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2004-03-16 第159回国会 参議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年三月十六日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月十五日     辞任         補欠選任      市田 忠義君     井上 美代君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         岩永 浩美君     理 事                 加治屋義人君                 段本 幸男君                 常田 享詳君                 和田ひろ子君                 紙  智子君     委 員                 市川 一朗君                 太田 豊秋君                 小斉平敏文君                 松山 政司君                 三浦 一水君                 小川 勝也君                 郡司  彰君                 信田 邦雄君                 羽田雄一郎君                 千葉 国男君                 福本 潤一君                 井上 美代君                 岩本 荘太君                 中村 敦夫君    国務大臣        農林水産大臣   亀井 善之君    副大臣        農林水産大臣  市川 一朗君        環境大臣    加藤 修一君    大臣政務官        農林水産大臣政        務官       福本 潤一君    事務局側        常任委員会専門        員        高野 浩臣君    政府参考人        内閣食品安全        委員会事務局長  梅津 準士君        外務省経済局長 佐々江賢一郎君        厚生労働省健康        局長       田中 慶司君        厚生労働省医薬        食品局食品安全        部長       遠藤  明君        農林水産大臣官        房総括審議官   村上 秀徳君        農林水産大臣官        房技術総括審議        官        坂野 雅敏君        農林水産省総合        食料局長     須賀田菊仁君        農林水産省消費        ・安全局長    中川  坦君        農林水産省生産        局長       白須 敏朗君        農林水産省経営        局長       川村秀三郎君        農林水産省農村        振興局長     太田 信介君        農林水産技術会        議事務局長    石原 一郎君        水産庁長官    田原 文夫君        環境大臣官房審        議官       小沢 典夫君        環境省環境管理        局水環境部長   吉田 徳久君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○農林水産に関する調査  (平成十六年度の農林水産行政基本施策に関  する件)     ─────────────
  2. 岩永浩美

    委員長岩永浩美君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告をいたします。  昨十五日、市田忠義君が委員を辞任され、その補欠として井上美代君が選任されました。     ─────────────
  3. 岩永浩美

  4. 岩永浩美

    委員長岩永浩美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 岩永浩美

    委員長岩永浩美君) 農林水産に関する調査のうち、平成十六年度の農林水産行政基本施策に関する件を議題といたします。  本件につきましては既に説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 おはようございます。自民党の小斉平でございます。  大臣、大変御苦労さまでございます。衆議院での予算委員会、参議院での決算、予算委員会、あるいは対外的にはアメリカでのBSEWTOFTA国内では鳥インフルエンザと、もう誠に寝る暇もないぐらいでありまして、大臣のその真摯な姿勢に対してまず深く敬意を表したいと思います。  私は、大体薩摩隼人でありますから、口で人は余り褒めるなというような教育を受けました。それでありますので、今まで余り大臣敬意を表することも余りしなかったのでありますけれども、先輩たちが、与党であるからたまには褒めろと、このように言われましたので冒頭申し上げるわけでありますが、決して口先だけではなくして心から深く敬意を表しておるということをまず冒頭に申し上げておきたいと思います。  それで、まず先日の所信についてお伺いをいたしたいと思います。  大臣所信の中で、現在の農政の最大の課題である新たな食料農業農村基本計画策定に向けた取組を行うと、このように述べられました。平成十一年に制定をされた現在の基本計画、この中では自給率の四五%達成というのが唯一の具体的な目標になっておりましたけれども、今日まで一向に自給率向上しない、していない。実現のための具体的な施策が、政策が明確でなかった、あるいは目標達成への努力が足りなかった、このように言わざるを得ないと、このように思います。  そこで、新しい基本計画策定に当たっては、自給率四五%達成、これの期間を延長するといった声も聞こえてくるわけでありますけれども、そういうことは断じてあってはならないと私は思います。  新たな基本計画自給率四五%の達成、これをどのように実現をされるお考えなのか、大臣決意政策のイメージ、方向性、どのように考えていらっしゃるのか、お聞かせを賜りたいと思います。
  7. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 大変日ごろから委員には農林水産行政進展のために力強い御支援を賜り、感謝を申し上げる次第でございます。  今御指摘食料自給率の問題、基本計画見直しの作業、昨年十二月、食料農業農村審議会、そして企画部会諮問をし、今精力的にいろいろ御議論をちょうだいしておるわけであります。  その中で、カロリーベース食料自給率目標、このことにつきましては、基本計画におきまして個別品目ごと消費及び生産における取り組むべき課題を明示した上で、これらの課題が解決された場合には個別品目自給水準を積み上げたものとして四五%を設定したところであります。  なお、個別品目自給水準、そういう面で、例えば米の消費平成二十二年に一人当たり六十六キロと、これを想定し、主食需要九百六万トン、生産も同じく九百六万トンと、このように一〇〇%を目標としておるわけであります。しかし、米の消費、現実には現在十四年で六十二・七キロと、こういうようなことであるわけでありまして、自給率、これまで五年連続で四〇%というような現状であるわけであります。その向上を図るためには、基本計画に明示された消費と併せて生産面における問題解決に向けた更なる努力が必要と、このように考えております。  とりわけ、国民食生活の変化、食料自給率低下に加えて栄養バランスの崩れ、こういうことが生じ、また生活習慣病、こういう問題も招いている実態を考えますときに、今般の基本計画見直しに当たっては、生産面と同時に消費面からのアプローチ、これを考えなければならないと。そういう面で、食生活の大切さを教える食育推進と、またさらに、米を中心とした日本型食生活、この復権、これを積極的に進めてまいりたいと、このように考えておるわけでありますし、そのことを検討しておるわけでもございます。  新たな基本計画の検討に当たっても、国民のニーズにこたえる農政実現が図られるよう、万全の対応をしてまいりたいと、このように考えております。
  8. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 三月十日、我が国メキシコとのFTA、これを大筋で合意をして、十二日には閣僚によるテレビ会談最終合意がなされたところであります。メキシコとの合意により、今後、韓国、マレーシア、タイ、フィリピン等とのFTA交渉影響が出てくる可能性が出てきたわけであります。当然、農産物林産品関税引下げ撤廃が焦点になってくると思われます。WTOFTA交渉の結果、我が国自給率と大きくかかわってくると思います。農林産品輸入を増加させる一方で我が国自給率、これの目標である四五%の目標というものを達成、これを目指すことが本当に可能なのかどうかと、このように思わざるを得ません。  例えば林業について申し上げますと、住宅建設ブーム木材需要が非常に増加をした昭和三十九年、この年に木材輸入自由化を完了をいたしております。それから四十年たっておるわけです。当時八〇%もあった自給率、これが今現在一八%、ここまで低下をしておると。安い木材がどんどん輸入されてきて、国産材は売れなくなっているんです。その結果、結局、放置林、これが非常に急増しておる。前回も申し上げましたけれども、宮崎県の場合、一町歩の、三十年、四十年たった杉を一町歩切って、掛かりのいいところ、手元に残るの八十万なんです。そこに植栽をまた一町歩やろうとすれば百五十万掛かるんです。ですから、だれも木を植えない。だから、伐採放置林というのが非常にどんどん増えてくる。全国的に見ても七〇%に達しておるんですよ。  このような状況が続くと、表土の流出とか土砂崩れ、こういうものが、災害がだんだんだんだん増加してくるのは御承知のとおりであります。その結果、これらの災害に対して国費をつぎ込まなくてはならないと。で、国土を守れなくなると。農業についても全く私は一緒だと思うんです。食料自給率が下がる、安い農産物輸入される、農業がやっていけなくなると。いわゆる一番中山間地、そこからどんどんどんどん、耕作放棄地がどんどん増えてきて、国土が荒廃をすると。林業現状というのは、私は正に農業の未来を暗示している、この縮図だと思わざるを得ないと。  こういった経験があるにもかかわらず、農村を守る中長期的な対策というものが見えてこない。大臣は、FTAがもたらす国内農業への影響あるいは自給率への影響、これらのものをどのようにお考えか、またそれに対する対策、併せてお聞かせを賜りたいと思います。
  9. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) FTA交渉に当たりましては、必要に応じて関税撤廃例外品目を設ける、あるいは関税割当て制度や長期の経過措置を設けると、こういうようなことで、輸入増大国内生産にそのまま量を置き換わるということのないよう留意をして対応しているところであります。  一方、国際化進展の中で、やはり中長期的には農業構造改革を進めると、このことは必要なことであるわけでありまして、国産農産物消費者に選択されるよう品質の向上とまた低コスト化等国際競争力強化推進していくことが必要と、このように考え、今基本計画見直し等諮問をし、そしてこれを実施すべく努力をしてまいりたいと、こう考えております。そういう中で、今度のメキシコとの農産物関税交渉、これにつきましても今の点を十分留意をして交渉に取り組んだわけであります。国内農業の健全な発展、これを図りながら、同時に消費者選択範囲拡大ができるということに、合意に達することが考えられる。  こういうわけで、今後、韓国ASEAN諸国とのFTA交渉、これが本格化するわけでもあります。そういう面で、農産物の実質的な関税撤廃を伴う我が国初FTAであります今回のメキシコ交渉経験を生かしながら、我が国農林水産物輸出拡大も視野に入れて、我が国農業、この構造改革の円滑な推進によりまして、積極的な戦略、このことを留意をして対応してまいりたいと、このように考えております。
  10. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 この自給率向上という大目標達成するためには、不退転の決意そして国の強烈な意志と情熱がなければ私は不可能だと、このように思います。私どもや国民、これを本気にさせる基本計画策定に御努力を賜りたいとお願いを申し上げたいと思います。  続きまして、BSEの問題についてお伺いをいたします。  アメリカでは、BSE検査のデータを改ざんしたというような問題が表面化をしたわけでありますけれども、我が国への輸出再開に向けて、日本への輸出用に限り全頭検査を実施するという業者やら、あるいは生後三十か月以内の牛肉のみを輸出をするといった業界団体の声が出始めておる。  我が国牛肉は、BSE発生以来全頭検査を行っておるわけでありますけれども、アメリカは、我が国BSE発生した、たった一枚の通告で一切合財それ以降輸入を認めてない。宮崎にもこの認定アメリカ向け認定した工場があるわけなんですけれども、その条件たるや、とにかくやたら厳しいんですよ。私がもらったその条件認定の要綱、これだけでも三十五ページあるんです、三十五ページ。そして、その上に抜き打ち検査まで、抜き打ち検査も度々やる。それぐらい厳しいことをやっておる。これら、HACCPに沿った条件をクリアして、なおかつ全頭検査をしておるにもかかわらず、我が国BSE発生以降の輸出はストップしたまま、そのまんまなんです。アメリカはまだ当然国内の安全、安心基準、これに基づいて輸入しておると、このようにしか思えない。  我が国も当然、国内の安全と安心、この基準を厳格にアメリカと同様守るべきだと私は思います。お互いに国内処置同等のものを守ってもらうということは国際協定上も私は問題がないと、このように思います。国内の食の安全基準を満たしてないものや、発生国からの輸入清浄国になるまで一切しないとはっきり言った方が私はすっきりすると思うんです。今後の方針をお聞かせを賜りたいと思います。
  11. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 米国牛肉輸入の問題、これはもう既に何回か私申し上げておりますが、我が国と同じ全頭、屠畜場における全頭の検査と併せて特定危険部位除去我が国と同じ基準、これを基本的なことでなければならないと。  ベネマン農務長官あるいはゼーリック通商代表、また昨日はボーカス上院議員が私のところにお見えになりまして、私は昨日はこの上院議員から、我が国の科学的な知見と申しますか、国際基準でどうだとか、こういろいろなことをおっしゃいますけれども、私は、我が国BSE発生の問題、このときのことを十分考えなければならないと。そして、そういうことと同時に国民健康保護、そしてさらに食品の安全、安心、こういう点で全頭検査をしている、特定危険部位除去をしていると。そういうことで今、あの当時三割、消費が三割に落ちたと。それが今日、十頭目、十一頭目が発生をいたしましても消費は減少しないと、こういうことになっていると。  これはやはり国民がそのことを、全頭検査特定危険部位除去、こういう面で安全そして安心というものを評価をされていることであるわけでありまして、このことを再三申し上げ、科学的な問題でと向こうはおっしゃったわけですが、私は、二十三か月、二十一か月の発見も我が国ではそれができたわけでありますから、そういう面でもやはり全頭検査特定危険部位除去ということは重要な基本的なことと再三申し上げ、今日まで関係の方々にそのことを強く申し上げておるわけでありますし、引き続きその考え方で進めてまいりたいと、こう思っております。
  12. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 先ほど申し上げましたように、我が国発生以来、発生したときにアメリカ農務省は、一方的ないわゆる発表で特別な通知してないんですね。一方的な、もう日本から輸出したら駄目ですよというような一方的な発表しただけで通知もしてないというような状況にあります。ですから、やっぱりここはやっぱり毅然とした態度でこの問題には対応していただきたいと私は思います。  ところで、今申し述べましたように、アメリカへの牛肉輸出については米国から非常に強い厳しい条件を付けられておると、このように申し上げましたけれども、逆に国民の安全、これを守るという観点から言えば、これは当然なことだと私は思うんです。むしろ国民の安全を守るためには、どういうところでどのように生産や処理がなされておるか、あるいは我が国安全基準を満たしておるか、条件を付けたり頻繁にチェックをすべきだと、このように私は思います。  まあ、どことは言いませんけれども、ある国では牛の成長を早めるために成長ホルモンを使用しておるというようなうわさもありますし、また、えさに日本で禁止をしておるものを混入させているんではないかとか、衛生的に問題があるんではないかとか、輸入食品基準、いわゆる水際ではなく現地生産現場における基準をやっぱり作って相手国我が国基準をクリアさせる、その必要があると思います。現状はどうなっておるのか、お聞かせを賜りたいと思います。
  13. 遠藤明

    政府参考人遠藤明君) 輸入食品につきまして、食品衛生法におきまして国内生産、製造される食品と同一の基準を適用し、同等安全性確保を図っているところでございます。特に生産加工段階における衛生管理検査が必須と考えられる食肉、フグや生食用カキについては、我が国同等以上の基準に基づき衛生的に処理されたこと等に関する輸出国政府機関証明書輸入時に提出することを義務付けております。また、他の食品につきましても、農薬や動物用医薬品残留などの問題が発生した際には、必要に応じて二国間協議現地調査等を通じて残留防止対策検査結果についての輸出国政府証明輸入時に提出させることとしております。  厚生労働省といたしましても、輸出国段階における衛生対策は重要と考えており、平成十六年度から新たに実施する輸入食品監視指導計画に基づき、輸入時の検査違反となった食品中心に二国間協議現地調査推進するとともに、輸出国政府に対して我が国が求める衛生水準確保のため、生産製造段階での対策の実施を求めてまいりたいと考えております。
  14. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 また、今年の三月、北海道で七歳になる死亡牛からBSEが見付かったわけでありますけれども、過去十例のうち七例と同じく、九六年春生まれの牛であります。感染ルート解明原因究明、これはどこまで進んでおるのか、さらに生体での検査、すなわち生前診断法研究開発、これはどのようになっておるのか。この生前診断法が確立すれば、今日行っているような手順も非常に簡単になる、簡略化されますし、経費の削減にもつながる、このように思うんです。世界の動きや国内での研究状況、これをお聞かせを賜りたいと思います。
  15. 石原一郎

    政府参考人石原一郎君) BSE感染牛の生前診断法研究開発現状と見通しについてお答え申し上げます。  BSEの制圧のための研究開発としましては、一つはプリオンたんぱく質異常化機構あるいはBSE発生メカニズム解明、それと同時に、委員指摘の生前診断法開発が重要であるというふうに考えております。現在は、マウスなどを用いまして、プリオンが蓄積したことと関連して体の中で例えば血液なり尿なりがどう変わるかといった形での成分の分析、それと低濃度のプリオンをどうやって検出するかという高感度なプリオン検出法といった研究開発に取り組んでおるところでございます。  ただ、研究推進に当たりましては、牛そのものを使った形での研究開発を進める必要があろうかと思っております。牛そのものを使いました研究開発につきましては、施設が別途、バイオセーフティーレベル3の施設が要るわけでございますが、現在、農業生物系特定産業技術研究機構動物衛生研究所におきまして高度研究施設建設中でございます。本年度中にも完成するんではないかと思っております。  生前診断法開発につきましては、この施設等を活用しまして、できる限り早急に研究開発を進めてまいりたいというふうに考えております。
  16. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 この生体診断法、この確立というのは、我が国世界に先駆ける研究課題だと、このように思いますので、本格的に取り組んでいただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。  次に、鳥インフルエンザについてお尋ねをしたいと思います。  山口、大分そして京都での鳥インフルエンザ発生により、発生農家はもとより、移動制限区域内の農場にも大変な被害が生じておる。しかも、京都の丹波町だけではなくて大阪でも感染したカラス、これが発見されたことで、全国のやっぱり養鶏農家パニック状態に陥っておると言っても過言ではないと、このように思います。  私も、つい先日、地元の大きな養鶏場経営者とお会いしました。そうしたら、言うんですね、もしうちで発生したら破産です、破滅ですと。もうはっきりそのように言われました。  今朝、報道等々によりますと、鳥インフルエンザ対策に関する関係閣僚による会合、これで政府鳥インフルエンザ対策がまとめられたと、このように承知をいたしておるわけでありますけれども、その内容と大臣の所感をお聞かせを賜りたいと、このように思います。
  17. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 今御指摘のとおり、今朝、鳥インフルエンザ対策に関する関係閣僚による会合鳥インフルエンザ緊急総合対策が取りまとめられたわけであります。  第一点として、蔓延防止対策の徹底、発生防止早期通報発生した場合の防疫措置等であります。第二点として、国民の食に対する不安を払拭するための措置。三点として、人への感染防止国民健康確保のための措置。四点目といたしまして、早期通報の促進と被害拡大防止のための法制度の整備、これは家畜伝染病予防法改正でございます。五点目として、養鶏事業者関連事業者対策。六点目として、地方自治団体に対する対応。これを柱にいたしまして、農林水産省だけでなく、厚生労働省等を含めた政府全体としての対策が総合的に打ち出されることになったわけであります。  農水省といたしましては、この緊急総合対策を踏まえまして、引き続き蔓延防止に全力を挙げることとともに、今通常国会家畜伝染病予防法改正案を提出をいたしまして、移動制限命令に協力した養鶏業者に対する助成措置制度化通報義務違反に関するペナルティーの強化等を図ることとしております。  委員からも御指摘のとおり、私も京都現場に参りまして、本当に大変厳しい状況下の中でいろいろな対応をしなければならない数々の問題点、また知事さん始め町長さん、地元皆さん方からもいろいろのお話を承っております。今回のこの総合対策、これを中心に万全の体制を期してまいりたいと、このように考えております。
  18. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 事は緊急を要しますので、一刻も早く万全の処置お願いをしたいと、このように思います。  ただいまお聞きしましたら、各方面にわたる対策となっておるわけでありますけれども、鳥インフルエンザ発生に伴う養鶏農家や風評被害、これへの対策は打つことができても、発生のもととなる感染ルート、これがいまだにはっきりしていない。我が国にどのようにこの鳥インフルエンザというものが来たのか、感染源は何なのかと。やっぱりこの感染ルートが明らかにならないことには養鶏農家のパニックというものは収まらないし、いわゆる防疫体制も後手後手になるんではないかと、このように思います。  今日は、せっかく環境省の加藤副大臣にもお越しをいただいておりますので、農水省と環境省から、感染ルートの究明の現状、今後の見通しをお聞かせを賜りたいと思います。
  19. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 今、先生おっしゃいましたように、今後の発生防止対策を徹底していくためにも、感染経路の究明というのは大変大事な問題でございます。私どもは、二つの手法でもってこれにアプローチをしているところでございまして、一つは遺伝子の解析でございます。それから、もう一つは疫学的な調査でございます。  まず最初の遺伝子の解析の状況でありますけれども、最初に発生をいたしました山口で発見をされましたウイルスにつきましては、これまでにも香港なりベトナムで人が感染した、その人から分離をされたウイルスとは大分違ったものであるということが分かっておりますし、また山口、それから大分、京都というこの三つの例のそれぞれのウイルスにつきましては、極めてお互いに近い関係にあるというふうなことも分かってきております。  また、疫学的な調査でありますけれども、山口と大分のこの二つの例につきまして、その感染経路が疑われるような人の移動ですとかあるいは車両の出入りといったものをいろいろ調べましたけれども、こちらの方からは決め手になるようなものはまだ現在確認をされておらないわけでございます。  他方、これまでの三つの発生地点の周辺ではいずれも渡り鳥の飛来が確認をされておりますし、今後、可能性の一つといたしまして、野生鳥類の何らかの関与があるというふうなことも、そういうことも考慮いたしまして、こういった野生の鳥類のウイルスの保有に関します調査も、こちらの方は特に環境省とも連携をしながら行っていく必要があるというふうに思っております。  これからもこういった疫学的な調査、あるいは海外で分離をされましたウイルスとの突合をしながら、感染原因なり感染経路の検証、究明に当たっていきたいというふうに思っておりますけれども、今朝ほどの鳥インフルエンザ緊急総合対策の中でも、早急に農林水産省の中に専門家から成ります感染経路究明チームというものを設置をいたしました。そういうことが、設置をするということが決められております。この究明チームの下で感染経路の究明に全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  20. 加藤修一

    ○副大臣(加藤修一君) ただいま農水省からも御答弁ありましたように、感染経路の関係につきましては、いわゆる渡り鳥等が関与している可能性指摘されているところでございまして、このため、科学技術振興調整費、これを用いまして関係府省が連携して実施します緊急調査研究、これにおきまして、一つには渡り鳥の渡来ルートにかかわる解析、二つには渡り鳥を含む野鳥のウイルス保有調査、これを進めているところでございます。このうち、山口県の発生地周辺で調査しました野鳥については、ウイルス調査の結果が出ておりまして、高病原性の鳥インフルエンザウイルスは検出されなかったと、このような結果を得ております。  また、昨年来からの鳥インフルエンザ発生しました韓国、ここには環境省職員等を派遣いたしまして、発生地周辺の野鳥の生息状況、これに関しまして情報収集を行っているところでございます。この調査においても、これまでのところ、渡り鳥を含む野鳥について高病原性鳥インフルエンザは検出されなかったと聞いているところでございます。  それから、この対策につきましては省内で対策チームを設けて対応強化を更に図っているところでございますし、今後とも関係省庁との連携を図りながら野生鳥類等にかかわる感染経路の解明に向けて役割を大きく果たしてまいりたいと、このように考えている次第でございます。
  21. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 今、加藤副大臣からお話を賜りましたが、今朝のニュースでちょうど韓国の模様が出ておりまして、野鳥五百羽やったけれどもウイルスは出ないと、ふんの調査もやったけれどもこれからも出てこなかったと。非常に大変な努力をなされておることはもう評価をするわけでありますけれども、先ほど述べましたように、やっぱりこの感染ルートの特定というものを急がないと、BSEいまだにまだ感染ルート確定できない、しかしBSEよりかはるかにこれはパニックに陥る可能性があると、このように思いますので、特段の更なる御努力お願いを申し上げたいと、このように思います。  国民の信頼を得るための安全、安心基準、このうち安全の基準というものは枠をはめて対処できると、このように思いますけれども、安心基準というものはやっぱり行政への信頼からしか生まれてこないと、私はこのように思います。京都での発生により法的整備も含めて様々な対応が進められておるわけでありますけれども、一方、国民に信頼と安心を与える努力、これが私は欠けておるのではないかと懸念をいたしております。  昨年、食品安全委員会、これが生まれまして、国民に安全と安心を与える役割を果たすと私は思っておりましたけれども、ところが今回のこの鳥インフルエンザ発生では、私の思い違いかも、記憶違いかもしれませんけれども、三月の九日の「国民の皆様へ」と題する文書、これに初めて食品安全委員会の名前が出てきたように私は記憶をいたしております。間違いかもしれません。どうも私は対応が遅過ぎる、国民の目にやっぱり食品安全委員会としての姿が見えてこないと、このように思います。  農水省や厚労省では一生懸命やられておるんですけれども、やっぱりもうちょっと食品安全委員会というものが前面に出て、国民食品の安全、安心、これにかかわることを私は直接訴えるべきだと、このように思います。今のままでは発足する前と後の体制、ほとんど変わらないと、こんなに言われてもしようがないと私は思います。完全に独立した機関として国民安心を与えるよう、もうちょっと積極的に責任を果たすべきと私は思いますけれども、今後の対応についてお聞かせを賜りたいと思います。
  22. 梅津準士

    政府参考人梅津準士君) 食品安全委員会は、昨年七月の発足以来、科学的知見に基づく中立公正なリスク評価を実施するとともに、今御指摘国民に対して正確な情報を伝えるというための活動を展開してきております。  特に、このたびの鳥インフルエンザにつきましては、今御指摘の四府省連名での「国民の皆様へ」の発信に加えまして、三月十一日に開催された食品安全委員会においてなぜ安全なのかということを、私どもの委員の提案を踏まえて、より分かりやすい「鶏肉・鶏卵は「安全」と考えます。」というメッセージをホームページに掲載する等の活動をしております。さらに、先週土曜日でございますけれども、有明のホールで専門家による講演会を開催したところでございます。  また、今朝の政府の取りまとめを踏まえまして、テレビあるいは新聞の突き出し等、政府広報を活用した国民への正確な情報の発信について今準備しているところでございます。さらにまた、講演会等についても具体的に予定している、今計画しているところでございまして、今後とも国民に対して科学的見地から食品安全性についての情報発信を積極的に進めてまいりたいと考えております。
  23. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 今の答弁聞いておりまして、今からやるとかいろいろ言われますが、取組されていることは十二分理解をいたします。しかし、もうちょっと私は、先ほど申し上げましたように、国民の目に映るようなやっぱり活動を積極的に、更に積極的にやっていただきたいということを御要望申し上げておきます。  では次に、海外から生体のまま輸入をされておる魚類、あるいは近年増加をしておる養殖用の稚魚などへのウイルス感染症対策、これについてお聞かせを賜りたいと思います。  我が国ではコイヘルペス、これが発生をいたしまして、食用ゴイの輸入は三か月前に停止をしておった。それにもかかわらず、感染経路はいまだに分かっていないと。コイ以外の魚類、これを輸入した際に、その容器あるいは水、あるいはほかの魚にウイルスが付着しておったのではないかと、そういう可能性考えられると。  今日の自由貿易体制や高速化する物流の中で、しかも野鳥による感染も考えられるときにどこかの国でウイルス感染症が発生をしたら、その国からの輸入を止めるだけの検疫体制、これではもう限界に来ておると思わざるを得ません。その国と貿易がある国やあるいは隣接した国で危険と判断される場合には一時的に輸入を停止をする等の対応考える必要があると私は思います。  また、養殖用の稚魚等の大量輸入、これも大きな危険をはらんでおりまして、過剰放養による大規模感染もあり得ると。その場合は、検疫の強化は無論のことでありますけれども、稚魚の需給調整や放養尾数の適正化を図る必要もあると思われます。  世界的な規模でウイルス感染症が同時多発、同時に多発する可能性考えた上で関係法律や検疫体制、この在り方を問い直す必要があると私は思うんですが、いかがでしょう。
  24. 中川坦

    政府参考人中川坦君) まず、現在の水産動物の防疫措置、防疫体制について御説明を申し上げたいというふうに思いますけれども、現状では、水産資源保護法に基づきまして、特定の魚種及び疾病につきまして、これを日本輸入する場合には輸出国政府機関によります検査証明を付けるということを条件として輸入許可をしているわけでございます。  こういった対象になります疾病につきましては、OIEの水産動物の衛生規約の考え方に従いまして、現在、日本でまだ発生はしていない、あるいは発生しているとしてもごく一部の地域に限られている、こういう疾病であって、しかもいったん日本に入ってきた場合には大変重大な問題を引き起こすと、そういう視点から魚種とそれから対象になる疾病を選びまして、輸入の許可制ということにしてございます。現在では、先生おっしゃいましたコイですとかあるいはサケ科の魚類、それからクルマエビ属のエビの種苗について指定をしているわけであります。  ただ、昨年のコイヘルペスウイルス病の発生もありまして、いま一度日本の水産関係の国境措置についてきちっと一回チェックをしてみる必要があるんではないかというふうに私どもも考えております。今年の二月ですけれども、専門家の方々にお集まりをいただきまして水産防疫体制について勉強会を開いておりまして、この夏ごろまでに掛けてどういう点が問題があるかどうかと、あるいはまたそれに対する対応はどうかといった点も含めてこの専門家の方々に議論をしていただいて一定の方向を出していただければというふうに思っております。
  25. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 WTOの新ラウンド閣僚会議が開催をされまして、水産物は鉱工業製品と同列に扱われまして、一律に関税撤廃が提案されたわけでありますけれども、結果は先送りになった。既に乱獲、過剰乱獲状態にある漁業資源に対して、水産物の関税撤廃、これを認めれば更に漁獲量を増やすことにもなりかねない。この総則にも、持続可能な開発の目的への約束を再確認すると明記をされておりまして、関税撤廃の動きというものは、私は総則の趣旨に反したものであると、このように思います。有限天然資源の持続的利用というものは、水産資源の保護とその水産製品の生産調整、この両面から私はやっぱり推進すべきものであると、このように思います。  大臣所信で述べられましたように、林水産物が分野別関税撤廃の対象分野に含まれないよう全力を尽くす、これはもう非常に有り難いことでありますけれども、関税削減方式の動きそのものも私は阻止しなければならない問題だと私は思いますが、大臣の今後の見通しをお聞かせを賜りたいと思います。
  26. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) WTOにおきます水産物の関税問題につきましては、非農産品市場のアクセス交渉グループ、ここで議論されておるわけでありまして、今、委員からも御指摘がありましたとおり、前ジラール議長のとき、いわゆるカンクンの閣僚会議前におきましては、水産物関税撤廃並びに平均関税率の低い我が国に不利な関税削減方式が提案されて、我が国はこれに強く反対をしてきたわけであります。  カンクン閣僚会議におきましては、デルベス議長のペーパーが出ておりまして、この分野別関税撤廃、関税削減方式等の主要な論点につきまして、先進国、途上国のその両陣営の主張の対立と、こういうようなことで問題が先送りされたわけであります。  我が国としても、委員からも御指摘のとおり、今後、有限天然資源である水産資源の持続的な利用の観点から、分野別関税撤廃について水産物が対象に含まれないよう、また、関税削減方式については我が国の水産物の事情に配慮できるよう、引き続き最大限の努力をしてまいりたいと、このように考えております。
  27. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 大臣の大変力強い決意を聞かせていただきまして安心をしたところであります。  次に、マグロの輸入についてでありますけれども、IUU対策、これがポジティブリストにより本格的に推進をすることになりました。このことに非常に大きく期待をしておるところであります。  そこで、IUU対策、これを実効あらしめるためにも、IUU漁船からマグロを積み替えたりしたいわゆる正規許可船、これをポジティブリストから随時外す、そのような対策も必要だと思うんですけれども、この対策は万全なのかどうか。また、これによって我が国へのマグロの輸入量や価格、これはどのように変化すると見ておられるのか。また、生鮮や冷凍、冷蔵についてはその対象になっていないわけでありますけれども、その理由も併せてお聞かせを賜りたいと思います。
  28. 田原文夫

    政府参考人田原文夫君) お答えいたします。  先生ただいま御指摘になりましたIUU漁業、いわゆる違法、無報告、無規制の漁業、こういった漁業が特にマグロ関係でばっこしておりまして、こうしたことが資源の問題あるいは我が国マグロ漁業への影響、非常に大きいものである、こういった認識で、前は例えばこうしたIUUの船籍国からの輸入を制限するというふうな対応等も取っていたわけでございますけれども、IUU船でございますので、例えば船籍国を変えるとかあるいは船自体を変えていくというふうな対応で、もうイタチごっこみたいなことで、十分な対策が取れてこられなかったということは御指摘のとおりでございます。  このため、私ども一昨年から、ICCATでございますとかIOTCでございますとか、こういった国際的な漁業管理委員会、こういったところへ働き掛けてまいりまして、いわゆるポジティブリスト、正規船だけからのものを認めるという対策、これを決議してもらいまして、昨年の十一月十四日からでございますけれども、正式に我が国もこのポジティブリスト対策ということで進めているわけでございます。  具体的には、正規船であります二十四メーター以上の大型漁船が漁獲いたしました冷凍のクロマグロですとかメバチ、こういったものについて経済産業省が発行します事前確認書、こういったものを対象にするということでやっているわけでございます。  率直なところ、やっとこさここまで来たというところでございまして、十一月の十四日から始めたばかりでございますので、効果自体がどういうふうになるかというのはまだ若干見極める必要があろうかというふうに思っておりますけれども。また、こういうふうに大型船の冷凍漁船となりますと、現実的には刺身マグロの供給ということになります。こういったものでございますので、かなりの程度はカバーされているんではないかというふうには思いますけれども、ただ、おっしゃられますように、例えば漁船を二十四メーター未満に小型化するというような動きがあるとか、いろんな話がございます。私ども、そうした動きにつきましては注視してまいりまして、今後ともこのIUU漁業対策、これがしり抜けにならないようにいろいろと努力はしてまいりたいと、かように考えている次第でございます。
  29. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 WCPFCですね、これが今年の六月に発効すると、このように聞いておるわけでありますけれども、同条約における資源管理、これはどのようになっているのか、お聞かせを賜りたいと思います。  外国で大型漁船の駆け込みによる実績作りが行われているということも聞き及んでおりますが、駆け込み漁船への規制、これはどのようになっているのかも併せてお聞かせを賜りたいと思います。
  30. 田原文夫

    政府参考人田原文夫君) WCPFCに関します先生の御指摘でございます。  WCPFC条約は中部太平洋のマグロを管理するということで、加盟国が十三か国批准いたしましたら、その十三か国に達しました六か月後ということでございますので、去る昨年の十二月十九日にニュージーが批准書を寄託したということでございますので、今年の六月十九日に発効が予定されているということでございます。  この中西部の太平洋におきますマグロ漁業、御指摘のように非常に過剰漁獲の懸念があるということでございまして、これまで五回にわたりまして準備会合が、発効に備えました準備会合が開かれておりますけれども、この準備会合におきましては、特に漁船の増隻と申しますか、漁獲圧力を強めるような動き、こういったことの増大を控えるようにというふうな決議等々、こういったことがなされております。  ただ、残念ながら、具体的に国名を挙げますと、特に台湾でございますけれども、こういった国はこうした決議に反しまして大型の巻き網船の建造、増隻を続けているというふうなことでございまして、私ども、度々こうした準備会合でございますとかこういった国際会議の場におきまして、こうした動きに対します警告と申しますか問題点、こういったことは指摘しておりますし、さらに、去る二月の台湾との漁業協議におきましてもこうした問題点につきまして指摘しているところでございます。  いずれにしましても、マグロ漁業は高度回遊性魚種ということで、多くの国が一致して資源管理を行わないと永続して漁獲ができないというものでございますので、私ども引き続きまして、こうした漁獲努力量の増大に関しましては厳正な態度で対応してまいりたいというふうに思っている次第でございます。
  31. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 カツオ・マグロにおいて、成魚から小型魚まで取り尽くして資源の保護に大きな影響を与えておる大型巻き網漁船、これは集魚装置使用に加えて蛍光塗料、それと発光器を使った威嚇装置による漁獲圧力を増大させておる漁船も非常に増えておる。特に、この小型魚に対する漁獲圧力の問題は、資源の持続というものに大きな影響を与える。ですから、我が国のみならず、やっぱり諸外国に対しても強く働き掛ける必要があると、このように思うんですが、現状と取組についてお聞かせを賜りたいと思います。
  32. 田原文夫

    政府参考人田原文夫君) お答えいたします。  カツオ・マグロ漁業に対しますいわゆる大型巻き網漁業の現状でございますけれども、我が国の場合は、先生御指摘されましたように、漁業資源に対します漁獲圧力が強いということで、平成八年以降でございますけれども、三十五隻ということで、許可隻数を制限いたしております。また、許可ごとに操業区域を制限するというふうなことで、この漁獲圧力の増加ということで厳しく抑制的に運用しているところでございます。  ところが、先ほど申しましたように、中西部太平洋海域におきます全世界の巻き網船、これを見てまいりますと、特に先ほど来申しております台湾等を中心といたしました増隻、こういったことが行われておりまして、平成八年は世界全体では百四十一隻であったものが十五年には二百九隻ということで約五割増しという状況でございまして、こうした著しい漁獲圧力の増大というものは今後に懸念材料ということを言わざるを得ないというふうに思っております。  若干繰り返しになりますけれども、先ほど申しましたように、私どもこのWCPFCの第五回の準備会合におきまして、こうした状況につきまして加盟各国等々に訴えまして、決議、こういったことが行われておりまして、恐らく条約発効後におきましてはこうした措置につきまして具体的な検討がなされるんではないかというふうに考えておりますけれども、いずれにいたしましても、マグロという国際共通の高度回遊資源でございますので、私どもあらゆる国際会議等の場におきまして、こうした動きの問題点、こういった点は度重なって指摘することによりまして適正な漁獲管理を行われるよう努めてまいりたいと、かように考えている次第でございます。
  33. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 御承知のように、長年にわたって漁獲量というものは減少し続ける、しかも魚価が低迷をしておりまして、漁業経営者のコスト削減ももう限度なんですね。そういう中でもう経営不振が非常に深刻化いたしております。その一方で、漁船の高度化がこれが進みまして、船の値段もどんどんどんどん高騰しておると。だから、そういう状況で新船建造もままならないという状況に置かれておるわけであります。  宮崎県のカツオ・マグロ漁業では、もう半数近くの漁船というのが船齢十五年以上、現状の戦闘能力では経営の維持、存続すら難しくなっておるというのが現状であります。新船建造は無理としても、船体改造で新船並みのリニューアルを行って何とか苦境を脱しようとして努力をしておる経営者も多いわけでありますけれども、その資金対策が非常に問題なんです。  船体改造には漁業近代化資金から融資されることは承知をいたしておりますが、漁業経営者のこの苦境というものを救うために何らかの対策を講じることはできないのか、お聞かせを賜りたいと思います。
  34. 田原文夫

    政府参考人田原文夫君) お答えいたします。  漁業経営が厳しいということで、漁業者の方々が新造船というよりはむしろリニューアル化、こういったことによりましてできるだけ安全で装備も整った漁船に変えたいという御要望があるということは承知しております。  ただいま先生もおっしゃられましたけれども、例えば漁業近代化資金のいわゆる一号資金と申しますか漁船資金、こういったものを使っていただきながらエンジン等の交換ですとか船体改造のリニューアル化、こういったことは可能でございますし、公庫資金の中でも漁船資金ですとか漁業経営改善支援資金、こういったもの等がございますので、こういったものを使っていただきながら先ほど御指摘になられましたような船体のリニューアル化、こういったことをやっていただけたらというふうに思っている次第でございます。  なお、この償還期限でございますけれども、漁業近代化資金の場合は、漁船本体でございますと償還期限十五年でございますが、リニューアル等の船体以外のものというふうになってまいりますと七年と、こういうふうになっておりますし、それから農林漁業金融公庫資金は、これまで償還期限十二年ということをやっておりましたけれども、十六年度の条件改定で一応十五年まで延ばせるということで対応させていただけたらというふうに思っている次第でございます。
  35. 小斉平敏文

    ○小斉平敏文君 もう最後になりますけれども、京都で浅田農産の会長御夫妻が自殺をされるという非常に痛ましい事件があったわけであります。心からお悔やみを申し上げたいと思います。  空白の一週間と言われるこの鳥インフルエンザ発生から通報までの期間、何があったのか、どのような判断がなされたのか、もう今となりましてはもう会長の心情というものは知る由もないわけであります。ただ、判断ミスがあったということは否定のしようがなく、食の安全と安心、これを守る決意努力の大切さということと、一つの判断ミス、決断の遅れというものが大きな被害をもたらすという重大な教訓として私はこのことは受け止めなければならないと、このように思います。  鳥インフルエンザやコイヘルペス、BSEのみならず、農薬等に汚染された野菜や穀物、また加工食品の添加物等々、あらゆる食物、食べ物において食の安全を脅かす危険性が常に存在をいたしておるわけであります。食料の多くを海外にゆだねておる我が国であればこそ、いついかなる事態にも対応できるよう常に危機感を持って対処する必要があると私は思います。海外機関の安全基準にとらわれることなく、やっぱり世界に先駆けて安全の基準、これを打ち出していく責任と努力、これが求められておると思います。  大臣に、食の安全と安心、これを守る決意をお聞かせを賜りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  36. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 食の安全、安心、これはBSE発生、このことを発端といたしまして、政府におきましては、食の、食品安全性確保すると、こういう観点から、食品安全行政にリスク分析の手法を導入することになったわけでありまして、昨年、食品安全委員会がスタートし、食品安全基本法が制定をされたわけであります。そして、この食品安全委員会におきますリスク評価が行われ、食品安全行政の体制、これは整備されたわけであります。  私ども農水省といたしましては、産業振興部門から独立した食品分野におきます消費者行政、リスク管理を一元的に取り扱うと、そして消費・安全局を昨年七月スタートさせたわけであります。そういう中で、農薬取締法等の食の安全、安心のためのいわゆる規制の見直し強化を図ったところでもあります。  また、今回、この高病原性鳥インフルエンザ対策の一環といたしまして、今国会に、家畜伝染病予防法改正案を国会に提出する予定といたしておるわけでありまして、こうした体制の下で、国民健康保護を第一に、そしてBSEあるいは鳥インフルエンザ等の諸案件に迅速、的確な対応を心掛けていかなければならないわけでありまして、そういう面で、食の安全、安心に対する国民の信頼を回復するよう、更にこれを契機に努めてまいりたいと、このように考えております。  なお、今後とも、食品の安全、安心、こういう点を確保する面におきましては、危機管理、そういう点にも十分意を用いまして、食品安全委員会あるいは厚生労働省と緊密な連携、あるいはまた都道府県との緊密な連携と、こういうものをしっかり確立をして国民の食の安全、安心、これに万全を期してまいりたいと、このように考えております。
  37. 段本幸男

    段本幸男君 自民党の段本幸男です。小斉平議員に続きまして、大臣所信表明に対する質疑をさせていただきたいというふうに思います。  特に、私の場合は、現地回っていて、今農村を、状況を見ると、状況は大変厳しい中、しかし厳しい中にも新しい二十一世紀の農業を求めて何か模索していこう、こういう動きが見られるんではないかというふうに思っています。しかし、前提に食の安全とかいろんな問題があって、なかなか厳しい選択の中での模索だというふうに思います。  そういう折に大臣所信表明でいろんな道すがらを作っておられますけれども、なおいろんな課題を抱えているんではないか、そういった問題について、農政問題全般にわたって幅広く大臣と議論をさせていただきたいというふうに思っています。  まず一番最初に鳥インフルエンザについてなんですけれども、既に同僚の小斉平議員から大まかな部分については既に問いただしがありましたので、私からは更にもう少し現地で起こっている幾つかの細かい事柄について確認をさせていただきたいというふうに思います。  一番最初、現地いろいろ回っていると、小斉平議員も言っていたように、やっぱりパニック状態になっている、これがすべてではないかというふうに思っておりますけれども、そういう養鶏業者の方に聞くと、BSEのときに全頭検査することによって国民の信頼を早く取り戻し消費回復にもつなげていった、そういう何か、この鳥インフルエンザの解決についても何か、それに匹敵するような何か抜本策を何とか示してほしい、また、そっちに、方向に向いていけば解決に向かうんだ、こういう道すがらを是が非も示してほしい、こんな要望が強くあるんですが、大臣にその辺の、既に検討をやられていると思いますが、検討状況をお聞かせ願いたいと思います。
  38. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) もう委員、今、委員から御指摘のとおり、私も京都に参りまして関係皆さん方からお話を伺い、またあの現場に参りますとき、正にパニック、異常な状況下、ある面では災害と、こう申し上げてもよろしいような状況にあるわけであります。  そういう面で、やはり、この鳥インフルエンザBSEの問題、そういう問題と、何といっても、先ほども御答弁いたしましたが、食の安全、安心の、そして国民の健康ということを第一義に施策を進めてまいらなければならないと、このように強く思うわけであります。  今回、鳥の問題に、鳥インフルエンザにつきましては、山口県、大分県のケースは防疫マニュアル、こういう面で防疫措置が講じられたと。しかし、京都の場合は、やはり通報がなく、そして鶏が大量死したと、そういう中でもあの出荷が続けられたと、こういう点で出荷先の食鳥処理場、こういうところでも感染するというような事態になったわけでもあります。  こういうことで、いろいろ、特に鶏の場合、鶏肉、鶏卵、これが人に感染したという事例がこれはないわけであります、そういう報告がないわけでありまして、政府考え方として、国民皆さん方に正確にいろいろお伝えをすると、そういうことにいろいろ努力をしておるわけでありまして、地方紙だとかあるいはまたQアンドA、あるいはまたいろいろ、私ども地方農政局の職員も連日大型量販店であるとかあるいは学校給食等々におきましても関係者のところにいろいろ説明に参ったりいたしております。また、これ、関係省庁連絡会議におきましても、三月九日に食品安全委員会厚生労働省環境省と連名で「国民の皆様へ」というような文書を発表いたしまして、周知を図っておるところでもございます。  今日、インフルエンザの関係閣僚によります鳥インフルエンザ緊急総合対策、こういうものを取りまとめたわけでありまして、いろいろの取組をいたしまして、それらを的確に進めて、安全、安心、この確保に万全を期してまいりたいと、このように考えております。
  39. 段本幸男

    段本幸男君 そうした対策の中で、特に現地の養鶏場では、早くワクチンを使って、これで何とかならないか、蔓延防止を是非してほしいと、こういうふうな意見があるんですが、ワクチン使用についてその道はないのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  40. 中川坦

    政府参考人中川坦君) ワクチン使用の問題、これ大変難しい問題でございます。といいますのも、現在世界じゅうにありますこの鳥インフルエンザのワクチンといいますのは、ワクチンを打ちましても、感染自体、ウイルスに感染すること自体を防ぐことができません。ただ発症を防ぐことができるということで、ウイルスが体の中に入っても死なないでいるということでございます。  ただ、体内に外からウイルスを取り込んでしまいますので、打たない場合に比べると、その便、ふんなどに混じってウイルスを外に排出する量は減りますけれども、やはりまた新たな感染源になるということであります。そういった点が一つの大きな問題点でございます。  それから、二つ目としまして、このワクチンを打った鶏が本当に外からかかったかどうか、感染したかどうかというところのチェックがこれまた大変難しい問題でございます。おとり鶏を使って判別するというふうな方法もありますが、具体的に血清を採って抗体を調べるというようなことをいたしますと、それが外からウイルスに感染をして抗体ができたのか、ワクチンによる抗体なのかというのも、技術的に不可能ではありませんけれども大変手間が掛かるということで、結局、そこの鶏が本当にその地域の、あるいはその群の鶏がウイルスに感染しているかどうかということを発見するのがともすれば遅くなるというふうなことがあります。  こういう二つの問題がありまして、例えば日本にこういったことを、ワクチンを使うとなりますと、どうしても清浄化、日本の地域からこの鳥インフルエンザのウイルスをなくしてしまうという、そういう対策が遅れてしまうと。遅れてしまうとどういう問題があるかとなりますと、ウイルスは世代交代によって、突然変異によって単に鶏に感染するだけではなくて、人から人にうつるような、そういう新たな大変害の大きいウイルスに変異をするというリスクもあります。  ですから、こういったことを考えますと、この鳥インフルエンザに対します防疫対策の要諦、基本は、取りあえず早く、とにかく早く見付けて、小さいうちに淘汰をして、そして撲滅をすると。早期発見をし、早期淘汰をするというのがこの対策の一番の原則だというふうに思っております。この辺は専門家の方々の御意見も、多くの方々そういうふうに見ておられます。  ただ、不幸にして、そういう対策ではなかなか防ぎ切れずに蔓延をし始めたと、発生拡大をするという、そのときの最後の手段としてワクチンの使用ということも一つの選択肢にはなるわけでありまして、日本では今このワクチンは未承認でありますので、まずは海外から輸入をして政府として備蓄をすると。それから、この未承認のワクチンを使うとなりますと、使った鶏の肉だとか卵が本当に安全かどうかといった点、これもまたきちっとチェックをする必要がございます。この点につきましては、三月一日でありますけれども、食品安全委員会の方にこの安全性についての諮問を行っております。現在御審議をいただいておりまして、三月の末には答申をいただけるんではないかというふうに思っております。  今申し上げましたように、このワクチン、大変使用が難しい、またマイナス面も多いということで、私どもとすれば大変慎重な対応をしていく必要があるというふうに思っております。
  41. 段本幸男

    段本幸男君 ワクチン使用については、今の段階では少なくとも非常に難しい段階だということのようですけれども、いずれどういうことが起こってくるか分からない。そのときにおさおさ怠りなく準備だけはしていただきたいというふうに思います。  それから、風評被害について一つお伺いしたいんですけれども、先ごろ福井県の方に行ったら、福井県は京都の丹波町から三十キロで円形を描くとごく一部だけがそのエリアとして入るそうです。福井県の方で検討されたら、そのエリア内には影響あるような養鶏場はないということで制限区域から外されたようですけれども、その一部が入っただけでもう福井県の採卵業者から卵を買うのはよそう、スーパーがそういう措置を取ったという話も聞きました。  もう非常に、できるだけ安全にというのはいいんですけれども、それが過剰反応することによってその地域に営む養鶏農家なんかに非常に影響を与えているということでございまして、やはりこういう風評被害に対して、これはもう行政の方でいろいろな形で指導していただく以外ないんだろうというふうに思うんですけれども、どのような対応を取られようとしているのか、お伺いしたいと思います。
  42. 福本潤一

    大臣政務官福本潤一君) 段本委員におかれましては、現地を回られて様々な風評被害対策対応していただいたということを聞いております。農林水産省といたしましても、亀井大臣京都、関西に行かれましたし、私も山口県、熊本県、大分県、香川県回って、この対策、検討してまいったところでございます。  具体的に、鳥インフルエンザに、発生に伴いまして風評被害の防止対策ということで、農水省、最初に鶏肉、鶏卵に関する正しい情報に係るPR活動をいたしました。地方紙四十七紙への広告の掲載、小売店舗ポスター及びQアンドAの配布を行っております。さらには、地方農政局、また地方農政事務所において鶏肉、鶏卵取扱店舗を巡回いたしまして、風評被害をもたらすような不適切な表示に対し個別指導を実施しております。  さらに、発生県産であることだけを理由として鶏肉や鶏卵の取引拒否を行わないように関係団体等に対し協力要請を実施するとともに、地方農政局、例えば近畿農政局では大手量販店の本部等に直接足を運んで協力要請を行っております。同様に、学校給食において鶏肉や鶏卵を不使用としている教育委員会等に対しましても、地方農政局、例えば近畿農政局では直接足を運んで協力要請を行っておるところでございます。  このほか、正しい情報の伝達、これを第一に、三月九日付けで、食品安全委員会厚生労働省環境省と連携し、政府として国民に対し鶏肉、鶏卵の安全性等について都道府県を通じて周知を図ったところでございます。  いずれにいたしましても、このような取組により、今後とも風評被害防止に対してきめ細やかな対応を行ってまいる所存でございます。
  43. 段本幸男

    段本幸男君 今言ったようなところは、将来、対策の対象にもならない、言わばはざまになるところ。そういうところで農家が発信しているSOSをきちんとやっぱり農水省も受け止めてやって、どういうふうに指導するのか、きめ細かな、福本務官おっしゃったような対応お願いしたいと思います。  それからもう一点。  先ごろ滋賀県の方に行ったら、カラスに感染が確認されてから、もう各地は戦々恐々としている。特に、琵琶湖を抱え水鳥が一杯いるものだから、一体どういった格好でウイルス検査をしていけばいいのか、もう獣医の方は不眠不休でやっているんだと言っておりました。しかし、それでもなかなか、もう県内一周回るだけでも大変で、野鳥までやると、もういろんな形で苦労されていると言いました。  そういう部の中で、自分のところではなかなか、獣医さんたくさんいるんだけれども、獣医さんの中で特殊なウイルスの確認なんというと、特殊な部門ですからなかなかできる方もいない。せめて例えば食品検査とかそういう他部門にもお願いしていろんな形で応援態勢をと言ったけれども、県内では、食品なんかやっている人は、いやいや、おれは人間を診るけれども、そんな鳥なんかやれぬと言って断られるんだというふうに言っておりました。  是非これは国レベルで、厚生労働省関係機関等にお願いし、また民間に対してもいろいろおられるんだろうと思います。既に環境省等はやっておられますけれども、是非もう少し大きいネットワークを組んで、早くそういうものに対応していかなきゃいけないわけですからそういう対策を講じてもらいたいと思うんですが、その取組についてお伺いしたいと思います。
  44. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 鳥インフルエンザのウイルスの鑑定ですけれども、今、防疫マニュアルでは、各県にあります家畜保健衛生所の方でウイルス分離までをやり、その後つくばにあります動物衛生研究所の方で確定診断をする、こういう役割分担をやっているわけでございます。  確かに、家畜保健衛生所、近年ずっと獣医さんの数も減ってはまいりましたけれども、十三年にBSE我が国発生したと、その辺りがちょうどボトムでありまして、それ以後、家畜保健衛生所の業務もBSE検査等いろいろ増えてきたということもありまして、ここ一、二年では獣医さんの数も増えてきているわけであります。そういった人員の確保という点では、十六年度もまた各都道府県で増員をするというふうな県もかなりあるというふうに私ども承知をしております。  こういった人員の確保のほかに、やはり技術を一定水準以上に保っておくということも大変大事でありまして、こういった面では、職員、獣医さんを対象にいたしまして講習会を開いて、新たな技術の習得にも努めていただくというふうなことも私どもやっております。それから、マンパワーだけではなくて、やはり迅速な診断機器の整備ということもやはり大事でございまして、この効率化のためのこういった機材の整備も、これも十六年度予算では増額をいたしております。  こういったいろいろな環境整備あるいはマンパワーの能力アップ、それぞれ努力をいたしまして、今、先生おっしゃったような、確かに現場ではいろいろ御苦労の点もあると思います。こういったそれぞれの対応での、現状というものは私どもよく聞いて必要な対応を取っていきたいというふうに思います。
  45. 段本幸男

    段本幸男君 いずれにせよ、鳥インフルエンザ対策は素早い対応が非常に大事だというふうに思っております。先ほど大臣おっしゃったように、家畜伝染病予防法改正も含めていろんな総合的な対策を取る、こういう話ですので、我々もその改正案について審査する側としてもう全面的に協力するから、是非素早い、養鶏農家安心を与えるような対策を引き続き取っていっていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  次に、食の安全問題についてお伺いしたいと思います。  施政方針の中でも、食の安全は最重点の三つの一つだったですかね、最重点で取り組まれるというふうなことになっております。そして、安全局ができたり、いろんな形でこれまでも対応をしてこられました。しかし、大綱では、大枠ではそういった方向でできたと思うんですが、まだそれぞれ細部については必ずしも問題ないわけじゃない、幾つかの問題を抱えているんではないかというふうに思います。そういった問題について幾つかお伺いしたいと思います。  まず、カイワレ、例の裁判でも問題になった、カイワレの裁判でも問題になったO157についてなんですけれども、先ごろたしか、沖縄の米軍基地でも輸入ハンバーグに入っていて問題を起こしたというふうなケースが見られるように、現在でもあちこちで、時々ですが、やっぱりそういう問題を惹起しているんではないかというふうに思っています。しかし、どうもニュース性がないと、マスコミも国民もすぐ忘れて無関心の状況になってしまう、こんな非常に移りっ気の強い状況ではないかというふうに思っています。  食の安全言うときに、一例としてこのO157を出しましたが、こういうふうにいろいろ過去問題になって、なお今も問題なんだけれども、どうも問題点がうまくとらえられていないような問題があるんではないか、こんなふうなことを感じます。  こういうようなものを感じると、やはり単にマスコミのニュース報道に任すだけではなくて、食の安全というものについてはやはり国民にもっと今まで以上の、通り一遍の広報ではなくて、もっと突っ込んだ、あるいはいい形でのそういう情報伝達システムというのを押さえなきゃいけないんではないかと思うんですが、この辺についての取組をお伺いしたいと思います。
  46. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 消費者の方々の視点に立ってこれから食品安全行政を進めていくという上で一番大事なことは、食品の安全、安心確保するために、消費者の方々に食品に関しますいろんな情報、これを正確また迅速に伝えていくと、情報提供していくということが先生おっしゃいましたように大変大事だというふうに思っております。  私ども農林水産省では、本省だけではなくて地方の機関も、地方の機関いろいろ持っておりますけれども、こういった各段階におきまして、消費者の方々、生産者の方々、それからまた食品業者の方々との間で意見交換をする場、これはリスクコミュニケーションというふうな最近の呼び方もありますけれども、こういう場をいろいろと設けておりまして、そういう場を通じて情報提供していくと。これは、単にニュース性があるとか話題になっているということだけではなくて、もっとふだんからきちっと知っておいていただきたいような事柄、例えば残留農薬の問題ですとか飼料添加物の問題ですとか、こういったじっくりと話をしなきゃいけない、そして理解をしていただかなきゃいけない、そういった問題もテーマに選びながら意見交換などもやっておりますし、それからまた、鳥インフルエンザのようになかなかマスコミでは必要な情報も分からないというふうな部分につきましては、ホームページのようなところにきちっとしたQアンドAを載せるというふうなことをやりながら、正確でまた分かりやすい情報の提供にも努めております。  それから、御承知のように、本省、それから各都道府県の農政事務所には消費者相談の窓口もございます。四十八か所設置をしておりますが、こういったところでも必要な情報提供ができるように、また御質問にも答えられるようにということで、的確なまた正確な情報提供に努めているところでございます。
  47. 段本幸男

    段本幸男君 もう一つ食の安全についてお伺いしたいんですけれども、この一月に京都の城陽市で卵の生産日の偽装事件というのがありました。六か月も前の卵を今のラベル付けてやると、もうとんでもない事件が起こりました。  こういう偽装表示とか不当表示については、既に雪印があった、全農チキンフーズもあった、そして日本ハムもあった。もう次から次へとどんどん続いてきている。その都度、農林省は多分もう徹底指導をされていると思うんですが、依然としてもう目を覆いたくなるような状態でこういうことが続くというのは、今までの農水省のそういう指導が必ずしも功を奏していない、こういうことになるんではないかと思うんですが、企業のモラルハザードについて、やはりこの際何か抜本的なものを作るべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  48. 福本潤一

    大臣政務官福本潤一君) 本件は、京都府の養鶏生産組合が、昨年六月に採卵した卵を、半年後の昨年十二月に賞味期限を九日間などと表示して販売した事件であると。したがいまして、これに対して京都府が、食品衛生法違反するとして、一月二十日付けで当該組合に対し一週間の営業停止を命じるとともに、再発防止の徹底を指導したと承知しております。  いずれにしても、表示を偽って半年前の卵を出荷していたことは鶏卵に対する消費者の信頼を損ねる行為でございまして、誠に遺憾でございます。  農水省といたしましても、これまで関係業界を通じて卵の賞味期限の適正表示の取組を推進しているところでございますが、今回の事例発生を受け、速やかに鶏卵格付包装施設において鶏卵の格付表示を行う者に対し、表示責任、説明責任等、事業者責任を十分認識するように指導したところでございます。  先ほど委員指摘のように、こういうことが今後続かないように、関係業界に対しましても、業界モラルの再構築、また採卵日等表示するものを適正に表示するように指導いたしまして、消費者に誤解を与えないような表示を推進してまいる所存でございます。
  49. 段本幸男

    段本幸男君 罰則強化がすべてではないと思いますけれども、是非もうもっともっと強い何か信念を持って農林省が取り組むべき、このことを要望しておきたいと思います。  次に、トレーサビリティーについて少しお伺いしたいんですが、BSEを契機として牛についておやりになるようになった。あるいはその他の食品物についても、これから農林省としては真剣に取り組もう、こういうふうなことではないかというふうに伺っております。  私も、トレーサビリティー、すなわち流通が、どこから出てきてどういう経過を持っておるか、これを消費者にきちっとした形で教えることは大変重要なことではないか、こういうふうに思っています。しかし、現地へ行ってみると、農家の方が、いや、そのトレーサビリティーを生産サイドの農林省がやっているんじゃ、もう今さっき言った卵のいろんな企業のモラルと同じで、なかなか信頼できないではないか。むしろ、これは食品衛生やっている厚生労働省にやってもらった方がいいんじゃないかというような意見がありました。  こういうことも含めて、トレーサビリティーについて一体どのように進めようとされているのか、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  50. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) トレーサビリティーシステムにつきましては、委員今も御指摘のとおり、農林水産物や食品生産、あるいはまた流通過程の追跡、遡及、こういう面でいろいろその履歴が分かるわけであります。万一食品事故が発生した場合、その原因の究明、これも容易にできるわけでありまして、リスク管理、これに役立つわけでもあります。  農薬の使用状況ですとか、あるいは消費者が求めております情報や、これ生産者から伝えたい情報を伝達することができるわけでありまして、生産者と消費者との間の顔の見える関係、これを構築することができるんではなかろうかと、このように思っておりまして、このようにトレーサビリティーシステムにつきましては、農産、農林水産物あるいは食品生産、あるいは流通の過程を明確にする仕組みでありまして、生産、流通の過程を所管しております農林水産省が行うということが私は適切なことではなかろうかと、このように思います。いろいろ我が省といたしましても、先覚的なシステムの開発や情報関連機器等も整備を行うなど、生産者や事業者の自主的な取組を推進しております。  今後とも、この食の安全、安心、これを守る視点におきましても、やはり生産者と消費者の顔の見える関係づくりを通じて、また産地の活性化を図る面におきましても、やはりこのトレーサビリティーシステムの普及というものは大変重要なことでありますので、これを支援してまいりたいと、このように考えております。
  51. 段本幸男

    段本幸男君 そのトレーサビリティーのちょっと細部についてお伺いしたいんですけれども、現在、たしか全農かどこかの指導でトレーサビリティーを入れるときのシステムの個票を配って農家側に書いてもらうとか、いろんな検討を進められているというふうに伺っておりますけれども。しかし、この前、熊本行ったら、そういう個票があって、書けと言うけれども、ほとんどが当然パソコンで処理することを前提に個票が全部作られている。そんなの回ってきたって、じっちゃんばっちゃんの家へ行ったってとても書けない。農家には多くやっぱりそういう状況ではないかというふうに思います。  これは、全般、トレーサビリティーこれから進めるに当たって恐らく全部出てくる問題だと思いますが、片っ方でIT化をうまく利用しながら情報を利用して的確に早くしなきゃいけない、こういう側面と、片っ方で農村行けばまだパソコンもないような農家が一杯あるわけですから、これとのギャップをどう埋めていくかというのを早く対策しないと、せっかく霞が関の机の上ではいいシステムでき上がっても現地では稼働しない、こんな問題があるんではないかと思うんですが、その辺の問題について農林省はどのようにお考えになっているか、お伺いいたします。
  52. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 確かにトレーサビリティーの一番の基になりますのは、どういう農薬を使ったかとか、あるいはどういう肥料を使ったかといった、そういう生産段階での投入資材の記録が一番ベースになるわけであります。したがって、個々の生産者の方々には、やはりきちっとした記帳をしていただくというのがベースになるわけでありますけれども、他方で、そういった情報をきちっと効率的に整理をするとなると、今、先生おっしゃったように、パソコンを使って、あるいはそれ以外のIT技術を使って効率的な記録なり保管、そういったものをしていかなきゃいけないと。  そこで、現場では大変いろいろ苦労はされているとは思いますけれども、高齢な方々もいらっしゃる中で、やはり農協とすればできるだけ、最初のうちはパソコンの入力はあるいは農協の職員の人がやるにしても、最初の記帳のところだけは個々の農家でやっていただくと。そのときも、いきなりその紙をお配りをするというだけではなくて、アドバイザーのような方を作ってきめ細かく指導をしていくと。そして、だんだんと慣れていただくと。そういう取組も農協の単協の中ではやっていただいているというふうに今承知をしております。  最初はなかなか取っ掛かりが難しいというふうなところがあるかとは思いますけれども、やはりこういった現場での取組をすることによって、ほかの産地と違った、そういう努力をしていただいているところの産地がやはり評価を受けるというそういうことでありますので、是非、趣旨を含めて御理解いただき、また努力もいただきたいというふうに思っております。
  53. 段本幸男

    段本幸男君 是非しっかりした対応お願いしたいと思います。  それでは次に、環境農業について少しお伺いしたいと思います。  大臣、施政方針演説で重点三項目の一つに環境というものを入れられて取り組もうとされておられます。しかし、実際には環境面での取組についてはまだまだ緒に就いたばかりで、むしろこれから農林省がどういう姿勢を持って取り組んでいくか、非常に重要な段階を迎えるんじゃないかと思いますが、それらにかかわる問題について。  まず一つは、たしか今年十月までに畜産ふん尿については処理しなきゃいけない、畜産三法で義務付けられているというふうに思いますが。いまだにその対応が大変遅れて、もうどういうふうにやっていくのか苦慮されているというふうに伺っております。どういう状況にあって、これからどうされようとしているのか、対策をお伺いしたいと思います。
  54. 福本潤一

    大臣政務官福本潤一君) 家畜排せつ物法に基づきまして、管理基準平成十六年十一月から全面的に適用されることから、家畜排せつ物処理施設の整備を計画的に推進してきたところでございます。本年十月末までに緊急かつ計画的な整備を推進するため、昨年の三月、農林水産省と全国農業協同組合中央会が共同で畜産環境整備促進特別プロジェクトを立ち上げまして、施設整備の促進に全力で取り組んでいるところでございます。  このプロジェクトの下で昨年七月に総点検を実施したところでございまして、この結果によれば、施設整備を要する農家約二万七千九百戸のうち、十四年度末までに整備を終えた農家はほぼ五〇%という状態でございます。また、総点検結果に基づきまして作成した施設整備計画、これによりますと、十五年度五千八百戸、十六年度七千八百戸の計一万三千六百戸の施設整備が必要となっております。  このため、処理施設の整備が円滑に行われますように、四点、きめ細かな支援措置を講じているところでございます。一点目は、十六年度予算案において堆肥化、エネルギー利用等を図るための施設整備事業に要する予算を増額しております。二点目にはリース方式による補助事業。三点目には低利資金の融資。四点目に、特別償却、固定資産税の課税標準の軽減を内容とする税制上の優遇措置でございます。  今後とも、これらの支援措置を講じることによりまして計画の達成に向けて最大限に努力してまいる所存でございます。
  55. 段本幸男

    段本幸男君 私は、この問題は、今農水省で御検討中の例えば環境支払であるとか、いろんな検討をされていると伺っておりますけれども、そういう問題に大変関連してくると思うんですね。農業はただ自分らの思いを主張するばっかりでやることをやっていないというんでは国民の理解が物すごく得にくいだろうと思うんですね。やはりそういう意識を持って、やると決めたことはきちんとやる姿勢を是非持っていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  次に、有機農業関係についてお伺いしたいと思います。  先ごろ、JAS法が改正になりまして、有機認証、これはもう正に世界基準世界標準となって、我が国が誇るべきものを持っておられると言う割には現地ではなかなか進みにくいというのが実情ではないかというふうに思います。  それは、この前、愛媛県の明浜というところで無茶々園という農家へ行っていろいろしゃべったら、それはそうだと。日本はこれだけ湿潤農業、雨も多いし暑いし湿潤農業をやっているのに、乾燥農業地帯、欧米の乾燥農業基準を持ってきてそっくり当てはめたってもうとてもできるものじゃない、かえって日本型の有機農業を進めようとするときの隘路になっているんじゃないか、こんな声が聞こえました。この声は、そこだけではなくて各地でそんな声を聞いています。  この際、何らかの格好でそういう実態をもう一度検証しながら方策を改めるべきだと思うんですが、農水省のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  56. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 有機食品につきましては、平成の十一年のJAS法改正基準ができました。この際の基準というのは、国際的な基準でありますコーデックスのガイドラインに沿って定められております。この規格に従わない限りは有機というふうな表示ができなくなったわけでございます。  確かに、先生おっしゃるように、日本の気候の特殊性といいますか、ほかのところとまた違った部分というのはあるかとは思いますけれども、やはりこの有機という言葉、それに対する世界共通の基準というものがコーデックスであるわけでありまして、これを改めるといいますか、緩めることによって対応するということではやはり消費者の方々の信頼を失って、かえってこの制度自身がねらっております目的が達せられないというふうに私は思っております。  こういうふうに新しい有機の制度ができまして、現在国内の農家数は約四千五百戸でございまして、十四年度の有機の格付がされました農産物も前年に比べますと一・四倍ということで、少しずつ伸びてはきているわけでございます。やはり、この制度がきちっと現場に定着をし、また難しい中でもやはり生産者の方々の努力によって基準にきちっと適合した生産物を作っていただくということが大変大事なことではないかというふうに思っております。もちろん、新たにこういった認証を受けようとされる方々に対しましてはきちっとした研修を受けられるような制度も準備をしておりまして、そういうことを通じて一層の制度の定着、普及を目指したいというふうに思っております。  それから、少しこれに関連して申し上げますけれども、有機ではなくても、慣行の農業から例えば二分の一以下の農薬を使ったり、あるいは肥料を使ったりという場合には特別栽培農産物という制度もございます。これもまたガイドラインをきちっと改正をしまして、より現実に合ったような形で改正をすることとしております。  こういったものも併せて活用いただいて、生産者の方々の創意工夫がちゃんと製品に生かせるように、表示に生かせるように、そして消費者の方々から評価を受けるように、受けられるようにというふうな、そういうふうに持っていきたいというふうに思います。
  57. 段本幸男

    段本幸男君 生産者、消費者それぞれの立場があるから大変難しいと思いますが、検証しながら是非いいふうに持っていっていただきたいと思います。  それから、この前、鳥取に行ったら、鳥取の農家はもう紙マルチを、再生紙による紙マルチを十年以上やっているけれども、一体農林省は評価しているものやらしていないものやら、農林省の姿勢が全然見えないと言っておられました。十年前というと実は私も担当農政局長でいたところなものですから大変反省しているんですけれども、同じような話は福井でもやっぱり聞きました。  こういうようなのを見ていると、大臣の施政方針では環境を大事にするとおっしゃっている、農林省も一生懸命そういうところは取り組んでいるとおっしゃっているんですが、やはり意気込みが十分に農家まで伝わるような、そういうものにはまだ不十分なんではないか。特に私のおった農政局も含めてですけれども、やっぱり末端の担当者までそういう意識が伝わらないと従来システムでどうも動いている部分が多いんじゃないか、こんなふうに思いますが、そういう部分についてのお考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  58. 福本潤一

    大臣政務官福本潤一君) 環境保全を重視した農業ということで、農林水産省といたしましては、これは段本委員もまだ農水省におられたときだと思いますが、平成四年の新たな食料農業農村政策の方向、新政策、この中で環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業として環境保全型農業を確立していくという方針を打ち出して、それ以来、環境保全型農業技術の現地実証や消費者との情報交換の場作り、さらには技術開発や優良事例情報の発信に取り組んできたところでございます。  また、平成十一年からは、持続農業法に基づきまして、堆肥等による土作りと化学肥料、化学合成農薬の使用低減に一体的に取り組む農業者、エコファーマーに対しまして、金融・税制上の特例措置の支援策を講じるとともに、こうした制度のPRに努めてきたところでございます。  さらに、昨年十二月、農林水産環境政策の基本方針を決定いたしまして、農林水産省が支援する農林水産業は環境保全を重視したものに移行するという考え方を明確にいたしますし、これも広く公表したところでございます。  現在、全省的に取り組んでいる食料農業農村基本計画見直し作業におきましても、環境保全を重視した施策の一層の推進、これを重要なテーマの一つに掲げておるところでございまして、今後とも農林水産省としての基本姿勢を明確にしつつ、対処してまいりたいと思っております。
  59. 段本幸男

    段本幸男君 是非お願いしたいのは、そのたくさんの文字よりも、大臣とか副大臣とか政務官とか、やっぱりそういう意識を分かっておられる方がやっぱり自分の気持ちを出してやっていただくことが大事だと思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。  それから、無登録農薬問題についてお伺いしたいんですけれども、無登録農薬問題があって無登録農薬を使っちゃいかぬ、このことは私も痛切に感じるんですけれども、しかし、品種に登録されていないがために、例えば地域が是非とも新しい何かこんな産品を作りたい、あるいは外国のいろんな中国野菜とかヨーロッパでやられているような野菜をやりたいというときに、一切そんなものは登録されていないから日本に持ってきたときにチャレンジができない、もう大変困っているんだというような声を聞きました。これは石川県の例ですけれども。  そういうようなのを見ていると、それで、頼むからメーカーに、農薬メーカーに何とかこれを登録をできるようにやってくれと言うけれども、もうかるかもうからぬか分からぬものをメーカーはそんな細かいところまでやってないという、ほとんどが中小企業ですから、そういう部分はやっぱり行政が上手に介添えしていかないと、日本農業はやっぱりそういう多品目少量生産以外にないわけですから、そういう部分に対する手だてが必要と思いますが、どういう手段を、どういう支援策を講じておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  60. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 無登録農薬問題への対応でございますけれども、これは先生御承知のように、昨年から経過措置ということで、各都道府県の方から申請を上げていただいたものについては、当面二年間程度を想定しておりますが、その間は経過措置ということで認めているわけでございます。もう既に件数として九千件に上っております。  本来、こういったマイナー作物を対象とする農薬につきましてはメーカーが登録を申請をするというのが本来の姿でありますけれども、さっきおっしゃったようにマーケットとしての規模が小さいということで、そのまま放置しておったのでは登録が進まなくなるおそれもございます。  そこで、このマイナー作物等の農薬登録の促進に向けまして、一つは、登録の際に必要となります残留性の試験など、これを都道府県において実施をするようにということで、しかもこれが九千件もありますとダブって無駄なことをやることにもなりますから、そこは各レベルで協議会を作っておりまして、ダブりがないようにそれぞれ役割分担をして、相互に連携をして、その試験の、何といいますか、残留の試験をするようにと、そういった調整を一つやっております。それからもう一つは、都道府県が実施をします際の残留試験につきまして、やはり助成の面も準備をいたしております。  こういった、一つは調整、もう一つは支援措置というこの二つでもって、暫定期間の期限のうちにできるだけきちっとした登録ができるようにしたいというふうに思っております。
  61. 段本幸男

    段本幸男君 是非、地域のチャレンジの芽を助長してやるように政策誘導をお願いしたいと思います。  それでは次に、新たな米対策についてお伺いしたいと思います。  新たな米対策について、一昨年来いろいろと検討してきました。基本は、もう前の制度はいろいろ複雑過ぎて分かりにくい、簡略なものをこさえて農家に分かりやすいという掛け声で作ってきた。現に、農林省から一番最初の案が出てきたときにはそうだったはずなんですが、我々も反省せにゃいかぬのですが、政治がああだこうだ、こっちのもあっちのも、もうあれもこれも入れようとするものだから、結果、各地で聞きに行くと、いや、前のより複雑になって分かりにくい、なかなか大変だ、こんなふうな面も出てきているんではないか。現にそういう声を聞くんですけれども、この辺を何か徐々にでもいろんな形で少しシンプル化に向けて、あるいは農家に分かりやすいようにやっていくべきじゃないかと思うんですが、お考えをお聞かせ願います。
  62. 須賀田菊仁

    政府参考人須賀田菊仁君) 今般の米政策改革でございます。足掛け三年にわたります各方面からの御意見を聞いて取りまとめたものでございます。  内容は、もう先生も御承知のように、過去三十年間の生産調整の反省に立ちまして、地域の農業は地域で守るんだという考え方の下に、売れる米作り、転作作物の産地づくりを進める、あるいは担い手の育成確保を図る、生産者団体によります自主的、主体的な取組の道筋を付ける、こういうことを目的にして、できるだけ仕組みを簡略化、例えばあの共補償はもう廃止するだとかし、かつ地域の自主性、創意工夫が発揮できるようなお金の使い方をする、こういうことで取り組んでいくということにしたつもりでございます。  私ども、実は一月の初めに、大臣の指示の下に各ブロックに現地督励に行きました。やはり、そこでは過去三十年間の仕組みをがらっと変えるということで、あるいは過去の生産調整の仕組みからするとお金が足りぬのじゃないかとか、あるいは担い手のリストアップといってもなかなかそれは難しいとか、あるいは集荷円滑化対策といっても実践的にどうやったらいいか分からないとかいう御不満、御意見をいただきました。現在、そういう声を含めまして、どうやったらいいかというマニュアル作りだとか、模範例はこうだとかというのを現地にお示しをしているところでございます。  やはり、今回取りまとめていただきました改革の方向というのは避けて通れない方向でございます。是非とも農家の方に御理解を賜りたいというふうに考えておりまして、今後とも、生産者団体と相談をしながら、体系的、実践的に理解の浸透に努めていきたいというふうに考えているところでございます。
  63. 段本幸男

    段本幸男君 是非よろしくお願いします。  それから、産地づくり交付金についてお伺いしたいんですけれども、各地で水田ビジョン作りがもうそろそろ終わろうかというふうな段階に差し掛かっていると思うんですけれども、この前、北海道の石狩に行ったら、どうも水田ビジョンに基づいて金をはじくと産地づくり交付金が前年の六割から七割ぐらいしかならぬ、こんなんではとても農業経営できない、もう悲鳴のような声が出ていました。  もちろん、いろんな自分の出し前なんかを計算しないとか、いろんな問題あるのかもしれませんが、一番水田農業で大規模化して集約的にといった北海道はそんな状態で本当にいいのかどうか、農水省はどのようなお考えをお持ちなのかお聞かせ願いたいと思います。
  64. 福本潤一

    大臣政務官福本潤一君) 産地づくりの対策ということで、水田農業構造改革交付金千四百四十五億円、これと、これまでの助成実績、平成十四年度が千八百七十四億円とを比較されまして減額されたと解されているのではないかと思われますが、これ、水田農業構造改革交付金という中には、生産調整の取組実績に応じまして支払われる助成金、重点作物特別対策等というのが含まれておりませんで、これが具体的には単純な比較ができない点でございまして、仮に生産調整の取組実績に応じて支払われる部分、これを含めた額で比較してみた場合、十六年度の予算は平成十四年度の実績と比較しましておおむね九割ということになっております。  いずれにいたしましても、新たな対策の予算に対しましては、厳しい財政事情の中で平成十五年度当初予算や十四年度の助成実績と比較して遜色ないものとも言えるところでございまして、所要の額を確保したものと考えておるところでございます。
  65. 段本幸男

    段本幸男君 必ずしも遜色ないかどうかは受ける側の判断ですから、いずれにせよ、きちっと説明していって、そしてやる気のあるところにしわ寄せが行かぬように、それはもう絶対そうやってほしいというふうに思います。  そして、こういうふうな米対策をやってきたんですが、大臣、一つお伺いしたいんですが、これたしか福島の会津、今日は和田さんおられなくなりましたが、あそこへ行ったときの話ですけれども、今水田で一番いいのは、兼業で五反百姓をやっているか、それとも年金生活で一町歩やっているんだ、そういう人が一番いいんだ、こんなふうに聞きました。  あるいは石川県へ行ったときは、とにかく大規模を、済みません、石川ばかり出して。石川県へ行ったときは、大規模経営をやらないかぬというので一生懸命規模拡大した、すると、この米の値段、こういう農政の情勢だからますます苦しくなっている、そうやって努力した人が一番苦しい状態に置かれている、こんなふうな声も聞きました。  本当に今回の新たな米対策でそういうものが解消されるのかどうか、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  66. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 昨年は冷害、こういうことで、少しちょっと違うかなと、こう思いますけれども、近年、米価の低落傾向、こういうことは進んでおるわけであります。  そういう中で、水田の経営規模、小さないわゆる兼業農家や御指摘の年金に依存している自給的高齢者の農家、こういう面で稲作所得に対する依存度が低いと、こういう面から、米価の下落の影響はそういう方は少ないというところは現実のことと、このようにも認識をいたします。  しかし、水田経営規模が大きな経営、こういう面では、米価の低落のテンポが規模拡大によるコストの削減努力が追い付かないため、そういう面で所得の減少等によりまして経営内容が悪化をしているということは実態であると思います。  こうした中で、今回の米政策の改革、こういう面におきまして、規模拡大等による水田農業構造改革を進める観点から、すべての生産調整実施者を対象とする稲作所得基盤確保対策に上乗せをいたしまして、一定規模以上の水田経営を行う、米価下落による稲作収入の減少の影響が大きい担い手に対しまして、担い手経営安定対策を講ずることにしたわけであります。  また、これに加えまして、農地の利用集積の加速化による生産コストの低減ですとか、あるいはまた生産物の加工や消費者等への直接販売など、経営の多角化によります所得の確保、いわゆる経営者の創意工夫、こういう様々な経営改善等に取り組んでいただく、これの支援を強化してまいりたいと、このように考えております。  これらによりまして、意欲を持って農業経営に取り組む経営者の経営改善努力が、集中的に重点的に支援をしてまいりたいと、このように考えております。
  67. 段本幸男

    段本幸男君 そうした視点で一つお願いしたいんですけれども、今是非とも、意欲あってやっていこう、そういう農家は土地を請負とか、いろんな形で集めながらやっておられる。もうせめてコストの縮減を図っていこう、こういう努力をされているんですが、先ごろ滋賀県の彦根へ行ったら、いや、一生懸命やっているけれども、いろんな土地が全部で百四十にも分かれていると言うんですよ。もう自分がどこでやっているのか分からないくらい煩雑になっている。この新たな米対策を行うのに、あるいはこの米価になってくれば、せめてもう少し十か所以内に集約してくれれば、何も事業やらなくてもいい、換地だけやってくれればいいんだ、こんなふうな要望が出ておりました。  恐らく全国でそういう要望が非常に強くなっているんではないかというふうに思いますけれども、これに対する農林省のお考えをただしたいというふうに思います。
  68. 川村秀三郎

    政府参考人川村秀三郎君) 委員指摘のように、規模拡大をして規模は大きくなったけれども、田んぼの数が非常に多いということで非常に効率が悪いという事例は聞いております。今後は、正に質的な規模拡大といいますか、そういうものが必要になってくるということで、そういうことを配慮しながらやらなくちゃいけないと思っております。  特に、そういう集団化といいますか、質的に高めた規模拡大という話になりますと、やはり地域におきます話合いといいますか、合意形成、これが非常に大事だと思っております。  今回の米対策におきましても、地域の水田農業ビジョン、この中で、担い手を明確化して、そしてそこへの土地の集積をどういうふうに今後考えていくかということを徹底して議論していただきたいということで、そういう助成も出しているところでございまして、今後、委員が御指摘のように、質的に高めていくという努力を更にしていきたいと、こう思っているところでございます。
  69. 段本幸男

    段本幸男君 是非よろしくお願いします。  それから、幾つかほかにもあるんですが、もう時間が余りなくなりましたので、もう一つ大きな問題として食の安全とか、いろんな問題を追求していくと、やはり都市と農村がどれだけ共生状態に、二十一世紀社会ですから、つくっていくかというのが非常に重要ではないかというふうに思うんですね。生産の場では、とにかく生産するだけではなくて、国民のニーズ、例えば教育の場としてやってほしいとか老人福祉の観点から何かを取り組んでほしいとか、いろんな要望が出てきて、そういう芽も少しずつ出掛かっているんじゃないかというふうに思います。私自身も長野県の飯田市に通って、そういうものを自ら率先して取り組んだりやっております。  しかし、現場においては都市の思いと農村の思いが、それぞれ自分の都合いい形で展開したいから、ギャップがあって、ミスマッチみたいなものがあるんではないか。それをうまくつなぐコーディネーター役というんですか、そういうものがないと、実際には霞が関の机の上で言っているだけでは進まないんではないか。そういうものに対する取組、もう既に「オーライ!ニッポン」で観光カリスマを指定したり、いろんな形でやっておられるのは伺っておりますけれども、更に強い取組を必要ではないかと思うんですが、お考えをお聞かせ願います。
  70. 太田信介

    政府参考人太田信介君) 都市と農山漁村の共生・対流を進めるためには、ゆとり、安らぎなどを求めます都市住民等のニーズと地域の活性化に向けた農山漁村での取組を結び付けることが必要だと、委員指摘のとおりでございます。そうした役割を担い得る人材の育成とその活用が重要というふうに考えております。  このため、農林水産省といたしましても、共生・対流を推進する観点から、農山漁村の魅力を生かすグリーンツーリズムの企画など、都市と農山漁村の結び付きをコーディネートする、そういう人材の育成等を支援しておりまして、これまでに約一千人が所定の講座を修了しておられるという状況にございます。  また、都市側と農山漁村側の人々のニーズをマッチングさせる、そういった活動を推進しているほか、都市の青年と中山間地域との交流を通じて地域の活性を図る観点から、中山間地域等青年協力隊というものを長期派遣する、こういった取組等も推進している状況にございます。  今後とも、こうした人材の育成やその活躍のための条件整備を積極的に進めることによりまして、都市と農山漁村の共生・対流を一層促進してまいりたいというふうに考えております。
  71. 段本幸男

    段本幸男君 大変重要なところなんで、是非力を入れてやっていただきたいと思います。  ほか幾つか質問したかったんですが、時間もなくなりましたので、最後に大臣に是非お聞きしたいんですが、先ごろ熊本に行ったときに、熊本の農家が、畜舎設計なんかを見ていても、どうも補助金で実施すると画一方式なものだから無駄が多いという御指摘を受けました。その農家、いや、実はこの間、畜産事業団の人が三か月ほどの農家研修に来た。来たときに、その担当者が、いや、BSE対策費というのはこんなふうに使われるんですか、実は今まで配る方をやっていたけれども、実際にそれを目の当たりで見たのは初めてなんですよと言っていたと言いました。なかなか、今多分農林本省もそうだろうと思いますが、もういろんな課題がメジロ押しですから、現地出てやるというのは、まあ鳥インフルエンザは局所的に見られることはあっても、現地へ出て、農家に接しながら、肌身触れて感じるなんてことは非常に少なくなっている、希薄化しているんじゃないかというふうに思うんですね。それがやはり政策出したときにいま一つ農家に浸透しにくい面があるんじゃないか。  この際、是非、大臣、思い切って若い職員を、農家にもう長期派遣するんだ、行ってこい、それは将来、もう当座間に合わなくても、長期的にやっぱり農政を担って頑張っていく、こういう人を育ててほしいと思うんですが、大臣のお考えをお聞かせ願って、最後の質問とさせていただきます。
  72. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 委員指摘のとおり、私も本当に現場農業者の意見を直接伺うこと、まず何よりも現場を知ることが一番大切、このように考えておりますし、でき得る限り職員にもそのような対応ができるように努めさせておるところでもございます。  今回、米政策の問題につきましても、この国会の始まる前にそれぞれ幹部職員を地方農政局に出向かせまして、そして地方でいろいろな話を伺うと。またさらには、地方におきましてもできるだけ現場に入って夜遅くまで本当にひざを突き合わせていろいろな話をし、そして更に理解を深めることが大切なこと、このように話をし、私も地方農政局の幹部にも先般もお目に掛かりいろいろな話をしたわけであります。  そのように、いわゆる地域での農業のいろいろの振興等に対する取組、こういうものを私どもが把握をする、さらにはこれ地域に出向いて生産者等の農政懇談会、こういうものをするとか、あるいはいろいろな意見交換、またBSE鳥インフルエンザ発生に今担当官を出向かせたりしていろいろなことをしておりますが、やはり何といってもその現場皆さん方から直接お話を伺うことが基本でありますし、今、委員からも御指摘のように、あらゆる部門でその努力を職員にもさせて、そして生きたと申しますか、農水省と生産者がやはり正に顔の見える関係と、そういう中で生産振興に、また食の安全、安心、こういうものが確立できるように努力をさせてまいりたいと、このように考えております。
  73. 段本幸男

    段本幸男君 よろしくお願いします。ありがとうございました。
  74. 岩永浩美

    委員長岩永浩美君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  75. 岩永浩美

    委員長岩永浩美君) ただいまから農林水産委員会を再開をいたします。  休憩前に引き続き、農林水産に関する調査のうち、平成十六年度の農林水産行政基本施策に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  76. 郡司彰

    ○郡司彰君 民主党・新緑風会の郡司でございます。  大変今日は、例年になくといいますか、今年一番のぽかぽか陽気でございまして、午睡にちょうどいい時間なんでありますけれども、お付き合いをお願いをしたいというふうに思います。  大臣所信に沿った形で質問をさせていただきたいと思いますが、そういいながら、一番最初のだけ、この中に字句が記載をされていないことについてお聞きをさせていただきたいと思います。  まず、自給率の問題でございますが、食料農業農村基本法が制定をされ、基本計画策定をされ、その中でも、年月を区切って、二十二年だったと思いますけれども、四五%に高めていこうというような目標がございました。今現在、特に主要食糧というような中に含まれておりますけれども、大豆あるいは麦、それらを中心にして自給率の四五%達成は大丈夫かということについて大臣にお聞きをしたいと思います。
  77. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 食料農業農村基本計画の中で、食料自給率四五%。その達成条件といたしまして、いわゆる総供給熱量の四分の一を占めます、自給率がほぼ一〇〇%であります米の消費の維持ということが重要なことでありまして、これは平成九年、一人当たり六十六・七キロでありましたのが、今は六十二・六キロと。平成二十二年には六十六キロと、このように目標を掲げておるわけでありまして、それ四五%と、この目標に向かって、米につきましてはそういうことでございますが、平成二十二年、六十六と、こういうことと、それ以外の品目につきましては基本的に生産拡大ということを前提としております。  今申し上げましたとおり、米につきましては六十二・七キロと、こういうように消費量が減少しております。あと、ここのところ、食料自給率、平均、平成十年度以降五年連続して四〇%と、こういう状況にあるわけでありますが、食料自給率低下、これはやはり、先ほども申し上げましたとおり、米の消費が減少していると。一方、畜産物や油脂類の消費が増大していると。食生活の変化、これが主要な要因になっておるわけでありまして、そういう面で、食料自給率向上を図る面では、生産と併せて消費の面で考えていかなければならないと思います。消費の在り方と、こういうことが重要になるわけであります。  そういう面で、食生活の変化、そしてさらには栄養バランスの取れたものを維持しなければならないと。今、栄養バランスが崩れてきて生活習慣病、こういうことも増加をしておるわけでもございます。そういう面で是非、生産面消費面でのアプローチ、そういうことから食生活の大切さ、そういう点で食育推進すると。さらには、米を中心とした日本型食生活、これを復権させる、こういう努力が必要なことではなかろうかと、このように考えております。
  78. 郡司彰

    ○郡司彰君 達成できれば有り難いことでございますし、できないからどうのこうのということの議論をするつもりではございません。ずっと下がりぎみだったものが基本計画以降はまあ横ばいになっている。反転攻勢のきっかけに是非していただきたいと思いますし、今のような、ただ単に自給率のために、作物の生産だけではなくて、食育あるいは日本の食文化を見直すということも大変重要だろうと思っていますので、その辺についてはできるだけ達成がかなうようなことをお願いをしたいというふうに思っています。  それから、所信の方の三ページ、四ページ、五ページ辺りに記載がありますけれども、現在の基本計画、昨年から見直しの議論が始まっているというようなことでございますけれども、これ、大臣として、この基本計画の中の議論をどういう形でまとめていこう、リードをしていこうというようなお考えか、お聞かせをいただきたい。
  79. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 昨年八月、この見直しを指示をしたわけであります。そして、この審議会に諮問をし、今、企画部会で御議論をちょうだいしております。  それは、やはり食の安全、安心、これに対する関心は高まっている一方、農業構造改革の立ち後れ、あるいはWTO等国際規律の強化などを踏まえまして、競争力の強化など、国民の期待にこたえられる農業農村、この実現に向かって農政全般につきましての改革が求められておるわけでもございます。  そういう中で、やはり先ほども申し上げました基本計画見直しにつきましては、食の安全、安心、この確保のためのやはり施策を進めると。一つは、品目別の価格・経営安定政策から、諸外国の直接支払も視野に入れまして、意欲と能力のある担い手の経営を支援する品目横断的な政策への移行を考えたいと。またさらには、望ましい農業構造と、そして土地利用を実現するための担い手あるいは農地制度の改革と遊休農地の問題、高齢化の問題等々もあるわけでありまして、この点、その農地制度の改革も必要ではなかろうかと。あるいはまた、環境保全を重視した施策の一層の推進食料安全保障や多面的な機能、こういう観点から、農地、そして水などの保全、この政策の確立が必要ではなかろうかと。この三点につきまして本格的な検討を進めて今おるところであります。この三点につきまして私はお願いをした、諮問をしたことでもございます。  また、もう一つは、今年の予算にも考えておりますが、高品質な我が国農産物輸出拡大、いわゆる守りの農政から攻めと、こういう視点に立ちまして輸出拡大のことが考えられないかと、こういうこともお願いをしておるところでもございます。  今、この食料農業農村政策審議会の企画部会におきまして、月に二回というようなペースで今いろいろ御議論をいただいておるところでもございます。一つはやはりスピード、こういうものが求められるわけでありますので、七月ごろまでに中間の論点整理ができればと、このようにお願いもしておるわけでありまして、一面では、来年度の概算要求にそれを盛り込むことができないかと、こんな考え方を持っております。また、是非国民に開かれた透明性のある議論、こういうことでいろいろオープンな形でも議論をしていただいておるわけであります。先ほど申し上げましたように、来年三月の基本計画ということに向かって、七月の中間論点整理等々を踏まえて対応してまいりたいと、このように考えております。
  80. 郡司彰

    ○郡司彰君 今お話をいただきました。いろいろな言葉がちりばめられておりましたけれども、端的に言いますと、私ども民主党も農業問題大切にきちんとやっていこうというようなことで、直接支払あるいは分権、環境というようなことをキーワードにしてやっていこうというようなことにしておるんでありますけれども、大臣の今の発言の中にも同じような言葉がたくさんございました。  端的に幾つかの言葉で表すと、大臣にとってはどういう言葉になりますでしょうか。
  81. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 一つは、キーワードといたしましては、消費者、生活者の視点に立った施策強化、特に食の安全、安心確保、こういうことが考えられるわけでありますし、さらに、施策の担い手への集中と攻めの農政への転換、あるいは環境や農地、水等の保全と、こういう三点ということに考えられるかなと、こう思います。
  82. 郡司彰

    ○郡司彰君 八ページのところには、施策の一層の集中化、重点化を進めるということがございまして、私どもも理解をできるところなんであります。  一方で、こういうような形でもって担い手が大宗を占めるというようなことになってまいりますと、家族農業といいますか、今の兼業の在り方、あるいはこれまで行政を二人三脚のような形でやってきた系統組織、生産者団体というのがあろうかと思いますけれども、これの関係も、一方で重点化、集中化ということになりますと、系統の生産者団体というのは間口が相当広いというようなこともあって、国の考えているところと幾らかこう違ってくるんではないか、これまでとですね。そういうような思いがありますけれども、その辺のところについてはどうなんでございましょうか。
  83. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) いろいろ集中化等々、いわゆる小規模の農業、こういう面での問題もあろうかと思います。そういう面では、やはり農業、先ほどの問題といたしましては環境、水等の問題、そういう面でいわゆる地域としていろいろの施策を進めていくと。そういう中で、いろいろ総合的にその担い手あるいはそれに集中する集約形態、こういうようないろいろの形で進むわけでありますが、小規模の農業、そういう点では地域を維持する、多面的な機能を維持すると、そういう面での環境、水等々踏まえた形での中での施策推進していく、こういうことを考えていく必要があるんではなかろうかと、こう思います。
  84. 郡司彰

    ○郡司彰君 系統農協の方は、今までこう、これまでの各大臣の歴年のを見ますと、いろんなところでこう一緒にやっていこうというような形のものが散見されましたけれども、今年のこの八ページを見ますと、「農業者、消費者に最大のメリットや満足を提供できるよう、系統自らが経済事業等の抜本改革を進めていくよう支援していきます。」ということになるわけでありまして、端的に言うと自立をするように心掛けなさいということで、必ずしもこれが善しあしの問題ではなくて、そういうことの時代の流れだろうと思うんですね。分かりやすく言うと、これまで一緒にやってきたところ相当あるけれども、今後は政府の方は重点化、集中化ですよと。系統は自分でやっていきなさい、そういうようなことにおっしゃっているということにとらえてもよろしいんでしょうか。
  85. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) そうなかなか二つに分けていろいろの対応をするというのは非常に難しいことであるわけでありまして、系統としても今回法改正等々の、いわゆる農協法の改正等の問題につきまして、系統としていろいろ改革を、またいろいろな系統を通じて議論を進めて今日まで来られたわけでもあります。そういう面で、やはりこの系統としての存在というのは大変大きな位置付けがあるわけであります。十分それらと対応できるような、呼応できるような、いろいろのお互いに努力をしていく必要があるんではなかろうかと、このように思います。
  86. 郡司彰

    ○郡司彰君 私は、これを書いてあることが良くないという意味では決してとらえておりません。本来、協同組合の原理原則からすると、行政と同じような歩調でということ自体が世界の協同組合の中では元々異質ではないかなという思いを持っておりますから、そういう意味で、これまでと同じようなことを改めるということは私は時代の流れとして良いことだろうというふうに思っています。ただ、さっと書いてあると、もしかすると生産者団体の方がそういうところをきちんと理解をしないで、これまでどおり仲良くやっていこうというふうに取ってばかりいると違うんではないかなというふうなこともございましてお聞きをしたようなところでございます。  その辺のところについては、重ねてでありますけれども、端的に私の言う今のような思いでよろしいんでございましょうか。
  87. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 是非、時代の趨勢、いろいろ環境も、外部の環境も変わってきておるわけであります。そういう面で、系統自身としても経済的な面での主体性を持ったいろいろの改革を進めておられるわけであります。是非、時代の流れ、また国際環境等々のいろいろの問題もあるわけであります。お互いに緊密な連携を取るとともに、やはりそれぞれ系統が主体性を持って対応していただく、またこれが必要なことではなかろうかと、こう思います。
  88. 郡司彰

    ○郡司彰君 次に、水産、そして森林といいますか林業関係についてお聞きをしたいと思いますが、二十一ページには水産の関係が記載がございます。二十ページには森林の関係がございますけれども、私は、ここに網羅をされているようなことではなくて、もう少し細かい部分で、例えば水産の関係でございますと、日本の国は六割以上が養殖、育てる漁業というような形を取っているわけでありまして、これは世界に行っても、ノルウェーとかごく一部の国を除いては、日本の、何と言うんでしょう、進んだ分野というふうにも言えるんだと思いますが、そのことが本当にこれから日本の漁業の中心を担っていくということでもって、雇用の問題もあろうかと思いますが、過殖の問題やら何やら相当出てきております。生態系の問題も含めて出てきておりますが、どのような将来像を養殖を中心にしてお考えになっていらっしゃるのか。  それから、林業関係でございますけれども、この林業も、十三行にわたって森林の問題書いてありますが、どうも林業者の生きるすべがこの中からは読み取れないんではないかなというような思いがありまして、大変ここまでも厳しい林業の経営をなさってきたそういう方々が大臣所信ではなかなか読み取れない。改めて大臣の口から、こういうことをやっていけば林業者としてもちゃんと生きていけるというようなことがございましたらば、お聞かせをいただきたいと思います。
  89. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 水産の関係我が国の養殖業、これは平成十四年には百三十八万トン、約五千二百億円の生産であるわけであります。このうち、給餌型養殖業は約三十二万トンで約二千六百億円を生産をし、国民需要の強い魚種を供給しております。地域の振興にも貢献する重要な部門でもあるわけであります。  他方、えさの過剰投与が行われた場合、漁場環境が悪化をし、魚病被害発生など懸念されるところがあるわけであります。このため、養殖指針の作成や環境への負荷の少ない餌料の普及を促進するとともに、持続的養殖生産確保法によりまして漁業者自ら漁場改善計画を作成することを促進をし、漁場の状態に応じた養殖漁業生産、餌料の適正な使用等が行われるよう指導に努めておるところでもございます。  こうした対応等を通じまして、消費者に安全で安心できる、環境に配慮した持続的養殖業、この推進に全力を尽くしてまいりたいと、このように考えております。  また、林業につきましては、長期にわたります木材価格の低迷あるいは人件費を始めとする経営コストの増加、また採算性と、こういう面で大幅に低下をしておるわけでもございます。林業業者が、減少や高齢化の進むなど極めて厳しい状況下に置かれておると、このように認識をいたしております。  こういう状況の中で、林業の持続的かつ健全な発展を図っていくためには、経営規模の拡大、あるいは担い手の確保と育成、あるいは路網の整備であるとか機械化等の推進、こういうことを進めることが必要でありまして、平成十三年度に策定されました森林・林業基本計画、これに基づきましてこれらの施策を積極的に推進をいたしまして、効率的、また安定的な林業経営が確立できるように努めてまいりたいと、このように考えております。
  90. 郡司彰

    ○郡司彰君 水産の関係、漁業者もこの十年、二十年で相当就労者が減ってきておりまして、今後の予測もかなり減るだろう、十万単位で減るだろうというような予測が出ております。  また、林業関係は、国土の七割を占める部分なんであるけれども、そこに携わる人たちがなかなか生計が立ち行かないという声を相当聞かされておりまして、ただこの林業の場合は、何かあったらば、その施策が来年、再来年ですぐに実を結ぶということにならないんですね。そういう意味では、長期的に計画的に国土というものの保全も含めて十分に意を使って、私は、特別会計の関係で五十年間で支払というようなことも今あって大変苦労をされているんだと思いますけれども、やはり基本のところは、人も金も山には掛けるんだというような強い意気込みで進めていただきたいなというふうに思っております。  次でありますけれども、二十二ページの方に記載がございますコイヘルペスの関係ですが、これまでの経過と現状どうなっているのか、若干、世の中の中では落ち着いたような形になっておりまして、情報がこのところ新しいものが出されてないような気がいたしまして、説明お願いしたいと思います。
  91. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 経過を振り返りますと、昨年の十月の中旬ごろからでございますけれども、茨城県の霞ケ浦におきましてコイの大量死が見られたわけでございます。  県の方から、この十月の末になりまして、独立行政法人水産総合研究センターの養殖研究所の方に検査の依頼がございました。その検査の結果、コイヘルペスウイルスの陽性反応が出た。これが十月の三十一日でございまして、翌日の十一月の一日には、早速、農林水産省と茨城県の方で現地調査に参りました。現場を見たところ、コイヘルペスウイルス病の可能性が高いというふうに判断されましたので、翌二日にはその旨を公表いたしますとともに、全国の都道府県に対しまして、コイヘルペスウイルス病の早期発見と、それから蔓延防止措置を取るようにということで要請をいたしました。  こういった経過の中で、各都道府県から、養殖場等におきまして調査を行った結果として、コイヘルペスウイルスに感染をしたコイが見付かったということで、現在までのところ二十三の都府県で感染のコイが発見をされておりますし、また焼却処分等、所要の蔓延防止措置も取られているところでございます。  農林水産省といたしましては、今後の蔓延防止措置等について検討するために、専門家の方々に技術検討会ということで数度にわたって検討をいただいてきております。また、各都道府県におきますコイヘルペスウイルス病の調査、あるいは持続的養殖生産確保法に基づきます感染したコイの処分等に必要な経費、こういったものが的確に行われるようにということで、昨年の暮れでありますけれども、補正予算によりまして約十七億六千万の予算の手当てもしたところでございます。  現在は水温が低い状態にありまして、こういう状態で新たな感染というのはほとんど出てきておりませんけれども、また春、水温が上がってくるということに対しまして新たな発生も予見をされるわけでありまして、今そこのところを注意しながら対応を今検討しておるところでございます。
  92. 郡司彰

    ○郡司彰君 これまで、十一月段階でいただいたのとほとんど同じような説明でございますので、特にそれ以降の激しい動きはないんだなというふうに理解をいたします。  侵入経路についてはどのような段階でしょうか、今分かっている範囲は。
  93. 中川坦

    政府参考人中川坦君) このコイヘルペスウイルス病の感染ルート解明につきましては、専門家の方々のいろんな助言をいただきながら三つのルートで今調べております。  一つは、発生した養殖場のコイがどこから仕入れたのかという、そういった仕入れ元をたどる調査が一つございます。それからもう一つは、自然の水系にコイの放流が行われております。こういったところではその放流の実態調査をする。それから三点目としまして、海外からのコイの輸入が行われているかどうか、そういった面からの調査、これら三つのルートで調査を行っているところであります。  先ほど二十三の都府県というふうに申しましたけれども、発生箇所で申し上げますと、全部で九十七の事例がございます。この九十七の事例のうちの約半分、四十六の事例が霞ケ浦あるいは北浦からの感染したコイの移動に伴うものというふうにおよそこの推測が付くわけでありますけれども、霞ケ浦、北浦を含みます天然水域の残りの五十一の事例につきましては、一般の人によりますコイの放流あるいは死亡したコイの投棄なども考えられますけれども、なかなか具体的にこれがどういったところから持ち込まれたのか、あるいはどういう理由で感染したのかというようなことはなかなか特定がまだできておりません。  それから、コイの輸入につきましても、これまでのところ感染を疑われるようなコイの輸入というのは見付かっておらないという状況でございます。  この後の具体的な感染経路の究明のための手段としましては、コイヘルペスのこのウイルスのDNAの塩基配列を調べまして、これが海外との関連がどの程度あるかといったようなそういう新たな手法も含めて、感染経路の究明に努力したいというふうに思っております。
  94. 郡司彰

    ○郡司彰君 一九九八年にイスラエルで初めてというのは、二〇〇〇年になってアメリカの学者がそうだろうということになったわけですね。非常に時間が短い病気だということなんでありますけれども、今のその三番目の関係、その海外からということが、常識的には日本で新たに発生したということを考えなければ海外からだろうということになるわけですね。  ところが、このコイそのものは食用のものは値段の関係からいってそんなに世界を飛び回るような商品にはならないだろうと。しかし、病気としてうつるのはコイ以外にはうつってないんだということになると、食べるコイ以外のコイについてというのが一番おかしいというふうに思うのが普通じゃないかと思うんですが、その辺のところについては言及ございませんでしたが、どうなんでしょうか。
  95. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 海外からの輸入の実績を調べるというのは貿易統計になるわけでありますけれども、今の分類上では、コイというものと金魚のような観賞魚が一本になっておりまして、なかなかそこのところが細かく分からないということもございます。大分調べようとして努力をしたわけでありますけれども、具体的に疑われるような事例というのが実績としても上がってきてないというのが実態でございます。
  96. 郡司彰

    ○郡司彰君 非常に憶測で発言をするということは差し控えた方がよろしいんだと思いますけれども、発生をしたのがイスラエルでございますね。食用のコイをそれほど養殖しているのかどうか分かりませんが、一方で観賞用と言われるコイは相当なさっていますね。発生をしているのもほとんどそういうのをなさっている国だということがあれば、そちらの方を私は正直言って疑ってやらないと、また同じようなことの結果を及ぼすんではないかというふうに思っておりまして、そちらの方の業界の方も大変努力はなさっていると思います。なさっていると思いますけれども、私としては可能性がやっぱりそこだろうと思いますので、そこのところについて、かなりきちっとした行政的な指導をやっていただきたいということを申し上げたいと思いますが、そういう私の申出に対して、いただけますか。
  97. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 今、郡司先生もおっしゃいましたように、このコイヘルペスウイルス病が世界で知られたのは二〇〇〇年でありますし、二〇〇一年の九月にヨーロッパの方でこの魚病の研究者の国際会議があって、その際にこのコイヘルペスウイルス病の報告があるということで、これが世の中にといいますか、世界的に知られた最初のきっかけになった会議であったというふうに思っております。  この九月の会議のすぐ後でありますけれども、二〇〇一年の九月の十三日に、このニシキゴイの養殖業界の方々、そういった団体に対しまして、海外でこういった新しい病気、ウイルスの病気が発生したらしいということで注意喚起などもいたしております。  そういうことで、私どもとすれば知り得た直後に、当時はまだ水産庁でこの問題を扱っておりましたけれども、関係業界の方にも注意喚起をし、さらにまた年が明けまして二〇〇二年にはインドネシアでこういったコイの大量死も報告されておりますけれども、こういった情報を得るごとに、それぞれ関係業界の方には注意喚起もお願いをしました。それから、全国の魚類の防疫推進会議といった会議も開きまして、そこの場でも各都道府県の方々にも併せて注意をするようにということで情報提供もしてきたわけでございます。  したがいまして、先生の今の御趣旨に沿いまして、これまでもやってきておりますけれども、これからも改めてこういった関係業界の方々にも注意喚起をしてまいりたいというふうに思います。
  98. 郡司彰

    ○郡司彰君 それから、KHVそのものの研究あるいは対処についてでありますけれども、これはたまたま、たまたまといいますか、持続的養殖生産確保法の特定疾病、指定をしたらばすぐにまた発生したような状況になっておりましたけれども、これはどうなんでしょうか、純粋に頭の中だけで考えますと、この程度の被害額のことについて恒常的に研究をしたりして人を使って対処策を考えているならば、起こったときに全部燃やしたり何かしちゃえばそれで済むというような、乱暴な言い方を非常にしておりますが、小さい魚や何かというのはそういうことも今まではなされてきたような感じもしないでもないんですが、これはあれですか、農水省としては、そのものの研究あるいは対処というのをこれからは持続的に国の機関の中で行っていくんですか。
  99. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 先生の御趣旨は、こういったウイルス病に対して研究、対処法等に研究を続けていくのかという御趣旨だと承りました。  このコイヘルペスウイルス病につきましては、十六年度の予算におきまして、これは技術会議の方の予算でありますけれども、緊急の課題がある際にそれをテーマ設定をして、例えばワクチンの開発ですとか、いろんな防疫対応の新技術の開発を含めまして研究をしていこうと、そういう重点課題にするということでなっております。  まだこの病気につきましては具体的な治療法なり対処法がない病気でありますので、そういった面での技術開発には努めてまいりたいというふうに思っております。
  100. 郡司彰

    ○郡司彰君 専門家による技術検討会も開催をされたようでありますけれども、そんなにいらっしゃいませんね、日本には専門家と言われる方が。これらを大量に、何というんですか、そういう専門家を養成をするということよりは、費用対効果を考えると、世界的な規模でどこかできちんとやるというようなことに日本も参加をする、援助をするというようなことでも間に合うのではないかという感じがしないでもないんです。ただ、これだけのことになりましたから、やるということならばきちんとやるというような体制を取っていただきたいなというふうに思っております。  それから、霞ケ浦の関係についてお聞きをしたいというふうに思いますが、埋却もあったのかなと思ったら全部焼却だそうでありますけれども、どのぐらいの量、いつごろまでに終わるというようなことで、これまでの経過も含めて焼却の状態をお知らせいただきたいと思います。
  101. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 茨城県におきましては、昨年の十二月の二十日に、この持続的養殖生産確保法に基づきまして、霞ケ浦、北浦のすべての養殖ゴイを対象に、今年の三月三十一日までに処分するようにという蔓延防止のための命令が発せられております。  現地におきましては、一月の二十日から焼却処分が開始されておりまして、養殖ゴイの総量が二千数百トンというふうに今推定をされておりますけれども、三月の十四日までに既に千七百六十四トンが処分済みということでございます。  これでいきますと、期限も三月三十一日となっておりますし、この三月中には全量処分される見込みというふうに承知をいたしております。
  102. 郡司彰

    ○郡司彰君 業者の方につきまして、これ、大臣所信の中の二十二ページには、「被害を受けた養殖業者の経営支援を図ってまいります。」というような文言がございます。  昨日、質問をするに当たりまして、そういうことを県の方と交渉はされているんですかというお話を申し上げましたところ、何か農水省の方ではなさっていないようなニュアンスで受け止めましたが、これ、大臣の方はこういうふうに所信の中にきちんと書いてあるんですけれども、現実問題として県の方との交渉はどのようになっておりますか。
  103. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 交渉といいますか、まずは私ども承知しておりますのは、五十八、約六十の業者の方がこの現地におられるというふうに聞いておりますけれども、当初はこういった業者の方々が、もう今回は廃業するというふうなことで意見が集約が見られたというふうなことも聞いておりまして、ただ現実にはまだそこまでも行っていないと。意思の、意見の統一といいますか、五十八の業者の方それぞれがそういうふうに決意を、決断をされたというふうには伺っておりません。  いずれにいたしましても、具体的なそれぞれのこれからの、営業を続けるかどうかという個々の業者の方々の御判断がまだ十分全部固まったというふうには承知をいたしておりません。何か、今後、養殖の方を続けたいということで、そういう方がいらっしゃるということであれば、改めてそういった方々の御要望もお聞きした上で、どういうことが可能かどうかということを検討させていただきたいというふうに思います。
  104. 郡司彰

    ○郡司彰君 二点ほどちょっと確認をさせていただきますが、その検討の方、それから県全体が業者の方の話をどういうふうにするかまとめ、県として、県内の状況がまとまったと。これは交渉の窓口は、そうすると農水省でよろしいということなのかということが一つ。  それから、これは亀井農水大臣が記者会見で、国としては生活保障や養殖施設の残存価格補償等の廃業補償は困難とした上で、設備撤去については漁場環境の保全の観点から支援できるよう検討してまいりたいというような発言をしたというふうに地元の方では流されておりますが、この二つのことについてはそれぞれよろしいでしょうか、そのようなことで。
  105. 田原文夫

    政府参考人田原文夫君) まず前段の点でございますけれども、これはまず霞ケ浦、北浦におきますコイ養殖漁業、こうしたものは県の漁業権に基づくいわゆる小割り式の網生けす漁業ということで、昭和四十年以降でございますか、四十年近くにわたって行われているというふうに聞いております。  したがいまして、先ほど消費安全局長の方からるるお答えしておりますけれども、持続的養殖確保法に基づきます補償措置、こういったことに対します予算の必要な金額、こういったこと等は国において計上し、しかるべく助成をするということでございますけれども、こうした業自体をどうするかという問題につきましての御判断は漁業者の方、さらには免許等を行っております県当局がまず一義的には判断されるということであろうかと思いますし、したがいまして、こういったことにつきまして国として補償するとか、そういったたぐいの話にはこれはならないんではないかというふうに考えている次第でございます。  それから、二点目の御指摘の点でございますが、私もちょっと詳細にそこはチェックしなければいけないのかもしれませんですけれども、私ども、十六年度、現在御審議いただいております予算の中で、内水面環境活用総合対策事業という約五億円の予算措置、これを計上させてもらっております。  この予算におきましては、今後とも養殖業を行うに当たりまして、例えば不要となりました、汚れたようなと言うとちょっと語弊があるかもしれませんですけれども、そういった施設を撤去するとか、そういったような事業に対する助成事業ということは組んでいるところでございまして、県当局がそうした漁業権の今後の運用と申しますか、そういったことに当たりましてこうした事業等々をお使いになられるかどうか、これは一義的には漁業者の御意向を伺っていただきながら県の方で御判断していただくべきものではないかと思いますけれども、そういったことがあれば十分に対応するという意味におきまして、大臣からはそういった趣旨で申し上げたということではないかというふうに考えております。
  106. 郡司彰

    ○郡司彰君 最初の方のがちょっとよく明確ではないんですが、県の方は国の方と協議を進めているところでございますというような発言をしておりますが、その国というのは、先ほど言ったように、国土交通省という何かちょっと話も出ていたのでありますけれども、農水省でよろしいんですか。
  107. 田原文夫

    政府参考人田原文夫君) 私ども、県の方から具体的に水産庁としてそうした要請が、今日現在の段階におきましてお受けしているという状況ではございません。
  108. 郡司彰

    ○郡司彰君 分かりました。  霞ケ浦というのは全国で二番目に大きな面積を持っているということなんでありますけれども、非常にほかの湖沼と変わった特色があるだろうというふうに昔から言われておりまして、実は平均の水深が四メートルしかありません。一番深いところでも七メートルぐらいしかないというようなことでございまして、そういうような中で霞ケ浦の、環境的な面から見ると霞ケ浦というのはどういうようなことでとらえておけばよろしいのか、環境省の方で、いらっしゃっておりますでしょうか。
  109. 小沢典夫

    政府参考人小沢典夫君) 霞ケ浦は、御指摘のように、我が国第二の面積を有する湖でありまして、優れた景勝地であるということで水郷筑波国定公園に指定されております。  生態系という点では、湖岸に自生するアサザなどの希少な水草や広大なヨシ群落等により特徴付けられる植生が見られますほか、希少鳥類でありますオオヒシクイの越冬地となっているなど、良好な湖沼生態系を有している場所であると承知しております。
  110. 郡司彰

    ○郡司彰君 そのようなところで今回コイのヘルペスということが起こって、改めて茨城県も地域の周辺の方々も、これから霞ケ浦というのは例えばどういうような湖として、県民が、あるいは国民という言い方をしてもよろしいんだと思いますけれども、見ていけばいいんだろうというようなことを今考えているところだと思うんですね。  これ、農水省としては、今後、先ほどの話で大体お分かりになったわけでありますけれども、養殖をするとしての対象の湖沼として霞ケ浦を見る場合にはどのようにお考えでしょうか。
  111. 田原文夫

    政府参考人田原文夫君) お答えいたします。  霞ケ浦地区におきますいわゆる小割り式の網生けすコイ養殖漁業、これは、先ほども申し上げましたけれども、霞ケ浦の水を工業用水等に使おうということで、水門の設置等に伴いまして、大体四十年ごろから、従来の河川漁業をこうした作り育てる漁業に変えるという趣旨で漁業権の免許が行われ、今日に至っている経緯であるというふうに承知をいたしております。  他方、霞ケ浦の富栄養化に伴いますいろんな問題ということで、茨城県におかれましては条例も制定されておられるようでございますし、この富栄養化の防止に関する条例に基づきまして、霞ケ浦魚類養殖業指導要領、こういったことも定められながら、例えば放養尾数の適正化ですとかあるいは給餌を必要としない魚種への転換指導ですとか、こんなことをいろいろされておられるという話は承知しているところでございます。  私どもといたしましては、基本的には県当局が、そうした環境の問題と内水面漁業の振興の問題、どう調和されるかということは、これは霞が関におります我々ではなく、正に霞ケ浦を所管しておられる茨城県の地元の住民の方々並びに県御当局がまずどう判断されるのが一義的な、必要なことだというふうに認識しておりまして、私どもは、そうした判断の下で、県当局あるいは地元の漁業者の方々が引き続き魚類養殖をやっていきたいという御意向であれば、私どもでできる限りの御支援をしていきたいと。  先ほど申し上げました、例えば事業名でいたしますと内水面の環境活用総合対策事業もございますし、個々の漁業者の方々に対しましてのいろいろ種苗の手当てのための資金制度ですとか、いろんな金融措置等もございます。こういったことで支援をしていきたいと、かように考えている次第でございます。
  112. 郡司彰

    ○郡司彰君 環境省の方で先ほど霞ケ浦の、どういう湖だということをお話をいただきましたが、霞ケ浦の養殖漁業をもし行うとすると、何かコメントをいただくようなことがございますか。
  113. 吉田徳久

    政府参考人吉田徳久君) お答えをいたします。  今、水産庁長官からもお話ございましたように、環境保全の面からもコイの養殖に伴う汚濁負荷の削減というのは大事になっております。昭和五十九年に成立いたしました湖沼水質保全特別措置法に基づきまして、網生けすを用いるコイの養殖場につきましては、そこからの負荷を極力少なくするように県を通じて指導がなされてまいりました。私どもといたしましては、もちろんその霞ケ浦の水質を保全する一環として、今申し上げましたような養殖に伴う負荷の適正な管理というものも一層充実をしていく必要があると思います。  なお、現在も霞ケ浦の水質は、有機汚濁の代表指標でございますCODにしても、富栄養化の指標でございますN、窒素あるいは燐にいたしましても、まだ満足できる状況にはございませんので、環境省としても、農水省と連携しながら、引き続き霞ケ浦の水質の改善に努めていきたいと思っております。
  114. 郡司彰

    ○郡司彰君 次に、先ほどお話の中にも出てまいりましたが、今年また水温が上がってまいりますと動き出すんではないか、十八度から二十三、四度ぐらいが一番ウイルスにとってはというような話がございましたけれども、これに対する対策というか、今のところ、まだその時期になってみなければ、実際にウイルスは今の時点で死滅しているのかどうかも分からないということなのか、その辺を含めてちょっとお話をいただきたいと思います。
  115. 中川坦

    政府参考人中川坦君) これまでの技術検討会におきます専門家の方々の助言を踏まえまして今やっておりますことは、これからの昇温期に備えまして、可能な限り綿密な監視を行って、感染したコイがあればできるだけ早く発見をして、それを淘汰していくと、こういうことが蔓延防止のための必要な措置だというふうに思っているわけでございます。  既に、各都道府県ごとにコイヘルペス病の監視のための地区区分といいますか、そういったようなものを作っていただいておりまして、汚染の可能性の高い地域を重点的に監視をするということが一つの活動でございます。それから、既にコイヘルペス病の発生が確認をされました養殖場などにおきましては、持続的養殖生産確保法に基づきますコイの処分、これはもう既に行っていただいておりますけれども、それに加えまして施設の消毒など、再発あるいは蔓延防止のための確実な措置を取っていただくと。それから三点目としまして、天然水域でありますけれども、ここでこのコイヘルペスウイルス病の発生が確認された場合にはコイの持ち出しを禁止をすると。  こういった、それぞれの状況に応じて、できるだけ早く見付けて、早くそういったものを排除するということ、これしかこのコイヘルペスウイルス病に対する蔓延防止対策はありませんので、そこのところをきちっとやっていただくということで、今のうちに準備をお願いしたいというふうに思っております。
  116. 郡司彰

    ○郡司彰君 次に、米国からの牛肉輸入の問題についてお話をお聞きしたいと思いますが、大臣、昨日、ボーカス上院議員がおいでになってお話合いをされたということでございます。どのようなお話合いがなされたのかということと併せて、このボーカス上院議員という方はどういう立場を代表するということなのか。大臣がお会いになられたんでありますから何がしかの権限なりを持っていらっしゃるのかなというような気もしないでもないんですが、どういう方だということも含めて、お分かりになればお話しいただけますか。
  117. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 昨日、ボーカス米国上院議員とお目に掛かりました。権限はどういうことか、上院の財務委員会ですか、その筆頭をされていると、こういうようなことで、国会議員としてお見えになった。私以外にも、経済産業大臣ですとか官房長官にもお会いになっている、あと、それから外務副大臣等にもお目に掛かっておられると、このように思っております。別に私は、権限は、先方からお会いしたいというお話でございますのでお目に掛かったわけであります。  その中で、お話は、輸入再開は日米双方にとって重要な問題であり、早期の再開に向けて双方努力する必要があると。また、いわゆる国際基準にのっとった科学的な基準と、こういうことを検討し、それによる解決というようなお話が、その必要性をお述べになったわけであります。  私は、かねがね申し上げておりますとおり、ベネマン農務長官あるいはゼーリック通商代表と、ベネマン長官とは電話、あるいはゼーリック通商代表とは直接お目に掛かってお話もいたしました。それは、我が国でやっておりますいわゆる屠畜場におきます全頭検査、そしてさらに特定危険部位除去、このことを繰り返し申し上げておるわけであります。  そういう中で、科学的な知見と、あるいはOIEに、いろいろその基準のことにつきましてお触れになりましたので、我が国では全頭検査をしていると、さらには、二十三か月、二十一か月、このBSEの感染牛を発見をしたと、こういうことで、消費がかつてもう三割に落ちたのが、今は九割を超えていると。そして、十頭、十一頭、ここで発生いたしましても、その国民考え方というものは一向に変わっていないと。やはりそれは、我が国の取っておりますこの全頭検査特定危険部位除去、これを国民皆さん方が御理解をしていただいていることだと。  こういう面で、是非米国におきましても、やはり食の安全、安心と、そして消費者が望むものを輸出されるということが基本ではなかろうかと。さらには、科学的な問題でも、先ほど申し上げましたとおり、若齢牛が出ておると。これはやはり、BSEが出ましてまだ二十年に満たないわけでありますので、いろいろな問題が、まだ未解決の分野もあるはずだと。そういう面で、やはり我が国の取っておりますことを再三申し上げたようなわけであります。  なお、ボーカス上院議員はモンタナ州、いわゆる食肉の生産地、民主党の有力議員と、こういうことでありますし、どうも伺いますと食肉産業とのつながりも深い関係者と、このようなことのようでございます。なお、上院の財政委員長をお務めになって、クリントン政権のときには上院の財政委員長もお務めになったと、このように承知をいたしております。
  118. 郡司彰

    ○郡司彰君 午前中も、小斉平議員の方の質問にもありましたように、アメリカも、これまでよりは頭数を増やして調べましょうとか、いろんなことを言ってきてやってきている。一方で、これは昨日の質問の際にはちょっと申し上げなかったことなんでありますけれども、どうもWTOとの関係で、提訴する内容にもなるんではないかというような動きがあるとか、そういうこともあるんだそうでありますけれども、一方、私、日本では全頭検査やっていて、これまでに想像もしなかったような月数のものが出てきたり、それから、決めるときも簡単に決めているということではないんですけれども、全頭、死亡牛検査を昨年から行っております。  それで、これは実際に委員会の視察で見に行きました。大変な作業ですね、なさっている方々は。私ども行ったときは、非常ににおいや何かも気を遣って相当程度私どもが見やすいようにやっていただいたんですけれども、それでも大変な作業をなさっているということで、そのことによって日本の場合には安心という形を国民の方に与えて、全頭検査あるいは死亡牛検査で初めて出たということになっても、前々回、いろんなときのような動きにならないということになっているんだと思いますね。  そういうふうなことを含めて、米国のこの検査拡大、そのことによって条件は変わらないというのが今の大臣の発言の趣旨だったというふうに思いますが、改めてその辺のところ、再開の条件は変わらないというようなことでよろしいでしょうか。
  119. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 先ほど申し上げましたとおり、国民健康保護、そして食の安全、安心と、こういう面、そしてさらには、我が国で取っております対応ということが基本的なことでありますので、そのことを十分踏まえて対応することが適切なことだと、このように考えております。
  120. 郡司彰

    ○郡司彰君 それから関連をして、トレーサビリティー法案でございますけれども、私ども、昨年の法案審議の際にも、これは基本法段階で、国の内外ということにしたではないかと。トレーサビリティーについても、なぜこれがアメリカからの牛肉については必要ないんだというようなことの質問をいたしましたが、当時の大臣の答弁は、検疫体制で十分ですよと。それから、言葉はどうでしょう、未発生国という言葉だったんでしょうか、そういうようなことだから大丈夫だということだったんでありますが、その当時の発言に対して、そしてまた現状、少し前提が違ってきたのではないかなという思いがありますが、大臣の現在の考え方を聞かせてください。
  121. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 今回の米国におきますBSE発生対応いたしまして、米国牛肉等につきまして直ちに輸入停止をいたしたところであります。  トレーサビリティーの問題、このことにつきましては、当時、このトレーサビリティーシステムの御要請をちょうだいをいたしました。そのときにも私は、BSE発生国、こういうことで、トレーサビリティーを要求することは国際協定に抵触するおそれが高いんではなかろうかと、こういうことも申し上げたわけであります。やはりその問題は、現実にまだ抵触する国際協定の問題はあると、このように思っております。  したがいまして、このトレーサビリティーシステム法の見直しにつきましてはやはり慎重に検討する必要があるんではなかろうかと、このように考えております。
  122. 郡司彰

    ○郡司彰君 日本の、どういう経路で感染をしたのかというような報告も出されて、その中でも、あのときには、一つは別ですけれども、二つの可能性は、八二年、八七年にイギリスから十四頭ぐらい入ったやつがもしかすると日本で暴露をされるきっかけになったんではないかというようなことがございました。だとすると、アメリカそのものは、イギリスからは日本の十四頭どころではない頭数を輸入をしていたということは、これはもう事実だというふうに大臣もお認めになると思いますし、また日本そのものも、やっぱり時期が、非常に昨年の法案審議と微妙な時期に、アメリカ、カナダに対してどうなんですかという質問書もお送りをしている。そういうことを含めて、私は改めてこのトレーサビリティー法案については修正を含めてお話をするべきではないかというふうに思っておりますけれども、一蹴をされますでしょうか。
  123. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 国際協定の問題、これに抵触するというような問題もございますし、その問題につきましては慎重に考えなければならないことではなかろうかと、こう思います。
  124. 郡司彰

    ○郡司彰君 いずれまた、今日は所信でございますのでできるだけソフトにということで心掛けておりますので、改めてまたそのような機会を持ちたいというふうに思います。  次に、時間がございませんので次の質問に移らさせていただきますが、メキシコとのFTA合意をしたということで、これマスコミの論調も、FTA日本は後れていたけれどもようやく頑張ったと、これからどんどんFTAを結ぶべきだというようなことが多くて、国としてもあるいは企業としてもチャンスが広がるんだぞというようなことで、おおむね前向きにということが多いんですね。じゃ、大臣所信の中にも、情報をたくさん集めて間違いがないようにやっていきますよということで、今日はそういう質問をしようということで、昨日も質問のやり取りをいたしました。ところが、大臣の方は「各国の事情等についてできる限り情報の収集分析を行い、」というふうに書いてあるんですけれども、農水省は実は余りやっていないんだよというようなことで、それらに関してはもうほとんど外務省にお聞きをくださいというようなことなんでありますが、それはそれでいいです、これからやろうとすることだというふうに理解をすればよろしいんですけれども、私はちょっと不十分だなという思いがあります。  まずその前に、FTAメキシコとの合意内容について簡単に御説明いただけますか。
  125. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) メキシコとのFTA交渉につきましては、先週の金曜日夜に、日本側からは私のほか、中川経産大臣、川口外務大臣、そしてメキシコ側からはカナレス経済大臣、ウサビアガ農牧大臣出席いたしまして、テレビ会談を通じまして大筋合意に達したところであります。  その内容、これは農林水産品約千百品目につきましての関税譲許を行うものでありますが、豚肉につきましては、昨年十月、閣僚折衝の合意を基本に、差額関税制度の根幹を維持したほか、そのほかの品目につきましても必要に応じて例外品目あるいは関税割当て経過期間を設定するとともに、二国間セーフガードを導入することとしたわけであります。  農林水産物の関税交渉に当たりましては、農林水産業の多面的な機能への配慮と我が国食料安全保障の確保農林水産業における構造改革努力に悪影響を与えないよう十分留意をして交渉に取り組んできたところであります。  そういう中で、先ほど委員指摘がございましたが、アジアの国とのFTA交渉が今進められております。我が省、それぞれ各国ごとにチームを編成をさせまして、私が所信に申し上げておりますとおり、いろいろの情報の分析、また戦略というものをやはり作ってまいらなければならないわけでありまして、外務省というようなことでなしに、我が省がそのような本部組織、対策本部を設置をいたしまして、我が省の機関を十二分に活用してFTAの問題にしっかりした対応をいたしたいと、今、そのいろいろのことを今進めておるところでもございます。
  126. 郡司彰

    ○郡司彰君 メキシコアメリカと結んだNAFTAというのがありまして、これがFTA世界のはしりのような感じで言われておりまして、たまたま今回は日本メキシコでございますから、そのメキシコが既に十年近く前から行っているものがどういうふうになっているかという検証をすべきではないか。どうもFTAFTAということに草木がなびいて、実際にその起こっていることがどういうことなんだということが余りにも日本の場合には知らされていないんではないかということでお聞きをしたいというふうに思っております。  このNAFTAの検証、メキシコはどうなったのかということで幾つかお尋ねをしたいと思いますけれども、この間の対米貿易内容、それから農山漁村への影響、あるいは農山漁村、農林漁業にかかわらず、生産性あるいは労働コストはどのようになっているのか、また、豚肉の輸入量ということで、特に豚肉が今回メキシコとの関係で話題になりましたので、ここのところは農水省でもって答えをいただけるということでございますから、豚肉の輸入量は農水省、それ以外のところについては外務省でおいでになっている方、お知らせいただきたいと思います。
  127. 佐々江賢一郎

    政府参考人(佐々江賢一郎君) お答え申し上げます。  農業部分については後ほど農水省の方からお願いしたいと思いますけれども、メキシコアメリカのまず貿易でございますけれども、これは、NAFTAの事務局がございまして、二〇〇三年に統計を発表しておりますが、それによりますと、メキシコの対米輸出はNAFTA発効後大きく増加しておるということでございまして、二〇〇二年のメキシコ米国への総輸出額は千三百六十一億ドルということでございまして、NAFTA発効前、これは一九九三年でございますが、五百八十億ドルに比べますと約二・三倍に増加しておるということでございます。  また、反対に、この米国メキシコに対する輸出につきましても同様に、NAFTA発効後、これも大きく増加しておるということでございます。数字を申し上げますと、二〇〇二年の米国メキシコへの総輸出額は千七十二億ドルということでございまして、これもNAFTA発効前、一九九三年のレベルに比べますと約二・一倍に増加しているということでございます。  それから、先生今お尋ねの生産性あるいは労働コストの点でございますけれども、これにつきましては世界銀行の報告がございます。これによりますれば、NAFTA発効後、技術移転が促進されて、メキシコの産業全体の生産性は向上したというような報告が出ております。その中、農業分野では、しかし格差が見られるということで、北部を中心とした輸出志向の農業では生産性の向上が見られたと、他方、南部の小規模の農家はそうした恩恵を受けることはなかったというような報告も出ております。  それから、労働コストにつきましては、これはメキシコの経済省が報告をしておりますが、輸出に関するセクターほど賃金水準が上昇したという報告がなされております。  以上でございます。
  128. 村上秀徳

    政府参考人村上秀徳君) NAFTA影響、効果でございますけれども、貿易面で、全体的な貿易については今外務省の方からお話があったとおりですけれども、アメリカメキシコ間の農産物の貿易についてはNAFTA発効後大きく増加しておりまして、二〇〇二年のアメリカからのメキシコへの農産物輸出額は約七十二億ドル、約九千億円ということで、NAFTA発効前の一九九三年の約二倍に増加しているところでございます。また、メキシコ米国への農産物輸出額は約五十億ドル、約六千九百億円ということで、これもNAFTA発効前の約二倍に増加しているということでございます。  品目別では、米国からはトウモロコシ、小麦、大豆、牛肉、豚肉などの輸出が増加しております。このうち、今、委員指摘の豚肉につきましては、アメリカから輸出額は約一億二千万ドル、約百五十億円、約七万七千トンということで、NAFTAが発効する前の約二・九倍、数量では約三・七倍に増加しているということでございます。他方、メキシコからは、トマトなどの野菜、それからブドウなどの果実の輸出が増加しているということでございます。  以上でございます。
  129. 郡司彰

    ○郡司彰君 皆様のところに委員長のお計らいで資料を配らせていただいておりますが、大臣、この資料でございます。(資料提示)これは、NAFTAの教訓ですよということでこういうグラフがあったんでありますけれども、メキシコ自給率、かなり、元々低くなってきていたんでありますが、右の方に一九九三年というのがNAFTAが発効した年でございます、それ以降メキシコ自給率はここまで下がってきているというようなことなんですね。  それで、今農水省の方から、例えば豚肉の輸入量はアメリカからどのぐらいあるんですかというと、七万七千トンだそうでございます。今回、日本メキシコからの豚肉の輸入で枠を設けて、一定関税を低くしようと言ったのは八万トンだったですね。余りにもいい数字で合うわけでありますけれども。  それから、先ほど外務省の方もお話をいただいた、それから農水省の方からもお話をいただきましたが、この貿易は確かに相当増えているんですね。しかし、おおよそのところは、米企業の企業内の貿易というような数字が非常に多いんですね、これは。  労働コストについては、二三・二%メキシコで下がったということになっております。これはほかのアメリカもカナダも一緒なんですね。それで、世論調査をやりましたところの数字を見ると、六割から八割の方が、これはNAFTAは失敗だと、やめろという答えの方が多いんですね。  こういうふうな数字を見てみると、先ほどの数字は、それは私も事実の数字だろうというふうに思います。しかし、中身が全然違う。例えばカナダに対するグリーンフィールドの投資、新しい工場を作って雇用をやるというようなことではなくて、投資先というのはほとんどもう合併とか買収ですよ。ですから、新たな工場ができて新たな雇用をするなんということがほとんどない。しかも今回の場合は、これメキシコの場合で見ますと、これは新規雇用は増えているんです。大変に増えているんです。しかし、その五五%は法定基準を満たしていない。社会保険、社会保障。それから、休日年間十日も満たしていない。それから、日本で言うところのボーナスが、向こうで言うクリスマスボーナス、これもほとんどゼロとか、大変にこの労働条件が悪くなっている。それから、農業関係だけでいうと、全体で農業そのものは、食品の価格は二五七%上昇したんだけれども、農業収入は一八五%しか上がっていないというようなことになってくる。国や企業は非常にFTAにとってメリットがあったけれども、そこに住んでいる人たちにとってはかなり厳しい条件の就労になっていたり、そういうことがある。  それから、メキシコアメリカ関係だけからいいますと、その国境地帯、マキラドーラという何か独特の地帯がありますね。そこのところの輸出それから原油の輸出、これが輸出全体の五四%になっているんですよ。ですから、今までも、NAFTAメキシコアメリカ関係を見れば、その地域からは、黙認をされていたものが数字になってはっきり出るようになったから、大変多くなっている。それも、貿易そのものの数字も大きくなってくるけれども、ほとんどアメリカの企業が買収をしたことによって企業内のトレードですよ。  こういうふうなところを多分外務省の方も御存じなんだと思いますけれども、今私の方で申し上げたような中身は違っておりますか。
  130. 佐々江賢一郎

    政府参考人(佐々江賢一郎君) ただいま先生が引用されました数字については、私どもいろいろな数字を聞いておるわけでございます。アメリカ研究所でも、どちらかというと、このNAFTAの雇用に与える影響についてやや消極的にとらえている分析もありますし、他方、これはある面で当然でございますけれども、アメリカ政府はむしろこれを非常に積極的にとらえた評価あるいは数字を公表しているというようなこともございます。  例えば、アメリカのUSTRなどは、アメリカからメキシコへの投資残高というのは九三年の百五十億ドルから約五百億ドルと相当な数字でございますから増えているということで、これによって米国人の平均的な所得増加というのは大変多く増えていると。これに、アメリカに裨益している、こういうことを言っているわけでございます。  もちろん、その中には企業内の取引もあると思いますし、ですからこの経済的な所得効果というものがどの階層のどの人たちに及んでいるかということは当然あると思いますけれども、少なくともアメリカ政府は、これは全体として経済的効果はプラスであるという評価をしているということも是非御理解いただきたいと思います。
  131. 郡司彰

    ○郡司彰君 NAFTAを、NAFTAじゃなくてFTAをやるなという立場に私も別に立っておりません。しかし、国や企業が潤うということに合わせてそこに住む人たちも潤うような形を何とか探していかなければいけないだろうという思いは強いわけでありますけれども、例えばこれは農業だけで見ましても、メキシコ関係でありますけれども、一九九三年から二〇〇二年の間、コーンと菜種の輸入が八百八十万トンから二千三十万トンに増えている。それから、先ほど言った肉もそうで、食肉とか果実、これも相当程度実はアメリカからの輸入が増えているんですね。  先ほど大臣、豚肉の日本メキシコ関係は八万トンということでもっていろいろこの数字が出されていて大変だったというような論調が多いんでありますけれども、その同じほとんど数量、七万七千トンがアメリカからメキシコに入ってきている。これは玉突きで、結局はアメリカがもうかる機構になっているんではないかというような思いがありますが、どうでしょうか。
  132. 村上秀徳

    政府参考人村上秀徳君) メキシコの豚肉の全体的な需給でございますけれども、手元にございますFAOのデータによりますと、メキシコの豚肉の生産は二〇〇三年で百八万トンという状況でございます。  それから、今、先生御指摘のとおり、アメリカからかなりの数量を入れております。他方で、輸出が五万トン程度あったというふうに考えております。  そういう中で、輸出にかかわる関係の州というのが三州ほどございますけれども、企業経営をしているような場合が多いわけでございますが、その中にはいろんな形態がございまして、必ずしもアメリカからの玉突きということではなくて、この輸入の、このFTAの枠でございますけれども、これについては当然原産地規則を決めておりまして、メキシコ産の豚とそれから生産された豚肉ということを規定しているところでございます。
  133. 郡司彰

    ○郡司彰君 私は、アメリカという国自体がどうのこうのというような思いを持っているわけではありませんので。  次に、例えばアメリカはどういう影響が出ているのかということで外務省さんにお聞きをしたいというふうに思いますが、アメリカにはNAFTA業者への政府給付というのがあるんだそうでありまして、受給者、どのような人数になっているんでしょうか。また、どういう人に対して支給をされているのでありましょうか。
  134. 佐々江賢一郎

    政府参考人(佐々江賢一郎君) 今、先生御指摘になられました制度は、NAFTA協定に基づく失業給付と言われる米政府の導入した移行調整支援プログラムということをお話しされているんではないかと思いますが、もしそういうものであるとすれば、これは基本的には、このNAFTAの締結に伴いまして、NAFTA締結国からの輸入急増や、あるいはこれらの国に生産拠点が移動したために職を失ったと、あるいはそればかりではなくて就業時間が削減されたと、そういう米国の労働者に対して支援するプログラムであるというふうに理解をしております。  この実態でございますが、失業給付件数等の詳細については、必ずしもすべてを把握しているわけではございませんが、一つのデータとしてアメリカの民間の研究所のまとめた報告によりますと、一九九四年のNAFTAの発効後、二〇〇一年までの給付件数は約三十七万件あるというふうに承知をしております。で、産業別に見ますと、特にこのうちアパレル産業において約十万件、その他金属加工機械産業、輸送機器産業において約十三万件の給付があったということがこのレポートに書かれているということを承知しております。
  135. 郡司彰

    ○郡司彰君 今おっしゃっていただいた内容で、給付の内容、相当厳しいんだそうでありますけれども、二〇〇二年まで一年ちょっと延びると、今現在四十一万三千百二十三名が受給をされているそうであります。相当厳しい受給資格でありますので、実態的にはかなりの更に失業者が出ているんではないかなというふうに思います。  次に、さきにこのメキシコとの関係より以前に日本とシンガポールの間で新時代の経済連携協定というものが結ばれておりますけれども、私は農産物の問題の関心からでありますけれども、どうもこの日本で余り出てこないけれども、投資ルールに伴っての紛争、係争というのが多いんではないかなというような思いを持っておりまして、この投資ルールの問題点と、内国民待遇でありますとか、あるいは投資環境の整備ということに関していろいろの係争等が起こっているというようなことも聞いておりますけれども、どういう現状でしょうか。
  136. 佐々江賢一郎

    政府参考人(佐々江賢一郎君) 先生、今シンガポール協定のことを言及になられましたけれども、これはNAFTAにも同様の投資に関する規則がございます。大体、諸外国のこの種の協定には投資に関する規定あるいはその紛争処理に関する規定があるわけでございます。一般的には、原則として内国民待遇を与える、あるいはこの投資を認める条件として現地調達等一定の保護的な義務を課すことを禁止する、あるいは、投資家とこれは主として国でございますが、紛争処理等が規定されるということで、この投資の保護と同時に自由化に関する規定が設けられているということでございます。基本的にはこの種の規定を通じまして投資を促進する、あるいは自由化を促進するということで、これが結果的に経済成長あるいは活性化につながるということで各国ともこういう規定を設けているということでございます。基本的には、このメキシコでもそうでございますが、そのほかのASEAN諸国等の協定におきましてもこのような基本的な投資の枠組みというものが必要であるというふうに考えております。  具体的なこの紛争の状況についてお話がございますけれども、少なくとも、日・シンガポール協定を結びました結果、何かこの協定上の紛争処理をしなければいけないという状況にはございません。むしろ、この協定の結果として、日本からシンガポールに対する大型投資、あるいはシンガポールから日本に対する投資は増大しておりまして、この結果として双方向の投資が増大される効果をもたらしているというふうに考えております。
  137. 郡司彰

    ○郡司彰君 今のところそういうケースが出ていないということでありますが、これ、NAFTAの場合は、例えばエチル社とカナダ政府関係で、私どもこれ見ると何でこれカナダ政府が悪いのか分からないような内容でありますけれども、いずれにしても投資環境が不整備なんだというようなことなんでしょう。一千三百万ドル、カナダ政府がエチル社に払ったとか、それからメタルクラッド社とメキシコ政府関係では、これも同じような有害廃棄物処理場の埋立地の拡大をその会社が申請をして、それは国内法に照らして駄目なんだということだったんだけれども、結果として裁定は千五百六十万ドル、メキシコ政府がメタルクラッド社に払ったとか、大変な係争が起きているわけです。  これ、日本もシンガポールと結んだということは、シンガポール国籍の方が一名でもいれば内国民待遇の裁判も起こるというようなことになるわけでありまして、今後これ農産物関係も含めていろいろなケースが出てくると思いますので、農水省としても、大臣が言われているように、情報収集その他をきちんとやっていかなければいけないんではないかなというふうに思っております。  それから、外務省さんおいでになっていらっしゃいますが、最後に、労働市場の開放ということがちょっと出ておりますが、これ、労働市場の開放、今どういうことが議題になっているのか。私としては、農業分野の例えばオペレーターとかそういう方も技術者とかという枠でもってそういう交渉の枠組みに入れば入ってもらいたいなという思いがあるんですが、その労働市場の開放ということに関してはどういうことなんでありましょうか。農業の技術者というのはそこに入るというようなことにはなっておりますでしょうか。
  138. 太田信介

    政府参考人太田信介君) 我が国農業分野においても外国人に対します研修・技能実習制度を実施しております。これは、研修生の送り出し国への技術移転を通じた我が国の国際貢献の一環という位置付けで行っておるものでございます。  農業分野におきます外国人労働者の受入れにつきましては、国際競争力強化の観点から、コスト削減を図るための方策として、作目によりましてはメリットがあるとの見方もございます。しかしながら、一方で、社会的な受入れ体制の問題や我が国農業技術等の流出など懸念も大きいと考えられ、慎重な考慮を要する問題であるというふうに受け止めております。  いずれにいたしましても、外国人労働者の受入れにつきましては政府全体として十分検討されるべきものというふうに考えております。
  139. 郡司彰

    ○郡司彰君 時間がなくなっておりますが、大臣、担い手が大宗を占めるような形に持っていきたいということは基本だろうと思うんですね。その担い手というのはこの所信の中には特に出ておりませんが、約四十万戸ぐらいの、株式会社とか法人とかも含めてそういう数を頭に置きながらというような話がこれまでも出されております。四十万というのは個人ではなくて経営体だというようなことでとらえると、それが生産の大宗を占めるような労働力の確保というのは大臣のそのお考えの中ではどのようなイメージとしてお持ちになっていらっしゃいますか。
  140. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 四十万、それ個人経営とそして農業生産法人と、そういう面で四十万というような経営体を考えておるわけであります。その中で、農業生産法人あるいは認定農業者、こういうような形で考えていると、そのほかは家族経営というような形の数字というものが四十万以外に長短があると、こういうことであります。
  141. 郡司彰

    ○郡司彰君 実態としては、先ほど段本議員のところで現場に農水省の方もどんどん行った方がいいんじゃないかという話がありましたが、私、農業センサスが出されると、非常にこれは、それぞれもっと細かい形の範囲で農業センサスが出されて、それに基づいて地域の農業がいろいろ具体化されるというようなことが望ましいんではないかというふうに思っているんですが、例えば県内のそういう数字をいろんなところを見ても、かなりその数字が実態とそぐわないようなものとして出てくるものが多いんですね。  それはどういうことによってそういうことをもたらすのかというと、出されたその調査票にそのまま素直に書いていいものかどうかというような実態が多分にあるんだろうというふうに思うんです。そこは厳密な話をすれば、難しいその外国人労働力をどうするんだとか、それは法務省の問題ではないかというようなこともあろうかと思うんですが、私はなかなか、経営体として人を雇うということになると、幾らかでも生産性を高めるためには安い労働力を探すということに走らざるを得ない。  それから逆な意味に、国が進めている構造改善で、農業も水田だけじゃないんですよと、それ以外のところにということになると、これはもう単純に言えば、いかに労力をぶち込むかによってその生産性に跳ね返ってくると。そういう単純な図式になる地域というのは結構多いんですね。  だとすると、その労働力の確保についてもう少し、前にもお願いをしたのでありますけれども、真剣に、この外国人の技術者というようなものとか、今は受け入れている研修生という形を取っておりますけれども、もう少しルールを早め早めに作るということをしないと、私はちょっとそれぞれの地域で生産ということに関して追い付かないようなものが出てくるんじゃないかと思っておりまして、最後にまた、重ねてで恐縮ですけれども、早期に農水省としてもその労働力の確保について取り組むんだというような決意とお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  142. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) できる限り国内での農業者によりまして農業が確立できるような施策を進めると、このことが基本であるわけでありまして、そういう面で今回、基本計画見直しと担い手あるいはまたやる気と能力のある農業者をしっかり支援をして後押しをしようと、こういうようなことを今進めておるわけであります。  基本的には、我が国国内での農業者を、いろいろハローワーク、新規の就農、こういうようなことにも意を注いでおるわけでありますが、そのような中で考えてまいりたいと。外国人のその労働者等につきましては慎重な考慮が必要ではなかろうかと、このように思います。
  143. 郡司彰

    ○郡司彰君 終わります。
  144. 千葉国男

    ○千葉国男君 公明党の千葉国男でございます。  最初に、WTO交渉について基本的な問題についてお伺いをしたいと思います。  その前に、対メキシコとのFTA交渉が大筋合意されたことにつきまして、一つの交渉の山を乗り越えたと、こういう意味で、大臣始め関係者の皆さんの御努力に心より敬意を表したいと思います。  今後、タイ、フィリピン、マレーシアなど年内の交渉が続きますけれども、農家の方々も注目をしておりますので、更なる頑張りを期待したいと、このように思っております。  WTO交渉が昨年九月のカンクン閣僚会議の決裂以降中断をいたしております。本年一月十一日に米国ゼーリック通商代表WTO加盟百四十八か国に対しまして交渉再開に向けた書簡を送るなど、積極的な行動を起こしております。この三月二十二日からジュネーブでWTO農業委員会特別会合が開催されますし、さらには本年七月から八月にかけてWTO交渉の山場を迎えるとの指摘もあります。  カンクンでの決裂後、約半年が経過をしておりますが、この間、今後の交渉に向けてどのような準備をされてきたのか、また、我が国として現在のWTO交渉状況をどのように認識し、対応されるおつもりなのか、農水大臣にお伺いをいたします。
  145. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) WTO交渉につきましては、今、委員からも御指摘がございましたとおり、昨年九月、メキシコ・カンクンでの閣僚会議、こういう中で開発途上国、そして更に先進諸国の対立と、こういうことで合意に至らなかったわけでもございます。その後、事務レベルの交渉が継続されてきたわけであります。各国間の溝はうずまらず、本年二月に各交渉グループの議長が新たに選任をされたわけであります。また、農業交渉につきましては、今、委員からもお話しのとおり、三月二十二日に再開されると、こういうことになっております。  この間、私といたしましては、主要国や途上国の閣僚との意見交換を重ねてまいりました。昨年十二月上旬にはローマで開催されましたFAO総会に出席をし、我が国の立場を主張いたしました。さらには、その会合でも途上国等七か国の閣僚と意見交換を行うなど、我が国の立場をいろいろと主張してきたわけであります。さらには、先ほど委員からも一月に米国ゼーリック通商代表が書簡を送られたと。そして、二月に、通商代表、来日をされまして意見交換を行いまして、私は我が国の立場をまた更に説明をし、主張したわけでもございます。  WTO交渉は本年末が期限とされておるわけでありまして、本年半ばまでに枠組みの合意を目指すとの機運が醸成されつつあります。我が国といたしましては、スイス、ノルウェー、韓国など、関心を共有するいわゆるG10の国々との連携を図りつつ、米国あるいはEU、途上国など関係国に協議を深め、そして我が国の主張が反映されるように更なる努力をしてまいりたいと、このように考えております。
  146. 千葉国男

    ○千葉国男君 今、大臣からお話がございましたけれども、WTO交渉農業交渉での我が国の基本哲学というのは、多様な農業の共存、これを目指して、農業の多面的構造、多面的機能への配慮あるいは食料安全保障を主張してまいりました。今後のWTO農業交渉においても今まで主張してきた日本提案を引き続き主張していくのか、それとも様々な、期限に向けて、合意に向け、新たな提案を行う用意があるのか、大臣にお伺いいたします。
  147. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) WTO交渉農業交渉におきましては、我が国の多様な農業の共存を基本理念といたしまして、食料の安全保障、また国土の保全等、非貿易的関心事項、この事項に配慮して、柔軟で継続性があるバランスの取れたルールの確立、これを主張してきたところでもありまして、我が国としても分野ごとにこの具体的なルールに関する提案を行ってきたところでもございます。  こうした中で、昨年、カンクンの閣僚会議におきましてデルベス議長案が示されたわけでありまして、今後、この議論の出発点とされるところでもあるわけでありまして、この議長案におきましては各国のセンシティビティーに対する一定の配慮が見られていると、この面は評価ができるわけであります。しかし、上限関税の設定と関税割当ての拡大等の問題点があるわけでありまして、この是正が必要であります。このため、先ほども申し上げましたが、G10諸国と連携をして、共同して提案や主張を行っているところでもあります。  今後の農業交渉におきましても、その多様な農業の共存という我が国の基本理念にのっとりまして、そしてデルベス議長案の問題点の是正を主張するということをいたしてまいりたい、そして、このことを米国、EUあるいはまた途上国等、関係国にも十分働き掛けて努力をしてまいりたいと、このように考えております。
  148. 千葉国男

    ○千葉国男君 平成十六年度予算で我が国農産物輸出のための予算が計上されております。今まで受け身の姿勢から、非常に積極的な姿勢に転じたことはすばらしいと思いますが、改めて今なぜ農業生産物の輸出政府自ら支援することにしたのか、輸出支援の意義、内容、効果等についてお伺いします。
  149. 村上秀徳

    政府参考人村上秀徳君) お答えいたします。  近年、アジア諸国の経済発展に伴う所得の向上などによりまして高品質な国産農産物輸出機会を拡大する好機が生じてきております。そういうことから、農林水産省として、地方やジェトロあるいは民間団体と連携をいたしまして国産農産物輸出機会を拡大することが重要ではないかというふうに考えているわけでございます。  そういうことで、輸出促進事業として、諸外国の貿易制度などの調査輸出先国への市場開拓ミッションの派遣、海外セミナーなどを活用した国産農産物のPRなどを強化するとともに、国内外のニーズに対応した生産体制の構築に向け、高品質化等の取組を一層推進することとしているわけでございます。  このようないろんなところで輸出促進の取組が行われておりまして、そういうものに対する支援をしていくということが我が国農業の活性化というような観点からも重要ではないかというふうに考えているところでございます。
  150. 千葉国男

    ○千葉国男君 次に、鳥インフルエンザ対策についてお伺いをしたいと思います。  今日、大変な混乱状況にあると言わざるを得ませんが、特に京都の場合、初動態勢が遅れた。当然この養鶏業者に第一義的責任があると思いますけれども、今日まで鳥インフルエンザについては八十年間も発症がなかった。こういう意味で、また、感染ルートいまだ不明確のこともあれば、やはり予防対策のための国の指導あるいは県の指導が極めて重要であると思いますが、この更なる徹底について、その考え方をよろしくお願いします。
  151. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 我が国で七十九年ぶりに高病原性鳥インフルエンザが山口に発生しました際、あるいはその次の大分のケース、この二つは通報が非常に早くに行われたということ、それから昨年の九月に策定をしておりました防疫マニュアルに沿いまして現場で的確な対応をしていただいた、この二つのことがありまして初動の対応というものがきちっと行われたというふうに思っておりますけれども、先生おっしゃいましたように、この京都のケースでは、養鶏業者からの通報が行われなかったというふうなこと、それからまた、大量の鶏の死亡が発生する中で生きた鶏の出荷も行われたということが分かっております。こういった点、大変大きな問題でございます。  こういう事例も踏まえまして、三月の四日に各都道府県知事あてに通知を出しまして、この中身は二つございますけれども、一つはこれからの防疫対応ということで、何よりも野鳥などの、野鳥やあるいはネズミといった、そういったものが鶏舎に、この侵入を防ぐ、あるいはネズミなどについては駆除をすると、こういった予防措置を徹底してやっていただくことがまず大事だということが一点であります。  それからもう一つは、この通報が遅れたということにかんがみまして、家畜伝染病予防法の中の五十二条には報告徴求という条項がございます。この五十二条に基づきまして、この鳥インフルエンザ可能性が否定できないような事態が生じた場合には直ちに報告をしていただく、また、そうでなくても一週間に一度は農場の死亡羽数等を報告をしていただく、こういうことを命じる、そういう通知を発出したわけでございます。この五十二条に基づきます報告徴求は罰則も付いておりまして、こういったことで、養鶏業者の方々にもふだんから自分のところで飼っておられる鶏についての健康状態、異変がないかどうかということについても注意をしていただく、そういうことを改めて要請をしたところでありまして、こういうことを通じまして、できるだけ早く手だてが打てるようにということで徹底をしてまいりたいというふうに思っております。
  152. 千葉国男

    ○千葉国男君 今の内容がしっかり徹底されれば一番いいんですけれども、今回を振り返ってみたときに、浅田農場の場合、大量死の発生が始まった二十日の前日に府の担当者が聞き取り調査に行っている、ところが鶏舎には立ち入らなかった、こういうふうに報告されておりまして、当然、その際、インフルエンザの症状とか疾病発見の方法について当然説明はされていると思うんですけれども、その府県側の指導内容について、更にどうだったのかという、その後の調査報告は聞いているんでしょうか。
  153. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 京都の家畜保健衛生所の職員が、二月の十九日でありますけれども、これは大分におきます第二例目の発生を受けて一斉調査をしたその一環といたしまして十九日に発生農場を訪れまして、異常鶏の有無があるかどうかといった聞き取り調査を行ったと。それで、そのときには浅田農場の方からは異常がないということでそういう回答を得たということでありますけれども、その際にも、異常鶏が発生した場合にはきちっと連絡をしてほしいといった注意喚起も行ったというふうに聞いております。  そういうことで、そういう注意喚起も行ったにもかかわらず、その後、この十九日の時点ではまだ死亡羽数も百八十羽、後で分かったことでありますけれども百八十羽程度ということで、むしろその翌日から一千羽台の死亡数になるわけでありますが、こういったその後の状況を踏まえますと、通報がなかったということは極めて残念なことだ、遺憾なことだというふうに思っております。
  154. 千葉国男

    ○千葉国男君 担当官のそうした問題について、更にきちっとしていただきたいとも思いますし、現状で感染源とか感染経路もいまだ不明であると。有力な渡り鳥説もあるわけですけれども、BSEの場合は蔓延防止策の一つとしてトレーサビリティーシステムが機能しておりますけれども、この渡り鳥説にはまだ全然機能していないと。こういうことから考えたときに、この感染説についての調査研究あるいは研究状況について、特に今一番力を入れてどういうふうに努力されているのか、その辺をお願いします。
  155. 中川坦

    政府参考人中川坦君) 感染経路の究明、これは先ほども申し上げましたが、一つは遺伝子解析によるアプローチ、それからもう一つは、疫学的な調査によりまして、この発生農場とそこに出入りをしていた人たちあるいは車両といったような観点から、何か感染が疑われるような、そういう推定ができるような点はないかどうかということで調査をいたしておりますが、今までのところ確たる、こういう経路で感染したんではないかというふうに具体的に想定されるようなものはまだ明らかになってきておりません。  その中で、一つは、先生も今おっしゃいましたが、野鳥が何らかの関与があるんではないかと。これは、一例から三例目まで、いずれも近くにそういった水鳥が来るような場所もあったというふうなことが分かっております。そういった面で、この野鳥の持っておりますウイルスの調査もこれから重点的にやっていく分野の一つだというふうに思っております。こういったところは、新たに予算も得まして、環境省、それからいろんな独立行政法人の研究機関とも連携を取りながら、今調査をやっているところでございます。  もう一つはウイルスの検査でありますけれども、ウイルスの分析でありますけれども、この遺伝子解析の方も、これまでのところ、日本発生をしましたいずれの例もそれぞれ極めてウイルスは近縁関係が近いということは分かっております。それから、海外との関係では、香港やベトナムで分離をされましたウイルスとはかなり系統が異なるということも分かっております。ただ、これはこの程度のことでありまして、更に海外のウイルスとの比較といったところにも力を注ぎまして、感染経路、感染原因の究明に力を入れたいというふうに思っております。  その中で、今度、農林水産省の中にこの感染経路の究明チームというものを立ち上げるということにいたしました。この専門家の方々の検討によりまして、鋭意感染経路の究明に努めてまいりたいというふうに思っております。
  156. 千葉国男

    ○千葉国男君 鳥肉市場への流通の件なんですけれども、厚生省の認可、許可を受けた食鳥処理場において都道府県の検査が義務付けられている、この検査は現在目睹によって、目視によって行われている、で、検査に合格した鶏肉のみが市場に出荷される仕組みになっております。  ところが、今回の京都府浅田農場での事例におきましては、同農場から一万五千羽ほどの鶏の出荷を受けた兵庫県や愛知県の食鳥処理場での検査では残念ながら鳥インフルエンザを見抜くことができず、結果として西日本中心に多数の府県に鶏肉が流通し、兵庫県の処理場や香川県の化製場においては二次感染が発生することになりました。また、出荷先の自治体では回収作業等に追われるなど、大きな混乱を招いております。  その意味で、養鶏場と食鳥処理場との間の、飼養状況に関して情報連絡体制が非常に大事になっていると思いますが、その体制はどうなっているのか。今回の事態を踏まえて、それらの連絡体制や食鳥検査の方法などを見直すべきであると、こう考えますけれども、厚生労働省、どうでしょうか。
  157. 遠藤明

    政府参考人遠藤明君) 鳥インフルエンザ発生が疑われる養鶏場からの食鳥処理場への鳥の搬入を防止するためには、養鶏場における鶏死亡の急増等、生産段階の情報を踏まえた対応が極めて重要であると考えております。  農林水産省におかれまして、去る三月四日に、養鶏場における鶏の異常に関する情報について家畜保健衛生所に毎週報告を求めることとなったところでございます。厚生労働省におきましても、同日、農林水産省と連携して、食鳥処理場において食鳥処理の可否を適切に判断するため、養鶏業者が家畜保健衛生所に報告した情報を食鳥検査申請時に食肉衛生検査所にも提出していただくことといたしました。これにより、問題のない養鶏場から出荷された鶏であるということが確認可能な体制となったと考えております。また、このような情報連絡体制の整備に加えまして、今週から、食鳥処理場に搬入された鶏に高率の死亡や呼吸器症状など鳥インフルエンザに感染していることが疑われる症状が確認された場合には、食鳥検査において簡易検査キットを用いてスクリーニング検査を実施するなど、鳥インフルエンザ検査体制についても強化をしたところでございます。  今後とも、都道府県等との連絡体制を密にし、農林水産省と十分に連携しながら鳥インフルエンザ対策の実施を図ってまいりたいと考えております。
  158. 千葉国男

    ○千葉国男君 前回の委員会のときに、私が鶏に対するワクチン接種について御質問をさせていただきました。先ほどもちょっと答弁がありましたけれども、そういう中で農水省は、三月一日に、鳥インフルエンザ不活性化ワクチンを接種した鶏の食品としての安全性について食品安全委員会食品健康影響評価を依頼したと聞いております。この依頼は従来から取ってきたワクチン接種についての農水省の立場の変更を意味しているのか、お伺いをしたいと思います。  また、食品健康影響評価について食品安全委員会はいつごろを目途に結論を出すおつもりなのか、お伺いをしたいと思います。
  159. 中川坦

    政府参考人中川坦君) まず、鳥インフルエンザワクチンに対します農林水産省の基本的な考え方でございますけれども、この鳥インフルエンザのワクチンは、いろんな銘柄はありますけれども、いずれもその機能としましてはウイルスに感染をすることは防止ができないと。ただ、ワクチンを打った鶏はウイルスに感染をしても発症はしないということで、体内にウイルスを持ったまま外見上は元気にしているという、そういう状態になるものでございます。  したがいまして、体内にウイルスを取り込んでしまう、感染をしてしまうということでありますから、当然ふんの中にはウイルスが混じって排出をされるということになります。もちろん、打たない場合よりはその量は減るということが知見としてありますけれども、体外に排出をするということは、そのワクチンを打った鶏がほかの鳥に対する新たな感染源になるということでありまして、そういうことからしますと、なかなかワクチンを打つということはその地域が清浄化が図れないということでもございます。  そうだとしますと、ウイルスがその地域にずっと長い間存在をしていると、その間に変異が起こって非常に、人に感染をする、あるいは人から人に感染をするような新たなウイルスに変異をするというリスクも高まるということで、基本的にこの鳥インフルエンザに対する防疫の第一の取るべき措置は、早く見付けて早く淘汰をするということによって対策をしていく、それが一番大事なことだというふうに考えております。  そういうことでやるというのが基本でありますけれども、不幸にして鳥インフルエンザが広がっていく、摘発、淘汰という手法では防げないという事態になった、そのときに最後の手段としてワクチンを打つということも一つの方法だとは思っておりますが、そのためにも、このワクチンは現在日本では承認をされておりませんので、政府といたしまして緊急に輸入をして備蓄を今したところでございますが、この備蓄をしたワクチンが、いざ不幸にしてそういうものを使わざるを得なくなったときに、ワクチンを打つということによってその鶏の肉や卵が安全かどうかという、そこのところを健康影響評価ということで食品安全委員会の方に諮問を今回したわけでございます。  あくまでも最後の手段としてワクチンを使わざるを得なくなったときに、そのことが食品安全性という面で問題が生じないようにあらかじめ食品安全委員会の方で審査をいただくという、そういう措置として今回諮問をしたという次第でございます。
  160. 梅津準士

    政府参考人梅津準士君) 鳥インフルエンザ不活化ワクチンを使用した食品安全性につきましては、三月十日の動物用医薬品専門調査会で審議が行われまして、人の健康への影響は無視できるという調査会の結果が出たわけでございますけれども、これについて、翌三月十一日開催された食品安全委員会会合で二週間の国民からの意見、情報の募集を行うこととされまして、今それを行っている最中でございます。  寄せられた意見、情報の取りまとめが済み次第速やかに、その後なるべく早い食品安全委員会会合で御判断をいただく予定でございます。
  161. 千葉国男

    ○千葉国男君 更に厚生労働省にお伺いいたしますが、何といっても人への感染を防止することが最も大事なことであると思っております。そのためには、万が一ということも考え、備えあれば憂いなしで万全の体制を取っていただきたい、こう思いますが、どういう今現在取組をされているのか、よろしくお願いします。
  162. 田中慶司

    政府参考人田中慶司君) 高病原性鳥インフルエンザにつきましては、感染した鳥との接触等によりましてまれに人へ感染することが報告されておりまして、タイやベトナムでの人への感染事例も感染した鳥との接触等によるものと考えられているところでございます。  厚生労働省では、発生状況等に関する情報収集、それから流行地域への渡航者に対する注意喚起、これを行いますとともに、人への感染、健康被害を防止するために、WHOの情報などを踏まえまして、まず、鳥の処分に従事する者などに対しますマスク、ゴーグル、手袋等の感染防護措置及びその者の健康監視の徹底、それから、高病原性鳥インフルエンザにかかった疑いのある者を診察した医療機関から直ちに報告を求めるとともに、当該患者に速やかにタミフル等による治療体制を確保すること等を自治体に御指導申し上げているところでございます。  また、三月十日付けで、鳥インフルエンザに関する養鶏業従事者のための感染防護のための留意点につきまして、厚生労働省から農林水産省に対して関係者に周知していただくように依頼するとともに、自治体の公衆衛生部局に対しまして適切に対応するように通知しているところでございます。  今後とも、各関係機関と密接に連携を図りつつ、養鶏業従事者を含め、人への感染防止対策の徹底を図ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  163. 千葉国男

    ○千葉国男君 次に、グリーンツーリズムの推進についてお伺いをしたいと思います。  一九九九年七月に公布、施行されました食料農業農村基本法では、都市と農山漁村の共生・対流が明確に位置付けられるようになりました。さらに、二〇〇二年四月に策定されました食と農の再生プランにおいては、食の安全と安心確保、②農業構造改革の加速度と並んで、都市と農山漁村の共生・対流が重点政策の三つの柱の一つと位置付けられております。  そういう意味で、農水省としてグリーンツーリズムの推進についてこれまでどういう取組をしてきたのか、あるいはどういう成果が今現れてきているのか、御報告をお願いします。
  164. 福本潤一

    大臣政務官福本潤一君) グリーンツーリズムの推進につきましては、これまでいわゆる農村休暇法という法律でこのグリーンツーリズム、位置付けられ、また種々の補助事業や規制緩和措置を活用しながら以下の三つの具体的な活動に取り組んでおるところでございます。一点目は農林漁業者の行う民宿の開業促進、二点目に農作業やそば打ち又はうどん打ちなどの体験の場づくり、三番目にはグリーンツーリズムに取り組む人材の育成、こういうことに取り組んでおるところでございます。  こういう支援措置の結果、全国で、農家民宿の宿泊者数は年間九百万から一千万人になっている、また約六千か所の市民農園、約一万か所の産地直売所が稼働している状況でございまして、多様なグリーンツーリズムに地域ぐるみで取り組む事例も多く出てきております。  今後とも、グリーンツーリズムの推進に向けたこうした取組等を支援してまいるところでございます。
  165. 千葉国男

    ○千葉国男君 グリーンツーリズムを推進するに当たりましては、例えば農家民宿の開設一つ取りましても様々な規制に阻まれていることが多いわけです。  その意味で、現在、注目を集めているのが特区制度の活用でありますけれども、現時点でグリーンツーリズム関連の特区はどのようなものがあるか、教えていただきたいと思います。
  166. 太田信介

    政府参考人太田信介君) お尋ねのグリーンツーリズムに関します構造改革特区制度によります規制緩和でございますが、まず一つは、農家民宿につきましては、消防用設備等の設置につきましての消防法令の運用の弾力化が図られたほか、農家民宿等によりますどぶろくの製造につきまして酒税法による製造免許要件の特例措置、そしてまた、農業生産法人が農業体験施設の開設、運営や農家民宿等の経営を行うことを可能とするような措置、さらには、地方公共団体及び農協以外の者による市民農園の開設を可能とする措置が講じられたところでございます。  また、特区制度の導入を契機に、農家民宿に関します全国的な措置といたしまして、旅館業法によります客室面積要件の撤廃、あるいは旅行業法上宿泊者の送迎輸送が可能であることの明確化等の規制緩和が行われたところであります。  これらの特区制度につきましては、平成十五年十一月末までに十九府県、三十四計画が認定され、既に各地で具体的な取組が展開されている状況にございます。
  167. 千葉国男

    ○千葉国男君 個人的なことですが、私は衆議院議員時代にヨーロッパを視察をいたしまして、そのヨーロッパにおけるグリーンツーリズムの農家を視察させていただきました。本当にカラフルですばらしい御夫婦等にお会いしまして、感動したことを覚えております。  現実にはしかし、グリーンツーリズムを推進しますから皆さんよろしく参加してくださいと、こういうことだけではこの事業はなかなか成功しない。それだけの様々な積み重ねがあって初めて功を奏しているわけですけれども、我が国におきましては、都市住民の皆さんの自然や農村への回帰志向が高まっているとはいっても、まだ実際には農家民宿が利用されているケースがまだまだ、先ほどちょっと報告がありましたけれども、わずかな例になっております。  そこで、グリーンツーリズムを推進するに当たりまして、都市住民の皆さんに対してグリーンツーリズムをよく御理解をいただくための対策を様々に時間を掛けて打っていかなければならないと、こう思いますが、どのような努力を積み重ねているのか。また、それぞれ関連の文部省あるいは総務省、環境省などの他省庁との連携も大変重要なことだと思っております。その辺のところをよろしくお願いいたします。
  168. 福本潤一

    大臣政務官福本潤一君) 農業体験、また定年した後の農業に戻る、またスローフードなど、都市住民の方々、農山漁村で活動に対するニーズが高まっております。  こうしたニーズにこたえていくために、的確な情報発信や活動機会の提供を行っていくということは国民が望む新たなライフスタイルの形成につながるものというふうに認識しておりまして、このため、平成十五年度から実施している新グリーンツーリズムの総合推進対策、ここで二点、都市住民の方に働き掛けて施策を充実させておるところでございますが、その二点は、子供とか家族、熟年などの多様な都市住民への新たなライフスタイルの提案、普及と、二点目には、インターネット上でのポータルサイトの開設等による農山漁村情報の発信の強化と。もう最近はほとんど都市部で生まれ育って三十歳、四十歳という方がございますので、そういう方にこういう提案をしているところでございますし、さらに、去る二月二十五日に開催されました「オーライ!ニッポン全国大会」という中では、「都市と農山漁村の共生・対流で変わるライフスタイルと地域経済」というテーマを掲げてシンポジウムを開催しましたし、都市から農山漁村に移り住んで他の人の参考となる新たなライフスタイルを実践しておられる方々を表彰したところでございます。  こういう中、関係他省とも様々な連携をしておりまして、政府の中で初の八つの府省の関係大臣から成るプロジェクトチームを設置いたしまして、都市と農山漁村の共生・対流の推進に向けた幅広い議論を行い、一体となって関係施策推進しているところでございます。  この施策の一つでもございます青少年の教育、健康の増進、観光の振興とも深くかかわっておりますし、関係府省と提携し、多様な取組を総合的に実施していくことが極めて重要と認識しております。  他府省との関係で、具体的には、修学旅行において子供たちの農業農村体験活動を推進するために、文部科学省が教育関係者の働き掛けを行う一方、農林水産省は受入れ側の農山漁村の体制作りを支援し、さらに、観光立国というこういう実現に向けまして国土交通省とも連携いたしまして、美しい農山漁村の景観形成や外国人旅行者も訪れる観光立村、こういう推進を取り組んでおるところでございますし、今後とも関係省庁と連携を深めて、このグリーンツーリズム運動、進めてまいりたいと思います。
  169. 千葉国男

    ○千葉国男君 最後になります。  このグリーンツーリズムの推進に当たりましては、農山漁村の地域活性化事業といたしまして亀井大臣に是非とも陣頭指揮を執っていただきまして、推進をよろしくお願いしたいと思います。  大臣の意気込みをお伺いして、私の質問を終わりにしたいと思います。よろしくお願いします。
  170. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 今、政務官からも御答弁を申し上げましたが、このグリーンツーリズム、都市住民が農山漁村におきまして農林漁業体験や生活文化、また自然を楽しむと、こういうような活動、新たなライフスタイル、こういうような認識の下に国民の間に積極的に啓発普及ということが重要と、このように考えております。  先ほども政務官から御答弁を申し上げましたが、第一回の「オーライ!ニッポン」大会、これを開催いたしまして、体験教育旅行や援農ボランティアなどグリーンツーリズムに積極的に取り組む長野県飯田市が「オーライ!ニッポン大賞」と、このグランプリに選ばれまして、総理大臣賞が授与されたところでもございます。  実は、私、この間、岩手県の遠野市に参りまして、そして構造改革特区、こういうことでどぶろくの製造第一号の江川さんというお宅に農家民宿でお世話になりまして、その晩、郷土料理をちょうだいすると、また朝五時半から乳搾りの体験をするとか、あるいは炭焼き、シイタケの菌を植え付ける、イワナの養殖等々のところで一緒にいろいろな仕事をいたしまして、実感をしてきたところでもございます。  また、昨年の十二月、FAOの総会に参りまして、外国での農家民宿、こういうものはどういうものかと。パリから三百キロくらい離れたところの農村に参りまして、ここは農家民宿というよりも、経営者が建設会社の社長さんと。ただ、建物を、千二百年前の石造りの建物を購入されて、そして建設会社の社長ですから、そこを一億ぐらい、元は何か安い建物のようでございますけれども、一億くらい掛けて民宿にされて、六部屋くらいのところでございますけれども、やはりスケールはちょっと違うわけでありますけれども、そのような体験をいたしております。  そのような意味で、グリーンツーリズムに積極的に取り組んでまいりたいと、こう思っておりまして、是非全国各地に広げて、農山漁村と都市との共生・対流、こういうことがまた地域の再生、こういうことにもつながりますので、関係府省とも十分連携をして積極的に進めてまいりたいと、こう思っております。
  171. 千葉国男

    ○千葉国男君 終わります。
  172. 紙智子

    ○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。  今、食の安全、安心という問題は大変大きな国民の要求になっています。  農水省が二月四日に発表しました食料自給率に関する意識・意向調査、ここでは我が国食料供給に不安を感じる人が、非常に感じるというのとある程度感じるを合わせますと、消費者農業者とも九割を超えているんですね。そして、自給率については大幅に引き上げるべきだというのが、それぞれ消費者農業者、八四・九%と九〇・四%ということですから、圧倒的な声になっているというふうに思うんです。  四年前に旧総理府が行った世論調査では、当時、不安があるということでは七八・四%、自給率が低いというふうな意見が五二・八%だった。この四年間で更にやっぱり食料供給への不安が増大したというふうに言えると思うんです。  加えて、この四年間はBSEがあり、そして産地偽装表示事件があり、今度の鳥インフルエンザの問題と、消費者に大変大きな不安を与えた一方で、生産者にとっても輸入拡大や価格補償制度の後退など、厳しい条件が強まった。そういう中で、こういう自給率向上を求める意見が強まったというふうに思うんですね。  そこで、この示された結果に対する感想と、それから、私、やっぱり自給率向上課題というのは農政の最重要課題であるというふうに思うわけですけれども、その点での大臣の御認識をまずお聞きしたいと思います。
  173. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 今、委員指摘調査、一つは昨年十一月中旬から十二月中旬にかけましての調査であります。これはいわゆる農林水産情報交流ネットワーク事業の農業者モニター三千二百二十四名、あるいは消費者情報提供協力者千四百八十名を対象にした調査であります。  それによりますれば、やはり食料供給に対する不安があるわけであります。食料自給率向上の必要性に関する意識が高いという結果が得られております。これは、国土や自然環境の保全、世界的な食料供給の制約に関する各種の報道、我が国食料自給率が先進国中最低の水準にあると、この認識の高まり、これらを受けたものであると、このように考えております。  なお、この調査の後、米国でのBSE発生鳥インフルエンザ発生があったわけでありまして、現時点では食料の供給に対する不安や自給率向上の要請は更に強まっているのではないかと私は考えております。  このようなことからも、食料の安全、食の安全と信頼を確保しつつ、食料農業農村基本法に基づく国民に対する食料の安定供給と食料自給率向上を図っていく考えでおります。  なお、平成十二年に行われました総理府の農産物貿易に関する世論調査における同じような設問に対する回答結果と比べますと、将来の食料供給に不安があると答えた者の割合が、食料自給率の水準が低いと考えていると思われる者の割合は今回の調査の方が高くなっておるわけでもございます。  しかし、若干、この両調査とも、やはり調査の趣旨、世論調査食料農業の多面的機能や農産物貿易政策についての幅広く調査をされているわけでありまして、今回の調査食料自給率に特化をした調査、こういうことでありますし、調査対象が今回の、世論調査国民一般でありますけれども、今回の調査は、先ほども申し上げましたとおり、農林水産行政に意識が高い農業者や消費者モニター、こういうことで大きく異なっておるわけでありまして、調査結果を単に比較するということによって国民の意識の変化を判断することは適当ではないと、このようにも考えますが、前段申し上げましたとおり、この食料の安定供給とそして食料自給率向上を図っていくという考え方、これは十分認識して対応しなければならないと、こう思っております。
  174. 紙智子

    ○紙智子君 それで、現在の自給率目標なんですけれども、二〇一〇年に四五%というふうになっていたわけですけれども、この間はずっと四〇%で横ばいで来ているわけです。基本計画見直しでは、期中の見直しではなく、今後十年程度を見通した新たな計画を策定することとし、目標年度を二十七年度とする方向で検討というふうにありますね。  それで、そうしますと、この四五%という目標は棚上げになってしまうのかと。我が党はこれまでせめて食料自給率を五〇%、更に六〇%へと引き上げていかなきゃいけないということをずっと主張してきたわけです。そして、新基本法のときの質疑の中でも、野党は当時五〇%はという話をやっていたわけで、そういう中で四五%というふうになったわけですけれども、大臣はこの控え目の四五%すらできないということであきらめてしまったのかなと思うんですけれども、この点いかがでしょうか。
  175. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 食料自給率につきましては、食料農業農村基本計画見直しに当たりまして、消費生産、両面にわたりましてその動向に係る徹底的な検証と、そして幅広い論議を行っていく考えであります。  自給率問題は、農業政策の面でどのような見直しを行うか、あるいは食生活見直しに関しましてどのような取組をするかと。これらの成果をどのように見直すかと、こういうことと密接な関係を、関連をするわけでありまして、これらとの関係を踏まえまして具体的な目標等について検討をされるべきものと、このように考えております。  その目標水準につきましては、やっぱりいたずらに高いと、高ければ高いと、これはよろしいことでございますけれども、高い目標を掲げるのでなく、私は、やはり地に足の着いた、到達可能な現実的な目標と、このことが重要なことではなかろうかと、このように考えております。
  176. 紙智子

    ○紙智子君 地に足の着いた現実的な目標ということで四五%を閣議で決定したものだと思うんですね。決して軽いものではないと思うんです。安易にやはり棚上げするべきものでもないというふうに思うんですね。これができなかったということになりますと、やっぱり政府全体の責任も問われる問題だというふうに私は思うんですが、この点はいかがでしょうか。
  177. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) この二十二年度の数字につきましてはどうするか、もうこれは今後審議会で議論をするということになるわけでありまして、決してこの数字を避けて通るというわけではないわけであります。  やはり、食料自給率目標につきましては、消費者生産者等関係者の取組の指針とする必要があることから、やはり食料農業農村基本計画におきまして何の前提もなく何%という目標を掲げるのではなく、先ほど来申し上げましたとおり、消費生産における取り組むべき課題を明示するとともに、これらの課題が解決される場合の姿として、栄養バランスの改善等、いわゆる食生活見直しを前提とした消費量の目標値、いわゆる望ましい食料消費の姿、あるいはまた米、麦、大豆などの品目ごとに生産性や品質の向上、この課題の解決を前提として生産量の目標値である生産努力目標、こういうことを掲げることが適当と、このように思います。  そのようなことで、実現可能な水準と、もうそういうことから品目ごとの自給率目標を設定するとともに、それを積み上げたカロリーベース食料自給率、これを四五%と、こう設定してきておるわけでありまして、これら十分今後の審議会での議論をしていただきたいと、またその御議論に基づきまして対応してまいりたいと、こう思っております。
  178. 紙智子

    ○紙智子君 これ、最初に決める、設定する際の議論というのが、やっぱり五〇パー、五割以上を適当だという議論の中で、しかし実現可能性だとか、それからやっぱり今言われたことを含めて、それでやっぱり控え目な目標として設定してきたわけで、その意味でやっぱりできていないということについては責任が問われる問題だというふうに私は思うんです。  我が党は自給率引上げにはやっぱり二つのことが大事だというふうに主張してまいりました。その一つは輸入の問題で、輸入のやっぱり規制を行うという問題と、それから価格制度の拡充が必要だということを言ってきたわけです。  ところが、この四年間の短期間で見ても輸入は増えているわけですね。二〇〇〇年の農産物輸入額でいいますと三兆九千七百十三億円と、そういう規模だったわけですけれども、二〇〇三年には四兆三千六百数十億円と。EUのようにこの価格・所得関係のところで六割から七割というように農業予算の中心にするべきだと、それだけのスペースを取ってやるべきだと主張してきたわけですけれども、これも抜本的な対策がこの間なされてきていないわけです。  こういう状況では、やはりどだい食料自給率は絵にかいたもちになってしまうと。改めてこの二つの問題、施策に全力を挙げるように、そして農政の転換をしていくように、そのことを要求したいと思います。いかがでしょうか。
  179. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) なかなか、米の消費、そして我が国食料自給率がこのように低下をしていると。これはもうかつては、七〇%、八〇%のころは米をもう百二十キロ消費をしておったわけでありますが、今日、六十二・七キロと、こういうようなことで、四〇%に下がってきていると、こういうような状況と。  そういうことから考えますと、やはりその部分、米の消費の減少、こういうことが低下の一つの大きな要因になっておりますし、それ以外の品目につきましては、麦ですとか、あるいは大豆や砂糖、こういう生産拡大して、その他の品目は生産量が減少していると、こういうことで今四〇%という状況にあるわけでありまして、今後、やはり何といっても食生活の変化、これが主要な要因になっておるわけでありまして、消費、そして生産、両面にわたりましての努力が必要ではなかろうかと。  そういう点から、食生活の変化に対応しては、やはり食育推進ですとか、あるいは米を中心とする日本型食生活、こういうことの復権と、これらを積極的に進める、こういうことが必要なことではなかろうかと。そういう点で、消費生産、あるいはまた食品産業関連事業者等と一体になった形で自給率向上に努めてまいりたいと、こう思っております。
  180. 紙智子

    ○紙智子君 どうも、どういうふうに聞いても、何かやっぱり消費者消費の仕方の問題ですとか、そこに責任が行っているような感じに聞こえてしまって、実際に政府自身がどういうふうに努力をやってきたのかということの反省がやっぱり足りないように感じるんです。  それで、次に、輸入が増えて自給率が下がる懸念がある問題では差し当たってのFTAの問題があります。我が党は、FTAについては、平等互恵、そして経済主権の尊重と、そういう立場をもって臨むべきだというふうに考えます、当たり前のことですけれども。その点で、自給率向上という問題は我が国の基本的な国のありようの問題だというふうに思うんですね。工業製品の輸出をやりやすくするために、その引換えとして農産物の自由化をやるべきではないというふうに思います。  そこで、今回、メキシコとの合意についてなんですけれども、この取扱いによって関連農業への影響が実際にどうなるのか、それを分析した上での合意なんでしょうか。いかがでしょうか。
  181. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) メキシコとの農林水産物の関税交渉、これに当たりましては、多面的な機能への配慮、あるいは我が国食料の安全保障、この確保、また農林水産業における構造改革努力に悪影響を与えないような十分留意をいたしまして交渉に取り組んできたところでもございます。  農林水産品約一千百品目につきましての関税譲許、これを行うものの、豚肉につきましては、昨年十月の閣僚折衝の合意を基本に、差額関税制度の根幹を維持したほか、その他の品目につきましては、品目ごとの国内農業における重要性を勘案し、必要に応じて例外品目、関税割当て、あるいは経過期間を設定すると、こういうことで、又は二国間セーフガード、これを導入することを確保した上で合意、大筋合意をしたものであります。  そういう面でいろいろ、我が農水省としてもいろいろ考慮し、また団体の皆さんの御意向も承る、今日まで産学官での共同研究と、こういうようなことも経過を経てきておるわけでありまして、そういう面で今回のFTAメキシコとの問題につきましては我が国農業に支障を生じない、こういう範囲の中で対応したと、このように考えております。
  182. 紙智子

    ○紙智子君 支障を余り生じないということで判断したということなんですけれども、養豚協会は豚肉を関税撤廃品目から除外するようにということでこれまで要望してきていますよね。それから、日本園芸農協はオレンジジュースなどで現時点の自由化以上の譲歩はしないようにと、これは参議院の視察のときにもやっぱり現場の方から要望をされていたわけですけれども、こういうふうに要求してきたわけです。  それで、やっぱり数値的、シミュレーション的に実際にこうなるよという分析を分かりやすく示すべきではないかと思うんですね。農水省の「自由貿易協定を巡る各国との議論の状況と今後の対応」ということで、これ、こういうのが出ていますよね。この中でも、締結に当たってはどのような利益と損失が生じるか十分に検証するというふうにあるわけです。この中でも言っているわけです。  そこで、影響を客観的に明らかにする用意があるかどうかということを、まず。
  183. 村上秀徳

    政府参考人村上秀徳君) メキシコとの農産物についての交渉に当たりましては、それぞれの品目の関税率の水準とか国内需給の状況国内関係農家の構造改革状況、あるいはメキシコ産品の輸出競争力や輸出余力といったことを十分勘案いたしまして、先ほど大臣が申し上げましたような適切な経過期間を設定するとか関税割当て枠の設定などを行いまして、国内農業への影響を極力回避するというように努めたところでございます。  農産物関税撤廃は、国内農業に及ぼす影響のみを為替レートの動向やあるいは他の輸出国の動向等と切り離して分析することは非常に困難でございますので、個別品目の一つ一つについて定量的な影響分析は行っていないところでございますけれども、今申し上げましたようなことを総合的に判断しながら、国内農業への影響を極力回避するという形で努めてきたところでございます。
  184. 紙智子

    ○紙智子君 損失が出た場合にはどう対応するというのはございますか。
  185. 白須敏朗

    政府参考人白須敏朗君) ただいまの委員の御指摘でございますが、いずれにいたしましても、例えば豚肉につきましても安価な豚肉の輸入を極力抑制するという差額関税制度、これの根幹を堅持するということを大前提ということで今回の交渉にも臨んだわけでございます。したがいまして、そこのところは、根幹はもちろん堅持できたわけでございまして、そういった意味で、国内養豚経営への影響は極力回避できるというふうに考えているところでございます。  また、委員の御指摘ございました、例えばオレンジジュースということにつきましても、いずれにしても、この関税率につきましては半減の水準でございまして、無税ということじゃございません。しかも、そういった意味での現行の輸入量相当がスタートでございまして、それを五年掛けて徐々に、その低関税率の枠は増加していくわけでございますが、これは義務輸入でもございませんし、そういった意味で、私どもといいますか、今想定されておりますのは、メキシコ産の果汁の過半が例えば現在入っておりますブラジル産などと代替するというふうに見込まれているわけでございます。  したがいまして、そういうことをるる勘案をいたしますと、国内かんきつ系への影響というものは極力回避できるのではないかというふうに考えている次第でございます。
  186. 紙智子

    ○紙智子君 FTA交渉において、WTO上、実質上すべての貿易の自由化が条件とされています。しかし、確立された定義はあるのかということなんですね。  それで、貿易額の九〇%以上を対象にするということは、これ、あくまでもEUの事務局の解釈にすぎないと思うんですね。その点では自給率向上に逆行して、この農業の多面的な機能を損なうような農林水産品は交渉の除外品目にするという姿勢で臨むべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  187. 村上秀徳

    政府参考人村上秀徳君) 先生御指摘のように、ガット二十四条で、自由貿易協定は、協定参加国間において、実質上すべての貿易について、関税その他の制限的通商規則を廃止するということが求められておりますが、この実質上すべての貿易について、現在のところ明確な国際基準はございません。委員指摘のとおり、EUの内部では貿易額の九割相当というような議論がされているということでございます。  交渉に当たりましては、当然、国内農業に与える影響などを勘案いたしまして、FTA交渉は原則は関税撤廃でございますけれども、関税の撤廃に当たりましても経過期間を十分取るということ、それから、関税を撤廃しない、関税割当てという形で一定の低税率の輸入機会を提供するというようなこと、あるいは、相手国の関心の度合いにもよりますが、我が国の重要な品目については再協議というような特別扱いをしていったりする、いろんな工夫を品目の需要に応じてやっていきたいというふうに思っているところでございます。
  188. 紙智子

    ○紙智子君 次は米問題です。  今、農村では、米政策改革で水田農業のビジョン作り、この作成に追われています。その中で、産地づくり交付金がこれまでの転作助成金の水準に比べて大幅に削減するということが大きな問題になっているんですね。  それで、皆さんのお手元にお配りしましたこの資料、一覧表にしていますけれども、これは来年度、十六年度の産地づくり交付金と、今年度、十五年度のこの水田農業経営確立対策額の比較ということで、資料として出させていただきました。  二〇〇三年度の水田農業経営確立対策のこの予算の交付予定額というのは千八百五十九億八千九百万円となっています。これが、来年度の水田農業構造改革交付金の交付予定額が千四百四十五億八百万円と。だから、二二・三%減ると、削減ということになるんですね。  この削減はやはり農村経済にとっては大きな打撃になることは明らかだと思うんです。影響がないというふうに言えるのかどうなのか、このところの、この辺の認識について、大臣、お伺いします。
  189. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 現行の米の生産調整対策をめぐって、稲作における構造改革の著しい後れ、あるいは品質の劣る麦、大豆の生産による需要とのミスマッチによります産地づくりの遅延と、また、生産調整以外の生産対策構造改革施策の予算の圧迫等の課題が見られるところでありまして、このため、米施策の改革の一環として、十六年度から開始する産地づくり対策につきましては、このような状況を踏まえまして、農家の生産意欲の喚起という点にも配慮しつつ、担い手の育成と、麦、大豆の品質向上や耕畜連携の推進等に重点を置きまして政府として予算を決定したところでありまして、産地づくり対策のうち、水田農業構造改革交付金、これ千四百四十五億円でありますけれども、これまでの助成実績と比較をいたしまして減額されたと解されているのではないかと考えられますが、水田農業構造改革交付金には生産調整の取組実績に応じて支払われる助成金が含まれていないこと等から単純な比較はできないわけでありまして、仮に、生産調整の取組実績に応じて支払われる部分、いわゆる重点作物特別対策を含めた額で比較してみれば、十六年度の予算額は、平成十四年度の助成実績と比較をして、おおむね九割というようなことになると思います。  いずれにいたしましても、新しい対策の予算につきましては、厳しい財政状況の中で、平成十五年度当初予算や十四年度の助成実績と比較して遜色のないものではなかろうかと、所要の額を確保しておると、このように考えております。  産地づくりの推進交付金の使い方につきましては、地域の創意工夫と、こういう中で決める仕組みにもなっておりますところでありまして、活力ある地域水田農業実現に向けて産地づくり推進交付金を御活用をいただきたいと、このように考えております。
  190. 紙智子

    ○紙智子君 実際、目で見ると、これだけ減るんだなというふうに思うわけで、影響がないということはないんですよね。  問題は、確かに、いろいろその分埋め合わせするんだみたいなことを言っているわけですけれども、実際には、問題は、生産調整にかかわって農家が直接受け取る、支払われるような転作助成金に当たる部分が、これが新制度でどうなるかというところが一番みんな関心持っていますしね、現場では。知りたいところだし、そして減るということが言われているわけです。政府農業団体に対して現行水準を確保したというふうに言っているようなんですけれども、これとんでもないなと私は思うんですね。  私の地元の北海道の農業者に聞きますと、例えば鵡川町というところでは、平成十五年度と比べて四〇%も減少するんですよ。農家経済に大変なこれ影響が懸念されているわけです。  それから、空知の方の妹背牛町というところがあるんですけれども、ここは助成金でいうと一戸当たり二百十万円だったのが三割減ると。規模拡大ということでやって、投資をして土地を買ってと。ところが、米の価格が下がってきて、それで赤字になってと。で、借金抱えて、その借金の何とか穴埋めをしながら、続けて頑張ろうと思っている、そういうやっぱり穴埋めにも一定使われてきたということを考えますと、この削減というのはもうストレートに響いてくるんですよね。  それから、今までこの助成金が──それで、当別町、札幌のすぐ隣にあります当別町というところがあるんですけれども、ここは十アール当たり六万八千円という金額だったんですけれども、町全体の交付金の総額が七四%に減っちゃったんですよ。そうしたら、今まで六万八千円だったのが三万八千円なんだと。三万円減るんですね。そういうふうになりますから、大規模でやっている大型の経営の人でも、三百万円は減収になるのははっきりしているという話なんです。  ですから、これ三年間は一定額ということですから、この状態が三年間続くわけです。これでは、担い手育成というんですけれども、この間にも担い手がつぶれてしまうというふうに、本当に胸が痛いんですけれども、この辺のところはいかがでしょうか。
  191. 白須敏朗

    政府参考人白須敏朗君) ただいまの委員の御指摘でございますが、大臣から申し上げましたとおり、いずれにしても、今回、私どもとしましては、産地づくり交付金につきましては必要な額を確保したというふうに考えているところでございます。ただ、個々の農家を見ますれば、委員指摘のように、いろんな経営状況の、経営状態の農家もあるというのは御指摘のとおりかと思います。  また一方、助成単価の話も今おっしゃったわけでございます。例えば、助成単価につきましても、確かに、現行対策におきますれば、最高額の単価は七万三千円というふうな、十アール当たりでございますが、なっているわけでございます。  ただ、委員も御指摘のとおり、今回、十六年度から実施をされますこの産地づくり対策、特にこの水田農業構造改革交付金というものは、もう御案内のとおりでございますが、地域でそれぞれ人なり単価というものが設定できる仕組みであるわけでございます。また、従来の、従来といいますか、現行の対策の七万三千円のうちの例えば一万円は農家自らの拠出金の分であったというふうなこともございまして、実際の国の助成単価は六万三千円だったというふうなこともあるわけでございます。  またさらに、先ほどの委員が御指摘になった差額の分とも関連をするわけでございますが、水田農業構造改革交付金とは別に、飼料作物に対して実績払いによりまして一万三千円、十アール当たり一万三千円というものの上乗せ助成を行う、そういう耕畜連携推進対策というものもまたあるわけでございます。  したがいまして、一つ申し上げさせていただきたいのは、そこのところを、単純な現行対策とそれから産地づくりの、ただいま委員の御指摘になった新たな対策との金目というものは、なかなかそこのところは比較をするのは、単純に比較するのは必ずしも適当ではないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  また、負債の問題あるいは農家経済の問題も委員指摘になったわけでございます。ただ、あくまで現行の生産調整の助成金というものは、やはり農家の負債の返済、あるいはまたそういったものではございませんで、もう御案内のとおり、米の生産調整というものがやはり麦、大豆、飼料作物と、そういった作物の本作化ということに取り組んだ際の助成措置であるというところはひとつ御理解を賜りたいわけでございます。  いずれにいたしましても、十六年度から開始をいたします産地づくり交付金というものは、地域がそれぞれの地域の独自の発想、あるいはまたそれぞれの戦略、あるいは地域の皆さん方合意ということに基づきまして、地域の水田農業ビジョンに基づいて実施される取組に対しまして助成をするものでございまして、そういった意味で、足腰の強い水田農業の産地の形成ということに私どももこの産地づくり交付金が十分活用されるというところを期待しているところでございます。
  192. 紙智子

    ○紙智子君 これからやるところについては、それは必要なことはどんどんやっていかなくちゃいけないと思うんですけれども、しかし今、農業農村現状というのは本当に瀕死の状態というふうに言えると思うんです。やっぱり今一滴の水を受けなければ本当にやっていけないという状況のときに、農家の手取りを削減するようなことをやっていいのかということなんですね。せめて今年度と同じ産地づくりの交付金を保障すべきだというふうに思います。  ちょっとあと時間があるので続けてやらせていただきますが、しかも、この新交付金ですね、これ担い手を明確にすると、その担い手と一般耕作者との間で差を付けるようにする仕組みになっているわけです。水田ビジョンの作成の遅れの一因に担い手の名前が挙がらないということがあるんですね。そうすると、そういうところは交付金の水準が大幅に下がるんですよ。そういうところは農業生産から脱落すると。  また一方、担い手がいるところでは、大規模な面積要件が押し付けられていますから、その人だけ担い手にしているところでは集落で険悪な雰囲気になってしまうわけです。それで、元々あった農村集落のまとまり、お互いに協力し合いながらやっていく、そういう集落のまとまりを壊している状況になっているんですね、現場は。  こういうやり方をやっぱりやめるべきだと。それぞれの条件に応じてすべてのやる気のある者に対する支援を差し伸べるべきだというふうに思いますけれども、前段で聞いた産地づくりの交付金、今年度と同じ保障すべきだというのを含めてちょっとお答え願います。
  193. 白須敏朗

    政府参考人白須敏朗君) 一つには、ただいまの、まず一つ算定のお話が委員からも御指摘あったわけでございます。  私ども、今回の産地づくり推進交付金の算定に当たりましては、転作田におけますやはり認定農業者なり農家以外の法人経営、そういったシェアをスタート台といたしまして、平成二十二年度において構造展望が実現されることを前提といたしまして、担い手の育成が進展するということを織り込みまして十八年度の担い手率を設定したわけでございます。  これはやはり全体としての水田農業構造改革という観点から、転作麦なり大豆、あるいは飼料作物と、そういった生産の相当部分を担っております生産組織が効率的かつ安定的な形態に発展するということを期待をいたしまして、そういう意味で意欲的に見込んだものでございますが、ただ、配分を受けましたこの産地づくり交付金につきましては、申し上げましたとおり、要するに算定はただいまの委員からも御指摘のあった作物ごとの生産調整規模の見通しに基づきます本体部分と、それから意欲的な担い手の、ただいま私申し上げました育成の見通しに基づく担い手部分、そういうふうに分けて算定をいたしたわけでございますが、ただ、実際の交付金の使い方につきましては地域でそれぞれ、ただいま申し上げましたとおり、地域でそれぞれビジョンの中でお決めをいただく、そういう仕組みでございまして、担い手部分の額を担い手に限定して活用すると、そういったようなことが義務付けられているということでは決してございませんので、その点は御理解をいただきたいと思います。  また、金額面につきましては、私どもとしては大変、全体として予算の中でしっかりとした水田農業構造改革というふうな見地から算定をしたわけでございますが、そこのところは、申し上げましたとおり望ましいやはり水田農業実現に向けて全体としてやはり地域の創意と工夫、いかに活用するか、その結果として、どういう形で効率的な、あるいは安定的な農業経営が育成されていくかという観点から、米の生産調整の推進でありますとか、あるいは作物の産地づくりの推進でありますとか、あるいは先ほど申し上げました構造改革、担い手の育成、これに助成できるという観点から必要な額を確保した次第でございまして、そこの点は御理解を賜りたいと考える次第でございます。
  194. 紙智子

    ○紙智子君 時間の関係で一つ削りますけれども、もう一つ聞きたいのは、米政策改革の地方での説明会で、農水省の幹部がメキシコFTA交渉に関連して、決裂して四千億円の工業製品が売れなくなったとして、構造改革は待ったなしなんだと言ってハッパを掛けているということなんですね。こういう外圧を利用したようなやり方で説明会でやるということ自体いかがなものかと思うんですけれども、この点いかがでしょうか。
  195. 白須敏朗

    政府参考人白須敏朗君) お話しのとおり、産地づくりの交付金の交付に当たりましては、それぞれ地域水田農業ビジョンというものをやはり産地でそれぞれ市町村単位で作っていただくということがやはり必要なわけでございます。  そういうことで、年度内に可能な限りきちっとビジョンを作っていただこうというふうなことで、ただいま委員からもお話ございましたが、大臣からも御下命を受けまして、それぞれ、私も含めまして担当局長がそれぞれ農政局単位で各地域に参りまして、それぞれ農協なり市町村あるいはまた普及所等々、あるいは農業者の皆さん方にもお集まりをいただきまして説明会をさせていただいたわけでございます。  正にそういう中で、先ほどの申し上げております水田農業構造改革の必要性なりこれからの将来の在り方といったようなことも含めまして、正に米政策改革の一環として十六年度から開始しますその産地づくり対策ということの趣旨をお話しさせていただいたということでございまして、決して外圧を利用して云々ということは私どもは承知をいたしておりません。
  196. 紙智子

    ○紙智子君 現場では、やっぱり脅しとも取れるというか、そういう言い方はないだろうと、一体農水省なのかということで強い怒りが広がっているんですよね。私もやっぱり、農水省のさっき紹介したこの中でもいたずらにそういう対立するようなことをやってはいけないということをちゃんと書いているわけですから、そういうことはやっぱり改めていただきたいというふうに思います。  それで、この米改革は、結局農家に渡る予算を削減すると。そして、担い手と言われる一定の人にしか支援をしないと。農村の集落のまとまりも困難にしていくと。その上、米の流通において市場原理を徹底する。そして、米の余るところは翌年生産を削減させる、そうやって淘汰していくんだと。そして、競争で残るところしか米を作れなくしようとするというようなこういう政策が、本当に私は目標に書いてあるような農業の持つ多面的機能をどうやって発揮することできるだろうかと、こういう方向で。むしろこれを破壊して、農村環境や集落を守れなくしていく道だと思うんです。ひいては、自給率向上どころか本当に輸入依存を進めて国民の期待の道にも反していく道だというふうに思いますから、私はやっぱり今の米改革の進行については見直しをすべきということを強く求めて、質問を終わらせていただきます。
  197. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 無所属の会の岩本荘太でございます。  大臣所信表明に対します質問ということで、午前中、地元のことについては自民党の段本先生も大分詳しく御紹介いただきましたので、私は所信表明に対する質問ということで、もう少し大きいというか大所高所からというか、そう言っては失礼かもしれませんが、質問させていただきます。ただ、ちょっとそういう大きな扱い方しますと、質問通告大分アバウトになった感じがありますので、質問によってはここになかったじゃないかというようなことがあるかもしれませんけれども、ひとつ臨機応変に対応お願いいたしたいと思うんであります。  大臣所信表明、これ私も聞かせていただきまして、ある意味では当面する農政問題、これに真剣に対処しようとする姿勢は見えるんじゃないかなと、私はその辺では評価できるとは思っておりますが、現実に農家の方にしてみれば、こういうことを言われても、じゃ一体具体的にはどういう方向なのかなという疑問は依然変わらないのが実態ではないのかなと。そういうようなことから、この所信表明に沿ってどういうような農業のイメージといいますか、農村のイメージというか、そういうものに関してちょっとお聞きしていきたいと、そういうものをイメージアップしていきたいというつもりで質問をさせていただきます。  まず、日本農業、午前中からいろいろな質問がございましたが、日本農業と一口に言ってもこれは相当広い話でございますし、私の認識では単純にこれ考えますと、いわゆる穀物生産といいますか、土地利用型の農業は、これはとてもじゃないけれども、例えば株式会社がやろうが、とてもじゃないけれどもアメリカには勝てないと。労働生産性だけを見たらそういう実情ではないかと。片や、最近中国の生鮮野菜なんかに象徴されますように、ああいうところでできるもの、ああいうところの労賃を使ってできるものは、労賃の比較から、どんな工夫をしてもできないんじゃないかと、基本的にはですね。工夫というのは言い過ぎかもしれませんけれども。そういうような中で、一方ではやはり花なんかはそうですかね、いわゆる今度輸出しようというようなお気持ちもあるようですから、そういう非常にやりやすい農業もあると。  そういういろんな多面的な農業の中で、では一体これからの日本農業をどんなふうなイメージでお考えになっているのか、土地利用型についてはそれぞれどんなふうにお考えになっているのか。それぞれあるのかもしれませんし、全体としてもイメージというのがあるんだと思うんですけれども、その辺、大臣はどんなふうにお考えになっているか、まずその辺をお聞きしたいと思います。
  198. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 将来の日本農業につきまして、私は、まず安全で安心でおいしい食料の、合理的な価格で安定的に供給、国民に提供する、供給すると。そして、健全で豊かな自然環境と景観の保全、また景観の形成、こういう面で国民の期待される農業実現してまいりたいと、こう思っております。  こうした中で、諸外国との生産構造の差異を踏まえて、農業の競争力強化などに向けて我が国農業構造の改革がやはり必要であるわけでありまして、そういう面で担い手に絞った支援策の体系的な整備、これを進めることが必要と、こう思います。  それと同時に、構造改革進展する中で、食料の供給や多面的機能の発揮、これが適正に確保されること、それには農地、水等の資源の保全のための政策の確立、こういうことが必要であるわけでありまして、こうした点を踏まえまして、私は、次の世代に対してどのような姿の農業を残していくか、こういう視点に立ちまして、今、食料農業農村基本計画見直しを始めとする農政全般の改革に取り組んでおるわけでありまして、厳しい、今、委員指摘のとおり、土地利用型の農業における問題、これは非常に厳しい状況と、これはそのように受け止めなければならないわけであります。しかし、何としても農業の競争力の強化、こういう点に向けた改革を進めていくということが必要なことではなかろうかと、このように思っております。
  199. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 今のお話で私なりに理解いたしますと、今の日本農業、構造という意味じゃなくて、日本の今の現状農業というものを大体維持していこうというようなふうにお見受け、お聞きしたんですが、大体そんな理解でよろしいんですか。  昔は選択的拡大とか、そういう言葉もいろいろありましたし、先ほど言いましたように、今は各農業、それぞれ大きな差があるわけですね。そんな中で、大臣、それは、私はそれはいけないと言っているんじゃなくて、それならそれでいいんですけれども、その辺はしっかりと認識しなきゃいけないことの一つじゃないかと思うんですけれども、いかがなものでしょうか。
  200. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 基本的にそのような視点に立ちまして、いわゆる担い手のやる気と能力のあるプロ農業経営、こういう方々への支援、そしてさらに、やはりそのためのいわゆる農地制度ですとかあるいは経営という面での支援と、こういうことを中心に、やる気と本当に能力のある人たちがしっかり農業ができるような、またそういう人たちが中心になるような農業というものが必要ではなかろうかと、こう思います。    〔委員長退席、理事常田享詳君着席〕
  201. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 大臣お一人にこういう問題を課するのも酷かもしれませんけれども、要するにその辺の問題意識というのを分けて考えないと、ただ漠然と農業というだけだと解決いかないんじゃないかと思うんですね。大臣、いわゆる一つの審議会じゃないですか。いろいろと基本計画の改定等検討されている中で、その辺をしっかりと分けて方向を見せてくれると農家というのも分かりやすくなるんじゃないかと思うんです。だから、それだけ土地利用型大変でも、これはある意味ではあるインセンティブを与えてやるんだということであれば、これはこれでいいわけですけれども、これはせんじ詰めていけば食料自給の問題とも関係してくると思いますけれども、そういう物の見方をしていただくと私は非常に有り難いと思っております。  そこで、まずお米の問題なんですけれども、これは土地利用型の最たるものだと思いますが、一方ではこれはある意味のインセンティブを与えて国内でかなりの自給率をやっていると、一つの日本農業の典型ではないかと思うんですが、そこでこの抜本的な改定、これ平成十四年度からだったですかね、八年間にわたって抜本的な改正に向かってあるべき姿に持っていくということで、先ほどからいろいろ質問出ておりますけれども。  そんな中で、先ほどもありましたかね、いわゆる担い手を特に優遇するといいますか、担い手対策というものに取り組むと。個別農家にして四ヘクタール、北海道は十ヘクタールですか、集落農業にして二十ヘクタールだったですか、そういうようなことで、この面積が果たしていいかどうか、これも一つ大きな問題あると思いますよ。  こういう農家であれば農業だけで自立できるのか、じゃほかのと併せてどうやるのか、その辺のイメージというのも本当は農林省示していただかないと駄目だと思うんですけれども、それは別にして、こういうような対策を取られる、これはある意味では国がリストラやっているんじゃないか、農林省がリストラやっているんじゃないかと。リストラというのは今はどっちかというと首切りみたいに、効率の悪いものを切り捨てるという意味で受け取られていますから、そういう意味でリストラやっているんじゃないかというようなひどい批判もあるわけですが、それはさておき。  こういう方策を取るというのは、いわゆる担い手がマイナス方向にあると、このままではもう足らないという認識でやられるのか、あるいは担い手がやれば日本農業は立ち直れると、今あるこれはここまで来ているからこれをもっと伸ばしていこうということでやられるのか、どちらの認識なんですか。
  202. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 今取り組んでおりますことは、今、委員指摘の後段の考え方と。やはり、担い手を中心として、やる気と能力のあるそういう方々がしっかりやっていただけるような後押しをする必要があると、こういう前提の中で考えておるようなわけでございます。
  203. 川村秀三郎

    政府参考人川村秀三郎君) 新しい基本法ができまして、その中で構造展望というようなものをしております。  基本的な考え方といたしまして、効率的、安定的な経営、こういうものが相当部分を占めるような生産構造といいますか、そういう農業構造にしていきたいということが目標でございます。  そういう観点からいたしますと、まだその効率的、安定的な経営というものが十分に備わっておらないということでございますので、そういう方が増えるように、力を付けるようにということが基本的な姿勢でございます。
  204. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 そうしますと、この担い手はもうだんだん育ってきている。これを更に増やしたいということは、そちらに重点を置いてやられるということになるわけですよね。  そうしますと、先ほどから出ておりますように、要するに農村、農家の方々の心境として、そちらが農林省の方向かと、そこに達していない人は、おれはやっぱり切り捨てられるかと、やっぱり将来やっていけないのかというような気分にならざるを得ないと思うんですよね。それはまた、それもいけないと言っているわけじゃないんです。そうした場合に、もしそれでなければ日本農業が成り立たないとすれば、そうやって重点から外されるというか、大規模でないというか、そういう方々はやがて農村を離れるかもしれない、農業を離れるかもしれない。  そういう人たちに対してどういう対策を講ずるのか、これはやっぱり農林省しか考えるところないと思うんですね。それこそリストラでおれは知らないよと言って切り捨てるだけじゃ済まない問題だと思うんですけれども、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  205. 川村秀三郎

    政府参考人川村秀三郎君) 先ほども申し上げましたように、担い手が中心となって、その周りにまた、そこにまだ達しない農家というものが周辺の農家としていらっしゃるわけです。で、それを切り捨てるということではなくて、その中核となられる担い手とその周辺の農家とが一体となって食料生産を担っているわけですので、そこはやはりその能力と意欲に応じて機能分担をしていただくということだろうと思います。    〔理事常田享詳君退席、委員長着席〕  そのために、またその小規模な方も、例えばその集落営農を今回また担い手として位置付けておりますので、その中の一員に入っていただくとか、あるいは小規模であっても複合経営といったような道もございますので、大きいからいいということでは必ずしもないと思うんで、そこはやはり農業でしっかり生計を立てられるという方を育てていきたいということでございます。
  206. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 今の御説明を私なりに解釈しますと、要するに担い手に重点を置いて担い手を増やすわけでしょう。そうすると、それ以外の方は減るわけですよね。減るというか、切り捨てられるわけですよね。だから、その人たちは、今のお話ですと集落営農をやれと、そちらが方向だと、こういうふうに理解できちゃうんですが、そういうことですか。
  207. 川村秀三郎

    政府参考人川村秀三郎君) 基本的に、その中核となられる担い手という方は農業で生計を立てておられるということになります。ただ、その周辺の農家というのは、兼業をされておったりいろんな形があると思います。  だから、そういう場合にまず経営体として安定させるためには、その中核を担っていただく担い手のところの所得をどう確保していくとか、そういう施策がまずあります。それから、周辺の農家にとっては、まだやはり食料生産ということを担っていただいておりますので、例えば端的な例を言いますと、全体として整備をする必要があるような基盤整備でありますとか、その共済でありますとか、そういうものはすべての農家を対象にするということでありますので、一律に小規模の方を切り捨てるということではないわけです。
  208. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 切捨てというのは言葉が過ぎるかもしれませんけれども、担い手が増えれば、それによって影響を受ける小規模農家といいますか、面積で言っているから私は小規模農家と言っているんですけれども、そういう人たちが増えるわけですよね。そういう人たちが農業で今までどおりやるとすれば集落農業になるかもしらぬ、それで食えなくなれば兼業をやる、これも一つの道でしょうけれども、その辺を農林省がどうお考えかということを私はお聞きしているんですよ。  確実に影響を受けるわけですよ、こっちを増やせば、担い手を増やせばですね。そういう人たちは、場合によっては食えなくなるんです。食えなくなったとしても、こういう手があるから日本農業のためにこう行けばいいじゃないかということであれば、またそれも理解できると思うんですけれども、そういう片方だけの、重点にやったことに対して、取り残されると言ったらこれも言葉はきつ過ぎるかもしれませんけれども、そういう者に対してどういう対応をされるかということをお聞きしているんですが、いかがなものでしょうか。
  209. 川村秀三郎

    政府参考人川村秀三郎君) 基本的に今後の農業政策というのは、農業で生計を立てられる方を中心考えていくということですので、農業以外の兼業とかそういうことをやっていらっしゃる方は、その合わせた総合所得で生計を維持されているということになろうかと思います。  ただ、農業生産を担われる部分については、先ほど言いました基盤整備であるとか共同利用施設の整備であるとか、その受益の対象になるということは当然あるわけで、一律に小規模の方の面倒を見ないよということではないということでございますが。
  210. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 そういうお話ですと、やはり担い手の方はいわゆる生産調整やる、何かこの予算ありましたよね、先ほどちょっと出ました。それに対して、担い手の方はそれだけ余計にもらわれるでしょう、同じ農家に対してね。農林省としては、農家、農業を対象に視点を当てて見ているとすれば、やっぱりそこに差が出てきちゃうわけですよね。やっぱり一つの担い手を育ててこれで日本農業立ち直そうとすれば、やはりそれは農業だけの所得だけじゃなくて、やっぱり農家としての存立を図るのか、あるいは外へ行っちゃったら外へ行ってもいいですよ、そういう視点で考えないと、やはり平等感というのは出てこないんじゃないかと私は思うんですよ。  この辺は、ちょっと時間がなくて私の質問がまだあるものですから次に移らせてもらいますが、それと同じような、ちょっと関連はすると思うんですけれども、三つの重点事項の中の最初に、これは私は初めて見たような気がするんですけれども、意欲と能力のある担い手の経営を支援する品目横断的な政策へ移行と。これは私、実は農林省へ入ったころはまだ選択的拡大、昔の農業基本法で選択的拡大、いいものをそれだけ集中してやれという時代から見ますと隔世の感があるんですけれども、これはこれでいいんですけれども、これちょっと、言葉だけ聞きますとイメージがちょっとわいてこない。この品目横断的な政策へ移行、ちょっと分かりやすくこれを説明していただきたいと思うんですけれども。
  211. 川村秀三郎

    政府参考人川村秀三郎君) 品目横断的な対策という言葉を使っておりますのは、これまでの政策が、個別品目に着目をして主として価格政策、それから所得政策にも多少変えてきましたけれども、そういうことですと、経営を全体としてとらえるということがなかなか難しい。経営の独自性なり創意工夫性を生かすということになりますと、経営全体をとらえるということでないと担い手が育たないということですので、品目に着目するのではなくて経営を全体としてとらえる、すなわち、品目はどんな、いろんなものを育てておりますので、それを横断的にひっくるめて対策を取れないかという意味で品目横断と言っているわけでございます。
  212. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 特に私は思うんですけれども、それこそ、いわゆる農業経済といいますか、農業経済のとらえ方から農家経済に変わっているんじゃないですか、そういう品目横断的に農業経営として考えるということであれば。だから、これは一つの方向として私は非常にいいことだと思うんですよね。こういうことをやってもらいたい、やってもらえばいいと思うんですが。  そこで、さっき言いました品目横断という、その品目で一番大きいのはお米じゃないですか。だから、お米も含めて品目横断的な施策考えるという、これこそ今の日本農業に対して必要なことだと僕は思うんですけれども、この辺についていかがなものでしょうか。
  213. 川村秀三郎

    政府参考人川村秀三郎君) 委員指摘のとおり、土地利用型の代表選手は稲作でございます。水田を利用して小麦を作るとか大豆を作るとか、またいろんな野菜とかありますので、やはり将来的な方向としては、その水田営農という形で一つの、正に稲と小麦とか大豆とかその他の作物、それらをひっくるめてとらえるということがふさわしいと思っております。
  214. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございました。  そういうことによって直接支払というか、そういうものの導入もできるようになるのかもしれませんしね。それが私はやっぱり一つの大きな方向だと思います。  そこで、次に個別の問題に入りまして、BSE、これ前回もちょっとお聞きしたんですけれども、これは、アメリカBSE牛の感染が分かって、それに対して大臣は全面禁止令、これは日本国民もそれで安心したと。日本の場合も全面検査安心したということで、私も、そこまでの取組といいますか、それは大変評価しておるんですけれども、その後聞きますと大分出ているんですね。疫学グループですか、疫学検査グループですか、あそこがやられたときは七例目ですよね。七例目までのケースで、あれでも、七例目が出てもそんな影響はなかった。それで、大分出ていて今もう余りニュースにならないんですけれども、これは、ニュースにならなくて安心しておれるのは、これは消費者段階、消費者サイドの話じゃないかと。私は、これ、生産者はどういう気持ちでおるのかなという。いろいろと、BSEの絶滅のためにいろいろ原因究明されている。これは小斉平委員が午前中いろいろ質問された中でもございましたが、時間がありませんので一つだけ。  私はもう、やっぱり自分で育てた牛が、毎度言っておりますけれども、これは検査されたら殺されちゃうかもしらぬと、何のために育ててきたか、何のために生まれてきたかという、そういうことに対する生産者の非常な、何というか、生産者の意識に対して影響のある面もあると思うんですね。そういう面で、対策をいろいろは講じて、所得対策等講じられておると思いますけれども、この生産意欲といいますか、生産者に対してどのような認識でおられるのか、そういうことも調査されておられるのか、そういうことを含めてどういう対策を取られておられるのか、その点だけお聞きして、終わりにします。
  215. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) BSEの患畜が確認された場合にはこれらの牛が殺処分に移行になるわけでありまして、このために、代替牛の円滑な導入、こういう面で経営再建を支援することを目的に、代替牛の導入経費も助成するとともに、その導入に伴う所得の低下を緩和するための助成を行う事業を実施しております。この事業が創設された以降、BSE発生農家にあっては、この事業に、代替牛導入が行われ、円滑な経営継続が図られているところでありまして、農家が安心して営農を続けていく上での大きな助けになっていると、このように考えております。  実は私のところにも、六例目のBSE発生をいたしまして、その農家も現在、当時と同じ牛を導入いたしまして酪農経営継続してやっておりますし、この助成措置に大変感謝をいたしておりますことを承知をいたしております。  畜産物価格関連対策として実施されているものでありまして、十六年度につきましても畜産物価格決定に併せて検討をすることとなりますが、BSE発生した場合の経営再建対策が極めて重要な事業であると、このように考えております。  今後とも、BSE発生農家に対する経営再建支援措置を講ずることを通じまして、畜産農家が安心して営農に取り組める環境をつくってまいりたいと、このように考えております。
  216. 岩本荘太

    ○岩本荘太君 ありがとうございました。  終わります。
  217. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 諫早湾の干拓事業に関する件について質問したいと思います。  最初は、円弧滑りという問題についてお尋ねします。  円弧滑りというのはなかなかなじみのない言葉でございますけれども、これは簡単に言うと、軟弱な地盤があって、そこに盛土をするだとか大きな建物を建てるとか、重力を加えると軟弱な地盤ですからそこは沈んでしまうわけですね。沈んだ分量はどこかで出てこなきゃいけないというところで、ほかの場所で土がばっと盛り上がって出てくると。このことを円弧滑りと言われております。これが、今月の二日、長崎県の諫早湾干拓事業地内において造成地の土が堤防の下を流動してしまうという事故が起きたわけですね。  皆さんにお配りしましたこの簡単な絵がありますけれども、この右側の方がいわゆる悪名高い干拓地、宅地造成地として予定されているところですね。ここに盛土をやったわけですね。これは去年の十一月から盛土をやっているわけですよ。そうしますと、地盤が軟弱ですから、ここの部分が長さ百二十メートル、幅約二十メートルにわたっておよそ三メートル地盤が沈下したわけですね。そうすると、その分の土はどこへ行ったかというと、この前の旧海岸の堤防というのがありまして、その堤防の部分はコンクリートや何かで頑丈なわけですから、その下の軟弱な地盤を押し出して、そしてこの後背地のところへ土が出てきたと。そして、そこには水路があったわけですよ。この水路を埋め尽くすような形で土が出てきてしまったという、こういう事件が起きたわけですね。  これは、諫早市の小野島町というんですかね、この農業用排水路なんですけれども、地盤が約百四十メートルにわたって上昇してしまったと。一部では幅約二十メートル、深さ一メートルの水路が土砂で埋め尽くされたという、こういうことが起きてしまったわけですね。そして、その旧堤防上の道路にも段差ができてしまったということなんですね。ですから、こういう不思議な、非常に危険な状況が起きたということがあります。  今回の、農村振興局長にお聞きしたいわけですけれども、今回の事故について、事故の詳細と原因、その後の対策について明らかにしていただきたい。
  218. 太田信介

    政府参考人太田信介君) 御指摘の事態でございますけれども、干拓地と背後地が接する辺りにおきまして入植者の宅地等の用地造成工事を実施しておりました。その際におけます盛土の荷重によりまして地盤が沈下し、また干拓地の外側にあります排水路の地盤が盛り上がった、委員指摘の円弧滑りという現象でございます。  一つは、この排水路が少し閉塞された状況にございますので、応急的な排水対策を行いつつ、現在実施しております対策に必要な滑りの面、これを特定するための調査を踏まえまして早急に具体的な対策工を実施してまいりたいというふうに考えております。
  219. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 諫早干拓地の地盤というのは、大体深さ二十メートルから三十メートル、相当深いところまで、潟土と言われているような状況なんですね。もう日本の中でも最悪の軟弱地盤なんですよ、あそこは。そういう状況があります。つまり、どういうことかといいますと、土粒子が細かいわけですから、含水量、要するに水を含む量が大変多くなってきて、どこかが変形するともう急激にその強度が弱っていくという、そういう一帯なんですね。  これはまた専門用語なんですが、高鋭敏粘土、高鋭敏粘土と言われて、こういうところに大型の構造物を建設するというのはこれは大変危険で、そういう場所ではないわけですね。ですから、今後もこの事業地内の随所で同様の事故が発生する可能性があるのではないかと思いますけれども、それについてどういうふうに予測していますか。
  220. 太田信介

    政府参考人太田信介君) 現在の工事自体は、正に潟土が堆積したかなり厚い潟土の層に対して、圧密といいまして、上に荷を掛けて、それによっていわゆる水分を絞り出しながら地盤を強化するという、そういう工事の一環として実施してまいってきたわけでございますけれども、私どもといたしましては、この盛土以外にも、内部堤防工事あるいは農地造成工事等も実施しております。これら工事につきましては、十分な施工管理を行いつつ適切に実施していく必要があるというふうに考えております。
  221. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 適切にと言っても、二十メートルから三十メートルまでもう全部こういう状況なんですよ。基本的な、何というんですか、一部分が弱いとかいう話ではありませんからね。そういう方法でもって本当にそんなしっかりした地盤に再生できるとはとても思えないです、物すごい広い地域ですからね。  そうすると、今回の場所というのは入植者の宅地予定地なんですね。ここに家を建てる、箱物を造るというところなんですよ。そんなところで大変なことが起きちゃったわけですよね。ですから、今造成中だったですから、だれも住んでいませんから人命に及ぶというような事故になりませんでしたけれども、これはもう基本的に諫早湾の軟弱地盤という構造的な欠陥があるわけですから、これからもいろんなことが起きる危険性というのは十分想定できるわけですよね。  これは、はっきり言って、諫早湾干拓事業にとっては実は致命的な欠陥なんですよ。安全ということをやっぱり優先的に考えて仕事をしなきゃいけないとすれば、この円弧滑りという、そういう現象に対する抜本的な解決策、こういうものがなければ、はっきり答えが出せないんだったら出せるまでこれ事業を凍結すべきだと私は思いますけれども、いかがでしょうか。
  222. 太田信介

    政府参考人太田信介君) 干陸地の現地盤でございますけれども、潟土の堆積によりまして形成された干潟であります。通常は均質な性状を有するものでありますけれども、円弧滑りの発生した箇所、その形成過程において、事前調査では予測し得なかった点があるのではないかということも考えられますので、現在、滑り面を特定するためのボーリング調査をいたしております。こうした結果を踏まえて、その対策を十分にしてまいりたいというふうに考えております。
  223. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 事前調査では特定できないというよりも、そもそも物のずさんな形で始まってしまいましたから、部分的にそれを探すなんて言ったって、これはできないと思いますよ、私はもう。全体のものだって学者たちは言っているわけですから。  それで、やはりこれは安全という問題、非常に重要だと思うんですけれども、今までの話を聞いて、大臣、どう思われますか。やはり工事をちょっと中断して、そういう根本的な欠陥の問題について一度ちゃんと調べてみると、それまでは工事中止すべきだと思われませんか。
  224. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 先ほど局長から答弁いたしましたが、ボーリング等調査をして、その対応をしておると、こういうことでありますので、それを見守ってまいりたいと、こう思っております。
  225. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 私は見守っていても駄目だと思うんですね、やっぱり危ないんですから。ですから、それはもうちょっと、今急に大臣、話聞いたと思われますから、調べていただきたいんですよ。結構大変な問題なんです、これ。  この続きですけれども、いわゆるギロチンに関しての中・長期開門調査についてお伺いしたいんです。  農林水産大臣の特命により設置された有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会、いわゆるノリ第三者委員会ですね、これは各分野の専門家で構成されていまして、二〇〇一年の十二月に短期、中期、長期の段階的な開門調査を実施すべきという見解を農林大臣に示しました。そして、福岡、佐賀、熊本、この各県議会は、昨年の十二月に中・長期開門調査の実施を求める意見書を相次いで可決したんです。そして、今年の二月には、潮谷義子熊本県知事が県議会で中・長期開門調査を求めました。このほか、長崎大学とか九州大学、そういうところの専門家チームにより、諫早湾干拓事業で湾を締め切った後に、湾外の有明海で潮流が最大三三%遅くなったということが明らかにされて、これはもう全体的に中・長期開門調査を求める声がどんどん大きくなっているというのが現状です。  しかし、こういう動きの中で、農水省が官僚のOBばっかり集めて、中・長期開門調査検討会議というのを作っちゃったわけでしょう。世の中では、これ仲間内でやったわけですから、八百長会議って呼んでいるわけですよ。余りにもあからさまに、おかしな会議なんですね。結局、やっぱり案の定、開門に否定的な報告が出てきているわけですね。農水省は、こっちの方を受けて、以前に実施した短期開門調査だけでお茶濁して、もう中・長期開門調査というのは何とかやめようという、そういう方向にあるんですよね。これは大変ひど過ぎると、どう考えたってこんなことを公の行政機関がやっていいのかという批判が非常に強いわけですね。  農村振興局長にお聞きしますけれども、そもそもそのノリ第三者委員会というのは、短期開門調査について、中・長期開門調査のための予備的データを取ることを目的として位置付けたんですよ。それで短期開門調査というのをやったわけですよ。実際に、ノリ第三者委員会委員長だった清水誠東大名誉教授も、報道機関のインタビューに対して、そもそも短期開門調査は中・長期調査の実施に向けた準備段階でしかないとはっきりと言い切っているわけですね。そして、この中期開門調査というのは主に流動、潮位差とか潮流のデータを取ることを目的とした。はっきりしているんです、何をやるか。長期開門調査の方は、干潟や底生生物を復元させて、生物や浄化能力のデータの採取ということを目的としているわけですよ。  だから、きちっと目的があって、それを段階的にきちんとやらないと、漁業に対する干拓事業の影響というものが分からないということになっているわけです。非常に科学的で論理的な物事の進め方なんですね。短期開門調査だけを実施したって、中・長期開門調査をしなければノリ第三者委員会の示した見解どおりの調査目的というのはいつまでたったって達成できないんですよ。そのことをどういうふうにお考えですか。
  226. 太田信介

    政府参考人太田信介君) ノリ不作等第三者委員会の見解に述べられております開門調査の目的でございますが、諫早湾干拓事業が起こしたと指摘される有明海の環境変化の諸事象につきまして、その指摘の適否を検証することだと。その具体的な実施に当たっては、社会的要因も含めて行政の判断にゆだねられたという状況にございます。  ちなみに、ノリ不作等第三者委員会の見解の書きぶりとしては、現実的な第一段階としては二か月程度の開門調査をまず考えたい。中略でございますけれども、次の段階として半年程度の開門調査を行い、更にそれらの結果の検討を踏まえて数年の開門調査へ進むことが望まれるということ。そしてその際には、委員長の発言として、実施についてはこれから行政に判断いただくという整理がなされたわけであります。  このため、農林水産省といたしましては、短期開門調査を含みます開門総合調査、この中には流動等を含めたシミュレーションによる検証、あるいは干潟の浄化機能を類似干潟で行うといったことを併せた開門総合調査を精力的に実施しましたが、その実施に当たって、中・長期開門調査の取扱いについては新たに検討することといたしたところであります。  この検討の場であります中・長期開門調査検討会議におきまして、諫早湾干拓事業の有明海の環境への影響を検証する方法として、中・長期開門調査が適切かどうかを含めて様々な角度から論点を整理いただいたわけであります。  検討会議、それからその専門委員会ということで学識経験者の方にも参加いただきまして、その中で様々な議論をいただきました。その議論におきましては、賛否両論がございましたが、有明海の海域環境は気象、海象等の複合的な要因に影響を受けていることから、開門の影響を抽出し、また諫早湾干拓事業の有明海の環境への影響を検討することは困難ではないかという意見があり、また、開門してもどのような手法によってどのような知見が得られるかについて明確な結論が得られなかったという状況がございます。  中・長期開門調査につきましては、こうした議論も踏まえ、漁業関係者や諫早湾周辺住民の方々に配慮をしつつ、行政として時間意識や費用対効果にも照らして総合的に判断していく必要がある困難な課題と認識しておりまして、有明海の環境改善に向けて少しでも早く効果的に取り組んでいくために今なすべきことは何かということに重点を置いて判断をしてまいりたいというふうに考えております。
  227. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 今なすべきことは、中期・長期開門調査をやらないということなんですか。
  228. 太田信介

    政府参考人太田信介君) 今なすべきことは、有明海の環境改善に向けて少しでも早く効果的に取り組んでいくために何をするかということであります。
  229. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 何をするんですか。何をするか分からないから中期・長期開門調査が必要だという、当たり前のそうしたプログラムができたわけじゃないですか。この農水省OBで作った委員会とかという会議ですか、これはただそれをストップしただけの話じゃないですか。こんなばかな話ないですよ。
  230. 太田信介

    政府参考人太田信介君) 検討会議の構成は、農水省ばかりではなく、国土交通省あるいは環境省の関係者も入っていただき、行政経験を踏まえた、あるいは技術的な観点も踏まえ、また専門委員会を設置し、技術的な観点ではそちらの方で深めた議論もいただいた結果でございます。
  231. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 何をなすべきかというところで終わったような答えのその会議はどれだけの意味があるんですか。OBを集め、そしていわゆる御用学者を集めて、なるべくやらないようにしようというふうにして決めただけで、一体何やるんですか、これから。
  232. 太田信介

    政府参考人太田信介君) この検討会議は、そこで結論というよりも、最後の判断は行政でございますので、行政が判断するに当たって必要な論点を整理いただくということで、お読みいただくとおり、様々な観点からその論点を整理いただいたところでございます。
  233. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 行政が判断したっていいけれども、全く、じゃ何をなすべきか、様々な観点からやらないというだけのことだったら、全く積極的な答えというのは出ないわけですよ。しかも、多くの人々が集まって、様々なデータを出して、とにかくやってみようじゃないかと。なぜかというと、このことによって有明海が死の海になっていって、漁業がつぶれて、今漁業をやっている人たちが廃業しなきゃならなくなっていくと、こういう事態が起こっているんですよ。  そして、しかもこれは、農水省というのは農林業と水産業をやるわけでしょう。同じことをやっているところが身内の首を絞めるような、そういう矛盾したことをやっておるわけですよね。これに対して説明をしなさいというふうにたくさんの漁民が何度も何度も来て、担当者と、説明をくれということを求めて、私たちは公共事業チェック議員の会という議員連盟でもって、そこが仲立ちして話合いしてきたけれども、農水省から論理的な答えというのは一度も持ってない。はっきりした具体的な質問に対して支離滅裂な答えをずっと持っているんですよ。これはまずいじゃないですか。自分たちの省内で矛盾したことをやって、しかもそれが説明できない。そして、それじゃ本当に水産業に悪影響があるのかどうかということを調べようじゃないかと。なければいいんですから。なぜ調べることを拒否するんですか。
  234. 太田信介

    政府参考人太田信介君) 短期開門調査を実施し、今また中・長期開門調査をいかにすべきかということを検討してまいってきておるわけですが、例えば一つの例でございますけれども、この中・長期開門調査検討会議において開門方法につきましても議論がなされております。制約条件を設けない常時開門、いわゆるゲートを全開するようなイメージでございます。そしてまた、短期調査と同様の開門の二つのケースについての検討をされております。  短期開門調査と同様の開門は、調節水位をマイナス一メーターから一・二メーターの間で管理します水位変動での調査であり、この場合の中・長期開門調査においては、専門委員会におきまして短期開門調査と同じ程度の成果しか期待ができないんじゃないかという議論がされております。他方で、制限条件を設けない常時開門を行った場合、大きくかつ速い局所的な流れが生じます。いわゆる鳴門の渦潮よりも速い流れが生じます。これまでに経験のない新しい状況を海域にもたらすことになるということで、こういう新しい海域の状況が海域環境にどのような影響を与えるか未知の部分が多いということもございます。  我々としては、そういうものを実施した場合に、当然水門の辺りが特に流速が速くなりますので、底が掘れていくと。したがって、そこのブロックが現在設置をしておるものでは不十分で、そのために新たな補強工法もしなきゃいけないといったことも、その工事的な期間も含め検討した結果としてそういうものを検討会議で議論をしていただいている状況にございます。
  235. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 それ全部推察なんですよね、そうじゃないかという。全く明確な科学的なデータというものがない推察でもって、とにかく開門したくないから、それに対してそういう理屈を付けているんでしょう。そして、今まではそんな門なかったわけでしょう、そういう門なんかなかったわけですから。それまで自然に潮流というのもあったし、漁業も盛んになっていたし、健全だったわけでしょう。それが異変が起きたわけでしょう。だから、それに近い形にして見てみようと。  ですから、調査というのも、何もこうやったら、決めたとおりだあっとやるというわけではありませんよ。いろんな段取り踏みながら、何か起きるかもしれない、やってみなきゃ分からない。そうしたら、それに即して調査方法を変えるなりなんなりして、取りあえず調査しなければ何にも答えなんて出ませんよ。想像だけでやっている、それはもうナンセンスじゃないですか。
  236. 太田信介

    政府参考人太田信介君) 私どもは、そういうこともあり、事柄には慎重でなきゃいけないという観点が一つございますけれども、先ほど申し上げましたように、短期開門調査を含みます開門総合調査で相当程度の事柄を明らかにしたということもございます。そういったことも踏まえた検討会議での議論の結果でございまして、そういったものを含めて判断をしていかなければならないというふうに考えております。
  237. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 全く現実に起こっている事柄を無視して、ただ事業がもう決まっちゃったんだから、非常に、何というんですか、それをやるだけが目的化しているというのが実態なんですよ、これ。もう我々が調べている公共事業、公共事業はすべて駄目だというんじゃないですね、必要なものもあるけれども。無駄で意味のないものはやめなきゃいけないというのは、財政的に言ったって環境問題考えたって、今一番重要なテーマなんですね。  その中で、余りにも大きな疑問がこの干拓事業にあるのに、開門調査を中期、長期でやったら必ずそのデータが出てきてしまう、そうするとストップせざるを得ないというような状況になってきたからやらないんじゃないんですか。
  238. 太田信介

    政府参考人太田信介君) 委員指摘のような観点で物事を我々としては判断しているんじゃなくて、ノリ委員会の見解を踏まえ、それをどのように行政として対応していくかということを真剣に議論した結果でございます。
  239. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 大臣、この問題はもっと前々からずっと続いてきている話なんですよ。これは余りにもひどい話なんですね、理屈に合わないわけですから。もうほとんど支離滅裂なんですよ。我々、だから、農水省の農水という字は漢字が違うんじゃないかというぐらいまともじゃないんです、答えも。ですから、是非とも、私はやめろと今言いませんよ。具体的に調査するということはこれは絶対必要なんです、これだけ大きな問題なんですから。ですから、調査するかしないか、中期・長期開門調査する。  ここで私は、非常に大臣という位置の判断が重要な事態に来ていると思うんですね。これをこのままごまかしたまま続けてしまえば、それは普通の大臣、ありきたりの大臣で終わってしまうけれども、ここではっきり大臣が自分の判断力、良識というものを発揮していただければ、歴史に残る大臣になると思うんですよ。これは分岐点だと思いますけれども、大臣、どちらを選ばれますか。
  240. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) この問題、いろいろ経過があり、先ほどいろいろ御指摘がありましたけれども、この検討委員会の報告書が出ておるわけであります。  これにつきましては、それなりの経過であの検討委員会がスタートし、また論点の整理をちょうだいしたわけであります。そのようなことに踏まえまして、関係者からいろいろ意見を伺った上で私としては判断をしたいと、このように考えております。それにはやはり、今、担当部局を通じましていろいろの形で意見の聴取も行っておるところでもございます。そのようなことを踏まえまして対応してまいりたいと、このように考えております。
  241. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 やっぱりこれに対して非常に国民が納得するような気持ちのいい決断を下すことが、私は自民党の応援をするわけじゃないけれども、やっぱり自民党というのは違うなと、あるいはこの内閣はやるときはやるんだなと、そしてこのときにこの大臣がいてやったんだという、大きな問題になっていると思いますので、是非とも真剣にこれを考えて早い決断をお願いしたいということを申請して、質問を終わりたいと思います。
  242. 岩永浩美

    委員長岩永浩美君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十二分散会