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1988-03-24 第112回国会 参議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十四日(木曜日)    午前十時二分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大木  浩君     理 事                 下条進一郎君                 前田 勲男君                 福間 知之君                 市川 正一君     委 員                 杉元 恒雄君                 中曽根弘文君                 平井 卓志君                 降矢 敬義君                 松浦 孝治君                 松尾 官平君                 向山 一人君                 青木 薪次君                 梶原 敬義君                 高杉 廸忠君                 伏見 康治君                 矢原 秀男君                 井上  計君                 木本平八郎君    国務大臣        通商産業大臣   田村  元君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君    政府委員        公正取引委員会        委員長      梅澤 節男君        公正取引委員会        事務局経済部長  柴田 章平君        公正取引委員会        事務局取引部長  土原 陽美君        公正取引委員会        事務局審査部長  植木 邦之君        経済企画庁調整        局長       横溝 雅夫君        経済企画庁国民        生活局長     海野 恒男君        経済企画庁物価        局長       冨金原俊二君        経済企画庁総合        計画局審議官   宮本 邦男君        経済企画庁調査        局長       勝村 坦郎君        通商産業政務次        官        倉田 寛之君        通商産業大臣官        房総務審議官   山本 幸助君        通商産業大臣官        房審議官     安藤 勝良君        通商産業省通商        政策局次長    吉田 文毅君        通商産業省貿易        局長       畠山  襄君        通商産業省産業        政策局長     杉山  弘君        通商産業省立地        公害局長     安楽 隆二君        通商産業省機械        情報産業局長   児玉 幸治君        資源エネルギー        庁長官      浜岡 平一君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        逢坂 国一君        資源エネルギー        庁石油部長    内藤 正久君        特許庁長官    小川 邦夫君        中小企業庁長官  岩崎 八男君        中小企業庁次長  広海 正光君        中小企業庁計画        部長       田辺 俊彦君        中小企業庁指導        部長       村田 憲寿君        中小企業庁小規        模企業部長    三上 義忠君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    説明員        国土庁地方振興        局過疎対策室長  広瀬 経之君        外務省北米局安        全保障課長    岡本 行夫君        運輸大臣官房日        本鉄道建設公        団・本州四国連        絡橋公団監理官  荒井 正吾君        労働省労働基準        局安全衛生部安        全課長      北山 宏幸君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (通商産業行政基本施策に関する件)  (経済計画等基本施策に関する件) ○中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  産業貿易及び経済計等に関する調査を議題といたします。  前回の委員会において聴取いたしました所信等に対し、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 青木薪次

    青木薪次君 まず、経企庁長官質問いたしたいと思うのでありますが、我が国経済現状景気動向について伺いたいと思います。  百一国会の本委員会において、河本経済企画庁長官は、中小企業政策の根本とは何ぞや、こういう質問をしたときに、「これは景気を思い切ってよくして、中小企業仕事がうんとふえる」ことだということを言われたことがあるのであります。「仕事の量が中小企業にも確保できるということが私はもう九五%まで中小企業対策ではなかろうかと。」、こういうように述べておられるのであります。ということは、経済成長を促進し、景気をよくするということが中小企業政策にとって最も重要なことだと思うからであります。  そこで、今日の我が国経済はどのような状況にあるのかについてでありまするけれども、六十年九月のG5以降、円高不況にどんどん見舞われて低迷を続けてまいったのでありますが、一昨年末に景気の底を打って、昨年は回復から拡大への基調をたどってきたわけです。十七日に経済企画庁が発表いたしました昨年の十月から十二月の国民所得統計速報によりますと、十月から十二月までの実質成長率前期比一・七%、年率にして七%ということであるわけでありますが、我が国経済現状をどう思っていらっしゃるのか、企画庁長官説明をいただきたい。
  4. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) まず、冒頭に先生指摘のとおり、中小企業等問題等は、これは河本経企庁長官の在任中の私もその議事録を読ましてもいただきました。とりわけ、この問題についての御専門通産大臣の方が御専門でございましょうけれども、私にあえてどのような方向で考えていくのか、見通し並びにそういう問題点動向をどのようにとらえているかという御質問と承っておりますので、概略ながら御返答させていただきたいと、こう思います。  我が国経済は、六十年九月のG5以降の急速な円高によりまして、特に輸出関連製造業中心景気の後退が強まったわけでございます。これは先生指摘のG5、プラザ合意以降ということでございましょうか。その後の景気は、六十一年末に底入れをいたしまして、回復拡大局面を迎えた。今までは回復基調ということだけで私どもは申し上げておりましたが、この一月以降は拡大局面に入ったという形で表現をさしていただいているわけでございます。  こうした動きをもたらしました原因としましては、まず第一に考えられますことは、産業円高に対する構造調整をほぼ終了したという点が第一点ではないだろうか。第二点は、円高原油安プラス効果が行き渡って家計や企業の支出を増大させたことではないであろうか。第三点は、緊急経済対策等財政拡大策金融緩和といった政策効果が徐々に浸透してきたことなどが挙げられるのではなかろうかと、このように考えておるわけでございます。  したがいまして、昨年秋から我が国経済文字どおり拡大局面に突入をしていった。そして、昨年十月から十二月期のGNP動向や、あるいはまたことしに入ってからの推移をずっと一覧してみましても、内需が一層着実に拡大する一方、対外黒字の縮小も進みつつございまして、全般に私どもにとりましては望ましい方向と受け取られる方向に位置づけられておる、こう考えておる次第でございます。  なお、アメリカ経済においても、連邦財政赤字並びに貿易赤字削減のための努力がなされておりまして、このところ円・ドルレートといいますものは比較的に安定した動きを続けているのではないかと、このような判断をしておるところでございます。
  5. 青木薪次

    青木薪次君 政府は昨年末に六十三年度経済見通しをまとめられて、GNP実質成長三・八%ということを見込んでおられるのでありますが、しかし現在の景気上昇を持続して成長を続けることができるかどうか。  項目別に見ると、個人消費設備投資などは来年度も堅調に推移しそうでありまするけれども、今年度の景気を支えた住宅投資は大幅に伸びが鈍ると実は見ているわけであります。公共投資も来年度は今年度補正後並みの水準にとどまっておりまして、成長には寄与しない。内需が大幅に拡大するかどうかは疑問でありまして、外需についても輸出伸びが期待できないで、一方、輸入を拡大することが国際的使命でも実はあると思うのでありまして、さらに為替相場が不安定では外需はますます不透明なものとなる。今、経企庁長官は比較的安定していると言うけれども、百二十円台で安定されたんでは、後でも出しますけれども、問題があると思うんです。  したがって、このように見てまいりますと、景気拡大減速傾向を示して、年度後半には足取りが重くなるんじゃないだろうかということを心配いたしておるのであります。政府の来年度の経済見通しについて説明をしていただきたいと思います。
  6. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 委員の御指摘の声も、私どもも現在経済審議会中心にして作成を御依頼申し上げておるのでございますが、そういう中においても種々そのような御意見も出ておることも承知しておるところでございます。  六十三年度の我が国経済につきましては、外需対外不均衡の是正過程を反映しまして引き続きマイナスの寄与となるものと見込まれております。  一方、片や御指摘内需景気回復の二年目を迎えておりますから、まず第一に、個人消費雇用者所得等の着実な伸び等によりさらに堅調に推移すると見込まれておるわけでございまして、第二点といたしましては、設備投資が非製造業において堅調に推移し、そしてまた製造業においても内需関連分野投資増加していくのではなかろうか、このように見込まれ、なおかつ判断をされているというところでございます。そのようなことから、引き続いて先ほど申し上げたような好調を持続できるものと見込んでおるという点でございます。  以上、あわせますると、六十三年度につきましては、全体として内需中心とした実質三・八%という委員指摘の着実な成長を見込んでいるところでございます。目下経済審議会中心にしまして作成中の折でございますから、いろいろ甲論乙駁の意見等もあろうかと思いますが、そのような方向づけの中で進んでおるということの中間報告を兼ねまして報告を申し上げさしていただいた次第でございます。
  7. 青木薪次

    青木薪次君 今のお話のように、消費伸び、それから設備投資伸びといったような問題等中心として回復から拡大へ順調に進んでいるという話でありました。  中小企業あるいは地方景気を見ると、私は必ずしも楽観できる状態ではないと思うんです。私は中小企業の業界の皆さんに業種別にいろいろ御意見を聞くことがあるし、現に調べてもみたわけでありますが、必ずしも楽観する事態だけではないというように考えておるわけであります。  通産大臣は、「景気は全体としては内需主導型により着実な回復局面にあるものの、構造調整に伴う二面性が強くあらわれており、輸出型中小企業、とりわけ輸出型産地企業城下町等景況には依然としてはかばかしくないものがあります。また、今後の為替レート動向いかんでは我が国経済全体に深刻な影響があらわれることも懸念されます。」というように二、三日前の所信表明で私は聞いたわけでありますが、通産大臣経済現状と今後の見通しについて所管大臣としてどういうように見通しをつけておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  8. 田村元

    国務大臣田村元君) 今の御質問、特に中小企業を対象にした御質問と思いますので、そういう面で景況を眺めてみたいと思います。  中小企業景況につきましては、確かに生産回復しつつあります。六十二年の十月期から十二月期には対前年同期比で六・六%の増加となっております。また、中小企業倒産件数も本年二月には八百二十件と落ちついた動きを示しております。円高倒産鎮静化方向に向かっているんだなという感じでございますけれども、確かに中小企業景況は総じて回復しつつあるとは言いますけれども、今のお話のように、やはり二面性というものが強く出ておることも紛れもない事実であります。  それで、昨年十月から十二月期に比べまして六十三年の一―三月は悪化を見込む企業の方が多くなっておりますけれども、これは中小企業景況調査でございますが、一―三月期は十―十二月期に比べまして季節的要因というものがありまして、どうしても景況悪化する傾向がございます。むしろ六十三年の一―三月期の見通しは、六十二年の一―三月期の見通しよりも改善しておるということは喜ばしいことと思います。しかしながら、二面性という問題で私どもも頭を悩ましております。輸出型中小企業、とりわけ輸出型産地企業城下町景況は確かにはかばかしくないものがございます。  ちょっと数字を申しますと、輸出型五十五産地動向で言いますと、輸出額が六十二年前年比一六・〇%の減であります、マイナスが一六%。生産額が六・四%減であります。それから、六十一年以降の倒産廃業企業数は千百五十七でございますから、六十年末の産地組合員企業数が一万五千七百四十一に対して七・四%という倒産廃業になっております。それから、六十二年末時点休業企業が千三百二十五でございますから、六十二年末の産地組合員企業数が一万四千五百三十七、この中で九・一%が休業というような状況でございます。  でございますから、円レートも当然しっかりと見きわめながら慎重に対応していかなきゃならぬ、これはもう申すまでもございません。
  9. 青木薪次

    青木薪次君 中小企業庁が一月二十五日に発表いたしました「中小企業景況調査報告書」によりますと、六十二年の十月から十二月期の中小企業景況は、輸出は依然低迷をしているけれども、全体としては回復しつつあり、全産業売り上げのDI、これは御案内のようにディフュージョンインデックスの略で、特に言及のない限り前年同期に比べて増加、好転したとする企業割合から減少、悪化したとする企業割合を差し引いた値でありまするけれども、これが十三期ぶりにプラスに転じた。来期、ことしの一―三月期でありまするけれども、その見通しは先行きの悪化を予想する企業が多いなどとありまするけれども中小企業景況について、今大臣からも御答弁があったわけでありますが、ひとつ中小企業庁長官から御答弁を願いたいと思います。
  10. 広海正光

    政府委員(広海正光君) ただいま大臣から申し上げましたとおり、この中小企業景況調査によりますと、昨年十月―十二月期に比較いたしまして、ことしの一―三月期では悪化を見込む企業の方が多くなっているわけでございます。ただ、これは季節的な要因を反映した要素がかなりあるわけでございまして、六十二年の一―三月期、同じ季節でございますが、一年前の一―三月期と今度の一―三月期を比較いたしますと売り上げ、生産その他経常利益も非常に改善はしているということは言えるわけでございます。したがいまして、まだ低水準ではございますけれども、全体としては中小企業分野につきましても景気回復方向にあるということは言えるんだと思われるわけでございます。  しかしながら、これも先ほど大臣が申し上げましたが、輸出型の中小企業、とりわけ輸出型の産地あるいは企業城下町等におきます中小企業におきましては、まだ景況ははかばかしくないものがある、こういうことでございます。
  11. 青木薪次

    青木薪次君 田村通産大臣が、「今後の為替レート動向いかんでは我が国経済全体に深刻な影響があらわれることも懸念されます。」と言われまして、ここで聞いておったわけでありますが、我が国経済における特に輸出型企業にとっての最大の関心は、やっぱり円高問題であると思います。そして、今後我が国経済安定成長を続けていくためには為替レートの安定が不可欠な要件だと思います。しかしながら、為替レート推移を見ると、六十年九月のプラザ合意当時の一ドル二百四十円、これが急激かつ大幅な円高が進んで、ことしの初めには一ドル百二十円近くとなった。これは、このことで年を越したわけでありますが、ここに来ても百二十円台後半で推移いたしております。きのうは百二十七円ということでありました。  こうした中で、関係主要国の間で為替安定に向けて政策協調がとられてはいるものの、米国経済構造上、やはり双子の赤字というものを急激に解消することは絶対できぬというように考えているわけでありますが、今後とも円高基調が続くということが予想されるとするならば、為替の安定は全く困難ではないだろうか。通産大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  12. 田村元

    国務大臣田村元君) おっしゃるとおり、我が国輸出型産地中小企業は、非常に厳しい状況の中で、円高など内外の厳しい経済環境に対応していくために必死の努力をしております。内需転換あるいはコストダウンの徹底というように頑張っております。  ちょっと数字を申し上げますと、例えば輸出型五十五産地調査によりますと、昨年十二月末時点製造原価円高前に比べて六・四%低下しております。また、採算適正レートも、一昨年十二月末に百九十円パードルとする組合が多かったのでありますが、昨年十二月末には百五十円ないし百六十円パードルそこいらというような組合が大宗を占めるに至っております。ということは、コストの削減が進んできたということでございます。  しかしながら、現実の為替レートとの乖離というものはやっぱり依然として残っておりまして、輸出型産地中小企業はなお厳しい対応を迫られております。輸出型五十五産地動向で言いますと、六十二年、前年比輸出額で一六%の減、生産額で六・四%の減、それから六十一年以降の倒産廃業企業数は千百五十七、これは六十年末の産地組合員企業数一万五千七百四十一の七・四%、六十二年末時点休業企業数が千三百二十五、これは六十二年末の産地組合員企業数一万四千五百三十七に対して九・一%、こういうことになっております。なお、下請中小企業におきましても、受注量回復してきておりますものの、受注単価回復が緩慢でございますので、なお厳しい状況にあります。このような中での一層の円高というものは、これは下請中小企業に対してはもう大変なことになるというふうに案じております。  年明け以降の為替相場は、各国の強力な協調介入あるいは米国貿易収支改善などによりまして、比較的安定した動きをしております。しかしながら、やはり六十年秋以来の円高というものは余りにも急激であり大きなものでございまして、各企業は懸命の経営努力を続けております。とりわけ中小企業、特に輸出依存度の高い地域あるいは業種というところでは、大変厳しい状況下にあります。  産業経済の安定的な発展のためには、何といっても為替相場というものが私は基本だと思います。そのためには各国がより一層政策協調をやっていくということが必要だろうかと思います。  我が国としても緊急経済対策等内需拡大に努めてきておりますが、引き続き通貨当局の適時適切な介入を求めなきゃなりませんし、低金利政策の実施はもとより、内需主導型の高目経済成長の実現によって為替相場の安定に努力しなければなりません。一方また、構造調整というものに対して手厚くこれを指導していかなければならないと思います。  他の先進諸国におきましても、為替市場における協調介入金融政策弾力的運用が重要でございまして、とりわけアメリカ財政赤字削減、これがさきにスケジュールを発表しましたけれども、これを確実に実行してもらわないと全世界に大変な迷惑をかけることになる、このように思います。  いずれにいたしましても全精魂を傾けて中小企業対策をやっていく所存でございます。
  13. 青木薪次

    青木薪次君 大臣のおっしゃるように、為替レートの安定ということが極めて大切であることは、私も全く同じ意見でございまして、もう一つの問題として、一ドル百二十円台での安定ということが我が国経済にとってどうなのか、いわゆる計画を立てやすいということはあるかもしれませんが、我が国経済のファンダメンタルズを反映して健全な発展を可能とするようなレートであるかどうかの問題です。  通産大臣は、昨年の委員会で、当時の円レート一ドル百四十円絡みということは、「輸出型産業、とりわけ関連中小企業、特に下請中小企業あるいは輸出型の地域産業等にとりまして極めて厳しいものでございまして、常識的に言えば到底耐えられない」ということを再三にわたっておっしゃっているわけでありますが、今日の一ドル百二十円台の為替相場をどのように見ておられるのか。先ほど経企庁長官は比較的安定していると言われましたけれども、百二十円台の安定ということはどういうことなのか。率直に言ってこれら輸出型の企業が耐えられる円相場はどの程度の水準であると見ていいのか、現状を踏まえて通産大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  14. 田村元

    国務大臣田村元君) 幾らがいいかということはちょっと言えないと思うんです。といいますのは、業種業態によりまして違いますから、いわゆる一般論として物を言うことがこの為替レートま非常に難しい。それは経済二面性で、輸出型の中小企業にとっては円は安いにこしたことはありません。ところが今度は逆に、日本景気を支えるあるいは反映させる、景況感をよくさせる内需型産業へのプラスという点からいいますと、円は高いに越したことがない面もあります。円が高くて油が安ければこれはもう景気がよくなる方向へつながっていく、これは当然のことでございます。でございますから、一般論としてこれを論ずることはできませんけれども円高とか原油安のまた効果というものも高く評価しなければならぬ面はございますが、しかし一方において輸出型ということになりますと、これはとてものことじゃありませんが百二十円では問題にならないと思います。  日本企業は非常にたくましゅうございますから、私が百七十円プラスマイナス十円ということを言いました当時に比べて、今はもう合理化が進んでそしてコストダウンがうんと進んでおりますから私も驚いておりますけれども、だからといってそれは企業によっては百二十円ぐらいで頑張る企業もあるかもしれませんけれども、やはりそういう面の一般論でいえば私は百二十円はつらかろう。でございますから、先ほど企画庁長官が申しましたのは百二十円台、まあ百三十円ちょっと上ぐらいのところで安定した動きになっておる、言うなれば変化が非常に少なくなっておるという趣旨で申したと思いますが、その意味では確かに安定をしておりますけれども、高値安定では困るということでございます。しかし、一概に言えないつらさもございますが、これは業種業態によっての判断であると思います。
  15. 青木薪次

    青木薪次君 あのころ、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の著者で知られるボーゲルハーバード大学教授がこう言っているんです。後世の歴史家は、アメリカ債務国に転落し日本最大債権国になった年として一九八五年を記録することになるだろうということを明記されております。ことしは日本中小企業にとってその生死をかけた闘いの始まりの年でもある。大幅な円高等によって企業の存続そのものが危ぶまれるという厳しい状況の中で、みずからの存在と発展のため製品の高付加価値化とそれから事業の多角化、他の業種への転換等を余儀なくされているのが中小企業の実情であると思われるのであります。  産業構造の転換過程で、不可避的に生ずる雇用のミスマッチを緩和してきた中小企業の歴史的な位置づけが今変わろうとしていると思われるのでありまするけれども、こういう点について、大臣中小企業政策の何といいますか哲学といいますか、あるべき姿といいますか、そういったものについてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  16. 田村元

    国務大臣田村元君) 中小企業というのは、各国によって姿は変わろうかと思いますが、我が国においては産業中心であります。極端に申せば、我が国では中小企業というものがすなわち産業であると言っても過言でないと思います。事業所数で全体の九九・四%、従業員数で八一・四%でございますから、大企業がどれだけ逆立ちしたって歯が立たないわけであります。しかも、中小企業景気、不景気というものが我が国経済を左右しているわけでございます。つまり、中小企業対策の万全なくして経済産業政策の万全はあり得ない、私はそのように思っております。  通商産業大臣というのは、大きく中小企業担当大臣というカラーを持っておるわけでございます。でございますから、二人の政務次官のうち一人を中小企業担当の専門に特命してあるわけでございます。  そういうふうに考えまして、今後も中小企業対策をしっかりやっていかなければなりませんが、ただ、ここで申し上げなければならぬことは、中小企業はもはや従来のおたな的な感覚ではもう生きていけないということでございます。でございますから、体質的にも強くなってもらわなければなりませんが、同時に、今御審議を願おうとしております異分野の融合というような問題とか、いろんな生き抜くためのノーハウというものをこれから見出して、そしてたくましくなっていかなければならない。そのために政府がうんとそれに対して御協力を申し上げなくちゃならない、このように考えております。  ちょっと御質問が非常に大きな御質問でございましたので、私もちょっと答弁に戸惑った面はございますけれども、あえて哲学的なことということでございますならば、そういうふうに考えております。
  17. 青木薪次

    青木薪次君 そういう御答弁で結構です。  中小企業我が国産業のかなめであるという立場に立って、中小企業がやはり発展することが我が国産業の支えであり、しかも、ある意味ではやっぱり行政的に考えても産業民主化のかなめであると考えてやっていただきたいということでありまして、そのためには中小企業対策費は一般会計と産業投資特別会計とを合わせて前年度比〇・二%増というわずかな増加となったわけです。  これは、私は前に建設委員長をやったわけでありますが、建設関係、特に一般公共事業投資等の関係については二〇%余の増加を昨年とことしではしているわけです。もちろん、NTTの株の売却益を使ったとか、地方においても公共事業をふやしたとかいろんなことはありますよ。あったにいたしましても、トータル的な数字から言うならばそのようになっているということでありまして、〇・二%増ということは、ふえないよりはいいけれども、わずかな増加となったのであります。中小企業の窮状と比べるとその増加額の伸びが少ないのではないかと疑問を抱かざるを得ないのであります。それだけ中小企業は厳しい状態を打開するためにしぶとい努力を重ねているということでありますので、大臣はこの点についてどう考えているのか、御所見を伺いたいと思います。  さらに来年度予算に占める中小企業対策費をこれで十分とお考えになっていらっしゃるのかどうか。今後の中小企業対策の中長期的ビジョンについて、先ほどの質問とあわせて私は整合性のある御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  18. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は、中小企業予算というのは年々減っておったわけでございます。私は大変運のいい幸せな通産大臣でございまして、まあ貿易面、通政面ではひどい目に遭いましたけれども、予算面では非常に幸せであった。といいますのは、私が着任してそれから編成した予算、つまり昭和六十二年度予算から下げどまりまして、そうしてわずかでもプラスになりました。六十三年度予算案もわずかではございますけれどもプラスということになって、わずかではありますが上向きの姿になりました。  実は中小企業予算といいますのはちょっと公共事業なんかとは違いまして、予算そのものだけで、金額だけで判断できない面がございます。六十三年度の中小企業対策予算の総額は、一般会計と産投特別会計の合計で二千二百八十九億円でございます。おっしゃるとおり対前年比〇・二%増でございますが、これは今の中小企業対策としてもちろん十分とは言えないかもしれませんけれども、まあまあこれで対応できるんじゃなかろうかと私は思いますのは、中小企業が今一番欲しがっておりますのは何かといえば金繰りなんです。金繰りに一番頭を悩ましておるわけでございますが、この金繰りの面では政府系の中小企業金融機関による融資だけで見ましても、中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工組合中央金庫、おおよそ二十兆円の融資枠を動かしておるわけでございます。これは大きいものだと思う。二十兆円でございます。それ以外に都市銀行もございます。これはもっともっと大きいと思いますが、政府系の金融機関でもそれだけを確保しておりますので、中小企業対策としてはこれで難局を乗り越えていけるであろう。  特に、御承知のように今内需が非常に伸びておりますから、恐らく六十二年度の景気は大変なことでございましょう。六十三年度も何か経済学者に言わせると、経済学者の中には神武景気を上回るんじゃないかなんと大げさなことを言う人もおりますけれども、でございますから、消費経済が非常に盛んになります。しかも、構造転換で内需方向へ手を出していくということであれば、非常に絶好のチャンスということにもなりましょうし、まあこういう対策でいけるんじゃなかろうかというふうに中小企業庁は私に対して自信を持った言い方をいたしております。
  19. 青木薪次

    青木薪次君 政府は、急激な円高中小企業が対処できるよう二つの円高対策立法を設定して今日に至っているのであります。  昭和六十一年二月のいわゆる新事業転換法、特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法と、やはり六十一年十二月の新城下町法、特定地域中小企業対策臨時措置法がそれでありますが、前者は業種中心とした緊急避難的な円高対策法であって、後者は特定地域中心とした積極的円高対策法でありますが、これら二法の実施状況について具体的に伺いたいと思うのであります。例えば利用中小企業者数と貸付融資実績及び融資規模等について、ひとつ今大臣がおっしゃいました政府系三行で二十兆円という数字については確かに私は相当多いと思いまするけれども、内容的にどうだろうかという点が懸念されますものですから、そのことについて御答弁をお伺いいたしたいと思います。
  20. 広海正光

    政府委員(広海正光君) 新転換法と特定地域法の実施状況でございますけれども、制定以来ことし一月末までの実績でございますけれども、新転換法に基づきます認定の件数は二万三千六百四件でございます。それに対しまして低利融資を行っているわけでございますけれども、実績は四千五百六十億円と、こういうことになっております。また、特定地域法の実績でございますが、これもやはり適応計画というものを出して承認を受ける必要があるわけでございますけれども、それの件数が、制定以来ことし一月末までの実績でございますが七千三百二十件。それでまたこれに対しましても低利融資を行っているわけでございますが、その実績が千二百億円と、このようになっております。  それからこの二十兆円、政府関係中小企業の融資機関の融資残高でございますが、大臣申し上げましたようにございます。それの条件でございますけれども、大部分は大企業の最優遇金利、いわゆる長期プライムレートでございますけれども、それ並みの金利で貸し付けているわけでございますが、全部が全部それじゃございませんで、今申し上げましたような政策融資だとか、あるいは特別に支援をしなければならないような融資につきましては、長期プライムレートよりさらに低い金利で貸し付けをしているというのが状況でございまして、例えば今申し上げました新転換法に基づきます低利融資につきましては四・〇五%、それから特定地域法に基づきます低利融資につきましては、一番安いのが三・五%というような金利で貸しております。  今、二十兆円の中に特定地域法に基づきます低利融資も含まれているようなことをちょっと今そういうニュアンスで申し上げましたが、これはまた別な制度で融資をしておりまして、二十兆円の中には入っておりません。
  21. 青木薪次

    青木薪次君 円高による中小企業景況は、円高メリットの広がりや個人消費拡大、さっき大臣がおっしゃったわけでありますが、そのために景況回復基調にある、これは経企庁長官もおっしゃいました。しかし、中小企業景況は、悪化の度合いは弱まってきたものの地域業種による跛行性が非常に見られるなど、中小製造業中心に依然低迷し、あるいはまた停滞傾向を示し、輸出型産地企業城下町等ではなお厳しい状況が続いているということだと思うのであります。  こうした中で昨年、六十二年一月から十二月の倒産推移とその特徴を見ると、件数で昨年が一万二千六百五十五件、昭和五十一年の数字を見ると一万五千六百三十八件に次ぐ十二番目だと言われているわけであります。負債額が二兆五百四十六億円で、昭和五十四年の二兆一千九百十八億に次ぐところの十二番目の記録である。これは帝国データバンクの調べでありますが、こうした倒産状況に加えて、この輸出型産地中小企業中心としたいわゆる転業、休業廃業動向にも変化が生じているわけでありますが、通産省、中小企業庁はこの理由をどうお考えになっているか、御答弁いただきたいと思います。
  22. 広海正光

    政府委員(広海正光君) 倒産件数につきましては、今先生から御指摘ございましたように六十二年で一万二千六百十七件ということでございます。この水準自体が高いか低いかという問題がございますけれども、少なくとも最近について申し上げますと、五十九年の二万七百七十三件をピークにいたしましてずっと減ってまいりまして、それで六十二年には一万二千六百十七件と、こういう水準になっているわけでございます。  今申し上げましたように、倒産自体は非常に減ってはいるということが言えると思うのでございますけれども、これも御指摘ございましたように、倒産とは別に転業、休業廃業というのが非常にふえているというようなことが民間の信用調査機関の調べでございますけれども出ております。  この倒産がずっと減っている理由でございますけれども、一つには非常に金融が緩和している。したがいまして、業績が悪くても金繰りがつくということで一つには倒産が減っているんじゃないか。それからまた、全体的な内需拡大ということで、経済情勢もひところに比較いたしますとかなり好転してきているといったようないろんな事情が反映して、倒産という形での企業の崩壊はかなり少なくなってきているんじゃないか。しかし、転廃業あるいは休業というのが他方において非常にあるということにつきましてはそのとおりでございまして、これはやはり基本的には現下の厳しい経済情勢というものを反映した結果、仕事を続けていけば倒産に至る、その前に転業、休業あるいは廃業をしてしまおうと、こういう動きが出ているのではないか、このように考えております。
  23. 青木薪次

    青木薪次君 今の御答弁を聞きまして、いろいろと輸出型の下請中小企業が非常に厳しい、特に厳しいということは、転業、休業廃業倒産の前に行われていると今の御答弁を聞いたわけでありますが、これは産業構造調整といいますか、これがいわゆる非常にスピードが足取り速く行われている。これについていけない。どうしても大企業の場合においては、全体として輸出の関係がシビアであるならば、やはり一緒に下請関連の中小企業もその負担をしょえということをどうしても言わざるを得ない情勢というものが各所に見られているわけでありますが、そのこと自体については現状としては理解はするけれども、やっぱりこのことについては我々は中小企業を守るという立場から考えても何らかの対策を講ずる必要があるわけであります。  その意味で、転業、休業廃業がふえている、倒産件数は減っているということであったにしても、さらに倒産件数増加するという傾向がことしあたりから出てくるのじゃないだろうか。もうこれ以上経費の節減はできない、転業も廃業休業もできないんだということになれば、これはもう倒産の道を選ぶしかない、お手々を上げてしまうということになるわけでありますが、その点について中小企業庁はどう考えていますか。
  24. 広海正光

    政府委員(広海正光君) 倒産が減ってはいても、休業廃業あるいは転業する中小企業が非常にあるということは、やはり厳粛に受けとめねばならぬ事実だと思います。これも先生指摘のとおりでございますけれども、やはり構造転換を迫る状況が非常に厳しい、環境が非常に急速に変わってきている、それについていけない、こういう基本的な事情もあろうかと思います。したがいまして、金繰りがつかなくなりますと倒産という形でまたふえてくるということも懸念されるところでございます。  したがいまして、中小企業庁といたしましては、環境の非常な急激な変化に中小企業が円滑に対応できるようにいろんな対策をとってきたわけでございますけれども、これからもしっかりやっていかなければならない、このように考えております。
  25. 青木薪次

    青木薪次君 私は、中小企業にとって円高の進展が輸出型、下請企業へ及ぼした影響ははかり知れないと思うのでありますが、工業製品の輸出は円ベースで見ると減少傾向が続いて、中小企業業種製品の輸出金額にも減少傾向が続いているのであります。こうした事態を打開するために輸出型、下請企業は海外進出を図ったり、あるいは計画中の企業も非常に多いのであります。  そこで、中小企業の海外投資現状について、業種別件数、地域別、直接投資額についてお伺いすることが第一点。  それから、中小企業の海外進出や現地生産化といった現象は今後一層増加すると思われるんですね。しかし、大企業に比べて一般に海外活動のための情報収集能力の欠如、人材不足、資金不足などの問題を抱えているのが現状であります。中小企業庁の国際化実態調査、八六年二月にやっているわけでありますが、これによると、撤退企業の原因として、パートナーの選定ミスによるトラブルの発生、あるいはまた販路開拓の失敗、現地の環境に関する事前情報の誤りといったような、現地の生の情報を入手して分析することの困難さから生ずる事前準備というか直前準備というのか、こういうことが実は指摘されているのでありまして、通産省、中小企業庁の対応策及び現状の制度の実績について、例えば海外投資アドバイザー事業なんかについてやっていらっしゃるということも聞いておりますので、お伺いいたしたい。  それから、こうした中小企業の海外進出促進策を利用できるのかということについて、一部の上層中小企業や特定分野での専門技術を持った海外進出可能な企業に限定されるのではないか、また中小企業の中でも二極化現象が生じるのではないのかという、つまり国内中小企業の中下層部分といいますか、これが転廃業を強制させられる、こういう不安の声が上がっているのが現状でありますが、この点について中小企業庁はどういうようにお考えになっているか。  以上の答弁を求めて私の質問を終わります。
  26. 広海正光

    政府委員(広海正光君) ただいまいろいろな観点からの御質問があったわけでございますが、まず一点目の中小企業の海外進出の現状につきましてお答えを申し上げたいと思います。  統計の関係上、今手元にございますのは昭和六十一年のデータが最新でございますけれども、六十年から六十一年にかけまして中小企業の海外投資件数は非常にふえておりまして、前年比八八%ふえて五百九十九件、金額で申し上げますと、前年比二〇〇%、つまり倍でございますが、六・三億ドル、このようになっております。  業種別に申し上げますと、件数で申し上げますが、五百九十九件のうち製造業が四六・六%、半分弱でございますけれども、二百七十九件ということになっておりまして、その中では圧倒的に機械関係が多うございます。百三十一件、こういうことになっております。あと製造業以外では商業も相当ございまして、これが百三十九件、二三・二%ということになっております。  それから地域別には、北米が四四・二%で二百六十五件。それとほぼ同じぐらいがアジアでございまして、二百五十八件ということで、北米とアジアで九割近くの投資が行われているというのが現状でございます。  それから次に、中小企業の海外進出を支援するための中小企業庁といたしましての対策でございますけれども、これは六十一年から実はいろんな対策を講じさせていただいております。  一つには、中小企業事業団によります海外投資アドバイザー、現地に投資する場合にどうしたらいいかということにつきましていろいろとアドバイスする制度を拡充いたしました海外投資アドバイザー制度というのが一つございます。それから中小企業事業団あるいは商工会議所あるいはジエトロを通じまして、海外投資をしたい中小企業者に対しますいろんな投資関連の情報、現地情報も含めまして情報の提供の拡充を行っております。それからまた、人材不足に対しますいろんな研修制度、これは中小企業事業団が中心になっておりますけれども、いろんな研修制度、それから資金的な助成をするということで低利融資制度、さらにはまた今国会で御審議をいただきます信用保険法等の改正法案の中で海外投資関係保険の創設もしたいということで御提案を申し上げている次第でございます。  それから最後でございますけれども、海外投資できる中小企業はやはり限られているんじゃないか、それもできなくて転廃業あるいは休業倒産ということを余儀なくされる中小企業者がたくさんいるんじゃないか、それに対してどうするんだ、こういう御質問でございますけれども、これは私どもとしましては、今までの答弁のやや繰り返しもございますけれども、一つにはやはり円高構造転換対策というものをやっていく必要があるということで、従来から新転換法あるいは新地域法に基づきますいろんな対策をやってきたのでございますけれども、さらに今国会で御審議をお願いしております融合化に関する法案、これもやはり円高構造転換対策の一貫として位置づけていきたい、このように考えているわけでございます。  それから、大きくは第二点目でございますけれども円高構造転換という目的を限定した対策とは別に、やはり中小企業一般は経営基盤が脆弱でございますし、経営資源も乏しいということで、経営基盤の一般的な充実を図ろうということで、これはかねてからいろんな対策をとってきておりますけれども、やはりその面につきましても格段の拡充を図っていく必要があるということで、例えば金融あるいは信用保険制度の拡充だとか、それから人材の教育あるいは技術や情報化の対応策といったようなところを充実しております。この信用保険制度につきましては、先ほど申し上げましたように、関係の法案も提出している次第でございます。  それから第三番目に、中小企業の中でも特に小規模な企業者に対する対策でございますけれども、いわゆる小規模企業対策でございますが、これは今申し上げました円高構造転換対策あるいは経営基盤対策、すべて利用ができるわけでございますけれども、さらに上乗せの対策が必要だということで、経営指導あるいは金融面、税制面、いろんな点におきまして、上乗せのいろんな小規模企業向けの対策もまた講じているということでございます。
  27. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 最初に、愛媛県の伊方町でたしか昨年十月十九日から二十一日、本年二月十二日だったと思うんですが、四国電力の伊方原発二号機での出力調整試験を行ってきましたが、何のためにやったのか、そしてその内容、その結果を最初に報告していただきたいと思います。
  28. 逢坂国一

    政府委員(逢坂国一君) 四国電力伊方発電所二号炉につきまして、出力調整試験運転を実施した件につきまして御説明申し上げます。  出力調整試験と申しますのは、現在原子力発電所は供給力の中核として開発し運転されているわけでございますが、将来電気の需要とそれから供給力との関係から原子力のウエートが高くなりましたときに、原子力の方で出力を調整する必要が出てくるのではないか、こういうことで、そのためのいろんな諸データを得る、こういう目的で試験をしているものでございます。  試験ということになっておりますが、実際やっておりますのは、一〇〇%の出力の原子炉を三時間かけて五〇%に下げまして、六時間継続し、さらに三時間で一〇〇%に戻す、こういう操作でございまして、制御のやり方といたしましては通常の操作と何ら変わりないものでございます。  この試験につきましては、昨年の十月から前後五回実施してございますが、それに加えまして、先般問題になりました、二月十二日に第二回の試験を実施したという経過でございます。  この問題につきましては、安全上の問題は私どもは何らないということで考えておりましたし、事前に解析をいたしまして、それの電算機解析とどういう相違があるかというようなことを調べるわけでございますが、こういうふうな経過をたどりました結果も、極めてスムーズな制御の過程をたどりまして、何ら問題はないということでございます。  安全の問題として、安全というより技術的な問題でございますが、考えられますのは、今の安全審査の範囲内での操作でございますから、もともと問題は起きないわけでございますが、運転する場合に、出力の上げ方を早くいたしますと燃料の中のペレットとさやとの間に応力が働く、こういう問題がありまして通常はゆっくり立ち上げている。数字で申し上げますと、安全審査で考えておりますのは五%パー分ぐらいでございまして、今回実施したのは〇・二八%パー分、二十分の一ぐらいのスピードだと思いますが、それで、一般の場合にはさらにその下げたぐらいゆっくり立ち上げる、こういうことでございますので、その間で若干通常の運転よりも速いという問題がありますので、燃料に無理がくるかもしれない、こういうことが一つ技術的な問題としてあるわけでございますが、この問題、炉水レベルその他で判断いたしましたが何ら異常なしと、こういうことで安全に実施された、こういう経過でございます。
  29. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 原発の先進国であるアメリカでは、このような非常に危険性を伴う実験というのはやっていないと聞いておりますが、その点はいかがですか。  それから、チェルノブイリの事故については、これは百万キロワット出力の能力を持ったものを六万キロワットに下げて、それを三十万キロワットの出力に持っていこうとして核反応事故を起こしたと聞いておるわけですがね。こういうような実験を短時間に繰り返すようなことをするということは学者によりますと相当危険だと、こう言っている人もおるんですが、この点いかがでしょうか。
  30. 逢坂国一

    政府委員(逢坂国一君) まず一点、アメリカでそういう実験をやっていないんではないかと、こういうお話でございますが、むしろアメリカ、フランス各国ともこういうものを日常的に行っており、一〇〇%から負荷のない深夜には五〇%に下げるという運転を日常的にやっているのでございまして、試験すら実施していないということは誤りでございます。日常的にやっているということでございます。  それから、チェルノブイルとはこれは全く違う現象でございまして、チェルノブイルの事故は炉の特性が非常に脆弱であるという問題に加えまして、運転員が規則違反その他たくさんの操作の誤りをいたしました結果でございます。  チェルノブイルの炉は、専門用語で申しますと低出力のときに変化を与えますと、ボイドなどを発生させますと出力が逆に上がる、中性子の数がふえる、プラスの反応度の性質を持っております。日本での軽水炉などではそれは逆でございまして、ボイドあるいは泡ができますと逆に出力が下がる、こういう特性のものでございます。これを私どもは自己制御性と言っておりますが、西欧の諸国、西側の諸国の発電炉にはソビエトのような炉はございません。  そういう意味で、非常に炉の特性が不安定でございまして危険なものであります。ですから、それを注意しながら運転しなければならないという炉でございますが、運転員はその炉の特性を十分に認識しなかったんだと思いますが、安全系を切ったり、あるいは当然後で気がついて入れたんですけれども、制御棒の操作が遅かったというような、前もって入れておかなきゃいけないようなところを抜いておいたというような操作のミスをやっておるわけでございまして、チェルノブイルと今回のものとを混同するというのは明らかな間違いでございます。  私ども、そういう点は誤解のないようにということで何度もお話ししているわけでございますが、まだそういう若干の誤りがございます点については非常に残念に思っております。
  31. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 それでは、軽水炉の関係で、アメリカ、フランスでもう日常的にやっているという、その同じ形の炉の実験の状況を、きょうはもう時間がございませんから、後で出してくださいますか。
  32. 逢坂国一

    政府委員(逢坂国一君) はい、整理いたしまして先生にお届けいたします。
  33. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 同じ条件で同じような、四国の伊方と同じような内容のもの。
  34. 逢坂国一

    政府委員(逢坂国一君) フランス及びアメリカで日常的に行っている例というのは加圧水型がほとんどでございますので、同じような条件ということになります。
  35. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 次に、経済企画庁長官にお尋ねしますけれども円高差益の国民への還元の状況について非常に進んだ面と非常におくれた面と、NHKの指摘にもございましたが、この点についてトータルで円高差益の還元というのはどのくらい一体なされておるのか、おくれておる部門はどういうところなのか、これについてお尋ねをしたいと思うのです。
  36. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 全般にわたって広い御質問でございますから、その高低の度合いの具体的なことなどに至りましては政府委員に答えさせますけれども、概略、還元状況はどうかと、こう聞かれますると、私どもは、円高差益の還元につきましては、一昨年の累次にわたる対策等におきましてまずもって三度にわたる電気・ガス料金の引き下げなども実施してまいりましたし、これらの還元策などを通じまして円高等のメリットはおおむね順調に物価に反映されつつあるものと考えている次第でございます。  ちなみに、当庁の試算で我々が考えておりますのは、全体の経済から見ました円高差益の還元率は六九・六%すなわち七割くらい、昨年の十二月までの累計でございますが、七割という判断に立っております。
  37. 冨金原俊二

    政府委員冨金原俊二君) 若干補足をさせていただきたいと思いますが、先生指摘の、どういうところが進んでいて、どういうところがおくれているかということを的確に御説明することはなかなか難しいのでございますけれども、よく議論されますのは、これは厳密な意味での差益還元ということについてはいろいろ中でも議論がございますが、例えば国際航空運賃の方向別格差の問題が、これは運輸省の方でもいろいろ御努力をいただいて累次是正はしてきておるわけでございますけれども、まだ格差が相当残っているではないかという御指摘をいただいておりまして、私どもとしてもこの格差是正は引き続き進めていく必要があるんではないかと考えているわけでございます。  似たような問題で、やはり国際電信電話料金のような問題でも格差というものが出てきておりまして、これも努力をしていく必要がある分野ではないかと考えております。  よくこのほかに議論されますものとしては、例えばプロパンガスの価格が少しまだ引き下げの余地があるんではないか。この点につきましては、通産省の方でも御指導いただいて価格の引き下げが進むようにいろいろ話をしていただいているわけでございますが、基本的には認可料金ということでもない分野でございますので、指導という形で努力を続けていただいているというようなことでございます。  比較的進んでいる分野はどうかということでございますが、一般的に申しまして規制が比較的ないといいますか、競争が非常に激しい分野では、例えば国内の価格と海外に差ができますと当然輸入が非常にふえてまいります。その輸入がふえるという形を通して国内の価格も激しい競争の中で下がっていくという面がございまして、特に最近で考えてみますと、ガソリンとか灯油とかそういったものはかなり値下がりをしているわけでございますし、また魚なんかで見ましても、輸入品の価格動向調査等で見てまいりますと例えばエビなどは相当値下がりしているというようなことで、ものによりましてそれぞれ差がございますけれども、全体的に申しますと、先ほど大臣がお答えをいたしましたように、総合的に見れば順調に差益還元が進んでいるんではないかというふうに判断をしておるわけでございます。
  38. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 大事なものについては、僕はもうちょっと触れていただきたいと思うんですけれども、それは小麦ですね。僕も決算委員会、去年も商工委員会でも言ったと思うんだけれども、小麦の円高差益というのは千八百億ぐらいあるんだそうですね。これは食管会計との関係があってやらない、こう言っているようなんだけれども、しかし明らかに国民から見ますとおかしいじゃないかとよく指摘されるんですよ。また、肉の問題もありますけれども、特に小麦の問題と食管関係とみそもくそも一緒にするような処理の仕方についてはおかしいと思うんです。これは国民の立場に立って、この点についてはどのように対処するのか、長官の御意見を聞きたいと思います。  それから、タクシーの料金とか、要するに非常に円高で燃料費が安くなっている、しかも石油自体がやっぱりだぶついて安くなっておる、こういう状況なんですね。この点については確かに地方のタクシー会社というのはもう車が過剰で経営が非常に厳しいんですよ。賃金もまともに食える賃金が払えるような状況ではない。しかしタクシー会社によっては非常に内容のいいところもあるわけなんですね。だから、一律に指導はできないかもわからぬけれども、一体そういうものについてはどう考えるのか。
  39. 冨金原俊二

    政府委員冨金原俊二君) 先生指摘の、小麦の価格とかあるいは食肉の問題でございますけれども、いわゆる円高差益というものの定義の問題になるわけでございますが、海外から円高によって安く入ってきた部分の差益というふうに限定して考えますと、それについては農水省なんかとも話し合いをしまして、いわゆる円高によって発生した差益は少なくとも売り渡し価格を下げてもらうということで話し合いをいたしまして、昨年も小麦の価格を一応引き下げてもらったわけでございますし、それから食肉、牛肉なんかにつきましても、いわゆる差益、円高によって生じた部分は少なくとも出してもらうということで話はしているわけでございます。  ところが、実際にそういう形で価格を下げたわけでございますが、どうも一般の消費者の立場から見ますと、例えばパンの値段が下がらないじゃないかというような話になるわけでございます。これについても結局、食パンの中での小麦の原材料のウエートというのがそれほど多くないという実態もございます。そこで、全般的に引き下げは一円、二円というようなことではなかなか難しいものですから、先般も山崎パンなどでは、特別に一般に売られているパンについては五円ばかり下げるというようなことで、種類を定めて下げるようなこともしてもらっているわけでございますが、基本的な消費者の感じといたしましては、やはり制度、仕組みがあるために、本来もう少し下がってほしい、あるいは下げてもいいんではないかというほど下がっていないんじゃないかという御不満がございます。  これは先生も御承知のとおり、基本的には国内の農業政策との関連で、ある程度構造改善を進めながらやりませんと、消費者価格を急激に下げてしまうということになりますと、今度は生産者の方が困るという問題があるものでございますから、いわゆる内外価格差の問題としては、若干時間はかかりますけれども、取り組んでいかなければいけない問題ではないかというふうに考えているわけでございます。  それからタクシーの料金の問題でございますけれども、確かにタクシーについても差益は燃料費が安くなるという形では出ているわけでございますが、これも先生御承知かと思いますが、タクシー料金の中で占める人件費の割合というのが非常に高いものでございますから、今のところタクシーの料金の値上げ申請は来ておりませんけれども、全体として見ますと、価格を下げるというよりは料金の値上げの申請がおくれるという形で価格が変わらないというような実態になっているというふうに理解をしているわけでございます。
  40. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 委員指摘のとおり、私ども政治家でございますから、どうしても一般大衆その他と接点を数多く持つわけでございますが、そういう中から感ずる何といいますか、皮膚感覚的に感ずるものとしましては、御指摘のとおり、余り実感としてそのまま還元されているように思えないではないかという御指摘はよくわかるわけでございます。  しかし、政府といたしましては、円高等のメリットはおおむね、私がさっき申し上げましたように、順調には反映しつつあると、こう判断をしておるわけでございますが、原材料費等の低下を通ずる円高効果というのはまず広く、薄く、ある程度タイムラグ――タイムラグといいますのも二ないし二・四半期半くらいのタイムラグだと思いますが、これをもってあらわれてくるという状況でございますし、先ほど政府委員答弁しましたように、内外価格差の問題もあるということから、消費者にとっては必ずしも満足しているような円高メリットの効果が実感されていないということは私自身も認識せざるを得ません。  いずれにしましても、政府としましては為替レート動向等を踏まえまして、公共料金につきましては差益の的確な反映をまず図ることが第一である。先ほどの小麦、タクシー等の問題なども、そういう点においては早速ながら、また私もよく細かいことまではわかりませんでしたけれども、やってみたいなと思うわけでございます。  必要に応じた輸入消費価格の動向調査の実施、あるいはまた公表、あるいはアメリカ市場に対するPR、またアメリカ市場に対して日本がどういうものを必要としているかというこれまたPRなど、情報提供などを行いまして円高のメリットの一層の浸透に努めてまいりたい、こう考えております。  結論としましては、時間のかかる問題ではございます。しかし経済構造の調整あるいは規制、今までの慣行、こういうようなものを見直しまして、輸入の拡大等を通じまして内外価格差の縮小にこれ努めていきたいと、このように考えておりますので、よろしくその点御判断願いたいと思います。
  41. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 航空運賃の問題、あるいは小麦の問題、そういう問題まだ幾つかその他にたくさんありますが、議論するつもりはないですから、具体的にぜひ対応していただきたいと思うんです。  小麦の問題については、内外価格差の問題、政府委員答弁ではその関係もあると言うけれども、それはちょっと違うんでありまして、小麦は食管会計に入れまして、そして国内産の小麦も一緒にして、そして売り出しているわけです。だから輸入小麦の価格は別な価格があって、そして国産の小麦の価格も別な価格があって、その価格差の問題とかという問題じゃない。だから、千八百億円近くの貿易収支の要するに円高メリットが、黒字が出ているわけですから、その部分を一体、千八百億全部返さぬにしても一千億とかそこら辺もうちょっと還元をするのは当然でしょう。そんな議論というのは成り立たない。ただ、農林省のやっぱり判断と国民全体の判断とのずれ、それに対して経済企画庁はどう考えるかの問題だと思うんですよ。もう答弁は要りませんから、次に行きます。  第百十二回国会における田村通産大臣所信表明演説と中尾経済企画庁長官のあいさつを読みました。その中で共通して東京一極集中のことが取り上げられております。通産大臣は、中央と地方経済格差が再び拡大しつつあることを指摘しております。経済企画庁長官は、同時に第四次全国総合開発計画で示された多極分散型の国土形成を実現していくということをうたい上げておるわけです。私は、この問題が今最大の課題になっていると思うんですね。  これは「中央公論」の六十三年二月号に、茂木敏充という人が、これはマッキンゼー社の上級コンサルタントマネジャーをやっている人なんですが、「都会の不満 地方の不安」「同時解決の方策と新政権の政策大系を探る」ということで書いております。これは何回か読んでみたんですが、「同じ日本の中に、首都圏「先進国」と地方「後進国」という、外国ほどにも違う二つの地域社会が生まれた その不均衡は対外貿易不均衡以上に大きい」と、こう指摘していろいろと述べられておるわけです。  私も地方におりまして、非常に敏感にとらえていることがよくわかるんです。問題は、これから政府の機能を移すとか、あるいは国会の機能を移すとか、いろんな議論があると思うんだけれども、一番問題になるのはこの首都圏から非常に遠い地域ですね。例えば九州とか北海道とか、飛行機の運賃も片道二万五千円以上、往復五万円もかかるような地域、道路で走ってもあるいは新幹線で行っても、あるいは新幹線のないところは在来線ですが、非常に時間がかかる、そういう非常に首都圏あるいは三大都市圏から離れた遠い地域の県ですね、地方ですね。ここが特に急にまた最近は厳しい状況に立ち至っておるわけですね。したがって、一体どういう状況になっているかというのを認識してもらうためにも今から少しお聞きをしまして、あと企画庁長官通産大臣の方に答弁をしていただきたいと思うんです。  まず一つは、人、物、金がなぜまたここのところ急に東京一極集中の形にずっと出てきたのか、それを一体どう見ているか、それが一つですね。  それから国土庁、おいでと思いますが、各県の市町村における過疎の状況をお尋ねいたします。特に私が言いました首都圏から離れたところが大変悪い結果になっておりますから、私の地元の大分県も非常に悪いんですが、そのワーストテンぐらいを国土庁の方からまず発表していただき、過疎率、人口減少率も発表していただきたいと思うんです。この二つを先にお尋ねします。
  42. 広瀬経之

    説明員(広瀬経之君) 過疎地域の現況でございますが、まず都道府県内の過疎市町村数の割合の大きなところから申し上げますと、鹿児島県が七六%、これを筆頭にいたしまして、以下大分、北海道、島根、高知、宮崎、愛媛、広島、熊本、徳島、こういう順の道県になっております。  それから二点目の、県ごとの人口減少率を昭和三十五年から六十年までの二十五年間で見ますと、一番大きなところが島根県でございまして一〇・六%の減少でございます。以下長崎、鹿児島、佐賀、秋田、山形、高知、徳島、岩手、熊本と、こういう県の順になっているわけでございます。  以上でございます。
  43. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 私の地元の大分県知事は一村一品を今一生懸命唱えている。それから北海道の横路知事も一生懸命頑張っている。熊本の細川知事も頑張っている。そして竹下総理は「ふるさと創生論」を言っている。それぞれなぜそういうことを言っているかというのは、悪い地域におるから皆そう言っているわけですね。  大分県知事は今こう言っているんですよ。地方の時代はもう終わった、今や試練の時代だと、こう言っているんです。そうしたら、今度熊本の知事はどう言っているかというと、地方試練の時代はもう終わった、今や地方反乱の時代だと、こう言っているんです。竹下総理に聞いてみたいと思うんですが、何と言うかね。  いずれにしても、非常に人口の減少あるいは過疎が進んでいるのはやっぱり便利の悪いところなんですね。非常に交通の便も悪いし、地形上も悪い、そういうところがどんどん厳しい状況になっている。だから、私はやっぱり今度の多極分散型国土の形成あるいは国土の均衡ある発展というものを考えた場合に、やはり首都圏あるいは三大都市から遠く離れたこういうところに徹底した力を入れる、重点をかけていく必要があると思うんです。  雇用の問題で申しますと、有効求人倍率というのを見てみますと、九州の場合が昭和六十年度は何と〇・三五、六十一年度も〇・三五、六十二年が〇・四〇ですね。それから北海道の場合は、六十年が〇・三九、六十一年が〇・四〇、六十二年が〇・四四。一番いいのは東海なんですが、六十年が一・二七、六十一年が一・〇九、六十二年が一・一二、関東が六十年が〇・九〇、六十一年が〇・七九、六十二年が〇・九二なんですね。これを見てわかりますように、やはり四国、九州と北海道がずっと厳しい状況になっておる。  それから、毎勤統計によります都道府県の産業大分類別常用雇用労働者一人平均の月間給与額を見ますと、東京が昭和五十七年が三十四万九千八百十九円、六十一年が四十万五百七十一円。これは我が大分県で見ますと、五十七年が二十四万三千九百六十七円、六十一年が二十五万八千八百七十五円。宮崎や鹿児島にいきますともっと悪いんです。鹿児島では五十七年が二十一万六千二百二十六円、六十一年が二十四万七千四百八十一円、こうなっております。  それから都道府県の財政格差が、これもまた昭和六十三年度の都道府県別の予算を見てみますと、これまた大変広がっております。法人の事業税と住民税のその伸びを見ますと、東京が三九・二%、千葉が三六・六、茨城三二・一、神奈川、秋田、埼玉、これが三〇%を超えておる。逆に一けた台は福井が三・九、愛媛が五・八、鹿児島が八・九、あと大分、奈良と、こうつながっておる。  それから大学ですね、短大と大学がまた首都圏に集中をしているわけですね。東京の場合短大が七万六千三百八十六人、大学が五十七万七百十九人。地方から親の金を集めちゃ全部東京に持ってきているわけですね。だからますます東京集中がなされているわけです。  そこで田村大臣地域間格差が広がっているというこの問題の一番大きいのは、九州とか四国とか、首都圏から非常に離れた、あるいは三大都市から非常に遠く離れた地域が非常に深刻な問題になっているわけなんですね。だから、国土の均衡ある発展、多極分散型の国土をつくるという場合に、最重点にするのは私はやっぱりそういう北海道や九州、九州でも特に後から申し上げますが東海岸、こういうところだと思うんです。両大臣のその辺に対する、大臣の所信演説の中にそこがはっきり出ておるものですから、両大臣から感想をひっくるめまして答弁をお願いしたいと思います。
  44. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 田村通産大臣ただいま御到着なものですから、私の方が全般にわたりまして聞かしていただいたものですから先に答弁さしていただきます。  委員先ほど来の御指摘のとおり、地域間格差といいましょうか、それは非常に高まっておる。ある意味においては一極集中主義的な、東京にさらに集中していこうという傾向がないわけではない。ちょっと例は悪いんですけれども、先般大阪商工会議所、大阪経団連が東京にわざわざ今までなかった出張所をおつくりになる。ということは、あれほど大阪近郊では関西の発展を唱えていながらも、なおかつ東京に集中するというこの傾向は、これはまた不可思議な傾向であると言わざるを得ませんし、またこの東京のど真ん中に、皇居は当然のことながら、国会から官庁から学校から病院から商業都市あるいは工場に至るまで等々、これが全部集中してしまっているというところに確かに大きな問題があるなという御指摘は、先生のおっしゃるとおりであろうと思います。  そこで、地域経済活性化のためには交通通信網の整備による交通の活発化がまず第一に重要ではないかということが認識の一つでございます。そこで、昨年六月に策定されました第四次全国総合開発計画における「四国地方整備の基本方向」におきましても、先生指摘の中国、九州あるいは近畿といった近隣地域との交流の活発化を図ることがまず第一に重要と指摘されておるわけでございます。  なお、去る一月二十二日に経済審議会において取りまとめられました「新経済計画基本的考え方と検討の方向」におきましてもその点がうたわれておりまして、地域経済の均衡ある発展のためには第四次全国総合開発計画を着実に実行することが緊要であると指摘されておる次第でございます。
  45. 田村元

    国務大臣田村元君) 今中尾企画庁長官から御答弁申し上げた、私も大体同感でございます。  私、梶原さんの御質問を全部聞いておりませんので、あるいはピントが狂っておるかもしれませんけれども、今中尾長官が申しましたように、東京に産学官全部が集まっておる、しかも産はハードからソフトから全部集まっておるという、そうなれば、当然一極集中になるのは当たり前なんです。でございますから、これもやはり何とか考えなきゃならぬのじゃなかろうかと、そのように思います。先ほどちょっと御指摘のあったとおりだと思います。  これを多極分散型にする、そのときに九州、特に東側の海岸線なんかはすばらしいのじゃないか、あるいは北海道等も十分考えたらどうかと、こういうことでございますが、私が直接どこどことまた地域を申しますと、感謝の手紙と同時にまた抗議の手紙も参りますので、その点はうっかり物も言えませんけれども、私はおっしゃる御趣旨はよくわかります。  私の方では、私は三重県の南部の出身でございますが、熊野川というところまでが私の地元です。紀伊半島の南部はもうどんどん人口が減って、紀和町というところなんかはもう三分の一以下になりました。ここにおる前田君とは川一つで隣でございます。ところが、これは土地がないんです。山が海にもうほとんどくっついているというようなこともあって、非常に難しい面もございますけれども、そういう過疎地域を抱えておりますだけにつくづく思いますことは、まず何よりも必要なことは便利にすることだ。これがまず何よりも必要だと、便利にする、簡単な話ですけれども。  九州もそれは島といえば島かもしれませんが、離島じゃあるまいし、便利にすれば、しかも今はもう北海道から四国、九州全部寝たままで運んでくれるような世の中になったわけですから、もう便利になった。その中でもまたどんどん便利にしていく、その必要があるんじゃないでしょうか。私どももそういうことを体してこれから多極分散へということを考えたいと思っております。
  46. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 そこで、また後から質問をしようかと思ったんですけれども大臣答弁がもう前に来ましたから先にやりますが、今言われましたように、とにかく便利にするということは、特に東京や大都市から離れた地域においては、それをやらなければ、景色がよくても何がよくても、便利の悪いところへ人は行きませんよ。工場も来ません。だから、そのおくれた地域についてはこの際思い切って今やってもらう必要があるんではないだろうかと思う。  特に大分、宮崎、鹿児島、先ほど過疎率をずっと見ましたけれども、特に小倉から大分を通り宮崎に行って鹿児島に行くところには高速道路が一本もない。海岸の景色はいいけれども、道がないんですね。高速道路が一本もない。それから昔の国鉄、今JRですが、これは小倉から大分まで複線がやっとできたんです。しかし、あと十何キロかまだ一部継承事項で、JR九州が最近ぼつぼつしかやらないんですね。問題は、大分から今度は宮崎に抜ける線というのは単線なんです。それはしょっちゅう乗るんですが、どうかした拍子に下り線を待ちますから、特急が特急じゃないんですね。たくさん待つんです。それで駅で交差して、それからまた一つの線を上ったり下ったりするんです。JR九州になりましたら、もうこれは民間会社で採算優先ですから、恐らく大分から鹿児島に向けての複線化というのは永久にしないでしょう。新幹線計画なんか当初いろいろ言っていたけれども、ほとんど可能性がないようになってしまった。  それで、東九州に高速道路を通すという、そういう方向が国で決まりました。しかし、これもいつのことかわかりません。こういう状況なんですね。私はしたがって、そういう状況の中で道路とそれから鉄道網をもっとしっかりしてもらわなきゃこれはどうしようもならぬ。  同時に、北海道と本州の間はもうトンネルで結ばれました。陸つなぎになりまして便利になった。それから本州と四国の間は橋がかかりまして、また何本か、三本かかりますね。そうすると、九州の特に大分の東海岸というのは、関門で本州と九州は結ばれておりますけれども、九州の東海岸、佐田岬と佐賀関半島というのは非常に近い。距離で言いますと十四キロぐらい。ここでトンネルを掘れば四国と九州は結ばれるわけなんです。これは豊予海峡トンネルといいまして、運輸大臣が鉄建公団に指示をしてトンネル計画についての調査を既にやっているわけです。  私はこの際両大臣に力を入れていただいて、私も予算の委嘱審査の建設、国土庁のときに出ていって二十八日にまたこの点は言いますけれども、豊予海峡トンネルあたりを早く計画し実現に移す時期が来ていると思うんですね。そうすればよくなります。今この点についてはどうなっていますか。
  47. 荒井正吾

    説明員(荒井正吾君) 今先生お問い合わせの、豊予海峡トンネルの現在の調査概況について御説明申し上げます。  豊予海峡トンネルは四国新幹線、大阪と大分を結ぶ新幹線計画の一環として調査をしたわけでございます。調査は四十九年度より開始いたしまして、調査の中身はトンネル予定部の地形と地質を調査いたしました。地形と申しますのは、海面下からどの程度海底部があるか、これはトンネルの深さに関係いたします。それから地質といいますのは、どのような土があるか、これは掘るときの困難度に関係いたします。  最終的な報告は今整理中でございますけれども、現在わかっておりますのは水深が深いところで百九十メーターある。ちなみに青函トンネルの場合は百四十メーターでございます。地質につきましてはおおむねかたい地盤であるということはわかっております。一部にやわらかい地盤があるというところでございます。
  48. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 そこで、国土の均衡ある発展あるいは東京一極集中を排除するためにも、非常に具体的な話になって恐縮なんですが、両大臣、そういう私が言いましたような状況を頭に描いていただきまして感想をお聞きしたいんです。
  49. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 計画の話でございますから、私の方から先に答弁させていただきたいと思いますが、田村通産大臣はよく豊予海峡のことも存じ上げておるようで、大変にお力のある方ですからそういう点ではまた私もともども協力し合っていきたい、こう思っております。  豊予海峡ということのみならず、私の、例えば山梨県ではございますけれども、この間から武田信玄公がNHKで大河ドラマになりました。途端に四車線は全く息詰まるくらいに人が来てくださっている。恵林寺という武田信玄公の菩提寺がございますが、あそこは通年一日平均四、五人くらいしか来ないところですけれども、今は一日平均二千人以上来るというんですね。  そういうことからだけでも交通麻痺でございまして、それだけでももう一極集中主義はいかに弊害が多いかということもわかりますし、多極分散型という方向づけのためにも田村通産大臣等とも十分にひとつ打ち合わせなどさせていただきたい、このように考えておる次第でございます。
  50. 田村元

    国務大臣田村元君) 私はあのかいわいは割合によく知っておる一人であります。もう日豊本線と聞いただけでぞっといたしますが、特に大分から先の遠いこと。私は飛行機は余り好きじゃないものですからよく列車を使います。小倉まで新幹線で行ってあとは日豊本線に乗るわけですけれども、都城へ行くのなんかはもううんざりするほど遠い。何とかしなきゃいかぬなといつも思っておりましたが、そういうことで日向までフェリーに乗ったりして楽な道を選んでおりますけれども、豊予海峡というと海の部分はわずか十四キロですから、それほど大したこともない。  ただ、これは私の私見ですけれども、もう新幹線だなんだにこだわる時期は過ぎたんじゃなかろうかという感じを僕はするんです。私の地元は前田君と全く重なっておりますが、もう新幹線はぶん投げまして、近畿自動車道紀勢線というやつに今食らいついているんですけれども、それで前田君らと一緒に大いにやっておりますが、私はやっぱり佐田岬から九州へ、これは非常にいいことだと思います。しかし、私は建設大臣でも運輸大臣でもありませんから、運輸大臣は前にしたことはありますけれども、今は余り物を言うべきでないと思っておりますが、まあ大いに頑張つてください。企画庁長官もお約束を申し上げたようなことでございますから大いに頑張ってください。私も頑張ります。  ちょっと私も言葉の責任がございますので、私は梶原さんを励ます会の発起人の代表で、この人のためなら何でもするとうっかり言うてしまったものですから、言責というのがありますので私も可能な限りのことをいたしたいと思っております。
  51. 梶原敬義

    ○梶原敬義君 ありがとうございました。  話は変わりますが、国土庁の方から新産都の達成状況、そういうものを資料としていただいております。ちょっと時間がございませんから国土庁の方から発表していただくのはよしますが、新産都も、特に大分の方は新産都もある程度いい結果が出ているんですが、宮崎県の日向あたりの新産都の状況を私も見てきましたが、非常に工場用地はつくっているんですが草が生えておりまして、まあ大分でも新産都の中にそういう、企業をやってもしようがないからゴルフ場でもやるかというところも出てきておるんですが、そういう状況が一方にあります。  それから一方には、内陸部に地方自治体が工場誘致のために幾つも工場用地を造成をしております。自治省が発表しております、地方の工業用地の分譲に対して自治省が何か後押しをしようということで、日本全国で工場用地は約二万六千ヘクタール、いつでも工場来てくださいという土地が遊んで地方自治体の財政を圧迫をしている、大まかに言うとそういう結果になっている。もうちょっと言いますと、臨海工業地帯の関係で自治省の数字では四千七百七十二ヘクタール、内陸工業用地が九百八十六ヘクタール、それにその土地開発公社や地域振興整備公団が抱える土地等々入れまして約二万六千ヘクタールの工場用地が遊休している。  国土の均衡ある発展、あるいは地域間格差をなくすためには、だからいつも思うんですが、これは一つの例ですが、川崎あたりにいっぱい工場がありますね。石油合成なんかやっている。そういうところの工場はもっと思い切って政策的に臨海工業地帯やなんかに移す。あるいは東京周辺の内陸部の加工組み立て工場なんかで移していいやつは思い切って地方に移す。そういうような政策を思い切ってしていただきたいし、地方自治体の調査によりましても、やはり今の過疎状況やあるいは地方の沈滞している現状の中では、やっぱりそれを一番希望しているという統計資料や調査資料等も出ているわけなんです。  私は、ここはやはりいろいろ手だてをしていただいて、そういう工場再配置やなんかで努力をしているのは、通産省も経済企画庁もしているのはよく理解をしているんですが、それだけではこの大きな東京、首都圏一極集中の流れは変わらない。思い切ってばさっとやるようなやっぱり手を、行政がなかなかやりにくかったら国会でもっとやる、こういうことを最後にお願いをして、時間も参りましたから終わりたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  52. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 御趣旨を十分に体して、私も田村通産大臣とも相談しながら、特に知悉している場所だということを先ほど通産大臣も言っておられましたから、そういう点においては十分に勉強させていただきながら、私も鋭意努力してみたいなと、このように考えております。
  53. 大木浩

    委員長大木浩君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後零時五十分まで休憩いたします。    午後零時四分休憩      ─────・─────    午後零時五十五分開会
  54. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  55. 伏見康治

    ○伏見康治君 せっかく大臣がおいでになりますんですが、残念ながら私のきょうの質問は専ら秘密特許関係で、余り大臣に直接お伺いすることがないのはまことに残念なんです。先日の予算委員会のときにも実はちょっと触れたんでございますが、そのときは時間がございませんでして十分質問ができなかったように思いますので、きょうはこの秘密特許の問題だけに限定してお話を承りたいと思っております。  せっかく大臣がおられますから、おもしろいお話を一つ先に申し上げましょう、質問ではないんですが。  大臣は御存じないと思いますが、私は折り紙の大家なんですね。それで、つい先週、自分が偉いと思っている何人かの折り紙の作家を集めまして会合をやって、非常に楽しかったんです。その席にわざわざ丹波の山奥から藤本修三さんという方があらわれました。田舎の高等学校の先生なんですが、この先生は世界的に有名な折り紙の作家なんです。日本では余り知られていない、むしろ外国でよく知られている。しょっちゅうヨーロッパ、特にイギリスの折り紙に関心を持っている方々と文通しておられる方です。  この方とお話をして大変楽しかったんですが、そのときたまたま私の机の上に乗っておりました最近出ました数学の対称性に関する、シンメトリーに関する大変分厚い、大きな本がございましたんで、それを藤本先生がごらんになっておりましたら、その中にアメリカのある大学の数学の先生が何か論文を載せておられる。その論文の中身が、実は藤本先生が考えたことがそっくり載っておるわけです。そして、しかも藤本先生の名前が引用していない。そのアメリカの数学の先生というのは、実は藤本さんとしょっちゅう文通しておられる方なんです。したがって十分お互いのことを知っているはずであるのに、いわば藤本さんの知恵を盗んで、しかもそれに対してごあいさつがない。藤本先生、大変憤慨されたんですが、これが知的所有権というものの一つのあらわれです。  そして、知的所有権が無視されているという例は、日本人も相当やっているかもしれませんが、アメリカの学者も盛んにやっておりまして、もっと具体的にこれは相当シリアスな問題になる。藤本先生のケースはそれほどシリアスでないと思います。藤本先生自身も抗議の手紙は書くけれども、別に裁判にかけるつもりはないと言っておられましたが、もう少し裁判ざたになってもいいと思われるようなケースが頻々として起こっております。  私は物理屋ですが、アメリカの物理学関係の雑誌がございまして、それには速報誌というのがございます。何か日本の学者が新しい思いつきをしたというわけで、その速報誌に載せるわけですね。載せようとして投書するわけです。アメリカの雑誌には、何もアメリカに限りません、しかるべき学会誌でありますというと、すべてレフェリーというのがありまして、レフェリーがその論文を審査いたしまして載せる価値があるかないかを判断するわけですね。ところが、しばしばレフェリーの段階で論文の内容が盗まれるわけです。つまり、あるレフェリーはその論文を読んでそれを棄却してしまう。棄却しておいて、自分の頭の中にその内容を取り込んで別の自分の名前の論文を書いてしまうというケースが間々起こっております。  これも知的所有権の一つのバイオレーションだと思いますが、しかし、こういうものも、一定の利益に結びつけて金銭ざたで物事をおさめるという形にすべきものではないと私は思うんですね。こういうものはすべて科学者のお互いのモラルの問題であって、そういうものはモラルの問題として片づけるべきものであって、裁判ざたにするのは間違いであろうと思います。  特許制度というものがイギリスで近代的な形になりましたのは前世紀の半ばごろだと思うんですが、ちょうどそのころ、物理の方で申しますというと、マイケル・ファラデーという大変偉い先生が次から次へ発見をされた時代ですね。そのころは電磁気に関する研究が世界的に流行いたしまして、ヨーロッパの各国で電磁気に関する発見が相次いで起こったわけでございます。そういう情勢の中では、おれの方が先だという争いが必ず起こるものでございまして、そのことをセツルするためにマイケル・ファラデーが言い出して、プライオリティー、つまり論文のどっちが先かというプライオリティーを決めるのにどうするかという手続問題を決めました。  それは、しかるべき学会誌というものにその論文を投稿した、そしてその学会が受け取った日付をその論文に必ず書くわけです。受け付け何月何日と書くわけです。その前後によって、どちらが先に発見をしたかという日取りにしようではないかという提案がマイケル・ファラデーによってなされまして、それ以後、学者の間では論文が載った日付をもって、論文がいわばしかるべき学会誌に届けられた日付をもってその発明がなされた日付とするということによってプライオリティーを決めようということになりまして、それが現代までずっと続いているわけです。  湯川秀樹先生の例えば中間子の発表というのは、口頭で発表された時期とそれから日本物理学会、その当時は数学物理学会でしたが、その雑誌に受理されたのと一年間ギャップがございまして、したがっていろいろなお祝いをするときにはその学会誌に出た日付をもっていろんなことをいたしますが、実際はそれより以前に発表されているんです。そういうこともございますが、この論文のプライオリティーも別に金銭で片づく問題ではございません。これもやはり完全に学者のモラルの問題として処理すべき問題だと私は思っております。  商売の問題とそれからそういうモラルの問題とどこで区別をつけるかということはだんだん難しくなってくるとは思いますが、そういう学問的な研究の段階にまでその特許的な精神が入り過ぎますというと、学問を非常に阻害することになると思います。  今の若い人はしばしばとんでもない誤解をしているんですが、例えば日本物理学会というものは文部省のお金で運営されているものと間違えているような学生がしばしばあらわれます。それから、特許についても、特許というものは秘密だと思っている人がたくさんいます。そこで、改めて特許の精神というものは公開にあるということをこの際繰り返して申し上げておきたいと思います。  その公開であるべき特許に秘密特許というのが今押しつけられようとしていると思うのでございますが、これはアメリカさんとの接触の結果そういうことになりつつあると思うのでございます。  まず私が伺いたいと思いますのは、アメリカの秘密特許の制度というものはどういう制度なのか。つまり、これは特許の根本精神である公開の原則といったようなものを破るんですから、相当アメリカといっても無理をしていると思うんですが、どういうふうにアメリカの国内では秘密特許というのをなさっているのかというアメリカの特許制度のお話をちょっと承りたいと思います。
  56. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) アメリカには一九五二年につくられました秘密特許法というものがございまして、これに基づきまして特許出願の対象でございます発明あるいは技術上の知識が特許権の付与によりまして公開される事態になった場合に、米国の安全に重要な影響を及ぼす、被害を与えるといった場合には、特許の対象でございます発明または技術にアメリカ特許庁長官が秘密保持命令を出すという制度になっております。
  57. 伏見康治

    ○伏見康治君 秘密にすべきか秘密にしないかというのは、これはもちろん軍事機密的なものであるかどうかという判断だと思うんです。特許庁の長官が必ずしもそういう、これを軍事的に秘密にした方がよいかどうかという判断ができるはずはないと思うんですが、当然アメリカの軍部との関係において物事が決められると思うんですね。その関係はどうなっているでしょうか。
  58. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 我々の承知いたしますところでは、アメリカにおいては年間十一万件ぐらいの特許申請が出されているそうでございます。これは特許庁に出願されるわけでございます。これを受けました特許庁、具体的には個々の審査官でございますが、それぞれの判断に応じまして米国の関係省庁の意見を聞くことになっております。  米国の特許法の中身、これは政府が所有に利害関係を有する発明、そうではない発明というふうにいろいろ細かく区分けはしてございますけれども基本的な考え方は、一言で言いますと、特許庁が関係省庁と相談して、そして関係省庁の長の判断に基づいて秘密保持命令を出すということに相なっております。
  59. 伏見康治

    ○伏見康治君 今数万件と言われたのは年間の数字ですか。
  60. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 約十一万件と申し上げました。年間と承知しております。
  61. 伏見康治

    ○伏見康治君 十一万件のものをお調べになって、それが軍事的に重要なものであるかどうかということを普通の意味での審査員が判断することは非常に難しいと思うんです。特に近ごろは、軍事的にセンシティブな技術というものと民間で使っている技術というものとの間がだんだん不明瞭になってきつつあるわけですね。したがって、ある発明がこれは秘密にした方がいいという判断あるいはこれはそのまま公開した方がよろしいという判断のその境目が極めて微妙であって、したがって相当の専門家でなければ実は判断がつかない問題であろうと思います。  最近の我々の苦い経験から申しますというと、工作機械が原子力潜水艦のスクリュー音に関係があるといったようなそういう関係というものは、恐らく工作機械を眺めただけでは必ずしも出てこない話であって、潜水艦がスクリュー音で探知されているというそのバックグラウンドがあって初めて判断ができるわけですね。要するに軍部の方々が何か関与しなければ当然判断できないわけで、相当たくさんのDODの方々が特許審査に参加しておられるはずだと私は想像いたします。  特に日本の戦争中のことを考えますと、日本の特許庁に兵隊さんがたくさん乗り込んできまして、そしてこれも秘密にせい、これも秘密にせいといった苦い経験が半世紀ほど前にあったわけですが、そのことを考えますと、今のアメリカの特許審査というものは相当つらいことになっているはずだと思うんですが、その点どうですか。
  62. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 先ほどの御答弁をもう少し詳しく申し上げますと、こういうことでございます。  例えばお尋ねの、民間の方がなされました発明につきましては、それに対して特許を付与することによる公表または公開が――私は今アメリカの特許法の関連条文から御説明しておりますが、それが国家の安全に有害であると特許庁長官判断した場合には、特許庁長官はその特許出願を原子力委員会、国防長官及び米国の国防機関として大統領に指定された政府のその他の省庁の長にまず調査させるわけでございます。そして、そのような関係機関の長がその発明は秘密を保持すべきであるという判断を行いましたときには、その判断を受けた特許庁長官が秘密保持命令を出す、こういうことでございます。  アメリカのこの制度が非常に多数の年間の特許申請に対して一〇〇%有効に機能しているかどうかといった詳細については、その個々のケースについては私ども承知しておるものではございませんが、アメリカの秘密特許制度というのはこういうこととして運用されているというふうに理解しております。
  63. 伏見康治

    ○伏見康治君 少し問題を変えまして、今言われた特許庁の長官が秘密保持の特許にする、シークリシーオーダーというものを出すわけですが、それを出されたその件はどういうふうに処置されるわけですか。  秘密というのは公開しないという意味であって、例えば内容は完全に特許庁の内部の人にはわかっている、外には出ないという意味だと思うんですが、しかし、アメリカといえどもという言葉はよくないかもしれないけれども、軍部の力の強いところでも、しかし秘密保持命令というものは個人の権利を阻害するわけですね。その方が何かよく売れる機械をつくって、それで大もうけするという予定表を持っておったといたしますというと、それが秘密にされてしまうということはその発明者にとっては大変な損害になるわけですが、それに対してその損害をできるだけ減らすような仕組みを絶えず考えておられると思うんですが、まず第一にその秘密にしておくという期間をできるだけ短く設定するということだろうと思うんですが、それはどういうふうになっているでしょうか。
  64. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 同じく特許法の規定によりまして、技術を秘密にしておく期間は原則として一年でございます。ただ、これをそのときどきの状況によりましてもちろん延長するという可能性は残されておるわけでございます。
  65. 伏見康治

    ○伏見康治君 原則は一年なんでしょうけれども、一年たっても何事もなければそのまままた新たに期間が継続されるということになって、いわば無限に続く可能性もあるわけなんでしょうが、秘密にされた方はたまらないから秘密を解除せいという請求処置をなさるんだろうと思うんですが、そういうふうな仕組みになっているんですか。つまり、特許を申請なさった方の方に秘密解除を申請する権利があるんですか。
  66. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 特許法の規定によりますと、「発明は、一年を超えて秘密に保持され、特許付与を保留されてはならない」とございますので、先ほど私が申し上げました原則としてというのは、まず一年間でその保持命令が終了するということでございます。したがって、それを延長する場合には、延長する側に相当の理由を立証する責任がある、説明する責任があるということでございます。
  67. 伏見康治

    ○伏見康治君 政府がとにかく特許を秘密保持にしてしまったために出願人が受ける被害に対してはどういう補償措置がとられているんでしょうか。
  68. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) これも特許法に規定がございまして、出願人等が秘密命令によって生じた損害またはその開示の結果、政府によりその発明が実施されたことに対してこうむった損害、あるいは得べかりし利益の逸失というものに対しては、政府に対して補償請求権を有するわけでございます。また、当然のことながら不服がある場合には訴訟に訴える道も開かれております。
  69. 伏見康治

    ○伏見康治君 いろんなケースが考えられるんですが、もう一つ伺っておきたいのは、その秘密にしてしまった特許と内容において同じ事柄を別の方が発明なさって、その方がその秘密の期間中に独立に出願されたという場合にはどういうことになるんですか。
  70. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 私ども必ずしも断定する材料は有しておりませんが、アメリカの特許法上の運用の問題といたしまして、そのような場合はもはや秘密を保持していく必要がないという判断のもとに秘密命令が解除される蓋然性が高いと推測しております。
  71. 伏見康治

    ○伏見康治君 さて、以上のようなのがアメリカの国内における秘密特許制度の幾つかの点だと思うんでございますが、そのアメリカの秘密特許がいろいろな面で日本に入ろうとしているわけですね。つまり、いろいろな武器関係の接触があるためにアメリカの軍事機密が日本の特許制度の中に入り込んでくるわけですが、日本の特許制度の中には秘密特許という制度は全然ございません。全部公開するという原則になっているわけです。  その中にこれだけは秘密にせいという異質的な制度を入れるということのためには、日本の特許制度として相当例外的な処置をするということになるんですが、その根本原則のようなものはどうなっているんですか。
  72. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 御指摘のとおり、我が国の特許制度は公開が大原則でございます。ただし、この五六年協定と我々が呼んでおりますところの第三条の実施が問題になっておるわけでございますけれども、これの実施によりましても米国政府から当該技術が防衛目的のために日本政府に提供された場合、この特許出願に相当する日本において出願されたものは、米国における取り扱いと類似の取り扱いを受けるという規定に基づきまして、いわば極めて限定的な措置を条約に基づいて実施するということでございますので、これが我が国にとって新しい秘密特許制度を設けるといったようなことにはならないと存じます。
  73. 伏見康治

    ○伏見康治君 今まで主として外務省の方にお答えを願ったわけなんですけれども、特許庁の方はそれを実際上やるわけですから、いろんなことをお調べになっているはずだと思うんですね。これから主として特許庁の方にお伺いしたいと思っているんですが、まだしかし内容的には外務省かな。  一九五六年に何かアメリカとの間で協定が結ばれまして、それの実施細目をつくりませんと物事が動かなかったはずなんですが、長い間そういう細目をつくるという話は動かなかったわけなんですが、それが近ごろになってその細目をつくるという機運になってきたというふうに伺っているんですが、それはどういうことなんですか、説明してください。
  74. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) いわゆる五六年協定で、日本も国会の御承認を得て約束しておりますことを実施するその手続細目がないということについては、もちろん米側は当初から早くつくってほしいということを言っていたわけでございます。その後、時代の状況あるいは先方の担当者の態度等による差異もあったのかもしれませんけれども、催促があったりなかったり、こういう状況で来たわけございます。  最近になりましてアメリカ側から要請が非常に強くなってまいりましたのは、私ども推測いたしますに幾つかの要素があると思います。  一つは、日米の経済摩擦の深刻化の中で著作権とか特許権といった知的所有権の保護にアメリカが非常に強い関心を示すようになってきていること。二つ目には、日本の技術水準自体が非常に高いレベルに到達し、アメリカのそれと拮抗するようなところにまで来たこと。さらに三番目には、あえて推測しますと、アメリカが自国及び西側諸国の安全保障を考えますときに、やはり国防体制の中で技術面に相当なポイントを置かざるを得ない、そういった中で同盟国に対して安心して技術を移転できるようなそういった体制が必要であると認識するに至っていること。  このようなもろもろな要素が重なり合って、最近アメリカが特にこの実施細目の締結を強く望んでいるということだと考えます。
  75. 伏見康治

    ○伏見康治君 今の御説明は、そういうことであろうという判断の問題だと思うので、余りお役人の言うべきことではないだろうと思うんです。  そういう話がとにかく持ち込まれてきて、そろそろ特許庁としては秘密維持命令なるものを日本の特許の中で受け取らなければならないということになってくるんですが、これは手続的にはどういうことになるんでしょうか。日本の特許制度の中には元来ないんですが、それをどういう形で入れることになっているのでしょうか。
  76. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 具体的な手続そのものにつきましては、実はこの協定の実施細目ということで日米間で話し合っておるところでございますので、現段階では具体的に申し上げる状況にはございません。  ただ、一つはっきりしておりますことは、この協定に基づく出願でありましても、いわゆる特許法の出願であることには変わりはございませんので、特許出願として特許庁としては受けとめていくことにはなろうと考えております。
  77. 伏見康治

    ○伏見康治君 アメリカ側が秘密を守るということを至上命令と考えるならば、日本の特許なんか取らないでおくのが一番無難だと思うんですが、やはり先ほど御説明があったように、発明がやがて秘密を解除されて民生に利用されるという段階での日本における特許権を確保しておきたいということであろうと思うんですね。  それで、日本の特許庁が秘密命令を受け取る根拠は、一九五六年の協定の条文に基づいて、私は素人でよくわからないんですが、そういう国際条約、国際協定のようなもので外国と約束するとそれが国内立法をしたのと同じことになるんですか。その辺のことをちょっと説明してください。
  78. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) この一九五六年協定と議定書につきましては、当時国会の御承認を得るという手続をとりまして、したがいまして、条約としての効力を持っておりますので、このままこれが国内法としての効力を持っております。また、特許法上も二十六条におきまして、条約で特許に関し別段の定めがあればこの条約の規定によるという明文の規定もございまして、したがいまして、この一九五六年協定及び議定書が法律的根拠になっておると理解しております。
  79. 伏見康治

    ○伏見康治君 私が了解しているところでは、五六年協定というのはそのさらに前のMDAに関連してつくられていて、非常に長い名前がついているんですが、その中に「防衛目的のため」云々という形容詞がついているわけです。したがって、この秘密特許の問題というものは防衛目的上の技術、科学技術といったようなものだと思うんですが、その防衛技術というのが近ごろ非常に広く解釈されるようになってきている傾向があるわけです。  つまり、以前は防衛目的で特にMDAなんかを考えたときには、実際できている大砲とかレーダーとか飛行機とかいったような非常に具体的な武器の技術であったと思うんですが、近ごろは基礎的な方へだんだん話が広がってまいりまして、一見しては防衛に関係なさそうなことまで防衛という形容詞がつけられるようになってきている。これは非常に恐ろしいことだと思うんですね。  それで伺いたいんですが、この本来のMDAがつくられたときの「防衛」というのは非常にはっきりした武器というイメージがあったと思うんですが、今の段階でつくろうとしているその秘密特許の対象になるようなものの「防衛」、要するに軍事機密というその軍機というのがどういうふうに限定されているのか説明していただきたい。
  80. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 御指摘のとおり、五六年協定の第三条には、「一方の政府が合意される手続に従って防衛目的のため他方の政府に提供した技術上の知識が」云々という表現があるわけでございます。この防衛目的、MDAのもとでどのように取り扱われているかという御質問でございますが、一般的に申し上げますと、防衛目的とは必ずしもただいま御指摘の武器、防衛庁の装備品等に直接関連するものに限られるわけではございませんで、我が国の防衛産業の能力の向上を通じて将来の我が国の装備品の供給能力が向上する、そうしたことによって我が国全体の防衛能力の向上が図られる、こういったようなものも含めて広く考えております。
  81. 伏見康治

    ○伏見康治君 SDIについて伺いたいんですけれども、SDI協定を結ばれる前に中曽根前首相が言われたこと、あるいは後藤田さんが言われたことの中には、基礎研究であるということがたびたび繰り返されていたと思うんですが、SDI関係での共同研究をする際の問題では、今言った防衛関係というのはどういうふうに理解されていますか。
  82. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) SDIの場合でございますと、昨年の七月に結びました参加協定に基づきまして、我が国の参加の対応が律せられていくわけでございますけれども、その際、米側から提供されます情報は基礎技術が多いのではないかという点につきましては、その技術が基礎技術であろうとなかろうと、あるいは武器技術であろうと、汎用技術であろうと、防衛目的のために行われるものであるかどうかという判断、これは日米双方が相談して、これから具体的なケースが起こってきた場合に判断していくことでございます。
  83. 伏見康治

    ○伏見康治君 今私が申し上げたように、中曽根さんも後藤田さんも基礎研究だと言っているんですが、防衛の目的のためというのと基礎研究というのとでは話がまるで違うと思うんですが、そういうふうにいろいろ解釈があいまいになるのは非常に危険だと思うんですね。  今後とも秘密協定をどういう範囲内で受け取るのかという点で、「防衛目的のため」という形容詞の意味をちゃんとあらかじめ限定しておくということが極めて大事だと思うんですが、そういう方針でいらっしゃいますか。
  84. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 我が国のSDI参加の精神につきましては、一昨年の官房長官談話をここで長々引用することはいたしませんが、我が国としても、SDIというものが究極的な核の廃絶に資するものであるという認識のもとに参加の決定を行ったわけでございます。そしてその際に、今御質問の点でございますけれども我が国の防衛技術に資するかどうかというのは当然その関連でも議論がなされたわけでございますが、私どもは、防衛技術というのはいわゆる貿管令別表に書いてございます武器技術というとらえ方はしておりませんで、武器技術も汎用技術も防衛技術として一定の考え方のもとに取り組まなければならないという考え方でございます。したがいまして、私どもは、基礎技術というものに対しては本質的に機密性というものはとらないんだという考え方ではおらないわけでございます。
  85. 伏見康治

    ○伏見康治君 大変なことになってきちゃったという感じがいたしますが、SDIで内容的に申しますと、例えば非常に強力なレーザーをつくるということは一つのやり方として推進されているはずだと思うんですが、私が年をとる前にかかわってきた核融合の研究の中には、強力なレーザー光によって核融合の平和的利用を行うという研究が行われておりまして、極めて強力なレーザーというものを私たちの同僚がっくり上げているわけですが、その強力なレーザーをつくるという意味においては、SDIにお使いになるレーザーと技術的にはほとんど、あるいは完全に一致していると言ってもいいと思うんですね。  それを一方で、それが防衛機密に関連するということでいろんな秘密措置をとられるということになりますというと、平和を目的にした大事な基礎研究までそれに巻き込まれるおそれが非常に強くなってきて、日本の学術研究あるいは世界の学術研究全体に非常に悪い影響を与えることになると思うんですが、その点はどうお考えになっていますか。
  86. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) SDIに参加するかどうかということは、我が国企業等がそれぞれ独自の判断に基づいて行うことでございます。そしてその際に問題となりますのは、米国から受けることもある秘密情報というものをいかに保護するかという問題でございます。  そして、これは当然その企業などが自分の商業的な判断等に基づきまして参加をする。その際に、開示されてはならないという条件でもらいました情報というのは当然これは参加者の方としても尊重しなければならない。その具体的な対応はあくまでも個々のSDI参加契約の中で決まっていくわけでございますが、そういった個々の参加者の行動あるいは米国から受けます条件というものが日本の技術体系全般に秘密の網をかけていくといったような事態にはならないと考えております。
  87. 伏見康治

    ○伏見康治君 その最後の点が守られるように努力していただきたいと思います。  いろいろなことを聞きますが、今包んでいる秘密特許の制度を部分的に日本に取り込むというときには、相手が米国ということになっているわけですが、アメリカさんの威力もだんだん衰えてきたので、例えばイギリスが日本に対して同じような秘密特許の申請をしてくるということがあり得るようにも思うんですが、どうするつもりですか。
  88. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) これは先ほど特許庁長官の方からも御答弁がございましたように、私ども国会の御承認をいただいて初めてこのようなことができるわけでございます。したがいまして、このような制度を結ぶ相手方は米国しかあり得ませんし、また将来の問題としてほかの国と同様の取り決めを結ぶといったことは考えておりません。
  89. 伏見康治

    ○伏見康治君 次に、日本で、実際にアメリカの要請があって何とかしなくちゃならぬというときにどうするのかという手続的なことを伺いたいんですが、アメリカからこれを秘密特許にせいという御要請は向こうのだれが日本のだれに言ってくることなんでしょうか。
  90. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 米国におきましては、先ほど申し上げましたように、これが特許庁長官の指示によりまして秘密保持がかかるわけでございます。そしてそれによって五六年協定と先ほどから我々が呼んでおります第三条に合致する対応で我が国に移転されたもの、特許の出願が行われたものに対しては当然我が国米国におけるのと類似の秘密保持を行うわけでございます。  ただ、御質問の御趣旨が、それでは米国が一方的にどのような技術でも秘密保持という命令を日本に対してなして、日本の特許の制度がゆがんでしまうのではないかということでございますとすれば、それはアメリカが一方的に恣意的にそれを命令することはできません。と申しますのは、三条にございますようにあくまでもこれは「防衛目的のため」という条件が付されておりまして、この防衛目的に合致するかどうかということは両国の政府が協議して決めるということでございます。言うなれば、日本政府アメリカにこの技術を秘密に保持せいと恣意的にやみくもに強制されるということはないということでございます。
  91. 伏見康治

    ○伏見康治君 それでは、アメリカさんがこれは秘密特許にしてくださいと言って袋に入れたものを、日本側が袋に入れたまま表面に受け付けの日付だけ押して預かっておくということではない、中身をよく調べるということだと理解いたしますが、そうすると、審査官というものは防衛秘密的なものを頭の中に入れることになるわけです。したがって、それをもし何かの加減で漏えいしてしまったというような場合の罰則が問題になると思うんですが、その点はどうなっていますか。
  92. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 秘密漏えいの罰則の適用という御質問でございますけれども、実はこの協定に基づく特許出願の実務処理をどうするかということ自体、現在日米間で話し合い中でございまして、したがいまして、審査官が実際にこの協定出願の内容を預かった段階で関与するのか否かも明らかでない現時点でございますので、御指摘のような罰則の適用がどうなるかということはお答えできない状況でございます。  ただ、一般論といたしまして、もともと特許の通常の実務処理におきましても秘密保持の義務はかかっております。すなわち、国家公務員法それから特許法におきまして、通常の特許出願情報につきまして特許庁の職員は秘密保持をする義務をかぶっております。そういう体系にはもともとあるということは言えると思います。
  93. 伏見康治

    ○伏見康治君 先ほどの方の説明と少し違っているように思いますが、要するにまだ折衝中であって決まっていないという理解だと思うんです。  現在の日本の審査官が公務員としての守秘義務的なものを負わされていることはこれは事実だと思うんですが、その中に防衛秘密的なものが入ってきたらば恐らく罪は重くなるんじゃないかと私は想像するんですね。それをどういうふうにおさばきになるおつもりかということを伺いたいわけです。
  94. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 秘密保持ということでは、もともと今申し上げましたようにかぶっておりますし、それ以上に新たに何か立法措置を講ずるかどうかということでは、そういう新たな立法措置を講ずるというような議論、あるいは新たな協定を結ぶというようなことは私はないと理解しております。  現行法の体系の中で、どういった秘密保持関連規定が適用されるかということだと思いますが、その個々の法の適用の細かい点につきましては、実は先ほど申し上げましたように、まだ実務処理のあり方について現在相談中の段階でございますので、具体的に審査官がその辺の法適用にどうかかわるかということは現段階では申し上げられない状況でございます。
  95. 伏見康治

    ○伏見康治君 今のお話のとおり、日本の制度の中で働いておられる審査官が今以上の重大な責任を押しつけられないように、これからの交渉で頑張っていただきたいという希望を述べておきたいと思います。  大分時間を超過いたしましたが、これで終わります。どうもありがとうございました。
  96. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 通産大臣にまずお尋ねをします。  この三月の十九、二十日、急遽西ドイツのコンスタンツにおいて貿易大臣中心とする会合に御出席をされたようでございますけれども、その目的の内容と成果についてまず簡単に伺いたいと思います。
  97. 田村元

    国務大臣田村元君) 私は、去る十八日から二十日までの実質二日間、ドイツのコンスタンツで開かれました貿易大臣会合に出席をいたしました。それは、本年末に予定されておりますウルグアイ・ラウンド交渉の中間レビューをどういうふうに取りまとめたらよいか、実りのあるものにするために自由にいろいろな論点について調整の可能性を探ったものでございます。この会合には先進国十四カ国、それから途上国十三カ国、それにEC委員会と、二十八人の貿易担当大臣並びにガット事務局長が集まったわけであります。  特に申し上げることは三点だと思います。  まず、中間レビューにおいては閣僚の関与、貿易政策レビューなどまずガット機能の強化、それから紛争処理制度の改善を含めることにつきましておおむね合意が得られた、これが一点です。  それから、セーフガードにつきましては、いわゆる灰色措置、例のあの自主規制のようなもの、灰色措置をガットのルールの中に取り込むことを検討することを含めまして今次交渉においてまとめ上げる必要性について意見の一致を見ました。  それから新交渉分野では、先ほどお話のありましたサービス貿易及び知的所有権が取り上げられまして、交渉開始当初は消極的、むしろ反対といいますか対応を示しておりました発展途上国ではありましたけれども、先般の会合におきましては、途上国は初めて交渉に応ずる姿勢を示したということであります。  この会合によりましてウルグアイ・ニューラウンド交渉に一層の弾みがつくことを期待しております。  それから、びっしりの会議でございまして、いわゆる俗に言うバイの会談等をやっておる時間的余裕がなかったということで、何しろ私は最後のまとめのときにまことに我が日本としてはマイナスだったかもしれませんけれども、途中で中座しなければならなかった、日本へ帰る時間的な問題、国会がありますから。そういうことで途中で立ちましたが、非常に私は行ってよかったとつくづく思っております。もし日本があれに行かなかったら、恐らく相当厳しい批判が噴き出しただろうというふうに思っております。
  98. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 通産大臣にお伺いしますが、一つは米の包括通商法案についてでございますが、これは報道また議会でもいろいろと論議をされておられるところでございますけれども、今後この米の包括通商法案というものが三月末――昨年四月に下院を、そして七月には上院を通過しておりますけれども、両院の協議会でもいろんな論議が出ているようでございます。今年の三月十五日には米上院、そうしていろいろと検討されているようでございますけれども、これらの関連する一つはスーパー三〇一条、上院の案について、また関連法の三三七条について等々ございますけれども、総じて今後の見通し、経過、日本としてどう対処すべきなのか、こういうところをまずは事務当局に伺って、最後に大臣の御見解をあわせてお願いしたいと思います。
  99. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) 米国の包括貿易法案の審議状況等でございます。  米国内におきまして、御案内のとおり現在両院協議会において本件の審議を行っておりますが、これまでのところ昨年九月に両院協議会が設置されたものの、余り進捗はしておりませんでした。先月より再度両院協議会の審議が活発化してまいったところでありまして、今後の見通しにつきましては、いろいろな見方はございますが三月中、三月の二十三日ということを言っている人もおりますし、場合によりましたら一カ月ぐらいずれ込みまして、四月の末あたりに行政府と立法府との間の実質的なネゴが行われるというようなことを言っている方々もおります。  いずれにいたしましても、これからフェーズツー、向こうの用語でございますが、第一段階、第二段階に審議内容を分けておりまして、その第二段階に差しかかっているところでございます。
  100. 田村元

    国務大臣田村元君) 今、吉田次長から御答弁を申し上げましたような経過でございますが、あえて私から今後の見通し、中身を含めてちょっと申し上げますならば、昨年、あれは十月十九日のブラックマンデーにおける株式の大暴落、それからその後で保護主義的な貿易法案は世界経済を混乱に陥れるんじゃないかという考え方がアメリカの国内で強まってきました。特に最近、アメリカ貿易収支改善が著しいというような好材料もあります。でございますから、保護主義的な法案が果たして成立するだろうか、私はアメリカの良識を信じたいのでありますが、これだけは何とも言えませんけれども、そういう好材料があるということだけは言えるでありましょう。  ただこの場合、だからといってアメリカの議会は非常ないら立ちといいますか、新聞で使う言葉で、新聞用語を私がおかりするならば、いら立ちというものが強いようでございますので、もし不幸にして保護主義的条項が含まれたまま通過した場合、大統領の拒否権を期待せざるを得ない。現にアメリカ政府も一月の日米首脳会談の折に、レーガン大統領が保護主義法案に対しては拒否権を発動するという保証をしました。保護主義法案には反対の態度を行政府はとってきておるということで、今後ともアメリカ政府に対する働きかけを続けてまいりたいと思っております。  そこで私は、いい機会でございますので一つだけちょっと申し上げたいのでありますが、先般もヤイター代表とも会いましたが、お互いに言うことは同じなんです、アメリカの行政府は反対なんですから。こういう保護主義に対して反対なんです。ただ議会が騒いでおる。でございますから、私ども日本政府所管大臣といっても働きかけに限界があります。  私は、昨年の東芝問題以来本当に痛切に感じておりますことは、アメリカのみならずヨーロッパでも、あるいはASEA Nでもそうですけれども、今こそ日本は幅広い、しかも中身の深い議員外交というものを展開することが何より必要じゃなかろうかと私は思うんです。議員同士がフランクにやあやあと言っていろんなことを胸襟を開いて話し合う、議員同士ですから公的な責任は生じませんから。そういうふうにしてお互いの距離を縮めていくということは本当に必要だとつくづく思いました。私は大臣をやめたら議員外交に徹してやろうとすら思っていますが、つくづくそれを感じました。これは与党野党言いません。でございますから、どうぞこれからも皆さんにおかれても事あるごとに議員外交をよろしくお願いしたいというのが私の今度の抱いたあるいは一番大きな印象かもしれません。
  101. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 時間がございませんので、経企庁長官にはまた後日にさせていただきまして、公取委員長に一問だけお願いしたいと思います。  円高差益の還元、そういうふうな中で政府の規制緩和の分野が非常にウエートを占めている。まああらあら言えば四〇%ぐらいになっている。そういう中で、政府の規制緩和をするということも一つの大きな政策次元の問題である、こういうふうに私は考えるわけでございますが、その件について公取ではどういうふうに今後対処しようとされていらっしゃるのか伺いたいと思います。
  102. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 政府規制全般についての当委員会の考え方というお尋ねかと存じますけれども、御案内のとおり政府規制の見直しという点につきましては、私ども承知しております範囲で、一九七〇年代の後半から先進諸国におきましてこの動きが非常に積極的に見られるようになったわけであります。我が国におきましても、ちょうどOECDの理事会の勧告が出ました一九七九年の二、三年後だったと思いますけれども、当時の当委員会政府規制全般につきまして競争政策全般からの考え方をまとめました。  その後、政府全体の取り組みといたしましては、さきの臨時行政調査会なり行革審の作業を通じまして、今日例えば電気通信事業の分野とか、あるいは航空、金融等についてかなりの前進が見られておるわけでございます。  ただ、この政府規制、我が国にとりましても今後できる限り経済全般に市場原理を導入していく、かたがた市場の国際化を通じまして国際的な要請もあるわけでございます。この問題につきましては、もちろん政府規制の背後にはそれぞれの政策目的があるわけでありまして、したがいまして、しかも制度として定着しております限りではこれの規制緩和というのはかなりやはり時間を伴う作業であることをお互いに覚悟しなければならないと思います。したがいまして、それぞれの政策についての見直し、その合意――この合意といいますのは、必ずしも政府部内の合意に限りませず、むしろ大事なのは社会全般の私は合意が背景にあることが一番大事だと思うわけでございますが、たまたま現在政府も全体としてこの規制緩和に取り組むという観点から、今度の行革審でこの作業が現在進められておるわけであります。  これは非常に注目すべき作業だと私どもも考えておりまして、もちろん競争政策としてこの作業あるいは各省との関係を通じまして意見の調整を図りながら、できる限り政府規制というものが、不必要なものはなくしていく、必要なものも最小限度にとどめるという考え方で臨んでまいらなければならない問題であると考えております。
  103. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 公取委員長にもう一点だけお伺いしたいんですが、そういうふうなことで公的規制の実態調査、六十三年度に実行をされる、していかなくちゃいけないわけですが、この調査内容の公表の段階というのは、そういう期日というのはどの程度限定されていらっしゃるのかおわかりであったら伺いたい。
  104. 柴田章平

    政府委員(柴田章平君) 私ども、今委員長答弁申し上げましたように、昭和五十七年度に政府規制の緩和について全体的な考え方、対応のしぶり、あるいは取り組みの姿勢について意見を発表してまいりました。その後、この意見をベースにいたしましてそれぞれ各関係団体あるいは関係業界あるいは関係省庁がどのような動きをされるのかということを、動きをしながら、あるいは場合によってはそれぞれの関係者と私ども協議をして、なるべく規制が緩和されるようにいろいろ私どもなりに努力を続けてきたということでございます。  その流れの中で、六十三年度においても、今委員長申しましたように新しい行革審の審議を踏まえながら、我々としてもさらにより一層の努力が要求されているところでございまして、そういう意味で六十三年度にはさらに関係業界の実態調査なりあるいはどういうふうに緩和していくかということを取り組むわけでございますけれども、現段階においてどういうふうな対応をするか具体的なプログラムはまだ模索中でございまして、どういうふうなタイミングで対応するかということについて今この段階で御返事申し上げるのは御容赦をいただきたい。  ただ、なるべく行革審の方も一年ぐらいのスパンをにらみながら作業を進めていらっしゃいますので、私どももその作業の動向は十分に参考に置きながら作業を進めていかなければいけない、こういうふうに考えております。
  105. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 時間が来ましたから……。
  106. 市川正一

    ○市川正一君 本日は往復で三十数分という短い時間でありますので、最初に北九州市の白島石油備蓄基地の問題から伺いたいと思います。  この問題は昨年の五月二十五日、本委員会で私が、ここに議事録もございますが、現場写真もここでお見せをいたしました。そして防波堤の損傷事故を起こした白島石油備蓄基地の問題としてただしました。その際、原因究明の結果を待って対処したい、こう政府は答えられました。また、調査報告書は昨年八月に出るとも言っておられたんでありますが、現在どのように相なっておりましょうか。
  107. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 白島国家石油備蓄基地のその後の検討状況でございますけれども、昨年御質問いただいてから我々応急工事及び原因究明を実施いたしてきております。  まず応急工事につきましては、ことしの冬を乗り越えますために被害拡大防止という観点から必要最小限の工事を実施いたしました。その工事が五月から十二月初旬までかかっております。具体的には、破損あるいは水没いたしましたケーソンを撤去し、あるいはその撤去したものを新造いたしまして据えつけをするとか、あるいはマウンドの補修をいたしますとか、あるいは移動いたしましたケーソンの砂積みをいたしますとか、そういう応急工事を実施してきたのが一つでございます。  それからもう一つの原因究明でございますけれども、通産省といたしましては石油公団を通じまして白島石油備蓄株式会社を指導いたしまして、その原因究明に当たらせてまいりました。  それで、具体的には被災状況をまず把握いたしまして、かつ当時の気象、海象の状況を把握するとともに、来襲いたしました波浪の推算をいたしました。かつ設計及び施工管理状況調査、さらには被災施設の耐波性の検討及び水理模型実験の実施等を行ってまいっております。  その中で、例えば水理模型実験を行いますについて、二次元の特定の断面につきまして波が来た場合にどういう影響があるかというふうな実験につきましても、例えば四月から九月いっぱいまでかかっておりますし、三次元、これは特定の角の部分でございますけれども、その部分についての波の影響ということを実験いたしますにつきまして、六月から十一月の半ばごろまでかかっております。したがいまして、当初予定を申し上げました期間よりは実験等に多大の時間を要したというのが実態でございます。それらの結果を取りまとめまして、三月十二日に会社側から港湾管理者でございます北九州市に報告書を一応提出をいたしまして、三月十九日、先週に一応受理をされております。  それで、その過程の中で石油公団といたしましては、白島国家石油備蓄基地計画対策委員会という委員会を設置いたしまして、昨年の三月十九日から一番最近時点ではことしの三月十四日に至りますまで、七回にわたって専門的な見地から被災原因の把握を中心に検討を行ってまいっております。  他方、通産省といたしましては、常時石油公団と緊密な連絡をとりまして原因の客観的な把握に努めるよう公団及びそれを通じての会社を指導してまいったわけでございます。  それで今後の方向でございますけれども、今申し上げましたように原因究明の会社側としての報告書を北九州市に御提出いたしておりますので、北九州市の方で許可権者としての立場から総合的な検討が行われ、その結果最終的に被災原因が確定するという手続になっていくものと理解いたしております。
  108. 市川正一

    ○市川正一君 長々と四分にわたる経過なんだが、十三日付の西日本新聞その他によると、その報告書の内容は、事故は天災、設計見直し必要等々報道されております。報告書の内容は一体どういうものですか、簡潔に述べてください。
  109. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 報告書の概要でございますが、まず防波堤の設計に関しましては、完成時設計波三分の一有義波高で六・一メートル、施工時設計波四・〇メートルということで作業を進めてまいりましたけれども、来襲いたしました波浪は三分の一有義波高で五・五メートルないし六・五メートルということで、設計の前提となっておりました波高を大幅に上回るものが長時間にわたって来襲したというのが第一の問題点でございます。  それから施工に関しましては、越冬断面は施工設計波のみならず既往の最大波高、これは三分の一有義波高で五・〇七メートルでございますけれども、それに耐えるという安定計算を確認した上で越冬断面の工事を了したものでございますけれども、今申し上げましたようにこれをも越える高い来襲波が長時間にあったということでございます。それから品質出来高管理につきましても、基準に基づくとおりの実施が行われていたかどうかということをチェックをいたしましたけれども、いずれも満足をする結果になっております。  したがいまして、結論といたしましては、設計波高を上回る異常波浪が長時間にわたって防波堤に来襲したことが原因である。また安定性の低い施工途中であったということが被災を大きくしたというふうな結論になっております。
  110. 市川正一

    ○市川正一君 あなたが今引用された幾つかの数字、いわゆるデータは、私が去年の五月にそれがいかにずさんなものかということをいろいろここで論証した問題なんです。  そこで、報告書の概要なるものはいただきました。八ページのものです。しかし、これではわからぬのです。これでは本当のことが出てこぬのです。結局、八ページのわずか数行のそのところが結論ということになっておるので、実態を明らかにするためにも、正式の報告書の写しを資料として提出してください。
  111. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 御説明申し上げておりました概要でございますけれども、これは報告書の結論の部分をお届けしておるものでございます。それで、この備蓄基地の被災の実態にかんがみ、かつその重要性にかんがみまして、原因を調査しその結果を広く公表するということは基本的に必要なことであると考えております。けれども、現段階の作業状況を御理解いただきたいと思うわけでございますが、先ほど申し上げましたように、備蓄会社が許可権者としての北九州市の指示を受けて究明作業を行ってきて、とりあえず報告書を提出したということで、今後北九州市においてこの報告書の分析、評価が行われ、同市が許可権者としての立場で判断をされるものと聞いております。  したがいまして、会社の報告書は原因究明全体の作業の中のいわば中間段階のものでございますので、今後市における検討の過程でいろいろ追加や補足等の可能性もございますので、そういう検討を経た上で報告書を確定していくという手続でございます。  したがいまして、基本的には公表すべきであるという考え方に立っておりますので、そういう手続を了して内容が確定した段階では公表することが適当と考えておりますので、その段階で公表するように会社側に対して検討をさせてまいりたいと思っております。
  112. 市川正一

    ○市川正一君 先ほど来聞いておりますと、許可権者、許可権者と言うて全部北九州市側に問題を押しつける姿勢というのがありあり見えております。その問題については後で触れますけれども、私どもは前回の質問で、我々の入手できる範囲で根拠を挙げて計画のずさんさを指摘して、中止を求めてまいりました。この間、一体通産省は何をしたか。石油公団に設置した委員会で何をやってきたか。具体的なその成果があるならば示してください。あなた、公開すると言っているんだから、ここで何をやってきたかということを簡潔に報告してください。
  113. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 先ほども申し上げましたように、公団における委員会を七回開催いたしてきておりますけれども、その開催あるいはその中間の検討において通産省は公団と一体になりまして細かい点に至るまで検討をいたしております。  したがいまして、公団任せということでは当然ないわけでございますけれども、例えば初めの三月十九日に実態把握に入りまして、五月十五日、七月二十九日、十一月十三日、十二月一日、三月四日、三月十四日という七回の中で、それぞれの調査、原因究明の節々に応じての問題、例えば二次元水理模型実験の検討が進んでまいりますとそれをどう考えるべきか、あるいは三次元の結果が出てまいりますればどうそれを把握すべきかというふうなことを、原因究明作業の進捗に応じて節々で議論をしてまいっておるというのが委員会状況でございます。
  114. 市川正一

    ○市川正一君 じゃ、それだけあなた方としても積極的に対策をとってこられたとおっしゃるならば、この正式の報告書の写しをどうして資料として国会に提出できないんですか。
  115. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 御指摘のとおり、最終的に御提出申し上げるというのが基本方向でございます。ただ、我々としては、いろいろ議論をいたしてまいりましたけれども、全体の作業が完了したところでお示しをするというのが議論の混乱を呼ばないで適当ではないかということで、その作業が完了いたしましたところでお示しを申し上げたいと思っております。
  116. 市川正一

    ○市川正一君 それは、結局臭い物にふたをしてその経過を知らしめない、結果だけを押しつけるということじゃないですか。  内藤さん、あなたは覚えていらっしゃると思うんだけれども、前回の私の質問にあなたは何と答えられたか。ここに会議録がありますが、「現在の工学水準で推定され得る限りでは、百年安全ということが計算上確認をされておる」と、こう大みえを切ったじゃないですか。そういう現在の工学水準でいわばその粋を集めた最高の百年安全という、そういうたんかを切ったものがそうでなかったんですよ。だとすれば、それに必要なデータは、その経過において公表すべきですよ。私たちもそれなりに研究します。それなりに問題を分析してやはりこの問題についてはっきりしなければならぬわけですよ。  しかし、報告書の結論が伝えられるように天災であり設計変更だということであれば、内藤さんが前本委員会で言われた立場、つまり通産省の立場に立って、今回の事故を見てみると、現在の工学水準では推定不可能な事故であるということに論理の結論としてならざるを得ぬと思うんですが、とすればこのプロジェクトは中止以外にないと思いますが、いかがですか。
  117. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) このプロジェクトを始めました段階においての工学水準の最高の水準判断をしたというふうに理解をいたしておりますけれども、その後、さらに工学水準が一般的に進歩したというふうに言われておりますので、その進歩に基づきまして改めてその実態に応じた対応策を検討してまいりたいと思っております。  したがいまして、先生指摘の臭い物にふたをするという気持ちは全くございませんので、その経過を含めた中間の検討の資料もすべて報告書の中に入っておりますから、それは公表申し上げる段階で御理解をいただけるのかと思っております。
  118. 市川正一

    ○市川正一君 今必要なんですよ。これから継続してやっていくのか、それともここで打ち切るのか、そういう判断をするために今必要なんですよ。今出すべきですよ。どうですか。
  119. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) ただいま先ほど来先生から御指摘をいただいております事態につきましては、私ども決して拱手傍観をしておるつもりはございません。原因はともあれ、こういう事態が発生をいたしておりますことにつきましては、非常に責任を感じているわけでございまして、原因の究明等につきましては、本当に誠心誠意取り組んでいかなければならないと思っているわけでございます。  当初、設計が行われましたときには、ただいま先生が引用されましたような考え方もあったわけでございますけれども、ともかくも結果は御承知のとおりでございますので、真剣に取り組まなければならないと思っております。  報告書全文につきましては、ただいま石油部長からも御説明申し上げましたように、今後さらに補整とか追加とかこういったものがあり得るものでございますので、最終的に関係者間で合意ができましたものを全文公開させていただきたいと思います。  ただ、それまで待てと言うのかという御指摘でございまして、先生の御指摘もよくわかりますので、私どもの一つの努力といたしまして、この報告書のエッセンスといいますか、かなりまとまったものになると思いますが、要約をお届け申し上げたいと思いますので、それでしばらく事態の推移を見ていただけないものだろうかと思うわけでございます。
  120. 市川正一

    ○市川正一君 わかりました。  ただ、今やはり引き続きこのプロジェクトを継続して進めるべきなのか、それとも今ここで断を下すべきなのかという判断がこのデータの中に私は含まれていると思う。ですから、我々も研究すべきだという責任を感じてこれを要請しておりますので、この点はひとつしかと受けとめていただきたい。  そこで、問題を進めたいと思うんですが、政府は最近、石油の国家備蓄基地建設計画を変更しております。ところが、なぜか白島については見直しの対象にしておりません。もう一つの長崎の上五島はこれはことしの秋できるんですから、完成目前ですからそれなりに理解できますけれども、白島については筋が通らぬと思うんです。  私は、今回のこの措置は去年の十一月十三日の総合エネルギー調査会と石油審議会の報告、ここにございますが、その中に「備蓄による需給上の効果、あるいは産業への影響等備蓄の必要性を国際的な動向をも踏まえ勘案し、見直し」、こういうふうに明記されております。これに基づいて先般のこの変更が行われたとするならば、私はここでエネルギー需要の議論をやろうという意味は毛頭ありませんが、まさにこういう趣旨であるならば白島こそ見直しの対象にし、そして計画を中止すべきであると思いますが、いかがでしょう。
  121. 内藤正久

    政府委員(内藤正久君) 国家備蓄基地は御承知のとおり、三千万キロリットルの国家備蓄を貯蔵するための恒久施設といたしまして貯油率七五%で四千万キロリットルの合計になります施設を全国十カ所で建設いたしておりますけれども、その建設計画の見直しを先生指摘のとおり、昨年十一月の総合エネルギー調査会、石油審議会、石油備蓄小委員会の提案に基づきまして実施をしたものでございます。  そこの考え方は、「基地建設の効率性を考慮し、引き続き着実な工事の推進を図るべきである」が、国家備蓄基地のうち一部については用地造成のおくれ等から計画に比べて工事がおくれていることを踏まえ、「効率的な建設を行うとの観点に立って、各基地の実態を踏まえつつ建設計画を見直し、完成目標年度を繰り延べることが適当である」ということで、実態に即した無理のない建設を進める。他方、備蓄の三千万キロリットルへの積み増しは予定どおり実施するということで基地建設の繰り延べを一部提言しておりますけれども、それにのっとりまして、最高六十九年度まで約四年間の一部繰り延べを決定したものでございます。  それで、先生指摘の白島でございますけれども、先ほど来論議になっておりますように、被災原因の究明作業を実施しておるということでございますので、その原因が確定いたしまして、かつその上で安全性を踏まえた克服策のあり方を検討し、その上で経済性の検討をするというプロセスを経た上でその取り扱いが判断されるものであると理解いたしておりまして、現時点においてはそういう判断がまだプロセスの一過程でございますので、判断を行うことは不能であるということから触れなかったものでございます。したがいまして、計画を変えないという意味ではございません。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたようなプロセスを経て工事継続ということにもしなりますれば、その段階で初めてスケジュールを見直すという段取りでございます。
  122. 市川正一

    ○市川正一君 私が言っているのは、今政府自身がそういう、ここに一覧表がありますが、国家備蓄基地建設の計画変更という問題と取り組んでいるわけですね。だとすれば、これだけ事故を起こし災害を起こしたところの白島については、やはり見直すというのが当然の最小限の前提じゃないですか。引き続き計画どおりやっていくというんじゃなしに、当然これについては見直すという、そういう言うならば一時再検討の時期を置いてしかるべきじゃないですか。その点はどうなんですか。
  123. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) ただいま石油部長からも御説明申し上げましたように、現在原油ベースで三千万キロリッターの国家備蓄を達成する、さらにそれを国家備蓄基地に収容するという目標に取り組んでいるわけでございます。現在行いました見直しは、工事が進んでおりますものにつきまして、それぞれの実態に応じまして完成時期を変更する、完成時期を後ろへずらすという形の見直しを行ったものでございます。  今御論議の対象になっております白島の石油備蓄基地につきましては、局面が違っておりまして、ただいま先生が御主張になるような見方もあるわけでございます。私どもといたしましては、現在進行中の原因究明の作業が終わりましたところで、安全性という観点から考えればどういう手直しが必要なのかという検討も行われるわけでございますし、またそれに即して経済性を考えてみた場合に、ほかの選択肢はないものだろうかというような判断もあるわけでございまして、現在の見直しとは基本的に性格の違うものでございます。そういう意味で見直しの対象にいたしておりませんけれども、ただいま石油部長が申し上げましたような姿勢で今後この取り扱いにつきましては真剣に考えていくというものでございますので、御理解をいただければと思います。
  124. 市川正一

    ○市川正一君 浜岡さんのおっしゃる意味はわかります。要するに見直しという次元と違った意味で、言うならば今のお言葉をおかりすれば、真剣にどうすべきかということを検討している、そういう過程だと、こういうふうに理解していいわけですね。
  125. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) そのとおりでございます。
  126. 市川正一

    ○市川正一君 そこで、先ほど来お言葉が出ておりました許可権者という問題に関連して事柄をはっきりさしておきたいと思うんであります。  報告書は、許可権者である北九州市に提出された、そして許可権者である北九州市がこれを今検討していると、だからそれを待ってという姿勢が冒頭の内藤部長答弁の中にも繰り返しありました。しかし、私は本来これは国としても独自の検討と判断が求められている問題だと思うんです。  なぜならば、このプロジェクトは国の計画です。また石油公団やあるいは公団が出資した会社が事業の主体になっておる。そして国の予算も既に五百億を超える巨額な費用がここにつぎ込まれている。つまり、今後の方針を決めなければならないのは北九州市ではなしに、まさに国です。また、許可権者が北九州市だとおっしゃるんだが、それはたまたま港湾法や消防法に基づいて審査を行おうということなのであって、しかも前例のないこういう大事業の場合、北九州市は当然のこととして運輸省とかあるいは消防庁と協議し、その指導のもとに行っているわけですね。だから、どこから見ても事実上大きな責任というのは国にあるということは明白である。  そうしますと、この事業がもし中止になるならば、北九州市は既に百六十億円の資金を投入していると言われております。この資金を含め、与えた損失に対する補償は国として誠実に行わなければならないことはこれは当然の前提になるわけでありますが、国が計画を撤回すれば許可権者としての北九州市、こうおっしゃるけれども、その許可権を行使する対象がなくなるということだけのことで、残るのはあとは国のプロジェクト、この計画なんですね。  そこで、話を進めたいんでありますが、私はこの際将来に及ぼす損害、被害あるいは影響などを考えるならば、国の側が今までのいきさつなどに固執するんじゃなしに、高い事業費ではあったけれども、今この時朝にこそ計画を中止すべきである、こう思うんでありますが、いかがでございましょうか。
  127. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 石油部長が許可権者という表現を用いましたのは、いみじくもただいま先生が御指摘になったような意味合いで引用いたしましたわけでございまして、特別の意図が含まれているものではないことを理解をしてやっていただければと思います。  基本的には、先生指摘のようにこのプロジェクトは国家備蓄基地でございますから、国といいますか、あるいは通産省の意思というものが働いていることは私ども決して否定するつもりはございません。ただ、今先生指摘のように既にかなりの額が投下されておりますし、また進むにいたしましても、あるいは退くにいたしましてもそれぞれ相当の経費がかかるわけでございまして、やはり安全性という観点から見ました専門家の判断というものを十分踏んまえながら、その上に立って進む場合、退く場合の経済性というものもにらみ合わせて、最終的には私どもが責任を持って考えなければならない問題だというぐあいに思っております。  今の段階ではその判断をするだけの材料が出そろっておりませんので、先生のおっしゃるような決断をするわけにまいりませんけれども、先ほど来繰り返し申し上げることになりますけれども、どうするかということにつきましては真剣に責任を持って取り組んでいかなければならないと思っているわけでございます。
  128. 田村元

    国務大臣田村元君) まことに申しわけのない大事故でございました。今市川委員いろいろとおっしゃいましたが、私も一々ごもっともと思って伺っておりました。  ただ、長官が申しましたように、進むにしても退くにしても巨額の費用を必要とする。仮に中止をするとしてもそのときにその施設をどういうふうにするのか。撤去をしなきゃならぬというような問題もありましょう。いろんな問題ございます。しかも国民の巨額の血税というものがつぎ込まれておるわけでございますから、やはりその原因の究明というものを徹底的に行ったリポートを踏まえて、そしてそれをまた土木工学的にも政府においても検討をしていうぐらいの慎重さは私は必要だと思うんです。  特に北九州市は、ちょっと仄聞するところによりますと二、三カ月以内ぐらいに結論を出したい、そのように努力をしたいということのようでございます。二、三カ月以内に結論が出るかどうか私は率直に言って知りませんけれども、そういう努力をしておるそうでございます。でございますから、それほど長い、来年だ、再来年だというわけじゃないわけでございますから、やはり国民にこれを、経済性、安全性いろいろありますが、その前に国民に納得をしていただくような私は報告をしなきゃならぬと思うんです。そういう点はどうかひとつ御理解を賜りとうございます。
  129. 市川正一

    ○市川正一君 前回の本委員会大臣も、これは大変なことでちょっと驚いております、調べましょう、こう答えられている。そして、今この段階まで参りました。私は、この調査報告書に基づいて文字どおり政治的勇断といいますか、決断をすべきときだ、こう思います。  連想いたすのはあのさまよえる原子力船「むつ」の問題であります。廃船すべきだという強力な意見が与党自民党内からも出てまいりました。時の科学技術庁長官は亡くなられた岩動さんだったと私記憶しておりますが、まさにあのとき決断が必要だったと思うんでありますが、私は田村通産大臣が今こそこの問題について勇断をされることを、そして後世に国民に立派な決断をされた大臣としてその名が残りますように切に期待をいたす次第であります。  時間が参りまして、私実は通産大臣所信表明の中の中小企業の問題で質問をいたすつもりでありましたが、あと残す時間は三分でありますので、一問だけお伺いいたしたいのは、田村通産大臣輸出型産地中小企業の実態が依然としてはかばかしくないというふうに述べられておる問題について、実はいろいろお聞きするつもりだったんでありますが、新潟県の燕市の金属洋食器などの業界で、三月十日の朝日新聞が「円高苦境で能率向上裏目 指失う事故急増 昨年九十三人が百五十二本」という報道をいたしております。  これ自体極めてショッキングでありますけれども、この数字は必ずしも全体を把握し反映しているとは言えないというふうに現地で申しております。というのは、この調査の中には主人が一人で仕事をしているところ、夫婦で仕事をしているところは含まれていないからであります。  労働省は、事業主からの報告や届け出だけを待つんではなしに、こうした零細な業者の実態を積極的に調査して適切な指導を行うべきであると思いますが、労働省として零細な下請業者にも徹底するための具体的措置をとるためにどういう取り組みをなすっていらっしゃるか最後にお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  130. 北山宏幸

    説明員(北山宏幸君) 三条労働基準監督署が管轄をいたします燕それから三条市というのは御承知のとおり洋食器の産地でございまして、プレスによる金属製品の加工業者が非常に多いということでございまして、従来から私ども労働基準監督署の最重点の施策といたしまして監督指導を強化していたところでございます。  プレス機械作業に従事しております一人親方であるとかあるいは夫婦だけで仕事をしている方々などにつきましては、御指摘のとおり労働安全衛生法の適用はないものでありますけれども、このような作業に従事している方々の大部分はいわゆる家内労働法の家内労働者として適用があるのではないかというふうに思われるわけでございます。それで、このような家内労働者の安全性の確保につきましては、従来から委託者における自主的災害防止協議会の設置、こういったことにつきまして指導を行いますとともに、家内労働者に対しても災害防止に関する意識の高揚を図っているところでございまして、今後ともこういった方々の災害防止について鋭意努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  131. 市川正一

    ○市川正一君 終わります。
  132. 井上計

    ○井上計君 経企庁長官並びに経企庁の方々に質問というよりきょうは実はいささか勉強したいと思いましてお尋ねをしたいと思いますので、どうかセミナーのつもりで、ソフトでまた遠慮なく率直にひとつお話をいただければと、こう思います。    〔委員長退席、下条進一郎君着席〕  一昨日の長官の当委員会での所信表明の中で、「新たな経済計画の策定」という中でこう述べておられます。「新しい経済計画においては、経済構造の調整を一層強力に推進し、内需主導成長への転換・定着を進めることを基本方向としつつ、主要な政策課題として、第一に経済発展の成果を国民一人一人の生活に十分生かし、豊かさを実感できる国民生活を実現すること」、以下第二、第三とお述べになりました。  現在、我が国経済大国になったということはもう一様にみんな言っております。ところが現実の問題として、国民の大多数が豊かさを実感として全く受けとめていない。経済大国になったけれども一向に我々の生活はよくならない、こんなふうなことが随分と言われておるわけでありますが、確かに私自身考えても、本当に経済大国になった、実質的になったんであろうかと考えると疑問に思う点が幾つかあるわけですね。  そこで、経企庁としてはこの理由はどの辺にあるのか、あるいはまたどういう部門が経済大国にふさわしくない、国民生活に豊かさが実感として味わえない理由であるのか、それらについてひとつ教えていただきたい、こう思います。
  133. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 井上先生の御指摘でございますが、井上先生の御勉強に値するような答弁はできかねるような感じさえいたしますけれども、私も所信表明の中で申し述べたことでございますから、私なりの答弁をまずさしていただきまして、恐らくアイテム、アイテムによって私の答弁足らざるところがあると思います。その点は政府委員に答えさせますけれども、よろしくお願いいたしたいと思います。    〔理事下条進一郎君退席、委員長着席〕  大体我が国の一人当たりのGDPは、特に近時の円高を反映しまして為替レートで換算するとまさに委員指摘のとおり世界最高水準になったわけでございます。ちなみに円高状況を考えますると、かつて六位ぐらいであった日本は、今やスイスの一位を抜いておるとさえも言えるわけでございまして、そういう点では実態はそのとおりでございます。  しかしながら、住宅社会資本等の整備の状況とか、あるいは長い労働時間、また高い食料品価格などを見ますると、欧米諸国に比べてかなりまだ劣っている面が率直に感じられます。この結果、国民の充足感はそれほど高くないという御指摘のとおりに感じておられるんだなという私どもも感じは率直にいたしております。
  134. 井上計

    ○井上計君 今大臣、明確にお答えいただきましたが、社会住宅資本の整備のおくれ、それから確かに長い労働時間、これも労働時間のことも所信表明の中でお述べになっておりますが、それから高い食料費と、三点お述べになって、大体この三つがやはり我が国はまだ豊かさを味わえない最大の理由、私もそのように思います。  そこで、高い食料費というふうなお話がありましたが、けさほど梶原委員質問の中でも円高差益の還元の問題が出ております。確かに昨年の春ごろまでは円高不況だとか円高デフレと随分言われておりました。ところが、夏、秋以降、特にことしの正月ごろは円高不況という文字は新聞にもほとんどなくなりまして、円高好況、円高景気というふうなことが随分言われるようになってまいりました。わずか半年ぐらいのうちでうんと変わったなという強い私も印象を持っておるんですが、これはお世辞を言うわけじゃありませんが、政府円高政策よろしきを得たと、これは評価をしております。同時にまた、この円高に対応して我が国産業界が、特に輸出関連産業が非常に努力をしたというふうなことのあらわれであろうと、こう思います。  よく言われておるように、自国通貨が弱くなって栄えた国はないと、こんなことを私も聞いた記憶がありますし、また経企庁首脳が言われたことがあるようですけれども円高性善説、確かにそうだなという感じが最近しておるんですね。ところが、やはり円高の還元がそれほどまだ十分でないということについても否定できない。  これは経済企画庁監修になっておりますが、こういうふうなパンフレットをお出しになっている。確かにこれを見ると、一般の人はああ随分と円高還元されているな、しかし私はそれほど円高の恩恵をこうむっていないというふうに思っている人があるんではなかろうかと、こう思いますが、けさほど梶原委員質問にもかなりお答えがありましたから簡単に申し上げますけれども、特に去年の資料でいきますと、六十二年度の四月―九月期が七〇%の還元率、十月―十二月期は九〇%の還元率と、こうなっておるんですね。ところが、さらにこの資料でいきますと、輸入構造の変化で製品が随分とふえておるんですが、食料品だとか原材料はそれほどふえていないという数字になっておるんですね。その辺のところはどんなふうなお考えでおられるのか、ひとつお伺いをいたしたい。  さらに、差益還元率が、今申し上げたようなこの資料にありますが、十―十二月期は九〇%の還元率でありますが、じゃ食料品で見るとどれぐらいの還元率なのか、あるいは製品の還元率はどれぐらいなのか、原材料の還元率はどれぐらいなのか、もしそういう資料がおありでしたらお伺いをいたしたいと思います。
  135. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 資料も用意はございますけれども、後ほどこれはちょっと数字的な問題になりますから政府委員にお答えさせたいと思います。  まず円高メリットは、一昨年来の累次にわたる対策等によりまして還元策は相当に尽力をいたしました。おおむね順調に物価に反映されているものと私どもは考えておるわけでございますが、先ほどの御指摘にもございましたように七割方、厳密に言うと六九・六%というような還元率がアベレージとして考えられるわけでございます。  例えば、我が国消費者物価の上昇率は過去二年続けて一%を切るというような極めて落ちついた動きを示しております。ただ、原材料費などの低下を通じます円高効果は、薄く広くタイムラグも持っておる。そのタイムラグというのが大体二から二・四半期半ぐらいのタイムラグだろうと思っておりますが、を持ってあらわれるということと、また一部ブランド品につきましては、これは言いにくいことではございますけれども、高級品イメージの維持のために値下げされないという面もこれは否めない事実でございまして、さらに国内制度等に絡むいわゆる内外価格差の問題などもありますことから、消費者にとって必ずしも円高のメリットをそのまま実感として痛感している人はいないという御指摘は当たろうかと思っておるのでございます。  いずれにいたしましても、政府としては為替レートのまず動向をじっと見極める必要がある。それから、公共料金についての差益の的確な反映を図ること。さらに、消費者等への広範な情報提供、これは日本だけの広範なPRではなく、対アメリカの市場に対しても日本のニーズに対するPRをする必要があるということなどを通じまして、円高差益の一層の還元に私ども努力をするつもりでございます。さらに時間のかかる問題ではございますけれども経済構造調整あるいは規制制度の見直し、あるいは古い慣行の見直し、あるいは輸入の拡大等を通じまして内外価格差の縮小に努めることが極めて重要であると考えております。  それから、お尋ねの食料品の問題でございますが、食料品、製品等の具体的品目の円高差益の還元につきましては、輸入消費財価格動向調査によりますると、輸入コストの低下がおおむね順調に価格に反映されているものとは考えておるのでございます。このことについて、先ほど申し上げました多少アイテムごとによって違いますから、政府委員にも答弁させたいと思っております。
  136. 冨金原俊二

    政府委員冨金原俊二君) 井上先生の御質問二点について補足をさせていただきます。  初めにお礼を申し上げたいのでございますが、私どもが監修いたしましたデータを御勉強いただきましてありがとうございました。  まず初めに御質問のございました、製品輸入はふえているかもしらぬけれども、食料品輸入がふえていないのではないかという御質問でございます。  ここのパンフレットにお示しをしてございます数字は、実は百分比で出しておるものでございますから、ここに数字は出ておりませんけれども、年間の輸入総額を一〇〇といたしまして構成比をとりますと余り変化していないということは事実でございます。  ちなみに数字をちょっと申してみますと、六十年の輸入全体のシェアを一〇〇としまして食料品が一二%でございました。それが六十一年が一五・二%、それで六十二年は一五%ちょうどということで、構成比は余り動いていないのでございます。ただし、総量で見てまいりますと、例えば今申し上げた数字に比較いたしますと、六十年の輸入の全体の合計額が千二百九十五億ドルでございました。そのうち食料品が百五十五億ドル含まれております。つまり、この構成比がしたがって一二%ということになりますが、六十一年は千二百六十四億ドル、輸入の合計でございますが、そのうち食料品が百九十二億ドル、それから六十二年になりますと、全体で千四百九十五億ドル輸入がございますが、そのうち食料品が二百二十四億ドル。したがいまして、伸び率で見てまいりますと比較的高うございまして、そういう意味ではちょっとグラフが少し構成比だけなものですから、そういう印象を持たれるかもしれませんが、着実にはふえてきていると思います。  それから、二つ目の御質問でございますが、先生は、全体としての数字の中から食料品や製品や原材料で差益の発生額、還元額、どうなっているかという御質問でございますが、実は、先ほど先生御引用になりました全体の差益の発生・還元額の計算と申しますのは、例えば還元につきましては、GNPの中で個人消費あるいは政府消費という消費をくくってどれぐらい価格に反映されているか、あるいは投資については民間の投資とかあるいは政府投資についてはどういう形でデフレーターが下がっているか、輸出についてどうかというGNP構成項目で試算をしているものでございますから、食料品でどうなっているか、あるいは原材料でどうなっているかということをそれに合わせては実は計算がないのでございます。  ただ、政策を担当さしていただいている者の感じを申し上げますと、先ほど長官がちょっと引用されました、私どもときどき輸入消費財の価格動向調査というようなものをやって発表をいたしております。そういったようなものを見たり、それから、現実に例えば今問題になっております食料品というのはかなりの程度政府が関与しておりますものですから、関係省庁で例えば牛肉の値段を引き下げていくとか、あるいは米とか小麦とか、先ほど梶原先生も御質問ございましたけれども、そういったものについてはある程度データがございます。  その中で一体差益がどれぐらい発生しているのだろうかというようなことはそれぞれのところで大体把握できるものですから、それについてはできるだけ差益を還元する、価格を引き下げるというような形で、差益の発生だけでなくて、実際は根っこから実はかなり高いものですから、それを含めて下げるという努力をしているというわけですが、そういうふうに考えると狭い意味での差益についてはかなり還元を進めてきているというふうに考えているわけでございます。  それで、全体的に申しますと、やはり我が国の場合には規制のない上にかなり競争が激しゅうございます。原材料、製品についても競争を通じてそれぞれの段階で価格が非常に競争過程の中で下がってきているものがいろいろある。ただ先生御承知のとおり、昨年の後半あたりから建設資材がかなり上がりました。木材などは差益とかなんとか関係なしに上がってしまったというような、需給関係によっても差が出てくるということは御承知のとおりだと思います。  一応補足をさせていただきました。
  137. 井上計

    ○井上計君 きょうは余り時間がないので、実はもっといろんなこともお伺いしたいし、また私の若干感じていること等も意見として申し上げたいと思っておったんです。  還元について私自身はよくわかるんです。ところが一般になかなか理解されない。理解されない理由は何かというと、先ほど梶原委員質問にもありましたけれども、一番やはりぴんとくる食料品がなかなか安くなっていない。それは実は円高と関係なく政府の、小麦は食管法でくくられておる、あるいは牛肉は輸入規制がされておる、いろんな問題がありますからね、そういうふうなことで安くならぬ。これが一般国民から見るとやはり円高の差益がちっとも返ってこない、こういうふうなことになって不満があるわけですね。まあこれはまた別の問題になりますからゆっくりとまた改めていろいろと御意見も聞きたい、また私の気持ちも申し上げたいと思っております。  ただ、今お話の中でもう一つ、物価が一%弱程度しか上がっていない理由の一つは、実はNICSの輸入品が激増しておる、これがありますね。これが物価の上昇を非常に抑えておるという問題、これもやっぱり広い意味では円高効果だと思います。それからもう一つ、その前に食料品の輸入が去年あたり激増しています。特に米の粉あるいは小麦粉及びその製品が激増しておることがある程度そういうふうなものを下げておるという効果がありますから、これは国民もわかっておる。  一面、逆にそのために中小の食料品メーカーが大変困っておるというふうなまた問題が生じていますが、ところがそういうふうなものが、コーヒー豆等下がっておるにかかわらず一般消費者が受ける感じはちっとも安くなっていない理由の一つに、地価の非常な高騰があると思うんですね。  地価が高騰し固定資産税や地代が上がっていることによってコスト、経費が増大していますから、したがって例を挙げればコーヒー豆は下がっておるが経費が増大しておれば、先ほど人件費という話もありましたが、人件費よりもむしろそういうふうな一般の経費が非常に高くなったから下げられない、こういうふうな面もあると思う。今後のこれは大きな政策課題だと思いますが、経企庁としてもその辺のところをお考えをいただいて、今後のまた御指導を願いたい、こう思います。  時間がありませんから、あと重要な点を一、二お伺いします。  五十八年の八月に、経企庁は「一九八〇年代経済社会の展望と指針」というのをお出しになっていますね、その要旨があります。  先ほどちょっと長官から同僚委員質問にお答えがありましたが、一月二十二日に出された経済審議会運営委員会の「新経済計画基本的考え方と検討の方向」というのがあります。これをずっと見ておりまして感じること、実は五十八年八月とことし一月の「基本的考え方と検討の方向」と、字句はもちろん違っていますが、余り変わっていないですね。特に変わっていないなと思うのは、農業政策についての考え方が実は余り変わっていないんですね。五十八年も同じようなことが言われておる。  だから私は、先般予算委員会でも提言しましたが、これだけ時代が変化しているのにかかわらず、政策の転換がほとんどないものの最たるものが農業政策だ。農業政策の転換をもっとやらなければ、国民の不満がもっと増大するという意味のことを申し上げたんですけれども、やはりそれらの点についてもっと御留意をいただきたい。  特に経済企画庁は何といっても政策指導官庁ですから、強力なリーダーシップをとっていただけないものであろうか。とっているとおっしゃられると思いますけれども、どうも我々見ておると、こういうふうな指針はお出しになるけれども実際にはなかなか経企庁によって強力な政策指導がなされておるのかどうかという、ちょっと今までも若干疑問を持っておる点がありますので、失礼ですが、特に長官にこのことは要望しておきたい、こう思います。  それから、ついでに申し上げますが、もう一つは新経済五カ年計画ですね。新経済計画の中で時短の問題、先ほど長官言われました豊かさを感じない問題の一つは時短だ。それから成長率、これは経企庁は実際お決めになっていないかもしれませんが、大体策定中であるがほぼ決まったということでありますが、この年平均実質三・八%の成長率を見込まれるとすると、内需成長率を幾らに見込まれるのか、外需を幾らに見込まれるのかというこの点は重要だと思うんですね。  それから、外需マイナス成長が見込みによって若干変化するんではないかと私は感じるんですが、アメリカが今後とも引き続いて赤字削減政策をとれば、これは大統領選挙の結果でどうなるかわかりませんが、とるであろう、こう考えると、アメリカのデフレ政策が世界的にさらに強まっていく、浸透する、それによって外需マイナス成長がかなり変わってくるんではないか、こういう私素人ながら懸念があるんです。  それから、世界的にそのようなアメリカのデフレ政策がさらに浸透すると、我が国が国際経済の責任からして三・八%程度の成長率で責任が果たして果たせるのかな、これから五年間、もっと高目成長率を我が国は考える必要があるんではないかな、こんな感じもするんですが、以上あれこれ取りとめもなく申し上げましたが、それらの点についてひとつ御見解を伺えればありがたい、こう思います。
  138. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 井上先生、絶えず御勉強なさっておられまして、非常に私どもも感じるところがございます。今の成長率の問題にいたしましても、目下経済審議会の中で検討中でございますから、ちょっと数値を挙げることは控えたいとは思いますけれども、いずれにしてもそういう論議もなされているやに私も中間報告を受けております。  まず、内需主導による適度な成長路線を定着させることは、国際的に調和のとれた対外均衡を達成して世界に貢献していく上でも基本問題である。こういう認識を十分踏まえながら、今経済審議会の方に中期的な五カ年計画のあり方等の審議を推進していただいておるというのが実情です。  それから、我が国経済内需主導成長への転換あるいは定着を進めるに当たりましては、米国を初めとする各国との経済政策全般にわたる国際協調の政策がこれまた一段と必要になるのではないかという、その強化も必要になってくると判断いたします。  米国財政赤字削減等により経常収支の赤字削減に取り組むということは、基本的には世界経済の健全な発展にとりましても望ましいことではございます。しかし他方では、米国の輸入減を通じまして世界経済影響を及ぼすものであることも事実でございます。  我が国としては、国際的な政策協調の枠組みの中でこのような効果を緩和するために内需拡大、一般的な言い方ではございますが市場開放の一層の推進、これは御指摘にございましたように、農業問題にちっとも変革がないじゃないかという御指摘でございますが、私も私の所属する政党においては総合農政調査会の顧問をさしていただいておりますけれども、本当にこの点は悩みこそあれなかなか改革、前進の方向につながらないことを遺憾に思っておる次第でございます。輸入の拡大を図ることがまず必要であるということにおきまして、先生の御意見大変に参考にさしていただきました。ありがとうございました。
  139. 井上計

    ○井上計君 長官、おっしゃっていただいたことはよくわかりました。  ただ、そこで先ほどの労働時間の問題でありますが、これは新経済五カ年計画の指針の中にありますが、現在年間約二千百時間の労働時間を六十七年度には約千八百五十時間、大体ざっと言って二百五十時間ぐらい短縮する。これは当然やるべきこと、またやらなくちゃいけないことですけれども、ところが口ではそう言っても、二百五十時間というと一日七時間にするとざっと四十日近くになるわけですね。だからこれは容易なことではないと思うんです。  もう一つ、さらにこれだけ短縮していくと生産性が低下をすることは必然ですし、それによって我が国の製品のコストは当然上昇するであろう。それに加えてNICSの製品がますます今後輸入が増加をするであろう。NICS製品と、既に起きていますが、国内製品との競合によって国内の価格はコストは上がっておるにもかかわらず下がる、これは既にそういう現象が起きております。  それから、構造転換等によって海外立地等当然ふえてくると考えますと、そこで言われておる産業の空洞化、これも大きな問題になってくる。そうすると失業者がふえるんではないかという懸念も生じてくると思うんですが、これらの今関連する、これから起きるもろもろの問題等について、経企庁としてはどんなふうなお考えをお持ちなのか、ひとつ教えていただければありがたいんですが。
  140. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) これまた井上先生、NICSの問題点ども含めまして私どもと全く同感な思いで見ておられるわけでございますが、労働時間そのものの短縮というのは労働投入量を減らす効果を持つということは事実でございます。  しかし、他方では自由時間の増大というものを通じまして消費を刺激いたしますし、内需主導型の産業構造への転換を促す面もありますけれども、省力のための設備投資を推進し、あるいは労働生産性の向上をもたらすという効果を持つこともこれまた指摘しておかなければならぬ問題点であろうと思うのでございます。  ただ、今後は労働時間の短縮を図るということだけでなく、NICSなどに見られるような輸入の活用、またそれをどのように的確に国民に浸透させるかという点、あるいは生産性の向上等の構造的政策を、委員指摘のとおりに積極的に推進することが物価の安定につながっていくものではないか。梶原先生の先ほどの御指摘でもございました高値安定ということでない方向にもつなげていく努力をしなければならない、このように考えておる次第でございます。
  141. 井上計

    ○井上計君 長官、私見ではありますけれども、私は今お答えいただいたのと私がお尋ねしたこと、そういうふうな状況を将来的に考えていくと、これは今後の検討の方向にも実はないんです。余りまだ論議されておりませんが、現在おおむね六十歳の定年制、これを今後何年か計画で定年制の延長、せめて六十五歳ぐらいまでの延長を政策として考える必要はないのであろうか、あるんじゃないかという私感じを持つ、それが一つですね。これは例の厚生年金、国民年金等々の受給年齢を延長するというふうなことも将来の負担率の問題で出てきている、これが一つです。  それから、そのためには高齢者――高齢者と言っていいのか中高年齢層と言っていいのか知りませんが、それらの人たちの働く場所、雇用の場を政策として拡大をしていく、あるいは創設をしていく、こういう政策がどうしても必要ではないか、私はそんなふうな考え方をかねがね持っておるんですが、これはまたひとつ、今後とも大いにその点経企庁としても御検討をいただけたら、こう思います。  それから、時間がないので、もう一問お尋ねをしたいんですが、きのうの新聞報道で、これまた今までお尋ねしたこととちょっと違うような感じになるんですけれども、サラリーマン貯蓄が、これは昨年六十二年ですが、平均八百十九万円になった、こういう報道があるんですね。いささか意外なんです。しかも伸び率が前年比一一・八%という二けたの伸び、これは五十六年の一六・四%に次いで六年ぶりの二けたの伸びだ、こう書いてある。  しかもこの中身をずっと見ますと、これはサラリーマンだけじゃありませんが、個人事業主を含めてでありますけれども、株式を除いた個人貯蓄残高が五百七十二兆円ある、こういう数字を見ると、冒頭お尋ねをした豊かさを実感として味わっていないにかかわらず、実はこのような貯蓄残高が非常に伸びておる、個人貯蓄が大変多くなっておるというふうなこととのギャップといいますか、ちょっと言い方がおかしいんですけれども、何と言っていいかわからないんですが、そういうふうな乖離といいますか、そんなふうな点は経企庁としてはどんなふうな認識をお持ちなんでしょうか、ひとつお伺いできればと、こう思います。
  142. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) まず、第一点に御指摘いただきました定年制の問題でございますが、自分自身を顧みましてもちょうど私の年齢あたりが定年の年代です。この間私の同級生同士が集まったのでございますけれども、そのときにもほとんど定年でございます。しかし、働ける活力とたくましさを皆持っておる、こういう点において私も全く委員指摘のとおりの感じを皮膚感覚的に味わったようなことでございました。そのことはまた次の課題として勉強もさせていただきたいなと、こう思っております。  御指摘のサラリーマンの貯蓄の平均八百十九万という、こういうことになっておるがどうだろうかというようなことでございます。昭和六十二年の貯蓄動向調査速報、これは恐らくきのうの新聞とおっしゃいましたから総務庁の発表だろうと思いますが、これによれば、勤労者の世帯の平均貯蓄残高は八百十九万円、前年比で一一・八%増と高い伸びを示しておる。特に株式は前年比四五・五%増、株式投資信託は前年比の一二一・八%増と大きな伸びを示しておるわけでございます。  この背景としましては、株価の上昇によりまして保有株式の評価額が増大したものではないかなと、もちろん全部が全部株を持っているというわけじゃございませんが、比較的貯蓄に余裕のある人たちが株に投下をしておるということ、これがまた株価が相当上昇した、こういうものもアベレージされまするとこういう結果に出てくるのではないかなという感じで受けとめるわけでございます。
  143. 井上計

    ○井上計君 今長官お話しの、私もこの総務庁の調査を見てその点はわかるんですが、ただ、さっき申し上げたように株式の価格が上昇したことによって貯蓄率が増大したのであろうと、こう思って見ておると、そこで個人貯蓄残高が五百七十二兆円にふえておる、だから株価の上昇によってサラリーマンの平均貯蓄額がふえたことと同時に個人貯蓄がふえておる。だから、豊かになったからふえたんだろうということになりますが、逆に言うと金は持っておる、金はできてきたけれども使い道がないんだ、だから貯蓄に回っておるんだというふうなことであるとすると、内需拡大政策というふうな面をもっと考えていかなくてはいかぬなと、こんな感じがしたものでありますからあえてこの問題をお尋ねしたと、こういうことなんです。  今後、そういうふうなことについてもさらに経企庁としては、何といっても政策指導官庁でありますから、大いにひとつそのような面で政策の転換、新しい時代へ対応する政策の立案、指導を活発、強力にやっていただくようにひとつ要望をして質問を終わります。
  144. 木本平八郎

    木本平八郎君 きょう私は、公取委員長に専らいろいろ質問したいといいますか、問題を一緒に考えていただきたいと思うわけです。それで、委員長には委員長としてだけではなくて、エコノミストの立場からいろいろ意見も開陳していただきたいということをあらかじめお願い申し上げたいわけです。  きょうのこの商工委員会を聞いていまして、今までと非常に違う印象があるわけです。皆さんは今出席されたからよくおわかりにならないかもしれないですけれども、午前中の梶原委員から始まって矢原委員、そして今、井上委員と私と、あと松浦委員がどういうふうに取り上げられるかわかりませんけれども、みんな物価の問題とか消費の問題なんですね。これは私は去年まで余りなかった傾向ではないかと思うのです。  それだけに我々はこの委員会だけではなくて国民としても、どうも先ほど井上委員が言われたように、これだけ円高だ、そしてこれだけ貿易黒字がある、日本は世界一の経済大国になったと言われながら、国民の方に全然生活実感として豊かになったという実感がないわけですね。日本にどんどん入ってきた富は一体どこにあるんだろうか。日本列島の中にあることは確かなんですね。ところが、国民のところには少なくとも来ていないという感覚があるわけです。この感覚については後からまた詳しく私の考えを申し上げたいと思うのです。  私の実感を結論から申し上げますと、やっぱり日本は物価が高いのだ、高収入高支出だ、だから悪い言い方をすれば宵越しの金を持たないというか、非常にフローの生活でどんどん入ってくるけれどもどんどん出ていっちゃう、後に何も残らない。先ほど貯蓄の問題がありましたけれども、これは私は住宅ローンなんかが入っているからだと思っているわけですけれども、こういう生活をいつまで続けていくんだろうという疑問とか反省が我々の中に非常に強く出てきたんじゃないかと思うわけですね。  したがって、きょう公取委員長にぜひ、実は結論的には頑張ってもらいたいということなんですけれども、何としても物価を下げていかなきゃいかぬ、そのためにはいろいろな方法がありますけれども、一番大きな方法としてはやっぱり競争状態を推進していくということじゃないかと思うわけです。その辺で、日本の公取委員会というのは、私も民間におりましたからわかるんですけれども、民間に対する独禁法の番人としては実にすばらしくやってこられたと思うわけです。それについては一点の批判もないだろうと思いますけれども、公的規制というものに対する力の入れ方が足らないといいますか、その辺にまだまだ今後頑張ってもらう余地があるんじゃないかと思うのです。  まず委員長、公的規制というものについてどういうふうにお考えになっているか、あるいは今後公取としてはどういうふうに持っていかれる予定なのか、方針じみたものを御説明いただきたいと思うのです。
  145. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま御指摘もあったわけでございますけれども、私ども考えますに、現在この競争政策という言葉が、恐らくこれは一九七〇年代以降国際的にも私は定着してきておると思うのです。  その内容を大ざっぱに言ってしまいますと、ただいまお触れになりました一つは独禁法の体系のもとにおけるいわゆる独占なりカルテルなりの排除、それから公正なルールのもとで競争が行われなければならないという分野、それからもう一つは、やはり経済社会になるべく市場原理と申しますか競争原理が導入されるように、その観点からむしろそれの障害になっておるような政府の規制、公的規制をなるべく排除する。  この最後に申しました公的規制なり政府規制の排除というのが今日各国の競争政策当局の一つの非常に重要な政策目標といいますか、行政の使命ということで認識が高まっておると思っております。その証拠に、一九七九年のOECDの理事会勧告におきましても、政府規制というものをただいま申しました意味での競争政策の観点から各国とも再点検しようと、その基本はやはり政府規制と言います以上、その背景に一つの追求されるべき公的な目的があるわけでございますが、その公的な目的あるいは政策目的をそれぞれの時点でもう一遍見直してみる、見直すと同時に大胆に不必要になった公的目的というものを整理していく。  しかしながら、どうしても必要な政策目的なり公的目的は当然あるわけでございますから、その場合においてもそれを達成する手段としての公的規制というものをなるべく必要最小限度にとどめる。つまり市場とか競争に任せておいてもそういう目的が達成されるとすれば、そういう公的規制というものはどんどん外していく。これが大ざっぱに言えば競争政策という観点から見た公的規制見直しの基本的な私は軌道だろうと考えておるわけであります。  その結果、当然のことながら市場原理が働く分野が広がるわけでございますから、そのことを通じて経済が活性化する。同時にその反射的効果として、反射的効果というのはちょっと語弊がありますけれども、物価問題にも当然いい方向に働くに違いありませんし、また行政のサイドから見ますと、それは行政の簡素化、行政コストの低減というところで社会全体のためにもこれは非常に望ましい方向に働くだろうと、そういうことでございまして、その意味では御指摘になりましたようにこの公的規制なり政府規制の見直し、あるいはこれをなるべく必要最小限のものに持っていくという方向で競争政策当局に課せられました使命というものは私は非常に大きいというふうに考えております。
  146. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、今お話の中にありました諸外国も非常に必死になってデレギュレーションというのをやろうとしているということはわかるんですけれども、そこで今委員長がおっしゃった中で一つ、規制を外して競争原理を入れても公的な目的が達せられるんなら、できるだけ規制を外して競争原理を入れた方がいいんじゃないかと、こう言われたわけですけれども、具体的にアメリカ及び諸外国でどういう例があるか教えていただきたいと思うんですが。
  147. 柴田章平

    政府委員(柴田章平君) 私どももそれほどたくさん広範囲に勉強しているわけではございませんが、最近非常に動きが活発になっている分野というのは通信の分野あるいは航空の分野、トラックの分野あるいは金融の分野、この四つが国際的に比較的規制の緩和が進んでいる分野ではないかと思います。  その分野だけに限って申し上げますと、特にアメリカとイギリスの動きが顕著ではないかというふうに承知をいたしておりますが、例えばテレコミュニケーションと申しますか、通信の分野で申し上げますと、アメリカでは一九八四年にATTの長距離通話部門とそれから地域電話部門の分離を認め、さらにATTに対して届け出等の規制をするということで、従来の参入許可ということから届け出の方へ規制を移行していくというふうな動きがございましたし、英国では一九八四年にBT、ブリティッシュ・テレコムの民営化と独占の廃止というふうな動きがございました。  航空の分野で申し上げれば、一九八二年、アメリカでは国内航空の参入と料金の規制を撤廃いたしておりますし、トラックで申し上げればアメリカでは一九八〇年に参入と料金の規制を大幅に緩和するというふうな動きがございました。  さらに金融で申し上げれば、証券に関してはアメリカで一九七五年に固定手数料を撤廃をいたしておりますし、イギリスでは一九八六年、これはビッグバンというふうによく言われておりますことは御承知かと思いますけれども、売買手数料の自由化が行われるというふうな流れがあったというふうに承知をいたしております。
  148. 木本平八郎

    木本平八郎君 今アメリカで進んでいるとおっしゃった四つの中で、日本は電気通信は去年NTTが民営化されて、割合に自由化されているんですね。ところが、あとの三つは全然と言ってもいいぐらい公的規制が緩和されていない。こういう点でも非常におくれているという感じがするわけです。したがって、例えばアメリカやイギリスやドイツとか、こういう先進国に対して日本はこの面でも相対的に相当おくれているという感じはするんですが、その辺はどうなんでしょう。
  149. 柴田章平

    政府委員(柴田章平君) これはやはりある意味で経済的、社会的そして歴史的な要素がいろいろ絡んでおりまして、一概にこうでなければいけないという答えを出すことは非常に難しいと思いますし、ある一つの時点だけ区切ってその時点でどちらの方が上、どちらの方が下ということが必ずしもいいかどうか、私どもよくわかりませんので、やはりそれぞれケース・バイ・ケースに判断をしていかざるを得ないと思います。  ただ、今先生の御質問に対して私の私的な感触を申し上げることをお許しいただけるとすれば、アメリカとイギリスに比べて、今の四つの分野について私なりの判断を申し上げれば、やや日本の場合はおくれている、またドイツよりは逆に進んでいると、こういうふうな感じではないかな、感じでございますけれども私はそういうふうに感じております。
  150. 木本平八郎

    木本平八郎君 例えばここにありますトラック、あるいは金融はもうことし自由化が大問題になってくると思うんですけれどもね。例えばトラック、あるいはここにあります倉庫業とか通運業とか、こういうものは専門家同士で話し合うわけですね。こんなものはもう料金だって何だってお互い同士エキスパートなんだから、ネゴで決めさせればいいんで、最高料金を決めることも最低料金を決めることも何にも必要ないわけですね。ところが、そういうものさえ残っているという感じがするわけです。  私もいただいた資料をいろいろ見ておりまして非常にびっくりしたのは、そんなことが何でいまだに残っているんだろうという感じがするわけです。この辺は今後ともぜひ公取の方で頑張ってデレギュレーション――デレギュレーションと言うまでもないんじゃないかと思うんですが、これはぜひ緩和を進めていただきたいと思うわけです。  それで、先ほどからのお話の中でもうかがえるんですけれども、やっぱり時代がどんどんどんどん変わっていくわけですね。そうすると、そのときにはこれは非常に有用な武器だったものも全然無用の長物になってしまうし、かえって有害になる。規制なんというのはそういうものだと思うんです。ここにも述べられておりますけれども、一たん規制をつくっちゃうと、ほうっておくとなかなかディレートできない。したがって、よっぽど意識的に排除する、廃止するということを進めないとできないということだと思うんですね。その点はぜひ今後とも頑張ってもらいたいと思うんです。  それで、私は実は五十七年に公取が出されました「政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度の見直しについて(概要)」ということで、五十七年八月に出しておられるんですね。これを拝見しますと、これをこのまま六十三年三月というふうに日付を打ちかえても、きょうでも十分に通るんじゃないかと思うんです、この内容は。しかも、これは五十七年ですから、六十年から円高が始まったわけですからね。そういうことも未来を先取りされて書かれていると思うんです。  ところが、現実には事態は余り進んでいないんじゃないかと思うんですよ。確かに、説明していただきたいと説明を求めれば、いやこういう点、こういう点進歩していますとおっしゃるんでしょうけれども、さっと見た感触としては余り進んでいないという感じなんですね。進んでいないというのは、ざっくばらんに言って、一体この阻害要因というか、どこに難しさがあるんだろうというふうに感じるんですが、その辺はいかがですか。
  151. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 今お触れになりました五十七年、当時の公正取引委員会がまとめました十六業種についての一つの見解でありますけれども、それ以後全然進んでいないという御評価でございましたけれども、ただこの見解をまとめました後、臨時行政調査会が開かれまして、この見解も非常に参考にしていただいた。そういった作業の過程を経まして、電気通信事業とか航空、それから金融、そういった面でやはりデレギュレーションの方向我が国も進んできておるということは、これは否定できないと思うわけでございます。  ただ、なかなかこの作業が遅々として進まないということは、それはくしくも先ほどお触れになりましたように、政府規制の背後には一つの政策目的があるわけでありまして、しかも制度として固定してまいりますと、これは政府規制に限りませずいずれの制度でもそうでございますけれども、それなりに社会全般の政策的コンセンサスが形成される間に、やはり相応の私は時間が必要なんだろうと思うわけでございます。  ただ、昨今の状況を見ますると、政府全体としてこの規制緩和に取り組むという努力を続けておるわけでございまして、今行われております行革審でもこのテーマが取り上げられております。それから、いろんな分野におきましてそれぞれ所管庁が問題意識を持って意識的に取り組み始められたという、非常に私は何年か前に比べますれば全体の規制緩和への機運というものが高まってきておるということでございます。  したがいまして、これは一競争当局がこの問題を実現できるということでは到底ございませんで、政府部内の合意の形成はもちろんでございますけれども、関係省庁とも十分に連絡をとりながら、この機運を大事にしながら着実に作業を進めていくということが私は大事だと思っております。
  152. 木本平八郎

    木本平八郎君 まさにそのとおりだと思うんですね。  それで、これは国民がちょっと考えればこういうデレギュレーションをやろうと思っても各省庁で相当抵抗があるだろうと、特に許認可官庁といわれるようなところはなかなか自分の許認可権限を緩くしたがらないというふうなことは簡単に想像つくんですけれども、やはりその辺を意識改革してもらわないと、こういったことはなかなか進まない。したがって、今後の公取としては、こういうことを公取本来の仕事として進めていただくとともに、やはり政府部内の啓蒙というか説得というか、各省庁にやはりそういうスタンスをとってもらうように、少なくとも馬を水辺に連れていく努力はしていただかなきゃいかぬし、それが一番大事なんじゃないかという気がするわけですね。そういう点からぜひ公取の努力を期待したいわけです。  そこでもう一つ、これは全然違う見地からなんですが、日本株式会社という言葉がありますね。これは我々もその一員として貿易の先兵をやってきたわけですけれども、この日本株式会社というのは、私の解釈ですけれども政府から民間から一丸となって生産を上げる、経済拡大をする、成長する、貿易を伸ばす、輸出を伸ばす、いわゆるメーカーなんですな、日本株式会社という。これはすばらしい成果を上げたわけです。  ところが、私はもうこの段階に来たら日本株式会社は解散しなきゃいけないんじゃないかという気がするんですね。この日本株式会社があると、貿易摩擦をやり、輸出に圧力をかける、黒字がぼんぼんなにしてくる。一方、投資もしていますけれども、どうもハワイの不動産なんかを買いに行ったからもうストップさせられたんですね。不動産業も自粛しなきゃいかぬというふうな状況になってきておるわけです。そういう点で私は日本株式会社の解散というふうなことを、これ象徴的な言い方なんですけれども、相当みんなが真剣にやっぱり考えにゃいかぬ。  私は生産が不要だ、あるいは生産が悪だと言うつもりはないんですけれども、やはり消費だとか生活とかというものがもう第一線で出てなきゃいかぬ。したがって、日本株式会社というのは解散して、名前は何というのがいいか知りませんけれども消費組合でもないけれども、何かそういうふうな発想の転換が必要なんじゃないかと思うんですが、その辺御感想はいかがですか。
  153. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 私がお答えできる範囲の問題を超えた非常に大きい問題の御提起でございます。  先ほど来申し上げております競争政策という観点から我が国経済なり市場構造のこの十年あたりの動きを見てまいりますと、私は基本的に大きな問題としてまず市場の国際化があると思うんです。これはいろいろ政府規制との絡みで国内的にも議論があるわけでございますけれども、しかし、この市場の国際化を通じて日本産業構造なり市場構造がかなり大きく動いてきておる。したがって、かつて議論されたような閉鎖的な日本経済社会という構想で我々日本人も考えるような経済構造の現況にはないという、ここは一つ押さえなきゃならぬと思います。  それからもう一つは、国際的な交流にも通じる問題でございますけれども、やはり技術革新というのが現在の経済なり市場を活性化しておる非常に大きな原動力になっておりまして、競争当局との関連から申しますれば、技術取引の取り扱いを今後誤らないないようにしていかなければならない、そういった問題意識を持っております。
  154. 木本平八郎

    木本平八郎君 今の技術の観点からこういう競争とか、こういった問題を考えるというのは私も気がつかなくて非常に教えられました。これは私も少し今後勉強していきたいと思うんです。  今委員長がおっしゃった市場参入の問題、市場開放の問題ですね、これは実は後からひとつ申し上げようと思ったんですけれども、その前にちょっと細かい点で二、三お聞きしたいんです。  一つは、ついこの間の新聞に出ておりましたけれども、公取が神奈川とか鳥取、福岡のLPガス業界に対していろいろアプローチされている。家庭用のプロパンというのは、非常に円高だけれども、あれは自由競争には一応なっているんですけれども値段が余り下がらないと、こういう点についてどういうスタンスでアプローチされるのか、その経過と今後の考え方をちょっと御説明いただきたいと思うんです。
  155. 植木邦之

    政府委員(植木邦之君) お答えいたします。  先生のおっしゃられましたプロパンガスの問題でございますけれども公正取引委員会といたしましては、六十一年の十二月に神奈川県と鳥取県、福岡県のLPガス協会に対してそれぞれ警告を行ったところでございます。神奈川県の方は、協会の支部が四つございまして、これが顧客の移動を制限しているというケースでございます。それから鳥取県と福岡県の協会は、これは資源エネルギー庁さんが円高差益の還元を御指導になったときに、小売価格の値段の引き下げの幅を一定の範囲にとどめるという決定をしているということでございまして、私どもこのような円高差益の還元というようなことを阻害するような行為がありましたら今後とも同じように厳正に取り締まっていきたい、このように考えております。
  156. 木本平八郎

    木本平八郎君 いわゆるやみカルテルみたいなものがどうしても起こってくると思うんですが、この辺は厳重に監視していただいて、競争が公正に行われるように、物価が下がるようにぜひ今後とも努力をお願いしたいと思うんです。  それからもう一つの疑問なんですけれども、再販価格維持の問題がありますね。これも結論からいえば私はメーカー保護、メーカー擁護のためであって、もう消費中心の行政に変わらなきゃいけないんで、生産者は保護しなくてもいいんじゃないかという気がするんですね。  ちょっとお聞きしますと、今この再販価格制度に乗っかっているのは、書籍はありますけれども、それ以外に化粧品なんですね。香水とかオーデコロンとかシャンプーとかクリームとかファンデーションとか口紅、おしろい、こんなものを何で、値段が競争になってこれはもうダンピングされてもいいんじゃないか、千円以下ということになっているらしいんですがね。どういうことでこういうものが維持されているのか、業界の圧力なのか、あるいは我々議員の方の、族議員の問題なのかわかりませんけれども、だれが考えたってこんなもの今ごろ統制しているというか規制しているというのはおかしいという感じはするわけですね。  それからもう一つは医薬品。医薬品も、どんな薬かと思ったら腹痛の薬とか風邪の薬とかビタミン剤でしょう。それが全部じゃなくて、全部の中の二割ぐらいだという話なんですね。二割ならもうやめた方がいいんじゃないかと思うんですけれどもね。これをやめるというのは、やっぱり何か抵抗があるんですかね。
  157. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) この再販価格維持制度については、制度論として各種の議論が従来からもございます。昭和四十一年にそれまでございました指定商品というものをかなり整理いたしまして、今残っておりますのは、ただいまおっしゃいましたように書籍とか化粧品――これは千円以下でございますが、それから何品目かの医薬品でございます。  書籍は、私のこれは個人的な勉強なんですけれども、これは非常に古く、各国とも、もうやめたところもございますけれども、別の経緯がございまして、この書籍の再販価格制度というのはそれなりに非常に歴史のある経緯がございます。  それから、他の品目につきましては、本来は競争政策の観点からいきますと、いずれも割合大衆向きの商品、まあ今の言葉で言いますと大衆向きというのはなかなかそぐわないわけでございますけれども、それがいわゆるおとり廉売と申しますか、不正な競争手段に使われがちである。したがって、競争秩序全体を公正なものにするためにということでそもそも再販価格維持制度というのがスタートしておるわけでございます。  それはそれなりに、制度的な背景なり歴史的背景があるということは先ほども申し上げたとおりでありますけれども、今日の時点におきましてこの制度の改廃の議論をやります前に私ども努力をいたしておりますのは、少なくとも消費者に不当な不利益を与えないようにということで、この制度自身の運用状況につきましては、関係業界等をも通じまして非常に厳重な監視体制をもって臨んでおるというのが実情でございます。
  158. 木本平八郎

    木本平八郎君 あと四十七分まで二、三分しかないんですが、それで、先ほどちょっと出ました市場開放の問題ですね。それからもう一つ、私は今後非常に重要になるのは、そこに通産省の方も来ておられるのでなんですけれども、私はアメリカからダンピング提訴が来年ラッシュしてくるんじゃないかという気がするんです。  これは、私はアメリカ人から直接聞いたんですけれども、彼らは今下院ではそれをねらっておる。数品目ねらい撃ちにしてダンピング提訴してくるということなんですね。それはどうしてかというと、国内価格は非常に高くて輸出価格が低いというなにがありますね。これがもう来年ぐらいはちょっと時期的に許されない。一時的な為替レートの調整とかなんとかでもう言い抜けられなくなるということで彼らは準備しちゃっているわけですね。  今後のアメリカとの関係というのは、次の機会にまた私申し上げたいと思っているんですけれども、そういうふうな面から、先ほどの公的規制なんかも、それからある意味じゃ表面上は自由化されていても実際は行政指導その他で規制がある、こういうものが非関税障壁ということで彼らが非常に日本はずるいとかアンフェアだとかいら立っている原因の一つにもあるわけですね。  そういう点からも、きちっとやはり公正な競争が日本では行われている、市場もちゃんと開放されている、閉鎖的じゃないということがやっぱり必要だと思うんです。それはもう今からやっていかないと、問題が起こってアメリカから指摘されてから騒いでも遅いし、後追いするとコストが高くなりますね。そういう点で私は今ダンピング問題ということを申し上げたんですけれども、そういういろいろな面で日本というのはもうねらい撃ちされているということを考えますと、ついこの間、富士フィルムかなんかが値段を下げていましたね、フィルムは。そういうふうにやっぱり値段を下げるということは、消費者だけじゃなくて国全体としても非常に必要な時期になっているんじゃないかと思うんですがね。その辺の感触を最後に伺って、私の質問を終わります。
  159. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 例えばおっしゃいました点は、私どもも折に触れて外国の連中と接触いたしますときに痛感をする問題でございます。  基本的には、やはり公正な市場競争というものが経済の隅々にまで浸透するということが一番大事な問題であるわけでありますけれども、私どもが所管している問題につきまして、昨秋アメリカへ参りましたときにひとつ注意しなければならないと考えましたことは、これは具体的には景品規制の話でございますけれども日本のやり方とアメリカのやり方は違うわけです。それはそれなりにそれぞれの国の政策なり物の考え方なり消費者の意識構造も違うわけですから、それを説明しないままに外から受け取りますと、日本の市場が非常に閉鎖的であるというふうに受け取られがちでございまして、そういうところはやはりきちんと説明してやらなければならない分野も非常に多い。その意味でも、我々競争当局間でも各国との意思の疎通、日本の実情をよく説明すべきことは説明してやるという努力が必要であると考えております。
  160. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 十時から既に先輩の七名の委員先生方が御質問をされて時間も大分たっておりますので、簡単に質問をさせていただきますが、若干重複をする点はお許しをいただきたいと思います。  何はさておきましても、我が国経済は貿易立国であります。そういう点で、通商問題について少しお尋ねをいたしたいと思います。  日米間の貿易不均衡は改善されつつあるとは言いましても、なお依然として高水準にあると思います。このため、日米通商摩擦は牛肉、オレンジなどの自由化、公共事業への参入問題などに代表されるごとく、激化の様相をたどっておるわけでございまして、まことにゆゆしい事態だと考えられるわけであります。特に、米国議会においては、多くの保護主義的条項を含む包括通商法案の審議が今山場を迎えており、その帰趨は、世界の自由貿易体制維持の観点から極めて重要であろうと思います。田村通産大臣中尾経済企画庁長官委員会所信表明におかれて、自由貿易体制の維持強化と調和のある対外経済の形成は我が国経済運営の最重点課題であると位置づけられておるところであります。  そこでお伺いをいたしますが、包括貿易法案の重要ポイントと審議の現状並びに成立の見通し等についてお伺いをいたしたいし、またそれに対する日本政府の対策についてもお聞かせ願いたいと思います。これについては矢原委員からも御質問をされましたが、通商問題の中で非常に重要でございますので、再度御答弁をお願いいたします。
  161. 田村元

    国務大臣田村元君) 御指摘のとおり、日米の貿易インバランスというものは改善方向に定着しつつありといえども、その比較は大変なものであります。でありますから、当然、従来の貿易摩擦というものがそう簡単に解消するという楽観的な見方はできないかもしれません。しかしながら、私は先般もヤイター代表と会いましたけれども、あるいはECの各国の貿易大臣とも会いましたけれども、彼らは、日本政府がとった対応策、つまり外需型から内需型へという構造調整、そのための内需振興策、日本景気動向、こういうものについて非常に高く評価しておる、その点では従来とは相当大きく変わったと思います。  それで、問題は、アメリカの行政府はこれは保護主義反対でありますから、我々と考え方はそう変わらない。問題はアメリカの議会であります。この議会が今非常に厳しい対応を、議会そのものとは言いませんが、向こうの議員さんの中には相当厳しい対応をしてくる者もあるということでありますが、いわゆる包括貿易法案につきましては、上院と下院が意見が違っておることは御承知のとおりですけれども、昨年の九月に両院協議会を設置したものの、ほとんど審議らしい審議は行われないままにずっと推移したわけです。先月からようやく審議が再開されたところであります。  これは私から申し上げるまでもなく、十分に御承知のところと思いますけれども、関税法三百三十七条、いわゆる知的所有権等、フェーズⅠ、これについては両院の調整がほぼ終了したというふうに聞いておりますけれども、通商法三〇一条、二〇一条、ダンピング、貿易統制援助、いわゆるフェーズⅡについては現在両院間で調整中であるというふうに聞いております。  この中で、上院はゲファート条項の削除、スーパー三〇一条の採用を提案しておるというようなところでありますが、今後の包括貿易法案の見通しにつきましてはいろいろ見方がありますけれども、昨年のいわゆるブラックマンデーにおける株式暴落後に、保護主義的な貿易法案というものは世界経済を混乱に陥れるという考え方がアメリカでほうはいとしてわき起こってきたことは事実であります。また同時に、最近におけるアメリカ貿易収支改善というような好材料もありますので、保護主義的な法案が何とか成立しないように、そういう好材料の方にどうしても僕ら望みを託するんですが、しないようにと思って祈っておりますけれども、もし不幸にして保護主義的な条項が含まれたまま通過した場合には、これはもう大統領の拒否権に期待せざるを得ない。  現にアメリカ政府も、去る一月の日米首脳会議において、レーガン大統領が竹下首相に、保護主義法案に対しては拒否権を発動するという保証をしました。保護主義法案には反対という態度が非常にはっきりととられておりますから、これからもああいうものが通らないように米国政府に働きかけていきたいと思っております。  ただ、先ほどちょっとお触れしましたが、私は本当に昨年来、ココムの問題でもそうですけれども、痛切に感じたことは、議員外交というものがいかに必要かということ。日本は議院内閣制で政府と与党が一体でありますけれどもアメリカは違います。完全な三権分立ですから、なおさらのこと議員外交というものの必要性、それも向こうも与党、野党を問わず、こちらも与党、野党を問わず議員外交というものが必要だということを痛切に感じてきたというわけであります。
  162. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 今のアメリカは非常に大きな貿易赤字でありますけれども、何といいましても世界一の貿易国であります。そういう点でアメリカが風邪を引いてしまいますと、日本経済自身にも大きな影響があるし、日本経済にとっては自由貿易体制を維持することが日本の国を守り、また経済を守っていくということにつながるわけでございますので、非常に大変でございますが、どうかそういう点について格段の御努力をいただきたいと思います。  ところで、現在、我が国は世界貿易額の約一〇%を占めており、最大の資本輸出国であります。世界経済において枢要な地位を占めるに至った我が国としては、世界の中の日本という新たな観点に立って世界経済の創造的成長に積極的に貢献していかなければならないわけでございます。  こうした観点を踏まえられた田村通産大臣は、インドネシアのバリ島で開催された第四回アジア・太平洋貿易会議に御出席されるとともに、先般は西ドイツのコンスタンツで開催されました二十八カ国の貿易大臣会合にも出席され、世界経済運営のリーダーとして数々の新構想を提案されたと伺っております。アジア・太平洋自由貿易構想の内容とその実現の見通し、両会合での主要テーマ等についてお聞かせをいただきたいと思います。
  163. 田村元

    国務大臣田村元君) おっしゃるとおり、日本はもう島国であってはいかぬのです。世界に門戸を開かなきゃならぬ、もう既に開いておりますけれども。  バリ島の会合、また先般の西ドイツのバンゲマン経済大臣の提唱によるコンスタンツの会合、ともに大変有意義なものでありました。  私は、昨年の一月にASEANを訪問して、日本・オーストラリア定期閣僚会議の後、ずっと回り込んだわけであります。そうしてタイのバンコクでニューAIDプラン、新アジア工業化プランというものを私は提唱したわけです。これはどういうことかといいますと、ASEAN諸国、アジアにおける発展途上国といいましょうか、このASEAN諸国の姿を見て、日本経済先進国としてこの窮状をほうっておいていいんだろうか、その国々はほとんど一次産品に頼っておる。ところが原油は暴落、木材もまた低迷を続けておるというような状況である。  そこで私は、ASEAN諸国、これはもちろん中国等も含みますけれども、ASEAN諸国に呼びかけたんです。あなた方はいつまでも一次産品に頼っていないで輸出型の工業を振興せしめたらどうですか。なかなか大変だろうけれども、そうして新しい繁栄を築くことが何よりも大切だと私は思う。ついては、ASEAN諸国に、従来のようにお金を差し上げる、あるいは借款を、つまりお金を貸してあげるというようなことだけでなしに、産業関連のインフラも供与しましょう、技術も供与しましょう、あるいはいろいろなマーケティングノーハウも供与しましょう、いろんなことを我が国から御提供申し上げる。  そうして、まず我が国があなた方にとって魅力あるマーケットになってあげようじゃありませんか、だからうんと頑張ってください。ただ、我が国でデザインその他でなかなか売れにくい、そういうのは、こういうものをつくりなさいよ、そうすれば売れますよ。アメリカへ売るコツはこういうことですよ、ECへ売るコツはこういうことですよ、まあその点では日本は貿易国ですから、輸出国ですから非常に詳しいわけです。そういうふうにして大いに御協力を申し上げましょうということを提案したわけです。それで非常に評判がよかった。  ところが、このニューAIDプランというのは一対一なんだ。日本対何国、日本対何国なんです。そこで、通産省の若手の官僚たちが、私が提唱したニューAIDプランを踏まえて、そして日本は国際的に目を開かなきゃならぬというので、太平洋に面した国々と大いにこれから交流を深めていこう、それはどうすればいいか。米加自由貿易協定のようなものじゃない、あんなものじゃない。日本は、また同時に、大東亜共栄圏をつくるような大それた帝国主義的な考え方を持つべきでない。それよりも、日本も仲間に入れてもらって、そうして太平洋圏の国々も幸せにする、そういう点で協力をし合う。それには当然アメリカやカナダの力もかりなきゃならぬし、従来アメリカがやっておった仕事の役割分担も日本がアジアの友人たちに対してしなきゃならぬというようなことから、いろいろと検討しておるんです。  まだこれ実は煮詰まっていないんです。今若い官僚たちが大いに国際マンぶりを発揮しまして、若きエコノミストが議論をしておるわけですよ。私は大いにやれと、親子近く年の違う役人たちが大いにかんかんがくがくの論を闘わしておるのを目を細めて見たり聞いたりしておるわけですけれども、これが十分に煮詰まってくることを期待しておると、そういうことです。
  164. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 アジア太平洋構想の考え方をお聞かせいただいて非常に心強く思った次第でございます。やはり日本の国の立地条件から見て、大臣が考えられておられるそういう太平洋地域経済浮上ということが、やはり将来における日本発展につながるであろうということも、私も十分にはわかりませんが思うわけでございまして、どうかよろしくお願いをいたしたいと思う次第でございます。  それではもう一問お願いをいたしたいわけでございますが、午前中来いろいろ日本経済問題について、非常に景気が好調であるというようなことを御答弁なりお話もございました。そういう中で、その政策、特に経済構造の転換がやはりうまくいっておるんだということにつながってくるんであろうと思いますが、その点では、円高による経済環境の激変が逆に、日本の国にとっては試練ではあったけれども、一方では内需型産業構造への転換のよい機会になっておると思うわけでございまして、そういうことで、最近の構造調整の進捗がどのようになっておるのか、また、これから構造調整をどのように通産省はやっていこうとされておるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  165. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ただいまお話しのとおり、最近日本経済は非常に内需が好調でございまして、先般も十―十二月期の国民所得統計が発表になりましたが、六十二年度の経済成長率は、これから一ー三の数字が出てまいりますが、仮に一―三月が十―十二月期に対して伸び率がゼロでいきましても四%を超える、こういう状況でございます。ただその間、外需経済成長の足を引っ張っておりますが、内需は非常に好調に伸びておる。これまで日本経済構造調整内需主導経済への転換ということで言われておりましたが、それは最近までのところは非常にうまくいっているというふうに考えます。ただ、何といたしましてもまだ対外バランスは大幅な黒字を計上いたしております。したがいまして、これからも引き続いてこれまで同様内需主導型の経済の定着ということを目指していかなければならないと思います。  マクロ的に見ますと今申し上げたように非常にうまくはいっておりますが、ミクロ的に見てまいりますと、やはり企業城下町と言われるようなところとか、輸出型の中小企業産地と言われるようなところでは、特に円高の大きな影響を受けて地域経済にも影響が出ておりますし、またこういう地域では、最近好転してまいりましたが、雇用情勢というものもまだ全国平均に比べますと非常に悪い状態にございます。したがいまして、これからも構造調整内需主導型の経済運営をやっていきます場合に、ただいま申し上げました企業城下町なり輸出産地といったような地域経済への配慮、さらにはまた、雇用面での各種のミスマッチというものに対してきめ細かい対応をしていくことが必要であろうと考えております。  こういった問題につきましては、既に国会におきましても特定地域中小企業対策臨時措置法を成立させていただきましたし、また産業構造転換円滑化臨時措置法も成立させていただいております。こういった法律の運用を含め、ミクロ的な面に対しては十分の手を打っていきたいと思います。  さらに、冒頭申し上げましたようなマクロ的な好調をこれからも持続させますためには、やはりマクロ経済面での適切な成長の維持ということが必要になってまいりますので、こういった点につきましても、現在新しい中期の経済計画の検討が経済審議会等で行われておりますが、この現在までの内需中心経済成長というものをマクロ面でぜひ確保できるような計画にしていく、そういう方向で通産省としては努力をしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  166. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 中小企業関係で、輸出型産地とか企業城下町等企業については非常に厳しい状態があるということはよくわかっておるわけでございますが、そういう中でも経済構造調整がうまくかなり回転をいたしておる。そういうことの中で、輸出型でありました企業がどういうような方向と申しますか、構造転換をなさっておるのか、その点お聞かせを願いたいと思います。
  167. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) お尋ねがございましたので、若干具体的な例に即して申し上げてみたいと思います。  輸出型産業と申しますと、代表的なところは加工組み立て型産業でございます。電子機器、電気機械製造業につきましては、このところ国内のオーディオビデオについて非常に需要が好調でございまして、むしろ円高によりまして採算が悪くなっております輸出を減らしてむしろ内需に振り向けるという格好でやっております。また、素材産業の中でも例えば鉄鋼業のようなものはこれは国内の需要が非常に好調でございまして、最近では四半期ベースでございますが、年換算をいたしますと一億トンを超える程度の需要になっておりますが、これもむしろ外国からの安い輸入鋼材がふえ、また輸出量も抑えておりますが、内需中心でやっております。ただ、こういった状況がいつまで続くということにつきましては必ずしも十分な保証がございませんので、鉄鋼業におきましては鉄鋼業以外の新しい分野への進出ということを考えております。  某高炉メーカーの場合でございますと、たしか昭和六十七年度だったと思いますけれども、現在まで八〇%ぐらいの比率でございます鉄鋼業関係の売り上げを五〇%までに下げて、残り五〇%は鉄鋼業以外の分野で売り上げを伸ばしていくというようなことも考えているようでございますが、この種の事例につきましては枚挙がございませんが、これまでのところ何にも増しまして内需が非常に好調でございますので、こういった事業転換、内需転換ということが非常にうまくいっている、こういうふうに考えております。
  168. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 もう時間ですから終わりますが、それぞれ構造転換もこれからやはり進めていかなければならない中で、先ほど通産大臣の方からもお話がございましたが、やはり開発輸入というような形の中で協力をやっていく、構造転換を図っていくということも通産省の施策の中にはかなり入っておるわけでございますが、そういう点を強力に進めていただきたいと思います。  以上で終わります。
  169. 大木浩

    委員長大木浩君) 本件に関する質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  170. 大木浩

    委員長大木浩君) 次に、中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案並びに異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法案を便宜一括して議題といたします。  まず、中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案について趣旨説明を聴取いたします。田村通商産業大臣
  171. 田村元

    国務大臣田村元君) 中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  中小企業信用補完制度は、信用力の不足する中小企業者の事業資金の融通を円滑化するため、信用保証協会が債務保証を行い、これについて中小企業信用保険公庫が保険を行うものであり、保証債務残高は現在十兆円を超える規模に達しております。  我が国中小企業は、現在、円高、技術革新の進展、国民ニーズの多様化、高度化、国際化の進展等の厳しい環境変化の中で構造転換を迫られております。とりわけ、円高の長期化により、中小企業には新たな発展のための活路の開拓が求められております。  中小企業信用補完制度においても、このような内外の経済環境の変化に直面している中小企業の資金需用に的確に対応していくことの必要性がますます高まってきております。  本法律案は、このような観点から中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正しようとするものであります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一は、付保限度額の引き上げであります。最近における中小企業の資金需要の大口化に対処するため、昭和五十五年度以降据え置かれていた普通保険、無担保保険及び特別小口保険の付保限度額をそれぞれ引き上げることとしております。  第二は、海外投資関係保険の創設であります。我が国経済の国際化に対応し、海外直接投資の必要に迫られている中小企業増加しておりますが、中小企業は大企業と比べて、資金調達力で格差があり、これを補うことが極めて重要であります。このような観点から、海外直接投資に必要な資金を対象とする保険制度として、海外投資関係保険を創設することとしております。  第三は、新事業開拓保険の創設であります。我が国産業構造転換の大きな流れの中で、中小企業が新たな発展を遂げていくためには、新たな商品、技術の開発、市場の開拓等により新たな事業の開拓を行っていくことが極めて重要になっております。このような観点から、新たな事業の開拓に必要な資金を対象とする保険制度として、新事業開拓保険を創設することとしております。  第四は、倒産関連保証に係る無担保保険の付保限度額の特例の延長、拡充であります。円高の長期化等に対応し、本年三月三十一日に期限の到来する本特例措置を延長、拡充し、引き続き円高影響を受けている中小企業者の経営の安定を図ることとしております。  第五は、中小企業信用保険公庫が、これらの信用補完制度の拡充を円滑に実施し得るよう経営基盤の強化を図ることとし、このため、所要の措置を講ずることとしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  172. 大木浩

    委員長大木浩君) 次に、異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法案について趣旨説明を聴取いたします。田村通商産業大臣
  173. 田村元

    国務大臣田村元君) 異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓の促進に関する臨時措置法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  円高の長期化のもとで、中小企業は、新たな発展のための構造転換を迫られております。また、近年における技術革新の急速な進展は、基本的な技術体系の変革をもたらしつつあり、国民ニーズの多様化、高度化は、新たな製品やサービスの提供を中小企業に求めております。  このような厳しい経済的環境に対応して中小企業が新分野を開拓するには、広い視野と事業分野をまたがった技術や経営に関する知識が必要となりますが、一般に事業分野が狭く、経営資源の蓄積が乏しい中小企業が自力でこれを行うことは容易なことではありません。現在、全国各地で、事業分野を異にする中小企業者が協同してそれぞれの技術や経営に関する知識を融合させ、新たな製品やサービスを開発し、新分野を開拓しようとする動き、いわゆる異分野中小企業者の融合化が積極的に展開されております。これは、融合化が厳しい経済的環境の中で中小企業が創造的発展を遂げていくための新たな活動理念であることを示すものと考えられます。  本法案は、このような融合化を促進するための措置を講ずることにより、新たな経済的環境に即応した中小企業の創意ある向上発展を図り、もって我が国産業構造の転換の円滑化と国民経済の均衡ある発展に資することを目的に立案されたものであります。  次に、本法案の要旨を御説明申し上げます。  第一に、国及び地方公共団体は、異分野中小企業者の知識の融合による新分野の開拓を促進するための施策を総合的に推進するよう努める旨を規定しております。融合化は、異分野中小企業者の交流に始まり、その組織化から開発、事業化に至るまでの息の長い活動を行うことによって初めてその目的を達成し得るものであります。したがって、融合化の円滑な実施のためには、国及び地方公共団体が総合的に施策を講ずることが重要であり、このような観点から、その施策に係る努力義務を規定しているものであります。  第二に、異分野中小企業者組合員とする事業協同組合は、研究開発その他の知識融合開発事業に関する計画作成し、所管行政庁の認定を受けることができることとし、計画の認定を受けた組合及びその組合員等に対しては、必要な資金の確保、中小企業信用保険法による新事業開拓保険の付保限度額等の特例、試験研究についての課税の特例、準備金制度の創設等金融、税制面における種々の助成措置を講ずることとしております。  第三に、計画の認定を受けた事業協同組合が知識融合開発事業を円滑に実施できるよう、中小企業等協同組合法の特例を設けるとともに、その開発成果を協業組合において円滑に事業化できるよう、中小企業団体の組織に関する法律の特例を設けることとしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  174. 大木浩

    委員長大木浩君) 以上で両案の趣旨説明聴取は終わりました。  両案に対する質疑は後日に行うこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十九分散会