繁樹君) 確かに、現在の人類の社会は国家というのを形成しておりますので、国家というものを単位とした現在の社会においては、国家の利益というものを無視するわけにはいかないかと思います。しかし、基本的には、人間がどこにいようともどこの人種であろうとも、幸福に生活していけるということが基本になるべきものでございまして、それを制約するためにはそれだけの合理的な理由がなければならないと思います。国益、治安というのもそれ自体で存在意義があるのではなくて、その国家の中に住んでいる人たちが迷惑を受けない、あるいはより幸福を維持できるために必要だから、そういう国益とか治安ということが出てくるのだというふうに思います。  そういうことを考えました場合に、いま中山先生からお話がございましたように、一部の人に対して制限を課するという場合には、さらにそれだけの合理的な理由がなければならない。たとえば犯罪人が生じたという場合に、それに対して刑罰を科するということも必要になるわけですけれども、犯罪人であったからといってその人権を無視してはならないわけで、その場合にやはりその人を含む全体としての国民といいますか、その地域に住んでいる人たちの利益ということと、犯罪人の人権を制約する必要度といいますか、そういう合理性というものをてんびんにかけなければならないというふうに思うわけでございます。  そういう場合に、やはり世界的な水準といいますか、そういうことが絶えず念頭に置かるべきでございまして、国際人権規約とか世界人権宣言というのは、その最小の人と国家が守るべき基準あるいはそれに基づいた法制度を定めているわけでございますし、文明諸国がとっております制度に照らして、もし日本がそれ以上に特定の人に対して制限を課するとすれば、日本国家にとってそれが必要な合理的な理由が明らかにされなければならないと思うわけでございます。  私も短い期間外国で生活をしたのでございますけれども、その場合に、市民生活としてそこの国の人たちと差別を受けたという感じはそれほど持たないわけでございまして、日本においてだけ外国人が日本人と違って指紋を何回もとらなければならない、あるいは常時外国人登録証を持ち歩かなければならないということを合理化する根拠はないのではないだろうか。少なくとも現在文明諸国、先進諸国におきましては、市民生活についてはその国の国民と同じように近づけて取り扱うという趨勢になってきているわけでございますので、日本としてもやはりそういう考え方を基本に据えて、外国人に対して処遇を考えていくべきであるというふうに思います。
  38. 中山千夏

    ○中山千夏君 先ほど河さんの方から、在日朝鮮人の歴史的な背景というのを伺いました。これはやはり四月の衆院の法務委員会で、参考人の方々の中でそういう点に触れられているところがあります。  大阪市の生野区長山崎さんは、   当区におきます外国人の登録人員でございますが、約三万九千人で、全国の市区町村中では最も多く、生野区人口の約二二%、これは四・五人に一人となっているわけでございます。なぜ外国人の方が生野区に多く住んでおられるかということでございますが、大正年間に、いま申しました平野川の改修工事が行われ、韓国、朝鮮人の多くの人たちがこの工事に従事され、改修後もこの町に住まわれることになったということが大きな理由の一つであると聞いております。と証言していらっしゃいますし、それから尾崎弁護士が、   在日朝鮮人というのは、御存じのように、長い日本の植民地支配の中で、いろいろな形で日本に来られた方、強制連行された方々とその子孫でございまして、本来はその多くの人はかって日本人であった。それが第二次世界大戦の終わった結果として外国人になったという方々でございまして、そうした歴史的な事実を踏まえるならば、とりわけ日本国民として差別をすべき理由は全然ございません。と、こんなふうにおっしゃっています。  これは河さんがさつきお話になったことの趣旨と大体同じことだと思うのですけれども、先ほど山中さんが最後に御質問になった点が少しお答えが足りなかったように思いますので、重ねてそこを聞かせていただきたいんですが、やはりこういう在日朝鮮人の方たちの状況、歴史的な背景というものを、日本人はこれから子々孫々知っていなければいけないだろうと思うわけです。ところが、教科書の検定の中で、そういう事実がだんだん曲げられると言ってしまっては強過ぎるかもしれませんけれども、薄められていって、歴史の中からほとんど消されていこうとしている。そういう動きがいま出てきています。  そういうことになりますと、いまの状態でさえ外登法の改正がなかなか皆さんが指摘なすったような点で進まないわけですよね。そこで、その歴史的な背景などが消し去られてしまったら、これはますます法改正にとってもよい方向にはいかないのではないかという心配を私は持っています。教科書の問題について、日本の教科書の問題、教科書の中の歴史記述の問題について、河さん、御感想があればこれを機会に述べていただきたい。  これを最後の質問にしたいと思います。
  39. 河昌玉

    ○参考人(河昌玉君) 先ほど時間がないということでお答えできなかったわけですが、私どもと日本の著名な法律家あるいは学者などと一緒になって、強制連行の真相調査というものを沖繩、九州、東北、北海道などに数年にわたって行ったことがございます。  私もその調査団の一員として共同調査をやりました。加わって各地に一緒に行きましたけれども、そこで感じたことは、在日朝鮮人の強制連行の歴史ですね。これはその事実がほとんど伝えられていないということでした。県の歴史を本にした、そういうのもございますけれども、在日朝鮮人の強制連行の歴史、在日朝鮮人がどのように犠牲になったか、そういう問題がたくさんございますけれども、そういう記述はありませんでした。  特に、在日朝鮮人も広島、長崎で原爆でたくさん犠牲になっております。記念館にも行ってみました。ところが、在日朝鮮人が強制連行で来て、そして原爆に遭って非常に多くの人が犠牲になったという記述はないわけです。最近、教科書の問題が問題になっていますけれども、在日朝鮮人問題、つまり過去の朝鮮に対する植民地支配、その歴史については、一貫してそれを覆い隠そうということが故意にやられてきている。それが今日、政治の右傾化とかいろいろなことが言われていますが、教科書の検定問題でそこに指摘された若干の、いわゆる植民地支配当時のそういう問題について指摘がありますね。それをも書きかえて、つまり侵略戦争、侵略したそういう歴史については跡形もないようにしよう、これは非常に危険なことだと思います。  在日朝鮮人の歴史的事情、つまり朝鮮植民地の問題を覆い隠して朝日両国人民の真の友好関係は築かれないと思います。そういうことになれば、アジアの平和も実際は実現しないのではないか。そういう意味において、やっぱり歴史的なこれは.事実ですから、きちんと正確にずっと後世にも伝えて、朝日両国民の真の友好関係、その上に立ったいわゆる平和の関係を築き発展さしていくべきではないか。  そういう意味において、今回、外国人登録法が在日朝鮮人にとっていかにひどい法律であるかということがいろいろな角度で検討されましたこの機会に、ぜひ日本当局の在日朝鮮人政策そのものがやっぱり改善されるべきではないか、その問題と教科書の問題は、本質的にはネックは同じところがら来ているのではないか、そういうことを痛切に感じます。
  40. 中山千夏

    ○中山千夏君 どうもありがとうございました。
  41. 鈴木一弘

    ○委員長(鈴木一弘君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。心から御礼を申し上げます。  午前はこの程度とし、午後四時まで休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ―――――・―――――    午後四時四分開会
  42. 鈴木一弘

    ○委員長(鈴木一弘君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  外国人登録法の一部を改正する法律案を議題とし質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  43. 小平芳平

    ○小平芳平君 初めに、インドシナ難民について若干お尋ねをします。  ことしの春、当委員会でインドシナ難民の主に定住センターについてお尋ねをいたしましたが、その後七月には行管から「難民行政監察結果に基づく勧告」が各省に出ているようであります。この勧告は難民の問題全体にわたっての勧告でありますが、ごく要点を挙げて、法務省としてはこの勧告をどう受けとめておられますか、お尋ねしたい。
  44. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) この勧告につきましてはいろんな省にわたっておりまして、恐らく内閣がお答えする一番ふさわしいところじゃないかと思います。しかし、この難民問題に関します勧告につきましては法務省に関係するところもあるわけでございます。  具体的には、私どもは大村に難民一時レセプションセンターというものを持って運営いたしております。このセンターの目的は、いわゆるボートピープルが日本に到着しましたときに、まずここに入ってもらって、いろんな健康診断でございますとか、その他の調査を行った上で民間の施設に移っていただく、こういう手順になっているわけでございます。この大村の一時レセプションセンターにつきましてその運営を充実させよう、そういう趣旨のことが勧告の中に盛り込まれているわけでございます。私どもこれを受けとめまして、できるだけ健康診断その他の調査がスムーズに、円滑にいきますように必要な手配を行っていきたい、こう考差ているわけでございます。  そのほかに、今度の勧告、これは法務省に直接関係ございませんけれども、一番眼目として挙げられましたのがボートピープルのための長期滞在施設に関する点でございます。これはただいま申し上げましたとおり、ボートピープルが一時レセプションセンターから民間の施設に移されるわけでございますが、これはカリタスであるとか日赤等が経営していらっしゃるわけでございますが、この民間の施設が現在ほとんど満杯でございます。いっぱいでございます。しかも、このボートピープルの方々が希望する第三国、たとえばアメリカ、カナダ、豪州等へ移る可能性というのは非常に少なくなってきている。したがって、何らかのこういう長期に滞在することになったボートピープルのための施設を政府がつくるべきではないかという趣旨のことがこの勧告の中に入っております。これが一番の大きな眼目ではないかと私ども考えております。
  45. 小平芳平

    ○小平芳平君 その問題は法務省は関係がないわけですか。
  46. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) 現在この問題につきましては、直接の主務官庁と申しますか、それは外務省がやったらどうかということを行管の勧告の中で述べられておりまして、外務省も加わり、それからさらに内閣の方のインドシナ難民対策連絡調整会議というのがございますが、内閣官房も加わってこの勧告に沿った、これを実施に移すためのいろんな準備を進めているところでございます。  法務省といたしましては、これには直接は関係ございませんが、しかしこれに非常に関心がございます。と申しますのは、私どもの方で、先ほど御説明申し上げましたとおり、一時レセプションセンターでいろいろなチェック、健康診断であるとか身元調査とか、そういうものを済ませた後、民間の施設に移ってもらうわけですけれども、民間の施設がもしいっぱいでございますと移すことができないわけです。したがって、今度のこういう行管の勧告で出ました長期滞在のための施設がもし設けられましたならば、私どもといたしましても非常にこれは助かるということで、非常に大きな関心のあったところでございます。
  47. 坂田道太

    ○国務大臣(坂田道太君) 実はこの七月六日の閣議におきまして、中曽根行管庁長官からこの「難民行政監察結果に基づく勧告」について発言がございました。  その要旨は、一つには、昨年二倍のぺースでインドシナ難民が上陸しておるが、最近第三国への出国が困難となってきておるので、わが国に長期滞在する難民が増加しておる、また受け入れ施設が民間団体で収容人員等で受け入れの限界にきている状況である、このため外務省を初めとする関係各省庁の協力のもとで長期滞在施設を設置するということ。それから二つには、インドシナ難民以外の亡命者等についても、亡命直後の生活援護体制を整備するというような趣旨でございました。  これに対しまして私からも発言をいたしまして、この問題は非常に重要な問題であるというふうに考える。インドシナ難民を取り巻く環境というものはきわめて厳しいわけでございますが、わが国の難民対策を充実させていくということがぜひとも必要であると自分は考える。いまお話しのございました長期滞在難民の施設は必要であるというふうに、積極的に賛成の意を表明をいたしたわけでございます。これを機会に、わが法務省においても大村の難民一時レセプションセンターの運営の充実を期したいというふうに申したわけでございます。これは日本が国際的な視点に立って、そうして国際的な責任をやはり果たすというそういうことがぜひ必要だ。そういう総合的な安全保障の立場からもぜひ積極的にやりたい、やるべきであるという意味のことを申し上げた次第でございます。
  48. 小平芳平

    ○小平芳平君 確かに、宗教団体等が経営している一時滞在施設は長期滞在者がふえる一方でいろんな問題が起きているということ。それで、実態としても行管が指摘しているとおりだと思いますが、職員の負担がきわめて重くなってきているとか、あるいは付近にももともと人間が住んでおりますから、地域住民との対応、それから施設の管理運営上等の問題、まだそのほかにも一時働きに行くとか、そのことがいいか悪いかとか、いろんな問題が起きておりまして、そこで局長が言われましたように、大村の一時レセプションセンターからの受け入れ先がなくなるという事態ですね、それがもう目に見えているんじゃないかというような現在の状況。  それで、法務大臣からは重大な関心があり積極的に施策を進めたいという御趣旨の御発言がありましたけれども、とにかくその所管が決まらないというのは一番困るんですね、所管が決まってないということ。法務省はそれほど熱心にやる必要がないわけですか。外務省ないし内閣へ第一次的には任しておけばいいというお考えなんでしょうか。
  49. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) この行管の勧告では、主務官庁として外務省が当たってはどうかということを勧めていらっしゃるわけです。それを受けまして、外務省としても現在これを引き受けるということになって、先ほど申し上げましたけれども、内閣その他の関係機関も協力してすでに具体的な準備に入っていると、こういうことになっております。
  50. 小平芳平

    ○小平芳平君 この指摘されているような事態が起きないことを望んで、次へ参ります。  次に、無国籍の問題につきましても、この法務委員会でも何回か論議されているようでありますが、無国籍者は沖繩で実態調査をなさったかどうか。その結果はどうか。  それから、本土でも五十六年度に着手したいというふうな答弁をしておられますが、その結果は出ましたかどうか。  それから、国籍法の改正について法制審議会で審議中というふうに伺っておりますが、その結論はいつごろになりますか。  以上の点をお伺いしたい。
  51. 中島一郎

    ○政府委員(中島一郎君) いわゆる無国籍者全般ということではないわけでありますけれども、無国籍児ということで問題になったことがございます。特に、沖繩における無国籍児というものが各方面で問題になったことがございまして、民事局といたしましては国籍法の改正というようなことも考えておりましたものですから、その資料の一部にもということもありまして、沖繩における実態調査というようなものをやったことがございます。  ただ、無国籍と申しましても、その発生する原因と申しましょうか、事情はさまざまでございまして、あるいは国籍法の改正によって解消できるものもありますれば、国籍法の改正によっては解消できないというような無国籍児もあるわけでありまして、そういった実態を踏まえて国籍法の改正をも考えてまいりたいということを思っております。  国籍法の改正でございますけれども、この点につきましては、御承知のように昨年の十月に法務大臣から法制審議会に対しまして、国籍法を改正する必要があるとすればその要綱を示されたいという諮問が出されておるわけでございます。この諮問に基づきまして、法制審議会では現在国籍法部会というのを設けて検討しておられるわけでございまして、私どもはできるだけ早い時期にその答申をいただきたいということでお願いをしておるわけでありますけれども、審議会もそういうことで一生懸命やっていただいておりますけれども、現在のところ、はっきりといつ答申をいただけるかということについては申し上げられないというような実態でございます。
  52. 小平芳平

    ○小平芳平君 その点につきまして、婦人に対する差別の撤廃に関する条約でありますか、これとの関連で奥野前法務大臣は、再来年の春といいますから要するに来年の春ということですが、国会に提出する考えで進めているかのように答弁しておられます。そこにいろんなやりとりが載っておりますが、この点については、いま局長からは、法制審議会の結論は、審議中であるという以外の答弁はありませんでしたが、大体奥野さんの法務大臣のときでも再来年の春というふうに時期を示しておりますが、この点はいかがでしょうか。
  53. 中島一郎

    政府委員(中島一郎君) 確かに国会においてそういう御質問、御答弁というようないきさつもございました。私どもとしては、審議会に対してそういういきさつを十分に御説明をいたしまして、私どもとすれば来年の国会にも提出するというぐらいの意気込みでやりたいのだと、こういうことを申し上げて、早期に答申をいただくようにお願いをいたしております。 .-  ただ、審議会に審議をお願いしておるということでありますので、いつまでと確定的な日を切ってお願いをするということもいかがであろうかということがございますので、それで先ほどから審議会の結論がいついただけるかということははっきりとは申し上げられないということを申し上げておるわけでありますけれども、その事情は審議会にも十分御説明をいたしまして、一日も早く答申をいただきたいということは申し上げてあるところでございます。
  54. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、外登法について直接関係するわけですが、国際人権規約への加入等の状況に適切に対応するためというふうに提案理由の説明をしておられますが、午前中の参考人の御意見では、国際人権規約に反する日本の制度であるというような御指摘もあったんですが、法務省としてのお考えは、この提案理由説明で述べようとしていることはどういうことでありますか。
  55. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) まず、冒頭お断りいたしたいのは、私どもといたしましては出入国管理法、それから外国人登録法いずれにつきましても国際人権規約には一切抵触しないというふうに考えているわけでございます。昭和五十四年、いまから三年前にわが国はこの人権規約に加入して、これがわが国について効力を発生したわけでございますが、その加入の段階で十分検討いたしまして、ただいま申し上げました二つの法律のいずれの条文もA規約、B規約のいずれにも抵触しないという、そういう結論に達しているわけでございます。  もちろん、けさの参考人の方々は別の御意見を持っていらっしゃるようでございますけれども、しかし、たとえばB規約の七条であれ十二条、十四条、二十六条、いろいろな条文ございますが、基本的には内外人の法律の前における平等ということがこのB規約で貫かれておるわけでございます。わが国のみならず、いろんな各国で外国人の入国、滞在についての制度を持っておりますが、そういう入国、滞在を認めるか認めないか、あるいはいかなる条件で認めるかということはこれは主権の作用でございまして、したがってこれは各国に任されている、各国の裁量にゆだねられている、こういうことでございます。したがいまして、その範囲内で合理的に運営されている制度はいかなる意味においても人権規約の規定には相反しないと、こういうことになっておるわけでございます。  それじゃ、しからばなぜ私どもが提案理由説明の中で人権規約のことに触れたかということでございますが、もちろん私どもは今度の改正案はそういうことで人権規約に違反する点は全くないと考えております。しかし、わが国が戦後いわゆる混乱期を経まして、その後非常な経済成長、それから国際化の時代を迎えて、その過程でこの人権規約にも加入したし、それから難民条約にも入りました。こういう状況、時代の趨勢というものは、やはりわが国に在留する外国人の負担の軽減と申しますか、処遇について十分意識させる、そういうものがあったわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、いま申し上げたようなそういう時代の流れ、趨勢、こういうものに今度の改正案が沿ったものであるかどうかをいま一度念のために確認した、そういう意味でございまして、私どもはそういうものに沿ったものであるというふうに確信して今度お諮りした次第でございます。
  56. 小平芳平

    ○小平芳平君 今回の改正は、要するに外国人登録についての手続面で三年が五年とか、十四歳が十六歳とか、あるいは指紋が四回が三回とかいうふうな改正、要するに手続面の変化はありますけれども、果たしていま局長が御説明のような抜本改正になっているかどうか。従来から、この外登法にしろ入管法にしろ、抜本的に改めて新しい流れに沿っていくというふうな趣旨にも考えられておりましたが、そういう点はいかがでしょうか。
  57. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) 今度お諮りしております改正案が、抜本的な改正案であるかどうかということはこれはいろいろ評価があろうかと思います。しかし、私どもは今度の改正案をつくるに際しましては、外国人登録法の基本問題を含めて検討をいたしました。  その基本問題というのは何であるかと申しますと、具体的にはたとえば指紋押捺制度、登録証明書の常時携帯義務、それから各種の義務年齢を何歳まで引き上げられるか、いろんなそういう問題がございます。私どもは、戦後わが国の経済成長、それから国際化、こういう時代の中で、できるだけ外国人の負担の軽減を図りたいということを考えてまいったのでございますけれども、他方におきまして、わが国を取り巻く情勢として不法入国者というものが決して後を絶っていない、不法残留者というものもふえている、こういう状況でございます。そこで、慎重に検討しました結果、現行外国人登録制度の基本目的、基盤、こういうものは維持しながら、その枠内でできるだけ外国人に対する緩和を図りたい、こういうことになったわけでございます。  したがいまして、その意味で、たとえば指紋押捺制度はどうしても残す必要がございますけれども、押捺の個数は減らす、それから常時携帯義務、これはどうしても外すことはできませんけれども、しかし年齢的に従来十四歳以上の人はこの義務をしょっていたものを十六歳に引き上げる、さらに登録の確認申請期間につきまして、従来三年であったものを五年に延ばす等々、それから罰則の整備もいたしました。こういうことを通じまして、外国人の負担の軽減緩和を図るということにしたわけでございます。その意味で私どもは、先ほど申し上げましたように、登録制度の基盤は維持するけれども、基本問題にまでさかのぼって検討した結果のものを国会にお諮りしている、こういうことでございます。
  58. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがいまして、いま局長の説明なさることは、これに対する別の意見も午前中の参考人の御意見にあったわけです。そういうこと  は十分承知の上で答弁しておられると思いますが、そういう意味から言うと指紋押捺、常時携帯、そういうことに対する批判がある。批判はあるけれども、要するに今回の改正で十分対応できる、また今回の改正で当分改正しない。その欠陥は直したし、当分これでいかれるというふうなお考えなんでしょうか。
  59. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) 先ほど小平委員の御質問にお答えして申し上げたのは、私どもとしては、現下の情勢におきまして、現在の外国人登録制度についてどういう点についてどのくらい改めることができるかということについて基本問題を含めて検討したということを申し上げたわけです。今度お諮りしております改正案は、その結果、私どもが最善の案と考えているものをお諮りした、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  60. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、九十日以内の短期滞在者は新規登録をすることにはならないが、登録の義務が免除されるともなっていないようでありますが、この短期滞在者の扱いについて御質問したい。
  61. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) ただいま小平委員が御指摘になりましたように、九十日以内のいわゆる短期滞在者につきましては登録の義務がないわけでございます。それじゃ、九十日以内の滞在者が全然新規登録をやっていないかということでございますが、実際には若干あるようでございます。統計を引いてまことに恐縮ですが、昭和五十六年、昨年に新規入国しました外国人は全部で百三十三万おりました。このうちいわゆる新規登録をした者は六万七千名、約五%でございます。この六万七千名の中でも、約四分の一は九十日以内の短期滞在者であったと考えております。  そういう人たちはなぜ新規登録をしたのかといいますと、私どもの推定でございますけれども、九十日以上多分滞在する予定であった人たち、あるいは商取引の結果、登録済証明書の発給を受ける必要があったというようなそういう事情があったとか、そういうことではないかと思うのであります。いずれにいたしましても非常に少数の人、短期滞在者のうちの少数の人が新規登録を行ったという事実はあるようでございます。その場合、私どもとしては登録の申請があったときにはこれを受け付けることになっているわけです。
  62. 小平芳平

    ○小平芳平君 不法入国者、不法残留者等の申請義務についてはいかがですか。
  63. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) 外国人登録法の第三条では、外国人が本邦に入ったときには九十日以上滞在する場合には登録の義務があると、こういうふうに規定されておるわけです。本邦に入ったというのはいかなる意味か、これは適法に入った人たちだけに限られるのか、それとも不法に入った人もその中に入るのかということでございますけれども、私どもといたしましてはこれはすべての人、つまり不法入国者も含んだものであるというふうに解釈しております。したがいまして、不法入国者といえども登録義務はあるというふうに考えております。
  64. 小平芳平

    ○小平芳平君 不法残留が明らかになった時点で、出入国管理法による規制下に置かれると思います。あなたは不法に入国して不法に残留しているんですよということになった段階で法の規制のもとに置かれるわけでありますので、登録しなさいといっても、これは二重の手続になるのではないですか。
  65. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) 不法入国者といえども、九十日以上滞在する場合には登録義務があるということでございますが、小平委員がおっしゃいましたとおり、そういう登録いたしますと当然不法入国の事実がわかってしまいます。したがって、実際問題としては、不法入国者は登録はしないということでございます。したがって、不法入国者が登録義務を怠って、そしてそのまま日本に潜在している、こういうかっこう、形になっているかと思います。
  66. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまの御説明によりまして、実際問題としては不法入国者は登録をしておらないし、また登録申請の義務があるというたてまえであって、実際には登録をさせているわけではないと。それがわかった場合ですが、わかった場合でも登録をさせているわけではないということになるんでしょうか。
  67. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) お答え申し上げます。  不法入国者あるいは不法残留者、いずれも、これは御案内のとおり出入国管理及び難民認定法上犯罪ということにされておるわけでございます。したがって、ただいま大鷹局長の答弁いたしましたように、みずから自己の犯罪を積極的に申告するということがなかなか履行しがたいという関係がありまして、多くの不法入国者、不法残留者がわが国に潜在しておるということを申し上げたわけでございます。  しかし、たとえば本人が自発的に出頭申告した場合、これは刑事法上は自首ということになる場合が多いわけでございますが、その他たとえば警察官の職務質問によって不法入国の事実あるいは不法残留の事実が判明したというような場合には、一方において刑事上の手続が進行いたしますと同時に、直ちに住居地所轄の市区町村の窓口に出頭して新規登録をするようにという指導をいたしまして登録をさしておるというのが現状でございます。
  68. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、罰則の改正について御質問いたします。  この罰則の改正の中でも、特に午前中もるるお話がありました不携帯罪、不提示罪についてでありますが、不携帯罪が二十万円以下の罰金になるということでありますが、これは旅券等の不携帯罪、不提示罪に比べて著しく刑罰が重いということでありますか。
  69. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 今回御提案申し上げております外国人登録法の改正案のうちで、罰則関係につきましては相当程度の中身を持った改正案を御提案申し上げておるわけでございますが、その中の一つに、ただいま御指摘の不携帯罪についての法定刑の問題がございます。現行法では一年以下の懲役、禁錮または三万円以下の罰金ということになっておるわけでございますが、今回の改正法案におきましては罰金刑一本で対処させていただきたいということで、その罰金の最高限度額を二十万円に引き上げるという案を御提案申し上げておるわけでございます。  なぜ二十万円以下の罰金という法定刑になっておるかということでございますが、この点は大きく分けて三つの理由があるわけでございます。現行の法定刑の最高限度額三万円でございますが、これはわが国について講和条約が発効いたしました日が現行の外国人登録法の施行日でございますが、それからすでに三十年以上経過しておるわけでございます。その間の物価あるいは賃金、そういうもろもろの推移というものを勘案いたしまして、昭和二十七年四月当時の三万円以下というのが現行では二十万円以下とするのが相当であるというふうに考えた理由が一つ。それから第二の点は、ただいま先生御指摘になりました出入国管理法上の旅券の不携帯罪の法定刑、これが現行法では十万円以下の罰金ということになっておるわけでございますが、それとのバランスということを考えたわけでございます。御承知のとおり、出入国管理法上旅券の携帯義務を課せられておる外国人は九十日未満、三カ月未満わが国に滞在するにすぎない、いわば短期滞在者ということになっておるわけでございます。一方において、外国人登録証明書を携帯することを義務づけられております外国人というのは、九十日を超えてわが国に滞在する長期在留外国人という.ことになるわけでございます。そういたしますと、わが国との結びつきは前者の場合に比較いたしまして後者の場合にはより一層深いわけでございまして、そういう点から、旅券というのはこれは一種の身分証明書でございまして、身分関係を明確ならしめる公的な証明書でございますが、外国人登録証明書は身分関係並びに居住関係、これを明確ならしめて在留外国人の公正な管理に資する目的の公的な証明書でございますので、そういう両者の比較検討の上から二十万円以下の罰金というふうにさせていただいておるわけでございます。  それから第三の理由は、昨年の通常国会に改正法案を御提案申し上げました出入国管理令の一部を改正する法律でございますが、本年一月一日から施行されておるわけでございますが、この法案におきまして、従来一万円であった罰金は十万円に、それから三万円以下であった罰金は二十万円以下に、それから十万円以下であった罰金は三十万円以下にというふうな改正法案を御提案申し上げまして、御承認を得て本年の一月一日から施行させていただいておるわけでございますが、それとの比較権衡という点も勘案いたしまして、このように改めさせていただいて御提案申し上げさせていただいておるわけでございます。
  70. 小平芳平

    ○小平芳平君 きょうの委員会は大分夜までかかるような予定でありまして、私も短い時間で質疑を終わりたいと思ってやっておりますので、なるべく簡単に御答弁を願いたい。以下、質問点がまだ数が多いんですけれども、簡単に御答弁をいただきたい。  私がいま申し上げたのは、登録証明書の不携帯罪、登録証明書を持っていなかった。よく言われるように、洋服を取りかえたとか、ちょっとうちへ置いて出てきたとか、あるいは午前中のお話で、外国人ならば運転免許証を取るときにちゃんと点検が済んでいるはずだのに追及されるとか、いろんな例を挙げておられましたが、いかにも不携帯だけで二十万円以下の罰金というのもまた重いんではないか。あるいは旅券等の不携帯罪が十万円以下の罰金、これに対して片方は十万円、片方は二十万円となった場合に、それはわが国との関係において旅券の場合は関係が薄いし、外国人登録の場合は関係が深いんだからと、いま御説明がありましたが、そういうことはありませんか。
  71. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 旅券の不携帯罪の法定刑を今回二十万円以下の罰金というふうに御提案申し上げておるわけでございますが、これはあくまでも二十万円というのは法定刑の最高限度を定めた規定でございますので、――ただいま旅券と申し上げたようでございますが、外国人登録証明書の不携帯でございます。この法定刑の範囲内において不携帯という違反に至った経緯あるいは違反の態様、犯情その他個人的な情状という各事案事案に応じた適正な量刑が裁判所によって科されるであろうというふうに私どもは考えておるわけでございます。  それからもう一点、簡単に申し上げますと、二十万円ということにさせていただきました一つの根拠として、調査いたしました結果、最近十年間で外国人登録証明書の不携帯罪だけで懲役刑が裁判所によって選択された事例が六件ございます。今後はこの種の案件につきましてもすべて罰金刑で対応していかなければいかぬということになりますので、そういう場合をも考慮いたしまして、法定刑の最高限度を二十万円というふうにさしていただいておるわけでございます。
  72. 小平芳平

    ○小平芳平君 それが刑罰が重過ぎはしないかと言っているわけですが、いかがですか。たとえ六件にしても、不携帯だけで六件が懲役刑になっているということは重過ぎやしないか。
  73. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 数多くの外国人登録法違反の事案、これは起訴される事案というものは、むしろ不起訴になる、起訴されない事案よりも少ないわけでございますので、しかも起訴された事案の中でも大半の事件はは罰金刑を従来科されておったということでございまして、この十年間の間六件という数は、パーセントにいたしますと〇コンマ以下のごくわずかな事例でございます。いろいろ犯行に至った経緯それから犯情、個人的な情状、そういうものを裁判所が適正に勘案をされて、適正な量刑を下されたものというふうに考えておるわけでございます。  ちょっとこの六件の中身を見てみますと、前科が非常に多いというような事案が一つの類型、それからもう一つの類型は、他の犯罪を犯すために、外国人登録証明書を携帯しておれば、つかまった場合に直ちに身分関係がばれてしまうというようなことで、故意に登録証明書を携帯しないで他の犯罪を犯したというような、犯情としては好ましくない事案に限って、懲役刑の選択が過去においてはなされておったようでございます。
  74. 小平芳平

    ○小平芳平君 局長も、午前中からの参考人の御意見もよく伺っていたので、これ以上繰り返しませんけれども、そういう意見もあるわけです。  次に、代理義務者の虚偽申請についての処罰規定、これについて簡単に御説明をいただきたい。
  75. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 今回の改正法案の中身の一つといたしまして、代理人による虚偽申請罪というものを新設させていただきたいと御提案申し上げておるわけでございます。現行法のもとでは、外国人登録法十五条に定められております代理義務者が虚偽申請罪を犯した場合に、これを処罰する旨の明文の規定はございません。  ところで、私どもが調査いたしました結果、昭和五十五年の一月から十二月までの間の例をとりますと、代理人の虚偽申請があったと認められる事案が三十六件報告されておるわけでございます。これは、大半の事案が不法入国者の子弟などに係る案件でございます。不法入国者同士が結婚をした、その間に子供が生まれたというような場合に、真正の名前で外国人登録をするということになりますと不法入国の事案が発覚するというようなことから、すでに適法に在留しておる外国人の間に生まれた子供ということで虚偽の申請が行われるというような事案が、このうちの大半であろうというふうに考えるわけでございます。  ところで、虚偽申請と申します事案は、不申請というような事案が消極的に申請を行わないという形態でありますのと比較いたしまして、この虚偽申請というのは積極的に虚偽の事項を申請するということから、在留外国人の居住関係、身分関係を明確にすることを目的とする外国人登録制度の根幹を揺さぶる非常に遺憾な事案である。要するに、外国人登録秩序を保持する上からは、ちょっと軽視できない事案であるというふうに考えまして、この代理人による虚偽申請罪の新設をお願い申し上げておるわけでございます。
  76. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう一度先ほどの登録証の問題に戻りますが、登録証の提示を求めて相手が提示しなかった場合は、不携帯ですか不提示ですか。
  77. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 外国人登録証明書を携帯しているにもかかわらず、法律で定められた警察官とか、あるいは入国警備官とか、そういう人たちから提示を求められて提示しないということになりますと、不提示罪ということになるわけでございます。
  78. 小平芳平

    ○小平芳平君 持っているか、持っていないかわからない場合は、どういうふうにして確認なさるんですか。
  79. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 通常、任意捜査の段階におきましては、捜査の過程において本人の身分関係、それからなぜ要求を受けてもこの外国人登録証明書を提示しないのかというようなことを、通常の場合は一線の警察官が相手方の外国人に対していろいろ質問するわけでございます。その間に、いま申し上げました外国人登録証明書を携帯しておるか携帯しておらないかということが判明する事案が通常でございます。
  80. 小平芳平

    ○小平芳平君 本当に持っているのか、持っているけれども提示しないのか、あるいは持っていないのか、それを確かめるには結局所持品検査をする、あるいは強制捜査をするということ以外確かめられなくなるんじゃないですか。
  81. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) ただいま申し上げましたように、本人にいろいろ提示をしない理由、それから本人の身分関係、そういう事実関係を確認して事案の内容を明らかにする、要するに外国人登録証明書を携帯しているのか、いないのかということを明らかにするというのが、通常の捜査の方法であろうと考えられるわけでございます。またそのほかに、本人の住居が本人の供述によって明らかになったというようなことになれば、また住居地の家族に電話をして確かめて、外国人登録証明書が家に置いてないかどうか、本人が持っておるかどうかというような側面的な方法で事実関係を明らかにするということも可能だろうと考えられるわけでございます。
  82. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、登録証の不携帯者に対しまして、任意捜査と、いつでも強制捜査できる、逮捕できるということをたてまえにしておいて、そこでしかし任意捜査でもという任意捜査のことをいま御説明になっておられますが、その辺の立て分けはどうなさっているんですか。
  83. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 実は、ただいまの先生の御質問は、本日の午前中宮崎参考人が十万円以下の罰金であれば現行犯逮捕はできないのじゃないか、現行犯逮捕ができるように逮捕の要件を備えるために二十万円以下の罰金に法定刑を引き上げておるのじゃないかというような御意見があったわけでございますが、この点は事実に相違しております。現行の刑事訴訟法の規定によりますと、現行犯逮捕の場合であれ、逮捕状による通常逮捕の場合であれ、八千円以下の罰金が法定刑として定められておる事案につきましては、住居が不定であるとか相手方が逃走するおそれがあるとか、任意出頭の呼び出しに応じないとか、そういう特殊例外的な場合を除いて逮捕できないということになっております。これはあくまでも八千円以下の罰金が法定刑として定められておる場合でございますので、現行法でございましても三万円以下の罰金ということになっておりますので、逮捕の要件の上では現行法もただいま御提案申し上げております改正法案も差異は一切ございません。  それから、先生の後段の御質問でございますが、不携帯事案について見ますと、強制捜査に進展する事案というのはごくまれでございまして、大半の事案がいわゆる任意捜査で行われておる、また場合によっては、任意捜査までいかないで始末書あるいは弁明書というようなものを本人から徴しまして、本人からもう二度と外国人登録証明書の不携帯というようなことをしないように注意するというような注意を与えて、いわば説諭処分という形で済ましておる事案も多いというふうに承知しております。
  84. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまちょっと御説明がありました続きとしまして、登録証不携帯事犯について起訴、起訴猶予、一要するに類別に分けた調査がありますか。ありましたら御答弁いただきたい。
  85. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 実は、検察の行っております統計では外国人登録法違反という一本で統計の数字が出ております関係で、数多い外国人登録法の罰則のうち、不携帯罪のみについてどういう処理がなされておるかということは、全国的な統計はちょっと手元にございません。  ただ、私ども法案の中身をいろいろ検討いたしました段階で、全国で最も数多くの事件を処理されております東京地方検察庁におきまして昭和五十一年以降不携帯罪のみで送致あるいは送付された事件の処理結果がどういうふうになっておるかということを調査いたしました資料がございますので、これによってお答えさせていただきたいと思います。  たとえば昭和五十一年でございますと、不携帯罪のみで処理された事案が百八十八件で、略式命令請求いたしました件数が三十五件で、不起訴の件数が百一件ということになっております。昭和五十三年について見ますと、処理が百六十二件、略式命令請求が十四件、不起訴が九十六件ということになっております。昭和五十五年について見ますと、処理が百十六件、略式命令請求が二十七件、不起訴が八十八件ということになっておりまして、大体全体の件数の二〇%から三〇%程度が略式命令請求という形で罰金刑に処せられておるというふうに承知しておるわけでございます。
  86. 小平芳平

    ○小平芳平君 旅券の不携帯を理由としまして、いまのように略式あるいは不起訴というふうにな  ったわけですか。
  87. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 外国人登録証明書の不携帯罪のみで処理がなされておる事案でございます。通常この種の事案は、窃盗の犯人が登録証明書を持ってなかったとかいうように、他の犯罪と併合罪の関係で処理されるという事案が多いわけでございますが、そういう事案を調査いたしましても実態がよく判明いたしませんので、ただいまは外国人登録証明書の不携帯罪のみで処理された事案の調査結果を申し上げました。
  88. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちょっと私の質問が間違っておりまして、旅券の不携帯者はそういう略式命令を受けてないんじゃないですか。    〔委員長退席、理事円山雅也君着席〕 要するに、もっと軽いんじゃないですか。
  89. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) いま手元に資料がございませんが、旅券の不携帯罪ということで検察庁に送致される事案というのは、全体的に見て数がきわめて少ないということは事実でございます。
  90. 小平芳平

    ○小平芳平君 登録証の不携帯事案の起訴率、これは一般刑法犯の場合と比較してどういう結果が言えますか。
  91. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 全体的な犯罪の起訴、不起訴の比率、その中にそれと比較いたしました不携帯事案の起訴、不起訴の比率、これを比較した資料はただいま手元に置いておりませんが、一般的に申し上げますと、犯罪のうち刑法犯の起訴率よりは特別法犯の起訴率というのははるかに高いわけでございます。正確な数字ではございませんが、特別法犯の起訴率というのは最近数年間八〇%台で推移しておるのではないかというふうに記憶いたしておるわけでございます。  それと比較いたしますと、外国人登録証明書の不携帯事案という事案の中身は、きょうの午前中の参考人の陳述の中にもございましたように、過失を内容とする不携帯と、うっかりして忘れたというような事案が事案としては多いというようなことが大きな原因になりまして、そのほか外国人登録証明書は持っておらないけれども、大学の学生証とか、あるいは勤め先が発行しておる身分証明書とか、そういうのを持っておって身分関係の確定はある程度できるというような、そういう事案が多いというようなこともいろいろあります関係で、比較的不携帯罪の起訴率というものは、先ほどお答え申し上げましたように低いということが言えると思います。
  92. 小平芳平

    ○小平芳平君 前回の委員会で寺田委員からもいろいろ資料を提出してくれるように要請しておられましたが、まだ配付しておられませんが、特に難民関係のいろんな資料を要求しておられましたが、その資料とともに、いまの犯罪関係の、あるいは罰則関係の資料も、わかる範囲で御提出を願いたい。    〔理事円山雅也君退席、委員長着席〕
  93. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 調査できます範囲で御提出申し上げたいと思います。
  94. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、帰化について伺いますが、在日韓国人・朝鮮人の帰化はどのような状況になっておりますか。
  95. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) 帰化の問題につきましては、ちょっとただいま担当の者も出席しておりませんし、それから手元にも資料を持っておりません。
  96. 小平芳平

    ○小平芳平君 帰化申請の場合に、犯罪歴というものが大きな要件として取り上げられることと思いますが、そういう点について帰化の要件を外登法違反の事例によりまして左右されるのかどうかということを伺いたかったわけです。
  97. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) 外国人の帰化につきましては、永住の場合と同様に、素行が善良である、それから独立生計維持能力があると、こういうことが要件になってまいるわけでございます。  それでは、素行善良とはどういうことかということについては、犯罪歴があれば一応問題になります。ただ、ただいま御質問がありましたような登録証明書の不携帯で罰金刑に処せられた、重刑ではなくて罰金刑の程度のものでございました場合には、事案の中身に応じて判断されると、そういうことであろうと思います。
  98. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、ついうっかりして忘れていたというくらいのことで、将来帰化できないというようなことにはならないんでしょうね。
  99. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) ついうっかり登録証明書を携帯するのを忘れたというようなそういうケー久でございますと、先ほど當別當審議官からお答えしましたとおり、起訴にならない可能性の方が強いわけでございます。したがいまして、そういう場合には帰化の申請に際しても障害にはならないはずでございます。
  100. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、行政訴訟、外登法あるいは入管法関係の現在係争中の訴訟事件はどのくらいありますか。また、そのケースを説明していただきたい。
  101. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 行政訴訟の所管部局から直接調査の結果を聞き取っておりませんので、一般的なお答えになろうかと思いますが、ただいまお答え申し上げられることは、不法入国者あるいは不法残留者あるいは資格外活動者というような人たちが、退去強制手続が進められて退去強制令書が発付されるというような場合に、この退去強制令書の発付処分の取り消し、あるいは無効確認を求めて行政訴訟を提起されるということがあるわけでございます。あるいは正規に在留しておる外国人でございましても、在留期間の更新の申請をいたしまして、この在留期間の更新が認められないというような場合に、在留期間更新不許可処分の取り消し訴訟というようなものを提起される案件もあるわけでございます。  こういう出入国管理法上の法務大臣の裁決あるいは処分を対象とする行政訴訟で現在係属中のものは、大体三十件程度であろうというふうに承知しております。
  102. 小平芳平

    ○小平芳平君 たとえば、指紋の押捺をあくまで拒否すれば、これは体刑になり強制送還になるわけでしょう。
  103. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 指紋の押捺を拒否したために、それが出入国管理法二十四条に定める退去強制事由に当たって退去強制されたという事案は、現在までないというふうに承知しております。と申しますのは、現在の出入国管理法二十四条が定めております退去強制事由のうち、外国人登録に関する法令の規定に違反して退去強制事由に当たる者は、禁錮以上の刑に処せられて、しかも執行猶予の言い渡しを受けていない者、要するに禁錮以上の実刑に処せられた者に限るということでございますので、現在までただいま申し上げましたような事例はございません。
  104. 小平芳平

    ○小平芳平君 これで質問は終わりますが、局長が十分検討した改正案であるというふうに最初に言われましたけれども、なおかっ問題は非常に多い外登法であるというふうに私たちは考えております。  以上で終わります。
  105. 山中郁子

    ○山中郁子君 外登法の一部改正に際しまして質疑が行われて、衆議院から引き続いているわけですけれども、この質疑を通しましても、それからまた本日午前中、本委員会で行われました参考人の御意見を伺いましても、外登法の実際の運用の中でのやはり大変重要な問題があるということを私も改めて認識を深めたところなんです。とりわけ、在日朝鮮人に対する差別的とも言えるほどの人権侵害の実態ですね、これは近代国家としてあるまじきことだということは改めて申し上げるまでもないことなんですけれども、大変重大な事態だというふうに思います。  そこで、初めにお伺いしたいんですけれども、今回の法改正が現状を改善するんだということで提起をされているのですが、きょうの午前中も国際法学者の宮崎参考人や、あるいは朝総連の河参考人からも具体的にお話がありまして、特に在日朝鮮人の方たちがあれほど抵抗している指紋の押捺や、いわゆる登録証の常時携帯義務をそのまま残して改善と言っても、何が改善になるのかというふうに思わざるを得ないと言っても言い過ぎではないと思うんです。で、御意見も午前中にありましたけれども、住民基本台帳に登録するだけで十分である、大きく言って、抜本的に考えて外登法を廃止すべきだという、もちろん参考人の方も必要最小限の問題まで否定してはいらっしゃらないんだけれども、指紋の押捺や常時携帯義務など、そういうものは本当に抜本的に廃止をするということをするべきだということを強調されておりました。私もそのとおりだと思うんですけれども、今回改正されるというそのそもそもの理由はどこにあるのかということを、ちょっと改めてお伺いをしたいと存じます。
  106. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) すでに先ほど小平委員の御質問にお答えして御説明申し上げた点でございますけれども、私どもといたしましては、現在の外国人登録法が制定されてからことしでちょうど三十年になります。戦後の混乱期には登録証明書の不正発給であるとか、あるいは変造、偽造、こういうものが多かったのでございますけれども、二十七年の現行法の制定を境にして、社会の落ち  つきもございまして、外国人登録法というものは非常に定着してきました。この間、わが国の国際的な地位も非常に上がりましたし、それから国際交流の度合いも深まってきました。その間、私どもは背景にある一つの事情として、国際人権規約への加入等も十分意識の中に置いていたわけでございます。  そこで、こういう情勢の中でできるだけ外国人に不必要な負担はかけたくない、できるだけ負担を緩和したいという考えを持つに至ったのでございます。もちろん、同時にこれは市町村の負担も軽減することになります。どのくらいこれを軽減できるかどうかにつきましては、外国人登録制度の基本問題を含めていろいろ慎重に検討いたしました。私どもは、その際やはりもう一つの事情として、外国人登録制度を取り巻く環境として不法入国というものが後を絶っていない、非常にむしろ巧妙化してきているということ。それから不法残留、それからさらに不法残留の一つの形態でございますけれども、流民問題、こういう問題も出てきているので、必ずしも情勢は手放しで楽観できるものではない、こういうふうに考えました。  そこで、昭和二十七年にできました現在の外国人登録制度の基本目的、それは外国人の居住関係、身分関係を把握して、公正な外国人の在留管理に資するということでございますけれども、この基本目的はそのまま維持して、しかも基本的な制度は変えることができない、その範囲内でできるだけ具体的に外国人の負担を減らし市町村の負担も軽減したい、こういうふうに考えました。  そこで、その具体的な形といたしまして、まず指紋制度につきましては、指紋制度そのものはこれは不可欠のものでございますので廃止することはできませんけれども、外国人が押捺する個数を減らす、こういうことを考えました。さらに、登録証明書の常時携帯義務につきましては、これも登録制度の基本的な基盤でございまして廃止することはできませんけれども、十六歳以下の年少の人についてはこの義務を課さないことにしようということにいたしました。その他登録証明書の登録の確認申請期間が従来三年でございましたけれども、これを五年に延ばしても差し支えないのじゃないかというふうにも考えたわけでございます。  こういうふうに私どもといたしましては、外国人登録制度を取り巻くいろいろな状況というものを勘案いたしまして、そこで現在の登録制度の基盤は維持しながらも、その中でできるだけ外国人に対する負担の緩和を図りたいということで、今回成案を得て国会に御提案申し上げることになったわけでございます。
  107. 山中郁子

    ○山中郁子君 衆議院の段階から何回も何回もそういうことをおっしゃっているんですよね。私、限られた時間でそのことを一つ一つまた繰り返すことはしたくないんですが、大鷹さんはそういうふうにおっしゃるけれども、実際現状の問題として、それじゃこうしたものによって問題がないとあなた方おっしゃらないと思うのね。いっぱいいろんな事件が起きているわけでしょう、人権侵害の事件が。けさ午前中の参考人質疑のときに数十万件、つまり十四歳以下の子供たちを除けばすべての在日朝鮮人がみんなそれで一回はやられているというふうな数字になるぐらいの、こうした携帯してないということに対する、人権侵害にわたるいろんな事件が起こっているという話がありましたけれども、私は、外国人登録法というけれども、そもそもが在日朝鮮人に対するそうした差別的なこの法の運用の実態ですね、これをもっと本当に真剣に考えていただかなきやならない時期は、もう遅過ぎるとは思いますけれども、そういう意味のことを申し上げているんです。形式的なお答えは余りいただかなくていいんです。もうこれは何回も、いままでも衆議院の審議の過程を見てくればわかるわけです。  そこで、これは五十二年の朝日新聞に出ていた記事なんですけれども、当時の上智大学長のヨゼフ・ビタウさんという人が、「外国人である私は「外国人登録証明書」を携帯していなければならない。だが在日二十五年、その間、北は北海道から南は九州まで、」会議などでよく旅行もするが、「これまで一度もその提示を求められたことはない。」ということをおっしゃっています。一たまたまということじゃなくて、私が申し上げましたように、在日朝鮮人の皆さんに対するそうした差別的な法の運用、人権侵害にわたる運用の問題というのは実際にあるんだから、そこのところを本当に政府が真剣に考えて、近代国家にふさわしい、恥ずかしくない立場からの法改正を考えていかなきゃいけないだろう。私は、その指紋押捺が原則的に最低必要な条件だとあなたおっしゃるけれども、そこについてだって議論はあるけれども、それについていま議論に深入りはしませんけれども、そこのところはぜひ誠意のあるお考えを聞かせていただきたいと思います。
  108. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) ただいまこの外国人登録制度というものは朝鮮半島出身者に対して差別的に運用されておるのじゃないか、そういう御意見でございましたけれども、私ども実はそうは考えていないのでございます。たまたま外国人登録法違反で検挙されたりするそういう人たちの中には、朝鮮半島出身者は韓国籍であり朝鮮籍であり、そういう方が多いだろうと思います。  それはなぜかと申しますと、現在長期在留して登録をしております外国人は全部で約八十万名、七十九万を超す人数がいるわけでございますけれども、そのうちの六十七万名は朝鮮半島出身者である。こういうことで、したがって当然そういう外国人登録法違反のケースというものは朝鮮半島出身者の方に多いのだろうと思います。  それじゃ、そういう方々以外についてないのかと申しますと、手元にございます私どもの統計を見ましても、外国人登録違反で問題になりましたケースというものはそれ以外の国籍の人にも相当いるわけでございまして、たとえばフィリピン人、それからアメリカ人、イギリス人、フランス人、そういう欧米の人も含めているわけでございます。もちろん比率的には、先ほど申しましたように、人口の比率が朝鮮半島出身者が多いのでこっちの方が多いのですけれども、そういう人たちも当然そういう該当数、統計の中へ入ってきているということを御指摘申し上げたいと思います。
  109. 山中郁子

    ○山中郁子君 形式的なことを私は言っているのではなくて、そしてまた比率で言うならば、もっと詰めたアンバランスというものははっきり出てくるものでありますけれども、やっぱり実際に現実に起こっている事態を率直にごらんにならなければ、本当に外登法の持っている本質的な問題というものが認識できないし、それを百も承知の上で先ほどるる御説明なすったそれが改善だとおっしゃるというところに、重大な基本的な問題があるということを指摘をしておきたいと思います。  それで、これも午前中の朝総連の河参考人の発言にもありましたけれども、いま数十万の在日朝鮮人の方たちが日本にこうやって生活を余儀なくされている、そういう結果に導かれた背景というのは、戦前日本に強制連行されてくるなど日本の朝鮮侵略、植民地支配、民族抑圧の結果としての実態なんですね。そういう方たち、あるいはその方たちの子孫の人たちが現在の在日朝鮮人ということになるわけです。このような歴史的な経過を踏まえて当然何らかの配慮がされるべきであるというふうに思いますけれども、実際にはそれと全く逆に、後ほど具体的にもお尋ねをいたしますけれども、指紋を無理やりにとるとか、極端に言えばおふろに行ったり買い物に行ったりするそういうときにも登録証を持ってなきゃいけない。犯罪人扱いする。そういうことは、まさに逆な実態であると言わざるを得ません。  これはけさほどもお話があったんですけれども、現在重大な問題として教科書問題が、つまり中国や朝鮮に対する過去の日本帝国主義の侵略あ.るいは植民地支配、そうしたものを隠蔽しようとする、ねじ曲げようとする、そういう日本の政府の、文部省の対応が国際的問題になって非難をされていますけれども、私はやはりこの外登法の問題で議論されている重大な本質というのは、今日のこの教科書問題にも反映して、その在日朝鮮人に対する差別的運用の問題と紙の裏表をなすものだというふうに思います。  これをさらにねじ曲げて押し隠していこうとして反省を示そうとしない、こういう問題はまさに軌を一にするものだと思いますが、きょう法務大臣に御出席いただいておりますので、どうぞいま私が申し上げました事の本質の問題提起をぜひ率直に受けとめていただきまして、この教科書問題に対する大臣の御意見を承りたいと思いますが、よろしくお願いをいたします。
  110. 坂田道太

    ○国務大臣(坂田道太君) 外国人登録法の問題は、昭和二十七年以来、今回大きく改正をやったわけでございますが、何と申しましても外国人が日本に参りまして、そしてここで非常に日本という国はいい国だ、住みよい国だと、一時滞在にしろ、あるいは永住にしろ、いい国だというふうに思われるようなそういう国にしなきゃならない。そのために、やはりこの外国人登録法についてのいろいろの配慮ある改正を行ってきたつもりでございます。  まだまだいろいろ御批判を受けておるわけでございますが、われわれといたしましては、ただいまといたしましては最善の努力を払った法案であるというふうに思いますので、ひとつ御理解を賜りますようにお願いを申し上げたいというふうに思います。
  111. 山中郁子

    ○山中郁子君 在日朝鮮人の方々に対する差別的な運用ということを私は先ほどから申し上げています。もちろん、在日朝鮮人の方たちだけではありません。しかし、欧米人のそれに対しては明らかに違っていた。そうした差別的な運用がされているという問題と、いま教科書問題で問題になっている日本の文部省の、過去の朝鮮に対する侵略や、あるいは植民地支配の事実をゆがめようとする、また書きかえようとする、そうした事態と紙の表裏の関係にある、その点についてのぜひとも法務大臣の、内閣の閣僚の一員としての御見解をお伺いしたいと思っております。
  112. 坂田道太

    ○国務大臣(坂田道太君) いま教科書の問題につきましては、主管大臣がおられますので、私からとやかく申し上げない方がよかろうかというふうに思うわけでございます。  いずれにいたしましても、このような外国人登録法というものを運用いたします場合におきまして、差別をするなどということはあってならないことだというふうに思います。そういうわけでございまして、いかなる国の人といえども人権が守られる、日本という国はりっぱな国だというふうに言われるような運用をやらなければならないとわれわれは考えておるわけでございまして、今後ともいろいろの御指導、御鞭撻をお願い申し上げたいと思います。
  113. 山中郁子

    ○山中郁子君 午前中の参考人質問でも私申し上げたんですけれども、いわゆる国家主権と基本的人権の尊重ということが外国人の処遇をめぐってしばしば問題になる。その調和の問題ですね。そこにこの外国人登録法の運用の実態の問題もあるので、もう一つぜひ大臣に率直に忌憚のない御意見を伺いたいと思いますのは、いま日本という国はよい国だというふうに受けとめてもらえるような、外国人登録法一つとってみてもそうでなければならないし、そのように努力しているんだとおっしゃるけれども、おふろへ行くときに登録証を持っていない、ちょっと買い物にそこに行くときに持っていない、それが処罰の対象になるというようなことが、日本はいい国だと思われる実態だとお考えですか。  枚挙にいとまのないそういう事犯があるんですよ、事実がね。ちょっと外へ買い物に出たというときに持ってないと、在日朝鮮人の方の家の前に待ち構えるようにして、そして出てきたところを示せと言う。そういうようなことがこの外国人登録法によって行われていることが、そういう事実が、またそうしなきゃならないことになっているわけでしょう、どこへ行くんでも常に持ってなきゃいけないということになっているんだから。そんなことしなくたっていいじゃないですか。そしてまた、何回も一生変わることのない指紋を押し直させる、もともと嫌がることをね。当然ですよ、人間にしてみたら。犯罪人扱いにされる指紋を、しかもそれを何回もやらされる。そんなことは、もう屈辱的なことは決まり切っていますでしょう。  そういうことを、これほど批判もされながら、そしてなおかつ強引にやっぱりやっているという日本が、外国人にとっていい国だと思われますか。そういうふうにお考えになりますか。私は率直にそれは大臣のお考えを伺いたいですわ。
  114. 坂田道太

    ○国務大臣(坂田道太君) われわれが諸外国を旅行いたしますときにも旅券を持っておるわけなので、しょっちゅう旅券の提示を求められるわけなのですけれども、よその国に行ったらやはりそういうような決まり、決まったことはちゃんと煩わしくてもやるということが、むしろ自分の存在というか、自分は何もそういうやましいことはないのだ、犯罪者でも何でもないのだということを示す一つのまた有力な材料、身分証明書にもなっておるわけなので、同様に日本におきます外国人が、日本におってその居住関係あるいは身分関係、こういうことがはっきりしておるということがあれば、常に持っておって、提示を求められてもいつでも出すということであれば、自分は不法な入国者でもなければ何でもないのだ、犯罪をしようと思っておる者でもないのだということをはっきりさせるものだと私は思うわけなのでございます。  そういうことでございまして、私は、やはり外国人にいたしましても、日本の国に生活をする以上は、その国の法律に従ってもらうということが当然であって、これは国際人としての責任であり義務であるというふうに思うわけで、それに違反するようなことはやってならない。むしろ自分が外国人である、そして決して犯罪やなんか犯すような者でない、自分はちゃんと何はしてあると、そういう自分を証明するということになるわけでございます。  しかし、そうは言いましても、七十万も八十万もおる外国人の中に不法入国者もございますし、あるいは不法なことをやりかねない者もあるわけなのでございまして、大部分の日本に在住する外国人が本当に住みよい日本で堂々とやれるようにするためにこそ、むしろそういう不法者があった場合は、そういう者に対するきちんとした制裁措置があるということも、私は当然なことではなかろうかというふうに思うので、これは何も日本だけのものじゃない、諸外国においても同様だと思うのでございます。  ただ、それだからといって、日本は非常に完全無欠かと言えば、いままで御議論がありまするように、決して私はこれでもって完備しておるというふうに言うつもりはございません。皆さん方の御意見等あるいは御批判等を率直に承って、そうしてできるだけひとつ完全なものに近いようにしていかなきゃならぬというふうに考えておるわけでございます。
  115. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、その国の法律を守らなくていいなどということを言っているのじゃないんですよ。だから、この外国人登録法という法律の中身が問題で、これを改正するとおっしゃるならば、いま大問題になっているそうした常時携帯義務だとか、それから指紋押捺の問題だとかいうことを廃止するという、そういう改善をすべきじゃないかということを申し上げていますので、念のためお話ししておきます。  それから、大臣はいま不法なことをやりかねないとおっしゃったけれども、これはちょっと私、問題のあるおっしゃりようだと思いますよ。外国人だからという偏見で不法なことをやりかねないというのは、一体これはどういう意味ですか。
  116. 坂田道太

    ○国務大臣(坂田道太君) いや、私が申し上げましたのは、外国人だからどうだこうだじゃなくて、人間だれしも完全無欠じゃないということを申し上げておるわけでございます。
  117. 山中郁子

    ○山中郁子君 それなら、日本人すべてに、不法なことをやりかねないということだって通用するわけでしょう。そういうもので何か持って歩いてなきゃいけない、身分証明書を持って歩いてなきゃいけない、戸籍謄本を持って歩いてなきゃいけないということになっていないでしょうが。
  118. 坂田道太

    ○国務大臣(坂田道太君) やはり日本に在住する外国人としましては、自分はやはり確かな者であるというふうに証明する何かが必要だというふうに思うわけなので、その意味合いにおきましては、証明書というのは自分を証明する非常に大事な、あるいは唯一のものであろうかと思うのでございまして、むしろこれを携帯するということが自分を証明することになるということはひとつおわかりいただきたいと思うのでございまして、そういうものがなくていいかと、私はそうは思わない。あればこそいいわけなので、外国に行って旅券を持っていない。そして、いかに自分を証明しようとしてもだれも聞いてくれやしない。しかし、旅券を持っているなら、おれはこういう男だ、こういう日本人だということを言えば、そうかということになるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  119. 山中郁子

    ○山中郁子君 話をすりかえないでいただきたいと思うんですけれども、一つは、外国にたまたま行って旅券を持つ持たないという問題と、何十年日本で暮らすということと全く根本的に違う話です。それから、在日朝鮮人の方々について言うならば、先ほども申し上げましたように歴史的な背景というものもあります。  それと、登録をしてあるんだから、それはちゃんとした外国人登録法に基づいて登録しているんですよ。私がいま一つ具体的に問題にしているのは、何もそれをおふろに行くときも、隣にちょっと出かけるときも、買い物に行くときも、常時持ってなければ処罰の対象になるというようなそういうことが問題で、そんなことで日本はいい国だと外国人の方に思われるはずがないじゃないですかと私は申し上げているんです。だから、大臣は、それを御承知の上で話をすりかえていらっしゃると思いますので、改めてそういうことなんだということをはっきりさせておきます。  具体的な問題でお尋ねをいたしますが、これは衆議院の審議でも何度も出ていますので簡単にお答えいただけばいいんですが、昨年七月の塩山市の金美代子さんの事件について、けさほど朝総連の河参考人も若干触れられておりましたけれども、警察庁に経過報告を、特に衆議院で問題になった以降の、あなた方がお調べになりました経過についてお示しをいただきたい。
  120. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 事案の概要は、昨年の五月の十四日でございますが、山梨県の警察官がスピード違反の車を認めまして停止をさせて職務質問をしたところ、運転者が無免許で、さらに外国人である、加えて外国人登録証を携帯していなかったということが発見されたわけでございます。こういう場合は、通常、同乗している人が二人おったのでありますけれども、無免許運転を幇助したとか教唆したとかいう疑いがあって、同乗者についても職務質問を実施するのは通常でございますので、この場合も職務質問を行ったところが、同乗していた人二人も外国人で、登録証を不携帯であるということがわかったということでございます。  ただ、当日、この人たちは大変時間的に急いでいるということもありましたので、当該の交通の事案と、それから不携帯事案につきましては簡単に取り調べただけで、後日都合のいい日に出頭していただくことを約束して帰宅していただいたということでございます。そして、約二ヵ月後になりますが、七月の二十日にこの三名ともそれぞれ好都合であるということを確かめた上で、所轄の塩山警察署に出頭を求めて、外国人登録証の不携帯事案について取り調べをするとともに、捜査上の必要から、本人の承諾を得て指紋、写真等の捜査資料を作成したものでございます。
  121. 山中郁子

    ○山中郁子君 衆議院で問題になっていろいろ質問もありましたよね。批判もありました。その後さらにお調べになっていると思うんですけれども、その経過はいかがですか。
  122. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) いろいろ質問は承っておりますけれども、特にその後、この問題としましては告発が検察庁になされたということを伺っているだけでありまして、特別その後改めて調べたというようなことはございません。
  123. 山中郁子

    ○山中郁子君 細かいことは省略します。特に、同乗者に教唆などのあれでもって職務質問するのが当然であるなどという問題のあることをおっしゃっていますけれども、時間の関係で簡単に幾つかの点について御質問します。  それでは、この金美代子さんという方が後ほど登録証を持参して提示したわけですね。そのときは、彼女はそれを持ってなかったということで取り調べられたわけでしょう。そして、その後出頭して提示したわけですね。だったらそれで済むわけでしょう。それを何で指紋押捺させたり、体重や身長まではからせたり、それから写真をあちこち撮ったり、何か足の長さだか足形だかとるとか、何でそういうことが必要なんですか。提示すればいいわけでしょう。不携帯だったんだから、持ってないんだから、見せなさいということで出頭してお見せしたわけでしょう。だから、それで済むわけでしょう。
  124. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 外登法の登録証不携帯の罪につきましては、携帯していないということがそもそも犯罪になるわけでございまして、後で持ってきて見せれば全部それで済ませるということになりますと、この条文の存在がなくなるわけでございます。  ただ、私どもは、実際の運用に当たりましては柔軟に対処することにしておりまして、先ほどもお話ありましたふろ屋に行く途中とか、だれが見ても常識的にそこまでやるのは酷であるというようなものについては問擬いたしてないわけでございまして、しかし、そういうものを越えまして、これはどうしてもやはり持っているべきであったというものにつきましては、法に従って処罰するという措置をとっているわけでございまして、このケースの場合もそういう趣旨で立件したわけでございます。
  125. 山中郁子

    ○山中郁子君 大分先ほどの大鷹局長の話と違いますね。たまたま持っていないと。それは提示すればそれで済むことでしょう。そういうふうにおっしゃっておりましたわね。それはたまたま持っていないというだけで、そうしたらそれは提示すれば済むものではないとおっしゃるのは、そうするとそこはどういうことになるんですか。持っていなかった、そして後から持っていって提示しましたと。それで済まないというのは、一体どういうことなんですか。
  126. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 外登法によりますと、外国人登録証というのは常時携帯するということが外国人に義務づけられておるわけでございまして、持っていないことはこれは法違反を構成すると、こういうことになるわけでございまして、後ほど確認する、あるいは提示して見せるというのは、  これは別の問題でございます。
  127. 山中郁子

    ○山中郁子君 それじゃ、何でこういう場合に指紋――そこでもうちゃんと指紋を押してあるわけ  でしょう、みんな手続に従って。その登録証を持  っていって見せているのに、何でここでまた指紋をとったり、身長をはかったり、体重をはかったりする必要があるんですか。金さん自身が、もう自分は何の犯罪を犯したのか、人殺しをした重罪犯罪人みたいなふうにして強制的にそうした指紋採取その他やらされて、一体これはどういうこと  かということを涙を流しながら抗議したにもかかわらず、本当に強制的に金さん自身の手を警察官が持って、そうして指紋や掌紋を押させるというような事実があったわけですよ。なぜそういうことをする必要があるんですか。大臣もよく聞いておいおていただきたいんですけれども、こういうことがこの外登法によって実際に行われ、そして告訴されている、訴追されているという事態があるということを問題にしているのであって、現実の問題としてどういう法的根拠に基づいて金さんを犯罪人扱いにして、指紋、掌紋、足形、写真、そうしたものをおとりになったのか、その根拠を示してください、法律の根拠を。
  128. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 指紋、写真等についてお尋ねでございますが、この法的根拠は、一般的に申し上げますと身柄を拘束されている被疑者につきましては刑事訴訟法の二百十八条でございます。このケースの場合は身柄不拘東でございますからこれではございませんで、刑訴法の百八十九条二項及び刑訴法の百九十七条第一項が法的根拠に当たると存じます。
  129. 山中郁子

    ○山中郁子君 強制的にこういう指紋や何かをと  っていいなんということになっていませんでしょう。それで、国家公安委員会規則である指紋等取扱規則第三条一項、三項及び四項によれば、身体の拘束を受けていない被疑者につき掌紋を採取するのは、「被疑者が強盗、窃盗、詐欺その他警視総監または道府県警察本部長が指定する犯罪を行なった者であるとき」とされているんですよ。そうでしょう。金さんの場合にどうしてそういうことができるんですか。国家公安委員会の規則でちゃんとそこにうたわれているじゃありませんか。強制的にそんなことできないでしょう。
  130. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) ただいま御指摘になりましたのは国家公安委員会規則の指紋等取扱規則の第三条一項でございまして、その三項をお読みになるとおわかりと思いますけれども、「警察署長等は、身体の拘束を受けていない被疑者について必要があると認めるときは、その承諾を得て指紋または掌紋を採取し、」云々という規定がございまして、このケースの場合はこの三項によりまして被疑者の承諾を得て指紋等を採取したというのが事実でございます。
  131. 山中郁子

    ○山中郁子君 いま私が読み上げた国家公安委員会規則の中に、そういうふうにちゃんと書いてあるんです。それで、こうした規則法律を無視してまで指紋や掌紋などの押捺を強制する、強要する必要がどうしてあったのか、そこのところを教えてください、具体的に。
  132. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 一般に、被疑者となった者からは捜査上の必要に基づいて指紋なり写真なりその他の、これはいわば鑑識資料でございますけれども、こういうものを採取しておるわけでござます。この三人の人たちもこれは被疑者でございますので、現場において当時そういう鑑識資料を採取する必要があろうと判断いたしまして、ただ、これは先ほどお答えしましたように、身柄不拘東でございますから本人たちの承諾が必要なのでございまして、承諾をいただいてとったということでございます。
  133. 山中郁子

    ○山中郁子君 承諾なんかしていないんですよ、それはね。だから、そういうことをよく調べてほしいと思っているんですけれども、これはもう衆議院段階でもやりとりがありましたから言いますけれども、いま私が申し上げた事実はそのとおりで、本人がそういうことで抗議をしているのに、強制的に手をとって、そして掌紋なり指紋なりを押させるということをやっている、現実に三人の係員が。  私はここで明らかにしていただきたいのですけれども、金美代子さんに対してこれらの行為を働  いた警察官の氏名を明らかにしてください。これ  は警察庁に事前にお願いをしておりましたので、  お示しいただきたいと思います。
  134. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 本件捜査にかかわった警察官は、いずれもこれは組織の一員として正当な職務執行を行ったものでありまして、ことさらに氏名を公表するということは必要はないかと思いますが、特にこの場合におきましては山梨県警なり塩山警察署にいわゆる抗議と称していやがらせの電話、手紙等多数参っておりますので、そういう観点からも、当該正当な職務執行を行った警察官を保護する意味でも、氏名の公表は私どもからは差し控えさしていただきたいと思います。
  135. 山中郁子

    ○山中郁子君 正当な行為をしたのなら、正々堂々とおっしゃったらいいじゃないですか。国会で要求されて、その行為を働いた警官の名前を言えないんですか。国会に対して、委員会に対してその名前は言えないんですか。わかっているでしょう、当然のことながら。教えてください。
  136. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) ただいまお答え申し上げましたように、いろいろといやがらせの電話とか手紙がたくさん参っております。これを公表いたしますと、当該警察官に対してもいやがらせが来るのはきわめて明らかであろうと思いますので、そういう意味で御遠慮申し上げたいということでございます。
  137. 山中郁子

    ○山中郁子君 不当な人権侵害を働いた警察官に批判があるのはあたりまえです。それを、いやがらせだとか何だとかすりかえて、そして警察官の保護だなんて、全く私、警察の勝手な言いようというのには本当にがまんがなりません。  実際問題として、こうした重大な問題、つまりこの外国人登録法にかかる具体的な事例について、国会でその氏名を明らかにされたいということに対して口を閉ざして語らないということは重大な問題だと思いますので、私は委員長において御注意いただき、そして氏名を明らかにするよう御指示いただきたいと思います。
  138. 鈴木一弘

    ○委員長(鈴木一弘君) これは後刻、理事会において相談をいたしたいと思います。
  139. 山中郁子

    ○山中郁子君 刑事局長にお尋ねいたしますが、この事件のように警察官などが本人の意に反して指紋や掌紋の採取を強要した場合には、刑法百九十三条にいう公務員職権乱用罪に当たると思いますけれども、この点の御見解をお伺いいたします。
  140. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) お尋ねの件につきましては、先ほどもちょっと出たかと思いますけれども、金美代子さんという方から当時の警察官を被告訴人とする告訴が甲府地検に提出されております。本年の四月の二十八日になりますが、甲府の検察庁に告訴がされておりまして、現在検察庁で捜査中でございます。したがいまして、いま御指摘のような問題もその捜査の中で明らかになるべき事項でございますので、まだ捜査中の現段階におきまして、犯罪の成否ということについて結論的なお答えをするのは差し控えさしていただきたいと思います。
  141. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、この告訴されている事案についての現在の処分はどうなっていますか。要するに、まだそのままということですか。
  142. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) ただいま申しましたように、告訴が本年の四月の二十八日に検察庁になされておりまして現在まで捜査を続けておるわけでございまして、何分にも捜査の途中でございますから、どういうことをいままでやっている、これからどういうふうにやるということは、いわば捜査の内容にわたることでございますので、具体的にはお許しをいただきたいわけでございますが、関係者から必要な事情を聴取する、またそれによってさらに必要な人たちからいろいろと事情を聞くというようなことで、いま御指摘のような問題点を含めて犯罪の成否というものを明らかにして一いくということでございまして、いままさにそういう途中にあるというふうに御理解をいただきたいわけでございます。  なお、よけいなことでございますが、御本人の方の外国人登録法違反、これはその当時警察から事件として検察庁に送られまして、検察庁におき.まして不起訴処分になっております。
  143. 山中郁子

    ○山中郁子君 明らかな人権侵害、行き過ぎのケースであることははっきりしていますので、厳重な捜査に基づいて公正な処理を早急に図られるべきであると思います。  いまは一つの例だけ申し上げましたけれども、もともと指紋を押すなんということは犯罪捜査の必要から生まれてきているものですよね。これを強要されるということは、初めにも申し上げましたように大変な屈辱感を受けて、この金美代子さんの場合にも本当にもう涙を流して、しばらくは平常の精神状態に戻ることがむずかしかったというほどのショックを受けておられる。たまたまそれを持っていなかったというそれだけで、あることははっきりして、後にちゃんと行って示している。  こういうことは、先ほど申し上げましたこの制度自体の外国人、在日朝鮮人の方たちに対するやはり差別的な運用と相まって、大変本質的な重大な近代国家にふさわしくない内容で運用されているということがありますから、私はそこで具体的に、外国でもすでに多く行われていますけれども、写真だとかサインだとか、そういう身元をはっきり確認できることは幾らでもあると思うのですよね。いまもうそういう点については、ほかの問題についてだってみんなそういうふうに使われているわけですから、だからこういう工夫の余地が今後絶対ないというふうに考えるのは、私は余りにも法務大臣なり入管局長なりが何回もおっしゃっている法の目的とするところがら大きく外れているというふうに考えざるを得ません。  それで、直ちに廃止できないとおっしゃるんですけれども、そうであったとしても何らかの緩和措置、たとえば居住地と同一市町村内では携帯しないでいいとか、だから結局ちょっと買い物に行くときだとか、おふろ屋さんに行くときだとか、そういうときは持たなくてもいいんだとか、これは本当に常識的なことだと思うんですけれども、そういう工夫の余地がないのかどうか。それは今回の法改正と直接つながらなくても結構ですけれども、-誠意のある御見解をお伺いしたいところでございます。
  144. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) ただいま指紋の押捺とそれから携帯義務の両方についてお尋ねがございましたけれども、ただ山中委員は指紋は犯罪捜査のためにあるということをおっしゃっておりますが、実は私どもの理解するところでは、指紋というのは同一人性の確認のためにあるわけでございます。これが、たまたま犯罪捜査に利用されているということは言えようかと思います。  たとえば、アメリカのある州では、自動車の運転免許証発行に際して指紋をとっております。これは何も犯罪捜査に関係がないので、たとえばある運転免許証の発給を受けた人が事故で死んだという場合に、そばにだれもいなかったというときに、それは何人であるかということを確かめるためにそういう手段がとられているわけでございます。  したがいまして、指紋の押捺というのは犯罪捜査のためではなくて身元の確認、英語で言うとアィデンティフィケーションのためにあるわけでございます。私ども外国人登録証明書、それから登録原票、これを正確に保つためにはどうしても同一人性の確認をする決め手が必要であると考えております。それは現在のところ指紋以外にはない。  もちろん、山中委員が御指摘になりました写真、それから署名、こういうものもございます。しかし、写真につきましては、この問も寺田委員の御質問にもお答えして申し上げましたとおり、他人のそら似ということもありますし、それから年月がたつに従って顔かたちが変わる、三年、五年の間にも見分けがっかなくなるということもあり得るわけでございます。写真には、すぐその場で本人と見比べられるというそういう利点はあり・ますけれども、決め手になるものではない。それから署名につきましては、これは欧米諸国では署名というものが非常に信頼性の高いものになっておりますけれども、わが国を含めてアジア諸国ではそういう習慣はない。したがって、いずれにいたしましても、指紋にかわって同一人性を確認するために絶対的な決め手になるようなものは、現在のところ見当らないということ等を申し上げざるを得ないのだろうと思います。  それから、登録証明書の常時携帯の件でございますけれども、私どもといたしましては先ほどから申し上げておるように、常時携帯そのものはこ.れは制度として外すことはできない。これは外国人の公正な管理に資するため存在しております外国人登録制度の上で基本的な制度でございまして、これは外すことはできない。  その運用についてどうかということが山中委員からお尋ねがございました。私どもといたしましては、これは当然外国人は常時携帯しているべき.である、これは原則であると思います。しかし、たとえば先ほどから例に挙げられました銭湯に行く場合はどうかということ、あるいはすぐ角のたばこ屋に行くときに持っていなかったらそういう場合はどうなのかというようなことでございますが、この辺はそれは常識の範囲内でございまして、したがって、私どもは常識の範囲内で許されるものは、これはあえてそこまで厳しくやる必要・はないのじゃないかというふうに考えております。しかし、これはすべて常識でその場合場合の個別の事情というものをよく考えないといけませんので、一般論として申し上げることは非常にむずかしいのだろうと思います。  しかし、いずれにいたしましても、なるべく血の通った常識の範囲内での運営ということが望ましいというふうに考えておるわけでございます。
  145. 山中郁子

    ○山中郁子君 その常識の範囲内というのが、だからさっきの幾つも事例があるのですけれども、そこの家から出てくるのを待ち構えて、そして多分あそこら辺へ行くんだから持ってないだろうとわかった上で提示しろと言って、それで持ってなければ連れていく、こういうことがやっぱり行われているというところの問題があるんだということを私は申し上げます。そして、常識の範囲内として私は、たとえば先ほど同一市町村内では携帯しなくてもそれはいいんだ、常識の範囲内として、そういうことをせめて幾らでも、たとえばそういうふうに現状の当面の問題としても工夫できるのではないかと、そういうことを申し上げております。  それから、身元確認のお話をおっしゃいましたけれども、そもそも結局身元確認というところがら日本の近代社会において、それから世界的にも指紋というのが犯罪の捜査との関係で生まれてきて、そしてまたそれが、その範囲ができ上がってきているんだという経過を私は申し上げているので、それはおわかりいただいていると思います。  最後になりますけれども、私はやっぱりいまお話をいろいろ伺っていて、今回の改正が外国人の人権を尊重する、ないしは内外人の法的地位を平等なものにしていこうというものよりは、やっぱり行政の簡素化とかそういうことの方がどうしても考えられてしまう、つまりもっと本当に改善しなきゃならない基本的な問題が解決しないにもかかわらず、そこのところを牢固として譲らないで、そういう改善を図って、それで改善だとおっしゃっているという点で、私は一九七九年の九月二十一日の国際人権規約を批准した際の国会の附帯決議で「すべての者は法の前に平等であり、人種、言語、宗教等によるいかなる差別もしてはならないとの原則にのっとり、在留外国人の基本的人権の保障をさらに充実するよう必要な措置を講ずること。」を政府が誠実に努力すべきであるとした附帯決議があるんですけれども、そういう立場に立つならば、もっとその方向で、その理念に立って改善の努力をしていただいてしかるべきだと考えておりますので、最後に大臣から御所見を伺って、私の質問を終わることにいたします。
  146. 坂田道太

    ○国務大臣(坂田道太君) ただいまお話がございましたとおりに、人権尊重を基本理念とする現行憲法のもとにおきまして、ただいまお示しの国際人権規約の趣旨にのっとりまして、われわれとしては最善の努力をしたつもりでございますが、今後ともこの方向の具現に向かって努力をしてまいりたいと、かように考えております。
  147. 鈴木一弘

    ○委員長(鈴木一弘君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、安井謙君が委員を辞任され、その補欠として関口恵造君が選任されました。
  148. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いま山中委員が御質問になりました山梨県の塩山警察の問題で刑事局長にお尋ねしようと思ったのは、さっきあなたがお答えになったのでちょっと聞き漏らしたように思うので一言だけお尋ねしたいのは、金美代子さんの外登法違反被疑事件については不起訴にしたとおっしゃったんですかな。ちょっとその点確認したい。
  149. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 金美代子さんから告訴のされました公務員職権乱用罪の事件は捜査中でございます。  それから、もとになりました不携帯の事実でございますが、それは外国人登録法違反ということになるわけでございまして、警察から検察庁に事件の送致がありましたけれども、その不携帯の事件自体は不起訴処分になっておりますということをつけ加えたわけでございます。
  150. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それじゃ、もうあなたは結構です。  警察の方にお伺いしたいんだけれども、いまの金美代子さんの事件、この人は写真を撮ったり十指の指紋をとったり、足形を採取したりしたというのだけれども、これは間違いありませんか。
  151. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) そのとおりでございます。
  152. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは、いま刑事局長に伺うと、不起訴処分にしたというくらい情状も軽い事件だけれども、そんなに情状の軽い事件に、写真を撮ったり十指の指紋をとったり足形をとったりする必要があるんだろうか。どうもそんな必要はないように思うけれども、どうだろうか。その点いかがでしょうか。
  153. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) これは最終的には現場の判断でやるようになっているわけでございますが、一般的に申し上げますと、被疑者となった者からは、それぞれの事情に応じて違うわけでございますけれども、必要に応じて、身柄拘束であろうと任意取り調べであろうと、任意の場合は御本人の承諾が要るわけでございますけれども、承諾を得た上で、そのような写真とか指紋をとらしていただくということが間々ございます。この場合も、現場においてそういうことが必要だろうというふうに判断して、承諾をいただいてとらしていただいたというのが事実でございます。
  154. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 警察の方からいただいた犯罪捜査規範、こういうものをよく読んでみると、原則として指紋を採取したり写真その他鑑識資料を確実に作成するというのは、逮捕した被疑者についてじゃないのですか。どうもそんなふうになっているようじゃないですか。その点どうなのか。
  155. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 逮捕した被疑者につきましては、その事柄と申しますか事案の内容からしましていわば当然に必ずとる、刑事訴訟法にも裏づけもございますし、そういうふうになるわけでございますが、それにとどまらず、逮捕しなかった被疑者につきましても御本人の承諾が得られればとるようにしなさい、こういう捜査規範の定めになっているわけでございます。
  156. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そこだ。そこが、逮捕した被疑者についてはそういうことをすることが義務づけられているけれども、逮捕してない被疑者についてはそれはその場における警察官の判断だけれども、しかし、いまも入国管理局長が答弁したように、不携帯罪というようなものはそう重罪じゃないわけだから、ことにこの事件は検察庁は不起訴にしたというくらいこれは情状が軽いものだから、その情状の軽い者にことさら十指の指紋をとったりする必要は全くないと思う。だから、現場の判断だということはわかるけれども、その現場の判断がすこぶる妥当性を欠いたということは言えるのじゃないか。  ことに足形の採取なんというのは、警察からいただいた公安委員会規則によると、これは現場の遺留した足跡と一致するかどうかというようなそういう鑑識上の必要があるときに足形を採取するということになっている。この人は何もよそで犯罪を犯して、遺留した足跡なんというのは問題になっていないんだから、その承諾を得ることは当然だけれども、そんなことについてまで承諾を得る必要なんというのは毫もない。これは行き過ぎですよ。現場の警察官が判断したといったって、そんな犯罪にそんなぎょうさんな、鶏を割くに牛刀を用いるようなことはしなくてもいいわけだ。  だから、やはり上に立つ者がそういう行き過ぎがあった。この女性は屈辱感を覚えて涙を流して、そしてその警察官を告訴するくらい怒っているわけだ。屈辱感を覚えているわけだ。だから、そんな小さな犯罪にその人が屈辱感を覚えて告訴するほどの精神的な打撃を与えるような処置をすることはこれは行き過ぎだ。だから、あなた方がそういう点を少し教育しなければいけませんよ。どうですか。
  157. 吉野準

    ○説明員(吉野準君) 警察の仕事というのは、これは最終的には現場の判断に任せざるを得ない性質のものでございまして、ただ、私どもとしましては、現場を指導しないで放置してよろしいというつもりはございませんで、機会をとらえて現場の指導には努めてまいってきておるところでございます。今後とも指導には努めてまいりたいというふうに存じております。
  158. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 過ちを認めたがごとく認めないがごとく、現場を指導すると言うんだから、よく指導してください。これは行き過ぎですよ。わかりましたか。それじゃもうあなたはよろしい。実際了解を得てやったかどうかという点は争いがあるから、これは検察庁がいずれ決めるでしょう。あるいは、民事訴訟でも起こせば裁判所が決めることになると思うけれども、仮にその承諾があったとして、不承不承、承諾したのでしょうけれども、あったとしても足形までとる必要はない。現場の遺留の足跡と一致しているかどうかなんてことを調べる必要は毫もないんだ。警察の規則をよく読んでごらんなさい。そういうことになっている、足跡をとるときは。だからそれは行き過ぎだ。あなたに対するお尋ねはこれで終わった。わかったでしょう、私の言う気持ちは。  それから次は、難民問題についてお尋ねをしますが、難民問題につきましては昭和五十七年七月行政管理庁から「難民行政監察結果に基づく勧告」というのがなされておりますね。これは大体外務省それから厚生省、文部省等に対する改善方策が盛られておるわけですが、こういう難民に関する業務を調整、連絡を図るのは内閣ですね、総理府ですか、これはどういうふうに受けとめていらっしゃるか、それをひとつお答えいただきたい。    〔委員長退席、理事小平芳平君着席〕
  159. 色摩力夫

    ○説明員(色摩力夫君) 御指摘のとおり、行政管理庁から特別行政監察の結果といたしまして七月の初めに難民行政に関する勧告が出ました。そして、七月の六日には中曽根行政管理庁長官が、これは異例のこととは思いますが、閣議に閣議報告という形で報告されて、閣議の了承を得られたものと理解しております。  したがって、私どもはこれは単なる勧告ではなくて、政治レベルの事実上の意思決定、こういう方針でいくのだということが示されたものと理解しております。それが第一点でございます。  第二点は、これはあくまでも緊急措置でございます。緊急措置という意味は、二重の意味があるものと私どもは理解しております。  一つは、この勧告に盛られたとりあえずの措置をすべてやるならば、わが国のインドシナ難民対策がすべて恒久の制度としてうまくいくという性質のものではございません。これは客観情勢の推移により将来いろんな形で柔軟に対処していかなければ、とうてい解決のつかない難問と心得ております。  また、緊急措置の第二の問題は、これはたとえばことしの統計的事実を見ますと、ボートピープル、つまり一時滞在難民という形で続々とわが国の港に到着しておりますが、そのペースは去年、おととしと比べてすべて二倍のぺースに上っております。したがって、これは客観情勢に迫られておりますので、緊急にこの勧告に盛られた措置をとらなければならない。つまり、来年度の予算要求ではとうてい間に合わない。いろんな技術的な問題はございましょうけれども、できるだけ早急に実現化の方向に向かって努力している最中でございます。
  160. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 外務省はどんなふうな受けとめ方をしていますか。
  161. 今川幸雄

    ○説明員(今川幸雄君) 外務省といたしましては、やはり本年の一月、わが国に対しまして難民条約が発効したことでもございまして、先ほど色摩事務局長も言われましたとおり、ベトナム難民のボートピープルと言われる人たちのわが国へ参りますのが、その数において非常に急増しておりまして、他方、米国、カナダ等へこれらの人々が出国するという動きは鈍化しておりますので、こういうことからわが国へ滞留するベトナム難民の人の数が非常に多くなっておりますので、政府としても何らかの新たな対応を迫られていると考えておりましたとき、難民行政に関する監察が行われ、その結果、行政勧告が行われましたことはまことに時宜を得たものと考えておりますので、この御趣旨を尊重して難民対策を行っていきたいと考えております。  もちろん、外務省といたしましては、難民対策というものは政府全体が本格的な取り組みをしていただくべきものであると考えておりまして、ひとり外務省のみが行って済むものではないと思いますが、しかし本格的対応には時間がかかることでもございますので、今次監察の結果、特に外務省にこれを行うようにという勧告をいただきました長期滞在難民のための施設の設置及び管理運営についてでございますが、これにつきましても本格的対応がとられるまでの間、当面外務省がこれに当たるということで、現在関係各省庁の協力を得まして対策を鋭意検討している次第でございます。
  162. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 この勧告を読みますと、たとえば一時滞在難民を入所させている姫路定住促進センターには収容力に限界がある。入所までに長期間待機させられている状況である。それから、大和定住センターは汚水処理に限界があるなど種々の問題があり、収容人員を縮小せざるを得ない状況にある。そこで、こういう点の隘路を打開するために姫路定住促進センターの収容人員を増大させる等その改善について検討すると、これは外務省に対する対策を勧告しているのですね。  それから、定住促進センターの入所希望者に対.しては、面接を早期に実施する、そして速やかな入所の実現を図れと、これも外務省に勧告をしておる。それから、定住手当の支給を阻むような条件を払拭しなさいということも外務省に勧告しておりますね。こういう点はもう具体的に取りかかっておられるのですか、どうですか。
  163. 今川幸雄

    ○説明員(今川幸雄君) 先生御指摘のございました大和定住センター及び姫路定住センターの問題でございますが、たとえば大和定住促進センターは、確かに定員は百四十七名となっておりますのでございますが、これは全部の部屋に全部定員をきっちり入れた場合の数であるわけでございます。しかし、実際上、家族構成の問題もございまして全部部屋をきっちり詰めるということはなかなかできませんで、やはり三人家族であって五人の部屋でございましても、二人はほかの人を入れないで家族を入れてあげるというようなこともやっておりますので、どうしてもこの定員の中でやるということでございますが、他方、この大和というところの地質の問題もございまして、汚水処理にやや難点があるということで、実際上、運営上、大和の定住促進センターの人員は八割程度に抑えてきたことは事実でございます。  他方、姫路の定住促進センターの方には、百六名の定員でございますが、常にほぼ定員満杯の人数を入れておりまして、時には定員を超えて入れておるということでございますが、今後は、特にいま問題となっておりますベトナム難民――ボートピープルを入れますのは姫路が主でございますので、この姫路の定住促進センターには定員いっぱいに入れると同時に、就職を何とか努力して早めていきまして、回転をよくして姫路の定住促進センターを卒業する人の数をふやしていくということで、ただいまアジア福祉教育財団難民事業本部の委託事業としてこの定住促進事業はやっておりますが、この委託を受けておりますアジア福祉教育財団の方に十分指導を行い、また、関係省庁とも協議を行ってこの改善に努め始めているところでございます。
  164. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、「第三国に出国するか又は我が国で難民認定を受けるまでの間、衣食住に欠ける等保護を必要とする者に対し、必要な援護を行うための予算措置を講ずる等援護体制を整備する必要がある。」、こういう勧告が最後になされておりますね。これは「援護体制を整備する必要がある。」ということで、必要な予算措置を講じろということまで踏み込んで言っておるわけだから、これもやはりあなた方が実行に移すことが望ましいわけでしょう。これは外務省の領域かな、それとも総理府の内閣の室長の領域か、これはどちらか御答弁を願いたいと思うんです。
  165. 色摩力夫

    ○説明員(色摩力夫君) 先生御指摘の点は、一時滞在難民の援護対策に関して必要な予算措置も含めて対処せよということを御指摘になったと思われますが、それでよろしいでしょうか。――  それに関しては、行政監察の勧告の中にも書いておりますけれども、一時滞在難民は、現状は日本に到着した入り口の部分、これは法務省所管のレセプションセンター、大村にございますが、そこで所要の処理がなされる、そして民間の一時滞在難民施設、これはカリタス・ジャパンとか日赤その他の民間団体が運営しております。そこで、事実上難民が長期化して、とりあえず第三国に行くめどがないと思われる方々、これが急速に去年あたりからふえております。この方々をどうするかということに焦点がしぼられまして、ここには、この表現では、長期滞在施設をつくれという形で勧告が出ております。  そこで、先ほどの答弁で申し上げましたように、これは緊急を要するプロジェクトと心得ております。もしこれができないと民間のいままでの努力、その規模、そのやり方をこれ以上継続するわけにはいかないほど非常に困難な問題が生じていると承っております。したがって、この長期滞在化した難民を一括収容する、ある意味で規模の大きい施設を政府につくれと、それは外務省に対して勧告がなされております。この点は至急措置をして、速やかに設置し解消したいといま努力しでいる最中でございます。
  166. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 この最後に勧告があるのは、外務省が個別難民の問題で勧告がありますね。これはどういうふうにしていらっしゃいますか。
  167. 今川幸雄

    ○説明員(今川幸雄君) 行政勧告の最後のところにございます「個別難民(亡命者)」云々とございますのは、これは昨年末から今年初め、非常に多く来ましたポーランドの難民、船員さんの亡命した人でございますが、ポーランド難民それから  アフガン難民等で、わが国へ来る人が、これはわが国が難民条約に加入したこともございまして、まだインドシナ難民に比べましたらばるかに少な  い数ではございますが、その数はぐっとふえておりまして、現在三十名ぐらいのこういう人がわが国に滞在しているのでございます。   このような個別難民、つまり大量難民ではない個別難民であるポーランド難民であるとか、キューバ難民であるとか、アフガン難民であるとか、あるいはイラン難民というような方々のいままでお世話をする措置というものが全くなかったもの  でございますから、これらについて外務省が援護の措置をとるということを勧告されているわけで  ございまして、この勧告の御趣旨を尊重し、できる限りの保護の措置をとれるように外務省として努力をしていきたいと考えております。
  168. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、現実に五十八年度の予算なんかには、予算的な要求をなさっておられ  るわけですね。
  169. 今川幸雄

    ○説明員(今川幸雄君) 行政勧告が出ましたのが七月六日でございますので、その後、財政当局に  お話をしている段階でございます。
  170. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それでは、事務局長と室長はもう結構です。   外国人登録法の問題につきましては、きょうは参考人の意見聴取を行ったわけですが、参考人の意見というのは、日本に滞在しておる朝鮮人諸君の願望というようなものを代弁したものなんでしようね。  それに住民基本台帳をやはり適用して外国人登録をやめてほしい。それが内外人の差別扱いをなくすゆえんである、それが市民的政治的権利に関する国際規約第二条の趣旨にかなうゆえんであるという趣旨の意見が述べられましたね。これは宮崎明治大学教授もやっぱりそういう意見のようでしたが、これに対しては、あなた方法務省としてはどんなふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  171. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) 外国人登録制度とそれから住民基本台帳法に基づく住民登録、この二つの間には大変な違いがございます。その違いは何かと申しますと、まず目的の違いがございます。  外国人登録制度というものは、在留外国人の公正な管理に資するため、身分関係、居住関係を把握するということになっております。この在留外国人の公正な管理の中には、外国人の公正な規制、必要な規制も入っているわけです。具体的に申しますれば、不法入国者あるいは不法残留者である外国人の規制、こういう非常に大きな役割りを担っておるわけです。  他方におきまして、住民基本台帳法に規定しております住民登録というものの目的とするところは、日本国民の居住関係の公証でございます。もちろん最近は、外国人登録制度もこの住民登録と同じような役割りを担う面も出てきました。たとえば社会保障制度、社会保障関係の手続であるとか、入学、就職、それから許認可証明事務、こういうものに外国人登録の登録証明書の提示、あるいはそれにかわる外国人登録済証明書の提出、こういうことが行われているわけです。   しかし、それにもかかわらず、やはり外国人登録制度というのは、先ほど申し上げましたとおり在留外国人の公正な管理、不法入国者、不法残留者を含めて、これらに対する規制というものを非常に大きな目的としているということが申し上げられる。  したがって、この外国人登録制度と住民登録とは、目的において非常に大きな違いがあるということは申し上げられると思います。    〔理事小平芳平君退席、委員長着席〕 目的が違いますので、したがって登録される事項も非常に違います。  具体的に言えば、たとえば住民基本台帳には外国人の在留資格であるとか在留期間とか、こういうものは入ってきません。それから、外国人の職業であるとか、それから勤務地、こういうものも入っておりません。しかし、これはいずれも外国人の身分関係として非常に重要な部分でございまして、どこの国でも大体外国人登録においては、こういう職業とか勤務先も登録事項として入っているようなことでございます。こういうふうに、目的も違うし登録事項も違う。  さらにもう一つ、私どもが申し上げたいのは、日本の住民登録というのは戸籍制度を前提にしております。身分関係につきましてはこの戸籍というものが一つ前提になっているわけでございますけれども、外国人についてはこの戸籍制度がございません。たとえば、外国人の氏名あるいは生年月日、あるいは国籍、こういうものが、わが国ではこれを権威を持って証明することができない。どうしてもその本国に問い合わさなければならない、そういう関係になっているわけです。こういうふうな、そういう制度の中身も違うということで、したがって外国人登録制度をやめて住民基本台帳をもってかえるということは、これはできないことでございます。  なお、その場合に、長年わが国に住んでいる朝鮮半島出身者の場合はこれは除いたらどうかと、そういうお話もあったのでございますけれども、しかし外国人の登録制度というのは、これは網羅的一律にやらなければ全く効果がない。いま申し上げましたように不法入国者、不法残留者のことを申し上げましたけれども、たまたまこういう人たちは近隣諸国から入ってくる人が大部分でございます。こういう人たちと見分けのつかないそういう外国人の方々をすべて住民登録に変えてしまう、外国人登録制度の適用から外すということになると、外国人登録制度というものは空洞化いたします。役に立たなくなります。したがって、これは私どもとしては全く考えていない、また実現できないことと考えております。  それじゃ、こういうふうに外国人については登録制度、わが国民については住民登録ということでは不平等、差別ではないか、こういうこともきょう議論が出ました。しかし、これにつきましては、私どもは人権規約の上からいっても問題は全くないと考えておるわけでございます。  と申しますのは、人権規約、そのうち特にB規約の二条あるいは第二十六条で内外人平等ということがうたわれております。しかし、各国とも外国人の入国、滞在につきましては、これは主権の作用であるというふうに認めております。これは国際慣習法でございまして、この点について国際人権規約は全く触れてないわけです。したがって、いかなる外国人をいかなる条件で入国させ、また滞在を許すかということはすべて各国の裁量にゆだねられている。したがって、そういう外国人管理のための制度がそういう合理的な必要に基づいて設けられている限り、これは内外人平等であるとかそういう国際人権規約の規定の中身とは全く矛盾しないと、こういうふうに考えているわけであります。  したがいまして、内外人の間の差別ということで人権規約に違反するのではないかという、そういう議論もきょうの参考人のお話の中にもございましたけれども、私どもはそう考えておりません。また、国際的にもそういうことが問題になったことはないわけでございます。
  172. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 本法は、いま局長が言われたように、在留外国人の公正な管理に資するという目的が第一条にうたわれておりますね。あなた方の言われる公正な管理の中身というのは、いま密入国者の取り締まりであるとか不法残留者に対する適切な処置であるとか、そういうことを例示されたが、そのほかにはどんなものがあるんですか。不法入国者とかいうようなもの、それを対象に公正な管理と言うのはちょっと何かそぐわないような感じがするけれども、この中身はどういうものなんでしょう。
  173. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) 外国人に対する公正な管理と言った場合には、その広がりはいろいろあると思います。その一つの重要な部分が不法入国者とか不法残留者、あるいは最近では非常にふえております資格外活動、こういう者に対する取り締まり規制の面でございます。  しかし、外国人に対する公正な管理の中身はそれだけにはとどまらないと思います。最近非常に目立ってきましたのは、行政サービス的な面でございます。出入国管理及び難民認定法の枠の中で申し上げても、たとえば外国人に対して永住許可を与えるとか、あるいは再入国許可を与えるとか、在留の更新をするとか、外国人の利益になるようなそういうサービス的な面もございます。こういうものも合わせまして、私どもは管理という言葉の中に含められるというふうに考えております。
  174. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 余り最初に言った不法なる者の取り締まりという点を強調なさると、これは治安立法である、取り締まり法規だというふうに見られてしまうけれども、あなたが最後に言われた、いろいろ福祉面にこれを活用するんだというようなことになりますと、いろんな性格というものが出てくるわけで、いままではやはり治安立法的な面が強く表面に出てきた。そのためにこれは治安立法だというふうに思われたかもしらないけれども、だからあなたのおっしゃる後半の在留外国人のためのこれは法規なんですというのは、きわめて最近になって出てきたものなんでしょう。
  175. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) 外国人に対する規制、特に不法入国あるいは不法残留あるいは資格外活動、こういうものに対する取り締まり、これが治安立法に連なると私どもは考えておりません。これは在留管理の規制的な側面というふうに考えるわけです。しかし、それがすべてではない。最近は行政サービス的な面もふえてきているということを申し上げたわけです。それは外国人の在留そのものにつきましても、出入国管理及び難民認定法の枠内で考えても、先ほど申し上げたようなそういうものが中身としてあります。  しかし、それだけでなく、もっと実は広がりがございまして、たとえば在留する外国人が就職したり入学したり、あるいは社会保障手続をしたりするときに、外国人登録証明書というものを提示して、あるいは登録証明書をずっと置いておくわけにいきませんから、それにかわって登録済証明書というのを発給を受けてそれを提出する、こういうことで、社会保障的な面にも、そういう給付行政に関する部分にもかかわりを持ってきたということが言えるのだろうと思います。そういう意味で、外国人登録というものは、広い意味の外国人の公正な管理に役に立っているということを申し上げられると思います。
  176. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 この法律は、きょう河参考人が言ったことなんだけれども、主として在日朝鮮人を対象としておる、たとえば白人が不携帯罪で罰せられるなんということは余り聞いたことがない、これは上智大学の学長が、私ども長い間日本におるけれども、かってこういうことで取り調べを受けたことはないと言っておると、そういうあれがありましたね。ことに在日朝鮮人に対しては、教室で授業中の女性教師が突然踏み込んできた警察官に登録証の提示を求められ、家にありますと言ったら警察へ引っ張っていかれたというようなことも言っておったですね。  ですから、在日朝鮮人を対象とする取り締まり法規であるというふうに見られるのは、法自体の性格というよりは、これを適用する主として警察官だが、その警察官の不当な適用ということがそういうふうな解釈を生む原因になったのかもしれない。そういうことについては、あなたはどういうふうにお考えになりますか。
  177. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) 私どもは、外国人登録法というものが在日朝鮮半島出身者を取り締まるためのそういう法規であるとは毛頭考えておりません。もちろん、外国人登録法違反の事案というものは朝鮮半島出身者の方々に圧倒的に多いわけでございます。それはなぜかといえば、登録の対象になっているような長期在留外国人の非常に多くが朝鮮半島出身者であるという事実に由来しているものと考えております。現在七十九万名の登録外国人がおりますけれども、そのうち六十七万名は朝鮮半島出身者でございます。  そこで、それじゃ外国人登録法違反というものはそういう朝鮮半島出身者だけにしぼられているのかということでございますけれども、それはそうではないのでございます。ここに私ちょうど手元に統計を持っておりますが、昭和五十六年、昨年の外国人登録法違反の国籍別の事案の表がございます。それによりますと、朝鮮半島出身者はもちろん圧倒的に多いのでございますけれども、たとえばアメリカであるとかイギリスであるとか、そういう人たちも対象に入っております。現在わが国には約二万名のアメリカ人が住んでおります。これは朝鮮半島出身者に比べますと非常に少ない人数でございますけれども、そのアメリカ人の例を一つだけ取り上げて申し上げますと、五十六年中に外国人登録法違反で送致されました件数は百七十三件ございまして、送致された人員は百六十四名でございます。
  178. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 先ほど警察の外事課長ですかね、にもお話をしたんだけれども、警察庁は不起訴にするような微罪について足形までとって被疑者を憤激させるというようなことがありますね。それから、いま私がお話ししたように、教室に警察官が踏み込んで提示を求める。そういうような警察の行き過ぎがありますと、どうしてもやはりこの法律はわれわれを圧迫するためにあるのであるというふうな理解がここに生じますからね。これはあなた方と警察当局とがときどきは話し合いをなさって、そういう行き過ぎがないようにということはやっぱり意見交換をなさる必要があるんじゃないでしょうかね。その点どうなんでしょう。
  179. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) ただいま寺田委員のおっしゃった点は全くそのとおりでございまして、私どもといたしましても日ごろから警察当局と意思疎通をよく図っておく必要があると考えております。また、現にそれは実行いたしております。これからもそういうことで、十分に警察当局と私どもとの間の連絡というものを密にしていきたいと考えております。
  180. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、何かあれですね、あなた方が韓国籍を取得するように陰に陽に奨励をしておる。したがって、切りかえのときに、従来韓国籍から朝鮮籍に国籍を、国籍と言っていいんだろうか、現実に二つに分かれているから、国籍を移した場合に、市町村ではそういうふうに直したのに、法務省が保管している原票にはなかなかそれを訂正しないのだ、はなはだもってけしからぬという怒りがやはりありますね。これはやはり国籍を強要しておるのである。したがって、やはり弾圧である、そういう理解を持っておるようですが、そういうことはあっちゃいかぬのだけれども、この点の真相はどうですか。
  181. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) 私どももけさの参考人の陳述は伺っておりまして、そういう話が出ました。そこで早速調べてみたのでございますけれども、ことしの六月末現在の数字をちょっと御参考までに申し上げさしていただきたいと思います。  国籍の訂正の報告の件数は、全部で二千二百四十八件ございます。そのうち、ことしにつきましては十九件でございます。きょうまでの累計が二千二百四十八件でございます。それから、そのうち訂正を認めた件数は、ことしの六月末、ことしについては四件、それから累計では八百九十六件ございます。したがいまして、いまのところペンディングになっておりますのがことしについては十四件、それから累計では千三百五十件ございます。この千三百五十件というのは、あるいは少し減っているかもしれません、六月末現在ですから。  これはどういうことかと申しますと、戦後間もなく、昭和二十三年だったと思いますけれども韓国が成立いたしました。その段階で朝鮮半島出身者が外国人登録に際して、表示として朝鮮から韓国に変えたいというそういう動きがあったわけです。いろいろないきさつを経まして、結局これは認めることにしたわけです。ところが、従来全部朝鮮ということになっていたのですが、その一部が韓国になったのですが、その最初の段階では非常に簡単にこれを認めてしまったのです。一、二年たってから私どもは、これはそう簡単に認めるわけにいかないので、ちゃんとした根拠がなくちやいかぬということで、韓国の国籍登録、国籍証明書であるとか登録証明書というのでしょうか、そういうものの提示を要求するようになりました。  その最初の段階で非常に簡単に表示の変更をしてしまったそういうものについて、その後日韓協定もできまして、韓国というのは国籍である、これは国籍をあらわすものである、そういうことになりました。その韓国から朝鮮に戻したいというケースが出てきたわけです。しかし、そうなりますと、実は韓国というのはもういまの段階ではこれは国籍でございますので、国籍の変更というのは根拠がなければできない。ちゃんとした書類も出してもらって、本当にこれは誤った国籍であったということが証明されないと、私どもとしてはこれは認めるわけにいかないわけです。  戦後間もなくの時期に、余り大して何もそういう書類も出さないで簡単に認められたケースについて、実はあれは誤りであったというようなことが認められる場合には、これは私どもは韓国から朝鮮への書きかえを認めるわけでございます。それが先ほど申し上げましたようなケースでございます。  その残っている累計の千何百ケースにつきましては、なおそういうことで国籍を変更するために十分なそういう資料というものが備わっているかどうかについて検討を要するという、そういうケースでございます。
  182. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 まだ釈然としないものがありますね、あなたの御答弁によってね。同じ半島の住民で南を選ぶか北を選ぶかということで、普通のフランスからドイツへ、日本からアメリカへというのとはやっぱり趣を異にしていますからね。だから、韓国を承認してしまったから、韓国は国籍であるが北朝鮮は符号であるというような立場を余り固執して認めないということになりますと、実際にはそれは合わないのじゃないんですかね。  私ども、在日韓国人なり在日朝鮮人と接触してみて、いま不幸にして三十八度線で分かれているけれども、結局は両者は平和的に統一されるべき一つの国家なんだ、一つの国家であるという考え方を皆持っていますよね。ですから、余りそれをかたく考えて、何らかもう的確な証明がないと認めないと言っていつまでもたなざらしにしておくというのはどうでしょうかね。
  183. 大鷹弘

    ○政府委員(大鷹弘君) いつまでもたなざらしにしておくというふうには考えていないわけですが、しかし、国籍の変更というのはこれはそれほど簡単なことではないだろうと思います。これは韓国に限らず、それがフランスであろうと、あるいはアメリカであろうと、同じだろうと思います。やはり自分の国籍はAではなくてBであると言う以上は、そうですかということで簡単にこれを認めるわけにいかない性質のものであろうと思います。  したがいまして、この申し出のあったケースについて、本当にこれは間違いであった、もともと韓国国籍に入れるべき人ではなかったのだということがわかった場合には、私どもとしてはこれは訂正を認める、こういう考えでおりますし、またペンディングのものについても、そういう考えでこれからも対処していきたいと考えておるわけです。
  184. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 くどくなるし、時間も時間だから余りこだわるわけじゃないんだ。いま言ったように、フランス人がドイツ人に変わるという意味じゃないわけでしょう。一つの国家がいま不幸にして政治的に分断されている。したがって、平和的に統一さるべきである。そういう事実関係にあるわけですから、だから日本人がアメリカ人になるんだ、国籍の変更は重大なんだというその重大さとは若干やっぱり違いますよ。
  185. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) ただいまの寺田委員の御質問について先ほど大鷹局長が説明申し上げましたペンディングの事案、これはどういう事案かということをわかりやすくちょっと説明さしていただきたいと思います。  と申し上げますのは、ある人の国籍がどこか、外国人の国籍がどこかという問題は、わが国が自由に決定し得る問題ではございません。国籍国の意思というものが働いてくるわけでございます。仮に、外国人登録の上で韓国という国籍に登録されておる人が朝鮮に国籍を訂正してもらいたいという申し立てをしてきた場合、現在大韓民国政府は、在外国民登録法という法律を施行しておりまして、わが国ならわが国、韓国から言えばわが国の在留韓国人は、在外国民ということになるわけでございますが、そのわが国に在留しておる韓国人は、わが国にございます韓国の大使館に登録することになっておるわけでございます。この登録に基づいて、外国人登録法の国籍を韓国というふうに登録しておるわけでございます。  したがって、本人の申し立てで朝鮮に変更してもらいたいということを自由に認めるというようなことになりますと、その人間は、わが国は朝鮮だと、一方大韓民国の政府はこれは韓国だという、国によって国籍の帰属について抵触を来すという問題になってくるわけでございます。こういうことがありますと、いろいろの面で弊害が生じてくるということになりますので、いま申し上げましたような在外国民登録法に基づいて登録しておる韓国人が外国人登録の国籍を朝鮮に訂正してもらいたいという申し立てがあった場合には、基本的にはこの在外国民の登録を取り消す、要するに韓国の国籍を離脱するというようなことが前提になりませんと、いまの国籍の抵触の問題が解決されないということになりますので、こういう点についてペンディングの事案が生じておるということでございます。
  186. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ただその場合、あなた方、やっぱり国籍選択の自由というものは基本的に尊重していかれるわけですか。その点ちょっと御答弁願いたい。
  187. 當別當季正

    ○説明員(當別當季正君) 国籍選択の自由というのはもちろん十分に尊重もし、それを前提にした外国人登録行政を行っておるわけでございますが、わが国と外国政府とによって、当該在留外国人の国籍の把握についての抵触を生ずるということがないような措置をとっていかなきゃいかぬというようなことで、先ほどのペンディングのようなケースが生じておるわけでございます。
  188. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それはそれじゃこの次また論ずることにして、あと公安調査庁長官がお見えになっていますか。――  この問題は、先般新聞紙上で私見たんです。あなたの部下の職員が警察から来た情報を右翼団体に漏らしていたというような記事があったんですが、こういう事実があったことは間違いないんでしょうか。
  189. 鎌田好夫

    ○政府委員(鎌田好夫君) お答えいたします。  おおむね新聞に記載されたような事実があったわけでございまして、関東公安調査局に所属する若い調査官でございますが、五十三年から右翼の調査を担当している調査官が、統一戦線義勇軍と称する右翼団体の調査に当たっておったわけでございます。その調査の過程で統一義勇軍の木村という人と、構成員でございますけれども、接触していたわけでございますけれども、その統一義勇軍の実態把握に努めている過程において、いま御指摘のような警察から受け取っていた資料あるいは当庁で作成した資料、このコピーを渡したということがあったわけでございます。渡したのは昨年の十二月とことしの一月、三回に分けて渡しているようでございます。
  190. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私どもは、戦前大体検察庁と警視庁との関係などを先輩からいろいろ聞いておった。たとえば頭山秀三を逮捕する、あるいは頭山邸を検証するというようなことを検察庁が決定する。武装警官を十人よこせというようなことを言うと、すぐそれが外部に漏れちゃう。だから、大事なときは行く先を告げずに、ただ武装警官を十人よこせと言ってやっておるというふうなことを第一線の検事からも聞いたんですね。だから、むしろ情報を外部に漏らすのは警視庁の方だ、警察の方であるというふうにわれわれ頭の中で、そういうふうに言われておるというふうにいままで聞いておった。  ところが、今度はまるでそれと逆になっちゃって、警察から来た情報を法務省の方が漏らしちゃった。法務省といっても、公安調査庁は検察官出身の方がキャップでいらっしゃるから、いままでの常識と百八十度変わっちゃって、これはちょっと困るじゃないかと、これはあなた方がよほど綱紀を引き締めていただかなきゃいけない。それからまた、そういうことをすることは公務員法に違反するわけでしょう。これは当然処分をして、そういうことが二度と起きないようになさらなきゃいかぬですね。その点はどうなんでしょうか。
  191. 鎌田好夫

    ○政府委員(鎌田好夫君) 非常に微妙な問題でございますが、私どもの調査は御承知のように任意調査に限られているわけでございますが、任意調査のあり方にいろいろあるわけでございますけれども、その一つとしてギブ・アンド・テークということがあるわけでございます。ギブ・アンド・テークと申しますと、金銭その他の物質的利益を提供することによって情報をいただく、あるいはそれ以外の非物質的な利益を提供することによって情報をもらう、こういつたことを考えておるわけでございますが、その際にある種の情報を交換するといいますか、向こうの希望している情報を与えることによって情報をもらうという場合もやむを得ず起こることがあるわけでございます。  そのような場合に、いま御指摘のように、まず第一に国家公務員でありますから秘密の問題がございます。公務員としての義務の問題がございます。それから、われわれとしてはその情報がだれから出ているのかということを秘匿することがわれわれの将来の仕事のために必要でございますので、そういったことが絶対にわからないという方法が必要である。第三に、結局その情報を与えることによってこちらがとる情報の方が価値が大きいということが絶対に必要である。向こうに情報を渡すことによってプラス・マイナス・プラスになるということが絶対に必要なわけでございまして、そうでない与え方というのはこれは厳に行わないようにさしているということでございます。  特に、今回の場合は、コピー世代と申しますか、学校の試験のときにも他人のとったノートをコピーしてそれでやっているといったような若い人たちでございましたので、コピーということに対する観念が薄かったのかと思いますが、この統一義勇軍に関する部分のコピーをそのまま渡した、しかもよそからもらったものを渡したということで、われわれの常識からするとまことに遺憾なことに考えているわけでございます。
  192. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それは、遺憾なことをやったのを、何かあなたのいまの答弁だと弁明するがごとき趣旨にもとれるんだけれども、それじゃそういうマル秘情報だということなんだが、マル秘情報を入手するためには職員が右翼団体なんかに渡すことを許しているんですか。肯定なさるつもりかな。  というのは、微妙な問題であるとか、情報を交換する場合もあるんだとかいうようないろんなことを言うと、何かその若者のやったことをあなたが一生懸命弁明しているようにも思われますね。それじゃマル秘情報なんというのは、国会が国政調査権で求めた場合にどんどん出したらいい。国会が求める場合はものすごく秘匿して、若者が右翼団体に交付するなんて、そんな不合理なことはないでしょう。一体それは公務員法違反なのか、違反でないのか、どっちなんです。
  193. 鎌田好夫

    ○政府委員(鎌田好夫君) 本件の場合は、内容について調査しましたけれども、当該団体の集会、デモの実行状況が書かれているという内容でございまして、それ自体すでに明らかになっている事実が中心でございましたので、国家公務員法には触れない場合に当たるというふうに考えました。  ただ、それが警視庁がまとめた資料である、しかもそれをそのまま生の形で出したという点で遺憾であったということでございまして、行政処分には該当いたしませんかもしれませんが、厳重注意の上、当分の間調査の実行から外しまして内部事務に従事させる、反省をさせるという処置をとったわけでございます。
  194. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうしますと、その情報というものは公知の事実であって、新聞に書いてあるようなマル秘情報ではなかったんだという、そういうことですか。
  195. 鎌田好夫

    ○政府委員(鎌田好夫君) われわれとしては、そのように判断したということでございます。
  196. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、あなたが遺憾の意を表明したというのは、警視庁の情報をそのまま漏らした点にある、その点が遺憾だと、そういうことかな。その点どうでしょうか。
  197. 鎌田好夫

    ○政府委員(鎌田好夫君) そのとおりでございます。
  198. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうも釈然としないが、マル秘情報ではないんだ、公知の事実であると。新聞の報道とも若干違う。何か警察当局の方はそれで怒っちゃって、その後の情報の提供をストップしたというようなことまで新聞に書いてあるんだけれども、そういう警察が怒ってストップしたなんということはなかったわけですね。
  199. 鎌田好夫

    ○政府委員(鎌田好夫君) その点は、われわれとしてはストップされたのかどうか判断できないわけでございますが、警察からの連絡によりますと、それまで出していた公安情報というのを発行をやめたということで、それ以降は当庁には届いておりません。
  200. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 何かあなたの答弁を伺うと、率直に申しわけなかったということを謝るのが嫌なものだから、いろんなことを言って弁明しているように聞こえて余り釈然としませんよ、私の方は。警視庁がいままで出してくれた情報をにわかにやめたなんというのはおかしいじゃないですか。やっぱり怒っているんだ、それは。どうもあなたの御答弁を伺って、私は釈然としない。真実を率直に語っていないという感じがするんだ。  しかし、あなたを責めることが僕は目的じゃないので、そういうことが二度と起きないように、右翼をあれするというようなことは、もういま一番私どもが迷惑しているのは右翼だから、右翼をむしろしっかりと取り締まってほしいと私は考えておる。接触するのもいいだろうけれども、それに情報を提供するなんというのは言語道断だと私は考える。まあ、あなたにも長い間お座りいただいたが、もうあなたは結構ですから。  最後に大臣にお尋ねをしたい。  外国人登録法の問題につきましていろいろいままで、たとえば登録証明書の登録自体を十四歳から十六歳に引き上げた、それから登録証明書の常時携帯義務も十四歳から十六歳に緩和をした、確認登録、切りかえ登録といいますか、それも三年から五年に延長した、違反者に対する罰則なども、たとえば常時携帯義務の違反について体刑を外して罰金刑だけにしたというような進歩があることは私も認めるにやぶさかではないのですけれども、しかし、なお登録については十六歳から十八歳にしてもらいたいというような要望があることはあなたも御存じだと思います。それから違反者に対する罰則につきましても、これは本来民事罰ではないだろうか。したがって、過料にしてもらいたいというような要望もあります。  その中には、決して法の適用を受ける人々だけではなくして、たとえば衆議院の参考人として出頭いたしました大阪市の生野区長などが組織しておる登録事務担当者の協議会も、そういうような意見を持っておるということも明らかになっております。あるいは指紋押捺というようなものを、局長がおっしゃるように必要であるとしても、それは一回限りでいいんじゃないかというようなことがあるわけであります。  すべてそういうふうな問題に関しまして、やはりそういう国民の願望というものを十分御検討になって、もうこれで根本的な改革はしてしまったんだからこれ以上考慮の余地はないというかたくなな態度をおとりになるのではなくして、やはりできるだけ大衆の願望を入れて取り締まりを緩和してまいりましょう、それも検討いたしましょうという態度が望ましいと思うのでありますが、この点は大臣いかがでしょうか。
  201. 坂田道太

    ○国務大臣(坂田道太君) 私どもといたしましては、ただいまの段階では現行法よりも一歩前進であるというふうには考えております。  しかし、衆議院、参議院を通じまして、諸先生方のいろいろの御討議、御批判等を私率直に承りまして、やはりこういうような行政法規というものは、常に情勢の変化に対しまして改廃されるものであるということは言うをまたないところでございます。言うなら、日に新たに日に新たにということを心がけるべきものであるというふうに私は思うわけでございます。外国人登録法もまたその例に漏れませんし、最近における外国人登録制度を取り巻く諸情勢を顧みますときに、国の内外の国際化現象というものは今後も引き続き拡大され進化されていくものと思われるのでございます。  このような時代に直面いたしまして、この時代の要請にこたえ得る運用を考えるということは、衝に当たる者の使命であるというふうに考えるのでございまして、本改正案の御審議の過程で御指摘のございました諸点につきましても十分留意し、不断の検討をいたしていく所存でございます。
  202. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 終わります。
  203. 鈴木一弘

    ○委員長(鈴木一弘君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 鈴木一弘

    ○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認めます。それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。1別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  外国人登録法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  205. 鈴木一弘

    ○委員長(鈴木一弘君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕.
  206. 鈴木一弘

    ○委員長(鈴木一弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十四分散会      ―――――・―――――