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1948-03-30 第2回国会 参議院 司法委員会 9号 公式Web版

  1. 昭和二十三年三月三十日(火曜日)    午後二時一分開會   ―――――――――――――   本日の會議に付した事件 ○檢察廳法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○檢察審査會法案(内閣送付) ○人身保護法案(伊藤修君發議)   ―――――――――――――
  2. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それではこれより司法委員會を開會いたします。本日は檢察廳法の一部を改正する法律案、竝びに檢察審査會法案、兩案を一括して議題に供します。この法案は御承知の通り豫備審査のために本委員會に付託されておるのですが、本日は先ず法務廳裁の提案理由を伺うことにいたします。
  3. 鈴木義男

    ○國務大臣(鈴木義男君) 只今上程になりました檢察廳法の一部を改正する法律案の提案理由の御説明を申上げます。  そもそも檢察官は公訴權の實行をその職責とするものであり、檢察官による公訴權の實行が適正に行われなければ、刑罰法令の適正な適用實現もこれを期待することができないことは論を俟たないところであります。このためには檢察官の身分保障を強くし、檢察官をして如何なる勢力にも影響されることなく、嚴正公平に公訴權の實行に當らしめる用意が必要でありまして、檢察廳法第二十三條は全くこの趣旨に出た規定なのであります。併しながら現行制度のように、檢察官の罷免事由を、心身の故障その他の事由に因りその職務を執るに堪えない場合のみに限り、檢察官が職務上の非能率或いは重大な非行等に因りその職務を執るに適しない場合には、尚これを罷免することができないというのでは、その身分保障が強きに過ぎるとの批判もあり、又裁判官の身分保障に比して權衡を失するとの意見もあるのであります。よつて政府におきましては、以上の諸論を詳細研究いたしまして、檢察官の職責の重要性に鑑み、檢察事務運營の適正を圖ると共に、檢察の民主化を期するために、新たに檢察官の適格に關する定時審郷制度を設け、併せて檢察官の罷免事由を擴張し、更に檢察官適格審査委員會の構成員の過半數を國會議員とすることに改めて、ここにこの法案を提出した次第であります。何率愼重御審議の上速かに御可決あらんことを望みます。  次に同じく上程になりました檢察審査會法案の提案理由を御説明申上げます。  我が國の法制によりますれば、公訴は檢察官のみがこれを行うものでありますが、日本國憲法精神に鑑みますと、公訴權の實行に關しても、できる限り民意を反映せしめて、その適正を圖るのが至當と考えられるのであります。而して、公訴權の實行に關し民意を反映せしめる最も徹底した制度は、英米におけるがごとき起訴階審でありますが、我が國の國情竝びに英米における起訴陪審の實績などを詳細に研究いたしました結果、今俄かに起訴陪審を採用することは適當ではなく、むしろ檢察官の不起訴處分の當否の審査竝びに檢察事務の改善に關する建議又は勸告を所掌する檢察審査會制度を設けるのが、最も我が國情に合致するものと考えまして、この法案を提出する次第であります。  次にこの法案の内容の大要を御説明いたします。  第一、檢察審査會は、政令で定める地方裁判所及び地方裁判所支部の所在地に置かれるものであつて、その數は全國通じて二百を下つてはならないのであります。  第二、檢察審査會は、その管轄區域内の衆議院議員の選擧權を有する者であつて、一定の缺格事由のない者の中からくじで選定した十一人の檢察審査員を以て組織するものであつて、別に同數の複充員があり、檢察審査員資格名簿及び檢察審査員候補者名簿の調製方法竝びにくじによる選定の方法などは、大體陪審法のそれに準じております。檢察審査員及び複充員の任期は六ケ月でありますが、この法律施行後最初に選定される檢察審査員及び複充員各十一人の内各六人の任期は三ケ月、各五人の任期は六ケ月と定め、爾後三ケ月ごとに六人又は五人が新たに選定複充されるものといたしまして、いわゆる半數交替制を採つて檢察審査會の機能の低下を防止する方策を講じたのであります。  第三、檢察審査會の所掌する事項は、檢察管の不起訴處分の當否の審査竝びに檢察事務の改善に關する建議又は勸告でありまして、檢察審査會は、告訴若しくは告發をした者、請求を待つて受理すべき事件について請求をした者又は被害者の申立があるときは、必ず不起訴處分の當否の審査を行わなければならず、又檢察審査會の過半數による議決があるときは、職權で不起訴處分の當否の審査を行うことができることとなつております。檢察審査會は、その職權を行うに當り、何人の指揮監督も受けず、全く獨立してその職權を行うものであります。  第四、檢察審査會の審査手續につきましては、檢察官に對し審査に必要な資料の提出及び意見の開陳を要求し、審査申立人及び證人を呼出してこれを尋問し、又は相當と認める者の出頭を求めて、法律その他の事項に關し專門的助言を徴することができるのであります。檢察審査會は、審査の結果議決をしたときは、理由を附した議決書を作成し、その謄本を當該檢察官か指揮監督する檢事正及び檢察官適格審査委員會に送付し、且つ議現の要旨を七日問掲示することといたしてあります。而して檢事正は、檢察審査會の議決を參考にし公訴を提起すべきものと思料するときは、起訴の手續をしなければならないのであります。  第五、檢察審査會に關する經費につきましては、これを裁判所の經費の一部として國の豫算に計上しなければならないものといたしてあります。  以上で簡單ながら、提案理由の御説明を終えることにいたしますが、何卒愼重御審議の上、速かに御可決あらんことを望みます。
  4. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 兩案に對する質疑は後日にこれを讓りまして、次に人身保護法を上程いたします。これに對する各條の説明を梶田專門調査員よりお願いいたします。
  5. 梶田年

    ○專門調査員(梶田年君) 昨日本委員會におきまして人身保護法案に關する全般的な説明といたしまして、この法律の性格、適用の範圍、憲法との關係、刑事訴訟法との關係等につきまして大體の説明がありまして、この法律が新憲法の下におきましてなくてはならなて重要な附屬法であるということが明らかにせられたのであります。本日は命によりましてこれからこの法律の逐條説明を申上げることにいたします。が、これに先立つて一言申上げて置きたいことは、この法案は人身保護請求の手續の骨組だけを簡潔に規定したものでございまして、法案の條文自體から見ますると、不備不明な點があるように見られるかも知れませんが、この法律の運用に關する手續その他の事項は、すべとこの法律の運用について最後的に監督權を有するところの最高裁半所の規則に讓る方針で立案されておるのでありまするから、この法律の運用を效果的にするには、適切な最高裁判所規則の制定が必要であるということを御留意をお願いいたしたいのであります。  さてこの第一條でありますが、第一條はこの法律の基本といたしまして、この法律の目的と適用範圍が示されておるのであります。一般説明にもありましたように、この法律は憲法の保障するところの身體の自由に對する不法侵害を排除しまして、簡便な方法で被害者を現實に且つ迅速に救濟いたしまして、自由を囘復させることを目的とする非常例外的な措置を決めた法律であります。この法律によつて救濟の對象とするものは、現に身體の自由を拘束せられておる者でありまして、その自由の拘束が法律上正當の手續によらないで不法に行われた報告にこの法律が適用せられるのであります。從つて自由の拘束が不法ではなくして、單に不當に行われた程度に過ぎない場合には適用せられないという趣旨であります。即ち權限のある者がその自由裁量の範圍内でなした拘束には適用しないということになるのであります。自由を拘束されるということは、これは身體の自由が侵害せられるすべての場合を包含するのでありまして、逮捕、監禁、抑留、或いは抑制、拘禁、軟禁など、苟くも身體の自由を奪われ、又は制限せられる如何なる場合も含める趣旨であります。拘束という文句は、この廣い意味を表す用語として使用したのであります。そうしてこの拘束せられておるかどうかということは、これは事實問題として決せられることになるのであります。「法律上正當なる手續によらないで、」と申しまするのは、身體の拘束が法規に定める手續に從わないことであつて、拘束が實體法上正當であるか否かということは問わないのであります。從つて、拘束が犯罪に基くかどうか、有罪か無罪かというようなことは關係がないのでありまして、例えば犯罪を構成していない場合でも適法に勾留状で拘束せられているならば人身保護の請求は棄却せられることになるのであります。これに反しまして勾留状に形式的の缺點があれば、たとえ犯罪が成立しておりましても人身保護の請求は認められることになるのであります。それ故に、法律上正當な手續の要件と申しますれば、第一に拘束が形式的に法規の根據に基くこと、第二に拘束が法律の定める手續方式に從うこと、第三に拘束がその權限ある者によつて行われることということになるのでありまして、この要件を缺くときには手續上不法となるのであります。「法律上正當な手續によらないで」というのはこういう意味で、相當廣い意味を持つておるのであります。それ故に犯罪嫌疑によつて刑事事件として拘束せられた場合におきましても、拘束、即ち逮捕或いは勾留刑事訴訟法の規定に基く令状によらない場合、令状によつておりましても令状がその方式要件を備えていない場合、又令状が權限ある裁判官によつて發せられていないというような場合にはいずれも不法な拘束となるのであります。不法な拘束から現實に免れしめて、身體の自由を完全に回復せしめることが即ちこの第一條に言う「救濟」であります。非常救濟と稱せられておるのであります。この救濟を求めることが即ち人身保護の請求となるのであります。この請求は憲法によつて與えられ保障せられた權利でありまして、これは外國では特權と稱せられておるのであります。この權利の本質は身體の自由權、即ち民法上の人格權即ち私權の一つでありまして、從つてこの私權の保護を請求する私權保護の請求權の一種に外ならないのでありまして、このことは一般説明にも述べられておる通りであります、本條に「救濟を請求する」といたしまして、請求という文字を使つてありますのは右の理由からでありまして、又憲法第三十四條の後段に「要求があれば」というのは、この人身保護の請求としてここに現われて來たのであります。  本法によつて救濟の對象となりまする不法な拘束には、公權力による場合と、個人の私力による場合とあります。即ち第一は刑事事件又は行政事件に關しまして公權力による不法拘束であります。例えば司法官憲の正當の令状なくして逮捕又は勾留する場合、勾留の原因が消滅しておるに拘わらず勾留を取消さないで繼續する場合、勾留の更新決定の手續をしないで勾留を繼續する場合等に生ずるのであります。第二は個人の私力又は私的團體による不法拘束であります。例えば政爭の關係、選擧關係、或いは勞働爭議の關係等から反對派の人物を抑留、軟禁その他の方法で身體の自由を奪い、又は制限する等の場合に生ずるのであります。又精神病者でない者を精神病者と稱して病院又は私宅監置室に監置する場合、未成年者に對する監護權がない者が未成年者を懲戒場に入れる場合、坑夫を所謂監獄部屋に收容して勞役に服させる場合、こういう場合に生ずるだろうと思われるのであります。これらのことも昨日一般説明ですでに説明のあつた通りであります。身體の自由に對する不法な侵害があつた場合に、被拘束者、即ち拘束せられておる者、本人は自分でその現實の侵害を排除するために救濟を請求するということは事實上非常に困難であります。且つ速かに救濟をなす必要があるということからいたしまして、被害者の親族とか、友人とか、隣人など誰でも被拘束者のために裁判所に救濟を求め得ることができることにいたしたのであります。これは本人の代理人としてするのではありません。本人のために獨立して自己の名を以てするのでありまして、本人の救濟が簡便に且つ迅速に實現されることを期したのであります。  次に第二條でありますが、第一條に規定いたしました身體の自由を不法に拘束せられた者が救濟を求める請求、即ち人身保護の請求は辯護士を代理人としてすることを原則といたしたのであります。人身保護の請求は實際におきまして濫用せられる幣があるのでありまして、少くとも法律の施行の當初においては相當濫用の虞れあるものと存ぜられるのであります。即ちこれによつて正當な刑事訴訟の手續が妨げられるということもできて來ようと思われるのであります。アメリカの或る判例によりますれば、戰爭のために徴用された者の父親が、苦役のために息子が監禁されたのは不法であるとして、この人身保護令状の請求をした例があるくらいであるのでありまして、我が國においてもやはりこの法律の施行の際には相當濫用せられるような心配があるではないかと思われるのであります。そこでこの人身保護の令状、即ち人身保護命令の手續というものは非常に效果的なものでありまするから、これが濫用を防ぐために拘束が不法であるかどうかということについて、法律上竝びに事實上の判斷の能力を有する者、又責任のある者という趣旨からいたしまして辯護士を代理人として人身保護の請求をなすべきものといたしたのであります。併しながら特別の事情のある場合には辯護士を代理人としないで請求者自身裁判所に請求することを例外として許してあるのであります。特別の事情と申しますのは、請求者の所在地に辯護士がないとか辯護士を依頼する資力がないとか、急迫でありまして辯護士を依頼する時の餘裕がないというような場合を豫想いたしております。  次に第三條であります。本條は人身保護請求の管轄裁判所を規定したものであります。憲法第三十四條の後段の規定に基く人身保護の請求は、身體に對する不法な拘束が公權力又は強大な私人又は私人團體の力で行われ、下級裁判所の手に乘らない場合も含んだ、又この請求は全國的に統一して行われるべきであると同時に、その濫用を防ぐ必要があるというような理由からいたしまして、その管轄最高裁判所の專屬とすべきものであるというような強い意見があるのでありまするが、民主主義憲法の下に出發した現在の我が國では、本法の施行と共に相當數の請求事件が提起せられるものと考えられるのみならず、人身保護命令の手續は簡便且つ迅速に行われることがその使命でありまするから、これらの點に鑑みまして、地方裁判所及び高等裁判所を以て人身保護請求をし得る初審裁判所即ち管轄裁判所としたのであります。然らば最高裁判所は何ら裁判權がないかと申しますると、そうではないのであつて、最高裁判所は人身保護命令の手續については監督權を有するものといたしまして、必要に應じて自ら審理する權能を有するものとする建前を取りまして、初審として人身保護の請求を受理する管轄權こそないけれどもが、下級審たる地方裁判所又は高等裁判所に係屬する事件を、何どきでも引取つてみずから處理し得る權限を有するものとされているのであります。これは後に説明します十九條に規定いたしておるのであります。尚最高裁判所上訴管轄を持つておるのでありまして、そのことは十八條に規定しておるのであります。右述べまするごとく人身保護請求の管轄裁判所は地方裁判所と高等裁判所と競合しておるのでありまするから、請求者は任意に管轄權のあるいずれの裁判所にも請求し得るのであります。そうしてこの管轄裁判所の土地管轄は、原則として被拘束者、拘束せられておる者の所在地を基本として定められるわけでありまするけれども、人身保護の請求に當りまして被拘束者の所在が不利である場合には、管轄裁判所は定まらないというようなことになりまするから、その缺陷を防ぐと共に、人身保護命令の手續が簡便且つ迅速を旨とする趣旨に鑑みまして、被拘束者以外の關係者、即ち拘束者、請求者及び請求者の代理人たる辯護士の所在地の裁判所にも管轄權があるものとする考え方であります。その結果土地の管轄は極めて自由、廣汎なものとなりまして、殆んど土地管轄の定めがないと同樣の結果となるのであります。人身保護の請求は書面を以てすることが通例でありますけれども、請求者が無筆である場合、司法書士存在しない等の場合も考慮いたしまして、裁判所に出頭して口頭で請求をすることを得るものとしたのであります。この場合には裁判所は請求の趣旨その理由等請求の要件を聽取つて調書を作成すべきであります。この手續規定は最高裁判所規則によつて定められることに考えられておるのであります。  次は第四條でありますが、本條は人權保護の請求の要件を規定したのであります。人權保護の要件は人身保護の請求の開示と疏明資料の提供ということになつております。請求書の記載要件は、第一には請求の趣旨、第二には請求の理由、第三には知れている拘束者竝びに拘束の理由を記載するということであります。第一の請求の趣旨と申しますのは、拘束者に對して人身保護命令を發給して被拘束者の釋放を求める申立というのであります。第二の請求の理由と申しますのは、請求の趣旨の原因たる事實、即ち拘束が不法であることの事實關係をいうのであります。從つて拘束せられた日時とか、拘束せられた方法、經過的事情、拘束者には拘束の權限のないこと、殊に正式の令状によらないというようなことをいうのであります。第三に知れている拘束者竝びに拘束の場所でありますが、拘束者が何人であるか、又拘束の場所がどこであるかは、それが知れているときには、當然に請求の理由の中に記載せられるべきことでありますが、拘束者又は拘束の場所が不明である場合も少くないのでありますから、かような場合には、これらの表示がないからというて、請求が不適法となるものではないのであります。併しこれらのことは請求の理由中の重要なことでありますから、確定的に明らかでない場合でも、推定し得る拘束者又は拘束の場所を記載すべきであります。請求を受けた裁判所がこれを調査する手掛かりとするため必要だからであります。拘束者又は拘束の場所が全く不明の場合には、請求書にそのことを附記することが適當であろうと思はれるのであります。人身保護請求の要件といたしましては、以上のことを表示した請求書を提出するか、或いは口頭陳述をすると共に必要な疏明資料を提供することを要するのでありますが、この必要な疏明資料と申しますのは、只今申しました請求の理由を疏明するに足る材料であります。即ち不法拘束の事實、その方法、經過的事情等を疏明するのでありますから、資料といたしましては關係者の陳述書、證明書、その他の文書、名刺とか寫眞などでありまして、口頭陳述による場合に、請求の際に裁判所に出頭した關係人の陳述なども疏明資料となるのであります。  次に第五條であります。人身保護の請求を受けたる裁判所は請求の要件である請求書又は口頭陳述の要件を書き、又は必要な疏明資料の提出がないときには請求を却下することができるのであります。即ち不適法として却下するわけであります。この却下するかどうかということは受理した裁判所の自由裁量によるのであります。請求書又は疏明資料が不完全であるからといつて直ちに却下すべきでないのでありまして、必要に應じて補正すべきことが適當であろうと思います。なぜならばこの人身保護命令の手續というものは非常例外的な措置でありまして、迅速且つ簡便に何人にも容易に利用し得ることを目的とするものでありますからであります。それ故に一應は適法としてこれを認容する建前を以て處理することが必要であります。ただ請求の理由自體で拘束が不法でないことが明白であるとか、請求が濫用であるという心證を裁判所が得た場合、又は補正を命じてこれに應じませんような場合に却下すべきものとなるのであります。右の不適法却下に對しましては抗告その他の不服の方法は認められていないのでありますが、管轄裁判所で却下された場合に他の管轄裁判所に更に請求することが許されるのであります。これは即ち再審査の請求でありまして、この再審査の請求を許すがため却下の決定を直ちに確定せしめるのではなく、權限ある裁判所にいつでも順番に繰返し請求し得るものとなすのでありまして、この請求の反復を許すということは、これは強權に對しまして弱者を保護する趣旨から沿革上認められて來たのでありまして、この場合には從つて一事不再理の原則というものは適用されないのであります。英米法におきましては右と同樣に權限あるすべての裁判官に申立て得る仕組になつておるのでありまして、人身保護の精神を徹底せしめる趣旨に基くのであります。  次に第六條であります。本條は受理した事件の移送に關する規定であります。人身保護の請求を受理いたしました裁判所みずから事件を處理することが不適當であると認めるとき、例えば拘束者が受理した裁判所の發した令状逮捕又は拘留されておるような場合に、受理した裁判所と同一構成の裁判所が事件を處理する場合のごときは不適當であります。又拘束者が私人である場合にはその地方におけるその者の地位と勢力の關係から、或いは拘束者、被拘束者、請求者など所在地の關係とか、職業の關係などから手續を遲滯せしめたり、又は困難にするような事情があるときは、受理裁判所として處理することが不適當な場合となるのであります。かような場合には請求を受理した裁判所は、他の適當と認められる管轄裁判所に事件を移送することができるのであります。この移送は決定を以てするのでありますが、移送を受けた裁判所が更に他の裁判所へ移送するということはできないものと解釋せらるべきでありまして、若しもこの再移送の即ち轉移送というものを認めますならば、自然に事件の處理を遲延せしむることとなりまして、人身保護命令の手續の目的に反することになるのであります。  次に第七條でありますが、本條は人身保護命令を發するがどうかを決する準備調査に關する規定であります。人身保護の請求を受けた裁判所が、請求を不適法として却下するか、又は他の適當な管轄裁判所に移送する場合の外は、結局請求が理由があるかどうかを審理するために、審問期日を開くかどうか、人身保護命令を出すかどうかということを決定せねばならないのでありまするが、請求書の記載、疏明の資料だけではこの決定をするに不十分である場合が相當多いのであります。殊に請求書の記載等では拘束者が不明であるとか、拘束者は知れておりまするが、その所在が不明である場合には、人身保護命令を發給することが事實上できないのであります。かような場合に拘束者が何人であるす、その所在竝びに拘束の場所はどこであるかを取調べる必要があるのであります。又人身保護命令發給、發給と申しますのは命令を出すことであります。命令を發する手續をするかどうか決める場合に、拘束の事由につきまして或る程度の取調べをする必要があります。これらの必要事項の取調べをなすには拘束者、請求者の代理人の陳述を聞くのでありますが、必要がありますればその他の關係者の陳述を聞くことができるのであります。この取調べの結果は後日の審問期日における取調べの備準となるのであります。この準備調査は受理裁判所の会議體の構成員たる部員即ち受命判事をしてさせることができるものとしたのであります。併しながら準備調査は必ずしもこれをせねばならないというわけではないのでありまして、請求がその要件を完全に具備、疏明資料も一應整つてゐる場合には、準備調査は必ずしもその必要があるとは言えないのであります。從つて裁判所はその自由裁量によつて、この準備調査を省略して、直ちに第十條の審問期日を定めて、人身保護命令を發し得るのであります。要するに準備調査というものは、一面におきましては審問期日の準備調べで、下調べと申しますのでありますが、他面におきましては人身保護命令が極めて實效的であるだけに、これを發することを愼重にし、且つ當事者に濫用されることを防ぐと共に、又刑事訴訟の手續を妨げることがないようにする趣旨で設けられたので、人身保護命令發給の橋渡しの作用をなすものでありますから、これらの點を考慮に入れて準備調査を省略するかどうかということが決せられることになるのであります。  次に第八條であります。本條は假釋放に關する規定であります。裁判所は人身保護の請求を受理いたしまして、請求書、疏明資料を審査した上に、準備調査を行なつて審問期日を定めて、人身保護命令を發給の手續をして、最終の判決をなるまでには相當の日時を要する場合がありまするから、その間に不法と認められるような拘束を繼續することは人身保護の目的を沒却することに相成るのであります。又拘束者が被拘束者を遠方に移動させたり、或いは藏匿する、隠す虞れのあるとき等、差迫つた事珍のある場合には、審問期日に出頭せしめるために、被拘束者の身柄を適當に抑えて置く必要があるのであります。そこで差當り一時的に被拘束者を拘束から免れるたるに、いつでも裁判所の呼出しに應じて出頭することを條件といたしまして、辯護士の責任ある保證の下に又は人身保護の請求者に保證金を立てしめ、裁判所が假に一時的に被拘束者を釋放し、又は特定人の監督の下に置く等、適當の處分をすることを得るものといたしたのであります。又請求者が無資力の場合、請求書、疏明資料で拘束が不法のものと認められるような場合等、要するに裁判所の心證によつて保證金を立てしめないで、一時釋放その他の適當の處分を認めたのであります。右の辯護士の保証の下に一時釋放を許すのは辯護士の保證證書を裁判所に差出させるのでありまして、刑事訴訟法責任と同樣に、辯護士に責任を以ていつでも被拘束者を呼出しに應じて裁判所に出頭せしめることを保證させるのであります。「一時釋放その他適当な處分」と申しまするのは、精神病者に對する監置、未成年者を懲戒場に收容した場合等に、特定人の監督の下に移して居住せしめるというような適宜の處分を指すのであります。「一時釋放その他適當な處分」、これをこの法律では假釋放と總稱するのであります。この假釋放の請求は、請求者及びその代理人、刑事々件の辯護人が、できるのであります。  次が第九條であります。本條は準備調査の結果、請求を棄却する場合に對する規定であります。裁判所が第七條の準備調査をした結果、人身保護の請求の原因たる拘束は不法ではない、正當の理由に基くことが明らかとなり、請求しその理由がないことが明白となつたときには、裁判所は審問期日を定めまして、人身保護命令書發給、その他の審問手續を經ないで決定を以て請求を棄却するのであります。この請求棄却の決定をなるのは、請求の理由のないことが明白な場合、例えば裁判所の正當な合式な令状に基いて勾留せられておることが判明した場合等で、請求の理由が必ずしも明白でない場合、即ち疑のある場合には請求を棄却することはできないのであります。請求が不適法でない限りにおいては、一應人身保護命令を發するということが原則であります。準備調査をするのは人身保護請求の濫用を防いで、全く理由のない請求を棄却いたしまして、事件に或る程度のブレーキを掛けて篩い落すということが一つの目的でありまして、裁判所は取調べにおいて無論審問期日の取調べに讓られることになつておるのであります。準備調査の結果請求が棄却らせれたときにも、前條のこの保護によつて拘束者が一時釋放される場合には、裁判所は被拘束者を呼出して出頭せしめた上、その身柄を拘束者に引渡すことになるのであります。請求が棄却せられたときには、請求不適法として却下せられた場合と同樣に、他の管轄裁判所の再審査を求めるために更に同樣の請求をなすものと解すべきであります。
  6. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それではここでちよつと休憩いたします。    午後二時三十九分休憩    ―――――・―――――    午後三時十四分開會
  7. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それでは休憩前に引續きまして御説明をお伺いいたします。
  8. 梶田年

    ○專門調査員(梶田年君) では續いて第十條から御説明申上げます。前條におきまして説明いたしましたごとく、準備調査の結果、裁判所が人身保護の請求を理由なきものとして却下する場合の外は、審問期日を定めまして、關係者を召喚いたしまして、所謂調人身保護命令書の發給及び審問手續を行うのであります。この命令書の發給及び審問の手續は、この法律の核心をなすものであります。本條はこの手續を規定したものであります。以下簡單にそれを説明いたしますると、第一に審問期日の指定竝びに當事者の呼出でありまするが、審問期日の指定は、裁判所において審問する日時、場所を定めてこれをない、その日時、場所に人身保護の請求者本人又はその代理人たる辯護士、被拘束者及び拘束者を呼出すために、それぞれ召喚状を發するのであります。召喚状の樣式は最高裁判所規則に讓る豫定であります。次に人身保護命令書の發給を手續でありますが、右の召喚状と共に、拘束者に對して、いわゆる人身保護命令書を發するのでありまして、この命令書を以て被拘束者を審問期日に出頭させること、即ち被拘束者の身柄を差出すことを命じまして、且つ審問期日までに被拘者者を拘束した日時、場所竝びに拘束の事由を開示した答辯書を提出すべきことを命ずるのであります。右の命令書には、若し拘束者が命令に服從しないで、被拘束者を出頭せしめず、又は答辯書を提出しないときは、勾引し又は命令に服するまで勾留することある旨、及び遅延一日について五百圓以下の過料に處することある旨を附記せねばならないのであります。この附記の制裁は、審問期日に右命令に違背したことが判明した場合に、科せられることの警告であつて、命令に服從すべきことの間接強制ともなるのであります。この制裁というものは、いわゆる法廷侮辱罪の性質を有するものでありまするが、法廷侮辱罪というものは我が國においてはまだ規定がありませんので、民事罰若しくは秩序罰とも見るべきものでありまして、その手續は最高裁判所規則に讓る豫定であります。人身保護命令書は、拘束者に送達されるのでありまするが、その送達と審問期日との間には、少くとも三日の期間を置かなければならないのであります。この三日の期間を置くということは答辯書を作る準備のために與えられたのでありまして、三日以上幾日の期間を置いても差支ないという趣旨ではないのであります。そうしてこの期間は、拘束者又は被拘束者の所在地と裁判所との距離、交通の關係等いろいろな事情から、これを短縮し又は伸長することができることになつております。  次に第十一條でありまするが、裁判所は、刑事事件について拘束に關する令状、即ち逮捕状、勾留状を發しまして、これによつて被拘束者が身體の拘束を受けている場合には、前條の人身保護命令書を發した裁判所は、右の拘束令状を發した裁判官の屬する裁判所及びその令状を請求したと否とに拘わらず、その事件を取扱つた檢察官又は現に取扱つている檢察官に對して、審問期日及び人身保護命令書を以て定めた事項を通告せねばならないことになつております。右の命令書によつて被拘束者を出頭せしめる手續は、拘束令状の發給に關與した裁判所又は檢察官には關係なく行われるのでありますから、これらの官憲の立場上、右の通知をいたしまして、審問期日に立會う機會を與えるためであります。そうして審問期日に立會わしめるのは、拘束の理由について意見を述べることを得せしめるためであると解すべきであります。そうして右の審問期日に立會をする裁判所の代表者を定める必要があるのでありますが、これは最高裁判所規則で定める豫定になつております。要するに右の立會というものは、審問期日の審理において、拘束令状の發給が形式的に、又手續上合法であるかどうかの判斷を正確にするためであります。  次に第十二條であります。審問期日における取調べには、被拘束者本人及びしの辯護人が出席せねばならないことにしてあるのであります。これは被拘束者の立場からこの辯明意見を十分に聞くためであります。又取調べを公開の法廷で行うこのといたしましたのは、被拘束者の利益にために公明正大に事を運ぶ趣旨からであります。これは憲法第三十四條後段の趣旨に應えるものでありまして、人身保護命令書の手續として最も重要な要件であります。尚審問期日は延期することなく迅速に運ばなければならないのでありますから、その手續は他の事件に優先的に進められなければなりないのでありまして、續行の必要があれば連日開廷せられるということになるのであります。審問期日には、被拘束者の辯護人を依頼していないときには、裁判所は辯護士の中から辯護人として適當なものを選任しなければならないというのであります。この辯護人は刑事訴訟手續のいわゆる國選辯護人と同性質のものであります。選任の方法等について必要があれば最高裁判所規則を以て定める豫定になつております。審問期日に出席すべき當事者は、被拘禁者本人、その辯護人の外に拘束者、請求者、その代理人であるます。拘束令状を發した裁判所の代表者、檢察官は立會うことができるのでありますけれども、當事者として出席することを要するものではないのであります。  次は第十三條であります。本條は審問期日のおける取調の順序方法を規定したものであります。審問期日の手續としては、先ず人身保護の請求者が請求書に基いて請求の趣旨及び請求の理由を陳述する。これに對して拘束者が拘束の事由を明らかにするために答辯書に基いて陳述するのであります。而して審問期日の取調準備のために準備調査が行われている場合には、これの調査の結果を陳述し又は援用することができるのであります。尚審問期日には被拘束者及びその辯護人も出席して、被拘束者の利益のために辯明又は意見の陳述をなすことができるのは、前條において説明した通りであります。又審問期日には拘束令状を發した裁判所の代表者、檢察官も立曾つて拘束に關して意見を述べ得ることは先に御説明した通りであります。從つて審問期日における手續は、利害關係を有する多數の當事者間に行われる特殊の訴訟手續となるのであります。併しながら審問期日における取調べの中心は、何と申しましても拘束の事由があるか否かを判斷するのでありまして、主たる當事者は請求者と拘束者とであります。殊に憲法第三十四條後段の趣旨に從いまして、拘束の事由を開示せしめる點に掛かつておるのであります。かようにして各當事者の主張、辯明、意見の陳述にあつた上で證據資料の取調べが行われるのであります。即ちこれが證據調べでありまして、當事者の申立により又は職權を以て證人の訊問、書證の提出、その他必要に應じて鑑定、檢證等も行われるのであります。證據調べを終つて請求者と拘束者との間に拘束の手續が不法であるか合法であるかという點について辯論が行わるべきであります。その結果によつて裁判所が判決をするということになるのであります。審問期日は必ずしも一日で終るわけではないのでありまして、審問が繼續する間、判決に至るまで拘束者が出頭せしめた被拘束者の身柄は、裁判所の支配の下に留置せられて置かなければならないのであります。どういう方法で留置されるかは最高裁判所規則に讓る豫定であります。例えば被疑者又は未決被告人を收容する拘置所又は最寄りの警察署の留置場等に留置せしめることにすることが適當であるように考えられるのであります。  次は第十四條であります。審問期日におきまして、前條に從つて審問した結果、裁判所が人身保護の請求者のなした請求が理由がない、即ち拘束は合法であつて手續上何ら不法の點がないと判斷したときには、判決を以てこれを棄却するのであります。從つて拘束者が審問期日裁判所に出頭せしめた被拘束者の身柄は、これを拘束者に引渡すのであります。この引渡しは裁判所が事實行爲を以て現實の引渡しをなすのでありまして、檢事の手を經てなすものではないのであります。この棄却判決に對しましては、請求者又はその代理人から最高裁判所上訴することができます。請求者が被拘束者自身でない場合に、被拘束者自身も上訴し得るものと解すべきであります。審問期日におきまして、審問の結果、裁判所が請求者の請求が理由あるとき、即ち被拘束者に對する拘束が不法であつて、正當な手續によらない拘束であると判斷したときには、判決を以て請求者を釋放するのであります。この判決の執行として、裁判所は判決確定を持たないで直ちに事實行爲を以て被拘束者を現實に釋放してしもうのであります。この釋放の判決に對しましては、拘束者から不服の申立といたしまして上訴をすることができるのであります。併しながら被釋放者に犯罪がてるかどうかということは、これは別問題でありますから、被釋放者に對して公訴が提記されておるときは被釋放者と雖も被告人として犯罪の有無について裁判所の判決を受けねばならないのであります。  次は第十五條であります。拘束者が第十條第二項の規定する人身保護命令書を以て拘束者に對してなした命令、即ち審問期日には拘束者を出頭させること、竝びに審問期日までに拘束の日時、場所及びその事由についての答辯書を提出することの命令に違背して應じないときには、裁判所は勾引状を以て拘束者を勾引し、又は命令に服するまで勾留すること、及び命令に違背する日數によつて一日について五百圓以下の割合の過料に處することができるものとしたのであります。拘束者を勾引又は勾留するのは、拘束者の右の命令に從つてその實行を促すためであります。過料に處するのは、命令に服することを間接に強制するのであります。右の勾引又は勾留及び過料の制裁を科することは、人身保護の命令書に附記して豫め豫告したあるということは前に説明した通りであります。こういう勾引、勾留の執行方法は最高裁判所憲法の授權による規則制定權に基いて、刑事訴訟法の規定を準用するというような規定を設けることが豫定せられておるのであります。  次は第十六條であります。審問期日における取調べは、被拘束者及びその辯護人の出席する法廷で行われるのであります。辯護人を被拘束者が選任しないときには、裁判所は職權で辯護人を選任することを要するのであります。だからして右裁判所の選任するいわゆる國選辯護人を附するよりも、成るべく被拘束者本人が選任する辯護人を立會わしめることが適當でありますが故に、本條におきまして被拘束者から辯護人を依頼する申出があつたときには、拘束者は遅滯なく被拘束者の指定する辯護士に通知をしなければならないものとしたのであります。被拘束者が辯護士を指定しないか、又は指定した辯護士が旅行中、病氣というような事故があるときには、その通知は被拘束者の所在地の辯護士會にすることにしたのであります。右の通知を受けた辯護士會は會則その他適當の方法で右の依頼に應ずる辯護士を定めて拘束者の囘答し、被拘束者から依頼を受けしめることになるのであります。辯護士會の會則に右の通知に處する規定もないというときには、最高裁判所規則を以て適當な方法を定める豫定になつておるのであります。  次は第十七條であります。第一條によつて人身保護の請求を受けた裁判所、又はこの裁判所から第六條によつて事件の移送を受けた裁判所は、その事件の内容を最高裁判所通知いたしまして、却下の決定をした事件について準備調査をしたとか、事件の處理、竝びにその經過、竝びに結果を最高裁判所に報告することを要するものといたしたのであります。これは最高裁判所が人身保護請求事件につきまして、監督權を有すると共に、最高の裁判權を有し、事件の性質如何によつてその必要を認めるときにはいつでも事件を引取つて自ら處理する權限を有するのでありますから、この權限を行使するために前述の通知報告を受けて、事件の内容、進行状態その他について十分の知識を有することになつておるのであります。  次は第十八條であります。最高裁判所は人身保護の請求事件、人見保護命令書の手續につきましては監督權を有するものとする建前からして、請求を棄却した初審裁判所の判決に對しましては、請求者も拘束者も敗訴の立場にある者は、最高裁判所上訴することを得るものといたしたのであります。この上訴審は法律問題のみを審査する上告審ではないでありまして、事實を審査するもので、初審としての覆審をするものと解すべきものであります。人身保護命令書の手續の性質から申しましても、又最高裁判所が下級裁判所に系屬する事件を引取つて、自ら處理することが認められております點から見ましても、この場合、最高裁判所は初審で終審であるというべきでありますから、この點から見ましても最高裁判所は事實審であるといわなければならんのであります。  次は第十九條であります。最高裁判所は、人身保護命令の手續につきましては、沿革上の理由もあつて、監督權を有するものとする建前からいたしまして、不法拘束による自由の侵害が、非常に強大な個人の私力、又は團體力で行われる場合、又は拘束者の社會的地位又は勢力からいたしまして、下級裁判所はその力に押されて、迅速に處理することができないような事件、その他社會的に極めて影響の大きい事件につきまして、最高裁判所がみずから處理することを適當とし、又は必要とするものと認められることがあるのであります。かような重要事件であるかどうか、即ち最高裁判所が、みずから處理することを適當とし、又は必要と認めるかどうかの判斷をするには、初審の下級裁判所からの事件の通知、報告を資料として、又職權で調査をいたしまして、自由裁量を以て決することになるのであります。かようにして最高裁判所がみずから處理することを適當とし、又は必要と認めた事件につきましては、初審の下級裁判所における事件の進行程度如何に拘わらず、下級裁判所に命じて事件を送致せしめて、初審且つ終審として自由に事件を處理するのでありまして、この場合には最高裁判所は、下級審のなした裁判及び處分を取消又し、又は變更し得ることになつております。最高裁判所は、前に述べまするごとく、下級裁判所から事件を引取つて處理することができるのでありますけれども、初審として本來の管轄權はないのでありますから、事件を受理した管轄裁判所が、第六條によつて最高裁判所に事件を移送することはできないものと解さなければならないのであります。右の最高裁判所が下級裁判所に係屬しておる事件を引取つて、みずから處理することは、英法においては、最高裁判所が下級裁判所に對して、特權として、一般事件について事件の移送命令を發して、事件を引取ることが認められておる。この制度を人身保護命令書の手續に應用したのであります。  次は第二十條であります。最高裁判所は、人身保護命令書の手續につきましては、監督權を有しておる建前からいたしまして、この法律に規定していない手續について、又この法律を運用するに必要な手續につきまして、憲法第七十七條の授權に基く規則制定權によつて、規則を定めることができるのでありますけれども、本條におきまして、手續でなくても請求、審判につき必要な事項は、規則で定め得ることを特に明らかにいたしたいのであります。  次は第二十一條であります。本條は、本法の運用を圓滑にするために、その目的に反し妨害となるような行爲をした者に對して、制裁を科することができることを規定したものであります。この制裁は、刑罰として、その罪質に鑑みて、刑法の逮捕監禁罪、身體の自由に對する脅迫罪、犯人藏匿、隱避等の刑を參酌して定めたのであります。  簡單でありますが、以上を以て逐條の説明といたします。
  9. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それでは本案竝びに先程の法務總裁の説明にかかるところの檢察審査會法案、檢察廳法の一部を改正する法律案、竝びに經犯罪法、いずれも明日質疑をいたしたいと思います。明日午前十時から開會いたします。本日はこれを以て散會いたします。    午後三時三十四分散會  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            岡部  常君    委員            大野 幸一君            齋  武雄君            中村 正雄君           大野木秀次郎君            水久保甚作君            鬼丸 義齊君            來馬 琢道君            松村眞一郎君            星野 芳樹君   國務大臣    法 務 總 裁 鈴木 義男君   專門調査員            梶田  年君