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1984-02-17 第101回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年二月十七日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 倉成  正君    理事 小渕 恵三君 理事 原田昇左右君    理事 松永  光君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 岡田 利春君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    石原慎太郎君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       澁谷 直藏君    砂田 重民君       田中 龍夫君    高鳥  修君       玉置 和郎君    中馬 弘毅君       橋本龍太郎君    原田  憲君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       村田敬次郎君    村山 達雄君       井上 一成君    稲葉 誠一君       上田  哲君    大出  俊君       島田 琢郎君    清水  勇君       関  晴正君    武藤 山治君       矢山 有作君    湯山  勇君       市川 雄一君    草川 昭三君       斉藤  節君    木下敬之助君       小平  忠君    渡辺  朗君       工藤  晃君    柴田 睦夫君       瀬崎 博義君    藤田 スミ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 住  栄作君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 森  喜朗君         厚 生 大 臣 渡部 恒三君         農林水産大臣  山村新治郎君         通商産業大臣 小此木彦三郎君         運 輸 大 臣 細田 吉藏君         郵 政 大 臣 奥田 敬和君         労 働 大 臣 坂本三十次君         建 設 大 臣 水野  清君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     田川 誠一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      中西 一郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官)稻村佐近四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      岩動 道行君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上田  稔君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      前田 正道君         内閣総理大臣官         房会計課長   渡辺  尚君         兼内閣参事官         内閣総理大臣官         房地域改善対策         室長      佐藤 良正君         総理府人事局長 藤井 良二君         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局取引部長 奥村 栄一君         警察庁刑事局保         安部長     鈴木 良一君         警察庁警備局長 山田 英雄君         行政管理庁長官         官房審議官   佐々木晴夫君         行政管理庁行政         管理局長    門田 英郎君         防衛庁参事官  古川  清君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 矢崎 新二君         防衛庁経理局長 宍倉 宗夫君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁総務         部長      梅岡  弘君         経済企画庁調整         局長      谷村 昭一君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         科学技術庁原子         力局長     中村 守孝君         国土庁長官官房         長       石川  周君         国土庁長官官房         会計課長    安達 五郎君         国土庁地方振興         局長      川俣 芳郎君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   波多野敬雄君         外務省経済局次         長       恩田  宗君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 小和田 恒君         大蔵大臣官房総         務審議官    吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省国際金融         局長      酒井 健三君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房審         議官      齋藤 尚夫君         文部大臣官房会         計課長     國分 正明君         文部省初等中東         教育局長    高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省社会教育         局長      宮野 禮一君         文部省管理局長 阿部 充夫君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生省医務局長 吉崎 正義君         厚生省保険局長 吉村  仁君         社会保険庁医療         保険部長    坂本 龍彦君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         水産庁長官   渡邉 文雄君         通商産業省通商         政策局長    柴田 益男君         通商産業省貿易         局長      杉山  弘君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       松田  泰君         中小企業庁長官 中澤 忠義君         運輸省自動車局         長       角田 達郎君         労働大臣官房長 小粥 義朗君         労働省職業安定         局長      加藤  孝君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         自治省行政局選         挙部長     岩田  脩君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十七日  辞任         補欠選任   武藤 山治君     関  晴正君   大久保直彦君     市川 雄一君   岡崎万寿秀君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   関  晴正君     武藤 山治君   市川 雄一君     大久保直彦君   藤田 スミ君     柴田 睦夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計予算  昭和五十九年度特別会計予算  昭和五十九年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 倉成正

    倉成委員長 これより会議を開きます。  昭和五十九年度一般会計予算昭和五十九年度特別会計予算昭和五十九年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。市川雄一君。
  3. 市川雄一

    市川委員 私は、きょうはシーレーン防衛の問題をお伺いしたいと思います。  それに先立ちまして、総理並びに防衛庁長官前提の問題を確認いたしたいと思います。  一つは、今防衛庁大綱水準達成を目指して防衛力の整備を行っているわけですが、この防衛力大綱の基礎となった考え方基盤的防衛力という考え方はもうお捨てになったのかどうか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  4. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 決して捨てておりません。その大綱水準に早く到達するように、今せっかく努力中でございます。
  5. 市川雄一

    市川委員 大綱では、特定第三国脅威として想定しない、こういうふうに言われてきましたけれども、その点はどうですか。(発言する者あり)
  6. 倉成正

    倉成委員長 御静粛に願います。
  7. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 その点も同様でございます。変わっておりません。
  8. 市川雄一

    市川委員 総理にお伺いいたしますが、日本防衛にとって脅威がある、脅威があればこれは当然備えなければならないと思うのです。そこでお伺いするわけですが、防衛費が四年間連続して突出したと言われております。この四年間防衛費を突出してまでも早急に防衛力を整備しなければならない脅威というものは一体どういう脅威なのか、総理はその点をどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、これを伺いたいと思います。
  9. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大綱水準にできるだけ早く近づけたいという考えに立ちまして鋭意努力しておるところでございます。  脅威というのは、意志能力が結合した場合に脅威が出てくる。能力はあっても意志がない場合には、それは現実的な脅威にまでは成長しない。しかし、潜在的脅威というものはあり得る。そういう意味において、潜在的脅威というものは日本の周辺においてもあり得る、そう考えておるわけであります。要するに、万一不幸な事態が起きた場合に、侵略をさせない、あるいは侵略を誘発させない、それに必要な範囲の最小限度の有効な防衛力を整備しよう、そういう考えに立っておるわけであります。
  10. 市川雄一

    市川委員 要するに、四年連続して防衛費が突出した、今の総理お答えで言いますと大綱水準達成を非常に急いでいる、急に急ぎ出した、スピードが加速された、その加速された背景には、加速しなければならない脅威というものがあっておやりになっているのだろうというふうに思うのです。本当はそういう説明をしなければ国民はわからないと思うのですね。ただ大綱水準があって、大綱水準を早く達成したい、だからやっているのだということではなくて、早くというからには、達成スピードを早めたわけですから、早めなければならないような切迫した脅威というものがこの四年間あるのかどうか。その脅威というものを総理国民に向かってどういうふうに説明なさるのか。こういう脅威があって、福祉やほかの予算を多少削っても防衛力は早く整備しなければならないのだ、こう国民に向かって説明をなさる、そういう切迫した脅威というものが具体的にどういう脅威なのか、これがよく理解できない、どうでしょうか。
  11. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大綱水準ということが今我々の焦点になっておりますが、それをつくるときの前提条件というものがあります。それはあの中に書いてあるとおりであります。そして、万一侵略が起きた場合には、それが限定的小規模のものである場合には自分の力でそれを駆逐する。そういう能力を整備したい、あの大綱水準をつくったときにはそれがないからそれを速やかに整備したい、そういう意図であの大綱水準という目標が決められ、歴代内閣は、そのような万一侵略が限定的小規模の侵略に対しては有効に対処し得る力を整備しようという意味で今努力しておる最中です。そして、あの五十一年大綱水準をつくったときの状況と今日の状況とを見ると、また非常に変化がありまして、周囲状況というものは、日本の力と比べてみると、日本努力がまだまだ足りない、大綱水準に早く到達させる必要がある、そういう状況にあると考えておるわけであります。
  12. 市川雄一

    市川委員 五十一年に大綱ができたわけですが、今総理は、大綱ができたときと今では周囲状況が変わった、こうおっしゃったわけですけれども、大綱には前提とする国際情勢が明記されております。その前提とする国際情勢にもし大きな変化があった場合は直ちに大綱水準を見直す、そういう仕組みになっております。今総理のおっしゃった、五十一年の大綱ができたときに比べて今周囲変化があった、もちろん国際情勢変化しておりますから、変化がないとは申しませんが、大綱水準を見直すに足る国際情勢変化があった、そういう意味変化ですか、どうですか。
  13. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 基本的な枠組みについては変わっていないと思います。ただ、現実的にいろいろのアクセントがついていることは事実でございます。
  14. 市川雄一

    市川委員 大綱を見直すほどの変化ではない、そうするとおかしいのですよね。大綱を見直すほどの変化じゃない、それだったら何も普通のスピードでやればいいじゃないかということになるわけです。それはまた後で議論します。  もう一つ歴代防衛庁長官は、大村長官伊藤長官も、大綱水準達成しても千海里のシーレーン防衛能力は不十分である、こういうふうに国会やNHK討論会新聞記者インタビューや、そういうところで述べておりますが、新しい防衛庁長官はどうお考えですか。
  15. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これはもう十分御案内だと思いますが、シーレーン防衛というのは一〇〇%完璧を期する、そういうわけにはまいりません。そういう意味で十分でないという発言だろうと思います。
  16. 市川雄一

    市川委員 十分でない。千海里のシーレーン防衛能力大綱水準、これはイコールですか。大綱水準を早く達成したい、千海里のシーレーン防衛能力を持ちたい。ワインバーガー氏は八〇年代中という期限を区切っておっしゃっておるわけです。この能力というものは大綱水準イコール大綱水準達成されればこれがイコール達成されるのか、足らないということなのか、どうなんですか。
  17. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これはいわゆる相手国の戦力といいますか、行動といいますか、そういったものとの対応もございますので、相対的なものだと思いますが、私どもは、防衛力大綱に一刻も早く、できるだけ早く到達する努力をすることによって相当程度海上交通の安全が確保できる、そういうように考えております。
  18. 市川雄一

    市川委員 いや、私の質問にまだお答えになっていないと思うのです。要するに、相当程度ということを聞いているのではないのですよ。防衛庁長官として、大綱水準達成すれば千海里のシーレーン防衛能力は満足する、そういうイコール関係にあるのか、それとも大綱水準達成してもなお不十分であるというお考えなのか、それを聞いているのです。
  19. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 これは、申し上げたとおり、いわゆる防衛力というものは相対的なものでございますので、したがいまして、その防衛力大綱達成すればそれによってもう十分である、こういうようなことは一概に言えないと思います。
  20. 市川雄一

    市川委員 一概には言えないけれども何なんですか。一概には言えないけれどもどうなんですか。じゃ、政府には考えはないのですか、要するに。
  21. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 当面は「防衛計画大綱」の水準に達するように努力をする、そのことが必要である、そう考えておるわけであります。
  22. 市川雄一

    市川委員 当面のことを聞いているわけじゃなくて、アメリカもはっきり何回もおっしゃっているわけですよね。八〇年代中にシーレーン防衛能力を持つと日本総理大臣が約束したというくらいの言い方をしているわけです。その話はまた後でやるのですけれども、だから要するに、大村長官も、伊藤長官も、大綱水準に達してもシーレーン防衛能力は不十分だ、こうはっきりおっしゃっておるわけです。だから、防衛力変化する国際情勢との絡みで相対的なものだということは、これは当たり前の話です。そんなことは前提で議論しているわけですから。あなた方が考えているシーレーン防衛能力というものを考えたときに、大綱水準で間に合うのか間に合わないのか、なおかつ不十分なんだ。長官、どうですか。はっきり簡単に答えてください。――いやいや、長官に聞いているんだ。もっとはっきり言ってください。簡単な答えなんだ。不十分です、十分です、それだけなんだ。
  23. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 いや、さっきから申し上げているとおり相対的な問題でございますので、一刻も早くその水準に達したいというのが今の我々の考え方でございます。したがいまして、伊藤長官とか前の谷川長官は、そういうことを踏まえて不十分であるという発言をされたものと了解をしております。
  24. 市川雄一

    市川委員 総理、今伺っていて、相対的なものだ、これは当然だと思います。ですから基盤的防衛力構想も五つの国際情勢という一つ前提を置いておるわけですよね。この前提が大きく変化しない限り基盤防衛力でいくのだ、こういうことですよ。これは当然そういう相対性でできている。この基盤防衛力を見直すに足る変化があったのか。いや変化はありましたけれども、見直すに足る変化はございませんでしたという前提で私は伺っているわけですよ。  それでは伺うけれども、総理並びに防衛庁長官がおっしゃっている、総理アメリカでおっしゃいましたよね、千海里防衛ということを。千海里シーレーン防衛能力というもの、これは大綱水準達成すれば十分なのか、不十分なのかという今の時点での御認識を長官は言えないわけですよ、総理総理はどうですか。
  25. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ただいまの御質問は、シーレーン防衛というものの考え方にもとを発する問題でございまして、このシーレーン防衛と申しますのは、有事の際、国民の生存を維持しあるいは継戦能力を保持するという観点から、港湾、海峡の防備でございますとか、あるいは哨戒でございますとか防衛といったような各種作戦を組み合わせます。そういった各種作戦の組み合わせによります累積効果によって海上交通の安全を確保するということを目的とするものでございます。したがいまして、その作戦の態様は千差万別でございますから、一〇〇%やれるとかやれないとかいうようなものではございませんで、相当効果をこれが発揮することによりまして、これが抑止効果にもなりますし、有事における対応もそれだけ十分にできるという性質のものでございますから、数字をもって完全にできるとかできないとかいうふうな性格のものではないと思うわけでございまして、したがいまして、我々としては、現在、大綱水準達成ということを目標相当能力向上を図ることを期するということで政策を展開をしておるわけでございます。
  26. 市川雄一

    市川委員 余り答弁になっておりませんね。数字でもってはかれない。数字でもってはかれなかったら基盤防衛力なんて計画さえ立ちませんよ。冗談じゃありませんよ。それは数字でもってはかれないけれども、いろんな国際情勢や何かを決めて、基盤防衛力だって数字ではかっているんじゃないですか、大綱水準。何を言っているんですか。そんなの答弁になっていませんよ。  総理に伺いますが、総理は昨年訪米されたときに、ワシントン・ポストの首脳とインタビューというか朝食会でお話をされた。去年新聞で話題をにぎわしたわけですが、不沈空母の発言にあらわれている総理の一連の、バックファイア爆撃機侵入に対抗する巨大な防衛とりでを備えなければならない、バックファイア侵入を阻止するのが我々の第一の目標だ、これは総理、今でも総理はこういうふうに、間違いないとお考えでございますか。
  27. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防空能力を充実さして、外国航空機侵入侵略を許さない、これはやはり防衛の大きなアイテムであると思っています。
  28. 市川雄一

    市川委員 総理は、バックファイアという航空機の固有名詞を挙げて、バックファイアを阻止することが我々の第一目標だ、こうおっしゃっているわけです。もちろん防空能力を持つことは当然だと思うのですけれども、バックファイアを阻止することが第一目標だ、バックファイア特定されているところに問題があると私は思うのですが、この考え総理は今も変わっておりませんか、こういう意味でございます。
  29. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 不法侵入しあるいは侵略して入ってくる外国航空機、これに対してはすべて防空能力を充実さしてそういうことを起こさせないようにする、これが我々の考え方であります。
  30. 市川雄一

    市川委員 それはもうよくわかっているわけです。不法侵入してくる飛行機を阻止する、これは当たり前の話だ。だけれど、総理は、バックファイア侵入を阻止するのが我々の第一目標である。バックファイアというのは御承知のようにソ連戦闘爆撃機航続距離五千キロ、核爆弾も持っている、そういう飛行機を阻止することが第一目標だ。この考えは、じゃ間違っているわけですか、第一員標だというのは。それとも総理はおっしゃってないのですか、こんなことは語ってない、ワシントン・ポストで言ってない、向こうが勝手に書いたんだ。これはやはり日本のこれからの防衛考える上で、総理がどういうことをお考えになっているのか知る上で非常に重要な問題なので私は今聞いているわけです。ワシントン・ポストにそんなことを言った覚えはない、あるいは、バックファイアを阻止するのが第一目標だというのは私の考え違いだった、こういうことなのかどうなのか、はっきり御答弁をいただきたいと思います。
  31. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我が国は仮想敵国を設けておりません。我々は侵略してくる、あるいは不法侵入してくる一切の外国航空機に対して、これをそういうことを起こさせないような抑止力を持つ、また、そういうことが起きた場合には、有効に対処し得る能力を持つ、それが我々の考え方であります。
  32. 市川雄一

    市川委員 言ったのか言わないのか、御答弁がありませんでした。また、バックファイア侵入を阻止するのが我々の第一目標だということは間違っているのか間違ってないのか、今の時点での御判断を伺ったが、これも御答弁がございませんでした。これはバックファイアという名前を挙げたところに大きな意味があるわけですね。先ほど、もう総理もお気づきになっていらっしゃると思うのですが、基盤的防衛力構想では、大綱では特定第三国脅威として想定していない。バックファイアというのはソ連戦闘爆撃機です。日本総理バックファイアなんということを言えば、これは完全に大綱考え方が違う異質のものですよね。これはここまでにしておきましょう、水かけ論になる。水かけ論というか総理お答えにならない。  そこでまた総理にお伺いしたいのですが、大平元首相は総理に就任なさるときにこういうことをおっしゃっていますね。総理大臣就任のインタビューで、「本来ソ連の安全保障政策は非常に用心深い防衛的なものだと思う、ソ連外交は非常に手がたく、すぐれた外交を展開してきている、」。こういうインタビューの記事をもとにして予算委員会の場所で大平元総理ソ連観というものを聞かれているわけです。この質問に対して大平元総理は、もちろん国際情勢が今とその当時とは違うと思うのですけれども、これはソ連という国の本質的なものを聞いておるわけです。「用心深い国であるという感じを持っております。進んで他国を攻略するというようなことよりは、防衛に主眼を置いた外交防衛政策を展開している国ではないかというように私は受けとめております。」これが予算委員会での大平元首相のお答えでございます。  今回、アメリカの国防報告によりますと「ソ連は本来、攻撃的だが、それが一層広範囲になってきた。」アメリカの国防報告ではアメリカの一応ソ連観というか、短い文章ではございますが、「ソ連は本来、攻撃的だが、それが一層広範囲になってきた。」こう言っております。総理ソ連観というもの、総理はどういうソ連観をお持ちなのか、これを伺いたいと思います。
  33. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我々の周りにある国に対しまして、それが侵略的であるとか平和的であるとかそういうような評価を軽々に申し上げることは慎んだ方がいいと思っております。国民も世界も各国の行状というものを現実に見ておるのでありまして、その見ているそのものというものをやはり基礎にしておいていいのではないかと思います。
  34. 市川雄一

    市川委員 昨年、願わくは、アメリカに行かれたときに、そういうことで話をされていただければ一番よかった。ソ連バックファイア爆撃機日本の上空で阻止するのが我々の第一目標だ、ソ連極東太平洋艦隊を日本海に四海峡封鎖して封じ込めるのが我々の第二の目標だ、これはもう明らかにソ連ソ連という言葉を使っていらっしゃるのです、総理は。今の御答弁と全然違う。日本の国会だと非常に静かな御答弁になる。アメリカヘ行かれると急に、非常に勇気のある発言をする。勇気があるかどうかわかりませんけれども。非常に矛盾を感じるわけです、私は。  もう一つ総理にお伺いしたいのですが、ワインバーガー国防長官は昨年の十二月十三日、ワシントン記者クラブで演説しております。その演説の中で、ソ連極東部に配属されている中距離核ミサイルSS20、このSS20が現在百十七基配備されておる。近い将来百四十四基になるであろう。そして、この事実に基づいて「ソ連脅威が直接、日本に向けられている」こういうふうに言っております。  総理、SS20が日本に直接向けられた脅威、こういうふうに総理は御認識ですか。そういう評価ですか。
  35. 倉成正

  36. 市川雄一

    市川委員 いや、ちょっと待ってください、委員長。これは総理に対する御質問をしているわけです。これは防衛局長に聞いているわけじゃない。いや、防衛局長防衛の専門問題じゃないのですよ、これは。
  37. 倉成正

    倉成委員長 はい、わかりました。  総理大臣
  38. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本に向けられているかどうかはわからない。それは、相手の意図というものは我々が想像すべくもないものであります。しかし、一般的に言ってやればやれる到達範囲内に日本はある、そういう潜在的な状態にはあると思います。
  39. 市川雄一

    市川委員 ちょっと、この問題は非核問題のときに……。総理の今の見解だけ伺っておきます。  ことしの国防報告で、総理、「鈴木(前)首相は一九八一年五月、日本の領土と領空及び周辺千海里のシーレーン防衛が合憲であり、国家政策であると述べ、日本の役割とその目標を表明した。中曽根首相は米国との国家的分業下での日本の責任がどうあるべきかを、より率直に表明している。」こう述べている。非常にいろいろな問題を含んでいますね。アメリカの国防報告。公式文書です、これは。アメリカ政府の公式文書。周辺千海里のシーレーン防衛が合憲で国家政策、こういう総理は御認識ですか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは努力目標であって、私は当たらずといえども遠からずである。我々自体は、鈴木前総理が申し述べ、またあるいは鈴木・レーガン会談でコミュニケを発表した、それを誠実に実行しようと思って努力しておるのであります。
  41. 市川雄一

    市川委員 当たらずとも遠からず、国家政策である、そう理解いたします。  もう一つ伺います。「中曽根首相は米国との国家的分業下での日本の責任がどうあるべきかを、より率直に表明している。」これは、千海里のシーレーン防衛は米国との国家的分業の日本側の役割というか日本側の責任というか、こういう意味のことというふうに受け取れるわけですが、総理はそういうふうに理解をされているわけですか、また、そういう発言をなさったわけですか。総理が率直におっしゃった、こう言っている。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 端的にそういうことを言ったかどうか記憶にありません。しかし、私の頭の中にあるのは、前から国会で申し上げているように日本は盾の役目、アメリカはやりの役目、そういうことを申し上げて、層とやりの分業関係にある。つまり、日本日本の国土防衛を中心にして、攻撃的性格は持たない、しかし、万一日本侵略された場合にやりの役目をやって抑止力、攻撃力を発揮するのは主としてアメリカの力である、そういうようなやりと盾の関係にある、そういう分業関係防衛関係をつくっているということは申し上げております。
  43. 市川雄一

    市川委員 一般論を総理はおっしゃったわけですね。やりと盾という一般論。やりの役割はアメリカだ。層の役割は日本だ。今ここで、国防報告で言っていることはそういう一般論じゃないのですよ。「周辺千海里」こう言っている。周辺千海里のシーレーン防衛日本の分業だ、アメリカと両方で分業し合うその中の日本の方の責任だぞ、こう言っているわけです。じゃ、これ、国防報告でアメリカの言っていることは日本考えと違うのですか。一般論を聞いているのじゃないのです。シーレーン防衛は分業なのかと聞いている。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 周辺千海里とおっしゃいますけれども、何も千海里をコンパスでぐるっと回して全部守るという意味ではないのです。それは、もし航路帯を設ける場合はという限定されたことで言っておる。周辺という場合は数百海里、これが今まで防衛庁が言ってきたことであると思います。しかも、それはいわゆる海上警備防衛活動、海上警備活動というのであって、今、矢崎防衛局長が申し上げたように港湾の警備もあれば近海の周辺の防衛もあればあるいは海峡の防御もあれば、さまざまなものすべての海上交通路の保全、それが目的であるということを言っておるのであります。誤解なきようにお願いいたします。
  45. 市川雄一

    市川委員 いや、周辺と航路帯を設ければという説明があったのですけれども、要するに、私が最初から聞いている国防報告では千海里のシーレーン防衛日本の国家分業だ、こう言っているのですよ。これはどうなんですかと聞いているのです。そうですかと聞いている。
  46. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もし航路帯を設ける場合には千海里程度というもので、それは我々の努力目標であると考えております。
  47. 倉成正

    倉成委員長 矢崎防衛局長。――ちょっと市川委員、待ってください。国防報告の……。
  48. 市川雄一

    市川委員 いやいや、答弁を求めていないんだから……。
  49. 倉成正

    倉成委員長 しかし、今の点は大事な点です。
  50. 矢崎新二

    矢崎政府委員 今の事実関係について補足して御説明を申し上げさせていただきたいと思います。  日米間の共同作戦のやり方といいますのは、御承知のようなガイドラインにはっきり決めておるわけでございまして、我が国有事の場合におきます周辺海域の防衛それから海上交通保護のための作戦につきましては、海上自衛隊と米海軍が共同して実施する。「米海軍部隊は、海上自衛隊の行う作戦を支援し、及び機動打撃力を有する任務部隊の使用を伴うような作戦を含め、侵攻兵力を撃退するための作戦を実施する。」というふうに書いておるわけでございまして、あくまでも日米共同でやるということで日米間で合意ができておる話でございます。
  51. 市川雄一

    市川委員 聞いてないですよ、そういうことは。それはちゃんと私も防衛庁からいただいているのです。わざわざここで貴重な時間をつぶしていただきたくないわけです。  今のお話に入りたいのですが、もう一点だけ、大事な問題ですので伺いたいと思うのです。  今年度の防衛予算の決定というか決まっていくプロセスですね、総理、我々は新聞で拝見しているわけですけれども。新聞では「防衛予算"満額獲得"を 外相が異例の側面支援「公約実行」強硬な米」もちろんちゃんと記事が書いてある、どんなことを言ったか。それから「防衛努力米国に説明 訪米前に安倍外務大臣語る」「防衛首相のひとり舞台 対米配慮先行 歯どめ揺らぐ」こういう見出しが躍っているわけですね、当時の新聞。これは「首相、防衛費で対米配慮指示」なんて書いてある。恐らく否定されると思うのです。否定されると思いますが、おとといどなたか伺っていましたからあえて同じ質問はしたくないのですけれども、ただ、国防報告やあるいはワインバーガー国防長官が演説で、シーレーンの千海里の防衛は、中曽根、鈴木両首相の名を挙げてこのお二人がみずから設定したものだ、自分から言ったのだ、何もアメリカが要求したわけではないのだ、自分から言い出したのだ、こういう言い方までして、早く達成しるということを何回も事あるごとに言ってきているわけです。これは総理アメリカに約束した何か対米公約、向こうはそういうような受けとめ方をしているようですが、総理はどういう御認識ですか。
  52. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本防衛日本が自主的にすべて決めることであって、アメリカから頼まれたからといっておいそれとイエスと言うべきものではない。日本が自分で持っておる防衛計画に従って、必要と思われることは、財政やら国民世論を考えてやるべきことはやっていくのが日本政府の責任であります。
  53. 市川雄一

    市川委員 本音も建前もなくそうあれば非常にいいわけですが。  そこでお伺いしますが、これは防衛庁長官、もちろん総理も聞いておいていただきたいのですが、大綱と千海里のシーレーン防衛というものがいかに違うかということを私が申し上げますから、反論をしていただきたいのです。防衛庁長官、反論をしていただきたい、局長さんが答弁をなさる前に。僕もメモだけですから。  大綱は平和時の防衛力、こう言っているわけです。今矢崎局長がここで答弁なさいましたけれども、シーレーン防衛有事、こうおっしゃった。言葉でもはっきり違う、平和時の防衛。  それから、大綱の想定は独力対処。日米安保条約の抑止がきいている、したがって独力で対処する。独力対処ができなくなったら安保条約に来援を、米軍に来援を依頼する。ところが、シーレーン防衛、千海里の防衛、今、矢崎局長がここでまさに頼まないのに答弁してくれたから助かったわけですけれども、米軍との共同対処を前提、こうおっしゃった。米軍との共同対処ということは、安保条約第五条の発動が前提じゃありませんか。初めから安保条約の抑止はきいてない。独力ではもう対処できなくなった、したがって第五条の発動で共同対処。大綱は違いますよ。安保条約の抑止がきいている。その安保条約の網の目をくぐって奇襲的に、小規模、限定的に来る、簡単に既成事実をつくらせない、排除する、独力でやるのだ、こういう前提です。全然違うのです。  それから三番目、今申し上げましたけれども、安保条約の抑止がきいているという前提、もちろん千海里もきいているという前提ですけれども、その意味は誤解なさらないでいただきたい。独力で対処できないもの、こう初めからもうシーレーン防衛は見ているわけです。  もう一つ、細かくなって恐縮ですけれども、大綱では小規模、限定的、奇襲的なもの、こう言っているわけです。シーレーンは違いますよ。これは本格的なものですよ。さっきの説明は、この防衛庁の文書を読んでもわかりますように、日本国民日本の通商破壊に向けられた、海上交通路の攻撃に向けられたその武力攻撃を排除をする、国民生活に不可欠の物資であれば、これは守るなければならない。これは相当日本の通商路を徹底的にやろうという攻撃を想定しているわけですから、本格的な武力侵攻です。これは小規模、限定的なんというものじゃないです。  それから大綱は、米ソ相戦わずという前提です。大綱の一番最初の国際情勢認識にそういうことも書いてあるし、米ソ相戦わず。シーレーン防衛は米ソ戦ですよ、想定が。米ソ戦。米ソ相戦う、その中で日本がどういう役割を果たすか。アメリカがやりで日本が盾、こういうことじゃありませんか。  それからもう一つ大綱は、大綱を決定した閣議の後で坂田防衛庁長官が記者会見している。談話を発表した。防衛庁長官談話。米ソ冷戦から脱却すべきだという視点で大綱をつくりました、こう言っている。米ソ冷戦から脱却すべきだ、ここに文章あります。シーレーン防衛は違いますよ。新しい米ソ冷戦下、米ソの対決機運が非常に高まった。  それから、大綱では、国際情勢変化がなければ変えないという前提があった。国際情勢変化という一つ前提。それから、GNP一%という歯どめ。シーレーン防衛ではこういうものは全然ないのです。  さっきからそれで聞いているのです。どこまでやるのかというのが、はっきりしていない。一回も国会で答弁されたことがない。防衛庁から一回もそういうものが出たことがないじゃありませんか。ここまでやればいいんだというものが出てない。大綱水準達成しても、十分なのかと聞いていればわけがわからない。そのときの国際情勢でまたどんどん伸びていくようなことをおっしゃっている。歯どめがない。大綱とは全然違う。  それから、大綱特定第三国脅威を想定していない。シーレーンは明らかに対ソ連です。さっきの総理発言にも、認めなかったけれども、バックファイアとかソ連太平洋艦隊の日本海封じ込めとか、これは明らかに対ソ連大綱特定第三国を想定していない、平和時の防衛力。  それから九番目、航路帯を設ける場合は千海里。設けない場合もあるという前提です、設ける場合はという日本語は。しかし、これ、今、シーレーン防衛は、設ける場合はとお答えにはなっているけれども、そうではない。アメリカは、周辺千海里、当然日本のやることだ、初めから千海里防衛をやるという前提です。前提が変わっている。これだけ違うのですよ。  まだあるかもしれません。私のったない頭で考えても大綱と千海里シーレーン防衛とはこれだけ違う。これは大綱にもともとなかったと思うのです、千海里防衛なんということは。それは、シーレーンという考え方は当然あったと思います。千海里防衛というものはなかったと思う。ないものを後からつけ加えた。だからこういう矛盾が生まれてくる。どうお考えですか。
  54. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 広範多岐の御質問でございますが、防衛大綱は平時ということを一応前提としておりますが、同時に、これは有事に備えるということですね。限定、小規模、そういう武力攻撃があったときにどうするかということでございますから、防衛大綱に基づいて有事にどう備えていくかということをやるのは、これは当然だと思います。平和時であるからというような問題ではないと思います。(市川委員「ちょっとそれはおかしい、大綱考え方と違います」と呼ぶ)いや、おかしくないです。大綱考え方はそういう考え方です。  それから、独力で対処すべきであるのに日米でいろいろやるのはおかしいじゃないか、こういうことでございますが、日米安保条約というのは、日本が他国から武力攻撃を受けたときにどう対処するかということですね。日米安保条約でアメリカ防衛してもらう、そういう条約でございますから、それに基づいていろいろと対応するのはこれ当然だと思います。  それからシーレーンの問題でございますが、これはシーレーンの定義が、市川さんの考えておられるシーレーンというものと我々の考えているシーレーンというものと考え方が多少違っているのじゃないでしょうか。そういう点からこれはアメリカと海域分担をするのじゃないかとかいろいろなことが出てくるのじゃないかと思います。(市川委員「まあいいです、そこまでにしておいてください。そこまでが非常に重要なところだから。申しわけありませんが」と呼ぶ)そこまででいいですか。
  55. 市川雄一

    市川委員 ええ。そこまでの議論をちょっと。どうも申しわけありません、途中で答弁を切っちゃって。  そこが今一番肝心なところだと思うのです。要するに大綱は、安保条約の抑止がきいているから日本を攻めることは米軍と戦うことになる、だから大規模侵略はない、こういう前提です。それで、五つに分析して、国際情勢は安定している。それは御存じだと思うから一々申し上げませんけれども、安定している。そういう前提で、その平和時における防衛力、その安保条約の網の目をくぐってくるのは、恐らくそれは極めて奇襲的なものだろう、こう言っているのです。防衛白書でもはっきり説明しているのです。奇襲的なものだろう、したがって規模も小規模だろう。どのくらいかと言うと、わかりません、こう言う。期間も限定的だろう、その程度のものは排除できる力を持っておる、こう言っているわけです。だから、その平和時という考え方、平和時の警戒ということを前提に、その程度の奇襲に対しては排除する力を持っている。シーレーンは違いますよ。通商破壊という物すごい、初めから日米共同で対処しなければいけないという事態を想定しているわけですから、全然違うよ。想定が違う。  それよりももう一つ。先ほど矢崎局長答弁なさった、防衛白書、例えば五十八年防衛白書の八十九ページ、ここに、我が国の政府考え方を紹介するという前提で紹介されたシーレーン防衛考え方。「わが国の「シーレーン防衛」については、日米共同対処によりわが国に対する武力攻撃が発生した場合における海上交通の安全を図ることしており、」云々、こうあるわけです。これは紛れもなく初めから日米共同対処じゃないですか。ところが大綱は違いますよ。大綱は、その程度の小規模、限定的侵略は独力で排除する、独力で排除し切れなくなったときに初めて安保条約により米軍の来援を依頼する、こう言っているわけです。  ですから、僕が申し上げたいことは、その程度のものしか大綱では想定していなかったということです。独力で対処するという程度の侵略を想定してつくったものです。初めから日米安保条約で共同で、もういきなり初めから共同でいくんだというものじゃないのです。こっちは二段構えなんです。独力でいく、だめだったら安保でいく。シーレーンはもう最初から安保で共同でいく。違うじゃありませんか。違うと思いますよ。これが違わなかったらおかしいと思うのです。しかも……(「答弁答弁」と呼ぶ者あり)じゃ、それ伺いましょう。長官、どうですか。
  56. 矢崎新二

    矢崎政府委員 ただいまの御指摘は、「防衛計画大綱」の考え方についてでございますので、どういうふうに考えているかということを御説明申し上げたいと思います。  「防衛計画大綱」におきましては、「防衛の構想」というのが三番目にございまして、そのサブタイトルの二番目に「侵略対処」ということがございます。この中に、「限定的かつ小規模な侵略については、原則として独力で排除することとし、」ということで、ここに「原則として」ということが入っておるわけでございます。それからその次に「侵略の規模、態様等により、独力での排除が困難な場合にも、あらゆる方法による強じんな抵抗を継続し、米国からの協力をまってこれを排除することとする。」ということが書いでございますが、この「原則として独力で排除することとし、」ということの意味は、大綱を作成しました当時から、これは先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、日米安保条約というものがございまして、有事には共同対処ということが基本的な構造としてございますから、そういう場合を想定をいたしまして「原則として」ということをここに加えてあるわけでございます。  したがいまして、シーレーン防衛につきましても同様でございまして、日米で共同で対処するということが、この限定、小規模侵略というようなことについてシーレーン防衛のケースにおいてあり得ないということではないというふうに御理解いただきたいと思います。
  57. 市川雄一

    市川委員 御理解願いたい、質問すればそうやって後から釈明をする。だったら初めからそういうふうに書けばいいじゃないですか。初めからそういうふうに言えばいい。言ってないのですよ。ごまかさないでいただきたいのです。二段構えじゃないのですよ、のっけから共同対処と言っているのですよ。じゃ、大綱は「原則」という言葉があった。原則として独力対処じゃないですか。自力で対処する。全然違うじゃありませんか。僕が言いたいことは、独力で対処できるものを想定している、あるいは独力で対処する。シーレーンの方はもう独力ではとても初めから無理だという想定で、もうそんな条件なしで、無条件で共同対処、こう言っているのです。  それじゃ長官、伺いますよ。長官はさっき、安保条約があるのだから当然、こうおっしゃっていますが、それは当然かもしれませんが、公海上でシーレーンが攻撃を受けた、安保条約は発動できますか、長官長官に聞きますよ。長官はさっきそういうふうにおっしゃった。
  58. 倉成正

  59. 市川雄一

    市川委員 安保条約があるんだから、安保条約で米軍に依頼するのは当たり前だとおっしゃった。公海上でシーレーンが攻撃された、それじゃ安保条約が発動できますかと、僕は長官に聞いているのですよ。
  60. 矢崎新二

    矢崎政府委員 安保条約の発動の要件は安保条約の第五条にございまして、日本の領土、領海に対する攻撃ということが前提になっているわけでございます。したがいまして、安保条約第五条という意味での御質問でございますれば、その発動、は公海上の攻撃の場合にはないということでございます。
  61. 市川雄一

    市川委員 ですから、ないというのです。公海上の場合、ないというのです、長官。安保条約があるんだから、アメリカと共同対処でシーレーンを守るのは当たり前だと長官がさっきここで答弁なさったから僕は今のことを聞いておるのですよ。随時協議しかできない。随時協議の結果……(発言する者あり)有事の話といったって、シーレーンが攻撃されたらと言っているのですよ。有事じゃないのですか、シーレーンが攻撃されたときは。それじゃシーレーンの攻撃は有事じゃないのですか。平時ですか。  ですから、要するに大綱の中になかった、五十六年ですか、鈴木前首相が訪米されて千海里という問題が初めて出た、それからナショナル・プレス・クラブで千海里の発言があった。そこからですよ、防衛庁も符節を合わせたように千海里、千海里と言い出したのは。僕はそれを言っているのです。しかも、それが防衛費を非常に膨らませて、どこへ行くのかわからない。はっきり示さない。ですから、独力で対処する、共同対処で初めから対処、これは違いますよ。矛盾していると思う。違うと思う。じゃ長官、さっきから何かおっしゃりたいようですから、答えてください。
  62. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 シーレーンというものの概念、これをどのように考えていくかということによっていろいろ違ってくると思います。我々も、シーレーンというのは、先ほど防衛局長が言ったように、いわゆる国民の生存の維持をする、それから有事の際の継戦能力を確保する、そのために港湾とか海峡の防備あるいは護衛をする、哨戒をする、そういったもろもろの作戦を積み上げる、そういうものの相乗効果海上交通の安全を図る、そういうことを目的としているというわけでございます。  それで、日米共同でいろいろやっているからそれはおかしいじゃないかというお話でございますが、先ほども申しましたとおり、このシーレーンというものはそういうことでございますから、これは日本自体がやるべきことなんだ。それで、このシーレーンの研究の中におきましても、主体は日本ですよ。いわゆる非常に強い攻勢的な戦力、作戦というものについてはアメリカに頼る。しかし、アメリカはどこまでも支援なんです。それから航路帯で言うと、千海里以遠の方はアメリカがやる、こう言っているわけでございますから、そこら辺はよく御理解を賜りたいと思います。
  63. 市川雄一

    市川委員 極めて不満足な答弁であるということだけ申し上げておきます。  次に移ります。  F15戦闘機の、コンフォーマルパレットタンクというものがF15にはある。これは言ってみれば、補助タンクと言うとちょっとまた概念が違うようですが、機体に密着されてついているタンク。今、日本の航空自衛隊のF15にはこのコンフォーマルパレットタンクはついているのですか、ついていないのですか、どっちですか。
  64. 木下博生

    木下政府委員 コンフォーマルフュエルタンクと申しますのは、日本語で増槽タンクと言っておりますが、これは胴体に密着させたタンクでございますけれども、現在、日本のF15には配備されておりません。
  65. 市川雄一

    市川委員 このコンフォーマルパレットタンクは、機内のタンクに搭載できる燃料との比較で、このタンクに燃料を詰めますと燃料が七五%ふえる。それから、戦闘行動で約七九%航続距離が延びると言われている。それから、空中待機の時間が三八%延びる。大体一時間ぐらいの航続距離が一時間半ぐらい程度に延ばせる、こう言われておりますが、まず、これはそういうタンクですか。
  66. 木下博生

    木下政府委員 現在、自衛隊で保有しておりますF15は、通常のぶら下げるタイプの補助タンクを持っておりますが、これに対しましてコンフォーマルフュエルタンクの場合には千五百ガロンぐらいの燃料をつけることができるようになっております。これを装備しました場合にどれだけ距離が延びるかという点につきましては、運用のやり方いかんによりますので正確に申しにくいところはございますが、ジェーン年鑑によりますと、このコンフォーマルフュエルタンクをつけた場合に、いわゆる巡航の最高距離を飛ぶような飛び方をした場合に約二割程度距離が延びるというふうに言われております。
  67. 市川雄一

    市川委員 このタンクはなぜF15にはつけないのか。つけられると考えているのか、あるいは憲法上つけられないというふうに考えているのか。そのつけてない理由、その理由として、憲法上づけられない、あるいはつけられる、あるいはつけない理由、それをお答えいただきたい。
  68. 矢崎新二

    矢崎政府委員 我が国の航空自衛隊の担当します防空構想を前提として考えました場合、現在のF15によりましても十分な性能を持っておるということでございまして、私どもとしては、これを装備する考えは現在は持っておりません。  今の、憲法上どうかという点につきましては、これはその増槽タンクをつけること自体に特に問題があるとは思っておりませんが、現在ではそういう計画を持っていないということでございます。
  69. 市川雄一

    市川委員 そこでお伺いしますが、この空中給油機、この間もここで関連した御議論があったようですが、この空中給油機というものは持てるというふうにお考えですかどうですか、防衛庁
  70. 矢崎新二

    矢崎政府委員 空中給油機の問題は、我が国におきます戦闘機の行動をどういうふうに運用するかということにかかわる問題かと思います。その点について申し上げますと、現在の世界におきます航空機の性能の向上、スピードあるいはその低空侵入能力というようなものを考慮いたしました場合には、上空におきまして待機をしてそこで対処をする、迎撃するという戦法が非常に有効であるということが言えると思うわけでございまして、それをいわゆるCAP運用と称しておりますが、そういうことが将来の問題といたしまして重要な要素になることは、これは否定ができないわけでございまして、そういう意味で、そのCAP運用をいたしますためには、空中給油ということが必要になるわけでございますので、そういう空中給油が可能になれば、上空におきますCAP運用による迎撃能力の向上が可能になるという問題でございます。そういう意味で、この空中給油の問題につきましては、我々としても、将来の問題としては決して否定をしているわけではございませんが、これを現在持とうという考えは持っておりません。また、このことは、理論的な問題として申し上げますならば、憲法上、特に問題があるとは考えておりません。
  71. 市川雄一

    市川委員 その場合、理論上ということで、将来のお見通しというか、そういうことに今触れられたわけですけれども、空中給油機を持った場合、F4ファントムの問題がございますね。この間、ここで議論があったようですけれども、給油装置をつけるか、つけないか。そうなってきますと、なぜ憲法上とかそういう聞き方をしているかと申し上げますと、F15の場合は、国会でいろいろなことがあって統一見解が出た。結果として、F15には給油装置は残した。給油装置を残した以上は、将来の運用を考えて、空中給油機が必要になれば恐らく買うのだろう、こういう理論的推測はできるわけですけれども、ただ一方には、F4のときにはF15よりも対地攻撃力がある。しかも足が長い。これに空中給油して足を長くすることは他国に脅威を与える、こんな議論があって外したいきさつがあると思う。そうすると、空中給油機を持った場合、やれる飛行機とやれない飛行機と、こうなってくるわけですね、おかしな話なのですけれども。そういう御認識ですか、お考えですか。
  72. 矢崎新二

    矢崎政府委員 御質問は、F4の空中給油装置を外した経緯についてでございますが、この点につきましては、五十三年の三月四日にF15の問題で国会で御説明申し上げました見解がござ、います。その中にその点を説明をいたしたものがございます。それによりますと、「当時の論議の中には、空中給油を行うことは専守防衛にもとるとの主張もあったが、政府としては、そのような見地からではなく、有事の際我が国の領空ないしその周辺において空中警戒待機の態勢をとることの有効性は認めつつも、F14が我が国の主力戦闘機である期間においては、同装置を必要とするとは判断しなかったため、右の改修を打つたものである。」こういうふうに御説明をした経緯がございますので、これによって御理解を賜りたいと思います。
  73. 市川雄一

    市川委員 その見解は読んでいるのですけれどもね。なぜそんなことを伺ったかというと、本当は時間があれば千海里の防空能力をもうちょっと聞きたかったのです。これも非常にあいまいです。あいまいというか、よくわからない。  そこで伺いますが、シーレーンの千海里防衛大綱水準では不十分という発言は、大村防衛庁長官あるいは伊藤防衛庁長官、矢田統幕議長、アメリカのロング司令官、当時いろいろな方が言っているわけですね。いろいろな方がいろいろなことを言っている。そこで、不十分と言う以上は、自分なりの物差しがあって言っていると思うのです。ここまで持たなければいけない、しかし大綱水準ではここだ、これだけ足りない、だから不十分だ、こういうふうに言えると思うのです。と言う以上は、自分の物差しを示す必要があると思うのですね。その物差しを示さない。私は、これがシーレーンの問題をわかりづらくしていると思うのです。  ですから、航路帯を設ける場合、皆さんの論理に従って申し上げれば、千海里、結構ですそれは。航路帯を設ける場合は千海里。一体どういう脅威から何を守るのかということも問題なんです。これは人によって答えが変わってしまう。それはまあいいでしょう。しかし、どのぐらいめ予算がかかるのか、どのくらいの装備、海はどうなるか空はどうなるか、そのくらいの大枠は示さなければいけないと思うのです。大綱にはこんなことは出ていませんよ。航路帯を設ければ千海里、その千海里の防衛の基準として、大網水準は、対潜哨戒機だとか、そんなことは書いてない。書いてないけれども、一応大綱水準というものはある。ですから、そういう千海里、シーレーンについて、どうですか、あなた方と私たちと考え方が違うなら違うで結構、ひとつはっきりとあなた方の考えを出してもらいたい。そして、大綱水準達成しても足りないなら足りない、理由はこうだ、堂々と出せばいいじゃないですか。我々はシーレーン防衛については賛成していない。あなた方は進めている。結構じゃないですか。立場が違うんだからしようがないと思う。だけれども、政府がやる以上は考えを出す必要があると思う。防衛庁長官どうですか、出すお考えはありませんか。
  74. 倉成正

    倉成委員長 矢崎防衛局長。――長官、呼ばれないで出ないでください。
  75. 矢崎新二

    矢崎政府委員 御説明申し上げます。  「防衛計画大綱」におきましては、海上防衛力といたしまして、御承知のように対潜水上艦艇約六十隻というものを保有し、それから作戦航空機としては約二百二十機、潜水艦十六隻ということを目標にいたしまして整備をしていこうということでございます。実際にこれをどういうふうにやっていくかということにつきましては、防衛庁が作成いたしました五六中業によりまして現在整備を進めておるわけでございますが、その中で、正面関係の全体の新規の計画額は五兆三千億円でございます。その中の海上自衛隊の関係では約二兆一千億円というものを想定をいたしまして、個別に装備を積み上げている次第であります。
  76. 市川雄一

    市川委員 シーレーンというのは、長官、何の脅威から何を守るのですか。簡単にどうですか。
  77. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 何の脅威から何を守るか、そういう定義ではなしに、我々のシーレーンというのは先ほど申したとおりでございます。
  78. 市川雄一

    市川委員 何の脅威から何を守るかというものが全くない、これはおかしいですよ。そんなものは常識じゃないですか。
  79. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 要するに、海上交通の安全を確保するという……(市川委員「何の脅威から」と呼ぶ)それは、攻撃するものから守ることは当然でございます。
  80. 市川雄一

    市川委員 わかりました。(「禅問答みたいだな」と呼ぶ者あり)そうなんですよ、禅問答になっちゃうんですよ。もう少しわかりやすく答えていただきたいのですが、通商路の確保ということをよくおっしゃっていました。ただ、前にも指摘したことがあるのですが、もう一度申し上げますので反論していただきたいのです。  ソ連の太平洋艦隊の持っている潜水艦、防衛庁に聞いてもどうせ数を言いませんから、この資料で私は一応計算をしてみました。平和・安全保障研究所の「アジア安全保障」一九八三年版。百二十一隻。これは一九八二年の数字です。一九八二年、ソ連太平洋艦隊の潜水艦の数は百二十一、平和・安全保障研究所の発表した数字。これは百二十一隻あるのですが、何隻が通商路の攻撃に向けられるか、いろいろな専門家が分析しているのです。防衛庁が盛んにシーレーンシーレーン、こうおっしゃっているから。しかも大綱でもそうですが、海上自衛隊の主要装備は対潜能力です。護衛艦、対潜能力、背で言えば駆逐艦です。対潜水艦作戦が海上自衛隊の主要な装備ですよ。そういうことから考えてみて、ソ連の太平洋艦隊の潜水艦が何隻あるのか。その何隻がシーレーン、いわゆる政府の言う通商破壊に向けてくるのか、こういう分析をいろいろな方がやっているのです。  それによりますと、弾道ミサイル装備潜水艦――潜水艦は大きく分けて三つ種類がある、もう御承知だと思います。弾道ミサイル装備潜水艦、これは原子力推進とディーゼルエンジンと二つに分かれる、SSBNとSSB、これは合わせて三十一隻。これは戦略核ですから、まさかタンカーに撃たないと思いますね、商船に。この三十一隻を百二十一から引かなければいけない。そういう運用をなさる。その次が誘導ミサイル装備潜水艦、巡航ミサイル装備の潜水艦、これもSSGNとSSG、原子力とディーゼルと二つある。新型と旧型、これが二十四隻。これも本来の運用は対空母、水上艦艇というのは常識です。防衛庁は、いや、それだって商船に向いてくるかもしれない、こうおっしゃりたい気持ちはよくわかる。しかし、これは言ってみればスズメを大砲で撃つようなものです。また、潜水艦は一回弾を撃ってしまえば自分の居場所がわかる、知られてしまう。簡単に居場所がわかるというのは怖い、やられてしまうわけですから。ですから、そういう意味では第七艦隊に向いている。対空母、対水上艦艇攻撃用の潜水艦が二十四隻。とてもこれが通商路破壊に向けてくるとは考えられない。そうなってきますと、この二十四隻も百二十一から引く。あと何隻残るか。魚雷装備の潜水艦、SSNとSS。SSNが十九、SSが四十七隻、合わせて六十六隻残る。六十六残るのですが、防衛庁ソ連の潜水艦の稼働率は何%ですかと伺った。一五%ですというお答えがあった。六十六隻に一五%の稼働率を掛けてみました。そうしますと、原子力推進の方は四捨五入して、四捨五入というのはおかしいのですが、三隻。いわゆるディーゼルエンジンの方のSSは七隻、こうなっています。合わせて十隻、こうなってしまう。  ところが、このSSの任務というのは、通商破壊が第一義的な任務じゃない。これはたくさんいろいろなことをやらなければならないのですね。まずソ連のSSBN、戦略核の潜水艦を守らなければならない。一つはボディーガード。もう一つアメリカの戦略核の潜水艦を攻撃しなければならない。どちらかといえば、アンチSSBN、これが主要任務ですよ。それから、場合によっては空母攻撃の方に支援に回らなければならない、間に合わなくなってくる。もう一つは、沿岸警備もしなければならない。ウラジオストクとかペトロを守らなければならない。そして通商破壊です。そうなってきますと、要するに十隻の潜水艦で、稼働率十隻で何ができるか。通商破壊なんかにとても向けているいとまがない。北太平洋は、SSBNとSSBNの戦いですよ。オホーツク海とバンゴーにトライデント型潜水艦の母港がある。この対決の図式じゃないですか。通商破壊なんて防衛庁の言っている万ペソ連の潜水艦は向けている暇がないのです。  この見解について、防衛庁、異論があれば反論していただきたい。
  81. 古川清

    ○古川政府委員 お答え申し上げます。  潜水艦の稼働率といいますものは、通常、そういうソ連の場合に低いとは言われておりますけれども、一たん緩急の際にはそれがどれだけアップするかわからないと言う人もございます。当然また脅威の態様というのはいろいろございまして、単にそれが攻撃型の潜水艦に限られない。もっと空からも来るかもしれない、あるいはバックファイアが飛んでくるかもしれない。またいろいろな脅威の態様があるということを心にとめておかなくてはいけないだろう、そういうふうに考えております。
  82. 市川雄一

    市川委員 今バックファイアの話をしているのじゃないのですよ。そんなことはわかっているんだ。バックファイアも飛んでくる、SS20も飛んでくるかもしれない。そうじゃなくて、潜水艦の話をしている。こんにゃく問答。余り堂々と反論なさらない。通商破壊に何隻向いていると見ているか。ほとんど向いてないのですよ。また、いとまがない。その両方から説明したのですよ、僕は。だから、要するにシーレーンシーレーンと騒ぐほどのソ連の潜水艦能力はないじゃありませんかと僕は指摘しているのです。堂々と反論してください。
  83. 倉成正

    倉成委員長 古川参事官、堂々と反論してください。
  84. 古川清

    ○古川政府委員 私どもは、極東に配置されておりますソ連の潜水艦の数は、百三十五というふうに、先生の数よりも若干多く計算してございます。しかし、その十隻という結論というのは私ども実は持っておりませんで、それにはいろいろな計算の仕方があり得るのであろうと私は思います。したがいまして、一概に十隻だけがその場合に海上交通路の破壊に使用されるというふうな結論は出しにくいものと私は考えております。
  85. 市川雄一

    市川委員 それは反論じゃないのですよ、一概にということは。というのは、誘導ミサイル潜水艦がタンカーをねらうということもありますよと言いたいわけでしょう。そう思うのです。それを向けなければならないのですから、いまのあなたの答弁では。そうなってくると、議論というのはかみ合わなくなっちゃう。そうすると、例えばF15だって、対地攻撃力は、一定の攻撃力は持っているわけです。F15だって全然ないわけじゃないんだ。しかし、F15は要撃戦闘機だ、迎撃用だ、だから足は長くて対地攻撃力はあるけれども、F4ほどはないんだ、だからいいのだという議論になっているわけでしょう、皆さんの論理は。それを、ではもし今のあなたのおっしゃったような論理をこっちが使えば、運用によって変わるんだ、いや、大したことない対地攻撃力かもしれないけれども、それを対地攻撃に使うというふうに人間の意思が決めれば、F15だって他国に脅威になるじゃないか、こういう理屈だって成り立っちゃうわけですよ。それじゃ議論にならないのです、こういうものを議論をするときには。一つのルールで議論しているのだから。  これは、百三十五と言ったって百二十一と言ったって大して変わりませんよ。しかも、SS四十七隻、例えばこれを十隻ふやしても結構ですよ。旧型ばかりなんですから。大体、ソ連の艦艇の数というのは、もう退役したようなやつまで含めて数えている場合が多いわけです。それから、はしけ船みたいなものまで下手をすると入っている。そういうことはわかっているんですよ。ですから、通商破壊に向けられるような潜水艦の力はないと言うのです。反論していただきたいです。どうですか。
  86. 倉成正

    倉成委員長 古川参事官、詳しく説明してください。
  87. 古川清

    ○古川政府委員 お答え申し上げます。  ソ連の船がおんほろばかりでできているとは私ども実は思っておりませんで……(市川委員「ばかりとは言っていない。そういうのが多いと言ったんです」と呼ぶ)ソ連の潜水艦はいろんな新しい型の潜水艦が実はつくられておるわけでございまして、その製造能力も非常に高いものがある。確かに古いものも考えてあるかもしれませんけれども、その百三十五というものにつきましては、私どもとしましては、非常に高い能力のあるソ連の潜水艦として計算をしておるわけでございます。
  88. 倉成正

    倉成委員長 古川参事官に申し上げますが、市川君が質問しているのは、通商に対する破壊能力ということについて質問しておりますから、その点について少し詳しく説明してください。
  89. 古川清

    ○古川政府委員 その百三十五隻のソ連の潜水艦がいかなる内訳にあるかということにつきましては、実はいろんな問題がございまして、この答弁は実は差し控えさしていただきたいと思っておるわけでございます。  しかし、通商破壊の場合に潜水艦だけと私は実は考えておりませんで、いろんな形の、先ほど申し上げましたとおり、日本の通商路を破壊するというものであれば、それは潜水艦だけに限定してしかけでくるということはあり得ないわけでございます。いろんなものを使ってくるであろう。したがいまして、これを潜水艦だけに限定しての話はいささかどうかなという感じはするわけでございますけれども、先生のおっしゃいました、潜水艦の通商破壊に使われるのは十隻前後であるという結論は、先ほど申し上げましたとおり、私は出しておらないわけでございます。
  90. 市川雄一

    市川委員 潜水艦だけだとは言っていませんよ。だけれども、それじゃおかしくなりますよ。防衛庁の戦後の防衛力整備の海上自衛隊の整備というのは対潜ですよ。最近じゃないですか、ハープーンだとか対艦ミサイルだとか対空ミサイルを持ち始めたのは。それだって、わずか何隻もないでしょう。ほとんどが対潜じゃないですか。防衛白書にもはっきり書いてありますよ。海上自衛隊は主に対潜水艦能力の整備に努めてきたと書いてある。自分で言っている。全然話が違う。もちろん、防衛庁も潜水艦だけで攻められるとは思ってないでしょう。私も思っていませんよ。だけれども、潜水艦が主体だと防衛庁が言うから、そっちの土俵に乗ってこっちは議論しているんですよ。  そうすると今度は、潜水艦だけじゃありません、そんなのは当たり前の話。答弁にも何もなっていませんよ。おんぼろばかりだなんて言っていませんよ。冗談じゃない。ソ連の潜水艦だって優秀ですよ。タイフーンなどというのは、今度はアメリカではトライデントということになっているわけですから。そういうのは、ソ連が最近潜水艦をつくっているのは原子力潜水艦で、SSBNですよ。これに力を入れている。アメリカは六五%、核ミサイル、SLBMは。ソ連はまだ三二%ですから。ICBMが六五%。多いんです。だから追っかけている。だから、今づくっている潜水艦はほとんどSSBNとか、そういう方ですよ。ですから、通商路の破壊に向けてくる潜水艦は、今ソ連がつくっているような、そんな最新鋭の潜水艦は向けてきませんよ。戦略核を向けてきますか。そういうことを聞いている。通商路の破壊に向けてきそうな潜水艦は、潜水艦の機能からいってこういうことですよ、それから防衛庁のおっしゃっている稼働率で計算するとこういうことですよ、こう言っているのです。これを反論すればいいのですよ。
  91. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 いろいろ御意見を承りました。一つの見識として承っておきます。  私どもの申し上げたいことはどういうことかと申しますと、一つには、先ほど古川参事官からも話がありましたとおり、通商破壊は潜水艦だけでやるものじゃない、いわゆる総合戦力でやるものだ、こう考えております。  それからもう一つ、何か我が国の自衛隊が対潜作戦だけに重点を置いておる、こういうふうに私承ったわけですが、これは陸海空のバランスをとるということでちゃんとやっておりますので、この点、御理解をいただきたいと思います。
  92. 市川雄一

    市川委員 「海上自衛隊の現有する艦艇、航空機は、主として対潜水艦作戦のための装備となっている」、昭和五十五年八月の防衛白書に書いてあります。長官、そういうふうに書いてありますよ。まあいいですよ。反論が余り堂々とされておりませんから、やめておきます。  次に、核ミサイルの寄港の問題をお伺いしたいと思います。  これは総理にもお伺いしたいと思っておりますが、アメリカの軍事情勢報告によると「核能力を持つ海上発射巡航ミサイルはことし、攻撃型潜水艦および選ばれた水上艦艇に配備されるだろう。」こう言っております。「戦艦ニュージャージーは、トマホーク長距離巡航ミサイルが最初に配備される予定の米艦船である。」こうも言っております。この軍事情勢報告で言っている巡航ミサイルの配備を予定している艦船、潜水艦は、ロサンゼルス級、スタージョン級、これに配備する、こう言っておるわけですが、この二つの潜水艦が昨年一年間で佐世保に一回、横須賀に十六回、合わせて十七回、あるいは十七隻来ました。やがてこの潜水艦に核能力を持った巡航トマホークが装備される。停泊日数でいいますと、横須賀だけで伺いましたら、百三十四日横須賀の港に原子力潜水艦が停泊していたわけでございます。この巡航トマホークというのは、もう釈迦に説法になると思いますが、防衛庁とか外務省はよく御存じだと思いますが、言ってみれば、SS20はシベリアで撃つと十分で東京へ来てしまう。トマホークはジェット推進ですから、日本近海で仮にシベリアへ撃っても三時間くらいかかってしまう。そうなりますと、SS20やバックファイアが飛び立った後トマホークを撃っても余り意味がない。これは、御承知のように地形をコンピューターで読みながらレーダーをくぐって低空で行くわけですね。そういう意味では、先制奇襲兵器というふうに言われているわけです。もう一つは、見せることによって意味のある兵器。ソ連アメリカはメッセージを送っていると思うのです。SS20、バックファイアが極東に配備された。こっちもこういう兵器を配備したぞ。やるならやるぞ。抑止兵器。したがって、本来なら、核兵器をどこに配備しているかとか、どこへ搭載するかなんということは言わないのが国家政策だと言っているアメリカが、なぜわざわざ軍事情勢報告で公表したか。それは、絶えずソ連に見せておかなければならない。メッセージを送っているわけです、SS20とバックファイアに対する対抗手段をつくりましたよと。  したがって、二つ問題があると思うのです。これから横須賀寄港が多くなる。もう一つは、戦艦ニュージャージーにもし搭載されて日本に寄港した場合は、これは単なる今までの航空母艦の寄港とは違ってくる。東京湾からでも巡航トマホークは撃てる。そうすれば、モンゴル近くのSS20の基地を攻撃できる。東京湾からでも撃てる。ということは、寄港が寄港ではなくて、イギリスやドイツに地上配備の巡航ミサイルが、トマホークが配備される、地上に配備されたと同じ機能を機能的には横須賀の港で持ってしまうわけです。戦艦ニュージャージーに核つきトマホークが搭載されて横須賀の港に入った。ということは、横須賀の港から撃てるわけですから、まさに核弾頭つきの巡航トマホークが日本の横須賀に配備された。臨時配備か固定配備の違いしか問題的には起きてこない、こういう問題を含んでいると私は思うのです、まじめに考えれば。まじめにですよ、茶化さないで考えれば。そういう問題を含んでいて、今それが注目されている。こういう新しい事態においても、ロサンゼルス級あるいはスタージョン級の原子力潜水艦あるいは戦艦ニュージャージーの寄港を求められた場合に、核を持っていればアメリカ日本に言ってくるでしょう、言ってこないのだから持っていないのでしょう、こういう今までのような対応でいいというふうにお考えですか、外務大臣。
  93. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 核を保有している、保有能力があるというのと核を装備しているかどうかというのはまた別問題だと思うのですが、我が国としては、御承知のように非核三原則は厳然としてこれを遵守しなければなりませんし、また、安保条約の事前協議は安保条約の中に厳然としてあるわけですから、アメリカが核を持ち込む、こういう場合には事前協議の対象になる、そのときはこれは必ず拒否する、これがこれまでの日本政府の方針でございます。我々は今後ともこうした基本方針に基づきまして、日米安保条約、その関連規定によってそれを進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  94. 市川雄一

    市川委員 いや、それはわかっているのです。しかし、事柄の本質は変わってくると思うのですね。これは時間があればもう少し防衛庁とか総理に伺いたかった。対抗というのは、七〇年代型の脅威に対抗している。八〇年代型の脅威、要撃戦闘機F15をたくさんそろえたら、ではソ連は必ず飛行機で来るのか。そんなことはありませんよ。ミサイルで来たらどうしますか。しかも、非核ミサイルで攻撃されたらどうするのですか。ミサイル攻撃というものを想定していないですよ。今の日本のレーダーでミサイルがとらえられますか、ミサイルで攻撃されたら。ミサイルに対応する兵器を持っているか。持っていない。特に中距離核ミサイルに対する日本防衛というと、アメリカの核抑止。これは本当は議論したかったのです。しかし、これは核抑止と言うけれども、アメリカがワシントンやニューヨークを犠牲にして東京を守るか。シベリアと東京ですよ、戦うと。シベリアと東京は対称性がない。ですから、核に対する防衛は非核三原則を守るしかない。ソ連に核攻撃の口実を与えない、あるいは国際的な保障の取り決めをとる努力をするとか。  そうなってきますと、日本の外務省は、アメリカが言ってこないから、戦艦ニュージャージーやスタージョン級やロサンゼルス級の原子力潜水艦が日本に来ていますけれども、核はありませんと言うけれども、果たしてソ連がそういう見方をするでしょうか。ソ連はしないと思いますよ。戦艦ニュージャージーというのは、アメリカ当局が何回も核つきのトマホークを搭載すると言明している。ですから、そういう意味で、本当に日本を核の脅威から守る、それなら非核三原則をしっかり守る、守ることによって日本に対する核攻撃の口実を与えない、こういう政府の毅然たる態度が必要だと私は思うのです。しかし、事柄が変わってきているのに、今まで言ってこないからないでしょうというやり方で済むかどうかと聞いているわけです。済まないと私は思う。もうちょっと積極的なアメリカとの外交努力というのはないのでしょうか、何かもう少し日本国民がすとんとわかるような形での。新しい事態なんですから、新しい事態に対応した日本の非核三原則の理解を求めるとか、そういうことを今伺っているのですが、どうでしょう。
  95. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 御承知のように、日米関係というのは強力な信頼関係で保たれておるわけです。そして日米安保条約が存在をしておる。この安保条約は両国がこれを遵守しなければならぬわけですし、その日米安全保障条約の中では、核の持ち込みについては事前協議の対象となるということがはっきりと打ち出されておるわけですから、アメリカが核を持ち込むということになれば必ず協議がなされる、それに対して日本は拒否する、こういうことは鮮明にいたしておるわけでありますし、また日本としては、国民が核の持ち込みに対して非常に注目しておるような事態がこれまでもありました。例えば昨年もF16の三沢への持ち込みであるとか、あるいはエンタープライズの寄港といった問題について、いろいろと国民の間で疑問等が起こったわけでございます。こういう際に我々としては、日米安保条約並びにその関連規定が厳正に遵守されておるということを一般的に確認をしなければならぬ。こういう立場で、国会等の議論も含めて私が、マンスフィールド大使との間で、日米安保条約に基づくところの事前協議条項を遵守するのだ、そして日米間が信頼関係を持ってこの非核三原則を推進していくのだということを確認し合ったところであります。ですから、日米間においては少なくともそうした問題については疑問はあり得ないと私は確信をいたしております。
  96. 市川雄一

    市川委員 総理、たびたび国会で同じ問題を答弁されていて恐縮なんですが、今私は巡航トマホークの持っている意味ということを申し上げながら、非核三原則の持つ意味というものを含めて米艦船の、トマホーク搭載の艦船の寄港というものが持つ意味は従来と変わってきているということを申し上げているわけです。私は新しい事態だと思うのです。この事態に――今までも何となく国民政府の言う、アメリカが言ってこないからないんだろう、だからないんです、こういう論理には非常に納得しないものを感じているわけです。何か新しい努力というか外交努力というか、この問題についてそういうことをなさるお考えはありませんか。
  97. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外務大臣が答えたとおりであります。
  98. 市川雄一

    市川委員 次に、時間が迫ってまいりましたので農産物の問題を伺いたいと思います。  私、予算委員会で二回、内閣委員会で一回、雑豆のIQ制度の問題を質問をいたしました。北海道の生産者を守るという立場で、雑豆にはIQ制度という制度があります。それは輸入を制限するということです。一年間の小豆なら小豆の日本人の需要量というものを農林省が計算して、その需要量から北海道の生産量を引く、残ったのが不足分、その不足分についてのみ外貨を割り当てて小豆の輸入を許可する、こういう制度でございます。しかも、その小豆の輸入を扱える商社は四十五社が特定されている。それ以外の新規参入は認められない、しかも、この許可を得るには外貨割り当て額の約二〇%に当たる調整金というお金を納めなければならない。実際に小豆を輸入しようがしまいが、外貨割り当てを受けるためには二〇%の調整金を払う。前払い。こういう制度になっているわけですが、北海道の生産者を守るということはそれなりに理解できるわけです。それなりに理解できるのですが、それが同時に、特定された四十五社という輸入商社の社会通念を超えた利益、過剰利益を構造的に再生産している、保障している。こういう制度の矛盾を私はこの予算委員会で二回取り上げました。当時の農林水産大臣、通産大臣は、それは改善しなければならない、合理化しなければならない、こういう御答弁をされておるのです。  農林省にお伺いしますが、その後何か改善の具体的な措置を講じましたか。
  99. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 雑豆の輸入割り当て制度につきましては、国内価格の安定を旨といたしまして、適切な輸入数量の割り当てを実施いたしておるわけでございます。また、必要に応じまして随時追加発券の措置も講じておるわけでございますが、今お尋ねの輸入割り当て方法の改善の問題につきましては、関係する業界も大変複雑多岐でございまして、いろいろ検討を進めてきた経緯はあるわけでございますが、いまだ実現を見るに至っておりません。
  100. 市川雄一

    市川委員 私の調査によりますと、実態は改善されていない、これが私の調査による結論でございます。改善策、いろいろ難しいと思うのですが、輸入を絞って供給量を一定に制限しておいて、輸入した後は今度は自由だ、これは輸入権限を持ったものがもうかるのは当たり前の話であります。したがって、具体的な改善策、かつて需割りとかいろいろなことを御提言申し上げたこともございましたが、そういうことを含めて、もし具体的な改善策があったら言っていただきたいと思います。
  101. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 確かにこの問題、なかなか厄介な問題でございますが、私どもも何らかの改善を図る必要があるという必要性は十分認識しておりまして、できますれば新年度早々にも、関係する業界と話し合いの場を持ちまして、その結論を出しました上で通商産業省とも十分相談をいたしまして、実需者団体による共同購入、さらには輸入割り当て方法の改善を進めるという方向で対処していきたいと思っております。
  102. 市川雄一

    市川委員 農林省は今ああいう考え方で当面やりたいとおっしゃっているのですが、通産省のお考えはどうですか。
  103. 杉山弘

    ○杉山政府委員 お答えいたします。  通産省といたしましても、ただいま農林省からお話のございましたような方向で協力をして改善を検討いたしてまいりたい、こう考えております。
  104. 市川雄一

    市川委員 農林水藤大臣、今局長さんが答弁されましたが、大臣のお考えはどうですか。
  105. 山村新治郎

    ○山村国務大臣 お答えいたします。  雑豆の流通改善につきまして、種々の団体がある、生産団体、流通団体、実需者団体、かなり広範なものでなかなか難しいようでございました。しかし、今、政府委員の方から申し上げましたように、かなり煮詰まってもきておるようでございますので、私といたしましては通産省、通産大臣と相談いたしまして、雑豆関係者の御納得いただけるような改善方法を早急にとってまいりたい、そういうぐあいに考えております。
  106. 市川雄一

    市川委員 通産大臣のお考えはどうですか。
  107. 小此木彦三郎

    ○小此木国務大臣 私といたしましても、本問題の改善策に積極約に対処してまいりたいと存じます。
  108. 市川雄一

    市川委員 次に、運輸省にお伺いしたいと思います。時間が迫ってまいりましたが、運輸省が認可しておるトラックの運賃の問題をめぐる問題でございます。  なぜこの問題を言うかといいますと、日本の物流の約九〇%が貨物輸送、その貨物輸送の約九八%近いものが中小零細企業のトラック業者でございます。しかし、運輸省が認可した認可運賃は、業界側の過当競争ということもありまして、約七〇%ぐらいしか荷主から払ってもらえない。したがって、経営が非常に苦しい。苦しいから、一台のトラックに積むトン数をふやして過積載、あるいは運転手を二人置きたいところを一人にして過労、こういう働いている一番弱い人のところにしわ寄せがどうしてもこざるを得ない。  そこで、一つの問題を提起いたしますと、神奈川県のトラック協会で、県下三百社のトラック運送業番を対象にしてアンケート調査を行いました。その結果、法定福利費、年金と健康保険と労災、この法定福利費を全然従業員に払わない、あるいは計上しない、事業者負担をやらない、こういう企業がございました。三百社のうち二十社が法定福利費の計上がゼロです。二%未満三社、五%未満が十二社、こういう実態が出てきたわけでございます。このアンケートはその後協会の幹部が確認しております。こういう答えた会社に対して、本当に法定福利費はこの程度なのか、そうですと、そういう確認をとっております。  これは要するに、運賃収受という問題がうまくいっておりませんから、どうしても又請、またその又請というような格好で行われておりますから、どうしてもそういうところにしわ寄せがいかざるを得ない、こういう実態があるわけですが、運輸省として実態を把握されたらいかがか、調査されたらどうか。しかも、調査して私が指摘するような事実があれば、これは全国的な規模ですから、何らかの改善を運輸省にお願いしたいと思うのです。この点について運輸省の見解をお願いしたいのです。
  109. 角田達郎

    ○角田政府委員 トラック運賃の収受の問題につきましては、これは以前から大変重要な問題でございまして、私どもも、トラックの運送事業者が荷主からどの程度運賃を収受しているか、この辺の調査をしたことはございます。その結果は、ただいま先生がおっしゃいましたように、基準運賃に対する七十数%の収受率でございます。そういうような遺憾な状態でございます。  ただ、事業者が法定福利費も計上していない、こういうようなことにつきましては、先生が御指摘になられた神奈川県のトラック協会の調査によって初めて私ども気がついたようなわけでございまして、こういうような状況が全国的にどの程度あるのか、その辺は相当対象事業者が多いものですから時間がかかると思いますけれども、実態を正確に把握してみたいと思います。また、その結果法定福利費が計上されていないというような事実が判明いたしましたら、これは関係省庁ともよく連絡をとって善処してまいりたい、かように考えております。
  110. 市川雄一

    市川委員 大手の荷主が、もともと自分の会社の輸送部の一部だったものを独立さして、一〇〇%出資あるいは役員を派遣する物流子会社という子会社をつくる。そして荷主は自分が独立さした子会社、そこへまず荷を頼む。したがって荷主と物流子会社の間では運賃の収受は非常に良好な関係になっている、自分の身内ですから。ところが、物流子会社が今度はそれを運送事業者に下請に出す、こういう関係になっているのですね。ですから認可運賃というものが、荷主とその荷主のつくった子会社の間では成立している。しかし、この物流子会社と運送事業者の間では、もう認可運賃の七〇%から六五%というのが実情なわけです。  運輸省にお伺いしますが、この物流子会社と運送事業者の関係には法律上の認可運賃は適用されない、こういう御認識でしょうか。
  111. 角田達郎

    ○角田政府委員 トラック運送の状況の中におきまして、ただいま先生がおっしゃいましたように物流子会社というものが介在している例がございます。この物流子会社というのは、道路運送法上は御案内のように自動車運送取扱事業者ということで法律的な地位を与えられておるわけでございまして、その取扱事業者と真荷主との間には、ただいま先生おっしゃいましたように道路運送法上の認可運賃が働く。しかし、取扱事業者がその荷物を現実に依頼をするトラック運送業者、これと取扱事業者との関係につきましては認可運賃は働かない、法律上はそういうふうに観念して私ども運用しております。
  112. 市川雄一

    市川委員 法律的にはそうだということは伺っております。  そこで公正取引委員会に伺いたいわけです。今運輸省がおっしゃったように、そういう物流子会社と運送事業者の間には、いわゆる運送法で言う認可運賃というものは適用されない、こういう関係です。しかも物流子会社、それから運送業者――運送業者が非常に数が多い、弱い、したがって運賃が認可運賃の七〇%ぐらいにいつもダンピング状態にあるわけです。そういうことが一方では法定福利費を計上しないという会社、三百社のうちの一五%ぐらいの会社がそういうものを生み出している。これは社会的な問題だと思うのです。  そこで何とか是正しなきゃいけない。いろいろなやり方があると思うのですが、一つは、優越的地位の乱用ということ。どういうことかということで、公正取引委員会告示第十五号の十四でいろいろなことをおっしゃっているわけですが、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。」こうなっておるわけです。  これは伺いたいのですが、運送事業者が継続的取引をしている荷主から要請された価格が、通常の取引の実態から見て非常に廉価でかつコスト割れとなっており、その価格で取引を継続することは欠損につながり、ひいては企業倒産に追い込まれる、かといってその荷主との取引をやめたくともかわりの荷主を見つけることができないようなケースについては、優越的地位の乱用、不公正な取引と見られる可能性があるというふうに、私はこの公取委告示第十五号十四の見解というものを読んでみたのですが、どうでしょうか、取引委員会の御見解、まず第一点。  それから、済みません、時間がありませんので、もう一点。独占禁止法第二条の九項の二の「不当な対価をもって取引すること。」ということについて伺いたいのですが、この項目を拝見しまして、ある運送事業者が、正当な理由がないのにコストを著しく割った安い対価で荷主を獲得し、実質的に同業者を締め出し、同業者の事業活動が困難となるような行為を行う、このような場合には独禁法上の不当廉売に該当するおそれがある、こういうふうに解釈できるではないかと思うのですが、その点の公正取引委員会の御見解を承りたいと思います。
  113. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 まず第一の点でございますが、独占禁止法は不公正な取引方法を用いることを禁止しておりまして、その中に、今お話のございましたように、優越的地位の乱用行為が含まれておるわけでございます。具体的な事実関係に照らして、優越的地位の乱用であるかどうかは個々に判定すべきことでございますので、今お話を伺っただけで、それが直ちに十九条違反ということになるかどうかは結論を今申し上げることはできないわけでございますけれども、一般的に申しますと、仰せのありましたように、「取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、」「相手方に不利益となるように取引条件を設定し、又は変更すること。」こういうことは、公正な競争を阻害するおそれがある場合に当たるという場合もあり得ると考えております。  それから、第二の問題でございますけれども、安売りをしたということになりますでしょうか、廉売を行ったということが直ちに独禁法上の不当廉売に該当するわけでないことは御承知であろうと思います。「不公正な取引方法」の第六項という中に不当廉売の規定があるわけでございますけれども、正当な理由がなくしてコストを著しく下回って、長期間継続的に採算を度外視した廉売を行って同業者の事業活動を困難にするおそれを生じた、そういうようなものが問題になるわけでございますから、お話のありましたようなケースが二つとも、具体的に申し上げたその二つのいずれに該当するかは、個々に判定をいたしたいと考えます。
  114. 市川雄一

    市川委員 終わります。
  115. 倉成正

    倉成委員長 これにて市川君の質疑は終了いたしました。  午後零時五十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十三分休憩      ――――◇―――――     午後零時五十二分開講
  116. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大内啓伍君。
  117. 大内啓伍

    大内委員 中曽根総理及び中曽根内閣は、財政面におきましてこれまで三つの公約をされてきたと思います。  その一つは、言うまでもなく、鈴木内閣から受け継がれました「増税なき財政再建」、さらには五十九年度赤字体質からの脱却方針、そしてさらには六十五年度赤字国債ゼロ方針、これが財政面における重要な中曽根総理の公約だと思うのでありますが、その第一の「増税なき財政再建」という問題を見ておりますと、既に「増税による財政再建」に変質してきたように実は思うのであります。鈴木内閣は、昭和五十五年の七月十八日に財政再建の方針を打ち出したのでございますが、その後の状況を見ておりますと、以下のとおりであります。  すなわち、財政再建を打ち出しました五十五年度は、三千五百十億円の増税が行われました。五十六年度は一兆四千億円の増税でありました。五十七年度は三千五百億の増税でありました。そして今回五十九年度は、地方税を合わせまして一兆三千億程度の増税であります。つまり、財政再建という問題が打ち出されて以来、五十五年から五十九年度まで、増税を行わなかったのは昨年の五十八年度だけてあります。この総額は三兆四千億の増税になります。恐らく政府としては、臨調の方針というものを引き合いに出しまして、租税負担率の上昇をもたらすような、そういう増税は余りやっていないと申し開きをするかもしれません。しかし、租税負担率も上がっていることは御案内のとおりであります。昭和五十六年度は二三・五%でございましたが、五十九年度は二四・二%という数字政府から示されていることでも明らかであります。私は、実態は「増税なき財政再建」ではなくて、「増税による財政再建」になっている、少なくとも国民の実感、そして財政運営の実態、そう思いますが、総理、いかがでしょうか。
  118. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が内閣総理大臣を拝命しましてから、経済財政政策を申し上げましたが、まず第一に、「増税なき財政再建」というこの目標は、あくまで全力を尽くして守ってまいりたいと思っております。きのうの私の発言で、何かそれは五十九年度だけに限定するような誤解を与えたようでございますが、そういうことではございません。あくまでこの「増税なき財政再建」という目標を、全力を尽くして今後とも堅持して努力してまいるつもりでおります。  それから、六十五年に赤字公債依存体質を脱却する、また公債依存体質から脱却していく、これも同じように内閣を挙げて努力してまいりたいと思っております。  ただいま鈴木内閣、中曽根内閣における増税問題について御発言がございましたが、昨年はお話しのように、増減税ともに御迷惑をかけずにある程度やれたと思います。本年度は一兆一千八百億円の減税措置を片っ方でやっておりまして、この点について非常な苦労があったわけでございます。そういう点において、でこぼこ調整と前に申し上げましたけれども、そういうような措置をとらざるを得なくなった次第でございまして、その点はぜひ御了承をいただきたいと思うのでございます。大蔵省の計算によりますと、約二百三十億円ですか、実質的に税が余計取られるという御説明でございましたが、よく聞いてみますと、法人の赤字が出た場合の繰り戻し還付というものを停止した、そういうことで、約六百億円ほど増税を抑えた、それを入れるというとそれほどの御負担ではない、そういうような趣旨の説明がございました。非常に大きな国債を抱えまして、その重圧のもとに死に物狂いで努力しておるつもりでありますので、ぜひ御了承いただきたいと思います。
  119. 大内啓伍

    大内委員 私は、今具体的に物を問うておりまして、「増税なき財政再建」というのは、増税を主力とした財政再建になっている。もっと本当に正確に言えば、「増税なき財政再建」ではなくて「財政再建なき増税」になっているのじゃないか、私は実態はそうだと思うのです。それは決して揚げ足をとるために申し上げているのではありません。この深刻な事態に対してどういう政策選択が必要かということについてお互いに苦しみたいと思って申し上げているのです。つまり、そのような大増税をやりましても、財政再建されているなら、つまり財政の体質改善が進んでいるなら、私はそれは一つの選択だと思うのです。しかし、事態は違うのです。それを私は具体的に申し上げたいと思うのです。  その一つは、政府はこれまでたびたび赤字国債ゼロ方針というものを発表してまいりました。昭和五十五年の赤字国債発行ゼロを目指しましたのが、昭和五十一年二月の財政収支試算でありました。続いて、五十七年のゼロを目指したのが、昭和五十三年二月の財政収支試算でありました。そして、鈴木内閣から中曽根内閣に引き継がれた五十九年度ゼロ方針、これは御案内のように、昭和五十四年二月に出されたものです。全部失敗しました。政府が出した赤字国債ゼロ方針はことごとく失敗いたしました。それは事実であります。そして、今御指摘のような六十五年度赤字国債体質からの脱却方針が出されているのであります。  問題は、赤字は減ったかということであります。赤字はほとんど減っていません。赤字という意味は赤字国債という意味であります。この三年間を見ておりましても、大蔵大臣よく御存じのとおり七兆円水準であります。しかし、もっと実態的に言えば、定率繰り入れ等の停止をやっておりますので、いずれも八兆円を突破する状態にあります。つまり、増税をやって赤字国債からの脱却をやるんだと言いながら、赤字国債は減ってない、むしろふえている。そして、これまで出してきた方針三つは全部失敗に終わりました。  経済の成長率はと見れば、あの五十六年から縮小均衡財政に入った、その三年間、言うまでもなく五%台から転落して三%台の最悪の事態に陥りました。それを政府は世界不況の責任になすりつけているわけで、私は必ずしもそれだけではないと見ております。  自然増収は、毎年二兆円前後に落ち込んでしまいました。ここのところの三年間は一兆六千億、一兆八千億、二兆二千億、これは非常に重大な状況が財政の面で出てきている。したがって、これは財政欠陥に結びつく。五十六年度は御存じのとおり三兆三千億、そして五十七年度は六兆一千億、そして五十八年度、昨年は、一生懸命精査したのでございますが、もちろん今度の補正で明らかなように、二兆数千億の税収欠陥が生まれる。一般歳出も頭打ちが続いてきている。しかもこれは、山口主計局長といえば日本の最もエリートの中のエリートと言われておりますが、五十七年度からは、赤字国債の発行と同じであると山口主計局長が国会で答弁された定率繰り入れの停止が始まりました。この三年間で総額四兆二千億。そして昭和六十年度からは、この十年間政府みずからが財政の節度を失うからやってはいかぬと言い続けてきた赤字国債の借りかえが始まろうとしているのであります。  そして、予算編成を毎年度見ておりますと、最近は粉飾予算編成が非常に員立ってきている。これはいろいろな数字を持っています。これは臨調が最近答申の中で厳禁していることです。緊急避難的措置というもの、五十八年度も五十九年度も二兆円を上回っております。  そして、五十八年度三つの最悪事態が生まれています。それは、一つは中小企業の倒産件数であります。一万九千百五十五件、二兆五千八百四十一。億円の負債総額、これは戦後最大であります。最悪であります。失業率二・六%、これも昭和三十年最高の二・五%を上回る最悪の事態でございます。国際収支、経常収支、貿易収支ともに膨大な黒字が発生し、これが貿易摩擦の大きな原因をつくり出しております。  つまり、こうやって見ておりますと、日本の財政の状態というのはまさに重病状態にあります。政府のとってきたこの政策によってだけとは申しませんが、それも大きな原因があってこういう重病状態になった。それは財政政策の失敗の証明だと思うのですが、大蔵大臣、いかがでしょう。
  120. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今の御指摘になりました倒産件数それから失業率、これは数字で見る限りおっしゃるとおりでございます。ただ、けさほど月例報告を聞きますと、多少改善されたという報告も承りました。  それから、いわゆる経常収支の問題につきましては、これは大内委員は国際摩擦を起こす要因としてのマイナス要素、こういう御指摘でありますが、その限りにおいてはそうでありましょう。かつて佐藤内閣ができた当時、何とか三十億ドル程度の黒字にしたいと言っておったときから見れば、別の意味において隔世の感がありますが、大内委員前提に置けばそのとおりでございます。  したがって、これらを振り返って見ますときに、まず財政政策というもの、私は――今度百二十二兆円の国債残高ということになりますが、そのうちの百十兆がまさに五十年代に発行されたものであります。したがって、当時国債政策というものにそれなりの景気を安定的に維持するための効果はあったではないかというふうに私は思います。しかしながら、第一次石油ショック、引き続き第二次石油危機ということからして、もちろん我が国自体の政策をネグって、国際不況だけに負わせるという考え方はございませんが、国際不況等からして今日の状態に至ったわけであります。  しかし、その中においても、ちょうど私は五十五年度予算編成の際の大蔵大臣でありましたが、いわば公債政策がある程度一番いいところへ来ておったような感じがします。しかし、その問題が、結局国際不況等からいたしまして、むしろ景気が容易に回復しないという非常に苦しい状態が五十六年、五十七年ではなかったかというふうに考えます。  したがって、五十八年、「増税なき財政再建」ということを一つのてことして、いわば財政再建を新しく財政改革という姿でもってとらえて進んでいこうということに相なりました。そのいわば二年目を迎えたわけであります。が、いまおっしゃいましたように、だんだんだんだん後退しているじゃないか。すなわち定率繰り入れをやめる。そうして、今度は借りかえをやる。これらは絶えず議論をしながら、その都度私どもはそれに対してやはり歯どめをかけるべきだという主張をしながらも、そうならざるを得なかったということは率直に認めなければならないと思います。  したがって、五十九年度は、先ほど総理からもお答えがありましたように、とにかく「増税なき財政再建」ということをてことして、そして、いわば歳出の抑制に全力を傾注して、そして各党間のお約束でありましたところの減税問題に対するそれの財源として酒税等、あるいは物品税、そして法人税にこの負担をお願いしなければならなかった。いま一つ石油税の問題は、これは特定財源として御理解をいただかなければならぬではないか。  しかし、今のような議論を踏まえて、大体大内委員のおっしゃっていることと私どもの考えと、そう大きな差はないと思います。ですが、絶えず考えて差があるのは、言ってみれば、政府は中期展望に基づきまして、いわゆる経済の諸指標を七、六、五抜きの四、三、二、一、すなわち六ないし七%に名目成長を置くというところと、大内委員のかねての主張はやはり八%というところに置かれるというその主張のギャップというのは、これはなかなか議論をしても、そう急に埋まる問題ではないなと思いながらも、私どももその将来の展望を、いわゆる名目成長率六ないし七%、仮定計算は六・五%をとっておりますが、その中でいまおっしゃったような御意見を外しながら、これからやはり政策選択よろしきを得て進めていって、六十五年度の努力目標というものを絶えず念頭に置いて進めていかなければならぬというふうに考えております。ただ、大内委員の立場からの批判は、これは甘んじて受けなければならない批判である、このように理解をしております。
  121. 大内啓伍

    大内委員 私は、今述べた事実関係というのは、これは数字をもって証明されるところでございますので、我々の恣意的な分析ではない。財政再建というものが打ち出され、しかもそれは「増税なき」という言葉までついて打ち出されながら、財政再建は遅々として進んでないというのではなくて、悪化の方向にある、そのことを具体的に今指摘したわけなんであります。私は、財政再建は再建の方向に向かっていないと思うのです。悪い方に向かっていると思うのです。したがって、せっかく中曽根総理が六十五年度赤字国債体質からの脱却という方針を掲げられましても、このような状態では無理だと思うのです。現に、来年度、つまり五十九年度の一兆円規模の減額という方針も五千二百五十億にとどまったという意味も、ここで何とか帳じりを合わせなければならぬものだから、残念ながらそうせざるを得なかった。つまり、六十五年度も崩壊するという兆候が、もうここに出てきてしまっている。  私は、中曽根総理に端的に伺いますが、今私が説明した諸指標からいいまして、財政は悪化していると思う、六十五年度の方針は非常に難しくなっていると思うのです。いかがでしょうか。
  122. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大内さんが御指摘になった、数字をもってお示しになった点は、我々も遺憾ながら認めざるを得ないと思います。ただ、六十五年赤字公債依存脱却ということは非常に難しいことであるということは、もう初めから承知して、あえてそういうかんぬきを内分でつくっておったわけであります。と申しますのは、あの目標をつくったときでも、毎年度毎年度の公債費負担というものがどの程度になるかという予想を立ててみますと、六十四年、六十五年ぐらいがやはり公債費負担のピークになってくるときでもあったように、当時の数値ではなっておりました。多い数字ですと、たしか十五兆から十七兆ぐらい一年度で返さなければならぬという数字ですらもあったと思います。  そういうような情勢のもとでも、しかし、これからいろいろな努力をしながら、当時の計画では八年計画で体質改善はやろうというので、もう非常に苦しい、もうほとんど無理だと思われるくらいな情勢を知りながらもあえてやったのは、そういうようなかんぬきをみずからつくって徹底的我慢もし、また再建に向かって歯を食いしばって努力しなければならぬということを政府内外に約束もし、実行しようという気持ちから実はみずから課したものなのでありまして、そのことは五十九年度予算編成を経験しましてますます感じたところでございます。これからますます国債費の負担というものは加重されてくる危険性がなきにしもあらずであります。借りかえという発想が出てまいったのも、やむを得ずそういう面から出てきたわけでございますが、ともかくそういう厳しい事態のもとにおきましても何とか改善していきたいという熱意で実は実行しておるのでございます。  じゃ、財政の再建に向かっているかあるいは悪い方へ向かっているかという判定でございますが、国債費の重圧がますます加わりつつあるという点においては、非常にマイナスの要因が田できていると思います。しかし、歳出歳入構造の見直しという点におきましては、五十九年度はある程度制度の改革にまで手を染め、メスを入れ始めまして、そういう意味では一歩前進しつつあると思う。そのためにおしかりも受け、また御迷惑もおかけしているわけでございます。例えば地方財政等の関係におきましてもあるいは国民医療費の関係におきましても、そうであります。でありますが、これは制度にまで踏み込んでそういう恒久的な対策を講じてまでもこの財政問題を解決していきたいという考えに立って実行しつつあるところなのでありまして、事態の重大性というものは大内さんの御指摘になっているとおりであると私も自覚しております。
  123. 大内啓伍

    大内委員 六十五年度赤字国債体質からの脱却を図るためには、大蔵省が今度出しました膨大な要調整額を克服しなければできませんです。ですから、これは要調整額の議論をすれば、おのずからそれができる議論ができない議論か明らかになってくると思うのです。  私は、その前に、河本経企庁長官、今のこうした財政運営で六十五年度赤字国債の脱却はできると――経済の最高責任者ですから、お伺いしたいのです。
  124. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 財政改革、財政再建というのは、昭和六十五年度までに、現在出しておる赤字国債約百七兆、これをなくすることでありますから、この程度のことは私は十分できると思っております。
  125. 大内啓伍

    大内委員 いとも簡単におっしゃられましたが、これは河本さん流の経済運営、財政運営をやればという前提がつくのでしょう。これは後で議論いたしましょう。  私は昨年の秋にも中曽根総理と議論したときに、必ず五十九年度は一兆円規模の増税をやらざるを得ない、政府の財政運営をもってすればそうなる。そして、そういう増税はやらないと言うので、みずからの言動にぜひ責任をお持ちになりますようにと言って別れたのです。私は、この六十五年度赤字国債脱却方針は、この政府の財政運営方針をもってしては大変な無理が起こる、少なくとも国民生活には大変な無理が起こる。これには総理みずからその言動に責任を持たれて、この方針を堅持していくということを断言されるのでしょうか。それとも多少膨らみを持って言われるのでしょうか。これは後日に証明されることですから、本当のことをお聞かせいただきたいのです。
  126. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国債費の重圧のもとでこれを実現していくということは、非常に無理な事態にあるということは承知しております。しかし、我々の努力いかんによって、絶望視するというような問題ではない。また、政府関係全省庁及び政府関係機関がみずからを戒めて冗費を節約して、そして歳出歳入構造を改めて、合理的に立て直していくというためにみずからむちを当てていくという、そういう気持ちもありましてつくった目標である。あくまでこれを追求して実現に向かって進みたいと考えて、無理であり、苦しいことは重々承知しておるところであります。
  127. 大内啓伍

    大内委員 では、その具体的な要調整額の問題にいきましょうか。  今度大蔵省から出された「財政の中期展望」あるいは仮定計算によりますと、借換債発行のケース、政府はそういう方針をとろうとしているわけですから、そのケースで、例えば一般歳出三%及び五%のケースで見てまいりますと、六十年度が三兆から四兆円の財政不足が起こりますね。六十一年度は四兆から五兆円の要調整額が起こりますね。したがって、六十五年度まで議論することは別にいたしまして、当面六十年度、六十一年度を考えた場合に、大蔵大臣としてはこれへの対応を歳出削減だけでいける、こういうふうにお考えでしょうか。例えば六十年度の三兆円から四兆円というこの財政不足を歳出削減だけでやっていける、こう断言できましょうか。
  128. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは要調整額は、この計算が、御案内のように現行の施策、制度すべてを前提としたという考え方であります。私どもとしては、このたびの予算編成に当たって、制度、施策の根源にさかのぼって本当に厳しい対応をいたしましたが、しかしながら、まだ私どもは制度、施策の根本にさかのぼって歳出削減の努力をしなければならぬという考え方には変わりありません。したがって、私どもとしてはやはりそれを徹底的にまずやって、そして、この国会での議論とかを通じながら、国民の皆様方のコンセンサスを得るには一体どういう組み合わせがいいかということはその時点考えるべきことであって、私にいわゆる歳出削減のみでこの要調整額そのものが全部のみ込めるかと言われたら、それは努力目標として掲げなければなりませんが、制度、施策の根本にさかのぼるというものにも限界がありつつも、その姿勢を崩すわけにはいかぬというお答えをせざるを得ないと思います。
  129. 大内啓伍

    大内委員 きょう、前大蔵大臣渡辺幹事長代理は、重要な記者会見をやっております。歳出カットは極力カットするが、限界があってできない、これから増税を検討する作業に入りたい。これは前の大蔵大臣、自民党の重要な幹部ですよ。この前も、減税はやるけれども増税はやらぬ、それを公約してもいいと中曽根総理はおっしゃった。何かこれは同じ手法ですね。国会論議のうちはそういう増税は来年度は考えないということを言い続けて、国会の論議が終了すると党として本格的な検討に入る。もうその兆候があらわれています。まあしかし、それも私は一つのまじめな作業なのかもしれないとすら思うのですが、今大蔵大臣はなかなか言いにくいから言えないのでしょうが、もうちょっと端的におっしゃったらどうですか。歳出削減だけでは要調整額は埋まらないでしょう。
  130. 竹下登

    ○竹下国務大臣 制度、施策の根源にさかのぼってなお努力をいたしましても、非常に難しい問題であるというふうな理解はございます。しかしながら、今日の段階で要調整額というものは、よしんば仮定計算であるとはいえ、これを歳出削減だけをもって充てるということは不可能ですと言うだけの心の準備は、私にはいまだありません。もっと勉強してみなければならぬと思っております。
  131. 大内啓伍

    大内委員 私が聞いておりますのは、心の準備ではなくて政策の準備なんです。  それでは伺いましょうか。  歳出削減の具体的な項目は、どういう項目が今後考えられるのですか。
  132. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはやはりことし整理いたしました臨調提言に関する三十数項目でございましたか、その問題、それから財政制度審議会等から指摘された点、そして今後とも行われるであろう国会審議等で指摘された点、これらが歳出削減、なかんずく制度、施策の根源にさかのぼるべき問題になるだろうというふうに考えております。
  133. 大内啓伍

    大内委員 総理に伺います。  総理としては、歳出削減の具体的な項目をどういうふうにお考えですか。これはこの前党首会談でもたしかその一部については触れられていたと思うのです。どこで言っている点とかそういう表現ではなくて、これとこれとこれについて歳出削減をやりたい、こういうお話を承りたいのです。
  134. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今五十九年度予算の御審議を願っている最中でございまして、来年度予算の要目に関する具体的なお示しは、なかなか難しいところであります。しかし、一般論として申し上げれば、臨調でお示しになった幾つかの項目があります。また、党首会談でも補助金の問題が挙がりました。あるいは人件費の問題も挙がったと思います。そういうような面でいろんな工夫を凝らしていく場があるのではないかと思っております。人件費の問題は、しかし人事院勧告を無視せよという意味の御発言ではなくして、総定員法とかあるいは人員の抑制、そういう面から考うべきである、そういうようなお考えがあったのではないかと記憶しております。
  135. 大内啓伍

    大内委員 中曽根総理は、言うまでもなく自民党の総裁でございますが、その幹事長代理が増税を検討したい、これについては総理・総裁としてはいかがでしょうか。
  136. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは個人的意見だろうと思います。  党としては、今の五十九年度予算の御審議を願って、これを成立することに精いっぱいの努力をしておる最中でございまして、来年度予算あるいは来年度以降に関する財政諸施策につきましては、政府・与党で慎重に相談の上、これは公式に決まるものでございます。
  137. 大内啓伍

    大内委員 五十九年度予算というのは六十年度予算にも非常に大きく連動しているわけです。ですから、六十年度以降の問題についても吟味しないと、五十九年度の予算編成のよしあしも評価できないのです。そういう意味でお伺いをしているわけなんです。  今の御議論でおわかりのとおり、歳出削減で、今政府が出している例えば三兆から四兆という来年度考えられる税収不足あるいは財源不足を補うということは、具体的な方策はなかなか我々に示し得ないということだけは、ここでわかったと思うのです。  そうしますと、大蔵大臣、もう一つの問題は増税の問題ですが、既定税目の増税は、なお可能な余地はありましょうか。
  138. 竹下登

    ○竹下国務大臣 「増税なき財政再建」ということを念頭に置きながら、既定税目とはいえ、増税の可能性があるかということに対してお答えするということにいささかのちゅうちょを感じますが、中期答申で指摘されまして、そして、このたびも税制調査会等で議論になって、引き続き検討を要請されたというものは存在をしております。
  139. 大内啓伍

    大内委員 そうすると、それは来年度にかけて手をつけるというお考えに立つわけですか。
  140. 竹下登

    ○竹下国務大臣 引き続き検討をすべきものと指摘されたものについては、まさにこれから検討を開始いたしまして、最終的には公共サービスをどこのところに置くか。しかしながら、今前提としてお互い議論しておりますこの展望等々を念頭に置いた場合、手をつけるという表現は明確にすることはできないと思いますが、そういうことの可能性があるという方向で検討は続けなければならぬ課題だと思っております。
  141. 大内啓伍

    大内委員 要調整額の来年度の三、四兆を埋める額ではありませんね。
  142. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる仮定に基づく、その中期展望につきまして出ておる要調整額というものを埋めていくという努力は、当然しなければならぬと思っております。
  143. 大内啓伍

    大内委員 いや、私が言っておりますのは、それは既定税目の増税という問題の中で解決はできませんでしょうと、こう申し上げているわけです。
  144. 竹下登

    ○竹下国務大臣 既定税目の中で、今いろいろ言われております、夏までにある種の答えを出さなくてはならぬではないかという問題の一つとしては、利子配当課税の問題がございます。それから、いろいろ議論はされながらも引き続き検討ということになった問題には、退給の問題等がございます。さらには、もっと中長期的には幅広い税目の問題についての検討をすべしである、こういう避けて通れない課題であるというふうな御答申もいただいておるわけであります。だから、今にわかに、今税調等で指摘されておる問題だけでは要調整額は埋めれないだろうということは、そのとおりですとは言えないと思います。
  145. 大内啓伍

    大内委員 非常に難しい日本語ですが、しかし、まあ相当はっきりしている事実は、よほど思い切った歳出削減を行い得るかどうか、これはなかなか難しいでしょうね。既定税目の増税によってそれだけの膨大な要調整額を埋めるということはなかなか難しいでしょうね、今の政府政策をとる限りですよ。ですから、勢いやはり相当規模の大型増税しか残っていないでしょう、政府の手法としては。  そして、きのうは中曽根総理は、いわゆる一般消費税というタイプの大型間接税は導入を考えていない。いわゆると。いわゆる国会決議によって禁止された一般消費税というものについて、相当限定されておっしゃられたのです。これはどういうタイプの大型新税を指しているのでしょうか。よくわからないのです。
  146. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点も誤解を生んだので、この際、改めて正しく申し上げてみたいと思いますが、大型間接税というようなものを考えてはおりません。今まで国会決議というものがありましたから、それが念頭にありまして、それで国会決議に示されたようないわゆる一般消費税に類するようなというようなことをつけましたが、今までの答弁どおり、大型間接税というものは考えておりませんと、そういうふうに申し上げる次第であります。私の言葉足らずの点であったと思います。
  147. 大内啓伍

    大内委員 私は、政府の答えを聞いていて全然わからないですよ。そうすると、これだけの膨大な要調整額を一体何で埋めるのか。自分たちで要調整額はこんなにたくさんありますよと、こう出してきた。例えば、借換債の発行で一般歳出の伸びを五%にした場合は、六十年度が三兆八千億から六十五年度は九兆八千九百億に達する。やらない、やらないという話はわかるけれども、やらないのだとこの問題が解決できない。では、財政運営や経済運営について、我々が言うようなもっと積極的な財政運営をやって、自然増収をふやす政策をとるというなら、それは一つの答えになる。今の答えでは、総理からも大蔵大臣からも答えが出ていない。国民もわからない。まじめに考えようとしている我々もわからない。これ、要調整額を埋める策を示してください。大蔵大臣、示してください。
  148. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」で申し述べておりますように、今後とも、まずは歳出削減というものについて制度、施策の根源にさかのぼってやっていく。そしてなおかつ、いわゆる負担をするものも国民でありますし、受益者もまた国民でありますので、そこで一方、歳入面についての見直しも申し上げておるところでございますので、最終的にはその組み合わせをどうしてやるかということについては、それこそ国会の議論等を通じながら、国民の合意するであろう可能性の点を見つけながら、それに対応していく。今、増税で何ぼ、あるいは歳出削減で幾らということを、画然と言える状態にはありません。
  149. 大内啓伍

    大内委員 結局は逃げの答弁ですから、本格的な四つに組んだ議論は私は不可能だと思います。しかし、今政府がやっているこういう予算編成、財政運営からいたしますと、大型間接税の導入はしないと今総理はおっしゃられたけれども、ほかに手だてはないですよ。こういう縮小均衡型の財政運営、予算編成をやっている限りは、自然増収はふえるはずがないですよ。ですから、勢いそれは「増税なき財政再建」ではなくて、「増税による財政再建」、それも「財政再建なき増税」に陥っていくのですよ。そのことを強く指摘しておきたいと思うのです。この辺、我々もまじめな議論として提起しています。決して揚げ足取りではありません。ですから、本当はその辺について知恵を出し合ってもいいのです。政府がとらわれないで、あらゆるいい政策があったら選択をしようというそういう姿勢があれば、私は相当話し合いができると思っています。ぜひお考えをいただきたいと思うのです。  これ、「中期展望」をもらいましたけれども、財政の中期展望に係る主要経費別内訳というのが出ていませんね。これでは本当にどこを例えば歳出カットしていけばいいのか、本当の財政論議がなかなかできないのです。これ、出していただけませんでしょうか。
  150. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる六十五年度までの歳出の主要経費別分類を示せということは、これとまあ租税負担率の問題と両方でございますが、前国会においても、大内委員から大蔵省に対してそういう御指摘がありました。したがって、この問題について、私も可能な限りの努力をいたしますという旨を答えております。  そこで、それをどういうふうにして協議してお出しした方がいいかということについて、いろいろ財政当局の中で議論をいたしましたが、結局これを、主要経費別分類という形で出しました昭和五十六年でございますかの際の反省等も含め、なかなかこれを具体的にお示しする作業は困難だ、こういう答えになりましたので、正確を期するために主計局長からお答えさすことをお許しいただきたいと思います。
  151. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 「中期展望」は、個々の経費まで予算と同じような次元で、細目にわたる厳密な点検を行おうとするものではございません。将来に向けて財政の全体像を描くことによりまして、中期的視点に立った財政運営を進めていく上での検討の手がかりを示すものとして試算したものでございます。  基本的な手法といたしましては、個々の経費の積み上げを行っておりますが、それは必ずしも主要経費別ではございませんで、人件費、物件費、そのうちまた国庫債務負担行為の歳出化経費等性質別にグループ分けした経費につきまして、それぞれ年次計画やマクロ指標を用いて推計したものを合計したものでございます。これをあえて主要経費別に分けましても、推計方法がまちまちなために、各経費別の正確な姿は必ずしも反映されない、実態とやや異なった姿となってしまうので、作成していないわけでございます。  かつて五十六年度の「中期展望」につきまして、内訳表を作成し、提出したことがございます。その結果、中期展望がその本来の趣旨から離れまして、残念ながら、経費の横並びとかあるいは既得権化というような面で、やや議論が混乱したこともあったのは事実でございます。したがいまして、そういう経験にかんがみまして、その後は内訳表の提出は差し控えさせていただいておるわけでございます。  昨年の国会でも議論されました。私ども種々検討を重ねましたが、やはり以上のような弊害がございますので、今回も提出を差し控えさせていただきたいと存じます。
  152. 大内啓伍

    大内委員 私は、中期展望や財政の仮計算を出しながら、その基礎となっている主要経費別の内訳が出せないというのはおかしいと思いますね。現に五十六年度は、それは今御指摘のようなあるいは弊害もあったかもしれないが、とにかく出したんですね。社会保障、公共投資は出せるでしょう。防衛費は出せるでしょう。この三つ、ここで出してください。
  153. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 ただいま申し上げましたように、主要経費別は作成しておりませんが、ただいま作業として進めておりますのに、経常部門、投資部門別の分割表を作業している最中でございます。これは政策論議を進めていただくための御参考として、できれば近日中にお出ししたいと存じております。その中では、この二部門分割でございますが、社会保障移転支出、それから公共投資という点は明らかにさせていただきたいと考えておる次第でございます。
  154. 大内啓伍

    大内委員 その数字を出していただけませんか。
  155. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 ただいま作業中でございますので、まだ不安定な数字でございますが、仮集計の数字で申し上げますと、社会保障移転支出の増加率で申し上げます。六十年度が七・三%、六十一年度が六・七%、六十二年度が五・二%でございます。また、公共投資につきましては、やはりこれはその伸び率でございますが、六十年度が一・一%、六十一年度〇・七%、六十二年度〇・六%となっております。
  156. 大内啓伍

    大内委員 出せば出せるんですよ。額もついでに出してくれませんか。
  157. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 社会保障移転支出でございますが、本年度が十一兆三千二百七十三億円でございます。六十年度は十二兆一千億程度、六十一年度が十二兆九千億程度、六十二年度が十三兆六千億程度であろうかと思います。  それから公共投資は、五十九年度が七兆百五十四億円でございますが、六十年度が七兆強、六十一年度が七兆一千億強、六十二年度が七兆二千億弱ぐらいあろうかと思います。
  158. 大内啓伍

    大内委員 委員長にお願いいたしますが、今のことを言われただけでもわかりませんので、資料として出すように命じてください。
  159. 竹下登

    ○竹下国務大臣 承知いたしました。
  160. 大内啓伍

    大内委員 防衛費はどうでしょう。
  161. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 防衛関係費の中でもいろいろの性格の経費が含まれておりまして、それらを集計して防衛関係費としてまとめたものは作成しておりません。
  162. 大内啓伍

    大内委員 そうすると、五十九年度段階の国庫債務負担行為がありますわね。二兆一千四百八十億、これは後年度どういう形で歳出化されていきますか。それはわかっているでしょう。
  163. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答えいたします。  五十九年度の後年度負担二兆一千四百八十億につきましては、六十年度に一兆七百六十億、六十一年度に七千百七十億、六十二年度に三千三百億、六十三年度に二百五十億という一応の見通しをつけております。  ただ、先生御承知のように、後年度負担額には二種類ございまして、継続費と国庫債務負担行為とあるわけでございますが、継続費につきましては年割りが決まっております。しかしながら、国庫債務負担行為につきましては、これは年割りで決まっているという性格のものでございませんので、一応私どもの今の時点での見込みでございます。でございますからして、今後商議を進める段階等におきまして今市し上げました数字が変動することはあり得るということをお断りしておきたいと存じます。
  164. 大内啓伍

    大内委員 そうしますと、その後年度負担二兆一千四百八十億の約半分が来年度は歳出化されるということになりますね。そうしますと、来年度の防衛費はどのくらいになりますか。債務負担行為の歳出化がこれだけはっきりしているんだから、防衛関係予算数字も出るでしょう。出してください。
  165. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 防衛関係費全体といたしましては、ただいま申し上げました債務負担行為のほかに、人件糧食費がどういうふうになりますか、またその他の物件費がどうなりますかということがございまして、全体合計したものが防衛関係費ということになるわけでございます。  人件糧食費の見込みが一体どういうふうになるのかということにつきましては、ただいまの時点で六十年度の数字を正確に見通すということは極めて難しいことでございますので、今申し上げました債務負担行為の分、一兆七百六十億でございますが、これに相当いたします五十九年度の金額と申しますのが九千八百三十一億でございますので、この債務負担行為では約九百三十億ふえる、こういうことに相なるわけでありまして、この部分は五十九年度の予算二兆九千三百四十六億に対しまして三・二%ぐらいにきくわけでございます。ただ、その他の要素につきましては、ただいまの段階で確たることを申し上げられる数字はございません。
  166. 大内啓伍

    大内委員 後で一%の論議をするに際しても、本当は重要な数字なんですね。しかし、それがここまで来ても明らかにできない。こんなことはできるんですよ、本当は。しかし、少なくとも今の議論で明らかになったことは、五十九年度の防衛予算に対して来年度は三・二%程度の押し上げになるということですわね、防衛費は。そうでしょう。
  167. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 そのとおりでございます。  ちなみに申しますと、五十九年度におきましては、今の三・二%に相当する数字が四・九でございましたし、その前におきましては六・〇だったというのが予算成立時におきます数字でございますからして、三・二%と私が申し上げました数字は、ここ数年来に比較いたしますと大変、大変と言ってはちょっと大げさでございますが、少ない数字でございます。
  168. 大内啓伍

    大内委員 本来、主要経費別の経費というのはもっときちっと出していただきたいのでございますが、これはなお参議院段階もありますので、議論を重ねていきたいと思っております。  そこで、問題は租税負担率です。「増税なき財政再建」というものの基準は、租税負担率がどう動くか、これによって決定されると言ってもいいかもしれないのです。  そこで、昨年の九月二十日に、私はこの委員会で大蔵大臣との質疑を通じまして、五十九年度から六十五年度までの租税負担率及び国民負担率について、出す方向で検討せよ、検討いたしましょう、こういう約束がなされたと思うのでありますが、今回の「中期展望」あるいは「財政の仮定計算」では、それが示されておりませんね。これは約束違反だと思いますが、いかがでしょうか。数字を明らかにしていただきたいのです。これは重要な数字です。
  169. 竹下登

    ○竹下国務大臣 おっしゃったように、私も、租税負担率の問題につきましては、大内委員の御発言を受けましてから後、当時の予算委員長久野委員長からも、これについての検討は十分に行うようにという委員長としての見解もいただいた問題であります。  この問題については、私どもも、当時もでございましたが、いろいろ議論を重ねてまいりました。流動的な情勢のもとで、租税負担率の目標値を具体的な数値の形であらかじめ固定的に設定することは、これは実際問題として困難な問題である、しかし、何らかの議論の手がかりとなるものを示すことにつきましては今後とも検討していきたいというお答えを、正確に申し上げておるわけであります。  租税負担率の水準は、究極的には、政府部門、民間部門に資源をどう配分するのが適当かという問題と裏腹をなすものでございますので、国民が真に必要とする公共支出の水準対応して、言ってみれば定まってくるものと考えられます。したがって、結局はその年度年度の公共支出の水準と、それを裏づける国民の負担水準というものは、その年度年度の予算編成を通じて明らかにされるべきものであろう、したがって、あらかじめ定量的かつ一義的に設定することは、現段階においては難しいじゃないかということの結論に到達をいたしたわけであります。  しかしながら、やはり臨調でも指摘され、そして私どもも、今度財政改革を進めるに当たっての考え方として出しておりますところのいわば我々の考え方としては、いつも申すようでございますが、「将来の租税負担と社会保障負担とを合せた全体としての国民の負担率は、ヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低い水準にとどめることが望ましい。」こういうことを基本的な考え方に盛り込んだということであります。したがって、この議論は、かつての七カ年計画にはそうは言っても二十六カ二分の一というものを出したじゃないか、それを出したということの反省が、結局定量的に示さなくて定性的に示すものであるという経済の中期展望となってあらわれ、それを受けたものが、いわば財政改革の考え方として明示して今日御審議をいただいておる、こういうことになろうかと思うのであります。
  170. 大内啓伍

    大内委員 でも、仮定計算ではいろいろな数字を出しているでしょう。大蔵大臣は出す方向で検討すると私に約束したのですから、約束を守ってくださいよ。六十五年度の租税負担率は、仮定計算ではどうなります。
  171. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわばかつての二十六カ二分の一に当たるという考え方ではなく、仮定計算としてお出ししたものは計算ができるわけでございますが、この場合には地方税の問題もございますので、この点につきましては主税局長から正確にお答えをさせます。
  172. 大内啓伍

    大内委員 委員長答弁をなるべく短くやってもらうように、時間が非常にたちますので。
  173. 倉成正

    倉成委員長 簡潔に願います。
  174. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま大臣が申し上げましたように、目標値という意味ではなくて、まず地方税の租税負担率でございますが、自治省と協議いたしました結果、六十五年度八・八程度、それから租税負担率の場合は、今出しております一般会計のほかに特別会計の税収がございます。これが六十五年度で約〇・八%程度ということでございますので、合計いたしますと二四・七%程度ということに相なります。
  175. 大内啓伍

    大内委員 私は今やっと六十五年度の仮定計算に基づく租税負担率というものを引き出したのですが、本当はこれが私の求めている租税負担率じゃないのです。政府は、政府の方針として「展望と指針」というものを出された。そして、この「展望と指針」の中で幾つかの答えが固まってきている。その前提には、必ず国民負担とか租税負担率というものが一定の基準がなければあんな答えが出るものではないということは、この前の国会でも指摘した。そして、当時の経済企画庁長官であった塩崎氏は、それでは一月に出すようにお約束いたしますと言った。今仮定計算上の租税負担率は聞いたが、「展望と指針」の租税負担率、六十五年度は何ぼになるのですか。これは経済企画庁長官。この間は、私は、私が持っている数字も出したのですよ。あのときの租税負担率は二七%なんです。国民負担率は四〇%です。そう考えてよろしいですか。
  176. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 「展望と指針」では、租税負担率は計算をいたしておりません。
  177. 大内啓伍

    大内委員 計算しているはずですよ。私は経済企画庁から聞いたのですから、そんなうそをつかれたのでは、これは黙っておられません。
  178. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 「展望と指針」では、御承知のように望ましい姿として、六十五年度のいわゆる国民負担のあり方につきましてはヨーロッパの水準をかなり下回る程度にとどめるのが望ましい、こういう望ましい方向という形でお示ししてあるわけでございます。
  179. 大内啓伍

    大内委員 では、その望ましい方向での数字は、租税負担率、国民負担率は幾らですか。
  180. 大竹宏繁

    ○大竹政府委員 「展望と指針」はいわば定性的と申しますか、詳細な数字を掲げて、それを目標とするという形をとっておりません。したがいまして、租税負担率あるいは国民負担率のあり方につきましても、定性的な言い方で述べるにとどめておるわけでございます。
  181. 大内啓伍

    大内委員 本当は、経済企画庁はあの当時この数字を出そうとしたんですよ。諸般の事情からこれを取りやめただけなんですよ。予算委員長もかつては経企庁長官でしたよ。恐らくこの辺の事情も御存じだと思うのです。しかし、言えないというならしようがありませんけれども、先ほど財政計算のあれでは六十五年度二四・七とおっしゃいましたね。そうすると、借換債の発行で五%一般歳出増でいきますと、六十五年の要調整額は九兆八千億余になりますね。それがどっちへ行くかによってこの二四・七%は全然違ってしまうわけですね。この「展望と指針」で計画された二七%をオーバーするケースもあるのですね。この要調整額が二四・七%にぶっかかった場合はどういうふうになりますか。
  182. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 全くの仮定の計算になるわけでございますけれども、ケースa(1)で要調整額の対国民所得比が二・九%でございますから、この部分を全額税収で補てんするという仮定に立ちますと、二・九%ポイント租税負担率が上がるということになるわけでございますが、ただ、これもどういう税目で補てんするかということにも関係がございまして、現在の地方交付税の仕組みを前提にいたしまして、該当する税目で仮に補てんするとなりますと、二・九%プラスアルファということになるかと思います。全くの機械的な計算でございます。
  183. 大内啓伍

    大内委員 お聞きのとおりで、二四・七%という租税負担率は非常に低過ぎますね。今の政府の抱えているこの要調整額が租税負担率にぶっかかっていけば、この「展望と指針」で計算した二七%もオーバーするという状況にある。これだけは今御答弁ではっきりしたわけです。  これは委員長にお願いいたしますが、「展望と指針」については、これは租税負担率も国民負担率も相当一つの基準を考えながらあの答え、作文を書いているんですよ。出すように命じていただけませんか。
  184. 倉成正

    倉成委員長 大内君の御質問でありますが、私もこの問題いろいろ勉強してみまして、なかなか難しい問題だと思います。しかし、せっかくのお申し出でありますから、御質問の趣旨を踏まえて理事会で協議をいたしたいと思います。
  185. 大内啓伍

    大内委員 本当は委員長は出させるというところまで言うべきでしょうが、みんな預かると理事会でいつもうやむやになってしまうのです。この前も理事会預かりだったのですよ。  じゃ、具体的な問題でもうちょっと詰めましょうか。三時間ぐらいあるといいのですけれども、時間が短いので。  五十八年度補正で住宅・都市整備公団補給金等というのがございましたね。これは一千二百四十八億七千四百万円、これが五十八年度補正予算案の中に入っている、出ておるのです。私はこれは極めておかしい措置だと思っています。これは五十九年度においても、実はこの予算の中で同様の手法がとられているのですね。これは予算編成上、問題化したら大変なんですよ。  というのは、この住宅・都市整備公団補給金というのは、この十年間一貫して予算化されている項目なんですよ。そして、最近四年間のこの予算の規模というものは、一千億前後という膨大なものなんです。つまり、初めから予算化することが必要である予算項目であるにかかわらず、五十九年度予算には頭が出ていないんですよ。現にこの予算は、過去においては本予算として計上されていますよ。この予算は、当然五十九年度予算に計上されるべきものが計上されていない。これは予算提出上の瑕疵ですよ。こういうごまかしは許されてはなりませんよ。しかも臨調の答申では、この住宅・都市整備公団補給金、これこそが緊急避難措置であっていけない、これは答申の中に出ているんですよ。三十億や五十億の予算じゃないですよ。出すか出さないかという予算でもないです。毎年出してきている予算の、しかも一千億を超える予算が本予算には計上されないで、後でまたそうっと補正措置をしようなどという、この予算提出の態度は何ですか。私は、この予算は撤回しなきゃならぬとすら思うくらいの項目なんですよ。どうしますか、大蔵大臣。
  186. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 住宅・都市整備公団の補給金でございますが、過去におきましても当初予算で計上したこともございますし、それから、当初予算に計上しないで補正予算等で措置したこともございます。四十年から四十二年までは当初予算に計上しました。四十三年以降五十二年までは補正予算等で措置いたしました。五十三年から五十六年までは、全部または一部を当初予算に計上いたしました。五十七年度からまた当初予算に計上しないで補正予算で措置するということが、これまでとられてきたわけでございます。  この公団に対する補給金は、決算確定をもって交付をするということに法令上なっております。それで、予算計上に当たりましては、年度によりかなり相違がございます。そのときどきの財政事情のもとで適切と考えられる方法をとってきたわけでございますが、五十九年度におきましては、前年度に引き続きましてこういう財政事情のもとでございます。この公共事業全体の中で直接建設に結びつく事業を確保する見地から当初予算に計上しなかったものでございます。
  187. 大内啓伍

    大内委員 お聞きのとおりです。理由になりません。今まで当初予算に出してきたものを、今度は便宜的に、当初予算ではなくてまた補正で措置しようとする。しかも、それは臨調の答申によって戒められている。それをまたあえてやった。これでは納得できないと言ったら、これでとまってしまいますよ。こんな予算編成で予算審議ができるかと居直ったら、とまってしまうのですよ。そのくらいの項目なんですよ。これはどうしましょうかね。これは予算編成上の重大な瑕疵です。
  188. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 臨調答申では、この補給金の話じゃございませんで、住宅公庫補給金の問題かと思います。これにっきましては、住宅金融公庫法によりまして、時限的に繰り延べ措置を認める法的な根拠が授権されているわけでございます。  住宅・都市整備公団補給金の問題につきましては、補給金の計上の仕方、これは過去にも二通りの方法をとっておりますので、大内委員御指摘の方法も当然あろうかと思います。今政府がお出ししておりますやり方もあろうかと思います。ただ、ことしにつきましては、昨年もそうでございました、一昨年もそうでございまして、同じような状況にございます。直接建設に結びつく事業費を確保するという大変苦しい台所の事情から、ここ一、二年の前例に倣いまして計上を見送った次第でございます。
  189. 大内啓伍

    大内委員 私、ここに臨調の答申を持っていますよ。この補給金、書いてあります。私はここで、予算を出し直せなどというやぼなことは言いませんけれども、少なくとも緊急避難的な措置としてこの種のものはいけないと書かれているものを、あえておやりになったわけですよ。ですから、予算を撤回せよとは申しませんが、大蔵大臣、少なくともこのような、臨調の答申の精神に反するような予算編成は以後やらないと、ここで約束してください。
  190. 竹下登

    ○竹下国務大臣 住宅金融公庫の補給金の話が指摘されておったというのは私も承知しておりますが、いずれにいたしましても、臨調の答申を尊重するという建前のものが臨調の答申に背くような予算編成は慎むべきことである、こういうふうに私も理解をしております。
  191. 大内啓伍

    大内委員 改めますか。
  192. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この予算そのものにつきましては、私がここで今、大内委員も御指摘なすったように、出し直しいたしますということを申し上げるわけにはまいりません。今後、今の御指摘をも踏まえて、私どもとしては正確な措置をさしていただきます。
  193. 大内啓伍

    大内委員 じゃ、今回は大目に見ましょう。  私は、河本経企庁長官にお伺いしますが、河本経企庁長官は、二月七日号の「エコノミスト」で、政府予算編成について非常に重大なことをおっしゃっているのですね。これは政府予算編成後のインタビューであるだけに、私は非常に重大視しました。  河本長官はこう言っておられますね。「日本のもっている優れた潜在的な力がフルに発揮できる経済にもっていくということが、当面最大の政治の課題である。ところが、今度の予算は、」「経済に対しては中立である。経済成長に対してはゼロの力しかない。」「内需の拡大ということについて、財政は中立である、ということであると、本格的な問題の処理にはならない。」こう言っておられますね。これは政府予算編成後の見解でございますので、景気調整機能を無視した予算編成方針に対する明確な批判ですね、これは。つまり、政府の今回の予算編成についての明らかな不満の表明ですね。そう受け取ってよろしいですか。
  194. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 国の予算が経済の成長に対してゼロの力しか持たないということは、これは大変遺憾だと思います。何としてもある程度の貢献ができるような、そういう予算にしたいというのは、私だけではございませんで、たくさんの人がそう考えておられると思うのです。  そこで、予算編成の最終段階で、政府と自由民主党の政策責任者が相談をいたしまして、今度の予算は方やむを得ないが、これからの進め方については財政運営、金融運営、財政政策と金融政策、これを機動的に運営をしていこうと、まあ、そういうことを申し合わせをいたしました。事態の情勢いかんでは、金融政策と財政政策によりましてさらに経済成長に貢献をできるような、そういうことを事態の推移いかんによっては考えていこうというのがこの機動的な運営、こういう意味でございます。
  195. 大内啓伍

    大内委員 河本経企庁長官は、そうしますと、五十九年度予算については満足されているわけですか。
  196. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 さっきも申し上げましたように、財政の力が弱っておるとはいえ、経済成長に対して中立である、ゼロの効果しかないというような予算は大変残念だと思います。ただしかし、現状から見ますと、万やむを得ない、こういう点もございますので、さっき申し上げましたように、これからの運営について財政政策と金融政策を機動的に運営する、そういう基本方針をわざわざ確認をした、こういうことでございます。
  197. 大内啓伍

    大内委員 残念だという意味は不満だという意味ですね。  こうおっしゃっているのですね。アメリカは政治の決断によって立ち直ってきた、日本は潜在的な力ははるかにアメリカよりも強いが、その力を生かす政治の決断が行われていない。つまり、五十九年度予算編成に当たって、河本さんはそう述べられているじゃありませんか。政治の決断が欠けていると判断されているのですか。
  198. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど来のいろいろ御議論を拝聴しておったのでございますが、若干の時間をおかしいただきまして意見を申し述べますと、私は財政再建にいろいろ方法があると思いますが、その一つの大きな柱というものは、潜在成長力をできるだけフルに発揮する。それによって税の弾性値が高くなりますから、税の自然増収を拡大をしていく。それが一つの大きな方法である、このように思っております川ほかにももちろん考えなければならぬ課題がたくさんございますけれども。  さて、最近のアメリカの経済の動向を見ておりますと、新年度も五・三%の実質成長、名目は一〇・一%成長、このようになっておりますが、経済のいろんな条件をアメリカと比較をいたしてみますと、技術の問題あるいは経済の国際競争力、あるいは国民の貯蓄、それから労働の量と質、まあ軍事費の負担、いろんな角度から考えまして、日本の条件の方がはるかにいい条件にある、私はこのように思っておるのです。したがって、アメリカが五%台の成長ができるということであれば、日本はそれ以上の成長ができてもおかしくはない。それができないということは、何らかの問題があるのではないか、このように思っておるわけです。  それから「展望と指針」では、実質経済成長は四%、それから名目成長は六%ないし七%、こういうことになっておりますが、それは毎年そういう成長をするということではございませんで、情勢の大変悪いときには実質二、三%成長という時代もあると思います。情勢がよくなりますと五、六%成長、こういう時代もあろうと思うのです。その平均が昭和六十五年まで四%、こういうことだと思うのです。  数年ふうに第二次石油危機からようやく立ち直りまして、世界経済も上方に向かっておりますし、日本経済もようやく調整が終わった、そういうまさに潜在成長力を拡大をする絶好の機会のように思いますので、この際、一工夫も二工夫もいたしまして、経済の潜在成長力を高めるようなそういう政策が望ましい、このように思っております。それは私だけではございませんで、政府部内におきましても、また与党の中におきましても、そういう意見がございまして、そこでまた当初の意見に返りますけれども、そこで、ことしは引き続いて財政政策と金融政策を機動的に運営をしていこう、実情に合ったようにひとつ考えていこう、こういうことにしたわけでございます。
  199. 大内啓伍

    大内委員 私は、今のお話に同感するところが非常に多いのです。しかし、そのお考え政府予算編成には反映されていないと思うのですよ。  そうして、河本経企庁長官はこういうふうにも言っていますね。「できるだけ早い機会に思いきった所得税の大減税を、もう一回やる必要がある。そうすれば、一気呵成に日本の景気は回復する。」この河本経企庁長官発言に責任をお持ちになりますか。
  200. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は、景気対策の上からも、それから財政再建という面からも考えまして、現在の税制を根本的に再検討することが必要だ、このように思っております。特にこの租税の問題は、景気政策、経済政策と表裏一体の関係にあるものですから、私も非常に関心を持っているわけなんですが、そこで、今御指摘されましたような問題につきまして、これからの緊急の課題として大蔵大臣、それから自由民主党の政策責任者、こういう方々に私の意見を提案いたしまして、検討していただいておるというのが現状でございます。
  201. 大内啓伍

    大内委員 そうしますと、所得税の大幅減税というものは今検討されているというふうに理解していいのですね。  それからもう一つ、同時に河本経企庁長官は、投資減税についても、これは大幅にやらなきゃならぬ、それから公共投資についても前倒しをやる必要がある、そしてその追加をやる必要もある、そしてその追加について、財源がなければ建設国債を発行してでもやるべきだ、そしてそのための補正予算も組むべきだという非常に踏み込んだお話をされておりますね。それも一連のものとして理解していいんですか。
  202. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今検討していただいております内容ですね、所得税の減税だけではないのです。税体系の根本的な見直し、直間比率の見直しということでありますが、それはある意味においては、所得税の大幅減税、それから間接税の増徴、それは技術的な問題がございますが、そういう問題を含めまして全般的に検討していただいておる、こういうことでございます。  それから、先ほども触れましたように、これからは経済の動向等を十分見まして、財政、金融を機動的に運用していく、時と場合によれば、つまり経済の情勢いかんでは補正予算考える必要があるのではないか、こういう趣旨でございます。
  203. 大内啓伍

    大内委員 今の河本経企庁長官の非常に積極的な提案については、中曽根総理はどういうふうにお考えですか。
  204. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今五十九年度予算を御審議願っている最中でございまして、この五十九年度予算をまず成立させる、そして景気上昇のラインをますます力強く進めていくということを考えております。将来のことは、いろいろ党内でまた次の問題として御検討願うということになると思います。
  205. 大内啓伍

    大内委員 中曽根総理はその辺まででしょうね、今言えるのは。  で、経企庁長官、経済企画庁設置法を見ますと、長期経済計画を策定する権限を持っているんですね。これはやられますか。
  206. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 昨年「展望と指針」を発表したばかりでございまして、ただ「展望と指針」は、こういう激動期のことでございますから、比較的具体的な数字が少ない、こう思うのです。そのかわり、毎年これを見直していこう、こういうスケジュールになっておりますので、現在は新たに中期計画をつくる、あるいは長期計画をつくる考えはございません。
  207. 大内啓伍

    大内委員 私は、今までいろいろ論じてまいりましたけれども、委員長、これはお許しをいただきまして、私の試算をしたものをちょっとお配りをさしていただきますが。
  208. 倉成正

    倉成委員長 結構です。
  209. 大内啓伍

    大内委員 今ここで「財政の中期見通し」というものをいつものように策定をしてみました。これはもちろん幾つかの前提がございまして、財政の現状及び積極的な経済、財政政策の推進を前提として、一定の予見し得る仮定のもとに要調整額がどういうふうになるだろうかということを検証したものでございますが、これでまいりますと、政府が今やろうとしているような、あるいはやってきた縮小均衡型の経済、財政運営では、中曽根総理の残された「増税なき財政再建」とそれから昭和六十五年度赤字国債の脱却という二つの公約は実行することが不可能であろう、したがって、この際、この二つの目標達成するためには、私どもが示すようなこういう拡大均衡の方向へ転換すべきだという一つの試算でございます。  その試算の前提及び要領につきましては、一番最後のページに書いてございますので、後でごらんをいただきますが、この数字をごらんいただいておわかりのように、例えばこの一番最後のページに書いてございますように、五十九年度において公共投資の上期の前倒しをやる、下期の大幅追加をやる、金融政策の機動的な運営などを通じて自然増収の増大を図る、あるいは六十年度以降においては、所得税の減税の追加や大幅な投資減税の実施をやるというような一連の措置をとった場合に、政府が今度財政の仮定計算で出しましたような要調整額は大幅に圧縮されるという方向が見通されるわけでございます。  したがって、財政再建という問題は、これは自民党政府の課題じゃなくて、国民、国家全体の問題でございますから、よくなるために我々もできるだけの協力はしたいし、知恵も出したいと思っております。そういう意味一つの試算として差し上げ、これは前に主計局にも差し上げてありますので、大蔵大臣の感想を聞いておきたいと思うのであります。
  210. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに私は、私どもが今後財政改革を議論していくための手がかりとしてお出しした、それで大内委員が今日こうしてやはり一つの仮定の上に立ってお出しいただいた、そういうものをお互いに出し合って議論する中に一つの方向が模索されながら見出されていくではないか、こういうような感じがいたしております。そのことは大変私どもにとってもいいことだと思っております。ただ、大内委員と議論をしておりますと、結局、先ほど来の議論でございますが、いわば潜在成長力をどう見るかという点に若干の乖離がある、こういう印象はいつでも持っております。
  211. 大内啓伍

    大内委員 まだこれはたくさん詰めたい問題がございますが、時間の制約がございますので、次に防衛問題に移りたいと思うのです。  例の防衛費の一%問題で国会が一日ストップしてしまいました。そして、あの段階では、私どももいろいろ努力をいたしましたのですが、あのときの総理答弁は、「昭和五十一年の三木内閣の防衛費に関する閣議決定の方針については、これを守ってまいります。」こういう御見解でございいました。それで事態が一応収拾されたことは、私は一歩前進であったと思うのでありますが、しかし、問題は依然として残されているように思います。これは中曽根総理を苦しめるために論議をしようという意味ではありません。できるだけ政府の真意を明らかにさしておくことの方がプラスになると思うからなんです。  あの三木内閣の五十一年の閣議決定というものはよく御案内のとおりでありまして、こういうふうに書いてあります。「防衛力整備の実施に当たっては、当面、各年度の防衛関係経費の総額が当該年度の国民総生産の百分の一に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うものとする。」つまり、一%を守るというものは、非核三原則のような問題とちょっと違いまして、当面これをめどとして守りたいというのが三木内閣の閣議決定であります。総理が使っておられるこの守りますという意味の当面は、私の理解では、五十九年度は当面の中で守りたい、こういう意味と解釈されるのであります。  というのは、これは後で申し上げますが、昭和六十年度以降の防衛費というものは一%を割る公算が極めて大なんであります。だからこそ私は、先ほど後年度負担及びその歳出化という問題についても前段で触れたのであります。私の理解でよろしゅうございましょうか。
  212. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先般私がここで申し上げましたように、三木内閣の決定の方針を守ってまいります、こういう考えに立ちまして、今後とも努力してまいりたいと思っております。  では、いつまで守るのかという御質問でございますが、これはともかく全力を尽くして一%以内をめどにして、三木内閣の決定どおり、できるだけ、やれるところまで懸命の努力を尽くしていく、そういうことでございます。
  213. 大内啓伍

    大内委員 中曽根総理は、私とこの問題で既に議論を交わしているわけであります。すなわち昭和五十七年の十二月十四日、討ち入りの日でございました。このときに総理は、一%問題について非常に重要なお答えをされているわけです。最大限の努力をし、しかもそれが満たされないという状態になればやむを得ない、そのときにおける歯どめの問題も考えなければならない、要約いたしますとそう言っているのでありますが、これは実は昭和五十二年の防衛白書にはこう書かれております。「「当面」とあるのは、何らか固定的な期間を予定したものではなく、この決定は必要に応じて改めて検討されるものである」、防衛白書にこう書いてありました。今述べました総理の答えはこれと符合いたします。総理発言は綸言汗のごとしであります。五十七年十二月十四日の私に対してなされた一%問題についてのこの言質については、総理は責任をお持ちになりましょうね。
  214. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大内さんに申し上げたことはよく記憶しております。その趣旨は、ともかく全力を振るって一%以内にとどめるように努力をしてみます。その結果についてどこまでやれるかということはそのとき考えますという趣旨で、努力する、守っていくことを全力を尽くしてやってみる、そういう点に重点があったということを改めて申し上げる次第でございます。
  215. 大内啓伍

    大内委員 重点を置いて一生懸命やっても、それが満たされないという状態になればやむを得ない、この言質も生きておりますね。
  216. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかく今申し上げましたように、この間大内さんや皆さんの御努力でできました私のこの答弁を守っていく、そういうことで御了承を願いたいと思うのであります。
  217. 大内啓伍

    大内委員 じゃ、ちょっと別の方から聞きましょうか。  総務長官、総務長官は人事院勧告を守るということを約束されましたね。ここで約束されますか、改めて。
  218. 中西一郎

    ○中西国務大臣 昨年の十一月二十七日、このことをおっしゃっておると思うのですが、参議院の内閣委員会で丹羽総務長官発言をしておられます。  いろいろ難しい情勢の中であるのだけれども、五十九年度について勧告が出されたならば、勧告の実施に向けて最大限の努力を尽くす所存であるということをおっしゃっております。私も引き継ぎを受けましたし、総務長官としては、同じ立場で労使関係の良好な関係を維持しなければなりませんし、また、職員の皆さんが仕事に励んでいただかなければなりません。同様の対処をいたす決意でございます。
  219. 大内啓伍

    大内委員 丹羽総務長官の場合は、完全実施に向けて最大限努める所存でありますと言っております。完全実施と言っておりますね。今は実施に向けてとおっしゃいましたが、完全実施という意味で理解をさせていただきますが。  そこで、ベースアップが三%以上になった場合に、もちろん二百九十六兆円の一%を超えるわけですが、ただ、この間じゅうの議論は幾らかラフだと思いますね。つまり、一%を超えたか超えないかはいつ判定するのですか。総理大臣、いつ判定するのです。
  220. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、超えたときに判定するのではないかと思います。ハードルの乗り越えみたいなものですから、超したときに判定するのではないかと思います。
  221. 大内啓伍

    大内委員 超したときをいつ判定するかという問題を聞いているわけなんですが、八月に人事院勧告があったときにその判定はできますか。できないでしょう。GNPは決まらないでしょう。円レートもあるいは石油価格もわからないでしょう。八月の人事院勧告が出た段階で一%を超えるという断定はできないでしょう、どんな数字が出ても。その辺は政府は、超えたときにとおっしゃる以上は一応いつを見ておられるのか、そういう意味でお伺いしているのです。
  222. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 おっしゃいますように、人事院勧告が八月上旬に出ますが、GNPがどういうふうに伸びるか、景気の情勢あるいは円レートあるいは石油の値段、いろいろな問題が錯綜しておりまして、分子と分母がまだ未定の状態で続くと思います。
  223. 大内啓伍

    大内委員 私の言っている意味はなかなか重要な意味があるのですよ。一%の問題と人事院勧告の完全実施の問題、両立すると言っているのですよ。そうでしょう。
  224. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一%を超したか起さないかという判定の基準が、そのときの状態におきましてはまだなかなか決めにくい状態にあるであろう、そう申し上げるわけです。
  225. 大内啓伍

    大内委員 したがって、八月に人事院勧告が出れば、一%の動向いかんにかかわらず、完全実施という問題が一%を理由にして拒否されるような事態は起こるはずがない、そういう意味で理解できますね。
  226. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 人事院勧告の問題は、一%とは別個の問題でありまして、国家公務員法に基づき、その趣旨に沿って政治が判定すべきものであると思います。
  227. 大内啓伍

    大内委員 それは大変結構な答えです。人事院勧告は人事院勧告として実施していく、こういうお答えでございますが、非常に結構なお答えてあります。  そこで、六十年度を私はちょっと展望してみますと、六十年度の成長率が仮に五十九年の五・九%と同じ場合、防衛費の伸びは六・八二%超えたら一%を突破いたします。「展望と指針」の中間値あるいは中央値といいますか、六・五%をとった場合、七・四二%までアローアンスがあります。しかし、この中にはベースアップ分は含まれておりません。ベースアップは恐らく半分ないしはそれ以上占めるでしょう。私はそういう意味で、六十年度は、極めて常識的に考えれば、政府が守るとおっしゃっている一%は突破せざるを得ないのではないか。先のことだから言えません、先のことだからわかりません、そういう議論じゃなくて、もっと常識的な議論をすればそういうことになると思うのです。ですから、当面というのは大体いつまでを考えておられますか、それは五十九年度までは守るということでしょうと言うゆえんも、実はこういうところからでございます。  六十年度は突破すると私は思いますが、防衛庁長官はいかがですか。
  228. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 そういう御見解もあろうかと思いますが、私どもの方は、六十年度の予算につきましては、歳出化の問題と同時に、人件費、糧食費、その他経費というようなものもございます。で、しかもGNPがどうなるかわかりませんので、この段階ではさように申し上げることができないことを御了承いただきたいと思います。
  229. 大内啓伍

    大内委員 では総理、そうしたGNP等の動向のいかんにかかわらず、この一つの基準、歯どめというものは政府にとっては非常に重大なものなので、六十年度も万難を排して守りたい、あるいは私に答弁されたようにそれは状況によって考えたい、いずれでしょうか。
  230. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一%の枠を守るように一生懸命努力してまいりたいと思っております。
  231. 大内啓伍

    大内委員 そこまでしか言わないということにしているわけでしょう。しかし崩れますよ。ですから私は、わかりやすい政治とおっしゃる以上は、なるべくうそをつかない、国会対策上のうそはできるだけ最小限にする。ゼロにせよとは申しません。最小限の自衛措置です。もっと実質的に見てみますと、防衛予算のうち人件糧食費は四五%ですね。そして今度の防衛費についても、六・五五%で突出してけしからぬ、こういう話が渦巻きました。しかし、この六・五五%分、つまり一千八百四億円の内訳をきっと吟味されていると思うのです。この一千八百四億円の増のうち、四六%は人件糧食費です。ですから、防衛費の増大に反対しようとすると、場合によっては公務員、つまり自衛隊の人事院勧告の実施についてすら反対しなければ論理が合わない、こういう事態にも入るのですよ。  私は、そうした防衛力の実質的なチェックという課題とかけ離れた論議というものが、一%論や六・五五%の批判論の中にあるように思われてならないのです。私は、こういう実質的でない議論を避けるために、防衛力の無原則な拡大をチェックするための新たな歯どめという問題は、もっと政府としても政治家同士としても真剣に考え合わなければならぬと思いますが、総理、いかがでしょうか。
  232. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 将来の問題として研究しなければならぬ問題であると思いますし、有力な御助言をいただけば、政府もそれを将来の課題として参考にいたしたいと思います。
  233. 大内啓伍

    大内委員 本当はシーレーンの問題について少し本格的な議論をしたいなと思っておりましたが、私に残された時間があと十分しかありませんので、これは後日機会を得てやりたいと思っております。ここは非常に重要なところで残念なんですが、いたし方ありません。  そこで、その他の問題について、各論について幾つかお伺いをしておきたいと思うのです。  まず自治大臣、きょうのある新聞によりますと、全国における高給与自治体百五十三市町村に対して、自治省はその給与の改善というものを迫ってきた。しかし、にもかかわらず、三十九市町村については、この自治省の指導はほとんど無視されて、是正が行われていないという調査が明らかになりました。この点についてはいかがお考えでしよう。
  234. 田川誠一

    ○田川国務大臣 そのようなことを聞いておりますが、我々、地方自治の本旨から見まして、制裁を与えるとかいうようなことはいたしません。ただ、国家公務員よりもさらに数段給与が上回っている自治体は、財政が非常に豊かであるということを判断せざるを得ませんので、そうした見解に立って財政措置をいたすつもりでございます。
  235. 大内啓伍

    大内委員 それは、そういうところに対しては地方交付税の減額措置をとる、こういう意味ですか。
  236. 田川誠一

    ○田川国務大臣 起債の問題であるとかその他の財政措置を財政が豊かな自治体として対応していく、こういうことでございます。
  237. 大内啓伍

    大内委員 自治大臣、ぜひその辺は勇気を奮ってこのラスパイレスの縮小に向けて御努力をいただきたいと思うのです。  それからもう一つ、これは小さな問題かもしれませんけれども、私は国会として隗より始めよという意味で非常に質的に重要だと思われますのは、SPの配置なんです。今総理大臣を初め閣僚の皆さん、それから党の首脳の皆さんにSPがずっとついています。しかし、我々もいろいろ調査しておりますと、ゴルフ場へ行くのにもSPがついていますね。宴会へ行くのにもSPがついていますね。私はそういう方もあると思うのです。必要な方はあるかもしれないと思うのです。レーガン大統領でも、ゴルフ場で危ない目に遭っていますからね。  しかし、そのSPをつける対象と、SPのガードの基準が余りにもルーズじゃないでしょうか。かつて鳩山内閣は、二十九年の十二月にSPの廃止を実行しました。そして、みずから、自分でカバーすべきものはカバーする。厳しい姿勢を示した。私は、SPは今オーバーガードだと思いますよ。ああいう立派な人々をそういうむだなことに使ってはいかぬ。SPの配置については、自治大臣として再検討する意思はありませんか。いかがでしよう。
  238. 田川誠一

    ○田川国務大臣 自治大臣といたしましては、そういうことについて発言力もありませんが、国家公安委員長を兼ねておりますので、国家公安委員長として申し上げたいと思います。  今大内さんが言われたことは、非常に重要であり、また大変適切な御指摘だと私は思っております。警察当局としては、できるだけ政治家あるいは外国からのお客さん、重要人物、こういうもののガードはしていかなければならぬ、身の安全を図っていかなければならぬ、こういうことで一生懸命やっております。でありますから、できるだけ身辺の護衛、警戒はやらなければならぬという立場にあります。  しかし一面、私は政治家としての立場から見ますと、行政改革をやっているこうした時期に、一体今のような状態でいいのかなということを考えざるを得ない。また考えておりました。私は新自由クラブの代表になりましてから四年になりますが、実はSPを辞退しているわけです。ずっと辞退してまいりました。しかし、総理大臣初め各閣僚、重要人物はどうしても身辺を警戒していかなければならぬ、こういうことで一応の基準が警察当局ではできているようでございまして、私は、そういう基準にまで発言する、いろいろ指揮をする権限はありませんけれども、この際はやはり見直していった方がよろしいのではないか、こういうふうに思っております。  そうして、これは単にいろいろ言われている人物ばかりでなく、与野党を通じて、お互いに考えていっていただきたいのでございます。野党の中にも、何百キロというような地域まで、選挙区にお帰りになるのにSPをつけてお帰りになっている幹部もいらっしゃいます。そういうことだけ一つ見ましても、やはり見直していっていただかなければならないのでございます。しかし、警察の立場になりますと、もし事件が起こったら責任を追及されますからね。ですから、そういう意味からは、警察としてはやはり今見直すということはなかなかできないと思うのです。しかし、政治家の方から辞退をするというぐらいの立場を持ってやっていただければ、今警察は人員も少ないので非常に困っているわけですよ。そういう意味で、むしろ政治家の方の立場から、身の安全の危険のない人はお断りしていただければ、お願いいたしたいと思います。
  239. 大内啓伍

    大内委員 私はもう二、三分しか時間がありませんので、ぜひ見直しをされるように、総理におかれましても、こういう問題は、隗より始めよ、政治姿勢として非常に大事なことです。ぜひお願いをしたいと思うのです。  そして最後に、私は一言だけ厚生大臣にお尋ねをいたします。  これは医師の過剰問題であります。  御存じのように、昭和四十八年に、一県一医大構想というものによりまして、十万人単位で、医師については百五十人、歯科医については五十人という基準が決まりましたけれども、この目標は既にもう五十八年度の段階でオーバーし始めてきている。このままでいきますと、お医者さんも歯科医師ももう余ってしまう。これは非常に重大な問題になってきていると私は思うのです。そして、既に厚生省と文部省の間でこの問題の検討会が開かれまして、医学生等の削減問題が議論されているようでございます。これはひとつ根本的に再検討して計画を見直してもらいたい、こう思いますが、厚生大臣の御答弁を最後にお伺いをいたしたいと思います。
  240. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 ただいま大内先生がおっしゃるとおりに、大変重要な問題でありまして、厚生省が最初にお願いした数より今の医科大学の定数ははるかに突破している状態で、御承知のような心配もあります。これは与党の機関の方からもいろいろ御心配をいただいておりますので、これは長期の時間を要する問題であります、将来の問題でありますから、近く検討委員会をつくりまして、六十年度の政策に反映させるように努力してまいりたいと思います。
  241. 大内啓伍

    大内委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  242. 倉成正

    倉成委員長 文部大臣、簡潔に願います。
  243. 森喜朗

    ○森国務大臣 ただいまの大内先生のお話は、私どもの立場からいいますと、医師養成機関でございますから、むしろ私の方のお答えの方が大内先生の御質問に答えることになるのかもしれません。  基本的には、医師の定数がどの程度が必要なのかということは、これはぜひひとつ厚生省でお考えいただきたい。厚生大臣も今話しておりましたように、与党の方でも関係荷が集まって協議を始めるようでございます。  ただ、医師養成機関の立場からいきますと、必ずしもお医者さんの数が、数的には確かに超えておりますけれども、地域によったり自治体病院によっては偏在をいたしておりますし、基礎医学なんというのはなかなか足りないようでありまして、解剖学とか病理などというのは足りないようであります。その点も十分考えまして――ただ、医学教育を進めていく、教育条件の改善という立場の中で、少なくともおおむね定員百二十名ぐらいある国立大学のところは、少しは、そういう教育改善という立場の中で六十年度から、すべてではありませんけれども、やはりその地域の地域医療ということも十分検討しながら、あるいは大学の対応考えながら検討を開始したい、このように考えております。
  244. 倉成正

    倉成委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田利春君。
  245. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、政府に対して、政治姿勢、また主として外交問題を中心にして、見解をお尋ねいたしたいと存じます。  特に、私の持ち時間の中で関議員が三十分間関連質問をする予定になっておりますので、委員長の方でしかるべくお取り計らいのほどをまずお願いを申し上げておきたいと存じます。
  246. 倉成正

    倉成委員長 承知しました。
  247. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今国会は、昨年十二月に行われた衆議院の解散、総選挙を受けての特別国会であるわけであります。私は、そういう意味で、この総選挙の国民の審判というものを我々政治家は一体どう総括をするのか、このことが今国会に課せられている一つの大きな課題ではなかろうか、かように存ずるのであります。  しかも、中曽根内閣は、一昨年誕生して昨年の解散まで、約一年間の時間を経過いたしておるわけであります。その間、外交、内政についていろいろ問題が多岐にわたって提起をされましたし、あるいはまた、田中問題を中心にするいわば政治倫理の問題、田中議員の辞職勧告決議案をめぐって、第百臨時国会は長い時間空転をしたという、その延長線上の中で憲法七条による解散が行われておるわけであります。  私は改めて、この十一月二十八日の衆議院の解散権の行使は、中曽根内閣として一体どういう意義を求めて衆議院の解散を行って国民の審判を仰いだのか、この点をまず冒頭明確にひとつ御説明を願いたいと思う次第です。
  248. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 人心一新のときが来たということと、それから行革法案を初め全法案の成立を期する、そういう二つの願いを込めて行ったわけであります。
  249. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 十一月の解散というのは、前のダブル選挙以来、約三年五カ月目の解散であります。そして、先ほど申し上げましたように、中曽根内閣が誕生してちょうど一年目の解散であります。いわば、あの臨時国会における法案を通す、そうして国民に信を問うという、単にそういう単純な解散ではないと私は思うのであります。いわば田中問題を中心とする政治倫理に関して、この際、主権者である国民の審判というものを仰ぐ、やはりそういう決意が込められて、この解散が行われましたし、当然内閣が誕生すれば、ある一定時間経過すると、その政策について、またこれから推し進めようとする自分の政策に対して国民の審判を仰ぐというのは、極めて憲政の常道として当然であろうかと思うのです。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕 私は、そういう意味で前回の総選挙は、自民党中曽根政治のこの一年間の歩んできた、いわば中曽根政治に対する国民の総決算といいますか、審判を仰ぐ、こういう意味が当然含まれていることはもう間違いがないのではないかと思うのです。同時にまた、この選挙を通じて、これから政権を担当して自民党が進めていく政策について、また国民の支持を仰ぐ、審判を仰ぐ、これも憲政の常道でしょう。私のそういう今申し上げた点について、どうも総理答弁はつっけんどんの答弁でちょっと冷たい答弁というように思うのですけれども、私の申し上げていることは極めて当然ではないでしょうか。
  250. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 岡田さんがおっしゃることも、皆さん方の御意見として理解できるところでありますが、我々の方の立場を申し上げますと、人心一新と、もう一つは、両院議長さんまで間にお入りになって全法案成立ということのめどがつくかつかぬかということが私の判定への一つの重要な要素であったということも御存じのとおりであります。
  251. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 どうも総理は、私の質問に対して、いわばそのときの瞬間的な政治状況というもののみをとらまえているわけですね。いわば憲政の常道としてのあり方からいえば、もう一年間も政権を担当したわけですから、もちろんその間そのときの政治情勢はあるでしょうけれども、やはり解散、総選挙というものは、それまでの政権を担当してきた中曽根政治に対する国民の審判を仰ぐということもやはり含まれることは、これは政治常識ではないでしょうか。解散権の問題でありますから、ほかの大臣に聞いても答弁願うわけにはまいらぬのでしょうけれども、しかし、大体どの政治家に聞いても、中曽根政治に対して、やはり一年間歩み来って、今後また進めようとする政策について同時に審判を仰いだものだ、国民の皆さんはそう思って審判をしたんだと思うのですよ。違うのは中曽根総理大臣だけでしょうか。私のこういう常識は国民的常識としてあなたは受けとめることができませんでしょうか。
  252. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 おっしゃることはよくわかります。
  253. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今度の選挙の結果、過般本会議で行われた総理の施政方針の演説、この内容、特に冒頭から、謙虚にこれから国政の衝に当たっていく決意である、そして第一には、政治倫理の問題を、これを積極的に取り上げて国民の批判にこたえてまいりたい、第二には、新しい民主政治の運営と展開について十分心がけていきたい、いわば広範な対話の政治を進めていく、こういう二つの点がその決意として述べられておるわけであります。  そこで、私は、一つの政治倫理の問題でありますけれども、どうも選挙後の総理大臣発言というものが国民の側から見れば何を言っているのかわからない点がどうしても出てまいるのであります。総理は、選挙の結果、総括として、これは記者団の会見で述べておるのでありますけれども、田中問題にけじめが明確でないことと、政治倫理問題に対するみずからの取り組みが国民の不満を招いたことが敗因である、こう述べられておるのであります。これは施政方針の中でも述べられておりますから、極めて当然な総括だろうかと思います。ところが、その次の発言として、これはその後の記者会見で述べられておるのでありますけれども、これは十二月二十七日の会見ですね。どうも世間には誤解があるようだということを前提にして述べられているわけです。いわば中曽根内閣が、中曽根政治が田中元首相の影響を受けてきたというのは全く世間の誤解であるということを明確に述べて、この誤解というものは、いわば新聞あるいは雑誌あるいはテレビで国民に与えられたものである、こう断定いたしておるのであります。したがって、そういうことがこの敗因につながった、こうあなたは述べられておるのであります。  どうも私はこの認識について非常に疑問がありますし、国民の側から見ても、この中曽根総理説明については納得のできない部面が私は多々あると思うのであります。中曽根総理大臣は、政権誕生後の十二月二十七日、記者会見でのトーンが上がっておるのでありますけれども、この発言について、今でもそうである、こういう確信をお持ちなのでしょうか。この点、総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  254. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前から申し上げておりますように、政治倫理問題に関する私たちの政治姿勢が必ずしも国民の御納得を得ることができなかった、そういう点で遺憾の点があったと思っております。
  255. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そのことは施政方針でも述べられておりますからいいのでありますけれども、私が聞いておりますのは、総理の認識の問題であります。どうも国民の認識と総理の認識のずれが余りにも大き過ぎるということを実は問題にして今質問をいたしておるのであります。いわば総理は、これは自民党党内の問題でありますけれども、この戦いの結果、党内の厳しい批判を受けながら、総裁声明というものを発表して、総裁としては、この結果は辞職に値する責任を感ずる、したがって、今後は田中氏の政治的影響力を排除して清新な党風をつくるのだという決意をあなたは総裁声明で述べられておるわけであります。このことはもう陰に陽に今までの田中氏の政治に対する影響力、そういう影響というものを今後は排除して、そして誤解のないように清新な党風を築き上げるのだという決意を、この総裁声明に込められておる、私はこう思うし、国民もそう理解をいたしておるのであります。したがって、世間では俗っぽく田中曽根内閣とかいった批判があったのでありますけれども、そのことがすべて報道関係によってつくられたものだ、全然そういう影響力がないとだれも信ずる人はいないと思うのであります。  この点、もう一度、謙虚にこれからも国政に当たるというあなたのせっかくの御姿勢でありますから、私ども非常に結構な姿勢であると思うのであります。そういう意味で、謙虚にひとつこの面についてのお考えをもう一度お聞かせ願いたいと思います。
  256. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 選挙にあらわれました国民の御審判をよく反省いたしまして、まず政治家としての出処進退について倫理というものを最大限に考えていくように努力をするとともに、やはり政界を浄化して、国民の期待に沿うようなりっぱな政界にしていくという点について与野党、皆さんと一緒にまた御相談もし改革も進めていきたい。また、与野党の対話、野党の皆様方のお考えも十分謙虚にお聞きいたしまして、そういう国民的広場を広めた形で政治を進めていく、そういうふうにいたしたいと思っております。
  257. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今国会予算委員会における総理答弁を、私は私なりでずっとあらゆる部面にわたる総理答弁を聞いているのですが、どうも肝心なところはさっと避けて通る非常に高度な技術的な手法をもって答弁をされておる、こう私は感じておるわけです。  そこで、第二次中曽根内閣に今度政策の合意によって入閣された田川さんにちょっとお聞きいたしたいと思うのですけれども、私はやはり第一次中曽根内閣、その出発において、またその一年間の経過において、倫理懇の議員のそれぞれの全国遊説で、田川自治大臣が当時いろいろ国民に対話の中で訴えられたように、刑事被告人である言うなれば田中氏の影響というものを陰に陽にやはり受けられていたという認識にあなたは立たれて、そして長岡においてあるいはまた北海道、函館において、全国それぞれの地域において国民に政治倫理の確立について訴えられたと思うのですが、この点、第一次中曽根内閣についてあなたはどういう認識を持っておられたのでしょうか。
  258. 田川誠一

    ○田川国務大臣 総選挙の結果によりまして総理大臣がたびたびおっしゃられたように、総選挙の結果を深く反省をせられておられます。それから政治倫理につきましても、従来にない積極的な姿勢を示しておられます。そういう背景に立って、先般来申し上げましたような政策合意をいたしましたので、私どもは連立に応じたわけでございます。きのう武藤さんが私に、中曽根さんをタカ派とかいろいろ言われたということでございますけれども、新聞には批判をした面だけしか出ないで、評価していることが余り出ないのです。私も中曽根さんをタカ派と言った後には、調和のとれたタカ派であるということを申し上げた。そういうことが新聞に出ないのです。ですから、批判をすると同時に、また評価をしているということでございます。
  259. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 るる私が述べてまいりましたように、私が言わんとすることはもう総理も十分理解ができるのではないか、かように思うのであります。  そこで、私はこれからの政治倫理の確立に当たって、特に田川自治大臣は、元旦の恒例のいわば田中元首相に対する訪問については、あなたは、自分の職域である自治省、警察庁内にはこれを厳しく禁じて、そういう通達をした、こう言われているのでありますけれども、これはそのようになされたのかどうか。なされたとすれば、警察庁の場合はわかりますけれども、自治省、自分の職域である自治省についてもそういう指示をしたという点についての考え方をこの機会に承っておきたいと思います。
  260. 田川誠一

    ○田川国務大臣 指示と言われるほどのことをした覚えはございませんけれども、雑談の中に自治省の幹部に対してそれに似たようなことは言った記憶がございます。
  261. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そこで、私は今前段で質問いたしましたように、やはり総選挙というのは、単に今総理が言われているような、そのときの局面における課題のみにおいて国民の審判が下されるものではないと私は思うのであります。しかし、総理は本会議においても予算委員会においても、今回の総選挙の結果というものは、政治倫理について国民からおきゅうを据えられたものであって、それ以外の中曽根内閣の外交あるいはまた防衛あるいはまた福祉、教育、そういう行革等の全般にわたって国民が批判したものではないということを胸を張って実は答弁をされておるのであります。私はこのことに非常に危惧を抱いておるのであります。  特に、中曽根内閣が発足当時から今国会でもしばしば問題がありましたように、国民の側からすれば、中曽根さんのいわば不沈空母論とかあるいはまた三海峡封鎖論、そして日米運命共同体の、いわば中曽根さんの防衛力増強の軍拡の路線について大変大きな危惧を私は抱いていたと思うわけであります。ある人のごときは、中曽根康弘を艦長とする不沈空母には、私は家族を含めて乗らない、こういう端的な表現で批判された一般の国民の方もおります。だがしかし、中曽根さんが艦長であっても、不沈商船であれば私は乗っていきます、この人はそう言うのであります。  そういう意味で、中曽根路線について国民のそういう危惧というものが、今回の選挙を通じて、余り突出をしないように、行き過ぎないように、いわばバランスのとれた政策というものを常に心がけるべきである、こういう国民の批判というものが今度の選挙の結果にあらわれたのではないか、私はこう思うのであります。そういうことがないというのであれば、ないと胸を張って言い切る証拠でも何かおありなんでしょうか。見解を承りたいと思います。
  262. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 バランスのとれた政策を行うべきであると考えます。
  263. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 ところが、バランスのとれた政策とは国民に思われないわけですね。去年の予算においても防衛費は突出をしましたし、今年も六・五五%と突出をしておる。これが国民の側の率直な批判だと思うのであります。しかし、総理は、これはバランスがとれているのだ、こう胸を張りますけれども、選挙の結果はそうではないんじゃないですか。いや、そういうことは絶対ないということを総理は何か立証できますか。
  264. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛の問題をおっしゃいますが、防衛は私はおくれておると考えておりますから、少しその点は重視したわけであります。あるいは国際経済協力の問題も非常に重要性があると思いましたから、これも非常に強化に努めたところであります。それでも社会保障費、その他の面も配慮いたしまして、全体とのバランスというものを考えてやっている次第であります。
  265. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 総理はそう答弁をされますけれども、しかし、国民の意識というものは今どこにあるのか、このこともやはり我々は重要な参考にしなければならぬと思うのであります。特に防衛については、自衛隊の軍事力を強化する、これに賛成だというのは、これは選挙のときに同時に行われた国民の意識調査の中では一〇%、一割しかないのであります。現状でいいというのが六割、むしろ縮小すべきだというのが一九%であります。廃止をすべきだというのが五%で、その他、答えないのが六%。これは昭和五十三年に比べて、「現状で行く」「縮小する」「廃止する」という人が八四%、五十三年の場合には七七%でありました。むしろ中曽根内閣が出現をして、このような「現状で行く」「縮小する」「廃止する」人が非常にふえておるという国民の意識調査が実はあるのであります。しかも、「自衛隊は強化する」という中には、男が一五%で、女の場合には六%という数字もあります。同時にまた、昭和五十三年には自民党支持者の中でも、自衛隊を強化すべきだ、これは二四%であります。ところが、これが今度の調査によっては一四%に下がっているのです。自民党支持者の中でも一四%です。これが国民の意識調査の中に実は出ておるのであります。  ですから、今総理はいろいろ答弁をされておりますけれども、この国民の意識調査、もちろんこれには認識の仕方はいろいろあるでしょうけれども、一応の国民の意識水準、動向として参考になるのではないでしょうか。いかがでしょうか。
  266. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 現状で維持するというのは最大多数で、この数字はそう変化してないと思います。
  267. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 ですから、私も「現状で行く」というのは六割だと言っておるのです。前は六一%、今度は六〇%ですから大体同じ水準です。ただ「現状で行く」「縮小する」「廃止する」となりますと八四%になるわけであります。この点はやはり的確に把握をしておく必要がある、こう思うのであります。だから、中曽根さんのどうも路線を見ておると、ずんずん自衛隊の軍事力が強化をされて、その反面、福祉や教育が切り捨てられるのではないか、これに対して国民は非常に厳しく反応した、これが今度の総選挙の結果だ、こう私は受けとめておるのであります。しかも自民党支持者が、この問題について五十三年、五十八年でもって既に支持状況が変わってきている。こういう面も考える場合に、単に我々だけが言うのではなくして、全国民的な面でそういう見方が今度の選挙の結果にあったのだ、残念ながらこのことを明確に指摘をしておかなければならないと思うわけです。ですから、少なくともこの防衛力の問題については、これは先ほど田川さんからもお答えがありましたけれども、いわば新自由クラブとの合意書の中にも、「平和外交の推進」という中に、非核三原則を遵守する問題や核軍縮、平和外交を進める、そういう点も合意書の中にあるわけでありますから、やはり第二期の中曽根内閣としては、そういう点について冷静に謙虚に受けとめながらこれからの防衛問題に対処していくということでなければならないのではないかと思うのですが、感想はいかがですか。
  268. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新自由クラブとの協定はよく守ってまいりたいと思っております。  それから、おっしゃいますように、国民世論というものをよくおもんぱかりまして、安定性のある政策を進めてまいりたいと思います。
  269. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、第二の問題として取り上げたいのは、今防衛関係の問題をやりましたから、それに対応して福祉の問題を取り上げたいのであります。  選挙前、既に五十九年度の概算要求が行われて、厚生省は厚生省として大蔵省に対して概算要求を出した。その中に、健康保険法の改正をして従来十割負担を八割負担にする、このことを、いわば大蔵省、厚生省の官僚ベースの中で決断をして、厚生省は大蔵省にこれを要求した。大蔵大臣に言わせれば、内なる改革で非常に結構なことだという談話も出しておるわけであります。そしてそのまま解散、総選挙になったのであります。国民の、特にサラリーマンのこの政策に対する不満というものは、選挙の中にも大きかったと思うのです。大きかったからこそ、自民党の候補者の中でも、この点は当然改革をする、あるいは反対をすると答えた人もおるし、自民党自体としても、この政策については選挙後見直す、こう言わざるを得なかったわけですね。これも新聞で公式に自民党の見解として報道されておることは御存じのとおりであります。したがって、選挙のときに国民にそのように約束したのでありますから、当然それに基づいて、今度の予算の策定に当たって、当初の二割負担というものを再検討して、最終的に政府原案になった、今度は一割負担ですね、二割負担が一割負担ということに政府としては選挙中の見直しをするという約束をそういう形で果たしたのだ、こういう認識でおられるのかどうか、この点、御説明を願いたいと思います。
  270. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 お話しのように、私が厚生大臣に就任しまして、概算要求で話しておったのは二割負担とかあるいは入院時の負担とかあるいはビタミン剤その他を使わせないとかいろいろな点がありましたが、その後、国民の世論の動向等を考えられました党とよく相談をいたしまして、今回のように、入院時一時負担とか薬剤の使用とか、そういう面を除きまして、純粋に五十九年、六十年、一割負担、六十一年から二割負担というふうにお願いしたわけであります。
  271. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 厚生大臣は選挙当時大臣ではなかったわけですから。選挙の最中に、自民党は見直しをしますということを約束したわけですね。その結果、最終的に今度の政府原案が決まったわけでありますが、この決まった内容が、選挙のそういう公約に基づいて見直した結果こういうことにしたのだ、これが回答である、こう受けとめていいのですかどうですかと伺っておるわけです。厚生大臣は当時まだ厚生大臣ではなく、林さんが厚生大臣ですから。しかし、総理総理であるわけでありますから、そういう意味で、そうであるかないか、この点、総裁としてお答え願えますか。
  272. 竹下登

    ○竹下国務大臣 直接厚生省と私が相手をいたしましたので、私からお答えいたしますならば、各方面の意見を聞きながら見直しをする、各方面の意見を聞いて、これが妥当として見直しした結果である、こういうふうに御理解をいただきたい。
  273. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この制度の改革、行政改革の中に、今度の施政方針でも「年金や医療保険制度の本格的改革」という言葉を総理は使って施政方針演説をされておるのであります。少なくとも、健康保険法、大正十一年ですか、本格的には昭和二年、創設をされてまいっておるわけです。我が国の社会保障制度の中のいわば基礎的な制度であるということは御承知のとおりだと思うのです。したがって、このあり方というものは我が国の社会保障制度の根幹に関する問題だという理解があってしかるべきではなかろうかと思うわけであります。いわば制度的には、歴史的な我が国の社会保障制度の中で重大な柱をなしているものである。だから施政方針でも「本格的」という非常に重きを置いた表現もなされておるのではなかろうかと思うのであります。私はそういう点について、この健康保険法の問題について言えば、私が述べた認識は政府の認識と一致するでしょうか、いかがですか。
  274. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 医療保険制度というものは、我が国社会保障制度の中の大黒柱の一つであると思っております。
  275. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 一つであると同時に、年金もありますけれども、年金というのは、これは船員保険法が民間では一番早くて昭和十四年ですね。厚生年金は昭和十七年なわけです。健康保険というのはもう大正十一年、昭和二年ですから、そういう意味では、我が国の社会保障制度の中では、戦前戦後を通じて先駆的な基本的な制度であるということ、同じ制度の中でもそう理解できるのではないでしょうか。
  276. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのように思います。
  277. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 このような改正に当たって、一月二十五日、見直しをされた政府原案が決まったものですから、厚生省は、社会保険審議会、同時にまた、我々はその上級審、こう言っておりますけれども、総理が所管をいたしております社会保障制度審議会にそれぞれ諮問をされているわけですね。この諮問の結果は、当然答申されると思うのです。この答申は十分尊重されるものと思いますけれども、いかがでしょうか。
  278. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 もちろん、私の方から諮問して今お願いをしておるわけでありますから、答申を尊重してまいりたいと思います。
  279. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この答申は、社会保険審議会の方はいつごろ答申される見込みか、同時にまた、社会保障制度審議会の答申は一体いつごろされる見込みか、承っておきたい。
  280. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答え申し上げます。  社会保険審議会の答申はただいまのところ今月の二十二日を一応予定しております。それから社会保障制度審議会の答申は翌日の二十三日を予定しております。
  281. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そういたしますと、この制度というものは、我が国の社会保障制度の先駆的な基本、基幹をなす制度である、このように政府は、総理大臣も認められたのであります。にかかわらず、このような制度の変更、改革に関して、事前に法律で、設置法で設置をされている社会保険審議会の議も経ていない、あるいはまた総理の所轄でありますところの社会保障制度審議会の議も経ないで予算を確定して今国会に出している、こういうことになるのであります。そして審議会の結論は、答申を尊重すると政府は言われているのであります。違う答申が出たら、これ、予算を修正しなければいかぬでしょう。一連の答弁から言えばそうではないですか。そうであれば、この部面については、これは審議会の答申まで待たなきゃいかぬのじゃないですか。予算が修正になる可能性がある問題、不確定の問題でしょう。  委員長、どうですか。この点は、審議会の結論を得て初めて我々は政府の提出予算が確定されるかどうかということの認識に立って審議せざるを得ないと思うのですね。今までの答弁の一連の流れからいえば、論理的にいって、この予算委員会で審議することは私は非常に無理があると思うのですが。
  282. 吉村仁

    ○吉村政府委員 私ども政府案を決定いたします段階、これは当然予算を伴う政府案でございますので、予算編成の過程において決まるわけでございます。その予算編成の過程において決まりました政府案を社会保険審議会それから制度審議会に御諮問を申し上げ、その御答申をいただいて、それを尊重して政府の法案をつくる、こういうことに相なるわけでございます。
  283. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 政府には審議会いろいろありますね。たくさんありますよ。まあ事後承認という場合もあるでしょう。だがしかし、問題は政治的認識の問題なんです、先ほどから言っているように。我が国の、九兆円も予算があるのでしょう、社会保障関係費というのは。これは、その中の先駆的な基本的な制度である、こう言っているわけでしょう。それを審議会にも、しかも総理大臣所管の審議会にもかけないで、勝手に予算を決めて予算に合わせて今度は諮問をする。当然審議会というのは関係者がいろいろ入っておりますから、いろいろな意見が出ますよ。簡単にオーケーなんという結論が出るはずがないでしょう、この審議会で。出ると思う方がよほどおかしいのです。ただ、それぞれ保険会計というものを将来どうするかという面については、それぞれの意見がほぼ一致するでしょう。  だがしかし、こういう十割保障を九割にするという大改革について、事前に、例えば年金なら年金制度を改革する場合には、大体アプローチをしながら、そして年金の改正に持っていくわけでしょう。その間それぞれ審議会がいろいろ諮問に応じて審議をして積み重ねてくるわけですよ。事健康保険に関しては予算の策定上いわば財源問題として簡単に扱われているわけです。これは逆立ちの政治であります。こういうことがまかり通っておるのでは、今後財源上予算編成でどんどんどんどん制度が変えられるということになってくるわけです。そして後は追加して審議会が開かれる。こういうばかな運営があっていいのでしょうか。厚生大臣、どうですか。
  284. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 この問題は、私の聞くところによれば、四十年代の抜本改正の時代からいろいろ議論が今日まで何回かの間行われてまいりまして、昨年の夏の概算要求の際に厚生省と大蔵省で話し合いまして、これは世間にも明らかにされて、今日まで検討を重ねられてきた結果、私どもはこういう考えで進んでいくことが二十一世紀の医療制度をより安定的なものにするために必要であるという考えに立って予算編成に当たったわけでございます。
  285. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そんな二十一世紀、まだストレートに関係ないですよ、今の問題は。  私は、健康保険の関係の今までのいろいろな制度の改革の変遷について、私なりに勉強いたしておるわけであります。どう読んでみても、今厚生大臣が答弁していることにはならぬわけでしょう、これは。少なくともずっと六十年間も十割保障の制度を今度は変えるわけでありますから、これはもう極めて基本的な改革であるわけです。それを審議会にもかけないで事後承認で済ますことができるのですか。私はどうもその点については納得できないのであります。  今までの一連の答弁で、委員長御存じのように、これは我が国の社会保障制度の先駆的な基本的な制度である、こう言われておるわけですね。そして、審議会の答申を尊重すると言うのでしょう。違った意見が出たらこれを修正しなければいかぬわけでしょう。でないと尊重にならぬわけでしょう。尊重しないというのなら問答無用だということでしょう。そういう予算修正を含む可能性がある、変更のある可能性がある問題でしょう。だから、当然そういう面について、今の厚生大臣の答弁で私、納得できないですね。どういうぐあいに扱うのか、委員長の方でひとつ決めてもらいたいと思うのです。
  286. 吉村仁

    ○吉村政府委員 ただいま大臣が御答弁申し上げましたように、医療保険の問題につきましては、昭和四十年代の初めからいろいろな検討を加え、関係各方面からもいろいろな御意見を寄せていただいておるわけでございましたが、従来の健康保険の改正というのは、やはり三K赤字というようなことで赤字対策に終始する面が多かったわけでございます。現在、政府管掌健康保険もおかげさんで黒字に転向いたしましたが、これからの医療費の動向というものを考えましたときに、非常に中長期的な観点からいいますと、やはり医療費の規模というものを適正な水準にする、それから給付と負担の公平を図る、こういう見地から、今まで寄せられました関係方面の意見もいろいろ勘案をいたしまして私どもは概算要求案をつくったわけでございます。  その概算要求案につきましては、その後いろいろ関係方面から御意見が寄せられまして、それを予算編成の過程で修正をしてつくったわけでございます。そして……(岡田(利)委員「あなた、答えられないでしょう、答申と予算関係。答えられるの、あなた」と呼ぶ)それで私どもはそれを御諮問申し上げておるわけでありますが、いろいろ審議会の御意見が寄せられると思います。そして、その意見につきまして私どもは尊重をしていきたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  287. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そんなこと、二重の答弁をしなくてもいいですよ。大臣は尊重する、こう言っているのでしょう。制度に対する認識もはっきりしているわけでしょう。あと問題は、もし別な方向で答申が出た場合どうするのですか、こう言っているんですよ。予算変更が伴うでしょう、こう言っているわけです。――いいよ、あなたの出る幕じゃないよ、それはもう。これは局長答弁する問題じゃないよ。その場合には予算変更するんでしょう、尊重する以上は。しないのですか、するのですか。初めからしないというのならば、問答無用でしょう。はっきりしてください。
  288. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 先ほど申し上げたような考えで今お願いしているわけでありますから、この答申が出るのを待って、それから関係法律を出そうということで、予算は別であります。(岡田(利)委員「おかしいよ、質問に答えてないんだもの」と呼ぶ)
  289. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 岡田君。(発言する者あり)――では、岡田君の質問は、答申が出た場合どうするかということでありますので、もう一回、政府側から懇切丁寧に御答弁願います。
  290. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 答申がまだ出ておりません。この答申が出てから、もとより私どもはこれに関連する法律を出そうと思って、今答申が出るのを待っておるところであります。
  291. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 吉村保険局長、補足答弁を願います。――ちょっと停止をして。     〔速記中止〕
  292. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 速記を始めて。  厚生大臣。
  293. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 いままでもこういう方式で行われてきておりますので――もちろん、今回答申が出ましてから、立法化についてはそれを尊重して出そうということでありますから、答申が出て、それからそれを尊重して考えていくということであります。
  294. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これは総理、聞いていてもおわかりになるのじゃないのですかね。これはやはり問題認識なんですよ。問題意識が全然違うのですよ。
  295. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 先ほど私が申し上げましたように、この改革は、私ども、医療水準の適正化あるいは制度間の格差の是正あるいは負担と給付の公平あるいは国民がそれぞれ健康を守る自覚を持っていただくとか、いろんな要因でこれを制度改革の柱として出したものでありますから、私どもの期待する答申が出ていただけるものと私どもは期待いたしております。
  296. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 岡田君。――岡田君、質問を続行してください、もう一回。(岡田(利)委員質問に答えてない」と呼ぶ)  厚生大臣。
  297. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 私どもは、これが国民の皆様方の将来の医療確保のための最良の策であるということで諮問をいたしておりますので、私どもの期待する答申が必ず御理解いただけるものと考えております。
  298. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これは言える言えないとか、そういう問題ではないのです。そういう次元の問題じゃないわけです。この問題意識をどこに立てるかということなのですよ、私の言っているのは。だから順序よく詰めてきているわけです。したがって、この問題というのは、こういう形で常に国民の基本的な福祉が変えられていくということになったら国民の側として我慢ができないでしょう。しかも選挙では、見直しをするということを約束したのでしょう。広く意見を聞かなければならぬでしょう。法律で審議会が設置をされておるでしょう。すべてを抜きにして、政府ベース、官僚ベースの中で最終的に決めてしまう、これを押しつける、こういう手法が、総理が言う、今度の施政方針にも出ておるように、新しい民主政治の運営と展開に心がけてまいるという施政方針の精神にかなっていますか。私は、そのことをまず問題にしているのですよ。  今後ともこういう制度をこのまま運用するのですか。せめてその点でも、理事会なら理事会で結論を出してもらうということでなければ、なかなか次の論点が進まぬじゃないですか。
  299. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 私どもは、今回の改革案が社会福祉を立派にし、国民の皆さん方のお役に立つという考えでこれを出しておりますし、皆さん方の考えと違うかもしれませんけれども、私どもはこれが最善の策として出しておるわけでありますから、私どもの諮問した案が必ず答申において理解していただけると考えております。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕 今までの慣例によってこういうことを行っておるということでございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  300. 倉成正

    倉成委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  301. 倉成正

    倉成委員長 それでは速記を始めてください。  岡田君、質問をひとつ続けてください。岡田君、どうぞ質問を続けてください。(岡田(利)委員質問しているのですよ。答弁がないから質問できないのだ」と呼ぶ)――岡田君、質問を続けてください。続けてください。(「続行、続行」と呼び、その他発言する者あり)――岡田君、時間がだんだん経過しますから、続けてください。
  302. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先ほどから何回も質問しておりますように、制度改正、しかも、これは予算にも関連する問題が今審議をされておるわけです。したがって、審議会の結論が出た場合に、これを尊重するというのでありますから、当然内容が変わった答申があれば、予算上は補正予算で修正をする、そういうことになるのでしょう。いずれかとにかく措置をとらなければならない問題ではないですか、どうなんですかということを聞いておるわけなのです。だから、その点非常にシンプルな質問なのですから、極めて明快に答弁してもらうといいわけです。
  303. 倉成正

    倉成委員長 政府側、もう一度答弁してください。渡部厚生大臣、歯切れよく答弁してください。
  304. 渡部恒三

    ○渡部国務大臣 先ほど申し上げましたように、私どもはいろいろ検討をいたしました結果、今回の案が医療水準の適正化、また給付と負担の公平あるいは制度間の格差の是正あるいは国民の健康増進、そして国民の健康を守る保険制度を将来にわたって揺るぎないものとする最善の案であるということで出して諮問しておりますので、必ず私どもの期待にこたえられる答申を得るものと確信をいたしております。(「答弁じゃない、ちょっと待ってくれ」と呼ぶ者あり)
  305. 倉成正

    倉成委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  306. 倉成正

    倉成委員長 速記を始めてください。  この際、二十分間休憩します。時間厳守であります。     午後三時五十八分休憩      ――――◇―――――     午後四時二十三分開講
  307. 倉成正

    倉成委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  先ほど岡田君が取り上げられました問題については保留することとし、質疑を続行願います。岡田利春君。
  308. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がなくなりましたが、もう一点、大蔵大臣にお聞きいたしておきたいと思うのです。  今度の予算委員会のやりとりの中でも、「増税なき」という言葉について随分それぞれの委員から意見が出ているわけです。大蔵大臣の答弁によりますと、租税負担率が上がったとしても、臨調のいわば自然増収という面で答弁をされてその追及をかわしておる、実はこういう内容になっておるのであります。しかし、今年の場合には、大幅な減税が行われて、そして増税が行われて、そして租税負担率が〇・三上回った。これは政治論からいえば、やはり「増税なき」、こういうことで努力をしたけれども、結果的には増税の側面が今度の予算にはあらわれているということを政治論的にはむしろ素直に認められた方がいいのではないのか。そのことでそれぞれ意見があってもどうのこうのというわけではないのでありますから、そういう政治はやはり反省と素直さが大事だ、こういう政治姿勢の面からいって見解を承りたい、かように思う次第です。
  309. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今、岡田さんの政治論でございますが、確かに、我々今度のいわゆる予算編成に当たって、なかんずく一般歳出を削減することによって、言ってみれば、それに見合うところの財源そのものは増税をもって充てたわけではない。お願いしたのは、大蔵委員会における小委員会等におかれましても、減税は必要だが、その財源は赤字公債によらない、がしかし、各党がそれを見つけることはできなかった。そこで、政府において見つけろということで、やはり赤字公債は後世代にツケを回すことだから、したがって、それに見合うものは、言ってみれば、間接税、酒税、法人税等々で埋め合わしていただきましたから、これを御理解いただきたいというふうに申し上げているのでありまして、開き直って、おれは「増税なき財政再建」に反してはいないんだと言っておるつもりはございません。立て分けをしまして申し上げておる。しかしさらに、そうなれば、特定財源とはいえ石油税の問題は増税じゃないか、これは、特定財源であるからという御説明を平たくしておるのであって、国民の皆様方にも現実を平たくお話しすることによって、こっちが開き直るというような考え方はありません。
  310. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間が十五、六分しかありませんので、外交問題についてはほとんど触れることができないわけですが、きょう飛び飛びになりますけれども、時間内で御覧間いたしたいと思います。  一つは、今年アジアにおける最大の外交課題というのは朝鮮半島のデタントであるということは、だれしも見方が一致するのではなかろうかと思うわけであります。ただ、今回のいわば朝鮮側の三者会談の提案、このことが逆にアメリカ側から四者会談の提案ということでなされておる経過があるわけでありますが、しかし、一月二十五日の朝鮮の最高人民会議における報告、許タン政治局員が報告をいたしておるわけです。この報告によれば、昨年の九月アメリカ側の方から第三国を通じて三者会談の提案がなされた、このことが実は正式に報告されておると我々は情報を得ておるのであります。  そうしますと、昨年の九月でありますから、安倍外務大臣もしばしばアメリカを訪問されておりますし、また、内閣総理大臣アメリカの要人としばしばお会いになっていて、特に朝鮮半島の問題についてはアメリカ日本は密接に情報連絡をする、こういう確認に基づいて今日まで朝鮮半島問題に対処されたと思うわけです。この情報についてどのように政府は受けとめられておるのかどうか。それと、今度の提案された内容、それぞれ重要な項目があるわけです。これを一体日本政府としてはどう掌握されておるのか、この機会に承っておきたいと思います。
  311. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 朝鮮半島の情勢につきましては、日本アメリカとの間あるいはまた日韓の間で非常に十分な連絡あるいは情報の交換をいたしております。したがって、北朝鮮から提案がありましたいわゆる三者会談につきましても、その段階におきましてアメリカから日本にも連絡がありました。あるいはまた、韓国からも連絡を得たわけであります。したがって、いまのような九月の段階でアメリカの方から三者会談を提案をしたというふうなことは、これは全く承知しておりませんし、そういうことはあり得なかったものというふうに考えております。たしか北朝鮮から三者会談の提案があったのは十月、いわゆるラングーン事件の前後にあったというふうに記憶をいたしておるわけであります。  それから、いわゆる三者会談、四者会談、いろいろと提案が行われておりますが、我が国といたしましては、基本的には、やはり朝鮮半島の緊張緩和のために大事なことは南北両国の対話が基本的に大事である、それに伴っていろいろの形が出ておりますが、それはそれなりに、やはり南北の緊張緩和を図っていく一つの環境づくりのためにはそれなりの意味があることであろう、こういうように思いますけれども、しかし、何といいましても南北の両鮮が基本的に対話をするというところから本当の緊張緩和が生まれてくるのではないか、こういうふうに判断をいたしておるわけであります。
  312. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 我が国と韓国また朝鮮の関係からいって、この朝鮮半島の緊張緩和に日本が積極的に役割を果たす、こういう姿勢が大事だと思うのです。  私は、今日の一連の動向を見ますと、これは結局、一月の二十六日にレーガン大統領が一般教書で演説されておりますけれども、いわばアメリカの対ソ平和攻勢の一つの戦略の一環として朝鮮半島のデタントの問題が提起をされておる、このようにやはり受けとめるべきではなかろうかと思うのであります。いわば朝鮮側がこういう時期のタイミングでこの提案をオープンにしてくる、こういう点について多少戸惑いがあって、いわば中国を立ててはっきりとした朝鮮側の感触を探るという外交的な手法もあの回答の中には含まれておるのではないか。いずれにしても、この三者会談、あるいは変則的になるかしれませんけれども、進むことは間違いがないのではないか、そういう展望を持っておる課題ではないのか、こう私は思うのであります。  中曽根総理大臣は三月下旬に中国を訪問されるわけであります。もちろん中国訪問に当たっては、第二次経済援助の問題等もありますし、懸案事項もあるでしょう。だが、中国と日本との間に朝鮮半島の緊張緩和の問題についてやはり忌憚のない意見を交換し、そしてまた、我が国がこれに貢献するという姿勢はきわめて重大である、こう認識をいたしておるのであります。  そういう意味で、私は、例えばこの三者会談というものがどこで行われるかという問題もあるでしょう。板門店で行われるのか、あるいはそれが三者会談であるけれども中国で行われるとすれば、これは三者会談という問題も前進していくのではなかろうか、こういう判断もあるわけです。要は、総理大臣としての本件に関する決意のほどを、今私の質問に対してお聞かせ願いたいと思う次第です。
  313. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 朝鮮半島の平和と安定には、わが国も重大な関心を持っております。  それから、南北の問題は、北朝鮮と韓国と両方の当事者でまず話し合ってまとめるべき問題であると考えております。  第三に、いわゆる三者会談というものが北朝鮮側から提起されたようでございますが、各国の反応等を見ておりますと、必ずしもまだ一致するという雲行きでもなさそうであります。いずれにせよ、日本はそういう三者会談というものについては当事者でもありません。私は、当事者というのはむしろ休戦会談に関係した国々じゃないかということも申し上げてありますが、重大なる関心を持って見守っております。もちろん、中国へ参りました際には、朝鮮半島の平和的安定の問題も当然話の中へ入ってくることであろうと思います。
  314. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 朝鮮戦争、不幸な事態でありましたけれども、それ以前はわが国の支配された地域、韓国が支配している以外の地域もまだ残っておるのでありますから、そういう視点というものは、特にこれからのアジアの外交政策を進める上において私は重要であるということを特に指摘をしておきたいと思うのであります。言うなれば、中国の国交回復にはいろいろな各界層の努力が行われた。いわば中国国交回復の前夜とは言いませんけれども、前々夜ぐらいのそういうアプローチを考えていかなければならない時期に来ているのではないか、こう私は積極的な考え方を展開することを期待をいたしておきたい、かように思います。  第二には、中東問題についてこの機会に承っておきたいと思うのですが、先般、中曽根総理大臣は、オーストラリアのホーク首相と会談した場合に、中東問題について一定の見識を述べられておるわけです。伝えられるところによりますと、アラブ首脳会議が提案をいたしましたフェズ憲章、これに関連をしてレーガン大統領のいわば和平提案、中東問題の平和的な解決はこの接点にあるのではないか、私は一つの見識だと思うのであります。  今日のレバノンの情勢は、大変な変化をいたしておるわけでありますけれども、いずれにしても、サウジアラビアの提案というものをレバノン側として受けとめるということが正式に決まっておりますし、新たな展開を見せていくわけであります。しかし、私は、その中でも特にイスラエルとシリアの自制というものが非常に重要であるし、また、シリア抜きでこの和平の問題は解決できない状況になってきているということも事実ではないか、このように思うのであります。  その点について、ホーク首相と話した見識を交えて総理大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  315. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ホーク首相と話しました点は、今おっしゃられたとおりの大体の内容であります。私の方の考えは、アラブ側がまとまりましたフェズ憲章と、それからアメリカの大統領レーガンさんが提案しましたレーガン提案、これを調和させる点で解決するのが適当であろう、そういう努力をしていきたい、そういう我が方の考え方を申し上げました。しかし、当面の問題としてレバノンの問題がございまして、レバノンであのような不幸な事件がまだ続いておるということは非常に胸を痛めることであります。そういう意味からも、一日も早くあの混乱と殺りくの事態が収拾されて平和が訪れるように念願してやまないところでございます。  そういう点でアラブの国々もいろいろ努力もしておるようですし、西欧の国々もまたいろいろ努力しておるようでございますが、我々はそれらに深く立ち入るという立場にありませんけれども、しかし、おっしゃいますように、日本はあの辺につきましては重大関心を持っておる地帯でもあり、経済的な協力もやっておるところでもございますから、そういうような面からも、平和が一日も早く訪れるように協力してまいりたいと思っておるところであります。
  316. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 特に先般安倍外務大臣は、イラン・イラク紛争について日本の果たす役割という点について非常に強調されておるわけであります。しかし、伝えられるところによりますと、すでに国連事務総長の停戦に関する七項目の提案がなされている、この点今日報道されておるのであります。日本側としては、この提案というものについて承知をしておったのかどうか、この点についてまず第一点承っておきたいと思うのであります。  第二の問題は、私は、今日のイ・イ紛争の実態というものを考えてみます場合に、やはり戦いはエスカレートしていく方向にある、そういうものを内蔵しつつ状況は悪化の傾向をたどっておるのではないか、残念ながらそう見ざるを得ないと思うのです。いわばこの戦争を終結するために、イラク側の態度として、カーグ島を攻撃をする、戦争をエスカレートさせる、そういう中で、いわば国際的な干渉の中でこの戦争を解決するというようなそういう動きがどうも最近の動向から感じられるわけであります。我が国にとっては非常に重要な問題でありますから、これに対する関心は国民的に高いと思うのであります。  そういう意味で、この問題に対するせっかくの外務省は努力をしておりますけれども、最近の特に緊迫した状況に対してどのように対応されようとしておるか、承っておきたいと思います。
  317. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 イラン・イラクの戦争も五年も続いておるわけであります。特に、最近ではまたお互いに都市攻撃等が始まったというようなことで、非常に心配をいたしております。その間に、御承知のように、国連によるところの調停の努力であるとか、あるいはまた、中東諸国の仲介の努力等が行われたわけでございますが、すべて失敗をして今日に至っております。  そういう中あって、日本は、御承知のようにイラン、イラクとも非常に親しい友好的な関係にあります。そういう関係の上に立って、日本も、やはりイラン、イラクの調停とまではいかなくとも、平和的な環境をつくり上げるための貢献をしなければならぬ、こういうことで昨年から営々として努力をいたしております。それなりにイラン、イラクとの政治的なパイプもできましたし、それなりの効果も上げておるわけでございますが、最近の情勢では、今お話しのように、いつこれが拡大をするかわからないという状況にもあるわけでございます。日本政府としても、早速イラン、イラクの両国の大使を呼びまして、この紛争の拡大防止のための両国の自制を強く求めておりますし、また、今後とも両国との間の関係――両国の外務大臣も日本に呼んでおるわけでございますが、そうしたルート等を通じましてこの戦争の拡大を何としても防いでいく、そして平和環境をつくるために日本なりの努力をこれから尽くしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  318. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がありませんからこの一問で終わりますけれども、正月明けの中曽根さんの政治姿勢といいますか、アメリカのレーガン大統領の政治姿勢と非常に似ているなど一般的に皆感じているのではないかと思います。ある人は、中曽根総理もレーガン大統領もハトの羽を持ったタカになったのではないかなどということを言う人もおりますけれども、いずれにしても、平和、軍縮の問題で東西の話し合い、我が国は日ソの話し合い、こういう点が非常に強調されているのであります。私は素直にそれを受けとめたいと思いますけれども、ただ今年、外務大臣の外交演説の中では、ちょっと気にかかった文句として「十分な抑止力」というのがあるわけです。均衡ある抑止力ではなくして、「十分な」という表現を使っているわけです。これは軍事力で言えば、圧倒的なという意味か、優勢な軍事力、抑止力ということにつながるのではないかという危惧もあの演説文を読んで感じておるわけであります。しかし、私は、チェルネンコ政権ができても、その集団的な指導、あるいは国内、外交の政策は一応変わらないという方向が演説の中にはっきり出ておると思うのであります。したがって、ブッシュ副大統領と会談した新型中距離ミサイルの撤去の要求や限定地域紛争拡大の防止などの話し合い、これは常識的に考えられる内容で、一つの糸口にはなろうかと思いますけれども、相当時間がかかる、こう判断をいたしたわけです。  しかし、いずれにしても、この東西関係というものは打開されなければならない、氷河の時代を抜け切らなければならないという人類の願い、各国民の願いは共通しております。その場合に、いわば力を背景とする話し合いというのではなくして、やはり東西関係が良好な関係にあるというのは、私に言わせると、常に共通な利害の基礎の上に立っている関係が東西関係の極めて良好な関係だと、私自身はそういう理解をいたしておるわけであります。いわば今日の時代は、気に入ろうと入るまいと平和共存をする、そういう平和共存せざるを得ない時代であることも間違いがないのでありますから、私は、そういう意味で、日ソの関係がこれから改善をされていく。総理大臣も対話を積み重ねていくときのう方針を述べられておるわけであります。しかし、日ソ関係とか東西関係、相手は社会主義の国でありますから、時としては積み重ねばかりがいいのではなくして、あるときにはやはり最高級の首脳、幹部がチャンスがあれば積極的な姿勢で会談をする、そういう中で問題を解決していくという手法が過去の歴史の中でしばしば成功しておるということも我々は学んでおかなければならぬのではないか、こう思うのであります。  そういう点について総理大臣の所見を承って、質問を終わりたいと思います。
  319. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 東西間の問題につきまして、平和共存の必要を説かれました点につきましては、私も同感でございます。この席上を通じてしばしば申し上げましたように、この際できるだけ国際緊張を緩和して、そして軍縮、特に核軍縮を実行する方向で日本も善意を持って努力してまいりたいと思いますし、関係各国との関係も良好ならしむるように努力してまいりたいと思います。
  320. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 あと、関連質問で関君に譲ります。
  321. 倉成正

    倉成委員長 この際、関晴正君より関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。関晴正君。
  322. 関晴正

    ○関委員 私は、総理大臣にお尋ねをしたいと思います。  原子力船の開発事業団が生まれまして、もう二十年は過ぎました。だがしかし、目的とするところの原子力船の問題については依然として先が見えない現状にある、こう思います。総理大臣は、この事業団の主務大臣であります。私はかつて、総理をしておった鈴木氏にも、主務大臣としていかなる覚悟といかなる考えを持つかということで科学技術委員会でお尋ねをしたことがございました。そういう意味において、何で二十年もたちながらこの原子力船の研究開発の仕事というものがさまよわなければならないのか。このことについて、言うなれば主務大臣であり総理大臣であるところの中曽根氏はどうお考えになっておられるか、お尋ねしたいと思います。
  323. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我が国は海運国でございますから、原子力商船の開発を行わんとして今まで営々として努力してきたところでございますけれども、遺憾ながら「むつ」の問題がとんざしてまいりましたことは甚だ遺憾千万でございます。関係方面のいろいろな御努力によりまして、今「むつ」は大湊におるわけでございますけれども、やはり定係港をつくろうということで、関根浜ということを地元の皆さんが話し合って、目をつけてその方向へ進んでおるところでございます。  しかるところ、党内におきまして「むつ」の将来性等につきましていろいろ議論も起きました。しかし、先般来予算編成に当たりまして調整をいたしました結果、関根浜の港は建設は継続する、それから舶用炉の研究は重大であるからこれは継続する、それ以外の「むつ」の処理の問題については、来年度予算の編成の前にする概算請求のころまでに党内で専門家等を集めて意見も聞いて判断をしよう、そういうことになっておるのが現状でございます。
  324. 関晴正

    ○関委員 私の聞いているのは、二十年もたちながら、この船の行方、この問題の解決というのが依然としてきちんとしない、それはどこに理由がおありだとお考えですかと聞いておるのです。――いやいや、私は主務大臣に聞いているのだ。(「主務大臣は科学技術庁長官じゃないか」と呼ぶ者あり)違うよ、委任大臣だ、これは。
  325. 岩動道行

    岩動国務大臣 「むつ」につきましてはおおむね二十年間を経過いたしておりますが、これにつきましては、まず最大の原因は、去る四十九年に放射線漏れという事態が起こりましたことが大きな支障になっておるわけでございます。これにつきましては、私どもは鋭意その遮へいのためにも努力をいたしまして、佐世保においてまず今日考えられる最善の修理を行ったところでございます。しかしながら、この「むつ」が大湊にまた帰るということにつきましては、いろいろ努力をいたしましたが、なかなか地元の御了解が得られなくて今日に至ったわけでございます。  そこで、前の中川長官が大変な努力をいたしまして、日本じゅういろいろな港の可能性についても検討いたしましたが、最終的に関根浜で港をつくって、そこに「むつ」を移す、それまでの間は大湊に仮の停泊をさせてもらうということで、ようやく地元の方々の御理解と御了解をいただいて今日に至っているわけでございます。したがいまして、私どもは、まず関根浜に地元の方々とのお約束に従って港をつくって、そして大湊から「むつ」を回航して、そこで今後の研究開発を進める、こういうことで今日まで至っておるところでございます。  しかしながら、これにっきましてはまた先ほど総理から御答弁がございましたように、各方面からのいろいろな御議論もございましたので、今後党において、また政府関係をいたしまして、そのあり方について検討をするということになっているのが現状でございます。
  326. 関晴正

    ○関委員 自民党の中にも主務大臣が科学技術庁長官だと思い誤っている人がありますから、この際教えておきますけれども、科学技術庁長官というのは主務大臣に委任を受けて、そうして執行している大臣、主務大臣というのは中曽根総理と運輸大臣、このお二人でございますから、御承知しておいてください。  そこで、私は、こうした事態に至った最大の理由というものがどこにあるかという一つの反省、一つの総括、これなくして次に進むといってもこれは無理だと思う。ただいまの委任大臣だってこの問題についてお答えになっておりませんよ。何が今日の原子力船「むつ」の現状を持ち来したのか。これは最初に誤りがあったのです。初めに誤りありきと言っていいでしょう。その最初の誤りは何かというと、ろくな陸上実験をしなかったところにある。ろくな陸上実験をしなかったからこそこのような誤りを来したわけです。そうして、当時の建造の契約金額というものを見ますと、三菱と播麿の両社において七十三億です。その後故障が起きたからというて修理にかけられた金は八十八億です。主務大臣、よく聞いておいてくださいよ。つくるときにかけた金よりも補修にかけられた船に対する金というものがはるかに大きい。それでいて、今の船がまたテストに出かけたからといって、故障が起きた場合に会社がその責めを負うようになっているかというと、これまた負えないような契約になっているわけであります。そもそも初めに契約をしたときに、両会社が欠陥船をつくった場合には当然このつくった会社が責任を負わなければならないはずです。なぜ負わなくてもよかったのでありましょうか、この理由を聞きたいと思います。
  327. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 ただいまお尋ねの点は、建造契約におきます瑕疵担保の問題であろうかと思います。通常のこういった建造契約等におきます瑕疵担保の期限が一年から一年半というところでございまして、そういうことで、建造契約においては瑕疵担保の期間といたしましてそのように設定しておったわけでございますが、不幸にいたしまして放射線漏れのトラブルを起こしました結果、その性能を所定の期間まで確認することができなかったということで、当初瑕疵担保期間を過ぎてしまったということで、契約上はその責任を問うことができなくなったということでございます。それで、今回遮へい改修工事に当たりましては、その経験にかんがみ、できるだけ瑕疵担保期間の延長をしたわけでございますが、これは商慣習その他の一般的な制約もございまして、相手方の契約者との相談事でございますので、そう長くすることができず、現在は二年ということになっております。
  328. 関晴正

    ○関委員 とにかく船が実験に出ていく。出ていくときにはこの船がどんな故障を起こそうと保証の責任を建設会社は負うておらない。一年過ぎ、一年半過ぎ、そこまでは何とか責任を負わせておったけれども、後、期間が切れちゃった。期間が切れちゃった以上は期間の更新をして出ていくべきであったと思う。それをおろそかにしたために、国がわざわざまた金をかけてやらなければならなかった。これは事業団の怠慢だと思うのです。我々、物を買いますよ。一年ぐらい保証しますと言いますよ、使った後。家を建てますよ。五年間ぐらいは保証しましょうと言いますよ。ところが、これほど三十年の寿命もあるような、と称せられるような重要な仕事を言いつけて、そうして買いつけて、それがわずかに一年以内にということは何です。しかも、一年以内にやらなかった場合には、やったとみなしてその責めは負わないというばかげた契約をしているじゃありませんか。そして、今度の遮へいにおける契約はどうかと言えば、これは二十四カ月としておりますよ。まあ二倍にしたわけでしょう、懲りて。二倍にしてみたところで、ことしの六月になると二十四カ月は過ぎてしまいます。六月までにテストに出かけるような条件は全くありません。ですから、その過ぎた後に出かけていくとしても、どのくらいの見通しになるだろうか。まあ二年後、三年後あるいはもっとかかるかもしれませんよ。そうしますというと、またけがをしました、また故障がありましたといったって、保証の責めは両会社は負わなくてもいい、また国民の税金でやる、こういうような契約をしていくならば、金が幾らあったってたまりません。そういう意味において、私は、船にも欠陥があったが契約にも欠陥があった、こう思うのですが、その点について総理どう思いますか。
  329. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  当初の「むつ」の放射線漏れのトラブルにつきましては、メーカー側の製造責任上の問題はもちろんでございますが、全体の設計監理の面におきまして事業団にも一半の責任があるわけでございます。今回の遮へい改修工事におきましては、その経験を生かしまして、メーカーと事業団との責任というものを明確にするということで、設計につきましては事業団の責任において行う、施工につきましてメーカーが責任を持つ、こういうぐあいに分担をいたしておるわけでございます。  それから、瑕疵担保期間の問題でございますが、これは契約という形ではなかなかに、メーカーでも一般的ないろいろなほかの契約との関連もございますので、そう長い瑕疵担保期間を置くということはなかなかに難しゅうございます。ただ、先生御指摘のように、既に事業団が修理を終わってから今日までかなり時間もたっておりますが、瑕疵担保期間が近づいているじゃないかという御指摘につきましては、私ども事業団をしてメーカーと精力的に折衝いたしておりまして、この瑕疵担保期間につきましてさらに実質的に延長を図るよう今折衝をしておるところでございます。
  330. 関晴正

    ○関委員 とにかく今の瑕疵担保の期間についても、この会社の方でも自信がないものですから、会社というものは上手によく契約しておりますよ。何と書いあるかというと、ちょっと読んでみましょう。「かし担保 工事の引渡し後二十四ケ月以内に工事に経年変化による劣化、欠陥を除き」、「除き」ですよ、「かしが発見され、その期間内に事業団の請求があったときは、」それぞれにおいて云々と、こうあります。これは、会社自体も経年変化による劣化と欠陥ということを予定しているわけですよ、逆にこの文章を見ますときに。それだけに、この船の安全性というものについて技術的にもまだ自信がない。そういう意味において私はまたまた問題が起こるであろう、こう思います。  そうしてまた、今局長が言いましたけれども、二十四カ月はあと四カ月で期限が切れます。ですから、この期限を大幅にとにかく延ばしてもらおうというところに、これから折衝するかもしれません。折衝してみたところでどうなるか。私は大したことにはならないだろうと思う。また、うまくいったとしても、これに寄りかかることにおける不安と危険性というものはつきまとうであろう。こういうことについて主務大臣はよく承知をしておいてください。  そこで、私はこれを深くさらに追及したいのだけれども、時間もありませんから次の問題に入りたいと思うけれども、入る前に、こうした契約について総理はどうお思いになるか、率直に総理のお考え、お気持ち、今初めて聞いたのならば今初めて聞いたところで総理のこうした契約についての御見解、これをひとつ出してください。
  331. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今お話を承りまして、契約その他につきましては厳重に監督してやらなければいかぬと思っております。
  332. 関晴正

    ○関委員 事業団法によりますと、主務大臣は特別監督の任務があります。そういう意味において、今後については十分に監督をしていただきたい。持っている権能を遊ばせないで事に当たっていただきたいということを一つ申し上げておきます。  二つ目は、私がここに定係港をつくる場合にいろいろ申し上げました。いろいろ申し上げたことの中で最大の問題は、あの場所は不適地だ。なぜ不適地であるかというと、あそこには下北半島三キロの沖合に南北百キロにわたって活断層が走っている。百キロの活断層ということになりますと、マグニチュード八・二が想定されます。震度五まで想定して港をつくると中川君は答えましたけれども、八・二なんというようなものが起こると、震度五をはるかに超えます。六、七にまで至るでありましょう。そういう意味においてはこれは危険な場所だ、こう主張いたしました。そうして私がよりどころとしたところの活断層の根拠というものは、「日本の活断層」分布図と資料。これは活断層研究会というところで、総理の出身の東大の出版会で出したものです。言うなれば、これは非常に権威あるものです。この権威あるものがはっきりと書いておる。それを東京、東北両電力会社の資料によれば、これはないことになっている。ないことになっているならば、その資料の生データをお出しください。幾ら求めても、お見せするわけにはいかない、こう言っているわけです。人に借すものではない、こう両電力会社は言う。  それで、原子力行政というのは自主、民主、公開が原則でしょう。国会の科学技術委員会において出せと言っても出さない。活断層殺しをしたまま事を進めているわけなんです。それで、私は、そういうことを言うならば、この権威ある活断層研究会のものは誤っているというならば、そちらの方で誤りときょう主張してください。言いません。それもできないというならば、五、六億の金を惜しまないで国独自の力で活断層の方も調査したらよかろう、こう申し上げてきてからもう二年になります。金を惜しんで依然としてやろうとしておらないので、監督の地位にある総理に私は、この際何でそんなことをちゃんとやらないんだ、やりなさい、こう言いつける御意思はありませんか、伺っておきます。
  333. 倉成正

  334. 関晴正

    ○関委員 いやいや、総理に聞いているんだ、総理に。だめなんだ、これは。だめだよ、委員長、私は総理に聞いているのだから。
  335. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 その前に事実関係を……
  336. 関晴正

    ○関委員 要らない。この答弁は要らない。これは委員会でもうやっているんだから。主務大臣に聞いているんだ。答えさせない。要らないというのだ。わかっているんだから。聞いて飽きているんだから。
  337. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 活断層の存在、有無という問題については、専門家から御答弁させます。
  338. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 お答えいたします。  原子力船事業団は、関根浜港の建設については、現地の立地環境調査を昭和五十六年四月から五十七年三月にかけて行ったわけでございます。この際、活断層の調査にっきまして、ちょうど事業団がやろうとしているのと同じ調査が既に昭和五十二年から五十三年にかけまして東京電力、東北電力によって行われておりました。その調査データを借用して、独自に専門的能力を有します調査機関に解析評価を依頼し、さらに専門家のチェックも受けまして、下北半島東方沖には活断層は存在しないという事業団としての結論を出したわけでございます。  それで、電力の行った調査は、活断層の存在の有無を確認するため最も適切な方法とされておりますスパーカー方式と音波探査でございます。しかも専門的能力を有します調査機関が実施しておりまして、先生御指摘の、「日本の活断層」を作成するために利用されました調査とは、実はこれは海上保安庁の調査でございますが、エアガン方式、音波探査で調査の目的の海底地形図の作成とされておるわけでございます。(関委員委員長、済まないけれどもいいから、ちょっととめてください」と呼ぶ)
  339. 倉成正

    倉成委員長 簡単に説明してください。(関委員「時間がありません。委員長、ここでとめてください。終わらせてください」と呼ぶ)
  340. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 そのようなことで、私どもとしては……
  341. 関晴正

    ○関委員 私は限られた時間しかありませんよ。この答弁は前々から聞いちゃってるの。人の借り物で、そうしてないことにしたから、それじゃ借り物でもいいから生データを私どもに見せなさいと言った。見せなさいと言っても見せないと言うんだ。そこで総理に、そういうことはあるものじゃないから見せるようにさせます、こう答弁してくだされば、それでいいんです。総理、どうです。
  342. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 東電と東北電力がやった資料を引用して判定を下したようでありますが、判定をやるまでにはかなりいろいろ原子力委員会その他におきましても調査をいたしているのではないかと思います。その辺の事情は、私は科学技術庁長官に委任しているものでありますから、科学技術庁長官からお聞き願いたいと思います。
  343. 倉成正

  344. 関晴正

    ○関委員 要りません。要りません。私はあと十二分までしか時間のない立場です。そこで私は、今までの委員会で質問して討論された話は、もう要らないと言っているんだ。だから私は総理にだけ聞きたいのです。そのために出てきたんだから。あとはまたいろんな場所でやれますから。  そこで、総理、あなたは総理であるけれども主務大臣なんだ。委任大臣は何でいままできたかというと、極力私の要望にこたえようと思ったが相手の方がかたくなでやれませんでした、ときているんですよ。だからあなたにお願いしているんだ。あなたなら相当乱暴なことまでもする人だ、とは言ってもよくないけれども、(笑声)近いことはしているわけですからね。そういう意味で、とにかく私は、ここは考えておいていただきたい。あなたも今突然来たからお答えにくいところもあるでしょうが、私はこれはやってもらいたい。  そこで、今青森の関根の浜では、皆さん方が、ここに船が来る場合のいろんな心配があります。そうして専門の漁業を持って生活している人たちは反対である。三分の一以上の漁民は反対なんです。ところが、三分の二の多数をとらないと事が決まらぬものだから、三分の二をとるためにどんなことをしたか。九十日以上働かなければ組合員の正規の資格はありません。それが二日か三日の昆布とり、そういう者をかき集めて、三十九名も正組合員に格上げして、そうして三分の二の多数というものをとった格好にしちゃっている。ですからこの総会はインチキ総会です。この総会の議決というのは無効です。無効なものですから、今日訴訟が提起されております。くしくもこの訴訟の提起された日と、権威ある自民党科学技術部会の林寛子さんの声明の日と同じでありました。そこで私は、やはり自民党の中にもいろいろ考え方が来たな、こう思って、これは大変敬意を表しているわけです。そういう意味においては、「技術立国 日本の危機」というものを書いた中山太郎さんのこの本は実にいい本です。そういう意味において、私は今や本当に良心的な政治家がこの問題について決断しなければこの問題の解決は不可能だ、それに乗り出すために私はやると言って、いいことを言っていますよ。そこで、これらの浜の方々は、とにかくきのう入札しましたよね。捨て石二千万円程度。六十万立米のうちの二千立米ですよ。〇・三三%でしょう。金額にして二千四百万円、そういうことでいままで一応工事はしました。いや、しようとしている。まだしていません。仮に工事をしてこの港をつくるとしても、この港を利用するためには前浜の陸地がうまくいかなければいけません。陸地の取得というものは今日七割しか進んでおりません。三割はなぜ進まないか。三分の一の漁民が断固として反対しているからです。ですから、船ができた、船は出ていく港は残る、だが利用はできない。船は出ていく煙は残るというのはあるけれども。まことに問題は深刻なんです。むだな金遣いというものをされないんだ。ですから、見通しとしてこの共有地、この陸地の土地所有、これが取得できるかどうか、取得できると言うならば、ひとつそれを証するに足るものをお出しください。
  345. 倉成正

    倉成委員長 時間がありませんので、簡潔に願います。
  346. 岩動道行

    岩動国務大臣 まず関根浜の漁協の総会の決議についてでございますが、これは、一部の組合員の万から、水産業協同組合法に基づいて、青森県に対して議決の取り消し請求が出されたのでありますが、青森県は、その請求の理由については、いずれも理由なしとして昨年の九月二十七日に棄却の審決を行ったと承知をいたしております。したがいまして、漁協総会の議決は有効であり、手続上問題となる点はなかったものと理解をいたしております。  また、用地の買収につきましては、青森県の御協力をいただきまして、既におおよそ七〇%の用地を確保いたしております。さらに残りの用地買収につきましても、現在事業団において鋭意努力をいたしており、また、地元の方々の御協力もいただいて進めてまいる所存でございます。  なお、今後残された用地の取得につきましても、地元の漁協においていろいろ補償の問題等にも関連していると伺っておりますが、これらのことはいずれにいたしましても早晩解決されると承知をいたしております。したがいまして、政府といたしましては、これらの状況を踏まえて、今後とも青森県当局の積極的な御協力をいただいて、早期に用地確保を図るように事業団を督励してまいりたいと考えておるところでございます。何とぞ御了承をいただきたいと思います。
  347. 倉成正

    倉成委員長 関君、残念ながら時間が参りました。
  348. 関晴正

    ○関委員 私の聞いているのは、取得の見込みが立つと証するに足るものがあるかと聞いているのです。全くないのです。ですから進めることは無理。大丈夫だと言うなら香ってください、そこだけ。そこだけ答えてください、大丈夫だと言うなら。
  349. 倉成正

    倉成委員長 時間です。簡潔に答えてください。
  350. 中村守孝

    ○中村(守)政府委員 用地の買収につきましては、今いろいろ価格等の条件面での食い違いはありますが、絶対にその買収に応じないということを開発公社ないし事業団に対して直接主張している地権者があるという話は事業団から報告も受けておりません。誠意を尽くして話し合いをしてまいりたいと思います。
  351. 倉成正

    倉成委員長 これにて岡田君の質疑は、保留分を除いて終了いたしました。  次に、湯山勇君。
  352. 湯山勇

    ○湯山委員 私は、主として教育改革の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  総理は、教育改革は国民の声である、今日国民の教育改革に対する世論の盛り上がりというものは極めて大きくて、教育改革の絶好の機会であるということを申されておりますが、私もこの点は同感です。ただ、選挙において、田中問題に対しての処理については批判を受けたけれども、政策は支持されたということを申されましたが、これはちょっと違った見方もあるのじゃないか。と申しますのは、今の教育改革に対しての世論の盛り上がりというものは、教育を改革して文化国家、平和国家、民主国家をつくっていこうという、そういう積極的なものではなくて、今日の教育崩壊を憂えて、これは何とかしなきゃならないということが大きな原因であるということを認識しなければなりませんから、そうすると、総理の言っておられることに共鳴して、支持して盛り上がったというよりも、むしろそういう国民の声を総理が受けて立ったのだということも、また私は否めない事実だろうと思います。この観点もひとつおわきまえになった上で対処していただきたいということを申し上げたいと思います。  でなければ、当然、全国民が教育改革を支持するはずですけれども、教育界はもちろん、政界あるいは財界にもあります、与党自由民主党の中にもやはり危惧の念を抱いておる人、たくさんあるわけで、こういうことから見てみると、私はこの問題はよほど慎重にしていただく必要があるのじゃないかということを感じます。  そこで、それらの不安とか懸念、そういったものには二つありまして、一つはもちろんこういう今まで発表になったやり方、やる方向、それらについての懸念ももちろんありますけれども、同時に見逃してならないのは、中曽根総理御自身に対する懸念、これもないとは言えないと思います。先般、矢野委員は教育改革を唱える資格があるかどうかというような厳しいお話もございましたけれども、私は、中曽根総理に対する懸念、幾つかありますけれども、その一番大きいものはロッキード問題に対する総理の姿勢、ここにあるということを指摘いたしたいと思うのです。  それは、総理がこのロッキード事件について、裁判中は三権分立の立場から静観する、判決については厳粛に受けとめる、さらに、政治的道義的な責任をとるということについては、それは本人の問題だというようにやっておられるし、いろいろな言の端々に田中角榮元総理をかばう姿勢が感じられる。このことに対しては、私は、国民の大部分がやはり懸念を持っている、そこで、教育を改革していく御意思、非常に強い御意思を持っておられますが、これらの点についての国民の納得を得なければならないということをまず申し上げたいと思います。  そこで、この点についてまずお尋ねいたしたいのは、先般十月の十二日ですか、判決において裁判長は、この事件が「国民の信頼を甚だしく失墜し、」その次です、「社会に及ぼした病理的影響」――「病理的影響」という表現です。「病理的影響の大きさにははかり知れない」と、この判決の理由要旨で述べております。このことについて総理は、そのとおりだとお考えですか。間違っているとお考えでしょうか。まず伺いたいと思います。
  353. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、教育の問題に対する国民の皆さんのお考えにつきましては、湯山さんのおっしゃるとおりであると思います。やはり国民の皆さんがみんな御心配なすって、そして全国津々浦々的にこの問題が関心を呼んでおります。私もその一人でありまして、それらの声にこたえて政治家として発言をしたという点が多いということを申し上げます。それから、私自体も人間として欠陥のある人間でございますから、大いに反省もし、また自粛自戒もいたしまして、今後とも正直に誠心誠意努めていきたいと思っております。  それから、判決の問題でございますが、判決につきましては厳粛に受けとめると申し上げておるのでございまして、その点は、いま御指摘になった点も厳粛に受けとめておるということでございます。
  354. 湯山勇

    ○湯山委員 厳粛に受けとめているということだけでは国民はわからないと思います。もう既に裁判長は今のようなことをはっきり述べておるわけですから、裁判長の言っているとおりだということなのか、それはそうは思わない、これは別にどうお答えになったからといって、それを重ねて質問いたしません。率直に述べていただきたいと思うのです。
  355. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は行政府の最高責任者の一人でありまして、判決の内容自体についていろいろ立ち入った論評はやることは適当でないと思います。ただ、あの判決全文につきましては、やはり厳粛に受けとめて、将来戒めていくということが正しいと思っております。
  356. 湯山勇

    ○湯山委員 いただきたいお答えがいただけなかったことは残念ですけれども、後、順次お尋ねして、もう一遍そのことをお尋ねしたいと思います。  具体的な事実を挙げてお尋ねいたしたいと思うのですが、昭和四十九年二月八日、ちょうどやはり衆議院のこの予算委員会でした。田中総理で、中曽根総理は当時通産大臣としてその席におられましたから、あるいは御記憶になっておられるかもしれません。私はやはり教育問題を取り上げまして、文部大臣にはひとつぜひ立派な人を選んでいただきたい、今までもそうですが、特に教育の重大なときには立派な文部大臣を選んでいただきたいという要請をいたしました。さらに、総理が教育勅語はいいことが書いてあるというような御発言があったり、東南アジアの方へ行ったら、修身をやってないために日本人はこのごろ利己的だというような批判があったというようなことを発表されましたので、私は、教育勅語を衆参両院で廃止したことを覚えていらっしゃるか、あるいは東南アジアの方へ行って修身を教えないから利己的だというが、同じ総理も修身の教育を受けていながら、タイ国で青年にやはり利己的だ、自分のことだけしか考えていないというようなことを言われておる。総理がそういうことについて言うときには、自分が東南アジアで言われたことを本当だ、それはそのとおりだというのを確かめないで、ただだれが何を言ったというようなことを軽々に言うのは、今のことは間違ってもいるし、すべきではないというようなことを、この二回の予算委員会でただしました。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕  そのときに、第一回目のときに田中総理は、こういうことを答弁しておられます。戦後、日本の教育は反対の方向に変わった。占領軍の「第一のメモのときは、幣原内閣は教育に対しては自信を持てない、持てないような内閣はやめなさいといって、幣原内閣は投げ出したわけであります。」「名目的には確かに日本の自由化、民主化ということはありましたが、一つの占領目的がメモに明らかに示されておったとおりあったわけです。ですから忠魂碑を取り除きなさい、国歌も歌ってはいけない、国旗を掲げてはならない、もとより無格社である神社の参拝も一切やめる、」三十年間にいろいろアメリカのメモケースが――その後言葉が続きませんが、会議録どおり言えば、「絶対的に日本に適合するものでもないと思います」という御答弁がありました。  次のときにも、同じように教育勅語について述べられた。「これは占領軍の強制力によって廃棄されたんです。それだけじゃないんです。」また、「忠魂碑は全部排除せよ、無格社に対する小中学校の春秋に参詣すみことはやめなさい、」「とにかくあの占領軍メモランダムに対しては泣いた人もあるんです。」こういう非常にきつい調子で、同じようなことを二日間に分かれて御答弁がありました。  私は、余り総理興奮しないで、教育になるとあなたはかっとなるようですが、ひとつ冷静に教育の問題はお考え願いたいというようなことを申し上げましたら、なおかつ、「それは体質的興奮ではなく、教育の重要性に対する反応を示したものだ、こう理解されたい。」これはここに会議録があります。一々取り上げてやる時間がありませんから、以下証拠の会議録がありますから。これに御記憶がありますか、幾らかでも。
  357. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 余り記憶ありません。
  358. 湯山勇

    ○湯山委員 それじゃ、今のは会議録ですから、そのとおりです。  さて、これは今申し上げましたように、二月八日と三月二十九日と二回のを今一緒に申し上げました。それから一カ月余りたって、五月十三日に、田中総理は武道館で、田中総理を励ます会で五つの大切、十の反省を発表されました。これは日にちは別として御存じのことと思います。それを受けて、五月の十三日に発表になって、あと党内いろいろ調整もあり、文部大臣とのお話し合いもあったと思います。そうして、これがこの五つの大切、十の反省を教育の舞台に出すことを決めまして、その後、四十九年の六月二十四日に、当時の文部大臣――お名前を挙げてもいいのですが、こう見回すと、文部大臣がこの委員会には随分たくさんいらっしゃって、奥野先生、それからさっき三原先生もいらっしゃいました。海部先生、砂田先生、田中先生と、まあこれで文部大臣された方五人もいらっしゃいますから、はてな、教育臨調をつくらないで、ここでやった方がいいのではないかと思うほどいらっしゃいますから、以後、お名前を挙げないで当時の文部大臣で申します。  とにかく、五つの大切、十の反省を発表して一カ月十日ぐらいで、ついに文部省は、社会教育審議会に「青少年の徳性のかん養について」という諮問をいたしました。その諮問は、要点だけ申し上げますと、田中元総理が、今日の青少年は知恵太り、徳やせということを言っておられた。よく似たことを中曽根総理も、知育偏重というような意味のことをおっしゃるようですが、そういう言葉を受けましてこの諮問では、「しかるに最近では、青少年に対する道徳教育の不十分さが指摘されており、」「したがって、この際、青少年の徳性のかん養について、」――「早急に」というのがついています、「早急に検討を進め、その具体的方策を明らかにする必要がある。」それから「その対策として簡単で明白ないくつかの」――「いくつかの」というのは数だと思います、「道徳律を掲げてその徹底を期することなどが提唱されている。」明らかに五切十省を指しています。  そこで審議が開始されました。その後、四十九年十二月に田中総理は例の金脈問題で辞任をされました。そういうこともありまして、この審議は進まないんです。社会教育審議会は、抱えたままで審議が進みません。そして、しかも五十一年七月二十七日に、ロッキード事件で田中元総理は逮捕されたということになります。  問題はこれからなんです。そこで早急にしかも簡単な項目でというのでやられた、その答申が出ない。五十一年十月に衆議院の文教委員会で取り上げられました。この文教委員会には、当時理事として藤波官房長官と、渡部恒三厚生大臣が出席されております。この委員会で当時の文部大臣はこう答えております。ロッキード事件が学校教育、子供に与えている影響は極めて大きい、その中に総理大臣が含まれ、しかも外国の金――「しかも」は私の言葉です。外国の金であることなど、子供に与える影響は極めて憂慮すべきものがある。社会教育審議会の有光会長に対しては既に、その文部大臣からですが、いわゆる五切十省の関連で出てきた諮問だという、生じてきたけれども、そうしたもの、つまり五切十省との関連においてあの審議を続けていただくことは望ましくないと伝えた。これは会議録がここにありますし、官房長官、渡部厚生大臣出席しておったか、とにかく出席した名前に出ていますから、お調べください。  そしてさらに、その後一向進まない。四年もたった五十三年、再びこの問題が衆議院文教委員会で取り上げられました。この委員会には、理事として藤波官房長官、それから森文部大臣が出席しておられます。これも会議録がそのままここにございますから、ひとつごらんください。当時の文部大臣はかわっておられましたけれども、こう答えています。前はありますけれども、「これを田中前総理がおっしゃったのではなくて、小学校の子供たちから尊敬され、愛されている校長先生がおっしゃった言葉としてその書かれた言葉の内容を考えてみますと、私は間違っているものだとは思いません。」私たちも、これはいい言葉をうまいこと言ったなと思って実は感心しておったぐらいで、文部大臣はそういう評価をされて、その次です。「しかし、たまたま言われた方が言われた方であったので問題になったわけでございます。」後があって、さきの大臣と同じ認識を持っております。――さきのは申し上げたとおりです。こう申しております。  こうして答申が出ないで、ついに五十六年の五月九日に答申が出ました。その答申は似ても似つかないものです。題名も変わって「青少年の徳性と社会教育」についての答申です。「青少年の徳性のかん養」ではありません。こういうことになっております。七年間、審議会も随分むだな努力をし、費用も随分かかっております。  こういうことですから、本来ならば、時間があればちょうど三人いらっしゃいますから、厚生大臣も入れて証明していただくことも考えもしましたけれども、それも御無礼と思いますので遠慮いたします。  さて、問題はここからです。  この間、(「前置きが長い」と呼ぶ者あり)いや、これは大事なことですから。昭和四十九年から五十六年、いいかげんな答申です。この間、一体青少年の犯罪はどうなのかということですが、それにつきましては警察庁の方から資料をいただきました。それで見ると、成人の犯罪はそんなにふえておりません。四十九年を一〇〇として、成人のは五十六年で九四、むしろ横ばいないし減る傾向です。ところが刑法犯の少年は、四十九年を一〇〇として五十六年一六〇、五十八年一七〇、もうふえる一方です。さらにその中で刑法犯少年の犯罪別ですが、それで見ると、いずれもふえておりますが、特に知能犯と称する、物を取るもの、占有離脱物横領罪というのは、四十九年を一〇〇とすれば、五十六年には四二四です。  こういうことを見ますと、そのときに、もしいまのように五つの大切、十の反省というのがすんなりいって、徹底して教育されておればこんなにならなかった、こう大幅にふえた原因にはこのことが関係していると私は思いますけれども、公安委員長、どうですか。
  359. 田川誠一

    ○田川国務大臣 青少年の犯罪の原因は一つではないと思います。いろいろな問題があるだろうと思います。  私どもから言わしていただければ、環境ですね。環境の中には、先般三塚委員が指摘されましたああいう雑誌の類だとかいろいろあるわけです。ですから、これだという一つのあれはありませんけれども、先ほど湯山さんが言われましたロッキード事件が全然関係ないとは言えないと思います。
  360. 湯山勇

    ○湯山委員 委員長、結構です。  なお、これにつきましては警察庁の担当が、少年何かがありますね。そこでは実情を調査して発表して、その対策も発表しておりますけれども、聞いてみますと、そんな対策ではとてもなくならない。文部省もこの間随分通達をたくさん出しています。それでも何にもならない。そんなことをやればやるほど無力感に襲われるばかりだというのが正直な告白です。これが教育にどんなに影響しているか。これは言葉もいいし、非常にぴったりしていますから、先生たちの中には、今週は物を大切にしようというのでいこうというのを黒板に書いて、直ちに指導に当たった人もあります。それからそのほか随分現場ではそのための努力をしておること間違いないし、校長先生の訓話でやったりいろいろやっております。しかし、一向に今のように答申も出ないし、五切十省というのは日の目を見ないでそんな状態、そこでそういうことが影響していろいろな問題が現場でも起こっておるのです。  今ここで一つ投書を取り上げます。これは去年の十一月二十二日朝日、「ちょっとひとこと」です。「悪いお手本」というこれはコピーです。これで見ますと、   恥ずかしい話ですが、小五の長女が万引きをしましてね。 電話ですから。  鉛筆一本だったのですが、悪い芽は早いうちに摘まねばと思い、子供と文具店へ謝りに行ったり、先生に相談したりで苦労いたしました。   反省していると思っていたこの子が「田中角栄さんは悪いことをしたのに辞めないんだよね」とポツリともらしたんです。この言葉には大きな罪を犯した人が平気でいるのに、鉛筆一  本の私がなんで、という意味が含まれているように思え、反省が足りないと心配になりました。 こういう投書です、電話の。朝日が「ちょっとひとこと」欄で紹介しています。  それだけではありません。まだありまして、田中という姓の子供はたくさんあると思うのです。田中姓の子供の中に教室で冷やかされて困るという訴えがあるというのも報告されておりますし、それからこれは方々で言われたのですが、これをそのままにしておいて、子供にまじめに勉強せよとは言えませんというのがありますし、あるいは先生が生徒に注意をすると、田中角榮はどうしたのだと食ってかかる者もいた、これが実態なんです。  こう見てくると、私はこの問題は、一国の総理大臣であり、どなたか大臣がおっしゃったように、言った人が言った人だから影響は大きい、ほうっておけないというのはよく気持ちがわかると思うのです。単に抽象的なのでなくて、これだけ具体的に社会教育審議会が青少年徳性涵養はこれというのがつぶされて、しかもそれが逆効果です。これは、私は教育改革は人によるというのを最初申し上げましたが、総理も儒教の精神、これはどこへ出しても恥ずかしくない、日本の神道の清き明けき心というのは立派な美徳だというようにおっしゃいましたけれども、これもやはりこの五つの大切、十の反省なんかというものは、だれがどこへ出しても恥ずかしくないです。けれども、言う人がどういう人が言うかによって逆なこともあるということは、これは教育のことを考えるに当たってはしっかり胸に置かなければならない問題だと思いますので、あえて申し上げたわけです。  さて、こうなってくると、このことが青少年に――今公安委員長言われたように、これが非行の全部の原因とは申しません。教育破壊の原因とは申しませんが、影響のあったことは事実だということは、文部大臣、お認めになりますか。
  361. 森喜朗

    ○森国務大臣 判決にございました社会に対する病理的影響大というのは私も承知もいたしておりますし、そのことは社会にいろいろな意味では影響があったと思っております。
  362. 湯山勇

    ○湯山委員 もちろん、社会の中には学校も含まれていると思うのです。大きい意味での社会の定義の中には、学校もあれば、政府だってやはり一つの社会でしょう、定義的に言えば。教育に悪影響があったかどうか、これはあなたの前任者の大臣は、あなたもお聞きのように認めておって、手を打っておるのですよ。これはほっておけないというので手を打っている。あの大臣のとったことを御支持なさるか、教育に悪影響があったというのをお認めになりますか。
  363. 森喜朗

    ○森国務大臣 子供たちの物の考え方は、湯山先生、もう長い間教職におありでございましたから、やはり心身の発達状況に応じていろいろな角度で物を考えるだろうと思います。やはりこれは学校教育の中でこうした問題を議論をしたり話し合いになるということは、我々大人の立場としては、子供の社会に極力こうしたものが入らないように気をつけていかなければならぬと私は思っております。そういう意味では、教育の場に、先ほども申し上げたように、やはり小学校、中学校、高等学校、それぞれの発達の過程の中で影響のあったものもあるというふうに私は考えます。が、しかし、そのことは、やはりそういう大人の醜い面やあるいは政治やイデオロギーのような問題は、極力子供たちの場に入らないように大人が一生懸命に防いでいくということも、私は大変大事なことではないかと思っております。
  364. 湯山勇

    ○湯山委員 影響があったということはお認めになったし、私に言わせれば、こんなことで社会教育審議会が空転してやれなくなって、現場にもそういう問題が起こったということは、文部省も被害者だと思うのです。病理的影響を受けた側ですよね。これは、文部省がそうであれば政府もそうでしょう。だから、中曽根総理、もう一遍もとへ返りますけれども、こういうことで悪影響が現実に文部省へ来ておるわけです。で、公安委員長も影響なしとしないというときに、ただ厳粛に受けとめただけというのではいけないので、それはやはりここで総理が何かの御見解をお示しになる、その必要があると思うのです。これからの問題じゃないのですから、既にそういう事実が明らかである以上、特に教育改革を進めようとする総理は、これについてこうだ、いや、よくないことだ、責任感じるということ。あるいはもっと前へ行きましょう。田中角榮元総理は責任あるとお思いになりますか。
  365. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政治倫理に関する問題にも似た問題だろうと思います。このことにつきましては既に何回かいろいろ申し上げているとおりであります。しかし、今の子供たちのいろいろな状況は、私は前に申し上げましたけれども、一種の文明病というものの被害を受けておる、そういう面もなきにしもあらずである。いろいろなテレビや、あるいは先般ここで三塚君から示されましたような出版物とか俗悪なものや、そういうものが子供の心をむしばんでいることも事実でありましょう。あるいは戦後三十数年たった長い間の教育の中にゆがみやいろいろなそういう問題もまた響いてきていることも多いし、家庭の構造や家族の生態というものもまた非常に響いてきている部分も多いのではないでしょうか。そういう意味において、やはり総合的に考えるべきときに来ておる。しかし、政治家はやはり襟を正していかなければいかぬ、そう思っております。
  366. 湯山勇

    ○湯山委員 襟を正して、しかもこれは裁判じゃないのですから、こういうことについては政治的道義的な責任をとるべきだ、こうお考えにはなりませんか。ならないならならないで構わぬです、これは心構えの問題ですから。どうでしょう。
  367. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、人を責めるよりもおのれ自体を責め、おのれ自体を律しなければいかぬ、それはやはり政治家の第一義ではないかと思います。
  368. 湯山勇

    ○湯山委員 教育改革を唱える中曽根総理なら、どうなさいますか。
  369. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先般来申し上げましたように、心をむなしゅうして一生懸命努力していきたいと思っております。
  370. 湯山勇

    ○湯山委員 これではお答えになってないと思うのですよ。ですから、私はこれだけ具体的な例を挙げて、文部大臣認めて、しかも総理にお聞きしておるのですから、そのためにこれだけの時間費やして、大事なことだからお聞きしておるのです。これは急ですから、お答えできにくければ文書でもしてください。どうでしょう、係員長。――答えられませんか。答えられなければ答えられないとおっしゃってください。
  371. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今まで十分申し上げてきたつもりでおります。
  372. 湯山勇

    ○湯山委員 そういうことにしましょう。  次に、申し上げておきますけれども、文部大臣、聞いておってくださいね。東京芸大で、国立ですよ、先生がにせのバイオリンを売ったという事件がありました。これは、先生が子供を刺したという事件もありましたが、同じような性格ですね、子供を先生が傷つけた点においては。それから国立の医科歯科大学では、教授になるために買収が行われている、これもこの間のことです。それから、大事な真理の研究の広島大学では、にせのデータで世界的な成果を上げたというんで発表して、うそであった。ここまで来ておるのですよ。これは私は関係ないとは言えないと思うのです。このあたりをひとつしっかり考えてかかっていただかないと、総理に対する信頼感は高まらないということを申し上げておきます。  それから次は、同じくやはり懸念されることの一つは、教育改革の基本的な方向の問題です。  総理ははっきり、憲法を守り教育基本法に従ってやる、あるいは憲法、教育基本法を守る立場で教育改革を進める、非常に明確で結構だと思います。しかし、それでもなおかつ不安が残る。何が残るかというと、一つは、総理がみずから改憲論者だと言っておられることです。それから、教育改革についてさっき申し上げましたけれども、文部大臣もこのことについては、幾らか例えば定着したが、行き過ぎた面もあるというようなことをおっしゃっておられます。で、田中角榮元総理は押しつけだとはっきり言っておられる。自民党で自主憲法と言うのも、自主憲法という発想はやはり押しつけだということで、教育改革と憲法改正というのは同じ発想から出ている、ここに一つ懸念があります。しかも、自由民主党は自主憲法をつくるために努力するという決議をしておられる。  さらにまた、総理は、二十一世紀を展望してやるんだ、こういうことですが、二十一世紀は、今のようなことでいって現行憲法がそのままあるとお思いなんですか。
  373. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法は、言論の自由、思想の自由を保障して、人権を一番尊重するように強調しておるので、そういう点はやはり我々はわきまえていかなければならぬと思っております。いかなる人間もいかなる思想もそれは自由である。しかし、それが行政府の責任者の立場になれば、これは個人の立場と違いますから一定の限界はある、そういう慎みと分限をわきまえて行政は進むべきで、それを悪いと言うわけにはいかない。個人が持っておる信条やら思想まで否定するということは行き過ぎではないかと私は思っております。しかし、公務員となった者が公務を執行するというについては、これは一定の分限と節度と規律を守ってやらなければいけない、そう思っております。
  374. 湯山勇

    ○湯山委員 端的にお答え願いたいのですが、教育基本法と憲法とは密接不離です。憲法の理想の実現は教育にあるとちゃんと基本法に書いてあるとおりです。したがって、教育改革の基本を憲法、教育基本法を守るというその憲法、教育基本法は、現在の憲法、現在の教育基本法なのかどうかをお聞きしておるのです、端的には。
  375. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今の教育基本法は今の憲法とパラレルでできておるので、もちろん今の憲法、そういう意味であります。
  376. 湯山勇

    ○湯山委員 それで大変安心いたしました、現在の憲法。  ただ、もう一つ、それに関連して心配な点があります。矢野質問に対して、教育基本法、これは昭和三十一年の政府答弁、清瀬文部大臣、それから鳩山総理答弁を取り上げて、当時はこれを改めなければ愛国心の教育はできないというような答弁があった。それに対して中曽根総理は、そういったようなやりとりがあったように思うけれども、しかし、どう言われましたかね、そのような答弁があったと思うが、あったとしてもと言われたか、とにかく中曽根内閣では私の言っていることが教育基本法の解釈であり、この解釈に従って実行していくという答弁をなさいました。この言葉は気になるのです。私も、総理の言われることが間違いだと思っていません。当時は、そういう言葉がなかった。  その前に、池田・ロバートソン会談がありました。あれがいつでしたか、二十八年十月でした。私も出たばかりでした、国会へ。そのときに、日本は教育や広報活動によって青少年に愛国心を養う必要があるということが合意されて、発表になりました。それを受けて、あのとき教育委員会法と教科書法と今の教育制度の審議会、三つ出されて、結局、教育委員会法だけが警官の力で通されて、私も警官に取り巻かれて質問しました。あとの二つは流れたのです。だから、このときの審議というのは余り中身は大事じゃないのですが、そのときに言われたのは、確かに愛国心という言葉はあそこにはない。それでは本当の愛国心の教育はできにくい、あるいはできないと言ったかもしれませんが、やってはいけないということはなかった。だから、その点で総理の言われることを否定はしません。しかし、お答えがそういう御答弁なら、私もああそうだったなと思いますけれども、そうじゃなくて、解釈は、中曽根内閣では私の言っていることが教育基本法の解釈であり、その精神でやる。だったら憲法も中曽根内閣では私の解釈がと、こうなりませんか。私は、これは怖いのです。  なぜそれを言うかというと、憲法の解釈をめぐって教育では重大な問題がある。それは、自衛隊は合憲か違憲か、教育ではどちらをとっておると総理、お思いですか。
  377. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今の論争は、先般行われた論争といいますか論議でありまして、教育基本法第一条に関して清瀬文部大臣が、忠義、愛国心、親孝行ですか、そういう徳目がないから直す必要があるんだというような話に対して、私は清瀬さんのようには考えません、責任感とかああいう第一条にある文言から見れば、十分そういうものは考えられる余地がある、自分はそういう解釈に立っております、そういうことを申し上げたのであって、それを間違っておるとは思いません。それを何か質問の方から見ると、忠義や親孝行というものをあの中に入れてはいけないというようなことを非常に強く言われたような印象を持ちましたから、私は私の解釈でいくのです、責任とかそういうものの中には十分入る余地があると思っております、そういうふうに申し上げたわけであります。
  378. 湯山勇

    ○湯山委員 その御答弁でいいと思うのですよ、内容は。ただ、言い万が、中曽根内閣ではというのがついているし、私の解釈で実行していく、これは問題があるのです。しかし、憲法、これは教育では解釈の問題はゆるがせにできない。一体自衛隊は教育の場では合憲と扱っておるのですか、違憲と扱っておるか、御存じでしょうか。
  379. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 本によって違うんじゃないですかね。日教組の先生は、大部分は違憲だという考えを持っておられるようです。しかし、教科書自体は、本によっていろいろ千差万別である、こう思っております。
  380. 湯山勇

    ○湯山委員 釈迦に説法というようなことはありますけれども、申し上げますと、教育ではそうでないのです。合憲と書いた教科書もありません。違憲と書いた教科書もありません。これはこうなっています。検定審議会の答申を得て、教科書には合憲、違憲両論を書いたものを合格とする。だから、子供たちが使っておる教科書、教えるのは、憲法については両論ありますよ、偏らないでということを教えておるので、決してばらばらじゃないのです。そのときに中曽根内閣はこうだというようなことの解釈に立って押しつけるようなことになっては大変です。しかし、現行憲法を守っていくんだ、今の基本法に対する解釈が、それは表現はまずかったかもしれないが自分の解釈を言ったので、おれの解釈が万能だといった意味ではないということですから、それはそう理解していいですね。答弁してください、大事な問題ですから。
  381. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 結構です。
  382. 湯山勇

    ○湯山委員 それでは、ここまでで明らかになったことは、教育改革は現行の憲法で、現行の教育基本法のもとに進めていくということが一つと、それから、政府で解釈したこと、これを教育に押しつけるようなことはない、この二つは確認されました。  さて、次は諮問機関です。これも気になることが多いのです。今の憲法でまちまちじゃないかと言われたぐらいな認識じゃないかと思うこともあるんですよ、総理の国会答弁でも。  例えば、矢野さんが言われた両省にまたがるんだから広げぬといかぬ、総理がやらぬといかぬというようなことは、これはもう冗談だろうと思います。何のための内閣が、何のための総理か、何のための国務大臣か、これを考えれば、各省にまたがるから一緒にしなければできないなんということはあり得ないことです、言えないこと。まして学生の就職は労働省なんか、これも間違いではないけれども認識が誤っています。学生の就職は学長、あるいは高校で校長が届け出だけで学校が無料紹介所になれる。ほとんど学校で、大学でやっています、高校でやっています、幾つかほんの少しはやってないところもありますけれども。  そういうことですから、これもまあ間違いと思わなければならないし、社会教育や全人教育、これはやらぬといかぬというようなこともだれかにお答えになっておりますけれども、一々だれの質問というのはもう申しません。言っておりますけれども、社会教育については、教育基本法では、「家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育」はすべてこれは社会教育。ですから、こう社会教育でやれるのだ、各省集める必要はありません。ですから、この辺については、せっかく総理が御説明になっても、ああそうですかと言うわけにはいかぬわけです。これを御指摘申し上げたい。これには説得力がありません。  それでは何かというと、結局出てくる大きい問題は二十一世紀を見通した教育だ、しかも教育の基本にかかわる問題だということですけれども、それを審議するために置かれているのが中教審ではないでしょうか。教育の基本問題というのは、法律で申し上げますと中央教育審議会、これは「教育、学術又は文化に関する基本的な重要施策について調査審議」して答申するとあります。  総理が言われたのはやはり同じことで、本会議答弁でも、二十一世紀を展望して教育の基本がどうあるべきかについて提言を期待する、基本的な問題についての答申を得るのだということを述べておられます。これは間違いございませんね。二十一世紀を展望して、しかも基本的な問題、それについて答申を得る、この御説明、間違いありませんね。
  383. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろんそういうことも言っておりますし、二十一世紀を展望して、さらに国民的広がりの中に国民的なすそ野を広げて、そしてみんなでこの問題を考える、みんなでこの問題に関する判断を行い、国民の皆さんと一緒にやっていくという意味において、内閣全体で総がかりでやるようにいたしたい、そういうことも申し上げております。
  384. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで、これは中教審の場合は、審議会の委員は「人格が高潔で、教育、学術又は文化に関し広く且つ高い識見を有する者のうちから」とあります。これに今度のはどんなものが加わるのでしょう、この上に。
  385. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 抽象的な言葉としてはそれに尽きているでしょうけれども、もし入れるとすれば、やはり全国民的立場とか視野とかあるいは二十一世紀を展望してとか、そういうようなもっと社会的広がりあるいは未来性、そういうようなものがニュアンスとしては入り得る余地があるのではないでしょうか。
  386. 湯山勇

    ○湯山委員 では、大きい意味ではこれへみんな入るということですから、その点からいくと改めなければならないということはないと思いますし、人選も幅を広げていこうというのであれば、これは委員を広げることはできるわけです。特別の事情については臨時委員を入れる、拡大もできます。無理に新しいのをつくらなくてもいいと思いますし、二十一世紀の展望に関することについては既に諮問をしておるはずです。それは時代の変化対応する教育というのを諮問しておるのです、このことについては。だから、これらを考えてみますと、総理の新たな機関を設けなければならないということについては、私はその根拠が極めて薄いということを申し上げなければなりません。  しかも、法律で現にある機関です。法律である機関で、大綱において変わりがないというものをどうして外して別につくる必要があるのか。一体、この委員は何人ぐらいをお考えになっておられるのですか。全国民の視野といったら何万人も集めるのでしょうか。これはどういう構想ですか。
  387. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今のようなこういう新しい時代、転換期に遭遇いたしまして、現時点に立って来るべき時代をよく見渡し、そして全国民的視野と基盤に立ったそういう論議も踏まえていただくようにしたらいいと思っております。  それに、党首会談をやりましたときに、野党の有力な党の皆さんの中から、教育臨調という関係で、今の中教審でないもっと広がりを持った内閣レベルの諮問委員会をつくってやったらどうかという御議論もあり、教育臨調という名前をたしかお出しになった党もありますし、そういう名前はお出しにならないでも、すそ野を広げて国民的な広がりの中で関心を持ってやる、そういうお話もございまして、野党と協調していこう、いいお考えはいただいて進みたい、そういうことも申し上げてきたので、そういうお考えを拝借させていただきたいし、また話し合いをそれを中心にやっていきたい、そう思って申し上げている次第なのであります。
  388. 湯山勇

    ○湯山委員 文部大臣、あなたは、これは記者会見ですけれども、内閣に設置することに賛成の意味かどうかわかりませんが、戦前に比べて文部省ほど力も権力もなくなった役所はないということを言っておられます。その上で、幼保一元化、幼稚園と保育所を一緒にする、こういう問題もあるし、それから、何しろ莫大な金が要るから、やはり教育改革に取り組むのには内閣全体でやるのがいいというような意味のことを述べておられますが、これはどういう御意図ですか。いまのような別の機関をつくることですか。
  389. 森喜朗

    ○森国務大臣 私は、戦前のことは余り、子供だったものですから、つまびらかにはしていないのです。まあ湯山さんと同じように、私も国会へ出てきまして十五年目になりますが、主に文教問題を中心にやってまいりましたから、その力がないとかということよりも、ほかの役所に比べて、通産省や運輸省や農林省のように、いわゆる中央政府がこう行こうというふうに考えたら、それがずっとすぐ下へおりていくというものではない。地方教育委員会にやはり主体性を持たしていく。これは教育の中立性、いろいろな角度から見てそういう形になっておりますから、戦前に比べて権力がない、権限がないというふうに私は申し上げておるのではなくて、ほかの役所に比べては、文部省の行政の機能というのは指導や助言という、そういう行政のやり方しかない、私はこのような意味で申し上げたわけでございます。  そして、いろいろな教育の改革議論というのは、もう本当にここ十年、二十年出ていると思うのです。湯山さんの属しておられる社会党さんからも出ておりますし、民社党さん、公明党さん、いろいろな角度で、共産党さんからも出ております。また、多くの文化人やあるいは経済界やあるいはPTAや小学校長会や中学校長会や、いろいろなところから教育の改革が出ている。その議論を踏まえながら中教審の四十六年の答申もあったのも御承知のとおりでございます。  しかし、それらの教育改革の、なるほどということを理想的につくり上げようとすると、やはり相当なお金がかかってくることだけは、これは湯山さんだって計算されてみてもよくおわかりになると思うのです。私はそのことを、お金を得るためにやるというのではなくて、新しい教育改革で一歩を、もう一つ新しいニーズ――これまではどちらかというと、中教審の四十六年の答申を見ましても、幼児から高等教育機関まで、こうなっておりますけれども、やはりこれからの教育というものを、総理もおっしゃるように二十一世紀を踏まえて考えてみると、もっともっと量的に拡大をしていかなければならぬ面もある、そういうふうに考えますと、いろいろな角度、今までの審議の視点や検討する角度というのは変わってきます。そういうふうに考えてまいりますと、これは文部省とそして中教審の判断だけでは、容易に国民的すそ野の広がるような議論にはならないのではないか。  さはさりながら、中教審の今日まで議論してきたものというのは立派なものでありますし、その中でこのことをどうしても実現していくためには、もう少し内閣全体の各部署、各省庁の協力を得なければならぬものもある、そういうふうに考えてみますと、この際、内閣の中に新しい機関を設けて、そして中教審の議論の上に立って、新しい視点でもう一遍検討してみる必要があるのではないか、私はそのように考えて、むしろ文部省は、大変いい、そしてまた、本当に日本の教育を進めていく大事な役所として、これから日本国民の皆さんとともに議論していただく、そういう時代が来ておるのではないか、私はこんなふうに考えて、大変意義があるものだというふうに考えておるわけであります。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕
  390. 湯山勇

    ○湯山委員 文部大臣、弱くなった文部省を強くしようというような意図はないようですね、今の御答弁では。それは幾らかわかりました。しかし、金が莫大に要るから内閣挙げてやる方がいいというのはいただけない。  では、幾ら要ると思っているのですか。
  391. 森喜朗

    ○森国務大臣 ちょっと私の言葉を、湯山さんは解釈を間違えられたと思います。お金が要るからというのではなくて、単にそういうような形でまず教育改革、六・三・三・四制を仮に変えたとしますね、いろいろな意見を聞いて。ということをちょっとはじいたって、幾らかかるかわかりませんけれども、やはり相当の経費がかかることは間違いないと思います。ですから、そういうことでお金をかけるというのではなくて、今日的な国の財政やいろいろな立場の中で、本当に今までの日本の歩み方と違う歩み方というのがあると私は思うのです。  これはちょっと長くなって先生は気になさるかもしれませんが、さっきからいろいろと冒頭の前文のところから先生は御議論がございましたけれども、今日の日本の、四十九年ごろからいろいろな形で、第三のピークで非行少年が出てきた、あるいは文部省のいろいろな機関の中でいろいろな不祥事があったということを御指摘がありましたけれども、私は、必ずしもそのことは田中さんの問題と全部結びつけるものではないと思っております。  しかし私は、やはり一番大事なことは、日本の人口構成というものを考えてみますと――どれがいい、これがいいというのではないので、誤解をなさらぬでください。先生は、先生をなさっておられたから一番よくおわかりですが、戦前の教育を受けた人と、戦前の教育を受けた人を親に持つちょうど私たちのような世代、それから、戦後の教育を受けた人たち、その戦後の教育を受けた人たちに育ててもらった子供たち、日本には今そういう四世代みたいなものがあると私は思うのです。これがよかったとか悪かったということを私は今ここで申し上げるのではなくて、現実の日本の人口構成はまさにそうなっておる。これは日本の、戦争という一つの大きなキーポイントといいますかいわゆる分岐点で、そういう一つの形が今日本国民の中にできているわけです。  私はあえてその世代を、まあ第一世代、第四世代と申し上げていいかわかりませんが、その中にお互いの人間的な考え方の違い、あるいは先ほど申し上げた戦前の教育を受けてこられた人と、本当に新しい戦後教育を受けた人を親に持つ子供たちの間に、精神的なギャップや、物の考え方がやはり違ってくると思います。ですからそういう日本民族というのは、やはり全体を考えて、二十一世紀、日本人が生きていく道というのはどうあるべきなのか、こんなことを議論をしていただくことはとても大事なことだと私は考えるのです。  ですからそういう意味で、これは中教審だけではなくて内閣全体の形の中で、これからの日本の教育はどうあるべきなのか、そしてまた、日本の文化というものやあるいは国際社会の中における日本の役割というのは、どういう生き方をしていくべきなのか、私は、そういう高次元で一遍議論を、それぞれの斯界の方々のお話を承ってやっていただくということが、日本の将来にとってはとても大事なことではないだろうか。また、我々今日こうして政治の中で生きている者にとって、二十一世紀の子供たちに何としてもこのことだけはきちっとしておいていく政治家としての責任もあるのではないか。そんな角度で総理はこの問題を提起されておるんだというふうに私は承知をいたし、文部大臣という立場で、大変ありがたいことであり、意義のあることだと考えて、ぜひこのことを進めていきたい、こんなふうに思っているわけであります。
  392. 湯山勇

    ○湯山委員 非常に真摯なまじめな御答弁をいただいて、結構だと思います。教育改革を進める文部大臣に選ばれたというのも――私は常に、総理の一番大きな役目は、細かいことじゃなくて、いい文部大臣をつくるということを申し上げてきましたが、歴代の文部大臣、皆立派な方ですが、森文部大臣もまたそれにふさわしい立派な文部大臣だと思います。本当です。これはお上手になるといかぬから言うまいと思ったのですけれども、今のを聞いて、そのとおりです。本当に一部にうわさされておるような財界の人だとかあるいは総理の諮問機関のだれとかという人とか、そんな人を持ってくるのではなくて、文部大臣は、広くとにかく国民各層、今の若い人の意見、それから中の意見、戦前育ちの意見、もちろん現場の先生の意見、それらを総結集して教育改革に臨もうというこの考えは賛成です。非常にいいと思います。ただ、そういうのに合うかどうかです、新しいものが。  一体何人ぐらいで、これは少し立ち入って、予算委員会ですからお許し願って言えば、このための予算はどれくらいですか。
  393. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今またこれは構想の段階で、中教審の今までの成果をよく検討を加え、選別もし、かつまた、私が私的に諮問しておりまする文化と教育の懇談会の方々の結論が三月に出る予定でございまして、それらを踏まえまして、そうしてこの設置法の構造というものも考えていこう、そういうことでありますので、今いつから出発するとか何人であるとかお金はどれぐらいかかるとかそういうことは、今後それらのことを踏まえた上で具体的に考えていくという問題でございます。
  394. 湯山勇

    ○湯山委員 予算をお聞きすれば、大体何人ぐらいで、月何回なら何回ぐらいで、どれくらいの期間というのはわかるんです。それもわからない。何人か、もちろんわからない。何をするかについても、さっきのようにはっきりした御答弁がいただけない。これでは一体予算委員会なんでしょうか、これは。
  395. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま湯山先生からお話しの予算の問題でございます。  この点は総理府所管の審議会として予想されておりますので、現在私どもで承知しておりますのは、臨時行政改革推進審議会等という八百四十四万余の経費の中で百九十二万円、これが委員手当でございます。それから庁費につきましては、各種会議経費百八万円余の中で二十九万円余でございます。したがいまして、計上している所要金額は合計二百二十二万円余ということになるわけでございます。  ただ、ちょっと御説明いたしますと、ただいま総理からお語ございましたように、この諮問機関にかかわる組織、構成その他人員等具体につきましては、今後設置法を提出させていただきまして審議をお願いするということにいたしております。したがいまして、現時点では、最低限の経費として総理府で計上されている、こういうふうに私どもは承知しているわけでこざいます。
  396. 湯山勇

    ○湯山委員 それで最低の場合、今の二百万ぐらいでやっていけるということですか。
  397. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま申し上げましたように、今後設置法その他で組織、構成を明確にいたしまして御審議をいただくわけでございます。現在二百二十二万円余の積算の構成等どういうふうに相なるかという点は、今後の検討課題ではございますが、仮にこの最低限度を計上した経費につきまして足りない場合には、既定経費の枠内でいろいろと工夫をしてまいるというふうになろうかと承知しております。
  398. 湯山勇

    ○湯山委員 さっきの岡田さんのと似たようなことなんですけれども、これで予算審議せいと言ってもできませんね、この予算は。  ただ申し上げたいのは、とにかく広げて大きくやっていくというのはわかりました。それはわかりましたけれども、今の臨調の後の行政改革推進審議会、これは、何か聞いてみますと、一億近い予算を見ておりますね。それから委員の手当も、委員長が一日が一万八千幾らとか。ですから、これは二百万を組んでおって、一億になっても二億になっても、やはり簡単に操作できるのですか。大蔵大臣、どんなものでしょう、常識的に。
  399. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 総理府所管の項、総理本府という予算の中に、積算の基礎といたしまして、ただいま文部省の官房長が申し上げましたような数字が入っているわけでございますが……
  400. 湯山勇

    ○湯山委員 人数は幾ら、それで。
  401. 山口光秀

    ○山口(光)政府委員 人数は、積算の内容は文部省の方からお答えしたらいいと思いますが、臨時行政改革推進審議会等ということになっておりまして、その臨時行政改革推進審議会を含めまして八百四十四万九千円という中身でございます。今のは委員手当の話を申し上げているわけでございます。  それから、委員手当全体といたしましては、五千五百六十一万九千円でございます。それがこの経費が入っている仲間をみんな集めました経費の総体でございます。
  402. 湯山勇

    ○湯山委員 それじゃ答弁にならぬ。――いや、いいです、時間がもったいないから。  総理にお尋ねします。これはひとつ、もうちょっとはっきり答えてください。この審議会の名称です。とにかく、教育臨調と香ったら総理の御機嫌が悪いし、あんなことじゃない、こう言われるし、どういう名前で言ったらいいのか。これは何という名前ですか。総理、ひとつ名前ぐらいもうつけておかぬと、審議になりませんよ。
  403. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これから設置法を考えようというときでございますから、名前もまだ決まっておりません。各党の御意見等もよく承って、いい名前をつけたらいいと思っております。湯山さんも、ひとついい案をお出し願いたいと思います。
  404. 湯山勇

    ○湯山委員 康弘という名前のいわれを聞かしてもらいましたので、ひとつこれ、今になって、これだけ審議するときに、総理の嫌いな教育臨調という言葉を使わなきゃならぬというのも、これもやっぱり不信感につながるんじゃないでしょうか。ひとつそこらもお考えいただかなければならないと思います。  結局、お聞きして、何をやるかということも余りはっきりいたしません。長期にわたって、二十一世紀というのは今の時代に即応したというので諮問しておるのですから、何も中教審でできないことはない。それから、中教審は基本的な重要な問題を協議する、審議する。だからこれにぴたっと当てはまります。それ以外につけ加えることというのは、広くというのですが……(三塚委員「中教審反対だと言ったろう」と呼ぶ)中教審反対と言われますが、それは私が言うだけではなくて、かつて文部大臣さえ中教審反対と言われて本会議答弁されたことがある。御存じない、知っていますか。(三塚委員「知らない」と呼ぶ)知らない。だから余計なことを言いなさんな、知らぬでは。
  405. 倉成正

    倉成委員長 湯山君、質問してください。
  406. 湯山勇

    ○湯山委員 今のようなことなんです、総理。今たまたま三塚さんがいいことを言うてくれたので便乗するようですけれども、総理も中教審は万全じゃないとおっしゃったですね。そうでしょう。それは今度できるのだって、もちろんそうです。が、それは中教審は今のように万全ではないけれども、この出たものには問題があるけれども、それはカバーしていかなければなりません。それがありますけれども、しかし、文筆で書いた中教審の構成というのは、私はこれまで反対しておるわけじゃない。出てきたものには意見があります。たくさんあります。それは自民党政府の文部大臣さえ反対しておられて、本会議でこれを質問されたことがあります、御存じと思いますけれども。ですから、これはだれでも、出てきたものがいい悪いは今おっしゃったとおり。  さて問題は、ついでではなくて、今聞こうと思っておったのですが、総理は、中教審でいいけれども、二、三割足りない、中教審で七、八割は明らかにされるが、残る二、三割は検討しなければならない。これはいいかげん、直観的にそう言われたのか、根拠があって言われたのか。これは大事な問題ですから、はっきりしてください。
  407. 森喜朗

    ○森国務大臣 湯山さん、八割ぐらいというのは、私がたしかこの委員会で申したような記憶がございまして、総理が八割、二割というようなことはおっしゃらなかったと思います。中教審の四十六年の答申だけに限って、湯山さんも御承知のとおりです、勉強なさっていらっしゃいますから。項目的にこう見ていきますと、およそ私は八割ぐらいというようなことを申し上げたのですが、それはすべて内容も八割ぐらいやったとかそういう意味ではございません。あのときはたしかどなたか、塚本さんか矢野さんの御質問だったような気がしますが、瞬間的に私は感覚的にちょっとそういうふうに申し上げたわけです。  しかし、大体今日までの答申の中で、幼児教育から高等教育までの学校教育全般にわたる改革でありまして、いろいろな角度から改善できるものはかなり改善をしでございます。ただ、その中でやはりどうしても残されたといいましょうか、まだ実施ができなかったというのは、先導的試行あるいは幼稚園の設置義務、あるいは行政の一元化というようなところが残っておると思います。どちらかというと、やはりこれは法律改正をしなければならぬというものにもあると思いますし、もう一つは、その四十六年の当時では、やはり国民的な高まりというものは、今のような教育改革の高まりがなかったようにも私は承知をいたしております。  そういう中で、これらの残された課題を踏まえて、これが本当にこういうやり方でいくことが正しいのか。あの時代とはまだかなり時代が変わってきておりますし、さっきもちょっと申し上げたように、情報化あるいは国際化というのはどんどん進んでおりますし、それから幼稚園の問題にいたしましても、就学年齢というのは一体どのあたりがいいのだろうか、こういうような問題も当然出てまいりますし、また、社会が求めている者というのは一体どういう人材なんだろうか、このこともよくこの間から国大協の先生方や、きのうは私大の先生方とお話をしても、若干今日的教育の中に求められているものとどうも違っておるような感じもいたします。そういうようなことも議論をしていくためには、大体言い残された問題の方がむしろ大変大事なところばかりだというふうに考えて、何度も何度も申し上げるようでありますが、新しい機関の上でむしろこのことを議論していくことが大事だと思うのです。  先ほどから名前、名称のことや人選のこと、いろいろお話、お尋ねございますが、そのことを今決めることがむしろこれはまたかえってよくないことだと思っております。むしろこれから設置法を国会の中でお願いをする、そういう議論の中で、与野党通じて議論の中から高まってくるもの、そのことが一番総理の求めておられる国民的合意のスタートだろうというふうに私は考えておるわけでございます。
  408. 湯山勇

    ○湯山委員 森文部大臣、今の御答弁はちょっといただけない。これは本会議で、二月八日の本会議での答弁です。ただ、本会議の速記録できてないですから大変申しわけないのですが、これは恐らく二月八日ですから、私の方の石橋委員長か自民党の藤尾さん、このお二人のどっちかへの答弁だと思います。そこで、本会議答弁で、中教審で七、八割は明らかにされたが残りと、こう答えておるので、あなたの答弁ではありません。
  409. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのところは、中教審も大変立派な業績を残された、それを踏まえて、そしてその上にさらに広がりを持ったものを勉強したい。中教審がカバーした範囲は七、八割はカバーしていると思うが、二十一世紀を展望するとまだ二、三割はさらに新しい視点から見直したり、また新しく取り上げたりすべき問題、あるいはさらに加重すべき問題点等もあると思われる、そういうのは二、三割はあると思われる、そういう趣旨で申し上げた。例えば、共通一次テストの問題とかあるいは偏差値の問題だとか、また国際性の問題。国際性の問題は四十九年の答申にも出てますけれども、今のような事態に立っていろいろな、海外子女教育の問題もございますし、ともかく四十九年あるいは四十六年からもう相当年数がたっておるわけですから、この間に大きな変化もありました。そういう新しい視点に立ちながら、もう一回見直すべき問題点も含まれている、そういう意味で申し上げました。
  410. 湯山勇

    ○湯山委員 ただいま総理の御答弁の範囲では、どうせ新しい中教審ができるわけですから、そこで論議しても決しておかしくない問題、国際理解の教育にしても、共通一次の問題も、純粋教育の問題です。それから、文部大臣のおっしゃった何歳から教育していいかというようなのを財界の人に聞いたって、わかるものじゃありませんしね。やはりこれは児童心理なり児童発達、そういった本当の専門家じゃなきゃ、何歳かなんてできないのだ。これを広場へ持ち出してやったからって、簡単に結論が出るものじゃありません。だから、いまの御説明ではやはり納得できない。これは納得できるようにぜひしてほしいと思うのです。  それから、今文部大臣がおっしゃったり総理もおっしゃった、フリーに、とにかく自由に意見を述べてやっていく、名前を決めるのさえも遠慮してフリー討議をするというのですが、総理官邸からこれをとやかく言うことはしない、これはわかりました。一切干渉しない、フリーに、自由に討議をしてもらう、これはそういう方針ですか。
  411. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民的立場に立ちまして自由に御討議願いたい、そう思っています。また、やはり試験を受ける子供たちや学生の立場というものもよほど考える必要がある、また、父兄の立場も考える必要はある。それは最近受験戦争等が非常にひどくもなってきている、こういう点でもっと広がりを持たせた感覚というものも要るのではないかと思います。
  412. 湯山勇

    ○湯山委員 ちょっと意地悪な質問してもいいですか、総理。(中曽根内閣総理大臣「どうぞ」と呼ぶ)  高崎の中学で、偏差値によって輪切りで推薦して高校へ進めておりますか。私は総理、あなたの御郷里の高崎、二十何万ぐらいの都市では、もうどの高校が幾らというのは、中学と一緒になっておるわけです、長い間。そんなにして輪切りする必要はないのです、わかっているから。ただ、偏差値の試験は、多分中学の三年生は全部受けさせておると思います、テストを。それは親を納得さすためぐらいなことで、もううちのは、これくらいから上ならここへ通る。ありますよねランクが、高校の。これはあるのですから。東京のようなところは、それはもう偏差値でいきますけれども、人口二、三十万あるいはもうちょっと大きいところまでは、いわゆる偏差値で、ちゃあっと切ってこうこうなんということはしなくても、長い積み重ねでいっておるのです。  ですから、意地悪な質問じゃない、意見を述べたので終わります。そういうことは、総理が実情を仙台に行ってお聞きになったときに、仙台はどうなのか、やはりお聞きいただかないと、軽々にいまのように言われるとそうかなと思うし、この問題はもう一度後で触れます。  そこで、いま審議拘束しないということですが、私はちょっと気になることがあるのです。それは何かというと、今度統一会派をつくるために自民党と新自由クラブが政策についての合意書をおつくりになりました。それによって統一、一緒になったのだということを言っておられます。  この中で気になるのは、「中等教育の再編成のための五年制中等学校の創設、」「六・三・三・四の学制改革を実施するための」、「実施するための」とまで言っておるのですよ。「具体的な検討」をする。だから、実施するための検討です。六・三・三制の検討じゃないのですよ。これは合意して、これによってできたのだ。  それから、後でも聞きますけれども、同じ合意の中で、民間の人材の積極的な任用といったって、これも任免権者は文部省じゃありません、文部省のもありますけれども。それから採用の問題は、地方でやれば県教委、都道府県教委です。免許、養成はいいとしても、任用はもちろん国が持つものじゃありません。それから、研修も教育委員会の仕事です。これについてもこうやって合意しておるわけです。これがもう自由討議だから、これは合意であのときに必要な文書でつくったけれども、もう気にしないでいいんだ、新しい諮問機関では。そんなのは、もう五年制だろうが六年制だろうが、そういうことじゃない、こんなものにこだわらずに審議してもらうんだ。フリーというのはそういう意味ですか。
  413. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今お挙げになったものは、両党が検討の対象として挙げたものです。やはり検討する以上は実施することを前提にして検討しなければ迫力がないので、そういう意味で「実施」ということも入っていたのでしょう。しかし、ともかく新しくできるその機関が自分たちで、その対象もみんなで相談をして決めていただくのがよろしいのではないかと思っております。
  414. 湯山勇

    ○湯山委員 これはもう審議は無視していいんですね。
  415. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自由にやっていただくということです。
  416. 湯山勇

    ○湯山委員 田川代表にお尋ねいたします。  今の答弁でよろしいんですか。もうあれはあのとき限りで、今後改革を進めるに当たって審議会でこれがあるというようなことで拘束したり方向づけたりはしない、自由にやってもらうんだ。よろしいんですか、それで。
  417. 田川誠一

    ○田川国務大臣 自民党も新自由クラブも、これは政党ですから、学制改革の案をつくっても決しておかしいことではないと思います。  今度新しい機関にこれが拘束をするかしないかという御質問だと思うのです。これは今、総理がおっしゃったように、新しくできる機関は広くいろいろな方々の意見をお聞きしておやりになるというのですから、私どもが合意したものが拘束するというふうに私どもは思ってはおりません。
  418. 湯山勇

    ○湯山委員 重ねてお尋ねいたします。  じゃ、もうこれは実現しなくても別に問題ではないということですね。念のために。
  419. 田川誠一

    ○田川国務大臣 今御質問されたような言い方をされますと私どもの方もちょっと困るので、私どもはいいと思ってつくったものですから、それを初めから、のっけから問題にしなくてもいいのかと聞かれると、そうはいきません。私どもはいいと思ってこういう案をつくった。しかし、それが新しくできる国民的ないろいろな審議機関で拘束をされるようなことはされないということを申し上げているので、私どもは、そんなものはほっておいて何も考えなくてもいいということでは毛頭ございません。私どもはそれを押しつけるということではない、一つの意見として私どもは持っている、こういうことでございます。
  420. 森喜朗

    ○森国務大臣 答弁要求がなかったのですが、政策協定は公党間で合意されるということですから、これは承知をいたしております。  私が今自分でちょっと資料をまとめてみたのですが……(湯山委員「なるべく短くやってください」と呼ぶ)はい。民社党さんから「活力ある福祉社会をめざして」というやはり教育の改革論が出ておりますし、湯山さんの所属される社会党さんからも、二十一世紀への指針という、これは選挙の当時から、人間性豊かな開花を目指す教育、文化という構想も出ておりますし、日教組の方からも出ております。それから公明党さんからも新しい本が出ております。こういう一つの高まりが、総理が先ほどから御説明を申し上げた多くの方々からそういう高まりがあるということです。議会制民主主義のもとでは、国民の意見を代表する公党の意見は、私はこれは十分耳を傾けるべきだと考えております。しかし、それをどうするかこうするかは新しい機関が考えることでありますし、当然、各党がいろいろな意見を持ってくることは、すべてこの機関を拘束するというものではない、私はそのように承知をいたしております。
  421. 湯山勇

    ○湯山委員 文部大臣、あなたは記者の質問に答えて、責任政党だから当然干渉というか、それをやらせるのは当然だという意味の御発言がありましたね。自民党が余り干渉し過ぎるのじゃないかという質問に対して、そういう答弁をなさいましたね。政党内閣であるし、一体になってやっておるのだから、与党の意見を入れるのは当然だという言い方をなさったことがありますね。それと今のとはちょっと合わぬじゃないですか。どっちがが間違いか。
  422. 森喜朗

    ○森国務大臣 教育といえども、やはりこれは内閣が責任を持っていかなければなりませんから、そういう意味では与党としての責任があるということを申し上げたわけです。今、公党間の新自由クラブさんとの政策協定の話が出ておりましたから、こうした一つのいろいろな考え方は耳を傾けていくことが当然だと思うが、ただ新しい機関の皆さんがどのようにこれに耳を傾けられていくかということは、我々がそう口出しすることではない。そういう意味で、中立性を求める意味から新しい機関ができるというふうに我々は承知しておる。これは湯山さんもそうだと思うのです。ですから、そういう中で新しい機関がすべて公党間の政策に拘束をされるものではないというふうに私は考えております、こう申し上げておるわけであります。
  423. 湯山勇

    ○湯山委員 ちょっと歯切れの悪いところがありますけれども、まあそういうことにしても、いまのようなことになれば、じゃこの合意も、我々の出しておるものも、公明党さんの出したものも大体同じように扱われていく、それでいいんですか。
  424. 田川誠一

    ○田川国務大臣 今文部大臣がおっしゃったとおりでございます。
  425. 湯山勇

    ○湯山委員 それじゃ、その実現に努力するのは、だれがどこで努力するのですか。
  426. 田川誠一

    ○田川国務大臣 公党間で案をつくれば、実現しないなんていう案をつくらないのです。実現をしたいと言うのが当たり前で、実現しない案なんかどの政党でもおつくりにならないと思うのです、実現したいと思って案をつくるのですから。
  427. 湯山勇

    ○湯山委員 それは私に答えていただいておりません。それは慣用語として使ったというのに近い御答弁です。それでは私は、これだけ公党が合意して一つになる、その条件に対してその程度のことであなたがもし踏み切ったということであれば、もしそうだとすれば、私は連合政権というものには重大な疑義を持ちますし、国民もまた、新自由は教育が最大の重点政策だとしょっちゅう言ってきた、その新自由が今のようなことでいいと言われるのですから、それはそれで承っておきます。これ以上申しません。承っておきます。しかし、重大問題であることだけ御指摘申し上げます。  それから次に……(「まだあるのか」と呼ぶ者あり)まだあるのです。まだ余計あるので困っているのです。  次に、総理の見識の中で敬服すべきもの、それは教育臨調という言葉を使わないという理由として、行革のように政府の手で役人を減したり機構をいじったり、それはできない。義務教育は市町村教育委員会、高校は都道府県教育委員会、こういうことをおっしゃっています。これもそのとおりです。例外はありますけれども、基本はおっしゃるとおり。ですから、ここで約束したからといってすぐできるものじゃない、そこに今度の本質があるという、これはいいお言葉です。着眼も非常にいいと思います。ただ、それならば私が言いたいのは、教育改革の今度の項目の中に、教育行政の改革というのがないのですね。なぜお入れにならないのですか。
  428. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もっとも、文部省設置法を見ますと、いわゆる教育制度に関する調査、企画というのがありまして、大学やらあるいはそのほか教育制度等について文部省は国会に法案を提出したり企画する、そういう権限はあるのです。ただし、義務教育について、管理は今申し上げましたように府県あるいは市町村の教育委員会が中心でやっている。それはよくわきまえていかなきゃならぬ、そういうことであります。  それから、今の御質問は何でしたっけ。
  429. 湯山勇

    ○湯山委員 教育行政は改革しなくてもいいのか。
  430. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 恐らくその辺はデリケートなところで、今度出てくる委員の皆さんがお考えになることじゃないでしょうか。教育全般という形になりますから、それも委員さんの御意見によっては検討の対象になることもあり得るんじゃないでしょうか。我々は余り拘束して物を考えておりません。
  431. 湯山勇

    ○湯山委員 それでは、教育行政の改革ということは現在、総理の頭にはおありにならないのですか。
  432. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 つまり、今度できる機関の皆さんは、設置法に基づいて自由にお考えいただくことでありまして、我々が今先走ってああだこうだということを申し上げる段階ではありません。今私は、今の段階において文部省のシステムや教育行政のシステムを変えようということは、今のところは聞いておりません。
  433. 湯山勇

    ○湯山委員 そうじゃないのですよ。総理は、こういうこと、こういうこと、こういうことを改革する、二十一世紀を展望してこういうことを改革していくんだ、さらに入学試験についてもこうとおっしゃったですね。その中にないのですよ。だから、あれだけはっきりおっしゃっておったし、しかも今度の教育改革諮問機関に対して、それには、そこではもうきちっとした臨調じゃなくて、義務教育は手がつかぬ、高校教育、県立、これも権限は違うという意味の御発言ですね、いまのは。そうすると、これは教育行政は抜いてあるでしょう、構想の中には。
  434. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あの施政方針演説をやりました時点におきましては、今の都道府県あるいは市町村が管理しているそういうものを変えようという意識は私にはありませんでした。
  435. 湯山勇

    ○湯山委員 しかし、行政改革で、入試の問題にしても任用の問題にしてもあるいはその他にしても、結局行政機関が果たさなければならない役割というのは随分大きい、これはお認めになられるでしよう。
  436. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、国家、公共団体が果たすべき役割は、非常に大きいものがあると思います。
  437. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで私は、やはり教育行政というのは、文部省を含めて、大きく言えば総理を含めて行政機関です。そこの改革についてお触れにならないで、今のように当時構想にないという状態で教育改革はできない、このことを一つ御指摘申し上げたいわけです。  その中央機関である文部省についても、臨床的な問題というのでいろいろ御指摘になりましたけれども、それは入学試験の例えば共通一次なんかというものは、文部省が本気になれば二年でなくなるのです。一年だと迷惑かけますけれども、二年余裕を置けば、これは飛んでのきます。ただ、これだけの競争の中で絶対これなら正しいという選抜方法がないのですから、どんな方法でもやっておればかすがたまる、抜け道が出てくる。変えなければいかぬです、しばしば。その変えるために一週もとへ戻すというようなことは、今の高校にしても昔の中学校、総理のころの中学校だって受験勉強したんじゃないですか、小学校で。今のような形態じゃないですから、たとえば学務課から、大阪なり東京どうだったか、とにかくこっそり抜き打ちで課外やってないか、視察して注意を与える。これはもう戦前じゃない、昭和初期からの現象です。今日もいろいろ苦労してやって改まらない。これは宿命です。くじを引くか、好きなところへみんな入れるかしか本当はないのですけれども、それじゃいかぬ。  だから、苦労してその都度検討しなきゃいかぬのを共通一次なんかで固定しようとするから無神がいって、この共通一次の輪切りの中へ私学まで入れようとして、私学が嫌だと言ったら何か私学助成を減したといううわささえあるくらいです。そうじゃないけれども、うわさはあるくらいです。全く逆なんですよ。とにかく共通一次に入れというのを、入れれば私大まで輪切りに入っちゃう。こういうことを文部省はやっちゃいかぬですよ。また自民党もやらないようにしてもらいたい。これはやっちゃいかぬとは申しませんが、本当に行政が機能していけば、こんなのできぬことないです。  それから、学区制を非常に厳重にやったときには、高校進学に今のような問題はありませんでした。これももう今は中学の九十何%が高校へ行くのですから、そのために特別な教室をつくったりなんかしなくても、トータルの上からは行けるわけです。これを工夫していけば、そこからでも道はあるのです。行政が対応しないで、審議会でやってくれと言ったって、できるものではないですよ、こんなものは。やはり行政がしっかりしなければならない。それが今のようなことで、そんなのまでここの委員会でやるというようなことは、これは文部省の恥ですよ。こんなことをここでやってもらわなければならぬというのは恥です。そういうときには私は、森文部大臣なら辞表を懐へ入れてやるぐらいな勇気がこの人はあるんじゃないかと思っていたんですけれども、まあいいです。  言いたいのはまだあるんです。いいですか。ですから私は森さん、今のようなことを文部省がすいすいと、わけのわからぬ、どういう条文になるか、名前もわからぬ、人数もわからぬ、こういうのをこしらえると言えば、あなたのところには法律に基づくのがあるのですから、これを振りかざしていってやらないと、この臨調は何年もつか、三年もつか二年もつか知りませんが、それから後の中教審はどうなんです。大事な問題を皆取り上げられて、あと何十年続くかわからない中教審、これはもう機能がありませんよ。辞表を出しなさい。持っていったら、中曽根総理は受けやしませんよ。それじゃ考え直す……(「質問をしてください」と呼ぶ者あり)質問ですよ。受けますか、総理質問せいと言うから、質問です。
  438. 森喜朗

    ○森国務大臣 湯山さんが、とても文部省やそれから中教審を大事にしていただく気持ちは本当にありがたく思っております。しかし、新しい機関がどのような形で出ていくか、構成、組織、そのあたりを見るまでは、しばらくこの十四期について少し当面見合わせておこう、こういうことでございますから、新しい形ができ上がってきた時点で中教審との関係をどうするか、これは私の責任において考えていかなければならぬと思っております。  それからもう一つは、先ほどからいろいろと、先生も時間を気にしておられますけれども、こちらも大事なことでありますから。先生、私も非常に迷うのです。正直言って迷うのです。あなたもおっしゃったとおり、試行錯誤を繰り返して受験の制度を変えていっても、どこかに穴がある、そのとおりだと思います。  私も国立大学の先生方や私学の先生方と公式的にも非公式にもいろいろなお話をいたしますが、やはり大学の先生方は、学問を追求していくためにはすばらしい学問を修める能力のある人が欲しい、こうおっしゃるのです。この間、仙台に行きまして、お名前を申し上げたら大変失礼でありますけれども、総理と教育関係者とのお話の中にも、ある国立大学の先生は、五教科七課目が多いなどと思うような学生は国立大学に要らないのですとおっしゃるのです。しかし、我々政治家のこの凡庸な頭から見ると、それだけで人間を判断するというのはひどいじゃありませんか、こう私も総理も思います。こういう議論になってまいりますと、これは仙台じゃないのですが、ある学者さんは、日本はまさに科学技術立国として生きていかなければならぬ、そうすると人間の才能が最も大事なので、あなたの時代に学力を落としてしまうようなことがあったら、文部大臣として日本の将来にとって大きな責任ですよと言われて、僕は大変ショックでした。なるほどなと、そうも思います。  しかし、そういう状況で幾ら選抜方法を変えてみても、今の高等教育機関にかかわる人たちはやはり真理を追求し、学問を深めていく、そういう使命感に燃えているのですね。そうだとするならば、そのことを否定して、もっと別の角度から多様的に入れなさいといっても、これはなかなか難しいところです。ですから、高等教育というのはどうあるべきなんだろうか。国立と公立と私立大学というのはどうあるべきなんだろうか。この間三塚さんがおっしゃったように、先生御承知のとおり、大学院大学という道は一応開いてあります。しかし、そういう新しい大学のあり方というのは社会のニーズにこたえてどうやるべきなんだろうか。大学の先生方にこの辺を私どもが言うと、社会が求めているんです、社会が求めているから我々はその使命に燃えてやるんです、こうおっしゃいますが、社会はどうも求めてないという空気も強い。ですから、こういう問題になりますと、やはり新しい機関で幅広い皆さんの意見を聞いて、長期的な問題として日本の高等教育をどう位置づけるかということはとても大事な国民的課題だ、私はこのように考えておるわけです。
  439. 湯山勇

    ○湯山委員 大事な問題だというのはよくわかりますけれども、しかし、これは今言われたように後でまた議論いたします。私は、必ずしもその先生方が本当に学問を大切にして言っておるかどうか、疑問です。大学院の問題は総理にも申し上げました。現に最高学府である大学院がどんな状態がということもお考えください。これは後で議論します。あと一つだけで、もう時間がないからできません。一般質問か何かでお伺いします。  今は、今度の改革の大部分を現場で負わなければならない教育委員会、地方教育行政、これがどうかという問題ですが、義務教育を担当する市町村、これはその市町村の教育委員会が発表した資料です。それによれば、一回も委員会を開いてない教育委員会があります。それから専従者が一人もいない、こんなのがあります。それから三人以下に至っては、三千ばかり教育委員会がありますが、四百以上が三人以下です。それから、委員会には指導主事というのは必置です。その指導主事のいないのが七〇%以上です。これで一体機能ができるか。何をしているかというと、結局文部省から県を通じて来ることの消化だけです。伝達だけです。  そこで、これでは住民に密着できないということを、この市町村教育委員会自身がその反省に立ってこの資料を公開しておる。そうですね、文部大臣。そこからでいいです。――そのとおり、はい。だから、いろいろ言うけれども、中野区のような準公選もその基盤から出てきておるのです。それから大阪の、あれはどこでした、箕面市が、教育委員会の会議録を公開してくれと、裁判になりました。教育委員会側が用意した裁判の準備書面では、任命者の市長には責任を持つが住民には負わない、こういうのがちゃんとある。これも文部省もお認めになりました、以前委員会で。これです。これではとても担い手になれません。  それから、都道府県の教育委員会、これも、本来都道府県の教育委員会で中心になってやっていくのは、合議制ですから教育長なんです。しかし、教育長の人事は文部省はタッチしない、言うてきたのを認めるというのをずっと続けてきました。しかし、昭和五十三年六月、ついに文部省もたまりかねて、文部大臣は、教育委員会の委員長には適任者を選んでくれ。それから事務次官は、教育委員会の一番大事な仕事はいい教育長を選ぶことだということを言って訴えたのです。  なぜそうなのかというと、教育長は、もとは資格要件が法定されておりましたが、昭和三十一年にこれをのいた。途端に知事部局の人事へ巻き込まれてしまって、結局知事部局の人事と教育長人事が一緒になりました。本来、教育長というものは、教育に関して専門的な識見を有し、行政にも堪能なる者、これが教育長の条件で、これは変わっておりません。したがって教育長は、いきなり教育長になっても教育公務員です。文部省の初市局長はどんなに熱心でも、あるいは教科書課長がどんなに熱心でも、これは教育公務員じゃありませんよ。ないのです。  教育長は教育公務員、これは教育の専門職だ。ところが、それが専門職でないのが今日日本でどれくらいおるかというと、二十一名います。四十七都道府県の中の二十一名は、無資格とは言わぬけれども、不適任です。これについて文部大臣はどう言ったかというと、これはまあ知事部局から来るのは例外だ、例外というのは少ないはずだけれども例外が多過ぎる、まことに憂慮にたえない。かといって帰すわけにいかないので、研修ででも補わざるを得ない。さらに当時の局長は、いや、持ってくるのはみんなそんなのだ、もっといい人はないか、あるのはあるけれども、いま知事部局の人事ですからできない、こういうことです。  これはだれが動かしているか。教育長は教育委員会が選ぶというのが壊れて、実権は知事が握っている。群馬県の教育長はどうなんですか。資格のある方ですか、ない方ですか。(中曽根内閣総理大臣「立派な人です」と呼ぶ)いや、立派な人はいいですけれども、持ってないのです。県の何か、企画部長か阿部長か、いい人はそうですけれども、しかし文部省の言う適任者ではない。ですから、これを改めていかないで今のようなことを持っていっても、それはこなせません。合議制の本来のあり方が地方教育行政では壊れている。ここにやはり大きな問題がございます。これをほうっておいて一体教育改革が進むと総理、お考えでしょうか。
  440. 森喜朗

    ○森国務大臣 地方教育委員会が充実をしてないということは、残念ながら確かに湯山先生の御指摘のとおりだと思います。したがいまして、先生も御承知のとおり、文部省としても地方教育委員会の充実強化につきましてはいろいろな角度で努力をしておるわけでございます。教育長は、できれば私も先生のおっしゃるとおりの形がいいと思います。思いますが、それだけに、いろいろな識見を有した人が県にもかなりたくさんいらっしゃいます。これもやはり認めていかなければならぬことだと思っております。したがいまして、こういう教育長、教育委員会のあり方、こうしたこともこれからの大変大事な教育の課題だと私は受けとめております。長い間に定着をいたしました地方教育行政、もう三十有余年たっておりまして、地方自治を尊重するということ、政治的中立性の確保ということのこの基調だけはしっかり承知をして、地方教育委員会のあり方なども、十分に私の仕事の一番大事な問題としてやはりこれから努力をしていきたい、こんなふうに考えております。
  441. 湯山勇

    ○湯山委員 この問題は非常に重大な問題です。これを放置しておいたら、幾ら審議会がいい答申を出しても、それは行われる心配はありません。この辺を本当に考えられるのは、やはり教育についての本当の正しい識見を持った人でなければわからないと思うのです。教育改革、これは私に言わせれば、教育委員会がもし知事部局から持ってきたらはね返すだけの自主性を持たなければ、さっき森文部大臣に申し上げたように、総理から無理や、ほかから無理が来たらはね返すだけの力を文部省が持たなければ本当の教育ができないと申し上げたのは、それと一脈通じます。今日の教育委員会は、もう形は整っていることは整っていても、実質そういう状態にあることを総理はわきまえておっしゃらないと――半分わきまえて言われたことは認めます。けれども、実態はそうなんです。群馬でお調べになってください。そういうことをほうっておいての教育改革、これも私は納得できません。  こう見てまいりますと、まだもっともっと重大な問題もあるのです。それはそう言いながら、これで仮にいい答申が出て、それで各党一致して進めたとしても、直ちに手のつかない公教育の枠外に今の受験産業がある。何人ぐらいおりますか、今のような文部省の手の届かないところで教育を受けておる者が。文部大臣。
  442. 高石邦男

    ○高石政府委員 塾に通っている者、これは全体を正確に悉皆調査したことはありませんので掌握しかねますが、小中の生徒で約四百万近い子供たちが塾に通っているというふうに推計されます。
  443. 湯山勇

    ○湯山委員 総理、全体の今の小中の児童生徒数は千七百万から千八百万です。その中の四百万が全然文部省の手の届かないところ、これは学校じゃないのですね、学校として認められておりません、そこで教育を受けている。そういうまことに不思議な教育機関が日本に存在している。これを無視して教育改革はできない。このことはおわかりでしょうか。
  444. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の孫は小学校四年生ですが、塾へ通っておるからよく知っております。そういうことを見ているから、心配にたえない点もあるのです。
  445. 湯山勇

    ○湯山委員 お孫さんは塾へ行って、効果がありますか。
  446. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まだよくわかりません。
  447. 湯山勇

    ○湯山委員 何か効果がなければこんなには行かぬですよ、ただ親の見えだけでは。つまり、こういうことがあるというのは、これは今初中局長は四百万と言いましたが、総理も含めて親たちの教育に対する不信です、公教育に対する。そう受け取らないといかぬのですよ、総理。それは、踊りを習いに行くとか音楽を習いに行く、これはいいです。しかし、いわゆる受験のための学習塾というものは、これはすべて公教育、私学も含めてです、これに対する不信のあらわれ。それが四百万ということになれば、ほうっておけませんでしょう、総理
  448. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 さればこそ、こういう新しい機関でこういう問題をどういうふうに解決するか、研究してもらいたいと思っておるわけです。
  449. 湯山勇

    ○湯山委員 研究ですが、解決するという自信がありますか。
  450. 森喜朗

    ○森国務大臣 確かに、今湯山さんおっしゃるように、学校教育に対して不満はあるということであろうと思いますが、同時に、これは入試改善、それから学歴社会、もう一つは、私ども政治の立場で言っていいかどうかわかりませんが、親自身の意識の改革というものが私は大事だと思います。  そういうふうに考えますと、この際、今総理が申し上げたように、私も先ほどちょっと長いとおしかりをいただきましたけれども、やはり一番問題の根っこは高等教育機関にあると思うのです。そこから高校、中学と、だんだんその目標に向かって親も苦労しなければならぬ、学校の先生も苦労しなければならぬ、本人も苦労しなければならぬ、そこにまた塾、予備校というようなものも枠外の中に出てくるという現象、そういう社会的現象を解決する、そういう役割としてこの新しい機関に私は大いに期待をしていきたい、こう思っているのです。
  451. 湯山勇

    ○湯山委員 私は、今の御答弁を聞いて、総理の御答弁を聞いても、果たしてそれができるかできないか、非常に疑問です。下手すると、よく批判されておる中で厳しいのは、政府で当然やらなければならないこと、それを政府外の機関にやらせて、当然国会でやらなければならないことを外でやらして、それを利用して意図的な教育を進めようというようなことになってはならないという注意は傾聴しなければならないと思うのです。  こういうことを申し上げまして、あと農林大臣やそれから総務長官の担当の問題で総理にお聞きしたいことがあったのですけれども、それはまた他の委員にしていただくことにして、なお残りの問題は一般質問でひとつたださせていただきます。少し言い過ぎた点もあるかもしれませんけれども、本当に教育を思っての質問ですから、ひとつ総理もお含みの上で努力してください。  以上で終わります。
  452. 倉成正

    倉成委員長 これにて湯山君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  453. 倉成正

    倉成委員長 この際、公聴会の件について御報告いたします。  公述人の人選等につきましては、さきに委員長に御一任願っておりましたが、本日の理事会において慎重に協議した結果、公述人はお手元に配付いたしました名簿のとおり決定いたしました。     ―――――――――――――    予算委員会公述人名簿 一、意見を聞く問題 昭和五十九年度総予算について  ○二月二十三日(木)     国策研究会理事長   法眼 晋作君     東京大学名誉教授   大田  堯君     日本経済新聞社論説委     員          黒羽 亮一君     青山学院大学教授   原   豊君     財政研究所所長    館 龍一郎君     埼玉大学教授     暉峻 淑子君  ○二月二十四日(金)     名古屋大学教授    水野 正一君     TKC全国会会長   飯塚  毅君     公認会計士・税理士     日興リサーチセンター     取締役理事長     松川 道哉君     統一戦線促進労働組合     懇談会事務局長    春山  明君     上智大学教授     小山 路男君     作家・評論家     小田  実君     ―――――――――――――
  454. 倉成正

    倉成委員長 次回は、明十八日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十六分散会