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1969-06-10 第61回国会 参議院 法務委員会 10号 公式Web版

  1. 昭和四十四年六月十日(火曜日)    午前十時二十四分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         小平 芳平君     理 事                 後藤 義隆君                 河口 陽一君                 亀田 得治君     委 員                 上田  稔君                久次米健太郎君                 近藤英一郎君                 山本敬三郎君                 山高しげり君    政府委員        警察庁交通局長  久保 卓也君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       岸  盛一君        最高裁判所事務        総局総務局長   寺田 治郎君        最高裁判所事務        総局人事局長   矢崎 憲正君        最高裁判所事務        総局経理局長   岩野  徹君        最高裁判所事務        総局刑事局長   佐藤 千速君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判の運営等に関する調査  (交通事故対策に関する件)  (吹田事件刑事補償に関する件)  (広島地方裁判所裁判官の不再任に関する件)     ―――――――――――――
  2. 小平芳平

    ○委員長(小平芳平君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 道路交通法違反問題の扱いについて若干お尋ねをしたいと思うのです。  最近、警察官自身がこの道路交通法を無視したり、しかもその中には非常に計画的な悪質と思われるようなものがあったりして、たいへんこれは私、交通問題がやかましく言われておるときに、そういうことが新聞やニュースで報道されるということは、与える印象がはなはだよくないと思うのですね。そういう点で、そういう事件が起きた直後、大臣も非常に恐縮した意味のことを言っておられましたが、おそらく交通局長としてもしかるべく措置をとられたと思いますが、その点につきましてどういうふうに措置をされたものか、まずお尋ねをしておきたいと思います。
  4. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 警察庁内部の組織といたしましては、警察官のどのような規律違反であれ警務局で所管いたしておりますので、警務局で五月初め及びその末、たしか二度にわたって、全国に対しまして、規律違反のないように、特に交通関係につきましては、警察官の車両の保有者及び免許証の保有者、そういう点もずいぶん調べましたし、それから任意保険に入っていない者が相当にあるということで、この点も警務局のほうから強制――強制と申しますか、なるべく任意保険加入するようにという通達を出しております。警務局のほうで措置いたしました。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 まあひとつ十分、ああいう新聞報道されたようなことが再び起こらないように、諸般の注意をやってほしいと思います。  そこで、私きょうお尋ねしたいと思いますのは、よく聞く苦情なんですが、非常に軽微な道路交通法違反があると、そういう場合に、その軽微な事犯があったかなかったかそれも疑わしいようなのがある。そういう場合に、警察官タクシーの運転手などに対して自分の意見を押しつけてくるというのですね。で、その押しつけ方というのは、従わなければ逮捕をするというやり方をとってくるというわけですね。従っておれば軽い反則金の程度で済む事案ですね、もし警察官の言うとおりの事実だとしても。にもかかわらず、意見が違うということになると逮捕と、こういうことをやりかねない態度をとってくる。中には逮捕されたのもあります。こういうことは、私は行き過ぎじゃないかと思う、そういうやり方はね。それは、悪質なものについては、現場ですぐ逮捕するということも必要なものはこれはたくさんあると思うのです。それはそれでおやりになったらいいと思うのです。そうでなく、しかもわずかな意見の違い、警察官の言うとおりとしてもそれは軽い反則金で処理したらいい程度だと、向こうもそう言うておるわけですわ。そう言うておって、認めないのなら逮捕だ、こういうふうなことは、いかにも権力をかさに着て弱い者をいじめるという印象を与えますので、はなはだ私おもしろくない。ちょいちょいそういううわさを聞くし、私そう思っておるのです。で、あなたのほうのそういう問題に対する基本的な考え方ですね、まずお答え願いたいと思います。
  6. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 軽易な事件について、特に反則行為に該当するものにつきまして、原則として逮捕するということはあり得ないと思いまするし、また、その反則行為を認めないということは反則制度に乗らないというだけでありまして、反則の切符を受け取らなければ、それはそれでよろしくて、あとは刑事手続に乗るというだけなんでありまして、これは私どもの方針としてはそういうことが徹底されているつもりでありまするけれども、その反則を行ないましたときの状況いかんによって逮捕される場合がある。昨年の例で申しますと、七月に反則通告制度が実施されましたけれども、それから十二月までの間で、反則者であって現行犯逮捕されたものが七十一件ということになっております。これは道交法違反関係では通常あまり現行犯逮捕ということは行なわれておりませんけれども、全体では約八千七百件くらいありますけれども、そのうちの七十一件ということで、まずまずと思っておりますけれども、ただ現場の警察官のいまのおっしゃるような行為あるいは態度というものは、必ずしも適正でない。この反則行為を認めなかったから直ちにそれが逮捕するぞというような言い方というものは、適当でないというふうに私は考えます。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 この七十一件というのは、逮捕して、あとの処分はどうなったのですか。
  8. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) これは逮捕いたしましても、私の手元にありまする幾つかの例から見ますると、一応警察署に連れて行きまして、それで捜査をいたしまして、たいていが認めております。そこでその日のうちに帰しておるというのが現状のようであります。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 この七十一件は、全部処罰されたのですか。
  10. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 七十一件の中身については、私は確認いたしておりませんけれども、おそらく大部分というものは反則制度に乗ったのでなかろうかと思います。もし反則行為を認めておりませんければ、それはそれで本人を帰して、あとは刑事手続に乗るということになります。おそらく、自信を持っては申し上げられませんけれども、七十一件のものについて留置をしたということはほとんどなかろうというふうに考えます。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 ともかくタクシーの運転手の場合は、これはみんなつとめておるわけですし、したがって住所もはっきりしておるわけですね。これはちゃんと証明書も持っておるわけだし、したがって、住所不定とか、そういう問題は起こらない。逃亡といったようなことも起こりません。そんなことは普通考えられぬことです。それから、ネズミ取りとか、そういう場合でも、証拠はちゃんとあるわけですね、警察側で。そこの見解の違いであるだけでね。だから、そういうものは本来逮捕の要件に当たらない場合が多いのですよ。それを七十一件も逮捕しておる。それは現場で何かけんかになって、そうして道交法違反と別に何か起きたということなら、それはまた別個な検討が必要ですけれども、普通の道交法違反自身でしたら、逮捕の要件に一体合致するかどうかということ自身が疑わしいものが多いわけなんですね。で、との七十一件、一つ一つこれは具体的に検討しなければわかりません。私の言うのは。ところが、私たちがちょいちょいうわさに聞くのでは、ともかくそんな要件とか、たいした吟味もしない。証拠隠滅のおそれがあるわけでもない、逃げ隠れする立場でもない、ただ警察官が考えておることを認めないというだけで連れて行くと、これはもうけしからぬと、こういうことを聞くわけです。で、私、うわさだけじゃいかぬから、そんな事実があれば少し具体的にちゃんと示してくれと言うて、その結果、四つばかりここへ事案が来ているわけです。来ておりまするので、具体的にこれをひとつ調べてみてほしいのです。  申し上げますと、第一は、昭和四十三年十二月十七日、これは大阪の豊中署ですね、十七日の夜のようです。運転手が斎藤。名前もちょっとこちらに報告が書いてありませんが、斎藤運転手。これはネズミ取りにひっかかったわけですね。否認したら逮捕と、こういうふうになっておるのです。それから四十二年の十月二十九日、これは福島署ですね。これは反則金の前のことですけれども、しかし問題の本質は同じことなんで、十月二十九日、栗須義久、これもやはりネズミ取りです。警察の言い分を否認したところ、逮捕された。それから四十三年五月十四日、堺北署ですね。これは積載違反なんですね。ラーメンのケースを六十六積んでいたようですね。警察は二百キロオーバーしていると言うのに対して、運転手のほうはそうじゃないと、ラーメンの一つのケースは三キロだから、限度である二トンをオーバーしておることはないと、こういう意見の違いが現場で発生したところ、その場で手錠をかけて留置された、そういう案件。まあ警察の言うとおりだとしても、わずかのこれはオーバーですわね。ところが、運転手の言うのは、決してそうはならぬ、計算してごらんなさいと言うて、水かけ論みたいな状態で逮捕された。それからもう一つは、四十三年八月七日、浪速署ですね、松浦稔ですね。堺北署のやつは逮捕されたのが小国太一ですね。それで、浪速署の四番目の件は、交通事故がありまして、松浦を加害者だと誤認して、そうしてつかまえたものなんですね。いや自分はそんなことは全然関係がないと言っておるにもかかわらず、被害者と称する人が何か申し出たので、それで松浦を加害者と一方的に断定して、すぐ逮捕して連れていった。その松浦という人がタクシー会社につとめておるわけでしょうが、その出勤の際の事故のようですが、出勤の時刻と発生の時刻が全然違っておるのですね。少し慎重にやればすぐわかる事案のようです。あとからこれは人違いだということで、すぐ釈放されているんですがね。この四つとも、結局逮捕されてすぐ釈放されてそのままになっているわけです。一番目と二番目はスピード関係、三番目が積載関係――積載関係は、さっき申し上げたとおり、どっちの計算が正しいのかわかりゃせぬ。四番目のほうは人違いですね。一番目も二番目もこれはネズミ取りだから、計算機は持っているんだろうが、はかり方で多少の違いは出ますからね。第一、スピード違反などは、若干のオーバーというものは普通大目に見ておるわけですね。だから、そういうことが加味されたのかどうか知らぬが、全然その後の手続というものは何にもないわけなんです、結果から見ても。だから、こういうのは、たとえばさっきの七十一件ある昨年の数字、そういう七十一の中に入ってこぬのと違うですか――七十一件というのは昨年ですね。
  12. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) そうです。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、昨年の分について私三つあげたわけですね。こういうのが一体七十一に入っているのかどうか、これを調べてみてほしいんですが。そうしませんと、半ば無理じいしたような態度逮捕した、あと処分しない、うやむやに消えていくわけだね。しかし、そういうことをされた人の立場から見たら、非常にうらみ骨髄に達するわけだ。しかも、これは報告がないから、皆さんのほうにはわからない。全くうやむやのうちにそういうことが見過ごされるということになる。しかし、そういうことがいろいろ伝わって、非常に私はやはり取り締まり官に対する悪い感情を持つと思うんですね。それは、交通違反なんというものは、警察も一生懸命になっているが、やはり運転者なり、歩行者なり、関係者全部が協力してもらわなけりゃいかぬ私は問題だと思うんですがね。だから、それだけに、どこかで無理なことをやっているという感情を与えるようなことをやっちゃ、私は非常なやっぱりマイナス面が出てくると思います。そういう意味で、事柄としては軽微なことであり、何か末端の軽いトラブルのようではありますが、仲間では非常にやっぱりけしからぬということをよく言うんですね。だから、これはひとつ調べてみてください。この四つの案件、こっちのほうから言うたら、逮捕しながら処罰もできないようなものを何で一体逮捕するのかということすら言いたいわけだ。いまからさかのぼって起訴してくれという意味で言っているんじゃないですよ。おそらく、逮捕もしながら起訴もできないというのは、結局は運転手の言い分が大体正しかったんじゃないですか、調べてみたら。だから、それは人間だれだって判断の誤りというものがあるわけですからね。それは、何べんも違反事故を起こして、これは常習者だ、そういう諸君が否認した場合には、その簡単に警察官としても引き下がれない場合もあるでしょうが、善良な運転手が、そうじゃない、こうでしょうという場合に、それはもう有無を言わさずつかまえてしまう、これは私はもういかぬと思うんです。起訴されて有罪になったような事件ですと、結局おまえ運転手のほうが悪いじゃないか、こう言われがちですから、結局逮捕はしたが問題にならなかったというのを四つばかりここへ出したのです。交通局長としてもどうですか、こんなあなた逮捕までしてね、そうして何にもあと処分ができない、結果的に見ても非常にそれはお気の毒なことをしたというふうに思われると思いますが、どうなんですか。
  14. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) いまおあげになりました四つの事件の中で、最後の四つ目の件は誤認逮捕ということになろうと思いますが、これは刑事事件なんかでもありますように、たまにあり得ることだと考えます。しかし、その前の三つの事件ということは、もし先生のおっしゃるとおりであれば、全然逮捕に値することではない。私どもは報告として聞いているところでは、その住所氏名がはっきりしないというのは、たとえばチラリズム作戦と言うんだそうですが、免許証を呈示しなければならない義務があるわけですから、車の中で呈示をするのですけれども、免許証をこういうふうに見せるだけで、窓を全然あけない。したがって、なるほど免許証の呈示は受けたかもしれませんけれども、名前も何も全然わからないといったようなこと。あるいは、カブトムシ作戦と言うんだそうですけれども、うんともすんとも言わない、窓を全然あけないでかぎをかけたままだんまり作戦をとっておるというようなことで逮捕するのだ。それからまた、これは状況が具体的にどういうふうになっておるかわかりませんけれども、本人が逃亡ないし証拠隠滅のおそれがあるというふうに、これは報告ですから、具体的な状況はよくわかりませんけれども、そういったような場合に逮捕しておるのだ。それが七十件ばかりになるということでありまして、もし先生の言われたような事件があるとすれば、適当でないと私は考えます。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 まあこの一、二、三、具体的な事情を調べて、さらに的確なひとつ御判断を聞かしてほしいと思います。  それから四の場合でも、普通刑事事件でいろいろな誤認逮捕があるというのと、ちょっと私は性格が違うと思うんですよ、これね。交通事故でしょう。そうして本人が会社へつとめている。まずそれから事情を聞いてやるべきだと私は思うのですよ。それを、おまえ事故を起こして知らぬ顔をしている、けしからぬぞということで逮捕していっておるわけですね。だから、凶悪な犯罪等をやって、警察が一生懸命やって誤認逮捕したというようなのと、ちょっとこれ違うのでね。どうも道交法違反の中で逮捕ということが運用がよろしきを得ていないんじゃないか。悪いやつはつかまえたらいい、それはもう私は認めますよ、そういう場合には。そうでない、意見の違いとか、そういうことで簡単につかまえるというようなことは、やめてもらいたいと思いますね。相手がほんとうに自分は違反をしておらぬと思えば、場合によっては抵抗する場合が相当あり得ると思う、けしからぬと。いやむしろ自分のほうでも実際にこれはもう違反したということを知っておる人は、すなおに調べに応ずるでしょうね。だから、その辺のこともあるんですからね。ちょっと抵抗したから、そのこと自身が悪いのだというふうなことも、これは慎重に考えないといかぬということだと思います。自分が悪くないのに因縁つけられて黙っているような人間というのは、これはたいして正義感の強い男ではないと思います、逆に。まあ若い警察官のことですから、そういう人情の機微なところまではなかなか判断できにくいかもしれないけれども、しかし少しでもそういうことがあると悪いうわさが伝わりますからよくない。ぜひこれは調べてください。七十一件との関係はどうなっているかも。
  16. 久保卓也

    ○政府委員(久保卓也君) いまのお話の中で、事故があったからといって、あるいは意見が相違しているからといって逮捕するということは、まず私には考えられないのですけれども、具体的にはその事情を調べた上でないと正確なお答えはできないと思います。  それから、いまの四件について、さらに七十一件との関連についての御要望につきましては、私のほうで調査の上お答えしたいと思います。
  17. 亀田得治

    ○亀田得治君 せんだっての新聞でしたか、交通違反の取り締まりについての点取り主義、こういうことを今後は廃止するというふうな見出しで記事が載っておりましたが、ぼくらこういうことはとっくに廃止されているのだと思っていたのですが、必ずしもそうでない空気が全体にあるわけですから、それは警察庁自身としてはそんな方針は持っておらぬでしょうが、こういうことがニュースになるところを見ますと、やはり全体の警察官の中にはそういう考えが残っておるというふうな感じを私は持って見たのですが、五月十六日の朝日新聞ですが、実情はどういうことになっていますか。
  18. 久保卓也

    ○政府委員(久保卓也君) 特に点数主義と申しますのは、警察官の中で約六万人を占めております外勤について従来行なわれておりました。要するに、どろぼうをつかまえたら何点、交通違反で取り締まったら何点、月間総合しまして非常に成績のいい者が表彰を受ける、あるいはそういった者が昇任その他の場合の選考の対象になるというようなあり方。これはすぐに点数に換算いたしませんでも、たとえばABCというクラスに分けるというようなこと、いずれにしましても点数ということを当人の評価の対象にしてまいったということであります。  ところが、この点についての弊害がいろいろ世上も言われておりましたし、また県によりましてはこの点数制度をとっていない県もあったわけであります。非常にアンバランスでありましたが、昨年の秋にこの制度を全廃するということで、当人の全般的な仕事の評価を常々して、その上で本人がいい悪いというようなふうに評価すべきであるということで、これは昨年の秋全国に通達され、もう徹底されていると思います。したがいまして、今日ではそういうようなあり方はないと思いますが、特に私、交通局長になりまして交通の面で考えておりますることは、悪質な違反に対してはこれはもう絶対に取り締まりをしなければいけない。これはしかし、すぐにそれが点数に結びつくとは限りませんが、それから軽易なものについては警告と指導を重ねていく。警告と指導で本人が将来とも違反をしないという保証はありませんけれども、私は、交通のルールなり交通のマナーを何とか身につけてもらうためには、繰り返し繰り返し警告、指導をすべきであるというふうに考えております。私は、外勤であれ、交通外勤であれ、あるいは白バイ、あるいはパトカー乗務員であれ、すべて軽易なものは指導と警告を繰り返していく。当然、こういうものは件数の上にあらわれてきませんから、本人の成績ということにはなりませんけれども、しかし、もしそういうことが繰り返されて、その町の交通マナーがよくなれば、それは警察署全体として当然いいのだというふうに評価すべきではないかということで、この春の警察本部長会議でも申しましたが、来たる――すぐ交通関係の課長会議がありますが、その際にも徹底するつもりであります。したがいまして、私は今日ではいわゆる点数制度あるいは件数主義というものは警察から払拭されたのではなかろうかというふうに確信いたしております。
  19. 亀田得治

    ○亀田得治君 制度としては廃止されても、長年の慣習というものはやはりしばらく残るのだと思います、事実上。これは警察だけじゃなしに、どこでもそうです。だから、そういう面をひとつ今後十分注意してほしいと思いますね。そういうものが残っておると、やはり間違った、行き過ぎた逮捕というようなことにもまた結びつく場合もあり得るわけでしてね。  それからスピードの問題ですが、これは若干のものは大目に見ておるというふうに、これはぼくらの運転しておる諸君も言うのですが、そんなことは別にして、ともかくスピードだけはきちっとやってくれと言うて、やかましく言うておりますが、一般にはそういうふうに言うておりますが、それはどうなんですか。
  20. 小平芳平

    ○委員長(小平芳平君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  21. 小平芳平

    ○委員長(小平芳平君) 速記をつけて。
  22. 久保卓也

    ○政府委員(久保卓也君) ただいまの御質問に対しましては、制限されましたスピードを違反しておるからといって、直ちにそれを違反の対象にしておるということではありませんで、ある程度常識的な線で違反の対象とするということであります。
  23. 小平芳平

    ○委員長(小平芳平君) 交通局長にちょっと一つお尋ねしますが、信号機をさえぎって見えなくするということは、これは何らかの違反行為の罪になると思うのですが、実際最近は街路樹で信号機が見えにくいところができてくると思うのです。それからもう一つ、街路樹ならともかく、今度は個人の庭木が道路へすっと出てきちゃって、それで信号機が見えなくなっちゃう。それは都内の荻窪の例ですけれども、有名な事故の多い交差点があるのです。信号機があるけれども、もうほとんど用を足さないわけです。原因はというと、庭木が出てきちゃうから信号機が見えない。それで付近の人の苦情としては、庭木が道路へ出過ぎるもんだから、雨があがっても露が落ちるとか、毛虫が落ちるとか、そういう苦情があるのですが、それはどうしようもないのですが、信号機が見えなくなるということ、庭木でそうなるということは、何らか交通事故防止の対象に考えられぬものでしょうか、いかがでしょうか。
  24. 久保卓也

    ○政府委員(久保卓也君) 信号機のみならず、道路交通関係の標識につきましても同じような問題があるわけでありまして、外国の例に比べまして、わが国の場合にはそういったような障害物を除去するという努力は非常に少ないように思います。そこで、この四月から五月十日まで一カ月間をかけまして、全国の交通標識、これは信号機は当然入りますが、そういうものを総点検をやっております。この結果が六月一ぱいに上がってまいりますので、これは交通安全施設三カ年計画の中にすぐには入りませんけれども、計画を変更しましても、以上の面での要望がありました点、あるいは改善を要すべき点については、この計画の中で訂正いたしたいと考えております。  そこで、いまお話しの点は、一応、何人も信号機の効用を妨げるような行為をしてはならない、あるいは物件を設置してはならないという規定がありますので、違反ではありますが、おそらく現実にあまり違反として取り締まるのもあまり常識的でありませんので、おそらく警察側が、たとえば街路樹はもちろんでありますが、私人の家の植物なんかについては具体的な折衝によって何かやっているのではなかろうかと考えますけれども、あまり徹底されてない面があるのかもしれません。これはおそらく、いま申し上げました五月十日までの点検の中であらわれてくるのではなかろうかと思います。
  25. 河口陽一

    ○河口陽一君 ちょっと関連して。  けさラジオで承知したのですが、北海道の苫小牧市で緑のおばさんが交通整理をしておる。ちょうど幼稚園ですか、小学校の生徒ですか、小さい子が三人ばかり交通事故で二カ月ぐらいの大けがをことごとくした。その事故は、何か小型トラックの運転手がわき見をしておって起きた事故と、こういうふうに報道されておるのですが、たまたまその緑のおばさんが整理が悪かったのかどうか、過失罪というのですか、何かそういう罪に問われておるということが放送されたのですが、私どもちょっと常識では考えられぬような不幸な事件だと思って聞いたのですが、御承知ですか。
  26. 久保卓也

    ○政府委員(久保卓也君) 私はその事件は存じませんけれども、こういう問題は従来から問題になっていることでありまして、たとえばPTAの方が子供のために登校時交通整理をやっておる。そういう場合に事故があったときは、これはその方が業務として行なっているわけではありませんので、その方がかりに過失があってもおそらく追及されない。しかしながら、緑のおばさんが市の職員である、市で雇われているという場合には、そういった仕事そのものを持っておるわけでありますから、過失を追及されるということになっているようであります。
  27. 小平芳平

    ○委員長(小平芳平君) 午後一時三十分まで休憩いたします。    午後十一時五分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十一分開会
  28. 小平芳平

    ○委員長(小平芳平君) 委員会を再開いたします。  午前に引き続き質疑を行ないます。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  29. 亀田得治

    ○亀田得治君 二つの問題をお聞きしたいと思うのですが、一番最初に、例の吹田事件の元被告人の方が三十二名、刑事補償法二十四条に基づく公示の請求をいたしまして、途中でそれが金額、公示の方法などが訂正されたりした事件でありますが、この経過を一応最初に最高のほうから御説明願いたいと思います。
  30. 岩野徹

    ○最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 裁判所で補償決定がなされますと、そのつど各裁判所からその決定を公告する経費につきまして最高裁判所に予算の配分方の申請を受けることに従来からなっております。これは結局、事前に予算を送ってはいないということでございます。いずれも補償決定のあった後のことでございます。その補償決定がありました後に、各裁判所から公告に要する経費の示達方の申請がございましたが、その場合に、私どもとしましては一応の基準に従いまして示達をするという取り扱いになっております。大阪の吹田事件の場合も、さような状況で、大阪高等裁判所から公告料の示達方申請がございまして、それに対して当方が金額を定めて送ったということでございます。
  31. 亀田得治

    ○亀田得治君 大阪高裁の刑事三部から最高のほうに要求のあった当初の金額ですね。これはどうなっているのですか。金額、それから公示の内容。
  32. 岩野徹

    ○最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 四月十四日に上申がございまして、その上申の金額は三百二十八万一千二百十二円でございました。
  33. 亀田得治

    ○亀田得治君 中身はどうですか。
  34. 岩野徹

    ○最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 中身は、結局補償決定の中身を公告するということでございます。  もう少し申し上げますと、公告の中身という意味じゃなくて、公告をいかなる新聞に載せるかという観点からでは、全国版三紙に掲載したいのだがということで、この金額の上申があったわけでございます。
  35. 亀田得治

    ○亀田得治君 全国版三紙というのは、朝日、毎日、読売ですか。
  36. 岩野徹

    ○最高裁判所長官代理者(岩野徹君) さようでございます。朝日、毎日、読売の三紙でございます。
  37. 亀田得治

    ○亀田得治君 そして、それに対して最高裁としてはもう少し圧縮してくれという意思表示をされたようですが、その圧縮の金額というのは幾らなんですか。
  38. 岩野徹

    ○最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 四月二十三日に示達いたしましたが、そのときには九十五万一千円の示達をいたしました。この九十五万一千円の示達の掲載新聞紙は、全国版一紙――朝日新聞でございます。それから毎日、読売は大阪の府内版ということで計算した金額でございます。ところが、その後、大阪高等裁判所から連絡がございまして、この金額に対しまして、被告人の一人が鳥取県に在住しているということで、府内版ではカバーできないということで、近畿セット版に掲載するということにしてほしいという申請がございまして、上申がありましたために、五月の八日にさらに十二万一千円の示達をいたしました。合計いたしまして吹田事件では百七万二千円という示達額になっております。
  39. 亀田得治

    ○亀田得治君 近畿版というのは、朝日のほうけ全国板そのままで、毎日、読売についてですか。
  40. 岩野徹

    ○最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 近畿セット版というようでございます。
  41. 亀田得治

    ○亀田得治君 そこで、事実関係、一応明らかになりましたが、いわゆる冤罪者の名誉回復ということのために、補償法の二十四条が置かれておることは、これはもう私から申し上げるまでもなく明確なことなんであります。実際にその事件を扱っておる担当の裁判官が、記録を調べ、諸般の事情を検討して、そうしてかくかくの公示方法をとろうということを決定した場合には、これは私は、裁判ですから、そういうことに予算上の観点から干渉するのはもう間違っておるというふうに思うのです。それじゃ名誉回復だといって無限に大きなことを言われた場合どうするかというふうな反論があるかもしれませんが、それはなるほど関係者は大きなことを言うかもしれません。それは、とことんまで自分の権利を回復する、名誉を回復するという立場で言うのですから、しかし、そこは裁判官が判断するわけなんですから、その申請を適当と見るかどうか、いろいろケース・ケースによって違うわけですから、したがって、第一線、現場の裁判官からの要求そのまま認めると予算上非常にふくれ上がって困るとか、そんな心配は私は要らぬと思うのです。それは、最高裁があらかじめ予定した予算額にきちっとはまるかどうか、その年によって私は違うと思うのです。しかし、そういうことよりも、一線の裁判官の決定をそういう予算上の立場から制約するようなことは、裁判の性格上おもしろくないと思うのですね。したがって、今回の措置は、従来もこういうことは若干あったのじゃないかと思うのですが、公になりましたので、私としては非常にこれは問題ではないかという感じを抱いておるわけなんです。その点についての見解ですね、これは事務総長が適当だと思いますが、全体の裁判という立場から、はっきりひとつ考え方をお聞かせ願いたいと思います。これは私は、裁判官をむしろ尊重する。それは判決じゃない、決定の程度というふうなことでは済まされぬと思うのですね。どういうことですか。
  42. 岸盛一

    ○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) お説のとおり、裁判官の意向というものは、これは最大限に尊重さるべきだと思います。それは事、判決であろうと、決定でありましょうと、裁判それ自体に関する場合だと考えます。補償の決定そのものは裁判でありますけれども、それをどういう方法で公示するかということは、これは司法行政機関としての裁判所がやることでございまして、そうなりますと、やはりそういう司法行政に属するということで、裁判所全体の予算のワクとか、いろいろそういう面の最高裁の司法行政上の意思というものが働いてくる。これは、決してそのことは、裁判官、裁判を無視するということにはならないと考えております。今回こういう問題が起きましたが、ここ二十数年、一つの基準に従ってどの事件も同じように扱ってきておるわけでありまして、今回の吹田事件、それが特に不利益な扱いを受けたということは絶対ございませんし、そればかりじゃなくて、むしろ普通の、八海事件、松川事件、あの世間に知れ渡った事件と全く同じ方法で公示の措置をとったわけでございます。
  43. 亀田得治

    ○亀田得治君 従来、若干一般的なこともこの際お聞きしておきたいと思うのですが、どの程度この予算というものはあらかじめ取っておるのですか。
  44. 岩野徹

    ○最高裁判所長官代理者(岩野徹君) これは予算費目で申し上げますと、庁費の中の雑役務費でございます。その金額は、最近では一千七百万円ぐらい計上されておりますが、そういう意味では、それを全部つぎ込むということをしなければならないほど事件が生じれば、それから使っていくということになるわけでございます。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 雑役務費、えらいむずかしい名前をつけるのですね。
  46. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) そういうことを人に頼む経費でございます。写真をとってもらうのも雑役務費から払うわけでございます。
  47. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、二十四条に基づく以外のものも含まれておるのですか、刑事補償法二十四条以外のもの。
  48. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) さようでございます。検証写真を現像してもらう、焼きつけてもらう費用も雑役務費から払うわけでございます。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 従来約千七百万ですか、その使用の実績というものはどういう状態になっておるのです。こまかいことは要りませんが、二十四条に基づく公示の費用と、そのほか。
  50. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 費目をまず申し上げますと、雑役務費がどんなことに使われているかを申し上げますと、筆耕料、速記料、借料及び損料、写真焼きつけ料、公告料、破産手続費用、翻訳料、保管料、その他ということでございます。概略の金額を申し上げますと、地方裁判所でまず申し上げますと、筆耕料三十六万六千九百七十一円、速記料二百八十万五千七百円、借料及び損料三十三万七千百七十二円、写真焼きつけ料二百二十七万六千百四十六円、公告料七十四万五千五百七十七円、破産手続費用七万四千五百八十二円、翻訳料一万円、保管料一万四千四百円、その他六十七万八千百十二円、地方裁判所関係合計で七百三十万九千六百六十円と、かようになっております。なお、高等裁判所家庭裁判所等でもいろいろございますが、あまりこまかいことになりますので……、申し上げましょうか。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 高等裁判所の合計は幾らになっております。
  52. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 高等裁判所で申しますと、筆耕料七十九万六千四百二十五円、速記料一万二千三百円、借料及び損料一万一千九百二十円、写真焼きつけ料二十五万五千三百九十五円、公告料十八万七千七百七十二円、保管料一万三千二百円、その他十五万六千二百五十円、合計しまして百四十三万三千二百六十二円。
  53. 亀田得治

    亀田得治君 これは昭和四十三年度ですか。
  54. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) ただいま申しましたデータは、昭和四十年のデータでございます。
  55. 亀田得治

    亀田得治君 それは決算額ですね、実際の支出。
  56. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) はい、支出済み額でございます。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 地方裁判所公告料七十四万幾らというのは、件数は何件ぐらいなんです。
  58. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) ただいまその件数はちょっと手元に持ちあわせておりません。いずれ調べた上で御報告申し上げます。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 高裁の十八万というのも一緒に調べてください。
  60. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) はい。
  61. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、何か一応の基準を持っておるというお話でしたね。これはどういう基準なんです。
  62. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) さようでございます。通常は、被告人住所を中心としました地方版三紙に掲載するというのがほとんど大部分の例でございます。特殊の場合、先ほど総長が申し上げましたように、松川事件等特殊な事件になりました場合に、地方版二紙と全国版二紙という、まれにそういうことをやることがあるということで、原則としては地方版三紙ということで長い間処理してまいっているわけでございます。
  63. 亀田得治

    亀田得治君 松川の場合には、具体的には金額は幾らだったんですか。
  64. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 松川事件の場合は八十五万円でございます。
  65. 亀田得治

    亀田得治君 内容はどうですか、全国版というのは。
  66. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) これは全国版二紙と地方版二紙ということでございます。
  67. 亀田得治

    亀田得治君 そういう基準は、各高等裁判所なり地方裁判所に最高裁からちゃんと連絡はできておるものなんですか、平素から。
  68. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 刑事局長と経理局長の連名の通達で、補償決定の項目に関する一応の基準が示してございます。
  69. 亀田得治

    亀田得治君 それはいつ出ているんですか。
  70. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 昭和二十五年の三月二十九日、これで経理・刑事局長の通達がございます。それから昭和四十三年六月二十日、刑事局長の回答がございます。それからそれ以外には、会同その他で一般的な裁判所の方針、及び経理局で従前取り扱った例等は各裁判官にできる限りお知らせしているはずでございます。
  71. 亀田得治

    亀田得治君 そうしますと、いまの説明のとおりだと、裁判官は知っておるわけですね。めったにある案件ではないから、当然決定前はそのようなものを調べて決定されると思うのですね。
  72. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 補償決定はおやりになりますが、公告をどうするかということは、先ほど総長が申しましたように、裁判に付随する司法行政事務と考えておりますので、当該裁判官――その補償決定をされた裁判官が必ずしも担当して公告掲載紙ないしは掲載文ということをおきめになるとは限らない。一般的な司法行政業務でございますので、観念的には裁判官会議の所管でございましょうが、所長その他にそれぞれ実質的に委任されているというところで、所長以下、あるいは所長が当該補償決定をされた裁判官とお話なさって、最高裁の一般方針等も十分了解を得た上でこれは処理されているのでございます。
  73. 亀田得治

    亀田得治君 その司法行政事務だということを事務総長局長も言われるんですがね、これはそう簡単にきめてかかれる性格じゃ私はないと思うのですよ。二十四条には、公示自体はもう法律できめているわけですよ。中身を裁判官が決定するわけですわね。その決定される中身は、被告人基本的な人権にかかわる問題でしょう。そういう問題を単なる司法行政事務というふうな割り切り方が、これはおかしいじゃないですか。そういうふうに言わないと、最高裁のほうで予算上の理由で干渉もできないものですからね、無理やりにそういうことをおっしゃるのではないですか。どうしてこんなことが司法行政事務になるのですか。私の意見をもう少し聞いてください。たとえば、判決と一緒に書かれる換算などがありますね、罰金を納めないときの。そういうことと大同小異ですよ、被告人自身の立場から考えたら。それは裁判所内部のことで、第三者には何の関係もないのだということなら、それはいいでしょうが、これは重要な関係があるのですから、それは内容の決定の妥当であるかどうかは、これは普通の裁判にだってあるわけでしてね。だから、この場合に妥当でないというなら、その決定をした裁判官が批判されるだけであって、それが司法行政事務だ、だから最高のほうで多い場合には削減してちっとも差しつかえないのだ、そんなことは私はちょっとおかしいと思いますよ。これは事務総長から――あなたが司法行政事務だということを前提にして言われるから、その前提が私はおかしいのじゃないかと思う。形式論じゃなしに、実質的にこれは考えてください。
  74. 佐藤千速

    最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) まず私のほうから。ただいま仰せの問題は、公示そのものが裁判であるか司法行政であるかという問題でございますが、法学公示というものは司法行政として行なわれるのだという見解が従前からすでにあるわけでございます。具体的に申しますと、現行刑事補償の立案に関与された横井検事、それから現在教育大の教授であられる高田卓爾教授、いずれもはっきりと、これは司法行政として行なわれるものである、こういうふうにその著書において明示されておるのでございまして、文献におきましてそれに反した見解というものは私どもは見当たることができないのでございます。
  75. 亀田得治

    亀田得治君 まあそれに反した見解が見当たらぬからいまおっしゃった二つの意見が正しいのだということには必ずしもなりませんよ。こういう具体的な問題が起きますと、初めてやはりみながものごとを考えるわけですからね。公示行為それ自身と、その公示の中身を決定する行為とは、これは非常に違うと思うのですね。中身が問題なんですよ。どういう中身の公示を行なうのか、中身並びに方法ですわね。これはやはりその事件を調べて、直接記録等を調べてきめるわけでしょう、決定の方法というのは。これは当然裁判ではないですか。その点は、どういう意味で二人の学説が、これが司法行政事務だとおっしゃるのですか、わかりませんが、決定されたものはあとから事務的に取り扱う、その点だけでしょうが。司法行政事務というのは、それを乗り越えて被告人が自分の名誉回復のために求めている、それを裁判所が審査するわけですからね、それが裁判でなくて、どうしてほかのもの、あり得るわけがないでしょう。
  76. 佐藤千速

    最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) 補償の決定そのものは、まさに仰せのごとく裁判でございます。その要旨を公示すると、こういうことが司法行政であると、かような趣旨で申し上げてるわけでございまして、私ども従来からその考えに基づきまして処理してまいった、こういうことでございます。
  77. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、公示ということは、その手段方法と切り離して考えられないことですわね。手段方法はだれかがきめるわけでしょう。これは裁判官しかないじゃないですか。その部分は、これは何といったって裁判ですよ。これは無罪判決に関連して、さらに裁判所の判断を求めておるわけでしょう。だから、こういう点は、従来そういう一つの基準を設けて、そのワク内で締めつけてきておるもんですから、そういう立場を貫くためにいまのような説明をされるわけですけどね、人権擁護の最後の政府といわれる最高裁がそういう感覚では、私は少しおかしいと思うんですよ。だから、裁判官がこの事案についてはこうすべきだということを決定して、そうしてそれが従来の基準からはずれ、またしたがって予算も足らないということなら、これは最高裁は、予備費なり、補正なり、いろんな方法で生み出すことをやっぱり考えるべきが筋なんですよ、何といっても。そうなりませんか。
  78. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 私どもは、いままで、刑事補償金の補償決定の公告に関しまして、先ほど申し上げましたように、千七百万円前後の金の中から支払ってきました。実際の例としては、きわめてわずかな金額でございましたし、したがいまして予備費その他を考えるような状況には立ったことがございません。先ほど亀田委員がおっしゃいます点でございますが、たとえば競売公告等で新聞紙に掲載されておりますが、これは地方裁判所として掲載いたしております。したがいまして、こういった対外的に取引をして金額を幾らかときめて、そうして公告をやっていくという業務は、いわば公告注文業務でございまして、どういう新聞が安いとか、どういう新聞のほうが高いとか、こういった場合に、それぞれ事情を勘案して考えていくことが競売公告の場合は考えられるわけでございます。ただ、この補償決定の公告の場合は、新聞紙を、何々新聞というその三種類の新聞紙名と申しますか、これを指定するのは当事者に、申し立てた者にありと、こう解しておりますが、それを全国版で知らせるか、地方版でやるか、あるいは先ほどのようなセット版で出すか、こういった中身は、これは先ほどから申し上げますように、司法行政事務としてそういう中身をきめていく裁判所のやることだと、こういうふうに解してやってきておるわけでございまして、この解釈自身が、先ほど指摘されました文献にも根拠のあることでございますし、私どももさように考えておるわけでございます。
  79. 亀田得治

    亀田得治君 競売のことを引き合いに出されましたけれどもね、多少はやはり性格が私は違うと思うのですよ。こういう冤罪者の名誉回復ということで、本人が、どの新聞の三紙、こう言って、そうして担当の裁判官がそれが妥当だろうという場合と、競売なんかの場合は、これは私も、突然にそういうことをあなたおっしゃるから、どういうふうに反論していいかちょっと戸惑いますけれどもね。それは明らかにその場合は相当事務的に運ばれてもいいことだと思いますよ。だれもそれほど文句がないだろうしね、事実上。だけど、この場合はあなた、長期にわたって有罪か無罪かということで非常な激しい権利闘争をやってきておるわけです。その延長なんですよ、これは何といっても。そういう立場というものを最高裁がもっとこれは真剣にやっぱり考えてやるべきだと思いますよ。それを担当した裁判官がそこまでする必要はないとこうおっしゃったとするなら、これまた多少別な、これほど問題にならぬと思うんですよ。担当裁判官が、やはり本件の特殊性格にかんがみ、本人がそれほど言うのであればそこまでしてやろう、こうきめておるんですからね。
  80. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 大阪の場合にも、当初、最初申し上げました金額の差がございまして、大阪高等裁判所と当方と十分連絡をとりまして、裁判官にも従前の取り扱いの内容等十分お話しした上で金額を決定し、それを示達いたしたわけで、その示達した金によって公告されたわけでございますから、このケースについては、大阪高等裁判所では従前の方針並びに現在における最高裁の考え方というものについて十分了解をせられたものと私どもは考えておるわけでございます。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 従来、公示についての予算請求があり、それに対して最高裁からもう少し安くしろといったようなことを言ったケースはあるんですか、どうなっているんです。
  82. 岩野徹

    ○最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 先ほどの松川事件のときでも、一応現地からは、ただいまの記録でございますが、二百二十九万三千四百四十五円とい要望がございましたが、それに対して先ほど申し上げましたように八十五万円の示達をいたしたわけでございます。
  83. 亀田得治

    ○亀田得治君 二百二十九万というのはどこの裁判所できめて要求してきたんですか。
  84. 岩野徹

    ○最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 仙台高等裁判所でございます。
  85. 亀田得治

    ○亀田得治君 そのときにすでに問題が起きていたわけですな。そのこと自体が新聞等で騒がれなかったものですから、私も気がつかなかったわけですが、そのときはそんなにスムースにいってるんですか。
  86. 岩野徹

    ○最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 朝日、読売、毎日の全国版についての希望だったと思われます。それからもう一つは、金額に変更がございますのは、一つは、公告のいわゆる中身と申しますか、いわゆる補償決定の要旨をどのように要約して要旨を公告するかという、その要旨の作成のしかたというようなもので、紙面を多く要するか、あるいはそうでないかということもございますし、それぞれの具体的なケースについていろいろ検討して必要限度の公告内容をきめ、それから掲載すべき新聞紙を決定するということで、金額の差が出てきているわけでございます。
  87. 亀田得治

    ○亀田得治君 松川、それからまだほかにありますか。八海はどうでした。
  88. 岩野徹

    ○最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 青梅事件がございます。これも高等裁判所関係でございます。これが四十八万六千円でございます。それから東京地裁の青梅事件が三十三万九千円。青梅事件につきましては、高裁の分と地裁の分とございます。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 要求額は。
  90. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) ただいま資料を持ってまいっておりませんが……。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 要求額と結論のところを一覧表つくってください。
  92. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) いま申し上げましたのは、一応上申記録の写しを用意していた一、二の件について申し上げたわけでございますので、調査の上お答え申し上げます。
  93. 亀田得治

    亀田得治君 最高裁としても、予算があればちゃんと出しておる問題だろうと思いますよ。推測は、ないもんだから先ほど来のような説明で圧縮しているんだと思いますが、やはりこういう部分についての予算というものは削らない。もちろん、だからといってどんどん過大に公告してもらってけっこう、そんなことを私申し上げるんじゃない。各担当の裁判官がそういう予算などの規模を考えないできちんとやってほしいという態度でいくべきだと思うし、それに関する予算というものは、これは大蔵省に対してもきちっと了解をさせておくべきだと思いますね。そういうふうにこの機会に私は発展させてほしいと思うんですよ。先ほど局長からちょっと言われましたね。新聞の種類は本人の申請を尊重するが、全国版であるか地方版であるかは司法行政のワク内だと、わしのほうで選択できるんだと、こういうふうなことをおっしゃったけどね。これは少し無理な議論だと思うんですね。全国版の朝日、あるいは地方版の朝日、これは性格がまるきり違ってくるわけですよ。これは別々の新聞と見なきゃいかぬですよ、特に公告をする場合には。そうでしょう、見る対象がもう違うわけですから。大阪版であれば大阪の人しか見ないと考えていいですよ。そんなこと私が言わぬだって自明のことですわね。それを朝日と名前がつけば同じ新聞なんであって、同じ新聞の中の選択ぐらいはまかしてくれというのは、ちょっと通りにくい議論のように思いますよ。だから、その辺をもう少し研究してほしいと思いますね、私は。初めて問題になって、いままでやってきた慣習を一挙にくつがえすようなことはなかなか皆さんの立場で言いにくいことでしょうが、やはり裁判を尊重していく。裁判の尊重というのは、形式を私は申し上げるんじゃないんで、やはり権利義務に関する実質的な判断というものについての裁判官の判断を尊重していくということに尽きると思うのですね。それが判決の形をとろうが、決定の形をとろうが、形式を私は問うわけじゃないんですよ。そういう慣習をつくっていくことが、私はあらゆる意味でまた司法権のほんとうの立場というものが守られていくものだと思いますので申し上げているので、ひとつこれは少し研究の余地があるように思いますね。どうせこういうことは、みんなあなた法律専門家同士ですから、あまり無理な説明しましてもちょっと説得力を持ちません。特に全国紙地方紙は同じ新聞だというようなことは、ちょっとこれは、こういう場合には当てはまらぬと思うんですよ。ちょっと無理があるでしょう、どうです。
  94. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 裁判それ自身の中身がどうきまるかということは、もちろん申し上げるように、各裁判官のおきめになることでございますが、公告するということになりますと、同じような事件については同じような公告をしていくということで考えるべきだろうと思います。したがいまして、全国にあります――ただ具体的な、被告人であった者、無罪判決を受けた人の希望だけによって、非常に広い紙面をとった公告をするとか、あるいは特定の新聞を指名してやっていくというふうに、その当該個人的な見解ではなしに、やはり裁判所としては全国的に同一歩調で公告は取り扱うというふうに考えておるのが一点でございます。  それから、先ほど来申し上げますように、公告決定という裁判ではなくて、補償決定が裁判であって、そのあった裁判の中身をどのように公示するかということでございますから、これは官報に載せる場合でも、それは裁判官公告決定を新聞に掲載するのではなくて、補償決定の要旨を載せるというわけで、一段その次にはずれておりますし、公告決定自身を――公告決定とも呼びませんが、それは裁判それ自身ではないと、こういうふうに解釈いたしておりますことに、あまり無理はないのじゃないかというふうにただいまでも信じております。ただ、御指摘のように、担当の裁判官からいろんな御意見なり何なりを十分伺った上で、全国的な取り扱いと比べまして勘案して、相当な必要な金額は当然最高裁としても示達すべきものと考えておりますし、それによって裁判費系統の庁費というものに不足が生じたときは、もちろんその手当てをする覚悟でございますが、従前の経過にかんがみますときには、それほど予備費使用しなければならないような状況にはなってこなかったわけでございます。できる限り全国的に考えました上で、無罪判決を受けた者についてなされた刑事補償決定のその中身を、その制度の趣旨に沿った公示を考えるということには、何ら異存はないわけでありますので、今後も費用の許します限りその点について積極的な努力はやっていく考えではおります。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 また本質論に逆戻りするようなことになりますけれども、補償決定はこれは裁判だと、公告については決定とも呼んでいない、形式的にも決定とも呼んでいない、これはもう裁判じゃないんだ、こう言われますが、これはもう被告人の立場から見れば補償決定と一体のものですよ。普通の個人間の名誉棄損の事件であれば、幾ら幾ら損害賠償を払え、そうしてさらにこれをどういうふうに公示しろとかというような請求の仕組みで出てきますね。一緒ですよ、これは。これは形式的にただ刑事補償法の規定では何か分けて書いてありますが、これは一体のものです、被告人から考えたら。実質的に私は申し上げているわけです。だから、そういう形式論ではちょっと筋が通らぬと思うのですね。だから、私は最高裁に要求したいことは、担当の裁判官があるわけですから、その諸君が記録なり前後の事情等を調べて、本件についてはこういうふうにやろうということをきめてきた場合には、その線で最大限に実現できるようにやっぱり努力してほしいということなんです。そういうことは一体どう考えるのか。そんな努力も必要ない、おれのほうできめているワク以外はだめだ、こういうことなら、初めから最高裁へ持ってこさしたらいいでしょう、手続自体を。そうでしょう。そんなあなた、下級裁判所裁判官にその点の審査をやらしておいて、それを違った点に持っていくということは、これはやり方としてもまずいと思う。決定であるかないか、形式はどうでもよろしい。ともかく私たちとしては、これはもう普通の名誉回復、損害を受けた名誉回復の公示までさせる。それと同じことだ、これは。そういうふうに理解しておるわけです。したがって、実質的には、それについての担当裁判官の決定というものは、これは尊重しなければいかぬ問題です。決定というか、考えはね。予算上のことであまりこういうことは関与すべき問題じゃない、こう考えておるわけです。したがって、予算のワクが足らぬ場合には、予備費なり、補正なり、そういう努力を関係者がやっぱりやるべきだ。大蔵省が認めないのなら、認めない大蔵省のほうが悪いわけですからね。それをやっぱり説得するように持っていかなきゃならぬ。その姿勢がなければ、ほかの裁判でも裁判が非常にふえてきた、予算がないからともかく証人を圧縮してくれとか、いや鑑定をもう少し安い人にやってくれとか、そんなことはまあめったにおやりにならぬでしょうが、理屈として同じことになってきます。そんなことは許されぬことだという立場をこの際やっぱりはっきりしてもらわないといかぬと思うのですね。理屈は抜きにして、どっちの方向でものを考えるのか、これをひとつ総長から最終的にお答えください、時間の関係もありますから。
  96. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 御趣旨はよく先ほどからお聞きしておりまして理解しております。決して予算の面で下級裁判所に一種のいわば制約を与えるために私どもは公告司法行政事務で裁判ではないのだというような理屈をいまこね上げているわけではございません。問題はやはり、先ほど来刑事局長なり並びに経理局長からもお答えいたしましたとおり、補償決定そのものとそれの公告というものの性質の問題だと思います。私どもは、その点につきましては、今回、この問題で初めてこういう公の席で論議されたわけでありますが、たとえばいわゆる謝罪広告あるいはその主文の中でこういう文章を載せろとやられますと、これはまさに裁判になりますけれども、この場合はどうも、公告は裁判である、だから裁判官のきめたことに拘束されるということは、無理かと思いますけれども、しかし、これは、先ほど来おっしゃいましたように、理屈の問題じゃなしに、私どもも前向きの姿勢で検討はいたしますけれども、そう簡単に結論が出るかどうか、これははっきりこういうところでお約束して、結論が出ないような場合には申しわけありませんから、そういう趣旨でまあ前向きで検討はいたします。
  97. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 関連して。これは経理局長でも、あるいは刑事局長でもかまいませんが、公示が裁判であるかそれとも司法行政事務であるかということを決定する一つの参考としてこれから伺っておきたいのでありますが、公示の方法並びにその内容に対して不服のある場合に、だれからかそれに対して異議の方法がありますか、ありませんか。
  98. 佐藤千速

    ○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) ございません。
  99. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 全く異議の方法はない。
  100. 佐藤千速

    ○最高裁判所長官代理者(佐藤千速君) はい。
  101. 亀田得治

    ○亀田得治君 異議の方法がないからというところから、したがってこれは行政事務だということにもすぐまた結びつくわけでは私はないと思います。異議の方法がないことはないと私は思うのです。制度上刑事補償法自身にきめられた直接の条文はないかもしらぬが、刑事被告人がこれによって自分の名誉回復はされておらぬ、名誉回復の手段を裁判所自身によって侵されておるということになれば、その判断を求めるための訴訟上の手段は私はとり得ると思う。皆さんのほうはこれは行政事務だというのですから、そういう行政事務に対する提訴の方法は、これはちゃんと第一審の裁判所に普通の裁判官の判断を求めるということは私は可能だと思います、行政事務だとおっしゃるのですから。だから、刑事補償法にはそういう異議とか不服とかいうことは書いてありませんが、そういう形式よりも、実質ですよ。それは競売法と比較したり、そんなものじゃこれはないと思います。そういうことで、ひとつこの機会に研究してください。  次に、もう一つお聞きしたいのは、広島の元地裁の裁判官をやっておられた長谷川さんですね、この方が今回の十年の切りかえの再任時期に再任されなかったということで、これまたいろいろ問題が持ち上がっておるわけですが、これもまず最高裁のほうから、経過ですね、一応できるだけ詳しく御報告を願います。
  102. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 十分御承知のことと存じますので、こういうことを申し上げるのはいかがかとは存じますが、具体的な人事に関する事柄につきましてはそのしさいを申し上げることは差し控えさしていただきたいと存ずるわけでございます。転任とか、それからいろいろな一般的な事柄につきましては、これは御質問があればもちろん述べさしていただきたいと存じます。それで、長谷川前判事の不再任と申しますか、名簿に登載されなかったという件につきましては、申し上げることのできますることは、五月の終わりの裁判官会議の議によりまして、最高裁判所の提出すべき名簿に登載されなかったと、したがいまして任期の満了によって退官なすったということは申し上げることができると存じます。
  103. 亀田得治

    ○亀田得治君 人事のことだから何か中身に触れたくないというふうな趣旨のお話のようですが、まあしかし、本人が記者会見もしたりして問題点について発表されておるわけですわね、公に。だから、そういう場合には、何もことさらに隠しておくと、そんな必要はないと思うんですね。そういうことをあまり公にしないというのは、本人も公にしてもらいたくない内部的な処理としてやってほしいといったような場合には、これは本人の名誉のためにも必要な場合が多いと思います。ところが、本件は、そうじゃなしに、争点が表に出てしもうとるわけですよ。出てしまっておるものを、ここだけでは黙っておったって、それはおかしいわけでね。出てしまえば、そういうことがどちらが一体言い分が正しいのかということを議論することは、これは今後の司法制度全体のために非常にプラスになることだと私は思うのです。あまり人事の中身のことについて私だってよけいなおせっかいはしたくないですけれどもね、表に出ているんですもの。だから、もっとはっきりおっしゃってもらわなければ、それこそ頭としっぽがけですわね。そんなことは別にわかっておるわけでね。なぜそういうことでもめておるのかという問題点、その問題点について最高裁は実はこう判断したなら判断したと、これもさっきの吹田事件と同じように、あまりこういうことはいままで議論されなかったと思うんです。私の記憶ではこれは初めてじゃないかと思いますが、しかしこれはよく考えてみますと非常に重要なことですよ。おそらく裁判官自身が、立場の考え方とかそういうことは抜きにして、非常にやはり考えておられると思うのですね、全国の裁判官にそういうことが伝われば。どうです、端的にもう少し詳しくおっしゃってください。
  104. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 事柄は最高裁判所の裁判官会議の議事の内容に関する事柄でございます。これは御承知のとおりでございます。そういう事柄について申し上げることは差し控えさしていただきたいわけでございまして、ある特定の裁判官をどういうわけで最高裁判所は再任の名簿に載っけたのだというような御質問がございましても、これはどういうわけでその特定の裁判官を名簿に載せたのだということは、これは裁判官会議できまる事柄でございますので、申し上げることは差し控えさせていただかなければならないと思いますし、同様に、どういうわけでじゃその裁判官を名簿に載せなかったのだという御質問がございましても、これはやはり裁判官会議の議事の内容に関する事柄でございますので、ここでは申し上げることは差し控えさせていただきたいと、こういうような趣旨でございます。
  105. 亀田得治

    ○亀田得治君 六月三日付で長谷川元裁判官から最高裁長官あてに意見書が出ておりますね、その事実はどうですか。
  106. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) その意見書と申しますか、長谷川前判事から長官あての六月三日付の書面は、受理と申しますか、受け取っておるわけでございます。内容も承知いたしておるわけでございます。
  107. 亀田得治

    ○亀田得治君 それじゃ、あなたのほうからなかなかおっしゃいませんから、ひとつこれは中身がはっきりしないと議論のしょうがないですよ、実際のところ。で、局長のほうからどうも言いにくいようですから、私のほうから意見書を一応読んでみますよ。  「私は、本日二〇年目の任期終了により裁判官を退官いたします。しかし、私は二〇年間奉職し、また、人権を守る最後のとりでたるべき裁判所をみずからの意思で辞したのではありません。去る二月一三日、はじめて福岡高裁に転任の交渉があり、私はそれを一身上の都合その他により断わり、みずからの任地希望をも述べたところ、最高裁は再任期には転所の保障はないと主張して、当初に示した任地を受諾しなければ再任しないとの意向を示すにいたり、その結果本日に及んだのであります。  裁判官に一〇年毎の任期を設けた趣旨は、一〇年毎に裁判官の適格を審査し、不適格者を除くことにあることが明らかでありますが、私に関するかぎり、本件人事の交渉の任にあたられた方からも私が裁判官として不適格であるとは聞いておりませんし、自身、裁判所のため、裁判のために二〇年間情熱を注いだつもりであり、また、私の知らない、不適格の事由があるのなら、当局も福岡高裁に再任すべきでないことも明らかであります。  再任期に、最高裁の示す任地以外での再任はなされないとすると、憲法上、裁判官に保障された転所の保障は実質的に奪われるのと同様の結果となり、最高裁の示す任地が本人の意向を完全に無視して、一部人事官僚の手によって立案され、最高裁裁判官会議が安直にそれを可決するのだと仮定すると、法の精神に反するのではないかと愚考するものであります。  裁判は、いずれの任地においても同一であり、いかなる任地においてもその職務を尽すべきであって、往々にして一部裁判官が転所の保障をたてに自己の任地を固執し人事の停滞をもたらすとの批判を聞くところでありますが、他面、裁判官の任地が一部人事官僚の手により意のままに遂行されてはならないことも重要な原則であり、憲法が裁判官の身分の保障のほかに転所の保障を規定した所以は右の意にほかならないことはいうまでもありません。  私のばあい、不再任の理由は、おそらく一箇所の任地を拒否し、その理由が当局者を納得せしめるに足りなかったというにあると考えられますが、かような事例が今後頻発するとなれば、裁判官は一〇年をまたずして最高裁事務局の意向を伺う結果となり、身分の保障、転所の保障は、当局者の意図にかかわらず、実質的に奪われるのではないかと危惧するところであります。  要するに、今回の私に対する人事は、憲法と裁判所法の精神に反するものであり、今後私のごとき例が出るに及んでは、裁判の独立にも影響なしとせず、国民の裁判所にかける信頼と期待をも裏切ることともなりかねないと感じ、あえて愚見を呈し、まじめに司法の重大な職責をになおうとしている裁判官のために、かかる過誤を繰返されないよう配慮を願う次第であります。  私の手元にこういうものが来ておるわけですが、こういうものが来ておることは事実でしょうね。さっき意見書があるとおっしゃったが、その意見書というのはこういうことなんでしょう。
  108. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) さようでございます。
  109. 亀田得治

    ○亀田得治君 そこで、この意見書についてお聞きするわけですがね。この意見書の中で、事実に関する点、それから法律問題に関する点、二つ要約してあるわけですね。まず事実に関する点の経過等が書いてあるわけですが、この点は間違いがあるんですか、ないんですか、このとおりなんですか。
  110. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) それが、先ほど申し上げまして、亀田委員の御了解を得るようお願い申し上げた事柄に関するわけでございまして、こういうことがやはり具体的に最高裁判所の裁判官会議で十分検討されるわけでございます。
  111. 亀田得治

    ○亀田得治君 最高裁の裁判官会議の中身を一言も言ってならぬと、そんなものじゃ私はなかろうと思うんですね。重大な論争が起きた場合に、それに役立つということであれば、いやこういう意見もある、ああいう意見もある、そういうことが大いに私はしかるべき場所ではやられてけっこうなことだと思うんですよ。それは、裁判所の立場、そのものとは何といったって裁判官の地位ですからね。これは法曹であれば関心を持つのはあたりまえなんですからね。だから、少しでも触れたら、もうそれは答えぬというような、そんなことはよくないと思うんですよ。私も、皆さんの立場も考えて、最終決定の中身、理由、いろんなことまでは聞きませんけれども、ある程度のことはやはりおっしゃってもらわないと、何かふたしているような感じで、かえっていかぬと思うんです。  そこで、結局問題は、福岡高裁に転所しないものですから、再任をするかしないかということが問題になったんでしょう。問題になったというのは、その関係なんでしょう。中身はよしておいて。
  112. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) それが、裁判官会議の内容に入る事柄でございますので……。
  113. 亀田得治

    ○亀田得治君 そんなことないですよ。
  114. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) そうおっしゃいませず。要するに、先ほど御指摘になりました長谷川前判事の書面の中身に、憲法と裁判所法の精神に反するということでだいぶん強く非難をなすっておいでになるようでございますけれども、御承知のように、憲法七十八条と裁判所法の四十八条に……。
  115. 亀田得治

    ○亀田得治君 それはまたあとで一般論で聞きすすから。
  116. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 一般論をひとつお聞きになっていただきたいのでございますけれども。
  117. 亀田得治

    ○亀田得治君 それはまた別個に、私も重要な問題だから一般論も考えておりますが、だけど、事実がはっきりしないことにはいかぬから、それで聞いておるわけですよ。だから、福岡高裁への転所ということが了解されないので、再任するかしないかということが問題になったんだ、議題じゃないですか。議題の出たいわれぐらいは、そんなことおっしゃってもちっとも差しつかえない。それじゃ、こんなものは何にもないのに出てきたんですか、こんな文書。そんなことないでしょう。あなたのほうは受け取っておる。関係のないものだったら、受け取る必要がないでしょう。その点さえはっきりしてもらえば、あまり中身に触れたいで、一般論に移ってもいいですよ。
  118. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) やはり、先ほど申し上げましたように、この長谷川前判事の人事について申し上げられる事柄といたしましては、五月の終わりの裁判官会議で再任の名簿に登載されなかったという結論だけはもう具体的事実として申し上げることはできるのでございますけれども、どういうわけでその名簿にそれじゃ載らなかったのかということにつきましては、これはごかんべん願いたいのでございます。
  119. 亀田得治

    ○亀田得治君 事務総長はわりあいざっくばらんで、いろんな古い悪習にとらわれないでものごとをお考えになる立場なんですが、新聞にも出て、本人も新聞記者に聞かれて、こういうことですと言っているようなことについて、議題になったそのことぐらいはそのとおりですとおっしゃってもらえば、今度一般論に私は移るつもりなんですがね。根掘り葉掘り最高裁の内部の議論自身は、私ここで引きずり出してやろうと思わない。一般論に移ろうと思うんだが、議題になったゆえんぐらいはおっしゃってもらって、それが何で差しつかえるのかね。だれが一体被害受けるんです、こんなこと。事務総長、どうです。人事局長は打ち合わせてきたんだから、それは総長を抜きにしていいとは言えない、それは総長が判断すべきで。
  120. 岸盛一

    ○最高裁判所長官代理者(岸盛一君) これは理屈で亀田委員とやりとりするという、そういう気持ちではございませんから、その点は御了承願いたいと思いますが、この転任ということと、それから再任ということは、これは全然別なことです、転任ということと再任というのは。再任につきましては、つまり世俗になりますけれども、憲法八十条、裁判所法四十条等の規定によって、最高裁判所の指名した名簿に基づいて内閣が任命する、こういうことになっているのです。どうもこの事件を扱った新聞を見ますと、そこまでこまかく分析しておりませんで、転任ということと、転任の拒否ということと不再任ということをごっちゃにして議論しているのじゃないかというふうに思われます。もちろん、これは抽象的に申しまして、抽象的な問題として、あの人は前に転任に応じなかったから、よし今度しっぺ返ししてやろう、そういう人事は絶対やっておりません。これは抽象論として、再任の場合は、これは憲法の規定によって、十年たてば判事という身分はなくなってしまう。そうなると、転所という問題は起きてこないのです。で、なぜそれじゃ今度長谷川判事を名簿に載せられなかったかということは、これは先ほど来人事局長が申しておりますとおり、これはもう人事の機密に関することであり、また裁判官会議で十分論議されたことでありますので、ここで申し上げることは、これはちょっと妥当じゃない、かように思います。  下級裁判所の裁判官の名簿作成権というのは、それは最高裁判所にあると、それに基づいて政府が任命する。そういうような法制上のたてまえから見まして、人事についてこういう国会の正規の席で意見を申し上げるということは、これは私どもとしても差し控えなければならない事柄である、さようなわけでございます。
  121. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあ結局、私の質問にお答えにならないで、一般論をおっしゃっているのですがね。  じゃ、ひとつ一般論に少し入ってみたいと思いますけれども、裁判官の再任をするかどうか、この基準はどこにあるのですか。憲法にも何にも書いてないわけですね。ほかの国家公務員であれば、首切る場合にいろいろな国家公務員法上の規定があるわけですね。再任をしないということは、再任を希望している人にとっては事実上のこれは首切りなんですね。総長がおっしゃるような、いや初めから十年の権利しかないのだとか、そんなことは形式論であって、そうして理想的な制度からいえば、私自身はそれはもっと別なことを考えております。だけれども、現状というものは首切りということになるわけですね。したがって、基準というものが明確でなければならぬと思うのです。それはどういう基準ですか、まずそれからお聞きしましよう。
  122. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) どうも御承知のとおりでございますけれども、裁判官につきましては、憲法の七十八条、それから裁判所法の四十八条によりまして、非常に強い身分保障を受けているわけでございます。原則として、ともかくその意に反しては、免官、転所、転官、職務の停止または報酬の減額は、その十年の任期内である限りは、これはもう絶対に保障されておると、これは何者も手をつけることができないという強い身分保障を受けているわけでございます。したがいまして、憲法の八十条、それから裁判所法の四十条によりまして再任という制度が定められておるわけでございまして、これも御承知のとおりでございますが、なぜそれじゃその再任の制度があるかということにつきましては、一般的には、人事の停滞を防ぐためであり、また再任不適格者を除くためであるというように説明されているわけでございまして、この人事の停滞を防ぎ、または再任不適格者を除くということが、この最高裁の裁判官会議で名簿を作成するにあたりまして、その具体的事案事案について考えられる一つの抽象的な基準ということが言えるのではないかと思うわけでございます。それに基づきまして、要するに、まあ何と申しますか、ケース・バイ・ケース、その具体的事案についてそういうような考慮からいろいろ審議が行なわれるということになるのではないかと、こう存じておるわけであります。
  123. 亀田得治

    ○亀田得治君 再任の基準について、適、不適は、これは当然だと思います。その適、不適の中身はどういうことなんです。
  124. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) それは、その事案事案で結局裁判官会議でおきめになっていただくという以上にはちょっと申し上げようがないと思うのでございます。私自身がきめるのじゃなくて、裁判官会議でその具体的な事案に基づいてそれぞれ御意見を交換なすって、そしてそこでおきめいただくということになるわけでございますので、やはり具体的事案事案について会議できまるということ以上にはちょっと申し上げられないのじゃないかと思うのであります。
  125. 亀田得治

    ○亀田得治君 最高裁の裁判官会議では、再任についての適、不適を判断するための基準というものは何も設けておらないのですか。
  126. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 具体的な規則と申しますか、規定と申しますか、そういうような基準というものはないというように申し上げていいのじゃないですか。
  127. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、多数の裁判官一人ずつを議題にしていくのですか。裁判官会議の実際はどうなんですか、中身までは遠慮しておくが。
  128. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 要するに、大体この十数年間でございますけれども、年間に任期終了で勇退なさる方が八、九人は毎年おられるわけでございます。その場合に、それぞれの内容について裁判官会議は具体的に検討なさると、こう申し上げていいと思います。
  129. 亀田得治

    ○亀田得治君 八、九人の程度じゃないでしょう、十年目十年目で。
  130. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) いいえ、退官なさる方……。
  131. 亀田得治

    ○亀田得治君 いや、再任する場合です。
  132. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 再任は多うございます。
  133. 亀田得治

    亀田得治君 それを聞いている。
  134. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) もちろん再任と不再任とうらはらでございますけれども。
  135. 亀田得治

    亀田得治君 うらはらだけれども、やめる人じゃなしに、再任も検討しなきゃいかぬでしょう。
  136. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) もちろんでございます。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 それは一人ずつやっているでしょう。
  138. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) もちろんでございます。
  139. 亀田得治

    亀田得治君 どの程度でございますか、大事なことですよ。
  140. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 何と申しますか、裁判官会議を構成なさっていらっしゃいます各裁判官が十分それぞれ納得なさるほど十分におやりになっております。
  141. 亀田得治

    亀田得治君 結局、何でしょう、裁判官は、憲法七十六条で、良心に従い、そうして憲法法律のみに拘束される、憲法法律の立場で良心的に仕事をしておる、これが一番大事なことと違いますか、そういうことははっきりしておるんですか。
  142. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) そのことは実にはっきりいたしております。
  143. 亀田得治

    亀田得治君 基準といえばこれだけですね、適、不適を判断するのは。そうじゃないですか。ほかに何もないんでしょう、基準的なものは。適、不適の点ですよ。
  144. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) それは、要するに、具体的に、その人を名簿に載っけるか、あるいは載っけないかという場合に、裁判官会議でそれぞれ御意見の交換があるわけでございまして、したがいまして、それだけが基準かというように問われますと、これは何とも申し上げにくいわけでございますけれども、これはいろいろの観点から判断なさると思います。
  145. 亀田得治

    亀田得治君 適、不適を判断するにはそれだけでいいんじゃないですか。中身はいろいろありますよ。大きな基準といえば、憲法法律に従って忠実にやっておるか、良心的に忠実にやっておるか、それ以外の何の考慮が要るんですか、裁判官として。
  146. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) それは、それだけに限定するというように申し上げていいのかどうか……。
  147. 亀田得治

    亀田得治君 それは、能力が頭から欠けているとか、そんなことであれば、それは全然例外的なことであって……。
  148. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 良心に従って、独立して職権を行ない、この憲法及び法律のみに拘束されるという七十六条の規定はもちろんあるわけでございますけれども、しかし、独立して職権を行なうということだけが適、不適の基準になるかどうかということになりますと、これはそれだけが基準になるがどうかという結論は直ちにここでは申し上げることはむずかしいと思うんでございます。
  149. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、明文上基準を求めるとしたら、それしかないじゃないですか。それは若干それに付加するものが考えたらあるかもしれませんがね。一番大事な問題点じゃないですか。私は、十年の再任をするかしないか、そういう制度になっておるが、そのとき適、不適というのはどういう一体角度でやっておるのかと先ほどから聞いているんだが、どうもあいまいですね。ケース・バイ・ケースと言ったって、それは土台が要るわけでして、その土台の上に立ってのケース・バイ・ケースじゃないと、行きあたりばったりということになっちゃうんですよ、そんなものは。それははっきりしているんでしょう、制度上も。
  150. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) これは、何と申しますか、先ほど来申し上げておりますように、憲法七十八条、裁判所法四十八条が要するに裁判官身分保障である。それに対しまして、十年の任期をきざんでいくという憲法八十条、裁判所法四十条に基づく再任の制度があるわけでございます。その再任の制度は、普通一般的に言われておりますことは、人事の停滞を防ぐ、また再任不適格者を除くという目的のためにそれがあるのだというように説明されているわけでございまして、明文とかあるいは規則、規定というようなものは再任の名簿作成についてはないのじゃないか、こう思われるわけであります。
  151. 亀田得治

    亀田得治君 きわめてたよりないことになりますね、そういうことになりますと。人事の停滞といったようなあとからくっつけたような行政的な基準というものが大きく支配することになるのですよ、結論的に申し上げると。十年の切りかえ時期においてその裁判官がさらに再任を希望しているという場合には、その裁判官憲法七十六条に示された原則に従って忠実に仕事をしてきているという裁判官である以上は再任しなければならないと思っているのですよ。そういう裁判官であっても再任しないで済むという考え方を最高裁が出されるのだったら、これは非常な大問題になると私は思います。そういう良心的な忠実な裁判官であっても、たとえば転所に応じない、行政的な理由で再任をしないということになると、これはもう憲法並びに裁判所法身分保障の規定は事実上吹っ飛んでしまう。皆さんは形式上、いや転所の保障は十年間だけで、こういう説明をしておられるのですが、そうじゃないんですよ。憲法ではちゃんと身分保障についての基本原則を書き、さらに裁判所法がそれを受けて、転所をも含めたことを書いているわけですね。これを十年だけだというふうに押し込めて解釈することは、現在の司法制度裁判官の現状から見て、非常なこれは間違った解釈に私はなると思います。それは、旧憲法はもちろん、一般の国家公務員以上に不利な立場に裁判官が置かれることになりますよ、行政上の立場から言えば。ともかくも、最高裁の行政当局が考えるように、あっちへ行きこっちへ行きしてくれたほうがそれは都合がいいでしょう。だけれども、その点を保障しているわけなんですが、そうして現状では、ぼくらこういう制度ができたときのいきさつというものは若干聞いておりますが、行政上の理由なんということじゃないのですよ。それは現在任命される裁判官が適当かどうかわからない、むしろそっちのほうが大きいんですよ、適、不適のほうが。一度に裁判官を全部新たに求めるといったって、できはせぬ、事実上。最高裁の裁判官もそれに合わしてじゃ十年に一ぺん検討しようか。これはあくまで実質的な適、不適の観点から言われている問題なんです。それをいつの間にか行政人事の停滞とかそんなことをあなたくっつけて、これは行政当局が苦労すべき問題なんです、そんなことは。その苦労を緩和するために基本線を侵すということは、これは許されませんよ。だから、端的に言えば、本人が希望する以上、そうして裁判官として適任者である以上は、これは再任の義務がありますよ、現状では。そうしなければ、身分保障という趣旨にはずれてくるのです。本件に関して事務総長も、新聞等で拝見したのだが、きわめて形式的な解釈を出しておりますがね、私は一般の裁判官はああいう手続は納得せぬと思うのですね。しかも、いまお聞きしますと、再任するかしないかの検討の基準ですね、これがきわめてあいまい。人事の停滞というようなことをいつの間にか一つの大きな柱として織り込んでくる。これじゃ独立の性格を持った各裁判官の立場と矛盾してきます。これはどうですか。事務総長もそういう形式論一点ばりでいって差しつかえないと思っているのですか。私はこれは非常に重要な問題だと思う。
  152. 岸盛一

    最高裁判所長官代理者(岸盛一君) 結論的には、人事局長から申し上げたことになるかと思います。もちろん、憲法七十六条の、良心に従い、憲法及び法律に従って仕事をやっている裁判官、これが裁判官としては一番大事なことなんです。これが抽象的一つの基準ということは言えます。しかし、裁判官の任命というのは、新規に任命する場合もありますし、たとえばほかから弁護士あるいは検察官、それから十年たったから再任という場合もあるので、いろいろな場合があるものですから、ただいまの原則だけで割り切れるものじゃなくして、それにはまたいろいろな裁判官として名簿に載せていいかどうかという要素はこれはある。しかし、それは、具体的に言えとおっしゃられると、ちょっと説明のしかたに困るというのが、先ほど人事局長から説明申し上げていることなんです。ここで抽象的に議論する限りにおいては、やはりその程度の説明しかできないのじゃないかと、かように考えるわけです。
  153. 亀田得治

    亀田得治君 意に反して再任されなかったというのはどの程度あるのです。今回は一件であることは間違いない。従来どうなんです。
  154. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 大体毎年平均いたしましてお一人ずつぐらいはございます。
  155. 亀田得治

    亀田得治君 平均して――そうすると、いままで二十人余りあるわけですか、現在まで。二十人にもならぬですかね。
  156. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) そこまでさかのぼって実は調べてはおらないのでございますけれども、十一、二年の間に、大体平均しますとお一人ずつぐらいはおありになるということは申し上げられると思います。
  157. 亀田得治

    亀田得治君 それは大部分は、たとえば病気だとか、あるいは職務上何か間違いをおかしたとか、そういうことが多いのと違いますか。
  158. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 先ほどとまた同じ御返事を申し上げることで……。
  159. 亀田得治

    亀田得治君 いや、抽象的に聞くのだから、そんなことぐらい……。
  160. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) ごかんべんいただきたいと思います。
  161. 亀田得治

    亀田得治君 だから、それはそういう理由で再任しないということは、これは当然予想されておることですよ。だけれども、制度上もちゃんと明文のある転所というような問題をその時期に持ち出してきて、そうして再任をしない。これは私は間違いだと思うのでして、そういうふうなことはなかったのですか、全然。あったのでしょう。そんな一般的な基準を聞いているわけですからね。
  162. 矢崎憲正

    最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) それがどうも具体的な問題に触れないで申し上げることができないものですから、どうか先ほど申し上げたとおり、ひとつここはごかんべんいただきたいのでございますが、要するに、毎年ともかく任期の終了時に立ち至りまして勇退なさる方が七、八人ございまして、そうして御自分の御意思でなくて名簿に載らないというお方が平均して年に一名ぐらいはおありになるというような実態でございます。
  163. 亀田得治

    亀田得治君 そんな程度であれば、この人事の停滞ということを、再任するかしないかについて、そんなに大きく持ち出す必要がないのじゃないですか。当初の説明の中で、適、不適、もう一つ人事の停滞という行政的な範疇を持ち出されたのだが、大体うまくおさまっているわけでしょう。たくさんの中で年に一人程度だと言われる程度であれば、何も一つの大きな基準として出されることは、私はこれは間違いだと思うのですよ。裁判官の場合には、そんなものはあなた、基準外にいろいろな扱いというものがあり得るわけですから、なぜそんなことまで基準というようなことを言うのですか。
  164. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) これは今度の事案を全く離れた一般的な事情として御説明さしていただきたいと思うのでございますが、大体年間転任なさるお方が五百人ぐらいおいでになる。と申しますのは、これは研修所ができてからのことなんでございますけれども、大体みんなの意向の集まりといたしまして、大きい裁判所、それから中ぐらいの裁判所、それから小さい裁判所、この三つの裁判所をみんな平均して経験し、そうしてそれぞれの経験を経た後に一つの裁判所に定着するようにしてもらったほうがいいという希望がございまして、その希望が、初めは転任する方が非常に少なかったのでございますけれども、最近はその転任なさる方が非常にふえてまいりまして、大体裁判官二千五百人――まあ二千五百五十人ぐらいおいでになりますが、その中で大体五百人は一年に転任なさる。これが戦前までは、全部地方にばらまかれまして、大都会には初めからは転任させられなかったのでございます。そして小都市、中都市に予備判事としまして全部出されまして、そして数年を経てその中から二人あるいは三人、四人、五人と、だんだんに大都会のほうに転任して入ってこられたわけなんです。そして大都会に入られた方は大体においてそこに定着なさっておいでになる、これが戦前の人事だったんでございます。ところが、戦後におきましては、研修所ができましたあとは、先ほど申し上げましたように、とにかくみんなが大きいところ、中くらいのところ、小さいところと、そういうところを経験しようじゃないかと、一人の特定の者が大きいところだけに定着してしまうというのはどうもわれわれ同期の感情から見ておもしろくないという意向が非常に強く出てまいりました。それに基づきまして、順次大きいところ、小さいところ、最初小さいところにいたときは次は大きいところ、大きいところにいたときは次は小さいところ、あるいは中くらいのところというふうに、順次転任というものが出てまいりまして、それが現在年間約五百人に達しているわけでございます。そういうような転任の実情があるわけでございまして、ですから最近は、そうでございますね、まあ四、五回御転任にならないと定着なさらないということになってまいりまして、これがおそらく最高裁判所でも非常にむずかしい問題になってきているわけでございます。と申しますのは、そういうふうに転任がたくさんございますと、訴訟がどうしてもおくれるわけでございます。私どもの観測では、そういう転任によって訴訟遅延というものが非常にたくさん起きてきている、これは非常に困った事態だと。しかし、そうかと言って、戦前のように地方に全部ばらまいて、そして地方をずっと回って、そのあとで特定の人に大都会に入ってもらうというようなやり方では、裁判官になってくれ手がないわけです。そうすると、どうしてもいまのような五、六回転任して落ちつかざるを得ないというような、一つのみんなの準則と申しますか、そういうような気持ちでみんな転任されておいでになるお方が年間五百人にも達しておる、そのために訴訟遅延も起きている、これは実に頭の痛いむずかしい問題があるわけでございます。これは、この問題とは関係なく、抽象的な一つの人事異動の非常に困難な問題という頭をかかえている問題を申し上げて御参考に供したいと思うのでございます。
  165. 亀田得治

    ○亀田得治君 だから、つまりまあ反面から言えば、年間五百人も動くのであればどうにでも融通がつくわけですよ。裁判官が足らぬといっておるときに、まだとどまりたいという人をそのことだけを理由にして再任をしないと――また結びつくわけですけれども。そういう五百人も動いておるなら、それは何としてでも。そこは苦労しますよ、人事のやりくりというのは。どこでもそうですわ、裁判所だけではなくて。それはあなた苦労するのはしかたがない、あたりまえですよ。だから、人数がわりあい、ケースがどうも少ない、そんなにないようですがね。私、ある程度いまのうちにこういう点はもう少しやっぱり検討しませんと、裁判所自身が裁判官の身分保障をないがしろにするような考え方じゃ、それはいかぬですわ。だから、人事の問題というのは、これはもちろん必要なことだし、裁判官全体が筋の通った提案だったら別にそんなに反対しないでしょう。そんなことは理解されてみんなが動くということでなければ、ほんとうの裁判官のやり方じゃないですよ、押し切っていくというようなことは。だから、悪く解釈すると、十年きた、どうもあいつのやる裁判気に食わぬ、いろんな家族の事情などを考えて北海道の一番端のほうへ行けと言えばやめるだろうと、そんなこと露骨に言いはせぬけれども、それに類したようなことが出てきますと、裁判官の身分保障なんというものはくずれてくるのですね。くずれてくる。それは私は、具体的な裁判官が、自分の恣意だけで、個人的な意見だけで、わしはここから一歩も動かぬのだ、こういうことでもまた困ると思う、これは全体の司法の状況というものを考えて行動してもらわぬと。しかし、各裁判官みんな常識を持っているわけですから、そんなことはみんな頭にあると思うのですよ。したがって、それを非常にかたく守るとやりくりに困るという、そんなことを心配するよりも、そういう点をないがしろにしますと逆の作用が出てくる、逆の作用が。それはあなた、現在、最高裁長官といえども、やはり政党政治下においては、これは時の与党によって結局は任命されるのですよ。任命されても、職務は別だという気概でやっておられることは、これはわれわれもそういうふうに見ております。見ておりますが、新聞等にも出ておるように、自民党さんのほうで、変な判決した裁判官の一ぺん中身洗ってみるとか、そういうようなことも一方にあるわけでしょう。そんなことがあなた容易にできることじゃないと思いますが、しかし、そのために裁判官の身分保障というものは、私から言わなくたって皆さん自身知っておるとおり、歴史的にこう出てきておるわけですから、それと矛盾するようなことは、一人の裁判官の問題であっても、これはもう神経質過ぎるくらいに私は考えてほしいと思います。司法行政に都合がいいからというふうなことで、裁判官の本質に多少でもマイナスになるような考え方を強められるということは、どうも私は賛成できかねるのです。
  166. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 司法行政の都合がいいとか悪いとか、そういうことでこの再任問題というものが扱われていないこと、これは間違いないことでございます。おことばにございましたけれども、なぜこういう人をそれじゃ名簿に載っけたのだというような場合も、もちろんその具体的な内容につきましては、これはお答え申し上げることは差し控えさしていただかなければならないと思うのでございます。しかし、亀田委員の御心配なさるお気持ちと申しますか、こういうことが心配だぞとおっしゃるお気持ちは十分よくわかっておるわけでございまして、そういうような御心配につきましては、これは絶対にそういうことはないことでございますけれども、ないが上にも十分私どもとしても留意してまいりたいと思うわけでございます。
  167. 亀田得治

    ○亀田得治君 従来広島の裁判所は司法行政等について裁判官会議を非常に活発にやられておる裁判所だということを、これは風のたよりに聞いておるわけですが、そうですが。裁判所に行きますと、司法行政事務にあまり関心持たない、おれは裁判の実務のほうだけが好きなんだという人もおられますけれども、私は、裁判所が独立していくということは、これはもう裁判官自体が行政の責任も持っているということでなきゃ私はいかぬと思うのですね。そういう立場から、これは両方の仕事といえばまことに繁雑になりますけれども、しかしそれは乗り切らなきゃ、おれは裁判だけやっておってあとのことは人まかせと、それじゃ片ちんばですから、そういう面から、裁判官会議が司法行政のことなどで活発に開かれるということはいいことだと思っておるのです。広島の裁判所は従来そういう伝統を持っているやに聞くのですが、どうですか。
  168. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) これはあるいは総務局長のほうから申し上げたほうがいい事柄かもしれませんが、私が聞いております範囲では、また実際に経験いたしました範囲では、これは東京あたりも、事件との関連においてもそうですけれども、非常に活発に司法行政面は動いておるわけでございまして、大阪もちろんそうでございますし、広島ももちろんそうであるというように聞いておるわけでございます。
  169. 亀田得治

    ○亀田得治君 ところが、そういう面で、現在の広島の地裁の所長とそれからいま問題になっておる長谷川裁判官との間でときに意見の違いが出るということがあったようにも思うし、それは聞くわけだ。そういうことも反映しているんじゃないかというふうなことを伝え聞くわけですが、そうなりますと、私はいよいよ危惧しておる問題に触れていくわけでして、そういう意見の食い違いというようなことはどうですか、監督者の立場から見て。
  170. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) それは聞いておりませんですが、そのようなことは私はないというように信じております。
  171. 亀田得治

    ○亀田得治君 背後にそれがあって転所というものが表には出ておるのか。
  172. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) 私はそのようには聞いておりませんですけれども、どちらからお聞きになったのか存じませんけれども、私自身はそういうようには伺っておりません。
  173. 亀田得治

    ○亀田得治君 ああいうそこの所属の裁判官の転所というような問題は、一般的にそこの長の意見というものが相当重きをなすわけでしょう、最高の決定に対して。
  174. 矢崎憲正

    ○最高裁判所長官代理者(矢崎憲正君) これはもちろん、五百人以上の者が異動するわけでございますから、その御本人の御意向、またそれからそこの所長なり長官なり所長代行、いろいろな方の御意見はもちろん十分反映されるわけでございます。
  175. 亀田得治

    ○亀田得治君 問題になっているようなケースについては、そんなに数多くないようです。そういう面では安心しておりますけれどもね。ないようですから、やはりそういう場合には背後まで調べてみるというくらいのことをやっぱりやるべきだと思いますね。裁判官としては適任だが、そういう司法行政上の問題等でそのことが反映してくるというようなことじゃ、これは私はいよいよもってよくない。りっぱな裁判官を集めるためにも、こういう点はひとつはっきりしておいてほしいと思いますな。その点はどうも聞いておられぬようですけれどもね、受ける感じ。しかし、転所が問題であったことは、大体受ける感じから私はそのとおりだと思っているのです。  きょうはこの程度にしておきます。
  176. 小平芳平

    ○委員長(小平芳平君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十七分散会      ―――――・―――――