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1980-04-24 第91回国会 参議院 法務委員会 7号 公式Web版

  1. 昭和五十五年四月二十四日(木曜日)    午前十時十分開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月十八日     辞任         補欠選任      高平 公友君     野呂田芳成君      山本 富雄君     永野 嚴雄君      降矢 敬義君     八木 一郎君      衛藤征士郎君     長田 裕二君      大森  昭君     加瀬  完君      吉田 正雄君     阿具根 登君  四月二十一日     辞任         補欠選任      上田  稔君      長田 裕二君     丸茂 重貞君      長谷川 信君     田代由紀男君  四月二十三日     辞任         補欠選任      丸茂 重貞君     斎藤栄三郎君  四月二十四日     辞任         補欠選任      斎藤栄三郎君     中西 一郎君      永野 嚴雄君     堀江 正夫君      宮之原貞光君     佐藤 三吾君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         峯山 昭範君     理 事                 竹内  潔君                 寺田 熊雄君                 宮崎 正義君     委 員                 小林 国司君                 中西 一郎君                 野呂田芳成君                 堀江 正夫君                 八木 一郎君                 佐藤 三吾君                 橋本  敦君                 円山 雅也君    国務大臣        法 務 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        法務大臣官房長  筧  榮一君        法務大臣官房審        議官       水原 敏博君        法務省民事局長  貞家 克己君        法務省刑事局長  前田  宏君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   大西 勝也君        最高裁判所事務        総局刑事局長   柳瀬 隆次君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君    説明員        警察庁刑事局捜        査第二課長    漆間 英治君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○民法及び家事審判法の一部を改正する法律案  (内閣提出、衆議院送付) ○参考人の出席要求に関する件 ○刑事補償法の一部を改正する法律案(内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  去る十八日、大森昭君、吉田正雄君、高平公友君、山本富雄君、降矢敬義君及び衛藤征士郎君が委員を辞任され、その補欠として加瀬完君、阿具根登君、野呂田芳成君、永野嚴雄君、八木一郎君及び長田裕二君が選任されました。  また、去る二十一日、上田稔君が委員を辞任されました。  また、同日、長田裕二君及び長谷川信君が委員を辞任され、その補欠として丸茂重貞君及び田代由紀男君が選任されました。  また、昨二十三日、丸茂重貞君が委員を辞任され、その補欠として斎藤栄三郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) 民法及び家事審判法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。倉石法務大臣。
  4. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 民法及び家事審判法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  ごの法律案は、民法につき、第一に、法定相続分の改定をしようとするものであります。すなわち、現行の民法は、法定相続分につき、子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分は三分の二、配偶者の相続分は三分の一、配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者及び直系尊属の相続分はおのおの二分の一、配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は三分の二、兄弟姉妹の相続分は三分の一と定めておりますが、それぞれの場合につき配偶者の相続分を引き上げるものとし、子及び配偶者が相続人であるときは、子及び配偶者の相続分はおのおの二分の一に、配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は三分の二に、直系尊属の相続分は三分の一に、配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は四分の三に、兄弟姉妹の相続分は四分の一にそれぞれ改めようとするものであります。これは、最近の家族関係におきまして、いわゆる核家族化が進んだことと子の数が減少したこととによって家族構成にかなりの変化を生じていること、及び婚姻生活における配偶者の貢献に対する一般の評価が高まり、これを相続に反映させるべきであるとする意見が国民の間に有力となってきたこと等にかんがみ、相続分を改定することにより配偶者を優遇しようとするものであります。  第二は、兄弟姉妹が相続人となるべき場合の代襲相続人の範囲を制限しようとするものであります。現行の民法におきましては、代襲相続人の範囲に制限がありませんので、兄弟姉妹が相続人となるべき場合に、被相続人とは格別のかかわりもなかった者までが代襲相続人となることがあり、しかもそれらの者が遠隔の地に居住し、または所在が不明であるために、遺産の分割の協議または審判が遅延する等の弊害を生じている実情にかんがみ、この場合の代襲相続人の範囲を兄弟姉妹の子までに制限しようとするものであります。  第三は、寄与分の制度を新たに設けようとするものであります。この制度は、被相続人の財産の維持または増加につき特別に寄与をした相続人には、遺産の分割に際し、本来の相続分を超える額の財産を取得させようとするものであります。現行の民法にはこのような制度がありませんので、特別の寄与をした相続人も、他の相続人と同様に、相続分に応じた財産の取得をすることができるにすぎません。そこで、このような特別の寄与をした相続人は、寄与分として、相続人間の協議または家庭裁判所の審判によって定められる額の財産を遺産のうちから取得できるものとし、これによって遺産の分割における相続人間の実質的な衡平を実現しようとするものであります。  第四は、遺産分割の基準に関する改正であります。これは、遺産分割の基準を定めている現行の民法第九百六条に、遺産の分割に当たり考慮すべき事情の例として、相続人の「年齢」並びに「心身の状態及び生活の状況」を新たに加えることにより、遺産の分割に当たり、これらの事情をも考慮すべきことを明確にしようとするものであります。  第五は、遺留分を改定しようとするものであります。現行の民法におきましては、遺留分は、直系卑属のみが相続人であるとき、または直系卑属及び配偶者が相続人であるときは、被相続人の財産の二分の一、その他の場合は、被相続人の財産の三分の一と定められておりますが、配偶者の相続分を第一のように引き上げることといたしますと、配偶者の相続分が子の相続分と同等となりますので、これとの均衡上、配偶者が相続人となる場合で、現行の民法では遺留分が三分の一とされている場合につき、これを二分の一に引き上げようとするものであります。  次に、家事審判法の改正の趣旨を申し上げます。この改正は、第一に、民法を改正し、寄与分の制度を新設したことに伴いまして、「寄与分を定める処分」を家庭裁判所の審判事項として追加しようとするものであります。  第二は、家事審判事件につき、審判前の保全処分の制度を設け、これに形成力・執行力を付与しようとするものであります。すでに、最高裁判所規則である家事審判規則において、審判前の仮の処分として種々のものが認められておりますが、これらの処分には執行力がないと解されているために、その実効性はきわめて乏しいものとなっております。しかし、家事事件におきましても、申し立てがあってから審判がされるまでには長期間を要することがあり、この傾向は、生活関係の複雑多様化ないし権利意識の高揚に伴って、近年ますます顕著になっております。この間に関係人の財産に変動が生ずることになりますと、審判を行うこと自体が困難になったり、後日、権利者が有利な審判を得たとしても、執行による権利の実現が困難となるおそれがあるのであります。また、事件関係人の生活上の危険を防止するため、審判手続の進行中に仮に給付を命ずる必要がある場合も少なくありません。そこで、この際、家事審判法に審判前の保全処分の制度を設け、これに形成力・執行力を付与して、家事審判手続における暫定的な権利関係の規制を図り、家事審判の実効性を確保しようとするものであります。  第三は、遺産分割等の審判事件につき、本審判に先立って、遺産の全部または一部につき、相続人に対し競売その他の換価を命ずることができるものとするものであります。これは、遺産分割等の審判において、適正妥当な分割をするため、あらかじめ遺産の全部または一部につき換価しておく必要のある場合が多いことを配慮して講じた措置であります。  第四は、過料等の額の引き上げであります。これは、現在の経済事情等に照らし、家事審判法中の履行命令の不遵守等に対する制裁としての過料等の罰則規定がその本来の機能を果たすことができるようその額を改定しようとするものであります。  以上がこの法律案の趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  5. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  6. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。  民法及び家事審判法の一部を改正する法律案の審査のため、来る五月八日の委員会に参考人の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) 御異議ないと認めます。  なお、人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  9. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) 刑事補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は、去る十七日の委員会において聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 まず、刑事補償法の問題からお尋ねをいたしますが、今回この刑事補償金を下限が千円、上限が四千百円から上限のみ四千八百円にこれを引き上げようとするわけであります。ただ、死刑の場合は一千五百万円を二千万円に引き上げるということになっておりますが、この引き上げは、今回に限って考えてみますと、引き上げ幅が七百円でありますから、約これは二〇%には達しませんけれども、かなりな率としては引き上げになっておりますが、ただ、この刑事補償法が昭和二十五年に制定せられましたとき、出発点の金額が非常に安うございましたので、その関係でしょうか、どうも四千八百円という金額が、現在の労働者の賃金それから物価水準等に比べまして、これは著しく安いように思われるわけであります。仮にこの四千八百円に二十五日を掛けてみますと、これは十二万円にも達しないということでありますので、成年の労働者の現在の常用労働者の平均賃金にも達しないということであります。これではどうも低きに失するのではないかと考えますが、この点いかがでしょうか。
  11. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 今回の改正は、お手元の資料にもございますように、賃金、物価等の上昇等を考えまして額を決めておるわけでございます。念のために数字で申しますと、賃金関係では五十三年を一〇〇とした場合に五十五年の推定が一一四・一と、それから物価関係では同じく一一一・四と。これを、従来の方式がいいかどうかという問題はございますけれども、両方足しまして二で割るというようなやり方をしておるわけでございますが、その数値が一一二・八と、こういうことになるわけでございまして、これを現行の四千百円に掛けますと、四千六百二十五という数字が出るわけでございます。それを切り上げますと四千七百というような数字も出るわけでございますが、一面、証人の日当額の引き上げということも考慮しなければなりませんで、その方が四千八百円ということになっておりますので、これらを総合勘案して四千八百円ということにさしていただこうと、こういうことでございまして、それ自体妥当な額ではないかというふうに一応思っておるわけでございます。  ただ、御指摘のように、従来の方式のもとになる制定当初の数値が低いんじゃないかということは御意見としては十分あり得るところであろうと思います。ただ、その当時のことはいろいろと古いことでもございまして、必ずしもはっきりしない点がございますけれども、当時の、つまり現行法が制定されました当時の国会におきます政府委員の説明等を見ますと、旧法つまり現行法の前の刑事補償法でございますが、その場合には一日五円以内ということになっておった。その当時いろいろと横並びの金額を見ますと、たとえば旧刑事訴訟法におきます未決勾留日数の罰金への換算率と申しますか、それが一日一円であるというようなこと、また証人の日当が二円以内であるというようなこと、鑑定人の日当が二円以上十円以内であったというようなこと、こういうようなことを横並びで考えまして、それが新刑事訴訟法になりまして見ますと、先ほどの換算率が一日二百円となっておる。一方、証人の日当は百二十円、鑑定人の日当が三百六十円以内と、こういうことになっている。このような対比をいたしますと、一応補償金額が一日三百円、あるいは鑑定人の方で見ますと百八十円というふうな数値が出るというような説明になっておりまして、その間でいわゆる賃金、物価等の上昇というものも横でにらんでいるようでございますけれども、結論的には必ずしも賃金の上昇に応じてスライドして正確に決めなきゃいかぬという性質のものでもなかろうというような議論がそこに入りまして、結論的には一種の達観と言うとおかしいかもしれませんけれども、その当時の時点で幾ばくの補償をすれば補償として成り立つかというような常識的な観点から、先ほどのような、場合によっては三百円というような数字も出るのを勘案しながら四百円というふうに決めたというふうに言われておるわけでございます。それについてはいろいろと御議論もあるようでございますけれども、当時といたしましてはそういう考えであったということでございまして、それをもとにいたしまして数次にわたる改正が行われて今日に至っておるということでございます。したがいまして、そういう考え方を前提といたしますと、必ずしも低いわけではないんじゃないかということでございます。
  12. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 刑事局長のいろいろ説明を聞きますと、証人その他の日当を考慮したというのはかなり大きなウエートを占めるようですね。そして、何か結論としては必ずしも低いことはないという、何かこれは低いことないという結論になってしまったんじゃないですか。しかし、これは憲法の規定からきておるので、当然国家が不当な公権力の行使によってその損害を与えた、それを補償しなきゃいけないということになりますと、実際上その不当な拘禁によって被害をこうむった人間がどの程度の損害を受けたんだということを考えませんと、証人の日当がどうのこうのというよりは、やっぱりその本人に即して考えてもらわないといけないので、そうなりますと、最小限度これは現在の一般的な労働者の平均賃金、常用労働者の平均賃金ぐらいのものは見ませんと、やはりこれは低いと言わざるを得ないんじゃないですか。いまお話ししたように、大体一カ月二十五日働くでしょう、普通の人は。ですから、平均賃金を出す場合、平均賃金というとなんだけれども、平均の月収を出す場合に、一日の平均賃金に大体二十五を掛けるようですね。もし四千八百円だとしますと、この人は月に十二万円の収入の者だということになるでしょう。そうすると、常用労働者の平均賃金よりもはるかに低いものになってしまう。政府はいつも賃金白書を出しておりますね。それによると、平均の常用労働者の賃金というのを月額どのくらいか刑事局長は御存じですか。
  13. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 一応この法案を提出するにつきまして調べましたところで、先ほどもこの資料にあることで申したわけでございますが、この資料の「賃金・物価指数調」となっておりますように、一応私どもの常用労働者の一日平均給与額というもの、これが五十三年は七千八百四十六円というふうに見ているわけでございまして、五十五年度を推定して八千九百四十九円というふうに見ているわけでございます。
  14. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 常用労働者の五十三年が七千八百四十六円。そうしますと、ますますもってこの四千八百円というのは低いことになる。ことに、五十五年の推定が八千九百四十九円とあなた方が推定しておられるようでありますから、それを参考にしますと、ますますこれは低いということにならざるを得ないわけで、これを必ずしも低くないと言うのはどうだろうかな、ちょっとおかしいんじゃないですか。しかも、あなたが制定当時のいろいろな論議を御紹介になったけれども、制定当時では、近い将来の改正を期してともかくこの法律を速やかに制定しようという意見が強かったんじゃないですか。そして、国家の財政状態を考えるという、そういう配慮が強かったようですね。しかし、憲法の精神から言うと、余り財政状況というものを勘案して、それにウエートを置くということは必ずしも妥当でないと思われるんですが、しかも、あなた御存じでしょうね、昭和二十五年から三十九年まで十五年間も、当初の四百円を上限とするものが据え置かれておりますが、これは御存じでしょうね。どうですか。
  15. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) いろいろとお尋ねがあるわけでございますが、まず、確かに賃金だけを見ますと、それとの対比ということにおいては四千八百円というのは低きに失するんじゃないかという御議論が出るかと思います。このことは従来から御議論もあったところでございまして、この刑事補償というものがいわば生活費を見るということかどうかというような議論も毎々あったように承知しておるわけでございます。で、従来から私どもとしては、賃金そのものをそのまま補償するということでもなかろうというようなお答えをまた、してきたようでございます。したがいまして、当然に常用労働者の平均賃金というものに合わせるようにということにつきましては、考え方がいろいろあるというふうに思うわけでございます。  それから次に、制定当時、近い将来に改正するというようなこと、また財政状態を勘案するというようなことが議論されておったようでございます。このことも承知しております。  このことに関連して申しますと、確かに寺田委員の仰せになりますように、この制度は憲法にもとがあるわけでございますので、それなりに重視しなきゃならぬことは当然でございますけれども、やはりその財源と申しますか、支出のもとは国の負担、つまり国民の負担であるわけでございます。したがいまして、財政の問題ということも全く無視はできない問題ではないかというふうに思うわけでございます。  それから、二十五年から三十九年まで改正が行われなかったことを知っておったかどうかということでございますが、客観的な事実といたしましてはそのとおりでございまして、大変過去のことになりまして、どういうふうにお答えしたらよろしいかわかりませんけれども、そのことは事実でございます。
  16. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 必ずしも常用労働者の賃金によらなくてもいいんだということになると、あなたは何によるべきだと思われるんですか、それじゃ。
  17. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) それがまあ根本の議論であろうかと思います。そういう意味で、金額の当否は別といたしまして、制定当時の考え方というものが参考になるだろうということで、先ほども当時の政府側の考え方というものを申し上げたわけでございます。全く基準がなくてはいかぬわけでございますけれども、この金額を定めますについては、それぞれさかのぼって昔の例を考えると。昔の例を考えますとだんだんわからなくなる点もあみわけでございますけれども、この法律につきまして言えば、旧法時代が一日五円以内であったと。それなりに合理的なものであっただろう、こういう推定が働きまして、それをもとにいたしまして、また一方で証人の日当あるいは鑑定人の日当というものもそれぞれ法律で決められておるわけでございますから、またそれなりの合理的なものであろうということを前提といたしまして、そういうものを総合勘案して決める。で、先ほども御紹介しました、当時の政府側の説明の最後の方にありますように、いろいろな事情を勘案しながら、結局はこの時点でどれだけの補償をすれば一応この刑事補償として補償したということになるかという常識的な考慮、あるいは常識的な判断ということを言っておるわけでございまして、帰するところはそういうことしかないんじゃないかというふうに思っております。
  18. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 あなたは証人の旅費、日当などを盛んに援用されるけれども、証人は別段、その日一日出たからといって生活上にそれほど差し支えるものじゃないので、月給をもらっている人なら、別段一日出たからといって月給を引かれるとは限らない。それから日当の人でさえも、日当仮に八千円取ったとしても、そのときに四千円の日当をもらえば、四千円は損するかもしれないけれども、しかし証人の場合の損失と、何年間も拘禁された人の精神的、物質的な損害とは、これは比較にならぬでしょう、あなた。しかも、証人の場合には正しい裁判を国家がするということに対する国民としての協力ということもある。だから、それはある程度金銭的な犠牲を、まあわずかであるけれども、甘受しなきゃいけないという理論が成り立つけれども、不当な裁判で拘禁された人間が証人と同じような金銭上の負担をしなければならないという理論にはならないでしょう。あなたは盛んに証人、証人と言われるが、どうも証人のあれはそう右へならえすることは適当じゃありませんよ、それは。どう考えたって。
  19. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 私も別に証人にならわなきゃいかぬというふうに申したつもりはございませんで、当時も証人とか鑑定人等というものを横に置いて、それを横にらみしながら決めておったという程度のことを申したわけでございます。  また今回も、先ほど申しましたように、単純な計算でまいりますとむしろ四千七百円に切り上げてもなるわけでございますが、それでは低過ぎるんじゃないかということで、さらにそれを引き上げる、もう一回二重に切り上げるということで四千八百円にしておるんだという御説明をしたわけで、その説明の中に一つの事情といたしまして証人日当も四千八百円が考えられているので、それを下回るということは幾ら何でも低過ぎるということで考えたんだという趣旨のことを申し上げたわけで、証人日当にそろえなきゃいかぬということを申したつもりはございません。
  20. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 あなたは八十四国会で瀬戸山法務大臣が、八十四国会における刑事補償法の改正で、「上限の問題がやや少し低位に見られておるような傾向がずっときておる、実情と合わないような関係があらわれておることも事実でございます。」「もう一遍経過から、この法の精神からいって将来必ず検討しなければならない、かように考えております。」という答弁をしておることを御存じですか。
  21. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) ええ、そのような御答弁があったことは承知しております。
  22. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、これは刑事局長――伊藤榮樹刑事局長が、「確かに現在見てみますと、制定当時とは大分、常用労働者の平均賃金日額との差異が生じておるということは否定できないわけでございます。したがいまして、ただいま御指摘いただきましたことは、私どもとしてももう一度この刑事補償金額の基準日額を再検討してみる必要があるのじゃないかというふうな感じを持っておるわけでございます」というような意見を、答弁をしておる。これはどうですか。
  23. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) その点も承知いたしております。
  24. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 したがって、これはまあそのときの瀬戸山法務大臣が言いましたように、そもそも出発点からこの問題について考えていかなきゃいかぬというようなことが、やはり当然この法の改正を考える場合にはあなた方も考慮していただかないと困るわけですよ。それをあなた御否定になりますか、あるいは肯定されますか。
  25. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 確かにこの法律ができまして以来、長い間かかっておるわけでございますが、まあその制定当時のこと、またその後、たとえば先ほど御指摘になりましたように、ある一定の期間引き上げが行われなかったということ、また、その後いろいろと引き上げが行われておりますけれども、それを全体を通じて見ますといろいろ問題点があるように思われるということ。また一方におきまして、証人等とパラレルということを申すわけじゃございませんけれども、証人日当等の引き上げにつきましてもいろいろとでこぼこみたいなものがあるようでございまして、そういうものをいわば全体的に、刑事補償の補償金額に限らずいろいろ刑事関係のそういう日当額とかたくさんあるわけでございますので、そういうものも総合的にあわせてまあ見直しと申しますか、そういう必要があるように思っております。そういう意味においては、委員の御指摘についてはまことにそのとおりであろうと思います。
  26. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最高裁の方へお伺いしますがね、岡垣最高裁刑事局長――これは前の八十四国会当時の刑事局長ですね、この岡垣さんが、五十三年度予算における裁判所の当初の要求は、基準日額の上限を六千円とし、下限を千円としたという趣旨のことを言っておられますが、このことをあなた御承知でしょうか。
  27. 柳瀬隆次

    ○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 仰せのとおり答弁しておることを承知しております。
  28. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 まあそういうことがあるわけで、つまり最高裁判所や法務省としても、五十三年度において当初の要求がすでに上限が六千円であったということにかんがみると、あなた方も、やはりこの四千八百円というような額はまあ低いと常識上それは考えておられたに違いないでしょう。  だから、そうは要求しても国家財政の見地から大蔵省がなかなか通りにくいということを率直におっしゃっていただけば、われわれとしては納得いくんだけれども、刑事局長のように、どうも低いということをなかなか認めずにいろいろ陳弁せられると、どうもちょっとわれわれとして納得しがたいわけでね。そうでしょう。  だから、もう一遍これはやはり当初にさかのぼって検討して、できるだけこれが妥当な線に近づけるように努力するということをおっしゃっていただかなきゃいけません。どうですか。
  29. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 私どもこの金額で法案をお願いしている立場でございますので、これを否定するようなことも申しかねるわけでございましておしかりを受けるわけでございますが、先ほども申しましたように、いろいろな面で再検討しなきゃいけない。これは前々から申しておりますが、改めて認識しておるところでございます。まあ先ほど申しましたように国家財政という問題もございますし、いまそのことも委員がおっしゃったところでございますが、率直に申しましてこの刑事補償法関係の予算が最高裁の方で要求をされ、また執行もされておるということで、私どもともう少し連絡をよくいたしましてその点をやっていかなきゃならぬという問題が含まれておるように思うわけでございます。  したがいまして、それやこれやいろいろ考えまして、来年度の予算要求につきましては、最高裁御当局とも十分協議を遂げまして、より一層この金額が引き上げられますように努力をいたしたいと思います。
  30. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 法務大臣、いま刑事局長が最高裁とよく連絡をとって妥当な線に引き上げるように極力努力したいということをおっしゃいましたが、これはやっぱり法務大臣の御努力や、それからそういうお気持ちがないといけませんわね。いかがでしょうか。
  31. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 全般的に見まして、先ほど来寺田委員とこちらとの質疑応答を拝聴しておりまして、いろいろなことを考えさせられながら承っておったわけであります。私といたしましても、ただいま刑事局長申し上げましたような方向で努力をしてまいりたいと思っております。
  32. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 じゃ、この問題はこれで終わりまして、次はちょっとKDDの問題をお尋ねしたいと思うんですが、これは警察庁の担当課長来ておられますね――それでは……。     ―――――――――――――
  33. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) この際、委員の異動について御報告いたします。  ただいま斎藤栄三郎君が委員を辞任され、その補欠として中西一郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  34. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 KDDの問題につきましてはすでに佐藤陽一――これは前社長室長ですか、これが五十五年二月二十四日に逮捕され、五十五年三月十五日に起訴になっておりますね。これは業務上横領、関税法違反、物品税法違反。それからその後、これは官界に飛び火して松井清武――これは郵政省の元電監室監理官、それから郵政省郵務局国際業務課長日高英実、これが五十五年三月十八日に逮捕されている。そして、四月八日に収賄で起訴になっておる。それからまた佐藤陽一が贈賄で同日付で起訴になっておる。それから板野元社長が五十五年四月五日に逮捕されて、二十六日にこれが勾留が満期となるということのようですね。  その後捜査の進捗ぶりといいますか、これがどうなっているか、まず警察庁の方に御説明いただきたい。
  35. 漆間英治

    ○説明員(漆間英治君) この事件に関します捜査の経過は、ただいま御質問の中に織り込まれておるとおりでございまして、現在板野KDD元社長を逮捕勾留中でございます。二十六日が満期であることも御指摘のとおりでございます。  この事件の逮捕容疑は業務上横領罪でございまして、小さな下着とかその他のたぐいを一千万円近く買ったというような容疑内容でございまして、その容疑内容の裏づけに現在警視庁が全力を挙げているところでございます。
  36. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 この事件については捜査の対象が単純な業務上横領罪に限られておるのではなくして、これが官界、政界に対する贈賄罪、少なくも官界、だけでなくして政界にもそれが波及するということがいままでたびたびマスコミで報道せられておりますし、国民もその問題に非常に関心を寄せておるわけですね。  ところが、最近贈収賄罪の成立の見込みがないと、したがって、捜査はもうこれで終わりであるかのような報道が盛んになされております。それで板野元社長の勾留満期がぎりぎりの二十六日ということになりますと、あなた方ももうそろそろそういう点の見当といいますか、大体の判断はおつけにならぬといけませんわね。どうだろうか、政界に対してあなた方の追及というものはもうこの程度で挫折してしまって見込みがないんだろうか、その点はいかがです。
  37. 漆間英治

    ○説明員(漆間英治君) 確かに勾留満期が近づいておりますので、ある意味では捜査は山場に差しかかっていることは事実だと思います。  しかし、警察といたしましては常々申し上げておりますように、この事件に関しまして刑事責任を問うべき事実があれば厳正に対処するということで、初めから捜査に携わってきておりまして、今後においてもその方針は貫き通す方針でございます。したがいまして、一部の新聞に政界工作といいますか、政界工作の追及を断念したかのごとき報道が出ておるわけですけれども、決してそうではございませんで、今後とも解明すべき、刑事責任を問うべき事実があれば厳正に対処するという方針のもとに捜査を続けてまいるという方針にいささかも変更はございません。
  38. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから今度は法務省の刑事局長にお尋ねしますがね。いま板野が逮捕され、勾留せられ、勾留が更新せられ、そして二十六日が満期となっておる。いまの被疑事実の罪名は業務上横領ですね。二十六日ということになると、あと二日を余すだけなので、業務上横領としての起訴はほぼ確実とわれわれは判断するんですけれども、これはもうその程度のことはあなたもおっしゃっていいんじゃないでしょうかね。どうでしょう。
  39. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 何分にも起訴、不起訴という重大なことでございまして、あと二日というようなお話もございましたけれども、最終の二日というのは大変大事な二日間でございます。  御案内のとおり、この業務上横領の事実自体相当長期間にわたる、また多数にわたる、多数回に及ぶ事案でございまして、その事実の確定ということにつきましても、それなりの努力を要するところでございまして、そういう意味で、今段階であと二日とおっしゃいましても、どういう結論になるかということを申し上げるのはまだ早いのではないかと、かように思います。
  40. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 警察の方にお尋ねするけれども、非常に長い間にわたって業務上横領の行為が行われたと、われわれはそういうふうに見ておるわけですね。それがマスコミの報道によりますと、交際費の使用と絡み合っておるということなんです。われわれもやはり交際費を持つ地位についたことあるけれども、交際費というのはこれは明らかに個人の物品を買ったり、個人の飲み食いに使ったりということは、これはできないはずの性質のものですね。だから、もしも板野が個人的な用途のための、あるいは家庭用品を買ったなんと言えばね、それは交際費の使用で賄えるもんじゃなくて、それはやはり交際費の乱用になるというか、許されないことだと私は思いますけれどもね。  まあそれは別として、あなた方が非常に細かい物品の買い入れとか金銭の出入りとかいうことを大変苦心しておられるということを聞いているんだけれども、あなた方としてはそういう業務上横領で逮捕された以上は、もうすでに勾留満期に近い今日、それを裏づける資料というものは当然入手していなきゃいかぬと私は思うけれども、これはあなた方としては入手したという確信を持って検察庁の方に送致せられておるんでしょうね、その点どうです。
  41. 漆間英治

    ○説明員(漆間英治君) 御質問の点は捜査の内容にわたりますので答えにくい点がございますが、先ほどもお答え申し上げましたように、本件の容疑内容というのは非常に細かい物を多年にわたっていろいろ買い集めた、しかもそれがいまの御指摘にありましたように、交際費を使って私物買いをしたという内容でございますから、その立証というのは非常に実は大変に手間のかかる作業でございまして、警視庁でも多数の捜査員を動員して毎日精力的にその裏づけに当たっているわけでありますが、やはり事柄が事柄であるだけに相当この立証には苦労しているというように聞いております。しかしその結果、起訴まで持ち込めるのかどうかという点につきましては、まだ私その判断を聞いておりませんので申し上げるわけにいきませんけれども、警視庁としてはその事実で逮捕したわけですから、これを立証すべく最善を尽くしているということだけお答え申し上げておきます。
  42. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最善を尽くしていらっしゃるということで自信のほどは大体うかがえるけれども、あなた方としては起訴に持ち込めるだけの自信というものを持っておられるんじゃないかしら。あなた方の自信をうかがっている。検察庁がどうするということは、これは検察庁の方でやることだから、これはあなた方が揣摩するわけにいかぬだろうけれども、あなた方御自身の自信のほどを伺いたい。
  43. 漆間英治

    ○説明員(漆間英治君) 起訴に持ち込みたいというふうに考えております。
  44. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 では、持ち込みたいということで努力して、成果が上がりましたか。
  45. 漆間英治

    ○説明員(漆間英治君) その点は先ほど申し上げましたように、捜査の内容にわたりますのでお答えを差し控えさしていただきます。
  46. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いや、捜査の内容を一つ一つ聞く場合には、あなた方が答えにくいということはこれは私どももわかるけれども、捜査の成果が上がっているかどうかということぐらいはいいんじゃないですか、これはどうです。成果が上がらないなら上がらぬでもよろしい。上がったなら上がったと言ってください。
  47. 漆間英治

    ○説明員(漆間英治君) やはり同じお答えをするのが適当かと存じます。
  48. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうも少しあれだね、ちょっとそれは憶病じゃないかな。少なくもあなた方は誠意を持ってやり、持ち込みたいと願望し、一生懸命やっているわけでしょう。それがむだになったわけじゃないんでしょう。むだになったのですか。
  49. 漆間英治

    ○説明員(漆間英治君) 起訴になるかならないかということは別にしまして、捜査としては前進しているというように考えております。
  50. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 捜査としては前進しているということだね。
  51. 漆間英治

    ○説明員(漆間英治君) いまお答え申し上げましたように、捜査としては前進しているというように考えております。
  52. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 刑事局長ね、いま捜査としては前進しているということだから、大体いまよく私どもとしてはもうわかって、それ以上余り無理なことは言えぬかもしれないけれども、そういう前進した捜査の資料とか結果とかいうものは、検察庁としては当然警視庁から入手しておられるんでしょう。
  53. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 当然のことながら警察当局からいろいろな資料も入手しておりますし、また処分を決める検察の立場におきましても、捜査を重ねて事実の確定に努めているところでございます。
  54. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いまは業務上横領の問題をお尋ねをしたのですが、先ほど警察庁の方から非常に力強い御答弁があった。それは、政界の問題についても決してあきらめたわけじゃなくて、これからも鋭意捜査に努力するということだったんです。その点は検察庁の方はどうなんですか、政界工作の問題。
  55. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) いわゆる政官界工作と申しますか、いろいろと新聞報道等で言われているところがございます。またそれにつきまして、先ほど御指摘のように国民の関心が高いことも承知しておるわけでございます。しかし、毎々申しておりますように、広い意味での疑惑がイコール犯罪というわけでもないわけでございますから、その点はもちろん御了解をいただきたいわけでございますけれども、警察、検察を通じまして、犯罪の疑いがあるというものにつきまして厳正な態度で臨むことは当然でございます。
  56. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 もちろん臨むことは当然だけれども、現実にいま警察からお話があったように、そういう態度で現実に臨んでおるという、その客観的事実も肯定されるんでしょうね。
  57. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 当然であると申しましたのは、現実の問題といたしましてもそのように努力していると、こういうことでございます。
  58. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、この最近の新聞報道にある賄賂が特定できないと、したがって、政界の強制捜査はいたしませんと、そういうように捜査当局が判断を固めたと、こういうふうな事実はあるんですか、ないんですか、これ刑事局長にお尋ねしたいのです。
  59. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 板野元社長に対する業務上横領の事実についての逮捕勾留ということが続いておりまして、先ほど来御指摘のように、勾留満期が二十六日であるというようなことから、いろいろと推測的な記事が出ておるようでございますけれども、そこに掲げられておりますようなことにつきましては、警察当局から全く聞いておりません。
  60. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 なお、この佐藤前室長が起訴された後、保釈が許されず、依然として勾留が続いておりますね。これは保釈の申請があったんですかなかったんですか、刑事局長いかがですか。
  61. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) ちょっと正確なお答えができなくて恐縮でございますが、現に勾留が続いていることは事実でございます。
  62. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、保釈の申請があったかなかったかを知らないわけですか、刑事局長は。報告を受けてないわけですか。
  63. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 正確なことを実は聞いておりません。
  64. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは調べればすぐわかることですから、調べてください。調べて返事をしていただきたいですよ。
  65. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) ただいま問い合わせまして御報告を申し上げます。
  66. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 普通の場合は、弁護人としましては起訴がありますと保釈の申請をするのが当然ですが、恐らくこれは保釈請求が却下されたんだろうと思わざるを得ないですね。まあ、これは調べた後で結構ですが、これがこのように長い勾留になっておるというのは、政官界工作、それに対するやはり調べが続いておるとわれわれ考えてもいいわけですが、この点はやはり警察の方でも佐藤を現在なお取り調べ中なんでしょうか。
  67. 漆間英治

    ○説明員(漆間英治君) その点につきましては、最近の取り調べ状況を聞いておりませんので正確なお答えができません。必要であれば問い合わして回答申し上げます。
  68. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 じゃ、問い合わしてください。
  69. 漆間英治

    ○説明員(漆間英治君) はい。
  70. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは、検察庁の方もやはり佐藤の取り調べは続行なさっておられるんでしょうね。
  71. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 寺田委員に改めて申し上げるのもいかがかと思いますけれども、やはり身柄の勾留が続けられておるといいますことは、もともとの逮捕勾留事実または起訴事実、これについて身柄を拘束する必要があると、こういうことに理屈上なるわけでございまして、それが第一次的なことであろうというふうに申すほかないわけでございますが、その間必要に応じて他の事実につきましても取り調べを行うことはあり得るということでございます。
  72. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 刑事局長が言われるように、確かにこれは余罪取り調べということで勾留をするわけにいかぬから、一応勾留を継続する理由としては、罪証隠滅のおそれがあるということに、この事件の場合は形式上はなるわけでしょうね。それはよくわかるけれども、しかし現実にはやはりこれを取り調べているというふうに捜査の実情からわれわれは判断せざるを得ないわけで、これはまあそういうことがあり得るというふうに刑事局長非常に巧妙にぼかしておっしゃったけれども、これは取り調べているとわれわれが判断することが決して誤りではないと、その点はあなたもお認めになるでしょう。
  73. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) その点は先ほどもお答えしたとおりでございまして、第一次的には当該事実についての身柄拘束でございますが、その間必要に応じて取り調べをすることがあると御理解いただいて差し支えございません。
  74. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 捜査も前進しておるということだし、政官界工作も決してあきらめたわけではなくして、捜査を継続するという決意が述べられたし、佐藤陽一について、その点についてなお事情を聞いておるということでありますから、大体私どもとしてはそれで結構だと思いますが、しかし、国民全部がやはりこの事件は単純な業務上横領にとどまらず、政官界工作にまで捜査の手が伸びるということを期待をしておりますし、これはやはりそういう意気込みでひとつ捜査に当たっていただきたいと、ぜひひとつそういう決意で捜査を続行していただきたい。これはどうですか、御両所にお伺いしたいと思います。
  75. 漆間英治

    ○説明員(漆間英治君) 冒頭にも申し上げましたように、まさにそのような決意で捜査に当たっているわけでありますし、今後ともそれを持続したいと思います。
  76. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) お答えをいたします前に、先ほどの保釈のことでございますけれども、事情はよくわかりませんけれども、保釈の申請はまだ出ていないということでございます。  それから、いまの点につきましては警察からお答えしたとおりでございます。
  77. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 結構です。保釈の請求は出ていないというのは、やはり保釈の請求をしても余罪取り調べで却下になるということが弁護人にわかっているから、それで保釈の請求をしないんでしょうが、大体いまお二方の御答弁で結構です。  じゃ、警察の方はこれで結構ですから……。
  78. 漆間英治

    ○説明員(漆間英治君) いま取り調べの経過を確認させておりますので、――それは後でよろしゅうございますか。
  79. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それじゃ、ちょっと待ってください。それまた伺って……。  これは刑事局長にお尋ねをしなきゃいかぬことですが、    〔委員長退席、理事宮崎正義君着席〕 これは刑事訴訟法の三十九条弁護人の被疑者、被告人に対する接見交通権ですね。まあこれは秘密で交通するので秘密交通権とも言われますが、この接見交通権の運用につきまして、しばしば弁護人と検察官との間、あるいは警察官との間にトラブルが起きるのであります。そして、刑事訴訟法のこれは八十一条でしたか、被疑者に対する接見交通を制限する処分が裁判官によってなされることがありますね。そのときには、ことに弁護人の接見がいろいろ制限を受けまして――私自身もそうですが、被疑者に面接を求めるときに警察官の方では検察官の指定書を持ってきてくださいということを言いますね。われわれもどうも指定書がなければ接見できないというのはどうだろうかという感じは持つけれども、しかしそこでトラブルを起こして警察官と言い合いをしてもしようがないから、だから妥協して検察官に接見指定書というのをもらって、そして警察にそれを出して面会します。あの接見の指定書というのは、これは検察庁が警察に対して、一般的にそういうふうな扱いにしろということを指揮してそうなったんでしょうか。それとも個々の検察官がその都度警察官にそういう具体的な指揮をしてそうなるんですか。その点刑事局長いかがでしょうか。
  80. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) お尋ねの点は、ただいま御引用になりました刑事訴訟法の三十九条の三項、つまり接見のあるいは物の授受等の指定の問題であろうかと思いますが、あるいはちょっとお尋ねの趣旨を取り違っているかもしれませんけれども、この規定によりますと、検察官、検察事務官または司法警察職員は、捜査のため必要があるときはいまのような指定ができるということになっておるわけでございます。したがいまして、具体的にはその捜査の状況等によりまして、また弁護人側の防御活動のことも考えまして、日時、場所、時間等を指定しているわけでございます。ただ、そういう日時、場所、時間の指定を円滑にいたしますために、ただいま委員のおっしゃいましたような意味でのトラブルを避けるという意味も含めまして、検察官の方から警察に対しまして、この被疑者については接見禁止になっておるので、弁護人からの面会があった場合には具体的な指定をするので、そのことを知っておいてほしいという意味のいわば連絡と申しますか、そういうような趣旨で、身柄を拘束している警察の方にそういうことを連絡をするということがあるわけでございます。
  81. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、それは局長、個々のケースケースによって、ケース・バイ・ケースで検察官がその都度警察官に連絡をしてやらしているということですか。それとも一般的にそういう指定書を発行すると、その指定書を出した場合にだけ面会をさせろという一般的な指揮か何かがなされているのか、その点ちょっと明らかにしてほしいのです。
  82. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) いま申しましたように、ケース・バイ・ケースと言えばケース・バイ・ケースでございますけれども、そういう扱いがあるということを一般的に決めておきませんとお互いにまごつくということもございますので、具体的指定をする場合につきましては、その指定書を持っていった場合に接見させるようにというようなことで、そのことをあらかじめ連絡というか、予告というか、そういうことをそのケースごとにするわけでございますけれども、さらにそういう扱いがあるということを一般的にまた警察との間で話をしておると、こういうことでございます。
  83. 漆間英治

    ○説明員(漆間英治君) 先ほどの件でございますが、起訴後においても必要に応じ佐藤前社長室長を取り調べはいたしておるそうでございます。
  84. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 じゃ、課長結構ですから……。  局長、やはり一般的なことを決めておかないといけないので警察庁との間にそういうふうな一般的な連絡をしているというのは、これはいつの時点でそういうことをなさったんでしょうか。
  85. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 先ほどのお尋ねにもちょっと申しましたように、あるいは取り違っているかということでございますけれども、別にそういう指揮をしたとかそういうことではございませんで、検察庁部内でこういうふうな扱いをすると。こういうふうな扱いと申しますのは、ケース・バイ・ケースとして接見禁止になっておるものについては具体的な接見の日時、場所、時間等の指定をすると。で、このケースについてはそういうことをするということを、そのケースについて当該警察の方に御連絡をするということを決めておるわけでございます。こういうふうにやりますよということを事実上と申しますか、別に指揮とか何とかそういうことではなくて、周知していただくということでございまして、いつどういう形で何か指揮をしたかというようなことではないわけでございます。
  86. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いや、その部内で一般的にそういうふうにしようということを決めたとおっしゃるから、それはいつの時点でそういうことを決められたんですか。
  87. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) ちょっといま手元に規程を持っておりませんので正確な日時はわかりませんが、部内の事務規程というものがございまして、それを決めた時点でございます。大分前のことでございます。
  88. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 部内の事務規程でお決めになったんですね。その事務規程というのは秘密のものですか。秘密でなければ明らかにしていただきたいと思うんです。
  89. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 部内のことでございますから、そういう意味では公表するような性質のものでございませんが、特段秘匿しなければいかぬということでもございません。したがいまして、内容を申し上げるのは別に差し支えないわけでございますけれども、いまいつの規程であったかということを、具体的にちょっと記憶がございませんので、大変前のことでございます。
  90. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それでは、差し支えないようでしたらそれをひとつ委員会に出してもらえますか。
  91. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) その内容につきましては御説明をいたします。
  92. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いや、それでわかるんです。というのは、私ども検察庁からその指定をもらいますとちゃんと印刷してあるからね。ああこれはやはり法務省の方なりあるいは最高検察庁なりがちゃんと書式を決めて印刷をして各検察庁に配付したものだなということが一見明瞭なんですね。それはわかりました。  これは検察官としてはどうなんですか。たとえばそういう指定書を持っていかないで、警察官が検事に諮らずに、警察官の処置として独自に日時や場所を指定しても、それは構わないわけですか。
  93. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) そういうような言い方でのお尋ねになりますと、差し支えないと言えば差し支えないようなことになるかと思いますが、先ほども申し上げましたように、三十九条の三項におきましては検察官は必要があるときは指定できるということになっておりますので、その運用に反するような事実になることは好ましくないと申しますか、適当でないというふうに考えます。
  94. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 刑事局長、ちょっとよくわからないんですが、つまり検察庁の方でそういうふうに決めて、そして警察に連絡してやってもらっているというんでしょう。しかし、法規上は司法警察官といえども日時、場所の指定権はあるんだと。だけれども、そういう場合にはやはり検察庁の指定に従ってもらった方がいい、警察が独自に指定しない方がいいと、そういうことなんですということですか。
  95. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) ですから、先ほど申しましたように、権限的には警察もいまおっしゃいましたようにあるわけでございます。しかし、検察官もそういう権限があるということでございますから、運用といたしましては、そこの辺でそごを来さないように、また、弁護人側の活動にも支障を来さないように、混乱を生じないようにするのが望ましいと、こういうことでございます。
  96. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 その抽象論はわかるんだけれども、検察官の指定書を出してそれによってわれわれ面会しますね。しかし、そういうことをせずに警察へ行って警察に会わせろとこう言って、警察官がそれじゃ何日の何時に来てください、こう言って会ってもそれは構わないのかどうか。警察官がこの三十九条三項に従って日時、場所を指定しても、それで差し支えないかどうかとお伺いしているわけです。
  97. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 同じようなお答えになるかもしれませんが、差し支えないと言えば差し支えはないわけでございますけれども、考え方が二途に分かれるというようなことでは、弁護人側の方にとっても支障が生ずるのではないかという意味で、すべてこの指定ということは、冒頭に申しましたように、捜査の必要とそれから弁護人側におかれます防御活動との一種の調和を要する問題でございますので、そういう意味で、トラブルというかごたごたというか、そういうことがないようにするということが望ましいであろうということを申したわけでございます。
  98. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうもはっきりしないけれども、局長の言わんと欲するところは、やはりそういう場合には検察官の指定に一元的に取りまとめて行使することが望ましいと、そう言われるわけですね。
  99. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 実質的にはそのように御理解いただいてよろしいと思います。
  100. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そしてこの司法警察員が接見の日時、場所を指定することがあり得るわけですね。いま刑事局長は、一般的な接見が禁止された場合、この指定する場合は検察官が一元的にその指定を行った方が望ましいとあなたは言われたけれども、そうでない一般的な場合ですよ、司法警察員も日時、場所を指定できるわけだけれども、その指定できる司法警察員というのはどういう職にある者だろうか。実は判例でこれは何か捜査主任官とか捜査主任官補佐とか、そういう者は指定権があるというふうな判例が出ておるものだからそれでお尋ねするわけですが、一定のその職が前提になるのか、その点はちょっとお伺いしてみたい。どうですか。
  101. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 三十九条の三項によりますと「司法警察職員」はということでございまして、「(司法警察員及び司法巡査をいう。)」というふうに書かれておりますから、この場合については限定は法律上はないということだろうと思います。
  102. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、あなたも御存じでしょう、最高裁判所昭和四十九年(オ)の第一〇八八号、この判決によりますと、「当該被疑事件は、枚岡署に置かれた捜査本部が統一的に捜査を指揮し、内部的には、捜査本部の捜査主任官高井及びこれを補佐する宮里が接見の日時等についての指定権を与えられていて、布施署において浜口の取調べを担当していた友田にはこれが制限されていたというのであるから、」という判旨があるわけですね。そうすると法律的には、犯罪の捜査に従事しておる司法警察職員はすべて指定権を持っている、法律的には。しかし、部内的にその指定権を何びとに与えるかということを警察内部で取り決めておると、そういうふうに見てよろしいでしょうか、いかがですか。
  103. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 結論的にはいまおっしゃったとおりであろうと思います。つまり、この判決でも「内部的には、」という言い方が使われておるわけでございまして、事実上先ほどのような問題もございまして、混乱しないようにというようなこともあってかと思いますけれども、この場合には、捜査主任官という立場にある者に指定権を集中しておったという運用の問題であろうと思います。
  104. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、それは別段検察庁との取り決めとかあるいは連絡とかいうことを待たずに、警察が警察部内で独自に決めておるというふうに伺ってよろしいか。いかがです。
  105. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 警察の場合も、すべての警察が同様にやっているかということになりますと、よくわからないわけでございますけれども、本件の場合には、ここにも引用されておりますように、そういう運用というか、扱いになっておったということであろうと思います。
  106. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 別段、警察の方からこういうふうに決めたからということで、検察庁に連絡があるとかいうような一般的な問題じゃないんですね。どうですか。
  107. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) そのように思います。
  108. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは、具体的に松江地方検察庁で起きた問題なんですが、被疑者が佐々木勉、弁護人が野島幹郎、罪名は贈賄で、五十五年四月九日に逮捕せられて、弁護人が十五日に接見を求めたところが、検察官に拒絶されて、何か十八日に指定を受けたというんですね。それで、十五日に拘置所にいる被疑者に対して電報を打った。電文は、調べがあるとの理由により面会が金曜日まで許されません。家庭には異状なし。あなたにも異常なきことを祈る。弁護士野島。という電文であったというんです。ところがその電報も検察官の方で差しとめて渡さなかった。これは十八日ぐらいまで渡さなかったようですね。これは適当な処分と言えますか。これはどうでしょう。
  109. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) ただいまお尋ねの松江におきます事件につきましては、昨日寺田委員から御連絡を受けまして、ゆうべ聞いたばかりでございまして、電話等のことでございますから、正確に実情を十分把握していない点がございます。したがいまして、正確なお答えになるかどうかという点がございますけれども、急に聞きました限度でございますからよくわからない点もありますけれども、先ほどのようなことで、四月の十一日に検察庁が警察から身柄の送致を受けまして、十二日に勾留を請求をし、その事件につきましては二十一日に釈放になっているようでございます。  ところで、その接見につきましては、十四日と十八日の二回に接見がなされております。で、いまお尋ねのように、十八日の接見につきまして、いつ弁護人の方から申し出があったかという点がややはっきりしないわけでございますけれども、何日か前――何日かと言いましてもそうないと思いますけれども、あるいは二、三日前にあったのではないかというふうに思われるわけでございます。まあいまも十五日とおっしゃいましたのであるいはそうかと思いますけれども、その際に、一応ゆうべの報告によりますと、先ほど一般論でお話がございましたように、検察官側の都合と、それから弁護人側の都合というものがあるわけでございまして、その辺は弁護人とお話し合いをして、結論的に十八日になったというふうに聞いておるわけでございます。  それからもう一つ、電報の点でございますけれども、これはいまおっしゃいましたような内容の電報が勾留中の被疑者に出されたことは事実のようでございます。その電報の交付自体が若干おくれたということも事実のようでございますが、ゆうべの報告によりますと、電文のことでございましてかたかなで来ておるので、果たして弁護人からのものであるかどうかということについて若干心配をいたしまして、恐らく野島弁護士ということであろうということで、いろいろと連絡をとって確認をしておったというようなことから、若干手間がかかりまして、本人に渡すまで一日、二日かかったというようなことのように聞いております。
  110. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これはね、まず法律問題からお伺いするけれども、弁護人の接見交通権というのは、これは裁判所の命令といえども制約はできないわけでしょう。これはあなたもお認めになるでしょう。
  111. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) その点はそのとおりでございます。
  112. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 その接見交通権の中にはね、当然手紙とか電報とかいうものも入るわけでしょう。ごれはお認めになりますか。
  113. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) その点は、広い意味では接見の一態様といえば一態様かと思いますけれども、一面、物の授受という両面をあるいは持っておるんじゃないかというような感じがするわけでございます。
  114. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうすると、電報などは物の授受になって接見交通権の対象にはならないと、接見交通権のそういう権利の内容にはならないんだという解釈ですか。
  115. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) そういう意味で申したわけではございませんで、接見でありましても書類その他の物の授受でありましても、弁護人については保障されているということでございますから、そこを取り違えて言う意味ではございません。ただ、接見にしても物の授受にいたしましても、先ほど来御議論のございますように、捜査の必要との関係で必要な指定ができるということになっておりまして、その指定の対象になることではあろうと。ただその場合に、接見と物の授受と両面を持っているんじゃないかということを申しただけでございます。
  116. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 電報などというようなものをね、そんなに――あなたは一日、二日おくれたと言うけれども、実際は三日おくれたらしいんだけれども、十五日に打ったものを十八日に本人に見せているからね。これは何ぼ何でも適当でないでしょう。見せることが別段捜査にそう支障がありとも思えないからね。  またあなたは、弁護人に問い合わせるのに時間がかかったと言いますが、私どもが東京から電話してもすぐつながるいま現在ですからね、検察官が野島弁護士にこういう電報を打ったかということを問い合わせるのに、二日も三日もかかるわけないでしょう。ですから、それはどうしても余り適当な処分ではなかったんでしょう。  ことに、野島君が検察官に最初なぜ電報を本人に渡さないのかということを問い合わせたときにね、検察官はね、大声でこれは接見が制限されたんですよということを言って、逆に電報を打った行為をなじったというんです。だから、もうまるでちょっと――私は何もその検事のそういうものの責任を問うというような大人げないことをしているわけじゃないけれども、どうもそういう認識じゃ困るからね。それは適当な行為ではないということをあなたがお認めになって、その検察官に適当な教育をしてくだされば結構なんですよ。ですから、率直にね、そういうことは適当でないなら適当でないということをあなたがお認めになれば結構なんです。
  117. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) まあ冒頭にもお断りしましたように、きのう聞きましてどうもいきさつがよくわからない点がありまして、そのことも含めてお断りをしたわけでございます。  ただいまおっしゃいましたように、問い合わせをしたということはしたらしいんですけれども、手間がかかるということの説明もちょっとよくわからなかったわけでございます。ただ向こうのといいますか、現地の申しておりましたことは、そのことだけであれば事は簡単だったのかもしれませんけれども、先ほど来出ておりますことからもうかがえますように、若干弁護人の方といろんな意味で行き違いといいますか、があったんじゃないかというふうにもうかがえるわけでございまして、その辺が手間取った一つの一因でもあるように察せられるような気がするわけでございます。  それはそれといたしまして、弁護人の接見交通権というものを不当に侵害してならないことはそのとおりでございます。したがいまして、もう少し事情も調べなきゃならぬ点もございますが、もし行き届かない点があったといたしますならば、そういうことのないように十分注意いたしたいと思います。
  118. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 よく調べて、確かにこれは余り感心しない行為だからよく注意をしてもらいたいと思うんです。ことにこの電文自体を見た場合に、調べがあるとの理由により面会が金曜日まで許されません。家庭には異状なし。あなたにも異常なきことを祈る。弁護士野島。という電文自体を見ても、そんなことをほかの人が電報を打てるわけがないんで、常識で考えたってこれは弁護士が打ったなということはぴんとくるでしょう。またぴんとこないような検察官でも困るわけで、それだけの判断力を持ってないと困るわけです。  それから、弁護人の電文は接見交通権の内容であって、裁判官といえどもこれを禁止できないんだという法律上の解釈はしっかり検察官が持ってくれなければ困るわけで、そういう意味でよく調べた上で適切な処置をしてもらいたい。別段検事のどういうふうな責任を問えというようなことを、私は大人げないことを言うわけじゃありません。ただ、よくそういう誤りがないようにあなたが十分監督をしてほしいということなんですが、いかがですか。
  119. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 先ほども申し上げましたように、なおよく事情を調べまして、不適切な点がありましたらよく措置をしたいと思います。
  120. 宮崎正義

    ○理事(宮崎正義君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十三分休憩      ―――――・―――――    午後一時五分開会
  121. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、刑事補償法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  122. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 刑事補償法の一部を改正する法律案につきまして、第五十八回での参議院の法務委員会においての附帯決議がございます。  こういう附帯決議がついておりますが、このことについての今日までにどういうふうにお考えになって、今後どのような処置をされるのか、この点についてお伺いをいたします。
  123. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) ただいま御指摘になりました附帯決議は、二項目含まれているわけでございます。一つは、いわゆる身柄不拘束の者についての補償の問題、それから被疑者補償制度の整備という問題が含まれておるわけでございます。  まず第一点の、身柄不拘束の者に対します補償についてでございますが、この点につきましては、前々から申し上げておるようなことの繰り返しになって恐縮でございますけれども、このような附帯決議もありまして、その後も引き続き検討は続けておるわけでございます。しかしながら、基本的にいろいろと問題がございまして、結論的には非拘禁者に対する補償そのものは実現していないわけでございます。と申しますのは、やはりこの刑事補償というものの性格と申しますか、特殊性と申しますか、そういうところに基本があるように思うわけでございまして、本来、改めて申すまでもないかと思いますが、国の公権力の行使によります損害、この補償につきましては、性質が損害賠償ということは当然でございまして、そういうことでございますと、基本的にはやはり公務員の故意、過失というものが必要であろうということでございます。ところが、この刑事補償は、改めて申すまでもございませんが、故意、過失というようなものを要件といたしませんで、いわゆる無過失補償ということで、きわめて例外的なものでございます。  なぜ、そういうことになるかと申しますと、やはり憲法の規定もございますし、こういう刑事事件で身柄の拘束を受けた者が、その後無罪になったという場合の損害ということでございますので、いま申しましたような大原則を貫かないで、特殊例外ということでこういう規定が、こういう法律ができたというふうに理解されるところでございます。したがいまして、特殊例外というようなことからいたしますと、やはり身柄の拘束というところに重点があって、それが原則を打ち破る大きな理由になっているんだろうというふうに思うわけでございます。  一方、確かに身柄を拘束されませんで裁判を受けましていろいろと時間もかかる等のことがあって、結果的に無罪になるという場合に、その被告人の方にとりまして有形無形の被害があるということは、もちろん否定するわけではございません。しかし、そういう者につきまして直ちに補償をするということになりますと、その他いろいろな国の公権力の行使によって生ずる損害というものもないわけではございません。そういうこととのつり合いと申しますか、均衡と申しますか、そういうこともございまして、やはり先ほど申しましたような損害賠償の原則を打ち破る特殊例外というのは、やはり身柄の拘束ということが一つの大きな理由になっているだろうというふうに考えるわけでございます。  また一方、内容的に申しまして、この刑事補償はいわゆる定型的な補償ということになって現在に至っておるわけでございまして、身柄を拘束しない、いわゆる非拘束者、非拘禁者、この補償ということになりますと、その定型性という問題についてもいろいろと問題が起こってくるというようなことでございまして、なかなかそれに踏み切れないというのが実情でございます。  しかし、そのもとになりますのは、やはり国の負担ということは即国民の負担であるわけでございます。したがいまして、国民の負担というものがどこまで及ぶべきかという基本問題にもつながるわけでございます。  しかしながら、たとえば最近のように犯罪被害者に対する給付というようなことも制度化されたようなこともございますし、だんだんとそういう観点からの理解と申しますか、そういうものも少しずつながら変わってきているような気もするわけでございます。したがいまして、そういうような国全体の法制というものをさらに重ねてにらみながら検討を続けていきたい。しかし、率直に申し上げて、なかなか踏み切るのはむずかしい点があるのじゃないかというふうに考えております。  ただ、そのかわりというわけでもございませんけれども、私どものできます範囲というようなことで、五十一年の刑事訴訟法の一部改正によりましていわゆる費用補償ということを実現しておるわけでございます。これは広い意味では拘禁されなかった、いわゆる非拘禁者補償のうち定型化できるものについての補償をしたというふうにも御理解がいただけるのではないかというふうに考えております。  それから、被疑者補償の方につきましては詳しく申しませんけれども、いろいろと御指摘もございまして、規定の内容を整備いたしまして、できるだけ漏れなく、捜査中で身柄を拘束され犯罪の嫌疑がないことが明らかになった者につきましては補償をするという運用を図っているところでございます。
  124. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いずれにいたしましても、物的な補償ということは当然将来考えていかれるような御答弁と受けとめておきたいと思いますけれども、精神的な問題ということになりますと、これは不拘束であろうが拘束であろうが、これは同じ問題だと思うわけです。そういうことから考えていきますと、何がためにこの法務委員会で、当委員会で附帯決議をしたかという、その根本的な精神といいますか、考え方といいますか、そのことをくみ取っていくということがわれわれの決議に対するお考えにならなきゃならないところじゃなかろうかと思うのです。  こういうふうに考えていきますと、いまの御答弁を、五十一年の刑事訴訟法で一面代行――代行と言うてはおかしいですけれども、一種の変わった行き方で考えをそこに置いているというような御答弁でございますけれども、当法務委員会における精神をどうくみ取っていかれているのか、この点をもう一度お伺いをしておきたいと思います。
  125. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) その点は先ほども若干触れたつもりでございますけれども、御指摘のような附帯決議もございまして、身柄の不拘束の者に対します補償というものにつきましてもできるだけのものを考えていきたいという気持ちから、先ほど申しましたような費用補償というような形でいわばその一部を実現した、かように考えている次第でございます。
  126. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 この刑事補償法の一部を改正する法律案というものは、午前中も寺田委員の方から事細かく質問をしておられましたけれども、この法案そのものが補償のメーンでございます。そういうことから考えていきまして、今回は――四十八年から五十年、五十年から五十三年、五十五年、その以前は四十三年、三十九年と二十五年の法の制定のときからきているわけでありますが、いつも必ず改正案の最後のところに附則とあります。この附則ということについての定義といいますか、そういうものの御説明を願いたいと思います。
  127. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 御指摘のように、毎回の改正の際に附則がついておりまして、同趣旨のものが書かれておるわけでございます。この趣旨は改めて申し上げるまでもないと思いますけれども、この刑事補償というものの仕組みが無罪の裁判というものを基本に置いているわけでございまして、無罪の裁判があった者が未決の拘禁等を受けておったということによって補償をするということでございますので、一つの無罪の裁判の時期というものが問題になるわけでございます。  そこで、この附則の二項にございますように、この法律の施行前に無罪の裁判があった者にかかわる補償――免訴、公訴棄却等も含みますけれども、そういう補償については旧法――改正前の規定によるというのがこの制度の仕組みからいたしまして妥当であろうというふうに考えて、このようなことになっているわけでございます。
  128. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 附則ということに対する定義を……。
  129. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 御趣旨を十分理解してないかもしれませんが、結局法律が改正になりますと経過的な措置が必要になるわけでございます。具体的に申しますと、改正前の時代に身柄の拘束があって、改正後に無罪の裁判があるというようなときにどちらの法律でいくか。つまり、金額的に申しますと、低い方の前の金額でいくか、引き上げられた高い方の金額でいくかというような問題が起こりますので、そういう問題を解決するために経過的な措置を決めるものが附則であろうと思います。
  130. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 このことで、附則とは付帯的なことだとか辞書を引いてみますといろいろございますが、それは別としまして、この附則の1でございますね、「この法律は、公布の日から施行する。」ということになっておりますが、この「公布の日」とは大体いつごろになるのか。たとえば、この法案が二十五日に通過して二十六日に公布したということになりますと、いつごろの日程で施行されていくのか、その辺を伺っておきたいと思うんです。
  131. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) この法案が御可決をいただきまして成立いたしますと、内閣におきましてこの公布の日を閣議で決めるわけでございます。したがいまして、まだ具体的な日は決まっておりませんけれども、当国会におきまして御可決をいただきました場合には、その直近の、直後の閣議で公布の日を決め、また何日以内といいますか、そう長くない期間内に公布の手続がとられるということでございまして、公布されますと即日から施行する、つまり効力が発生する、こういうことに相なります。
  132. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そうしますと、閣議で決定された後に、そのときから法律施行の期日というものが制定されるわけですね。  法例の第一条ですか、そのことについてちょっと御説明願いたいと思います。
  133. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 法例では、たしか原則的には公布の日から二十日を経過した日から施行するというのを原則にしておったように思いますが、たしかただし書きでその法律で特別の定めをすればその定めによると。つまり、今回の附則もそうでございますが、即日施行というものは例外と言えば例外かもしれませんけれども、その法律自体で決めればそのとおりになると、こういうことでございます。
  134. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 ちょっとこの六法を開いていただきたいのですが、そこで第一条を読んでいただいて、2の方までついでに読んでいただきたいと思います。
  135. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 法例の一条であろうかと思いますが、「法律ハ公布ノ日ヨリ起算シ満二十日ヲ経テ之ヲ施行ス但法律ヲ以テ之ニ異ナリタル施行時期ヲ定メタルトキハ此限ニ在ラス」。  それから、二項は別なことでございまして、「台湾、」云々ということがございますが、これも何か問題でございましょうか。
  136. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 その、何とも二項のところおかしいと思いませんか。
  137. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 二項には、「台湾、北海道、沖繩県其他島地ニ付テハ勅令ヲ以テ特別ノ施行時期ヲ定ムルコトヲ得」という規定がまあ残っております。確かにおかしいといえばおかしいわけでございましょう。ただ、これは何分にも明治三十一年の法律でございまして、そのときのことがまあ残っていると言えばば残っているんじゃないかと思います。まあこれ自体どうも私の所管でございませんので明確なお答えができないわけでございます。
  138. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 私は大臣にこれを聞いていていただきたかったんですよ。これはもちろん法制局の問題ですから、そちらの方へ移るわけですが、この2のところには「台湾」となっているんですよね、「北海道、沖繩県」となっている。この沖繩県は、いまは確かに日本の国になっておりますけれども、その間にちょっと変わっておりましたね、これは私が申し上げることもないと思うんですが。こういうことが法例として第一条「法律の施行時期」と銘打って出ているのに、これはどういうわけなんですかね、この考え方というのは。こういうことを閣議でひとつ、まだこんなふうなことが残されているんだというようなことをはっきり大臣に指摘しておきたかったんですが、おいでにならないから、後でまたもう一回これは念を押して大臣に言いますけれどもね。  いずれにしましても、そうしますと、まあ大体規定では二十日、例外があるということで、先ほどのお話でいきますと大体二十日過ぎごろには、二十日ごろには施行されるということになります。  そこで、これは裁判所の方の問題にも関係すると思うんですけれども、刑事補償決定のあった事例というのをいただいているわけです。これが四十九年から五十三年までの事例をいただいているわけですが、これについてちょっと御説明をいただきたいのは、四十九年は大体これで幾らになっているのか。合計が補償金額がどれだけになっているのか。五十年、五十一年、五十二年、五十三年と、これは全部トータル、全部細大漏らさず出されている、刑事補償の全部でございますかどうか、この点を伺っておきたいと思いますけれども。
  139. 柳瀬隆次

    ○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) ただいまお尋ねの数字につきましては、すべての件数が網羅されておるというふうにお答えしたいと存じます。また、金額につきましてはお手元の法律案関係資料の最終ページにございます第三表に載っておる金額のとおりでございます。
  140. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 三表に載っているのは総合計ですね。各年度ごとのでしたかね。この三表の分が年度ごとの計でございますね。
  141. 柳瀬隆次

    ○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) さようでございます。
  142. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 わかりました。  それで、刑事局長、午前中にも質問がございましたけれども、五十三年の四月十三日の当委員会で私も事細かくいろんな事例を挙げながら質問をしているわけですが、上限のことにつきましては先ほど寺田委員の方から質問もございました。当時も私は質問をしておりますけれども、西ドイツあたりでは上限を設けていないという制度をやっているということもあるわけでありますし、こういう点から考えていきましても、将来の方向性というものは当然考えていいんだというふうに思っているわけですが、念のためにもう一度伺っておきたいと思います。上限の件ですね。
  143. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) その当時も恐らく御説明をしておると思いますけれども、現行の刑事補償法におきましては、まあいわゆる定型的な補償ということを考えておるわけでございまして、そういう意味合いから上限を定めないと。一定の幅でございますけれども、いわゆる定額といいますか定型といいますか、そういう形での金額を考えているわけでございます。  ただ、いま御指摘のように西ドイツの法律のことでございますが、若干性格が違う点もあるわけでございます。と申しますのは、私ども若干研究いたしました限りでは、西ドイツの場合にはその被害の立証をむしろ要件としておるというようなことでございまして、その点がまあ性格的に違うという大きな点であろうと思うわけでございます。  そのようなことで、上限を外すということはこの法律の基本的な性格と申しますか、そういうことにもかかわることでございますので、いろいろな意味から検討をしたいということでございます。
  144. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 裁判所の方からいただいた先ほどの資料の中で五十三年の十七のところにあります仙台高裁の詐欺というのがありますけれども、これが補償決定になったのが五十三年の四月の三日でございます。この五十三年にも四月の十三日に当委員会でこの法案の審議をやったわけでありますが、そうしますと、この人は五十年のときの補償額で換算をされていると思うわけですが、刑事局長、そうだと思うんですが、どうなんですか。
  145. 柳瀬隆次

    ○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) ただいまお尋ねの仙台高裁の請求人の関係では、無罪の確定がただいま仰せの五十三年の刑事補償法の改正の前でございますので、金額は改正前の金額によって補償がなされておると、こういうことでございます。
  146. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 これが一昨年の四月の十三日ですから、本会議が終わって閣議が終わって仮にやったとしても、一カ月と見ても、約一カ月前には五十年のときの補償額であり、そしてまた一カ月過ぎたときでは今度は五十三年の四月となっているけれども、五十三年の補償額によって決められるということになるわけですね。  こういうことから考えていきますと、物的なことより精神的な問題かち考えていきますと非常に、わずか一カ月足らずのことで差がうんと出てくる、物的にも差が出てくる。精神的にも大きな衝撃の上にさらに重ねられるものがあるだろうと思うんですがね。  こういう点についてお考えをお聞かせ願いたいことと、それから、これは前田刑事局長の方に。わずか一カ月足らずで――公布の日の問題ですね、一カ月足らずで前の年の、前のときの補償額、わずか一カ月足らずで今度新しい補償額、こういうふうな面を考えていきますと――これはまだ一例なんですよ、もっと一日違い、一週間違いというのも出てくると思うんです。そういうことを考えていきますと、わずか一日ぐらいの違いで前のときの補償額、一日違いで今度新しい補償額というようなことになってくる。こういうようなことを考えていきますと、裁判官の裁量ということも含まれてくるかどうか、これはまた裁判官のことですからわかりませんけれども、いずれにしてもこういう問題が起きてくるということは当然だと思うんですね。こういうことについてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  147. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) ただいま御指摘のような具体的なことを考えますと、確かにおかしいといいますか、不合理だというようなことも言えるかと思いますけれども、法律、これに限らず、新しく制度をつくる場合、あるいはその内容を改善する場合、すべて共通の問題であるわけでございます。  そこで、一日違いで旧法が適用になったり新法が適用になったりということは、やむを得ないということがいいかどうかわかりませんけれども、現実の問題としてはやむを得ないようなことでございます。それをなくすためにどうしたらいいかということになりますと、遡及適用というようなことを考えなければいかぬわけでございましょうが、そうしますと、一体いつまでさかのぼったらいいかという問題も起こりますし、またそれを時点を切りますと、そのさかのぼった時点の前後でまた一日違いというような問題も起こるわけでございますので、そういう意味では一面不合理というような気もいたしますけれども、やむを得ないと言えばやむを得ない問題ではないか、かように考えております。
  148. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 遡及の問題もそうでしょうけれども、私の考えは、今日のように内外の経済情勢というのは非常に激動しております。これは私申し上げるまでもないと思うんです。いろんな社会情勢も違ってきていると思うんです。  そうしますと、一番最初に申し上げましたように、二十五年から三十九年までそのままであった。それが、四十三年ごろからだんだんと狭まれてきて、そして五十年から五十三年になってきた。そして五十三年から五十五年にこの改正がされてきたということはそのことを如実に物語っていると思います。  そうであるならば、毎年これはその経済情勢、物価指数等の状況に合わせながら、毎年刑事補償というものの額というものは改定していけば、いま私が一つの例を取り上げて、取り上げた問題が解消されてくる、こういうふうに思うわけなんです。そうしますと、本人としてみれば物的にも不足が起こるでしょう。それよりむしろ、精神的な与えられた今日までの苦痛というもの、社会から白い目で見られ、長い間白眼視されてきた苦しい生活を一族、眷族といいますか、その人たちが苦杯をなめてきたということの労苦に対しても報いられるようになるんじゃないかと思うのです。こうした点から、物価指数というものも毎年出されているわけであります。そして政府としても予算を、その消費者物価を幾らに抑えるというふうな考え方もしているわけであります。したがって、そういうことから考えていきますと、法務省のあり方も、やはり温かい、血の通った行き方を考えた方が私はいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  149. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 一日違いの問題は別にいたしまして、なるべく経済事情の変動に応じた改正を行うべきであるということは御指摘のとおりであろうと思います。  ただ、よけいなことかもしれませんけれども、そうなりますと何か一定の基準を設けまして、法律に特別な規定を設けまして、毎年の何月なら何月に賃金とか物価とか、そういうものを権威のあるものを特定いたしまして、それに応じてスライドをするというような規定を設けるということも一案であろうかと思いますし、場合によってはそういう一定の枠内で金額を政令にゆだねるというようなこともまた一つの考え方ではないかというふうに思うわけでございます。そういうことによりますとむしろ迅速な適用ができるということも考えられるわけでございますが、何分にも法律事項であるかどうかという問題も基本にございますので、そんなようなことも、ちょっと思いつきのようなことでございますけれども、申し添えるところでございます。
  150. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 これは十分お考えを願いたいと思うんです。大臣にもこの問題について一言御答弁を願いたいと思うんです。  それから、先ほど前田刑事局長の方から伺ったと思いますが、法例の件でございますが、お聞きになりましたですか。施行期日と県のこと、お読みになりましたか。
  151. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 私ども初めて気がついたわけでありますが、この法律を見ますというと、冒頭からおかしいと言えばまことにおかしいものがそのまま残っております。これはやはりそれ相当に現状に即して改めるべきではないかという気がいたしております。
  152. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 もう一点質問があったんですが、途中でお入りになられたので、やりとりやったのがおわかりじゃなかったと思いますので、まあそれは結構でございます。  次に、再審制度のことに入りたいと思うんですが、これはもうたびたび論議をされてきているところでありますが、裁判所の方にお伺いいたしますが、主な再審事件の無罪決定になった事件名と、そして開始決定になった件数とを御説明を願いたいと思います。
  153. 柳瀬隆次

    ○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 昭和三十八年以降の関係で、再審により無罪となったものの事件名を申し上げますと、主なものを申し上げますと、これはいわゆる巌窟王事件というものがございます。昭和三十八年三月十五日に名古屋高裁で再審の裁判が確定しております。また、いわゆる金森事件というのがございます。これは昭和四十五年二月十一日大阪高裁で再審の裁判が確定しております。さらに、いわゆる弘前大教授夫人殺し事件というものがございます。これは昭和五十二年三月一日に仙台高裁において再審の裁判が確定しております。また、いわゆる加藤老事件というものがございます。これは昭和五十二年七月十五日に広島高裁において再審の裁判が確定しております。さらに、いわゆる青森老女殺し事件と称されるものがございます。昭和五十三年八月十四日に青森地裁において再審の裁判が確定しております。  以上が主な事件ということで申し上げたいと思います。
  154. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 できれば一覧表にしていただいてお知らせを願いたいと思いますが、いかがですか。
  155. 柳瀬隆次

    ○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 仰せのとおり、一覧表にしてなるべく早い時期にお持ちしたいと思います。
  156. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 再審制度の門戸を拡大するということが論議をされてきておりますが、申すまでもなく、再審の七項目が大きな一つの足かせのような形になっているということはしばしば言われているわけですが、こういう点についてお考えを、今後どうされるのか伺っておきたいと思います。
  157. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 再審制度につきましては、いまお尋ねのありましたような事件がございましたことも一つの原因かと思いますけれども、いろいろと御議論がございまして、日弁連等におきましても改正案のようなものを発表しておられるというようなことは承知しておるわけでございます。  で、そのほかにもいろいろなお考えがあるようでございますが、現在この再審の改正問題につきましては、私どもといたしましても諸外国の立法例等も含めまして、また最近の運用等についての問題も含めまして、いろいろと検討しておるところでございます。  しかしながら、いわゆる白鳥決定と称せられるものが出ておりますし、その後最近の事件におきましてもそれに準拠したような決定等がありますわけでございます。しかし、それらにつきましては、検察側といたしましては若干不満もあるというようなことで、上級審の御判断を求めておるというような状況にもございます。まあそれやこれやいろいろございまして、私どもといたしましても十分検討を進めておりますけれども、現在の刑事訴訟法の特に再審事由そのものでございますけれども、それにつきましては簡単に申しますと誤解もございますけれども、一言で申しまして、再審事由そのものが諸外国の立法例等に比べまして特に狭いというふうにも考えていないわけでございます。また運用も、いまのような裁判例等を通じまして次第に固まりつつあるというふうにも考えられるわけでございます。もちろん検討をしないという意味ではございませんけれども、そういうような理解に立っておるわけでございます。  ただ一面、手続的な面におきましてはなお整備を要する点が幾らかあるだろうというふうに思っておりまして、その点の問題も含めてあわせて検討しておるところでございます。
  158. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 いまの御答弁は、前にこれは衆議院の方で御答弁なさっておられますですね、同じようなことでございますが。その中で、「細かい手続的な面につきましては若干整備を要する点があるので」ということをおっしゃったことが、いま最後におっしゃられたことだと思うんです。この「手続的な面」というのはどういうふうなことなのか、具体的に御説明願えれば。
  159. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 一、二の例を申しますと、いわゆる原裁判――もとの裁判でございますが、原裁判に関与した裁判官が、再審の裁判に関与することの当否というような問題がございます。また、再審請求をいたしましたもの、それが再審請求段階あるいは再審開始決定後という、そこも問題でございますが、そういう人たちと弁護人との接見交通の問題、そういうものもございます。それからもう一つの問題といたしましては、御指摘を受けている点としては、検察官側の不服申し立て制度の当否というようなことが大きな問題であろうと思います。
  160. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そうしますと、この手続的なことではいまお話が若干ございましたけれども、私のいま手元にある新聞にもこのことが出ているわけでありますが、そのくだりをひとつ読んでみますと、   法務省は、近く法制審議会に刑訴法の一部改正を諮問する方針だが、再審理由の改正抜きの諮問に対しては、法制審の日弁連委員などから反対が出ることが予想され答申までは難航が予想される。   再審制度は、誤判に苦しむ無実の人を救済する制度だが、再審ができるのは刑訴法で「原判決での罪よりも軽い罪を認めるべき明らかな証拠を発見した時」などと厳しく限定されており、再審請求者にとっては極めて「狭き門」になっている。二十年から五十三年まで、死刑確定者は六百三十人余にも上るのに、再審開始決定があったのはわずか一件だったことでも、その狭さはわかる。   ところが、昨年は六月に「財田川事件」、九月に「免田事件」、十二月に「松山事件」と、相次いで死刑確定判決の再審が認められ、これに伴って厳しい再審制度のあり方に対する見直しの問題が、大きくクローズアップされてきた。法務省の検討も、この見直し機運を反映したものだ。   法務省が改正しようとしている第一は、原判決に関与した裁判官の除外。現行法では、「再審請求は原判決をした裁判所が管轄する」となっているが、同じ裁判官が違う判決をする可能性は極めて少なく、再審が棄却されるのは当然ともいえる。このため法務省では、その事件を担当した裁判所が管轄することは変えないものの、裁判官は除外することができると改める方針である。   また、これまでは原則として、再審開始後であっても、受刑者は弁護人と立会人なしで会うことはできない。「被告人と同じ法的地位になるが、受刑者であることに変わりはない」との理由だが、不当だとの批判も強い。現実には運用で弁護士と秘密に接見できるようにしているところもあり、秘密交通権を明文化する考えだ。   このほか、現行再審制度では、普通の無罪判決の場合と違って、たとえ無罪になったとしても、裁判に要した費用は自弁だ。この点についても、法務省は国費で弁護士報酬を含む裁判費用を補償するよう改正する方向で検討している。  このように報道をされているわけですが、先ほどの御答弁とこれとあわしてみて、そういうふうな方向で進んでおられるんだと、こう認識をいたしてよろしいですか。
  161. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) いまお読み上げになりました新聞報道すべて間違いとは申しませんし、おおむね合致してると言えば合致しているということであろうと思いますけれども、率直に申しまして、まだ法制審議会に諮問をするとか、また問題点としては大体先ほどお読み上げになりましたようなこと、また私が申し上げたようなこと、それが問題点であるということは十分承知しておりますし、それにまともに取り組んで制度的な整備、改善を図るということはもちろん考えておりますけれども、まだ具体的にどうしたらいいかというところまで案をつくるとか、方針を決めるとかいうような段階にはまだ至っていないわけでございます。  したがいまして、手続的にも法制審議会に諮問するというような、まだ確たるところまでは行っていないと。しかし、方向的にはいろいろな問題点につきまして十分検討を進めまして整備改善を図りたい、こういうことで進めておるわけでございます。
  162. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 手続的なことと基本的なことと、この考え方はいろいろあると思うんです。七項目の基本規定というものはそのままにして手続の面だけ変えていこうという、こういうふうにとられるわけなんですが、手続を云々する場合にはやはり基本の方にも影響してくるようにも思えるわけなんですね。基本法の方にも影響してくるんじゃないか、このようにも思うわけなんですが、どうでしょうか。
  163. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) もちろん無関係ではございませんけれども、率直に申しまして、再審事由そのものの問題とそれからいまいろいろと出ましたような手続の問題とは、やはり切り離しても考えられる問題であろうと思います。むしろ問題は――問題はといいますか、いろいろと御批判を受け御意見が出ておりますのは、再審事由の方であろうと思うわけであります。これにつきましては、まあ基本的にさかのぼりますと確定判決との関係という刑事訴訟の基本にもかかわる問題であるということでございますし、また、先ほども申しましたように、まあいろいろ狭いんじゃないかという御意見もございますけれども、そうおっしゃられるほどではないような気もいたしておりますし、また過去にはなかなか決定がなかったということも言われておりますが、逆な言い方をすれば、最近におきましてはいろいろと開始決定もあるというような実情でございます。また、その内容につきましては、それ自体いろいろと問題がないわけではございません。そういうようなことでございますので、再審事由の拡大というか緩和ということにつきましては刑事訴訟法の基本にもかかわるということでございますので、より一層慎重な検討が必要であろう。それをしないで手続だけやるのはおかしいということではどうもないように思いまして、手続きはやはり切り離しても考えられる問題ではないかというふうに考えております。
  164. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 総務局長おいでになっておられるので一言お伺いしておきたいと思いますが、国民の立場の中から知りたいことは、大阪空港の公害訴訟の件でございますが、あの公害問題が相当多く論議を世上で醸しております。こうした中で審理のやり直しというようなことの問題が出ておりますが、このことについての詳細といいますか経緯といいますか、そういうことを御説明願いたいと思います。
  165. 大西勝也

    ○最高裁判所長官代理者(大西勝也君) ただいま宮崎委員の御質問は大阪空港の訴訟にかかわるものと存じますが、具体的事件に関係することでございまして、私どもも詳細知る由もないわけでございますが、新聞等でも報ぜられております客観的な事実、外形的な事実ということで申し上げますならば、今年の四月十六日、大法廷に係属しておりましたこの事件について弁論再開決定が行われ、即日関係者に対する通知がなされたというのがいわば経過ということになるわけでございます。
  166. 橋本敦

    ○橋本敦君 まず、法案に関連をしてお伺いさしていただきますが、今回の補償額の引き上げそれ自体は一定の改善であることは間違いないわけですが、午前中も同僚委員から議論されましたように、最高限度額が四千八百円で果たしてこれで妥当だろうか。先ほども宮崎委員からも出された問題であります。私も同じような問題意識を持っておりますので、まずこの点を伺ってまいりたいと思いますが、最高裁の総務局からいただきました資料で、刑事補償の補償決定人員が四十九年から五十三年までいただいております。それで、この補償決定の中で最高額が決定されたのはどのくらいのパーセンテージになるか、これを知りたいんですが、これすぐわかるでしょうか。
  167. 柳瀬隆次

    ○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) お尋ねでございますけれども、資料はございますが、まだパーセンテージを出しておらないという状況でございます。
  168. 橋本敦

    ○橋本敦君 それじゃ、最低額、最高額がありますが、裁判所の認定で平均して大体どのラインが一番多いか、最高額は私はきわめて少ないと見ておるんですが、そこらあたりの状況を説明してください。
  169. 柳瀬隆次

    ○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) いまパーセンテージを持ち合わせておりませんとお答えいたしましたが、探しましたところ、昭和五十四年の刑事補償決定人員の関係で数字が見つかりましたので、この点お答えしたいと思いますが、最高額の四千百円の補償をした関係が二七・四%、それから四千円で補償したものが七・八%、三千七百円で補償したものが二・〇%、三千五百円で補償したものが五・九%、それから三千三百円で補償したものが二・〇%、三千二百円で補償したものが一五・七%、三千円で補償したものが一一・七%、二千五百円が七・八%、以下細かくなりますが、二千二百円、二・〇%、二千百円、二・〇%、二千五十円、三・九%、二千円、七・八%、千五百円、二・〇%、眼底の千円が二・〇%、以上のような数字でございます。
  170. 橋本敦

    ○橋本敦君 いまの数字から見ますと、最高が二七・四%、最低が千円ということですが、大体中をとってみて三千三百円以下という数字が、これがやっぱり過半数を占めるぐらいの率になってきますね。  それで、要するにこれは裁判所が決定をされるわけで、裁判所がこれをどういう基準で決定されるかということになると、法の定めがあって、補償金の額を定めるについては拘束の種類やその勾留、拘束期間の長短、本人が受けた財産上の損失、得るはずであった利益の喪失、精神上の苦痛等々あって、要するに一切の事情を考慮すると、こういうたてまえになっている。そこで、裁判所がどういう一切の事情を考慮されたかわからぬのですが、勾留期間が長ければそれだけ精神的苦痛も大きい。したがって、勾留期間が長いと当然補償金額も上限に近づくのかというと、個々の事例を調べてみると決してそうはなっていない。非常にこういう抽象的な基準で裁判所の裁量的判断に任される部分が多い。その結果として、どういう判断によるかは別として、いま言ったように最高限度額が決まっているけれども、その最高限度額の補償を受けるのが五十四年で三割に足らないと、こういう結果になっている。だからしたがって、最高限度額が低いというそのことの上に、実際の運用実態が非常に低く行われているという実情も考慮しながら、この引き上げ額については検討していく必要があるというのが第一の問題であります。  一つこの点で伺っておきますが、いまの法のたてまえからいきますと、本人が受けた財産上の損失とか得るはずであった利益の喪失も勘案すると、こうなっておりますが、常用労働者の平均賃金よりも低い金額が上限である場合に、本来本人が得べかりし利益を考えればほとんどがもう最高限度額に行くだろうというような推定が一応は成り立つわけですね。しかし、本人がどういう職業であるかどうかによってまた変わりますよ。だけれども、これは常用労働者の平均額ですから、その平均額より下回っている上限がある。その上限に勾留が長ければ当然近づいていくだろうし、短くても近づいていくだろう。つまり財産上の利益の損失を重く見、精神上の苦痛を重視するならばほとんど上限に行ってしかるべきじゃないかという目で私は見ているんですが、法務省はどうお考えですか。この運用実態についてどう考えますか。
  171. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 何分にも決定は裁判所でなされることでございますので、私から申し上げる立場にないような気もするわけでございますが、抽象的な理屈みたいなことでございますけれども、この刑事補償法による補償は、俗に定型的な補償だと言われておるわけでございます。したがいまして、定額と言ってもいいわけでございますが、若干幅があると、その幅の中でいろいろな要素を考えるということでございまして、上限がなければ別でございますけれども、上限というものを一応設けております前提では、いまおっしゃいましたような逸失利益的なものを一〇〇%見るということにはもともとなっていないと言えばなっていないわけでございましょう。したがいまして、具体的なケースに応じて損失額を証明してそれに応じた補償をするという制度になりますとまた話は別でございますが、そういう仕組みをとっていない場合におきましては、やはりその枠内でいろんな要素を一つの要素として考えると、そのものずばりで考えるということでなくて、その枠内でどの辺に金額を決めるかという場合のいろんな要素の一つということにとどまっているんじゃないかというふうに考えるわけでございます。  また一方、平均賃金は当然働いておられる方々のことでございますが、こういう補償を受ける方々の中には無職の方もおられるでございましょうし、余り働いていない方もあるわけでございまして、そういう点も裁判所におかれては考えられていることもあるんじゃないかというふうに思います。
  172. 橋本敦

    ○橋本敦君 理屈はね、局長ね、裁判所がいろんなことを考える、それは私も言ったとおりですよ。だけれども、運用の実態として上限と、それから幅がありますけれども、その上限をもらえる人が補償請求のわずか三割だと、裁判所の認定で。こういう実態については、いまの財政事情、経済事情、上限自体が常用労働者の賃金よりも低いという実態を見れば、せっかくのこの国の補償はもっと上限に近づく運用がなされておっていいんではないかという見方は法務省はまるでありませんか。そこのところを私は伺っている。
  173. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 先ほどもお答えしましたように、個々の案件についての御判断について批判がましいことになると立場上申しかねるわけでございます。そういうことを離れて申しますと、先ほどの最高裁からの御報告で最高は三〇%を割っておるということでございますが、ずっと上の方から足してまいりますと、三千円を若干上回るところまでで五〇%を超えているというような数字にもなるような計算であると思います。したがいまして、全体から見れば上限に近い方で運用がなされておると。いま伺いまして大変細かい分類があるなという印象も持ったわけでございますが、それなりのケースに応じての御判断であろうということでございますし、確かに橋本委員の御指摘のように、この絶対額と申しますか、上限の額が低いという御批判もございますから、そういう観点からいたしますと、もう少し上限に近づくということもあり得るかなという気はいたしますけれども、先ほどのように大変細かく、極端に言えば小刻みな決定がなされておるということから見ますと、いろんな要素が勘案されているんだなということも一つまた考えられるわけでございます。
  174. 橋本敦

    ○橋本敦君 この運用の実態は裁判所にかかわる問題で、これは実証的にずっとやっぱり検討していかなくちゃならぬと思いますので、この程度でやめますけれども、要するに今度の場合も下限は変わらないわけでしょう、下限は変わらない。それで上限がわずか上がる。その上限をわずか上げても、いままでの運用実態から言えば非常に少ないですから、下限を上げるということによって補償額全体を押し上げていくという、こういう考え方を国が持たないと、実際は補償を受ける人はなかなか満足な補償が受けられない実情にありますよという問題を私は指摘したつもりなんですね。だから、この点について今度は下限を上げておりませんけれども、下限を上げることの方がむしろ補償額を高くしていく方向に裁判所の判断をプロモートする要素になるという、運用の問題を今後研究してほしいということをお願いしておきたいと思います。いかがですか。
  175. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) たまたま五十四年の数字について御報告があったわけでございますが、過去数年の実績等も重ねて最高裁と検討をさしていただきまして、いまのような問題の分析も含めましてこの額の決め方については今後ともなるべく引き上げるように努力いたしたいと思います。
  176. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、もう一つ今度は別の観点からですが、法務省の資料として五十三年の常用労働者の平均の賃金を七千八百四十六円とごらんになっている。五十五年の推定はもう一度正確におっしゃっていただきたいんですが、八千幾らでしたかね。
  177. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 五十五年の推定ということでございまして、八千九百四十九円という数値を推定しております。
  178. 橋本敦

    ○橋本敦君 はい、わかりました。  そういたしますと、上限が四千八百円ですから、五十五年の八千九百四十九円との差を考えますと四千百四十九円の差ということになりますね。そこでずっといままでからの経過を調べてみますと、一つのおもしろい傾向がわかるんですよ。これは常任委調査室の鴫谷さんが書かれた「刑事補償金の算定基準日額をめぐって」という「立法と調査」の一九七八年十月号に書かれている論文がありまして、これは大変よくまとまって興味があるんですが、これで調べてみますと、こういうことがわかるんです。三十九年の四月に施行されたとき最高額は千円でした。このときの三十八年の常用労働者の日額推定が千八十九円です。ですから八十九円の差しかなかったわけですね。その次、四十三年になりますと千三百円に増額されました。ところが、四十二年の賃金日額は千六百二十四円にも上昇しておりますから、差は三百二十四円に開きました。それから四十八年の六月の施行の場合二千二百円に上限が上がりました。そのとき四十八年推定で三千七百九十七円、その差は千五百九十七円と開きました。五十二年十二月の施行で三千二百円に上限が上げられましたが、五十年推定で賃金日額が五千九百十七円になりましたから二千七百十七円と開きました。その次、五十三年の四月、四千百円になりました。そのとき五十三年推定は七千六百七十三円ですから、三千五百七十三円と開きました。で、今度は、いまお聞きのように四千百四十九円とまたさらに開いたわけです。だから、いままでの改正のたびに常用労働者の平均賃金日額との差が初めはたった八十九円だったのが、いまやどんどんどんどん開いて四千百円まで開いてきた。これはもう非常に大きな開きですね。だから、これは一つのやっぱり問題なんですよ。なぜこういうような開きを大きく大きくしていった程度にしか補償金額が上がらないのか。これがまさに憲法四十条で定められた無罪を受け、不当に拘禁された国民に対する国の態度であろうか。これは大問題だと私は思うんですよ。  で、こういうようになったことについて、一つは法務省自身の指数の取り方が、こういう常用労働者の平均賃金日額ということを非常に重視をしないで、物価指数と賃金上昇指数との平均値を出して、それでもって引き上げの一つのレートもしくはインデックスにしていくという考え方をとっている。ところが、物価はこれだけ上がったらもう狂乱物価で大問題ですよね。だから、物価自体の上昇指数というのはこんな賃金ほどじゃありません。で、なぜこの物価指数で平均をしてわざわざ賃金指数の上昇率をレートダウンまでさせて、そしてこういう資料にするのか。ここに一つの疑問がある。  それから、いままでいつもの刑事補償の金額の引き上げについて鴫谷さんも指摘していますけれども、とる数字の基礎の一貫性がないんじゃないか。つまり、あるときは卸売物価指数をとるし、あるときは消費者物価指数と対比するし、あるときは日雇い労働者平均賃金をとるし、ある年度は全産業常用労働者平均賃金をとる。こういうアンバランスがある。だから、法務省自身がこういう法案を用意して引き上げをやって国民の権利を守るということについて一貫性と腰だめが足らぬ。まさに憲法四十条をはっきりと実現していくという構えが足らぬ。そういう批判を私は受けかねないと思っておるんですが、こういう大きな開きが――初めの出発点はよかったですよ、いまこれだけ開いてしまったことについて御反省はありませんか。
  179. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) ただいま御引用のような御指摘があることを私も承知したわけでございますが、まあ基本的にこの補償金額が常用労働者の平均賃金と同額でなければならないかどうかという問題は、やはり基本的には一つ問題があろうかと思います。しかし、その点が無視できない要素であるということは、これは否定できないところでございまして、その差が御指摘のようにだんだん開いてきたということは、確かに一つの問題であるというふうに存じます。  ただ、その場合に、その差が開いた一つの理由として、物価指数といいますか、それが影響しているということは事実としてはそのとおりであるわけでございますが、物価と賃金との関係が――もちろん賃金が上がってきて悪いことはございませんけれども、差があり過ぎるような気もするのもひとつ検討を要するような気もするわけでございまして、その点につきまして、こういうような差があるということを前提といたしますと、こういう方式がいいかどうかということを改めて検討しなきゃならぬというふうに思うわけでございます。  それから一貫性がないという御指摘がございましたが、確かに結果的にといいますか振り返ってみますと、年度によりましていろいろな数値を用いているということはそのとおりでございますが、最近は、当否は別といたしまして今回お願いしておりますような形、このお手元の資料にもありますような賃金と物価というものの関係でこの何回かはお願いをしておるわけでございます。と申しますのは、いままでのことについていろいろと検討もし御批判も受けまして、むしろそういうことについて妙な数字を用いることはよくないというような反省も含めまして、最近としては一貫していると――その当否はまた別でごさいますけれども、最近は一貫しているというふうに御理解を賜りたいわけでございます。  ただ、何分にもこれは憲法から来る問題でございますから、御指摘のようなことのないように最大限努力をしなければならぬと思っておりますけれども、一方国の負担、つまり国民の負担ということでございますので、財政事情ということも必ずしも無視するわけにはいかないということでございます。したがいまして、予算の確定ということがこの金額の定め方に大きな影響を持つということは実際問題として否定できないわけでございますので、午前中の御質疑の際にもお答えしたところでございますけれども、最高裁と十分御連絡をいたしましてできるだけ引き上げるように、また適正な金額を定めるように努力をいたしたい、かように思います。
  180. 橋本敦

    ○橋本敦君 要するに今後努力をしていただくということで私ども努力したいと思いますが、ぜひ格段の努力をお願いしたいと思います。  それでもう一つの問題は、今度は財田川事件で死刑囚にも再審の道が開かれたという方向が出まして私も非常に喜んでおりますが、仮に死刑判決を受けて、財田川事件の場合はもう二十年以上拘禁されておりますが、それで無罪が確定したと、こうなりますと、その間通常死刑判決を受けた人の心理から言いますと、その判決を受けそれが確定した次の日から死の恐怖に直面いたしますね。そういう死の恐怖に直面をした日がずっと何年も続いていく。そうなりますと、私はこの精神上の苦痛というのは通常の有期懲役刑の判決を受けて服役をする、あるいは未決で勾留されておるという状況の精神的苦痛と比べて大変な違いだと思いますね。そういう場合にも最高限が四千八百円である。私はこの死刑というそういう――残虐なる刑という憲法上の言葉に当たらぬかもしれませんが、最高の極刑を言い渡してそれの苦痛を受けた人に対しての補償は、これは死んだ場合二千万円というのは後でまた言いますけれども、この四千八百円というそのままの適用でいいだろうか。まさに国が間違って死刑の判決言い渡した、言い渡したことによる本人の精神的苦痛はまさに生死をさまよう日が続く。家族も含めて大変だ。その場合に四千八百円でいいだろうか。私は、できれば死刑判決を受けた人がそれが冤罪だとわかって無罪が確定した場合は、特別にやっぱり精神的な苦痛に対する、国の間違った判決をしたことに対する補償として考慮をするという方法を、将来の立法論にはなりますけれども、一考してあげていいんではないかという気がしておるんですが、刑事局長の御意見はいかがでしょうか。
  181. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) ただいまおっしゃいましたように死の恐怖と申しますか、そういう状態に置かれておる方が無罪になったということを考えますと、その苦痛というものははかり知れないと言えばはかり知れないものがあろうと思うわけでございます。したがいまして、それなりの手当てをしなければいかぬということも基本的な考え方としては別に反対するものではございませんけれども、現在の補償法の中でどういうような形が可能であるかということにつきましては、なおいろいろと検討をしなければならぬことがあるんじゃないかというふうに思うわけでございますので、基本的な問題点の一つとして検討をさせていただきたいと思います。
  182. 橋本敦

    ○橋本敦君 確かに今後の一つの検討課題として私どもも考えたいと思うんですね、そんなに数がありませんので。ですから、この場合は国の財政事情ということもそう通用しませんので、合理的なやっぱり方法を考えたいと思いますね。  さて、その死刑になったという場合に、それが後に冤罪であることがわかれば、最高限が今度は二千万円に引き上げられた、こういうことですね。  さて、私もこれ考えるのですけれども、観念的に言いますと、取り返しのつかないことになったわけですね。生命は地球より重いという言葉がありますけれども、それがまさに国家の行為によって取り返しがつかないことになった。国に過失があろうが何であろうがそれは別として、結果として取り返しがつかない、生命それ自体を消滅さしたという行為に対して二千万で果たして――今日の命の値段ということははかり知れないけれども、今日の経済情勢から見て、これでいいだろうか。今度は二千万ということになったものですから特に私ども修正案を出しませんけれども、これもやっぱり検討する必要がある。  たとえば二千万ですと、一生無事に働いて退官される皆さんが、二千万の退職金をいただける人もいただけない人もいろいろあるでしょうけれども、高級官僚の、私どもがよく言う渡り鳥官僚の退職金なんというのはこんな二千万どころじゃないですよね、特殊法人へ天下ったりして。それから思いますと、いかに草莽の民であろうとも、国民の命が国家の行為で殺されて二千万とは、これは私はとてもじゃない、妥当性を欠くという気がしてならぬのですよ。  二千万といえば、たとえば町で遺族がマンション一つ買いたいと言っても、たとえば肉親の命一つでマンション一つ都会なら買えぬぐらいの値段でしょうね。  そこで、この二千万というのは、私はこういう観念的に、理念的に考えて、これはやっぱり引き上げる必要がある、今後の研究課題だ、こう思っておりますが、局長はいかがお考えでしょうか。
  183. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 死刑の場合の刑事補償ということはもともとあってはならぬことことでございまして、そちらの面でまず配慮しなきゃいかぬことであろうと思うわけでございます。  幸いにしていままで例がないということもそれなりのことであろうと思いますが、それはそれといたしまして、死刑の場合には二千万ということにさせていただこうと思っておりますが、そのほかに財産上の損失額があればそれが当然補償される、それに二千万が加算されるということは改めて申すまでもないと思います。したがいまして、この場合の二千万はいわば精神的損害というものに対する補償ということに相なるわけでございます。  ただ、いまおっしゃいましたように、生命を金で換算すること自体がなかなか困難であり、またある意味では不合理な問題であろうと思いますので、仮に何億円でも足りないと言えば足りないというような問題にもなるわけでございます。それにしても常識的な金額というものはあり得るかと思いまするので、今回二千万といたしましたのは別に正確な計数的なものがあってのことではございませんで、従来の改正の経緯、また民事裁判におきます損害賠償事件における補償額の状況等をにらみ合わせてとりあえず二千万円としたわけでございまして、果たしてこれで完全に十分かと言われますと、そう申し上げるわけにもいかないわけでございますが、これをまたふやします場合に果たしてどういう金額がいいのかということもなかなか困難な問題でございましょうと思いますので、いろいろな御趣旨を踏まえまして検討をまた重ねたいと思います。
  184. 橋本敦

    ○橋本敦君 いまたとえば自動車の強制賠償保険は二千万というラインになっておりますが、実際は車を持っている方はもう一億近い任意保険に入っておられますよね。だから、やっぱり得べかりし利益の喪失というのはどんどん高くなっておりますから、そういう場合で、過失によるそういう交通事故の場合の損害賠償でも億近い金に近づいていますよね。そういうことも考えなくちゃならぬし、いまおっしゃった財産上の喪失した利益に対する補償は別途あるということですが、これ自体がまた算定がむずかしいでしょう。こういう場合は恐らく十年、二十年拘禁という例が出てくる。その場合、二十年前職は何であったか、賃金はどうであったか、これがまた算定が大変なことですね。だから、そう考えますと、財産上の損失補償でカバーできるということも、観念的にそういうことは言えても、完全に十分カバーできないわけです。つまり、人の生涯自体が回復できないという意味ですね。だから、いまおっしゃったように、さらに今後の検討課題として研究をしていただくようにお願いをしておきます。  さて、もう一つの問題は、今度はいただいた最高裁の総務局の資料からですが、刑事補償の請求人員というのが、実際に身柄を拘束された事件で無罪が確定した数の平均してどのくらいになっておりますか。毎年度の数字はいただいておりますが、平均してどれくらいの人が請求していますか。
  185. 柳瀬隆次

    ○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 結論的な数字だけを申し上げますと、昭和五十一年、二年、三年の地裁、簡裁の関係でございますが、地裁においては請求可能な者のうち六五・六%、簡裁においては請求可能な者のうち五〇・〇%の方が補償の請求をしております。
  186. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、請求資格があるうち五割ないし六割しか請求をしない、なぜそうなのかと、こういうわけですが、この点について御存じと思いますが、横山晃一郎さんの「憲法と刑事訴訟法の交錯」という論文がある。この中でもこの問題が指摘されておりますが、この横山先生の指摘でも請求する者は有資格者の大体半数だと。こういう実情をとらえてその実態の調査に苦労されておるんですが、依然としてこういう補償制度があるということを弁護人がついておってもつい知らないまま期間を徒過したとかいうことが一つあるんですね。それから知っているけれども、ついうっかり請求の期間を徒過する、こういうこともあるんですね。それから金額が少ないために、たとえば三日、四日勾留されただけだということになりますと、裁判所まで出かけていって請求書を出す、資料をつけて出す、そして今度は決定をいただいて実際の請求をする。裁判所までタクシーで往復したりしていると、実際この金額がもう何のことかわからぬようになると、こういうことで行かない人もあるというように私も聞いたこともあるんですね。裁判所としてはこれだけ少ない数しか請求しない国民の実情をどうごらんになっておられますか。
  187. 柳瀬隆次

    ○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 請求資格がある方が十分に請求をしてこの制度を生かしていただくということは望ましいことであると存じます。まあ従来からその点につきまして国会などでも御指摘をいただいておりますけれども、たとえば無罪判決を言い渡す際に何らかの説示をしてはどうかというふうな御指摘もございます。最高裁刑事局といたしましては、従来通達により、あるいは裁判官の会同の席上等において、係官の方から無罪判決の宣告をした場合には、刑事補償法の適用のないことが明らかであると認められる場合は格別でございますが、そうでない限りは、判決が確定すれば刑事補償の請求をすることができるのであるということを、あるいは請求の期間がどうなっておるかというふうなことを被告人に告知するのが至当であるというようなことを通達あるいは会同の席で連絡をいたしまして、各裁判官にもその面の周知を図っているというふうなこともございます。
  188. 橋本敦

    ○橋本敦君 いまお答えいただいた問題は、私も五十年の六月十九日、法務委員会で、無罪判決の場合に何らかの方法で被告人に告知してもらう等善処を考慮してもらいたいということでお約束いただいて、そういう結果、いま御答弁のようにやっていただいていると思うのです。  もう一つの問題は、私じかに自分の実務の関係で聞いてみますと、裁判所へ行ってこの手続をするのに、裁判所というのは書式がどうしてもむずかしいところなものですから、素人でそれができるだろうか、どういう資料をつけたらいいんだろうかという悩みがあるようです。だからしたがって、この補償の決定を求める、その際の定型的な請求申し立て書、この書式とか、それから今度は、決定があった後の払い渡し請求書の書式ですね、こういうもののサンプルをつくっておきまして、その告知の際に、書式はこういうことでいいですから自分で書けますよ、その書式には添付すべき資料としてこういうことがコメントしてありますよと、そういうものをつくっておいて、裁判官が告知していただいた後書記官がそれを渡してやる。あるいはこれは検察官が渡してやってくれてもいいんですが、そういう書式の要領をつくってやっていただくというところまで親切にやってもらえないだろうかと私は思いますが、いかがでしょう。
  189. 柳瀬隆次

    ○最高裁判所長官代理者(柳瀬隆次君) 先ほどお答えいたしましたが、判決宣告の際に、このような制度があるということを告知をして十分徹底をするということになっております。その時点ではまだ当然のことながら判決の確定は見ておらないわけでございます。その先どういう経過をたどって無罪判決が確定するに至るのか、その辺わからない段階でございますけれども、いま仰せられましたようなことは一つの大変結構な御工夫であるとは存じますが、請求の方式については特に書面でなければならぬということもございません。口頭でもよろしいということになっておりますので、申し立て資格のある方が裁判所へおいでいただいてお申し出いただければ、裁判所としてはその旨の立件をして手続を進める、このようにしておると思いますので、仰せのことは一つの御工夫として十分研究したいとは思いますが、実情はそのようになっておるというふうに思います。
  190. 橋本敦

    ○橋本敦君 これはひとつ国民のためのサービスという観点から、検察庁とも相談をしていただいて研究してください。せっかくの制度はできるだけ国民に利用さしてあげたいものですからね。  さてその次に、不当な拘禁によっての補償ということと別に、学界では早くから論ぜられておりますけれども、不当な押収、捜索を受けたということに対する補償も検討をすべきではないかという議論がありますね。確かに押収、捜索というのは、これはやっぱり逮捕に近い強制捜査、国家権力の発動ですから、その意に反して家じゅうを捜索される。隣近所にもそれなりのことがやっぱりわかるということで、家庭にとって、本人にとっては精神的苦痛も当然それに対応して伴いますし、やっぱり国家権力の作用の一つですから。こういう場合についても補償の適用ということの範囲を拡大せよという学界の意見もありますね。そういう点について法務省はいまのところどうお考えでしょうか。
  191. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 御指摘のように、押収、捜索が間違って行われたということによります損害というものは無視できないというふうに思うわけでございます。  ただ、これはほかのところで御議論されております、いわゆる非拘禁者――拘禁されない人に対する補償と似たような問題を持っておるかと思うわけでございます。このことにつきまして、先ほど他の委員のお尋ねに対しましてお答えしたところでございますが、やはりまあかたいようなことを申すわけでございますけれども、損害賠償の一種であるといたしますと、原則的には故意、過失ということによる国家賠償というのがたてまえであろう。無過失的な国家賠償ということになりますと、きわめて特異例外な場合であろうということでございますので、それを現在は申すまでもなく身柄の拘束という場合に限っておるわけでございます。これをどこまで押し広げるかということになりますと、他の公権力の行使による被害、損害の問題とも関係してくるわけでございまして、そういうこととの均衡の問題と申しますか、そういうこともあわせて考えなければならないというふうに思うわけでございます。  いろいろと国家権力による国家的に不当なことが行われた場合に、どこまで国、つまり国民が負担すべきかということにつきましては、社会情勢等もいろいろと変わってくるように思いますので、そういう点をにらみ合わせながら検討をいたしたいと思います。
  192. 橋本敦

    ○橋本敦君 これも新たな立法論になりますので、将来の検討として検討をお願いしておきます。  実際は、手形帳、小切手帳が押収される、そして手形を落とす期日がわからなくなって大変に困って、不渡りを出すというようなことで、中小企業の人なんかは大変困っている実例を私も知っておりますので。そういう場合に、局長がおっしゃるように、故意、過失が立証できれば損害賠償請求、国家賠償できますけれども、捜査機関の行為に対して故意、過失の立証なんというのは国民にとって通常容易なことじゃございませんので、だから、そういう意味も含めて将来やっぱり検討の一つの問題として実情も調べていただきたいと思います。  大体法案に関して私が持っております問題意識は以上のようなことですので、以上で法案についての設問は終わりますが、この機会に、KDDの捜査に関連をして刑事局長にお伺いをさしていただきたいと思います。  すでにKDDでは佐藤陽一、それから松井清武、そして日高英実、この三名が起訴されておりますが、この三名の起訴は、これは言うまでもありませんが、刑法百九十八条、そして百九十七条、つまり単純贈収賄、こういったことで立件がされておる、これは間違いございませんか。
  193. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) そのとおりでございます。
  194. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで一つの問題は、佐藤は当時KDDの社長室長でございました。社長室長の独断の権限でこの贈賄ができたのであろうかということに私は一つの疑問を持つわけです。つまり、公訴事実から見ましても、この贈賄を行った趣旨が、当時KDDが国際電気通信業務に関する協定、契約の認可、そして国際電気通信役務の料金等同社の行う業務の認可に関するこういう事務をとっていた人に関して、郵政大臣に認可申請した国際海事衛星機構に関する運用協定の締結に関する件など多数の件の処理に関して、便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼、あるいは今後同様の扱いを受けたいという趣旨でこういう南ヨーロッパ旅行をやった、こういうことですね。  こうなりますと、こういう国際海事衛星機構に関する運用協定の締結に関する件などというのは、当時の状況からしてKDD自体の非常に大きな問題であったわけですね。だからしたがって、当然板野社長がこの協定の締結の促進について重大な関心を持ち、みずからの任務としてもこれを考えていたであろうという事情は推測をされる。だからしたがって、佐藤室長だけがこれに関与したというのはちょっと常識に反するんで、この佐藤の松井外一名に対する贈賄、特に問題になった国際海事衛星機構に関する運用協定の締結に関する件ということになれば、当然私は、板野社長の指示もしくは了解を得て二人の郵政官僚に贈賄をした、こう理解するのが常識ではないかと思いますが、この点について、こういう常識的判断からの捜査はなされておりますか。
  195. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 具体的事件のことでございますので、まあいろいろな見方もあろうかと思いますが、やはり証拠に基づいての処分ということでございますから、現段階で申し上げられますことは、起訴された事実がそのとおりであるということしか申し上げられないわけでございます。  ただ、橋本委員のような見方ももちろんあり得るかと思いますけれども、まあ反論するわけではございませんけれども、起訴されたような事案について、佐藤室長という者の判断でやり得ないようなことでもないという気も一面するわけでございます。
  196. 橋本敦

    ○橋本敦君 一面気もするということで、あなたと私と気分論を論議してもしようがないですから。  要するに、捜査としてはいま板野社長は逮捕されていますよね、横領容疑で。しかし、この佐藤室長の贈賄に関連をして板野社長がどういう関連性を持ったかは佐藤に当然聞くべきことでしょう。都合によったら板野氏にも聞かなきゃならぬ問題であることは間違いないでしょう。いかがですか。
  197. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 当然個人でやったことではございませんで、会社のしかるべき役職にある者としてやったことでございますから、さらにその上の指示を受けていることがあるかどうかということは当然捜査の中で検討されたことと思います。
  198. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、捜査の結果どうであったかはいまお尋ねしませんが、もし板野社長の暗黙の了解もしくは指示に基づいて佐藤が贈賄をやったとすれば、板野社長はこの贈賄の件に関して佐藤と共謀共同正犯という関係に法律上なり得ますね。
  199. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) いまのような前提を置きますならば、当然そういうことに相なるわけでございます。
  200. 橋本敦

    ○橋本敦君 だからしたがって、佐藤のその後の捜査及び板野の取り調べいかんによっては、いま言ったような問題は理論的にあるわけですから、捜査をさらに深めて、この点の究明はしてもらわねばならぬと思うんですね。  それから、今度のKDDの捜査全体に関連をしまして、きのうきょうの新聞では、金の流れの解明をほぼ終えたという報道が圧倒的にたくさん出ておりますね。金の流れの解明は大体終えたという状況ですか。
  201. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) けさの新聞の一、二のものにいまおっしゃいましたような記事があったことは私も見て知っておるわけでございますが、逆に不思議に思いますことは、現にこの事件は捜査中でございまして、まだ板野元社長の勾留期間も何日か残っておるというようなことでございます。そういう段階で、検察当局はもちろん恐らく警察におきましてもそういうような捜査の過程のことを発表するというようなことはないはずであろうというふうに思うわけでございますし、したがって、どういうことからああいうような記事がまとめられたか不審に思うような気もするわけでございます。  それはそれといたしまして、私どもといたしましては、まだ具体的にどういうことであるかということは、詳しくといいますか、報告を受けておりません。
  202. 橋本敦

    ○橋本敦君 では、さかのぼって公訴事実に関連してお伺いしますが、要するに佐藤の贈賄については、いまお話をした国際海事衛星機構に関する運用協定の締結に関する件、これについて便宜な計らいを受けた例だということですが、これだけじゃなくて、公訴事実ではこの運用協定の締結に関する件など多数の案件の処理に関し、こうなっておりますね。だからしたがって、KDDの運輸大臣への認可申請その他多数の件に関して便宜を受けたその例、もしくは今後同様の便宜を図ってもらいたい趣旨で南ヨーロッパ旅行の費用を出した、こういうことですから、この協定だけに限らないわけです。そこまで捜査は進んだわけですね。そこで私が一つ聞きたいのは、この協定以外の多数の案件の処理に関して――この多数の案件というのは、日本語の字体から見ますとまさに多数ですから、これはいっぱいあるんですね。だから、その中には、当時KDDで問題であった多数の案件というとかなりのものが含まれますが、当然この中に料金値下げ問題を、料金を下げないでうまくいけるようにという趣旨の料金問題、これも入っていたというように私は読み取っておるんですが、いかがですか。
  203. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 起訴状の記載からいたしますと、多数の案件という言葉が使われておりますからまさしく御指摘のようなことで複数、しかも相当数ということになることは言うまでもないと思います。ただ、その内容がどうであるかということになりますと、起訴したばかりといいますか、公判がまだもちろん開かれていない段階でございまして、今後の公判立証ということの内容にわたることでございますので、現段階におきましては、その内容について具体的なことはお答えいたしかねるわけでございます。
  204. 橋本敦

    ○橋本敦君 いずれこの問題は、公判になれば、多数の案件とは何かというのはある程度立証上必要な事実は冒頭陳述で明らかにされる事項だと思いますが、それはそうでしょうね。
  205. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 当然、この事実を立証するわけでございますから、その立証に必要な限度におきまして御指摘の点もより詳しく明らかになると思います。
  206. 橋本敦

    ○橋本敦君 しかもその前に、起訴状の朗読があった後、弁護人からの起訴状に対する求釈明要求は当然ある。私が弁護人なら、この多数の案件とは何か特定されたい――起訴状というのは公訴事実の特定ですからね、求釈明要求は当然しますよね。そうすると、検察官は必要に応じてお答えになる。その段階でも明らかにされる事項だ。  そこで、当時の事情から見て、海事衛星機構に関する運用協定の締結以外に大きな問題と言えば、これは客観的に料金問題があり、人事問題がありというようなことが大きな問題として含まれている。だから、料金問題ということもこの多数の案件の中の一つとして入っている可能性は、これはいまも否定なさらないんじゃありませんか。
  207. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) どのようにお答えしたらいいかと思いますが、現段階でのお答えとしては、その多数の案件の具体的内容については申し上げるのが適当でないと言うしか言えないわけでございます。
  208. 橋本敦

    ○橋本敦君 常識的に考えて、入ってないとあなたが断言されない以上は入っていると考える状況にKDDは当時の事情からいってあるわけですよ。仮に料金問題がこの中にあるとしますと、佐藤の贈賄行為はその海事衛星機構に関する協定で便宜を図ってもらっただけじゃなくて、多数の案件の中に料金問題もある。こういう料金問題があるとなると、これはまさに何度も国会でも論議されておりますけれども、服部郵政大臣の国会答弁の変化と、そうしてそのころに見合う五十三年五月二十五日の「口悦」や「山崎」における板野社長との密会、これが一つはやっぱり問題になってくる。だから私が言うのは、この佐藤の起訴状自体から板野との線が結ばれ、そうして政界工作、特に料金問題となれば服部郵政大臣に結びついていく捜査の線ということの芽はこの起訴状の中にもうある、こういうように考えて私は質問しているわけですね。これは私の想像ですよ。そうなってきますと、いま逮捕されている板野は、この佐藤の取り調べとの関係においても、料金問題、それからこの官僚二人に対する贈賄に関して板野がどれだけかかわったのかかわってないのか、こういう問題も含めて当然捜査されていなくちゃならぬと私は思いますが、それはどうですか。
  209. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 橋本委員がこの起訴事実につきましていろいろな見方をされること、これを私からとやかく言う立場にございませんが、それはそれといたしまして、いまのような問題は従来から御指摘を受けているところでございまして、当然解明を要する事実の一つであろうと思います。
  210. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、今度のKDDの金の流れで、けさの各紙も言っておりますが、政治家関係には一億円以上流れたというような報道もいろいろあります。  そこで、郵政大臣の職務権限は、これは料金の認可権があり、人事に対して承認権がありますから明白ですが、国際電電の料金をどうするかという問題を国会が議論をする、また現に議論をしてきた。その料金問題に関して国会議員の職務権限は、KDDの料金問題に関連して職務権限はまるで関係がない、全くないという見方を検察庁は理論的にされておりますか。それとも権限があり得るという見方をされておりますか。この点はいかがですか。
  211. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 現に捜査中の具体的な案件に関係するようなお答えになりますと、誤解を受けると思いますので、差し控えさしていただきたいわけでございますが、国会で御議論になる事柄、それについて国会議員が職務権限をお持ちであること、これは当然であろうと思います。
  212. 橋本敦

    ○橋本敦君 例の大阪地裁におけるタクシー汚職事件判決の判決文そのままとってみますと、国会議員の職務権限に関しては、「結局、国会議員は、自己の所属する議員の議事一般についてこれに関与できる一般的職務権限があるというべきである。」という結論になっていますね。これは委員会の審議だけに限らず自己の所属する議院の議事一般について、こういう一般的職務権限があるというべきであるという判示になっています。これは検察庁の論告の主張とも沿うものですが、この考え方は局長も御賛同でございますか。
  213. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) まあ一般論的な表現にはなっておるわけでございますけれども、やはり具体的事件というものがあって、その事案に即しての裁判所の御判断であるわけでございますので、それの当否について、まだこれは裁判が確定しているわけでもございませんので、当否についてここで申し上げるのはいかがかと思います。
  214. 橋本敦

    ○橋本敦君 検察官の考え方ですよ。裁判所の判断がどうなるか、おっしゃるとおりこれは一審判決。検察官の考えとしては、国会議員というのは、自分の所属する委員会での直接の議事にかかわるだけじゃなくて、自分の属する議院の議事一般について一般的職務権限があるという考え方は、職務権限論としては正しいんじゃないですか。これはおかしくないと思います。
  215. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) まあきわめて一般論として言えばそのようであろうと思います。
  216. 橋本敦

    ○橋本敦君 だからKDDが政治家に、逓信委員であれどうであれ、盆暮れのつけ届けをしたとか、贈り物をしたとか、商品券を贈ったとか、こういう事実に関連して言うならば、その趣旨は具体的に究明する必要はあるけれども、国会議員がこのKDDに関してまるで初めから職務権限がないという立場で捜査もしないというわけにいかないんじゃないですか。
  217. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) お尋ねが贈収賄罪としての捜査の要否ということになりますと、職務権限だけで事は片づくわけじゃございませんで……
  218. 橋本敦

    ○橋本敦君 まず職務権限論として……。
  219. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) やはり趣旨というものが一番問題であろうと、もちろん御指摘の職務権限ということにつきましては、先ほどお尋ねがありお答えしたようなところでございますから、それはそれで否定するわけじゃございませんが、それだけで取りかかるというわけにもいかないということでございます。
  220. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから職務権限は一般的、理論的にはある。だけれども捜査はそれだけで取りかかれない、具体的事実と証拠が要る、こうなってきますね。  そこで、KDDが政治家のパーティー券をたくさん買ったという例がいろいろある。たとえば、いままで明らかになったところでは、T議員に対してパーティー券百枚買った。T議員は返されたと言っておられます。また、S議員も百枚買ってもらったが返したと、こう言っておられますね。それから、四十枚、これはM議員ですが、これは認めておられますね。こういう政治家が行うパーティー券、KDDの社員が百人も五十人も参加することはあり得ない状況がはっきりしておる客観的事実の中で、これだけたくさんのパーティー券を買って差し上げるというのは、パーティー券を買うという名目であるけれども、KDDが行きもしないのにそれだけ大量のパーティー券を買うということは、政治家に対するこれは利益の供与ということに当たる可能性はありませんか。
  221. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 橋本委員もいろいろと条件をつけておっしゃっているようでございますので、そういう条件が前提でございますと、まあ当たり得ると言ってよろしいかと思います。
  222. 橋本敦

    ○橋本敦君 だからそういう状況があったかどうかは、これはやっぱり捜査の問題ですからね、これは調べてもらわなくちゃいかぬ。特にもう判例で確立していますけれども、これはもう賄賂の目的物というのはこれは有形、無形を問わず、要するにその人の欲望を満たす利益性、そういうものがあれば足りるわけですからね。だからパーティー券であれ、せんべつという名目であれ、これはもう問わないわけですよ。だから政治献金が政治献金として妥当である場合もあるけれども、政治献金という名の賄賂である場合もある。これはもう検察官もよく御存じのとおりですね。  そこで、このKDDの場合は何人かの政治家がパーティー券を買ってもらったあるいは商品券が贈られた、こういろいろなことがありますが、現金の授受が少ないので捜査がむずかしいと、商品券だから、パーティー券だから、こういうことは理屈が立ちますか。これは立たぬと思いますね、どうですか。
  223. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 抽象的に言えば現金でなくても賄賂になることは当然でございますけれども、現金の方が賄賂性の認定が強い場合があるだろうとこういう意味にとれば、そういうことであろうかと思います。
  224. 橋本敦

    ○橋本敦君 パーティー券は現金に転化する、商品券はすぐ現金的価値に換価されますからね、現金とほとんど変わらない。だからそういう意味では、このKDDの事件については政治家への商品券、パーティー券問題、それからあるいはせんべつその他いろいろ出されているわけですから、その政治家が職務権限が初めからはっきりないなら別ですが、職務権限が抽象的、一般的にあるという立論はもう言うまでもないんですから、あとは捜査の詰めだと、私はこうなると思うんですね。  そこで、板野社長は二十六日に勾留満期ですが、こういうKDDの政界工作を実際に板野がどのように指示をし、ま実際にどのようにやられたか、これは重大な関心を持っていまも捜査を遂げておられるし、今後もパーティー券やそれから商品券も含めて政界工作については捜査を詰めていかれるという決意にお変わりはないと思いますが、いかがですか。
  225. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) いわゆるこのKDD事件につきましてはいろいろな形での疑惑といいますか、問題が提起されておるわけでございます。その中で捜査当局の立場といたしましては犯罪になるものしかできないわけでございますが、その限度におきまして、従来から申し上げておりますように最善を尽くすことは今後も変わりません。
  226. 橋本敦

    ○橋本敦君 KDDが四年幾らの間に六十億円の交際費を使ったという問題が社会的に広く言われておるし、そしてパーティー券の問題、商品券の問題、これは客観的にはもう多数KDDが政界工作でやっているという事実も言われている。しかも料金値下げ問題という重大問題をめぐって服部郵政大臣の答弁の変化ということも社会的に注目を浴びている。こういう状況で、政治家に対して一人も事情聴取をしないままこの事件が終わるということは、これは常識的に考えられない事件だと、この事件の性質から言って、と私は思うんですが、政治家に対する事情聴取に踏み切るだけの捜査を詰めておられるのかどうか、ここのところをはっきり聞きたいですね。
  227. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) お尋ねでございますけれども、いままさに進行中の捜査のことでございまして、この段階でだれをどういうふうに調べるとか事情を聞くとかいうことを申し上げるのは、それ自体適当でないように思いますので、お許しをいただきたいわけでございます。
  228. 橋本敦

    ○橋本敦君 局長ね、だれを調べるとか、私、特定の人の名前を言ってほしいという意味じゃないですね。だから私の指摘したのは、名前を指摘しないで、K議員とかS議員だとか、たとえばの例で挙げたわけですね。要するに、このKDD事件が具体的事実から出発しているんですよ。佐藤陽一に対する公訴事実から見て――いいですか、あの二人の郵政官僚に対する贈賄が――何遍も言いますけれども、海事衛星機構に関する運用協定の締結に関する件、これは運輸大臣に申請をしておった、これに便宜を図ってもらった謝礼というだけじゃなくて、その他多数の案件の処理に関して便宜を図ってもらい、今後便宜を図ってもらう趣旨で贈賄したという起訴事実があるんですから、こういう観点からいくならば、料金値下げ問題も含め、多数の案件も含め、そして多数の商品券、パーティー券があると、こういう全貌を捜査するとなると、当然この政界工作について詰めた捜査をやっていかないと犯罪の成否をきわめるわけにいかないというのが常識ですから、この点は検察庁としては徹底的に政治家も含めて事情は究明をするという方針なのかどうかはっきりしてほしい、こういう意味です。
  229. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 先ほどパーティー券の件につきましてはローマ字の名前でおっしゃいましたけれども、その前には特定の政治家の名前を挙げておられたと思います。それやこれやございまして、私が申し上げますと、特定しないと申しましても、すぐにそれをつなげて受け取られるおそれもあるわけでございます。そういうことで、できるならば差し控えたいということを申したわけでございますし、一面いまいろいろと御指摘を受けまして、それが常識であろうというようなことも仰せになりましたわけで、捜査といたしまして常識に沿った捜査がなされるべきものであろうというふうに思います。
  230. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうしますと、二十六日にこの政界工作のかぎを握る最高の責任者である板野氏の勾留の満期ということになるんですが、彼がどういうことで起訴されるかどうか、これはまだわかりません。いまのところは横領ということで捜査を詰めておられるということですが、しかし、この事件が彼の単なる横領だけでない事件の広がりを持っていることも、これはもう明らかである。そういたしますと、二十六日までに捜査に全力を挙げるという、こういう大事な節目を考えますと、いま局長がおっしゃった多面的に政界工作も含めて事実を詰めるという捜査は、二十六日まであと残されたわずかですけれども、全力を挙げてこれはもう二十六日までにやれる限りおやりになっておられると、こう伺っていいですか。
  231. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) その点はまさしくそのとおりでございます。
  232. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうすると、可能性として初めに指摘した佐藤陽一と板野社長が共謀で二人の郵政官僚に贈賄をしたということで公訴が提起される可能性もあるし、新たな贈賄ということで起訴される可能性もあるし、この二日間の捜査というのはそういう可能性をめぐっていま非常に重大なときだと、こう理解していいですか。
  233. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 毎度申し上げますけれども、可能性ということをおっしゃいますと、可能性はあらゆる無限だというようなことになるわけでございますから何とも申し上げかねますけれども、それはそれといたしまして、勾留期間もう残り少ないわけでございますが、その間従来同様に、またさらに努力をいたしまして、できる限りのことをいたしたいというのが検察当局の立場であろうと思います。
  234. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうしますと、二十六日までに政界工作を含めて捜査を詰めるということであれば、二十六日までに証拠によって必要な政治家の事情聴取も二十六日までにあり得ると、こう理解していいですか。
  235. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) いわゆる三段論法といいますか、論理的なお尋ねになりますと、論理的にはあり得るということになろうかと思いますけれども、何分にも捜査のことでございますから、それに至る証拠がありませんと取りつきようもないことでございます。したがいまして、そういう意味であり得るということも断言いたしかねるわけでございます。
  236. 橋本敦

    ○橋本敦君 じゃ、時間が参りましたので、もう終わりますけれども、佐藤陽一は、寺田委員の御質問でもありましたが、起訴された以後も必要に応じて取り調べをなさっておるようですね。これはKDD事件の大きさから言って当然でしょう。だから、二十六日に仮に板野が横領ということだけで起訴されたということになった場合も、引き続き検察官は身柄の拘束を求めて、KDD事件の全貌について、二十六日までに間に合わなかった分について捜査を進めていく決意があるかどうか、この点はいかがですか。
  237. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) その点は寺田委員にお答えしたところと同じことでございますが、いわゆる余罪のためにのみ身柄を引き続き拘束するということは本来適当でないわけでございます。まあ仮に起訴になりました場合、これも仮定論でございますが、その場合にそのこととの関係で身柄の拘束の必要があれば拘束が続けられるということでございまして、その間必要な捜査ということは当然行われることもあり得るであろうと思います。
  238. 橋本敦

    ○橋本敦君 それじゃ、最後に。  新たな犯罪容疑、たとえば贈収賄ということで、贈賄ということで固まれば、新たに逮捕状をとって捜査を続けるということも理論的にはあり得るわけですが、いかがですか。
  239. 前田宏

    ○政府委員(前田宏君) 先ほども申し上げましたように、あらゆる可能性ということで申すわけでございましたら、あり得るということになろうと思います。
  240. 橋本敦

    ○橋本敦君 終わります。     ―――――――――――――
  241. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) この際、委員の異動について御報告いたします。  ただいま宮之原貞光君及び永野嚴雄君が委員を辞任され、その補欠として佐藤三吾君及び堀江正夫君が選任されました。     ―――――――――――――
  242. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  243. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  刑事補償法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  244. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  寺田君から発言を求められておりますので、これを許します。寺田君。
  245. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私は、ただいま可決されました刑事補償法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、日本共産党及び参議院クラブの各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。     刑事補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府及び最高裁判所は、刑事補償制度の趣旨にかんがみ、経済事情等を考慮して、補償金額の引上げに、さらに一層の努力をすべきである。   右決議する。  以上であります。
  246. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) ただいま寺田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  247. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) 全会一致と認めます。よって、寺田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定をいたしました。  ただいまの決議に対し、倉石法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。倉石法務大臣。
  248. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、鋭意努力してまいりたいと考えております。
  249. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 峯山昭範

    ○委員長(峯山昭範君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時八分散会      ―――――・―――――