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1954-03-18 第19回国会 参議院 本会議 20号 公式Web版

  1. 昭和二十九年三月十八日(木曜日)    午前十時二十六分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十号   昭和二十九年三月十八日    午前十時開議  第一 防衛庁設置法案及び自衛隊法案(趣旨説明)(前会の続)  第二 輸出保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ―――――・―――――
  3. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) これより本日の会議を開きます。  この際、お諮りいたします。昨日決定いたしました警察制度の運用並びに町村合併促進状況に関する実地調査のための議員派遣につき、地方行政委員長から、島村軍次君を石村幸作君に替え、同君を愛知県に明後二十日から二日間の日程を以て派遣することとし、又伊能繁次郎君の派遣を長野県に本日から二日間に変更されたい旨の要求書が提出されております。委員長要求の通り議員派遣の変更をすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。よつて委員長要求の通り変更することに決しました。      ―――――・―――――
  5. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 日程第一、防衛庁設置法案及び自衛隊法案(趣旨説明)(前会の続)  昨日の趣旨説明に対し、これより順次質疑を許します。植竹春彦君。    〔植竹春彦君登壇、拍手〕
  6. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 今回、政府によつて提案せられ、その趣旨説明のありましたこの防衛二法案に対しまして、自由党を代表して政府に質問をいたします。  質問の第一点は、防衛問題に対する輿論指導についてお尋ねをいたします。それは自衛隊は違憲なりという説があるからであります。この違憲論を分析いたしますれば、第一に、自衛隊は軍隊であるから違憲であるという説、第二には、自衛隊の指揮権を総理大臣に与えることは総理の権限拡張と相成つて違憲の疑いを生ずるという説、第三番目には、予備自衛官制度を設けることは応召の義務を課することであつて、これは憲法第十八条にいわゆる苦役からの自由を守るの精神に副わざるものがあるといつて違憲を唱える説であります。尤もこれには逆に、今回の自衛隊法案については、いわゆる軍刑法に対比すべきこの自衛隊におきまする罰則に関する規定が不備であるという説もあるわけであります。第四番目に、違憲論といたしましては、土地の収用権は財産権の侵害になるから、憲法第二十九条に違反となるという説であります。今、前述四項目に亘る違憲論がある次第でありまするが、政府は進んで憲法違反にあらざるゆえんを国民の各階層へ徹底浸透せしめるために積極的に輿論指導をなす必要があると信じますが、これに関する政府の御所見と御方針につき緒方副総理から、又、前述四項目に亘りまする違憲論に対する御答弁としては木村国務大臣から、又、この罰則が不備であるという説に対する政府の御方針、御答弁については、これ又木村国務大臣より御答弁を承わりたいのであります。  緒方副総理は、三月十三日の土曜日の衆議院本会議におきまして、この問題については国会の論議を通じて国民の理解と協力を求める旨の御発言があつて、私は又これを傍聽いたしたのでありまするけれども、その論議からだけでは絶対不十分と考えまするので、本院において改めて質問をいたす次第であります。更に又保安隊乃至自衛隊に対しまして、こまかしの軍隊なりとする論者あるに対しまして、政府はよろしくその然らざるゆえんを關明し、戦力なき軍隊の意義も、形式論にとどまらず国民の常識にアッピールするように、国民によく納得の行くように輿論指導をなすべきであると思いまするので、以下私見と希望とを附しまして私の質問の論旨を進めて参ります。  およそ社会現象は、一方的な立場に立つてのみこれを立案し、勘案し、解決して行つてはならない。即ち一方には主観的条件を考え、更に又他方においては客観的情勢を洞察し、この主客両方面の立場に立つて解決して行かなければならない場合が多いと考えられます。(「だから違憲なんだ」と呼ぶ者あり)保安隊乃至防衛隊は、その立法、その結成発展の経過からこれを考えますれば、即ち主観的立場で見るならば、もともとこれは国家の警察即ち治安維持を目途として結成いたしたものでありますから、戦力ならざる限りは、これが厖大になろうとも憲法違反でないという政府の主張は正しいと考えます。更に比較法的に外国の立法例をとつてみましても、警察力即ち治安維持力の範囲の問題について、一九五〇年の十月、スイス刑法は第二編第三章の国家防衛に関しまする第二百七十五条風下の大修正を行なつております。この点に関しまして、スイス刑法は内乱に関する罪の規定の大幅な改正を断行いたしまして、違反者を厳罰に処することにいたしておるのであります。その改正法提案の理由書に曰く、第一に、昔の革命というものはバリケード戦や、或いは暴力を以て政府を追い出す程度で済んだけれども、近代の革命においては注意深く考えめぐらされたる企画の下に、必要なる場合には外国と通謀の下に、外国の指導下に準備せられて外国の紐の付いていることを指摘いたして、これに対する治安維持力、即ち警察力の厖大ならざるを得ないことを表明いたしておるのであります。又西ドイツにおきましても、一九五一年の七月に人身の自由保護に関する法律において、又同年八月の内乱外患に関する規定を定めたときにも、前述スイス刑法改正の提案理由書を援用いたしまして治安立法を引締めておるのであります。誠に内乱外患に対する防衛と国内の治安は大規模な自衛隊を絶対必要といたしまするのが、遺憾ながらこれは米ソ両陣営を問わず、世界の情勢であると同時に、それは又我が国におきましても深刻に考え、設備せられなければならん実情であるのであります。だから我が国にありましては、防衛庁が設置せられ、自衛隊が組織せられ、漸増急増いたされましても、この力が戦力でない限りは、これは違憲ではないのみならず、防衛は国内から生ずる治安撹乱に対してのみならず、国外からの侵攻による国内混乱を防衛することは、国家が国民の基本的人権を守る当然の義務を負うからであります。これをわかりやすく説明いたしますると、例えばこの鉛筆削り、鉛筆削りに作りました小刀、これは一寸の小刀であろうとも、これが五寸の小刀になりましようとも、その製作目的が文房具であり、鉛筆削りである以上は、依然として文房具であります。(「小刀が戦力だと言つているんじやないんだよ」と呼ぶ者あり)併しこの鉛筆削りも主観的条件、この製作目的が文房具であれば文房具であるけれども、(「バズーカ砲で鉛筆は削れん」と呼ぶ者あり)この鉛筆削りが学生生徒に用いられるときにはこれは文房具であるけれども、盗族これを用いるときには兇器となり、又兵士が戦場で白兵戦のときに用いる場合にはこれは兵器となり得るわけであります。併しこの一寸の鉛筆削りが五寸になるときには、これは文房具であるけれども、やがてこれが一尺になり、サーベルになつたときにおきましては、この客観的情勢からして、問題は深まつて参るのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)即ち第二の視点でありまする自衛隊の客観的性能、ポテンシヤリテイから考えまするならば、私は戦力と憲法改正問題に関して、もはや第二段のとるべき措置を考えなければならない段階が来ていると信ずるのであります。即ち客観的に見ますれば、自衛隊はその結成目的如何にかかわらず、その性能が終戦前の力に比しまして飛躍的に高度化されつつあるという事実を考え、且つ又警察力の範囲乃至防衛力の範囲が、漸増急増せらるる客観的状態から見ますれば、もはや今日では戦力の概念の輪、即ち戦力の範疇と増大し行く防衛力の概念の輪とが、相交錯する直前のいわゆる輪違い状態になる、一歩手前の限界点に近付いたものと考えられます。諸外国におきましては、すでにこの二つの概念の輪は相交錯いたしておるのでありまするが、我が国におきましては憲法が改正いたされておりませんから、まだ交錯状態まではこの防衛隊の状態を持つて行けない状態にあるのでありまして、この点は憲法改正の必要が単に観念的ばかりではなく、現実の問題処理上にまさにその限界点に到達せんとしておると考えるのであります。私見を以てすれば、保安隊も自衛隊も厖大ながら依然として警察力、治安維持力でありまして、軍隊である以上は、戦力の有無にかかわりませず、政府は速かに憲法改正の段取りの第一歩を踏み出すべきであると考えるのであります。輿論は防衛や憲法改正に全面的に反対している者ばかりではありません。むしろ憲法改正を望んでいる国民が多数にあることと思う。今の憲法は世界が一つであつた終戦直後に作らせられた憲法でありまするが今日は世界が二つになつておるのでありまするから、我が憲法も又改正について考慮せらるべき段階であると考えるのであります。戦力論争と憲法改正との関係論議は各党間にほぼ出尽された感がありますし、政府又その所信の披瀝といたしまして、今日の段階では憲法改正をいたさざる旨の言明があつたことは十分に承知はいたしておりまするけれども、現在国民の一部に自衛隊に対して憲法違反的な言論が展開され、而も戦力概念が上述のように限界点に到達している現状から見ますると、私はこの問題は与党或いは友党にのみの輿論指導、啓発指導に任せずに、政府みずからも又全国民に対して積極策をとられんことを強く望むものであります。輿論指導のない民主政治、多数決政治は衆愚政治に陥る場合すらあることを思いまするならば、国民に正し旨を広め、その納得を得てこそ、多数決政治の真価を発揮し得るものと信ずるのであります。この輿論指導なき多数決政治は、あたかもバターのないパンのようなものであるということを考えなければならない。政府といたしましては、憲法を改正しないから従つて輿論指導もお考えにならないといつたような段階もあり得るわけでありましようけれども、事態今日のごとくんば、政府に対して積極的態度を要望しつつ第一の質問を終了いたします。  次に質問の第二点は、自衛隊の指揮権の問題であり、第三点は、国防会議等に関する問題であります。この二つの問題は相関連いたしまするので一括して質問の論旨を進めます。この二つの質問の思想とするところは、第一に、自衛隊が一政党の私兵化を来たしまして、あたかも却つて治安が撹乱される場合が想定されるのであります。第二には、これと正反対に、この原案第十九条に基きまして将来武官優位の傾向を強からしめはしないかという疑念、即ち曾つての帷幄上奏のごとき、或いは防衛全般に亘りましての武官による専横をなからしめるという希望に基いての質問でありまして、政府原案はどの条項によつて予防してあるか、その組織機構について総理大臣或いは木村国務大臣よりの御答弁をお願いいたします。一方におきまして、文武官同等に任用いたしますることは公平でありまするけれども、やがて文官同士、武官は武官同士、類を友を呼び派閥を相生じまして、曾つての軍閥の再現をしないよう戒めなければならないと思います。他方におきまして自衛隊の指揮権を総理大臣一個に集中いたしまするときには、一カ所或いは数カ所の仮装暴動が蜂起いたしまするときに、第一の懸念は、消極的に、この鎮圧すべき暴動に対して政府は動員をいたさずに、不作為の間に革命を成就せしめることがあるであろうという懸念であります。第二の懸念といたしましては、逆に積極的に、鎮圧に名をかりて動員した自衛隊をして中途、敵は本能寺を指呼して、踵をめぐらして却つて革命達成を助長するの憂い深く、疑念は政府が原案各条に照らして十分納得行くように解明を要する最大重要の政治課題であると信じます。又自衛隊法案第七条に「内閣総理大臣は、内閣を代表して」「指揮監督権を有する。」とあるが、総理大臣は各大臣の罷免権を有するから結局総理は専断権を掌握することができます。この点、防止方法は制度として又立法措置としてどうなつているかということをお尋ねいたしたいのであります。衆議院の本会議におきまして緒方副総理は、国会の監視と選挙とがあるから専制をなし得ない旨の御答弁があつたのでありますが、前述のごとく国会の監視が行届かない場合があります。即ち原案第七十八条の緊急状態こそこの立法の盲点であると指摘いたさなければならない。(「そこだけはよくわかつている。」と呼ぶ者あり)法律は如何に改正いたしましても、結局は国民の投票により如何なる議員を国会に多数出すかという、結局は主権者国民の心によつてきまることでありますけれども、さればこそなお更輿論指導ということに重点をおかれたいのであります。このような最も重要なる政治課題、即ち日本の国家構造を変革するかどうかというような、そんなような本革の口火になるような重要課題を含みまするときに、私は政府原案に対しまして再考三考を深く要請する次第でございます。  今本問題に関しましては、左に坐する者は軍閥の再建専横を恐れ、又右に坐する者はこの赤色革命を警戒いたしまして、誠に国会の監視と選挙だけでは決して防ぎ切れざる左右両方のこの疑念に対しまして、中央に座席する我が自由党といたしましては、本問題に対して政府の十分納得行くような解明を要請いたしまして、質問の最も重点として、この点を副総理から御答弁頂きたいのであります。我が自由党吉田政府は赤色にあらざる、黒色にあらざる、汚職にあらざる、無色透明なる公明正大なる態度を堅持して、政界を浄化し、本問題に心血を注いで頂きたいと思います。  次に国防会議につきましては、現在諮問機関となつているけれども、前述の理由と同一の理由を以ちまして、総理大臣の指揮権の専横を防ぐためにも決議機関となすべきであるという説があるわけでありますが、これは憲法改正以前にこの体制を整備する必要を感ずるという、この説に対しまして政府の御所見を伺いたいのであります。私が右に述べましたところは私見やありまするけれども、そもそも民主主義の政治原理と考えらるるいわゆる三権分立の原理におきまして、私は国防のウエイトというものは今日の政情において非常に重大であると考えましてこの国防に十二分にウエイトをおいて考えて行かなければならないと考えるのであります。自衛隊の動員は決して一人の専断に依らざるようにその立法措置を講ずべきであろうと考えます。  次に最後の質問第四点といたしまして、自衛隊はMSAとの関係においてアメリカから指図せられたる自主性なきものという説がありまするが、政府は独立国として我が国の必要即ち国の利益と幸福のために自主的に設置するものであるということを国民に徹底するように闡明すべきであると思いますが、この点を副総理にお尋ねいたします。ただ駐留軍が撤退後も国防が経済力に即応し而も完全を期し得るかどうか、この所信と計画について木村大臣にお尋ねいたす次第であります。思うに、戦争の概念は、クラウゼウイツツのあの当時、戦争が行政の延長として政策完遂の手段であるという考え方から、ルーデンドルフの誤つた修正を経過いたしまして、今日と将来の戦争というものが、戦線なき非平時状態を含むところの、国家群と国家群との戦争であり、非平時状態であることを思えば、MSAを協定して祖国を集団的に防衛することは自主性を傷つけるどころか、軍事顧問を招き、又共同して防衛に当ることは国際情勢、当然の認識でありまして、決して奴隷隷属的なりと卑屈的に悩む必要は絶対にないということを、政府はこの国会の論議を通じてのみならず、広く全国に広めなければならないと思うのであります。(拍手)人類の生活においてあらゆる罪悪と反感と争闘を、更に一切の陰惨なる事態をこの地球の上から払拭し去るということは我々の理想とするところであります。我々は一切の殺人と戦争とをこの世界から排除、駆逐いたさなければならないことは何人といえども論議の余地がないばかりでなく、我々もこの理想の実現のために日夜心胆を砕いているのでありまするけれども、これはひとり政治家への課題にとどまらず更に一切の人類の理想であつて、世界の諸国民はこの大理想の顕現にあらゆる熱情を傾倒すべき責任を負うものであると信ずるものであります。併し翻つて世界の現状を直視するときは、残念ながら戦争の絶滅は理想との間に未だ間隔ある現実であるということを認識いたさなければならない。我々国民相互いは日本国憲法においてこの憲法を遵守することを誓つたが、同時に国家それ自体、政府自身も又この憲法上国民の基本的人権を保全し擁護して行く義務を負うのであります。この義務は単に国内に発生いたしました治安撹乱や不法行為から良民を護つて行くという義務だけにとどまらず、いわんや国外から侵攻せられましたときに剣を抜き放つてこの国民の人権と安全を護るということこそは、我が憲法上に義務付けられてあるということを考えなければならない。この義務が、この国防が、歪曲せられ或いは誤解されて違憲として流布せられることは我々の到底忍び得ざるところでありまして、政府に対しまして輿論指導につきまして万全の措置を要望いたして、私の質問を終了いたします。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
  7. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  最初に自衛隊は違憲ではないかという説に対してどう考えておるかという御質疑でありましたが、独立国としてみずからの手によつて自分の国を守ることは当然の責務であると考えます。従来我が国は日米安全保障条約によりまして、直接侵略に対しては、アメリカの駐留軍がこれに対処することになつておつたのであります。併し独立国として自国の独立と安全をいつまでも他国の手に委ねておくことはできませんので、国力に即応し且つ憲法の許す範囲内におきまして、自衛力を漸増し今回自衛隊を設けることになつたことは、これはまさに国として必要な措置をとつたのであります。国民の大多数はこの点を十分に了解して政府の施策を支持するものと信じておりまするが、更に今後とも、国民の理解を求めることには御指摘のごとく十分の努力を進めて参りたいと考えております。  なおこの国民の理解を求めるについての輿論指導の問題でありまするが、私はやはりこれは国会の論議というものが相当重要な輿論指導になると考えます。その意味におきまして国会の権威、国会の論議の権威を高めることは、私どもが輿論を指導する上において特に課せられたる責任であると考えるのであります。で、政府といたしましては、勿論機会あるごとに輿論指導に努めておるのでありまして憲法に対する政府の態度は、すでに前回の総選挙におきましても十分に所信を披瀝いたしまして、国民の批判を煩わして参つたのでありまして、この点におきましては、今後もあらゆる機会に国民の理解を深めて参りたい、さように考えております。  それから、総理大臣が自衛隊の指揮権を掌握することになるというと、非常に危険がありはしないか、不作為の革命等が起ることがありはしないかという御質疑と承わりましたのでありまするが、民主主義におきましても、自衛隊の最高指揮監督権はこれは総理大臣が握る以外に途がない。これを御指摘のような危険なからしむるためには、究極におきまして国民の良識に信頼する以外にないのであります。民主主義におきましては結局国民の良識が、これが最後の判断をなすものでありまして、若しこれに信頼ができなければ民主主義は成り立たない。そういう意味におきまして、政府も無論輿論指導に努めまするが、この国民の良識によつて総理大臣にいろいろな権力、ひとり自衛隊の指揮監督権のみでなく、すべての権力が集中する制度になつておりまするが、それより生ずる危険は結局国会の監督、又その国会に至りまする選挙、その選挙をいたしまする国民、その国民の良識を信頼する以外にないと思います。(「そんな常識論、公式論で納得できるものではないよ」と呼ぶ者あり)  それから国防会議のことにつきまして御質問ありましたが、国防会議は国防上の重要且つ基本的な問題につきまして、総理大臣の意思決定を補佐する最高の機関でありまするから、この構成につきましては今後十分に慎重に検討いたしてこの構成を完璧にいたしたい。さように考えております。  それから自衛隊はMSAとの関連において自主性のないものではないかという御質問でありまするが、自衛隊は独立国としての日本の平和と独立を保つための自主的な実力部隊でありまして、この自衛隊の終局の目的は、お説の通り国家の利益と幸福とに奉仕するものであるということは、あらゆる機会に国民に周知徹底すべきものであると、さように考えております。  以上、お答えいたします。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
  8. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 只今の御質問に対しては、大体緒方副総理から御答弁あつたようでありますが、重複を避けて私は申上げたいと思います。  この予備自衛官の制度は憲法違反でないかという御質問のようであります。私は然らずとお答えいたしたい。御承知の通り予備自衛官は退職した隊員のうちから本人の志願によつて採用するのであります。その服務の条件につきましても、入隊するときには、本人に事前において十分にこれを納得させて入らせるのであります。さような点から申しましても、決して強制的のものではない。いわゆる志願でありますから、違憲では勿論ないことは明白であります。  それから土地収用権を規定しておるのであります。これは違憲じやないかという御質問のようであります。防衛出動時におきまする物資の収用等につきましては、すでに法律として施行されております災害救助法、この第二十四条、第二十六条、第二十七条に定められておりまする程度を超えない範囲において自衛隊が収用等を行うことを定めたものでありまして、且つその手続等につきましても、今申しまする災害救助法の手続を準用することになつておりますから、決して憲法違反の慮れはないのであります。  次に、罰則が不備じやないかという御質問でありますが、御承知の通り、この自衛隊を民主的に運営するためには極めて軽度の罰則を規定してあるのでありまして、決して私は不備じやないと考えております。(拍手)     ―――――――――――――
  9. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 廣瀬久忠君。    〔廣瀬久忠君登壇、拍手〕
  10. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 防衛関係の両法案並びに防衛関係の問題につきまして、質疑をいたします。  先ず、総理大臣に対する質問をいたします。(「おらんぞ」と呼ぶ者あり)防衛問題に関するものであります。緒方副総理より御答弁を願いたい。防衛問題に関する論議はすでに出尽された感じがされますが、私誠に不明の至り、どうにもわからんことばかり。特に防衛に関する首相の言うつておるところと首相の行うておるところとを合せて考えまするときに、一体首相は何を考えておるか、首相の肚はどこにあるか、私にはわからんことばかりである。で、今日はあえて質問をいたすわけであります。あいにく総理がおらないので、非常に私は迷惑をしておる。私が聞くことは総理でなければならないことが多い。併し副総理においてでき得るだけの御答弁をしてもらいたいのであります。  政府は今回防衛関係の二つの法案を出した。すでに又予算においては防衛関係の大幅な増額を要求して、現に参議院の予算委員会においてこれを審議しておる。そのほかにMSAの協定、これをも国会に出しておる。これを見ますと、予算、法律、条約、あらゆる角度から防衛の強化を図つておるのでありまして、今国会はまさに防衛国会の観があります。私はここで第一の質問をいたします。今、政府はその有するあらゆる権力を以て、或いは予算に、或いは法律に、或いは条約に、あらゆる権力を動員して防衛の増強をしておる。併し、翻つてその理由を考えるときに、私は幾つも聞かなければならんことがある。昨日木村長官は自衛隊法並びに防衛庁設置法、この法案の説明に対して頗る簡単に、内外の情勢から自衛力の増強を図る必要がある。ただそれだけ言つておる。私は甚だこれは不十分である。一体内外の情勢と簡単に言うけれども、今我が国の現情はどう考えておられるのか。私は非常に特別の理由がなければ、今政府がこんなときに防衛力の増強をあらゆる角度より図るということは、それは非常に無理だと思う。私は今、日本の国内情勢を先ず見なければならんと思う。昨年下半期以来、我が国の財政経済は急角度に悪化したように見える。吉田首相は昨年末突如として一兆予算を提唱した。大蔵大臣はその意を体して緊縮予算を組んだ。そうしてこの議会に緊縮予算を説明し、国民に耐乏を求めて来た。一体緊縮予算を作るといのは何のためだ、言うまでもなくインフレ抑圧のためだ。然るにインフレ抑圧のために緊縮予算を組みながら、インフレの最も大きな原因である防衛に力を入れるのだ。ほかの生産の経費民生安定の経費を削つてまで防衛費に力を入れるのだということは、非常な矛盾であると思います。(拍手)この矛盾に対して、何かそこに特別の理由があるにきまつておると私は思う。その理由を聞きたいのです。又、一体緊縮予算を作るときには、政府は国民に非常な親切な態度でなければならん。緊縮予算は言うまでもなくデフレ傾向を表わす、失業者は続出するわけだ。飢餓線上に坊彷徨する者もたくさん現われる。これらに対して政府は緊縮予算を編成し、これを実行するに当つては十分な用意と覚悟とを要する。即ち社会政策的の経費、社会保障的の経費を十分に用意して当るべきである。然るに政府はこの社会政策的面においては平年度並みであり、特に力を入れておらん。特に力を入れておるのは、先ほど申したように防衛費である。私は緊縮予算を組んでおる政府として、かくのごときことは甚だ国民に不親切であると思う。それでも政府はこれを押切つて、防衛のために大分大いなる増強の態勢を整えんとしている。即ち政府は政府の有するあらゆる権力、条約の権力、法律の権力、予算の権力を総動員して防衛態勢を今増強せんとしておる。それなら国際情勢が悪いか。私は日本の周囲の国際情勢は、朝鮮事変の終了後において漸次緊張が緩和しつつあるものと思う。それから或いは国際情勢と国内情勢との関係上、間接侵略の恐れありと言えば、私はこれに対しては現在我が国は保安隊、警察隊を持つており、そう心配したこともないと思う。又、万一外国より我が国に対する侵略が考えられるとするならば、それに対しては安保条約によつてアメリカの駐留軍がおる。かく考えて来ると、国際情勢も国内情勢も、今かくまでして防衛力増強に政府が当らなければならん理由はどこにあるか。私はこれを私自身想像すればわからんことはないが、私はこれを政府から聞きたいのです。こういうわけで国民には、弁財政経済の転換は無理だ、国際情勢の関係からそれまでの必要はないのだけれども、こういうわけでやるのだということを聞きたいのです。それを先ず開きたい。これは私は緒方副総理も御答弁願えると思う、この点を先ず聞きたい。  それから次の問題は、これは本当は総理でなければできないかも知れんけれども、先ず遠慮なく副総理より答えてもらいたい。その遠慮なくという意味は、私に対して遠慮なくでなく、総理に対して副総理は遠慮なく私に答えてもらいたい、こういう意味です。(「わかつた」と呼ぶ者あり、笑声、拍手)今日までの実情に防衛力を増強して来た首相は、もうここまで来て、軍備はいたしません、軍備はいたしません一点張りで過そうというのは私は無理だと思う。少くとも今日私の見るとこるでは、首相は防衛に関する政治的目標として、政治的目標として、将来軍備をやる考えですかということを明らかにしていいのです。その時期が来ている、こう私は思う。これを今聞きたい。私の言うことが或いは誤りかも知れん、或いは皮肉かも知れん。一体防衛についての今日までの吉田首相の足取り、今日までやつて来たことを、これを見ますと、私はこういう感じがするのです。財政経済について無計画を以て方針としているところの首相は、防衛については驚くべき計画性を持つている、こう私は思う。首相は軍備はやらない、軍備はやらないと言いなんがら、先ず最初は警察予備隊を設けてここに軍備への第一歩を踏み出した。併し警察では軍備へのおたまじやくしには少し物足らん、性質が違う。そこで警察という衣を脱ぎ捨てて一歩を進めて保安隊というあいまいなものを作り出した。(「足が出た」と呼ぶ者あり)ここでおたまじやくしまで漕ぎつけた。今度は大幅に一歩を進めて直接侵略に対し武力を用い得るところの自衛隊に変更した。いよいよ軍隊への最後の段階まで来たと私は思う。これを顧みると、警察予備隊から保安隊に、保安隊から自衛隊、一歩々々と軍隊に近寄るため用意周到なる態度、私はこを計画的と見る。私の誤りであろうか。或いは私の皮肉であろうか。否、私から言わせれば、首相の皮肉であると思う。(笑声)今回提出された自衛隊法、防衛庁設置法の構想を見るというと、実に堂々たる軍国調である。曰く国防会議、曰く統合幕僚会議、曰く云云、全く軍国調と言うべきである。このほか防衛予算は大幅に殖えている。人員も十六万五千に増している。今官界一帯に予算の緊縮と行政の整理とで肌寒い風が吹き寄せているときに、天下の春はまさに自衛隊に落ちたというような感じがする。今や、自衛隊はいよいよ実力ある部隊となりつつある。いつまでもいつまもで戦力なき云々などと言つてもおられないでしよう。いわんや今回はMSA援助協定を締結して軍事義務までも負担したではありませんか。ここまで来たら、少くともここで来たら吉田首相は、防衛に関する訪治の目標として将来軍備をやりますということを明瞭にすべきである。私自身自衛軍論者の一人である関係上、払えて首相に苦言を呈するわけであります。恐らく、恐らく首相は、私のこの質問に対して軍備の約束はいたさないことであろう。併しながら私はそういうことであるならば、実にその影響は深刻である。影響は悪いと私は思う。今二つ三つの影響を挙げて、そんな影響はあつてもかまわんと言うのか、それを一つお答えを願いたいと思う。今日常識は、吉田さんはあんなことを言つておるけれども、結局軍備はやるのだ、憲法は改正するんだというのが世の常識です。而もこれは国内だけじやない、国際的にも今日MSAの協定を結んだその反響を、諸外国の反響を御覧なさい。どこの国でも日本の軍備の前進として取扱つておる。それはMSA援助なるものは、それは主として軍事援助だから、従つて国際的の常識として今日日本が軍備を一歩進めたというのは、私は当然であろうと思う。国内的に見ても国内の常識、国際的に見ても軍備を吉田首相はやつておると思われる。それでもなおこの一点張りに、軍備はいたしませんと言うのなら、それは黒を白と言いくるめようというものだ。この頃黒を白と言うようなことは余りはやらん。吉田首相は、日本の大政治家である。今日は世界の政治家である。併しこの政治家吉田に対して、我が純情の日本の青年が、吉田首相の軍備に対する言行を如何に考えるだろうか。政治家というものはでたらめを言うものだと考える人が多い。私はこれは政治への不信であると思う。政治への不信だ。純情の青年の心をつかみ得ないような政治は、未来のなき政治になつてしまう。私はこれを一番心配するのだ。政治家吉田氏は国家のためにこの不信をなからしめてもらいたいと思う。これが悪影響の一つです。  それから次には、このままで行つたならば、自衛隊十六万五千に筋金は入らない。やれ自衛隊は憲法違反だ、或いはやれ自衛隊は、あれはアメリカから来た新鋭の武器を操縦する操縦隊に過ぎないのだ、将来軍隊にならないのだというようなことが言われておつたならば、自衛隊員はこれを如何に考えるだろうか。烈々たる士気が湧いて来るなどということは私はあり得ないと思う。昨年来どこからともなくいやな言葉が出た。恐らく政府筋かも知れんが、いやな言葉が湧いて来た。それは戦力なき軍隊という言葉だ。併しながら今日のままで推移して行くというと、私は魂なき軍隊が生れるのではないかと思う。これでは、十六万自衛隊に筋金は入りません。私の希望する軍隊は、平和のための軍隊です。戦争のための軍隊じやない、自衛のための軍隊です。侵略のための軍隊ではない。私は国民経済の許すときに、その許す範囲において軍隊を持つこと、それは独立国当然の権利であり、同時に義務である。それでこそ我が国は自由諸国家群の一員として名誉ある独立国となり得るのではないか。何を軍隊を持つことを恥じるのか。私は首相の従来の態度は誠に了解に苦しむ。魂の入らない自衛隊などを作つてもらいたくない。私はどうか将来の政治目標としての、吉田首相の軍備を持つということの言明を是非もらいたい。  以上を以て首相に対する私の質問を終りまして、次に私は保安庁長官にお尋ねをする。昨日保安庁長官は、この大きな両法案の説明を至極簡単に片付けられた。非常に私は残念に思う。最も国会において大きな問題であると思つておる憲法問題にこの説明は触れておらん。私はこれを甚だ遺憾に思う。  私はそれで先ず第一に、憲法と自衛隊法との関係について聞きたいのであります。政府は自衛隊は憲法に禁ずる戦力でないということを言つておる。どういう意味で戦力でないと言うのか。その意味を明らかにしてもらいたい。或いは従来のごとき政府の解釈で言つておるのか、或いは改進党のいわゆる清瀬理論に基いておるのか。戦力でないということをどういう観念からとられるのか、それを説明してもらいたい。申すまでもなく保安隊は非常事態に対して治安維持を目的とするところの警察的の任務が主である。ところが今度の自衛隊は外部よりの武力攻撃に対し武力を以て対抗し、そうして我が国を守る軍隊的なものである。それでもこれが戦力でないというのは、自衛権としては我が国は戦力を持てるという意味、即ち改進党のいわゆるその意味であるのか、或いはまだ戦力そのものでないと、こう言うのか。それを一つ、この壇上よりはつきりとして頂きたいのであります。  次に、憲法に関する二つの点についてなおお尋ねするが、自衛隊法八十八条の武力行使、それが憲法第九条の一項、つまり放棄せられた国際紛争の解決の手段としての武力行使とならない場合と、なる場合があると思うが、どういう工合にこれを考えておられるのか。  それから次は、自衛隊法八十八条の武力行使が、憲法第九条第二項において禁じられた交戦権の行使となる場合と、ならない場合があると思う。これについて、はつきりとした御説明を願いたい。  それから次には、私はこれは保安庁長官の立法的の政治論を聞きたい。  第一は、自衛隊の性格をどう考え作られたか、これを聞きたい。次には、自衛隊の指導精神をどう考えてこの立法を作られたか、それを、聞きたい。それから政治優先と自衛隊、どういう考えでこれを、この立法をせられたか。自衛隊法に触れつつ長官の政治論を伺いたい。  それからなお私がお伺いしたいのは、自衛隊の自主性確保の問題、アメリカの隷属の軍だとよく言われるが、私はそんなことはないと思う。併しアメリカ軍と肩を並べて共同動作をすることがあろうと思う。どうしてこの自主性を確保するか。あらかじめ協定を結ぶ考えであるかどうか。  それから防衛出動の場合に、国民に対して、私の見るところでは、非常事態の布告というものをなすべきじやないか。自衛隊は国民の協力を受けなければならん。国民は又、防衛出勤のあるがごとき国家情勢に対してその非常事態を認識しなければならん。然るにこれに対してどういうように考らておられるのか。法の上には現われておらない。  もう一つ私が心配するのは、自衛隊は国内法上の軍隊でない。そのために国際法上不利の取扱いを受けることなきや。即ち外国の軍艦が我が自衛艦を臨検したり、或いは拿捕したり、或いは自衛隊員が捕虜になつた場合に軍人としての取扱を受けないというような不利がありはしないか、その結果が遂に我が国威を傷付けるがごときことがあつてはならない、こう思う。  以上の諸点につきまして、それぞれ総理に代つて副総理、なお他は保安庁長官より御答弁を願いたい。  以上を以て私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
  11. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  防衛力を、或いは自衛隊を漸増する理由がどこにあるのかという御質問と承わりましたが、政治の基調が国民生活の安定及び充実にあることは申すまでもないのであります。政府が防衛力の漸増を唱えておる一つの理由もそこにあるのであります。併しながら、同時に日米安全保障条約によりまして、防衛力をだんだん国力の許す限り増して行く、これは条約上の義務ではありませんが、一つの道徳上の義務になつておる。従いまして国民生活の安定、充実を図りますると同時に、この義務もやはり果して行かなければならんと考えます。のみならず、独立した国といしましては、いつまでも日米安全保障条約に依頼して、国の防衛を他国の力に依頼しておることは、これは国としてとるべき態度でない。やはりみずからの手によつてみずからの防衛に当るということが、独立国としては当然の体制であり、又一つの大きな国務で上るとすら考えるのであります。その意味におきまして政府は、国力の許す範囲におきまして、又憲法の範囲におきまして、国力の漸増を企てておる次第であります。この点は十分に廣瀬さんにおいても御了承頂けることだと考えます。  それから憲法の問題でありまするが、政府といたしましても、現行の憲法を万代不易なものとは決して考えておりません。この憲法の前文或いは第九条に謳つておりまするところの、無防備の理想と申しまするか、平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼して、日本の防衛力を持たない境涯に至りたい。これは一つの日本の理想でありまして、平和の理想郷に対する悲願でありまするけれども、世界の現実は非常にこれと異なつておる。それだけに今日の現実に処する憲法といたしましては、必ずしもこの憲法が完全なものでないということも考えられるのであります。併しながら、憲法は国家の基本法でありまして、国として一日も憲法がないわけに行かない。若し現行の憲法に不完全の点があり、これは改正すべきものであるということになりましたならば、そうして国民の遵法の精神がかき乱されましたならば、国の秩序というものは保たれない。政府といたしましては、現行の憲法が不完全であるという立場はとりたくない。又とるべきではない。この憲法に対する立場は、これは私から申せば、識者はすでに十分了解されることでありまして、この憲法を改正しないということを言うのはけしからんではないか。憲法を改正するということを政府は宣言すべきでないかということは、私を以て言わしめるならば、むしろ不必要な論議であると考える。現に憲法の調査を与党を通してやつております。この事実によりまして御了承頂けるものと考えます。  それから戦力に至らざる防衛力、そういうあいまいなことを言わずに、何故に軍備をするということを言わないかという御趣旨のように承わりましたが、憲法は現に戦力を禁止いたしておる。その下におきましては、戦力に至らざる防衛力を国の必要から持つことは、これは当然である。今の御議論は、私はやはり不可能なことを御要講になつておるのだと考えます。  以上、お答えといたします。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
  12. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  先ず戦力問題についてであります。政府は、常にこの点については客観説をとつておるのであります。いわゆる芦田理論と申しましようか、その人たちのいわゆる主観説はとつておりません。即ち主観説によりますると、自衛のためなら戦力を用い得るのではないか。これは有力な議論があります。いわゆる京都大学の名誉教授の佐々木博士のごときはその説をとつておるのであります。併し、現政府はその説をとらないのであります。いわゆる自衛のためといえども、如何なる任務、目的のためといえども、戦力に至らざる程度のもので初めて用い得るのだ、こういう、理論をとつておるのであります。而して自衛隊は未だ戦力に至らざるものであるから、従つて何ら憲法に違反しない。こういう理論をとつておるのであります。  次に、自衛隊法八十八条の武力行使の問唐でありますが、御承知の通り武力行使は緊急やむを得ざる場合、即ち外部の侵略が目睫に迫つて、日本が危険に陥つた場合初めて行使するのであります。いわゆる国と国の間の紛争を解決するために用いるものではないのであります。従つていわゆる八十八条の武力行使は、国際紛争解決の手段としての武力行使とは、その性質、範囲か全然異なることを御承知願いたいのであります。  次に、自衛隊の性格問題でありますが、いわゆる保安隊は我が国の平和と秩序を維持する、即ち国内問題を処理するために作られたものでありまするが、自衛隊はいわゆる外部からの不当な侵略に対して対処し得るように規定しております。と同時に又国内の秩序維持のためにも行動するようになつておるのであります。両面を持つておるということを御承知願いたいのであります。而してこの自衛隊が外部からの不当な侵略に対して対処し得ることになりますると、おのずからその性格が変るのは当然でありまして、隊員に対してもいわゆるその指導方針においては十分にその点を理解せしめることにしております。五十二条の規定然りであります。即ち自衛隊員は、我が国の平和と独立を任務とする尊き職務を持つておるということを指導方針にいたしておるのであります。十分に五十二条を一つお読み下されば、指導方針がどこにあるかということが御承知頂けることと考えます。  次に、いわゆる政治優先の問題であります。私は廣獺君と同じように、政治は軍事に優先すべきものであるという考えを持つておるのであります。これでなくてはなりません。かるが故に今度の防衛庁設置法案においては、この点を十分に確立することに腐心しておるのであります。即ち最高の指揮権は、内閣を代表する内閣の首長である総理大臣が持つておるのであります。而して国防に関する重要事項について、且つ出動の可否については、これを国防会議に委ね、この諮問を得て初めて総理大臣が命令を出すということにしておるのであります。なお、内部の機構といたしまして、参事官制度を設けまして、いわゆる長官を補佐するこの制度によつて、私はいわゆる政治が軍事に優先する、この建前を堅持して行きたい。こう考えておる次第であります。  次に、交戦権の問題でありまするが、交戦権は要するに交戦国として普通有する国際法上の権利を指すのでありまして、戦う権利を言うのではありません。従いまして自衛隊が行動する場合において、交戦権が行使できない場合に多少の不便はあります。即ち永世中立国家の船を臨検し或いは拿捕するというような権利は持つていないことは当然であります。従いましてこの点において不便を感ずることはやむを得ないと考えております。併しながら不幸にして我が国の自衛艦は外部からの不当の侵略或いは攻撃を受けた場合につきましては、もとよりいわゆる正当防衛権を以ちまして、これに対処することは当然であるということを御承知を願いたい次第であります。(拍手)    〔廣瀬久忠君発言の許可を求む〕 ○議長(河井彌八号)廣瀬君。    〔廣瀬久忠君登壇、拍手〕
  13. 廣瀬久忠

    ○廣瀬久忠君 緒方副総理は私の述べたことを少し誤解しておる。私は自衛力の漸増は当然であると思うが、今年のような年に、緊縮予算を組んでインフレを抑えるというような年に、それかも国際情勢がかく緩和しておるときに、自衛力の漸増の範囲を逸脱しておりますこの二法案を出し、予算を出し、MSAを締結しておる。漸増ではない。画期的の増加を図つた。それには特別の理由があるのだ。それは言わないからいけない。私はそれを言つてもらいたい。これはアメリカとの関係において、MSAの、つまり援助協定を結ぶために、これだけのことをやらなければならないと私は思う。私はそれは悪くないと思う。それをやるべきだ。先ほど自由党の植竹君が言つた通りに、私はアメリカと防衛協定を結んで、それと相伴つて我が国の自衛力を増強すべきだと思うのです。それは正しいと思うのです。それを何で遠慮するのか。私はその意味がわからん。私は日本はどこまでも国際協調で行かなければならん。協調を隷属などと言うのは大きな間違いだ。自主、而して協調。これができないはずはない。今MSA協定を結ぶことは協調なんだ。同時に自衛隊法を作るのは自主なんです。自主と協調を以て進むべきで、それをなんで、MSA協定を結ぶためにと、我が国は、国家の生命、将来のためMSA協定を結んで自衛隊の増員をするのだと、なぜ言わないか。それが私の甚だ遺憾とするところであります。かくの、ごとき態度で臨まなければ、我が国の国際的の政治問題、賠償問題でも、国際的な経済問題、外資導入問題、貿易問題でも解決ができない。私は自主と協調とが相伴つて進むことこそ国策の向うべきところだと思う。政府はそういう点において甚だ臆病過ぎる。再軍備問題についてもそうだ。再軍備問題についてもやろうと、やつぱり言わない。憲法があるから。それは私も今憲法に違反することをやれと言つているのではない。将来の政治目標として、将来の再軍備を約束するのに何が悪いか。それだけのことをやらないのは、私は国民の向うところを迷わせると思う。先ほど輿論指導の議論があつたが、この態度で進むのでなければ、輿論の指導なんかできません。  どうか、以上に対する政府の所見を改めて伺いたい。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
  14. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) 重ねてお答えをいたしまするが、今回の自衛力の増強につきましては、MSAの関係から増強したものではございません。これは、はつきり申上げまするが、日本として自主的に考えまして、国力を考え憲法関係も考えまして、この結論になつたものでありましてその点は誤解のないようにお願いをいたしたい。  それから保安庁法の改正は、これは前国会当時から、直接侵略にも防衛に当るという方針をとつて参りまして、そのために三党の間の協定を進めて、この結論に至つたのでありまして、これもMSAの関係から、この結論に追い込まれたというようなことはございません。(拍手)     ―――――――――――――
  15. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 矢嶋三義君。    〔矢嶋三義君登壇、拍手〕
  16. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 終戦後十年に満たずして、恐るべき法案が提出され、恐るべき発言がなされるに至りました。私は日本社会党を代表いたしまして、二法案に関し、吉田総理大臣以下関係各大臣に若干の質問を試みんとするものであります。質問に先立ちまして、国会に臨まれる政府の心構えについて反省を促し、強く善処かた自力全野党派を代表いたしましていたすものであります。  本重要法律案を本会議に上程し、質問することを予定いたしまして以来、総理の出席がないために、すでに一週間を経過いたしました。本法律案は極めて重要なものであると同時に、更に我々が吉田総理の出席を要望したゆえんというものは、吉田総理の現内閣における専制的存在、この点にあるのでございます。私は信じませんが、世間の人は吉田総理の下にはお茶坊主がいると言つているのでございます。従つてこれらの重要法律案については、総理みずからこの壇上から答えるべきであり、又その必要があるが故に我々は要望して参つたのでございます。従来重要法律案の審議の渋滞或いは国会混乱の原因は、総理の国会に出席をしないということが常に原因となつておるのでございます。独立前においては総理は渉外事務に名をかり、独立後においては、いわゆる所労を理由として国会を無視して参りました。先般の教育二重要法案の審議に当りましても、病重く当分登院できないと申しながら、その翌日には衆議院に登院いたしておるのでございます。勿論このたび診断書が提出されておりますし、それらの診断書を我々は否定するものではございませんが、併しながら総理は大磯にこもり、外遊の打合せと準備おさおさ怠りないのでございます。従来の行為から国会出席に関する積極的意思のない点につきましては、我々は容赦することはできません。総理の我儘は天下周知の事実でありまして、かくのごときことを許容して参りました与党の責任は極めて重大である。国会においてもその責任の一端があると考えるのでございます。違憲の疑点濃き、而も国家、民族にとり極めて重大な本法律案を審議するに当つて総理の不出席のままこの審議を続けるということは、国会の権威上誠に遺憾極まりないことであつて国民の負託に応えるゆえんでないと思うのでございます。吉田総理以下政府委員がその心構えを改めない限り、今後の法案審議は重大支障を来たす虞れがあることを警告し、政府を代表して緒方副総理の御所見をお伺いしておきます。(拍手)  さて、質問に入りまして、世界の情勢が東に西に緊張緩和の方向にあるこの世界情勢に逆行して、日本を取巻くアジア諸国の警戒心を必要以上に刺激するがごとき再軍備への途を、国民を目隠しにして政府は引きずつているのであります。経済力を無視し、米国から押しつけられた耐乏再軍備方針の推進のために、農民、中小企業者、市民等、勤労階級は犠牲を強要され、社会保障政策は、進展はおろか、実質的後退を来たし、教育の機会均等も看板倒れとなり、春秋に富む学徒諸君は学費不如意の故に向学心を満たされず、又、荒廃のまま放置された山河に住む国民は、常に自然の暴威の前にさらされ、生命財産を脅かされ、戦々兢々として生への営みを細々と続けているのが実情であるのであります。原子兵器を主体とし、陸上兵力を成るべく引揚げて、極東諸国にその負担を担わせるというアメリカの新らしい極東戦略配備は、着々と実行に移されており、その立場から割出された日本再軍備の要求は極めて強いのでありまして、その要求に屈し、MSA受入れによる防衛力増強の具体的措置として吉田内閣がとられたのが、この二法案でありまして、日本農村青年を目標とした陸上自衛隊に重点を置くものであります。何が故に、かくも国民を犠牲にし、米国の強要に屈して、自主性なき米国の傭兵を創設されようとするのか。国民には納得できません。日本人吉田総理の見解を承わりたいのが質問の第一点であります。  次に私は防衛力の問題について、政府並びに吉田総理が国民に対して本日までとり来たつた欺騰的且つ秘密主美的な態度について、この際、国民に陳謝し、真実を国民に披瀝すべきであり、その政治的責任を問わんとするのであります。顧みまするに、吉田総理は、昭和二十五年七月二十六日、宏院の本会議で次のごとく発言しております。「朝鮮問題の進展は我が国の治安の上に大きな不安を与えているので、警察力増強による治安維持のために警察予備隊を設けるが、再軍備するつもりは全くない」と述べて以来、六日までみずから口が酸つぱくなるというほど再軍備しないと公約して参つたのであります。更に岡崎担当国務大臣は、二十五年八月十四日、「世上やや、アメリカの通信等によりまして、これが再軍備の始めになるんじやないかというふうに言われております関係上、そういうことでは決してないのであるということを強くいたしたいと思つております」との国会における答弁の下に、当時七万五千人の警察予備隊が発足したのであります。続いて昭和二十七年四月二十八日、平和条約、日米中保条約、日米行政協定が発効したのでありますが、当時の第十三回国会に保安庁法を政府は提出して参りました。当時我々は、保安庁法は、日米安全但障条約の前文にある、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のために漸増的にみずから責任を負うことを期待するとの条文に従つて、政府が防衛力の増強、更には再軍備の意図に基いて保安庁法を提案したものと断じ、追及したところ、政府は、独立後の機構改革の一環として取り上げたものであつて、保安隊、警備隊は、国家地方警察及び自治体警察の警察力を補うことを目的とする警察予備隊の性格を何ら変えるものでないと強弁する一方、法案審議の当初から、政府はひそかにフリゲート艦等の貸与方を米国側と交渉していたのであります。その後、十五国会で、我々の反対を押し切つて船舶貸出協定を成立せしめ、再軍備しない、保安隊は増強しないと答弁しながらも、隊員は約十六万四千名とならんとし、その間、関係経費を含め約五千五百億円の国賓支出をいたしたのであります。更に昨年秋、国会開会中に、我が国会をつんぼ桟敷に置き、総理は自分の個人特使池田勇人氏をして日本の国防の問題を他国の首都ワシントンで米国首脳者と協議させたもので、その結果が、MSA協定、更に本日の二法案と相成つて参つたことは、明々白々たることでありまして、この法案は、軍機秘密保護法制定、集団安全保障義務に基く海外出動、再軍備徴兵制度実施、太平洋軍事同盟締結等に通ずるレールの敷設の役割を果すものとなると申したからとて、良心と責任を以てこれを否定し得る人が幾人ございましよう。政府は依然として、戦力でない、再軍備しない、憲法違反でないと、詭弁を弄しておるのであります。事ここに至りましては、怒髪天を衝くとも足らざるものを感じます。本日までとり来つたその欺瞞的態度を国民に陳謝し、その公約したる政策の変更を来たしたる今日、潔くその政治的責任を明確にすべきと考えますが、吉田総理、岡崎外相、木村長官の答弁を求めます。  次に、質問の第三点として、自衛隊の軍隊的性格並びに外敵対抗と憲法との関係についてお伺いします。木村長官は二十八年七月十八日、衆議院外務委員会で、MSAの義務を受諾すれば保安隊の性格は変り得ると述べておられるのでありますが、我が国に対するMSA援助は明らかに軍事援助であります。その受諾の必要条件として生れた自衛隊は、政府が従来強弁して参りました保安隊、警備隊の警察的性格を、軍隊としての性格へと質的変化を来たしたと断定するものであります。警察予備隊令の第一条には、「目的」として、「わが国の平和と秩序を維持し、公共の福祉を保障するのに必要な限度内で、国家地方警察及び自治体警察の警察力を補うため」云々と述べられ、保安庁法の四条「任務」の項には、「わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する」云々と謳われております。然るにこのたびの自衛隊法第三条には「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、」云々と述べられ、国内治安維持から外敵対抗へと一大飛躍をいたしておるのであります。更に、新たに航空幕僚監部を設け、三軍均衡方式をとり、統合幕僚会議を設けて統合調整を図ることとし、自衛隊員の退職制限を設け、旧予備役制度に匹敵する予備自衛官制度を創設しているのであります。更に、自衛官の階級呼称は、陸海空それぞれ別個に、陸将、陸佐、陸尉、陸曹の形態をとり、曾つての軍隊のそれと何ら異なるところはありませんし、保安庁法における船舶、船隊の活字は、それぞれ艦、艦隊と置き替えられたのであります。更に、防衛出動時の権限強化を図り、百三条には「自衛隊の任務遂行上必要があると認めるときは、病院、診療所その他政令で定める施設を管理し、土地、家屋若しくは物資を使用し、物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対して、その取扱う物資の保管を命じ、又は物資を収用することができる。」と規定され、保安庁法による命令出動違反の刑罰量三年以下の懲役又は禁固は、自衛隊法による防衛出動時には、これが七年以下の懲役又は禁固と、罰則が極めて強化整備されたのでおります。更に委託学生制度或いは少年自衛隊制度とも申すべき中堅幹部養成制度の創設等、全く軍隊として組織化され、装備され、訓練され、行動することに相成つたのが自衛隊であります。かくのごとく、外敵対抗を目的として組織され、その目的のために訓練される勢力は、学説によつても、国際的通念によつても、軍隊であり、その保持と、外敵に対する武力行使による行動は戦闘であり、明らかに憲法第九条に違反するものと断ぜざるを得ないのであります。衆議院における最近の政府答弁は、「直接侵略に対する武力行使は、国際紛争解決手段としての武力行使でないから、違憲にあらず」としておりますが、然りとすれば、国際紛争でない直接侵略に対する自衛のためには戦力が保持できると憲法第九条第二項は解されることになるのでありますが、政府の従来とり来たつた、自衛のためにも戦力の保持はできないという解釈を変更されたのかどうか。以上の点について吉田、岡崎、木村、各大臣の答弁を求めるものであります。  質問の第四点は、従来の政府答弁は、自衛隊の違憲性をみずから立証するものであることを指摘し、厚顔無責任にも、それらを無視して提案し来たつた政府の所見と責任を、吉田総理並びに木村長官に質さんとするものであります。  吉田総理は昭和二十一年六月二十八日、衆議院本会議において野坂議員の質問に対し、「戦争放棄に関する憲法草案の条項におきまして、国家正当防衛権による戦争は正当なりとせられるようであるが、私はかくのごときことを認むることが有害であると思うのであります。近年の戦争は多くは国家防衛権の名において行われたことは顕著なる事実であります。故に正当防衛権を認めることが、たまたま戦争を誘発するゆえんであると思うのであります」と答弁し、更に同月二十六日、衆議院本会議で、原議員の質問には、「第九条第二項において一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、又交戦権も放棄したものであります。従来、近年の戦争は多く自衛隊の名において戦われたのであります。満州事変然り、大東亜戦争又然り」云々と答えておられるのであります。自衛権の発動として、外敵に対し武力行使に出ることを主目的とする自衛隊は、以上の総理の見解を以てしても明らかに違憲ではありませんか。  更に当時の大橋担当国務大臣は、同年六月六日、当院内閣委員会で次のごとく述べております。「外敵対抗の意図を有する部隊、対外的な意図を以て設けられた部隊は、近代戦遂行能力に達しなくても違憲である」と言明され、同日更に、「相手国が日本の憲法に関係なしに、宣戦布告して、武力攻撃をして来た場合、日本側が受けて立つことは憲法上禁止されておりまするし、又そうしたことはなすべきでなく、米駐留軍の行動に待つという態度をとるべきと思うのであります」と、答弁されております。  更に木村国務大臣は、二十七年三月十日、「外敵と戦うという段階に至るかどうかに私は判断の基礎を置いております。これを一たび外敵と戦い得る編成と装備を持つに至りますれば、無論、第九条第二項の戦力として、あらかじめ憲法改正の必要があると考えるのであります」と、答弁されているのであります。これらはいずれも自衛隊は違憲なりとの十分なる説明ではありませんか。何事でありますか。国民を欺瞞するにもほどがあります。先ほど副総理は、国会論議の権威ということを申されましたが、如何でありますか。(拍手)国務大臣の答弁は私の答弁でありますと常々申される吉田総理の下における内閣が、みずからの答弁で違憲であることを立証される本法案を上程されたことは、国会における答弁に対して一片の責任感なく、国会軽視も極まれりと申さなければなりません。私はその政治責任を追及するものであります政治は二法案を撤回するか、潔く引責総辞職するか、いずれかの途を選ぶべきであると考えるのでありますが、良心に従つての答弁を求めます。(拍手)  そもそも本法案は、現行憲法下で自衛のための戦力保持ができるという見解に立つ改進党の意見が、二法案の立案交渉の過程において政府与党を圧して成案が得られたことは、天下周知のことであります。保安庁法審議の当時、本会議場で違憲立法なりと断じ、反対討論をなし、反対投票された改進党の憲法解釈の便宜主義的豹変はともかくとして、政府の従来の答弁に照して著しく矛盾を来たす二法案は、憲法違反であり、又政府の道義に欠けた政治責任を断固として追求せざるを得ないのであります。若し政府において撤回せざる場合においては、本院としては違憲法案審議の疑義を、先ず徹底的に解明せざるを得ないことに相成りましよう。  更に、大達文相にお伺いしますが、文部省発行にかかる「あたらしい憲法のはなし」なる中学生用教科書には、戦力不保持の解釈として「兵隊も軍艦も、飛行機も、およそ戦争をするためのものは一切持たないということです」と書かれておるのであります。即ち攻撃目的にせよ、自衛目的にせよ、対外的な対抗の意図を持つた武力は、名目の如何にかかわらず、これを保持しないという解釈を教示しておるのであります。文部省発行の教科書の解釈から明らかに違憲である本法案に養成された大達文相の責任を明確にして頂きたいのであります。  質問の第六点は、海外派兵の問題であります。日米安全保障条約において防衛力漸増の責任を期待され、更に日米相互防衛援助協定で防衛力の増強、国際緊張の原因除去についての強力、更に自由世界の防衛力の発展及び維持への寄与等を義務付けられたのであります。更に平和条約第五条(a)項の(iii)には、「国際連合が憲章に従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、」と謳われており、日米間の行政協定二十四条には、「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」とあります。直接侵略に備える自衛隊が、直接侵略の根源を絶つ自衛行動の名の下に国外に自衛隊が派せられ、米軍の隷属下に置かれる危険性は極めて大と申さねばなりません。米軍は歴戦に輝く筋金の入つた純精鋭軍隊であります。共同作戦時の指揮権さえ明確でないだけに、事態発生の場合、自衛隊が引きずり廻される不安は絶対否定できないのであります。武力行使を公然と認められた防衛出動が、国際的な紛争に巻き込まれないと誰が保証できますか。私の理解しがたい点は、日米相互防衛援助協定では、それぞれの自国にとつては当然過ぎるほど明確な憲法上のことに関し、第九条にわざわざ「この協定は、各政府がそれぞれ自国の憲法上の規定に従つて実施するものとする。」と規定しているのでありますが、海外派兵の禁止条項を設けて国民の不安解消に何が故に応えなかつたのか。これらの点に関し岡崎外相、木村長官の答弁を求めます。  質問の第七点として、吉田総理、木村長官、小笠原蔵相に防衛計画の問題についてお尋ねいたします  吉田総理は曾つて中途半端な再軍備は共産党に乗ぜられるのみで、有害であると国会で述べられております。防衛計画は基礎的な軍事戦略と、経済財政の防衛費負担能力に対する見通しの下に樹立されるでありましようが、国民大衆は防衛創設費並びに維持費の増大化による生活への圧迫を極度に懸念いたしております。日本国民に語らずとも、MSA交渉の段階において、我が国の長期防衛計画について米国側と協議し、一応の目標を樹立したことは明白でありましよう、又保守三派の了解線というものを伝えております。これらと関連し、総理は近く憲法改正、再軍備の決意を持つていると思うのでありますが、その時期、規模、更にその日本経済への影響、国民の負担、生活水準への影響等、如何ように見通しを立て計画を持つておられるのでありますか。あたかも役牛のごとく、耐乏を強いられながらも、ここまでおいでここまでおいでといつたような、その都度増強政策では、国民大衆は吉田内閣の手で、どこまで連れて行かれるのか、又その背後にある米国は、どこまで連れて行かせ、何をさせようと考えているのかと、極めて大きな不安を持つのも当然かと考えられるのであります。その場逃れの答弁は絶対許されません。国民に代つて誠意ある真実の答弁を強く要求いたします。  質問の第八点は、内容についてお尋ねいたしますが、文官優位並びに統帥権の問題についてであります。政府は従来保安庁法第十六条の内局幹部の任用資格制限を以て、非民主的な部隊活動を抑制するためには、統制をとる中枢機関は制服職員であつてはならないと説明していたのでありますが、このたびの撤廃によつて、基本的方針の策定について、長官を補佐する参事官は少くとも大部分制服職員で占められるに至ることは明白で、更に防衛庁設置法案第十九条で、内部部局の職員として制服自衛官の勤務を許容しておりますので、文官優位の原則は破れ武官優位となることは必至で、内部部局の軍隊色を濃化するでありましよう。更に国防会議に伝えられるがごとく、学識経験者として旧軍人が構成員となつたあかつきには、政治の軍事に対する優先の原則が崩れ去ることは明白であります。統合幕僚会議は議長以下四人いずれも自衛官であり、更に官房長と五局長の大部分が自衛官となつた場合、それらに補佐される防衛庁長官が政変ごとにかわる国務大臣であつてみれば、最も軍国主義に徹した旧陸海空軍の佐官級を以て占めるこれら自衛官の集団の前にロボット化することは必至でありましよう。旧軍人を以て長官に充てたる場合においては、何をか言わんやであります。民主主義の歴史の浅い我が国においては、総理、長官が度重なる政変によるその地位の不安定と併せ考えるときに、技術的指揮は制服職員に任せるとしても、各幕僚監部並びに内局幹部に文官任命の規定を設けない限り、我が国は挙げて軍国主義化するでありましよう。一部旧軍人の自衛力増強論者の中には、憲法を改正し、天皇を国家元首として統帥権を所属させようとの意見もあるやに聞くのでありますが、危険極まりないことと考えるものであります。今後首相は、与党の総裁であり、総理大臣であり、更に自衛隊の最高指揮監督者となり、行政権、統帥権の一切を掌握するに至るのであります。一たびワンマン的首相が実現せんか、これ又国家国民にとつては危険極まりないことと相成るのであります。その他裁専制を如何に抑制するか、国防会議の構成に関する構想並びに提案の時期とも併せ、これらの点について吉田松理、木村長官の御所見を承わりたいのであります。  次に、秘密保護条項について質問いたします。日米相互防衛援助協定第二条に基く秘密保護に関する立法を、MSA法による供与兵器の機密保持のみに限定しないで、防衛関係事項全般も拡大する考えあるやに聞くのであります。そもそも兵器の秘密保護は特定の兵器、その設計図、構造、性能を秘密として保護するもので、その範囲はできるだけ狭く局限すべきもので、無用の摩擦を国民の間に起してはならないのであります。言論報道の自由は勿論、必要以上に国民の自由を束縛する軍機の秘密保護法は、軍隊、戦力の存在を許さざる現憲法下では立法不能であることは明白であり、明らかに違憲であります。又政府の言うがごとき戦力に達せざるものに秘密保護の必要はないではありませんか。本村長官、伴藤法制局長官の御所見を承わります。  質問の第十点は、MSA援助との関係についてであります。政府はMSA援助期待額として、陸上、海上、航空等それぞれ計画を立てられ、更にそのほか極東諸国に対する貸与予定艦艇二十五隻中から十七、八隻の貸与を計算に入れておるようでありますが、米国側において、援助兵器施設等海空関係は渋つておると伝え聞くのでおりますが、その真否並びに理由如何なるものと考えられるか。若し然りとすれば、三軍均衡方式の防衛計画の変更、延いては予算の変更を必要とするものと予想されますが、これらの点に関し岡崎外相、木村長官の答弁を求めます。  最後に、沖縄、小笠原諸島返還の問題についてお尋ねいたします。曾つて外電は、日本の防衛方針がはつきりするまで原子力利用兵器置場として沖縄、小笠原諸島は米国が保持するであろうと伝えましたが、誠に恐るべき危険事であります。自衛隊創設の見返りとして島々が返還されるのではないかとも流布されておりますが、私は絶対かくのごときことは信ずることができません。返還の見通しと併せ岡崎外相の御所見を伺います。  以上、質問を展開して参りますと、自衛隊は内国の基本法たる憲法によりどころなき装備、訓練、行動等、独立国日本の自主性に欠けた軍隊であり、国民の基本的人権に制約を加え、その多くの国民の生活を圧迫し、外、近隣諸国に無用の刺激を与えることが痛感されるのであります。吉田総理は、昭和二十一年六月末会議場においてみずからなした日本国憲法の提案理由を心静かに再読玩味し、その進退を明確にされるべきであることを国民に代つて要望すると同時に、我々は国民に応える意味において、我々の国会の権威と良識の下に、この二法案の本国会の成立を絶対に阻止しなければならないという決意を有することを表明し、私の質問を終る次第であります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
  17. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  最初に、総理大臣の病気について御質問がありましたが、これは信用のある医師の診断書に書いてありまする通りのことでございまするので、完全野党でも、この点は御信用頂けるものと考えます。(「昨日までだつたのだ、診断書は」と呼ぶ者あり)  次に、憲法に対する態度でありまするが、現在の政府といたしましては、戦力は自衛のためにも持たないと、持つてはいけないと解釈をいたしております。又自衛権のはうの問題は、これは国として、独立国としてはおのずから存する固有の権利でありまして、国がある以上は、条約に先立つて、条約がなく、憲法がなくても、固有の自衛権が存在する。但し、この自衛権のためにも、憲法によりまして戦力は持たないという建前をとつております。  それからアメリカに防衛計画の長期計画を示したのではないか、それによつて今回の保安庁法の改正等ができたのではないかという御質疑に承わりましたが、そういう事実はございません。まだ長期計画というものもできておりません。従いまして御質疑の、再軍備になる時期がいつであるか、今の政府の称しておりまする戦力に至らざる防衛力が軍備に変る時期がいつであるか、はつきりした答弁をしろという御質疑でありましたが、この点につきましては、只今はつきりした御答弁をする時期に参つておりません。  それから今回の防衛庁設置法案によつて、従来の文官優位が覆えされたことは日本の憲法の精神に反する事態が生れたのではないかという御質疑でありまするが、私は政治が軍事に優位する、これは国として絶対に必要なことでありまして、今後といえども、国の運命を賭けて貫かなければならないことであると考えます。先般の太平洋戦争の勃発に至りました事情を検討いたしましても、この点は今後の憲法におきましてはどこまでも徹底さすべきであると考えます。併しながらこの政治の軍事に優位することと文官の優位ということとは、これは又別問題であると考えております。国防会議に旧軍人が入れば、この政治が軍事に優位することも崩れるのではないかというお尋ねでありましたが、今のところまだ国防会議の構成につきましては決定しておりません。これは法律できめることになつておりまして、今のところ決定しておりませんが、御説のように私はこれは旧軍人というような人が何らの資格なしに国防会議に入つて行くべきものではないと、さように考えます。  それから旧軍人が、今で言いますれば保安庁長官になつたような場合、これは非常な危険であり、いわゆる政治が軍事に優位する原則も崩れるのではないかという御質問でありましたが、今の憲法の建前では、国務大臣は文民でなくてはならんことになつておりまするし、又今日の保安庁長官、将来どういう名前に変るか知りませんが、その保安庁長官はこれは国務大臣が兼ねることになつておりまするので、従いましてその地位に旧軍人が就くことはあり得ないと考えております。  それから天皇が元首となり、統帥杷が天皇の手に握られるような事態になりはしないか、政府はそういうことを考えてはいないかという御質疑でありましたが、政府といたしましてはそういうことは少しも考えておりません。なお、総理大臣がその軍隊の最高指揮権を持つた場合のことについての御質疑に対しましては、先ほど私が答弁いたしましたので、この場合重ねてお答えを申上げません。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
  18. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 大体緒方副総理より答弁せられた通りでありまするが、ただ憲法の問題といたしまして一言触れておきたいのであります。憲法第九条第一項においては、国権の発動たる戦争と、武力の行使と武力の威嚇が、国際紛争解決の手段としてはこれを行使しない。こう書いてあります。決して自衛権を否定した規定ではないのであります。一国として自衛権を持つことは当然であります。どこの国といたしましても、自衛権のない国家はありません。自衛権の裏付けとして自衛力を持ち得ることは、これ又当然の事理であるのであります。ただ、憲法第九条二項において、戦力の保持を禁止されております。戦力に至らざる程度の自衛力を独立国として日本が持つことは当然であろうと考えておるのであります。  海外派遣の問題でありまするが、これは新らしい自衛隊法第七十六条に明らかに外部からの武力侵略攻撃のあつた場合に限定いたしております。このときにはじめて総理大臣は出動命令を出し得ることになつております。この出動命令を出すについても、これは原則として国会の事前承認を求めるのであります。国会が休会しておつて、国会の承認を得ることができないような場合には、次の国会で直ちに承認を求めるということになつております。これでチエツクされておりますから、海外派遣の問題などは起る余地がないと考えております。  それから制服と平服の問題でありますが、制服を一遍着た者が内局へ入れないというような、そういう禁札を掲げることはどうかと思うのです。現在旧軍人でない立派な者が制服を着ておるのであります。そういう者のうちに相当な能力あり。経験のある者が内局へ来られないということは、これはどうかと考えております。そこで内局からも立派な者は制服を着せ、制服を着た者も立派な者は内局に服させる、こういう建前をとりたい。ただ、制服を着たままで内局へ入ることはこれはよろしくない。だから制服を着たまま内属へ入ることはこれは許されないのであります。  ただ、一旦制服を着た者でも、優秀な者は内局へ入るという余地を作つてやろうというのが法律の趣旨であります。  それから三軍均衡方式の問題でありますが、これは理想論でありまして、只今の日本の国力ではさようなことに参ることはできません。  そこでアメリカとの間の船の問題でありますが、我々の希望する船が一体アメリカから贈与を受けるかどうかということについては、アメリカにも種種事情がありまするので、今折角交渉中でありまして、まだ結論は出ておりません。  それから秘密保護法でありますが、これは旧来の事情をよく私も在野法曹として承知しておるのであります。できるだけしぼらなければなりません。言論を抑圧するとか人権を無視するとかいうようなことがあつては相成りませんので、これはしぼるだけしぼる。国民に迷惑のかからないようにという慎重な態度を以ちまして今研究中で、一両日中に成案を得て国会の御審議を願う段取りになると考えております。(拍手)    〔国務大臣大達茂雄君登壇、拍手〕
  19. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 只今の矢嶋議員の御質問中に引合いに出されました「あたらしい憲法のはなし」という本は、昭和二十二年に文部省が編纂、発行して、二十六年に廃刊になつておる本であります。そのうちに軍備に関係する点の記述がありますが、これは中学生を対象として通俗的に記述せられたものだと存じます。勿論政府の憲法に対する公的解釈をそこで示したというものでないことは、これは言うまでもありません。さように御了承を願います。  それから、昨日この議場におきまして、私に対する質問がありました。この機会にその御質問に対する答弁が留保してありましたので、申上げたいと存じます。  第一は、秋山議員の御質問でありますが、これは新年度において児童数が百万人から増加をしておる。然るにこれに対して何らの財政措置が講じられていない。そのようなことを前提としておるお尋ねであります。これはすでに予算の上で明瞭でありますように、この増加児童数に見合うところの予算措置が講ぜられてあるのであります。そのように御了承願いたいと思います。  その次は、これが起因となつて全国的に混乱が起つておる。これに対してどう対処するつもりか。こういうことであります。これは私どものほうでも、実はこの百万人の児童致増加に対して措置が講じられていない、のみならず大幅な教育職員に対する首切りが行われると、かような、あられもない宣伝が盛んに行われたのであります。これが府県の当局までも多少の動揺を与えたことは事実のようであります。この点は全く虚構の事柄でありますから、これに関しましてはその誤解を解くために、自治庁並びに文部省連名で各地に通達を発しまして、誤解を避けることにいたしたのであります。  それから次は村尾議員の御質問でありました。その御質問は、昭和二十八年度の義務教育費国庫負担金において概略十億円くらいの不足が生ずる見込みと思われる。(「あとでやれ」「議長注意して下さい」と呼ぶ者あり)これはどういうことになるか、この不足に対してどういう始末をするか。こういう御趣旨であります。これは申上げるまでもなく現行義務教育費国庫負担法は実際支出額の二分の一を国庫において負担するということになつておるのであります。従つて決算において不足を生じました場合には、その決算に基いて半額が負担をせられるのであります。決してその半額をその以内において値切るというようなことはないのであります。  それからその次が加瀬議員の御質問であります。(「議事進行には、そういう申合せはなかつたはずだ、議長注意してもらいたいと呼ぶ者あり)この質問は一兆円予算で抑えてあるために教育費において非常にしわ寄せになつて非常に窮屈になつておる。こういうことでありますが、これも予算を御覧になればわかるように、さようなことはないのであります。(拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手〕
  20. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 防衛計画に伴う財政経済、国民生活についての見通しはどうかというお尋ねでございましたが、政府は自衛力漸増に一歩を進める建前の下に二十九年度予算案においても百四十億の防衛関係費を増額したのでありますが、防衛予算の計上については国民生活に圧迫を加えないよう、又国力の回復に応じて漸進的に行うべきものと考えておるのでありまして、従つて将来ともいわゆる漸増計画の進展によりまして、我が国の財政経済、国民生活等に圧迫を加えるようなことはないと確信いたしております。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕
  21. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 最近の国際情勢は、その緊張緩和の方向に向いておることは事実でありまするけれども、さりとて国として防衛力の増強を怠つてよろしいというところまでは到底来ておらないと私は考えております。  この相互安全保障協定において憲法法に従つて行うという規定は入れておるが、海外派兵をしないという規定は入れていないのはどういうことかという御質問でございますが、このいわゆるMSAの協定は、要するにアメリカが援助を提供し、日本がこれを受けるということを根幹とする協定でありまして、海外に部隊を派遣するとかどうとかということは全くこれは協定の取扱うべき事項ではないのであります。従いまして、かかる事項を協定の中に入れることは誠に不自然で、適当であるとは思われません。然るに憲法の規定に従つて行うということは、これも必ずしも必要はないことでありまして、こういう規定がなくても政府は憲法の規定に従つて処理することは当然でありまするけれども、この種の規定は他の条約や協定にも例があるのでありまして、例えば条約の発効については各締約国の憲法の規定に基いてやる。こういうような言葉もありますので、念のため憲法の規定に従つて行うということを入れただけであります。  なお沖縄、小笠原島等の返還についての御質問でありますが、これらの諸島が将来必ず返還されるということは間違いないことでありますけれども、その時期等については未だ見通しは付いておりません。(拍手)    〔政府委員佐藤達夫君登壇、拍手〕
  22. 佐藤達夫

    ○政府委員(佐藤達夫君) 秘密保護法につきましては、先ほど木村長官からお答えいたしました通り、必要やむを得ざる限度にとどめるということは当然でありまして、その趣旨で私どものほうでも検討しております。  それからこの秘密保護法に関係して、或る向うから来る武器、即ち例えば高性能の武器などを持つことによつて戦力にならんかというような御疑問がありましたように拝聽いたしましたが、かねがね申上げておりますように、憲法に言つております戦力は、総合された力であります。言い換えれば装備編成された実力組織の全体についてこれを判定すべきものであることは憲法の趣旨から当然であろうと思うわけで、その意味か申しまして、一つ一つの武器というものは、これは戦力の確かに構成要素にはなりましようが、それ自体を以て戦力とは言い得ないものというふうに考えておるわけであります。    〔議長退席、副議長着席〕  従いまして、個々の武器と、これら受入れました形の自衛隊というものとのその総合された自衛隊の力は戦力になるかどうか、その問題になるわけでありまして、私どもといたしましては、この十何万程度の自衛隊がこれを受入れました形を想像いたしましても、到底戦力には達しないというふうに考えておるわけであります。(拍手、「詭弁長官」と呼ぶ者あり)    〔矢嶋三義君発言の許可を求む〕
  23. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 矢嶋君。    〔矢嶋三義君登壇、拍手〕
  24. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 只今緒方副総理以下関係大臣の答弁がありましたが、極めて不明確であり不十分な点がありますので、重ねてお尋ねいたします。  その第一は、私は少し、くどいくらい、この憲法制定国会以来本日までに至る政府の自衛力の問題、戦力の問題、憲法との関連の言質を元にして伺つたのであります。これは新聞記事でなくて、私は速記録を調べたものでございます。それらを私が先ほどくどいくらい申上げたわけでありますが、この見地から考えた場合に、政治的責任を感じないかということ、それほどこの議政壇上から国会論議の権威を口にされる緒方副総理以下関係大臣が国民に嘘をついてよろしいのかどうか。  具体的に私は重ねて伺いますが、大橋担当国務大臣が発言された「外敵対抗の意図を有する部隊、それから対外的な意図を以て設けられた部隊は、近代戦遂行能力に達しなくても違憲である。」こういうふうに吉田総理の下に答弁しておるじやございませんか。それではこのたび直接侵略に対抗することを目的として設けられた自衛隊は、明らかにこの大橋国務相の曾つての答弁速記録から言えば違憲ではありませんか。そういうことの何ら説明がなくて、こういう法律案を出すところに、政治的責任を感じ、法案を撤回するなり、総辞職するなりすべきであるということを私は伺つておるのでございます。  第二点について伺いたい点は、副総理は自衛のために戦力は保持できないというふうに曾つて吉田総理が発言された内容は変更していないという答弁があつたわけでございますが、併し、私は繰返してお伺いいたします。衆議院における答弁を私拝聽していますというと、こういうことを言つておるわけでございます。即ち外敵に対抗する、そのときに武力を使う、併しこれは外国が日本に直接侵略して来る、それを防ぐのだ、外敵に対抗するのだ、自衛だ、それに武力を使う、これは国際紛争を解決する手段でないから差支えない、こう言つておる。であるとすれば、憲法第九条の二項、前項の目的を達するため、戦力を保持しないとあるのであるから、だから直接侵略に対して武力を行使する、これは国際紛争でないからいいのだということになれば、直接侵略に対してこれに応ずるためには武力を持つていいという解釈に当然なるじやありませんか。これは国法解釈上の問題である。法律上から言つても明確にそうなる。即ち直接侵略に対して武力を行使することは国際紛争解決の手段でないから差支えないというこの解釈は、取りも直さず自衛のためには戦力を持つていいということを表明したと同様でございます。ここにも曾つての吉田総理以下の戦力保持に関するところのこの国会における答弁と、重大なる相違を来たしておるわけでございます。  それから次に国防会議に関連いたしまして、政治優先の問題でありますが、木村長官は政治優先は堅持される。こういうふうに答弁されておりますが、よく長官考えて頂きたい。陸上幕僚長、これは軍令軍政も扱います。あの目的の内容を見ますと、このようになつております。いわば陸軍大臣であります。同様に海上幕僚長、航空幕僚長、いずれも海軍大臣、航空大臣に匹敵するのである。その横に統合幕僚会議というものがあつて、そこに議長がおられる。これらの四人のかたは全部自衛官でございます。現在各保安隊或いは警備隊の幹部級は戦争中最も軍国主義に徹したところの大佐、中佐、或いは少将級の方々でございます。これらの方々が協議して、そうして長官、あなたを補佐されるわけですが、あなたは政変のたびに変る立場にあるわけです。而もあなたの基本的方針の策定について補佐するところの参事官八人、次長、官房長、部局長、ここにも制服職員が入つていいことになつている。今度撤廃したわけです。そうなりますと、長官の周囲はすべて軍国主義にこり固まつたところの自衛官ではありませんか。これで果して文官優位、政治優先の原則が堅持できますか。あなたがいつまでもこの防衛庁長官をしているのではないのですよ。吉田内閣が総辞職すれば、明日にもあなたはそのポストから去らなければならないのでございます。重ねてそれらについてお伺いいたしておきます。  それから、私ここで重ねてお伺いいたしたい点は、先ほど副総理は国会論議の権威ということを申されたのでありますが、私はその通りだと思うのです。余りにも国民の側からとれば嘘が多いと思うのでございます。先ほどMSAとこの防衛庁関係の法案は無関係だ、自衛隊の組織と無関係だ、曾つては保安庁法と平和条約、安保条約とは無関係である、誰がそんなことを信頼されますか。信じられますか。或いは先ほど文相が極めて不謹慎な発言をされました。子供に対しまして、戦争に必要な飛行機や軍艦、そういうものは一切持てないというふうなことを縷々述べております。その線に沿つて全国の先生方が教育をして来たのに、これは公的発表ではない云々ということを言つておりますが、国民を欺偏するにも程があると思うのであります。少し目を閉じて考えて御覧なさい。国民の側から見れば、海行かば造船疑獄、陸行かば陸運疑獄、里行かば日殖、保全疑獄、空行かば日航疑獄、こういうことを叫ぶかも知れません。(拍手)或いはNHKのとんち教室の青木先生が生徒さんに、国会とは、こういうふうに尋ねた際に、生徒は、国会とは嘘をまことらしく言葉巧みに言い廻す所なり。かくのごとく答えるようになつたならば一体その責任はどこにあるのでしようか。これは政治の不信であり、民主政治日本国参議権の障害となる最たるものであります。従つて私は総理以下関係大臣は、この議政壇上から議院を通じて国民にはつきりと発言し、或いは再軍備しない、こういう公約というものは確実に守らなければならない。若しそれが守れない段階に来たならば、いさぎよくその責任を国民の前に明らかにすべきであると私は確信いたすものであります。私はこの国家並びに民族の運命を左右するところの二つの重要法律案の質疑応答に当つて、大臣とこの壇上から言葉のやりとりをしようとするのじやございません。現在の我が国の置かれている情勢、それからここに打ち出されて参りましたこの二つの法律案の内容については、国民は極めて懸念いたしておるのであります。明確に国民の納得できるような説明をしなければならない。又国会議員として私はそれを要求いたす次第でございす。良心に誓つて誠意あるところの答弁を重ねて要求する次第であります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
  25. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。  私は決してでたらめなことを申上げておるのではないのであります。先ほど申上げました憲法の解釈は、今の吉田内閣の閣議としてきめた意見は、先ほど申上げましたように、自衛力を持つことは違憲ではない、戦力に至らざる自衛力を持つことは違憲ではないということを申上げたのであります。なおこの点につきましては、私は大橋法務総裁の当時の発言は存じておりませんから、足らんところは法制局長官からあとでお答えいたします。(「ちやんと言つた」「大橋大臣の答弁のじやない」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  26. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 御静粛に願います。
  27. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) (続) それから自衛のための、紛争解決の手段ではないから差支えないということが政府の答弁として新聞に現われておるやに御質疑がありましたが、新聞に載つておるところが、果して政府が申上げた通りであるかどうか。私は十分に新聞記事は見ておりません。でありまするが、それと今日我々が憲法の範囲内において持つものが、戦力であるかどうかということは、これは別問題であります。この直接侵略があつた場合に、日本の十分でない戦力に至らざる防衛力を以て米軍と共同作戦の上に防衛することもあり得るのでございます。私は新聞記事を十分に見ておりませんから、これで御満足が行くかどうかわかりませんが、これは、そういう場合であろうと私は想像いたします。  それから、将来再軍備をしないと言うものが、再軍備をした場合には責任を負うべきであると。これは私は、将来内閣が再軍備をする場合には、勿論国民の批判を経て、それは国際関係も変りますし、国の生命は一日もゆるがせにすることはできないのでありますから、政府が責任を持つて政策を変える場合は当然あり得る。但しその政策を変えることは、国民の批判、国民の判定なしにやることはできない。その意味におきまして必ず総選挙に問うて国民の批判を仰ぎます。そういう決意であります。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
  28. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  いわゆる政治は軍事に優先する建前をこの自衛隊法では堅持しております。それは内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を持つているのでありまして、これは明らかに七条で謳つております。そうして長官が内閣総理大臣の指揮監督権の下において更に幕僚長を指揮監督するのであります。幕僚長は勝手な行動に出ることはできません。又長官の命令を幕僚長が施行することになつておるのであります。長官が勝手な命令を出すことはできんことの建前を以て規定しておるのであります。ここで抑えております。従いまして計画、実施、すべて長官の承認を得なければ幕僚長はできないことになつておりまするから、この点において私は、いわゆる文官優位の建前は堅持されておると、こう考えております。そこでその内局の問題でございまするが、内局も決して、制服を着たまま自衛官が内局に入ることはできないのであります。(「その問題じやない、頭の問題だ」と呼ぶ者あり)入ろうと思えば制服を脱いで、そうして職員として内局に入つて来るのであります。これにおいて私は、いわゆる文官優位の建前は十分堅持できるものと、こう考えております。    〔政府委員佐藤達夫君登壇、拍手〕
  29. 佐藤達夫

    ○政府委員(佐藤達夫君) 大橋国務大臣の見解につきましては、先ほど緒方国務大臣からお答えしましたように、現内閣のことではございませんからいいようなものではございますけれども、(「そんなばかなことがあるか」と呼ぶ者あり)併し私は事実の関係でございますから、ここで明らかにいたしておきたいと思います。当時大橋国務大臣は、予備隊担当の国務大臣でありまして、先ほど緒方副総理は法務総裁とおつしやられました、これは思い違いであろうと思います。予備隊担当であつたと思います。これは三好さんの質問の関係で、たしかにそういうことを言われまして、ところがそのあとで当時の法務総裁木村さんが、我々が今申上げておるようなこの客観説を申上げたわけです。それが三好さんからちよつと矛盾がある、食い違いがあるんじやないかというようなことを指摘されまして、そして大橋国務大臣は、これは政府の法律解釈は、勿論法務総裁の解釈は権威あるものだから、自分の言つたことは、政府の当然の解釈であるかどうかということについては、法務総裁の答えを以て政府の答えと御了承願いたいということが速記録に出ておるわけでございますから、まあ内閣は違いましても、その当時から今の考え方とは変つておらないというわけでございます。(拍手)    〔矢嶋三義君発言の許可を求む〕
  30. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) あと一分あります。矢嶋三義君。    〔「文部大臣を呼べ」と呼ぶ者あり〕
  31. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 文部大臣は、矢嶋さんがよろしいとおつしやつたので帰しました。    〔矢嶋三義君登壇、拍手〕
  32. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 文部大臣の答弁はあとで承わることにして、重ねて伺います。  緒方副総理は、前内閣の責任は現在の吉田内閣では負えないと申されるのでありますか。現在の政治は政党政治でございます。自由党の与党によつて過去数年間、日本の政治というものがここにとられて参つたわけでございます。内閣の責任の座に就かれておつたのでございます。その自由党の総裁である吉田総理が発言されたこと、更にその当時吉田総理大臣が、各国務大臣の発言は私の発言でございますというように答弁して委員会でも常に対処されておつたのでございますが、その大臣の発言が、内閣が変つたならば、現内閣では責任をとらない。こういうふうに言われるのでありますか。私は重ねてお伺いいたします。  なお、佐藤法制局長官はここに立つていろいろと詭弁を弄しておりましたが、私も速記録を調べております。当時の木村法務総裁も、自分はこの憲法との関係は外敵に対抗するかしないかというところを基準において、外敵に対抗するように装備され編成されるように至るならば、明らかに憲法九条の違反であるということを、あなた自身も当時の法務総裁として答弁されておる。そういうふうに記録に残つておる。誠に詭弁を弄するも極まれりと言わざるを得ません。  更にもう一点重ねて伺いますが、それは自衛のためにも戦力は保持できないということを変えたかどうかということに対するところの答弁は不明確です。先ほど私は直接侵略に対する武力行使に関連いたしまして詳しく質問いたしたつもりでございます。この点についても緒方副総理並びに木村長官の答弁を再三に亘つて求めます。
  33. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 時間が参りました。
  34. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君(続) 時間が参りましたから、ここで質問を終りますが、もう少し、曾つてあなた方がこの議政壇上から答弁されたことを想起されて、責任感を持つて良心に誓つて答弁して頂きたい。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
  35. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたしますが、政党政治であるということを、私はよく存じております。併し今の政府の制度は内閣責任制でありまして、その内閣のした施政に対して政府は当然責任を持つのみならず、この防衛に対する問題は、昨年の総選挙においてこれは一番大きな問題でありまして、その問題につきまして率直に我が党、又前の内閣の閣僚も、その意見を披瀝しまして、今日申しておる通りの意見を披瀝しまして、国民の批判を仰ぎ、国民の判定を求めております。その点につきましては、少しもあいまいなことを申しておるつもりはございません。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕
  36. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  私は終始客観論をとつております。いわゆる目的の如何を問わず、大きな実力部隊を持つということは、これは戦力に至るであろう。こう解釈しております。そこで今御指摘になつたものは、私は外国と堂々と戦争し得るような大きな戦力、即ち近代戦争を遂行し得るような装備編成をいたしたものは戦力であるであろう。こういう意味であるのであります。私の、速記録は終始一貫そのことを明らかにしておると考えております。    〔国務大臣大達茂雄君登壇、拍手〕
  37. 大達茂雄

    ○国務大臣(大達茂雄君) 先ほど私がお答えを申した点で、私は御了解頂けると思つております。私はあの「あたらしい憲法のはなし」という本に書いてある記述が憲法上正しいか正しくないか、そんなことは言つておるのじやありませんが、(「それを聞いておるのだ」と呼ぶ者あり)これは政府の憲件の解釈、公的の解釈を示したものじやない。こういうことを申しておるのであります。それならば、それについて、何か責任を感じないかというようなお話のようですが、これはすでに今日は廃刊になつておる、数年前に。而もこれは片山内閣の手でこしらえた本です。二十二年七月にできた。そんな片山内閣のこしらえた、今日廃刊になつている本に或る記述があるからといつて、それで私が責任を負うとか負わんとか、そんな無理な話はない。(拍手)     ―――――――――――――
  38. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 山下義信君。    〔山下義信君登壇、拍手〕
  39. 山下義信

    ○山下義信君 私は社会党第二控室を代表し、国家の運命に関する我が国の防衛問題、即ちここに提出された二法案に対し、政府の所信を質さんとするものであります。  第一は、首相の政治責任であります。吉田首相は我が国の防衛問題を巧みに利用し、これを以て政権維持の具に供し、久しく権勢の座を占めて、おのれ一身の栄華をほしいままにし来つたのであります。国民に対しては、如何にも米国に抵抗して再軍備に反対するかのごとく見せかけ、一方米国に対しては、保守勢力を糾合して、彼の要望に添うかのごとく振舞い、一歩々々譲歩することによつて彼の歓心を購い、以て内閣の寿命を延長することに成功したのであります。吉田個人は、疑いもなくその政権慾を満足せしめたでありましよう。併し首相の浪費によつて多くの負債を残された国民は、いよいよ不幸のどん底に陥ろうとしているのであります。吉田積年の悪政は、今日の世相に厳然として現われております。悪政の毒素は、国民の骨髄にまで浸潤するに至りました。国民の気力は沮喪し、独立再建の萌芽は悉くむしり取られ、国家崩壊の危機は恐るべき勢いを以て日増しに増大しつつあるのであります。然るに吉田首相は、内外の情勢に逆行し、国力後退、人心悪化のさ中において、従来の態度を一変し、再軍備への前進を開始したのであります。彼は国民との公約を裏切つたのであります。彼の「憲法は改正いたしません」と称するは、憲法尊重の念から出でたものではないのであつて、実は国民投票に敗れることを知るからであります。卑怯未練な吉田首相は、選挙においては再軍備反対に似せて、我らの投票を詐取し、今においては堂々雌雄を決することを避け、明らかに憲法を蹂躙して強引に押し切り、既成事実を作つて否応なしにこれを国民に押しつけんとするものであります。(拍手)ややもすれば時の権力者に盲従する封建性と、こうなつた以上は仕方がないとする現実追随の諦らめ性と、この国民性の弱点に乗じ、事をうやむやのうちに決せんとするは、如何に吉田首相が経国の宰相に非ずして、ただ単に一個の政権亡者に過ぎざるかを雄弁に物語るものであります。(拍手)政治というものが、うまく国民をだますにありというならば、伊藤斗福と吉田茂といくばくの差があるでありましようか。(拍手)我々は、吉田首相が桑港以来予定のコースをとりながら、終始国民を欺き、重大政策の変更に当つては、当然総辞職するか又は解散を以て信を天下に問うべきにかかわらず、依然居据り工作に耽るがごときは、断じて許容し得ざるところであります。(拍手)内閣は如何なる出処進退を以て今後の政局に対処せんとするか。その所信を承わりたいのであります。  第二は、政府の防衛計画には、更に自主性がなく、自衛隊の性格はまさに傭兵的であるという点であります。ラドフォード統合会議議長、スチブンソン陸軍長官らによつて決定された米国の極東防衛計画は、即ち沖縄を以て世界最強の基地となし、これに原子兵器を貯え、日本駐留の第三海兵師団、空挺連隊、水陸両用戦車部隊を以て新たに機動部隊を編成し、東はハワイ、南は比島の中間までを防衛線とし、沖縄から八百キロの上海に向つてその焦点を集中するの態勢であります。これがため在日米軍の地上部隊として、且つ朝鮮部隊の補充として、日本陸軍十個師を要求し来たつたことは、世間周知の事実であります。米国の態度は意外に強硬で、MSAの交渉過程においても峻厳にこれを迫り、政府は遂にその要求に屈服したのであります。一個師一万八千に食い止めたなどと手柄顔に申しておりますが、その実は予備役を入れて二十二万五千の兵力となし、更に或る種の方法を以て三十二万の兵力となすことは、秘密の了解事項となつているのであります。(拍手)而してこれらの兵力は、我が国防衛上自主的に計画割出されたものではなく、米国がアジアにおける作戦用兵上の必要量でありまして勿論海外派兵をも含め、すべて彼の方針に基き、我がほうの計画というものは全然樹立されてはいないのであります。ただ彼の損害と危険の分担をさせられたに過ぎないのであります。自衛隊ではなくて他衛隊であります。従つて国力との勘案など寸毫も顧慮されてはいないのであります。未だ国防の方針なくして、先ず軍隊を先に作るは、これ即ち米国の傭兵なるが故であります。政府は今次の増強計画を以て果して自主的計画に基くと断言することができますか。文大蔵大臣は如何に国力を勘案したと言うか、防衛費用の総額を幾ばくに抑えんとするや、民生安定費との均衡を如何に考慮したと言うか。財政当局としての所員を伺いたいのであります。  木村長官に伺いたいのは、前述の自主的計画の有無と共に、在日米軍撤恨計画との関係であります。すでに米軍の撤退につきましては、その年次計画が示されてあり、これに対応してMSAの交渉において、我がほうの計画書が提出されてあるのであります。保安庁当局はその一部、即ち昭和三十年度の増強計画を最近に発表いたしました。陸上二万二千名、海上六千名、艦船二十二隻、空軍八千六百名、二百八十機と発表いたしておりますが、この際、その全部をお示し願いたいと思います。  なお、米軍の撤退については、MSA協定発表に際し、両国の当事者は、その促進を声明いたしましたが、事事はこれに反しまして、撤退計画は延期せられ、一部は永久駐留に変更せら九たのではないかと思われます。現に二月十七日、スミス極東委員長代理等の三者会議において、これが決定を見、アリソン大使は旨を受けて帰任したという報道があります。各地の米軍基地関係者も、非公式にこれを肯定しているようでありますが、外相の答弁を粛めたいと思います。  傭兵的性格の顕著なるものは、貸与兵器の問題であります。貸与兵器の大部分は相当の中古品であつて、カービンや小銃等は十年十五年の古品が多く、中には使用に耐えないようなものがあります。今回MSAの貸与に対しまして、日本の要望する兵器は全部断わられたということでありますが、そのことはともかくといたしまして、これらの兵器を通じて、まさしく米軍の完全なる支配を受けているのであります。即ち兵器は、一人々々が米国から貸与された形となつておりまして、みだりに使用すれば一年以下の懲役、万一損傷すれば五年以下の懲役が課せしれ、米軍顧問団によつて厳重に管理されるという建前であります。米軍の許可がなくば兵器の使用はできないという軍隊、隊員の持つ兵器の監督権は上級指揮官になくして米軍にあるという自衛隊、これでも政府は傭兵的でないと言い切ることができましようか。貸与兵器を通じて、完全に米軍の支配を受けているではありませんか。更に不可解なことは、兵器はあつても弾薬はないという事実であります。海上自衛隊で言えば、船は借りても油がないという関係に置かれております。今日の発射速度において、弾薬の需要量は、旧陸軍の十倍以上を必要とすることは論のない常識でありますが、これら弾薬の数量、貯蔵、保管、出入の権限等は如何なる状態に置かれてあるのでありますか。恐らく米国側と何らかの秘密協定があつて、自衛隊自身の自由にはできないことになつていると考えられます。軍機秘密保護法の必要なるゆえんでありましよう。明瞭に御説明を頂きたいと思います。  いま一つ重要なるは、軍事頑固団の使命であります。MSAによりまして七百名という大量の顧問団が正式に派遣され、四億近い経費が負担させられるのでありますが、かかる多数の軍事頑問団を何故必要とするのでありましようか。真の目的は果して奈辺にあるのでありましようか。曾つて大隈内閣の時代において、数名の軍事顧問団を派遣するということに対してすら、当時の中国がこれを国辱として、容易に承服しなかつたという事実があります。然るに今は七百名という空前大量の軍事顧問団を、鞠躬如として迎えんとするのであります。隔世の忍なきを得ないのであります。政府はこれらの任務を兵器の監督、訓練の指導など、さり気なく弁疏しておりますが、何ぞ図らん、これらの顧問団は作戦命令によつて組織的に構成せられ、それぞれ任務を与えられて各部隊に配属し、一朝有事の際には直ちに早変りして日本人部隊を準星し、これを指揮命令して米軍部隊に薪属せしむるのが其の目的であることは、火を見るよりも明らかであります。(拍手)これを以ても自衛隊の性格が傭兵的でないと断言できるでありましようか。責任ある御答弁を望みます。  次は仮想敵国の問題であります。政府は我が国防衛の目標として、ソ連、中共を仮想敵国とするもののごとくであります。現に一月二十八日の本議場におきまして首相はこれを明言しております。併し国民はむしろ奇異の感に打たれるものである。今日多くの国民は、貿易の増大、引揚げの促進等、心から彼らとの友好を望みこそすれ、何人も政府のごとくこれを敵視いたしまして他日の一戦を試みようとするがごとき者は、恐らく吉田首相と木村長官以外には一人もないと思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)政府は何が故に、ソ連、中共を目して仮想敵国としなければならないか。又、政府はしばしば米国側から極東の軍事情勢を聞かされておるようでありますが、侵略の危険性がどの程度緊迫しているというのであるか。どの程度宿意性がありと考えられるか。政府は国民の前にこれを説明する義務があると信じます。  第三は徴兵制度の問題であります。政府は飽くまで志願兵制度で行くとシラを切つておりますが、果して徴兵制度は永久に採らない覚悟であるかどうか。ここで言明を願いたいのであります。自衛隊員の募集につきましては、過去のデータから推測いたしまして、その人員に限度のあることは数字上極めて明白であります。昭和二十九年は、満期者その他で六万五千名、新規増員三万名、合せて十万名の募集を必要とするのでありますが、目下頻りにやつておる行政整理の対象者であるとか、失業者であるとか、農村の二、三男等に目をつけて或いは自治体警察官等にも目をつけ、且つこれを数回に分割して充足しようとしておりますが、満員になるか甚だ疑問であります。昭和三十年度に至つては全然見当がつかず、自信がないというのが真相であります。かてて加えてこれから直接侵略に当るということになれば、志願者の激減はけだし必至でありまして政府当局は徴兵制度の不可避を内心予期しておるのではないかと考えられますが飽くまでこれを否定されるならば、志願兵制度存続の確信を数字を以て示されたいのであります。  次は自衛隊と憲法違反の問題であります。総括的に憲法第九条に違反することは賛言を要しませんが、更にその内容において重大なる憲法違反を犯さんとしておるのであります。  第一は統帥権の問題であります。自衛隊法は、曾つて天皇の大権であつた統帥権と等しきものを内閣総理大臣吉田茂に帰属せしめようとするものであります。文武の大権を握る総理大臣の性格は、まさに国の元首に相当し、我が国の首相をアメリカの大統領と同じ地位に押し上げようとするものであります。かくのごとき権能を与えることは、我が憲法の予期して認めざるところでありまして、憲法になき権限を一片の法律によつて強行せんとするは、これを以て憲法の違反と言わんよりは、吉田内閣は多数を以て一種のクーデターを行わんとするものと断ぜざるを得ないのであります。白色テロを警戒し、暴力革命を抑圧せんとする吉田政府が、みずから先んじて憲法無視の革命をなさんとするは何事でありますか。吉田首相の責任を問わねばなりません。およそ民主主義国家におきましては、かくのごとく武力の指揮権を総理大臣に与えることは、国家組織の基本問題として、いずれも憲法中特筆大書するところでございます。政府は何を根拠としてかくのごとき非違を企くたのでありましようか。或いは自衛隊の最高指揮権を以て一般行政権であると強弁するようでありますが、各省大臣を長官とするその上に立つてこれを指揮命令することは、果して各省同列の行政なりと言い得るでありましようか。たとえ行政権説をとるといたしましても、軍事行動或いは軍事準備行動のごとき、当然、行政中の重要行政として憲法第七十三条の列挙中に見出さるべきであると存じまするが、政府の見解は如何でありましようか、承わりたいと思います。  私はこの際、関連して、吉田首相に、文官優越制と軍国主義の復活について如何なる信念を有するか、伺いたいのであります。軍隊の編成上、文官優越制を採用いたしますことは、我が国におきましては初の経験であります。この制度の目的は申すまでもたく、軍事力をして文官の権限に従属させ、行政府に対して軍隊の地位を二次的に置き、それによつて民主主義の確立を図らんとするものであります。併しながら、これがためには三つの条件を必要とするのである。憲法中、軍隊における文官優越性を明記すること。同じく国会の監督権を明らかにすること。同じく軍隊の使用目的を特定化すること。この三点であります。然るに我が憲法におきましては、かかる規定は一ヵ条もないのであります。然らば政府は何を以て文官優越主義を貫徹し得るでありましようか。又、本制度の目的は軍国主義の防止にあるのでありますが、政府はすでに発生せんとする軍国主義の復活につきまして如何にこれを阻止せんとするか。その熱意、その具体策につきまして、首相の答弁を得たいと存ずるのであります。諸外国は、我が国の再軍備と共に、軍国主義の復活を疑心暗鬼で注目いたしております。然るに政府のなすところを見ると、再軍備へのテンポと共に、陰に陽にこれが助長を図り、或いは旧軍人を重視して首相のスタッフとし、或いは天皇神格化の走りとなつて復辞の志を示し、自衛隊においては皇室中心主義を称揚し、この思想を以て愛国心だと言い、一方においては中央集権を強化して民主政治の後退を図るなど、少くとも軍国主義復活の素地を培養するもののごとくでありまして、文官優越主義の確立には一向に誠意のないように思われるのであります。資格制限撤廃のごときはその片鱗である。私はこの点につきまして、右翼との関係浅からずといわれる緒方副総理から、その所信を承わりたいと思うのであります。  憲法違反の第二は、予備役制度の問題であります。兵力増強の手段であり、民兵制の前駆として、政府は予備自衛官の制度を考えたのであります。平素の職業にあるまで月千円の手当を与え、年二回短期の招集に応ずればよい、旅費も手当もやると言つておりますが、防衛出動即ち、いざ戦争というときには、動員命令によつて赤紙招集となり、この招集に応ぜざれば三年の懲役、濫りに職場を離れた者は七年の重刑に処せられるのであります。まさに憲法第十八条に違反し、戦争行為という苦役を強制するものでありまして、断じて許し得ざるところでございます。たとい志願により或いは宣誓などの形式を以てするも、かかる契約は憲法第三章の精神に反し、違憲、無効の規定と言わねばなりませんが、政府はこの方式を以て民兵制度を創設する考えであるか。憲法との関係を如何に考えるか。伺いたいのであります。  又、防衛出動に当つて広汎なる土地収用権等を与えんとする自衛隊法百三条の規定は、誠に粗筆不備でありまして、損害賠償等の措置も明確ならず、単に災害救助法を準用するという程度を以ては、憲法第二十九条の趣旨に合致しないと思われまするが、この権限の行使において、如何なる事態、如何なる場合が予想されるか。又、今次ビキニ湾の原爆被害に鑑みましても、人命等の補償は如何に考えるか承わりたいと思います。  以上で私の質問は終りますが、我々は、吉田首相が民生安定を犠牲として再軍備に狂弄せんとするその愚を憐れまざるを得ないのであります。社会保障を捨てることは民主国家の存在を否定するものであります。大衆の生活を剥奪し、革命の機運を促進して、他方においてその防衛に努力しようとするは、正気の沙汰とは思えないのであります。更に吉田首相の許し難き最大の罪悪は、今次戦役一千万の犠牲者によつて築かれたる平和憲法を破壊し、前後三十年に亘る八千万国民の苦難を一挙に徒労に帰せしめるのみか、再び阿鼻叫喚の悲劇を繰返さんとするものでありまして、人類史上の叛逆者であります。切に政府当局の誠意ある反省を求めて止みません。(指手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
  40. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) 政府は、吉田首相は、再軍備反対の公約を裏切るのではないかという御質疑でありましたが、(「その通り」と呼ぶ者あり)違います。(笑声)政府は、再軍備の意図は持つておりません。自衛力漸増は従来からの方針であり、自衛隊は憲法の禁止する戦力ではありません。又憲法は国の自衛権までも放棄したものでない以上、今回の自衛隊は決して憲法違反ではないのであります。(「違います」と呼ぶ者あり)それから今回自衛隊を設ける仮想敵国はどちらかという御質問、更に吉田総理大臣が中国並びにソ連を仮想敵国としたかのごとき御議論でありましたが、「たびたびある」と呼ぶ者あり)吉田総理大臣の言われましたことは、そういう趣旨ではないのでありまして、中ソ友好条約が中国ソ連の間にあつて、その条約の中に日本を仮想敵国としている。従つてそれに対する考えが必要であるということは言われましたけれども、今回の自衛隊を作るに中ソを仮想敵国としてその組織を作るということは言うておられない。私も同様に考えております。  それから今回の総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持つということは、軍閥を作るのではないかというお説でありますが、今度の指揮権は決して旧憲法で言われるところの統帥権ではないのでありまして、統帥権が旧憲法に認められました結果、政府のほかに、或いは政府と対立する一つの権力がありましたために、あのような軍部の横暴を生じたのでありまするが、今度は行政の最高責任者である総理大臣が自衛隊の指揮権を握るのでありまして、その間に曾つての軍閥或いは軍部の横暴というようなものはあり得ない、その点は御安心を願つて差支えないと用います。  それから総理の権限を論ぜられまして、何か私が右翼に関係があるというようなことを言われましたが、右翼ということは、これは複数であつて、私は右翼の者を知つておりまするが、私が右翼の運動のどこに関係がありますか、御指摘をお願いしたい。若し御指摘がなければ、お取消しを願いたい。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
  41. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  米国駐留軍の撤退の問題でありますが、御承知の通り日米安全保障条約によつて、我が国の外敵からの侵入に対してアメリカ駐留軍が当ることになつているのであります。このアメリカ駐留軍が即時に全部撤退するということはあり得ないことであります。これははつきり申上げます。そこでその一部分がいつ撤退するか、その時期は明瞭にわかつておりません。但し我々は自衛力漸増方針を以て著々と漸増をやつております。二十九年度においては、今御審議願つておる通りでありましてこれが完成したあかつきにおきまして、アメリカの駐留軍の一部地上部隊が撤退することは、これはあり得るであろうと思います。その兵力量はどうかということは、只今のところわかりませんが、今後アメリカとの間に打合せがあると思います。  次に、軍事顧問団の問題でありますが、御承知の通り軍事顧問団は、全くアメリカから貸与を受ける武器のその操作等についての指示を受けるのでありまして、自衛隊に対しての指揮命令とかいうことには断じて関与させまん。又関与すべきではないと考えてやります。  次に、徴兵制度でありますが、徴兵制度は只今考えておりません。徴兵制度を布くということになれば、勿論憲法改正を要することであります。我々は現段階においては、志願制度で行こうと考えておる。然らば志願制度の限界はどこにあるかということになりますと、これはいろいろの観点からいたしまして、約二十二、三万が程度であろうと考えております。  それから三十年の計画はどうかということであります。三十年の計画につきましては、まだ確定的なものは持つておりません。ただ一応の目途程度のものでありまして、今後我々は日本の財政力その他を勘案いたしまして、研究し、計画させたいと考えております。  予備自衛官の問題でありますが、これはすでに申上げた通り、すでに退職になつた旧来の警察予備隊員或いは保安隊員、このうちから志願によつて募集するのであります。勿論この待機その他については、すべて入つて来るいわゆる応募者に周知せしむる。憲法十八条との関係におきまして……。憲法十八条は苦役を課さないということになつております。これは強制苦役のことであります。予備自衛官に対しては強制苦役を何も課しません。本人の意思に基いて入つて来るから問題はないのであります。  それから土地収用等の問題であります。これは先ほど答弁いたしました通り、災害救助法に基きまして、損害を与えるような場合には相当の補償をするということになつておりますから、国民の権利保護については万全を期したいと、こう考えております。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕
  42. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 只今山下君は、海外派兵について秘密の約束があるということを断言されました。又アメリカの駐留軍が永久駐留の計画があるのじやないか。こういうことも言われたのであります。ところが政府としては海外派兵のごときことは何ら約束はしないし、又海外派兵をしないということも明らかにいたしているのであります。米駐留軍の永久駐留の報道があるということは、これは取るに足らない問題でありまして、さようなことは絶対にないことはもう明らかであるのであつて、アメリカ側は速かに撤退いたしたいと言うておるのであります。併し先ほども国会の論議においては責任を持てとい、ことが強調されております。山下君が、海外派兵の秘密約束があるなどという断言をせられる以上は、その証拠を出されるべきであると考えております。(「何を言うか」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣小笠原三九郎君登壇、拍手〕
  43. 小笠原三九郎

    ○国務大臣(小笠原三九郎君) 防衛計画には、自主性もなく国力を勘案した計画でもないというような意味のお話がありましたが、この点は先ほどもお答えいたしました通り、政府としては、二十九年度予算には百四十億円の増加をいたしておりますけれども、他方社会保障費その他予算の配分についても十分苦心いたしておるのでありまして、なお将来も防衛予算の計上は、財政力、経済力、即ち国力の回復に応じて国民生活に重大な影響を及ぼさないよう考慮しつつ、自主的に自衛力の漸増を推進しよう。こういう考えを持つている次第であります。(拍手)
  44. 重宗雄三

    ○副議長(重宗雄三君) 午後二時三十分まで休憩いたします。    午後一時十九分休憩      ―――――・―――――    午後三時九分開議
  45. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。苫米地義三君。    〔苫米地義三君登壇、拍手〕
  46. 苫米地義三

    ○苫米地義三君 私は改進党を代表いたしまして、以下五つの点について極めて簡単に御質問を申上げたいと思います。私の質問は他の同僚諸君の質問と相当ダブるかも知れませんが、事重要な法案でございますから、政府側におきましても、どうぞ御迷惑ではございましようが、懇切明快に御答弁をお願いしたいと思います。  先ず第一点でございますが、自衛軍問題に対する我が党の基本的態度というものは決定いたしておるのでありまして、その態度と申しますことは左の四点に帰する次第でございます。その一つは、独立国として自衛軍を持つということは当然必要であること。その二は、自衛権に基く限り現行憲法に抵触するものではないということ。その三は、自衛軍の規模は国力に相応しなければならない、こういうこと。第四は、自衛軍は如何なる場合でも外国へ出兵してはならない。この四つの点を我々は主張するのであります。我々はこの観点に立つて法案の審議に当るのでありますが、この四つに対して政府の考えと我々の考えと容れない点がございまするならば御指摘を願いたいと思うのです。なお、今回のMSA協定の結果といたしまして、以上の四つの原則に抵触するものがありまするなれば、この点も御指摘を願いたいと思います。例えばアメリカと韓国とは、すでにMSAの協定を締結いたしております。今回日本とアメリカとの間にMSAの協定をするのでありますが、これで三国間に連鎖協定、私はあえて連鎖協定と言いたいのでありますが、この連鎖協定ができたことでありまするから、この事実を三年前に遡つて考えてみたいと思います。即ち、北鮮軍が南鮮を侵略した、その勢いが南鮮を席巻して、そうして米軍がこれを援助に参りましたけれども、それでもなお且つ、釜山の一角に橋頭堡を保つほどの苦戦を続けておつた。そういう事態が仮に今後起りました場合に、この三国間の連鎖式の協定によつて、果して我我は海外に出兵しないで済む、こういうことになりますかどうですか。その点をはつきりと説明を願いたいと思います。元来MSA本来の性格から申しまするならば、即ち、集団安全保障でありますから、この連鎖式の協定は、当然の結果として韓国へ日本が出動しなければならないということになるのではないか。その点を御説明願いたいと思います。政府はしばしば海外に出兵のことは日本自身がきめることだと、こう申しておりますけれども、この連鎖協定というものが、そういう性質のものじやない。当然の運営として出兵せざるを得ないことになるんじやないか。この点を明確に御答弁願いいと思います。又日本の軍備を陸兵が三十万或いは三十五万にして欲しいという要求がアメリカ側にあるということを聞くのでありますが、勿論我が国経済の情勢から申しまするならば、それはできないでしよう。従つて政府は漸増方式をとつておられるのです。無理もないことだと存ずるのでありますが、併し先ほど副総理が言われたように、自分の国は自分の手によつて守るんだ、守り通すんだ。こういう建前の自衛軍である限り、完成するところの目標の標準がなければならん。その最後的に宜分の手で守り得るという自衛軍の程度は、これを具体的に御説明なさるならば、どれくらいのことになるのであるか。それをお話願いたいと思います。又自衛隊は戦力を持たないと言われておりますが、併し今申上げたように、みずからの手によつてみずから守るというような場合に、果して戦力によらないで侵略軍を防衛することができるのかどうか。こういう点について政府の今までの答弁は非常に矛盾したり、しどろもどろであるように思うのですが、この点をはつきりと、もう一度御説明を願いたいと思います。  それから第二点、私は我が国における軍備論を通しまして感じますことは、如何にも歌舞伎の時代劇を見るような感じになるのであります。なぜなれば、歴史はすでに二十世紀の後半に入つております。科学の進歩というものは超スピードで発展し続けておるからであります。世界は御承知のようにだんだん狭くなり新兵器というものが続々発明されて、過去の常識を以ては到底理解のできないほどの強力な破壊力を持つようになりました。現に最近問題になつております第五福龍丸の事件を想像いたしましても、どれくらいの強力なものであるかということが想像つくのであります。而も戦いは人道を無視することについて差支えないようなあらゆる残虐行為をも容認するというような時代になつておるのであります。もう戦争は軍人が戦場で戦い合うというようなことでなく、科学技術者がいながらにして兵器を操縦いたしまするならば、世界のどこにでも攻撃を加え得ることができるように必ずなります。そういうところまで社会の進歩が達しておるのであります。これは間違いのない事実であります。而もその被害者は軍人ではない。無事の民衆と文明の破壊であることを知らなければなりません。政府はこういう時代の推移をどういうふうに見ておられますか。又これに対して今の軍備論は邊かに隔たつた考えであると思うのですが、将来平和と安全をどうして確保せんといたしておりますか。この点のお考えを伺いたいと思います。  第三点は、私は先ほど申上げますように、この法案に対する我々の考えはもうきまつておるんですが、それにもかかわらず、我が国が現在なお環境上危険な立場にあることは、これ又否めない事実であります。さような観点から、内外より迫るところの危険を防衛し、国内治安の維持を確保せんとする意味合いにおきましてこれが必要を認めるものでありますが、併しながら窮極においては一国の安全は一国の力ばかりでは到底守り得ないものだと私どもは考えます。ここに国際連合の役割があり、各国はこれに大なる期待を持つているのでありますが、現在の国連機構は遺憾ながらその役割を果すには十分ではございません。我が国はすでに平和条約において国連加盟の意思表示をいたしております。然る限り、国連機構がその目的といたしまするところの世界の平和と協力の実を挙ざ得るよう改善すべきものは改善し、以て国際間の恐怖と不安を除去するに足るような努力を各国と共にしなければならないのでありますが、我が政府は、これに対して相当熱意を持つて然るべきだと思うのですが御所見を承わりたい。  それから第四点は、最も重要な点でございます。それは自衛隊の運用に関する点です。法案の内容にはいろいろの制約がありまして独裁主義者の介入を許さないようになつておりますけれども、それにもかかわらず、結局は自衛隊は内閣総理大臣に所属し、兵馬の権は全く総理大臣の手に帰する次第であります。若し独裁的総理大臣の出現がありますならば、これが運用を誤れば、いわゆる憲法上の、政府の行為によつて再び戦争の惨禍を起すことになると思うのであります。政府は、法規に定める民主的な運営によるからその心配はないとしばしば申されますが、併し一方警察制度の改正によつて中央集権が強化されるようになり、又人事院を廃止して、人事権を掌握するような独裁化の素地が作られつつある現状であります。こういう状態に鑑みまして、この独裁化の点を特に警戒しなければならないと思います。現にこの内閣は憲法第七条を濫用して、ほしいままに国権の最高機関たる国会を解散いたしましたことがあります。このことは明らかに独裁専制の可能性を立証するものであると思うのであります。政府はこの自衛隊の運営につきまして独裁者抑制のために更に一段の工夫を凝らすべきであると思うのでありますが、幾たびも政府側の説明がありますけれども、事重大でありまするから、私は重ねてこの点を明確に御答弁願いたいと思うのであります。  私の質問は以上で終ります。(拍手)    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
  47. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) お答えいたします。  自衛力の問題に対する改進党の態度、今四条件をお挙げになりましたが、これに対して総理大臣はどういう見方を持つているかという御質問のように承わりました。独立国として、国力に応じて自衛力を増強するという点につきましては、政府の見解と改進党の御意見との間に何らの隔りがない、全く同じであります。併し政府は、第二番目にお挙げになりました自衛のためといえども戦力を保持することは、憲法上できないという立場に立つておりまして、この点、第二番目にお挙げになりました条件において多少の食い違いがあるように考えます。  なお、MSA協定は、この政府の方針に何ら影響を与えるものでないと政府は考えております。  なお、行く行くは日本の防衛力の限界をどの辺に置いておるか。三十万とか三十五万とかいう説があるようでれるが、どういうふうに考えておるかという御意見でありましたが、この点につきましては、まだ最後の結論に達しておらないのみならず、いわゆる長期計画というものも持つておりません。ただ一応の目安としまして、今日、日米安全保障条約の下にアメリカの駐留軍が駐留いたしているのでありますが、その駐留軍の撤退を可能とする程度まで日本の地上防衛力を、日米安全保障条約の道徳的義務によつて漸増して行くことが必要であろうかと考えております。ただそれは地上の駐留軍だけでありまして、空軍、海軍共に日本の防衛に当つている駐留軍が撤退を可能にするという時期につきましては、今日のところ予見ができないのでありまして、自分の力で自分の国を守ると申しましたけれども、それは差当りの目安といたしましては、地上の兵力を駐留軍の撤退を可能とする程度まで進めるのが目安ではないかと考えております。  それから新兵器の出現と今後の戦争観についての御質問でございますが、新兵器の出現、その他科学の発展に鑑みまして、今後若し戦争があるとすれば、極めて苛烈な、見方によりましては、今日の人類文明の壊滅というようなことになろうかと恐れられます。それだけに人類の幸福のために、将来戦争は絶対避けて参りたいという考えを持つております。併しながら、この熱心なる希望がありましても、今日の世界の現実を見さする際に、我が国として国力に相応した自衛力は、やはり戦争を避ける意味からも必要である。さように考えて、自衛力を保持することにいたしているような次第であります。  それから自衛軍の指揮監督権が総理大臣の掌中に握られまするために、総理大臣の地位を独裁者にしはしないかという御意見でありましたが、これはやはり先ほど来、午前の本議場におきまして申上げましたように、これはやはり何と申しましても国会の監督、又その国会を選ぶ選挙、その基盤をなしておりまするところの国民の良識というものに依存する以外にこの独裁化を防ぐ途はないのでありまして、今日自衛軍の指揮監督権は、勿論旧憲法下のいわゆる統帥権とは違いますけれども、そういう点についても国民の理解、自覚の上に、十分監視をして行く必要があろうかと考えます。  爾余の御質問に対しましては、所管大臣からお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕
  48. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) いわゆるMSAの協定は、米国が援助を提供し、日本がこれを受けるということを根幹といたしているものでありまして、我が国の防衛力についてお話のような四原則等が、矛盾も何もしない。全然別ものであるということは御承知願えると思うのであります。で、連鎖協定とお話になりましたが、ちよつと意味が取りかねるのでありますが、このMSAの協定は、安全保障を目指しているものというよりは、むしろその目的のために、各自国の防衛力を増強せんといたすものであります。で、海外に部隊を派遣するというような重大な事項につきましては、明白なる規定が協定のうちにないならば、これは義務となることはあり得ないのであります。即ち我が国が全く独自で決定するところでありまするが、政府といたしましては、憲法の規定等に鑑みまして、これをなす意思は全然ないのであります。  国連機構につきましては、お話のように、只今完全なものとは言いがたいのでありまするが、我が国も将来責任ある加盟国たるの地位を得るように努力いたしますと共に、これによつて更に国連強化に寄与して平和の維持に資して参りたい。こういうふうに考えております。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
  49. 木村篤太郎

    ○日瀞大臣(木村篤太郎君) もうすでに、緒方、岡崎両国務大臣から答弁されました。私から改めて答弁する余地はないのでありますが、ただ一言申上げておきます。  科学兵器のことについて、非常に苫米地君が御関心のようであります。我々も大いに関心を持つておるのであります。いわゆる今後日本の防衛をするについて、経済的に能率的にこれをなし遂げるには、どうしても科学の力に待たなきやならんと考えております。御承知の通り、イギリスにおいてはいわゆるGMの研究が非常に進んでおります。スイスにおきましてもすでにその完成を見たということであります。アメリカにおいても又然りであります。それで我が国におきましても、今後国防の第一線に立つて最も能率的経済的にやるのには、この電波兵器の研究に待たなきやならんと、私は考えておるのであります。そこで、この問題を取上げて如何にすべきかということは、今後の課題でありますが、我我といたしましては、日本の科学者によくこの旨を理解をしてもらつて、今後総力を挙げて日本の経済的な科学兵器の推進に寄与いたしたいと、こう考えております。  次に、今度の法案によると、如何にも総理大臣に権力が集中するのではないかという御議論でありまするが、これは私はしばしば申上げました通り、内閣総理大臣は、内閣の首長として、内閣の代表として、自衛隊を指揮監督をするのであります。而してその内閣は国会に対して責任を負うのであります。国会が背後にあるのであります。緊急時の自衛隊の出動についても、すべて事前において国会の承認ということを建前にいたします。やむを得ない場合に出動いたした場合にも、事後において速かに国会の承認を得るということになつておるのでありまするから、いずれの面から見ましても総理大臣が独裁して自衛隊を自由にするということはできぬはずであります。その点の心配はないと考えます。(拍手)     ―――――――――――――
  50. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君)堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇、拍手〕
  51. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は只今議題となつておりまするこの二つの法案に対しまして、以下述べる数点について質問をいたしたいのであります。  先ず第一に、自衛の手段というものが果して政府の言うような手段のみであるだろうかという点であります。勿論、独立国であるからには必ず自衛の手段を持つていなければなりません。又それが権利でもあることは私どもも認めざるを得ないのであります。併しながら、自衛の手段は軍隊にのみよるものではないのであります。そのほかに、親善友好関係を基礎とするところの外交政策もこれ又自衛の手段であります。或いは又、この外交政策に基いて、例えば隣国との間に親善関係の条約を結ぶことも、その自衛の手段として見なければならんのであります。ところが、政府の説明は、自衛の手段と言えば、軍隊、武力のみを以てこれに該当するものとなし、そうしてこの自衛の手段を増強することが日本の国土の防衛のためであると説明しているのであります。併しながら、従来我々が経験して来たように、武力によるところの自衛の手段というものが遂には侵略に転化し、そうしてあの第二次大戦に至るまでの一連の政策を遂行するに至つたことは、我々のすでにまだ記憶に新たなところであります。我々はこのような自衛が侵略に転化した事実を反省し、そして特に隣国に対して我々が与えたあの憎むべき侵略に対する反省の上に立ちまして、我々は平和憲法を制定し、その前文において「平知を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」ということを決意したのであります。我々は、従つて今日この平和憲法によつて一切の武力を放棄したのであり、政府の説明によるようなインチキの戦力或いは自衛力というものも我々は放棄したのであります。ところが吉田首相は、先に二つの条約を締結し、そうして日本をアメリカの隷属下に置く。今又、更にMSA協定を締結いたしまして、自衛隊の名において日本に再軍備を強制し、一方、国民生活はどうかと申しますると、極度の窮迫をも敢えて顧みないという態度をとつているのであります。国民の意思を無視し、日本を再び戦争へ駆り立てようというのが吉田首相の政策だと申しても差支えないのであります。曾つて対日理事会の英連邦代表として日本に滞在し、現在はメルボルン大学の政治学の教授をやつているマクマホン・ボール氏が、先般も日本に参つたのでありますが、本年初めに朝日新聞に一文を寄せまして、日本の再軍備について次のような警告を発しております。即ちそれによると、日本の再軍備は軍事的にも経済的にも又社会的にも無意味であり、むしろ日本としては東西両地域との平和的な交通を通じて親善友好関係を保つべきであるということを主張しておるのであります。この点に関しまして首相並びに外相はどのように考えられるか。その所信を伺いたいのであります。  第二には、自衛隊の性格についてであります。自衛隊が軍隊であること、従つて又それが憲法違反であることにつきましては、同僚議員諸君からこれまで指摘された通りであります。私は、自衛隊が日本の国民の要望に基くものではなく、アメリカの極東防衛政策の一環としてアメリカのための軍隊であるということを指摘したいのであります。アメリカは、終戦後、新中国の成立によりまして大陸侵略政策が挫折いたしました。この政策の破綻を補うために、単独占領によるところの占領政策を通じまして、日本の軍事化、軍事基地化を図つて参つたのであります。殊に朝鮮戦争が勃発いたしましてからは、これを契機に、この日本の軍事化、軍事基地化の政策が推進され今日に至つたことは、我々がアメリカのペンタゴンのあの内部での論争を通じて明らかに見ることができるのであります。日本の吉田内閣はこのアメリカの政策に呼応いたしまして先には警察予備隊を設置する、更にこれを保安隊に変える、そして今又これを自衛隊に発展させようとする一連の政策を遂行して参つたのであります。ですからニューヨーク・タイムズのレストン記者が、昨年秋丁度池田・ロバートソン会談が行われておつた当時であります。アメリカ極東の防衛に関する一文を草した中で、日本の再軍備こそはアメリカの極東防衛の最も重要な環であるということを指摘しておるのであります。今日アメリカの戦争政策が、朝鮮休戦後の経済的な混乱から転換を余儀なくされ、いわゆるニュー・ルックの政策をとらざるを得ないような状態に追いつめられていることは周知の通りであります。そのために陸軍の兵力を削減し、他方空軍兵力を増強し、原子兵器の拡充が今日アメリカにおいて要請されているのでありまするが、この陸軍の兵力の削減を補うものとして、西においては西ドイツ、東においては日本の再軍備がアメリカによつて焦眉の問題として提出されているのであります。で、ニューヨーク・タイムズのハンソン・ボールドウイン記者も、これについて今年の一月二十四日号の週刊誌にこのように論じております。ニュー・ルック政策は戦略的空軍力の強化を意味する。空軍基地、原子兵器基地の拡充を意味する。それは具体的には日本、沖繩、硫黄島の確保を意味するものである。陸軍の兵力の本国における削減は、日本の再軍備によつてこれを補うべきであるということを、ハンソン・ボールドウインは指摘しているのであります。又極く最近でありまするが、日本タイムズに転載されたウォール・ストリート・ジャーナル紙の社説にも、日本の再軍備は日本の自衛のためのものではあるが、だが併し、それは同時にアメリカ自身の防衛力を更に強化するものである。このように指摘いたしておるのであります。この自衛隊というものが果してどういう性格を持つものかということについて、首相、外相の所信を伺いたいのであります。  第三には、自衛隊は何を防衛するのか、その任務は何かということについてお尋ねいたしたいのであります。勿論政府は、間接或いは直接侵略から我が国土を防衛するのだ。これが任務である。このように説明されるかもしれません。まあ間接侵略はともかくとして、ここで直接侵略の問題について私はお尋ねしたいのであります。今日、果して日本に直接侵略の危険があるだろうか。朝鮮休戦後世界の国際的緊張が緩和され、特に最近のベルリン四国外相会議におきまして、極東問題の解決のために来る四月の二十六日からジユネーヴにおいて平和会議が開催されるときめられ、この会議には新中国ばかりではなく、朝鮮人民共和国代表も又招聘されようといたしておるのであります。岡崎外相は恐らく共産主義諸国は、侵略的意図を持つている国家であると言うかもしれません。只今同僚議員の質問に答えて、副総理は、中ソは仮想敵国ではないと言明されております。若し中ソが仮想敵国でないとしたならば、何国が日本に対して直接侵略の危険を与えようとしているのでありましようか。今日の国際情勢を見まするに凶暴なマツカーシズムのあらしの吹きまくつているところのアメリカを除いては、共産主義諸国の侵略的脅威を直接感じている国が、一体世界にどれだけあるでありましよう。イギリス、フランスその他の国々は、モロトフ外相の提案するであろうと言われる欧州安全保障案に対しまして多くの期待をかけていることは、すでに外国電報の報道しているところであります。このような情勢の下に、而もアメリカの極東政策の要請に基いて自衛隊を創設しようというのであります。何のために如何なる任務を帯びたところの自衛隊かということをお尋ねいたしたいのであります。首相、外相、保安庁長官のお答えを願いたいと思います。  第四番目に、アメリカは今日国際情勢下に孤立をしておる。日本も又それに伴つて孤立しようとしておるということを申上げたいのであります。先般来申しますように、アメリカは今日国際情勢下において孤立をいたしております。勿論アメリカが、今日世界の主要国に対し、経済的な、軍事的な或いは技術的な援助等を与えていることは事実であります。併しその戦争政策も、今やヨーロッパにおいて、アジアにおいて孤立しつつあることは、我々として率直に認めなければなりません。ヨーロツパにおけるところのEDC条約がフランスの反駁に会いまして、いつそれが実現するか殆んど予想もされないという状態であります。イギリスが経済的に或いは又政治的にも、中近東問題をめぐつてアメリカとの間に対立をいたしていることも又否安することはできないのであります。アジアにおきましてもパキスタンとの軍事協定がインドとの関係を極めて悪化せしめているということも、これ又見逃すことができないのであります。いわんやアメリカの構想の中に極東政策の終局として太平洋軍事同盟等の構想があるものとするならば、ますますアメリカは、世界の民主国から孤立するでありましよう。このようなアメリカに呼応して日本がその要請に基いて自衛隊を設け、再軍備への一層の推進を遂げようとするのであります。すでに二つの条約の締結によりましてアジアの主要国から孤立化し、更にアメリカの傭兵的な再軍備によつてますます独立化しようとしているのであります。日本の再軍備が国内においては軍国主義の復活としてアジアの諸国から危惧の念を以て見られはうとしておるのも全くその通りだと申さなければなりません。更にフィリピンであるとかインドネシアであるとかビルマであるとかいうような国々との間には、賠償問題も解決いたしておりません。これらの国々の輿論が賠償問題をも解決することなくして日本が再軍備することに、非常に不満の意を表明していることは、我々としても十分に注意しなければならない点だと思うのであります。で、これらの事実について首相、外相はどのように考えられるか、お尋ねいたしたいのであります。  最後に日本の再軍備は、軍国主義化の危険を伴うという点であります。アジアの諸国が恐れているところの日本の軍国主義化の危険は単なる危険ではありません。先ず第一に軍隊としての装備、訓練、組織等が事実においてこの法案を通じて推進されて行くということ、又この法案によつて文官優位の原則が放棄されているというような事実、更には又首相の地位等に関する同僚議員の質問等を併せて考えるならば、最近の反動的な趨勢の助長と相待つてこれが軍国主義復活の危険を包蔵するものと申しても過言ではないと思うのであります。イギリスやアメリカでも政治の軍事に対する優位を保つためには、かなり苦い経験をなめておるのであります。日本のように民主主義の根が極めて浅い。そういうところにおいて、果して軍国主義の復活を阻止するところの条件はどこにあるか。こういう点について首相、保安庁長官の所見を伺いたいのであります。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕
  52. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 自衛手段として親善友好の外交政策なり、親善関係の条約なりを結ぶべきであるというお話でありまして、これは親善的な外交政策、親善約な条約、いずれも結構でありますが、これはむしろこの善隣友好とでも言うべき方針から行うべきことであつて、これをついでに自衛の手段としてやるということはどうかと考えております。こういうことは勿論やりますが、これだけで現在の日本が安全を守り得るかどうか。これについては私は非常に疑問を持つております。  それから警察予備隊から保安隊、自衛隊と、だんだん変つて来ておるじやないかというお話でありますが、これは勿論その通りでありまして、政府としては自衛力漸増という計画に基きまして、経済力、政治上の関係が許す限りにおいて、漸次自衛力を強化して行きたいと、こういう方針の下に進んでおります。  それから直接侵略、こういうものは今考えられないじやないかというお話でありますが、成るほど世界の情勢は、だんだん戦争の危険が遠ざかつておるように見受けられることは事実であります。併しながら我々が自衛力を強化しようというのは、この非常に大きな世界戦争とでも言うべきものだけと見ておるのじやないのであつて、いわゆる無責任なる軍国主義が今なお跡を絶たない現在におきましては、必要な程度の自衛力を持つことは当然であると考えておりまして、これにつきまして、ハンソン・ポールドウインとか、レストンとか、マクマホン・ボールとか、ウォール・ストリート・ジャーナル紙とか、いろいろな外国の人の説を争げられましたが、我々は外国人の説よりも、我が国独自の考え方で進んでおるのであります。  それからアメリカが孤立しておるじやないかと、こういうお話でありますか、私は別にアメリカの立場を弁護する気はありません。併しながら孤立しておるとすれば、むしろ私は共産主義国家側のほうであろうかと思つております。自由主義諸国の間におきましては、勿論自由なる言論は盛んに行われておりまして、その中には意見の相違も随分ありましようけれども、これを以てフメリカが独立しておるというようなことは当らないのであつて、自由諸国間の紐帯は、かかる自由なる言論を通じ日々強化しておる。こう私は考えております。  それから東南アジアにおいて日本の防衛力について脅威を感じていはしないか。賠償の問題についてお話がありましたが、私も昨年の秋、自分でこの地方を廻りまして、親しく状況を見て参りましたが、日本が必要な程度の防衛力を持つということについては、いずれも深い理解を持つておりまして、これを脅威と考えておるとは、到底考えられません。    〔国務大臣緒方竹虎君登壇、拍手〕
  53. 緒方竹虎

    ○国務大臣(緒方竹虎君) 自衛の意義について御質問でありましたが、自衛とは、国の内外から、国の安全、国の治安を撹乱せんとする行為に対しましてこれを防遏して国を守ることでありまして、このためには物心両面に亘つて有効適切な措置を講ずることが必要であり、勿論単に武力のみを以て自衛の任を全うすることはできない。そういう考えを持ちまして、その点におきましては御質疑の通りであります。  なお、マクマホン・ボール氏の意見についてどう思うかという御質問がありましたが、只今外務大臣からもお答えしましたが、これに対する論評は差控えたいと存じます。  爾余のことにつきましては、只今外務大臣からお答えしたことに尽きておるようでありまするので、私から繰返しません。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕
  54. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。現下の国際情勢は、多少平和の方向に向つておるということは事実であります。併しよく掘り下げて見ますると、なかなか微妙なことがあるということも、堀君御承知の通りであります。去る二月に、イギリスにおける新軍事予算の法律案が可決された際に、チヤーチル首相は言つておるのであります。「要するにこの平和の機関を通じて英国も防衛を計画して外敵の侵略を阻止しなければならない。」要するにイギリスにおいても、法の秩序と外敵の侵入を阻止して、そうして国の安全を守るためには、やはり国防計画を進めなくてはならない。これをいみじくもチヤーチル首相は言つておるのであります。日本におきましても、只今は、表面は平和な様相を呈しておりまするが、我が国周辺の軍事情勢を見ますると、決して我々は一日もゆるがせにすることはできん。我が国の安全と平和を守るためには、我が国の経済力に相当した国防計画を立てて我々は行かなくてはならんと信じておるのであります。従つてこの現下の国際情勢を勘案し、我が国の財政力と睨み合せて、現在の保安隊、今後来るべき自衛隊程度の防衛力は是非我々は必要と考えておるのであります。  なお、マクマホン・ボールのことを申されましたが、マクマホン・ボールの議論は、要するに共産主義国家と自由主義国家群との間に立つて中立を守つて行くということが根本の議論であるのでありましよう。これが本当に、さような中立を保ち得れば、誠に仕合せでありますが、これは一片の私は理想論に過ぎないと考えております。我々はやはり日本の置かれた立場というものをよく考えて、日本の防衛は如何にあるべきかということに心を砕かなければならんと、こう考えておる次第であります。(拍手)
  55. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ―――――・―――――
  56. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 日程第二、輸出保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。  先ず委員長の報告を求めます。通商産業委員会理事松平勇雄君。    〔松平勇雄君登壇、拍手〕
  57. 松平勇雄

    ○松平勇雄君 只今議題となりました輸出保険法の一部を改正する法律案につきまして、通商産業委員会における審議の経過と結果を御報告いたします。  御承知の通り、輸出保険制度は昭和二十五年に制定せられましてから数回の改正を加えて、現在では普通輸出保険を初め、輸出代金保険、輸出手形保険、輸出金融保険及び海外広告保険の五種類を含む制度にまで発展し、その利用率も逐年累増して参りました。然るところ、最近の我が国際収支の実情よりいたしまして新たに委託販売輸出保険を設けることが要請されて参りましたので、事態に鑑み、ここに本改正法案の提出を見た次第であります。  さて、本制度は、いわゆる委託販売輸出契約に基きまして貨物を輸出した場合に、その貨物が予想通りに売れないために、輸出者がこうむる損失を政府が填補するという保険制度であります。この制度によりまして、我が輸出業者やメーカーが安心して委託販売の形式による輸出ができるようにするのが狙いでありまして我がほうの支店網などが貧弱な今日、市場開拓のため在外公館や、輸出業界から熱心なる要望があつたものであります。  そこで本保険制度の要点を申上げますと、第一に、填補する危険は、委託販売輸出契約通りに販売できなかつたために受ける損失でありまして、貨物そのものに関する損失や、代金回収の不能は、この保険の対象としてはおりません。  第二に、損失類に関する規定でありまして、即ち輸出者が貨物の輸出に関して支出した費用から、期間内に販売された貨物の代金額及び売れ残り貨物の処分、その他必要なる処置を講じて回収した金額などを差引いて残つた額としております。  第三に、政府は右の損失額の八〇%を補填することになつております。なお、売残り品は積み戻して処分することが原則ではありますが、通商産業大臣の承認があれば、現地で処分しても差支えないことになつております。従つて残品を大臣の承認なしに現地で処分したときには、費用を回収したものとして現実には保険金の填補がありません。  以上のように新らしい保険を追加する以外に、本改正案では現行制度につき若干の技術的な改正を加えております。  当委員会におきましては、審議に際しまして、特に輸出業者並びに各種のメーカー及び金融機関よりそれぞれ意見を聽取するなど、慎重に検討を加えました。質疑は主として本制度を実施することにより、海外でのダンピングを誘発し、正常なる輸出を妨害する虞れはないかという点に集中したのでありますが、これは要するに海外での売れ残り品を処分する場合に生ずる事態でありまして、これに対する政府側の答弁は、「通産大臣がその処分に承認を与える場合は、慎重なる考慮を払い、承認の基準は約款中に挿入する予定が、次の三つの要件が揃つた場合にのみ承認する」とのことでありました。即ち、第一、残品が相手方の手許にあることが証明され、第二に、現地で処分したほうが確実に有利であり、第三に、処分見込の価格が正常輸出を阻害しない価格であることとでございましたが、特に最後の事項を重視するとの答弁でありました。その他詳細は速記録によつて御承知を願います。  かくて質疑を終り、討論に入りましたところ、各委員よりそれぞれ次のごとき条件を付して養成意見が述べられました。先ず豊田委員は、「悪意の業者に利用されぬよう、且つ処分に関する承認制度が一般の正常輸出に悪影響を与えぬよう運営に万全の措置を講ずることを要望」し、小松委員は、「メーカーが本制度に頼つて製品を低下させぬよう、又検査を十分に行うよう注意ありたし」と述べました。三輪委員は、「ダンピングを助長せぬように大臣の承認には慎重を期し、広く適正な判断を求めること及び輸出保険特別会計の収支に多く拘泥せず利用率の上昇を望む」とし、高橋委員付、「この運用は寛厳そのよろしきを期すべきである」と述べ、最後に武藤委員は、「運用に十分配慮して成果を挙げられたし」と述べました。  次いで採決に入りましたところ、全会一致を以て、本改正法案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上により本報告を終ります。(拍手)
  58. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  59. 河井彌八

    ○議長(河井彌八君) 総員起立と認めます。よつて本案は、全会一致を以て可決せられました。  本日の議事日程は、これにて終了いたしました。次会は、明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第公報を以て御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時七分散会      ―――――・――――― ○本日の会議に付した事件  一、議員派遣変更の件  一、日程第一 防衛庁設置法案及び自衛隊法案(趣旨説明)(前会の続)  一、日程第二 輸出保険法の一部を改正する法律案