○吉井光照君 私は、公明党・
国民会議を代表して、ただいま
趣旨説明のありました
国民健康保険法の一部を
改正する
法律案に対し、
竹下総理を初め関係各大臣に質問をいたします。
先日、六十二年版の厚生白書が発表されましたが、この白書によりますと、
日本の社会保障
制度が二十一世紀に向かって大きな転換期を迎えつつあり、今までのような欧米諸国水準への追いつけ追い越せのいわゆるキャッチアップ型から、
国民のニーズに積極的に
対応する生活の質の向上、すなわちクォリティー・オブ・ライフ型への必要性、そして医療保険
制度について一元化論の中で、二十一世紀の本格的な
高齢化社会に向かって、医療費保障システムの長期的安定化と給付と
負担の不均衡是正を前提に、国保
制度の見直しを初め医療保険
制度の
改革を推進すると主張しているのであります。
そこで、
総理にお伺いをいたします。
昭和五十八年の老人保健
制度の創設に始まり、同五十九年に健康保険法の
改正、さらに同六十一年に老人保健
制度の
改革等、一連の法
改正と
制度改革が給付と
負担の公平化の名のもとに実施されてまいりましたが、私の見るところ、これらはいずれも増大し続ける老人医療費をいかに抑制するか、また国庫
負担をいかに軽減させるか、そして、連帯と自助努力の名による
制度間の財政調整と個人の
負担強化に帰趨させるものであったと言わざるを得ません。まさに、老人医療など保険
制度から国庫を撤退させ、医療費抑制だけがねらいの
改革以外の何物でもないと言っても過言ではないと考えます。このようなことで、
国民全体に良質の医療をできるだけ安くという医療保険
制度本来の役割と使命が全うできるのでありましょうか。白書も指摘するように、急速な
高齢化社会を迎えてますます深刻かつ重大な局面に遭遇する老人医療の将来を思うとき、二十一世紀へ向けて医療保険
制度に対する国の、
政府の責任と役割をどのように認識し、担っていく考えなのか、今こそ
国民の前に明確にすべきであると考えますが、御所見を伺いたいのであります。
また、
政府の医療費の
政策目標として、従来、
所得の伸びの
範囲に抑えるということでありましたが、五十八年、五十九年は
範囲内にとどまったものの、六十年以降は大幅に
所得の伸びを上回る医療費の伸びであります。しかも、毎年一兆円ずつ医療費が増大しておりますが、これは財政のつじつま合わせ、つまり財政主導型の医療
政策を推進してきた結果によるものではありませんか。今後とも
所得の伸びの
範囲内という目標を堅持するおつもりなのか、医療費
政策目標をどこに置かれるのかを明確にお示しをいただきたいのであります。
次に、医療保険の一元化について厚生大臣にお伺いします。
政府は、医療保険の給付と
負担の公平化という観点から、六十年代後半のできるだけ早い時期に医療保険の一元化を図るとの
改革方針を打ち出しておりますが、何をもって一元化と言うのか、その姿、中身、すなわち給付率、一元化への時期等について、具体的構想をお示しいただきたいのであります。
次に、国庫
負担について、大蔵大臣にお尋ねをいたします。
さきにも述べましたように、老人保健
制度の
制度化、退職者医療
制度の導入、健保法の
改正など、一連の
制度改革のたびごとに国の医療に対する責任の低下が顕著になっていることは甚だ遺憾であります。今後の医療保険
制度における国庫
負担の位置づけについて明快に御
説明をいただきたいのであります。
次に、
負担と給付の公平化問題についてであります。
国民皆保険
制度のもとで、保険税を納付するという
負担面ではそれぞれの
所得に応じて公平に行われていると考えられますが、問題は給付面であります。僻地、離島などいわゆる過疎地、無医地区等においては適切な受診、受療が得られないという不公平についても、何らかの是正策を講ずる必要があります。この点について自治、厚生両大臣の御所見を承りたいのであります。
次に、地方財政への影響について伺います。
六十三年度
財源補てんは、十分でないにしても地方交付税の
特例加算等の
措置で補てんすると言うが、六十四年度については明らかにされていないのであります。これについてどう扱われるのか、また、この
措置で国保運営は十分確保されると考えておられるのか。また、調整債はいわば地方の借金であり、いずれは返済すべきものであります。従来からの取り扱いでいきますと、約八割程度しか国からは補てんされていません。まして、不交付団体のままであれば補てんがないことになり、公平の観点からこれら不交付団体に対しどう対処されるおつもりか。またさらに、
政府の
説明によれば、
改正に伴う地方財政への影響額については地方交付税調整債で
財源補てんをしており、単なる
財源の地方
負担の転嫁でないと強弁していますが、百歩譲って、もしそうであるならば、このような複雑な仕組みをわざわざ用いずとも、初めから国が直接国庫
負担という形で
負担すれば済むことではありませんか。この点あわせて大蔵、自治、厚生各大臣の御
説明をいただきたいのであります。
次に、低
所得者対策についてであります。
いわゆる保険基盤安定
制度の中で
懸念されることは、
改革案にもかかわらず、より根本的な問題として、国保被保険者に年金生活者が増大することから、四割、六割の保険料軽減者がふえる傾向にあります。このような状況についてどのように受けとめ、対処される考えか、厚生大臣の御答弁をいただきたいのであります。
次に、医療費地域対策について伺います。
いわゆる基準医療費の二割を超える部分について、保険料と国、地方で折半
負担するという趣旨でありますが、国は単に口を差し挟むだけでなく、地方の経営努力に具体的に協力、参画すべきではありませんか。例えば、地域医療
計画、診療報酬改定など、ほとんど国の決定権にまつものが多く、一方的に地方自治体に押しつけることには問題があります。したがって、その実施に当たっては、国は相当分の国庫
負担をすべきが当然ではないでしょうか。また、
改革案は、運用面において不透明な部分が多分に見受けられるのであります。例えば、地域医療費適正化プログラムにおける平均医療費の基準額の定め方、高額医療地域としての指定等について、政令委任事項となっているため、具体的には何も明らかではありません。この点もぜひ明確にしておくべきであります。厚生大臣の御所見を承りたいのであります。
次に、高額医療費共同
事業についてであります。
六十三年度の
国民医療費は十九兆円に達すると推計されており、対前年度伸び率は
国民所得の伸び率を上回る五・二%増であります。この医療費増加の
理由について、厚生省の分析結果によりますと、その一つに、医療技術の急速な進歩による医療の高度化が挙げられています。すなわち、高価な医療機器の
開発と普及がどんどん医療費を押し上げているということであります。もしそうであるならば、このたびの高額医療費共同
事業の強化
拡充策としての国、地方分合わせて二百億円の助成で妥当と言えるのでありましょうか。つまり、交付の基準となる限度額約百万円の国保が、健保の約八十万円並みに
引き上げ、
対象拡大されるのでしょうか。また、二百億円の助成金のうち国の
負担が一割というのは、
政府の公言する国と地方が一体となって取り組むという精神にもとるのではありませんか。厚生大臣の御所見を承りたいのであります。
次に、老人保健拠出金に関する国庫
負担の問題についてであります。
改革案の最大の眼目は、国保
制度の安定化を図るためとされています。しかしながら、中身を検証すると、老人保健拠出金に係る国庫
負担の見直しとして国は四百六十億円の削減を行っており、その相当分を保険料で補てんする
内容となっています。これでは国保からの拠出金を増額したも同然であり、国保
制度の安定を目指すとの
政府の考え方と矛盾することになり、単なる国庫
負担の削減策であるとの批判があるのも当然であります。真に老人保健
制度のあるべき姿を求めるのであるならば、六十五年度に予定されている老人保健の加入者按分率の
引き上げなど見直しの際に行えば事足りるのではありませんか。何ゆえ今回の
改正の中で老人保健拠出金に係る国庫
負担のみの見直しを行わねばならないのか、厚生大臣に御
説明をいただきたいのであります。
次に、保健施設
事業についてであります。
今回の厚生白書には、注目すべき点があります。すなわち、超
高齢化社会のもとでは、マンパワーの量の拡大と質の向上がこれからの社会保障の重要な課題であり、その整備
改革が急務であるとの指摘があります。全く同感であります。私は、かねて年金
制度、医療保険
制度の整備も、
高齢化社会においては極めて重要な問題であるとは思っていますが、それ以上に二十一世紀の福祉行政の重要な課題は介護問題に尽きると考えていたからであります。保健施設
事業も介護サービスも、国保被保険者の健康増進と社会参加に重要な役割を果たすものであります。御提案の国保の医療費抑制策も全く否定するものではありませんが、疾病予防にまさる
国民の健康保障と保険財政の健全化への有効な手だてはありません。そのような視点からも保健施設
事業は重要であります。また、それが結果として医療費の軽減に連動するものと確信をしております。しかしながら、国保の保健施設
事業は、被用者保険と比較するとき、
事業内容に大きな格差があることは否定できません。例えば、健保組合、政管健保、いずれも健康教育、健康診査、健康相談、成人病予防検診等々、積極的に保健施設
事業に取り組んでいることは御承知のとおりであります。今後、国保被保険者の高齢化が進むことから、このままでは医療費の増大は必至であり、被保険者の疾病予防と健康確保のため、保健施設
事業の有効な確立と推進が急務であると考えます。この保健施設
事業の
拡充整備について自治、厚生両大臣の決意を承りたいのであります。
終わりに、医療費の適正化対策について伺います。
真の意味の医療費適正化の処方せんは、
現行保険
制度に予防給付の導入を図るとともに、老人数の増加、成人病増加、疾病構造の
変化等諸要因の究明と、さらには医療技術の急速な進歩と高度化に
対応し得るよう
制度の見直しが必要であります。例えば、医療の高度化を
理由に、過剰な検査や薬づけに象徴される過剰濃密診療が恒常的に行われている中で、レセプト
審査の強化や医療機関への指導監督の強化等が世論として強く指摘されているところであります。これらを放置して医療の適正化はあり得ません。医療給付
内容の適正化と改善こそが
制度建て直しの基本的施策であり、
国民の保険
制度への
信頼を回復するかぎであります。厚生大臣の御決意を承って、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣竹下登君
登壇〕