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1993-06-02 第126回国会 衆議院 労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年六月二日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 岡田 利春君    理事 愛野興一郎君 理事 大野 功統君    理事 古賀 正浩君 理事 住  博司君    理事 長勢 甚遠君 理事 岩田 順介君    理事 永井 孝信君 理事 河上 覃雄君       赤城 徳彦君    塩川正十郎君       東家 嘉幸君    野呂田芳成君       羽田  孜君    平田辰一郎君       伊東 秀子君    石橋 大吉君       岡崎トミ子君    岡崎 宏美君       山下洲夫君    石田 祝稔君       伏屋 修治君    金子 満広君       伊藤 英成君  出席国務大臣         労 働 大 臣 村上 正邦君  出席政府委員         労働大臣官房審 征矢 紀臣君         議官         労働省婦人局長 松原 亘子君         労働省職業安定 岡山  茂君         局次長         労働省職業能力 伊藤 欣士君         開発局長  委員外出席者         労働委員会調査 下野 一則君         室長     ――――――――――――― 委員の異動 五月十九日  辞任         補欠選任   平田辰一郎君     虎島 和夫君   石橋 大吉君     鈴木  久君   外口 玉子君     堀込 征雄君   伊藤 英成君     川端 達夫君 同日  辞任         補欠選任   虎島 和夫君     平田辰一郎君   鈴木  久君     石橋 大吉君   堀込 征雄君     外口 玉子君   川端 達夫君     伊藤 英成君 同月二十日  辞任         補欠選任   石田 祝稔君     市川 雄一君 同月二十六日  辞任         補欠選任   伊藤 英成君     中野 寛成君 同日  辞任         補欠選任   中野 寛成君     伊藤 英成君 同月二十七日  辞任         補欠選任   市川雄一君      石田祝稔君 六月二日  辞任         補欠選任   田邊  誠君     岡崎トミ子君   山下洲夫君     伊東 秀子君 同日  辞任         補欠選任   伊東 秀子君     山下洲夫君   岡崎トミ子君     田邊  誠君     ――――――――――――― 五月十八日  労働基準法改善に関する請願小松定男君紹  介)(第二一九九号)  労働基準法改正等に関する請願菅野悦子君  紹介)(第二二〇〇号)  同(辻第一君紹介)(第二二〇一号)  同(寺前巖紹介)(第二二〇二号)  同(東中光雄紹介)(第二二〇三号)  同(藤田スミ紹介)(第二二〇四号)  同(正森成二君紹介)(第二二〇五号)  同(吉井英勝紹介)(第二二〇六号) 同月二十五日  トラック運輸から長時間労働一掃に関する請願  (河上覃雄君紹介)(第二三二〇号)  労働基準法改正等に関する請願金子満広君  紹介)(第二三二一号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二三二二号)  同(不破哲三紹介)(第二三二三号)  同(山原健二郎紹介)(第二三二四号) 同月二十七日  労働基準法抜本改正に関する請願不破哲三  君紹介)(第二四五九号)  労働基準法改善に関する請願金子満広君紹  介)(第二四六〇号)  労働基準法改正等に関する請願金子満広君  紹介)(第二四六一号)  同(木島日出夫紹介)(第二四六二号)  同(児玉健次紹介)(第二四六三号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二四六四号)  同(菅野悦子紹介)(第二四六五号)  同(辻第一君紹介)(第二四六六号)  同(寺前巖紹介)(第二四六七号)  同(東中光雄紹介)(第二四六八号)  同(不破哲三紹介)(第二四六九号)  同(藤田スミ紹介)(第二四七〇号)  同(正森成二君紹介)(第二四七一号)  同(山原健二郎紹介)(第二四七二号)  同(吉井英勝紹介)(第二四七三号)  労働時間短縮に関する請願小沢和秋紹介)  (第二四七四号)  同(古堅実吉紹介)(第二四七五号)  同(三浦久紹介)(第二四七六号) 同月二十八日  労災年金受給者遺族年金受給要件改善に関  する請願石橋大吉紹介)(第二六五一号)  同(岩田順介紹介)(第二六五二号)  同(遠藤登紹介)(第二六五三号)  同(加藤繁秋紹介)(第二六五四号)  同(田口健二紹介)(第二六五五号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第二八六三号)  障害者雇用率引き上げ雇用完全実施職域  拡大及び指導の強化に関する請願石橋大吉君  紹介)(第二六五六号)  同(岩田順介紹介)(第二六五七号)  同(遠藤登紹介)(第二六五八号)  同(加藤繁秋紹介)(第二六五九号)  同(田口健二紹介)(第二六六〇号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第二八六四号)  労災補償保険法後退阻止に関する請願(石  橋大吉紹介)(第二六六一号)  同(岩田順介紹介)(第二六六二号)  同(遠藤登紹介)(第二六六三号)  同(加藤繁秋紹介)(第二六六四号)  同(田口健二紹介)(第二六六五号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第二八六五号)  労災病院の全府県設置に関する請願石橋大吉  君紹介)(第二六六六号)  同(岩田順介紹介)(第二六六七号)  同(遠藤登紹介)(第二六六八号)  同(田口健二紹介)(第二六六九号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第二八六六号)  労災ナーシングホーム増設入居基準に関す  る請願石橋大吉紹介)(第二六七〇号)  同(岩田順介紹介)(第二六七一号)  同(遠藤登紹介)(第二六七二号)  同(加藤繁秋紹介)(第二六七三号)  同(田口健二紹介)(第二六七四号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第二八六七号) 六月一日  労災年金受給者遺族年金受給要件改善に関  する請願小里貞利紹介)(第三〇六四号)  同(奥田敬和紹介)(第三〇六五号)  同(木村守男紹介)(第三〇六六号)  同(住博司紹介)(第三〇六七号)  同(田邉國男紹介)(第三〇六八号)  同(保利耕輔君紹介)(第三〇六九号)  同(前田武志紹介)(第三〇七〇号)  同(宮里松正紹介)(第三〇七一号)  障害者雇用率引き上げ雇用完全実施職域  拡大及び指導の強化仁関する請願小里貞利君  紹介)(第三〇七二号)  同(奥田敬和紹介)(第三〇七三号)  同(住博司紹介)(第三〇七四号)  同(田邉國男紹介)(第三〇七五号)  同(保利耕輔君紹介)(第三〇七六号)  同(前田武志紹介)(第三〇七七号)  同(宮里松正紹介)(第三〇七八号)  労災補償保険法後退阻止に関する請願(小  里貞利紹介)(第三〇七九号)  同(奥田敬和紹介)(第三〇八〇号)  同(木村守男紹介)(第三〇八一号)  同(住博司紹介)(第三〇八二号)  同(田邉國男紹介)(第三〇八三号)  同(保利耕輔君紹介)(第三〇八四号)  同(前田武志紹介)(第三〇八五号)  同(宮里松正紹介)(第三〇八六号)  労災病院の全府県設置に関する請願小里貞利  君紹介)(第三〇八七号)  同(奥田敬和紹介)(第三〇八八号)  同(住博司紹介)(第三〇八九号)  同(田邉國男紹介)(第三〇九〇号)  同(保利耕輔君紹介)(第三〇九一号)  同(前田武志紹介)(第三〇九二号)  同(宮里松正紹介)(第三〇九三号)  労災ナーシングホーム増設入居基準に関す  る請願小里貞利紹介)(第三〇九四号)  同(奥田敬和紹介)(第三〇九五号)  同(住博司紹介)(第三〇九六号)  同(田邉國男紹介)(第三〇九七号)  同(保利耕輔君紹介)(第三〇九八号)  同(前田武志紹介)(第三〇九九号)  同(宮里松正紹介)(第三一〇〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十八日  パートタイム労働者待遇改善に関する陳情書  外三件  (第二四四号)  パートタイム労働法の制定に関する陳情書外三  件  (第二四五号)  国の季節労働者援護制度の存続に関する陳情書  (第二四六号)  介護看護休暇法制化等に関する陳情書外五  件  (第二四七号)  は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  短時間労働者雇用管理改善等に関する法律  案(内閣提出第六一号)      ――――◇―――――
  2. 岡田利春

    岡田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、短時間労働者雇用管理改善等に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤城徳彦君。
  3. 赤城徳彦

    赤城委員 おはようございます。  短時間労働者雇用管理改善等に関する法律につきまして、幾つか御質問させていただきます。  まず、パートタイムの最近の動向なんですが、特に女性社会進出ということが叫ばれて久しいわけですけれども、結婚、出産して、そのまま家庭に入らず、手がすいてきたらまた社会へ出て働くという女性の方が大変ふえてまいりまして、数字で見ましても、最近は八百万人を超えるパート労働者がおります。平成三年で八百二万人、平成四年で八百六十八万人ということですから、雇用総数の既に一七・三%という大変な割合を占めております。その中でも特に七割が女性だということで、この女性就業パートタイムというのは大変大きな関係があるかと思います。  さて、パート労働がこれだけふえてきたということは、雇う側にとっても、女性就業意識変化ということもありますし、また、雇われる側にとっても、いろいろございますが、双方ニーズが一致してここまで伸びてきたのではないかと思いますけれども、その要因をどういうふうにお考えか、お尋ねします。
  4. 松原亘子

    松原政府委員 お答えいたします。  先生おっしゃいましたように、パートタイム労働者が非常に最近ふえてきておりますけれども、これにはパートタイム労働者を雇う側、それから、パートタイム労働者として雇われる側、双方要因があるわけでございます。  具体的に申し上げますと、まず、パートタイム労働者を雇う側の要因といたしましては、現在急速にサービス経済化というものが進展をいたしておりまして、こういったサービス産業におきましては、労働集約的で、また時間帯や曜日によって仕事の繁閑の差が大きいといったような特色もあるわけでございますが、そういった産業がふえてきているということ。それから、労働時間短縮というのが時代の要請であるわけでございますけれども、そういう労働時間の短縮を一方で進めながら、また他方では営業時間を確保していくといったようなことから、そのマッチを図るためにパートタイム労働に対する需要がふえてきているという面もございますし、またもう一つの側面といたしましては、人手不足が進行しているということから、なかなか正社員の確保が難しいといったような事情もあるかと思います。  他方パートタイム労働者として雇われる側の要因といたしましては、先生も御指摘されましたように、多くの女性子育てが一段落したら就業したい、もちろん子育て時期も引退せずにずっと継続して就業したいという女性も多いわけでございますけれども世論調査などを見ますと、約三分の二の女性子育て時期には一たん家庭に入り、子育てが一段落したら再び就業したいという意識を持っているわけでございますが、そういった女性が非常にふえているということで、女性就業に対する意識が変わってきているということがございます。  また、高齢化社会が急速に進展をいたしているわけでございますが、高齢者方々もまだまだ働きたいという方、実際に働けるという方が多いわけでございますが、そういった方々でも体力に見合った就業ですとか、なだらかな引退といったようなこともお考えになって短時間勤務を希望するという方も多いわけでございます。  そういったパートタイム労働者として雇われる側の要因もあるわけでございまして、先ほど申し上げました雇う側の要因と両方相まちまして、パートタイム労働者が非常にふえているという実態にあるというふうに認識しているわけでございます。
  5. 赤城徳彦

    赤城委員 雇う側、雇われる側双方いろいろな理由があって、特に経済情勢変化等があって大きく伸びてきたということでございます。よくわかりました。  お互いニーズが合致したから伸びてきたのだ、こういうことなんですけれども、その中にはいろいろ個別に問題が指摘されているところでございますけれども、さて、そのパート労働についてのいろいろな課題をどういうふうに労働省として認識されているのか、お尋ねいたします。
  6. 松原亘子

    松原政府委員 パートタイム労働者に関係いたします問題として幾つ指摘されておりますことは、まず、パートタイム労働者が雇い入れをされる時点においてその労働条件が必ずしも明確にされていない場合があるということから、それが労使の間で事後的に問題になることがあるということが一つございます。  また、とかくパートタイム労働者というと補助的労働同義語というふうにみなす方もありまして、実際には基幹的な仕事ですとか恒常的な仕事を行っているパートタイム労働者の方もいて、かつそういう方がふえているわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような補助的な労働というふうに考えられて、必ずしも十分な能力の発揮の機会が与えられていないといったようなこともあるわけでございます。  また、パートタイム労働者の側にはやはり家庭生活両立させながら働きたいという方が多いわけでございますが、そういった家事育児介護等家庭責任との両立をどういうふうにうまく図っていくかといったようなことについての不満ですとか悩みを持っておる方も多いということも私ども把握しているところでございます。
  7. 赤城徳彦

    赤城委員 パート労働課題はいろいろあるわけなんですけれども、また、パート労働といったときに、必ずしも女性だけではなくて、高齢者パートで働くという例もあろうかと思いますけれども、やはりパート労働の大宗は女性、特に主婦でありますから、その立場に立ってどういうふうな対策考えられるかというのが大変重要になってくるかと思うのです。自民党の総合政策研究所というところでも、それぞれの生活している人の立場に立った政策をもう一度再編成していこうということで、例えば、サラリーマンから見て、高齢者から見て、女性から見てどういうふうに今までの政策を見直していったらいいか、再点検したらいいか、こういうふうなテーマで今検討しているところなんです。  考えて見ますと、女性は、まず結婚します。結婚すると、夫の世話をしなきゃならない、家事をしなきゃならない。そうこうしているうちに、子供が生まれて、今度は育児だ、子供世語をする。やっと子供の手が離れて、仕事をまたやってみようかと社会へ出る。ところが、そうこうしているうちに、今度は両親がもう年とって動けなくなった、今度はお年寄りの世話だ。一生涯を他人の、他人というか身内ですけれども、人の世話をする、人のために働くということで一生を終わらせてしまって、本当にその女性能力を発揮し切れないままいわば社会的に大きなむだをしているのではないかなと思うのです。特に、今大学進学率ではもう女性の方が上だということでありますし、非常に知識能力を持った女性が多いわけであります。  そういう女性が、今言いましたような家事とか育児とか介護とか、こういう手を離れて、あるいはそういうことをしながらいかに社会で活躍していただけるかという、このいわば家庭生活職場との両立ということなんですけれども、これについて、これは何も労働省だけではないかと思いますけれども労働省としてこういうことをどういうふうに施策としてバックアップしていくのかということをお答えいだきたいと思います。
  8. 松原亘子

    松原政府委員 お答え申し上げます。  先生は今現実女性家事育児介護等の負担を負っているという現状を踏まえておっしゃられたということに理解いたしておりますけれども、私どもは、そういった家事育児介護ということも女性仕事というふうに頭から決めつけてしまうという、固定的に役割考えることをまず改めなければいけないのではないか、そういう役割分担固定化ということをまず改めるということが必要だと思っておりまして、こういったことは男性仕事ではないという男性意識をまず改めていただきたいということもあるわけでございますが、現実にはやはり御指摘のように、家事育児介護責任女性の肩に重くかかっているわけでございます。  そういうことで、私どもは、女性がその意欲、能力に応じて仕事を得、能力を発揮したいというふうに思った場合に、それを支援する施策というのは非常に必要なものだというふうに考えているわけでございます。  このため、幾つか具体的な施策をやっておりますが、一つは、昨年施行されました育児休業法でございます。おかげさまでこの法律は順調にスタートいたしまして、一部の調査対象対象といたしました調査結果でございますけれども、九割を超える企業において既に労働協約就業規則の中にこれが盛り込まれたというような結果も得ております。そういうことからスタートは順調であったと思いますけれども、さらにこれを一層定着させるために指導をいたしたい。さらに、育児休業者職場復帰プログラム実施奨励金という制度も導入いたしまして、これを活用してぜひ多くの女性が円滑に職場復帰できるようにということを支援いたしたいというふうに思っているわけでございます。  それから、介護の問題につきましては、昨年、介護休業制度等に関するガイドラインというものを定めまして、この普及促進を積極的に図りたいというふうに考えておりまして、事業主方々にお集まりをいただきまして普及のための使用者会議をやるとか、もう少し積極的にこの制度導入を検討している、具体的に検討し始めたといったような方々については、そういう企業の方に集まっていただいて、既に導入した企業の例なども研究して具体的な研究会をやっていただくといったようなことをやりたいというふうに思っております。  また、これは育児との関連でございますけれども企業内の託児施設が整備されるということも女性家庭責任職業責任との両立という観点から非常に重要なことだというふうに思っております。そういうことから、今年度から事業所内託児施設助成金制度というものを創設いたしまして、事業所内託児施設設置され適切に運用されるようにということで助成をしたいというふうに思っているわけでございます。  さらに、保育園ですとか介護施設等に関します情報というのも非常に重要なことでございます。そういうことから、働く女性のための就業支援事業というものをやっておりまして、二〇二〇というのが電話番号でございますので、私どもこれを俗称フレーフレー・テレホン事業と言っておるのですが、これを民間法人に委託いたしまして、必要な情報が必要とされている女性に適切に流れるようにということで、そういった事業どもやっているところでございます。
  9. 赤城徳彦

    赤城委員 まさに松原局長が言われるように、育児でも介護でもこれは女性役割とばかりは言えないわけで、社会男女両性が支えているんだという認識に立たなきゃいけない、本当にそのとおりだと思います。  以下、法案に沿って、ちょっと細かな話を順次伺いたいと思います。  今のパート労働問題点の中で、パートの態様にもいろいろある。補助的なものから基幹的なもの、季節的なものから恒常的なものまであるわけなんです。また、パートの側も本当にあいた時間に働きたいという人からもっと本格的に高度な仕事へつきたい、そういういろいろなニーズ。雇う側のニーズもいろいろある。本当に補助的に働きたい人、また補助的な労働者を雇いたい人とそのニーズが合う、あるいは高度な仕事をやりたい、もっと本格的に働きたいという人とそういう労働者が欲しいというニーズお互いに合うことがまず大事だと思うのです。  その点はこの法律の第十条で、そういう労使双方ニーズがマッチングするように雇用情報提供職業紹介の充実に努めること、こういうふうにされていますけれども、具体的にどういうことをされるのかをお答えください。
  10. 岡山茂

    岡山政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、パートタイム労働者希望される方は大変多様でございましていろいろでございますが、家庭主婦から初めてパートで働こうという方、あるいは、既に勤めていたけれども育児等で一たん家庭に入られてしばらくしてからまた職場に行こう、こういうような方もおられますし、また、本格的な仕事につこうということで考えておられる方もおられます。こういういろいろなニーズがございます。しかし一方、職業生活について非常に遠ざかっておったというようなこともございまして、職業についての基本的な知識とか経験といったことが乏しい場合も少なくございません。あるいはまた、その希望者につきましても家庭生活との両立のために就業時間等の希望がいろいろ多様でございます。  したがいまして、それらの多様なニーズに即しましてどのように適当な職業についていただくかということが非常に大事なことでございますので、現在私ども公共職業安定所におきましては、まず基本的な知識を持ってもらうために、例えばパートタイム職業教室などを開きまして、現在の雇用情勢についていろいろと御説明したり求人情報を御説明したり、あるいはいろいろな簡単な講習を受けていただくといったようなことなどをやっておりますし、それぞれの方々ニーズに応じたきめ細かな相談に応じておるところでございます。  ただ、大都市部に特にパートタイム希望者が集中しているということもございまして、安定所で十分対応できない面もございますので、大都市部におきましては、そういうパート労働者職業紹介あるいは職業指導を専門に取り扱いますパートバンク設置いたしまして、現在まで六十二カ所設置をしておりますけれども、あるいは中規模都市には少し小さいものでございますが、パートサテライトといったようなものを設けまして、それぞれに対応できるようにいたしておるわけでございます。  今後とも、それらの施策を充実していこうと考えておるわけでございまして、今回のこの法案におきましてもその趣旨で、それぞれの適性、能力経験技能等にふさわしい職業を選ぶことができるように、いろいろな情報提供あるいは職業指導をしていこうということで対応いたしております。あるいはまた、最近はレディス・ハローワークといったような形で女性就業条件に即したいろいろなきめ細かい相談ができるような対策も講じておりますので、これをさらに充実していこう、というふうに考えておるところでございます。
  11. 赤城徳彦

    赤城委員 労働者側がこういうところで働きたい、使用者側がこういう人を雇いたい、最終的にはそれがどこでマッチングするかというと、労働条件に究極的にはあらわれていると思うのですね。  雇い入れ時に、こういう条件でこういう仕事ですよ、こういう労働時間、休日、給与ですよということははっきりしてなければいけないのですけれども、先ほどのパート労働課題についてのお答えの中にもありましたように、この雇い入れ時に労働条件がはっきりしていないという例が非常に多いということを聞きます。雇入通知書を交付していないとか就業規則パートタイム用に定めていないとかいう例がある、こういうふうに聞きますけれども、その実態はどうでしょうか。
  12. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 労働省パートタイム労働者総合実態調査、これは平成二年でございますが、これによりますと、採用時の労働条件の明示につきましては、何らかの方法で労働条件を明示している事業所の割合は九八・一%でございます。その内訳につきましては、「主に口頭で説明している」が六六・五%、次いで「主に雇入通知書等書面を交付している」が一五・八%、「主に就業規則を交付し、労働契約書を締結している」が二二・九%となっております。  また、パートタイム労働者に対する就業規則の適用につきましては、「正社員の就業規則を準用し適用している」が三三・一%、「正社員の就業規則とは別に独立したパート専用の就業規則を適用している」が二〇・五%、「正社員の就業規則パートの特別規定を追加して適用している」が七・六%となっておりまして、「パート用の就業規則はない」とするものは、これも三八・八%となっております。
  13. 赤城徳彦

    赤城委員 今のお答えにありましたけれども、確かにちゃんと書面や規則を定めないで口頭でやる例が多い。そういうところにつきまして、これまでもパート労働指針で、雇入通知書を交付しなさいとか、パート用に就業規則をちゃんと定めなさい、こういうことを指導してきたと思うのですが、今回はこれを法律で、これは法律の六条にありますけれどもパートタイム労働者雇用管理改善のために事業主が講ずべき措置についての指針を定める、これを法律に位置づけてございます。  今までのパート労働指針でもいろいろな指導をされてこられましたけれども、これを法律に格上げすることによって、内容においてどう変わるのか。また、その効果において、今まで指導してきたけれども、いまだに口頭で労働条件を伝えるだけという事業所が多いというところは、今度の新しい法律に基づいて出すことによってどういうふうに改善されるのか、そこら辺をお尋ねします。
  14. 松原亘子

    松原政府委員 この法案の第三条におきまして、まず「事業主等の責務」というのを定めております。この三条は、「事業主は、その雇用する短時間労働者について、適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理改善」、これらをひっくるめまして「雇用管理改善等」と言っておりますが、「を図るために必要な措置を講ずることにより、当該短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように努める」ということで、事業主の責務というのをまず第三条に規定をいたしたわけでございます。そして、その第三条の事業主の責務を具体的にどういうことについて事業主は努力するのかということを明らかにするという趣旨から、第六条におきまして、労働大臣が指針を定めるということにいたしたわけでございます。  これは、前のパートタイム労働指針が「労使をはじめ関係者が考慮すべき事項」を定めたものであるというふうに「趣旨」のところで書いてありますことと、先ほど申し上げましたように、法律に基づく事業主の責務を具体化するものとして定められるという意味におきまして、現行の指針とこの法律に基づいて策定する指針とは基本的にその性格が違うというふうに私ども考えているところでございますし、加えまして、この指針につきましては、労働大臣は、必要があると認めるときには、事業主に対しまして、必要な指導及び助言を行うということで、そういう具体的な規定も置きました。  つまり、これらによりまして、私どもといたしましては、パートタイム労働者雇用管理改善等が進みますように指針を明らかにし、そして、労働大臣が積極的に助言、指導をやっていくということで、パートタイム労働者雇用管理改善が一層進んでいくというふうに考えているところでございます。
  15. 赤城徳彦

    赤城委員 今度は法律に基づく責務だということでありますから、事業主の側もこれを重く受けとめていただいて、また、指導する側もしっかりと指導していただきたいと思うのです。  この事業主の責務ということでは、またほかにもいろいろ書かれているのですけれども、八条に、短時間雇用管理者を置きなさい、こういうことが書いてあります。  ただ、これは「短時間労働者雇用管理改善等に関する事項を管理させるため、短時間雇用管理者を選任するように努めるものとする。」こういうふうな努力規定になっていまして、果たしてこれでちゃんと選任してくれるのか。あるいは小さな企業で改めて管理者を選任するとなると、その負担も大きいのではないか。また、改めて選任するのではなくてだれかが兼務するとしたのでは、実際にそういう雇用管理のことをやってくれるのかどうか。また、「選任するように努める」と書いてあるけれども、具体的にどういうことをやるのか。その任務とか行為とか、そういうことが書かれていないと、これはせっかく管理者の規定があっても有効に機能するのかなという疑問が生ずるわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
  16. 松原亘子

    松原政府委員 この短時間雇用管理者の規定を置いた趣旨でございますけれども、短時間労働者就業実態は多様であるというのは先生が御指摘されたとおりでございまして、特に短時間労働者をたくさん雇用している事業所におきましては、事業主がみずからこういったすべての短時間労働者について、就業実態に応じたきめ細かな雇用管理を行うということはなかなか難しい面があるわけでございます。そういうことから、体制を事業所内でちゃんと整備をしてもらう、パートタイム労働者についての雇用管理改善が進むような体制整備をしていただくという観点から、この短時間雇用管理者の選任を事業所に勧めるということにいたしたわけでございます。  確かに、非常に小さな規模においてはという御懸念はあろうかと思いますけれども、ここにも「省令で定める数以上の短時間労働者を雇用する事業所ごと」と書いてございまして、現在も短時間雇用管理者の選任というのは婦人少年室が中心となりまして選任勧奨をいたしておりますけれども、その場合も、パートタイム労働者が常時十人以上いる事業所において選任するようにということにいたしておりまして、基本的にはこの考え方を引き継ぎたいというふうに思っておりますことから、小さな企業まで負担がかかるということにはならないかと思います。  また、専らこの問題を担当する人、いわば専任者として置くということについてまでは私ども考えておりませんけれども、あくまでも短時間労働者雇用管理について責任を持っている人が選任されることが望ましいといいますか必要であるわけでございますので、そういう方向に行くように今後選任勧奨を行いたいというふうに思っているところでございます。  この短時間雇用管理者の職務でございますけれども、ここに条文上も書いてございますように、「雇用管理改善等に関する事項を管理させる」というふうに書いてございますが、具体的には、このために事業主の指示に基づき必要な措置を講ずるとか、場合によりましては、短時間雇用管理者みずからが雇用管理改善等のために必要な措置を計画し、そして事業主に助言をするといったようなこと、また、雇用するその企業において、事業所において雇用される短時間労働者相談に応ずるとか、この問題について関係行政機関との連絡に当たるといったようなことを職務として考えているところでございますが、この具体的なことにつきましては法案成立後に通達で示したいというふうに思っているところでございます。
  17. 赤城徳彦

    赤城委員 時間が迫ってきましたので、あと一、二点にしたいと思うのですが、今度の法律で短時間労働援助センターを設けるということになっていますけれども、この趣旨や効果はどうお考えでしょうか。
  18. 松原亘子

    松原政府委員 短時間労働者雇用管理改善等のためには、この法律に基づきます先ほど来申し上げましたような事業主の責務、その具体的な内容が指針に定められるわけでございますし、それに基づきまして、行政機関としては、この法律が適正に施行されるようにということで、必要な場合には労働大臣が助言、指導するということになっておりますけれども、短時間労働者にかかわる問題というのは非常に多面的な問題がございまして、指針に書いてある事項を守ってもらうという場合におきましても、例えば企業の全体の人事方針とか賃金体系とか、場合によりましては営業体制をどうするかとか、操業体制をどうするかといったようなかなり企業経営全般にわたる見直しが必要であるという場合も多いわけでございます。  そういうことになってまいりますと、こういった面での技術的、専門的な事項に精通している人たちがむしろやった方がいいという面もあるわけでございます。これは必ずしも行政の方が手を抜くといったようなことではございませんで、行政の指導とそういった専門的な機関のいわばサービス、こういったものが一体となって企業の中での雇用管理改善がより効率的に図られるというふうに考えたわけでございます。  また、短時間労働者自身にとっても、先ほど申し上げましたような、例えば家庭生活との両立問題、こういったことについての具体的な情報が欲しいとか、いろいろな悩みも抱えているという場合もあるわけでございますが、そういう場合には、こういったことに精通した専門的な相談員が親身になって相談に当たるということが非常に求められる場面もあるわけでございます。  そういうことから、行政機関がみずからこういった部分をやるというよりは、むしろこれにふさわしい民間団体にそういった機能を付与するという形でそういった支援を行ってもらう方がより適切ではないかというふうに考えたわけでございまして、パートタイム労働問題全般の改善のために、行政の指導と短時間労働援助センターによる支援サービス、こういったものがいわば車の両輪となって働くということを期待しているわけでございます。
  19. 赤城徳彦

    赤城委員 大臣がおいでいただきましたので、大臣に一点お尋ねします。  最初にお話ししましたように、パートタイム労働というのは非常に大きな勢いでふえてきた。これはいろいろな問題点指摘される声もありますけれども、基本的には社会構造がこれだけサービス化が進んできて、また、女性社会進出という意欲の高まりとか、そういう双方ニーズが合致してふえてきたんだ、また、これからの高齢化社会考えていきますと、女性能力をもっともっと活用して、あるいは高齢者能力社会に貢献、発揮させていただいて社会の活力を保っていくということが非常に大事になってくると思います。  そういうパート役割をこれから積極的に位置づけて推進していくことが大事かと思いますけれども、大臣のお考えをお伺いして終わりたいと思います。
  20. 村上正邦

    ○村上国務大臣 おくれて参りましたが、本日、参議院の本会議労働基準法改正法案の成立を見ることができました。御報告と、あわせて感謝を申し上げる次第であります。  御質問でございますが、委員のおっしゃいます位置づけは、そのとおりの認識を私どもも持っております。子供育児が終わり、一応子供さんから手が離れられた女性方々が、ここでもう一度社会に役に立つ、またいろいろな仕事をしたい、こういった御希望に沿い得る就業形態、それから、体力に見合った働き方をしたいという高齢者の要望に沿うとともに、サービス産業の割合が非常に高まり、営業時間や仕事の忙しさの状況に合わせてパートタイム労働を活用したいという、雇う側の要望にも合った就業形態でありまして、近年著しく増加を見ております。また、これからの中長期的な人手不足の傾向をも考えますときに、このように女性高齢者が働きやすい就業形態であるパートタイム労働はますます重要な今後の位置づけになってまいる、それにふさわしい整備をしていかなければならない、こう思っております。
  21. 赤城徳彦

    赤城委員 ありがとうございました。
  22. 岡田利春

    岡田委員長 次に、岡崎トミ子君。
  23. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 岡崎でございます。よろしくお願いいたします。  まず最初に、この十年間に女性労働者は大幅にふえて、中でも女性雇用労働者は全雇用労働者の三分の一を超えました。この間に、男女雇用機会均等法、労働者派遣法、育児休業法など女性をめぐる労働法制、労働環境も大きく変化をしております。  しかしながら、効率主義とか能率主義を追求する経済運営の中で、雇用における男女の差別は依然として残されております。大多数の女性は単純補助労働に固定されて、賃金も男性の二分の一にすぎず、むしろ格差が広がる傾向さえ示されております。これは、女性労働者の多くが中小企業に働いておりまして、また、パートタイム労働や臨時、派遣労働などいわゆる不安定雇用労働者が増加していることが原因だというふうに思います。  パートタイム労働者は七〇年代以降ふえ続けておりますが、八〇年代に入っては経済のソフト化の中で一層増加して、女性労働者は、正社員と、もう一つパート労働者という不安定雇用労働者に二分化されて、これまでから取ってまいりました労働条件が崩されているというふうに私は認識をいたしております。  で、一九八六年に男女雇用機会均等法が施行されて、雇用における男女平等の実現の第一歩をしるしたというふうに思いますけれども、依然として女性能力については固定的な見方あるいは男女の性別役割分業は根強く存在しておりまして、企業の男女差別の是正は一向に進んでいないというふうに思います。何とか男女の平等な労働権を確立するために、私たちはもっともっと人間らしい生活、働き方、そして人権尊重の原則に置きかえてこれから考えていきたいというふうに思っておりますが、このパートというのは女性問題というふうに考えてもいいというふうに思います。この差別をなくすために国はどのような議論をしてきたのかということについて順次伺ってまいりたいと思います。  今、九百万とも一千万人とも推定されるような数にふえましたのはどういう理由だというふうにお考えでしょうか。なぜパートか、なぜパートタイマーがこれほどふえたとお考えでしょうか、まずその点からお聞かせいただきたいと思います。
  24. 松原亘子

    松原政府委員 先生指摘のように、パートタイム労働者というのは非常にふえてきておりまして、今や全雇用労働者の一七%余りを占めるまでになってきているわけでございます。  このような増加の背景は、いわばパートタイム労働者を雇う側の方々と、パートタイム労働者として雇われる方々の両方のニーズが合致した結果であるというふうに認識をいたしておりますけれども、まずパートタイム労働者を雇う側の要因といたしましては、サービス経済化が非常に進展をいたしました。サービス産業の特徴でございますけれども労働集約的であるといったこと、それから、曜日や時間帯によって仕事の繁閑の差が大きいといったことがあるわけでございまして、サービス経済化が進むということは、それでパートタイム雇用に対する需要がふえてくるということにもなってきたわけでございます。  それからまた、一方で、労働時間の短縮という要請が非常に強いわけでございますけれども労働時間の短縮を進めながら営業時間は一定の時間を確保するということになってまいりますと、そのマッチングという観点からもパートタイム労働に対する需要がふえてくるということもございましたし、また、九〇年代、八〇年代後半から非常に人手不足が顕著になってまいりまして、そういう中で正社員の確保が非常に難しいという状況も出てきたわけでございます。  一方、パートタイム労働者として雇われる方の事情といたしましては、女性就業意識というのは非常な高まりを見せているわけでございます。継続してずっと働きたい、男性と同じように定年まで働きたいという方も非常にふえております。ただ、一方で、女性意識を見ますと、結婚や出産で一時期家庭に入り、子育てが一段落したらまた仕事に戻りたいという意識の方が過半数を占める大きな層をなしているわけでございます。そういう方々にとりましては、そういった家庭責任職業責任とを両立させながら働きたいというニーズも強いわけでございまして、パートタイム労働者方々に対する意識調査でも、どうしてパートタイムという労働形態を選んだのですかという調査結果に対しましては、自分の都合のいい時間帯に働けるからとか家庭責任との両方が容易であるからといったようなお答えが多いわけでございます。そういった女性就業意識の問題がございます。  もう一つは、高齢化が進展しておりまして、高齢者の方でもまだまだ働きたい、働けるという方も多いわけでございまして、そういう方々が、しかしながらフルタイムで働くのはちょっとという方が、体力に見合った就業とかなだらかな引退といったことをお考えになって短時間勤務を希望するという場合も多いわけでございまして、そういった双方要因からこれだけふえてきているというふうに認識をいたしております。
  25. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 今のお話にもございましたけれども、結婚、出産などで退職して育児に専念して、その後また再就職するという働き方を女性自身が望んでいるというふうにさまざまな世論調査でも、意識調査の中でも繰り返されて言ってまいりました。  ここに立教大学の大森真紀教授の点検をした結果がございますけれども、大森教授は  パート労働力の需要は何よりも、「人件費の安さ」にある。  女性パートの増大の原因として、高度成長期には若年労働力の不足への対応、石油危機以降の低成長期には減量経営の手段、八〇年代からは、すでに述べたようなサービス経済化進展があげられ、その間にパートタイマーの仕事内容も、単なる補助業務からより基幹的な業務へと変化してきたが、いずれもパートタイマーの人件費の安さが需要側にとっての最大の利点であった それから  パートタイマーは雇用調整しやすい労働力としても、需要側にとって重要な意味を持っている。雇用調整弁として使われてしまっている。それから家庭責任を負った女性は、大体短い時間で働きたいということを選択しているわけですけれども、このことに関しましても、  男性家庭責任をいっさい放棄して仕事に専念し、残業も転勤も厭わないからこそ、家庭責任 を負う女性正社員は働きにくい、正社員が働きにくいから女性パートタイマーとして働くごとで家庭責任を果たそうとするという悪循環の仕組みができあがっている。つまり、男性の働き方と女性の働き方が、家庭責任の担い方とそれにかかわる労働時間の長さを媒体にして連動しているなかで、女性パートタイマーを希望しているという構造こそが、パートタイマーの最大の問題点であろう。 こう述べておられます。  ここにも大きな原因があるだろうというふうに私は思います。  それからもう一つ、このことを補強している社会的な枠組みとして税制と社会保障がございますけれども、働く既婚女性の増加によって配偶者控除の果たす役割が問題となって、パートタイマーとして働く奥さんはみずからは税金は払わず、夫もその所得について配偶者控除を受けられるような非課税限度額におさまるよう働き方を調整する、こういう行動がしばしば見受けられてきておりまして、こういうことは、もちろん働く女性の側にも原因があってそうした相まってのお互いの需要供給の関係だというふうに言われるかもしれませんけれども、このことを見逃してはならないというふうに私は考えておりますけれども、その点はいかがでしょうか。
  26. 松原亘子

    松原政府委員 パートタイム労働者がふえてきた要因というのは、一概に言えない非常な多面的な要因があるというのは御指摘のとおりだと思います。  ただ、企業パートタイム労働者をなぜ雇っているのかということにつきましては、労働省平成二年に実施いたしました調査によりますと、一番多い回答は、まず業務量がふえたから、仕事がふえたからということでございます。それが第一位でございます。その次に多いのは、一日の忙しい時間帯に対処するためという回答が多くなっております。先生がおっしゃった人件費が割安だからということを指摘する企業もございますけれども、今先に申し上げました二つを挙げる企業が三六%とか三九%といった数値を示しているのに対しまして、この人件費が割安だからということを挙げている企業は二一%ということで、相対的には低くなっております。もちろん、そういう企業がないということではございません。しかしながら、そういったことだけでパートタイム労働がふえてきたということではないというふうに思います。  それから、最後に御指摘になりました説とか社会保障の関係でございますけれども、私どもパートタイム労働対策の今後のあり方について御検討いただきましたパートタイム労働問題研究会、昨年の十二月に御報告を出していただきましたけれども、その研究会におきましてもこの点が議論になりました。  そこでの一応のまとめといたしましては、税制、社会保障といった社会制度については、「女性社会の基幹的労働力として位置づけるべきであり、こうした観点に立って、社会制度の枠組みの見直しが検討される時期にきている」というふうにまとめられたわけでございます。また、必ずしも税、社会保障といった社会制度ではございませんけれども企業の中にも配偶者手当制度といった制度がございます。この配偶者手当制度につきましても同じような問題が実はあるわけでございまして、そういった問題についても、「労使において制度の在り方、内容について検討が行われるよう期待したい。」というふうに述べられているところでございまして、実はこれを報告いたしました婦人少年問題審議会におきましても同じような議論がなされているということで、私どもとしても、これがストレートにパートタイム労働をふやしているといったことにつながるというふうには必ずしも考えておりませんけれども、働く女性が非常にふえ、社会の中で基幹的に位置づけられてきているという社会の流れから考えますと、こういった制度も見直すべき時期に来ているというのは私どもも同感するところでございます。
  27. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 パートタイマーの採用が始まりましたのは一九五〇年代後半というふうに言われておりますけれどもパートタイマーについての行政の動きを最初に確認できるのは、一九六四年十一月の婦人少年問題審議会の「婦人労働の有効活用について」という報告、これでよろしいでしょうか。  これができましたいきさつを簡単に、そして、なぜこれが動いてこなかったのかについてお伺いしたいと思います。
  28. 松原亘子

    松原政府委員 パートタイム労働者の歴史をちょっとひもといてみますと、昭和三十年代の後半ごろから非常にふえてきたというふうに私ども考えております。  こういったことを踏まえて昭和三十九年に「婦人労働の有効活用について」という婦人少年問題審議会の婦人労働部会の報告が取りまとめられたというふうに思っております。特にパートタイム雇用につきましては、その報告の該当部分をちょっと読み上げさせていただきますと、  パートタイム雇用は、家庭責任をもつ婦人が、家事負担を果しつつ雇用の機会をうる制度として、欧米諸国で行きわたっている雇用形態で、わが国に於ても若年令層労働力不足に伴い漸次導入の気運にあるが、中高年令層婦人の特性ならびに、通常雇用との関連に十分留意しつつわが国社会の実情に即したパートタイム雇用の導入について、婦人労働力活用の見地から検討を行なうこと。 というふうに報告がなされているわけでございます。  したがいまして、そのときはまだパートタイム雇用というのはそれほど我が国では一般的なものではなかった。しかしながら、家庭責任を果たしつつ雇用の機会を得たいという女性にとっては非常にいい制度ではないかという見地から、その雇用の導入について婦人労働力活用の見地から検討を行うこと、こういうスタンスでございました。  これは先生がおっしゃいましたように、私どもの承知している限りでは、パートタイム労働対策について初めて世に出たというものであるというふうに思っております。
  29. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 私は、この中ですばらしいのは、個々の女性の資質とか立場が尊重される、そして、能力開発の機会が男子と均等に与えられるようにする、憲法を初めILO条約などの趣旨を生かすことが重要である、そしてまた、女性労働に対する社会的偏見の除去、取り除く必要性を指摘しておりまして、パートは常時必要な労働力であることははっきりしているけれども、身分的には正社員と差別されていることがあるであろうということは、もうこのときにもきちんと指摘がされているわけなのですね。  そして、一九六九年九月に職業安定局の通達が出されております。これは後に、一九八一年、パート労働者の賃金は同職種、同経験労働者と比べて低い額でないことというふうな通達に変わっていくわけなのですが、一貫して労働省やあるいは職業安定局が出してきたものについては、差別のないようにというようなことであったろうと思います。  ところが、三十年間ずっとパートがなされてきておりますこの間に、パートタイマーが会社に望む制度というアンケートによりますと、第一位は賃金の上昇 四四・一%、第二位が退職金制度の導入 三一・四%、第三位が有給休暇制度の導入 一九・八%というふうに、基本的な労働条件にかかわるものが上位を占めております。  ですから、この第一位の賃金上昇、この願いとは裏腹に正社員との賃金格差は拡大しているというのが現状で、労働省が出しております女子一般労働者と女子パートタイム労働者の賃金格差の推移を見てみましても、女性正社員を一〇〇とした場合、七六年に八〇・六、八七年には七一・九というふうに差は広がっております。これは労働白書の中でも、拡大の原因は、正社員の賃金カーブの上昇程度が違う、勤続年数が違う、あるいはベースアップ制度パートタイマーにはない、そして賞与がない、昇進、昇格がない、多くの場合家族手当や住宅手当が支給されない、こういうことが加わって一層賃金格差の拡大に拍車をかけているということなのですね。パートタイム労働条件の確保は、基本的には労働基準監督行政の役割とされておりますけれども、監督指導状況を見ますと、十分即応されていないというふうに見られております。  五十七年五月に出されました行政管理庁の実態調査結果、この結果どんなふうに出ておりますでしょうか、そして、この調査がその後どんなふうに生かされてきたかについてお答えいただきたいと思います。
  30. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 昭和五十七年五月に取りまとめられました行政管理庁の「パートタイム労働者等の労働条件の確保に関する実態調査」につきましては、パートタイム労働者労働条件、業務内容等の実態、関係行政機関の監督指導状況等を調査したものでございます。  この調査結果を踏まえまして、当面、パートタイム労働者の法定労働条件の確保等を図る観点から、就業規則の整備等の指導により一層適正なパートタイム労働者の雇用関係の確立を推進すること、個別事業場の監督指導に当たりましては、パートタイム労働者に係る法令遵守状況に配慮するとともにその実効性を確保することなどの改善措置を講ずる必要がある旨の指摘が行われたところでございます。  労働省といたしましては、これを受けまして、昭和五十九年十二月にパートタイム労働対策要綱を策定するとともに、昭和六十三年四月には労働基準法改正、これは所定労働日数に応じた年休の付与でございますが、平成元年六月にはパートタイム労働指針を制定するなど、パートタイム労働者対策の拡充強化に努めてきたところでございます。  さらにこれらの対策を進めるに当たりまして、賃金、労働時間等主要な労働条件を明らかにした雇入通知書のモデル様式あるいはモデル就業規則の作成及びその普及を図るとともに、集団指導、説明会の開催あるいはパートタイム労働者の法定労働条件の履行確保のための的確な監督指導に努めてきたところでございます。
  31. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 この実態調査の中では、労働基準法が守られていないということが物すごくはっきりとしているわけなんですね。そして、定着率が悪くて、何とかしてこれを定着させなきゃいけないということでさまざまに指導が行われてまいりましたけれども、その指導がやはり労働者においてもまた雇い入れ側の方においても徹底されていなかったということがあると思います。  そして、これまでにもいろいろと通達が出されてまいりましたし、一九八二年には、パートタイマー雇用実態調査の中で、有給休暇がないとか雇用保険がないとか労災保険がない、パートタイマーの名簿すらないということについて、対処が不十分であるという指摘。また、一九八三年にはパートタイム労働対策の方向を提言する。八四年には労働基準法研究会でやはりこれ実態調査研究をしまして、これもまとめたものを出しております。  この間ずっと差別のないようにというようなことが初めの段階からだんだん切り崩されて、今おっしゃいました一九八四年、昭和五十九年の労働省パートタイム労働対策要綱、この辺になってまいりますと、賃金そのほかの労働条件の差別是正には触れなくなって、退職金は正社員と別建てということで、正社員とパートタイマーの差別を固定化する危険がだんだん生まれてきているわけです。  また、一九八七年の女子パートタイマー労働政策に関する研究会の報告、三年間かけて研究したということで、このところで初めてパートタイマーを経済社会に欠かせない基幹労働力というふうに位置づけておりますけれども、この中でもやはり白熱した論議が行われましたけれども、残念ながら、差別の現状を固定化するというような危険があったように私は思います。  そのときに国の側が大体どのような努力をされて労働者側やあるいは雇い入れ側に対して指導を行ってきたのか、少なくともこの一九六四年、一番最初に報告が出されてから二十年過ぎて、そしてパートタイム労働対策要綱ができたというあたりの二十年間、放置されたままであったというふうに私は思いますけれども、この点に関してはどのような御見解がおありでしょうか。
  32. 松原亘子

    松原政府委員 昭和三十九年の婦人少年問題審議会の婦人労働部会の報告でございますけれども、この報告からの二十年ということでございますので、この報告にさかのぼってちょっと触れさせていただきますと、昭和三十九年のこの報告は、先ほど先生がおっしゃいましたその均等待遇ということにつきましては、パートタイム労働の部分についてそういうことが触れられているものではないと私どもは理解をいたしているわけでございます。つまり、この報告は、婦人労働力の有効活用についての報告ということで、全般を触れているわけでございます。そして「婦人労働力の有効活用についての基本的な考え方」というその考え方の中に、いわば現代的な表現で申し上げれば、男女の雇用機会の均等の必要性というのがうたわれているというふうに理解をいたしているわけでございます。  その当時はまだパートタイム雇用というのは生まれたばかりと言ってもいい時代でございまして、この時点では、ある意味ではそれについての考え方が明確になっているというものではなかったというふうに思います。  しかしながら、その後の状況を見てまいりますと、昭和四十一年にまた婦人少年問題審議会からの建議が出されまして、その中にもパートタイムの雇用条件の適正化ということが指摘されておりまして、その中では、調査研究を進めるということと、パートタイム労働者についての職業意識、契約意識を高めることに関する啓蒙活動を行うことというのが要請されていたわけでございます。つまり、この三十年代から四十年代の初めにかけてというのはまだまだ非常に初期の段階でございまして、均等待遇といったようなことについては、この時期はまだそういう考え方はなかったというのが私どもの認識でございます。  しかしながら、その後、昭和四十四年になりますけれども、女子パートタイム雇用に関する専門家会議の報告が出、また同年、婦人少年問題審議会から「女子パートタイム雇用の対策に関する建議」というのが労働大臣に出されました。そして、それらを受けまして、昭和四十五年に婦人少年局長通達というのが出ておりますけれども、このときに、パートタイム労働者の保護と労働条件の向上を図り、パートタイム労働者が本格的労働力として企業の雇用体系の中に正しく位置づけられることを促し、近代的パートタイム雇用を確立するため、労使を初め社会一般の指導啓発に努めるということにいたしたわけでございます。  そして、この通達の中に、特に賃金について書いてあるところでございますけれどもパートタイム労働者の賃金については、同種の労働者との均衡が保たれるようにという考え方が出たわけでございます。  その考え方は昭和五十九年の通達においては出ていないという先生の御指摘でございましたけれども、五十九年にはパートタイム労働対策要綱というのが取りまとめられたわけでございます。そこでは、パートタイム労働者労働条件の明確化、労働時間等の適正化、雇用管理の適正化を図るという観点から、ここでもやはり労使等が考慮すべき事項ということで幾つか書いてございますけれども、雇入通知書の交付ですとか就業規則の作成、年次有給休暇の付与、雇用管理の適正化等についての指針を初めて示したわけでございます。  あわせまして、これに関して労働省が講ずる施策というのも体系的に定めたわけでございますが、この対策要綱におきましても、「同種の業務に従事する通常の労働者労働条件との均衡等を考慮しつつ、適正な労働条件を設定すべきである」という考え方が書かれておりまして、考え方がなくなったとか弱くなったということはないと思います。  また、御承知のとおり平成元年に定めましたパートタイム労働指針におきましてもこの考え方が引き継がれているということでございます。
  33. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 ところが、一九八八年九月、東京商工会議所の調査によりますと、パートタイム労働対策要綱を知らないために、未実施事業所が四五・四%、中小零細企業六一・五%ということで、保護や処置の平等は手の打ちようがないまま放置されたということが出されておりまして、その一カ月後、東京商工会議所意見書として、法的に整備していこうというパート労働者の願いを無視するかのように、法的整備にブレーキがかかる、これが出されておりますが、御存じだろうというふうに思います。  時間が大変少なくなってまいりましたので急がなければなりませんが、これまでに、法制化ということでいいますと、一九八四年、実態調査の研究がまとまった後、また八七年、女子パートタイマー労働政策に関する研究会報告がなされた後、そして一九九二年にパートタイム労働に関する研究会の研究報告の後、法律が必要というふうになってまいりました。  しかし、この間に裁判が起こされましたり、私ども宮城県の中でも、昨年の六月に三十四人のパート主婦方々が、七年から十六年も働き続けた人たちが不況ということで首を切られたりしておりまして、これはもう救いようのない状態です。一つ、三洋電機の場合には勝訴したという結果がありまして、パートであっても正規の社員と差別をしてはならないという結果が出されておりますけれども、これも、すべてのパートタイム労働者が裁判に持ち込めるわけではなく、年数もかかり、費用もかかるということも含めますと、こういう方々の救いというのは法的にきちんと罰則がなければ難しいのではないかというふうな考え方がございます。  もう一つの、今度の新しい法制化の中で短時間労働援助センターというものが設置されておりますけれども、こういうもので苦情が出た中で救いができるのかどうなのか、大臣の方からひとつ力強く、救うことができるのであるというようなことがあれば、そういう観点に立ってお答えいただきたいと思います。パート労働者方々の状況は大変にハードです。裁判にまで持ち込むような状況が起きています。不況の中で首も切られています。そういうことに対して今度の法律で本当に救われるのかどうかという観点でお答えをいただきたいと思います。
  34. 松原亘子

    松原政府委員 パートタイム労働援助センターを設けた趣旨でございますけれども、もちろん、行政の責任といたしまして、この法律が正しく施行されるようにということのために助言、指導をやっていくということが必要でございますし、その施行責任は行政機関にあるのは当然でございます。しかしながら、パートタイム労働者雇用管理を全般的に改善していくという場合には、かなり専門的、技術的にわたる部分もある、そういったことを実際に改善していく、そういったことまで踏み込んで具体的に改めてもらうということでないと、パートタイム労働者雇用管理現実改善されたということにはなかなかならないわけでございます。  そういうことから、そういった技術的、専門的な事項についてノウハウを有する機関に少し行政サービス的な側面を持ってもらい、行政機関の行う指導と相まってパートタイム労働者のさまざまな問題が解決されるようにということでこういうものを設けることにいたしたわけでございます。  したがいまして、パートタイム労働者方々の方について申し上げれば、いろいろな問題をもちろんお持ちだと思います。そういう場合に、パートタイム労働にかかわる行政機関というのは実は非常にたくさんございまして、職業安定所、それから労働基準監督署、婦人少年室もございます。税、社会保障の問題になりますとそういった機関もございます。そういったさまざまの機関のうち、パートで働いていらっしゃる方々がどこの機関に行けば適切なアドバイスがもらえるか、また、自分が抱えているトラブルをどうやったら、どこに行けば解決してもらえるかということはなかなかわかりにくいところがあるわけでございます。  そういったときにこのパートタイム労働援助センターに相談をしていただければ、そこでしかるべき、まず一次的に相談に乗り、かつ具体的、専門的な、例えば労働基準監督署でなけば解決できないという問題になれば、そういう監督機関への紹介といいますか取り次ぎといいますか、そういったこともやるということによって、パートタイム労働者の方にも援助をしていきたいというふうに思っているわけでございます。
  35. 村上正邦

    ○村上国務大臣 まさしくこの罰則、野党でまとめていただきました案と政府が提出させていただいております案でそこらあたりが一番大きな問題だと思いますが、私の私見を言えば、最もそこらあたりに問題があるというふうに考えながらも、まだ社会的にそこまでこの合意というものができてないのじゃないだろうか、こういう考え方ておりますが、御指摘の点については十分心して対応しなければならない、こう思っております。
  36. 岡崎トミ子

    岡崎(ト)委員 大臣と私の認識がちょっと違っておりますけれども、とにかくパート労働というものが生まれましてから差別が温存されたままで、今度こそ是正のための法制度をということで、多くのパート労働者、九百万とも一千万人とも言われている人たちが本当に願っているものです。どうぞ、これから二十一世紀にかけて、私たちは差別のない労働をということを願っておりますし、殊に九三年と九四年、ILOにおいてパートタイム労働課題を取り上げられておりまして、日本の女性の働き方というものが注目されておりますので、私たちも、ともにこのことについては一生懸命力をかけてまいりたいというふうに思いますので、大臣にもよろしく力添えをお願いしたいというふうに思います。  これで質問を終わります。ありがとうございました。
  37. 岡田利春

    岡田委員長 次に、岡崎宏美君。
  38. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 今、岡崎トミ子議員の質問の最後に大臣が、パートで働いていらっしゃる皆さんにいろいろな問題があることはわかり、私たちが出しました野党案と政府案の違いというものもそこのところに問題というものがあるのだろうとおっしゃりながら、なおかつ、しかしまだ社会的に合意が得られていないのではないかと、私見というふうに断りを入れましたけれども、おっしゃったわけです。  きょう、労働委員会にたくさんの傍聴の方が見えているのですね。女性が多いです。ほとんどの方が、政府が提案をしたいわゆるパート労働法で、私たちにとって、一体、これまで大変だ大変だ、問題だと思っていたことが何とか改善されるものなのかどうかということで、随分関心を持って来ていらっしゃると思うのですが、質問に入ります前に率直に私お尋ねしたいと思うのです。  こうやって仕事をやりくりしてまでもこの法律案審議の様子を必死で傍聴しに来ておられる方あるいはたくさんのパートの人たち、その人たちが問題だと思っていることを実は大臣初め労働省の方は何だと思って受けとめておられるのか、だからどうしたいと思っていらっしゃるのか、とりあえずお聞きしたいと思います。
  39. 松原亘子

    松原政府委員 パートタイム労働者方々の持っておられる不満でありますとか不安であるとかは、非常に多岐にわたっているものであるというふうに私どもは認識をいたしております。  意識調査などの結果によりますと、賃金が安い、雇用が不安定であるといったことを不満として挙げられる方もあるわけでございます。私どもといたしましては、さまざまある不満、不安をどうやって解決していくか、解消の方向に向けていくかということが非常に重要なことだろうというふうに思っているのはそのとおりでございます。  もちろん、今申し上げたこと以外にも、例えば雇い入れのときの雇い入れ条件というのが必ずしも文書で示されていない、口頭の約束だけで採用されてしまうといったことから、それらをめぐりまして入社後さまざまのトラブルが生ずるということもあるわけでございます。そういったことについては、事前に十分文書で明らかにされれば、相当の部分、相当の不満、不安というのは解消されるというふうに思うわけでございますし、そういったことも非常な問題だというふうに思っております。  それからまた、パートタイム労働の歴史はかなりになっておりますけれども、まだまだ一部の使用者の中には、パートタイム労働というのは一時的な労働であるとか補助的な労働であるといったような意識もあるわけでございます。今や我が国の経済社会において非常に大きな位置を占めてきておりますこのパートタイム労働というものを、ぜひとも社会的にきちんと位置づけるということが必要だろうというふうに思っておりまして、そういったことが、何よりもまず私どもとしてはやりたい、やらなければならないと思っていることでございます。  その点につきましては、今回の法案において、パートタイム労働対策に関する指針の問題でもございますけれども、まずもってパートタイム労働対策の基本方針というものを定めるということにいたしたのも、そういった姿勢というのを大きく世の中に訴える必要があるのではないかというふうに思ったことにもよるわけでございます。  さまざまな問題点があるのは承知いたしております。そういったものを、国の姿勢を世に明らかにする、そして、具体的に事業主にその責務に基づいてやってもらわなければいけない事項については指針を定め、必要に応じて行政指導をやっていくことによって、持っておられる不満、不安が解消されていくということを私どもは期待をいたしているわけでございます。
  40. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 パートの人たちが抱えているたくさんの不安や不満、実際に今持っているものが具体的にどう改善されるのかということについて、働いている側の人たちは大変な思いで見ているわけですので、そのことを理解いただいて、では、少しでも具体的に改善するためには今回の法律案で足るのか、あるいは足らざるところがあるとすればどうするのか、そこらあたりを私は極めて率直に、素直にお尋ねをしますので、お答えいただきたいと思うのです。  正直に申し上げて、今の局長の答弁、そしてそれと並べて提案をされた法律案を読みましたときに、本当にそこにつながるのだろうかという思いがいたします。  例えば「目的」ですけれども、私、何度も読んでみたのです。何度も読んでみたのですけれども、この「目的」とされる文章の中から、本当に今起きているたくさんの不安だとか不満だとかいうものが除かれるのだろうか、それを取り除くことを目的にしているのだろうかどうだろうかというところで最初に悩むわけです。  法律の文章というのはなかなか理解しがたいものがあります。法律を専門にしている人は読み切れても、普通そうした文章に日ごろ接しない人にとってみれば、なかなか理解しづらいものがあるのですね。この「目的」を、ぜひ我々が日常会話で話をしているふうに言い直していただきたいと思うのです。  つまり、パート労働者、ここでは短時間労働者というふうに言われているその役割、私風に要約すると、短時間労働者役割が大きい、雇用管理改善職業能力の開発及び向上を、その役割が大きいからこうしたことを行って、もっと能力を有効発揮できるようにしよう、そう書いてある。それで、有効発揮させることによって福祉の増進を図るのだ、こういうふうに「目的」の項では書いてあるというふうに読んだわけですね、私は。  では、具体的にこれは何を指すのか。さっきもお尋ねをして答えもいただいたけれども現実に抱えている不安だとか不満だとかいうものを解消するのだ、改善をするのだというのはこの中のどこに出てくるのか、具体的には何を考えておられるのか、それをまず答えていただきたいと思います。
  41. 松原亘子

    松原政府委員 先生がおっしゃいましたように、法律用語というのはなかなかわかりにくいというところは私も共感できるところでございまして、もう少しこれをわかりやすい、平易な言葉で書けたらというのは本当に思うのでございますけれども、そこはなかなかやむを得ないところでございますので、少しこの意味を御説明させていただきます。  まず、最初に書いてございます「短時間労働者が我が国の経済社会において果たす役割の重要性」、これはこれまでも申し上げてきたところでございます。非常に数がふえてきたということだけではなくて、質的にも、これまでの補助的な労働と見るだけの見方というのはおかしいというような状況になってきているわけでございます。  経済社会において非常に大きな役割を果たす、そういう状況になってきているということを考慮いたしまして、「短時間労働者について、その雇用管理改善等に関する措置」、この辺が一つわかりにくいところではないかというふうに思うのでございますが、これは実は法律技術的にこういうことになってしまったのですが、第三条に「事業主等の責務」というのが書いてございます。この事業主の責務としまして、「事業主は、その雇用する短時間労働者について、適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理改善」としまして、括弧で「(以下「雇用管理改善等」という。)」という読みかえをいたしているわけでございますけれども、「目的」に言います「雇用管理改善等」というのは、いわばこれを全部含むわけでございます。つまり、「適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理改善」に関する措置というふうに「目的」は読めるわけでございまして、技術的な問題から非常にわかりにくいという点はあるわけでございますけれども、そういった措置を一つ講ずる。  それから「職業能力の開発及び向上等に関する措置」でございますが、これはまた条文の後ろの方に、国や都道府県及び雇用促進事業団が行うものといたしまして「職業能力の開発及び向上等に関する措置」、つまり、パートタイム労働者の方がパートタイム労働につく前に、例えば長い間家庭に入っていた方は技術や技能が十分現代に追いついていないという場合があれば、新しい技能、技術を身につけたいというふうに思う場合も多いわけでございまして、ここは、そういう方には職業能力の開発の機会を提供するという意味であるわけでございます。  そういった企業の中での、略称で恐縮ですが「雇用管理改善等」の措置、そして、国が、パートタイム労働者がよりよい収入を得られる、より技術、技能を要する仕事につきたいと思う方はつけるように、そういう能力を身につける機会を付与するといいますか機会を設ける、こういった措置を講ずることによりまして、やはり短時間労働者の方が一番願いとしておられるのはその持っている「能力を有効に発揮」できる、この「有効に」というのは能力を発揮しそれが適正に評価されるということも当然入るわけでございますが、そういうことができるようにし、「もってその福祉の増進」という言葉が最後に来ておりますけれども、この「福祉の増進」というのは、労働省設置法にも労働省の目的として「福祉の増進」ということが書いてございますが、働く方々のいわば幸せ度を高める、言いかえればそういうことになろうかと思いますが、こういった措置を講ずることによりまして、短時間労働者の方が職業生活においてより充実した生活が営めるように、そして人生を幸せに感じていただけるようにということが、この法律の目的になっているところでございます。
  42. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 ということは、「適正な労働条件」というものが三条の事業主の責務のところにも入っている。「目的」の中で「適正な労働条件の確保」が図られるということは、当然これから具体的に進んでいく場合には出てくるということなんですね。そうすると、では「適正な労働条件」とは一体何かということが随分我々にとっては気になるところですし、もちろん現場でうんうん言っている人にはもっと気になることだと思いますね。だから、後、では「適正な労働条件」とは何かというものについていろいろお尋ねもしたいと思います。  その前に、「福祉の増進」というのは幸せ度を高めることだというのは、わかったようでわからない。役所が具体的に進めることで幸せ度を高める。生活大国だとかいう言葉そのものも一体何かというふうになってくると、現実の生活の中では、幸せになりたいというときに、今現在つらいと思っていることを除去するということにやはりつながっていくわけでしょう。そうすると、一つでもつらいと思うことを除去する方法というものをそこで決めなければならないわけですよ、具体的に形にして。  あす、また労働委員会が開かれて、私たち野党が出しているものも論議していただくわけですけれども、私たちは、今つらい、大変だと思っていることを一つでも除去するためには、例えばそういうことは一般的に見てだれにとってもあってはならぬことだとしたら、そういうことはやってはならないということをはっきり決めた方がいい、極めてわかりやすい、そういうふうに申し上げているわけなんですが、これは政府案で出てきた場合には、では幸せ度を高めるというこの「福祉の増進」というのは、具体的に、嫌だ、苦しい、問題だということを除去するためにどういうふうにこれは働くわけですか。
  43. 松原亘子

    松原政府委員 「適正な労働条件の確保」が何かということになるわけでございますけれども、現在のパートタイム労働指針にはいろいろなことが書いてございます。  具体的な規定といたしましては、「労働条件の明確化」ということで雇入通知書の交付と就業規則の整備が書いてございますが、続きまして、「労働条件の適正化」ということがございます。表現的には、「適正な労働条件の確保」という表現とパートタイム労働指針で言う「労働条件の適正化」と表現は違いますけれども、私どもは意味する範囲は同じであるというふうに考えております。  現行パートタイム労働指針において「労働条件の適正化」というのはどういう範囲を含んでいるかということでございますが、一つは、パートタイム労働者労働時間の決め方の問題でございます。それからパートタイム労働者についての年次有給休暇、期間の定めのある労働契約についての取り扱い、それからパートタイム労働者就業実態、通常の労働者との均衡などを考慮して定めるということが書いてございます賃金、賞与及び退職金、それから福利厚生施設、健康診断ということが「労働条件の適正化」という項目の中に書かれていることでございます。  そういうことから、今後この法律が成立しました後に、三条の事業主の責務の内容といいますか、それを具体的に明らかにする指針を定めるわけでございますけれども、そこでは「適正な労働条件の確保」に向けてどういったことを定めていくか、これはこれからの問題ではございますけれども、現行指針が今申し上げたような範囲を範疇としておりますことから、これを踏まえて私どもは検討したいというふうに思っております。  そういったところにそれぞれパートタイム労働者方々の不安なり不満なりがあるというふうに認識をいたしておりますので、指針においてそういった点を明らかにしていくことにより、かつ、その指針の定着を図り、必要に応じて労働大臣が助言、指導をやっていくということによって先ほど申し上げたトータルとしての幸せ度の向上につながるというふうに思っているところでございます。
  44. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 指針をこれまでやってきて、それをさらに根拠づけをして、より一番みんなが問題だと考えている点を改善するのだ、そういうふうな説明だと思うのですが、そうすると、さっきまでのほかの委員の質問の中でもありましたし答えの中でもありましたけれども、それでは、この指針を根拠づけをするという今回の一つ法律の位置づけとすれば、当然私たちが素直に受けとめるのは、今のこのパートタイム労働指針でうたわれている趣旨や目的というものは、これはそのまま生かされていくということになるわけですね。  では、改めてお尋ねをしておきますけれどもパートタイム労働指針の趣旨、目的というのは、繰り返しになるかもしれないけれども、一体何だったのか。  この指針に関しては、指針の中でも趣旨というものは入っておりますけれども、実際に労働省がこの指針を広めるに当たって、行政のサイドで留意しなければならないことというふうなものも通達でやはり出しておられるわけですね。そこらあたりで、その中で言われていることというのは、私は極めて具体的に、そういう意味ではこの法律案よりはわかりやすく書いてあるというふうに思うのですけれども、一度言っていただけませんか。
  45. 松原亘子

    松原政府委員 現行のパートタイム労働指針は、労働大臣の告示という形で労使を初め関係者が考慮すべき事項ということで定めたものでございます。  それに対しまして今回の指針は、事業主の責務を具体化するものとして法律に根拠を置いたものになるわけでございまして、その性格が違うのは、法律上の根拠があるかないかということによって私どもとしては随分違ったものになるというふうに認識をいたしているわけでございます。  ところで、その中身についてなかなか法律だとわかりにくいとおっしゃられた点でございます。  それは、一つには、先ほど目的と事業主の責務との関係を申し上げました。そういう極めて技術的なところから来ているわかりにくさというのがあるのだと思いますけれども、もう一つは、新しい法律に基づく指針の内容が明らかになっていないということが一つあるのではないかというふうに思います。  これにつきましては、今回の法案提出に至ります過程で、パートタイム労働問題を総合的に検討いただきましたパートタイム労働問題研究会においても議論をされたわけでございますけれども、そこで現行の指針はおおむね妥当であるという御意見でございました。そういうことから、この法律が成立しました後策定する指針は、審議会にまたお諮りはいたしますけれども、私どもとしては、現行指針をベースにして考えたいというふうに思っております。  もちろん、表現的に非常にわかりにくいというのは問題でございますので、その指針とは別に、それを例えば地方に通達として流すとか、また労使方々に理解していただくための広報用の資料をつくるといったようなときには、十分わかりやすい表現を使うようにいたしたいというふうに思っておりますけれども、今わかりにくいという点は、指針の内容が明らかになっていない、それが現行指針とつながりがあるのかないのか、どういう関係になるのか、カバレージがどうなのかといったようなことが、法律案だけを見ているというところではわかりにくいということがあろうかと思います。  その背景といいますかそれを御説明いたしますと、現行指針を踏まえて今後検討させていただくということから、ここに書いてございます範囲のものについてがベースになってくるということでございます。
  46. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 なかなか読んでくださらないので、私、自分で説もうかと思うのですがね。ただ、法律案を見ているだけではわかりにくいかもしれないとおっしゃるのだけれども、普通、もし私がパートで働いている人間だとしたら、法律に触れることも少ないのだけれども、何か自分にとって、働き方というものを位置づけるものは何かと思って探したら、みんな見るのは法律しかないわけですよ。だから、法律を見てよくわからないというのは一番困るのです。なおかつ、働きに行くということは、働きに行っているその人だけの問題ではなくて、必ずそこに相手がいるのだから、みんなが見て、この法律を見てそうだということがすぐわからなければいけないのです。このことは申し上げておきたいと思います。  この指針を最初に出されたときの通達では、こんなふうに書いてあるのですよ。  パートタイム労働指針は、パートタイム労働者就業実態及び現状における問題点にかんがみ、 だからですけれども、  現行の労働関係法令に定められている事項のうち特にパートタイム労働者労働条件の確保等を図る上で問題のある事項を含めパートタイム労働者の処遇及び労働条件等について労使をはじめ関係者が考慮すべき事項を総合的に盛り込んだものであること。 いろいろパートの人には対策をとってきたけれども、なお問題がある。それはやはり労働条件というところに多い。だから、労働条件の確保を図るためにどうしたらいいのか、処遇だとか労働条件についてどうしたらいいのかを関係者に徹底させるのが指針だというふうに書いてあるわけですよ。法律よりも随分わかりやすくありませんか。  そうすると、私は、今のこのパートタイム労働指針というものが基本的にはみんなに受け入れられている、そしてこれを何とか法的に根拠づけをして広げたいというふうにおっしゃるその気持ちはわかりますけれども、だとしたら、やはりこの法律案の中に指針そのものがうたっている趣旨は入ってくるべきではないか、それがわかりやすいように「目的」の中に入ってくるべきではないかと思っております。私たちが出している案というものは、やってはならないことも当然ちゃんとうたってあるわけですし、ぜひそこのところは受けとめていただきたいな、こう思うわけです。  さっきの答弁の中でありましたけれども、結局、法律の中でわかりにくいことの一つに、現行の指針をベースにというお話がありましたけれども、現在のところ明らかになっていない。この法案を読む限りでは、指針という言葉は出てきても、その中身が明らか。になっていないことだとおっしゃっているわけです。  しかし、これは現行のものがベースだというふうに先ほどおっしゃっているわけですから、少なくとも、この法案の中で考えられている、今後対策をとられようとする中身は、今ある指針を上回ることはあっても下回ることは絶対ないということを言い切っていただかないと困るわけですが、それはどうですか。
  47. 松原亘子

    松原政府委員 下回ることはありません。
  48. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 これは今後、まだこれからの委員会の中でも私たちやっていきたいわけですが、今のお約束だけはしっかりと受けとめましたし、守っていただきたいと思っております。  次に移りたいと思うのですが、「目的」と来れば、その対象になる人たちというのは当然はっきりさせなければならなくなってまいります。  定義として、それでは短時間労働者とは一体何かということが出てくるわけですが、どうも私は、この今ある指針からいけば、パート労働者という位置づけが変わっているのじゃないのか、そういうふうに思うのですが、それはどうですか。また、変える必要があったのでしょうか。
  49. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 この法律におきましては、短時間労働者の定義といたしまして、「一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者」という定義をいたしております。この点につきましては、確かに現行のパートタイム労働指針におきましては一カ月と一日が入っておりますが、ただ、当時の議論で定義というまでなかなか固められないということで、「意義」という形になっております。そこで、今回の定義におきまして、これは一週間で見ますから、一日の短い人は当然この中に入ります。  それから、法律的な面からいきますと、既に短時間労働者という考え方を取り入れております雇用保険法、障害者の雇用の促進等に関する法律あるいは中小企業退職金共済法、これらの法律におきまして、一週間を単位として定義をいたしております。また、労働基準法におきましては、これも基本的な考え方として、三十二条におきまして、一週間が所定労働時間の定め方の原則であるというような考え方をとっているわけでございます。  したがいまして、法律上の定義として明確に対処するという観点から、こういう先例等も見まして、一週間ということで定義をいたしておるわけでございます。  ただし、その定義の解釈、運用におきまして、現行の「意義」で決められております一カ月等の問題が、これまた下回ることのないようにきちんと対処するという考え方で解釈、運用していく、こういうことでございます。
  50. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 解釈や運用で今あるものを下回らないようにと言われても、解釈や運用はだれが見てもわかるのですか。例えば、そのときの行政の責任者の考え一つで解釈や運用というのは変わる可能性があるのじゃないですか。
  51. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 そういうことはできないわけでございまして、現行のパートタイム労働指針におきまして、一応「意義」という形で対象者を決めている、その中で一カ月という考え方があるわけでございますから、そういうものは引き継いでいく、こういうことでございます。  したがいまして、そういう考え方につきましては、やはりこれは通達等におきましてきちんと処理をして対処していく、こういうことになるわけでございます。
  52. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 その前にちょっと確認をいたします。  短時間労働者が何であるか、パート労働者とは何であるかというのは、やはりこの法律一つの柱だと思うのです。だから、お互いにあいまいなままでいくと、いろいろ問題は出てくると思うわけです。  これは、労働省が昭和四十五年に出されている「女子パートタイム雇用に関する対策の推進について」という局長通達です。その中で「「パートタイム雇用」について」という項があって、こういうふうに書いてあるのです。   現状では、パートタイム雇用についての概念の混乱が、近代的パートタイム雇用の確立のうえで問題となっているので、パートタイム雇用は、身分的な区分ではなく、短時間就労という一つの雇用形態であり、パートタイマーは労働時間以外の点においては、フルタイムの労働者と何ら異なるものではないことをひろく周知徹底するものとする。 身分的な区分ではない、短時間就労という一つの雇用形態で、それ以外何も変わらないよというふうにここで言い切っているわけですけれども、この考え方は今も変わらない、こう考えていいわけですね。
  53. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 おっしゃるとおりでございまして、その考え方は変わっておりません。  したがいまして、この法律労働時間が通常の労働者に比べて短いということを客観的なメルクマールとして定義をし、そういう方の現状の雇用管理について通常の労働者と異なった雇用管理が行われているという実態を踏まえて、この法律による対策をとる、こういう考え方をしているところでございます。  したがいまして、いわゆる疑似パートと言われる通常の労働者と同じ労働時間で名前だけパートタイマーと言われているような方、これはいわば身分的な問題でございまして、こういう方についての対策は、ここでは別の観点から検討すべき課題というふうにとらえているところでございます。
  54. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 もう一つ確認をしたいのですけれども、これはパートタイム労働指針が出るときですが、平成元年の通達では、   短時間性の程度に関し、「相当程度短い」としたのは、パートタイム労働者の概念が必ずしも定着しておらず、パートタイム労働者がどのように整序されるのか、今後の動向を見守る必要があり、現段階において画一的、一義的に定義することが困難な面が多いことによるものであること。 とした上で、したがって、「相当程度短い」というのは、  通常の労働者の所定労働時間より一割から二割程度以上短いこと というふうにその時点で明らかにされているわけです。それも間違いありませんね。
  55. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 間違いございません。その後の経過を踏まえまして、今回法律をつくるにおきまして、対象者をきちんと定義いたしませんと法律対象としての対策がとれないわけでございますから、そういう意味で、客観的に通常の労働者より時間の短い方という定義をいたしまして、そういう方についての対策をとる。当時は、そこまではっきりした議論がなかなか進まない面がありまして、「意義」という形で、相当程度短い人を対象にやっていくという考え方でやってきているわけでございます。
  56. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 基本的に、身分の区分ではない、時間の問題だという考え方は変わっていない。そして、指針が出されたときの周知徹底の内容というものも変わっていない。さっき疑似パートの問題もそちらの方からあったわけですが、指針が出されて、そして、その時点で相当程度短い労働者で、しかもそれが通常の労働者よりこういうふうに短いんだということが明らかにされた段階で、なおかつ、それが約四年という経過をたどってきた中で、相当程度短い労働者というのが社会一般に概念として定着したのじゃないのか、そういうふうに私は思うわけです。  だから、今言われた疑似パートと俗に言われる人、通常の労働者とほとんど同じ働き方をしている人については「通常の労働者としてふさわしい処遇をするように努める」ということも、これまた指針で具体的に書かれたことによって問題点が非常にはっきりしてきている。だから、目指すべき方向がはっきりしてきた、そういうふうに私自身は受けとめているわけです。  「相当程度短い」ということを定義することによって、なおかつ、通常の人と同じような働き方をする人は本来通常の労働者として扱う、そういうことが書かれたことによって改善する点というのが明らかになった、私はこういうふうに思っているわけです。  この指針の果たしてきた役割というものを一体どういうふうに受けとめておられるのか、それをお尋ねしたいと思います。
  57. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 指針におきましては、御指摘のように、「意義」として「相当程度短い」という形にいたしまして、なおかつ、相当程度の範囲を超えるけれども通常の労働者より短い人、こういう方については当面その指針の対象として対策をとる、それからそういう方、ほとんど通常の労働者と同じ労働時間の方については、それは通常の労働者として考えるべきであるというような趣旨を指針で書いているところでございますが、今回の考え方の整理としましては、短時間労働者の定義としましては、今言った、相当程度を超えて通常労働者より短い方も含めてこの短時間労働者対象入れるということでございます。ただし、指針におきまして現行の指針を下回らないという意味は、短いけれども通常の労働者とほとんど同じ方については現行の指針と同じような考え方で対処すべきである、そういう意味で、今後の検討課題としまして新しい法律に基づく指針においてもそういう考え方を盛り込んでまいりたいと思っております。
  58. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 私の地元でも、パートで働く人たちが、とにかく少しでも労働条件改善させたい、なかなか労働組合を組織するのも難しいのですけれども、努力をして皆さん組合を組織をされてきている。大抵は一つのところに一人がせいぜい二人ということがほとんどですけれども、その人たちが地域でまた集まってお互いに支え合って運動をしている。その人たちが自分たちの働き方を調査をしようということでアンケートをとったり、あるいはそういう活動ができるということも知らない人のために、例えば一一〇番というふうな取り組みもしたり、随分努力をされている。そういう中でも、パートと言われているけれども、実際には時間も仕事の中身もほとんど通常の労働者と同じ、あるいはもっと長く働いている人だって出てきているような状況だというのは、そういう結果の中で出てきているわけです。  労働基準法が本来はどういう働き方をしている人にだって基本的には適用されるということは、当たり前のことなんだけれども知られていない。知られていないことによって、あるいはパートという名前がついたがためにまたいろいろな差別もされている。その人たちがこの「定義」の中で救われていく対象となるのかどうか。特に、疑似パートと言われている人たちがどういうふうに扱われていくのかどうか。  何とか指針で、今表現をしているようなことはどこかに通達なついろいろな形で入れていくというふうには再三おっしゃるのだけれども、我々は通達をつくる段階でその場に居合わせることができない。働く人もさらに居合わせることはできない。とすれば、やはり本体の中で何らかの表現をしてもらわなければ、疑似パートと言われる人たちは救われないのじゃないかと私は思うのですが、それはどうでしょう。
  59. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、現行の指針でそういう趣旨が書いてあるわけでございますが、新しい法律に基づく指針におきましても現行の指針を下回ることがないようにいたしますということでございまして、指針の中でそういう趣旨を踏まえて対処していきたいというふうに考えております。
  60. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 それは絶対にちゃんと書きますということを約束していただいたというふうに受けとめておいていいのでしょうかね。それはまた具体的に、間違いなくやりますというふうに審議の中でぜひ答えていただきたいと思うのですが、もう少しお尋ねをいたします。  さっき労基法の三十二条を引用されて、一日の時間の問題をおっしゃっておられた。私は、今回一日という単位が外れているのを随分心配をしています。それは、ついこの間審議された労働基準法の中でも、これは男性女性もそうですが、やはり私たちが一番人間らしく働く、人間としてゆとりを持った生活をしていくということを考えれば、一日にどれくらい働くのか、一日これ以上働いてはいけないという規制があることがまず必要だ、生きている人間はリズムがあるのだからそれを大事にするべきだということを、しつこく言わせていただいているわけですね。  さっき岡崎トミ子議員の方からもいろいろな指摘がありましたけれどもパートタイマーで働いている人、いろいろな言い分があるのでしょうけれども、でもパートでしか働けない、あるいはパートだから何とか働いていける、そういう表現の中には、やはり家庭との両立ということも出てくるし、あるいは自分の健康状態と両立をさせるということも出てくるし、これはパートで働く女性ばかりでなく、本来的にはみんな自分の持つ能力に応じてというか、ゆとりを持って働くことができるということを目指していくわけだけれども、それは社会的な条件、もろもろの中で、基本的に女の人は今パートでしか、あるいはパートだからという働き方を余儀なくされているというふうに思うわけですよ。  ところが、全体に労働時間というのは随分変形制だとかというものも入ってきて、基本的に私たちが考えてきた一日二十四時間、八時間、八時間、八時間のリズムが崩れてきている中で、パートの人たちも、一方では基本的に労基法が適用になる。例えば変形労働時間も適用になるというふうによく言われているわけで、そうするとパートの人たちに何の歯どめもなく、何かトラブルがあったときに何の救済もなくて、そういう中に組み込まれていくのは実に困る、せめてやはり一日の単位というものが特にパートの人には今必要だ、私はそんなふうに思っているのです。  さっきも説明をされているわけですが、一日の労働時間というものを単位にすることをどうして外さなければならないのか、変わらないのであれば、なぜ一日というものを入れていてはいけないのか、私には納得ができませんので、答えていただきたいと思います。
  61. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 一日の所定労働時間が短い方というのは、一週間単位で見ますと、これは短い中に必ず入ります。したがって、そういう意味からこれは定義としては削っているわけでございます。  もう一点は、一日の所定労働時間が通常の労働者より長くて、かつ、出勤日数が少ないために一週間当たりで見ると短い人もいるわけでございますが、これはもう現行の指針におきます考え方あるいは今回の法律におきます考え方でも対象に入ってくる、こういうような整理でございます。
  62. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 どうもよくわからないのですけれども、さっき三十二条を読んでいただいたときに、三十二条、その後の②とついている部分があるでしょう、それも読んでおいていただかないと困るなと思ったのです。  この間、私たちがこの法律の説明を受けてきたときに、ほかの法律も含めて大体今労働時間というのは一週間が単位だから、それにそろえて問題ない、一日も一週間の中に入るから、そういうふうに言われているわけですが、労基法の三十二条には、さっきおっしゃった「一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」の続きに、「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。」こういうふうに書いてあるわけですよね。これはいつだって、人間の働き方は一日を単位に物を考えるということは基本的なことで変わらないのだということが、ここにあると私は思っているのですよ。だから、説明していただくのはいいのだけれども、やはり最後まで言ってもらいたい。  一日というものにこだわりながら働いている、そういう人たちがたくさんいるのだということ、これを労働省はちゃんと受けとめていただかないと、逆に言うと、例えば指針をつくっていったって、社会的な条件をもっとそろえなければいけない面もあるわけですね。そのときに、あくまでも一日が単位だということが欠けていくと、その整備そのもの、社会的なその整備だって随分違ったものになってくると思いますので、これは改めて申し上げておきたいと思います。  今回の「定義」の中でもう一度お尋ねをしておきますのは、さっきから現行の指針というか、指針の一番最後に書かれてある疑似パートの部分、これは先ほどの答弁からいくと、何らかの形で保障していくということだと思うわけですが、それは例えば本体、法律そのものの中で何らかの形で入れてほしいと私たちは思うけれども、指針の中で入れられるのか、あるいは例えば通達という形で入れられるのか、そのあたりは事務サイドとしてはどういうふうなものを今頭に描いておられるか、そのあたり教えてください。
  63. 松原亘子

    松原政府委員 ずっと御説明いたしましたように、今回の法律は、通常の労働者と比べて所定労働時間が短い方はすべてカバーいたしているわけでございます。  そういう労働者の中で、通常の労働者とほとんど同じ時間働いておられ、就業実態から見ても通常の労働者とほとんど同じ状況にあるという方をどうするかということは、当然新しい指針をつくる場合にも問題になるわけでございます。それを労働時間が相当程度短い方と同じにするのかどうか、そうではなくて、特別にその方々については配慮すべき事項を書くかどうかということになろうかと思います。  その点につきましては、私ども今回この法律が成立しました後に定める指針においては、相当程度短いということではない、相当程度ではない短さというのでしょうか、かなり通常の労働者に近い長さ働いておられるけれども通常の労働者と比べると労働時間が短いという方については、それ以外の労働者の方、つまり相当程度労働時間が短い方とは別に書く必要があるのではないか、別の配慮事項を書く必要があるのではないか、それは現在この指針に書いておるこのことを踏襲をいたすということでございますので、あくまでも指針の中に書いていくということを今は考えているところでございます。     〔委員長退席、永井委員長代理着席〕
  64. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 それは今後私たちもまたいろいろな要望をしていきたいと思いますし、どういう形でというものも、できるだけたくさんの人が、だれが見てもわかる、これを見ればわかるというふうなものを実は私たちは求めているんだということを申し上げておきたいと思います。その線に沿ってやっていただきたいと思うのです。  次に、関係者の責務といいますか、では実際にだれがどのようなことをしていくのかというところなんですが、その前に、せっかくですから、いろいろな皆さんの声というものを聞いてほしいなと私は思うのですよね。  さっきも紹介させていただきましたが、パートで働く人たちは、一生懸命組合もつくって何とかよくしましょうというふうに頑張っています。その人たちがパート一一〇番というふうな取り組みを各地でやっている。  これはたまたま神戸でやった一一〇番の中で持ちかけられている相談というか、電話での悩みなんですね。例えばこんな人がいますよ。ホテルに勤めている人なんですね。「会社経費を二億円削減しなければならないと言い、そのためパートの勤務時間を一律に五時間にされた。」実はそれまでは、特に十二月というふうなときは「私は月に二百二十時間働いた。収入が半分になってしまって困る。」パートだとはいえ、忙しいときは二百二十時間も働かしている。ところが、ちょっと景気が悪くなって、会社がそのあたりの雇用管理というかやらなきゃならなくなると、いきなり五時間だというふうに切られる、こういうことが起きて、自分の生活設計上の問題もあるんだというふうなことが言われています。  あるいは、「拘束時間以外に残業を強いられることがある。」何とかしてもらいたい。  あるいは、雇うときは「会社が長期契約を約束したのに、首だと言われた。」何の手だてもない。  それから、「派遣先と九月七日から一年間の雇用契約を結んだが、「不況による受注減」を理由に一月二十五日で一方的に契約解除された。その後何の連絡もない。」困っている。  「業績悪化のため、事業所を昨年末で閉鎖。十六年間会社のために働いてきたのに退職金すらない。解雇された時点で予告手当の支給なし。会社は「パート社員」だからどうしてもいいと言っている。私はパートで働かされていると聞いたことがない。」十六年間働き続けてきて、自分は正社員だと思って働いてきている、そういうふうなことを電話で言われている。  あるいは、「土曜日に出ていくと、ちょっと二階に上がってくれと言われた。「こういう不景気の時だから辞めてもらいたい。明日から来なくていい」と。渡されたのは三万円。」  こういうことが本当に綿々と言われているわけですね。  一方で、例えばパートの人たちにアンケートをとると、皆さん本当に結構長時間働いている。通常七時間、八時間勤務の人も結構たくさんいる、残業もやっている、こういうのがずっと出てくるわけですね。  一番最初にもお尋ねをしたように、だから、少しでもパートというだけで不当な扱いをされないために、具体的にその原因を取っていこうということが求められているわけですが、今聞いていただいたように、非常に不安定な雇用の形態、条件も悪い、これに対してどうにかしてほしいというふうに声を上げたときに、パートの人たちはまずどうすればいいのでしょうか。どうにかしてほしいという声をどこへ持っていったらいいのですか。どこがどういうふうに解決をしてくれるのでしょうか。それをまず教えていただきたいと思います。
  65. 松原亘子

    松原政府委員 今先生いろいろな声を御紹介になられましたので、個別にそれに対してということではないのですけれどもパート労働者方々が持っておられる声というのはさまざまあるわけでして、それに応じて対応する行政機関というのもそれぞれ違ってくる場合があるわけでございますが、今伺っておりまして、やはり基本は労働契約を結ぶときにあいまいなままにやって大きな問題になっていることが非常にクローズアップされているのじゃないかというふうに思いました。十六年働いておられる方が正社員と思っておったのにパートなんだからあしたからというような話は、まさに契約を結ぶときに、きちっとどういう形で結ぶかということであろうかと思います。  問題が起こった場合にどうするかということにつきましては、先ほどちょっと短時間労働援助センターのことを申し上げましたけれども、いろいろ錯綜した問題をほぐしていくために、とりあえずどこかで相談を受けてもらうということがやはり非常に重要なことではないかというふうに思います。場合によりましては労働基準監督官によってしか解決ができないという問題もありましょうし、そうでない問題もさまざまあろうかと思いますけれどもパートタイム労働者方々が気楽に利用できる、気楽に相談に来られるというものとして、私どもとしてはパートタイム労働援助センターの機能を充実させて、そこでそういった声を一次的に受けとめていきたいというふうに思っているわけでございます。
  66. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 例えば、労働者側が余りよく知らなくていいかげんな約束で働き始めた、だから問題が起きたということもあるでしょう。だけれども、ほとんどの場合は、雇う側の人たちが最初にあなたにはこういう条件で働いてもらいたいということをきちんと言う、それによって知ることができるわけですから、それで自分がそこで働くかあるいは嫌かということを言えるようになるわけですからね。そこの部分はやはり事業主サイドの方で、きちんとやらなければいけないこと、あるいはやってはいけないこと、それがどれほど明らかにされるがが実は改善のかぎだ、私自身はそういうふうに思っております。  そうだとすると、今回、その三条の「事業主等の責務」というものの中に、最初「目的」のところでもお尋ねをしましたけれども、「適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理改善を図るために必要な措置」というものが出てくるというふうに言われております。そうすると、一体何々がその中に上がってくるのか、かつまた、例えば労働条件の中にはこれこれがあり、そして、この部分についてはこういうことはやってはいけない、あるいはこうしなければいけないということがどれほど具体的に出てくるのか、それを出していただきたいと思います。
  67. 松原亘子

    松原政府委員 この三条の事業主の責務につきましては、具体的にはその後の六条で労働大臣が指針を定めることにいたしているわけでございますが、その指針に定められた事項が具体的な事業主の責務の内容として出てくるわけでございます。  それで、これは先ほど来御説明しておりますように、現行のパートタイム労働指針を踏襲して私どもはやりたいというふうに考えておりますことからもう少し具体的に説明させていただきますと、まず、労働条件の明確化ということで、雇い入れ時に雇入通知書をきちんと交付をするということ、パートタイム労働者に適用される就業規則をきちんと整備をするということ、それから、労働条件の適正化ということにつきましては、労働時間それから期間の定めのある労働契約の場合の予告の問題ですとか、賃金、賞与及び退職金の均衡等の問題ですとか、福利厚生施設の活用の問題等々につきまして、私どもはこの指針の中で具体的に事業主の責務として明らかにいたしたいというふうに思っているわけでございます。
  68. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 そうすると、例えば今のこの指針で上がってきている各項目、労働条件の明確化というところから項目ごとに上がってきていますが、それは全部その項目は生きてくるということですね。項目ごとに出てくるというふうに受けとめていいわけですか。
  69. 松原亘子

    松原政府委員 具体的に指針をどういう形式で定めるかということまではまだ十分は検討いたしておりませんが、内容的には現行指針に盛り込まれていることを下回ることのないように新しい指針を策定いたしたいというふうに思っているわけでございます。もちろん、皆さんになるべくわかりやすいように出したいというのは当然のことでございます。
  70. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 その際に、岡崎トミ子議員の質問の中にもありましたが、往々にして事業主の側というのは、これは局長の答弁からいくとその数はやや少ないというふうにおっしゃっておられたのだけれども、やはりパートを使うことの理由は人件費が安いということ、これはたとえ二割であれぬぐえない事実だと思いますね。  それで、なおかつ、仕事量がふえたとか、あるいは一日の時間で仕事の多いところができたからだという答えは、仕事がふえたのだったら、業務量がふえたのだったら、では正規の職員を、正規の社員をふやせばいいと普通は考えますね。けれども、正規の社員をふやすよりもパートの方が安いから、業務量の多さを乗り切るためにパートを雇う、これは人件費が安いからというのが現実のところの理由じゃないでしょうかね。  そういうふうに見ていくと、項目を挙げてこういうふうに扱わなければいけない、これこれこういう項目は差別をしてはいけない、均等にちゃんと扱わなければいけないということを挙げても、守らなくたって、ひょっとしたらですよ、別にどうということはない……。私は、大臣も覚えておいでだと思うのですが、労基法の審議のときにも、今の会社側の人たちはいい人もいるかもしれないけれども、悪い扱いをする人は、基準監督署からいろいろ意見を言われても、そんなものは参考程度だと労働組合との団体交渉の場でも堂々と言ってのけるような会社もあると。  それで、そのときにこのパートで働いている人たちは、せっかくその指針に上がってきたとしても、ではこれを守らなければどうなるのか、自分でしっかり見た場合に明らかにこれに違反しているじゃないかというふうに思ったときに、それではどうすればいいのですか。
  71. 松原亘子

    松原政府委員 パートで働いている労働者の方が、自分の企業におけるいろいろな扱いが、この新たな法律に基づく新たな指針に書かれてあることとどうも違うというふうに思われたら、それは御遠慮なくパート労働援助センターに言ってきていただくのももちろん結構でございますし、具体的な事項にもよりますけれども労働基準監督署に行っていただくということもあろうかと思います。  ですから、私どもとしては、パートタイム労働者方々にも指針の内容というのは当然知っていただきたいというふうに思うわけです。事業主の責務ということで定め、事業主が守るべき事項として指針を定めるわけでございますけれども、当然のことながら、パートタイム労働者方々も十分知っていただきたいというふうに思うわけでございます。
  72. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 例えば解雇されたときに、どうしようもなければ労働基準監督署に行くわけですよね。なかなかそこでも現実には解決ができておりません。ほとんどの場合、その解雇は正当か不当かというところでもめます。そして、ほとんどの場合、まあ働いている人の方が弱いというかあきらめることが多いです。それでも行って頑張るときには、ほとんどの場合は裁判になっています。裁判になると随分時間もかかるし、お金もかかります。パートの人たちがそこまでやっていこうとすれば、並み大抵のことではないわけですよ。基本的に労働組合がないところの人だっていっぱいいるわけですから。  その際に、そこまでいかないまでも、例えば企業の側の事業主の責務として言われることが、努力することであるのか、やってはならないことであるのかでは、行政の側が事業主の側に指導する際に、あるいは助言をする際に、もう私たちは勧告もしてほしいと思うのだけれども、その際に、随分違うのじゃありませんか。努力することであるのか、やってはならないことを決めておくのかでは、随分違うのじゃありませんか。
  73. 松原亘子

    松原政府委員 このパートタイム労働指針に基づいて事業主が具体的にやらなければいけないことが定められるわけですけれども、それにつきましては、三条に書いてございますように、「事業主は、」最後は「努めるものとする。」こういうことになっているわけでございます。そういう意味では、事業主がそういう指針に定められた事項を守るように最大限の努力をするということがこの法律の内容になっているわけでございます。  つまり、こうしてはならないとか、そういう意味での強行法規というものではないというのは御指摘のとおりでございます。しかしながら、この法律に基づきまして労働大臣が必要に応じて助言、指導をやるといったような規定も盛り込んでいるところでございますし、また、強行的な措置ではなく、ソフトな形でパートタイマーの方々が持っておられる諸問題を解決するというような方策も盛り込んでいるところでございまして、私どもとしては、これで実効がないということではないのではないかというふうに思っております。  例えばちょっと別の話で恐縮ですが、男女雇用機会均等法につきましても、あれが審議されましたときに、努力義務というのは意味がないのではないかとか弱いのではないかという御指摘がございました。もちろん一気に世の中が変わるというところまでは至っておりませんけれども、あの法律ができたことで多くの企業があれを遵守する、女子に対する門戸を開いていくというような効果が実態的に出てきておりまして、私どもとしては、努力義務だから効果がないとかいうことは、そういうふうには簡単には言えないのではないか。  私どもとしては、法案が成立しましたら、この法律の適正な施行を図るということによって実効が上がるように努力をしてまいりたいというふうに思っているわけでございます。     〔永井委員長代理退席、委員長着席〕
  74. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 均等法の話が出てきましたけれども、それは現実をどういう目で見るかで随分評価が分かれるところだろうと思います。確かに、努力規定だけれども少しずつ改善されるということは、それは否定はしません。変わらなくっちゃうそですから。だけれども現実に均等法にどうも違反をしているのではないか、そういう声が上がったときに、例えば今各地の婦人少年室はなかなかそこに対応し切れない面がある。これは一度一般質問のときにもさせていただいていますから御承知だろうと思います。やはり一方の当事者を引きずり出すこともなかなかできない。そういう中で均等法に対する不満を持っている女性というのは随分たくさんいるということを私は忘れていただいちゃ困ると思います。  確かに、お互いに努力をしながら少しずつ改善するというのは、これはみんなやっていることです。だけれども、いざトラブルが起きたときにそれで救えないものがたくさんあるからこそ、やはりやってはならない、こういうことについて差別してはならないというのはできるだけはっきり出してはどうか、その方がより改善できるというふうに私たちは言っているわけだし、働いている側の人たちはほとんどの人がそう思っているわけですからね。  だから、努力があるいは禁止かということで変わらないと言われても、これは私は変わるとしか言いようがないのです。例えばいろいろな審議会の場所なんかで、ここは必ず意見がぶつかっているところですから。意見がぶつからなくってそういう論議になるんだったら、これはまた話は違うと思いますよ。必ず禁止をされるのは困るというものがあって、そして、いや禁止規定にしてもらわなければうちの職場ではちっとも変わらないという意見がぶつかって、こういう論議になっていることだけは忘れていただきたくないと思います。  では、また少しずつお尋ねをしてみたいと思うのですが、さっき雇入れ通知書の話なんかも出てきましたけれども、私は、この指針の中身を、本当を言うと国会の場所で、委員会で指針のあり方について論議されてもいいと思っているのです。それは、一番公の場所でというか、だれもが聞こうと思えば聞ける場所で論議がされるからだと思います。まあ審議会でいろいろな立場の人が出てきて意見を述べていただくわけだから、一方的だとかいうふうなことはないと確信をいたしますけれども、しかし、多くの当事者は見えませんので、私は本来は指針の中身になる内容というものもこの場で実は論議をしていただきたい、せめてそういう経過の報告は行政側としてはやってほしいというふうに思っております。  その要望をさせていただいた上で、この項目を少しずつたどっていきますけども、雇入通知書で一番最初に期間が出てきますよね、雇用期間が。さっき十六年間働いていた人の話を私紹介させてもらいましたけれども、それ以外にでも随分長く働いている入っているわけですよ。勤続年数が三年以上、四年以上、七年以上。二十年以上の人も、例えばこれは神戸でとったアンケートですけれども、出てきているわけですね。ところが、不況になるとこういうふうに何年も働いている人でも、雇用契約で半年ずつくらいの契約が繰り返し繰り返しされて、例えば十年働いた人がある日、ある不況の時期に陥ったときに、あなたいつまでだからやめてというふうなことが、実際にはたくさん起きているわけですね。これはやはり明らかに不当な扱いではないのか、そう思います。  パートの人だけではなくて雇用契約上の問題というのはあるわけですけれども、しかし、この雇入通知書に例えば最初に雇用期間の欄が出てくるために、働きに来て、とりあえず一年だけれどもあるいは半年だけれども繰り返しまた更新しますからという、その辺の口約束で何となく働き始めて首になるというふうなトラブルが起きていることを、じゃどうすれば防ぐことができるのか。  基本的に、よほどの理由がない限りパートで働く人にだって本当は期間の定めというものは要らないのではないか。むしろ期間の定めは限定するということを、例えば今回のこれから考えられる。指針の中ででも検討されてはどうでしょうかね。妙に、終わりの期間をつくることによって首を切られるというふうな場面が出てくるとしたら、それを防ぐには例えばどうすればいいか、そういう方法もあるのではないかというふうなことは検討されないのでしょうか。
  75. 松原亘子

    松原政府委員 労働契約の内容として雇用期間についてどのような定めをするかということは、基本的には労使の自主的な決定にゆだねられるべきことだというふうに私ども考えております。  ただ、雇入通知書の中において書かれていることが守られないとか、そういうことは非常に問題であるわけですけれども、雇い入れられるときに、もちろん事業主もどれだけの期間-期間の定めがなしというのはありますけれども、定める場合にはいつからいつまで、そして更新があるのかどうかといったようなことについても明らかにすることは必要だろうというふうに思っておりますけれども、期間を定めた雇用契約を結ぶべきではないとか、そういったことまでは行政として介入すべきことではなく、それは労使が自主的にお話し合いをいただいて決めるべきことではないかというふうに思います。もちろん労働基準法上、期間の定めをする場合には一年を超える雇用契約の定めをしてはならないということはございますけれども、それを除きましては、基本的には労使自治にゆだねるべきことだというふうに考えております。
  76. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 期間の定めをしてはならないというふうにはできないにしても、期間の定めをするような契約というものは、例えば、もう本当に一時的な季節的なものというふうに限定をされるというふうなものがわかるような方法はないのだろうか、そんな検討もできないだろうかということを申し上げているわけですが……。
  77. 松原亘子

    松原政府委員 なかなか難しいかとは思いますが、ちょっと勉強させていただきます。
  78. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 ぜひそれは検討事項にしていただきたいと思うのですよ。  それはパートの人だけではなくて、契約上の問題はこれから随分論議しなければならないことであるということはよく承知をしておりますが、現実の問題として、短期雇用の形式が何度も何度も繰り返されていっていて、そして、結局雇用の調節をする際にまずパートの人たちがその雇用契約によって一番に解雇をされるというふうなことが現実にあり得るわけですから、これはいろいろなトラブルの物すごく大きな理由になっているわけですから、これを何らかの形で守る、そういう手だてはないものかということを勉強していただくというか、考えていただくというか、これはぜひお願いをしておきたいと思うのです。いつもこの契約があって、そしてそれを理由に首を切られる、こういうことがあるわけですので、ぜひお願いをいたします。  もう一つは、例えば非常に長期にわたってパートで働いている人がいる、その一方でその企業が毎年正規の職員の新規採用などをやっている、その際に、パートで働いている人が、自分は正規の職員で働きたいのだ、正規社員で働きたいのだ、こういう希望があるときに、パート労働者を優先的にその会社に雇ってはどうか、こういうことを盛り込むことは不可能ではないと思うのですが、それはどうでしょうか。
  79. 松原亘子

    松原政府委員 現行指針におきましては、パートタイム労働者から通常労働者に変わりたいという方につきましても若干書いてございまして、  使用者は、通常の労働者を募集しようとするときは、現に雇用する同種の業務に従事するパートタイム労働者であって通常の労働者として雇用されることを希望するものに対し、これに応募する機会を優先的に与えるように努める ということが書いてございまして、基本的にはこの考え方を踏襲いたしたいというふうに考えているところでございます。
  80. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 ぜひそれを盛り込んでいっていただきたいと思います。とどのつまりといいますか、例えば、いろいろなトラブルがあったりそれを受けて相談に駆け込んだりあるいは会社側と話し合いをしたり、そういった手だてをお互いにやった結果、特に行政の方は今回は援助センターというものも設置をして、事業主に対していろいろな指導、助言をする、こういうふうに言われているわけですけれども、それが実現をすることができる、指導、助言が確実に形になるというのか、事業主がきちんとそれを実行に移すということを働いている側は最終的には一番強く望んでいるわけですね。だから、我々は単なる指導ではなくてもう少し踏み込むことができないのか。禁止で罰則という方法を我々は一番望むけれども、それにいかないまでも、もう少し行政として強い態度を事業主に求めることはできないのか。その担保がこの法律の中にあるかどうか、このことを最終的には見ているわけですが、この辺はどうでしょうか。
  81. 松原亘子

    松原政府委員 指針に盛り込んだ事項については、もちろん事業主が自主的にその実現に向けて努力をしていただくということになるわけでございますけれども、その努力が十分でないとか、パートタイム労働者方々にとって問題である状態が放置されているといったようなことがある場合には、法律の中にも規定してございますけれども労働大臣が必要な場合には助言、指導するという規定を置いてございまして、この規定というのは、私どもとしては非常に重みのある規定だというふうに思っております。  先ほど申し上げましたように、非常に問題だというふうに考えた場合には、これに基づきまして事業主に対して適切な指導、助言をやっていきたいというふうに思っているわけでございます。
  82. 岡崎宏美

    岡崎(宏)委員 大臣、大臣の指導、助言は大変重みがあるということなのですが、私、実際自分でも働いてきてなかなか法律そのものが自分の身に直接こんな形で生かされていると思える場面というのは少ないですね。結構みんな身を削って働いているわけです。しかし、やはり不当に解雇されるというふうに意識したときに、その不当性をめぐって随分時間をかけて裁判などでもやっていくわけですけれども、そこまでいかない前に事業主改善をさせることができるかどうかは大臣の指導、助言にこれからはかかってくる、こういうふうにこの法律でいく限りは受けとめられるわけですね。  したがって、まず一番に、働いている人が不当に扱われることがないようにということを目的に置かれて大臣が指導、助言をされる、これが随分必要になってまいりますので、私は、最後にそのあたりをお伺いして終わりたいと思います。その辺はいかがですか。
  83. 村上正邦

    ○村上国務大臣 先ほどから非常にきめ細かな、さすが女性議員ならではの、また、パートという性格的に女性が非常に多い、こうしたことについてお互い相通ずる心理的な、そこらあたりの機微に触れた御質問を聞かせていただきました。  この前、参議院の予算委員会でしたか、これはパートじゃございませんが、人材派遣、この扱いが資材部に置かれているということを、ある党の議員からこういう扱いはどう思うかという質問を受けたときに、私は憤りを感じます、こうお答えをいたしました。要するに、人を人とも思わないこういう扱い、パートにおいてもそうした不当な扱い、いろいろ問題がたくさん指摘されている、こうしたことを是正しなければならない、それが我々労働省の置かれた立場だ、こういう認識に立ちましてこのパート法案を提出させていただいているということ、この基本認識だけはひとつ御理解を賜っておきたい、こう思います。  それから、大臣の監督指導ということですが、実はこれもつい最近でございましたが、ある御家庭の御婦人から私のところに、身障者の雇用の扱いについてある企業にこういう扱いをされた、これに対して大臣どう思うか、こういう切々たるお手紙をちょうだいいたしました。  私は、早速その企業責任者に電話を入れ、そしてまた労働省の担当の課長にもこの解決方について取り組むように、誠意を持って指導するようにということでおりましたが、一週間たち十日たっても先方からの確たる――その間窓口ではいろいろやりとりをやっておりましたけれども、どうも時間がかかり過ぎる。そこで、私は国会の合間を見まして、きょう午前中の国会の日程がないということを確認いたしまして、練馬の企業でございましたが車を飛ばして現場へ行って、現場に責任者に来ていただいて、いろいろとやりとりをいたしました。その結果、御両親もその結論に対しては非常に満足をいただいたわけであります。  このときも、現場へ参りましたら、その企業におきましてはちょうど御婦人の方々がたくさん仕事をなさっておられまして、たまたまお話を聞けばパート方々ということでございまして、二、三十分、そのパートで働いておられる御婦人、御婦人じゃない、女性の皆さん方と、パートのあり方についていろいろとお話も承ってまいりました。  パート方々は非常に明るくて、この仕事場においては不平だとか不満だとかさらさら感ずることができなかった。非常に希望を持って、安心してお勤めいただくことを……(発言する者あり)認識じゃありません、現実を申し上げているのです。聞いてください、まじめに僕は申し上げているのです。だから、私は、そういう現場に行っての、そういう現場の明るい職場の状況を見たということを申し上げているのでありまして、それですべてだとは申していないのです。  ですから、パートのこういう法案を今御提出申し上げているわけですから、現実的には、パートで働こうともどういう職場においてでも、やはり一人一人が自分の天分、自分の置かれたそうした環境の中で安心して働けるような職場をつくっていくことがぬくもりのある労働行政だ、私はこのことを強く訴え、労基法の改正の中におきましても労働行政の基本のあり方について申し上げてきたところでございまして、大臣の監督指導ということについての責任の重さは十分痛感をしておりますことを申し上げさせていただく次第であります。
  84. 岡田利春

    岡田委員長 午後一時三十分より再開することどし、この際、休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  85. 岡田利春

    岡田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。伊東秀子君。
  86. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 まず、政府案の中身に入ります前に、大臣にお伺いいたします。  我々四野党及び参議院民主改革連合が先に共同提案している法案があるわけでございますが、その法案は、まさしく政府がかつて昭和四十五年に出した通達その他にのっとりまして、要するに、この四十五年の通達によりますと、労働時間以外の要素を考慮しないで、パートタイマーについてもなるべく平等に扱うようにするという趣旨にのっとりまして四野党が共同提案いたした法案があるわけでございますが、その法案の審議の前に何ゆえに政府提案を出したのか、その我々の共同提案した法案と政府提案の趣旨がどう違うのかについて御答弁願います。
  87. 村上正邦

    ○村上国務大臣 野党法案の内容は承知いたしておりますが、労働省といたしましては、パートタイム労働者の処遇の確保等に関し、先ほども議論がなされておりましたが、罰則等による規制を行うことやパートタイム労働者について差別的取り扱いを禁止することについては、社会的コンセンサスが得られていないことから適当ではないと考えており、パートタイム労働者の多様な就業実態意識を踏まえた適正な労働条件の確保及び雇用管理改善を図ることを内容とする政府法案を提出いたしたところでございます。
  88. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 といたしますと、罰則等の問題だけなのか、基本的な法の立法趣旨において全く変わりがないというだけの問題なのか、その点はいかがでしょうか。
  89. 松原亘子

    松原政府委員 私どもがこれまでやってまいりましたパートタイム労働対策、かなり前からのものもございますけれども、四十五年に出しました通達において明らかにしました考え方は、賃金につきましては、パートタイム労働者についても同種の労働者との均衡を保つようにということを明らかにいたしました。もちろんパートタイマーというのは、身分的な区別ではなく、労働時間が短いという点を除いては何ら変わることがないということは書いてございますが、それはその当時のパートタイム労働をめぐる世の中の認識を反映いたしまして、例えば労働基準法ですとか最低賃金法、そういったものも含めてパートタイム労働者には適用がないのではないかというふうに一部誤った考え方などもかなりあったわけでございます。そういうことから、まずそれを改めなければいけないという趣旨で出したわけでございます。  それで、均衡の問題につきましては、今申し上げましたように、賃金について同種の労働者との均衡云々ということが書いてございますが、それにつきましては、今回の法案に基づきまして私どもが策定を考えております指針の中におきましても、午前中にも御答弁申し上げましたけれども、現行の指針を基礎としてそれを下回らないということで対応したいと申し上げました。そして、現行指針の中には、賃金、賞与、退職金等について、就業実態、同種の労働者との均衡を考慮するようにということが書かれているわけでございまして、基本的に考え方としてそういう考え方は流れております。  ただ、基本的な違いが罰則だけということでは必ずしもございませんで、野党法案の中に書かれております基本的な柱は、パートタイム労働者をフルタイム労働者と差別をしないということがポイントであろうかと思います。その差別かどうかということについては、私どもはやはりこれは判断がなかなか難しいのではないか。パートタイム労働者労働時間が短いということではございますが、短いから労働時間に比例していろいろなことが違ってくるだけだということではございませんで、それに伴う仕事の内容ですとか、責任の度合い等々、さまざまな面においての違いが出てくるわけでございます。  そういうことから、差別ということについては、たとえパートタイム労働者七フルタイム労働者の取り扱いは違う点がありましても、社会的に許容されない差別であるということまではなかなか世の中のコンセンサスができ上がっているとは言えないのではないかということが、考え方の違いとしてあるわけでございます。
  90. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 といたしますと、今回の政府案と野党共同提案の大きな観点の違いは、現在正規の労働者に適用されているさまざまな制度、慣行、それとパート労働条件実態とは差別には至っていない、それぞれの職種や勤務態様に応じた区別であるという観点からの法律というふうにお考えということでしょうか。
  91. 松原亘子

    松原政府委員 パートタイム労働者とフルタイム労働者の取り扱いの違いがすべて区別であると言い切れるかどうか、これにつきましては個々に検討しなければいけないことがあろうかと思いますけれども、ただ、現行のパートタイム労働指針に基づきまして私どもがいろいろ指導しておりますことに、パートタイム労働者の中でも労働時間が相当程度短い者でない短時間の労働者、つまり、パートタイム労働指針の一番最後の部分に書いてあるところですけれども、ほとんど通常の労働者労働時間が同じ労働者であって、就業実態等についてもほとんど違いがないという労働者であって、労働条件等について差がある者については、なるべく通常の労働者と同じにするようにという考え方はあるわけでございます。  そういうことから、全く考え方が違うというものではなく、基本的にはパートタイム労働者とフルタイム労働者のいわれなき違いというのはなくしていかなければいけないという基本的な考え方はあるわけでございますけれども、じゃ、具体的にどういったことが社会的に許容されないものかということについてまでは、なかなかまだコンセンサスができていないのではないかという意味でございます。
  92. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 午前中の御答弁、さらには今大臣及び政府委員の方がお答えになった内容では、通達、指針、それは今回の法案にも貫いているということでございましたね。  としますと、昭和四十五年の労働省婦人少年局長通達におきましては、この通達の目標というところにこういうふうにうたっております。  パートタイマーの保護と労働条件の向上をはかり、パートタイマーが本格的労働力として企業の雇用体系の中に正しく位置づけられることを促し、もって近代的パートタイム雇用を確立することを目標として、 しかし、現状ではパートタイム雇用についての概念の混乱がさまざまな問題を引き起こしているので、  パートタイム雇用は、身分的な区分ではなく、短時間就労という一つの雇用形態であり、パートタイマーは労働時間以外の点においては、フルタイムの労働者と何ら異なるものではないことをひろく周知徹底するものとする。この通達の目標及び平成元年六月二十三日の労働省事務次官通達においても、なぜ通達を出すか、及び、この同じ日に指針を出しているわけですけれども、その指針を出す趣旨として、要するに、パートタイム労働者が重要な労働力の一つとして増加傾向にある、  しかし、パートタイム労働者の処遇及び労働条件等については、雇入れに際して労働条件が不明確であること、パートタイム労働者就業実態に配慮した雇用労務管理が行われていないこと等種々の問題点指摘されてきた。 こういうことの改善のために考慮すべき事項の指針を出すというふうにはっきりうたっておりますが、この二点については今回の法案についても制度趣旨、立法趣旨として貫いているというふうに確認してよろしゅうございましょうか。
  93. 松原亘子

    松原政府委員 基本的に御指摘の点は今回の法案の中に貫いているものでございます。
  94. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 重要な点でございますので、大臣にも御答弁をお願いいたしたいと思います。
  95. 村上正邦

    ○村上国務大臣 今政府委員が答弁いたしましたように、貫いているということでございます。
  96. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 ということであれば、こちらの側も政府法案に対する一つ考え方ということが出てくるわけでございますが、じゃ、まずそれを少し条文に沿って伺いたいと思います。  今のような基本的な認識は、パートのこの四十五年の通達、要するに、労働時間以外の点においてはフルタイムの労働者と何ら変わらない、そして、今回の法の目的が、パートタイム労働者就業実態に配慮した雇用、労務管理を行っていくという方針のもとになされたということであるとすれば、今回の法の「目的」の第一条のところなんですが、この第一条が何を目的とするのかというところで、どうもはっきりしないんですよね。  要するに、「雇用管理改善等に関する措置」を講ずることを目的にするのか「短時間労働者がその有する能力を有効に発揮」できるようにすることが目的なのか。そこへ「福祉の増進」という、福祉というあいまいな言葉が出てきているということで、先ほどの二つの通達及び指針に出てきた明確な目標が、どうもこの第一条の法の「目的」のところでは、より明確でないという問題があるわけですが、何ゆえにこのような条文になっているのか。要するに、ここの条文の目的は、先ほど私が読み上げた通達、指針の目標と読みかえてもよいという趣旨なのか、その辺をちょっと御答弁いただけますでしょうか。
  97. 松原亘子

    松原政府委員 この法律第一条の「目的」でございますけれども、この最終的な目的は「短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、」それを通じて「福祉の増進を図る」、つまり、短時間労働者の福祉の増進を図るということが目的でございます。  そして、そのために短時間労働者の「雇用管理改善等に関する措置、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずる」ということで、この「雇用管理改善等に関する措置」を講ずるというのは、短時間労働者能力を有効に発揮することができるようにするための具体的な手段と言うとちょっと適切ではないかもしれませんけれども、そのための方策であるわけでございます。  つまり、パートタイム労働者について、この「雇用管理改善等」というものが何を指すかというのは、また三条の中に具体的に書いてあるわけでございますが、こういうことが行われることによって、先ほど先生が御指摘になりましたパートタイム労働者就業実態を踏まえたさまざまな管理が行われるということになってくるわけでございますので、それがパートタイム労働者能力の有効発揮、福祉の増進に資するといいますか、その目的の達成に向けて必要なことである、こういう位置づけでございます。
  98. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 といたしますと、ここの第一条で一番大きい問題というか、法の達成すべき目標というのは、雇用管理改善にかかってくると思うんですよね。要するに、福祉の増進を図るために何をするかといったら、雇用管理改善をするんだということですから、それに関する措置をするということですから、法としてはここが一番の中心になるんじゃないかと思われるわけですが、この雇用管理改善に関する措置の中身、これは四十五年の通達に目標としてうたっている「パートタイマーは労働時間以外の点においては、フルタイムの労働者と何ら異なるものではないことをひろく周知徹底するものとする。」というこの精神のもとからの、現状における雇用管理改善なんだというふうに読みかえてよろしゅうございますでしょうか。
  99. 松原亘子

    松原政府委員 四十五年の通達は、再三申し上げてございますけれどもパートタイマーは労働時間が短いという点を除いては何ら違わないというのは、当時の状況の中で、パートタイム労働者というのは、通常の労働者と違って、労働保護法規の適用もないといったような考え方がまだあった時代背景のもとに出された通達でございます。そういうことから、そういったパートタイム労働者というのも労働時間が短いという労働者なんであって、労働保護法規の適用その他、通常の労働者に適用される労働関係法令の適用があるんだということを明確にしたわけでございます。  今回、パートタイム労働者のために「雇用管理改善等に関する措置」を講ずるということを具体的な方策として書いてございますけれども、これは三条の「事業主等の責務」のところに具体的に書いてございますが、「適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理改善を図るために必要な措置を講ずること」を事業主の責務というふうに規定をいたしておりまして、その責務の具体的な内容を指針で定め、その実現方を事業主に求める、こういう立て方になっているものでございます。
  100. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 四十五年の通達のみならず、平成元年の指針においても、なぜこの指針を定めるか、労働条件等について考慮すべき事項とは何かというところの冒頭に、  パートタイム労働者については、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働者保護法令の遵守が図られるとともに、労働条件は、パートタイム労働者就業実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定められるべきであるが、特に、次の点について適切な措置を講じられるべきである。 こういう形で項目を掲げているということから考えるならば、通達、指針、そして今回の法案、これは要するにこの一条における「雇用管理改善等に関する措置」三条における「適正な労働条件の確保」、こういった措置を国が責任を持って行政として努力義務ながら事業主に課していくものであるというふうに読み取れるかと思うのですが、もう一度確認的にお伺いしますが、この考え方に変わりないですね。
  101. 松原亘子

    松原政府委員 今回この法案を提出いたしました経緯とかそういったものを総合的に考えますと、これまでパートタイム労働指針によりまして、あそこに書いてございますことが広く企業の中で定着するようにということで指導をやってきたわけでございます。しかしながら、残念ではございますけれども、必ずしも十分これが浸透していない面もあったというようなことを踏まえまして、もう少しきちんとしたものにする必要があるということから、法律に根拠を持つ指針にしたいということにしたわけでございます。  そういう一連の流れのもとで、この法律案の作成をさせていただいたわけでございますので、今先生がおっしゃいましたような流れをくんでこの法律案を出させていただいた。したがって、考え方の中には、今おっしゃられたような考え方が流れているんだというふうに御理解いただいて結構でございます。
  102. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 といたしますと、法案の体裁として、要するに労働条件、「適正な労働条件の確保」というところに重点が置かれるとするならば、適正な労働条件、確保すべき労働条件の中身をやはり法の中にきちっと並べていく、条文化していくということが、これまでの流れから来たら当然ではなかろうかと思うわけでございますが、この法案の体裁を見ますと、その一番重要な中身についてはすっぽりと条文化されていないままに、労働大臣の基本方針とかあるいは指針にゆだねられていて、今法案を審議しようとしてもさっぱりわからないという状況があるわけでございます。  ところが、もう一方、この法案の三分の二を占める第四章の「短時間労働援助センター」ということに関しましては、第十一条から二十八条までも占めておりまして、この法律とは何と短時間労働援助センターをつくるための法律ではなかろうかというふうに、私も法律家ではございますが、ちょっとこれは何のための法律だろうかと間違えてしまうような構成になっているわけです。むしろ援助センターの細かいことこそ省令等に譲るべきであって、パートタイマーの適正な労働条件の確保が主目的であるならば、それをきちんと法で明確化していくべきだと私は考えるわけでございますが、その点について、なぜこのような構成になったのか、御説明いただきたいと思います。
  103. 松原亘子

    松原政府委員 まず、雇用管理改善等に関する措置の具体的な内容を指針に定めるということでございますけれども、これにつきましては、これまでも労使の方もお入りいただきましたパートタイム労働問題研究会の中で検討していただき、その内容はおおむね妥当である、しかしながらより一層周知徹底を図るためには法的根拠をつける必要があるのではないかという御意見があったことを踏まえたものでございますし、研究会の中で議論が分かれた点は、一方では、法的根拠は必要ない、指針で労使の自主的な努力に任せることで十分である、法的整備に反対という御意見もございました。もちろん一方には野党法案のような差別を禁止する法律が必要ではないかという御意見もあったわけでございます。つまり、意見が労使の中で大きく分かれ、かつまた、婦人少年問題審議会という正式の審議会に法案をお諮りしたわけでございますけれども、その時点でも、基本的には今申し上げたように大きく意見が分かれたわけでございます。  そういう中で私ども、何とかパートタイム労働者社会における位置づけをきちんとしたいといったこと、それから、パートタイム労働者が持っておられる能力を有効に発揮して職業生活を生き生きと送っていただけるようにしたい、そういう中で何とか法的な整備に持っていきたいというふうに考えたわけでございます。  そういうバランスの中でつくったということから、基本的には現行の指針に法的根拠を与えることでより強力な行政指導をやっていくということで状況を改善したいというふうに考えた次第でございます  なお、短時間労働援助センターについての条文の数が多いということにつきましては、これは国にかわって事業を行う、それを適正にしてもらわなければ困るわけでございます。そういうことから、見ていただきますと非常に手続的な規定なのですけれども、これはやはりどうしても法定をしなければいけないという事項になってまいりますことから、条文の数で見ますとその辺の数が多くなるということではございますけれども、それはかなり技術的な要素からそういうことになっておりますので、御了解をいただきたいというふうに思う次第でございます。
  104. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 労働省のそういう御苦労のほどというのは今の御答弁でわかるわけでございますが、やはり本来、法というものは権利義務を定めるものであるという建前からするならば、当然「適正な労働条件の確保」ということがパートに関する大きな今回の法の立法趣旨という点から考えてみても、やはり指針に譲るのではなしに、きちんと条文化すべきであるというふうに私は考えますし、差別か区別かという、区別とまではおっしゃらないということですけれども、差別であるか差別でないかという評価はともかくとして、今置かれているパートタイマーの方々労働実態というのは、平成二年ですか、労働省が行いましたパートタイム労働者総合実態調査というのがございますね、これは労働省平成三年九月に発表しておられますけれども、この労働実態を見ても非常に問題である、賃金においてもあるいは総実労働時間等においても。  フルタイマー型パートタイマーなどを見ますと、年間総実労働時間は産業計で千八百六十四時間、この実態調査の中ではBパートと呼ばれておりますけれども、男子においては千九百六十五・七時間、女性でも千八百六時間というふうに、本年度達成目標の千八百時間を上回っているような総実労働時間を働いている方々、この調査の中身によりましても、退職金のパートに対する定めのあるところは二一%である、八八%近くが退職金の定めがない、それから賞与についても、例えばBパートでしたら平均十七万ぐらいしかもらっていないというような大きな差別の実態があるわけです。こういったところに労働省は問題だという問題点の出発点がおありであろう、それで何とかこれを引き上げていかなければいけない、パートタイマーが労働力として重要な位置を占め始め、今後も増加傾向にある今こそ、この点に何とかしなければという出発点がおありではなかろうかと私も善解しているわけでございます。  そういう点では、きちんと労働条件を明確化していく方向での法の今後の見直しということも考えておられるのかどうか、その点、労働大臣、いかがでございますでしょうか。
  105. 松原亘子

    松原政府委員 今回の法律は、現状、パートタイム実態がどういう状況にあるかといったようなことを十分踏まえて作成をいたしたものでございますが、法律はもちろん未来永劫不変であるということはあり得ないわけでございまして、状況が大きく変わるということになってまいりますれば、それに応じた検討というのは当然出てこようかと思います。  また、労働大臣がこの法律に基づきまして基本方針を定めるということになっておりますけれども、そこにおきましてもパートタイム労働者職業生活実態等を十分踏まえて定めるということになっておりますので、その職業生活実態、その他パートタイム労働をめぐる状況が変わってくれば労働大臣が定める基本方針という内容についても変わってくることは当然あるわけでございまして、一度定めたものが未来永劫不変のものであるということではないと思う次第でございます。
  106. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 重ねて労働大臣にお伺いしますが、といたしますと、先ほど、研究会の中でもいろいろな意見の中で、バランシングを保ちながらより一歩指針を法案の中に明確化していきたいという趣旨からこの法案をつくられたということでございますので、ある意味では過渡的な措置であり、おおむねもう少し状況を見ながら見直しをしていく方向にあるということは、大臣、いかがでございましょうか。
  107. 村上正邦

    ○村上国務大臣 パートに今従事しておられる数字、八百六十八万といいましょうか、こうしたたくさんの人たちが日本経済の中で重要な位置づけをしようとしている今日でございまして、特にまた今回いろいろと御審議をいただいております。そうした中で、傍聴席にもこれだけ御熱心に審議を見守っているという、そうしたこの委員会の真剣にパートの行く末についてお考え賜っておりますこと等々勘案しながら、不十分な面が出てくれば、それは十分法的に整備していかなきゃならぬことだ、こう思います。
  108. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 次に、具体的なことに移らせていただきます。  要するに、この法案の体裁としては、重要な中身は労働大臣が定める基本方針及び指針にゆだねられているということで、午前中の御答弁及び先ほどの御答弁でも、平成元年に出された指針の中身は当然盛り込むというような御答弁でございましたけれども、包括的に当然盛り込むと言われても、私たちにとりましてはやはり中身が非常に重要なものでございますので、一つ一つそのアウトライン的なものをお伺いしていきたいと思います。  まず、この指針の第三の一というところの一番目に、「雇入通知書の交付」ということを関係者のとるべき適切な措置として、努力義務ではあるけれども課しているわけですね。「今後のパートタイム労働対策の在り方について」という「パートタイム労働問題に関する研究会報告」でも、どのような労働条件に置かれているかといったことが非常に不明確なことから労使間のトラブルが多いというふうに言っているわけでございますけれども、この雇入通知書の交付義務、これについては当然指針に盛り込むというふうに考えてよろしいでしょうか。
  109. 松原亘子

    松原政府委員 この点はぜひ指針に盛り込みたいというふうに考えております。  以後具体的にお聞きになるかと思いますが、いずれにしても、前提といたしましては、私どもは案をつくりまして審議会に諮り、その御意見を伺って最終的に決めるということになるわけでございまして、私どもとしてはその案に盛り込みたいというふうに考えております。
  110. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 それから二番目の「就業規則の整備」「パートタイム労働者に適用される就業規則を作成する」という義務も課すというふうに考えてよいかと思うのですが、これも課すかどうかという点が第一点。  それからもう一つは、なるべくフルタイムの労働者との労働条件の均衡化を図るという方向から就業規則の整備を義務づけるのであれば、就業規則をつくって、かつ、パートタイム労働者に示すときに、通常の労働者就業規則がどうなっているかというようなこととの対比ができるような、そういう形の作成にまでやはり事業主は努めなければいけないのじゃないかと私は思うわけでございます。その二点についてはいかがでしょうか。
  111. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 就業規則の整備の問題につきましても、基本的には、先ほど来お答え申し上げておりますように、現行の指針に書かれてある事項につきまして、新しく法律に基づく指針をつくる際にこれを頭に置きながら、これを基礎として指針を定めてまいりたいというふうに孝えます。  それから、一般的に、就業規則のあり方につきましては、これは基準法上のいろいろな考え方、整理があるわけでございます。例えばモデル就業規則みたいなものの普及を図っていくとか、やり方をいろいろ考えながらこの問題に対処してまいりたいというふうに考えております。
  112. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 それから、雇入通知書の中身に関しまして、ここに前の雇入通知書のモデルがあるわけでございます。これは労働省がモデルとして出している通知書でございますが、この中身に「所定外労働等」という部分があるわけですね。  なぜパートを選ぶかということについては、自分の働きたい時間帯が選べるとか時間が短いからというのが圧倒的にパート選択の理由になっているというのは、平成二年の調査の結果にも出ているわけでございます。そういうふうに、パートというのは本来時間外を強制されない。日立・武蔵の判決が出て、時間外労働についても違反すれば不利益処分を受けてもしょうがないというような状況が今の日本の中では判例上もできてしまっているわけですけれどもパートタイマーを選ぶ大きい理由は時間外はしないということ、これを前提に労働省指導すべきであるにもかかわらず、こういうように雇入通知書の中に「所定外労働等」などということを盛り込むということは大変問題じゃなかろうかと思うわけでございますが、その点についてはいかがですか。
  113. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 労働時間の関係につきましても、現行の指針にございます労働時間のあり方の点を踏まえて新しい指針で検討いたしたい、これを基礎として検討いたしたいと思いますが、御指摘の雇入通知書の中身のあり方につきましては、その際に、また改めてそれでいいかどうか洗い直して検討いたしたいと思います。
  114. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 やはり法ができたからには、こういうこれまであいまいになされてきた所定外労働時間をパートの人にも強要するような状況というものには、国としての、行政としての徹底した対処をとるべきではなかろうかというふうに思いますので、その辺は十分に前向きの形で検討していただきたい。  特に、これは先ほどの研究会報告にも出てはおりましたけれども、政府の平成二年の調査でも、残業の有無に関して、「残業があった」とする者が二六・一%となっている。特にフルタイマー型パートタイマー、Bパートと呼ばれる人たちの約半数、四三・三%が残業をさせられて、しかもBパートの人の一カ月間の平均残業時間は十三・七時間にまでなっているのですね。こういう実態に対しては、労働条件の均等待遇をきちっと法で明確にしていない以上、やはり残業しないというのはパートタイマーであることの権利の部分として確立するような労働省の態度というのが必要ではなかろうかと思いますので、ぜひその点の指針における配慮をお願いしたいと思います。  次に、年次有給休暇の件なのですが、これについては、指針できちんと基準法の定めるところによって所定の日数の年休を与えるようにというふうに指導している。しかし現実には、やはり先ほどの平成二年の労働省調査によりますと、年休があると答えているパートタイマーの人は合計で四割、四〇・五%しかいないのですね。つまり、このような指針を出していながら、現実には四割しか年休をもらっていない、与えられていないという実態があるわけですが、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  115. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 御指摘のような問題点があるわけでございますが、法制的には御指摘のように労働基準法できちんとこれは定められているわけでございまして、これにつきましては、今回の基準法から、改正の中で一定の資格要件等も変わりましたから、そういうことを踏まえてまた見直しもいたしますけれども、指針を新しく法律に基づく指針として対処をする際に、この内容を指針の中に盛り込み、かつそれを周知徹底し、あるいは指導していく、こういうような考え方でそういうことのないようにしてまいりたいと思います。もちろん、労働基準行政が監督指導する際に、そういう事実がありますればこれは当然是正するわけでございますが、そういうこととあわせてやってまいりたいと思います。
  116. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 次に、指針の中の「期間の定めのある労働契約」に関しては、期間が一年を超えて引き続き雇用するに至った場合には、できるだけ長く勤められるように事業主は努力せよというような部分とか、解雇予告をせよ、あるいは解雇予告手当を出せというようなことも書いてあるわけですが、これもきちんと指針に盛り込むというふうに考えてよろしいでしょうか。
  117. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 期間の定めのある労働契約の御指摘の点につきましても、現行の指針を踏まえまして新しい法律に基づく指針で対処してまいりたいと思います。
  118. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 賃金、賞与、退職金については、大変ここは重要な部分なんですけれども、「その就業実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする。」というふうに書いております。  この賃金、賞与、退職金の差別というのがパートタイマーの今一番大きな問題点でございまして、この点についてはこのような文言できちんと指針に文言化するというふうに考えてよろしゅうございますか。
  119. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 御指摘の点につきましても、基本的な考え方として「その就業実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定める」という点を十分踏まえて、新しい指針で検討してまいりたいと思います。
  120. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 大体主なるところを伺ったわけでございますが、問題点は、この法案がすべて指導監督に終わっている、実効性の確保措置が全くないというところが問題なわけで、労働大臣が基本方針及び指針で今のようなことをお定めになっても、現実にこの平成元年に出されている指針においても年休をとっているところは四割にすぎない。あるいは雇入通知書の交付をしているところ、これは平成三年に総務庁の行政監察局「婦人就業対策等の現状と課題」というところからとったものなんですけれども、一八・六%しか雇入通知書を交付していないという結果が出ているのですね。就業規則の整備に至っては二五・七%。この調査においては年休の付与は一六・四%。女性就業実態ですからさらに労働省調査結果より悪くなっているわけですけれども、健康診断の実施についても九・一、雇用保険の適用についても二二・五というように、大変指針の遵守状況は悪いという現実があるわけです。  ですから、この法案で指針で定めても、指導監督でしなさいといっても全く守らない。現指針ですらこんなに遵守されていない現実があるにもかかわらず、法案化しても何らその確保措置がないというのでは、何のための法なのかということになるかと思うのですが、その点はいかがお考えなのでしょうか。
  121. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 実態で御指摘のような点があり、現行の指針が、これは告示に基づきまして周知徹底を図っておるわけでございますが、十分周知徹底されていないという現状を踏まえまして、先ほど来申し上げておりますようにこの指針を法律に基づくものといたしまして、この内容は現行の指針を踏まえて対処していく、かつ、法律に基づいて労働大臣がこの指針関係の助言、指導等をできるようにいたしているわけでございまして、そういう形で周知徹底あるいは助言、指導をすることによってこの指針を実効あるものにしてまいりたいと考えております。  先ほども申し上げましたが、内容的に労働基準法等で定められております事項につきましては、もちろん監督労働基準行政、監督する際にはそちらの面からも是正指導をやっていくというような考え方で対処してまいりたいと思います。
  122. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 指針を指導しても聞かなかった場合は、非常に端的に易しい言葉で言ってどうするつもりなんでしょう、事業主が聞かなかった場合。
  123. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 一度指導して聞かなかった場合には二度、二度指導して聞かなければ三度、何遍でも指導いたしまして実効あるようにしてまいりたいというように考えております。
  124. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 行政指導をそういうふうに回数を多くするということのようですけれども、そういった企業を公表するとか社会的な一つの制裁というか、そういうことは考えてないのかどうか、いかがでしょうか。
  125. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 この法律考えております指針、その中身は先ほど来申し上げているとおりでございますが、こういう中身のものにつきまして先生指摘のように公表制度等で対処することは、これは法制的になかなか難しいというふうに考えております。  したがいまして、私どもは現状の諸般の事情を踏まえながら、この法律案に基づきます指針、それの実効を確保するために労働大臣の指導・援助で対処してまいりたいというふうに思っております。
  126. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 この法案の一番の問題点はそこだと思うのですね。現実に今までも、四年前に出された指針に対しての遵守状況はこんなに低い状況だ。問題点は、かつての平成元年の指針を周知徹底させることだということをこの基準法研究会の報告でもきちっとうたっている。それを法制化した。法制化したけれども、聞かない場合にはただ何度も何度も繰り返すだけだというのでは、全く何のための法制化なんだということになるわけで、どうしてもそこはきちんと何か確保措置をとるというのが法律ではなかろうかと思うわけです。  ぜひこの点は修正ないしは近い将来見直すという方向へ持っていっていただきたいと考えるわけでございますが、労働大臣いかがでございましょうか。
  127. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 この法案自体が成立した後の情勢の変化による見直し問題につきましては、先ほど局長から御答弁したとおりでございます。  もう一点は、先ほど先生指摘もございましたが、例えば雇入通知書の交付を義務づけるべきではないか、罰則つきでやるべきではないか、こういう御議論もあるわけでございます。そういう御議論になりますと、これは短時間労働者だけの問題ではございませんで、いわゆる疑似パートと言われます労働時間は通常労働者と同じパートタイマーの方、あるいは臨時労働者、嘱託等、名称のいかんを問わず、労働者一般についての雇い入れ時にどういう方法で労働条件を明示すべきかという議論、考え方になるわけでございます。  したがって、そういう考え方は短時間労働者だけの法律ではなかなか解決できない問題でございまして、これは私ども、先日、労働基準法研究会労働契約法制のあり方について一定の報告が行われたわけでございますが、そういうものを参考にしながら別途検討されるべき課題であるというふうに考えております。
  128. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 この点は重要な点なので大臣に前向きな姿勢だけでも示してもらいたいということで、実効確保措置のない法はないと同じことになるわけですから、その点の姿勢をちょっと示していただきたいと思います。
  129. 村上正邦

    ○村上国務大臣 私も単純な方ですから、永井先生方が身を乗り出されて率直に言えと言われるとここまで出てきますけれども、新規採用取り消しの場合も、罰則規定を出さなければ実効性は上がらないのではないか、こういう御議論でございました。しかし、雇用ということからいきますと罰則ということがなじむのかな、そこらあたりのジレンマが私も随分あのときにもございまして、罰則規定については御勘弁を願った。そしてぎりぎり、では何ができるのか、そこで、企業名の公表ということを打ち出したわけでございます。  伊東先生、私は人間性善説をとっているのですよ。中には何回言っても素知らぬ顔で、何とやらの何とやらでということもありますけれども、しかし、それはそれなりに、やはりケース・バイ・ケースにおいて私は社会的良心というものを信じたときに、行政ベースでほどほどのところの合意というものは出てくるのではないのかな、こういうふうに考えて歯切れの悪い答弁をいたしておりますが、どうぞひとつ……。まあしかし、これはパートの今後の大きな問題でございますので、その推移を見てまいりたい、こう思います。
  130. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 基準法に定められている部分もこの指針の中にはあるわけで、基準行政を徹底化するということの間接的なやり方とか、あるいは先ほども二度、三度、四度、五度という本当に行政の強い姿勢とか、そういう形を運用において強化しつつ、やはり最終的には、性善説だけに立たずに、現実パート労働者の権利の保護という観点での一歩前進の方向への見直しを最初から考えておいていただきたいと思います。  それから、時間がなくなりましたが、疑似パートについて伺います。  午前中の御答弁では、この法案では疑似パートについてはその指針において保護したいと考えているということでございましたが、疑似パート、ほぼ労働時間は正規と同じ、かつ残業も平均月十三・七時間ですか、実態調査によればやっているような人たちに対して、具体的に、その雇用の確保と賃金、退職金、賞与、こういった重要な労働条件についての保護をどういうふうに考えているのか、ちょっともう少し中身でお答えいただきたいと思うのです。
  131. 松原亘子

    松原政府委員 先生がおっしゃいました疑似パートというのは、実は非常に言葉として概念がはっきりしないことでございますので、別の言葉で言わせていただきますと、この法案は、通常の労働者より労働時間が短い労働者対象といたしております。その中には、通常の労働者にかなり近いけれども短い時間働いておられる方もあろうかと思います。そういう方を疑似パートということで呼ぶとすれば、そういう方はこの法案対象に入ってくるわけでございますので、指針の中でどう取り上げるかということはありますけれども、その対象に入ってくる。  そして、じゃ指針の中で通常の労働者とほぼ同じであるが若干短い労働者についてどうするかということにつきましては、現行の指針の中で一番最後に、通常の労働者とほとんど同じ時間働いているといいますか、所定労働時間がほとんど同じ労働者についてもこの指針を当分の間適用するということになっております。  これは何で当分の間となっておるかということは、前の方に「パートタイム労働者の意義」という、このパートタイム労働指針の適用対象となる範囲というのが書いてございますが、ここには相当程度労働時間が短い労働者対象としている、したがって、相当程度ではないけれども短い人たちというのはこの原則からくると外れてしまうわけですね。それで最後で、当分の間適用する、こういうことになっているわけでございます。  今回は正面からこういう方々も適用対象になるわけでございますので、パートタイム労働指針に、先ほど個別に先生から御質問ございましたけれども、そういったことにつきましてもこういう労働者にも適用されるものとして書かれるわけでございます。  なお、加えまして、この最後の第四に書いてございますような、こういった通常の労働者とほとんど同じ所定労働時間である労働者のうち  通常の労働者と同様の就業実態にあるにもかかわらず、処遇又は労働条件等について通常の労働者と区別して取り扱われている者については、通常の労働者としてふさわしい処遇をするように努めるものとする。 こういうふうに書いてございます。この精神は、引き続き新しい指針におても踏襲して生かしたいというふうに思っているわけでございます。
  132. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 正規の労働者とほぼ同じ労働時間働いているけれども若干短いということについての取り扱いはわかったのですが、短くない、ほぼどころか、正規の労働者就業規則で八時間と書いてあれば、八時間ないしは八時間以上働いて雇用形態がパートタイマーであるという人に関しては、労働省としてはどういうふうに今後その保護を図りたいと考えているのでしょうか。
  133. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 御指摘の点は過去いろいろな経緯の中で繰り返し御指摘があって、経緯的に言えば、期間労働者とか臨時あるいは日雇い、嘱託の方、それがいわば衣をかえてパートタイマーというような名前になってきている、そういう方の問題でございまして、それをどうするかということはなかなか難しい問題でございますが、考え方といたしましては、先ほども申し上げましたように、これは労働契約法制のあり方についての見直しをする中で、いろいろな問題点の整理をし検討していく課題であるというふうに考えておりまして、そういう方向で中央労働基準審議会の中で検討をしていさたいというふうに考えているところでございます。
  134. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 労働契約に関する研究会報告というのを私も拝見させていただいたのですが、その中にも触れられてないのですよ。ですから、パートタイマーでもありません。労働契約の部分で考えますと言いますけれども、そこにも触れられていない。あれは中間的な報告ということなのでしょうけれども、そのままになされて、この方々が正規に変わりたいけれども、それは雇用契約における契約の自由だということで放置されている。  今パートと言われている人たちの二割強、こういうような形態の人たちがいて、これをどうするかというのは非常に大きい問題なわけなのですけれども、今おっしゃった御答弁ではちょっとなかなか展望が見えないわけです。この点について労働大臣はいかがお考えでいらっしゃいますか。
  135. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 御指摘のような問題、課題があることについては十分承知しているわけでございますが、現時点で将来の展望を開けという御指摘でございますけれども、なかなか現状ではかばかしいお答えができないわけでございまして、難しい課題であるというふうに考えております。
  136. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 難しい課題であるからこそ政府委員の方ではなくて、労働行政に新しいビジョンを持ちながら熱意を持って当たっておられる大臣に展望を伺いたい。そして、パート労働法がこういう形で出てきた以上、それはセットに考えなければいけないと思うわけでございます。
  137. 村上正邦

    ○村上国務大臣 お褒めにあずかりましてありがとうございます。先ほどもありましたが、先生法律の専門家でいらっしゃって、法律というのは法律の専門家が見なければ、読まなければわからぬということではなくして、どなたがお読みになられても、縦から読んでも横から読んでもわかるような法文化というのは必要だと思うし、我々、政府委員また国会においての答弁にしても、私は逃げてはいかぬ、真っ正面に答えていこう、わかりやすく単純に、モーニングを重ね着して上からかくようなことではいかぬということを常々申し上げてきております。そうしたことから、私の答弁も労働委員会、予算委員会等において真っ正面から受けて御答弁をしてきたという自負はございます。  そこで、ただいまの御質問の答えでございますが、今も審議官がお答えいたしました。展望が見えないのじゃこれは困るのでありまして、大臣として、政治家として、そこは展望が開けるような方策を講じていかなければならない、こう思っております。
  138. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 重ねてお伺いしますけれども労働契約に関して今研究会でいろいろ論議を重ねておりますけれども、大臣としてぜひこの点についての検討もせよという形で――今展望が見えないとおっしゃっているだけでなくて、労働契約のあり方として、同じ勤務条件を強いながら労働契約だけ、そういういつでも首切れるような、あるいはそういう悪い労働条件が押しつけられているようなパートにすることがおかしいわけで、その辺を契約法制の審議の中にきちんとやれというふうに指示なさるおつもりはあるかないか、いかがでしょう。
  139. 村上正邦

    ○村上国務大臣 審議のそうした深まりの中で、指示すべきことは指示していきたい。先ほども申しましたように、あるところにおいては、人材派遣の扱いを資材課で扱うとか、パートにおきましても、パートの皆さん方が本当に自分の能力、天分を生かしながら社会に貢献していき、また家庭との両立、そうした環境をつくっていくことについては積極的にやっていかなければならない、こういう抱負でおりますことを申し上げさせていただきたいと思います。
  140. 伊東秀子

    伊東(秀)委員 これで終わります。
  141. 岡田利春

    岡田委員長 次に、石田祝稔君。
  142. 石田祝稔

    石田(祝)委員 まず最初に、きょうからジュネーブで開かれております第八十回のILO総会でパートタイム労働が議題になるように伺っておりますが、労働省としてどういう形でこのILO総会に臨まれるのか。ちょうどきょうがこのパートタイム法案の審議日でありますけれども、時を同じくして、時差の関係でまだ始まっていないと思いますけれども、国際会議も行われる。どういう対応で臨まれるのか、まずお伺いをしたいと思います。
  143. 松原亘子

    松原政府委員 ことしのILO総会におきまして、パートタイム労働についての国際文書の採択を目指した検討が行われるということに今なっているわけでございますが、私どもといたしましては、パートタイム労働について国際文書を採択をするということは、加盟国のパートタイム労働者の雇用、労働条件改善を図る上で有意義であるというふうに考えておりまして、基本的には、国際文書の採択ということに向けて私どもとしても努力をするという方向で対処いたしたいというふうに思っております。  しかしながら、パートタイム労働者の現状は、我が国におきましても非常に実態が多様であるということでございますけれども、国によりましてまたこの実態というのは非常に異なっているものでございます。そういうことから、各加盟国で多様な就業実態に応じた対策のあり方が検討され、そして講じられるようにというような方向に持っていくことが最も適当であるというふうに考えておりますので、私どもといたしまして、採択されます国際文書の形式は勧告であることが望ましいというのが基本的スタンスですし、また、個々具体的な規定ぶりについても、加盟国政府が受け入れやすいような形で弾力的な対応ができるようなそういう規定にすることが適当であるという基本的な姿勢で臨むことといたしているところでございます。
  144. 石田祝稔

    石田(祝)委員 この総会は、政府とそれから労働者側使用者側とそれぞれ出席をして意見を述べられるようでありますけれども労働者側使用者側がどういうふうな対応を、対応というかどういう意見を持って臨まれるのか、どういう意見がそこで発表されようとしているのか、そこのところは把握されておりますか。
  145. 松原亘子

    松原政府委員 この総会で事務局の方から示されました国際文書の案について、具体的にどういう対応をとられるかということについて私ども詳細は承知いたしておりませんが、実はILO事務局の方から昨年、ことしの総会に出す国際文書案の策定の過程で各国に質問書が送付をされました。そのときに、もちろん政府も回答いたしたわけでございますけれども労使団体からの見解も出されました。  それから見てみますと、労働者側は、パートタイム労働に関する条約及び勧告を採択することは賛成であるということ、しかしながら、条約で扱おうとしておる均等待遇の内容、そのときILOからの質問書については具体的には賃金についての質問があったわけでございますが、その内容が不十分であるという見解をお持ちだったというふうに承知をいたしております。  また一方、使用者側の方は、パートタイム労働がどうあるべきかということにつきましては、基本的には関係労使の自主的な合意にゆだねることが適当であるということで、基本的には、パートタイム労働について新たな国際文書を採択することについては慎重であるべきだという見解をお持ちであったというふうに認識しております。
  146. 石田祝稔

    石田(祝)委員 私も、資料をちょうだいしまして拝見をいたしました。労働大臣官房国際労働課仮訳というこの文書をいただきましたが、その中では、政府は「柔軟な勧告の形式がよい。」日経連、使用者側代表は要するに「勧告の形式がよい。」それで日本労働組合総連合会、連合は「勧告により補足された条約の形式が望ましい。」若干態度が違うわけでありますけれども、政府としては、条約という形になると国内法の整備から一切が規定されてくる、こういうお考えもあって「柔軟な勧告の形式がよい。」こういうふうなことであろうと思いますけれども、この総会での対応とこの本法律案との関係ですわ。  並行して行われますし、その文書の採択が条約になろうが勧告になろうが、やはり国際会議で、ILOの総会で日本として文書の採択に賛成をする、こういう文書を採択する、こういう形になりましたら、それはやはり日本の国内法としても考慮せざるを得ないと思います。  ですから、この総会での対応と今回提出されております法律案とは整合性がとれているという形になっているのか、また、全く同じ考え方に基づいて総会で発言をされるのか、これはいかがですか。
  147. 松原亘子

    松原政府委員 今回提出させていただきました法案は、我が国のパートタイム労働者の実情に応じまして、多様なパートタイム労働者の特性に。沿った雇用管理改善等が図られるように指導・援助を行うということをメーンポイントとしているわけでございまして、そういう意味では、先ほど申し上げました総会における我が国政府の対処方針と合致するものであるというふうに認識しているわけでございます。
  148. 石田祝稔

    石田(祝)委員 では、またこの件は若干後でお聞きをしますが、一致をして臨む、こういうことであると了解をいたしました。  続きまして、大臣にお伺いをしたいのですが、この法案に対する労働省考え方、また、法案提出に至った理由ですね。  当初私の承知しております範囲では、なかなか法案になじまない、これは労使の協調の中で解決していく問題だ、こういうスタンスであったように私は承知をしております、これは誤解かもしれませんけれども。それが、法案を提出するに至った理由、そのあたりはどういう経緯で今回法案を出すようになったのか。昨年、野党四党で共同提案をいたしております。その野党の法案提出というのも一つの引き金と申しましょうか、きっかけになったのかなという考え方もいたしますけれども、そこのところを、どういう経緯でこうなったのか、現在どう考えているのか、大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  149. 村上正邦

    ○村上国務大臣 短時間労働は、働く人、雇う側双方にとってその要望に合う就業形態であることなどから、ますますその増加を見ておるわけでありますが、今後もますます重要になるものと考えております。  しかしながら、短時間労働者就業をめぐっては、多様な就業意識就業実態を踏まえた適切な雇用管理が行われていないなどさまざまな問題点指摘されております。また、短時間労働者職業生活上の不安を考えているところでもあります。  本法案においては、このような短時間労働者の抱える諸問題に対処するため、労働大臣が基本方針や指針を定めること、短時間労働援助センターを通じての情報提供相談・援助等を行うこととしておりますが、これらの措置により、短時間労働者雇用管理改善等が図られ、短時間労働者がその能力を有効に発揮できるようになるものと考えております。  なお、法制化の問題については、今後のパートタイム労働の重要性にかんがみ、昨年十二月にパートタイム労働問題に関する研究会から、パートタイム労働対策を拡充強化するため法的整備を行うことが必要であるとの報告をいただき、関係審議会に諮った上で法案を提出をさせていただいた、こういうことでございます。
  150. 石田祝稔

    石田(祝)委員 そうすると、大臣にも御答弁いただきましたが、昨年のパートタイム労働研究会の結果を得て今回提出をいたした。私たちは、法案化が必要であるということはその以前から主張してまいりましたけれども、なかなかお聞き入れをいただくことができなくて、やっと今回こういう形で出た。内容についてはこれから後でお伺いをしたいと思いますけれども、ともかく、もうちょっと早く出していただければよかったのじゃないか。物事をやるのに遅過ぎることはないという言葉もありますけれども、やはり若干遅いのではないか、私は正直こういうふうな気はいたします。  それで、この法案の名称についてまずお伺いをいたしたいと思います。  素朴な疑問として、「短時間労働者雇用管理改善」、これは一体何なのだろう。「雇用管理」という名前からいたしますと、どうもやはりパート方々をどうやってうまく雇用管理をしていくのか、こういうふうなイメージが非常に強いわけです。  この法案の要綱等を読ませていただきますと、「雇用管理改善」ということはどういうことかというと、事業主の責務として書かれておりまして、「短時間労働者の適正な労働条件の確保及び教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理改善」。これだったら、適正な労働条件の確保等に関する法律案要綱、こうした方がもっとはっきりするのじゃないかというふうに私は思います。  私は、この法案の名称がなぜこうなったのかどうもわからないですし、端的に言えば、今気に食わないというお声も若干ありましたけれども、何となくパートの人は管理される側かな、こういうふうなことも思います。これをもうちょっと違った名称で、私は、適正な労働条件の確保等、こういう方がいいと思いますけれども、これはどうしてこうなったのですか。
  151. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 一般的に申し上げまして、雇用管理改善というのは広い概念でございまして、その中には、適正な労働条件の確保、これも入るわけでございますが、その適正な労働条件の確保というのが、今までの流れの中で今回のこの法案を作成するに際して非常に重要な中身であるというようなことから、特に「適正な労働条件の確保及び」ということで法文化したわけでございまして、それを全体として「雇用管理改善等」という形でくくっているということでございます。  なお、私ども法律で「雇用管理改善」という名前の法律幾つかあるわけでございますが、ただいま御指摘のような適正な労働条件の確保等というような形のものは現在までのところはございません。  なお、この法律をまとめるに当たりまして、先ほど来申し上げておるわけでございますが、労使の意見が分かれておりまして、他方におきましては、現行の指針等で労使が話し合いをしながらやっていけばいいので、特に法律は要らないというような考え方と、もう一方では、差別禁止的な法律、これを罰則をもってやるべきであるというような意見、そういう形で分かれている中を私ども法案の取りまとめ作業をしてきたわけでございます。  今後パートタイム労働者がふえていく中でこれは非常に重要な課題である。そういう課題に対処するために、現状でいきますと、雇用管理が非常にうまくいっているところと、それから必ずしもうまくいっていないところがある。そういう現状の中で、全体としてのパート労働市場を適切に適正に育てていく、そのための雇用管理改善等を図る必要がある、こういうような観点からこの法律をまとめてきた経緯がございまして、そういう経緯の中でこういう名称にしてきているということでございます。
  152. 石田祝稔

    石田(祝)委員 私がちょっと説明に来ていただいて聞いたところでは、ここのところは「雇用管理改善」とした方が幅が広いんだ、こういうふうに教えていただきましたけれども、適正な労働条件の確保ということよりも「雇用管理改善」というふうにした方が、もうちょっと幅広く、いろいろな意味でいいということですか。
  153. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 この法律自体の構成が、先ほど来申し上げておりますように、一つの柱として、事業主の方が対処していただきます指針、これは従来告示でやってきているわけでございますが、それをいわば法律に基づくものにしていく、事業主雇用管理改善等をしていくための指針をこの法律に基づいてつくっていく、こういうような観点。  それから、一般的な概念としては、雇用管理改善というのはそういう意味では広い概念でございますけれども、ただし、その指針の中心としまして、適正な労働条件の確保、これが非常に重要事項でございますから、その中からそれを取り出して法文上も明確にして指針をつくる基本的な考え方としている、こういうことでございます。
  154. 石田祝稔

    石田(祝)委員 説明をいろいろいただきましたけれども、なぜこうなっているのかちょっと私理解ができません。この件はまた関連で同僚議員が質問します。  それでは、「雇用管理改善」という意味ですね、これは「雇用管理改善等」ということで全部くくっておりますけれども、具体的にどういうことを意味しているのですか。
  155. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 具体的に申し上げれば、これは、短時間労働者の方はそれぞれ企業で雇用されて働いているわけでございますから、そこで働く際の適正な労働条件が確保され、かつ、働く場におきます、指針に書いてございますようないろいろなものが確保されるような形でのいわば雇用の管理が事業主によって行われる、そういうような観点で「雇用管理改善」という言葉を使っているところでございます。
  156. 石田祝稔

    石田(祝)委員 では、この件は同僚の議員に譲るといたしまして、本法律案のこれが柱だ、これがこの法律案のポイントだ、これは何でしょうか。
  157. 松原亘子

    松原政府委員 一つは、パートタイム労働者能力の有効な発揮、そして福祉の向上のために事業主の責務としてパートタイム労働者雇用管理改善を図るということを明確にしたということでございます。その具体的な内容を労働大臣が指針で定め、かつ、必要があると考えたときには指導、助言を行うというのが一つの柱でございます。  それからもう一つは、具体的な行政指導を行うというその行政指導と相まって、その行政指導をされた内容を実現するためにもう少し専門的、技術的な知識で対応しなければいけないという分野がかなりあるわけでございます。  例えばパートタイム労働者の処遇の改善という場合におきましても、企業全体の人事管理方針ですとか、賃金体系とか、場合によりましては、人員配置をどうするかとか、営業・操業体制をどうするかといったようなことまで検討しなければいけないということも出てくるわけでございますが、そういった専門的、技術的な事項については、そういった分野の情報を十分に持ち、かつ適切にアドバイスができるところが行うことが適当であり、また、パートタイム労働者が持っておられるいろいろな悩みや不安などに対して御相談に応じるという場合にも、特に家庭生活職業生活との両立という観点からさまざまな情報が求められている場合があるわけでございますし、また、いろいろ相談に乗ってもらいたいということも持っておられます。  そういう場合にはそういう道の専門家が対応するということがより適切であろうかと思いますので、一方で事業主の責務、そして指針、労働大臣の助言、指導という行政指導の流れとあわせまして、行政サービス的に求められております相談・援助に対応するということが必要であろうかと思いまして、そのために短時間労働援助センターを指定法人として設置をするということにしておりますが、それがもう一つの柱でございます。  ただ、その全体にかぶさるもう一つの大きなものは、パートタイム労働というのはこれまでとかく補助的な労働同義語とみなされるというようなこともあったり、また、場合によっては労働基準法すら適用がないのじゃないかというような誤った考え方がないということも言えないわけでございます。そういうことから、労働大臣がパートタイム労働対策についての基本的な方針を定めるということで、そういった世の中のパートタイム労働に関する認識を改めてもらうということも、具体的な政策の前提として非常に重要なことであるというふうに思っております。  したがいまして、ポイントを言ってしまえば、以上申し上げた三点ということになってこようかと思います。
  158. 石田祝稔

    石田(祝)委員 そうすると、いろいろと詳しく御説明をいただきましたが、一つは指針を策定するということ、二点目が短時間労働援助センターを設ける、そして指導、助言をする、そして三点目は基本方針を決める、この三点ですか。――今うなずいていただいたからそうだと思います。  それでは、この指針について私はお伺いしたいと思うのですが、資料をいただきました。非常によくできていると思うのですね。「パートタイム労働豆事典」というのをいただきまして、これに平成元年のパートタイム労働指針というのも最後の方に出ておりますが、このパートタイム労働指針と本案で策定をされようとしている指針との関係についてお伺いをしたいと思います。  これは端的に言えばどういうふうな関係になりますか。
  159. 松原亘子

    松原政府委員 現行の指針は労働大臣の告示ということで示しているものでございますが、これは具体的な法的根拠があるというものではございません。また、この指針は労使を初め関係者が考慮すべき事項を定めたものであるということを趣旨で明らかにしてございますけれども、考慮事項が定められたということでございます。  それに対しまして、今回この法律に基づいて定めようとしております指針でございますが、第三条にございます「事業主等の責務」を明らかにし、その責務の具体的な内容を明らかにするものとして定めるものでございまして、具体的な法律の根拠を持ち、かつ、その指針に基づいて、必要がある場合には助言または指導を行うということにいたしているわけでございます。  また、指針の性格は、今申し上げましたように法的根拠の有無等を含めまして性格は異にするものでございますけれども、この法律に基づいて定めます新しい指針におきましても、これまでの指針に盛り込まれておりましたことを十分基礎とし、踏まえて中に盛り込みたいというふうに私ども考えているところでございます。
  160. 石田祝稔

    石田(祝)委員 そうすると、このパートタイム労働指針というものにいわゆる法的な根拠を与えて、現在のパートタイム労働指針を一つのステップというのでしょうか、基準として、基礎として新しい指針も決めていきたい、そして決められたものは今回法的な根拠が与えられる、それに基づいて指導、助言も行うのだ、こういうことですね。  そうすると、私はこのパートタイム労働指針、十分ではないかもしれませんけれども、非常によくできているのじゃないかというふうに思いました。それで、これがなぜ問題だったか、なぜ新しい法的な根拠をつくらなくてはならなかったか。これは内容の問題もあります。また実効性の問題、いわゆる効力を発揮するかどうかという二つの大きな問題があると私は思うのですね。  今度新しく策定する指針の内容についてお伺いをしたいと思うのですが、具体的にどういうふうな内容にされるお考えですか。これは、今の労働指針を基本とする、こういうお考えを今お述べをいただきました。また、以前より同僚の議員に対しても同じような御答弁がありましたけれども、もう一歩踏み込んで、どういうことをお考えになっていらっしゃるのか、ぜひこの労働委員会の場でつまびらかにしていただければありがたいと私は思います。
  161. 松原亘子

    松原政府委員 現行のパートタイム労働指針におきましては、「パートタイム労働者の処遇及び労働条件等について考慮すべき事項」ということで幾つかのことがずっと書かれております。例えば、「労働条件の明確化」ということで、雇い入れ通知書の交付ですとか就業規則の整備、それから「労働条件の適正化」ということで、パートタイム労働者労働時間の問題、年次有給休暇、期間の定めのある労働契約の問題、賃金、賞与及び退職金、福利厚生施設、健康診断、それから「雇用管理の適正化」ということで、雇用保険等の適用の問題、教育訓練の実施、通常の労働者への応募の機会の付与といったことが書かれておりますが、基本的にはこういったことを新しい指針にも盛り込んでいきたいというふうに考えているところでございます。
  162. 石田祝稔

    石田(祝)委員 この内容のことと委員会審議については後でお伺いしますけれども、大臣に御答弁をいただきたいのですが、現在のこのパートタイム労働指針より前進したものになるのかどうか、これを端的に、短くて結構ですから、お答えをいただきたいと思います。
  163. 村上正邦

    ○村上国務大臣 指針の具体的内容は、法律成立後、関係審議会の意見を聞いた上で定めることとなるが、雇入通知書の交付、就業規則の整備など、現在のパートタイム労働指針の内容を基礎として、パートタイム労働者雇用管理改善等を進めるという観点から検討する予定であります。  前進したものとなるか、こういうことでございますが、意気込みだけはそうした意気込みを持っております。
  164. 石田祝稔

    石田(祝)委員 大臣はふだん非常に歯切れがいいのですけれども、どういうわけか何か文章をそのまま読まれて、意気込みをお示しいただいたのですが、やはりこれは非常に大事なところだと思うのですね。  私、先ほど申し上げましたように、このパートタイム労働指針と今回のこの法案の中身というのでしょうか大きな柱の指針の策定、これはやはり中身そのものと同時に実効性の確保ということも非常に大事だ。実効性の確保は、これは罰則の問題とかいろいろありますから、私も本当に実効性が上がるかどうかも心配しているのですけれども、それ以上にこの中身が前進をしているかどうか。これをただ移しかえるだけでありましたら、これは極端にいえば四年間どういうふうにこのパートの問題が進んでおったのか、そういうことになりかねないと私思うのですよ。  今回この法案が例えば通りましたら、それは通ったら、すぐまた今回の国会の補正予算みたいに同じ国会の会期内で補正が出るとか修正案が出るとかありませんから、これはやはりある一定の期間非常に効力を持つ法案になるのではないかと思うのですけれども、内容についてもうちょっと、個々のことは時間がないので私聞くことができませんけれども、少なくとも前進はしているよ、パートタイム労働者方々のお立場に立って一歩二歩と前進をさせた内容にしますよ、こういう御答弁をぜひいただきたいと思うのですね。そういうことを期待されて何人かの傍聴の方も来ていると思うのですけれども、そこのところをぜひ言語明瞭、意味明確な大臣からもう一度御答弁をいただきたいと思います。
  165. 村上正邦

    ○村上国務大臣 前進するものと信じております。
  166. 石田祝稔

    石田(祝)委員 この問題はもう一度ぜひお聞きをしたいという気もいたしますけれども、このことはでは同僚議員にお譲りします。理事がまたお聞きすると思いますが、ぜひこの内容について、一つ二つは私細かく詰められないと思いますけれども、お願いしたいと思うのです。  それから、この内容について、先ほど局長も御答弁ありましたし、ずっと聞いておりますと、この法案が成立してから内容を考えますよ、そして審議会にかけます。これは労働基準法の改正のときにも私同じことを申し上げたと思うのですけれども、枠組みだけを通してください、そうしたら中身は私たちが法案が通った後で考えますよ、そして審議会に諮って、答申をいただいてやります、ではこの委員会は何のためにやっているんだ。全部が全部、一字一句このとおりです、そういうものを出せとは申しませんけれども、内容について、項目はこうですよ、この項目についてはこういう考え方ですよ、それぐらいやっていただかないと、私たちは何のために審議しているんだろう。  先ほど局長言われたように、この指針というのは三つの柱の一つだ、こういうことでもありますし、具体的な中身がどういうふうになるのかというのが非常に大事な問題であります。  これはぜひ局長にもお聞きをしたいんですけれども、こういうふうに委員会審議、枠組みだけを決めますのでそれを通してください、中身は委員会に語らずに私たちが決めますよ、こういうことで本当にいいんですか、非常に私は疑問があります。
  167. 松原亘子

    松原政府委員 この法律に基づきます指針は、法律の中にも書いてございますように、関係審議会の意見を聞いた上で定めるということになっているわけでございます。関係審議会にはもちろん労使の代表の方が入っておられるわけでございまして、そこで私どもが策定いたしました案を十分御議論いただいてから正式なものとして公表されるということでございます。  これまで私ども、現行の指針に基づきまして、かなり具体的に、こういったことを新しい指針にもとりあえずの私どもの意思としては盛り込みたいということを申し上げたかと思いますが、そういったことを申し上げ、かつまた、ここの中で先生方からいろいろ御議論がございました点も踏まえまして私どもは案を作成をいたしたい、国会の審議の状況を十分踏まえて案を作成いたしたいというふうに思っているわけでございます。
  168. 石田祝稔

    石田(祝)委員 くどいようで申しわけないのですが、そういうふうな進め方はどうなんですか、私は疑問なんですね。  さっき言いましたように、委員会のことを参考にする、議論を参考にして内容を決めますよ……。だけれども、さっきから聞いていると、大臣に私二回お伺いをして、どうなりますか、進みますかと。そうすると、最後の答弁は、前進することを信じている、こういう御答弁でありました。個々の中身を一々列挙することではなくても、少なくともこれよりは進みますよ、こういう形で、総枠として今より進んだものになりますよ、少なくともこれくらいのことを言っていただかないと、枠組みだけ通したらあとはいいですよ、ブラックボックスみたいなことは私できないと思うのですよ。  結局、法案として成立して、あとの中身をこれから埋め込むという話になるわけですから、審議をしている意味というもの、これをいま一度お考えをいただきたいと私は思います。  局長の考え方は、こういう形で進めたい、論議を生かしてやりたいというお考えはわかりますけれども、そういうふうなやり方というものをどういうふうにお考えになっておりますか、これをもう一度ちょっと御答弁いただけますか。
  169. 松原亘子

    松原政府委員 私どもは今回のこの法案の審議を通じまして、各先生からこれまでにもいろいろ御質問あったわけでございます。それらに対してお答えをしてきたという過程の中で、この国会でのいろいろな御意見というのはかなりの部分把握をできたといいますか、状況を認識できたという点は十分ございます。  そういうことから、私どもが案をつくる際には、これまで御議論がございましたこと、また、これからもあるであろう議論を踏まえまして適切に対処いたしたいと思っておりますし、審議会で関係の方々、つまり労働組合代表の方、使用者代表の方が出ておられる三者構成の審議会で十分審議をしていただき、そして策定をいたしたいというふうに思っているところでございます。
  170. 石田祝稔

    石田(祝)委員 これは今後の非常に大きな課題だと思いますので、また御意見を伺いたいのですが、ぜひ私たちのこの審議、一言一句とは申しませんけれども、ぜひ生かしていただいてやっていただきたいというふうに私は思います。  こういうやり方について私は納得したわけではありませんが、ほかにも聞くことがありますのできょうはこれくらいにしておきたいと思います。  本法律案が成立した場合、現在のパートタイム労働指針、これはどういうふうになるのか。ずっと並行的に存在していくのか、それとも中身が、指針が策定されたらこれは必然的に消えてしまうのか。この労働指針についてはどういうふうになりますか。
  171. 松原亘子

    松原政府委員 法律成立後は法律に基づいて新しいパートタイム労働指針ができるということになってくるものでございますので、現行の指針がいわば取ってかわられるということになりますことから、現行のパートタイム労働指針は廃止をされるということになるというふうに考えます。
  172. 石田祝稔

    石田(祝)委員 そうしますと、このパートタイム労働指針、これは現在こういう印刷物になって我々も目にしております。そして、新しい法案が例えば成立をして指針が決められれば、これはもう当然効力はなくなる、いわゆる考慮すべき事項を定めたものという、こういうものも消滅してしまう、こういうことだろうと思うのですね。  そうすると、この中身の問題で幾つかお聞きをしたいのですが、ここのところで、私がいただいた豆辞典の十四ページ、ここに「健康診断」という項目があります。ここにこういうふうに書かれているのですね。  使用者は、常時使用するパートタイム労働者に  ついては、労働安全衛生法の定めるところにより、健康診断を実施するものとすること。こういうことが出ております。  それで、先ほど最初にお伺いをしたILOの第八十回総会での事前の質問に対する回答にこういうところがあるんですね。これは、私、理解が足らないがゆえの質問かもしれませんが、問いの七というところ、こういう質問があったんです。「条約は、以下のことに関してパートタイム労働者が他の労働者と同じ保護を受けるべきであると規定すべきか。」これで三つの問いがありまして、その二番目の(b)という問いに「職業安全衛生。」この部分についてパートタイム労働者が他の労働者と同じ保護を受けるべきであるかどうか、これについて回答がございまして、回答した国が五十四カ国、賛成した国が五十二カ国、そして反対した国は日本一カ国、そしてその他の国は一カ国、こういうことで、日本の意見というものがここにも述べられております。それに対して賛成かどうかということで、ノーということですね。日本だけが反対した。  使用者に対し、パートタイム労働者に他の労働者と同様の保護(職業上の安全衛生に限定されない定期健康診断等など)を与えることを強制することは適切ではなく、保護の内容に応じて権限ある機関が定める条件に従って、異なった取り扱いを認めるべきである。こういうふうな回答なんですね。  これは、ここのところとパートタイム労働指針の「健康診断を実施するものとすること。」こういう考慮すべき事項を決めておりますけれども、ちょっと私の理解では違うんじゃないかな。考慮しなさいと言っておいて、こっちの回答では、それぞれに任せなさい。日本だけが反対をしているんですね。ノーの回答を出している。  ですから、先ほど最初にお聞きしたように、こういう国際会議の態度と本法案は矛盾しない、こういう態度であったら、新しく策定される指針というものは、同じ理屈でいくと、健康診断については今までのパートタイム労働指針よりも内容が後退することになりませんか。
  173. 松原亘子

    松原政府委員 このILOの質問書の問い七に対します回答でございますけれども、この問い七の書きぶりが「条約は、以下のことに関してパートタイム労働者が他の労働者と同じ保護を受けるべきであると規定すべきか。」ということなんですが、そして「職業安全衛生。」というふうに書かれているだけでございまして、これは、もちろんチェックをしてみないとといいますか、質問してみないとわからない点はございますけれども、必ずしも健康診断だけに限られないではないか。つまり、職業安全衛生といいますともう少し幅が広くなってしまうということから、健康診断はともかく、それ以外の分野についてまですべてということについては、まだ国内においては十分そこまで検討も煮詰まっていないということを踏まえまして、健康診断を除く他のことについてまで一律に強制するということは適当ではないのではないかという趣旨の回答であったわけでございます。  したがって、このILOのまとめ方が、日本だけ反対というふうに書かれておりますと、いかにも全部について反対しているというようにとられがちでございますけれども、私どもの方が懸念いたしましたのは、職業安全衛生という言葉の持つ意味が十分明確でないということから、健康診断を超えた相当幅広なところにまで一律の義務が課せられるのではないかということを懸念をいたしたというところからくるものでございまして、今回の法案とILOに対する対応が違うということは、そういう意味ではないというふうに思っております。
  174. 石田祝稔

    石田(祝)委員 個々の質問がどういう原文になっているか、私は承知しません。しかし、どこから出した訳かというと、労働大臣の官房ですから、私は全面的に信用して疑問点をお聞きしているわけです。ですから、少なくとも、これが要約でなくてこのまま翻訳をされているということであれば、間違いなく日本は反対したただ一つの国ということになりますね。そういうことで今回臨まれるわけです。  ですから、余りにも厳密に労働安全衛生ということを考えられて、いわゆる誠意を持って対応されるという観点から厳密に考え過ぎてこうなったという御説明だと私は思うのですけれども、このいただいた資料だけを見れば、少なくともこのパートタイム労働指針に反するのではないか。今回法案が成立すれば指針が策定されて、そうすると、このパートタイム労働指針はなくなる、そういうことですから、中身がそっくり改善されて移されるのだったらいいですけれども、これを見る限りでは、私はなかなか納得ができません。  ですから、これはどういうことになっているのか、委員会後でも結構ですけれども、ぜひこれは明確に教えていただきたいと思うのですが、これは教えていただけますか。
  175. 松原亘子

    松原政府委員 今回のILO総会のパートタイム労働問題に関する委員会につきましては、私どもの方からも出席をいたしておりますので、今先生指摘のような点も十分踏まえて対応するようにということでやらせていただきたいと思います。
  176. 石田祝稔

    石田(祝)委員 いや、そうではなくて、この部分についてどういうふうになっていたのか、本当はどうなのか、後でもうちょっと詳しく説明をしていただけますか。よければ首を振ってください。  時間がありませんので、最後にお聞きしたいのですが、短時間労働援助センター、これはなぜつくらなければいけないのかという気が私は正直いたします。  例えば、先ほどからちよくちよく利用させていただいております「パートタイム労働豆事典」、これの一番最後、裏表紙のところに、「パートタイム労働に関する相談や問い合わせは」ということで、こんなにたくさん書かれているのですね。全部で十幾つ書かれているのです。ですから、こういうものが現にあって、なおかつ、なぜ民間の団体を新設しなければならないのか、これは私は理由がよくわかりません。今までのところでは不十分だ、こういうことであろうと思うのですけれども、そうすると、今までパートタイム労働に関してはどういう相談を受けておったのか、結局今まで何をしておったのか、こういうことにもなると思うのです。  なぜつくらなければいけないのか、新しく民間でつくらなければならないのか、この理由をちょっと教えてください。
  177. 松原亘子

    松原政府委員 短時間労働者雇用管理改善等を進めるということで、一つの大きな柱が事業主の責務とそれを明確にした指針だということは申し上げましたけれども、それに沿ったような形で雇用管理改善をしようということで事業主が臨んだ場合でも、具体的に結論を出すまでには、例えば企業の人事管理の方針をどうするかとか、賃金体系をどういうふうに持っていくかとか、労働者の人員配置をどういうふうに考えるかとか、場合によりましては営業・操業体制をどうするかといったような、企業の経営全般にかかわる事項を再検討しなければいけないということは往々にして出てくるわけでございます。  そういうことになってまいりますと、かなり具体的、技術的、専門的な知識、技能を持って対応しなければ、行政機関がみずからそういった分野にまで対応するということはなかなか難しい面がございます。むしろ、パートタイム労働者雇用管理を非常に上手にやっている、うまくやっている、パートタイム労働者も非常に能力を発揮して幸せに働いている、そういう事例は民間にあるわけでございまして、そういった個別事例を十分収集し、そういったものに基づいたきめ細かな専門的、技術的アドバイスができるということも非常に必要なことだと思います。指針を周知し、守ってくださいと言うだけではなく、そういう指導だけではなく、そういった技術的援助をすることも非常に重要なことだと思っております。  それからまた、パートタイム労働者自身は家庭生活との両立を図りながら働く方が多いわけでございまして、そういう問題に絡んだもろもろのことを心配事として、また不安や不満として持っておられる方もあるわけでございます。そういう方に対する相談、コンサルティング、カウンセリング等も含めましたことは、むしろそういったノウハウといいますか、それを持った民間団体がきめ細かく対応することの方がより効果的だというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、今先生が御指摘の豆事典に、確かにいろいろな行政機関がございます。パートタイム労働者の方、使用者の方もそうですけれども、それぞれの問題について、一体どこに行けば的確に答えが返ってくるかといいますか、これだけ機関が多いというのは、それだけパートタイム問題の幅が広いということであるわけでございますが、それだけに、抱えられた問題を処理するために向かうべき行政機関がすぐわかるかどうかについてはなかなか難しいところもあろうかと思います。もちろんこういうことに精通していらっしゃる方は問題なく正しいところに行くということであろうかと思いますけれども、長い間家庭に入っておられたパートタイム労働者の方が相談に行きたいと思われても、問題ごとにどこに行けばいいかがなかなかわからないということは往々にしてあるわけでございます。  パートタイム労働問題研究会が地方に視察に行かれたとき、私どもも同行いたしましたけれども、そういったところでも、パートタイム労働者の方の声として、気軽に相談に行けるところが欲しい、どの相談だとどこの機関、どれだとどこだと言われても、なかなかそういう判断はできないという声もございました。そういうことから、一つは、身近な相談窓口を設けることも非常に重要なことではないかと考えた次第でございます。  したがいまして、行政機関の任務とあわせまして、いわば行政サービス的なことを補完的に行うということも、あわせてパートタイム労働者方々のためにも非常に必要なことなのではないかと考えたことによりまして、こういったものを設置することにいたしたわけでございます。
  178. 石田祝稔

    石田(祝)委員 私はどうも、今の局長の御説明では必要かつ十分な条件かなという疑問点がちょっと残ります。  時間になりましたので、私は終わります。
  179. 岡田利春

  180. 河上覃雄

    河上委員 それでは、残り時間が十五分でございますので、これまでの議論を整理補完する形から今後の議論につなげていきたい、こういう視点から、簡潔にお尋ねをいたしますので、どうぞ明快にお答えいただきたいと思います。  もう形容詞も背景も全部省いてストレートにお伺いしますが、一つは、将来、パート労働者はさらに増加する傾向にあるか否か。そして、基幹的労働力になると考えられているか。さらに、基幹的労働力として位置づけるべきであるとお考えかどうか。まず、この三点、明確に御回答ください。
  181. 松原亘子

    松原政府委員 パートタイム労働者は非常にふえておりまして、現在八百六十八万人にまでなっており、全雇用労働者の一七・三%を占めております。  このようにパートタイム労働者がふえた背景には、パートタイム労働が、働く人また雇う側双方にとって、その要望に合う就業形態であるわけでございますし、また、これからの中長期的な人手不足の傾向を考えますと、女性高齢者が働きやすい就業形態でもあるわけでございますので、ますます重要なものになると考えているわけでございます。  ともすれば、パートタイム労働というのは補助的な労働だと見られる方もありますけれども、もはやそういう時代ではなくなっているわけでございまして、そういう考え方は改められるべきであると考えおります。  現に、一部の企業においては、パートタイム労働者を基幹労働力として十分にその能力を発揮してもらっているという企業もあるわけでございまして、将来的にはそういう方向に向かうというふうに思い、また期待をいたしているわけでございます。
  182. 河上覃雄

    河上委員 次に、この法案の目的でありました「雇用管理改善等」、これについてお伺いします。  一般論として雇用管理とは何なのですか。また、本法で言う雇用管理とこれは同じでしょうか。
  183. 松原亘子

    松原政府委員 雇用管理といいますのは、一般的には、労働者を募集、採用し、そして採用した労働者を一定の仕事につけ、必要な場合に教育訓練を実施し、また、ステージによりまして昇進、昇格といったような措置をとる。もちろん賃金や労働時間をどうするかといったこと、福利厚生、そして定年退職、解雇という最後のステージ、それから全般にわたりましての企業の雇用におけるマネージメントといいますか、管理の全般を指すものだというふうに考えております。  この法律におきます雇用管理もほぼ一般的に言われておりますのと同じでございますが、先ほど来御議論がございました労働条件ということにつきましては、適正な労働条件及び教育訓練、福利厚生その他の雇用管理、こういうふうに書いてございますが、特記をするような形で書いてはございますけれども雇用管理の中の最も重要な部分であるということからそのように書いておりまして、基本的には、労働者の募集、採用から定年退職、解雇に至るまでのさまざまの企業とのかかわりが出てくること全般を指すというふうに理解をいたしております。
  184. 河上覃雄

    河上委員 「労働経済の分析」の二百十六ページに「雇用管理の概念」こう出ております。労働省が出しております「労働経済の分析」ですが、その中に   具体的には、募集・採用、配置・昇進、退職などの諸管理を指しますが、これより広い概念として、賃金、労働時間、福利厚生、教育訓練、職場環境、労使関係など従業員の雇用に関する諸管理を含んでいう場合もあります。 こう書いてあります。今回の雇用管理、全部同じですとお答えございました。  私は具体的に申し上げるわけですが、これはすべて労働条件、大事な側面です。賃金、労働時間等々、もろもろ含めてそうだ。この一つ一つが全部本法においてもきちっと担保されると理解してよろしいですね。雇用管理改善をする措置を講ずる、こうあるわけですから、まだ何らか改善されてない実態にあるという認識にお立ちになっていらっしゃると私は思います。  その意味では、改善を必要とする雇用管理、これは私が前段申し上げたその一つ一つすべて対象になるんだ、こう理解してよろしいですか。
  185. 松原亘子

    松原政府委員 概念的にはそのとおりでございます。
  186. 河上覃雄

    河上委員 したがいまして、先ほどからも議論もございました「雇用管理改善等」、これは第三条の「適正な労働条件の確保」、これにつながるんだ、その帰結として、実行効果を上げるためには具体的に指針で大臣がこれをもって臨む、こういう関係になるわけですが、今申し上げたその一つ一つ、差別なきようきちっと手当てをすることを強くもう一遍主張しておさたいと思っております。  そして、もう一点だけ、「適正な労働条件の確保」、こうおっしゃって一行書いてあるわけですが、これは認識をお尋ねしておきたいのですが、適正というのは何に対して適正なのか、何と比較して適正なのかという認識、お答えいただけますか。
  187. 松原亘子

    松原政府委員 短時間労働者雇用管理に関しますいろいろな問題点といたしましては、例えば、パートタイム労働者労働条件が雇い入れ時において必ずしも明確になっていないことから労使の間で問題が生じるといったようなことがまずございます。それからまた、パートタイム労働者用の就業規則がないという企業も実はかなりあるわけでございまして、そういう面でもパートタイム労働者労働条件が十分明確になっているとは言えないわけでございます。さらに、就業規則を策定している場合でも、就業規則を変更する場合にパートタイム労働者の意見を聞いているかといいますと、必ずしも多くの企業で聞かれていないというような問題もございますし、また、パートタイム労働者、何より労働時間ということが非常に重要な点でございますけれどもパートタイム労働者のさまざまな事情を考慮して労働時間を定めるということに必ずしもすべての場合なっていないとか、それから、残業もあって就業継続が困難になるような場合もないわけではないという問題もございます。  そういったことはいずれも問題点というふうに認識をされることでございまして、そういったものの改善を図ることが適正化、「適正な労働条件の確保」であるというふうに考えているわけでございます。
  188. 河上覃雄

    河上委員 では、その次にお尋ねいたしたいと思いますが、パートタイム労働者労働条件は、通常の労働者と比べまして差別的であると認識をなさっていらっしゃいますか、それともそういうことはない、こういう御認識でしょうか、この認識についてお伺いします。
  189. 松原亘子

    松原政府委員 さまざまの調査から見てみますと、パートタイム労働者と通常の労働者との労働条件におきましての取り扱いに違いが見られるのは事実でございます。昇給のありなしとか、退職金制度の適用のありなしといったようなことから、幾つか取り扱いが違うのがございます。  しかしながら、パートタイム労働者というのはフルタイム労働者労働時間が短いという点においては決定的に違うわけでございます。そういうことから、単に労働時間に比例するのかどうかという問題は非常に大きな問題になってこようかと思いますけれども労働時間が短いということは、その他の面についても同じような比例的な影響があるということだけではなく、それ以外の基本的な、本質的な違いというものを生じてくるわけでございます。  その他の面と申し上げますのは、例えば配置をする仕事の範囲ですとか、どういった責任のポストにつけるかとか、それから配置がえをするのかどうか、場合によりましては転勤の対象にするかどうかといったような、先ほど先生指摘ございました雇用管理のいろいろな中での取り扱いが、労働時間が短いことから来る制約というのは労働時間が短いことに比例する以上にあるというのが私ども考え、すべての場合ではございませんけれども、そういう場合も多いかというふうに思います。  そういうことから、さまざまパートタイム労働者と通常の労働者との間には取り扱いが違う点はございますけれども、これらをいわば社会的に許容されない差別であるというふうに言うことはなかなか難しいのではないかと思うところでございます。もちろん、例えば福利厚生施設などについて指針でも同じように取り扱うようにすることが望ましいというふうに書いてございますとおり、なるべく同じように取り扱うのが望ましいということは基本ではございますけれども、さりとて同じでない場合は差別だというところまではまだ十分な認識の成熟はないのではないかと考えているところでございます。
  190. 河上覃雄

    河上委員 持ち時間がもうほとんどなくなってしまいましたが、実はこの差別的取り扱いについて事例を一つ一つ挙げながら回答をいただきたかったのです。そうすればもう少し浮き彫りになるのではないのかな、私はこういう実感を持っております。しかし、これは後の論議にさせていただきたいと思います。  大臣、性善説、潤い、そして人間愛あふれる労働行政を目指す大臣でございまして、ともかくきょうは同僚議員からも、この法律がもう一歩枠として前向き、前進になるのかと御質問して甚だ恐縮でございますが、私も最後にもう一遍、前進すると信じている、間違いなく前進させる、こういう大臣の御答弁をぜひともいただきたい、こういう意味から、最後に大臣に御答弁いただきたいと思います。
  191. 村上正邦

    ○村上国務大臣 パートで働く方々が安心して、そして、今までもろもろ問題点がございましたが、そういうものが改善されて働けるように、私は前進するもの、こう信じております。
  192. 河上覃雄

    河上委員 終わります。
  193. 岡田利春

  194. 金子満広

    金子(満)委員 短時間ですから、ひとつ的確に答えていただきたいと思います。  パート労働者の雇用、賃金、労働条件、この改善の問題は、ひとりパート労働者だけでなくて、大きな社会問題、政治問題であり、今や国際的な問題にまでなっていると思うのです。  パート労働者とフルタイム労働者の関係については、きょうも答弁で松原局長初め関係者からいろいろ言われていますが、メモをとってみますと、大体、パートタイム労働者というのは短時間就労という一つの雇用形態である、これを指すものであって、それ以外は通常の労働者と変わるものではない、こういうような趣旨の答弁が繰り返しされました。至極当然で、私もそうだと思います。  問題は、至極当然のこの言われている原則が、なぜ法案の中に目的とか定義とかそういう形で入らないのかということなのです。何を基準に法律をつくっているのだろう、こういうことを私も感ずるわけです。さっき大臣が答弁の中で、法律家が読まなければわからないような法律は、こう言われましたけれども、これは法律家が見てもわからない、そして、縦横どっちから見ても迷路に入ってしまう。一条はといったら、いや三条と合わせる、一条、三条といったら五条を見てくれ、十四条を見てくれと、おかしな格好になってしまうのです。私は、こういう形を見ると、背骨のない法案だ、だからつかみどころがないのですよ。  常日ごろ言葉にしているのだから、パートとフルタイムの労働者との関係というのはこういうものなのだという点をなぜ法案入れなかったのか、ここのところを最初に伺っておきたい。これは大臣答えてくださいよ。
  195. 松原亘子

    松原政府委員 今回のこの法案は、「目的」、また第一条ということで恐縮でございますけれども、短時間労働者能力の有効な発揮、これを目的といたしているわけでございます、もちろん、最終的にはその福祉の増進ということがございますけれども。そして、そのための方策として企業におけるパートタイム労働者雇用管理改善を図ってもらう、それ以外にもございますけれども、そのことをメーンポイントにいたしているわけでございます。そして、その雇用管理改善ということにつきまして具体的に事業主の責務というものを第三条で定めておりまして、どこへ向かっての努力なのかということになってまいりますけれども、それは三条の事業主の責務の具体化を新たなパートタイム労働指針において明らかにする、こういう組み立てになっているわけでございます。  かなり法律技術的な点もございまして、一条、三条、それからその先へ、こういうことになってまいりますけれども法律の形はこうでございますが、私どもとしましては、午前中も申し上げましたように、事業主の方のみならず、パートタイム労働者の方にも正しく理解していただくということは非常に重要なことだというふうに考えておりまして、わかりやすい資料の作成等につきましては今後十分努力をいたしてまいりたいというふうに思っているところでございます。
  196. 金子満広

    金子(満)委員 改善とか努力とか使用者責任とかいう言葉がずっとあるのですが、フルタイムとパート労働者との関係がはっきりしないから、努力努力といってもどんな努力だかさっぱりわからないのですね。  それはそれとして、私は、パート法案の最大の問題、基準は何かということでいえば、この法案ができることによってパート労働者労働条件改善が前進するかどうか、そこにあると思うのです。したがって、パートと通常労働者との均等待遇が確立をする方向に向かうかどうか、そういう中で、特にパート労働者にとって最大の問題は賃金になると思いますが、その賃金がどうなるか、これは一つの大きな試金石になると思うのです。  パート法ではこの点について、別に決めるところのパート労働指針、これで法的な基礎を与えてやるのだということにはなっているし、きょうの午前中からの答弁でもそういうことになっています。労働条件を指針にゆだねるということ自体私は大きな問題があると思いますが、それはそれとしてわきに置くとして、その指針がどういう内容のものになるかということであります。  当然と思いますけれども、これは八九年に決めた現行指針が基礎になる、このように解釈してよろしいですか。
  197. 松原亘子

    松原政府委員 法律に基づきます新たな指針につきましては、私どもが案を作成し、審議会にお諮りした上で決定をするということになるわけでございますけれども、私どもの検討におきましては、現行のパートタイム労働指針を基礎にして検討いたしたいというふうに考えております。
  198. 金子満広

    金子(満)委員 やはりそこは大きな問題だと私は思うのです。現行の指針というのは、次のようなことが賃金のところにあります。   パートタイム労働者の賃金、賞与及び退職金については、労使において、その就業実態、通常の労働者との均衡 均等ではありません。  均衡等を考慮して定めるように努めるものとする。 今読んだくだりは一体どういうものか、この点で重大な指摘をやっているものがあります。  労働省は、この答弁でもそうだし、国内では非常に言葉を選んでやっていると思うのです。しかし、外国に対してはなかなか正直に物を言う点があるのですね。  それは、先ほども質問の中でいろいろありましたが、ILOが去年、パート条約の作成に当たって質問書というのを各国政府に送ってきました。内容は三十三項目あります。これに対して日本政府は回答を出しました。時間があれば私は全部やってもいいと思うのですけれども、その中で特に関係のある問題で、ILOが出した質問の十八項目にはこういうのがあります。   勧告は、パートタイム労働者が、奨励金、報奨金、交替勤務・夜業・週末勤務・公休日の勤務に対する割増し金、通勤・食事その他の目的の手当を含め、関係する分野または事業所のフルタイムの労働者が受け取る基本給に加算される金銭的補償から平等に給付を受けるべきであると規定すべきか。 この点はどうかという問いであります。この点について、回答した労働省ですから、ここに書いてありますけれども、ちょっと長いですけれども第一と第二のパラグラフを読んでいただきたいと思うのです。十七に書いてあります質問十八について。
  199. 松原亘子

    松原政府委員 質問十八は、勧告に今先生が御指摘になりましたようなことを規定すべきか、こういうことでございますが、これに対しまして私どもは、   パートタイム労働者はフルタイム労働者に比較して労働時間が短いため、事業主の負担となるべき手当をフルタイム労働者と同様に支払うこととすると、結果としてパートタイム労働者の時間単価が上がることとなり、逆にフルタイム労働者との均衡を失してしまうこととなる。 というのが第一パラグラフでございます。   そして第二バラグラフにおきましては、パートタイム労働者実態、フルタイム労働との均衡、パートタイム労働者間の均衡を考慮して労使において決定される事項であり、一律に平等な取扱いを規定することは適当ではなく、加盟国の実情に応じて、国内法制または国内慣行に従って行われるべきである。という基本的な考え方を述べております。
  200. 金子満広

    金子(満)委員 大変重大な内容だと思うのです。なかなか国会の答弁ではこういう答弁をしないのです。それから、大臣の談話などでもこういうのは出たことはないんですよ。私は、そういう意味でいえば非常に正直だと思うのです。正直だけれども、あえて言えば、そこに見えるのは日本の行政当局における心の冷たさだと思うのです。これは使用者が喜びますよ、全くそのとおりだと。どこのパート労働者がこれを喜びますか。  「一律に平等な取り扱いを規定することは適当ではなく、」そして、日本政府が最後にこの締めくくりで入れたのが、先ほど私が申し上げた一九八九年の「パートタイム労働者の処遇及び労働条件について考慮すべき事項に関する指針」の内容なんです。何と解釈しようとも、これは差別をするということです。一律に平等でないということを外国に、しかも国際機関に出しているのです。きょうから始まっているんじゃないですか。  あえて言えば、この同じ問いに対して五十五カ国は賛意を表しているのです。七カ国が異論を唱えたのですが、その一つが日本なんです。  こういう点を考えたときに、国際貢献を言うのだったらこういう点でどうするかということも私は考えてほしいと思うのです。ですから、今言った八九年の、つまりパート労働指針というのは、これまで労働省自身がやってきたこと、日本の全体がパート労働についてはこうあるべきだというその到達点をがくんと下げたのです。これが八九年の指針なんです。だから、パート労働者にとってはこれは明らかな後退なんだ。  過去の労働省立場がどうであったか、これは一言で言えばパートも通常の労働者も平等でなければならないという立場を貫いてきたのです。特に七〇年の婦発五の通達は見事にそれを書いているのです。長いところはもう繰り返しませんけれども、そこだけ読めば、  パートタイム雇用は、身分的な区分ではなく、短時間就労という一つの雇用形態であり、パートタイマーは労働時間以外の点においては、フルタイムの労働者と何ら異なるものではないことをひろく周知徹底するものとする。 とある。そのとおりなんです。これはどこに行ってしまったのです。みんな八九年で消えたじゃないですか。こういう点は指摘すればまだたくさんあるのです。  したがって、七〇年代から八〇年代にかけて、これは労働省の婦人少年室関係のいろいろの文書を見たって明確なんですよ。当時の労働行政というのは、同一労働同一賃金の原則に立っていたことは明白なんです。これを否定する発言はないでしょう。  ところがそういう中で、流れがそうですから、六九年も労働省の職安局長通達「パートタイマーの職業紹介業務について」を出しました。その中ではパートタイマーの時間当たりの賃金をどうすべきかを指示しているのです。そういう同じような内容が職安局長通達で八一年、八六年にも出されている。これもあえてそのところだけ読ませてもらえば、   時間当たりの賃金は、当該事業所に勤務する同職種、同作業、同経験で、かつ勤務時間帯が同じである一般従業員の時間当たり賃金と比べて低い額でないこと。 と書いてある。いいじゃないですか。そのとおりじゃないですか。何でこれを変えるのです。法案には全然ないでしょう、こんなこと。だから私は背骨がないと言うのです。  そういうところまで来ているのだから、こういう点を私たちは厳しく指摘していかなければならぬと思うのです。積み上げてきたものを崩すんだもの。それで、外国に対しては堂々と本音を吐いて、国会その他ではうまく表現を変えながら何とかその場を切り抜けようという、私は悪い意味で言えば官僚の処世術だと思う。まずいですよ。大垣はいいも悪いも率直に物を言うという人だから、私はこういう点をはっきりさせていかなければならぬと思うのですね。  ですから、八九年のそれができる前はどうだったか。今聞いたような答弁は一つもないですよ。  一つの例でいえば、一九八〇年の参議院社会労働委員会パートの賃金格差の解消を求めるという質問が出たときに、時の藤尾労働大臣は何と言ったか。「同じ働きに対する価値が、働く形態によって評価が変わってくるなどということはあってはならぬ」「落差がどんどんと縮まっていきますように、あるいはなくなっていきますようにという方向で、ひとつ労働行政を進めてもらいたい」、もう一読して明快じゃないですか。賃金格差を解消するということが労働行政の基本にちゃんと座っているのです。  ところが、こういう中でどういうことが起こるか。八九年の指針を決め、その指針に基づいてこれは衆議院の社会労働委員会質疑がありました。八九年十一月十四日です。現行のパート指針についての質問が出たのに対して、当時の野崎労働基準局長が何と答えたか。これは同一労働同一賃金のことではありませんと答えたんじゃないですか。それをあたかも労働省の担当官は最初からずっと一貫して今日に至るようなことを言っているのですよ。違うのです、これは。こういう点は私は、全国八百万を超えるパート労働者がいるのですから、うそついちゃいかぬと思うのですよ。  こういう点を指摘しておかないと、先ほど言ったように六九年の労働省職安局長通達、七〇年の婦発五の通達、八一年の職安局長通達、八六年の職安局長通達、それが八九年の指針で全部骨がなくなったんじゃないですか。  それが今度できる、またつくろうとして提案している政府案の中ではどういうことになるか。法文の中には原則はうたわない、指針をつくります、その指針の基礎は八九年の指針が土台になりますよというのを松原局長も答えた。これは個人の答えではなくて労働省、政府の見解だと思いますよ、個人が法案を出しているんじゃないんだから。そういう点を考えたときに、事は単純ではないと思うのです、ほかの法律にはないんだから。この点をどう考えますか。どなたでも結構です。
  201. 松原亘子

    松原政府委員 四十五年の婦人少年局長通達でございますけれども、これは当時まだパートタイム労働というのがそれほど成熟していない、生まれてそれほど時間がたってないという時期で、とかくパートタイム労働というのはまだ労働保護法規の適用がなくても当然なのではないかといったような考えがあった時代、また、パートタイム労働というのも、労働時間が短いということでパートタイム労働なのか、それともパートタイマーという呼称で呼ばれているからパートタイム労働者なのかといったような概念自体もまだ非常に混乱していた時期に出されたものでございます。  そういうことから、まず基本的には概念を明確にするということが必要であるということから、パートタイム労働者というのは労働時間が短いということであって身分的な区別をあらわすものではないということを明らかにしたわけでございます。それからまた、その後の方に出てまいりますけれどもパートタイム労働者の賃金につきましては、同種の労働者との均衡を保つようにということが同じ通達の中でも言われております。  この同種の労働者との均衡という考え方は、その後の私どものいろいろな通達の中にも基本的に流れていることでございまして、現行のパートタイム労働指針もその四十五年当時の通達からかけ離れたものではなく、その精神を引き継いだものだというふうに私どもは理解をいたしているところでございます。
  202. 金子満広

    金子(満)委員 お言葉ですけれども、そこが一番違うのです。そこを隠しているのです。労働省はここのところをぼやっとしておくのです。いいですか、先ほど私は指摘をしましたけれども、じゃ、七〇年の婦発五の通達の中にパート労働者就業実態という言葉がありましたか。これをするっと入れたのが八九年なんです。確かに均衡という言葉はあります。前からあるのです。だけれども、その就業実態というのは、そこでいろいろの労働条件を決めるというのだから、就業実態というのはどういうものなのか、それで差をつける賃金というのはどんなぐあいにそこで差をつけるのか、言葉があるのだから実態はそこにあると思うのです。均等と均衡は言葉が違うのです。等と衡は違うのです。均衡というのは、局長言うとおりに七〇年のものにもあります、均衡という言葉で。そのままここにあります。「同種の労働者の賃金と均衡を保ったものであるよう、」と書いてあります。しかし、そこのところは、何をというのがない。これが八九年にはそこのところで、「その就業実態、通常の労働者との均衡等を考慮して」とこうなる。だから、私は聞いている。  就業実態とは何が実態なのか。同じ労働をやって何が違うのか、その就業実態。それで差をつけてもよろしい、つり合いがとれればいいのですというのが八九年ですから、そこのところを説明してもらわないとわからない。藤尾さんの言ったことも野崎労働基準局長の言ったことも、今度は現在労働省のしかるべき責任ある立場にいる人が言ったことと違うのだ、みんな。  それで皆さんはいいですよ、違った解釈をしても。パート労働者は毎日パート労働者なんだから、皆さんの方は複雑であっても、パート労働者職場は単純なんです。賃金は労働条件があって説明すればすぐできる、ごちゃごちゃしないのだから。そこの点をはっきり答えておいていただきたいと思います。
  203. 松原亘子

    松原政府委員 平成元年のパートタイム労働指針では、先生指摘のように、賃金、賞与及び退職金については、  労使において、その就業実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする。 というふうに書いてございますが、この趣旨は、パートタイム労働者の賃金、賞与、退職金につきましては、その職務の内容、責任の度合い、どのような仕事に配置される可能性があるかどうか、転勤だとか配転の問題、そういった各種の要素を考慮し、通常の労働者との均衡、いわばつり合いを考慮した上定めるようにという趣旨でございます。  ところで、昭和四十五年の婦人少年局長通達におきましては、賃金について同種の労働者との均衡が保たれるようにという言葉遣いになってございますが、これは単に通常の労働者との均衡ということではございませんで、同種の労働者との均衡ということでございまして、この意味は、就業実態、先ほど申し上げましたような意味での就業実態でございますが、そういったものを考慮した上で均衡を保つようにという趣旨でございまして、基本的に四十五年通達と現行のパートタイム労働指針の趣旨は変わっているものではございません。
  204. 金子満広

    金子(満)委員 そこのところ、変わったということになると重大なことになりますから、変わらないとか発展させてとか実情に合わせてとか、そういうのが今まで随分言葉にはあるのです。しかし、明白に違っているのですね。だから、通常労働者パートとの違いというのでなくて、同一の仕事ということになる。そのことは幾つでも山のように例はあるのですよ。  二十四時間営業の仕事を見てください。パートと正規の労働者、同じ仕事をやっている、同じものを売っているのですから、同じ食べ物を売っているのですから。それで賃金はこんな差があるのです。違うのは転勤と配転があるのです、正規の方は。格付があって、A支店からB支店の方に行く、こっちの方が大きい、そういうのがある。やっている仕事が同じで賃金は上がっていく、そこのところで、転勤とか配転とか出向というのを言葉で出してきたのは八九年以後なのです。だって、それまでに労働省はそんな説明しないのです。公式にはしてないのですよ。  だから、私は、そこのところで八六年まで職安局長通達があるのだから、その後八九年の三年間の状態が、社会経済状況はどうだったか、雇用関係はどうだったかという点も考慮に入れて、そうでないと、単純に言えば、ああそうか、パートというのは景気が高い低いの高低のときの安全弁だよ、そのときパートをこうすればいいのだというのが公式にも言われるのだから、パート労働者についての労働条件というのは法律でがちっとしなければだめだというのが随分あったと思うのですよ。  労働省は本当にそういう意味では六九年、七〇年そして八一年、八六年はかなり意欲的に答えたと思う。ところが、八九年になってちょっと変わった。私は、言葉は悪いけれども使用者側の意見がかなり入るようになったと思うのですよ。だから、やりづらい仕事労働省はやったのです。だから、やりづらいときに原則を貫くのが行政でなければいけないし、政治でなければいかぬ。勇気がいるのです。流れに任じていったら、ずるずるいってしまうのだから。そして、出てきた法律というのは、だから骨がないのです。  だから、先ほどの局長の説明でも、一条と言えば三条になるのです。一条、三条を言えば五条を言わなければ通じないのです。全体通じないから責任を十四条に持っていくのじゃないですか。もっと極端に私から言えば、ああ、気楽なものですと。これではパート労働者は救われないです。じゃ、都道府県に一カ所つくるそこのセンターに行ってください。いいですよ、小さい県は。委員長は北海道ですけれども、札幌に一つできるのに、釧路からパート労働者相談に行けますか。旅費がけるのだったらパートで働いたのがパアになってしまうのです。だから、そういうようなことを考えると、相当抜本的にこの問題は考えなければならぬ。  ですから、決意表明を聞いてもなんですけれども、村上労働大臣、これは本当に私は大事だと思うのです。確かに労働大臣はうんと変わるのですよ。六九年からうんと変わってきた。それはそれぞれに責任を持ってやったといえばそうかもしれないけれども、しかし、パート労働者は変わることがないのだから。そこでパート労働者に対する歴史的な到達点というのは客観的にあるのです。だから、ここを守らなければならない。そして、同じ労働大臣の藤尾さんはそういうふうに言ったわけですよ。言ったから今責任をとれ、何もこんなこと言わないですよ。しかし、大臣の現職が言ったことは、大臣としては行政で引き継ぎしなければならぬということにもなると思うのですね。  ですから、私は、法案にもそれから指針の中にも明確に均等待遇ということを書き入れるべきだ、そういうものをつくるべきだ、そういう点を私は申し上げるのですが、大臣、そのこともひとつ含めて答弁を伺って私の質問を終わります。
  205. 村上正邦

    ○村上国務大臣 かねがねから、労働運動の大先輩でいらっしゃる金子委員の言書火を吐くようなそうした思いにつきまして、日ごろから敬意を表しております。  いろいろとあるべき姿についてお話を賜りました。十分心して行政に当たってまいりたい、こう思っております。
  206. 金子満広

    金子(満)委員 終わります。
  207. 岡田利春

    岡田委員長 次に、伊藤英成君。
  208. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 政府提案の短時間労働者雇用管理改善等に関する法律案について質問をするわけでありますけれども、私ども民社党としても、このいわゆるパート労働の問題について長きにわたって研究もし取り組んでまいりました。そして、昨年の初めに他の野党とも共同で、議員立法の形でいわゆるパート労働法を出しているわけでありますけれども、それほど重要なテーマとして取り組んでいるわけでありまして、そんな意味で、問題提起も含めまして質問をいたしたいと思います。  最初に、この法律案の目的に関して伺うわけでありますが、政府提案の「目的」はこういうふうに書いてありますね。「短時間労働者について、その雇用管理改善等に関する措置、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように」することとされているわけでありますけれども、短時間労働者の通常の労働者との均等待遇及び適正な就業条件の確保という観点は織り込まれておりません。  従来、パートタイム労働問題として指摘されてきた最も切実な問題の一つは、パートタイム労働者の通常労働者との賃金あるいは退職金、福利厚生等の労働条件における格差や不安定な雇用問題であるわけであります。  したがって、この政府提案で均等待遇及び適正な就業条件の確保が本当に実現できるのだろうかということが問題になるわけですね。この点についてどのような見解が、お伺いをいたします。
  209. 松原亘子

    松原政府委員 パートタイム労働者につきましては、一般の労働者、通常の労働者と比較しまして、賃金その他の労働条件に差が見られることが多いというのは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、それは、労使の両当事者が職務の内容ですとか責任の度合い、転勤、配置転換等さまざまの要素を勘案して自主的に決定した結果でございまして、それを一概に差別的な取り扱いであると言うことはなかなかできないのではないかというふうに思うわけでございます。  また、不安定な雇用ということにつきましては、雇用契約に期間の定めがあるという場合でありましても、そのこと自体はやはり労使が自主的に決定すべきことでございまして、雇用契約に期間の定めをつけてはいけないということはなかなか言えないかというふうに思います。  また、この法案におきましては、私どもは、パートタイム労働者方々が悩んでおられる問題点、切実なパートタイム労働問題点というものを少しでも改善できるように、解決できるようにしたいというふうに考えておりまして、パートタイム労働者の多様な就業実態を踏まえまして、労働大臣が事業主の責務であります雇用管理改善等に関して必要な指針を定めるということにいたしておりますし、指針に基づきまして必要な助言、指導を実施をするということにいたしているところでございます。  そういった措置を通じまして、パートタイム労働者方々がその持てる能力を有効に発揮できるように、そういう状況が実現できるようにということをこの法案は最大の眼目にいたしているところでございます。
  210. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の御説明で、そして、その中でもいろいろな指針やら助言をいろいろされて取り組んでいるようでありますが、目的はそういうことでやられているのでしょうが、しかし現在の状況は極めて不十分である、だから、こういう法律をつくろうというふうに考えるわけですね。  では、この法律で本当に目的とすることができるんだろうかといいますと、私は、今の御説明においても、そして現在の状況を見ても極めて問題である、こういうふうに思わざるを得ないということをまず申し上げておきたいと思います。  先進諸国の立法例を見ても、労働時間に比例してパートタイム労働者の通常の労働者との同等な権利を保障することが国際的な傾向にあるわけですね。申し上げるまでもありませんが、ILO勧告の第百六十五号においても、「パートタイム労働者の雇用条件は、可能な限り、それぞれフルタイム労働者の雇用条件と同等であるべきである。」そして、「適当な場合には、パートタイム労働者の権利は、比例的に考慮することができる。」こうなっておりますね。  労働省はこのILO勧告の規定についてどういうふうに考えているか、お伺いをいたします。
  211. 松原亘子

    松原政府委員 このILOの勧告は、国際的にいろいろな国が、この件に関しては、パートタイム労働対策を進める上で指針となるものとして示されたものでございます。したがいまして、表現としても、「パートタイム労働者の雇用条件は、可能な限り、それぞれフルタイム労働者の雇用条件と同等であるべきである。」とか、「適当な場合には、パートタイム労働者の権利は、比例的に考慮することができる。」ということで、かなり弾力的な表現になっているわけでございます。  そういうことで、このILO百六十五号勧告の内容が実現できる、そういうことについてのコンセンサスが国内にあるという国におきましては、これを一つの指針としてこの実現を具体的に図るということも可能であると思います。先生おっしゃいましたように、欧米諸国においては、一部の国にそういう考え方をとっている国がございます。  ただ、その背景には、非常に高い失業率の中でできるだけ多くの人で仕事を分け合うというワークシェアリングの発想からやられているといったようなこともあるわけでございまして、世界の国々のとっておる施策の背景などを考えますと、直ちにそれを日本にも適用するということは、諸条件から適当でないとか難しいとかいろいろなことはあろうかと思います。しかしながら、ここに掲げられております考え方としては、私どもも否定をするものではございません。  そういうことから、再三御説明してございますように、パートタイム労働指針の中にも既に賃金、賞与、退職金について「就業実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように」という考え方も出しておりますし、また、相当程度短い労働者ではない、もう少し長いけれども通常の労働者よりは短い労働者について、その就業実態が通常労働者とほとんど変わらない労働者については、「通常の労働者としてふさわしい処遇をするように」ということも指針に書いているわけでございます。  そういう意味で、考え方としては、私ども否定するわけではないということだけは御理解いただきたいと思います。     〔委員長退席、永井委員長代理着席〕
  212. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 考え方としてそういうふうに受け取り、そして指針でそれをまた示したりということでという説明でありましたけれども、重ねて伺いますけれども、では日本として、このILO条約の第百五十六号並びにこの勧告第百六十五号の水準を確保することが求められているわけだと思うのですが、そうした観点に立ってパートタイム労働に関する立法措置が日本でとられなかったのはなぜであるか、どう思われますか。
  213. 松原亘子

    松原政府委員 ちょっと説明が長くなるかもしれませんけれども御容赦いただきたいのですが、ILO百五十六号条約は、御承知と思いますけれども、男女労働者特に家族的責任を有する労働者の機会均等及び均等待遇に関する条約ということでございまして、必ずしもパートタイム労働者の問題を扱っているということではないとは思います。これにつきましては、条約の各条に書いてございますことを一々精査しなくては単純には結論が出ない点ではございますけれども、私どもとしましても、昨年の六月策定いたしました女子労働者福祉対策基本方針の中におきましても、この条約の批准についてはその可能性について検討するということを一応掲げてございまして、県体的な検討を今内々にやっているところでございます。  ただ、その前に御指摘ございましたように、百六十五号勧告の中で具体的にパートタイマー、パートタイム労働についての記述がございまして、そこでは、先生が御指摘されましたように、可能な限りの雇用条件の同等でありますとか、適当な場合の権利の比例的な考慮といったようなことが書いてあるわけでございますけれども、これにつきましては、またこれを前面に出した立法を行うというところまでは我が国におけるコンセンサスというものができていないのではないかというふうに考えるわけでございます。  この法案を提出するに至りました過程において、パートタイム労働問題研究会ですとか、婦人少年問題審議会、労使の参画を得て検討をお願いしたわけでございますけれども、そこでも、差別を禁止する法律が必要であるという御意見が一方にございますけれども他方には、パートタイム労働に関する問題は労使の自主性にゆだねれば十分なので、立法措置そのものが必要ないという御意見もあった中でございます。  そういうことから、現在我が国におけるコンセンサスがどの辺にあるかということを私ども検討いたしまして、現在提出させていただいているような。法案の形にいたしたわけでございます。
  214. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の議論は、先般の労基法の改正案の審議のときにも申し上げたと思うのですが、日本は今法律で何を規定していくのか、いわば行政指導的なもので何をやっていくのか、どういうふうにしていくことが日本の行政として望ましいのかという観点を考えながら私は質問しているつもりであります。そういう意味で、今回も指針というのがあり、そこに任せている。今回の法律案は、法のつくり方として中身は極めて問題の法律案だと私は思っております。  そういう意味でこの指針の問題についても聞くのですが、この法律案では、短時間労働者雇用管理改善に関する具体的事項はすべて指針にゆだねられているということですね。そして、この法律案そのものの中には具体的な内容は極めて乏しいといいましょうか、ほとんどないというふうに考えていいのだろうと思っているのです。  現行のパートタイム労働指針に掲げられている事項は、パートタイム労働者の処遇及び労働条件改善を図るための基本的な原則であるはずですね。短時間労働者に関する立法を行うならば、当然指針の各事項は原則として法律に明記されなければならぬ、そうでなければ法制化の意義はない、こういうふうに思うのです。  指針の中身を法律に明記しなくて指針にゆだねる理由を説明してください
  215. 松原亘子

    松原政府委員 先ほども御説明いたしましたけれども、この法案提出に至ります過程で労使間でのいろいろなやりとりがあったというふうに申し上げましたが、そういう中で、何とかこの時期、これだけ増大したパートタイム労働者方々が有効に能力を発揮できるような環境整備をやはり早く私どもとして進めることが必要なのではないかというふうに考えたわけでございます。  ところが、先ほど御紹介いたしましたように、労使の意見の隔たりが非常に大きいという中でやっていくためには、現在、指針をもとにいたしまして指導しておりますことを、その指針に法的根拠をつけ、そして具体的な労働大臣の助言、指導の規定も置くということでより積極的に進める姿勢を明確にすることを明らかにするということが、労使の意見が分かれた中でのコンセンサスとして法案に盛り込まれることだという判断をして私どもやらせていただいたものでございます。
  216. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 先回の労基法の問題も非常に似ていると私は思うのですが、本日も局長のお話は、そのときのコンセンサス、コンセンサス云々と言って今日のこういう状況になっているということだと思うのですね。では、本当にどれだけ守られるのだろうかということになると思うのですね。  平成元年に出されたパートタイム労働指針に基づいて行政指導が行われておりますけれども、総務庁の行政監察の指摘によりますと、指針に定められた事項が必ずしも遵守されているとは言えないな、こういうふうに思います。  今私がちらっと見てみれば、行政監察局の出している資料によれば、パートの問題で、例えば就業規則の整備という問題について遵守していないという事業所の数は二五・七%を占めている。いろいろ出ておりますが、例えば所定外労働の問題について言えば、程度の明示がされていない、六六%。そうすると七割弱がそういうことも行われていない。退職金の問題について言えば、八六・八%が遵守されていない。教育訓練の実施について言えば、三九・五%が遵守されていない。ほかにもまだずっと表の中には出ておりますけれども、そういう状況ですよ。  今回の法案によって指針の根拠を法律に設けても、具体的事項がすべて指針にゆだねられているのでは、従来の行政指導と実質的に変わらないのではないか。実効性が本当にあるんだろうか。どうでしょうかね。それで、実効性を担保するための対策はどういうふうにとられているのか。本当に実効性を担保しようと思ったら罰則も必要ではないか。今の話はいかがですか。     〔永井委員長代理退席、委員長着席〕
  217. 松原亘子

    松原政府委員 指針に法的根拠をつけても実効性に余り変化がないのではないかということでございますが、私どもは決してそういうふうに考えておりませんで、国の意思として、国会で御審議いただいたその結果で、パートタイム労働者についてのさまざまの問題点を解決するためにパートタイム労働指針というものに法的根拠がつけられるということ、これは非常に大きな意思決定であるというふうに思います。  これまでは法的根拠がなく労働大臣の告示ということで示しておりましたものが、国会の御審議を経た法律に基づくということになるのは、決定的な性格の違いがあるというふうに思っております。また、これまでは具体的な指導根拠がないながらも、したがいまして具体的にはなかなかやりづらい点もあったわけでございますが、指針の周知を図るべく努力してきた、それが今回は労働大臣の助言、指導という規定も入ったわけでございます。そういうことから、問題がある事業所については労働大臣が指導できるという根拠規定が置かれたということもこれは非常に大きな進歩だ、手前みそで恐縮ですが、そう考えておりまして、これらの規定を十分活用いたしまして、パートタイム労働者方々雇用管理改善等が図られ、有効な能力発揮が実現できるように私ども努力いたしたいというふうに思っておるところでございます。
  218. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 大違いだそうでありますけれども、局長に重ねて伺います。  私はこう思っているのです。残念ながらと言った方がいいと思うのですが、我が日本の中央官庁のいわゆる行政指導的な、あえて私は的と申し上げますが、その影響力は極めて大きいと思っているのですよ、実態は。いいですか。  この間ある銀行の部長と話をしていました。何と言ったかといいますと、これは労働省じゃないのですよ、大蔵省の役人の方が、いわば感想といいましょうかお話をされたそうです。言葉は法です、言葉は法律だというくらいに思ってやることが多い……。  しかも、労働省が今まで指針として本当にやってきたのでしょう。それで、先ほど申し上げたように、総務庁の行政監察をやった結果が先ほど申し上げたような状況でしょう。そうしたら、本当に今回そんなに局長が言うほどに大違いの効果が上がるのですか。それほど言われるならもう一回言ってください、どうやって効果が上がりますか。
  219. 松原亘子

    松原政府委員 これも私の非常に狭い範囲での経験から申し上げさせていただきますと、婦人少年局、婦人局、いろいろな場面で事業主に対しまして指導というのをやってまいりました。法的根拠がない時代からこうあるべきだどいうことをいろいろ考えましてやってきた時代がございます。そういうときに、一番、特に第一線の婦人少年室が指導するときにぶち当たりました悩みというのは、事業主の方もいろいろいらっしゃいますから、ちょっと言葉を発すればすぐぴんと感じて直されるというところもあるかもしれませんけれども、幾ら言っても、あんたは一体どういう権限に基づいてそういうことを言っているのかということでぽんとはね返されるという例も随分あったわけでございます。  そういうことから、私の極めて個人的なあれということではございませんけれども、実際に法的根拠があるとないということは非常に違う。その後、法律的な根拠が出てまいりますと、事業主方々もああ法律に基づいているのだからということで、取り組み方というのは違ってくるわけでございます。そういう具体的な経験もいたしておりますことから、私は法律に根拠があるとないとでは違うというふうに申し上げたわけでございます。  それからまた、行政監察結果でも指摘されておりますけれども、この問題につきまして必ずしも労働行政の関係機関、いろいろございます、婦人少年室だけでやっているわけではございませんで、労働基準監督機関、職業安定機関、いろいろ関係するところがあるわけでございますけれども、そういった関係機関の連携をとるようにということも実は監察結果で指摘をされておりまして、こういった法律ができればなお一層連携をとるということは、当然のことではございますけれども、業務の中の重要な柱として立てていくことができるということにもなってまいりますので、私どもとしてはその効果は非常に大きな違いがあるというふうに思っているわけでございます。
  220. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 その法律の中にもっとはっきりと具体的な問題について明示をしてやるのが本来の姿だと私は思っているのですよ。これは、必ず日本はもっとそうしなければならぬと信じておりますから、その部分についてはぜひ今後も、お互いにそれはそうしなければいかぬ、こう思っております。それから、指針としてやる場合でも、それは本当に効果があるものにしなければならぬ、こう思いますね。  それで、今のこの法律案に基づいて指針をと考えられるわけですが、今回のこの指針の具体的な内容はどういうふうに考えるのかですね。今までも、このパートタイム労働問題に関する研究会報告というものの中でも今の指針の内容について見直しを提言しておりますけれども、具体的に検討されているものがあれば御説明をいただきたいと思います。
  221. 松原亘子

    松原政府委員 指針の具体的内容はこれから関係審議会の御意見も聞いた上で定めるということになるわけでございますけれども、今後のパートタイム労働対策のあり方を研究していただきましたパートタイム労働問題に関する研究会報告におきましても、現在のパートタイム労働指針において示されている内容はおおむね妥当なものであるというふうにされたところでございます。  そういうことから、私どもは現在のパートタイム労働指針の内容を基礎として、これを踏襲する形で検討いたしたいというふうに思っているところでございます。
  222. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 ちょっともう一回説明していただきたいのです。今までを踏襲して、そして何を見直すことになりますか、もう一回説明していただけますか。
  223. 松原亘子

    松原政府委員 見直すというふうに申し上げたわけでございませんで、現行のパートタイム労働指針の内容を基礎といたしまして、これを踏襲する方向で検討を行いたいということでございます。
  224. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 研究会報告で見直しを提言している内容は、どういうことであると思われますか。
  225. 松原亘子

    松原政府委員 失礼いたしました。  この研究会報告のまとめに、パートタイム労働指針につきましては、「まず、多様なパートタイム労働実態を十分踏まえつつパートタイム労働について国が講じようとする施策の基本的方向を明らかにする必要がある。」ということと同時に、この研究会でまとめられた基本的考え方といいますのは、パートタイム労働というものを我が国の経済社会に正しく位置づけ、「パートタイム労働市場を適正かつ健全に育成するという観点に立った対策を総合的に推進する必要がある。」という基本的考え方が示されておりますけれども、それに沿って「従来のパートタイム労働指針を見直すとともに、その周知徹底を図り」云々と書かれているところを御指摘されたのだというふうに思います。  見直すといいますのは、法的根拠をつけたということに着目しての見直しということでございまして、実質的内容というよりは、むしろかなり技術的な見直しというふうに私どもは理解しております。つまり、法律的な根拠のある指針とそうでない告示として示される指針ということから性格が違ってくる。また表現的にも、例えば現行の指針は労使等関係者が考慮すべき事項として定めるといったような文言がついております。そういった法律の書き方との整合性とか法的根拠があることに基づく表現上の違いといったようなことは見直すべきだという御趣旨だと私どもは理解しておりまして、実質的な内容を見直すということではないという理解でございます。
  226. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 時間が来てしまいましたけれども、最後に大臣にちょっと伺います。  パートタイム労働労働条件を見ますと、現実には、賃金の問題にしても退職金の問題にしても、福利厚生の問題にしても教育訓練等々の問題にしても、やはり通常の労働者より不利な条件下に置かれているわけですね。そしてまた、パートタイム労働者の平均勤続年数というのも年々延びている。そして、労働省研究会においてもそうですが、パートタイム労働者社会におけるいわば基幹的労働力として位置づけられているわけでありますけれども、これからパートタイム労働の活用を真剣に考えるならば、労働省としてパートタイム労働に対するビジョンが問われるということだと私は思うのですね。そして、労働省は現在の状況をどういうふうに認識をして、そのビジョンに合わせてどういうふうに具体的に改善策を実行してきたかということも問われるということだと思うのですね。今後の方向も含めてお伺いをいたします。  私の質問はここまでで終わりますけれども、まだまだたくさんいろいろな問題がありますから、それは次回にまた質問をさせていただくというふうにしてきょうは終わりますが、大臣、答弁をお願いします。
  227. 村上正邦

    ○村上国務大臣 パートタイム労働は、繰り返し申し上げておりますように、非常に重要になるものと位置づけております。  労働省といたしましては、これまで、平成元年に定めたパートタイム労働指針の周知徹底を図るとともに、パートバンク設置等によるパートタイム労働者職業紹介等の推進、パートタイム労働者に対する職業能力の開発等総合的なパートタイム労働対策を積極的に進めてきたところであります。  また、短時間労働を魅力ある良好な就業形態として確立し、短時間労働者が安心してその能力を十分に発揮することができるようにするために、短時間労働者雇用管理改善等のための指導を行うとともに、短時間労働者及び事業主等の抱える諸問題が解消されるための相談援助を行う体制を整備することを内容とする本案を提出いたしました。どうかひとつ十分審議を深めていただきまして、より効果の上がるものにしてまいりたい、このように考えております。
  228. 岡田利春

    岡田委員長 次回は、明三日木曜日午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十一分散会