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1999-05-06 第145回国会 参議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月六日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  四月二十八日     辞任         補欠選任      佐藤 昭郎君     有馬 朗人君      高野 博師君     大森 礼子君  五月六日     辞任         補欠選任      服部三男雄君     松村 龍二君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         荒木 清寛君     理 事                 鈴木 正孝君                 松村 龍二君                 円 より子君                 大森 礼子君                 平野 貞夫君     委 員                 阿部 正俊君                 井上  裕君                 竹山  裕君                 吉川 芳男君                 海野  徹君                 千葉 景子君                 角田 義一君                 藁科 滿治君                 橋本  敦君                 福島 瑞穂君                 中村 敦夫君    国務大臣        法務大臣     陣内 孝雄君    政府委員        警察庁刑事局長  林  則清君        警察庁警備局長  金重 凱之君        法務省民事局長  細川  清君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        法務省入国管理        局長       竹中 繁雄君        厚生省保険局長  羽毛田信吾君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提  出) ○出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法  律案内閣提出)     ─────────────
  2. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月二十八日、佐藤昭郎君及び高野博師君が委員辞任され、その補欠として有馬朗人君及び大森礼子君が選任されました。  また、本日、服部三男雄君が委員辞任され、その補欠として松村龍二君が選任されました。     ─────────────
  3. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が二名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事松村龍二君及び大森礼子君を指名いたします。     ─────────────
  5. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 外国人登録法の一部を改正する法律案及び出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 円より子

    円より子君 民主党・新緑風会の円より子でございます。  前回委員会参考人崔善愛さんまた関口さんをお呼びして、当事者として入管法やまた外登法のさまざまな問題点をお話ししてくださいました。それについての質疑があったわけですけれども、私どもは今回、指紋押捺を全廃するということについては多分国民皆さんも大変いいことだと思っていらっしゃると思うんです。ただ、今まで指紋押捺があり、外登証の常時携帯ということを義務づけられてきたその経緯については、余り戦後生まれの皆さん御存じないんじゃないかという気もしております。  私自身もそれほど詳しくなくて、この連休中に随分、在日方々のことや、さまざま本を読ませていただいたんですけれども、在日という形で外国人としてずっと指紋押捺を続け、また外登証を常時携帯してきた方ですが、一度も外国に行ったことがないという方たちがいらっしゃいます。そして、その方が旧国籍法によって、相手方婚姻したときに日本戸籍からは除籍され、向こう送付されないまま無戸籍、無国籍のような状態でずっと外国人としてこられた方々もいらっしゃる。  そういった方についてちょっときょうは質問させていただきたいと思っているんですが、まず、特別永住者の方はもうとにかく外登証の常時携帯義務を課さなくてもいいのではないかと私は考えている者なんですが、特別永住者というのはどういった形でなられた方々かをちょっと教えていただけませんでしょうか。
  7. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 特別永住者という資格は、平成三年五月十日にできましたいわゆる特例法によって生まれたわけでございます。日本国との平和条約に基づき日本国籍を離脱した者等出入国管理に関する特例法、これでございます。この法律に基づきまして、歴史的経緯があって日本におられる方に関しては特別の地位と申しますか、を与えるということを制定した法律に基づいてできた資格でございます。
  8. 円より子

    円より子君 わかりやすく話していただけませんか。
  9. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 日本におられる外国人の中で、戦前から日本におられる外国人につきましては、その過程で一時は日本国籍を取得しておられた方もいたわけで、その後ポツダム宣言受諾平和条約を結んで独立する過程国籍を喪失された、そういう歴史的な経緯があることにかんがみまして、その後、いろんな経緯を経てこの法律ができて、そういう特別な資格を与えることになったということでございます。
  10. 円より子

    円より子君 日本国籍を取得した方がおられた。御自分意思で取得なさったんですか。
  11. 細川清

    政府委員細川清君) 明治四十三年のいわゆる日韓併合条約によりまして、我が国朝鮮半島に対する領土主権とそれからそこに住んでいる人に対する主権を取得したわけでございます。御指摘の旧国籍法朝鮮半島については施行されたことは一度もないんですが、条約上そうなっておりますので、その条約解釈上、当然日本国籍になるというのが戦前からの解釈でございました。  ですから、御質問意思に基づいているかどうかということになりますと、それは意思によらないで全員が日本人になったわけでございます。
  12. 円より子

    円より子君 今のだけではきっとおわかりにならない方もいらっしゃるかと思いますので、私はわかりやすく話してみたいと思うんです。  今、民事局長がおっしゃったとおり、一九一〇年八月二十二日に韓日併合条約が締結されました。そして、朝鮮日本領土となり、朝鮮人日本国籍を取得というより取得させられたということです。そして、戸籍朝鮮戸籍令適用を受け、国籍日本国籍になったんですが、朝鮮戸籍を有するという形になったわけです。それが、一九四五年八月十五日に日本戦争に負けましてポツダム宣言を受諾した。そしてこの後、七年後ですが、一九五二年四月二十八日にサンフランシスコ平和条約発効するわけです。このとき、先ほどおっしゃったように明治四十三年、一九一〇年に日本国籍を持たされた人たちが戦後また朝鮮国籍に戻ったわけです。韓国と北朝鮮二つになりましたから、韓国籍に返られた方たちもいる、そういった状況なんですが、そのとき実はこういった人たちが、先ほど入管局長が話しなさったように特例法によって特別永住者となられたという形なんです。  実はその中で一度も外国に行ったことのない方で外国人登録証を持っていらっしゃる方がいるといいますのは、難しいですが、日本人とされていて日本国籍を持っていた朝鮮の方、朝鮮戸籍を持つ方と婚姻した日本女性がいるわけです。この人は、一九五〇年七月一日に新国籍法日本で施行されました、その前に婚姻したものですから、新国籍法では外国人婚姻をしても国籍が変わったり戸籍が変わったりすることはないんですが、その前だったものですから、彼女は日本人日本に生まれた人なんですが、韓国の人と結婚したことによって除籍されたわけです、両親の籍から。除籍されて、だからそのときに韓国人になり韓国戸籍に入ったというのが普通一般だと思います。それが、サンフランシスコ条約によって国籍が今度はまた韓国になったわけです、夫が。それによって彼女も韓国籍になったんです。  そういった場合に、実はこの方の場合は、民事局長通達によって日本国籍がそのときに喪失したんです。といいますのは、サンフランシスコ平和条約が結ばれる直前に、平和条約発効に伴う国籍及び戸籍事務の取り扱いに関する民事甲第四三八号民事局長通達というのが出ておりまして、それによって、「もと内地人であった者でも、条約発効前に、朝鮮人又は台湾人との婚姻養子縁組等身分行為により、内地戸籍から除籍せられるべき事由の生じたものは、朝鮮人又は台湾人であって、条約発効とともに、日本国籍を喪失する」という形になったものですから、それで彼女はずっと外国人として生き続けるんですが、その後、夫と実は離婚をしたんです。ところが、朝鮮戸籍に入っていなかったものですから、どうも異動変更がないものですから、向こうでは入っていない人の離婚はできないし、それからこちらでもまた除籍されたところに入籍できないという状況があったんです。  民事局長通達国籍を失った人なんですが、こういうケースについて、民事局長御存じでしょうか。
  13. 細川清

    政府委員細川清君) まず、通達国籍がなくなったという点ですが、この通達サンフランシスコ平和条約解釈を示したものでございます。平和条約の第二条の(a)項で、日本国朝鮮独立を承認し、朝鮮に対するすべての権利権原請求権を放棄すると規定しておりますので、要するに日韓併合条約がなかったと同じような、復旧的な、原状回復的な扱いをするということになったと思います。その解釈を模したのがこの通達でございます。  それで、この通達で言っておりますように、その区別はどうするかということは、要するに内地戸籍に入っているか朝鮮戸籍に入っているかということで区別いたしました。したがいまして、父母が日本人で、内地において朝鮮の籍の方と結婚されて、そして戸籍がそちらに動くべきものになった人は平和条約解釈では日本国籍を失うこと、それから逆に、朝鮮の出身の女性日本人男性と結婚して内地戸籍に入っていた場合は、その人は平和条約発効に伴い当然に日本国籍になる、そういう扱いであったわけでございます。  そういうことを知っているかということでございますが、現在、帰化の申請をされる方にも、最近は少なくなりましたが以前はたくさんございましたので、そういう方がおられるということはよく承知しております。
  14. 円より子

    円より子君 そういった方々で無戸籍になった方々がどのくらいいるかというのは把握していらっしゃいますか。
  15. 細川清

    政府委員細川清君) 平和条約解釈上は、当然に日本国籍を離脱すると。それから、韓国国籍法では、そういう人たちは当然韓国国籍を取得することになっているわけでして、したがって法律上の厳密な意味での無国籍ではなくて、戸籍届け出手続韓国で行われなかったために韓国戸籍に載っていないという方はおられると思います。
  16. 円より子

    円より子君 そうすると、そういう人たち韓国籍で無戸籍という形になるんでしょうか。
  17. 細川清

    政府委員細川清君) そのとおりでございます。
  18. 円より子

    円より子君 ちょっと先ほどの話に戻りまして、この通達というものがどういう効力を持つのかということがあるんです。通達にもさまざまありますが、民事局長が今おっしゃったとおり、この通達平和条約解釈でそういう通達をお出しになったということなんですが、この解釈というのは随分分かれるようですね。  例えば、それこそこういう解釈もございます。今おっしゃった平和条約第二条で「日本国は、朝鮮独立を承認して、済州島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利権原及び請求権を放棄する。」と規定しているが、これは朝鮮独立を承認し、領土主権を放棄するとともに、朝鮮人に対する主権をも放棄する趣旨であり、国籍については、日韓併合によって韓国国籍を喪失した本来の朝鮮人及びその子孫をして日本国籍を喪失させる趣旨であることは首肯できるけれども、それ以上に、これらの者と婚姻した本来の日本人女子についても日本国籍を喪失させねばならないという要請まで包含しているものとは解しがたい。また、国際法上または国際慣行上も夫婦同一国籍主義の原則は確立されていない。しからば、朝鮮人婚姻した日本人女子国籍の問題は、我が国国内法令に従ってこれを決定しなければならない。そして、平和条約発効当時施行されている我が国籍法によれば、明白に夫婦独立国籍主義を採用しているのであって、外国人婚姻した日本人女子日本国籍離脱の措置をとらない限り当然に日本国籍を失わない、こういったものもありまして、御存じのように幾つも解釈が分かれます。最高裁でも、こういった方々がいろんな、今私が話しているケースとは違いますけれども、おっしゃるような解釈日本国籍がなくなったというふうにはなっております。  私がきょう質問をしたいのは、もちろん日本国籍を今から取得したいとかそういう方がいらっしゃるかどうか、韓国籍の方がいいと思う方もいらっしゃるかと思います。ですから、そういうふうにしようということではなくて、戦争はざまで一片の通達によって、また国籍法が変わるはざま国籍を離脱され、戸籍からも除籍され、もとに戻ることもできなかった人たちがいて、それは日本女性だけではない。国籍選択権というのが占領軍によって考えられた経緯もありましたけれども、その後、サンフランシスコ平和条約があるときに、どちらの国籍にするかというようなことの意思も一切聞かれずに、今度はまた日本国籍を離脱させられてしまったような人たちがいることを日本人たちにも知っておいてほしいことと、またそういった人たちについてどうすればいいのか、私たちは考えなきゃいけない時期に来ているんじゃないかということを申し上げたいんです。  それで、一つは、離婚をすれば外国人韓国国籍を失うということが韓国国籍法に書いてあるんですね。それから、戸籍韓国戸籍から除籍するということが出ているんです。先ほど私が申し上げた女性の場合のように、日本戸籍から除籍され韓国戸籍に入らなかった人たち、その入らなかったのは、これも法務省民事局長回答によって送付が停止されたことによるんですね。これは、一九四五年十月十五日民事甲四五二号民事局長回答というのがありまして、戦後の大変なときだったからでしょうか、外地への届け出書送付停止というのがありまして、彼女の戸籍韓国戸籍に入らなかったわけです。こういった人の場合、離婚するとどういう手続が踏まれることになるんでしょうか。
  19. 細川清

    政府委員細川清君) 確かに、戦後、韓国との関係が正常な外交関係でなかったので、ある時期から送付できなかった、したがいまして送付をやめたという事実はございます。  離婚したらどうなるかということなんですが、これは、法律の立場から考えますと、本当は韓国国籍なものですから、それをどう扱うかというのは専ら韓国法律によって定まるということになります。ただ、離婚しようと思えば、日本裁判所離婚することは十分可能でございます。
  20. 円より子

    円より子君 大韓民国国籍法では第十二条で、国籍の喪失というのがありまして、婚姻により大韓民国国籍を取得した者であって婚姻の取り消しまたは離婚により外国国籍を取得した者というのは韓国国籍を喪失するわけです。ちゃんと第十二条にそれが書いてありまして、そうするとまた日本国籍かということになるんですが、戸籍向こうに行っていないし、国籍変更のあったことも全く彼女の場合出ていないんですね。そういった人たちが、数を把握なさっていないようですが、現実には随分いらっしゃるんです。そういったときに手続がどうなるのか。  質問の前に法務省に聞いたんですけれども、戸籍の上での変動がないからこちらの籍に入れられないということなんですが、そういうケースは、法務省民事局長回答外地への届け出書送付を停止したわけですから、何かこちらで法務省がしてあげなきゃどうにもならないんじゃないかと思うんです。現場の市役所とか区役所ではこういう回答があるので届け出は出せませんし、こちらにも戻りません。韓国にはその人の形跡が一つもどこにも書いてないんです。だから、韓国国民としての権利を一度も持ったことがないわけですね、国籍があるというふうに言われても。そういったケースはどうなるんでしょうか。無国籍、無戸籍のような状態現実にはされてしまっている方なんです。
  21. 細川清

    政府委員細川清君) まず、御質問の前提ですが、韓国国籍法では、韓国男性外国人女性が結婚した場合にはその女性韓国国籍を取得するんです。それで、今度は離婚したときどうなるかという場合、当然には韓国国籍がなくなるわけじゃなくて、離婚によってもと国籍回復するとか、そういうことが条件で韓国国籍がなくなるというのが韓国国籍法解釈だと思います。  ただいまお話があったような関係は、繰り返しになりますが、日本戸籍日本国籍がある人だけを載せているものですから、そういう制度です。ですから、まず離婚をするということが、これは裁判所に行けばできるわけですが、そういう手続が必要です。  それから、日本国籍を取得するにはどうするかということですが、これは帰化手続があるわけでして、個別的な対応はすべてこれで従来させていただいています。平和条約発効から現在まで約三十万人の方が日本帰化をしているんですが、そのうちの二十二万人が従来の韓国朝鮮国籍があった方ということが私たちの統計に載っております。  以上です。
  22. 円より子

    円より子君 旧国籍法もとで、婚姻解消日本住所を有するときは法務総裁許可を得て日本国籍回復することができるというのがございます。そのときに彼女は許可を得て日本国籍回復したいと思ったんですが、これは全部法務大臣の裁量ですよね。なぜそういうときに日本人女性なのにできなかったんでしょうか。それはやはり戸籍とか国籍向こうにないというような事務的な不備だったからなんでしょうか。
  23. 細川清

    政府委員細川清君) 今読まれたのは、昭和二十五年に全面改正される前の旧国籍法でございます。国籍回復という制度は現在の国籍法ではございませんで、それは帰化手続に一本化しております。  元日本人であった人が国籍を失った上でさらに日本国籍を取得したいという場合には、帰化要件は五つありますが、そのうち、五年以上日本に居住するという要件は、日本住所さえあればいいということで緩和されております。それから生計要件独立して生計を立てる要件、これは免除されております。それから本国法によって能力があることということなんですが、これも免除されております。ですから、実質上問題になるのは素行が善良であるということだけなんですが、従来からこういう方々に対する帰化の行政の運用上は、事情事情ですから、法律上の要件を満たしていれば帰化許可するという方向でやっております。その結果がさっき申し上げました二十二万人という数になってくるわけでございます。
  24. 円より子

    円より子君 今の答弁の中に二つ質問があります。  一つは、旧国籍法もとで結婚した人ですけれども、さっき私が法務総裁許可を得て日本国籍回復することができると言いましたら、今新国籍法になっているからとおっしゃいましたね。そうしますと、彼女の場合は旧国籍法もとで結婚したものですから日本国籍を失ったんです。それで、それを回復するに当たってはもう新国籍法になっているからできないというのであれば、適用が違うわけですよね。そういうのはどうなりますか。
  25. 細川清

    政府委員細川清君) そういう方が日本国籍を喪失したのは新国籍法、旧国籍法にかかわりのない問題でございまして、先ほど申し上げましたサンフランシスコ平和条約解釈で喪失したということなんです。結婚の当時は日本国籍が双方あったわけですから国籍は別に関係なかったわけでございます。  それで、二十五年に現在の国籍法に全面改正されましたが、そのときの考え方は、要するに日本国籍を出生後に取得する方法帰化という手続に一本化しようということになっただけでして、そのことは同じでございます。ですから、現在の制度で引き直せば、先ほどの回復に当たるのは簡易な帰化方法というのがありますので、それでお願いいたしますということを申し上げているわけでございます。
  26. 円より子

    円より子君 帰化についてはもちろん質問しますけれども、その前に今のことなんですけれども、サンフランシスコ平和条約発効に伴って国籍が変わったとおっしゃいました。そうしますと、新国籍法もとで結婚した場合は外国人と結婚しても戸籍は変わりませんよね。違いますか。
  27. 細川清

    政府委員細川清君) 現在の国籍法もと外国人の方と結婚しますと、当然には国籍には影響ありません。  それで、戸籍には、身分事項欄に年月日、どこの国籍だれだれと婚姻ということが記載されるわけでございます。
  28. 円より子

    円より子君 私はそれを知っておりますが、そのときに除籍されませんねという意味で伺ったんです。
  29. 細川清

    政府委員細川清君) 従来の親御さんの戸籍から除籍されるかどうかは御本人の自由で、日本戸籍ですが、婚姻されたということで独立戸籍をつくることは可能でございます。また従来のままでいることも可能でございます。
  30. 円より子

    円より子君 聞いていることと違うことを余りお答えにならないでほしいんですが、大変頭のいい方ですからそういうふうにお答えになるんでしょうけれども、私は、除籍されて相手方戸籍に入るということはありませんねと申し上げているんです。
  31. 細川清

    政府委員細川清君) それは結婚した外国人の方の国の法律によるわけです。  外国人女性と結婚した場合には当然自分の国の国籍を与えるという法制もあるわけで、そういう国で戸籍制度があればそこの戸籍に載るわけです。それは外国法律によるわけで、日本国籍から除籍されることはないということでございます。
  32. 円より子

    円より子君 そうしますと、例えば韓国の場合ですと、今の戸籍法であっても韓国戸籍女性が入ることは可能なわけですか。
  33. 細川清

    政府委員細川清君) 最近韓国国籍法戸籍法を改正いたしましたものですから、私、その詳細存じませんが、つい昭和六十年代ぐらいまでは、おっしゃるとおり、結婚しますと韓国戸籍に載ります。ただ、一定期間内に従来の日本国籍を喪失しないとまた韓国国籍を失うというのが韓国法扱いでございます。
  34. 円より子

    円より子君 そうしますと、彼女はたまたま民事局長回答によって外地への届け出書送付が停止されて向こう戸籍に載らなかったけれども、載らなかった場合に、これは仮定の話ですけれども、日本も今回例えば外国にいる日本人参政権を与えますよね。そういった形で、もし韓国にそういったものがあったとしたら、ずっと日本に住んでいる韓国人だけれども、成人ですから当然参政権があったりとかその国の国籍を持つ人としてのいろいろメリットがあるはずなんですけれども、彼女は一度もそういったものを受けていないんです。それは向こう国籍を取ったということになるんでしょうか。
  35. 細川清

    政府委員細川清君) 韓国法律上その方をどう扱うかは基本的には韓国法律の問題でございます。ただ、戸籍に載っていなければ韓国国民として韓国政府は把握できないという問題がございます。  ですから、こういう時期に日本国籍を喪失した方で韓国国籍のない方は領事館等に行かれて戸籍回復手続をされるというのが一般的なやり方でございます。
  36. 円より子

    円より子君 それができなかったんです。  おっしゃるとおり、向こう戸籍に出ていませんから韓国の政府はその人を韓国人として把握できませんよね。  そうしますと、届け出書送付を停止した後、それを回復するようになさいましたか。
  37. 細川清

    政府委員細川清君) 停止した理由は、当時の外交関係上要するに送ることができなかったものですから、事実上できないので停止するという通達を出したというふうに聞いております。
  38. 円より子

    円より子君 停止してその後、そのときに不利益をこうむった人たち回復させるためには後から送らなきゃいけませんよね。ですから、その回答を停止なさらないとできないんじゃないんですか、現場の人たちは。  以前、労働省の方で、職業訓練校に入る人たちに保証人を必要とするというのがずっとあったんです、つい去年まで。四十歳になっても五十歳になっても、だれか保証人がなければ訓練校に入れないという制度がずっとありまして、何がそんなふうになっているのかと思って、随分いろんな方から何とかしてほしい、大人なのにということで労働省に聞きましたけれども、そんなことはあり得ませんなんて言う。でも現実にはあったんです。  それで、ある労働省の方に親切にきちんと、当たり前かもしれませんが、通達というのはたくさんあるので調べていただいたら、中学卒の子供たちで職業訓練校に入る子が多かった時代に親の保証人が必要だという通達を労働省の課長が出しておりまして、それが延々と生きていて、成人に対してもみんな保証人を要している。それをこの間やっと停止してもらったんです、そういうことはしないように。やっぱりそういうことをしないと、どうもお役人の方たちは大変生まじめに、上の方からそういう通達が来るとずっと延々とおかしいとも思わずにお続けになるんですね。  これだって、この通達のおかげで戸籍もつくれなかった人たちがいるわけです。それについて何とかしようというのが法務省じゃないかと思うんですが、なぜ停止なさらなかったんでしょうか。
  39. 細川清

    政府委員細川清君) 平和条約発効前は、内地籍も朝鮮籍も台湾籍も国籍日本国籍だというふうに考えられておりましたので、したがって日本人同士の間の戸籍の編製の問題であったわけです。  しかし、平和条約発効後は、外国国籍の方となられますので、その点については現在どこの国ともそういう婚姻届け出送付はやっていないわけでして、現在の法律制度は、他の外国でもそうですけれども、一般的には婚姻した人が自分自分の本国に届けるということになっているわけでございます。
  40. 円より子

    円より子君 この件については、そういったはざまにいる人たちを何とかしようというちょっとお気持ちがなかったのかなという、今からでも気がつけば考えていただきたいことだと思います。  もう一つ、おっしゃったとおり、確かに帰化制度があります。  ところが、彼女もきちんと離婚した後で、法務局に相談して帰化をしたいと申し出ているんですが、不可能と言われております。このときに彼女は離婚して子供がいて、そして朝鮮の人と結婚してあなたはもう除籍されたんだから実家には帰ってくるなというようなことがありまして、大変苦労して仕事を見つけ、やっていくんですが、またそれは隣家からの火事で一切の財産を失い、苦労して、ちょうど生活保護を受けたりしていたので、収入で多分だめになったのではないかと彼女はそのとき思ったみたいなんですけれども、先ほどの民事局長のお話では、そういったことも全部免除されて日本人女性だったら帰化ができたはずですね。それができなかったんです。その後息子さんも帰化の申請をしたけれども、それもできなかった。  帰化は簡単にできるとおっしゃっていますけれども、決してそうじゃないんです。いろんな方々のお話を聞くと、何年も待たされ、そしてもうきちんとした書類を出してもこれがないあれがないと言われて、そのときに教えてもらって、また行くと次は別のが不備だと言われてという形で、何年も何年もかかっている方たちがたくさんいらっしゃる。そういった事情を余り御存じないのかもしれません。  ですから、彼女は結局日本国籍回復法務大臣による裁量によってもできなかったし、それから帰化もできなかったという状況なんです。こういう人たちがいることをぜひ知っていただきたい。彼女たちは今そういった日本に対して日本国籍を取得したいとはもう思っていないかもしれません。自分の生まれた国で、朝鮮半島に一度も住んだこともないし行ったこともないというような人たちがたくさんいらっしゃるけれども、今さら向こうに行ったって言葉もわからないしという人たち、多分今じゃなくてもずっとそういう気持ちで生きていらしたと思うんですが、どちらの国の国民としての権利も持たないまま来たわけです。  そういった人たちを、今回ただ指紋押捺制度の改正だけじゃなくて変えていただきたい、何とか救済措置がないのかどうか、これはちょっと大臣にお伺いしたいと思います。
  41. 細川清

    政府委員細川清君) 最初に言われた例は私ども理解できないんですが、私は国籍担当の課長もやっておりまして、ある一定期、数年間ですが、すべての国籍案件について目を通しておりましたので、そういう方が日本帰化されていることはよく承知をしております。ですから、生計要件法律上要求されておりませんので、それで断られるということはおよそちょっと考えられないんですが、もし具体的なことがあれば十分お聞かせいただきたい、本当にそう思います。よろしくお願いします。
  42. 円より子

    円より子君 では、きょうは時間がありませんから、後でぜひ民事局長の方に個別のケースの御相談に参りますので、よろしくお願いいたします。  それで、そういった方々現実にいらっしゃることについて、今回改正のここではできなくても、何か救済措置がないのかどうか、大臣、感想をお聞かせ願えますか。
  43. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) ただいま御質問に対してお答えしてまいったわけでございますけれども、この帰化制度というものを運用しながら、しかもこれをできるだけ事情を配慮しながら適正に迅速に運用して、そういったはざまにおられる方々の問題に対処すべきではないか、このように考えております。
  44. 円より子

    円より子君 もう一つ質問させていただきます。  その方は、日本国籍になるならないよりも、在日韓国朝鮮人としてずっと生きていらして、指紋押捺やまた外登証の常時携帯をしてこられたんです。そういう中で在日人たちが人道的扱いを受けていないということを本当に重々知っていらして、できれば自分のことの原状回復よりも在日人たち全員の常時携帯の廃止とか、そういったことをずっと考えていらっしゃる方なんです。  実は、十六歳になったときに外登証の常時携帯を言われた高校生の子供たちで、十六歳で大人としての権利をもらえていないのになぜ常時携帯をしなきゃいけないのかという子供たち、それを拒否している子供たちが結構今いるんです。  この十六歳の根拠が何なのかを教えていただきたいんです。子どもの権利条約やさまざまなものによって、ついこの間はこの法務委員会外登法の審議の合間に、大臣にもお出ましいただきまして児童買春や児童ポルノの処罰法を可決させていただきましたけれども、あれも子供、児童というのは十八歳未満ということをうたっておりまして、今そういった形でなぜ十六歳からなのかということの根拠がよくわからないんです。これについてお答えいただけますでしょうか。
  45. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) この十六歳の以前は昔は十四歳ということでございました。それで、昭和五十七年の法改正の際に、この外登証の常時携帯義務を課すべき者の範囲をどうすべきかということを検討いたしました。その結果、十六歳未満の者については、親の監護のもとにあるなど、通常独立した社会生活を営むことが少ないのに対して、労働基準法の児童保護規定やそれから道路交通法の二輪車免許等の取得可能年齢など、社会生活上の資格に関する法令に十六歳以上を基準としているものが少なくないということ等を考慮いたしまして、十六歳に決定したという経緯があったと承知しております。
  46. 円より子

    円より子君 今おっしゃるとおり、そのころのちょうど昭和五十七年、国会でも議論されておりまして、十六歳ではなくて十八歳に引き上げたらどうかという議論もいろいろ法務委員会の議事録などを見ますとございますけれども、おっしゃるとおり、十六歳未満の場合は親の監督保護のもとに生活している、これは我が国におきましては義務教育年齢にも当たりますので、だから十六歳以上にしたという形になっているんです。  十六歳を過ぎますと、ある程度独立した行動をとるようになるというんですが、これは日本では確かに小学校、中学校が義務教育ですね。でも、今高校進学率が大変高くて、九五%以上が高校進学をしているという形で、ほとんど親元にいて親の監督下にあるんじゃないかと思うんです。  在日方たちの進学率、御存じでしょうか。
  47. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 承知しておりません。
  48. 円より子

    円より子君 これは文部省に聞きましても確かに把握していらっしゃらないんです。在日方々の団体とかいろんなところでお聞きしたところによりますと、ほとんど日本と同じ進学率かまたはそれ以上だというふうに今言われているそうです。  そういうふうになりますと、十四歳とかというのが決まったときと、また十六歳と決まったときと今は全然状況が違うと思うんです。五十七年のときもかなりの人たちが高校進学していたと思うんですけれども、これとか、それから義務教育年齢に当たるからというのは随分あいまいな根拠だと私は思います。  もう一つ、労働基準法で確かに最低年齢で第五十六条、「満十五才に満たない児童は、労働者として使用してはならない。」というのがありますし、また、ただ深夜業などでは「満十八才に満たない者」となって、「ただし、交替制によつて使用する満十六才以上の男性については、この限りでない。」と。ここで十六歳というのも出てくるんですが、じゃ女子はどうなのかといういろんな問題があります。どうも十六歳という根拠が今の時代には大変あいまいではないかと思うんです。今でも絶対に十六歳が子供であって、十八歳は無理だというふうにお思いになっているんでしょうか。その根拠をもう少しはっきり教えていただきたい。
  49. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) これはどこで区切るかの問題でございまして、先ほど言いましたように、独立してそういう生活ができるというのはいきなりある年齢から変わっていくわけじゃないわけですから、どこで区切るかということである種の水かけ論的なことになるんだと思いますけれども、今回これを改正するに際して、この点についても当然いろいろな国のケースも調べてみたんですけれども、外国の例を見ましても、どちらかというと十六歳というのが非常に多うございます。イギリスとかフランス等につきましても十六歳以上の者に限って外国人登録をさせ、あるいは滞在許可証の携帯を求めるというようなことになっております。  それから、子供がどのぐらいのところでひとり歩きできるかということの国際的な基準はないんですけれども、国際民間航空条約の第九条の附属書というのがございまして、ちょっと読み上げますと、そこでは、締約国は、親または法定代理人に伴われて入国する十六歳未満の子供については、子供の特徴等が成人同伴者の旅券に記載されていれば別個の旅券を要求すべきではないというようなことになっておりまして、身分を証明する文書の携帯を求める年齢として、十六歳というのは国際的に十分一つの基準になるのではないかと考えている次第でございます。
  50. 円より子

    円より子君 おっしゃるとおり、確かにどの年齢で区切るかというのは水かけ論になるかと思いますが、区切るというときに今の子供たちの置かれている状況とか、また特別永住者なり永住者になって日本にずっと住み続けたいと思っている人たち、また日本に親、祖父母のときから何世代も住み続けて本当に日本の言葉しか、文化しか知らないという人たちがたくさんいる中で、そういった事情を考慮することが年齢を区切るときの最も大事な問題ではないかと思うんです。  ですから、ただこの法律がこうなっているからという区切り方ではない、ここに住む人たちの人権とか思いとかそういったものを尊重した年齢の決め方、またそういったことをぜひしていただきたいと思います。  もう一つ、オランダは日本と同じように生地主義ではなくて血統主義をとっている国ですけれども、三世代住み続けた人については補完的に生地主義をとるというようなことをやっております。そういった国もございますし、今後、国籍やそういった問題については、なお一層私たち外国人人たちの人権という点で考え直していかなきゃいけないんじゃないかということを要望して、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  51. 千葉景子

    ○千葉景子君 私は、きょうは少し実務的になろうかと思いますけれども、何点か質問させていただきます。  今、永住者あるいは特別永住者皆さんに係る問題についても円理事の方からも御議論がございました。そこで、永住者、特別永住者皆さんに係る何点かの問題について私もお尋ねしたいと思います。  この法的な地位といいましょうか特殊的な立場というものを考えたときに、例えば、永住者、特別永住者に関して外国人登録の登録事項などについて配慮をしたり、あるいはもう少し日本の社会で生きているということを前提にした考え方に立つことができないのだろうか、こういう思いがいたします。  今回も職業あるいは勤務地、こういうものについては撤廃をするという方向がなされておりますけれども、前回もちょっとお聞きしてまだはっきりしておりませんでしたけれども、例えば「国籍の属する国における住所又は居所」、こういう項目がございます。取り扱いについては柔軟に取り扱っておられるというお答えもいただきました。私は、それぞれの民族あるいはお一人お一人のアイデンティティー、こういうものは大切にする必要があるというふうに思います。その一人一人がどういうものを胸におさめているかという問題はございますけれども、登録をさせるかどうかという問題としては、例えば日本で生まれ育ち、あるいは日本自分の本拠として生活をしている皆さんとして考えれば、国籍の属する国における住所とか居所の登録を義務づけるということはもう既になじまないのではないかというふうに思います。今言ったように、国籍、それぞれがアイデンティティーを大事にしているかどうかという問題とは全くこれは別の問題だというふうに思うんです。  この登録事項一つとってみても非常に負担を強いている、あるいはあくまでも外国人という区別をして非常に管理的な色彩を残しているというふうに思うんですけれども、この点について、まずこの一つについてみても何らか考え直す余地があるんではないかと思いますが、いかがですか。
  52. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 最初に、職業それから勤務所等の名称及び所在地、これをなぜ削ることにしたかということを簡単に御説明したいと思うんですけれども、登録事項のうちで変更したら十四日以内にすぐに変更登録をしなきゃいかぬということを言われている項目といいますのは居住地のほかに六つございまして、氏名、国籍、在留資格、在留期間と今度削ろうとしているこの二つの項目なわけでございます。  これは、変更になったらすぐ十四日以内に登録に行かなきゃいけないということですから、特にある意味で大変煩わしいということになるんだと思いますけれども、その四つのうち、恐らく永住者、特別永住者につきましては氏名とか国籍が変わることもありませんし、在留資格も変わりませんし、それから在留期間も変わりませんから、十四日以内にやらなきゃいけないのはこの二つなんです。  ですから、これがある意味で非常に大変であり、それから、その内容の性質上どっちかというとプライバシーの保護にも関係してくるということで、特にこの二つについては、永住者、特別永住者日本の社会での定住性が高いので、こういうものを常時把握していかなきゃいけない必要は乏しいんじゃないかということに着目して、今回はこれを外したいということにしたわけでございます。  それ以外のことについてということで、特に委員から「国籍の属する国における住所又は居所」、これはどうなのかという御質問がございました。  これにつきましては、ここにはこう書いてございますけれども、実務上は本国における戸籍に記載された本籍地をこれに書き込むようにお願いしてございまして、現にそういうことをやっていただいております。親の本籍地の記載が身分関係の把握にも役立っておりまして、この記載は本人の同一性を確認するのに非常に役立っているということでございます。  これは、むしろ特別永住者の方から、本国の戸籍を調べてみたらどうもこれは違っていた、日本の役所に提出したものと内容が違っていたのでちょっと訂正をしたいということで訂正を求めにお見えになる方がかなりございまして、私はこれはそれなりに御理解いただいて定着している項目ではないかなと理解しているところでございます。
  53. 千葉景子

    ○千葉景子君 ちょっと余り理屈になっていないんじゃないかと思うんですが、間違っていたので直しに来られたと。それは登録されているものですから、それが間違っていたらやはり自分できちっとしたものに訂正をしよう、これはあり得ることですけれども、それが国籍の属する国における住所または居所を登録させるという理屈には全然ならないと思うんです。  それは、先ほど言ったように、それぞれの皆さん自分のやはりアイデンティティーといいますか、そういうものを大事にして、間違っていたものは訂正しようというお気持ちは当然あろうというふうに思うんです。ただ、実質的には住所とか居所というのは日本をそれぞれ生活の基盤とされているわけですし、本籍といいましても、もうそことの直接の関係というのが非常に希薄になっている、そういう部分もあります。それが直ちに同一性の確認の根拠になるというのも非常に何か理由としては薄弱ではないだろうかというふうに思うんです。決して御本人の意思を無にしようという意味ではなくて、登録事項としてだれでもが義務的に登録させられるということは必要ないのではないかというふうに私は思いますので、ぜひここは改めて永住者、特別永住者の地位というものにかんがみて、まずこの一つでももう一度検討するというふうにしていただけないでしょうか。お考えは。
  54. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほど申しましたようなことで、今回は「職業」、それから「勤務所又は事務所の名称及び所在地」、この二つを永住者、特別永住者に関しては削減するということにとどめたい、このように考えております。
  55. 千葉景子

    ○千葉景子君 それはまた今後の審議の中でもいろいろ議論させていただくことにしたいというふうに思います。  それから、登録証明書の切りかえ期間、これも五年から七年ということになります。確かに五年から七年というのは延ばされたと言えば延ばされたわけですけれども、例えばこれも永住者や特別永住者ということを考えますと、本当に定期的に切りかえをして、そして何かを確認するということが必要なのかどうか、そういう問題があると思うんです。  例えば、普通の日本の市民にとっても、何か変更があれば届けをします。やはり同じように変更があったら届ける、それをきちっと義務づけるということで十分足りるのではないかというふうに思います。  例えば、永住者を考えても平成九年度では八万人余です。それから特別永住者も五十四万人余の皆さんがおいでなわけです。こういう数から考えますと、自治体の事務などの負担、それから御本人の定住性というものを考えたときには、切りかえ期間というものを撤廃して、そして変更をきちっと届けてもらうというようなことで私はこの外国人登録制度趣旨も十分に全うされるというふうに思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  56. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) まさに委員がおっしゃるような理由で確認期間を五年、正確には五回目の誕生日から七年、七回目の誕生日にまで伸長したいというのが今度の改正の一項目になっているわけでございます。  しかし、確認制度は、登録の内容を定期的に点検して誤りや事実との不一致が生じていないかどうかを調べ、是正を要するものを発見したときは登録の内容を速やかに事実に合致させようとするものでございまして、永住者、特別永住者であっても登録の正確性を維持するために必要な制度でありますので、この制度自体を廃止するというのはいかがなものかと考えております。
  57. 千葉景子

    ○千葉景子君 登録した内容が誤りかどうか、あるいは誤った登録をしたとか、あるいは変更をきちっと届けていない、こういう問題は日本の私たち市民にとっても住民基本台帳などで問題はあるわけですね。同じことであろうかと思うんです。日本の一般市民にとっては、別にそれを確認するために切りかえなどするわけじゃないですね、定期的には。それでも、それが誤ったものかどうか、あるいはもし虚偽があればそれはそれなりにきちっと制裁がある。これもやっぱり誤ったことを登録したりあるいは登録をしなかったりすれば、それについての一定の何らかの制裁なり措置というものは考えられるわけで、定期的に切りかえをすることによってこれだけたくさんの皆さんの確認をする、そういうために七年ごとに切りかえるということも非常に事務の負担であり、それだけ定住性のある皆さんにとっての負担にもなっていると言えるのではないかというふうに思います。  これについても、今のお答えでは変えるつもりはないというようなお答えですけれども、この審議がまだ続きますので、ぜひその間にも御検討いただきまして、また再度その検討の結果などはお尋ねをしたいというふうに思っております。  さて、この登録制度ですけれども、今度の改正によりまして登録原票の開示、この問題が新しく盛り込まれるということになりました。そこで、新しい制度ということになりますので、ちょっと細かい点ですけれども、まず確認をしていきたいというふうに思います。  まず、この登録原票の開示ですけれども、第四条の三、そこでいろいろ基準が記載をされておりますけれども、四項でまず開示請求ができるものとして「国の機関又は地方公共団体」というのが挙げられます。この「国の機関」というのはどういうところまでを含むというふうに考えればよろしいのでしょうか。
  58. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 改正法四条の三第四項においては、国の機関がその事務を執行する上で必要がある場合には、登録原票の写しまたは登録原票記載事項証明書の交付を求めることができるということが明記されておりますけれども、現在でも、社会保険行政部門とかあるいは税制関係部門等の関係行政機関から登録原票の記載内容について照会があった場合、その根拠規定あるいは職務、執務上の必要性を勘案して照会に応じております。今後もこのような機関からの照会が予想されますので、この規定を置いている次第でございます。
  59. 千葉景子

    ○千葉景子君 そういうことを聞いたんじゃなくて、国の機関ということは例えば国の各省庁がありますね、さらにそれにどういうところまでをこの「国の機関」として含むのかということをお尋ねしているわけです。要するに、国の機関はすべてということになりますか。
  60. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 「国の機関」は、その根拠規定があり、あるいは職務執行上の必要性があるところはすべてに係ります。
  61. 千葉景子

    ○千葉景子君 捜査機関なんかも入りますか。
  62. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 捜査機関も当然入ると思います。
  63. 千葉景子

    ○千葉景子君 そうなりますと、国の機関すべてが法律の定める事務の遂行のため必要があると認める場合については交付を請求できるということなんですが、「法律の定める事務の遂行」ということになりますと、これはどういう意味ですか。法律の定める事務の遂行のために必要があれば開示を求められるということが記載をされております。この意味を説明いただきたい。
  64. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 法律の定める事務の遂行に当たっては、登録原票の記載を利用する必要がある場合には登録原票の記載事項を開示することとしておりますけれども、こういう書き方をしましたのは、他の法律により開示を求めることができることとなっている場合には既に第一項の規定がございます。第一項の規定により開示し得ることになっているので、他の法律で特段の規定が置かれていない場合であっても、国の機関または地方公共団体が法律上担うこととされている事務を遂行する上で必要と認められる場合には開示し得るようにしているものでございます。
  65. 千葉景子

    ○千葉景子君 ということは、例えば何々省設置法なりでこういう事務を遂行するということが決められていますね。そういうことすべてが「法律の定める事務」ということになりますか。
  66. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 当然、その目的とやること、その要求することにある種合理的な関係がなければいけないわけですから、何でもかんでもこれがあるから聞ける、どこまでも聞ける、調べられる、開示を求められるということではございません。
  67. 千葉景子

    ○千葉景子君 絞りは、また必要があるときとか理由とかそういうことを求めるんですけれども、この「法律の定める事務」の「法律」というのは結局は何の法律のことを指すんですか。
  68. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) いろんな法律でこういう場合にはこういうことができるということが書いてある場合がございます。例えば刑事訴訟法では、捜査機関は関係の公務所に対していろいろな意見を照会することができる、そういうようなことが書いてあるものについてはその法律によるということでございます。
  69. 千葉景子

    ○千葉景子君 いや、さっき、開示を別建てで法的に認めているものはそれでやると。そうじゃないものをここで定めているわけでしょう。そうすると、この「法律」というのは何ですか。
  70. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほども申しましたように、社会保険行政部門とかそれから税務関係部門等の関係行政機関から登録原票の記載内容について照会があった場合に、その根拠規定、それから職務執行上の必要性、こういうものを勘案しまして必要に応じて応じておるということでございます。
  71. 千葉景子

    ○千葉景子君 そうすると、この法律というのは、事務の執行を決めている法律なんというのは随分たくさんあるわけです。先ほど言ったように、まずはそれを設置している法律からして、こういう事務を管轄する、執行するということになるわけです。  要するに、国の機関は、必要があればという部分はありますけれども、基本的に開示を求めることができるということですか。
  72. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほども言いましたように、やっぱり根拠規定がどうなっているのかということと、あるいは職務執行上の必要性がどうなっているか、こういうものを勘案した上でということで、何でもかんでもということではございません。
  73. 千葉景子

    ○千葉景子君 そうしましたら、さらに、執行のために必要があると認める場合にはということになるわけですね。だから、何でもかんでもじゃないことは、それはそうですよ、必要があると認められなければ。それから第六項では、その理由などをはっきりさせて求めるということになっているわけです。国の側というのは、そういう意味では非常に広範囲に、登録原票、しかもこの登録原票の写しそのものの交付を請求できるということになるわけです。それに対して、今度は五項の方ですけれども、「弁護士その他政令で定める者は、法律の定める事務又は業務の遂行のため」、今度は原票は請求できませんけれども、登録原票記載事項証明書の交付を求めることができる。  「弁護士」は具体的に書いてありますからわかります。「その他政令で定める者」というのは、今後政令が定められることになるんだろうと思いますけれども、弁護士に準ずるような、具体的にはどういう者がここに含まれてくるのでしょうか。
  74. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 「その他政令で定める者」、その具体的な内容でございますけれども、まだこの政令をつくる前でございまして、政令を定める時点で具体的に検討することとなりますけれども、現時点では、日本赤十字社とか預金保険機構などのように、今後とも登録原票の記載を利用することについて人道上あるいは公益上の観点から開示の必要性が高いと認められるものを定めることにしたい、このように考えております。
  75. 千葉景子

    ○千葉景子君 その者は、これも法律の定める事務または業務の遂行のためということになるのですが、その「法律の定める事務」というのはどういうことになるのでしょうか。
  76. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) お尋ねの点につきましては、原票には外国人のプライバシーに関する事項も多く含まれているわけですから、弁護士その他政令で定めることとなる者が登録原票の記載事項の開示を求めることができる場合として、これらの者が個人的な関心や用務のために必要とするような場合ではなくて、法律で定められた事務または業務を遂行する上で必要とする場合に限定するということにしたものでございます。  例えば、弁護士が弁護士法に規定するような職務を行う場合や、法律で設立目的や業務を規定されているような機関がその本来の活動を行うような場合がこれに該当すると考えます。
  77. 千葉景子

    ○千葉景子君 そうしますと、例えば、弁護士の場合には弁護士法とかそういうものを指すということになるのかと思うんですが、先ほど、例えば日本赤十字社などが人道上、その他政令で定める者に含まれる可能性があると。こういう場合には、「法律の定める事務」というのはどういうことになるんでしょうか。
  78. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほど申しましたように、赤十字であれば赤十字に関しては法律で設立目的なり業務が規定されているわけでありましょうから、そういうものを踏まえて決定するということだと思います。
  79. 千葉景子

    ○千葉景子君 今度は第六項へ行きますと、さらに「前三項の請求は、請求を必要とする理由その他法務省令で定める事項を明らかにしてしなければならない。」ということになりますが、この法務省令でどういうことが定められるのですか。  請求を必要とする理由というのは法的には規定をされているけれども、さらにこういう具体的な必要性があるというようなことが求められるんだろうと思いますが、さらにその他の事項というのは例えばどういうことが推定をされるのですか。
  80. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今先生がおっしゃいました請求を必要とする理由に加えまして、請求者を明らかにするための事項、この人が本当に請求することができる人なのかどうかということを明らかにするための事項として、請求を行う国の機関等の名称、または請求を行う者の氏名及び住所、それから、一方におきまして請求にかかわる外国人を特定できるような身分事項、例えば、氏名、国籍及び居住地などを規定することを念頭に置いております。  なお、検討に当たりましては、住民基本台帳の閲覧及び住民票の写し等の交付に関する省令第二条を参考にする予定でございます。
  81. 千葉景子

    ○千葉景子君 四項と五項では登録原票そのものの写しの交付を求められるか。五項は登録原票記載事項証明、原票の写しそのものは交付を求められない、こういう区分けがされております。この理由はどういうところにございますか。
  82. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) この開示を求める者の公共性といいますか、それがどのぐらいあるかによってこの違いをつくっているわけでございます。
  83. 千葉景子

    ○千葉景子君 そうすると、公共性といえば国の機関、地方公共団体は当たり前ですよね、これが公共性がなかったらとんでもないことなわけで、それと「弁護士その他政令で定める者」というのは公共性において異なる、そういう理由ですか。
  84. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) この登録事項には当然プライバシーにかかわるような事項もかなり入っているものですから、弁護士及び政令で定める者については制限を加えているということでございます。
  85. 千葉景子

    ○千葉景子君 先ほど、国の機関等に捜査機関も当然含まれるというお話でございました。  従来、この外国人登録証については、登録済み証明が自治体において交付をされていろいろ利用されてきたということはあるんですけれども、国の機関、特に捜査機関については大量照会等の問題が指摘されてまいりました。不必要なといいましょうか、こういう照会が大変乱用されてきたという問題があったんですけれども、そういうことを考えると、本当に国の機関の方が公共性がきちっとしていて、弁護士その他政令で定める者はどうも区分けをされているというのは、どっちが信用が高いのかちょっとよくわかりませんけれども、この大量照会等、こういう問題点についてはこの法律ではどういうチェックがされようとしているのでしょうか。特に、捜査事項照会によってこれまでは照会がなされてきた、それとの関係はどういうふうになりますか。
  86. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 過去にそういう事例があったということ、いろいろ問題視されたということは私どもも承知しております。  先ほど委員がおっしゃいましたような漠然とした大勢といいますか、不特定多数の外国人にかかわるような開示の請求あるいは必要性が不明瞭、そういうような請求があった場合にどういうふうにするかということでございますけれども、その 請求の理由等に十分な合理的な理由があるのかどうか、その請求の根拠となる法令は何か、あるいはその趣旨はどうなっているか、そういうものを確認しまして、その上で対処すべきものだと思っております。
  87. 千葉景子

    ○千葉景子君 要するに、今回の規定によって請求を必要とする理由とか、そういうものを求めておりますね。そういうことによって十分にチェックをしていくということになりますか。
  88. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) そういうことでございます。十分な合理的な理由があるかどうかということを、その請求の根拠となる法令の趣旨を踏まえて確認して、その上で対処してもらう、こういうことでございます。
  89. 千葉景子

    ○千葉景子君 もう一点、捜査事項照会という照会の仕方というのは、この法律の交付請求とは別に存続するということですか。
  90. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 捜査の場合は、第四条の三の一項でございますけれども、「市町村の長は、次項から第五項までの規定又は他の法律の規定に基づく請求があった場合を除き、登録原票を開示してはならない。」、こういう書き方になっておりまして、他の法律の規定に基づく請求に当たります。これは刑事訴訟法で捜査当局はこういうことを公務所に聞くことができるということになっていますので、それはこの規定によって開示を認めるということになります。
  91. 千葉景子

    ○千葉景子君 捜査事項照会、刑事訴訟法によるんですけれども、従来はこの方法で非常に大量照会等の弊害というのが実際上あったわけです。そのチェックというのは、今回の法律とはまた全く別な問題ですね。  この開示請求については、第六項で、請求を必要とする理由とかそういうものを明確にさせてやるということです。捜査事項照会については従来弊害があったことが指摘をされておりますけれども、それはこの法律によってチェックをする問題ではない。ただ、それについてもやはり今後十分に監視あるいはチェックをしていただく必要があると思いますけれども、そこはどう取り組まれるおつもりですか。
  92. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 過去にそういうことを指摘される事態があったということはもちろん承知しております、最近余りそういうことは聞かなくなってきたわけですが。  いずれにしましても、登録原票の開示、特に今先生がおっしゃったような不特定多数の外国人に係る開示要求、あるいは必要性が不明確な開示要求、そういうものにどういうふうに対応するかということについてガイドラインのようなものをつくりまして、開示に当たっての指針、そういうものを作成して市区町村に示すことをこれから検討していきたいと思っております。
  93. 千葉景子

    ○千葉景子君 開示に当たりましては、それから照会のあり方についても、十分にそのガイドラインなりで厳しくチェックをしていくように、その点についてはお願いをしたいというふうに思います。  私は入管関係についてもまだまだ質問をさせていただくところがあるんですけれども、時間も限られておりますので、そこはまた後日に譲らせていただき、きょうは最後に、全廃をされますこの登録原票に係る指紋についての取り扱い、これまでも十分に取り組まれてきたかというふうに思うのですけれども、膨大な数の指紋が残されている。これは今どういう状況にあって、今後さらに指紋の扱いをどういうふうにされるおつもりでしょうか。ちょっとこれ事前のあれがなかったかと思いますが、おわかりであればお願いします。
  94. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 基本的に、昔とった指紋のうちの指紋原票にあるものは破棄するということで済むわけでございます。一方におきまして登録原票にあるもの、市区町村にあるものはそこで用が終わった時点で処分していただくなり、あるいは我々のところに持ってきて我々の方で処分するということになろうかと思いますけれども、たしか指紋押捺が廃止された後の最初の年、一年間分くらいにつきましては、その登録原票を法務本省に持ってきてマイクロフィルムに撮る際に指紋をつけたままで撮ったものがございます。これにつきましては簡単に消すわけにいかないものですから、一々これを取り出しまして指紋を消しまして、それでもう一度マイクロフィルムに入れて戻すという作業を今やっております。ただ、これはなかなか手間のかかる仕事なものですから全部終わっているわけではございません。最終的にはこういうものもすべて抹消するという方針でございます。
  95. 千葉景子

    ○千葉景子君 どの程度その作業というのは進んでいるのか。それから、今後また指紋の全廃ということに伴いましてその量というのは大変膨大なものになってこようかというふうに思いますけれども、これはできるだけ早く対処いただけるものでしょうか。どんな見通しをお持ちですか。その点についておわかりになれば、それをお聞きして、終わります。
  96. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほどのマイクロフィルムに残した分というのは平成五年の約六万枚でございます。これまでに一つ一つ拾い上げて指紋を抹消するということをやった数は、今現在二万でございます。ですから、まだ残りがあるということでございます。  指紋押捺が全廃になりますれば、これは一々ピックアップしないで順番にできますので、恐らく非常に早く作業は進むと思います。今現在は、指紋押捺者かどうかというのを一々確認しながら拾い上げなければいけないので、非常に手間がかかっているというのが現状でございます。
  97. 海野徹

    ○海野徹君 それでは、私の方から何点か御質問させていただきますが、まず具体的な質問に入る前に、大臣に御見解をお伺いしたいと思います。  私も法律論を学生時代やってきませんでしたから、経済だけ専門でしたから、なかなか法律論に入るというのは大変苦手な部分があるわけなんですが、必ず法律というのは条文に入る前にその歴史的な要請あるいは思想とか精神というのが法文に盛り込まれているかと思うんです。  今回の出入国管理及び難民認定法の問題にもそれなりの歴史あるいは精神というものがあるのではないか。その辺の歴史的な要請あるいは精神が守られているのか、あるいは守られている部分が何なのか、その点についてまず大臣から御見解をお伺いしたいと思います。
  98. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 法は最高の規範でございますので、今委員御指摘のような精神とか思想というものは大変大事な問題だと思っております。  それで、今日の我が国を取り巻く状況、国際環境の変化や我が国の国際社会における地位の向上等がございまして、我が国が国際社会において果たすべき役割というのがますますこれからは重大になっていくもの、このように認識しておるところでございます。このような状況もとで、入管法というのは、国際協調、国際協力の増進への寄与あるいはまた我が国社会の健全な発展の確保、こういうものを基本的な精神としていくべきである、このように考える次第でございます。
  99. 海野徹

    ○海野徹君 今、その精神について大臣からお話があったのですが、我々が法改正を議論する場合、改正されますからどうも改正された部分だけに目が行ってしまって、変わっていない部分については、なぜ変わらないのか、変えるべきでなかったのか、あるいは変えるべきものが変えられていないのかというようなことを議論するのをどうしても忘れてしまうのですね。  そういった意味では、今大臣がおっしゃったような部分は、歴史的に考えてみれば、とにかく今回の改正にも守るべきものは持っている。改正すべきものは、国際社会の中で日本が果たす役割が非常に重要になっている、あるいは国際社会の中でどう我が国を位置づけるか、そういう重要性の部分から変えてきたのだというようなことで、いま一度、今回の改正でこういう部分は変わっていません、これは要するに未来永劫に変えません、しかし歴史的な要請からこういう部分を変えましたという点について御見解をお伺いしたいと思います。
  100. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) ただいまも申し上げましたように、我が国社会の健全な発展の確保ということは、これはもう非常に大事なことでございますが、一方では国際協調、国際協力、交流の増進への寄与ということも我が国に求められておるところでございますので、そういうものを踏まえながら、そういう理念に基づきまして外国人の円滑な受け入れを推進していく必要がある、このように考えるわけでございます。  ところで、現在、我が国においては約二十七万人の不法在留者が存在しておること、また不法入国が後を絶たず、これらの者が不法に滞在して種々の問題の原因になっておるということもこれまた事実でございます。  このような中にございますので、正規に在留する外国人についてはその負担軽減を図るため再入国許可の有効期間を伸長するということ、それから不法に在留する行為に対しては適正かつ厳格に対応していくため不法在留罪を設けるということ、また退去強制された者に係る上陸拒否期間を伸長することによりまして健全な社会の発展の確保に努めていく必要がある、このように考えておるところでございます。
  101. 海野徹

    ○海野徹君 不法入国者あるいは不法残留者については厳正な処置をする、それと精神そのものについてはとにかく変えていかないということになりますと、以前いろいろ議論がありました点、あるいは現在でもこの法のすき間の中で精神が必ずしも透徹されていない、要するに法の不備の中で大変な御不幸な体験をしていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるわけですね。そういうものについては速やかに救済していってほしい、それは私もお願いしたいと思います。  確かに出入国管理というのは主権の行使ですから、これは国益に沿っているか、国益に利しているか、あるいは国益に反するかということで我々が判断していくということでありますが、大臣は我々日本の国益、国民の利益というものは具体的にどういうようなことをお考えになって、今回の法改正がそれに本当に沿っているものなのか。あるいは以前議論になった、今も大変御苦労されている方々にとってそれが少しでも救済になっているのか、その点についての御見解をお伺いします。
  102. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 我が国の今置かれている立場を考えます場合に、専門的な技術などを持っておる外国人の方についてはその受け入れを円滑にしていくということ、また開発途上国の人材育成を目的とする留学生や研修生、技術実習生、こういった者を幅広く受け入れをして、そして国際貢献に寄与していくということ、こういうのは大変重要なことだと思います。そういうものができるようにしなければならないということ。  しかし、また他方では我が国社会に悪影響を及ぼす不法就労者等が存在して、社会、経済、治安等にいろいろな影響を与えておりますので、これらの者については厳正に対処していくこと、こういうことを総合的に行うことが我が国の国益に合致することである、このように考えるわけでございます。
  103. 海野徹

    ○海野徹君 いろんな法改正、これは我々が国際社会の中でどういう役割を果たすか、位置づけをするか、あるいは日本はどういう国を目指すかというようなことで、その詳細にわたっては法的にそれを表現していくということになるかと思うのですけれども、今その時期じゃないかもしれませんが、私は個人的にはもう移民法というものを検討すべき時期に来ているのではないか、そんなことを思っているわけです。これから健全な交流を図る、あるいはその一方で社会秩序の安寧を図るということになると相当な決意を我々国民一人一人がやらなくちゃいけない、そういう時期に来ているのではないかと思うのですが、その点についての御見解をお伺いします。
  104. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 委員のお考えについても理解できるところでございます。  ただ、この問題は大変広範にわたって大きな影響をもたらすものでございますので、さらにいろんな立場での議論が必要である、このように考えておるところでございます。
  105. 海野徹

    ○海野徹君 それでは、いろんな議論をこれからしていかなくちゃならないということでありますし、私もそう思いますからこの辺で総論的な質問から各論に入りたいと思います。  入管法の改正案、再入国許可の有効期間を一年を超えない範囲から三年を超えない範囲にする、こういうふうに延ばすということになっています。再入国制度そのものがやはりある歴史的な背景からできているというふうに思うわけなんですが、その制度、目的あるいは要件等、歴史的な要請と今日的な要請、その辺の比較の中から制度の概要について答弁いただきます。
  106. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 再入国制度と申しますのは、本邦に在留している外国人が用務等のために一時的に本邦を離れて外国に渡航した後再び入国し、出国前と同一の在留資格で在留しようとする場合に、出国の前にこの許可を受けて行けば再度の入国に際して改めて入国のための査証を取得したり、あるいは新たに在留資格及び在留期間の決定を受けることを不要とすることによって外国人の再入国の利便を図る制度でございます。本邦に適法に在留しているすべての外国人が対象となっております。  現在の運用状況でございますけれども、ほとんどの場合が資格が認められております。去年の例で言いますと、約五十万件の再入国許可申請がございましたけれども、不許可になった例は数十件ということでございます。基本的に付与された在留資格にかかわる活動を行っているかということ、これが不許可になる一番の目安でございまして、そういう活動を行っていない場合を除いては申請のほとんどが許可になっているというのが今日の状況でございます。
  107. 海野徹

    ○海野徹君 その不許可の数十件、もう少し具体的にお話しいただけますか。
  108. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 再入国許可を申請する際に、もともとの在留期間自体がたくさんあれば再入国許可だけを申請するわけですけれども、人によりましては在留資格の在留期間だけが既に短いという人がございます。そういう場合には、在留期間の更新なり在留資格変更なりとあわせて再入国許可の申請を行うということがしばしば行われますけれども、そのもともとの更新自体が不許可になり、あるいは資格変更自体が不許可になった場合には再入国許可も不許可にせざるを得ませんので、大体そういうケースがほとんど大部分だろうと思います。
  109. 海野徹

    ○海野徹君 具体的にもう少し今の事例をお話しいただけますか。
  110. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 例えば、就学生が六カ月の在留期間がある、四カ月あるいは五カ月たった、ちょっと自分の国に帰りたい。ですけれども六カ月しか在留期間がないわけですから、これのさらに伸長を求めて地方入管局にやってくる。その際に在留資格の延長とそれから再入国許可二つを一緒に申請に来る。こういうような場合に、そのもとの就学としての在留資格での期間延長が許可できないというような状況の場合には再入国許可許可がおりない、こういうようなことでございます。
  111. 海野徹

    ○海野徹君 在留許可許可できないということは、要するに何らかの問題があったということなんですね。その辺の問題点は具体的につまびらかにできますか、一点でも二点でもいいんですが。
  112. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 例えば、就学生が実は余り日本人学校に通っていなくて、むしろ不法就労といいますか資格外活動といいますか、そういうことに主に時間を費やしていたというようなことがわかった場合には、就学生としての資格の更新が不許可になる場合がございます。そういう際に、あわせて再入国許可申請があったときに、それも不許可になるということでございます。
  113. 海野徹

    ○海野徹君 再入国許可の必要性はいろいろ今のお話から類推できることが多いわけなんですが、必要性、相当性、当該外国人の在留中の一切の行状、国内の政治、経済、社会等の諸情勢あるいは国際情勢等、諸般の事情を考慮して再入国の許可を与えるか否かを判断するというようなことがあるんですが、こういうことというのは、許可を与える場合、裁量権が余りにも広過ぎるんじゃないかということがあるわけなんです。その点はどうなんですか。
  114. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほども言いましたように、再入国許可に関しましてはほとんどの場合許可しているという状況でございまして、裁量権でもって許可したりしなかったりというよりかは、もうほとんど許可しているというような状況ですから、特に裁量権が広くて問題が起こっているという状況ではないと理解しております。
  115. 海野徹

    ○海野徹君 確かに数字的にはそういうようなことがあるわけなんですけれども、こういうような説明を受けますと若干広過ぎるかなという思いがありますし、もう少し再入国許可、不許可の基準というのを具体的に示す必要があるんじゃないかと私は考えるわけなんですけれども、その辺はどうでしょうね。
  116. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほども申しましたように、この不許可にするケースというのは極めて限られた場合でございまして、かつ実際には、付与された在留資格にかかわる活動を行っているかどうか、これがほとんど基準になっておりますので、これ以上さらに新しい基準をつくるという必要はないのではないかと思います。
  117. 海野徹

    ○海野徹君 言葉としてはわかるんですけれども、もう少し具体的な例を示してくれると我々としては非常に理解しやすいような形になるわけなんですけれども、まあその辺はわかりました。  それでは、数次再入国制度について、その目的あるいは許可要件等を御説明いただけますか。
  118. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 再入国制度外国人の再入国の利便を図る制度でございまして、数次再入国許可につきましては、商用目的等、頻繁に出入国する外国人に便宜を図るため、一度の許可で一年を超えない範囲において何回でも出入国できるものでございます。  現在、付与された在留資格にかかわる活動を行っていない等の場合を除いて、これも申請のほとんどは許可されております。
  119. 海野徹

    ○海野徹君 その辺でほとんどは許可されているということなんですが、許可されていない例もあるかと思うんですが、その辺のことを教えてください。
  120. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 入管法の二十六条六項では、引き続き当該許可、これは再入国許可ですね、を与えておくことが適当でないと認める場合に数次再入国許可を取り消すことができるとしております。  これは、既に数次再入国許可を受けた者が何回か出入国を繰り返しているうちに我が国の利益に反するような事態が生じた場合に取り消しできるようにしたものでございますが、最近はこの規定により数次再入国許可を取り消した事例はございません。
  121. 海野徹

    ○海野徹君 それでは、第二十六条第四項の再入国許可の延長について、その辺の背景を御説明していただけますか。
  122. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 再入国許可は、先ほど申しましたように、この許可さえとっておけば在留資格を失うことなしに外国へ行って戻ってこられる、こういう非常に外国人の利便を考えた制度ではありますけれども、今現在、この再入国許可の有効期間はどうなっているかといいますと、法律で一年以内に定められております。これですと便利は便利かもしれないけれども、もう少し長くしてくれないかという要請が各団体からございまして、今の時代にもう少しこれは長くしてしかるべきではないかということで今回の改正に及んだ次第でございます。
  123. 海野徹

    ○海野徹君 その辺が一年を三年にしたという理由なんですね。許可をされていない、要するに不許可ということがほとんどないということになれば、三年というよりも五年でも六年でも何年でもよかったんじゃないかと思うんですが、その辺はどうして三年というのにこだわったんですか。
  124. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 三年以内ということにいたしましたのは、それぞれの在留資格に合わせて在留期間というのがございますけれども、これは一番短いのは十五日、九十日から、あるいは一年、三年とあるわけでございますが、定期の期間がついております在留資格の中で一番長いのが三年でございます。それでこの三年にそろえたということでございます。
  125. 海野徹

    ○海野徹君 わかりました。  それでは、その在留期間三年そのものを延ばそうという議論はなかったんですね。
  126. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) この在留期間そのものを延ばすということは、今回の法改正に関してはございません。
  127. 海野徹

    ○海野徹君 いや、議論があったかなかったか。
  128. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 当然そういうようなことも議論はいたしました。  在留期間は今、先ほど言いましたように、一番短いのは十五日、九十日、短期の九十日から三年まであるわけですけれども、いろいろな最近の情勢を考えるともっと出入りを自由にしたらいいんじゃないか、三年をさらに延ばすということよりか、例えば一年のやつをもう少し長く延ばせないかとか、三カ月のやつを六カ月にできないかとか、その種の議論はいつもしているところでございます。
  129. 海野徹

    ○海野徹君 それでは次に入りますが、入管特例法の第十条第一項で、特別永住者に再入国を許可する場合には許可の日から四年を超えない範囲内においてその有効期間を定めて許可し、さらに再入国許可の有効期間内に再入国することができない相当の理由があると認めるときは、一年を超えず、かつ許可の日から五年を超えない範囲内で有効期間の延長をすることができる、こう定めていますが、一般の外国人に対しては一年と二年の制度特別永住者に対して四年と五年の制度と、これを区別しているんですが、この辺について説明してください。
  130. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 特別永住者は、日本国籍を有する者として戦前から引き続き本邦に在留し、平和条約発効によって自己の意思によることなく日本国籍を離脱したという歴史的経緯を有する方々でございます。日本国との平和条約に基づき日本国籍を離脱した者等出入国管理に関する特例法に定めております最大五年という期間は、このような歴史的経緯を有する点を重視して決められたものでございます。  したがいまして、このような歴史的経緯を有していない他の在留資格を有する方と再入国許可の有効期間について異なる取り扱いをすることにしたということでございます。
  131. 海野徹

    ○海野徹君 それで、一般の外国人について期間を延ばしたということになったら、特例法趣旨から考えて特別永住者方々はもっと延ばそうという議論はなかったんですか。
  132. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今回はその話はございませんでした。
  133. 海野徹

    ○海野徹君 それでは、大臣にお伺いします。  その議論は今回なかったということなんですが、歴史的ないろいろな経緯から考えて、ここの委員会等でも議論を聞いていますと、やはりこれはバランス上も期間を延ばすべきではないかと私は考えますがどうでしょうか。見解のほどをお聞かせください。
  134. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 既に五年という非常に長い期間を特別在留者、定住者には設けてあるというようなことでございまして、今のところそれで十分ではないかなというふうな判断をいたしております。それよりも、今まで一年未満であったものを必要に応じて三年まで延ばせたということ、これが実態上大変有効な措置であったのではないか、このように考えております。
  135. 海野徹

    ○海野徹君 それでは、その次に退去強制手続についての質問に入ります。  現行制度では、被退去強制者に対する上陸拒否期間を一年、この趣旨を説明してください。
  136. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 現行法におきましては、不法残留等の入管法違反を理由として退去強制された者については、退去を強制した後一定期間の上陸を禁止するのでなければ退去強制することに意味がないという考え方で一年間我が国への上陸を拒否するということにしたものでございます。
  137. 海野徹

    ○海野徹君 上陸拒否期間については永久に拒否しますという国もあると思うんですけれども、期間別に諸外国の例がおわかりになりましたらちょっと教えていただけますか。
  138. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 日本の場合にも、今一年と申しましたのは、退去強制手続によって退去強制された者に関しては現行法では上陸拒否期間が一年であるということでありまして、それ以外の状況のときにはもっと長くなります。例えば、日本法律、あるいは外国法律でも同じですが、により一年以上の自由刑に処せられた者は、たとえそれが執行猶予がつきましても、永久拒否と申しますか、基本的には日本に入ってこれない、こういうふうに日本のシステムでもなっております。  それから、外国の例でございますけれども、日本の置かれている地理的な状況、それからどういう地域から不法就労をしたいという人たちがやってくるかということを考えますと、やっぱりアジア太平洋の国との比較が一番意味があるのだろうと思います。そういう人たちを招きかねないような国、例えばアメリカとか韓国とか豪州とかニュージーランドというふうな国になると思いますけれども、例えば韓国は五年でございます。それからアメリカの場合には、不法にアメリカに滞在した期間が一年未満の場合にはたしか拒否期間が三年でございますけれども、これが一年以上不法に滞在した場合には拒否期間が十年になりますというようなことで、たしか豪州は三年、ニュージーランドは五年だったですか、かなりアジア太平洋の国は厳しい扱いになっているということでございます。
  139. 海野徹

    ○海野徹君 今回五年としていますよね。その理由を説明してください。
  140. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) ただいま申しましたように、日本に不法就労等で入ってきたいとする外国人は主にアジアから来るわけなんですが、そういう人たちが行く可能性のある候補地、そういうところとの関係で先ほど申しましたようなほかの国の事情を見ますと五年が適当ではないかというのが最大の理由でございます。  あと、これは正確な全貌を示す数字ではないわけですけれども、ある種のサンプリング調査をしましたところ、日本から退去強制されて再度入ってくる人たちの大部分が大体過去五年間に入ってきているということで、そこまで延ばすと少なくとも正規の手続で入ってくる人間に関しては対応できるんじゃないかということも考慮いたしました。
  141. 海野徹

    ○海野徹君 五年に改正されて延ばされているわけなんですが、非常に反社会性の強い者の拒否期間がそのまま一年、この辺はどういうことなんですか。
  142. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) これは入管法第五条第一項第九号前段というところの規定だろうと思います。  銃剣等あるいは麻薬の関係者、そういう者で前に上陸拒否にあった者が入ってきた際には一年間だめだということになっているわけですけれども、確かにその規定はございますけれども、この規定はどちらかといいますと念のためにつくった規定でございまして、普通は、日本にそういうものを持って入ってくる人間は私どものところあるいは税関で必ずそれが指摘されまして取り締まり当局の方に通報されます。それで、それ相応の刑に処せられます。普通であれば一年以上ということになりますので、その結果として一年以上の自由刑に処せられれば、これは先ほど言いましたように拒否期間が永久になりますので、永久に入ってこれないということになりまして、最近はそれ以外の例はほとんどないと思います。
  143. 海野徹

    ○海野徹君 それなりのチェック体制ができているということなんですね。わかりました。  それでは、もう一点最後に質問させていただきます。  こういう今から質問するようなたぐいの話が結構あちこちから聞こえるんですけれども、これは決して日本側からメッセージを送っているということじゃないと思うんですが、要するに日本のイメージが非常に問題視されるということでもあるものですから、ちょっとお聞かせいただけますか。  ある旅行会社が中国人の団体旅行、中国人の方々日本の国内に来て旅行する、その団体旅行を受け入れる。ただ、窓口となる中国担当者が言うには、日本に入国に当たっては多額の保証金を積みなさい、日本からまた中国に帰ってくればそれは返してあげるよ、日本政府からそういう指示があったと。しかも、窓口は極めて少数の旅行会社しかその窓口がない、日本の旅行会社の代理店がない、そういう話があるということを聞くんです。  いろいろ調べてみましたら、中国人の方々が集団で団体旅行に行く。これは日本だけじゃなくて、アメリカに行くかもしれません、あるいはオーストラリアに行くかもしれません。最近の例でも、団体で旅行に行って、中国へ帰ってきたのはその団体の中でごく一部だったと。その国内でどこかへ行っちゃったということがあるらしいんですよね。  そういうこともあって、いろいろ中国当局としても出国に関しても大変神経を使っているのかなと。と同時に、何らかの形でいろんな問題点、我々日本の国内にも問題点が、要するに反社会的なものがあるのかなということも考えられるんですが、そういうことはお聞きになったことはございませんですか。局長でいいです。
  144. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 委員御指摘のようなことについては承知しておりません。
  145. 海野徹

    ○海野徹君 これは単なる風聞で終わっていればいいんですが、ある意味では歴史認識を克服しながら日中関係をよくしていきたいという思いでそれぞれ努力しているわけなんですよ。そういう中で、こういうような誤ったメッセージとか誤ったうわさが流れていくということが特定の業界の中でもあるとしたら非常に問題ですから、その辺はアンテナを高くしていただけませんですかね、そのことを要望して終わりにします。
  146. 大森礼子

    大森礼子君 公明党の大森礼子です。  早速、質問させていただきます。  まず最初に、前回委員会のときに、円委員の方から、提案理由説明の中に人権を配慮しという言葉がございませんがと大臣に対して質問がございました。それを受けて、大臣が人権という言葉を今となっては入れたかったなというふうな趣旨のことをおっしゃったので、私が今からでも遅くございませんよ、加筆されるんでしたら私ども反対しませんよと申し上げました。大臣、検討してみますとおっしゃったのですが、結論は出ましたでしょうか。人権を配慮しの文言を提案理由の中に入れるかどうか、いかがでしょうか。
  147. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) もともと出入国管理行政において人権の配慮というのは欠かすことのできない基本的な要素であるということは先般来申し上げたところでございます。そして、衆参両議院の法務委員会での附帯決議においてもそのようなことが言われておりまして、それを私どもは重く受けとめて法務行政を進めておるところでございます。  そういうわけでございましたので、今委員御指摘のような点で配慮がもう少し行き届く必要があったんではないかなということは正直私も考えましたけれども、いろいろな検討はいたしましたけれども、なかなか難しい面もある。しかし、私の言わんとするところは、今委員が御指摘なさいましたような人権への配慮というのも本改正案提案の当然の前提であるということを改めて申し上げさせていただいて、ひとつ御理解を賜りたい、このように思うわけでございます。
  148. 大森礼子

    大森礼子君 人権を配慮しというのは、当然といえば当然と言われても、やはりこれは文字になるかどうかということが大きな違いであると思います。ただ、大臣がもうそれを当然の前提というふうにおっしゃいましたので、それは当然の前提となっていると暗に読み込んだ上で解釈させていただきます。  それから、まず最初に申し上げるべきことを先に言っておきたいんですが、参考人質疑を行いました。それで、関口千恵さんという女性の方に来ていただきました。この方は「在留特別許可」という本をお書きになった方です。御主人が不法残留中のバングラデシュ人でありまして、結婚される。その中で、退去強制手続の中で在留特別許可をかち取ったというお話なんです。  その中に、入管、事務所になるんでしょうか、要するにオフィスの方での職員の対応というものが書かれております。関口さんと実際にお会いしまして、普通の方でございました。ですから、特に虚偽の内容を書いているとは思わないわけです。そうしますと、いろいろ外国人が行かれる入管の窓口というものの対応、もし入管の方が人権に配慮をするんだというのであれば、その窓口の方がそういう人権感覚というものを身につけていなければならないし、またそれに裏打ちされた態度といいますか、言動、振る舞いというものが必要であろうと思います。  私たち日本人は余りなじみのない役所でございまして、実は私もその本を読むまでその現状というのがよくわかりませんでした。大臣、お読みになっていませんよね、ちょっと確認ですが。
  149. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 私なりに丁寧に読ませていただいたつもりでございます。
  150. 大森礼子

    大森礼子君 局長はいかがですか。
  151. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 端から端まできっちり読ませていただきました。
  152. 大森礼子

    大森礼子君 感想を聞こうかと思ったのですが、ちょっと時間の関係もございますので、あれも一つのやはり実際に体験された方の意見としてとても私は貴重な御意見だと思います。ぜひそういうものを人権教育とかそういうテキストにしていただくとかしていただきたい。そして、その窓口業務の改善というものを図っていただきたい、そのように思います。そうしませんと、幾ら人権人権と言葉でおっしゃられても、到底信用することができませんので、しっかりその点よろしくお願いいたします。  もう一つ、大臣にお尋ねいたします。  前回指紋押捺を拒否して再入国許可が得られず、協定永住資格を失ったケースとして崔善愛さんのことをお話しいたしました。そのときに大臣が、あのときは仕方がなかったにせよという趣旨だと思いますが、非常にお気の毒だと思うので救済措置等について検討していきたいという積極的な御答弁があったと思います。  私、そのことを崔さんにもお話ししたんですが、どうも言葉がいかようにもとりようがあって、余り大臣の答弁を疑っちゃいけないのかもしれませんけれども、積極的に理解してよろしいのかどうか、検討をしていただいていると考えてよろしいのでしょうか。
  153. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 前回までの議論は繰り返す必要がないかと思いますけれども、結論だけ申し上げますと、特別永住者としての地位を回復することは法律の規定によってこれはできないと思います。  しかし、出入国管理行政上、可能な限度で救済するための方策を今検討させておるところでございます。
  154. 大森礼子

    大森礼子君 私も法律というのは一応読みますからわかるのですが、多分一般永住ということをお考えなんだと思いますけれども、一般永住だと今だって申請すればできるんですよ、やろうと思ったらできるわけですよ。それがなぜできなかったかということなんです。  だから、救済という場合には、いやこんな方法がありますから御自由にどうぞと、これでは本当にこの指紋押捺問題について法務省回答を出したことになるんだろうかと私は思いますよ。あの時期に、もう非常にはっきり言って嫌がらせをしたわけですから、指紋押捺拒否した者を全部再入国不許可にして、非常に異常な時期がございました。これはおかしいわけですよ。どこかでそういう変なことをしたことをきれいにしなくちゃいけないと思います。  あのときに自由裁量によりまして再入国不許可としたのは法務省の大臣なわけなんですから、そして今法務大臣、人が違ったと申しましても、行政の継続性で同じ法務省の大臣でございますから、過去の大臣が過去において行ったものを、もう一度今の大臣がこれでよかったのか、これを検討するという余地があっていいと私は思うのですが、大臣、今なさった答弁でもう決まりですか、それともさらにもっとよい方法がないか検討する努力をするとお答えいただけるのか、いかがでしょうか。
  155. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 大変難しい問題だと思います。引き続き本邦に在留していなかったということで、法を適用するということが当然のあり方だと思います。そういう中で、それに準ずるような、かわるような何かがないだろうかということで前回は検討をしてみようということを申し上げたわけでございますので、その辺、私なりにできる限りのことをしたいと思ったところでございます。
  156. 大森礼子

    大森礼子君 できる限りのことをしたいということは、まだ検討していただけるということなんでしょうね。  というのは、一般永住でしたら、まさに裁量権でぽんと押したら済むわけで、それじゃちょっと大臣の誠意が伝わらないというふうに私は思います。  ともかく変な汚点を後に残さないために、私たちも一生懸命知恵を絞って、多分法務省の方がよく検討されると思いますけれども、必ず方法はあると思いますので、大臣、さらに努力をしていただきたい、これをお願いいたします。  それから同時に、崔さんのようなケースではございませんが、指紋押捺拒否をしたことによって在留の身分といいますか、そこら辺でもしかしたら不利益をこうむったままの方がいらっしゃるかもしれませんが、こういう方のことについてもあわせて御検討いただきたいというふうに私は思います。法律で仕方がなかったからというんですけれども、自由裁量でやっているわけですから、その責任は感じていただきたいと思います。  それから、言いたくありませんけれども、住専の処理のときだって、民間会社の救済のために税金を使ってなんという超法規的なとんでもないやり方をやったわけですから、いいことのためにやろうと思えばいろんな方法があると私は思います。  それでは、次の質問に行きます。  まず、入管法のことについてお尋ねいたします。  まず、罰則の新設がございます。不法在留罪です。この理由として、「不法入国者や不法上陸者が激増しており、その不法在留行為は、適正な出入国管理の実施を妨げているのみならず、我が国の社会、経済、治安等に悪影響を及ぼしております。」、こういうふうに説明されているわけです。  それで、今の法律が不法入国罪、不法上陸罪、不法残留罪を規定しながら、不法に入国した者が在留する行為を処罰しなかった理由というのは、これは一体何なのでしょうか、教えてください。
  157. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 恐らく昔は不法残留に比べて不法入国の人間は少なかったということが挙げられると思います。平成五年ぐらいが不法残留者が一番多くなったころなんですけれども、その後不法残留者はだんだん全体の数が減ってまいりました。それから、私どもが退去強制手続をとって本国に帰す人間のうち不法残留者の数は全体としてはどんどん減っていっている傾向にございます。  ところが、その中にありまして、不法入国者の数はむしろ確実に今ふえているということで、恐らく不法入国者がまだまだふえているのであろうということが推察できるわけでございます。  さらに、この退去強制手続をとった人間の数というのは、実際に不法入国あるいは正規に入ったのは数年前のことでございますから、最近の状況は、新聞、テレビ等で御承知のように集団密航の者がどんどんふえているという状況でございますので、これは、不法入国しそのまま不法に滞在する人間に対してやはり手当てをしなきゃいかぬということで今回の法改正を御提案した次第でございます。
  158. 大森礼子

    大森礼子君 今のですと、要するに必要性という意味では理解できるんです。ただ、私、刑罰理論というか刑法理論といったらいいんでしょうか、これはもう昔から大きな実は論点になっていたわけですね。不法残留というのは正規に入った人が在留期限を過ぎて残る場合ですね。それで、不法入国の場合には不法に入った人であって、そして時効期間が過ぎたらその後は処罰されなくなる、これはおかしいではないかということを、私は十年ぐらい前ですか検事になったとき疑問に思っておりました。  ところが、そのときに先輩から聞いた説明では、不法入国罪の中に既にその後ある一定の期間不法に滞在するという行為が含まれているから、既に不法入国罪の中で評価されているんだ、こう教えていただいたことがあるのですが、つまり、言ってみれば刑法上状態犯というんでしょうか、一たん違法状態が出たらその違法状態が続くけれども、それは既に評価されている。窃盗罪なんかそうですね。こういう理論的なことについては、そういう問題があったから今まで規定されなかったというのではないのでしょうか。
  159. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 少なくとも今の解釈では、委員がおっしゃったような解釈皆さんとっておりませんで、不法入国は、不法入国をどこの時点で始めてどこの時点で終わるかの問題がございますけれども、これは不法入国の時点の問題であって、三年たてば公訴時効が発生する、こういう解釈をとっているところでございます。
  160. 大森礼子

    大森礼子君 そうなんですけれども、確かに不都合な結果は生ずるんですけれども、その犯罪の性質からしてそういうふうな不都合が生ずるんだと私は理解しておったんです。  そうしますと、不法入国罪の成立時期と不法在留罪の成立時期、どこで成立するのか、これを教えてください。実行の着手です。
  161. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 不法上陸した直後の本邦における滞在行為は上陸行為に当然随伴するものですから、不法在留罪の在留に当たるものではなく、不法上陸後、社会通念に照らして、本邦における滞在が不法上陸とは別個独立の行為と認められるに至ったときに不法在留罪の在留が開始すると考えております。  具体的には、事案に応じて、上陸後の時間的経緯、場所的移動及び滞在の態様の変化等を総合的に考慮してその始期を判断することになろうかと思います。
  162. 大森礼子

    大森礼子君 私はそこがよくわからないんです。だから、具体的にどういう行為があったらなるのか。やっぱり構成要件というのは、そこから犯罪になるわけですから、一般人をしてこういう行為をしたらこの犯罪が成立しますよとちゃんとわかるものでなくてはいけませんね。  それで不法在留罪、例えば具体的にどんな行為をしたら、ここら辺からと大まかでもいいですから教えていただけませんか。
  163. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 例えば集団密航で日本の港、岸壁ですか、ここにやっとたどり着いて、これは一秒でも二秒でも滞在は滞在だからこれは滞在かということには恐らくならないと思います。これはやっぱり不法上陸の一部ということだろうと思います。  では、それが果たしてどこから不法在留になるかということですけれども、これは当然そのときそのときの状況によるわけで、一概には申せないわけですけれども、例えばですけれども、そういうことで到着しまして、それで実際に不法就労する場所が東京方面、しばしば最近はいろいろ日本海とかそういうかなり東京から離れたところでもって上陸するわけですけれども、そこで上陸して、それ自体はまだ不法在留が始まっていないと思いますけれども、実際に不法就労するところに向けて車に乗って動き出したということであれば、これは恐らくもう不法在留が始まっているということかなと思います。
  164. 大森礼子

    大森礼子君 そうしますと、それは計画的に受け入れ側があってという場合はよろしいですよ。不法就労する場所がなく、ともかく入ってどこかへ行ってとか、まだ決まっていない場合とか、よくわからないんですね。だから、不法在留の要素というんですか、例えば行き着く先の目的地点が決まっているとか、それから在留する何か裏づけができているとか、何かそういう要素を示していただかないと、いつから犯罪になるか。  では、別の聞き方をしましょうか。不法入国者がいます、入国しました、その罪の時効期間経過前にその者が摘発されたときに、不法入国罪とそれから不法在留罪、これは二罪が成立するんですか、それとも一罪だけなんですか、そこら辺はいかがですか。
  165. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) この罪数論の話は、専門家の間でもいろんな意見が分かれているところだと思いますけれども、不法入国または不法上陸した者が不法在留した場合、不法入国罪または不法上陸罪と不法在留罪の両方が成立する。ただ、具体的事案によってはこれを一罪と評価し得る場合もあろうかと考えます、ケース・バイ・ケースによりますけれども。
  166. 大森礼子

    大森礼子君 併合罪もあるんですか。
  167. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 併合罪ではございません。いわば評価上の一罪ということでございます。
  168. 大森礼子

    大森礼子君 科刑上、包括一罪ということですか。科刑上一罪の中には観念的競合とか牽連犯とかあるんでしょうか。それから包括一罪とか、そこら辺の検討ができていないんですか。  というのは、やっぱり科刑上一罪ということはそれぞれ犯罪が成立することですから、これは確かにどちらも三年以下だから実際的には科刑上一罪で結果は変わらないかもしれないけれども、二罪が成立して科刑上一罪か、それとも一罪なのか、これは重要な問題だと思うんです。  だから、実行着手主義というか、いつ成立するのかということをお聞きしたいんですけれども、もっと明快な答えはございませんか。
  169. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 申しわけありません。ちょっと訂正いたします。併合罪はないと申しましたけれども、可能性としては併合罪もあり得るということでございます。  ですから、もう一度言い直しますと、こういう場合には不法入国罪と不法在留罪の二罪が成立して、そのときの状況によって包括一罪と見られる場合もあるし、場合によっては併合罪とされる場合もあるということでございます。
  170. 大森礼子

    大森礼子君 併合罪でしたら刑法四十五条で、要するに科刑が加重されまして一・五倍になるわけです。すなわち四年六月になるんですかね。だから、その罪数関係はどうなるか。その前提として、どこでどの行為から不法在留罪が成立するのかということがわかりませんと、併合罪加重になりますと非常に過酷な結果になりますでしょう。行為者にとっては関心事ですよ、どこから成立するのかということが。  今の答弁だと、意図が見え見えじゃございませんか。時効完成後、捕まえることができぬのは問題だから捕まえるように新設して、ずっとこれは時効が完成しないわけでしょう、継続犯ですから。見つかったときにはいつでも警察が捕まえるようにしておこうという意図が何か見え見えなんですね。  説明できないんでしたらそれで結構ですけれども、もう少しきちっと説明できませんか、成立時期。
  171. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほど申しましたように、包括一罪と評価し得る場合としては、不法入国、不法上陸行為等、その後の不法在留行為が一連の意思もとに行われたと認められる場合が考えられますけれども、最終的には、具体的な事件が起こってそれに対する判断は裁判所が行うということかと思います。
  172. 大森礼子

    大森礼子君 一応、不法入国とか不法上陸というのは、その在留のとらえ方によるかもしれませんが、やっぱり日本の国土の上にしばらく滞在しようという意図で来るんだと思いますから、これを果たして別に評価していいのかどうか大いに問題だと私は思います。  それでもう一つ、不法入国をすれば、これは退去強制事由ですね。こちらの方は時効とかはないわけです。それで、不法入国者は時効期間三年を経過しましても退去強制はできるわけですね。局長、できますね。
  173. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 不法入国者でございますか。不法入国者は、三年たつと時効が成立しまして刑罰は問えないことになります。
  174. 大森礼子

    大森礼子君 刑罰はそうなんですけれども、その二十四条に退去強制と、これは時効完成前なんというのはありませんから、例えば五年目に見つかってもこの退去強制事由には当たるわけでしょう。それで退去強制できるわけでしょうという質問です。
  175. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 失礼しました。当然退去強制はできます。
  176. 大森礼子

    大森礼子君 そうなんですね。  それで、再入国拒否期間が一年から非常に過酷なことになるということを別の角度から説明しようと思うんです。  不法在留罪が新設になりますと、本来これまで不法入国罪だけであったのがこの時効完成後も警察による摘発の余地がありますね。もう時効が完成しないわけですから、ずっと摘発できます。そして、警察の方が摘発しますと、今度は入管法の五条一項四号の方ですね、上陸拒否事由というのは、「一年以上の懲役若しくは禁錮」とかの場合には、今度はこれは上陸拒否事由だから、ずっと再入国云々は関係ないことですよね。そうしますと、これは入管のルートか、あるいは警察によって裁判に乗るルートかによって全然結果が違ってくるというのは、私はもう昔から変な話だなと思っていたんです。  不法在留罪になりましたら、半永久的にもう幾らでも逮捕することができる。そして裁判にかけます、三年以下の懲役になるわけですから、これは裁判で一年以上の言い渡しを受けるということは十分可能だと思うんです。それで執行猶予がついてもいいわけでしょう、この条文ですと。そうしますと、こちらの方で入管法五条一項四号に該当する可能性が高くなりまして、ずっと上陸拒否できるという形になると思うんです。  それで、一つの刑罰法令をつくるという場合、その及ぼされる人というものは、新設されたから新たにこういう行為が処罰されるということだけでなくて、刑罰だけでなくて、実は日本におられる外国人の方というのは、何か刑事事件を起こしますと、自分がどういう刑罰を科されるのか、裁判でどういう結果が出るのかということももちろん関心事ですが、それなら初犯であれば執行猶予なんというのがあるわけです。怖いのは、退去強制にされるのではないかということの方に実は彼らは大きな関心を持っているんです。これは私が検察庁という現場でそういう事件を扱って、彼らの関心事は、その裁判の結果がどうなるか、それもありますけれども、特に奥さんなんかと住んでいた場合に、退去強制を受けるんじゃないかとそちらの方を非常に心配されるわけです。  そういう観点から見ますと、単に新たに一つ犯罪ができて刑罰が科されるというのみならず、再入国拒否期間は五年に延長する、こちらにも網をかける。そして、この不法在留罪の新設によって、見つかったときには幾らでもずっと警察に捕まる可能性がある。これだけでも強制退去事由ですし、また、その裁判の言い渡し刑によってはもう上陸拒否がずっと続く。これは非常に過酷な結果になると思うんです。  こういう厳しいやり方をとるのであるならば、逆にやっぱり人道的に配慮すべき場合もあると思うんですよ。滞在するということはそれだけ人間関係というものもできますし、そのときに何か例外的扱いというものを担保するような規定も必要ではないかと思うのですが、局長はいかがお考えですか。
  177. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今のような非常に人道上のケースの場合どうするかということかと思いますけれども、上陸拒否事由に該当する者であっても、入管法十二条で、その者に特別に上陸を許可すべき事情があると認める場合には特別に上陸を許可することができるとしており、委員御指摘の点を含め、その適切な運用に努めてまいりたいと思っております。
  178. 大森礼子

    大森礼子君 今、上陸特別許可、十二条とおっしゃいましたけれども、これは要件が「法務大臣は、前条第三項の裁決に当たつて、」、前条第三項というのは異議申し出をしたときでしょう。この「第一項の規定」というのは何の規定ですか、ここのところは。要するに、上陸拒否の認定を受けて異議申し出をした場合に該当する規定ではございませんか、非常に限定しているではありませんか。だから、だめですよ、そんな。  ほかにもまだあるでしょう。こんな場合、こういう制度を利用してくださったら不当な結論にはなりませんということを説明してくださいませんか。
  179. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) この上陸特別許可制度は当然あるわけでございまして、それを利用することは可能なわけでございます。
  180. 大森礼子

    大森礼子君 何か議論がかみ合いませんね。  そうしたら、被退去強制者の上陸拒否期間との関係です。いろんなケースがあると思います。不法入国して滞在して人間関係ができた場合、正規に入国して人間関係ができて結婚したりしてずるずると不法残留になっている場合とか、そういう中で婚姻しまして家族がいるのに外へ退去強制されちゃった、今度帰ってくるのに、前は一年だったのに今度は五年じゃないかと。  そうしたときに、この改正で一番問題になるのは、例えばいろんな形で日本に生活の基盤を事実上形成した方がいらっしゃると思います。こういう方について、この法律の規定どおり、強制退去事由に当たるから出てください、今度五年入れませんよという規定をする。こういうことによりますと、例えば国際人権規約に家族の保護規定というのがございます。第二十三条、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。」という規定もあるわけなんです。こういうものと抵触するのではないかと私は思うんです。  ですから、一方で入国管理のために不法入国者が多いからこういう規定を設けよう、これは一つの政策としてあるかもしれません。だけれども、一方でこういう家族関係、不法在留者だって不法入国者だってやっぱり恋愛する権利はございますし、それはだれもとめることはできないわけでありまして、そうなったときに余りに過酷な取り扱いをしますとやっぱり人道上問題があると思うんです。だから、個々の具体的なケースによって、ちゃんと例外規定といいますか、原則は厳しいけれどもこういう例外的な扱いもありますよと、これを備えなければ、この人権規約にも抵触するおそれがあるのではないかと思うんです。  そこで局長、一方で厳しくするのは結構です。しかし、人道的に引き離すべきでないとか、こうして出てきた場合にどういう扱いができますか。
  181. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今回の改正案においては、深刻化する不法滞在外国人問題について的確に対処するため、本邦から退去強制された者が本邦に上陸することのできない期間を五年に伸長しようとするものでありますけれども、退去強制された者の日本人配偶者等我が国に居住する場合で人道上の見地等から特別に我が国への上陸を許可すべき事情があるときなどは、上陸特別許可制度で従来どおり適正に対応することは変わりなく、委員御指摘の国際規約に抵触するおそれはないものと考えております。
  182. 大森礼子

    大森礼子君 ちょっと答弁がよくわからないんです。  例えば、一たん退去強制された、そしてこれまで一年だったわけですけれども、それでももっと早く入りたいという場合には在留資格認定証明という制度がございましたね。だから、例えばこういう制度もございますという答弁をしていただけるといいんですよ。これは広く認めると言ったら語弊があるのかもしれませんけれども、やっぱり柔軟な運用をしてそういう不都合がないように努力いたしますとか、本当はこういう答えが欲しいんです。  では、在留資格認定証明書、これまで上陸拒否期間が一年であった場合でもどのくらい交付件数があるのかという気がするんです。最近三年間ぐらいで結構です。在留資格認定証明書の交付件数はどのくらいございますか。
  183. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 在留資格認定証明書の交付件数自体はたくさんあるんですけれども、委員の御関心の入管法第五条の上陸拒否事由該当者に対する在留資格認定証明書の交付数ということで申し上げますと、平成八年が二十四名、平成九年が四十二名、平成十年が五十三名ということになっております。
  184. 大森礼子

    大森礼子君 それで、本当は申請数もお聞きしなければいけないんですけれども、これはちょっと通告していなかったのですが、これは申請した人の何%ぐらいに当たるんですか。大体で結構ですが、わかりませんか。わからなかったらまた次に聞きますからいいです。
  185. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) これは申請したうちの九割以上がこういう交付を認められているということでございます。
  186. 大森礼子

    大森礼子君 申請すると大体九割以上が認められていると。もちろん理由にもよりますけれども、正当な理由があればほとんど認められると考えてよろしいわけですね。  では、在留特別許可というのがございますね。こっちの方は大体このぐらい申請したらこのぐらい認められているとか、もちろんちゃんとした理由がある場合ですよ、どのくらいなのでしょうか。数字わかりますか、大体で結構ですが。
  187. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 在留特別許可許可件数でございますが、これは上陸特別許可より非常に数字が多うございまして、平成八年で一千五百十一件、平成九年で一千四百三十一件、それから去年はさらにふえまして二千四百九十七件でございます。  そのうち、委員が御関心のあります家族関係といいますか、それについて若干御説明しますと、まず日本人の配偶者等に関するものでございますが、平成八年が千七百十三件、先ほどの──済みません。日本人の配偶者等の内訳の数字はちょっと確認する必要がございますので、先ほどでもってとめさせていただきます。
  188. 大森礼子

    大森礼子君 また数字をきちっとお尋ねしたいと思います。  要するに、在留資格認定証明とか在留特別許可とか上陸特別許可、しかしこれは極めて適用される場面が限られているわけですね。在留特別許可は退去強制手続に入ってからのこととか。ですから、一方でこういう厳しい態度で臨むのであれば、やはり救済規定、例外規定といいますか、こういうものをきちっと私は担保すべきであると思います。ちょっと時間がないのできょうはこれ以上入りません。  それから、よく質問を受けるんですが、外国人の方でも確かに不法残留される方もおられます。それで、裁判を受けることとの関係なんですけれども、労働災害とか賃金未払い、それから離婚等で外国人が裁判をするケースもふえるわけですね。一方で退去強制事由もあるということで、このことによって裁判を受ける権利が阻害されているというふうな状況はないのかどうか。
  189. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 法律上は、退去強制令書が発付された者については、入管法第五十二条第三項の規定に従いまして速やかに送還するということになっております。  委員お尋ねのような民事訴訟を提起している場合については、訴訟代理人によって訴訟を遂行する可能性を考慮して、裁判を受ける権利を阻害することのないように留意しつつ送還を実施しております。
  190. 大森礼子

    大森礼子君 訴訟代理人とおっしゃったんですが、訴訟代理人がいるから本人が強制送還になってもいいんじゃないか、こういう考え方なんですか。
  191. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほどの答弁のとおりでございます。
  192. 大森礼子

    大森礼子君 それで、結局代理人が見つからなかったらやめざるを得ないということになるわけでしょう。ちょっとそこは問題があると思います。  いっぱい細かいところはあるんですが、それから一つ、在留資格認定証明書の交付を受けたのであれば在外公館でビザの発給を受けるのが当然ということになりますね。ところが、受けられなかった例があるとか、こういう話は聞いておられませんか。
  193. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) そういう例は聞いております。  在留資格認定証明書は日本では我々が、我々というか入管職員が審査するわけで、当事者の外国人自体は外国にいるわけですから、これはいわばある種の書類審査でございます。ですから、それを見てこれは適正だということで在留資格認定証明書を発給しまして、本人のところに送ります。本人はそれを持って在外公館に行ってビザを請求するということになるわけですが、そこで初めて在外公館で本人と直接会うということになるわけです。  その過程で、我々が東京でやっていたことで知り得なかったこと、例えば在留資格認定証明書にかかわる書類が虚偽のものであったとか、本人が入れかわったとか、その種のことが生じたということで、ビザの発給についてこれは一体どうしましょうかということで外務省本省経由で我々に問い合わせしてくる場合もありますし、あるいはこうこうこういう事情でこれについては発給を拒否しました、こういうことを言ってくる例もございます。
  194. 大森礼子

    大森礼子君 そうすると、証明書は有効なままそういうことをされてきたということですか。
  195. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) そういうことでございます。
  196. 大森礼子

    大森礼子君 それは同じ国の態度としておかしいんじゃございませんか。そういう事由があるのであれば、その認定証明書を取り消すとかきちっとした手続をやらないと、いいと思っていたら今度はビザの方が出なかったとか、非常にちぐはぐじゃございませんか。そこらの連携をもっときちっとすべきだと思います。これはまたいつか質問をさせていただきます。そんな扱いがあるなんて、私はびっくりしました。  それから、再入国許可制度についてお尋ねします。  いっぱい質問を用意してきたんですが、時間の関係で詳しくできないんですが、再入国許可制度というのが何のためにあるのかということが私はよくわからないんです。特に私は特別永住の方というふうに限定させていただきます。これは一般永住の方と差別するわけではないんですが、こうした方が話がわかりやすいので。特別永住の方に対して再入国許可制度を課す合理性というのは一体何なんでしょうか。簡潔に教えてください。
  197. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 再入国許可制度は、我が国に在留している外国人が一たん出国する場合には本来在留資格を失い、再び入国するに当たり改めて上陸手続をとらなければならないというところを、再度我が国に入国しようとするとき、その上陸手続を簡略化するとともに、再入国した後は従前の在留資格及び在留期間等を継続させるものであります。  したがって、永住者または特別永住者につきましてもその事情に変わりはなく、再入国後、その法的地位のまま入国し、引き続き在留できるという効果があることから、この制度は必要かつ合理的なものであると考えております。  なお、この制度は最高裁の判決でも是認されているところでございます。
  198. 大森礼子

    大森礼子君 三権分立、国会ですので。  それで、入管法二十六条の規定がよくわからないんです。今お読みになったんでしょうか。特別永住の方については、「その在留期間(在留期間の定めのない者にあつては、本邦に在留し得る期間)」、こういう規定があるわけですが、特別永住の方については、在留期間とか満了の日、これはどういう形になるんでしょうか。
  199. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) この二十六条は再入国許可に関する一般法でございまして、ここに書いてあるとおりなんですが、特別永住者等につきましては例の特例法に規定がございまして、例外規定として一年を四年にするということになっております。ここでは一年ということになっておりますけれども、特別永住者については四年ということになっております。
  200. 大森礼子

    大森礼子君 おかしいでしょう。改正でその期間が延びたという話でしょう。今質問しているのは、二十六条でこの要件が特別永住の人にどう当てはまるのかということを知りたいんです。「本邦に在留する外国人」、この中に特別永住の方も含めるというわけでしょう。「その在留期間」とあるんです。「在留期間の定めのない者にあつては、本邦に在留し得る期間」、この満了の日以前にというんですから、在留期間が基準になっています。特別永住の方についてはこの在留期間というのはどう考えればよろしいのですかという質問です。
  201. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 在留できる期間は初めから最後までということでございます。
  202. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 入管局長、もう一回答弁してください。
  203. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 特別永住の地位にいる期間ということでございます。
  204. 大森礼子

    大森礼子君 特別永住の地位にいる期間、これはあってないようなものでしょう、ずっと日本にいられるわけですから。  それで、「本邦に再び入国する意図をもつて出国しようとするときは、」というんですけれども、永住者、特に戦後生まれの方も育っておられます。日本人とどこも変わりません。生活の本拠は日本です。こういう特別永住者がほとんどなわけでしょう。「本邦に再び入国する意図をもつて出国しようとするとき」、特別永住の方についてはほとんどの場合じゃございませんか。局長、いかがですか。
  205. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) ほとんどといえばほとんどでございますけれども、反対に、再び日本に戻る意図を持たずに出国されるという方もおられるということでございます。再び日本に戻ることを考えずに本人の意思日本を単純出国するという方もおられるということでございます。
  206. 大森礼子

    大森礼子君 それはおられるでしょう。世の中はみんな画一的に行動するとは限りませんから、まさにそれこそ自由の問題です。ほとんどの場合はまた本邦に帰ってこられるわけでしょうというんです。  それで、先ほど海野先生が再入国制度のことについて、五十万件申請があって、不許可は数十件ですと。それで何をチェックするんですかと言ったら、付与された在留の活動を行っているかどうかチェックする。これは一般外国人だったらよろしいですよ、特別永住者の方なんかこれは当てはまりませんでしょう。  それから、在留資格の更新、変更をあわせてする場合に、更新が不許可になって、その結果として再入国不許可となる、その中に数次旅券が含まれていると。そうしたら、ほとんど許可になるのであれば、せめて特別永住の方はこういう厄介な手続から解放してあげたらいかがですか。それでも、いや特別永住の人は絶対この再入国許可が要るんだという積極的な理由づけがあったら教えてください。後で大臣にも聞きます。
  207. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 特別永住者といえども外国人でございまして、外国人の場合には本来的に日本人と違いまして、当然に日本に在留したり住んだり日本に帰国できるということがないわけですから、やはり再入国許可制度を維持する必要があろうかと思います。
  208. 大森礼子

    大森礼子君 局長、御自分で全然理由づけができていないということをしゃべっていておわかりになるでしょう。あなた方は本当に言葉を使い分けるんだ。あるときには特別永住はみんな外国人、そして外国人というのは我が国許可をして初めて在留できるんだという言い方をするんです。でも、私はこういう問題を考えるときには、一般永住の方、特別永住の方、そして一般外国人と分けて考えなければいけないと私は思うんです。  外国人許可されて初めて日本にいられるという答弁を局長されるんでしたら、これまでの特別永住が認められるまでの経過というものを局長は御理解していないことになるんじゃございませんか。自由裁量じゃございませんでしょう。覊束裁量でしょう。条件を見たら全部永住権を与えなきゃいけない、そういう態度を日本がとったわけでしょう。それでもまだ許可がないと外国人日本にいられないからといって、国家主権に服するんだみたいな説明をなさるんですか。
  209. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) その覊束裁量の分は、特別永住者になりたいという申請をしたときにはこういう一定の条件がある人間に対しては覊束的に許可をしなければいけないということでございまして、この再入国許可自体とは特別の関係がないわけでございます。  先ほど私が申しましたように、特別永住者の場合にも年間に数十名の単位で単純出国しております。そういう方たちに対して、特別永住者の方が再び日本に入国しようとする意思があるのかないのかという確認にもなっております。  それから、さらに言いますと、特別永住者の一部の方の中には旅券自体をお持ちでない方がおられます。そういう方たちの場合には再入国許可書が事実上の旅券となって、これでもって世界を旅行しているということでございます。
  210. 大森礼子

    大森礼子君 また日本に帰ってくるかどうか、これを確認する必要があるというんですけれども、ほとんどの人は帰ってくるわけでしょう。戦後生まれの人なんかみんな一緒に日本人と同じように暮らしているわけですから。だったら、帰ってこない人だけ特別に申請するようにしたらいいんじゃありませんか。  それで、規約人権委員会の第四回の勧告に特に、お読みになりましたでしょう、「日本で出生した韓国朝鮮出身の人々のような永住者に関して、」、ここでは永住者について「日本で出生した韓国朝鮮出身の人々のような」という限定がついております。「出国前に再入国の許可を得る必要性をその法律から除去することを強く要請する。」、こういう勧告が出ているんです。出ているということはやっぱり理由があるから出ているわけです。ところが、今お話ししてみると、何か必要性があるからとわけのわからない答弁なんです。こんなことでこの二法案の審議が終わっていいんでしょうか。  では、大臣に聞きます。この特別永住者に関して、特にこの再入国許可制度においてどういう目的を達しようとしておられるんですか。
  211. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 今、局長がるる御説明申し上げました、また最高裁判所の判例等でもこの妥当性は認めていただいているわけでございますが、永住者、特に特別永住者について、歴史的経緯は踏まえつつも、今申し上げましたような総合的な判断に基づいてこの再入国許可制度は維持されるべきものだと考えております。
  212. 大森礼子

    大森礼子君 それは全然理由になっていないじゃないですか。  それから、確かに昔は指紋押捺を拒否した人に再入国を許可しないというはっきり言って嫌がらせがありました。墓参りも行けなかった。フランスの神父さんですか、家族の葬儀も出られなかった。もうこの時代は終わったんだろうと私は考えたいわけです。  そうしますと、先ほど言ったように、ほとんど許可が出る状態であれば特に特別永住の方にわざわざこんな再入国許可をとらせるような必要はないんじゃありませんか。それで、パスポートにもちゃんと資格が書いてあるわけでしょう。それを見せたらすっと通していいと思うんですけれども、その方がよっぽど事務の簡略化にもなるし、面倒くさくないし、そんなに人手もとらなくて済むし、よっぽどよろしいんじゃございませんか。大臣、いかがお考えですか。
  213. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) そういうお考えもあろうかと思いますが、繰り返しになりますけれども、私どもは、出入国管理法に基づいてこの再入国許可制度というのは維持されなければならない、このように考えております。
  214. 大森礼子

    大森礼子君 きょう質問がいっぱいあるんです。これはやっぱり答弁のスピードにもよるんですけれども、もう次の質問に行きます。  外国人登録証の常時携帯義務については前回委員会でもいろいろやりとりがございました。それで、常時携帯義務、私は特別永住者の方についてはもう廃止すべきだろう、こういうふうな考え方を持っているんですが、実際提示を求める現場で活動される方にお尋ねしたいと思うんです。特別永住者の方についてこの常時携帯義務を外してもらったらもう絶対に困るという理由を教えていただきたいんです。入管の方それから警察の方にお尋ねしたいと思います。
  215. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 法務省の主管でございますけれども、警察の実務の立場からという御質問でございますので申し上げますけれども、この外国人登録証明書の携帯義務というのは、当該外国人の身分関係、居住関係を現場で即時的に確認するために必要なものだというふうに判断されていると理解しておるわけでありまして、警察官の職務執行に際しまして、現場において外国人の身分関係、居住関係を確認する必要が生じるというようなことがございますから、外国人登録証携帯の義務が極めて重要だというふうに思っておるんです。  そこで、特別永住者という人たちとの関係で申し上げますならば、北朝鮮工作員による潜入・脱出事案というのがこれまでも発生しております。こうした事案に対応する上で外国人登録証明書の携帯義務が確保されることが必要だというふうに思っておりまして、現にこれまでも男鹿脇本事件だとか日向事件あるいは磯の松島事件、宇出津事件といった近年検挙をした四つの事件でいずれも外国人登録証明書の不携帯あるいは提示拒否で検挙しておる、そして北朝鮮工作員による工作活動を解明したというようなことがございます。特に今申し上げた四つの事例の中の宇出津事件では、北朝鮮による日本人拉致事案の一端が明らかにされているというようなことから、警察としましては、国民の生命、身体の保護の観点からも重要なものだというふうに考えております。
  216. 大森礼子

    大森礼子君 職務執行上の必要が生ずるということなんですが、だからまさに具体的にどんな現場でどんな場面でということを私は知りたいわけなんです、言葉ではいろいろ言えますから。  それから、検挙件数でも実際に下がっているわけです。何回も繰り返しますが、摘発数も過去三年間は年二十件以下です。それから、ここ数年、起訴は一件もされておりません。それから、北朝鮮のスパイのことですが、これは今おっしゃいました四件、多分ここなんでしょう、本音は。そうだとすると、向こうがスパイとか送り込んでくる可能性があるから、この常時携帯義務というのはいつまでたっても解放されないということになりますか。
  217. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 要するに、私ども現場の立場からすれば、この常時携帯義務というものがあることによってこういう北朝鮮工作員諜報事件というものが解明できておるというようなことを申し上げておるわけです。
  218. 大森礼子

    大森礼子君 これによって解明できた事件もあるということですね。それが四件ということでございました。  それで、例えば一方で運用のあり方とか、これはもう附帯決議もありましたし、規約人権委員会の勧告などもいろんな問題を提起されておりますので、例えば警察でも現場でどういうふうな場合に提示を求めていいかとか、こういうやっぱり指導がなされているのではないかと思うのですが、何かそういう通達とか指導とかマニュアルとかそういうことで徹底しておられますか。
  219. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 今御質問ありましたのは、要するに取り締まりの現場における基準みたいなものということになるのかというふうに思っておりますけれども、これは昭和六十二年と平成四年の二度の衆参両院の附帯決議、この趣旨を踏まえまして、常時携帯義務、提示義務等に関する規定の運用に当たりましては、場所的、時間的な条件、あるいは被疑者の年齢、境遇、さらには違反態様等々総合的に判断しまして、それぞれ個々の事案ごとに可能な限り常識的かつ柔軟な対処に努めるよう一線を指導しているというようなことでございます。
  220. 大森礼子

    大森礼子君 多分さっきの四件が摘発できたというのも、何かもう手当たり次第に聞いていって、たまたま変な人がいて、持っていない人がいて調べたらスパイだったと、こういうのではなくて、やはり当たりをつけるといいますか、ちゃんと調べていって、引っ張るというのは変ですけれども、この手段として使ったのではないかという気もしますが、それはこれ以上議論しません。もう時間がなくなりました。  最後に、きょう、どうしてもお聞きしようと思ったんですけれども、私たちは、特別永住の方については常時携帯義務というのは廃止すべきだ、また廃止する方向で行くべきだと考えております。そうすると罰則の問題は起きないんですけれども、一応規約人権委員会の勧告も出ておりますから並列した形で議論することになります。  それで、過去の附帯決議におきまして、やはり他の法令との罰則の均衡性とかも考えていく、検討していくというのがあるんです。今回それを検討されていないように思うんですが、大臣、検討したけれどもやっぱりこのままでいいという結論なのか。もう時間がないから質問、先に行きます。最後に答えてください。  それから、ほかの法律との関係、例えば免許証の携帯義務とか、もう全然違うわけです。それで、免許証の場合には、携帯義務違反は二万円以下の罰金、提示義務違反は五万円以下の罰金。どんな場合に提示を求めることができるかといいましたら、道路交通法六十七条一項は何を規定しているかというと、多分車両等の運転者が無免許運転とか酒気帯び運転とか過労運転とか、それから大型自動車を運転できないのに運転しているとか、こういう違反した形で運転していると認めるときには提示させることができるというんです。それで、こういうケースというのは非常に大きな事故につながりやすいような極めて危険な行為なわけです。それであっても罰則というのはこの程度であるということ。  それから、住民基本台帳法との関係でも全然違います。それから、戸籍法では虚偽の届け出をした場合には一年以下の懲役と、懲役がございます。住民基本台帳法でも、記載事項の調査に当たって吏員の質問に対し虚偽の陳述をした場合は五万円、これは罰金です。台帳原票でしょうか、記録の正確性担保のためであればある程度罰則もやむを得ないのかなという気がするんですけれども、それとは関係ないところで、何で常時携帯義務の違反について刑罰を科す必要があるのでしょうか。そして、同じ刑罰にしても、ほかの携帯義務違反、提示義務違反などと比べて非常にこれは過酷な形になっております。  大臣、この点について、刑罰はこのままでよいとお考えなのかどうかお答えいただきたい。もう時間がないので、この質問を最後にいたします。
  221. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 今お話しの件でございますが、この問題につきましては検討の過程で検討してみたわけでございますけれども、昭和五十七年の法改正におきまして外国人登録法の罰則全体の見直しを行ったわけでございますので、現時点ではさらなる見直しを行う必要はない、このような結論に達したわけでございます。
  222. 大森礼子

    大森礼子君 終わります。
  223. 橋本敦

    ○橋本敦君 最初に、私は大臣にお伺いをしたいと思うんですが、法務委員会の要請、つまり国会の要請でこの法務委員会に崔さんに参考人としてお越しいただきまして、私たちも大変感銘をする陳述をしていただきました。  その崔さんがこうおっしゃっています。「私も、きょうここでこのような正直な意見を述べることで、三年の在留期間が理由を明らかにされることなく一年に短縮されるのではないかという恐怖を持ちながら臨んでいます。これらの恐怖は在日すべての人が日常の中で感じているものです。」。私は、今までの在日韓国人皆さんその他に対する管理行政の実態を見て、こういうお考えはまさに共通する問題だと思うんです。  しかし、国会が参考人として招致をしたその方が自分の体験を自分自身の見解を含めて自由に述べられるのは当然のことでありまして、そのことによって法務行政の側が何らかの不利益な扱いをするということは絶対にあってはならないし、またないはずだと私は思うわけです。    〔委員長退席、理事円より子君着席〕  そこで、間違いがないと思いますが、この点について法務大臣に御見解をまず承っておきたいと思います。
  224. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 委員のお考えのとおり、私も考えております。
  225. 橋本敦

    ○橋本敦君 具体的に法案について質問に入っていきます。  まず、不法滞在罪の新設の問題ですが、現行法の不法入国罪あるいは不法上陸罪と相まってこれを今回新設するという立法趣旨は果たして何かということについて、これまでの議事録その他から調べますと、我が国への不法入国を防止する効果があると考えておりますという答弁があります。果たしてそうだろうか、こういうわけです。  また一面、百十六国会の衆議院法務委員会の会議録によりますと、当時の股野入管局長は、不法就労外国人に対する法務省の基本的な考え方を問われまして、「不法就労の外国人というものは、これは我が国及び我が国の近隣の諸国との経済格差あるいはこれらの諸国における経済事情等を原因として日本に来ておる」者でありますと、こう答弁されている。確かに実態はそうです。そうだとしますと、この不法在留罪の新設によって、こういう実態が背景にあるときに、果たして不法入国を防止する効果があると考えるのは、これは実態に即さない余りにも単純な考え方じゃないかと思うんです。  当委員会参考人として来られた関口千恵さんも、あの人のこれまでの体験からしてですよ、はっきり一言で申し上げますと、抑止効果は全くないと思いますと。つまり、今私が指摘したような現状が彼らにとっては変わっているのではないのですから、こうおっしゃっているんです。私は、確かにそういう考え方が妥当する合理的背景はあると思うんです。  だから、そういう意味で抑止効果があるというのは単純に言えないと私は思いますが、大臣、いかがですか。
  226. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 今回新設する不法在留罪、これは新たに不法入国者や不法上陸者による不法在留行為を処罰しようとするものであります。現行法上の不法入国罪、不法上陸罪と相まちまして、我が国への不法入国及び不法上陸を防止する効果があると考えておるところでございます。
  227. 橋本敦

    ○橋本敦君 結論だけ変わらない結論をおっしゃったので、私が指摘したことに対して合理的な反論はないですね。私は説得性に乏しい答弁だと思います。  さらに進みますが、こういう不法在留罪の新設は一体何を具体的にもたらすかということであります。  現行の不法入国罪や不法上陸罪は公訴時効で三年ということになりますが、これが新設されますと、事実上、公訴時効の適用を受けられなくなるということになるわけです。これはもう言うまでもありません。公訴時効というのは一体何のために設けられているのかということをもう一遍考えてもらいたいんです。  公訴時効の存在理由は、まず第一に、時間の経過によって刑罰を加える必要性が減少または消滅するという実体的な理由。あるいは長年の経過で証拠が散逸して、そのために適正な裁判の実現が困難になるという訴訟手続上の問題がある。三つ目には、犯人としていつまでも不安定な状態に置くべきではないという人権と法的安定性の要請もある。そういったことが立法政策上言われているのはもう学会の定説ですから、否定なさることはないと思うんです。  今回の不法在留罪の新設というのは、このような近代刑法が確立してきた基本原則の一つを事実上無効ならしめる、つまり時効制度を根本から覆してしまう、そういう大きな問題を含んでいる、重大な問題を含んでいる、そういう認識は法務省にありますか。
  228. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今回の不法在留罪の新設の理由でございますけれども、片方におきまして不法残留罪というのが今現在ございます。    〔理事円より子君退席、委員長着席〕  この対象になる方々というのは、日本に適法に入って半年なり一年なり三年なりいて、その後、引き続き在留資格の更新をすることなしに在留した人は不法残留罪ということになるわけでございますけれども、不法残留罪は、これは一たんそういうことになりますと、ずっと日本にいる限り理論的には対象になります。一方におきまして、今現在の法律によりますと、不法に入国した人が三年たつとこれは刑罰の対象にならないということは、適法に入国して結果として不法残留になった人との関係で明らかに均衡を逸しておるということが一つでございます。  もう一つは、そういうこともあって、先ほど数字をちょっと申しましたけれども、この数年来、不法入国者がふえ続けているという現状がございまして、それに対応して今回の法改正を提案するに至ったということでございます。
  229. 橋本敦

    ○橋本敦君 今のバランス論というのは、私は合理的な理由にならぬと思います。  といいますのは、オーバーステイというのは正当に滞在する権利もともとあったわけですからね。その人がオーバーステイしたというそのことから、具体的に不法残留罪ということが出てくるわけでしょう。本件の場合は、まさに行為の端緒が不法入国であり不法上陸であるという、そのこと自体が違法行為として既に刑法上犯罪の構成要件として明確になっているわけです。そういう犯罪の構成要件が明確になっているその犯罪が、三年で時効になり時効制度適用を受けるということなのに、事実上この時効制度を無にしてしまうということになるじゃないですか。だから、今あなたがおっしゃった不法残留罪の場合と基本的に違うんですよ。だから、このケースについては公訴時効制度を無にしてしまうことに実体的になるということについて、人権上の問題として法務省はどれだけ深く検討したのかと聞いているんですが、それは答弁がないです。  しかも、第二番目の問題として、人権上さらに問題なのは、大森委員も指摘されたので私は詳しく聞きませんが、聞く予定にしていたんですが、構成要件上の不明確性が甚だしいんです。いつの時点から不法在留罪になるかというと、あなたの先ほどの説明では、それは個々別個の判断が必要ですと。不法上陸して、それからどこかのところへ滞在する目的で出発を始めたらそれは不法滞在が始まる、犯罪の始期だと、こういう感じでおっしゃいました。ところが、それならじっとそこに三日も四日もいたらそれはどうかというと、不法在留罪にはならない、こう言うわけでしょう。じゃ、どこかへ向かうといったって当てもなく向かうのか、明確に向かった場合がそうなのか、それが判然としない。  結局、あなたが最後にどう言うかというと、個別具体的な状況で一概に言えません、最後は裁判所が判断するんですと。それは裁判所は判断しますよ。判断するけれども、捜査をして立件するのはどうするんですか。いい加減なことでやったら、それこそ人権侵害でしょう。だから、そういう構成要件の不明確性というのはぬぐいがたいわけですよ。  そして、もう一つ人権上の問題として私が指摘したいのは、こういうような犯罪を新設するについて、今実際に不法入国をして不法に滞在していると見られる二十七万なりあるいは三十万近くいると法務省が言っている人たちの中で、現に犯罪が増加しているかどうかということについて具体的に調べた資料はありますか。
  230. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 警察等から聞いておる数字によれば、どこの時点でふえたかということにもよりますけれども、必ずしも去年がおととしに比べてふえたというようなことには私が見た数字ではなっておりませんけれども、長いスパンで見ると明らかにふえているということかと思います。
  231. 橋本敦

    ○橋本敦君 そんな頼りない話をされては困るよ。  要するに、在日外国人の犯罪件数がどうなっているかという資料は警察白書であります。しかし、不法に入国、上陸して不法在留と見られている人たち、あるいはオーバーステイと見られている人たち合わせて二十七万人ぐらいいるというんですが、最近の在日外国人の犯罪ケースについて、そういう不法に入国あるいは不法に上陸した人の犯罪件数が著しく増加しているというような資料はないでしょう。要求したって、ないと言ったんです。どうですか。
  232. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) ごく最近だけをとってみますと、そういう数字が非常にふえているということには必ずしもなっていないと思います。
  233. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから、立法趣旨自体が具体的根拠を欠いているんですよ。だから、この新設について、治安上必要だということを法務大臣趣旨説明で立法趣旨とおっしゃいましたが、治安上必要だと言うけれども、具体的な調査も具体的な事実も摘示されていないんです。そういう状況でこういうようなことをやるということに、一体必要性がどこにあるかということを私は改めて問わざるを得ないんです。  それからもう一つ問題を言いますと、今、不法上陸、不法入国しても日本に長くいる段階で社会的にそれなりの生活をするという状況になって、そして現に働いている人たちがたくさんいるわけです。そういう人たち日本の方と結婚するというような関係を結ぶことももちろんあります。そうなった場合に、在留特別許可の申請をするということが私はあり得ると思うんですが、どうですか。
  234. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) その前に先ほどの数字を言ってよろしいですか。  警察庁の統計によれば、不法在留者による犯罪の検挙人員につきましては次のとおりでございます。平成八年、九年それから平成十年上半期とございます。刑法犯の検挙人員それから特別法犯の検挙人員と分かれておりますが、平成八年が刑法犯の検挙人員が二百三十五人、特別法犯の検挙人員が六百九十八人、平成九年が刑法犯の検挙人員が二百九十六人、それから特別法犯の検挙人員が千七百八十六名、平成十年上半期でございますが、刑法犯の検挙人員が百四十七人、それから特別法犯の場合が八百六十七人という数字でございます。
  235. 橋本敦

    ○橋本敦君 やっと数字が出ましたが、私が指摘したいのは、実際に不法在留と見られている、二十七万人いるという皆さんから見るとごくわずかだ。大部分の人たちは不法残留だけれども犯罪に走ることなく何とか暮らしていらっしゃる、生活を守っていらっしゃるというのが圧倒的多数だ。今言われた数字はごくわずかですよ、圧倒的な二十七万から見ると。だから、それだけの理由でこの新設罪ということは具体的合理性がないと私は思います。答弁をいただいたから言っておきます。  先ほど私が聞いたのはどうですか。
  236. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) もう一度お願いします。
  237. 橋本敦

    ○橋本敦君 では、もう一遍聞きます。  日本に不法在留と言われている中でも多年暮らしてきて、日本人皆さんと結婚をしたり、あるいはいろんな生活関係日本に定住に近い形が客観的に出てきて、そして日本に引き続き在留したいということで婚姻を理由として在留特別許可を申請するというケースもあるのではないか、こういうことです。
  238. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) おっしゃるとおり、そういう方がたくさんおられます。
  239. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういう皆さんに対する許可数をここ二、三年で言ってみてください。
  240. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 日本人の配偶者等ケースで在留特別許可を求めたケース、かつその中で何人ぐらいに在留特別許可を与えたかということでございますが、平成八年は先ほども言いましたけれども、数字がちょっとしっかりしていませんものですからもう一度確認いたします。平成九年では、在留特別許可を出した数字は日本人の配偶者等、このカテゴリーで千二百十二件でございます。退去、だめだということで拒否された方の人数が四十五名でございます。それから、平成十年につきましては在留特別許可を与えられた数字は二千二百四十八件でございます。それから、退去とされた数字は四十四件でございます。  ついでに、日本人ではなく永住者の配偶者等ということで在留特別許可を与えられた数字は、平成九年が三十九件、退去ということで受け入れなかった数字はゼロでございます。それから、平成十年は在留特別許可を与えられた数字が十九件、それから退去とされた件数が二件でございます。
  241. 橋本敦

    ○橋本敦君 大臣、今お聞きいただいたように、在留特別許可ということで、長年日本に暮らしている関係日本人と結婚をするというようなことではかなり在留許可が裁量で認められているわけでしょう。そこで、今度のこの不法在留罪が新設をされるとどうなりますかというのです。そういう裁量による許可がしてあげられなくなるんじゃありませんか。今度そういう在留許可申請が出てきたとしたら、ちょっと待ちなさい、あなたはそういう申請以前に不法在留の罪を犯しているんですよ、だからまず刑事手続で刑事責任をあなたはとってもらわなきゃ困りますと。こうなって、その方は在留許可の申請どころか刑事告発の対象にされて刑事責任をまず追及される。刑事責任を追及されれば、在留許可を与えてあげるという裁量どころか、それ以前に退去強制ということになるじゃありませんか。  退去強制ということになれば、今度は上陸期間の延長で五年間入ってこれない、あるいはこの不法在留罪によって一年以上の判決が出ればもう帰ってこれなくなってくるということになれば、半永久的に、永久的に家族の離別が起こるじゃないですか。  だから、現在行われているようなそういう人権上の扱いさえ、私は十分だと言いませんが、人権上の扱いさえしてあげられなくなるという重大な人権上の問題をこの新設は含んでいます。そういう点、どう考えましたか、これをつくるについて。
  242. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 在留特別許可とそれから刑事手続にかけるかどうかの問題でございますけれども、不法残留された方についても全く同じことが今現在起こっているわけでございます。  それで、今度は不法在留するという方に対しましても、基本的には今不法残留している人間に対して行うのと同じことをやるんだと思います。普通に退去強制にのせる場合はのせますし、それから特に、恐らく悪質な場合には刑事手続にのせますし、それからそういうことでなくて、人道的なケースに関しては不法残留の人と同じように不法在留の人についても在留特別許可を与えることを検討するということになるんじゃないかと思います。
  243. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうすると、今までどおり在留特別許可は与えますよと、この法案で不法在留罪が新設されても。これは重大な問題です。  だから、あなたの答弁どおりだとしますと、この不法在留罪が新設されても、日本人と結婚した、そして家庭を持ち、合理的な社会生活をこれから営む、そういうことが可能だとすれば、在留特別許可は認めます。理論的には不法在留罪の構成要件に該当する明らかに刑事責任を追及できる場合だけれども、刑事責任の追及はしないということも入管は考えますよと。  警察、警察署はどうですか。答弁に責任持てますか、そういう答弁。大臣に答えてもらわないと答弁に責任持てないでしょう。大臣どうですか、今の答弁で間違いないですか。
  244. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) この在留特別許可の運用のあり方につきましては、これからも変わらないというふうに思います。  ただ、不法在留罪の適用に当たっては、これは一応法の適用というものはあると思いますけれども、人道上等から大臣が在留特別許可を与えるべきものと判断したものについては従来と同じような考え方で臨むべきであろうと思っております。
  245. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうすると、在留特別許可をやってきたこれまでの具体的なケースはいろいろあるでしょうが、人道的、人権上の配慮をしながらやってきたというケースはいささかも変わるものではない、こういうことですね。それはもうはっきり大臣答弁として確認しておきますよ。
  246. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) はい。
  247. 橋本敦

    ○橋本敦君 しかし、それにしても、今後この不法在留罪が新設されることによって、不利益を受けるような、今言った在留特別許可の運用上、不利益を受けるような例は絶対にないと私は信用できないというように思います。しかし、大臣が答弁されたんだから、一応それは大臣の答弁として、重大な答弁として受けとめておきたいと思います。  それから、上陸期間の伸長について、もう時間がないから次に話を進めますが、実際問題として今上陸期間が一年、これが終わってすぐに入れるということではなくして、実際は二年、三年、四年とかかって再入国が許可される、すぐに許可されないという事例もかなりあると関口参考人参考人として述べていました。実態はどうですか。
  248. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 二つケースを分けて考えなきゃいけないと思うんですけれども、一つは退去強制という行政処分だけをされたケースです。この場合には、ですから一年間はいずれにしろ日本に再び戻ってこれない拒否期間なわけです。ですから、それが明けたところで申請をするなり、申請自体はそれより前にやるにしても、法律の建前上、一年たったところで正式に入管は受理する、こういうことになるんだと思うんですけれども、そういうケースと、それから先ほども言いましたように、刑事罰にあって一年以上の自由刑を得た者に対しては、これは拒否期間が基本的には永久でございますから、ちょっと対応が違うんだと思います。  それで、一年の拒否期間の人間に関しましては、もちろん何か事情があれば別ですけれども、普通のケースですと、そんなに二年も三年もということには恐らくなっていないと思います。恐らくと申しますのは、一年の拒否期間のある人間でも一年も待てないからさらにもっと短くしたいというのでもって、資格認定証明を出される方がおりますが、その人たちについてはちょっとどのぐらい資格認定証明が出るまで時間がかかったかということは、数字が少ないものですから自分たちでチェックできます。それでやった結果なんですけれども、大体平均で五カ月ぐらいで出ているという状況でございます。  ですから、在留拒否期間にあっている人間に対してさえもそういうことなわけですから、そうでない外国人に対してはそれ以上長くなるということは恐らくないんじゃないか、このように推定するわけでございます。  この間の参考人の御質疑の中でも、たしか関口参考人は単なる行政処分だけの人は比較的早く出るというようなこともおっしゃったというふうに覚えております。
  249. 橋本敦

    ○橋本敦君 それでは、時間がありませんから端的に局長に伺います。  日本人と結婚をしたということで、その配偶者が一応退去強制処分で外国へ帰らざるを得なかった、それが今度再入国を申請した場合に、今もありましたように、現在だったら一年少々で帰ってこれる、こういうことです。今度、これが五年ということになりますと、一年や一年半や二年で帰れますか、本当に。そこのところですよ、はっきり言ってください。
  250. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 人道ケースに関して我々の政策を変えるつもりはございませんので、実質的にそこで大きな変化が起きるということがないようにしたいと考えております。
  251. 橋本敦

    ○橋本敦君 ないようにしたいというのは、法律上どこに根拠がありますか。
  252. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) これはあくまでも上陸特別許可制度について申しているわけでございます。
  253. 橋本敦

    ○橋本敦君 そのあくまでも上陸特別許可制度自体が広範な裁量であって、具体的な法的な覊束裁量と言えない、そういう問題だから心配しているんです。  あなたがおっしゃるように、今度は五年に伸長したけれども日本人の配偶者については今までどおり一年少々で入れます、上陸特別許可という制度で入れます、こうおっしゃっても、その上陸特別許可というその制度自体の運用がまさに自由な裁量に任されていて、何の覊束的な根拠も具体的にないじゃないですか。そこのところが我々は重大な問題だと。もしも本当にそのとおりやるなら特別規定を置きなさい、そうでなければ安心できません。今までの入管行政から見ても、みんなそう思っています。  大臣、そういう危惧について、特別に法できちっとやるということが立法上この件では欠けておるという問題について、法改正については慎重に考える、そういう点で不備があるというようにお考えになりませんか。私は心配ですよ。
  254. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) ただいま御指摘のようなケース、これは人権上、人道上十分配慮しながら入管法の十二条を適用しつつ在留特別許可というのを与えておりまして、これについては今後も同じような運用を図っていくということは先ほど来申し上げたとおりでございます。それによって委員が御心配なさっているような問題は解決するのが当然だというふうに私は考えております。
  255. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は、そういうことをおっしゃるのであれば、大臣答弁としてははっきり今おっしゃいましたが、この問題について、法務大臣の全く広範な自由裁量に入管行政が任されている部分がたくさんありますから、そういった面は、やはり人権を守る上でもっと法律的に具体的に規制をしていく、根拠を決めていく、覊束裁量に変えていくということが基本的には大事だということを指摘しておきたいと思います。  それから最後に、この参考人もおっしゃったんですが、不法在留の外国人皆さんとの関係でいえば、まさに今日人権を守り、国際人権規約、難民条約その他、開かれた国際社会で、内外の問題について言えば、日本が開かれた社会に発展をしていくという上からいっても、日本に住んでいらっしゃる外国人皆さんとは管理の対象ではなくてともに生きるという方向に大きく政策を検討していく必要があるということを、我々も主張しますが、参考人もおっしゃっているんです。  そういう点で、この不法在留者の問題については、大臣も御存じと思いますけれども、多くの諸国でもう既にアムネスティの制度が運用されているわけです。例えばオランダ、ベルギー、オーストリア、ポルトガル、アルゼンチン、アメリカ、フランス、イタリア、スペイン、カナダ、たくさんあります。そして、我が国もこうしたアムネスティの問題についてこの際思い切って検討する必要があるのではないかということ、そのことを法務省も検討の課題として今後慎重にこの問題も政策的に重大な問題として考えていくということが必要ではないか。  まさに国際社会における日本として内外人ともに生きるという方向を二十一世紀に目指さなくちゃならぬという観点からいって、そういった検討を政府としても積極的に行うべきだと思いますが、お考えを伺って質問を終わります。
  256. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 我が国の入管行政、法務行政につきましては、現下の国際協調あるいは国際交流の大事な時期でございますので、十分そういうものに配慮しながら、そして一方ではまた我が国の秩序の保持、福祉の向上、こういう面にも意を尽くしながら国益を守っていく必要があろうかと思っております。
  257. 橋本敦

    ○橋本敦君 きょうはこれで終わります。
  258. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。  入管法改正の立法目的につきまして、不法入国者の増加ということと外国人犯罪がふえているという二点がよく指摘をされております。参議院法務委員会調査室の作成した「出入国管理及び難民認定法改正の背景」というところでも、一般犯罪の増加、外国人の犯罪の取り締まりの強化の必要性が述べられております。  ところで、先ほど、橋本委員からの質問に対して、刑法犯、特別刑法犯、外国人の犯罪についての件数を言っていただきました。これは、何を分母とするかということはありますけれども、日本人で刑法犯、特別刑法犯の場合と、外国人、リーガルとイリーガルをまぜて分母にした場合の刑法犯、特別刑法犯の割合を比較しますと、決して外国人の犯罪が日本人に比較して多いとは言えないと思うのですが、いかがでしょうか。
  259. 林則清

    政府委員(林則清君) 手元に特別法犯の方を持ってまいりませんでしたので、刑法犯でお答えをいたしたいと思います。  日本の場合に、総務庁統計局の資料によると、平成十年十月一日現在におきまして十四歳以上の日本人人口というのは一億七百八十三万人ということでございます。一方、平成十年の日本人刑法犯検挙人員は三十一万四千十五人であります。したがいまして、十四歳以上の日本人の人口に占める刑法犯の割合は〇・二九%でございます。  他方、これもまた総務庁統計局の資料によりますと、平成十年十月一日現在、我が国において定住居住者等を含む十四歳以上の外国人人口というのは約百九万人というふうに把握をされております。一方、平成十年の定住居住者等を含む外国人の検挙人員というのが一万二百四十八人でありまして、十四歳以上の外国人人口に占める割合は〇・九四%でございます。  なお、つけ加えますと、不法滞在者の数につきましては正確に把握されておりませんので、この外国人人口には含めておりません。  以上でございます。
  260. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 外国人犯罪が多いというのが立法の理由なんですか。それとも不法入国者の増加ということが立法の理由なのでしょうか。
  261. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 基本的には、不法入国者の数が平成五年以降、不法残留している人の数が少なくとも我々が退去強制している人間の中で少しずつ減ってきているにもかかわらず、着実にふえているというのが一番大きなポイントだと思っております。
  262. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 入国拒否期間を一年から五年へ延ばすということ、なぜそういう必要があるのかということが実はわからないんです。実際なぜ入国拒否期間を長くする必要があるのか。  強制退去者のうち、一年後に入国している人の割合、それから五年後に入国している人の割合を教えてください。
  263. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 委員質問に一〇〇%答える数字は実はできませんものですから、平成十年の六月、この一カ月間に退去強制をした人間の数、五千数百ありましたけれども、その数字の中で過去に退去強制歴がある人間が何人いるかということを調べてみました。これは五千数百人一人一人全部当たって調べてみました。その結果、退去強制歴が判明した数が四百七十二件でございます。そのうち、退去強制後一年以内に入国している人の割合は二八%、百三十四件、それから五年を超えて入国している人の割合は三十八件、八%という数字でございました。
  264. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 一年後の直後に入国している人の割合は二八%あるんですか。
  265. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) そういうことでございます。
  266. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 この立法理由なんですが、入国拒否期間が一年だとなぜだめで、二年でなく三年でなく四年でなく、なぜ五年なのかという立法理由を教えてください。
  267. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほどもちょっと御説明いたしましたけれども、この上陸拒否期間に関しては、日本周辺のこういう不法就労目的でやっていきたいと思う対象の国々、アメリカとか韓国とか、そういうところでもやっぱり非常に厳しい扱いをしております。韓国は五年でございます。アメリカは、先ほど言いましたように、不法にいる期間が一年未満であれば上陸拒否期間は三年ですけれども、一年を超えますと十年になります。ということで非常に厳しい扱いをしております。そういうことを勘案しまして五年が妥当な線かなということで選んだわけでございます。
  268. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 諸外国との比較ではなく、なぜ日本で一年を五年にする必要があるんですか。
  269. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 日本の場合はどうかということでございますけれども、先ほどのサンプリング調査でもおわかりのように、五年以上過ぎてから再度入ってきた人間の数というのは八%ということでございまして、このサンプリング調査ではということでございますけれども、九二%は少なくとも五年以内に入ってきている。そのうちのかなりの部分が普通の正規のルートをとって入ってきているということからして、五年にすれば少なくとも不法入国にあらざるやり方で入ってくる人間に関してはほとんど押さえられるということで五年ということにしたわけでございます。
  270. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 逆に、入国拒否期間の長期化は偽造旅券による入国の増加を招くとは言えないですか。
  271. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 当然そういうことはあり得るかと思いますけれども、偽造旅券ということは基本的に不法入国の方になるわけですから、不法入国についても取り締まりを強化しなきゃいかぬということで、不法在留を目的とする不法入国者に対して抑止力となるような法改正を同時に提案しているわけでございます。この両者が相まって、上陸拒否期間を五年にするという改正とそれから不法在留罪を設けるという、この二つが相まって効果を上げるということかと思います。  それから、もちろん偽造旅券等に対する対策は引き続き強化してまいるつもりでございます。
  272. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 本当に悪い人は偽造旅券で何度も入ってくる可能性がある。実は期間が長くなって一番困るのは、真実の名前で子供を産んだり結婚したいと思う人である。  つまり、私がもしフィリピン女性で、違う人の名前で入国をしたあるいはさせられた。私が子供を産む場合に私の本当の子供というふうにならないので、真実を一致させる必要があって本人が苦しむのは、実は子供を産んだり恋人ができたり結婚をしたりという局面であって、何度もリピーターとして偽造パスポートで入ってくる人は何の痛痒も感じない。むしろ、不法滞在罪、そして一年から五年の伸長は、家族をつくったり生活をしようとしている人にとって負担になると思いますが、この点についていかがですか。
  273. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) これも先ほど述べましたとおり、退去強制された者の日本人配偶者等我が国に居住する場合で人道上の見地から特別に我が国への上陸を許可すべき事情があるときあるいは特別に在留許可する必要があるとき等は、上陸特別許可ないし在留特別許可制度で従来どおり適正に対処するということを考えている次第でございます。
  274. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 上陸特別許可制度は裁量による極めて例外的な措置で、現実許可された例を余り聞かないんですけれども、一年間にどれぐらい許可されていますか。
  275. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほどの御質問でもございましたけれども、大体年間四、五十件という数字、これは家族関係ケースのみでございます。
  276. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 しかし、例外的な措置で数としては極めて少ない。それでは決して根本的な救済にはならないというふうに思います。  次に、強制退去者のうち三年以上の不法滞在歴のある人は、例えば一九九八年度で何人いたのでしょうか。
  277. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 済みません、一九九八年の数字はございません。一九九七年に退去強制手続をとった数は四万九千五百六十六人で、このうち三年を超えて不法に滞在した者の数は二万三千四百十八名でございます。  ちなみに、退去強制の手続を受けた者のうち不法入国者は七千百十七人でございまして、そのうち三年を超えて我が国に不法に在留した者は三千百三十六名となっております。
  278. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 これは先ほど大森さんが聞いたことにもつながるんですが、強制退去の対象にはなるわけですから、新たに不法滞在罪を設ける意味は一体何なのかということをもう一回お尋ねします。
  279. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 悪質なケースに関しては当然刑事罰の対象とすべきでありまして、不法残留の外国人につきましても、普通は単に行政手続で退去強制の手続にのせるだけですけれども、その中で特に刑事罰の対象とすべきものは今現在も刑事罰の対象としております。  そういうことが不法残留の外国人、すなわち適法に入ってきた外国人に対してはできて、不法入国の外国人もともと適法でない手段で入ってきた外国人にはできないというのはやはり不合理でありますので、こういう提案を行っている次第でございます。
  280. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 入国管理局の取り締まり強化によって引き起こされる問題点が数多く出てくるだろうと思います。今でも例えば結核やエイズウイルス、HIVなどの感染症が潜在化する危険性がある。例えば、茨城県のある医療機関では在日外国人に対して積極的にHIV抗体検査を施行し、毎年数人のHIV感染者を見つけていたと。しかし、一九九三年に入管の特別一斉摘発が行われたため、その医療機関ではエイズ抗体検査を受ける在日外国人受診者が極端に減少する、あるいは結核で入院をして入管に通報されるということを察知した人は途中で病院から退院をしてしまうといった事態があります。  ですから、不法滞在罪や一年から五年の今回の改悪によってむしろさまざまな問題が潜在化すると思いますが、その点の議論はあったのでしょうか。
  281. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 取り締まりを強化する法改正を行えば、これは当然個々のケースでいろいろあるわけで、そういうことであれば、むしろ潜ろうというんですか、潜在化の方向に行こうという方が出てきても不思議はないわけですけれども、私どもが考えるところでは、この不法在留罪を設けることによって、もともと不法就労等のために不法入国あるいは不法上陸しようとする外国人を思いとどまらせるという効果があろうかと思いますし、全体として潜在化がさらに進むというふうには考えておりません。
  282. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 いや、経済的利益で来ている人が思いとどまったりする理由にはならないんではないかと思います。  これは橋本委員も確認されたんですが、例えば不法入国後在留罪については、本人の意思によらず人身売買で入国された女性については基本的に適用しないということを明言していただくことはできないでしょうか。
  283. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) ちょっと具体的にどういうケースか必ずしも私には十分理解できていないのかもしれませんけれども、いずれにしましても、人道上の問題があるものにつきましては十分それを配慮して、先ほど言いましたような在留特別許可等の制度を適切に運用してまいりたいと考えております。
  284. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 これは先ほど円委員質問されましたが、私も、さまざまな在日韓国朝鮮の人から、十六歳になって子供が常時携帯義務を持ち、刑事罰の対象になるのが本人も嫌だ、大人も嫌だ、親も嫌だと思うというお話をよく聞きます。特に高校生ですと、学校を休むか早退をしなければそういう手続に行けないということがあります。  私自身は外登法そのものに問題があると思いますが、百歩譲って、この十六歳を二十などに見直すということを考えていただきたいんですが、どうでしょうか。
  285. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) これも先ほど申したとおりなんですけれども、現行の外国人登録法において十六歳という年齢を基準として採用しましたのは、十六歳未満の者は通常保護者の監督下にあり、独立して社会生活を営むことはまれであると考えられますが、また逆に、十六歳に達すれば独立して社会的に行動することが可能であると考えるのが適当であるということから、十六歳をもって各種の義務を課し、その履行を担保するため処罰規定を適用することとしたものであり、これは妥当なものであると考えております。
  286. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 外国人の子供、十六歳は子供なんでしょうか、大人なんでしょうか。子供であるにもかかわらず刑罰の対象にされるということは非常に不均衡だと思います。ぜひ再考していただきたいと思います。  それで、入管局長は外務省から出向してきた方ですから、条約や国際人権規約B規約に対する御理解は大変ある方だというふうに思います。それで常時携帯義務についてなんですが、これはほかの委員も言いましたけれども、常時携帯義務は撤廃すべきだと私は思いますが、これもまた百歩譲って、規約人権委員会が言っている永住外国人の範囲にでもせめてまず常時携帯義務を撤廃すべきだと考えますが、条約解釈条約という点に照らしていかがですか。
  287. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今私は法務省におりまして、条約解釈は基本的に外務省が行うということだそうでございますので私が有権的に解釈できるわけではございませんけれども、この人権のB規約でございますか、これに関する規約人権委員会の勧告に法的な拘束力があるかどうかということに関しては、これは法的には拘束力がないということで大体皆様の御理解を得られているんじゃないかと思います。
  288. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 しかし、そのB規約の規約人権委員会の最終見解は、批准をしている日本国としては条約と憲法は同位置にあるわけですから、法的拘束力がないということで何らエクスキューズにはないと。日本の人権状況を規約に合わせて向上させるという責務を国会議員だけでなく役所も負うのだというふうに思いますが、いかがですか。
  289. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 当然のことながら、国際人権規約に日本は加盟しているわけでございますから、全体としてこの規約を遵守するということは当然だと思いますけれども、個々のケースにつきましてはそれなりに自分の国の事情に合わせて判断するということになるのかと思います。
  290. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 条約を批准しながら遵守しないのは恥だと思います。  ところで、常時携帯義務につき、血統主義をとり、自国人には同義務を義務づけない国で、植民地出身者に同義務を課している国はあるのでしょうか。
  291. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 私どもが現在把握している限りでは、国籍の付与について原則として血統主義を採用し、外国人に登録証明書等の身分事項を証する書類の携帯義務を課している国はドイツ、スペインなど二十四カ国でありますが、これらの諸国に居住する外国人の中で、植民地出身者とそれ以外の外国人を区別して、植民地出身の外国人のみに対して登録証明書等の携帯義務を課しているか否かということに関しましては、残念ながら承知しておりません。
  292. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 一つの社会で身分証明の携帯を義務づけられた集団と携帯を義務づけられていない集団が混在して生活している場で、即時その場で何者かを明らかにしようとするならば、社会のすべての構成員を何らかの記号によって分別するシステムを完備するか、あるいは無差別にすべての日本社会の構成員に日本社会で生活する資格の有無を即時的に把握する制度を導入しなければ識別することはできないと思います。  つまり、あなたは外国人ですか、いいえ、私は日本人ですというと、何の証明も普通日本人は持っていないわけですから、そうしますと、一体この常時携帯義務は本当に何の役に立っているのかと思います。とすると、唯一の手段は、例えば肌の色だとか服装だとか外見、容貌によって外登証の提示を求める。あるいは学生証を見て、よくこれは在日韓国人の男の人が言うんですが、学生証を日本名で、通名で持っていたら引きとめられないけれども、しかしきちっと本名宣言をして本名にすると、いろんな場所でじゃ外登証出せと言われる。  要するに、そういうふうに人種差別を生むことになってしまうのではないかという点については、大臣、いかがですか。
  293. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 私は、特に今行われていることが不都合だというふうには考えません。
  294. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 なぜですか。
  295. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) これはもう我が国の国益にかなう形で人道上、人権上も十分配慮しながら行われている姿だと思うからでございます。
  296. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 役に立っているか立っていないかよくわからない制度で、極めて抽象的なことしか言ってもらえないにもかかわらず、一律に十六歳以上の外国人に常時携帯義務を課すというのは、目的と手段がずれていると考えますが、いかがですか。どうですか、大臣。
  297. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) これは今当局から御説明したとおりでございます。  外国事情、本人の責任感、そういうものを総合的に判断した上での日本の国内事情に照らした合理的な判断だと私は思っております。
  298. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 ここの参考人として崔さんに発言をしていただきました。  それで、指紋押捺制度は撤廃されますけれども、かつて指紋押捺を拒否したために、崔さんを代表としますけれども、いろんな不利益をこうむっている人がいらっしゃいます。今回、改正に当たって、そういう人たち、例えば指紋押捺を拒否したために永住権などを失った人もおりますけれども、そういう救済ということについてはいかがお考えですか、大臣。
  299. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) このたびの外国人登録法の改正案によりますと、指紋押捺制度が全廃されることは御承知のとおりでございますが、この際、これまで我が国に引き続き長期間在留されている外国人の方で、指紋押捺を拒否したことが原因で在留資格を喪失し、あるいは比較的短期の在留資格しか得られない状況にあり、しかしながら今後さらに我が国における長期の在留を希望される場合は、入国管理行政上可能な限度でこの状態を救済するための柔軟な方策を検討してまいりたい、このように考えております。
  300. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 前向きな答弁ありがとうございます。  可能な限りそれはよろしくお願いします。今後も、その点については話を聞かせてください。それはよろしくお願いします。  最後に、ちょっと異例な質問になったら済みませんが、四月二十八日、衆議院で盗聴法、組織的犯罪対策法に関して強行採決が行われました。ビデオで見ましたし、速記録を急いで取り寄せましたけれども、声が聞き取れず、何を話しているかよくわかりません。参考人にだれを呼ぶのか、どういうふうに進行するのか、委員長に一任をしてくれの旨の発言があるかのようにも聞いておりますが、委員長に一体何を一任するのか全くわからない状況です。  これはもちろん衆議院の法務委員会の中で議論のあるところで、参議院は別の院ですけれども、ただ同じ法務委員会ということで共通項がありますので、官房長はなぜかその場に同席をしていらしたそうですが、きょうはちょっと官房長は来ていらっしゃらないんですが、刑事局長はその場にいらっしゃったんですか。感想をちょっとお願いします。
  301. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 私は委員会の席にはおりませんでしたが、テレビで拝見しておりました。  委員質問の組織犯罪対策三法でございますけれども、これは昨年の百四十二国会に提出されまして、現在、衆議院の法務委員会で御審議いただいております。  この三法でございますけれども、我が国における組織的な犯罪の情勢、あるいは国境を越えた活動によりまして国際社会にとって非常な脅威となっておりますこの犯罪に対処するための国際的な協調の必要性ということも考えなければなりません。そうした緊急に対応する必要があると思われる事項に関しまして法整備を図るということで今御審議をいただいているというところです。  法務当局は、この問題の重要性、緊急性にかんがみまして、できる限り早期にこの法整備を実現させていただきたいと考えております。  衆議院の法務委員会のことにつきましては、この委員会の運営について所感を述べる立場にございませんので、コメントは控えたいと思っております。
  302. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 ただ、強行採決ということに関して、ジャスティス・ミニストリーと言われる法務省としては無効ではないかという判断をぜひしていただきたいとは思いますが、それは立場が違うかもしれません。  二点お聞きします。  盗聴法、組織的犯罪対策法が一般的にはメディアなどでオウム真理教対策と言われたりしております。しかし、今あるオウム真理教、例えば土地を購入する、パソコンを売るといったことに関して盗聴法、組織的犯罪対策法が役に立つというふうには思いませんけれども、その点についてはオウム真理教対策になるとお考えですか。
  303. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 今度の組織犯罪対策三法案でございますけれども、これは組織的な犯罪に適切に対処する、そのために有効と考えられる刑事法の整備を図ろうとするものでございます。これによりまして、現在の法案では組織的な殺人等あるいは組織的な殺人等の予備罪あるいは組織的な犯罪にかかわる犯人蔵匿等に対する刑が加重されるということで、組織的な犯罪を抑止する効果があると考えられております。  また、そのほかにマネーロンダリングの処罰あるいは犯罪収益の規制の強化、経済的な側面から組織的な犯罪に対処することができるということになろうかと思います。  さらに、一定の重大な事案については、犯罪捜査のための通信傍受ということによりまして、早期に首謀者も含め犯行に関与した者を特定して検挙することができるようになると考えております。  オウム真理教による一連の犯罪が敢行された当時に本法案のような組織的犯罪対策法が整備されていたならば、仮定の話でございますが、組織的な殺人等に対する一定の抑止効果が期待できたほか、通信の傍受によって早期に実態を解明し、被害を最小限に抑えることももとより、地下鉄サリン事件などについてはその発生を未然に防止できた可能性もあったと思われます。  したがって、オウム真理教に限らず、今後の同様の犯罪対策としても極めて有効であると考えております。
  304. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 しかし、警察の組織的犯罪と戦って緒方事件をやっていた坂本堤弁護士は、私と大森さんと同期ですけれども、逆にそのことによって捜査がおくれたのではないかとちまたで言われていたりすることもあります。大森さんがこの委員会でよく主張していらっしゃるように、むしろオウム真理教の犯罪捜査についてのきちっとした総括をされない限り、導入の根拠にはならないというふうに考えます。  とにかく、衆参あわせての法務委員会の中でいろんな審議、民主主義の自殺行為でない審議がなされることを望みます。  ありがとうございます。
  305. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 四月二十二日にこの委員会参考人質疑がありました。崔善愛さん、関口千恵さんからさまざまな証言をいただき、実際の法律が及ぼす現場、人々の問題というものが絵をかくように鮮やかにわかった、大変いい会だったと思いますけれども、法務大臣入管局長、この議事を御存じですか、うなずくか嫌々だけでいいです。──ごらんいただいた。  法務大臣にお聞きしますけれども、特に崔さんのたどった経験、それとまだ不安定な現状ということに関してどういう感想をお持ちですか。
  306. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 委員会として参考人の御意見をいろいろな立場の方からお聞きになっておられました。そういうもの全体を拝見させていただく中での問題の一つでございますけれども、参考人の御意見の中には制度としての常時携帯は必要であるという御意見を述べられた方もおられたように思っております。また、崔さんのように日本で生まれ育った直接の当事者である方の切々としたお気持ち、これも聞かせていただくことができました。  これまで繰り返して申し上げておりますように、現行法の常時携帯制度を維持する必要があると法務省としては考えておりますが、平成四年の衆参両議院法務委員会の附帯決議の趣旨も踏まえまして、例えば外国人であるという理由だけで画一的、機械的に登録証明書を携帯しているかどうかを確認するようなそういう運用は行わない、こういったことなど、今後ともこの制度については常識的かつ弾力的な運用が必要であるということを改めて感じたところでございます。
  307. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 全然聞いていることと答えていることはずれちゃっているんですけれども、そういう質問を出さなかったから、違う答えを読んじゃったんじゃないですか。崔さんは常時携帯の問題とは余り関係ないんです。指紋押捺を拒否したために、人道上から見ても道義的に見ても後で大変ひどい目に遭ったわけです。これは法律がどうのという問題じゃないわけなんです。  結局、これは指紋押捺という非常に野蛮で余り意味のない制度がなぜかずっと存続してしまって、それを改正してこなかったというところから派生してたくさんの悲劇が起こったわけです。これの個々のケースというのはやはり人の自由あるいは成長というものを殺していくという効果を負ったわけです。決してこれは私は民族問題ではないと思うんです。人道上の問題だ。たまたま被害に遭ったのが民族的なところに来たという問題なんです。  そういう意味では、らい病の法律というのが長い間あって、らい患者というものに対して根拠のない差別が加わったということがありました。そういう問題と同じような形で考えることができると思うんです。らいの問題の場合は、そうしたことは誤っていたんだと担当大臣が謝罪した、そういう記憶がございます。大変これは潔い態度だったと思いますけれども、この崔さんたち、こうした人々が受けた今までの指紋押捺に関する被害、心の痛み、要するに非人道的な人生の強制というようなことに対して、法務大臣はどうですか、謝罪される気はありますか。
  308. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 今、委員がお話しになりましたようなこと、これも崔さんは訴えておられました。そのことも改めて申し上げたいと思います。  その上で、この指紋押捺制度というのは、戦後の大変難しい経済社会の中で犯罪が激増していったという状況の中で必要に応じてとられた施策であったと私は思っております。そのこと自体は当時は妥当性を持っておったと思いますが、その後今日に至る間、いろんな状況の変化、特に人権問題等についてのしっかりとした理念の確立等も踏まえてこういうふうな状況になってきたと思います。  その過程において、今心を痛められた崔さんのお気持ちというのは大変個人的には同情する点がございますけれども、この制度の効果、必要性、合理性、こういうものを全体としてとらえて理解していくべきものである、このように思っております。
  309. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 日本では大臣の置かれた立場というのは鏡もちのミカンだというふうに言われていまして、余りはっきりしたことを言うと長続きしないというんで御同情申し上げますけれども、こういうことぐらいはきちっと国と自分というものを一致させて明快にやった方が人気が出ますよ。  それじゃ、入管局長にお聞きしたいんですが、関口千恵さんの証言の中で、入管の許認可あるいは対応、それについてやはりどうしても現場ではアジア人に対する差別が目立つんだ、これはもう否定できないと。もう一つは、結婚したカップルの問題です。国際結婚の場合に、日本人の方が女性である場合の方が非常に差別が強いということを断言していたわけですね。  こういう事態に対してどう認識しているのか。もしそれが事実だと、なぜそうなっているのかということをちょっとお答えいただきたいんです。
  310. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) この間の話を伺いまして、ああいうことが事実であれば大変遺憾に思う次第でございます。ただ、昔から比べまして、そういう接遇等の面に関してももっとよくやるようにということで、かなり力を入れているつもりでございます。  関口さんのだんなさんが在留特別許可にあった時点では、私はちょっと数字で計算してみますと、在留特別許可にあった方々のうち、あの方はバングラデシュ人だそうですが、韓国朝鮮の方を除いた外国人で在留特別許可を受けた方の数は、あれは平成元年だとたしか百人ぐらいだと思います。去年の数字だと恐らく二千人を超えていると思います。したがいまして、二十倍になっているわけで、その間にいろいろな経験を経て、少なくともあれよりは少しましになっているんじゃないかなと思います。  私、引き続き研修等におきましてこういう接遇面をもっと改善するように努力したいと思っております。
  311. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 それでは次に、不法滞在者の収容という問題についてお尋ねしますけれども、入管当局はオーバーステイの外国人を見つけ次第すべて収容してしまうというふうに見えるんですよ。私らもテレビの報道か何かの特別番組で入管の協力をもらってよくやりますけれども、ばあっと入っていってだだだっと全部捕まえてしまうという形で、こういう現状を見ていると、どうなんでしょう、基本的には収容という問題に関して専門的な言葉で収容前置主義、あるいは原則的収容主義という言葉を使われているそうですけれども、やはりそれが基本的な建前なんでしょうか。
  312. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 入管法上はそのようになっております。
  313. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 収容には二つのタイプがあって、収容令書をとってから収容にかかるという通常収容ですか、それから緊急の場合は先に収容してしまうという要急収容、後で令書をとるということですけれども、この比率というのはどういうふうになっていますか。
  314. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 済みません、ちょっと手元に今数字がございませんので。
  315. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 それでは、入国警備官が所轄の主任審査官に収容令書発付を要請するわけですね。それでそれをもらって収容するということなんですが、警備官が要請して発付される率というんですか、どのぐらいなんでしょうか。つまり、発付されない場合というのはどのぐらいあるかということを知りたいんです。
  316. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 九割以上は発付されているということでございます。
  317. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 その場合、主任審査官という人は発付の判断をしなきゃいけないわけですけれども、どういう材料とプロセスでそれをやっているのか。現実は入国警備官の主観というものでもう要請されて、今言われたように九割以上自動的にこういうふうに発付されてしまうんじゃないかというふうに思えるんですけれども、いかがでしょうか。
  318. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 収容令書はだれが請求できるかというと、それは入国警備官になるわけですけれども、入国警備官は退去強制事由のどれかに該当すると疑うに足りる相当な理由がある場合、こういう場合にはそういう請求ができるということになっております。それに対しまして、委員がおっしゃるとおり、主任審査官がこれを審査した上でこれが妥当かどうかを見て発給をするということでございます。  主任審査官というのは入国警備官とは別の官職で別の職務権限を持っている者でございまして、もちろん広い意味で入管局の中の人間という意味では入国警備官もそれから主任審査官も同じでございますけれども、そういうことで一応違った立場の者が審査をして発給するかどうかを決めているということでございます。
  319. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 今お答えになりました、一応収容前置主義というのが建前になっているというはっきりした御意見でしたけれども、実は本来の入管法というのはそれを保障しているかどうかというのが大変疑問なんですね、解釈の問題なんですけれども。  といいますのは、昭和二十七年四月十五日に、第十三回国会というのがあって、そこに参議院の外務・法務連合委員会というのがありました。それで、これはポツダム政令として公布された出入国管理令というのを日本独立した後できちっとした法律にしなきゃいけないということでの審議がされた委員会だったんですけれども、このとき伊藤修という議員さんから政府に質問がありました。これは収容が行政権のみの判断に基づいて三十日から六十日にも及ぶというような身体拘束をするというのは問題だという質問だったんです。  それでその答えが、当時法制意見長官というのがあったそうですけれども、この法制意見長官の佐藤達夫政府委員という人がこういうふうにはっきり答えているんです。「十分な審査をするために必要なる期間というものは当然予想されるわけであります。而してその疑われた人によつては、その間どうしても放任して置けない人もある。従つてそういう人たちにつきましては、収容することができると書いてあるのでありまして、すべてを収容するわけでないことは明瞭であります。」と言っているんです。つまり、収容の対象がどうしてもほうっておけない人だ、すべてを収容するわけではないことは明瞭だというふうに答えているんですよ。  そうすると、これは今の収容前置主義と百八十度違うということなんですけれども、政府としてはこの見解というのはどこかで明確に方針転換したということはあるんでしょうか。
  320. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 実は、今伺った話は初めてでございまして、前は別の解釈をしていたのかどうかさえもちょっと私確認しておりませんけれども、少なくとも今の入管法の規定の解釈、三十九条「収容」、四十四条「容疑者の引渡」、それから四十五条「入国審査官の審査」、これを見比べて、法律の建前としては収容前置主義になっているということに関しては関係者の意見が一致していると思います。  ただ、先ほどそういうことを申し述べましたけれども、具体的にはそれなりに柔軟に取り扱うように努めておりまして、例えば健康上の理由とか、中に収容してしまうと出国の準備ができなくなってしまいますから、そういうこととか、それから収容しないと、逃亡しては困るわけで、当然そういうことを考慮いたしまして、事案によっては収容当日に仮放免をするというような措置をとることも行っておりまして、ケース・バイ・ケースで柔軟、適切に対応するように努めているところでございます。
  321. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 私、急にさっきのドキュメントを出しましたので、後ほどゆっくり調べてもう一度見解をはっきりさせていただきたいと思います。  もう一つ大事なことは、不法滞在者の収容に関してかかわる人々なんです。これは主任審査官、入国警備官、それから入国審査官、多少問題があるときでも特別審理官ですか、全部一つの役所の中の人、つまり閉ざされて見えない中でそれが処理される。  そうすると、こういう国際化した社会の中で、さまざまな国のさまざまな文化を持った、いろいろな事情の人々が個的にも公的にも異なりながら入ってくる、たくさんの問題が発生していると思うんです。  しかし、一つの役所、一つの価値観でしかない、そういうところですべてが処理される。これは、基本的に人権が守れないという設定になっている。それと同時に、そこで行われる処置というものに対して、やはり大変な外国からの反感を買う、日本人あるいは日本という国が大変損をするということがあると思うんです。これはもう今や最前線の機関の問題だと思うんです。  ですから、やはり不服審査の第三者機関のような設置が必要じゃないか、こういうふうに考えるんです。どうでしょうか、そのことに関して。
  322. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 入管だけで全部やっているじゃないかという御指摘でございますけれども、不法に滞在する外国人等の取り扱いにつきましては、アメリカとかイギリスにつきましても、基本的に移民官が裁判所の令状なしに逮捕できる制度を持っておりまして、非常にほかの先進国と比べて日本が異なることをやっているというふうには認識しておりません。  それから、処遇の面でございますけれども、私どもといたしましても、なるだけ人権に配慮した処遇をしなければいけないという認識を持っておりまして、収容施設における処遇の根拠法規、法令でございます被収容者処遇規則というものをこの間改正しまして、収容施設の長が被収容者から直接意見を聴取する等をして一層処遇の適正を図るという方針を、これは去年ですが打ち出しております。  この被収容者から直接意見を聴取するということについては、幾つかのトライアル・アンド・エラーを経まして、今年度から全国の収容所あるいは収容場でこれを実施しているということでございます。  それから、第三者機関の介入がないではないかということでございますが、これは、退去強制令書発付取り消しの行政訴訟が提起される場合には、当然これは裁判所の判断を仰ぐということになります。
  323. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 それでもなおかつ、要するに国際化という問題が避けられない大きな、玄関の部分ですから、やはり民間が何らかの形でそこに介在するという方向を探っていただきたいと要請するわけです。  ちょっと別の質問になりますけれども、これは厚生省関係でしょうか、外国人労働者の医療問題ということについてお尋ねします。  外国人労働者というのは、合法的滞在でも不法滞在でも国民保険には入れないわけですね。特に不法滞在者は社会保険にも入れないということがあります。だからといって、普通にお金を払って行くには余りにも高過ぎてだめだ、こういうことでさまざまな問題が起きております。最近では、もう民間がボランティアとして、不法滞在外国人の医療費を相互扶助する共済組合というようなものを横浜につくって大変話題を呼んでおります。民間のこうした国際問題に対する取り組みと比べて国の対応というのはかなり鈍感で形式主義に陥っているんじゃないかというふうに考えるんですが、このことに関してどうでしょうか、当局は。
  324. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) お答えを申し上げます。  まず、我が国の医療保険制度におきます外国人方々の取り扱い一般論を申し上げたいと存じます。  我が国の医療保険制度におきましても、過去いろいろな経緯はございましたけれども、今日の段階におきましては、適法に在留をされます外国人につきましては、健康保険の場合には、これはサラリーマンの保険でございます、その適用されます事業所におきまして常用雇用の関係にあります方、これは国内の人たちも同じですけれども、こういう関係にある方については健康保険の適用対象となりますし、それから、健康保険の適用を受けない方でありましても、我が国住所を有するということになりました方々につきましては国民健康保険を適用するという関係になってございます。  ただ、今お挙げございましたような、現実問題として多くの不法滞在の外国人方々がおられます。この方々につきましては、引用されましたような形で、確かに現在の医療保険制度の対象にならないということになりまして、互助制度といいますか互助共済の制度等が適用されているもの、あるいは治療を受けながら医療費を払わないという形の中で医療機関にしわ寄せされている、医療そのものを受けるのを我慢されるというようなケースもあると思います。  大変そういう意味では悩ましい問題なのでございますけれども、一方におきまして、こうした不法滞在の外国人方々につきまして医療保険制度をそのまま適用していくということになりますと、これはまた不法滞在ということのゆえにいろいろな問題がやはり出てくるということで、厚生省におきましても、この問題、大変悩みまして、平成七年に有識者の方々を集めました懇談会等を開いていろいろ報告をいただいたわけであります。  その中でも、不法滞在外国人につきまして新たな制度的対応を行うことはかえって不法滞在を助長するおそれがありはしないか、こういうような御議論もございました。そうした中で、その報告書の中でも、今後の方向としましては、国あるいは地方自治体、医療機関などの関係者が、それぞれかかわりの程度を広げていくということによりまして問題点をできるだけ小さくしていくということが現実的な対応ではないかということをいただきました。  それを受けて、厚生省としましても平成八年度に、公的医療保険制度に加入をしておられない外国人に対しまして、救急医療費、非常に救急の医療を受けられたときの補助制度を設けるというような形の対応をいたしてまいっております。  今申し上げましたように、これに真正面から取り組むこともなかなか難しゅうございますけれども、今後とも必要に応じまして、医療保険制度のみならず全体的な医療に係る諸制度の中で、そういった適用のあり方というようなことを引き続きまた検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  325. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 お答えが大分長かったので質問できなくなっちゃったんですが、基本的に、不法滞在者でも人権というのはあると思うんです。人権というのはそういうものなんですよ。入管法違反であっても、不法滞在者が健康と身の安全を求める権利は私は同時的にあると思うんです。しかし、それが制度的にかなり縛られて両方とも無視されているということに問題があります。  例えば、不法滞在者が病院に行くと入管に通告されるというケースが多い。ですから病院に行かない。そうすると病状が悪化し、大変な生命の危機に陥るというようなこともあります。それから、エイズ患者などの場合も、ほかの怖い伝染病もそうですけれども、やはり問題になるから病院に行かないということになります。そうすると、そういう人々が日本社会に潜伏してしまって日本の社会そのものにまた危険をもたらすという状況があると思うんです。  ですから、私は、医療行政と入管行政というものが一体化しない形で、独立して行われるという条件が非常に必要だと思うんですけれども、その点、どうでしょうか。大臣でも入管局長でも結構ですし、厚生省としてはどう考えるか。
  326. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 先ほども申し上げましたように、大変難しい問題です。確かに、医療が必要であるという状況については、これはそういう状態になったときのその方々の御苦境といいますか、そういうことについて私どもの方も思いをいたさないわけではないわけでありますけれども、一面において、不法入国、不法滞在という形の場合に、そういったことを抜きにして真正面から制度的な対応を図るということもなかなか難しいということで、有識者の方々の御議論の中でも、やはりそれぞれがかかわりの程度を広げることによって問題点をできるだけ小さくしていくことが現実的な対応ではないかということをいただいたのも、いろいろ苦渋の上での御報告であったと思います。  そうした中で、非常に緊急を要するような救急医療のような場合に、先ほど申し上げましたような補助制度をつくるというような形で現実的対応をいたしておりますけれども、こういった形の中で一歩一歩問題解決に取り組むよりなかろうかというふうに思います。
  327. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 もう一つ、手短に入管にお聞きしますけれども、外国人宗教者の入国についてちょっとお聞きします。  外国とかかわっていく、だんだん関係が深くなっていくということは、そこの国の文化というものに対面せざるを得ない、これを正確に深く理解しないと問題がこじれるわけです。  そういう意味で、特に宗教というものが非常に大きな文化の根拠になっているというケースがあります。これは日本ではちょっと想像できないんですね。ほかの国々に行くとわかります。例えば、東南アジアと一言で言ったって、タイは本当に仏教的価値観があるし、またインドネシアはバリ島を除いてはイスラム教、そしてフィリピンはカトリックとか、そういうふうに同じ東南アジアと言いながらも非常に違うんですね、内容が。そういうことを抜きにして、日本の会社なんかも、ただ数値主義でどんどんいくと大変なトラブルが起こってうまくいかないということで、これは何をやるにしても非常に重要な部分だと思うんです。  入管問題に関して言うと、やはりたくさんの外国人ソサエティーがいろいろなところででき始めているわけです。既にもう大きなものもあります。そうすると、ここでは、合法であるか非合法であるかにかかわらず、滞在者たちがいろんな問題で精神的な救済というものを求める心が強いわけなんです。そこに宗教的なそういう指導者あるいは経験豊かな識者みたいなものが問題解決の相談相手になる、これはもう法律でどうしようもないようなところを救っているわけです。実際にそういう人たちがたくさん入ってきている。  また、精神的な安定のためという面もあります。例えば生死の問題です。死に直面するときにそういう人の存在なしにはやはりまともに人生を終わらせられないというような、日本人の普通の常識からいったら全然わからないものがあるんです。しかし、それはもう確実に存在している強い要素です。  その件に関して、宗教指導者の入国が非常に要件が困難だという事態があるんです。その典型的なものは、観光ビザでしか入れない。しかし、これは九十日という範囲がありますね。もう少し滞在しなきゃいけない、しかし、出ていってまた入ってくる資金的な余裕がないとか。  そういう文化の面、特に宗教的な面で指導者たちが必要と判定することが必要なんですけれども、そうした人々が入国しやすいという要件に関して、そうした認識があるかどうかということをお聞きしたいんです。
  328. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) そういう場所があるというのはテレビ等で、例えば歌舞伎町に韓国人向けのキリスト教の教会のようなものがマンションの中にあるとか、あるいは地方にモスク、そういうものがあるというようなこと程度までしか承知しておりません。そういう宗教指導者の短期滞在の在留資格による入国、それにつきましても、ですから具体的にはどのようなものか承知しておりません。  こういう人たちの入国申請については、上陸条件に適合している場合は当然上陸を許可するということになっておりますけれども、その判断に当たっては、入国目的、予定滞在期間等を総合的に判断し、その適正な運用について十分に配慮してまいりたいと考えております。
  329. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 質問を終わります。
  330. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十八分散会