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2006-03-23 第164回国会 参議院 国土交通委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十八年三月二十三日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         羽田雄一郎君     理 事                 伊達 忠一君                 脇  雅史君                 大江 康弘君                 山下八洲夫君                 西田 実仁君     委 員                 市川 一朗君                 小池 正勝君                 末松 信介君                 田村 公平君                 藤野 公孝君                 松村 龍二君                 吉田 博美君                 加藤 敏幸君                 北澤 俊美君                 輿石  東君                 佐藤 雄平君                 田名部匡省君                 前田 武志君                 山本 香苗君                 小林美恵子君                 渕上 貞雄君    国務大臣        国土交通大臣   北側 一雄君    副大臣        国土交通大臣  松村 龍二君    大臣政務官        国土交通大臣政        務官       吉田 博美君    事務局側        常任委員会専門        員        伊原江太郎君    政府参考人        国土交通省総合        政策局長     竹歳  誠君        国土交通省都市        ・地域整備局長  柴田 高博君        国土交通省鉄道        局長       梅田 春実君        国土交通省航空        局長       岩崎 貞二君        国土交通省政策        統括官      杉山 篤史君        航空鉄道事故        調査委員会事務        局長       福本 秀爾君    参考人        東京大学大学院        工学系研究科社        会基盤学専攻教        授        家田  仁君        弁護士      佐藤 潤太君        筑波大学大学院        システム情報工        学研究科教授・        リスク工学専攻        長        稲垣 敏之君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○運輸安全性向上のための鉄道事業法等の一  部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) ただいまから国土交通委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  運輸安全性向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授家田仁君、弁護士佐藤潤太君及び筑波大学大学院システム情報工学研究科教授リスク工学専攻長稲垣敏之君を参考人として出席を求め、その御意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  運輸安全性向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会国土交通省総合政策局長竹歳誠君、国土交通省都市地域整備局長柴田高博君、国土交通省鉄道局長梅田春実君、国土交通省航空局長岩崎貞二君、国土交通省政策統括官杉山篤史君及び航空鉄道事故調査委員会事務局長福本秀爾君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 運輸安全性向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 末松信介

    末松信介君 どうもおはようございます。自民党末松信介でございます。二十五分間でありますので、足早に質問を申し上げていきたいと思います。  質問のまず第一は、安全面でのトラブルについて国への報告制度創設についてお伺いをいたします。  今回の航空法改正によりまして、現行制度では報告義務のなかったトラブルまで報告義務が課せられるということになったわけであります。私は、グレーゾーンの取扱いが明確になったということは航空安全対策上、一歩前進したと思っているわけなんですけれども、この法律を有効に機能させるかどうかということは、各航空事業者ミスを隠ぺいしない、ミスを隠ぺいさせない、こういった風土づくりが極めて重要だと思うんです。  日本では、失敗は恥ずかしいという恥の文化がございます。始末書てんまつ書を書いたら昇進に大きく影響するんじゃないかといったことが正直さを曲げてしまうということが往々にしてありがちなんですけれども、それを抑制して報告しやすい環境をつくることは官民共同で行うべきだと思うんです。  例えば、アメリカのインシデント報告におけるASAP、航空安全報告制度であるとか、ASRP、航空宇宙安全諮問パネル、こういうところが使用している制度のように、報告者匿名性確保することもこれは一つの方法だと思います。それと、発生から一定期間までに報告を上げれば、基本的にはFAAは、連邦航空局処分を免除されるということになっているわけなんですけれども。こうしたことを参考にしまして、制度創設というものも一つの工夫として必要だと思うんですけれども大臣の御見解をお伺い申し上げたいと思います。担当の参考人の方で結構でございます。
  8. 岩崎貞二

    政府参考人岩崎貞二君) 先生指摘のとおり、今回、従来の航空事故重大インシデント以外に航空機の正常な運航に安全上の支障を及ぼす事態、こうしたものについて事業者から報告を求めるという制度創設させていただきたいと思っております。できるだけ情報を集めて、航空事故等を未然に防止するための予防的な対策の分析でありますとか、各事業者でこうしたトラブルがあったということを共有化してもらおうと、こういう趣旨で設けるものでございます。  できるだけ多く集めるということは先生の御指摘のとおり重要だろうと思っております。報告者匿名性確保あるいは行政処分を減免していくということについても、今先生の御指摘ありました欧米の事例なんかを参考に勉強していきたいと思っております。今、関係者から成る検討会を設けておりまして、そこで勉強させていただいているところでございます。  それから、今回はそうした事例ですが、もっとヒヤリ・ハットというものをより積極的に集めていきたいと思っておりまして、これは従来からやっておりますけれども匿名性確保して集めていこうということで今後とも充実を図っていきたいと、このように思っておるところでございます。
  9. 末松信介

    末松信介君 今局長からヒヤリ・ハットの話があったんですけれども航空会社ごと状況は全部は知りませんけれどもヒヤリ・ハット報告制度、エコーという制度があったりしまして、実際匿名でいろんなトラブルとかミスがあった場合にはきちっと報告を内部的にやることになっているんです。ただ、それは恐らく社外秘だと思うんですけれども。  航空会社そのものは随分努力はされておられるんですけれども、結局問題というのは、やはり刑法とのかかわり合いということが最終的には問題になってこようかと私は思っておりますんですよね。実際、パイロットの方に聞いても、まあ急降下をやらざるを得なくなったということで管制の方に連絡したら、行ったら、取りあえずはやっぱり警察の方が来られておると。なぜかといったら、けが人がないかどうかということを確認に来ると。だから、やっぱりそれだけでもかなり乗員の方というのは気分的にめいってしまうというか、こんなもんかなということを思いがちでありまして、やはり正直に何でも報告をできるという、ミスとかトラブルというのを生きた教材にするということがやっぱり大事なんで、是非ともにこの検討を前向きに進めていっていただきたいと思います。  今回の改正安全管理規程作成安全統括責任者選任義務化されているわけなんですけれども、このことで、かつて航空会社安全対策に取り組んだ役員の方が無事故記録よりも日々の取組が重要だということを言葉として残しておられます。そういう意味で、運輸事業者にとって安全管理規程とか安全統括責任者というのは大変重い意味を持ってくると私は思っています。  そこで、この安全統括責任者選任義務化では、役員クラスから選任をさせ、その解任命令については大臣が行うことができるというわけなんですけれども、それは結果として、うがった見方をすれば民間企業への人事の間接的な介入ということも想定されるため、私は非常に慎重に判断しなけりゃならないと思うんです。  安全統括責任者職務を怠ったときというのはいかなる場合を指すのかということをお答えいただきたいと思います。
  10. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 今回の改正一つポイントが、今委員のおっしゃっていただきました安全管理規程作成をしていただく、そして事業者事業会社の中で安全統括管理者選任をしていただくと、ここが一つ今回の法改正ポイントでございます。  今委員のおっしゃいましたように、安全統括管理者解任命令を、国土交通大臣航空運送事業者に対しまして当該安全統括管理者解任すべきことを命ずることができると、こういう規定になっているわけでございます。ですから、直接解任するわけじゃなくて、中にもちろん事業者が入って、事業者解任するかしないかというのは最終的判断をされるわけでございますが、そうはいっても間接的に民間会社人事に大きな影響を与えていくという御指摘はそのとおりでございます。それだけに、やはり慎重な運用をしなければならないというふうに考えております。  どんな場合に、じゃこういう解任命令を出すのかということでございますが、具体的に申し上げますと、安全統括管理者業務統括管理意見具申等職務を怠った上、何ら改善措置を講じようとしないために安全性が阻害され、重大な事故発生したり、また発生するおそれが著しく高いと認められる場合等を想定をしているところでございます。
  11. 末松信介

    末松信介君 改善をしようとする努力を怠ったときということで、具体的にこれなかなか分かりにくい、分かりにくいなというのが実は実感なんですよね。  そこで、じゃちょっとお尋ねしたいんですけれども、昨年、日本航空社長二回、全日空社長一回ここへ参考人招致されて、委員からいろんな質疑行われたんですけれども、あのとき業務改善命令JAL提出をしました。その後もトラブルをずっと続けてきたと。今回も、まあ今日新聞を見たら、「MD87型機、主脚点検忘れ 日航、十日間運航」という形で記事出ているわけなんですよね、きちっとその指示守らなかったと。  今日のこの記事は横に置いておいて、昨年のJAL業務改善命令を出された後もトラブルを引き続きこれ起こし続けたという状況を見た場合、あの場合に安全管理者という責任者が、安全統括責任者がおられた場合、これはやはり解任に値する状況であるかどうかということ、この点だけは一度明確にお答えいただきたいと。想定されなければ、これ法案にきちっと賛成をしていくというのはなかなかしづらい点がちょっとあると思うんですよ、私はもちろん賛成しますけれどもね。その点どうでしょうか、これ。
  12. 岩崎貞二

    政府参考人岩崎貞二君) 昨年来、JALトラブルを起こしておるわけでございまして、先生指摘のとおり、事業改善命令が出された後、昨日もトラブルが続いているということについては大変遺憾だと思っております。  ただ、直ちにじゃJALにこういう場合だったら解任命令を発するかどうかというのは、一方で改善措置報告に従って経営トップが直接現場に赴いて安全ミーティングなんかをやられているという一定努力はされているところもありますので、そうしたことを含めて総合的に評価していくべき問題だろうと、こう思っております。一概にJALの例でどうするこうするということについては考えさせていただきたいと、このように思っておるところでございます。
  13. 末松信介

    末松信介君 その一つの事実がもうあるわけで、存在していますよね、去年は。もちろん、ああいう日航業務改善命令が出ていたと、そんなさなかに緊張しなきゃならない全日空トラブルを起こしたという、これも私は随分大きなミスをしていたと思っていますんですけれども。  ただ、具体的に日航業務改善命令を出されるに至って、その後もずっと続けたという事実は事実で残っておって、そこへ仮に今回のこの安全統括責任者という方を置かれた場合に、この方が解任されるべきかどうかということの判断がここで申し上げられないということは、極めて先々分からないことに我々は賛成していかなきゃならぬという感じを受けるんですよ。それをあいまいにされていて、実はこうだったと言われて、私たちこれ法案に賛成した場合、一体どのように考えていっていいか判断が付かないと思うんですよ。もう少しだけちょっと突っ込んでお考え、お答えいただけたらなと思いますけれども
  14. 岩崎貞二

    政府参考人岩崎貞二君) 今回の解任命令を出すのは、その安全管理者が引き続き統括管理あるいは意見具申等職務を怠った上、何ら改善措置を講じようとしないために安全性が阻害され、重大な事故発生したり、また発生するおそれが著しく高く認められる場合と、こういうことになっております。  今回のJALの例で申しますと、一定の、繰り返しになりますけれども経営トップの方が改善措置を講じられているということはある程度評価しなきゃいけないと思っております。ただ、引き続きトラブルが起こっているということでございますが、このトラブルの内容も、率直に申しますと航空機にありがちな、どうしてもその仕組みの機械上のトラブルもございますし、やはりヒューマンなトラブルなんかが大きな事故にもつながると思いますので、そういうようなものがあったかどうかという検証をした上でこうしたものを発動するしないというのは決めていかなきゃいけないと、このように思っておるところでございます。
  15. 末松信介

    末松信介君 その役職を解任することが目的ではなくて、事故を防止するということが一番の目的でありますので、しっかり岩崎局長の顔を今見て、信頼を寄せてまいりたいと思っています。後日、後でまたほかの委員から質問があるかもしれません。  次の質問に移りたいと思います。  羽田空港では、昨年の十月に着陸回数現行の一時間当たり最大二十九回から三十回に増やして、発着枠一日当たり十四便増やされたわけであります。航空管制の安全に関する研究会による十分な検討安全検証が経た上での決定でありまして、それの需要にこたえる上で良かったことだと私は思います。  そこで、現在の羽田空港においては、朝夕中心航空機定時運航確保されているとは言い難い状況がずっと続いていると思うんです。  三週間前でしたか、北側大臣大阪矢野議員と私、三人乗り合わして、あのとき矢野議員と話しておったのは、国交大臣が乗っているこの飛行機だから時間どおり着くねということを言ったんですよ。ところが、一時間五分では着かず、一時間半掛かったと。値打ちがないなという話を実は、機内で降りるときに話を、(発言する者あり)そうですか、いやいや、後で聞きます、先生。  それで、まあかなり混雑空港であるがゆえのこと分かるんです。離陸まで今六番待ちですということですから、二分間掛ける六ですから十二分待たなきゃならぬということが分かったんで、大変な状況だなということを思ったわけなんですけれども。  こういう場合、タイムテーブルで四月は一時間十分になっています、羽田大阪伊丹の間はですね。もう少し延ばしてもいいんじゃないかなということ、この定時性を余りにも考える余り少しくゆとりを失うんじゃないかという不安を実は抱いているわけなんです。  昨年のJR尼崎線事故でも、運転手の方が定時確保ということを、このことが意識を、大変焦りを招きまして事故につながった可能性指摘をされているわけなんですけれども、昨今の運輸事業者ごとに激しい競争による定時運行へのプレッシャーはある面では人々の余裕を奪ってヒューマンエラーを誘発していると、こういうことになるんじゃないかと思うんですけれどもトラブル事故発生の原因となりかねない、危惧されるこの定時性確保ということについて、どうお考えかということと、あわせて、今の羽田であるとか厳しい列車ダイヤ等々を見た場合、その現状をどう分析してどういう対策考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  16. 岩崎貞二

    政府参考人岩崎貞二君) 二つ問題があると思っておりまして、一つは、到着してから出発するまでの時間が非常に窮屈だと、どうしてもその間の点検とか整備とか、あるいは若干遅れが出たときの取戻しとか、そういうことで出発を急ぐといった傾向がございます。こういうことについて、昨年、JALの方では現場ミーティングなんかでそういう声があったものですから、その辺について一部手直しをしたと、このように聞いております。  それから、そもそものダイヤ設定自体の問題でございますけれども、確かに羽田空港におきましては、一時間に着陸は三十、出発は三十二ということでございますが、これの一時間の値自体は、その一時間の中で三十なり三十二入っているんですけれども、それを五分ごとあるいは十分ごと、十五分ごとなんかに分析しますと、どうしても十時、十一時とか切りのいい時間に出発するのが多うございまして、そうした十分、十五分になりますと、例えば出発ですと一時間に三十二でございますから、十五分ごとであれば八から九ぐらいが適正な値なんですけれども、そこに出発便が十便以上集中するといった傾向がないわけではございません。  こういうことを我々問題意識で持っておりまして、今、羽田空港事務所とそれぞれのエアラインとの間で少しずつでも改善していこうということで取り組んでいるところでございます。
  17. 末松信介

    末松信介君 鉄道の方なんかはどうでしょうかね。ダイヤ改正がありましたけれどもね、尼崎なんかは。
  18. 梅田春実

    政府参考人梅田春実君) 鉄道運行ダイヤにつきましては、運転速度あるいは発着の時刻、運行回数等に関する計画でございますけれども航空と違いまして鉄道の場合は、鉄道の線路、これは全部事業者が大体持っていますし、車両の構造、これも大体全部持っていますので、その構造とか性能に照らしまして鉄道事業者安全性利便性を考慮しながら決める計画でございます。  先生指摘のように、福知山線事故の直後にダイヤゆとりがなかったんじゃないかという批判が大分ございまして、JR西日本では福知山線運行再開につきまして、福知山線については少し見直しまして若干のゆとりを持たせたダイヤにいたしましたが、今般のダイヤ改正、三月のダイヤ改正におきましては、駅の実態調査、利用の実態調査なんかをきちんと行いまして、運転時分、それから停車時分、それから列車折り返し時分、こういうものを一個一個見直しを行いました。あらゆる部分にできるだけゆとりを考慮したダイヤにしようということで、まあ若干長めではございますけれども、今までのダイヤよりは若干長めではございますが、ゆとりのあるダイヤ設定を行ったというふうに聞いております。  考え方は細かくございますけれども、いずれにしましても、この前の事故を踏まえて、ゆとりを持たせるという考え方でやってきておりますし、我々も事故の直後、鉄道事業者につきまして、ダイヤ見直しをきちんと行って、ゆとりがあるかどうかの再点検をさせたところでございます。
  19. 末松信介

    末松信介君 尼崎線ですけれども宝塚—尼崎の間もまあ三分ほど時間が長くなった、掛かるようになったということ、それだけゆとりを持たせたということだと思うんです。  私が住んでいる近くの三宮駅でも、四十秒の停車時間が、快速、新快速、七十秒になったということを伺っておりますので、旅客の方に聞けば、乗客の方に聞けば、やはりスピードよりも命を大切に、安全を大切にということでありますので、そういった方向で進めていっていただきたいと思います。  時間が来ていますので、進めます。  また一つ飛行機の方へ戻るんですけれども、これ安全運航状況混雑空港発着枠に大きく加味するということを更に進めてはどうかということを考えております。自民党の部会でも局長にちょっとお話ししたことあったんですけれども羽田空港の枠、成田もそうかな、羽田空港の枠につきまして内外の航空会社にとっては非常に重要なものになってきております。  航空会社のこの評価というのは、一つは、これは運賃の低廉化努力しているかどうかということが一つ挙げられます。それと、ローカル線に、地方の足としてどれだけ貢献しているか、公共性の高い存在であるか否かということがあると。もう三つ目は、やっぱり安全の確保になってきていると思うんですよ。私は、やっぱり安全の確保競争というんでしょうか、安全競争というものを高めていっていいんじゃないかと思うんですよ。  この点について、そのウエートというものを、羽田の枠の配分在り方について、混雑空港配分の枠の在り方について、安全のウエートを高くしてはどうかと思うんですけれども局長のお考え伺います。
  20. 岩崎貞二

    政府参考人岩崎貞二君) 現在、羽田発着枠配分でございますけれども競争の促進でありますとか、多様なネットワークの形成でありますとかということと併せて、安全も、死亡事故発生したかどうかということについては評価をしておりますけれども、まあその程度にとどまっているというふうな現状でございます。  私どもは、安全についてはもう少しちゃんと評価をしていきたいと、こう思っておりまして、先ほど先生お話しのありました、昨年の八月に、一時間二十九から三十に枠を増やしたときでございますけれども、そのときに大手のエアラインには五枠、五枠を差し上げたんですが、JALANAについては、JALがそのころトラブルを起こしていたということを評価、かんがみまして、JALに二、ANAに三と差を付けたわけでございます。  今後、九月には、私どもの方からエアラインの方に、この安全については先ほど申しました死亡事故の有無だけではなくて、ほかの項目も追加してこれから重視していく方針で考えていきますということについては既に通知をしておりまして、その具体化の作業を今進めていると、こういう状況でございます。
  21. 末松信介

    末松信介君 発着枠は、その枠は五年ごとにやっていますよね。今の時代ですから、これは更に三年ごとぐらいに短い形で検討したらどうかと思うんですけれども、こんなところはどういう形で決められたのか、ちょっとお尋ねしたいんですけれども
  22. 岩崎貞二

    政府参考人岩崎貞二君) 五年ごとというルールになっておりますけれども、途中段階でも昨年のように枠が増える場合もありますので、そういう場合なんかにもこのルールを適用するというようなことで、安全の方を重視した枠の配分在り方について前向きに取り組んでいきたいと、このように考えているところでございます。
  23. 末松信介

    末松信介君 じゃ、努力のほどをよろしくお願い申し上げます。  最後に、連続立体交差事業のことについて質問して終わりたいと思うんですけれども、私、地方議会に籍を置きまして、自由民主党なんですけれども自民党はなかなか都市部で選挙に勝てなかった時代が長く続いていまして、なぜ都市部に弱いのかということで都市問題研究会というのを作って、おまえ、そこの座長をやれと言われて、いろいろと研究したんですよ。  私、一つ分かりましたのは、それはなぜかといったら、都市に住む納税者が社会において弱者感を抱くに至ったということなんです。まじめに働いてまじめに税金を納めても保育所に入れない、子供が保育所へ入れない。お年寄りの方もすぐに特別養護老人ホームに入れないと、それでいろいろと続いてきたんですよ。その中で重要な一つの項目が、まじめに税金を納めても渋滞は解消されない、開かずの踏切がずっと存在し続けるという。生活に大きな変化をなかなか与えてくれるような、そういうことが社会の事象として起きないということだったんですよ。その連続立体交差事業というのは非常に大きなポイントで、いろいろと勉強したことを覚えておりますんですけれども。  もう細かなことを申し上げる時間もなくなってまいりましたので、この連続立体交差事業についてその進捗状況はどうか、全国的に見て進捗状況はどうかということをお尋ねしたいということと、もう一つは、例えば来週の月曜日、姫路の方で高架化が進みますよね、竣工式が行われます。もう三十三年掛かった、六百九億掛かったと。四・三キロぐらいですよね。これ非常にお金も掛かって、時間も掛かるわけなんです。一部の市においては大きな財政負担になるんでやりたくてもその事業に乗っていけないというような事態があるのかどうか、そういう状況があるのかどうかということをお尋ねして、質問を終えたいと思います。
  24. 柴田高博

    政府参考人(柴田高博君) 連立事業でございますが、今、政府といたしましても重点的に取り組んでいるところでございます。現在、事業の実施箇所でございますが、六十二か所で現在実施中でございます。千二百か所の踏切を除却しようということで今取り組んでございます。  これまで、この五年間で三十か所ぐらいを踏切除却やってまいりましたけれども、今後更に五年間では、今回、連立の条件も、自動車交通だけではなくて、歩行者の方がたくさんおられるというようなことも条件に入れておりまして、この除却の数もこれまで以上の、倍以上のスピードで進めていきたいと考えてございます。  また、地方公共団体の負担というものも結構たくさんあるのは事実でございまして、平均的にいいますと、一割が事業者、残りの部分について国と地方が二分の一ずつの負担をするわけでございまして、国費が二分の一入るわけでございますが、地方公共団体に代わりまして、我々といたしましてもいろんな制度を持っております、立替え施行制度というものがあるわけでございますが、来年度この制度を拡充したいと考えてございます。  現在は事業者だけが立替え施行ができるわけでございますが、事業者以外にも特別目的会社だとか第三セクター、こういうところも立替え施行ができるようにしたいという具合に、来年度からしたいと考えてございます。これによりまして、地方公共団体のスタッフ、体制を支援できるということと、あと資金面でも裏負担の部分の特に地方費の一般財源部分についてこの立替えでもって資金面でも支援ができるということで、この制度等によりまして更に地方公共団体の負担を少なくし、支援をし、事業を進めていきたいという具合に考えております。  いずれにしましても、一生懸命努力していきたいと考えております。
  25. 末松信介

    末松信介君 ありがとうございました。  以上で終わります。
  26. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 民主党・新緑風会の佐藤雄平でございます。  末松さんの質問にもありましたけれども、今、公共交通の安全、この法案を審議をしている中でも、日本航空の今日の整備点検を忘れて十日間運航してしまった、そしてまたスカイマークは、これも整備点検を忘れて運航してしまった。私は、このような事案を見るにつけ、その安全、保安以前の問題がこれたくさんあるんじゃないかなと。特にJALについては、昨年から正に枚挙にいとまがないぐらいもう連日のようにいろんな事案が起こっております。そしてさらにまた、国土交通省の皆さんにつけても何回立入検査をしたか。そしてさらにまた、大臣が何回業務改善命令を出したか。にもかかわらずこのような問題が起きているということは、私は安全以前の問題で、会社の一つのやっぱりモラル、会社の経営、こういうふうなところに大きな問題があるんではないかな、そんな思いをしますし、さらにまた、会社の問題ということは、監督官庁が何回も業務改善命令とか立入検査をしたことが全く効果を現してないということは、これは監督官庁のある意味では指導にも問題があるんではないかなと、そんな思いがしてなりません。  私は、やっぱり幾つかの問題があると思いますけれども、まず、会社の一つのモラル、そしてやっぱり余りにも大きくなり過ぎて、ある意味では官僚的になって、縦割り行政になってるんじゃないかなと思うんです。全く愛社精神、これに欠けてるんじゃないかなと、そんな思いをしますけれども、その点について大臣の御所感をお伺いしたいと思います。
  27. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 昨年来、特にJALグループにおきましてトラブルが続いておることは、極めて遺憾と言わざるを得ません。今回の、点検期限を超過したまま飛行したと、飛行を継続しておったということにつきましても、三月二十二日付けで厳重注意を行いまして、再発防止策を四月五日までに報告するように指示をしたところでございます。  今後とも、私どもといたしましては、JALグループはもちろんでございますが、航空事業者に対しまして、立入検査等も含めて、しっかりとその安全確保のために厳しく監視をしていきたいというふうに思っておるところでございます。  今回この法律案を提案をさせていただいているのも、一つ委員のおっしゃった問題点に対するやはり改善をすべきということもありまして、今回の法律案の提案をさせていただいております。  やはり私どももしっかり監視をしないといけないわけでございますが、やはりまずは自ら、こういう公共交通の事業者自らが社内で、経営トップから現場の第一線まで、安全確保、安全が最優先という意識を徹底していただく必要があるわけでございます。そこのところを今回、安全管理体制の構築を事業者としてしっかりやっていただく、そのために、安全管理規程作成だとかそれから安全統括管理者選任していただくだとか、そうした安全管理体制をしっかりとやっていただく、それを、この安全管理のマネジメントを私ども評価をしていくと、そうした体制を是非取らせていただきたいと考えているところでございます。
  28. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 大臣の話も分からないわけではございませんけれども、しかし、昨年から再三にわたる業務改善命令と立入検査しているわけですね。しかも、安全が最優先だともう大臣が口酸っぱくあらゆるところで言っている。さらにまた、我が党の北澤議員も新町社長の進退についても追及した。それがようやっと今になって退くというふうな話になっていますけれども、私は、この辺はやっぱり一つの会社自身の問題と。その根底は、合併、巨大になり過ぎたと。ですから、会社に対する、先ほども、繰り返すようでありますけれども、愛社精神がなくなっていると。この件については大臣はいかがお考えでございますか。
  29. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) おっしゃっているとおり、交通事業者、公共交通に携わる方々は、経営者から現場の方々まで、やはりこの安全を最優先にしていくという意識をこれはもう徹底をしていただく必要があるわけでございます。  委員のおっしゃっているモラルだとか愛社精神だとか、そういうことについても、そのためには、やはり安全を最優先にしていくということが、意識をしっかりと浸透していくことが、それが結果として愛社精神につながるわけでございまして、そこが委員のおっしゃっているように官僚組織といいますか縦割りにならないように本当にしないといけないわけでございまして、そこのところは私どももしっかりとよく見ていきたいというふうに思っております。
  30. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 是非、その愛社精神が生まれるような航空行政の指導をしていただきたいなとお願いしておきます。  次に、これまた大臣にとって頭の痛い話かなと思うんですけれども、平成十三年の静岡県の焼津上空でのニアミスの問題、これが二十日の日に東京地裁の判決が出て、そして管制官二人は無罪であると。これは、場合によってはシステム全体の問題ではないかと、そのような結論になったのかなと思います。  その中で、安全対策、この法案についても頻繁にヒューマンエラーということが出てきておりますし、このヒューマンエラー対策のための今度の安全対策かなと、法案改正かなと思っているわけでありますけれども、残念ながら、今度の判決を見るにつけ、個人の問題じゃないと、個人の間違った誤報はあったかも分からぬけれども、システム全体の問題であるということの結論になったわけでありますけれども、この東京地裁の判決についての大臣の御所感をお伺いしたいと思います。
  31. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 先般の東京地裁の判決は、これはあくまで個人の刑事責任が問われたものでございまして、それについては東京地裁の方で責任なしという御判断がなされたものでございます。  したがって、航空行政の課題そのものは、これは当然、平成十三年のこの事故に関しましては重い課題を投げ掛けられたわけでございまして、また、昨年も管制にかかわるミスもございました。やはり今後とも管制の更なる安全対策にしっかりと取り組みまして、航空の安全に対する信頼回復を図っていかねばならないというふうに考えているところでございます。
  32. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 これは、大臣、百人近い犠牲者というか重軽傷者が出たわけですね。正にその責任はだれだ。要するに、犠牲者が出たわけですから、そこにはある意味ではその刑事責任も万が一の場合起こるか分からぬ。ですから、検察当局からすると、これで航空事案、このような航空事案のときに責任の所在が全くなくなるんじゃないかなと、そんな論調もあります。  大臣法律の専門家でありますけれども、本当にそのような判断でよろしいんでしょうか。
  33. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 先ほども申し上げましたように、これは管制官個人の刑事責任が否定されたにすぎません。したがって、今委員のおっしゃったように、百名の方がけがをされたという重大な事故をもたらしたわけでございまして、このこと自体はやはり航空行政に重い課題を当然投げ掛けているわけでございまして、この直後にも再発防止策を取りまとめをさしていただきましたが、しっかりと管制の安全を図るために、様々な問題点について、こうしたことが二度と起こらないようにしっかりと取組をさしていただきたいと思っております。
  34. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 新聞よくお読みになったと思いますけれども、個人の問題の、あの管制官二人は、これはシステムの問題だというふうなことを主張したわけですよね。それが結果的には個人の問題でないというふうな判決が出れば、間接的にはこれやっぱりシステムの問題であろうというような私自身は理解をさしていただきたいと思います。  次に移らしていただきます。  航空局長に。いわゆる静岡上空での問題というのは、いわゆる安全装置とそれから管制官と機長の一つのトライアングル、それで、当然その管制官の指令とそれから自動安全装置の指令と、このようなことというのは、同時に食い違った判断が起こるというふうなことも十分今までも考えられたと思うんです、この法改正になる前に、これまで日本の航空の歴史というのは何十年もあるわけですから。  そういうふうな中で、やはり交通業界が頻繁、激しくなってきた。一日この上空六千四百機、約、そのほかの米軍にしても自衛隊にしても、それを含めると一万機飛んでいるわけですから、そのようなトラブルが当然起こるという前提の中でいろいろ行政の指導をしてきたと思うんですけれども、この管制官といわゆる自動安全システムの指令が違うと、食い違いがあるというようなことは当然私はこの法改正以前にも考えられなかったのかなと思うわけでありますけれども、この件についての局長の御所見をお伺いしたいと思います。
  35. 岩崎貞二

    政府参考人岩崎貞二君) このニアミス事故が起こったときでございますけれども、当時、管制官の指示と先生指摘航空機衝突防止装置、TCASと申しますけれども、TCASとの指示とが食い違った場合どうするかということについて明確な基準を示しておりませんでした。  私どもの安全基準はICAOという国際航空機関の国際標準に準拠することを基本としておりますけれども、当時世界的にも、ICAOの方でもこれについての規定ははっきりしていなかったということと、それから、このTCASという装置が平成五年ごろから導入されてきたわけでございますけれども、初期の時代はなかなか性能は必ずしも良くなかったものですから、しょっちゅう誤表示を出すといったこともございました。そんなことで、平成十三年の当時は、繰り返しになりますけれども、どちらの指示を優先するかということについて明確に定めておりませんでした。  事故発生後、委員会も設置をいたしまして、これについてどうすべきかということを考えました。TCASの設計基準が初期当時と違って随分性能が向上していること、それから、ICAOではまだ決まっておりませんでしたけれども、アメリカとかイギリスではこうしたものについてTCASの方の指示を優先しなさいという規定が導入されていること等々も分かりましたので、私どもの方も、これはやっぱりTCASの指示を優先するということの方向に持っていこうということで作業を進めてまいりました。平成十四年の七月に、我が国のエアラインに対してその指示を徹底するとともに、ICAOの方でもちゃんと直してくれと、こういうことを働き掛けまして、平成の十五年十一月に国際標準も直してもらったと、こういう状況でございます。  現在のところは、こうしたTCASの指示と管制官の指示が異なった場合、TCASの指示が優先するということを徹底しているところでございます。
  36. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 局長、私言っているのは、そういうふうなことが想定できなかったのかというふうなことを申し上げているんです。
  37. 岩崎貞二

    政府参考人岩崎貞二君) 繰り返しになりますけれども、当時、TCASの方の誤作動等々もございましたので、必ずしも明確にできなかったということでございます。  私ども、今後も技術革新の状況とか、あるいは国際基準の動向とか、いろんなトラブル状況とか、こういうことを含めて適切な制度や基準の見直し、これに頑張ってまいりたいと、このように思っているところでございます。
  38. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 その後、衝突防止装置の方を優先するというふうなことになったわけですけれども、やっぱり私は、行政は様々なことを先んじながら一つのきちっとしたルールを作っていくと。事故があってからじゃなく、事故の前に想定しながらルールを作っていくということが監督官庁の一つの役割であろうし、また航空局長の大きな責任だと思いますので、もう是非、その件については推進お願いしたいと思います。  次に、事故調査委員会局長にお伺いしたいと思います。  この事案について、事故調査委員会報告書をずっと見させていただきました。そうすると、過程はずっと書いてあるんです。過程は書いてあるんだけれども、その原因のところに過程しか書いてなくて、何が原因だということが全く実は書いてないんです。私、事故調査委員会というのは、よく調査をして、それが次の安全対策に提案をすると、次の安全対策を講ずるという大きな要素でなければ私は余り意味ないと思うんです。  この委員会の調査報告書を見る限りは、結論的にどこが間違っていた、どこが原因、そういうふうなことが全く書いてないんでありますけれども、この報告書についての御所見というか、考え方をお伺いしたいと思います。
  39. 福本秀爾

    政府参考人福本秀爾君) お答えいたします。  本事故につきましては、事故調査委員会は平成十四年の七月に、事故原因を究明いたしまして事故の防止に寄与することを目的といたしまして調査報告書を公表をいたしておるところでございます。こういうものでございます。(資料提示)  その中で、本事故の主な推定原因といたしましては、航空管制官が九〇七便と九五八便を取り違えて指示したということや、九〇七便の運航乗務員がTCAS、航空機衝突防止装置でございますが、その回避指示、RAと呼んでおりますが、そのRAと逆の操作を行ったということを挙げておるところでございます。  また、このような事故原因の背景といたしましては、CNFと呼んでおりますが、異常接近警報が作動いたしました際の航空管制官の心理的な動揺があった。あるいは、先ほどのRAという回避指示でございますが、その指示と逆の操作を行うことの危険性に関します運航乗務員の認識不足等が言わば複合的に関与いたしましたものではないかという具合に推定をいたしたところでございます。  なお、本事故を受けまして、事故調査委員会におきましては、国土交通大臣に対しまして、航空交通管制業務の確実な実施、航空機運航業務におけるTCAS作動時の適切な対応等を内容といたします勧告、建議を行っておるところでございます。  さらに、先ほど航空局長からも御答弁がございましたが、ICAOに対しまして、管制指示とRAの指示が相違いたした場合においては、操縦士はRAの指示に従うべき等が明確となるようにICAOの関係規程の改正を求めるという安全勧告を行ったところでございまして、これらの提言を受けまして事故の再発防止が図られているものと認識をいたしておるところでございます。
  40. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 そういうふうな結論から安全装置を優先するというふうなことになったということでありますけれども、しかし、あの過程を本当に見る限りは、その責任というか、原因がどこだというのが全く何というのかな、明確にはなってないんで、私はやっぱり航空鉄道調査委員会というのはもっと明確さを期すべきではないかなと、そんな思いをしているところでもあります。  次に、大臣に、今度の裁判についてはいわゆる事故調の調査のこの資料をお使いになったということになっております。諸外国では事故調査委員会報告書というのは全く使わないというふうなことになっているわけであります。  もちろん、今度の裁判で使ったのも、係争、お互いに戦う部分じゃなくて、本当のその事実だけを採用したというようなことになっているわけでありますけれども、しかし、これは国際民間航空条約の中ではこれは使わないというふうなことになっているわけですが、それを採用したということについての御所見を大臣にお伺いしたいと思います。
  41. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 航空鉄道事故調査委員会目的というのは、これは事故の原因を究明をいたしまして再発防止を期するというところが目的でございます。したがって、事故の責任はだれなんだと、どこにあるんだということを問うために行われている調査ではございません。もちろん、それに間接的にかかわることは当然あるとは思いますが、目的はあくまで事故原因の究明、そして再発防止、ここが調査委員会目的でございます。  この調査報告書につきましては、御承知のとおり一般に公表をなされているところでございまして、この公表された内容を司法当局の方がどのような形で利用されるかということは、これはもう司法当局の方の御判断でございまして、私どもの方からこれ使ってはならないとか、そういうことは言う性格のものではないと。一般に公表をしているもの、それを司法当局がどう判断するかということだというふうに考えております。
  42. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 あり得ないとは思いますけれども、ただ、このような事案が起こると、どうしてもやっぱり官側と民側のいろんな問題になってくる、そのとき、官側の機関である事故調査委員会の資料というのはどうしても第三者的な客観的な担保を取れるかというと、一般論からすればなかなか取れないであろうというような誤解も生む可能性もあるわけでございますので、今の大臣の答弁のとおり遵守していただきたいと思っております。  次に移らしていただきます。  これは局長に。結果的には、これ繰り返すようでありますけれども管制官のお二人は全く無罪であると。その管制官が言っていたさっきの構造的な航空システム、これに問題があるというふうなことを彼ら二人は言っていたわけですけれども、仮に、仮にこのシステムに問題があるとすれば、どのような点にあると思いますか。
  43. 岩崎貞二

    政府参考人岩崎貞二君) 先生御案内のとおり、管制官はレーダー画面を見ながら航空機の誘導、指示をやっているところでございます。我々も努力してきたつもりでございますけれども、ややもすると管制官個人の技量に頼っていた面がなかったかと、このように反省をしているところでございます。  管制官は、忙しいときには二十機ぐらいの飛行機を同時に取り扱うというような環境で働いておりますので、できるだけやっぱり管制官の負荷を下げてあげないといけないと、このように思っております。  一つは、機械的な支援をよりできないかというところでございまして、例えば接近をしたときに警報装置が出るようなシステムになっているんですけれども、それをもっと正確なものにしていけないかとか、あるいは管制官、非常にどの飛行機とどの飛行機をどちらを先に通していいのかというようなことについてやっぱり判断をしなきゃいけないんですけれども、そういうことについて判断の支援機能みたいなのをレーダー画面の中で現せないかとか、そういうことを今取り組んでいるところでございます。  それからもう一つは、管制官のやっぱり大変負荷に掛かりますのは、高度を変更したり針路を変更させるというようなことが多くあるとなかなか大変でございます。そのためには、空域とか航空路の単純な形で通りやすい形のものにしてあげなきゃいけないんですけれども、そういうことについても今いろいろ取り組んでいるところでございます。  その他、ソフトの面も含めて、こうした管制ミスのないような体制というのを我々真剣にこれからも取り組んでまいりたいと、このように思っているところでございます。
  44. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 法案に入る前に様々な航空事案について質問さしていただきましたが、それぐらいやっぱり今頻繁に事案が起きているというふうなことはきちっと御認識をしていただきたいと思います。  今度のいわゆる安全法案でございます。今もそれぞれ質問をさしていただきましたとおり、空の安全対策でもう目一杯いろんな問題がたくさんある。そしてまた陸上交通についても、昨年の西日本JRの百七人の犠牲者を出したこの事案がある。あとまた、船舶でもいろんな事案がありました。  こうしてみますと、運輸の安全向上のための改正法案という中で、鉄道事業法、軌道法、航空法、道路運送法、貨物自動車運送事業法、海上運送法、内航海運業法、これ全部で七つ。これだけやっぱり安全、安心について国民から問われているときに七つの法案を一くくりにして出してくると。むしろ私は国土交通省の安全法でも作った方がいいかなと思うぐらいの気持ちでありますけれども、これ一緒くたに出してきた。これ多分この方が都合がいいと、役所の御都合主義かとも思うんですけれども、この背景はどういうふうなことですか、大臣に御答弁願いたいと思います。
  45. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 昨年の四月のJR西日本の福知山線における列車脱線事故、また航空分野における連続しましたトラブル等々、ヒューマンエラーが関係すると見られる事故トラブルが多発をいたしました。これも、私の方からこのヒューマンエラーについて是非専門家の方々にも入っていただいて検討してもらいたいということをお願いをいたしまして、省内に、外部の専門家の方々にも入っていただきまして、公共交通に係るヒューマンエラー事故防止対策検討委員会というものを設置をさせていただきました。昨年の八月に中間の取りまとめをいただいたわけでございます。  その中で、やはり公共交通の交通事業者全体に安全マネジメント態勢の構築をしっかりやっていただく必要があると、またこれが経営トップから現場職員までこの安全マネジメントについて深く理解をする必要がある、こういう非常に重要な御指摘をちょうだいをいたしまして、これは単に鉄道とか航空に限らず、交通事業者においてこれはもう全く同様のことでございまして、事業者において経営トップから現場まで一丸となった安全管理態勢の構築を図ることの必要性、これが指摘をされたところでございます。  本法案におきまして様々な改正をお願いをしているわけでございますが、今回の改正運輸分野における安全対策の柱として、これはモードを問わず、経営トップから現場まで一丸となった安全管理態勢を構築させると、これが今回の改正一つの大きな柱でございまして、全モードの事業法を改正いたしまして、安全管理規程作成とまた安全統括管理者選任と、こうしたことを義務付けを共通して行うこととさしていただいたところでございます。  また、そもそも目的規定ですね、輸送の安全の確保という目的規定について明確に書かせていただく、また責務規定を追加をさせていただくということも全モードを対象に改正をお願いをしているところでございますし、また輸送の安全にかかわる情報については、これはやはり利用者、国民からしっかり監視をしていただくためにも、公表の義務付け、これもモード横断的に対象にさしていただいたところでございます。こうしたことを内容とする改正でございますので、各事業法を一括して改正をさせていただきたいというふうに考えております。
  46. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 大臣、こういうことじゃないでしょうか。これは、公共運輸事業に対しての一つの一般的な安全策、これはもう当然あります、まあある意味ではその共用部門というか。次に、航空なら航空鉄道なら鉄道、船舶なら船舶、これの専門分野があると思うんです。ですから、私は、今一般論としてのいわゆる安全対策というよりも、むしろそれぞれの専門分野での安全対策が最も重要であろうということでこの法案をお出されになったんじゃないでしょうか。だとすれば、もっとこれはその航空の部門、鉄道の部門、自動車運輸の部門、船舶の部門ということで、それぞれお出しになるのが国民のある意味では安全に対する負託にこたえるということではないでしょうか。
  47. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 公共交通の事業者において、事業者自らが安全管理体制をしっかりと構築をしていただくということが最も大事なことだというふうに思っております。  それは、各モードのそれぞれに当てはまることではなくて、全体にこれ当てはまることでございますので、そこのところを各事業法すべてにわたって一貫をさしていただいたということでございます。もちろん各モードごとの特性がございます。その特性に応じて鉄道法の改正、また航空法改正、これも当然しなければならないし、今回も鉄道法、航空法固有の安全対策について併せて所要の改正をお願いをしているところでございまして、是非御理解をお願いしたいと思っております。
  48. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 まあ理解されろと言えば理解するしかないのかなと思うけれども、私はちょっとこの法案提出に極めて、一括してということは極めて安易な感じがしてなりませんので、忠告をさしてもらっておきます。  次に、大臣からも度々言葉として出ているヒューマンエラーです。  私は、ヒューマンエラーというのはやっぱり現象面であって、何でそのヒューマンエラーが起きてしまうのかと。言葉は悪いですけれども、これ何か今法案それぞれやっていると、ハエたたきを一生懸命やっている。対症療法を一生懸命やっている。やっぱりハエとなるその元となるウジ虫、これをやっぱりたたいておかないとどんどんどんどんハエが出ちゃうんですね。  そういうふうなことを考えると、私は、この規制緩和が直接の影響でないということを再三答弁をいただいておりますけれども、規制緩和にも安全に対する規制緩和と経済的な規制緩和があります。安全に対する規制緩和もそれぞれ今まで出ておる。そして、経済的な規制緩和、これは結果的には安全に対する極めて不安を起こすことになるんです。総量のいわゆる需給のバランスがそれぞれの業界にあった。航空にもあったし、自動車、タクシー業界にもあった。そして、需給のバランスを取っていた。ところが、それが外された。これは経済的ないわゆる規制緩和というふうなことでしょう。  そうなってくると、極めて大変な過当競争が生まれます。過当競争が生まれると、やっぱりコストダウンになる。そうすると人員を削減する。そうすると労働条件が極めて劣悪になってくる。結果的に事故につながる状況が起きてしまうと。  私は、これはもう正に経済的な規制緩和が結果的には安全に極めて不安をもたらすというふうなことだと思いますけれども、これについての大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  49. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) その御質問はこれまでも何度もちょうだいをしておるところでございます。経済的規制が緩和をされて安全面での規制がおろそかになる、そういうことはあってはならないというふうに考えているところでございます。  逆に申し上げますと、それじゃ経済的規制がなされていたならば安全が十分に確保されているかというと、それも違うと思うんですね、私は。やはりそういう経済的な規制が緩和され競争が厳しくなる、競争が厳しくなっても、安全面だけの確保、規制はしっかり維持をしていく、また強化をしていくという姿勢が大切であると思っているところでございます。  先ほどもお話がございましたが、我々、航空であれ鉄道であれ、利用する側からしますと、やはり安全に輸送をしてもらうということが一番の我々利用者の側にとっては一番大事なところでございまして、そういう意味では私は、今回の法案改正の中にも入っておりますけれども、様々なことをもう情報公開をしっかりやっていくと、消費者、利用者にその航空会社が、その鉄道会社が安全面においてどういうことがあったのか、またどういう取組をしているのか、そういうことをしっかり利用者や国民に分かるようにして、利用者や国民がそうしたことを判断をしていけるような、そうしたことをすることが非常に大事ではないかというふうに思っているところでございます。
  50. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 済みません、時間が。
  51. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 済みません、じゃいったん終わらせていただきます。
  52. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 大臣一つそれ私は、もう大臣、大きな間違っていると思うよ。まあ一つ、じゃその経済的な規制緩和が、規制があれば事故がなくなるのかと、これは大変な私は間違いだ。公共交通、これはやっぱり安全ですからね。ですから、安全が最優先と言っているでしょう。この需給のバランスを外しただけでもう大変な競争原理が結果的になっているんです。それは、これは航空審議会の一九九八年のその答申なんです。これで、航空運送の安全確保を市場原理にゆだねることには限界があると書いてある。ですから、私は鉄道にしても、公共交通機関というのは無造作にどんどんどんどん市場競争に出すというふうなことは大変なやっぱり問題がある。それは人の命にかかわる、ほかの経済活動と違うと、こういうふうな観点というのは私は公共交通機関の中の行政指導としてやっぱり一つ感覚的に必要ではないかなと、そんな思いをします。  次に移らしていただきます。  このヒューマンエラーについて、航空局長鉄道局長にお伺いします。  これも再三にわたって昨年から質問をさしてもらっております。いろんな安全に対する規制緩和とさっきの経済的な規制緩和がありました。特に航空事業については、今の話の中でも言いましたけれども、経済的な規制緩和の問題、さらにまたその安全について九四年から特に〇一年までの間、全部で十六ぐらいの規制改革をしているんですね。これはどうしても私は事故につながる一つの大きな背景になっているんじゃないかなと思う。  その中の主なものというのは、九四年の定例の整備の海外委託を認める、さらに九七年の国による検査を民間に委任する検査導入、だったら国は何のためにこの行政をしているんだというふうなことになってくるんです。そして、二〇〇〇年の航空法改正、これはもう整備士の制度見直しとか機長の資格制度見直しとか、特にまた航空整備に関する業務管理の受委託の許可、要するに餓鬼請から孫請、それで海外に持っていったと、このようなことが私はもう大変な今度の事案を起こしている大きな背景になっていると思う。  これについての局長の御所見と、それからもう時間ありませんので、鉄道局長鉄道局長に先般の西日本JRのときも質問した。あのときも、もう極めて過密ダイヤになっているんです。この過密ダイヤが大きなやっぱりプレッシャーになっている。この辺についてどのような改善をしたのか。それから、安全対策について、その総延長距離は日本で二番目に長い割には安全対策がブービーかメーカーだったと、西日本JR。これに対してどのような改善策を取ったのか、この件について両局長にお尋ねしたいと思います。
  53. 岩崎貞二

    政府参考人岩崎貞二君) 先生指摘のように、安全について市場原理にゆだねるわけにはいかないと、これは我々もそう思っておりまして、安全に対する規制は、大臣の答弁と繰り返しになりますけれども、きっちりやっていかないとということでこれまでも進めてきたつもりでございますし、今後ともやっていきたいと思っております。  ただ、その安全に対する規制を一切見直さないということではございませんで、やっぱり航空機の性能は向上している、あるいは海外整備の問題なんかでも、諸外国での整備をしても十分な技術力がある。こうしたことになると、それは合理的な形の見直しというのは今までもやってきておりますし、これからもやっていかなきゃいかぬと思っております。  いずれにしろ、航空の安全に関する規制につきましては、国際標準でありますとか、どういう事故トラブルが起こっているかとか、そういうことをちゃんと見ながら適切な対応を取っていきたいと、このように思っておるところでございます。
  54. 梅田春実

    政府参考人梅田春実君) まずダイヤの話でございますが、先生指摘のとおり、福知山の事故が起きました際に、ダイヤが非常に厳しいと、それが運転士の心理状況に影響して事故の原因ではないかという御指摘を大分受けました。運転再開に当たりましては、事故の原因については現在事故調で調査中でございますけれども、御指摘を受けた点についてできることは直ちに改善するという姿勢で臨んでおります。  したがいまして、ダイヤにつきましても、御指摘があるような面があるとやはり運転面で利用者の方々から非常に不安に思われるというのは大変でございますから、運転再開に当たりましては余裕時分を持たせたというのは先ほど申し上げたとおりでございます。これは福知山線についての措置でございましたけれども、当時のJR西日本を含めまして全事業者につきまして、ゆとり時分を持たせるようにということで総点検をさせまして、それぞれのところについてもう一度チェックをしたところでございます。  そういう点を踏まえまして、今回、三月のダイヤ改正におきましては、停車時分、特に停車時分、それから列車折り返し時分、こういう点について一つ一つの駅について利用実態を調査した上で、そういう部分を中心にしながら余裕を持たせたダイヤ設定を行って、更に利用者の利便に供するとともにその安全性を高めたというふうに聞いているところでございます。  それからもう一点、その他の安全対策につきましては、安全性向上計画作成していただきまして、現在私ども、本社、支社をずっと監査をしてきております。その間、十一月には勧告等も出させていただきました。  御指摘にありましたような、安全投資の面で手抜きをやったんではないかというようなことを大分言われました。その点につきましては、安全性向上計画の中でATS—Pをできるだけ早期に装備していくということで、安全面での投資を中心にしながら設備投資を強化するというような策を取ってきて、現実に実行してきているところでございます。  また、人員の面等につきましても、従来の要員等の問題につきまして中で十分検討して、先般、人員面でも少しゆとりを持たせるべく新規採用の増に踏み切ったというふうに聞いておりまして、御指摘のような点につきましては、事故の原因がまだ明らかではありませんが、できることは早急に手を打ってまいりたいと考えております。
  55. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 十三分ということで時間になってしまいました。あとの問題はまた別の機会に質問させていただきますけれども。  いずれにしても、全体を見るにつけ、会社のやっぱり一つの安全に対するモラルというか、それは行政当局からも監督官庁からもよく言っていただきたいのは、やっぱりサービスの最前線というのは運転士であり、乗務員であり、オペレーターである。この話を聞かない限り、私は安全対策は功を奏しないと思うんです。そういうふうな意味合いから、私は安全対策法案と同時に、やっぱり風通しのいい会社、これをつくるような一つの慣行をきちっとそれぞれの運輸公共の会社に御指導していただきたいということを申し述べて、質問を終わらせていただきます。
  56. 山本香苗

    ○山本香苗君 公明党の山本香苗です。  まず、このたびの法案の審議に入るに当たりまして、北側大臣にお伺いいたします。  死者百七名、負傷者五百四十六名を出した、我が国の鉄道輸送の歴史の中でも未曾有の大事故となりましたJR福知山線列車脱線事故発生から間もなく一年がたとうとしております。昨日は、JR西日本では、その反省として新たな企業理念、また安全に向けた行動指針となる安全憲章というものを見直されたそうでございますが、決してこれらの言葉だけで終わってしまってはならないと思っております。  あの大事故から一年を迎えるに当たっての、北側国土交通大臣の率直なところの御所見をお伺いさせていただきたいと思います。
  57. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) あの昨年の四月二十五日、私もすぐさま現場に行かせていただきまして、本当にあの悲惨な事故状況につきましては今も、当然のことでございますけれども、強烈な印象を受け、また、もう二度とこうした事故は起こしてはならないということを決意をしたところでございます。その思いはもう今も何ら変わっていないところでございまして、しっかりと再発防止に向けての取組を、先ほど鉄道局長がるる説明をしておりましたが、しっかりと取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。  一つは、事故調査委員会が今事故原因の究明、やはりこの事故原因の究明をしっかりとやっていただくことが大事なことだと思っておりまして、これには少し時間が掛かりますが、この事故調査委員会事故原因の究明、そして再発防止、これをしっかりとお願いをしたいというふうに思っているところでございます。先般、先般じゃない、昨年ですね、経過報告と建議もちょうだいをいたしました。  この事故調査委員会の最終的な取りまとめまでにはまだ少し時間をちょうだいしないといけないわけでございますが、ただ、被害者の方々に、一体なぜこの事故が起こったのかということを、少しでもその事実関係を明らかにし、公表していくということは私は非常に大事なことだというふうに思っておりますので、できるだけ早い段階に第二回目の経過報告、中間報告を是非させていただきたいというふうに思っているところでございます。  再発防止に向けての様々な取組、ATSの緊急整備や運転士の資質向上検討等、また建議をちょうだいしました技術基準の見直し等々、今一生懸命取り組んでいるところでございますし、今回の本法案もお願いをしておりますのも、その一環としてお願いをしているところでございます。  JR西日本につきましては、今後とも、この安全性向上計画がしっかりと実施されているかどうか、私ども監視をこれからも続けていきたいというふうに思っております。
  58. 山本香苗

    ○山本香苗君 ただいま大臣の方から、事故調査委員会の調査につきましても御答弁いただきましたけれども、昨年の九月六日に経過報告と建議がなされたと。事故後四か月でおまとめになられたということは評価すべきであると思うんですが、先ほど大臣もおっしゃっていらっしゃったとおり、だれもが知りたいと思っているのに、何であのようにスピードを出し過ぎたんだろうかと、何でこのような事故が起きたんだろうかといったことがやっぱりまだ分からないわけであります。  事故調査委員会としての最終的な取りまとめにおきましては、事故の背景も含めて徹底した事故原因の究明とそれに応じた具体的な再発防止策の提言までぐっと踏み込んでいただきたいと思っております。また、この建議におきましては、今回の法改正の中にも入っておりますけれども、いわゆるサバイバルファクターといったものの側面というものが入っておりませんので、最終的な取りまとめに当たりましてはこういったところもきちっと入れていただきたいと。  そこで、三点まとめてお伺いしたいわけでございますが、現在、事故調としての調査がどこまで進んでいるのか、またその内容としてはどこまで踏み込んでいくのか、取りまとめの見通しにつきまして、今大臣の方から早い段階で二回目のという話がありましたけれども、最終的な取りまとめまでの間の経過報告という形でございますが、どの辺を考えていらっしゃるのか。三点まとめてお答えいただきたいと思います。
  59. 福本秀爾

    政府参考人福本秀爾君) お答えいたします。  航空鉄道事故調査委員会におきましては、JR福知山線列車脱線事故に係ります調査を鋭意進めておるところでございますが、多角的な事実調査と科学的な解析に基づき最終的な結論を得るというまでにはもう少しお時間をちょうだいする必要があるということでございまして、昨年九月、それまでの調査で判明いたしました事実につきまして、客観性の高い情報が比較的速やかに得られるというハード面の調査結果を中心といたしまして、その概要を報告をし、かつ公表さしていただいたところでございます。あわせて、これらについて再発防止対策等の検討が早急に必要であると考えられましたことから、事故調査の終了を待つことなく、航空鉄道事故調査委員会設置法第二十二条の規定に基づきまして、講ずべき施策四項目につきまして、大臣に対しまして建議をさしていただいたというところでございます。  事故調査におきましては、不確かな情報に基づく憶測でございましたりあるいは予断といったようなものを排しまして、客観的な事実情報に基づく科学的な解析を行うということが極めて重要でございます。本委員会におきましては、現在、関係者からの口述の聴取、あるいは各種記録の収集、分析、ヒューマンファクターを含めました事故の背景の調査、あるいはサバイバルファクター、いわゆる被害原因調査の観点など、多角的な観点から鋭意調査を進めておるところでございまして、また先月には、事故現場のレール上に残されておりました粉砕痕、いわゆる白い粉と呼んでおりますが、その解明のためのバラストの飛散に関する公開実験というようなことも行ったところでございます。  本委員会といたしましては、引き続き様々な観点から詳細な調査を進めまして、科学的かつ客観的な分析、検証を行った上で、事故の原因を究明し、できるだけ速やかに報告をできるよう今後とも全力で取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
  60. 山本香苗

    ○山本香苗君 本日の質疑は二十分いただいておりますけれども、次回もさせていただきますので、できるところまで、具体的に順次、これから法案の中身につきましてお伺いをさせていただきたいと思っております。  今回の法案目的のところに、一条のところに輸送の安全の確保という一文を入れていただいたと。法律に明記したということは非常にその意味合いというものは重いものだと思っております。しかし、書いただけでは安全というものは確保できないわけでございまして、その目的達成の手段の一つとして、先ほどから大臣もおっしゃった、一つポイントだとおっしゃっていらっしゃいました安全管理規程作成並びに届出を各事業者に義務付けるということだと思っております。  ただ、こういった安全管理規程のようなもの、そういった名前ではないにしろ、各事業者で何らかの形であるんじゃないかと、もう既に作っているようなものではないかと思っているんですが、その現状というものは一体どうなっているんでしょうか。  また、すべての事業者となりますと、JR西日本とかそういった大きなところから、また小さな、個人タクシーのような小さなところまで掛かってくるわけでございますけれども、二月二十八日の衆議院の本会議におきまして、大臣の方では、安全管理規程の内容については、事業規模、事業実態に応じて適切な安全管理を図ることができるようなものにしていきたいと御答弁をされております。具体的には、事業規模、事業実態に応じてどのような内容の差を設けることになるんでしょうか。特に、中小規模の事業者に対して何らかの配慮がなされるような形になるんでしょうか。
  61. 杉山篤史

    政府参考人杉山篤史君) ただいま安全管理規程作成の義務付けについてのお尋ねがございました。  この安全管理規程は、正に各事業会社の安全管理体制を構築する柱になるものでございますのできっちりと作っていただく必要があるということでございますが、一方におきまして、先生指摘がございましたように、運輸事業というのは、その事業の規模あるいはその経営の形態等、非常に様々でございます。したがいまして、そういった事業の実態を踏まえながらその安全管理規程を作っていただくということも、これまた非常に、実効性を持たしていくという意味で大変重要だと私ども考えております。  したがいまして、その内容につきまして記載していただく場合には、まずは、先生のお話にございましたように、既に既存の、会社の中でそういった安全管理に類する文書というものはできているところもかなりあるんじゃないかという具合に思っておりますので、そういった既存の文書を活用していくということも一つの手段だと思っておりますし、また、新たに作るところにつきましても、今お話がございましたように、事業の規模、事業の実態等に応じて適切な内容となるようにしていく必要があると思っております。  具体的には、やはりこれから安全管理規程を作っていただくわけでございますが、私どもといたしましても、その安全管理規程に係るガイドラインというようなもの、これを今、事業者それから有識者が集まっていただきまして、そのガイドラインの作成検討会を進めているところでございます。それによりまして、かなり事業者の、あるいは有識者の考えも反映されましたようなガイドラインができていくんではないかと思っております。  それから、中小事業者に対する配慮でございますが、これも非常に重要だと思っております。  中小事業者につきましては、ガイドラインに加えまして、何らかのやはりその事業のモードに応じましたような手引書等の作成も必要だと思っておりますし、さらには、運輸事業者を対象といたしました講習会等々も開催することを私ども考えておりまして、そういったような形でこの安全管理規程という新しい制度の円滑な導入のための環境整備というものに努力をしてまいりたいと思っている次第でございます。
  62. 山本香苗

    ○山本香苗君 安全管理というものは事業者の自主的な取組ではありますけれども、だから事業者はきちっとやんなくちゃいけない、第一義的には事業者がきちんとやらなくてはいけないわけではありますが、今回法律できちんと作ることを義務付けるということについては、義務付けた限りは、国がちゃんと、きちんとそれが継続的になされている、紙に書いただけじゃないと、そういうものである形をきちっと担保していく、チェックしていくような体制が必要になってくるんだと思います。  この点につきましては、衆議院での議論の中でも、本法案の施行に合わせて事業者の安全管理体制の適切さの評価を行う安全マネジメント評価を実施するというふうに御答弁、統括官されていらっしゃいますけれども、そのような評価がきちんと行える体制は本当に整っているのだろうか、作ったはいいけれどもチェックする体制が何かお粗末だということではないんだろうかと大変心配しております。  衆議院の参考人質疑においても、参考人の方から安全監視体制の充実ということが今回大きくうたわれておりますと、これは非常にすばらしい、まあ体制の充実、非常にすばらしいことだと思います、しかし、若干危惧いたしますのは、果たしてそれに見合うような人材がどこまで十分に確保できるのだろうかということであります、というふうにおっしゃられておりました。  体制として、人的なところ、また専門性のところ、そういった面から本当に十分チェック体制としてできているのかどうか、この点につきまして統括官にお伺いします。
  63. 杉山篤史

    政府参考人杉山篤史君) 先生の御指摘ございましたように、この安全マネジメント態勢というものをまず一義的には事業者がきちっとつくっていただくわけでございますが、それをやはり維持継続し、更には向上させていくという意味では、外部からのチェックというものは非常に重要な要素になってくるだろうと私どもも思っております。  そのために、この法案に基づく運輸事業者が構築いたします安全管理体制の評価運輸安全マネジメント評価でございますが、この実施のための体制といたしまして、専門的な知見を一か所に効果的に蓄積することによりまして、モード横断的に、効果的、効率的な評価の実施を図ることが私ども重要だと考えております。このため、来年度でございますが、大臣官房に、仮称でございますが、運輸安全政策審議官というものをヘッドといたします専任の安全監視組織といたしまして二十七名の体制の新組織を設置いたしまして、従前から実施しております保安監査とも併せ、適切な連携を図りながら、この運輸安全マネジメント評価を実施してまいりたいと思っておる次第でございます。  今申し上げましたように、この二十七名の体制ということでまずスタートをさせていただきたいと思いますが、御指摘にもございましたように、やはり非常に専門性も必要とするものだと私ども考えております。したがいまして、当然に、まずスタートの段階では十分な研修をいたしますと同時に、例えば、できるだけ私どもの職員だけではなく、例えば弁護士さんでございますとか、外部の方のいろんな知識も導入しながら、できれば体制を組めればという具合なことも考えているところでございます。
  64. 山本香苗

    ○山本香苗君 二十七人ということなんですけれども、本当にそれで大丈夫なのかなと思うところもあるわけでございますが、正に今、中だけで集めていくのは大変難しいという話で、できれば外部の方も入っていただきたいと。具体的に今弁護士さんという話でございましたけれども、その外部の方というのはほかにはどういう方を想定されていらっしゃるんでしょうか。
  65. 杉山篤史

    政府参考人杉山篤史君) 外部の方は、いろんなケースが考えられるわけでございますが、実はこの運輸安全マネジメントというのは、システムといたしましては既存の例えば制度で申し上げますとISOという制度がございまして、そのISOの制度を活用するような部分もございますので、したがいまして、例えば、直ちにということはなかなか難しいかと思いますが、そういったISOの専門的な知識を有する方でございますとか、あるいは企業のいろんな財務等も分かるような方等々も幅広くできれば考えていきたいと思っているところでございますが、他方でなかなかそういう人が、今いろいろ探しているところでございますが、これからちょっとそういった方に広げるには少し時間が掛かろうかと思っておりますが、将来の問題といたしましてできるだけ幅広い方にも参加できるような努力をしていきたいと思っております。
  66. 山本香苗

    ○山本香苗君 ある意味養成という部分もこれからしっかりやっていかなくてはいけない部分ではないかと思うわけでございますけれども、この安全マネジメント評価というもの、これ国がするわけでございますけれども、この後の扱いというのはどういう形になるんでしょうか。もちろんこれは公表されるという形になるんですか。
  67. 杉山篤史

    政府参考人杉山篤史君) 安全マネジメント評価につきましては、個々の事業者にいわゆる監査という形で入るわけでございまして、その監査の結果を踏まえましてある一定評価をするということになろうかと思いますが、その個々の監査の評価というものをどう扱うかということになろうかと思いますが、これにつきましては、できるだけ私どもデータを蓄積をいたしまして、そのデータを蓄積しましたデータの中でいろいろ共通的にいろんな課題も出てくるかと思います。そういったものにつきまして、何らかの形で公表できるような方法を考えていきたいと思っております。
  68. 山本香苗

    ○山本香苗君 いろいろとまだまだ言いたいことがあるんですけれども、続きは後日の質問に譲りたいと思います。  ありがとうございました。
  69. 小林美恵子

    小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。  私は今日、法案改正一つになっております事故調査委員会について質問させていただきます。  先ほどもございましたけれども、JR福知山線脱線事故から間もなく一年になります。先日、私は被害者ネットワークの方にお会いをしました。御遺族や被害者の思いは、四月二十五日で時が止まっている、なぜ家族が死ななければならなかったのか、何両目のどこに乗っていたのか、どういう経過や理由で大事故が起きたのか知りたいのだと。私は、この被害者の思いといいますのは本当に当然だと思いますけど、まず、大臣はこの思い、どのようにお受け止めになられるでしょうか。
  70. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 御遺族またけがをされた方々お一人お一人、私は大変な状況にいらっしゃるというふうに思っております。今委員がおっしゃったように、なぜと、なぜあの事故になってしまったのか、その事故原因をやはり明らかにしていくということが非常に大事だと思っております。今、鋭意事故調査委員会が調査をしているところでございますが、できるだけ早くその事故原因を取りまとめていただいて御報告をしなければならないというふうに思っております。
  71. 小林美恵子

    小林美恵子君 被害者の皆さんは、あの事故の原因が本当に徹底的に究明されて、それで再発防止策が明らかにされることが事故の打撃から立ち直る第一歩だとおっしゃっておられます。私、そうした役割を担う事故調査委員会の責務というのは大変重大だというふうに思います。  そこで質問なんですけど、今回の改正案で、事故調査委員会目的、所掌事務に被害の原因究明と被害の軽減が明記をされました。具体的にはどう変わるのか、御説明いただけますか。
  72. 福本秀爾

    政府参考人福本秀爾君) お答えいたします。  昨今、航空鉄道分野におきまして事故トラブルが相次いで発生をいたしてございまして、公共交通システムそのものへの国民の信頼が揺らぎかねない状況となってございます。特に、JR福知山線列車脱線事故におきましては、近年例を見ない多数の人的な被害が生じたことから、当委員会といたしましても、事故の背後要因あるいは被害の発生拡大原因というものも視野に入れまして全容の早期解明に努めておるところでございます。  今後、公共交通機関の更なる高速化あるいは大量輸送化ということが見込まれるわけでございますが、一たび事故発生いたしますれば甚大な被害が発生をいたします危険性がますます高まっていくと、こういう具合に予想がされるわけでございます。また、依然として後を絶たないヒューマンエラーの問題でございましたり、自然災害等に起因する事故というものにつきましても、従来の予防型の対策のみでは限界があるということも事実ではないかと思っております。  このたび、事故の原因究明及び再発防止に加えまして、事故に伴う被害の発生あるいは拡大原因というものも究明をいたしまして、万が一事故発生いたしました場合の被害を可能な限り軽減をさしていただくというための提言を行うということも当委員会に対する大きな国民の期待ではないかという具合に認識をいたしまして、今般このような改正を提案をさしていただいたということでございます。  具体的には、やはり航空機でございましたり鉄道車両でございましたり、そういったものの耐衝撃性、大きなものにぶつかったときの衝撃をいかに吸収をするか、和らげるか。あるいは、耐火性、火が出た場合の燃えにくくするといったこと。あるいは、座席でございましたりシートベルトでございましたり、そういう車内設備の安全性、被害を拡大させないための安全性と、そういったものでございます。あるいは、事故直後の乗務員の救命救急活動が適切であったか、もっとこういうことをしておればもっと被害が少なくて済んだんではないかと、こういったことについても調査を行い、必要な提言を行ってまいりたいと、こういう具合に考えておるところでございます。
  73. 小林美恵子

    小林美恵子君 具体的に、では少しお聞きしたいと思うんですけれども、昨年の九月に事故調査委員会が中間報告を出されました。それで、被害者ネットの皆さんの、大臣にも、調査委員会にも要請が出されていると思うんですけれども。これが一つの文書なんですけれども、そこにはこういうふうに書いてあります。  脱線転覆のメカニズムが十二分に解明されることは当然ですが、脱線転覆に至る諸要因や、脱線を防止することができなかった要因、さらには、被害を少しでも減少させることができたのではないかという広い視点からの事故の原因が解明されることを切望していると。具体的に、余裕のない運行ダイヤ定時運行の強要と事故との関係、さらに、福知山線で速度を監視するATSの設置が遅れた理由、運転士の異常な運転を引き起こした人間的、心理的要因とその人間的要因に影響を与えた組織的な要因、日勤教育の問題も含むということです。さらに、人的被害を軽減し、生き残る可能性を探るという視点から、サバイバルアスペクツ、犠牲者原因要因ですね、こういうことも含めて是非解明されるべきだというふうにありますけれども、先ほどの事務局長の御答弁からいいましても、この件についても事故調査委員会として調査と報告の対象にするということで理解をしてよろしいでしょうか。
  74. 福本秀爾

    政府参考人福本秀爾君) お答えいたします。  JR福知山線列車脱線事故につきましては、昨年九月に経過報告を行ったところでございまして、その直後でございますか、委員指摘の四・二五ネットワークから、事故調査委員会の経過報告に対する声明という文書を当委員会にちょうだいをいたしたことは十分承知をいたしてございます。  事故調査におきましては、不確かな情報に基づく憶測でございましたり、あるいは予断といったようなものを排しまして、客観的な事実情報に基づく科学的な解析を行うということが重要でございまして、本委員会におきましては、関係者からの口述聴取と、あるいは各種記録の収集、分析、それからヒューマンファクターも含めた事故の背景あるいはサバイバルファクターの観点など、多角的な観点から鋭意調査を進めておるところでございまして、ほぼ四・二五ネットワークの方々がおっしゃっておることは網羅がされておるんではないかと認識をいたしてございます。  このような多角的な調査を総合的に進めまして、できるだけ速やかにその調査結果をまとめ、御報告をいたしたいと考えて全力で取り組んでおるところでございます。
  75. 小林美恵子

    小林美恵子君 要望については網羅をされて、調査の対象にされているという御答弁でございました。私は大変重要な点だというふうに思います。  そこで、大臣に確認をさせていただきたいと思いますけれども、今の事務局長の御答弁、福知山線脱線事故に関してお答えをいただきましたけれども、今回の改正に伴いまして、その福知山線脱線事故に限らず、様々な事故において事故原因のメカニズムにとどまらない事故の背後要因も含めて、更に犠牲者の軽減のための原因究明も行うということで、事故調査委員会在り方はそういうふうになるということで理解をしていいでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
  76. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 先ほど事故調査委員会事務局長から答弁したとおりでございます。  今回の改正につきましては、被害原因に関する調査提言機能も強化する、さらには背後要因に関する調査権限も明確化するということ等によりまして、事故調査委員会事故調査が、単にその物理的な、また技術的な側面に限らず、人的な側面についてもしっかりと多角的に調査をしていただけるようにしていきたいと、そういう観点からの法改正でございます。  今後、ハード面、ソフト面にわたる総合的な調査をしっかりとしていただきたいというふうに思っております。
  77. 小林美恵子

    小林美恵子君 私、今後の事故調査委員会在り方として、もう一つ、被害者支援も必要ではないかというふうに思っております。  私がお会いした御遺族の方は、本当に涙ぐみながら、時がたてばたつほどつらさが増しますとおっしゃっていました。正に御遺族や被害者への心のケアというのも重要だと思います。  それで、この点、衆議院での参考人質疑で、鉄道安全推進委員会の、TASKの佐藤弁護士が、アメリカの国家運輸安全委員会の家族支援局が事故調査に関する情報提供、精神的ケアなど、被害者の支援が行われていることを紹介をして、事故調の所掌事務に被害者支援の追加を指摘をされました。TASKの方は、大変何といいますか、今回の政府がお出しになりましたこの法案にかかわりまして、運輸の安全ということで様々な提言も出されて、自らこういう法案にしたらどうかという提言もされておりましたけれども、その中に、事故調の在り方として家族支援という項目がございまして、アメリカでの例を出されておりましたけれども、アメリカでは、事故調査委員会委員長は精神的外傷のケアのための非営利組織を指定し、事故に巻き込まれた御家族の精神的ケアと援助を第一義的責任を負うというふうに例に出されておりました。  この点を、そのまま日本に当てはまるかどうかという点については議論が要るかと思いますけれども、私はせっかく専門家の皆さんがこういう提案もされているわけですから、こういうことも参考にして、日本においても被害者支援を事故調の役割に追加することも検討することが必要ではないかというふうに思いますが、この点、大臣、いかがでしょうか。
  78. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 精神的なケアを始め、被害者の方々に対する支援というのが重要であるというのはもう全くそのとおりでございまして、これはしっかりと、事業者はもちろんでございますけれども、行政としてもよく連携を取って対応をしなければならないというふうに思っております。  ただ、航空鉄道事故調査委員会でこうした被害者支援の機能を持たせるということは、今やっているその調査委員会の役割、事実関係を解明し原因を究明していく、そして再発防止策を提言していくと、こうした事故調の機能を考えますと、被害者の支援業務を追加することがふさわしいかどうかというのは、これはよく検討しなければならないというふうに思っております。
  79. 小林美恵子

    小林美恵子君 検討しなければならないというふうにおっしゃっておられますけれども、そのことも言って、視野に入れて今後考えていくということはあるというふうに理解していいんでしょうか。
  80. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) むしろ、他の行政機能として果たさなきゃいけないというふうに思っているんです。事故調査委員会としては、むしろこれはもう客観的に科学的に事実関係を解明して事故原因を究明していくというところが一番の大きな役割でございますので、そこに被害者支援機能を持たせることは、むしろ私は慎重に考えないといけないのではないかというふうに思っているんです。
  81. 小林美恵子

    小林美恵子君 私は検討をしていただきたいというふうに思いますけれども。  先ほど、被害者の支援について行政や、それから鉄道事業所等々の問題も大臣指摘がございましたけど、そこで私は、被害者支援に経済的支援も大変今重要な点だというふうに思うんですけど、そこでちょっと一つお聞きしたいと思います。  私がお聞きをしました被害者の方は、事故で心肺停止となりまして、昨年七月まで意識不明の状態だったそうです。御家族も、看病と精神的負担で仕事を休職し、無収入になったと。JR西日本からは、いわゆる賠償の仮払いとして生活支援を受給されているそうなんですけど、御主人が意識を回復して途端に生活支援を打ち切られたというんですね。意識は回復しても仕事には行けません。御家族も今なお休職中で、子供さんも二人抱えておられます。本当に必死の生活です。  私はこういうことをお聞きしてきたんですけれども、これは一例でございますけれども、私、この事故に伴って被害者の方々や御遺族の方がどういう実情かということは、大臣は御存じかどうか、お伺いしたいと思います。
  82. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 私が被害者の方々の個々の事情を知っているかと聞かれますと、それは十分に掌握していないというふうにお答えしなければならないと思います。  ただ、JR西日本に対しましては、ともかく被害者の方々には誠実かつ万全な対応をしてもらいたいということはもう事故直後から一貫して言い続けておりまして、また被害者の方々の状況、事情というのも、これはもう様々だというふうに思っております。そうした事情に応じてしっかりと対応するように、JR西日本に対しましては今後とも指導していきたいというふうに思っております。
  83. 小林美恵子

    小林美恵子君 JR西日本に対して今後ともしっかりと指導していきたいという答弁をいただきました。  是非、御遺族や被害者の皆さんの思いというのは大変なものが私はあるというふうに思いますので、酌み取っていただいて、しっかりと対応していただきたいということを強調して質問を終わります。  ありがとうございました。
  84. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 社民党の渕上です。  私は、さきの委員会において、多発をいたしました事故トラブルについての認識、原因、対策についてお伺いをいたしました。今日は、相次ぐ事故トラブル発生をしたことに対する監督庁としての責任をどのように認識されているのか、大臣にお伺いいたします。
  85. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 昨年の福知山線事故、また航空事業者におけるトラブルが続いていること、国民の皆様の、利用者の皆様のこうした公共交通に対する信頼が大きく揺らいでいることは、もう極めて遺憾というふうに言わざるを得ないと考えております。しっかりとこの公共交通に対する信頼を取り戻すために、やはり再発防止に向けての取組をしっかりとやっていくことが大切だというふうに考えております。  今回、このような法案をお願いをさしていただいておるのもその一つでございまして、公共交通の安全確保、これがもう何といっても公共交通にとりましては一番大事なことでございますので、しっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  86. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 しっかり取り組んでいただくことを要望をした上で、どうかその責任体制についてもはっきり各所明確にされるようお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、交通運輸において発生をしております事故トラブル発生について、国土交通省は運輸の安全の重要性についてどのように認識されているのか、お伺いいたします。
  87. 杉山篤史

    政府参考人杉山篤史君) 公共交通機関は、言うまでもなく我が国の社会経済を支える基盤でございまして、国民生活にとって欠かせない重要な存在でございます。  したがいまして、公共交通機関の安全かつ円滑な運行は国民生活にとって極めて重要なものと認識しておりまして、とりわけその安全は、公共交通機関の最大の使命であるとともに最も基本的なサービスであり、国民の公共交通に対する信頼の根本を成すものであると認識しているところでございます。
  88. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 国土交通省は、運輸の安全を確保するために法律や規制それから予算処置を含めてどのような取組をこの間されてきたのか、また、これらの取組で十分安全が担保されているかどうか、お伺いいたします。
  89. 杉山篤史

    政府参考人杉山篤史君) 国土交通省におきましては、先ほど来から申し上げておりますように、公共交通機関に係る最大の使命は輸送の安全の確保であるという認識に立ちまして、運輸事業者の事業運営に関して必要な安全基準の設定やその見直し、それから基準適合性の検査や事業開始後の保安監査、それから必要に応じた事業改善命令の発出、さらには、事故が起こった場合の事故原因の究明とそれに基づく再発防止策の実施等、必要な施策を一体として講ずることによりまして総合的に安全を担保してまいったところでございます。  また、近年の運輸事業者を取り巻く環境の変化や事故等の態様に対応いたしまして、保安監査等の実施体制の強化を通じた事後チェックの充実強化等にも努めてまいったところでございます。
  90. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 これまで、発生をします事故の分析を踏まえて安全に対する取組をどのようにされたのか、お伺いいたします。
  91. 杉山篤史

    政府参考人杉山篤史君) 昨年の四月に発生いたしましたJR西日本の福知山線における脱線事故あるいは航空分野における各種トラブル等、事故トラブルが多発したわけでございますが、まずこれらの原因につきましては、徹底的に背景や原因を究明いたしまして再発防止策を講じていくことが必要であると考えております。  また、これらの公共交通機関に係る事故トラブルの背景といたしましてヒューマンエラーが関係すると見られていることから、先ほど来から申し上げておりますように、従来の監督行政の延長ではなく、運輸事業者に対する新たな監視、監督の手法につきまして、省内に外部の有識者を含めました公共交通に係るヒューマンエラー事故防止対策検討委員会を設置して検討を進めてまいったところでございます。  この委員会が昨年八月に行った中間取りまとめにおきましては、公共交通の安全を確保するためには、事業者における安全意識の浸透、安全風土の構築のための具体的な取組を強化する必要があるということ、そのため、国の果たすべき役割といたしまして、事業者においてトップから現場まで一丸となった安全管理のための体制の構築を図るということ、また、その安全管理の体制について国が監視をする仕組み、安全マネジメント評価でございますが、これを導入することが提言されたところでございます。  今回、本法案におきまして、この趣旨に沿いまして事業者安全管理規程作成の義務付け等を行い、経営トップの主導の下、現場まで一丸となった安全管理体制を構築させることとしております。  また、更なる対策といたしまして、鉄道の運転士の資質の向上あるいは速度制限装置等に係る技術基準、航空交通管制に係るヒューマンエラー対策等につきましても検討を進め、公共交通機関の総合的な安全対策を推進してまいる所存でございます。
  92. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 今回提出をされています法律案により、今後重大事故発生することのないよう運輸の安全が確保されるとお考えになっているでしょうかどうか。  また、法律案が、どのような点が安全確保に効果があるとお考えになるんでしょうか。お伺いいたします。
  93. 杉山篤史

    政府参考人杉山篤史君) 本法案におきましては、主な内容といたしましては、一つ安全管理規程作成安全統括管理者選任の義務付け等を通じた運輸事業者の安全管理体制の構築、それから、国及び事業者における輸送の安全にかかわる情報の公表の義務付け、それから踏切道改良促進法の期限の延長等の取組の継続強化、更には航空鉄道事故調査委員会、海難審判庁に係る事故調査機能の強化等を内容とするものでございます。  特に、安全管理規程作成の義務付け等につきましては、経営トップの主導の下、現場まで一丸となった安全管理体制の構築が図られ、これによって事業者全体に安全意識が浸透いたしまして、ヒューマンエラーにかかわる事故防止につながるものと考えているところでございます。  また、これらによりまして、運輸事業者における輸送の安全を確保するための取組の強化が図られますとともに、あわせまして鉄道事故の約半数を占める踏切道の安全性向上、交通の円滑化や運輸の安全に関する国の組織体制の強化が図られまして、運輸安全性向上につながるものと考えているところでございます。
  94. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 先ほども議論がありましたけれども、私はやはり運輸事業における規制緩和が職場における合理化や効率化を進めた結果、事故トラブル発生を招いているのではないかというふうに考えておりますけれども、その見解はいかがでしょうか。  また、国土交通省は規制緩和と安全監視のバランスをどのように考えているのか、お伺いいたします。
  95. 杉山篤史

    政府参考人杉山篤史君) この規制緩和と安全の問題につきましても何度か御質問が出ているところでございます。  規制緩和につきましては、社会経済情勢等の変化に的確に対応いたしまして、国民生活の質を向上させ、あるいは経済の活性化を図るという観点から、絶えず経済的規制などの見直しを行うことは、これは必要であると考えているところでございます。  一方で、公共交通機関の安全は、これも繰り返し申し上げてございますが、最も基本的なサービスであり、国民の公共交通に対する信頼の根本を成すものであるということから、国といたしましては、民間の行う事業や民間事業者に対しまして適切な規制を行うことによりまして必要な安全等の確保を図ってきているところでございます。  従来より、社会的規制につきましては、科学技術の進歩や社会情勢の変化に的確に対応して不断に見直しを行うことによりまして安全等の確保に努めてきたところでありますが、今回のような事故トラブルを踏まえまして、今般、公共交通事業者に対しまして輸送の安全を確保するための取組を強化させるために安全マネジメント評価の実施という新たな施策を行ってまいりたいと考えている次第でございます。  いずれにいたしましても、公共交通に対する国民の信頼を回復すべく、公共交通の安全の確保に万全を期してまいりたいと思っております。
  96. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 朝も同僚議員の方から質問があっておりましたけれども、今日もまたマスコミに載っているような状況。したがいまして、改めて陸海空における安全確保の問題について、大臣の決意といいましょうか、私何回も聞いておりますが、良くなってないというところは一体どこに問題があるのかも含めて、どんな決意、何回同じような決意をされてもなくならないというところが事故かなというふうにも思わないわけでもないんですが、改めて大臣、最近の事故、監査だとか立入検査だとか行った以降、どのように安全に対して認識されているのかお伺いをいたして質問を終わります。
  97. 北側一雄

    国務大臣北側一雄君) 航空の方に関する御質問だということだととらえてお答えしたいと思うんですけれどもトラブルは、もちろんこれはあってはならないわけでございます。とともに、トラブルが起こる要因というのが、やっぱり人為的な不注意だとかミスの場合が多いわけですね。更に言いますと、人為的な失念だとかミスというのは、私はこれ、じゃなくなるのかというと、それはなくならないんだと思うんですね。これからも、やはりそういう人為的なミスというのはこれからもあるんだろうと。それを絶対に事故につなげていかないということが大切で、そうしたミスがあっても事故につながらないようなシステム、仕組みというものを交通事業者の方でしっかりとつくっていただく、また私どももしっかりと監視をしていくということが大切、肝要なのではないかというふうに思っているところでございます。  また、先ほどの規制緩和の問題に関連するかもしれませんが、これ、時代がたてばたつほど技術というのは高度化します。技術が高度化すればするほどリスクというのは大きくなりますよね。私は、やはりこういう技術がどんどん高度化して、どんどん便利になる速くなるというふうな時代にますますリスクが大きくなるわけだから、安全面に関する規制、また監視体制、そうしたものをしっかり強化していかないといけないというふうに考えているところでございまして、昨年来大きな事故、連続するトラブル、多発をしている状況でございます、しっかりと監視監督体制を強化し、事故が二度と起こらないように再発防止に向けて取組をしてまいる決意でございます。
  98. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  99. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) ただいまから国土交通委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、運輸安全性向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授家田仁君、弁護士佐藤潤太君及び筑波大学大学院システム情報工学研究科教授リスク工学専攻長稲垣敏之君、以上三名の参考人に御出席をいただき、御意見を聴取し、質疑を行います。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変御多忙のところを本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  参考人の方々から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  それでは、本日の議事の進め方について申し上げます。  まず、家田参考人佐藤参考人稲垣参考人の順序でお一人十五分ずつ御意見をお述べいただき、その後、各委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  参考人の方々の御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず家田参考人にお願いいたします。家田参考人
  100. 家田仁

    参考人家田仁君) 今御紹介いただきました東京大学の家田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  私は、大学で交通、都市、国土、そういった分野を担当してございますが、交通運輸の安全の問題につきましては、五年前の地下鉄日比谷線の脱線事故、あるいは一昨年の新潟県中越地震におきまして調査や対策策定などのお手伝いをさせていただいたりしております。また、今回の議案とも関連の深い鉄道の技術基準検討委員会委員長を仰せ付かっておるところでございます。お求めがございましたので、このたびの法律改正に関しまして、今申し上げたような経験を踏まえまして意見を述べさせていただきます。よろしくお願いいたします。  なお、私の今回の意見陳述の内容に比較的近い内容の書いたものが、比較的最近出た、つい先ごろ出たものがございましたので、御参考までに配付させていただきました。後ほどごらんいただければ幸いでございます。  それでは、お話し申し上げます。  まず、昨今の事故状況などをかんがみますと、今回の一連の法律改正は、全般として見ますと極めて時宜にかなっており、早期の成立と施行が望まれると考えております。  ここでは、法改正の内容につきまして私が特に着目しております点、これは三点ございますけれども、それについて順に意見を述べさせていただこうと存じます。  まず、改正の第一のポイントは、鉄道事業法や道路運送法など運輸の基本を規定する法律群の中で、法律目的として輸送の安全の確保というものがはっきり明記されて、また運輸業を行う事業者に対しまして安全向上努力の責務が明確にうたわれた点でございます。  第二の改正ポイントと私が考えますものは、事業者におきまして安全管理規程を定めるということや、あるいは経営トップと別個の独立した安全統括管理者を置いて安全に関する統括的なマネジメントを行う体制、これを取ることが義務付けられた点でございます。  まず後者につきましては、申し上げますと、ISO、国際標準化機構がここまで長年掛けて進めてきました安全管理あるいは環境管理あるいはプロジェクト管理、労働安全衛生管理などで開発さてきた基本的なマネジメントの思想が今回の改正にも系統的に採用されている点でございます。これは国際的な流れと極めて整合的でありますことはもとより、運輸交通以外の分野、例えば電力であるとか食料であるとか、その他もろもろの安全にかかわる分野とも連動性が高いつくりとなってございます。  こうした発想は、これまでにも進められてきた技術基準の改定とも軌を一にして、事業者の自主的な改善活動を基本に置きつつも、それを国等がサポートやチェックするという総合的な体制が取られているように感じます。  これら二つのポイントは極めて重要な改善点であると認識しておりますけれども、我が国の運輸交通分野において従来全くなかったものかというと、決してそんなことはございません。我が国の技術文化の中にあります安全第一、これは国際的にも使われる用語ですが、これは、こういうコンセプトはむしろ戦後の事故多発期を乗り切って、そしてその後の我が国の高度成長期を推進した技術分野が大事にしてきた極めて重要な、しかも不可欠な歯車であったと私は考えます。  いろんなところにそういうものの痕跡はあるわけですが、例えば現在のJRの前身であります日本国有鉄道を見ますと、安全綱領と呼ばれる、新入社員がまず初めに覚えて、そしてまた毎日朝職員全員が唱える憲法のようなものが古くから定められておりましたけれども、先にこれを紹介させていただきます。少々細部は違っているかもしれませんけれども、大体次のような内容でございます。  まず第一は、安全は、輸送業務最大の使命であると。第二は、安全の確保は、規程の遵守及び職務の厳正から始まり、不断の努力によって築き上げられる。第三は、確認の励行と連絡の徹底は、安全確保の基本である。第四は、安全の確保のためには、職責を超えて一致協力しなくてはならない。第五は、疑わしいときは、手落ちなく考えて、最も安全と認められる道を採らねばならないと。こういう五項目でございます。  第一項に挙げられております、安全は輸送業務最大の使命であるというのは、先ほど申し上げた第一のポイントそのものでございます。今回の法律改定でも、目的の欄にほとんどその用語で入っているわけでございます。また、第二項以降にある不断の努力とか確認の励行と連絡の徹底、職責を超えてという辺りは、それぞれ今の用語で言いますと、逐次改善あるいはスパイラルアップという考え方やプラン・ドゥー・チェック・アクションの発想、あるいは組織を超えた連携の必要などを述べているものでありますし、また最後にありました、最も安全と認められる道という辺りはリスク対応への基本姿勢を述べているもので、現在もなお安全マネジメントの要諦をついていると思います。つまり、第二のポイントとして申し上げたISOのマネジメント思想を先取りしたものになっているわけです。  では、今回、法を改正するということはどういう意義を持つのかについて申し述べたいと思います。それは、こうした基本思想を法律にきちんと明記するという点にあると考えます。  と申しますのは、このような安全性改善の発想が何も法律に書いていなくとも、従来の日本経済と日本の人口が拡張基調、拡大基調にあった時代には、安全に対する必要な費用やあるいは投資を拡大する経営の中で十分に吸収することができたわけであります。しかしながら、その後の低成長、それから今後予想される人口減少という中では状況は大幅に変化しつつあるように思います。そういう状況下では、運輸事業者においても財務的な意味での経費節減が最重視されて、短期的な会計的視点からの狭義の経営マネジメントに偏重する懸念がないとは言えません。さらにまた、我が国の官民の組織においては、少々理工系の人材を軽視する傾向もあります。そういったことも考慮しますと、今後必要な維持更新や安全性改善投資が後回しにされて、長期的に見て思いもよらぬ事態が引き起こされる懸念も皆無とは言えません。  実際、一九八〇年代のアメリカ合衆国を見ますと、短期的な経営のみに目が行って、維持更新などが看過された結果、あちこちで橋梁が落ちるというような重大な安全上の問題が生じました。後にアメリカ・イン・ルーイン、すなわち荒廃するアメリカと言われたこの苦い経験からアメリカが回復するためには、その後非常に大きな努力を払わなければならなかったことは御存じのとおりでございます。  というような実例を考えますと、運輸交通事業におきましては、我が国で従来からはぐくまれてきた安全第一という思想を堅持し、今後の社会情勢の中でも科学的かつ正直な技術的態度に立って、毅然とした安全管理が行われる経営体制を確実に担保するために、今回のような法改正が極めて重要なものと考えるところであります。  今回の意見陳述で私が最も強調させていただきたいのは、これから申し上げます法改正の第三の重要なポイントでございます。これは、安全にかかわる情報運輸事業者や政府が整理して一般に公表するという点でございます。この点につきましては、第一、第二の点と比べますと、我が国は少々遅れていると言わざるを得ません。  先ほどお示しした日本国有鉄道の安全綱領についても、その中には、利用者とか国民が安全性の維持向上に関して果たす役割というような発想は全く見当たらないわけです。  しかし、運輸交通の安全問題や地震、津波、洪水などの防災問題におきましては、利用者や国民の果たす役割は極めて大きいものです。安全性に対する利用者の意識が常に高い状態に維持されているならば、利用者はより安全性の高い選択肢を選ぶことによってその意思を事業者に伝えることができますし、利用者の声が束になって形成されたところの社会的な圧力が事業者などに作用して、CSR活動、すなわち事業者の社会的責任を介して安全性向上に資することもできます。また、利用者や国民の安全意識が高ければ、その支払意思を通じて安全投資を促進することもできます。  より広い視野に立ちますと、安全や技術、あるいは自然力と人間の行為との関係につきまして、利用者や国民一般がどのような見識を持つかによって、その国の技術社会システムのありようも大きく異なったものとなるわけであります。  ところが、現実はというと、利用者も国民も、そしてマスコミも、何か事故トラブルが起こった直後こそ安全に関して大きな関心を払いますが、その後徐々に関心が薄れてしまい、ともすると安全なんかにお金掛ける必要はないだろうというふうな風潮に短絡的に考えがちです。実際、御巣鷹山で墜落して五百人以上の方が亡くなったジャンボ機の事故のケースでも、そのしばらく後は航空利用率が低下しましたが、すぐに回復してしまいました。阪神大震災でも同じようなことが起こりました。  水に流すという言葉に代表される我が国の国民性もあってか、頻度の低い鉄道事故航空事故、あるいは大規模災害に対する国民の意識を高い水準に保つことは決して簡単ではありません。そして、それが十分に維持できない限り、真っ当な安全対策を進めることは極めて困難なのであります。  また逆に、事業者におきましても、利用者や国民一般に対して安全やサービスなどにかかわる情報を平常時からも積極的に提供するということに対してはちゅうちょする傾向があることも否めません。これは、他社との競争関係、対抗関係の中で、なぜうちが率先してやらなければならないのかという考えによるものと思われます。  法において事故や遅延などのトラブル発生状況、施設や設備の改善状況などといった安全にかかわる情報を路線や区間などの別に極力具体的に示すべきであるという思想をきちんと定めておくことは、以上のような視点からも極めて重要なものと考えます。  さらに、より積極的には、次のような視点も重要なものと考えます。  一例を挙げますと、九州では、九州道守会議という一般利用者や住民の活動があります。道守は道を守るというふうに書きますが、一般の人たちが主体となって道路管理者と協力し、道路の不具合を発見したり、その改善に貢献するとともに、社会基盤である道路に関する啓発活動や、あるいは人々の関心を道路に向ける活動などを行っております。  このように、利用者や国民が運輸交通の安全に対して、単なるユーザーとしてのみならず、主体的、積極的に貢献することは、世界的に見ても注目すべき運動と言えます。また、まだまだ未熟な段階にはありますが、東急電鉄の世田谷線におきましては、このような発想に立った活動がなされつつあるところでございます。この点も付け加えておきます。  尼崎の脱線事故でも見られましたように、周辺の住民などが事故後の救援などの活動に極めて大きく貢献しております。こうした非常時の対応をより充実したものにするためにも、利用者や住民一般と運輸事業者が平常時からこのような密接な協働、この場合の協働は協力して働くという意味ですが、協働活動を業務の中に組み込むことが有効な方策となっていくものと考えます。  つまり、今後は、従来のように運輸サービスの供給サイドのみにおいて安全性向上活動を行うのではなく、利用者や国民と協働的な、広い意味でのリスクコミュニケーションを充実させることが不可欠になるものと考えます。そして、このような調和的なマネジメントこそが、我が国を含めてアジア的な文化が長い歴史の中ではぐくんできた知恵に富んだ発想であることも指摘しておきたいと思います。  今回の法改正にはここまでのことはもちろん述べられておりませんが、今後このような方向を目指していく上でも、利用者と国民との関係に着目したこの第三のポイントは、これからの第一歩として今後の我が国の交通運輸史の中でも極めて重要な意味を持つものと確信しております。  最後になりますが、運輸交通分野における安全問題をとらえる基本的な視点につきまして幾つか私見を述べさせていただきます。  第一は、人間社会においてつくられる技術システムには必ず限界というものがあるという点であります。  例えば、地震や津波につきましても、何らかの規模の外力を想定し、その想定シナリオに対応できるようにシステムをコントロールする、こういう発想が取られております。これはこれでよろしいのですが、国民が忘れてならないのは、そうした想定シナリオは外れる場合もあると。すなわち、システムには必ず限界があるということであります。特に、大きな自然に取り囲まれて成立している交通施設のような社会基盤ではこの点が極めて重要です。このことは、冷静に考えればだれにでも分かる当然のことなのですが、社会一般に共感、理解されているかといいますと、そうとも言い切れません。  二〇〇四年の中越地震では、大きな地震力の下に上越新幹線が脱線しました。これは、どんなシステムも限界というものがあるということを一般に如実に知らしめた事故であったと言えましょう。しかも、脱線しても大きな被害をもたらすことなく、言わばソフトランディングすることができた点も大きな示唆に富んだものでした。  今後は、単に想定シナリオに対して、事故発生させないという発想の枠を超え、想定外の事態においてたとえ事故発生したとしても、発生する被害を最小化できるようなシステムを指向することが重要と考えます。そうした意味から、今回の改正事故調査委員会の調査対象が事故発生のみならず被害の発生にも拡大された点は評価できると考えております。  最後に、安全に関しまして私が常日ごろから使っておりますフレーズを申し上げ、私の意見陳述を終えさせていただきます。  それは、お配りした資料にもタイトルになっておりますけれども、安全には、絶対も、神話も、そしてゴールもないというものでございます。  以上です。どうも御清聴ありがとうございました。
  101. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) ありがとうございました。  次に、佐藤参考人にお願いいたします。佐藤参考人
  102. 佐藤潤太

    参考人佐藤潤太君) 佐藤でございます。  お手元に私の説明資料というふうなものをお配りしてあると思いますので。私は、そういう学問的というかそういうことじゃなくて、実際に現在事故防止のために鉄道がどういうことをやっているかという具体的なことを中心にお話をしたいというふうに思っております。  まず、故意による事故があるんですね、鉄道には。一番有名なのは、例のサリン事件、ああいう薬を電車の中にまくというようなことがあったわけです。だから、現在実は、電車の車掌が車内放送でお客さんに向かって、持ち主不明の荷物、不審な荷物があれば、どうか乗務員や駅員にお知らせしてくださいということを言っているわけです。あれがどれだけ有効になるかは知りませんが、まあしかし、そういうようなことを通じて少しでも皆さん方に関心を持ってもらうということには、と思っておるんです。  それから二番目に、踏切道についてです。  踏切道の事故防止なんですが、これはまず、現在大きな課題になっておりますのは、いわゆる開かずの踏切というのがあるんですね、非常にそこに交通量が多くて。それで、これは一年ほど前のことなんですが、東武鉄道の伊勢崎線の竹ノ塚構内で、警手がそこに勤務してたんですね、保安の人が。ところが、余りにも長かったものだから、もう上げたというようなことがございました。  そういうふうなことで死傷者が出たんで、やっぱりこういうふうなことについては、踏切の保安係、踏切の警手さん、そういう人に対して指導、教育をやっていくということと同時に、やっぱりこういう踏切については立体化への努力、これは簡単にいきませんよ、国なり地方公共団体、そういうふうなものとの協力の下にどういうふうに立体化していくかということが大きな課題だと思います。  それから、これは去年の十月なんですが、JR京浜東北線の蒲田—大森間、学校道踏切と言うらしいんですが、そこで、自動の踏切です、そこに余り長くあったものだから故障ということを書いたんですね。そうしたら、故障だから入ってもいいんかと思って入って死傷者が出たわけです。だから、それ以後は踏切に故障というような表示はもうやめると。それから、そういうことがあっても、注意してもらわなきゃ勝手に入っちゃいけませんぜという看板を出す。それからさらに、そういうときであれば、迂回路案内を表示してそっちへ回ってもらうというようなことが現在なされております。  それから、車が通る踏切について、車がその踏切で止まってしもうたというようなときには、現在、障害物検知装置というふうなものを作って、それを通行する電車の方に対して知らせるというようなものもできております。  それから、これは通行者が手で押すボタンがあって、危険を通報するボタンが、その踏切が危ねえというときにはボタンを押すというような施設もあります。  それから、駅に構内踏切、駅の中でそこに踏切があるというようなことについては、これは各社が、地下道でそっちに行ってもらうとか陸橋で退避するというようなことを各社が努力しておるように思います。  それから、現在踏切で遮断機がない、自動遮断機を設置するというようなことも相当なされてきているように思います。  それから、運転や人事事故の防止のことについて、まずこれで議論をしなきゃならぬのは、一つは一年前の福知山線列車の脱線ですね。  これは死者が百七名ですか、負傷者が五百名以上だということで、こういうようなことについていろいろ議論がされておりますが、ATSを増設する、ATSがあるんだったら、普通のところ以外に速度制限をする場所にもそういうものを付けたらどうか。それから、社員への指導、教育が十分になされていなかったんじゃないか。それから、ダイヤについて、現在、運行の時分を多少延長するというようなことはどうだろうか。  それで、これは現在皆様方のところに行っているんじゃないかと思いますが、参議院の国土交通委員会の調査室が作っておりました参考資料の八十四ページ、それから九十一ページにも、交通事故委員会、それから航空鉄道事故調査委員会、それから運輸省、そういうふうなところからいろいろな対策が出ております。そういうふうなことを着実に実施していくということではないかと思います。  それから、これは少し時間がたつ、もう実は十五年ほどたっておるんですが、信楽高原鉄道、これは関西の方にあるんですが、そこで列車が単線区間で正面衝突したんですね。それで四十二人が死に、六百何人が負傷するというようなことがございました。この件については、実はその会社の業務課長という人の過失があったんじゃないか。刑事事件になりまして、これは、三人の人、それは信楽駅の助役だった人、運転指令を兼務しているんですが、それからそこの電気関係の課長、それからその電気関係の設備をやっている会社の責任者、そういう人が刑事責任になりまして、執行猶予付きですけれども有罪になったんです。  ところが、これ実際はそこの業務課長という、まあ世間一般に言えば運輸部長に当たる人なんですが、その人の過失というものも相当あったんじゃないか。ところが、この人はその電車に乗っていたんですよ。だから殉職しているんです。だから、その人が刑事責任は負ってないんですけれども、しかし、こういうようなこともいろいろ考えなきゃならぬのではないかというふうに思っております。  それから、今度は線路工事作業者、土木とか電気の人が線路で昼間、最終電車が済んでから工事するんならばいいんですが、それだけじゃ駄目なんで昼間でも工事をやるんですね。そういうことが、これは最近の新聞ですから、今年の一月にJRの伯備線で単線区間で電車にひかれて三人ほど死に負傷者が一人あった、こういうようなことですが、こういうようなことについては、そういうことを、列車ダイヤがちょっと乱れると、それからそこで仕事をするということの運転指令とそれから現場で作業をやっているその責任者との間の連絡がどうも十分じゃなかったんじゃないかというように思います。同時に私は、運転指令の方からそこを通過する列車の運転士に対して、そこで仕事しとるでと、だから注意して運転せいということをやっぱり言うべきじゃないかというように思っております。  それから、これも去年の暮れですけれども、JRの羽越線で特急「いなほ」、これが脱線転覆したんですね。それで、四人ぐらい死んで負傷者も出た。こういうことについては、それ以後JR東日本がどういうふうにしたらいいかということも大きく出ているんですが、風速計を増設すると。それから、どの程度の風が吹いたら列車を止めるという、そのどの程度の、例えば三十メーターの風が吹いたら止める、それを二十五メーターにするとか、そういうようなことをもやる。それから、これはまだ簡単にいかぬと思いますが、列車に風速計を付けるとか、それから架線、電車が行くときに架線がありますが、架線が揺れるのをできるだけ防ぐような機械というふうなものもこれからは研究されるべきではないかというように思っております。  それから、これは新幹線のことでそういうことがありましたから、少し前になりますが、運転手その他の運転係員に定期的な身体検査をすると。そして睡眠不足なんかで異常体質があったら早くそれに注意するというようなことをも是非、まあ現在やっているんですけれども、それがされなきゃいかぬのじゃないか。  それから、これはちっちゃなことですけれども、電車の扉事故というのが現場におる者としては非常にあるんですよ。だから、駆け込み乗車をできるだけしないようにしてくださいと、これはもう同じことばっかし駅で言うとるんですけど、なかなか簡単にいかぬのですよ。現に私でも、駅に来て電車が止まっていてドアが開いてる、必ずしもその電車に乗らぬで次の電車でもいいんだけれども、ついちょっちょっちょっと急ぐというようなことになる。まあ人間の心理だと思うんですが、駆け込み乗車をするということが扉事故の非常に大きな原因になっていますんで、そういうことをやめると。  それから、これは私もハンドル持っていてそういうことがあるんですが、子供が線路の付近で遊んでいるんですよ。これは非常に危険なんですね。  それから、事故があって、その事故、まあ線路の中でですね、そういうところに消防とか警察の人が来てやっているときに電車が行って、その消防の人とか警察の人をという事故は何回も新聞で皆さん見ていらっしゃると思います。そういうふうなときに、運転指令の方から、どこで事故をやっていると場所を言って、どこどこどこどこ駅間じゃ駄目なんですね、そこのところの何とか橋梁のすぐ手前だとか、そういうようなこともちゃんと言って、それから、子供が線路の付近で遊んでいるんならどの場所を言うてやらぬと、そういうふうな点が事故の防止にはなかなかつながらないということがあるように思います。  それから、これは事故のことではありませんが、今度こういうふうな安全管理規程改正するということの中で、鉄道事業者がちょっと安全の管理をサボっておるというようなことがあれば、国が、国土交通大臣が、ある一定の場合になったら安全統括管理者とか運転管理者を解任できるというふうなことが決まっております。しかし、この運用はできるだけ慎重にやってもらいたいなということが現業の者として感じるところでございます。  以上です。
  103. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) ありがとうございました。  次に、稲垣参考人にお願いいたします。稲垣参考人
  104. 稲垣敏之

    参考人稲垣敏之君) 筑波大学の稲垣でございます。  本日は、私が今まで人間機械系、つまりヒューマンマシンシステムでございますが、その信頼性、安全性について研究してまいりました、その研究から何を考えてきたかということをお話しさしていただきまして、法案の御審議の御参考までになればというふうに考えてお話しさしていただきます。  お手元にパワーポイントのスライドの形で四枚にまとめてまいりましたので、それに沿って御説明したいと思います。私自身がヒューマンインターフェースの研究をやっておりましたので、実際にはこれはスライドでお見せする方が本当はうまく御説明できたのかもしれませんが、お手元の資料で御説明いたします。  まず一枚目でございますが、左側に二つグラフがかいてございます。これはいずれも事故率が経年的にどのように変化してきたかということを示しております。上の方は自動車でございますが、下の方は航空機でございます。いずれも事故率そのものは様々な安全確保努力によりまして低減してきてはいるんですが、私どもから考えますともう少し下がってほしい、にもかかわらず十分下がり切っていないと、そういうようなもどかしさを感じるということがございます。  事故率は実はそれほど、何といいますか、変わらなくても、実は事故の件数というのは増えていく。つまり、飛行機であれば便数は増えてまいりますし、自動車であれば台数は増えていくということでございますので、事故率が上がってないから大丈夫ということには実はなりません。  私自身がやや気にしておりますのは、交通移動体が実は高度技術システムとして極めて難しいものになってきている、人間にとって分かりにくくなっている面があると、そういうようなことから新しいタイプの事故が出てきているというようなことが気になっております。  航空機の方では、その辺りのところをちょっと赤で示しておりますが、私自身は、そのタイプを、右の方に書かしていただきましたが、五つに分けております。多機能インターフェースがかえってヒューマンエラーを誘発することがあると。二番目は、人と機械が意図が対立してしまうことがあると。三番目、自動化システムというのは非常に信頼性が高くなっているんですけど、あるときは人間はそれに対して不信を抱くこともありますし、あるときはまた過信を抱いてしまうこともあると、で、それが交錯するという現象が出てくるというのがございます。四番目は、自動化システムが実は少々の異常であったらそれを隠してしまうぐらいにかなり制御の能力としては非常に高いものがある、異常が隠ぺいされてしまう、で、人間には何が起こっているのかよく分からないということが出てくると。五番目は、高機能のシステムといいますのは、自分で状況判断して自分でアクションを取ることができるということから非常に自律性の高いものでございますが、それが人によっては一体機械が何をやっているのかというのが、意図が分かりにくい、そういうような点がございます。  そういうふうな問題の幾つかを、時間が限られておりますので、航空機を例に取ってお話しさしていただきたいと思います。  二枚目のスライドをごらんいただきますと、その左側には、これ一九九二年にエアバスの320がストラスブールで墜落したという、その事例を挙げております。これは非常にヒューマンインターフェースの観点から我々の関心をかき立てたものでございますが、左下の方に、これはパイロットがコンピューターに対してどのような指令を与えるかというところを、フライトコントロールユニットでございますが、その一部分を表示したものでございます。  二つ並んで、同じような図が並んでおりますが、上はパイロットが自分がやろうとしていたことが本当だったらどういうふうに表れたかということでございます。これは下の方へ向かって降下角三・三度で降りたいというふうに思っていたと、それをコンピューターに入力したときにはこのような画面になると。ところが、実際にその事故機で起こっていたのは実は下の画面である。これは降下率、一分間に三千三百フィート降りると、そのような形態になっております。これは同じダイヤルを入力装置として使うにもかかわらず、それを違う意味で入力をさせられると、そういうような多機能の非常にコンパクトなインターフェースでございますけれども、それが逆に作用したということでございます。それによりまして、その上の方に書いてございますが、本来ならば空港へ向かって三・三度で降りようと思っていたところが、かなりきつい角度で山にぶつかっていってしまったというようなことでございます。  ただし、これはこのインターフェースだけがその背景にあるのではなくて、ほかにも要因は実はございます。皆様御存じのとおり、山にぶつかろうとしますと最終的に警報が鳴るんではないかというふうにお考えだろうと思いますが、実はこの飛行機には警報は積まれておりませんでした。それ、どうしてそういうふうなことになったのかということは、これはマネジメントの問題として出てまいります。これに関しましては後で少しお話しさしていただくことができるかもしれません。  右の方をごらんいただきますと、上の方が人と機械の意図の対立でございますが、これは、中華航空飛行機が名古屋で落ちましたけれども、例えばこれはパイロットが意図せずにコンピューターにゴーアラウンドを指示してしまっていたと、それを、命令を入れてしまったということは認識はしておりますけども、それをきちんと解除しないままパイロットの方は降下をしようというふうに思って、それで操作をするわけです。そうしますと、コンピューターの方は人間に上がれと言われたので上がろうとする、ところが人間は下がろうと思ったので、コンピューターにさっきの命令は違いますよということを言わないまま無理に下げようとした、そういうことで機体には相反する目的の下で制御が加えられたと、そういうような事例でございます。  右下の方は、これは高機能のシステムの中には、例えば、現在の降下というのは機体にとっては余りよくない、もう少し緩いパスに変えた方がよいというときには自動的にパスを緩めてくれる、そういうような機能が付いておりますが、このパイロットの目の前にプライマリーフライトディスプレーというのがございますが、その上の方に、今ちょっとこの図では赤あるいは少し茶色っぽい枠で囲ってあるところがございますが、これをごらんいただきますとお分かりのように、パスが変わりますとその対応するモードが変わります。自動化システムの制御のモードが変わったということがこのように表示されるのですけれども、実はそれが非常にさりげない、音も何もなしに、単にモードが変わって、十秒間だけ枠で囲われて、十秒たつともうその枠も消えてしまうと。ですから、そういうふうによくよく気を付けて見てないとモードが変わったということがなかなか気が付きにくい。これも、自動化システムとしてはよかれと思って、安全のためにと思ってプロテクションの一つの機能としてこういうのが実現しておりますけれども、これが逆に作用してしまうこともございますということであります。  資料の裏をごらんいただきますと、これ三枚目の方では、実際に我々が事故を調べているときに、事故原因の八〇%はヒューマンエラーであると、これはもう交通モードにかかわらず大体このような八〇%というようなことが言われたりすることがございますけれども、私は、もちろんヒューマンエラーというのは問題ではあるんですが、その背景に運転員の能力、いわゆる人間の能力に対して過大な要求が課せられているというような状況もあるのではないかというふうに今までから考えてまいりました。  つまり、交通移動体の高速化というのは著しいものがございますし、交通の高密度化というのも著しいものがございます。そうしますと、例えば交通の高密度化が進みますと、その運転員は注意を向けるべきものが極めて多くなる。もちろん自動化システムそのものも機能が増えておりますので、それの様子も見ないといけませんし、周りもよく見ないといけないというようなことで、注意を向けるべき対象が非常に多くなっている。高速化によりまして、当然、その認知、判断、操作に許される時間的な余裕も当然短くなってくるというようなことがございます。  今申し上げましたように、運転といいますのは、あるいは操縦でも結構ですが、一応基本的には認知、判断、操作、これが繰り返されているということになりますが、当然、認知が誤っておればそれに基づく判断を誤ります。その判断が誤っておればそれに基づく操作を誤るということで、認知がいかに的確にできているかというのが、これが基本でございます。ただ、人間の特性といたしまして、手掛かりの情報がすべて目の前に提示されていても、実はそれが状況認識に的確に結び付くとは限らないという残念なことがございます。  私どもはその状況認識に三つのレベルを考えておりまして、何か変だということに気が付く、これがレベル一の状況認識は確保できていると申します。その変だと思ったのがどういうふうな原因によるものかということまで特定できればレベル二の状況認識は確保できたという言い方をいたします。そのままいくとどういうふうになっていくのか、あるいは私がこういうふうなことを何か操作をするとそれの影響がどういうふうにこれから移り変わっていくようなものになるのかということは、将来が予測できるようなところになりますと、これはレベル三であるというふうに申しますが、実はこれ、何か変だということにもなかなか気付かないということがインシデントのレポートなどを解析すると出てくるというふうな報告がございまして、そういうふうなタイプのエラーが実は八〇%ほどを占めているというようなこともございました。  その右の方の図をごらんいただきますと、これはコントロールド・フライト・イントゥー・テレイン、CFITというふうに我々は呼んでおりますけれども、全く故障のない機体が山にどんとぶつかっていくというようなタイプの非常に悲惨な事故でございます。多くの場合は墜落の寸前までコックピットは平穏そのものでございます。こういうふうな何か変だということに本当は気付いておれば直ちに対応できたのかもしれませんが、なかなかそれが難しいということでございます。  さて、その四枚目のスライドでございますが、これは実は、皆様当然御承知のように、事故はたった一つの要因で起こるものではございません。複数な要因が時間的に、何といいますか、ごく最近のことだけで起こるとも限らない、もうはるか昔のことがずっと影響を及ぼしてきて今の事故に至っている、そういうこともあるわけでございます。それを事象の連鎖というふうに我々はモデルでは表現したりしますけれども。  ごく普通には、先ほども事故の原因が八〇%はヒューマンエラーだというふうな言い方をいたしましたが、これは一つ事故に対して一つの主原因を割り当てたとするとどうなるかというふうな統計の取り方でございます。当然、これ航空の例でしたら、その事故を防ぐために最後の最後まで努力をしないといけないというのがパイロットでありますので、もしそのパイロットがここでこういうことをしてくれればこの事故は防げたのではないかと、そういうふうな議論が実は出てくる可能性が非常に高いわけです。そうしますと、主原因のところでパイロットというのが当然リストアップされますけれども。  ところが、一つ事故の中には、本当はそのパイロットをそのような事態に追い込んだのは何であるかと、さらにそういうふうな状況をつくり出したのは何であるかということをずっとさかのぼって調べていきます。これを多重要因で分析するやり方だというふうに申しますけれども一つ事故に対してどういうふうな要因があったのかというのをすべて並べ上げたといたしますと、この右の方の表をごらんいただきますと、パイロットはもちろん七〇から七五でございますが、マネジメントというのが出てまいります。マネジメントが六〇から八〇というのが、こういうふうなものが出てまいりまして、これがつまりトップの安全文化に対する姿勢というのが出てくるということでございます。安全文化というのは紅葉型であって、上から順番に染まっていかないと下の方には全然到達することができないというふうな言い方もする方もいらっしゃいますけれども。  そのような要素を先ほどのCFITを例にしてパイチャートで、グラフで書かしていただきましたが、そのCFIT事故、これ調べますと、大体三分の一が対地接近警報装置、GPWSを積んでいない飛行機によるものであると、三分の一が警報がないものであると、全く警報が出なかったと、三分の一が乗員の不適切な対応であるとか警報の遅れが起因していると、そういうふうになっておりますが、GPWSを積まない三分の一というのが、実はこれはマネジメントのディシジョンであります。GPWSというのは、時折ですが誤報が出るということがあると、誤報が出ることによって不都合が生じる、そういうものは積まなくてもよいというような判断が、もし下したとするとこのようなケースになります。  ちなみに、その三〇%のGPWS非装備による事故を引き起こしているのは、全世界の飛行機の中の約三%ぐらいの非常にマイナーなところでございます。そのほんの少しのところが実はこの大きな影響を及ぼしているというようなことになります。  警報のないものに関しましては、これはGPWS、家田先生のお話にもございましたが、機械システムには限界があると。その機械システムの限界そのものに起因するようなところでございます。  まとめますと、エラーの背後には、今まで申し上げましたように、個人的な要因もございますが、組織的な要因あるいは文化的な要因、安全文化でございますが、そういうような様々なものがあると。  私ども事故を防止する、あるいは事故が起こったとしても最低限、被害がもっと軽減できたのではないかということを当然考えなきゃいけないわけですが、そういうことを考えるためには、私自身は大体三つを考えておりますが、一つ目は、状況に応じた人間と機械の協調、これは私自身の専門でございますので、技術システムの限界があるという家田先生の御指摘と全く同じでございますが、実は、技術システムにも限界があるんですが、人間の特性にも限界があると。ヒューマンファクターの観点からは当然これも考えておかないといけないと。まじめな人ほど頑張ろうとする。無理なところでも頑張ろうとするんですけれども、もうそれだけに頼っているわけにはいかないというようなことがございます。  二つ目が安全文化の醸成でございまして、これはもう最近コストがもちろん重要な問題になりますし、安全そのものは新しい何物も生み出さないような錯覚を起こしたりすることがございますが、実は安全を優先することが自然な発想として行動に表れるということが非常に重要であるということを企業体あるいは全体、国全体が認識する必要があるんではないかというふうに考えております。  三番目は、事故が起こりましたら、それがどういうふうになって起こってきたのかということを、原因は徹底的に追及する必要がございますけれども、ただそれだけではなくて、それでしたら墓標安全、つまり、だれかが亡くなったら、それを基にして何か手を打ってくるというようなことになりますが、実はそれだけではなくて、やはりインシデントあるいは小さなトラブル、こういうものを背景にどういうものがあったのかというところまで調べ上げて、それに基づいてつぶしていくという、そういうタイプの予防安全型の考え方というのが必要なんではないかなというふうに考えております。  以上でございます。
  105. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、大変恐縮でございますが、時間が限られておりますので、簡潔に御発言くださいますようお願い申し上げます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  106. 末松信介

    末松信介君 どうも三人の先生方、いろいろと有意義なお話をしていただきましてありがとうございました。  何をお聞きしていいかちょっと戸惑っておりますんですけど、特に佐藤参考人からはかなり法律的なお話が出るかなと思っていたんですけれども鉄道のお話が出ましたので驚いたわけなんですけれども。  まず、家田先生にお聞きをしたいと思うんですけれども、場合によってはちょっと両先生にお聞きするかもしれませんけれども。  ヒューマンエラーについてということで、先生の専門が東大の大学院工学系の研究家でありましたんですけれども、ただヒューマンエラーの研究をなさっておられるということも今ちょっと詳しく本を拝見しましたわけなんですけれども、そのヒューマンエラーについてお伺いしたいと思うんです。  ヒューマンエラーというのは、結局、ミス作業の究極の原因として扱うより、作業環境や心理的な圧迫や作業条件などの結果起こったものであるというように考えるべきであると、これは実はある航空会社の元専務、しかも国交省から民間に移っていかれた方のお言葉なんです。この方、なかなか立派なことをたくさんおっしゃっておられて、よく活躍されたんですけれどもヒューマンエラーについては、人間の思考というもの、行動の奔放さは理性だけでは解釈できず、また拘束することもできないことが最大の原因である、人間性を一定の型にはめ込むことはできない、あるがままの姿の中でそういったミス作業をいかに防止するかということが、このことを考えることが大切であるということを言われたわけなんです。大変いい言葉だなということで記憶に残っておったんですけれども、要はヒューマンエラーには手っ取り早い万能薬はないということだろうとは思うんですけれども。  先生、このヒューマンエラーとの限界なき闘いという、安全には、絶対も、神話も、そしてゴールもないということを書かれているわけなんですけれども、今のこの日本が取り組んでいる上で、このヒューマンエラーをできるだけなくしていこうということで抜け落ちている視点というのがあるんじゃないかということをお尋ねしたいんですよね。先生この中に書いておられる、人間・技術システム設計の考え方にも修正が必要なのではないかということをお話しなさっておられるわけなんですよね。この点をちょっとお聞きをしたいと思います。  それと同時に、事故発生させないという発想から一歩進め、想定外の事態で事故発生したとしても被害を最小化させる発想をシステム設計に取り入れるべきであるという話なんですけれども、結局そうなれば、無事故対策と片一方では減災対策というのも考えておかないかぬという、そういうことになってくると思うんですよ。日本の場合はそれができているかどうかって分かりにくいんですよね。無事故である、事故があったらおかしいという前提でやっぱりやっていると思うんですよ。鉄道なんか特にそうだと思うんですよね、ある面では。  そういう点で、先生の、特にこのシステム設計に修正が必要であるという点、どういうことかということ、改めてお尋ねしたいのと、ヒューマンエラーについて、今行政も取り組んでおるんですけれども、抜け落ちておる視点というのは何かということをちょっとお尋ね申し上げます。
  107. 家田仁

    参考人家田仁君) 今、末松先生からお話があった二点についてなるべく簡単にお答えいたします。  ヒューマンエラーにつきましては、昨今いろいろ生じている問題で着目されているところではございますが、一部で誤解もございまして、日本はヒューマンエラーあるいはそれのフェールセーフ化にリラクタントであったというような言い方をされる方もいますが、私は決してそんなことはないと思っております。鉄道を始めとするいろんな技術的なシステムは技術だけでは動きませんので、常に人間がエラーを起こすはずであると、それを機械でバックアップする、いろんなバックアップをする、機械でバックアップできないにしても、Aさんが起こすエラーをBさんがバックアップするというようなことは何重にもやってきているわけです。それでも起こる。これがヒューマンエラーの特徴だと思っております。  ただ、私が最近懸念をしておりますのは、ヒューマンエラーをする人間の方の行動の幅が広がりつつあるという懸念を持っております。日本の労働の質は非常に高いことで定評があったわけですが、例えば技能オリンピックなんというものでも日本は余り勝てなくなる状況にある。そういう中では、こんなことまで人間がするのかというような行動をするようになってきている。ところが、技術システムの方はその改変に非常に時間が掛かりますので、人間のそういった行動の幅が広がるのに対応し切れていない面があるというような感覚を持っています。これはまだまだ勉強課題だと思っています。  それから、二点目につきましては、この被害の最小化というところですが、先生指摘のとおり、賛成でございます。どういうことかというと、日本の社会は、どうも何かを想定すると、その想定の中の仕事をちゃんとやっているかということには着目するんだけれども、それを逸脱することが起こり得るということを頭から抜いちゃうところがありますね。こうなるはずですと、それについてはこうやっていますと。例えば津波にしても、いろいろ最近問題になっておりますけれども、大体二十メーターですというと、じゃ二十五メーターのことはないという何か頭になってしまう。ここのところを脱却しないと、事故が起こることを容認した上でその被害を最小化するという発想になかなか飛び付けないと思います。  ただ、いい面も、いい面といいますか、一つ参考になることもございまして、例えば飛行機に乗ると添乗員、添乗員じゃないや、フライトアテンダントと言うんですかね、最近は、の方が、いざというときはこういう格好をしてくださいとかやりますね。あれは事故なんか絶対ありませんという姿勢ではないですね。したがって、運輸交通の中でも事故は絶対ありませんということを言い切っているわけではない。ああいうような姿勢をもう少し拡大して、いざというときのためになるべく被害が小さくなるようにしましょうねというのを極力明示的に取り上げていくべきだと思っております。  いずれにしましても、今の御質問はどっちも非常に重要な点で、直ちに一朝一夕に解決できることではないんですが、これからに向けて是非政策の中心に置いていただきたいと思っているところでございます。
  108. 末松信介

    末松信介君 どうもありがとうございます。  先生から今お答えいただきまして非常に参考になったんですけれども、確かにこのヒューマンエラーについて考えたとき、私、知り合いのパイロットがおるんですけれども、秋田の方の、翌日も秋田から羽田へ操縦せなきゃいかぬいうことで、夜一杯飲んでおったわけですよ。十二時間以内に入っちゃったら、これ酒飲んだらあかんのですよね。航空法違反じゃないんですよ、航空法に基づいて社内規定を作って、十二時間以内は飲んじゃいかぬと。そのとき一人で飲んでたら黙ってたかもしれません。でも、複数で飲んでたから、結局相互監視をしたから、言わざるを得ないから本社にそれを報告して、結局代わりのパイロットが東京から秋田へ徹夜で運ばれたということなんですよ。  私は、やっぱりそういうことは非常に大事なことだと思うんですよね。  これは、やはりそういう面ではシングルチェックよりもお互いに相互監視するということ、発展的に考えたらダブルチェックであるということで。そうして考えていった場合に、合理化という点についてはこの委員会でもいろんな先生方からいろいろお話あるんですけれども、機械になせる技と人がなせる技という点、この領域、今先生お話がありましたけれども、この合理化という点において限界が来ておるのかどうかという点ですね、行き過ぎという点があったらちょっと御指摘いただきたいんですよ。これはもう家田先生佐藤先生稲垣先生、どなたでも結構です。これは行き過ぎた合理化だという一つ何か象徴的なものがあったらおっしゃっていただきたいんですよ。なければ結構、次へ進みますけれども
  109. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) いかがでしょうか、参考人の方々。
  110. 稲垣敏之

    参考人稲垣敏之君) 今の議論の中で、例えば、先ほどのところに少し戻るかもしれませんが、つまり人間と機械のところでシステムの在り方、そのヒューマンエラーというのは先ほどからお話出てまいりますように、実は私はヒューマンエラーを犯した人を責めるというのはやっぱりよくないと、そういうような視点がまず大事だろうと思います。  それと、想定外の場面というのも、やはりこれは、実はその想定外の場面で対応せざるをいけないというのはやはり人間でございますので、そういうところでその技術システムの在り方というのを考えないといけないと。そういうふうなヒューマンファクターの観点というのがこれからの技術システムを考える上で重要であろうというふうには思っておりますけれども
  111. 末松信介

    末松信介君 どうもありがとうございます。  佐藤先生にお聞きを申し上げたいんですけれども先生弁護士だから想定しておった質問をちょっと率直に申し上げたいんですけれども、今日午前中、大臣、お答えは航空局長からいただきましたんですけれども、結局、あるパイロットは、ミスがあるからミスを防止できると言う。ミストラブルは積極的に、社内開示はもちろんのこと、同業種の方にもやっぱりどんどんどんどん開示してやる必要があると、これは生きた教材であるということを言ってるんですよね。私もそう思うんですよ。  ミスを速やかに報告するということは隠していないというあかしですから、これはもう大切なことであると。結局、各航空会社ヒヤリ・ハット制度というのがあって、匿名でやっぱり出すわけですよ。それを教材にしながら、いろいろ回覧が回ってきたり、いろんなミーティング一つの大きないい材料にするわけなんですけれどもね。  結局、一番問題は何かといった場合、重大なインシデントぐらいになってきた、トラブルとの間ぐらいになってきた場合に、結局日本は事故の究明よりも結局その責任の究明が先に来るということなんですね、事故の究明より責任の究明が来ると。結局、事故の再発防止というよりも注目すべきは責任者捜しなんですよね。ここにもう注目が行ってしまうからみんな腰が引けると。当然もう自分に不利になることは言いたくないから黙秘権的なものがやっぱり出てくるわけなんですよ。  そういう点で私、朝お尋ねしたのは、アメリカのインシデント報告におけるASAP、航空安全報告制度とか、ASRP、航空宇宙安全諮問パネルなどが採用している制度のような報告者匿名性確保とか、あるいは発生から一定期間まで報告を上げれば基本的にはFAA航空宇宙局の処分が免除されるということ、このことを是非考えるべきだということを申し上げて、局長はそれを検討していかなきゃいけないと言ったんですよ。  私は、やはり事故の究明が一番大事であって、責任者捜しはある面で後でもいいんじゃないかということを思うんですよ。再発防止がやっぱり大事ですからね。どうも日本の場合はそれが先に来るということで、アメリカの制度というものをやっぱりどんどん取り入れるべきじゃないかと。そのことについて佐藤先生弁護士でもありますのでちょっとお答えをいただきたいということと、鉄道の専門家でありますので、先生よく、今お話ありましたんで、安全統括管理者解任は慎重に行うべきであると、これはある面では伝家の宝刀になるかもしれませんけれども、これはそういった責任者解任は問題じゃなくて、事故を防止することが大事なことなわけなんですけれども、伝家の宝刀は簡単に抜くなという理由をもう一度ちょっとおっしゃっていただきたいと思います。
  112. 佐藤潤太

    参考人佐藤潤太君) 最初の方の件については、実際問題としてはなかなか難しいというように思います。  具体的な事例で言いますと、先ほど申しましたように、信楽高原鉄道事故については、責任は、業務課長ができるだけ早く、信号機が故障なんだと、信号機が故障しているけれども、早う電車出したいというような気持ちから、信号機が故障ならば相手の駅に対してでもちゃんと閉塞取扱責任者を送って、それとの間に電車がないということを確認してから出さなきゃいかぬ。ところが、もうともかく早う早う早う、早うもう出せ出せ出せ、もうお客さんもたくさんいるというような感じがあったと思います。そういうふうに閉塞のことについて十分な自分が知識がないのに、ともかく早く出そうというような感じがあったと。  ところが、そういうことはこの日だけじゃなくて、その何週間か前にも同じようなことがあったのです。そうして、それは、その係の人、それから相互直通をしているJRの人、そういう人も気付いておったんです。気付いておったんだけれども、まあ上司やし、あんな偉い人やからということでなかなか言えぬということがあったように思います。それが良く言えば日本の社会のまあいい点でもあるんだろうと思うんですけれども。そういうようなことが非常に大きな課題として私はありますだけに、こういうようなことについては簡単にはいかないというように思います。しかし、やっぱりそういうようなことはちゃんとはっきりしなきゃいかぬだろうというように思います。  特に、そういうようなことを交渉している信楽高原鉄道じゃなくて、相手、相互直通しているJRの人も、あの業務課長はどうもちょっとと思ってもそのことはまあ言わない、言ったらいかぬな、あんな偉い人にどうもという感じがあるように思います。そういうような感じが私は、日本の社会のいい点でもあるんでしょう、そういう点が。しかし、事故防止のためにやはりそういうふうな点はきっちりしておかなきゃいかぬ。そういうことが実は、その一番責任のある人は殉死しているから刑事責任は問われなかった。ところが、民事で、このことによって死んだ人、けがをした人に対する損害賠償においてはそのことが完全に評価されていると思います。  それで、御存じのとおり、この信楽高原鉄道は従業員は二十人ぐらいなんです。JR西言うたらごっついでしょう。だから、それが連帯責任でいけということになれば、あれだけたくさんの人が死んでいったものに対する連帯責任ということになれば、だれが負担するかというのは分かっているでしょう。そういうようなことで処理されているというような感じがあります。  実は、このことについては、民事については最終的なまだ結論が出てなくて、JRは信楽高原鉄道に対して損害賠償金額のことについて現在訴訟を起こしているんです、賠償の額を。だから、それはまだ、今後はどういうふうになるかということはまだはっきりいたしません。そういうことで、なかなかそういうことについてきちっとやるということは、私はなかなか難しいなということを思っております。
  113. 末松信介

    末松信介君 時間来ましたので、安全統括責任者というのはちょっと下げます。  ありがとうございました。
  114. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 今日は、三人の参考人先生方、本当にありがとうございました。  午前中、この安全の法案の審議をいたしました。ほとんどがこれ、そのヒューマンエラーをいかに防ぐかということが中心の今度の法案であります。まず、家田佐藤稲垣、三人の参考人にお伺いしますけれどもヒューマンエラー、いろんな議論をしていると、現象面のヒューマンエラーにどうしても限定されてくる。今日も、家田参考人、それと稲垣参考人、いずれも技術屋さんでありますから、私はもっと別な見地からいろいろ質疑をしてきたんです。  それはどういうことかというと、規制緩和とヒューマンエラー。それで、規制緩和も、安全に対する規制緩和、それから経済的な規制緩和、それぞれが私はヒューマンエラーに、安全の欠如になってつながっている部分が相当あると思うんです。衆議院の方でもう法案上がっているんですけれども、衆議院の方でもこれ、法案に対する附帯決議、全部で十七項目のうちの五つがヒューマンエラー。それで、しかもその規制緩和との関連、関係を精査しながら行政はこれから指導をしていくべきだと。そんなことも書いてあるわけ、法案にはなりませんでしたけれども。まず、このヒューマンエラーと規制緩和、安全、それから経済、これについての御見解を三人の参考人にお伺いしたいと同時に、今、末松さんからもありましたけど、私もこれ、人間・技術システム設計の考え方にも修正が必要なのではないかと。これもお伺いしようと思っていたんですけれども、今御答弁いただきましたが、もう少しこれ、具体的に家田参考人からお伺いしたいと思います。
  115. 家田仁

    参考人家田仁君) 今、佐藤先生からの御質問、二つございましたので、お答えいたします。  規制緩和とヒューマンエラーの関係でございます。規制緩和はヒューマンエラーの原因かどうかという、原因となり得るかどうかという御下問かと思いますけれども、私はそういうふうには思っておりません。規制緩和というのは、基本的には自由度を高め、技術的にあるいは制度的に工夫を凝らすと、モチベーションを高めて工夫を凝らして、安全についてもより良いやり方を考える。そういう面でいうと規制緩和は必要なことだと思っております。  ただ、重要なことは、規制緩和さえすれば何でもうまくいくかのような幻想に陥っているような人たちもいないとは言いません。すなわち、規制緩和をしつつ、一方で守るべきものはきちんと守り、あるいは、それは一部では安全でありますし、一部では地球環境の保全というようなことかもしれない、あるいは自然の保全かもしれない。そういった両方の車の両輪のような関係と思うべきだと思います。たった今、こういう法案の中でその両輪の片輪の方を非常に強調しようとしている向き、動きなわけですけど、それは私は歓迎しております。  それから、二点目につきまして、人間・技術システム設計の考え方にも修正が必要ということでございます。これは先ほど佐藤参考人もお話しされたところではございますけれども、日本の経営のスタイルは、どちらかというと温情主義、あるいは一家主義、家族主義の中でやっている面があって、それはいい面も多々あるんですけれども、そこでは、ある場合にはその温情主義があだとなってくることもある。  例えば踏切の事故は、温情主義がゆえに、決してあの踏切操作員は悪い方向でやったんじゃないですね、利用者が便利と思ってやった。それをまた周りも認めてきた、地域もですね。それが、みんなの温情が結果としてああいう事故をもたらしてしまう。そういうところから一歩脱却して、ドライな報告の関係、あるいはいろんな、姉歯のトラブルもそうかもしれませんけれども、部内でも何か問題を見付けたら、それを別のところから申告する制度とか、別の手をまた考えていく必要があろうかと思います。いずれにしても、まだまだ勉強の余地のあるところだと思っているところでございます。  以上です。
  116. 佐藤潤太

    参考人佐藤潤太君) 今の件は、今踏切の事故のことについて家田先生が言われたんで繰り返しませんが、先ほどちょっと申しました東武の伊勢崎線の踏切の事故ですね、あれについて、私は、厳密に踏切の警手、踏切の保安係は電車が近づいてきているんだから、ああもう絶対投げたらいかぬということを、そのルールはきちっとしなきゃいかぬということを言いながら、実際にそこに来たら、ちょっと見たら、あっ電車はまだ大分向こうあるな、ちょっとはい行きなさいということがあったんだろうと思います。だから、それだけに、私はそういうヒューマンエラーとそれから人情との関係というのはなかなか難しいなというように思います。しかし、事故防止ということについては、やはり規制、安易な緩和は良くないということで突っ走らにゃいかぬのかなというように思っております。  以上です。
  117. 稲垣敏之

    参考人稲垣敏之君) 私に御下問の点は規制緩和とヒューマンエラーだろうと思いますが、これに関しましては、家田先生がおっしゃいましたように、規制緩和がすぐにヒューマンエラーにつながるとは私も考えておりません。  ただ、遠因となりますのは、例えば、ルールさえ守ればよいと、あるいはルールに書いていないことはやらなくてもよいと、そういうような風潮がもし規制緩和によりまして出てくるといたしますと、例えばこれは整備であるだとかパイロット、例えばパイロットにしますと、教育であるとか訓練であるとか、そういうところに少し影響が出てくるかもしれないと、そういうような雰囲気はあり得るかというふうには思っております。
  118. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 午前中の委員会でもやりましたけれども、要するに規制緩和によって過当競争が生まれる。そうすると、過当競争というのはダンピングになる。ダンピングというのは、経営理念からするとやっぱり人員を削減する。そうすると、どうしても労働条件が過重になってくる。その結果、どうしても安全に対する欠如が出てしまうと。  そして、もう一つ申し上げたいことは、航空審議会の中で、これも午前中お話をさしていただいたんですけれども、やっぱり航空行政とか公共の交通というのはやはり人の命にかかわることである、ですから、経済的なバロメーターだけで本当に測っていいのかなと、その航空審議会のある方がそんなことも申し述べておるものですから、そういうふうなことについて私は皆さん方がどういうふうにお考えになるのかなという、今話を聞いていると、もう本当に技術的な話で、確かにこれはなるほどなと思うところありますけど、その更にまたその背景というのが極めて私は大事なことになってくると思っております。  次に、これ列車じゃなくて飛行機の話なんです。  昨日、おとといの裁判の話がありましたね。結局は個人の責任じゃないというふうなことになって、システムの問題であるということになりました。これもそれぞれ今述べてもらっているわけでありますけれども、このとき、航空鉄道事故調査委員会がありますね、航空事故調査委員会の資料を採用して、それが、闘う話じゃないところで事実の資料をお使いになったんですね、東京地裁は。このことについてまずどのようなお考えか。  それと同時に、要するに航空事故調査委員会、これは国土交通省の附属機関なんですね。ですから、これからそういうふうな官と民のいろんな係争するような話が出た場合に、やっぱりその附属機関というふうな今の立場がいいのかどうか。外国みたく、アメリカ、ドイツ、イギリスみたいないわゆる第三者機関で置いた方がいいのか、この辺についての見解があったら、御三人にお伺いしたいと思います。
  119. 家田仁

    参考人家田仁君) 今の附属機関の辺りのところについて、私の経験した範囲のところでお話ししたいと思うんですが、先ほど申し上げたとおり、日比谷線の事故が五年前に起こりまして、そのときには、鉄道事故調査委員会ではなくて、私ども事故調査検討会というような名前で国土交通省の中につくった組織で今の事故調査委員会と似たようなことをやりました。  そのとき痛感したんですが、大事なことは、今そこで事故が起きている、すぐにもデータなり情報なりを集めたいと。一番データ、情報に近いところの組織が有効である。それからもう一つは、技術力のある官僚がいないと話にならない。これ単にAならばBと分かる話じゃないですからね。それからもう一つは、対策を取ったときにすぐにそれが命令できないと手が打てないという面からすると、あのときに関する限り、私は国土交通省の中にあったのが極めて迅速な手を打てて有効だったと思っています。  ただ一方で気を付けなきゃいけないのは、国土交通省といいますか、行政そのものが仕事をしている管制とか、そういう場合には当事者そのものであることもあるわけで、その場合には、調査機能であるところの事故調査委員会と実際に仕事をしている場所としての国土交通省というものがやっぱり使い分けが必要になるんじゃないかと思います。その辺りの透明性を確保するためには、ああいうところの活動がなるべく外にオープンにされてだれでも聞けると、なるべく頻繁に発表するというようなことが一つの手じゃないかと思っております。  以上です。
  120. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 ありがとうございました。
  121. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) その他、参考人の方、いかがですか。
  122. 佐藤潤太

    参考人佐藤潤太君) ちょっと航空事故のことは、ちょっと私。
  123. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) それでは、よろしいですか。稲垣参考人
  124. 稲垣敏之

    参考人稲垣敏之君) 私も、基本的には家田先生と同じように考えております。  実際に、それで、私も事故調査委員の方々はよく存じ上げてはおりますけれども、その方々が例えば御発表になるようなものを見て、私は例えばこれ、今お話しのように、国土交通省の中ではなくて、外に関係ない機関として独立させた方がいいんじゃないかという御指摘でもあるかと思いますけれども、私は、関する限り、それ特にバイアスが掛かったというような雰囲気がいたしませんでした。これだけは、実際に事故調査報告が出されますので我々は非常に興味持って読みますから、そういうようなところは今までのところは心配はなかったなというふうには率直なところは思っております。
  125. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 特に私が聞きたかったのは、弁護士なさっている佐藤先生から、実はその公と官の、そういうふうな係争があった場合、これはいろいろその官の方の資料が万が一というふうなことになったら困るんじゃないかなと思いながら、今、佐藤参考人にもお聞きしたいと思ったんですけれども
  126. 佐藤潤太

    参考人佐藤潤太君) 航空の問題については実は全く素人でございますので……
  127. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 いや、航空鉄道も一緒ですよ。
  128. 佐藤潤太

    参考人佐藤潤太君) そういうことを別にいたしまして、そういうような事故調査委員会が例えば国土交通省と全然別個な形でやるというようなことは、私は必ずしもそうしなくてもいいんじゃないかと、こういうふうに、現在の第六感としてはそういうふうに思います。
  129. 佐藤雄平

    佐藤雄平君 ありがとうございました。
  130. 山本香苗

    ○山本香苗君 公明党の山本香苗です。  三人の参考人先生方、今日は大変お忙しい中、このように貴重な御意見をいただく機会をいただきまして、誠にありがとうございます。  まず、三人の先生方にお伺いしたいわけなんですけれども、今日午前中も、先ほど佐藤委員の方からお話がありましたとおり、審議ございまして、その中で、今回のこの法案の中の一つの大きなポイントになるところ、この運輸行政の中で、各事業者さんがそれぞれ安全管理というものはやるというのはもう第一義的なことではあるけれども、今回、管理規程等を作らせて、そしてそれを届け出させることを義務付ける、最終的にはそれを国がちゃんとチェックする、継続的にチェックするという形を取られることになっているわけなんですけれども、この安全マネジメントの評価というんでしょうか、これにつきまして、在り方としてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、三人の先生方にお伺いしたいんです。  特に、佐藤参考人におかれましては、阪急電車で、私も阪急沿線で育った者でございまして、大変お世話になっていたんだなと思ってしみじみお伺いしていたわけでございますけれども評価される方の立場として、先ほどの解任命令の話もありますが、どういったことを懸念されていらっしゃるのか、懸念される点がございましたら、お伺いさせていただきたいと思います。
  131. 佐藤潤太

    参考人佐藤潤太君) 私は、まず一般論として述べるならば、私は、事故防止の対策については、まず基本的には各企業がその事故検討して対策考えていくということがやっぱり第一次的なものでしょう。それから、二次的には、やっぱり国土交通省とか会社の方においてそういうふうなことについていろいろ検討したものを上げてもらって、そして国としてどういうふうにするかということを検討すべき問題だろうと思います。それから、最終的には、航空鉄道事故委員会というものがちゃんと出て、専門家の方たちによるものがあるわけですから、そういうふうなものでやっていこうということ。これは、ここの、参議院国土交通委員会調査室の八十四ページ以降に航空鉄道事故調査委員会委員長の名前において出されておる、こういうようなことは私は賛成でございます。こういうようなことによってやっていけばいいんじゃないかというように思っております。  それから、おまえは阪急電車に長らくおって、それで阪急電車はそういうふうなことによってやっているかということになりますと、中におった者としては非常にじくじたるものがございます。
  132. 家田仁

    参考人家田仁君) 山本先生の御関心というか御指摘の点なんですけれども、私は、先ほども申し上げましたとおり、事業者計画を立てて、それを国がチェックするというふうにだけ今回の法律改正を読むのは不十分だと思っております。重要なことは、利用者や国民がチェックを、まあチェックって細かい意味のチェックなわけじゃないんですが、意識としてチェックしていくと。これが国がきちんとしたチェックをできる後押しになるんですね。それを、こんなところで申し上げるのも何ですが、先生方には是非お願いしたいと思うところでございます。  それからもう一点は、このシステムの中では安全総括管理者というのが置かれているわけですが、ある意味では、先ほどもあったように、何か問題があると解任できるみたいなことがありましたが、より重要なことは、そういう人が正直にきちんとした安全の仕事をしている限りにおいては、むしろその人を守るということこそが公的セクターや皆さん方のお仕事ではないかと思うところでございます。  以上です。
  133. 稲垣敏之

    参考人稲垣敏之君) 私は、今議論されているものはかなり交通機関の中でも公共性の高いものであるというふうに考えております。したがいまして、国民といたしましては、そういうふうな公共性の高い交通機関の安全を事業者任せで本当にいいのかというような危惧を持っているんではないかと。ですから、国民の視点から考えますと、社会の安全、安心というのを高めてもらいたい、それに対しては国が率先して安全が大事だということをもっと明確にしてもらいたいというような視点があるんではないかなというふうに考えております。
  134. 山本香苗

    ○山本香苗君 家田参考人の正にそこに、ちょっとその後に行こうと思っていたんですけれども、いわゆる評価して、それで単に国がそのまま持っているというのじゃもう宝の何とかになってしまうわけで、持ち腐れになってしまうわけでありまして、これをどうやっぱり使っていくかというところをしっかりやらなくちゃいけないなと思っているわけなんです。  一番最初に意見陳述していただいた中で、いわゆる利用者をどういうふうにインボルブしていくかというお話をされていたと思うんですけれども、今回、いわゆる国もまた事業者もいろんな形で安全に関する情報報告また公表するというところですね、ここのところをうまく使っていかなくちゃいけないなと思っているんです。単に、いろんな形で今JR西日本さんもホームページで一杯一杯情報載せていますけれども、どれが本当に私たちに役に立つ情報なのかよく分からないところもたくさんあるわけなんですね。  この情報の公表の在り方ですね、どういう形でやっていけばいいかと。先生が去年の毎日新聞に書かれた中にも、各社の安全度や快適性を利用者が確認できるような仕組みができれば改善を迫る大きな力になるだろうということなんですけれども、これどういうふうな形でつくっていったらいいのか、もうちょっとお知恵をいただければなと思います。
  135. 家田仁

    参考人家田仁君) 例えばですが、国土交通省が公開している一つの、もう既に公開しているものとして、いろんな車の性能が、あるいは安全性能等も含めて全部分かるようにしていますね。これは一つの先行事例じゃないかと思います。これがどれほど利用者に読まれているかどうかは別ですが、少なくともそういうものをきちんと整理して公開するものであると。あるいは、それを鉄道でいえば、何線のどことどこの駅の間はこんな状況ですよと、ATSは今こんな状況ですが、来年にはこんなことやろうと思っていますよとか、そういうような公開の仕方をイメージいたします。  ただ、一方で、公開していればそれでいいというものではなくて、今いろんな社会基盤につきましては、NPO等々の活動それから普通の主婦の方々の活動等が、そういう情報を使いながらより良い先駆にしていくような活動を随分やっているんですね、まあ道路というか河川では。ああいう手法を是非この運輸事業の分野にも適用していってはどうかと思っております。  以上です。
  136. 山本香苗

    ○山本香苗君 それで、公表の前に、このヒューマン、稲垣先生が入っていらっしゃる検討会の方ございますよね、あの中で、正にいわゆる評価、安全マネジメント評価を含む事後チェックのところで、第三者の、第三者機関、外部機関を活用したらどうかということの一項目、提言が中間報告には入っているんですけれども、この第三者、いわゆる外部の組織による第三者的チェック機能の活用というところ、お考えありましたらもうちょっとつまびらかに御説明いただければと思うんですが。
  137. 稲垣敏之

    参考人稲垣敏之君) 第三者といいましても、例えばいろんな研究機関とか大学とか、そういうふうなところもございますので、それの知見を御利用になればいかがかなというふうには考えておりました。
  138. 山本香苗

    ○山本香苗君 いや、もうちょっといろいろ具体的にお話があるかなと思ったんですが、済みません。  最後に、佐藤参考人にもう一回お伺いしようと思うんですけれども、非常に現場でいろいろやってこられたわけで、私もこの法案は、実は審議入る前にずうっと読んでいて、なかなかイメージがわいてこなくて、現場の方がどう動くんだろうかと。それはまあ法律で規定するより事業者の中でしっかりやっていただく話になると思うんですけれども、単に上からかぶせるわけじゃなくて、現場の方々が働きやすい、本当に安全というものを大切にしなくちゃいけないんだ、これが一番自分たちの使命なんだというところを感じるためにはどういうことをしていかなくてはいけないのか。今、大分いろんな形で時代が変わってくる中で、先輩としてこういうことをやっぱり後輩に伝えていかなくちゃいけないなと思う部分がございましたら、最後にお伺いして終わらさしていただきたいと思います。
  139. 佐藤潤太

    参考人佐藤潤太君) そういうことがちゃんとできるんならば、私は今ここでこんな弁護士なんかやっとりゃしませんよ。なかなかそれができないから、容易なことではないなあと、まあ思っております。
  140. 小林美恵子

    小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。  今日は参考人の皆さん、貴重な御意見をいただきまして本当にありがとうございます。  私は、まず稲垣参考人にお伺いをしたいと思います。  先ほど、航空事故の例を取って御説明いただいたと思うんですけれども、いわゆる事故原因の八〇%はヒューマンエラーとして、その背景には運転員の能力への過大な要求と同時に、先生、組織的要因があるというふうにも御指摘をされました。  その件にかかわって私ちょっとお伺いしたいんですけれども航空の話ではちょっとないんですけれども、JR福知山線の脱線事故に関してですけれども、運転士の心理と行動といいますか、ミスや秒読みの運転遅れに対する厳罰主義とやっぱり密接に関係していたのではないかという点があるかなと思うんですね。残念ながら亡くなられた運転士は、時速七十キロへの減速区間に入る前に十分に速度を落とさなかったのはなぜなのかと。時速三十キロもオーバーという猛スピードで曲線区間に突入した心理的な背景は何なのかと。  JR西日本は、安全というふうに掲げながらも、その中にコスト削減を掲げているという奇妙なところがございまして、収益第一という目標が掲げていたというふうに私は思うんですけども、それと関連しまして、運転の遅れに対する運転士の心理として、徹底した日勤教育、そういうことが運転士の中でもまた日勤教育に回されるのではないかという、そういうプレッシャーが与えられていく面があったんじゃないかなと思うんですけれども、私は、組織的な要因ということの一つとして、運転士がこういうふうに追い込まれていく問題とその背景にある鉄道事業者のいわゆる経営姿勢、この点について先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  141. 稲垣敏之

    参考人稲垣敏之君) 今御指摘いただきましたのは非常に重要な点だと思います。  それで、例えばJR福知山線、私は報道で知る限りではございますけれども、遅れがあった。その定時性を求められる。これに関しましては確かに、何といいますか、まじめな人であれば、先ほど申し上げましたように、無理をして何とかそれを、遅れを取り戻そうというようなことがございます。そういうところにやっぱり追い込まれていく。  御指摘のように、日勤教育も、やっぱり一つヒューマンエラーというのを厳罰主義でというふうにとらえてしまうというのが非常に問題であるというふうに考えております。やはり厳罰主義ではヒューマンエラーは絶対になくなりませんので、そのヒューマンエラーがなぜ起こったのかというのは、その人を処罰してもほとんど意味がないというふうには私は考えております。  まず、そういうところでしょうか。
  142. 小林美恵子

    小林美恵子君 ですので、そういうことを追い込んでいく鉄道事業者の姿勢といいますか、その点について御意見があれば。
  143. 稲垣敏之

    参考人稲垣敏之君) 最近、航空事業者の方のお話を伺ったことがございますけれども、その定時性を求める、そういうところで、やはり安全というのに対して少しでも不安があれば定時性ではなくて安全を重視せよと、そういうようなトップの姿勢というのが打ち出されているようなところもございます。  先ほどのコストを第一にという御指摘がございましたけれども、実際には、輸送機関であるので安全が第一であって、安全はもう前提、大前提であって、その上にコストの削減というのが議論されるべきであろうと、そういうふうに考えております。これは非常にマネジメントの姿勢そのものであろうと思います。
  144. 小林美恵子

    小林美恵子君 安全が第一で、その上でコストのことだというふうにおっしゃいましたけれども、その点にかかわりまして、次に私は家田参考人にお伺いをしたいというふうに思います。  家田参考人も、先ほどの御説明の中に経費の削減と、それと安全費用とその投資の、安全の投資の拡大という関係で御説明があったと思いますけれども、私も、先ほど稲垣先生がおっしゃいましたけれども、何よりも安全が十分費用の面でも大事にされなくてはならないというふうに思います。  そこで、少しお伺いしたいんですけれども、例えばJR西日本は、あの事故のときといいますか、全路線のうち二〇〇四年までにいわゆるATS—Pを設置したのは八%の区間でしかなかったと言われています。この事故の後、会社側はATS—Pを設置したということではございますけれども事故が起こってから言っても仕方がない面もございますけれども、やっぱりしっかりとATS—Pを設置していたならばという点で思いますと、やっぱり悔やまれてならないなということが私は思うところでございます。  そういうふうに考えますと、安全の面でしっかり事業者が投資をしていく、そういう点では費用を惜しまず出していくということは本当に必要ではないかと思うんですけど、この点について家田先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  145. 家田仁

    参考人家田仁君) お答えいたします。  まず、安全に対して必要な投資をしていくと、経費を使っていくというのは、先ほども申し上げたとおり、重要なことだと思っています。  ただ、それはだれが出しているのかというところにもやっぱり配慮が必要で、基本的には鉄道利用者が運賃収入を払って、その中で使っていくわけですね。したがいまして、そこから上がっていく収入をどこに使っていくか。あるときには、利用者はサービスの向上の方をうんと重視するかもしれない。経営者もそうかもしれない。しかし、安全を管理している技術者たちからするとむしろ安全に投資するのがいいんじゃないですかというときには、どちらかといえば安全に出してほしいですね。  ただ、先ほど、繰り返し申し上げていて恐縮ですけれども、大事なことは、国民や利用者が安全にもお金を使ってちょうだい、私の運賃上げてもいいから安全にしてちょうだいという姿勢に持っていくことが重要なんですね。じゃないと、だれも出しようのないお金を安全投資なんかできないわけです。それが一点です。  それから二点目は、結果論として言えばATSということになるかもしれませんが、今鉄道で一番人が死んでいるのは踏切です。じゃ、踏切の方を優先すべきであるというような事業者が仮にいたとしても僕は不思議はないと思います。どこに冷静にお金を使うべきかということこそきちんと考えるべきで、何か一個事故が起こるとそれだけが悪いとなるのは余り冷静かつ正直な議論とは私は思っておりません。  以上です。
  146. 小林美恵子

    小林美恵子君 私は、公共交通としてはやっぱり事業者の責任というのは問われていくものだというふうに思っております。  あと二点、佐藤参考人にお伺いをしたいというふうに思います。  先ほどの話ともちょっとかかわるんですけれども、安全をやっぱり事業者が担保していく上では、私はやっぱりマンパワーも本当に大事だというふうに思うんです。  先生、著書の中にこういうくだりがございました。主要な駅に信号士や転轍士が配置されない状態の下では、駅で信号機や転轍機が故障したようなときに、正常な運転に戻るまでに今までよりも時間が掛かる場合が多いようですと、いわゆる復元力が低下していると言ってよいでしょうということで、駅の運転責任者の項でこういうふうに述べられております。  実は私も大阪でございまして、阪急電鉄の労働者の方とお話をさせていただいたことがございまして、その労働者の方は、かつては車両点検するときには金づちでもって車両をたたいて、その音の響きでそこがひびが割れているんじゃないかなというのを発見するとおっしゃるんですね。今はもうモニターだけだというふうにおっしゃっておりましたけれども、いや人の力というのは本当に大事だなというふうにそのお話を聞いて改めて思ったんですけれども。  実は、JRのいわゆるJR二十年検証委員会というのがありまして、御存じかなと思いますけれども、「JR十八年の検証」という冊子をお出しになられました。そこで、この間JRがどれだけ人を削減してきたかということが冊子に報告しておりまして、JR西日本じゃない、これはJR東日本の場合を取っていますけれども、例えば十八年間でいきますと一万四千七百五十九人が削減されたと。職種別でいきますと、工務・設備部門で九〇年三月期からは七千二百三十人、四八・八%の削減、駅部門では四千六百十人の二七・六%、運輸車両部門では三千五百九十人の一五・二%と。プラットホームの駅員の無人化、駅員が一人もいない無人駅は四六・八%になるというふうにありました。  私は、やっぱりこういう状態で大丈夫かなというふうに思いまして、やっぱり運輸の安全を守る上でも改めてマンパワーを見直すべきだというふうに思いますけれども先生、いかがですか。
  147. 佐藤潤太

    参考人佐藤潤太君) おっしゃるとおりです。  ただしかし、これはまあ別な話なんですけれども、各駅に信号所があって、信号所の係員というものがいたわけですね。ところが、その信号所の係員を全部一か所に集めて、そして集中制御方式にしました。そういうふうなことのために、私がそこに書いたように、事故があったとき、若しくは何か信号が故障したときに復元力が非常に低下しているわけです。そのことを私、そういうことをやっているときに、ヨーロッパに運転協会から指定されてドイツへ行ったときに聞いたんです。ドイツはそういう集中制御方式にして電車がこういうふうになっていることをどう思っているんだと、何か対策はあるかと聞いたら、一言、ああ、お客さんに待ってもらいますと。そう言われたら、もうその反論ができないわけですよね。  だから、この現在のように集中制御方式にして電車がはっきり言えば遅れるということについては、日本だけじゃないんですね。そういうようなことがなされてきておるということは、私たちとしても、各国でそういうふうにやっていると、日本だけでそういうふうにせぬようにはいかぬということのように思います。  しかし、そういうようなことはいろいろな面で見られているわけですね。今日もちょっとそういうことを、この線路工事の作業者の人事事故、こういうように線路の補修工事をする、架線の線路工事やる、そういう人に電鉄の社員は余りおりません。みんな請負なんですね。  そういうようなことで、いかに合理化をしていくかということを努めておることだから、マンパワーをある程度、大いに力を入れて電鉄がやっていけということを言葉としては聞きますけれども、実際問題としては容易なことではないなというように課題として受けております。
  148. 小林美恵子

    小林美恵子君 では最後に、先生弁護士でもいらっしゃいますので、その点でお聞きしたいんですけれども、今回の法案事故調査委員会目的や所掌事務が一定改善の方向へ改正されている面がございます。それに関しまして、私は事故調査委員会が被害者支援の観点での調査報告も必要ではないかなというふうに考えているんですけれども弁護士としてどのようにお考えか、この点お聞きします。
  149. 佐藤潤太

    参考人佐藤潤太君) 全く同感でございます。
  150. 小林美恵子

    小林美恵子君 どうもありがとうございました。
  151. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 社民党の渕上でございます。  三人の参考人の方々、本当に御苦労さんでございます。今日はありがとうございました。  まず、家田参考人にお伺いをいたしますが、私は、事故調査委員会を設置をして事故の原因について究明すべきだというのはずっと言い続けてきて、ようやく今調査委員会が設置ができました。それで、やはりどうも、先ほどお話ありましたように身内意識が働くんじゃないかと。したがって、その事故調査委員会に対する国民の評価というものを得られるためには、やっぱり第三者、独立機関というのが必要ではないかというふうに言い続けておるわけでございますけれども、その点、先生のお考え、先ほど少しお伺いをいたしましたが、もう少し、今の調査委員会、独立した調査委員会をどうあるべきかということについて御示唆をいただければと思っています。  それと、今度の法案の中で安全総括責任、監督責任者というんですかね、正式な名称、ちょっと。これも、やはり企業であれば身内意識が働くと思うんですね。非常に強い身内意識が働くと同時に、そういう箇所をつくれば、そこの責任者が責任を取らないようにどうするかというのをやっぱり考えるんじゃないかと私は思うんですね。そうすると何が起こってくるかというと、やっぱり事故の原因を隠蔽をしていく、そういうようなことが起きていくのではないかと、このように思うんですが、その傾向がますます強くなって、結果的には現場における厳罰主義というのが横行していくのではないかというように思うんでありますが、その点、先生はどのようにお考えになっているのか。もし、企業にもやはりどこが、どういうセクションがやっていくのか。例えば、企業の監査役のところがやるのか営業のところがやるのか、それとも独立させるのかではまたここの性格も変わってくると思うんでありますが、その点どのようにお考えになっておられるのか、お伺いいたします。
  152. 家田仁

    参考人家田仁君) まず、事故調査委員会のお話でございますけれども、独立した組織でやったって、それはそれでいいんじゃないかとは思っています。  ただ、今のような組織で何か不都合が生じているかというと、余りそんな印象は持ってございません。というのは、あそこに調査分析されている委員の方々、別に鉄道会社の人じゃなくて全く独立したところから来ている方ですし、みんな実に真摯に御活躍されている。  ただ、先ほどどなたかの先生からもお話がありましたけれども、もう少し透明性を高めて、国民から見えるような姿にすることが私は課題じゃないかと思っております。それによって、先生が御指摘のような点が十分担保できるんじゃないかという印象を持っています。  それから二点目。企業の中における、つまり、運輸事業者の中における安全総括責任者意味合いでございますけれども、これは、従来のようにこういう方策がなくても何らか安全問題を担当する人はいるはずです。で、必ずやっているはずです。ただ、大事なポイントは、こういう人たちをきちんと法律で指定して、それの責務をきっちりしておくと。ある意味では、経営トップから、何というんでしょうかね、やや対立的な場面になっても頑張ってくれというメッセージを送っているんですね。したがいまして、そういう人たちが事柄をあいまいにするというモチベーションよりは、むしろきちんとして、そして駄目なものは駄目、運転停止するべきものはする、速度を落とすべきものは落とすということをきちんと公的セクターが支援できると、そういうシステムになってきたというふうに私は評価しております。  以上です。
  153. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 次に、佐藤参考人にお伺いいたしますけれども、今まで事故に関していろんな現場で法的に携わってきておられて、やはり事故が起きたらすぐ現場の人が責任を追及される。で、そういう今言われたような、先ほどお話あったような、現場の人が常に処罰の対象になっていますね。ですから、そこのところが、やっぱりこの事故原因をなくしていく場合に、責任の所在、会社全体で取っていこうとかというのが余りないのじゃないかと。会社の中にも、起こした現場の人が悪いと、これで大体事を済ませようとしているんじゃないかというふうに思うんですが、その点、先生、どのようにお考えなのか。  それから、これから先、航空であれ船であれ、鉄道であれ自動車であれ、大きな事故発生をした場合に必ず問題になってくるのが被害者の補償の問題。ここのところをもう少し、どういうふうにしたらいいかちょっとまだ分かりませんけれども、私は被害者救済のための一定ルールみたいなのをきちっと法でつくったらどうかなというふうに思っているんですが、ここのところが常に争いになって長く民事上の解決が見ない、そのためにいろいろ苦労されているというようなお話を聞きますので、その点、そういう被害者補償のためのルールみたいなものはつくっておった方がいいのかどうなのか、どうお考えなのか、その点、いかがでございましょうか。
  154. 佐藤潤太

    参考人佐藤潤太君) まず、事故が起きましたときに現場だけで、その監督者というか管理者というか、そういうふうなところに責任が及んでないんじゃないかということについては、私は弁護士としては、なるほどそういうこともあるかなという点で少し反省をいたします。どうしても司法の場に出ると、これについての責任は、非常に明確であると、ちゃんと文書に書いてあるとか何かというふうなことがないと、どうしてもそこについて刑事責任とかなんとかということを論ずることはちょっと弱いんですね。だから、何かあったときの責任は、非常に責任が明確である人に対して重く行って、そうでない人のところに薄く行きやすいということは、これは司法におる者としては反省しなきゃいかぬ点があるんじゃないかというように思っております。  ただ、そういうような場合でも、業務の管理責任がどうだったというような面で十分に課長として、部長として、取締役として、そういうことを十分監視してなかったんじゃないかということで、刑事責任はないけれども、社内における例えば降職処分とか、それからそういうような形でその人の責任を問うているということはございます。だから、そういうようなことでは司法の、その法律、裁判所での判断とはまた別な判断というものが私はなされておるんで、現場だけの責任で、非常に責任が明確な人だけをやって、それでやや薄いとかというようなときをネグレクトしているということでは全くないと、こういうように思います。  それから、過去のいろいろの体験があって、そういうようなものを一つルールにしていかなきゃいかぬのじゃないかということは全くそのとおりだと思います。大いにそれを勉強しなきゃならぬと思っております。
  155. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 最後に稲垣参考人の方にお伺いをいたしますが、先生のこのいただいたチャートの四番の一番下に「「墓標安全」を脱却し、「予防安全」の実現へ」と。誠に当を得た言葉だと思いますね。  これは私、東武の竹ノ塚の踏切事故、このことを考えますと、人柱が立たないとどうも安全問題については積極的に動かないという国民性があるのではないかと。ですから、本来ならばこの事故は起こらなくていい事故だったと私は思っているんです、竹ノ塚の事故はですね。あそこも二、三百メートルちょっと歩けば別にちゃんと歩道があるわけですから、そこまで行っていただければいいんだけれども、それを行かずにそこに行っているから。  逆に言うと、ここではヒューマンエラーかもしれないけれども、今度は守らなきゃならない利用する側のヒューマンエラーもあったんじゃないかと思うんですが、そこら辺りの我が国における安全に対する人の教育というのは、先生、どのようにお考えになるか。ただ、余りヒューマンエラー、エラーと言うと、そこの現場に携わっておる人たちだけの問題のように思うんですね。ですから、私はそうではないのではないかと。安全という問題を考えていく場合に、人柱が立たなければ結果的には安全問題を考えないという大きな日本国民のヒューマンエラーみたいのがあるんじゃないかというふうに思っているところなんですが、先生はどのようにお考えなんでしょうか。
  156. 稲垣敏之

    参考人稲垣敏之君) 今の御指摘は非常に重要だと思います。  我々も教育の方に携わっておりますけれども、安全をどうやって教育するかというのは非常に難しい問題かもしれません。でも、日本の特徴といたしましては、今までは日本というのは例えば世界で一番安全であって安心な国であったと、そういうような、安全というのはもうお金も何も出さなくてもそのまま存在しているものだというようなことが我々がもう身にしみて今までからも感じてしまっていたと、そういうふうなところが非常にポイントであろうかというふうに思います。  ですから、安全というのは、実際にはかなりお金も掛けないといけないし、努力もしないといけない、自分の何か身を切るようなところもなければならない、それで初めて安全というのは保つことができる非常に不安定なものであるというような認識というのが社会に必要なんではないかなというふうに思っております。
  157. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 その場合、例えば今の鉄道であれ、いろんな施設というのは大変古くなってきていますね。だけれども、非常に近代化されて技術が発展をしてきています。そうしてくると、やっぱりヒューマンエラーというのは、その技術に対する教育みたいなものはすべてにおいて行わなきゃならないと思うんですが、そこら辺のところの足りないところがヒューマンエラーとなって現れてきているんじゃないんですか。そうではないんでしょうか。
  158. 稲垣敏之

    参考人稲垣敏之君) そういうのもおっしゃるとおりでございまして、我々は、とにかくシステムをつくったと、新しい高度の技術のシステムをつくった、それをうまく使ってくださいと、こういうふうなスタイルで今までどうも進んできたようでございますけれども、実はそうではないと。人間の特性というのを踏まえた上での技術システムというのを考えていかなければならないと、そのようなところが、今我々も研究課題でもございますし、それから、予防安全を実現していくためにも、やはりこれは技術的な課題、様々なものがございますけれども、単に技術システムだけの問題ではなくて、人間の特性、心の問題ですよね、そちらの観点が必要だというふうには認識しております。
  159. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 終わります。ありがとうございました。
  160. 羽田雄一郎

    委員長羽田雄一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言お礼を申し上げさせていただきます。  参考人の方々には、長時間にわたり御出席をいただき、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。今後、皆様方の御意見委員会の審議の中で十分に活用していきたいと存じます。  委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十五分散会