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1968-01-27 第58回国会 参議院 本会議 2号 公式Web版

  1. 昭和四十三年一月二十七日(土曜日)    〇開 会 式  午前十時五十八分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長及び議員、内閣総理大臣その他の国務大臣及び最高裁判所長官は、式場に入り、所定の位置に着いた。  午前十一時 天皇陛下は衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。    〔一同敬礼〕  午前十一時一分衆議院議長石井光次郎君は式場の中央に進み、次の式辞を述べた。    式 辞   天皇陛下の御臨席をいただき、第五十八回国会の開会式をあげるにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。  現下わが国をめぐる内外の諸情勢はまことに多端であり、内治外交の各般にわたり解決すべき幾多の問題があります。  われわれは、この際、決意を新たにして、外に対しては、広く諸外国との親交を深め、人類共通の念願である世界平和の達成に一段の努力をいたすとともに、内にあつては、流動する国際経済の影響を克服して、わが国産業経済の発展、貿易の伸長を図り、さらに社会福祉の増進、教育及び科学技術の振興等諸般の問題につき適切な施策を推進して国民生活の安定向上につとめ、もつてますます国運の繁栄を期すべきであります。   ここに、開会式を行なうにあたり、われわれに負荷された重大な使命にかんがみ、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もつて国民の委託にこたえようとするものであります。次いで、天皇陛下から次のおことばを賜わった。    おことば   本日、第五十八回国会の開会式に臨み、全国民を代表する諸君と親しく一堂に会することは、わたくしの喜びとするところであります。   現下の国際情勢は、きわめて多端でありますが、この間に処して、わが国が諸外国との友好を深め、世界平和のためにたゆみない努力を続け、国際的地位の向上を見つつあることは、まことに喜びに堪えません。また、内にあつては、全国民が相協力して、民生の安定と経済の発展につとめ、その成果をあげていることは、深く多とするところであります。  しかしながら、わが国が内外の情勢に対処し、今後ざらに国運の発展を期するためには、なおいつそうの努力を要することと思います。   ここに、国会が、国権の最高機関として、その任務の達成に最善を尽くし、国民の信託にこたえることを切に望みます。    〔一同敬礼〕 衆議院議長はおことば書をお受けした。天皇陛下は参議院議長の前行で式場を出られた。  次いで、一同は式場を出た。    午前十一時八分式を終わる      ─────・───── 昭和四十三年一月二十七日(土曜日)    午後三時九分開議     ━━━━━━━━━━━━━ ○議事日程 第二号   昭和四十三年一月二十七日    午後三時開議  第一 国務大臣の演説に関する件     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、常任委員長辞任の件  一、常任委員長の選挙  以下 議事日程のとおり     ―――――――――――――
  2. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ―――――・―――――
  3. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  西田信一君から海外旅行のため明二十八日から二十六日間、八田一朗君から海外旅行のため十二日間、それぞれ請暇の申し出がございました。  いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。      ―――――・―――――
  5. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) この際、常任委員長の辞任につき、おはかりいたします。     内閣委員長      豊田 雅孝君     地方行政委員長    仲原 善一君     大蔵委員長      竹中 恒夫君     文教委員長      大谷藤之助君     農林水産委員長    野知 浩之君     商工委員長      鹿島 俊雄君     運輸委員長      天坊 裕彦君     逓信委員長      森中 守義君     予算委員長      新谷寅三郎君 から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申し出がございました。  いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。      ―――――・―――――
  7. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) つきましては、この際、日程に追加して、 常任委員長の選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。
  9. 藤田正明

    ○藤田正明君 常任委員長の選挙は、その手続を省略し、いずれも議長において指名することの動議を提出いたします。
  10. 近藤信一

    ○近藤信一君 私は、藤田君の動議に賛成いたします。
  11. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 藤田君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。  よって、議長は、内閣委員長に井川伊平君を指名いたします。    〔拍手〕  地方行政委員長に津島文治君を指名いたします。    〔拍手〕  大蔵委員長に青柳秀夫君を指名いたします。    〔拍手〕  文教委員長に中村喜四郎君を指名いたします。    〔拍手〕  農林水産委員長に和田鶴一君を指名いたします。    〔拍手〕  商工委員長に金丸冨夫君を指名いたします。    〔拍手〕  運輸委員長に谷口慶吉君を指名いたします。    〔拍手〕  逓信委員長に久保等君を指名いたします。    〔拍手〕  予算委員長に西郷吉之助君を指名いたします。    〔拍手〕      ―――――・―――――
  13. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 日程第一、国務大臣の演説に関する件。  内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、宮澤国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。佐藤内閣総理大臣。    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
  14. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 第五十八回国会に臨み、当面する内外の諸問題について、私の所信を明らかにしたいと存じます。   わが国はことしで明治改元百年を迎えました。国民各位とともに、明治の輝かしい経営のあとをしのび、国家民族の長い将来にわたる発展のため努力する決意を新たにしたいと思います。  明治維新は封建時代から近代への一大転換でありました。東洋の一小国であった日本は、ほぼ半世紀の間に世界的な国家に成長いたしました。当時、諸外国との友好を深め、進んで西欧文明を取り入れ、近代国家としての基盤を確立した国民の気概と活力、指導者の識見と勇断に深い尊敬の念を禁じ得ません。   自来一世紀、われわれは第二次大戦で敗れた痛手を乗り越えて、焦土と廃墟の上に奇跡的といわれる復興をなし遂げ、わが国は、世界有数の先進工業国に発展いたしました。この成果を踏まえつつ、国際社会における枢要な国家としての地位を保ち、真に民族の恒久的な繁栄の基礎を築くべく、次の百年に向かって新しい出発をしなければなりません。私は、この機会に、長期的な展望に立った重要な政治の課題に触れ、国民各位の御理解を得たいと思います。  まず第一に、二十世紀後半の人類は核時代に生きております。この核時代をいかに生きるべきかは、今日すべての国家に共通した課題であります。  われわれは、核兵器の絶滅を念願し、みずからもあえてこれを保有せず、その持ち込みも許さない決意であります。しかしながら、米ソ二大核保有国に続き、イギリス、フランス、中共は、それぞれの立場で核兵器をてことして国家利益の追求をはかろうとしております。  このため、われわれは、当面、核兵器拡散防止に関する公正な条約の早期締結につとめ、さらに国際間の交渉による核軍縮の達成に全力を傾けねばなりません。そして核保有国が、核兵器で威嚇したり、これを使用したりすることを不可能とする国際世論を喚起し、人類の理性が核兵器を支配する正常な国際環境をつくらねばなりません。  世界における唯一の被爆国民としての悲惨な経験を持つわれわれの発言は、世界政治のあり方に重大な示唆を与え、大きな指標となるべきであります。  人類にとって次の世紀にかけての最大の課題は、核エネルギーを中心とした科学技術の進歩の問題であります。核エネルギーの平和利用の分野は予測のつかないほど広大なものであり、あわせて、宇宙、海洋開発などの面で世界各国民がその知力を競う時代が到来することは、必然であります。これからのいわゆる「巨大科学」の時代に、われわれ日本民族は、みずからの繁栄と人類の進歩のために積極的に取り組まなければなりません。  われわれは、核エネルギーの平和利用における国際的進歩におくれをとらないよう、渾身の努力をしなければなりません。そして、科学技術の面における貢献によって、核時代におけるわが国の威信を高め、平和への発言権を確保し、国際社会に建設的な提言を行なうべきであります。  第二に、国際政治の中心課題は今後とも南北問題であります。世界総人口の約三分の二をかかえる発展途上国には、政治的不安定、社会体制のおくれ、国民経済の貧困が目立ち、特に経済発展の面で先進諸国との格差は、年々増大する一方であります。  貧困と飢餓、疾病と文盲を追放するため積極的協力をすることは、先進諸国に課せられた共同の責任であると申さねばなりません。特に、アジアの一員であり、アジアの平和と繁栄が自国の平和と繁栄に直接結びついているわが国としては、まず、アジア諸国の民生安定に積極的に寄与しなければなりません。発展途上国に対するわれわれの経済協力は、アジアの連帯を推進し、平和への布石となるのであります。  第三に、先進諸国に共通な現象として起こっている都市化傾向は、わが国において特に典型的であります。日本列島全体が都市化の波に洗われ、われわれは新しい都市社会の時代を迎えようとしております。  経済の高度成長によるこのような都市化傾向は、農村をも含めて、われわれの生活を急激に変えつつあります。この結果、大都市においては、公害、住宅問題、交通難等、過密の弊害が激化し、また、周辺地域の無秩序な市街地化を来たしており、都市機能の低下を招き、生活、生産両面において、いろいろな摩擦現象を生じております。一方、農村地域においては、人口流出が続き、教育、医療問題など基礎的な生活条件に影響を与えるほどのいわゆる過疎現象も目立っております。  このような地域社会の変化に賢明に対処することこそ、社会を進展させるゆえんであり、われわれに課せられた重要な課題であります。特に狭隘な国土、貧弱な資源など、恵まれない自然条件を克服して新しい国土開発を進めるためには、土地問題が公共優先の観点から再検討されねばなりません。各地域の特性に応じて、計画的に、かつ、均衡のとれた国土開発を行なうことは、将来への大きな目標であります。  第四に、今日国際社会は教育競争の時代となっております。一国の将来が青少年の双肩にかかっていることは、古今東西を通じて変わらない真理であります。われわれは、今後とも世界的に高い教育水準を維持し、国民一人一人の資質を高め、能力を開発する努力を続けねばなりません。  しかしながら、科学技術の急激な進歩によって、ともすれば人間の尊厳が見失われ、精神の衰退を招きがちであります。われわれは、人間のゆるぎない優位を確立し、人類の英知が物質文明を支配し、科学技術とともに哲学、文学、芸術などが栄える人間性豊かな社会を目標としております。  このため、教育もまた、民族のすぐれた伝統にささえられた人間形成に重点を置かなければならないと信じます。  第五に、われわれは、民族の理想として、国際社会における名誉ある地位を占めることを念願しております。過去百年の間に世界有数の近代国家として興隆した誇りを持ち、挫折の経験を謙虚に省みながら、民族の理想達成のため、たゆみない努力を続けなければなりません。  自己の能力を正しく把握し、社会秩序を守り、日本人としての誇りと独立の気概を持つことは、民族の若さと活力を永遠に維持する秘訣であり、また、国の安全を保持する基本的な条件であります。  国際協調の道を切り開いて、恒久的な平和を招来することは、全人類の悲願でありますが、現実の国際情勢は、まだそこまで到達し得ないというのが実情であります。このため世界各国は、自国の利益と安全確保のために、それぞれの立場から現実的な動きを示しており、わが国もまたその例外ではないのであります。われわれは民族の理想達成のために、常にきびしい現実を直視し、歴史の推移に柔軟に対処し得る時代感覚を持つと同時に、いかなる時代にも生き抜くたくましさを持たなければなりません。  次に、外交および経済に関する若干の重要問題について申し上げます。  小笠原の返還交渉は硬調に進み、近く関係協定を国会に提出して承認を求めることといたします。  沖繩の祖国復帰は国民的総意であります。両三年内に返還の時期についてめどをつけるため、日米間の外交折衝を進め、まず返還を実現することに全力を傾ける決意であります。このため、米国との相互信頼の基礎に立って、安全保障上の要請を踏まえつつ、現実的な解決策を生み出すべく努力してまいりますが、それまでの間、本土との一体化施策を進め、教育、経済、社会、文化などの各面で本土との格差を是正し、復帰にそなえる方針であります。  戦争によってわれわれの手から離れた領土を平和時に回復することが、きわめて困難な問題であることは申すまでもありません。幸いにして、沖繩問題は基本的解決の方向へ向かって着実な軌道に乗せることができました。祖国復帰を一日も早く実現するためには、このことによってわれわれ日本国民が、一そう世界の平和と繁栄のために寄与し得るという信頼感を、国際社会に植つけることが何よりも大切であります。   一方、北方領土返還問題の前途には大きな困難が横たわっております。領土問題は、日本民族の誇りにつながるものであり、大きな国家利益の問題であります。われわれは、その回復に向かって忍耐強く努力しなければなりません。  ベトナムにおいて依然戦火が続いていることは、まことに遺憾にたえません。私は、一日も早く公正な平和がもたらされることを、心から望むものであります。ベトナム戦争の早期終結は国際世論であり、私は当事者が互いに意思疏通をはかり、一日も早く話し合いのテーブルにつくことを期待してやみません。わが国としても平和実現のためできるだけの努力を続けてまいります。  最近における三十八度線を越えて発生した事件及び先日の米艦拿捕事件によって、アジアに新しい緊張が生まれようとしております。世界、特にアジアの平和を心から願う日本国民にとって、まことに憂慮にたえないところであります。われわれは、アジアの平和維持のため、朝鮮半島をめぐる諸問題が一日も早く平和裏に解決されるよう切望してやみません。  中国情勢の安定なくしては、アジアにおける真の平和と繁栄の達成は困難であります。私は、中共内部の動きを注意深く見守りつつ、これまでどおり政経分離の原則のもとに、貿易、文化の交流を進める政策を続けてまいります。  政府は、昨年秋以来、一連の景気調整措置をとってまいりましたが、わが国の経済は、いまなお相当の拡大傾向にあり、国際収支の状況にも特に改善のきざしがあらわれておりません。また、ポンド切り下げ、米国の国際収支改善政策の発表など、国際経済環境はいっそうきびしさを加えつつあります。  このような情勢に対処し、政府は、今後の経済運営にあたっては、引き続き景気を抑制する基本的な態度を堅持し、政府、民間を通じて総需要の抑制をはかり、国際収支の均衡回復と物価の安定を最も重要な政策目標としてまいります。国民各位においても、投資及び消費について節度ある態度で臨み、輸出を伸ばし、外資の節約につとめるよう強く要望いたします。  また、国際通貨体制の不安については、具体的には、世界経済と貿易を拡大する方向に沿って国際的な協力を強め、その安定をはかるべきであります。政府は、このような観点から、まずみずからの景気の安定、持続的な経済成長につとめつつ、国際協力を呼びかけるとともに、わが国としても、できる限りの協力を行なってまいります。  昭和四十三年度の予算編成にあたっては、景気抑制を主眼として財政規模の圧縮と公債発行額の縮減につとめるとともに、特に財政体質の改善のため、一般会計について総合予算主義を採用し、予算補正の大きな要因を除去することといたしました。しかし、今後体質改善の実をあげるためには、引き続き予算に関係のある現行諸制度の抜本的な改善を実施しなくてはなりません。行政機構の簡素合理化をはじめとするこれら諸制度の改善が実施されて、初めて将来にわたる安定成長への基盤が確立されるのであります。  地方行財政の運営にあたっても、国と同様、その合理化、効率化について格段の努力をされるよう強く要請いたします。  税制につきましては、一方において中小所得者の負担軽減のため、所得税、住民税等の減税を行なうとともに、間接税の一部について最近の所得、物価水準を勘案した負担の調整を行ない、歳入を充足する措置をとることといたしました。  本年度の消費者物価は、政府が当初見通した四・五%上昇の範囲内におさまるものと見込まれますが、本年度後半の物価上昇には根強いものがあり、また、今般公共料金の一部等について最小限度の引き上げを行なうこととしたのに伴う影響もありますので、明年度の動向は楽観を許さない情勢となっております。このため、政府は、財政金融政策の適切な運営と相まって、引き続き生産性の低い部門の近代化、流通機構の改善、公正な競争条件の整備など、物価安定のための諸施策を一そう強力に推進し、明年度の物価を本年度に比べて四・八尾程度の上昇にとどめるべく、最大の努力をいたす決意であります。  なお、人類の進歩と調和をテーマとして開催される日本万国博覧会は明後年に迫りましたが、政府は、初めてアジアに招致されたこの平和の祭典を成功に導くだめ、万全の準備を進めてまいります。  私は、明治百年を迎え、わが国が当面している政治の課題について述べてまいりました。明治百年の意義は、過去の栄光を追うことにはなく、来たるべき百年に過去の経験をどう生かしていくかにあります。  時代のいかんを問わず、民族の発展と文明の進歩への道は、決して坦々として調和のとれたものではありません。さまざまの困難と矛盾を抱きつつ流動してやまないのであります。現在、われわれは核時代に生き、増大する国際的責任、激化ずる社会的変動等、かつて先人の経験したことのない、きびしい試練に直面しております。この試練を乗り越えて、明日の祖国の命運を切り開いていくことこそ、次の世代に対するわれわれの重大な責務であります。(拍手)     ―――――――――――――  政治に携わる者は、国民の代表者たるにふさわしい道義感のもとに行動し、清潔な議会民主政治を確立して、国民の政治に対する信頼を高め、その付託にこたえなければなりません。  公務に奉仕する者は、綱紀を厳正に維持し、職務に精励することが何よりも大切であります。  私は、みずからの姿勢を正し、国民諸君とともに、わが民族の未来への道を真剣に考え、相携えて前進したいと思います。国民諸君の御支援を心からお願いする次第であります。(拍手)
  15. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 三木外務大臣。    〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
  16. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) ここに、わが国外交の基本政策について所信を申し述べたいと存じます。  およそ一国の外交政策には、その国の置かれた環境からくる基礎条件があります。わが国の基礎条件とは一体何でありましょうか。  日本は海に囲まれた島国であります。国土は狭く資源に乏しい、巨大なアジア大陸に隣接している。これが日本の置かれた環境であります。こうした環境は、平和に生きていこうと決意する日本に、基礎条件として、次の三つの方向を与えております。  すなわち日本は、海洋国家として孤立主義はとれない、世界の中の日本、アジア太平洋の中の日本として生きていく道を考えなくてはならぬということであります。  ざらに日本は、自給自足経済ではなく、広く世界との貿易によって立っていかねばならぬということであります。そして日本は、隣接するアジア大陸とは、脅威も受けず、脅威も与えず、相互尊重の善隣関係を持っていかねばならぬということであります。時代がいかに変わろうとも、日本の環境に変わりがない以上は、日本の生きていく方向とそのかじ取りとしての日本外交の基本路線に変わりはありません。輝かしい明治百年の歴史の中においても、こうした基本路線にそむいて、自給自足経済を試みたり、大陸国家たらんとした場合は失敗でありました。これは歴史のとうとい教訓であります。  私は、一年前、この議場で外交に関する所信を表明して以来、「戦争と平和」の問題に真剣に取り組んでまいりました。しかし、一年という期間はあまりにも短く、問題はあまりにも大きく、そのすべてに成果をあげたとは申せません。しかし、ある問題は相当に、ある問題は幾分なりとも、ともかく前進したことは事実であります。  まず、日米間の最大懸案である沖繩、小笠原の施政権返還について申し述べたいと存じます。この問題は、昨年十一月の佐藤総理大臣の訪米により、解決の方向に大きく前進したことは御承知のとおりであります。小笠原の返還実施については、アメリカとの間に目下交渉を進めておりますが、交渉がまとまり次第、今国会に提出して承認を求めたいと考えております。  沖繩については、総理訪米の際の共同声明で確認されたごとく、施政権返還の方針のもとに、日米両国政府間で近く協議を開始する考えであります。  ざらに、施政権返還の際の摩擦を最小限にするため、沖繩の住民とその制度の本土との一本化を促進し、住民の経済的、社会的福祉を増進するため、援助を一そう増大する等、引き続き最善の努力を続けるつもりであります。また、との目的のため今回沖繩に設置される諮問委員会には、わが国の見解をできるだけ反映せしめるため、積極的に努力していくつもりであります。  わが国とアメリカとの関係は、あらゆる分野において、緊密な協力と友好の関係を維持し、強化してまいっております。この協力、友好の関係は、将来においてもゆるぎなきものであります。したがって、複雑な沖繩問題も、両国の相互信頼に基づく話し合いによって解決できるものと確信いたしております。  ひるがえって、ベトナム戦争については、遺憾ながら事態は必ずしも一年前より好転しているとは申せません。戦争の惨禍はむしろ拡大しております。しかし、私は希望を捨てるものではありません。本年を何とか転換の端緒をつかみ得る年とするために努力を続けていくつもりであります。ベトナム問題についてわが国に対し国際的に二つの方向からの期待が寄せられております。一つは、アメリカと関係の深い国であって、しかも軍事的に圏外に立っている日本こそは、アメリカに率直に勧告できる立場にあるとの期待であります。もう一つは、アジアの国である日本こそは、北ベトナム、ベトコンに対し、アメリカの真意を理解させ得る立場にあるという期待であります。  私は、このような、双方からの期待にこたえるべく努力をいたしたいと考えております。北側との接触もいとうものではありません。過去一年間に、アメリカ、南ベトナムはもちろん、ソ連、東欧、イギリス、カナダともベトナム和平についてはいろいろと話し合いを行ない、また提案も試みてまいりました。相互保障方式などもその一つであります。  現在のところ、北ベトナム爆撃をアメリカが一方的に停止すべきかいなかに議論が集中されております。北爆が好ましいと思っている者はだれ一人あるはずはありません。しかし、北爆停止は戦争終結に役立つ方向で実現されなければかえって危険な面も有しております。すなわち、北爆が停止されても、北から南への補給や派兵が続く場合は、逆にざらに激しい北爆再開となることを私はおそれるものであります。  問題は相互不信の除去であります。このため、たとえば、北ベトナムの友好国を通じての何らかの保障が必要でありましょう。形はアメリカの一方的無条件の停止でも、そうした保障なしには、実際問題として北爆停止の実現はむずかしいのではないでしょうか。  この場合、北ベトナム友好国側のこのような保障に対し、北ベトナムは、アメリカの友好国側にいかなる保障を求めるでありましょうか、知りたい点であります。もし、それが、和平が達成された暁のアメリカ軍の撤退と基地撤去でありますならば、アメリカの友邦はこぞって保障国たり得るでありましょう。  ベトナム人の運命はベトナム人自身がきめるべきであります。北ベトナムもベトコンも、そして南ベトナム政府自体も、できるだけ早く、アメリカをして安んじて撤兵をし得る環境をつくり、その上で自分たちで民族自決をはかるべきものと考えます。こうした環境をすみやかにつくることを当面の目標として、現実的、実際的解決の道の探究をアメリカ並びに全ベトナムの人々に私は強く訴えたいと思うのであります。  私は、最近、北鮮が米国の艦艇を拿捕する事件が起こったことを憂慮しております。この事件は、わが国ときわめて近い地域に起こったものでありますだけに、われわれとしても重大な関心を抱かざるを得ないのであります。  私は、この地域を新たなる紛争の地域にしては絶対にいけないと信ずるものであります。  私は、当事者がこの事件をすみやかに解決するため、冷静にして慎重な態度で対処することを強く要望するとともに、わが国としても事態の平和的解決のため協力を惜しまぬ覚悟であります。  以上、当面の重要な問題について申し述べましたが、こごに、過去一年のわが国の外交活動を振り返ってみたいと存じます。東南アジア経済開発の問題、日ソ間懸案の検討問題、核兵器拡散防止条約の問題、ケネディラウンドの交渉問題、中東の問題等はすべて前進を遂げております。  東南アジア経済開発問題については、昨年四月、マニラで第二回東南アジア開発閣僚会議を開催いたしました。この会議において、東南アジア漁業開発センターが正式に決定を見、わが国の技術指導のもとに作業を開始することになりました。第三回会議は来たる四月シンガポールで開かれる予定であります。政府としては、アジア開発銀行の営業開始、農業開発特別基金の設置等の進展と歩調を合わせながら、東南アジアに対する多角的経済協力を一そう強化する所存であります。  また、ASPAC、すなわちアジア太平洋閣僚会議は、昨年七月バンコクで第二回会議を開きました。第三回会議は本年七月オーストラリアのキャンベラで開かれる予定であります。この会議は、アジア太平洋地域の連帯と協力の精神を深め、適当な共通の事業を行なうのみならず、参加国外相級の自由率直な定期的話合いの場として健全な発展を遂げていくよう、今後とも協力してまいりたいと考えております。  私は、アジアの繁栄は、アジア諸国の相互協力に太平洋諸国の連帯協力が加わることによって初めて促進され得るものと確信しております。アジアと太平洋の接点にあるわが国として、この重要な長期的課題にでき得る限りの貢献をなすべきであると存じます。幸いアジア太平洋諸国間の相互理解と連帯協力の機運は、官民のレベルを問わず、各種の交流を通じて次第に高められております。ベトナム戦後の永続的なアジアの安定と平和を考えた場合、アジア太平洋地域協力の基盤が一そう強化される必要のあることは申すまでもありません。  昨年、佐藤総理大臣が韓国並びに中華民国を手始めに、広くアジア太平洋諸国を歴訪ざれましたことは、わが国とこれら諸国との相互理解と協力の進展に大いなる功績をおさめたものと信じます。  日ソの関係につきましては、私は昨年七月、第一回日ソ定期協議のためソ連を訪問し、コスイギン首相その他ソ連政府首脳部の人達と親しく会談する機会を得ました。その際に、コスイギン首相の行なった提案に基づき、日ソ間のあらゆる懸案の総ざらいを行なうため、昨年以来両国政府間の話し合いを開始いたしました。このような交渉を通じて両国間に長期的に安定した善隣友好関係を樹立し得ることを期待するものであります。北方領土の問題につきましては、いかに時間がかかろうとも、あくまでもわが公正なる主張のもとにその解決をはかる覚悟であります。  核兵器拡散防止条約の問題につきましては、去る一月十八日、米ソ両国が十入カ国軍縮委員会に提出した核兵器拡散防止改訂条約案には、日本の主張も相当に取り入れられております。今後政府としては、公正な条約が実現されるよう一そうの努力を傾ける所存であります。  昨年の国際経済は、一方に、ケネディラウンドの関税一括引き下げ交渉が妥結し、国際通貨基金における特別引き出し権創設についても合意が成立する等、大きな進展がありました。しかし、他方、昨年秋より本年初頭にかけて、ポンド切り下げ、ドル防衛の強化を契機に、わが国をめぐる国際経済環境はきびしさを増してまいっております。しかしながら、わが国としては、先進工業国の一員として、この困難な国際環境の克服に今後とも協力してまいりたいと考えております。  さらに、今日の日本は世界の南北問題解決に貢献する心がまえが必要であると思います。  もちろん、日本国内にも解決すべき幾多の経済的、社会的問題をかかえておりますが、しかし、国内問題が片づいてから南北問題にかかるといって過ごせるものではありません。日本の長期的な繁栄はアジアの繁栄の中にこそ約束されるものであります。アジアの先進工業国として、アジアの南北問題に対する日本の寄与は当然の責務であると思います。貧困は国際不安定の原因であります。南と北との格差が縮まらない限り世界の不安定は解消されません。南北問題に対する国民の理解を求めたいと存じます。  中東問題については、国際連合が安全保障理事会を通じて解決の方途を示し得たことは大きな進展というべきであります。この間、安全保障理事国として公正な見地から関係各国の意見の調整に陰の努力を続けたわが国の活動は、高く評価されております。中東問題の終局的解決は当面困難とは考えられますが、今後も国連の場を通じて正しい解決の方向へ向かって力を尽くす所存であります。  私は、昭和四十三年という年は、世界的に新たな展開が始まる年になるかもしれぬと考えております。それだけに日本外交にとっても重要な年であります。これからの日本外交を推進していくためのわれわれの心がまえは、一体どうあるべきであろうか。国民各位とともに深く考えるべき課題であります。  今日を核外交時代と呼ぶ人があります。そして、軍事力の背景のない外交は無力であり、現代の力の象徴は核兵器であるから、核兵器を持たない国は国際的発言力が弱いという意見があります。私はこの意見にくみすることはできません。たとえ核兵器を持たなくとも、今後日本が日本の立場から世界の平和と繁栄に貢献するならば、国際社会で尊敬され重視ざれ得る日本になり得ることは間違いありません。しかし、核エネルギーの平和利用の面における機会均等だけは絶対に確保せねばなりません。このことに保証を求める日本の主張を曲げるようなことは、私はいたしません。  核時代といえども、一国の防衛にその国民が最大の努力を払うという世界普遍の原則に変わりはありません。国の安全確保に関する責任はみずから負わねばならぬことは申すまでもないのであります。しかし、現実問題として、一国だけで国の安全を確保することは不可能であります。今日は集団安全保障の時代であります。このような、世界に共通して集団安全保障体制をとることがかえって戦争に近づくという考え方は、世界に通用する議論だとは思いません。  われわれは、日本の安全に関する日米安全保障条約の意義を正当に評価し、自主的判断に基づき、みずからの防衛努力とともに、日米安全保障条約を堅持していく考えであることを明らかにいたしておきたいと思います。(拍手)  さらに、今日はいずれの国とも共存共栄の道を追求せねばならぬ時代であります。共存共栄を否定すれば対決と戦争しか残りません。現在の世界が、イデオロギーを越えて共存の方向に大きく動いていることは、まことに喜ぶべき傾向であります。この中で、中共はいまだ資本主義、自由主義との共存を認めてはおりません。しかし、中共が永久に現在のままであるとは思われません。長い目をもって私は大陸隣人の良識を期待するものであります。  人類三十数億、百数十カ国、そこには、ありとあらゆる考え方、民族、慣習の違いがあります。互いに文化交流を通じて相互の理解を深め、「共存の哲学」を悟る以外に人類の生きて行く道はないのではないでしょうか。  私は、流動する世界情勢の中にあって、歴史の教訓に学びつつ、日本の環境からくる外交の諸原則に沿って、国益の増進と世界の平和と進歩のために全力を傾ける所存であります。国民各位の御理解と御支持を期待するものであります。(拍手)     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  17. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 水田大蔵大臣。    〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
  18. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) ここに昭和四十三年度予算の御審議をお願いするにあたり、その大綱を御説明申し上げ、あわせて今後における財政金融政策について、私の所信を申し述べたいと存じます。  わが国経済は、いま、二つの課題に直面しております。一つは、国内景気を抑制し、すみやかに国際収支の大幅な赤字を解消することであります。他の一つは、長期的見地から、既存の制度、慣行、政策を再検討し、経済全体の効率化をはかることであります。  この二つの課題に取り組んでいくに際して、われわれは、わが国を取り巻く国際経済環境がきわめてきびしい状態にあることを銘記しなければなりません。  昨年十一月の英ポンドの平価切り下げに続き、本年初頭には米国の国際収支改善対策が発表される等、国際経済情勢は、流動的な様相を強めてまいりました。今後の展開いかんによっては、ようやく上昇に向かいかけていた世界経済の順調な足どりが乱れるおそれもあります。本年は、このようなきびしい国際経済環境の中にあって、前に述べた二つの課題を解決していかなければならないのであります。  このような見地から、昭和四十三年の財政金融政策は、次の二点を眼目として運営する所存であります。  第一は、景気の調整であります。  昭和四十一年初頭、不況克服のため公債発行を伴う財政政策が導入された後、わが国経済は、順調な上昇を続けてまいりましたが、昨年初めごろより、国内総需要の堅調を反映して、国際収支の不均衡が次第に顕著となり、昨年秋には一連の引締め措置を講ずるのやむなきに至りました。しかし、現在に至るも、国際収支は、依然として大幅な赤字を続けております。このような赤字基調から脱却することは、当面緊急の政策目標であり、本年初めには、公定歩合の再引き上げも行なわれたのでありますが、財政金融両面で、引き続き景気抑制への努力が要請されているのであります。  公債発行を伴う財政政策は、ここに三年目を迎えました。本年は、この財政政策が、金融政策と緊密な連係を保ち、歳出面、税制面、公債政策の各分野において、十分、抑制的に運営され、その真価を実証すべき年であります。  昭和四十三年度の予算編成にあたって、私は、この点を特に配慮いたしました。  昭和四十三年度予算は、きわめてきびしい内容のものとなっておりますが、私は、これが、結局、物価の安定にも役立ち、国民福祉の向上に寄与する最善の道であると信ずるのであります。  第二は、財政等の体質の改善であります。  わが国経済が、均衡のとれた持続的発展を遂げていくためには、財政が、その景気調整機能と資源配分機能とを十分に発揮していかなければならないのであります。  しかしながら、最近、法律上、制度上、義務的に支出しなければならない経費の毎年の伸びは著しく、これのみで年々財政規模をかなりの速度で増大させる勢いにあります。このような財政の体質を放置するならば、景気抑制的に財政を運営する必要がある場合にも、容易にこれを行なうことができず、財政の景気調整機能を有効に発揮させることが困難となるのであります。また、このような状況のもとにおいては、財源を政策的意図をもって適正かつ効率的に配分する余地に乏しく、財政の資源配分機能の適切な発揮も期待できないのであります。しかも、今後は、税収が常に従来のように高い伸びを示すものとは考えがたく、いまにしてこのように硬面化した体質を改善し、安易に財政に依存する傾向を是正しなければ、将来、財政政策の行き結まりを招くおそれすらあるのであります。  昭和四十三年度の予算編成にあたっては、財政体質改善のために特段の努力を払いました。しかし、財政の硬直化打開という課題は、短時日の間に一挙に解決できる性格のものではありません。解決の第一歩は、このたびの予算編成において踏み出されたのでありますが、さらに引き続いて問題の根本的解決をはからなければならないのであります。  今日、体質改善という課題は、ひとり財政のみに課されているわけではありません。内外諸情勢の変化に即応し、金融面その他経済の各分野にわたり、従来の制度、慣行にとらわれることなく、その効率化をはかっていくことが必要であります。  政府は、今後、財政金融に関連する諸制度の根本的な検討と、その改善に取り組む決意であります。これには、数多くの困難が予想されますだけに、広く各界各層の御理解と御協力をお願いしたいのであります。  昭和四十三年度予算は、以上申し述べました財政金融政策の基本方針にのっとり編成いたしました。  その特色は、次の諸点であります。  第一は、財政規模の増大を極力抑制したことであります。  すなわち、一般会計予算の総額は、前年度補正後予算額に比べて、一一・八%の増加に押えました。これは、最近十年来の予算の伸びに比べて、きわめて低い伸び率であり、非常に抑制された姿となっております。財政投融資計画の前年度当初計画に対する伸びは、十三%であり、これは、昭和三十四年度以来最も低い伸び率であります。国民経済計算上の政府財貨サービス購入も、前年度の実績見込みに対して一一・七%の伸びとなり、国民総支出の伸びを下回る見込みであります。  第二は、公債依存度を大幅に引き下げたことであります。  公債発行を伴う財政に景気抑制的な機能を発揮させるため、また、長期的観点から財政体質の改善に資するため、昭和四十三年度予算の編成にあたっては、公債発行額の圧縮に、できるだけの努力を払いました。すなわち、一般会計における公債の発行額は、六千四百億円、財政投融資計画における政府保証債の発行額は三千六百億円にとどめ、前年度に比べて大幅に減額いたしました。これにより、一般会計歳入中に占める公債発行収入の割合を一〇%台まで引き下げることとしたのであります。  第三は、新たに総合予算主義のたてまえをとったことであります。  予算は、本来、年に一度すべての財政需要を見込み、各経費の優先順位を比較勘案して編成すべきものであります。従来は、公務員の給与改定及び食糧管理特別会計への追加繰り入れが、毎年恒例的に予算補正の大きな要因となっていたのでありますが、昭和四十三年度予算におきましては、このような慣行を排除することといたしました。すなわち、公務員の給与改定に備えて予備費の充実をはかりました。また、食糧管理特別会計への繰り入れについては、年度の途中において米価の改定等事情の変化があっても、これによって補正財源を必要としない方式の確立を期することといたしております。  第四は、税負担の調整合理化をはかったことであります。  昭和四十三年度におきましては、中小所得者の負担の軽減に重点をおいて、平年度一千二百五十億円の所得税の減税を行なうほか、当面の経済施策に即応する税制上の措置を講ずることといたしました。他方、来年度の経済の推移を勘案し、所得及び物価の水準等の状況に応じた間接税負担の調整等を行ない、歳入の充足をはかることといたしました。これにより、税制改正等による減収は、昭和四十三年度においては生じないこととなります。  第五は、財源の適正かつ効率的な配分につとめたことであります。  一般会計予算及び財政投融資計画とも、その限られたワク内において、財源の重点的な配分を行ない、最大の効率が得られるように配意いたしました。特に、予算内容の更新をはかり、補助金の整理合理化を一そう推進することに留意いたしました。  第六は、行政の効率化に格段の配慮を加えたことであります。  すなわち、国家公務員の定員につきましては、極力減員につとめた結果、昭和四十三年度の国家公務員の定員は、前年度に比べて減少することとなります。これは、昭和二十九年度以来のことであります。  また、行政機構につきましては、各省庁の部局、公庫、公団の新設は、一切これを行なわないことといたしました。  かくして、一般会計予算の総額は、歳入歳出とも五兆八千百八十五億円となり、昭和四十二年度補正後予算に対し、六千百五十一億円の増加となっております。  財政投融資計画の総額は、二兆六千九百九十億円でありまして、昭和四十二年度当初計画に対し、三千百六億円の増加となっております。  以下、政府が特に重点をおいた施策について、その概略を申し述べます。  まず、税制等の改正であります。  所得税につきましては、中小所得者の負担の軽減をはかるため、夫婦と子三人の給与所得者の課税最低限を年収八十三万円程度まで、約十万円引き上げることといたしました。また、障害者控除、寡婦控除等につきましても、引き上げを行なうことといたしております。  租税特別措置につきましては、輸出の振興、技術開発の促進、中小企業の構造改善等に資するものを拡充する一方、価格変動準備金の積み立て率を引き下げる等、既存の制度の整備合理化を進めることといたしました。  間接税等につきましては、酒税の増徴、たばこ小売定価の改定を行ない、さらに、物品税の暫定措置について所要の調整を講ずることといたしております。  なお、地方税につきましては、住民税の課税最低限を引き上げる等、負担の軽減をはかることといたしました。また、地方道路財源の充実をはかるため、新たに自動車取得税を創設することといたしております。  次に、歳出について申し上げます。  昭和四十三年度予算におきましては、限りある財源の中で、各種施策につき、相互の均衡をはかりながら、できる限りの配慮を加えることといたしました。  以下、重要施策の要点について申し述べます。  第一は、社会保障施策の充実であります。  まず、低所得者対策といたしましては、生活扶助基準の引き上げ、福祉年金の給付月額の引き上げと所得制限の緩和等を行なうことといたしました。  また、児童保護、老人福祉、身体障害者保護、心身障害児保護、原爆被爆者援護等について、施策の充実をはかっております。  第二は、文教の充実と科学技術の振興であります。  文教の充実につきましては、義務教育における学級編制の改善、教員処遇の改善をはかったほか、教材費の増額を行なうことといたしました。また、学校の施設・設備等教育環境の整備を推進することとしております。さらに、大学入学志願者の増加に対処するため、学生の増募を行ない、また、私学については、新たに教育研究費の補助を行なう等、振興助成を進めることといたしております。このほか、育英奨学制度の充実をはかっております。  科学技術の振興につきましては、動力炉の開発、宇宙開発、大型重要技術の研究開発等を促進することとしております。  第三は、各種社会資本の整備であります。  公共事業費等の投資的経費は、本来、経済情勢に応じてその規模を弾力的に調整すべきものであり、昭和四十三年度におきましては、景気調整の方針にのっとり、公共投資の伸びを抑制することといたしました。  その内容につきましては、各事業の緊要性を勘案し、抑制の方針のもとにおいても、事業の着実な推進に留意いたしました。  すなわち、住宅建設につきましては、「一世帯一住宅」の実現を目標とする住宅建設五カ年計画に沿って、引き続きその促進をはかっております。昭和四十三年度における政府施策住宅の建設戸数は、前年度に対して四万四千戸余りを増加し、約五十万戸といたしました。また、下水道等の生活環境施設の整備を促進することとしております。このほか、治山、治水等国土保全の推進をはかり、また、道路、港湾、空港等各般の施設の整備を進め、このうち、治山、治水、港湾につきましては、昭和四十三年度を初年度とする新五カ年計画を策定することといたしております。  第四は、輸出の振興と対外経済協力の推進であります。  輸出の振興につきましては、日本輸出入銀行の貸し付け規模の大幅な拡大をはかりました。  対外経済協力につきましては、海外経済協力基金の事業規模の増大等、わが国経済の実情に応じて、その推進をはかることとしております。なお、昭和四十五年に開かれる万国博覧会につきましては、その開催準備に遺漏なきを期しております。  第五は、中小企業及び農林漁業の近代化であります。  中小企業につきましては、その近代化をはかるため、中小企業関係金融機関の資金量の増大、中小企業振興事業団の資金の拡充等をはかることとしております。  農林漁業につきましては、農業基盤の整備、農林水産業構造改善対策等の施策を推進し、その近代化をはかることとしております。金融面におきましても、農業近代化資金、農業改良資金の融資ワクを拡大し、また、農林漁業金融公庫に総合施設資金を創設する等の措置を講ずることといたしております。  さらに、流通面の近代化、合理化をはかるため、卸売り市場の整備を促進し、また、国民金融公庫、農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫に特別融資制度を設けることとしております。  これらの施策は、物価の安定に貢献するものと考えられます。  第六は、交通安全及び公害防止のための施策に重点を置いたことであります。  交通安全対策につきましては、歩行者保護のための施設の整備等を引き続き推進することといたしました。また、公害防止事業団の資金量の拡充、融資条件の改善をはかり、公害防止技術の開発等、施策の充実をはかっております。  最後に、地方財政について申し述べます。  昭和四十三年度の地方財政は、地方税、地方交付税等の歳入の大幅な増加が見込まれるのでありますが、現下の経済情勢にかんがみ、国と同一の基調で、節度ある運営を行なうことにより、地方財政の一そうの健全化が促進されるよう期待するものであります。  以上、昭和四十三年度予算の大綱について御説明いたしました。  現行国際通貨体制の基軸をなす米ドル及び英ポンドをめぐり、最近、相次いで注目すべき措置がとられるに及んで、国際通貨問題の重要性は、いよいよ高まってまいりました。  安定した国際通貨体制は、世界経済の交流をささえる基盤であります。  国際経済交流の発展なくして、わが国経済の健全な成長は実現しがたく、各国の理解と協力とによって、国際通貨体制の安定強化が達成されることが切に望まれるのであります。IMFの特別引き出し権制度も、このような協力の一つの成果として、その早期実施が期待されます。  わが国も、国際経済社会の一員として、国際通貨体制の安定強化にできる限りの協力を行ない、世界経済の拡大発展に貢献したいと考えております。また、かかる協力をすることこそ、わが国の経済発展それ自体をささえるゆえんであると信じます。  世界経済が拡大発展を遂げていくためには、各国が国際経済の自由な交流を促進する努力を続ける必要があると考えます。わが国も、各国と歩調を合わせて、本年から関税の一括引き下げを行なうこととする等、経済の国際化に沿った施策を着着と進めているのであります。  経済の国際化の進展につれ、国際競争がますます激しくなることは覚悟しなければなりません。一方、国内的には、労働力不足の本格化等、長期的基本的な条件の変化も生じているのであります。このような内外の状況の変化を前にして、企業の体質の強化と金融の効率化とが切に要請されることは言うまでもありません。この要請にこたえるためには、もとより産業界及び金融界の自主的な努力に待つべきものと考えます。政府も、資本市場の育成をはかるほか、金融制度全般にわたり再検討を行ない、競争原理の導入をはかる等、金融の効率化を進めるため、環境の整備につとめる所存であります。  本年、わが国を取り巻く世界経済の動向がいかなる展開を示すかは予断を許しがたく、このような情勢の中で、国際収支の均衡回復という目標に到達するには、多くの困難が予想されます。これらの困難に対処し、事態の変化に応じて、財政金融政策を機動的弾力的に運用しながら、政府は、景気調整の目的達成に、確固たる決意をもって当たる所存であります。同時に、この難局打開には、経済界をはじめ国民全体の御理解と御協力とが不可欠であることを、私は強く訴えたいのであります。  昭和四十三年は、調整の年、地固めの年であります。  幸いにして、各界各層の深い御理解と心からの御協力が得られますならば、国際収支はやがて均衡を回復し一わが国経済は、国民の活力にささえられて、再び、新たな発展を遂げていくものと確信いたす次第であります。(拍手)
  19. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 宮澤国務大臣。    〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
  20. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 昨年秋以来、財政金融両面にわたる一連の景気調整措置が実施され、さらにその効果の一そうの浸透をはかるため、本月初めには、公定歩合の再引き上げが行なわれました。このような措置がとられてはおりますものの、いまだわが国経済の基調に大きな変化はあらわれておりません。本年度のわが国経済は、民間設備投資が前年度に比べ三〇%に近い大幅な増加となり、消費支出もかなり増加するものと思われますので、経済全体としては、予想を上回り、実質二・六パーセント程度の成長が見込まれます。このような国内経済活動を反映し、輸入は二〇%を上回る大幅な増加が見込まれますが、反面、輸出は海外景気の停滞もありまして八%程度の伸びにとどまるものと思われ、総合収支では七億ドルに及ぶ赤字が避けられない情勢にあります。  他方、国際経済の動きに目を転じますと、去る十一月、英国はポンド平価の切り下げ、公定歩合の引き上げ等、強力な国際収支改善策をとり、米国は、これに伴って、公定歩合の引き上げを行ない、さらに本年に入りましてから、ドルの価値を維持・強化するため海外投融資及び海外旅行の制限など、きわめてきびしい措置をとることを明らかにし、今後逐次具体化されるものと思います。国際通貨の価値の安定は、世界経済の健全な発展及びわが国通貨価値の安定に基本的に重要でありますが、国際経済の最近の動きは、世界景気の先行きに不安定な要因をもたらし、世界貿易及びわが国国際収支の前途を険しいものにしております。  このような国際経済環境の中にあって、今後、わが国としては、国際収支の改善と物価の安定をはかり、長期にわたる経済発展と国民生活向上の基盤をつちかっていかなければなりません。  政府は、昭和四十三年度の予算編成にあたり、総需要の抑制をはかるため、財政規模及び公債発行額を極力押えるとともに、限られた財源を重点的に配分し、輸出の振興、生産性の低い分野の近代化、生活基盤の充実などに留意いたしました。  現在行なわれております景気調整措置の効果は、次第に経済の実体面にも浸透し、それに伴い国内経済は鎮静化し、やがて国際収支も改善していくものと考えます。政府は、今後とも、国内経済と国際収支の動向を注視しつつ、経済政策の弾力的運用をはかり、経済社会発展計画が目ざす持続的な安定成長への足固めを行なうよう経済を運営してまいる考えであります。  その結果、明年度、わが国経済の成長率は、実質で七・六%程度になるものと見込まれます。  国際収支につきましては、現在の赤字基調はなおしばらく継続するものと思われますが、漸次改善され、おそくとも明年一-三月期には均衡するようになるものと期待しています。しかし、年度を通じますと、明年度においても三億五千万ドル程度の赤字は見込まざるを得ないかと考えております。これは赤字としてはなおかなりの額でございますが、国際収支をこの程度に改善することさえ、決して容易ではございません。明年度においては、貿易収支で二十億ドル程度の黒字を出すことを目標としておりますが、これは輸入を八%台の増加にとどめるとしても、輸出が一五%程度増加しなければ実現することはできません。このことは、わが国の輸出を他の諸国の二倍以上の増加割合で伸ばすことでありまして、これは達成すすためには格段の努力が必要でございます。  政府は、明年度におきましても、輸出振興のため、税制面、金融面などにおいて特段の配慮をすることといたしました。民間経済界におかれましても、特に明年度は一輸出の大幅な増加を実現しない限り、わが国経済の運営が円滑に行なわれがたいことを十分認識され、輸出を第一の目標として、一そう努力ざれることを強く期待するものでございます。  国際収支の改善と並んで重要な政策課題は物価の安定であります。  消費者物価は、昭和三十年代後半には年率六%という高い上昇を示しておりましたが、昭和四十一年度には四・七彩の上昇にとどまり、さらに、本年度におきましては、政府が当初見通しました四・五%の上昇の範囲内におさまるものと見込まれます。しかしながら、本年度における動向を見ますと、上期は比較的安定的に推移し、前年度の上期に比し三・一%の上昇にとどまりましたが、昨年秋以降、再び騰勢を強めており、下期においては、前年度の下期に比べて、六%近い上昇が予想されます。したがいまして、明年度は、この影響を受けて、たとえ年度中横ばいに推移するといたしましても、本年度に比して三%余りの上昇になりますので、年度中における上昇を最小限度に押えるようにつとめ、四・八%程度の上昇にとどめたいと考えております。  他方、卸売り物価につきましては、本年度は一・五彩程度の上昇が見込まれますが、今後、景気調整措置の効果が次第に浸透し、明年度においては、一彩程度の上昇になるものと考えます。このような物価上昇の見込みは、決して低いものではありませんが、物価の上昇をこの程度に押えることも決して容易ではありません。  政府は、今後とも農業、中小企業、サービス業など生産性の低い部門の近代化、流通機構の改善などの構造対策を引き続き強力に推進してまいります。さらに、若年労働力を中心とする労働力の不足が次第に本格化し、賃金や物価に対守る影響を強めておりますので、その流動化対策には一段と努力する必要がございます。-他方、景気調整が進むにつれて、競争制限的な行為がふえがちでございますが、そのような行為が安易に行なわれることのないようにする必要があります。また、野菜、食肉、牛乳など家計に直接つながる生活必需物資については、価格を安定させ、円滑な供給が行なわれるよう一そう努力してまいります。  政府は、昭和四十三年度の予算編成にあたりまして、たばこ、国鉄定期運賃、間接税の一部について最小限度の引き上げを行なうことといたしました。これは、一方で国民負担の現状にかんがみ、明年度におきましても一千億円にのぼる所得税の減税を行ない、また、他方、財政体質の改善をはかるため、諸外国に比べて著しく高い公債への依存度を引き下げることにしたのに伴いまして、やむを得ずとった措置であります。もちろん、このような措置が、当面、物価に好ましくない影響を与えることは否定できません。しかしながら、他方で、政府が、従来の財政のあり方を反省し、その体質の健全化に積極的に取り組んだことは、長期的には物価問題解決への糸口になるものと考えております。  物価の長期的な安定をはかり、経済の健全な発展を期するためには、その背後にある旧来の制度・慣行に再検討を加えることが基本的に重要であると考えます。  今日行なわれております制度・慣行を見ますと、きわめて多くのものが弾力性を失い、経済や行財政の効率化を阻害し、物価の上昇をもたらす根源にもなっていると考えられます。  このような認識のもとに、政府は、昭和四十一二年度の予算編成にあたり、財政規模を極力圧縮するとともに、新たに総合予算主義をとり、公務員給与及び米価の改定のため、毎年年度途中において巨額の補正予算を組まなければならないという慣行を排除し、さらに、公債発行額を削減し、財政体質の改善をはかることとしたのであります。  昭和四十三年度は、行政及び財政の硬直化をもたらしている諸問題について、その解決をはかる第一歩を踏み出すべき年と考えます。今後早急に再検討を行なう必要のあるものとしては、米価、医療保険、国と地方の行財政のあり方など、数多くのものがあります。私は、これらの問題について、国民各層が国民経済的な視野に立って十分議論を行ない、新しい時代に即した新しい制度を国民的合意に基づいて確立し、昭和四十四年度を目途に新たな制度が発足することを念願いたしておるものであります。  以上、わが国経済の当面する諸問題について私の所信を申し述べました。  国民各位の御理解と御協力を切望いたします。(拍手)
  21. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) ただいまの演説に対し、質疑の通告がございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 重宗雄三

    ○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十八分散会      ―――――・―――――