○沓脱タケ子君 そこで、実は私、関西電力の人権裁判として知られております神戸地裁の
昭和五十九年五月十八日の判決言い渡し、この判決文を読んでみまして驚いたわけですね。労基法三条の規定とかけ離れたような事実がずらずらと列記をされているわけでございまして、御参考に供しておきたいと思いますので、ちょっと事例を挙げてみたいと思います。
例えば、仮に
労働者Aといたしますが、会社は、このAと通勤ルートを同一にする従業員が通勤時にその
労働者と接触しないように監督し、たまたま顔を合わせる者があれば直ちにその者に対してその
労働者と接触しないように指示した。その結果、この者は
労働者を見つけると逃げるようになった。また、その
労働者が大阪から通勤するBという
労働者と出会い、営業所まで一緒に歩いて行ったところ、名前は省略しますが、そこの主任はそのB
労働者に対して、四、五回にわたって、さっきのA
労働者と何を話すんや、いいかげんにしておけとたびたび注意をした。あるいはそのA
労働者がたまたま退勤時に会社から大分離れたところだそうですけれ
ども、喫茶店に行って一緒になったC
労働者と話をした。そうすると、会社はこれを尾行しておって、翌日その一緒になって喫茶店で話をした
労働者を問い詰めて、きのうの会話の内容を聞き出した。これまあ裁判で供述をしておるわけですから正確なんですね。
また、そのA
労働者に電話があったんです。これをそこの課の
課長が盗聴したんですね。たまたまそのA
労働者にあった電話というのが、緊急に会いたいということなので、その目的地へ実は行った。そしたらそこまで尾行をつけてきた。まあちょっと考えられないようなことなんですが、そういうことが起こっているわけなんですね。
まあ大体うまいこと考えておるんかな、A
労働者は
職場を何回か転職をしているんですが、そういう場合に必ず班長とか職制の前とか、すぐ後ろとかということで、すぐにそのA
労働者の言動が一見してわかる位置へ座らせる。そのA
労働者がとる電話というのはその前におる班長の前に置いている電話で、その班長がそこへかかった電話は必ずとって、そのA
労働者にかかってきた電話については相手先を二遍も三遍も聞きただすと、そういう格好になっておるわけですね。
おもしろいなと思ったのは、会社のレクリエーションで例えば浜松へ慰安旅行に行った、伊豆へ行ったあるいは秋芳洞へ行ったというとき、そんなときどうするんかなと思っていたんですが、ちゃんとやっぱりやっているんですね。電車の中へ座るときには、その両わきとか向かいとかというのはちゃんと職制を配置する。それから宿屋で一緒に部屋をとるときには、これは職制が大丈夫と思う堅固なというのかな、会社の方で信頼できる人を配置するというようなことで、大体レクリエーションというのはそれこそ職員と親睦を固めるためにやるような性格のものですから、いろい
ろな人たちと話し合って行きたいし、いろんな
方々と一緒に寝泊まりするというのは当たり前のことなんだけれ
ども、毎回毎回そういうふうにしている。
もっとひどいなと思いましたのは、これは年月日明らかなんですが、裁判資料ですから言いませんが、その原告の
労働者のロッカーの中の私物を会社側が
調査をして、かばんの中に入れていた手帳をあけて写真に写すとかね。これ驚いたんですよね。
また、ほとんど毎日そのA
労働者なる人は昼休みに将棋をするんだそうですね。その
労働者が将棋をする相手と何を話をするかというのが気になってしようがないものだから、観戦をする格好で決まった人をきちんと監視をさせる。ちょっと手が込んでいる。さらに、退勤時にたまたま一杯飲みに行ったところが、自分の同じ課の職員がおったので、一緒に酒を飲んでいた。そこへ上司の人たちが来たんだそうです。だから一緒にその上司も含めて飲んでいたんだそうですけれ
ども、明くる日に、最初に一緒になったE
労働者を呼び出しまして、そしてきのうはそのA
労働者と何を話していたかといって問いただすということなんですね。これはちょっと驚きましたね。
それで、
職場の中でもいろんなことがあるんですが、時間の都合があるから余り丁寧に言えないんですけれ
ども、大体
職場でも全員が当番制である安全週番とか安全推進
委員というのからも排除してしまっている。あるいは全員参加の懇談会以外は
職場の会合にも参加させない。それから従業員に対する教育が青年社員教育、中型社員教育、専門教育などを行っているけれ
ども、十六年間一回もこのA
労働者はその教育は受けていないとか、まあそういうのが一人じゃなくて何人にもそういう事態が起こっているわけなんです。
私は、これを見まして驚いたということを冒頭に申し上げましたが、こんな事例が例えばあるとすれば、
労働省としては労基法三条の趣旨に反すると思いませんか。その辺はどうですか。