○山下芳生君 私は、
日本共産党を
代表して、
国家公務員法改正案について
質問します。
まず、
国家公務員制度改革の基本問題について
質問します。
本
法案は、二〇〇八年に制定された
国家公務員制度改革基本法に基づくものとされています。我が党を除く与野党の
修正合意で成立したこの
基本法を始め、この間、
国家公務員制度改革と称して進められてきたのは、第一に
内閣一元管理という名の
官邸の
人事権の
強化であり、第二に天下りの全面的な容認でありました。その一方で、
公務員制度の根幹問題である
労働基本権の
回復は一切先送りされてきたのであります。こうした
改革が何をもたらしたのか、今厳しく問われなければなりません。
第一に、
内閣一元管理という
官邸の
人事権
強化の問題です。
今回の
法案に盛り込まれた
幹部人事の
一元管理は、
議院内閣制の下、
国家公務員がその
役割を適切に果たすことを基本
理念の第一に掲げる
基本法に従ったものであり、
内閣としての一体性を
確保などを理由に、
官邸の
人事権の
強化を目指すものであります。
ところが、今まさに問題となっているのが、この間の一連の安倍
内閣の
人事にほかなりません。安倍
総理肝煎りで任命されたNHK経営
委員とそこで選ばれた会長が、公共放送のトップとしての資格に欠ける言動を繰り返し、
国民の強い批判を招いているのはその一例であります。その役職に求められる
能力や識見ではなく、
政権との近さを基準とした
人事が何をもたらすかは明らかであります。
菅官房長官は、一年前の四月一日、
内閣府の新入
職員入府式で、国家全体の
奉仕者として頑張ってほしいと言い、昨年九月の
幹部職員セミナーでは、この
政権の方向性を常に念頭に置いて取り組んでもらいたいと述べました。驚くべき発言です。安倍
政権が求めているのは、
国民に奉仕する
公務員ではなく、
政権に服従する
公務員なのですか、お答えください。
法案が導入する
幹部人事の
一元管理は、
政府の
幹部公務員候補を官房長官が審査し、その任免にも
官邸が関わるものとなっています。こうした
制度の下で、
幹部になるために必要な
能力は、その専門
能力や
国民目線ではなく、
政権への近さ、果ては
政権へのおもねりになっていくのではありませんか。これこそ猟官主義ではありませんか。
言うまでもなく、
日本国憲法は、戦前の天皇の官吏から全体の
奉仕者へと
公務員制度の
理念を百八十度転換しました。
公務員は、憲法の
国民主権の下、全体の
奉仕者として、
法律に基づき、
職務遂行の中立公平が求められることとなったのです。
ところが、歴代自民党
政権の下でこの
理念はねじ曲げられ、大企業奉仕、日米同盟最優先の
政治を担う
官僚集団とされ、業界との癒着構造が形成されてきました。
内閣一元
制度の導入は、それを一層悪化させるものであります。求められているのは、現憲法の精神に沿った
公務員制度の民主的
改革であります。
第二に、天下り禁止の問題です。
公務員制度への
国民の
信頼を壊してきた最大の悪弊は、歴代自民党
政権の下で繰り返されてきた官民の癒着、高級
官僚の天下り、わたりであります。この悪弊を絶ち切るためには、天下り禁止を厳格に実施することです。
ところが、第一次安倍
内閣は、二〇〇七年、天下りのあっせんを禁止するだけで、それまであった天下りそのものの
原則禁止
規定を
国家公務員法から削除してしまいました。
その結果、何が起きたでしょうか。二〇一一年には、前資源エネルギー庁長官が東京電力に直接天下るという前代未聞の事態が起こりました。監督
省庁から監督企業への最悪の天下りであります。三・一一原発事故と
国民からの強い批判の中で、前長官は東電顧問を辞職し、経産省は
幹部公務員の電力業界への天下りを自粛せざるを得なくなりました。数々の
官製談合を繰り返してきた防衛省においても、関連企業への天下り自粛を継続しています。
官民の癒着を断ち切るためには、こうした自粛
措置にとどまるのではなく、改めて天下りそのものを厳格に禁止することこそ必要なのではありませんか。
加えて、国土交通省の前
事務次官自ら、所管する業界への天下りあっせん、口利きを行っていたことが大問題となりました。ところが、このトップ
官僚による重大な国公法違反に対し、安倍
内閣は何の処分も行っていないのではありませんか。こうした
姿勢が
公務員制度に対する
国民の
信頼を失っているとは思いませんか。
第三に、
公務員の
労働基本権回復の問題です。
日本国憲法は、そもそも、
公務員を含む全ての労働者に基本的人権として
労働基本権を保障しています。ところが、憲法制定の直後、一九四八年に、
公務員の争議行為の禁止を
日本政府に押し付けたマッカーサー指令によってこの基本権が
公務員から剥奪され、以来、その
回復が
我が国公務員制度の根本的な
課題となってきたのであります。
公務員は、
国民の権利を尊重する立場で
仕事をすることが求められます。そのためには、自らの人権が保障されていることが不可欠です。にもかかわらず、
基本法には、「
自律的労使関係制度を
措置するものとする。」という不十分な
規定が置かれただけでありました。
労働基本権の
回復こそ、
公務員制度改革の根本に据えるべきではありませんか。
公務員の
労働基本権の保障は世界的なスタンダードであります。ILOは、二〇〇二年、
日本政府に対し、
公務員の
労働基本権に対する現行の制約を維持するとの
考えを再考すべきであると求め、以後、一貫して
公務員への
労働基本権の付与を勧告してきました。
稲田大臣は、
衆議院の
法案審査において、これらILO勧告について、
公務員制度改革について
関係者と十分話し合うことと、
改革の進展について
情報提供を続けることの二つを要請しているとの認識を述べられていますが、これは一貫して
労働基本権の付与を求めてきたILO勧告の核心からあえて目をそらすものではありませんか。
最後に、
法案について具体的に二点
質問します。
まず、
人事の
中立性、公正性の問題です。
法案は、
幹部職員人事の
一元化として、官房長官による
適格性審査と
幹部候補者名簿の作成を
規定しています。
政治家である官房長官による審査で中立公正な審査ができるのですか。
法案は、
幹部職員の降任の
条件として、当該
幹部職員が他の
幹部職員に比して勤務実績が劣っていることを要件にしていますが、
稲田大臣は、
衆議院の
審議において、「
能力が劣っていなくても、ほかにいい人を
登用したいがために、一つポストを下げる、そういう特例の降任
制度」と答弁されました。一体、ポストを下げる客観的な基準はあるのですか。
幹部職員の
登用においても降任においても、
政権の意のままということですか、お答えください。
次に、
人事院の代償機能の問題です。
設置される
内閣人事局には、総務省及び
人事院から
人事に関する
事務が移管されますが、その中には級別定数の
事務も含まれています。
勤務条件そのものである級別定数を、第三者機関である
人事院から移管し、使用者中の使用者である
内閣人事局が決定するということになれば、
人事院の代償機能を後退させることになるのではありませんか。
以上、
法案の徹底
審議を求めて、
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣稲田朋美君
登壇、
拍手〕