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1949-05-28 第5回国会 参議院 法務・農林連合委員会 2号 公式Web版

  1. 昭和二十四年五月二十八日(土曜日)    午前十時四十二分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件農業資産相続特例法案内閣提出、  衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それではこれより法務及び農林の連合委員会を聞きます。本日は各学識経驗のあるお方に御出席願いまして、この方々から只今審議中の農業資産相続特例法案について御意見をお伺いいたしたいと存じます。本日御出席をお願いいたしました訳は、御承知の通り農業資産相続特例法が只今議題になつておる次第でありまして、この法案はその及ぼすところ影響至大な関係がある次第でして、農民諸君の將來の企業形体に大きな影響を及ぼすと考えまして、その道に明るい皆樣の御意見をお伺いして我々の法案審議の参考の資料に供したいと存じまして、お忙しいところを御出席願いまして恐縮でございますが、忌憚のない御意見をお伺いいたしたいと思います。特にこの法案の第九條、第十二條というものが問題になつておる次第でありまして、第九條によつてこういう農業資産の相続に特例を設けることの可否、第十二條によつてこれを將來請求し得るという制度、こういうことによつて日本の現在の農村企業というものが、いわゆるこの法律の狙うところの農業企業の細分化ということを防止するかどうかという点、或いはこれが現在の民法に定むるところの均分相続の原則に悖るかどうか、そういう点についていろいろ御意見を伺い、又その他の点についてこの法案について御意見があればお伺いいたしたいと存じます。要するに農村の実情と法律との関連が我々として知りたいと存ずる次第であります。どうか皆樣の御意見を忌憚なくお述べ願いたいと思います。  先ず全國指導連の調査部長をなさつてらつしやる杉村さんからお伺いいたしたいと存じます。
  3. 杉村幹

    ○説明員(杉村幹君) 現在のところ農業経営の細分化は非常に進んでおりまして、日本内地におきますれば五反未満の農家四二・四%でありながら、その経営する面積は全体の十七・二%であるというふうなことで、北海道と内地との全体の経営面積を見ましても、一戸平均として見て八反五畝でありまして、日本昭和十五年における調査の一町一反一畝に比べまして相当減つておるというような事情であります。これは主として戰後における農村への都市からの帰農人口というものと、それから農村の大部分の人口の自然の増加というものによつて生れた來たわけであります。併し農家を專業兼業別に見ますると、專業農家の数が殖えております。これは戰爭中の兼業農家いわゆる職工農家等が兼業の対象を失つて專業農家になつた。食えないところの專業農家になつたというふうな実態であります。尚こうした他に税金の問題で累進高率課税が更に農村の経営の細分化をば招來しつつあるというふうな状況であります。こういう状況であつて見ますれば、今後の日本農村についてはどうなつて行くかということにつきまして、非常に大きな心配を持たれるわけでありますが、何とかして経営細分化は食い止めねばならないというふうなことが農村関係者一般の氣持となつておるのであります。併しその食い止めの方法は、鉱工業の発展によつて農村人口をばその方に向けなければ駄目であるというふうに大きくは言い得るのではないかと思うわけであります。均分相続法によつてそれでは農村で問題を起しているかと言いますと、我々の耳に入つている範囲内におきましては、未だそれによつて大きな問題が起きておらないようであります。それは大体次、三男坊やそうした人たちが権利放棄という形において円満にと申しませうか、今のところはこの問題は解決しておるようでありまして、その点では未だ具体的にこうあつて欲しいというような声が下からも出ておらない、そう問題が出ておらないということが却つて実態であります。私共は経営の細分化に対しましては、やはりどうしてもこれを防止しなければならぬというふうに思うのでありますが、この法律によつてそれを防止し得るかどうかという点につきましては、防止し得ないということはないでありませうけれども、そう大して大きな意義は認められないのではないかというふうに私共は思つております。併しこれは全指連の意見でもなければ私個人の考であるわけであります。  それでここでお願いしたいということは、一つはこうした法律によつて無理に農村の経営の細分化を防止しろというよりも、例えば相続税なんかの軽減によりましておのずから農業資産が分割されないで、而も均分相続精神生きるというふうな方法があると思うわけであります。先程申しましたように、農家から見ますと一町の経営でありましたも五、六人の人の生活が支えきれないというふうな状況でありまして、その点は非常に將來が心配されたわけでありますけれども、問題は一つは將來における日本工業発達と先にも申上げましたように相続税法の問題とか、或いは又調停におきまして農業資産を十分護らして行くというようなことについて考慮を拂つて貰うということであります。以上であります。
  4. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 質問は後にお讓り願いまして、次に全國農民組合の金田範俊君の御意見をお伺いいたします。
  5. 金田範俊

    ○説明員(金田範俊君) この法案によつて日本の農業の將來に大きな方向が決定されると思うのであります。從いまして日本の農業がどういう方向に進むべきかという方向と結び附けて、私は法案が作られなければならんと思うのであります。一部の者は、日本の農業を細分化さしてこの資本主義下における農業というものを一應沒落さして、その後に土地の均分化の下に建直さなければならんということを言う者があります。現在の農業経営の段階を認めましてこれ以上の細分化を食い止めなければならんという考え、或いは農民の所在する耕地面積の限界をどこに置くことが一番正常な農業経営が行われるであろうというようないろいろな基本的な問題につきましてこういうような保護法案というものが決められなければならんと思うのであります。私はこの法案を見まして考えますと、憲法によるというところの財産の均分化ということよりもむしろ長子相続に重点が置かれておるのではないかというような感じを受けるのであります。実際農民に当つてみますると、農民は自分の財産は結局自分の後を継ぐ者に讓りたい、そうして如何に法律がどうなつても自分はおじごや三男坊に面倒を見た貰うということは現在の状態においては部落の者或いは親戚の者に顔向けができないというような極めて封建的な考え方があるのであります。併しながら我々はこういうような封建的な考え方をなくして本当に個人の人格の尊重、財産の均分というような方向に指導しなければならんと思つておるのでありますが、法律もこういうような消極的なこの法案のように現在の段階における農業経営のこの段階における問題についての法律でなしにもつと日本農業建設的な、もつと経営が裕かになるというような方向にこの資産相続の特例というものを持つて行かなければならんと思うのであります。大体私の総括的な意見は只今申上げましたように建設的な意見を織り込んだところの法案を作つて頂きたい、こういう考えであります。
  6. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 次に全國農民組合の沼田政治君にお願いいたします。
  7. 沼田政治

    ○説明員(沼田政治君) この法案につきまして実際に農村に出掛けまして農民の人たちにこの趣旨を話しまするというと、皆これは賛成だ、結構だ、こう言うておるわけであります、尤も農民といたしましては法案の内容がどんなものであるか具体的な知識を持合せないためにそういう法案の内容を十分檢討して賛成だ、こういうのではございませんが少くともこの趣旨に賛成であるというふうなことは殆んど私共の接した範囲においての農民の一致した意見であるようであります。ただ問題はこの法律によつてこの趣旨が十分に貫徹できるか、或いは却つて弊害となる面が出やしないかということであろうかと思うのであります。趣旨は先程委員長の仰せられました通り日本農民の零細な経営をこれ以上細分化することを防止するのであるということにあるわけでございますが、これも先程杉村さんが言われました通り、この法律だけで耕地の細分化を防止するというようなことは不可能なのでございます。そういう点から申しまして、私はむしろ今の農地改革自作農主義という考え方で出発しておる、この建前を認める以上は、むしろこの際、思い切つて徹底的な家産法の制定を一つ御考慮になつた頂きたい、こういうふうに考えておるわけであります。  それからこの経営の面積についてでありますが、要は適正な経営が行われることが重要なのでございまして、何町歩以上はよろしい、何町歩以下では困るというようなことではないわけでありまして、五町、六町でもそれが適正に経営されておるものは勿論認めて差支えないわけでございます。從つて五町や六町の経営面積農地に対してまで、これの分割を防止するという必要はあながちないわけでございます。ただ経営面積というものは、それぞれの技術能力に應じておのずから決定されるものでございますから、そうした具体的な経営面積を考えるということは、これは当然無理であると思います。五、六町も作つておる面積第三者から見て必ずしも適正でない、こういう判定を下されるような場合には、当事者の意思に從つて分けるというようなことも、これはちつとも差支えないじやないかというふうに考えておるわけであります。  それから農業財産の特質として私が考えられますことは、これは親の財産であるといつても必ずしも親の働によつてできた財産とは限らないのでありまして、例えば農民の場合には、親が八十歳まで生きておつて、子供が五十歳頃になるまで百姓をやつておつたとすれば、名義は親の財産でありますが、実際はむしろ長男の方が、自分の所有権と申しますか、それに対して権利を主張することのできる場合が非常に多いわけであります。そういう場合には結局長男が、長男とばかりは限りませんが、とにかく親と一緒に長い間、農業をやつていた子供は、嫁などに行つた娘や或いは早くから町に出て働いていた子供と同じく、これを平等に分けるということは、これは不都合なのでありまして、結局そういう考えで、農業財産は單なる親の財産と單純に決めてしまうことはできない、そればかりでなく、例えば二男や三男でも他に仕事がなくて家にいつまでも留まつて、そして家の百姓の手傳をさせられたというような場合には、やはり二男や三男の勤労によつてでき上つた農業財産でありますから、これは牛や馬の場合なら大した問題になりませんが、長い間、土地改良の対していろいろと共同で以て労力を注ぎ込んで非常によくなつたという場合には、これは実際問題として、分割は事実不可能でございます。それに対しましては親ばかりでなく皆の共有財産である、こういう考え方が持たれるわけであります。そういう点に対しても大きな考慮を拂わなければならんと思います。  それからこういう問題は要するに法律で以て形式的に決めてしまうと、実際に合わないところができて來ます。要するに日本の農業というものは非常に遅れた要素を持つておりますから、それを近代的の法律解釈で以て割切つてしまうと実情に副わない、こういう点も十分考えますときに、余り法律の規定によつて身動きもとれないものを作つてしまうと、却つて実情に合わない、こういう点を我々は考えるわけであります。そういう点で、できるだけ運用の余地をこういう法案は残して置くべきである、こういうふうに考えておるわけであります。それじやその運用はどうするかと申しますというと、まあ当事者間の話合で決まりがつけば、これは一番円滿でよろしいのでありますけれども、必ずしも当事者の話合で解決がつくとは、これは実際上参らないわけであります。それならばいきなり家庭裁判所へ持つて行くかと言つても、それは又余り表沙汰になつてしまう、そこでどうしてもやはり村で、この法律によると、農地委員の意見を聞くというようなことになつておりますが、そうした附随的な役割だけでなく、むしろ民生委員とか小作調停委員などが各町村において任命されておるような形において、こういう問題があつたときに、村で予めそうした問題について、何と申しますか、仲介するとか、そうした積極的な役割を演ずるようなものを置いて、そうしてそういう人たちの話合によつて決めるというようなことなども考える必要があるのではないか、こういうふうに思うわけであります。  それからもう一つ問題になりますのは、この長男の資産を分ける場合に、農業経営の安定を害しない範囲だとか程度でとかいうように、非常に曖昧な表現がされておるわけなんであります。これはまあ先程言つたように、余りきつく規定すると、又身動きのとれない、実情に合わないものが出て参るわけなんでありますが、又曖昧にすると、これは又問題の種を蒔くわけでありますから、その点は、今申しましたように、民生委員的な機関を運用することによつて解決をするというようなことが一番必要になつて來るのじやないかと、こういうふうに思うわけであります。  それから最後に申上げたいと思いますのは、一部の学者の間で、この法律憲法違反であると、いわゆる平等権を阻害するものであるというような意見がありましたけれども、併し私共としては、そうした形成的な考え方には賛成いたしません、やはり経済的な基盤というものをなくして徒らに平等にされるということは、これは実生活というものを無視することになつてしもうわけでありますからして、そういう点は、私共は余り重くそういう意見を願る必要はないのじやないか、こういうふうに考えるわけであります。  それから長男農業資産を多く相続することによつて、その他の次男なり三男なりに分ける場合、必ずしもこれは財産を評價してそれで分ける必要もないのじやないかと、これは私は法律の專門家ではありませんからして、詳しいことを、或いは確信を持つて申上げることはできないのでありますが、例えば所有と経営というものを分離した考え方を以て、新らしく地主を作るという形になつては、これは問題があろうかとも思いますが、併し相続の場合に限つては特例としてこれと認めて、次男、三男には所有権は認める、併し経営権は飽くまでも、まあ次男、三男に限らないでしようが、一人に限定する、そうして小作料に相当するものをその農業相続人は拂うというような考え方も出て來るのじやないか、ただまあ当事者が希望すれば、一括代價を支拂つて済ましてもよろしいというようなことで、そういう解決の方法があるのじやないかと、これは素人考えでありますが、そういうふうに考えておるわけであります。  大体そうした意味で、結論といたしましては、この法律案の趣旨は非常に結構である、併しもつと内容については檢討される余地が残されているのじやないか、これをこのまま出すことは少し早いのじやないか、こういう感じがするのであります。
  8. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 次は日本農民組合中村進君。
  9. 中村進

    ○説明員(中村進君) 私只今申上げたいと思います意見は、日本農民組合として決定した意見ではないということを、予めお含み置きを願いたいと思います。  この法律案農業資産の分割による農業経営の細分化を防止しようというよい意図を持つておるということは、私共十分に分るのでありますが、これが農地改革によつて実質上作り出されております小土地所有制度を維持しよう、又それを固定化して行こうというところに非常に問題があるのではないかと、そういうような私共は考えるのであります。即ちこの法案は、農地改革と表裏一体をなすものであるという点から性格が評價されなければならないのでありまして、これが日本の農業の今後の発展のためにどういう役割を持つか、こういう点を私達批判いたしたいと思うのであります。農地改革が古い土地所有制度から解放した意味では私達進歩的だと思つておりますが、併しこれが現在小土地所有制度に固定させようとする点、この点が非常に反動的な役割を生みつつあるのだと我々は考えておるのであります。從いまして、この法律案の性格も、こういう農地制度を固定化しようという性格を持つておるのでありますから、我々としてはむしろ農業自由な発展の途につかせようという意図の下に、均等相続をして、その均等相続の結果農業経営が細分化されるものならば、それは又農民の自由意思によつて選んだ途として、当然農民が負わなければならん犠牲であるし、この細分化を避けまして家産制的な家庭共同経営の途につこうということを農民が自由意思によつて決定しまして、將來農業自由な発展の途を部ぶならば、これも又農民の進むべき途として我々は取上げてよろしいのではないかと、そう思つておる次第であります。從いまして、結論としましては、この法律案に対しましては反対であります。
  10. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それでは次に日本農民組合の大森眞一郎君。
  11. 大森眞一郎

    ○説明員(大森眞一郎君) 日農の大森であります。この農業資産についての問題につきましては、私も日農の執行部の一人でありますが、執行部としてはまだ結論に達しておりませんので、これから申上げまする私の意見は、個人資格において申上げることを予め前提いたしたいと思うのであります。  話の順序といたしまして、第一の点は、本法案そのものについての疑点、いわゆる法案につき我々が賛成する、或いは反対するという立場を離れて、法案そのものについての二、三の疑点を指摘いたしたいと思います。第二の点は、この法案の持つところの社会的な性格、それに対する我々の見解、第三の点は、農業資産に対する積極的な我々の主張、多少純理的になりまするが、大体そういう三点に分けまして順を遂うて意見を申上げたいと思います。  先ず私共これは、農林省の方から概略のレクチュアーを頂きまして、大体の点を了承しておりますので、結局この問題については、條文解釈上の我々の誤りもあろうかと思いまするが、二、三の点について我々の疑点を申上げて見いと思うのであります。  先ず逐條的に申上げまして、第二條関係につきましては、第一点といたしまして、ここでは自家用薪炭材の採取の目的に供されるいろいろな土地或いは樹木の所有権等が規定されておりまするが、農業関係で最も必要なるところの採草地、放牧地については農業資産の範囲に入れないのかどうか、これは若しこういうものが含まれておるとするならば差支えありませんが、これが含まれていないとすれば、この問題は含めなければならん性格のものであろうと考えられるのであります。  第三点といたしましては、第二條の第三号の、「農業又は常時の居住の目的に供される建物」云々とありまするが、「農業」は別といたしまして、「常時の居住の目的に供される建物」、いわゆる住居というものについて、これを農業資産として限定することに無理がありはしないか、と申しまするのは、現在の農家の実情を見ますると、母家ばかりでなく、下家というのですか、別個に家を建てまして、その長男、或いは次男等がそれぞれ別個の家屋に居住しておるというような実情にもありますのと、もう一つは被相続人の妻が、この農業資産を抑えられた場合に、これは私、民法をよく知りませんが、現在の民法では、その相続者が扶養義務を負わないと考えられますので、若し円満に行つている家庭ならよろしいのでございますが、継母その他の場合になりますると、それらの被相続者の妻の居住権というものが奪われてしまうという疑念がこの点から生ずるわけであります。  第三点といたしまして、第三項の中にありまする『「農業」とは、耕作、養畜又は養蚕の業務』という規定がありまするが、果樹或いは茶等の特殊作物については、然らばどう扱われるか、この耕作を廣義に解釈いたしまして、肥培管理をやるから、これを耕作の中に含めるかどうか、若し含めないとすれば、現在の果樹地帶、茶業地帶等における相続の点については問題があるのではないかという、疑念が一つあるわけであります。  次に第四点といたしましては、別表の点であります。別表を見ますると、いわゆる大農具を指摘しておりまするが、例えばこの中で一例としまして、なわない機、或いはなわ仕上機、むしろ製造機等、こういうものは農業本來の、農業自体の問題でなく、副業的性格を持つものでありますし、仮にこの法律が実施されて、一切が農業資産相続人相続された場合、例えばよく例に出しまするが、被相続人の妻のその後の生活が、財産相続によりまして、財産の分割により取得によりまして、果して生活が將來維持できるか、若しできないとするならば、多くはこれは被相続人と一緒に農業に從事しておりまするから年齢の点から考えまして、こういう副業的な仕事で生計を営む途も考えられなければならんのであります。從つて基本的な農業生産手段として、認められないものについてまで、農業資材として、これを制約してしまうのが正しいかどうか、そういう点にも疑念があるわけでありますし、且つこういう機材を当該農家の農業経営に、必要以上に保有されている場合もあるのでありまするから、これらをすべて包括して、農業資産相続人に一括相続させるということが妥当かどうか、私は妥当でないというふうに思う、若し私のこの解釈が誤りなければそういう点も考えられる。  第二に別表の第二の牛馬の点についても、同樣のことが言えると思うのであります。大家畜といたしましても、当該農家の農業経営に必要な範囲は、一定の限度があるのでありまして、併し所有関係から見ますれば、必ずしも農業経営とマッチした形において所有されておるのではないのでありますから、例えば牛の子供、馬の子供、こういうものを考える場合には、これは当然処分しまして、均等相続するのが妥当ではないか。  それから次の第三の点におきましても、例えば自轉車のごときにいたしましても、ただ農家の実情によりましては、農家に一台という限定でなく、各人がそれぞれ所有しておる場合もあるのでありまするから、これをも農業資産として一括農業資産相続人相続させることが果して妥当かどうか、そういう点に疑念があるわけであります。從つて今まで申上げたところは、総括的に申しまして当該農家の農業経営に必要なる範囲の農業生産資材或いはその他を農業資産として若し限定するならば、限定すべきではなかろうかという結論であります。  次には九條関係におきましては、これは修正案の意見もありますように、農業資産を一括指定された農業資産相続人相続するといたしますれば、他の部分においての均等相続権利を主張することがやはり無理がある。負担の均点上から考えまして無理があるという点は指摘されるのでありまするが、この点については別に意見として申し上げたいと存じておる次第であります。  第十一條関係におきましては、少しこれも法文解釈が誤りかどうか知りませんが、被相続人の負債の場合、債務の場合は、共同相続人がその取得しました相続分の比率に應じて連帶責任を負うというふうに解釈されるのでありますが、例えば馬を購入したために負債が生じて、その負債が完済されないでおるというような場合、これは農業資産として農業資産相続人相続するものでありますが、これを共同相続人の共同の責任において弁済するかどうか、この点にやはり矛盾がありはせんかという疑念が一つあるのであります。  次、第十二條関係におきましては、これでは結局民法の均等相続の原則をできるだけ生かす意味で十二條関係はあると思うのでありまするが、ここで規定されておるのは、請求権が、利益分配の請求権が共同相続人にあるという規定でありまするが、併し農家の実情を見ますれば、いろいろ参考資料で、統計の上では地域差が非常にあるので、一定して申し上げることはできんと思いまするが、我々の考える零細農の場合、或いは中農下層、或いは貧農上層あたりの生活実態を見ますれば、農業資産以外の資産というものはそう多く所有されていないと考えられるわけであります。從つて農業資産を農業資産相続人相続して、あとの残りというものは非常に零細なものである、且つ農業資産相続人がその二十ケ年の範囲内において利益の分配を請求された場合には支拂うと言つておるのでありまするが、農業の今後の見通しを考えましても、農家の経営というものはますます困難になるのでありまして、そういう余剩の金を作りうるだけの能力ありや否やという点に、非常に疑念があるのでありまするから、若し今後農業恐慌その他によりまして農家が疲弊するといたしますれば、この請求権というものは法文に書かれておつても、これは空文に等しいものである。結局均等相続の根拠というものは失われるというふうに考えらるるわけであります。以上の点が大体この法案そのものについての疑点でありまして、これは私が法案そのものを十分に理解しない面から來るところのいろいろの誤解もあろうと思いますが、現在我々がこの法案を一読いたしまして感じた点を率直に申上げたわけであります。  第二に本法案の持つ性格について少しく農民運動の立場から申上げて見たいと思うのであります。どうもこの法案を見てみますると、一應均等相続の原則をとりつつ、一方では農業経営の細分化を抑制するという狙いが法律技術的に非常に困難を冒しながら而も一應纒つておるように見られるのでありまするが、併し我々がこれを通読して感じまするところは、やはり本質においては家督相続法と何ら変りのないような性格を持つのではなかろうか、と申しますのは、法案そのものは確にそういう点を打破しておりまするけれども、農村の実情から見まして、大体長子が農業資産の相続人になるということは、これは慣行上から申しましても、大体現在長子が農業に從事しておりまする関係からそういう形になるのでありまして、そういう旧來の法律と変らない姿が現われるのではないか、これは社会的に見ましてそういう考えを持たれるのであります。その次はドイツ世襲制とは違うにいたしましても、これは家産の世襲制の色彩を相当残すものではなかろうかというふうな感じを持たせるのであります。次の点は先程中村君が指摘いたしましたように、これは小農維持政策基本としての考え方でありまして、この点に対しましては我々農民運動の立場からはやはり批判的な態度をとらざるを得ないというふうな感じ方を持つのであります。いろいろな点もあるまするが、抽象的な議論になるかと思いますので省略いたしまして、こういう法律の何らかの農業資産に対する対策は必要でありまするけれども、現在のこの特例法案に盛られた内容から受ける感じ、又その影響するであろうと思うことは、結局全体として農村における封建的な靜度を維持し温存せしめるというような傾向を馴致しやせんかという点に、強い批判的な立場を主張せざるを得ないのであります。  次に第三の農業資産についての私の考え方、これを少しく申上げたいと思うのであります。先ず農地改革の性格から考えまして、農地改革の進歩的要素は結局封建的な土地所有という制度を打破した点にあるのでありまするが、いわゆる農地改革基本的な方針として一貫されるのはやはり小農維持政策であるというふうに考えられるので、その点は私共は進歩性を認めないのであります。農地改革に対して我々がとつた、日農のとつた態度というものは結局農民の現在の立場を考えますと、日本の高率小作料に虐められ、耕作権が非常に不動的な脆弱なものであつたから、土地所有に対する農民の要望が非常に強い、從つてこの要望を無下に抑えるということはいかんという立場と、同時に一方ではこれはどうしても実行されるものでありまするから、積極的にこれを支持して、そして農民小作人に正しく土地を所有せしめようという主張、又これを買い得ないものは國家が買收して、國家の小作人として経営を継続せしめようという二つの点からこれを主張しておつたのであります。從つてこの制度そのものについて我々は最後的に賛意を表しておるのではないのでありまして、現在土地國有論はありますが、我々は土地國有論を採らずにいわゆる所有権と、用役権と申しますか、通俗的に使用権というものとのむしろ分離の方向に導いて、実質的に土地國有にしないで、働く農民に土地を完全に利用せしめるという態度を、我々は土地そのものについては主張するのであります。その建前から考えまするときに、先ず所有権と耕作権とはこれを一應分離して考えるという建前を、一点として取上げておるのであります。第二の点といたしましては、耕作農民に土地を與える、土地は耕作農民によつてのみ所有さるべきである、使用さるべきであるという観点を採つておるのであります。この二点から、農業資産の処分の問題、相続の問題を考えますると、先ず非農家と農家と、この二つを分離して考える。いわゆる共同相続人の中におきましても、非農民と農民とを分離して対策を講じなければならんのでなかろうかというふうに思うのであります。農業資産につきましても一應所有権の面におきましては均等に相続せしめる、但し、その使用に当つては非農民であるところの共同相続人はこれを使用することができない、又農業資産を分割することはできないというふうな建前を採るべきではなかろうかと思うのであります。然らば何故その所有権を認めさせるかということになりますと、この特例法案によりますると、二十年間にこれを請求された場合には利益を分配しろとなつておりまするが、実際上これが行われないことがありまするので、若し非農民であるところの共同相続者に対しましても、所有権は持つても一定期間、これは二十年が妥当か十年が妥当か、問題でありまするが、一定の期間はその処分権は認めない、併しその期限が切れた後であれば、農業経営に影響あろうとも、義務を履行しないところの農業資産相続者に対して、これを処分せしめて所有権をやはり強力に実行させることを考えられる方が妥当でなかろうかというふうに考えるわけであります。  次に農業資産の相続者の点でありまするが、これは耕作及び農業に現に從事しておるところの共同相続人には、全部これを均等配分した持分については、一人の農業資産の相続者と認めるのでなく、農業者はこれを全部資産相続人として認める、そうしていわゆる非農家分に対しましてはこれはいろいろその農家がその土地を買えない、能力がない場合には、現行の農地調整法並びに自作農維持創設特別措置法を適用いたしまして、國家が買收してこれを小作人に與えるというような措置でカヴァーして行けばいいというように考えますが、農業者の場合には分割可能の場合は、これは大体二町歩持つておるような所であれば、二人の農業者が共同相続人の中にあるとするならば、これは二人に分割して十分経営ができるのでありますから、單なる零細化を抑止するというだけで、農業資産を一括相続せしめるという方向はとるべきでなく、実情に應じて分割し得るものは、これを分割するというふうに私は考えるのであります。  尚実際上の扱い方になれば、これは協同経営の形が当然出て來るのでありまするから、これは農民の自由意思に任し得るような法的措置を講じて置いて、ただ單なる一人の農業資産相続人というような限定をなさない方が実情に適し、更に農業経営の協同化の方向を促進し得るものというふうに考える次第であります。若しこれが非常に小さい耕地でありまして、これを分割すれば立どころに農業それ自体が破壞されるというような場合につきましては、これは特定の農業者を農業資産相続人として指定することも正しいと思うので、そういう規定を置いて新らしく法案が考えられて頂ければ結構だろうと思うのであります。農業資材、農業の生産手段の処理の問題につきましては、細部に亘つてはいろいろ問題がありましようが、大網的に申上げますれば、結局当該農家の農業経営に必要な最小限度の範囲で農業資産として限定するというふうに考えたいと思うのであります。一括して申しますれば、結論的に申しますれば、結局農家非農家の共同相続人については、相続の方法について別個の取扱を考慮すること、それから農家、農業從事者の場合においては、これは單に分割を機械的に阻止するのではなく、実情に應じて可能な場合には分割をやらせる、そうして分割できない場合には特定の農業資産相続人を指定するというような形をとつて頂きたいのと、農業資材については最小限に農業資産としての限定をするというので、結論といたしまして、私の主張いたしたいのはやはり農業経営の維持存続、或いは細分化防止ということは農業政策上必要でありまするが、これは農業資産の相続の面からのみ考慮するのではなく、これは極力農業政策そのものによつてやるべきであつて、併しながら現実に資産相続によつて零細化が止むを得ない実情にあるのでありまするから、特定の法的措置も必要でありまするけれども、その場合におきましても、やはり民法に認められておりまする均等相続の原則は、最後の立場においては、飽くまで憲法に許された我々個人権利というものを保護する、これが優先するという建前で法案全体を処理して頂きたいと思うのであります。從つてここに提示されておりまする農業資産相続特例法案は、農業の細分化防止が先行いたしておりまして、いわゆる均等相続の面が從となつておるという点からいたしましても、私共賛意を表し難いものであります。以上私の意見として申上げます。
  12. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 次には東京大学法学部教授我妻榮君の御意見を伺います。
  13. 我妻榮

    ○説明員(我妻榮君) 最初にこの法案の内容について申上げますが、内容の細かな点は差措きまして、一番問用になる点は、第九條を中心とした規定の立法、そうしてそれに対する修正案との対比であろうと思います。この両方の内容を十分御承知のことと思いますので繰返して申上げませんが、この原案と修正案とを比較して私の感じた点を順次に申上げたいと思います。  原案ですと、農業資産以外の財産についてもその特定の相続人が分配に預かる、それに反して修正案だと農業資産の價格が大きい場合には、農業資産以外の財産からは一切分配に預らない、この点が非常な違いだろうと思うのであります、ところで農業資産以外の財産と申しますのは、多くの場合日常生活に必要な財産、或いは農業経営のための資金などであると思うのでありまして、そういたしますと、原案ですと農業資産以外の、即ち日常生活に必要な財産や、農業経営の資金になるものも分けて貰える、ところが修正案だとそれは全然貰えない、もつと具体的に申上げますと、この修正案についての例を、ここに例をお書きになつたのを頂きましたのですが、この例について見ますと、四十万円の遺産があつて、丁度共同相続人子供四人であるところの例を挙げておりますのだ、それによりますと、一人が十万円ずつということになります。そこで修正案によりますと、その十万円というものは全部農業資産によつて充当されるわれでありますから、二十八万円の農業資産の外に、多少預金があるとか、その他日常生活に必要な財産があつてもそれは全然分けて貰えない、ところが原案によると、その金なんかも分けて貰える、ここが一番違う点だろうと思うのでありますが、日常生活、或いは農業経営の資産となるものを、全然分けて貰えなくてもいいものだろうか、私はそれじや困るのではないか、農業資産以外に、それ以外の分の財産からも分けて貰えるというところが原案の狙いであつて、その点は原案の方がいいのではないか、成る程修正案のようにしますと、計算が非常に簡單になりますし、それから修正案の理由書で詳細明解に御説明になつておりますように、農業資産價格が比較的少いときは、厄介なことはしなくてもいいということは、第二例に示しておる通りであります。併し原案がわざわざ厄介なことをした要点は、農業資産以外の財産の分配にも預らせようとしたところに、そこに相当意味があるのじやないかというふうに考えられるのであります。それから原案でも、農業資産についても價格を評價してそうしてその評價価格に應じた相続分を再檢討して分けるのでありますから、結局各相続人民法所定の割合を所得することになりますので、結果は同じことになる、十万円ずつ、十万円という値打のある相続しかしない、又すべき者がそれだけの相続をしたということと全く同じことになりますので、ただ財産の内容が違つて來るだけで、結局原案と修正案とは全く同じでありますが、原案に対して修正案理由の中で、各人平等思想に反するという規定をしておられますけれども、これはちよつと私には頷きがたいのでありまして、原案でも平等思想には反しない、若し修正案が各人平等思想に反しないというならば原案でも反しない、そこに私同じだろうというふうに考えるのであります。  その他一、二文字使用方法、或いは表現の仕方に多少問題と思われるところがないではありませんが、それは細かな問題でありますので……、法案そのものについては以上であります。  第二に、これと憲法との関係について私の考えを申上げたいと思います。  憲法に違反する点がないかどうかということになりますと、只今申しましたように、第九條の定め方が憲法の精神に反するのではなくて、むしろ問題は第十二條と第十五條にある、第十五條では、農業資産の評價方法を收益價格によつておりますので、田や畑、或いは牛や馬を若し賣つたら非常に高く賣れる、その賣る値段にしないで、それから農業を経営して行けば一年の收益がどのくらいあるかということから逆算して、値段が幾らということになるのでありますから、收益價格は一般的に言つて交換價格よりも低いと見なければならん、そういう低い値段で評價して、それを基礎として分けるということでは、果して平等の理想に合うかどうかということ……、十五條でありますが、これが第一の問題であります。それから十二條関係で申しますのは、十二條の二項ではその弁済方法を「二十年以内でなければならない。」となつておりますので、暗にこれは年賦償還でもいい、二十年以内なら年賦償還でもいいということを予定しておるのでありましよう、或いは期間の延期をしてもいいということを予定しておるのでありましようが、少くとも相続の時に次男、三男にフルに金をやらなくてもいいのだとなつておるが、これは平等の理想に合わないのじやないか、十二條の一項のところで自己のため相続の開始があつたときから三年を経過をすると駄目になるということを言つておるのは妥当を欠いておると思う、この十五條、十二條の一項及び二項というのが問題であろうと思うのであります。併しこの点に関しては、私はむしろ問題を解決する鍵は、我が國の農業の維持に果して必要であろうか、どうしてもこういう措置をとらなければ我が國の農業を維持して行くことができないかどうかという点にあるのであつて、その点はしつかり考えて、そうだ、どうしてもそうしなくちやならんということになつた場合には、以上指摘いたしました三つの点ぐらいならば、憲法違反でないという議論を構成すること必ずしも困難ではないというふうに思うのであります。その根拠はどうかと言いますと、又議論が非常に長くなりますが、簡單に申しますれば、憲法二十九條の関係と所有権ということについても公共の福祉は相当の制限を加えることが許されるというところに帰着いたします。勿論公共の福祉という漠然たる言葉で新憲法が折角與えた自由平等権利制限することは甚だ怪しからん、最近そうした傾向の立法が見えるということを一部の学者が指摘されることは御承知の通りであります。これらの学者が言われておることを私共は根本においては同感でありますが、從つて又この法案についてもただ公共の福祉ということを持ち出して來てどうなつてもいいという議論をすることは嚴に愼まなければならんと考えております。併しこれは我が國の農業というものに最も重要な関係がありますのみならず、先程申上げた三点は後に申しますように、平等の原則に強く食い込んでおるものではないという、この両方を睨み合せて憲法違反ではないということになろうと考えるわけであります。併し申すまでもなく公共の福祉という理想でそこまで制限していいかどうかということは、これは單なる形式論では片附かないのでありまして、國民の輿論、正しい國民感情というようなことが決定の標準になるのでありますから、その点は各人におかれましても愼重に御考慮なさるべきであろうと思うのであります。  そこで最後にこの法案全体に対する私の総括的な考察を申上げます。この法案は恐らくはすべての方々から指摘されたでありましようように、これは農業経営を維持しようとする、即ち農地の細分化を防ごうという理想と、それから農村民主化農村における次男、或いは娘さんたちというものの個人の尊嚴を確保し、男女の本質的平等を確立して行くという、一言にして言えば農村民主化、即ち新憲法二十九條の趣旨を生かそうという二つの理想の調節であろうと思います。重ねて申しますと、本法案の眼目は農業経営の維持と農村民主化の理想の容易に合流しないのを如何に調節しようかということがこの法案の狙いだと考えるのであります。そういたしますと先ず第一農業経営の維持という理想からいつて、この法案は果して妥当であろうか、私にして言わしめますと、これは甚だ中途半端で、この法律では恐らくは農業経営の維持は不可能とまでは申しませんけれども、甚だ困難になるのではないか、若し農業経営の維持ということを飽くまでも嚴正にやろうとするなら、この法案のような多額な債務長男なり、次男なり、つまり農業を承継する者が負担するようでは、到底成り立つて行かんのじやなかろうか、この修正案で松村議員が例として挙げておられますのは、遺産が四十万円で子供が四人という、比較的簡單な家族でありますから、從つて二十八万円の農業資産の中、長男が十万円の取分をもつておるわけでありますから、十八万円の借金を背負うということになるのだろうと思います。二十八万円の資産を持つて十八万円の借金を背負つて行くことが妥当であるかどうか、ところが農村の実際には、もつと複雑な家庭が多いのじやなかろうか、妻がある、そして子供が五人ある、これは少し子供が多すぎるかも知れませんが、妻があつて子供が五人あるという例を一つ採つてみますというと、御承知の通りその場合の子供一人の相続分は三分の二の五分の一になりますから、十五分の二になります。即ち四十万円の中の五万三千円余の取分しか持たないことになります。そうしますと例えば長男農業を承継いたしますと、二十八万円の農業資産なら二十二万七千円の借金を背負わなければならないということになります。妻と五人の子供があるということは、余り多くはありませんけれども、子供五人あるという例は農村では必ずしも珍らしくはないと思います。そのときに長男が四十万円の財産を有する農家でありますと、農業資産二十八万円と仮定しておるわけでありますが、その二十八万円の農業資産を承継して二十二万七千円の借金を背負つて來るということでは、果して農業経営を維持することができるであろうか、そうしてそういうようなやり方で、この法案では農業経営を維持するということがいい得るであろうか、成る程この法律によつて農地そのものは細分化しないでありましよう。又農業経営に必要な道具や何かはかたまつでおるでありましよう、併しながら物だけがかたまつていたところで、そういう多額の借金を背負わされたのでは、やはり農業経営は維持して行けないということになるのではなかろうか、若し本当に農業経営を維持して行こうとするならば、次男、三男に十分な保障を與えると同時に、その保障長男の負担とはしないで、國家が低利資金を貸して、そうして長男はその國家の低利資金をゆつくり出して行くという方法でも採るより外方法がないのじやないか、尤も原案には私が今申しましたような露骨な計算になることを、農業資産の評價の問題で片附けておるのだと思うのでありますが、農業資産の評價の方法が收益價格によるということになりますならば、露骨に申しまして、これは安く値踏みするということになるのでありまして、だから私が今述べたような子供五人とおつ母さんがある場合なら、二十二万七千円の借金を背負うということになりますけれども、さような二十二万七千円ということは文字通り二十二万七千円だと思います。二十八万円の農業資産は收益價格なのだから、実際は相当大きな額になります。だから長男は何とかやつて行けるのじやなかろうか、ということが原案の眼目であるかも知れません、併しそうだとすると、おはり問題をここでひどい言葉を使いますと多少ごまかしておるということも言えないことはない、そこで若しその問題を正当に考えて、そうして次男以下にも全く平等のものを與える、そうして長男農業経営もできるというようにするためには、どうしても國家が中に入つて低利資金を貸付けるというような方法でもとるより外ないのじやないか、併しこうした方法をとりますことは又日本の今日の財政その他から考えて非常に困難な問題であるということは勿論私も承知しておるのでありますが、ただ私の申上げようとしておることはそこまでの決心を以て踏み込んで行くならば、農業の経営の維持、或いは細分化を防ぐということも可能であろう、併しこの法律を以てしては到底法律の掲げてある目的を達することができないのじやないかということを申上げる次第であります。  さて今度はもう一つの農村民主化という方から申しますと、これはこの法律には無論直接には触れていないわけであります。我が國の農村ではここで農村関係、そちらの方の專門家であられるお方々が先程からいろいろおつしやいましたようにいわゆる封建的な氣持というものが非常に強く残つておる、そうして親或いは長男という者の権力が非常に強いという実情であります。從つて民法がそのまま施行になつておつて、今日まででも果してどれだけ民法が要求しておるように平等に分配したところがあるだろうか、恐らくはそれは非常に少いのではなかろうか、親や長男の威力によつて次男、三男の申出を受付けない、そうして実際は長男子一人相続のような実を挙げてきたのが非常に多いのじやないか、この法律民法通りに行われた場合にそれを是正しようとしているのでありますけれども、併し農村は実際はこの法律よりもつと從來の長男子一人相続のようなことをやつておるので、この線までさえ來やしないじやないか、若し親が單に封建的な、いわゆる封建的な態度で次男、三男の取り分を退けて、或いは長男が次男、三男の取り合を退けるということをしないで、もつと合理的にやろうとするならば、親が遺言をするなり、生前処分をするなり、勿論生前処分をしますと、この法案よりも遥かに長男を有利にすることができる、その半分までは、次男、三男に分けるとか、債権で返すというようなことをしないで、半分だけはまるまる長男の取り分にすることもできることは御承知の通りでありますから、從つてこの法案はそういう遺産をするとか、生前に分けるという農民は比較的少いだろうということをおもんばかつた法律だろうと思いますけれども併し私は案外そうではないと思うのである、何らか法律的な遺言或いは生前処分なり、法律的形式的通りには行われないかも知れないが、併し財産長男子一人相続ということが農村には実は行われておるのではなかろうか、そうするし次男、三男或いは娘さん達の立場はどこまで行つても独立の人格が尊重されない、本質的な平等の理想の本質に近ずくことができないのじやないかと思うのであります。民法をそのまま露骨に施行されておつたところでそうでありますから、そこにそういう法律を持つて行きますと、そうした傾向に非常に大きな拍車を掛けることに力を與えることになりはしないか、この法律がいきなり行きますと、多くの農村では今度の法律農業資産全部長男が取ることになつておるのだということだけを強く主張してあとから評價した割合で返すのだということは全く行われないことになりはしないか、それを先程二十年の年賦というふうにしておつても今日の経済情勢では殆んどゼロのようになつてしまう、或いは農業経営の不振その他で結局拂わないことになつてしまうということを言われましたが、私も無論そうだと思いますが、併しもう一歩進んでそういう金を返すのだということさえはつきり認識しないで、うやむやになつてしまうようになつてこの法律が実施されることになりはしないか、というようなことを虞れるのであります。  そこでこの二つの理想を考えて來ますと、この法案のような中途半端な法律農業経営の維持を図ろうとすることはその法の目的には決して十分なものではない、そうして却つて農村民主化という方を妨げる反作用がむしろ多いのじやないか、それらがこの法案施行することを見合せて、そうしてもう少し日本農村の実情を観察することが賢明なのじやないか、農村で果してどのような相続が実際、行われておるか、民法の規定がどこまで実際に行われるか、親なり或いは長男というものの威力がどこまで働くかということをもう少し見たらどうか、それから又次男以下に対して独立職業を営んで行ける、自立して行けるような指導をするというような途をもう少し講じてみたらどうか、先程言われましたように、共同相続人、必ずしも農業資産を分けないで、共同経営というものがやれないものか、その方の指導をするというような実質的な指導をもう少しやつてみて、そうして農村相続がどう行われるかということをもう少し研究してみた上で対策を講ずることが賢明なことではないかというのが私の結論であります。  最後に私個人のことを附加えさして頂きます。私はこの民法の制定いたされます際の起草委員でありますと同時にその当時貴族院に籍を置きました、その当時私はどうしても民法相続については、農村については特例を設けなければならんということを非常に強く考えておりました、そうして民法施行すると同時に、農業資産についての相続特例を考えねばならんということを強く主張しております。起草委員会の席でも主張いたしましたし、確か貴族院議員としてもそのことを主張して、当時貴族院決議案となつたことを記憶しております。その決議案に私も全面的に賛成した一人であります。併しその当時とは私の考えが多少変つて参りました。あの当時いわば観念的にそう考えましたことをその後農村事情を見てみますと、私が心配したような方は必ずしも心配するに及ばない、そうしてむしろ私が民法ができれば農村がもつともつと民主化するだろうと考えていた方が、却て間違であつたというようなことを只今考えております。その後の計画によりまして、私の考えがあの当時とは多少変りまして、そうして只今申上げたような結論を申上げたわけであります。御了解願いたいと思います。
  14. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 何か公述の方々に御質問がありますか、ありますればこの際御質問願います。
  15. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 我妻さんにお伺いしますが、こういうことになりはしませんか、あなたの御意見に対しまして、農業資産の修正案の意見ですね、これは運轉資金なり、生活資金なりが入つていないという点ですが、若しそれを加えるということであるならば、一定率のものを運轉資産として数えるならいいという思想、まだ入つておりませんが、そういう考え方ですか。どういう意味がと申しますと、第一例で申しますと、農業資産が二十八万円ということになるわけですね、そうして実際の手取はここに表に書いてありますが、三十一万円になるわけです。農業資産の二十八万円の外にこれ又お互いに分配します。四分の一、三十一万円ということになる、その差額が三万円になるわけですね、三万円がいわゆる運轉資金、生活資金になる、ところが第二例の四十万円の場合になりますと、農業資産が二十万円しかない、ところが原案によると三十万円相続することになります。そうすると農業資産が二十一万円のときに、運轉資金なり、生活資金なりとして十万円がとれる、ところが二十八万円のときに三万円をとるということであれば、これはおかしいじやないかという思想が入つておる、修正案には。若し運轉資金が要るならば或る一定率を受けるというのが一つの考え方です。この修正案は農業資産に運轉資金ということを考えた案ではない、若し動産不動産の外に流動資金としてそのものを取得するというならば一定率のものを書くような考え方ならば、一つの合理的である、こういう考え方を持つていう、これは皆さんにもお聞き願いたい、農業資産というものは、ここに何万円あるかということになれば、原案は動産不動産しか考えていない案である、ここに運轉資金を要するというならば、農業資産にこの或る一定率の運轉資金というものを考えて、それを加味して総合したものを農業資産として考えるという考え方まで細かくやらないというと、これは非常に大まかだということが私の考えになるわけです。今申しました二十八万円の農業資産に対して三万円の釣りがつく、ところが二十万円の農業資産について十万円の釣りがつくということが、そこに合理性がないということが私の要点である、そういう合理性がないことで更に動産不動産の外に運轉資金というものを農業資産の中に加えるという複雜な要素が加わるから、その問題は後日にして、とにかく農業資産だけで問題を解決した方がいいじやないかというような修正案の意見、それからもう一つは相続人それ自身が裸であるということを想像する必要がない、相続人も何か持つている筈である、ですから相続人の持つている遺産相続だけで農業経営だけで農業経営をしなければならないというほど、平素から相続人は無一物であるということを予想することからしてどうかという考え方もある、これは少し細分した議論になりましたが、そんなことを考慮して余程檢討しなければならんというふうに私は考えている、何かの理想の下に先ず原則は決まつて進まなければならんのじやないかという御議論がありましたが、それなら何か目標を決めなければいかんと思う、今いろいろ証人の御意見の中にそういう考え方もあつた、問題は非常に具体的になつている、この具体的な法案を是認するか否かということが今当面の問題である、是認するとすればどういう形で是認するか、こういうことです。差迫つている問題で、会期も切迫している、それが皆さん方の御意見を承つて我々も討論して決めなければならんというところまで切羽詰つている、そういう実情を考えて頂いて、具体的にもう少し何か御意見があればお聞かせ願いたいと思います。証人の皆さんに対してお願いするのであります。
  16. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 実は御承知の通りこの法案は第一國会以來当委員会におきまして、農林と連合いたしまして非常に問題になつておりまして、当時政府から提出された原案につきましては、我々農林及び法務委員会におきまして承服し難いものでありますので、審議未了になつた次第であります。その後政府の方におきまして鋭意研究いたされまして、今日提案されておるような法案になつて現われて参つたのですが、この法案におきましては第一國会において我々が指摘した部分は相当直されて今日出て参つたのですが、尚まだ承服し難い点が多々あるものですから、今日に追い込まれて参つたのでありますが、それで皆さん方のお忙しいところを煩して皆さん方の御意見を拜廳し、尚我々の意見の足らざる点を補いたいこういう考え方です。
  17. 松井道夫

    松井道夫君 質問というよりもちよつとお尋ねしておきたいのですが、杉村さんにお尋ねいたしますが、この今回の法案について何か農業会乃至は協同組合法方で当局の方から諮問とかその他相談に與つたようなことはありませんか。
  18. 杉村幹

    ○説明員(杉村幹君) ありませんです。
  19. 松井道夫

    松井道夫君 それじや全農の方にお尋ねしますが、全農としては今言うように諮問をされたとか、相談に與つたというようなことはありませんか。
  20. 金田範俊

    ○説明員(金田範俊君) ございません。
  21. 松井道夫

    松井道夫君 日農はどうですか。
  22. 大森眞一郎

    ○説明員(大森眞一郎君) やはりありません。
  23. 松井道夫

    松井道夫君 我妻先生にお尋ねしますが、あなた方專門家の学者の方へ何か政府当局から御相談申上げていることはございませんか、立案当局から……
  24. 我妻榮

    ○説明員(我妻榮君) 政府当局から表向きはありませんが、実質的にはいろいろ御相談を受けている同僚がありようです。
  25. 松井道夫

    松井道夫君 あなたのところにはありませんか。
  26. 我妻榮

    ○説明員(我妻榮君) 私自身はこの審議に関係しておりません。
  27. 松井道夫

    松井道夫君 どなたの方へ……
  28. 我妻榮

    ○説明員(我妻榮君) それは私も余りよく存じませんですが……
  29. 松井道夫

    松井道夫君 帝國大学法学部関係では……
  30. 我妻榮

    ○説明員(我妻榮君) 加藤助教授がしばしばこれに関係されたように聞いておりますが……
  31. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 私は皆さんに端的に伺いたいのですが、この案を修正すると否とを問わず成立させた方がいいと思われるか、まだ待つた方がいいと思われるかということを端的に一つ伺つておきたいと思います。
  32. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それじや誠に御迷惑ですが、一つ只今松村さんの御発言のごとく、皆さんの端的な御意見をお伺いしたいのですが、順次一つ……
  33. 杉村幹

    ○説明員(杉村幹君) 待つた方がいいと思います。
  34. 金田範俊

    ○説明員(金田範俊君) 私は細分化を防止するという意味では賛成ですが、内容に沢山疑義があるのです。先つき大森さんからお話があつたように、二條も三條も四條も五條もいろいろあるのです、こういう疑義かあるものをそのまま賛成するというわけには参らんのです。一應疑義を解消した後で、我我組合の決めた意見としてお答えした方がいいと思います。
  35. 沼田政治

    ○説明員(沼田政治君) 私も同じような意見です。
  36. 中村進

    ○説明員(中村進君) 待つて頂きたいと思います。
  37. 大森眞一郎

    ○説明員(大森眞一郎君) 私は先程申しましたような根拠からそういう点を十分檢討してからにして頂きたい。
  38. 我妻榮

    ○説明員(我妻榮君) 私は先程申しましたように、今直ぐこれを法律にしない方が賢明であろうと申したのですが、重ねて申しますと、もう民法施行大分になつておりますが、こういう法律がなくてもそれ程大きな問題を生じていない、そこで一日を爭つて早くしなければならないという理由はないと思う、そこで延ばすのでありますが、延ばすについて一つ希望があるのです。政府当局で檢討なさる必要のあることは勿論でありますが、一体実際の農民家族の方々、長男、次男、それぞれの人がどう考えているのかということを余程実際に聞く必要があるのじやないか、殊に聞くといつただけではなかなか答えは出て來ないと思いますけれども、併し参議院でこういう法律を最後にいろいろな疑問を持つて延ばしたのだが、近いうち又問題になるのだという案を示して、農民のところに話をして行きますと、相当実際に檢討して考えるのではないかと思います。これは私共はいろいろなところから研究の委嘱を受けたりいたしまして、農村調査を大分やつております。余談になつて申訳ありませんが、最近においても元貴族院議員だつた青木子爵の農場に参りまして調査をいたしまして、そこでいろいろな百姓さんの家族を呼んで、長男或いは次男に一体親父が死んだらどうするつもりかということを話をした、どういたらよいかということはなかなか答えが出て参りませんでしたが、例えば法律でこうなるとしたらお前達どうするのか、お前達の農業資産はどのくらいあるのか、君は兄弟が何人くらいあるのか、君が長男ならどう処置するかというようなことを話しますと、具体的に考えてその結果答えは区々になりましようし、或いは立法に直接参考になるような答えは出て來ないかも知れませんが、そういうことを一應農民諸君に考えて頂くということがどんな法律を作るにしても最も効果のあることじやないか、そこで私が希望しますことは、單に延ばすという、そうして條文の形式的な、或いは論理的な内容を檢討するために延ばすというのではなくて、お延ばしになつてそうして全國的な農民諸君に向つてこの問題を眞劍に考えて頂きたいということをそれぞれの機関を通してなさることが必要ではないか、公聽会というようなものもありますけれども、どうも率直に申しまして形式的に流れてしまいはしないか、本当に國民全体の、それに利害関係を持つている人々の意見を聞くことが本当の意味の公聽会でなくちやならん、こう考えておりますので、私の結論をもう一度申上げます。これは是非お延べになりまして、そうして日本全体の輿論をお聞きになるための準備をすることが賢明じやないかと思うのであります。大変差出がましいことを言いましが、御了承願います。
  39. 松井道夫

    松井道夫君 我妻さんにもう一点お尋ねしたいのでありますが、家産法というのは、これは或る程度の適正の規模を……、これは遺言による処分とか、生前処分とかということを禁じてしまつて要するに家産にしてやつて行こう、そこには協同経営というようなことも勿論認められましようが、そう言つた形の家産法と言つたこと、そういうものについてはどう考えておられるか、又家産法を作る必要があるかどうかということについて。
  40. 我妻榮

    ○説明員(我妻榮君) 家産法ということも御承知の通り各國いろいろ経驗を持つておりまして、内容が非常に違いますので、家産法と言つて一口に言うが非常に困難だと思いますが、対象限度に單に賣買、或いは担保の処分を禁ずるというだけのものを作るということが果してどれだけの意義があるか私は非常に疑問に思うのであります。どうしても資本主義経済の中にあつて、農業を営んで行くのでありますから金も要るし、いろいろな取引もするし、ただその場合に一定の土地と一定の農業資産だけが共有物になつていたところで、どれだけ実際の経済の波に対抗して、それを維持して行くことができるかということは、私は非常に疑問に思つております。私の知つている限りにおいては、家産法は世界の歴史において成功していない。尚未解決の問題だと言つてもいいのじやないかと考えております。從つて日本でも、或いはそれがいい道なのか知りませんが、併しそのためには相当愼重な調査研究を必要とすると思います。
  41. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 他にお尋ねがありますか、それではどうもお忙しいところ貴重な御意見を伺いまして有難うございました。
  42. 松井道夫

    松井道夫君 私はこの際立案当局に対しまして何と申しますか、將來かようなことがないように注意を喚起したいと思うのであります。先にこの案の前の案が國会に提出されまして、そのときに我々は種々の点についてその法案の欠陷を指摘したのであります。勿論相続関係の計算の非常な困難なことや、或いは特別相続分といたしまして財産の半分を取つてしまうと言つたようなことや、それから今日いろいろ各方面から指摘されました、多くの土地を持つている者は、長男、次男何れも耕作に從事しているならばそれを分けていいのじやないかというようなこと、又協同経営ということを前提として立案すればいいのじやないかといつた点を指摘したのでありますが、そのうちで非常な煩雜の点や、又今の均分相続に違反する疑いがある点等を避けられたという点は結構なんでありますが、その外、今の二人の相続を認めて、数人の家族で多くの土地を持つている場合にはいいのじやないかというようなこと、二人の農業経営者がある場合に、協同経営ということを認めてもいいのじやないかというような点については、少しもこの法案には現われていないのであります。私はその後よく各方面の見解も確かめられて、これが最善ということで、而も立案したものであろうと私は思つておつたのでありますが、今日聽いたところによりますと、各方面の意見はさつぱりそれを求めておられない、而もここで今日述べられたように、前回指摘したようなことを更に実際からこれを指摘しているのであります。私は非常に政府当局として、立案当局として無責任じやないかと思うのであります。私は今までの陳述を聞きまして、この案を審議することをいやになつたのであります。大変よくできているものと思つたのでありますが、これは他の各界の意見を聽いて立案して、これよりしようがないのだということになつたのだ、私の主張するような場合の沢山の土地を持つている人、或いは共同経営ということはやり得んのだ、その他のことで解決するより仕方がないので、そういう結論になつたのだ、と私は思つたから私の主張する点はこれは收めてまあこれに賛成するより仕方があるまいというように考えておつたのであります。併し今日聽いてみると、まるきりそうではなくてごまかされておる、甚だ遺憾千万であります。將來このようなことがないように強く要望して置きます。
  43. 門田定藏

    ○門田定藏君 私も先つきの愛妻教授の御説と一緒ですが、農村の実情から申しますと、この法律を作るということは至つて尚早である、私は見合わせて貰いたいどころか廃めて貰いたい、平和農村にこういう法律を作つたならば、いろいろないざこざを起す。その実例を申上げますと、この間も申上げましたが、決して農民はそんなことを考えていない、農村の細分化を防ぐ点から言つても、こういう法律で均等なんとかいうようなことを作る、これは却つて農村の細分化を來すような虞れがある、詳細にこれを申しますというと、我々は四十年も農業運動をやつておりますが、鳥取縣で三十万ばかり農民がありますが、その農民の腹をよく調べてみると、決してこういうことを望んでいない、若しこういうことが法律化されるというと、却つて農地の細分化を助長するようなことになる、何故かというと、農村の経営のやり方はこの間も申しましたように、例えば五人の兄弟があつて、一人が一町作つてそれをあとの兄弟にその一町の田を分けてやつたところで農業経営はできない、そこで家内が協力してあとの四人の子供に対しては、何か農業以外の仕事を將來やつて行くような方法で皆んなで協力してやつて行つておるのです。そうして一人前に皆んなが協力して、後の四人の子供を一本立になるようにして協力してやつておる際に、いようよ相続ということになつて又その子供が五十万円なら五十万円の財産を均等に分けるということをすると、その農業経営ということは困難だということは明らかなことであります。だからしてそういう法律は却つてない方がいい、いま暫くこれまでの民法によつて先に我妻教授が言われたように大した問題はないのだからして、いま暫く新憲法治下における農民の実情をよく考えて見て、そうして問題が起つて場合に、この法律を作るべきである、これは至つて危險極まるところのものであるから、審議未了にして私は貰いたいと思います。
  44. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 私は先に第一回の法務・農林共同の委員会において修正意見を大略述べて置いたのでありますが、まだ十分に御審議を経なかつたのでありますが、今日大分委員会も終りに近ずいておりますが、その間にいろいろ檢討しました結果私の修正意見というものを更に改めまして、改めると申しますのは、文字の分りよいように整理いたしまして、最後の修正意見としてこの委員会に提案いたしたいと思います。
  45. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 修正意見はまだ……
  46. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 修正意見ですから、案ではない、前の案と違つておることをよく御覽になつて、この審議はやはり続けられるものと思いますので、その段階においての修正意見の、私の纏つたところはここにあるということを一つ御了解願いたいと思います。その意味で申上げます。
  47. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) この手元に廻つているやつでしよう。
  48. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 ちよつと違つております。
  49. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 変えたのですか、又。
  50. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 変えました。第九條を次のように改める、「第九條 農業資産相続人及び他の共同相続人相続分は、民法昭和二十二年法律第二百二十二号)の規定に從う。」第二項は「2相続財産の價額に対する農業資産の價額の割合が、農業資産相続人民法による相続分を超えるときは、前項の規定にかかわらず、その割合をもつて農業資産相続人相続とする。この場合には、他の共同相続人相続分は、農業資産相続人相続分を除いた割分につき他の共同相続人民法による相続分に比例して定める。」第三項「3 民法第九百九十九條第二項の規定の適用については、相続の放棄をしない相続人相続の放棄によつて帰属する相続分は、前項の規定にかかわらず、民法による相続分の比例による。」その次に第十一條の修正に入るわけです。第十一條第二項中「相続分」を「民法による相続分」に改める。第十二條についての今度の修正です。第十二條第一項中……、十二條の方の修正案でありますが、第十二條第一項中「特別相続分によつて受ける利益の額を、民法による自己の相続分に應じて」をそれを引つ掛け「第九條第二項の規定による相続分が民法による相続分を超えることによつて受ける利益の額を、その各自の民法による相続分に比例して」と改める。こういうことになります。
  51. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そうすると十一條というのが入つたのですね。
  52. 松村眞一郎

    ○松村眞一郎君 十一條が入つたのです。御説明申上げます。これは原案では特別相続分というものと、相続分というものを二つ認めておりました。第十一條第二項中に相続分と書いてあるのは、当然民法による相続分でありますけれども、私の修正案では相続分という文字を二つ中に用いておる、第九條の規定による相続分というのと、民法による相続分というのと両方用いていますから、第十一條第二項の相続分というのは何れの相続分であるか不明確になる、そのために原案でも修正案でも同じことになる、相続分ということは、民法による相続分でありますから、実質上の改正ではありません。最初の私の修正意見は、原案が特別相続分というものを認めていましたから、その線に沿うて特別相続分ということをやはり認める、それは民法相続分を超えた超過部分だけを特別の相続分というので案を拵えたのでありますけれども、特別相続分という思想を交えないで一本にした方が簡單明瞭であるというので、只今申上げました最後の案になつたわけであります。特別相続分という思想は全然この中から取られたのであります。併しながら差額だけは今申しました民法による相続分を超過する分の差額だけは、特別に相続するのでありますから、実質上の特別相続分になる、ですからそれは名称を使わないようにいたしました。そこで十二條の規定の解釈はここにはつきりして置いた方がいい、どつちになつても実はよろしい、それは十二條の中の項目の特別相続分、即ち今度の修正意見によりますと、第九條第二項の規定によつて利益を受けた者はいずれにしても後で分配の請求を受けるのでありますから、この十一條の規定の相続分が、民法による相続分であつても、第九條の規定による相続分であつても、結局するところ第十二條の項目の場合は第十一條第二項の規定による利益ということになりますから、私は何れでもいいと思う、実はそう疑わしい場合は第十一條の第二項の相続分を、民法による相続分にお読みになつても、第九條の規定による相続分になつてもどちらでもいいのでありますけれども、初めから曖昧なことを書くよりも明瞭にして置いたらいいだろうというだけの規定であります。
  53. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 別に他に御質疑はないですか、ではこの程度にして置きまして、農林及び法律の連合委員会を解くことにいたします。午後は御承知の通り本会議の都合を伺いまして、許可を受けて法務委員会を開くことにいたします。時間は追つて御通知申上げます。    午後零時二十七分散会  出席者は左の通り。   法務委員    委員長     伊藤  修君    理事            鬼丸 義齊君            宮城タマヨ君    委員            齋  武雄君            團  伊能君            來馬 琢道君            松井 道夫君            松村眞一郎君   農林委員    委員長     楠見 義男君    理事            平沼彌太郎君            石川 準吉君            藤野 繁雄君    委員            門田 定藏君            北村 一男君            星   一君            加賀  操君            徳島 宗敬君   説明員    全國指導農業共    同組合連合会調    査部長     杉村  幹君    全國農業組合員 金田 範俊君    全國農民組合土    地改良委員連盟    事務局長    沼田 政治君    日本農民組合政    治部員     中村  進君    日本農民組合事    務局長     大森眞一郎君    東京大学法学部    教授      我妻  榮君