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1953-10-30 第17回国会 参議院 法務委員会 1号 公式Web版

  1. 昭和二十八年十月三十日(金曜日)    午後一時五十一分開会   ―――――――――――――  委員氏名    委員長     郡  祐一君    理事      小野 義夫君    理事      宮城タマヨ君    理事      亀田 得治君            愛知 揆一君            青木 一男君            大達 茂雄君            楠見 義男君            中山 福藏君            三橋八次郎君            赤松 常子君            棚橋 小虎君            一松 定吉君            羽仁 五郎君            木村篤太郎君   ―――――――――――――   委員の異動 十月二十九日委員愛知揆一君辞任につ き、その補欠として加藤武徳君を議長 において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     郡  祐一君    理事            小野 義夫君            宮城タマヨ君            亀田 得治君    委員            楠見 義男君            中山 福藏君            三橋八次郎君            棚橋 小虎君   国務大臣    法 務 大 臣 犬養  健君   政府委員    法務省刑事局長 岡原 昌男君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  眞道君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件検察及び裁判の運営等に関する調査  の件  (報告書に関する件) ○派遣議員の報告 ○日本国アメリカ合衆国との間の安  全保障条約第三条に基く行政協定に  伴う刑事特別法の一部を改正する法  律案(内閣送付)   ―――――――――――――
  2. 郡祐一

    ○委員長(郡祐一君) 只今より委員会を開きます。  本日は先ず調査報告書の提出に関する件を議題に供します。第十六国会閉会中検察及び裁判の運営等に関する件につきまして継続調査を行なつて参りましたが、本院規則第五十五条によりますと、次の会期の初めに報告書を議長に提出することになつておりますので、未了の調査報告書を提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 郡祐一

    ○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めます。  なお、例によりまして報告書の内容は委員長に御一任願うこととして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 郡祐一

    ○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めます。報告書を提出することに賛成の諸君の御署名を願います。   多数意見者署名    三橋八次郎  棚橋 小虎    小野 義夫  宮城タマヨ    楠見 義男  亀田 得治    中山 福藏   ―――――――――――――
  5. 郡祐一

    ○委員長(郡祐一君) 次に、派遣議員の報告の件を議題に供します。  閉会中に北海道大阪府及び兵庫県に二班の議員派遣を行いましたので、その御報告をそれぞれ派遣議員のかたにお願いいたします。  私たち一松委員、加藤委員、私の三人は改正刑事訴訟法の運用状況、法廷秩序維持に関する問題を主眼といたしまして、検察及び裁判の運営等に関する調査をなすため、大阪府兵庫県に派遣されることなりましたので、堀専門員、三原調査員を帯同し、大阪市神戸市に出張いたし、九月六日から八日までの三日間に亘り所定の調査を完了いたしました。よつてここにその報告をいたすわけでありますが、詳細は長くなりますので、報告書に譲ることといたしまして、概要を申上げたいと思います。  今回の調査の目的といたしますところは、先般第十六国会において成立しました刑事訴訟法の一部改正及び刑法等の一部改正の運用の状況及び吹田事件公判の状況をも含めて一般的に法廷の秩序維持に関する問題を明らかにし、併せて関西における重要関係官庁施設を視察し、その実情を知ることであります。その調査の対象とした官庁及び調査の項目を申上げますと、  一、大阪高等裁判所につき高裁及び管内地裁、家裁並びに簡裁の裁判事務の概況、特に簡裁(なかんずく特任)判事の配置及び研修の実情。  二、大阪高等検察庁につき高検及び管内地検並びに区検の検察事務処理の概況、特に副検事の配置及び研修の実情。  三、大阪地方裁判所につき民事及び刑事事件の処理状況、特に令状発付及び法廷等の秩序維持に関する法律運用の実情。  四、大阪家庭裁判所につき少年審判、家事審判及び家事調停事件の処理状況、特に調停条項履行確保の実情。  五、大阪地方検察庁につき検察事務の処理状況、特に警察官との連絡協力の実情。  六、大阪拘置所につき拘禁者の処遇、特に拘禁者と弁護人との接見の実情。  七、神戸地方裁判所につき民事及び刑事事件の処理状況、特に令状発付及び法廷等の秩序維持に関する法律運用の実情。  八、神戸家庭裁判所につき少年審判、家事審判及び家事調停事件の処理状況、特に調停条項履行確保の実情。  九、神戸地方検察庁につき検察事務の処理状況、特に警察官との連絡協力の実情等であります。  調査を実施いたしますため、大阪におきましては大阪高裁に、神戸におきましては神戸地裁に裁判所関係、検察庁関係、一般法曹関係の会合を別々に開き、それぞれ資料の提出を願い説明を聞き質疑応答を行い、懇談を重ねました。又大阪におきましては大阪拘置所家庭裁判所及びその建築状況を視察し、裁判所関係の敷地を見分いたし、神戸におきましては地検及び家庭裁判所につき庁舎及び施設の状況を視察いたしました。  かような次第で新しい施設、重要な事案を見聞いたしまして十分所期の成果を収め得たと存じております。従いまして御報告いたすべき事柄が相当あるわけでありますが、詳細は報告書及び添附の資料によつて御了承願うことといたしまして、簡単に概要だけを御報告いたします。
  6. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 北海道への議員派遣報告を申上げます。  赤松、三橋、宮城の三委員は第十六国会の閉会中、検察及び裁判の運営等に関する調査のため、北海道に派遣せられることになりました。そこで私たち三人は及川調査員、小島法制局参事を帯同し、売春問題、特に最近条例を改正して売春行為自体を処罰するこことした札幌市及び売春を公認するような条例を作ろうとして世間の注目を浴びた千歳町における売春の実態並びにその取締の現況などを調査することにいたしまして、去る九月十三日より六日間、札幌市及び千歳町に出張したのであります。  調査は順調に進みまして、予定通り所期の目的を達して帰京することができたのでございますが、その経過及び結果につきましては詳細に調査報告書を作成いたしまして、売春関係参考資料として各委員のお手許に配付すべく目下印刷中でございますから、それによつて詳しく御了承願いたいと存じます。
  7. 郡祐一

    ○委員長(郡祐一君) 次に、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案、予備審査を議題に供します。先ず政府より提案理由の説明を聴取いたします。
  8. 犬養健

    国務大臣犬養健君) 只今議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律案につき、提案の理由を御説明申し上げます。  日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて、日本国及びその附近に配備された合衆国軍隊に関して、行政協定の趣旨に則り、刑事上の実体法及び手続法についての特別規定を定めたものとして、昨年五月七日公布施行をみたものでありますが、今般発効をみるにいたりました日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定第十七条を改正する議定書により、同軍隊に対する刑事裁判権の行使に関する事項が改正され、これに伴い刑事特別法中の手続規定につきましてその一部を改正する必要を生じましたので、この法律案を提出することといたしたものであります。  改正の主要点を申し上げますと、先ず第一に合衆国軍隊使用する施設又は区域内における逮捕等につきまして、現行法の下におきましては、合衆国軍隊権限ある者の同意を得るか又はこれに嘱託して行わなければならないのでありますが、これを改めまして、かかる同意又は嘱託を要する場合を合衆国軍隊がその権限に基いて警備している施設又は区域内に限りますと共に、重大な犯罪にかかる現行犯人を逮捕する場合におきましてはかかる施設又は区域内におきましても、右の同意を得ることを要しないこととした点であります。  第二は、逮捕された合衆国軍隊の構成員又は軍属の身柄の引渡につきまして、現行法の下におきましては検察官又は司法警察員は、逮捕された者が合衆国軍隊の構成員、軍属又は家族であることを確認いたしましたときは、直ちにその者を合衆国軍隊に引き渡さなければならないこととされておりますが、これを改めまして、引き渡すべき場合は、同軍隊の構成員又は軍属の犯した犯罪が、公務執行中に行われた場合等、合衆国が第一次裁判権を行使する罪にあたる場合に限ることとした点であります。  第三は、施設又は区域内における捜索差押等につきまして現行法の下におきましては、合衆国軍隊使用する施設又は区域内において、又は合衆国軍隊財産について、これを行うには、合衆国軍隊権限ある者の同意を得るか又はこれに嘱託しなければならないこととされており、又、合衆国軍隊の構成員、軍属又は家族の身体又は財産に対して行う場合においても、ほぼ同様の制約がなされているのでありますが、これを改めまして、かかる同意又は嘱託を要する場合を合衆国軍隊がその権限に基いて警備している施設又は区域内で行う場合と合衆国軍隊財産について行う場合とに限るごととした点であります。  以上この法律案につきまして概略御説明申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上速かに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
  9. 郡祐一

    ○委員長(郡祐一君) 本案について御質疑のおありのかたは順次御発言を願います。……それでは質疑に入ります前に、刑事局長から只今の大臣の説明に補足いたしました説明を聴取いたしたいと思います。
  10. 岡原昌男

    ○政府委員(岡原昌男君) 実は今回御審議をお願いいたしました行政協定に伴う刑事特別法の一部改正法律案につきましては、別途いつもの例に従いまして詳細な逐条の説明を用意したのでございますが、印刷の関係であと二、三日間かかるような話でございますので、一応時間の節約上そのあらましだけを只今御説明申上げたいと思います。  この今回の改正は御承知の通り、行政協定第十七条につきまして先般全面的にこれをNATO方式に切替える議定書が成立いたしました。そうしてこれに伴いまして若干の事項についての公式議事録もできました次第であります。その考え方といたしましては、かねて問題になつておりました日米行政協定の第十七条のいわゆる刑事裁判権条項に関しまして、日本側において非常に不利な点があるのではないかという点を、いわゆる国際公法の最も最新的な形式と言われます北大西洋方式に切替えるというところに主眼があつたのでございます。で、北大西洋条約の考え方は、これはすでに前回の国会でお手許に資料はお配りいたしましたし、今回又用意はいたしておりますが、それを御覧頂くとわかります通り、大体三つの範疇に分けて考えてございます。その一つは、いわゆる専属的裁判権の問題でございます。それは両方の、駐留国とそれから受入国とその両方がそれぞれの立場で専属的裁判権を行使する場合という場合が一つでございます。それでどういう場合かと申しますと、一方の例えば受入国のほうで全然処罰ができない。で、一方の駐留国のほうではこれを処罰ができる。つまり罰条がないものはこれは初めから問題になりませんので、そういう場合は片一方だけが専属的な裁判権を有する。丁度逆な場合に、駐留国において処罰できないけれども、受入国において処罰ができるという場合の受入国の専属的な裁判権、これがいわゆる専属的な場合の考え方でございます。  次には、今度は両方で処罰ができる場合にはどうなるかということになるわけでございまして、それを第一次裁判権と第二次裁判権と二つに分けるわけでございます。甲の国、受入国の法律でも処罰ができる、それから駐留国のほうの法律に則つてもやはり処罰にかかる。それではそのどちらを先にやるのかという問題が出て来るわけでございますが、その際には、特殊の犯罪を限つて駐留国において特に必要とする、或いは軍に直接影響するような犯罪だけを限つてこれを第一次に裁判権を持ち、その他に挙げて受入国の裁判権に委ねるというふうに考えるわけでございます。そこで、この競合する場合の、いわゆる第一次裁判権、第二次裁判権、この二つができて参りまして、そうして今度はこの第一次裁判権と第二次裁判権をどのように調整するかと申しますと、第一次裁判権を行使しない場合は、この第二次裁判権を行使する権利を片方が確保する。要するに一方がやらなければ片一方がやる。その順序がきめられて来たわけであります。それがNATO方式の、いわゆるNATOの方式の根本的な立て方でございます。で、その考え方はすべて相互主義になつておりまして、その特殊の法律等も大体現在の国際公法の通念において認められたところを掲げておるのでございまして、すでにノールウェー、アメリカフランス、ペルジウムと、この四ヵ方国がごの北大西洋条約に加盟して効力を発効したわけでございます。で、我が国におきましても、それに則りまして、かれてアメリカに対し行政協定第十七条の第一項に基く改訂の要請をしておつたわけでございます。本年の四月の十四日と思いますが、アメリカに対してその改訂を申込んでおつたのでございますが、それが御承知の通りアメリカ上院おけにるこのNATO協定の批准の問題にからまりまして、かなり時日が遷延したわけでございます。そうしてその結果漸く七月の二十三日にこれが通過したのでございます。それに並行いたしまして、私どものほうといたしましても、外務省と密接な連絡を保ちながら、アメリカ当局とこの十七条の現在の形をNATO方式に切替えるようにという前の主張を具体的に会議の上に生かして行つたわけでございます。この点は或いは外務省のほうから御説明願うのが正しいかとも思いますが、その経過におきましては、必ずしも簡単ではなかつたのでございますけれども、結局その我々の主張が殆んで全部通りまして、実質的に全部NATO方式と同じように切替つたわけでございます。そこで別に資料としてお配りいたしました通りの安全保障条約第三条に基く行政協定十七条を改訂する議定書及び同義定書に合意された公式議事録、かようなものができたわけでございます。さような関係で従来の行政協定に基く刊事特別法、これが手続の面でこの新たに議定されました十七条の条文と違つて来た面が出て参つたわけでございます。で今までは国会の開会中でございませんでしたので、とりあえずはごの議定書に定むるところと、それからこれに抵触せざる範囲の従来の刊事特別法を以て律しておるという法律関係でございますが、すでに国会も開会になりましたので、早急にこの法律の改正を御審議願うことになつた次第でございます。  それでは内容は割合に簡単でございますが、一応逐条的に御説明いたしたいと思います。御承知の通り、刑事特別法の第一条は定義規定でございまして、それから二条から九条までが罰則規定でございます。その関係はすべてちつとも動いておりませんので、一つも改正の必要はないわけでございます。  そこで第三章の手続規定のうち若干の規定が今度動いて来たわけでございます。第十条の元の条文は「合衆国軍隊の使用する施設又は区域内における逮捕、勾引状又は勾留状の執行その他人身を拘束する処分は、合衆国軍隊の権限ある者の承認を受けて行い、又は検察官若しくは司法警察職員からその合衆国軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。」という条文でございました。ところが今回この公式議事録の10の(a)及び10の(b)に関してというこの資料の十三頁の二行から三行にかけまして、「合衆国の軍当局は、通常、合衆国軍隊が使用し、且つ、その権限に基いて警備している施設及び区域内ですべての逮捕を行うものとする。このことは、合衆国軍隊の権限のある当局が同意する場合又は重大な罪を犯した現行犯人を追跡している場合において日本国の当局が前記の施設又は区域内において逮捕を行うことを妨げるものではない。」というふうにこの警察権の行う区域を、警備しておる施設及び区域、と使用し且つ警備しておるというふうに限定して参つたわけでございます。つまり非常に狭い区域だけ向うがやつて、あとは一切こちらに任せろということになりましたので、その関係でこの条文が動いて来たわけでございます。今回直しました条文は「合衆国軍隊がその権限に基いて警備しておる合衆国の軍隊の使用する施設又は区域内における逮捕、勾引状又は勾留状の執行その他人身を拘束する処分は、」こういうふうに直つて来たわけでございます。  それからこの同意という文字を今度使いましたのは、やはり今読みました中に、同意というのは公式議事録の中にございました。前は承認という言葉が使つてあつたわけでございます。承認よりもやや同意のほうがこちらに有利だという感じがございますし、英文もこれが前はアプルーヴアルという文字を使つておりましたのを、今度コンセントという文字を使つております。さようなわけで今度この文字を変えたわけでございます。なお、その次に「検察官若しくは司法警察職員から」云々というのは、これは特にそれを語呂の関係上、それを入れずとも同じことでございますが、検察官若しくは警察職員と申しますと、ほかの権限ある官庁が抜けて来るわけでございます。例えば国鉄の公安官であるとか検察事務官等が抜けて来るわけでございますので、これはやはり一般の者もなし得るということに一般の訴訟法通りに直したわけでございます。  次は十条の第二項といたしまして、「死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる罪に係る現行犯人を追跡して前項の施設又は区域内において逮捕する場合には、同項の同意を得ることを要しない。」という一項を追加いたしました。この点は前に日米間の合同委員会においてこの実態はすでに合意されておつたわけでございます。そうして今回これが先ほど読みました通り、公式議事録の中に入つて参りましたので、これを我がほうにおいても刑事特別法の中に条文として取入れる。そうしてはつきりさせるということにいたしたわけでございます。つまり法定刑が死刑又は無期若しくは長期三年以上、大低の刑法犯は入つて参りますが、長期三年以上の懲役又は禁錮にあたる現行犯人、これを追いかけてこの施設又は区域内に入つた場合には、同意を要せずしてつかまえ得る、かような趣旨でございます。  次は第十一条の関係でございます。第十一条は元の条文は「検察官又は司法警察職員は、合衆国軍隊の使用する施設又は区域外で逮捕された者が合衆国軍隊の構成員、軍属又は家族(以下『合衆国軍隊要員』という。)であることを確認したときは、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定にかかわらず、直ちに被疑者を合衆国軍隊に引き渡さなければならない。」ということになつておつたのでございますが、先ほど申しました通り裁判権の所在につきましていわゆる競合した場合に第一次裁判権、第二次裁判権という観念が入つて参りました。そうして第一次裁判権が向うにあるときに、それは身柄も向うに渡すのが当然であるが、そうでない場合はこちらでずつと引続いてやるのが当然だ、さような関係から向うに直ちに引渡す被疑者の範囲が減つて参つたわけでございます。で、今回の条文は「検察官又は司法警察員は、逮捕された者が合衆国軍隊の構成員又は軍属であり、且つ、その者の犯した罪が行政協定第十七条第三項(a)に掲げる罪のいずれかに該当すると明らかに認めたときは、刑事訴訟法の規定にかかわらず、直ちに被疑者を合衆国軍隊に引き渡さなければならない。」こいうふうに直つたわけでございます。ここに行政協定第十七条第三項(a)と申しますのは、先ほど申しました合衆国軍当局側が第一次裁判権を持つ場合でございます。これを改訂されました行政協定十七条の議定書について読み上げますると、「裁判権を行使する権利が競合する場合には、次の規定が適用される。」この3の(a)が、「合衆国の軍当局は、次の罪については、合衆国軍隊の構成員又は軍属に対して裁判権を行使する第一次の権利を有する。」ここで特に御注意を願いたいのは、家族が入つておりません。ですから第一次裁判権を向うが家族に対して最初に持つという場合はないわけでございます。それを受けましてこちらの法案も家族は勿論除いてございます。で、「第一次の権利を有する。」で、(i)といたしまして、「もつぱら合衆国の財産若しくは安全のみに対する罪又はもつぱら合衆国軍隊の他の構成員若しくは軍属若しくは合衆国軍隊の構成員若しくは軍属の家族の身体若しくは財産のみに対する罪」、この(i)は語呂が少し変でございますが、要点は要するに向う側の国の安全に対する罪、こちらに余り影響のないような犯罪というような趣旨でございます。それから(ii)の「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」、これは国際公法上でこれ又すでに長く認められました国際法の原則を取入れたわけでございます。で、「公務執行中の作為又は不作為」、この「中」という文字につきましても米軍当局はかなり厳格な観念で扱つておるようでございます。  言い換えますと、単に公務執行の時間中であつただけではいけない。公務執行の勤務時間中であるというだけでは公務執行中にはならない。やはりやつているその当該の作為又は不作為が公務そのものというふうなものでなければならないというふうなわけから、厳格な観念によつておるようでございます。それからなおここに出て参ります安全に対する罪という言葉が出ておりますが、これは同じく十七条の第二項の(c)に註釈がございます。「本条2及び3の適用上、国の安全に関する罪は、次のものを含む。(i)当該国に対する反逆(ii)妨害行為(サボタージュ)、ちよう報行為又は当該国の公務上若しくは国防上の秘密に関する法令の違反」ということになつておるわけでございます。この罪の更に詳しい内容については相互に通告するという建前になつております。まだ通告は参つておりません。さような関係で十一条の引渡の場合を前と比べまして非常に限定されて参つたので、その点を改正いたしたのが只今読上げました条文でございます。  次は第十二条関係でございます。元の条文は「検察官又は司法警察員は、行政協定第十七条第三項(b)又は(c)による引渡の通知があつた場合には、裁判官の発する逮捕状を示して被疑者の引渡を受け、又は検察事務官若しくは司法警察職員にその引渡を受けさせなければならない。」かようになつておつたわけでございます。ところで今回この点の十七条の規定が全部がらつと変つて参りましたので、「第三項(b)又(c)」ということがなくなつて参りました。そうしてあちらの側で捕まつた場合の身柄の取扱いにつきまして、先ほど読上げました公式議事録の十項の(a)及び十項の(b)に関するというところの二番目にございますが、改訂前の行政協定第十七条第三項(b)又は(c)の場合よりも広く認められることになつて来たわけでございます。そこでその辺の語呂を合せると申しますか、調子を合せると申しますか、その合せるために今回は次のように改正しようとするものであります。「検察官又は司法警察員は、合衆国軍隊から日本国の法令による罪を犯した者を引き渡す旨の通知があつた場合には、裁判官の発する逮捕状を示して裁疑者の引渡を受け、又は検察事務官若しくは司法警察職員にその引渡を受けさせなければならない。」前段の通知の規定を単に前の十七条三項の(b)又は(c)ということでなくて、全般的にこちらに、「日本国の法令による罪を犯した者を引き渡す」という大部分の場合を全部入れたわけでございます。  次は十三条関係でございます。十三条につきましては、先ほど第十条の関係で「承認」という言葉を「同意」というふうに直したと申上げましたが、それと同じように公式議事録の第十に関しまして、丁度この印刷物の十四頁の二項になりますが「日本国の当局は、通常、合衆国軍隊が使用し、且つ、その権限に基いて警備している施設若しくは区域内にあるすべての者若しくは財産について、又は所在地のいかんを問わず合衆国軍隊の財産について、捜索、差押又は検証を行う権利を行使しない。但し、合衆国軍隊の権限のある当局が、日本国の当局によるこれらの捜索、差押又は検証に同意した場合は、この限りでない。」という文字に変つておりますので、この趣旨をここに取入れたわけでございます。実体的には余り変ていないのでございます。  なお改正前の十三条第二項、つまり「合衆国軍隊の使用する施設又は区域外にある合衆国軍隊要員の身体又は財産」に対する場合、これは今回すべて要らなくなりました。ほかの一般の刑事訴訟法にまつすぐ乗つて来るわけでありますので、この条文を削除した次第でございます。  次は第十八条関係でございます。第十八条は、この前刑事特別法の御審議を煩わしたときにも御説明いたしました通り、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件、つまり日本の法令で罰せられる事件以外の事件、こういう事件でございます。さような事件について協力の規定を置いたわけでございます。この点は日本の法律に違反する罪でございますと、刑事訴訟法の規定がそのままかぶつて参るわけでございまして、何らの特別の措置は必要はないのでございますが、ところがこのように、平たく申しますと、アメリカの法律に違反するというふうな罪でこちらの法律に違反しないという場合には、やはり何かの特別の規定を要するというので設けられた規定でございますが、このうち合衆国軍隊の構成員、軍属又は軍法に服する家族というふうに改めた趣旨は、要するに家族のうち、前の十八条の関係で合衆国の軍隊要員といいますのは家族すべて入つております。その家族のうち軍法に服する家族だけが今回の刑事裁判権の問題に取入れられて参つて、あとは一般の普通の市民と同じ取扱いになります。さような軍法に服する家族だけについてはこの規定によればよろしい。あとは刑事訴訟法による、かように絞つてこれを限定したのであります。その次の第十八条第三項も全く同じでございます。四項も又同じでございます。  次は附則でございます。附則の第一項は公布の日から施行するというので、成るべく早く施行いたしたい。ただ先ほど申上げました通り、現在は何とか解釈上条約と同じ効力を持つ行政協定の該当条文並びにこれに抵触せざる範囲の国内法、かようなものを動かしておるわけでございますが、やはりそれは国内法的に完全な形とは言い得ないと思いますので、正しい形に引直して行きたい、従つて成るべく早く公布施行したい、かような考え方でございます。  第二項は経過規定でございまして、「検察官又は司法警察員は、逮捕された者が合衆国軍隊の構成員、軍属又は家族であり、且つ、その者の犯した罪が昭和二十八年十月二十九日前の行為に係るものであることを確認したときは、この法律による改正後の第十一条第一項の規定により引渡をなすべき場合に該当しない場合においても、刑事訴訟法の規定にかかわらず、直ちに被疑者を合衆国軍隊に引き渡さなければならない。」、この趣旨はいわゆる手続法規におきましては、普通従来の大陸法系の考え方によりますると、犯罪の起つたそのとき如何にかかわらず、現にその手続の進行するときを基準にしてこれを律する、というのが大体の建前でございます。ところがこの点に関しまして、英米法のほうは、むしろそれが逆になつておりまして、手続法規が改正される場合にあつては、その改正される以後に犯された罪につてのい手続のみにこれを適用する、かような建前になつておりまして、この点は、合衆国の判例、或いは何といいますか、取扱いの実際、それから立法も幾つか見つけましたが、さようなことになつておりますので、この点は我々の従来の法律観念と若干違いがあるのではないかと言つて、いろいろ議論いたしました末、やはりこはり、これは一応さように問題が複雑化するものであれば、その英米法系の考え方によるのも止むを得ないのではないか。併し実際問題としては、古い事件を一、一掘り下げて、アメリカで問題にした事件を更にもう一度やるという必要はないのでございますから、大体賄えるであろうということで、かような規定にいたしたわけでございます。  次は第三項でございますが、「司法警察員は、前項の規定により被疑者を合衆国軍隊に引き渡した場合においても、必要な捜査を行い、すみやかに書類及び証拠物とともに事件検察官に送致しなければならない。」、これは事件送致の特例と申しますか、すべて向う側に引き渡した場合においても、事件だけは必要な捜査を行つた上に、こちらに移さなければならん、かようなことを明らかにした趣旨でございます。  なお、この附則第四項といたしまして、国税犯則取締法の臨時特例に関する法律の条文を追加してございます。これは先ほど申上げました通り、「合衆国の使用する施設及び区域内」という従来の考え方が第十条関係及び第十三条関係において申上げました通り、「合衆国軍隊がその権限に基いて警備している」ということに変つて参りました。つまり向う側の警察権の及ぶ範囲が極めて限定されまして、その他は日本の機関が普通通りやれるということになつて来ましたので、これに伴いまして国税犯則取締法関税法等の同じ条文もやはり直さなければいかん、かような考え方で直したわけでございます。それからなおもう一つ、「承認」という文字を「同意」に変えましたのも、先ほど十条並びに十三条の関係で申上げたと全く同様でございます。条文は、「合衆国軍隊の使用する施設及び区域内における国税犯則取締法又は関税法の規定による臨検、捜索又は差押は、合衆国軍隊の権限ある者の承認を受けて行い、又は国税庁長官、国税局長、税務署長若しくは税関長から合衆国軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。」という従来の条文を、「合衆国軍隊がその権限に基いて警備している合衆国軍隊の使用する施設及び区域」というふうに直し、なお先ほどの「承認」という文字を「同意」という文字に変えた次第でございます。  以上が大体逐条説明でございます。なお御質疑に応じまして又詳細なお答えをいたしたいと思います。
  11. 郡祐一

    ○委員長(郡祐一君) それでは御質疑のあるかたは御質疑を願います。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  12. 郡祐一

    ○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。では質疑は次回に譲るごとにいたします。次回は明日午前十時から開会することといたしまして、本日はこれを以て散会いたします。    午後二時三十九分散会