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金子(満)
委員 大変重大な内容だと思うのです。なかなか国会の答弁ではこういう答弁をしないのです。それから、大臣の談話などでもこういうのは出たことはないんですよ。私は、そういう意味でいえば非常に正直だと思うのです。正直だけれ
ども、あえて言えば、そこに見えるのは日本の行政当局における心の冷たさだと思うのです。これは使用者が喜びますよ、全くそのとおりだと。どこの
パート労働者がこれを喜びますか。
「一律に平等な取り扱いを規定することは適当ではなく、」そして、日本政府が最後にこの締めくくりで
入れたのが、先ほど私が申し上げた一九八九年の「
パートタイム労働者の処遇及び
労働条件について考慮すべき事項に関する指針」の内容なんです。何と解釈しようとも、これは差別をするということです。一律に平等でないということを外国に、しかも国際機関に出しているのです。きょうから始まっているんじゃないですか。
あえて言えば、この同じ問いに対して五十五カ国は賛意を表しているのです。七カ国が異論を唱えたのですが、その
一つが日本なんです。
こういう点を
考えたときに、国際貢献を言うのだったらこういう点でどうするかということも私は
考えてほしいと思うのです。ですから、今言った八九年の、つまり
パート労働指針というのは、これまで
労働省自身がやってきたこと、日本の全体が
パート労働についてはこうあるべきだというその到達点をがくんと下げたのです。これが八九年の指針なんです。だから、
パート労働者にとってはこれは明らかな
後退なんだ。
過去の
労働省の
立場がどうであったか、これは一言で言えば
パートも通常の
労働者も平等でなければならないという
立場を貫いてきたのです。特に七〇年の婦発五の通達は見事にそれを書いているのです。長いところはもう繰り返しませんけれ
ども、そこだけ読めば、
パートタイム雇用は、身分的な区分ではなく、短時間就労という
一つの雇用形態であり、
パートタイマーは
労働時間以外の点においては、フルタイムの
労働者と何ら異なるものではないことをひろく周知徹底するものとする。
とある。そのとおりなんです。これはどこに行ってしまったのです。みんな八九年で消えたじゃないですか。こういう点は
指摘すればまだたくさんあるのです。
したがって、七〇年代から八〇年代にかけて、これは
労働省の婦人少年室関係のいろいろの文書を見たって明確なんですよ。当時の
労働行政というのは、同一
労働同一賃金の原則に立っていたことは明白なんです。これを否定する発言はないでしょう。
ところがそういう中で、流れがそうですから、六九年も
労働省の職安局長通達「
パートタイマーの
職業紹介業務について」を出しました。その中では
パートタイマーの時間当たりの賃金をどうすべきかを指示しているのです。そういう同じような内容が職安局長通達で八一年、八六年にも出されている。これもあえてそのところだけ読ませてもらえば、
時間当たりの賃金は、当該
事業所に勤務する同職種、同作業、同
経験で、かつ勤務時間帯が同じである一般従業員の時間当たり賃金と比べて低い額でないこと。
と書いてある。いいじゃないですか。そのとおりじゃないですか。何でこれを変えるのです。
法案には全然ないでしょう、こんなこと。だから私は背骨がないと言うのです。
そういうところまで来ているのだから、こういう点を私たちは厳しく
指摘していかなければならぬと思うのです。積み上げてきたものを崩すんだもの。それで、外国に対しては堂々と本音を吐いて、国会その他ではうまく表現を変えながら何とかその場を切り抜けようという、私は悪い意味で言えば官僚の処世術だと思う。まずいですよ。大垣はいいも悪いも率直に物を言うという人だから、私はこういう点をはっきりさせていかなければならぬと思うのですね。
ですから、八九年のそれができる前はどうだったか。今聞いたような答弁は
一つもないですよ。
一つの例でいえば、一九八〇年の参議院
社会労働委員会で
パートの賃金格差の解消を求めるという質問が出たときに、時の藤尾
労働大臣は何と言ったか。「同じ働きに対する価値が、働く形態によって評価が変わってくるなどということはあってはならぬ」「落差がどんどんと縮まっていきますように、あるいはなくなっていきますようにという方向で、ひとつ
労働行政を進めてもらいたい」、もう一読して明快じゃないですか。賃金格差を解消するということが
労働行政の基本にちゃんと座っているのです。
ところが、こういう中でどういうことが起こるか。八九年の指針を決め、その指針に基づいてこれは衆議院の
社会労働委員会で
質疑がありました。八九年十一月十四日です。現行の
パート指針についての質問が出たのに対して、当時の野崎
労働基準局長が何と答えたか。これは同一
労働同一賃金のことではありませんと答えたんじゃないですか。それをあたかも
労働省の担当官は最初からずっと一貫して今日に至るようなことを言っているのですよ。違うのです、これは。こういう点は私は、全国八百万を超える
パート労働者がいるのですから、うそついちゃいかぬと思うのですよ。
こういう点を
指摘しておかないと、先ほど言ったように六九年の
労働省職安局長通達、七〇年の婦発五の通達、八一年の職安局長通達、八六年の職安局長通達、それが八九年の指針で全部骨がなくなったんじゃないですか。
それが今度できる、またつくろうとして提案している政府案の中ではどういうことになるか。法文の中には原則はうたわない、指針をつくります、その指針の基礎は八九年の指針が土台になりますよというのを
松原局長も答えた。これは個人の答えではなくて
労働省、政府の見解だと思いますよ、個人が
法案を出しているんじゃないんだから。そういう点を
考えたときに、事は単純ではないと思うのです、ほかの
法律にはないんだから。この点をどう
考えますか。どなたでも結構です。