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1953-07-27 第16回国会 参議院 内閣委員会 23号 公式Web版

  1. 昭和二十八年七月二十七日(月曜日)    午前十時四十三分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     小酒井義男君    理事            上原 正吉君            長島 銀藏君            竹下 豐次君    委員            井上 知治君            白波瀬米吉君            重宗 雄三君            井野 碩哉君            高瀬荘太郎君            成瀬 幡治君            松永 義雄君            松原 一彦君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 木村篤太郎君   政府委員    外務大臣官房長 大江  晃君    外務参事官    (外務大臣官房    審議室付)   廣瀬 節男君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   参考人    早稲田大学教授 末高  信君    日本放送協会解    説委員     齋藤榮三郎君    東京新聞論説委    員       及川六三四君    旧軍人関係恩給    復活全国連絡会    副会長     福留  繁君    日本傷痍軍人会   恩給対策委員長  森田 忠平君    全戦傷病者要求   貫徹闘争委員長  川原 和雄君    日本国有鉄道機    関車労働組合中   央執行副委員長  中村 順造君    国鉄労働組合交    渉部長     鈴木  清君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○恩給法の一部を改正する法律案(内  閣提出・衆議院送付) ○保安庁法の一部を改正する法律案  (内閣提出・衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 只今より内閣委員会を開会いたします。  恩給法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日はかねてお諮りをしてありましたように、本法律案について各参考人の方々から御意見を聴取することになつておりますので、只今より参考人の方の意見をお述べ願うことにいたします。  開会に当りまして参考人として御出席下さつた皆さんに一言御挨拶申上げますが、御承知のように、恩給法の一部を改正する法律案が過日衆議限で可決せられまして本院に送付をされております。当委員会に本法律案の審議を付託をせられておりますので、それの審議に当つて皆さん方の御意見をお聞かせ願つて慎重に審議をして参りたいと考えております。  非常にお忙しくお暑い中を御出店下さいましてありがとうございます。委員に代りまして一言御礼申上げます。  それから参考人の方にちよつとお願い申上げておきますが、甚だ勝手でございますけれども、大体お述べになる時間を二十分くらいに一つお願いをいたして、あとお述べ願つた順序で委員のかたから何か質問があれば一つお尋ね申上げる、こういうふうに進めたいと思いますのでお含みの上ひとつお述べ願いたいと思います。  それでは早稲田大学教授の末高信さんにお願いいたします。
  3. 末高信

    ○参考人(末高信君) 御指名を頂きました末高でございます。簡単に所見を述べたいと思います。軍人恩給復活を図るこの法律案につきましては、私は残念ながら賛意を表することができないものでありますが、次にその要旨を述べてみたいと思います。  第一は行過ぎ是正の問題であります。この軍人恩給の復活は、占領期間中に司令部によつて行われた施策の行過ぎを是正するということでございます。この議論は講和成立後万事反動的、保守的な風潮の中にありまして、一般人に訴えやすい考え方であると思います。けれど考えなければならないことは、敗戦後祖国崩壊のあとを受けまして、我々の立ち上つたときの決意は、既往は問わない焼土の上に立つた姿、裸のままで皆なが懸命の努力を傾け、めいめいで生活の重荷を担つて行こうという決意であつたことは、今なお忘れることのできない事実であります。かくて先祖伝来の家業を失つた者、都市爆撃によつて家財を失つた者等いずれも無一物になつたのであります。これらの人々に対し戦時災害補償法等による国の約束は何ら行われることなく廃棄せられたのでありますが、これこそ敗戦によつて国民一般の負うべき苦悩であるとしてたえ忍んで来たのであります。このような犠牲はもちろん物ばかりではございません。一人むすこが学徒の勤労動員によつて倒れ、一家の主人が徴用工で傷つき、或いは都市防空に挺身中に命を落した者等無数の犠牲者の家族はこれが運命であると諦めて黙々とたえているのであります。更に広島、長崎の原爆の犠牲者数十万人の家庭も又国の特別の補助を受けることなく立ち上つているのであります。即ち私どもは戦前及び戦時中の国の法律によつて約束せらていた補償は全部御破算として、素裸のままで各自の全力を注ぐことを誓つたのであります。かくて軍人恩給の停止は形は当時の司令部の命令によつたものでありますが、その精神は敗戦後日時という国家がその再建のためにとつた根本的方針、即ち裸のままで出発するというその根本的方針に一致するものでありますから、この軍人恩給の停止は行過ぎの施策であるどころかむしろまさにとるべき当然の施策であつて、今日これを是正するという口実を借りて復活することは、まさに反動政策と言われてもやむを得ないことと存じます。  第二は国民各階層の不公平を助長するという点であります。仮に百歩を譲つて恩給停止が行過ぎの施策であるとし、これを是正することとなりますと、戦時災害補償の全面的実行、農地改革の名において収奪せられたところの農地の復元等も、旧憲法時代の各種法律によつて約束付けられ、規定せられていたものでありまするからして、当然これを行わなければならないと思います。然るに軍人恩給のみについてこれを復活するということは、国民のうちに重要なる不公平、不均衡をかもすものであろうと思います。  第三は、旧軍人の間に不公平が起るという点でおります。この法案において構想せられている方式では、軍人恩給を復活すると、旧軍人のうちに不公平、不均衡をかもすことになります。即ちこの法案の説明書によりますると、終戦時において従来の恩給法の規定通りに恩給を支給いたしますれば、受給者は七百万人前後、その所要金額は二千億円と推定せられておるのでありますが、その後新たなる報告に基いて推計いたしますると、現在において従来の規定で恩給を復活することになれば、受給者三百六十万人、所要金網千五百億円であるとせられております。ところがこの法案では、復活恩給の受給者百九十二万人、所要金額は平年度におきまして五百七十七億円余りにしぼられております。うち生存年余恩給は二十四万七千人、その所要金額六十九億円、遺族に対して与えられるところの扶助料年金については、百六十七万七千人でその所要金額五百八億円となつております。このように従来の恩給法がそのまま復活する場合に比し、この法案の構想によれば受給人員において約二分の一、金額において約三分の一に圧縮せられている理由は、普通恩給及び普通扶助料についての在職年数に対するところの加算がなくなつたからであります。このため公務傷病にようずして恩給又は扶助料を受けることのできる者は、将校、下士官等のいわば職業軍人及びその遺族であつて、民間から出た一般兵にありましては、この生存年金又扶助料を受けることができないのであります。このことは職業軍人と民間兵との間に重大なアンバランスをもたらすものであります。  第四は反動思想という点であります。旧憲法時代の軍人恩給は明治初年から行われまして、法律としては明治二十三年に規定せられたものであります。それを貫くところの基本的観念は絶対君主としての天皇がその股肱に賜わる恩恵であることは疑うことはできないのであります。即ち天皇に対する日頃の忠勤に対するほうびとして、老後における給与の形をとつたものがこの軍人恩給であります。然るに現在の憲法では、天皇の憲法上の地位は全く変化し国の主権者は国民であります。そして戦争を放棄し軍人という階層は消滅した今日、天皇の股肱たる者は存在しないのであります。ところが大将には大将なりの恩給が復活することとなると、旧憲法時代の天皇の恩賞とかほうびとかが再びよみがえるような感じを打消すことはできません。私は、大将の恩給の復活は大将という終身官の身分の復活を前提とするものであり、或いは少くともそれを予想するものであつて、そのこと自体憲法違反であつて、従つて軍人恩給復活は憲法に忠実である限り不可能であるということを信ずるものでありますが、仮に法理として私の論断に異なる見解があるといたしましても、天皇の股肱に与えた恩賞に出発したところの恩給を復活することは、少くとも憲法の精神にそむくところの施設であるということは疑いのないところであります。  第五は財政負担の点であります。この軍人恩給の復活のための予算は本年度は四月から十二月までの九ヵ月分で四百五十億円となつておりますが、平年度におきましては五百七十七億円と見積られております。このほかに傷病賜金のような一時金として給付するものを加えるならば毎年の予算は総予算の六%を占めることになります。私は、全国民に対し窮乏からその生活を守り、その生活を保障するための生活保護費が僅かに二百五十億にとどまつている現在において、この軍人という特殊の階層に対する恩給の復活によつてその二倍以上ろ国費を使うことは、一つは財政負担の絶対額の点からも、一つは生活保護費との均衡から見て賛成できないものであります。  第六は再軍備との関連であります。この案に対する反対の論拠の最後のものとして指摘したいことは、これが再軍備の地ならしとして利用せられるのではないかという懸念でございます。今日は再軍備の賛否に対して私の見解を述べる機会ではございませんけれども、今日再軍備が憲法上不可能であることは厳然たる事実であります。然るに従来政府の施策は、再軍備のために用意をしているかに見えるものが多々あるのであります。かくて再軍備を既成事実として作り上げているのではないかという懸念を国民一般が持つていることは否定できないのでございます。この軍人恩給の復活が予備隊、保安隊の士気を鼓舞し、その募集を容易ならしめることをねらつているのではないかという懸念を我々は持つものであります。かくて再軍備につながる一切の施策の一部門として、この軍人恩給の復活のための法案に反対せざるを得ないのであります。  以上私は軍人恩給の復活に対する反対の論拠を述べて参りましたが、最後にこの問題に対する積極的、建設的の意見を述べて私の論述を結びたいと思うのであります。  私どもが現在社会の根底をきわめ国民生活の実際に触れるならば、そこには窮乏に悩む人々、惨苦と絶望のうちにあえいでいる人々の余りに多いのに驚くのであります。貧乏のどん底にもだえている者は旧軍人の未亡人や子供ばかりではない。一般の孤児や未亡人や老人や失業者、病人の人々は、旧軍人のように集団の偉力をもつて運動する術を知らない。又知つてもその力がない。従つて旧軍人がよき理解者を首相、閣僚のうちに持つように、有力な理解者、支持者を持つことができないで毎日ただ不安と窮乏のうちにその命をすりへらしているのであります。けれども政治というものは語られざる民衆の声に耳を傾け、訴えられざる国民の苦悩に目を向けることでなければならんのであります。かくて悩みある人に慰めを与え、光なき人々に燈を点ずることこそ国の責任であります。この責任を果すものは即ち社会保障制度であります。私は政府が軍人恩給復活のための費用として予定している本年度四百五十億円、平年度五百七十七億円を、この国の責任において全国民にその生活を保障するところの社会保障制度の中に投入するならば、本年度の社会保障制度予算約七百四十億円、それは生活保護、児童保護、社会保険、結核対策等を含んでおるのでありますが、七百四十億円にプラスせられまするならば総額は実に千二百億又は千三百億円の巨額に上り、私ども社会保障制度審議会から首相に対し勧告してある内容と規模においてこの制度を充実することができるのであります。私は旧軍人の諸君、特にその傷い者並びに遺族の方々のうちに、真に自力では生活を支えることのできない方々に対する厚い同情を持つことにおいて、あえて人後に落ちるものではないのでありますが、旧軍人であつたがための集団としてこれに恩給を復活することは何としても不合理であると信ずるのであります。即ち国民一般として納得する平等の保障即ち社会保障こそとるべき方策であります。  終りに繰返し私は皆さんにお願い申上げたいと存ずるのであります。旧軍人の諸君と共に、そのほかにも社会にまだまだ存在する多くの不在な人々の声なき祈り、深刻な多くの戦争犠牲者の静かなる訴えに耳を傾けて下さることをお願いいたします。
  4. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 只今お述べ願つた末高さんの御意見に対して、何か御質問ございましたら。
  5. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 只今末高さんは社会保障制度でなければいけないというお説でありましたが、そうすると、軍人恩給者も社会制度にしろというお説でございましようか。もう一点それをお聞きしたいと思います。
  6. 末高信

    ○参考人(末高信君) お尋ねの御趣旨はいわゆる文官恩給に関連してでございましようか。
  7. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 そうです。
  8. 末高信

    ○参考人(末高信君) 現在支給せられている文官恩給といたしましては、これはその全体の官吏に対するところの賃金制度の一部分をなしておるのです。で、必ずしも天皇の恩恵、股肱が尽すところの忠誠に対するところのほうびの意見を現在持つておらないと思います。いわば俸給の後払いの形を持つておるものが多々あると思うのでありますが、併しこれが私の考えるところによりますれば、官吏、公務員の給与制度というものが、民間の給与制度と大体マッチするようになりますれば、全体をひつくるめて現在の社会保障制度、特に厚生年金保険制度の中にこれを包含することが望ましと考えております。その準備を今日において着々しなければならないという工合に考えております。
  9. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 そうしますと、軍人恩給の恩給という名前はやめてしまつて、そして給料後払のような形の、やはり社会保障制度の前提条件としてやる、こういう御意見ですか。
  10. 末高信

    ○参考人(末高信君) そういうものが合理的に構想せられれば私は賛成申上げたいのであります。例えば西ドイツにおきまして負担均衡法ということがいま構想せられております。あらゆる戦争犠牲というものを地ならしして、その戦争の犠牲を国民全体が均衡に負担するという法案が練られておるのでありますが、そういう意味におきまして、あらゆる犠牲というものは評価せられて、国民に公平なるきよ出を求めて、これを是正するということであれば私は納得いたします。
  11. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 ちよつてお尋ねいたします。今長島さんの御質問に対するお答えを承わりますと、文官のほうは軍人と違つて忠誠という意味が余り包含されてないのでこの存在は認めてもいいというお答えだつたのでしようか、よくはつきりわからなかつたのですが。
  12. 末高信

    ○参考人(末高信君) 少くとも現在あるがままの恩給制度の中には、天皇の股肱に対して与えられる御ほうびという観念は殆んどないと考えております、文官恩給につきまして。普通の銀行会社における退職資金的な性格が大部分であると考えております。
  13. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 従来の恩給法で文官と当時の武官と二つに分けまして、武官は忠誠という気持が非常に濃厚であります。併し文官はそうでないというようなことがどこかではつきりしておるのでしようか。一本じやないのでしようか。
  14. 末高信

    ○参考人(末高信君) いや法文の上でははつきりいたしておらないと考えます。併し武官は、どこの国におきましても、封建時代におきましては侍に対するところの知行であります。永世に亘つて先租代々同じ知行が与えられる、全生命を天皇に捧げる、君主に捧げるという意味で知行が与えられていたと思います。それを資本主義になるとそれが俸給という形に切り替つて参りましたが、軍人に対して知行の一部分が結局生涯の忠誠を誓わせるために与えられるところのものと、こういう感じが軍人恩給に非常に濃厚であつたと考えております。文官に対するところの大正十二年にできております今日の恩給法はややその感じを持つておりますが、終戦後は大分性格の変化があつたと考えております。少くとも法律的には性格の変化がなくても、これを支払う側から申しますと、国家という立場におきまして文官に払うところの文官恩給というものが、必ずしも天皇に対する、或いは君主に対するところの忠誠というものとは別に、俸給の後払の形式、而も或る意味におきましては、社会保障的な老後の生活を勤労者に対して与えるというような意味を多分に持つておる制度ではないか。併しこれに対しては私が先ほど申上げたように満足いたしておりません。この官吏又は公務員に対するところの俸給制度というものと、民間の賃金或いは俸給の制度というものとが、だんだん同じような水準において給与が与えられるということになりますると、これは民間人と全く選ぶところがないというふうになりまして、民間人に与えられておりますところの厚生年金制度のほうにこれを移行させることが望ましい方向である。今日におきまして直ちにその方向に向つて着手しなければならない。少くとも研究或いは立案というようなところに向いて行かなければならないという工合に考えでおります。
  15. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 私はこの恩給制度の昔からの世界の歴史というものはよくわかりませんので、そのことについてはかれこれ言う資格もないわけでありますが、まあ私どもの感じでは日本の恩給法では、文官と武官との恩給はそう性格違つたものではないというふうに私も考えておるわけであります。武官に対して忠誠を覆わせるというようなことは、いろいろな軍人に対する勅諭とかいうようなものではつきりした部面もありますけれども、恩給の関係につきましてそこまで忠誠の義務と特に文官と区別して考えなければならないようなことは余りないのじやないか。少くとも法律でそれははつきりした文面はないように思つておりますので、その点で両者を区別するということはどうかという疑いがなお残るわけであります。  ただ一番先にお話になりましたほかのやれ広島の原爆の事件だとか、そのほか災害を受けた人との権衡でこの分だけを救済するのはどうかという問題は、これは一応ごもつともの御意見だと思いますが、一方文官は追放された者も復活をしてそうして武官だけは許されないということは、何か今までできておる日本の法律にそれを差別待遇する根拠でもない限り、私はそれを差別待遇することはむしろ不公平じやないか、かような疑問を持つておるわけであります。その点はそうお考えになりませんか。
  16. 末高信

    ○参考人(末高信君) たびたびのお尋ねでありますが、法律上、武官と文官との恩給の精神が区別せられておるとは考えておりません。併し終戦後の公務員のかたの恩給に対しては、未だ或いは国民一般の恩給に対する考え方は、私が申上げたような変化を遂げておる、実際上、社会上の通念として、そういう変化を遂げたという工合に私は了承いたしております。
  17. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 時間を余りつぶしてもあと時間が足りなくなるので、この程度で。
  18. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) ほかにお尋ねございませんか……。ほかにないようでしたら、次の参考人にお聞きすることにいたして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) それでは次に日本放送協会解説委員の斎藤栄三郎さんにお願いいたします。
  20. 齋藤榮三郎

    ○参考人(齋藤榮三郎君) 今御指名を頂きましたNHKの齋藤榮三郎であります。大体私の申上げたいことにつきましては、末高博士からすでに述べられておりますが、簡単に私の意見を述べたいと思います。  大体昨年の十一月のラジオを通じて軍人恩給復活の賛成論と反対論を紹介しました。そのときのことを今思い出すのでありますが、賛成論者のほうは大体まあ既得権益だということと文官ももらつておるのだということ、それから非常に今生活に困つておるというこの三点を強烈に上げておるのであります。反対論者のほうは、どうもこの際軍人恩給を出すということは再軍備に拍車をかけるのじやないか、そういうことは国際上不利じやないかという意見。それから一つの社会革命で、なくなつたのだからこれを復活することは工合が悪いだろうという議論。それからもう一つは困つていると言つたつて何も軍人だけが困つているのではない、こういう三つの議論であるようであります。私はこの賛否両論いずれもごもつともであると思いますけれども、ただもつともであると言つたのでは参考人としての意見になりませんから、私は結論を申上げますと、私は軍人恩給支給については絶対反対であります。  その理由とするところは第一番に財政上の問題であります。戦前の恩給が日本の歳出に占めた比率を調べてみますと予算の七分五厘であります。これを今度のこの渡されました案に基いて計算いたしますと平年度においては五百七十七億円であります。これは全歳出の六%に当ります。我々国民一人当り六百八十円の恩給負担をしなければならない、国民一人当り六百八十円、全歳出の六%の負担をしなければならない、戦前七分五厘で数は減つたとは言うものの今日の財政から果してこの金額の負担に耐えるかどうかということを私は非常に疑問に思うのです。これが第一の財政上の理由です。  第二の理由といたしましては、今日の日本の現状を見ておると余りにも予算が総花式にばらまかれている、それがためにやることが一つもみのらないというきらいがあります。むしろこの際あらめるものを二年なり三年なりたな上げしてでもいいから、治山治水の最も国家再建にほしいというところに重点的に使わなければならないのに、今日の祖国再建が消費面だけ向上しておつて一向生産面が振わないという現状において、こういう恩給支出をすることが財政支出の原則に合うか合わないかと言えば私は合わないと思います。少くとも今日の日本の経済再建のためから言えば、村政支出は重点的でなければならず、且つ又それは生産事業に投資されることが必要条件であると信ずるが故に、私は財政の負担がまちまちであるということと、いま一つは重点的でないという二つの理由、財政上の理由から反対いたします。  第二は既得権益論は先ほど末高博士の御指摘で十分であります。一つの社会革命が行われたことと、若しこれを元に戻すというならばほうぼうからこういう言い分が出るだろうと思います。私自身ここにおられる福留閣下のおられたシンガポールから一新聞記者として着のみ着のままで帰つて参りました。そうして我々は何にもそれについては要求もしておりません。又私の親戚自身も満洲から帰り空襲で死んだ者もいるけれども併し我々はそれらについて何も今要求しようと思つておらないのです。それが今たまたま組織を持ちそうして発言をなし得る立場におられるが故に、こういう組織の強い所にだけ若しも致府の諸君がお認めになるというならば、一方において要求したものは全部お認めになる用意があるかということをお聞きしたいと思います。昨年十一月の放送をいたしましてから随分手紙が参ります。その手紙を今日は持つて参りませんでしたが、それを大部に分類してみると二つになる。一つは組織的に軍人恩給の復活を要求する組織運動者であります。いま一つはこのさい自分は子供を五人も六人も抱えて食えないのであるから、このさい是非ともうえ死にから助けてもらいたい、だから世論を起してもらいたいという切実な叫びです。私はそういう困つている諸君を無下に退けようとは思わないけれども、この案によると二十九、三十、三十一年の三年間に亘つて一時賜金を与えられるだけであつて、真に困つている葉書一枚で応召させられた諸君については十分の対策が立てられていないのじやないかという気がするのであります。これが既得権益論に対する私の駁論であります。  それから文官の恩給はどうかという御質問でありますが、一つの社会革命に際して文官というものについては大きな革命が行われなかつた。そうして行われたほうだけがなくなつたということは、なくなつた諸君には気の毒であつたけれども、当時の社会革命の起つた情勢よりそうならざるを得なかつたのです。若しそれがいやだというならなぜそのときに軍人諸君は反対しなかつたか。それをこのさい少し国家政が豊かになつたと思つたかどうか知りませんが、このさい復活を要求するということは一旦覆つてしまつた盆を又元へ戻すような、覆水盆に返らずというたとえに反すると思います。若し軍人さんが文官がもらつているから自分たちももらいたいというならば、我々国民も恩給をもらいたいものであります。今日街の中小商工業者が幾らまじめに働いても食つて行けないという状態。たまたまその数が少いものなら話は別です。ところがどうでしようか、この数字に示されておる二百万人になんなんとする多くの数の諸君に今後ずつと長く支給するということは、これは長い間の国家の負担になる。  私は一つの妥協案として若しどうしてもやらなければいかんというならば、この昭和二十八年度に盛られた四百五十億円の予算を一時に全軍人さんにばらまいたらどうか。それで不満だとおつしやるならば仕方がないけれども、私は未来長い間もちろん年々才々十億、二十億ずつは逓減して参ると説明書に書いてありますけれども、この十億、二十億に逓減する程度ではどうにもならないのであつて、どうしてももらわなればならんといういきさつが私が了解する以外にあるとするならば、僅かに四百五十億を一時にばらまいて未来永劫に亘る負担を国家が負担するということは非常に疑問だと思う。理想から言えば先ほど末高博士から御指摘になつたように、文官の諸君といえども私は廃すべきだと思うのです。今の民間の中小商工業者はなかなか今の公務員の給与ベース一万三千五百円の水準まで行つておりません。こういうときに五世帯に一人いる役人、終戦当時に比べて三倍にふえたぼう大な公務員、我々が到底それだけのぼう大な恩給を負担するだけの財政余力がなくなるのじやないかということを懸念いたします。あるときは出しておくというのでは既得権益論になつてしまうから、この機会において私は文官の恩給については別途これを考慮することにしてこのさい軍人恩給については絶対反対であるが、どうしてもやむを得ないというならば、くどいようですが四百五十億を限度として一年に限つてばらまくことが私はよろしい、こう考えます。  それから第三に再軍備論への批判であります。国家として自衛権があつたほうがいいか、ないほうがいいかということは私は言う必要がないので、私は自衛権は持たなければならないと思つている。国家としては自衛権は持つべきものだと思いますけれども、ややもすると行過ぎるのであります。今日日本が軍人恩給を復活してそうして世間にどういう影響を与えるかということを考えてみると、再び外国は又曾つてのような軍閥ができるのじやなかろうかということを懸念いたすのであります。私はそういう国際情勢から見て、今後の日本の生きる道は経済主義に立脚した、徹底的に安くていい物を作り貿易を振興する以外にないとするならば、このさい諸外国の危惧を招くようなことはやらないほうがよかろう、こういうような観点から申上げました。くどいようですが申しますと、財政負担の点、既得権益論、文官の恩給との比較、並びに再軍備論の諸外国に与える影響等から見て、私は軍人恩給復活に絶対反対を主張する者である。併し不肖寡聞でありますから、私の知らない部面においてやらざるを得ない部面があるとすれば、それは一年限りの国家負担とすべきである。未来永劫長く負担するようなことは国家百年のためにならないという感じを持つわけであります。
  21. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 齋藤さんの御意見に対して御質問ございませんか。
  22. 松永義雄

    ○松永義雄君 外国に与える影響というのはそういう面の何か実際に存在しておるものですか。
  23. 齋藤榮三郎

    ○参考人(齋藤榮三郎君) 外国の影響ということで実際に悪い影響があるかいとう御意見だと思いますが恩給復活が直接的に響くのではなしに日本の再軍備ということが諸外国に対してやはり一まつの不安を与えておるというニュースは方々から入つております。
  24. 松永義雄

    ○松永義雄君 そういうニュースの記事がありましたら何かの便宜を与えて頂きたい。
  25. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) ほかにございませんか……。それでは齋藤さんに対する質問は終つたものとして次へ進行することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 次に東京新聞論説委員の及川六三四さんにお願いをいたします。
  27. 及川六三四

    ○参考人(及川六三四君) 私、東京新聞の及川でございます。  結論から申しますと私は条件付で本案の大綱に賛成いたします。条件付と申しまするのは、私は基本的な考え方におきましては旧武官と文官との別なく恩給制度というものは全廃すべきものだと考えます。その理由といたしましては、旧武官のかたや或いは文官のかたのお仕事も、たんぽに働くお百姓さんのお仕事も、工場で働かれる工員の人たちのお仕事も、国という建前から見ますならば何ら差別のあるべきものでないというのが第一点であります。  第二点は、全国民から負担された税金というものは全国民に還元するのが本則であると考えます。  この二つの理由から私は旧武官と文官との別なく恩給という制度は全廃して、そうして一切のものを含めた社会保障制度というものの確立に向うべきものであると考えます。併し社会保障制度に皆ひつくるめるといいましても、或いは恩給という制度があるために従来の俸給が低きに抑えられていたとか、或いは恩給のために俸給の一部を積立てたとか、或いは旧軍人のように退職後一般の社会に出まして何かの他の職に転ずることに不自由を持つような過去を持つている、こういうような人たちに対しましてはこの社会保障制度において何分の別途の考慮が加わるべきものであるということは、私が申上げるまでもない当然のことだと思います。その意味において私は基本においては恩給制度に反対なのであります。  併し、これを現実の面から見まするならば、私は先ほど申上げましたように、恩給において旧武官と文官との間に区別あるべきものじやないという建前から見まして、文官の恩給があつて、而も旧武官の恩給がないということは不合理だと思う。その意味において私はこの本案に対して条件付で賛成すると申したのであります。それはどういうふうな条件であるかと申しますると、将来これはどこまでも社会保障制度の確立ということに向わなければならんのでありますが、さしずめ今急に社会保障制度の確立ということは困難のように見受けられます。而も一方文官の恩給は継続しております。そうしてこの本案によつて支給される恩給とか扶助料というものの大部分が、遺家族或いは傷い者に振りまかれるということであります。これだけでも一般のその他の戦災者などに比較してみますると甚だ不公平ということは免れないかも知れませんけれども、少しでも多くの人を救うということは社会保障制度が確立していない限りにおいて、又文官の恩給というものが存在しております今日においては或る程度のものはやむを得ないと、かように考えます。それゆえに将来成るべく速かに社会保障制度に切換えらるべきであつて、その制度ができますまでの過渡期における便法として本案に賛成するという意味であります。  併しそういうふうに考えて来ますと、今のこの制度のままで軍人の恩給を復活するということでありますれば、私は旧武官と文官との間に区別があつてはならんという建前でありまするから、本来であればたとえ過渡的な便法といたしましても、やはりその支給額などにおいて文官と旧武官との間に差別があるべきでないと思います。そこでいずれかに暫定的に恩給というものを支給するにしましても、差別なしにどちらかに一本の体系に整えるべきが至当かと考えます。その場合に現実的にはどうなるか。今日の文官に出ておりますところの恩給なみに旧軍人の恩給というものをそちらのほうへ平均を取るということになりましては、先ほどから御指摘のありますたように制底国家の財政の負担はできない。この過渡期の間においてもやはり文官の恩給というものも、本案によりまするところの旧武官に対する恩給というものに国家の財政上から見て歩み寄らせるべきである。こういうふうな条件の下に、私まだせわしいものでありますから本案の細部まで検討はいたしておりませんけれども、大体この大綱において社会保障制度ができ上るまでの過渡的便法として認める。併しその過渡期の間に不公平のないように、更に細部に亘るところの合理化を絶えず企てて行くという意味において消極的に本案に賛成いたします。
  28. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 及川さんの御意見に対してお尋ねになる点はありませんか……別に御質問がないようですから、次の参考人のかたの意見を聞くことにいたしまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 次に旧軍人関係恩給復活全国連絡会副会長福留繁さんの御意見をお聞きします。
  30. 福留繁

    ○参考人(福留繁君) 私は恩給を頂きたいほうの側のつまり恩給復活要求者の立場で全般的な所見を申述べたいと思います。私には法律論とかそういつたことはできませんので実際の気持なり実情なりといつたことを主として申上げたいと思います。  恩給関係者は只今もお話ありましたように数百万人の多数に上つております。遺族あり、傷い軍人あり、老齢軍人ありいろいろでありまして、それらがそれぞれの事情に応じましていろいろな種類に恩給が分けてありますので、非常な複雑な問題でありますが、私は今回のこの恩給法一部改正法案によりまして、恩給を復活される者とこの新法案によりまして、却つて恩権を失う人々と、この二つのグループに分けてお話を申上げたいと思います。この新らしい恩給改正法案によりますと受給資格者は約二百万であります。正確に申しまして百九十二万何千であります。これらのもらうと予定される人々の中でも細目につきますと、いろいろ各人の立場によりまして意見なり希望なりがございまして必ずしも一致いたしておりません。併しながら二百万の少くも大部分のものが一致しておることがあるのであります。それは一日も早く頂きたい。この恩給法を通して頂いてそうして実際に受給者の手に一日も早く渡して頂きたい。こういう切望は少くも二百万の大部分が一致した願いでございます。又実際にこれ以上延ばされてはたまらん事情にござまいす。実は軍人恩給復活を要求する数百万人の人たちは、文官恩給の均衡から見ましても、日本の独立と同時に復活されるというふうに期待したのでございますが、それが日本政府によつて軍人恩給の停止のポツダム政令を更に一ヵ年延ばす、こういうふうな勅令が出まして非常な失望をしたわけであります。併しこれを契機といたしまして、期せずして全国的に旧軍人や恩給関係者の恩給運動がほうはいとして起つて参りました。併し旧軍人関係のこの運動は間もなく軍人恩給復活全国連盟、こういう名の下に全国的な結成をいたしまして、そうして今日に来ておるわけであります。二百万人以上の会員がおると思いますが、これは手前みそのようでありますけれども、実によく節度のとれました統制のとれた会でありまして、今日までいささかも不軌な運動とか、不軌な言動といつたものはしていないつもりであります。それは一つには政府におかれまして、昨年六月恩給特例審議会を設けて、お前たち騒がなくても恩給問題は解決をしてやるぞとこういうふうな態度を示され、自来六ヵ月に亘つて慎重審議を遂げられましてこのことに信頼して参つたのであります。果せるかな特例審議会が終りまして間もなく前国会にこの審議会の答申案を基礎とした新恩給法が、つまり旧恩給法の改正案が提出されたのであります。これに伴う恩給予算額も提出されたのでございますが、この前国会に提出された政府案に対しましては、これ又今日におけるごとく個々の問題につきましてはいろいろ不満の点もあつたのでありますが、ともかく背に腹は代えられない、一刻も早くこの新恩給法案が議会を通過して生活の資料を得たい、こういうふうな一念であつたのでございますが、ところが突如として議会が解散になりお流れとなりまして二百万恩給待望者は泣くにも泣かれん気持であつたのであります。地方の事情等をよく御存じの方も多かろうと思いますが、中には前国会で恩給法が通過することを当て込みまして高利貸から金を借りたりした人がかなりあります。又いまに恩給法が来るというふうに非常に待ちこがれながら死んで行つた老軍人、老未亡人などが多々おります。今度の議会で通過しなかつたらそれこそ大変だといつた切迫した気持で皆この新恩給法の通過を待望しておる次第でございます。  そこでお願い申上げたいことは、法案についてはいろいろの意見や希望などもありましようが、むずかしくてこの議会で非常に混乱を来たしたり通過をはばんだりといつたような問題は将来の問題にして頂きまして、何をおいてもぜひともこの議会でこの恩給法案を通して頂きたいということが第一でございます。それと同時にこの議会で成立いたしましても、実際支給されるまでには相当時日を要すると思います。これは事務的にちよつと考えましても相当時日を要すると考えるのでありますが、本当にのどから手が出るはどの思いで待ちに待つているお金ほざいますので、一日も早くこの恩典に浴したいばかりでなく、又支給が遅れますと高利貸の食いものになつたりといつたような虞れが多分にございますので、以前にありましたような恩給金庫のような何らか特別な措置を講じて頂きたい、こういうふうな二つのお願いをいたす次第でございます。  次に私ども恩給を頂きたい者が考えております気持を二三申上げますが、軍人恩給はよろしく廃止すべし、絶対反対といつたような声はかなり聞くのでございます。やるなら社会保障制度でやれ、恩給とは別個の考慮においてやるのがよろしい、こういつたふうな意見が一部の人々の間にあります。これには先ほど末高先生がお話になりましたようなこともありますし、軍人は戦争の責任者で懲罰的にも恩給などやるべきでない、こういつたような意見もあります。又軍人という制度はもうなくなつたのであるから、なくなつたものにやる必要はないじやないか、当然旧軍人恩給はなくなるべきであるというふうな意見もございますが、こういうふうな意見は恩給復活請求者の私どもといたしましては、何としても承服でない気持でおるのでございます。二三の例を引合いに出しますと、先だつて私の友だちの或るアメリカの海軍の高級の軍人が退役いたしましてアメリカ本国に帰りました。彼は恩給が現在現役俸の七〇%であるから日本におればかなり裕福に暮せる、だから一遍アメリカに帰るけれどももう一遍こちらに帰つて日本で暮したい、こういうふうなことを申しております。いろいろな面で社会保障が行渡つているアメリカにおきましても、軍人恩給が退職時の現役俸の七〇%与えられる、こういうことでございます。日本ではこの説明を御覧になりましてもわかりますように、軍人恩給は退職時の現役俸の百五十分の七十七、これは普通恩給でありますが、普通恩給はいかなる場合でも百五十分の七十七以外ということになつております。つまり大略現在の半分ということになつております。イギリスは社会保障制度の最も進んでおる国だということでありますが、軍人恩給は依然として現存いたしております。それから又ソ連という国は何でもかんでも一切平等主義で軍人恩給などないのかと思いますと、これは又意外にも軍人恩給は最も完全に行われておる国でございまして、退職時の俸給、勤務年数、その他従軍加算、潜水艦加算、航空加算、そういつたものをことごとく考慮に入れられておりまして、軍人優遇の意味すら加味されてあるように思われるのであります。それから西ドイツもイタリーも敗戦国でありますが、それにもかかわらず終戦翌年には早くも軍人恩給を復活しております。そうして祖国のために戦つた軍人というものに感謝するというふうな意味も含ましておるようでございます。かような現実を見たり聞かされたりしておりますのに、日本だけが軍人が懲罰的持遇を受けなければならんというふうなことでありますと、何としても旧軍人並びにその関係者はなつとくの行かない気持であるのでございます。それも先ほど来お話に出ましたように、日本全体の社会保障制度がよく行われまして、官吏も公吏も会社も新聞も大学教授も一切がつさい社会保障制度になるというふうな大勢でありますならば、これは無論大勢順応で行かなければならんのでございますが、先ほど及川参考人が述べられましたように現在はそうではない。ことに文武官といわれた国家公務員の片方の文官には従来の恩給法による恩給が支給されておるのであります。軍人恩給も復活して頂かなければ不公平であるという訴えが出るのは当然であると考えます。又国家が戦争前にいろんな約束をしてあつたことは履行すべきでないと言つた者もありましようが、恩給は国家が約束をしておつてそうして或る事情によつてこれを停止された、併し一たん約束をしたものは可能になればしたい、可能な程度に出してやろう、こういうのが御政道であろうと思いまして、その御政道に従つてこういうふうな恩給法の一部改正といつた形で新法案が出て来たと思うのであります。又頂くほうにしましても社会保障制度、そういつたものを今から始めていつきまるかわかりませんのに、そういつたものをのんべんとして持つている気持にはなれない。恩給制度といつた形で頂きたい。出すほうももらうほうも恩給制度といつた形がいい、こういつたふうに私どもは確信しておるのでございます。  次には軍人恩給は多過ぎる、もつと減額せよといつたような意見もございます。我々は恩給さえ頂けば国家の財政はどうなつてもよろしいとか、或いは旧軍人が頂ければほかの者はどうなつてもよろしいというふうなわけのわからん考えは毛頭持つておりません、差当つての法律案によつて定められる額について異議をさしはさむものではないのでございますが、この恩給が不当に過大であるというふうに批判をされるのは甚だ心外であると思うのでございます。試みに現行の文官恩給と新法案の軍人恩給を比べてみますと、文官最高恩給者である大臣の最低恩給基礎額は三十五万二千円でございます。よく昔から大臣大将と申しまするが、その大将の最低基礎額は新法案によりますると十六万四千八百円でございます。半分にも足りない、又保安隊の保安監と申しますると元の将官に相当する階級でございますが、その保安隊の保安監は恩給基礎額は三十三万六千円でありまして、大将元帥の二倍に相当いたします。先ほどこの軍人恩給の復活は保安隊などをエンカレッジして再軍備の促進をするというような懸念があるというふうなお説もございましたが、恩給を頂くのはかえつて逆でございまして、現在の保安庁のお役人は軍隊にならないほうがいいのであります。軍隊になりますと旧軍人の恩給で半分以下に減つてしまう。かような状況でありまして、でありますから私どもは文官恩給が決して高過ぎるとこういうふうには考えません。軍人恩給のほうが低過ぎるのだ、併し財政これを許すに至るまで我慢しなきやならん、耐え忍ばねばならんのだ、かように解しておるのでございます。  もう一つ軍人恩給を批判する声に上に厚く下に薄い、こういうのがございます。これは恩給であります限り勤務年数や退職時の俸給が基礎になりますから、上下の差等がつくのは止むを得ないのでございますが、そうして又この差等をつけなければ恩給ではなくなります。別なものになつてしまいます。そうして元の母体の秩序に影響するというものになつてしまいますので、このような恩給である限りは差等は止むを得ないのでございますが、併し軍人恩給は元から改正のたびに下に厚くということを考えて改正されて来ております。今回の法案を拝見いたしますと過去現在を通じまして文官、武官、あらゆる恩給の中で一番上に薄く下に厚くなつております。これはこの頂いた資料を御覧になれば直ちにわかります。  次に別なことを申上げますが、今回の政府案に対しまして衆議院において過般大体三つの点が修正いたされました。こ私れはが申上げるまでもないのでありますが、その一つは兵全部の仮定俸給を兵長の額に引上げる。これは退職時の俸給と勤務年数を基礎とすべき恩給の原則から申しますと、そこに若干のどう着があるのでございますが、これは兵の恩給を引上げてやりたいというふうな考慮からいろいろ考えられた末の御決定であろうと考えます。  その二は遺族扶助料について父母、祖父母の再婚の場合に、これは前に失格をしていた恩給権の一部を救うために改正いたされました。姓が変らなければ再婚しても恩給がある、年金があるのだ、扶助料があるのだ、こういうわけであります。  その三は、傷病者に対していわゆる第七項症の増加恩給、旧第一乃至第四款症の傷病年金を復活されることになりまして、それは昭和二十九年四月一日から実施せられるということになりました。昭和二十九年四月一日をもつと繰上げられればなお結構であろうと思いますが、これらの衆議院の修正を何とぞ参議院においても通過するようにお取計らいをお願い申上げたいのでございます。  以上をもちまして新恩給法により恩給を受ける資格のある立場のほうに関することを打切りまして、次はもう一つのほうの立場のグループ、即ち停止以前の旧恩給法が復活すれば当然年金を受ける資格のある者が信恩給法によりますと多数失格することになりますので、この点について簡単に申上げます。失格の主なる原因は先ほどもお話が出ましたが加算廃止によるものでございます。はつきりした数字は私どもにはよくつかめませんが、大体百五十万人近い人が失格するというふうにいわれております。或る人はこれを百万人ぐらいとこう見ておる人もありますが、私どもの知るところでは大体百四十万人ないし百五十万人といつた数字になるようでございますが、これには加算を認ますと財政上の困難、事務的な非常な困難、ここでは詳しく申上げませんがこういつたものがありまして早急な実現は不可能であります。そういつた事情はよく私どもも承知しております。併し何分人数の多いことでもございますので、これは一つ将来の問題としてお考えおきを願いたいと存ずるのでございます。  いま一つ失格者の立場から申上げたいことは一時恩給の件でございますが、この一時恩給は只今の加算の廃止による失格者を救い上げる一つの道でございます。新法案によりますと実役、実際勤務が恩給年限に達しない者は連続七年以上勤務した者に一時恩給は支給されるということになつております。旧法では三年以上の下士官に恩給があつたのであります。又現行の公務員の恩給では三年以上に一時恩給は支給されることになつております。こういつた振合から見ましても将来財政がこれを許す時期になりましたならば、七年以上を五年以上ぐらいに一つ引下げて頂きたい。そういたしますとよほど救われる者が出て来るのでございます。  それから次は連続七年以上勤務しなければいかんことになつておるのでありますが、断続をしますと通算されないことになつております。旧法では一年未満は計上しない、一年未満ということになつておりますが、新法では七年以上連続勤務しなければならんということになつております。現に文官のほうはこの旧法の一年未満計算せずというふうなものがとられておるのでございます。然るに軍人の場合は七年で而も連続というようなシヴイアな規格になつておりますので、これも今直ちにというわけには参りませずとも、将来の問題として御考慮おきをお願いいたしたいのでございます。  最後に戦争受刑者、俗にいう戦犯でございますが、この問題につきまして簡単に申上げたいと思います。戦争の受刑者につきましては、国内犯罪ではないのだから法律上何ら差別すべき理由はない。併し対外的には機微な問題であり国民感情の点からもなお考慮を要する、こういうので、服役中の者や刑死者遺族に対しては恩給の支給が許されないことなつております。これは今の段階ではやむを得ないと存じますが、まあその代り、と申しては語弊があるかも知れませんがその代りに今回援護法が適用されることにした頂きましたことは誠に感激に堪えないのでございますが、これで今日まで何ら救援の手を差のべてもらつていなかつた戦犯の遺族のかたたちは一先ず息をつけることと存じます。併しすでに一般に理解されて来ておりますように、戦犯は帰するところ戦争遂行に伴い、国家が軍隊ないし軍人に与えました任務に基くもので決して個人的犯罪と見るべきものではない、特殊な例外はあるかも知れませんが、統計的に見まして私の申しまするごとく個人的な刑事犯といつたものではないのでございまして、刑死者のごときは戦死者以上に気の毒な公務死と見るべきものと私は存じます。戦争受刑者に対する外国の感情が著しく緩和して来たことはモンテンルパやマヌスから帰つて来ることによつてもよく立証されておると思います。又国民感情につきましても、もはや私は心配はないと、かように見ておるのであります。これは過般モンテンルパから横浜に帰りましたあのさん橋の光景を御覧になつた方ならばどなたでも御異存はないと思います。非常な出迎人でございまして、あの出迎人は皇太子殿下のお見送りのときよりもかえつて人数がずつと多い。そういつた群衆が実に誠実のこもつた迎え振りでございまして、遺骨に対しては遺骨のように迎え、巣鴨に移管される者に対しては巣鴨に移管される者のように出迎え、最後に船から降りて来ました釈放者に対しましては釈放者に対する喜びといつた気持で迎えたのがよくわかつたのであります、実にあの大群衆が細かい心遣いをしてあのモンテンルパの戦犯を迎えたのであります。このことによりましても国民の戦犯に対する感情というものは十分にとけて来たと申しますか理解が行亘つた、こういうふうに考えられるのでございます。どうぞ近い機会におきましては戦犯関係の恩給扶助料の問題も完全な修正の行われるようにお願い申上げる次第でございます。私の申上げることはこれで終ります。
  31. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 福留さんの御意見に対して御質疑がありましたら御質疑をお願いいたします。
  32. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 将官であつたわけでありますからざつくばらんにお尋ねしたいと思いますが、この戦争がどうなつて入つて行つたかということについて私がつかんでおるのが誤りであつたら指摘して頂きたいと思います。五・一五事件或いは、二・二六事件、或いは相澤中佐事件或いはその前に表面に出なかつたといいますか、余り我々に知らされずにいた三月事件或いは十月事件こういつたものからずつと来て、そしてこれは財閥ないし政界の腐敗堕落というような結論、併しその基本になつておるものは結局農村の人たちが非常にかわいそうであるからこうこうというようなことが私は一つの大きな論点になつておるんじやないかと、こう思つておるのです。結局簡単に申上げまするならば、兵隊に来ておる兵の人たちは実に貧弱な農村から出ておつてかわいそうに黙々としてやつておるけれども、とにかく帰つて行つても職がないというような点では非常に気の毒である。これを打開するというような意味が私は基本的に貫かれて、大体そういう財界或いは政界がそういうものに対する政治力が悪いからこうなつておるのだ、というような結論が出て大体大東亜戦争に発展して行つたというふうにつかんでおるわけですが、そういうのが一つの指導理念になつておるのじやないかというふうにつかんでおるのですが、これはどうなんですか。
  33. 福留繁

    ○参考人(福留繁君) 御質問の御趣旨はよくわかりますが、非常に大きな問題でございまして且つ長年月に亘る問題でございますので、あなたのおつしやることは多分は当つておるのじやないかと思いますけれども私は的確にお答えはできません。大東亜戦争の現実の大きな面から研究しなければならんと思つております。まだ各方面ともこの研究はできていないのじやないかと私は思います。一つにはアメリカに各官庁等にありました資料を殆んど持つて行かれてしまいまして、私どもいろいろなことを調べたいと思いましたが、すぐ確実な資料がないものでありますので私にはそれ目上お答えする能力がございません。
  34. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私はなぜこんなことをお聞きするかというと、実際あなたが指摘されたように七年で打切られる、或いはこれが継続していないために、私は一番かわいそうな人たちは何といつたつて農村出身で葉書一枚で行つた人だと思うのですよ。それで恩給復活全国連絡会といいますかそういうようなのがあつて、私なんかに言わせれば、真先にこういう問題をどう解決して行くかということについて、やはり私は取組んで頂かなければならないと思います。それを簡単にこれは旧軍人の恩給復活で結構だというふうに結論を出されておつてしまつておるのか、そういう問題が一つ。  もう一つは末高さん、齋藤さんが指摘されたように、戦災によるところの犠牲者或いはもつと言えば終戦後とられところの、農地改革によるところの地主に与えた打撃、或いは国債の打切りというような広い視野から、私はこうした問題が少なくともあなたなどからは考えられて、そうしてこれに対する意見なり或いは対策というものが講じられなければならないのじやないか、こう考えておるわけですが、この点いかがでございますか。
  35. 福留繁

    ○参考人(福留繁君) おつしやる通りでございままして、七年以上で打切られたいわゆる下のほうのクラスのことを恩給連絡会は決して考えていないのじやなく、最もこれはしつこく取組んで来た問題でございまして、私どもの恩給連絡会が結成されましたのは昨年七月でございます、自来遺族・傷病者老令軍人、それから今の下級者、こらいつたものについて最も真剣にとつ組んで来たのであります。特別審議会中もしばしばそういう点について意見を具申しお願いをしておつたのであります。いろいろな方面を研究されて結局決定されたのはこの法のようなものでございます。決してこれで私どもは満足いたしておりません。ただ併し今の問題を出しましてもう一遍むし返して下さいといつても通らないことでございます。明らかに通らないことでございます。だから先ず片附くものから片附けて行くという気持でおります。農村のことが出ましたが私は元海軍でございまして海軍は志願兵が多かつたのです。戦争中は今の葉書一本で呼出された者も多かつたのでありますが、この海軍志願兵というものは殆んど農村の次男三男でございます。これは農村が貧乏で、私も農村の出身でございますが次男三男は一家をなして行けない、海軍に入ると加算が非常に多かつた、大体下士官になりますと全部恩給がつきます。下士官になりませんでも五年くらい勤めますと恩給がつくのです。それで海軍に志願した者は大部分が恩給目当でなんです。そこでその加算がなくなりますと、今の恩給失格者が多数に出まして、海軍等に恩給目当に入つて来た農村の二男、三男は気の毒になつて来る。七年以上ということで打切られたのでございますが、七年以上になりますと大体下士官は入りますが兵は漏れる。おつしやる通り七年で切られるということは私から申しましても甚だ心苦しいのでございまして、先ほど申しましたように何とかせめて五年くらいにして頂きたい、こう申上げた次第でございます。
  36. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 実は私も弟が二人海軍に行つておりましたが、一人戦死したのであります。あなたのおつしやることは私もよくわかるのでありますけれども、少くともあなたで考えられる、原爆ばかりではなくて、戦災にあつたりした人もたくさんあるわけであります。或いはあなたが海軍関係だから、現地において召集されたいわゆる無給軍属というような者、或いは七年以下で打切られた志願者というものはどうするか。或いは農地改革によるところの被害とか債務打切、そういうようなことについて私は広い立場において研究されなければ、一つの極めて簡単に旧軍人恩給の復活さえすればいいのだというそういう観点で、私はあなた方がこの運動の展開の主目標にされておる。単にそのためにドイツのことを研究されてみたり、ソ連とか西独も非常に結構だと思います。併し私は日本の今の置かれておる戦争の犠牲というものは誰が一番たくさん受けておるか、どういう範囲の人たちが受けているというような点も私は検討され、そうして私は一つの大きな目標というものを立てて来なければならないのじやないか。単にそういう人が大変生活に困つておるから軍人恩給という昔の法律があつたからこれを復旧さえすればいいというような簡単な取りつき方については少し疑義があるから、先ほどのような少し何と申しますか、方向の間違つたようなところからお尋ねしたのであります。その辺なんかどんなふうにお考えになつておるかという点を、一つ副会長さんでありますから連絡会というものは今後どういうふうに動いて行かれるかというようなことも将来の参考として伺つておるのであります。
  37. 福留繁

    ○参考人(福留繁君) おつしやるところ同感でございまして、政府が財政上これが許すような状態になり、手が廻り次第片端から戦争犠牲者に対する解決をやつて頂きたいと思います。これはもう私たち我が身につまされて最もよくわかります。決して自分さえもらえば後はどうでもいいというような考えは毛頭持つておりません。これは先ほども申上げました通りであります。これは一つ政府でそういうところをよく緩急をお図りになりましてやつて頂くということについては何ら異存はございません。又そうなくてはならん、又そういつた方面は私ども今後とも協力して行きたい、こう考えております。
  38. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) ほかにお尋ねの点がないようでしたらこれで午前の委員会を終つて午後一時まで休憩をいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) それでは午前の委員会は一応これで終了いたします。    午後零時五分休憩    ―――――・―――――    午後一時四十六分開会
  40. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 只今より午前に引続き内閣委員会を開会いたします。  日本傷痍軍人会の森田忠平さんから御意見を伺います。
  41. 森田忠平

    ○参考人(森田忠平君) 日本傷い軍人会の森田忠平でございます。  日本傷痍軍人会といたしましては恩給法の一部を改正する法律案に全面的に賛意を表します。この問題につきまして、かげながら聞きますると、衆議院の議員先生方並びに参議院の議員先生方におかれましても、この改正法律案が出ますると共に、又我々の全国の傷い軍人を心配下さいまして、七項症から四款症に至る年金をば復活すべく全力を上げて御尽力を願いますると共に、一部の修正案をば又準備下さいまして政府と折衝下さつて、衆議院で全面的にこれらの者の救済の修正案をば可決下さいましたことにつきましては、厚く御礼を申上げるものでございます。  我々この法律をば出して頂きまするにつきまして、この問題につきましてお願いもし、又賛成を願いたい理由は、あのか烈な日本の動員のさ中におきまするところのあの状態をば、静かに冥想にふけつて頂きたいと考えます。我々が曾つて戦場におもむくときに、郷士近隣の皆さんは、行つてこい、あとを引受ける、もちろん戦地に身を挺するにおきましては死を覚悟して参つております。併しながらそのときに国民の全部があとを引受けたとおつしやつたのであります。我々はもちろん戦場に行きまするには、死を覚悟しております。又死を覚悟せざれば戦地におもむけないのであります。このときにおきまして国民の皆さんが、行つて来い、あとを引受ける、この言葉をば我々は信じて参つたのでございます。先ほど国家公務員の恩給の問題と、傷い軍人の恩給の問題が問題にされたのでございますが、軍人は戦地に参りますときにはもちろん御承知の通り傷い軍人の九五%強というものは召集の軍人でありまして下士官兵でございます。将校の尉官以上のかたは四%強しかないのであります。でありまするからこれらの傷い軍人の大部分は召集のものであります。召集によりまして戦地におもむいた者は兵隊は五円五十銭の六割増の給料を頂きました。でありますからその給料では絶対に本人の小ずかいしかなかつたのであります。併しながら国家公務員は各職場に奉職いたしまするといたしますと、給料は或る程度の生活を支えるだけの給料は頂いているのであります。軍人は先ほど申しました通りに、その俸給では自分の小ずかいだけしかないのであります。そうしてその少い小ずかいをもつて国にむくゆるべく尽忠報国の誠を捧げたのでございます。そうしてみな傷つき郷里に帰りまして終戦となつた。その結果戦争に敗けたからお前らは恩給をやらんのだということは絶対に成立たんと思います。これらの者に対しましては、あくまで国の責任において傷病恩給を支給すべきものであり、あくまで我々としてこの問題をば要求いたすのでございます。  先ほど申しました通り、本件に関しましては衆議院におきまして致府の原案をば一部改正可決になりました。その裏には参議院の先生方の力が多大であつたということをば聞きまして我々としてただ感謝あるのみでございます。本件をば一日も早く参議院において可決されんことをばただ念願するものでございます。但しこの問題におきましてお願いいたしたいのは、傷い軍人といたしましては現段階においてこれをば可決して頂きたいのでありまして、又この案をばお前ら本当にどこも直すところがないのかと聞かれた場合にはまがあるのであります。併しながら我々といたしましては、現段階においてはこの案をば通してほしい。併し一例を申しますると、恩給の金額でございます。私らが一番もらいましたのは、昭和十三年の法律五十六号によりまして増加恩給並びに傷病年金をもらつたのでありますが、その率と今の金額を当てはめてみますと特別項症三項までは百倍になつております。併しながら四項、五項、六項、七項になりますと、四項は七十倍、五項、六項、七項は五十倍、そうして一款、二款、三款、四款になりますと又五十倍からだんだん上つて行つて六十倍になつた。結果におきまして三項までが百倍に行きましてあとは一ぺんに五十倍に下つている。そうして今度は一款から四款に行きまして又五十倍から六十倍にはね上つている。それがために四項、五項、六項の者は急に下つているのであります。もちろんこの案を提出されるときに、軽い者は金額がぐつと下げられるのだということは聞いておりまするが、これは全部下つておるなれば又理窟はあるのでございますが、一款から四款までは又今度は尻上つている。御承知の通り昭和十三年五十六号の法律によりまして全国何方の者がこの恩給を喜んでもらつたのであります。でありますからあくまであの率を百倍に上げるなれば百倍、現在公務員におかれましても二百何十倍かの給料が上つております。でありますから、せめてこの金不足に平均に上げてほしい、百五十倍なら百五十倍の線に向つて今後御考慮願いたい。  次は有期恩給の問題でございますが、これもせつかく昭和二十九年四月一日から施行されることになつたのでございますけれども、これらのものは七、八分のものは有期恩給でございまして、昭和二十一年の二月一日をば経て五年で全部が期限が切れております。でありますから昭和二十九年の四月一日に受給権が復活いたしまするといたしましても、恩給診断をいたしまして恩給局に五十条による恩給を請求をしなければなりません。そうすると全国十万余りの者が一ぺんに国立病院へ参りましてもなかなか診断をして頂けないのであります。又診断を一年ほどかかりましてでき上つたといたしましても、恩給局がこの十万の者をちよつと三月や半年では査定ができないのでございます。でありますから昭和七年にこれらの者は七項から四款の者が恩給が復活いたしましたときに、取りあえず二ヵ年間これに前の恩給局の査定で金をやつてその二ヵ年のうちに恩給診断をさした例がございます。でありますから、できますならばこれらの者に取りあえず五十条の規定によつて、五ヵ年の期限が切れておつてもこの二十九年から二ヵ年間は前の査定で恩給をやつてほしい。この臨時国会ででもこの問題について参議院に取上げて頂きますれば誠に結構だと考えるのであります。  又昭和二十九年四月一日から家族給が支給されることになつたのでございます。これは特別項から七項に至る傷い軍人に対して当ることになつたのでございますけれども、これは妻は退職後におきましてもらつても当る、併しながら子供並びに父母祖父母に対しましては、退職当時より引続き生計を共にしなければ当らないのでございます。退職当時において引続き生計を共にする、そうしますと妻はその後にもらつても退職後にもらつても加給をやるけれども、子供は退職のときに陸軍病院なり海軍病院を退院のときに子供がおらなければやらんぞという規定でございます。そうなりますると、妻がおつて初めて子供ができるのでありまして子供がおつてから妻をもらうということは絶対にございません。これはあつちこつちになつているのでございまして、妻は退職後もらつてもその加給が当るものといたしますれば、せめて子供だけでもやはり妻なみにして頂きたい。これは全傷い軍人の希望でございます。併しながら先ほど有期恩給の問題、恩給金庫の問題、家族加給の問題、三つ申上げましたが、これは希望でありまして、あくまで今の本案をば、一日も早く参議院の本会議において可決確定されんことをば、全国の傷い軍人が願つておるのであります。その可決された上においてその後にこの三つの問題をば御研究下さいまして、近い国会においてこの三つを修正されることをば特にお願いいたします。
  42. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 只今の御意見に対して御質問がありましたらお願いいたします。御質疑ありませんが……。  御質疑がないようですから次の参考人の意見を伺うことに進行いたして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) それでは次にやはり戦傷病者関係の川原和雄さんから御意見を伺います。
  44. 川原和雄

    ○参考人(川原和雄君) 私は全戦傷病者要求貫徹委員会を代表する者であります。このたび参考人として御招へい下さいましたこと感謝いたします。  現在ちまたには杖とも柱とも頼むべき夫をば戦場に失い、行きゆく道すらも阻まれ、いとしい我が子を他人にゆだね夜の女となることすらも余儀なくされた一部の遺族、又生活の荒波に押し流されんとしている傷い者が生ける屍をさらし、白衣の募金によりまして辛うじてその日の生活を護らんとする者、又未だに病床から立上ることすらもでき得ず闘病生活を続けているこれらの入院患者などの生きるための苦しみを御推察頂きまして、以下私の申上げる意見を幾分なりとも参考に役立たせて下さいますれば、幸甚と思うものでございます。私は法律を論ずる専門家でもなく、又その経験すらもありませんことを一言申添えておきます。  今次大戦は今までにないし烈なものでありました。日清、日露、又近くは支那事変等と異なり本土まで戦線が延び、ために軍人だけではなく国民すべてが戦争の被害者であり犠牲者であることは忘れてはならないことでありまして、これを無視したこの法案は決して国民の利益を図る趣旨とは言い得ない措置と言わざるを得ないのであります。まして日本の軍隊は憲法第九条にも明らかなごとく、軍の存在はもちろんのことその片りんだに止めることも許されないのでありまして、これは私が改めて申上げるまでもないことであります。然るに提案理由中には既得権の回復を叫ばれている、当然与えるべきもののごとく言われておりますが、これは大なる誤りであるというべきではないでしようか。先ほど申上げましたごとく街にはその日の生活すらでき得ず路頭に迷える幾万の戦争最大の犠牲者が何らかの救いの手を待ちわびている現状であるのであります。これらの者をさしおいてこのたびのような法案は果して平等且つ健全な措置であるということができ得ましようか。もちろん軍人は一番危険な場所に身を延し命を捧げたことは事実であります。併しそれはこのたびの法案によつて恩恵を受ける者のみならず、すべての軍人が同じような状態にあつたのであります。特に職業軍人でありますが、これらの者は統帥権を媒介といたしまして国家との間に雇用契約を結び、それから起るところの給与権が生じたのでありまして、この統帥権の媒介を失つた今日では、その権利も失われたものであると思われるのであります。その上この法案には消滅したはずの大将以下階級制度が温存されているのであります。そういう者は依然として高額な支給がなされ、受給の対象には加算、通算を認めない実役十二年以上の者で、一時金すらも実役七年という制限を加えていることは、職業軍人を優遇する意図と思われるのであります。その理由は一般兵士においてはこの制限内に入る者は殆んどあり得ない、支邦事変ぼつ発より起算いたしましても八年、かろうじて一時金の対象になりますが、これも殆んどあり得ないのであります。又仮に対象となる者があると仮定いたしましても、恩給の本質が国家と雇用契約中の経済力の喪失に対する補てんということでありますが、職業軍人と一般兵士の当時の俸給を引くらべてみるときに、職業軍人は当時にあつて家族を養う生活の費用が与えられたにもかかわらず一般兵士はどうであつたでありましようか。当時の家族生活費は言うに及ばず、将来の経済能力の喪失に対しても本法案が果してそれを補てんするということができるでありましようか。私は職業軍人云々としばしば申上げましたが、別に職業軍人に対して悪意を持つものではありませんが、同じ戦場で人生のすべてを犠牲にし国家のために尽して来た一般応召兵士を思うとき、この間の差別的取扱を易々として受取ることができ得ましようか。衆議院の公聴会におきまして或る人の言に、軽傷者の年金のことに触れたときに、重傷者に与えるべきが謙譲の美徳云々と言われております。謙譲の美徳は軽傷者にばかり押売することでなく、この場合において職業軍人こそその字句は適切ではないでしようか。職業軍人が一応の生活の保障をなされているときに、一般の兵士の場合はおのれの職業も投げ捨て、又家族の生活の保障すらもなされずお国に御奉公して来たものでありまして、これまでの受けた物質的精神的犠牲を思うとき、かかる差別的取扱に対しましては私は絶対に反対するものであります。先日衆議院の内閣委員会におきまして自由党を代表して高橋議員は、この予算の八五%は遺族並びに傷い者のためであり、この法案は遺族並びに傷い者のために作られたものであると言われましたが、その点に対して理解に苦しむものであります。配分の率をもつて遺族は救われるということは言い得ないのであります。遺族のこの配分における対象者は私は二百万と聞いております。さすればこのたびの国家予算を全部これに振り当てても未だ私は十分であるとは言い得ないのであります。而も遺族がこの法案において受ける扶助料は、兵隊で二万六千七百六十五円に対しまして、生存者で而も健康な大将四十年におきまして二十五万三千七百七十九円からの恩給を支給されることになるのであり、又傷い者の場合においても最下位にある七項症の兵は三万二千二百円であり、大将はやはり四十年といたしまして二十六万八千百九十二円でありまして、兵隊の両足切断すらも十三万六千二百円しか支給されていないということは、忠実に働いて死んだ者、次に傷を受けた者が一番ばかを見る結果になるのではないでしようか。私は老齢軍人に対しまして援護の手を差延べることにやぶさかではありません。併し先ほども申上げますごとく明日の生活も失つて路頭に迷えるこれら犠牲者を無視することに対しましては、国民の一人としても断じて許すことはでき得ないのであります。  以上述べましたことくこの法案はいかに職業軍人を優遇しているかはおわかりのことと思います。これを既得権で云々されるならば過去に残されたあらゆる既得権は回復されなくてはならず、さすれば曾つての貴族も又これにならつて復活されることになるのではないでしようか。まして昨今におきましてMSA並びに防衛計画書等問題になつているときにこのような措置がなされるとするならば、なお一層国民に戦争を予想させ、再軍備による徴兵制度を連想させ、国民をして不安定なる境地に追込む原因ともなるものであります。私は過去八年間幾たびとなく国会又政府当局に対しまして傷い者の援護に対し陳情請願をいたして来ましたが、そのたびごとに言われましたことは、戦争に参加した軍人である君たちに援護の手を差延べることは連合軍に対して思わしくないことで、気の毒ながら我慢してもらいたいということで今日まで来たのであります。傷ついた病人のことについてまで気をつかつて我々を今日まで見殺しにして来た政府は、いかに独立した今日とはいえ健康なる軍人にまで一足とびにこのような措置をなされることは、対外的に与える影響はどうでありましようか。微妙な国際情勢下に立つ我が国の政府のとるべき措置とはどうしても考えられないのであります。私は以上申述べましたる通り、かかる恩給に対しましては絶対に反対するものであります。  次に増加恩給について申述べたいと思います。私は基本的にはこうした恩給法によるものではなく、社会保障の見地から単独法によつて戦争による犠牲者の援護をなすべきものであると確信し、同法に対しまして反対の意思を持つものであります。併しながらこの法案を一応やむを得ないものとして考えましても、次に申述べるごとく不審な点が多々あるのでありまして、以下それについて申上げます。  増加恩給は、その人が受けた傷病の程度に応じて支給されるべきが根本的条件であると解釈いたしております。前段でも申述べましたがこれに階級制を設けることは余りにも不合理すぎることであります。大将の片腕も兵隊の片腕も人間の腕には変りはないのであります。又それから起る肉体的苦痛も又何ら変るものではありません。むしろ齢も若い兵隊が青年の夢すら見ることもでき得ず、あの殺伐とした戦場で歳月を送り生れもつかぬ不具の身となつた者を思うときに、これから先の長い人生を不具者というかせを背負つて行く姿を思えば、大将が背負う負担に比べて数倍するものでありまして、私は大将よりもこれら若年兵士にこそ高額の支給がなされることこそ妥当だと思うのであります。このたびの法案には増加恩給の階級を六階級にしている、これをもつて圧縮したかのごとく申されておりますが、これこそ一応のき弁にしか過ぎないのでありまして、その理由は、恩給を受ける権利又は資格の条項中附則第九条第一項ハの規定に「本号イ及びロに掲げる者以外の者でこの法律施行の際現に増加恩給を受けるもの」とあり普通の恩給の併給が認められておるのでありますが、これは普通恩給十四階級が当然消滅することでありまして、これをもつて果して階級の圧縮と言い得ることができましようか。私は、むしろ普通恩給の階級と増加恩給の階級とが二重になり、これから起る階級の差は増加恩給から来る恩給の差とは問題にならないほどの差でありまして、前段にも申上げました通り大将は四十年で六項症二十七万四千百九十二円、これを兵隊の場合には三万七千二百円で、兵隊の両眼失明者最高の支給額十九万四千二百円に比較しましても大将の六項症が八万円も多く支給されるのであります。これらを見ましても階級の圧縮が果してなされているかと言いえましようか。ここにおきして私は階級を認めないことを主張するものであります。  次は傷病等差額について申しますが、このたびの法案では一項症より三項症まで大体二五乃至二三%の差が設けられておりますが、三項症と四項症の差は八三%、五項症は七八%、六項帰三五%となつている、三、四項症並びに四、五項症の差が非常に大きく開いていることに対しては甚だ不審に思うのであります。衆議院の内閣委員会で恩給局長は、三項症は重傷者で五、六項症は軽傷者で、四項症は中傷者だと申されましたが、片足大腿部から切断した者と下腿部から切断した者との精神的肉体的苦痛が八三%もの差異があるのでありましよか。以前であつた小澤医博は、身体傷害者の労働衛生に関する研究と題する論文中におきまして、傷い者の労働時における心身の疲労度は、健康者に比して一・二倍乃至一・四倍の疲労の増大を証明しておりますが、この実験の対象となりました傷い者の分類は頭部傷害者、目の傷害者を含みましてこれが三名、上肢切断者中に上膊が五名、前膊が四名、下肢切断者は大腿切断が四名で下腿切断が二名、下腰神経損傷者が三名、上肢神経損傷者君名計二十四名で、この資料から判断いたしましても、三、四項症の差八三%、四、五項症の差七八%の開きはとても判断でき得ないのであります。又従来の恩給法では大正十二年恩給制定当時の六項症は一項症に対しまして約三〇%を支給され、以下数度にわたる改正においても一項症に対し三〇%程度を支給しておりましたものを、このたびの法案によりますると六項症は一項症に対し一五%にすぎない額を支給されているのであります。又これを現行の援護法と比較するときには、六項症は二万四千円支給されており、この改正案では一万七千円の支給となるのであります。物価は上りつつある今日、人事院においてすら公務員の給与のベースアップを勧告している今日において、従来支給されていた額よりも少い金額を支給することに対して甚だ不満に思うものであります。この際普通恩給の併給を論じられるのでありましようが、増加恩給と普通恩給とはその本質はおのずから異なるものでありましてこれを同一視することはでき得ないのであります。若しこれをあえてするならば、増加恩給にかかる階級差の圧縮はなされていないことになるのでありまして、増加恩給の階級はなくすべきであります。七項症以下四款症までの者に対しまする年金支給については衆議院において修正されておりまするので説明を省きます。  次に査定基準に対しまして申上げますが、この査定の基準となる恩給法施行令第二十四条は大正十二年に作られたものでありまして、これから大きな矛盾が起るのであります。当時は戦闘形態も肉弾戦を主とするものでありまして、その傷害も現在に比較して小範囲であつて切断が重点的に取扱われていたかのようであります。故に七項症の傷いの程度を五指一本失つたものと説明されおられることをしばしば聞いておりますが、これから見ましてもこの恩給法が切断を主に扱われていることが肯けるのであります。ところがこのたびの戦争はし烈であります。而も長期に亘る戦いであり、戦線も広範囲に及び、ために余り見受けられなかつた内科的疾患者が多数あらわれたことは事実であり、その上使用された兵器も科学兵器で、当時夢にすらも想像され得なかつた原子兵器の出現を見るに及びました。こうした中から起る傷害の程度も多種多様であります。而も支那事変当初は体力の優れた甲種合格者であり現役並びに予備役でありましたが、支那事変末期より太平洋戦争に至りましては、補充兵以下兵役すらもない国民兵までも動員したことや、長期にわたる疲労の蓄積並びに酷使、加えて給与の粗悪がら当然内科的諸病の累増を見る結果となつたのであります。こうした結果から起る傷病を現行法におきましては非常に軽傷に取扱われているのであります。又神経並びに機能障害等においても同様なことが言えるのであります。その一例として胸郭成形により肋骨九本を切除した者ですら六項症の査定を受けております。会社等に就職する場合におきましても、このような障害を持つ者は健康診断により拒否されるのは当然であります。もちろん労働力におきましても一般人の半分にも及ばないことは明らかであります。又各項症の査定内容において非常に巾があることであります。その例は両下腿切断者が二項症、同じく下腿及び大腿より切断された者はやはり二項症であり、後者は前者に比して大腿部切断分よりはサービスとなつているのであります。いやしくも肉体の一部を恩給とは言え金額に換算するときに、このような巾を持たせることは不合理と言わざるを得ないのであります。これは或る程度区分することは事務処理上繁雑であることではありましようが、一応肉体を金に換算する事務を扱う上は当然このような考慮はなさるべきであります。以上の理由から生業能力喪失の程度に基く百分率によりまして、症特査定基準を行うべきと考えるのであります。  次に家族加給でありますが、この点につきましてこの法案は衆議院において修正なされ、認められなかつた査定後の家族のうち、妻にのみ加給が認められております。併しこの点不審に思うことは、人間である以上妻帯すれば当然家族の増加することは常識でありまして、この法案から解釈いたしますと妻帯はしても子孫の出生を認めないことになるのですが、このようなことはこれこそ一大社会問題でありまして、妻を認めておりながらその夫婦生活を認めないということになるのであります。この点について恩給局での解説には、家族加給は査定当時をもつて基準とすることを原則として行うと申しておられますが、この恩給法は戦争という一大変事を予測して作つたものでありましようか、私は決して戦争を予測して作つたものでないと考えるものであります。さればこのたびのような男という男はすべて動員されて行われた戦いであれば、当然この法律においても一つの特例を設けることこそ適切な措置と言い得るのではないでしようか。私はここにおきまして、査定後に妻帯した者に対し、当然起るべき家族の増加に対する加給は支給されるべきが妥当であると考えるのであります。  今まで申述べて来ました通り、数多くの不満不審を含み而も不均衡なる恩給法によるものよりも、援護法の精神を生かした、すべての差別を除き傷害の程度に応じ、生業能力を考慮した人間的な配慮による医療の保障、職業の安定、住宅のあつせんを含む単独法による保障が与えられることを強く訴えるものであります。特に医療の保障につきましてはその一例として、現在胸部疾患者で相模原病院に入院中の約二十名のうち、その半数は障害からくる疲労によつて内科的疾患に移行していることは重視するに値するものであります。前段にも申上げましたごとく、障害者は健康者に比して疲労度が大であることは医学的に証明されております。而もこのために疲労の回復も健康人に比しまして遅いということであります。これが医学的証明からしましても傷い者は体力的にも健康者に比して弱まつているために余病の併発は当然考えられ、又再発も当然考えられることでありまして、この場合の医療の保障は現在何らなされておらず、再発のための入院すらでき得ず、困つておる者も数多くいる。この場合当然国家において保障がなされるべきであると思うのであります。又住宅に対しては生活の基盤となるものであり、その家すらもない者には公営住宅の優先入居を認められることの措置を講ぜられることが必要であると思うのであります。  以上るる申述べて来ましたが、この改正法案は遺族並びに傷い者を対象とすべきはずのものが、職業軍人の優遇に終つている感があり、路頭に迷える遺族並びに白衣による募金者等の救済はでき得ないことと思われます。これらの者の最低の生活保障を願うもので、決して裕福な生活をすることを目的として願つているものではないのであります。この点十分御審議下さいますことを切望して私の公述を終りたいと思います。
  45. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 只今の参考意見について何か御質問ございませんか。
  46. 長島銀藏

    ○長島銀藏君 文官恩給の点については一つも触れておりませんが、何かお考えがございましたらお話を承わりたい。
  47. 川原和雄

    ○参考人(川原和雄君) 文官恩給の御質問でございましたが、これには何ら私は触れておりません。併しながらやはり将来におきまして、こういつた社会保障という線にまとめるべきでありまして、一応第一の手段としてこの軍人恩給をそういつた方向に持つて行くことを私は訴えております。
  48. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) ほかに御質問ございませんか。御質問ないようでしたら、次の参考人の御意見を伺うことについて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) それでは次に機関車労働組合の中村順造さんの意見を聴取します。
  50. 中村順造

    ○参考人(中村順造君) 私は国鉄の機関車労働組合の副委員長をいたしております中村であります。本日本席に委員長が参りまして意見を申上げるはずでございましたが、委員長病気で静養いたしておりますので私が代りまして、今回の恩給法の改正に対しまして、私の所属する機関車関係の職員の立場から、私どもの考えていることを申述べたいと存ずるものであります。  今回国会に上程されました恩給法の改正の理由といたしまして、或いはそれに対するところの意見といたしまして、従来はしばしば説明がなされ、或いは見解が申述べられておりまするが要するに軍人の恩給の復活は、占領期間中の施策の行き過ぎを是正するものである、或いは従来の社会保障制度に連なる前提であるとも考えられる。その半面におきましては、再軍備に運なる軍人階層の復活で憲法違反である等の意見が出されまして、一般社会人や政党の間におきまして種々論議され、衆議院を通過いたしまして、今日参議院で審議中でありまするが、私はこのような論議の外に立ちまして、今回の改正におきまする問題の核心から外れまして、或いは主流から外れまして、忘れられた部分がある、そのために私どもの権利が侵害される、このような事態が生じたのでこの点について申上げたいと存ずるものであります。  従来改正前の恩給法によりますると、私ども蒸気機関車常務員は、恩給法の第三十八条の四に該当する不健康業務勤務者といたしまして〇・五の加算を受けておつたのであります。併し今回の改正に際しまして、従来と業務内容を何ら変革されていないにもかかわらず、ただ軍人の戦地における加算を認めることにより、ぼう大の予算を伴うという理由のみによりまして一切の加算を認めないという、この不合理且つ矛盾極まる措置がまさになされんといたしておるのであります。これに対しましては私どももちろん強く反対するものであります。軍人の戦時加算を、年数通算を認めない結果といたしまして、私どもの知る範囲内におけるところの数字では、五百五十万の恩給受給者が百九十三万人に減少し、その内容も受給の対象者が主として、結果的に大部分将校、下士官の職業軍人に限定されるといつた不合理があるのであります。この点は先ほど川原さんもるる述べられたわけであります。私は今この点について意見を申述べようとするものではありません。ただ大正十二年以来、我々の仕事が不健康業務であるとして認められ、幾多の先輩が苦しい生活の中にありながらも、多少なりともこの実態を認められて今日に及んでおりましたものが、職業軍人の生活擁護のため、何らの理由なくしてこの従来とられておつた措置が切捨てられることを甚だ残念に思うのであります。元来私ども蒸気機関車の機関士は国鉄輸送の第一線に立ちまして、その安全、正確、迅速をモットーといたしまして、日夜寒暑の別なく極めて悪条件の作業環境におつて、多数且つ貴重なる生命財産をお預かりして、業務を遂行いたしておるものであります。蒸気機関車操縦に際しての作業環境の例を一つ上げますと、先ず第一に石炭燃焼により発生する一酸化炭素、亜硫酸ガス等の人体に有毒なガスを呼吸することであります。第二に高圧蒸気の発生と千五百度に及ぶ石炭の燃焼温度等の関係で機関車の運転室が四十度をこえる高温高熱にさらされていることであります。第三に高速度で運転する機関車の人体に及ぼす影響といたしまして、激しい震動や騒音があるのであります。第四に強大な列車を牽引操縦する職務の性質上、格段の精神的労苦を伴うことであります。この点特に最近列車重量の増大と運転回数の増加、自動車交通量の激増等によります各ふみきりにおける注意力、又急行列車に至りましては五十秒ごとに一本々々の信号を確認しなければならないこと等、職務の責任に基く精神的重圧を常に我々は負わされておるのであります。第五といたしまして、日夜風雨の中に勤務するその不規則と危険度であります。列車運転の状況よりいたしまして、真夜中の出勤退庁は我々日常当然のことといたしておるのであります。而も暗夜風雨をついて高速度で自己の注意力のみを唯一のたよりとして運転する危険度も相当考慮されて然るべきであると存ずるのであります。  以上述べましたように、私どもの作業環境はその責任度の重大に加え、更に他に類例を見ないほど劣悪であります。従いましてその結果といたしまして、私どもの職務遂行上から来る特殊的病気といたしまして、有毒ガス及び煤煙吸引によるところの呼吸器疾患、肺浸潤等があるのであります。第二に不規則勤務及び動揺によるところの胃腸障害、第三に、高熱温度及び精神的な緊張、機関車の騒音等が原因するところの心臓肥大症、弁膜症動脈硬化症、筋肉萎縮性側索硬化症等の特殊的作業からくる特殊的疾病があるのであります。最近調査いたしました数字を上げてみますと退職者の六二%が病気であります。従いまして我々は健康体でいわゆる鉄道に就職いたしまして最後を全うするということは極めて困難な数字を示しているわけであります。その六二%の病気退職者のうちで肺浸潤が四〇%、胃腸障害が二五%、心臓弁膜症並びに肥大症が一五%、筋肉萎縮障害が一〇%、その他が一〇%と、これらの数字を示しておりますが、これは即ち私どもの業務がいかに不健康であり、日々我々が我が身をすり減らして輸送業務に専念しているかということを如実に物語つていを証左であると存ずるものであります。  なお私ども切実な要望を第十五国会におきまして何としても入れて頂くために、関係方面に陳情を行つて参つた次第でありますが、その過程におきまして恩給局の担当者が、私どもの既得権剥奪の理由といたまして、国鉄の機関士は給与において他と比較して優遇されているというようなことを申されております。併しこの点は全く事実と相違した甚だしい認識不足の理論でありまして、今昭和十七年一月当時平均本俸七十円一銭であつた我々と、大体本俸を同じくする停車場の予備助役等対比いたしますと、当時我々の七十円一銭に対し停車場の予備助役は七十円四十五銭であります。十年を経過いたしました昭和二十七年一月我々の本俸は一万一千九百三十八円、停車場予備助役は一万二千七百六十七円でありまして、その倍率は機関士が一七〇・五倍、予備助役は一八一・二倍でありまして、その他の職種を二、三調べてみまするならば、停車場助役は一七二・九倍、車掌区の助役は一七三・六倍、電務区助役は一七三・二倍等の数字を示しまして、恩給局の主張するところの機関士は他職に比べまして優遇されているということは、全然根拠のない事実と相違うた主張であることが数字の上からも察知できるわけであります。  次に政府機関の担当者がよく申されることは、私どもの要望を入れた場合に実にぼう大な予算を伴うように言われておりますが、恩給法三十八条の示す不健康業務は、極めて限定された業務に従事する狭い範囲のものに限られているのでありまして、軍人の戦時加算と到底比べものにならないほどの極少の予算で済むと考えられるのであります。国鉄にこの例をとりましても現在国鉄機関士総数一万六千八百十六名中、この適用を受ける者はコーポレーション切換え前に任官をした一万三千八百七十五名の者でありまして、今一万三千八百七十五名が全員退職したのちにおいても、年間予算としては増加する分は僅かに八千万円で一億円にも満たない数字であります。なおこれは全員停年退職の場合でありまして、これを現在の実情から見ますところの、毎年自然退職の点から行きまするなら年間一千万円程度の予算増加で足りる次第であります。もちろんこれは国鉄だけの問題でありますが、更にここで申述べておきますが、一万六千八百十六名中この適用を受ける者は一万三千八百七十五名と私は申上げましたが、残余の三千名に対じましては現在何らの措置がなされておらないのでありまして、私が前申述べましたような趣旨から、将来これらの者に対しましては何らかの方法により適切な措置が講ぜられなければならないことは当然のことと存ずるものであります。  最後に申述べたいことは、機関士の責任事故件数を見ますときに四十五才以上急激に増加のカーブを示しているのであります。このことは一体何を物語るかと申しまするなら、国鉄の現役の機関士としては適正限度として大体四十五才が限度ではないか。なお退職後の平均寿命が一般の職員の十八年に比べまして、機関士は退職後八年にして余生を終ることに対しまして、この問題は単に恩給受給の面のみでなくして、広く人道上の問題として特段の御関心を願いたいと存ずるものであります。同時に又このことは今回行われようとするところの若年停止制が五年引上げられることと密接不可分の関係にあることを申述べる次第であります。  以上申述べましたことは誠に簡単で粗雑でありまするが、要は我々が命を縮めて公共の福祉に奉仕した者に対する国家の保障を、恩給法の精神に従いまして要望したものであります。ただここで軍人恩給復活という政策のための犠牲となるには誠に忍びがたいところの問題のあることを申述べると共に、今回の改正に伴い多数私どもの組合員の既得権の剥奪からくるところの勤労意欲の低下減退、これは我々の基本的理念であるところの列車の安全運転をおびやかすという重大なる影響の発生することを恐れるものであります。  以上をもちまして私の公述を終ります。
  51. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 只今の参考意見に対しまして御質疑はございませんか。
  52. 松原一彦

    ○松原一彦君 国鉄機関車勤務の諸君の御意見はたびたび承わつておつて御同情申しますが、法第三十八条の四にある六種の業務の上になお最近は加えてほしいという意見も方々から聞いておりますが、あなたの今日の御陳述は、この二項の鉄道事業上における蒸気機関車乗務員としての現業勤務だけの御意見と承わりますけれども、何かはかの各公職に関係する諸君との間のお話合かなんかありますか、その点伺います。
  53. 中村順造

    ○参考人(中村順造君) お答え申上げます。私の考えておりますことは、現在今度の改正につきまして移行措置といたしまして六ヵ月間の猶予が設けられております。私は他の職種において加えてほしいというふうな意見は私は寡聞にしてまだ聞いておりませんが、でき得るなら現在三十八条の四に上げられているだけの職種だけでもよろしうございますので、これを移行措置として六ヵ月の期限を限定せずして、当分の間というふうな表現でも私は差支えないのでございまして、決してこれ以上のものを私は望んでいるわけではございません。当面三十八条の四に上げられているものの期間を延長して頂きたい。これによつても私どもの考えていることは十分達成されると考えるものであります。
  54. 松原一彦

    ○松原一彦君 その御趣旨わかりますが、戦時中の軍属諸君のあの異常な酷烈な、潜水艦、飛行機その他の危険な不健康の業務をやつて来た諸君の加給、加算も取つてのけようとしているこの法案で、ここだけ残すということは技術的にも非常にむずかしいように思われますが、警察官の恩給の年限が十二年になつている、あなたのほうのはこれで行くと、十一年何ヵ月かで十七年になるわけなんですね、それを十二年に警察官なみにやつて、通年としての加算というものを一応ここで整理するということについては、どうお考えですか。
  55. 中村順造

    ○参考人(中村順造君) その点につきましては私は心から賛成を申上げるものであります。むしろその点につきましては、移行の期間を延べるというふうな一時的な便法でなくして、本質的な警察官なみ、警察官はもちろん危険度から来ていると思いますが、我々の不健康業務の実態を御認識願いまして警察官なみに取扱いうるようにして頂ければ、なお且つ私は問題が根本的に解決されたものとして心から賛意を表するものであります。
  56. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 他にございませんか。なければ次の参考人の御意見を伺うことにいたしたいと思います。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) それでは次に国鉄労働組合の鈴木清さん、意見を述べて下さい。
  58. 鈴木清

    ○参考人(鈴木清君) 国鉄労働組合の鈴木でございます。  今回国会におきまして戦後停止されておりましたところの軍人恩給を復活し、これと共に一般公務員の恩給制度を改正し、若年恩給停止年限の引上げ、障害年金の廃止、特殊労務加算制度の廃止の目的をもつて法律案を審議されておるのでございますが、私ども公務に従事いたしておりますものといたしまして、又一般国民としての立場からいたしましても、本問題につきましては極めて深い関心を持つているものでございます。恩給制度改正に対する私どもの立場は、基本的には一時も早く近代的な社会保障制度を確立し、その中に包含せらるべき性格のものと考えているのでございます。この点につきましては社会主義政党はもとより保守政党に至りますまで、常に今までに主張されて来たところでありますし、今日全日本の国民が期待してやまないところであると思うのであります。併しながら社会保障制度の現状は今日に至りますまで遅々として前進しないのがその現状であります。このような状態の中で今回改正案として審議をされているものの内容は、私どもが期待をいたしますところの前進どころかかえつて後退せしめる内容でありますることは、誠に残念であると思うものでございます。以下本回改正案の諸点につきまして一、二の例を申上げ、意見といたしたいと存ずる次第であります。  先ず第一に一般恩給制度の改正についてでありますが、元来公務員に対する恩給制度を制定せられた趣意につきましては、公務員が国民全体への奉仕者として、永年その職務に従事したときにその老後を保障したり、又不時の疾病に倒れた際の保障として設けられたものであることは、私が申上げるまでもなく皆様が十分御承知のところであります。又この制度の中で特に条件の劣悪な職域、或いは非常に有害な業務に従事をいたしておる者に対しまして認めておるのが加算制度であると思われるのであります。今これらの中で〇・五の加算を認めておられるところの蒸気機関車乗務員の職務の内容について、若干くわしく申上げたいと存ずるのでございます。  皆様が十分御承知の通り機関車乗務員は数千の尊い人命と貴重な財産を預かつて、これを安全に且つ迅速に輸送する責任を担つているものでございます。これらの者がどのような環境の中で仕事をしているかを具体的に申上げますと、先ず第一に石炭の燃焼による有害ガスの発生であります。これは蒸気機関車の運転に当つて石炭の燃焼に伴う一酸化炭素、二酸化炭素或いは亜硫酸ガス等の発生であります。これらの人体に有害なガスが多量に発生する結果、乗務員は常にこの有害ガスを呼吸しつつ業務を遂行しなければならないのであります。これがため国鉄においては過去十ヵ年の間に隧道内において五十二件の窒息事故を出しているのでございます。最近におきましても去る三月、東海道線逢坂山隧道内におきまして乗務員が窒息をいたしたのであります。この問題につきましては目下滋賀の労働基準局等において国鉄に警告書を出しますと共に、現在現地調査等行なつているところでございます。これらのものは高熱下における精神的肉体的の重労働のために非常に疲労度が大きく、肉体に及ぼす影響も極めて大きいということができるのであります。御想像のつく通り蒸気機関車の運転は石炭の燃焼、高圧蒸気の発生に伴い常に摂氏四十度をこえる高熱でありまして、加うるに機関車の激しい震動と重労働による作業のために肉体的な疲労と、運転中における信号等の前途注視、種々なる器具の取扱等の強度な緊張感による精神的な疲労度は計り知れないものがあるのでございます。去る六月末問題につきまして国有鉄道内部におきまして、上野―水戸間でこれらに対するものの疲労度調査を行なつたのでありますが、その結果上野―水戸間を一往復するのに乗務員の体重は乗務前に比べて一貫目以上も減少し、更に脈搏は百五十から百六十程度まで上昇をいたして、或いは静脈が表われる等、如実にこの結果を表わしているのでございます。従つてこのような悪い環境の中で永年これの業務に従事いたしておりますと、次第々々に健康がむしばまれて機関車乗務員の寿命は一般国民に比べて非常に短命と言われている。永い歳月にわたつて職務に従事して退職いたしましても退職後せいぜい七、八年ぐらいしか寿命はないと言われておるのであります。  以上はこれらの機関車乗務員の実際の業務の内容につきまして率直に申上げたのでありまして、この機会にこの職務に対する一層の御理解をお願いしたいと思うのでございます。又伝染病棟に勤務する看護婦等につきましても、或いは炭鉱等に働いております職員等につきましても、その状態につきましてはここで私がくどくど申上げる必要もなく、皆様が十分御理解をしておられるところであると考えるのでございます。このようにいたしましてこれらのものの加算制度はその必要な理由によつて制定をせられたものでありまして、現在におきましてもなおこの理由は何ら解消されておらないと思うのでございます。従いましてこの加算制度を廃止するとの御意見につきましては、その理由が奈辺にあるかを疑うものであります。若しこのような状態の中でこの制度の廃止を強行せられるならば、関係職員の落胆は目に見えるようなものでありまして、ひいてはその重大な職務遂行にも影響することを心配いたすものであります。どうか本件の廃止につきましては、特に皆様の十分なる御理解と慎重なる御審議をお願いいたす次第であります。  次に軍人恩給復活の問題であります。戦後元軍人であつたか方々の中に極めて気の毒な生活の状態におかれている人々のあることを私どもは十分承知をいたしておるものであります。併しながら戦争によつて被害を受けた者は、ただ元軍人の方々のみではございません。全国民が或いは親兄弟を失い或いは家を焼かれる等、多かれ少なかれその被害を受けたのであります。戦争の惨禍によつて苦悩しんぎんした者は八千万すべての国民であつたのであります。従つて今日元軍人の方々のみがその救済の対象となる資格があるとは考えられないと思うのであります。それにもかかわらず軍人恩給を復活せんとする意図が、明らかに現在国民の多数が反対を唱えているところの再軍備を推し進める道を歩まんとする前提であり、平和憲法を無視して日本を再び戦争の危機に追いやる措置であると思う次第であります。以上申しました理由によりまして私は軍人恩給の復活に対し賛成をいたしかねると共に、一般公務員の恩給を改正することにつきましては絶対に反対をいたしたいのでございます。今日本なさなければならないことは軍人恩給の復活や一般恩給の改悪ではなくして、新らしい日本を作り出すための広範な社会保障制度への前進であると考えるのであります。特に軍人恩給の復活と関連して一般恩給の必要な諸制度を改悪することは、私どもの絶対に了承のできないところであります。どうか御理解ある議員各位の御尽力を得まして、現行恩給法は暫時このまま据置くこととし、一時も早く新らしい社会保障制度の確立の方向に進まれんことを切にこの機会に要望いたす次第であります。
  59. 松原一彦

    ○松原一彦君 ちよつと鈴木君に伺いますが、先般来あなたのほうからでしようか、あなたの組合の中に日本国鉄機関車労働組合というものがあるのですか。別のものですか、同じものですか。
  60. 鈴木清

    ○参考人(鈴木清君) 先ほど機関車組合の中村さんが陳情されましたところでございますが、国鉄労組と機関車労組との関係につきましては、元同じ国鉄労組におつたわけでございますがたしか二年ばかり前かと存じておりますが分れた、こういう立場になつております。従いまして例えば機関車乗務員なり或いは機関区に所属する職員というものは、国鉄労働組合と機関車労働組合とこの二つの組合に分れて加入をしている、こういう現状であります。
  61. 松原一彦

    ○松原一彦君 もう一つ伺いますが、この国鉄機関車労組から出されました各種の資料を拝見すると誠にお気の毒に堪えない。健康状態から言うてもあらゆる面から見てお気の毒に堪えないものがあるにかかわらず、その給与の面が低くつても高くはないという事実は漏れておる。これは一体どういうことなんでしようか。あなたがたの労働組合は、そういう現実の毎日の生活の上に危険労働に従事し、或いは健康をいためるような労働に従事する諸君の毎日の待遇に対して、今日までどういう御苦労をなされており、そうして現実は国鉄労働組合よりもどのくらいの差が、機関車労働組合のほうに優遇的に加えられているのかどうかを一つ、全然知らないものですからお聞かせ頂きたい。
  62. 鈴木清

    ○参考人(鈴木清君) 正確な資料をもつて御答弁申上げるわけでございませんが、国鉄労働組合がたしか昭和二十一年に発足をいたしましてより、当時は終戦後のインフレ下にありまして毎年一回乃至二回程度の賃上要求を出しまして、まあ若干のベース改訂がその都度なされて参つたわけであります。当時におきましていろいろ各国鉄の中にありますところの職種の賃金について意見もあつたことは事実であります。併しながら当時の状態は新しい賃金をもらえばもう物価は手の届かないところに行つている。こういう状態でありまして、何と申しますか各種の職種賃金と申しますか、こういうものを正確に詳細に検討をいたしているいとまがないうちに次の賃上げをしなければならないという状態で当時参つておつたわけであります。その後実は職階制といつたような問題もいろいろ内部で出たわけであります。この内容につきまして現在でもランクと申しまして各職別によつていろいろ号俸が若干違う。こういう建前に現在の国鉄職員の賃金体系はなつております。併しながらこの恩給に関係をいたしますような不健康業務であるから、このような性格から賃金をきめた、こういうような状態には現在至つておりません。従来これらのランクを機関車におきましても、やはり機関車乗務員の責任度の問題、或いは過去における経験度の問題、このような問題が主として論議されその賃金が認められて来た。このような状態であります。従つてお尋ねの一般職員に比べて機関車関係の職員がどの程度高いか、この問題につきまして正確な資料を持つていないわけでございますが、昔は初任給等が明白に高かつた、こういうことはあつたのでございますが、最近はランクというものが、さつき申上げた理由によつて何と申しますか或る程度のランクはあるといいながら、現実にははつきり具体的にこれだけ高いというような数字は出ていないのではないか、このように考えている次第であります。
  63. 松原一彦

    ○松原一彦君 ちよつと私どもわきから考えるとおかしく思う。長い間あなたがたが待遇問題については苦労をしておいでになるにもかかわらず、これほど重大な危険な仕事に従事しておられる国鉄機関車乗務員に対する待遇が今日他と平等であつて何ら一点の差別もついていないということならば、それをあなたがたが今日までお認めになつておつて恩給法の面だけでそういうふうなことをば御要求になるのは、ちよつとおかしいように思うのですがいかがなものですか。
  64. 鈴木清

    ○参考人(鈴木清君) その点につきましては先ほど申上げたわけでございますが、機関車乗務員の待遇が一般職員に比べて悪い、このようには私どもも現実に考えておりません。併しながら昔のように初任給制度が、誰が見ても明白に機関士になれば幾ら賃金が頂ける、こういつたような制度が現在いろいろ当局との問題において話はされているところでありますが、未だに意見は一致ができませんでこのような特別な初任給制度といつたものはできておらないのであります。  さつき申上げた各職別のランクと申しますか、これにつきましては一応例えば駅の助役は何ランクになる、機関区の機関士は何ランクになる、こういうランク制度は一応現在できておりまして、具体的に申上げれば駅の助役、機関士というものは同じ責任度合、或いはその上の待遇上の問題については大体同じ所にいる、このような状態になつている。こういうことであります。
  65. 松原一彦

    ○松原一彦君 どうも詳しい事情はわかりませんけれども、一般の職員と機関車乗務員との間に待遇上の差別はないと心得ていいわけなんですね。
  66. 鈴木清

    ○参考人(鈴木清君) 必ずもそういうことでもないと思うのでございますが。
  67. 松原一彦

    ○松原一彦君 それじや機関車側の中村君に伺いますが、実に私どもこの資料を頂いてわからないので、恩給局長にこれを今度削除してもよろしいかということを聞いたときに、恩給局長は、さつきお話もあつたが機関車乗務員に対しては初任給からしてすでにいいはずだ、普通一般よりも待遇はよくなつているはずだ、だから従つて恩給面においても一般職員よりもいいのだからそれは差つかえないといつたような、ばくたる話を聞いたのであります。数字を上げたわけではございません。しかしだんだんお聞きするとどうも話が違うらしい。中村君にお聞きしますが、国鉄では一体蒸気機関車のかような過酷な危険な任務に服している者に対して、待遇上の差別は事実ないのですか、今日まで。その点をお聞きしたい。
  68. 中村順造

    ○参考人(中村順造君) お答え申上げますが、待遇がいいとか或いはよくないとか申しますが私どもはあえてよくないと申します。恩給局の担当者が申されておりますのは戦争前のことでございまして、大体当時例えば駅の操車と申しますが旗を持つ人は四十五円だつたと記憶いたしますが、月給が四十五円で我々は初任給が五十六円でございました。そのように戦争前は明らかに初任給において十円の開きがあつたわけでございます。しかしながら戦争後におきましてあのインフレの高進するさ中に、我々としても一応生活給の獲得ということの上に立たなければならないというふうな事態が参つたのであります。従いまして戦争後におさましては我々の生活給が附帯的に考えられるようになりまして、一応職務の責任度とか或いは肝要度とかいわゆる質と量というふうなものは一切考えられずに、一応の措置がなされておつたのであります。この考え方が今もつて、我々の否定しているところの悪平等的なベース賃金であります。私は三年前に恐らくこの段階においては、我我のいわゆる職務の内容によるところの賃金形体こそ真に必要な段階ではないかということを強く主張したのでありますが、遺憾ながら当時の国鉄公社或いは組合同士の間におきましてもこの主張は入れられるところとなりませんで、国鉄労働組合と別な方向に歩まざるを得ない、こういうふうな状態になりまして国鉄労働組合から分れたわけであります。従いまして現在も我我はこの悪平等的なベース賃金を打破して、仕事の質と量によるところの新らしい賃金形体を生まなければならないという主張は現在もいたしております。しかしながらそれはただ我々の主張に止まつているわけでございまして、現在他の職種と比較しまして決して我々の賃金が高いということは絶対にないのでございます。これはすでに私どもが各方面に陳情いたしました際に実態に基いて詳しく作成した資料にも書いておりますが、お尋ねのような国鉄の機関車が他職に比して賃金が高い、あるいは恩給局長が主張しておるようなことは、先ほど公述の中にも申しましたように絶対にそのようなことはあり得ないということを私は申上げたいと存ずるものであります。
  69. 松原一彦

    ○松原一彦君 これも私は全く不案内の者ですが、乗車勤務とかいうその勤務時間に対して何分かの割増手当がつくという事実があるのですか、ないのですか。それはいかがです。
  70. 中村順造

    ○参考人(中村順造君) 現在ではいろいろ乗務をいたします関係で、駅で泊るとかあるいはその他夜食というようなものを意味して若干の手当はついておりますが、我々が国鉄の機関士であるからという特殊な加算は現在なかろう……。
  71. 松原一彦

    ○松原一彦君 実は私がお尋ねしておるのは、厚生関係などでも看護婦さんその他結核病院などで危険な業務に従事しておる者に対しては、結核、らい病に関係する勤務者には二号乃至六号俸を、又燈台守は三号俸の加俸をしている。こういう事実があるので機関車のほうにもあるのじやないかと思つて私はお伺いしたわけです。それはございませんか。
  72. 中村順造

    ○参考人(中村順造君) 全然ありません。
  73. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私はお二人にお願いしたいと思いますけれども、恩給の加算がつかぬということについて何とかしてくれという御意見は私はよくわかりますが、問題点は中村さんがおつしやるのは、今度の改正法の附則第四条の中に「この法律施行後六月を経過する日の属する月までの在職年の計算については」云々とあります、六ヵ月間をまあ延長してくれ、六ヵ月間は延長すると言つている。それを当分の間延ばしたらどうだという。これはこちらのほうの鈴木君のほうから出ている資料によりますると、これを現行法の六十三条の第一項の警察、監獄、そういう所に勤務している人たちが在職十二年以上で恩給がつくわけです。だからそういうふうに直してほしい。こういう二つの意見が出て来ておるわけであります。そこで実際松原委員などの御質問に対しまして、中村さんも十二年にしてくれたら一番いいのだが、こうおつしやるのですが、本当に願われるところは十二年にしてほしいのかあるいは附則第六条の六ヵ月を当分の間延ばせ、こういうところに尽きるか、そこのところをひとつお二人とも私は御意見を聞きたいし、くい違いがないよう、若し修正する場合にでも私は低いほうへ流れる心配があるからこの点ひとつ明確にお答えが願いたいと思います。
  74. 中村順造

    ○参考人(中村順造君) 私先ほども申上げたかと思いますが、私から考えますならこれは結果のことを考えた場合でございまして、実際は厳密に現行を計算いたしますならば、十一年三ヵ月、併し十二年ということに若干の時日の相違はございますが、六ヵ月を当分の間延長するということは一時的な便法であつて、万やむを得ない場合にはそのようにして頂きたい。しかしながらこれを根本的に解決するならあえて私は九ヵ月の日数は言わずして十二年にして頂きたい、このように考えておるのでございます。
  75. 鈴木清

    ○参考人(鈴木清君) 私も大体同じような意見でありますが、今御質問のありました十二年の点につきましては資料に私のほうも出ておるというお言葉でございますが、実は私の出したのではないのだと考えております。私のほうといたしましては、一応現在の制度というものをできるならば延長して頂きたい、このように考えております。併しながら要は先ほどいろいろ申しましたところの不均衡的な業務の実態を十分御認識を頂きまして、従来持つておりましたそのような特別な制度といつたようなものと同じような制度を是非残しておいて頂きたい、このような考え方でございまして、必ずしも狭いものの中にとじこもつておる、こういう考え方はございません。
  76. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 現行法でおけといことはよくわかりますが、中村さんにお尋ねしますが、当分の間とこうおつしやいましたときに、あなたは社会保障制度というようなものを予期されてそれまで当分の間にしておいてくれというのが、或いはこれを当分の間、仮に一年というのが私は常識だと思いますが、そうしますと一年ぽつきりでもいい、こういうような意味で当分の間と、こうおつしやつておるのが、そこのところを明確にして頂きたいと思います。
  77. 中村順造

    ○参考人(中村順造君) 私大変恐縮でございますが、我々の要求の見通しについて最悪の場合は当分の間でも我慢しなければならんだろう、情勢から見てもちろん私は将来いろいろな面で検討されて適切な処置が講ぜられなければならないということは申上げた通りでありますが、これは今申上げたように、我々の要望などの程度までかえて頂けるかという見通しの上に立つて、万やむを得ない場合は当分の間でよろしいのでございますが、しかしながら問題を根本的に解決して頂くためには、どうしてもあの警察官のランクの中に入れて頂きたい、こういう考え方で資料にもそういうことを書いておるわけでございます。
  78. 松原一彦

    ○松原一彦君 関連して鈴木君に伺いますが、同じ国鉄の中に、ある職種の人は十二年で恩給になり、ある職種の人は十七年でなければならんということがあつてよろしいのでございますか。おさまりますか。
  79. 鈴木清

    ○参考人(鈴木清君) その点につきましてはおさまりますかという御質問でございますが、現実までにやつてきた状態といたしまして一応他の職種の従業員もそういうことで了承して来た、こういう状態になつております。
  80. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) ちよつと私も一つ関連して今のお答えがあつたので、それに対してお尋ねしたいのですが、今問題になつておる三十八条の四ですね、これの二は機関車の勤務者ですね、三の炭坑で勤務しておる人、あるいは四の鉄道の隧道工事、又は橋梁工事などに従事しておる人、こういう勤務者が今まで同じに扱われて来た。機関車労組は機関車の業種別の集りですから機関車の従業員だけを考えていいと思うのですが、国鉄労組はこうした業績の仕事をしておる人も含んでおると思うのですが、そういう場合に蒸気機関車の従業員だけを特別の扱いをするということに対して問題がないのかどうか。
  81. 鈴木清

    ○参考人(鈴木清君) お答え申上げます。その点につきましては蒸気機関車の乗務員だけを取扱つて頂けばいいので、あと現在までにやつて参りました伝染病等に勤務する看護婦、あるいは炭坑の坑内で働いておる者、あるいは堀さく隧道等の中においてやつておる者、こういつた者について加算を認めなくてもいい、こういうことをさつき御質問によつてお答え申上げたのではございません。従来ついておらなかつたこういう危険業種が相当ございます。国鉄内部におきましても。それらの方々もつけて頂くということがあればもちろん喜ぶわけでありましようが、現在機関士あるいは伝染病等の看護婦こういつた者がついておるから、必ずしも自分たちもどうしてもそれをつけろ、こういう強い要請は今のところない、こういうことを申上げたわけでございます。やはり今申上げたことは全部一応機関車乗務員関係、あるいは看護婦あるいは隧道等に勤務する方々、こういつた方々は同じ扱いを是非して頂きたい、このように考えるわけであります。
  82. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうするとたしか三十八条の四の二にあるのは、鉄道事業における蒸気機関車乗務員としての現業勤務、こうなつておりますが。電化して電気機関車になつてくると、この法律ができた当時はそういうことはなかつたのですが、その場合の機関士の労務、職責、職務内容、質、量というものは全然蒸気機関車とは別なんですか。
  83. 中村順造

    ○参考人(中村順造君) その点は私どもは現在の中を拡げる考えはございません。もちろん従来も電気機関車にはこの条文は適用されておりませんし、現在私ども主張しておりますのは蒸気機関車だけ、将来も蒸気機関車だけだというような考えで現在その中を拡げる考えは持つておりません。今の三十八条の四ということでございますが、これは私どもが実態とにらみ合せて考えた場合にそうたくさんの対象者は国鉄内部においてもないというように考えております。任官して現在文官の元の資格を持つておりながら切羽で働くとか、あるいは圧さく空気の中で働くとかというようなことは殆んどない。それからただ伝染病等の看護婦においては一部あるかも知れないと思いますが、主として国鉄等においては蒸気機関車の機関が主体になつておる、このように考えるわけであります。
  84. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それからもう一つ勤務時間のことについてお尋ねしますが、八時間が原則であろうと思います。たとえば東京から出まして名古屋まで行つてしまう、そこで八時間が来た、そうすると名古屋で降りてしまつて東京まで帰つて来なければならんその場合に往復を考えられて八時間を考えられておるのか、行き放しの八時間か、そうすると帰りは超過勤務時間に入るのか、勤務時間はどういうふうになつておるのか。
  85. 中村順造

    ○参考人(中村順造君) これは内達一号と申しまして国鉄の達しでございますが、私どもの勤務時間は実時間は五時間半ということになつております。これは原則でございまして若干のそれに十分ないし十五分というふうな前後はございますが、原則としては五時間三十分が一日の平均勤務時間でございます。それから連続それでは五時間三十分乗つてよろしいかということでございますが、これは禁止されておりまして、私どもは大体距離にいたしまして、急行列車でございますと百五十キロないし二百キロぐらいの距離で機関車乗務員は乗り継ぎと申しまして次の乗務員が乗換えるわけでございまして、機関車はそのまま通しますが乗務員だけは乗換えるわけでございます。連続そう長い時間をとにかく行つて帰つてくるのが一就業でございますが、実際にハンドルをとる時間が五時間三十分に制限をされておるわけでございます。
  86. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) それでは参考人に対する御質疑はほかにないようでしたら、恩給法の一部を改正する法律案に関連する参考人の意見は以上で終了したものと認めて御異議ございませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 参考人のかた長い間御苦労さまでございました。  それでは本法律案に対する質疑は次回に続行いたすことにいたします。   ―――――――――――――
  88. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 次に保安庁法の一部を改正する法律案を議題といたします。前回に引続いて御質疑をお願いいたします。
  89. 松永義雄

    ○松永義雄君 外務大臣は非常にお伸しいようでございますので、できるだけ簡単に御質問いたしたいと思います。従つて御返事もできるだけイエスかノーかという極めて簡単でよろしうございますからお話願いたいと思います。  MSAのことでありますが五百十一条に規定してある六条件というもの、全部の条件を援助協定の締結に当つて日本側はこれを受入れるつもりでございましようか。
  90. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) さようでございます。
  91. 松永義雄

    ○松永義雄君 そうしますと右五百十一条第二号に規定してあります国際間の緊張を除去するため相互に合意されることのある行動とは、一体いかなる内容の行動、いかなる範囲の行動を意味するのか、解釈上の意見をお伺いいたします。
  92. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これはイエスノーではちよつとお答えがしにくいのですが、いま日本としては国際緊張の原因となるような関係のものは差当りないと思つております。具体的には従いまして今すぐにどの問題はどうするのだということにはなりませんけれども、非常に極端なことで誤解があつてもいけませんが、例えば非常に強い輸入制限措置というものが各国にありまするか、あるいは日本で非常に強い輸入制限措置というものがあつて、よその国が日本と商売ができないというような場合にも、「つのこれは国際竪張をもたらす原因になるかも知れません。あるいは他国と時に何か攻守同盟みたいなものを結ぼうとすればそれもやはり一つの緊張の原因になるかも知れません。場合はいろいろあると思いますが、若しそういうようなことが仮にありといたしますれば、そういういかなるものでも一つ合意によつてできるだけそういう緊張の原因を取除こうじやないかということが規定の趣旨と了解しております。
  93. 松永義雄

    ○松永義雄君 緊張を除去する行動という解釈は非常に内容が広範囲にわたつておる、深さと広さが非常に広大であるというふうに解釈されるのでありまして、緊張という意味は戦争が起るかも知れないという原因もその中に含まれておると、こう解釈するのが正当ではないかと思うのですが御意見を伺いたい。
  94. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 広く解しますればそうなると思います。
  95. 松永義雄

    ○松永義雄君 そういたしますと、この規定を見ますといずれはそれは追つて援助協定締結ののちに合意されることになるので、二段の合意が前提とされるようなふうに解釈されるのですが、そうすると二人がアベックに行つてその先が合意の結果広範囲にわたる解釈によつてそういう場合もある、戦争のおそれのあるような場合に原因を除去する行動をとるという約束をするということも解釈上予想されると思う  のですが、いかがでしようか。
  96. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと御質問の趣旨がはつきりしないのですが、つまりそういう一般的な規定を協定の中に設けるか、或いはMSAの法律に基く各種の条項を受けてと、いう一般的にそういうものを含んだものを認めてやるか、これは別としまして要するにそういう一般的な規定を両方で約束するわけでございます。そのあとで又新しく別のものだというものは、新しく事件が起りましたら別にやるわけであります。
  97. 松永義雄

    ○松永義雄君 結論的に具体的に申上げたほうがいいのでありますが、日本とアメリカとが攻守同盟でも結んで攻守同盟とひとしいところの行動をとるということもその解釈の中に入ると見てよろしいのでございますか。
  98. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは非常に国際紛争の種になるようなものを除去しようというものでございますから、常識的に見て国際平和を確保するための方式としては考えられるかも知れませんけれども、国際紛争の種を除こうというものにはそういうものは入らないと思います。
  99. 松永義雄

    ○松永義雄君 そうすると紛争を除くための行動というものは先ほど非常に広範囲であつて、殆んど緊張を除くための行動の意味の中に入つておると、こういうふうに言われたと思うのですけれども、我々は事あるときには攻守同盟がよければ同盟を結んで行動をとるというふうに解釈されても差支えないのですか。
  100. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと国際慣習からいいますと、そういう解釈は成り立たないと思います。
  101. 松永義雄

    ○松永義雄君 あなたは外交官だからそういうふうに言われますけれども、国際慣習のあるなしを問わず、この文章を読んだときにそういうふうな解釈をとつても不当ではないということを申上げておるのですが。
  102. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 到底そうは考えられません。国際的な緊張を除く手段を双方で考えようということであります。緊張を起すような何か原因があつたときにそれを除こうというのであります。
  103. 松永義雄

    ○松永義雄君 その原因を除くのに行動(アクシヨン)という言葉を使つておるので、行動とはどういうことかということを聞いておるので、それが広義に解釈されるからそういうものも含まれるのではないかこういうふうに聞いておるわけです。
  104. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 行動といいましても、例は悪いかも知れませんが日本で朝鮮をもう一遍領有したいという議論があれば国際緊張をもたらすような原因になると思います。そういつたことが起つたらそういうことのないようにお互いに努力をするというような種類で、とにかく国際緊張というものは相当に重大なものであります。これを除くように努力しよう、こういうことであります。
  105. 松永義雄

    ○松永義雄君 その先はもう意見の相違になつてきますが、行動という意味でしかも広範囲に考えられるのですからその原因がいろいろあるので、その原因を除くための行動というものが、戦争にひとしいものが出て来るのであります、解釈上。あなたがやるとかやらないとかというのではなくて解釈上そういうことが出て来るのではないか、こう聞いておるわけです。
  106. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは出て参りません。
  107. 松永義雄

    ○松永義雄君 その点につきましてはもう意見の相違ですからやめまして、更に第三号の規定でありますが、「軍事的義務を履行すること」となつておるのですが、援助を受ければ日本も又軍事的義務を履行しなければならないということが援助協定の中に入つて来ると解釈してよろしうございますか。
  108. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) その通りであります。
  109. 松永義雄

    ○松永義雄君 それから五百十一条第四号の規定ですが、一般的経済の許す限り全面的協力を行うという一般的経済とは、一体今のような日本の現在の経済状態を指しておるのですか。あるいはもう少し変つたものであるか、併しその標準というものは何であるか。
  110. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは一般的規定でありまして日本に対して当てはめる規定ではないのであります。いかなる国に対しても同じような規定があるのであります。そのときどきの経済の状況を見ておるのであります。
  111. 松永義雄

    ○松永義雄君 その一般的経済とかいろいろの日本の経済状態の許す限り、全面的な寄与を行うこと、全面的という言葉を特に強調して全面的寄与ということを書いてあるのですが、一体経済ができ得るという限度はどの程度であるかということは、これは大蔵大臣に質問すべきことであつて、実際上の解釈は、あなたを別に軽べつするわけではありませんが不適当だと思いますのでその点は省いておきます。その次に援助協定は無論米国安全のために締結されると思うのですが、そういうふうに解釈してよろしうございますが。
  112. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは日本の安全が即ち米国の安全になるという考え方から、米国の安全のために援助をするという、そういうことであります。
  113. 松永義雄

    ○松永義雄君 やや揚足どりになるかも知れませんが、MSA(ミユウチユアリ・セキュリティ・アクト)というものは日本だけに適用になることではないのであつて、ユーゴでもすでに結ばれておるとかいうお話で、世界的にこれは結ぶ国があれば結ぶのである、然るにMSAの前文には御承知の通り米国の安全のためということになつておるのであります。日本のためにのみアメリカの国内法ができておるわけではないと思う。出発点はやはりアメリカの安全のためだからできておるので、その結果としてアメリカの大統領が金を出す場合には第五百十一条の範囲内でなし得るのだという規定がしてあるのでありまして、日本のための安全は即ち米国の安全のためでもあるというのではなくして、米国の安全から出発して日本の安全にもなるとアメリカが解釈して、そうしてこういう国内法ができたのではないかと思うのですがいかがでしようか。
  114. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これはもちろんMSAというものは慈善事業ではないのでありまして、アメリカの安全になればこそアメリカが金を出すのでありまして、ただ今までのようなアメリカの孤立主義の考えを除きまして、世界の各国がおのおの防衛力を増強して、自分の国の安全を護るゆえんが世界の平和に寄与することになり、それが結局アメリカの安全になることになる、こういう意味でアメリカが援助をいたすのであります。
  115. 松永義雄

    ○松永義雄君 それではお尋ねいたしますが、MSAの援助は決してチヤリテーではないのだ、実際の関係から出ているのだ、併し日本の現状というのはまだたくさんの飢えたる人々が余りにも多すぎる、しかし日本のコストは高過ぎて、果して日本が成り立つて行くかどうかということについて英国の人は憂えておるのでありますが、その点に関して新聞記事のあるなしを問わず、そういつた意見にに対してどういうふうにあなたはお考えになるか。
  116. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私はそういうことももちろんあることを認めておりますが、MSAの援助に関連しましては、一方においては日本の防衛力の増強に資すると共に日本の経済面にも寄与するということを確信いたしておりますから、その方面にも直接の目的ではありますまいが相当の寄与ができ得るものと考えております。
  117. 松永義雄

    ○松永義雄君 外務大臣はMSAに対する援助協定を好きと思われておるのですか。お好きなんですか。好んでなさろうとしておるのですか。
  118. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私はこれは私の意見になるかも知れませんが、日本の自衛力なり防衛力の増強というためには日本自身が節約をし必要な経費を出すのが本則であろうと思います。ただ戦後の経済回復まだ意のごとくならず、一方において防衛力の増強は是非やりたいと考えておりますので、この際は変則ではありまするがMSAの援助を受けて、この方面にも一層の努力をすべきであろう、こう考えております。
  119. 松永義雄

    ○松永義雄君 その英国の雑誌のことはすでにお読みになつておることだからあえてここに申上げることもないと思うのですが、日本の援助協定によつて名前が再軍備で悪ければ何でもよろしいが、そういつた編成をするということは、アメリカ側の性急な(アージングという言葉が書いてありますが、)強要によつておるのだと言つておるのですが、本当のところあなたは好きでやつておるのかどうか。
  120. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私はできれば日本自体の力でやりたいと考えております。それでは十分でありませんから、MSAの援助を受けてやるのが次善の筋としては最もいいものであろうと考えております。
  121. 松永義雄

    ○松永義雄君 現在においてあなたはこれを日本はやつて然るべきだと、こう思つておるわけですか。
  122. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) その通りであります。
  123. 松永義雄

    ○松永義雄君 意見の相違ですから……。一体これによつてどのくらい援助を受けられるというつもりですか。
  124. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは直接の援助としましては約一億ないし一億五千万ドルの間ではないかと思つておりますが、まだその方面の話合は進んでおりませんから正確なことは申上げられません。
  125. 松永義雄

    ○松永義雄君 そうすると、それだけの金があれば日本は安心ができるというような結論をあなたがするのでやる、こういうお気持なんですか。
  126. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは、そのくらいの金とおつしやいますが日本の財政から言えば相当の金額であろうと思います。なおそれは金だけでは済まないものもあろうと思います。新しい種類の装置、新しい種類の兵器等もあろうと考えております。
  127. 松永義雄

    ○松永義雄君 サンフランシスコの講和会議のときに、ソヴイエト代表のグロムイコ氏が演説をしております中で、日本の陸軍の軍備は自己防衛にのみ供される、対空砲兵を含め総数十五万人の兵力を有する陸軍、それから七万五千トンの海軍、その他航空機を有する、こういうことを発言しておるのですが、今度のMSAとはどういう関係になるのですか。一体どういう腹でソヴイエトはそういうことを言うたのでしようか。
  128. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) ソヴイエトの腹は説明を受けておりませんから知りませんけれどもそれだけの問題ではなくて、日本海に入り得る船は日本海に領土を持つ国に限るというような条件もありまするし、又アメリカなり外国の軍隊は日本から撤去するという前提もありますから、その辺でソヴイエトの意向というものは大体察知できるのではないかと思つております。
  129. 松永義雄

    ○松永義雄君 ソヴイエト側がそういうことを言うのにはいろいろな腹があるだろう、想像する場合がいろいろあろうと思います。しかしながらソヴイエトがそう言うしアメリカもMSAの援助をする、こう言つておるのです。その際に特にMSAによつて何らか日本に重大なる義務を生ずるかのごとき約束をしなければならないということは、一体それはどういうわけなんですか。
  130. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは日本ばかりがMSAを受けておるならそういうお疑いもありましようが、イギリスもフランスもイタリヤもポルトガルもその他中南米諸国東亜の諸国にもいろいろな形で受けておるものもありまして、日本ばかりの問題ではありませんで、MSAを受けておる国が事実上どういう関係に立ちどういう義務を負うかということは過去の例で大体察知できるのであります。我々もこれを見まして別段日本がこれを受けたからといつて特に重大なるほかの国と違うような義務を受けるとは考えておりません。
  131. 松永義雄

    ○松永義雄君 私の憂えておるところは国民全部が戦争を好まない、二度とああいう戦争をやりたくない、戦争の惨禍はこりごりだと言つておる。然るに日本に仮に軍備がないとすれば、そうすれば攻められるおそれがあるのだ。ところが更にアメリカとこうした援助協定を結べば戦争が起る場合が一つふえるというふうになるのですが、あなたはそういうふうに考えられないのですか。
  132. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私も戦争なんということをやることは絶対に反対であります。しかしこれはしつかりした日本の防衛の力がある場合にのみ、日本の侵略等は免れ得ると思つておりますから。第二の点について方法論としては全く私は反対の考えを持つております。
  133. 松永義雄

    ○松永義雄君 こういう場合を考えられないのですか。アメリカにしたつてどこの国でもいいですが、よその国の援助によつて軍備を持つ、日本が持つ、そうしてそれ以外の第三国が何となく日本をねらつているというような場合に、それに備えるというような一つの編成というか施設を持つということは、これは軍隊を持つということにならないのですか。
  134. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは保安庁長官がここにおられますから私から申すのはおかしいのですが、MSAの援助を受けましても戦力に足るものを持つことは政府としてはいたす方針でないのであります。従いましてこれは純然たる国を護るために、しかもそとにも恐らく十分なところまでは行きませんと思いますが、そういう意味で国を護るための力の幾分かをふやそうという程度であります。ほかの国から疑惑を招くような理由は豪もないと信じております。
  135. 松永義雄

    ○松永義雄君 サンフテンシスコ会議におけるグロムイコ代表の発言に陸軍とか海軍とか言つておるのですが、その兵力は今申しましたように十五万人の陸軍、七万五千トンの海軍、こう言つておるので、現在経済審議庁が計画されている十七万五千人からすれば、陸軍とか海軍とかと言われるのは国際的な常識ではないのですか。
  136. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私は保安庁でも戦力に至らざる防衛の力を貯えようとして非常に苦心をしておることを承知しております。従いましてこの実際を御覧になれば軍隊であるというようなお考えは払拭できるだろうと思います。
  137. 松永義雄

    ○松永義雄君 世界で最も陸軍国だと言われているツヴイエトがこれを陸軍だと言つておるのです。それをあなたがけが陸軍でないと言つたつてそれで世界に通るおつもりですか。
  138. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) ソヴイエトは現在の保安隊を陸軍だと言つておるのじやないのでありまして、ソヴイエトが言うのは日本に新たにこれこれの軍隊を許すがそれ以上のものは許さない、こういうことを言つておるのであります。そうして対島海峡をほかの国は通さないとか、外国の軍隊は直ちに撤退しなければならん、こういう主張をいたしておるのでありまして、今のものを軍隊とか軍隊でないとかと言つておるのではないのであります。
  139. 松永義雄

    ○松永義雄君 私の言つておるのはあなたの註釈つきのことを聞こうというのではなくて、対空砲兵を持つておる十五万人の兵力を有するのを陸軍と言つておるのですから、それにひとしいものが現在あれば陸軍と思われるし、今なくして将来そういうことになるということになれば世界は陸軍と認めるのではないかということを申しておるのです。
  140. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) ソヴイエトはどういうふうに考えるか、これは私から申せませんが、一般的の自由主義諸国におきましてはこれを陸軍とは認めないであろう確信いたしております。
  141. 松永義雄

    ○松永義雄君 この保安隊と、今度のMSAによるところの編成されるものといいますかその性格は同じなんですか、違うのですか。
  142. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 同じであろうと考えております。
  143. 松永義雄

    ○松永義雄君 そうすると、今度の増強されるものが若しあなただけが軍備でない、陸軍でないとおつしやつても、ソヴイエトでないそのほかの国が軍備だと言われるような施設を日本が行うという場合においては、保安隊は軍備を目ざして出発したものであるというふうに考えてよろしいのですか。
  144. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは日本政府の見解が一番正しいと思います。
  145. 松永義雄

    ○松永義雄君 その先はあなたの独善的な判断ですが、それはあなたと私との議論ならそれはよろしいのですが、日本がどうなつて行くかということについて国民全部が憂えておるときでありますので、今日民主主義だとこう言われて国民の世論によつて政治をやつて行こうという世の中に、わかつた者はわかつた者でよし、わからない者はわからないものでよし、わかつた者の中にも賛成する者もあるし反対する者もあるといつたような政治をやつて、日本は一体安全なんですか。
  146. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 我々は思想統一等の考えはありません。従つて民主国家においてはいかなる場合にも議論ができるのは当然である、これがむしろ健全な民主主義諸国の徴候であると考えております。
  147. 松永義雄

    ○松永義雄君 重ねてお尋ねいたしますけれども、今度のMSA、アメリカによる援助協定の締結について、アメリカ側の要求が強いから吉田内閣は仕方がないからやるのだということではないのですか。
  148. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) アメリカは未だ曾つて自分の国の金をよそへ無理に貸してやるとか無理に借りろというようなことは全然ないのであります。向うの目的に沿わないようなことならば援助はしないだけの話であります。
  149. 松永義雄

    ○松永義雄君 まさか英国人はそううそをつく人間ではないので英国人はジエントツマンであるということを我々は承知しておるのですが、インペイシエント・アメリカン・アージングによつて日本が援助協定を締結しなければならないようなことになつておる、こういうことを言つておる。それでも外国の雑誌だから知らんとこういうふうにお話になるかも知れませんが、私はもう少し良心的になつて国民と話して頂きたいと思うのですが、何でもかんでも、保安庁長官がおられるのでありますが、事は黙つていたり、かくしても第三者は判断することはできるし、第三者の判断によつてことがきめられるという事実がすでに裁判上にもあるのですが、あなたがそういうふうに何でも否定しておられるのはいいのですが、しかしその結果漸次世の中が変つて来て、そうしてこれは本当に大変なことになつたというときになつて、実はああだつたということを言われて国民があつと驚かなければならないということは、決して日本の防衛になるものではない、かと私は考えるのですが、もう少し本当のことを言われてはどうなんですか。
  150. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私の申しおることが本当のことであります。ほかの外国の雑誌等が間違つておるのであります。
  151. 松永義雄

    ○松永義雄君 意見の相違ですから終ります。
  152. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 何か衆議院に出席を要求されておるとかでお忙しいようでありますから、私は簡単にお尋ねしたいと思いますが、MSAの援助を受けることによりまして、具体的に保安隊の性格とか任務とかいうようものがあるかないか。
  153. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) MSAの援助を受けることによつては全然変りありません。若し変るとすれば日本政府の決定、日本国民の決定によつて変ります。
  154. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 日本政府の決定によつて変るということは言葉の通り受取りますが、現実としては援助を受けることによつて変ることが現われてくることを予想しておられるか、全然そういうことはないとお考えになつておられるか。
  155. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) MSAの交渉においてはそういうことは全然ありません。
  156. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 五百十一条の六条件を全部のまれるわけですか。
  157. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) その通りであります。
  158. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうして何かのこれは条約か協定になるわけですが、そのことを明確に条約が協定の中に明示されるわけでありますか。
  159. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは表現の方法ですからそこまで話が進んでおりまませんし研究もそこまで行つておりせん。併し念のために申上げますれば、今まで各国がアメリカから援助を受けておりますが、その援助協定の第一条に一々六項目を明記しないで「MSA法に基くすべての条件等に基いて」こういうふうに書いてありまして、何も五百十一条だけでなくて全部のMSA法の関係規定に基いて、こういうふうになつております。
  160. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 あなたが日本の将来にということは、援助を受けておるところのユーゴであるとか、あるいはビルマにしろインドネシアにせよいろいろ国内に問題があつたことはよく御承知になつておると思います。そこで六条件ないしあるいは消極規定などによりまして私は例えば情報の漏れないようにするというような点で、又昔の軍機の保護規定というものが出てくるのではないかということを心配するのですが、あなたが特に交渉に当つておらて、これをやつては日本のために非常れに心配になるというようなことが、MSA関係に関連しましてここは一つはねのけてやらなければならないというようなことは条件に一つもありせんですか。
  161. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これはMSAの交渉をやる前にいろいろ考えてみまして、それで例の質問書も出したようなわけであります。今のところそういう心配になるようなものはないように私は見ております。
  162. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 日本政府としてあなたが質問書をお出しになつて心配されておる点があると思いますが、どういう点を心配されておりますか。
  163. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 例えば五百十一条の(a)項の三号に軍事的な義務というものがあります。この軍事的なる義務というものはどういう内容を持つか、その内容によりましては日本の憲法にも違反するような結果になりしないか、こういう懸念もありましたので、その点は確かめてみましたころ、安全保障条約による現行の義務以上に出ないものである、こういう向うの明答がありましたからこれでこの点も心配はないのであります。その次の防衛力を維持発展させる、こういうのが第四にありますが、これについても若しそういう日本の政治的条件や経済的条件にそぐわないような結果になつては大変だというので念のために確めました、この点も我々の考えと同様であつて、しかも防衛力の維持発展等については日本政府が決定するのであつて、アメリカ側は何ら干与するのではないということも明らかになりましたので、この点も心配するところはまい、こういうふうに考えます。
  164. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 今交渉をたびたびお続けになつておるが、いつ頃協定になるわけですか、条約になりますか。
  165. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは条約と名前をつけましても協定としましても、広義の条約であることは間違いありません。普通一般の協定と思つております。
  166. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これは協定であるから国会の承認を求める必要はない、そういう態度ですか。
  167. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 今申した通り、協定にしろほかの名前にしろ広義の条約ということには間違いないのでありますから、国会の承認は求めるつもりであります。
  168. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これはいつ頃まとまりましようか。大よその見通しは。
  169. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 見通しはまだつきません。今始めたばかりでたしか今日で三回目の会合をやつておると思いますが、まだちよつと具体的なところまで一つも入つておりませんからいつ頃になるかちよつと見当がつきません。
  170. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は戦力に対する解釈であるとかというようなものがずつと変つて来たと思います。こういうのは一つの軍事的援助に対して私は政府が受入れなければならん伏線だと思うのです。国民が非常に心配をし、何と言われましても私は結果には日本は再軍備し、そしてアメリカのMSA援助を受けるというよりもMSA機構の中に日本が入ることは事実だと思う。ですから私は一つその間の事情というものについて外務大臣は単に外務省の情報などを云々せずに、私は国有において十分一つ納得の行くように国民に対して説明をして頂くことを要望いたしましてお急ぎのようですから打切ります。
  171. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 外務大臣に対してほかに御質疑のおありの方ございませんか。ないようでしたら外務大臣にお帰りになつて頂いてよろしうございますね。   ―――――――――――――
  172. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) この機会に若しお許しが得られれば、今ここにかかつております外務省の移住局の問題について発言をいたしたいと思います。
  173. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 皆さんにお諮りいたしますが、外務大臣から移住局について発言がしたいということですが、いかがでございましよう。  それではどうぞ。
  174. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 極く簡単でありますが……。  戦後日本の領土が縮小いたしまして人口の重圧に悩んでいるわけでありますが、政府としましてはこの際是非移民を促進して国民に明るい希望を与える必要があると考えております。そのためには最も優秀な移民を安全にできるだけ多数送り出す必要があると思う。ところが戦後の諸外国の例に徹しますと、移民の送出は政府が直接これを担当しております。移民受入国でもやはり受入国の政府がこれに直接当つておるような状況であります。戦争前には我が国の移民事務は外務、拓務両省が強力に推進しておりましたが、現在は外務省の欧米局の第二課の移民班がこれに当つておりまして、移民政策の遂行上は十分な力を発揮できず甚だ困難をいたしておる実情であります。特に欧米局長は二十二ヵ国の米州諸国の政務処理に忙殺されておりまして、欧米地域以外の移民の送出を含み計画の立案実施に専念するには時間も足りないような有様であります。従つて行政簡素化の政府の方針もございまするが、只今申しましたような特別の必要がありますので、この際できるだけ簡素な機構で海外移住局を設置いたしまして、こういう移民致策の一項を強力にいたしたい、こういう考えで只今御審議願つておるような次第であります。  なおつけ加えますと、本年度送出の移民は当初は六百九十家族でありましたが、予算措置や船腹の事情からこれを二百二十家族に変更せざるを得なかつたのでありますが、来年度はこの四倍千家族ほどが予定されております。なおブラジル政府では現在九千家族の移民のわくを認めております。このような事情でありますので是非とも一つ御審議の上御承認を得たいと考えております。   ―――――――――――――
  175. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) それでは議題となつております保安庁法の一部を改正する法律案について、保安庁長官も出席をされておりますので質疑がありましたら御質疑を続行して頂きたいと思います。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  176. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 速記を始めて下さい。ほかに御質問もないようでありますから、質疑は尽きたものと認めて御異議ござざませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
  177. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 異議ないものと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。
  178. 松永義雄

    ○松永義雄君 只今議題となつております保安庁法の一部を改正する法律案について反対をいたします。  それは今外務大臣の御説明にあつたように、今度のMSA援助協定による編成は、保安隊を伸ばして行くものかのごとき言辞があつた。我々としましては、保安隊そのものがすでに軍の一つの卵である、軍にもひとしいものと言つても差支えないものに至つております。これは明らかに憲法に違反するものである。これを伸ばすところの今日の定員法を増加して漸次増員して行くという傾向を我々は予想しなければいけない。かくのごときものに対しては反対せざるを得ないと思います。
  179. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 只今議題となつております保安庁法の一部を改正する法律案に対しまして反対をいたします。  理由の第一点としましてフリゲート艦を十八隻を借りるいきさつをふりかえつてみるとよくわかると思います。当時アメリカの新聞は日本に対して十八ぱい云々するということを書き立てておつたのでございます。それに対しまして日本政府は十隻よりほかに借りないのだと、我々も委員会において、アメリカはこう言つておるのだが、日本政府はどうかということを質問しましたことに対しまして、言を左右にしてはつきりしなかつたということは私は当初あつたと思います。併し運輸大臣や或いは木村保安庁長官や外務大臣、その人たちが出て来て答弁が食い違つたようになつて来る。十隻を云々するということにからみ合つての問題が終つてから、私は漸く書簡というようなものを出して来たというようなことが当時の情勢であつたと記憶しておるのであります。ということは、結局保安隊の性格であるとか或いは任務であるとかいうようなものが、予備隊から保安隊にきり変るときに、これはやはり警察予備隊だというものが国警或いは自治警の警察力の足りないものをやるのであつて、本質的に何ら変りないのだということを提案理由或いは委員会の質問においても明らかにされたのでありますけれども、最近におけるところの自衛力の問題、或いは憲法第九条の問題、或いは戦力の問題などにからみ合つて参りますと、特にMSA援助前にひきかえまして、これは政府の考え方あるいは解釈の仕方というものが刻々に拡大強化されて来たと思うのであります。この一環として私は、たしかこの人員というものは、船が十八ぱい、上陸支援艇五十隻入つた、現にあるのだからしようがないのだ、こういうせつぱ詰つたところの既成事実を積上げておいてやつて来たことでございまして、私は提案としては無理からん点もあると思うのですけれども、基本的にやつておるところは今申しましたように本当に悪らつなる私はやり方だと思う。こういうやり方に対しまして反対をし、保安隊が何であろうとも軍隊の卵であるという解釈の下に反対いたします。
  180. 松原一彦

    ○松原一彦君 私は一つの国民が生きんがための自衛力を持つということに対して、何ら異議のあるものではありません。併し現行憲法下において戦力は持たれないという原則はどこまでも保持して行きたいと思うものであります。警察予備隊から保安隊に移つたあとの客観的な事実は、いささか私はふに落ちないものがありますけれども、保安隊が言うがごとくに国内治安の維持に任ずる必要のものであるという限りにおいてこれを承認せざるを得ません。改進党はその意味においてこれを承認いたしております。私は改進党に籍を持つ者でありますからこれを承認いたします。但しこれが直接外敵の侵入に対応するところの戦力であるということになりますと、遺憾ながら私は否認せざるを得ません。そういうような意味におきまして、この進展の将来に対しましては私は別に考えることにいたしまして、今回の定員増は万やむをえざる既成の事実として賛意を表するものであります。
  181. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 私は日本の現在の治安警備等の実情から見まして、今回の保安庁法の改正は適当なものであると思いますので、本案に賛成いたします。
  182. 上原正吉

    ○上原正吉君 私は自由党を代表いたしまして本法案に賛成いたします。我が国は世界で一、二を争う長い海岸線を持つておりまして、しかも現今密入国、密貿易が盛んに行われておりますことは諸種の報告で明らかであります。この長い海岸線を防備いたしますためには容易な力では防備できないと思うのでございます。ことに海賊などというものは今から二百年も前から大砲を持つておりましたので、この海上警備力増強のための保安庁法の改正は誠に適切のものだと思いますので、賛成いたします。
  183. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) ほかに御意見もないようですが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 異議ないものと認めます。それではこれより採決に移ります。保安庁法の一部を改正する法律案について採決をいたします。本法案を原案通り可決することに賛成のかたの挙手を願います。   (賛成者挙手〕
  185. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 多数でございます。よつて本法案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお本会議における委員長の口頭報告の内容は前例によつて委員長にお委せ願うことにいたしまして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 御異議ないものと認めます。それでは多数意見書に賛成なさつたかたの署名をお願いいたします。   多数意見者署名     長島 銀藏  白波瀬米吉     松原 一彦  竹下 豐次     上原 正吉
  187. 小酒井義男

    ○委員長(小酒井義男君) 御署名洩れございませんか。……御署名渡れないと認めます。それでは本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会