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1988-03-22 第112回国会 参議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十二日(火曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員の異動  二月二十二日     辞任         補欠選任      寺内 弘子君     坪井 一宇君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         村上 正邦君     理 事                 大浜 方栄君                 梶原  清君                 藤井 孝男君                 志苫  裕君                 多田 省吾君     委 員                 井上  裕君                大河原太一郎君                 河本嘉久蔵君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 坪井 一宇君                 福田 幸弘君                 藤野 賢二君                 矢野俊比古君                 山本 富雄君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 本岡 昭次君                 塩出 啓典君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 吉岡 吉典君                 栗林 卓司君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        大蔵政務次官   佐藤栄佐久君        大蔵省主計局次        長        斎藤 次郎君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省関税局長  大山 綱明君        大蔵省理財局次        長        公文  宏君        大蔵省理財局次        長        藤田 弘志君        大蔵省証券局長  藤田 恒郎君        国税庁次長    日向  隆君    事務局側        常任委員会専門        員        保家 茂彰君    説明員        内閣総理大臣官        房参事官     坂東眞理子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○租税及び金融等に関する調査  (財政及び金融等基本施策に関する件)     ─────────────
  2. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  去る二月十六日の委員会におきまして、財政及び金融等基本施策について宮澤大蔵大臣から所信を聴取いたしておりますので、これより大臣所信に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 志苫裕

    志苫裕君 きょうは財政運営と、それから税制論議、それから若干税の中の外国税額の三点についてお伺いをいたします。  まず大臣、六十三年度予算特色は何ですか。
  4. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私ども昭和六十三年度予算編成に当たりまして特に配意をいたしました点は、一つ我が国が内外から内需拡大社会資本充実要請を受けておるという現状にかんがみまして、国家財政もその政策推進のために一翼を担うべきであるという観点から、諸般の一般会計並びに社会資本整備特別勘定NTT株式売却代金活用によるものでありますが、等を通じまして社会資本整備に特段の配意をしたということでございます。  第二は、しかしながら財政再建なお途上でございますので、そういう意味では社会資本整備のために重点を置きます結果、それ以外のいわゆる経常経費等につきましてはなお厳しくこれを圧縮しなければならないということから、従来に続きましていわゆるゼロシーリング経常経費につきましては原則として適用いたしたということでございます。したがいまして、六十三年度予算編成に当たりましては、内需拡大財政再建という二つの、いわば一見矛盾いたします課題を両方とも満足させるというような目的で予算編成をいたしました。  結果といたしまして、特例公債あるいは公債全体に対しての依存率も若干の改善を見たといったような結果になっておりますが、特色と申せば、大体以上のようなことでございます。  なお、経常経費をゼロシーリングと申し上げましたが、マイナスシーリングでございまして、失礼いたしました。
  5. 志苫裕

    志苫裕君 去年の七月六日の百九臨時国会、たまたま六十三年度予算編成前でしたから、そこで財政演説では従来と同じような財政改革重要性を述べておりますが、近く開始する六十三年度予算編成では制度基本にさかのぼった見直し、それから施策優先順位に厳しい選択を行うという財政演説をなさっておるんですが、そのような所信がどこに反映されているんですか、ちょっと具体的に指摘してもらえますか。施策優先順位に厳しい選択を行うというくだりはどこに反映されているんですか。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点はただいま申し上げましたこととも多少関連をいたしますが、歳出面におきまして公共事業全体をいわば従来のほぼ二割アップという水準に高く置いたということが一つ優先でございます。それからまた、対外経済援助につきましても六・五%という高い水準伸びを確保いたした等々がいわば歳出面におけるアクセントでございますが、その反面、経常経費につきましてはマイナスシーリングでこれを圧縮をしてまいったと、そういうことを申し上げることができると思います。
  7. 志苫裕

    志苫裕君 なるほど、このたびの百十二国会財政演説では、特例公債を前年度当初より一兆八千三百億円減、公債依存度を一五%台に下げた。これは五十年度以降、特例公債発行下で最も低い水準である、こういささか胸を張っておりますが、しかし衆目の見るところ、ことしの予算特色歳出面じゃなくて歳入面にあるんじゃないですか。  まあ一々申し上げませんけれども財源の大幅な増加で何年以来の伸びだとか、何年以来の高い率だとか、皆さんの方が胸を張っている要因になっていると思うんですが、その限りにおいては、いわゆる財政改革であるとか施策優先順位選択であるとかというものではないんじゃないですか、この点はどうですか。
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま申し上げましたような歳出内容を、歳入面におきましては公債全体への依存度を一五・六%、おっしゃいますようにできるだけ下げつつ歳出面での要請を満たす、こういう考え方で編成をいたしておるわけでございます。
  9. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっとかみ合いませんけれども、なるほどNTTを一兆三千億取り込んでこれまで漸減傾向だった公共事業実質二〇%近く伸びた、これが特徴になっています。それで、内需型とか構造調整対応型とかというふうに言うんだけれども施策優先順位選択といった場合には、私が答弁で期待したのは――それはお金がようけ入ってきたので、あるいはNTTも取り込んだのでこれを公共投資に回した、これは見てわかっているわけです。しかし、その公共投資配分自体を見ると、別に優先順位というようなものは見られないんじゃないですか。大体よってくだんのごとしという、従来と同じ。しかも、NTT分も含めて、あのBタイプも含めまして、公共事業のいわば費目の配分というふうなものを見ますと、配分比率には私の見る限りちっとも変化がないですね。竹下総理の「ふるさと創生」も宮澤総理の「資産倍増」もちっとも顔が出ていませんね、これは。そうじゃないですかな。あるいはまた、私ども予算の二極分化と言うんですが、中曽根内閣特徴であった防衛が伸びる、生活が減るというこの二極分化構造にも基本的に変化はないし、どうも施策優先順位の厳しい選択というふうなものは私は見当たらないと思う。新内閣ができる、あるいはまた宮澤財政をやるというのであれば、何かそれらしいものが出るのかなと。  特に宮澤総理は去年の五月二十六日の委員会では、我が国経済力というのは大変大きい潜在成長力を持っているのにそれが十分に発揮されてもいないようだ、社会資本整備もおくれておる、二十一世紀になると年寄りがふえたりしまして、そのような力をいつまでも持ち続けるというわけでもなかろう、今のうちに社会資本整備の蓄積を図るべきだろうという認識を述べておられるわけで、新しい内閣もとであなたが財政担当者として実質責任を持って予算編成したのはこれが初めてだというふうに思うんですが、何かそういう宮澤ポリシーとでもいうか、竹下内閣のこれが目玉だというふうなものは余り拝見ができないので聞いているわけです。中曽根内閣の継承というんだからそれもそうかもしらぬが、それにしても何か特色がないという感じがするんですが、大蔵大臣、いかがですか。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は確かに、六十三年度一年度でなく、これから将来に向かって展開をすべき幾つかの問題を含んでおると思うのでありますけれども、まず公共事業そのもの配分につきまして、これは御承知のように、各省の間においてもあるいは一省の中におきましても、長年いわばマイナスシーリングをやってまいりましたために、そのマイナス分をお互いに分け合う、いわば公平にそのマイナスを分け合うということしか方法が現実にはないということから、公共事業相互間の配分がもうほとんど固定をしてしまっておったという現実がございます。この現実を変えるということは、そのようないきさつがありましてなかなか困難なことであるという行政の実情でございますが、しかし今回、その中でもとにかく何がしかの努力執行官庁ではしておってくれまして、例えば公共事業そのものについて、下水道シェアであるとかあるいは公園などのシェア、これは直接最も生活関連をいたしております種類の公共事業でありますが、このシェアがかなり上昇をいたしております。これはNTTBタイプを含んでのことでございますが、下水道公園等はかなりの上昇をいたしました。これだけでも実はなかなか簡単なことではなかったわけでございますが、今回ともかくそれが実現の第一歩をしるしたということ。  それから、全体に考えますと、このNTT活用はA、B、Cタイプがあるわけでございますけれども、この制度の創設が余り予告なしに昨年の国会においてお認めをいただいたこともございまして、事業地方の側で考えておる人たちが、いわば制度がよそより早く発足をした、よそより早く予算措置ができたということで多少これに対応するのに時間がかかっておりまして、今までいろんなプロジェクト地方で持っておりましたけれども現実にこの予算の対象になる、これにたえ得るほどの制度を持っていなかったということから、今極めてたくさんの地方でいろいろなプロジェクトが大変なスピードでもって詰められつつございますが、六十三年度にそれが間に合わなかった部分が実は多いようでございますけれども、この制度前提にして急速に地域のいろいろなプロジェクトがつくられつつございまして、殊にそれはこのBタイプ面的開発をねらっておりますわけですが、これは三年なり五年なりで短期間に各種の公共事業をいわば同時並行に行って地域開発をするという、そういうプロジェクトに一番適する制度でございますが、この制度がこういうふうに動き始めましたので、これから将来に向かいましては急速にそういう地域需要現実化してくるであろう。それによって、その結果として公共事業相互間のバランスというものが事実上新しいものに変わっていく、そういう第一年度目であるということで、志苫委員の言われるように、十分その相互間の配分変化がまだ見られません。それは事実でございますが、将来に向かってそういう端緒をつくったというふうに考えております。
  11. 志苫裕

    志苫裕君 今下水道の話がありましたけれどもNTTを加えないもので見ますと、下水道構成比は去年一五・六だったのがことしは一五・五に下がった。NTTを加えてかすかに一六%台に乗ったということでしょうか。いずれにしても変化がないですね。  まあ、私思うに、制度基本にさかのぼった見直しで何かあるかなと思って見たら、別に租特を直しているわけでもないし何にもない。強いて言えば、国民健康保険に都道府県を引っ張り込んだあたり制度改革と言うているのかなという感じがしないわけでもない。あるいはまた、政策選択としての国際責任の問題も、やっぱり軍事面戦略面だけに視点を注いでおるという感じがいたしますので、この辺は大いに転換を求めておきたいと思います。  ところで、先ほどもお話がありましたが、大蔵サイド財政再建内需拡大の両立、二兎を追って二兎をとったような予算だと言って自賛をしておるようです。死に体であった六十五年度特例公債脱却希望を見出したようだという雰囲気感じます。幾らか顔つきが緩んで見えるというところでしょうかね。  そこで、財政演説では、「六十五年度までの間に特例公債依存体質から脱却し、公債依存度を引き下げるという努力目標達成に向けて着実に前進することになりました。」と大分高い調子になっていますね。去年の今ごろの沈んだ雰囲気からいたしますと、たまにはラッパを吹きたい気持ちもわからぬわけでもないんですが、果たしてその根拠があるのか若干の検証をします。  大蔵大臣特例公債依存体質からの脱却というのはどういうことなんですか。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この言葉は随分古くから使われておりまして、いわば特例公債をそのときに新規発行をやめてしまうということを端的に言えばよろしいわけでしょうが、やはりその当時、将来を考えまして、それでもいろんな事情があるかもしれない、基本的にはもう特例公債というものは出さないというそういう状況をつくります、こういう意味合いであろうというふうに私は理解をいたしております。今の政府の立場から申しますと、私どもは、その言葉現実にはもうそこで特例公債新規発行はやめるということと同義語に私自身は考えておりますけれども、本来ちょっとそのような持って回った余裕のある言い方をいたしましたのは、将来のことに属する問題でもありますので、まあ大事をとってややそのような一般的な表現をしたのではないかと思います。
  13. 志苫裕

    志苫裕君 普通、依存体質と言う場合には体質表現をする何かがありまして、そういうふうな体質一つずつ改めていくというものだろうと思うんですが、今のあなたの話を聞くというと、特例公債依存から脱却とこう言えばいいんだろうが、そうもいかぬので体質と言っているんだから、だからまだ残っているのかもしらぬという意 味ですね。そういう意味で使っているんですか。  大平総理も五十五年の例の施政方針演説では、このころは特例公債と言ってないんですね。公債に対する過剰依存体質からの脱却、こういう表現がいつの間にかその財政再建のめどもつかなくなってくる、ハードルを低くしておく必要があるので特例公債というのが頭につきまして、公債依存体質からいつの間にか特例公債というふうにだんだんハードルを低くして、今度はそのうちに何とかめどがついた、こういうふうに言っているようなんです。    〔委員長退席理事梶原清君着席〕  もう一ついきましょう。公債依存度というのは、何か望ましい依存度というふうなものがあるんですか。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどの話にちょっと補足いたしますが、昭和五十年代のある時点から、ともかく公債がどんどんどんどん膨らんでまいりまして、いわば予算編成には特例公債前提にしなければこれはとても考えられないという時代がずっと続いてまいりまして、そのような財政のあり方というのはある時点から何とか転換をしなければならないという、その過去何年間かの現実を見ながら体質からの脱却ということを、そういう表現が用いられたという要素も今志苫委員が言われますように確かにあったと思います。  次の問題でございますが、公債依存度というものはどのぐらいならいいかということは、恐らく私どもの省内でもきちんと議論をされたことはないのではないかと思いますのは、当面建設公債をいつになったらやめられるか、やめることがいいかといったようなことにまで問題はまだ及んでいないわけでございまして、特例債をともかくやめたいということであるものでございますから、建設公債を含めて公債依存度をどのくらいに置くべきかということは、現実課題となります前に、まず特例公債をやめたいということが実は先行しているということではないかと思います。
  15. 志苫裕

    志苫裕君 特例公債依存体質から脱却公債依存度を引き下げるとの努力目標に向けて着実に前進をすることになった、しぶちんの大蔵省としては比較的この表現に関する限り楽観的ですよ。楽観的。ですから私は、まあ強いて心情をおもんぱかるに、今までは余り苦しかったのでちょっと先が見えたら少し大げさに喜んでおるのかなあという感じがしたので、一体依存体質とは何ぞや、公債依存度とは何だというふうなことを聞いてみると、余りそうしかしかとしたものを持っているわけでもない。何となく少しよくなったというレベルの話にしか感じない。  私はこの点で指摘しておきたいのは、やっぱり七〇年代のオイルショックに対応して財政主導財政運営をやった、それが財政にはね返ってきて、それから財政再建だ、税制論議だとか続けてくるわけでありますけれども、この過程で、五十九年目標がだめになった、六十五年目標も去年あたりはあやしかったというふうに、そういう過程でいつの間にか財政再建目標特例公債からの脱却に局限してしまった、あるいは財政改革課題公債依存度の引き下げだけに絞ってしまう、言うならば、これはやばいと思って目標ハードルを下げておるというのがこの数年のいきさつだと思うんですね。そういう財政運営だということをまず指摘をしておきたいと思うんですが、ところが皮肉なことに、去年立てた大蔵省中期財政展望仮定計算が狂っちゃった。狂ったので大変喜ばしい状況になったというのがことしの財政展望にあらわれている。  端的に聞きますが、このことし出した中期財政展望六十五年度ゼロという、もっとも五兆円ばかり要調整額を持っておりますが、これはこのとおりにいくというふうに理解していていいですね。簡潔にやってください。それでいいですか。
  16. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 財政中期展望というのは、釈迦に説法でございますけれども、現行の制度施策前提にしまして、それを何らの制度改革を行うことなくそのまま将来に投影するとどの程度財政負担が生じるかということでございまして、いわば自然体の財政状況をお示ししているものでございまして、したがって私どもは今後とも財政改革を進めていくという観点に立っておりまして、将来の予算編成を拘束するというような意味の具体的、定量的な財政計画ではないわけでございます。  したがいまして、御指摘のように五兆円程度の要調整がございますけれども、今後これは歳入歳出両面努力を通じて何とか縮めていかなければならないというぐあいに考えておるわけでございます。
  17. 志苫裕

    志苫裕君 五兆円程度の要調整額前提にしてゼロになる、これは歳出削減歳入増収、いずれにウエートを置きますか。
  18. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) これは今後毎年度の予算編成過程調整をしていく話でございますけれども、私どもそのほかに今後の財政展望を示す手がかりとしまして仮定計算例というのをお示ししております。それによりまして機械的に五、三、ゼロという一般歳出の見通しを機械的に置いたものをお示ししているわけでございますけれども、それによりますれば、今後とも一般歳出を極力削減する努力を続けていけば、税収動向がどうなるかは不透明な面はもちろんございますけれども、何とか六十五年度脱却に対して筋道を立てていけるのではないかという希望は出てきたというのが、ことしの仮定計算例を含めた、私どもの試算の結論ではないかというぐあいに考えておるわけでございます。
  19. 志苫裕

    志苫裕君 仮定計算ですから当たったこともなければ、そのとおりに運営したこともなければ、これをもとにして予算編成したこともなければ、公債を出したこともなければ、一遍もないんです、こんなものは。だけれども、アクセサリーのように毎年お出しになる。去年議論をいたしましたが、しかし何となくことしの分は信憑性がありそうだというふうなお話なんで聞いておるんです。  もう一つ聞きますよ、細かいこと。六十四年度の一般歳出、特に経常部門が幾らか伸びかげんになっていますね、この理由を簡単に言ってください。
  20. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 中期展望でお示しをいたしましたように、六十四年度は確かに六十五、六十六の伸びに比べまして一般歳出のところで七・三%ということで非常に高い伸びになっておりますけれども、これはいろいろな要因がございますが、主たる要因補助率カットをお願いしておりますものが六十三年度末で切れるということで、その部分増加圧力が六十四年度で申しますと一兆七百億程度ございます。それを織り込んでおります結果、高い伸び率になっておるということでございまして、六十四年度、その部分が非常に高い伸び率の原因になっております。したがいまして、その部分を飲み込みました六十五、六十六以降の伸びは二・五%程度という伸びになっておるわけでございます。
  21. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、六十四年度がいきなり歳出項目がずっとふえてくるのは、補助率カット本則に戻すというふうに理解していいですね。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、中期展望で七・三%と急に伸びが大きくなっているのはなぜかというお尋ねで、これは制度上この補助率カットは六十三で一応終了するわけでございますから、いわば仮定計算としては機械的にそれは六十四年度にもとに戻ると考えてすることが、この計算そのものの性格がそういうものでございますからそうしておりますが、さて補助率をこれからどうするかということにつきましては、今後のいろいろな情勢、国と地方の役割、財源等配分等々も考えながら関係各省で至急に検討を開始いたしたいと考えておるところでございます。
  23. 志苫裕

    志苫裕君 これを本則に戻すということを前提にして計算はしていることは間違いないですね。同じように六十六年で、七年がないからわからぬけれども、六十四年が急に大きくなっているのは補助金の戻りだと、本則に戻るからだと、六十六年から増加傾向を示すのは、これは私の理解では六十六年以降にいわゆる今までの財政再建期間中 に財政対策を講じて後年度に負担を繰り延べしたようなものが顔を出してくるからだと、こう理解していいんですね。
  24. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 六十六年度に六十五年度よりも高い伸び率を示しているのは、御指摘のとおりでございます。
  25. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣ね、六十四年に、仮定計算はそうしておるけれども、そのとおりにするかしないかは、これはまた各省庁相談だというふうになりますと、相談の結果そのようにしないということになると、逆にまた財政需要が膨らむんですね。これは間違いないでしょう。
  26. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 先ほど大臣が御答弁になりましたように、補助率の問題をどうするかというのは、これから各省庁と協議の上どういうぐあいにするかということを六十四年度予算編成過程調整を進めていくわけでございます。したがいまして、その部分がどうなるかについては、私どもとしてはまだ何らの予見を持っていないということでございます。
  27. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、本則に戻らなければその分は六十六年かなんか後ろへ、以降へ持ち越されることになるんだろうし、本則に戻ればこのようなことになるということはわかりました。  そこで、若干同僚委員予算委員会でもやりとりがあったらしいが、六十六年度以降の上向きかげんになったというふうに私は指摘しましたが、それのやりとりを聞いていて若干腑に落ちない点があるので改めて聞きますが、六十六年度以降ばっかりでもないんですけれども、六十五年度までを財政再建期間として予算編成上いろんな工夫や操作が行われる。後年度負担を伴う財源対策とも言われるし、各年度で行った歳出削減効果と、こう大蔵省は言っているようだし、私どもはそれをツケ回し、繰り延べとこう言うんだし、宮澤さんは座敷をきれいにするためにとりあえず押し入れに押し込んだ荷物と、こう言うわけですね。いろんな表現はあるけれども、この荷物の多くは六十六年度以降に整理することになっておるので、それが先ほど言った中期財政展望で六十六年から上向きに転じておるという数字となってあらわれるんですが、ちょっともう一度この額をこの委員会で言ってみてください。    〔理事梶原清君退席、委員長着席〕
  28. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 中期展望で六十六年度以降特に伸びているというものを織り込んでおりますのは、例えば国民年金の平準化措置に基づく償還額とか、住宅公庫の繰り延べた分の償還額とか、そういうものの積み上げでございます。  特に六十五年と六十六年度を比べて、六十六年度の増加要因になっておりますのは、交付税のいわば特例措置の繰り入れ分が千七百五十億円、それから国年の平準化が九百九十五億円、それから住宅公庫の元本・利子の償還分が合わせまして八百四億円というようなものが増加要因として六十六年度の中期展望に計上されておるわけでございます。
  29. 志苫裕

    志苫裕君 いや、私が言うているのは、六十六年そのものを言っているんじゃないですよ。財政再建期間中に後年度に負担を伴う財源対策として後ろへ延べたものは六十三年度までで幾らになっておるかと。各項目ごとにもう一遍数字を言ってみてください。予算委員会で言った数字と違うんじゃないですか。簡潔に言いなさいよ。
  30. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 一つ一つ申し上げますと、厚年の国庫負担金の繰り入れ等の特例額が合計で二兆七百三十億ということになっております。それから、住宅公庫の利子補給金の一部の繰り延べの額が合計で六千四百六十二億円ということでございます。それから、国民年金特別会計の平準化措置としまして一兆二千七百二十七億円でございます。それから、これは既に償還が終わりましたけれども、自賠責特会からの受入金、これが二千五百六十億円でございます。それから政管健保の国庫補助の繰り入れ特例、この分が六十三年度の六百五十億を含めまして四千二百三十九億円でございます。それから道路特会の借入金、これが七千六百九十七億円、これも今度きれいに債還をすることになっておりますけれども、この分が七千六百九十七億円、そのほかに、地方財政改革の改革による特会の借入金を一般会計負担としまして国債費に振りかえた分が五兆八千二百七十八億円でございます。そのほか、地方財政対策に伴う後年度負担額が合計で一兆二千三百十四億円というのが、今まで私ども歳出削減に伴う後年度への負担繰り延べしました事項調べのそれぞれの項目の金額でございます。
  31. 志苫裕

    志苫裕君 まず私が指摘しますが、一番額の大きいこの特会の分の処理は別としまして、地方財政対策で講じた覚書事項の分が何もないじゃないですか。これは幾らになりますか。
  32. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) これは御説明いたしますと……
  33. 志苫裕

    志苫裕君 額だけでいいですよ。
  34. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 額だけで申しますと、利差臨特の相当額が二百四十八億円、それから地域特例の臨特の相当額が八百二十一億円、それから臨時財政特例債の元利償還相当額が六十年度分二千四百九十五億円、六十一年度分四千五百八億円、六十二年度分八千三百九十三億円、六十三年度分八千六百九億円ということになっております。
  35. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、その合計は二兆五千七十四億円です。この分がまず抜けておったこと。さらに皆さんは、例えば国民年金、健康保険ですね、こういったものに、健康保険もそうですが、運用加算というふうなものを約束をされています。運用益の加算というようなものが全然計算に入れられていないでしょう。それから国民年金の場合、利払いの加算もありません。それから道路借入金、差し引きゼロと言っているんだけれども、自動車重量税のオーバーフロー部分四千百億ばかりあったはずなんですが、これだって回り回って負担です。この分も抜けておる。  こうこう考えてみますと、あれじゃないんですか、私の計算によりますと、運用益の加算を幾らにするかはわかりませんが、仮に長いものは十年ぐらいありますから、倍といかぬで五割増しだというふうに勘定しましても、実は予算委員会でお答えになった十兆何がし、十一兆三千億じゃなくて、これは二十一兆九千億、約二十二兆円ですよ、二十二兆円が六十六年以降に持ち越されているんですよ。まあ、繰り入れ停止部分が今まで幾らあったというようなのは、将来の場合に計算するのは、あの財政は会計が豊かでありゃどうでもいいわけでありますから、一応それを除きましても仮にそれを加えれば三十四兆、三十五兆円なんだ。いつも国庫にあるという意味で除くか埋めるかは別として、考えようによっては国庫債務なり継続費を含めれば三十八兆円ですよ、あなた。とても予算委員会答弁のあった十兆、二十兆という話じゃないのでありまして、その倍の額が実は六十六年度以降国の財政にかぶってくるというのが実態じゃないんですか。  皆さんがどういう意味で小さく言ったり、どういう意味で外したり、あるいは地方財政の覚書事項などは、まあ自治省を踏んづけてチャラにしてしまえというふうに思っておるから計算しておらぬのかわかりませんが、私の指摘についてはどうですか。
  36. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 地方財政負担の問題につきましては、確かに地方財政の覚書に基づきまして、将来交付税の特例措置額の精算等で調整するということになっておりますので、この繰り入れは私どもはそれぞれ六十四年度以降の問題で、しりは八十三年度までと長期にわたるものもございますけれども、これらについては繰り入れを行わなければならないというぐあいに考えておるわけでございます。予算委員会でお示しをした数字は、それぞれ法律等に基づきましていわば肯定をされているという意味でやや限定的な申し上げ方をしたのかもしれません。したがいまして、先ほど御指摘のありました地方財政の特例措置については、私どもは後年度負担として考えておるわけでございます。  ただ、今御指摘のありました、例えば国債費の 定率繰り入れの停止等につきましては、これは後年度国債の償還がNTTの売却益等で円滑に行われている限り、これについては改めて過去に停止したものを復活するという必要まではないのではないかというぐあいに考えておるわけでございます。
  37. 志苫裕

    志苫裕君 いや、ですから私は、この繰入分について、それが後年度負担だというふうには言うてない。これは、この会計が幸いにしてNTTの売却益等を取り込んで支障がないようにして、そこで金が余るからAタイプだBタイプだと言って公共事業の方まで繰り出しておるんですから、そのことはどうこう言いませんが、しかし今まで二十二兆円近い繰り延べ、つけ回しがあるという事実は認めた上でなければ本当の意味での財政再建なり財政改革はできませんよ、そんなものは。そういう意味指摘をしているんです。  だから、やっぱり国会で質問がありましたら、例えば住宅の分をここでは六千四百六十二億円、うち千二百九十八億円はけりをつけたから五千百六十四億円になると言いますが、これは六十五年まで残るわけでありますから、そうすれば五千八百億円です。こういうふうな計算になってきます。大臣、これは事務方じゃないんですが、運用益、利払い、これはつけるんでしょう、どうですか。
  38. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 厚年と国年の分につきまして運用益を繰り戻すということはお約束をしているわけでございまして、これについては入ると考えております。その総枠を試算しますと、両方合わせまして約八千六、七百億円になるというぐあいに考えております。
  39. 志苫裕

    志苫裕君 それは本体の方は、冗談じゃない、おれが持っておりゃもっとうまく運用したと言うかもしらぬので、この額はまあ金利ですと十年なら倍になると。運用益だから、へたなもうけもあるから、じゃあ半分ぐらいにしようかなといって私は先ほど額をお出ししたんですが、大臣、いずれにしても先ほど言いましたように、めどがついたと、財政再建なり財政改革目標をただ単に幾つかのファクターだけに制限して、財政再建ハードルを下げて、改革目標を下げまして、それでめどがついたという言いようは、財政運営をする当局者としては余り適当な姿勢じゃないという感じがするんですが、どうですか。
  40. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府予算委員会で御説明いたしました数字だけでも、定率繰り入れ等は別にいたしまして十一兆三千億、志苫委員はこれについてまたただいまいろいろお尋ねがあったわけでございますが、ということでございますから、あのときも申し上げたことですが、将来返還をしなければならない、こういうような債務を考えますと財政再建というものはまことに簡単なことではないという意味のことは予算委員会でも申し上げたのでございますが、とりあえず新しく利子負担を生みますような新規の特例公債の発行というものはとにかくそれをまずやめたい。そこから始めませんと財政再建というものは緒につかないわけでございますので、それをまずその目標を達成いたしたい、こういうことを申し上げており、またそれにとどまるわけでございます。
  41. 志苫裕

    志苫裕君 私はなぜこういうことを細かくやったのかといいますと、十兆円じゃない、二十兆円だ、あるいはまたいろんな要素で覚書事項はこれから交渉をして下げるのかもしらぬ、あるいは今までの借金はチャラにするのかもしらぬ、運用益はつけないかもしらぬ、あるいは補助率の切り下げは本則に戻さないかもしれない、こういう不確定な要因をたくさん持っています、今の段階では。これから財政再建論議とあわせて財源確保をねらいとした税制論議も起きます。そういうときに隠し玉のようにして、実はここにもまだ大分借金があるんです、ここにもまだ何とかあります、それがいやなら補助率は切り下げたままです、国民生活は切り下げたままです、利子なんかつけません、地方財政はやりません、こういう開き直りに出られたんじゃたまったものじゃないという意味で、事実は事実、ありのままにして論議の題材にしなさいということを言っているんです。この点はどうですか。
  42. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点はおっしゃるとおりであると思います。  政府が今まで申し上げてまいりましたいわゆる六十五年度云々は、ともかく新規の特例公債の発行だけは何とかやめたい、その目標の期日を申し上げておるだけのことでございまして、それによって今まで生じた債務がなくなるというようなことでは毛頭ございませんし、今まで生じた債務の返還をしていかなきゃならないという務めを政府は背負っておるわけでございますから、財政は、新しい借金をするのをやめ、特例公債をやめたといたしましても、好転をするといったようなわけにはまいらない、おっしゃるとおりでございます。
  43. 志苫裕

    志苫裕君 じゃ次に、ちょっと税制に入ります。  政府大蔵省は依然として消費一般に負担を求める間接税にこだわり続けて、依然としてというか、ますますといいますか、問題点を整理する意味で改めて問いますが、ベースの広い間接税いわゆる新型間接税と言っているようですが、それがなぜ今税制改革の柱にならなければならぬのですか、整理をして答えてください。
  44. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今という時点を、私どもは第一に、シャウプ税制改革が行われました昭和二十五年ごろから経過いたしました年月を大体大きな税制改革をなしにまいりましたから、それで、過去から見まして今という三十何年間の時点一つ考えております。それから、将来に向かいまして、二十一世紀になりますと我が国の高齢化社会化が急速に進むという、そういう十何年先の展望をもう一つ考えまして、今という時点を考えております。で、両方から今という時点を考えますと、この際なすべき税制の抜本的改革は過去四十年近い間の行われました制度基本的な改革であるとともに、二十一世紀に向かって我々が構築しておくべき税制の体系であるというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、まず過去との対比で申しますならば、シャウプ税制が所得税、法人税等々を中心に、いわば累進体系を中心に考えてまいりました税制は、我が国の所得の急激な、急激と申しますか、順調な三十何年間の上昇によりまして、当然のことながら直接税の占めるウエートが、当時に比べまして非常に上がってまいりました。これは当然のことでございますが、その結果、間接税のウエートは非常に下がってしまった。で、それはそれで重税感がなければそれも一つの考えでございますけれども、今や所得税は個人の勤労意欲をそぐ段階になっておりますし、法人税もまた国際的に考えてかなり高い、そういう中で消費税のウエートは非常に低い、こういうことでございます。  その我が国は、しかし世界において最も所得水準の高い国になったばかりでなく、所得格差の最も小さい国でございますから、そこで今度は、ここから将来への展望になるわけですが、将来そういう高齢化社会が到来をして、今の生産年齢人口が六・六人の生産年齢人口で一人のお年寄りを抱えておりますが、やがてそれが三人で一人を抱えるというようなことになれば、この税制を変えずにその社会的負担をしようとすれば、勤労所得者の負担は今よりも恐らく二倍、あるいは三倍という説もございますが、に計算をすればならざるを得ない。そういうことは現実に可能なことでございません。  我が国の高齢化社会でなお立派な福祉政策が行われ続けるといたしますれば、そのような負担は勤労者だけが今の何倍もの負担をするということでできるはずがない。むしろ、これだけ所得水準の高い、かつ所得格差の少ない国になりましたので、今からすべての人々にそのような共通な社会的な費用は薄く広く負担をしてもらう、そういう制度整備しておくべきではないか。つまり、今若い人と考え、みずから思っている人は実は担ぐ立場でなく担がれる方の立場に間もなく変わっていくわけでございますから、そういうことから考え ますと、来るべき若い人々にほとんど不能な過重な負担を負わせるのではなく、我々自身と申しますか、年をとった方もやはり薄く広く負担を分かち合っていくべきではないか、そういう制度を今つくっておく必要がある。  それは将来を展望をしてのことでございますが、過去との関連で申しますならば、それによって初めて、現在既にかなり過重であるところの所得税、法人税の負担を軽減することができますし、放置しておけば三倍にもなるかもしれない勤労所得の負担をさらに将来に向かって、この際そういうふうにならないようにしていくことができる。  つまり今という時点は、私どもは、四十年近いシャウプ税制以来の過ぎ去った年月の今と十何年たって二十一世紀を迎える将来を展望しての今と、その両方からとらえてこの際抜本改正をいたしたいと、こう考えておるわけであります。
  45. 志苫裕

    志苫裕君 どうも私のお尋ねと少し合わぬのですが、それはね、四十年たった、これから二、三十年先のことを考える、だから今です。これは今というのは過去と未来の真ん中が今ですから、それだけじゃちっとも説明にならぬ。  私は、なぜ今課税ベースの広い間接税かということを伺ったんですが、過去にさまざまなゆがみがございましたから、そこでそのゆがみを直そうと、しかしもう一つ、二十一世紀だ、あるいは二〇二〇年だというのは、その限りにおいてはまだ時間的余裕があるわけで、きょう、あすこれに決まりをつけなきゃならぬというものでもないということになれば、しかも過去数十年の間に直間のバランスが大きく崩れてしまって、それが重税感や不公平感を増幅しておるんだというお話ですけれども、そのことについて私もそれは異存ありません。しかし、バランスの問題は、いつも皆さんがおっしゃっているように結果ですから、これから直接税の中におけるさまざまなゆがみ、ひずみ、あるいは同じ所得税の中での所得と資産とか、そういう問題を解決をしていけば、あるいは法人課税についてもいろいろ問題があるから解決していこうということになっていくと、結果としてどのようなバランスになるかは絶えず結果論としてある、これは。  それから、間接税でも数十年前にぜいたく品だと思ったものは今ではぜいたく品ではない、普遍的な物だということになれば、個別の間接税のでこぼこを直す方法だってあるわけなんです。今いろいろとお話しのあったことが今課税ベースの広い間接税でなければ一切解決にならないという根拠ではないというふうに私は反論をしておきたいと思うんですね。  ただ、この税制改革というと、税の基本理念だとか、あるいは現行制度の持つゆがみ、ひずみの是正だとか、あるいは体系固有のことだとかいう響きがありますけれども、しかし税が基本的には財政需要を満たすものである限り、それを必要とする限りそれを論ずるのは当たり前のことだと思うんです。財源をどうするかというのを論議するのは当たり前のことなんです。ですから私は、この今の財政需要のことを二十一世紀にお年寄りがふえて働き手が減ってくるので負担の問題として議論しましたが、大蔵省はこの財政需要といいますか、財源としての話を避けているようでありますが、私は必要な財源は大いに論じたらいいというふうに思いますね。  財政再建の論議と税制論議を振り返ってみますと、幾つかの段階があるようでして、財政再建が緊急の政策課題に上ってきたのが五十三、四年です。ニクソン・ショック、ドルショック等で財政が出動をしてそれに対応した。特に五十三年の福田内閣に象徴されるように、臨時異例の財政運営をした結果病気になっちゃった。そこで五十四年に財源確保を目的とした税制論議が起きて、これが一般消費税となって国民に退けられる、財政再建は一般消費税によらないという国会決議でつぶれる。それでもう財政はどうにもこうにも足りませんので、いわゆる法人税を一兆幾らでしたか、九千億でしたか八千億ですか上げましたら財界から反撃を受けて、それで増税なき財政再建、こういうことになってしばらくを過ごします。そして増税なき財政再建路線、すなわち臨調行革路線で国民にもしわ寄せしたりいろいろなことをやったけれども、結局財政再建めどは立たないというので、また財源確保に回帰し、それで売上税が出てくる。売上税が出てくるんだけれども、増税なき財政再建であるとか不公平の是正であるとか、何とか比率であるとかということを言っていましたけれども、そんなものはアクセサリーで、突き詰めて言えば、財源確保のための手っ取り早い税制というふうなところに回帰をして、それがまた国民によってノー。  こう言われてきていることを考えますと、私は大蔵大臣、ひとつ真剣に考えてほしいんですが、だれでもお金を取られるとか納めることは好きじゃないですよ。好きじゃないけれども、お互いの共同の社会を運営するための費用負担、しかも税は国家の根幹にかかわっておるという合意はありますよ、あります。ですから、この間にも税制の本格的な改正こそなかったけれども、所得税の自然増収という名の増税もあったし、法人税、酒税、物品税などの増税も行いましたよ。だけれども、納税者の反乱にそう遭ったという事態でもなかった。事、課税ベースの広い間接税となると、二度にわたって納税者の反乱に遭ったというのはなぜかということを、もう少しここ十年間のいきさつを振り返って考える必要があるんじゃないでしょうかね。増税一般は好きじゃないが、いつでも反乱が起きるわけじゃない。社会共通の費用負担はそれなりの合意は国民にある。だけれども、この税については反乱が起きるということを、大蔵大臣、もう少し考えると、この税の性格にあるんじゃないでしょうか。ただ金取られるのいやだというものじゃないというふうに大蔵大臣は考えませんか、いかがでしょう。
  46. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和五十三、四年ごろからのことを考えますと、国会で御決議もありまして、政府は、当時民間で行われましたいわゆる減量経営ということを政府もしなければならないという国民の御意思を受け取って、いわゆるマイナスシーリングといったような行財政改革をかなり厳しくやってまいったわけであります。これは私は行政の分野におきましては類例を見ない、やはり一つの大きな努力であったということは間違いないところであると思いますし、それなりの成果も上がってまいりました。この点は恐らく国民が事実に徴して認めておられるところであろうと考えるのであります。  他方で、先ほども申し上げましたが、直接税関係の重税感というものは非常に日とともに強くなってまいりまして、これも何とかしなければいけない。それから、将来に向かって高齢化社会も訪れるということもわかってきた、そういう状況でございますから、このような所得水準と所得格差の小さい社会において社会の共通の負担を広く薄く受け持とうということ自身は、そのこと自身は私は国民に理解していただけるのではないかと考えます。  ただ、過去においてそれが国民の入れるところとならなかったのは、大平内閣当時の試みはあの国会決議にもあらわれておりますように、政府の減量努力が足りない、それが先決だという理由であったと思いますし、また、昨年の場合に起こりましたことは、やはり政府が考えておりますことを十分に国民に納得いただける、そういう機会をいろんな意味で失った。失ったことの理由はいろいろございますけれども、結果としてそういう機会を持つことができずに、いわば一種の国民の側から申せば拒否反応でございますけれども、そういうことが起こった。それが昨年の場合であったのではないか。  そのような経験にかんがみまして、このたびは十分国民に御理解をいただけるようにたっぷり時間をとり、国民の御意見を聞きながら作業を進めたいと考えておるところでございます。
  47. 志苫裕

    志苫裕君 そうではない。この税が持っておる性格が納税者国民の反発、反乱を呼ぶんだという ことで、今までの大平内閣以来、あるときはそれを財源確保と言い、あるときは増税なき財政再建と言い、あるときは不公平の是正と言い、いろいろ言っていたけれども、この税の持つ性格によるのであって、先ほども言いましたけれども、ただ単に税金を取られるからいやだというんじゃなくて、この税が国民一般が抱いておる税金のイメージとか税の理念とか税の原則といったものとは異質のものじゃないかなという、そういう気持ちだって国民には強いと思いますよ。あるいは、そういうものへの転換に対する危惧とか反発とかそういうふうなものが、まずこの税になると出てくる。その前提になっておるのは、俗にクロヨンと言われる不公平であるとか、もう十数兆円も売り上げをして数百億円もの所得申告があって、それでいて、よく聞いてみるというと、日本には税金を納めていない商社があるとか、あるいは何十億もの資産を残せるような高額所得者がおるのに、おれは幾ら一生働いたってそんなものは残らぬとかいう、そういう縦の不公平だとか、あるいは悪いやつほどよく眠っておるような徴税の仕方であるとか、あるいはまた納得のできない税金の使い道であるとか、そういう税に対する怨念みたいないらいらとかそういうふうなものがまたこの消費税に対するいら立ちや反発を増幅させる、こういうところじゃないんですか。  ですから、そのことを見ないでおいて、いや二十一世紀になって二〇二〇年になったら若い者一人に年寄り三人ですよとか、桐のたんすはどうたけれども、樫のたんすはどうだとか、こういうことを言うたって、それは国民の税に対するイメージと全然関係のないところでやっている。まあ早い話が、うちでもやりますが、今度の大蔵省が頼んで総務庁にやらしたというこの有識者アンケート調査なんというのがそのずれですよ。  一体あれですか、売上税が廃案になったことは大変無念ですということを言うて、この事実を深刻に受けとめて周到な配慮をもって検討しますと中曽根さんは百九国会で言ったわけですけれども、それは今ちょっとあなたがお話しになったように、時間をかけて手練手管を使って国民に無理やりわからせるとか反対勢力を鎮圧するとか、そういうことを言ったんじゃないんでしょう。同じ性質や同じ理念を持った、あるいは同じ懸念を持った税制は出さないということでなければ民主政治の常道に反するんじゃないでしょうか。大蔵大臣、どうですか。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今志苫委員の言われましたことは、いわゆる税制、今行われている税の制度あるいは行政に不公平がある、そこで国民は、そういう不公平のある状況において、新しい税制を受け入れる気持ちはないんではないかということであったと思います。  そこで、何が不公平であるかということは、私はいろいろ議論があるところであると思いますけれども、ともかくそのような不公平感を生じておるところがあるとすれば、そのような制度、そのような行政はこれは改めていかなければならないことは明らかであります。そういうことを前提にしなければ新しい税制というものを国民に受け取ってもらうわけにはいかないよという御指摘であれば、私はそれは政府もそうであろうと考えております。  したがいまして、このたび新しい税制を考えていきます上でいわゆる不公平感、不公平税制と言われるもの、これについてできるだけこれを改めてまいりたい。何が不公平でないかあるかということには議論がございますけれども、少なくとも政府がそうであると考えてしかるべきだと思うものにつきましてはそれをまず改めていくことは、これは前提として私どもも考えております。その上で国民に新しい税の御理解を得たいと思っておるところであります。
  49. 志苫裕

    志苫裕君 いや、大蔵大臣おっしゃるのと今現実に進んでおるのは、何が何でも課税ベースの広い間接税と抱き合わせでなければ公平の問題も何もやらぬというところに私は問題があるということを指摘しているんです。税制改革だって優先順位があったっていいじゃないですか。直間とこう言うけれども、不公平の問題は直間にあるんじゃないんでしょう、国民の感じは。直接税なら直接税の中に不公平がある、所得税なら所得税の中に不公平がある、資産持ちとそうでない、ただ体一貫で働いている者の間に不公平があるというふうなことが国民の実感なのであって、間接税を導入して相当財源持たないと三十年後に若い者は大変なことになるよと、だからひとつ年寄りにもみんな応分の負担を広く薄くしてもらって、若い者にだけどんと偏ってくればパンクしちゃいますからというふうなことは議論の立て方として大事ですが、それは今直接税の中の不公平を直すとか、資産と所得のバランスを直すとかいうふうなものにどうしても今持ってこなければ解決がつかない問題じゃない、時間的余裕がまだそれはあるじゃないですかということを私はどうしても指摘をしておきたいんです。  竹下総理は間接税に対する六つの懸念を表明しまして、まずは納税者と同じ地位に立ってみせました。減税をつけ加えることも忘れていませんから、大変如才がないわ、これは。いかにも気配りを大事にする竹下さんらしいやり方だなと思いますが、しかしそれは納税者と同じ地位に立っているんじゃないんですよ。そうだろうと言って、何か言ってくるとその一つ一つに反論を加えて解明をしていこうということなんでして、貸し借りを通ずる人間関係を大事にするというのが竹下政治の真髄らしいが、永田町以外にこんなもの通用しませんよ。  ですから、今政治選択として間接税を税制改革の柱に据えなければならぬ根拠はないんじゃないですかな。四十年の昔とこれから何十年先、その真ん中が今だというのは、それは今でしょうよ。しかし、四十年間にたまったあかはすぐ直さなきゃいかぬ。三十年後の先なら三年、五年かけたってまだ間に合う、そういう今じゃないですか。そういう今なら税制改革の選択の順位があったっていいじゃないですか。順を追ったっていいじゃないですか。それがどうして何もかも一緒でなければならぬということになりましょうか。大臣、もう一度答弁してください。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる不公平税制と言われているものについて政府は全く今まで手をつけなかったわけではございませんで、そのような国民の不公平感というものを何とか緩和をしようということで、例えば所得税におきましていわゆる中堅所得者を対象にした累進構造をなるべく緩和していきたい、あるいは配偶者特別控除を新たに設けた、あるいはまた今度は事業側で申せば、みなし法人の事業者報酬について青天井でこれを給与所得と考えるわけにはいかないというような制度も導入をしておる。いろんな側から言われております不公平感を是正するような努力を今日までいたしてまいりました。また、海外に事業活動をしております法人の海外所得についてのいわゆる二重課税防止につきましても、これはいわゆる特例あるいは不公平ということと関係は少ないと思われますが、しかしながら行き過ぎと思われるところは是正すべきであるという国会のお声にも耳を傾けてまいった等々いろいろな努力をしてまいりましたし、これからも努力をこれは当然のことながら税制面あるいは行政面両方で続けていかなければならない。資産課税につきましても土地税制につきましてもそのような努力を、前国会でも御審議をお願いをいたして、してまいったところでございます。  これを今後とも続けていかなければならないことはもちろんでありますが、同時に将来を展望して、実は三十年ではございませんで、二十一世紀まで十三年でございますからそんなに長い先のことではないということを私ども考えておるわけでございます。そして過去四十年近いシャウプ税制をこの際抜本的に考える。やりかえるとすれば、それはやはり十何年先の遠くない将来というものは、これは考えておくのがむしろ私は当然ではないかというふうに思っておるのでございます。
  51. 志苫裕

    志苫裕君 いやいや、高齢化社会対応はだれもそのことについてそう意見の食い違いはないんで す。食い違いがあるとすると、二〇二〇年ごろに非常に大変な事態が来るというデータを、あしたにでも来るようなことを言って、課税ベースの広い間接税導入の根拠にする。私はまだ三十年あるから三十年間議論はやらぬと言っているんじゃないんですよ。それは三年、五年のうちにできるだけそういう対応をしなきゃならぬということを否定しているんじゃないんですが、何か皆さんの方は時系列の違うようなものをごちゃごちゃに一緒に持ってきて、国民の強い希望を達成するにはそれがなければだめだというその手法のことを私は言っているので、これはこれからしばしば続きましょう。それにしても余りにも根拠が薄弱で目標がころころ変わっているんじゃないですかね。財源の調達を言ったかと思えば増税なきと言うし、公正、公平だと言うかと思えば直間比率の是正だと言うし、歳入構造も当面のことと思えば二、三十年先のことだし、それであげくの果てには所得、消費、資産のバランスだと。何のバランスだと聞いてみるというと、それは結果論だと、こう言う。私は差し迫って必要な税制にそんなに幾つも言い回しがあるわけでもないと思うんですよ。国民にとって必要なのはやっぱり納得のいくわかりやすい税制だと思いますね。何か手練手管のようにころころ変わっているじゃないですか。税財政のプロである大蔵省はいや数十年一貫しているんだと言うかもしらぬが、そうは皆さんの方だって一貫しているわけじゃない。  ですから、私は繰り返し主張しますが、たくさんの改革課題はあるけれども優先順位があっていいし、合意を取りつけられるものは幾つもある。間接税にも問題がたくさんありますよ。問題がありますが、大蔵省の方はOA機器に対する間接税を持ち込もうとしたらどこぞの反発を受けてパアになったものですから、それっきりもはやこれはもうあきらめてしまった。あきらめてしまって、何でもいいから目をつぶってみんなにかけるというふうに持ってきておるのも余り科学的じゃないわけで、政治力学で出したわけですね、これは。という点で、これは大蔵大臣に、税制にも改革課題優先順位があっていい、時系列の違うものを持ってきてごちゃごちゃにするなということを強く指摘しておきたい。所得、資産、消費と言っているんですが、まずは所得と資産からいきましょう、そういうふうに順序立てていく方法だってあるじゃないですかということを申し上げておきます。  ところで、総務庁おいでになっていますが、これは一体何ですか、新聞に一斉に報じられました。けさ資料もらったんですが、「税制改革に関する有識者調査」。有識者というのは何ですか、これは一体。「税制改革に関する有識者」というのは。
  52. 坂東眞理子

    説明員坂東眞理子君) 私どもが行いました「税制改革に関する有識者調査」では、学識者、報道、経済界、労働関係、農林水産・自営業、中小企業経営者、婦人・青年、サラリーマン、税の実務家、この九つの階層の方々に調査を聞いておりますが、そういう方々を対象とした一般の世論調査とは異なる調査だということでございます。
  53. 志苫裕

    志苫裕君 これは一般の世論調査でないんですね。
  54. 坂東眞理子

    説明員坂東眞理子君) はい。
  55. 志苫裕

    志苫裕君 どういういきさつでやったんですか。
  56. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  57. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 速記を起こして。
  58. 坂東眞理子

    説明員坂東眞理子君) 税制改革は政府の非常に重要な課題でございますし、大蔵省の方からこういう調査をしてほしいという依頼がありましたので、私どもの方としても行うということにいたしました。
  59. 志苫裕

    志苫裕君 そうすると、新聞報道にもありますが、大蔵省の依頼に基づいて総理府が世論調査ではない有識者調査を行ったということのようです。私はこのことについていずれあちこちでやるでしょうが、まず副総理、いいですか、これは竹下さんがいないからあなたに言うんだが、副総理に聞くんですが、非常に重要なテーマですね。竹下さんは間接税について、国民の理解を得られるように税制の確立という観点に立って、論議に先立って予見を与えることなく、広く国民各界各方面の意見を伺いながら成案を得たい、これは去年の十二月の衆参における本会議の答弁。紛れもなく与見を与えた有識者調査じゃないですか。しかも、総理がこの答弁をしたのは十二月だ、大蔵省はもうそのころ予見を持って、予見を与える項目を盛り込んでこの調査をやったんでしょう。総理府も総理府だ、頼まれればいいというものじゃないですよ、こんなものは。これはひとつ副総理、答えてください。これは責任問題だ。
  60. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 遺憾ながら所見を異にいたします。このような問題について国民がどう考えておられるかということとともに、有識者、いわゆるこういう問題について特に知識、経験を有せられる人々がどういうふうに考えておられるかということは、これはむしろ伺うべきものであって、その結果、予見を与えるとかいうようなこととは全く関係のないことであります。
  61. 志苫裕

    志苫裕君 「問6「不公平を解消するためには、直接税だけで努力をしても限界があり、間接税などで補完した方が公平になる」という意見に対してどのようにお考えですか。」と、これもあらかじめ予見を与えない調査ですか。
  62. 水野勝

    政府委員(水野勝君) そういうお問いかけとともに、いや、そうは言ってもやっぱり「直接税の中で改善を図るのがよい」という意見と、「間接税のウェイトを高めるなど、所得・消費・資産それぞれに対する課税のバランスをとった方が」よいという意見とを並べて、どちらでございますかというお問いかけでございますから、特段これが予見を与えるというようなものではないと考えておるところでございます。
  63. 志苫裕

    志苫裕君 これはまあ、ああ言えばこう言うのたぐいでね。しかし、客観的に見れば、この時期、有識者と称して各界百人、関口宏の「クイズ百人に聞きました」みたいな話です。そうでしょう、皆さんの望む人。これは所得階層はわかりますか。
  64. 坂東眞理子

    説明員坂東眞理子君) 伺っておりません。
  65. 志苫裕

    志苫裕君 間接税の懸念の一つに、所得の低い人でも、税金を納めてない人でも押しなべて取られるという懸念がありまして、そういう観点から見れば、所得の低い人は困る、所得の高い人は間接税で取られるが、それに見合う分だけ直税が下がって差し引き得だという損得論議がかかわっていますから、所得階級がどの程度の者がどのような見解を持つだろうかというのは非常に重要な点ですね。これは、なぜあえてそこのところを抜いたんですか。
  66. 坂東眞理子

    説明員坂東眞理子君) これはアンケート調査、皆様に書き入れていただく性質上、なかなか正確にお答えいただけないのではないかなという懸念がありましたのが一つ。それから、この調査は各グループごとの各界の御意見の差を比較するのが主たる目的でやっておりますので、そのグループの中でどういうふうに御意見の違いがあるかというさらに突っ込んだ分析は、その各グループの対象者が百人以下ということもありまして、その統計的な分析にたえないであろうということで伺っておりません。
  67. 志苫裕

    志苫裕君 この点については総理府の直接の担当者が女性が来たので弱いんですが……いやいや、土井さんになって以来どうも私は女性に弱くなっちゃったんですが。もっといろいろ聞こうと思ったんですが……。  そういう世論調査の技術上の問題とかでなく、非常に政策的な問題で大蔵省と組んで総理府が、大蔵省がやったんじゃ手前みそになりますし、世論調査については総理府という専門的なところに任せると人が何となく公平なデータのように思うだろうというあたりも読んだのに違いないんですがね。  これは総理府の方に申し上げておきますが、おたくのやっておる、これからやろうとする世論調査の権威を下げましたね、これは。本日以降、総 理府の世論調査なるもの信用せず。まあ、高いお足を、国民の税を使って世論調査も大事なことなんですが、こういうことをやっちゃいけませんね。それであなたはもう結構ですから、どうぞ。  これは大蔵大臣、これが有識者でもなければ何でもないんですがね、有識者は、税金は国民の知識でやるんじゃないですから、税に対する理念とか税体系とか、古今東西を通ずる普遍的な原理とかいうふうなものは大事ですよ。大事ですが、今問題になっているのはそんなことではないんじゃないですか。それをどうしてこうやって物知りそうな顔をして、その実、国民のことなんかさっぱりわかってないような連中を相手にしてどうのこうの。こういうのはもう今後やるべきじゃないし、これ没にしなさいよ。非常にけしからぬ。これはまさに私は総理の予見を与えないという答弁に明らかに反しているということを指摘をしておきまして、しかるべき場所で取り上げることになるでしょう。  最後に、ちょっと外国との租税摩擦について、いずれ租特がありますが、きょうは入り口だけでまずやっておきたいと思うんです。  円高のもとで企業の海外戦略が展開をされておりまして産業の空洞化が問題になるんですが、これを税収面で見ますと、企業所得の海外流出ですから当然税財政の空洞化ということになるわけで、この事態が進行すると企業活動と国益とは調和しなくなっちゃうという問題に行きますし、またこの企業経営のグローバリゼーションに伴って国境の壁を利用した、例えばタックスヘイブンや各国間の税制格差を活用した租税回避行為というようなものも目立ってきているようだし、あるいは海外の子会社、海外取引を利用しての経理操作あるいは外国税額控除制度の拡大運用、移転価格を悪用した所得、収益、費用の移転操作、タックスヘイブンの活用というようなものがこれからもひどくなってくるだろうし、指摘をされております。と同時に、グローバルな企業活動で得た所得を関係国で分けるということになりますと、どこだって財政は楽じゃありませんから自国の税収を増加させようということで、外資系企業がターゲットになる。そして、移転価格税制を初め自国の税制規定の強権発動でパイを取り合うという国際間のもめごとが深刻複雑になる。というところへ起きてきたのが例のトヨタ、日産、本田等に対するアメリカ歳入庁ですか、IRSと言いましたかね、のいわば課税増額更正という問題だったわけですが、これに対して法人税で八百億円、地方税で四百億円還付したということが一斉に各紙に報ぜられました。時間の関係で聞きますが、筋書きとしては報道のとおりだと理解していいですね。
  68. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 御指摘の個別の課税問題について私どもの立場で言うことは差し控えさしていただきたいと思います。  ただ、今委員も御指摘になりましたように、これらの件につきましては、六十二年十一月二十七日以降各新聞等で報道されたことは私どもとしても承知しておりまして、報道された内容につきましてはあえて否定しないところであります。
  69. 志苫裕

    志苫裕君 報道された内容がどうだって――そうなると一々聞かなきゃならぬのですが、だってどの新聞も同じように書いてあったから、筋書きはあのとおりに私がのみ込んで質問すればいいね。
  70. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 各紙がそれぞれ一様であったかどうか、私今ここでしかと確かめておりませんけれども、私が申し上げましたのは、十一月二十七日以降新聞等で報道されたことにつきましては私どもとしても承知しておりまして、これについてあえて否定しないということであります。
  71. 志苫裕

    志苫裕君 わかりました。  私の疑問からまず申し上げておきましょう。これによりますと、現地法人は当初ダンピングの容疑で財務省の調査を受けた。しかし、それはシロだったと。今度はIRSが高い値段で価格移転をしたというので税務調査、それで増額更正になったようなんですが、安いといってはダンピング、高いといっては移転価格、こうなると立つ瀬がないという感じがしないわけでもないんです。こういうのは一両刃論法と言うんですかな、何か言うようですけれども、腑に落ちないという感じですが、ほかにこういうケースがございましたか。
  72. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 私どもが承知しておりますのは、こういった移転価格課税の場合につきましては、日米租税条約に基づきまして納税者が二重課税排除のために相互協議の申し立てをしてきた場合に、私どもとしてはIRSと相互協議をするということになっております。この相互協議に上がってきてから私どもがこれについて承知をするということになるわけでありますが、これまでのところ、相互協議をした案件は過去に一件でございます。
  73. 志苫裕

    志苫裕君 移転価格税制が日本において六十一年に創設されて初の適用ケースというように思われるんですが、企業の原価形成に税務が踏み込んだという意味ではまさに画期的な出来事なんですが、独立企業間価格などをどのように認定をしたんですか。この相互協議、租税交渉のいきさつを述べてください。
  74. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 委員も御存じと思いますけれども相互協議の内容につきましては、これは二つ理由がございまして、一つ相互協議が開始されますと、問題は、そこで問題となっている製品の価格が、今委員がおっしゃいましたように、独立企業間価格として最も合理的なものであるかどうかということを両税務当局間で協議し、これについて検討をするわけであります。したがいまして、このために必要な関係企業におきます原価等を形成するデータにつきましては、私ども客観的に正確にこれを把握する必要がありますので、質問検査権を行使いたしまして、これを把握するわけでございます。したがいまして、このことにつきまして具体的に御説明申し上げることは、守秘義務の観点から御容赦をいただきたいと思うわけでございます。  また、別の観点から、日米租税条約第二十六条には条約上の守秘義務というものが規定されておりまして、相互協議になりまして、具体的にそこで議論された事柄につきましては日米両税務当局において守秘義務を守るようにということになっておりますので、これについて具体的に申し上げることは差し控えさせていただきたいと思うわけであります。  しかし、お尋ねの適正価格、つまり独立企業間価格ということにつきましては、今私どもが承知しております範囲におきましては、第一に独立価格比準法、第二に再販売価格基準法、第三に原価基準法、これらの三つの方法によりがたい場合にはその他の方法、つまりインカムスプリットといったような方法で算定することになっております。  これにつきまして、具体的に私どもどういう作業をいたしますかということを申し上げますと、まず第一には、こういった四つの方法のうちどの算定方法をとるべきかということを議論いたします。そして、もしある算定方法をとるべきであるということになりましたら、その中でどの取引を比較対象取引とすべきか。つまり、比準すべき独立企業間における取引と、こうすべきかということを議論いたしまして、その次にこの比較対象取引とした取引につきまして、それを真に比較可能にするためには取引の対象、取引の時期、取引段階あるいは取引要件との差をどう調整するかという問題について非常に突っ込んだ議論をいたします。その結果、最も合理的な独立企業間価格の算定方法についてその策定に至る、こういう段階を経たところでございます。
  75. 志苫裕

    志苫裕君 中身はなかなか言わぬだろうと思いますが、しかしこれは、今回について言えば千二百億円の日本の所得がアメリカへ移ったわけですから、秘密でございますなんと言っておれない。今後、電機やハイテクにも波及しますし、トラブルを現地法人や関係企業が避けて、利益の配分を現地法人に厚くして無難に過ごそうという動きが起きれば、ますますこれは日本の国益に反することになるという意味で、これはいろいろと問題が ありますからやります。ですが、その周辺だけ聞いておきますが、IRSと和解をした本田の法人税の取り扱いはどうなっていますか。
  76. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 本田の問題につきましては、新聞報道等でIRSとの間に今委員指摘のような経緯があったということは私ども承知しておりますけれども、直接私どもこれについては関知しておりません。
  77. 志苫裕

    志苫裕君 容易に考えられることは、IRSが本田の価格はこう、日産はこうなんとかと言ったんじゃないと思いますね。大体同じような眼鏡で三者を見たと思いますよ。ところが、本田はまあいろいろあったが結構ですと、残りの二社は、これは文句があるというので、日本の権限ある当局に申し立てをした。そこで、新聞によると二千五百億円が千二百億円まで減ったということになりますと、本田の価格と残りの二社の価格は違うはずです。それで結構ですとしたところと、頑張って半分値以下にしたところと違いますから。したがって、アームズ・レングス・プライスというんですか、独立企業間価格、これがあらゆる場合の物差しになるわけで、これが本田とトヨタ、日産と違うというのは理屈に合わぬ。こういう問題等も出てまいりますから、じゃいずれにしても、これは本田には還付はなかったんですね。
  78. 日向隆

    政府委員(日向隆君) さようでございます。
  79. 志苫裕

    志苫裕君 まあ、対応的調整はその前提になりますのは申し立てから始まるんですから、申し立てもないところに税金が返っていくことはなかろう、こう考えて念のために聞いてみました。  で、なぜ国税が八百で地方税が四百ですか。
  80. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 国税の還付につきましては、私新聞報道をあえて否定しないということを申し上げましたが、地方税につきましては所管が私どもではございませんので、私どもの立場で言うことは差し控えたいと思いますけれども、私ども地方税の事業税及び法人住民税と国税の税率とを比較いたしますと、一般的に申し上げましてほぼ半分ぐらいではなかろうかと思います。
  81. 志苫裕

    志苫裕君 あとここだけ聞いておきますが、これは所得が移るというのが建前なんですから、千二百億円の課税に相当する課税所得ですか、そのもとがアメリカへ移ったことになりますね、アメリカへ移ったことになる。本当にやったかどうか知りませんよ。そうなりますと、その所得に対してアメリカと日本は法人税が違いますから、現地法人に留保所得かあるいは配当の部分が出たはずですね。それがまた再び日本に返ってきたんですか。そもそも、この千二百億をアメリカへ送ったんですか。送らぬとすれば課税の問題が出てきますよ。その辺の確認はできているんですか。
  82. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 相互協議におきまして、移転価格課税事案の場合、合意に達しますのは所得金額、これは今委員がおっしゃいましたが、所得金額についての調整でございまして、この合意をしました各年々の所得金額につきまして、双方の締約国がそれぞれの国内法令に従って処理するということになるわけであります。  したがいまして、我が国は具体的に対応的調整、これは減額補正をするわけでありますけれども、それを行ったケースにおきまして我が国の納税者に対して法人税の還付を行いますし、相手国は同時にそれに対応いたしまして相手国の法人に対し追加的な課税を行うわけでありますけれども、それぞれの国で行う追加的課税に対応する対応や、還付された金額に対する処理は納税者の判断に任されているというところでございます。判断に任されておるというところではございますけれども、私どもそれぞれの判断の仕方を見まして、国内法令に照らして適正に処理しているところでございます。
  83. 和田教美

    ○和田教美君 私はきょうは税制改革問題を中心にお聞きしたいと思います。  政府は税制の抜本的改革の問題について、最近、所得、消費、資産の間で均衡のとれた税体系の構築ということを盛んにおっしゃる。そして、直間比率の是正というふうなことを余りおっしゃらなくなったわけでございますが、そこで、この所得、資産、消費のバランスというのは一体どういうことかということからまずお聞きしたい。  所得と消費はフローでありまして、資産はストックである、これを一体どういう基準でバランスをとるのか、なかなか難しいと思うので、私が理解するのは、所得課税、消費課税、資産課税のバランスと、こういう意味だと思いますが、その点まず確認をしたいわけでございます。
  84. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 私ども所得、消費、資産に対する課税のバランスと申し上げておりますときに、端的な一つのよるべきものとしてはOECDの歳入統計の区分基準がございまして、これに従いまして申し上げているところでございます。こうした国際的な一定の基準につきまして数字を見てまいりますと、その範囲内では国際的な比較ということもまた時系列的な比較ということも可能となるところでございますので、具体的にはこの基準によりまして申し上げているところでございます。  その税目別に若干のコメントを申し上げますと、所得課税、これは所得税と法人税でございます。それから、消費課税でございますと酒税、物品税等の個別の消費税でございますが、資産課税につきましては財産にかかる税、その他財産の保有にかかる税、財産の移転にかかる税、こうしたものでございまして、具体的には相続税、有価証券取引税、印紙収入、こうしたものを計上したものとして数字をお示ししているところでございます。
  85. 和田教美

    ○和田教美君 今大蔵省からいただいた国税収入の累年比較というのを見ましても、今局長の説明されたような分類になっております。  そこで問題は、この所得課税の中の所得税等という中には、私の表現かもしれませんけれども、勤労性所得とそれから資産性所得が一緒に入っていると思うんですね。この大蔵省の資料の説明によっても所得課税という中には所得、利潤及びキャピタルゲインにかかる税というふうに書いてございます。そうすると、キャピタルゲインにかかる税というのは株だとか土地譲渡益に対する課税ということだと思うんですね。    〔委員長退席理事梶原清君着席〕 それから利潤というのは、これは利子配当などを意味するのではないかと、そうすると勤労性所得とそういう資産性所得が一緒になっているということだと思うんですが、このバランス、これは一体どうなっているのかということはおわかりですか。
  86. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 御指摘のように、所得に対する課税の中には利子配当、キャピタルゲインに対する課税も入っておるわけでございます。ただ、日本の所得税でまいりますと、外国の所得税もほとんどそうでございますが、総合累進課税をとってございますので、比例税でございますとその所得によって案分すればいいわけでございますが、総合累進課税でございますと、その結果としての税額をどのように区分するかというのはなかなか議論のあるところでございますので、通常は所得税はやはり勤労所得と申しますか、給与所得、事業所得、それから資産所得、すべて所得としてその中に入り、その総体としての所得に対する累進課税の結果の税額を一本でお示ししているというのが通常の例でございます。
  87. 和田教美

    ○和田教美君 それじゃ、この分類についてお聞きしたいんですけれども、キャピタルゲイン課税との関連で最近問題になっております有価証券取引税、これは一体どこに入っておるんですか。
  88. 水野勝

    政府委員(水野勝君) これは所得税の中に入ってございますし、お配りされた資料でございますと、所得税の中の申告所得税の中に入っておるところでございます。
  89. 和田教美

    ○和田教美君 私がまずこういうことを聞くのは、最近政府は所得、消費、資産のバランスということをおっしゃるけれども、先ほどの大蔵大臣答弁を聞いておりましても、それは結局所得とそれから消費を比較するというふうな議論であったように思うんですね。それで、資産の問題というのは余り浮かび上がってこないわけでございま すが、しかし最近の傾向を見ておりますと、土地の急激な騰貴とか株高とかというふうな問題を含めて、例えばキャピタルゲイン課税の問題、あるいはまた我々が主張しております土地の再評価税を取れという問題、こういう問題はすべて資産を源泉とする課税の問題だというふうに思うので、私はむしろ、所得と消費をいきなり対比するよりも、所得と資産、このバランスをどう考えるかということが新しい観点として取り上げなければいけない問題ではないかと思うんです。  そういう意味では、所得課税の中の所得と資産性所得、つまり勤労性所得と資産性所得のバランスというのを、今のお話ですと総合課税だからそれはわからないということですが、何らかの工夫をして、それは大体の傾向を見つけるべきではないか、その十年ぐらいの傾向がどうなっているかというふうなことを見つける必要があるんではないかというふうに思うんですけれども、いかがでございますか。
  90. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先ほど私御答弁申し上げた――ちょっと御質問に対して正確にお答えしたかどうか心配な点がございますので、もう一回先ほどの御質疑につきましての御答弁を申し上げたいと思います。  有価証券取引に対する課税、この中で有価証券の取引の際に生じた譲渡益に対する課税につきまして、これは先ほど申し上げましたように申告所得税の中に入っております。それから、有価証券取引につきまして課せられます有価証券取引税、これは、このお配りされた表でございますと、間接税等の方の中に入ってございます。その点は、申しわけございませんが、もう一回御答弁さしていただきます。  それから、ただいまのお話でございますが、所得税の中の所得の分類まではいろんな統計がございます。普通の給与所得の場合、それから事業所得、それから土地の譲渡による所得、利子配当所得とそれぞれございますが、ただ、技術的なことを申し上げて恐縮でございますが、利子でございましても源泉徴収で入ってくるものと、それをもう一回申告されて申告所得税としてその上積み分を納税される場合と従来はあったわけでございます。それから、土地の部分につきましては、大多数の土地は分離課税でございますが、ほかの所得が全くないとなりますと控除額をそこから引いたりいたしますので、その部分、それ自身を土地の譲渡所得に対する税として見合うように計算できるかどうか、なかなか技術的に難しい点があるわけでございます。しかし、大ざっぱな傾向といったものは、そうした所得の統計からある程度はつかむことは不可能ではないと思います。
  91. 和田教美

    ○和田教美君 そういうことにひとつ一回チャレンジしてもらいたいというふうに思います。  それで、今のお話ですと、資産性の所得、つまりキャピタルゲインなんかは所得税に入っていると。それから、今のこの資料によりますと、相続税なんかは資産課税の中に入っておるわけですね。それから有価証券取引税は、今の政府答弁の御訂正で、間接税の中に入っておるわけですね。つまり、資産を源泉とする課税は三つのそれぞれに入ってしまっている、こういうことになりますね。そうでございますか。
  92. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 仰せのとおりでございます。
  93. 和田教美

    ○和田教美君 そういうところが、もう少し別の観点からその資料を整備していただきたいという私の要望でございます。それでないと、最近の問題意識、新しい問題意識、つまり勤労性所得と消費を比較するだけではなくて、資産性課税とのバランスというものを見なければ見当がつかないという問題についての一つの資料をお願いしたいと思うわけでございます。  そこでまたお配りした資料にこだわりますけれども大蔵省からいただいた資料を皆さんにお配りしていると思うんですが、これについてひとつお尋ねしたいんですが、竹下総理は十七日の予算委員会で、所得、消費、資産の望ましい課税比率については数値を挙げて説明することは困難だという答弁をされましたが、その際五十年度と六十一年度を比較されたわけでございます。で、新聞報道では、これはどうも、少なくとも五十年度以前の状態に戻すということが望ましいという意味ではないかというふうな記事も見られました。また、大蔵大臣は三十五年度と比較して答弁をされたことがございます。これはやっぱり三十五年度ぐらいが大体望ましい、その辺のところまで戻せたらいいんではないか、それぞれの直間比率ですね。そういうふうな感じではないかというふうにも受け取られる答弁をしたわけですけれども、一体、この表をごらんになって大蔵大臣は、どの姿が一番望ましい、つまり、これを美人コンテストというのに比較すればどれが一番美人であるか、目鼻だちも整ってというふうにお考えなのか、お答えを願いたい。
  94. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、確かに総理大臣は五十年を例に引いて話をされましたが、そのときの御説明によりますと、昭和五十年という年は我が国がもはや疑いもなく先進国の列に入っていて、しかしながら先進国の一つとして石油危機等々の大きな激変を受け始めた、そういう年であったとして五十年を自分は仮に一つの比較にしてみたと言われました。私が三十五年をとりましたのは、我が国がまあ国際社会にほぼ入って、戦後がやや終わったという時点として三十五年を例に申し上げたのでございます。  で、いずれもその年における資産、所得、消費の課税が理想的な年であったという意味合いを持っておりません。仮に、比較すべき過去の年次をいわば恣意的に取り上げたと申し上げてもその点ではよろしいと思うのでありまして、お尋ねに対して、したがいまして、この三つの間の比例関係はこれが望ましいといったようなことを、私どもはかつて検討したことも、恐らく政府――正式には無論ないと存じますが、はっきりお答えをするどうも根拠を持たない。それはやはり、社会が我が国のように殊にこれだけ急速に変わってまいりますと、そもそもその間の比率はかくあるべしというようなことを経験的に議論することが、私は難しいのではないかというふうに考えております。
  95. 和田教美

    ○和田教美君 まあ、この税制改革の問題で国民が求めている税制改革というものはどういうものであるかということなんですけれども、私は、政府もこれは認めておるのですが、まず不公平の是正だということだと思うんですね。税調の審議方針の中にもまず最初に不公平の是正ということを掲げておりました。そして私は、勤労性所得は確かに重い、サラリーマンを中心とする勤労性所得が確かに重いということは、大蔵大臣の言われたとおりだと思うんですけれども、それが重いからすぐダイレクトに大型間接税の導入を中心とする間接税のウエートをもっと高めなければならないという、そういう感じ方ではないのではないかというふうに私は思うんです。それよりも前に、政府はかつては直間比率の是正ということを盛んにおっしゃったけれども志苫委員も触れられましたように、むしろ直直比率の是正といいますか、直接税内部の不公平の是正ということが先だという説の方が、考え方の方が私は国民の多数ではないかというふうに思うんです。  直接税内部の不公平ということになりますと、よく言われますクロヨンの問題もございますけれども、特に最近は、さっき私が言いました勤労性所得に対して資産性所得も含めた資産課税、これが軽過ぎるのではないかという、そういう見方が出てきているのではないかというふうに思うんです。ですから、我々野党三派も土地譲渡所得税の強化を要求したり、我が党は、公明党は資産再評価の問題を出しておるというのもそういう一つの傾向のあらわれではないかというふうに思うんですが、資産課税とのバランスをもっと重視するという考え方について大蔵大臣はどうお考えですか。
  96. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどお話しのありましたOECDの分類によりますと、我が国の資産課税は六十一年度で一〇・二でございます。仮に、先ほどお話しのございました五十年ですと六であ りますし、三十五年ですと四でございます。この一〇・二というのは、これは定義によりまして有価証券取引税などが入っております反面、今度は和田委員の言われましたように、譲渡所得税は入っていないということでございますが、それにいたしましても、私は一〇・二というのはかなり高い率ではないかというふうにこれを見て直感をいたしました。沿革的に高いのはもとよりでございますが、今私が申し上げようといたしましたのは、六十一年現在で見る限り、これが低過ぎるかと言えば、私はそういう印象は持っていないということを申し上げようとしたのであります。  さてしかし、もとに返りまして、確かに所得の中には勤労性のものと、おっしゃいますように資産性のものがあって、資産課税、これは資産から生ずる所得及び資産そのもの、保有の事実そのもの、あるいは相続の事実そのものについての課税というものもひとつ大事に考えるべきじゃないかというのは、私はそのとおりだと思うのでございます。ただ、最近株式の上昇が続いておる、あるいは土地の高騰があった、こういうことが我々の比較的最近の体験でございますだけに、それをもっと課税をしたらいいということは国民感情の中にもあると思うのでございますが、果たして現在それらの課税が低過ぎるのかどうかということは、少し私は長い目で見る必要があるであろうというふうに思います。  それから、もう一言申し上げるならば、我が国の社会のでき方全体が恐らく他のどの国よりも所得格差の少ない国でございますし、また財産の所有関係でも恐らく我が国は他の国と比較して言えば大した金持ちもいない、大した貧乏人もいないというようなふうに分類される国ではないかと思いますので、そういう意味では社会政策としての資産の再配分についての租税の機能というのは、我が国の場合は他の国に比べてそんなに大きい必要はないのではないかということを感じております。    〔理事梶原清君退席、委員長着席〕
  97. 和田教美

    ○和田教美君 今お答えがございました資産性所得に対する課税も含めて、資産課税というものはどうも低過ぎるというふうな見方について、そうじゃない、かなり一〇・二%というのは高いというお話がございましたけれども、これは私は、資産課税の問題を論ずる場合には、時系列というか、時間的な経過というものを見なければならないというふうに思うんです。  例えば勤労性所得の問題を見る場合には、大体GNPの成長率というもののその前後でずっと伸びてきているというふうに思うので、仮に、東京周辺の土地の暴騰が、例えば五十九年、六十年ぐらいからここ数年間のあれを見ても勤労性所得の伸びというのは大体十数%とか二〇%ぐらいではないかと思うんです。  ところが、土地の場合には東京都周辺は大体三倍ぐらいになっています。三倍になっておって、資産課税の方はほとんどそんなに変わらないということは、相対的には非帯に課税が低くなっておるという解釈もできるのではないかと思うんです。そう言うと、大蔵省はすぐ未実現利益に対する云々という理屈を並べられるんですけれども、そういう点からいって、資産課税が高いという観点について私はどうしても納得できないんですけれども、その点はいかがですか。
  98. 水野勝

    政府委員(水野勝君) その資産課税というお話の場合に、まさに資産の保有、取得、譲渡、それぞれの場合があるわけでございますけれども、ここでお示ししているこの統計の数字でございますと、先ほど申し上げましたように、これは相続税、有価証券取引税、印紙収入が主体でございます。そういう点からいきますと、まず有価証券取引税につきましては、株価が非常に高水準になった。それはそのまま、あれは比例税でございますから、反映をされておる。それからまた、相続税でございますと、その課税財産の六割から七割が土地でございますから、それに反映されておる。印紙収入は登録免許税の土地の部分が主でございますから、それが地価がそのまま反映されておる。  そういう意味におきまして、こういう数字、OECD式によります数字でございますと、これはその地価の高騰、株価の高騰はそのまま反映されてきておる。そのお願いをする水準がまだ低いのかどうかということになりますと、そういう流通税的なものとしては相当な水準と申しますか、相応の水準になっておるのではないかと思うわけでございます。  そこで、御指摘の保有につきましての課税、あるいは未実現のものとしての譲渡益課税、そういった面からいたしますと、それが実現されるときには、それは税収として出てくるわけでございますが、そうすると、残るは保有に対するものでございます。そういたしますと、再評価の問題でございますとか経常的な財産税である富裕税といった問題、そうしたものになる。あるいは地方に固定資産税がございますが、そうしたものとしての問題になる。そういう保有の面、あるいは未実現の譲渡益に対する課税の面からさらにこの問題に接近をするとなりますと、それはそれぞれの税の問題について相当ないろいろ議論すべき問題があるのではないか。  したがいまして、ここにあらわれております流通税的資産課税、この水準だけから見ると、これはかなりな相応の水準のものを御負担願っていると言えるのではないかと思うわけでございます。
  99. 和田教美

    ○和田教美君 その問題については、局長のおっしゃるとおり、非常に議論のあるところだと思いますし、これからも大いに議論したいと思っております。  今の説明を裏返して大蔵大臣の説明、局長の説明を聞いていると、結局ここにまた別のデータもいただいておるのですが、「租税収入構成の国際比較」というのがございます。そうすると、日本は財産にかかる税その他の税は一四・三%、アメリカも一四・三%、イギリスも一四・六%、フランスだけがちょっと高くて一七・五%。それから西ドイツは逆に低くて四・八%というふうになっておって、大体各国並みになっておるというふうなデータがここに一つ出ているわけです。ということは、結局大蔵省は、資産に対する税はまあいいところだということで余り変える意思はないということを、逆に今の答弁もそれからこの資料も表明しておるのだろうと思うんです。  そうすると、結局は所得課税が勤労性所得を中心に十全になり過ぎているから、それがすなわち間接税の増徴ということに持っていかざるを得ないんだ、こういう論理構成をしているんだろうと思いますが、そのとおり理解してよろしゅうございますか。
  100. 水野勝

    政府委員(水野勝君) こうした数字のとり方からして国際的に比較いたしますと、そのような御議論ができようかと思うわけでございます。ただその前に一つ、まさに先ほどの委員指摘の資産課税というものに資産性所得というものをどういうふうにその場合に考えるかという問題がございまして、例えば有価証券でいたしますと、この分類では有価証券取引税は入っておる。有価証券取引税というのは今や二兆円近い税収になりまして相当のウエートを占めておるわけでございますが、それがどうも、いやそれだけ御負担を願っておるからといっても、なかなか御納得は簡単には得られない。やっぱりもうけられたところから、譲渡によってもうけの大きいところからお願いをする、そういう形の税制になっていないとなかなか御理解を得にくい。  したがいまして、いわば資産所得につきましての資産に対する課税全体としてはほどほどの水準とも言えるかもしれませんが、その中におきますところの資産の移転につきましての課税と資産の譲渡によります純利益に対する課税との問題がある。直直というか、資産の中におきますところの負担の求め方にバランスが崩れていないか。それは土地につきましても、この数字にあらわれておりますのは印紙収入が大きいというもので入っておる。それは土地の移転に対する課税でございますが、土地の譲渡につきましては、それがいろい ろな控除や分離課税で負担が軽減されているという御指摘がある。そこのところを十分説明ができないと、こういう数字で国際的にほどほどの水準だといってもなかなか御納得が得にくい面がある。そういう問題はやっぱりこの数字から見てもあるということは認識しているところでございます。
  101. 和田教美

    ○和田教美君 売上税が廃案になった直後に、去年の五月、たしか朝日新聞だったと思いますけれども、世論調査をしました。そうすると、八割近くの人が今の税金のかけ方は不公平だというふうに言っておりますね。だから、そういう意味では税制を変える必要があるということを答えておるわけです。ですから、そういう点では国民の一種の合意といいますか、とにかく今の税制には不公平が多いという、そういう点においては合意があるというふうに私ども見ておるわけです。しかし、どういう方向で変えるかということになりますと、税制改革の進め方として、所得税や住民税のような直接税を減らして、かわりに物やサービスなどに広く課税する間接税をふやそうという考え方について聞いたところ、反対が四八、賛成が三二と、むしろ反対論の方が多かったわけですね。その後各新聞社の世論調査を探してみましたけれども、こういう問題の立て方で聞いたのは余り見当たらなかったわけでございます。  それから数カ月たっておりますけれども、私は国民の受け取り方というのはそんなにこの傾向から根本的に変わっているとは思わないわけなんですね。やっぱり今、私がさっきから言っているように、まず手をつけなきゃいかぬのは直接税の内部の不公平であるという受け取り方の方が多いのではないかというふうに思うんですね。  ところが、さっき志苫委員指摘されました大蔵省要請に基づく総理府の有識者調査というのが出てきて、これだと大体八〇%ぐらいの人が間接税、大型間接税の導入に賛成のような意見を述べておるということなんですけれども、余りにもギャップが大き過ぎるというふうな点をまず感じるのと、大蔵省がそれほど世論を気にするんであれば、まあ言ってみれば街頭でとにかくアンケート用紙を配って、そしてその結果をもらうというにすぎないこういうアンケート調査なんということでお茶を濁すのでなくて、なぜ一万人ぐらいを対象とした無作為抽出法による世論調査をやらないのか。それでなければ我々の主張に対して全く対抗力を持たないどころか、かえってとにかく非常に政治的な思惑で世論指導、世論誘導をやろうという悪質な意図だというふうに我々は見るわけですけれども、そういうふうな見方が出てくるわけでございますが、政府が自信を持っているんなら世論調査をやってみられたらどうかと思うんですが、どうですか。
  102. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 今回のこの有識者調査は、先般昭和五十八年でございますが、年金改正に当たりまして厚生省がやはりこうした調査を行った例がございまして、アンケート調査と申しますか、世論調査等はもろもろの形で行われますが、こうしたまた有識者調査というものも有効ではないかということでお願いをしたわけでございます。  また、その有識者調査は全体としての考え方の方向というものもさることながら、有識者につきましての各グループごとにつきましてそれぞれどういった形の考え方の特異性が見られるか、そういうところに重要な意味があると聞いておるわけでございますので、こういう有識者調査といったものもまた一つの有益な調査ではないかということで私どもお願いをしたところでございます。
  103. 和田教美

    ○和田教美君 私の聞いているのは、世論調査はやらないのかと言っているんです。それもしかも、公平な第三者に委託した世論調査でなければ意味がないと思いますがね。
  104. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ちょっと速記とめて。    〔速記中止〕
  105. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 速記を起こして。
  106. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 従来からも一般的な世論調査はもろもろの機関にお願いしてやってはございます。こうしたものも有識者調査とあわせましていろいろ検討はしてまいりたいと思っております。
  107. 和田教美

    ○和田教美君 私は、シャウプ税制が強調しました所得税を初めとする直接税中心主義、これを今後も維持すべきだというふうに考えておるわけです。間接税はあくまでその補完税にとどめるべきであるというふうに考えております。また、現行体系の所得税の累進税率ですね、これによるいわゆる応能負担原則、総合課税主義というふうなものは所得格差を縮めてなるべく所得が平準化した社会をつくるという観点から私は望ましいと考えておるわけです。  その立場からすれば、所得、資産、消費という政府の三分類に即して言えば、現在のサラリーマンを中心とする不公平感を直すためにまずやらなければならないのは、さっきからも強調しておりますように、所得課税内部の整備、それには勤労性所得と資産性所得、さらに法人税との不公平というふうなものの是正もやる必要があると思います。それでも所得課税でなお足りないという場合に、その次はやっぱり資産課税との比較、資産課税の強化というふうに思うんですね。それがさっきの答弁を聞いていると、資産課税についてはなるべく手をつけないという感じがするんです。だから、所得と消費のバランスのみを強調するのは間違いではないかというふうに思うんですが、大蔵大臣のお答えを願いたいと思います。
  108. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、資産課税につきましては、我が国は、先進国はもとよりでございますが、そうでない国に比べればなおさらということになりましょうか。いわば大きな金持ちのいない国であるというふうに私は考えております。このことは我が国にとって決して悪いことだというふうに思っておりませんけれども、ただその反面で、国民全体がやはり蓄積というものが何といっても少ないということは今度言えると思いますので、したがいまして金持ちが国の富の大きな部分を持っている国といったような国において資産課税を自由化すべきであるといったようなことは、私は我が国の場合に妥当であると思いませんし、今固定資産税を合わせまして一四%というのはたまたまアメリカ、イギリスと同じぐらいでございますが、我が国としてはこれでいいのではないか。少なくとも国民の蓄積をもう少し大きくしたいということから言えば、これらの国より明らかに私は個人の蓄積は少ない、フローは大きくなりましたが、というような感じすらいたします。  それからもう一つ、所得税の中で不公平を是正すべきではないかというのは、それは先ほども申しましたように、そのとおりと考えております。  それから第三に、所得と消費との関連でございますけれども、私なんかが考えております我が国というのは、ともかく比較的所得水準が高くなり、所得格差も少なくなっておりますから、累進もよろしゅうございますが、それはかなりのところまで来ました。アメリカやイギリスが所得税の累進税率を簡素にして、下げようとしておるのには、私は我々もやはり参考とすべき点があるのではないかという感じすら持っておりまして、他方でこれだけの所得水準があり、しかも所得が比較的公平に分配されておる格差の少ない国では、いわゆる消費税の形で国民のだれもが少し薄い、しかし広く税負担をしてもらうということは相当なことではないだろうかというふうに考えておりますものですから、したがいましてある程度広いべースの消費税をお願いをしたい。殊に我が国が高齢化いたしますからなおさらでございますが、我が国自身のあり方というのはそういうことができるし、また国民もそれを認めてもらえるような今社会になってきたのではないかというふうに考えております。
  109. 和田教美

    ○和田教美君 竹下総理は、衆議院の予算委員会で大型間接税について、逆進的な税体系になるなど六つの懸念というものを発表されました。我々は総理が認めたこの六つの懸念という問題は、単に懸念などというふうなものではなくて、まさに大型間接税そのものが持っている本質的な欠陥、 体質的な欠陥であるというふうに鋭く指摘をしてまいりましたし、私も先日予算委員会でそういう質問をいたしました。ですから、その問題についてはいろいろと詳しいことの質問を繰り返しませんけれども、ただ一つ総理の質問に関連して申しますと、総理は大型間接税に関する懸念についていろいろな手を使えば中和できるんだ、例えば歳出面でそのゆがみをカバーするなどの税制、財政全般にわたるいろんな策で中和できるんだということをおっしゃったわけでございます。  しかし私は、税の問題、特に新税を導入するというふうな問題については、いきなり財政政策とか経済政策とかそういうものを持ち出してきて中和できるんだというふうな言い方は、非常にある意味で危険ではないかというふうに思うんですね。税の問題は、それを中和するというのであれば、それはやはり税制の中で中和する方法を見つけ出す、それがもしできないということであれば、それは悪い税なんだからあきらめる、こういう態度をとるべきではないかと思うんです。経済政策とか財政政策その他はその政治状況財政状況によって幾らでも変わり得るわけですから、そういう意味では、税の問題は税でまず考えるというのが正しいと思うんですが、その点はいかがですか。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一般的に大型の間接税というものは逆進性があるということは、それは別に私は異を唱えませんけれども、問題は、消費をするというときに所得の多い人であろうと資産の多い人であろうと少ない人であろうと、一定の消費には一定の消費税がかかるという制度、それだけが税制として存在しているのではありませんで、他方、殊に我が国などは極めて高い累進性を持った所得税が他方であるわけでございます。そういうものが基本にあって、その上でこういうことをやろうとするわけでございますから、これだけで全部を賄おうというのではないので、そういう意味で逆進性があるないということは、他の税とどういう関係に立っているかということで判断をすべきではないかということを考えておるわけでございます。  それからもう一つ総理大臣の言われましたことでありますが、仮にそういう消費税をお願いいたしまして、何度も御説明しておりますとおり、私どもは、なぜかと言えば、それは高齢化社会になってまいりますと、そのときの社会保障の負担というものは若い人だけではとてもやれませんでしょうということを申し上げているとおり、このような税制の結果得られる歳出を、いわばそういうことにしなければならないということを考えておりますからこそ申し上げておるのでありまして、したがいまして逆進性があるかないかということは、他の税制との関連とともにその歳入が何に用いられようとしているか、何に用いられつつあるかということで判断をしてしるかべきだというのは、私は議論としては間違っていないというふうに考えております。
  111. 和田教美

    ○和田教美君 そこで、政府が導入したいと考えておられる大型間接税、新型間接税、その中でも税調の審議がまだ進んでおりますから、今どういうタイプのものを導入するんだということを政府に聞いてもなかなかおっしゃらないだろうと思うんですけれども、今までの報道によりますと、EC型付加価値税あるいはEC型と特定せずに付加価値税一般という形でまとめるかもしれませんけれども、そういうものはいずれにしてもたたき台、試案の中に含まれるということが一致して報道されております。私も恐らくそうではないかと。この間小倉税調会長に聞いてみましたときもそういう答弁でございました。  そこで、大蔵大臣にお聞きしたいんですけれども、いろいろな理論的な議論は別として、このEC型付加価値税というものを見た場合に、とにかくこれほどわかりにくいタイプの税制はないんではないかというふうに思うんですね。これは税調も公平、簡素ということを言っておるわけで、少なくとも簡素というタイプの概念には全く反するものではないかというふうに思うんですけれども、その点は大蔵大臣、これは非常にわかりやすい税制であるというふうにお考えですか。
  112. 水野勝

    政府委員(水野勝君) やはりこうした税は新税でございますので、何と申しましても新税というのはいろんな反応があるわけでございます。しかし、税制の仕組みから申し上げれば、法人税はもう何十年かの間に定着はしているわけでございますが、法人税の課税対象となる所得を算定するに際しましては、売り上げがあり仕入れがあり一般管理費があり特別損益がありということで、いろいろな段階を経て算出される。そうした面からすれば、いろいろ議論されております間接税は売り上げと仕入れに着目されて算出されるということから考えまして、特に複雑というふうにも考えられないわけでございますが、何と申しましても新しいものでございますので、そこはいろいろなニュアンスがあろうかと思います。  しかし、これはただいま御指摘のように税制調査会でもまだ議論をされている段階でございますので、そこでどのようなものが出されてくるかでございますので、これ以上はなかなか申し上げにくいところでございます。
  113. 和田教美

    ○和田教美君 キャピタルゲイン課税については税調でも原則課税の方向で審議されておるということでございますが、一方、与党と三野党との協議、この中でも大体キャピタルゲイン課税はやるという方向でまとまったと。しかもそれは、なかなか納税者番号制の問題が時間がかかるから、とりあえずみなし分離課税のような方向でやろうという点についても自民党の渡辺政調会長は異論を唱えなかったというふうな報道がございますけれども、分離課税というふうなことになった場合に政府としては別段異存はございませんか。
  114. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 各党間のお話につきまして私ども正確には承知いたしておらないところでございますが、政府の税制調査会におきましてもキャピタルゲイン課税のあり方についていろいろ議論をされており、その中におきましては、その具体的な方式につきましてもいろいろ二つ三つの考え方があるといったことはかなり具体的には議論はされているところでございます。  したがいまして、こうした政府の税制調査会の具体的な検討の内容あるいは各党間におけるお話し合い等を踏まえまして、具体的にそうしたところでお示しがあれば、そうしたものはそうしたものとしていただきまして、私ども検討を進めてまいる必要があると考えておるところでございます。
  115. 和田教美

    ○和田教美君 今問題になっている点については、幾ら聞いても税調で審議中ということで逃げられてしまいますのでこれ以上聞きませんけれども一つ所得税の問題、所得税については去年の九月に成立した改正法で税率構造をとりあえず十五段階から十二段階に、最高税率を七〇%から六〇%に引き下げましたね。また、去年売上税とともに廃案となった抜本改革案では、六十三年分以降については最低税率一〇%、最高税率五〇%、税率の刻みは六段階とするという方向が打ち出されておったわけでございます。  この辺のところが、仮に抜本改正をやるというのであれば、一体どういうふうにしていくんだという点がもうひとつさっぱりはっきりしないわけでございますが、折しもアメリカでは税率構造を二段階にするというふうなことが行われましたし、イギリスでも最近サッチャーさんが税率構造を二段階にするというふうな方向で急激ないわゆる平準化の路線が行われているということなんですね。そうすると、我が国の場合は抜本答申に示された方向が結局終着点なのか、米英に見習うことが好きな自民党ですから、さらにこの税率構造をもっと少なくするというふうな方向でこれから考え直されるのか、その点はいかがでございますか。
  116. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先般、一応御提案申し上げた抜本改革のときの案が一つの形として世の中にお示ししたものでございますので、やはりそれが一つ議論の種にはなろうかと思うわけでございます。  しかし、昨年の九月に国会で成立をいただきましたものは、これに若干のまた手直しと申しますか、ある意味では相当な手直しも加えられておる。そういうものを織り込んだところであの六段階のものがそのまま今後案として成り立ち得るものなのかどうか。また、この税率につきましては、今お話しのような世界の大勢もある。一方、与野党間でまたいろいろなお話があるわけでございますので、先般のものが一つの検討対象ではあろうかと思いますが、そのままのものが今後またまとめられてくるのかどうか、これは今後の情勢次第ではないかと思うわけでございます。
  117. 和田教美

    ○和田教美君 次に法人税ですけれども大蔵大臣は、法人税減税については、租税特別措置の整理合理化などでその財源を賄って、大体法人税体系の中でとにかくまあやるんだというふうな趣旨の答弁をされたと思います。ところが小倉税調会長は、もちろん大蔵大臣の言うことそのものには別に異論はないんだけれども、しかし租税特別措置の整理などではとても財源は出てこない、だからやっぱり別の税源を見つけなきゃいかぬということをおっしゃって、どうも食い違っているような印象を受けるんですが、その点はいかがですか。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは私の申し上げたことにちょっと関連いたしますので私から申し上げます。  法人税の御質問がありまして、そのときに法人税減税分は、いわば仮に大きな消費税でございますか、そういうところから財源を求めるんだろうなという種類のお尋ねがありましたときに、法人税の場合には法人税の中で引当金でありますとか受取配当の一部不算入でありますとか、あるいは配当軽課分であるとかいったような、法人税内部でいろいろ手直しをできる、したいと思うこともございますので、そういうものがかなりの税源になるのではないかと思いますと、このような答弁を申し上げましたので、必ずしも全部法人税の中で処理できるというほどのことを申し上げたわけでもなかったわけでございます。
  119. 和田教美

    ○和田教美君 時間が来ましたから、これでやめます。
  120. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後四時まで休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ─────・─────    午後四時一分開会
  121. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、大臣所信に対する質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
  122. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は税制について最初に質問をいたします。初めに、有価証券のキャピタルゲイン課税についてお伺いいたします。  政府税調でも、また与野党の衆議院における税制協議会等におきましても、この有価証券のキャピタルゲイン課税につきましては、今までの原則非課税から原則課税へとほぼ合意ができつつあるようでございます。私は、アメリカを初めイギリス、フランスあるいはカナダ、スウェーデン、そしてそういった国々がもう原則課税をやっているわけでございますので当然だと思いますが、大変遅きに失したとも思っております。また、西ドイツ等も広くこれには課税をしております。そこで、キャピタルゲインの課税が原則課税となっても、果たして総合課税なのやら、あるいはみなし分離課税とかあるいは選択課税とかいろいろな方式があるわけでございますが、私はこれは断固として総合課税をすべきだと、このように思うわけでございます。しかも、総合課税にはどうしても捕捉という面で納税者カード制あるいは納税者番号制が必要になろう、こういうことになろうと思うんです。しかし、御存じのように、アメリカ等においても社会保障番号によって納税者番号制度を既にやっておりますし、カナダも社会保険番号あるいはデンマーク、スウェーデン、ノルウェー等は統一コードで、税務もこの中に含めております。イタリアも統一コードでございます。また、西ドイツにおいても税務署ごとに納税者番号はございます。スペインでは一九八五年から納税者番号制度を個人にも拡大いたしました。このようにいわゆる総合課税、しかも納税者番号制度というものを各国で採用をしているわけでございます。  私はこの前同僚議員とともに、御存じのように、朝霞の国税庁事務管理センターを視察させていただきました。その際にも、私はあのコンピューターの現状から見てもこれは可能であると、もうはっきり認識したわけでございます。そういったことで、大蔵大臣はこの有価証券のキャピタルゲイン課税につきましてどのようなお考えをお持ちであるか、まずお伺いします。
  123. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 有価証券のキャピタルゲインを原則課税にすべきだという御議論は非常に強うございますし、私も十分それは理由のあることだと思っております。ただ、そこで問題は、いかにすればそれが可能であるかということになるわけでございますが、多田委員の言われますように本来は総合課税が望ましい、そのためには納税者番号というものが必要であろう、それはまた可能なことであるし、恐らくは好ましいことである、こういうあたりのところを今政府の税制調査会がいろいろに検討しておられるところであります。  すなわち、納税者番号というようなものが可能であるか可能でないか、どれぐらいの費用がかかるか、どのぐらいの手数がかかるか、それからそれが納税に用いられるにとどまるものであるか、納税者番号を用いないところの経済行為は無効であるのか無効でないのか等々万般の問題がございますほかに、納税者番号というものがそれ自身として国民からどのように受け取られるか、殊に、これは始めますと納税にとどまらない、キャピタルゲインにとどまらないということになりやすい問題である。およそ全体主義的な国において国民が番号をつけられることは、これは少しも不思議でない、抵抗もないことであろうと思います。また、非常に民主主義の伝統の強い、個人主義の伝統の強い国においては、それでもアメリカの場合は随分時間がかかりましたが社会保障の番号が結局国民の番号になってきた。それは、かつてやはり全体主義国家としての経験を国民は持っておりませんし、それについての抵抗も強いということで可能になったのだと思いますが、我が国にはまた我が国の特別な国としての、国民としての過去における経験などがございますものですから、果たしてこれを国民がどのように受け取られるかということは、かなり慎重に大切に考えなければならないことであろうと思われます。  したがいまして、まず当面は、税制調査会がこの問題について比較的狭い範囲でまず納税者番号というものの特質、あるいは実行可能性について議論を始めていただきました。ただいまそういうところの現状でございます。基本的に有価証券のキャピタルゲインを課税の対象とする、課税を原則とすべきだというお考えは、そのように考える向きが非常に多くなってきておるというふうに思っております。
  124. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、プライバシー問題もありますけれども、一度グリーンカード制のときもプライバシー問題を慎重に考えながらということで法案まで成立したわけでございまして、政府・自民党さんも一度は賛成された経緯もございます。そういう意味で、この前の朝霞の国税庁事務管理センターを視察いたしましても、今確定申告の方々の何百万人といういわゆる名簿がそろっているわけでございまして、私は、この有価証券のキャピタルゲイン課税におきましても納税者カード制というものは実現可能なものである、このように確信するものでございます。  そこで、もう一点お伺いします。もし有価証券のキャピタルゲイン課税が原則課税となりまして何らかの方法で課税されたといたします。そうしますと、証券業界では、この前も視察いたしましたときに申されておりましたけれども昭和二十八年にキャピタルゲイン課税と交換に有価証券取 引税というものを創設したんだ、今や一兆八千億円にも及ぼうという税収がある、ですから、アメリカもやったように、キャピタルゲイン課税が原則課税になって実行された途端に有取税は廃止すべきだ、こういう意見もございます。しかしながら、御存じのようにイギリスでもまたフランスでも、あるいは各国におきましてもキャピタルゲイン課税とそれから有価証券取引税とは両立さしているという国が非常に多いわけです。イギリスでもこのキャピタルゲイン課税の原則課税とともに譲渡印紙税で〇・五%、またフランスも同じように有取税のようなものを〇・三%から〇・一五%、こういったものを併用しております。我が国もやはり有価証券取引税は若干減税するといたしましても、有取税は流通税である、こちらのキャピタルゲイン課税は所得課税である、税の性質も違いますし、また各国も併用している現状にかんがみまして、多少有取税は下げたとしても、これは併用すべきものではないか、このように、将来の問題でありますけれども、考えておりますが、大臣はいかが思いますか。
  125. 水野勝

    政府委員(水野勝君) まさに委員指摘のとおりでございまして、諸外国でも流通税と譲渡益課税のあり方はもろもろの態様があるようでございます。それからまた、この経緯につきましても、ただいま御指摘のとおり、昭和二十八年に原則課税が原則非課税になった際に有価証券取引税が創設されたという経緯がございます。こうしたことから見まして、これは全く無関係だという御議論もあり、またこれは両者の税は所得課税と流通税であって異なる性格のものであるという御指摘もあるわけでございます。  したがいまして、有価証券譲渡益課税の問題を取り上げる場合におきましても、これをもって直ちに有価証券取引税を廃止しなければならないという論理的な結びつきというものはないわけでございますが、いずれにしましても、ただいま有価証券取引税のあり方をも含めまして、税制調査会におきまして現在幅広い見地からこの問題が検討されているところでございますので、今後の審議を注視してまいりたいと存ずるところでございます。
  126. 多田省吾

    ○多田省吾君 有価証券譲渡益の課税が実現した場合に、それじゃ平年度でどの程度税収があるのか、これはもういろいろ言われております。私はそれに関連しまして、まず現在の状況において、例えば時価総額は現在どのようになっているのか、この前視察いたしましたときに、「昭和六十二年 証券市場の現況」というのをちょうだいしましたけれども、それを見ますと、昭和六十一年末で株式市場の時価総額は東京において二百九十三兆円余、このようになっております。ところが、昭和六十二年の一月から六月まで、ですから六月末だと思いますが、もう半年で百兆円もふえまして三百九十兆九千四百五十七億円、このようになっております。ですから、六十二年末には、これはもう私は五百兆円近くに上っているんじゃないか。ある場合にはニューヨークを東京市場が時価総額において追い抜いた、こういうことも言われております。まず、これをお伺いします。
  127. 藤田恒郎

    政府委員藤田恒郎君) 今委員お尋ねの全国の株式の時価総額でございますけれども、御承知のように、六十二年十月に株価の暴落と申しますか下落がございました。したがいまして、私どもが把握しております一番新しい数字で申し上げまして、六十三年一月末現在で、上場株式で三百八十六兆円、その他店頭証券で二兆円、合わせまして三百八十八兆円ということでございます。
  128. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、六十二年六月の三百九十兆円余というものよりもこの六十三年一月末は減っているということですか。
  129. 藤田恒郎

    政府委員藤田恒郎君) 先ほど御説明申し上げましたように、昨年の十月株価の大幅な下落がございました。したがいまして、上場株式あるいは店頭株式の時価を評価して計算いたしますと、若干減少になっているということでございます。
  130. 多田省吾

    ○多田省吾君 今株式はもうほぼ最高値に近づいている。ダウ平均でも、詳しいことは忘れましたけれども、最高値二万五千円だったでしょうか、今二万五千九百円とか、ほぼ最高値に近づいているので、そういう現状において私は減っているということはちょっと考えられないのですが、これは計算の何かベースの違いでもあるのですか。
  131. 藤田恒郎

    政府委員藤田恒郎君) 私ども今申し上げましたのは六十三年一月末現在の数字でございます。たしか一月末現在ではダウ平均が二万四千円台であったと思いますので、最近のようにまた二万五千五百円台に上昇いたしておりますと、この金額は当然膨らんでおります。
  132. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、現在においてはもう四百兆円をかなり超えているんじゃないか、このようにも思います。  それはそれとしておいておきまして、それでは昭和六十二年度における売買高はどの程度になっておりますか。この資料によりますと、六十二年上半期の売買高は千八百九十四億株、売買代金は百七十兆千九百二十六億円となっておりますので、単純に倍にいたしましても私は三百五十兆円程度にはいっているんじゃないかと、こう思いますが、いかがでしょうか。
  133. 藤田恒郎

    政府委員藤田恒郎君) たしか、私正確な数字は存じておりませんけれども、昨年度一年間で三百兆――昨年、これは暦年でございますけれども、昨年一年間の売買代金の総額が二百九十六兆でございます。
  134. 多田省吾

    ○多田省吾君 昨年はいわゆるブラックマンデーなんというのがありましたけれども、この証券業界から出している資料が六十二年上半期の売買高は百七十兆千九百二十六億円となっているんです。そうすると、下半期で百二十六兆円しかいかないということですか。
  135. 藤田恒郎

    政府委員藤田恒郎君) ここに毎月の売買高がございますけれども、前半で申し上げますと、大体月間で二十七、八兆でございましたけれども、十一月、十二月、これが約二分の一ないし三分の一まで減っておりまして十二兆そこそこまでなっております。したがいまして、年間をトータルいたしますと二百九十六兆ということになるわけでございます。
  136. 多田省吾

    ○多田省吾君 私はもっといっているんじゃないかなとこの表から見ているんですが、まあほぼ三百兆円といたしましても、そのうち個人売買にかかわる分は二五%と言う人もいるし三二%と言う人もいますが、個人はどの程度なんですか。
  137. 藤田恒郎

    政府委員藤田恒郎君) 私どもこれは、個人の売買高につきましては全体の統計がございませんで、総合証券三十四社だと思いますけれども、この統計でまいりますと大体二五%ぐらいの数字になっております。
  138. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから私は、二五%といたしましても、いろいろな計算方法があると思いますけれども、時価総額の経緯とかあるいは個人の売買高とかそういった点から見まして、税率を二〇%あるいは三〇%、いろいろございますけれども、もう衆目の一致するところ二兆円程度の税収は得られるだろう、そうすれば有価証券取引税を若干下げましても一兆五千億ぐらいは平年度で増収になるんじゃないか、こういう意見が専ら行われております。ですから私は、政府のおっしゃるように所得税減税のための、あるいは法人税やあるいは相続税やいろいろありますけれども、その減税のための財源としてどうしても不足するから新型間接税によらざるを得ないんだという論法はおかしいんじゃないか、このように思うわけでございます。ですから、いわゆるキャピタルゲイン課税にしましても、あるいは税の自然増収の問題、あるいはいろいろなその他の不公平税制の是正もあります。そういったものを早急にやって、野党の主張するような三兆円程度の減税は本年度においてやるべきだと、このように主張するわけでございますが、大臣、何か御意見ございますか。
  139. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる不公平税制、国民が不公平感を持っておられる税の制度あるいは執行につきましてはできる限りこれを改めまして、何といっても税の本当の値打ちは信頼ということが身上でございますから、これを疑われては なかなかうまい行政はできません。したがいまして、それをまずきちんとしたいということは私どもも、多田委員がたびたび言われますように、痛感をいたしております。それを何としても心がけたいと思っております。  なお、与野党間でいろいろ衆議院の国対委員長会談の申し合わせに基づきまして御協議が始まっておるところでございますが、これにつきましては、しばらく政府としてはその御協議の推移を見守らせていただきたいというふうに思っております。
  140. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に御質問したいのは、国債ネズミ講についてでございます。これは衆議院で、我が党の宮地代議士が衆議院予算委員会あるいは衆議院の大蔵委員会等で相当詳しく質問しておりますので、私はそれに加えて質問をするつもりはございません。  しかし私は、昭和四十五年の十月ごろ、いわゆるネズミ講はけしからぬということで、この大蔵委員会で福田大蔵大臣に初めて質問したことがございます。その翌年、脱税問題で熊本において手入れがあったわけでございますけれども、その後国会の良識によっていわゆる無限連鎖講防止法、ネズミ講防止法の法律ができましてこの問題はほぼ解決したわけでございますが、今度は金銭にかえて国債を種にするということ、そして本部にお金を納めさせない、こういうことで、何とか法律逃れをしようとしております。しかし、同じようなものですから被害はどんどんどんどん広がっております。ネズミ講においても対策が遅過ぎたために被害者はもう非常に多数に上ったわけでございまして、何百億円という損害を出したわけでございます。ですから、国債ネズミ講におきましてもいろいろ法律逃れをやっているようでありますけれども、山形におきましても既に告発が起こっております。私は、被害防止対策の実施を早急にまずやるべきだ、どうしても法律によって取り締まれないものならば早急にこれは法律改正、金銭のところを国債も加えたものにすべきでありましょうし、早急に私はやるべきだと、このように思います。  副総理でもあられる大蔵大臣、この席には大蔵大臣しかおられませんので、どうぞひとつ関係省庁にも督励されて十分な対応を進めるようお願いしたいと思います。そして、国債といっても国債をそのまま送るんじゃなくて金を送って国債を買わせるいう方式ですから、やっぱり私は現行法にも違反するのじゃないか、このように思えてなりません。  それからもう一点は、国利民福の会の本部とか幹部会員、あるいは五段階に分かれる各段階で、これによって先発組がある程度利益を得ているわけでございますが、これはどのような所得で捕捉して、どのように厳密に課税されるのか、これもあわせてお伺いしておきたいと思います。
  141. 日向隆

    政府委員(日向隆君) まず最初に、私から所得課税の問題につきましてお答えさせていただきます。  委員も御案内のように、経済的利益を得た場合、たとえそれが金銭以外のものでございましても、その経済的利益を時価で評価して収入金額を計算して課税するということになっております。今言われております国利民福の会、国債を利用したネズミ講の場合は、私どもが見ておりますと、主として昨年一月ころからその活動を始めていると聞いておりますので、それによる経済的利益が所得の形で申告されてまいりますのは六十二年分の確定申告に際してだと、こう考えております。  私どもといたしましては、会員の増加状況等についての資料、情報を収集する傍ら、六十二年分の確定申告の状況にも注意いたしまして、特に今おっしゃいましたように、幹部会員の方たちの申告状況、これは相当な所得があるというふうにも一部報道されておりますので、こういう方の申告状況には特に注意いたしまして、必要な場合には実地調査を行ない、この問題に関連する課税上の問題を適正に処理してまいりたいと、かように考えております。
  142. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの課税の問題、あるいは不正がございますればそれに対応する問題、なお今後立法措置をさらに必要とするかどうか等々、政府におきましても怠りなくいろいろ検討いたしてまいりますように関係各省庁に私からも御連絡をいたします。
  143. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 まず最初に、景気の動向と税収見通しについて質問いたします。  企業収益が大変伸びていると、こういう状況ですが、現在この伸びている原因と特徴ですね、これについてまずお答えいただきたいと思います。
  144. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 現時点での法人税収の動向を申し上げますと、一月末までの実績が判明しておりますが、これにつきましては前年比二〇%の伸びとなっておるわけでございます。また、予算に対しますところの進捗割合を見ますと、現時点では五五・一%、前年同月は四八・一%でございましたので、現在のところは好調に推移しているというふうに申し上げられると思います。  ただ、現時点での税収の伸びは、昨年度と比較いたしますと、昨年度は前半から半ば以降にかけましてもずっと法人税収は低調でございました。それが三月税収、四月税収、五月税収、これは決算期で申し上げますと一月、二月、三月決算でございます。このウエートが非常に大きいわけでございますが、その最後の三カ月分の税収が非常に伸びが大きかったということが去年の特徴でございます。  したがいまして、現時点までの法人税収の動向をもって今年度全体を推しはかるということはまだまだ少し早い段階でございまして、今申し上げましたように、一月末でも五五%、通常大体半分程度入っているところでございますから、いましばらく、特に非常にウエートの大きい三月決算の様子を見ませんと年度全体につきまして確定的なことはなお申し上げかねるのが実情でございます。
  145. 村上正邦

    委員長村上正邦君) ちょっと速記とめて。    〔速記中止〕
  146. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 速記を起こして。
  147. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そのもとになる景気の動向でありますが、景気は好調の方向だと。さらに、予測によりますと、六十三年度は過去最高益を更新する可能性も出てきていると、こういう報道もされておりますが、この辺は大蔵省、どうとらえていますか。
  148. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 去年の三月決算を見ますと、業績それ自体としては余り好調でないところではございましたけれども、金融収益等、土地や株式を処分する、あるいは金融収益で稼ぐ、こういった本業以外と申しますか、営業外と申しますか、そういうところでもってかなりその決算をカバーしたという面が認められるところでございますので、今期におきましてはそうしたものから経常的な利益の方に重点を移して決算を組まれるということも予測されるわけでございますので、昨年度のような税収が後半に至りまして出てまいりますかどうか。例えば昨年は三月決算まで、あるいは四月決算までは全部通じまして累計でもちまして見ますと、六十一年度は六十年と同額でございましたが、それが五月決算の出たところで、初めて前年対比で八%の伸びとなったということで、まさに最後の三月決算でもって全体が規定されたということでございますので、これからの三月決算の法人の決算の組み方次第でございまして、まことにまだ危ないところでございますので、確定的にはちょっと申し上げかねるところでございます。
  149. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今主税局長が言われたとおり、私は一部の報道にあるように、決してそんな楽観視できるものではないと思います。その中身は、やはりこの収益の内容です。今御指摘のあったとおり、金融資産や不動産への投資などですね。そしてそれは結局、株式や地価の高騰などに行っているのではないか。また、設備投資は本来の生産的な部分よりは非生産的な投資などに行っている。となりますと、有効需要は逆にこれは減少しやしないか。こういう点はどうでしょうか。
  150. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 昨年来の、ただいま申し上げてまいりましたようなその営業利益の動きを見てまいりますと、特に製造業となりますと、六十二年一―三月ぐらいまでこれは営業利益なり経常利益が、各四半期ごとをとって見ますと、ずっとマイナスとなってございます。これが六十二年の四―六月期から営業利益なり経常利益でもぼつぼつプラスに転じ、最近は、前年が悪かったということもございまして、経常利益でもかなりの伸びを示すようにもなってまいってきておりますので、恐らくは本来の営業活動の方に重点が移されてきているのではないか。  したがいまして、大きくは期待はできませんが、やはり経常的な営業活動の一般的な水準上昇ということで、そこそこの税収等は、また一方、期待は去年に比べれば経常的な面から今度は期待できるのではないか。ただ、逆に営業外利益で非常に無理をしたと。そこらがどのように、その分がなくなって、マイナス項目としてあらわれるか、そこらが判断の分かれるところでございます。
  151. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それからもう一つの面は、企業の利益の個人への分配が、これは十分でない。むしろ圧縮されているんじゃないか。ですから、個人消費の伸びが決してこれは伸びがよくないんじゃないか。したがって、今度個人の住宅投資の増加も、これもそう余り期待できないのではないか。この辺の経済の影響というのは結構、これは無視できないものがあるのではないかとこう思いますが、その点どうでしょうか。
  152. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先般のQEを見ましても、個人消費もまずそこそこの伸びはあるようでございます。これは、恐らくは株式等の上昇により資産効果もあったとも思われますし、また、年末調整によりますところの所得税減税という効果もあったのではないかと思うわけでございます。ただ、住宅となりますと、六十一年、六十二年がかなり高水準に推移しております。年率でいたしまして百八十万戸ぐらいの新築着工という状況でございますので、これが六十三年度もそのまま続くということは恐らくなかなか期待はしがたいところでございまして、政府経済見通しでも民間住宅設備投資につきましては三%ぐらいの伸びを見ておる。ここらあたりがまさに妥当なところではないかという気がするわけでございます。
  153. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 一つの見方では、やはり個人所得の伸び率がこれは低下しておって、そのこととあわせて住宅投資など住宅ローンの新設などためらわせる、こういう面が無視できないという指摘がされておって、やはり経済、これはむしろ景気上昇は短期間で息切れするんじゃないかという指摘がありますが、こういう見方についてはどうでしょうか。
  154. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先ほども申し上げましたように、経済が六十一年の十一月を底にいたしまして、本来の企業活動なり設備投資なりが上昇に転じてきているというところでございますので、これがどの程度続くかということにつきましてはいろいろ見方も分かれるところではございましょうが、六十三年度につきましては、経済見通しにもございますように、そこそこの成長と申しますか、拡大がまず続くのではないか。そうしたことを基本にいたしまして経済見通しが立てられ、また税収もそこそこのものを計上いたしておるところでございます。
  155. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 反面、企業の内部留保がふえているという状況だと思いますが、一億円以上の企業で、この二年間でもいいですが、どの程度内部留保がふえているか、これはわかりますか。――これは質問通告してなかった。したつもりだけれども、まあいいでしょう、こっちは調べてありますから。六十一年末で七十八兆一千百七十一億円、これは一億円以上の企業ですね。それで二年間で十七兆五千三百三十二億円増というんですから相当な増。これは法人企業統計年報から試算したものであります。  この内部留保について幾つか問題がありますが、その一つは、本格的な景気上昇につながっていくかとの関係で言いますと、やはりこれが果たしてこの再生産の方にうまくいくのかどうか、こういう面が一つあると思います。  それからもう一つは、むしろこれを社会に還元すべきじゃないかと、こういう要求が大変強いし、またそれは妥当なことだと思うんです。例えばここに四大証券の内部留保、これは結局マネーゲームで大もうけしたものですが、三年間で二・二倍で二兆四千億円も蓄えている。  私はこの金が果たして本当に日本の経済のいい意味の発展の方につながっていくのかどうかちょっと疑問だと思うんですよ。要するに、マネーゲームでの内部留保ですからね、これはまたさらにマネーゲームを生んでいくところに行きはしないか。この辺をどう実態をとらえ、どう考えておられるか、その点どうですか。
  156. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 金融の自由化、国際化の進展、こういった勢いは極めて最近著しいものがあるわけでございますので、やはり金融資産の増大、これが個人、法人部門を通じまして収益性の志向、収益性の根底にもなり、それが我が国企業の基盤の強化に役立つものではないかと思うわけでございます。単にこれが投機的な動きだけを目指したものであるといたしますと、それは我が国の経済にとりましても好ましくはないという議論もあり得るかとは思いますけれども、やはり企業は余裕資金を最大限に活用して収益の向上を目指すということは、これはやはり経済合理性にかなったものでございますので、それはこういったものが不健全な将来を予測、予見するものであるとは必ずしも私ども思わないわけでございます。これがひいては将来の有効な設備投資の原資にもなり得るということでございますので、それがおかしな方向にのみ動いていくと、そういうふうに考えることもないのではないかと思うわけでございます。
  157. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、のみにとは言っていないので、もしそれだけにいったらそれこそもうこれはまさしく世界経済は大混乱になるというようなことで、そうは申しませんけれども、しかしやっぱり大きな流れとして、危険な面はこれは注視をしなきゃいけないんじゃないかと思うんです。  そこで、社会への還元の一つとしてはもうちょっとこれは賃上げが必要じゃないかなと思うんですよ。これは現に、特に証券界では、ある証券会社などはもう本当に週刊誌に出るくらい大変な労働強化で、しかしそれで大変な成績を上げているというような状況も今随分ありますが、この証券関係の労働組合は賃上げ八・五%を要求しておりますけれども、そういう方向がまず一つ。  それから、全部悪い方へいくとは申しませんが、しかしその危険性もある以上これはやっぱり税金としてくみ上げていくということが、今キャピタルゲイン課税も一つ問題になっておりますけれども、それは相当いろんな面があると思うけれども、こういう面の強化ということが私は本当に日本経済が曲がらないでいくために必要じゃないかと思うんです。  今まで局長の答弁をいただきましたけれども、この辺で大臣に御登場いただけませんか、大きな話だから。
  158. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今ここへ来まして経済は確かにかなり正常に、しかも好転し始めておることは事実でございますが、振り返ってみますと、これは石油危機から源を発しまして円高がかなり急激に進行したといったようなことから、やはり我が国の雇用そのものに相当深刻に影響を与えた過去の何年間かであったと思います。したがって、そういう間にあってはやはり組合側の関心も賃上げもさることながら何としても雇用機会の確保ということにならざるを得ないし、政府としてもいろいろ雇用造出のために現在もいろんな措置をいたしつつあるようなことでございます。そういう過去でございましたから、したがって賃金の決定というものは労使双方とも極めて慎重であったというふうに観察をいたしております。  最近、有効求人倍率も〇・八六というようなかつてない水準にまで上昇しつつございますが、し かし地域により企業によりましてはやはりなかなか不況を脱出できないところもございますので、もともと賃金決定については政府がかれこれ申すべきことではないわけでございますが、そのような変化しつつある雇用情勢をも恐らく労使において踏んまえつつ、今年もまた賃金についての交渉が行われるであろうというふうに考えております。  それから、いわゆる財テク等々による内部留保、これはいずれは課税ができるわけでございますから、特にそのために特別の課税をするということはもとより考えておるわけではございません。言ってみれば、やがて設備投資になる、あるいは配当になる、あるいは賃金になるかもしれません。そういったような形でいずれは外へ出てくるものというふうに思っております。
  159. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 次に法人税の問題ですが、法人税が高いと企業は外国へ逃げてしまうというようなことが盛んに議論されておるわけです。それが一つの大型間接税導入の論拠にされておるんですね。私はこの話を聞いていまして、法人税が高いと企業が外国に逃げていってしまうと、そこで逃げるわけにいかない圧倒的多数の国民から浅く広くという意味でたくさん間接税を取ろうというのが私は大型間接税ではないかというような理解もしているんですが。それはさておいて、法人税が高いと本当に企業が外国に逃げてしまうということを日本の実態にかんがみて大臣、本気でそうお考えなんでしょうか。
  160. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは法人税だけが唯一の原因となってとは申しませんけれども、最近におけるいわゆる円高、為替の変動等々もございまして、どうも我が国で従来経済活動をしておった企業が外国に、それも発展途上国に限りません、先進国の場合もあるわけでございますが、むしろ立地をした方が有利であると考え出しておられる企業は少なからずございます。そういたしますと、それはやはり雇用の問題になってまいる。我が国の産業の空洞化という言葉はいきなりは大げさでございますけれども我が国から雇用の機会が失われていくということにもなりかねないので、法人税が国際並みでない、高いということはやはりそういう、それ一つだけの原因ではございませんが、いろんな原因の複合の一つ要因になるということは私は現実に心配なことだと思っておるのでございます。
  161. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 きょうの午後の参議院予算委員会に参考人が出てまいりましたね。その参考人によりますと、たしか、名目税率は高いけれども、しかし日本の法人税はそんなに決して高くない、要するに課税対象がずっと狭まっておって全体ではそうでないと、そういう指摘もありましたですね。  それから、国際比較がよく出てくるんですが、私は国際比較する場合に法人税だけで比較すると間違えるんじゃないかと。そこで、この比較は私正確だと思うのは、各国の法人税とそれから社会保障負担のうち使用者負担、その合計でやってみると大体企業の負担というのは出てきますね。それで比較するのが、これは企業の負担、外国へ逃げるかどうかという問題も含めまして、私は正確なんじゃないかと思うんですが、そういう面から見て日本の場合には負担が高いとお考えですか、どうですか。
  162. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 確かに社会保障負担の企業分をあわせて考えるべきだというお考えもあるようでございます。例えばスウェーデンなんかは法人税率は低い、それなのに企業が出ていってしまう、それは社会保障負担の企業分が非常に高いからであると、そういう御説明もあるようでございますが、しかし一応社会保障の企業負担がそこそこのものでございますと、これは損金として控除されるものでございますから、それを含めて法人税の負担率とあわせて考えるということはやはり純理的にはいかがかなという気がいたします。  やはり法人税の負担を比較するとすれば、法人税なり地方税としての法人住民税なり事業税なりを加えて比較するのが、形式的かもしりませんが、やはりこれが負担のバランスをあらわしておる。そういうことからいたしますと、先般来アメリカもイギリスも法人税率を皆三〇%台に引き下げてきておる。日本と一番経済的な関係の深いアメリカとの間でこれだけの差が出てまいりますと、やはりそこはもろもろの企業活動に不自然なゆがみを生ずるということは否定できないのではないかという気がするわけでございます。  社会保障負担の企業分ということは一つのおもしろい着眼点ではあると思いますが、損金算入されるものをすぐそれでもって比較できるかということになりますと、私どもややちゅうちょするところでございます。
  163. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 損金算入しますから若干計算が違って、それは数字は少し違ってくると思うけれども、大きく見ればそんな大した差にはならないと思うんですね。しかも、企業の負担感から言いますと、私はそれは一つのメルクマールだと思うんです。  そこで、一つのこれ資料、一九八五年現在ですが、日本は今両方足したもの、GNP比率一〇・二%、アメリカ七・二%、イギリスが八・三%、西ドイツが九・五%、フランスが高くて一四・八%、フランスの場合には社会保障負担が重いですね。それからイタリアが一一・八、スウェーデンがおっしゃったとおりですね一三・八。となりますと、むしろアメリカやイギリスや西ドイツよりも日本の方が高くて、決して国際比較を、私はいつも政府に言っていますけれども、そう安易に出すべき問題じゃないんじゃないかと思うんですが、その点これから御注意いただきましょうか。
  164. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 社会保障負担というものを、これは個人の場合にはもうほかに持っていきようがないわけでございますが、法人活動でございますから、これは本来企業の製品にして前転するか後転するかでございますので、一つの御議論ではございますが、これをもって法人税負担というものを、企業負担というものを見るのが適切であるというところまでは私どもちょっと言い切りがたいというのが実感でございます。
  165. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 先ほどおもしろい考えという発言もありましたので、そういう観点から大いに関心を持って、この問題にもひとつ大いに注視をしてもらいたいと思います。  次に、生活費非課税問題であります。  これは今までいろいろ議論もありましたし、大体不労所得、キャピタルゲインなんかそうですけれども不労所得であり、利益に対して課税しないで、実際生活費というのは、これ全部、ほとんど食っちゃいますからね、いわばこれは労働力の再生産費用ですよ、そこに課税するのはおかしいじゃないかという議論もこれありまして、大臣予算委員会などでも、原則的に生産費には非課税という考えはこれはやっぱり是認されていると思うんですが、それはもう一度確認してよろしいでしょうかな。
  166. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、いわゆる最低生活費といいますか、生活保護の基準と厳格に申し上げるわけではありませんけれども、そういうものはやはり課税の対象から直接税としてはいわば非課税、課税最低限の中に置かれるべきものだというふうには考えております。
  167. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それが私は正常な考えだと思いますが、ただ税務の現場では実際そうなっていない。それは現に人的控除を一人三十三万ですからね。扶養、要するに配偶者控除が若干あったとしても四人家族で百五十万そこそこです。ですから、それで大体食えるはずがないじゃないか。これはしばしば議論になっております。  そこで、お伺いしたいのは、これは実際に税務署の現場で使われている数字ですが、標準生計費というのがあります。そこで、東京都区部、大阪、名古屋、新潟、その標準生計費は幾らと計算されていますか。
  168. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 今委員がおっしゃいました標準生計費という言葉を、私どもが、総務庁統計局が行っている家計調査における一世帯当たり年平均一カ月の収入と支出、これが全世帯ベース で示されております消費支出を、これを便宜といいますか標準生計費と、こう言っているところでございまして、あえて申し上げますれば、ここで言う標準というのはその意味で平均的な実績というふうな意味であると御理解をいただきたいと思います。  その前提で直近の六十一年家計調査年報の一世帯当たり年平均一カ月の消費支出は、御指摘になりました東京都区部、世帯人員三・六五人で三十万七千百一円、大阪市は世帯人員三・五四人で二十六万二千五百二十円、名古屋市は世帯人員三・七〇人で三十万一千五百九十九円、新潟市は世帯人員三・六四人で二十六万八千四百十七円でございます。
  169. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それに単純に十二掛けて年間を計算しますと、東京が三百六十八万、大阪が三百十四万、名古屋が三百六十一万、新潟三百二十一万と、こういうことになるんです。で、これは今次長も言われたような正確な数字ですから、私はそれ以下の申告だからといって、これが標準だからそれ以下で生活できるはずないじゃないかと。あなたのところは大体標準並みの生活しているということで、それを根拠に、今の数字を根拠に修正を強く求めるようなことはあってはならないんじゃないか。これは修正の強要ですね。それからまた所得の推計、それに基づいて更正を行うというようなことはあってはならないと思いますが、いかがですか。
  170. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 第一におっしゃいました確定申告等に際しての所得の判断ということにつきまして、いわゆるその標準生計費をベースにするということがあってはならないということでございますが、これは確かに私が今申し上げましたように、税務庁統計局の行っている家計調査における一世帯当たりの年平均一カ月の収入と支出で示されている消費支出というものでございますから、あくまでもそれは平均的な実績でございまして、便宜私ども標準と呼んでおりますが、そういう標準としての規範的あるいは一般的な意味合いを持つものではありません。したがいまして、その事柄の性質上、委員がおっしゃいましたように、それによって所得を算定するという筋合いのものではなかろうかと思います。これは一つの目安といいますか、参考計数であろうかと思っております。  第二点の推計の話でございますけれども、これは推計につきましては、明文の規定がございますし、判例、これは所得税法第百五十六条でございますが、判例等にも推計課税の必要性については各種のケースにおいて認められているところであります。しかしながら、この推計につきましても、その必要性及び合理性については、また各種の判例等でうたわれておるところでございまして、今御指摘の生計費は、私が思いますのに、多分、資産負債増減法による推計の場合においてその一環として用いられますいわば生活費であろうかと思います。これは委員も御承知と思いますけれども、判例等で資産の増プラス負債の減プラス生計費、公租公課、保険料等として得た額が当該年度の所得金額とされていることもございまして、この場合においては、この標準生計費をそのまま直に使うというのは私もいかがかと思いますけれども、この計算過程で他により合理的な生計費の推計方法といいますか、算定方法がない場合にはやはりこの家計調査ベースの平均的な実績を使うことも一つの合理的な理由になるのではないかと、かように考えております。
  171. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 実際の事例として、実際に調査に来たけれども、本人の帳簿をよく見もしないでそれでもうこの数字を持ってきて、そしてそれを、それがあなたの所得だというようなやり方は、今の次長の答弁からいっても、これは妥当なやり方ではないでしょう。
  172. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 推計につきましては、先ほど申し上げましたように、所得税法第百五十六条等に明文の規定があるわけでございますけれども、これにつきましては、やはり各種の判例等で推計課税の必要性、合理性についてうたわれているところでございまして、私どもといたしましては、やはり推計の必要性を見た上で、さらにまたその推計の過程で一定の合理性を持って行うべきであろうと、かように考えております。
  173. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 しかし実際、生計費から、それもあくまでも推定、一般の額ですよ、それからあなたそれだけ所得があるなんて言われたら、それは逆にこれは反論のしようないですよね。それはそうでしょう。そうなると、幾らでも税金をぶっかけられる。やっぱり基本は実額課税主義でしょう。やはり実際のその経営、実際の事業に対応してどれだけ収入があり、経費があって、所得が幾らと、それがすぐわからない場合ね、帳簿がまだ不十分ですぐわからない場合に他の業種その他からその額を推計する、それは私はある、たまにあること、よくあることかもしれませんね。しかし、そうじゃなくて、これだけ生計費がかかって、あとその資産の増減はそれはいいですけれども基本にやっぱり生計費がちゃんと入っておる。それがどんどん行われたらこれは納税者はたまったものじゃないですよ。  ところが実際、これは最近東京世田谷税務署で、この生計費から所得を推定して、しかもそれで課税額を決定しているんです。過少申告だということで更正した事例があります。この点は御存じですか。
  174. 日向隆

    政府委員(日向隆君) ただいま委員指摘の個別の事案については私正確には承知しておりませんので、それについて申し上げることは差し控えさしていただきたいと思いますけれども、一般的に申し上げますと、税務調査におきましては、委員お話しになりましたが、納税者の帳簿等の調査基本にいたしまして、その他必要として収集した資料、情報に基づき、できる限り正確な所得を把握し、適正な課税を行うということにしておりまして、その意味では御承知のように、いわゆる実績に基づいて課税するのが原則であります。ただ、しかしながら帳簿等が不備な場合であるとか、帳簿等がありました場合でも、それについて納税者の協力、提示がないといったような、協力が得られない場合にはその必要性がございますので、推計課税を行うということでございます。  その推計課税が必要である場合について、どういった方法でやるかということについては、私が先ほど申し上げました資産負債増減法等四つばかりの方法が各種判例でそれぞれのケースにおいて認められるところでございまして、その各種の方法においても私どもとしてはできる限り推計の合理性は追求すべきであると、かように考えております。
  175. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 まあ、判例で認められるとおっしゃるけれどもね、私はそれは離れて、一般の課税の問題として本人が実際帳簿も見せると言っている。その調査を、恐らく帳簿の方を信用しないで行ってしまったのかもしれませんけれども、いきなりやってきて、しかも具体的な事業所得の額を並べて、それどうしてそうなるんだと言ったら、今言った資産の増プラス負債の減プラス生活費と、その生活費は何だと言ったらさっき言った標準生計費だと言うんですね。こんなことやって、しかもこれは一件だけじゃなくて更正受けたうちの三件がそうだと言うんですが、こんなことが横行していましたら一体納税者はどうしたらいいのか。これがほかからの推計であれば、例えば同業者からの比率であれば、いやそれはこうだと反論できますわね。標準生計費からそんな推計されたら、資産の増減とおっしゃいますけれども、それは一部あることは事実ですよ、しかしそのもとになっているのは生計費だったら、しかもそれが標準生計費を使われたら、さっきの答弁、しかもこれは何年か前に私も予算委員会指摘をしたときに、そんな標準生計費から推計するようなことがあってはならないという答弁もこれはあったわけですからね、そんなことが現場でまかり通っているということに対して、これはむしろぐあい悪いという指導はすべきじゃないんでしょうか。
  176. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 事実関係を私正確に存じ上げていませんので、果たして私の判断が適当か どうかその点は留保させていただきますけれども、いきなりそういった資産負債増減法による推計をするということは、私としては大変考えにくいところでございまして、やはり実績に基づいて課税するのが原則でございますから、帳簿等について調査を行う。帳簿等が不備な場合とか、あるいは帳簿等に基づいて調査を行うとしても、納税者の方のこの調査についての協力が得られないという場合に、やはりほかにその方法がございませんので、その必要性に基づいて明文の規定があります推計課税を行っているんだろうと、私はこう思うわけであります。  それで、さらにその推計の中におきまして、資産負債増減法の中で資産の増、負債の減プラス生計費及び公租公課等、その生計費として本来はその方の生計費を使うのがこれまた筋だと思いますけれども、その方の生計費を把握することが困難であるということであればいろんなやはり方法を試みて、最もその中で合理的な生計費の推計方法をとるべきではないか。その際、総理府が出しておりますいわゆる一カ月の一世帯当たりの消費支出の額というものは、過年度ではございますけれども平均的な実績として私どもやはり参考にするに足るものであるとかように考え、御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  177. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 その場合にはその人の標準生計費を使うとおっしゃったけれども、標準並みの生活をしているという確証がなきゃできないことですわね。ところが、全部何件も一緒にやっている。そして、説明を求めたらこの標準生計費だと。こういうことですと、この点納税者は安心できないんじゃないか。現にこの場合は調査に一回しか来ないで、もうよく見もしないで帰ってしまって、それでこれを持ってくるんですからね。客観的にこんなのほかに方法が全くないというような状況でない。  そこで確認したいのは、ほかにそういう状況がないにもかかわらず、こんな標準生計費から推計するなんということは、これはあってはならないことと、そうお聞きしてもよろしいでしょう。
  178. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 私が先ほどから繰り返し申し上げておりますところが税務調査のこういったケースにおける筋であると私は思いますので、この点については職員の指導徹底にさらに一層の努力をしたいと思います。
  179. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大臣、今のやりとりでおわかりになったことは、現場では年間一人三十三万なんという状況でこれはない。おわかりでしょう、今の次長の答弁。三百二十方、いや、もっと多いか三百六十万か、年間四人家族でやる場合もあるとおっしゃるということは、さっき大臣が宣言された生活費非課税が原則だと承認されたことが実際現場では起きていない。こういう実態を大臣今ごらんになって、これどうお考えになりますか。
  180. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは今国税庁次長がるる御説明申し上げたとおりでございます。
  181. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それは次長の立場からの答弁で、次長には生活費非課税の問題は全然私質問していません、そういう立場でないんだから。要するに、向こうは税金取るだけの話だからね。  大臣は先ほど私への答弁で、最低の生計費の関係で一人年間三十三万では暮らせないんじゃないか。しかし、現場ではもっともっとでかい額で実際徴税しているし、そして現にそれから推計をやる場合も、私はごく例外的な場合だとそれは判断しましたよ、今の答弁ではね。しかし、あり得る場合もあるという答弁が出てきた、これはゆゆしきこと。私はそれは改めるべきだと思うんだけれども、それはそれとして、先ほど来大臣が言っておる生活費非課税という、これは現場には通っていない、それは全く無視されておる。もっと生活費にばちっと課税されておる、それが課税対象になってしまっておる。この状況大臣としてはどうお考えなのかという、それをお聞かせください。
  182. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 所得税法には推計による更正または決定の根拠規定があるわけでございまして、先ほどから次長から申し述べておりますように、財産、債務の状況とか支出の状況等から推計して更正をすることができるという規定が、明文の根拠があるわけでございます。  それから、先ほど大臣から申し述べたのは、最低生計費と申しますか最低生活費と申しますか、そういう御趣旨のこととして御答弁申し上げていたのではないかと思います。先ほどの次長から御説明申し上げておりますのは、標準生計費と申しますかそうしたものでございますので、その問題と先ほど申し上げておりましたのとは、ちょっとそこは次元が違う話ではないかと思うわけでございます。
  183. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私が指摘したのは、実際課税ではそんな最低なんということは全然お構いなしに一般の推計から来ちゃうんですからね。これはあくまでも一般で、そこで一般、例えば三百六十万なら三百六十万というやつをあなたこれだけ課税されている、所得があるはずだということでやってくるということは、そんな最低の生計がどうあるというようなことは全く現場ではお構いなしにやっているんじゃないかということを私は指摘をしたんですが、どうも実際お答えがいただけないようですね。  あと、わずかな時間ですが、国債の発行問題ですが、六十五年度赤字国債脱却の見通しは今まで論じられてまいりました。ところが今後の推移など見てみますと、仮に建設国債は今ずっと同額としてふえないと仮定しましても、この借換債がもうずっとむしろふえていきますね。となりますと、むしろまた残額も減らない。まさしく今借換債が大変大きなウエートを持ってきているんですが、この面での脱却した後の再建の見通し、こんな多額の借換債、これは一体どうなっていくんだろうか、これについてお答えをいただきたいと思います。
  184. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 先ほど御質問ございましたけれども、私どもの御提示しております国債整理基金の資金繰り計算仮定計算ということによりますと、六十五年度以降も四条債を出し続けるといたしますと、国債残高は当面なかなか減っていかないという姿になっていることは事実でございます。ただし、特例公債につきましては、仮に六十五年脱却をいたしましてその後発行をしないということにいたしますと、着実に減っていくという姿になるわけでございます。
  185. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私の計算ですと、建設国債がずっと同額としましても二〇〇〇年に百九十八兆円ということになるんですよ。しかし、建設国債が果たして同額でいくかどうか、これはむしろそうでないと考える方がある意味じゃ常識かもしれませんね。となると、これはもっともっと残高がふえていく。この辺でむしろ建設国債を逆に減らしていけば財政再建の見通しもこれは出てくると思うんですが、この辺どうなんですか。
  186. 斎藤次郎

    政府委員斎藤次郎君) 御指摘のように、仮に建設公債につきまして今後同額を発行していきますと、昭和七十五年度の残高は百九十八兆ということになります。ただ、特例公債につきまして六十五年脱却後確実に減っていくということは、あわせてさらに国民経済が今後どんどん大きくなっていくということを考えますと、四条債についてどのような発行限度にしていくかということは、六十五年度脱却後のいわば財政運営の問題として各年度を考えていくべき問題だというぐあいに私どもは考えているわけでございます。
  187. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうすると、今期待するのはその後の経済発展による税収増と。しかし、先ほど来経済見通しの議論をしたけれども、なかなかやっぱり難しい情勢もありますよね。となると、なかなか難しいんじゃないかなと思いますが、最後に大臣のお考えを聞いて質問を終わりたいと思います。
  188. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもただいま一種の合意がございますのは、ともかく特例債というものは財政法でも本来考えていなかったところでありますし、したがって毎年こうやって国会のお許しを得て出しておるわけでございますけれども、これは文字どおり赤字国債でございますから、と もかくこれの新規発行をなるべく早くやめたいということを目標に進んでまいりまして、目標現実の射程に入ってきたと考えておるわけでございますが、まずそれを実現するのが第一でございます。ほかのことをその前に考えたり申したりいたしましても、それができなければ何のことにもなりませんので、まずそれをやらしていただきたいと思っておりまして、それが実現いたしますと、建設国債をどうするかということは当然議論の日程に上らざるを得ない。国債費を食いますことは同じことでございますから、さてそれはどうするかということになりますと、やはり我が国の経済のやや長期見通しにもその点は関連をしてまいることであろうと思います。それはその段階で考えていかなければならない。  近藤委員の言われますように、建設国債というのはまたまた年々ふえていくのだろう、同額と抑えてあるがそうではあるまいとおっしゃるような断定を私どもは持っているわけじゃございませんので、建設国債といえども国債でございますから、それは特例公債がなくなることができました段階で将来の問題として考えていかなければならないと思っております。
  189. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 終わります。
  190. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 大臣財政演説を手元に置きながら今お伺いをするわけでありますけれども、中を拝見しますと、これは今国会の冒頭の大臣財政演説でありますが、第一の課題としては内需を中心とした経済の持続的成長を挙げておられますし、第二は財政改革でありますし、第三の課題は税制の抜本的見直しでありますと、こうお書きになっています。それぞれごもっともでありますし、特段異論はございません。ところが、ではどういったぐあいになさるんですかと考えてみますと、必ずしもその中身は明らかではございませんで、どうしても手探りで何をお考えになっているのか探るような質問をするしかありませんので、以下、時間の関係があるので税制問題に絞りながら、どういったことをお考えになっているのか、お尋ねをしてまいりたいと思います。  まず、「国民各界各層の御議論等を拝聴しつつ、国民の納得が得られるような税制改革関連法案を取りまとめるよう引き続き最大限の努力を傾けてまいる所存であります。」こうお書きになっておるのでありますが、文章としてはどこといって反対する何物もないんです。といって、「国民の納得が得られるような税制改革関連法案」というのは具体的にどういう中身なのか。本当に国民の納得が得られるような税制改革関連法案をお取りまとめになるのでありましたら何の問題もないのでありまして、問題はどうやって国民の納得が得られるような税制改革関連法案をお取りまとめになるのだろうか。そこがやっぱり今我々もそうでありますし、多くの納税者、有権者の不安と関心の一つになるんだろうと思うんですね。  そこで、もう一つ伺ってまいりますと、今の税制改革関連法案について、そのしばらく前で「国民の税に対する不公平感を払拭するとともに、所得、消費、資産等の間で均衡がとれた安定的な説体系を構築することが不可欠であり、」という旨を述べておられます。その「所得、消費、資産等の間で均衡がとれた」とは、一体どういう税体系を頭の中でお考えになっているのか、これは予算委員会でもいろいろ問題になりました。同じ質問を私はここで繰り返すつもりはありません。で、何も理詰めでこの質問を私は申し上げるつもりはないんです。    〔委員長退席理事梶原清君着席〕 理解をするためにお尋ねするんですが、「所得、消費、資産等の間で均衡がとれた」というのは、資産についてはそれぞれの残高、それから消費あるいは所得についてはそれぞれのある期間における大きさ、そういったものの見合いで、だれが見てもなるほどと納得のいくようなそういう税負担を求めていくのが、おっしゃる「所得、消費、資産等の間で均衡がとれた」税体系ということになるのでありましょうか。  経済企画庁の国民経済計算昭和六十一年度の数字を見ますと、六十年末の土地の残高は千十六兆円であります。千十六兆円になってきた経緯というのは、土地の改造等で価値が付加されたものが三兆円、値上がりによって地価が増高したものが二百四十四兆円、前年度末の残高が千二百六十二兆円、約一千兆を超えるような土地の残高ということを頭に置いて税負担を求めていくということが大臣が言われている均衡がとれた税体系ということをおっしゃるので、また雇用所得を見ますと、六十一年度の場合は総額百八十三兆円であります。これは企画庁の計算で大きくくくってみればということでありましょう。一方、民間最終消費支出は百九十三兆円であります。もっとも考えてみますと、雇用所得で得た百八十三兆円が形が変わって民間最終消費支出になるのでありましょうから、数字が似ているのはまことによくわかるのであります。そうすると、所得と消費それぞれに負担を求めるというのは、たまたま数字が似ているからと単純に考えて伺うわけじゃありませんけれども、結局これは二重課税ということになるんだろう。百八十三兆円の所得に対して所得税が課せられ、税引き後の可処分所得に対して、その消費支出に対してさらに間接税がかけられるということは理屈上二重課税ということになるのではないか。そうしますと、間接税というのも片一方で所得税を中心にした直接税を基幹税として将来とも維持していくというお考えであれば、そんな大きな割合にしてしまうということはやはり税体系のつくり方としてはおかしいことになるのではないのか。  一方、その土地問題にさかのぼりますが、これは従来の政府の役割分担の中では主として自治省の担当でありますけれども、これはそういう自治省の担当部分について従来の、土地だけで申し上げておりますが、土地に対する課税のあり方について精査をしながら正しい課税を求めていくということを言外にこの「所得、消費、資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系」という言葉の中でおっしゃっているのであるのか。    〔理事梶原清君退席、委員長着席〕 その場合に、それは時価をもって課税をするのがだれが考えても一番無理がない税のやり方でありますが、その場合、生活に深いかかわりがある財産に対してどのような課税を求めていくのか、これはこれで重大な政治課題だろうと思うんです。そういった部分については、どういう展望をお考えになった上でこの「所得、消費、資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系」という言葉をお使いになったんだろうか。それは、大臣が自治大臣を督促してでもその資産課税をやらせるということを内心にお考えになってのことなんであろうか。  以上、拝見するたびにいろいろな疑問が吹っ切れないのでありますが、以上について御所見をまず承りたいと思います。
  191. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、財政演説で申し上げました「国民の納得が得られるような税制改革」、なぜこういうことを言ったかというお尋ねであったわけですが、私ども昨年税制改革案を国会に御提案いたしましたが、それは廃案となったわけでございます。国民の納得が得られなかったと、そのことを私どもは思っておるわけでございますが、それは私どもにいろいろな反省材料を与えてくれておるわけでありまして、ここに申しますことは、そのような過ちを二度と犯さないような心構えでやらせていただきたいと思いますということを率直に申し上げておるわけでございます。したがいまして、前回全体のことがいわば非常に急ぎ過ぎであったということを反省いたしまして、現に税制調査会で国のあちこちでヒヤリングをお願いし、あるいはこれからさらに幾つかのたたき台と思われるものを出しましてもう一遍国民の御意見をそういうことで聞いてみたいと、大変慎重に事を運んでいただいておりますのもそのような私どもの考え方のあらわれでありまして、その結果を見ながら、これならばという案を得てひとつ御審議を願いたい、こう思っておるわけでございます。  次に、所得と消費と資産との均衡がとれた安定 的な税体系、この「均衡」とは何であるかということは大変に難しい問題でございます。今朝も御議論がございましたが、やはりある時期から、仮に所得なら所得で非常に大きな所得課税のウエートが年とともにますます増す方向に向かっていく、あるいはその反対に、消費についての小さな課税のウエートがますます小さくなる方向へ向かっていく、その方向が何年間もあるいは十何年間も続いてとどまらないということでありますと、そのもとの年のバランスがよかったという議論は別段ございません、特にそれがあるわけじゃございませんし、我が国のようにこうやって経済社会が非常に早く変貌していきますと、どのバランスが万古不易のバランスだというような議論もともと私はできないのだと思いますが、しかし十何年も一つのトレンドがずっと続いていって、仮に所得課税はいよいよ大きくなる、消費課税はいよいよ小さくなるといったようなことは、やはりこれはバランスがどこかで外れているのではないか。現実に課税の実感としては、非常な累進率、累進度がきつうございまして、その重税感が出るといったようなことにそれがあらわれておるわけでありますが、そういうこと。  あるいは資産課税にしてみましても、まあこれはどの辺のところがよろしいのか、地方税まで含めますと、今お話もございましたけれども租税総額の一四ということは英米とたまたま似ております。が、我が国としてこれは私は決して軽い課税だとは考えておりません。いわば我が国は金持ちがたくさんいる国ではございませんので、そういう意味でこの一四というのはかなり重い税だと。これは恐らく、先ほど栗林委員が言われましたように、最近の土地、あるいは証券もそうかもしれませんが、急速な値上がりが――殊に国税の方の一〇というのは、過去に比べますと、例えば昭和四十年は四でございますし、昭和五十年は六でございますが、それが一〇・二というのはいかにもかなりの重さになっておる。これはバランスとしては不足だというふうには私自身は考えておりませんが、しかしいずれにいたしましても、この所得、消費の間のバランスというものを一義的に申し上げられるわけではないと思うのでございます。そういうふうに感じております。
  192. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 国民の納得を得られるために慎重の上にも慎重に考えてどういった案を提示するか今鋭意努力中でありますというお答えでございました。  ということは、国民に対して、今財政当局としては考えた末こういった案を持っておるんだが、それについて諸君どう思うかねと、こうやってお問いかけになるのがこれがもっともだと思うんですが、今現在は、財政当局はいろいろ悩んでおられるんであって、まだ提示する段階になっていないわけですね。  そこでお尋ねしたいのは、その段階なのに税制改革アンケートをなぜ総理府にやらせたんですか。このことは、一般の納税者あるいは有権者から見て非常に心地よいとお考えになったんだろうか。  なぜかといいますと、いや、そうはいったってやっぱり有権者が何を考えているか見たいんですというお答えになるかもしれませんが、あえて言いますと、昭和五十二年に既に総理府は税に関する世論調査をやっておりまして、内容は逐一御報告しませんけれども、直間比率の問題についても、直接税の割合をやや低めて間接税を重く導入した方がより公平だとは思いませんか云々という質問項目も含めて全部聞いているんです。しかも、五十二年というのは例の一般消費税がいろいろ話題を投げかけた年でありまして、財政再建国会決議は五十四年ですから、そのわずか二年前ですから、一般消費税で有権者の間で間接税の問題がある程度議論をされ浸透していった時期でもあるんですね。そうすると、五十二年のその世論調査だけで十分である、まず。それなのになぜこんなことをやったのか。もしかすると世論操作を始められたんではないかという危惧を与えるようなことをなぜおやりになったのか。これが国民の納得を得るということにプラスになるのかどうか。その点をお尋ねしたいと思います。
  193. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先般、総理府にお願いいたしました一千人のそういう方々への調査は、いわゆる世論調査というものではないと思います。  一般に世論調査といえば、無作為抽出方法によって無差別に行われるものでございましょうし、その数も相当の数でなければならないと思いますが、このたびはわざわざ目的的に幾つかの職種あるいは業種等々に分類をし、そういう方々に、しかもわずか千人でございますが、こういうことについてかなり専門的なと申しますか高い関心を持っておられる方々に御意見を聞いた。それは各層といいますか各界といいますか、無差別でなく不作為でなく、むしろ作為でそういう各界における御意見を伺ってみたということでありまして、これ自身はしたがって国民の世論のひな形として私どもは受け取っておりません。そういう抽出をしておりませんし、またそれだけの数をやっておりませんので、そのお答えそのものは私ども非常に参考になることではありますけれども、いわば世論のこれがひな形であるといったふうには考えておらないところであります。
  194. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私、案外これは割合に大切なところじゃないかと思ってお尋ねしているんですけれども、職業あるいは所属階級、学歴などなどによっていろんな御意見の違いがあるのではあるまいか。そうやって想定することはこれはもう別に何も反対する問題でもない。その場合に、そういった層に対してアンケート用紙を配って回収率約八〇%、これでもうわかった、こうやってしまえるそんなものなんだろうか。その層の人たちに対して、皆さん済みまぜん、直接おいでになるか、代理をお立てになるかして議論に参画してくれませんか、財政当局も何遍も出てまいりましょう、対話をまずいたしましょう。こうやって臨むのが本当はあるべき姿であって、アンケート調査であの層の意見はこうでしたと言って、そうわきまえてしまうのは基本的に間違いではないんだろうか。  なぜ言うかといいますと、イギリスが付加価値税を導入した場合に、いろんな業界団体とも何遍も話し合いをしながら、最後は業界団体のいろんなクレームを全部受け入れて法案を直して、それでやってきたことがあるということを聞いておりまして、なるほど前回の失敗も、政府財政当局が案を出したらもうどこも変えない、後はしゃにむにやってくる、そういった恐怖感を納税者に与えてしまった。これだと思うんですよ。したがって、今回についても、それは調べたいので調べたとおっしゃるんでしたらそれはそれでいいんですよ。ただ、アンケート調査でやってみたらわかったんだというこのやり方が私は同じ過ちを繰り返すことになるんではないか。そう思うものですから、今回のあの調査はおやりにならない方がよっぽどよかったという私の意見だけ申し上げて、御所見を承って、質問を終わります。
  195. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたとおり、これをいわゆる世論調査、世論へのアンケートというふうに私どもは受け取っておりませんで、考えておりませんので、各方面、各階層、各界におけるいわば有力な方々がどう考えておられるかということを一つの資料として承りました。かなり詳細に御質問をしておりますので、かなり詳細な御意見を承ることができました。それらは一般のアンケート、世論調査では得られない御意見でございますけれども、これをもって、これが国民の大体の動向であるといったような考え方はもともといたしておりませんし、私どもそういうつもりでこの調査をお願いしたわけではございません。
  196. 野末陳平

    ○野末陳平君 株式の譲渡所得課税問題でちょっとおさらいをしておきます、予算委員会の続きになりますけれども。  まず、課税強化、原則課税という方向が打ち出されて、そちらの方向に何か検討が進んでいるようで、これは結構なことだと思うんですが、私も何回かここでやっております。ただ、一つ心配と いうか予想外なのは、このキャピタルゲイン課税が不公平税制の代表みたいな扱いを受けてきましてね、これだけを直せばもう不公平は終わるような、そこまでではないんでしょうけれども、非常にいけにえ的な扱いを受けているような感じがするわけです。これは新聞報道ですけれどもね。  そこで、おさらいをするんですが、まず大蔵省は、この株式の譲渡益の課税というのはどの点が不公平だというような基本認識を持っているのか、その辺ちょっと聞かしてください。
  197. 水野勝

    政府委員(水野勝君) やはり有価証券の譲渡益も、それが実現された場合におきましては一つの経済的利益として、ほかの所得と同列のものであろうかと思うわけでございます。その点におきましては、やはり同じ種類、同じ次元に立つ所得としてこれは原則総合課税でお願いをするというのが、所得税の考え方からすれば望ましいことでございます。  特に昨年、利子課税につきましては一応の課税の方向で解決をしていただきました。同じような資産性所得でございますので、この有価証券の譲渡による所得、これは何らか所得税の問題として解決をしておくことが税制全体の見直しの際に必要ではないかと思うわけでございます。
  198. 野末陳平

    ○野末陳平君 前半はいいんですけれども、後半がやっぱりちょっとおかしいという気がするんですよ。  まず、利益が実現した場合、これはいいですよ。ところが、利子の方もやったから同じような資産性所得だと言うけれども、同じような資産性所得は利子に見合うのは配当じゃないかという気もするんですよ。だから、それはどうなんだろうという、つまり株式のキャピタルゲインは不公平だ、当然課税だと。それはいいんですが、その場合に、マル優を廃止して利子の課税は二〇%にした、だからこっちも当然やらなきゃいけないという議論もあるので、今の局長の答弁はそういうこともちょっと言ったから、それはおかしいんじゃないかという気がするんですが、どうですか。
  199. 水野勝

    政府委員(水野勝君) まさに配当につきましては二〇%なりの課税でお願いをいたしておるところでございますが、有価証券になりますと、これは配当時期を外して売買でもってこれをキャピタルゲイン化すれば、それが配当の部分も含めて非課税になるという点もあるわけでございまして、要するに、有価証券から生ずる確定あるいは不確定の利益とキャピタルゲインとはまさに同列のものであるというふうにも考えられるところでございますので、その点につきましてはやはり一応の整理をする必要があるのではないかと思うわけでございます。
  200. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、利子と同じような資産性所得だという言い方をするならば、配当も二〇%だけれども配当には配当控除があるわけだから、それはどういうふうに考えたらいいんですか。
  201. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 配当には一〇%なり五%の配当控除がございますが、配当課税の実態を見ますと、もうほとんどの配当所得者が十万円以下の申告不要の道をとられているわけでございまして、配当につきまして配当控除の適用を申し出られるということはかなり限られたケースのようでございます。したがいまして、配当につきましてはおおむね二〇%の課税が行われておるということで言えるのではないかと思うわけでございます。
  202. 野末陳平

    ○野末陳平君 大体実態はそうであろうと思うんですけれども、利子と引き合いに、マル優廃止とこのキャピタルゲイン課税を一緒に論じて公平論を言うならば、むしろ利子は配当に見合うもので、そして株式の譲渡益の場合は、譲渡損も含めて、例えば似たようなもので言うなら、土地な売買してもうければそちらは課税だ、だから株式の方もとかと言うならわかるんだけれども、ちょっとそこら辺が混乱して、不公平だという扱いを受けているという面が随分気になっているんです。  そこで、改めて大蔵省大蔵大臣にお聞きするんですけれども、株式を売ってもうけた場合に、じゃ何が不公平なんだというところがはっきりしてないと、今後の課税のやり方なんかも全部関係してくるだろうと思うので、それで改めて聞いたわけなんですよ。
  203. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは私も素人でございますので詳しいことも申し上げられませんが、文字どおりそのキャピタルゲインというものは課税の対象になるはずである、土地についてもキャピタルゲインは生じますし株式についても生じるわけでございますから、そのゲインが生じたときに、それは本来課税の対象になるべきものであろう、その原則を言っておるということではないかと思います。
  204. 野末陳平

    ○野末陳平君 そういう基本に立ってこれを考える分には構わないんですが、何となく私の見るところ、ちょっとこれだけが不公平の典型みたいな、代表みたいな、象徴みたいな感じで扱われているので、それで心配なのは、これが終わったらもう不公平税制は直したみたいなことを言われても困るから、念のために言っておいたんですが、さあ、そうすると今度は問題があるんです。  ゲインが実現した場合に課税、それは当然のことながら、今後原則課税の方向を打ち出してもらうのは結構ですが、今ある有取税の問題との絡みで、キャピタルゲイン課税が実現したら有取税は残す方向なのか、それともこれはどういうふうになるのかという、ここも大事なところなんですね。
  205. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 確かに有価証券取引税は昭和二十八年の税制改正の際に、有価証券の譲渡益課税が原則課税から原則非課税にされて、その際に、その有価証券の譲渡の背後にある担税力に着目して有価証券取引税をお願いした、これがまさに現実の経緯でございます。  したがいまして、税の性格としては、片や所得課税、片や流通課税でございますから、これは本来無関係のものでございまして、譲渡益課税を行うということから直ちに有取税を廃止しなければならないという論理的な結びつきはないわけでございますが、ただいま申し上げたような現実的な経緯もございますので、全く有価証券取引税の問題を離れてキャピタルゲイン課税を検討するということは、これはいかがなものか。したがいまして、有価証券取引税のあり方も含めまして現在幅広い見地から譲渡益課税問題が税制調査会におきまして検討されているものと考えておるところでございます。
  206. 野末陳平

    ○野末陳平君 理屈は確かに流通税と所得税だから違うんだけれども、これができた経緯を聞いてみると、もう証券界は完全にこれが流通税じゃないんだよ、消費課税という受けとめ方をしているわけですね。ですから、仮にみなし分離課税で売却時点でもって課税するという方式をとった場合、両立ということもあるわけだな。どうなんでしょうね、これは。今、慎重に検討しなきゃいかぬと、こういうお答えだけれども、両立もあり得るということでしょうね。つまり、有取税を吸収してみなし分離課税にということもあるだろうし、仮にの話だけれども、どういうふうに考えたらいいのでしょうね。
  207. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 経緯は先ほど申し上げたとおりでございますが、もう一つの問題としては法人の問題があるわけでございまして、現在株式の取引は、先ほどもお話しございました、個人が二五%であるというような数字もございます。そういたしますと、七五%は法人の取引で、法人の取引につきましては譲渡益が発生いたしますれば法人税が課税されておる、それでまた同時に、この有価証券取引税も課税されておる。この点もまたどのように考えるかという問題もございますので、なかなかこの両者の関係と申しますのは一義的に割り切れない点があるわけでございます。
  208. 野末陳平

    ○野末陳平君 説明を聞けば聞くほど難しくて、すぐにこれができてお金が入ってくるなんて思えなくなってきちゃいますね。だけれども、急がなければならないこともわかりますので、そうなると、大蔵大臣、これはやはりまず実現が早いというやり方と、もう一つはわかりやすいこと、この 二つが条件になってきますね、このキャピタルゲイン課税というのは。
  209. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 現在、税制調査会におきまして検討が行われておるところでございますが、その御論議を見ますと、これはあくまで他の所得と同じでございますから総合課税でいくべきであるという御議論、一方こうしたものにつきましての完全総合課税というものについてはなかなか難しい面もある、とにかく当面一種の分離課税でもってすべきであるという御議論、それからまたその中間的なものといたしまして、総合という原則をとりつつ、一定の仮定を置きましてのみなし分離課税的なものがいいのではないかという御議論、大体三つぐらいの御議論で検討が行われているようでございますが、これをどのように今後お取りまとめになるか、税制調査会の審議を現在注視しているところでございます。
  210. 野末陳平

    ○野末陳平君 私が考えますに、今の局長のお答えのように総合課税が当然なんですけれども、その総合課税の場合に捕捉がもう非常に難しいですからね。となると、これはやっぱり取引番号というのか納税者番号というのかわかりませんけれども、正確な捕捉をすることを前提にしてそういうシステムを取り入れなければなりませんから、これは相当時間がかかります。同時に、この間の予算委員会大蔵大臣にもお聞きしましたけれども、ロスの問題がありますからね。やはり赤字の場合にはそれもきちっと引いてもらったりとか、そういうふうに考えるとやっぱり相当なる時間がかかる。  今三つ検討していると言いましたけれども。結局急ぐという、これが至上命題じゃないけれども、急がなきゃならないということを背景に考えると、やはり一番便宜的なわかりやすい簡単なところへ落ちつかざるを得ないんじゃないですかね。どうなんでしょうね、それは。
  211. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこらのところが今税制調査会でいろいろお考えのところであって、ちょうど今野末委員も言われましたが、例えばこれはキャピタルゲインの課税であるとすれば、キャピタルロスはどうするのかという話は、源泉課税になれば一遍なくなってしまうのかと、しかしそれはおかしいなという議論が当然ございましょうし、そうしますとやっぱりいろいろ選択の道を残しておかなければならないのかというようなことになっていきますし、いずれにしても納税者番号という話は、これはかなりきちっと時間をかけて検討をしなければならないものだというふうに税制調査会の小委員会もお考えのようでございますから、そうだとすれば、それが少し時間のかかる問題として当面どういう形でやっていいのか、やれるのか、そのときに先ほどおっしゃったような問題はどうなるのか。  またもう一つ、流通税としての有価証券取引税をどうするのかということが一緒にそこへ入ってまいりますから、その決定はかなり実は難しい。いろいろな要素をこれから税制調査会でも判断をしていかれることになっていくのであろうし、政府としても、また私ども党にも調査会がございますのですが、その間でいろいろまだこれから議論になっていくことであろうと考えております。
  212. 野末陳平

    ○野末陳平君 いや、まさに難しいんですよ。それで時間もかかりそうなんです。だからこそ、そんなに急いでやると言っているけれども、大丈夫かと思うのと、それからやり方次第では株式市場に与える影響もあるでしょうからね。ですから、結果的には急がなければならないんだから、まあ便宜的にみなし分離課税あたりに落ちつくしかないかなとは思うんです。  しかし、今言ったように、ロスも入れてと考えたら、それで選択制という、選択制をするということは、これも時間を切って一挙にやろうたってそもそも無理です。しかも、選択制が果たしてプラスになるかどうかもわからない。こんな難しい問題をよくも簡単にすぐやると、原則課税と言ったなというんで、ちょっと意外だというのが最初の僕の話なんです。  それで、いろいろ聞いてみますと、やっぱり有取税を残したままというのはどうもなじまないような感じがします。流通税だというのは税の分け方からいえばそうかもしれないけれども、結果的には売却時点でもってある率を取られる。そうすると、みなし分離課税で、益が出ても損になっても、とにかくそこで低率の分離課税だ源泉だとなると、これは同じものを二種類取られるわけだからね、これはやっぱり一つにまとめざるを得ないんじゃないか。その方がわかりやすいんじゃないか。これは個人的な意見です。どうですかね、これは。
  213. 水野勝

    政府委員(水野勝君) それは土地の場合におきましても、やはり土地を取得すれば不動産取得税があり登録免許税があり、その契約書をつくれば印紙税がかかるということで、それからまた土地をお売りになって譲渡益があれば所得課税が行われるということでございますので、そうしたものが必ず一つの経済的行為に一つの課税ということでもないというふうに考えられるわけでございます。  ただ、この有取税の場合は、先ほど申し上げました創設の経緯等から見まして、この関連性というのはなかなか一概に割り切れないところでございますので、そこらをこもごも勘案して御議論がなされているのではないかと思うわけでございます。
  214. 野末陳平

    ○野末陳平君 今のは余りいい答えじゃないよね。確かに土地の場合だっていろいろな税金はあるけれども、僕が言うのは、売却時点において損得関係なく一定率の税金が二種類あるというのはちょっとほかにはないんじゃないか、キャピタルゲインのように。ということをちょっと言いたかったんだけれども、そのぐらいに難しいことだと思うんですよ。  簡単にいかないのもよくわかりますので、これは税制調査会の答申が出てきてからまたもう一回検討なさるんだと思いますが、大蔵大臣にお願いしておきたいことは、これは理想を追って実現が先だというわけにはいかない話になってしまった以上は、ある程度の問題は含んでも、わかりやすいところからスタートせざるを得ないのかなという気がしている。その場合には有取税は恐らく廃止して吸収せざるを得ないんじゃないか。それの上でみなし分離課税の方法以外にないんではないか。その場合にロスはどうするといったら、これは売る方の立場から言えば、株主の立場から言えば、きっと今損してしかも税金が取られるから嫌だから売らないで置いておくなんということがあり得るから、選択の道があるから、その辺がとりあえず急げば結論になるかなと思うんです。でも、これはいいというんだから、もう少したってからまたお聞きします。  もう一つ気になっていることは、配偶者控除も特別控除もいいんですけれども、去年の暮れやりましたが、あれの反省ね、どういうふうに主税局は持ってるか。と言うのはですね、何たって、どこへ行って説明してもまずわからないんですよ。それから、僕もわかんなくなっちゃうんだよね。一万円ふえることによって減っていくだの、九十万円超えたら今度は一万円でなくて何千何百円。あんなわからないものを素人に押しつけたってだめですね。  で、一番困ったのは、素人はわからなくたって、正直にそのまま出せば向こうがやってくれると言うかもしれませんけれども、一万円パート収入がふえたら、こちらの控除部分も一万円あるいは何千円減ってくという、そこまで厳密にやらなきゃいけなかったのかなあと思ったりして、もっとわかりやすい方法で、主婦もここまでならどうだ、ここから先ここまでならどうなるという、かなりのゾーンを広げていった方が結果的によかったんじゃないかと思ったりしているんですよ。だから、厳しくやり過ぎたんじゃないかというのが僕の受け取った感じなんですがね、去年の何といいますか所得申告を終わった時点で。そこで、どういう反省があるかなあと、こうお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。
  215. 水野勝

    政府委員(水野勝君) まさにこの問題は長い歴史を持つものでございまして、特にパート問題に 関連いたしまして、かつては主婦の方に所得があればそれを引いたものが扶養控除なり配偶者控除になるという時代がございましたが、それは面倒であるからということで、少々の所得があっても、それは扶養控除、配偶者控除を認めるというところで、いわば少額不追求の観点からそういう所得限度というものが決められたわけでございます。その所得限度はかつては扶養控除、配偶者控除の金額よりも小さかったわけでございますが、それがパート問題でパートの非課税限度を上げる必要があるという御要望が強くて、それをだんだんだんだん非課税限度を上げてまいった。それが現在のように人的控除と非課税限度とが一致してしまった。そうしますと、三十三万円にまで来てしまいましたので、少額不追求と言えるかどうか。それが大きくなりましたために少額不追求の金額をちょっとでも超えると根っこから課税になる、今度はそちらの方がおかしくなった。昔は、ちょっとでも所得があれば控除をそれだけ減らすというのがややこしいということで、それを少額不追求で解決しつつその少額不追求の金額を大きくしてしまったために、今度はそれを超えると非常に税負担が激変してむしろ手取りが減るという問題が起こってしまったということで、また昔の問題に戻ったのかなという気がするわけでございます。  したがいまして、この問題はむしろ一挙に二分二乗なりなんなりという方向にする、あるいは控除額を世帯単位で計算するとかというふうな基本的な展開を図ればそのような点は解決されるわけでございますけれども、そこまで、二分二乗とまでまいりますと、これはこれでまた非常に大きな負担の変動になるということから、この配偶者特別控除ということで解決を図ったところでございますので、いずれにしましても、これはパートの問題のあたりからついて回った問題でございます。その点におきまして、これをその金額だけ逓減させるという問題がもとへ戻った点はございますけれども、その点がまた複雑であるという御指摘がございますけれども、従来からも一定の金額以上所得があれば人的控除が受けられないということからすれば、その人の所得というものはいずれにしても調査をする、確定をする必要はございましたわけでございますから、そこは程度の問題かなということで、この制度がおなれになる、定着するのを少し見守らせていただければというのが率直な感じでございます。
  216. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあ、それは理想を言えば二分二乗でもいいんです。そこへ至るまでのつなぎであればまたそれなりにわかるけれども、どうもわかりにくい点が一つと、それから今までのように九十万超えたら途端にゼロになっちゃうというのは余りにも激変だから、そこで少しずつ逓減方式を取り入れたというのは、結果的にはそれが必ずしもプラスじゃないんじゃないかなと。つまり、ゼロにいつかはなるんだから。そうするとあの計算方法は、配偶者控除がとりあえず去年は三十八万円であって特別控除がそれについたと、ことしまた三十三万円に戻ると、そういうようなこともややっこしいんですが、やはりこの特別控除というのを刻んで減らしていくというのはなじまないんじゃないかなと思いますね。ですから結果的には、主婦がそれをめどに幾らまで働いたらいいんだということを物すごく関心を持っているという事実と、それからそれによって雇う方が非常にいろんな点で困ったりする面もある。そこら辺を考えてやっぱりわかりやすいめどをつける方が結果的にはいいかなと。  で、もう一つは内職との関連で、実害があるかないか知りませんよ、しかしながら計算上は必ず内職とパートの違いというものがいまだにあるわけで、そこら辺もひっくるめてさらにいい知恵を出してもらうということをお願いをするしかないですね。僕もないんだよ、考えたけど、いい知恵が。だから、もう最後になりましたけれども、配偶者控除はことしどうなるかわかりませんが、なかんずく特別控除の逓減方式というものを一応見直すぐらいのことを、作業をやってもらいたいとお願いしておきましょう。  終わります。
  217. 村上正邦

    委員長村上正邦君) 以上で大臣所信に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十八分散会